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特表2024-530329金属切削工具用の振動減衰工具ホルダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】金属切削工具用の振動減衰工具ホルダ
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/02 20060101AFI20240808BHJP
   B23B 27/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B23B29/02 A
B23B27/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513428
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2022074064
(87)【国際公開番号】W WO2023031189
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】21315152.5
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522501487
【氏名又は名称】セコ ツールズ ツーリング システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グロル, ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】クルムホルン, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】アリアックバリ, アリレザ
(72)【発明者】
【氏名】モラル, ジョルジュ
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046AA05
3C046BB02
3C046KK02
(57)【要約】
金属切削工具(2)用の振動減衰工具ホルダ(1)であって、ホルダ本体(3)を備える、振動減衰工具ホルダ(1)。ホルダ本体(3)は、長手方向軸(6)に沿ってホルダ本体(3)内に延び、第1のホルダ本体端部(4)に第1のキャビティ端部を有する内部キャビティ(10)を備える。減衰工具ホルダは、キャビティ(10)内に移動可能に配置され、長手方向軸(6)に沿って延び、第1のホルダ本体端部(4)に第1の調整質量端部を有する調整質量部(15)をさらに備える。減衰工具ホルダは、キャビティ(10)内で調整質量部(15)を囲む減衰媒体(22)と、キャビティ(10)内に位置決めされた単一の一次ばね要素(18)とをさらに備える。外側ばね要素端部(19)は、長手方向軸(6)で第1のキャビティ端部に不動に固定され、内側ばね要素端部(20)は、長手方向軸(6)で第1の調整質量端部に不動に固定される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属切削工具(2)用の振動減衰工具ホルダ(1)であって、前記振動減衰工具ホルダ(1)がホルダ本体(3)を備え、
前記ホルダ本体(3)が、第1のホルダ本体端部(4)と、第2のホルダ本体端部(5)と、前記第1のホルダ本体端部(4)から前記第2のホルダ本体端部(5)まで延びる長手方向軸(6)とを有し、
前記ホルダ本体(3)には、内部キャビティ(10)が設けられ、前記内部キャビティ(10)が、
内部キャビティ表面(11)によって画定され、
前記長手方向軸(6)に沿って前記ホルダ本体(3)内に延び、かつ
前記第1のホルダ本体端部(4)に第1のキャビティ端部を有し、
前記減衰工具ホルダが、
調整質量部(15)であって、
前記キャビティ(10)内に移動可能に配置され、
中立休止位置では、前記長手方向軸(6)に沿って延び、かつ
前記第1のホルダ本体端部(4)に第1の調整質量端部を有する
調整質量部(15)と、
前記キャビティ(10)内で前記調整質量部(15)を囲む減衰媒体(22)と、
前記キャビティ(10)内に位置決めされ、外側ばね要素端部(19)から内側ばね要素端部(20)までの長手方向延長部を有する単一の一次ばね要素(18)と
をさらに備える、前記振動減衰工具ホルダ(1)において、
前記外側ばね要素端部(19)が、前記長手方向軸(6)において前記第1のキャビティ端部に不動に固定され、かつ前記内側ばね要素端部(20)が、前記長手方向軸(6)において前記第1の調整質量端部に不動に固定されること
を特徴とする、振動減衰工具ホルダ(1)。
【請求項2】
前記一次ばね要素(18)の減衰が構造減衰である、請求項1に記載の振動減衰工具ホルダ。
【請求項3】
前記調整質量部(15)が、前記一次ばね要素(18)のみによって懸架される、請求項1または2に記載の振動減衰工具ホルダ。
【請求項4】
前記一次ばね要素(18)が屈曲可能であり、前記調整質量部(15)が、前記一次ばね要素(18)が屈曲することによって、前記長手方向軸(6)に垂直な前記一次ばね要素(15)の軸の周りで角度αにわたって枢動可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の振動減衰工具ホルダ。
【請求項5】
前記第1のキャビティ端部、前記第1の調整質量端部、および前記一次ばね要素(18)が一体であり、一体のワークピースから作製される、請求項1から4のいずれか一項に記載の振動減衰工具ホルダ。
【請求項6】
前記キャビティ(10)、前記調整質量部(15)、および好ましくは前記一次ばね要素(18)が円形断面を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の振動減衰工具ホルダ。
【請求項7】
前記一次ばね要素(18)が、前記外側ばね要素端部(19)および前記内側ばね要素端部(20)の両方から距離を置いた最小断面積から、それぞれの端部(19、20)に向かって両方向に増加する断面積を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の振動減衰工具ホルダ。
【請求項8】
前記減衰媒体(22)が、流体、好ましくは液体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の振動減衰工具ホルダ。
【請求項9】
前記減衰流体が、前記振動減衰工具ホルダの目標固有振動数が最大で15%、好ましくは最大で10%減少するように選択され、前記内部キャビティ内に分配される、請求項8に記載の振動減衰工具ホルダ。
【請求項10】
前記キャビティ(10)内に配置された補助弾性要素(21)をさらに備え、前記補助弾性要素(21)が、前記調整質量部(15)が閾値角度αを超えて枢動するときにのみ前記調整質量部(15)によって励起されるように配置および構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の振動減衰工具ホルダ。
【請求項11】
前記補助弾性要素(21)がポリマーを含む、請求項8に記載の振動減衰工具ホルダ。
【請求項12】
前記補助弾性要素(21)が、前記調整質量部(15)または前記一次ばね要素(21)の周囲に配置されたOリングである、請求項9に記載の振動減衰工具ホルダ。
【請求項13】
前記調整質量部(15)が、最大角度αで最大に枢動可能であり、前記閾値角度が、前記最大角度の少なくとも20%である、請求項1から12のいずれか一項に記載の振動減衰工具ホルダ。
【請求項14】
前記第1のホルダ本体端部(4)が、切削ヘッド(7)を支持するための前端部である、請求項1から13のいずれか一項に記載の振動減衰工具ホルダ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の振動減衰工具ホルダを備える穿孔工具(2)。
【請求項16】
切削ヘッド(7)をさらに備え、前記切削ヘッド(7)が、前記第1のホルダ本体端部(4)において前記ホルダ本体(3)に接続される、請求項15に記載の穿孔工具(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削工具用の振動減衰工具ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば回転切削工具または非回転切削工具などの様々な切削工具が、金属ワークピースを機械加工するために使用されている。そのような工具は、典型的には、前端部に切削ヘッドを有し、後端部に切削工具を工作機械に接続するためのシャンクを有する細長い本体を備える。切削ヘッドは、切削ヘッドと一体であっても、または交換可能な切削インサート上に位置してもよい切削エッジを備える。
【0003】
切削工具が操作されると、切削工具は、強度および/または方向が変化し得る切削力を受ける。これにより、切削工具に望ましくない振動(vibration)または発振(oscillation)が生じる可能性があり、これにより、機械加工されたワークピースの表面仕上げが不十分になる、または切削工具もしくはワークピースが損傷する可能性がある。
【0004】
米国特許第3598498号には、ボーリングバーの振動を減衰させるための調整可能な装置が示されている。装置は、円錐形の軸方向ボア内に位置する円錐形減衰質量を備える。中空ピンが減衰質量の軸方向に延びる凹部にねじ込まれ、調整可能なばねロッドの一端が中空ピンに挿入される。調整可能なばねロッドの他端は、調整可能なスリーブを介してボアの壁に結合される。減衰流体がボア内に提供される。
【0005】
この既知の装置の問題は、所望の周波数範囲および/または所望の振幅範囲にわたって良好で一貫した減衰を提供するように装置を設計することが困難であることである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、先行技術の欠点を軽減し、調整がより容易な振動減衰工具ホルダを提供することである。この目的は、本発明によれば、請求項1に記載の金属切削工具用の振動減衰工具ホルダによって達成される。
【0007】
本発明は、ホルダ本体を備える、金属切削工具用の振動減衰工具ホルダに関する。ホルダ本体は、第1のホルダ本体端部と、第2のホルダ本体端部と、第1のホルダ本体端部から第2のホルダ本体端部まで延びる長手方向軸とを有する。ホルダ本体には、内部キャビティが設けられ、内部キャビティは、内部キャビティ表面によって画定され、長手方向軸に沿ってホルダ本体内に延び、第1のホルダ本体端部に第1のキャビティ端部を有する。減衰工具ホルダは、キャビティ内に移動可能に配置された調整質量部をさらに備える。中立休止位置では、調整質量部は、長手方向軸に沿って延び、第1のホルダ本体端部に第1の調整質量端部を有する。減衰工具ホルダは、キャビティ内で調整質量部を囲む減衰媒体と、キャビティ内に位置決めされ、外側ばね要素端部および内側ばね要素端部を有し、外側ばね要素端部から内側ばね要素端部までの長手方向延長部を有する単一の一次ばね要素とをさらに備える。外側ばね要素端部は、長手方向軸で第1のキャビティ端部に不動に固定され、内側ばね要素端部は、長手方向軸で第1の調整質量端部に不動に固定される。
【0008】
したがって、工具ホルダは、調整質量部、一次ばね要素、および減衰媒体が配置されるキャビティを備える。これらの構成要素は、調整質量部が発振質量に対応し、一次ばね要素および減衰流体が剛性および減衰を提供する質量ダンパシステムを構成する。振動減衰工具ホルダを設計するとき、選択された誘導周波数および/または振幅に対する最適化された応答に必要な所望の剛性および所望の減衰が計算される。一次ばね要素の構成および一次ばね要素の不動接続のおかげで、一次ばね要素によってシステムに減衰はほとんど付加されない。さらに、減衰媒体、例えば流体は、減衰媒体によってシステムにほとんど剛性が付加されないように選択することができる。したがって、一次ばね要素および減衰流体は、計算値を満たすように独立して選択することができる。
【0009】
対照的に、米国特許第3598498号の装置を含む先行技術の装置では、ばね構成要素の装着および構成により、ばね構成要素も本質的にシステムに減衰を提供する。したがって、所望の剛性を満たすように先行技術の装置のばね構成要素を調整すると、装置の減衰も影響を受ける。したがって、周波数範囲および振幅に対して所望の応答を与えるように先行技術の工具ホルダを設計することは、本発明による振動減衰工具ホルダよりもかなり困難である。
【0010】
一次ばね要素は、外側ばね要素端部と共に第1のキャビティ端部に不動に固定され、内側ばね要素端部と共に第1の調整質量端部に不動に固定される。それにより、外側ばね要素端部と第1のキャビティ端部との間、および内側ばね要素端部と第1の調整質量端部との間に相対運動はない。言い換えれば、一次ばねのそれぞれの一端とそれが接続されている関連する端部との間に、相対的な並進も回転もない。一次ばね要素の両端の接続は強固(rigid)であると説明することができる。それにより、例えば摩擦によって引き起こされる接続部自体での減衰は無視することができる。
【0011】
調整質量部は、動作中に工具ホルダの振動が調整質量部をキャビティ内で移動させる、例えば発振させるように、キャビティ内に移動可能に配置される。調整質量部が中立休止位置にあるとき、調整質量部はホルダ本体の長手方向軸に沿って延びる。これは、振動減衰工具ホルダが非作動または静止しているときの平衡状態であり得る。
【0012】
一実施形態によれば、一次ばね要素の減衰は構造減衰である。これは、振動工具ホルダの通常動作中に一次ばね要素に由来し得る任意の他の形態の減衰が、構造減衰と比較して無視することができるほど小さいものと理解されるべきである。ばね要素に由来する構造減衰以外の減衰の他の形態は、大きさがより小さく、振動減衰工具ホルダの通常動作中に振動減衰工具ホルダに影響を与えない。構造減衰は、一次ばね要素が動作するとき、例えば屈曲(bend)または曲がる(flex)ときの一次ばね要素の材料における減衰として理解されるべきである。ばね要素の構造減衰が低いため、これにより、システムに付加されるほぼすべての減衰が減衰媒体に由来することが保証される。これにより、一次ばね要素の減衰を考慮せずに適切な減衰媒体を選択することによって、振動工具ホルダの所望の減衰を達成することができる。
【0013】
任意選択的に、調整質量部は、一次ばね要素のみによって懸架される。減衰媒体は調整質量部の任意の力に屈するので、一次ばね要素は、調整質量部が平衡状態で休止位置にあるときに調整質量部の位置を画定する唯一の構成要素である。これにより、有利には、振動減衰工具ホルダは、減衰媒体または一次ばね要素の減衰または剛性をそれぞれ付加し得る構成要素を欠いている。任意選択的に、減衰媒体を除いて、一次ばね要素は、休止位置またはそのすべての位置で調整質量部と接触する唯一の構成要素である。
【0014】
好ましくは、調整質量部は、キャビティ内に枢動可能に配置される。一実施形態によれば、調整質量部は、一次ばね要素の軸の周りで枢動可能である。調整質量部は、例えば、長手方向軸に垂直ないくつかの異なる軸の周りで角度αにわたって枢動可能である。好ましくは、調整質量部は、長手方向軸に垂直な各軸の周りで枢動可能である。調整質量部の各枢動軸について、一次ばね要素は、一端が固定され、他端が調整質量部の形態の質量を担持する片持ちばねとして、またはそれと同様に機能することができる。枢動調整質量部がシステムに提供する慣性は、調整質量部の長さに依存する。キャビティの限られた空間内で枢動するとき、長い調整質量部は、並進運動のために懸架される同じサイズの従来の質量よりも多くの慣性をシステムに提供することができる。それにより、有利には、調整質量部は、従来の並進質量よりも軽量であり、依然として同じまたはより良好な減衰結果を達成することができる。したがって、本実施形態による振動減衰工具ホルダの調整質量部は、有利には、同じ寸法を有する先行技術の工具の並進質量よりも少ない重量を工具ホルダに加えることができる。
【0015】
好ましくは、第1のキャビティ端部は第1のキャビティ端面を備え、第1の調整質量部は第1の調整質量部端面を備える。好ましくは、両方の端面は、一次ばね要素の関連する端部との接続部において平坦であり、両方の端面は、一次ばね要素の関連する端部の周囲に接触するか、または一体である。これにより、一次ばね要素は、それぞれの平面の両方から突出する。そのような設計は、調整質量部が自由に、かつ一次ばね要素の枢動軸に対して最大距離で枢動することを可能にする。さらに、第1のキャビティ端部および第1の調整質量端部が、一次ばね要素の剛性に可能な限りほとんど影響しないことが保証される。任意選択的に、両端面は、長手方向軸に垂直な平面内に延びる。
【0016】
一次ばね要素は、2つの対向する端部の間に細長い延長部を有する任意の適切な種類のものであってもよい。好ましくは、一次ばね要素は、調整質量部からの励起に応答して曲がるように配置および構成される。したがって、一次ばね要素は屈曲可能であり、調整質量部は、一次ばね要素の屈曲によって枢動可能である。好ましくは、調整質量部が中立休止位置にあるとき、一次ばね要素は、ホルダ本体の長手方向軸に沿って延びる。これは、振動減衰工具ホルダが非作動または静止しているときの平衡状態であり得る。例えば、一次ばね要素は、第1のキャビティおよび第1の調整質量端部に取り付けられたロッド、チューブまたは螺旋ねじの形態の別個の構成要素である。好ましくは、一次ばね要素は中実ロッドである。
【0017】
一実施形態によれば、第1のキャビティ端部、第1の調整質量端部、および一次ばね要素は一体であり、一体のワークピースから作製される。これにより、有利には、2つの一次ばね要素端部が第1のキャビティ端部および第1の調整質量端部のそれぞれに不動に接続されることが保証される。例えば、一次ばね要素は、第1のキャビティ端部から第1の調整質量端部まで延びるロッドであり、ロッドは、第1のキャビティ端部および第1の調整質量端部の両方と一体である。
【0018】
調整質量部、第1のキャビティ端部および一次ばね要素を製造する好ましい方法は、調整質量部の形状を有する中実ブランクを提供することである。次に、一次ばね要素の所望の形状が得られるまで、その一端に近い中実ブランクから材料が除去される。一次ばね要素は、調整質量部の平均断面積よりも小さい最小断面積を有することができる。例えば、中実円筒形のブランクを回転させることによって、外側端部の材料の残りの部分であってキャビティ端部を形成する部分と、内側端部の材料の残りの部分であって調整質量部を形成する部分との間に一次ばね要素を形成することができる。好ましくは、キャビティ、調整質量部、および一次ばね要素は、円形断面を有する。
【0019】
任意選択的に、調整質量部は、タングステン、炭化タングステン、タングステン合金、超硬合金、鋼または鋼合金を含む。任意選択的に、一次ばね要素は、タングステン、炭化タングステン、タングステン合金、超硬合金、鋼または鋼合金を含む。第1のキャビティ端部、第1の調整質量端部、および一次ばね要素が一体であり、一体のワークピースから作製される実施形態では、一体のワークピースは、このリストからの材料、好ましくは超硬合金または鋼を含む。好ましくは、キャビティは、このリストからの材料を含む本体内に形成される。
【0020】
調整質量部は、任意の適切な形状を有することができる。調整質量部の形状は、所望の重量および/または慣性に応じて選択することができる。枢動調整質量部は、対応する従来の並進質量よりも大きな運動を有するので、調整質量部は、並進するときよりもシステムに大きな慣性を提供する。工具ホルダ本体の利用可能な全長にわたって延びるキャビティを提供し、枢動調整質量部の慣性が可能な限り大きくなるように、可能な限り長い調整質量部をキャビティ内に配置することが有利である。したがって、調整質量部は、第1のキャビティ端部の一次ばね要素からキャビティの反対側の端部までずっと延びることができる。慣性をさらに増加させるために、調整質量部の質量は、第1の調整質量端部の遠位にある端部に集中してもよい。
【0021】
好ましくは、調整質量部は円形断面のみを有する。これにより、調整質量部は、枢動方向である長手方向軸に垂直なすべての方向において等しい品質を有する。任意選択的に、調整質量部は、円筒形、円錐形または球形である。任意選択的に、調整質量部は中実または中空である。
【0022】
調整質量部の外面は、減衰媒体との所望の相互作用に関して選択することができる。任意選択的に、調整質量部の外面は、滑らかであるか、粗いか、またはフィンなどの突出要素を備える。
【0023】
一次ばね要素は、振動減衰工具ホルダに剛性を付加する。一次ばね要素の最小断面積は、一次ばね要素の剛性を決定する。一実施形態によれば、一次ばね要素は、外側ばね要素端部および内側ばね要素端部の両方から距離を置いた最小断面積から、それぞれの端部に向かって両方向に増加する断面積を有する。そのような設計は、剛性の正確な選択を可能にすると同時に、亀裂形成のリスクを低減する。一次ばね要素は、例えば円形断面を有する中実構成要素であり、一次ばね要素の最小断面積は、例えば端部間の中央にある。他の実施形態では、一次ばね要素の断面積は、一部分、例えば主要部分に沿って、または一次ばね要素の長手方向の長さ全体に沿って一定である。
【0024】
好ましくは、減衰媒体は流体であり、より好ましくは液体である。減衰媒体はまた、いくつかの材料の組み合わせおよび/または流体、気体もしくは固体の組み合わせであってもよい。減衰媒体が流体である場合、キャビティは閉じられ、好ましくは流体をしっかりと保持し、漏れを防止するためにシールされる。
【0025】
減衰媒体は、キャビティ内に位置し、調整質量部を囲む。減衰媒体は、選択された調整質量部、一次ばね要素および/または内部キャビティを考慮して所望の減衰を達成するように選択することができる。例えば、調整質量部のための適切な密度および幾何学的形状、ならびにキャビティのための適切な幾何学的形状を最初に選択した後、適切な種類の減衰媒体、および/またはキャビティ内の減衰媒体の適切な分配を選択することによって、振動減衰工具ホルダの所望の減衰が達成される。
【0026】
例えば、減衰媒体は、長手方向および円周方向に調整質量部に沿って分配される。任意選択的に、減衰媒体は、キャビティの一部または全体を満たし、均一または不均一に分配される。この場合、調整質量部は、減衰媒体によって部分的にのみ囲まれてもよい。減衰媒体は、例えば、第1のキャビティ端部とは反対側のキャビティ内の端部に集中していてもよい。これにより、工具ホルダの減衰特性を特定の減衰特性に合わせて設計することができる。
【0027】
一般に、構造の剛性および減衰を確立するとき、構造の周波数応答関数(FRF)は、例えば衝撃ハンマー試験またはシェーカー試験を使用して得られる。FRFが周波数領域で計算された場合、対応する曲線は、周波数対大きさでプロットすることができる。所望の用途に関係する固有振動数である目標固有振動数は、曲線のピークとして見ることができる。ピークの位置、すなわち固有振動数は、この周波数における構造の剛性の指標である。ピークにおける曲線の幅は、この周波数における減衰の指標である。
【0028】
一般に、剛性および質量は、構造の固有振動数を決定する2つの主要な要素である。振動減衰工具ホルダに減衰媒体を追加する場合、減衰媒体の質量は、ホルダ本体および調整質量部と比較して無視することができる。しかしながら、減衰媒体なしおよび減衰媒体ありの減衰振動工具ホルダについて得られたFRF曲線を比較すると、ピークの固有振動数は異なる。この変化は、減衰媒体によって振動減衰工具ホルダに付加された剛性を示す。
【0029】
一実施形態によれば、減衰流体の形態の減衰媒体は、振動減衰工具ホルダの目標固有振動数が最大で15%、好ましくは最大で10%減少するように選択され、内部キャビティ内に分配される。減衰流体に由来する剛性のわずかな部分は、システムに付加されるほぼすべての剛性が一次ばね要素によって提供されることの保証にさらに寄与する。さらに、一次ばね要素の低い減衰のおかげで、システムのほぼすべての減衰が減衰媒体によって提供される。したがって、一次ばね要素および減衰流体は、振動減衰工具ホルダの所望の特性を満たすように独立して選択することができる。
【0030】
枢動調整質量部、正確な選択可能な剛性を提供する一次ばね要素、および正確な選択可能な減衰を提供する別個の減衰媒体の組み合わせは、有利には、振動減衰工具ホルダの誘導振動の振幅からの高い独立性を達成する。したがって、振動減衰工具ホルダの実施形態は、剛性および減衰特性の両方を有する構成要素によって懸架された並進質量を備える先行技術の装置と比較して、低振幅に対して効率が向上している。
【0031】
任意選択的に、振動減衰工具ホルダは、キャビティ内に配置された補助弾性要素をさらに備え、補助弾性要素は、調整質量部が閾値角度αを超えて枢動するときにのみ調整質量部によって励起されるように配置および構成される。弾性要素は、主にシステムに剛性を付加するが、固有の減衰も有する。固有の減衰は、弾性要素の形状および/または選択された弾性材料に由来してもよい。
【0032】
好ましくは、補助弾性要素は、例えばニトリル、ケイ素またはポリエチレンなどのポリマーを含む。一般に、減衰システムにおける弾性ポリマー要素の利点は、それらが高振幅に対して良好に機能することである。したがって、減衰振動工具ホルダの一実施形態において、誘導振動が高振幅を有するときにのみ作動するポリマー弾性要素を配置することにより、低振幅での既に良好な結果に影響を及ぼすことなく、高振幅に対する工具ホルダの効率を向上させることが可能になる。
【0033】
好ましくは、調整質量部は最大角度αで最大限に枢動可能であり、閾値角度は最大角度の少なくとも20%である。最大角度αは、調整質量部がキャビティ壁に接触することなく枢動することができる最大アーク長によって決定することができる。円筒形の調整質量部およびキャビティを有する実施形態では、閾値角度は、調整質量部の遠位端の、調整質量部とキャビティとの間の直径の差の20%の半径方向移動に対応することができる。調整質量部の遠位端は、第1の端部の反対側にあり、第2のホルダ本体端部に近い端部である。
【0034】
一実施形態によれば、振動減衰工具ホルダは、長手方向の振動を減衰させるためにキャビティ内に配置された二次補助弾性要素をさらに備える。二次補助弾性要素は、例えば、調整質量部の遠位端と第2のホルダ本体端部のキャビティ壁との間に配置されてもよい。二次補助弾性要素の影響は、閾値角度未満の調整質量部の枢動運動については無視することができることが好ましい。
【0035】
任意選択的に、補助弾性要素は、調整質量部からの励起に応答して圧縮または応力するように構成される。
【0036】
好ましい実施形態によれば、第1のホルダ本体端部は、切削ヘッドを支持するための接触面を有する前端部である。これにより、ばね要素は、動作中に振動が誘導される切削ヘッドの近くに位置する。さらに、枢動調整質量部からの対抗力がばね要素に作用し、したがって切削ヘッドの近くに作用する。別の利点は、減衰の大部分が調整質量部の遠位端、すなわち動作中に熱が発生する一次ばね要素および切削ヘッドから最も遠くに位置する端部で行われることである。多くの減衰媒体は、熱に敏感であるか、または熱に応答してそれらの減衰特性を変化させるので、振動減衰工具ホルダの本実施形態の減衰特性は、したがって、熱感度がより低い。
【0037】
本発明による振動減衰工具ホルダは、例えば旋削、フライス削り、削孔(drilling)、または穿孔(boring)工具などの金属切削工具に含まれてもよい。好ましくは、金属切削工具は、例えば穿孔工具などの非回転金属切削工具である。穿孔工具は、深い穴を切削するために使用される場合、工具ホルダの必要な長さが大きいために振動を特に受けやすい。上述のように主に慣性に依存する振動減衰工具ホルダの実施形態の調整質量部のおかげで、小さな直径を有する長い調整質量部を使用することができる。これは、直径が小さい深い穴を意図した長いボーリングバーにおいて有利である。
【0038】
一実施形態によれば、ボーリングバーなどの非回転金属切削工具は、振動減衰工具ホルダを含む細長い本体と、切削ヘッドとを備える。好ましい実施形態によれば、ホルダ本体は、切削ヘッドを振動減衰工具ホルダに解放可能に接続するために、前端部である第1のホルダ本体端部に接触面を備える。他の実施形態では、切削ヘッドはホルダ本体と一体である。切削ヘッドは、切削ヘッドと一体であっても、または交換可能な切削インサート上に位置してもよい切削エッジを備える。後端部である第2のホルダ本体端部には、切削工具を工作機械に接続するためのシャンクが設けられている。任意選択的に、シャンクには、例えばCoromant Capto(著作権)カップリングなどのカップリングが設けられている。
【0039】
以下、例示的な実施形態をより詳細に、かつ添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】ボーリングバーの形態の振動減衰工具ホルダを備える非回転金属切削工具の第1の実施形態の斜視図である。
図2】調整質量部およびキャビティの前端部/第1の端部のみを示す、図1に示す振動減衰工具ホルダの斜視図である。
図3a図2の振動減衰工具ホルダを概略縦断面で示す、図1に示すボーリングバーの側面図である。
図3b図2の振動減衰工具ホルダを概略縦断面で示す、図1に示すボーリングバーの側面図である。
図4】振動減衰工具ホルダの代替実施形態の長手方向断面図である。
図5】振動減衰工具ホルダの代替実施形態の長手方向断面図である。
図6】振動減衰工具ホルダの代替実施形態の長手方向断面図である。
図7】振動減衰工具ホルダの代替実施形態の長手方向断面図である。
図8】振動減衰工具ホルダの代替実施形態の長手方向断面図である。
図9】振動減衰工具ホルダの代替実施形態の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
すべての図は概略図であり、必ずしも縮尺通りではなく、一般に、それぞれの実施形態を解明するために必要な部品のみを示しているが、他の部品は省略または単に示唆されてもよい。別途指示がない限り、同様の参照符号は、異なる図の同様の部品を指す。
【0042】
図1図3を参照すると、振動減衰工具ホルダ1の第1の実施形態が示されている。工具ホルダ1は、ボーリングバー2の形態の非回転金属切削工具用の工具ホルダである。工具ホルダは、前端部4の形態の第1のホルダ本体端部と、後端部5の形態の第2のホルダ本体端部とを有するホルダ本体3を備える。ホルダ本体は、前端部4から後端部5まで長手方向軸6に沿った長手方向延長部を有する。図1の金属切削穿孔工具1では、穿孔ヘッド7の形態の切削ヘッドが、前端部4において工具ホルダ1のホルダ本体3に接続されている。図2に見られるように、ホルダ本体3には、切削ヘッド7で対応するカップリング(図示せず)を受けるためのカップリング、具体的にはCoromant Capto(著作権)カップリングの形態の接触面が設けられている。切削ヘッド7には、切削エッジ9を有する複製可能な切削インサート8が取り付けられている。
【0043】
図3を参照すると、ホルダ本体3には、キャビティ表面11によって画定される内部キャビティ10が設けられている。キャビティ10は、前端部の形態の第1のキャビティ端部から長手方向軸6に沿ってホルダ本体3内に延びる。キャビティ10は、前端部に前端面12を有し、第2のホルダ本体端部5により近い反対側の端部に後端部13を有する。後端部13において、ダクト14は、後端部5においてキャビティ10をホルダ本体3の外側と接続するためにキャビティと流体連通している。
【0044】
工具ホルダ1は、調整質量部15をさらに備える。調整質量部15は、キャビティ10内に移動可能に配置され、図3に示す中立休止位置では長手方向軸6に沿って延びている。調整質量部15は、キャビティ10の前端面12に、前端部16の形態の第1の調整質量端部を有する。調整質量部15は、ホルダ本体3の後端部5により近い反対側の端部に後端面17を有する。
【0045】
単一の一次ばね要素18がキャビティ10内に位置決めされる。一次ばね要素は、外側ばね要素端部19から内側ばね要素端部20までの長手方向延長部を有する。
【0046】
キャビティ10の前端面12を有する前端部、前端面16を有する前端部を有する調整質量部15、および一次ばね要素は、一体であり、一体のワークピースから作製され、超硬合金を含む。例示的な実施形態では、一体の構成要素の重量は0.44kgである。これにより、2つの一次ばね要素端部19、20は、キャビティ10の前端面12および第1の調整質量部15の前端面16のそれぞれに不動に固定される。
【0047】
調整質量部15、ならびに一次ばね要素、キャビティ10およびダクト14はすべて、それらの完全長に沿って円形断面を有する。調整質量部15、ならびに一次ばね要素18および調整質量部15を収容するキャビティ10の主チャンバは、円筒形である。例示的な実施形態では、調整質量部15は、一次ばね要素18の長手方向中心から遠位端まで90mmの長さであり、23mmの直径を有する。
【0048】
一次ばね要素18は、外側ばね要素端部19と内側ばね要素端部20との間の中間の最小断面積23から、それぞれの端部19、20に向かって両方向に増加する断面積を有する。
【0049】
工具ホルダ1は、ポリマーOリングの形態の補助弾性要素21をさらに備える。Oリング21は、後端部の調整質量部15の周面のスロットに配置されている。
【0050】
20mm/sの粘度を有する油の形態の減衰媒体22が、キャビティ10内の残りの空間を満たす。
【0051】
図3aでは、工具ホルダ1は非作動かつ静止している。一次ばね要素18は、平衡状態で休止位置にあり、ホルダ本体3の長手方向軸6および調整質量部15に沿って延びている。図示の休止位置では、Oリング21はキャビティ表面11に接触せず、その結果、調整質量部15は一次ばね要素18のみによって懸架される。
【0052】
動作中、切削インサート8の切削エッジ9からの変動する切削力がボーリングバーに作用する。これにより、ホルダ本体3は、一次ばね要素18において軸周りで枢動することによって発振および振動させられる。調整質量部15からの慣性は、一次ばね要素18を屈曲させ、その結果、調整質量部15は、一次ばね要素18において長手方向軸6に垂直な軸の周りを枢動する。
【0053】
減衰液体の形態の減衰媒体が選択され、減衰媒体は、振動減衰工具ホルダの目標固有振動数がそれによって最大で10%減少するように内部キャビティ内に分配される。これは、衝撃ハンマー試験の形態の実験、ならびに減衰媒体ありおよびなしの振動減衰工具ホルダの周波数領域における周波数応答関数(FRF)を計算することによって検証可能である。したがって、システムに付加される本質的にすべての剛性は、一次ばね要素に由来する。したがって、一次ばね要素18にその長さに沿って適切な断面積を提供することによって、所望のばね定数を得ることができる。
【0054】
第1の例示的な実施形態では、減衰媒体は液体である。振動減衰工具ホルダの第1の実施形態の枢動整質量および一次ばね要素によって良好に機能する減衰液体は、低粘度を有する液体、例えば50mm/s未満、好ましくは20mm/s未満の粘度を有する油である。
【0055】
第1の例示的な実施形態では、一次ばね要素18の減衰は構造減衰であり、その端部19および20を含む一次ばね要素に由来する他のすべての形態の減衰は無視することができる。したがって、システムに付加される本質的にすべての減衰は、減衰媒体22に由来する。
【0056】
一次ばね要素18の剛性、減衰媒体22の減衰、および調整質量部15の重量/慣性を適切に調整することにより、調整質量部の移動は、ホルダ本体3の移動に対して作用し、したがってその振動を減衰させることになる。調整質量部15は、異なる位相および/または周波数で移動する。
【0057】
一次ばね要素18および枢動質量を有する設計のおかげで、第1の実施形態による振動減衰工具ホルダは、並進質量を有する先行技術の装置よりも低振幅に敏感である。したがって、振動減衰工具ホルダは、より広い範囲の振幅に対して同様の減衰特性を有する。言い換えれば、振動減衰工具ホルダは振幅依存性が少ない。
【0058】
調整質量部15は、振幅の増加に応答してより大きな角度αにわたって枢動する。角度αが閾値に達すると、Oリング21はキャビティ壁11に接触する(図3bを参照)。Oリング21は、調整質量部15がOリング21をキャビティ壁11に押し付けることによって励起され、それによって圧縮される。減衰振動工具ホルダの第1の実施形態における、誘導振動が高振幅を有するときにのみ作動するようなOリング21の配置のおかげで、高振幅に対する工具ホルダの効率は、低振幅での既に良好な結果に影響を与えることなく向上する。
【0059】
第1の例示的な実施形態では、調整質量部15がキャビティ10内の利用可能な空間内で枢動することができる最大角度αは、1.3°である。閾値角度αは0.26°である。
【0060】
図4図9には、振動減衰工具ホルダ1の代替実施形態が示されている。これらの実施形態は、上述した第1の実施形態とは、主に調整質量部15、一次ばね要素18、および補助弾性要素21の設計によって異なり、これが図4図11の実施形態の説明がこれらの構成要素に焦点を当てている理由である。
【0061】
図4には、振動減衰工具ホルダ1の一実施形態が示されており、一次ばね要素18は、小さな円形断面を有する長いロッドの形態である。ロッドの形態の一次ばね要素18および調整質量部15は、それらの全長にわたって同じ一定の断面を有する。本実施形態の長い枢動調整質量部15により、大きくて重くなくても、減衰システムに十分な慣性を提供する。この実施形態は、工具ホルダが大きな断面を有することができないような小径の穴に挿入される用途に有利である。
【0062】
図5には、振動減衰工具ホルダ1の一実施形態が示されており、調整質量部15は3つのセクションを備える。一次ばね要素に最も近い第1のセクション15aは、枢動を可能にするための適切な間隙を残しながらキャビティに収まるように最大化された断面を有する円筒形である。セクション15aは、第1の実施形態の調整質量部15と同様である。第3のセクション15cは、ダクト14内に延び、図4の実施形態の調整質量部15と同様の一定の小さな断面を有する円筒形ロッドとして形成される。第2の中間セクション15bは、第1のセクション15aと第3のセクション15cとの間に位置し、円錐状の移行部を形成する。ダクト内への調整質量部15の延長により、減衰システムにより大きな慣性をもたらすように調整質量部15をより長くすることができる。円錐形セクション15bは、大きな断面を有する第1のセクション15aから小さな断面を有する第3のセクション15cへの移行部に新しいばね要素が導入されないことを保証する。
【0063】
図6a、図6bには、振動減衰工具ホルダ1の一実施形態が示されており、調整質量部15および一次ばね要素18は、図4の実施形態と同様である。実施形態は、一次ばね要素18の周りに配置されたOリングの形態の異なる種類の補助弾性要素21を有する。図6aでは、工具ホルダ1は非作動かつ静止している。
【0064】
一次ばね要素18は、平衡状態で休止位置にあり、ホルダ本体3の長手方向軸6および調整質量部15に沿って延びている。図示の休止位置では、Oリング21は、調整質量部15の前端面16と接触しているが、キャビティ10の前端面12とは接触していない。図6aの休止位置では、調整質量部15は、一次ばね要素18のみによって懸架されている。
【0065】
図6bでは、調整質量部15は、閾値よりも大きい角度αにわたって枢動している。Oリング21は、キャビティ10の前端面12に接触し、調整質量部15の前端面16によってキャビティ10の前端面12に押し付けられて励起され、圧縮される。これにより、図6a、図6bの実施形態のOリング21は、低振幅での既に良好な結果に影響を与えることなく、高振幅に対する工具ホルダの効率を向上させる。
【0066】
図7に示す振動減衰工具ホルダ1の実施形態は、図3の実施形態と同様である。図7の実施形態では、シャフト24がダクト14内に配置されている。Oリングの形態の補助弾性要素21が、シャフト24の周りに配置され、振幅中に調整質量部15の内部凹部壁面25と相互作用して、閾値角度αを超えて枢動する。
【0067】
図8には、振動減衰工具ホルダ1の一実施形態が示されており、調整質量部15は球形ボール25を備える。この実施形態では、適切なボール、および調整質量部15内のそれらの位置を選択することによって、調整質量部15の重量および重量分布を設計することが可能である。ボール25は、同じまたは異なる重量を有することができる。キャビティは、所望の重量分布が維持されることを保証するために、選択されたボールを保持するためのいくつかの区画を備えることができる。
【0068】
図9には、振動減衰工具ホルダ1の一実施形態が示されており、調整質量部15は2つのセクションを備える。一次ばね要素に最も近い第1のセクション15dは、図4の実施形態のロッドと同様の小さな断面を有する円筒形ロッドである。第2のセクション15dは、枢動を可能にするための適切な間隙を残しながらキャビティに収まるように最大化された直径を有する球状ボールを備える。調整質量部15のこの設計は、キャビティ10の限られた空間内に高い慣性を提供するのに有利である。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
【国際調査報告】