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特表2024-530331広域スペクトル不安定性検出及び緩和
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】広域スペクトル不安定性検出及び緩和
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240808BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20240808BHJP
   G10K 11/178 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R3/00 320
H04R1/10 101A
G10K11/178 110
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513442
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 US2022039238
(87)【国際公開番号】W WO2023033973
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】17/460,865
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ジョージ・モートン
(72)【発明者】
【氏名】エメリー・エム・ク
【テーマコード(参考)】
5D061
5D220
【Fターム(参考)】
5D061FF02
5D220AA01
5D220AB00
5D220BA30
(57)【要約】
不安定性を検出し、緩和措置を講じるためにオーディオ出力デバイスによって行われる方法が提供される。具体的には、生のフィードバック信号のA重み付けdBAレベルが閾値レベルを超えることが、少なくとも、ドライバをミュートすることをトリガする。記載の方法は、広域周波数スペクトルにわたる不安定性を検出することに適用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ出力デバイスによって行われる方法であって、
不安定性検出器によって、前記オーディオ出力デバイスのフィードバックマイクロフォンからフィードバック信号を受信することと、
前記フィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、前記オーディオ出力デバイスのドライバをミュートすることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記フィードバック信号の前記特性は、前記フィードバック信号が閾値A重み付けデシベル(dBA)レベルを超えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィードバック信号は、所定の時間期間の間に前記閾値A重み付けデシベル(dBA)レベルを超える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィードバックマイクロフォンは、20Hz~24kHzの信号を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ドライバをミュートすることは、所定の時間量の間に前記ドライバをミュートすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フィードバック信号の前記特性に少なくとも部分的に基づいて、前記オーディオ出力デバイスの再起動をトリガすること、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フィードバック信号の前記特性に少なくとも部分的に基づいて、定義された時間期間にわたって閾値回数だけ前記ドライバがミュートされたときに前記再起動をトリガすること、
を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フィードバック信号の前記特性に少なくとも部分的に基づいて、前記フィードバックマイクロフォン又はフィードフォワードマイクロフォンのうちの少なくとも一方をオフにすること、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
オーディオ出力デバイスであって、第1のイヤピースの中に少なくとも1つのプロセッサに結合されたメモリを備え、前記メモリには、前記オーディオ出力デバイスに、
前記少なくとも1つのプロセッサによって、第1のフィードバックマイクロフォンから第1のフィードバック信号を受信させ、
前記第1のフィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、前記オーディオ出力デバイスの第1のドライバをミュートさせるための命令が記憶されている、オーディオ出力デバイス。
【請求項10】
前記第1のフィードバック信号の前記特性は、前記第1のフィードバック信号が閾値A重み付けデシベル(dBA)レベルを超えることを含む、請求項9に記載のオーディオ出力デバイス。
【請求項11】
前記フィードバック信号は、所定の時間期間の間に前記閾値A重み付けデシベル(dBA)レベルを超える、請求項10に記載のオーディオ出力デバイス。
【請求項12】
前記第1のフィードバックマイクロフォンは、20Hz~24kHzの信号を検出する、請求項9に記載のオーディオ出力デバイス。
【請求項13】
ミュートする前記命令は、所定の時間量の間に前記ドライバをミュートするための命令を含む、請求項9に記載のオーディオ出力デバイス。
【請求項14】
前記命令は更に、前記オーディオ出力デバイスに、
前記第1のフィードバック信号の前記特性に少なくとも部分的に基づいて、前記オーディオ出力デバイスの再起動をトリガさせる、請求項9に記載のオーディオ出力デバイス。
【請求項15】
前記オーディオ出力デバイスに、
前記第1のフィードバック信号の前記特性に少なくとも部分的に基づいて、定義された時間期間にわたって閾値回数だけ前記第1のドライバがミュートされたときに、前記再起動をトリガさせる命令を更に含む、請求項14に記載のオーディオ出力デバイス。
【請求項16】
前記オーディオ出力デバイスに、
前記第1のフィードバック信号の前記特性に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のイヤピースの中の前記第1のフィードバックマイクロフォン又は第1のフィードフォワードマイクロフォンのうちの少なくとも一方をオフにさせる命令を更に含む、請求項9に記載のオーディオ出力デバイス。
【請求項17】
第2のイヤピースの中に少なくとも1つのプロセッサを更に備え、前記メモリには、前記オーディオ出力デバイスに、
前記第2のイヤピースの中の前記プロセッサによって、第2のフィードバックマイクロフォンから第2のフィードバック信号を受信させ、
前記第2のフィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、前記オーディオ出力デバイスの第2のドライバをミュートさせるための命令が記憶されている、請求項9に記載のオーディオ出力デバイス。
【請求項18】
前記命令は、前記オーディオ出力デバイスに、前記第1のドライバ及び前記第2のドライバを独立してミュートさせる、請求項17に記載のオーディオ出力デバイス。
【請求項19】
オーディオ出力デバイスであって、
フィードバックマイクロフォンと、ドライバと、不安定性検出器と、を備え、前記不安定性検出器は、
前記オーディオ出力デバイスの前記フィードバックマイクロフォンからフィードバック信号を受信し、
前記フィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、前記ドライバのミュートをトリガするように構成されている、オーディオ出力デバイス。
【請求項20】
前記フィードバック信号の前記特性は、前記フィードバック信号が所定の時間量の間に閾値A重み付けデシベル(dBA)レベルを超えることを含む、請求項19に記載のオーディオ出力デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年8月30日に出願された米国特許出願第17/460,865号の優先権及び利益を主張するものであり、当該出願の内容は、以下に完全に記載されるように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の態様は、概して、ウェアラブルオーディオ出力デバイスにおける不安定性を検出し、不安定性を緩和する措置を講じることに関する。検出は、人の可聴周波数スペクトルにわたって生じる。不安定性を緩和することは、ユーザにとって不快である大きなノイズをデバイスが生成する不安定な状態の可能性を低減する。
【背景技術】
【0003】
様々なオーディオデバイスは、1つ以上のマイクロフォンが、フィードフォワードマイクロフォンによって取り込まれる外部音響又はフィードバックマイクロフォンによって取り込まれる内部音響などの音を検出する、アクティブノイズコントロール又はキャンセリング(active noise control or cancellation、ANC)としても知られるアクティブノイズ低減(active noise reduction、ANR)機能を組み込んでいる。フィードフォワードマイクロフォン及び/又はフィードバックマイクロフォンからの信号は、さもなければユーザが聴き得るノイズを打ち消すために、音響変換器(例えば、スピーカ、ドライバ)に送給されるべきアンチノイズ信号を提供するように処理される。ある特定の不安定な状態が生じ得るときは、それがユーザにとって不快である場合がある。そのため、不安定性を検出し、その不安定性を緩和する措置を講じることが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で言及される全ての例及び特徴は、任意の技術的に可能な方式で組み合わせることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様は、オーディオ出力デバイスによって行われる方法であって、不安定性検出器によって、オーディオ出力デバイスのフィードバックマイクロフォンからフィードバック信号を受信することと、フィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、オーディオ出力デバイスのドライバをミュートすることと、を含む、方法を提供する。
【0006】
態様では、フィードバック信号の特性は、フィードバック信号が閾値A重み付けデシベル(decibel、dBA)レベルを超えることを含む。態様ではフィードバック信号は、所定の時間期間の間に閾値A重み付けデシベル(dBA)レベルを超える。
【0007】
態様ではフィードバックマイクロフォンは、20Hz~24kHzの信号を検出する。
【0008】
態様では、ドライバをミュートすることは、所定の時間量の間にドライバをミュートすることを含む。
【0009】
態様では、本方法は、フィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、オーディオ出力デバイスの再起動をトリガすることを更に含む。態様では、本方法は、フィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、定義された時間期間にわたって閾値回数だけドライバがミュートされたときに再起動をトリガすることを更に含む。
【0010】
態様では、本方法は、フィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、フィードバックマイクロフォン又はフィードフォワードマイクロフォンのうちの少なくとも一方をオフにすることを更に含む。
【0011】
態様は、オーディオ出力デバイスであって、第1のイヤピースの中に少なくとも1つのプロセッサに結合されたメモリを備え、メモリには、オーディオ出力デバイスに、少なくとも1つのプロセッサによって、第1のフィードバックマイクロフォンから第1のフィードバック信号を受信させ、第1のフィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、オーディオ出力デバイスの第1のドライバをミュートさせるための命令が記憶されている、オーディオ出力デバイスを提供する。
【0012】
態様では、第1のフィードバック信号の特性は、第1のフィードバック信号が閾値A重み付けデシベル(dBA)レベルを超えることを含む。態様ではフィードバック信号は、所定の時間期間の間に閾値A重み付けデシベル(dBA)レベルを超える。
【0013】
態様では、第1のフィードバックマイクロフォンは、20Hz~24kHzの信号を検出する。
【0014】
態様では、ミュートする命令は、所定の時間量の間にドライバをミュートするための命令を含む。
【0015】
態様では、命令は更に、オーディオ出力デバイスに、第1のフィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、オーディオ出力デバイスの再起動をトリガさせる。態様では、命令は、オーディオ出力デバイスに、第1のフィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、定義された時間期間にわたって閾値回数だけ第1のドライバがミュートされたときに、再起動をトリガさせる命令を更に含む。
【0016】
態様では、命令は、オーディオ出力デバイスに、第1のフィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、第1のイヤピースの中の第1のフィードバックマイクロフォン又は第1のフィードフォワードマイクロフォンのうちの少なくとも一方をオフにさせる命令を更に含む。
【0017】
態様では、オーディオ出力デバイスは、第2のイヤピースの中に少なくとも1つのプロセッサを更に備え、メモリには、オーディオ出力デバイスに、第2のイヤピースの中のプロセッサによって、第2のフィードバックマイクロフォンから第2のフィードバック信号を受信させ、第2のフィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、オーディオ出力デバイスの第2のドライバをミュートさせるための命令が記憶されている。
【0018】
態様では、命令は、オーディオ出力デバイスに、第1のドライバ及び第2のドライバを独立してミュートさせる。
【0019】
態様は、オーディオ出力デバイスであって、フィードバックマイクロフォンと、ドライバと、不安定性検出器とを備え、不安定性検出器は、オーディオ出力デバイスのフィードバックマイクロフォンからフィードバック信号を受信し、フィードバック信号の特性に少なくとも部分的に基づいて、ドライバのミュートをトリガするように構成されている、オーディオ出力デバイスを提供する。
【0020】
態様では、フィードバック信号の特性は、フィードバック信号が所定の時間量の間に閾値A重み付けデシベル(dBA)レベルを超えることを含む。
【0021】
1つ以上の実装形態の詳細が、添付図面及び以下の説明において記載される。他の特徴、目的、及び利点は、本説明及び図面から、並びに「特許請求の範囲」から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の態様が実施され得る例示的なオーディオ出力デバイスを例解する。
図2】本開示の態様による、不安定性検出器の例示的な構成要素を例解する。
図3】本開示の態様による、不安定性を検出及び緩和するために行われる例示的な動作を例解する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の態様は、オーディオ出力デバイス、並びにオーディオ出力デバイス内の不安定性を検出及び緩和するために、オーディオ出力デバイスによって行われる方法を提供する。現在、振動をもたらす不安定性の特定のサブセットが検出され得る。一実施例では、フィードバック信号の少なくとも一部分は、フィードバック(例えば、内部の)マイクロフォンによって取り込まれる信号の一部分内の不安定な状態のトーンシグネチャを検出するために処理される。トーンシグネチャが不安定な状態を表す場合、オーディオ出力デバイスは、不安定な状態が緩和されるようにANCシステムを調整するために1つ以上のコントロール信号を生成する。
【0024】
現在の方法は、既知の不安定性又はそうでなければ事前に識別された不安定性のサブセットを検出しようと試み、かつそれに応答するので、制限的であり得る。更に、不快感及び聴覚損傷の可能性を低減するように、可能な限り迅速に不安定性を低減又は停止することが望ましい。本明細書に記載のオーディオ出力デバイス及び方法は、広域周波数スペクトルにわたる不安定性を軽量な方法で検出する。不安定性は、振動が聴取者の聴覚を損傷する点に達する前に検出され得る。
【0025】
フィードバックマイクロフォンとドライバとの間、又はフィードフォワードマイクロフォンとドライバとの間のいずれかの伝達関数における任意の変化が、不安定性を作り出すことがある。可聴周波数のスペクトルにわたる不安定性の例示的な原因には、インイヤチップのノズルが塞がれていること、フィードバックマイクロフォン150のイヤカップカバーを取り外すこと、ユーザの手によってイヤカップの開口部をカッピングすること、並びにデバイスの中のハウジング及び電子機器を破砕又は損傷することが含まれる。
【0026】
図1は、ヘッドフォン110において展開されたANCシステム100の実施例を例解している。ヘッドフォン110は、各側部にイヤカップ120を含み、イヤカップ120は、ユーザの耳の上、耳の周囲、又は耳の上方に嵌合する。イヤカップ120は、ユーザの耳の上方に快適に嵌合するための軟質材料(例えば、軟質発泡体)の層130を含み得る。ヘッドフォン110上のANCシステムは、ユーザの環境で周囲ノイズを検出するためにイヤカップ120の外側で、又は、その近くに配置されたフィードフォワードマイクロフォン(外部マイクロフォン)140を含む。ANCシステムはまた、ユーザの外耳道及び/又はドライバ160に近接して(例えば、数ミリメートル以内に)位置決めされ得るフィードバックマイクロフォン(又は内部マイクロフォン)150を含む。ドライバ160は、電気信号を、ユーザが聴き得る音響信号に変換するための音響トランスデューサとすることができる。態様では、ドライバ160は、ヘッドフォン110が接続されているオーディオソースデバイスからのオーディオ信号を発する。フィードフォワードマイクロフォン140、フィードバックマイクロフォン150、及びドライバ160は、アクティブノイズコントロールエンジン170に接続されている。
【0027】
ANCシステム100は、オーディオ出力デバイスのユーザが聴くオーディオノイズ成分を低減するように動作する。ノイズキャンセルシステムは、フィードフォワードシステム及び/又はフィードバックシステムを含み得る。フィードフォワードシステムでは、フィードフォワードマイクロフォン140は、ヘッドフォン110の外部のノイズを検出する。アクティブノイズコントロールエンジン170は、ユーザの耳に伝達されると予想される外部ノイズに対抗するためにアンチノイズ信号を提供する。フィードバックシステムでは、フィードバックマイクロフォン150は、ユーザの耳に到達する音響信号を検出する。アクティブノイズコントロールエンジン170は、ユーザの音響体験の一部であることが意図されていない任意の信号成分を打ち消すために、検出された信号を処理する。
【0028】
態様では、アクティブノイズコントロールエンジン170は、不安定性検出器180を含む。不安定性検出器180は、フィードバックマイクロフォン150からのフィードバック信号を検出する。フィードバック信号の特性に基づいて、不安定性検出器180は、不安定性を緩和する措置を講じる。態様では、不安定性検出器180は、フィードバックマイクロフォン150によって出力されるフィードバック信号の中の不安定性を識別し、少なくともドライバ160をミュートする措置を講じる。
【0029】
図1は、ヘッドフォン110のいくつかの例示的な構成要素を例解している。図1に例解されていないが、ヘッドフォン110が機能するための他の構成要素が存在し得る。ヘッドフォン110は、1つ以上のサウンド管理能力又は他の能力を実装するように構成されたプロセッサ/処理システム及びメモリを含むハードウェア及び回路を更に含み得、それらは、不安定性を検出及び緩和するための記載のANC及び方法を含むが、これらに限定されない。
【0030】
例えば、ヘッドフォン110は、本明細書に記載の、プロセッサと、ヘッドフォンを動作させるための命令を記憶するメモリと、方法とを含む(又はそれらに結合されている)。
【0031】
また、図1は、ヘッドフォンの右側部分を例解している。ヘッドフォン110の対応する図示されていない左側部分は、図1に例解されるものと同様の特徴を含む。特に、左側はまた、フィードフォワードマイクロフォン、フィードバックマイクロフォン、ドライバ、アクティブノイズコントロールエンジン、及び不安定性検出器を含み得る。ヘッドフォンの右部分と同様に、左側不安定性検出器は、フィードバックマイクロフォンからのフィードバック信号を検出し、フィードバックマイクロフォンは、ユーザの左外耳道及び/又は左イヤカップ内のドライバに近接して(例えば、数ミリメートル以内に)位置決めされる。フィードバック信号の特性に基づいて、不安定性検出器は、左イヤカップの中のドライバをミュートするなど、不安定性を緩和する措置を講じる。
【0032】
態様では、ヘッドフォン110の右側及び左側は各々、それぞれのイヤカップにおいて不安定性が検出されるかどうかを独立して判定する。右イヤカップの中の不安定性検出器は、ヘッドフォン110の同じ側(例えば、右側)のドライバをコントロールする。同様に、左イヤカップの中の不安定性検出器は、ヘッドフォン110の同じ側(例えば、左側)のドライバをコントロールする。そのため、それぞれのフィードバックマイクロフォンからの生のフィードバック信号は、ヘッドフォン110のそれぞれの側の不安定性を識別するために独立して処理される。それぞれのフィードバック信号に基づいて、ドライバのうちの1つ以上が独立してコントロール及び/又はミュートされる。
【0033】
図1は、ANCシステム100がアラウンドイヤヘッドフォン110において展開されている実施例を例解しているが、ANCシステム100はまた、インイヤヘッドフォン、オンイヤヘッドフォン、及びオーディオ眼鏡又はフレームを含む他のフォームファクタにおいて展開され得る。
【0034】
図2は、本開示の態様による、不安定性検出器180の例示的な構成要素を例解している。不安定性検出器180は、フィードバックマイクロフォン150から生のフィードバック信号を受信する。不安定性検出器180は、ノイズに対する人の耳の応答又は感度を反映するように可聴周波数を重み付けするために、A重み付け(A周波数重み付け)を行う。A重み付けフィルタ190は、20Hz~24kHzの全可聴周波数範囲を包含し、出力は人の耳の周波数感度に近似する。A重み付けは、人の耳が低いオーディオ周波数に対してあまり敏感でないので、人の耳が知覚する相対的音量を説明する。n秒平均化フィルタ210は、A重み付け信号を所定の期間にわたって平均化する。閾値検出器220は、平均化されたA重み付け信号を閾値dBAレベルと比較する。以下に記載するように、閾値検出器220が、平均化されたA重み付け信号が閾値dBAレベルを超えると判定する場合、コントロール信号が、少なくともドライバ160をミュートするように出力される。
【0035】
不安定性検出器180は、フィードバックマイクロフォンからの平均化されたA重み付け信号が、所定の期間の間に閾値A重み付けレベル(dBA)を超えるときに、不安定性を検出する。不安定性を検出することに応答して、不安定性検出器180は、ドライバ160をある時間期間の間、ミュートするコントロール信号を送信する。その時間期間が経過した後、ドライバはミュートを解除する。不安定性検出器は、不安定性が検出されない限り、ドライバに影響を与えるいかなる措置も講じない。一時的にドライバをミュートすることは、ドライバからの音を遮断し、ユーザがヘッドフォンをユーザの耳から遠ざけることを可能にすることによって、ユーザを保護する。
【0036】
国際電気通信連合規格ITU-T H.870「Guidelines for safe listening devices/systems」には、人々を聴覚損失から保護するための、パーソナル/ポータブルオーディオシステムを含む、セーフリスニングデバイス及びシステムの要件が記載されている。この規格の目的は、聴取者が所与の時間期間にわたって最大音量を経験したときを判定する手段を提供することである。ITU-T H.870は、以下の表に示されるように、所与のA重み付けレベル(dBA)について、成人について週当たり1.6Pahの音量に達する時間を特定している。概して、時間は3dBAごとに半分になる。110dBAの場合、成人の1週間当たり1.6Pahの音量に達する時間は約2.25分であり、120dBAの場合、その時間は数秒である。最大音量に達するのに短い時間量しか要しないことを考慮すると、人々が高dBAレベルに不必要に曝露されないこと、及びそのような曝露が可能な限り制限されることが重要である。
【0037】
【表1】
【0038】
態様では、閾値A重み付けレベルは110dBAである。態様では、平均化フィルタ210は、1秒平均化フィルタである。したがって、一実施例では、A重み付け信号は、不安定性検出器が不安定性を検出するために1秒間に110dBAを超えなければならない。
【0039】
実施例では、不安定性を検出すると、不安定性検出器はドライバを3秒間ミュートする。3秒間ミュートした後、ドライバはミュートを解除する。
【0040】
3秒間の緩和措置をトリガする、1秒間にわたって平均化された110dBAのA重み付けレベルは、多くの要因に基づく。上の表に示されるように、ITU-T H.870は、平均的な成人の聴取時間が80dBAで40時間/週であり、より高いSPLでは時間が劇的に減少する(例えば、リスニング時間は107dBAでわずか4.5分/週である)ことを規定する。平均的な成人は、110dBAで2.25分/週以下に曝露されるべきである。不安定性を検出するために1秒平均dBAレベルトリガを使用することは、非常に短期間の過渡ノイズが不安定性をトリガすることを依然として防止しながら、規格によって概説されるよりも有意に迅速である。加えて、1秒の平均化は、不安定性検出器がA重み付けを行い、閾値dBAレベルが満たされたことを確認するための処理時間を考慮に入れる。したがって、1秒間の110dBAのA重み付けレベルは、不快感及び聴覚損傷を最小限に抑え、かつ短時間の過渡ノイズが不安定性を引き起こすことを回避するための、短い時間量の過度に大きい信号の平衡値である。
【0041】
ドライバを3秒間ミュートすることにより、ユーザが、ヘッドフォンをユーザの頭部から外すか、又はヘッドフォンをユーザの耳から離して、不安定性を停止させる措置を講じることが可能になる。3秒間ミュートすることにより、ユーザが、デバイスをオンに戻してリスニングを再開するか、又はユーザが不安定性を止めることができない場合にヘッドフォンをオフにすることが更に可能になる。ミュートすることは、検出された不安定性に基づいて講じられ得る1つの措置であるが、図3に関してより詳細に記載するように、他の措置が行われ得る。
【0042】
図3は、不安定性を検出し、緩和するためにオーディオ出力デバイスによって行われる例示的な動作300を例解している。310においてオーディオ出力デバイスの不安定性検出器は、オーディオ出力デバイスのフィードバックマイクロフォンからフィードバック信号を受信する。フィードバック信号の特性に基づいて、320において、ドライバがミュートされる。態様では、不安定性検出器は、ドライバをミュートするためのコントロール信号を送信する。
【0043】
フィードバックマイクロフォンは、不安定性検出が、概して20kHzを上限とする、人の可聴周波数スペクトルにわたって生じるように、20Hz~24kHzの信号を検出する。加えて、不安定性検出は、既知の不安定性の特定のサブセットに限定されない。態様では、フィードバック信号の特性は、閾値レベルを超えるA重み付けdBAレベルを含む。一実施例ではフィードバック信号は、所定の時間期間の間に閾値dBAレベルを超える。
【0044】
実施例では、110dBAレベル閾値を使用することを記載しているが、不安定性検出は、110dBAよりも大きい又は小さい他の閾値レベルを使用し得る。同様に、実施例は、1秒間閾値を超える平均A重み付けフィードバック信号を記載しているが、1秒よりも長い又は短い他の期間が、本明細書に記載される方法に従って使用されてもよい。概して、短い時間量の間の高い平均dBAレベルは、不快感を最小限に抑え、聴覚損失を回避するのに十分迅速に不安定性を識別する。
【0045】
態様では、ドライバは、所定の時間量の間にミュートされる。上述した実施例によれば、ドライバは3秒間ミュートされる。ユーザは、オーディオデバイスが、ソースデバイスへの接続の喪失とは対照的に、不安定性に起因して、部分的には、ドライバがミュートする前にユーザが聴いた瞬間的に大きな音のために、音を出力することを停止したと想定し得る。態様では、不安定性検出器は、構成された時間量の間にドライバをミュートするためのコントロール信号を送信する。ドライバは、ドライバがミュートされる時間により、ユーザがオーディオ出力デバイスをオフにすること、又はそうでなければオーディオ出力デバイスをユーザの耳から遠ざけることが可能になる限り、任意の時間量(3秒よりも長い又は短い)の間、ミュートされ得る。
【0046】
態様では、不安定性検出器は、不安定性の数又は不安定性検出器がドライバをミュートする指示を送信する回数を追跡する。態様では、オーディオ出力デバイスは、ある時間期間にわたって構成された数の不安定性が検出された後、デバイスの再起動を強制する。例えば、n個の不安定性がある時間期間(例えば、1日)にわたって検出される場合、又はある時間期間(例えば、4時間)の不安定性に応答してドライバをミュートするためにy個のコントロール信号を送信する場合、オーディオ出力デバイスは、頻繁な不安定性を引き起こしている可能性のある任意の問題に対処するのを助けるために、システムをリフレッシュし、かつ/又は更新をインストールしようとして、デバイスを再起動するようにトリガし得る。
【0047】
態様では、フィードバックマイクロフォン及び/又はフィードフォワードマイクロフォンは、ある時間期間にわたる構成された数の不安定性が検出された後にオフにされる。フィードバックマイクロフォンをオフにすることは、フィードバックマイクロフォンとドライバとの間の信号経路を遮断し、それによって、更なる過度に大きい信号をドライバが出力することを防止する。フィードフォワードマイクロフォンをオフにすることは、フィードフォワード信号によって引き起こされ得る振動及び不安定性を停止させることになる。ミュート、強制再起動、フィードバックマイクロフォンをオフにすること、及びフィードバックマイクロフォンをオフにすることは、単独で、又は任意の組み合わせで行われ得る。
【0048】
本明細書に記載の検出及び緩和方法は、有利には、不安定性のサブセットに限定されない。代わりに、本方法は、広域周波数スペクトルにわたって不安定性を検出する。態様では、不安定性がドライバをミュートすることをトリガする。ドライバをミュートすることに加えて、又はそれの代わりに、不安定性(すなわち、所与の時間量にわたるいくつかの不安定性)が、デバイスに再起動を行わせ得る。デバイスをミュートする及び/又は再起動することに加えて、又はそれの代わりに、フィードバック又はフィードフォワード信号がドライバに送信されず、ユーザに出力されないように、フィードバックマイクロフォン及び/又はフィードフォワードマイクロフォンがオフにされ得る。
【0049】
本開示の態様の説明は、例示の目的で上に提示されているが、本開示の態様は、開示された態様のいずれにも限定されることを意図していないことに留意され得る。説明された態様の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの修正形態及び変形形態が当業者には明らかであろう。
【0050】
上記では、本開示の態様が参照されている。しかしながら、本開示の範囲は、特定の説明された態様に限定されない。本開示の態様は、完全にハードウェア実施形態、完全にソフトウェア実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又は本明細書では全て、概して「構成要素」、「回路」、「モジュール」、若しくは「システム」と称され得るソフトウェア態様とハードウェア態様とを組み合わせる実施形態の形態をとることができる。更に、本開示の態様は、上に具現化された可読プログラムコードを有する1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体又は記憶デバイスなどの情報担体において有形に具現化されたコンピュータプログラムなどのコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。
【0051】
1つ以上のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせを利用することができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読記憶媒体であり得る。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、若しくは半導体のシステム、装置、若しくはデバイス、又は前述のものの任意の好適な組み合わせであり得るが、これらに限定されない。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な実施例としては、1つ以上のワイヤを有する電気接続、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み取り専用メモリ(read-only memory、ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(erasable programmable read-only memory、EPROM、又はフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(portable compact disc read-only memory、CD-ROM)、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイス、又は前述のものの任意の好適な組み合わせが挙げられる。現在の文脈では、コンピュータ可読記憶媒体は、プログラムを記憶することができる任意の有形媒体とすることができる。
【0052】
図中のフローチャート及びブロック図は、様々な態様によるシステム、方法、及びコンピュータプログラム製品について想定される実装のアーキテクチャ、機能、並びに動作を例解する。これに関して、フローチャート又はブロック図の各ブロックは、指定された論理機能を実装するための1つ以上の実行可能命令を含む、命令のモジュール、セグメント、又は部分に相当し得る。いくつかの代替的な実装形態では、ブロックで説明されている機能は、図に記載された順序から生じ得る。例えば、連続して示される2つのブロックは、実際には実質的に同時に実行され得るか、又は、場合によっては、ブロックは、関与する機能に依存して、逆の順序で実行され得る。ブロック図、及び/又はフローチャート例解図の各ブロック、並びに、ブロック図、及び/又はフローチャート例解図におけるブロックの組み合わせは、特定機能を実施するか、又は専用ハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせを動作させる専用ハードウェアベースのシステムで実装することができることにも留意されたい。
図1
図2
図3
【国際調査報告】