(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】加齢黄斑変性の処置のためのB因子阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/454 20060101AFI20240808BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A61K31/454
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514000
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 IB2022058275
(87)【国際公開番号】W WO2023037218
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】チャリル,アルノー アルメル オリビア
(72)【発明者】
【氏名】サンダー,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ザカリア,ナディア
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC52
(57)【要約】
B因子阻害剤であるイプタコパン又はその薬学的に許容される塩、例えばイプタコパン塩酸塩で早期又は中期加齢黄斑変性を処置する方法が本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加齢黄斑変性(AMD)の処置を、それを必要とする対象の眼において行う方法であって、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩を1日約400mgの総用量(前記投与量は、イプタコパンの無水遊離塩基を指す)で前記対象に経口投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記AMDは、早期AMDである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記AMDは、中期AMDである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記イプタコパンは、1日2回投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
イプタコパンは、200mgの用量で1日2回投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
イプタコパンは、少なくとも1ヶ月間にわたって投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
イプタコパンは、少なくとも6ヶ月間にわたって投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
イプタコパンは、少なくとも1年間にわたって投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
イプタコパンは、約2年間にわたって投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
イプタコパンの前記投与は、プラセボの投与と比較して、前記眼の失明を低減する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
イプタコパンの前記投与は、プラセボと比較して、ドルーゼンの形成を低減する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記失明は、以下の検査:
早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)最高矯正視力(BCVA)、
ETDRS低輝度視力(LLVA)、
コントラスト感度(CS)、又は
低輝度コントラスト感度(LLCS)
の1つ以上によって測定される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
イプタコパンの前記投与は、前記対象の前記眼における萎縮性病変の発生を低減する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
イプタコパンの前記投与は、プラセボの投与と比較して、前記眼における不完全な網膜色素上皮及び網膜外層萎縮(iRORA)の発生及び/又は大きさを低減する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
早期又は中期加齢黄斑変性(AMD)の進行の発生の低減を、それを必要とする患者の眼において行う方法であって、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩を1日約400mgの用量(前記投与量は、イプタコパンの無水遊離塩基を指す)で前記対象に経口投与することを含む、前記方法。
【請求項16】
前記イプタコパンは、1日2回投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
イプタコパンは、200mgの用量で1日2回投与される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
イプタコパンは、少なくとも1ヶ月間にわたって投与される、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
イプタコパンは、少なくとも6ヶ月間にわたって投与される、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
イプタコパンは、少なくとも1年間にわたって投与される、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
イプタコパンは、約2年間にわたって投与される、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
イプタコパンの前記投与は、プラセボの投与と比較して、前記眼の失明を低減する、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記失明は、以下の検査:
早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)最高矯正視力(BCVA)、
ETDRS低輝度視力(LLVA)、
コントラスト感度(CS)、又は
低輝度コントラスト感度(LLCS)
の1つ以上によって測定される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
イプタコパンの前記投与は、プラセボと比較して、前記眼におけるドルーゼンの形成を低減する、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
イプタコパンの前記投与は、前記対象の前記眼における萎縮性病変の発生を低減する、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
イプタコパンの前記投与は、プラセボの投与と比較して、前記眼における不完全な網膜色素上皮及び網膜外層萎縮(iRORA)の発生及び/又は大きさを低減する、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
早期又は中期加齢黄斑変性(AMD)の進行の防止を、それを必要とする患者の眼において行う方法であって、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩を1日約400mgの用量(前記投与量は、イプタコパンの無水遊離塩基を指す)で前記対象に経口投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
前記イプタコパンは、1日2回投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
イプタコパンは、200mgの用量で1日2回投与される、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
イプタコパンは、少なくとも1ヶ月間にわたって投与される、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
イプタコパンは、少なくとも6ヶ月間にわたって投与される、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
イプタコパンは、少なくとも1年間にわたって投与される、請求項27~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
イプタコパンは、約2年間にわたって投与される、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
イプタコパンの前記投与は、プラセボの投与と比較して、前記眼の失明を低減する、請求項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記失明は、以下の検査:
早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)最高矯正視力(BCVA)、
ETDRS低輝度視力(LLVA)、
コントラスト感度(CS)、又は
低輝度コントラスト感度(LLCS)
の1つ以上によって測定される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
イプタコパンの前記投与は、プラセボと比較して、前記眼におけるドルーゼンの形成を低減する、請求項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
イプタコパンの前記投与は、前記対象の前記眼における萎縮性病変の発生を低減する、請求項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
イプタコパンの前記投与は、プラセボの投与と比較して、前記眼における不完全な網膜色素上皮及び網膜外層萎縮(iRORA)の発生及び/又は大きさを低減する、請求項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
萎縮性病変の発生の低減を、それを必要とする患者の眼において行う方法であって、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩を1日約400mgの用量(前記投与量は、イプタコパンの無水遊離塩基を指す)で前記対象に経口投与することを含む、前記方法。
【請求項40】
前記患者は、早期又は中期加齢黄斑変性(AMD)に罹患している、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記イプタコパンは、1日2回投与される、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
イプタコパンは、200mgの用量で1日2回投与される、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
イプタコパンは、少なくとも1ヶ月間にわたって投与される、請求項39~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
イプタコパンは、少なくとも6ヶ月間にわたって投与される、請求項39~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
イプタコパンは、少なくとも1年間にわたって投与される、請求項39~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
イプタコパンは、約2年間にわたって投与される、請求項39~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
イプタコパンの前記投与は、プラセボの投与と比較して、前記眼の失明を低減する、請求項39~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
イプタコパンの前記投与は、プラセボと比較して、ドルーゼンの形成を低減する、請求項39~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記失明は、以下の検査:
早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)最高矯正視力(BCVA)、
ETDRS低輝度視力(LLVA)、
コントラスト感度(CS)、又は
低輝度コントラスト感度(LLCS)
の1つ以上によって測定される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
イプタコパンの前記投与は、前記対象の前記眼における萎縮性病変の形成を低減する、請求項39~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
イプタコパンの前記投与は、プラセボの投与と比較して、前記眼における不完全な網膜色素上皮及び網膜外層萎縮(iRORA)の発生及び/又は大きさを低減する、請求項39~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記対象は、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩の投与前に髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(A、C、Y及びW-135型)に対してワクチン接種されている、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、B因子阻害剤であるイプタコパン又はその薬学的に許容される塩、例えばイプタコパン塩酸塩で補体駆動疾患及び特に加齢黄斑変性を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢黄斑変性(AMD)は、先進国の高齢者集団における視覚障害の主な原因であり、米国全体では約1,100万人がAMDに罹患しており、全世界における有病率は1億7,000万人(Pennington and DeAngelis Eye Vis(Lond),34,2016)であり、老齢集団により増加するものと予想されている。
【0003】
早期及び中期AMD(e/iAMD)の特徴としては、ドルーゼンの形成(補体タンパク質を含有する脂質沈着)及び黄斑における色素の変化があり、特に低輝度条件下における軽度~中等度の視覚機能の喪失を伴う(Schneck et al,Optom Vis Sci;64-72,2021)。早期AMDは、ドルーゼンの大きさが≧63μm且つ≦125μmであるものとして定義され、中期AMDは、ドルーゼンが>125ミクロンであり、且つ/又は色素変化があることによって定義される。高リスクの中期AMD患者は、遅発型の以下の疾患である、滲出型(n)AMD又は地図状萎縮(GA)に5年間で転換するリスクが50%ある(Ferris et al,Arch Ophthalmol;1570-4,2005)。GA患者は、著しい視覚障害を有し、視力の悪化及び法的盲となるまで進行が継続する(Chakravarthy et al,Ophthalmology;842-849,2018)。GAを遅らせるための試みは、効果が限定的であり、疾患プロセスの早期の処置に対する必要性が注目されている(Guymer,Ophthalmol Retina;515-517,2018)。抗VEGF注射は、nAMDで観察される網膜の液体貯留による失明を低減することができるが、根底にある疾患の進行及び萎縮の発症を防ぐことはできない。抗VEGFは、nAMDによる視覚上の病的状態を軽減するが、IVTでの抗VEGF療法で処置された患者の98%は、7年間のフォローアップまで萎縮の発症が継続することになる(Rofagha et al,Ophthalmology;2292-9,2013)。GAに対する処置が存在せず、且つnAMDがGAに進行することにより、この疾患を初期に処置する必要性が注目されている。
【0004】
スペクトラルドメイン光干渉断層法(SD-OCT)により、後期AMDへの進行を高度に予測する高リスクの特徴を特定することが可能となった。これらの特徴としては、網膜内高輝度病巣(網膜色素上皮細胞(RPE)の網膜への遊走を示すものと考えられている)、ドルーゼン内の低輝度病巣(石灰沈着性結節に対応する)、網膜下のドルーゼン様沈着物及び高い中心ドルーゼン量が挙げられる。近年、研究者ら(Lei et al,Arch Clin Exp Ophthalmol;1551-1558,2017)により、これらの因子を、所与の患者の後期AMDに転換するリスクを反映することが可能な単純なスコアに統合する、OCT画像を用いたシステムが提案された。このシステムは、後にNassisi et al(Ophthalmology;1667-1674 2019)により、HARBOR研究に登録された対象の後期AMDでない僚眼の事後解析で検証された。1つ以上の高リスクのOCTでの特徴を有するベースライン時点の後期AMDでない僚眼(中期、早期又は正常な老化を含む)は、進行したAMDへの2年間の転換率が33.1%~84.4%であることを示した。
【0005】
補体タンパク質が関与する炎症性及び免疫媒介性事象は、ドルーゼンの生合成に関連付けられている。補体活性化副経路の過剰活性は、AMD病変に強く関連付けられる(Fritsche et al,Nat Genet;433-9,439e1-2,2013)。AMDにおける補体調節不全の重要な部位として、RPE-脈絡膜が考えられている。RPE-脈絡膜の副経路(AP)を阻害することにより、脈絡膜脱落の減少を遅らせるか又は停止させることができ、それによりRPEへの血流が促進され、網膜への栄養素移動がより良好となるだけでなく、網膜/RPEの老廃物のクリアランスを改善することが可能となる。さらに、ドルーゼン内及びブルック膜/RPE界面におけるAPの活性化を阻害することにより、RPE細胞及び関連する光受容体の健康状態と機能が改善される可能性があり、それによりnAMDの疾患活動性を低下させることができる(Kauppien et al,Cell Mol Life Sci;1765-86,2016)。経口のB因子阻害剤は、RPE-脈絡膜の補体活性化を低下させることができ、e/iAMDが萎縮に進行することを防止し、nAMD疾患活動性を低下させることができる。
【0006】
イプタコパンとしても公知のLNP023は、B因子(FB)のBbドメインに結合する、新規の、経口投与される、低分子量の、ファースト・イン・クラスの選択的プロテアーゼ阻害剤である。FBは、副経路(AP)の重要なプロテアーゼであり、Bbドメインは、APのC3及びC5コンバターゼの活性部分である。経口イプタコパン又はその薬学的に許容される塩、例えばイプタコパン塩酸塩によってFBを阻害することにより、ドルーゼンの形成が防止又は低減される可能性があり、したがってe/iAMDの転換を低減させ、現在の標準治療(SoC)を超える治療効果が提供される。加えて、経口投与経路は、現在のSoCの眼内投与経路と比較して患者に利点を提供する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩、例えばイプタコパン塩酸塩で補体駆動疾患及び特に早期又は中期加齢黄斑変性を処置する方法に関する。イプタコパンは、補体経路のB因子阻害剤のクラスに属し、C3の活性化によって引き起こされる補体系の増幅を阻害又は抑制することにより、活性化の初期のメカニズムとは無関係に作用する。イプタコパン塩酸塩は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を処置するために現在臨床開発中である。イプタコパン塩酸塩は、4-((2S,4S)-(4-エトキシ-1-((5-メトキシ-7-メチル-1H-インドール-4-イル)メチル)ピペリジン-2-イル))安息香酸塩酸塩と化学的に称され、以下の化学構造によって表され得る。
【化1】
【0008】
イプタコパン塩酸塩及びそれを調製する方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/009616号パンフレットに開示されている(実施例26dを参照されたい)。
【0009】
一態様では、本開示は、加齢黄斑変性(AMD)の処置を、それを必要とする対象の眼において行う方法であって、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩を1日約400mgの総用量(投与量は、イプタコパンの無水遊離塩基を指す)で対象に経口投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、投与は、対象、例えば患者を処置する。
【0010】
別の態様では、本開示は、早期又は中期加齢黄斑変性(AMD)の進行の発生の低減を、それを必要とする患者において行う方法であって、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩を1日約400mgの用量(投与量は、イプタコパンの無水遊離塩基を指す)で対象に経口投与することを含む方法を提供する。
【0011】
別の態様では、本開示は、早期又は中期加齢黄斑変性(AMD)の進行の防止を、それを必要とする患者において行う方法であって、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩を1日約400mgの用量(投与量は、イプタコパンの無水遊離塩基を指す)で対象に経口投与することを含む方法を提供する。
【0012】
別の態様では、本開示は、萎縮性病変の発生の低減を、それを必要とする患者において行う方法であって、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩を1日約400mgの用量(投与量は、イプタコパンの無水遊離塩基を指す)で対象に経口投与することを含む方法を提供する。
【0013】
本明細書に記載される処置方法は、加えて、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩、例えばイプタコパン塩酸塩による処置前及び/又は後に種々の評価工程を含み得る。一実施形態では、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩、例えばイプタコパン塩酸塩の投与前及び/又はその後、方法は、PK及びPDパラメータ(例えば、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩、例えばイプタコパン塩酸塩、C3、フラグメントBb又はsC5Bの血漿濃度)を評価する工程をさらに含む。評価は、例えば、質量分光法、例えばLC-MSによる体液、例えば血液又は血漿のサンプル分析によって達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載されるのは、早期及び中期加齢黄斑変性(e/iAMD)患者における、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩、例えばイプタコパン塩酸塩の安全性及び有効性を判定する第2相臨床研究である。したがって、本明細書に記載されるのは、e/iAMDの処置を、それを必要とする患者において行う方法であって、例えば、錠剤又はカプセル形態で患者に毎日、例えば約12時間毎にイプタコパン又はその薬学的に許容される塩、例えばイプタコパン塩酸塩の2回用量を経口投与することを含む方法である(投与量は、イプタコパン塩酸塩の無水遊離塩基を指す)。本明細書に記載されるのは、標的患者集団を選択する方法、標的患者集団の処置を監視する方法並びに標的患者集団の処置の安全性及び有効性を評価する方法でもある。
【0016】
本開示の詳細は、以下の添付の本明細書に示される。本明細書に記載のものと同様の又は均等な方法及び材料を本開示の実施又は試験に用いることができるが、ここで、例示的な方法及び材料を記載する。本開示の他の特徴、目的及び利点は、本明細書及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書及び添付の特許請求の範囲では、別途明らかに示されない限り、単数の形態は、複数も含む。別途定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で引用される全ての特許及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
定義
特定の定義が示されない限り、分析化学、合成有機化学並びに本明細書に記載される医薬及び薬化学と関連して用いられる命名法並びにそれらの手順及び技術は、当技術分野で周知であり且つ一般的に用いられるものである。標準的な技術が化学合成及び化学分析に用いられ得る。特定のそのような技術及び手順は、例えば、あらゆる目的について参照により本明細書に組み込まれる“Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,21st edition,2005に見出され得る。許可される場合、本開示の全体において引用される全ての特許出願、公開出願並びに他の刊行物及び他のデータは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
特に明記しない限り、以降の用語は、以下の意味を有する。
本明細書で用いられる「約」は、値の±10%の範囲内を意味する。
【0019】
本明細書で用いられる「投与すること」又は「投与」は、個人に医薬剤を提供することを意味し、医療専門家による投与及び自己投与が挙げられるが、これらに限定されない。個人への医薬品の投与は、連続的であるか、長期間にわたるか、短いか又は断続的であり得る。
【0020】
本明細書で用いられる用語「取得する」又は「取得すること」は、物理的実体(例えばサンプル、例えば、血液サンプル又は血漿サンプル)又は物理的実体若しくは値を「直接的に取得すること」若しくは「間接的に取得すること」による値、例えば数値の所有を得ることを指す。「直接的に取得すること」は、物理的実体又は値を得るためのプロセス(例えば分析方法)を実行することを意味する。「間接的に取得すること」は、物理的実体又は値を、別の当事者又は供給源(例えば、物理的実体又は値を直接取得した第三者のラボ)から受け取ることを指す。値を直接的に取得することは、サンプル又は別の物質の物理的変化を含むプロセスを実行すること、例えば、物質、例えばサンプルの物理的変化を含む分析的プロセスを実行すること、分析法、例えば本明細書に記載される方法を、例えば、例えば質量分光法、例えばLC-MS、例えばLC-MS/MS法による、体液、例えば血液のサンプル分析によって実行することを含む。
【0021】
本明細書で用いられる「用量」は、単回投与で又は指定された期間内に提供される医薬品の指定量を意味する。特定の実施形態では、用量は、カプセルで投与され得る。本明細書で用いられる投与量は、イプタコパン塩酸塩の無水遊離塩基を指す。
【0022】
本明細書で用いられる「固体」「患者」、「参加者」又は「対象」は、処置又は治療のために選択されたヒトを意味する。
【0023】
本明細書で用いられる「薬学的に許容される塩」は、イプタコパンの生理的且つ薬学的に許容可能な塩、すなわち、イプタコパンの所望の生物活性を保持し、且つ不所望の毒性効果を与えない塩を意味する。用語「薬学的に許容される塩」又は「塩」は、無機酸又は有機酸及び無機塩基又は有機塩基が挙げられる、薬学的に許容される非毒性の酸又は塩基から調製される塩を含む。イプタコパンの「薬学的に許容される塩」は、当技術分野で周知の方法によって調製され得る。薬学的に許容される塩のレビューについて、Stahl and Wermuth,Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use(Wiley-VCH,Weinheim,Germany,2002)を参照されたい。イプタコパン塩酸塩及びその調製方法は、国際公開第2015/009616号パンフレット(実施例26dを参照されたい)に開示されており、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
本明細書で用いられる用語「処置する」は、障害又は疾患、例えばe/iAMDの発症又は進行を低下させるか、抑制するか、減弱させるか、減少させるか、拘束するか又は安定させることを意味する。
【0025】
別段の定めがない限り、用語制御の従来の定義及び従来の安定な原子価が推定されて、全ての式及び基において達成される。
【0026】
冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本開示において、その冠詞の文法上の目的語の1つ又は複数(例えば少なくとも1つ)を指す。例として、「要素」は、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0027】
使用方法
いくつかの実施形態では、加齢黄斑変性(AMD)の処置を、それを必要とする対象の眼において行う方法であって、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩を1日約400mgの総用量(投与量は、イプタコパンの無水遊離塩基を指す)で対象に経口投与することを含む方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、投与は、対象、例えば患者を処置する。
【0028】
一実施形態では、AMDは、早期AMDである。
【0029】
一実施形態では、AMDは、中期AMDである。
【0030】
一実施形態では、イプタコパンは、1日2回投与される。
【0031】
一実施形態では、イプタコパンは、200mgの用量で1日2回投与される。
【0032】
一実施形態では、イプタコパンは、100mgの用量で1日4回投与される。
【0033】
一実施形態では、イプタコパンは、少なくとも1ヶ月間にわたって投与される。
【0034】
一実施形態では、イプタコパンは、少なくとも6ヶ月間にわたって投与される。
【0035】
一実施形態では、イプタコパンは、少なくとも1年間にわたって投与される。
【0036】
一実施形態では、イプタコパンは、約2年間にわたって投与される。
【0037】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボの投与と比較して、眼の失明の低減をもたらす。
【0038】
一実施形態では、失明は、以下の検査:
早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)最高矯正視力(BCVA)、
ETDRS低輝度視力(LLVA)、
コントラスト感度(CS)、又は
低輝度コントラスト感度(LLCS)
の1つ以上によって測定される。
【0039】
最高矯正視力(BCVA)は、ETDRS視力表を4メートル又は4メートルの視力表を読むことができない参加者では1メートルで使用して測定され得る。いくつかの実施形態では、BCVA又はLLVA評価のいずれかに関する対象のETDRSスコアは、プラセボの投与と比較して、少なくとも1列(5文字)、2列(10文字)又は3列(15文字)だけ高い。
【0040】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、眼におけるドルーゼンの形成を低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、ドルーゼンの形成を約10%、約20%、約30%、約40%又は約50%低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、ドルーゼンの形成を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%低減する。
【0041】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、対象の眼における萎縮性病変の発生を低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、萎縮性病変の発生を約10%、約20%、約30%、約40%又は約50%低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、萎縮性病変の発生を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%低減する。
【0042】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボの投与と比較して、眼における不完全な網膜色素上皮及び網膜外層萎縮(iRORA)の発生及び/又は大きさを低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、iRORAの発現を約10%、約20%、約30%、約40%又は約50%低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、iRORAの発現を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%低減する。
【0043】
一実施形態では、対象、例えば患者は、早期又は中期AMDと診断されている。
【0044】
一実施形態では、対象、例えば患者は、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩、例えばイプタコパン塩酸塩による処置前にワクチン接種されている。
【0045】
一実施形態では、対象、例えば患者は、処置前に髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(A、C、Y及びW-135型)に対してワクチン接種されている。
【0046】
いくつかの実施形態では、早期又は中期加齢黄斑変性(AMD)の進行の発生の低減を、それを必要とする患者の眼において行う方法であって、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩を1日約400mgの用量(投与量は、イプタコパンの無水遊離塩基を指す)で対象に経口投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0047】
一実施形態では、イプタコパンは、1日2回投与される。
【0048】
一実施形態では、イプタコパンは、200mgの用量で1日2回投与される。
【0049】
一実施形態では、イプタコパンは、100mgの用量で1日4回投与される。
【0050】
一実施形態では、イプタコパンは、少なくとも1ヶ月間にわたって投与される。
【0051】
一実施形態では、イプタコパンは、少なくとも6ヶ月間にわたって投与される。
【0052】
一実施形態では、イプタコパンは、少なくとも1年間にわたって投与される。
【0053】
一実施形態では、イプタコパンは、約2年間にわたって投与される。
【0054】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボの投与と比較して、眼の失明の低減をもたらす。
【0055】
一実施形態では、失明は、以下の検査:
早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)最高矯正視力(BCVA)、
ETDRS低輝度視力(LLVA)、
コントラスト感度(CS)、又は
低輝度コントラスト感度(LLCS)
の1つ以上によって測定される。
【0056】
最高矯正視力(BCVA)は、ETDRS視力表を4メートル又は4メートルの視力表を読むことができない参加者では1メートルで使用して測定され得る。いくつかの実施形態では、BCVA又はLLVA評価のいずれかに関する対象のETDRSスコアは、プラセボの投与と比較して、少なくとも1列(5文字)、2列(10文字)又は3列(15文字)だけ高い。
【0057】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、眼におけるドルーゼンの形成を低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、ドルーゼンの形成を約10%、約20%、約30%、約40%又は約50%低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、ドルーゼンの形成を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%低減する。
【0058】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、対象の眼における萎縮性病変の発生を低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、萎縮性病変の発生を約10%、約20%、約30%、約40%又は約50%低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、萎縮性病変の発生を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%低減する。
【0059】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボの投与と比較して、眼における不完全な網膜色素上皮及び網膜外層萎縮(iRORA)の発生及び/又は大きさを低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、iRORAの発現を約10%、約20%、約30%、約40%又は約50%低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、iRORAの発現を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%低減する。
【0060】
一実施形態では、対象、例えば患者は、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩、例えばイプタコパン塩酸塩による処置前にワクチン接種されている。
【0061】
一実施形態では、対象、例えば患者は、処置前に髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(A、C、Y及びW-135型)に対してワクチン接種されている。
【0062】
いくつかの実施形態では、早期又は中期加齢黄斑変性(AMD)の進行の防止を、それを必要とする患者の眼において行う方法であって、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩を1日約400mgの用量(投与量は、イプタコパンの無水遊離塩基を指す)で対象に経口投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0063】
一実施形態では、イプタコパンは、1日2回投与される。
【0064】
一実施形態では、イプタコパンは、200mgの用量で1日2回投与される。
【0065】
一実施形態では、イプタコパンは、100mgの用量で1日4回投与される。
【0066】
一実施形態では、イプタコパンは、少なくとも1ヶ月間にわたって投与される。
【0067】
一実施形態では、イプタコパンは、少なくとも6ヶ月間にわたって投与される。
【0068】
一実施形態では、イプタコパンは、少なくとも1年間にわたって投与される。
【0069】
一実施形態では、イプタコパンは、約2年間にわたって投与される。
【0070】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボの投与と比較して、眼の失明の低減をもたらす。
【0071】
一実施形態では、失明は、以下の検査:
早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)最高矯正視力(BCVA)、
ETDRS低輝度視力(LLVA)、
コントラスト感度(CS)、又は
低輝度コントラスト感度(LLCS)
の1つ以上によって測定される。
【0072】
最高矯正視力(BCVA)は、ETDRS視力表を4メートル又は4メートルの視力表を読むことができない参加者では1メートルで使用して測定され得る。いくつかの実施形態では、BCVA又はLLVA評価のいずれかに関する対象のETDRSスコアは、プラセボの投与と比較して、少なくとも1列(5文字)、2列(10文字)又は3列(15文字)だけ高い。
【0073】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、眼におけるドルーゼンの形成を低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、ドルーゼンの形成を約10%、約20%、約30%、約40%又は約50%低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、ドルーゼンの形成を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%低減する。
【0074】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、対象の眼における萎縮性病変の発生を低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、萎縮性病変の発生を約10%、約20%、約30%、約40%又は約50%低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、萎縮性病変の発生を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%低減する。
【0075】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボの投与と比較して、眼における不完全な網膜色素上皮及び網膜外層萎縮(iRORA)の発生及び/又は大きさを低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、iRORAの発現を約10%、約20%、約30%、約40%又は約50%低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、iRORAの発現を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%低減する。
【0076】
一実施形態では、対象、例えば患者は、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩、例えばイプタコパン塩酸塩による処置前にワクチン接種されている。
【0077】
いくつかの実施形態では、萎縮性病変の発生の低減を、それを必要とする患者の眼において行う方法であって、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩を1日約400mgの用量(投与量は、イプタコパンの無水遊離塩基を指す)で対象に経口投与することを含む方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、萎縮性病変の防止を、それを必要とする患者の眼において行う方法であって、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩を1日約400mgの用量(投与量は、イプタコパンの無水遊離塩基を指す)で対象に経口投与することを含む方法が本明細書に提供される。
【0078】
一実施形態では、イプタコパンは、1日2回投与される。
【0079】
一実施形態では、イプタコパンは、200mgの用量で1日2回投与される。
【0080】
一実施形態では、イプタコパンは、100mgの用量で1日4回投与される。
【0081】
一実施形態では、イプタコパンは、少なくとも1ヶ月間にわたって投与される。
【0082】
一実施形態では、イプタコパンは、少なくとも6ヶ月間にわたって投与される。
【0083】
一実施形態では、イプタコパンは、少なくとも1年間にわたって投与される。
【0084】
一実施形態では、イプタコパンは、約2年間にわたって投与される。
【0085】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボの投与と比較して、眼の失明の低減をもたらす。
【0086】
一実施形態では、失明は、以下の検査:
早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)最高矯正視力(BCVA)、
ETDRS低輝度視力(LLVA)、
コントラスト感度(CS)、又は
低輝度コントラスト感度(LLCS)
の1つ以上によって測定される。
【0087】
最高矯正視力(BCVA)は、ETDRS視力表を4メートル又は4メートルの視力表を読むことができない参加者では1メートルで使用して測定され得る。いくつかの実施形態では、BCVA又はLLVA評価のいずれかに関する対象のETDRSスコアは、プラセボの投与と比較して、少なくとも1列(5文字)、2列(10文字)又は3列(15文字)だけ高い。
【0088】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、眼におけるドルーゼンの形成を低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、ドルーゼンの形成を約10%、約20%、約30%、約40%又は約50%低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、ドルーゼンの形成を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%低減する。
【0089】
いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、眼における萎縮性病変の発生を約10%、約20%、約30%、約40%又は約50%低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、萎縮性病変の発生を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%低減する。
【0090】
一実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボの投与と比較して、眼における不完全な網膜色素上皮及び網膜外層萎縮(iRORA)の発生及び/又は大きさを低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、iRORAの発現を約10%、約20%、約30%、約40%又は約50%低減する。いくつかの実施形態では、イプタコパンの投与は、プラセボと比較して、iRORAの発現を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%低減する。
【0091】
一実施形態では、対象、例えば患者は、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩、例えばイプタコパン塩酸塩による処置前にワクチン接種されている。
【0092】
本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、対象は、イプタコパン又はその薬学的に許容される塩の投与前に髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(A、C、Y及びW-135型)に対してワクチン接種され得る。
【実施例】
【0093】
以下の実施例及び合成スキームによって本開示をさらに説明するが、これは、本明細書に記載される特定の手順の範囲又は趣旨において本開示を限定するものと解釈されるべきではない。実施例は、特定の実施形態を説明するために提供されており、これにより本開示の範囲を限定することを意図されないことが理解されるべきである。さらに、本開示の趣旨及び/又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者にそれ自体を示唆し得る種々の他の実施形態、変更形態及びそれらの均等物を用い得ることも理解されるべきである。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
実施例1.早期及び中期加齢黄斑変性患者におけるイプタコパンの安全性及び有効性を評価するランダム化参加者及び調査者検盲化プラセボ対照多施設概念実証研究
目的
本研究の目的は、早期又は中期AMDの眼が新たな不完全な網膜色素上皮及び網膜外層萎縮(iRORA)又は後期AMDに転換することを予防するイプタコパンの効果を評価することである。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
研究設計
本研究設計は、一方の眼に早期から中期の加齢黄斑変性(e/iAMD)を有し、他方の眼に滲出型加齢黄斑変性(nAMD)を有する患者におけるイプタコパンの安全性及び有効性を評価する、29ヶ月多施設ランダム化参加者及び調査者検盲化プラセボ対照概念実証研究である。登録された全ての参加者は、片眼に少なくとも1つの高リスクなOCTでの特徴を有するe/iAMDを有し(試験眼)、他方の眼(僚眼)にnAMDを有する必要がある。
【0108】
同意した参加者は、組み入れ基準及び除外基準に基づいて適格性を評価するために、スクリーニング評価を受ける。適格基準を全て満たした参加者は、ベースライン/1日目の来院時、以下の2つの処置アームの一方に1:1の比率でランダム化される。
・イプタコパン200mg、1日2回、経口
・プラセボ、1日2回、経口
【0109】
参加者は、中央読影センターによって光干渉断層法(OCT)で確認したときの高輝度病巣の存在により、2アーム間で層別化される。
【0110】
本研究の両アームに対し、現在の現地標準治療に従い、僚眼(nAMDの眼)を抗VEGF療法で処置する。
【0111】
世界全体で約146人(1アーム当たり73人)が処置される。参加者1人の最大研究期間は、スクリーニングと処置後のフォローアップを含む約880日である。
【0112】
本研究には、以下の3つの期間が存在する(
図1を参照されたい)。
・スクリーニング期間:-90日目から-1日目
・処置期間:ベースライン/1日目から730日目まで
・フォローアップ期間:(EOS):760日目/25ヶ月目及びEOS時来院の30日後(最終処置の約60日後)の研究後の安全連絡
【0113】
スクリーニング期間:-90日目から-1日目
最大90日のスクリーニング期間により、適格性を評価する。
【0114】
インフォームドコンセント用紙の施行後のスクリーニング来院において、人口統計、医療歴、バイタルサイン、身長及び体重、身体検査、ECG、妊娠の評価、複数の画像検査及び視覚検査並びに血液サンプルを含む適格性を判断するための評価を行い、参加者の全般的な健康状態及び組み入れ/除外基準の遵守を評価する。スクリーニング期間中、生体サンプル及び画像評価を行い、適格性を評価する。
【0115】
全ての適格性要件が満たされた時点で、参加者が髄膜炎菌(N.meningitidis)、肺炎球菌(S.pneumoniae)及びインフルエンザ菌(H.influenzae)に対してワクチン接種されていない場合(又は追加免疫が必要な場合)、ベースライン/1日目の来院の少なくとも2週間前にこれらのワクチン接種の手配を行う。ワクチン接種の物流管理は、調査施設によって管理される。必要に応じて、治験依頼者が支援を提供し得る。
【0116】
参加者の再スクリーニングが許容される。中央読影センターの助言の通り、解釈が困難である場合、品質を向上させるように画像評価が再度行われ得る。
【0117】
評価の再検査は、初回のスクリーニング来院の最大89日以内にスクリーニング枠内で繰り返され得る。最初に合格した他のスクリーニング評価を繰り返す必要はない。元々のスクリーニング来院日から89日を超過したスクリーニング枠外で再スクリーニングが行われる場合、全てのスクリーニング手順を繰り返さなければならない。
【0118】
調査者/参加者検盲化処置期間:ベースライン/1日目から24ヶ月目/730日目まで
適格参加者は、ベースライン/1日目の来院時、以下の処置アーム:イプタコパン又はプラセボの処置の一方に1/1の比率でランダム化される。ランダム化の時点で、全ての参加者に対して研究来院スケジュールが設定される。ベースライン/1日目の来院を除き、評価は別々の2日で実施され得るが、両日が来院枠内にあり、且つ互いに3日以内であることを条件とする。ベースライン/1日目に、研究処置の初回用量を、参加者が診療所を去る前に現地で投与する。初回用量後、参加者は、処置期間の24ヶ月中、研究処置を自己投与し(朝と夜)、11回のフォローアップ来院時に診察を受ける。
【0119】
診療所の来院日には参加者が問診票を全て記入し、バイタルサイン、ECG及び全ての血液サンプルを採取した後に投与を行わなければならない。眼内検査、画像評価、ETDRS視力及びコントラスト感度の測定については、投与前に完了する必要はない。
【0120】
処置来院時、処置の安全性及び有効性を評価するために、以下の評価の一部又は全て:バイタルサイン、身長及び体重、身体検査、ECG、妊娠検査、質問票を含む複数の画像及び視覚検査並びに血液サンプルを採取し、参加者の全般的な健康状態及び処置の遵守を評価する。加えて、参加者は、全般的な健康状態及びあらゆる有害事象の発現について質問される。処置期間中の全ての研究来院時、参加者は、薬物の数量管理を行うために、現地で使用されたボトル、あらゆる未使用の薬物及び参加者日誌を含む研究薬物を返却する。指定された来院時に参加者に研究薬物が再度供給される。
【0121】
研究薬物の最終の自己投与は、24ヶ月目(30日目)の来院(処置の終了)前の夜に行う。
【0122】
研究終了(EOS)時来院:25ヶ月目/760日目
全ての参加者は、EOS時来院のため25ヶ月目/760日目に診察を受ける。この来院時、研究完了情報を含む全ての研究評価の終了が完結する。
【0123】
フォローアップ期間:(試験後の安全連絡)26ヶ月目/790日目
EOS(25ヶ月目/760日目)時来院の約30日後に処置後の安全に関する電話をする。
【0124】
移動式MCVM検査
選定場所において、全てのスクリーニング要件を満たし、且つベースライン/1日目のランダム化に進むことが適格となる参加者は、移動式MCVMと診療所で使用されている固定式MCVM装置とを比較するために設計された、個別の2ヶ月間のサブ研究に参加することが求められる。移動式MCVM検査の研究集団は、本サブ研究に同意した男女約50人の参加者で構成される。
【0125】
両側のコントラスト感度の評価の調査は、スクリーニング、ベースライン/1日目及び2ヶ月目を含む3回の来院時、診療所の移動式MCVMを使用して検査する。ベースライン/1日目及び2ヶ月目の来院時、再現性のための二重検査を行う。
【0126】
診療所での評価に加えて、参加者は自宅でも移動式MCVMを使用し、スクリーニング来院と2ヶ月目の来院中、5~10分間隔で試験眼の測定を毎週2回行う(同じ時刻及び同じ場所が推奨される)。診療所の来院が予定されている週は、移動式MCVMによる在宅検査を診療所の来院と同じ日に行うことが推奨される。サブ研究のワークフローを
図2に示す。
【0127】
研究設計の論理的根拠
本研究の設計は、e/iAMDを処置するための、経口による1日2回の200mgのイプタコパンの有効性及び安全性の目的について検討するものである。
【0128】
本研究は、参加者及び調査者が検盲化され、治験依頼者は、盲検化されないままである(処置アームについての知識を必要とする有害事象の場合に緊急盲検解除措置が可能となる)。
【0129】
新たなiRORA又は後期AMDへの転換の一次エンドポイントは、処置の割り付けに対しても検盲化された中央読影施設による客観的評価に基づく。OCTで観察されるような網膜内高輝度病巣は、転換に関する最も予測的なリスク因子であり、したがって、このリスク因子を有する参加者は、イプタコパンアームとプラセボアームとの間で均等にランダム化される。2年間の研究処置期間は、高リスク因子を有する患者における後期AMDへの転換に関する刊行物(Lei et al,Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol;1551-1558,2017,Nassisi et al,Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol;2079-2085,2019)に基づく。
【0130】
実薬アームとプラセボアームとの間で処置をランダム化することにより、安全及び有効特性を客観的に評価することが可能となる。全ての研究参加者は、同一の研究評価を受け、同一の投与及び来院間隔の下で割り当てられた研究処置を受ける。両方の処置アームは、互いに並行して進行する。
【0131】
用量/レジメン及び処置期間の論理的根拠
e/iAMDは、ゆっくりと進行する疾患であるため、イプタコパンによる潜在的な臨床効果を検出するには、長期間の処置及び観察が必要となる。プラセボで処置したe/iAMDの眼と比較した場合の、イプタコパンで処置したe/iAMDの眼が転換するまでの時間を観察するのに十分な時間を与えるために、24ヶ月間の研究が選択された。
【0132】
健康なボランティアでの研究及び第2相研究のパート1の中間分析からの安全性及び有効性データの全体に基づき、本試験では1日2回の200mgのイプタコパンが選択された。加えて、この用量は、ヘモグロビン(Hb)レベルを維持するための、タンパク尿の減少を含むC3G及びPNH患者における第2相研究において、好ましいベネフィット-リスク比であることが実証されている。
【0133】
ファースト・イン・ヒューマン研究において、イプタコパンを単回漸増用量(SAD、10~400mg)及び反復漸増用量(MAD、2週間で1日2回の10~200mg)で102人の健康なボランティアに投与した。結果から、イプタコパンは、溶解度が高く、透過性が良好であり、吸収が速く、忍容性が良好であったことが示された。研究薬物の中断につながる死亡、SAE又はAEは、観察されなかった。MAD研究では、Wieslab APアッセイによって測定したときにAP活性の用量依存的な抑制が達成され、1日2回の100mg及び200mgの投与で14日間にわたり約80%以上の阻害を持続したが、Bbレベルは、全てのイプタコパンのコホートでベースラインから30~40%の減少を示した。
【0134】
臨床第2相データから、全ての検査された指標(PNH、IgAN、C3G)において、1日2回の200mgの投与レジメンにより、いかなる安全性の懸念もない最高の奏効率がもたらされたことが示された。これは、PKPDモデリングと同様に、これらの研究で収集された目標占有率データによっても裏付けられた。したがって、新たな参加者集団における有効性及びPK特性を調査する役割を果たす本試験では、1日2回の200mgが選択された。
【0135】
加えて、前臨床研究では、1日2回の200mgの投与後のヒト曝露に対し、許容できる安全域であることが裏付けられた。
【0136】
1日2回の200mgでの参加者の非結合型全身曝露量(AUCベース)は、39週間のイヌにおける研究でオフターゲットな精巣への影響が観察された最低曝露量の17.3倍未満(LOAEL)に留まっている。
【0137】
非結合型全身曝露量に基づく安全域により、39週間の毒性研究における雄のイヌの中で最も感受性の高い種及び性別に対して算出された2.2(AUC及びCmaxに基づく)の比率(NOAEL)がもたらされる。
【0138】
1日2回の200mgの用量のイプタコパンの安全性及び忍容性は、一部の参加者に1日2回の200mgのイプタコパンが12ヶ月超投与された、IgANにおけるパート1の研究並びにPNH及びC3Gにおける他の臨床研究によって裏付けられている。本研究のパート1では、1日2回の200mgの用量のイプタコパンにより、90日間にわたりタンパク尿が減少することが示され、これは1日2回の200mgのイプタコパンを支持するものであった。
【0139】
対照薬物(比較薬物/プラセボ)又は組合せ薬物の選択の論理的根拠
e/iAMDの処置に承認されている製品が存在しないため、今回の研究には実薬比較薬物が含まれていない。本研究の対照は、プラセボ処置であり、この処置は、承認された処置が存在しない経口療法の研究のための対照の一般的且つ確立された方法である。
【0140】
研究集団
調査における研究集団は、試験眼がe/iAMD、僚眼がnAMDと診断された≧50歳の男性及び女性参加者から構成される。試験眼は、少なくとも早期AMDであることに加え、OCTにおいて少なくとも1つの高リスクな特徴(網膜内高輝度病巣、網膜下のドルーゼン様沈着、ドルーゼン内の低輝度病巣又は中心3mm円内の≧0.03mm3のドルーゼン量)を有する必要がある。僚眼はnAMDの既往歴を有し、標準治療の抗VEGF硝子体内処置を実施中(又はベースライン/1日目までに実施される)でなければならない。世界全体で約292人の参加者がスクリーニングされ、146人の参加者が1:1の比率でランダム化される(各研究アームでn=73人)。
【0141】
調査者は、研究に考慮される全ての参加者が適格基準を満たすことを保証する。研究集団が全ての適格な参加者を代表するものであることを保証するために、調査者によって追加の基準が適用されるべきではない。
【0142】
組み入れ基準
本研究に組み入れるのに適格な参加者は、ベースライン/1日目以前に以下の基準を全て満たしていなければならない:
1.あらゆる評価を行う前に、書面によるインフォームドコンセントを得なければならない。
2.年齢が≧50歳の男性又は女性参加者であること。
3.眼底検査で調査者により測定されたときに、試験眼が早期又は中期AMDと診断されること(カラー眼底写真であれば、中央読影センターによる読影に対する確認は必要でない)。
4.試験眼(e/iAMDの眼)は、以下のOCTでの特徴の少なくとも1つを有する必要がある:網膜内高輝度病巣、網膜下のドルーゼン様沈着、ドルーゼン内の低輝度病巣又は中央読影センターにより測定されたときの、OCT上で中心3mm円内の≧0.03mm3のドルーゼン量。
5.調査者によって判定されるような、僚眼におけるnAMDの診断:
・nAMDの眼は、滲出性MNV(1型、2型又は3型)の既往歴があり、抗VEGF硝子体内注射によって処置されていなければならない。ベースライン/1日目の来院時に初回の抗VEGF処置を受けた、新たに診断されたnAMDは適格性がある。
6.イプタコパンによる処置を開始する前に、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)及び肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)感染症に対するワクチン接種が必要となる。参加者がこれまでにワクチン接種をしていない場合又は追加免疫が必要な場合、イプタコパンの初回投与の少なくとも2週間前に地方の規則に従ってワクチン接種が提供されなければならない。
7.これまでに受けていない場合、インフルエンザ菌(Haemophilius influenzae)感染症に対するワクチン接種は、実行可能な場合、地方の規則に従って提供されなければならない。ワクチン接種は、イプタコパンの初回投与の少なくとも2週間前に提供されなければならない。
8.研究の要件を理解して遵守するために、調査者と良好なコミュニケーションを取ることができること。
【0143】
除外基準
以下の基準のいずれかを満たす参加者は、本研究に組み入れるのに適格ではない:
1.スクリーニング又はベースライン/1日目に、調査者の見解により、研究処置に対する反応を妨げる可能性があり、研究結果の解釈を混乱させ、視力を損なわせ、研究期間中に計画された内科的又は外科的介入(例えば、白内障手術)を必要とし、予定された研究来院、研究の完了又は調査製品の安全な投与を妨害し得る内科的又は眼科的症状を併発していること。
2.ベースライン/1日目以前の3ヶ月以内における、試験眼に白内障手術及び硝子体網膜手術を含む眼内手術。
3.調査者の見解で、適切な眼底の可視化を妨げるか又は網膜画像データの品質に干渉する、著しい中間透光体混濁、眼球運動障害(眼振)、重度の眼瞼下垂、眼外運動の制限又は頭部振戦の存在。
4.スクリーニング又はベースライン/1日目に、いずれかの眼に任意の活動性の眼内若しくは眼窩周囲感染症又は活動性の眼内炎症(例えば、感染性結膜炎、角膜炎、強膜炎、眼内炎、感染性眼瞼炎、ブドウ膜炎)がある。
5.ベースライン/1日目の来院時に活動性の眼以外の感染症(細菌性、ウイルス性、真菌性若しくは寄生虫性)が存在するか若しくはその疑いがあるか(調査者の判断に基づく)、又は重度の再発性の細菌性感染症の既往歴がある。
6.スクリーニングにおける薬物治療中の眼圧(IOP)が>25mmHGと定義される、試験眼のコントロール不良な緑内障。IOP≦25mmHGのコントロールされた安定した緑内障は、軽度又は中等度(緑内障と一致する視神経異常及び一方の半視野に緑内障性視野異常があり、5度以内の固視でない)である場合に許容される。
7.糖尿病性黄斑浮腫の存在又は重度の非増殖性糖尿病性網膜症若しくは増殖性糖尿病性網膜症の既往歴/存在。
8.スクリーニング又はベースライン/1日目の来院時点における以下のようなバイタルサイン:
・体温が<35.0又は>37.5℃
・収縮期血圧が<90又は>180mm Hg
・拡張期血圧が<50又は>110mm Hg
・生じた脈拍数が<50又は>100bpm。調査者の決定に従って他に臨床的に重大なECGの異常がない場合、50bpm未満は許容可能である。心拍数が50bpm未満の参加者については、a)中等度又は重度の弁膜症;b)冠動脈疾患、心筋梗塞、高血圧又は真性糖尿病の既往歴;c)心筋症、先天性心臓欠損、開心術又は進行中の不整脈の既往歴;d)一親等の親族における突然死の家族歴、に関する既往歴がないという証拠を提供しなければならない。
留意点:血圧測定値が上昇した場合、調査者は、最大2回の追加の読取り値を得ることができ、それにより各測定を繰り返す前に参加者を少なくとも5分間静かに座らせた状態で合計3回の連続測定を行う。参加者を適格とするには、最低でも最終読取り値が範囲内でなければならない。
9.臨床的に重大なECGの異常の既往歴又はスクリーニング若しくはベースライン/1日目の来院時に以下のECGの異常のいずれかがある:
・QTcFが>450ミリ秒(男性)。
・QTcFが>460ミリ秒(女性)。
家族性QT延長症候群の既往歴又はトルサード・ド・ポワンツの既知の家族歴がある。
10.ベースライン/1日目以前の6ヶ月の期間中の脳卒中又は心筋梗塞の既往歴、あらゆる現在の臨床的に重大な不整脈又はあらゆる進行性の心臓高血圧症又は重度の肺高血圧症の既往歴がある。
11.透析又は腎移植を必要とする末期腎不全を含む腎不全の既往歴がある。
12.局所再発又は転移の証拠が存在するか否かを問わない、ベースライン/1日目の5年以内に処置されたか又は未処置の、あらゆる臓器系の悪性病変(皮膚の限局性基底細胞癌又は子宮頸部上皮内癌以外)の既往歴がある。
13.固形臓器移植又は骨髄移植の既往歴がある。
14.再発性髄膜炎の既往歴又はワクチン接種にもかかわらず、髄膜炎菌感染症の既往歴がある。
15.スクリーニング時のHIV検査陽性結果を含む、免疫不全疾患の既往歴がある。
16.B型肝炎(HBV)又はC型肝炎(HCV)の慢性感染。
・HBV表面抗原(HBsAg)で血清学的検査陽性の参加者又は標準的な現地の慣行の場合にはHBVコア抗原検査陽性の参加者は除外される。
・HBVコア抗体(HBcAb)の血清学的検査陽性の参加者は、以下の3つの基準を満たす場合を除き、除外される:
a)HBV DNA検査が陰性である。
b)最も遅くとも処置の1日目に開始され、最後の処置後6ヶ月まで継続されるラミブジン又はエンテカビルによる予防的処置。
c)B型肝炎の監視が実施されている:HBsAg及びHBV DNAは、予防的処置が終了するまで、最初の6ヶ月間は4週間毎に、その後は12週間毎に検査する。
HCV抗体検査陽性の参加者は、HCV RNAレベルを測定しなければならない。HCV RNAが陽性(検出可能)の参加者は、除外しなければならない。
17.調査者によって評価される、研究処置若しくは賦形剤若しくは同様の化学的分類の薬物のいずれかに対する過敏症又はフルオレセイン色素に対する臨床的に関連する過敏症の既往歴がある。
18.既知又は疑いのある遺伝性又は後天性の補体欠損症がある。
19.あらゆるポルフィリン症の代謝障害の既往歴がある。
20.ベースライン/1日目以前の4週間以内に、任意の生ワクチン接種を受けている。
21.研究薬物の初回投与以前の90日(又はリツキシマブの場合には180日)以内に、シクロホスファミド、リツキシマブ、インフリキシマブ、エクリズマブ、カナキヌマブ、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)若しくはミコフェノール酸ナトリウム(MPS)、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、エベロリムスなどであるが、これらに限定されない免疫抑制剤若しくは他の免疫調節剤又は全身性副腎皮質ステロイドの曝露(>7.5mg/dのプレドニゾン/プレドニゾロン当量)により以前処置された参加者。
22.結核(TB)のリスクのある参加者、特に、以下の参加者:
・活動性又は潜在性TBの臨床的、X線写真による又はラボによる以下の証拠を現在有する参加者:
・国のガイドラインに従った、スクリーニング時又はスクリーニング以前の2ヶ月以内に、QuantiFERON(QFT)検査が陽性であるか、又は精製タンパク誘導体(PPD)検査が陽性(≧5mmの硬結)であることによって確認された、TB感染(活動性又は潜在性)の証拠。QFT検査が陽性又は不確定の参加者は、ランダム化以前の12週間以内にTBの完全な精密検査(現地の慣行/ガイドラインに従う)を完了し、参加者に活動性又は潜在性TBの証拠がないことを結論として立証した場合、試験に参加することができる。潜在性TB感染の存在が立証された場合、ベースライン/1日目の前に、国のガイドラインに従ったTBの処置を開始又は完了していなければならない。国のガイドラインがない場合、以下が実証されている:TBが抗生物質により適切に処置されており、治癒したことを証明することができ、TBの曝露及び罹患をもたらすリスク因子が排除されている。
・以下の活動性TBの既往歴がある:
・スクリーニングの2年以内(処置されている場合でも)
・現地で認められているガイドラインに従った適切な処置の記録文書がない場合、スクリーニングの2年以上。
・調査者の見解において、且つ適切な評価に基づき、従来の免疫抑制剤の使用を妨げる、TBの再活性化のリスクがあること。
23.スクリーニングの30日以内(例えば、低分子)若しくは5半減期以内又は予想される薬力学的効果がベースライン/1日目に戻るまで(例えば、生物学的製剤)のいずれか長い期間;或いは地方の規則で必要とされる場合にはそれを超える期間に他の調査薬物を使用すること。
24.ベースライン/1日目以前の7日以内における、ゲムフィブロジル又はクロピドグレルなどの強力なCYP2C8阻害剤による前治療。
25.スクリーニング若しくはベースライン/1日目に研究に参加する場合、薬物の吸収、分布、代謝若しくは排泄を著しく変化させ得るか又は参加者を危険にさらす可能性のあるあらゆる外科的又は医学的状態。調査者は、参加者の医療歴及び/又は以下のいずれかの臨床的若しくはラボによる証拠を考慮してこの決定を行うべきである:
・被包性生物、例えば、髄膜炎菌(meningococcus)又は肺炎球菌(pneumococcus)によって引き起こされる侵襲性感染症の既往歴
・脾臓摘出
・炎症性腸疾患、消化性潰瘍、直腸出血を含む重度の消化器障害
・胃切除術、胃腸吻合術又は腸切除などの大規模な消化器管手術
・膵損傷又は膵炎
・正常上限(ULN)の2倍を超えるALT(SGPT)、AST(SGOT)、γ-GT、アルカリホスファターゼ又は血清ビリルビンのいずれか単体のパラメータによって示されるような、肝疾患又は肝損傷
・血尿を伴う、尿路閉塞又は排尿困難又はあらゆる尿路障害の証拠
・重篤な同時併存疾患、例えば、進行した心疾患(NYHAクラスIV)、重篤な肺動脈高血圧(WHOクラスIV)又は調査者により判断される他の状態
26.播種性血管内凝固症候群(DIC)を示唆するスクリーニング時の凝固パネルの異常な結果。
27.ベースライン/1日目以前の8週間以内又は地方の規則で必要とされる場合にはそれを超えて≧400mLの献血又は失血がある。ベースライン/1日目以前の30日以内の血漿献血(>200mL)。
28.妊娠した又は保育中(授乳中)の女性であり、この場合、妊娠とは、スクリーニング又はベースライン/1日目にヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)妊娠検査で陽性であることが確認された、受胎後及び妊娠期間が終了するまでの女性の状態として定義される。
29.生理学的に妊娠することが可能な全ての女性と定義される、出産能のある女性(但し、調査薬物の投与中、許容される避妊法を用いている場合を除く)。
・異性間性交の完全自制(これが参加者の好ましい通常の生活様式と一致する場合)。周期的な自制(例えば、カレンダー法、排卵法、症候体温法、排卵後法)及び膣外射精は、許容される避妊法ではない。
・調査薬物を服用する少なくとも6週前の、女性の避妊手術(子宮摘出術の有無を問わない外科的両側卵巣摘出術を受けたことがある)、子宮全摘出術又は卵管結紮術。卵巣摘出術単独の場合、フォローアップホルモンレベル評価によって女性の生殖状態が確認されている場合のみ。
・男性の避妊手術(スクリーニングの少なくとも6ヶ月前)。本研究の女性参加者については、精管切除した男性パートナーがその参加者の唯一のパートナーでなければならない。
・バリア避妊法:コンドーム又は閉塞キャップ(ペッサリー又は子宮頚部/円蓋キャップ)。英国について:殺精子剤の泡/ゲル/フィルム/クリーム/膣坐剤を伴う。
・経口(エストロゲン及びプロゲステロン)、注射型若しくは埋込み型ホルモン避妊法又は有効性が匹敵する(失敗率<1%)他の形態のホルモン避妊法、例えばホルモン膣環若しくは経皮的ホルモン避妊又は子宮内避妊器具(IUD)若しくは子宮内避妊システム(IUS)の配置の使用。
経口避妊を用いる場合、女性は、研究薬物を服用する前の最小3ヵ月間に同じピルで安定していなければならない。
【0144】
地方の規則が上記に列挙した避妊法から逸脱し、妊娠を防ぐためのより広範な措置が必要とされる場合、地方の規則が適用され、インフォームドコンセント用紙(ICF)に記載される。
【0145】
女性は、適切な臨床プロファイル(例えば、妥当な年齢、血管運動症状の既往歴)を伴う12ヶ月の自然(自発的)無月経があった場合又は少なくとも6週前に外科的両側卵巣摘出術(子宮摘出の有無を問わない)、子宮全摘出若しくは卵管結紮を受けた場合、閉経後であり、妊娠の可能性がないとみなされる。卵巣摘出術単独の場合、フォローアップホルモンレベル評価により女性の生殖状態が確認されている場合にのみ、妊娠の可能性がないとみなされる。
【0146】
均等物
当業者であれば、単に日常的な実験のみにより、本明細書に具体的に記載される特定の実施形態に対する多数の均等物を認識又は確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。
【国際調査報告】