(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-16
(54)【発明の名称】沿岸ソリューション
(51)【国際特許分類】
E02B 3/00 20060101AFI20240808BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240808BHJP
E04H 1/04 20060101ALN20240808BHJP
E04H 3/00 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
E02B3/00
E04H9/14 Z
E04H1/04 Z
E04H3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532656
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 SG2022050518
(87)【国際公開番号】W WO2023014289
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10202108651Q
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524050578
【氏名又は名称】ケッペル マネジメント リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーチャント アジーズ アミレイル
(72)【発明者】
【氏名】パズマルシー ムルティー
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】ロウ ホンミン ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】タン リ ホン
(72)【発明者】
【氏名】ラウ カー キー ポウル
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA28
2E139AB20
2E139AC03
2E139AC06
2E139AC12
2E139AC19
2E139AC42
2E139AC49
(57)【要約】
【課題】本発明は沿岸ソリューションに関する。
【解決手段】沿岸ソリューションは、境界を規定し、かつ、礁湖を形成するする複数の着底式インフラモジュールを備え、複数の着底式インフラモジュールの各々は、着底式インフラモジュールの負荷を海底に伝え、周囲の水圧に耐えるように構成されている。沿岸ソリューションは、着底式または浮体式のいずれかであり得る汎用モジュールをさらに備え、浮体式インフラモジュールは境界または防波堤内に配置される。浮体式インフラモジュールは、比較的軽いインフラサービス、および車両などの交通網が通過できるように設計されている。汎用モジュールは、ライブ・ワーク・プレイのために設計され、住居、オフィス、およびレクリエーションの施設などを収容する。着底式汎用モジュールは比較的重い上側構造物に対応するように設計され、浮体式汎用モジュールは比較的高い上側構造物に対応するように設計されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沿岸ソリューションであって、
複数の着底式インフラモジュールであって、前記沿岸ソリューションの境界を規定し、それぞれが前記着底式インフラモジュールの負荷を海底に伝え、周囲の水圧に耐えるように構成された前記複数の着底式インフラモジュールと、
複数の浮体式汎用モジュールおよび複数の浮体式インフラモジュールであって、前記浮体式汎用モジュールを前記海底から延びる杭の開放端に係留するように構成された拘束具をそれぞれ備える前記複数の浮体式汎用モジュールおよび前記複数の浮体式インフラモジュールと、
複数の着底式汎用モジュールと、を備え、
前記複数の浮体式汎用モジュール、複数の浮体式インフラモジュール、および複数の着底式汎用モジュールは、前記沿岸ソリューションの前記境界内に配置され、
前記複数の浮体式汎用モジュールおよび前記複数の浮体式インフラモジュールの各々は、第1ベースメント層と、第2ベースメント層と、をさらに備え、
前記拘束具は、前記浮体式汎用モジュールまたは前記浮体式インフラモジュールの外周に沿って設けられ、前記第1および第2ベースメント層の側壁に一体的に連結され、
前記拘束具は、前記杭と前記拘束具内のガイドとの間にローラ備えて、前記浮体式汎用モジュールまたは前記浮体式インフラモジュールを前記第1ベースメント層の表面に垂直な横方向において前記杭によって確実に拘束する、
沿岸ソリューション。
【請求項2】
隣接する2つの着底式インフラモジュールの間にゲートをさらに備える、
請求項1に記載の沿岸ソリューション。
【請求項3】
前記複数の着底式インフラモジュールおよび前記複数の着底式汎用モジュールの各々は、
着底の負荷を海底に伝えるように構成された複数の柱と、
周囲の水圧に耐えるように構成されたハルと、をさらに備える、
請求項1に記載の沿岸ソリューション。
【請求項4】
前記複数の着底式インフラモジュールおよび前記複数の着底式汎用モジュールの各々は、
生活様式および交通施設に適合された水位よりも上の最上層と、
収納のために構成された最下層と、
前記最上層と前記最下層との間に、地下生活様式および交通網、公共設備収納施設のために構成された複数のベースメント層と、をさらに備える、
請求項1に記載の沿岸ソリューション。
【請求項5】
前記最下層は、前記着底式インフラモジュールまたは前記着底式汎用モジュールの浮力を制御するためのバラストシステムを備える、
請求項4に記載の沿岸ソリューション。
【請求項6】
前記複数のベースメント層は、空地である、
請求項4に記載の沿岸ソリューション。
【請求項7】
前記着底式インフラモジュールおよび前記着底式汎用モジュールの各々は、
前記着底式インフラモジュールまたは前記着底式汎用モジュールの高さを調整する手段として、着底式インフラモジュールまたは着底式汎用モジュールの底部に定位置に設置されたコンクリートスペーサを備える、
請求項1~6のいずれか1項に記載の沿岸ソリューション。
【請求項8】
前記コンクリートスペーサは、コンクリートブロックである、
請求項7に記載の沿岸ソリューション。
【請求項9】
前記第2ベースメント層は、前記浮体式汎用モジュールまたは前記浮体式インフラモジュールの浮力を制御するためのバラストシステムを備える、
請求項1に記載の沿岸ソリューション。
【請求項10】
前記バラストシステムは、前記浮体式汎用モジュールまたは前記浮体式インフラモジュールを特定の喫水および直立に維持するように構成された能動的補償バラストシステムである、
請求項9に記載の沿岸ソリューション。
【請求項11】
前記第1ベースメント層は、地下の生活インフラ、輸送インフラ、ならびに、収納、エネルギー生成、および発電所用の公共事業インフラのための内部空間を備える、
請求項10に記載の沿岸ソリューション。
【請求項12】
前記着底式汎用モジュール、前記浮体式インフラモジュール、および前記浮体式汎用モジュールは、六角形である、
請求項1~11のいずれか1項に記載の沿岸ソリューション。
【請求項13】
前記着底式インフラモジュールと前記浮体式汎用モジュールとを互いに結合するように構成された可撓性連結アームをさらに備える、
請求項1~12のいずれか1項に記載の沿岸ソリューション。
【請求項14】
前記着底式モジュールおよび前記浮体式汎用モジュールは、リサイクルコンクリート骨材(RCA)を使用して製造されるものと考えられる、
請求項1~13のいずれか1項に記載の沿岸ソリューション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上における生活様式居住空間のための沿岸ソリューションに関する。特に、本発明は、海岸保護と海面上昇への対処とを支援する一代替方針である、インフラモジュールおよびリブ・ワーク・プレイモジュールの一組の総合的な沿岸ソリューションに関する。沿岸ソリューションは、複数の大型モジュール構造を備え、複数の大型モジュール構造は、構内および/または工場で完全に予め組み立てられ、様々な構成で組み合わせられて、気候変動、海岸保護、ならびに大規模なインフラおよび構築環境空間のためのソリューションを提供することができる。これらのモジュールは、陸地に接続されて、陸上の住宅団地の海洋空間への拡張を創出する。
【背景技術】
【0002】
気候変動は、多くの人々には認識できないかもしれないが、人類が直面する最も深刻な課題の一つである地球規模の現象である。気候変動は、経済的影響だけでなく、生物多様性の破壊、食料源の喪失も含む壊滅的な結果をもたらすであろう。多くの国々にとって、気候変動の影響は、温暖化および降雨量の増加、特に海面上昇の深刻さにおいて顕著である。
【0003】
防波堤の建設および土地の埋め立てなどの従来の静的解決策は実施されてきたが、これらは持続可能な解決策ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、当業者は、絶えず努力して海岸保護のための代替解決策を提供し、気候変動による海面上昇の課題に対処し、土地回復力を提供して人口増加を支えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記および他の問題の解決、および、技術水準の進歩は、本発明による沿岸ソリューションによりなされる。沿岸ソリューションの第1の利点は、該沿岸ソリューションが気候変動による海面上昇に対処するための代替解決策を提供することである。沿岸ソリューションの第2の利点は、該沿岸ソリューションが土地埋立および海岸保護に対する代替的(かつ補完的)気候変動適応方法であることである。沿岸ソリューションの第3の利点は、該沿岸ソリューションが別の用途に使用可能なソリューションであることである。具体的には、沿岸ソリューションは、配備されたり、また、異なる場所での異なる使用のために再配備されたりする能力により移動可能である。沿岸ソリューションの第4の利点は、該沿岸ソリューションが拡大縮小可能かつ輸出可能であり、これは、注文に応じて構築することができ、必要性が生じた場合、適応および拡張され得ることである。第5の利点は、沿岸ソリューションが複数の大型モジュール式構造を含み、複数の大型モジュール式構造は、構内および/または工場で完全に予め組み立てられ、様々な構成で組み合わせられて、気候変動、海岸保護、ならびに大規模なインフラおよび構築環境空間のためのソリューションを提供することができることである。
【0006】
本発明の第1態様は、沿岸ソリューションに関する。沿岸ソリューションは、複数の着底式インフラモジュールであって、沿岸ソリューションの境界を規定し、それぞれが着底式インフラモジュールの負荷を海底に伝え、周囲の水圧に耐えるように構成された複数の着底式インフラモジュールと、複数の浮体式汎用モジュールおよび複数の浮体式インフラモジュールであって、浮体式汎用および浮体式インフラモジュールを海底から延びる杭の開放端に係留するように構成された拘束具をそれぞれ備える複数の浮体式汎用モジュールおよび複数の浮体式インフラモジュールと、複数の着底式汎用モジュールと備え、複数の浮体式汎用モジュールおよび複数の浮体式インフラモジュール、全ては、複数の着底式インフラモジュールにより規定される沿岸ソリューションの境界内に配置されている。
【0007】
本発明の第1態様の一形態において、沿岸ソリューションは、隣接する2つの着底式インフラモジュールの間にゲートをさらに備える。
【0008】
本発明の第1態様の一形態において、複数の着底式インフラモジュールおよび複数の着底式汎用モジュールの各々は、着底の負荷を海底に伝えるように構成された複数の柱と、周囲の水圧に耐えるように構成されたハルとをさらに備える。
【0009】
本発明の第1態様の一形態において、複数の着底式インフラモジュールおよび複数の着底式汎用モジュールの各々は、生活様式および交通施設に適合された水位よりも上の最上層と、収納のために構成された最下層と、最上層と最下層との間に、地下生活様式および交通網、公共設備収納施設のために構成された複数のベースメント層とをさらに備える。
【0010】
本発明の第1態様の一形態において、最下層は、着底式インフラモジュールまたは着底式汎用モジュールの浮力を制御するためのバラストシステムを備える。
【0011】
本発明の第1態様の一形態において、複数のベースメント層は、空地である。
【0012】
本発明の第1態様の一形態において、着底式インフラモジュールおよび着底式汎用モジュールの各々は、着底式インフラモジュールまたは着底式汎用モジュールの高さを調整する手段として、着底式インフラモジュールまたは着底式汎用モジュールの底部に定位置に設置されたコンクリートスペーサを備える。
【0013】
本発明の第1態様の一形態において、コンクリートスペーサは、コンクリートブロックである。
【0014】
本発明の第1態様の一形態において、複数の浮体式汎用モジュールおよび複数の浮体式インフラモジュールの各々は、第1ベースメント層と、第2ベースメント層とをさらに備え、拘束具は、浮体式汎用モジュールまたは浮体式インフラモジュールの外周に沿って設けられ、第1および第2ベースメント層の側壁に一体的に連結される。
【0015】
本発明の第1態様の一形態において、拘束具は、杭と拘束具内のガイドとの間にローラ備えて、浮体式汎用モジュールまたは浮体式インフラモジュールを第1ベースメント層の表面に垂直な横方向において杭によって確実に拘束する。
【0016】
本発明の第1態様の一形態において、第2ベースメント層は、浮体式汎用モジュールまたは浮体式インフラモジュールの浮力を制御するためのバラストシステムを備える。
【0017】
本発明の第1態様の一形態において、バラストシステムは、浮体式汎用モジュールまたは浮体式インフラモジュールを特定の喫水および直立に維持するように構成された能動的補償バラストシステムである。
【0018】
本発明の第1態様の一形態において、第1ベースメント層は、地下の生活インフラ、輸送インフラ、ならびに、収納、エネルギー生成、および発電所用の公共事業インフラのための内部空間を備える。
【0019】
本発明の第1態様の一形態において、着底式汎用モジュールおよび浮体式汎用モジュールは、六角形である。
【0020】
本発明の第1態様の一形態において、沿岸ソリューションは、着底式インフラモジュールと浮体式汎用モジュールとを互いに結合するように構成された可撓性連結アームをさらに備える。
【0021】
本発明の第1態様の一形態において、着底式モジュールおよび浮体式モジュールは、さらなる技術的およびコスト的な評価の対象である、持続可能な材料を使用して製造されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明による上記および他の特徴および利点を、以下の詳細な記述において説明し、以下の図面に示す。
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る浮体式インフラを示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係るインフラ着底式モジュールを示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係る汎用着底式モジュールを示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係るインフラ浮体式モジュールを示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係る汎用浮体式モジュールを示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態に係る係留杭に連結された拘束具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、水上における生活様式居住空間のための沿岸ソリューションに関する。特に、本発明は、海岸保護と海面上昇への対処とを支援する一代替方針である、インフラモジュールおよび汎用すなわちライブ・ワーク・プレイモジュールの一組の総合的な沿岸ソリューションに関する。沿岸ソリューションは、総合的な生活防波堤を創出して海岸保護を提供し、新たな都市空間を創出するモジュールを含む。これらのモジュールは、陸地に接続されて、陸上の住宅団地の海洋空間への拡張を創出する。
【0024】
海面は今世紀に0.63m上昇し、地球の海面水温は気候変動および地球温暖化により1~4℃上昇し、沿岸都市および沿岸海洋生物多様性の破壊を引き起こすことが予想される。したがって、本発明の実施形態によれば、本発明の沿岸ソリューションは、低/ゼロ炭素の持続可能な材料で構築される回復力があり持続可能な土地の代替源を提供する。沿岸ソリューションは、電力が再生可能エネルギー源によって生成される、スマートでエネルギー効率の良い建物を収容するために使用され得る。さらに、沿岸ソリューションを構築するための構造および設備は本質的にモジュール式であるため、沿岸ソリューションは、拡大縮小性および適応性が向上されており、地球規模で配備され得る。海洋空間を水上都市が占めることは、既存の航路および停泊場所を妨害する場合があり、沿岸ソリューションのモジュール性により、水上都市のために確保された海洋空間の十分な利用が保証される。
【0025】
石油掘削作業のために主な機能が海上に配置される半潜水型海洋掘削装置などの沖合浮体構造物の設計とは異なり、ライブ・ワーク・プレイ目的のための沿岸ソリューションの設計は、人間の快適度についてのより徹底的な研究を必要とする。分類規則推奨を参照する最大加速度値が本発明の設計において使用されており、加速度がその限度を超えると、人間は動きを知覚し、船酔いする可能性がある。
【0026】
沿岸ソリューションは、海面上昇の影響への対処と共に新たな居住空間および生活様式空間を水面の上下に創出することができる、持続可能な一代替方針である。さらに、浮体式プラットフォームの居住者の快適度は、陸上の固定構造と比較して環境条件が異なる場合であっても、妥協されるべきではない。
【0027】
沿岸ソリューションは、持続可能性を促進するために、環境に配慮した下記の特徴も含み、これらは更なる技術的およびコスト的な評価を経て採用されることになる。
【0028】
-炭素硬化コンクリート、再生コンクリート骨材(RCA)を利用したコンクリート、またはセメント代替技術を利用したコンクリートなど、環境に配慮したコンクリートの使用を採用。これらの技術は、放出された二酸化炭素をセメントの硬化に利用したり、燃料および他の有益な製品へ変換したりすることにより、炭素排出量の低減に役立つ。セメント代替技術により、ポルトランドセメントを必要とせずにコンクリートの製造が可能となり、代わりに、製鋼所からの廃棄物であるスチールスラグなどの代替物を使用してコンクリートを固めることができる。
【0029】
-上側構造物の屋根上のソーラーパネルの設置
-上側構造物の屋根における雨水の収集および処理設備
-緑被率および環境問題に対する関心を促すための壁面緑化
沿岸ソリューションは、インフラモジュールとライブ・ワーク・プレイモジュールとを備える。
【0030】
インフラモジュールについては、着底式モジュールおよび浮体式インフラモジュールがある。着底式モジュールは、海岸防護のための防波堤として作用する。浮体式インフラモジュールは、比較的軽い負荷用である。
【0031】
汎用すなわちライブ・ワーク・プレイモジュールについては、着底式モジュールおよび浮体式モジュールがある。着底式モジュールは、比較的重い負荷、したがって、比較的多くの階数を有する建物または上側構造物に対応する。浮体式モジュールは、比較的少ない階数の上側構造物を有する比較的軽い負荷に対応する。
【0032】
着底式インフラモジュールは、防波堤を形成して海岸を保護し、礁湖を形成する。浮体式インフラモジュール、着底式および浮体式の汎用すなわちライブ・ワーク・プレイモジュールは、この礁湖内に形成されて、沿岸郡区を形成する。防波堤を形成する着底式インフラモジュールは、開口部/ゲートを備えて礁湖内外への緊急/保守アクセスを可能にし、また、礁湖と外洋との間の水移動も可能にする。沿岸ソリューションのインフラモジュールおよび汎用すなわちライブ・ワーク・プレイモジュールの詳細は、以下の通り説明される。
・沿岸ソリューション100の導入(基本計画)
図1は、本発明の一実施形態に係る沿岸ソリューション100を示す。沿岸ソリューション100は、複数の着底式インフラモジュール110と、複数の浮体式インフラモジュール130と、複数の汎用モジュール(着底式または浮体式)120とを備える。汎用モジュール120は、ライブ・ワーク・プレイを目的とするものである。したがって、汎用モジュール120は、汎用ライブ・ワーク・プレイモジュール120としても知られ得る。汎用モジュール120は、要件に応じて、着底式または浮体式であってもよい。
図2は着底式インフラモジュール110を示し、
図3は着底式汎用モジュール120を示し、
図4は浮体式インフラモジュール130を示し、
図5は浮体式汎用モジュール120を示す。ゲート150は、2つの着底式インフラモジュール110の間に設けられて船舶が沿岸ソリューション100に出入りすることを可能にする。
【0033】
着底式インフラモジュール110は、海岸保護防波堤の形状だけではなく沿岸ソリューション100の境界を規定するように配置され、着底式モジュール110の各々は着底式インフラモジュール110の負荷を海底に伝えるように設計され、これらモジュールのハルは周囲の水圧に耐えるように設計されている。
【0034】
浮体式インフラモジュール130および浮体式汎用モジュール120は、浮体式インフラモジュール130および浮体式汎用モジュール120を、海底から延びる杭(係留杭など)の開口端に固定するように構成された拘束具を備える。着底式汎用モジュール120、浮体式インフラモジュール130、および浮体式汎用モジュール120は、着底式インフラモジュール110の境界内に配置されている。この構成では、浮体式インフラモジュール130および浮体式汎用モジュール120は、礁湖領域を形成する防波堤として機能する着底式インフラモジュール110によって保護された礁湖領域内にあるであろう。
【0035】
各汎用モジュール120は、5,000平方メートルの面積を有し、これにより、約2000人の居住者を収容することができ、3つの汎用モジュール120は、互いに接続された場合、最大6000人の居住者を収容することができる。これらの数字は、上側構造物がどのように設計されているか、それらがアパート、オフィス、または他のレクリエーション目的のためにより多く使用されているかに応じて変化し得る。
【0036】
温室効果ガスの排出を低減するために、モジュール110,120,130は、環境に配慮したコンクリート技術を使用して製造され、該環境に配慮したコンクリート技術は、硬化のために二酸化炭素を取り込むか、または、セメントを、金属スラグ、シリカ結合剤、およびリサイクルコンクリート骨材(RCA)を利用するコンクリートなどの代替材料に置き換える。さらに、各モジュール110,120,130は、剛性強度および重複性を提供するために、ハニカム構造などの養蜂箱状の構成を有する強化コンクリート構造で作製される。
【0037】
モジュール110,120,130の上面における空間を、道路、公園および庭、ショッピングモール、パークコネクタなどの機能のために使用することができる。地下レベルの空間は、列車トンネル/駅、地下ショッピングスペース、収納スペース、駐車場、地下トンネル、水用スペース、海岸からの廃棄および電力接続などの機能に使用することができる。以下、より詳細に説明する。
【0038】
図1は同じ寸法を有するモジュール110,120,130を示すが、当業者は本発明から逸脱することなく、不均一なモジュール110,120,130が実装され得ることを認識するであろう。さらに、モジュール110,120,130は、容易に相互接続されてより大きなクラスタを形成できるように、六角形の形状であってもよい。
・着底式モジュール
着底式インフラモジュール110は、境界内に礁湖領域を形成する沿岸ソリューション100の境界(外周ともいう)を規定するように構築される。着底式インフラモジュール110は、海面上昇の課題を解決するために、海岸保護防波堤の一形態として機能する。また、着底式インフラモジュール110は、海岸保護防波堤の一形態としても考えられる。
図1に示されるように、沿岸ソリューション100の境界は、海岸線および着底式インフラモジュール110によって規定される。しかしながら、当業者であれば、本発明から逸脱することなく、沿岸ソリューション100の外周を規定するように複数の着底式インフラモジュール110が互いに接続された状態で、沿岸ソリューション100が海岸線190を越えて構築されてもよいことを認識するであろう。
【0039】
2つの種類の着底式モジュールがあり、すなわち、
図1に示す着底式インフラモジュール110(ただし、着底式インフラモジュールの詳細は
図2において110aと呼ばれる)と、
図1に示す着底式汎用モジュール120(ただし、着底式汎用モジュールの詳細は
図3において120aと呼ばれる)とがある。
【0040】
図2および
図3に示すように、着底式モジュール110a,120aは、海底に直接着座しているであろう。したがって、海底ができるだけ平坦で規則的であることを確実にする必要がある。海底が不規則または波状である場合、その上に着座する着底式モジュール110a,120aの着座構造は広がり、過度の応力を受けるリスクを被ることになる。このようなリスクを回避するためには、海底整備工事に備えて、海洋地球物理学的調査を実施すべきである。調査は、海底の表面上のあらゆる異常を識別し、岩および上部非固結海底堆積物内の埋設物をマッピングし、海底の性質に関する情報を明らかにすることができる。調査が完了した後、海底は、最上層を除去するかまたは海底上に材料の層を敷いて、平床を形成することにより準備されるであろう。
【0041】
ゲート150は、浮体式インフラの外周を規定する着底式モジュール110a,120aの間に設けられ、船舶が沿岸ソリューション100に出入りすることを可能にする。本質的に、着底式モジュール110a,120aは、海岸保護防波堤および洪水制御のために使用される。
【0042】
構内での製作、組み立て、および試用の後に、着底式モジュール110a,120aは、最下層110a4,120a3内のバラストシステムをデバラストすることにより設置場所まで浮かし、その後、海底上にバラストダウンされるであろう。同様に、着底式モジュール110a,120aは、必要性が生じた場合、デバラストされ、移転され得る。したがって、最下層110a4,120a3におけるバラストシステム内のバラストタンクは、将来的な任意の移転の可能性だけではなく、設置中の着底式モジュール110a,120aの輸送を可能にするために設けられている。
・着底式モジュール-内部構成要素
着底式インフラモジュール110aは、最上層110a1と、第1ベースメント層110a2と、第2ベースメント層110a3と、最下層110a4とを備える。最上層110a1は、モール、公園、および道路などの生活様式および輸送用である。第1ベースメント層110a2は、地下駐車場、地下街等に使用される内部空間用に構成されている。第2ベースメント層110a3は、収納、エネルギー生成、発電所、および列車トンネルなどのインフラ用途のために構成されている。最下層110a4は、収納およびバラストシステムのために構成されている。当業者は、より多くのベースメント層が最上層110a1と最下層110a4との間に加えられてもよく、これは海底までの水位の深さに依存することを認識するであろう。着底式インフラモジュール110aは、着底式インフラモジュール110の負荷を海底に伝えるための柱110a8,110a9,110a10を備える。
【0043】
着底式汎用モジュール120aは、最上層120a1と、複数のベースメント層120a2と、最下層120a3とを備える。最上層120a1は、モール、公園、および道路などの生活様式および輸送用である。インフラモジュール110aとは異なり、最上層120a1は、8~15階のような中~高密集の住宅団地のために構成されている。ベースメント層120a2は、地下駐車場、地下街などに使用される内部空間のため、ならびに収納、エネルギー生成、発電所、および列車トンネルなどのインフラ用途のために構成されている。最下層120a3は、収納およびバラストシステムのために構成されている。当業者は、ベースメント層120a2の数が海底までの水位の深さに依存することを認識するであろう。
【0044】
図2は、着底式インフラモジュール110aの断面図を示す。
図2の左側は水位110a5を示し、
図3の右側は高潮時の水位110a6、低潮時の水位110a7を示している。地球温暖化および気候変動による水位上昇の可能性に対処するため、適切な乾舷(水面と上面との距離)は、将来的な水位上昇を考慮して設計される。将来の保証のために追加される手段として、着底式インフラモジュール110aまたは着底式汎用モジュール120aは、増大した水位の水圧および負荷に耐え得るように設計されることとなり、将来的に必要とされれば、追加の防波堤を現場外に構築し、着底式インフラモジュール110aまたは着底式汎用モジュール120aの最上層110a1に設置することができる。
【0045】
着底式モジュール110a,120aは、乾舷の要件を満たすように着底式モジュール110a,120aの高さを調整する手段として、構造物の底部の適所に設置されたコンクリートスペーサを備える。コンクリートスペーサは、本質的に最下層110a4,120a3と海底との間に配置されるコンクリートブロックである。
・浮体式モジュール
着底式モジュール110a,120aと同様に、2種類の浮体式インフラモジュールがあり、すなわち、
図1に示されるような浮体式インフラモジュール130(ただし、浮体式インフラモジュールの詳細は
図4において130aと呼ばれる)と、
図1に示されるような浮体式汎用モジュール120(ただし、浮体式汎用モジュールの詳細は
図5において120bと呼ばれる)とがある。浮体式インフラモジュール130aは、比較的軽いインフラサービス、および車両などの交通網が通過できるように、または、パークコネクタのために設計されている一方で、浮体式汎用モジュール120bは、住宅、オフィス、およびレクリエーションのための設備を収容するように設計されている。
【0046】
図4および
図5に示されるように、浮体式モジュール130a,120bは、係留杭によって固定されるであろう。浮体式モジュール130a,120bは、水位よりも上に軽い構造物を収容し、
図5に示されるように、上面の上方の3~8階のような低~中密集の住宅団地のために構成される。浮体式モジュール130a,120bは、浮体式のモジュールであるため、海底の深さおよび海底の状態とは独立し、柔軟性がある。したがって、浮体式モジュール130a,120bの下方に大掛かりな海底準備は不要である。
【0047】
構内での製作、組み立て、および試用の後に、浮体式モジュール130a,120bは、第2ベースメント層130a2,120b2内のバラストシステムをデバラストすることにより設置場所まで浮かし、その後、係留杭の頂部が拘束具730内に延在する状態でバラストダウンされるであろう。同様に、浮体式モジュール130a,120bは、必要性が生じた場合、デバラストされ、移転され得る。
・浮体式モジュール-内部構成要素
図6に示されるように、浮体式モジュール130a,120bは、係留杭710により、該係留杭の上部720が拘束具730内に延在した状態で、海底に固定される。拘束具730は、水位に応じた垂直運動を可能にするように、かつ、水平運動は防止して浮体式モジュール130a,120bをある場所に固定するように構成されている。
図6に示されるように、拘束具730は、第1ベースメント層130a1,120b1および第2ベースメント層130a2,120b2の側壁に一体的に連結されている。係留杭の上部720を貫通開口部に挿入して浮体式モジュール130a,120bを係留杭に固定することができるように、貫通開口部が拘束具730の底部に設けられている。拘束具730は、貫通開口部の上部を覆うためのカバー731を含む。このカバー731は、貫通開口部に挿入された係留杭の長さに対応するように高さ調節可能である。
【0048】
図4および
図5に示されるように、浮体式モジュール130a,120bは、上面の下方に2つのレベル、すなわち、第1ベースメント層130a1,120b1および第2ベースメント層130a2,120b2を備える。拘束具730は、浮体式モジュール130a,120bの外周に沿って設けられ、第1ベースメント層130a1,120b1および第2ベースメント層130a2,120b2の側壁に一体的に連結される。拘束具730は、係留杭と拘束具730内のガイドとの間にローラを備えて、浮体式モジュール130a,120bが横方向においては係留杭によって拘束されることを確実に、すなわち、沿岸ソリューション100の境界内の水位または浮体式モジュールの全体的な負荷の変化による上下運動を確実にしてもよい。
【0049】
第2ベースメント層130a2,120b2は、浮体式モジュール130a,120bの浮力を制御するためのバラストシステムを備える。能動的補償バラストシステムは、このレベルに設置されて、プラットフォームを常に監視し、安定した状態に保つ。具体的には、能動的バラストシステムは、浮体式モジュールの喫水および傾きを絶えず監視し、浮体式モジュール130a,120bを指定された喫水および直立に保つために適切なバラストを実行する。一実施形態では、活荷重(人間、車両などからの移動荷重)がモジュール全体と比べて大幅に小さいならば、移動は浮体式モジュール130a,120bの喫水,傾きに大きな変化を引き起こさないため、能動的バラストシステムは必要とされない場合がある。第2ベースメント層130a2,120b2におけるバラストシステムは、将来的な任意の移転の可能性だけではなく、設置中の浮体式モジュール130a,120bの輸送を可能にするために提供される。
【0050】
第1ベースメント層130a1,120b1は、地下の生活インフラ、輸送インフラ、ならびに、収納、エネルギー生成、および発電所用の公共事業インフラのための内部空間を備える。着底式モジュールおよび浮体式モジュールの計画および配置に応じて、
図1の接続されたモジュール120,130の間で機械的および電気的な設備の共有が存在することになるので、エネルギー生成および発電所設備は、接続クラスタ内のすべてのモジュールに対して必要とさるわけではない。
【0051】
例えば、3つのモジュール120,130のクラスタでは、単一の発電設備が3つのモジュールのうちの1つに存在する必要があるだろうし、それ故に、他の2つのモジュールの空間を他の目的のために使用することができる。したがって、第1ベースメント層130a1,120b1の実際の構成は、設計上の選択肢として当業者に委ねられる。
【0052】
浮体式インフラモジュール130aおよび浮体式汎用モジュール120bは、剛性または可撓性のコネクタを介して互いに接続されてもよい。剛性コネクタは、基本的に、2つのモジュール130a,120bを互いに連結してより大きな単一のモジュールを形成する。可撓性コネクタにより、モジュール130a,120bは、多少の個別性および喫水の変動を、互いに妨害することなく保持できる。可撓性連結アームは、簡単に設置および係合解除することができる可撓性コネクタの一例であり、プラットフォームを互いに安全な距離に固定された状態に保ち、クラスタ内の各モジュール130a,120bの動きを連結する。誤解を避けるために、各クラスタは、2つ以上の浮体式インフラモジュール130a、2つ以上の浮体式汎用モジュール120b、または複数の浮体式インフラモジュール130aと複数の浮体式汎用モジュール120bとの組合せを使用して形成されてもよい。
【0053】
上記は、本発明による沿岸ソリューションの例示的な実施形態の説明である。当業者は、以下の特許請求の範囲に記載される本発明を侵害する、代替のインフラ、設備、システム、および方法を本開示に基づき設計することができ、また、設計するであろうことが予見できる。
【国際調査報告】