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特表2024-530365マイクロ流体デバイス内の微小液滴の撮像における改良または撮像に関する改良
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-19
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイス内の微小液滴の撮像における改良または撮像に関する改良
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20240809BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20240809BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240809BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
G01N1/00 101F
B01J19/00 321
G01N37/00 101
C12M1/34 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500424
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 GB2022051766
(87)【国際公開番号】W WO2023281274
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2109967.6
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521217482
【氏名又は名称】ライトキャスト ディスカバリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LIGHTCAST DISCOVERY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヘンリー アイザック
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ディーコン
(72)【発明者】
【氏名】ジャスミン カウル チャナ コンテリオ
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
4G075
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AA33
2G052AD26
2G052DA09
2G052ED14
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB01
4B029BB15
4B029DG10
4B029FA15
4G075AA13
4G075AA27
4G075AA39
4G075AA65
4G075BB05
4G075BB10
4G075CA14
4G075CA36
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB50
4G075FA12
4G075FB01
4G075FB02
4G075FB06
4G075FB12
4G075FC15
(57)【要約】
マイクロ流体デバイスと光学撮像デバイスとを具えた装置であって、このマイクロ流体デバイスは、複数の微小液滴を包含するように構成されたマイクロ流体空間と、マイクロ流体空間を照明する第1光源と、マイクロ流体空間に電圧を供給してマイクロ流体空間の両端間に電圧を発生するための電圧源と、波形信号を発生して、マイクロ流体空間の両端間に印加される電界を変調するように構成された第1変調器とを具え、第1変調器は、アクティブ状態と非アクティブ状態とを切り換えるように構成され、アクティブ状態ではマイクロ流体の両端間に電界が印加されて複数の微小液滴を保持し、非アクティブ状態ではマイクロ流体の両端間に電界が印加されず、第1変調器は、更に、第1光源を直接または間接的に制御するように構成され、これにより、アクティブ状態中に、光の少なくとも一部分がマイクロ流体デバイスの全体にわたって供給され、光学撮像デバイスは、微小液滴の少なくとも部分集合の画像を生成し、第1変調器は、更に、光学撮像デバイスを制御するように構成され、これにより、非アクティブ状態中に微小流体の少なくとも部分集合の画像が生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイスと光学撮像デバイスとを具えた装置であって、該マイクロ流体デバイスが、
複数の微小液滴を包含するように構成されたマイクロ流体空間と、
前記マイクロ流体空間を照明するための第1光源と、
前記マイクロ流体空間に電圧を供給して前記マイクロ流体空間の両端間に電界を発生するための電圧源と、
波形信号を発生して、前記流体空間の両端間に印加される電界を変調するように構成された第1変調器とを具え、
前記第1変調器は、アクティブ状態と非アクティブ状態とを切り換えるように構成され、前記アクティブ状態では、前記マイクロ流体空間の両端間に電界が印加され、前記非アクティブ状態では、前記マイクロ流体空間の両端間に電界が印加されず、
前記第1変調器は、更に、前記第1光源を直接または間接的に制御するように構成され、これにより、前記アクティブ状態中に、前記第1光源からの光の一部分が前記マイクロ流体空間の全体にわたって供給されて、前記電界の存在下で前記複数の微小液滴を保持し、
前記光学撮像デバイスは、前記微小液滴の少なくとも部分集合の画像を生成し、
前記第1変調器は、更に、前記光学撮像デバイスを制御するように構成され、これにより、前記非アクティブ状態中に、前記微小液滴の少なくとも部分集合の画像が生成される装置。
【請求項2】
前記第1変調器が、更に、前記第1光源を直接または間接的に制御するように構成され、これにより、前記第1光源が、前記非アクティブ状態中に前記微小液滴の少なくとも部分集合を撮像するための撮像照明を提供する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記画像が、蛍光画像、または蛍光共鳴エネルギー移動画像、または明視野画像、またはケミルミネセンス画像である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1変調器が発生する前記波形信号が方形波である、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記マイクロ流体デバイスが、等しい時間長だけ、前記アクティブ状態、前記非アクティブ状態、及び/または追加的状態である、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記マイクロ流体デバイスが、1つの期間の90%だけ前記アクティブ状態であり、前記1つの期間の10%だけ前記非アクティブ状態である、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記マイクロ流体デバイスが、1つの期間の10%だけ前記アクティブ状態であり、前記1つの期間の90%だけ前記非アクティブ状態である、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記波形信号が0.5~5000Hzの周波数範囲を有する、請求項1~7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの前記微小液滴が生物学的実体を含む、請求項1~8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記生物学的実体が、細胞、ウィルス、またはタンパク質である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも1つの前記微小液滴が蛍光性の実体を含む、請求項1~10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記第1変調器が、関数発生器、またはデジタルスイッチ、またはアナログスイッチである、請求項1~11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
第2光源を更に具えている、請求項1~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
フィルタを更に具え、該フィルタは、前記第1光源及び/または前記第2光源からの光の少なくとも一部分をフィルタ処理する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
コントローラが設けられ、該コントローラは前記フィルタを制御するように構成され、これにより、前記フィルタが、前記第1光源及び/または前記第2光源から提供される撮像照明を、前記非アクティブ状態中に前記マイクロ流体空間の全体にわたって提供することを可能にする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
第2変調器を更に具え、該第2変調器は、第2波形信号を発生して、前記第2光源からの光を変調するように構成されている、請求項13~15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記第1変調器または前記第2変調器が、更に、前記第2光源を制御するように構成され、これにより、前記第2光源が、前記非アクティブ状態中に、前記微小液滴の少なくとも部分集合に撮像照明を当てるように構成される、請求項13~16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
前記第1変調器が前記アクティブ状態と前記非アクティブ状態とを切り換える前に、前記マイクロ流体デバイスが前記アクティブ状態である、請求項1~17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
前記マイクロ流体デバイスが誘電体上の光エレクトロウェッティング(oEWOD)デバイスであり、または光ツイーザーデバイスであり、または光電子ツイーザー(OET)デバイスであり、または誘電泳動(DEP)デバイスである、請求項1~18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記光学撮像デバイスが検出器を更に具え、該検出器は、前記微小液滴の少なくとも部分集合からの光信号を検出するように構成されている、請求項1~19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記第1光源及び/または前記第2光源がLEDであり、またはレーザーであり、またはランプである、請求項1~20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
請求項1~21のいずれかに記載の装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、マイクロ流体デバイス内の微小液滴を撮像する装置に関するものであり、特に光電子マイクロ流体デバイス内の微小液滴を撮像しつつ、微小液滴制御を維持する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
液滴ベースのマイクロ流体システムは、小さい試薬量を用いて非常に多数の反応を並列的に迅速に実行することを目的とする。マイクロ流体デバイス内の液滴は、異なる技術で制御することができ、これらの技術は、誘電体上のエレクトロウェッティング(oEWOD:optical electrowetting-on-dielectric、エレクトロウェッティング:電気による濡れ性変化)効果;液体と基板との間に印加された電界が液体を自然状態よりも濡れ性にする周知の効果を含む。
【0003】
光学ベースの液滴操作技術は、光をパターン化し再構成して、複雑な制御回路をデバイス内に用いることなしに微小液滴に対する動的制御を行うことを可能にすることができる。光学的に媒介される誘電体上のエレクトロウェッティング(oEWOD)デバイスは、包含壁;例えばマイクロ流体空間を当該平板間に挟む一対の平行な平板によって規定されるマイクロ流体空間を通って位置を変える微小液滴を含む。包含壁のうちの少なくとも1つは、以下に「仮想」エレクトロウェッティング電極位置と称するものを含み、これらは包含壁内に埋め込まれた半導体のある領域を選択的に照明することによって生成される。光学アセンブリによって制御される独立した光源からの光による層の選択的な照明によって、仮想エレクトロウェッティング電極位置の仮想的経路を一時的に生成することができ、この経路に沿って微小液滴を移動させることができる。こうして、導電性のセルを省略し、均質な誘電体表面のために恒久的な液滴受容場所を放棄し、均質な誘電体表面上に、例えば画素化された光源を用いて光伝導層上の複数の点の選択的で変化する照明によって、液滴受容場所が一時的に生成される。このことは、高度に極限的なエレクトロウェッティング場を可能にし、こうしたエレクトロウェッティング場は、任意で、例えば乳化によって微小液滴が分散した分散媒の液滴の方向性のある流れに関連して、誘電体層上のあらゆる所に確立される、誘導される毛細管型の力によって、微小液滴を表面上で移動させることができる。換言すれば、分散媒は微小液滴を含む。
【0004】
oEWODのような光学ベースの液滴操作技術は、フレキシブルで高性能な液滴操作プラットフォームを提供する可能性を有する。マイクロ流体空間内の微小液滴に対する撮像及び測定を行うための適切な検出技術を統合するに当たり、挑戦が生じる。蛍光測定のような光ベースの測定は、生物学的検定を実行するための極めて重要なツールである。しかし、微小液滴を撮像し測定するために必要な光は、微小液滴を保持または操作するために用いる光を圧倒することによって、微小液滴制御の喪失を生じさせ得る。制御または浮動化されないと、微小液滴はマイクロ流体プラットフォーム内を漂遊する傾向があり、このことは、高品質の画像または測定値を取得することを更に複雑にし得る。
【0005】
従って、光学ベースの液滴操作技術を用いてマイクロ流体デバイス内の微小液滴を精密に制御することができ、かつ微小液滴制御の喪失を生じさせずに画像及び/または光学測定値を取得することができる発明の必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした背景に対して、本発明が生まれた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様によれば、マイクロ流体デバイスと光学撮像(イメージング)デバイスとを具えた装置が提供され、このマイクロ流体デバイスは:複数の微小液滴を包含するように構成されたマイクロ流体空間と;このマイクロ流体空間を照明するための第1光源と;このマイクロ流体デバイスに電圧を供給してマイクロ流体空間の両端間に電界を発生するための電圧源と;波形信号を発生してマイクロ流体空間の両端間に印加される電界を変調するように構成された第1変調器とを具え、第1変調器は、アクティブ状態と非アクティブ状態とを切り換えるように構成され、アクティブ状態では、マイクロ流体空間の両端間に電界が印加され、非アクティブ状態では、マイクロ流体の両端間に電界が印加されず、第1変調器は、更に、第1光源を直接または間接的に制御するように構成され、これにより、アクティブ状態中に、光の少なくとも一部分がマイクロ流体デバイス全体にわたって供給されて、電界の存在下で複数の微小液滴を保持し;光学撮像デバイスは、微小液滴の少なくとも部分集合の画像を生成し、第1変調器は、更に、光学撮像デバイスを制御するように構成され、これにより、非アクティブ状態中に、微小液滴の少なくとも部分集合の画像が生成される。
【0008】
第1変調器は、電界を変調するための波形を供給して、システムのスイッチング周波数で変調を行う。換言すれば、第1変調器は、アクティブ状態と非アクティブ状態との切り換えに関して、システムの光電子工学的要件を満たす電界の変調を行う。一部の好適例では、この切り換えを50Hzにすることができる。この周波数は、電界のA/C(alternating current:交流)周波数とは非常に異なり、電界のA/C周波数は例えば1kHzにすることができる。
【0009】
本発明の他の態様によれば、マイクロ流体デバイスと光学撮像デバイスとを具えた装置が提供され、このマイクロ流体デバイスは:複数の微小液滴を包含するように構成されたマイクロ流体空間と;このマイクロ流体空間を照明するための第1光源と;このマイクロ流体空間に電圧を供給してマイクロ流体空間の両端間に電界を発生するための電圧源と;波形信号を発生してマイクロ流体空間の両端間に印加される電界を変調するように構成された第1変調器とを具え、第1変調器は、アクティブ状態と非アクティブ状態とを切り換えるように構成され、アクティブ状態では、マイクロ流体の両端間に電界が印加されて複数の微小液滴を保持し、非アクティブ状態では、マイクロ流体の両端間に電界が印加されず、光学撮像デバイスは、微小液滴の少なくとも部分集合の画像を生成し、第1変調器は、更に、第1光源を直接または間接的に制御するように構成され、これにより、アクティブ状態中に、光の少なくとも一部分がマイクロ流体デバイス全体にわたって供給され;第1変調器は、更に、光学撮像デバイスを制御するように構成され、これにより、非アクティブ状態中に、微小液滴の少なくとも部分集合の画像が生成される。
【0010】
本発明によるデバイスは、光電子マイクロ流体デバイスのようなマイクロ流体デバイスとすることができる。本発明のデバイスは、ユーザがマイクロ流体空間に電界を印加して、微小液滴の少なくとも部分集合を定位置に保持することを可能にする。電界の印加は有利である、というのは、微小液滴をマイクロ流体空間内のアレイ内に保持することを可能にするからである。この電界はA/C電界とすることができる。
【0011】
それに加えて、アクティブ状態中に、例えばoEWODを通して微小液滴に対する操作を実行することに適した光を供給する光源を設けることによって、微小液滴、または少なくとも微小液滴の部分集合をマイクロ流体空間内で操作及び/または制御することができる。一部の好適例では、保持光源を用いて微小液滴を操作して、例えばoEWODを用いて微小液滴を併合または分割することができる。
【0012】
2つの光源を設ける好適例では、液滴制御を第1光源で維持することができ、第1光源は、常に液滴操作を行い、照明を保持したままにする。非アクティブ状態中には、この光源が液滴を保持する必要性は存在せず、従ってオン状態のままにすることができる。これらの場合には、光を試料から再び集光する際に、第1光源からの光を、撮像の前にフィルタで除去するか、記録した画像からコンピュータ処理により除去することができる。その代わりに、非アクティブ状態中に第1光源をオフ状態に切り換えることができ、一部の場合には、このことはフィルタ処理の必要性を排除するが、他の方法ではこの必要性が残る。このことは、2光源システムにおける撮像用光源の必要性とは対照的である。撮像用光源については、電界とは逆位相で光源をオン状態とオフ状態とに切り換える必要性が存在する。疑念を避けるために、上記フィルタ処理は、1つ以上のシャッタ、カラーフィルタ、または偏光により実現することができる。
【0013】
光源からの光は「保持照明」を提供することができ、保持照明はoEWODが微小液滴を操作することに適している。一部の好適例では、光源からの光が撮像照明を提供することができ、撮像照明は、例えば蛍光測定用の照明用に用いることができる。
【0014】
本発明の関係の中で用いる「保持照明」とは、アクティブ状態中に微小液滴の少なくとも部分集合を保持、操作、及び/または制御するための電界と組み合わせて用いられるあらゆる照明を含むものと理解するべきである。従って、oEWODの動作のためには、照明用の光及び電界が必要である。微小液滴の操作は、微小液滴を例えばアレイ内で分類、併合、分割、及び/または配列することを含むことができ、ただしこれらに限定されない。
【0015】
本明細書中に開示する微小液滴の部分集合は、1つ以上の微小液滴を含むことができる。
【0016】
第1変調器は、更に、第1光源を直接または間接的に制御するように構成され、これにより、アクティブ状態中に、光の少なくとも一部分がマイクロ流体空間の全体にわたって供給される。第1光源を直接制御することは、第1変調器がこの光源をオン状態とオフ状態との間で切り換えるように構成されていることを含むことができる。第1光源を間接的に制御することは、フィルタを使用することを含むことができ、このフィルタはコントローラ、あるいは第1変調器及び/または第2変調器によって制御することができる。このフィルタは、空間フィルタを含むことができ、第1光源上で動作して、アクティブ状態中に、微小液滴を保持及び/または操作することに適した光の一部分をマイクロ流体空間全体にわたって供給することができる。
【0017】
一部の好適例では、上記フィルタをカラーフィルタとすることができる。このカラーフィルタは、1つの光源と共に配置することができ、あるいは2つの光源と共に配置することができ、カラーフィルタは交換することができる。一般に、カラーフィルタは変調器によって変調されない。2つの光源を配置する好適例では、カラーフィルタ処理を撮像経路内に配置する場合、oEWOD光源は、撮像光に悪影響を与えることなしに最初から最後までアクティブ状態のままにすることができる。
【0018】
一部の好適例では、上記フィルタをDMD(digital mirror device:デジタルミラーデバイス)のような空間フィルタとすることができる。この空間フィルタは第1または第2変調器によって変調することができる。単一の光源を用いる際には、このフィルタがいくつかの振動モードを有し、複数の異なる周波数で振動することができる。
【0019】
一部の好適例では、第1変調器を、更に、光学撮像デバイスを制御するように構成して、非アクティブ状態中に、微小液滴の少なくとも部分集合の画像を生成することができる。
【0020】
一部の好適例では、第1変調器が、更に、第1光源を直接または間接的に制御するように構成され、これにより、非アクティブ状態中に、第1光源が微小液滴、または微小液滴の少なくとも部分集合を撮像するための撮像照明を提供する。一部の好適例では、第1変調器を、更に、第1光源を直接または間接的に制御するように構成し、これにより、非アクティブ状態中に、第1光源が微小液滴の少なくとも部分集合に至る蛍光に適した光を供給することができる。
【0021】
一部の好適例では、画像を蛍光画像、または蛍光共鳴エネルギー移動画像、または明視野画像、またはケミルミネセンス(化学発光)画像とすることができる。画像は、単一の切り換え非アクティブ状態の間隔中に捕捉した単一の画像とすることができる。しかし、一部の好適例では、画像を0.25s、0.5s、または1sの時間間隔にわたって積分することができる。従って、第1変調器がスイッチング(切り換え)変調を50HzでA/C電界に適用する場合、1sの時間積分は、50個の変調サイクルから収集される光を含む。この積分法は、読み取りノイズ(雑音)の影響を最小にし、より大きな信号対ノイズ比を実現することを可能にする。このことは、蛍光撮像のような多数の撮像技術にとって重要である。
【0022】
一部の好適例では、コントローラ、第1変調器、及び/または第2変調器を、更に、フィルタを制御するように構成して、非アクティブ状態中に微小液滴の少なくとも部分集合に当てられる光を、撮像に適したものにすることができる。一部の好適例では、フィルタを、第1光源からの光の少なくとも一部分をフィルタ処理するように構成し、これにより、アクティブ状態中と非アクティブ状態中とで異なる波長の光でマイクロ流体空間を照明することができる。一部の好適例では、フィルタをカラーフィルタとすることができる。
【0023】
上記フィルタは、単一の光源を、アクティブ状態及び非アクティブ状態中に保持照明及び撮像照明の両方に用いることを可能にし、このことは有益であり得る、というのは、こうしたフィルタは、ユーザが操作するに当たり単純かつ効率的であると共に費用効果的であるからである。単一の光源を、微小液滴を保持し、微小液滴の少なくとも部分集合を撮像するために用いる場合には、単一の光源を空間変調する。
【0024】
一部の好適例では、特に単一光源の構成では、アクティブ状態及び非アクティブ状態中に第1光源が連続してオン状態である。上記フィルタは、第1光源上で動作して、保持パターンと撮像照明パターンとを切り換えることができる。
【0025】
一部の好適例では、第1変調器を、更に、第1光源を直接または間接的に制御するように構成し、これにより、非アクティブ状態中に、第1光源が微小液滴の少なくとも部分集合に光を供給しないことができる。一部の好適例では、上記コントローラがフィルタを制御し、これより、非アクティブ状態中に、光を微小液滴に供給しないことができる。一部の好適例では、第1変調器が第1光源を制御し、これにより、非アクティブ状態中に第1光源を「オフ」状態にすることができる。このことは、光学撮像デバイスが例えばケミルミネセンス画像を生成するように構成されている際に有利であり得る。一部の好適例では、第1光源を二波長光源とすることができ、光学撮像デバイスを制御して微小液滴の少なくとも部分集合の画像を生成することが、微小液滴を保持することに適した波長から、撮像に適した異なる特定波長に切り換えることを含むことができる。操作用と撮像照明用とで異なる波長間を切り換えることによって、スペクトル上の区別が存在し、このことは、微小液滴の少なくとも部分集合内の内容物の検出及び/または分析を促進することができる。
【0026】
電界は変調されず、保持照明と撮像照明とが同時に存在することが一般に知られ、非アクティブ状態における撮像照明の強度は、微小液滴を保持及び/または操作するように設定された照明と干渉しないように十分に低くすることができる。しかし、撮像照明の弱い強度により、このことは長い画像取得時間を必要とし得るし、プロセス全体の効率を制限する。それに加えて、非アクティブ状態中には、微小液滴が電界によって保持されていない間に微小液滴が漂遊する。従って、長い取得期間は、マイクロ流体空間内の微小液滴の制御を維持することにとって有害であり得る。
【0027】
電界をアクティブ状態と非アクティブ状態との間で変調することによって、そして第1光源を直接または間接的に制御することによって、本発明の装置は、電界と撮像照明とがマイクロ流体空間に同時に当てられることを回避する。このことは、微小液滴の少なくとも部分集合の画像を取得するに当たり用いる光が、微小液滴の少なくとも部分集合を保持するために用いる光を圧倒して、oEWODのような不所望な光電効果を生じさせることを防止することができる。従って、このことは、本発明の装置を使用する際に利用することができる撮像照明の波長範囲または強度に制限が存在しないことを意味する。このことは、光電デバイス内の微小液滴を撮像するための他の技術とは対照的であり、こうした他の技術は、微小液滴を保持するための照明を圧倒しないように特定の波長を排除し強度を制限する。変調器を設けて、波形信号を発生して、マイクロ流体空間の両端間に印加される電界を変調することができる。この変調器はアクティブ状態及び非アクティブ状態にすることができ、アクティブ状態では、マイクロ流体空間の両端間に電界が印加されて、各微小液滴、あるいは微小液滴の少なくとも部分集合の制御を可能にし、非アクティブ状態では、マイクロ流体空間の両端間に電界が印加されない。非アクティブ状態では、微小液滴が短期間だけ電界によって保持されない。第1変調器は、特定の時間間隔で、アクティブ状態と非アクティブ状態とを切り換えることができる。第1変調器の非アクティブ状態中に、マイクロ流体空間内の微小液滴の少なくとも部分集合の画像を撮像することができる。
【0028】
上記変調器、上記フィルタ、照明光源の応答時間、及び変調器のアクティブ状態と非アクティブ状態との間の瞬間的ではない遷移を占めるべく、アクティブ状態と非アクティブ状態との間にある期間が存在し得るし、この期間内に、電界が存在することがあり、微小液滴に当てられる撮像照明が存在しないことがある。遷移時間を占めるための慎重な同期により、これらの遷移期間の影響を最小化または解消することができる。
【0029】
本発明の他の利点は、アクティブ状態と非アクティブ状態との間の変調が、微小液滴の少なくとも部分集合が非アクティブ状態中に漂遊していた際にも、その最適な保持位置に戻すことを可能にすることにある。例えば、非アクティブ状態では、マイクロ流体空間に電界が印加されず微小液滴は保持されず、したがって、微小液滴は、拡散、ブラウン運動により、あるいは分散媒の流動下で漂遊し得る。
【0030】
アクティブ状態中に撮像照明を微小液滴の少なくとも部分集合に当てると、微小液滴は照明の勾配に沿って推し進められることがあり、照明の勾配は照明における不均一性により生じる。こうした撮像照明における勾配は、光エレクトロウェッティング力を液滴に働かせ、従って液滴の保持位置からの変位を加速する。
【0031】
例えば、ケミルミネセンス画像を撮像する際に、非アクティブ状態中に微小液滴の少なくとも部分集合に撮像照明を当てないと、微小液滴がその最適な保持位置から受動的に漂遊し得る。微小液滴が保持照明の制御を超越して漂遊することを防止するのに十分な時間内に変調が行われるとすれば、変調器がマイクロ流体デバイスをアクティブ状態に切り換えて、マイクロ流体空間が保持照明で照明されると、微小液滴は漂遊する前にその位置に戻ることができる。
【0032】
一部の好適例では、コントローラを設けて、種々のパラメータを監視することができ、例えば、実験中に電圧を監視することができ、及び/または、コントローラがフィルタのような本発明の装置の他の構造を監視することができる。コントローラは、コンピュータ、マイクロプロセッサ、またはマイクロコントローラとすることができる。
【0033】
一部の好適例では、変調器が追加的状態に切り換わることができ、この状態では、マイクロ流体空間に印加される電界が存在せず、光源による微小液滴の照明が存在しない。一部の好適例では、非アクティブ状態中にフィルタを光源に付加することが、光学撮像デバイスが微小液滴の少なくとも部分集合を撮像することを可能にするのに十分でないことがある。一部の好適例では、光学撮像デバイスで画像を獲得するために、光源を「オフ」状態にする必要があり得る。このことは、例えばケミルミネセンス撮像中に特に有利であり得る。
【0034】
一部の好適例では、第1変調器が、アクティブ状態、非アクティブ状態、及び上記追加的状態を、動的に、かつあらゆる所与の順序で切り換えることができる。例えば、第1変調器は、第1光源を直接または間接的に制御し、これにより、アクティブ状態では第1光源を微小液滴のoEWOD制御用に用いることができ、あるいは非アクティブ状態では微小液滴の蛍光撮像用に用いることができ、アクティブ状態で微小液滴のoEWOD制御に戻ることができ、そして追加的状態で微小液滴の蛍光撮像に戻ることができる。
【0035】
一部の好適例では、第1変調器を関数発生器(ファンクションジェネレータ)とすることができ、またはデジタルスイッチにすることができ、またはアナログスイッチとすることができる。
【0036】
一部の好適例では、上記電圧源をAC電圧源とすることができる。一部の好適例では、上記電圧源を、マイクロ流体空間の両端間に電界を発生することに適したあらゆる電圧源とすることができる。
【0037】
一部の好適例では、上記電圧源が、アクティブ状態中に1~200Vの電圧を供給して、マイクロ流体空間の両端間に電界を発生することができる。一部の好適例では、上記電圧源が、アクティブ状態中に、1V超、10V超、20V超、30V超、40V超、50V超、60V超、70V超、80V超、90V超、100V超、110V超、120V超、130V超、140V超、150V超、160V超、170V超、180V超、または190V超の電圧を供給することができる。一部の好適例では、上記電圧源が、アクティブ状態中に、200V未満、190V未満、180V未満、170V未満、160V未満、150V未満、140V未満、130V未満、120V未満、110V未満、100V未満、90V未満、80V未満、70V未満、60V未満、50V未満、40V未満、30V未満、20V未満、または10V未満の電圧を供給することができる。一部の好適例では、上記電圧源が5~20Vの電圧を供給することができる。
【0038】
一部の好適例では、非アクティブ状態でマイクロ流体空間に供給される電圧を1V未満にすることができる。好適例では、非アクティブ状態でマイクロ流体空間に供給される電圧を0Vにすることができる。
【0039】
一部の好適例では、変調器が発生する波形信号を方形波とすることができる。一部の好適例では、電圧が変化するあらゆる波形信号を変調器が発生することができる。一部の好適例では、方形波またはトップハット(top-hat)波のような高速遷移を有する波形が有利である、というのは、アクティブ状態と非アクティブ状態とのオーバーラップ(重複)を防止するからである。オーバーラップは、微小液滴の少なくとも部分集合を保持するための光照明を圧倒する撮像照明をもたらし得るし、このことは微小液滴制御の喪失を生じさせ得る。
【0040】
一部の好適例では、マイクロ流体デバイスを、等しい時間長だけ、アクティブ状態、非アクティブ状態、及び/または追加的状態にすることができる。
【0041】
一部の好適例では、マイクロ流体デバイスを、ある期間の90%だけアクティブ状態にすることができ、その期間の10%だけ非アクティブ状態または追加的状態にすることができる。
【0042】
一部の好適例では、マイクロ流体デバイスを、ある期間の10%だけアクティブ状態にすることができ、その期間の90%だけ非アクティブ状態または追加的状態にすることができる。
【0043】
アクティブ状態と、非アクティブ状態または追加的状態との間に費やされる時間を分割して、微小液滴を保持することと撮像することとのバランスを実現して、微小液滴を十分に制御されたままにすることができる。アクティブ状態と、非アクティブ状態または追加的状態との間のデューティサイクルが、微小液滴の少なくとも部分集合が漂遊していた際にも、微小液滴の少なくとも部分集合をその最適な保持位置に戻すことを可能にする。このデューティサイクルは、微小液滴がその最適な保持位置から漂遊する速度に依存する。より高い速度で漂遊する微小液滴ほど、微小液滴の制御を取り戻すために、より長いアクティブ状態を必要とするのに対し、より低速で漂遊する微小液滴ほど、アクティブ状態がより短いデューティサイクルによって十分に制御することができる。
【0044】
微小液滴が漂遊する速度は複数の要因に依存し、これらは、操作光源の強度、デバイスが非アクティブ状態である時間長、微小液滴のサイズ、微小液滴の形状、微小液滴の圧縮、及び/または微小液滴が分散したキャリア相の粘度に依存し、ただしこれらの要因に限定されない。一部の好適例では、例えば、マイクロ流体空間を摩擦コーティングでコーティング(被覆)すること、微小液滴を冷却すること、微小液滴を圧縮すること、及び/またはより粘性のあるキャリア相を用いることによって、微小液滴がその最適な位置から漂遊する速度を低下させることができる。
【0045】
一部の好適例では、非アクティブ状態または追加的状態中にケミルミネセンス画像を取得する際に、非アクティブ状態または追加的状態の方が長いデューティサイクル、例えば10:90または1:99のようなデューティサイクルが好ましいことがある。ケミルミネセンス画像の取得中には、マイクロ流体空間に印加される電界及び当てられる撮像照明が存在しないことが理想的である。より長い非アクティブ状態または追加的状態を有して、微小液滴の少なくとも部分集合からケミルミネセンス信号を検出することができる時間を最大にすることが有益であり得る。しかし、非アクティブ状態または追加的状態中には微小液滴が保持されないので、微小液滴はその最適な保持位置から受動的に漂遊し、従って、アクティブ状態及び非アクティブ状態または追加的状態を変調することは、微小液滴に対する制御を維持することを可能にする。
【0046】
一部の好適例では、上記波形信号が0.5~5000Hzの周波数範囲を有することができる。一部の実施形態では、波形信号が、0.5Hz超、10Hz超、50Hz超、100Hz超、250Hz超、500Hz超、750Hz超、1000Hz超、1250Hz超、1500Hz超、1750Hz超、2000Hz超、2250Hz超、2500Hz超、2750Hz超、3000Hz超、3250Hz超、3500Hz超、3750Hz超、4000Hz超、4250Hz超、4500Hz超、または4750Hz超の周波数を有することができる。一部の実施形態では、波形信号が5000Hz未満、4750Hz未満、4500Hz未満、4250Hz未満、4000Hz未満、3750Hz未満、3500Hz未満、3250Hz未満、3000Hz未満、2750Hz未満、2500Hz未満、2250Hz未満、2000Hz未満、1750Hz未満、1500Hz未満、1250Hz未満、1000Hz未満、750Hz未満、500Hz未満、250Hz未満、100Hz未満、50Hz未満、または10Hz未満の周波数を有することができる。上記範囲は4Hz~50Hzであることが好ましい。
【0047】
一部の好適例では、波形信号変調周波数を、微小液滴がその最適な保持位置から漂遊する速度に応じて選択することができる。
【0048】
一部の好適例では、より大きな変調周波数が、微小液滴制御の低減を生じさせることがある。一部の好適例では、より大きな変調周波数が、
微小液滴制御を維持するのに十分な時間長だけ行われない、微小液滴を保持及び/または操作するように構成された照明による微小液滴の少なくとも部分集合の照明をもたらすことがある。
【0049】
一部の好適例では、特定の変調周波数が微小液滴制御の改善をもたらすことができる。例えば、変調周波数が1kHzのAC電圧源周波数と一致する好適例では、2.5kHzの変調周波数における保持強度を、1kHzの変調周波数における保持強度よりも大きくすることができる。
【0050】
最小の変調周波数は、微小液滴が漂遊する速度に依存する。デバイスが費やす時間は、非アクティブ状態または追加的状態では、微小液滴がアクティブ状態でその最適な保持位置に戻ることができる位置を超えて漂遊するのに要する時間よりも小さくなければならない。
【0051】
一部の実施形態では、マイクロ流体空間を、複数の微小液滴を包含するように構成することができる。上記装置は、微小液滴を単一の微小液滴レベルで保持及び/または操作、及び撮像することに適している。上記装置は、複数の微小液滴の少なくとも部分集合を保持及び/または操作、及び撮像することにも適している。
【0052】
一部の好適例では、少なくとも1つの微小液滴が生物学的実体を含むことができる。一部の好適例では、上記装置を用いて、微小液滴の少なくとも部分集合を、生物学的試料の一部として撮像することができる。一部の好適例では、上記装置を用いて、生物学的検定法の一部として蛍光測定を実行することができる。
【0053】
一部の好適例では、生物学的実体を細胞、ウィルス、タンパク質試料、抗体試料、機能性のマイクロビーズまたは酵素とすることができる。
【0054】
一部の好適例では、少なくとも1つの微小液滴が蛍光性の実体を含むことができる。蛍光性の実体は、蛍光染料または蛍光ビーズとすることができる。蛍光性の実体は、微小液滴中に存在する細胞のような生物学的実体に取り付けることができる。細胞のような生物学的実体は蛍光染料で染色することができる。
【0055】
一部の好適例では、アクティブ状態中と非アクティブ状態中とで単一の光源を用いて、微小液滴の少なくとも部分集合を照明することができる。一部の好適例では、上記装置が第2光源を更に具えることができる。一部の好適例では、アクティブ状態中に第1光源が微小液滴保持照明を提供することができ、非アクティブ状態中に第2光源が撮像照明を提供することができる。2つの光源を有する装置が有利である、というのは損失を低減することができるからである。空間的光変調器を通過させるために単一の光源が必要なことがあり、このことは関連する損失を有する。このことは、空間的光変調器を用いて単一の光源をフィルタ処理する必要があり得るからであり、このことが追加的な不所望な損失を生じさせる。従って、複数の光源を用いることは、より高い効率を有する。
【0056】
一部の好適例では、非アクティブ状態中の撮像を、照明光源なしで行うことができ、微小液滴内に包含される試料が発光する光を検出することができる。これらの好適例は、ケミルミネセント(化学発光性)、リン光発光性、または生物発光性である試料を撮像することに特に適している。
【0057】
一部の好適例では、上記装置が、第1及び/または第2光源からの光の少なくとも一部分をフィルタ処理するフィルタを更に具えることができる。
【0058】
一部の好適例では、コントローラを設けてフィルタを制御することができ、これにより、このフィルタは、非アクティブ状態中に、第1及び/または第2光源から供給され、マイクロ流体空間全体にわたって当てられる撮像照明を可能にする。
【0059】
一部の好適例では、上記装置が第2変調器を更に具えることができ、第2変調器は、第2光源からの光を変調するための第2波形信号を発生するように構成されている。第2変調器は、第2光源からの光を変調することができ、これにより、この光は第1変調器及び変調された電界とは位相をずらして変調され、電界と撮像照明とが同時にマイクロ流体空間に当てられない。
【0060】
一部の好適例では、第2変調器を設けて第2光源を制御し、これにより、第2光源が、非アクティブ状態中に微小液滴の少なくとも部分集合に撮像照明を当てるように構成される。一部の好適例では、第1及び/または第2変調器を、更に、第2光源を制御するように構成し、これにより、第2光源を、非アクティブ状態中に微小液滴の少なくとも部分集合に撮像照明を当てるように構成することができる。一部の好適例では、第1及び/または第2変調器を、更に、第2光源を制御するように構成し、これにより、第2光源が、非アクティブ状態中に、微小液滴の少なくとも部分集合に対する蛍光に適した光を供給することができる。
【0061】
2つの光源を用いる一部の好適例では、第1光源が、アクティブ状態及び非アクティブ状態の両方で連続して微小液滴の少なくとも部分集合を照明することができる。第2光源は、撮像照明を、微小液滴の少なくとも部分集合に当てるように構成され、第2光源は第2変調器によって変調され、これにより、撮像照明は非アクティブ状態中のみに当てられる。例えば、第2変調器は、光源を変調することができ、光源をオン状態とオフ状態との間で切り換えることができる。上記コントローラは、互いに位相がずれた第1及び第2変調器を変調または監視するように構成することができ、これにより、第2光源と電界とが同時にアクティブ状態にならず、撮像照明が微小液滴の操作を妨害して液滴制御の喪失を生じさせることが防止される。
【0062】
2つの光源を用いる一部の好適例では、上記コントローラ、あるいは第1及び/または第2変調器がフィルタを制御し、これにより、微小液滴の少なくとも部分集合を、撮像と保持とで異なる波長で照明することができ、これら2つの照明は空間的に区別される。一部の好適例では、保持照明の光源にフィルタを付加し、これにより、非アクティブ状態中には、保持照明の光源が微小液滴を照明せず、撮像光照明と干渉しないことができる。
【0063】
一部の好適例では、上記装置が:第1光源と;第2光源と;第1変調器と;第2変調器とを更に具え、第1光源は微小液滴の少なくとも部分集合を操作するための照明光を供給するように構成され、第2光源は微小液滴の少なくとも部分集合に撮像照明を当てるように構成され、第1変調器は、第1波形信号を発生してマイクロ流体空間の両端間に印加される電界を変調するように構成され、第2変調器は、第2波形信号を発生して第2光源による微小液滴の少なくとも部分集合の照明を変調するように構成され、第1変調器は、アクティブ状態と非アクティブ状態とを切り換えるように構成され、アクティブ状態では、マイクロ流体空間の両端間に電界が印加されて微小液滴の少なくとも部分集合を保持し、非アクティブ状態ではマイクロ流体空間の両端間に電界が印加されず、第1及び第2変調器は、更に、第2光源を直接または間接的に制御するように構成され、これにより、第2光源が、非アクティブ状態中に、微小液滴の少なくとも部分集合に撮像照明を当てる。
【0064】
一部の好適例では、第2変調器を、関数発生器による直接的電気変調器、デジタルスイッチまたはアナログスイッチ、チョッパ、電気光学変調器、音響光学変調器、またはシャッタとすることができ、但しこれらに限定されない。一部の好適例では、第2変調器を直接的なLED(light emitting diode:発光ダイオード)またはレーザー変調として実現することができる。一部の好適例では、第2変調器を、デジタル・マイクロミラーデバイス(DMD)、液晶空間光変調器(SLM:spatial light modulator)のような空間光変調器とすることができる。一部の好適例では、第2照明源がレーザーである際に、音響光学変調器または電気光学変調器を用いることが好ましことがある。音響光学変調器は、固定の周波数範囲上で動作可能であり、固定波長の光を変調するために用いることができる。電気光学変調器も、固定の周波数範囲上で動作可能であり、光の各波長向けに調整することができる。
【0065】
一部の好適例では、チョッパを第2変調器として用いることが好ましいことがある。チョッパは全波長の光を変調することに適している。チョッパは、ミッドレンジの周波数変調、例えば100Hz~1000Hzにおける使用に適したものとすることができる。
【0066】
一部の好適例では、直接的なLEDまたはレーザー変調が好ましいことがある。直接的なLEDまたはレーザー変調は、MHzの周波数範囲までの変調に適したものとすることができる。
【0067】
一部の好適例では、シャッタである第2変調器を用いることが好ましいことがある。シャッタは、明確に定義された方形波を実現することに適しており、こうした方形波は、マイクロ流体空間の両端間に印加される電界と微小液滴の撮像照明とのあらゆるオーバーラップを防止するために有利である。シャッタは、光の全波長で使用することに適している。シャッタは、他の変調よりも低い最大周波数を有し得る。
【0068】
一部の好適例では、第1及び/または第2光源をLEDとすることができ、またはレーザーとすることができ、あるいはランプとすることができる。
【0069】
一部の好適例では、光源として使用するレーザービームを空間的及び時間的にコヒーレントにすることができる。レーザービームはコリメート(平行)ビームとすることができる、というのは、レーザービームは高いコヒーレンス(干渉性)及び低いダイバージェンス(発散性)を有するからである。コリメート光ビームが供給する光を用いて、微小液滴が位置するマイクロ流体空間を照明することができる。一部の好適例では、レーザービームを用いて、非コヒーレント(非干渉性)光源で達成することができるよりも高い信号対ノイズ比を達成する。このことは、例えばラスタースキャン(水平走査線走査)を用いて撮像する際に有利であり得る。
【0070】
一部の好適例では、LEDまたはランプを光源として用いることが有益であり得る。1つの好適例では、白色LEDを光源として用いることができる、というのは、フィルタ処理して狭波長帯域を例えば蛍光測定用に選択的に当てることができる高パワーの出力を提供することができるからである。一部の好適例では、有色のLEDを光源として用いることができる。一部の好適例では、キセノンランプのようなランプをフィルタ処理して、光学測定用の狭帯域の照明を実現することができる。
【0071】
一部の好適例では、第1変調器がアクティブ状態と非アクティブ状態とを切り換える前に、マイクロ流体デバイスをアクティブ状態にすることができる。一部の好適例では、微小液滴の少なくとも部分集合の画像を撮像することが必要になる前に、マイクロ流体デバイスを用いて微小液滴の操作を実行することができる。従って、第1変調器が、マイクロ流体空間の両端間に印加される電界の変調を制御し始める前に、上記デバイスをアクティブ状態にすることができ、一定の電界またはA/C電界をマイクロ流体空間に与える。
【0072】
一部の好適例では、マイクロ流体デバイスを誘電体上の光エレクトロウェッティング(oEWOD)デバイスとすることができ、あるいは光ツイーザー(ピンセット)デバイスとすることができ、あるいは光電ツイーザー(OET:opto-electronic tweezer)デバイスとすることができ、あるいは誘電泳動(DEP:dielectrophoresis)デバイスとすることができる。
【0073】
一部の好適例では、エレクトロウェッティングを用いて微小液滴を操作するデバイスが提供され、このデバイスは第1複合壁と第2複合壁とを具え、第1複合壁は:第1基板と;この基板上の第1導体層と;20nm未満の厚さを有する上記光活性層上の第1連続誘電体層とを具え、第2複合壁は:第2基板と;この基板上の第2導体層とを具えている。
【0074】
一部の好適例では、第2複合壁が、任意で、20nm未満の厚さを有する第2導体層上に第2連続誘電体層を具えている。
【0075】
一部の好適例では、第1複合壁が、第1導電体層上に光活性層を更に具えている。
【0076】
一部の好適例では、マイクロ流体デバイスをoEWODデバイスとすることができ、このoEWOD構造は:第1複合壁と;第2複合壁と;A/C電源と;第1及び第2電磁放射源と;操作手段とで構成され、第1複合壁は、第1基板と;この基板上の第1導体層であって、70~250nmの範囲内の厚さを有する第1導体層と;この導体層上の光活性層であって、400~850nmの波長範囲内の電磁放射によって活性化され、300~1500nmの範囲内の厚さを有する光活性層と;この光活性層上の第1誘電体層であって、1nm~20nmのような20nmを下回る厚さを有する第1誘電体層とで構成され、この厚さは30~160nmの範囲内にすることができ、第2複合壁は、第2基板と;この基板上の第2導体層であって、70~250nmの範囲内の厚さを有する第2導体層と;任意で、第2導体層上の第2誘電体層であって、1nm~20nmのような20nmを下回る厚さを有する第2誘電体層とで構成され、この厚さは30~160nmの範囲内にすることができ、これらの複合壁の露出面どうしは、20~180μmだけ離れて配置されて、微小液滴を包含するように構成されたマイクロ流体空間を規定し、A/C電源は、第1及び第2導体層に接続されて、第1複合壁と第2複合壁との間に電圧を供給し、上記電磁放射源の電磁放射は、光活性層のバンドギャップよりも高いエネルギーを有し、光活性層に当たって、対応する仮のエレクトロウェッティング位置を第1誘電体層上に誘発するように構成され、操作手段は、電磁放射が光活性層に当たる点を操作して、仮のエレクトロウェッティング位置の配置を変化させ、これにより少なくとも1つのエレクトロウェッティング経路を生成し、このエレクトロウェッティング経路に沿って微小液滴を移動させることができる。これらの構造の第1及び第2壁は透明であり、マイクロ流体空間がこれらの間に挟まれる。
【0077】
一部の好適例では、第1及び/または第2基板を透明にすることができる。第1及び第2導体層は透明にすることができる。
【0078】
A/C電源は、0V~100Vの電圧を、第1及び第2複合壁を境界とするマイクロ流体空間の両端間に供給するように構成することができ、第1及び第2導体層に接続されている。一部の好適例では、供給する電圧を0V~50Vにすることができ、あるいは0V~10Vにすることができる。一部の好適例では、A/C電源を、0V超、5V超、10V超、15V超、20V超、25V超、30V超、35V超、40V超、50V超、60V超、70V超、80V超、または90V超の電圧を供給するように構成することができ、あるいは、この電圧を90V未満、80V未満、70V未満、60V未満、50V未満、45V未満、40V未満、35V未満、30V未満、25V未満、20V未満、15V未満、10V未満、または5V未満にすることができる。
【0079】
第1及び第2基板は、機械的強度のある材料製、例えばガラス製、シリコン製、金属製、または工業用プラスチック製であることが適切である。一部の好適例では、上記基板がある程度のフレキシビリティ(柔軟性)を有することができる。更に他の好適例では、第1及び第2基板が100~1500μm、例えば500μmまたは1100μmの厚さを有することができる。一部の好適例では、第1基板がシリコン、石英ガラス、及びガラスで構成される。一部の好適例では、第2基板が石英ガラスまたはガラスの一方で構成される。
【0080】
第1及び第2導体層は、第1及び第2基板の一方の表面上に配置され、代表的には70~250nmの範囲内の厚さを有し、70~150nmが好ましい。これらの層のうちの少なくとも1つは、酸化インジウムスズ(ITO:indium tin oxide)のような透明な導電性材料製、銀のような導電性材料またはPEDOT(poly(3,4-ethylenedioxythiophene):ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))等のような導電性ポリマーの非常に薄い膜製である。これらの層は、連続シートとして、あるいは複数のワイヤのような一連の離散構造として形成することができる。その代わりに、上記導体層は導電性材料のメッシュとすることができ、電磁放射がこのメッシュの網目間に指向される。
【0081】
光活性層は半導体材料で形成されることが適切であり、この半導体材料は、電磁放射源による刺激に応答して電荷の局在領域を生成することができる。その例は、300~1500nmの範囲内の厚さを有する水素化アモルファスシリコン層を含む。一部の好適例では、光活性層が可視光の使用によって活性化される。第1壁の場合における光活性層、及び任意で第2壁の場合における導体層は、誘電体層でコーティングすることができ、この誘電体層は代表的には30nmから160nmまでの厚さの範囲である。この層の誘電特性は、>107V/mの高い絶縁耐力(誘電強度)、及び>3の誘電定数を含むことが好ましい。一部の好適例では、誘電体層が、アルミナ、シリカ、ハフニア、または薄い非導電性のポリマーフィルム(重合体薄膜)から選択される。
【0082】
これらの構造の他の好適例では、少なくとも第1誘電体層、好適には両誘電体層が、種々の仮のエレクトロウェッティング位置で所望の微小液滴/分散媒の流体/表面の接触角を確立することに役立ち、追加的に、微小液滴の内容物が表面に粘着して、微小液滴がチップを通って移動すると共に減少することを防止することに役立つためのアンチファウリング(汚損防止、防汚)層でコーティングされている。第2壁が第2誘電体層を具えない場合、第2のアンチファウリング層を直接、第2導体層上に付加することができる。
【0083】
最適な性能のために、アンチファウリング層は、微小液滴/分散媒の流体/表面の接触角を確立することに役立つべきであり、この接触角は、空気-液体-表面の3点の境界面で、25℃で測定した際に50°~180°の範囲内であるべきである。一部の好適例では、これらの層が10nm未満の厚さを有し、代表的には単分子層である。他の好適例では、これらの層が、メチルメタクリレート(メタクリル酸メチル)、あるいは親水基、例えばアルコキシリルで置換されたその誘導体のようなアクリレートエステルのポリマーで構成される。これらのアンチファウリング層のいずれか、あるいは両方が疎水性であり、最適な性能を保証する。一部の好適例では、20nm未満の厚さのシリカの介在層を、アンチファウリング・コーティングと誘電体層との間に挿入して、化学的適合性のあるブリッジ(架橋)を提供することができる。
【0084】
第1及び第2誘電体層、従って第1及び第2壁はマイクロ流体空間を規定し、このマイクロ流体空間は、少なくとも10μmの幅であり、20~180μmの範囲内の幅であることが好ましく、このマイクロ流体空間内に微小液滴が包含される。微小液滴が包含される前に、微小液滴自体が固有の直径を有することが好ましく、この直径はマイクロ流体空間の幅よりも10%大きく、20%大きいことが適切である。従って、微小液滴は、チップに入る際に、圧縮を施されて、例えば、より良好な微小液滴併合能力により、強化されたエレクトロウェッティング性能をもたらす。一部の好適例では、第1及び第2誘電体層を、フルオロシランのような疎水性コーティングでコーティングすることができる。
【0085】
一部の好適例では、マイクロ流体空間が、第1壁と第2壁とを所定量だけ離して保持するための1つ以上のスペーサを含む。スペーサの選択肢は、ビーズまたはピラー(柱状体)、中間レジスト層から生成されるリッジ(頂部)を含み、これらのリッジは光パターン化によって生成されている。その代わりに、酸化シリコンまたは窒化シリコンのような堆積材料を用いてスペーサを作製することができる。その代わりに、接着剤コーティング付きまたは接着剤コーティングなしのフレキシブル・プラスチックフィルムを含むフィルムの層を用いて、スペーサ層を形成することができる。種々のスペーサの幾何学的形状を用いて、ピラーの直線によって規定される狭幅の流路、テーパー付き流路、または部分的に閉じた流路を形成することができる。慎重な設計によって、これらのスペーサを用いて、微小液滴の変形を支援することができ、その後に、微小液滴の分割を実行し、変形した微小液滴に対する操作を実行することができる。同様に、これらのスペーサを用いて、チップのゾーンどうしを物理的に分離して、液滴の構成物間の交差汚染を防止して、液圧下でチップをロード(装荷)する際に液滴の流れを正しい方向に進めることができる。一部の好適例では、スペーサは、ブレード形状の構造、ウェッジ(楔形)構造、ピラー、疎水性パッチ、狭幅流路にすることができ、但しこれらに限定されず、あるいは表面上のディンプル(窪み)にすることができる。
【0086】
導体層に取り付けたA/C電源を用いて、第1及び第2壁にバイアスをかけて、これらの壁間に電位差を与えることができ;この電位差は0~50ボルトの範囲内が適している。これらのoEWOD構造は、代表的には、400~850nmの範囲内の、例えば550、620、及び660nmの波長、及び光活性層のバンドギャップを超えるエネルギーを有する第2電磁放射源と共に用いられる。光活性層は仮想的なエレクトロウェッティング電極位置で活性化することが適切であり、この位置では、使用する放射の入射強度が0.01~0.2Wcm-2の範囲内である。
【0087】
電磁放射源が画素化されている場合、これらの電磁放射源は、直接、あるいはLEDまたは他のランプによって照明されるデジタル・マイクロミラーデバイス(DMD)のような反射スクリーンを用いて間接的に、のいずれかで給電される。このことは、仮想的なエレクトロウェッティング電極位置の高度に複雑なパターンを、第1誘電体層上に急速に生成し破壊することを可能にし、これにより、厳密に制御されるエレクトロウェッティング力を用いて、微小流体を 基本的に任意の仮想的通路に沿って精密に進めることを可能にする。こうしたエレクトロウェッティング経路は、第1誘電体層上の仮想的なエレクトロウェッティング電極位置の連続体で構成されるものとして見ることができる。
【0088】
一部の好適例では、電磁放射が当たる点の形状が、第1変調器及び/または第2変調器の画素化の形状によって決まる。電磁放射源の放射が光活性層上に当たる点は、従来の円形または環形を含むあらゆる好都合な形状にすることができる。一部の好適例では、これらの点の形態が、対応する画素化の形態によって決まり、他の好適例では、一旦、微小液滴がマイクロ流体空間に入ると、これらの微小液滴の形態に全体的または部分的に相当する。1つの好適例では、電磁放射が当たる点、従ってエレクトロウェッティング電極位置を三日月形にして、微小液滴の意図した進行方向に配向させることができる。エレクトロウェッティング電極位置自体は、第1壁に付着する微小液滴の表面よりも小さく、液滴と表面誘電体との間に形成される接触線全体にわたる最大の電界強度勾配を与えることが適切である。
【0089】
第1及び第2誘電体層は、単一の誘電体材料で構成することができ、あるいは2つ以上の誘電体材料の複合物とすることができる。誘電体層はAl2O3及びSiO2製とすることができ、但しこれらに限定されない。
【0090】
ある構造を、第1誘電体層と第2誘電体層との間に設けることができる。第1誘電体層と第2誘電体層との間の構造は、エポキシ製、ポリマー製、シリコン製、またはガラス製、あるいはその混合物または複合物製とすることができ、但しこれらに限定されず、真っ直ぐな、角のある、曲面状の、あるいは微小構造化された壁面/表面を有する。第1誘電体層と第2誘電体層との間の構造を、最上部及び最下部の複合壁に接続して、封止されたマイクロ流体デバイスを作製して、流路及び領域をデバイス内に規定することができる。この構造は、2つの複合壁間のギャップ(間隙)を占めることができる。その代わりに、あるいはそれに加えて、上記の導体及び誘電体を、既に壁面を有する成形基板上に堆積させることができる。
【0091】
本発明の方法及び装置の一部の態様は、誘電泳動または光ツイーザーにより微粒子を操作するように構成されたデバイスのような、エレクトロウェッティングデバイス以外の光活性デバイスに適用することに適している。こうしたデバイスでは、機能的に同一の光学機器を用いて細胞または粒子を操作及び検査して、仮想的な光誘電泳動勾配を生成する。本明細書中に定義する微粒子は、生体細胞、ポリスチレン及びラテックスを含む材料製のマイクロビーズ、ヒドロゲル、磁気マイクロビーズまたはコロイドのような粒子を参照することがある。誘電泳動及び光ツイーザーのメカニズムは、現在技術において周知であり、当業者が容易に実現することができる。
【0092】
一部の好適例では、光学撮像デバイスが、微小液滴の少なくとも部分集合からの光信号を検出するように構成された検出器を更に具えている。一部の好適例では、検出器を、微小液滴からの蛍光信号を検出するように構成することができる。蛍光測定は、生物学的検定法を実行するための極めて重要なツールである。一部の好適例では、検出器を、微小液滴からのケミルミネセンス信号を検出するように構成することができる。
【0093】
一部の好適例では、検出器が、微小液滴の少なくとも部分集合の画像を捕捉するように構成されたカメラを更に具えることができる。一部の好適例では、検出器がカメラを具えることができ、このカメラは、非アクティブ状態または追加的状態中に画像を撮像することを可能にすることができる。一部の好適例では、上記装置を用いて、微小液滴を移動させ、その間に移動する微小液滴上の画像を記録することもできる。
【0094】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、または方法によって選別(スクリーニング)した種(しゅ)が提供される。
【0095】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、または方法によって選択した種が提供される。
【0096】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、または方法によって隔離した種が提供される。
【0097】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、または方法によって作製した種が提供される。
【0098】
これらの種は、事実上、化学的、生化学的、または生物学的な種とすることができる。
【0099】
例えば、本発明は、本明細書中に開示する選別、選択、及び/または隔離方法によって識別した実体に対する作用薬/拮抗薬を提供することができる。本発明は、本明細書中に開示する選別、選択、及び/または隔離方法によって識別した実体に対する作用薬/拮抗薬を、治療における使用向けに提供することができる。この実体は、事実上、化学的、生化学的、または生物学的実体とすることができる。
【0100】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、方法、または種の使用方法が提供される。
【0101】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、方法、または種の、治療における使用方法が提供される。
【0102】
本発明は、本明細書中に開示するデバイス、装置、方法、または種の、製品を作製するに当たっての使用方法を提供する。作成する製品は、事実上、化学的、生化学的、または生物学的製品とすることができる。
【0103】
上記使用方法は、ペプチド合成とすることができる。上記使用方法は、合成生物学とすることができる。上記使用方法は、細胞株工学または細胞株開発とすることができる。上記使用方法は、細胞療法とすることができる。上記使用方法は、創薬とすることができる。上記使用方法は、抗体発見とすることができる。
【0104】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、方法、または種の、分析における使用方法が提供される。
【0105】
この分析は、物理分析、化学分析、または生物分析とすることができる。
【0106】
上記使用方法は、細胞内撮像とすることができる。上記使用方法は、高含量撮像とすることができる。
【0107】
上記使用方法は、診断とすることができる。
【0108】
上記使用方法は、生物学的検定法とすることができる。この生物学的検定法は、高性能スクリーニングとすることができる。この生物学的検定法は、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay:酵素免疫測定法)とすることができる。
【0109】
上記使用方法は、細胞分泌とすることができる。
【0110】
上記使用方法は、QC(quality control:品質管理)安全プロファイリングとすることができる。
【0111】
以下、本発明を、ほんの一例として、添付した図面を参照しながら、更に、より具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1】本発明の装置を概略的に示す図である。
図2】マイクロ流体空間の両端間に適用される空間フィルタを示す図である。
図3図3A及び3Bは、本発明によるoEWOD構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0113】
詳細な説明
本発明は、本明細書中に装置を開示し、この装置を用いて、1つ以上の微小液滴の画像を取得しつつ、及び/または光学測定値を取得しつつ、光電子液滴操作技術を用いて1つ以上の微小液滴の制御を維持することができる。
【0114】
図1を参照すれば、マイクロ流体デバイス10が提供され、マイクロ流体デバイス10は、少なくとも1つの微小液滴14を包含するように構成されたマイクロ流体空間12と、マイクロ流体空間12を照明するための光源16とを具えている。マイクロ流体デバイス10は、誘電体上の光エレクトロウェッティング(oEWOD)デバイスとすることができ、または光ツイーザーデバイスとすることができ、または光電子ツイーザー(OET)デバイスとすることができ、または誘電泳動(DEP)デバイスとすることができる。
【0115】
微小液滴14は、細胞または酵素のような生物学的実体、及び/または蛍光染料または蛍光ビーズのような蛍光性の実体を含むことができる。
【0116】
光源16は、ハロゲンランプ、レーザー、LED、または他のあらゆる適切な光源とすることができる。光源16は、単色LED、または好適には白色LEDとすることができる。
【0117】
電圧源が、マイクロ流体デバイスに電圧を供給して、マイクロ流体空間12の両端間に電界を発生する。図1中にグラフ表現13で示すように、この電圧はマイクロ流体空間の両端間に長時間にわたって印加される。変調器22は、波形信号28を発生して、マイクロ流体空間12の両端間に印加される電界を変調するように構成され、これによりアクティブ状態及び非アクティブ状態が存在し、アクティブ状態ではマイクロ流体空間12の両端間に電界が印加され、非アクティブ状態ではマイクロ流体空間12の両端間に電界が印加されない。アクティブ状態中には、マイクロ流体空間12の両端間に電界が発生し、光源16によるマイクロ流体空間の照明が、oEWOD力のような光電子力を生成する。この光電子力を用いて微小液滴を制御し、これにより微小液滴が定位置に保持され及び/または操作されて、例えばアレイ内に併合、分割、分類、及び/または配列される。
【0118】
変調器22は関数発生器とすることができ、またはデジタルスイッチとすることができ、またはアナログスイッチとすることができる。波形信号28は0.5~5000Hzの周波数範囲を有することができる。上記電圧源はA/C電圧源とすることができる。上記電圧源は、1~200Vの電圧を供給して、アクティブ状態中にマイクロ流体空間12の両端間に電界を発生することができる。非アクティブ状態でマイクロ流体空間12に供給される電圧は、1V未満にすることができ、0Vであることが好ましい。
【0119】
上記装置はコントローラ20も具え、コントローラ20は、コンピュータ、マイクロプロセッサ、またはマイクロコントローラとすることができる。コントローラ20は、空間フィルタのようなフィルタ32を制御するように構成することができる。フィルタ32は、カラーフィルタまたは空間フィルタとすることができる。コントローラ20を、第1変調器22、第2変調器23、フィルタ32、及び/または光学撮像デバイス18を制御するように構成し、これにより、非アクティブ状態中に微小液滴14の画像を撮像することができる。フィルタ32は、微小液滴14を保持するために使用する光をフィルタ処理するために用いることができるように制御することができ、これにより、非アクティブ状態中に、撮像に適した照明が微小液滴14に印加される。このことは、コントローラ20がフィルタ32を制御し、これにより、非アクティブ状態中に撮像照明が微小液滴14に当てられず、微小液滴14の画像が例えばケミルミネセンスによって取得されることを含むこともできる。
【0120】
それに加えて、第1変調器22は追加的状態に切り換わるように構成することができ、追加的状態では、マイクロ流体空間12に印加される電界が存在せず、光源16はオフ状態である。このことは、例えばケミルミネセンス撮像を実行する際に有利であり得る。図1は、第2変調器23を設けることができることも示している。第2変調器を、第2光源24を直接または間接的に制御するように構成し、これにより、撮像照明を微小液滴の少なくとも部分集合に提供することができる。
【0121】
図1に示すように、光学撮像デバイス18は、追加的フィルタ25と、1組以上のミラー27と、1つ以上のレンズ29、例えば第2光源24からの光が関心事の微小液滴上に焦点を結ぶための対物レンズ29とを更に具えることができる。光学撮像デバイス18は、微小液滴の画像、例えば蛍光画像またはケミルミネセンス画像を取得するためのカメラ31のような検出器31も具えている。
【0122】
光学撮像デバイス18は、微小液滴の少なくとも部分集合の画像を生成し、この画像は1つの微小液滴14を含むことができる。微小液滴の部分集合は複数の微小液滴を含むことができる。光学撮像デバイス18は検出器31を含むことができる。検出器31は、微小液滴14からの光信号、例えば蛍光信号またはケミルミネセンス信号を検出するように構成することができる。光学撮像デバイス18は、カメラを具えることもでき、このカメラを用いて微小液滴14の画像を取得することができる。次にこの画像をプロセッサによって処理することができる。
【0123】
上記装置は単一の光源16を具えることができ、非アクティブ状態中に、この光源を用いて微小液滴14の少なくとも部分集合を照明することができる。図1に示すように、本発明の装置は第2光源24を具えることもできる。上記装置が2つの光源を具える際には、第1光源16がアクティブ状態中に微小液滴保持照明を提供することができ、第2光源24は非アクティブ状態中に撮像照明を提供することができる。第2光源24は、ランプ、レーザー、LED、またはあらゆる適切な他の光源とすることができる。第2光源24は単色LEDとすることができ、または好適には白色LEDとすることができる。第2光源24を用いて、非アクティブ状態中に微小液滴14を撮像し、第2光源24は、蛍光照明、蛍光共鳴エネルギー移動照明、明視野照明、または微小液器14を撮像することに適した他のあらゆる照明に適した光源とすることができる。
【0124】
上記装置が第2光源24を具える際に、第2変調器26を用いて第2光源24を変調することができる。第2変調器26は、第2波形信号30を発生して第2光源24からの光を変調するように構成されている。第2変調器26は、第1光源22及び電界の変調とは位相をずらして第2光源24を変調するように構成することができる。このことは、電界と、微小液滴14の撮像照明とが同時にアクティブ状態にならないことを生じさせ、撮像照明が、微小液滴14を保持するために用いる照明と干渉することを防止する。第2変調器26は、関数発生器による直接的電気変調、デジタルスイッチまたはアナログスイッチ、チョッパ、電気光学変調器、音響光学変調器、またはシャッタとすることができ、但しこれらに限定されない。第2変調器26は、直接的なLEDまたはレーザー変調器とすることができる。第2変調器は、デジタル・マイクロミラーデバイス(DMD)、または液晶空間光変調器(SLM)のような空間光変調器とすることができる。
【0125】
図1に示すように、グラフ表現が、電界40が蛍光41と位相をずらして変調されることを示している。このことは、電界と、微小液滴14の蛍光照明のような撮像照明とが同時にアクティブ状態にならないことを意味し、撮像照明が、微小液滴14を保持するために用いる照明と干渉することを防止する。図2A及び2Bを参照すれば、空間変調の一例が示されている。一部の例では、単一の光源を用いて、微小液滴の少なくとも部分集合を保持し撮像する。この例では、図2A及び2Bに示すように、空間フィルタを用いて、照明を印加される電圧と同期させてパターン化して、アクティブ状態及び非アクティブ状態を生成する。アクティブ状態は、電圧が印加されることと保持光パターンが当てられることから成り、その一例を図2Aの画像中に示す。非アクティブ状態は、図2Bに示すように、印加される電圧が無効にされることと、照明パターンがブランケット照明に切り換えられることから成り、ここでは、光が検出器と同期すると、光が全視野を照明し、次にこのことを用いて画像を生成することができる。
【0126】
図3Aを参照すれば、マイクロ流体デバイス、特にoEWODデバイス100が提供される。oEWODデバイス100は、図3Aに示すように:第1基板104から成る第1複合壁102と、基板104上の第1透明導体層106と、導体層106上で波長範囲400~850nmの電磁放射によって活性化される光活性層108と、光活性層108上の第1誘電体層110とを具え、第1基板104はガラス製とすることができ、第1導体層106は70~250nmの範囲内の厚さを有し、光活性層108は300~1500nmの範囲内の厚さを有する。第1誘電体層110は20nmを下回る厚さを有する。この層の厚さの下限は、少なくとも部分的に、連続でなければならないこうした薄層を提供する方法によって決まる。しかし、理論的には0.1nm~20nmの厚さを有することができる。第1導体層は透明にすることができる。
【0127】
デバイス100は第2複合壁112も具え、第2複合壁112は:第2基板114と、基板114上の第2導体層116とを具え、第2基板114はガラス製とすることができる。第2導体層は透明にすることができる。第2導体層116は、70~250nmの範囲内の厚さを有することができる。第2誘電体層118が第2導体層116上に存在することができ、第2誘電体層118は、1nm~20nmのような20nmを下回る厚さを有し、あるいは25~160nmとすることができる。複合壁102の露出面と複合壁112の露出面とは、20~180μmだけ離れて配置されて、微小液滴122を包含するように構成されたマイクロ流体空間121を規定する。
【0128】
光活性層108はアモルファス(非晶質)シリコン製とすることができる。第1及び第2導体はITO製とすることができる。
【0129】
介在結合層124が、第1誘電体層110上に設けられ、第2誘電体層118上にも設けることができる。この介在層の厚さは0.1nm~5nmとすることができる。この介在層の厚さは、0.1nm超、0.25nm超、0.5nm超、0.75nm超、1nm超、1.5nm超、2nm超、2.5nm超、3nm超、3.5nm超、4nm超、または4.5nm超とすることができ、あるいは5nm未満、4.5nm未満、4nm未満、3.5nm未満、3nm未満、2.5nm未満、2nm未満、1.5nm未満、1nm未満、0.75nm未満、0.5nm未満、または0.25nm未満とすることができる。この介在層、例えば酸化シリコンは、第1及び/または第2誘電体層上に設けられる。この介在層の利点は、アンチファウリング層または非ファウリング層用の結合層として用いることができることにあり、アンチファウリング層または非ファウリング層は疎水性とすることができる。一部の好適例では、添付した図面中には図示しないが、介在結合層を省略することができる。こうした実施形態では、疎水性層を誘電体層に直接付加する。
【0130】
疎水性層126が介在結合層124上に設けられている。疎水性層の一例は、フルオロシランまたはフルオロシロキサンとすることができる。介在結合層124は任意であり、流路壁120はSU-8(登録商標、ネガティブ・フォトレジストの一種)製とすることができ、あるいはガラス構造の一部とすることができる。介在層124は、誘電体層110、118と疎水性層126との間に設けられる。
【0131】
図3Aに図示するように、入射光130を用いて光スプライト・パターン131を与えることができ、ここでは入射光130が微小液滴122の一部分上に光を与えて、微小液滴122をマイクロ流体空間121内の静止位置に保持する。オイルキャリア相134を、デバイス内の孔136を通して微小液滴122に設けて、主要栄養素及び主要成分を補給して、1つ以上の細胞のような微小液滴122内の内容物を生きた健康な状態に保つことができる。一部の場合には、相134が、主要栄養素、媒質、及び内容物を、細胞の成長、生存、及び/または増殖用に供給することができる。
【0132】
第1及び第2基板104、114は、機械的強度の高い材料製、例えばガラス製、金属製、または工業用プラスチック製である。一部の実施形態では、基板がある程度のフレキシビリティを有することができる。更に他の実施形態では、第1及び第2基板が少なくとも100μmの厚さを有する。一部の実施形態では、第1及び第2基板の厚さを、2500μm超、例えば3000、3500、または4000μmにすることができる。一部の実施形態では、第1及び第2基板が100~2500μmの範囲内の厚さを有することができる。一部の実施形態では、第1及び第2基板が、100μm超、200μm超、300μm超、400μm超、500μm超、600μm超、700μm超、800μm超、900μm超、1000μm超、1100μm超、1200μm超、1300μm超、1400μm超、1500μm超、1600μm超、1700μm超、1800μm超、1900μm超、2000μm超、2100μm超、2200μm超、2300μm超、または2400μm超の厚さを有することができる。一部の実施形態では、第1及び第2基板が、2500μm未満、2400μm未満、2300μm未満、2200μm未満、2100μm未満、2000μm未満、1900μm未満、1800μm未満、1700μm未満、1600μm未満、1500μm未満、1400μm未満、1300μm未満、1200μm未満、1100μm未満、1000μm未満、900μm未満、800μm未満、700μm未満、600μm未満、500μm未満、400μm未満、300μm未満、または200μm未満の厚さを有することができる。一部の実施形態では、第1基板がおよそ1100μmの厚さを有し、第2基板が700ミクロンの厚さを有する。他の実施形態では、第1及び第2基板が800ミクロンの厚さを有する。一部の実施形態では、第1基板が、シリコン、石英ガラス、及びガラスのうちの1つで構成される。一部の実施形態では、第2基板が石英ガラス及び/またはガラスの一方から成る。ガラスは、ソーダ石灰ガラスまたはフロートガラスとすることができ、但しこれらに限定されない。
【0133】
第1及び第2導体層106、116は、第1及び第2基板104、114の一方の表面上に配置され、代表的には70~250nmの範囲内の厚さを有し、70~150nmの範囲内の厚さが好ましい。これらの層のうちの少なくとも1つは、酸化インジウムスズ(ITO)のような透明金属製、銀のような導電性金属またはPEDOTのような導電性ポリマーの非常に薄い薄膜製である。これらの層は、連続シートとして、あるいは複数本のワイヤのような一連の離散構造として形成することができる。その代わりに、導体層は導電材料のメッシュとすることができ、電磁放射がこのメッシュの網目間に指向される。
【0134】
光活性層108は半導体材料で形成され、この半導体材料は、電磁放射源による刺激に応答して電荷の局在領域を生成することができる。その例は、300~1500nmの範囲内の厚さを有する水素化アモルファスシリコン層を含む。一部の実施形態では、光活性層が可視光の使用によって活性化される。光活性層は可視光の使用によって活性化される。この層の誘電特性は、>107V/mの高い絶縁耐力(誘電強度)及び>3の誘電率(誘電定数)を含むことが好ましい。一部の実施形態では、上記誘電体層が、アルミナ、シリカ、ハフニア、または非導電性のポリマー薄膜から選択される。
【0135】
その代わりに、少なくとも第1誘電体層、好適には両誘電体層にアンチファウリング層をコーティングして、種々の仮想的なエレクトロウェッティング電極位置に、所望の微小液滴/分散媒の流体/表面の接触角を確立することを支援することができる。このアンチファウリング層は、微小液滴の内容物が表面に付着して、微小液滴がチップを通って移動するに連れて減少することを追加的に防止することを意図している。
【0136】
最適な性能のために、アンチファウリング層は、微小液滴/分散媒の流体/表面の表面接触角を確立することを支援するべきであり、この接触角は、25℃で空気-液体-表面の三点境界面で測定した際に50°~180°の範囲内であるべきである。一部の実施形態では、これらの層が10nm未満の厚さを有し、代表的には単分子層である。その代わりに、これらの層は、メチルメタクリレート、または親水基、例えばアルコキシシリル基で置換したその誘導体のようなアクリレートエステルのポリマーから成ることができる。上記アンチファウリング層のいずれか、あるいは両方が疎水性であり、最適な性能を保証する。一部の実施形態では、厚さ20nm未満のシリカの介在層を、アンチファウリング・コーティングと誘電体層との間に挿入して、化学的適合性のあるブリッジ(架橋)を提供することができる。
【0137】
第1及び第2誘電体層、従って第1及び第2壁はマイクロ流体空間を規定し、このマイクロ流体空間は、少なくとも10μmの幅であり、20~180μmの範囲内の幅であることが好ましく、このマイクロ流体空間内に微小液滴が包含される。微小液滴が包含される前に、微小液滴自体が固有の直径を有することが好ましく、この直径はマイクロ流体空間の幅よりも10%大きい、あるいは20%大きい。従って、微小液滴は、チップに入る際に圧縮を施されて、球形の微小液滴の変形に至り、例えば、より良好な微小液滴併合能力により、強化されたエレクトロウェッティング性能をもたらす。一部の例では、第1及び第2誘電体層を、フルオロシランのような疎水性コーティングでコーティングすることができる。
【0138】
一部の実施形態では、マイクロ流体空間が、第1壁と第2壁とを所定量だけ離して保持するための1つ以上のスペーサを含む。スペーサの選択肢は、ビーズまたはピラー、中間レジスト層から生成されるリッジ(頂部)を含み、これらのリッジは光パターン化によって生成されている。その代わりに、酸化シリコンまたは窒化シリコンのような堆積材料を用いてスペーサを作製することができる。その代わりに、接着剤コーティング付きまたは接着剤コーティングなしのフレキシブル・プラスチックフィルムを含むフィルムの層を用いて、スペーサ層を形成することができる。種々のスペーサの幾何学的形状を用いて、ピラーの直線によって規定される狭幅の流路、テーパー付き流路、または部分的に閉じた流路を形成することができる。慎重な設計によって、これらのスペーサを用いて、微小液滴の変形を支援することができ、その後に、微小液滴の分割を実行し、変形した微小液滴に対する操作を実行することができる。同様に、これらのスペーサを用いて、チップのゾーンどうしを物理的に分離して、液滴の構成物間の交差汚染を防止して、液圧下でチップをロード(装荷)する際に液滴の流れを正しい方向に進めることができる。
【0139】
導体層に取り付けたA/C電源を用いて、第1及び第2壁にバイアスをかけて、これらの壁間に電位差を与えることができ;この電位差は0~50ボルトの範囲内が適している。これらのoEWOD構造は、代表的には、400~850nmの範囲内の、例えば550nm、620nm、及び660nmの波長、及び光活性層のバンドギャップを超えるエネルギーを有する電磁放射源と共に用いられる。光活性層は仮想的なエレクトロウェッティング電極位置で活性化することが適切であり、この位置では、使用する放射の入射強度が0.005~0.1Wcm-2の範囲内である。電磁放射源は0.005~1Wcm-2のレベルであり、あるいは0.005Wcm-2超、0.0075Wcm-2超、0.01Wcm-2超、0.025Wcm-2超、0.05Wcm-2超、または0.075Wcm-2超にすることができる。一部の実施形態では、電磁放射源を、0.1Wcm-2未満、0.075Wcm-2未満、0.05Wcm-2未満、0.025Wcm-2未満、0.01Wcm-2未満、0.0075Wcm-2未満、0.005Wcm-2未満、または0.0025Wcm-2未満のレベルにすることができる。
【0140】
電磁放射源が画素化されている場合、これらの電磁放射源は、直接、あるいはLEDまたは他のランプによって照明されるデジタル・マイクロミラーデバイス(DMD)のような反射スクリーンを用いて間接的に、のいずれかで給電される。このことは、仮想的なエレクトロウェッティング電極位置の高度に複雑なパターンを、第1誘電体層上に急速に生成し破壊することを可能にし、これにより、厳密に制御されるエレクトロウェッティング力を用いて、微小流体を 基本的に任意の仮想的通路に沿って精密に進めることを可能にする。こうしたエレクトロウェッティング経路は、第1誘電体層上の仮想的なエレクトロウェッティング電極位置の連続体で構成されるものとして見ることができる。
【0141】
第1及び第2誘電体層は、単一の誘電体材料で構成することができ、あるいは2つ以上の誘電体材料の複合体とすることができる。これらの誘電体層はAl2O3及びSiO2製とすることができ、但しこれらに限定されない。
【0142】
ある構造を、第1誘電体層と第2誘電体層との間に設けることができる。第1誘電体層と第2誘電体層との間の構造は、エポキシ製、ポリマー製、シリコンまたはガラス製、あるいはこれらの混合物製とすることができ、但しこれらに限定されず、平面状の、角度のある、曲面状の、または微小構造化された壁面/面を有する。第1誘電体層と第2誘電体層との間の構造を、上部及び下部の複合壁に接続して、封止されたマイクロ流体デバイスを作製し、このデバイス内に流路及び領域を規定することができる。この構造は、2つの複合壁間のギャップ(間隙)を占めることができる。その代わりに、あるいはそれに加えて、既に壁面を有する成形された基板上に、上記導体及び誘電体を堆積させることができる。
【0143】
図3Bに示すoEWODデバイス100は、代案のoEWOD構成を提供する。図3Bに示すように、このoEWODデバイスは:第1基板104から成る第1複合壁102と、基板104上の導体層106と、光活性層108と、光活性層108上の第1誘電体層110とを具え、第1基板104はガラス製にすることができ、第1導体層106は70~250nmの範囲内の厚さを有し、光活性層108は、導体層106上で400~850nmの波長範囲内の電磁放射によって活性化され、光活性層108は300~1500nmの範囲内の厚さを有する。第1誘電体層110は、20nm未満の厚さを有する連続層として形成される。
【0144】
図3Bに示すデバイス100は第2複合壁112も具え、第2複合壁112は:第2基板114と、基板114上の第2導体層116とを具え、基板114はガラス製とすることができる。第2導体層は透明にすることができる。第2導体層116は、70~250nmの範囲内の厚さを有することができる。第2誘電体層118が第2導体層116上に存在することができ、第2誘電体層118は20nm未満の厚さを有する。第1誘電体層と同様に、第2誘電体層は連続していなければならず、その厚さの実際の下限は製造上の制約によって決まるが、1nm~20nmにすることができる。第1連続誘電体層110の露出面と第2連続誘電体層118の露出面とは、20~180μm離れて配置されて、微小液滴122を包含するように構成されたマイクロ流体空間121を規定する。
【0145】
図1Bは、oEWODデバイス100の代案の実施形態を示し、ここではスペーサ層が別個の材料で形成されず、第1(アクティブ(能動的))基板104内の構造の一部として形成される。第1導体層106、光活性層108、第1誘電体層110、介在結合層124、及び疎水性層126で形成される、oEWODデバイスの副次的な層は、スペーサ構造の壁面を部分的に、あるいは完全に覆うことができる。追加的な実施形態は、デバイス100の代案の構成であり、ここではスペーサ層が第2(パッシブ(受動的))基板114の構造化によって形成される。
【0146】
一部の場合には、第1及び/または第2基板110、114を共に構造化することによって、あるいは図3Aに示すように、第1及び/または第2基板104、114内の構造と、流路壁120のような挿入材料との組合せを用いることによって、スペーサを形成することができる。
【0147】
図3Bに示すように、入射光130を用いて光スプライト・パターン131を与えることができ、光スプライト・パターン131では、入射光130が光活性層108の一部分を照明して、微小液滴122をマイクロ流体空間121内の静止位置に保持する。オイルキャリア相134を、デバイス内の孔136を通して微小液滴122に与えて、主要栄養素及び主要成分を補給して、1つ以上の細胞のような微小液滴122内の内容物を、生きた健康な状態に保つことができる。一部の場合には、オイル相134が、主要栄養素、1つ以上の媒体、及び内容物を、細胞の成長、生存、及び/または増殖用に供給することができる。
【0148】
本発明の種々の追加的態様及び実施形態は、本開示を考慮すれば当業者にとって明らかである。
【0149】
本明細書中に用いる「及び/または」は、規定した2つの特徴または構成要素の各々の、他方を伴う具体的開示または他方を伴わない具体的開示として解釈するべきである。例えば、「A及び/またはB」は、(i)A、(ii)B、及び(iii)A及びB、の各々の具体的開示として、まさに各々が本明細書中に個別に明記されているように解釈するべきである。
【0150】
文脈上で特に断りのない限り、以上に明記されている特徴の説明及び定義は、本発明のいずれの特定の態様または実施形態にも限定されず、記載されている全ての態様及び実施形態に同等に当てはまる。
【0151】
更に、本発明は例としていくつかの実施形態を参照しながら説明してきたが、本発明は開示した実施形態に限定されず、添付した特許請求の範囲に規定する本発明の範囲から逸脱することなしに、代案の実施形態を構成することができることは、当業者の理解する所である。
図1
図2A-2B】
図3A
図3B
【国際調査報告】