(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】非侵襲的脈圧波形測定のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A61B5/022 100Z
A61B5/022 300A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574232
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022040125
(87)【国際公開番号】W WO2023018912
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508032284
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【氏名又は名称】野村 知美
(72)【発明者】
【氏名】アレッシオ タンボリーニ
(72)【発明者】
【氏名】モルテザ ガリブ
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AB01
4C017AC03
4C017DE01
4C017FF08
(57)【要約】
非侵襲的高分解能圧脈波形測定システムのためのシステム及び方法は、提供される。システムは、血圧カフと、血圧カフを特定の圧力レベルに膨張させる空気ポンプと、特定の圧力レベルで高感度信号取得を実行するように構成されている高分解能圧力センサと、信号の絶対基準を測定し、信号をキャリブレートするように構成されている高レンジ圧力センサと、空気ポンプ及びセンサをカフと接続する空気圧チューブと、高分解能圧力センサの基準ポートへの入力として構成されている流体力学的フィルタとを含み得る。流体力学的フィルタは、信号の選択された周波数範囲を減衰させることによって、平均圧力のみを伝送するように構成され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧カフと、
前記血圧カフを特定の圧力レベルに膨張させる空気ポンプと、
特定の圧力レベルで高感度信号取得を実行するように構成されている高分解能圧力センサであって、各高分解能圧力センサは、測定ポート及び基準ポートを含む、前記高分解能圧力センサと、
前記信号の絶対基準を測定し、前記信号をキャリブレートするように構成されている高レンジ圧力センサと、
前記空気ポンプ及びセンサを前記カフと接続する空気圧チューブと、
各高分解能圧力センサの前記基準ポートへの入力として構成されている流体力学的フィルタと
を含み、
前記流体力学的フィルタは、前記信号の選択された周波数範囲を減衰させることによって、平均圧力のみを伝送するように構成されている、
非侵襲的圧脈波形測定システム。
【請求項2】
前記流体力学的フィルタは、抵抗コンポーネント及び容量コンポーネントを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記流体力学的フィルタの前記抵抗コンポーネントは、流れに抵抗を加えるように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記容量コンポーネントは、空気量を溜めることによって、圧力変化を低減するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記容量コンポーネントは、前記抵抗コンポーネントを前記基準ポートに接続するチューブを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記流体力学的フィルタの前記抵抗コンポーネントは、10-200μmの範囲内の内径を有する剛性チューブを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
容量エレメントの弾性は、0.2-2.0MPaの範囲内である、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記血圧カフは、ECGデバイス、iPhone、タブレット、コンピュータ、又は他のデバイスと同期され、それによって、有線或いは無線データの送信を可能にする、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
Bluetooth又はWi-Fiは、前記無線データの送信に採用される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記抵抗コンポーネント及び前記容量コンポーネントは、単一のコンポーネント内で組み合わされる、請求項2に記載のシステム。
【請求項11】
前記抵抗コンポーネントは、オリフィス又は物理フィルタを含む抵抗エレメントを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項12】
前記オリフィスは、固定され、且つ/或いは調整可能である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
容量コンポーネントは、コンプライアント弾性チューブ、小型ダンパーを有するチューブ、又はピストンシリンダを有するチューブを含む、請求項2に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療診断に関し、特に、いくつかの実装形態は、非侵襲的心臓波形測定に関し得る。
【背景技術】
【0002】
心臓病は、米国及び世界において、女性と男性との両方に関して死亡の主要な原因である。心臓病の早期且つ正確な診断は、患者の健康アウトカムを著しく改善し得る。しかしながら、現在、多くの重要な心血管の健康測定は、侵襲的、高価、且つ/或いは長時間の処置を伴う。したがって、進行した疾患進行が生じるまで、心不全などの、重篤な疾患を診断することが困難であり得る。
【0003】
いくつかの重要な測定は、医師が心不全を診断することを可能にする。例えば、圧脈(pressure pulse)波形は、医療専門家が心臓の健康を定量的且つ定性的に評価することを可能にする重要な測定である。典型的な臨床現場では、医療専門家は、ハンドヘルドフォースセンサを使用し、動脈の動径脈動を測定する。訓練されたオペレータは、精度を保証するために測定を実行しなければならない。
【発明の概要】
【0004】
開示される技術の様々な実施形態によれば、非侵襲的圧脈波形測定システムは、提供される。非侵襲的圧脈波形測定システムは、血圧カフと、血圧カフを特定の圧力レベルに膨張させる空気ポンプと、特定の圧力レベルで高感度信号取得を実行するように構成されている高分解能圧力センサであって、各高分解能圧力センサは、測定ポート及び基準ポートを含む、高分解能圧力センサと、信号の絶対基準を測定し、信号をキャリブレートするように構成されている高レンジ圧力センサと、空気ポンプ及びセンサをカフと接続する空気圧チューブと、各高分解能圧力センサの基準ポートへの入力として構成されている流体力学的フィルタとを含み得る。
【0005】
いくつかの実施形態では、流体力学的フィルタは、抵抗コンポーネント及び容量コンポーネントを含み、流体力学的フィルタは、信号の選択された周波数範囲を減衰させることによって、平均圧力のみを伝送するように構成されている。流体力学的フィルタの抵抗コンポーネントは、流れに抵抗を加え、それによって、流れを遅くするように構成され得る。いくつかのケースでは、流体力学的フィルタの抵抗コンポーネントは、10-200μmの範囲内の内径を有する剛性チューブを含む。容量コンポーネントは、空気量を溜めることによって、圧力変化を低減するように構成されている。いくつかの実施形態では、容量エレメントの弾性は、0.2-2.0MPaの範囲内である。容量コンポーネントは、抵抗コンポーネントを基準ポートに接続するチューブを含み得る。
【0006】
開示される技術の他の特徴及び態様は、例として、開示される技術の実施形態に従った特徴を示す添付の図面と併せて考慮される、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。要約は、本明細書に説明される任意の発明の範囲を限定することを意図されず、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ規定される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示は、1つ又は複数の様々な実施形態に従って、以下の図を参照して詳細に説明される。図は、例示のみの目的のために提供され、単に典型的或いは例示的な実施形態を描写する。
【
図1】
図1は、本明細書に開示されるシステム及び方法による、変形血圧カフシステムの一実施例を示すダイアグラムである。
【
図2A】
図2Aは、本明細書に開示されるシステム及び方法による、固定オリフィスを有する抵抗コンポーネントの一実施例を示すダイアグラムである。
【
図2B】
図2Bは、本明細書に開示されるシステム及び方法による、インラインフィルタを有する抵抗コンポーネントの一実施例を示すダイアグラムである。
【
図2C】
図2Cは、本明細書に開示されるシステム及び方法による、縮小された内径を有する抵抗コンポーネントの一実施例を示すダイアグラムである。
【
図2D】
図2Dは、弾性チューブを含む容量コンポーネントの概略図である。
【
図2E】
図2Eは、ピストンシリンダを有するチューブを含む容量コンポーネントの概略図である。
【
図3】
図3は、本明細書に開示されるシステム及び方法による、脈圧(pulse pressure)波形測定方法の一実施例を示すフローダイアグラムである。
【
図4A】
図4Aは、本明細書に開示されるシステム及び方法による、若年患者における左室の圧力-容積(「PV」)ループの例示的なプロットである。
【
図4B】
図4Bは、本明細書に開示されるシステム及び方法による、高齢患者における左室の圧力-容積(「PV」)ループの例示的なプロットである。
【
図5】
図5は、本明細書に開示されるシステム及び方法による、左室拡張末期圧(「LVEDP」)リスク予測方法の一実施例を示すフローダイアグラムである。
【
図6】
図6は、本明細書に開示されるシステム及び方法による、特定の圧力レベル及び3つの圧力ホールドで再構成されたエンベロープ関数の例示的なプロットである。
【
図7】
図7は、本明細書に開示されるシステム及び方法による、脈幅変動後の収縮期BP(「SBP」)及び拡張期BP(「DBP」)の変化を推定するためのエンベロープ関数の例示的なプロットである。
【0008】
図は、網羅的ではなく、本開示を、開示される正確な形態に限定しない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示されるシステム及び方法の実施形態は、非侵襲的である上に正確な心臓測定を実行するために使用され得る変形血圧(「BP」)カフを提供し得る。本明細書に開示されるシステム及び方法は、圧脈波形、左室拡張末期圧(「LVEDP」)測定、圧力-容積(「PV」)ループ測定、及び他の重要な心臓測定を実行するために活用され得る。本明細書におけるシステム及び方法は、変形BPカフシステム、測定を実行するための方法、リスク評価測定、及びキャリブレーション方法に関する。
【0010】
(非侵襲的脈圧波形測定)
変形血圧(「BP」)カフは、圧脈波形を測定するために使用され得る。いくつかの実施形態では、変形BPカフシステムは、静圧センサの代わりに、且つ/或いは静圧センサに加えて、動圧センサを含み得る。高分解能圧力センサは、特定の圧力レベルでの高感度信号取得のために含まれ得る。高分解能圧力センサは、測定ポート及び基準ポートを有する差圧センサを含んでもよく、圧力センサは、その測定ポートと基準ポートとの間の差を測定する。高レンジ絶対圧センサは、信号をキャリブレートするために使用され得る。空気バルブ又はフィルタは、基準ポートでの特定の圧力レベルを維持するために含まれ得る。圧力レベルを維持することは、高分解能圧力センサがその通常の範囲内で動作することを可能にし得る。測定中、圧力センサは、信号を同時に取得し得る。
【0011】
高レンジ圧力センサは、大気圧に関して測定されることがあり、高分解能圧力センサは、可変基準圧に関して測定されることがある。圧力センサは、BPカフシステムに並列に接続され得る。いくつかの実施形態では、高レンジ及び高分解能圧力センサは、それぞれ、測定値及び信号の大きさのオーダーの動作範囲を有してもよい。
【0012】
制御システムは、本明細書に説明される実施形態において採用されない。そのような制御システムは、空気バルブを動的に制御し、適切な圧力でバルブを開閉し、信号が正しく捕捉されることを保証するために使用され得る。そのようなシステムでは、圧力変動は、致命的な故障、信号ドリフト、及び貴重な情報の損失をもたらすセンサの飽和を引き起こし得る。これらの理由に関して、空気バルブシステムは、本明細書に説明される実施形態において存在しない欠点を提起し得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、パッシブ且つ自己調整可能な非侵襲的脈圧波形測定システムは、抵抗及び容量コンポーネントを有する膨張可能な加圧エアチャンバ内の高分解能圧力センサを含んでもよい。油圧フィルタリングは、所望の周波数のみを通過する信号をパッシブに生成するために、幾何学的条件を介して実装され得る。いくつかの実施形態では、空気バルブは、流体力学的フィルタに置き換えられてもよい。流体力学的フィルタは、固定され、或いは調整可能なオリフィス、インラインフィルタ、及び/又は変形BPカフシステムに含まれる残りのチューブのIDよりもかなり小さい内径(「ID」)を有するチューブを含み得る。
【0014】
流体力学的フィルタは、抵抗チューブ及びコンプライアントチューブの連続的な組み合わせを使用して実現され得る。抵抗チューブは、このエレメントを横切って移動し得る流れを制限する流れ抵抗を生成する。コンプライアントチューブは、所望のコンプライアンス率で注入量を溜める。この油圧システムは、RCローパスフィルタの電気的等価を生成する。そのような油圧システムでは、回路は、コンプライアントエレメントが抵抗エレメントを通して充填するのに必要である時間として理解され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、流体力学的フィルタは、抵抗コンポーネント及びコンプライアントコンポーネントを含む。抵抗コンポーネントは、流れに抵抗を加え、それによって、流れを遅くするように構成されており、コンプライアントコンポーネントは、空気量を溜めることによって、圧力変化を低減するように構成されている容量コンポーネントを含む。そのような実施形態では、コンプライアントコンポーネントは、抵抗コンポーネントを基準ポートに接続するチューブを含んでもよい。さらに、流体力学的フィルタの抵抗コンポーネントは、10-200μmの範囲内の内径を有する剛性チューブを含み得る。いくつかのケースでは、容量エレメントの弾性は、0.2-2.0MPaの範囲内である。流体力学的フィルタは、基準ポートへの入力接続を形成し、したがって、基準ポートへの流れを調整し得る。この構成は、滑らかな信号をもたらす安定した圧力をシステムに提供し得る。
【0016】
図1は、高精度センサのためのパッシブ構成を有するシステムの一実施例を示す。
図1に示されるように、システムは、BPカフ100を含み得る。システムはまた、高分解能圧力センサ114のための空気圧接続部106と、容量コンポーネント110と直列の抵抗コンポーネント108を含むフィルタ112と、基準ポート120とを含み得る。システムはまた、空気ポンプ102と、BPモニタ104とを含み得る。空気ポンプ102は、カフ100を膨張させるために使用され得る。
【0017】
図2A、
図2B、及び
図2Cは、固定オリフィス132を有するチューブ130と、インラインフィルタ134を有するチューブと、ID138よりも小さいID136を有するチューブとを含む抵抗コンポーネント108の概略図である。
図2Aに示されるように、フィルタ134は、オリフィス132を含み得る。
図2Bに示されるように、オリフィス132は、基準ポート120に接続するチューブ130内に構成され得る。さらなる実施形態では、オリフィスは、調整可能であってもよい。
図2Bに示されるように、基準ポート120に接続するチューブ130は、インラインフィルタ134と共に構成され得る。
図2Cに示されるように、基準ポート120に接続するチューブ130は、チューブのID138に対して縮小された直径を有する部分、すなわち、小さいID136を含み得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、フィルタ134は、固定され、或いは調整可能なオリフィス132を含んでもよい。オリフィス132は、残りのBP圧力カフシステムと基準ポート120との間を流れ得る空気の量を制御し得る。オリフィス132を横切る空気の流れは、圧力差によって駆動される。バルブの代わりにオリフィスを使用して区画間の流れを制限することは、平均信号を維持しながら圧力振動を平滑化することをもたらし、基準ポート側でローパスフィルタとして機能する。
【0019】
図2D及び
図2Eは、弾性チューブ(
図2D)及びピストンシリンダを有するチューブ(
図2E)を含む容量コンポーネント110の概略図である。
【0020】
重要な測定は、測定ポートで測定された信号と基準ポートで測定された信号との間の差であり得る。したがって、出力信号は、ハイパスフィルタリングされた信号に相当する。さらに、自己調整基準ポート信号はまた、中央出力信号を維持し得る。空気バルブとは対照的に、オリフィスを使用することは、基準ポートが、平均圧力信号にとどまることを可能にする。平均圧力信号を維持することは、測定された脈拍の偏りをなくし、高分解能トランスデューサを用いて中央信号を維持するために重要である。
【0021】
いくつかの実施形態では、流体力学的フィルタは、小さいIDを有するチューブを含む抵抗コンポーネントを含んでもよい。そのような実施形態では、抵抗コンポーネントは、10-200μmの範囲内の内径を有する実質的に剛性のチューブを含んでもよい。チューブのIDは、残りのBP圧力カフシステム及び基準ポートに接続されたチューブのIDよりも、直径でかなり小さくてもよい。小さいIDを有するチューブは、平均圧力のみが伝送されるフィルタとして効果的に機能し、流れに依存したローパスフィルタを基準ポートに生成する。フィルタの特定のカットオフ周波数は、流体力学の原理と、測定システム及び信号の特性とを使用して設計される。フィルタリングされた信号は、体積流量と基準ポート側の材料特性との組み合わせに依存し得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、システムは、市販の腕カフBPシステムを使用して設計されてもよい。システムは、異なる動作範囲を有する複数の圧力センサを含み、圧力波形を高精度で測定し、且つキャリブレートするように変形され得る。高分解能圧力センサは、正確な信号測定のために使用され得る。各高分解能圧力センサは、測定ポート及び基準ポートを含み得る。高レンジ圧力センサは、絶対基準及び信号キャリブレーションのために使用され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、システムは、表面に近い動脈を有し、血流の短時間の減少又は停止に耐え得る体内の任意の位置に適用され得る。可能性のある位置は、上腕、橈骨、大腿、及び後脛骨を含み得るが、それらに限定されない。
【0024】
圧力センサは、末梢の圧脈を測定し得る。流体-固体相互作用の原理によると、カフが膨張される圧力は、動脈における圧力-流れ挙動を変える。次いで、組み合わせ波形解析は、心血管の健康を非侵襲的に評価するために使用され得る。末梢の脈波形は、測定されることがあり、次いで、中心波形を推定するために変換され得る。
【0025】
クローズドシステムにおける圧力及び流速は、ベルヌーイの式(下記)によって与えられ得る。上腕カフが膨張されるとき、外部に印加される力は、動脈の半径を変え、最終的にシステムの圧力流の割合を変化する。より低い極値(extreme)では、最小DBPを下回る圧力を動脈に印加することは、圧力流挙動への変化なし或いは最小限の変化を引き起こし得る。より高い極値では、動脈における最大SBPを上回る圧力は、動脈の虚脱及び血流の停止を引き起こす。これらの2つの極値の間の任意の圧力は、圧力流の関係に比例した変化を生成し、やはりベルヌーイの式によって与えられ得る。したがって、2つの異なるホールド圧力における測定された波形を比較することは、システムの圧力-流れ特性の導出を可能にする。波形の定量的且つ定性的比較はまた、実行され得る。プロット方法はまた、波形対時間又は波形対波形などに使用され得る。
【0026】
弾性動脈における圧力流れ関係を反映する捕捉された信号は、患者をさらに特徴付け得るさらなる波形を導出するために使用され得る。流体力学的原理は、流れ、速度、及び半径方向の動きを含むが、それらに限定されない波形を導出することを可能にする。流体力学的原理は、静的システムのための圧力、速度、力、及び容積などのパラメータに関する。これらのシステムを複数の測定点で解析することは、取り調べられたパラメータを求めることを可能にする。例えば、速度は、DBP及び最高SBPのホールド圧力波形を使用することによって求められてもよい。最高SBP波形は、流れを完全に遮断し、絶対圧の読み取り値を与える。DBP波形は、圧力と流れとの組み合わせを表す。したがって、結果として生じる流れは、DBPのホールド圧力中に測定され得る。同様の導出は、他のホールド圧力の組み合わせに適用され得る。取得された結果の重要性は、捕捉された波形の基礎となる物理学に依存し得る。
【0027】
実用的な用途は、波形の同期を必要とし得る。解決策は、ECGを使用して、或いは最大dP/dt、開始、及びディクロティックノッチ(dicrotic notch)を含む心周期中の既知のタイミングイベントを使用して、異なる波形の時間同期を含み得る。このカフは、ECGと共にBluetooth(登録商標)又はWi-Fiなどの、他のデバイスと有線或いは無線の同期を有し得る。
【0028】
図3は、非侵襲的脈圧波形測定の一実施例を示す。上述されたように、変形BP圧力カフシステムは、上腕動脈における圧力脈拍を記録するために使用され得る。測定を実施するために、上腕BPカフは、患者の腕の周りに膨張され得る。ポンプシステムは、カフを膨張させるために使用され得る。第1の操作302は、測定プロセスを開始することを含み得る。第1の操作302の時点で、高レンジ圧力センサ及び高分解能圧力センサの出力は、両方ゼロであり得る。圧力センサは、患者の収縮期BP(「SBP」)及び拡張期BP(「DBP」)を測定するために使用され得る。第2の操作304は、BPを高レンジ圧力センサで測定することを含み得る。第2の操作304の時点で、高レンジセンサの出力は、患者に関する全てのBP範囲であることがあり、高分解能圧力センサの出力は、ゼロであることがある。
【0029】
第3の操作306として、目標圧力及びホールド圧力と、時間とは、設定され得る。例えば、カフは、100mmHgの圧力に膨張されるように設定されてもよく、40秒間保持されてもよい。他の圧力及びタイミングはまた、可能である。第3の操作306の時点で、高レンジ圧力センサと高分解能圧力センサとの両方の出力は、ゼロであり得る。カフの膨張圧基準値及び/又は目標値は、伝統的な血圧腕カフ測定を実行することによって取得され得る。例えば、ホールド圧力は、DBPにおいて、DBPを下回って、SBPにおいて、SBPを上回って、且つ/或いはMAPにおいて設定されてもよい。これらの値の典型的な生理学的範囲は、以下の通り:DBPに関して40-120mmHg、MAPに関して50-150mmHg、SBPに関して75-225mmHgである。他の圧力はまた、可能である。例えば、極端に具合の悪い対象者は、これらの範囲外の値を有し得る。患者固有の値に関して、特定の圧力レベルは、採用され、ホールド圧力の選択を導き得る。高分解能圧力センサをその動作範囲内に維持するために、圧力は、基準ポートに印加され得る。
【0030】
第4の操作308として、カフは、膨張され、所与の圧力で保持され得る。例えば、カフは、特定のホールド圧力のうちの1つであり得るP目標の圧力に膨張されてもよい。第4の操作308の時点で、高レンジセンサ出力は、絶対圧値であることがあり、高分解能圧力出力は、ゼロであることがある。第5の操作310として、次いで、カフは、目標圧力に膨張され得る。第5の操作310の時点で、高レンジセンサは、低い精度を有する絶対圧の脈拍の出力を有し得る。高分解能センサは、高い精度を有する相対圧の脈拍の出力を有し得る。第6の操作312として、カフは、収縮し、測定期間を終了し得る。第6の操作312の時点で、高及び高分解能圧力センサの各々は、ゼロの出力を有し得る。複数のホールド圧力に関して、操作3-6は、繰り返され得る。操作5からの出力は、キャリブレートされた高精度の脈拍出力のために組み合わされ得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、波形捕捉の比較は、低いホールド圧力と、より高い圧力極値を上回る高いホールド圧力とを使用して実行されてもよい。例えば、低いホールド圧力に関して、圧力は、DBPにおいて、或いはDBPの直下に設定されてもよい。高いホールド圧力に関して、圧力は、SBPを上回って(「最高SBP」)設定され、血液の流れを遮断してもよい。例えば、圧力は、約SBP+35mmHgに設定されてもよい。より低い極値では、波形は、静圧と流速との組み合わせを表し得る。より高い極値では、波形は、圧力特性のみを表示する。最高SBPのホールド圧力において、鎖骨下動脈の流れの停止は、上行大動脈の壁の穴から読み取られた静圧を表すための最も近い波形になる。このホールド圧力は、中心動脈における圧力波形を直接測定することを可能にする。最高SBPとDBPとの間のそれぞれの圧力波形は、心臓の健康及び疾患評価のための圧力-圧力(「PP」)ループにおいてプロットされ得る。これは、健康評価に適用される圧力-速度(「PV」)ループの作成を可能にする。
【0032】
(圧力-速度(「PV」)ループの実施形態)
上で議論されたように、上腕動脈での流れは、平均の流れに関するベルヌーイの式で特徴付けられ得る。
【数1】
ここで、P
Bは、上腕動脈での圧力であり、ρは、流体密度であり、u
bは、上腕動脈での流速であり、P
Tは、大動脈弓内の全圧である。
【0033】
最高SBPのホールド圧力(P
SS)において、上腕動脈は、完全に閉塞され、u
b=0をもたらす。したがって、カフでの測定された圧力は、大動脈弓内の圧力である。そのように、以下である。
【数2】
ここで、P
SSは、最高SBPのホールド圧力である。
【0034】
DBPの圧力ホールド(P
D)において、圧平(applanation)条件は、上腕動脈における圧力を測定する。上腕動脈における圧力は、以下に示されるように、ベルヌーイの式に適合する。
【数3】
ここで、P
Dは、DBPのホールド圧力である。
【0035】
上記を大動脈弓の全圧を介して等式化することと、速度(u
B)を求めることとは、以下を与える。
【数4】
【0036】
最高SBPの圧力(PSS)対DBP速度(uD)をプロットすることは、(「PV」)ループを与える。データは、任意の中間ステップでプロットされ、解析され得る。例えば、SBPの圧力対DBPの圧力は、解析されてもよい。
【0037】
図4は、高齢(
図4A)及び若年(
図4B)患者のPVループ比較の実施例を示す。PVループの各々は、異なる特徴及び形状を有し、各々は、上昇の収縮期部分の傾きをモデル化する破線402を含む。傾きは、年齢によって患者を明確に区別し得るので、診断に有用である。各々はまた、比例線である実線404を含む。他のパラメータは、ループ面積、曲率、陥入(indentation)、ピークシフト、及び他のパラメータの組み合わせを含む。
【0038】
(左室拡張末期圧(「LVEDP」)リスク予測の実施形態)
LVEDPは、心不全のリスクを予測し、診断し、且つ/或いは評価するために使用される重要な臨床測定値である。現在、心不全の閾値は、約18mmHgのLVEDP測定値である。LVEDPは、貴重な診断測定値であるので、LVEDPを測定するための非侵襲的方法は、臨床医が心不全のリスクを、より早期且つ正確に予測することを可能にし得る。
【0039】
非侵襲的脈波形解析及び分類アルゴリズムは、LVEDPリスク予測を形成するために使用され得る。
【0040】
図5は、いくつかの操作を含む非侵襲的LVEDPリスク予測方法500の一実施例を示す。第1の操作502は、患者の測定を行うことを含み得る。第1の操作502のサブ操作504は、患者の身長を測定することを含み得る。第1の操作502のサブ操作506は、患者の体重を測定することを含み得る。他の患者の測定はまた、行われ得る。第2の操作508は、患者の病歴を取得することを含み得る。第2の操作508に対するサブ操作510は、患者の手術を記録することを含み得る。心臓手術などの、患者の手術は、記録され得る。処置及び他の治療などの、他の医療情報はまた、記録され得る。第2の操作508に対するサブ操作512は、患者の状態を記録することを含み得る。患者の状態は、心不全、心筋梗塞、及び心筋症などの心血管状態の既知の例を含み得る。他の心臓状態、併存疾患状態、及び/又は一般的な健康状態は、記録され得る。遺伝的素因、家族歴、生活要因及び他の情報などの他の患者情報はまた、記録され得る。
【0041】
第3の操作516は、併存疾患(comorbidity)スコアを形成するために、記録された患者の測定と病歴とを組み合わせることを含み得る。
【0042】
第4の操作518は、市販且つ/或いは従来の上腕カフ又はいくつかの他の測定手段を使用して、患者のBPを、SBP及びDBPとして測定することを含み得る。
【0043】
第5の操作520は、患者の脈波形を測定することを含み得る。脈波形は、前述の実施形態に従った変形血圧カフを使用して測定され得る。例えば、特定の圧力に膨張され、それらの圧力を保持し、波形を設定圧力で捕捉する変形血圧カフは、使用されてもよい。ホールド圧力は、DBP、SBP、MAP、及び/又はsSBPを含み得る。いくつかの実施形態では、動脈を通る血液の流れを完全に遮断するsSBPは、使用されてもよい。膨張圧は、例えば、約100mmHgであってもよい。ホールド時間は、例えば、約40秒であってもよい。
【0044】
第5の操作520に対するサブ操作522は、呼吸周期を通して圧力振幅変動を考慮するのに十分な長さの時間、脈波形測定を実行することを含み得る。測定された振幅は、呼吸周期の呼気後段階で最も高いことがある。
【0045】
第6の操作524は、SBP及びDBP測定値を使用して、測定された脈波形をキャリブレートすることを含み得る。波形は、BP測定結果を利用する圧力単位でキャリブレートされ得る。キャリブレーション方法は、本開示の以下のセクションにおいて開示される方法を含み得る。
【0046】
第7の操作526は、特徴抽出のために複数の呼気後波形を選択することを含み得る。呼気後波形は、これらの波形が呼吸周期を通して最も高いLVEDP読み取り値をトラックし得るので、選択され得る。対象の抽出された特徴及び/又はパラメータは、増大指数(「AIX」)、収縮期脈面積、及び/又は収縮期BPを含み得る。他の所望の且つ/或いは関連する特徴及び/又はパラメータはまた、抽出されてもよい。
【0047】
第8の操作528は、脈波形における対象の特徴及び/又はパラメータを測定すること、及び/又は抽出することを含み得る。第8の操作528に対するサブ操作530は、SBP或いは収縮期脈面積を抽出することを含み得る。第8の操作528に対するサブ操作532は、AIXを抽出することを含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、分類アルゴリズムは、リスクを評価するために使用され得る。アルゴリズムの入力は、収縮期脈面積、増大指数、及び患者特徴である体重、及び併存疾患スコアのであり得る。入力及びアルゴリズムを使用して、障害閾値以上であるLVEDPを有する確率は、生成され得る。一実施形態では、障害閾値は、約18mmHgに設定されてもよい。別の実施形態では、閾値は、約15mmHgに設定されてもよく、或いはアルゴリズムを訓練するときに選択された臨床的関連の別の値に設定されてもよい。このプロセスは、n回の呼吸周期における呼気後脈拍に関して繰り返され、n個の確率予測を生成し得る。複数の測定は、行われ得る。例えば、一実施形態では、2つ又は3つの測定は、行われてもよい。複数の個々の脈の確率は、アンサンブル方法論を使用して単一のリスク予測に組み合わされ得る。予測は、単一のLVEDPリスク予測を生成するために一緒に処理され得る。アンサンブル方法論は、確率を平均化することを含むことがあり、且つ/或いは確率を集約する、より複雑な方法を含むことがある。
【0049】
したがって、第9の操作534は、個々のLVEDPリスクを予測するために各脈に関する選択された特徴及び/又はパラメータを入力することを含み得る。選択された特徴及び/又はパラメータは、収縮期脈面積、AIX、患者の体重、及び併存疾患スコアを含み得る。他のパラメータ及び/又はパラメータの組み合わせはまた、可能である。同様に、第10の操作536は、患者のLVEDPリスク予測のために個々の脈リスク予測を組み合わせることを含み得る。
【0050】
(キャリブレーションの実施形態)
BPカフ測定は、カフを介して測定される末梢BPが、健康な患者では中心BPをトラックする傾向があるので、有用な臨床測定として役立ち得る。残念ながら、心血管問題を経験する患者では、末梢BPと中心BPとの間の関係は、悪化し得る。患者における心血管問題の重症度は、末梢-中心BPの関係が悪化する度合いに影響し得る。しかしながら、BPカフ測定が、実行するのに迅速、非侵襲的、且つ安価であるので、BPカフ測定は、心血管問題を経験している患者にとって依然として重要な診断ツールである。末梢-中心BPの関係がそのような患者では悪化するが、キャリブレーション方法は、例えば、上腕BPカフで実行される末梢BP測定が、重度の問題を経験している患者でさえも中心BP測定のプロキシとして役立つことを可能にし得る。
【0051】
前述の実施形態において説明されたシステムなどの、変形BPカフシステムは、末梢BPを測定するために使用され得る。末梢BPは、呼吸によって引き起こされた圧力変動に起因して、いくつかの呼吸ホールド周期にわたって測定され得る。変形BPカフシステムを使用して測定された非侵襲的脈信号は、患者における中心BPの大きさをトラックするためにキャリブレートされ得る。
【0052】
エンベロープ関数は、末梢BP測定を補正し、信号をキャリブレートするために使用され得る。エンベロープ関数は、測定位置での脈幅とカフ圧との間の関係を含み得る。測定位置は、動脈であり得る。エンベロープ関数は、複数の呼吸ホールドにわたってカフ圧に対応する脈幅を測定することによって構築され得る。
【0053】
キャリブレーション方法は、いくつかの操作を含み得る。第1の操作は、従来且つ/或いは市販のオシロメトリックカフを使用して、収縮期血圧(「SBP」)、拡張期血圧(「DBP」)、及び平均血圧(「MAP」)の形態で末梢血圧を測定することを含み得る。これらの測定された値は、正確でないことがある。具体的には、これらの測定された値は、呼吸によって引き起こされた振幅変動に起因して、且つ/或いは他の誤差に起因して、生体内で行われた測定をトラックしないことがある。
【0054】
第2の操作は、変形BPカフを使用することを含み得る。変形BPカフは、前述の実施形態において説明されたように、高分解能圧力センサ及び高レンジ圧力センサを含む変形BPシステムであり得る。第2の操作は、変形BPカフを、設定圧力値に膨張させることを含み得る。脈拍は、その圧力値で記録され得る。BPカフは、設定圧力値の範囲にわたって膨張され得る。脈拍は、各圧力値に関して記録され得る。第2の操作は、呼吸によって引き起こされる圧力変動を考慮するために、複数の呼吸ホールドにわたって操作を行うことを含み得る。各呼吸ホールドに関して、測定された波形は、解析され、信号脈幅を、変形BPカフの設定圧力と比較し得る。測定は、エンベロープ関数のプロキシを再構成するために、複数のホールドにわたって行われ得る。例えば、測定は、2回、3回、又はそれ以上の呼吸ホールドにわたって行われてもよい。
【0055】
第3の操作は、第2の操作中に行われた測定を使用し、パラメータを計算し、呼吸変化に起因した圧力変動を補正し、最終的に末梢測定値を中心測定値にキャリブレートすることを含み得る。これは、末梢測定値を補正するために必要とされるパラメータを導出するためにエンベロープ関数を使用することによって実現され得る。
【0056】
図6はまた、BP測定値及び3つの圧力ホールドを用いて再構成されたエンベロープ関数の一実施例を示す。3つの圧力ホールドは、DBP、MAP、及び最高収縮期BP(「sSBP」)である。DBPの圧力ホールドに関して、変形BPカフは、最小限の圧力で膨張され、血液が、実質的に妨げられない動脈を通して流れることを可能にした。MAPの圧力ホールドに関して、変形BPカフは、MAPに膨張された。sSBPのホールドに関して、変形圧力カフは、動脈を通る任意の血液の流れを効果的に遮断するために、SBPの圧力を上回って膨張された。カフ圧は、3つのホールド値に関する破線の縦線として
図6に示される。3つのホールド値は、DBPホールド608、MAPホールド610、及びsSBPホールド612を含む。
【0057】
図6はまた、各ホールド圧力において測定された個々の記録脈拍を示す。
図6は、DBPホールドに関する個々の脈拍602、MAPホールドに関する個々の脈拍604、及びsSBPホールドに関する個々の脈拍606を示す。
図6の実施例に示されるように、複数の脈拍は、各圧力ホールドに関して記録され得る。個々の脈拍602、604、606の脈幅は、圧力センサで測定され得る。
図6に示される実施例では、脈幅は、ボルト(V)で報告される。これらの脈幅測定値はまた、他の圧力単位に変換され得る。
【0058】
上で議論されたように、呼吸は、中心BPにおいてかなりの変動を引き起こし得る。カフ圧力ホールドからの電圧ベースの信号は、カテーテル大動脈信号と全く同様に呼吸変動を示し得る。したがって、変形BPカフ測定によって報告されたBP値は、平均値であることを想定され得る。脈信号は、呼吸パターンにわたってSBP値及びDBP値を調整し、測定された圧力信号を正しくスケーリングすることによって、圧力単位にキャリブレートされ得る。脈拍のセグメント内の各個々の脈拍に関して、セグメントの平均脈幅からの脈幅差は、呼吸変動に関するSBP値及び/又はDBP値を補正するために使用され得る。
【0059】
例えば、DBP値を末梢DBPから中心DBPに補正するモデルは、エンベロープ関数から導出されたパラメータを使用して、以下によって与えられる。
【数5】
ここで、A
d/A
mは、DBP対MAPにおける脈幅間の比であり、DBP
cuff及びMAP
cuffは、それぞれ、カフBP読み取り値によって報告されたDBP及びMAPであり、m
1、m
2、及びbは、相関のために最適化された係数である。
【0060】
SBP値は、脈波形信号において測定可能な進行波ピーク及び反射波ピークを使用して補正され得る。上腕カフに関して、これらの特徴を示す可能性のあるホールド圧力は、sSBPである。補正されたSBPは、以下によって与えられ得る。
【数6】
ここで、SBP
corrは、中心BPをトラックするための補正されたSBP値であり、SBP
cuffは、SBPカフ測定読み出し値であり、P
1は、収縮期における第1のピークのピーク圧であり、P
2は、収縮期における第2のピークのピーク圧であり、m
1及びbは、相関のために最適化された係数である。
【0061】
線形エンベロープ関数モデルは、以下の閉形式の方程式において示されるように、実際の圧力を計算するために使用され得る。
【数7】
ここで、P
adjは、呼吸調整圧であり、P
calibは、BPの報告された値であり、ΔPAは、平均からの脈幅差であり、slope
pは、特定の圧力(slope
DBP又はslope
SBP)のエンベロープ関数の傾きである。圧力は、SBP又はDBPのいずれかであってもよい。
【0062】
脈拍のキャリブレートされていないセグメントでは、脈拍のセグメント内の全ての脈拍に関して前述の計算を繰り返し、信号のスケーリング方法論を利用することによって、全ての脈拍は、呼吸パターンを反映するSBP及びDBP値でキャリブレートされ得る。提起されたモデルは、測定点間の線形関係と、所与の対象者に関する固定されたエンベロープ関数とを想定する。より多くのホールド圧力と共に、より詳細なエンベロープ関数は、再構築されることができ、モデルの精度を高め得る。キャリブレーションは、SBP及び/又はDBPに独立して適用され得る。
【0063】
図7は、脈幅変動後のSBP及びDBPの変化を推定するために使用されるエンベロープ関数の一実施例を示す。
図6のように、圧力カフホールドは、破線の縦線によって表される。
図7は、DBPの圧力カフホールド値608、MAPの圧力カフホールド値610、及びSBPの圧力カフホールド値700を示す。
図7の右下における矢印708は、平均脈幅からの脈幅偏差を示す。矢印708の右上の矢印706は、SBP上昇を示す。fの左における矢印704は、DBP上昇を示す。次いで、エンベロープ関数702は、呼吸によって引き起こされ得る脈幅の変動後のSBP及びDBPの変化を推定するために使用され得る。
図7は、推定710を示す。
図7は、単に例示的なものである。
図7を参照して上述された方法論は、説明された必要な情報が取得される場合、異なるデバイス、閾値条件、及び量で実行されてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、呼吸変動を組み込むキャリブレーション方法はまた、心臓病学における診断ツールとして役立ち得る。例えば、奇脈(pulsus paradoxus)の状態は、吸気中に約10mmHgよりも大きいSBPの低下として規定される。この状態は、重度の急性喘息又は慢性閉塞性肺疾患などの心タンポナーデ又は右室の伸展中に観察され得る。したがって、キャリブレーション方法の一実施形態は、約10mmHgの閾値を設定することを含み得る。
【0065】
個々の実施形態の1つ又は複数において説明された様々な特徴、態様、及び機能性は、それらが説明される特定の実施形態へのそれらの適用性において限定されないことを理解されたい。代わりに、それらは、そのような実施形態が説明されるか否か、及びそのような特徴が説明された実施形態の一部であるとして提起されるか否かにかかわらず、単独で或いは様々な組み合わせにおいて、1つ又は複数の他の実施形態に適用され得る。したがって、本出願の広さ及び範囲は、任意の上述された例示的な実施形態によって限定されるべきではない。
【0066】
本明細書において使用される用語及び語句と、その変形とは、特に明示的に記載されない限り、限定的なものと対照的に、オープンエンドなものとして解釈されるべきである。前述の実施例として、用語「含む(including)」は、「限定なしに、含む(including, without limitation)」などを意味するものとして読まれるべきである。用語「実施例」は、議論における項目の例示的な例を提供するために使用され、その網羅的或いは限定的なリストではない。用語「a」又は「an」は、「少なくとも1つ」、「1つ又は複数」など、及び「従来の」、「伝統の」、「通常の」、「標準の」、「既知の」などの形容詞を意味するものとして読まれるべきである。同様の意味の用語は、説明された項目を所与の期間に限定し、或いは所与の時点で入手可能な項目に限定するものとして解釈されるべきではない。代わりに、それらは、現在又は将来の任意の時間に利用可能或いは既知であり得る従来技術、伝統技術、通常技術、又は標準技術を包含するように読まれるべきである。本明細書が、当業者にとって明らか或いは既知であり得る技術に言及する場合、そのような技術は、当業者にとって現在又は将来の任意の時間に明らか或いは既知である技術を包含する。
【0067】
「1つ又は複数の」、「少なくとも」、「が、それらに限定されない」、又はいくつかの例における他の同様の語句などの広義の単語及び語句の存在は、そのような広義の語句が欠如し得る例において、より狭いケースが意図され、或いは必要とされることを意味するように読まれるべきではない。用語「コンポーネント」の使用は、コンポーネントの一部として説明され、或いは特許請求される態様又は機能性が共通のパッケージにおいて全て構成されていることを暗示しない。実際、コンポーネントの様々な態様の任意又は全て、制御ロジックか或いは他のコンポーネントかは、単一のパッケージにおいて組み合わされることがあり、或いは別々に維持されることがあり、さらに複数のグループ化又はパッケージにおいて、或いは複数の位置にわたって分散されることがある。
【0068】
さらに、本明細書に記載される様々な実施形態は、例示的なブロックダイアグラム、フローチャート、及び他の図に関して説明される。本明細書を読んだ後、当業者に明らかになり得るように、示された実施形態及びその様々な代替は、示された実施例への限定なしに実装され得る。例えば、ブロックダイアグラム及びそれらに付随する説明は、特定のアーキテクチャ又は構成を強制するものとして解釈されるべきではない。
【0069】
特許請求の範囲を含む本開示を通して使用される、用語「実質的に(substantially)」、「おおよそ(approximately)」、及び「約(about)」は、処理における変動に起因してなどの、小さい変動を説明し、考慮するために使用される。例えば、それらは、±2%以下など、±1%以下など、±0.5%など、±0.2%以下など、±0.1%など、±0.05%以下などの、±5%以下を指し得る。
【国際調査報告】