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特表2024-530395エレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】エレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20240814BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240814BHJP
   F03H 99/00 20090101ALI20240814BHJP
   F03H 1/00 20060101ALI20240814BHJP
   H01J 1/304 20060101ALI20240814BHJP
   H01J 9/02 20060101ALI20240814BHJP
   H01J 27/26 20060101ALI20240814BHJP
   H05H 1/54 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
B05B5/025 A
B82Y40/00
F03H99/00 C
F03H1/00 A
F03H1/00 Z
H01J1/304
H01J9/02 B
H01J27/26
H05H1/54
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023581000
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 IB2021000394
(87)【国際公開番号】W WO2023275579
(87)【国際公開日】2023-01-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524002670
【氏名又は名称】イエナイ、スペース、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】IENAI SPACE, S.L.
(71)【出願人】
【識別番号】512245997
【氏名又は名称】コンセホ スペリオル デ インベスティガシオネス シエンティフィカス
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS
【住所又は居所原語表記】OTT,C/Serrano,n117,E-28006 Madrid Spain
(71)【出願人】
【識別番号】524002706
【氏名又は名称】フンダシオ、インスティトゥート、カタラー、デ、ナノシエンシア、イ、ナノテクノロヒア、(イセエネ2)
【氏名又は名称原語表記】FUNDACIO INSTITUT CATALA DE NANOCIENCIA I NANOTECNOLOGIA (ICN2)
(71)【出願人】
【識別番号】512171032
【氏名又は名称】インスティトゥシオ カタラナ デ レセルカ イ エストゥディス アヴァンカッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】ボルハ、セプルベダ、マルチネス
(72)【発明者】
【氏名】ホセプ、ノゲス、サンミケル
(72)【発明者】
【氏名】パウ、グエル、イ、グラウ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、ペレス、グランデ
(72)【発明者】
【氏名】ミック、バイネン
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル、クルス
(72)【発明者】
【氏名】サラ、コリエロ
【テーマコード(参考)】
2G084
4F034
5C227
【Fターム(参考)】
2G084AA22
2G084DD21
4F034AA01
4F034BA01
4F034BB04
4F034BB12
4F034BB15
4F034BB28
5C227AA07
5C227AA13
5C227AB02
5C227AB05
5C227AB07
5C227AB15
5C227AC02
5C227AC03
5C227AC16
5C227AC18
5C227AD07
5C227AD12
5C227AD15
5C227HH38
5C227HH42
5C227HH72
(57)【要約】
エレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法
本発明の第1の態様は、エレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法に関係される。上記方法は、基板を設けるステップと、プレートと少なくとも1つの突出部とを呈するステップと、その後上記少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化するステップと、を含む。
第2の態様によれば、本発明は、上記製造方法の結果であるエミッタと、本発明によるエミッタを備えるエレクトロスプレー発生装置と、その少なくとも1つのエレクトロスプレー発生装置を備える電気的宇宙推進装置と、にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロスプレー発生装置(10)用エミッタ(1)を製造するための方法であって、前記方法が、
- 基板(S)を提供するステップであって、前記基板(S)が、
プレート(1.3)と、
前記プレート(1.3)の第1の面(1.3.1)に配置された基部(1.2)を有する少なくとも1つの突出部(1.1)であって、前記少なくとも1つの突出部(1.1)が先端(1.4)で終端する、少なくとも1つの突出部(1.1)と、を備える、ステップと、
- 前記少なくとも1つの突出部(1.1)の外表面をナノテクスチャ化するステップであって、前記外表面をナノテクスチャ化する工程が、
a)前記表面を担体流体および粒子を含む懸濁液で覆うステップと、
b)前記懸濁液から前記担体流体を取り除き、前記表面を部分的に保護する複数の粒子を含むマスクを残すステップと、
c)前記粒子によって保護されていない基板を所定の深さだけ取り除くために主エッチング工程を行うステップと、を含む、ステップと、を含む、エレクトロスプレー発生装置(10)用エミッタ(1)を製造するための方法。
【請求項2】
前記プレート(1.3)の前記第1の面(1.3.1)の前記少なくとも1つの突出部(1.1)と接続された少なくとも1つの領域(R)がナノテクスチャ化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記懸濁液がコロイド粒子を含むコロイド懸濁液である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子がナノ/マイクロ粒子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記外表面をナノテクスチャ化する工程が、
- ステップa)の前に、ナノテクスチャ化される前記表面を第1のカバー層で覆うことと、
- ステップb)の後かつステップc)の前に、粒子の前記マスクによって保護されていない前記第1のカバー層の一部を取り除くために、ステップc)による前記主エッチング工程のそれぞれに対する予備エッチング工程を行い、前記第1のカバー層への前記懸濁液マスクの転移をもたらすことと、をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のカバー層が、Au、Al、Cr、Ti、Ni、Pt、Co、Fe、W、Ta、Cu、Zn、それらのうちの任意の可能な合金、SiO、Si、Al、任意の金属酸化物、またはそれらの任意の組み合わせ、のうちの材料である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のカバー層が物理気相成長によって堆積される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記コロイド懸濁液が、好ましくはラテックスまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)であるポリマー、Si、SiO2、ZnO、Zn、FexOy、Al2O3、Au、Pt、の粒子のうちの1つを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記懸濁液の組成物が、前記第1のカバー層上への前記粒子の付着および分布を容易にするために、帯電粒子を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子が前記第1のカバー層上に均一に分布される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のカバー層、前記基板、またはその両方が、
- 前表面化学物質もしくはプラズマ処理、
- 電圧の供給、または
- その両方、によって表面電荷を有する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記予備エッチング・ステップが、前記プレートに対して垂直方向の、プラズマ、好ましくはArのプラズマの投射に基づく、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記主エッチング・ステップが前記基板(S)の異方性エッチング工程である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記主エッチング・ステップがフッ素化ガスの組み合わせを用いて行われる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記主エッチング・ステップが、
- SF
- C
- 両方のガスの組み合わせ、
のガスを用いて同時にまたは任意の順番で行われる、プラズマを誘起する少なくとも1つのステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記粒子の直径が50nm~5000nmの範囲内にあり、最も好ましくは100nm~3000nmの範囲内にあり、最も好ましくは200nm~1000nmの範囲内にある、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のカバー層または基板(S)に堆積される前記粒子の表面密度が、0.001~50粒子毎平方ミクロンの範囲内にあり、最も好ましくは0.05~10粒子毎平方ミクロンの範囲内にある、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記懸濁液が極性溶媒を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
エレクトロスプレー発生装置(10)用のエミッタ(1)であって、前記エミッタ(1)が基板(S)であり、前記基板(S)が、
- プレート(1.3)と、
- 前記プレート(1.3)の第1の面(1.3.1)に配置された基部(1.2)を有する少なくとも1つの突出部(1.1)であって、前記少なくとも1つの突出部(1.1)が先端(1.4)で終端する、少なくとも1つの突出部(1.1)と、を備え、
前記少なくとも1つの突出部(1.1)の外表面がナノテクスチャ化されており、
前記ナノテクスチャ化表面(1.5)が、前記突出部(1.1)上に配置されたナノワイヤ(1.9)であっても前記プレート(1.3)に対して垂直な方向に低起伏表面から生じている前記ナノワイヤを有する、エッチングされた前記低起伏表面を示す、エレクトロスプレー発生装置(10)用のエミッタ(1)。
【請求項20】
前記基板(S)が少なくとも1つの液体源(1.8)を備える、請求項19に記載のエミッタ(1)。
【請求項21】
各突出部(1.1)が、前記突出部(1.1)に、または前記突出部(1.1)の前記基部(1.2)に供給を行うように適合された前記基板(S)の接続された領域(R)に配置された少なくとも1つの液体源(1.8)を有する、請求項20に記載のエミッタ(1)。
【請求項22】
前記基板(S)の前記接続された領域(R)がさらにナノテクスチャ化されている、請求項21に記載のエミッタ(1)。
【請求項23】
前記液体源(1.8)が、前記プレート(1.3)の前記第1の面(1.3.1)と反対側の面(1.3.2)とを流体的に接続する穿孔部である、請求項19から22のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項24】
液圧抵抗Rが、1015~1020Pa.s.m-3の範囲内にあり、より好ましくは1015~1018Pa.s.m-3の範囲内にあり、さらにより好ましくは1016~1018Pa.s.m-3の範囲内にあり、Rが、
【数1】
として算出され、透過率Kが、
【数2】
として算出され、体積分率Ψが、
【数3】
として算出され、Hが前記突出部(1.1)の高さであり、hが前記ナノテクスチャ化表面(1.5)の高さであり、rが前記突出部(1.1)の前記先端(1.4)の半径であり、αが断面図による前記突出部(1.1)の半角度であり、μが動粘度であり、dが前記ナノテクスチャ化表面(1.5)の前記ワイヤ(1.9)の直径であり、Ψが前記ナノテクスチャ化表面(1.5)のワイヤ(1.9)の体積分率であり、Nがワイヤ(1.9)の密度である、請求項19から23のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項25】
前記透過率Kが、10-16~10-11の範囲内にあり、より好ましくは10-14~10-11の範囲内にあり、さらにより好ましくは10-13~10-11の範囲内にあり、前記透過率Kが、
【数4】
として算出され、前記体積分率Ψが、
【数5】
として算出され、dが前記ナノテクスチャ化表面(1.5)の前記ワイヤ(1.9)の直径であり、Ψが前記ナノテクスチャ化表面(1.5)のワイヤ(1.9)の体積分率であり、Nがワイヤ(1.9)の密度である、請求項19から24のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項26】
前記体積分率Ψが、
【数6】
として算出され、dが前記ナノテクスチャ化表面(1.5)の前記ワイヤ(1.9)の直径であり、Nがワイヤ(1.9)の密度である、請求項19から25のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項27】
前記基板(S)が半導体である、請求項1から18のいずれか一項に記載のエミッタ(1)を製造する方法、または請求項19から26のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項28】
前記基板(S)がSiである、請求項27に記載のエミッタ(1)を製造する方法、またはエミッタ(1)。
【請求項29】
前記基板(S)がガラスである、請求項1から18のいずれか一項に記載のエミッタ(1)を製造する方法、または請求項19から26のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項30】
前記少なくとも1つの突出部(1.1)が、円錐形状、角錐形状、螺旋形状、刃形状、尖状形状、または針形状である、請求項1から29のいずれか一項に記載のエミッタ(1)を製造する方法、またはエミッタ(1)。
【請求項31】
前記先端(1.4)が電界集中のために適合された構造である、請求項1から30のいずれか一項に記載のエミッタ(1)を製造する方法、またはエミッタ(1)。
【請求項32】
- 請求項19から31のいずれか一項に記載のエミッタ(1)と、
- 前記少なくとも1つの突出部(1.1)を有する前記エミッタ(1)の前記プレート(1.3)の前記第1の面(1.3.1)に対向し、前記少なくとも1つの突出部(1.1)から離隔されている、電極(1.6)と、
- 生成されたイオンまたは滴を通過させるための少なくとも1つの開口部を備える、前記電極(1.6)と、
- 前記基板(S)と前記電極(1.6)との間の電圧を設定するための、電源(1.7)と、
- 前記プレート(1.3)の前記ナノテクスチャ化表面(1.5)と流体連通された、前記表面(1.5)に液体(1.8.1)を供給するための、液体源(1.8)と、を備える、エレクトロスプレー発生装置(10)。
【請求項33】
請求項32に記載の少なくとも1つのエレクトロスプレー発生装置(10)を備える、電気的宇宙推進装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の第1の態様は、エレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法に関係される。上記方法は、基板を設けるステップと、プレートと少なくとも1つの突出部とを呈するステップと、その後上記少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化するステップと、を含む。
【0002】
第2の態様によれば、本発明は、上記製造方法の結果であるエミッタと、本発明によるエミッタを備えるエレクトロスプレー発生装置と、その少なくとも1つのエレクトロスプレー発生装置を備える電気的宇宙推進装置と、にも関する。
【背景技術】
【0003】
電気力学的スプレーとしても知られるエレクトロスプレーは、生物医学的用途、宇宙推進用途、食品エリア、製薬分野、分光用途、空気清浄装置などの様々な技術分野において分子またはイオン流を提供し作るために使用されてきた、導電性液体の静電加速である。
【0004】
この技法を適用するために、エレクトロスプレー・エミッタまたは発生装置と呼ばれる装置が、導電性液体金属、コロイド、またはイオン液体などの導電性液体を分散させる目的で、高電圧電力を通常用いる。理論的には、かつ理想的には、分散された液体はエミッタ先端に達し、円錐形状で噴霧される。
【0005】
しかし、特に宇宙推進分野においては、技術進歩が、低電力推進システムを必要とするより小さい種類の衛星をもたらしているため、2000年代初頭まで上記技法は実装されるほど興味深いものではないと考えられてきた。
【0006】
エレクトロスプレー装置は、一般にはエミッタと対向電極とを含む。これら要素の両方が、液体に、微粒化されてナノもしくはマイクロ液滴、純粋なイオン放出、または両方の混合になる能力を与える。上記液体は、その密度、粘度、その表面張力、その比誘電率、およびその導電率によって主に画定される。
【0007】
電界が導電性液体の液体/固体界面に印加されるとき、電荷が、導電性が不連続な界面に移り、液体を移動させる。十分な導電性の液体については、液体表面に対する接線方向の電界はゼロになり、定常状態においては、電界の残りの法線成分が局所的表面張力のバランスを保つ。電界の法線成分は、電荷移動によって生成される対応する円錐状構造の半径をrとすると、r→0に対して特異である他のパラメータのうち、r-1/2に依存する式を示す。
【0008】
エレクトロスプレー構成において、電気力線を集中するために半径が可能な限り小さい先端終端構造の使用が求められる。
【0009】
導電性液体の体積が電界にさらされるとき、液体の形状は表面張力のみにより生じた形状から変形し始める。電圧が上昇されるにつれ、電界の効果もより顕著になる。電界のこの効果が表面張力が加える力と同程度の大きさの力を液滴に加え始めると、凸状面および丸みの付いた先端を伴った円錐形状が形成され始める。この結果、「テイラー円錐」という名称の円錐の形状に近づく。特定の閾値電圧に達されるとき、僅かに丸みの付いた先端が反転し、円錐噴射と呼ばれる液体噴射を行う。この円錐噴射の放出は、イオンが気相に移され得るエレクトロスプレー工程の初期である。安定した円錐噴射を実現するために、閾値より僅かに高い電圧が使用されなくてはならないことが一般に認められる。電圧がさらに上昇されるにつれ、他の状態の液滴崩壊が認められる。
【0010】
これに関連して、無次元流動パラメータ
【数1】
は、流動を支配する極めて関連性の高いパラメータであり、ここでρは流体の密度、κは液体の比誘電率、Κは液体の導電率、Qは体積流量、γは液体表面張力、およびεは自由空間の誘電率である。このパラメータは、テイラー円錐の先端から放出される電流の主パラメータであるが、液滴放出が止まり純粋なイオン条件(ion regime)が始まるζ≒1付近では破綻する。電界がイオン蒸発を実現するのに十分なほど高い場合、上記条件に達される。従って、エレクトロスプレー装置がイオン条件で動作するために、ζパラメータは1未満でなくてはならない。
【0011】
流体状態および電界状態によって、放出状態は、噴出、液滴、イオン、または液滴およびイオン放出の混合物の形態であってもよい。本発明に関して、放出は純粋なイオン性であることが求められる。円錐先端近傍において、電界はイオンを表面から直接遊離するのに十分なほど強くてもよく、これは電界蒸発と呼ばれる。
【0012】
エミッタの先端の電界は、印加される電界と、エミッタおよびエクストラクタの幾何学的形状と、液体メニスカスの実際の形状との関数であり、正規化角度放出プロファイルと印加電圧との積であるf・Vによって表されてもよい。電界蒸発を可能にする最低電圧は臨界電圧として公知である。
【0013】
先端半径はメニスカスの半径であり、電界の影響下で変形し、同時に電界を決定する。製造工程によって設定されるパラメータではないこの半径を決定することは難しい。それにもかかわらず、エミッタおよびエクストラクタの幾何学的形状は、電界を集中させることが意図された特定の形状を示す場合があるため、先端の電界と強く関連している。
【0014】
純粋なイオン性のエレクトロスプレーにおいて、エミッタへ供給を行う液体の体積流量は静電蒸発を補償しなくてはならない一方で、純粋なイオン条件を保証するために何らかの流量制限も典型的には必要とされる。
【0015】
先行技術によれば、いくつかの種類のエミッタが公知である。
【0016】
毛細管式
毛細管式エミッタは、液体が供給される毛細導管の使用に基づく。毛細管の端部が尖ったマイクロ構造で終端することにより、毛細管を抜け出る流体のメニスカスにおいて電界の集中が起きる。
【0017】
毛細管エミッタの主な技術的課題は以下の通りである。
- 体積流をエレクトロスプレー・エミッタへ送るために流動を送る最低限の圧力が必要とされ、さもなければ、圧力がより低い場合、放出は止まるかまたは不規則になる。
- 毛細管エレクトロスプレーにある狭い流体通路は、その動作を通して、液体中の不純物または装置内で生成される破片により目詰りする傾向がある。
- 毛細管エレクトロスプレーは低い流体インピーダンスを呈することで、典型的には液滴または混合条件をもたらすが、イオン条件を実現することは一般にはできない。
【0018】
多孔質式
多孔質式エミッタは、これら装置のいくつかの制限、主に多孔質媒体における受動供給によって置き換えられ得る圧力供給への依存、を克服することを試みて、毛細管式の代替として導入された。目詰りする問題も、現在は多孔質媒体内にエミッタ先端への複数の経路が存在するため、緩和され得る。
【0019】
多孔質エミッタの主な技術的課題は以下の通りである。
- 純粋なイオン条件を実現するためには高い流体インピーダンスが必要とされ、これには、技術の利点の1つとして提起された目詰りの緩和と競合している、小さい孔サイズを必要とする。
- 放出域のテイラー円錐の長さスケールは孔サイズに依存する。これは、純粋なイオン条件を実現するための高い流体インピーダンスに必要とされる小さい孔半径のために、電界が集中される放出域がマイクロ構造先端に近接する複数の地点に存在できることを必要とする。これは、他のエミッタより大きい分散角度と、実質的により低い角度分散効率とをもたらし得る。
- エミッタとイオン液体との間の境界に容量性二重層が存在することが観察されている。放出時間が長くなるかまたは電流が高くなると、電気化学窓限界が越えられる場合があり、エミッタ先端をエッチングして粗くすることが示されているイオン液体と材料との間の化学反応をもたらし、放出特性の経時的な劣化を引き起こす。
【0020】
外面濡れ式
毛細管エレクトロスプレーに対する代替的解決法は、毛細管力により液体をエミッタ先端に輸送するために吸い上げ(wicking)材料でエミッタの表面が被覆される、外面濡れ式エミッタである。この種のエミッタは、純粋なイオン条件を実現するために必要な液圧インピーダンスを有することができる。例えば、ブラック・シリコンから作られた表面被覆は機能することが知られているが、被覆の形態、特に表面分布およびアスペクト比、は典型的に適用される方法では制御できず、従ってナノ構造体の高さまたは離隔距離を調整することでは液圧インピーダンスを設計できない。さらに、被覆は、装置の動作による応力下で、経時的に機械的劣化をする場合がある。
【0021】
限定された電圧で動作する高い処理能力の外面濡れエレクトロスプレーを実現するために、エミッタの設計は、液圧インピーダンスの値がイオン条件を保持するため十分に高い限り、開始電圧と液圧インピーダンスとの両方を減少させるように適応されなくてはならないことが結論づけられている。液圧インピーダンスは、イオン放出を可能にしつつ取り出される電流を最大化する「最適」値を呈するため、生じる主な問題は、液圧インピーダンスを制御可能にする表面テクスチャを確立することである。
【0022】
上述の種類のエミッタはいずれもこの問題を十分に解決できない。対して、本発明は、高い機械的強度を保証しつつ受動液体供給での液圧インピーダンスの正確な決定を可能にする、外面濡れ式ナノテクスチャ化エミッタを製造する方法を説明する。加えて、これにより作製される装置は先行技術で説明された短所のそれぞれを克服していることが証明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、請求項1に記載のエレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法と、請求項19に記載のエレクトロスプレー発生装置用エミッタと、請求項32に記載のエレクトロスプレー発生装置と、請求項33に記載の電気的宇宙推進装置とを提供する。有利な実施形態は従属請求項において定義される。
【課題を解決するための手段】
【0024】
第1の発明の態様によれば、本発明はエレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法を提供し、上記方法が、
- 基板を提供するステップであって、上記基板が、
プレートと、
上記プレートの第1の面に配置された基部を有する少なくとも1つの突出部であって、先端で終端する少なくとも1つの突出部と、を備える、基板を提供するステップと、
- 上記少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化するステップであって、上記外表面をナノテクスチャ化する工程が、
a)上記表面を担体流体および粒子を含む懸濁液で覆うステップと、
b)上記懸濁液から上記担体流体を取り除き、上記表面を部分的に保護する複数の粒子を備えるマスクを残すステップと、
c)上記粒子によって保護されていない基板を所定の深さだけ取り除くために主エッチング工程を行うステップと、を含む、ナノテクスチャ化するステップと、を含む、方法である。
【0025】
本発明は、エレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法を提供する。上記方法は基板を提供する第1のステップを含む。基板は、プレートの第1の面に配置された少なくとも1つの突出部を呈するプレートを備える。少なくとも1つの突出部とプレートとの接触線は、少なくとも1つの突出部の基部を画定する。
【0026】
電界の集中を容易にし、イオンの発生または帯電液滴の放出を起こすために、少なくとも1つの突出部は先端で終端する。加えて、電界の集中は、導電性液体またはコロイドのイオンを先端の表面から直接遊離するのに十分なほど強い。
【0027】
エミッタの先端の電界は、印加される電界と、テーパ角度と、エミッタの高さや先端半径などのエミッタおよびエクストラクタの幾何学的形状との関数である。上記テーパ角度は、プレートから突出部の先端への垂線と突出部の側面との間の角度であると定義される。
【0028】
有利には、先端半径を小さくすること、テーパ角度および円錐高さの一方または両方を大きくすることは全て、エミッタの先端の電界の上昇、および機能するために必要な開始電圧の減少をもたらす。
【0029】
次に、本発明は、少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化する第2のステップを提示する、エレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法を提供する。
【0030】
ナノテクスチャ化により、表面がナノサイズ構造体で覆われることが理解される。
【0031】
少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化する工程は、担体流体および粒子を含む懸濁液で表面を覆う第1のステップを含む。少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化する工程の第1のステップは、工程の続きのステップのための最適な基礎を提供するためにプレート全体を均一に覆う傾向にある。
【0032】
プレートの少なくとも1つの突出部を覆う懸濁液の担体流体は、水、エタノール、または極性があり懸濁液によって輸送される粒子に影響しない任意の溶媒などの、粒子が溶解しない溶媒である。実施形態によれば、懸濁液は、コロイド粒子の極めて均一な懸濁を可能にするコロイド懸濁液である。
【0033】
懸濁液中の粒子の濃度および放置時間の両方のパラメータは、特定の動作状態におけるエミッタの最適な特徴および特性を得るために修正される余地がある。
【0034】
次に、少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化する工程は、懸濁液から担体流体を取り除き、プレートの第1の面を部分的に保護する複数の粒子を含むマスクを残す第2のステップを含む。
【0035】
上記工程の第2のステップは、過剰分の懸濁液を取り除いた後にその表面を制御された量の粒子で覆うために、プレートの第1の面にわたる懸濁液の均一な再配分を許可する。
【0036】
最後に、少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化する工程は、事前に堆積された粒子のマスクによって保護されていない基板を所定の深さだけ取り除くために主エッチング工程を行い、ナノ構造体を生成する第3のステップを含む。
【0037】
ナノ構造体の上記被覆は、充填密度およびナノ構造体の直径などの関連パラメータを呈する。どちらのパラメータも、エミッタ動作条件の変化を実現するための能力を提供する。
【0038】
少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化する工程の第3のステップは、工程の第1および第2のステップで事前に塗布された粒子によって保護されていない基板を所定の深さだけ取り除く主エッチング工程を行うことである。上記エッチング工程は、プレートの第1の面および基板の突出部にナノワイヤを形成する働きをする。ナノワイヤは全て基板に対して垂直に配向されるが、これはエッチング工程が上記方向にエッチングを行うように構成されているためである。
【0039】
好適な実施形態において、主エッチングはSiで行われる。
【0040】
粒子の懸濁液、好ましくはコロイド懸濁液、と深掘り反応性イオン・エッチングとを組み合わせる、前述のステップの組み合わせは、基板のナノテクスチャ化工程、およびナノ構造体、より詳細には形成されるナノワイヤ、の幾何学的形状への正確な制御をもたらす。
【0041】
少なくとも1つの突出部の外表面およびプレートの第1の面をナノテクスチャ化する一連のステップにより、ナノワイヤの密度、向き、直径およびアスペクト比などの複数の特性および特徴も正確に制御される。密度やアスペクト比のような重要パラメータの制御は、必要な開始電圧を最小化し、基板の液圧抵抗を制御することで純粋なイオン条件を保ちつつ電流の最大化を可能にするために重要である。
【0042】
有利には、工程中に全てのパラメータを制御することによって、生じるナノ構造体が機械的に強固になる。ナノワイヤは、好ましくは数百nmの範囲内で、比較的太く作ることができ、基板に刻まれることからその非分離部分であるため、基板に堅固に取り付けられることになり、結果的に高電界下でのエミッタの動作モード中に排出され得ない。
【0043】
加えて、ナノ構造体の機械的強度は、前述の濡れおよび流動工程中にイオン液体の強い毛細管力によって発生され得るナノワイヤの座屈も防止する。
【0044】
特定の実施形態において、プレートの第1の面の、少なくとも1つの突出部と接続された少なくとも1つの領域がナノテクスチャ化される。
【0045】
プレートの第1の面の少なくとも1つの接続された領域は、少なくとも1つのナノテクスチャ化された領域と、それに従い、エッチングされた表面の結果的な形状からナノワイヤと呼ばれる、基板の少なくとも1つの突出部を覆うナノ構造体の存在とを呈する、少なくとも1つの突出部を呈する。
【0046】
好適な実施形態において、突出部全体およびプレートの第1の面はナノテクスチャ化されており、従ってその表面に複数のナノワイヤを呈する。
【0047】
特定の実施形態において、懸濁液はコロイド粒子を含むコロイド懸濁液である。
【0048】
好適な実施形態において、懸濁液はコロイド粒子を担体として溶媒に含むコロイド懸濁液である。加えて、懸濁液は、ナノテクスチャ化領域の液圧抵抗への制御をもたらすために、少なくとも1つの突出部を覆う。先の実施形態によれば、懸濁液は、突出部の先端に供給を行うナノテクスチャ化領域の液圧抵抗へのさらなる制御をもたらすために、基板の少なくとも1つの接続された領域も覆う。
【0049】
好適な実施形態において、基板全体が懸濁液によって一様に覆われ、従ってコロイド粒子で完全に覆われる。
【0050】
特定の実施形態において、粒子はナノ/マイクロ粒子である。
【0051】
有利には、粒子はナノまたはマイクロ粒子であり、ナノ構造およびマイクロ構造のいずれにも実装され得る。特に、外面濡れエレクトロスプレーは、ナノ構造体を提供するために実装されるエミッタなどのマイクロ構造体に基づいており、ナノ構造体は毛細管力によってマイクロ構造先端への液体の吸い上げを可能にし、基板の流量制限に必要な液圧抵抗も生成し、従ってイオン条件をもたらす。
【0052】
特定の実施形態において、外表面をナノテクスチャ化する工程は、
- ステップa)の前に、ナノテクスチャ化される表面を第1のカバー層で覆うことと、
- ステップb)の後かつステップc)の前に、粒子のマスクによって保護されていない第1のカバー層の一部を取り除くために、ステップc)による主エッチング工程のそれぞれに対する予備エッチング工程を行い、第1のカバー層への懸濁液マスクの転移をもたらすことと、をさらに含む。
【0053】
外表面をナノテクスチャ化する工程の主工程は、続く主エッチング・ステップを容易にするために基板に適用される第1のカバー層でナノテクスチャ化される表面を覆う、第1のステップに先立つ追加のステップも呈することができる。
【0054】
外表面をナノテクスチャ化する工程の工程は、上述の工程の第2のステップで塗布された粒子のマスクによって保護されていない第1のカバー層の一部を取り除くために、第3の主ステップの主エッチング工程のそれぞれに対する予備エッチング工程を行う、その第2のステップと第3の主ステップとの間の別の追加のステップも呈することができる。結果として、懸濁液マスクは第1のカバー層へ移される。
【0055】
有利には、予備エッチング工程を行うこの追加のステップの実装は、基板に対するマスクの選択性を上げ、主エッチング中にパターン付きの第1のカバー層をマスクとして使用する能力をもたらし、より長い主エッチング工程を可能にし、粒子のみをマスクとしてそれが行われる場合と同様にマスクを損傷させない。
【0056】
特定の実施形態において、第1のカバー層は以下のうちの材料である:Au、Al、Cr、Ti、Ni、Pt、Co、Fe、W、Ta、Cu、Zn、それらのうちの任意の可能な合金、SiO、Si、Al、任意の金属酸化物、またはそれらの任意の組み合わせ。
【0057】
好適な実施形態において、第1のカバー層の材料は、反応性イオン・エッチングにおいてArなどの特定の種類のプラズマと組み合わされる間、より容易なエッチングを提供する、Auである。
【0058】
加えて、同一の好適な実施形態において、Au層は酸素プラズマで処理されて負帯電表面を提供し、懸濁液中で運ばれる正帯電粒子の静電自己集合を可能にする。このステップは任意のカバー層にも適用される。
【0059】
特に、基板の帯電したAu表面上に十分に分離した粒子の自己集合単層を生ずるために、ビーズを含む水懸濁液が使用される。
【0060】
有利には、単位面積あたりの粒子の濃度は表面に移動される粒子の数に依存するため、堆積された粒子、またはいわゆるコロイドの表面密度は、Au(またはビーズ)の表面電荷ならびに懸濁液中の粒子濃度およびその放置時間を制御することによって適合され得る。
【0061】
また同一の好適な実施形態において、懸濁液を適用した後の残存する浮遊コロイドを取り除くために、基板は洗浄され、表面のコロイドの正しい分布を変更する場合がある毛細管力を乾燥の際に避けるために、臨界点乾燥技法を使用して乾燥される。
【0062】
そして、基板上にAuディスク、または使用されている場合他の任意の材料、の配列を形成するために、粒子の単層が反応性イオン・エッチング・ステップでマスクとして使用される。基板上にナノワイヤの配列を形成するために、上記Auディスクはその後、主エッチング・ステップでマスクとして働く。ディスクを囲む材料は下方向に取り除かれるため、各Auディスクはナノワイヤを生成する。ナノワイヤを備える結果的に生じた表面は、ナノワイヤの頂上にマスクのディスクを示し得る。
【0063】
有利には、先の一連のステップを行うことによって、ナノワイヤの形成された配列は、基板のプレートの第1の面に垂直になる。
【0064】
また、先の一連のステップを制御して行うことによって、被覆の液圧抵抗を調整することが可能になる。例えば、大きいアスペクト比を有することで液圧抵抗の低減が可能になり、それによってより高い電流処理能力を有する装置を実現する。上記より高い電流処理能力を有する装置は、より高い透過率およびより低い抵抗をもたらすより細いナノワイヤ、またはナノワイヤのより低い表面密度のいずれか一方を用いることでも実現され得る。
【0065】
加えて、前述の技法を実装することで、費用対効果に優れ大規模な均等エッチングが可能になり、それによって制御された密度のナノワイヤ群を形成する。
【0066】
さらに、ナノワイヤがより低密度であると、個別のナノワイヤ間の間隔がより大きくなることにつながる。すなわち、いくつかの予備実験によれば、それが効果的な長さスケールを引き上げ、より低い開始電圧でのイオン放出の開始を可能にすることができる。
【0067】
特定の実施形態において、第1のカバー層は物理気相成長によって堆積される。
【0068】
物理気相成長工程によって第1のカバー層の堆積を行うことで、続く予備エッチング、反応性イオン・エッチング、がより容易に行われ、その後の主エッチングのパフォーマンスが上昇する。堆積中に費やされる時間により、結果的に生じる第1のカバー層の厚さの制御が可能となる。
【0069】
特定の実施形態において、コロイド懸濁液は以下の粒子のうちの1つを含む:好ましくはラテックスまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)であるポリマー、Si、SiO2、ZnO、Zn、FexOy、Al2O3、Au、Pt。
【0070】
実施形態において、コロイド懸濁液の選択された粒子は、SiO2、AuまたはPtなどの、Siエッチング工程に耐性のあるものである。
【0071】
特定の実施形態において、懸濁液組成物は、第1のカバー層への粒子の付着および分布を容易にするために、帯電粒子を含む。
【0072】
帯電粒子を使用することで、上記粒子は第1のカバー層に付着し一様に分布される。その好適な実施形態において、粒子は、工程の覆うステップのパフォーマンスを高めるため、その電荷の作用で選択される。
【0073】
電荷を制御することで、第1のカバー層に移動する粒子の数と、それに従って、結果的に生じるナノワイヤ群の密度とを制御することが可能になる。
【0074】
特定の実施形態において、粒子は第1のカバー層上に均一に分布されている。
【0075】
懸濁液内に含まれる粒子と反対の電荷を有する電圧を印加および設定することで、第1のカバー層にわたる粒子の均一な分布がもたらされ、工程の続く主エッチング・ステップが容易になる。コロイド懸濁液を使用することで、懸濁液内での粒子の均等な分布が可能となり、第1のカバー層での粒子のより均等な分布を補助する。
【0076】
特定の実施形態において、第1のカバー層、基板、またはその両方は、
- 前表面化学物質もしくはプラズマ処理、
- 電圧の供給、または
- その両方、によって表面電荷を有する。
【0077】
好適な実施形態において、基板および投射された帯電粒子は、基板の固有の表在電荷を使用して自己集合を行う。
【0078】
基板、第1のカバー層、またはその両方は、材料の不連続性により生成された表面電荷を既に有する。さらなる実施形態は、帯電粒子を投射する前表面化学物質またはプラズマ処理で表面を処理するステップを含む。他の実施形態によれば、第1のカバー層、基板、またはその両方は、表面に移動する帯電粒子をより強く制御する、帯電粒子の電荷と反対の電荷を伴う電圧に設定される。
【0079】
他の好適な実施形態において、高分子電解質単層の単層での被覆などの前表面化学物質、または酸素プラズマなどのプラズマ処理が適用されることで、投射された帯電粒子は、第1のカバー層を配置する前に拡散される。
【0080】
その好適な実施形態において、選択された粒子は、基板の表在電荷と比べて反対の電荷で表面的に帯電される。
【0081】
特定の実施形態において、予備エッチング・ステップは、プレートに対して垂直方向の、プラズマ、好ましくはArのプラズマの投射に基づいている。
【0082】
プラズマ、好ましくはArのプラズマの投射は、基板の表面に衝突し、上記表面の原子を機械的に引き出す。
【0083】
好適な実施形態において、投射されたArプラズマの流動は、上記原子を引き出すことのできる運動エネルギーに達するために、指向性を持って特に垂直に拡散する。その結果、この工程は基板表面にナノディスクを形成し、上記ナノディスクの直径は主エッチングを行った後に形成されるナノワイヤの直径となる。
【0084】
同一の好適な実施形態において、プラズマの垂直投射の結果、プレートの表面に対して垂直なナノワイヤが生じる。突出部上に生成されたナノワイヤは基板の主表面に配置されたナノワイヤの向きと同一の向きを保つことで、プレート表面と突出部表面との間に良好な境界面を生じさせ、流体が連続的にナノテクスチャ化された表面と相互作用することから、供給状態を動作的に向上させる。
【0085】
特定の実施形態において、主エッチング・ステップは基板の異方性エッチング工程である。
【0086】
有利には、かつSiを用いて行われる主エッチングの好適な実施形態においては、異方性エッチング工程は実質的に鉛直なナノワイヤの形成を補助する。
【0087】
特定の実施形態において、主エッチング・ステップはフッ素化ガスの組み合わせを用いて行われる。
【0088】
特定の実施形態において、主エッチング・ステップは、以下のガスを用いて同時にまたは任意の順番で行われる、プラズマを誘起する少なくとも1つのステップを含む:
- SF
- C
- 両方のガスの組み合わせ。
【0089】
好適な実施形態において、電圧を設定しながら、第一にSF、次にCまたは両方のガスの独自の組み合わせで前述のフッ素化ガスを用いてプラズマが誘起され、基板に向かって垂直に向けられる。
【0090】
上記一連のガスの組み合わせは、工程の主エッチング・ステップとして異方性エッチングを行う能力を提供し、ナノワイヤの幾何学的特徴のより良好なアスペクト比を得る能力を容易にする。
【0091】
特定の実施形態において、粒子の直径は50nm~5000nmの範囲内にあり、最も好ましくは100nm~3000nmの範囲内にあり、最も好ましくは200nm~1000nmの範囲内にある。
【0092】
粒子の直径は形成されるナノワイヤの直径を確立し、結果的に、上記形成されるナノワイヤのサイズおよび表面密度に影響する。
【0093】
特定の実施形態において、第1のカバー層または基板に堆積される粒子の表面密度は、0.001~50粒子毎平方ミクロンの範囲内にあり、最も好ましくは0.05~10粒子毎平方ミクロンの範囲内にある。
【0094】
もしあるならば第1のカバー層、または基板、に堆積される粒子の表面密度は、工程の第1のステップ中に適用される懸濁液内に含まれる粒子濃度に依存するが、放置時間にも依存する。粒子の結果的な表面密度は、ナノワイヤの結果的な密度でもある。
【0095】
特定の実施形態において、懸濁液は極性溶媒を含む。
【0096】
特に、懸濁液に含まれる選択された極性溶媒は粒子を溶解しない。
【0097】
また、有利には、選択された極性溶媒は、静電自己集合を保証するために必要とされる帯電粒子の安定的な分散をもたらす。
【0098】
本発明の第2の態様は、エレクトロスプレー発生装置用のエミッタであり、上記エミッタは基板であり、上記基板が、
- プレートと、
- 上記プレートの第1の面に配置された基部を有する少なくとも1つの突出部であって、先端で終端する少なくとも1つの突出部と、を備え、
上記少なくとも1つの突出部の外表面がナノテクスチャ化されており、
上記ナノテクスチャ化表面が、突出部上に配置されたナノワイヤであっても上記プレートに対して垂直な方向に低起伏表面から生じているナノワイヤを有する低起伏エッチングされた表面を示す、エミッタである。
【0099】
エレクトロスプレー発生装置用のエミッタは、プレートを呈する基板とプレートの第1の面に配置された基部を有する少なくとも1つの突出部とを備え、少なくとも1つの突出部の外表面はナノテクスチャ化されており、上記ナノテクスチャ化表面は低起伏エッチングされた表面を示し、低起伏エッチングされた表面は上記低起伏表面から生じているナノワイヤを備える。
【0100】
ナノワイヤの端部はエッチング工程によって刻まれた元々の表面と対応するため、テクスチャ化された表面は予め設定された寸法の滑らかな構成も示す。ナノワイヤが、ナノワイヤの向きも制御されずテクスチャ化領域を区画する上面も制御されない表面に追加された要素である場合は、これは当てはまらない。
【0101】
好適な実施形態において、ナノテクスチャ化工程中に行われる垂直化学物質エッチングの結果として、複数のナノワイヤは、突出部上に配置されたナノワイヤであっても、プレートに対して垂直である。向きはナノワイヤが配置される表面の傾きから独立しており、従って均等なナノテクスチャ化表面を保証する。
【0102】
特定の実施形態において、基板は少なくとも1つの液体源を備える。
【0103】
好適な実施形態において、基板はイオン液体推進剤として使用される少なくとも1つの液体源を備える。有利には、基板内部に少なくとも1つの液体源を備えることで、プレートのナノテクスチャ化表面、および/またはエミッタの突出部の間に流体連通をもたらし、液体の連続的供給が可能となる。
【0104】
特定の実施形態において、各突出部は、突出部、または突出部の基部に供給を行うように適合された基板の接続された領域、に配置された少なくとも1つの液体源を有する。
【0105】
この実施形態によれば、エミッタの基板全体の全ての部分の間の流体連通を保ち、従ってエミッタが時間の限定なしに動作様式となるために、各突出部は、突出部、または突出部の基部に供給を行うように適合された基板の接続された領域、に配置された少なくとも1つの液体源を呈する。
【0106】
特定の実施形態において、基板の接続された領域はさらにナノテクスチャ化されている。
【0107】
この実施形態によれば、液体源が基板の接続された領域にあり基板が突出部に接触または隣接しているとき、液体源から提供される液体は突出部の先端に流体的に接続されている。毛細管力により、ナノテクスチャ化表面の濡れ工程が可能になり、連続的連通をもたらす。
【0108】
特定の実施形態において、液体源は、プレートの第1の面と反対側の面とを流体的に接続する穿孔部である。
【0109】
好適な実施形態において、液体推進剤は液体源貯蔵部から出て少なくとも1つの穿孔部によって基板のプレートを通過し、従ってプレートの第1の面と反対側の面との流体連通をもたらす。
【0110】
特定の実施形態において、液圧抵抗Rは、1015~1020Pa.s.m-3の範囲内にあり、より好ましくは1015~1018Pa.s.m-3の範囲内にあり、さらにより好ましくは1016~1018Pa.s.m-3の範囲内にあり、Rが、
【数2】
として算出され、透過率Kが、
【数3】
として算出され、体積分率Ψが、
【数4】
として算出され、Hは突出部の高さであり、hはナノテクスチャ化表面の高さであり、rは突出部の先端の半径であり、αは断面図による突出部の半角度であり、μは動粘度であり、dはナノテクスチャ化表面のワイヤの直径であり、Ψはナノテクスチャ化表面のワイヤの体積分率であり、Nはワイヤの密度である。
【0111】
表面のナノワイヤの密度を適合させることは、液圧抵抗の効率的な制御をもたらす。
【0112】
加えて、ナノワイヤの密度を減少することで、液圧透過率が上昇し、外面濡れエミッタという特定の場合において液圧抵抗が減少する。
【0113】
同時に、ナノワイヤ密度の減少はナノワイヤ間の平均距離の上昇につながり、これは必要な開始電圧の削減などの結果も呈し、イオン条件も依然として保証する。
【0114】
特定の実施形態において、透過率Kは、10-16~10-11の範囲内にあり、より好ましくは10-14~10-11の範囲内にあり、さらにより好ましくは10-13~10-11の範囲内にあり、透過率Kが、
【数5】
として算出され、体積分率Ψが、
【数6】
として算出され、dはナノテクスチャ化表面のワイヤの直径であり、Ψはナノテクスチャ化表面のワイヤの体積分率であり、Nはワイヤの密度である。
【0115】
特定の実施形態において、体積分率Ψは、
【数7】
として算出され、dはナノテクスチャ化表面のワイヤの直径であり、Nはワイヤの密度である。
【0116】
エミッタを製造する方法および製造されるエミッタの特定の実施形態において、エミッタの基板は半導体である。
【0117】
有利には、採用される粒子の電荷が基板上の上記粒子の堆積のパフォーマンスに影響を与える工程のステップを容易にするために、エミッタを製造するための方法およびエミッタは半導体である基板を呈し、いくつかの予備実験はこの特徴が動作状態における必要な開始電圧を引き下げることを示している。
【0118】
エミッタを製造する方法および製造されるエミッタの特定の実施形態において、基板はSiである。
【0119】
Si基板を呈することによって、エミッタを製造する方法およびエミッタは、Siナノワイヤを形成するためのSiエッチング工程の特定の実施形態において、外面濡れエミッタという特定の場合に機械的により強固な基板を提供する。
【0120】
エミッタを製造する方法および製造されるエミッタの特定の実施形態において、基板はガラスである。
【0121】
エミッタを製造する方法および製造されるエミッタの特定の実施形態において、少なくとも1つの突出部は、円錐形状、角錐形状、螺旋形状、刃形状、尖状形状、または針形状である。
【0122】
円錐形状、角錐形状、螺旋形状、尖状形状、または針形状を有する少なくとも1つの突出部を提供することによって、エミッタを製造する方法は、エミッタが上記少なくとも1つの突出部形状を呈するとき、エミッタの動作状態中に純粋なイオン条件を最大化するために高電界を集中させる利点をもたらす。
【0123】
フォーム・ファクタが電気力線を集中させること、または印加される電圧のいずれか一方によって、電界が十分な強さに達すると、流体に与えられる正しい液圧抵抗およびその正しい温度と結び付けられた放出状態がイオン条件に達するのを保証する。本発明によれば、製造方法およびそれによって得られるエミッタにより得られるナノワイヤの構造は、イオン放出状態がより容易に実現されることを保証する。
【0124】
エミッタを製造する方法および製造されるエミッタの特定の実施形態において、エミッタの先端は電界集中のために適合された構造である。
【0125】
本発明の第3の態様は、
- エミッタと、
- 少なくとも1つの突出部を有するエミッタのプレートの面に対向し、上記少なくとも1つの突出部から離隔されている、電極と、
- 生成されたイオンまたは滴を通過させるための少なくとも1つの開口部を備える、電極と、
- 基板と電極との間の電圧を設定するための、電源と、
- プレートのナノテクスチャ化表面と流体連通された、上記表面に液体を供給するための、液体源と、を備える、エレクトロスプレー発生装置である。
【0126】
エレクトロスプレー発生装置は、少なくとも1つの突出部および/または少なくとも1つの接続されたナノテクスチャ化領域を有するエミッタと、生成されたイオンまたは滴を通過させるための少なくとも1つの開口部を有する電極と、基板と電界を発生させる電極との間の電圧を設定するための電源とを備える。
【0127】
好適な実施形態において、電極はエミッタの基板のプレートと平行なプレートであり、上記エミッタの上部に配置されており、同じエミッタの突出部から離隔されている。電極は、エレクトロスプレー発生装置が動作モードに入った後にイオンまたは滴を通過させるための孔で覆われる。
【0128】
別の好適な実施形態において、エレクトロスプレー発生装置のエミッタは、本発明の第1の態様の工程のステップに従ってナノテクスチャ化されたその基板の少なくとも1つの突出部を呈する。
【0129】
従って、ナノテクスチャ化のためのエッチング工程を行うことによって、結果的にナノワイヤの接着問題を防止し、それによってエレクトロスプレー発生装置の長期的な劣化を軽減する。
【0130】
本発明の第4の態様は、少なくとも1つのエレクトロスプレー発生装置を備える電気的宇宙推進装置である。
【0131】
主エッチング工程と追加の予備エッチング工程との両方によってどちらももたらされる、電気的宇宙推進装置の少なくとも1つのエレクトロスプレーに備えられる基板の機械的抵抗の上昇と、ナノワイヤの機械的抵抗の上昇とは、耐久性および残存性を向上させ、機械的振動が極めて強い発射環境によって生じる潜在的劣化を低減する。
【0132】
本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、添付の図面を参照して例示的かつ非限定的な例としてのみ提供される好適な実施形態の以下の詳細な説明からより明確に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0133】
図1】本発明によるエレクトロスプレー発生装置の実施形態の概略図である。
図2】本発明によるエレクトロスプレー発生装置の実施形態の概略図である。
図3】本発明によるエレクトロスプレー発生装置の複数の突出部を有するエミッタの構造体の実施形態の概略図である。
図4A-4F】本発明によるエレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法のステップの実施形態の概略図である。
図5】本発明の実施形態によるエレクトロスプレー発生装置の実施形態の走査電子顕微鏡による画像である。
図6】本発明の実施形態による複数のナノワイヤを呈するエレクトロスプレー発生装置のある領域の実施形態の走査電子顕微鏡による画像である。
図7】本発明の実施形態による複数のナノワイヤを呈するエレクトロスプレー発生装置のある領域の実施形態の走査電子顕微鏡による画像である。
【発明を実施するための形態】
【0134】
当業者に理解されるように、本発明の態様は、エレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法、エレクトロスプレー発生装置用エミッタ、エレクトロスプレー発生装置、または少なくとも1つのエレクトロスプレー発生装置を備える電気的宇宙推進装置として、具現化されてもよい。
【0135】
図1は、プレート(1.3)の第1の面に配置されている突出部(1.1)によって形成されるエミッタ(1)を備える、エレクトロスプレー発生装置(10)用エミッタ(1)の概略図を表す。一方で、突出部(1.1)はプレート(1.3)の第1の面(1.3.1)に配置されている基部(1.2)を呈し、他方で、同一の突出部(1.1)は先端(1.4)で終端する。
【0136】
エミッタ(1)は、好ましくは半導体である基板(S)から作られている。より好ましくは、エミッタ(1)の基板(S)はSiまたはガラスである。さらにより好ましくは、エミッタ(1)の基板(S)はSiである。
【0137】
さらに、図1に示される特定の実施形態において、エミッタ(1)の突出部(1.1)は、電界集中のために適合された構造を提供するために、円錐形状であり、先端(1.4)で終端する。他の特定の実施形態において、エミッタ(1)の突出部(1.1)は、円錐形状、角錐形状、針形状、螺旋形状、刃形状、尖状形状、または電界集中のために適合された構造を提供する任意の周知の形状を呈していてもよい。
【0138】
後述の図4A図4Fは、本発明の好適な実施形態によるエレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法のステップの概略図である。
【0139】
図4Aは、エミッタ(1)の少なくとも1つの突出部(1.1)をナノテクスチャ化するための方法の任意のステップを経る前の基板(S)を示す。
【0140】
図4Bは、本発明の好適な実施形態に従って灰色の区域が上記少なくとも1つの突出部(1.1)にわたって広げられた第1のカバー層を表す、エミッタ(1)の少なくとも1つの突出部(1.1)をナノテクスチャ化するための方法の第1のステップを示す。
【0141】
図4Cは、第1のカバー層(灰色の区域)が懸濁液(傾いたデカルト座標パターンによって表されるエリア)によって覆われる、本方法の第2のステップを示す。図4Dに示されるように、粒子を含む懸濁液(黒い区域)によって表面が覆われた後、担体流体が、粒子の堆積により生じ第1のカバー層を部分的に保護するマスク(破線)を生成する懸濁液(黒い区域)から取り除かれる。実施形態によれば、担体流体は乾燥工程によって取り除かれる。
【0142】
実施形態によれば、担体流体を取り除く前に、懸濁液(黒い区域)中の粒子は帯電しており、基板(S)は反対の電荷に帯電している。粒子と基板(S)との間の異なる電荷記号に起因して、粒子は基板(S)表面に向かって移動し、基板(S)に付着されてマスク(破線)を形成する。
【0143】
図4Dは、粒子のマスク(破線)によって保護される第1のカバー層(灰色の区域)が、粒子のマスク(破線)のパターンを第1のカバー層(灰色の区域)に移す予備エッチング工程を受ける、本方法の第3のステップを示す。図4Eに示されるように、粒子によって保護されていない第1のカバー層の部分は、エッチング工程において侵食され、第1のカバー層を開口し、粒子のマスクとエッチングされた第1のカバー層との両方によってこのとき部分的に保護されている基板(S)の表面を露出する。
【0144】
図4Eは、懸濁液の粒子(破線)によって保護されていないエリアにおいて第1のカバー層(灰色の区域)がエッチングされる、本方法の前述のステップの詳細図である。
【0145】
図4Fは、基板が主エッチング工程を受け、エッチングされていない基板(S)の層と、事前に拡散された懸濁液(黒い区域)の粒子によって保護された第1のカバー層(灰色の区域)の層と、懸濁液の残存粒子(破線)と、によって形成されるナノワイヤ(1.9)が作成される、本方法の最後のステップの詳細図である。上記工程の最後に、任意選択で全ての粒子が洗浄され、かつ任意選択で事前に広げられた第1のカバー層(灰色の区域)が洗浄されたナノワイヤ(1.9)が形成される。
【0146】
前述のように、かつ図1に示されるように、ナノテクスチャ化されるエミッタ(1.1)の表面を図4Cに示されるように担体流体および粒子を含む懸濁液で覆う本発明の方法の第1のステップの後に、エミッタ(1)の領域(R)はナノテクスチャ(1.5)化されている。
【0147】
その後、図4Dに示されるように、懸濁液(黒い区域)の上記担体流体が取り除かれ、結果的に、ナノテクスチャ化されるエミッタ(1)の領域(R)にわたって基板(S)の表面に付着される粒子のマスク(破線)を生成する。マスク(破線)は、ナノテクスチャ化されるエミッタ(1)の領域(R)を部分的に保護する。
【0148】
好適な実施形態において、図4Cに示されるようにナノテクスチャ化される表面を覆う懸濁液(黒い区域)は、懸濁液(黒い区域)中で均一に分布される傾向にあり、その結果基板(S)の表面に堆積されるとき均一な分布を生じるコロイド粒子を含む、コロイド懸濁液である。
【0149】
さらに、上記粒子はナノまたはマイクロ粒子のいずれか一方である。特定の実施形態において、コロイド懸濁液(黒い区域)はポリマー粒子を含む。より特定の実施形態において、これらコロイド懸濁液は以下のポリマー粒子のうちの1つを含む:ラテックス、ポリメチルメタクリレート(PMMA)。他の実施形態によれば、粒子はSi、SiO2、ZnO、Zn、FexOy、Al2O3、Au、Ptから作られる。さらに、懸濁液(黒い区域)は好ましくは極性溶媒を含む。
【0150】
最後に、事前に生成されたマスク(破線)によって保護されないままだったその表面のエミッタ(1)の基板(S)を所定の深さだけ取り除くために、図4Fに示されるように、主エッチング工程が行われる。
【0151】
好ましくは、エミッタ(1)に広げられた第1のカバー層の主エッチング・ステップは、SF、C、または両方のガスの組み合わせなどのフッ素化ガスの組み合わせを用いて行われる。また、エミッタ(1)の基板(S)の主エッチング・ステップは異方性エッチング工程である。
【0152】
さらに、追加的に、本発明の上述の方法の第1のステップと第2のステップとの間において、ナノテクスチャ化される表面が図4Bに示されるように第1のカバー層(灰色の区域)で覆われてもよい。
【0153】
そして、また追加的に、本方法の主要の第2のステップで担体流体を取り除いた後、ナノテクスチャ化される領域(R)に事前に広げられた第1のカバー層(灰色の区域)の一部を取り除くために、結果的に図4Eに示されるように懸濁液マスク(破線)を第1のカバー層(灰色の区域)に移す予備エッチング工程が行われてもよい。上記予備エッチング・ステップは、プレート(1.3)に対して垂直方向の、プラズマ、好ましくはArのプラズマの投射に基づいている。
【0154】
また図4Eに示されるように、この予備エッチングは、粒子の懸濁液(黒い区域)の粒子から作られたマスク(破線)によって保護されていない第1のカバー層(灰色の区域)を取り除くためのものであることが意図される。粒子のマスク(破線)はカバー層(灰色の区域)に移され、この時点で、行われる主エッチングのための新しいマスクになる。従って、予備エッチング工程は、カバー層(灰色の区域)をエッチングするためのものであり、基板(S)をエッチングするためのものではないことが意図される。
【0155】
好適な実施形態において、第1のカバー層(灰色の区域)は以下のうちの材料である:Au、Al、Cr、Ti、Ni、Pt、Co、Fe、W、Ta、Cu、Zn、それらのうちの任意の可能な合金、SiO、Si、Al、任意の金属酸化物、またはそれらの任意の組み合わせ。
【0156】
同一の好適な実施形態において、粒子は、第1のカバー層(灰色の区域)に上記粒子を付着させ分布させるために、帯電される。第1のカバー層、エミッタ(1)の基板(S)、またはその両方は、反対の電荷を有し、それにより粒子を表面に移動させる。材料の不連続性により自然に生成された第1のカバー層(灰色の区域)の電荷、エミッタ(1)の基板(S)の電荷、またはその両方が十分でなかった場合、他の実施形態によれば、エミッタ(1)の基板(S)、第1のカバー層(灰色の区域)、またはその両方は、粒子の電荷と反対の電荷を伴う電圧に設定され、工程への強い制御をもたらす。
【0157】
結果的に、より好適な実施形態において、粒子は第1のカバー層(灰色の区域)上に均一に分布されている。
【0158】
表面近傍に位置される粒子は表面に付着され、表面から離れている粒子は表面への距離に依存する移動時間が必要となる。
【0159】
従って、表面の電荷、基板(S)に印加される電位、および待機時間は、単位面積あたりの粒子密度の制御を可能にする変数である。
【0160】
ナノワイヤ(1.9)のより詳細な図において、上記ナノワイヤ(1.9)は、本方法の第1のステップ中に事前に拡散された懸濁液(黒い区域)からの残存粒子と、主エッチング工程によってエッチングされなかった基板(S)の一部と、の少なくとも1つの重ね合わせである。
【0161】
基板(S)を第1のカバー層(灰色の区域)で覆う追加のステップを含む本方法の好適な実施形態において、図4Fに示されるように、ナノワイヤ(1.9)は、本方法の第1のステップ中に事前に拡散された懸濁液(黒い区域)からの残存粒子と、予備エッチング工程によってエッチングされなかった第1のカバー層(灰色の区域)の層と、第1のカバー層(灰色の区域)と本発明による方法の第1のステップ中に生成された新しいマスクであるマスク(破線)との両方によって保護されている基板(S)の層と、の重ね合わせである。
【0162】
加えて、基板(S)をカバー層(灰色の区域)で覆う追加のステップを含む本方法の同一の好適な実施形態において、主エッチング工程は、従って、ナノワイヤ(1.9)を作成するために、予備エッチングによってエッチングされなかったカバー層(灰色の区域)の残部と、新しいマスクによって覆われていなかったエミッタ(1)の基板(S)の一部との両方をエッチングするためのものであることが意図される。
【0163】
本発明によれば、図1に戻り、突出部(1.1)の基板(S)の領域(R)はナノテクスチャ(1.5)化され、本方法の主要および追加ステップに従った後、結果的に上記領域(R)に複数のナノワイヤ(この図では図示されず)を形成する。好適な実施形態において、図1に示されるように、プレート(1.3)の第1の面(1.3.1)とエミッタ(1)の突出部(1.1)の外表面とは完全にナノテクスチャ(1.5)化されており、従ってナノテクスチャ化された領域(R)がエミッタ(1)の外表面を全て覆っている。
【0164】
好適な実施形態において、前に詳述された方法から生じたナノワイヤは、エレクトロスプレー発生装置(10)の突出部(1.1)およびプレート(1.3)の全体を均一に覆う。また、ナノワイヤは、プレート(1.3)に対して垂直な向きで、エミッタ(1)の低起伏エッチングされた表面から生じる。ナノワイヤがプレート(1.3)に対して垂直である場合、突出部上に配置されたナノワイヤもエミッタ(1)のプレート(1.3)に対して垂直であり、結果的に、一連のナノワイヤ全てが図1の向きに準拠して鉛直方向になっている。
【0165】
図1に示されるエミッタ(1)は、その動作状態において、円錐形状を有しエレクトロスプレー(1)の突出部(1.1)の先端(1.4)から放出される粒子ビーム(B)を発生させる。
【0166】
また動作状態において、図1に示されるように、エレクトロスプレー発生装置(1)が粒子ビーム(B)を放出していると、粒子の放出は突出部(1.1)の先端(1.4)から発出し、円錐が上記エミッタ(1.1)の先端で観察される。
【0167】
図1に表されるように、エレクトロスプレー発生装置(10)は、エミッタ(1)のプレート(1.3)のプレートの第1の面(1.3.1)に対向する電極(1.6)も呈する。上記電極(1.6)は突出部(1.1)から離れて配置され、生成された粒子ビーム(B)を通過させるための開口部を呈する。
【0168】
加えて、エレクトロスプレー発生装置(10)は、エミッタ(1)の基板(S)と電極(1.6)との間に電源(1.7)を示す。電源(1.7)は、両方の要素(1.6、S)の間に発生される電界が突出部の先端(1.4)に集中され、イオン化された粒子を先端(1.4)の流体から放つ強度に達するように、電極(1.6)と半導体基板(S)との間に電位差を設定する。
【0169】
突出部(1.1)の先端(1.4)から放出されるイオンの連続的な流動は、液体源(1.8)からの流体または液体(1.8.1)の流動も十分である場合に、保証される。これは、ナノテクスチャ化された表面(1.5)の毛細管力が表面の濡れに有利に働き、さらに、テクスチャ化された表面の液圧抵抗が極端に高くないことで十分な流体または流体(1.8)の流動に有利に働くが、依然としてイオン条件を実現するのに十分な程度に高いことを示唆する。
【0170】
ナノワイヤ(この図では図示されず)のそれぞれが突出部(1.1)上であろうとも基部(1.2)に対して垂直な同じ向きを保つ特定のナノワイヤ構造は、より低い供給電位においても一定で安定した液体(1.8.1)の流動を可能にするものである。この一定の液体(1.8.1)の流動が、突出部に液体を補充し、連続的で安定したイオン条件を保証する。
【0171】
次に、図2は、イオン液体推進剤として使用される液体(1.8.1)を含む貯蔵部を示す、エレクトロスプレー発生装置(10)のエミッタ(1)の別の実施形態を表す。液体源(1.8)は、液体源(1.8)の上記液体(1.8.1)を表面に供給するために、エミッタ(1)のプレート(1.3)および/または突出部(1.1)の、ナノテクスチャ化表面(1.5)に流体連通されている。
【0172】
この特定の実施形態において、図2に示されるように、エミッタ(1)の突出部(1.1)と液体源(1.8)からの液体(1.8.1)とを接続するために、プレート(1.3)はその両面、第1の面(1.3.1)および反対側の面(1.3.2)、で穿孔されている。
【0173】
図3は、エレクトロスプレー発生装置(10)のエミッタ(1)の複数の突出部の構造の概略図を示す。この特定の実施形態において、円錐形状を有する、エミッタ(1)の各突出部(1.1)は、その円錐直径Xによって画定される基部(1.2)を呈する。また、エミッタ(1)の各突出部(1.1)は、その高さH、その先端(1.4)半径r、およびエミッタ(1)のプレート(1.3)の厚さYによって画定される。
【0174】
この特定の実施形態において、図3で表されるように、複数の突出部(1.1)がプレート(1.3)上に配置されており、各突出部(1.1)の先端(1.4)はピッチPだけ離隔されている。さらに、エミッタ(1)のプレート(1.3)は、液体(この図では図示されず)にプレート(1.3)を通過させるために、推進剤通路直径Oを呈する。
【0175】
エレクトロスプレー発生装置(10)は、断面図により表される電極(1.6)の複数の部分も示し、電極(1.6)の部分は、電極(1.6)の他の部分から距離E1だけ離隔され、厚さE2を呈する。断面図による電極(1.6)の2つの部分の間の空隙または隙間は、孔を備えるプレートから作られたグリッド形態を有する電極(1.6)の穿孔部の直径である。電極(1.6)の2つの部分の間に存在する距離E1は、粒子ビーム(この図では図示されず)が各突出部(1.1)から生じるために十分な空間を提供する。さらに、各突出部(1.1)の各先端(1.4)は、電極(1.6)から距離E3だけ離隔されている。
【0176】
図3の右側において、複数のナノワイヤ(1.9)を呈するナノテクスチャ化領域(R)へ、より詳細な焦点が当てられている。各ナノワイヤは、その高さh、その直径d、および各ナノワイヤ(1.9)間の距離pなどの構造寸法を呈している。好ましくは、上述の寸法は、ナノテクスチャ化表面のワイヤの密度N、および従ってワイヤの体積分率Ψを算出する能力を当業者に提供する。2つのナノワイヤ(1.9)の断面図の上に、同じ詳細な焦点が平面視における5つのナノワイヤ(1.9)を示している。
【0177】
前述された複数のエミッタ(1)およびエレクトロスプレー発生装置(10)の要素の全ての構造寸法は、ナノまたはマイクロメートル規模である。
【0178】
図5、6および7は、マクロ/ナノメートル規模でエレクトロスプレー(10)の本エミッタ(1)などの装置を描写する能力を提供する走査電子顕微鏡によって撮られた画像である。
【0179】
図5は、複数のナノワイヤ(1.9)によって覆われた、エミッタ(1)の突出部(1.1)および領域(R)の全体的な図を示す。
【0180】
図6は、ナノワイヤ(1.9)によって覆われたエミッタ(1)の突出部(1.1)の表面の一部のより詳細な図を示す。見られるように、ナノワイヤ(1.9)はエミッタ(1)のプレート(1.3)に対して垂直である。
【0181】
図7は、ナノワイヤ(1.9)によって覆われたエミッタ(1)の突出部(1.1)の表面の一部のさらにより詳細な図を示す。この特定の実施形態において、走査電子顕微鏡によって撮られた画像は、ナノワイヤ(1.9)の高さh(2.298μm)および直径d(285nm)を測定する能力を提供する。この拡大図は、製造工程中に各ナノワイヤの頂部に生成されたマスクの残存ディスクも示す。
【0182】
ナノワイヤ被覆は、被覆された表面にわたって流れる流体に液圧抵抗を加える。被覆の設計パラメータ、主にナノワイヤの密度Nおよび直径dは、被覆の透過率Kを決定する。被覆された表面の幾何学的形状と合わせて被覆の高さを画定するナノワイヤ(1.9)の高さhは、液圧インピーダンスを決定する。液圧インピーダンスは、突出部(1.1)の先端の液体(1.8.1)メニスカス近傍の電気力により生み出された圧力差Δpによって押される総体積流量Qを調整する。
【0183】
全てのナノワイヤ(1.9)が同一の方向、好ましくはプレートに垂直に配向されている特定のナノワイヤ(1.9)構造と、均一な分布と、突出部(1.1)の先端(1.4)に保たれている低起伏とが、エミッタ(1)が先行技術のいかなるエミッタ(1)よりも高い流量をイオン放出状態下で支持する主な理由であることが証明されている。最適な状態の下でメニスカスを生成することが、ナノワイヤ(1.9)群を通る液体(1.8.1)の流動を送る機構である。それでもなお、ナノテクスチャ化表面(1.5)の残部のこの同一の構造は、先端(1.4)に供給を行う流動が先端(1.4)での要求流量を供給するのに十分であり、イオン流を発生させることを可能にする。
【0184】
実験された実施形態は、ナノワイヤ被覆のための以下の寸法パラメータで実現されている。
【表1】
【0185】
実験を実現するために使用された、EMI-BFなどのイオン液体は以下の特質を呈する:
γ=0.045N・m-1
κ=13.8
ρ=1280kg・m-3
k=1.2S・m-1
μ=0.040Pa・s。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D-4F】
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の第1の態様は、エレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法に関係される。上記方法は、基板を設けるステップと、プレートと少なくとも1つの突出部とを呈するステップと、その後、上記突出部上に配置されたナノワイヤであっても上記プレートに対して垂直な方向に低起伏表面から生じている上記ナノワイヤを有する、上記少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化するステップと、を含む。
【0002】
第2の態様によれば、本発明は、上記製造方法の結果であるエミッタと、本発明によるエミッタを備えるエレクトロスプレー発生装置と、その少なくとも1つのエレクトロスプレー発生装置を備える電気的宇宙推進装置と、にも関する。
【背景技術】
【0003】
電気力学的スプレーとしても知られるエレクトロスプレーは、生物医学的用途、宇宙推進用途、食品エリア、製薬分野、分光用途、空気清浄装置などの様々な技術分野において分子またはイオン流を提供し作るために使用されてきた、導電性液体の静電加速である。
【0004】
この技法を適用するために、エレクトロスプレー・エミッタまたは発生装置と呼ばれる装置が、導電性液体金属、コロイド、またはイオン液体などの導電性液体を分散させる目的で、高電圧電力を通常用いる。理論的には、かつ理想的には、分散された液体はエミッタ先端に達し、円錐形状で噴霧される。
【0005】
しかし、特に宇宙推進分野においては、技術進歩が、低電力推進システムを必要とするより小さい種類の衛星をもたらしているため、2000年代初頭まで上記技法は実装されるほど興味深いものではないと考えられてきた。
【0006】
エレクトロスプレー装置は、一般にはエミッタと対向電極とを含む。これら要素の両方が、液体に、微粒化されてナノもしくはマイクロ液滴、純粋なイオン放出、または両方の混合になる能力を与える。上記液体は、その密度、粘度、その表面張力、その比誘電率、およびその導電率によって主に画定される。
【0007】
電界が導電性液体の液体/固体界面に印加されるとき、電荷が、導電性が不連続な界面に移り、液体を移動させる。十分な導電性の液体については、液体表面に対する接線方向の電界はゼロになり、定常状態においては、電界の残りの法線成分が局所的表面張力のバランスを保つ。電界の法線成分は、電荷移動によって生成される対応する円錐状構造の半径をrとすると、r→0に対して特異である他のパラメータのうち、r-1/2に依存する式を示す。
【0008】
エレクトロスプレー構成において、電気力線を集中するために半径が可能な限り小さい先端終端構造の使用が求められる。
【0009】
導電性液体の体積が電界にさらされるとき、液体の形状は表面張力のみにより生じた形状から変形し始める。電圧が上昇されるにつれ、電界の効果もより顕著になる。電界のこの効果が表面張力が加える力と同程度の大きさの力を液滴に加え始めると、凸状面および丸みの付いた先端を伴った円錐形状が形成され始める。この結果、「テイラー円錐」という名称の円錐の形状に近づく。特定の閾値電圧に達されるとき、僅かに丸みの付いた先端が反転し、円錐噴射と呼ばれる液体噴射を行う。この円錐噴射の放出は、イオンが気相に移され得るエレクトロスプレー工程の初期である。安定した円錐噴射を実現するために、閾値より僅かに高い電圧が使用されなくてはならないことが一般に認められる。電圧がさらに上昇されるにつれ、他の状態の液滴崩壊が認められる。
【0010】
これに関連して、無次元流動パラメータ
【数1】
は、流動を支配する極めて関連性の高いパラメータであり、ここでρは流体の密度、κは液体の比誘電率、Κは液体の導電率、Qは体積流量、γは液体表面張力、およびεは自由空間の誘電率である。このパラメータは、テイラー円錐の先端から放出される電流の主パラメータであるが、液滴放出が止まり純粋なイオン条件(ion regime)が始まるζ≒1付近では破綻する。電界がイオン蒸発を実現するのに十分なほど高い場合、上記条件に達される。従って、エレクトロスプレー装置がイオン条件で動作するために、ζパラメータは1未満でなくてはならない。
【0011】
流体状態および電界状態によって、放出状態は、噴出、液滴、イオン、または液滴およびイオン放出の混合物の形態であってもよい。本発明に関して、放出は純粋なイオン性であることが求められる。円錐先端近傍において、電界はイオンを表面から直接遊離するのに十分なほど強くてもよく、これは電界蒸発と呼ばれる。
【0012】
エミッタの先端の電界は、印加される電界と、エミッタおよびエクストラクタの幾何学的形状と、液体メニスカスの実際の形状との関数であり、正規化角度放出プロファイルと印加電圧との積であるf・Vによって表されてもよい。電界蒸発を可能にする最低電圧は臨界電圧として公知である。
【0013】
先端半径はメニスカスの半径であり、電界の影響下で変形し、同時に電界を決定する。製造工程によって設定されるパラメータではないこの半径を決定することは難しい。それにもかかわらず、エミッタおよびエクストラクタの幾何学的形状は、電界を集中させることが意図された特定の形状を示す場合があるため、先端の電界と強く関連している。
【0014】
純粋なイオン性のエレクトロスプレーにおいて、エミッタへ供給を行う液体の体積流量は静電蒸発を補償しなくてはならない一方で、純粋なイオン条件を保証するために何らかの流量制限も典型的には必要とされる。
【0015】
先行技術によれば、いくつかの種類のエミッタが公知である。
【0016】
毛細管式
毛細管式エミッタは、液体が供給される毛細導管の使用に基づく。毛細管の端部が尖ったマイクロ構造で終端することにより、毛細管を抜け出る流体のメニスカスにおいて電界の集中が起きる。
【0017】
毛細管エミッタの主な技術的課題は以下の通りである。
- 体積流をエレクトロスプレー・エミッタへ送るために流動を送る最低限の圧力が必要とされ、さもなければ、圧力がより低い場合、放出は止まるかまたは不規則になる。
- 毛細管エレクトロスプレーにある狭い流体通路は、その動作を通して、液体中の不純物または装置内で生成される破片により目詰りする傾向がある。
- 毛細管エレクトロスプレーは低い流体インピーダンスを呈することで、典型的には液滴または混合条件をもたらすが、イオン条件を実現することは一般にはできない。
【0018】
多孔質式
多孔質式エミッタは、これら装置のいくつかの制限、主に多孔質媒体における受動供給によって置き換えられ得る圧力供給への依存、を克服することを試みて、毛細管式の代替として導入された。目詰りする問題も、現在は多孔質媒体内にエミッタ先端への複数の経路が存在するため、緩和され得る。
【0019】
多孔質エミッタの主な技術的課題は以下の通りである。
- 純粋なイオン条件を実現するためには高い流体インピーダンスが必要とされ、これには、技術の利点の1つとして提起された目詰りの緩和と競合している、小さい孔サイズを必要とする。
- 放出域のテイラー円錐の長さスケールは孔サイズに依存する。これは、純粋なイオン条件を実現するための高い流体インピーダンスに必要とされる小さい孔半径のために、電界が集中される放出域がマイクロ構造先端に近接する複数の地点に存在できることを必要とする。これは、他のエミッタより大きい分散角度と、実質的により低い角度分散効率とをもたらし得る。
- エミッタとイオン液体との間の境界に容量性二重層が存在することが観察されている。放出時間が長くなるかまたは電流が高くなると、電気化学窓限界が越えられる場合があり、エミッタ先端をエッチングして粗くすることが示されているイオン液体と材料との間の化学反応をもたらし、放出特性の経時的な劣化を引き起こす。
【0020】
外面濡れ式
毛細管エレクトロスプレーに対する代替的解決法は、毛細管力により液体をエミッタ先端に輸送するために吸い上げ(wicking)材料でエミッタの表面が被覆される、外面濡れ式エミッタである。この種のエミッタは、純粋なイオン条件を実現するために必要な液圧インピーダンスを有することができる。例えば、ブラック・シリコンから作られた表面被覆は機能することが知られているが、被覆の形態、特に表面分布およびアスペクト比、は典型的に適用される方法では制御できず、従ってナノ構造体の高さまたは離隔距離を調整することでは液圧インピーダンスを設計できない。さらに、被覆は、装置の動作による応力下で、経時的に機械的劣化をする場合がある。
【0021】
限定された電圧で動作する高い処理能力の外面濡れエレクトロスプレーを実現するために、エミッタの設計は、液圧インピーダンスの値がイオン条件を保持するため十分に高い限り、開始電圧と液圧インピーダンスとの両方を減少させるように適応されなくてはならないことが結論づけられている。液圧インピーダンスは、イオン放出を可能にしつつ取り出される電流を最大化する「最適」値を呈するため、生じる主な問題は、液圧インピーダンスを制御可能にする表面テクスチャを確立することである。
【0022】
上述の種類のエミッタはいずれもこの問題を十分に解決できない。対して、本発明は、高い機械的強度を保証しつつ受動液体供給での液圧インピーダンスの正確な決定を可能にする、外面濡れ式ナノテクスチャ化エミッタを製造する方法を説明する。加えて、これにより作製される装置は先行技術で説明された短所のそれぞれを克服していることが証明されている。
【0023】
文献WO2014/193995A1は、エレクトロスプレーシステムおよび関連した方法を開示している。
【0024】
journal of microelectromechanical systems,IEEE SERVICE CENTER,us,vol.23,no.5,2014年5月16日において出版されたHILL FRANCES ANN等の文献は、「HIGH-THROUGHPUT IONIC LIQUID ION SOURCES USING ARRAYS OF MICROFABRICATED ELECTROSPRAY EMITTERS WITH INTEGRATED EXTRACTOR GRID AND CARBON NANOTUBE FLOW CONTROL STRUCTURES」を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、請求項1に記載のエレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法と、請求項19に記載のエレクトロスプレー発生装置用エミッタと、請求項32に記載のエレクトロスプレー発生装置と、請求項33に記載の電気的宇宙推進装置とを提供する。有利な実施形態は従属請求項において定義される。
【課題を解決するための手段】
【0026】
第1の発明の態様によれば、本発明はエレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法を提供し、上記方法が、
- 基板を提供するステップであって、上記基板が、
プレートと、
上記プレートの第1の面に配置された基部を有する少なくとも1つの突出部であって、先端で終端する少なくとも1つの突出部と、を備える、基板を提供するステップと、
- 上記少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化するステップであって、上記外表面をナノテクスチャ化する工程が、
a)上記表面を担体流体および粒子を含む懸濁液で覆うステップと、
b)上記懸濁液から上記担体流体を取り除き、上記表面を部分的に保護する複数の上記粒子を備えるマスクを残すステップと、
c)上記粒子によって保護されていない上記基板を所定の深さだけ取り除くために主エッチング工程を上記プレートに対して垂直な方向に行うステップであって、上記主エッチング工程が、上記突出部上に配置されたナノワイヤであっても上記プレートに対して垂直な方向に低起伏表面から生じている上記ナノワイヤを有する、エッチングされた上記低起伏表面を示すように構成される、ステップと、を含む、ナノテクスチャ化するステップと、を含む、方法である。
【0027】
本発明は、エレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法を提供する。上記方法は基板を提供する第1のステップを含む。基板は、プレートの第1の面に配置された少なくとも1つの突出部を呈するプレートを備える。少なくとも1つの突出部とプレートとの接触線は、少なくとも1つの突出部の基部を画定する。
【0028】
電界の集中を容易にし、イオンの発生または帯電液滴の放出を起こすために、少なくとも1つの突出部は先端で終端する。加えて、電界の集中は、導電性液体またはコロイドのイオンを先端の表面から直接遊離するのに十分なほど強い。
【0029】
エミッタの先端の電界は、印加される電界と、テーパ角度と、エミッタの高さや先端半径などのエミッタおよびエクストラクタの幾何学的形状との関数である。上記テーパ角度は、プレートから突出部の先端への垂線と突出部の側面との間の角度であると定義される。
【0030】
有利には、先端半径を小さくすること、テーパ角度および円錐高さの一方または両方を大きくすることは全て、エミッタの先端の電界の上昇、および機能するために必要な開始電圧の減少をもたらす。
【0031】
次に、本発明は、少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化する第2のステップを提示する、エレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法を提供する。
【0032】
ナノテクスチャ化により、表面がナノサイズ構造体で覆われることが理解される。
【0033】
少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化する工程は、担体流体および粒子を含む懸濁液で表面を覆う第1のステップを含む。少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化する工程の第1のステップは、工程の続きのステップのための最適な基礎を提供するためにプレート全体を均一に覆う傾向にある。
【0034】
プレートの少なくとも1つの突出部を覆う懸濁液の担体流体は、水、エタノール、または極性があり懸濁液によって輸送される粒子に影響しない任意の溶媒などの、粒子が溶解しない溶媒である。実施形態によれば、懸濁液は、コロイド粒子の極めて均一な懸濁を可能にするコロイド懸濁液である。
【0035】
懸濁液中の粒子の濃度および放置時間の両方のパラメータは、特定の動作状態におけるエミッタの最適な特徴および特性を得るために修正される余地がある。
【0036】
次に、少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化する工程は、懸濁液から担体流体を取り除き、プレートの第1の面を部分的に保護する複数の粒子を含むマスクを残す第2のステップを含む。
【0037】
上記工程の第2のステップは、過剰分の懸濁液を取り除いた後にその表面を制御された量の粒子で覆うために、プレートの第1の面にわたる懸濁液の均一な再配分を許可する。
【0038】
最後に、少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化する工程は、事前に堆積された粒子のマスクによって保護されていない基板を所定の深さだけ取り除くために主エッチング工程を行い、ナノ構造体を生成する第3のステップを含む。
【0039】
ナノ構造体の上記被覆は、充填密度およびナノ構造体の直径などの関連パラメータを呈する。どちらのパラメータも、エミッタ動作条件の変化を実現するための能力を提供する。
【0040】
少なくとも1つの突出部の外表面をナノテクスチャ化する工程の第3のステップは、工程の第1および第2のステップで事前に塗布された粒子によって保護されていない基板を所定の深さだけ取り除く主エッチング工程を行うことである。上記エッチング工程は、プレートの第1の面および基板の突出部にナノワイヤを形成する働きをする。ナノワイヤは全て基板に対して垂直に配向されるが、これはエッチング工程が上記方向にエッチングを行うように構成されているためである。
【0041】
好適な実施形態において、主エッチングはSiで行われる。
【0042】
粒子の懸濁液、好ましくはコロイド懸濁液、と深掘り反応性イオン・エッチングとを組み合わせる、前述のステップの組み合わせは、基板のナノテクスチャ化工程、およびナノ構造体、より詳細には形成されるナノワイヤ、の幾何学的形状への正確な制御をもたらす。
【0043】
少なくとも1つの突出部の外表面およびプレートの第1の面をナノテクスチャ化する一連のステップにより、ナノワイヤの密度、向き、直径およびアスペクト比などの複数の特性および特徴も正確に制御される。密度やアスペクト比のような重要パラメータの制御は、必要な開始電圧を最小化し、基板の液圧抵抗を制御することで純粋なイオン条件を保ちつつ電流の最大化を可能にするために重要である。
【0044】
有利には、工程中に全てのパラメータを制御することによって、生じるナノ構造体が機械的に強固になる。ナノワイヤは、好ましくは数百nmの範囲内で、比較的太く作ることができ、基板に刻まれることからその非分離部分であるため、基板に堅固に取り付けられることになり、結果的に高電界下でのエミッタの動作モード中に排出され得ない。
【0045】
加えて、ナノ構造体の機械的強度は、前述の濡れおよび流動工程中にイオン液体の強い毛細管力によって発生され得るナノワイヤの座屈も防止する。
【0046】
特定の実施形態において、プレートの第1の面の、少なくとも1つの突出部と接続された少なくとも1つの領域がナノテクスチャ化される。
【0047】
プレートの第1の面の少なくとも1つの接続された領域は、少なくとも1つのナノテクスチャ化された領域と、それに従い、エッチングされた表面の結果的な形状からナノワイヤと呼ばれる、基板の少なくとも1つの突出部を覆うナノ構造体の存在とを呈する、少なくとも1つの突出部を呈する。
【0048】
好適な実施形態において、突出部全体およびプレートの第1の面はナノテクスチャ化されており、従ってその表面に複数のナノワイヤを呈する。
【0049】
特定の実施形態において、懸濁液はコロイド粒子を含むコロイド懸濁液である。
【0050】
好適な実施形態において、懸濁液はコロイド粒子を担体として溶媒に含むコロイド懸濁液である。加えて、懸濁液は、ナノテクスチャ化領域の液圧抵抗への制御をもたらすために、少なくとも1つの突出部を覆う。先の実施形態によれば、懸濁液は、突出部の先端に供給を行うナノテクスチャ化領域の液圧抵抗へのさらなる制御をもたらすために、基板の少なくとも1つの接続された領域も覆う。
【0051】
好適な実施形態において、基板全体が懸濁液によって一様に覆われ、従ってコロイド粒子で完全に覆われる。
【0052】
特定の実施形態において、粒子はナノ/マイクロ粒子である。
【0053】
有利には、粒子はナノまたはマイクロ粒子であり、ナノ構造およびマイクロ構造のいずれにも実装され得る。特に、外面濡れエレクトロスプレーは、ナノ構造体を提供するために実装されるエミッタなどのマイクロ構造体に基づいており、ナノ構造体は毛細管力によってマイクロ構造先端への液体の吸い上げを可能にし、基板の流量制限に必要な液圧抵抗も生成し、従ってイオン条件をもたらす。
【0054】
特定の実施形態において、外表面をナノテクスチャ化する工程は、
- ステップa)の前に、ナノテクスチャ化される表面を第1のカバー層で覆うことと、
- ステップb)の後かつステップc)の前に、粒子のマスクによって保護されていない第1のカバー層の一部を取り除くために、ステップc)による主エッチング工程のそれぞれに対する予備エッチング工程を行い、第1のカバー層への懸濁液マスクの転移をもたらすことと、をさらに含む。
【0055】
外表面をナノテクスチャ化する工程の主工程は、続く主エッチング・ステップを容易にするために基板に適用される第1のカバー層でナノテクスチャ化される表面を覆う、第1のステップに先立つ追加のステップも呈することができる。
【0056】
外表面をナノテクスチャ化する工程の工程は、上述の工程の第2のステップで塗布された粒子のマスクによって保護されていない第1のカバー層の一部を取り除くために、第3の主ステップの主エッチング工程のそれぞれに対する予備エッチング工程を行う、その第2のステップと第3の主ステップとの間の別の追加のステップも呈することができる。結果として、懸濁液マスクは第1のカバー層へ移される。
【0057】
有利には、予備エッチング工程を行うこの追加のステップの実装は、基板に対するマスクの選択性を上げ、主エッチング中にパターン付きの第1のカバー層をマスクとして使用する能力をもたらし、より長い主エッチング工程を可能にし、粒子のみをマスクとしてそれが行われる場合と同様にマスクを損傷させない。
【0058】
特定の実施形態において、第1のカバー層は以下のうちの材料である:Au、Al、Cr、Ti、Ni、Pt、Co、Fe、W、Ta、Cu、Zn、それらのうちの任意の可能な合金、SiO、Si、Al、任意の金属酸化物、またはそれらの任意の組み合わせ。
【0059】
好適な実施形態において、第1のカバー層の材料は、反応性イオン・エッチングにおいてArなどの特定の種類のプラズマと組み合わされる間、より容易なエッチングを提供する、Auである。
【0060】
加えて、同一の好適な実施形態において、Au層は酸素プラズマで処理されて負帯電表面を提供し、懸濁液中で運ばれる正帯電粒子の静電自己集合を可能にする。このステップは任意のカバー層にも適用される。
【0061】
特に、基板の帯電したAu表面上に十分に分離した粒子の自己集合単層を生ずるために、ビーズを含む水懸濁液が使用される。
【0062】
有利には、単位面積あたりの粒子の濃度は表面に移動される粒子の数に依存するため、堆積された粒子、またはいわゆるコロイドの表面密度は、Au(またはビーズ)の表面電荷ならびに懸濁液中の粒子濃度およびその放置時間を制御することによって適合され得る。
【0063】
また同一の好適な実施形態において、懸濁液を適用した後の残存する浮遊コロイドを取り除くために、基板は洗浄され、表面のコロイドの正しい分布を変更する場合がある毛細管力を乾燥の際に避けるために、臨界点乾燥技法を使用して乾燥される。
【0064】
そして、基板上にAuディスク、または使用されている場合他の任意の材料、の配列を形成するために、粒子の単層が反応性イオン・エッチング・ステップでマスクとして使用される。基板上にナノワイヤの配列を形成するために、上記Auディスクはその後、主エッチング・ステップでマスクとして働く。ディスクを囲む材料は下方向に取り除かれるため、各Auディスクはナノワイヤを生成する。ナノワイヤを備える結果的に生じた表面は、ナノワイヤの頂上にマスクのディスクを示し得る。
【0065】
有利には、先の一連のステップを行うことによって、ナノワイヤの形成された配列は、基板のプレートの第1の面に垂直になる。
【0066】
また、先の一連のステップを制御して行うことによって、被覆の液圧抵抗を調整することが可能になる。例えば、大きいアスペクト比を有することで液圧抵抗の低減が可能になり、それによってより高い電流処理能力を有する装置を実現する。上記より高い電流処理能力を有する装置は、より高い透過率およびより低い抵抗をもたらすより細いナノワイヤ、またはナノワイヤのより低い表面密度のいずれか一方を用いることでも実現され得る。
【0067】
加えて、前述の技法を実装することで、費用対効果に優れ大規模な均等エッチングが可能になり、それによって制御された密度のナノワイヤ群を形成する。
【0068】
さらに、ナノワイヤがより低密度であると、個別のナノワイヤ間の間隔がより大きくなることにつながる。すなわち、いくつかの予備実験によれば、それが効果的な長さスケールを引き上げ、より低い開始電圧でのイオン放出の開始を可能にすることができる。
【0069】
特定の実施形態において、第1のカバー層は物理気相成長によって堆積される。
【0070】
物理気相成長工程によって第1のカバー層の堆積を行うことで、続く予備エッチング、反応性イオン・エッチング、がより容易に行われ、その後の主エッチングのパフォーマンスが上昇する。堆積中に費やされる時間により、結果的に生じる第1のカバー層の厚さの制御が可能となる。
【0071】
特定の実施形態において、コロイド懸濁液は以下の粒子のうちの1つを含む:好ましくはラテックスまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)であるポリマー、Si、SiO2、ZnO、Zn、FexOy、Al2O3、Au、Pt。
【0072】
実施形態において、コロイド懸濁液の選択された粒子は、SiO2、AuまたはPtなどの、Siエッチング工程に耐性のあるものである。
【0073】
特定の実施形態において、懸濁液組成物は、第1のカバー層への粒子の付着および分布を容易にするために、帯電粒子を含む。
【0074】
帯電粒子を使用することで、上記粒子は第1のカバー層に付着し一様に分布される。その好適な実施形態において、粒子は、工程の覆うステップのパフォーマンスを高めるため、その電荷の作用で選択される。
【0075】
電荷を制御することで、第1のカバー層に移動する粒子の数と、それに従って、結果的に生じるナノワイヤ群の密度とを制御することが可能になる。
【0076】
特定の実施形態において、粒子は第1のカバー層上に均一に分布されている。
【0077】
懸濁液内に含まれる粒子と反対の電荷を有する電圧を印加および設定することで、第1のカバー層にわたる粒子の均一な分布がもたらされ、工程の続く主エッチング・ステップが容易になる。コロイド懸濁液を使用することで、懸濁液内での粒子の均等な分布が可能となり、第1のカバー層での粒子のより均等な分布を補助する。
【0078】
特定の実施形態において、第1のカバー層、基板、またはその両方は、
- 前表面化学物質もしくはプラズマ処理、
- 電圧の供給、または
- その両方、によって表面電荷を有する。
【0079】
好適な実施形態において、基板および投射された帯電粒子は、基板の固有の表在電荷を使用して自己集合を行う。
【0080】
基板、第1のカバー層、またはその両方は、材料の不連続性により生成された表面電荷を既に有する。さらなる実施形態は、帯電粒子を投射する前表面化学物質またはプラズマ処理で表面を処理するステップを含む。他の実施形態によれば、第1のカバー層、基板、またはその両方は、表面に移動する帯電粒子をより強く制御する、帯電粒子の電荷と反対の電荷を伴う電圧に設定される。
【0081】
他の好適な実施形態において、高分子電解質単層の単層での被覆などの前表面化学物質、または酸素プラズマなどのプラズマ処理が適用されることで、投射された帯電粒子は、第1のカバー層を配置する前に拡散される。
【0082】
その好適な実施形態において、選択された粒子は、基板の表在電荷と比べて反対の電荷で表面的に帯電される。
【0083】
特定の実施形態において、予備エッチング・ステップは、プレートに対して垂直方向の、プラズマ、好ましくはArのプラズマの投射に基づいている。
【0084】
プラズマ、好ましくはArのプラズマの投射は、基板の表面に衝突し、上記表面の原子を機械的に引き出す。
【0085】
好適な実施形態において、投射されたArプラズマの流動は、上記原子を引き出すことのできる運動エネルギーに達するために、指向性を持って特に垂直に拡散する。その結果、この工程は基板表面にナノディスクを形成し、上記ナノディスクの直径は主エッチングを行った後に形成されるナノワイヤの直径となる。
【0086】
同一の好適な実施形態において、プラズマの垂直投射の結果、プレートの表面に対して垂直なナノワイヤが生じる。突出部上に生成されたナノワイヤは基板の主表面に配置されたナノワイヤの向きと同一の向きを保つことで、プレート表面と突出部表面との間に良好な境界面を生じさせ、流体が連続的にナノテクスチャ化された表面と相互作用することから、供給状態を動作的に向上させる。
【0087】
特定の実施形態において、主エッチング・ステップは基板の異方性エッチング工程である。
【0088】
有利には、かつSiを用いて行われる主エッチングの好適な実施形態においては、異方性エッチング工程は実質的に鉛直なナノワイヤの形成を補助する。
【0089】
特定の実施形態において、主エッチング・ステップはフッ素化ガスの組み合わせを用いて行われる。
【0090】
特定の実施形態において、主エッチング・ステップは、以下のガスを用いて同時にまたは任意の順番で行われる、プラズマを誘起する少なくとも1つのステップを含む:
- SF
- C
- 両方のガスの組み合わせ。
【0091】
好適な実施形態において、電圧を設定しながら、第一にSF、次にCまたは両方のガスの独自の組み合わせで前述のフッ素化ガスを用いてプラズマが誘起され、基板に向かって垂直に向けられる。
【0092】
上記一連のガスの組み合わせは、工程の主エッチング・ステップとして異方性エッチングを行う能力を提供し、ナノワイヤの幾何学的特徴のより良好なアスペクト比を得る能力を容易にする。
【0093】
特定の実施形態において、粒子の直径は50nm~5000nmの範囲内にあり、最も好ましくは100nm~3000nmの範囲内にあり、最も好ましくは200nm~1000nmの範囲内にある。
【0094】
粒子の直径は形成されるナノワイヤの直径を確立し、結果的に、上記形成されるナノワイヤのサイズおよび表面密度に影響する。
【0095】
特定の実施形態において、第1のカバー層または基板に堆積される粒子の表面密度は、0.001~50粒子毎平方ミクロンの範囲内にあり、最も好ましくは0.05~10粒子毎平方ミクロンの範囲内にある。
【0096】
もしあるならば第1のカバー層、または基板、に堆積される粒子の表面密度は、工程の第1のステップ中に適用される懸濁液内に含まれる粒子濃度に依存するが、放置時間にも依存する。粒子の結果的な表面密度は、ナノワイヤの結果的な密度でもある。
【0097】
特定の実施形態において、懸濁液は極性溶媒を含む。
【0098】
特に、懸濁液に含まれる選択された極性溶媒は粒子を溶解しない。
【0099】
また、有利には、選択された極性溶媒は、静電自己集合を保証するために必要とされる帯電粒子の安定的な分散をもたらす。
【0100】
本発明の第2の態様は、エレクトロスプレー発生装置用のエミッタであり、上記エミッタは基板であり、上記基板が、
- プレートと、
- 上記プレートの第1の面に配置された基部を有する少なくとも1つの突出部であって、先端で終端する少なくとも1つの突出部と、を備え、
上記少なくとも1つの突出部の外表面が、上記第1の発明の態様のいずれかの実施形態によりナノテクスチャ化されており、
上記ナノテクスチャ化表面が、突出部上に配置されたナノワイヤであっても上記プレートに対して垂直な方向に低起伏表面から生じているナノワイヤを有する低起伏エッチングされた表面を示す、エミッタである。
【0101】
エレクトロスプレー発生装置用のエミッタは、プレートを呈する基板とプレートの第1の面に配置された基部を有する少なくとも1つの突出部とを備え、少なくとも1つの突出部の外表面はナノテクスチャ化されており、上記ナノテクスチャ化表面は低起伏エッチングされた表面を示し、低起伏エッチングされた表面は上記低起伏表面から生じているナノワイヤを備える。
【0102】
ナノワイヤの端部はエッチング工程によって刻まれた元々の表面と対応するため、テクスチャ化された表面は予め設定された寸法の滑らかな構成も示す。ナノワイヤが、ナノワイヤの向きも制御されずテクスチャ化領域を区画する上面も制御されない表面に追加された要素である場合は、これは当てはまらない。
【0103】
好適な実施形態において、ナノテクスチャ化工程中に行われる垂直化学物質エッチングの結果として、複数のナノワイヤは、突出部上に配置されたナノワイヤであっても、プレートに対して垂直である。向きはナノワイヤが配置される表面の傾きから独立しており、従って均等なナノテクスチャ化表面を保証する。
【0104】
特定の実施形態において、基板は少なくとも1つの液体源を備える。
【0105】
好適な実施形態において、基板はイオン液体推進剤として使用される少なくとも1つの液体源を備える。有利には、基板内部に少なくとも1つの液体源を備えることで、プレートのナノテクスチャ化表面、および/またはエミッタの突出部の間に流体連通をもたらし、液体の連続的供給が可能となる。
【0106】
特定の実施形態において、各突出部は、突出部、または突出部の基部に供給を行うように適合された基板の接続された領域、に配置された少なくとも1つの液体源を有する。
【0107】
この実施形態によれば、エミッタの基板全体の全ての部分の間の流体連通を保ち、従ってエミッタが時間の限定なしに動作様式となるために、各突出部は、突出部、または突出部の基部に供給を行うように適合された基板の接続された領域、に配置された少なくとも1つの液体源を呈する。
【0108】
特定の実施形態において、基板の接続された領域はさらにナノテクスチャ化されている。
【0109】
この実施形態によれば、液体源が基板の接続された領域にあり基板が突出部に接触または隣接しているとき、液体源から提供される液体は突出部の先端に流体的に接続されている。毛細管力により、ナノテクスチャ化表面の濡れ工程が可能になり、連続的連通をもたらす。
【0110】
特定の実施形態において、液体源は、プレートの第1の面と反対側の面とを流体的に接続する穿孔部である。
【0111】
好適な実施形態において、液体推進剤は液体源貯蔵部から出て少なくとも1つの穿孔部によって基板のプレートを通過し、従ってプレートの第1の面と反対側の面との流体連通をもたらす。
【0112】
特定の実施形態において、液圧抵抗Rは、1015~1020Pa.s.m-3の範囲内にあり、より好ましくは1015~1018Pa.s.m-3の範囲内にあり、さらにより好ましくは1016~1018Pa.s.m-3の範囲内にあり、Rが、
【数2】
として算出され、透過率Kが、
【数3】
として算出され、体積分率Ψが、
【数4】
として算出され、Hは突出部の高さであり、hはナノテクスチャ化表面の高さであり、rは突出部の先端の半径であり、αは断面図による突出部の半角度であり、μは動粘度であり、dはナノテクスチャ化表面のワイヤの直径であり、Ψはナノテクスチャ化表面のワイヤの体積分率であり、Nはワイヤの密度である。
【0113】
表面のナノワイヤの密度を適合させることは、液圧抵抗の効率的な制御をもたらす。
【0114】
加えて、ナノワイヤの密度を減少することで、液圧透過率が上昇し、外面濡れエミッタという特定の場合において液圧抵抗が減少する。
【0115】
同時に、ナノワイヤ密度の減少はナノワイヤ間の平均距離の上昇につながり、これは必要な開始電圧の削減などの結果も呈し、イオン条件も依然として保証する。
【0116】
特定の実施形態において、透過率Kは、10-16~10-11の範囲内にあり、より好ましくは10-14~10-11の範囲内にあり、さらにより好ましくは10-13~10-11の範囲内にあり、透過率Kが、
【数5】
として算出され、体積分率Ψが、
【数6】
として算出され、dはナノテクスチャ化表面のワイヤの直径であり、Ψはナノテクスチャ化表面のワイヤの体積分率であり、Nはワイヤの密度である。
【0117】
特定の実施形態において、体積分率Ψは、
【数7】
として算出され、dはナノテクスチャ化表面のワイヤの直径であり、Nはワイヤの密度である。
【0118】
エミッタを製造する方法および製造されるエミッタの特定の実施形態において、エミッタの基板は半導体である。
【0119】
有利には、採用される粒子の電荷が基板上の上記粒子の堆積のパフォーマンスに影響を与える工程のステップを容易にするために、エミッタを製造するための方法およびエミッタは半導体である基板を呈し、いくつかの予備実験はこの特徴が動作状態における必要な開始電圧を引き下げることを示している。
【0120】
エミッタを製造する方法および製造されるエミッタの特定の実施形態において、基板はSiである。
【0121】
Si基板を呈することによって、エミッタを製造する方法およびエミッタは、Siナノワイヤを形成するためのSiエッチング工程の特定の実施形態において、外面濡れエミッタという特定の場合に機械的により強固な基板を提供する。
【0122】
エミッタを製造する方法および製造されるエミッタの特定の実施形態において、基板はガラスである。
【0123】
エミッタを製造する方法および製造されるエミッタの特定の実施形態において、少なくとも1つの突出部は、円錐形状、角錐形状、螺旋形状、刃形状、尖状形状、または針形状である。
【0124】
円錐形状、角錐形状、螺旋形状、尖状形状、または針形状を有する少なくとも1つの突出部を提供することによって、エミッタを製造する方法は、エミッタが上記少なくとも1つの突出部形状を呈するとき、エミッタの動作状態中に純粋なイオン条件を最大化するために高電界を集中させる利点をもたらす。
【0125】
フォーム・ファクタが電気力線を集中させること、または印加される電圧のいずれか一方によって、電界が十分な強さに達すると、流体に与えられる正しい液圧抵抗およびその正しい温度と結び付けられた放出状態がイオン条件に達するのを保証する。本発明によれば、製造方法およびそれによって得られるエミッタにより得られるナノワイヤの構造は、イオン放出状態がより容易に実現されることを保証する。
【0126】
エミッタを製造する方法および製造されるエミッタの特定の実施形態において、エミッタの先端は電界集中のために適合された構造である。
【0127】
本発明の第3の態様は、
- エミッタと、
- 少なくとも1つの突出部を有するエミッタのプレートの面に対向し、上記少なくとも1つの突出部から離隔されている、電極と、
- 生成されたイオンまたは滴を通過させるための少なくとも1つの開口部を備える、電極と、
- 基板と電極との間の電圧を設定するための、電源と、
- プレートのナノテクスチャ化表面と流体連通された、上記表面に液体を供給するための、液体源と、を備える、エレクトロスプレー発生装置である。
【0128】
エレクトロスプレー発生装置は、少なくとも1つの突出部および/または少なくとも1つの接続されたナノテクスチャ化領域を有するエミッタと、生成されたイオンまたは滴を通過させるための少なくとも1つの開口部を有する電極と、基板と電界を発生させる電極との間の電圧を設定するための電源とを備える。
【0129】
好適な実施形態において、電極はエミッタの基板のプレートと平行なプレートであり、上記エミッタの上部に配置されており、同じエミッタの突出部から離隔されている。電極は、エレクトロスプレー発生装置が動作モードに入った後にイオンまたは滴を通過させるための孔で覆われる。
【0130】
別の好適な実施形態において、エレクトロスプレー発生装置のエミッタは、本発明の第1の態様の工程のステップに従ってナノテクスチャ化されたその基板の少なくとも1つの突出部を呈する。
【0131】
従って、ナノテクスチャ化のためのエッチング工程を行うことによって、結果的にナノワイヤの接着問題を防止し、それによってエレクトロスプレー発生装置の長期的な劣化を軽減する。
【0132】
本発明の第4の態様は、少なくとも1つのエレクトロスプレー発生装置を備える電気的宇宙推進装置である。
【0133】
主エッチング工程と追加の予備エッチング工程との両方によってどちらももたらされる、電気的宇宙推進装置の少なくとも1つのエレクトロスプレーに備えられる基板の機械的抵抗の上昇と、ナノワイヤの機械的抵抗の上昇とは、耐久性および残存性を向上させ、機械的振動が極めて強い発射環境によって生じる潜在的劣化を低減する。
【0134】
本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、添付の図面を参照して例示的かつ非限定的な例としてのみ提供される好適な実施形態の以下の詳細な説明からより明確に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0135】
図1】本発明によるエレクトロスプレー発生装置の実施形態の概略図である。
図2】本発明によるエレクトロスプレー発生装置の実施形態の概略図である。
図3】本発明によるエレクトロスプレー発生装置の複数の突出部を有するエミッタの構造体の実施形態の概略図である。
図4A-4F】本発明によるエレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法のステップの実施形態の概略図である。
図5】本発明の実施形態によるエレクトロスプレー発生装置の実施形態の走査電子顕微鏡による画像である。
図6】本発明の実施形態による複数のナノワイヤを呈するエレクトロスプレー発生装置のある領域の実施形態の走査電子顕微鏡による画像である。
図7】本発明の実施形態による複数のナノワイヤを呈するエレクトロスプレー発生装置のある領域の実施形態の走査電子顕微鏡による画像である。
【発明を実施するための形態】
【0136】
当業者に理解されるように、本発明の態様は、エレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法、エレクトロスプレー発生装置用エミッタ、エレクトロスプレー発生装置、または少なくとも1つのエレクトロスプレー発生装置を備える電気的宇宙推進装置として、具現化されてもよい。
【0137】
図1は、プレート(1.3)の第1の面に配置されている突出部(1.1)によって形成されるエミッタ(1)を備える、エレクトロスプレー発生装置(10)用エミッタ(1)の概略図を表す。一方で、突出部(1.1)はプレート(1.3)の第1の面(1.3.1)に配置されている基部(1.2)を呈し、他方で、同一の突出部(1.1)は先端(1.4)で終端する。
【0138】
エミッタ(1)は、好ましくは半導体である基板(S)から作られている。より好ましくは、エミッタ(1)の基板(S)はSiまたはガラスである。さらにより好ましくは、エミッタ(1)の基板(S)はSiである。
【0139】
さらに、図1に示される特定の実施形態において、エミッタ(1)の突出部(1.1)は、電界集中のために適合された構造を提供するために、円錐形状であり、先端(1.4)で終端する。他の特定の実施形態において、エミッタ(1)の突出部(1.1)は、円錐形状、角錐形状、針形状、螺旋形状、刃形状、尖状形状、または電界集中のために適合された構造を提供する任意の周知の形状を呈していてもよい。
【0140】
後述の図4A図4Fは、本発明の好適な実施形態によるエレクトロスプレー発生装置用エミッタを製造するための方法のステップの概略図である。
【0141】
図4Aは、エミッタ(1)の少なくとも1つの突出部(1.1)をナノテクスチャ化するための方法の任意のステップを経る前の基板(S)を示す。
【0142】
図4Bは、本発明の好適な実施形態に従って灰色の区域が上記少なくとも1つの突出部(1.1)にわたって広げられた第1のカバー層を表す、エミッタ(1)の少なくとも1つの突出部(1.1)をナノテクスチャ化するための方法の第1のステップを示す。
【0143】
図4Cは、第1のカバー層(灰色の区域)が懸濁液(傾いたデカルト座標パターンによって表されるエリア)によって覆われる、本方法の第2のステップを示す。図4Dに示されるように、粒子を含む懸濁液(黒い区域)によって表面が覆われた後、担体流体が、粒子の堆積により生じ第1のカバー層を部分的に保護するマスク(破線)を生成する懸濁液(黒い区域)から取り除かれる。実施形態によれば、担体流体は乾燥工程によって取り除かれる。
【0144】
実施形態によれば、担体流体を取り除く前に、懸濁液(黒い区域)中の粒子は帯電しており、基板(S)は反対の電荷に帯電している。粒子と基板(S)との間の異なる電荷記号に起因して、粒子は基板(S)表面に向かって移動し、基板(S)に付着されてマスク(破線)を形成する。
【0145】
図4Dは、粒子のマスク(破線)によって保護される第1のカバー層(灰色の区域)が、粒子のマスク(破線)のパターンを第1のカバー層(灰色の区域)に移す予備エッチング工程を受ける、本方法の第3のステップを示す。図4Eに示されるように、粒子によって保護されていない第1のカバー層の部分は、エッチング工程において侵食され、第1のカバー層を開口し、粒子のマスクとエッチングされた第1のカバー層との両方によってこのとき部分的に保護されている基板(S)の表面を露出する。
【0146】
図4Eは、懸濁液の粒子(破線)によって保護されていないエリアにおいて第1のカバー層(灰色の区域)がエッチングされる、本方法の前述のステップの詳細図である。
【0147】
図4Fは、基板が主エッチング工程を受け、エッチングされていない基板(S)の層と、事前に拡散された懸濁液(黒い区域)の粒子によって保護された第1のカバー層(灰色の区域)の層と、懸濁液の残存粒子(破線)と、によって形成されるナノワイヤ(1.9)が作成される、本方法の最後のステップの詳細図である。上記工程の最後に、任意選択で全ての粒子が洗浄され、かつ任意選択で事前に広げられた第1のカバー層(灰色の区域)が洗浄されたナノワイヤ(1.9)が形成される。
【0148】
前述のように、かつ図1に示されるように、ナノテクスチャ化されるエミッタ(1.1)の表面を図4Cに示されるように担体流体および粒子を含む懸濁液で覆う本発明の方法の第1のステップの後に、エミッタ(1)の領域(R)はナノテクスチャ(1.5)化されている。
【0149】
その後、図4Dに示されるように、懸濁液(黒い区域)の上記担体流体が取り除かれ、結果的に、ナノテクスチャ化されるエミッタ(1)の領域(R)にわたって基板(S)の表面に付着される粒子のマスク(破線)を生成する。マスク(破線)は、ナノテクスチャ化されるエミッタ(1)の領域(R)を部分的に保護する。
【0150】
好適な実施形態において、図4Cに示されるようにナノテクスチャ化される表面を覆う懸濁液(黒い区域)は、懸濁液(黒い区域)中で均一に分布される傾向にあり、その結果基板(S)の表面に堆積されるとき均一な分布を生じるコロイド粒子を含む、コロイド懸濁液である。
【0151】
さらに、上記粒子はナノまたはマイクロ粒子のいずれか一方である。特定の実施形態において、コロイド懸濁液(黒い区域)はポリマー粒子を含む。より特定の実施形態において、これらコロイド懸濁液は以下のポリマー粒子のうちの1つを含む:ラテックス、ポリメチルメタクリレート(PMMA)。他の実施形態によれば、粒子はSi、SiO2、ZnO、Zn、FexOy、Al2O3、Au、Ptから作られる。さらに、懸濁液(黒い区域)は好ましくは極性溶媒を含む。
【0152】
最後に、事前に生成されたマスク(破線)によって保護されないままだったその表面のエミッタ(1)の基板(S)を所定の深さだけ取り除くために、図4Fに示されるように、主エッチング工程が行われる。
【0153】
好ましくは、エミッタ(1)に広げられた第1のカバー層の主エッチング・ステップは、SF、C、または両方のガスの組み合わせなどのフッ素化ガスの組み合わせを用いて行われる。また、エミッタ(1)の基板(S)の主エッチング・ステップは異方性エッチング工程である。
【0154】
さらに、追加的に、本発明の上述の方法の第1のステップと第2のステップとの間において、ナノテクスチャ化される表面が図4Bに示されるように第1のカバー層(灰色の区域)で覆われてもよい。
【0155】
そして、また追加的に、本方法の主要の第2のステップで担体流体を取り除いた後、ナノテクスチャ化される領域(R)に事前に広げられた第1のカバー層(灰色の区域)の一部を取り除くために、結果的に図4Eに示されるように懸濁液マスク(破線)を第1のカバー層(灰色の区域)に移す予備エッチング工程が行われてもよい。上記予備エッチング・ステップは、プレート(1.3)に対して垂直方向の、プラズマ、好ましくはArのプラズマの投射に基づいている。
【0156】
また図4Eに示されるように、この予備エッチングは、粒子の懸濁液(黒い区域)の粒子から作られたマスク(破線)によって保護されていない第1のカバー層(灰色の区域)を取り除くためのものであることが意図される。粒子のマスク(破線)はカバー層(灰色の区域)に移され、この時点で、行われる主エッチングのための新しいマスクになる。従って、予備エッチング工程は、カバー層(灰色の区域)をエッチングするためのものであり、基板(S)をエッチングするためのものではないことが意図される。
【0157】
好適な実施形態において、第1のカバー層(灰色の区域)は以下のうちの材料である:Au、Al、Cr、Ti、Ni、Pt、Co、Fe、W、Ta、Cu、Zn、それらのうちの任意の可能な合金、SiO、Si、Al、任意の金属酸化物、またはそれらの任意の組み合わせ。
【0158】
同一の好適な実施形態において、粒子は、第1のカバー層(灰色の区域)に上記粒子を付着させ分布させるために、帯電される。第1のカバー層、エミッタ(1)の基板(S)、またはその両方は、反対の電荷を有し、それにより粒子を表面に移動させる。材料の不連続性により自然に生成された第1のカバー層(灰色の区域)の電荷、エミッタ(1)の基板(S)の電荷、またはその両方が十分でなかった場合、他の実施形態によれば、エミッタ(1)の基板(S)、第1のカバー層(灰色の区域)、またはその両方は、粒子の電荷と反対の電荷を伴う電圧に設定され、工程への強い制御をもたらす。
【0159】
結果的に、より好適な実施形態において、粒子は第1のカバー層(灰色の区域)上に均一に分布されている。
【0160】
表面近傍に位置される粒子は表面に付着され、表面から離れている粒子は表面への距離に依存する移動時間が必要となる。
【0161】
従って、表面の電荷、基板(S)に印加される電位、および待機時間は、単位面積あたりの粒子密度の制御を可能にする変数である。
【0162】
ナノワイヤ(1.9)のより詳細な図において、上記ナノワイヤ(1.9)は、本方法の第1のステップ中に事前に拡散された懸濁液(黒い区域)からの残存粒子と、主エッチング工程によってエッチングされなかった基板(S)の一部と、の少なくとも1つの重ね合わせである。
【0163】
基板(S)を第1のカバー層(灰色の区域)で覆う追加のステップを含む本方法の好適な実施形態において、図4Fに示されるように、ナノワイヤ(1.9)は、本方法の第1のステップ中に事前に拡散された懸濁液(黒い区域)からの残存粒子と、予備エッチング工程によってエッチングされなかった第1のカバー層(灰色の区域)の層と、第1のカバー層(灰色の区域)と本発明による方法の第1のステップ中に生成された新しいマスクであるマスク(破線)との両方によって保護されている基板(S)の層と、の重ね合わせである。
【0164】
加えて、基板(S)をカバー層(灰色の区域)で覆う追加のステップを含む本方法の同一の好適な実施形態において、主エッチング工程は、従って、ナノワイヤ(1.9)を作成するために、予備エッチングによってエッチングされなかったカバー層(灰色の区域)の残部と、新しいマスクによって覆われていなかったエミッタ(1)の基板(S)の一部との両方をエッチングするためのものであることが意図される。
【0165】
本発明によれば、図1に戻り、突出部(1.1)の基板(S)の領域(R)はナノテクスチャ(1.5)化され、本方法の主要および追加ステップに従った後、結果的に上記領域(R)に複数のナノワイヤ(この図では図示されず)を形成する。好適な実施形態において、図1に示されるように、プレート(1.3)の第1の面(1.3.1)とエミッタ(1)の突出部(1.1)の外表面とは完全にナノテクスチャ(1.5)化されており、従ってナノテクスチャ化された領域(R)がエミッタ(1)の外表面を全て覆っている。
【0166】
好適な実施形態において、前に詳述された方法から生じたナノワイヤは、エレクトロスプレー発生装置(10)の突出部(1.1)およびプレート(1.3)の全体を均一に覆う。また、ナノワイヤは、プレート(1.3)に対して垂直な向きで、エミッタ(1)の低起伏エッチングされた表面から生じる。ナノワイヤがプレート(1.3)に対して垂直である場合、突出部上に配置されたナノワイヤもエミッタ(1)のプレート(1.3)に対して垂直であり、結果的に、一連のナノワイヤ全てが図1の向きに準拠して鉛直方向になっている。
【0167】
図1に示されるエミッタ(1)は、その動作状態において、円錐形状を有しエレクトロスプレー(1)の突出部(1.1)の先端(1.4)から放出される粒子ビーム(B)を発生させる。
【0168】
また動作状態において、図1に示されるように、エレクトロスプレー発生装置(1)が粒子ビーム(B)を放出していると、粒子の放出は突出部(1.1)の先端(1.4)から発出し、円錐が上記エミッタ(1.1)の先端で観察される。
【0169】
図1に表されるように、エレクトロスプレー発生装置(10)は、エミッタ(1)のプレート(1.3)のプレートの第1の面(1.3.1)に対向する電極(1.6)も呈する。上記電極(1.6)は突出部(1.1)から離れて配置され、生成された粒子ビーム(B)を通過させるための開口部を呈する。
【0170】
加えて、エレクトロスプレー発生装置(10)は、エミッタ(1)の基板(S)と電極(1.6)との間に電源(1.7)を示す。電源(1.7)は、両方の要素(1.6、S)の間に発生される電界が突出部の先端(1.4)に集中され、イオン化された粒子を先端(1.4)の流体から放つ強度に達するように、電極(1.6)と半導体基板(S)との間に電位差を設定する。
【0171】
突出部(1.1)の先端(1.4)から放出されるイオンの連続的な流動は、液体源(1.8)からの流体または液体(1.8.1)の流動も十分である場合に、保証される。これは、ナノテクスチャ化された表面(1.5)の毛細管力が表面の濡れに有利に働き、さらに、テクスチャ化された表面の液圧抵抗が極端に高くないことで十分な流体または流体(1.8)の流動に有利に働くが、依然としてイオン条件を実現するのに十分な程度に高いことを示唆する。
【0172】
ナノワイヤ(この図では図示されず)のそれぞれが突出部(1.1)上であろうとも基部(1.2)に対して垂直な同じ向きを保つ特定のナノワイヤ構造は、より低い供給電位においても一定で安定した液体(1.8.1)の流動を可能にするものである。この一定の液体(1.8.1)の流動が、突出部に液体を補充し、連続的で安定したイオン条件を保証する。
【0173】
次に、図2は、イオン液体推進剤として使用される液体(1.8.1)を含む貯蔵部を示す、エレクトロスプレー発生装置(10)のエミッタ(1)の別の実施形態を表す。液体源(1.8)は、液体源(1.8)の上記液体(1.8.1)を表面に供給するために、エミッタ(1)のプレート(1.3)および/または突出部(1.1)の、ナノテクスチャ化表面(1.5)に流体連通されている。
【0174】
この特定の実施形態において、図2に示されるように、エミッタ(1)の突出部(1.1)と液体源(1.8)からの液体(1.8.1)とを接続するために、プレート(1.3)はその両面、第1の面(1.3.1)および反対側の面(1.3.2)、で穿孔されている。
【0175】
図3は、エレクトロスプレー発生装置(10)のエミッタ(1)の複数の突出部の構造の概略図を示す。この特定の実施形態において、円錐形状を有する、エミッタ(1)の各突出部(1.1)は、その円錐直径Xによって画定される基部(1.2)を呈する。また、エミッタ(1)の各突出部(1.1)は、その高さH、その先端(1.4)半径r、およびエミッタ(1)のプレート(1.3)の厚さYによって画定される。
【0176】
この特定の実施形態において、図3で表されるように、複数の突出部(1.1)がプレート(1.3)上に配置されており、各突出部(1.1)の先端(1.4)はピッチPだけ離隔されている。さらに、エミッタ(1)のプレート(1.3)は、液体(この図では図示されず)にプレート(1.3)を通過させるために、推進剤通路直径Oを呈する。
【0177】
エレクトロスプレー発生装置(10)は、断面図により表される電極(1.6)の複数の部分も示し、電極(1.6)の部分は、電極(1.6)の他の部分から距離E1だけ離隔され、厚さE2を呈する。断面図による電極(1.6)の2つの部分の間の空隙または隙間は、孔を備えるプレートから作られたグリッド形態を有する電極(1.6)の穿孔部の直径である。電極(1.6)の2つの部分の間に存在する距離E1は、粒子ビーム(この図では図示されず)が各突出部(1.1)から生じるために十分な空間を提供する。さらに、各突出部(1.1)の各先端(1.4)は、電極(1.6)から距離E3だけ離隔されている。
【0178】
図3の右側において、複数のナノワイヤ(1.9)を呈するナノテクスチャ化領域(R)へ、より詳細な焦点が当てられている。各ナノワイヤは、その高さh、その直径d、および各ナノワイヤ(1.9)間の距離pなどの構造寸法を呈している。好ましくは、上述の寸法は、ナノテクスチャ化表面のワイヤの密度N、および従ってワイヤの体積分率Ψを算出する能力を当業者に提供する。2つのナノワイヤ(1.9)の断面図の上に、同じ詳細な焦点が平面視における5つのナノワイヤ(1.9)を示している。
【0179】
前述された複数のエミッタ(1)およびエレクトロスプレー発生装置(10)の要素の全ての構造寸法は、ナノまたはマイクロメートル規模である。
【0180】
図5、6および7は、マクロ/ナノメートル規模でエレクトロスプレー(10)の本エミッタ(1)などの装置を描写する能力を提供する走査電子顕微鏡によって撮られた画像である。
【0181】
図5は、複数のナノワイヤ(1.9)によって覆われた、エミッタ(1)の突出部(1.1)および領域(R)の全体的な図を示す。
【0182】
図6は、ナノワイヤ(1.9)によって覆われたエミッタ(1)の突出部(1.1)の表面の一部のより詳細な図を示す。見られるように、ナノワイヤ(1.9)はエミッタ(1)のプレート(1.3)に対して垂直である。
【0183】
図7は、ナノワイヤ(1.9)によって覆われたエミッタ(1)の突出部(1.1)の表面の一部のさらにより詳細な図を示す。この特定の実施形態において、走査電子顕微鏡によって撮られた画像は、ナノワイヤ(1.9)の高さh(2.298μm)および直径d(285nm)を測定する能力を提供する。この拡大図は、製造工程中に各ナノワイヤの頂部に生成されたマスクの残存ディスクも示す。
【0184】
ナノワイヤ被覆は、被覆された表面にわたって流れる流体に液圧抵抗を加える。被覆の設計パラメータ、主にナノワイヤの密度Nおよび直径dは、被覆の透過率Kを決定する。被覆された表面の幾何学的形状と合わせて被覆の高さを画定するナノワイヤ(1.9)の高さhは、液圧インピーダンスを決定する。液圧インピーダンスは、突出部(1.1)の先端の液体(1.8.1)メニスカス近傍の電気力により生み出された圧力差Δpによって押される総体積流量Qを調整する。
【0185】
全てのナノワイヤ(1.9)が同一の方向、好ましくはプレートに垂直に配向されている特定のナノワイヤ(1.9)構造と、均一な分布と、突出部(1.1)の先端(1.4)に保たれている低起伏とが、エミッタ(1)が先行技術のいかなるエミッタ(1)よりも高い流量をイオン放出状態下で支持する主な理由であることが証明されている。最適な状態の下でメニスカスを生成することが、ナノワイヤ(1.9)群を通る液体(1.8.1)の流動を送る機構である。それでもなお、ナノテクスチャ化表面(1.5)の残部のこの同一の構造は、先端(1.4)に供給を行う流動が先端(1.4)での要求流量を供給するのに十分であり、イオン流を発生させることを可能にする。
【0186】
実験された実施形態は、ナノワイヤ被覆のための以下の寸法パラメータで実現されている。
【表1】
【0187】
実験を実現するために使用された、EMI-BFなどのイオン液体は以下の特質を呈する:
γ=0.045N・m-1
κ=13.8
ρ=1280kg・m-3
k=1.2S・m-1
μ=0.040Pa・s。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロスプレー発生装置(10)用エミッタ(1)を製造するための方法であって、前記方法が、
- 基板(S)を提供するステップであって、前記基板(S)が、
プレート(1.3)と、
前記プレート(1.3)の第1の面(1.3.1)に配置された基部(1.2)を有する少なくとも1つの突出部(1.1)であって、前記少なくとも1つの突出部(1.1)が先端(1.4)で終端する、少なくとも1つの突出部(1.1)と、を備える、ステップと、
- 前記少なくとも1つの突出部(1.1)の外表面をナノテクスチャ化するステップであって、前記外表面をナノテクスチャ化する工程が、
a)前記表面を担体流体および粒子を含む懸濁液で覆うステップと、
b)前記懸濁液から前記担体流体を取り除き、前記表面を部分的に保護する複数の前記粒子を含むマスクを残すステップと、
c)前記粒子によって保護されていない前記基板を所定の深さだけ取り除くために主エッチング工程を前記プレート(1.3)に対して垂直な方向に行うステップであって、前記主エッチング工程が、前記突出部(1.1)上に配置されたナノワイヤ(1.9)であっても前記プレート(1.3)に対して垂直な方向に低起伏表面から生じている前記ナノワイヤを有する、エッチングされた前記低起伏表面を示すように構成される、ステップと、を含む、ステップと、を含む、エレクトロスプレー発生装置(10)用エミッタ(1)を製造するための方法。
【請求項2】
前記プレート(1.3)の前記第1の面(1.3.1)の前記少なくとも1つの突出部(1.1)と接続された少なくとも1つの領域(R)がナノテクスチャ化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記懸濁液がコロイド粒子を含むコロイド懸濁液である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子がナノ/マイクロ粒子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記外表面をナノテクスチャ化する工程が、
- ステップa)の前に、ナノテクスチャ化される前記表面を第1のカバー層で覆うことと、
- ステップb)の後かつステップc)の前に、粒子の前記マスクによって保護されていない前記第1のカバー層の一部を取り除くために、ステップc)による前記主エッチング工程のそれぞれに対する予備エッチング工程を行い、前記第1のカバー層への前記懸濁液マスクの転移をもたらすことと、をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のカバー層が、Au、Al、Cr、Ti、Ni、Pt、Co、Fe、W、Ta、Cu、Zn、それらのうちの任意の可能な合金、SiO、Si、Al、任意の金属酸化物、またはそれらの任意の組み合わせ、のうちの材料である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のカバー層が物理気相成長によって堆積される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記コロイド懸濁液が、好ましくはラテックスまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)であるポリマー、Si、SiO2、ZnO、Zn、FexOy、Al2O3、Au、Pt、の粒子のうちの1つを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記懸濁液の組成物が、前記第1のカバー層上への前記粒子の付着および分布を容易にするために、帯電粒子を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子が前記第1のカバー層上に均一に分布される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のカバー層、前記基板、またはその両方が、
- 前表面化学物質もしくはプラズマ処理、
- 電圧の供給、または
- その両方、によって表面電荷を有する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記予備エッチング・ステップが、前記プレートに対して垂直方向の、プラズマ、好ましくはArのプラズマの投射に基づく、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記主エッチング・ステップが前記基板(S)の異方性エッチング工程である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記主エッチング・ステップがフッ素化ガスの組み合わせを用いて行われる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記主エッチング・ステップが、
- SF
- C
- 両方のガスの組み合わせ、
のガスを用いて同時にまたは任意の順番で行われる、プラズマを誘起する少なくとも1つのステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記粒子の直径が50nm~5000nmの範囲内にあり、最も好ましくは100nm~3000nmの範囲内にあり、最も好ましくは200nm~1000nmの範囲内にある、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のカバー層または基板(S)に堆積される前記粒子の表面密度が、0.001~50粒子毎平方ミクロンの範囲内にあり、最も好ましくは0.05~10粒子毎平方ミクロンの範囲内にある、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記懸濁液が極性溶媒を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記基板(S)が半導体である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記基板(S)がSiである、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記基板(S)がガラスである、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの突出部(1.1)が、円錐形状、角錐形状、螺旋形状、刃形状、尖状形状、または針形状である、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記先端(1.4)が電界集中のために適合された構造である、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
エレクトロスプレー発生装置(10)用のエミッタ(1)であって、前記エミッタ(1)が基板(S)であり、前記基板(S)が、
- プレート(1.3)と、
- 前記プレート(1.3)の第1の面(1.3.1)に配置された基部(1.2)を有する少なくとも1つの突出部(1.1)であって、前記少なくとも1つの突出部(1.1)が先端(1.4)で終端する、少なくとも1つの突出部(1.1)と、を備え、
前記少なくとも1つの突出部(1.1)の外表面が、請求項1から23のいずれか一項に記載によりナノテクスチャ化されており、
前記ナノテクスチャ化表面(1.5)が、前記突出部(1.1)上に配置されたナノワイヤ(1.9)であっても前記プレート(1.3)に対して垂直な方向に低起伏表面から生じている前記ナノワイヤを有する、エッチングされた前記低起伏表面を示す、エレクトロスプレー発生装置(10)用のエミッタ(1)。
【請求項25】
前記基板(S)が少なくとも1つの液体源(1.8)を備える、請求項24に記載のエミッタ(1)。
【請求項26】
各突出部(1.1)が、前記突出部(1.1)に、または前記突出部(1.1)の前記基部(1.2)に供給を行うように適合された前記基板(S)の接続された領域(R)に配置された少なくとも1つの液体源(1.8)を有する、請求項25に記載のエミッタ(1)。
【請求項27】
前記基板(S)の前記接続された領域(R)がさらにナノテクスチャ化されている、請求項26に記載のエミッタ(1)。
【請求項28】
前記液体源(1.8)が、前記プレート(1.3)の前記第1の面(1.3.1)と反対側の面(1.3.2)とを流体的に接続する穿孔部である、請求項24から27のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項29】
液圧抵抗Rが、1015~1020Pa.s.m-3の範囲内にあり、より好ましくは1015~1018Pa.s.m-3の範囲内にあり、さらにより好ましくは1016~1018Pa.s.m-3の範囲内にあり、Rが、
【数1】
として算出され、透過率Kが、
【数2】
として算出され、体積分率Ψが、
【数3】
として算出され、Hが前記突出部(1.1)の高さであり、hが前記ナノテクスチャ化表面(1.5)の高さであり、rが前記突出部(1.1)の前記先端(1.4)の半径であり、αが断面図による前記突出部(1.1)の半角度であり、μが動粘度であり、dが前記ナノテクスチャ化表面(1.5)の前記ワイヤ(1.9)の直径であり、Ψが前記ナノテクスチャ化表面(1.5)のワイヤ(1.9)の体積分率であり、Nがワイヤ(1.9)の密度である、請求項24から28のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項30】
前記透過率Kが、10-16~10-11の範囲内にあり、より好ましくは10-14~10-11の範囲内にあり、さらにより好ましくは10-13~10-11の範囲内にあり、前記透過率Kが、
【数4】
として算出され、前記体積分率Ψが、
【数5】
として算出され、dが前記ナノテクスチャ化表面(1.5)の前記ワイヤ(1.9)の直径であり、Ψが前記ナノテクスチャ化表面(1.5)のワイヤ(1.9)の体積分率であり、Nがワイヤ(1.9)の密度である、請求項24から29のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項31】
前記体積分率Ψが、
【数6】
として算出され、dが前記ナノテクスチャ化表面(1.5)の前記ワイヤ(1.9)の直径であり、Nがワイヤ(1.9)の密度である、請求項24から30のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項32】
前記基板(S)が半導体である、請求項24から31のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項33】
前記基板(S)がSiである、請求項32に記載のエミッタ(1)。
【請求項34】
前記基板(S)がガラスである、請求項24から31のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項35】
前記少なくとも1つの突出部(1.1)が、円錐形状、角錐形状、螺旋形状、刃形状、尖状形状、または針形状である、請求項24から34のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項36】
前記先端(1.4)が電界集中のために適合された構造である、請求項24から35のいずれか一項に記載のエミッタ(1)。
【請求項37】
- 請求項24から36のいずれか一項に記載のエミッタ(1)と、
- 前記少なくとも1つの突出部(1.1)を有する前記エミッタ(1)の前記プレート(1.3)の前記第1の面(1.3.1)に対向し、前記少なくとも1つの突出部(1.1)から離隔されている、電極(1.6)と、
- 生成されたイオンまたは滴を通過させるための少なくとも1つの開口部を備える、前記電極(1.6)と、
- 前記基板(S)と前記電極(1.6)との間の電圧を設定するための、電源(1.7)と、
- 前記プレート(1.3)の前記ナノテクスチャ化表面(1.5)と流体連通された、前記表面(1.5)に液体(1.8.1)を供給するための、液体源(1.8)と、を備える、エレクトロスプレー発生装置(10)。
【請求項38】
請求項37に記載の少なくとも1つのエレクトロスプレー発生装置(10)を備える、電気的宇宙推進装置(100)。
【国際調査報告】