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特表2024-530397生物学的実体と分子との相互作用を検出する方法または装置における改良、または生物学的実体と分子との相互作用を検出する方法または装置に関する改良
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】生物学的実体と分子との相互作用を検出する方法または装置における改良、または生物学的実体と分子との相互作用を検出する方法または装置に関する改良
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20240814BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240814BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240814BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C12Q1/68 100Z
G01N37/00 102
G01N37/00 101
C12M1/00 A
G01N21/64 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500421
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 GB2022051763
(87)【国際公開番号】W WO2023281273
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2109969.2
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521217482
【氏名又は名称】ライトキャスト ディスカバリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LIGHTCAST DISCOVERY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヘンリー アイザック
(72)【発明者】
【氏名】エマ ルイーズ ヘッド
(72)【発明者】
【氏名】アヤ ぺリング
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ディーコン
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン アレクサンダー フレイリング
【テーマコード(参考)】
2G043
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA06
2G043EA01
2G043FA03
2G043KA02
4B029AA07
4B029BB01
4B063QA18
4B063QQ05
4B063QQ41
4B063QR31
4B063QS28
4B063QX02
(57)【要約】
生物学的実体と分子との相互作用を検出する方法であって、この方法は:第1微小液滴のアレイをマイクロ流体チップ内に用意するステップであって、各微小液滴が少なくとも1つのビーズを含有し、各ビーズが、結合された光切断可能な分子を有するステップと;第2微小液滴のアレイをマイクロ流体チップ内に用意するステップであって、各微小液滴が生物学的実体を含有するステップと;第1及び第2微小液滴のアレイの全体を保持するステップと;少なくとも1つのビーズを含有する第1微小液滴の少なくとも部分集合を、分子を光切断するように構成された照明光源で照明するステップと;その後に、第1微小液滴の少なくとも部分集合を、第2微小液滴の少なくとも部分集合と併合して、併合微小液滴のアレイを形成するステップと;併合微小液滴からの光信号の変化を、光学システムを用いて検出して、生物学的実体と分子との相互作用を示すステップとを含む。生物学的実体と分子との相互作用を検出する装置も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的実体と分子との相互作用を検出する方法であって、
第1微小液滴のアレイをマイクロ流体チップ内に用意するステップであって、前記第1微小液滴の各々が少なくとも1つのビーズを含有し、該ビーズの各々が、当該ビーズに結合された光切断可能な前記分子を有するステップと、
第2微小液滴のアレイを前記マイクロ流体チップ内に用意するステップであって、前記第2微小液滴の各々が少なくとも1つの生物学的実体を含有するステップと、
前記第1微小液滴のアレイ及び前記第2微小液滴のアレイの全体を保持するステップと、
前記少なくとも1つのビーズを含有する前記第1微小液滴の少なくとも部分集合を、前記分子を光切断するように構成された照明光源で照明するステップと、
その後に、前記第1微小液滴の少なくとも部分集合を、前記第2微小液滴の少なくとも部分集合と併合して、併合微小液滴のアレイを形成するステップと、
前記併合微小液滴からの光信号の変化を、光学システムを用いて検出して、前記生物学的実体と前記分子との相互作用を検出するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記生物学的実体が、細胞または細胞の一部またはウィルスまたは酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1微小液滴のアレイ及び/または前記第2微小液滴のアレイを前記マイクロ流体チップ内に用意する前に、前記第1微小液滴及び/または前記第2微小液滴を分類するステップを更に含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出した光信号を用いて、前記併合微小液滴を分類するステップを更に含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ビーズの各々が、当該ビーズの表面上の分子タグを更に含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記分子タグが、核酸タグ、またはタンパク質タグ、または小分子タグ、または合成タグである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記分子タグが、DNAタグまたはRNAタグである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1微小液滴のアレイと前記第2微小液滴のアレイとを、交互に入り込む様式で保持する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
追加的微小液滴のアレイを前記マイクロ流体チップ内に用意する、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記追加的微小液滴の各々が、少なくとも1つのレポーター・エンティティを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記照明光源の光を、前記第1微小液滴に、1~300秒の期間だけ当てる、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1微小液滴の少なくとも部分集合に照明を当てる時間を変化させるステップを更に含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記照明光源の光を、前記第1微小液滴のうちの1つ以上に、0.7~400mWの強度で当てる、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記照明光源の光を、前記第1微小液滴のうちの1つ以上に、360~380nmの波長で当てる、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記第1微小液滴の少なくとも部分集合に当てる照明の強度を変化させるステップを更に含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記第1微小液滴の少なくとも部分集合または前記第2微小液滴の少なくとも部分集合を分割するステップを更に含む、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記併合微小液滴からの前記光信号の変化が所定の閾値を超えることを検出することが、更に、前記ビーズから解放された前記分子の濃度または数を測定するように構成されている。請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記光信号が、蛍光信号または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)信号または均一時間分解蛍光(HTRF)信号またはルミネセンス信号である、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記第1微小液滴を、前記第2微小液滴のアレイよりも前に、前記マイクロ流体チップ内に用意する、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記第2微小液滴のアレイ及び前記第1微小液滴のアレイを、順に前記マイクロ流体チップ内に導入するステップを含む、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記第1微小液滴のアレイと前記第2微小液滴のアレイとを、同時に前記マイクロ流体チップ内に導入するステップを含む、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記微小液滴が細胞培養培地を含む、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
キャリア流体を前記マイクロ流体チップ内に供給するステップを更に含む、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記第1微小液滴のアレイ及び/または前記第2微小液滴のアレイが、異なるサイズの微小液滴を含む、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記第1微小液滴のアレイ及び/または前記第2微小液滴のアレイが、ほぼ同じサイズの微小液滴を含む、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記方法が、前記微小液滴をウェルプレート内に分注するステップを更に含む、請求項1~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記微小液滴を、光学測定に基づいて回収用に選択する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
元の前記微小液滴から分割した前記微小液滴に対して、前記光学測定を行い、該光学測定に応じて前記元の微小液滴を回収用に選択する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
生物学的実体と分子との相互作用を検出する装置であって、
マイクロ流体チップと、
照明光源と、
コントローラと、
光学システムと、
分注システムとを具えた装置において、
前記マイクロ流体チップは、マイクロ流体空間と、第1微小液滴のアレイ及び第2微小液滴のアレイを導入するための入口とを具え、
前記第1微小液滴の各々が少なくとも1つのビーズを含有し、該ビーズの各々が、当該ビーズに結合された光切断可能な分子を有し、
前記第2微小液滴の各々が少なくとも1つの生物学的実体を含有し、
前記第1微小液滴のアレイと前記第2微小液滴のアレイとを併合して、併合微小液滴のアレイを前記マイクロ流体空間内に形成し、
前記照明光源は、前記少なくとも1つのビーズを含有する前記第1微小液滴の少なくとも部分集合を、前記マイクロ流体空間内で照明し、前記照明光源は、更に、前記分子を光切断するように構成され、
前記コントローラは、前記第1微小液滴に当てられる前記照明光源の光の時間または強度または波長を制御するように構成され、
前記光学システムは、前記併合微小液滴からの光信号の変化を検出して、前記生物学的実体と前記分子との相互作用を示すように構成され、
前記分注システムは、前記微小液滴を前記マイクロ流体空間内から容器内へ排出するように構成されている
装置。
【請求項30】
前記装置が、誘電体上の光エレクトロウェッティング(oEWOD)デバイス、または誘電体上のエレクトロウェッティング(EWOD)デバイス、または誘電泳動(DEP)デバイスである、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記照明光源が赤外線照明光源である、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
均一時間分解蛍光(HTRF)リーダーを更に具えている、請求項29~31のいずれかに記載の装置。
【請求項33】
ルミネセンス・リーダーを更に具えている、請求項29~31のいずれかに・記載の装置。
【請求項34】
請求項29~33のいずれかに記載の装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的実体と分子との相互作用を検出する方法に関するものである。より具体的には、本発明は、光学システムを用いて微小液滴からの光信号の変化を検出して、生物学的実体と分子との相互作用を示す方法に関するものである。本発明は、生物学的実体と分子との相互作用を検出する装置も提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
従来の高性能スクリーニング(HTS:high throughput screening)は、特に創薬において用いられ、生物及び化学の分野に関連する科学実験用の方法である。HTSは、一般に自動化装置を用いて、何千から何百万もの試料を、生物活性について、モデル生物、細胞、経路、または分子レベルで迅速にテストする。その最も一般的な形態では、HTSは、既知の構造の103~108個の小分子化合物を並列的にスクリーニング(選別)する。化学薬品混合物、天然物製品、オリゴヌクレオチド、ペプチド、及び抗体のような他の物質もスクリーニングする。
【0003】
HTS法の部分集合はDNA(deoxyribonucleic acid:デオキシリボ核酸)エンコードライブラリ(DEL:DNA encoded library)スクリーニング法である。DELは、DNAと共有結合した小分子の集合体であり、各ライブラリメンバーのアイデンティティ(正体)及び構造についての一意的情報を有する。DNAエンコード化学ライブラリ(DEL)は、主要な製薬会社によって広く採用され、非常に多数の創薬プログラムにおいて用いられている。DEL技術の応用は、ターゲット(目標)化合物の識別のためのコスト、時間、及び貯蔵空間の低減により、創薬の初期において有利である。
【0004】
高性能スクリーニング技術の更なる小型化は、プレートベースの試料分析から離れて、空間、試薬、消耗品、及びターゲット材料を更に低減することを目指す。DNAエンコード化学ライブラリに基づくスクリーンは、マイクロ流体デバイス内に内蔵することができるビーズ結合ライブラリに向かいつつある。ビーズ結合ライブラリは、大量の微小キャリアビーズを含み、これらの微小キャリアビーズは薬剤化合物用の結合基質として機能する。単一の薬剤化合物と共に、各ビーズは合成DNAタグの1つ以上のコピーを担持し、合成タグのDNAシーケンスは、当該ビーズに関連する薬剤化合物のアイデンティティを符号化する。一部の場合には、一組の複数の異なるDNAタグが各ビーズ上に存在することができ、各タグの存在は合成プロセス中の特定ステップの完了を示す。
【0005】
これらの化合物を細胞または他の生物学的実体に対して分析検査(アッセイ)するためには、これらの化合物をビーズから解放する必要がある。この目的のために、光切断可能なリンカー分子を用いて化合物をビーズ上に保持することができる。このリンカー分子が適正な波長及びフルエンス(流束量)の光で適切な継続時間だけ照射されると、リンカーが破断して、化合物をビーズから周囲の溶液中へ解放する。
【0006】
DELスクリーニング法をマイクロ流体デバイス内で実行して、DNAエンコード化合物ビーズの機能的スクリーンを可能にすることができる。一部のデバイスは、ピコリットル級の分析検査(アッセイ)試薬液滴中へのライブラリビーズの分配、ビーズからの化合物の光化学切断、レーザー誘起蛍光ベースのアッセイ(分析試料)検出、及びヒット(1回分の薬剤)を隔離するための蛍光活性液滴分類(ソート)を実行することができる。
【0007】
化合物ビーズが微小液滴のような小型の反応体積内に含有されると、微小液滴内での化合物の局所的濃縮を、マイクロウェル・プレートによって提供されるもののようなより大規模な体積中に含有される単一のビーズによるよりもずっと高濃度にすることができることが有利である。マイクロビーズは、化合物に対して有することができる結合能力が限られ、従って、マイクロビーズをより小さい体積内に封入することによって、この能力限界は、必ずしも、後の分析検査における限られた化合物濃縮に移行しない。このことは薬剤スクリーンに特に関係する、というのは、コンテナ(容器)の容積が薬剤のドーズ量(1回分の薬剤)が薬剤のEC50(median effect concentration:半数影響濃度)を超えるか否かを制約するからである。
【0008】
従来のマイクロ流体液滴形成デバイスを用いて、細胞とビーズ、及び他の試薬をまとめて、液滴の形成時に液滴中に封入することができる。一旦、液滴がマイクロ流体の流路内に形成されると、それ以上の材料を液滴中に追加することは技術的に挑戦的である。このため、大部分のマイクロ流体デバイスは、初期の液滴形成の時点で全部のターゲット材料を液滴中に封入しなければならないという制約がある。従って、封入分布の統計値が液滴の内容物を決定し、液滴のごく一部しか全部のターゲット材料を含むことができない。
【0009】
微小液滴を用いた、ビーズに結合されたDNAエンコードライブラリを分析検査することに伴う挑戦は、従来の微小液滴流体工学では、ビーズライブラリがマイクロ流体の流路を通過する際に、液滴のUV(ultraviolet:紫外線)照明を用いて、ビーズライブラリから小分子を切断することである。このようにUV照明を微小液滴に当てることは、必然的に、ビーズに加えて微小液滴内のあらゆる生体物質も照明する。このことは、生体物質中のDNAの損傷及び変異を生じさせ得るし、下流で遺伝分析が必要である場合に有害であり得る。
【0010】
従って、液滴マイクロ流体デバイスにおける効率的で高性能なスクリーニング技術の要求が存在し、この技術は、照明段階中にマイクロ流体デバイス内の生体物質を損傷することなしに、生体物質に対する試料分析を実行することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
こうした背景に対して本発明が生まれた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの態様によれば、生物学的実体と分子との相互作用を検出する方法が提供され、この方法は:第1微小液滴のアレイをマイクロ流体チップ内に用意するステップであって、各微小液滴は少なくとも1つのビーズを含有し、各ビーズは結合された光切断可能な分子を有するステップと;第2微小液滴のアレイをマイクロ流体チップ内に用意するステップであって、各微小液滴は少なくとも1つの生物学的実体を含有するステップと;第1及び第2微小液滴のアレイを保持するステップと;少なくとも1つのビーズを含有する第1微小液滴の少なくとも部分集合を、分子を光切断するように構成された照明光源で照明するステップと;その後に、第1微小液滴のアレイの少なくとも1つの部分集合を、第2微小液滴のアレイの少なくとも1つの部分集合と併合して、併合微小液滴のアレイを形成するステップと;光学システムを用いて、併合された微小液滴からの光信号の変化を検出して、生物学的実体と分子との相互作用を示すステップとを含む。
【0013】
本発明の方法は、光切断するように構成された照明による第2微小液滴のアレイの照明を回避しつつ、分子をビーズから光切断するように構成された照明光源による第1微小液滴の少なくとも部分集合の選択的で局所的な照明を可能にする。
【0014】
本明細書中に説明する併合ステップまたは併合動作は、EWOD(electrowetting-on-dielectric:誘電体上のエレクトロウェッティング(電気による濡れ性変化))及び・またはoEWOD(optical electrowetting-on-dielectric:誘電体上の光エレクトロウェッティング)技術を利用する際に、微小液滴のアレイに特に適用可能である。併合ステップは、サイズが不一致の微小液滴を含むことができる。例えば、細胞のような生物学的実体をより大きな液滴内に封入して、液滴生成プロセスの幾何学的制約を楽にすること、及び/またはより大きな栄養素源を生物学的エンティティに提供することが必要なことがある。併合された液滴のサイズを可能な限り小さく保ち、解放された化合物のより高いドーズ(投薬)量を可能にするために、ビーズを含有する小さい微小液滴との併合を行うことができる。併合ステップは、三者併合を含むことができ、これにより、ステップのうちの1つ以上において微小液滴を併合することが、サイズを不一致にすることがある。追加的な例では、第1微小液滴に、ビーズにロード(装荷)された薬剤が封入され、第2微小液滴にレポーター・エンティティ(実体)が封入され、レポーター・エンティティは細胞またはビーズのいずれにすることもでき、第3微小液滴に関心事の細胞が封入される。これら3つの微小液滴は、作業の流れに最も適したいずれの順序でも併合することができる。1回目の併合は、より大きな微小液滴を生じさせ、次に、この微小液滴に、より小さな第3微小液滴が併合される。他の例では、刺激剤をロードされた微小液滴を、まず、細胞を含有する微小液滴と併合する。次に、併合微小液滴を、ビーズを含有する微小液滴と併合する。
【0015】
フローセルまたはチャンバ内の微小液滴アレイ、あるいは従来の流路ベースのマイクロ流体内に包含される微小液滴を用いて、微小液滴を撮像及び分類することができる。しかし、微小液滴の2つ以上の異なるアレイを、フローセル、チャンバ、または従来の流路ベースのマイクロ流体内で併合するステップを実行することは、困難かつ非効率的であることが多い。
【0016】
それに加えて、あるいはその代わりに、流液式マイクロ流体デバイスは、微小液滴中のビーズから分子を切断するために用いることもできる。しかし、流液式デバイスは、ビーズから分子を光切断するために微小液滴を照明するための短い期間しか提供しない。従って、流液式マイクロ流体デバイスを用いる際には、微小液滴中の分子を切断するために高出力の照明光源を必要とすることが多い。このことは、高出力の照明で露光された、細胞を含有する周囲の他の微小液滴にも悪影響を与えることが多い。例えば、照明光源の高出力が、微小液滴内に含有されるあらゆる細胞を損傷させるか殺し得る。特に、この損傷は、光誘起の突然変異生成を含み得る。これとは対照的に、本発明のステップは、照明光源を、より長い期間にわたって、より低い照明電力で作動させて、第2微小液滴のアレイ内の細胞を損傷させることなしに、第1微小液滴のアレイ内のビーズから分子を切断することを可能にする。
【0017】
本発明によれば、第2微小液滴のアレイ内の各微小液滴が、少なくとも1つの生物学的実体を含有する。従って、第1微小液滴のみを選択的に照明することによって、光切断するように構成された照明光源による、第2組の微小液滴内の生物学的実体の損傷を回避することができる。
【0018】
本発明の方法は、光切断するように構成された照明光源で第1微小液滴が照明される前に、第1及び第2微小液滴のアレイをマイクロ流体チップに用意することを可能にする。マイクロ流体チップに微小液滴を用意するステップは、時間を要するプロセスになり得る。従って、光切断する前に、微小液滴をマイクロ流体チップに用意することによって、撮像ステップが光切断ステップの直後に後続することができ、第1及び第2微小液滴の光切断と併合との間の時間を大幅に最小化することができる。このことは有益である、というのは、ビーズからの切断後に、切断された分子が第1微小液滴内で費やす時間を最小にし、切断された分子が微小液滴から漏洩する可能性を最小にし、従って生物学的実体が光切断された分子に近接している時間を最大にするからである。
【0019】
一部の好適例では、第1微小液滴の部分集合を、光切断するように構成された照明光源で照明することができる。一部の好適例では、第1微小液滴のアレイ全体を、光切断するように構成された照明光源で照明することができる。
【0020】
一部の好適例では、第1微小液滴のアレイと第2微小液滴のアレイとを併合することを、マイクロ流体チップ全体にわたって、微小液滴の全部の対について同時に、またはほぼ同時に行うことができる。一部の好適例では、この併合を視野毎のベースで行うことができる。
【0021】
一部の好適例では、併合ステップが、第1微小液滴のアレイの少なくとも部分集合を、第2微小液滴のアレイの少なくとも部分集合と混合または攪拌して、併合微小液滴のアレイを形成することを含むこともできる。
【0022】
それに加えて、本明細書中に開示する本発明の方法は、複数の併合ステップを含むことができる。例えば、第1または第2微小液滴のアレイを、第2または第1微小液滴のアレイと併合する前に、微小液滴の複数の異なるアレイと併合することができ、これらのアレイは特定の栄養素またはミネラルを含有することができる。他の例では、第1微小液滴と第2微小液滴とを一緒に併合して、併合微小液滴のアレイを形成することができる。この段階では、併合微小液滴または併合前の微小液滴のいずれも、微小液滴の1つ以上の追加的アレイと追加的に併合することができ、微小液滴の追加的アレイは、栄養素、添加物、またはミネラルのような他の物質を含有することができる。こうした添加物は、密度修正剤、保湿剤、乾燥剤、界面活性剤、またはクラウディング剤(クラウディング・エージェント)を含むことができる。追加的微小液滴を更に用いて、レポータービーズのようなレポーター・エンティティ、検出試薬、抗体、刺激剤、補因子、サイトカイン、基質、レポーター細胞、副刺激細胞、バクテリア、またはウィルスを追加することができる。追加的液滴は、分析検定(アッセイ)中の任意のステップで併合することができ、第1微小液滴と第2微小液滴との併合の間、及び第1微小液滴と第2微小液滴との併合の前、及び第1微小液滴と第2微小液滴との併合の後を含む。更に、第4、第5、及び更なる追加的微小液滴の集合を、分析検定中の任意の段階で併合することができる。
【0023】
一部の好適例では、第1及び第2微小液滴のアレイの全体を保持するステップを、光学的に媒介される力を用いて実現することができる。一部の好適例では、第1微小液滴のアレイの少なくとも1つの部分集合と、第2微小液滴の少なくとも1つの部分集合との併合を、光学的に媒介される力を用いて実現することができる。
【0024】
一部の好適例では、マイクロ流体チップの両端間の電界の発生を伴う、マイクロ流体チップの少なくとも一部の照明時に、光学的に媒介される力を生成することができる。一部の好適例では、異なる照明波長を利用することによって、単一の光源を、光切断用及び光学的に媒介される微小液滴の制御用の両方に用いることができる。一部の好適例では、2つの光源を用いることができ、一方は光学的に媒介される力を与えるように最適化され、他方は光切断するように構成されている。一部の好適例では、光切断照明光源からの不所望な光学的に媒介される力を、照明及び電界の発生を変調することによって回避し、これにより、光学的に媒介される力と光切断照明とを同時に発生させないことができる。一部の好適例では、この変調をコントローラによって実現することができる。光学的に媒介される力及び光切断照明を変調することによって、光切断するように構成された照明光源からの妨害を防止しつつ、第1及び第2微小液滴のアレイを制御することができる。
【0025】
一部の好適例では、各ビーズが表面を有し、この表面上に光切断可能な分子が配置されている。一部の好適例では、少なくとも1つのビーズを含有する第1微小液滴の少なくとも部分集合を、ビーズの表面から分子を光切断するように構成された照明光源で照明するステップを含む。
【0026】
一部の好適例では、ビーズ材料をポリスチレン、テンタゲル(TentaGel:登録商標)、ヒドロゲル、樹脂(レジン)、または他のものとすることができる。一部の好適例では、ビーズを磁性にすることができる。一部の好適例では、ビーズを磁性にしないことができる。ビーズ材料は、ビーズの表面上の切断可能な分子の所望の密度に応じて選択することができる。一部の好適例では、テンタゲル(登録商標)のようなより多孔質の材料からビーズを形成する際に、切断可能な分子をビーズ内並びにビーズ表面に浮遊させることができる。
【0027】
一部の好適例では、切断可能な分子を、薬剤分子、ペプチド、タンパク質、抗体、またはあらゆる適切な小分子とすることができる。
【0028】
一部の好適例では、上記方法が、併合微小液滴からの光信号の変化を検出するステップを含むことができる。本明細書中に開示する本発明の関係では、この光信号は微小液滴のあらゆる部分から発出することができるものと理解するべきである。例えば、一部の好適例では、この光信号が、併合微小液滴の全体から発出することができる。一部の好適例では、上位光信号を、微小液滴の内容物が放出することができる。一部の好適例では、上記方法が、生物学的実体からの光信号の変化を、光学システムを用いて検出して、生物学的実体と分子との相互作用を示すステップを含むことができる。
【0029】
一部の好適例では、上記方法が、レポーターからの光信号の変化を検出するステップを含むことができ、このレポーターは追加的なマクロビーズに付着させることができる。一部の好適例では、レポーターを、光切断可能な分子を担持するのと同じビーズに付着させることができる。一部の好適例では、レポーターが複数のマイクロビーズを含むことができる。一部の好適例では、レポーターが他の種類の追加的な生物学的実体を含むことができる。上記光学システムは、光信号の変化を検出することができ、この変化は生物学的実体と分子との相互作用を示す。レポーターは、タンパク質、ペプチド、DNAのような核酸、または蛍光タグ付き分子とすることができ、但しこれらに限定されない。レポーターは、生物学的実体が分子と相互作用する際のpHの変化時に色を変えることができる、細胞からの分泌分子またはタグ付き染料とすることもできる。レポーターは、その後の併合操作中に微小液滴と組み合わせることができる。
【0030】
一部の好適例では、生物学的実体を、細胞、または細胞の一部、またはウィルス、または酵素とすることができる。それに加えて、あるいはその代わりに、生物学的実体は、抗体またはその抗体フラグメント(抗体断片)、抗原、受容体(レセプター)、リガンド(配分子)、基質、DNA、RNA(ribonucleic acid:リボ核酸)のような核酸、細胞または人工細胞の一部、細胞外小胞、リポソーム、ポリマー、組織の試料、バクテリオファージ、サイトカイン、及び/またはタンパク質とすることができ、但しこれらに限定されない。
【0031】
一部の好適例では、生物学的実体を単一細胞とすることができる。一部の好適例では、生物学的実体を菌類のような多細胞生物またはバクテリアのような単細胞生物とすることができる。一部の好適例では、マイクロ流体チップに供給される第2微小液滴の各々が、同じ生物学的実体を含むことができる。一部の好適例では、第2微小液滴が一組の生物学的実体を含むことができ、これらは遺伝子組み換えにより互いに異なる。一部の好適例では、マイクロ流体チップに供給される第2微小液滴の各々が、異なる生物学的実体を含むことができる。第2微小液滴のアレイは、複数の異なる細胞株を含んで、マイクロ流体チップへの単一回の微小液滴の供給のうちに、異なる細胞株と分子との相互作用を調査することができる。
【0032】
一部の好適例では、上記方法が、第1及び/または第2微小液滴をマイクロ流体チップ上で、但し第1及び/または第2微小液滴のアレイをマイクロ流体チップ内に用意する前に分類するステップを更に含むことができる。例えば、分類を用いて、所望数の生物学的実体またはビーズが、次にアレイを形成する微小液滴内に含有されることを保証することができ、空の微小液滴をアレイに供給することを防止することができ、このことはチップ上の空間を浪費することを防止する。一部の好適例では、微小液滴をマイクロ流体チップ内に供給する前に分類して、各微小液滴が所望の内容物を含有することを保証することができる。一部の好適例では、生物学的実体及び/またはレポーター・エンティティを、液滴内に封入する前に分類することができる。例えば、FACS(fluorescence-activated cell sorting:蛍光活性化細胞分類(セルソーティング))を用いて、特定の表面マーカーを有する生物学的実体を、微小液滴内に封入する前に選択することができる。
【0033】
一部の好適例では、第2微小液滴のアレイの行と、第1微小液滴のアレイの行とを交互配置して、併合の前に移動すべき距離の最小化を促進することができる。
【0034】
一部の好適例では、第2微小液滴の各々が、単一の生物学的実体を含有することができる。一部の好適例では、第2微小液滴の各々が複数の生物学的実体を含有することができる。複数の細胞のような複数の生物学的実体を単一の微小液滴内に有して、単一の細胞間の不均一性の問題を、薬物反応または発現のレベルで克服することが望ましいことがある。
【0035】
一部の好適例では、第1微小液滴のアレイ内の微小液滴の各々がビーズを含有することができ、同じ切断可能な分子または複数の切断可能な分子がこのビーズに結合されている。同じビーズ及び切断可能な分子を含有する複数の微小液滴を生成して、同じ分析検定の複数回の反復を実行することが有利であり得る。一部の好適例では、第1微小液滴のアレイ内の微小液滴の各々がビーズを含有することができ、異なる切断可能な分子または複数の切断可能な分子が、このビーズに結合されているか、このビーズの表面上に配置されている。各々が異なる切断可能な分子を含有する微小液滴のアレイを有して、マイクロ流体チップへの単一回の微小液滴の供給のうちに、生物学的実体と異なる分子との相互作用の検出を可能にすることが有利であり得る。
【0036】
一部の好適例では、第1微小液滴の各々が単一のビーズを含有することができる。一部の好適例では、第1微小液滴の各々が複数のビーズを含有することができる。単一の微小液滴内に含有されるビーズは、このビーズの表面上に配置された同じ種類の切断可能な分子を有することができる。その代わりに、単一の微小液滴内に含有される複数のビーズが、このビーズの表面上に配置された異なる切断可能な分子を有することができる。一部の好適例では、同じ液滴内の複数のビーズを用いて、異なる分子と生物学的実体との競合反応または干渉効果を調査することができる。
【0037】
一部の好適例では、正の制御及び/または負の制御を、マイクロ流体チップに対して行うことができる。正の制御は、既知の分子を既知の濃度で含有する微小液滴を用意することを含むことができる。正の制御は、ビーズを含有する微小液滴を用意することを含み、光切断可能な蛍光染料または比色分析染料分子が当該ビーズに結合され、光切断事象の成功を評価することができる。負の制御は、ビーズを含有する微小液滴を含むことができ、このビーズの表面上に切断可能な分子が配置されていない。負の制御は、不活性の切断可能な分子を有するビーズを含むことができ、こうした分子は、分析検定されている生物学的実体に影響を与えないことが知られている。
【0038】
一部の好適例では、上記方法が、検出した光信号を用いて併合微小液滴を分類するステップを更に含むことができる。一部の好適例では、検出した光信号が、所望の相互作用が行われたか否かを示すことができる。一部の好適例では、微小液滴を併合する前に分類することが、マイクロ流体チップ上の各併合微小液滴がビーズ及び生体細胞を共に含有することを保証することができる。併合前の微小液滴の分類なしでは、併合微小液滴を内容物について同様な様式で分類することはできるが、ポアソン(Poisson)統計が、全要素が液滴のアレイに所望の内容物をロードするために要する時間を増加させる。分類ステップなしでは、単一のビーズ及び単一の生体細胞を含有する液滴の比率が、液滴のうちの、実体のポアソン分布した払出しによって限定される。液滴を分類して、単一の実体を含有する液滴のみをロードすることによって、適正な物質を含有する液滴を分析検定する処理量(スループット)を増加させることができる。同様に、2、3個以上の実体を含有する液滴を分類することができることが有利である。こうした分類操作は、光学検査ステップによって制御することができ、これにより、撮像し、これに続いてコンピュータ分析して液滴に含有されるビーズまたは細胞の数をカウントすることにより、液滴の内容物が特定される。こうした分類プロセスは、液滴内部のビーズ及び細胞の両者、並びに他のアイテムを分類するために有用である。その代わりに、この分類プロセスを用いて、液滴のサイズを分類することができる。一部の好適例では、光学検査ステップが、明視野撮像、暗視野撮像、または蛍光撮像を含むことができ、但しこれらに限定されない。
【0039】
一部の好適例では、各ビーズが、当該ビーズの表面上に分子タグを具えることができる。一部の好適例では、第1組の微小液滴内に含有されるビーズに、表面に付着した切断可能な分子のライブラリを設けることができる。一部の好適例では、第1組の微小液滴内に含有されるビーズが、分子タグを更に具えることができ、この分子タグは、検出ステップ中に検出された相互作用に関与する分子を識別することに役立つことができる。一部の好適例では、タグを核酸タグ、またはタンパク質タグ、または小分子タグ、または合成タグとすることができる。一部の好適例では、分子タグをDNAタグまたはRNAタグとすることができる。一部の好適例では、分子がタグをsiRNA(small interfering RNA:低分子干渉RNA)タグまたはmRNA(messenger RNA:メッセンジャーRNA)タグとすることができる。一部の好適例では、分子タグを薬剤分子とすることができる。
【0040】
一部の好適例では、第1微小液滴のアレイと第2微小液滴のアレイとを、交互に入り込むアレイの形で保持することができる。交互に入り込むアレイは、第1微小液滴と第2微小液滴とが互いに近接することを可能にする。第1微小液滴と第2微小液滴との近接は、ビーズからの分子の切断と、生物学的実体を含有する微小液滴との併合との間の時間を最小にする。このことは有利である、というのは、切断された分子がビーズの表面から解放された後に、切断された分子が第1微小液滴から周囲の相内へ漏洩する恐れがあるからである。それに加えて、ビーズから分子を光切断することと、併合ステップとの間の時間を最小にすることは、方法全体の効率を増加させる。更に、第1微小液滴と第2微小液滴との近接は、細胞を含有する微小液滴とビーズを含有する微小液滴との間の移動を最小にすることができ、従って、この低減された移動は、切断された分子が第1微小液滴外へ漏洩する恐れを低下させることができる。
【0041】
その代わりに、第1及び第2微小液滴のアレイは、2つの別個のアレイとして保持することができる。
【0042】
一部の好適例では、追加的微小液滴のアレイをマイクロ流体チップに用意することができる。一部の好適例では、追加的微小液滴の各々が、少なくとも1つのレポーター・エンティティを具えることができる。一部の好適例では、このレポーター・エンティティをレポーター細胞とすることができる。
【0043】
一部の好適例では、照明光源を第1微小液滴に、1~300秒の期間だけ当てることができる。一部の好適例では、照明光源を第1微小液滴に、1秒超、10秒超、20秒超、30秒超、40秒超、50秒超、60秒超、70秒超、80秒超、90秒超、100秒超、110秒超、120秒超、130秒超、140秒超、150秒超、160秒超、170秒超、180秒超、190秒超、200秒超、220秒超、230秒超、240秒超、250秒超、260秒超、270秒超、280秒超、または290秒超だけ当てることができる。一部の好適例では、照明光源を第1微小液滴に、300秒未満、290秒未満、280秒未満、270秒未満、260秒未満、250秒未満、240秒未満、230秒未満、220秒未満、210秒未満、200秒未満、190秒未満、180秒未満、170秒未満、160秒未満、150秒未満、140秒未満、130秒未満、120秒未満、110秒未満、100秒未満、90秒未満、80秒未満、70秒未満、60秒未満、50秒未満、40秒未満、30秒未満、20秒未満、または10秒未満だけ当てることができる。一部の好適例では、照明光源を第1微小液滴の部分集合に、5分超、6分超、7分超、8分超、9分超、10分超、15分超、20分超、25分超、30分超、40分超、50分超、60分超、100分超、140分超、180分超、240分超だけ当てることができる。
【0044】
一部の好適例では、好適な照明期間が照明光源の強度に依存する。例えば、微小液滴をより低強度の照明で照明する場合、ビーズ表面から分子を光切断するのに十分なエネルギーを供給するためには、照明光源を第1微小液滴に、より長い期間だけ当てる必要がある。一部の好適例では、照明光源を第1微小液滴に10秒~60秒の好適な期間だけ当てる。
【0045】
一部の好適例では、照明の期間が長いほど、ビーズの表面から光切断される切断可能な分子の数の増加を生じさせることができる。ビーズの表面から切断される分子の数を制御することによって、併合ステップにおいて生物学的実体に触れる切断された分子の濃度を制御することができる。このことは、異なるドーズ量における生物学的実体と分子との相互作用の検出を促進することができる。
【0046】
特に断りのない限り、本発明中及び本発明の文脈内に開示する「ドーズ」または「ドーズ量」は、細胞のような生物学的実体を、特定濃度の薬剤分子のような分子に触れさせることを含むものと理解するべきである。大量の分析検定では、異なる濃度の同じ化合物で細胞を処理することによって、ドーズ応答曲線を得ることができる。このことは、最大の応答Emaxを、及び最大の半分の応答EC50を達成する薬剤濃度の計算を促進することができる。
【0047】
調整可能なドーズ量を実現するために、第1微小液滴内に含有されるビーズに当てる光切断照明の時間及び/または強度を変化させることによって、ビーズから解放される切断可能な分子の数を変化させることができる。
【0048】
ドーズ応答曲線は、第2微小液滴内の生物学的実体を、薬剤分子のような分子に、その濃度を増加させて触れさせることによって得ることができる。一部の好適例では、順次の併合ステップによって、このことを実現することができ、これらのステップでは、1つの第2微小液滴を複数の第1微小液滴と、切断された分子の順次のドーズ量で順次に併合する。更に、ドーズ応答曲線は、薬剤分子の試料を含有する液滴を、希釈剤を含有する液滴と併合して、薬剤分子を希釈して異なるドーズ量のパネルを提供することによって得ることができる。
【0049】
一部の好適例では、上記方法が、第1微小液滴の各々に照明を当てる時間を変化させるステップを更に含むことができ、あるいは他の好適例では、上記方法が、第1微小液滴の部分集合に照明を当てる時間を変化させるステップを更に含むことができる。一部の好適例では、同じ照明強度を維持しつつ、各微小液滴に照明を当てる時間を変化させることによって、含有する切断された分子の数が変化する第1微小液滴のアレイを生成することができる。従って、第1微小液滴の各々が、切断された分子を異なる濃度で含有することができ、各第1微小液滴は同一の第2微小液滴と併合することができる。このことは、順次の光切断ステップを必要とせずに、単一の分析検定中に、生物学的実体を種々の濃度の切断された分子に触れさせることを可能にする。
【0050】
一部の好適例では、照明光源を第1微小液滴のうちの1つ以上に0.7~400mWの総出力で当てることができる。一部の好適例では、第1微小液滴のうちの1つ以上に当てる照明光源が、0.7mW超、1mW超、10mW超、50mW超、100mW超、150mW超、200mW超、250mW超、300mW超、または350mW超の出力を有することができる。一部の好適例では、第1微小液滴のうちの1つ以上に当てる照明光源が、400mW未満、350mW未満、300mW未満、250mW未満、200mW未満、150mW未満、100mW未満、50mW未満、10mW未満、または1mW未満の出力を有することができる。一部の好適例では、照明光源を第1微小液滴のうちの1つ以上に0.7~400mWの出力で当てることが好ましいことがある。一部の好適例では、第1微小液滴のうちの1つ以上に当てる照明光源が0.7mW超、1mW超、5mW超、10mW超、15mW超、20mW超、25mW超、30mW超、または35mW超の出力を有することができる。一部の好適例では、第1微小液滴のうちの1つ以上に当てる照明光源が、40mW未満、35mW未満、30mW未満、25mW未満、20mW未満、15mW未満、10mW未満、5mW未満、または1mW未満の出力を有することができる。一部の好適例では、第1微小液滴の少なくとも部分集合に当てる照明光源が、少なくとも0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、10.0、または100.0ワットの総出力を有することができる。
【0051】
一部の好適例では、光切断照明の強度を、切断可能な分子とビーズとの間の結合を切断するために必要なエネルギーに応じて選択することができる。一部の好適例では、より高い強度を有する照明光源を使用して、分子または複数の分子をビーズの表面から切断するために要する時間を最小にすることが有益であり得る。このことは、上記方法の効率を最大にし、分析検定の合計時間を最小にすることができる。一部の好適例では、より低い強度を有する照明光源をより長い期間だけ使用して、光切断照明に敏感であり得る微小液滴媒体の成分を損傷することを防止することが有益であり得る。
【0052】
一部の好適例では、照明光源を第1微小液滴のうちの1つ以上に360~380nmの波長で当てることができる。
【0053】
一部の好適例では、第1微小液滴のうちの1つ以上に当てる照明光源が、200nm超、220nm超、240nm超、260nm超、280nm超、300nm超、320nm超、340nm超、360nm超、380nm超、400nm超、または420nm超の波長を有することができる。一部の好適例では、第1微小液滴のうちの1つ以上に当てる照明光源が、420nm未満、400nm未満、380nm未満、360nm未満、340nm未満、320nm未満、300nm未満、280nm未満、260nm未満、240nm未満、220nm未満、または200nm未満の波長を有することができる。一部の好適例では、好適な波長を365nmにすることができる。
【0054】
一部の好適例では、第1微小液滴のうちの1つ以上に当てる照明光源が、360nm超、362nm超、364nm超、366nm超、368nm超、370nm超、372nm超、374nm超、376nm超、または378nm超の波長を有することができる。一部の好適例では、第1微小液滴のうちの1つ以上に当てる照明光源が、380nm未満、378nm未満、376nm未満、374nm未満、372nm未満、370nm未満、368nm未満、366nm未満、364nm未満、または362nm未満の波長を有することができる。一部の好適例では、好適な波長を365nmにすることができる。
【0055】
照明光源は、微小液滴を他の波長で照明することができ、例えば、照明光源は、青色光に相当する波長を第1微小液滴に当てることができる。一部の好適例では、照明光源を異なる波長で1つ以上の第1微小液滴に当てて、光切断可能な分子をビーズから切断することができる。照明光源は、微小液滴をUV(ultraviolet:紫外)波長スペクトルで照明して、光切断可能な分子をビーズから切断することができる。
【0056】
一部の好適例では、上記方法が、第1微小液滴の各々に当てる照明の強度を変化させるステップを更に含むことができる。一部の好適例では、上記方法が、第1微小液滴の少なくとも部分集合に当てる照明を、グレースケールパターンで変化させるステップを更に含むことができる。一部の好適例では、光切断するように構成された照明光源の強度を変化させ、これにより第1微小液滴の各々が、解放する分子の数を変化させて、ビーズの表面から分子を解放することができる。このことは、順次の光切断ステップを必要とせずに、単一回の分析検定中に、切断される分子の濃度を変化させて、生物学的実体を分子に触れさせることを促進することができる。
【0057】
一部の好適例では、第1微小液滴の少なくとも部分集合に当てる光切断照明の時間または強度を変化させることを用いて、切断される分子の濃度勾配を、第1微小液滴の少なくとも部分集合の全体にわたって生成することができる。この濃度勾配を用いて、時間を費やし非実際的であり得る、切断可能な分子の数が変化するビーズをデバイス内に導入することを必要とせずに、変化するドーズ量の生物学的実体に対する影響を効率的に調査することができる。
【0058】
一部の好適例では、光切断用の照明の強度を変化させて、第1微小液滴の少なくとも部分集合の全体にわたってグレースケールパターンで当てることができる。このグレースケールパターンは、光切断照明が第1微小液滴の少なくとも部分集合に同じ時間長だけ、但し微小液滴の部分集合の全体にわたって異なる照明強度で当てられる際に形成される。例えば、第1微小液滴の部分集合の全体にわたって当てられる照明を、全強度から50%の強度まで、25%の強度まで変化させることができる。微小液滴の全体にわたって当てられる照明の勾配は、光切断が行われた後の、微小液滴内の切断された分子の数の濃度勾配に相当する。
【0059】
一部の好適例では、第1微小液滴の少なくとも部分集合中の微小液滴を、同じ照明強度で、但し微小液滴の部分集合の全体にわたって時間長を異ならせて照明することによって、濃度勾配を得ることができる。
【0060】
一部の好適例では、同時に照明することができる微小液滴の数が、光切断用の照明を当てるように構成された光学系の視野に依存する。この光学系は対物レンズを具えることができる。
【0061】
微小液滴に供給されるエネルギーを光切断用に調整するために、微小液滴に当てるパワー及び/または微小液滴の照明の継続時間を変化させることができる。このことは、光切断を効率的に、但し微小液滴の内容物を損傷するような高出力の照明の使用なしに行うことを可能にする。
【0062】
一部の好適例では、同時に照明される微小液滴の数を最大にして上記方法を並列化し、これにより方法の時間を節約して方法の効率を最大にすることが有利であり得る。
【0063】
一部の好適例では、上記方法が、微小液滴をアレイ内に保持するために使用する照明の強度または時間を変化させるステップを更に含むことができ、この照明は、第1及び/または第2微小液滴の少なくとも部分集合にグレースケールパターンで当てることができる。一部の好適例では、光学的に媒介される力で微小液滴を保持及び操作し、各微小液滴、または第1及び/または第2微小液滴の部分集合に当てられる制御付き照明光源の強度を変化させることを可能にすることができる。一部の好適例では、マイクロ流体チップの特定領域内で、微小液滴をより弱い力によって保持及び/または制御することが有利であり得る。例えば、微小液滴をマイクロ流体チップ内に供給する際に、微小液滴をより弱い光学的に媒介される制御下において、微小液滴をアレイの形に形成することができる効率を助長することができる。分析検定の後続段階では、微小液滴をより強い力で保持及び/または制御することが有益であり得る。一部の好適例では、微小液滴が最初に供給されるチップの領域内で、制御付き光源を、より低い照明強度、例えば上記照明強度の80%で用いることができる。より強い保持力を必要とするチップの他の領域では、制御付き光源の照明強度を100%にすることができる。
【0064】
一部の好適例では、上記方法が、第1及び/または第2微小液滴の少なくとも部分集合を分割するステップを更に含むことができる。一部の好適例では、光切断するように構成された照明光源による第1微小液滴の初期の照明後に、第1微小液滴を併合ステップの前に分割することができる。一部の好適例では、第1微小液滴を分割し、これにより、切断された分子が当該微小液滴の一部分内に含有され、ビーズ付きの切断された分子が当該微小液滴の他の部分に含有される。
【0065】
一部の好適例では、媒体をマイクロ流体チップ内に添加することができる。一部の好適例では、分割後に、マイクロ流体チップ内に媒体を添加して、分割した微小液滴を媒体と併合することによって、分割した微小液滴の体積を増加させることができる。分割ステップ後に、切断された分子を含有する微小液滴を、生物学的実体を含有する微小液滴と併合することができる。一部の好適例では、分割ステップ後に、ビーズを含有する微小液滴を、後続する光切断ステップにおいて用いることができる。光エレクトロウェッティングを用いて微小液滴を複数部分に分割する際に、ビーズを含有する元の液滴のアイデンティティを符号化する情報を維持することができ、その後に、元のビーズのアイデンティティを、分割した液滴を用いて行われた分析検定の結果にリンクすることができる。その後に、元のビーズを、分析検定の結果に基づく追加的な分析検定または回収用に選択することができる。
【0066】
一部の好適例では、同じビーズを一連の期間に光切断照明で露光して、追加的な切断可能な分子をビーズ表面から解放することを可能にすることができる。同じ光切断照明による一連の照明がビーズから解放する分子の数は、照明毎に指数関数的に減少する。従って、後続するステップにおいて同量の分子をビーズから解放するためには、後続する照明時間及び/または照明強度をより大きくする必要があり得る。順次のステップにおいて同じビーズから分子を光切断して、マイクロ流体チップ上で空間を使用する効率を増加させ、生物学的実体の所望のドーズ量を実現するために必要なビーズの数を最小にすることが有利であり得る。
【0067】
一部の好適例では、併合微小液滴からの光信号の変化が所定の閾値レベルを超えることの検出を、更に、ビーズから解放された分子の濃度または分子の数を測定するように構成することができる。
【0068】
一部の好適例では、併合微小液滴からの光信号を蛍光信号とすることができ、この蛍光信号は、蛍光信号の所定閾値を超えると肯定応答を示すことができる。この蛍光信号をモデルシステムと比較して、ビーズから解放される分子の濃度または分子の数を測定することができる。
【0069】
一部の好適例では、上記光信号を蛍光信号とすることができ、あるいは蛍光共鳴エネルギー移動(FRET:fluorescence resonance energy transfer)信号とすることができ、あるいは、均一(ホモジニアス)時間分解蛍光(HTRF:homogeneous time resolved fluorescence)信号またはルミネセンス(発光)信号、あるいはケミルミネセンス(化学発光)信号とすることができる。
【0070】
一部の好適例では、上記光信号を、ビーズまたは細胞に対する蛍光分析検定、ビーズまたは細胞に対するルミネセンス分析検定、細胞の形態または数の明視野画像または暗視野画像により検出することができる。正のヒットは、暗状態または明状態にすることができ、あるいは細胞の形態または増殖を示すことができる。分析検定の結果は、バイナリ(二進数)の結果とすることができ、あるいは分析検定に応答した定量化可能な事象(イベント)とすることができる。この結果は、解放された小分子に対する細胞の応答の測定値とすることができ、薬剤の有効性を示すことができる。その代わりに、標識抗体及び/またはキャッチ試薬を解放して、例えばサイトカイン検出用のELISA(enzyme-linked immunosorbent assay:酵素免疫測定法)スタイルのサンドイッチ分析検定に関与させることができる。一部の好適例では、HTRF信号が有利であり得る、というのは、他の種類の信号に比べて低減された背景(ノイズ)を有することができるからである。一部の好適例では、HTRF信号が、改善された信号対ノイズ比を有することができる。
【0071】
細胞内撮像も行うことができ、細胞または細胞含有物の一部内の信号を示すことができ、その例は、(細胞の)核、ゴルジ(Golgi)装置、及び/またはミトコンドリアを含む。
【0072】
一部の好適例では、第1微小液滴のアレイを、第2液滴のアレイより前にマイクロ流体チップに用意することができる。
【0073】
一部の好適例では、上記方法が、第2微小液滴のアレイ及び第1微小液滴のアレイを順次にマイクロ流体チップ内に導入するステップを更に含むことができる。一部の好適例では、細胞を含有する液滴を、ビーズを含有する液滴よりも前にロードすることがせき、その逆も成り立つ。
【0074】
一部の好適例では、上記方法が、第1及び第2微小液滴のアレイを同時にマイクロ流体チップ内に導入するステップを更に含むことができる。
【0075】
第1及び第2微小液滴のアレイは、異なる入口を通して同時にロードすることができる。第1及び第2微小液滴をマイクロ流体チップ内に同時にロードすることは、ロード時間を最小にし、デバイスの性能を増加させることができる。
【0076】
一部の好適例では、微小液滴が細胞培養培地を含有することができる。一部の好適例では、細胞培養培地が、EMEM(Eagle’s minimal essential medium:イーグル最小必須培地、登録商標)、DMEM(Dulbecco’s modified Eagle medium:ダルベッコ改変イーグル培地、登録商標)、RPMI(Roswell Park Memorial Institute:ロズウェルパーク記念研究所)培地、F-12培地を含むことができる。一部の好適例では、微小液滴が改良細胞培養培地を含有することができる。例えば、細胞培養培地は、追加抗体、pH緩衝液を含む緩衝液、及び/または馴化培地を含有することができる。一部の好適例では、微小液滴が、オプティプレップ(Optiprep:登録商標)のような密度修正剤を含むことができ、但しこれに限定されない。
【0077】
それに加えて、あるいはその代わりに、微小液滴は、添加剤、例えばサプリメント、密度修正剤、アゴニスト分子、拮抗薬、保湿剤、乾燥剤、補因子、刺激剤、サイトカイン、抑制剤、またはクラウディングエージェント(混雑剤)を含有することができ、但しこれらに限定されない。
【0078】
一部の好適例では、上記方法が、分散媒をマイクロ流体チップ内に供給するステップを更に含むことができる。分散媒は油脂とすることができる。一部の好適例では、界面活性剤交換を実行して、油脂を交換することによって界面活性剤レベルを低減することができる。一部の好適例では、ロードされた微小液滴の乳化用に用いる油脂に比べて低界面活性剤の油脂で、上記デバイスを事前準備することができる。分散媒内の界面活性剤の濃度が低いほど、微小液滴を包囲する分散媒中への、光切断された分子の漏洩を低減することに役立つことができる。一部の好適例では、上記油脂を細胞培養培地で調整して、細胞の生存を改善することができる。一部の好適例では、溶存する酸素及び/または二酸化炭素を上記油脂に混入して、細胞を含有する微小液滴に供給されるガスを補給して、デバイス内の細胞の生存を延長することができる。
【0079】
一部の好適例では、第1微小液滴のアレイ及び/または第2微小液滴のアレイは、異なるサイズの微小液滴を含むことができる。一部の好適例では、第1微小液滴のアレイ及び/または第2微小液滴のアレイが、5~200μmの直径の液滴を含むことができる。
【0080】
第1及び/または第2微小液滴の直径は、5μm超、10μm超、20μm超、30μm超、40μm超、50μm超、60μm超、70μm超、80μm超、90μm超、100μm超、110μm超、120μm超、130μm超、140μm超、150μm超、160μm超、170μm超、180μm超、または190μm超にすることができる。一部の好適例では、第1及び/または第2微小液滴の直径を、200μm未満、190μm未満、180μm未満、170μm未満、160μm未満、150μm未満、140μm未満、130μm未満、120μm未満、110μm未満、100μm未満、90μm未満、80μm未満、70μm未満、60μm未満、50μm未満、40μm未満、30μm未満、20μm未満、または10μm未満にすることができる。
【0081】
微小液滴のサイズを利用して、併合ステップにおいて生物学的実体が触れる、切断した分子の濃度を変化させることができる。より小さい分子を用いて、より高濃度の切断した分子に生物学的実体を触れさせることができる。微小液滴の最小のサイズは、分析検定の期間全体を通して微小液滴内の生物学的実体の生存を維持するために必要な細胞培養培地の最小体積に依存する。微小液滴の最大のサイズは、切断された分子の有用な濃度に依存することができる。
【0082】
一部の好適例では、複数の異なるサイズの微小液滴を用いて、第1及び/または第2アレイを形成することができる。一部の好適例では、併合後に微小液滴の体積を増加させることができ、従って分析検定中にサイズを増加させることができる。
【0083】
一部の好適例では、より小さい微小液滴を利用することによって、微小液滴をマイクロ流体チップ内により高い効率で供給することができる。液滴が小さいほど、マイクロ流体チップ上で必要とする空間が小さい。より小さい微小液滴を用いる際に、微小液滴を形成するために用いる生物学的実体の数を増加させる必要があり得る。このことは、非常に多数の空の微小液滴をマイクロ流体チップ内に有することを回避するために必要であり得るし、非常に多数の空の微小液滴を有することは、チップから分類して除去するための時間を要し、分析検定の効率を低下させる。
【0084】
一部の好適例では、第1微小液滴のアレイ及び/または第2微小液滴のアレイが、ほぼ同じサイズの微小液滴を含むことができる。
【0085】
一部の好適例では、上記方法が、ウェルプレートのような容器内に微小液滴を分注するステップを更に含むことができる。一部の好適例では、ウェルプレート内への分注により、肯定的なヒットに相当するビーズ及び/またはセルを回収することができる。ウェルプレートは、緩衝液、または水溶液、またはDNAスタビライゼーション・ソリューション(安定化溶液)を含有することができる。こうした溶液は、シーケンシング(シークエンシング)用の適切なプライマーを含むこともできる。乳剤(エマルジョン)中の液滴をウェルプレート内で断裂させて、ビーズを水溶液中に残すことができる。その代わりに、ビーズを油脂中に分注して、水溶液を添加する前にほぼ乾燥状態にすることを可能にすることができる。
【0086】
ビーズをウェルプレート内の個別のウェル内に分注して、生物学的実体にリンクされた表現型情報を維持することができ、あるいは複数のビーズをまとめて分注用に貯めておくことができ、この場合、複数のビーズを、ウェルプレート内の単一のウェル内に分注する。
【0087】
一部の好適例では、1つ以上の液滴を、光学測定に基づく回収用に選択することができる。
【0088】
一部の好適例では、元の液滴から分割した液滴に対して光学測定を行い、それに応じて元の液滴を回収用に選択する。
【0089】
本発明の追加的態様によれば、生物学的実体と分子との相互作用を検出する装置が提供され、この装置は:マイクロ流体チップと;照明光源と;コントローラと;光学システムと;分注システムとを具え、マイクロ流体チップは、マイクロ流体空間と、第1微小液滴のアレイ及び第2微小液滴のアレイをマイクロ流体空間内に導入するための入口とを具え、第1微小液滴の各々がビーズを含有し、各ビーズは、当該ビーズに結合された光切断可能な分子を有し、第2微小液滴の各々が少なくとも1つの生物学的実体を含有し、第1微小液滴のアレイと第2微小液滴のアレイとが併合されて、併合微小液滴のアレイをマイクロ流体空間内に形成し、照明光源は、少なくとも1つのビーズを含有する第1微小液滴の少なくとも部分集合をマイクロ流体空間内で照明し、照明光源は、更に、分子を光切断するように構成され、コントローラは、第1微小液滴に当てられる照明光源の時間または強度または波長を制御するように構成され、光学システムは、併合微小液滴からの光信号の変化を検出して、生物学的実体と分子との相互作用を示すように構成され、分注システムは、液滴をマイクロ流体空間内から容器内へ排出するように構成されている。
【0090】
一部の好適例では、上記マイクロ流体デバイスを、誘電体上の光エレクトロウェッティング(oEWOD)デバイス、または誘電体上のエレクトロウェッティング(EWOD)デバイス、または誘電泳動(DEP:dielectrophoresis)デバイスとすることができる。
【0091】
一部の好適例では、照明光源を紫外線照明光源とすることができる。一部の好適例では、ビーズの表面から分子を光切断するように構成された照明光源を、青色光源にすることができ、または白色光源にすることができる。一部の好適例では、ビーズの表面から分子を光切断するように構成された照明光源を、ビーズの表面から分子を光切断するのに十分なエネルギーを達成することができるあらゆる照明光源とすることができる。
【0092】
一部の好適例では、上記装置が、均一時間分解蛍光(HTRF)リーダー(読取り器)を更に具えることができる。
【0093】
一部の好適例では、微小液滴を包囲する環境を制御することができる。例えば、マイクロ流体チップに電流を通すことによって、微小液滴の温度を37℃に維持することができる。一部の好適例では、微小液滴乳剤をチップ外で冷却することができる。一部の好適例では、第2微小液滴のアレイ内に含有される生物学的実体を、マイクロ流体チップに供給する前に冷却することができる。一部の好適例では、光学変化を検出する前に、生物学的実体を回収するための回収期間が存在することができる。一部の好適例では、マイクロ流体チップがペルチェ(Peltier)システムを具えることができ、ペルチェシステムは、微小液滴がマイクロ流体チップ内にある間に微小液滴の冷却を促進する。一部の好適例では、微小液滴を20℃~25℃に冷却することができる。微小液滴を冷却することは、微小液滴内に含有される生物学的実体による栄養の消費を減速させる。微小液滴を冷却することは、微小液滴内に含有される生物学的実体によって生成される老廃物の分泌速度及び生成を減速させる。栄養の消費及び/または老廃物の生成を減速させることは、マイクロ流体チップ内の生物学的実体の生存を延長させる。
【0094】
本発明の他の態様によれば、カートリッジが提供され、このカートリッジは:液体試料を含有する貯蔵容器と;この貯蔵容器と流体連通する乳化装置と;乳化装置の下流に設けられた入口流路と;本発明のいずれかの態様によるデバイスと;ポンプシステムとを具え、乳化装置は、水性微小液滴の乳剤から成る媒体を非混和性分散媒中に生成するように構成され、入口流路は、非混和性分散媒中の水性微小液滴の乳剤から成る媒体を乳化装置から受け入れるように構成され、このため上記デバイスは入口ポートを具え、上記デバイスは入口流路と流体連通し、ポンプシステムは、液体試料の流れを乳化装置へ誘導し、及び/または非混和性分散媒中の水性微小液滴の乳剤から成る媒体の流れを、上記デバイスを通して誘導する。
【0095】
カートリッジ内の水性の流体は、細胞培養培地のような生体液とすることができ、細胞、ビーズ、粒子、薬剤、生体分子、または他の生物学的実体とすることができることが適切である。これらの実体は、ウィルス、DNAまたはRNA分子、刺激剤、サイトカイン、栄養素、及び油溶性ガスとすることができる。このため、カートリッジの流路及び構造の設計は、特に、均等な推力直径及び最小の流体せん断力の調和した選択によって、生体液の分散及び完全性が保存されるように最適化することができる。
【0096】
一部の好適例では、上記カートリッジが、上記デバイスの入力ポートに設けられた1つ以上のバルブを更に具えることができ、このバルブは、非混和性分散媒中の水性微小液滴の乳剤から成る上記媒体の、上記デバイスを通る流れを制御する。
【0097】
一部の好適例では、上記乳化装置をステップ乳化装置とすることができる。一部の好適例では、複数の乳化装置を設けることができ、各乳化装置には入口流路が設けられている。
【0098】
一部の好適例では、ポンプシステムが、ポンプ、ヘッド貯蔵容器、蓄圧器及び/または圧力源を含むことができ、但しこれらに限定されない。更に、液体試料の流れを乳化装置へ誘導する、及び/または上記デバイスを通る媒体の流れを誘導するために使用することができる他のポンプシステムを、当業者が知っていることは明らかである。
【0099】
非混和性分散媒によって包囲された微小液滴の水性乳剤を形成するための多数の技術は、現在技術において既知である。これらの技術は、クロスフロー(直交流)乳剤生成器、T-接合生成器、及びステップ乳化装置を含む。クロスフロー乳剤生成器、T-接合乳剤生成器、及び他の関係する装置は、代表的には、可変サイズの微小液滴を作製するために用いられる。微小液滴のサイズ分布は、油脂と水性材料とが交差する合流点で生成される流動状態に依存する。更に、微小液滴のサイズは、流動する流体の界面張力及び粘度のような流体特性に依存する。このため、均一で反復可能なサイズ分布の液滴をoEWODデバイス内に供給するためには、これらの種類の乳剤生成器に入る流体の流量を精密に制御し調整する必要がある。
【0100】
ステップ乳化装置が、乳化の合流点における流速への依存性が最小である微小液滴のサイズ分布で、乳剤を生成することが有利である。微小液滴のサイズは、主に、ノズルの物理的寸法、並びに流動する流体の材料特性によって決まる。ステップ乳化装置及び他の乳化装置は共に、流動する流体の特性に敏感であるが、界面張力及び粘度に依存する度合いは、ステップ乳化装置では大幅に低減される。このため、流動のパラメータを精密に制御し調整して乳化装置から排出される微小液滴のサイズ分布を修正する必要はない。ステップ乳化装置は、単純な固定流量または固定圧力のシステムで動作させることができる。ステップ乳化装置は、oEWODデバイスとの動作に特に適している、というのは、さもなければoEWODデバイスの動作用に用いる光学アセンブリとオーバーラップ(重複)し得る場所における検査及び乳化装置への光学的アクセスの必要性を回避するからである。ステップ乳化装置は、1つのカートリッジ・アセンブリ内で動作中の複数の乳化装置を監視し制御するための複数の検査及び微小液滴サイズ監視装置を導入する複雑性及びコストを回避する。従って、多数の独立したステップ乳化装置を、oEWODデバイス上の異なる入口に接続して、流体的に隔離された乳剤生成入力経路を、水性の入力とoEWODデバイスとの間に設けることができる。流体的に隔離された入力経路の使用は、oEWODデバイスが、異なる水性の入力材料どうしの交差汚染の可能性なしに、異なる水性の入力材料からの一組の独立した乳剤入力を受けることを可能にする。
【0101】
一部の好適例では、カートリッジ・アセンブリが8つまでの乳化装置を包含することができる。一部の好適例では、カートリッジ・アセンブリが、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つの乳化装置を包含することができる。一部の好適例では、カートリッジ・アセンブリが、8個~12個の乳化装置を包含することができる。一部の好適例では、カートリッジ・アセンブリが、12個~20個、20個~30個、30個~50個、または50個~100個の乳化装置を包含することができる。
【0102】
乳化装置はユーザが交換可能にすることができ、これによりユーザは自分が意図する目的に適した種類の乳化装置を選定することができる。例えば、ユーザは、特定範囲のサイズの微小液滴を供給する乳化装置でカートリッジを構成することができる。ユーザは、各々が異なるサイズ範囲、あるいはサイズ範囲の小区分を有する微小液滴を供給する一組の乳化装置を選定することができる。一部の好適例では、乳化装置を、14pL~180pLの範囲内の体積の微小液滴、あるいは180pL~500pLの範囲内、または500pL~1.2nLの範囲内の微小液滴を生成するように構成することができる。乳化装置は、14pL未満、特に10fL~50fLの範囲内、または50fL~14pLの範囲内の体積の微小液滴を生成するように構成することもできる。一部の好適例では、乳化装置を、少なくとも1.2nL~4nLの範囲を含む1.2nL超の微小液滴を生成するように構成することができる。乳化装置がステップ乳化装置である場合、乳化ノズルの幾何学的形状を変更することによって、特にノズルの高さを長方形のノズルの短軸方向に変化させることによって、微小液滴の体積を変化させることができる。
【0103】
更に、単一の乳化装置内の一組のステップ乳化装置ノズルの動作を並列化し、これにより複数の乳化ノズルを単一の水性の入力に接続することができる。これらの接続されたノズルは、相互接続された接合部間の複雑な相互作用によって決まる速度の変化を伴って、独立して動作することができる。乳化装置は、全部が、ノズルの物理的サイズによって決まるほぼ均一なサイズの微小液滴を生成することができる。このことは、非常に多数の生成装置が低い流速で並列的に動作することを可能にして、細胞及び他の生物学的実体を損傷させ得るせん断の有害な影響を解消する。このことは、粒子を含む生体物質が狭いノズル開口部を通過することの結果である、一部のノズルの部分的な閉塞または遮断にもかかわらず、乳化装置が乳剤を生成し続けることも可能にする。
【0104】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、カートリッジ、または方法によってスクリーニングした種(しゅ)が提供される。
【0105】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、カートリッジ、または方法によって選択した種が提供される。
【0106】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、カートリッジ、または方法によって隔離した種が提供される。
【0107】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、カートリッジ、または方法によって作製した種が提供される。
【0108】
これらの種は、事実上、化学種、生化学的種、生物種とすることができる。
【0109】
例えば、本発明は、本明細書中に開示するスクリーニング、選択、及び/または隔離によって識別した作用薬/拮抗薬を提供することができる。本発明は、本明細書中に開示するスクリーニング、選択、及び/または隔離方法によって識別した実体に、作用薬/拮抗薬を、治療において使用するために提供することができる。この実体は、事実上化学的、生化学的、または生物学的実体とすることができる。
【0110】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、カートリッジ、方法、または種の使用方法が提供される。
【0111】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、カートリッジ、方法、または種の、治療における使用方法が提供される。
【0112】
本発明は、本明細書中に開示するデバイス、装置、カートリッジ、方法、または種の、製品の作製における使用方法を提供することができる。作製される製品は、事実上、化学製品、生化学的製品、生物学的製品とすることができる。
【0113】
上記使用方法はペプチド合成とすることができる。上記使用方法は合成生物学とすることができる。上記使用方法は、細胞株の設計または開発とすることができる。上記使用方法は細胞療法とすることができる。上記使用方法は創薬とすることができる。上記使用方法は抗体発見とすることができる。
【0114】
本発明の1つの態様によれば、本明細書中に開示するデバイス、装置、カートリッジ、方法、または種の、分析における使用方法が提供される。
【0115】
この分析は、物理分析、化学分析、または生物分析とすることができる。
【0116】
上記使用方法は細胞内撮像とすることができる。この使用法は高コントラスト撮像とすることができる。
【0117】
この使用法は診断とすることができる。
【0118】
この使用法は生物学的検定とすることができる。この生物学的検定はスクリーニングとすることができる。この生物学的検定はELISAとすることができる。
【0119】
この使用法は細胞分泌とすることができる。
【0120】
この使用法はQC(quality control:品質管理)安全プロファイリングとすることができる。
【0121】
以下、本発明を、ほんの一例として、添付した図面を参照しながら更により具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0122】
図1】微小液滴内のビーズ表面に結合した分子の光切断を概略的に示す図である。
図2】光切断された分子を含有する微小液滴と生物学的実体を含有する微小液滴とを併合して併合微小液滴を生成することを概略的に示す図である。
図3図3A及び3Bは、液滴をアレイ内に保持することができる光スプライトのアレイ及び光切断照明パターンを提供する図である。
図4図4Aは、細胞及び単一のビーズを含有する種々の液滴を行に分類して示す図であり、図4Bは液滴の併合操作を示す図である。
図5図5A及び5Bは、細胞を含有する液滴の列と単一のビーズを含有する液滴の列とを交互させて分類した液滴のアレイを示す図である。
図6】列毎に強度が変化する光スプライトのアレイを提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0123】
本発明は、本明細書中に、生物学的実体24と分子16との相互作用を検出する方法及び装置を開示する。第1微小液滴及12及び第2微小液滴22のアレイをマイクロ流体チップ内に用意し、第1及び第2微小液滴のアレイ全体をマイクロ流体チップ内で保持する。微小液滴を、マイクロ流体チップ内に用意する前に分類し、これにより、所望の内容物を有する微小液滴のみをマイクロ流体チップ内に用意する。
【0124】
図1を参照すれば、ビーズ14を含有する第1微小流体12が示され、ビーズ14は表面を具え、この表面上に複数の切断可能な分子16が配置されている。ビーズ14の材料はポリスチレン、テトラゲル(TetraGel:登録商標)、ヒドロゲル、樹脂、または他のものとすることができる。ビーズ14がポリスチレン材料である際に、切断可能な分子16はビーズ14の表面上に配置されることができる。ビーズがより多孔質の材料、例えばテトラゲル(登録商標)である際には、切断可能な分子16はビーズ14内を懸濁状態にすることもできる。ビーズ14は磁性にも非磁性にもすることができる。ビーズ14の材料は、ビーズ14の表面上の切断可能な分子16の密度に応じて選択することができる。第1微小液滴12は複数のビーズ14を含有することができる。切断可能な分子16は、薬剤分子、タンパク質またはペプチド、抗体、またはあらゆる適切な小分子とすることができる。それに加えて、ビーズ14の表面は1つ以上のDNAタグを具え、これらのDNAタグは、分析検定の後期における、相互作用に関与する切断可能な分子16の識別に役立つことができる。微小液滴は流体20を含有する。流体20は次のもののうちの1つ以上を含むことができ、但しこれらに限定されない:界面活性剤、EMEMまたはDMEMまたはRPMIまたはF-12のような細胞培養培地、抗体、緩衝液、馴化培地、及び/または密度修正剤。
【0125】
図1に示すように、マイクロ流体チップ内で第1微小液滴12に照明光源を当て、これにより、切断可能な分子16をビーズ14の表面から光切断する。照明光源は、紫外線照明光源、青色光源、白色光源、または切断可能な分子16をビーズ14の表面に付着させるリンカー間の結合を破断するのに十分なエネルギーを達成することができる他のあらゆる照明光源とすることができる。ビーズ14に付着したDNAタグ18は照明によって切断されず、ビーズ14上に保持される。DNAタグ18が付着したビーズ14は、後続するステップでマイクロ流体チップ外に分注し、読み出して、どの切断可能な分子16が元々ビーズ14に付着していたかを識別することができる。
【0126】
図1に示すように、分子16の全部をビーズ14の表面から切断することができる。その代わりに、照明の時間及び/または強度を調整し、これにより、分子16の一部のみをビーズ14の表面から切断することができる。順次の光切断ステップを実行して、第1微小液滴12内の切断された分子16の濃度を増加させることができる。第1微小液滴12を分割して、切断された分子16がこの微小液滴の一部分内に含有され、ビーズ14がこの微小液滴の他の部分内に含有されるようにすることができる。マイクロ流体チップへの媒体の添加、及び分割された微小液滴と媒体との併合により、分割された微小液滴の体積を増加させることができる。分割ステップ後に、切断された分子16を含有する微小液滴を、第2微小液滴22と併合することができる。残りの分子16がビーズ14の表面に付着している場合、分割ステップ後に、ビーズ14を含有する微小液滴を、後続する光切断ステップで用いることができる。
【0127】
図2を参照すれば、切断された分子16を含有する第1微小液滴12を、少なくとも1つの生物学的実体24を含有する第2微小液滴と併合して、併合微小液滴26を形成することができる。第1微小液滴12のアレイを第2微小液滴22のアレイと同時に、またはほぼ同時に、マイクロ流体チップの全体にわたって、あるいは視野毎のベースで併合することができる。第1微小液滴12と第2微小液滴22とを併合することは、混合及び/または攪拌して併合微小液滴26を形成することを含むことができる。第1微小液滴中の流体20の組成と第2微小液滴中の流体20の組成とは、同じにすることができ、あるいは異なる組成にすることができる。
【0128】
生物学的実体24は、細胞、ウィルス、タンパク質試料、抗体試料、機能性マイクロビーズ、または酵素とすることができる。第2微小液滴22は光切断照明で露光されず、このため、生物学的実体24がDNAの損傷及び変異から保護され、DNAの損傷及び変異は、下流で遺伝分析が必要である場合に有害であり得る。併合ステップ中に、生物学的実体24が、微小液滴12内の切断された分子16に触れる。生物学的実体24が触れる切断された分子16の濃度は、図1に示すように、光切断ステップ中にビーズ14から解放される分子16の量に依存する。
【0129】
図1に示す光切断ステップと図2に示す併合ステップとの間の時間を最小にすることが有利である。一旦、切断された分子16が、第1微小液滴12の流体20中へ放出されると、切断された分子16が微小液滴12を出て、包囲する相内へ漏洩する可能性が存在する。光切断ステップと併合ステップとの間の時間を最小にするために、第1微小液滴12及び第2微小液滴22を共に、光切断ステップの前にマイクロ流体チップに供給することができる。光切断ステップは、図1に示すように、選択的かつ局所的様式で実行し、これにより、第1微小液滴12を光切断照明によって照明しつつ、第2微小液滴22は光切断照明によって照明しないことができる。一部の実施形態では、第1微小液滴12のアレイと第2微小液滴22のアレイとを、交互に入り込むアレイの形に配置して、光切断ステップと併合ステップとの間の時間を最小にすることができる。
【0130】
図1に示す光切断ステップは、第1微小液滴12のアレイに対して、光切断照明の強度及び/または時間長を変化させて実行することができる。第1微小液滴12のアレイ全体にわたって、第1微小液滴12内の切断された分子16を異なる濃度にして、第1微小液滴12のアレイを生成することができる。併合ステップ中に、同一の微小液滴22のアレイを第1微小液滴12のアレイと併合して、第2微小液滴22内の生物学的実体24を、異なるドーズ量の切断された分子16に触れさせることができる。このことは、ビーズ14を、その表面に付着した切断された分子16の数を変化させて用意しなければならないことなしに、ドーズ量の影響を調査することを可能にし、この影響は、微小液滴をマイクロ流体チップ内に単一回用意しておくうちに調査することができる。
【0131】
その代わりに、あるいはそれに加えて、併合微小液滴26に、複数の第1微小液滴12との順次の併合ステップを施し、これにより生物学的実体24を、順次のドーズ量の切断した分子16に触れさせることができる。
【0132】
光信号の変化を、併合微小液滴26から、光学システムを用いて検出して、生物学的実体24と切断した分子16との相互作用を示すことができる。検出される光信号は、併合微小液滴26の全体から発することができ、あるいは併合微小液滴26内の内容物から発することができる。併合微小液滴26は、検出した光信号を用いて分類することができる。
【0133】
光信号は、蛍光信号、またはFRET信号、またはHTRF信号とすることができ、但しこれらに限定されない。光信号は、ビーズ14または生物学的実体24に対する蛍光分析検査、ビーズ14または生物学的実体24に対するルミネセンス分析検査、生物学的実体24の明視野画像または暗視野画像の形態または数によって検出することができる。ビーズ14または生物学的実体24に対するルミネセンス分析検査は、レポーター系と共に用いることができる。例えば、微小液滴12、22は1つ以上の結合パートナーを含有することができ、これらの結合パートナーは、微小液滴を併合する際に一緒にまとめることができる。これらの結合パートナーは、例えば、抗体及び/または生物学的実体24のような捕捉成分とすることができる。1つ以上の結合パートナーを一緒にまとめて、機能活性を有する分子的実体または分子系を提供することができる。例えば、酵素の一部を一緒にまとめて一緒に結合して、機能活性を有する酵素全体を形成することができる。次に、この酵素は、基質が存在する際にルミネセンス信号を生成して、触媒反応を生成することができる。次に、酵素反応によって生成されるルミネセンス信号を、ルミネセンス分析検査によって検出することができる。
【0134】
ルミネセンス分析検査は、次の技術のうちの1つ以上とすることができ、但しこれらに限定されない:ケミルミネセンス;ECL(enhanced chemiluminescence:エンハンス・ケミルミネセンス(増感化学発光));生物発光(バイオルミネセンス);生物発光共鳴エネルギー移動(BRET:bioluminescence resonance energy transfer);フラッシュ・ルミネセンス;及びグロー・ルミネセンス。
【0135】
それに加えて、あるいはその代わりに、併合微小液滴26からの光信号は蛍光信号とすることができ、この蛍光信号は、蛍光の所定閾値を超えると肯定応答を示すことができる。この蛍光信号をモデルシステムと比較して、ビーズ14から解放された、切断された分子16の濃度または切断された分子16の数を測定することができる。
【0136】
図3A及び3Bを参照すれば、液滴をアレイ内に保持することができる光スプライト30が示されている。図3A及び3Bに示すように、光スプライト30は正方形として示されるが、光スプライト30が任意の形態、形状、または構成をとることができることは、当業者の理解する所である。図3Aは微小液滴の保持位置を示し、微小液滴は行内で一対になり、列は、細胞24を含有するもの、及び光切断可能な化合物をロードされたビーズを含有するものである。図3Bを参照すれば、次に、光切断照明スポットを、ビーズを含有する微小液滴用に指定された空間には選択的に当て、細胞を含有する微小液滴用に指定された空間には当てないことができ、光切断照明スポットはUV光とすることができる。
【0137】
図4Aを参照すれば、1つ以上の細胞24及び単一のビーズ14を含有する行内に分類された複数の微小液滴12、22が提供される。添付した図面中には図示しない他の例では、細胞を含有する微小液滴22をロード中に特異的に選択して、これらの微小液滴の全部が単一の細胞24を含有することを保証することができる。
【0138】
図4Aに示す例では、細胞を含有する微小液滴22とビーズ14を含有する微小液滴12とが別個のアレイ内に保持されている。次に、UV光のような照明光源を、ビーズ14を含有する微小液滴12に当てて、光切断可能な化合物のビーズ14からの解放をトリガすることができる。図4Bに示すように、細胞24を含有する微小液滴22及びビーズ14を含有する微小液滴12を一緒に移動させて併合して、ビーズ14から解放された光切断された化合物を細胞24に導入する。
【0139】
図5Aを参照すれば、細胞24を含有する液滴の列と、単一のビーズ14を含有する液滴の列とに分類された、微小液滴22、12のアレイが示されている。図5Bは、図5Aに示すアレイの一部分を示す。図5Bでは、併合操作の前に微小液滴22、12が選択されて、各微小液滴22と各微小液滴12とを合わせて各対にされている。
【0140】
図6を参照すれば、行毎に強度が変化する光切断照明スポット30のアレイが示されている。ビーズ14を含有する微小液滴12に光切断照明を当てると、光切断スポット30の強度の勾配が、光切断によってビーズ14から解放された薬剤の濃度に勾配を生じさせる。光切断スポット30の強度は、任意に、あるいは所望通りの反復的な調子で変化させることができる。行間で異なる強度ステップを有する2つのアレイの例を、同じマイクロ流体チップ内に示す。
【0141】
ほんの一例として、微小液滴をより低強度の照明で照明する場合、ビーズ表面から分子を光切断するのに十分なエネルギーを供給するためには、照明光源をより長期間だけ第1微小液滴に当てる必要があり得る。
【0142】
他の例では、より長期間の照明が、ビーズの表面から光切断される光切断可能な分子の数の増加を生じさせることができる。ビーズの表面から切断される分子の数を制御することによって、併合ステップで生物学的実体に触れる切断された分子の濃度を制御することができる。このことは、異なる分子ドーズ量における生物学的実体と分子との相互作用の検出を促進することができる。
【0143】
第1微小液滴の少なくとも部分集合に当てられる光切断照明の時間または強度を変化させることを用いて、第1微小液滴の少なくとも部分集合の全体にわたる、切断された分子の濃度勾配を生成することができる。第1微小液滴の少なくとも部分集合に、より高い強度(の照明)を当てることは、切断された分子のより高い濃度を生じさせる。上記濃度勾配を用いて、ビーズが有する切断可能な分子の数を変化させて、ビーズをデバイス内に導入することを必要とせずに、可変のドーズ量が細胞に与える影響を、効率的に調査することができる。一部の場合には、第1微小液滴の少なくとも部分集合に当てる照明の強度を変化させること、及び/または第1微小液滴の少なくとも部分集合に照明を当てる時間を変化させることが、ビーズ上の分子の光切断を制御するために有利であり得る。
【0144】
本発明の種々の追加的態様及び実施形態は、本開示を考慮すれば当業者にとって明らかである。
【0145】
本明細書中に用いる「及び/または」は、規定した2つの特徴または構成要素の各々の、他方を伴う具体的開示または他方を伴わない具体的開示として解釈するべきである。例えば、「A及び/またはB」は、(i)A、(ii)B、及び(iii)A及びB、の各々の具体的開示として、まさに各々が本明細書中に個別に明記されているように解釈するべきである。
【0146】
文脈上で特に断りのない限り、以上に明記されている特徴の説明及び定義は、本発明のいずれの特定の態様または実施形態にも限定されず、記載されている全ての態様及び実施形態に同等に当てはまる。
【0147】
更に、本発明は例としていくつかの実施形態を参照しながら説明してきたが、本発明は開示した実施形態に限定されず、添付した特許請求の範囲に規定する本発明の範囲から逸脱することなしに、代案の実施形態を構成することができることは、当業者の理解する所である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A-5B】
図6
【国際調査報告】