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特表2024-530398天然油または植物油を使用した寒天またはアガロースビーズの製造方法
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  • 特表-天然油または植物油を使用した寒天またはアガロースビーズの製造方法 図1
  • 特表-天然油または植物油を使用した寒天またはアガロースビーズの製造方法 図2
  • 特表-天然油または植物油を使用した寒天またはアガロースビーズの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】天然油または植物油を使用した寒天またはアガロースビーズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/12 20060101AFI20240814BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20240814BHJP
   C08J 3/16 20060101ALI20240814BHJP
   B01J 20/285 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C08B37/12 A
B01J13/00 D
C08J3/16 CEP
C08J3/16 CEZ
C08B37/12 Z
B01J20/285 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500551
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 SE2022050719
(87)【国際公開番号】W WO2023287348
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】2150945-0
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524007240
【氏名又は名称】バイオワークス テクノロジーズ アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】BIO-WORKS TECHNOLOGIES AB
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230891
【弁理士】
【氏名又は名称】里見 紗弥子
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル アンデルセン ショーン
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ピーターソン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー イドストローム
(72)【発明者】
【氏名】シャオ ファン
(72)【発明者】
【氏名】オロフ ハグルンド
(72)【発明者】
【氏名】ラース ハネスコグ
【テーマコード(参考)】
4C090
4F070
4G065
【Fターム(参考)】
4C090AA03
4C090AA04
4C090AA08
4C090BA38
4C090BA39
4C090BC10
4C090BD24
4C090CA06
4C090DA31
4C090DA40
4F070AA01
4F070AC12
4F070AC43
4F070AC94
4F070AE14
4F070AE28
4F070DA37
4F070DC03
4F070DC07
4G065AB06Y
4G065AB33Y
4G065AB35Y
4G065BA06
4G065CA02
4G065CA14
4G065DA10
4G065EA03
4G065EA05
4G065FA01
(57)【要約】
寒天またはアガロースビーズの製造方法であって、(i)寒天またはアガロースの水溶液を含む水相を、水溶液のゲル化温度より高い温度で準備するステップと、(ii)天然油または植物油を含む油相を、ステップ(i)で準備した水溶液のゲル化温度より高い温度で準備するステップと、(iii)反応器中で、ステップ(i)で準備した水相をステップ(ii)で得られた油相と混合し、乳化剤を添加するステップと、(iv)ステップ(iii)で得られた混合物を、好ましくは混合物を撹拌することによって、乳化し、それによってエマルションを生成するステップと、v)ステップ(iv)で得られたエマルションを、ステップ(i)で得られた水溶液のゲル化温度より0.1~30℃高い温度に冷却するための第1の冷却ステップとそれに続く反応器からエマルションを空にしてエマルションを熱交換器に通すことによってステップ(i)で準備された水溶液のゲル化温度よりも低い温度にエマルションを冷却する第2の冷却ステップとを含む段階的冷却を行うステップと、(vi)エマルションから寒天またはアガロースビーズを回収するステップと、を含む製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィー樹脂として使用するのに適した寒天またはアガロースビーズの製造方法であって、
(i)寒天またはアガロースの水溶液を含む水相を、前記水溶液のゲル化温度より高い温度で準備するステップと、
(ii)天然油または植物油を含む油相を、ステップ(i)で準備された前記水溶液のゲル化温度より高い温度で準備するステップと、
(iii)反応器中で、ステップ(i)で準備した前記水相をステップ(ii)で得られた油相と混合し、乳化剤を添加するステップと、
(iv)ステップ(iii)で得られた混合物を、好ましくは前記混合物を撹拌することによって、乳化し、それによってエマルションを生成するステップと、
(v)ステップ(iv)で得られた前記エマルションを、ステップ(i)で得られた前記水溶液の前記ゲル化温度より0.1~30℃高い温度に冷却するための第1の冷却ステップとそれに続く前記反応器から前記エマルションを空にして前記エマルションを熱交換器に通すことによってステップ(i)で準備された前記水溶液の前記ゲル化温度よりも低い温度に前記エマルションを冷却する第2の冷却ステップとを含む段階的冷却を行うステップと、
(vi)前記エマルションから寒天またはアガロースビーズを回収するステップと、
を含む製造方法。
【請求項2】
ステップ(iii)は、ステップ(i)からの前記水溶液を前記反応器中のステップ(ii)で準備された油相に添加することによって、好ましくはステップ(i)からの前記水溶液をステップ(ii)からの前記油相を含有する前記反応器に注ぐことによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(iii)およびステップ(iv)が同時に行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の冷却ステップは、前記反応器内の前記エマルションを40℃より0,1~20℃高い温度、好ましくは40℃より1~10℃高い温度、好ましくは40℃より1~5℃高い温度に冷却することによって行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の冷却ステップは、前記エマルションを30℃未満、好ましくは25℃未満の温度に冷却する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記植物油は、菜種油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、落花生油、または他の植物ベース油から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(iv)における撹拌は、オーバーヘッドミキサーによって、好ましくは1000~2000rpm、さらにより好ましくは1250~1750rpmで行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の冷却ステップは、前記エマルションを一連の熱交換器に通過させることを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第2の冷却ステップは、前記エマルションを100~700kWの熱交換器、好ましくは600~700kWの熱交換器に通すことを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
水相と油相との体積比は、1:9~1:1、好ましくは1:4~1:1、好ましくは2:5~5:8である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記乳化剤は、非イオン性界面活性剤であり、好ましくは、前記乳化剤は、ソルビタンエステルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(iii)で得られた前記混合物は、10~20g/L油相、好ましくは12.5~17.5g/L油相の量の乳化剤を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(iv)は、60~95℃で行われる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記寒天またはアガロースの水溶液は、1~9wt%の寒天またはアガロース、好ましくは3~8wt%の寒天またはアガロース、さらにより好ましくは約7wt%の寒天またはアガロースを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ビーズは、Kサイログロブリンで測定した0.20~0,35の多孔度を示し、ビーズの50%超は、30~75μmの間のサイズを示す、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によって得られた寒天またはアガロースビーズ。
【請求項16】
ビーズの55%超は、30~75μmの間のサイズを示す、請求項15に記載の寒天またはアガロースビーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、天然油または植物油を使用して混合物を乳化することによって、クロマトグラフィー樹脂として使用するのに適した寒天またはアガロースビーズを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分離目的のアガロースビーズは、50年間市販されている。従来、アガロースビーズは、温水非混和性溶媒中でアガロースの温溶液を乳化することによって油中水型(W/O)エマルションを形成し、続いてそのエマルションをアガロースのゲル化温度未満に冷却してビーズ粒子を形成することによって得られる。これらはその後の分離ステップで収集される。このようなプロセスは、例えばPORATH JET AL、Journal of Chromatography、vol.60、1971年1月1日、米国特許第2018071484号明細書および国際公開第1989011493号に事前に記載されている。
【0003】
クロマトグラフィー樹脂として使用されるアガロースビーズの重要なパラメータは、その多孔度である。多孔度は、製造中のさまざまなパラメータによって制御されるが、乳化溶液の冷却は最も重要なパラメータの1つである。ビーズの多孔度を所望の範囲にするには、乳化混合物の冷却および冷却中の温度勾配を制御することが不可欠である。
【0004】
伝統的に、エマルションの連続相として使用される水非混和性溶媒は、通常、有機溶媒、例えばトルエンから選択される。トルエンはその粘度の低さのために、冷却を適切に制御し、多孔度とサイズが制御されたビーズを製造する場合に有利である。このようなプロセスは、例えば国際公開第2020221762号に開示されている。しかし、近年、環境への懸念の高まりによって、業界は有機溶剤の使用を回避する生産方法を開発し、これらを部分的または完全に天然または植物代替品に置き換えるようになっている。さらに、トルエンなどの有機溶剤の使用は、爆発の危険性や作業の健康と安全への懸念など、他の問題も引き起こす。
【0005】
寒天は、アガロースとアガロペクチンとからなり、通常、アガロースとアガロペクチンとの比は90:10~70:30である。アガロースとアガロペクチンとは両方とも、アンヒドロガラクトースとガラクトースとのサブユニットが交互に並んだ多糖類であり、つまり、それらの多糖類骨格は同じである。アガロペクチンは、大幅に硫酸化されており、そのため、負に帯電している。さらに、メトキシ基を含有することを意味するメチル化もされている。アガロースは、実質的には帯電しておらず、硫酸基も有しない。寒天、特に脱硫酸化寒天と、アガロースとの両方は、当初、架橋分離ゲルの製造のための出発材料として提案された。例えば、米国特許第3959251号明細書(Porathら)を参照されたい。しかし、ここ数年、人々は寒天よりもアガロースに注目してきた。これはおそらく、寒天の硫酸基(アガロペクチンに含まれる)の高い含有量と寒天基材の品質とに悪影響を与えることなく硫酸基を除去する際の問題によるものと考えられる。
【0006】
植物油を使用してアガロースビーズを製造するとき、油中水型エマルションの連続相として有機溶媒を置き換えることが可能であることが、NICOLAS IONNIDISら、Journal of Colloid and Interface Science 367(2012)、およびCHENら、Journal of Separation Science、vol 40、22/17、など、以前に示されている。ただし、これらの結果はすべて実験室規模で生成されたものであるため、非常に少量である。
【0007】
有機溶媒と比較して植物油の粘度が著しく高いため、連続相として植物油を含むエマルションの冷却を制御することはより困難である。小規模で乳化するとき、取り扱う量が少ないため問題は少なく、したがって、反応器のジャケット冷却は、高粘度の連続相を含むエマルションを冷却するのに適した選択肢である。しかし、これは、ジャケット冷却と植物油のより高い粘度を組み合わせると、冷却が遅く制御不能になり、その結果、ビーズの形状、サイズ、多孔度特性が損なわれることになるため、工業規模の生産においては選択肢ではない。ゆっくりと冷却すると、比較的高い多孔度が得られる。急速冷却により細孔が小さくなる。
【0008】
工業的に実行可能なプロセスにおいて、トルエンなどの有機溶媒を利用しない方法によって寒天またはアガロースビーズを製造することは有利であろう。さらに、制御されたサイズおよび/または多孔度分布を有する寒天またはアガロースビーズを製造することは有利であろう。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、寒天またはアガロースビーズを製造するための改良された方法を提供することによって、上記の欠点の1つ以上を軽減または除去することである。
【0010】
本発明の別の目的は、連続相(油相)として天然油または植物油を含む油中水型(W/O)エマルションを使用する寒天またはアガロースビーズの製造方法を提供することである。これによって、低粘度有機溶媒の使用を排除または削減する方法が達成される。
【0011】
本発明の別の目的は、工業規模の生産に使用するのに適した冷却ステップを含む、寒天またはアガロースビーズの製造方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、制御されたサイズ分布および形状を有する寒天またはアガロースビーズをもたらす、寒天またはアガロースビーズの製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、制御された多孔度を有する寒天またはアガロースビーズをもたらす、寒天またはアガロースビーズの製造方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、ビーズ中の油含有物を低減または除去する、寒天またはアガロースビーズの製造方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、クロマトグラフィー樹脂として使用するのに適した寒天またはアガロースビーズを提供することである。
【0016】
本発明の1つの一般的な実施形態では、寒天またはアガロースビーズの製造方法が提供され、本方法は、
(i)寒天またはアガロースの水溶液を含む水相を、当該水溶液のゲル化温度より高い温度で準備するステップと、
(ii)天然油または植物油を含む油相を、ステップ(i)で準備された水溶液のゲル化温度より高い温度で準備するステップと、
(iii)反応器中で、ステップ(i)で準備した水相をステップ(ii)で得られた油相と混合し、乳化剤を添加するステップと、
(iv)ステップ(iii)で得られた混合物を、好ましくは混合物を撹拌することによって、乳化し、それによってエマルションを生成するステップと、
(v)ステップ(iv)で得られたエマルションを、ステップ(i)で得られた水溶液のゲル化温度より0.1~30℃高い温度に冷却するための第1の冷却ステップとそれに続く反応器からエマルションを空にしてエマルションを熱交換器に通すことによってステップ(i)で準備された水溶液のゲル化温度よりも低い温度にエマルションを冷却する第2の冷却ステップとを含む段階的冷却を行うステップと、
(vi)当該エマルションから寒天またはアガロースビーズを回収するステップと、
を含む。
【0017】
本発明による方法によって、より制御された粒径分布および多孔度が達成される。特定の理論に拘束されるものではないが、エマルションを段階的に冷却し、最初にエマルションを寒天またはアガロースの水溶液のゲル化温度に近いがまだゲル化温度より高い温度にすることによって、冷却開始とゲル化点、すなわち「粘性」ビーズがゲル化(すなわち固体)ビーズに変わる温度との間の粘度の差が減少すると考えられる。ビーズがまだ粘稠な形状にある開始温度とゲル化温度未満の温度、つまりビーズがゲル化(つまり固化)した形状になる温度との間の、温度および粘度の差が減少することによって、温度勾配の制御が容易になる。これによって、冷却速度によって大きく影響されるサイズ分布および多孔度など、温度に影響を受けるパラメータをより適切に制御できるようになる。より高い粘度を示す連続相を含むエマルションを製造するとき、冷却の制御は非常に重要であり、したがって従来の有機溶媒と比較して冷却中の温度制御がより困難になる。
【0018】
エマルションを、熱交換器を通して最終冷却することによって、制御された温度勾配での急速冷却が達成される。これによって、ゲル化の温度プロファイルを制御できるようになり、結果として得られるビーズのサイズ分布と多孔度を制御できるようになる。さらに、高速かつ制御された冷却を達成することによって、たとえ高粘度の連続相が油中水型(W/O)エマルションに利用されている場合でも、この方法を工業規模の生産に利用することが可能である。
【0019】
寒天またはアガロースの水溶液を含む水相は、例えばその全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2008136742号および米国特許第6602990号明細書に記載されているように、天然寒天、天然アガロース、または寒天またはアガロースの誘導体であり得る。
【0020】
寒天またはアガロース溶液のゲル化温度は、通常40℃超である。ただし、溶液中に存在する寒天の量と純度とに応じて、この値からのわずかな変動が発生する。しかしながら、当業者はこれらについて既知であることが期待されており、そのようなバリエーションが存在することを理解している。本発明の一実施形態では、寒天またはアガロースの水溶液を含む水相は、40℃より高い温度、好ましくは40~99℃、好ましくは40.1~99.9℃、さらにより好ましくは41℃~95℃の間の温度で準備される。
【0021】
本発明の一実施形態では、油相は、40℃より高い温度、好ましくは40~99℃、好ましくは40.1~99.9℃、さらにより好ましくは41℃~95℃の温度で準備される。
【0022】
一実施形態では、乳化剤は、水相と油相の両方が混合された後に、混合溶液に添加される。好ましくは、乳化剤は、水相が油相に添加された後に添加される。
【0023】
一実施形態では、混合物を乳化するステップ(iv)は、当業者に既知である任意の従来の乳化方法によって実行され得る。
【0024】
ステップ(iv)で得られたエマルションを冷却するための第1の冷却ステップは、エマルションをステップ(i)で得られた水溶液のゲル化温度より0.1~30℃高い温度に冷却する。一実施形態では、第1の冷却ステップは、エマルションをステップ(i)で準備された水溶液のゲル化温度より0.5~15℃高い温度、好ましくはステップ(i)で準備された水溶液のゲル化温度より0.5~10℃高い温度、さらに好ましくは、ステップ(i)で準備された水溶液のゲル化温度より0.5~5℃高い温度に冷却する。一実施形態では、第1の冷却ステップは、エマルションを40.5~49℃の温度、好ましくは41~45℃の温度に冷却する。
【0025】
本発明に従って段階的に冷却することによって、冷却が速く、制御され、便利な方法で行われるため、有機溶媒に比べてより粘性の高い油相を利用することが可能である。
【0026】
形成されたエマルションからの寒天またはアガロースビーズの回収は、当業者に既知である任意の従来の手段によって行われ得る。一実施形態では、ビーズは、過剰な水、および必要に応じて水相からビーズを分離するための界面活性剤の存在下でビーズを沈降させることによって回収される。
【0027】
本発明の一実施形態では、ステップ(iii)は、ステップ(i)からの水溶液を反応器中のステップ(ii)で準備された油相に添加することによって、好ましくはステップ(i)からの水溶液をステップ(ii)からの油相を含有する反応器に注ぐことによって行われる。本発明者らは、驚くべきことに、添加方法がエマルション中のビーズの形成に大きな影響を与えることを発見した。従来、トルエンのような低粘度溶媒を使用して乳化するとき、トルエンは水相に添加される。ただし、この添加方法を植物油のような粘度の高い油に使用すると、その後に形成されるビーズに油の混入が生じ、品質が損なわれる。本発明者らは、油相の代わりに水相を添加することによってこの問題を解決した。好ましくは、油相への水相の添加は、より均一な分布を確保し、凝集を避けるために、制御された方法で、例えば注入または滴下によって行われる。また、油相に添加されるときの水相の温度は、ビーズの最終特性に影響を与えることが示される。好ましくは、水相は、70℃より高い温度、好ましくは80℃より高い温度、好ましくは90℃より高い温度、さらにより好ましくは95℃より高い温度で添加される。
【0028】
本発明の一実施形態では、ステップ(iii)およびステップ(iv)は同時に実行される。本発明の一実施形態において、ステップ(iv)は、水相が油相に添加された後に開始される。
【0029】
本発明の一実施形態では、第1の冷却ステップは、反応器内のエマルションを、40℃より0.1~20℃高い温度、好ましくは40℃より1~10℃高い温度、さらに好ましくは40℃より1~5℃高い温度に冷却することによって行われる。前述したように、エマルションを寒天水溶液またはアガロース溶液(つまり水相)のゲル化温度に近い温度に冷却すると、冷却開始時とビーズのゲル化温度との間の粘度ギャップが減少する。これによって、温度勾配がより制御され、ビーズの多孔度やサイズ分布などのパラメータが制御される。
【0030】
本発明の一実施形態では、第2の冷却ステップによって、エマルションが30℃未満、好ましくは25℃未満の温度に冷却される。寒天またはアガロース溶液の水溶液(すなわち、水相)のゲル化温度より低い温度に冷却することによって、ビーズが得られる。
【0031】
天然油は、油含有植物の様々な部分から得られる油、例えば、種子、果実、葉、花、茎、樹皮または根からの油であり得る。本発明の一実施形態では、植物油は、菜種油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、落花生油、または別の植物ベースの油から選択される。好ましくは、植物油は菜種油である。菜種油は、エマルションの制御された冷却を保証するために最適な粘度特性を示すことが示される。
【0032】
本発明の一実施形態では、ステップ(iv)の撹拌は、オーバーヘッドミキサーによって、好ましくは1000~2000rpm、さらにより好ましくは1250~1750rpmで行われる。従来、寒天またはアガロースビーズを製造する場合、高せん断ミキサーが使用される。ただし、従来の有機水非混和性溶媒よりも粘度の高いオイルを使用するとき、高せん断混合によってビーズ内にオイルが混入する。特定の理論に拘束されるものではないが、粘度の増加によって、低粘度の油相における同じプロセスと比較して、混合時にビーズに対する機械的衝撃が増加すると考えられる。しかし、高粘度の油相では、高速の従来のミキサーを使用することでビーズの良好な粒子分布が可能になることが示される。ミキサーの速度(毎分回転数またはrpm)は、ビーズのサイズ分布に影響を与えることが示される。速度が増加すると、せん断効果が強くなり、ビーズのDv50値が減少する。Dv50は、製品重量の50%が特定のミクロンサイズ未満であることを意味する。また、高速によって連続相(油相)が形成されたエマルション球内に押し込まれ、エマルション内にエマルションが生じ、得られるビーズの特性が損なわれ得る。速度が低すぎるとエマルションが生成されない。
【0033】
本発明の一実施形態では、第2の冷却ステップは、エマルションを一連の熱交換器に通過させることを含む。一連の熱交換器を使用することによって、異なる冷却設定を提供し、それによって冷却勾配を異なる方法で制御することが可能になる。
【0034】
本発明の一実施形態では、第2の冷却ステップは、エマルションを100~700kWの熱交換器、好ましくは600~700kWの熱交換器に通すことを含む。好ましくは、熱交換器を通る水の温度は5~20℃であり、さらに好ましくは7~15℃である。
【0035】
本発明の一実施形態では、水相と油相との体積比は、1:9~1:1、好ましくは1:4~1:1、好ましくは2:5~5:8である。油相の体積に対して水相の体積が多いと、Dv50値が高くなる。
【0036】
本発明の一実施形態では、乳化剤は、非イオン性界面活性剤であり、好ましくは、乳化剤は、ソルビタンエステルである。一実施形態では、乳化剤は、SPANファミリーから選択され、好ましくは、乳化剤は、Span(商標)80、Span(商標)85、またはそれらの混合物から選択される。乳化剤の種類は、ビーズのサイズに影響し、ビーズの形状にも影響する。不適切な乳化剤の選択は、ビーズの凝集や油の混入を発生させ得る。乳化剤は、油相と水相との間の界面張力を低下させ、より小さな液滴への分割を促進し、それらを安定化する。相互作用が不十分だと、通常、形成異常が発生する。高粘度の油相を使用する場合に球形の寒天またはアガロースビーズを得るには、ソルビタンエステル、つまりSPANから選択される乳化剤が、変形したビーズの生成を最小限に抑え、良好なサイズ分布を維持することが示される。
【0037】
乳化剤は、HLB値によって特徴付けられる。HLB値は、乳化剤の可溶化特性の指標であり、その乳化剤が最適なエマルションの種類(O/WまたはW/O)を示す。油中水型(W/O)エマルションでは、HLBが低いことが好ましい。これは、連続相(油相)中での溶解度が高いことを意味し、より高いHLB値を有する乳化剤と比較して、制御されたサイズ範囲内にあるビーズの割合が大きくなることに寄与するためである。
【0038】
本発明の一実施形態では、ステップ(iii)で得られた混合物は、10~20g/L油相、好ましくは12.5~17.5g/L油相の量の乳化剤を含む。
【0039】
本発明の一実施形態では、ステップ(iv)は、60~95℃で実行される。
【0040】
本発明の一実施形態では、寒天またはアガロースの水溶液は、1~9wt%の寒天またはアガロース、好ましくは3~8wt%の寒天またはアガロース、さらにより好ましくは約7wt%の寒天またはアガロースを含む。水溶液の寒天またはアガロースの含有量によって、エマルションの水相の粘度が決まる。粘度は、相がどの程度よく混合されるかを決定し、したがってエマルション内で得られるビーズのサイズを決定する上で重要である。概して、寒天含有量が増加すると、より低い多孔度値を備えた、より大きく密度の高いビーズが生成される。さらに、寒天含有量が高いと、油含有量が減少すると考えられる。寒天含有量が低いほど、混合物を剪断して乳化するために必要なエネルギー入力が少なくなる。
【0041】
本発明の一実施形態では、水相と油相との体積比は2:8である。
【0042】
本発明の一実施形態では、水相は少なくとも1つの塩をさらに含み得る。塩は、粘度を低下させながらゲル化温度を上昇させる。本発明の一実施形態では、水相は、酸をさらに含み得る。pHが低いと、水相の粘度が低下し、ゲルの強度に影響する。本発明の一実施形態では、油相はさらに消泡剤を含み得る。
【0043】
本発明の第2の一般的な実施形態では、前述の実施形態のいずれかによる方法によって得られた寒天またはアガロースビーズが提供される。ビーズは、Kdサイログロブリンで測定した場合、0.20~0.35の多孔度を示し、さらにビーズの50%超は、30~75μmのサイズを示す。
【0044】
本発明の一実施形態では、ビーズの55%超は、30~75μmのサイズを示す。
【0045】
ゲル濾過では、内側移動相と外側移動相との間の特定の化合物の分布は、その分子サイズの関数であり、分布係数(Kd)で表される。通常ゲルビーズから除外されるより大きな分子、そのような分子のKd値は0となる。ゲルビーズの細孔サイズよりも小さい特定の分子はゲルマトリックスの細孔に入り、そのためKd値は1になる。中間サイズの分子の場合、Kd値は0~1になる。Kd値におけるこのタイプのバリエーションの変化によって、狭い分子サイズ範囲の分子を分離することが可能になる。
【0046】
次に、添付図面を参照して、例として本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】油相への寒天溶液の異なる添加速度を使用して、菜種油中の寒天溶液のエマルションによって生成されたアガロースビーズの10倍の顕微鏡画像を示す。図1は左半分と右半分とに分かれており、各半分は破線で区切られている。
図2】さまざまな添加手法を使用して、菜種油中の寒天溶液のエマルションによって生成されたアガロースビーズの10倍の顕微鏡画像を示す。図2は左半分と右半分とに分かれており、各半分は破線で区切られている。
図3】それぞれ菜種油およびトルエン中の寒天溶液のエマルションによって生成されたアガロースビーズの10倍の顕微鏡画像を示す。図3は左半分と右半分とに分かれており、各半分は破線で区切られている。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本明細書で使用される場合、「wt%」は、言及される化合物または組成物の総重量に対する言及される成分の重量パーセントを指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「およそ」は、参照される値を測定するために使用される方法と同じくらい正確であると解釈されるべきである。
【0050】
本発明は、クロマトグラフィー樹脂として使用するのに適した寒天またはアガロースビーズの製造方法に関する。当該方法は、油相(連続相)として天然油または植物油を含む油中水型(W/O)エマルションを利用する。得られたエマルションを本発明の段階的冷却によって冷却するとき、ゲル化(固化)したビーズは、形成される。本発明による段階的冷却は、冷却が迅速、便利、かつ制御された方法で行われるため、工業規模のプロセスでの当該方法の使用を可能にする。
【0051】
前述したように、高粘度の植物油をトルエンなどの低粘度の有機溶媒に置き換えるとき、油相の性質の違いによりいくつかの問題が発生する。粘度が増加すると、冷却の温度制御がより困難になる。温度勾配を制御しないと、得られるビーズのサイズ分布および細孔サイズなどのパラメータを制御することがさらに困難になる。粘度の増加によって、異なる相をどのように組み合わせるかという問題も生じる。
【0052】
(油相と水相とを一緒にする方法)
前述したように、連続相(油相)の粘度が高い場合、分散相(水相)を系にどのように添加するかが非常に重要であることが示される。トルエンのような低粘度の連続相を使用した場合、連続相を寒天溶液に添加する場合とその逆の場合とで、最終製品に違いは示されていない。この場合、添加率も結果に影響を与えないようである。粘度の高い連続相(菜種油)の場合、ただし、寒天の添加が速すぎる場合(図1を参照)、または代わりに油を寒天に添加した場合(「リバース」「乳化」)(図2を参照)、最終製品に油含有物が存在する。
【0053】
図1は、菜種油中の寒天溶液のエマルションによって生成されたアガロースビーズの10倍の顕微鏡画像を示しす。ビーズは、4:1の菜種油および寒天溶液(7%)、ならびに15g/LのSpan(商標)85油相からなる標準エマルションを使用し、90℃でオーバーヘッドスターラー(1500rpm)で撹拌して、製造される。反応器内でエマルションを40℃に冷却するように実行される第1の冷却ステップと、次に115kWの熱交換器を介して第2の冷却ステップとを有する、段階的な冷却が実行される。図1の左半分は、寒天溶液を油相にゆっくりと添加することによって生成されたビーズを示す。図1の右半分は、油に寒天溶液を急速に添加して生成されたビーズを示す。図1からわかるように、急速に添加するとビーズに油が混入する(図1の右半分を参照)。
【0054】
図2は、菜種油中の寒天溶液のエマルションによって生成されたアガロースビーズの10 倍の顕微鏡画像を示す。ビーズは、4:1の菜種油と寒天溶液(7%)および15g/LのSpan(商標)85 油相からなる標準エマルションを使用し、90℃でオーバーヘッドスターラー(1500rpm)で撹拌して製造される。反応器内でエマルションを40℃に冷却するように実行される第1の冷却ステップと、次に115kWの熱交換器を介して第2の冷却ステップとを有する、段階的な冷却が実行される。図2の左半分は、寒天溶液に油を添加して生成したビーズを示す。図2の右半分は、油に寒天溶液を急速に添加して生成されたビーズを示す。図2からわかるように、油を寒天溶液に添加する場合、ビーズ内に油が混入する(図2の左半分を参照)。この現象は、油の代わりに寒天溶液を加えた場合には見られない。
【0055】
局所的なゲル化を避けるために、寒天はまた、好ましくは、温かい状態(約95℃)で加えられるべきである。
【0056】
(ミキサーのタイプとRPM(1分あたりの回転数))
従来、寒天またはアガロースビーズを製造するとき、高せん断ミキサーを使用して、目的のサイズ範囲の小さな液滴を効果的に作成する。ただし、この方法は、油が混入する可能性があるため、高粘度の連続相を含むエマルションでは使用し得ない。特定の理論に拘束されるものではないが、粘度の増加によって、低粘度の油相での同じプロセスと比較して、混合時にビーズに対する機械的衝撃が増加すると考えられる。しかし、高粘度の油相では、高速の従来のミキサーを使用することによってビーズの良好な粒子分布が可能になることが示されている。
【0057】
図3からわかるように、混合速度はビーズの分布に大きな影響を与える。図3は、それぞれ菜種油およびトルエン中の寒天溶液のエマルションによって生成されたアガロースビーズの10倍の顕微鏡画像を示す。ビーズは、4:1の油相および20% 寒天溶液(7%)ならびに15g/LのSpan(商標)85油相からなるエマルションを使用し、高せん断ミキサーで8000rpm、90℃で撹拌して製造される。反応器内でエマルションを40℃に冷却するように実行される第1の冷却ステップと、次に115kWの熱交換器を介して第2の冷却ステップとを有する、段階的な冷却が実行される。図3の左半分は、トルエン中で生成されたビーズを示す。図3の右半分は、菜種油中のパールを示す。見てわかるように、高剪断ミキサーを菜種油とともに使用すると、ビーズの品質が損なわれる(図3の右半分を参照)。図1および図2に示すより低いrpmを使用して製造されたビーズは、油の混入が少なく、全体的に良好な分散を示す。
【0058】
(分散相(水相)と連続相(油相)との比)
前述したように、分散相(水相)と連続相との比は、ビーズのサイズ分布および細孔サイズに大きく影響する。表1は、8つの異なる実験に基づく実験シリーズの結果を示す。ここでは4つの異なるパラメータと、Dv50および30~75μmのビーズのパーセンテージに対するそれらの影響が調査される。この一連の実験で最も大きな影響を与えるパラメータは、分散相と連続相(AgOil)との比である。
【0059】
Dv50は、製品重量の50%が特定のミクロンサイズ未満であることを意味する。
【0060】
【表1】
【0061】
(乳化剤)
油中水型エマルションでは、連続(非極性)相での溶解度が高いことを意味するため、HLBが低いことが好ましく、これは、同じ化学族に由来するがHLB値がより高くなる乳化剤と比較して30~75μmの範囲内にあるビーズの割合が大きくなることに寄与する。異なるHLB値を有するSPANファミリーの2つの異なる乳化剤を調査した。結果を表2に示す。表2は、Span(商標)80とSpan(商標)85で乳化したビーズの粒子分布の違いを示す。ビーズは、4:1の菜種油と寒天溶液(5.3%)および15g/LのSpan(商標)85油相からなる標準エマルションを使用し、90℃でオーバーヘッドスターラー(1500rpm)で撹拌して製造される。反応器内でエマルションを55℃に冷却するように実行される第1の冷却ステップと、次に115kWの熱交換器を介して第2の冷却ステップとを有する、段階的な冷却が実行される。
【0062】
表2に示すように、HLB値が低いほど、特定のサイズ範囲内のビーズが多くなり、全体のサイズ分布も狭くなる。
【0063】
【表2】
【0064】
(第1の冷却ステップ)
前述したように、第1の冷却ステップによってエマルションを寒天またはアガロース溶液のゲル化温度に近い温度に冷却する段階的な冷却を使用すると、サイズ制御がさらに向上する。表3は、第1の冷却ステップがビーズのサイズに与える影響を示す。この表は、異なる温度、つまり、異なる第1の冷却ステップの温度、から冷却されたビーズの粒子分布の違いを示す。ビーズは、4:1の菜種油と寒天溶液(7%)および15g/LのSpan(商標)85油相からなる標準エマルションを使用し、90℃でオーバーヘッドスターラー(1500rpm)で撹拌して製造される。冷却は、まず反応器内で指定温度に行われ(第1の冷却ステップ)、次に115kWの熱交換器を介して行われる(第2の冷却ステップ)。
【0065】
見てわかるように、第2の冷却ステップの開始温度を上げる(第1の冷却ステップの温度を高くする)と、所望のサイズ指定内で達成されるビーズが少なくなる。この実験から得られた結論は、第1の冷却ステップの温度がビーズのサイズ分布に大きく影響するということである。
【0066】
【表3】
【0067】
(冷却手法)
反応器内での冷却、冷却容器内での冷却、および熱交換器を使用した冷却の、さまざまな冷却手法が評価される。結果を表4に示す。ビーズは、4:1の菜種油と寒天溶液(4.7%)および15g/LのSpan(商標)85油相からなる標準エマルションを使用し、90℃でオーバーヘッドスターラー(1500rpm)で撹拌して製造される。
【0068】
反応器内の冷却は、熱いエマルション混合物を撹拌しながら、冷たい水道水を反応器のジャケットに流すことによって行った。この方法によって、エマルション混合物を長時間にわたって均一に冷却した。この方法で冷却すると、他の冷却方法と比較して、Kd値が高く、若干柔らかくなる傾向のある多孔質ビーズが得られる(表4を参照)。ただし、このタイプの冷却では、ビーズが固まり、永久的な凝集体が形成されることにつながる。
【0069】
冷却容器内での冷却は、熱いエマルション液体を冷たい冷却媒体上に注ぐことによって行われた。これによって、最終温度に即座に冷却される。この急速な冷却によってビーズの多孔性が低下し、これがKd値の低下に反映される。ただし、連続相および開放容器の形で追加の冷媒が必要であるが、他の方法では必要ない。結果として、この方法は工業的に大規模な生産には最適ではない。
【0070】
熱交換器による冷却は、冷却された熱交換器に熱いエマルション混合物を流すことによって行われた。これによって、冷却容器内での冷却などの同等の多孔度特性を備えたビーズ、つまり比較的低いKd値を備えたビーズが得られる。
【0071】
表4に見られるように、熱交換器での冷却によって、他の冷却手法と比較して、所望のサイズ指定内のビーズの量が増加し、サイズ分布が狭くなった。
【0072】
【表4】
【0073】
(段階的冷却の多孔度への影響)
次の実施例では、形成されたビーズの多孔度に対する段階的冷却の影響を調査した。前述したように、エマルションを段階的に冷却することによって、最初にエマルションを寒天またはアガロースの水溶液のゲル化温度に近いがまだそれより高い温度にし、次にエマルションをゲル化温度未満に冷却することによって、冷却温度勾配の制御が容易にすることを可能にする。形成されたビーズの多孔度は、冷却速度に大きく影響される。
【0074】
水中に7%の寒天を含む寒天水溶液が生成される。この水溶液を94℃の温度に加熱し、撹拌しながら菜種油およびSpan 85を含む油相に注ぐ。合わせた寒天水溶液および油相を94℃、980RPMで撹拌する。得られたエマルションは、4:1の菜種油と寒天水溶液(7%)油および15g/LのSpan(商標)85油相からなる。
【0075】
第1の冷却ステップを実行して、反応器内のエマルションを43℃に冷却する。冷却されたエマルションは、12℃の冷却された水道水に接続された660kWの熱交換器に移される。エマルションを14~18℃に冷却し、形成された寒天ビーズを回収する。
【0076】
得られたビーズのKdサイログロブリンで測定された多孔度を表5に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
見てわかるように、Kdサイログロブリン値は、単一の冷却ステップを使用し、同様の寒天濃度を使用して生成された表4に示されるビーズと比較して大幅に低い。したがって、この方法は、油相としてトルエンを使用して形成された、入手可能な市販の寒天ビーズに匹敵する多孔度を示す寒天ビーズをもたらす。
図1
図2
図3
【国際調査報告】