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特表2024-530405生理学的パラメータを決定する方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】生理学的パラメータを決定する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20240814BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61B3/16
A61B10/00 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501711
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 FI2022050451
(87)【国際公開番号】W WO2023012402
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】20215838
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
(71)【出願人】
【識別番号】514056252
【氏名又は名称】アイケア フィンランド オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】エーンホルム イェスタ
(72)【発明者】
【氏名】ラウダソヤ マッティ
(72)【発明者】
【氏名】ホンカネン ヴィクトル
(72)【発明者】
【氏名】カンナス ラウリ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッラネン テーム
(72)【発明者】
【氏名】サルコラ ミカ
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA20
(57)【要約】
生理学的パラメータを決定するための装置(100)が開示される。この装置は、細長い磁気プローブ(102、610、702)と、磁気プローブを囲む駆動コイル(104)と、少なくとも第1セクションと第2セクションとを有する測定コイル(106、602、708、1004)と、コントローラ(108)とを備える。コントローラは、駆動コイルに通電して磁力を発生させ、磁気プローブの端部(102A)の方向への移動を開始させ、第1の誘起電圧値及び共通誘起電圧値を測定し、時間の関数としてロケータ値を決定し、ロケータ値を時間領域から空間領域にマッピングし、空間領域のロケータ値から、磁気プローブの速度プロファイルを計算し、計算した速度プロファイルを使用して生理学的パラメータを決定するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的パラメータを決定するための装置であって、該装置は以下のものを含む;
第1の端部と、前記第1の端部とは反対側の第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間の中間部とを有する細長い磁気プローブと;
前記磁気プローブを部分的に囲むように配置される駆動コイルと;
少なくとも第1セクションと第2セクションとを有し、前記磁気プローブを部分的に囲むように配置される測定コイルと;
コントローラと;
を備え、前記コントローラは、
・ 前記磁気プローブの、前記第1の端部の方向への移動を開始するために、前記駆動コイルに選択的に通電して磁力を発生させることと;
・ 前記磁気プローブの移動中、時間の関数として、第1の誘起電圧値と共通誘起電圧値とを測定することであって、前記第1の誘起電圧値は前記第1セクションにかかる電圧であり、前記共通誘起電圧値は、前記第1セクションから前記第2セクションにまたがる電圧値であるか、前記第2セクションの少なくとも一方にかかる電圧値である、前記測定することと;
・ 前記第1の誘起電圧値を前記共通誘起電圧値で除算することにより、時間の関数としてロケータ値を決定することと;
・ 前記ロケータ値を、時間の関数として、時間領域から空間領域にマッピングすることと;
・ 前記磁気プローブの第1の速度プロファイルを空間領域ロケータ値から計算し、前記計算した第1の速度プロファイルを使用して生理学的パラメータを決定することと;
を遂行するように構成される、
装置。
【請求項2】
前記測定コイルは、第1の期間は駆動コイルとして使用され、前記第1の期間の後の第2の期間においては、前記測定コイルの第2セクションとして使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
使用時に、前記測定コイルの第1セクションは、前記磁気プローブの第1セクションを囲み、前記測定コイルの第2セクションは、前記磁気プローブの第2セクションを囲み、
前記磁気プローブがその第1の空間位置にあるとき、前記磁気プローブの前記第1セクションは、前記磁気プローブの前記第2セクションとは異なる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
使用時に、前記磁気プローブがその第2の空間位置にあるとき、前記測定コイルの前記第1セクションは前記磁気プローブの前記第1セクションを囲まず、前記測定コイルの前記第2セクションは前記磁気プローブの前記第2セクションを囲み、ただし前記第2の空間位置は前記第1の空間位置とは異なる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
時間領域から空間領域へのマッピングが、事前に決定された伝達関数又はルックアップテーブルの少なくとも1つによって行われる、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記測定コイルの前記第1セクションと前記測定コイルの前記第2セクションが直列に接続される、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記測定コイルは第3セクションを有し、前記第3セクションは、前記測定コイルの第1及び第2セクションと直列に接続され、前記磁気プローブの第3セクションを囲むように配置される、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記共通誘起電圧が測定コイルの全セクションにまたがって測定される、請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の装置であって、前記コントローラが、
・ 前記磁気プローブの移動時間中に、第1セクション以外のセクションからの第2の誘起電圧値を時間の関数として測定し、
・ 前記第2の誘起電圧値を前記共通誘起電圧値で除算することにより、時間の関数として第2のロケータ値を決定し、
・ 第2のロケータ関数を時間領域から空間領域にマッピングし、
・ 空間領域の第2のロケータ値から、前記磁気プローブの第2の速度プロファイルを計算し、
・ 計算した前記第2の速度プロファイルを使用して、生理学的パラメータを更新する、
ように構成される、装置。
【請求項10】
前記第1の速度プロファイルは空間領域における速度と時間領域における速度の少なくとも1つを含む、請求項1から9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記第2の速度プロファイルは、空間領域における速度と時間領域における速度の少なくとも1つを含む、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
眼圧計である、請求項1から11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
生理学的パラメータを決定する方法であって、
・ 細長い磁気プローブを該磁気プローブの第1の端部の方向に移動させるべく、駆動コイルに通電することと;
・ 測定コイルの第1セクションについて、誘起された第1の電圧を時間の関数として測定することと;
・ 前記測定コイルの前記第1セクションと前記測定コイルの第2セクションにまたがる電圧であるか、前記第2セクションにかかる電圧である、誘起共通電圧を時間の関数として測定することと;
・ 測定された第1の誘起電圧値を測定された誘起共通電圧値で除算することにより、時間の関数として第1のロケータ値を決定することと;
・ 前記第1のロケータ値を時間領域から空間領域にマッピングすることと;
・ 空間領域の第1のロケータ値から、前記磁気プローブの第1の速度プロファイルを計算することと;
・ 前記第1の速度プロファイルを使用して生理学的パラメータを決定することと;
を含む、方法。
【請求項14】
前記磁気プローブは患者の方へ動くように仕向けられ、患者の体の表面に当たって跳ね返る、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
測定は前記磁気プローブの移動中に行われ、時間の関数として誘起電圧値が得られる、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記生理学的パラメータの決定は、前記磁気プローブが患者の体表面に衝突している間の加速度の分析、衝突前と衝突後の速度の変化、細長い磁気プローブの体表面への侵入量の少なくとも1つによって行われる、請求項13から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
請求項13から16のいずれかに記載の方法であって、前記生理学的パラメータ値は、
・ 前記測定コイルにおける、前記第1セクションとは異なるセクションについて、誘起された第2の電圧を時間の関数として測定することと;
・ 前記第2の誘起電圧値を前記共通誘起電圧値で除算することにより、時間の関数として第2のロケータ値を決定することと;
・ 第2のロケータ関数を時間領域から空間領域にマッピングすることと;
・ 空間領域の第2のロケータ値から、細長い磁気プローブの第2の速度プロファイルを、位置の関数として計算することと;
・ 計算した第2の速度プロファイルを使用して前記生理学的パラメータを更新することと;
によって更新される、方法。
【請求項18】
前記第1の速度プロファイルは空間領域における速度と時間領域における速度の少なくとも1つを含む、請求項13から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記第2の速度プロファイルは、空間領域における速度と時間領域における速度の少なくとも1つを含む、請求項17又は18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示される事項(以下、本開示という)は、一般に眼科治療装置に関し、より具体的には、生理学的パラメータを決定するための方法及びシステムに関する。
【背景】
【0002】
房水は、水晶体を保護し、眼内の液圧を維持するために眼内で生成される、透明な水のような液体である。眼内の液圧は眼圧として知られている。眼圧は眼球の強度を決定する生理学的パラメータであり、視力に影響を及ぼす可能性のある視神経損傷の兆候を見つける。正常な眼圧には日中変動があり、個人差もある。しかし、眼圧が常に高すぎたり低すぎたりする場合は、視力に問題が生じる可能性がある。
【0003】
従来、眼圧検査は眼圧を測定するものであった。この検査では、眼圧計を用いて眼球の固さを測定する。従来、ゴールドマン圧平眼圧計(Goldman Applanation Tonometer; GAT)は、しびれ薬で目を麻酔し、少量の無毒性の色素を目に入れる。その後、小さなプローブが眼球の表面にそっと触れ、眼圧が測定される。眼圧は、眼球表面の一定面積を静かに平らにするのに必要な力に基づいて測定される。しかし、眼球の厚さ、眼球の弾力性、使用する無毒性色素の量が誤差の原因となり、得られる測定値の精度に影響する。また、眼圧測定にはパーキンス圧平眼圧計(Perkins Applanation Tonometer; PAT)も用いられる。PATは人間工学に基づいた使いやすい手持ち式の眼圧計である。しかし、PATの操作には高度な熟練を要する。手持ち式眼圧計であるため安定性が低く、フルオレセインと麻酔薬の局所塗布が必要であるため、眼球表面に傷がつく可能性がある。
【0004】
トノペン(Tonopen)は眼圧を測定するリバウンド式眼圧計(Rebound Tonometry)の一種である。トノペンは眼を麻酔するためのしびれ薬を必要とする。トノペンは、眼圧を測定するために眼表面で跳ね返るプローブを備えている。使用されるプローブは円錐形の構造をしている。円錐状の構造は、誤って眼球表面に小さな傷をつける可能性がある。
【0005】
これらの事情に鑑みるに、生理学的パラメータの測定に関連する従来の方法に伴う上述の欠点を克服する必要性が存在する。
【摘要】
【0006】
本開示は、生理学的パラメータを決定するための装置を提供しようとするものである。本開示はまた、生理学的パラメータを決定するための方法を提供しようとするものである。本開示の目的は、従来技術で遭遇した問題を少なくとも部分的に克服する解決策を提供することである。
【0007】
1つの捉え方によれば、本開示は、生理学的パラメータを決定するための装置を提供する。この装置は、
第1の端部と、前記第1の端部とは反対側の第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間の中間部とを有する細長い磁気プローブと;
前記磁気プローブを部分的に囲むように配置される駆動コイルと;
少なくとも第1セクションと第2セクションとを有し、前記磁気プローブを部分的に囲むように配置される測定コイルと;
コントローラと;
を備え、前記コントローラは、
・ 前記磁気プローブの、前記第1の端部の方向への移動を開始するために、前記駆動コイルに選択的に通電して磁力を発生させることと;
・ 前記磁気プローブの移動中、時間の関数として、第1の誘起電圧値と共通誘起電圧値とを測定することであって、前記第1の誘起電圧値は前記第1セクションにかかる電圧であり、前記共通誘起電圧値は、前記第1セクションから前記第2セクションにまたがる電圧値であるか、前記第2セクションの少なくとも一方にかかる電圧値である、前記測定することと;
・ 前記第1の誘起電圧値を前記共通誘起電圧値で除算することにより、時間の関数としてロケータ値を決定することと;
・ 前記ロケータ値を、時間の関数として、時間領域から空間領域にマッピングすることと;
・ 前記磁気プローブの第1の速度プロファイルを空間領域ロケータ値から計算し、前記計算した第1の速度プロファイルを使用して生理学的パラメータを決定することと;
を遂行するように構成される。
【0008】
別の捉え方によれば、本開示は、生理学的パラメータを決定するための方法を提供する。この方法は、
・ 細長い磁気プローブを該磁気プローブの第1の端部の方向に移動させるべく、駆動コイルに通電することと;
・ 測定コイルの第1セクションについて、誘起された第1の電圧を時間の関数として測定することと;
・ 前記測定コイルの前記第1セクションと前記測定コイルの第2セクションにまたがる電圧であるか、前記第2セクションにかかる電圧である、誘起共通電圧を時間の関数として測定することと;
・ 測定された誘起電圧値を測定された誘起共通電圧値で除算することにより、時間の関数として第1のロケータ値を決定することと;
・ 前記第1のロケータ値を時間領域から空間領域にマッピングすることと;
・ 空間領域の第1のロケータ値から、前記磁気プローブの第1の速度プロファイルを計算することと;
・ 前記第1の速度プロファイルを使用して生理学的パラメータを決定することと;
を含む。
【0009】
本開示の実施形態は、従来技術における前述の問題を実質的に解消するか、又は少なくとも部分的に解決し、誘起電圧を計算することによって、磁気プローブの位置を正確に決定することを可能にする。
【0010】
本願に開示されるものの更なる側面や利点、特徴及び目的は、添付の特許請求の範囲と共に解釈される、添付図面及び例示的実施形態の詳細説明によって明らかにされよう。
【0011】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせで組み合わせることが可能であることも理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
上記の摘要、及び例示的な実施形態に関する以下の詳細説明は、添付の図面と併せて読むとより良く理解される。本開示を説明する目的で、本開示の例示的構成を図面に示す。ただし本開示は、本明細書に開示される特定の方法及び装置に限定されるものではない。また、図面の縮尺は正しいものではない。同様の要素は可能な限り同一の番号で示されている。
以下、本開示の実施形態を、例として次の図面を参照しながら説明する。
図1】本開示のある実施形態による、生理学的パラメータを決定する装置のシステムのブロック図である。
図2】信号コイル又は駆動コイルの電流1アンペアあたりに誘起される、磁気プローブに作用する力を、ミリメートル単位の位置に対して表したグラフである。
図3】測定コイルの共通誘起電圧を表すグラフである。
図4】各信号コイルセグメントにかかる電圧を測定するために、4台の差動増幅器を用いて3つのロケータ信号を測定した図である。
図5】本開示のある実装形態による、細長い磁気プローブの位置を決定するためのグラフである。
図6】本開示のある実装形態による測定コイルアセンブリである。
図7】本開示のある実装形態による、細長い磁気プローブの速度及び位置を決定するためのロボットシステムのシステムの模式図である。
図8】本開示のある実装形態による、誘起電圧を加算する電気回路である。
図9】本開示のある実装形態による、測定コイルの誘導信号電圧である。
図10】本開示のある実施形態による、装置の基本的な実装のためのシステムのブロック図である。
図11A】本開示のある実装形態による、第1の増幅器と第2の増幅器の最適な接続を実現するためのグラフである。
図11B】本開示のある実装形態による、第1の増幅器と第2の増幅器の最適な接続を実現するためのグラフである。
図12A】本開示のある実装形態による、信号電圧及び共通誘起電圧値を示すグラフである。
図12B】本開示のある実装形態による、信号電圧及び共通誘起電圧値を示すグラフである。
図13A】本開示のある実装形態に従う、複数の信号増幅器の加算による、ロケータ値を測定するためのグラフである。
図13B】本開示のある実装形態に従う、複数の信号増幅器の加算による、ロケータ値を測定するためのグラフである。
図13C】本開示のある実装形態に従う、複数の信号増幅器の加算による、ロケータ値を測定するためのグラフである。
図13D】本開示のある実装形態に従う、複数の信号増幅器の加算による、ロケータ値を測定するためのグラフである。
図14A】本開示の実施形態による、生理学的パラメータを決定するための方法のステップを示すフローチャートを示す。
図14B】本開示の実施形態による、生理学的パラメータを決定するための方法のステップを示すフローチャートを示す。
図15】速度プロファイルの決定に関する説明図である。 添付図面において、下線付きの番号は、その番号が書かれている場所のアイテム又はその番号に隣接するアイテムを表わすのに使用される。下線無しの番号は、当該番号から延びる線によって特定されるアイテムに関連付けられる。番号に下線が無く矢印を伴って書かれている場合、その番号は矢印が示す汎用アイテムを特定するために使用される。
【実施形態の詳細説明】
【0013】
以下の詳細説明は、本開示の実施形態及びそれらが実施され得る方法を例示する。本開示を実施するための形態をいくつか開示したが、当業者であれば、本開示を実施するための他の形態も実現可能であることを認識するであろう。
【0014】
1つの捉え方によれば、本開示のある実施形態は、生理学的パラメータを決定するための装置を提供する。この装置は、
第1の端部と、前記第1の端部とは反対側の第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間の中間部とを有する細長い磁気プローブと;
前記磁気プローブを部分的に囲むように配置される駆動コイルと;
少なくとも第1セクションと第2セクションとを有し、前記磁気プローブを部分的に囲むように配置される測定コイルと;
コントローラと;
を備え、前記コントローラは、
・ 前記磁気プローブの、前記第1の端部の方向への移動を開始するために、前記駆動コイルに選択的に通電して磁力を発生させることと;
・ 前記磁気プローブの移動中、時間の関数として、第1の誘起電圧値と共通誘起電圧値とを測定することであって、前記第1の誘起電圧値は前記第1セクションにかかる電圧であり、前記共通誘起電圧値は、前記第1セクションから前記第2セクションにまたがる電圧値であるか、前記第2セクションの少なくとも一方にかかる電圧値である、前記測定することと;
・ 前記第1の誘起電圧値を前記共通誘起電圧値で除算することにより、時間の関数としてロケータ値を決定することと;
・ 前記ロケータ値を、時間の関数として、時間領域から空間領域にマッピングすることと;
・ 前記磁気プローブの第1の速度プロファイルを空間領域ロケータ値から計算し、前記計算した第1の速度プロファイルを使用して生理学的パラメータを決定することと;
を遂行するように構成される。
【0015】
好ましくは、第1セクションからの電圧値の測定は、共通誘起電圧の測定中に同時に行われる。共通誘起電圧は、第1区間と第2区間にまたがって測定されることができる。すなわち、第1区間の電圧と第2区間の電圧を加算したものとして測定されることができる。または共通誘起電圧は、第2区間の電圧として測定されることができる。第2セクションは第1セクションにオーバーラップしていることができる。プローブ速度に依存しないロケータ信号を計算する前に、測定コイルの複数のセクションを使用して、これらの信号電圧を様々な方法で組み合わせることができる。実施形態によっては、最初のセクションの測定がまず行われ、他の測定サイクルにおいて共通誘起電圧の測定が行われる。相対時間に基づく共通開始時間(t0)が、両者それぞれの測定開始時間として定義される。
【0016】
本開示の別の捉え方によれば、本開示は、生理学的パラメータを決定するための方法を提供する。この方法は、
・ 細長い磁気プローブを該磁気プローブの第1の端部の方向に移動させるべく、駆動コイルに通電することと;
・ 測定コイルの第1セクションについて、誘起された第1の電圧を時間の関数として測定することと;
・ 前記測定コイルの前記第1セクションと前記測定コイルの第2セクションにまたがる電圧であるか、前記第2セクションにかかる電圧である、誘起共通電圧を時間の関数として測定することと;
・ 測定された第1の誘起電圧値を測定された誘起共通電圧値で除算することにより、時間の関数として第1のロケータ値を決定することと;
・ 前記第1のロケータ値を時間領域から空間領域にマッピングすることと;
・ 空間領域の第1のロケータ値から、前記磁気プローブの第1の速度プロファイルを計算することと;
・ 前記第1の速度プロファイルを使用して生理学的パラメータを決定することと;
を含む。
【0017】
細長い磁気プローブの速度と磁化が決定され、それによって、より正確な測定が可能になる。
【0018】
本開示は、生理学的パラメータを決定するための装置を提供する。ここで装置とは、眼の生理学的パラメータを測定するために使用され得る器具を指してもよい。眼の生理学的パラメータとは、例えば眼内の圧力や、眼の触覚感度のようなものであってもよい。実施形態によっては、前記装置は眼圧計である。眼圧計は、眼科的測定から眼圧を測定するために使用される。眼圧は、眼球表面から跳ね返された細長い磁気プローブの速度を(時間の関数として)表す電圧信号から計算される。信号の大きさは、細長い磁気プローブの磁力と速度に依存する。
【0019】
前記装置は、第1の端部と、前記第1の端部とは反対側の第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間の中間部とを有する細長い磁気プローブを備える。細長い磁気プローブの第1の端部は、生体適合材料から作られ、使用時に眼の表面と衝突する。第1の部分が生体適合材料で作られていることにより、有益なことに、プローブが眼球の生体組織と直に接触して機能することが可能となり、不快感や痛みを最小限に抑えることができる。生体適合材料は、発癌性や毒性がなく、腐食に強いことは注目すべきである。細長い磁気プローブは、磁性材料の細いワイヤーで作られてもよい。細長い磁気プローブは、例えば長さ20ミリメートル、幅0.5ミリメートルとしてもよい。細長い磁気プローブの磁性材料は強磁性体であってもよい。測定コイル内で細長い磁気プローブが動くと誘起電圧が発生する。しかし、細長い磁気プローブの磁力は非常に小さい。細長い磁気プローブは目の表面によってのみ押し戻され、押し戻されるための他の力は存在しない。
【0020】
この装置は、細長い磁気プローブを部分的に囲むように配置される駆動コイルを有する。この駆動コイルは、細長い磁気プローブが移動可能なループとして配置される。また駆動コイルは有限個のループを有する。駆動コイルは、磁気プローブの第1の端部と第2の端部との間の任意の点に沿って配置することができる。例えば、駆動コイルを第1の端部に近い位置に配置することができる。駆動コイルに電流を流すと、駆動コイルが細長い磁気プローブを動かす。駆動コイルは、細長い磁気プローブを引っ張り、駆動コイルを通して供給される電流と細長い磁気プローブの磁化との積に等しい速度で眼球表面に向かって突き出す。
【0021】
本装置は、少なくとも第1セクションと第2セクションとを有する測定コイルを備える。測定コイルは部分的に磁気プローブを囲むように配置される。測定コイルは有限個のループを有する。測定コイルのループの総数は、第1セクションと第2セクションとの間で分割される。第1セクション及び第2セクションの各々は、細長い磁気プローブが移動可能な少なくとも1つのループを有してもよい。細長い磁気プローブは、第1セクションと第2セクションとの間の中間セクションに沿って移動することができてもよい。測定コイルが2つ以上のセクションを有するため、細長い磁気プローブの移動によって誘起される異なる電圧プロファイルを同時に測定することが可能である。この技術的効果は、プローブの磁化定数の不確かさをなくすことである。実際、後述するように、少なくとも2つの異なる測定コイルを用いて測定を行うことで、磁化の値がまったく分からなくても、プローブの速度を決定することができる。
【0022】
実施形態によっては、測定コイルは、第1の期間は駆動コイルとして使用され、第1の期間の後の第2の期間においては、当該測定コイルの第2セクションとして使用される。ここで、測定コイルは電流を流すために使用され、それによって細長い磁気プローブに運動を誘発する。そして、細長い磁気プローブがその動作速度まで加速された直後に、測定コイルは、測定コイルへの誘起電圧を測定するために使用される。有益なことに、これによって装置内のコイルの数が減少する。測定コイルは、例えば電流を流すか誘起電圧を測定するかなど、コントローラが測定コイルを制御する方法に応じて、複数の機能を持つことができる。
【0023】
実施形態によっては、測定コイルの第1セクションと第2セクションは直列に接続される。ここで直列接続とは、第1セクションの最後のループと第2セクションの最初のループとの電気的結合を意味する。通常、直列接続される測定コイルに誘導される電圧の測定は、測定コイルの第1セクションと測定コイルの第2セクションに電圧計を接続することで実現できる。あるいは、第1セクションに誘起される電圧が測定される。その後、第1セクションと第2セクションに誘起される電圧を両方一緒に測定して、全体の誘起電圧値を導出してもよい。第2セクションに誘起される電圧は、全体の誘起電圧から第1セクションに誘起される電圧を減算することによって算出することができる。
【0024】
実施形態によっては、測定コイルは第3セクションを有し、当該第3セクションは、測定コイルの第1及び第2セクションと直列に接続され、細長い磁気プローブの第3セクションを囲むように配置される。この第3セクションは、細長い磁気プローブが移動可能な少なくとも1つのループを有してもよい。測定コイルに更に複数のセクションを追加して、より多くのデータポイントを生成してもよい。
【0025】
一例では、測定コイルは第1セクション、第2セクション、第3セクション及び第4セクションに分けられる。駆動コイルは1つのセクションを有する。測定コイルの第1セクション、第2セクション、第3セクション及び第4セクションを互いに接続する箇所にはカップリングリードが配線される。第1セクションの左端には第1のカップリングリードが接続され、第1セクションと第2セクションとの接続部には第2のカップリングリードが接続され、第2セクションと第3セクションとの接続部には第3のカップリングリードが接続され、第3セクションと第4セクションとの接続部には第4のカップリングリードが接続され、第4セクションの右端には第5のカップリングリードが接続される。このような測定コイルの例示的な実装については図6で更に詳しく説明する。
【0026】
本装置はコントローラを有する。コントローラは、情報に応答して処理するように動作可能な計算装置である。一例として、コントローラは、組み込みマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、コンピュータ、又は携帯型コンピューティングデバイスであってもよい。コントローラは、測定コイル及び駆動コイルと通信可能に結合される。コントローラは、細長い磁気プローブを眼球表面に向かって動かすために、駆動コイルに通電する。
【0027】
コントローラは、細長い磁気プローブの第1の端部の方向への移動を開始させる磁力を発生させるために、駆動コイルに選択的に通電するように構成される。ここで、選択的に通電するとは、駆動コイルの電源電圧のON/OFFを切り替えることを表す。駆動コイルの電源電圧がONに切り替えられると電界が生じる。通常、駆動コイルの電源電圧が高いほど磁力は大きくなる。その結果、細長い磁気プローブの加速度が増加する。磁力は細長い磁気プローブの磁化の関数である。ここでいう磁化とは、細長い磁気プローブの磁化の強さを表す。磁化が高いほど磁力は大きくなる。駆動コイルに選択的に通電することで、細長い磁気プローブを眼球表面に向けて移動させることができる。選択通電による駆動コイルの極性を逆にした場合には、細長い磁気プローブは逆方向に移動する。細長い磁気プローブは、必要なときはいつでも、コントローラによって制御され得る方向に移動する。ここで電圧は、細長い磁気プローブの速度及び磁化の関数である。
細長い磁気プローブの速度は、時間の関数として、測定コイルによって連続的に監視される。細長い磁気プローブの速度に関するそのような情報は、診断目的に使用され得る眼の圧力を決定するために使用され得る。電流が駆動コイルに供給されると、磁場が駆動コイルに誘導される。磁場は電流と駆動コイルの有限ループ数に比例する。磁場は、駆動コイルに供給される電流を制御することによって制御することができる。磁場は細長い磁気プローブに印加される磁力を発生させる。この磁力は細長い磁気プローブの磁化の関数である。細長い磁気プローブの加速度は、細長い磁気プローブの質量を、細長い磁気プローブに印加される力で割ることによって計算することができる。従って、細長い磁気プローブは、駆動コイルの電流パルスによって加速される。すなわち、駆動コイルの電流パルスによって生成される磁場が磁気プローブに作用し、磁気プローブに作用が加速される。細長い磁気プローブは測定コイルを通って眼球表面に向かって進み、眼球表面で跳ね返る。
上記の測定を行う際の技術的な問題のひとつは、磁化の値の不確かさである。実際、製造パッチが異なる(例えば(製造日や製造時間が異なる)2つのプローブを比較すると、プローブの磁化値や磁化能力に大きな差が生じることがある。これは、誘起電圧を測定する際の不確かさにつながる。プローブの速度はプローブの磁化値の関数であるので、例えば、同じ駆動電圧(電流)であっても、プローブの動きは速くなる可能性がある。
【0028】
実施形態によっては、細長い磁気プローブの磁化のために、本開示に磁化サイクルを組み込むことができる。ここで、磁化サイクルは、駆動コイルと測定コイルのそれぞれの電流パルスによって達成される。これらの電流パルスによって、細長い磁気プローブが装置内で前後に引っ張られる。磁化サイクルは較正サイクルで終了してもよい。較正サイクルは、細長い磁気プローブの最適な速度を得るための値に駆動コイルによる加速の度合いを設定するために必要な情報を収集する。較正サイクルは、生理学的パラメータを決定する前に、装置と細長い磁気プローブの両方をチェックする。実施形態によっては、較正サイクルは、時間の関数としての(複数の)ロケータ値を、時間領域から空間領域にマッピングするための(複数の)ルックアップテーブル値を収集するために使用することができる。
【0029】
実施形態では、使用時に、測定コイルの第1セクションは、細長い磁気プローブの第1セクションを囲み、測定コイルの第2セクションは、細長い磁気プローブの第2セクションを囲む。細長い磁気プローブが第1の空間位置にあるとき、細長い磁気プローブの第1セクションは、細長い磁気プローブの第2セクションとは異なる。装置の幾何学的セットアップにおいて、第1の空間位置は、細長い磁気プローブが選択的に通電される前の初期位置である。第1の位置では、細長い磁気プローブは装置内に完全に収納される。
【0030】
実施形態によっては、使用時に、細長い磁気プローブがその第2の空間位置にあるとき、測定コイルの第1セクションは細長い磁気プローブの第1セクションを囲まず、測定コイルの第2セクションは細長い磁気プローブの第2セクションを囲む。ここで第2の空間位置は第1の空間位置とは異なる。第2の空間的位置とは、例えば、細長い磁気プローブが末端位置、例えば測定コイルからほぼ外れた位置まで動いた場合などである。このとき測定コイルの第1セクションは細長い磁気プローブを全く囲んでいないため、細長い磁気プローブを部分的に囲む測定コイルと比較して、測定コイル上の磁束の変化が大きくなる。均一に磁化された細長い磁気プローブでは、磁束は全体を通して一定である。磁束線は一端から離れ、反対側の端から再び入る。磁束線の一部は、測定コイルの壁を通過し、反対側の端から再び進入する。更に、細長い磁気プローブは長く、測定コイルに非常に近い位置にあるため、測定コイルの磁束は一巻き毎に時間と共に変化する。
【0031】
測定コイルの電流は、制御された磁場パルスで細長い磁気プローブに作用し、細長い磁気プローブを所望の速度で眼球表面に送出する。細長い磁気プローブの速度は、電流パルスの振幅、細長い磁気プローブの長さと磁化、細長い磁気プローブと測定コイル及び駆動コイルとの間の摩擦によって決定される。細長い磁気プローブは眼球表面に当たると跳ね返る。細長い磁気プローブが接近し、跳ね返り、及び/又は戻ってくる間の、細長い磁気プローブの速度プロファイルを測定することによって、眼圧を決定することができる。
【0032】
コントローラは、細長い磁気プローブの移動時間中に、第1セクションからの(複数の)第1の誘起電圧値と、(複数の)共通誘起電圧値とを、時間の関数として測定するように構成される。細長い磁気プローブが第1セクションと第2セクションのループ内を移動すると、ファラデーの誘導の法則に従って電圧が誘起される。コントローラは、細長い磁気プローブが第1セクションを移動する間、(複数の)第1の誘起電圧値を、時間の関数として測定するように構成される。更に、測定コイルの共通誘起電圧が、時間の関数として測定される。2つのセクション(第1セクションと第2セクション)がある場合の共通誘起電圧は、両方のセクションに亘る誘起電圧である。例えば3つ又は4つのセクションがある場合、共通誘起電圧は、第1、第2、第3及び第4のセクションに亘る誘起電圧である。
【0033】
実施形態によっては、ロボットシステムを使用して細長い磁気プローブの位置を正確に制御することにより、誘起電圧のサンプリング間隔と測定コイルの幾何学配置を制御する。細長い磁気プローブが眼球表面に向かって第1セクション、第2セクション、第3セクション、第4セクションを通過する際、誘起電圧は時間の関数として変化する。誘起電圧の振幅は、細長い磁気プローブの位置と速度に比例する。細長い磁気プローブの磁化が既知の場合、共通誘起電圧は、速度の測定に適している。これについては、図4に関連して詳しく説明した。説明したように、技術的な問題の一つは、細長い磁気プローブの磁化が様々な値を持ちうるため、速度の単純な計算が困難になることである。
【0034】
はじめ、駆動コイルが細長い磁気プローブを加速する間、共通誘起電圧(及び第1の誘起電圧)は上昇する。続いて細長い磁気プローブは眼球表面に衝突し、減速して、約1ミリ秒(ms)でゼロになる。これは20ミリ秒から35ミリ秒後である。そして磁気プローブは跳ね返る。これらは磁気プローブの速度と眼球の表面からの距離に依存する。細長い磁気プローブの減速は、例えば20,24,28又は32ミリ秒から、21,25,30又は35ミリ秒で行われる。ここで、眼球の表面と接触中の磁気プローブの速度の変化の様子は、主に磁気プローブの速度に依存し、押し返す力を通じて眼内圧にも依存する。眼内圧に依存する主なパラメータは、磁気プローブの速度の減速の傾きによって与えられる。磁気プローブの速度の減速は、磁気プローブと眼球の表面との間の磁気力に等しい。
更に、本開示の装置は、細長い磁気プローブからの出力信号を補正して提供する。そして、提供される信号から眼圧が導出される。真の眼圧を明らかにするために変換する曲線を生成するために、出力信号は、他のタイプの測定を用いて、患者データで検証される。その結果、眼圧が低い時を除き、眼圧は、入力信号に約1.5の係数を乗じたものから定数を引いた値に等しくなる。眼圧が低いほど、この係数は大きくなり、定数は小さくなる。これについては図3に関連して詳しく説明した。
使用する第1の信号増幅器と第2の信号増幅器はオペアンプである。オペアンプは、増幅段の入力において、抵抗を介して、第1の信号増幅器と第2の信号増幅器の負端子と正端子に電圧を加える。更に、複数の誘起電圧信号を、抵抗によって設定された重みで容易に共通出力に加算又は減算することができる。具体的には、本開示を簡単に実施するために、差動増幅器を使用することができる。ここで、差動増幅器の第1入力は負端子に接続され、差動増幅器の第2入力は正端子に接続される。
基本的な実装は、第1の増幅器と第2の増幅器とを用いて行ってもよい。第1の増幅器は、第1セクション又は第2セクションからの、あるいは実施形態によっては第3セクション又は第4セクションからの、選択された誘起電圧を加算するための複数の入力を有する。第2の増幅器は、共通誘起電圧を計算するための差動増幅器である。一例では、第1の増幅器は第2セクション及び第3セクションと電気的に結合され、第2セクションと第3セクションの誘起電圧の差を決定する。また第2の増幅器は第1セクションと第4セクションと電気的に結合され、共通誘起電圧を生成する。
一例では、第1セクションの第1の誘起電圧を「V1」、第2セクションの第2の誘起電圧を「V2」、第3セクションの第3誘起電圧を「V3」と称する。更に、差動増幅器には4つの抵抗「R1」、「R2」、「R3」、「R4」が接続される。このような例では、出力電圧Voutは次のように計算される、
【0035】
out=(V1・R1/(R1+R2)+V2・R1/(R1+R2))(1+R4/R3)-V3・R4/R3
【0036】
非常に小さな信号を検出するためには、V1-V3に比例したVoutを与える差動増幅器を使用する方法が、干渉信号を除去するために実用的であることが判明した。このような増幅器が当該目的のために市販されている。
【0037】
このような例については、図8を参照して更に詳しく説明する。更に、4入力以下のオペアンプを用い、和抵抗の値で符号と増幅率を調整することにより、測定コイルの誘起電圧の任意の組み合わせを得ることができる。更に、第1の増幅器の出力と第2の増幅器の出力の組み合わせにより、最適化された信号を得ることができる。ここで、最適化された信号は、例えば細長い磁気プローブの位置などの要求に対して感度を有するようにされてもよく、例えば磁化度などの別のパラメータに対しては感度を有さないようにされてもよい。
【0038】
コントローラは、第1の誘起電圧値を共通誘起電圧値で除算することにより、時間の関数としてロケータ値を決定するように構成される。(ペア毎に)第1の電圧値をそれぞれの共通誘起電圧値で除算する技術的効果は、細長い磁気プローブの未知の磁化定数を排除することである。誘起される電圧は、測定コイルの磁束Φの変化の関数である。磁束は磁場B、すなわち細長い磁気プローブの磁化の関数である。Bは一定であるため、第1の誘起電圧を共通誘起電圧値で除算することで消去できる。
ロケータ値は、細長い磁気プローブの実際の位置と相関のある値を表す。測定が時間の関数として行われることを考慮すると、ロケータ値は、最初は時間の関数である。従って、ロケータ値は時間領域にある。第1の誘起電圧値は、対応する測定で得られた共通誘起電圧で除算される。実験的に、第1の誘起電圧コイル値を共通誘起電圧値で除算すると、同様の形状が得られることが分かった。それゆえ、ロケータ値は細長い磁気プローブの速度に依存しない。細長い磁気プローブの速度は磁化の関数である。このため、プローブの磁化についての駆動コイルの電流の変動がなくなる。
典型的には、細長い磁気プローブの磁化の不確かさを解決するために、第1の誘起電圧値と共通誘起電圧値が測定される。第1の誘起電圧値及び共通誘起電圧値は、細長い磁気プローブの速度及び磁化の関数である。一例として、第1の信号増幅器は、0.2ボルト(V)の駆動コイルと0.3Vの駆動コイルについて、測定コイル全体の共通誘起電圧を測定する。ここでは、共通誘起電圧を「U15」と称する。第2の信号増幅器は、第2セクションの第2のカップリングリードと、第3セクションと第4セクションの接続部の第4のカップリングリードと電気的に結合される。そこで、ここから測定される電圧を「U24]と称する。
「U24」を「U15」で除算すると、0.2V駆動コイルの場合も0.3V駆動コイルの場合も、駆動コイルの振幅への依存性が取り除かれているため、結果は完全に同一となる。細長い磁気プローブの速度は誘起電圧に直接影響する。ここで、第2の誘起電圧値は1.6増加し、中間領域のロケータ値は測定精度の範囲内で同じである。また、Z=5ミリメートル(mm)未満とZ=10ミリメートルより上の電圧信号は、考慮されない。これは、誘起電圧値がZの関数として急激に変化しておらず、ロケータ値が一定であるためである。この点については、図11に関連して更に詳しく説明する。
【0039】
前の例を続けると、有効範囲(useful range)はほとんど左に向いており、また狭くなる。従って、本開示は要求に応じて実施することができる。第4の信号増幅器、第5の信号増幅器などを使用することにより、有効範囲を広げることができる。これについては、図12と併せて更に詳しく説明する。図13は、2台の増幅器を使用した場合の、関心領域(ROI)を中心とした広い範囲をカバーするように収集した信号を示す。信号U15は、第1の信号増幅器からの出力信号と第2の信号増幅器からの出力信号の和を取ることにより測定される。ここで、第1の信号増幅器からの出力信号と第2の信号増幅器からの出力信号の和を「U+」という。また、第1の信号増幅器からの出力信号と第2の信号増幅器からの出力信号の差を「U-」と称する。通常、ロケータ値は、第1の信号増幅器からの出力信号と第2の信号増幅器からの出力信号の差と、第1の信号増幅器からの出力信号と第2の信号増幅器からの出力信号の和との比によって算出されることができる。すなわち、
L=(U-)/(U+)
である。
【0040】
コントローラは、電圧U13及びU35を時間の関数としてマッピングするように構成される。ここで時間領域とは、サンプリング時間の関数としてのロケータ値を表す。マッピングは、例えばルックアップテーブルなどを用いて実行することができる。ロケータ値は、測定コイルの形状ごとに実験によって決定される。これは例えば、細長い磁気プローブをアクチュエータで前後に移動させ、同時に誘起電圧値を測定することによって行うことができる。駆動コイルで移動させることから、細長い磁気プローブの空間位置と誘起電圧値との関係を決定することができる。
【0041】
実施形態によっては、時間領域から空間領域へのマッピングは、事前に決定された伝達関数又はルックアップテーブルの少なくとも1つによって行われる。時間領域信号のマッピングは、例えば、プローブを正確な位置に配置し、1キロヘルツのオーダーの適切な周波数で非常に小さな変位で振動させることによって行われる。この位置での時間領域信号は、1kHzでの誘起電圧に比例する。これは位置曲線を較正するために行われる。時間領域から空間領域へのマッピングは、プローブの速度を決定するために必要なステップである。事前に決定された伝達関数の作成は以下の例1に、ルックアップテーブルの決定方法の例は例2に開示される。
【0042】
コントローラは、細長い磁気プローブの第1の速度プロファイルを空間領域ロケータ値から計算し、計算した第1の速度プロファイルを使用して生理学的パラメータを決定するように構成される。第1の速度プロファイルは、空間領域のロケータ値に対する時間領域のロケータ値から計算される。対象とする用途に応じて、例えば眼圧などの生理学的パラメータを決定するために、時間の関数としての速度が使用される。一例として、細長い磁気プローブの速度と、細長い磁気プローブが眼球表面に向かって射出された後に細長い磁気プローブを停止させるための眼球表面の応答を、速度の一次導関数を計算することによって決定することができる。また、細長い磁気プローブが眼表面から跳ね返る速度を決定することができる。細長い磁気プローブが高速で跳ね返る場合は眼圧が高く、細長い磁気プローブが低速で跳ね返る場合は眼圧は低い。
細長い磁気プローブの時間及び速度に関する測定値は、医学的な試験(例えば臨床試験)と共に収集されてもよい。そして、本開示で議論するように、生理学的パラメータを決定するために、細長い磁気プローブという形状についての速度の関数を、臨床試験における測定結果と比較してもよい。細長い磁気プローブの速度は、第1の誘起電圧値を第2の誘起電圧値で除算して、細長い磁気プローブの速度を決定するために使用される相対値を得ることから、決定されてもよい。実施形態によっては、第1の速度プロファイルは、空間領域における速度と時間領域における速度の少なくとも1つを含む。実施形態によっては、第2の速度プロファイルは、空間領域における速度と時間領域における速度の少なくとも1つを含む。
【0043】
本開示は、装置の技術的範囲を、眼の生理学的パラメータの測定に限定することを意図していない。本装置は、眼球表面に関して説明したのと同様の方法で、身体のあらゆる部位に関する生理学的パラメータを測定するために用いることができる。
【0044】
実施形態によっては、装置のコントローラは更に以下のことを行うように構成される。
・ 細長い磁気プローブの移動時間中に、第1セクション以外のセクションからの第2の誘起電圧値を時間の関数として測定する。
・ 第2の誘起電圧値を共通誘起電圧値で除算することにより、時間の関数として第2のロケータ値を決定する。
・ 第2のロケータ関数を時間領域から空間領域にマッピングする。
・ 空間領域の第2のロケータ値から、細長い磁気プローブの第2の速度プロファイルを計算する。
・ 計算した第2の速度プロファイルを使用して、生理学的パラメータを更新する。更新は、例えば、第1の速度プロファイルと第2の速度プロファイルの平均を計算し、その平均を速度プロファイルとして使用して生理学的パラメータを決定することによって行うことができる。
【0045】
本開示はまた、上述の方法に関する。上に開示された様々な実施形態及び変形例は、本方法に準用される。
【0046】
実施形態によっては、細長い磁気プローブは患者の方へ動くように仕向けられ、患者の体の表面に当たって跳ね返る。表面とは、患者の眼の表面を指すことができる。プローブを表面に向け、速度プロファイルを測定することで、例えば患者の眼圧を知ることができる。例えば、プローブが眼球に当たったときの速度プロファイルが低い加速度を示す場合は、眼圧が低いことを示す。高い加速度(すなわち速度プロファイルの大きな変化)は、眼圧が高いことを示す。
【0047】
実施形態によっては、測定は細長い磁気プローブの移動中に行われ、時間の関数として(複数の)誘起電圧値が得られる。
【0048】
実施形態によっては、生理学的パラメータの決定は、細長い磁気プローブが患者の体表面に衝突している間の加速度の分析、衝突前と衝突後の速度の変化、細長い磁気プローブの体表面への侵入量の少なくとも1つによって実施される。加速度は、速度の時間に関する導関数であるため、速度プロファイルから求めることができる。
【0049】
実施形態によっては、生理学的パラメータ値は以下の方法で更新される。
・ 測定コイルにおける、第1セクションとは異なるセクションについて、誘起された第2の電圧を時間の関数として測定する。
・ 第2の誘起電圧値を共通誘起電圧値で除算することにより、時間の関数として第2のロケータ値を決定する。
・ 第2のロケータ関数を時間領域から空間領域にマッピングする。
・ 空間領域の第2のロケータ値から、細長い磁気プローブの第2の速度プロファイルを、位置の関数として計算する。
・ 計算した第2の速度プロファイルを使用して生理学的パラメータを更新する。
【0050】
実施形態によっては、第1の速度プロファイルは、空間領域における速度と時間領域における速度の少なくとも1つを含む。
【0051】
実施形態によっては、第2の速度プロファイルは、空間領域における速度と時間領域における速度の少なくとも1つを含む。
【0052】
例1:実験による伝達関数の事前決定
【0053】
ローカライゼーションを得るために、ロケータ値のマッピングが実行される。ここでローカライゼーションとは、Zの値とプローブの速度dZ/dtである。数学的には、細長い磁気プローブは、Zを位置とする線形空間にマッピングされる。そして、Zに関する第1の関数Lを測定するために、Zの値の設定とマッピングのためにロボットシステムが使用される。ここで、Zに関する第1の関数Lは「L(Z)」と表される。更に、Zに関する第2の関数が決定される。ここで第2の関数は、細長い磁気プローブの位置には依存するが、信号コイル誘起電圧信号、細長い磁気プローブの磁化の程度、プローブ速度には依存しない関数である。細長い磁気プローブの速度(v)を計算するためにはZの時間微分が使用される。
【0054】
v=dZ/dt=(dL/dt)/dL/dZ)
【0055】
例えば、高速で移動する細長い磁気プローブの場合、ロケータ値は短い時間間隔でサンプリングされる。この短い時間間隔は式T-Tn-1で与えられる。ここで、nは有限の時間間隔を示す。ロケータ値はL-Ln-1という式で示され、対応して増加する。n番目のサンプルについての磁気プローブの速度は次式で与えられる。
【0056】
=K(L-Ln-1)/(T-Tn-1
【0057】
Z=0から始まるZ値の長いスイープを作りつつ、複数のデータポイントを収集することができ、それによって1mm間隔の複数のステップを作成することができる。ここで電圧信号は、デジタルオシロスコープの出力における、ミリボルト(mVrms)単位の測定電圧の二乗平均平方根値である。有用なロケータ値を与えるZの範囲は1から7であり、これは、信頼できる結果を得るために、調べられる眼に許容される最大距離によって制限される。ローカリゼーション曲線のフィッティングには複数の点のデータが使用されるが、最初の10点のデータは、それぞれU+電圧とU-電圧について収集される。与えられたデータから最初の5つのZ値が計算される。これは、図13Cに関連して更に詳細に説明される。そして、図13Dの表に示されるような値が観測された。速度、磁化、及び、第1の誘起電圧値、第2の誘起電圧値、第3の誘起電圧値、及び第4の誘起電圧値についての細長い磁気プローブの依存性を除去し、各点についてそれぞれ共通誘起電圧で除算することにより、細長い磁気プローブの位置が得られる。更に、測定値の助けを借りて、適切な線形結合を作成することもできる。これについては、図5に関連して詳しく説明した。
【0058】
例2:細長い磁気プローブを前後に動かして上記のルックアップテーブルを決定する方法の例
【0059】
本開示では、バイブレータを使用して細長い磁気プローブを振動させることによって、当該磁気プローブの速度を示すために使用される第1の誘起電圧が、測定コイルに誘起される。バイブレータは、市販の圧電素子を用いて、その機械的共振周波数875ヘルツ(Hz)で細長い磁気プローブを振動させる。通常、バイブレータの振動の振幅は小さい。バイブレータは、信号発生器を0.2ボルト(V)と0.3Vにそれぞれ設定することで駆動される。共通誘起電圧は、測定コイルの誘起電圧の合計である。第1セクションと第2セクションの電圧の和は、第1セクションと第2セクションの誘起電圧を別々に測定することにより、測定されてもよい。
【0060】
実施形態によっては、共通誘起電圧は、測定コイルの全セクションにまたがって測定される。ここで、測定コイルの少なくとも第1セクションと第2セクションは、第1の信号増幅器と第2の信号増幅器に接続される。また、第1の信号増幅器と第2の信号増幅器は、要求に応じて変更可能な差動入力を構成する。例示的な実装では、第1の信号増幅器は第1セクションと第3セクションの間に接続され、第2の信号増幅器は第3セクションと第4セクションの間に接続される。またバイブレータは、第1の信号増幅器と第2の信号増幅器から、1ボルト(V)未満の信号を生成する。この大きさの電圧であれば、飽和を避けるために十分に低い。
通常、駆動コイルの出力は、測定された電圧の二乗平均平方根であり、ミリボルト(mVrms)単位で表される。標準電圧が0.2Vである駆動コイルの出力は500mVrmsである。標準電圧が0.3Vである駆動コイルの出力は800mVrmsである。第1の信号増幅器と第2の信号増幅器の入力は、測定コイルの複数のカップリングリードに接続されており、測定コイルはそれぞれ約1ミリボルト(mV)と1.6mVに対応している。また、第1の信号増幅器と第2の信号増幅器のそれぞれの出力は、細長い磁気プローブの速度を測定するためのデジタルオシロスコープの入力に接続される。
誘起電圧は測定コイルの4つのセクションから得られる。ここで、第1カップリングリードと第2カップリングリードの間で得られる誘起電圧を「U12」、第2カップリングリードと第3カップリングリードの間で得られる電圧を「U23」、第3カップリングリードと第4カップリングリードの間で得られる電圧を「U34」、第4カップリングリードと第5カップリングリードの間で得られる電圧を「U45」と称する。測定は、875ヘルツ(Hz),0.2V又は0.3Vの駆動コイルを使用して、信号発生器を手動で作動させることにより、30回の磁化サイクルにわたって行われる。信号増幅器は第3の信号増幅器を通じて駆動コイルに接続される。
デジタルオシロスコープは、第1の信号増幅器と第2の信号増幅器からの出力の二乗平均平方根値を測定し、それをスプレッドシートにデジタル保存する。このスプレッドシートは、細長い磁気プローブの位置の関数として測定値を受け取り表示するためのVisual Basicコードを有する。細長い磁気プローブの位置は、速度を時間積分することによって決定される。実施形態によっては、細長い磁気プローブの位置はロボットシステムによって制御される。ロボットシステムは、ステップモータによって駆動されるリニアスクリューを有し、細長い磁気プローブを高精度で直線的に動かすことを可能としている。測定コイルを低速で動かすと、信号コイルに電圧を誘導しない。
ロボットシステムは、測定と測定の間に位置をステップ様に変える。ここでは、細長い磁気プローブの位置を「Z」と称する。機械的な終端位置がスタート位置Z=0である。ロボットシステムは、次の測定ポイントのために1ミリメートル(mm)位置を変えるよう作動させられる。これについては、図7に関連して更に詳しく説明する。
【0061】
本開示の一実装形態では、ロケータ値は、Z=1~5ミリメートル(mm)の範囲で直線的であることが観察された。(Zは、コイルに対して移動するプローブの距離である)。Z=1ミリメートルから5ミリメートルの範囲の点に対して、スプレッドシートを用いて傾向線(トレンドライン)をフィッティングすることにより、近似値が得られる。結果として得られるロケータ値の傾向線は、y=mx+cという一般的な直線の方程式の形をしている。この傾向線は、装置内で測定を行うためのZ=1ミリメートルから5ミリメートルの範囲における細長い磁気プローブの位置を表している。ここで、変数「x」と「y」がさらなる計算のために選択される。そして、本開示の座標に適合させるために、変数xをZと等価にし、変数yをL(Z)の関数の1000倍と等価にする。従って、傾向線の方程式は次式で与えられる。
【0062】
1000L=-mZ+c
【0063】
従ってZは次のように表される。
【0064】
Z=-(1000/m)L+c/m
【0065】
ここで、定数K=(-1000)/mとする。また、c/mを、L=0のときのZの値とする。つまり、c/m=Zとする。従って、V=K(dL/dt)である。Vは変数である。その結果、次の式が得られる。
【0066】
Z=-Vt+Z
【0067】
このように、実施例と試験例に基づいて、ロケータ値から細長い磁気プローブの速度プロファイルを決定することができる。この速度プロファイルを用いて生理学的パラメータを決定することができる。すなわち、細長い磁気プローブの速度は、生理学的パラメータを決定するために使用することができる。特に、第1の誘起電圧は細長い磁気プローブの速度に比例する。
[図面の詳細説明]
【0068】
図1を参照すると、本開示のある実施形態に従う、生理学的パラメータを決定するための装置100のブロック図が示される。装置100は、細長い磁気プローブ102と、駆動コイル104と、測定コイル106と、コントローラ108とを備える。細長い磁気プローブ102は、第1の端部102Aと、第1の端部102Aとは反対側の第2の端部102Bと、第1の端部102Aと第2の端部102Bの間の中間部102Cとを有する。駆動コイル104は、細長い磁気プローブ102を部分的に囲むように配置される。測定コイル106は、少なくとも第1セクション106Aと第2セクション106Bとを有する。測定コイル106は、細長い磁気プローブ102を部分的に囲むように配置される。図では、測定コイルは4つのセクション、すなわち第1セクション106A、第2セクション106B、第3セクション106C、及び第4セクション106Dを有する。これらのセクションは互いに直列に接続される。
コントローラ108は、駆動コイル104及び測定コイル106と通信可能に結合される。コントローラ108は、駆動コイル104に選択的に通電して磁力を発生させ、細長い磁気プローブ102の、眼110に向かう移動を開始させる。図1は、位置Z=0であるプローブを示している。一例として、第1セクション106Aについて第1の誘起電圧を測定することができる。また、第1セクション106A及び第2セクション106Bにまたがる共通誘起電圧を測定することができる。
他の例としては、第1の誘起電圧を第2セクション106Bについて測定し、共通誘起電圧を例えば4つのセクション全てにまたがる電圧として測定することができる。実際、用語「第1セクション」は任意のセクションを指すことができる。共通誘起電圧は、少なくとも第1セクションとは異なる1つ又は複数のセクションから測定される。
【0069】
図2を参照すると、本開示の実施形態に従う、磁気プローブ102の各位置(単位はミリメートル)と、磁気プローブ102に作用する力(信号コイル又は駆動コイルの電流1アンペア当たりに誘起される力)との関係を表すグラフが示されている。横軸は、測定コイル106及び駆動コイル104に流れる電流1アンペア(A)に対して誘起される、磁気プローブ102に作用する磁力を表す。縦軸は、磁気プローブ102の位置をミリメートル単位で表している。線202は、測定コイル106に流れる電流によって、磁気プローブ102に作用する磁力を示している。線204は、駆動コイル104の電流によって、磁気プローブ102に作用する磁力を示している。上側の曲線202は、本測定器で使用される単一の信号コイルに対応し、下側の曲線204は駆動コイルに対応している。コイル内を等速で移動するプローブによって誘導される信号電圧の曲線は同じように見える。
【0070】
図3を参照すると、本開示の実施形態に従い、測定コイル106の共通誘起電圧を決定するためのグラフ302が示されている。共通誘起電圧は時間の関数である。点304において、駆動コイル104が細長い磁気プローブ102を加速し始めると、共通誘起電圧が増加する。(磁気プローブ102の加速は位置Z=0mmから始まっている。)磁気プローブ102は、点306で眼球110の表面に衝突する。(このとき位置はZ=4mmから8mmの間である。)そして磁気プローブ102は減速し、約1msでゼロになる。これが20ミリ秒(ms)から30ms後である。そして磁気プローブ102は跳ね返る。これらは磁気プローブ102の速度と眼球110の表面からの距離に依存する。ここで、眼球110の表面と接触中の磁気プローブ102の速度の変化の様子は、主に磁気プローブ102の速度に依存し、押し返す力を通じて眼内圧にも依存する。眼内圧に依存する主なパラメータは、磁気プローブ102の速度の減速の傾きによって与えられる。磁気プローブ102の速度の減速は、磁気プローブ102と眼球110の表面との間の磁気力に等しい。図には、測定コイルの単一の区間にわたる測定が示されている。駆動コイルはZ<1でアクティブである。プローブはZが約5-7mmで眼に当たる。このとき駆動力はゼロに近い。
【0071】
図4は、4つの差動増幅器を使用して各信号コイルセクション間の電圧を測定した、3つのロケータ信号を示している。図中の曲線は、隣接するコイル、すなわち第1セクションと第2セクション、第2セクションと第3セクション、第3セクションと第4セクションからの信号をそれぞれ取得し、それらをペアごとに引き、全ての合計U+(共通誘起電圧)で割ることによって作られる。このようにして計算された曲線は、全てプローブの速度と磁化に依存しない。これらの曲線から選択することで、プローブを広い範囲で局在させることができる。また、選択した領域の感度を最適化するために、適切な線形結合を形成することもできる。このセットアップでは、4つのチャンネル全てで各ポイントを同時にサンプリングするために、4つの増幅器/測定器を同期させる必要がある。複数の第1誘起電圧値を測定することの利点は、精度の向上である。
【0072】
図5を参照すると、本開示の実施形態に従い、細長い磁気プローブ102の位置を決定するためのグラフが示される。ここで、磁気プローブ102の速度と磁化の依存性は、測定コイルの半分のセクション(図9の=U12+U23)の誘起電圧U13と、もう半分のセクション(=U34+U45)の誘起電圧U35を測定することによって取り除かれる。信号比Sは、U13-U34の差をコイル全体の共通電圧Ucomで割ったものとして計算される。この信号比Sは、細長い磁気プローブ102の位置を表し、プローブの磁化や速度に依存しない。図5において、横軸は細長い磁気プローブ102の位置をミリメートル単位で表している。縦軸は信号比Sを表し、これはプローブ位置の関数である。時刻t1及びt2における2つの信号点S1及びS2を用いると、曲線は対応するz1及びz2を与える。このような信号点を用いて、プローブの平均速度はvcal=(z1-z2)/(t1-t2)として計算される。このようにして、プローブの磁化とは無関係に、プローブの位置を直接決定することができ、また、プローブの速度を間接的に決定することができる。
【0073】
実際、プローブの磁化係数を知らなくても、磁化の影響を較正し、それを使ってプローブの位置と速度を導き出すことができる。
【0074】
図6を参照すると、本開示の実施形態による測定コイルアセンブリ602が示されている。測定コイル602は、602Aで示される第1セクション、602Bで示される第2セクション、602Cで示される第3セクション、602Dで示される第4セクションに分けられる。更に、第1セクション602Aの左端J1には第1のカップリングリード604Aが接続され、第1セクション602Aと第2セクション602Bの接続部J2には第2のカップリングリード604Bが接続される。第2セクション602Bと第3セクション602Cの接続部J3には第3のカップリングリード604Cが接続され、第3セクション602Cと第4セクション602Dの接続部J4には第4のカップリングリード604Dが接続され、第4セクション602Dの右端J5には第5のカップリングリード604Eが接続される。測定コイル602の長さは20ミリメートル(mm)であってもよい。細長い磁気プローブ610は、1mmの精度612で直線的に移動する。ここで、Z=0は細長い磁気プローブ610の開始位置である。本明細書では、一般的に、次のような表記が使用されている。U12は、接続部J1とJ2との間の誘起電圧を表す。U16は、接続部J1とJ5との間の誘起電圧(すなわち、全てセクション602A、602B、602C及び602Dにまたがる電圧)を表す。U34は、接続部J3とJ4間の誘起電圧を表す。U24は、接続部J2とJ4との間の誘起電圧、すなわち第2セクション602Bと第3セクション603とCにまたがる誘起電圧を表す。
【0075】
図7を参照すると、本開示の一実施形態による、細長い磁気プローブ702の速度及び位置を決定するためのロボットシステムのシステム700の模式図が示されている。ロボットシステムは、ステップモータ706によって駆動されるリニアスクリュー704を備える。リニアスクリュー704は、細長い磁気プローブ702が、測定コイル708内を高精度で直線移動することを可能にする。更に、第1の信号増幅器710A及び第2の信号増幅器710Bが、測定コイル708の誘起電圧を増幅するために使用される。第1の信号増幅器710A及び第2の信号増幅器710Bは、オシロスコープ712と電気的に結合される。細長い磁気プローブ702は、磁気プローブ702の速度を決定するために、875ヘルツ(Hz)の周波数でバイブレータ714によって振動させられる。バイブレータ714は、第3の増幅器718を介して信号発生器716によって駆動される。
【0076】
図8を参照すると、本開示の実装形態による、誘起電圧を加算するための電気回路800が示されている。複数の抵抗R1、R2、R3、R4が示されている。測定コイル708の第1区間と第2区間との間に接続された第1電圧入力をV1、測定コイル708の第4区間の端部に接続された第2電圧入力をV2、測定コイル708の第3区間と第4区間との間に接続された第3電圧入力をV3と表している。第1に、第1電圧入力は第2誘起電圧値の負形、すなわちV1=-U2である。第2に、第2の電圧入力は第3の誘起電圧値と第2の誘起電圧値とを加算したものである。すなわちV2=U3+U4である。第3に、第3の入力は第3の誘起電圧に相当し、V3=U3である。最後に、Voutで示される出力電圧が得られる。出力電圧は、第1入力と第2入力と第3入力とを加算したものである。
【0077】
out= V1+V2+V3 = -U2+U3+U4-U3 = U4-U2
【0078】
出力電圧は複数の抵抗に対して計算されてもよい。
【0079】
V1=(V1・R1/(R1+R2)+V2・R1/(R1+R2))(1+R4/R3)-V3・R4/R3
【0080】
図9を参照すると、本開示の実装形態に従って、測定コイル602における誘導信号電圧が示されている。縦軸は、近似二乗平均平方根値の2倍であり、単位はミリボルトである。U12は、第1のカップリングリード604Aと第2のカップリングリード604Bとの間で得られる誘起電圧を示し、U23は、第2のカップリングリード604Bと第3のカップリングリード604Cとの間で得られる電圧を示す。U34は、第3のカップリングリード604Cと第4のカップリングリード604Dとの間で得られる電圧を示し、U45は、第4のカップリングリード604Dと第5のカップリングリード604Eとの間で得られる電圧を示す。
【0081】
図10を参照すると、本開示の例示的な実装形態に従う装置を実装するためのシステム1000のブロック図が示されている。第1の増幅器1002は、測定コイル1004の第2セクション1004B及び第3セクション1004Cと電気的に結合され、第2セクション及び第3セクションの誘起電圧を測定する。第2セクション及び第3セクションの誘起電圧は、第1の誘起電圧値として使用される。第2の増幅器1006は、測定コイル1004の第1セクション1004A及び第4セクション1004Dと電気的に結合され、共通誘起電圧を決定する。プローブは、図ではZ=0の位置にある。プローブは駆動コイル1040で動かすことができる。
【0082】
図11A及び図11Bを参照すると、本開示の実装形態に従って、図10の第1の増幅器1002及び図10の第2の増幅器1006の最適な接続を実現するためのグラフが示される。図10に示したように、第1の増幅器1002は、測定コイル1004の第2セクション及び第3セクションと電気的に結合される。第2の増幅器1006は、測定コイル1004の第1セクション及び第4セクションと電気的に結合される。図11Aには、バイブレータの電圧が0.2ボルト(V)の場合について、U15で示される共通誘起電圧が、U24で示される第2セクション及び第4セクションからの誘起電圧と並んでプロットされている。また、第1増幅器1002と第2増幅器1006の最適な接続を見つけるために、U24をU15で割り算したものも示されている。図11Bには、バイブレータの電圧が0.3ボルトの場合について、U15で示される共通誘起電圧が、U24で示される第2セクション及び第4セクションからの誘起電圧と並んでプロットされている。また、第1増幅器1002と第2増幅器1006の最適な接続を見つけるために、U24をU15で割り算したものも示されている。
【0083】
図12Aは、測定された第1の電圧値U13及びU35を示している。図12Bは、信号コイルセクションの合計(U+)を表すように加算された信号電圧と、これらの信号電圧の差(U-)を表している。U+はU15と等しいことに注意されたい。表記が異なるのは、2つ以上の測定信号を加算して測定されたことを示すためである。これは、差分Uを形成するためなど、いくつかの目的に使用する場合に便利である。最小限のシステムはこのように動作するだろう。信号コイルには2つのセクションがあり、それぞれに差動増幅器があり、図12Aに示す信号を生成する。(図12Bのように)U-信号とU+信号、及びそれらの商(ロケータ)を形成する代わりに、4mmのゼロクロス点を使用することができる。この発生時間が測定されていれば、0から4mmまでの平均速度を計算することができる。
【0084】
図13A図13Dを参照すると、本開示のある実施形態による、複数の信号増幅器の追加によってロケータ値を測定するためのグラフが示される。図13Aにおいて、線「シリーズ1」は、第1の結合リード604Aと第3の結合リード604Cとの間の測定コイル602における誘起電圧である、U13を示す。線「シリーズ2」は、第3のカップリングリード604Cと第5のカップリングリード604Eとの間の測定コイル602における誘起電圧である、U35を示す。線「シリーズ3」はU+、すなわち、第1の信号増幅器からの出力信号と第2の信号増幅器からの出力信号の和である。U-は、第1の信号増幅器からの出力と第2の信号増幅器からの出力との差である。図13Bは、U+とU-に関するロケータ値を提供する。ロケータ信号は、U-をU+で除算することにより生成される。また図13A及び図13Bは、Z値の長いスイープを有するデータを提供している。同様に、図13Cは、誘起電圧値の範囲からのデータであって、傾向線のフィッティングに使用される範囲のデータを提供する。図13Dは、U+とU-に関するロケータ値を示している。
【0085】
図14A及び図14Bを参照すると、本開示のある実施形態による、生理学的パラメータを決定するための方法のステップを示すフローチャートが示される。ステップ1402において、細長い磁気プローブを細長い磁気プローブの第1の端部の方向に移動させるために、駆動コイルが通電される。ステップ1404において、誘導された第1の電圧が、測定コイルの第1セクションを用いて、時間の関数として測定される。ステップ1406において、誘導された共通電圧が、測定コイルにわたって、時間の関数として測定される。ステップ1408において、測定された誘導第1電圧値をそれぞれの測定された誘起共通電圧値で除算することにより、時間の関数として第1ロケータ値が決定される。ステップ1410で、第1のロケータ値が時間領域から空間領域にマッピングされる。ステップ1412において、空間領域の第1のロケータ値は、細長い磁気プローブの第1の速度プロファイルを計算するために使用される。ステップ1414において、第1の速度プロファイルは生理学的パラメータを決定するために使用される。
【0086】
図15は、プローブの移動(0~10mmのZ軸)の関数としての測定値と計算値の説明図である。ロケータ1500は、図12Bに示すU-信号とU+信号の比をとることによって形成される。ロケータ1500の微分曲線1510は、点の増分をステップ長(1mm)で割ったものである。(微分曲線1510は、図15を読みやすくするために-4倍される)。微分曲線1520の逆数は、距離の関数としての第1の速度プロファイルであり、単位はmmである。
【0087】
添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、前述の本開示の実施形態を変更することが可能である。本開示を説明及び請求するために使用される「含む」、「備える」、「組み込む」、「有する」、「である」などの表現は、非排他的に解釈されることを意図しており、すなわち、明示的に記載されていない項目や部品、構成要素が存在することを許容する。要素が複数であることを明示しなかったとしても、当該要素が複数存在することを妨げない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図15
【国際調査報告】