(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】アルファ-シートポリペプチドおよびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240814BHJP
C07K 17/00 20060101ALI20240814BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240814BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240814BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240814BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240814BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240814BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240814BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240814BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240814BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240814BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240814BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20240814BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K17/00
A61P25/28
A61P3/00
A61P3/10
A61P21/00
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P25/00
A61P25/16
A61K38/10
A61K38/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502445
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 US2022030328
(87)【国際公開番号】W WO2023003623
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514104933
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ワシントン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ダジェット,ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】シア,ディラン
(72)【発明者】
【氏名】ブリーム,アリッサ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA18
4C084BA41
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA221
4C084ZA222
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB151
4C084ZB152
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC351
4C084ZC352
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045AA40
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA60
4H045EA21
4H045EA34
4H045EA50
(57)【要約】
本明細書では、共有結合により連結された2つ以上の単量体-シートポリペプチドを含む、-シートポリペプチド多量体が開示される。様々な実施形態では、多量体は二量体、三量体、四量体、五量体、または六量体を含み、または、多量体は二量体を含む。-シートを含む組成物および医療装置、ならびにアミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を治療および診断するためのそれらの使用もまた、開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共有結合により連結された2つ以上の単量体α-シートポリペプチドを含む、α-シートポリペプチド多量体。
【請求項2】
二量体、三量体、四量体、五量体、または六量体を含み、または前記多量体は二量体を含む、請求項1に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項3】
前記2つ以上の単量体α-シートポリペプチドは1以上(1、2、3、またはそれ以上)の下記により、共有結合により連結される、請求項1または2に記載のα-シートポリペプチド多量体:
(a)ジスルフィド結合;
(b)2つの単量体中に存在するシステイン残基間の他の共有結合;
(c)2つの単量体間のチオエーテル架橋;
(d)2つの単量体中に存在するチロシン残基間の共有結合;
(e)2つの単量体間の1,2,3-トリアゾール架橋;
(f)2つの単量体間のアミド結合;
(g)2つの単量体中に存在するヒスチジン残基間の共有結合;
(h)複数の単量体α-シートポリペプチドを共有結合により連結するコア構造、例えば、限定はされないが、ポリ-リジン、ポリ-オルニチン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)、他のポリマー、およびナノ粒子コア構造へのコンジュゲーション;
(i)2つの単量体中に存在するノルブロレン部分間の共有結合;
(j)1つの単量体中に存在するマレイミドモチーフと別の単量体のシステイン残基上の硫黄原子の間の共有結合;および/または
(k)連結部分、例えば、限定はされないが、ビス(マレイミド)エタン(BMOE);1,1’-(2,2’-オキシビス(エタン-2,1-ジオイル))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(MalPEG1);ならびに
【化1】
による、2つの単量体の共有結合。
【請求項4】
2つの単量体α-シートポリペプチドはジスルフィド結合により、共有結合により連結される、請求項2または3に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項5】
各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、少なくとも1つのシステイン残基を含む、請求項1-4のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項6】
各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、単一システイン残基を含み、任意で前記多量体は二量体である、請求項1-4のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項7】
(a)前記多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)の、LまたはD型のシステイン残基を含み;任意で、前記多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、LまたはD型の単一システイン残基を含み;
(b)前記多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)の、LまたはD型のヒスチジン残基を含み;任意で、前記多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、LまたはD型の単一ヒスチジン残基を含み;
(c)前記多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)の、LまたはD型のチロシン残基を含み;任意で、前記多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、LまたはD型の単一チロシン残基を含み;
(d)前記多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)のノルボルネン部分を含み;任意で、前記多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、単一ノルボルネン部分を含み;
(e)前記多量体中の1以上の単量体α-シートポリペプチドは、少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)のマレイミドモチーフを含み;任意で、前記多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、単一マレイミドモチーフを含み;および/または
(f)二量体中の1つの単量体α-シートポリペプチド(B単量体)は少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)の、LまたはD型のシステイン残基を含み、他の単量体α-シートポリペプチド(A単量体)はシステイン残基を含まず;任意で、前記二量体中の各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、前記A単量体は単一の、LまたはD型のシステイン残基を含む、
請求項1-6のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項8】
前記2つ以上の単量体α-シートポリペプチドは、コア構造、例えば、限定はされないが、ポリ-リジン、ポリ-オルニチン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)、他のポリマー、およびナノ粒子コア構造へのコンジュゲーションにより、共有結合により連結される、請求項1-7のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項9】
前記2つ以上の単量体α-シートポリペプチドはコア構造へのコンジュゲーションにより、共有結合により連結され、前記コア構造は、ポリ-リジンおよびポリ-オルニチンからなる群より選択され、任意で、前記多量体は少なくとも三量体、四量体、五量体、または六量体である、請求項1-8のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項10】
各単量体α-シートポリペプチドは、一般式X1-X2-X3-X4-X5による12-23の連続するアミノ酸を含み、
X1はL残基とD残基が交互に並ばない0-7の連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ5-12の連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない0-7の連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ4-12の連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない0-4の連続するアミノ酸残基である、請求項1-9のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項11】
各単量体α-シートポリペプチドにおける、前記少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)のシステイン、ヒスチジン、チロシン、ノルボルネン部分、マレイミド部分、または連結を促進する他の部分(例えば、限定はされないが、本明細書で開示されるもの)(集合的に「連結部分」と呼ばれる)は、ドメインX1、X2、X3、またはX4に存在し、またはドメインX2、X3、またはX4に存在する、請求項10に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項12】
各単量体α-シートポリペプチドについて、X1は独立して、L残基とD残基が交互に並ばない、0-2;2;または0の連続するアミノ酸残基である、請求項10-11のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項13】
1つ以上の単量体α-シートポリペプチドについて、全てのX1アミノ酸残基はLアミノ酸である、請求項10-12のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項14】
各単量体α-シートポリペプチドについて、X2は独立して、Dアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ、6-10、7-10、7-9、7、8、9、または10の連続するアミノ酸残基である、請求項10-13のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項15】
各単量体α-シートポリペプチドについて、X3は独立して、L残基とD残基が交互に並ばない、1-5、2-5、3-5、3、4、または5の連続するアミノ酸残基である、請求項10-14のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項16】
1つ以上の単量体α-シートポリペプチドについて、全てのX3アミノ酸はLアミノ酸またはグリシンである、請求項10-15のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項17】
1つ以上の単量体α-シートポリペプチドについて、全てのX3アミノ酸はDアミノ酸またはグリシンである、請求項10-15のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項18】
各単量体α-シートポリペプチドについて、X4は独立して、Dアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ、6-12、7-11、7、8、9、10、または11の連続するアミノ酸残基である、請求項10-17のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項19】
各単量体α-シートポリペプチドについて、X5は独立して、L残基とD残基が交互に並ばない、0-3、0-2、0、または2の連続するアミノ酸残基である、請求項10-18のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項20】
各単量体α-シートポリペプチドについて、全てのX5アミノ酸はLアミノ酸またはグリシンである、請求項10-19のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項21】
前記多量体中の1つ以上の単量体α-シートポリペプチドについて:
X1はL残基とD残基が交互に並ばない0-2の連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7-10または7-8の連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない3-5または4-5の連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7-11の連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない0-2の連続するアミノ酸残基である、請求項10-20のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項22】
前記多量体中の1つ以上の単量体α-シートポリペプチドについて:
X1はL残基とD残基が交互に並ばない2つの連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7つの連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない5つの連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7つの連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない2つの連続するアミノ酸残基である、請求項10-20のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項23】
前記多量体中の1つ以上の単量体α-シートポリペプチドについて:
X1はL残基とD残基が交互に並ばない2つの連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ8つの連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない4つの連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7つの連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない2つの連続するアミノ酸残基である、請求項10-20のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項24】
前記多量体中の1つ以上の単量体α-シートポリペプチドについて:
X1はL残基とD残基が交互に並ばない0の連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ9つの連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない3つの連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ11の連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない0の連続するアミノ酸残基である、請求項10-20のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項25】
前記多量体中の1つ以上の単量体α-シートポリペプチドについて:
X1はL残基とD残基が交互に並ばない0の連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ10の連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない4つの連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7つの連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない2つの連続するアミノ酸残基である、請求項10-20のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項26】
X1およびX5は、前記多量体中の1つ以上の単量体α-シートポリペプチドにおいて同じ長さである、請求項1-25のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項27】
X2およびX4は、前記多量体中の1つ以上の単量体α-シートポリペプチドにおいて同じ長さである、請求項1-26のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項28】
各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも14-23、17-23、21-23、または23アミノ酸の長さである、請求項1-27のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項29】
各単量体α-シートポリペプチドは、配列番号1-30またはその逆キラル対応物から選択されるアミノ酸配列に少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含み、
【表1】
【請求項30】
各単量体α-シートポリペプチドは、配列番号8の選択されたアミノ酸配列に少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含み:
【表2】
【請求項31】
各単量体α-シートポリペプチドは同一である、請求項1-30のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項32】
前記多量体は、互いに異なる単量体α-シートポリペプチド単位を含む、請求項1-30のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項33】
単量体α-シートポリペプチドの1つまたは両方は追加の機能ドメインを含む、請求項1-32のいずれか一項に記載のα-シートポリペプチド多量体。
【請求項34】
配列番号1-30またはその逆キラル対応物から選択されるアミノ酸配列に少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含み、
【表3】
【請求項35】
下記を含む、請求項34に記載のα-シートポリペプチド:
(a)少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)の、LまたはD型のシステイン残基;任意で前記α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、LまたはD型の単一システイン残基を含む;
(b)少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)の、LまたはD型のヒスチジン残基;任意で、前記α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、LまたはD型の単一ヒスチジン残基を含む;
(c)少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)の、LまたはD型のチロシン残基;任意で、前記α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、LまたはD型の単一チロシン残基を含む;および/または
(d)少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)のノルボルネン部分;任意で、前記α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、単一ノルボルネン部分を含む;および/または
(e)少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)のマレイミドモチーフ;任意で、前記α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、単一マレイミドモチーフを含む。
【請求項36】
配列番号8またはその逆キラル対応物のアミノ酸配列に、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含み、
【表4】
【請求項37】
(a)いずれかの前記請求項に記載のα-シートポリペプチドまたは多量体;および
(b)薬学的に許容される担体。
を下記を含む、医薬組成物。
【請求項38】
(a)表面上のポリマーコーティング;ならびに
(b)前記ポリマーコーティングに共有結合により連結されたα-シートポリペプチド
を含む、組成物。
【請求項39】
前記ポリマーはカテコールアミンポリマーを含み;任意で、前記ポリマーは、ポリドーパミン、ポリ-L-DOPA、ポリエピネフリン、ポリノルアドレナリン、および、ジ-ヒドロキシルフェノールおよび一級アミンで終わる任意の長さの分枝鎖を含む任意の合成生成物、およびそれらの組み合わせを含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記ポリマーはポリドーパミン(PDA)を含む、請求項38または39に記載の組成物。
【請求項41】
前記ポリマーコーティングは約25nm~約250nmの厚さ、または約50nm~約200nmの厚さ、または約60nm~約150nmの厚さ、または約60nm~約100nmの厚さ、または約70nm~約90nmの厚さ、または約75nm~85nmの厚さ、または約80nmの厚さである、請求項38-40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
前記表面としては、アッセイプレート(例えば、限定はされないが、マイクロウェルプレート)、ガラス、セラミック、マイクロ流体チャネルおよびデバイス、メンブラン、プラスチック、多糖、チタン、シリコーン、ナイロン、ニトロセルロース、テフロンビーズ、ガーゼ、外科用糸、包帯、および医療装置が挙げられるが、それらに限定されない、請求項38-41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
前記α-シートポリペプチドは、米国特許9896487号で開示される1つ以上のα-シートポリペプチドを含み、または、一般式X1-X2-X3-X4-X5による12-23の連続するアミノ酸を含み、
X1はL残基とD残基が交互に並ばない0-7の連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ5-9の連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない0-5の連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ4-12の連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない0-4の連続するアミノ酸残基である、請求項38-42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
前記α-シートポリペプチドは、いずれかの前記請求項に記載のα-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドを含む、請求項38-43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を有する被験体に、有効な量の、いずれかの前記請求項に記載のα-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドを投与し、疾患を治療するまたはその発症を制限することを含む、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を治療するまたはその発症を制限するための方法。
【請求項46】
前記アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患は、クロイツフェルト・ヤコブ病、海綿状脳症、軽鎖アミロイドーシス、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発ニューロパチー、ケネディ病、マシャド・ジョセフ病、アルツハイマー病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、2型糖尿病、トランスサイレチンにより引き起こされたアミロイドーシス(ATTR)、パーキンソン病、レビー小体病、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、大動脈中膜アミロイド、プロラクチノーマ、透析関連アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、フィンランド型アミロイドーシス、格子状角膜ジストロフィー、多発性骨髄腫、およびアミロイド-バイオフィルム細菌感染と関連する疾患からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
クロイツフェルト・ヤコブ病、海綿状脳症、軽鎖アミロイドーシス、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発ニューロパチー、ケネディ病、マシャド・ジョセフ病、アルツハイマー病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、2型糖尿病、トランスサイレチンにより引き起こされたアミロイドーシス(ATTR)、パーキンソン病、レビー小体病、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、大動脈中膜アミロイド、プロラクチノーマ、透析関連アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、フィンランド型アミロイドーシス、格子状角膜ジストロフィー、多発性骨髄腫、およびアミロイド-バイオフィルム細菌感染と関連する疾患からなる群より選択される障害を治療するまたはその発症を制限するための方法であって、前記方法はその必要のある被験体に有効な量の、いずれかの前記請求項に記載のα-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドを投与し、障害を治療するまたはその発症を制限することを含む、方法。
【請求項48】
(a)アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を有するリスクのある被験体由来の組織試料を、いずれかの前記請求項に記載のα-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドと、前記α-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドのアミロイド中間体(前記組織試料中に存在する場合)との結合に好適な条件下で、接触させ、結合複合体を生成させること、
(b)前記組織試料中の結合複合体を検出すること;ならびに
(c)前記検出に基づきアミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を診断または予測すること
を含む、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を診断する、予測する、またはモニタするための方法。
【請求項49】
前記組織試料は血液試料、血清試料、鼻汁、尿または脳脊髄液試料である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患は、クロイツフェルト・ヤコブ病、海綿状脳症、軽鎖アミロイドーシス、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発ニューロパチー、ケネディ病、マシャド・ジョセフ病、アルツハイマー病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、2型糖尿病、トランスサイレチンにより引き起こされたアミロイドーシス(ATTR)、パーキンソン病、レビー小体病、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、大動脈中膜アミロイド、プロラクチノーマ、透析関連アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、フィンランド型アミロイドーシス、格子状角膜ジストロフィー、多発性骨髄腫、およびアミロイド-バイオフィルム細菌感染と関連する疾患からなる群より選択される、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
(a)アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を有するリスクのある被験体由来の組織試料を、請求項39-44のいずれか一項に記載の組成物と、前記α-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドのアミロイド中間体(前記組織試料中に存在する場合)との結合に好適な条件下で、接触させ、結合複合体を生成させること、
(b)前記組織試料中の結合複合体を検出すること;ならびに
(c)前記検出に基づきアミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を診断または予測すること
を含む、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を診断または予測するための方法。
【請求項52】
前記組織試料は血液試料、血清試料、鼻汁、尿または脳脊髄液試料である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患は、クロイツフェルト・ヤコブ病、海綿状脳症、軽鎖アミロイドーシス、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発ニューロパチー、ケネディ病、マシャド・ジョセフ病、アルツハイマー病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、2型糖尿病、トランスサイレチンにより引き起こされたアミロイドーシス(ATTR)、パーキンソン病、レビー小体病、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、大動脈中膜アミロイド、プロラクチノーマ、透析関連アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、フィンランド型アミロイドーシス、格子状角膜ジストロフィー、多発性骨髄腫、およびアミロイド-バイオフィルム細菌感染と関連する疾患からなる群より選択される、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記医療装置の表面にコートされた、いずれかの前記請求項に記載のα-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドを含む、医療装置。
【請求項55】
前記医療装置は、前記装置の表面上の、ポリマーコーティング、例えば、限定はされないが、ポリドーパミン(PDA)コーティングを含み、前記α-シートポリペプチド多量体またはα-シートポリペプチドは前記ポリマーコーティングに共有結合により連結される、請求項54に記載の医療装置。
【請求項56】
前記医療装置は、人工心臓弁、心臓ペースメーカー、髄液シャント、尿路カテーテル、血管内カテーテル、義眼、人工関節、整形外科用インプラント、チタン含有インプラント、ポリスチレン含有インプラント、外科用メッシュインプラント、乳房インプラント、歯科インプラント、および子宮内避妊具からなる群より選択される、請求項54または55に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は2021年7月22日に出願された米国仮特許出願第63/224,815号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府からの資金提供に関する声明
この発明は国立衛生研究所により授与された助成金番号R01 GM095808号およびR01 AG067476号、および、米国陸軍医学研究獲得活動により授与された助成金番号W81XWH-19-1-0050号の下、政府支援を受けてなされた。政府は発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列表声明
配列表のコンピュータ可読形態は電子申請により本出願と共に提出され、その全体が参照により本出願に組み込まれる。配列表は、2022年5月9日に作製された、「21-0646-WO-SeqList_ST25.txt」というファイル名を有するファイル内に含まれ、20kbのサイズである。
【背景技術】
【0004】
アミロイド疾患は、世界中で10億人を超える人々に影響を与える。最もよく知られているものの1つはアルツハイマー病(AD)、記憶と認知機能の悪化の進行により臨床的に特徴付けられる致命的神経変性障害である。ADは米国では死亡原因の第6位であり、世界中では認知症の主因であり、5000万を超える人々に影響を与えている。ADの主な病理学的指標は細胞外アミロイド-β(Aβ)プラークおよびタウタンパク質のニューロン内神経原線維タングルである。プラーク沈着およびタングル形成のカスケードは下記パターンに従う:嗅内/嗅周皮質から始まり、辺縁系構造および海馬を介して広がり、最終的には前頭、側頭、および頭頂皮質に到達する4。プロセスは、α-、β-、およびγ-セクレターゼ酵素によりアミロイド前駆体タンパク質(APP)から切り取られるAβペプチドのミスフォールディングから始まる。その単量体形態では、Aβは様々な生物学的機能と関連するが、それは、凝集能を持つ状態にミスフォールドされる可能性があり、低~高分子量オリゴマーの不均一分布につながり、これは、最終的には、特徴的なアミロイドプラークを形成する。重要なことには、疾患進行は、アミロイドプラーク負荷ともタウタングル形成とも相関しないが、むしろ、主毒物として作用する低分子量(LMW)可溶性オリゴマーの存在と相関する。実のところ、原線維がない場合、これらのLMW可溶性オリゴマーは、ADのマウスモデルおよびプラークを生成しないADの家族性症例において証明されるように毒性および神経細胞死を誘導する。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様では、本開示は、共有結合により連結された2つ以上の単量体α-シートポリペプチドを含むα-シートポリペプチド多量体を提供する。様々な実施形態では、多量体は二量体、三量体、四量体、五量体、または六量体を含み、または、多量体は二量体を含む。様々な他の実施形態では、2つ以上の単量体α-シートポリペプチドは1以上(1、2、3、またはそれ以上)の下記により、共有結合により連結される:
(a)ジスルフィド結合;
(b)2つの単量体中に存在するシステイン残基間の他の共有結合;
(c)2つの単量体間のチオエーテル架橋;
(d)2つの単量体中に存在するチロシン残基間の共有結合;
(e)2つの単量体間の1,2,3-トリアゾール架橋;
(f)2つの単量体間のアミド結合;
(g)2つの単量体中に存在するヒスチジン残基間の共有結合;
(h)複数の単量体α-シートポリペプチドを共有結合により連結するコア構造、例えば、限定はされないが、ポリ-リジン、ポリ-オルニチン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)、他のポリマー、およびナノ粒子コア構造へのコンジュゲーション;
(i)2つの単量体中に存在するノルブロレン(norbrorene)部分間の共有結合;
(j)1つの単量体中に存在するマレイミドモチーフと別の単量体のシステイン残基上の硫黄原子の間の共有結合;および/または
(k)連結部分、例えば、限定はされないが、ビス(マレイミド)エタン(BMOE);1,1’-(2,2’-オキシビス(エタン-2,1-ジオイル))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(MalPEG1);および下記による2つの単量体の共有結合。
【化1】
【0006】
他の実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、少なくとも1つのシステイン残基を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、2つ以上の単量体α-シートポリペプチドは、コア構造、例えば、限定はされないが、ポリ-リジン、ポリ-オルニチン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)、他のポリマー、およびナノ粒子コア構造へのコンジュゲーションにより、共有結合により連結される。
【0008】
様々な実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドは、表1に示される、配列番号:1-30またはその逆キラル対応物から選択されるアミノ酸配列に少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含み、ここで:
(a)各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも1つのシステイン残基を含み;ならびに
(b)小文字の残基はDアミノ酸であり、大文字の残基はLアミノ酸であり、G残基はアキラルである。
【0009】
いくつかの実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドは同一であり;他の実施形態では、多量体は互いに異なる単量体α-シートポリペプチドを含む。様々なさらなる実施形態では、1つ以上の単量体α-シートポリペプチドは追加の機能ドメインを含む。
【0010】
別の態様では、本開示は、表1に示される、配列番号:1-30またはその逆キラル対応物から選択されるアミノ酸配列に少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含むα-シートポリペプチドを提供し、小文字の残基はDアミノ酸であり、大文字の残基はLアミノ酸であり、G残基はアキラルである。
【0011】
本開示はまた、下記を含む医薬組成物を提供する:
(a)本明細書におけるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせのα-シートポリペプチドまたは多量体;ならびに
(b)薬学的に許容される担体。
【0012】
本開示は、下記を含む組成物をさらに提供する:
(a)表面上のポリマーコーティング;および
(b)ポリマーコーティングに共有結合により連結されたα-シートポリペプチド。
【0013】
1つの実施形態では、ポリマーはカテコールアミンポリマーを含み;任意で、ポリマーは、ポリドーパミン、ポリ-L-DOPA、ポリエピネフリン、ポリノルアドレナリン、および、ジ-ヒドロキシルフェノールおよび一級アミンで終わる任意の長さの分枝鎖を含む任意の合成生成物、およびそれらの組み合わせを含む。様々な実施形態では、ポリマーコーティングは約25nm~約250nmの厚さ、または約50nm~約200nmの厚さ、または約60nm~約150nmの厚さ、または約60nm~約100nmの厚さ、または約70nm~約90nmの厚さ、または約75nm~85nmの厚さ、または約80nmの厚さであってもよい。他の実施形態では、表面としては、アッセイプレート(例えば、限定はされないが、マイクロウェルプレート)、ガラス、セラミック、マイクロ流体チャネルおよびデバイス、メンブラン、プラスチック、多糖、チタン、シリコーン、ナイロン、ニトロセルロース、テフロンビーズ、ガーゼ、外科用糸、包帯、および医療装置が挙げられるが、それらに限定されない。様々なさらなる実施形態では、α-シートポリペプチドは、本明細書で開示されるいずれかの実施形態の多量体またはポリペプチド、米国特許9896487号において開示される1つ以上のα-シートポリペプチドを含んでもよく、または、一般式X1-X2-X3-X4-X5による12-23の連続するアミノ酸を含み、ここで
X1はL残基とD残基が交互に並ばない0-7の連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ5-9の連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない0-5の連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ4-12の連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない0-4の連続するアミノ酸残基である。
【0014】
別の態様では、本開示は、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を有する被験体に有効な量の本明細書で開示されるいずれかの実施形態のα-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドを投与し、疾患を治療するまたはその発症を制限することを含む、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を治療するまたはその発症を制限するための方法を提供する。
【0015】
さらなる態様では、本開示は、下記からなる群より選択される障害を治療するまたはその発症を制限するための方法を提供し:クロイツフェルト・ヤコブ病、海綿状脳症、軽鎖アミロイドーシス、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発ニューロパチー、ケネディ病、マシャド・ジョセフ病、アルツハイマー病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、2型糖尿病、トランスサイレチンにより引き起こされたアミロイドーシス(ATTR)、パーキンソン病、レビー小体病、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、大動脈中膜アミロイド、プロラクチノーマ、透析関連アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、フィンランド型アミロイドーシス、格子状角膜ジストロフィー、多発性骨髄腫、およびアミロイド-バイオフィルム細菌感染と関連する疾患、方法はその必要のある被験体に、有効な量の本明細書で開示されるいずれかの実施形態のα-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドを投与し、障害を治療するまたはその発症を制限することを含む。
【0016】
1つの態様では、本開示は、下記を含む、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を診断する、予測する、またはモニタするための方法を提供する:
(a)アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を有するリスクのある被験体由来の組織試料を、本明細書で開示されるいずれかの実施形態のα-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドと、α-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドのアミロイド中間体(組織試料中に存在する場合)との結合に好適な条件下で、接触させ、結合複合体を生成させること;
(b)組織試料中の結合複合体を検出すること;ならびに
(c)検出に基づきアミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を診断または予測すること。
【0017】
別の態様では、本開示は、下記を含む、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を診断または予測するための方法を提供する:
(a)アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を有するリスクのある被験体由来の組織試料を、本明細書で開示されるいずれかの実施形態の組成物と、α-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドのアミロイド中間体(組織試料中に存在する場合)との結合に好適な条件下で、接触させ、結合複合体を生成させること;
(b)組織試料中の結合複合体を検出すること;ならびに
(c)検出に基づきアミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を診断または予測すること。
【0018】
1つの態様では、本開示は、医療装置の表面にコートされた、本明細書で開示されるいずれかの実施形態のα-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドを含む医療装置を提供する。いくつかの実施形態では、医療装置は、装置の表面上の、ポリマーコーティング、例えば、限定はされないが、ポリドーパミン(PDA)コーティングを含み、α-シートポリペプチド多量体またはα-シートポリペプチドはポリマーコーティングに共有結合により連結される。他の実施形態では、医療装置は、人工心臓弁、心臓ペースメーカー、髄液シャント、尿路カテーテル、血管内カテーテル、義眼、人工関節、整形外科用インプラント、チタン含有インプラント、ポリスチレン含有インプラント、外科用メッシュインプラント、乳房インプラント、歯科インプラント、および子宮内避妊具からなる群より選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1(a-c)】線維形成の阻害に関しての、単量体に対する二量体の改善された阻害を示す。(a)二量体による%阻害。(b)パネル(a)と同じであるが、破線が、個々の設計をつないでいる。(c)性能比、%阻害二量体/%阻害単量体(同じ設計)で反映される二量体対単量体の相対性能。阻害剤の比が降下するにつれ、単量体効力は降下し、二量体は40-85X倍で単量体を上回り、ホモ二量体については予測される2Xを著しく上回る。
【
図2】生きた大腸菌におけるバイオフィルムアミロイド形成の阻害を試験するためのプロトコルを示す。アミロイド形成を上記AbetaおよびIAPPと共に使用されるもののようなThTアッセイにより評価する。加えて、アミロイドの阻害はバイオフィルムを破壊し、プランクトン様浮遊性細菌細胞の増加につながり、そうして、それらは抗生物質感受性である。
【
図3】TEM画像は、(a)ペプチドを含まないバイオフィルムおよび(c)P1の存在下で増殖したバイオフィルムにおける広範なカーリー(curli)アミロイド線維形成を明らかにするが、(b)AP195二量体の存在下で増殖したものではそうではない(スケールバー=2μm)。P1およびAP195を等モル濃度で添加した。AP195はα-シートペプチドであり、P1はランダムコイル対照である。
【
図4】生きた大腸菌臨床分離株におけるアルファ-シート設計によるアミロイド形成の阻害を示す。(a)二量体設計AP193、AP195、AP195/199、およびAP5単量体は、ThT蛍光により測定されるように、UTI89 WTバイオフィルムにおけるアミロイド量の用量依存的低減を引き起こした。濃度が二量体について提供されるが、P1およびAP5単量体は、設計の比較のために、同じ数の単量体単位を提供するようにその濃度の2倍とした(例えば、5μMのAP5が適用されたと言う場合、それは実際には10μMであった)。cNFU=較正された、正規化蛍光単位であり、正規化シグナルは、大腸菌UTI89ΔcsgAバイオフィルムの非特異的ThT蛍光により較正した。(b)合成α-シートペプチドAP193およびAP195は、大腸菌GERB319バイオフィルム、ゲンタマイシンおよびシプロフロキサシンに対する耐性を有する、臨床UTI分離株のThT蛍光を減少させた(二量体ペプチドを8μMで添加し、ならびに、AP5およびP1は16μMとし、同じ単量体当量を提供した)。非構造化対照ペプチドP1は同じ濃度で適用した場合効果がなかった。パネルCおよびDについては、エラーバーは、少なくとも3反復の平均からの標準偏差を表し、p値は下記の通りに示される:
*はp<0.05を示し、
**はp<0.01を示し、
***はp<0.001を示し、n.s.はp≧0.05を示す。
【
図5】二量体APによる大腸菌の処理により、単量体よりも、より多くの細胞がプランクトン様状態にシフトされ、バイオフィルム中の細菌量が著しく低減される。(a)AP193d、(b)AP195d、(c)AP195/199ヘテロ二量体、(d)AP5単量体、(e)P1。浮遊性でプランクトン様である場合、細菌は抗生物質および宿主免疫系感受性である。バイオフィルムThTアッセイにおける細菌細胞数の推定。細胞をアッセイの各相中(プランクトン様、リンス、バイオフィルム)収集し、ホモジナイズし、細胞の数を600nmでの試料の光学密度により推定した。ペプチドは増殖に影響しなかった;代わりに、それらは細菌をバイオフィルム結合状態からプランクトン様状態にシフトさせた。エラーバーは、3反復の平均からの標準偏差を示す。
【
図6】(a)大腸菌UTI89 SLC-719(GFP)のRAW264.7マクロファージ(Alexa Fluor647)との1時間コインキュベーション後の蛍光顕微鏡法(スケールバー=30μm)画像。(b)食作用は8μM AP193dの存在下で培養されたバイオフィルム中で増加した。AP193二量体の存在下での改善された食作用は、改善されたバイオフィルム溶解度および個々の細菌の増加したアベイラビリティに起因した。
【
図7】合成α-シートペプチドはPDAコート表面に共有結合により結合する。(a)ドーパミンはDOPAおよびリジン官能基の両方を表示する。(b)PGAPを構成するための反応スキーム。弱アルカリ性pHで、ドーパミンは自己重合を受け、粘着性ポリドーパミン(PDA)コーティングを生成し、同時に、カテコール基のキノン形態への酸化が起こる。合成α-シートペプチドはアミノ基(Pep-NH
2)を含み、これはマイケル付加またはマイケル付加/シッフ塩基反応を受け、PDA表面に共有結合により結合する。
【
図8】PDAは、二量体AP193のポリプロピレン基材への付着を増強させる。ポリプロピレンマイクロタイタープレートを、PGAPアセンブリプロトコルに従い、調製し、次いで、Pac53ポリクローナル抗体でプロービングし、これはAP193d配列の一部を認識する。Pac53をAlexaFluor(登録商標)488(AF488)にコンジュゲートさせ、これにより、(a)蛍光測定および(b)蛍光顕微鏡法(200X倍率)によるAP193d結合の評価が可能になった。下記
図13に示されるように、単量体AP193のカップリングはほとんどないことに注意されたい。
【
図9】PDAグラフトα-シートペプチドはポリプロピレン基材上での大腸菌バイオフィルムの形成を防止する。ポリプロピレンPDAグラフトα-シートペプチド(96ウェルマイクロタイタープレート)に大腸菌UTI89 SLC-719を接種し、48時間26℃でインキュベートした。得られたバイオフィルムを(a-d)蛍光顕微鏡法および(e-f)クリスタルバイオレット染色により可視化した。(a-d)におけるスケールバーは60μmを示し、(e)のエラーバーは3試料の平均からの標準偏差を表す。
***p<0.001、両側スチューデントt検定。
【
図10】PDAグラフトα-シートペプチドはチタン基材上での大腸菌バイオフィルムの形成を防止する。チタンディスクをPDAおよびAP193dで機能化し、大腸菌UTI89 SLC-719を接種させ、48時間26℃でインキュベートした。表面を優しく洗浄し、共焦点顕微鏡法により撮像した。(c)AP193dを有するコーティングは、(a-b)、(d)対照と比較して、実質的なバイオフィルム破壊を引き起こした。スケールバーは55μmを示す。
【
図11】シリコーンPDAグラフトα-シートペプチドのキャラクタリゼーション。A)シリコーン片をPGAP(AP193d)で機能化し、大腸菌UTI89 SLC-719を接種させ、48時間26℃でインキュベートした。リンスステップ後、小片を超音波処理し、粘着性バイオフィルムを除去し、次いで、バイオフィルム懸濁液のGFP蛍光をプレートリーダーにおいて測定した(a)。AP193dを有するコーティングでは、付着バイオフィルムの量の著しい減少という結果になった(
***p<0.0005)。(b)コロニー形成単位(CFU)カウントをシリコーン結合バイオフィルムについて、300μg/mL Gmチャレンジあり(ハッシュバー)およびなし(ソリッドバー)で決定した。表面上のAP193dの存在により、ペプチドを含まない対照と比較して、Gmチャレンジ後およそ100倍少ない生菌という結果になった(
***p<0.0003)。(c)使用済みシリコーン片をELISA様アッセイにおいてPac53抗体でプロービングした。これらの材料は依然として、表面上でアクセス可能な、おそらく、活性なAP193dを示した(
*p<0.02)。全てのp値を有意性について両側スチューデントt検定により作成し、エラーバーは、平均からの標準偏差を示す。
【
図12】PDAグラフトα-シートペプチドコーティングは経時的に機能性を保持し、細胞生存率に影響しない。(a)AP193を有するポリプロピレンプレートをPBS(黒色菱形)またはプールしたヒト血漿(白色菱形)中37℃で最大5日までの間インキュベートし、表面上のα-シートペプチドの存在をPac53でプロービングすることにより定量化した。(b)マウス3T3線維芽細胞を、示されたコーティングを有する96ウェルポリスチレン組織培養プレート上で、24時間増殖させ、次いで、細胞生存率をMTTアッセイにより決定した。吸光度読み取りにより、試料間に著しい違いはないことが示された。エラーバーは3反復の平均からの標準偏差を示す。
【
図13】SOBAアッセイの開発および検出限界(LOD)。a.NuncプレートおよびTMBプロトコルを使用したAP193二量体(黒色)対AP193単量体(灰色)の比較。プレインキュベートした、毒性Abeta42を段階希釈し、プレートに適用した。二量体はSOBAシグナルに2xを超える効果を提供し、単量体シグナルはより低い濃度でより早く消滅する。AP193単量体のPDAコーティングへのカップリングもまた、二量体に比べ最小である。b.280nmでの吸光度は、表面にカップリングされていないペプチドの程度を反映する。PDAコーティングは、Nuncプレートと比較して、シグナルの増幅についてAP193二量体捕捉ペプチドの表示を改善した。c.PDAは、TMBプロトコルを使用した前に検出不能なレベルでのシグナルの増加につながる。透明なポリスチレンプレートをPDAでコートし、AP510の段階希釈物を、260μMから開始して適用し、16μM AP510に及んだ。次いで、プレインキュベートした、毒性Abeta42を1nMで、カップリングされたAP193二量体を有さない1組のウェルを含む、全てのウェルに添加したが、バックグラウンドシグナルを定量するために完全に反応停止せた。我々は、パネルbから、「元の」プロトコルに対し、全ての条件についてシグナルの増加を確認し、最大シグナルは65μMで到達し、プレートにカップリングされたAP193二量体のより高い濃度ではプラトーに達した。d.Nuncプレートを使用した化学ルミネセンスプロトコルによるLOD較正。Nuncアミノリンカープレートを使用して、化学ルミネセンスを直接、パネルBで定量した比色分析感度と比較した。我々は、100fMまでの有意の検出減少を観察し、この小さな変化を、比色分析アッセイの10nMと比較した。e.プレインキュベートしたAβ42毒性オリゴマー、単量体(Mon 100pM)、または前原線維(Fib 100pM)が添加された、プールしたヒト血漿について、化学ルミネセンスプロトコルを使用する、PDA-機能化プレートを用いたLOD較正。100pM毒性オリゴマー対同じ濃度の単量体および原線維型(protofibrillar)形態のAβ42についてのシグナルの大きな差に注目されたい。挿入図はより低い濃度および他の配座異性体試料の拡大である。我々は、PDAでコートされた白色ポリスチレンプレートにカップリングされた65μMのAP510dを使用した。有意性が1fMで観察された。f.パネルeからの血漿SOBA結果のLog-logプロット。LODは1fMであり、21,943のSOBAシグナルに対応し、そのため、それ未満では、結果は統計的に有意ではなく、ブランクと区別することができない。全てのp値はその試料のブランクに対するものである。
*p-値<0.05、
**p-値<0.01、
**p-値<0.001、
***p-値<0.0001。
【
図14】アルツハイマー病およびパーキンソン病と関連する毒性オリゴマーの検出のためのSOBA結果。A.元の2抗体法を使用し、シグナルを増幅するために、二量体捕捉剤AP193二量体およびウェルのポリマーコーティングを用いた、ヒト血漿試料中のAbetaオリゴマーのSOBA検出についての生ルミネセンス値。B.パネルAにおける被験体についての対応するCSF総Abeta42濃度。C.市販の対照およびAD血漿試料を使用し、SOBAのNext-Genバージョンを使用し、二量体捕捉ペプチド、例えばAP530d、PDAコーティングおよび単一抗体検出を用いた、生ルミネセンス値。D.パネルCにおける被験体についてのCSF中の対応する総Abeta42濃度。E.患者試料のCSF中の、PDおよびレビー小体認知症と関連するαシヌクレインオリゴマーの検出。
【
図15】F
18標識アルファ-シートペプチドを使用したWT(左)およびトランスジェニックADマウスのPET画像。
【
図16】AP5デンドリマーはポリ-リジンコアを使用し、AP5単量体が結合される複数の枝を生成させる。デンドリマーは、その後のアミノ酸のカップリングのために2つの一級アミンを露出させるための、リジン残基のN末端および側鎖上のFmoc保護基の同時脱保護により合成することができる。我々は4価構築物から開始した。
【
図17】異なる濃度のAbeta42毒性オリゴマーをNunc SOBAプレートに適用した。各濃度のAbeta42に対し、左の灰色バーはAP510二量体であり、AP5デンドリマーは中央の濃灰色バーであり、右のバーはブランクである。デンドリマーはより強いシグナルを提供し、それは、特に、最低濃度で非常に重要となり、その場合、効果は>4倍となる。
【
図18】Nuncプレートに結合させたデンドリマーと共に化学ルミネセンスおよびPDAを採用すると、非常に高いシグナル(黒色)対ブランク(灰色)が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
引用される全ての参考文献は本明細書でその全体が参照により組み込まれる。本出願内では、別記されない限り、使用される技術は、下記などのいくつかのよく知られた参考文献のいずれかにおいて見出すことができる:Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook, et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press), Gene Expression Technology (Methods in Enzymology, Vol. 185, D. Goeddel編, 1991. Academic Press, San Diego, CA), “Guide to Protein Purification” in Methods in Enzymology (M.P. Deutshcer, ed., (1990) Academic Press, Inc.); PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis, et al. 1990. Academic Press, San Diego, CA), Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, 第2版 (R.I. Freshney. 1987. Liss, Inc. New York, NY), Gene Transfer and Expression Protocols, pp. 109-128, ed. E.J. Murray, The Humana Press Inc., Clifton, N.J.), およびthe Ambion 1998 Catalog (Ambion, Austin, TX)。
【0021】
本明細書では、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈で明確に別記されない限り、複数の指示対象を含む。
【0022】
本明細書では、アミノ酸残基は下記のように省略される:アラニン(Ala;A)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、アルギニン(Arg;R)、システイン(Cys;C)、グルタミン酸(Glu;E)、グルタミン(Gln;Q)、グリシン(Gly;G)、ヒスチジン(His;H)、イソロイシン(Ile;I)、ロイシン(Leu;L)、リジン(Lys;K)、メチオニン(Met;M)、フェニルアラニン(Phe;F)、プロリン(Pro;P)、セリン(Ser;S)、スレオニン(Thr;T)、トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)、バリン(Val;V)、およびノルロイシン(Nle、B)。
【0023】
本明細書で開示される様々なポリペプチド配列では、小文字はD-アミノ酸を示し、大文字はLアミノ酸を表し、「G」(グリシン)はアキラルである。
【0024】
発明の任意の態様の全ての実施形態は、文脈で明確に別記されない限り、組み合わせて使用することができる。
【0025】
第1の態様では、本開示は、共有結合により連結された2つ以上の単量体α-シートポリペプチドを含むα-シートポリペプチド多量体を提供する。
【0026】
発明者らは、以前、α-シート構造を採用する単量体ポリペプチドは、一次アミノ酸配列に関係なく、よって、例えば、治療および診断方法において使用することができることを証明した(米国特許9896487号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。その中で示されるように、ポリペプチドの一次アミノ酸配列はそれ自体、ポリペプチド活性を決定しない。代わりに、動作可能な安定なα-シート構造を取るのはポリペプチドの能力であり、それは列挙されたポリペプチドの一般的な構造および交互のD/Lアミノ酸の列挙された配列により達成される。その中で示されるように、アミノ酸のランダム一次配列は発明のポリペプチドにおいて活性である。これらの同じ一次配列は、ポリペプチドがL-アミノ酸のみによって構成される場合、または、L/Dアミノ酸がポリペプチド内にランダムに分布し、それらが、交互のL/D位置を含まない場合、活性ではない。
【0027】
発明者らは、本明細書で、共有結合により連結された2つ以上の単量体α-シートポリペプチドの多量体は、単量体α-シートポリペプチドに対する阻害効力において、劇的、かつ、驚くべき改善を有することを開示する。
【0028】
本明細書では、「α-シートポリペプチド」はα-鎖においてL-およびD-型の隣り合うアミノ酸のテンプレート化された交互配列を含むポリペプチドであり、α-シートを形成することができる特徴的な二次構造を生成する。α-シートは、カルボニル酸素が鎖の一面上に整列され、他方、NH基は、交互配列ではなく、これにより、異なる物理的性質が提供されることを除き、β-シートに類似する。
【0029】
多量体は、使用目的に適切と考えられる、共有結合により連結された、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の単量体α-シートポリペプチドを含み得る。本明細書における教示を考慮して、当業者により理解されるように、任意の好適な数の単量体α-シートポリペプチドを共有結合により連結することができ、開示の多量体が形成される。特定の実施形態では、多量体は共有結合により連結された2つのα-シートポリペプチドを含む(すなわち:二量体)。他の実施形態では、多量体は共有結合により連結された3つのα-シートポリペプチドを含む(すなわち、三量体)。他の実施形態では、多量体は共有結合により連結された4つのα-シートポリペプチドを含む(すなわち、四量体)。他の実施形態では、多量体は共有結合により連結された5つのα-シートポリペプチドを含む(すなわち、五量体)。他の実施形態では、多量体は共有結合により連結された6つのα-シートポリペプチドを含む(すなわち、六量体)。
【0030】
多量体は、2つ以上の単量体α-シートポリペプチド間に任意の好適な共有結合を含み得る。1つの実施形態では、2つ以上の単量体α-シートポリペプチドは融合タンパク質で、タンパク質挿入として、または、任意で、任意の好適な長さおよびアミノ酸組成のアミノ酸リンカーにより分離されて提供される。
【0031】
1つの特定の実施形態では、2つ以上の単量体α-シートポリペプチドは、1つ以上のジスルフィド結合により、共有結合により連結される。1つの特定の実施形態では、2つの単量体α-シートポリペプチドは少なくとも1つのジスルフィド結合により、共有結合により連結される。さらなる特定の実施形態では、2つの単量体α-シートポリペプチドは1つのジスルフィド結合により、共有結合により連結される。
【0032】
様々な他の実施形態では、2つ以上の単量体α-シートポリペプチドは下記の1つ以上により、共有結合により連結され得る:
A.システイン多量体化。Cysマレイミドはマレイミド(malemide)チオール反応を利用して、2つのペプチドを配位させ、二量体または他の多量体を形成させる。1つの単量体は、マレイミドモチーフを含み(この単量体中にはCys残基はない)、他方は、システイン残基を含む(この単量体中にはマレイミドはない)。マレイミド環の二重結合側はCys残基のチオール上の水素を移動させ、共有結合により硫黄原子に結合し、二量体が形成される。マレイミドは、アミノ酸側鎖修飾として動作することが示されているが、それはまた、ペプチドへの偽アミノ酸またはキャップとして、配列中全く単独で動作することができる。Cysと同様に、ペプチド全体にわたる多くの単位が二量体よりもむしろ多量体を促進することができるであろう。
【0033】
B.チオエーテル二量体化。1つの単量体単位Aはアルキルハロゲン化(例えば、限定はされないが、臭素化)アミノ酸を含み、システインを含まないが、単量体Bは単一システインアミノ酸を含み、これは、チオールのアルキル化を介して容易に反応し、二量体を配位させるチオエーテル架橋が形成される。単量体A中の任意のアミノ酸はアルキルハロゲン化(例えば、限定はされないが、臭素化)させることができる。
【0034】
C.ジチロシン多量体化。Miyaura-Suzuki反応(またはより効率的でないペルオキシダーゼ触媒反応)を利用して、各々が単一チロシン残基を含む2つの単量体間でジチロシン結合が形成され得る。メカニズムはチロシンの酸化を含み、容易に反応する側鎖が生成され、ジチロシン二量体が形成される。一単量体あたり2つ以上のTyr残基を使用すると、多量体が促進され、一単量体あたりたった一つのTyrでは、二量体が生成される。
【0035】
D.ジチロシン多量体化。UV曝露に応じてRu(bpy)32+反応を使用して達成された光誘起ジチロシン架橋は、各単量体におけるチロシン残基を迅速に架橋し、二量体を形成する。一単量体あたり2つ以上のTyr残基の使用により、多量体が促進され、一単量体あたりたった一つのTyrでは二量体が生成される。
【0036】
E.クリックケミストリー。R1-アルキン基(単量体Aにアミノ酸修飾を介して、または、単量体A配列の末端にコンジュゲートされている、ここでR1==単量体A)を有する単量体A、および、R2-アジド基(単量体Bにアミノ酸修飾を介して、または、単量体配列の末端にコンジュゲートされている、ここでR2==単量体B)を有する1つの単量体B、および銅キレート化を使用して、二量体は、多量体化のための2つ以上の単量体単位間での1,2,3-トリアゾール架橋を用いて容易に形成される。
【0037】
F.アミド結合連結多量体。アミド結合連結単量体はC末端二量体化のためにリジン残基、または、N末端二量体化のためにグルタミン酸残基を組み入れることにより生成される。第1のアプローチはリジン残基のαおよびεアミノ基を使用し、2-単量体の第1の残基のαアミン基とのアミド結合を生成させる。Fmoc-Lys(Fmoc)-OHをこのために、それを樹脂に結合させることにより使用することができ、αおよびε-Fmoc基脱保護後、2つの単量体鎖が同時に伸長される。第2のアプローチは、樹脂からの切断前に、Fmoc-Glu-OHの、保護基なしのそのαおよびδカルボン酸基との使用を必要とし、2つ以上の伸長された単量体鎖が連結される。これらは、2つの単量体鎖への最初の付加物が別のFmoc-Lys(Fmoc)-OHである場合、木の枝がこのようにして広がるので、多量体に拡大することができる。
【0038】
G.ROMP二量体化。開環メタセシス重合(ROMP)は、単量体を重合させ、反応条件によって、様々なサイズの多量体を形成させることができる。ROMPはルテニウム錯体を使用して、ノルボルネン環における環ひずみを低減させることによりエネルギーを最小化することにより、ノルボルネンモチーフでの重合を開始させる。ペプチド配列中に代理アミノ酸代用物として付加されたノルボルネンはこの高速重合を可能にし、二量体ならびに所望のサイズの多量体が形成される。
【0039】
H.各単量体α-シートポリペプチド上に存在するシステイン残基またはヒスチジン残基を連結するためのデカフルオロビフェニル(DFBP)。
【0040】
I.多量体は、2つ以上の単量体α-シートポリペプチドの、複数の単量体α-シートポリペプチドを共有結合により連結させるように機能する様々なコア構造へのコンジュゲーションにより生成させることができ、二量体および高次構造(すなわち:三量体およびそれ以上)が形成される。非限定的、かつ、例示的なそのようなコア構造としては、ポリ-リジン、ポリ-オルニチン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)、適切な任意の他のポリマー、ナノ粒子、などが挙げられる。この実施形態では、多量体は様々なサイズ(MW)および配位数(コンジュゲートされたペプチドの数)で、標準方法を使用して構築させることができる。これらの材料は、単量体配列における一級アミンおよびチオールと容易に反応することができるように官能化することができる(アミンについてはLysおよびC末端、およびチオールについてはCys)。
【0041】
J.2つ以上の単量体α-シートポリペプチドを共有結合により連結させるために使用することができるいくつかの他の部分:ビス(マレイミド)エタン(BMOE);1,1’-(2,2’-オキシビス(エタン-2,1-ジオイル))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(MalPEG1);ならびに
【化2】
【0042】
よって、様々な実施形態では:
・多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、少なくとも1つのシステイン残基を含み、または多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、単一システイン残基を含み、単量体α-シートポリペプチドは、システイン残基を介して、共有結合により連結される。1つの実施形態では、多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、単一システイン残基を含み、多量体は二量体を含む。
【0043】
・多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、少なくとも1つのヒスチジン残基を含み、または多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、単一ヒスチジン残基を含み、単量体α-シートポリペプチドは、ヒスチジン残基を介して、共有結合により連結される。1つの実施形態では、多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、単一ヒスチジン残基を含み、多量体は二量体を含む。
【0044】
・多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、少なくとも1つのチロシン残基を含み、または多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、単一チロシン残基を含み、単量体α-シートポリペプチドは、チロシン残基を介して、共有結合により連結される。1つの実施形態では、多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、単一チロシン残基を含み、多量体は二量体を含む。
【0045】
・多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、アミノ酸代用物として少なくとも1つのノルボルネン部分を含み、または多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、アミノ酸代用物として単一ノルボルネン部分を含み、単量体α-シートポリペプチドは、ノルボルネン部分を介して、共有結合により連結される。1つの実施形態では、多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、単一ノルボルネン部分残基を含み、多量体は二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、またはさらに高次の多量体を含む。1つの非限定的実施形態では、多量体はROMP二量体化により形成され、それは、単量体を重合させ、反応条件によって様々なサイズの多量体を形成させることができる。ROMPはルテニウム錯体を使用して、ノルボルネン環における環ひずみを低減させることによりエネルギーを最小化することにより、ノルボルネンモチーフでの重合を開始させる。単量体中に代理アミノ酸代用物として付加されたノルボルネンはこの高速重合を可能にし、二量体ならびに所望のサイズの多量体が形成される。
【0046】
・多量体中の1つの単量体α-シートポリペプチド(単量体A)はシステイン残基を有さず、多量体中の他の単量体α-シートポリペプチド(単量体B)は少なくとも1つのシステイン残基を含み、または、単量体Bは単一システイン残基を含み、単量体AおよびBは、単量体A上の任意のアミノ酸残基と単量体B中のシステイン残基上の硫黄原子の間の共有結合を介して、共有結合により連結される。1つの実施形態では、多量体は二量体を含む。非限定的例として、1つの実施形態では(単量体A)はマレイミドモチーフを含み(単量体A中の任意の残基上または単量体A配列中の独立残基として)、システインを含まず、単量体Bは少なくとも1つのシステイン残基を含み、または、単量体Bは単一システイン残基を含み、単量体AおよびBは、単量体A上のマレイミドモチーフと単量体B中のシステイン残基上の硫黄原子の間の共有結合を介して、共有結合により連結される。1つの実施形態では、多量体は二量体を含む。
【0047】
・多量体中の1つの単量体α-シートポリペプチド(単量体A)はシステイン残基を有さず、多量体中の他の単量体α-シートポリペプチド(単量体B)は少なくとも1つのシステイン残基を含み、または、単量体Bは単一システイン残基を含み、単量体AおよびBは、単量体A上の任意のアミノ酸残基と単量体B中のシステイン残基上の硫黄原子の間のチオエーテル架橋を介して、共有結合により連結される。1つの実施形態では、多量体は二量体を含む。非限定的例として、1つの実施形態では、Aは、アルキルハロゲン化(例えば、限定はされないが、臭素化)アミノ酸を含み(単量体中の任意のAAはアルキルハロゲン化(例えば、限定はされないが、臭素化)されてもよい)、システインを含まず、単量体Bは少なくとも1つのシステイン残基を含み、または、単量体Bは単一システイン残基を含み、単量体AおよびBは、単量体A上の前の、アルキルハロゲン化(例えば、限定はされないが、臭素化)残基(単量体の共有結合で、新規S-結合で置換されるアルキルハロゲン)と単量体B中のシステイン残基上の硫黄原子の間のチオエーテル架橋を介して、共有結合により連結される。
【0048】
・多量体中の2つ以上の単量体α-シートポリペプチドは、単量体単位間の1,2,3-トリアゾール架橋を介して、共有結合により連結される。1つの実施形態では、多量体は二量体を含む。非限定的例として、1つの実施形態では、多量体中の1つの単量体α-シートポリペプチド(単量体A)は単量体A中の任意の残基にコンジュゲートされた、または、単量体Aの末端に付加されたアルキン基を含み、多量体中の他の単量体α-シートポリペプチド(単量体B)は、単量体B中の任意の残基にコンジュゲートされた、または、単量体Bの末端に付加されたアジド基を含み、単量体AおよびBは、銅キレート化後に、2つの単量体単位間の1,2,3-トリアゾール架橋を介して共有結合により連結される。
【0049】
・多量体中の2つ以上の単量体α-シートポリペプチドは、単量体単位間のアミド結合を介して、共有結合により連結される。1つの実施形態では、多量体は二量体を含む。非限定的例として、様々な実施形態では、(a)各単量体α-シートポリペプチドは、C末端多量体化(例えば、二量体化)のためにC末端にリジン残基を含み、または、(b)各単量体α-シートポリペプチドは、N末端多量体化(例えば、二量体化)のためにN末端にグルタミン酸残基を含む。第1のアプローチはリジン残基のαおよびεアミノ基を使用し、2-単量体の第1の残基のαアミン基とのアミド結合を生成させる。Fmoc-Lys(Fmoc)-OHは、それを樹脂に結合することにより、このために使用することができ、αおよびε-Fmoc基脱保護後、2つの単量体鎖は同時に伸長される。第2のアプローチは、樹脂からの切断前に、Fmoc-Glu-OHの、保護基なしのそのαおよびδカルボン酸基との使用を必要とし、伸長された単量体鎖が連結される。
【0050】
・多量体は、好適なコア構造に共有結合により連結された2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の単量体α-シートポリペプチドを含み、好適なコア構造としては、ポリ-リジン、ポリ-オルニチン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)、適切な任意の他のポリマー、およびナノ粒子が挙げられるが、それらに限定されない。
【0051】
・多量体は、下記から選択される、1つ以上のリンカーを介して、共有結合により連結される2つ以上の単量体α-シートポリペプチドを含む:ビス(マレイミド)エタン(BMOE);1,1’-(2,2’-オキシビス(エタン-2,1-ジオイル))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(MalPEG1);ならびに
【化3】
【0052】
1つの実施形態では、多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、追加の機能ドメインおよび他の残基、例えば、単量体連結目的のために付加され得る追加の残基を含まない。
【0053】
1つの実施形態では、多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、LまたはD型の少なくとも1つのシステイン残基を含む。1つの実施形態では、多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、LまたはD型の単一システイン残基を含む。
【0054】
別の実施形態では、多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)の、LまたはD型のヒスチジン残基を含む。1つの実施形態では、多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、LまたはD型の単一ヒスチジン残基を含む。
【0055】
1つの実施形態では、多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)の、LまたはD型のチロシン残基を含む。1つの実施形態では、多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、LまたはD型の単一チロシン残基を含む。
【0056】
さらなる実施形態では、多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは、少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)のノルボルネン部分を含む。1つの実施形態では、多量体中の各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、単一ノルボルネン部分を含む。
【0057】
別の実施形態では、二量体中の1つの単量体α-シートポリペプチド(B単量体)は少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)の、LまたはD型のシステイン残基を含み、他の単量体α-シートポリペプチド(A単量体)はシステイン残基を含まない。1つの実施形態では、二量体中の各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも12-23アミノ酸の長さであり、A単量体は単一の、LまたはD型のシステイン残基を含む。
【0058】
別の実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドは、一般式X1-X2-X3-X4-X5による12-23の連続するアミノ酸を含み、
X1はL残基とD残基が交互に並ばない0-7の連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ5-12の連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない0-7の連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ4-12の連続するアミノ酸残基であり;ならびに、
X5はL残基とD残基が交互に並ばない0-4の連続するアミノ酸残基である。
【0059】
本明細書では、「交互に並ぶ」は、L異性体とD異性体が交互に並ぶ少なくとも3つのアミノ酸のひと続き(すなわち、L-D-L;D-L-D;など)を意味する。
【0060】
本明細書では、「L残基とD残基が交互に並ばない」は、その領域はL異性体とD異性体が交互に並ぶ少なくとも3つのアミノ酸のひと続きを含まないことを意味する。よって、そのような領域(X1、X3、およびX5)は、DおよびL残基の両方を含み得る。例えば、ポリペプチドRGNwNeSkMNEYSGWmLmCtMGR(AP500;配列番号1)(大文字のアミノ酸残基はLアミノ酸であり、小文字のアミノ酸残基はDアミノ酸である)は本明細書で規定される下記サブユニット構造を有し:
X1はLアミノ酸とDアミノ酸が交互に並ばない2つの連続するアミノ酸残基であり(RG);
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7つの連続するアミノ酸残基であり(NwNeSkM)(配列番号62);
X3はLアミノ酸とDアミノ酸が交互に並ばない5つの連続するアミノ酸残基であり(NEYSG)(配列番号63);
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7つの連続するアミノ酸残基であり(WmLmCtM)(配列番号64);ならびに
X5はLアミノ酸とDアミノ酸が交互に並ばない2つのアミノ酸残基である(GR)。
【0061】
別の例では、ポリペプチドrGnWnEsKmneyyGwMlMcTmGr(配列番号65)(AP506)は本明細書で規定される下記サブユニット構造を有し:
X1はLアミノ酸とDアミノ酸が交互に並ばない0の連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ9つの連続するアミノ酸残基であり(rGnWnEsKm)(配列番号66);
X3はLアミノ酸とDアミノ酸が交互に並ばない3つの連続するアミノ酸残基であり(ney);
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ11の連続するアミノ酸残基であり(yGwMlMcTmGr)(配列番号67);ならびに
X5はLアミノ酸とDアミノ酸が交互に並ばない0のアミノ酸残基である。
【0062】
当業者であれば、どのように、他のポリペプチド配列が本明細書で記載される様々な一般式内に収まるかを認識するであろう。本明細書で記載されるポリペプチドは標準技術を使用して化学的に合成され得る。
【0063】
少なくとも1つ(1、2、3、またはそれ以上)のシステイン、ヒスチジン、チロシン、ノルボルネン部分、または連結を促進する他の部分(例えば、限定はされないが、本明細書で開示されるもの)(集合的に「連結部分」と呼ばれる)は各単量体α-シートポリペプチド中の任意の場所に配置され得る。さらなる実施形態では、各単量体α-シートポリペプチド中の少なくとも1つの連結部分は、ドメインX1、X2、X3、またはX4中に独立して存在する。別の実施形態では、各単量体α-シートポリペプチド中の少なくとも1つのシステイン残基は、ドメインX2、X3、またはX4中に独立して存在する。
【0064】
1つの実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドについて、X1は独立して、L残基とD残基が交互に並ばない0-2、0または2の連続するアミノ酸残基である。1つの実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドについて、全てのX1アミノ酸残基(存在する場合)はLアミノ酸である。別の実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドについて、全てのX1アミノ酸残基はDアミノ酸である。
【0065】
1つの実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドについて、X2は独立して、Dアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ、6-10、7-10、7-9、7、8、9、または10の連続するアミノ酸残基である。
【0066】
別の実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドについて、X3は独立して、L残基とD残基が交互に並ばない、1-5、2-5、3-5、3、4、または5の連続するアミノ酸残基である。1つの実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドについて、全てのX3アミノ酸は独立して、Lアミノ酸またはグリシンである。別の実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドについて、全てのX3アミノ酸は独立して、Dアミノ酸またはグリシンである。
【0067】
1つの実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドについて、X4は独立して、Dアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ、6-12、7-11、7、8、9、10、または11の連続するアミノ酸残基である。
【0068】
別の実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドについて、X5は独立して、L残基とD残基が交互に並ばない、0-3、0-2、0、または2の連続するアミノ酸残基である。1つの実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドについて、全てのX5アミノ酸(存在する場合)は独立して、Lアミノ酸である。
【0069】
1つの実施形態では、多量体中の1つ以上の単量体α-シートポリペプチドについて:
X1はL残基とD残基が交互に並ばない0-2の連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7-10または7-8の連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない3-5または4-5の連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7-11の連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない0-2の連続するアミノ酸残基である。1つの実施形態では、多量体中の全てのポリペプチドは、この一般式を含む。
【0070】
1つの特定の実施形態では、多量体中の1つ以上の単量体α-シートポリペプチドについて:
X1はL残基とD残基が交互に並ばない2つの連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7つの連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない5つの連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7つの連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない2つの連続するアミノ酸残基である。1つの実施形態では、多量体中の全てのポリペプチドは、この一般式を含む。
【0071】
別の特定の実施形態では、多量体中の1つ以上の単量体α-シートポリペプチドについて:
X1はL残基とD残基が交互に並ばない2つの連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ8つの連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない4つの連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7つの連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない2つの連続するアミノ酸残基である。1つの実施形態では、多量体中の全てのポリペプチドは、この一般式を含む。
【0072】
さらなる特定の実施形態では、多量体中の1つ以上の単量体α-シートポリペプチドについて:
X1はL残基とD残基が交互に並ばない0の連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ9つの連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない3つの連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ11の連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない0の連続するアミノ酸残基である。1つの実施形態では、多量体中の全てのポリペプチドは、この一般式を含む。
【0073】
別の特定の実施形態では、多量体中の1つ以上の単量体α-シートポリペプチドについて:
X1はL残基とD残基が交互に並ばない0の連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ10の連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない4つの連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ7つの連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない2つの連続するアミノ酸残基である。1つの実施形態では、多量体中の全てのポリペプチドは、この一般式を含む。
【0074】
1つの実施形態では、X1およびX5は一定の単量体α-シートポリペプチドにおいて同じ長さ(すなわち:多量体中の少なくとも1つの単量体α-シートポリペプチドにおいて同じ長さ)である。別の実施形態では、X1およびX5は各単量体α-シートポリペプチドにおいて同じ長さである。
【0075】
別の実施形態では、X2およびX4は、一定の単量体α-シートポリペプチドにおいて、または各単量体α-シートポリペプチドにおいて同じ長さである。
【0076】
さらなる実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも14-23、17-23、21-23、または23アミノ酸の長さである。
【0077】
1つの実施形態では、各単量体α-シートポリペプチドは、表1に示される、配列番号1-30、またはその逆キラル対応物から選択されるアミノ酸配列に、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含み:
(a)各単量体α-シートポリペプチドは少なくとも1つのシステイン残基を含み;ならびに
(b)小文字の残基はDアミノ酸であり、大文字の残基はLアミノ酸であり、G残基はアキラルである(常に、大文字で「G」と示される)。
【表1】
【0078】
多量体は、2つ以上の単量体α-シートポリペプチドを含み、各単量体は、同一のアミノ酸配列を含んでもよく、または、異なるアミノ酸配列を含み得る。1つの実施形態では、多量体中の全ての単量体は同じアミノ酸配列を有する。他の実施形態では、一定の多量体中の単量体は異なるアミノ酸配列を有する単量体を含み得る。
【0079】
単量体α-シートポリペプチドまたは多量体は、それらのN-およびまたはC末端に追加の残基を含み得る。非限定的な実施形態では、追加の残基は、追加の機能ドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、単量体の共有結合を促進するために、1つ以上の追加の残基または部分が付加され;非限定的なそのような「連結部分」は以上で記載される。他の非限定的な実施形態では、付加される機能ドメインは、治療部分、診断部分、検出可能部分、多量体を特定のインビボ場所にターゲティングさせるための部分を含み得る。
【0080】
単量体は、任意のアミノ酸、非天然アミノ酸またはそうでなければ多量体化のために使用される様式を有する官能化基準アミノ酸を含むことができ、ノルロイシン、マレイミド、ノルボルネン、および本明細書で記載される他のものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0081】
別の実施形態では、ポリペプチドまたは多量体は、下記でより詳細に記載されるように、ポリマー、例えば、限定はされないが、ポリドーパミン(PDA)にコンジュゲートされる。
【0082】
第2の態様では、本開示は、配列番号1-30またはその逆キラル対応物から選択されるアミノ酸配列に少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含むα-シートポリペプチドを提供し、小文字の残基はDアミノ酸であり、大文字の残基はLアミノ酸であり、G残基はアキラルである。
【0083】
開示のこの第2の態様のポリペプチドは、例えば、第1の態様の多量体を調製するために、本明細書で記載される多量体の使用のために、ならびに本明細書で開示される他の治療および診断使用のために使用することができる。
【0084】
開示の第1の態様における単量体のために記載される全ての実施形態は、この第2の態様の単量体と共に使用することができる。よって、例えば、単量体は、第1の態様において記載される1つ以上(1、2、3、またはそれ以上)の連結部分の任意の実施形態を含み得る。
【0085】
第1および第2の態様のいくつかの実施形態では、基準ポリペプチドアミノ酸配列におけるLまたはDアミノ酸に対する任意のアミノ酸置換はキラリティーを維持する(すなわち:Lアミノ酸はLアミノ酸で置換され;Dアミノ酸はDアミノ酸で置換される)。
【0086】
開示の第1および第2の態様の全ての実施形態において、α-シートポリペプチドは、任意の一定の使用に最も適切なものとして、キャップされてもよく、またはキャップされなくてもよい。様々な実施形態では、ポリペプチドのN末端またはC末端の1つまたは両方はアセチル化またはアミド化される。他の実施形態では、N末端またはC末端のどちらも、キャップされない。
【0087】
1つの実施形態では、本明細書で開示されるポリペプチドまたは多量体は、インビボでの半減期の増加を促進するために、例えば、ペグ化、HES化、PAS化、またはグリコシル化により、他の化合物に連結されてもよい。そのような連結は共有結合性または非共有結合性とすることができる。
【0088】
別の実施形態では、本開示は、下記を含む医薬組成物を提供する:
(a)開示の第1および第2の態様のいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせのα-シートポリペプチドまたは多量体;ならびに
(b)薬学的に許容される担体。
【0089】
本発明の医薬組成物は、例えば、本明細書で開示される方法において使用することができる。医薬組成物は、ペプチド(複数可)に加えて(a)凍結乾燥保護剤;(b)界面活性剤;(c)増量剤;(d)張度調整剤;(e)安定剤;(f)保存剤および/または(g)緩衝液を含み得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の緩衝液はトリス緩衝液、ヒスチジン緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液または酢酸緩衝液である。医薬組成物はまた、凍結乾燥保護剤、例えばスクロース、ソルビトールまたはトレハロースを含み得る。ある一定の実施形態では、医薬組成物は、保存剤、例えば塩化ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、クロロヘキシジン、フェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、o-クレゾール、p-クレゾール、クロロクレゾール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、安息香酸、およびそれらの様々な混合物を含む。他の実施形態では、医薬組成物は、グリシンのような増量剤を含む。さらに他の実施形態では、医薬組成物は、界面活性剤、例えば、ポリソルベート-20、ポリソルベート-40、ポリソルベート-60、ポリソルベート-65、ポリソルベート-80ポリソルベート-85、ポロクサマー-188、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミタート、ソルビタンモノステアレート、モノオレイン酸ソルビタン、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリステアレート、トリオレイン酸ソルビタン(sorbitan trioleaste)、またはそれらの組み合わせを含む。医薬組成物はまた、張度調整剤、例えば、製剤を、ヒト血液と実質的に等張または等浸透圧にする化合物を含み得る。例示的な張度調整剤としては、スクロース、ソルビトール、グリシン、メチオニン、マンニトール、デキストロース、イノシトール、塩化ナトリウム、アルギニンおよびアルギニン塩酸塩が挙げられる。他の実施形態では、医薬組成物は加えて、安定剤、例えば、対象となるタンパク質と合わせられると、凍結乾燥または液体形態での対象となるタンパク質の化学的および/または物理的不安定性を実質的に防止または低減する分子を含む。例示的な安定剤としては、スクロース、ソルビトール、グリシン、イノシトール、塩化ナトリウム、メチオニン、アルギニン、およびアルギニン塩酸塩が挙げられる。
【0090】
本明細書で記載される医薬組成物は薬学的に許容されない成分を実質的に含まず、すなわち、本出願の出願時の米国の規制上の要件により許可されるものより低い量の薬学的に許容されない成分を含む。この態様のいくつかの実施形態では、化合物が水中で溶解され、または懸濁される場合、組成物はさらに任意で、追加の薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む。他の実施形態では、本明細書で記載される医薬組成物は、固体医薬組成物(例えば、錠剤、カプセル、など)である。
【0091】
組成物は、任意の型の送達、例えば、限定はされないが、経口、非経口、静脈内、皮下、肺、および経鼻送達のために製剤化することができる。
【0092】
α-シートポリペプチドまたは多量体は医薬組成物中で投与される唯一の活性剤であってもよく、または、組成物は、使用目的に好適な1つ以上の他の活性剤を含み得る。様々な非限定的な実施形態では、組成物は、ペプチダーゼ阻害剤をさらに含み得る。
【0093】
第3の態様では、本開示は、下記を含む組成物を提供する:
(a)表面上のポリマーコーティング;ならびに
(b)ポリマーコーティングに共有結合により連結されたα-シートポリペプチド。
【0094】
本明細書における実施例で開示されるように、α-シートポリペプチドは、ポリドーパミン(PDA)コート表面により例示されるポリマコート表面に共有結合により結合する。開示の組成物を生成させるための非限定的な、例示的技術が、実施例において提供され、よって、本開示は、本明細書で開示されるステップを含む、この第3の態様の組成物を調製するための方法をさらに提供する。
【0095】
発明者らは、開示の組成物は、例えば、被験体から得られた生体試料中のα-シート含有毒性タンパク質種の非常に高い感度の検出のために使用することができることを示している。ポリマーコーティングに共有結合により連結されたα-シートポリペプチドは生体試料中のα-シート含有毒性タンパク質種の捕捉剤として使用される。
【0096】
ポリマーは任意の自己組織化ポリマーとすることができ、限定はされないが、カテコールアミンが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリドーパミン、ポリ-L-DOPA、ポリエピネフリン、ポリノルアドレナリン、またはジ-ヒドロキシルフェノールおよび一級アミンで終わる任意の長さの分枝鎖(カテコールアミンを構成する)を含む任意の合成生成物、およびそれらの組み合わせを含み得る。1つの非限定的実施形態では、ポリマーコーティングはポリドーパミン(PDA)を含む。
【0097】
ポリマーコーティングは意図された目的に好適な任意の厚さとすることができる。非限定的実施形態では、ポリマーコーティングは約25nm~約250nmの厚さ、または約50nm~約200nmの厚さ、または約60nm~約150nmの厚さ、または約60nm~約100nmの厚さ、または約70nm~約90nmの厚さ、または約75nm~85nmの厚さ、または約80nmの厚さである。本明細書では、「約」は列挙パラメータの+/-5%を意味する。
【0098】
ポリマーコーティングは表面全体、または表面の一部にわたっていてもよい。表面は使用目的に好適な任意の表面であってもよく、限定はされないが、アッセイプレート(例えば、限定はされないが、マイクロウェルプレート)、ガラス、セラミック、マイクロ流体チャネルおよびデバイス、メンブラン、プラスチック、多糖、チタン、シリコーン、ナイロン、ニトロセルロース、テフロンビーズ、ガーゼ、外科用糸、包帯、医療装置、などが挙げられる。表面は使用目的に好適な任意のサイズおよび形状を有してもよい。
【0099】
任意の好適なα-シートポリペプチドは開示の組成物において使用することができる。1つの実施形態では、α-シートポリペプチドは、米国特許9896487号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示される1つ以上のα-シートポリペプチドを含み得る。1つのそのような実施形態では、α-シートポリペプチドは、一般式X1-X2-X3-X4-X5による12-23の連続するアミノ酸を含み、式中、
X1はL残基とD残基が交互に並ばない0-7の連続するアミノ酸残基であり;
X2はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ5-9の連続するアミノ酸残基であり;
X3はL残基とD残基が交互に並ばない0-5の連続するアミノ酸残基であり;
X4はDアミノ酸とLアミノ酸が交互に並ぶ4-12の連続するアミノ酸残基であり;ならびに
X5はL残基とD残基が交互に並ばない0-4の連続するアミノ酸残基である。
【0100】
別の実施形態では、α-シートポリペプチドは、開示の第1および第2の態様のいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせによる、α-シートポリペプチまたはα-シートポリペプチドまたは多量体を含む。
【0101】
第4の態様では、本開示は、医療装置の表面にコートされた、本明細書で開示されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせのα-シートポリペプチド多量体またはα-シートポリペプチドを含む医療装置を提供する。1つの実施形態では、医療装置は、装置の表面上のポリドーパミン(PDA)コーティングを含み、α-シートポリペプチド多量体またはα-シートポリペプチドはPDAコーティングに共有結合により連結される。
【0102】
医療装置は、例えば、医療装置上での細菌感染/バイオフィルム形成のリスクを低減させるために、その必要がある被験体における留置のために使用することができる。任意の好適な医療装置が使用でき、限定はされないが、人工心臓弁、心臓ペースメーカー、髄液シャント、尿路カテーテル、血管内カテーテル、義眼、人工関節、整形外科用インプラント、チタン含有インプラント、ポリスチレン含有インプラント、外科用メッシュインプラント、乳房インプラント、歯科インプラント、および子宮内避妊具が挙げられる。
【0103】
第5の態様では、本開示は、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を有する被験体に、有効な量の、本明細書で開示されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせのα-シートポリペプチド多量体またはα-シートポリペプチドを投与し、疾患を治療するまたはその発症を制限することを含む、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を治療するまたはその発症を制限するための方法を提供する。
【0104】
1つの実施形態では、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患は、限定はされないが、クロイツフェルト・ヤコブ病、海綿状脳症、軽鎖アミロイドーシス、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発ニューロパチー、ケネディ病、マシャド・ジョセフ病、アルツハイマー病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、2型糖尿病、トランスサイレチンにより引き起こされたアミロイドーシス(ATTR)、パーキンソン病、レビー小体病、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、大動脈中膜アミロイド、プロラクチノーマ、透析関連アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、フィンランド型アミロイドーシス、格子状角膜ジストロフィー、多発性骨髄腫、およびアミロイド-バイオフィルム細菌感染と関連する疾患から構成される群から選択される。
【0105】
別の実施形態では、本開示は、限定はされないが、下記を含む群から選択される障害を治療するまたはその発症を制限するための方法を提供し:クロイツフェルト・ヤコブ病、海綿状脳症、軽鎖アミロイドーシス、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発ニューロパチー、ケネディ病、マシャド・ジョセフ病、アルツハイマー病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、2型糖尿病、トランスサイレチンにより引き起こされたアミロイドーシス(ATTR)、パーキンソン病、レビー小体病、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、大動脈中膜アミロイド、プロラクチノーマ、透析関連アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、フィンランド型アミロイドーシス、格子状角膜ジストロフィー、多発性骨髄腫、およびアミロイド-バイオフィルム細菌感染と関連する疾患、方法は、その必要のある被験体に、有効な量の、本明細書で開示されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせのα-シートポリペプチド多量体またはα-シートポリペプチを投与し、障害を治療するまたはその発症を制限することを含む。
【0106】
本明細書では、「アミロイド疾患/アミロイド関連疾患を治療する」は下記の1つ以上を達成することを意味する:(a)疾患の重症度を低減させる;(b)治療される疾患(複数可)に特徴的な症状の発症を制限または防止する;(c)治療される疾患(複数可)に特徴的な症状の悪化を阻止する;(d)前に障害(複数可)を有した患者において疾患(複数可)の再発を制限または防止する;(e)前に疾患(複数可)の症状があった患者において症状の再発を制限または防止する;ならびに(f)疾患を発症するリスクがある、または疾患の臨床効果をまだ示していない被験体において疾患の発症を制限する。
【0107】
本明細書では、「有効な量」は、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を治療および/または制限するのに有効なポリペプチドまたは多量体の量を示す。ポリペプチドまたは多量体は典型的には、医薬組成物、例えば以上で開示されるものとして製剤化され、任意の好適な経路を介して、例えば、経口的に、非経口的に(parentally)、吸入スプレーにより、経鼻的に、直腸に、または局所的に、従来の薬学的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルを含む投与単位製剤において、投与することができる。非経口という用語は本明細書では、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、胸骨内、腱内、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、注入技術または腹腔内を含む。1つの実施形態では、投与は経鼻的である。
【0108】
投与計画は、最適の望ましい応答(例えば、治療または予防的応答)を提供するように調整することができる。好適な投与量範囲は、例えば、0.1fg/kg-100mg/kg体重とすることができ;あるいは、0.5fg/kg~50mg/kg;1fg/kg~25mg/kg、または5fg/kg~10mg/kg体重とすることができる。ポリペプチドまたは多量体は単一ボーラスで送達させることができ、または主治医により決定されるように複数回(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上の回数)投与することができる。
【0109】
第6の態様では、本開示は、下記を含む、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を診断する、予測する、またはモニタするための方法を提供する:
(a)アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を有するリスクのある被験体由来の組織試料を、本明細書で開示されるいずれかの実施形態または実施形態の組み合わせのα-シートポリペプチド多量体またはα-シートポリペプチドと、α-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドのアミロイド中間体(組織試料中に存在する場合)との結合に好適な条件下で、接触させ、結合複合体を生成させること;
(b)組織試料中の結合複合体を検出すること;ならびに
(c)検出に基づき、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を診断する、予測する、またはモニタすること。
【0110】
この態様の方法を使用して、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を患っている可能性がある患者のための治療の経過をより正確に診断、予測、またはモニタし、よって、担当介護者による、治療選択肢のより多くの情報に基づく決定を提供することができる。アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患のリスクがある個体は、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患、例えば、限定はされないが、クロイツフェルト・ヤコブ病、海綿状脳症、軽鎖アミロイドーシス、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発ニューロパチー、ケネディ病、マシャド・ジョセフ病、アルツハイマー病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、2型糖尿病、トランスサイレチンにより引き起こされたアミロイドーシス(ATTR)、パーキンソン病、レビー小体病、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、大動脈中膜アミロイド、プロラクチノーマ、透析関連アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、フィンランド型アミロイドーシス、格子状角膜ジストロフィー、多発性骨髄腫、およびアミロイド-バイオフィルム細菌感染と関連する疾患についての1つ以上の徴候、症状、または危険因子を示すものである。
【0111】
組織試料は、任意の好適な組織試料であってもよく、限定はされないが、血液、血清、脳脊髄液、鼻汁、尿またはアミロイド疾患またはアミロイド関連疾患のリスクがある被験体由来の他の生物学的材料が挙げられる。
【0112】
ポリペプチドまたは多量体をアミロイド中間体(組織試料中に存在する場合)と結合させ、結合複合体を生成するのに好適な条件は、使用されるポリペプチド(複数可)、組織試料、および採用される技術の詳細に依存するであろう。そのような好適な条件の決定は本明細書における教示に基づく当技術分野における技術のレベル内にある。
【0113】
試料中のアミロイド中間体の存在を示すそのような複合体(もし、あれば)の形成は、それから、好適な手段により検出され、測定される。そのような方法としては、均一および不均一結合イムノアッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、免疫蛍光法、免疫組織化学、FACS、ビアコアおよびウエスタンブロット解析が挙げられるが、それらに限定されない。1つの特定の実施形態では、方法は本明細書で詳述されるSOBAアッセイの使用を含む。
【0114】
この態様における使用のためのポリペプチドおよび多量体は、以上で開示されるコンジュゲートを含むことができ、一定のアッセイに好適な任意の検出技術に有用なタグが提供される。使用されるタグは、使用される特定の検出/分析/診断技術および/または方法に依存するであろう。方法は、溶液中で実施することができ、または、発明のポリペプチド(複数可)は、担体または基材、例えば、本明細書で記載されるSOBAプレート、マイクロタイタープレート(ex:ELISA用)、メンブランおよびビーズ、などに結合または付着させてもよい。担体または基材はガラス、プラスチック(例えば、ポリスチレン)、多糖、ナイロン、ニトロセルロース、またはテフロン、などでできていてもよい。そのような支持体の表面は固体または多孔性であってもよく、任意の好都合な形状を有し得る。
【0115】
第7の態様では、本開示は、下記を含む、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を診断する、予測する、またはモニタするための方法を提供する:
(a)アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を有するリスクのある被験体由来の組織試料を、開示の第3の態様の組成物と、α-シートポリペプチド多量体またはポリペプチドのアミロイド中間体(組織試料中に存在する場合)との結合に好適な条件下で接触させ、結合複合体を生成させること;
(b)組織試料中の結合複合体を検出すること;ならびに
(c)検出に基づき、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を診断する、予測する、またはモニタすること。
【0116】
この態様の方法を使用して、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を患っている可能性がある患者のための治療の経過をより正確に診断、予測、またはモニタし、よって、担当介護者による、治療選択肢のより多くの情報に基づく決定を提供することができる。アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患のリスクがある個体は、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患、例えば、限定はされないが、クロイツフェルト・ヤコブ病、海綿状脳症、軽鎖アミロイドーシス、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、老人性全身性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発ニューロパチー、ケネディ病、マシャド・ジョセフ病、アルツハイマー病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、2型糖尿病、トランスサイレチンにより引き起こされたアミロイドーシス(ATTR)、パーキンソン病、レビー小体病、外傷性脳損傷、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、大動脈中膜アミロイド、プロラクチノーマ、透析関連アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、フィンランド型アミロイドーシス、格子状角膜ジストロフィー、多発性骨髄腫、およびアミロイド-バイオフィルム細菌感染と関連する疾患についての1つ以上の徴候、症状、または危険因子を示すものである。
【0117】
組織試料は、任意の好適な組織試料であってもよく、限定はされないが血液、血清、脳脊髄液、鼻汁、尿またはアミロイド疾患またはアミロイド関連疾患のリスクがある被験体由来の他の生物学的材料が挙げられる。
【0118】
ポリペプチドまたは多量体をアミロイド中間体(組織試料中に存在する場合)と結合させ、結合複合体を生成するのに好適な条件は、使用されるポリペプチド(複数可)、組織試料、および採用される技術の詳細に依存するであろう。そのような好適な条件の決定は本明細書における教示に基づく当技術分野における技術のレベル内にある。
【0119】
本明細書で開示される診断および予測方法の1つの実施形態では、対照試料に対するLOD/LOQ/カットオフより高い結合複合体の量は、被験体を、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を有すると診断するのに役立つ。別の実施形態では、対照より高い結合複合体の量は、被験体をアミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を発症する可能性があると予測するのに役立つ。さらなる実施形態では、被験体由来の前の試料と比較しての、被験体由来の試料中の結合複合体の量の増加は被験体におけるアミロイド疾患またはアミロイド関連疾患の進行を示し、または、被験体がアミロイド疾患またはアミロイド関連疾患のために受けている治療は変更する必要がある可能性がある(すなわち:現在の治療の代わりとなる別の治療、投与される治療薬の投与量の増加、投与回数の増加、別の投与方法、または現在の治療に対する補完治療アプローチなど)ことを示す。
【0120】
担当医療関係者により適切と決定される任意の対照が使用され得る。1つの実施形態では、対照は、「正常」(すなわち:アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を示すα-シート成分の存在を示さない)と指定された、予め決定されたレベルの結合複合体を含み得る。別の実施形態では、対照は、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患を有さないことが知られている1または複数の被験体由来の試料であってもよい。他の実施形態では、対照は1つ以上の以前の時間点での同じ被験体由来の試料(複数可)であってもよく;この実施形態は、アミロイド疾患またはアミロイド関連疾患をモニタする、または、被験体がアミロイド疾患またはアミロイド関連疾患のために受けている治療の効力をモニタするのに特に有用である。
【0121】
実施例
実施例1:アルファ-シート二量体によるアミロイド線維形成の改善された阻害
我々は、ヘアピンペプチドのα-鎖におけるテンプレート化された、交互に並ぶL-およびD-アミノ酸を介して、ベースα-シート構造を全て維持する独特な配列を有する一連のペプチドを設計した。各配列は、単一システイン残基(3文字コードCysおよび1文字コードC)を用いて設計し、それは、高pH(炭酸塩緩衝液、pH9.6)でDMSOを使用するチオール基(-SH)の酸化によるジスルフィド結合を介する、指示された二量体化の部位として作用する。表2は30の設計されたα-シート単量体/二量体ペプチドおよびAP90(我々のα-シートペプチドベンチマーク設計)についての配列を示す。Lアミノ酸は大文字で示され、Dアミノ酸は小文字で示され(グリシンは常に「G」により示されることに注意されたい。この単一水素アミノ酸のLおよびD型については区別はないからである)、全ての配列は1文字コードを用いて示されることに注意すべきである。加えて、Xは非標準アミノ酸ノルロイシンを示し、Ac-はアセチル化N末端を示し、-NH2はアミド化C末端を示す。
【表2】
【0122】
ペプチド設計の効力を、ThT蛍光アッセイにより、線維形成の阻害を介して研究した。ペプチドを、75μM AβとPBS凝集緩衝液中でコインキュベートし、β-シート形成についてThT蛍光を介して経時的にモニタした。各場合において、Aβのみ(すなわちAβはPBS中阻害剤なしで凝集する)を、標準対照として実行し、下記式により%阻害を計算するために使用した:
【数1】
【0123】
重要なことには、各値は生データから減算されるその対応する「ブランク」を有し、すなわち:最終阻害剤値=アッセイの終わりでの生値-所定の濃度でのPBS中のペプチドのみに対する値。
【0124】
「ブランク」値は2x開始Aβ値を決して超えず、過剰補正はデータ処理における効力源ではないことが確認され-最終Aβ値は平均して20x開始Aβ値であった。Aβ濃度は固定したまま、ペプチド濃度を変動させ、AP:Aβの等および準化学量論比での設計の効力を調べた(調査した比は1:1、1:10、および1:100を含む)。表3および
図1は、ThTアッセイによる線維形成を阻害するそれらの能力における各独特なペプチドの性能を示し-配列IDに続く「m」はそれが単量体形態であることを示し、「d」はそれが二量体形態であることを示す。α-シートペプチドの二量体形態はことのほか強力であり、それらの単量体対応物をはるかにしのぎ-全ての単量体形態は1:100比で約0%阻害を示したが、平均二量体阻害は54.7%であり、最大は89.2%であり、最小は38.5%であった。
図1cはこのデータを、二量体についての%阻害値を単量体についての%阻害値により除算し、その値をプロットすることにより計算された「性能比」として示し-単量体についての%阻害(分母)が0となった場合については、この比は、可能な最大性能比が100となるように、1の値を使用して計算した。二量体ペプチドが凝集阻害でそれらの単量体対応物よりも、単純に2x、より効率的であった場合(2xの結合するα-シート「面」を有するため)、そうすると、この比は試験した各比について、
図1cにおける水平な黒色破線で示される、2の値を有するであろう。
【表3】
【0125】
二量体化の追加の方法
ジスルフィド結合以外の二量体化法を使用して、開示の二量体を生成させることができ、細胞内毒性オリゴマーを有する疾患に対する治療薬に対し、特に細胞内などの還元環境において安定性を向上させるなどの利点が提供され得る。
【0126】
例えば、ビス(マレイミド)エタン(BMOE)および1,1’-(2,2’-オキシビス(エタン-2,1-ジオイル))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(MalPEG1)を使用して、2つの単量体をそれらのCys残基を介して連結させた。
【化4】
【化5】
【0127】
Abeta凝集の阻害を我々の標準ThTアッセイにおいて評価し、結果は、それらの単量体および二量体形態の異なるペプチドを、10倍過剰のAbetaを用いて比較する表中のものと比較することができる。
【表4】
【0128】
ジスルフィド結合形態と同様に、より長いリンカーを有する二量体は2xをはるかに超える応答を提供している。これらの連結は細胞内アミロイド疾患、例えばハンチントン病を標的にするのを助ける。
【0129】
他の哺乳類および細菌アミロイド系におけるアミロイド阻害
これらの改善されたα-シート設計は、ADに限定されず、それらは、配列および開始構造に関係なくアミロイド形成中に、アミロイド形成ペプチドおよびタンパク質により形成される一般的なアルファ-シート構造を標的にするために、様々なアミロイド系において改善された阻害を示す。一例として、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)によるアミロイド形成、2型糖尿病、の阻害もまた、二量体α-シートペプチドについてより有効である(表5)。配列に関係なく、二量体は2xより大きな効果により、単量体をしのぎ、それはIAPPが過剰である場合に、特に明らかである。
【表5】
【0130】
哺乳類アミロイドタンパク質に加えて、二量体設計の改善された阻害はまた、細菌アミロイド系において観察される。一例として、持続尿路感染を有する患者由来の大腸菌の臨床分離株を使用した結果が提示される。実験アプローチが
図2に示される。UTI89は、アミロイド線維構造を使用して、インビボで、抗生物質治療からの大きな破壊に抵抗する頑強なバイオフィルムを形成する尿路病原性大腸菌株である。バイオフィルム構造物が破壊できる場合、抗生物質はより有効でなければならない。哺乳類系におけるα-シート-媒介アミロイド形成はまた、グラム陰性および陽性細菌の両方において保護バイオフィルムを安定化するために使用される細菌アミロイドに当てはまる。
【0131】
図3は治療なしの生きた大腸菌におけるアミロイド形成およびAP195二量体の存在下での線維形成の阻害を示す。ランダムコイルペプチド対照(P1)は効果がなかった。
【0132】
様々な用量の異なる合成α-シートペプチド(AP193、AP195、AP195/199二量体、またはAP5単量体)または非構造化対照ペプチド(P1)を接種時に添加し、培養物を複製させた。AP5は23-残基、単量体α-シートヘアピンである。AP195およびAP193は、2つの同一α-シートヘアピンからなるホモ二量体であり、AP195/199は1つのAP195単量体および1つのAP199単量体からなるヘテロ二量体である。48時間の増殖後、バイオフィルムをすすぎ、ホモジナイズし、アミロイド染料チオフラビンT(ThT)で染色し、これはβ-シート原線維に結合すると蛍光を発し、アミロイド線維含量のレポーターとして機能する。ThTはまた、非特異的に細菌細胞表面に結合し、そのため、UTI89ΔcsgAノックアウト株のバイオフィルムが、同時に増殖し、非特異的ThT蛍光の推定が提供された。この非特異的結合シグナルをUTI89 WTシグナルから減算し、
図4に示される較正蛍光値(cNFU)を生成させた。ホモ二量体およびヘテロ二量体がAP5単量体よりずっと強力であり、P1ランダムコイル対照は効果がなかった(
図4A)。
【0133】
UTI89系を超えた合成α-シートペプチドの適用性を調べるために、我々は、大腸菌分離株を抗生物質耐性尿路感染を提示した小児患者から入手した。PCRにより、全ての分離株においてcsgA遺伝子の存在を確認したが、YESCA+コンゴレッド寒天上でカールした(curliated)、「rdar」コロニー形態を示したもののみをさらなるキャラクタリゼーションのために選択した。UTI89 WT系と同様に、AP193およびAP195は、ゲンタマイシン/シプロフロキサシン耐性株GERB319のThT蛍光において著しい減少を引き起こした(
図4B)が、ランダムコイル対照ペプチドおよびAP5単量体は2倍濃度で効果がなかった。
【0134】
アミロイド線維形成を阻害する効果はバイオフィルムを不安定にし、そのため、遊離した浮遊細菌が増加した。効果は、二量体については、単量体の用量の半分であっても、ずっとより顕著であった(
図5の各プロットにおいて上部灰色バーを比較されたい)。細胞におけるこのシフトは、多数の非保護、浮遊細菌という結果となり、それらはより抗生物質および免疫クリアランス感受性である。例えば、耐性UTI89株は、AP設計物の共投与により、ゲンタマイシンに対して13,000倍感受性となった。同様に、細菌は、
図6に示されるように、マクロファージによる食作用により感受性となった。
【0135】
材料および方法
ペプチドを、CEM Liberty Blue(商標)マイクロ波ペプチドシンセサイザーを使用し、Fmocに基づくDIC/Oxyma化学を用いて、標準方法に従い合成した。ペプチドは全て、Shimadzu Preparatory HPLCシステム上で標準方法に従い精製した。ペプチドを分子量について、Bruker Ion Trap(商標)ESI-MSシステム(Bruker EsquireまたはBrukeramaZon(商標)Speedのいずれかを使用した)を使用して確認し、配列はMS/MSを使用して確認し、構造は二次構造妥当性確認により、Jasco(商標)円二色性分光計(J-720またはJ-1500システムのいずれかを使用した)上で確認した。
【0136】
二量体ペプチドを、精製単量体ペプチドを用いて、最初に、約5mgの純粋単量体ペプチドを1mLのDMSOに溶解し、19mLのpH9.6炭酸塩緩衝液を添加し、2時間37℃で撹拌しながら混合し、続いて、一晩16時間室温で撹拌することにより、形成させた。次いで、二量体を非二量体化単量体からHPLCにより精製し、単量体形態について使用される同じ方法下で確認した。
【0137】
Aβ凝集および線維形成、ならびにα-シートペプチドを用いた阻害実験を、ThT蛍光を介して下記の通りの手順に従い、モニタした。6mM NaOH(aq)および22μM ThT溶液を調製する。Aβ42フィルム(複数可)を-80℃から除去する。RTに5分ベンチトップで平衡化させる。0.75mg/mL溶液のために十分な体積の6mM NaOH(aq)をAβ42フィルムに添加する。0.75mg/mL混合物を5分間超音波処理器内で超音波処理し、Aβ42を溶解させる。超音波処理後、溶液を含むチューブを指でたたき、混合させる。ペプチドが溶解していない(すなわち、微粒子が残っている)ことが観察された場合、超音波処理を5分ずつ、各々の後に溶解についてチェックしながら続ける。Aβ42が溶解されるとすぐに、0.75mg/mL溶液を、0.22μm酢酸セルロース遠心分離機フィルタに通して濾過し、不溶性材料を除去する。試料を2-3分間、低RPMで(4.3xg)遠心分離し、全ての溶液をフィルタに通過させる。濾過したAβ42溶液についてUV/Vis分光法を実施し、280nmで、1490M-1cm-1の消衰係数を用いて、正確なAβ42濃度を決定した。
【0138】
Aβ42原液を4時間、25℃インキュベーター内でNaOH処理のためにインキュベートする。このインキュベーション後、ストックは4℃で最大1週間まで、将来の試料調製において使用するために保存することができる。染料含有凝集溶媒中で作る必要がある阻害剤溶液の総体積を決定する。わずかに過剰の全ての阻害剤溶液を、原液の小アリコート(10-20mg/mL)を所望の濃度(複数可)まで、染料含有凝集溶媒/緩衝液(PBS)を用いて希釈することにより調製する。初期希釈後、全てのペプチド阻害剤の正確な濃度をUV/Vis分光法を用いて決定し、必要に応じ、さらなる希釈/添加を行う。単一試料を調製するのに必要とされるAβ42原液(Vstock)の体積を決定する。これは、下記に依存するであろう:ストック濃度(cstock)、所望の最終濃度(cfinal)、および使用される蛍光プレートについてのウェル体積。最終試料体積(Vfinal)はウェルの総体積未満で、ウェルの底面をコートするのに必要とされる最小体積より大きくなければならない。一般に、96-ウェルプレートでは、150μLを使用し、384-ウェルプレートでは60μLを使用する。下記式を使用する:Vstock=(Vfinal×cfinal)/(cstock)。Aβ42を完全NaOH処理させるとすぐに、最終試料を、ピペット操作により3x Vstockアリコートをlo-結合(lo-bind)チューブに入れ、それらを3x Vfinalまで、適切な染料含有溶媒(凝集溶媒/緩衝液または阻害剤を含む凝集溶媒/緩衝液)を用いて希釈することにより調製する。ピペット上での設定を変更せずに上下に4回混合する。プレートをフィルムで密閉し、それをプレートリーダーに移動し、標準的なThT蛍光アッセイを、438nmの励起波長および485nmの発光波長を使用して実施する。IAPP凝集および阻害を、同じ一般プロトコルを、いくらかの若干の改良と共に使用して評価した。
【0139】
AP設計物のBMOE二量体化のための方法
【化6】
6mM(1.3mg/mL)ビス(マレイミド)エタン(BMOE;Thermo Fisher Scientific)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(DMF;Millipore Sigma)の原液を2mLエッペンドルフチューブ内で調製した。BMOEを秤量し(2.0mg)、2mLエッペンドルフチューブに移し、1.5mLのDMFをマイクロピペットで添加し、チューブを、完全溶解が達成されるまで繰り返して反転させた。0.1M、pH8 トリス緩衝液の原液を50mLコニカルチューブ中で調製し:0.444gのTrizma HCl(Sigma Aldrich)および0.265gのTrizma塩基(Sigma Aldrich)を50mLチューブに添加し、50mLのMilli-Q DI H
2Oに溶解した。pHをpHプローブ(Mettler Toledo)を用いて確認し、pH紙(Fisher Scientific)で二重チェックした。スターラーバーを有する20mLガラスシンチレーションバイアル中で、AP527の1.3mM(3.9mg/mL)溶液を、50%DMF、50%ストックトリス緩衝液中で6.2mgのペプチドおよび1.6mLの溶液を使用して調製した。AP527濃度をNanoDrop(商標)2000c分光計(Thermo Fisher Scientific)で13,940M
-1cm
-1の消衰係数を使用して280nmでチェックした。マイクロピペットを使用して、適切な量のBMOEを含むDMF原液をペプチド溶液に添加し、約0.5mol、AP527に対するBMOEのEq.比を達成した。溶液を1000rpmで、室温で約16時間混合し、その時点で反応完了を超高速液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)を使用して確認した。少量(正確な重量は重要ではない)のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(Sigma Aldrich)をシンチレーションバイアルに添加し、溶液を1000rpmで、室温で1時間混合し、全ての望まれない、ジスルフィド結合二量体副産物を分解させた。次いで、溶液をMilliQ DI H
2Oで3倍希釈し、-80℃フリーザー内で凍結させ、凍結乾燥した。粗二量体を逆相-HPLC(Waters XSelect(商標)CSH C18 OBD Prep Column)により精製した。精製二量体をLCMSにより確認し、凍結乾燥し、-80℃で保存した。
【0140】
AP設計物のMalPEG1二量体化のための方法
【化7】
36mM(9.6mg/mL)1,1’-(2,2’-オキシビス(エタン-2,1-ジオイル))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(MalPEG1;Abosyn)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(DMF;Millipore Sigma)の原液を2mLエッペンドルフチューブにおいて調製した。MalPEG1を秤量し(4.8mg)、2mLエッペンドルフチューブに移し、0.5mL DMFをマイクロピペットで添加した。溶液を3000rpmで(FisherBrand)約1分間ボルテックスし、次いで、完全溶解が達成されるまで繰り返して反転させた。0.1M、pH8トリス緩衝液の原液を50mLコニカルチューブ中で調製した:0.444gのTrizma HCl(Sigma Aldrich)および0.265gのTrizma塩基(Sigma Aldrich)を50mLチューブに添加し、50mL Milli-Q DI H
2Oに溶解した。pHをpHプローブ(Mettler Toledo)で確認し、pH紙(Fisher Scientific)で二重チェックした。スターラーバーを有する20mLガラスシンチレーションバイアル中、AP527の0.79mM(2.3mg/mL)溶液を、50%DMF、50%ストックトリス緩衝液中、9.5mgのペプチドおよび4.14mLの溶液を使用して調製した。AP527濃度を、NanoDrop(商標)2000c分光計(Thermo Fisher Scientific)で13,940M
-1cm
-1の消衰係数を使用して280nmでチェックした。マイクロピペットを使用して、適切な量のMalPEG1を含むDMF原液をペプチド溶液に添加し、約0.5mol、AP527に対するMalPEG1のEq.比を達成した。溶液を1000rpmで、室温で約16時間混合し、その時点で、反応完了を超高速液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)を使用して確認した。少量(正確な重量は重要ではない)のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(Sigma Aldrich)をシンチレーションバイアルに添加し、溶液を1000rpmで、室温で1時間混合し、全ての望まれない、ジスルフィド結合二量体副産物を分解させた。次いで、溶液をMilli-Q DI H
2Oで3倍希釈し、-80℃フリーザー内で凍結させ、凍結乾燥した。粗二量体を逆相-HPLC(Waters XSelect(商標)CSH C18 OBD Prep Column)により精製した。精製二量体をLCMSにより確認し、凍結乾燥し、-80℃で保存した。
【0141】
バイオフィルム培養およびアッセイ
一晩培養物をLB培地中、約18時間増殖させた。細菌を遠心分離により8000xgで3分間収集し、YESCAブロス(53)+4%v/vDMSO中で再懸濁させ、600nmで0.1の光学密度まで希釈した。ペプチドストックを水に溶解し、濃度をNanoDrop(商標)(Thermo Scientific;Waltham、MA)により決定した。20μLのペプチドストックおよび/または無菌ddH2Oを、最終ペプチド濃度が0、2、4、10、または16μM(二量体ペプチドについては0、1、2、5、または8μM)となるように無菌48ウェルプレートの各ウェルに添加し、次いで、180μLの希釈細菌培養物を上面に添加した。プレートをカバーし、プラスチックバッグ内に密封し、26℃で48時間インキュベートした。増殖後、浮遊細胞および培地を除去し、バイオフィルムを1回250μLのPBSですすいだ。浮遊細胞を沈降させ、PBS中で再懸濁させ、浮遊およびリンス試料の両方の光学密度を600nmで決定し、細胞密度を推定した。PBS溶液を除去し、バイオフィルムを250μL PBS+20μM ThTに再懸濁させた。バイオフィルムを、激しいピペット操作(30x/ウェル)、超音波処理3分、およびプレートシェーカー上で1分によりホモジナイズした。次いで、100μLの各バイオフィルム懸濁液を、プレートリーダー(PerkinElmer;Waltham、MA)における測定のために黒色壁、クリアボトム96ウェルプレートに移した。ThT蛍光をアミロイド形成の代理として438/495nmで測定し、バイオフィルム吸光度を600nmで測定し、細菌細胞密度を推定した。UTI89 WTについては、バイオフィルムThT蛍光値を、ペプチドを含まない対照の平均値に対して正規化し、次いで、UTI89ΔcsgA試料の平均蛍光値を、非特異的結合を説明するために、減算した。抗生物質感受性試験の場合、バイオフィルムを同じように培養したが、100μLのYESCAまたは100μLの、900μg/mL Gmが補充されたYESCAをインキュベーションの終わり6時間前にウェルに添加した。インキュベーション後、浮遊細胞および培地を除去し、バイオフィルムを1回無菌PBS中ですすいだ。次いで、バイオフィルムを無菌PBSに再懸濁させ、超音波処理により5秒間、氷上でホモジナイズし、次いで、ドロッププレート方法によるCFUプレートカウントのために10倍単位で希釈した。
【0142】
細菌の免疫細胞に対する感受性を評価するために、緑色蛍光大腸菌UTI89 SLC-719のバイオフィルムを、YESCAブロス+4%DMSO中48時間、48ウェルポリスチレンプレートにおいて26℃で増殖させた。浮遊細胞および培地を除去し、バイオフィルムを1回無菌PBSで洗浄した。RAW264.7マクロファージ細胞を完全培地(DMEM+10%ウシ胎仔血清+1Xペニシリン/ストレプトマイシン)中で、継代12±2まで増殖させ、CellTrace(商標)Red(Thermo Fisher;Waltham、MA)で染色し、FACS緩衝液(PBS+5%FBS)に再懸濁させた。コインキュベーションでは、250μLの染色マクロファージ懸濁液を、各バイオフィルムの上面に、1:100のMOI(マクロファージ:細菌)で適用した。浮遊細菌およびマクロファージを同じ比で別個にコインキュベートした。コインキュベーションは1時間37℃で進行し、その後、細胞およびバイオフィルムを優しく擦ることにより剥離させた。
【0143】
考察
ここで記載される新規クラスの二量体α-シート設計物は、哺乳類および細菌の両方の異なるアミロイド系にわたって、単量体対応物を超える著しい改善を提供し、ならびにそれらの改善された結合のために異なる用途に適用可能である。
【0144】
【0145】
実施例2.AP表面コーティングは材料上での線維形成を阻害する
要約
バイオフィルムは医療装置バイアビリティーにとって大きな脅威のままであり、というのも、これらの表面結合細菌がインプラント拒絶および難治性感染につながる可能性があるからである。そのため、医療装置材料のための人工コーティングは、バイオフィルム病原性の局面を特異的に標的とする化学物質を使用しなければならない。この研究において、我々は、合成α-シートペプチドの予防、抗感染特性を、それらを医学的に関連する材料の表面にグラフトさせることによって証明している。ポリドーパミン(PDA)コーティングは、様々な基材上でペプチドを表示する好都合なコンジュゲーション戦略として機能し、機能性生体材料の防汚特性を、試験生物として尿路病原性大腸菌バイオフィルムを使用して証明した。
【0146】
序論
特殊材料製造と組み合わせた、現代医療技術、例えば麻酔および抗生物質療法の開発により、多種多様な疾患および障害の外科手術による治療が可能になった。不運なことに、過去数十年間における侵襲性手順の増加は、医療関連感染の対応する増加を伴い、これらの感染の大半は、手術部位上または内でのバイオフィルム形成に端を発する可能性がある。
【0147】
成熟バイオフィルム構造物は、細胞外マトリクスを構成する3つの材料:水和多糖、細胞外DNA、およびタンパク質の各々の物理化学的寄与に起因する。特定のサブセットのマトリクスタンパク質、機能性アミロイド線維は、様々な病原体の間で高度に保存され、この複雑な生物学的材料内の構造的足場として機能する。
【0148】
ドーパミン(
図7A)は重合して、多種多様の基材上でPDAの薄い、均一なコーティングを形成する。PDAが表面上に堆積されるとすぐに、それはそのカテコール部分の複数の酸化キノン形態を表し、それは次いで、アミンまたはチオールとの反応を受け、共有結合によりグラフトされた機能層が形成される(
図7B)。さらに、PDAはそれ自体、親水性、非汚損表面を提示し、それは、非常に疎水性の材料上であっても濡れ性を付与することができる。
【0149】
この研究において、PDAグラフトα-シートペプチド(PGAP)は、様々な表面に適用することができる新規抗バイオフィルムアプローチとして提示される。簡単で有効なプロセスにより、合成α-シートペプチドを有機および無機材料基材に連結させ、それらは、複数の培養モデルにおいて、バイオフィルムマトリクス中のカーリー(curli)アセンブリを妨害することにより、尿路病原性大腸菌の付着を防止した。PGAP材料はまた、医療用インプラントに望ましい品質を有し:それらは哺乳類細胞に対し無毒性であり、それらは経時的に活性を維持する。我々が知る限りでは、これは材料コーティングにおける抗アミロイド活性の最初の証拠であり、ここで提示された結果は、様々な材料表面上でのバイオフィルム形成の防止におけるα-シートペプチドの有用性を確立する。
【0150】
結果
PDAは合成α-シートペプチドの表面への共有結合を可能にする
バイオフィルムは事実上全ての型の医療装置インプラント、いくつかの医学的に関連する材料イタニウム(itanium)(TiO
2)、整形外科用インプラントのために使用される無機材料;ポリプロピレン(PP)、合成縫合糸においてしばしば使用される有機材料;ならびに、ポリウレタンおよびガラスに加えて、カテーテルにおいて最も一般的に使用されるシリコーン上で形成する。PDAの堆積は水溶液中アルカリ性pHで自然に起こる
33。清浄な基材をドーパミンHClの溶液(50mM トリス中2mg/mL、pH8.5)に24時間、300rpmで振盪しながら浸すことは、表面をPDAの薄膜で完全にコートするのに十分であった。ペプチドグラフティングについては、125μMの合成α-シートペプチド溶液(AP90またはAP193;P1およびBSAは、対照として機能した)をPDAコート基材に4時間25℃で適用し、次いで4℃に一晩、約18時間の総反応時間の間移動させた。ペプチド溶液を除去し、完全に形成したPGAP(
図7B)を使用前に滅菌水で完全にすすいだ。
【0151】
ペプチドのPDA表面へのグラフティングの成功を2つの方法により確認した。最初に比色分析アッセイ(BCAアッセイ;Thermo Fisher)により、カップリング効率および表面密度を推定した。96ウェルPPマイクロタイタープレートをPDAでコートし、以上のようにペプチドと共にインキュベートし、次いで、グラフティング後の溶液中のペプチドの濃度を適用した濃度と比較し、カップリング効率を決定した。AP193は、同じ濃度のAP90(46%)よりも高いカップリング効率(68%)を示し、おそらく、表面へのその物理吸着を促進するAP193二量体配列中のより疎水性の側鎖の存在によるものであろう。よって、AP193dを、その後実験におけるグラフティングのためのα-シートペプチドとして選択した。カップリング後のAP193の表面被覆率を、PPプレート内のウェルの寸法および結合したペプチドの質量に基づき、約9μmol/cm
2と推定した。次に、PGAP表面上のAP193の到達性(96ウェルPPプレート)を機能化PGAPをAlexaFluor(登録商標)488-コンジュゲートPac53抗体をもちいてプロービングすることにより決定し、これは、AP193ヘアピンの1つのストランドを認識する。プレートリーダーにおける免疫蛍光測定および蛍光顕微鏡法により、表面への十分なペプチド結合が明らかになった(
図8A、B)。AP193はPDAなしであっても、PP表面へのいくらかの非特異的吸着を示したが、PDAによるプレコーティングは結合したペプチドの量を実質的に増加させた(
図8A)。これはPDAにより、非特異的物理吸着およびペプチドアミン基とPDAキノン間の特異的共有結合の両方が可能になったという事実に起因した。
【0152】
PGAP材料は細菌バイオフィルム形成を阻害する
PP表面上でのPGAPの良好な付着およびアベイラビリティは必ずしも、グラフトペプチドの活性を確実なものにせず、そのため、さらなる試験を実施して、PGAPはバイオフィルム形成を、懸濁液中の合成α-シートペプチドと同様に、阻害することができたかどうか決定した。UPECバイオフィルムをPGAP表面上で48時間、EMにおいて(26℃、YESCAブロス+4%DMSO)頑強なアミロイド生成を引き出す(illicit)ことが知られている条件下で培養し、次いでバイオフィルム付着度をいくつかの方法により評価した。最初に、蛍光大腸菌UTI89(SLC-719株)
41をPDA/AP193、PDA/P1、PDA単独で機能化された、またはコーティングなしの96ウェルPPプレートにおいて培養し、得られたバイオフィルムを蛍光顕微鏡法およびクリスタルバイオレット(CV)染色を用いて評価した。
図9A-Dに示されるように、AP193 PGAPは実質的にPP表面の汚損を低減させ、PDA単独またはランダムコイル対照ペプチド、P1で機能化したPDAと比較して、プレートには非常に少ない細菌が付着した。これらの観察結果を、CV染色により確認し、これにより、AP193が機能性コーティング中に存在する場合の、著しく少ないバイオフィルム付着(
図9E)ならびに裸眼で視認可能な汚損が非常に少ないこと(
図9F)が証明された。共焦点顕微鏡法により、TiO
2上で表示されたPGAPについての同様の特性が明らかになり;これらの材料はまた、PDA単独、BSAによる機能化PDA、無コートTiO
2と比較して減少したバイオフィルム被覆を示した(
図10)。
【0153】
医療ケア関連大腸菌感染は典型的には尿路内で現れ、それはシリコーンカテーテルの表面上でのバイオフィルム形成に関与する。そのため、シリコーンチューブは、PGAPアプローチおよびバイオフィルム発生に関するその効果の評価のための臨床的に関連する基材として実行した。PDAコートシリコーン片を、蛍光大腸菌UTI89 SLC-719の培養物中に48時間(以上で記載されるカーリー(curli)誘導条件)浸し、それにより、シリコーンはバイオフィルムに包まれた。次いで各片を注意深くすすぎ、緩く結合した細胞を除去し、無菌PBSのチューブに移し、1分間超音波処理し、付着バイオフィルムを完全に脱離させた。プレートリーダーでの蛍光測定により各バイオフィルム懸濁液の細菌密度を決定し、AP193 PGAPシリコーン上で形成されたバイオフィルムはPDA対照またはシリコーン単独上のものよりも著しく低密度であった(
図11A)。さらに、PGAPシリコーン材料は、抗生物質に対するバイオフィルムの感受性を増加させた。この場合、細菌密度アッセイと同じ培養条件を使用したが、Gm(300μg/mL)をインキュベーションの終わり前6時間に試料の半分に添加した。細菌の抗生物質死滅は、PDA単独を有する、またはコーティングなしのシリコーンとは対照的に、バイオフィルムをPGAPシリコーン上で増殖させた場合著しく増加した(
図11B)。
【0154】
長期機能性の試験として、PGAPシリコーンをイムノアッセイにより探り、バイオフィルムがすでに材料表面上に発生した後のAP193の到達性を決定した。バイオフィルム密度アッセイ(
図11A)からのPGAPシリコーン片は事実上、超音波処理ステップ後付着細菌を有さなかったが、小片をさらに30秒間新鮮PBS中でボルテックスし、完全脱離を確保した。これらの「使用済み」材料を次いで微量遠心管に移し、そこで、それらをELISA様様式でPac53一次抗体および抗IgG-HRP二次抗体でプロービングした。反応停止させた反応溶液の吸光度測定により、対照と比較して、PGAP材料内の表面上に残るかなりのAP193が明らかになった(
図11C)。成熟バイオフィルムの発生および除去後での、PGAP表面上のアクセス可能な-おそらく、活性なα-シートペプチドの保持はこれらの材料の長期バイアビリティの可能性を示す。
【0155】
PGAP材料におけるAP193の安定性をさらに評価するために、PPプレートのいくつかのウェルをPDAおよびペプチドを用いて調製し、次いで、材料を生理食塩水(PBS)か、またはプールしたヒト血漿(PHP;PBS中50%v/v)溶液中で37℃にてインキュベートした。溶液を24時間毎に最大5日まで、引き抜き、取り換え、ウェルをインキュベーションの終わりにPac53抗体でプロービングし、表面上のアクセス可能なα-シートペプチドの量を定量した。AP193とPac53の間の結合シグナルは、PGAP材料がPBSまたはPHP中でインキュベートされたかに関係なく、経時的に減少しなかった(
図12A)。結合シグナルの大きさは、PBSと比較して、PHP中でインキュベートしたPGAPについては実質的に低く、血漿溶液中のタンパク質による表面結合AP193の非特異的遮蔽が示唆された。それにもかかわらず、PGAPの表面上のα-シートペプチドは、インキュベーションの過程を通して、機能性結合部分を表示し続け、インプラント材料としてのそれらの長期使用の可能性が示される。実際、PGAPの5ヶ月間、PBS中4℃でのインキュベーション後であっても、AP193はPac53により容易に検出可能であった。最後に、比色分析MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)細胞生存率アッセイを適用し、PGAPのマウス胚性線維芽細胞(3T3)との適合性を決定した。ポリスチレン組織培養プレートを前のようにPDAでコートし、次いで、AP193およびP1を表面にグラフトさせた。3T3細胞を固定希釈で各調製ウェルに三連で適用し、24時間37℃で増殖させ、その後、MTTの適用、細胞溶解、および比色分析測定を実施した。PGAPコーティングは、対照と比較して3T3細胞の生存率に著しくは影響せず(
図12B)、機能材料と潜在的患者宿主の間の良好な適合性が示された。
【0156】
考察
ここで提示した結果は、医用材料上でのグラフトさせた合成α-シートペプチドの効力を示し、それらの、様々な表面化学物質、例えば、シリコーンカテーテル、チタンインプラント、およびポリプロピレン装置への適応性が示される。PGAP材料は、尿路病原性大腸菌バイオフィルムのマトリクス内のカーリー(curli)含量を激減させ、強力な防汚効果につながった。PGAP表面上で増殖させたバイオフィルムは、不十分な接着および可溶性表現型を示し、PDAコーティングアプローチは、材料表面に対する特異性を有する抗アミロイド機能性を可能にした。それらの効力に加えて、PGAPコーティングは、合成α-シートペプチドの分散または全身投与を超える複数の改善の可能性を示す。第1に、合成α-シートペプチドのPDAへの共有結合は、表面を安定化し、機能分子のクリアランスを防止する。第2に、PGAP機能性の材料表面への特異的な制限は、治療効果を達成するのに必要とされるペプチドの量を低減させる。最後に、シリコーンPGAP上でのバイオフィルムチャレンジ後のAP193ペプチドの長期安定性により、これらの材料はそれらの最初の埋め込み後機能性を長く維持することが示される。
【0157】
材料および方法
PGAPの生成
PDAによるコーティング前に、全ての材料を前に確立したプロトコルに従い、完全にクリーニングした43。簡単に言うと、チタンディスク(医療用、1”直径;Sigma)を、5分間、各々、アセトン、エタノール、および水中で超音波処理によりクリーニングし、次いで、蒸留水中で完全にすすいだ。シリコーンチューブをメスにより切断し約2mmx2mm片とし、次いで70%エタノール中で10分間洗浄した。96ウェルPPプレート(Grenier Bio-one; Monroe、NC)はすでに無菌であり、さらなるクリーニングに供されなかった。コーティングプロセスを開始するために、2mg/mLのドーパミンHCl(Sigma)を10mMトリスHCl、pH8.5に溶解し、基材に24時間300rpmで振盪させながら適用した。チタンおよびシリコーンについては、材料をドーパミン溶液を含むペトリ皿に浸し、その一方、96ウェルプレートを、各ウェルを165μLドーパミン溶液で充填することによりコートした。インキュベーションにより、溶液の暗色化および全ての表面上での薄い、褐色PDAフィルムの堆積から明らかなように、ドーパミンの重合につながった。次いで、基材を5回蒸留水ですすぎ、空気乾燥させ、真空チャンバ内30℃で1時間、完全に乾燥させた。PDAを有さない対照基材もまた、同じプロトコルに従い、だが、ドーパミン溶液の代わりにトリス緩衝液中でのインキュベーションを用い作製した。
【0158】
全てのペプチドを、前に報告されたプロトコル
24に従い合成し、精製し、凍結乾燥させたペプチドを適切な緩衝液に使用直前に再懸濁させた。AP193二量体化が溶液中で前に確立したプロトコル
44を使用して起きた。簡単に言うと、0.25mgof凍結乾燥したAP193単量体を4μLのDMSOに溶解し、次いで、約300μLの50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中で希釈し、ペプチドの濃度を250μM(単量体濃度)とした。AP193ペプチド溶液を37℃で2時間インキュベートし、412nmでのEllman試薬(Thermo Fisher)による吸収の欠如から明らかなように、ジスルフィド結合の完全酸化が得られた。AP90はジスルフィド結合を含まず、よって、50mMリン酸カリウム、pH8.5中250μMの濃度まで再懸濁させた。同様に、BSAを、精製2mg/mLストック(Thermo Fisher)から、リン酸カリウム緩衝液中0.3mg/mLまで希釈した。ペプチド(またはBSA、示された場合)の溶液を清浄な、PDAコート基材に4時間25℃で適用し、次いで、一晩4℃でおよそ18時間の総反応時間の間反応させ続けた。96ウェルPPプレートの場合、50μLのペプチド溶液を各ウェルにアリコートして、カップリングを開始させた。チタンディスクについては、ペプチド溶液の20μLスポットをディスクの特定領域にピペッティングし、インキュベーションを、蒸発を防止するために加湿チャンバ内で実施した。調製したシリコーン片を80μLペプチド溶液を有する無菌1.5mLエッペンドルフチューブに浸した。ペプチド溶液を除去し、基材を3回滅菌水で洗浄した。ペプチド濃度(グラフティングおよび洗浄)を適用した濃度とPierce BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher)を使用して、カップリング効率についての単純な計量を使用して比較した:
【数2】
【0159】
ペプチド安定性評価
抗AP193ポリクローナル抗体(Pac53、ウサギ由来)を使用して、ペプチドグラフティングの成功を確認し、PGAPの安定性を決定した。グラフティング確認のために、96ウェルPPプレート上のPGAPを3%w/vBSAを含むPBS-T(PBS+0.05%v/vTween-20)で1時間室温で振盪させながらブロックし、次いで、100μL Pac53溶液(PBS-T+3%BSA中1:10,000)を、1時間室温で振盪させながら適用した。3洗浄後、AlexaFluor(商標)488標識を有するウサギIgGへの二次抗体(Abcam; Cambridge, UK)を45分間、室温で振盪させながら適用し、その後、蛍光顕微鏡法およびプレートリーダー測定による結合評価を実施した。安定性試験については、96ウェルPPプレート上のPGAPを100μLのPBSまたは100μLのプールしたヒト血漿(PBS中50%;Sigma)で充填し、被覆し、37℃で振盪なしでインキュベートした。24時間毎に、合計5日のインキュベーションの間、PBSおよび血漿を引き出し、置換した。サンドイッチELISAを、Pac53および抗ウサギIgG二次抗体(Abcam)を用いて実施し、インキュベーション中に表面から放出されたペプチドの量を推定した。高知のAP193濃度(NanoDrop(商標)により決定)は、同じプレートにおける標準として機能し、比色分析定量を、1-Step Ultra(商標)TMB ELISA Substrate Solution(Thermo Fisher)および2M H2SO4クエンチング、続いて、プレートリーダー(Perkin Elmer)における吸光度測定を使用して実施した。
【0160】
「使用済み」PGAPシリコーン片については、同じ抗体および試薬を以上のように使用した。簡単に言うと、使用済みシリコーン片を30秒間新鮮PBS中でボルテックスし、完全細菌脱離を確保した。次いでそれらを1.5mL微量遠心管に移し、そこで、それらを200μLのBSA溶液で一晩ブロックし(3%w/vを含むPBS-T)、2時間室温で、200μLのPac53ポリクローナル抗体(PBS-T+3%w/vBSA中1:10,000)を用いてプロービングし、3回、500μLPBS-T中でボルテックスしながら洗浄し、2時間室温で200μLのウサギIgGに対する二次抗体(Santa Cruz Biotechnology)を用いてプロービングし、3回、500μLのPBS-T中でボルテックスしながら洗浄し、次いで2時間、200μLの1-Step Ultra(商標) TMB ELISA Substrate Solution(ThermoFisher)を用いて発色させた。50μLの各試料を2連でマイクロタイタープレートに移し、反応を50μLの2M H2SO4で停止させ、その後、プレートリーダー(PerkinElmer)において吸光度測定を実施した。
【0161】
バイオフィルムチャレンジアッセイ
大腸菌UTI89 SLC-719をYESCAブロス+4%DMSO中で調製した45。PPプレートに120μL/ウェルの希釈培養物を接種し、チタンディスクをペトリ皿に入れ、5mL希釈培養物に浸し、シリコーン片を48ウェルポリスチレンプレートのウェルに入れ、400μLの希釈培養物に浸した。全てのバイオフィルムを振盪なしで48時間26℃で増殖させた。増殖後、浮遊細胞および培地を除去し、バイオフィルムを1回PBSですすいだ。PPプレートを4%パラホルムアルデヒドで固定し、Zeiss Axio(商標) Observer (Carl Zeiss AG)倒立蛍光顕微鏡上で撮像し、一方、TiO2ディスクをガラススライド上に油を塗ったカバースリップを用いて載置し、Zeiss LSM 510共焦点レーザー走査顕微鏡上で撮像した。CVアッセイでは、120μLクリスタルバイオレット染色液を各ウェルに1時間適用し、その後、除去し、PBSですすぎ、一晩乾燥させた。乾燥させた、CV染色バイオフィルムを120μLの30%酢酸に再懸濁させ、550nmでの吸光度測定は、バイオフィルムバイオマスの粗測定として機能した。シリコーン付着性アッセイについては、バイオフィルム被覆シリコーン片を300μLの無菌PBSを含む1.5エッペンドルフチューブに移し、氷上で1分間超音波処理し、付着細菌を脱離させた。次いで、バイオフィルム懸濁液を黒色96ウェルプレート中にアリコートし、488nmでの蛍光(GFP)は、付着細胞の数の推定値として機能した。シリコーン付着性アッセイにおける抗生物質チャレンジについては、バイオフィルムで被覆したシリコーン片を、インキュベーションの最終6時間中に、新鮮YESCA培地を、300μg/mLのGmと共に、またはそれなしで含むウェルに移した。次いで小片を1回200μLの無菌PBS中ですすぎ、緩く付着した細菌、培地、および抗生物質を除去し、次いで小片を以上のように超音波処理し、付着細菌を脱離させた。バイオフィルム懸濁液を無菌PBS中で段階希釈し、ドロッププレート法46に従い寒天プレート上に列挙させた。コロニー数を逆算し、各シリコーン片上の細菌の総数を決定し、次いで、これらのカウントを、シリコーン片の表面積に従い正規化した(CFU/mm2)。
【0162】
細胞毒性評価
PGAPの哺乳類細胞との適合性を比色分析MTTアッセイを用いて評価した。マウス線維芽細胞(NIH/3T3細胞;ATCC;Manassas、VA)を完全培地(DMEM+10%ウシ胎仔血清+1Xペニシリン/ストレプトマイシン)で70%集密度まで培養し、次いで、細胞をトリプシンにより脱離させ、血球計数器により計数した。その一方、無菌96ウェルポリスチレン組織培養プレートを以上で記載される通りPDAでコートし、AP193またはBSAで機能化した。調製したプレートの滅菌水を用いた完璧な洗浄後、150μLの、新鮮完全培地中の3T3懸濁液(5x104細胞/mL)を各ウェルに適用し少なくとも3つのウェルを1条件あたり調製した。1x106~1x103細胞/mLの範囲の段階希釈物もまた、三連で同じプレートに添加し、検量線を提供し、アッセイの直線範囲を決定した。37℃での24時間の増殖後、37.5μLのMTT溶液(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド;PBS中5mg/mL;Sigma)を各ウェルに添加し、プレートをさらに4時間インキュベートした。次いで、細胞をカオトロピック緩衝液(20%SDS、50%DMF、1%酢酸、0.2%HCl)を用いて溶解し、一晩インキュベートし、細胞内オキシドレダクターゼ酵素を放出させた。これらの酵素はMTTを黄色から暗紫色に変換させ、それをプレートリーダー上、570nmで吸光度により測定し;より高い吸光度はより大きな細胞生存率を示した。
【0163】
【0164】
実施例3.SOBA:初期分子病態生理に関連するバイオマーカーを標的にする可溶性オリゴマー結合アッセイ
序論
アルツハイマー病(AD)は50を超えるアミロイド疾患の1つであり、現在、米国では死亡原因の第6位であり、580万を超える米国人に影響を与え、有償および無償ケアにおいて2050までに$1.1兆を超えるコストがかかると予測される。ADはアミロイドベータ(Aβ)ペプチドの、低分子量(LMW)オリゴマーの不均一な動的分散への凝集により特徴付けられ、それは、高分子量(HMW)、βシートリッチ前原線維にまで進行し、最終的には、特徴的なクロスβプリーツシート原線維の形成という結果となり、それは、ニューロンをコートし、アミロイド疾患の病理学的特徴となる。最近の研究により、LMW可溶性オリゴマーはADにおいて主毒物となり、それは疾患進行と強く相関するが、プラーク負荷はそうではないことが示唆される。興味深いことに、疾患症状は、Ab凝集の後期(その時には、プラークがすでに沈着し、ニューロンへの主要ダメージが起きている)まで、提示し始めない。現在の検査は、前原線維および原線維が支配する疾患後期におけるADを診断することができるにすぎず、これは介入して、疾患を効果的に治療するには遅すぎる。実のところ、後期Abeta凝集体を標的にするいくつかの薬物候補は大規模、多施設臨床試験において成功していない。軽度認知障害(MCI)ステージにおける初期診断シナリオの場合、$7.9兆超が、医学的長期ケアのみで節約できるであろう。
【0165】
我々は、アルファ-シート二次構造を含む様々なアミロイド系において起こる最初期の構造変化に焦点をあてており、それは疾患の初期段階におけるLMWオリゴマーの凝集および毒性に関与する主要成分であると我々は考える。分子レベルで起こる初期ミスフォールディングに焦点を当てることにより、我々は、凝集を阻害し、毒性を軽減し、毒性オリゴマーをインビボで捕捉し、AD患者においてアルファ-シート含有毒性種を症状が出る前に検出する診断薬として作用する安定なアルファ-シートペプチドを設計した。我々の診断テストは可溶性オリゴマー結合アッセイ(SOBA)と呼ばれ、それはELISA様アッセイであり、アルファ-シートペプチドがプレートに共有結合により連結され、抗体ではなく捕捉剤として使用される。我々は、96ウェルポリスチレンプレートを発症前および症候性AD診断において使用するためのペプチド結合について機能化するためにポリドーパミン(PDA)堆積を使用する新規技術を記載する。加えて、我々は、将来の治療介入の場合の改善尺度として使用することができるであろう二次診断的検証のためのアルファ-シートに基づくPETトレーサーを記載する。
【0166】
結果
SOBAはアルファ-シート含量を、合成Abeta調製物ならびに動物または患者由来試料の両方において、標準サンドイッチELISAプロトコルを使用し、アルファ-シートペプチドを捕捉剤として用いて測定するELISA様アッセイである。この関連で、SOBAは、相補性により毒性種に結合することにより、適用試料におけるアルファ-シート構造の直接レポーターである。PDAを表面コーティング分子として使用し、アルファ-シートペプチドをプレートに共有結合により連結させる-Nuncイモビライザー(商標)アミノプレートの専売連結メカニズムの代わり-と、アルファ-シートペプチドの取り込み率が21mg/mlから196mg/ml結合総ペプチドまで増加した(
図13A)。捕捉ペプチドの増加した密度により、10nMから1nMの改善された感度が得られた(
図13B、C)。PDAコーティングなしで、TMB比色分析検出の代わりに化学ルミネセンスを使用すると、検出が10nMから100fMまで減少した(
図13D)。PDAコーティングを化学ルミネセンスと組み合わせると、1fM-100aM検出へのさらなる減少につながった(
図13E、F)。よって、二量体アルファ-シート捕捉ペプチドの共有結合を用いたPDAコーティングの付加および化学発光発生は以前の方法の感度を著しく上回り、ブランクでの検出の最低限界を有した。重要なことには、特異性は全てのプロトコルを通して、100pMで適用されたAbeta42の単量体および原線維(protofibrillar)形態として維持され、100pMで適用された毒性オリゴマー(約700,000のSOBAシグナルになる)に比べ、バックグラウンドと同等な本質的にヌルシグナルとなった(<10,000SOBAシグナルは、21,943の検出シグナルカットオフの下限未満である)(
図13E)。
【0167】
Abeta42毒性オリゴマーが添加されたCSF、血漿およびPBS中の捕捉剤のディスプレイを増加させるためにポリマーコーティングを介してプレートに共有結合により連結された二量体AP捕捉剤を使用するSOBAアッセイの性能を確立した後(
図13における結果は添加血漿である)、患者試料を試験した。特に、毒性オリゴマーのレベルは血液中で非常に低く、それらはPDAコーティングおよび二量体捕捉剤の組み合わせなしでは検出できない。
【0168】
我々は、包括的な臨床評価に基づき分類した、310の個体由来の379の横断的および縦断的ヒト血漿試料を試験した:認知障害なしの対照(CO、n=221)、軽度認知障害AD型(MCI、n=45)、および中等度から重度のAD(n=102)、および他の非AD認知障害(非AD CI、n=11)。CO症例のうち、追跡臨床通院で、11が「コンバーター」であり、MCIに進行し:8がMCI(AD型)に(n=10、2の縦断的試料を含む)、3が非AD CIに進行した。379の試料は集計分析のために独立したものとみなされた。
【0169】
CO、MCIおよびAD群は同様の平均年齢およびほぼ等しい性別分布を有した。CO群にはSOBA値の二峰性分布があり:(1)ネガティブCO症例および(2)かなりのSOBAスコアを有し、後に、MCI(我々は前臨床ADと呼ぶ)、またはPC-ADに変わった個体(
図14A)。SOBAはCOとMCIとAD参加者の間で良好な区別を提供し、受信者動作特性分析により決定すると、カットオフ値は28,207であった。このカットオフを超える値はSOBAポジティブと、未満の値はSOBAネガティブと考えた(
図14A)。対応させたSOBAポジティブおよびネガティブ試料を区別するこのカットオフはAβ42オリゴマーが添加された血漿における検出限界と同様である(
図13E、F)。
【0170】
MCIおよびAD試料(n=147)に対するSOBAと臨床診断の間の一致は優れており、食い違いはたった1つであった。この場合、臨床診断はADであったが、血漿SOBA値は低かった(12,323±3503)。我々はSOBAか臨床診断が誤っているかを断定的に決定することはできず;神経病理学的結果は入手不可能である。CO群由来の13の試料が試験してポジティブであり、12/13が後年にMCIに進行することが確認された。血漿(およびCSF)中での毒性オリゴマーの検出とAD連続上にあることとの間に高い相関があり、対照とMCIおよびAD症例、ならびに症状が出る前に疾患を潜伏させる個体の間には頑強な区別があった。SOBAを用いて得られた頑強な区別は毒性オリゴマーに対する高い特異性によるものであった。比較のために、総Abeta42濃度もまた、これらの個体についてのCSF中で測定した;CSFは通常、血液に比べ優れた結果を提供し、[Abeta42]はMCIおよびADの確認のために最も広く使用されるバイオマーカーである。
図14Bに示されるように、Abeta42レベルはCO、MCIおよびAD症例について著しく重なり、COをMCI/ADから区別することはできない。よって、SOBAは試料中の総Abeta42を用いて追跡せず、ここで開発した改善のために、SOBAは選択的に、血液中の毒性オリゴマーを含むアルファ-シートを検出することができ、それは、前の方法を使用しては可能でなかった。比較のために、血液におけるSOBAは99%感度および99%特異性を提供し、非AD認知症症例はSOBA-ネガティブであり、CSF中のAbeta42は67%/65%感度および特異性を提供することに注意されたい。
【0171】
我々はまた、配列ではなく、構造に基づくことを示すために、別の捕捉ペプチド(AP530)を使用して、併せて、セイヨウワサビペルオキシダーゼレポータータンパク質を含む単一抗体およびブロッカーを洗浄ステップにおいて使用して、SOBAの一バージョン(次世代)を開発した。決定的に、PDAコーティングおよび二量体-ペプチドコーティングは保持されたが、試験自体は、高速で、含むステップは少ない。このバージョンのSOBAを用いたテスト(
図14C)は
図14Aのものに相当する結果を提供したが、それらはまた、新規コホート、新鮮試料にまで及び、ドナーにおける民族の多様性を増加させた(試料2-3歳)。ここで再び、感度および特異性は優れている(シグナルの値はわずかに低く、というのも、新規バージョンは、オリジナルELISA様アッセイにおける二次抗体と関連する非特異的シグナルが少なくなるという結果になるからである)。加えて、これらの試料がより新しいものとなるにつれ、CSF中のAbeta42の検出のために改善された技術を利用した。
図14Dで見てわかるように、対照とAD患者の間の重なりは残っており、これらの2つの群間では、この広く使用されるADバイオマーカーを使用して、区別することはできない。
【0172】
SOBAアッセイはアルツハイマー病と関連するアミロイドベータ毒性オリゴマーの検出に制限されない。それはまた、パーキンソン病(PD)と診断された患者由来のCSFおよび血漿についても試験されている。この場合、2-抗体PDA/二量体バージョンのアッセイが採用されたが、Abeta抗体はαシヌクレイン抗体に置き換えられ、というのも、αシヌクレインの毒性オリゴマーがPDおよびレビー小体認知症(LBD)と関連するからである。PD患者由来のCSF試料は非常に強いシグナルを提供した(PBS中で1:10希釈)(
図14E)。以上で記載される血漿研究からのCOおよびAD被験体由来のCSF試料を評価し、それらはSOBAネガティブであった。AD試料はαシヌクレイン抗体についてネガティブであったが、それらはAD、CSFおよび血漿の両方に対して、Abeta抗体を使用してポジティブであった。対照群における被験体のいく人かが、剖検を実施した後最大16年までにPDおよび/またはLBDと診断されたこともまた興味深かった。剖検所見を見た後、我々は、彼等が認知障害ではなく、SOBA-ポジティブであった場合、彼等の保存CSFを試験した。これらの結果は、SOBAは、対照およびAD症例由来のPDとLBDを区別することができ、ならびに症状が出る前に毒性オリゴマーを検出することができることを示す。
【0173】
我々はまた、PET画像法により毒性可溶性オリゴマーを追跡するために放射性トレーサを有するアルファ-シートペプチドを設計した。我々のアルファ-シートペプチドは小さく、非常に可溶性であり(>50mg/ml)、血液脳関門を横切って容易に輸送される。それらは凝集傾向ではなく、動物にとって無毒性である。この点を考慮して、我々はインビボでのPETスキャンのための18F-修飾アルファ-シートペプチドを使用する検出診断を開発している。アミロイドプラーク(例えばフロルベタベン)を特異的に認識する他のアミロイドPET-トレーサーに比べ、我々のアルファ-シートPET-トレーサーは脳内の毒性、可溶性オリゴマーを標的にする。
【0174】
図15は、左にWT対照マウスおよび右にトランスジェニック発症前ADマウスを示す。注射の送達、投与およびタイミングおよび撮像は最適化されていないが、トレーサーが右の動物において確認でき、それは嗅球内にあると考えられる。別の研究は最近、Abetaオリゴマーと関連する別のADトランスジェニックマウス系統における嗅覚の異常およびマウスの末梢嗅覚ニューロンに影響する匂い検出を同定した。
【0175】
考察
アミロイド疾患のための診断法
上記SOBAを用いて対処される疾患領域に焦点を当てると、ADは治療の未来に困難な経路を提示し、というのも症状の提示はしばしば、生物学的損傷が起きた後、数十年であるからである。これにより、介入が有効となるには、それは個人または彼等の医者が疾患が存在している可能性があると示す前数十年に起こるべきであることが意味される。よって、AD治療における最も重要な因子は初期検出である。ADのための診断テストが提案されており、何十年も調査されているが、予後能力の観点から成功はほとんど、または、全くない。ほとんどのテストが、原線維または高分子量凝集体がすでに形成されたことを示すという点で、予想にすぎない。プラークは時として症状の提示よりも早く見られることがあるが、疾患過程においてうまく介入するには依然として遅すぎる。というのも、低分子量凝集体が毒性原因となり、何年もかけてダメージを与えているからである。さらに、認知正常人が何の症状もなくプラークを有する可能性もある。初期毒性種を検出することができる頑強なアッセイのための他の使用としては、前臨床動物試験(上記二量体阻害剤について実施される)におけるそれらの使用、ヒトにおける治療の効果をモニタするためのそれらの使用、およびトライアルにおける臨床エンドポイントとしてが挙げられる。
【0176】
パーキンソン病は非常に類似している。それは、その初期段階では正確に診断することができず、代わりに症状が重篤になってから発見される。しかしながら、この場合、早期発見と共に使用することができる治療がいくらかあるが;しかしながら、真に疾患修飾治療が依然として望ましく、そのためには、初期診断法が重要である。SOBA技術の2つの適用はどのようにして初期、発症前検出が可能であるかを強調し、後期における頑強な、非侵襲的診断は、現在採用されている、よりコストのかかる、より主観的な評価およびより侵襲性のバイオマーカー(CSF、PET画像法)よりも好ましいであろう。というのも、特に、それらはアミロイド線維およびプラークが存在する疾患のより遅い段階について報告するからである。その結果として、我々はまた、PET画像法を介して毒性可溶性オリゴマー(プラーク形成に先行する)を追跡するための放射性トレーサを有するアルファ-シート設計物を設計した。
【0177】
材料および方法
アルファ-シートペプチドの合成
SOBAのためのAP193捕捉ペプチド(Ac-RGEmNyFwMNEYYGWtMnCkMGR-NH2)(配列番号8)を、Rinkアミド樹脂上でFmoc化学を用い、手動標準固相ペプチド合成およびHBTU/DIEA化学を使用して、ならびに、マイクロ波ペプチド合成を介してLiberty Blueペプチドシンセサイザー(CEM)およびOxyma/DIC化学を使用して生成させた。樹脂に結合したペプチドを開裂させ、側鎖をTFA/TIPS/DODT/H2O(92.5:2.5:2.5:2.5)で脱保護し、冷エーテルを用いて沈殿させた。粗ペプチドを逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC、Shimadzu)により、>98%純度まで精製した(Phenomenex Jupiter 5μm C18 300A LC分取カラム250x21.2mm)。精製ペプチドの質量および配列を質量分析(MS)により、Bruker Esquireイオントラップエレクトロスプレー質量分析計上で確認した。ペプチドのα-シート構造を円二色性(CD、Jasco J720)により確認した。ペプチドを凍結乾燥し、-80℃で保存した。
【0178】
合成Aβ42オリゴマー標準の調製
Aβ42(残基1-42、Aβとも呼ばれる)をERI Amyloid Laboratory, LLC(Oxford、CT)から入手した。我々はShea et al. (2019)の手順に従い、それらは以下に記載される。Aβをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP, Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)を使用してデシードし(deseeded)、アリコートした。アリコートをHFIP中1mg/mlで、超音波処理器浴内で5分間、続いて、25分氷上で超音波処理し、次のラウンドを5分超音波処理、続いて、最終ラウンドを25分氷上とした。次いで、得られた溶液をN2ガスの穏やかな流れ下で吹き飛ばし、SpeedVac(商標)濃縮器(Savant ISS110, ThermoFisher Scientific)を使用して2時間低温(無加温)設定で乾燥させ、これにより、単量体化Aβフィルムが得られ、これを-20または-80℃で保存した。
【0179】
凝集アッセイおよび合成毒性オリゴマーのためのAβストックを、フィルムアリコートを室温で(RT)5分間平衡化させることにより調製した。次いで、フィルムを、濾過した6mM NaOH(pH11.6、Sigma-Aldrich)を用いて0.75mg/mLまで溶解させ、はじいてフィルムが溶解したことを確認し、続いて、超音波処理を5分間実施した。この溶液を0.22μm Costar酢酸セルロース遠心分離機フィルタ(Sigma-Aldrich)にガラスピペットを使用して移し、7,000rpm(約4000xg)で2分間遠心分離した。次いで、この溶液を、ガラスピペットを使用して、エッペンドルフ微量遠心機チューブ(Sigma-Aldrich)に移し;ペプチド濃度をNanoDrop(商標)2000分光計(ThermoFisher Scientific)を使用して280nmで1490M-1cm-1の消衰係数を使用して測定した。得られた原液を25℃で4時間静置させ、その後、それを直ちに使用し、または4℃で必要になるまで(1週以下)保存した。ストックAβを、24時間、25℃でのプレインキュベーション直前に、75μMまで、pH7.4リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(10mMリン酸塩、130mM NaCl、および2.7mM KCl;Sigma-Aldrich)を使用して、前に記載されるように(13)、凝集の誘導期中に、希釈し、毒性オリゴマーを得た。試料を、インキュベーション後、氷上に置き、保存した。試料を25μMまで希釈し、その直後に、CDを実施し、α-シートスペクトルが得られたことを確認し、それは平らな、ヌルスペクトルにより特徴付けられる。平らなスペクトルが得られる。というのも、アルファ-シート構造は、局所αLおよびαRキラリティー間で交互に並ぶアミノ酸から構成されるからであり、それはCDによるシグナルのキャンセルにつながる。さらに、これらのオリゴマーをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により特徴付ける前の研究により、このプロトコルを用いて作成された毒性オリゴマーは、六量体および十二量体の混合物であることが示されたが、SECは低分解能法であり、これらの割り当ては確定的なものではなく、例えば、それらは、それらは六量体ではなく五量体である可能性もあることに注意されたい。SECを実施し、オリゴマー標準は低分子量種を含み、より高い分子量のβ-シート前原線維を欠いていることを確認した。単量体および前原線維試料もまた調製し、SOBAに適用し、α-シートオリゴマーへの結合の特異性を確認した。単量体をNaOH中で調製し、凝集を防止し、前原線維をAβ42のより長いインキュベーション、120時間から得た。SECおよびCDにより、単量体試料は実際単量体であり、無秩序/ランダムコイル構造を含んだことを確認した。同様に、前原線維試料はβ-シートであり、より高い分子量の無毒性凝集体を形成した。
【0180】
可溶性オリゴマー結合アッセイ(SOBA)
血漿中の毒性オリゴマーの検出のためのSOBAの設計
前のアッセイは、分子のリジン連結のために予め機能化したNuncイモビライザー(商標)プレートを、および、比色分析読み取りのために発色試薬を使用した。血漿中の低濃度のAβ42、および毒性オリゴマーはこのごく一部にすぎないという事実を考えると、我々は下記によりシグナルを増幅しようとした:(A)比色分析TMB試薬よりもむしろ化学発光発色試薬を使用する、および(B)我々の捕捉ペプチドのディスプレイを増加させるためにポリスチレンプレートのためのコーティングを開発し、これはシグナルをさらに増加させ、LOQをアトモル-フェムトモル(aM-fM、10-18-10-15モル)まで降下させた。その結果、SOBAについてのLOQ(ag/mL-fg/mL)は、抗体-捕捉剤を使用するほとんどのELISAアッセイ(pg/mL-ng/mL)よりも、3桁(103)を超えて高感度である。この感度は、血漿中のアルファ-シート毒性オリゴマーの量が低いことを考えると、重要であった。
【0181】
ポリドーパミン表面コーティングは共有結合により結合される捕捉ペプチドの量を劇的に増加させ、取り込みはNuncプレート上で21μg/mlから、PDAを用いると196μg/mLまで増加した(
図13A)。加えて、PDA機能化はシグナルを、PBS中の1nM適用Aβ42オリゴマーについて、TMB比色分析プロトコルを使用して、バックグラウンドレベルから10xバックグラウンドまで増加させた(
図13B、C)。PDA機能化なしでの、化学発光試薬単独の導入は、LODを100fMまで低下させた(PBS中)が、統計学的有意性が維持された(
図13D)。化学ルミネセンスの使用およびPDAコーティングによる我々のAP193捕捉ペプチドのディスプレイの増加の組み合わせは、LODを10aMまで減少させ、「オリジナル」TMBプロトコルを9-桁だけ著しく上回った(PBSおよびCSF中)(
図13)。血漿中での性能を決定するために、商業用プールヒト血漿(Innovative Research, Novi, MI)のAβ42オリゴマー添加試料を評価した。統計的に有意なシグナル(ブランクに対する)を血漿中1fMまで観察した(
図13E)。重要なことには、特異性が全てのプロトコルを通して維持された;100pMの高濃度で適用された単量体および前原線維型(protofibrillar)Aβ42は、添加血漿について示されるように、バックグラウンドと同等のシグナルという結果となった(
図13E)。
図13FはSOBA値対Aβ42オリゴマーの濃度のlog-logプロットを示し、LODは1fM(約4.51fg/ml)であり、これは21,943のSOBAシグナルに対応する。比較のために、毒性オリゴマー添加CSFのLODはより低く、0.1fM(または100aM)である。SOBAの開発および使用における詳細なステップは以下に提示される。
【0182】
合成Aβ TMB(比色分析)プロトコル-較正
ストックAβ(以上で記載される)を各実験について希釈し、PBS中75μMでプレインキュベートした。我々は、我々のAP193α-シート設計物を全てのSOBA実験に対する捕捉剤として使用した。AP193を最初にDMSO(Sigma-Aldrich)を用いて溶解し36mMとし、次いでCO3
2-緩衝液(pH9.6)を用いて36μMまで希釈し、37℃水浴インキュベーター中で2時間インキュベートし、ペプチドを二量体させた。これによりずっと良好な捕捉が提供され、シグナルが著しく促進される。100μLのAP193を、Nuncイモビライザー(商標)アミノ96-ウェルプレート(Corning, Corning, NY, USA)における全ての陽性対照ウェルについて、1ウェルあたりでプレーティングした。対照ブランクウェルを、AP193の付着をブランク炭酸塩緩衝液により置き換えたことを除き、全てのステップに従い、同時に調製した。AP193を表面に、振盪させながら室温で(RT)2時間カップリングさせた。次いで、ウェルを吸引し、300μL PBS-T(0.01体積% Tween-20、Sigma-Aldrich)で5回洗浄した。次いで、150μLの10mMエタノールアミン(Sigma-Aldrich)を1ウェルあたりでプレーティングし、室温で2時間振盪することにより、表面上の未反応部位を反応停止させるために使用した。次いで、ウェルを吸引し、300μL PBS-Tで5回洗浄した。プレインキュベートしたAβ(75μM)を次いで、PBS、CSF、または血漿中、段階希釈し(最高濃度で開始し、その後、同じチューブ内で次の最高濃度まで希釈し)較正のための関連作業濃度とし、100μLを1ウェルあたりで適用し、1時間、25℃で振盪なしでインキュベートした。次いで、ウェルを吸引し、300μL PBSで3回洗浄した。一次6E10抗Aβ抗体(BioLegend, San Diego, CA, USA)の0.2μg/ml希釈を3%BSAを含むTBS-T(50mMトリス、100mM NaCl、0.01体積%Tween-20、pH7.6)中で調製し、この溶液の100μLを1ウェルあたりでプレーティングし、振盪させながら室温で1時間インキュベートした。次いで、ウェルを吸引し、300μL PBSで3回洗浄した。100μLの、3%BSAを含むTBS-T中の、二次ヤギ抗マウスHRP-コンジュゲート抗体(Pierce Biotechnology, Waltham, MA, USA)の0.08μg/ml希釈物を1ウェルあたりでプレーティングし、振盪させながら室温で45分間インキュベートし、その間、HRPの退色を回避するために箔で被覆した。次いで、ウェルを吸引し、300μL PBSで3回洗浄した。100μLの、室温テトラメチルベンジジン(TMB、ThermoFisher Scientific)を1ウェルあたりでプレーティングし、振盪させながら室温で15分間インキュベートし、その間、箔で被覆した。反応を100μLの2M H2SO4(Sigma-Aldrich)で停止させ、吸光度を450nmで、多モードプレートリーダー(PerkinElmer)にて測定した。
【0183】
化学発光プロトコル-較正
このプロトコルにおける全てのステップは、TMBプロトコルと、一次抗体の添加に至るまで同じであった。この場合、一次6E10抗Aβ抗体の0.1μg/ml希釈物(0.2μg/mlの代わり)を、3%BSAを含むTBS-T中で調製し、この溶液の100μLを1ウェルあたりでプレーティングし、振盪させながら室温で1時間インキュベートした。次いで、ウェルを吸引し、300μL PBSで3回洗浄した。100μLの、3%BSAを含むTBS-T中での二次ヤギ抗マウスHRP-コンジュゲート抗体(Santa Cruz Biotechnology)の0.04μg/ml希釈物を1ウェルあたりで適用し、振盪させながら室温で45分間インキュベートし、その間、HRPの退色を回避するために箔で被覆した。次いで、ウェルを吸引し、300μL PBSで6回洗浄した。115μLの室温SuperSignal(商標)ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate(Thermofisher)を1ウェルあたりでプレーティングし、PerkinElmer多モードプレートリーダーにおいて振盪させながら30秒間インキュベートし、その後、ルミネセンスを1秒積分時間を用いて読み取った。化学ルミネセンスを使用したプロットにおけるSOBA値は生の、未較正ルミネセンス読み取り値である。
【0184】
ポリドーパミン+化学発光プロトコル-較正
ドーパミンHCl(Sigma Aldrich)を10mMトリス-HCl(pH8.5)に溶解し、5mg/mlとし、96ウェルポリスチレンプレート(Thermofisher)において1ウェルあたり150μLで直ちにプレーティングした。ドーパミンHClはこのpHで迅速に重合してポリドーパミン(PDA)を形成し、プレートの壁上に薄膜コーティングを形成した。この溶液を室温で振盪させながら一晩20時間、インキュベートした。翌朝、AP193をDMSO(Sigma-Aldrich)で溶解させ36mMとし、次いでCO3
2-緩衝液(pH9.6)を用いて36μMまで希釈し、37℃水浴インキュベーター中で2時間インキュベートし、ペプチドを二量体させ、シグナルを増強した。次いで、ポリドーパミンコーティングを有するプレートのウェルを吸引し、300μLのDI H2Oで5回、攻撃洗浄を用いて洗浄し、残留ポリドーパミンを除去し、37℃で1時間乾燥させた。次いで100μLのAP193を1ウェルあたりで、PDAコートポリスチレンプレートにおける全ての陽性対照ウェルについてプレーティングし、振盪させながら室温で2時間カップリングさせた。次いで、ウェルを吸引し、300μL PBS-T(0.01体積%Tween-20、Sigma-Aldrich)で5回洗浄した。次いで、150μLの10mMエタノールアミン(Sigma-Aldrich)を1ウェルあたりでプレーティングし、室温で2時間振盪することにより、表面上の未反応部位を反応停止させるために使用した。次いで、ウェルを吸引し、300μL PBS-Tで5回洗浄した。プロトコルの残りは上記化学発光較正プロトコルに、0.1mg/ml 6E10一次抗体濃度および0.04mg/ml IgG二次濃度を維持しながら、従った。
【0185】
SOBAを用いた血漿試料の処理
ここで提示した全てのヒト血漿試料は、PDA+化学発光プロトコルを使用した。上記条件を確立した後、PDAコートプレートを、ポリドーパミン+化学発光プロトコル-較正セクションにおいて提供されたプロトコルによって調製した。プレート調製後、COおよびAD血漿試料(凍結-解凍サイクルの繰り返しを回避するために、115μLの試料に予めアリコートした)をエタノールアミン反応ステップ中、5分間37℃で解凍した。解凍後、全ての試料を3200xgで15分間4℃で遠心分離し、血小板を除去した。100μLの各血漿試料を1ウェルあたりでプレーティングし、プレートを25℃で1時間振盪なしでインキュベートした。次いで、ウェルを吸引し、300μL PBSで3回洗浄した。最後に、化学ルミネセンスのためのプロトコルを採用した。生ルミネセンス値が三連で評価した試料について報告される。あらゆる場合において、試料を2の異なる日に評価し(1日に単一ウェル、および、別日に二つ組、またはその反対)、確実に、結果が再現可能なものとなるようにした。また、ほとんどの試料を、数ヶ月の期間にわたって試験し、シグナルの安定性を試験した。商業的起源のプール血漿または単一-ドナー小児血漿を全てのプレート上で陰性対照としてインキュベートした。
【0186】
SOBAにより評価したアルツハイマー病血漿試料
310の研究参加者由来の379の血漿および対応CSF試料を、Behavioral Neurosciences Group (BNG) Sample and Data Repository[以前は、University of Washington Alzheimer’s Disease Research Center(UW ADRC)バイオバンク]から、VA Puget Sound Healthcare Systemおよびその調査員Dr. Elaine PeskindとDr. Valerie DaggettへのUniversity of Washingtonの間の物質移動合意書を介して、入手した。
【0187】
SOBAにより評価したパーキンソン病CSF試料
CSFおよび血液試料を、ワシントン大学メディカルセンター(University of Washington Medical Center)でパーキンソン病のための脳深部刺激(DBS)電極の埋め込みを受けている参加者から入手した。
【0188】
PD CSFテストのためのSOBAプロトコル
CSF SOBA-PDプロトコルを、血漿SOBA-ADプロトコルと同じ方法を使用し、下記を変更して実施した:CSFを5分間37℃で解凍し、PBSを用いて1:10希釈し(すなわち、30μlのCSFを、三連測定のために、270μlのPBSを用いて希釈し、300μlの最終体積とした)、その後、プレーティングした。我々は4B12抗α-シヌクレイン抗体クローン(Biolegend807801)を0.025μg/mlで一次抗体として使用し、BP-HRPm-IgGκ抗体(Santa Cruz Biotechnology sc-516102)を0.01μg/mlで二次抗体として使用した。
【0189】
次世代SOBA
より低い変動係数を提供する可変性のより低いSOBAの別のより速いバージョンもまた開発した。これは、異なる捕捉ペプチド、ブロッキング剤、およびセイヨウワサビペルオキシダーゼを含む単一6E10抗Abeta抗体を利用し、二次抗体の必要性が除去される。SOBAのこのバージョンの結果が市販の血漿試料を使用して提示される。
【0190】
インビボでの毒性オリゴマーの検出のための18F-アルファ-シートペプチドトレーサー
我々は、18F-ベンゾエートをAPペプチド上の一級アミンに連結させた。放射標識を確認し、精製をHPLCを使用して実施した。この方法を用いた、放射標識において十分な収量が得られれば、我々は前進し、そうでなければ、我々はクリックケミストリーに基づく放射標識または他の標識プロトコルを検討する。
【0191】
マウスをCharles River Laboratoryから入手した。我々は、Swedish突然変異(Tg2576)を有するトランスジェニックマウスを使用した。これらを、我々は、我々の化合物を用いた他の研究において採用した。これらのマウスは老化中、行動欠陥およびADの生化学的特徴を示し、下記が挙げられる:著しい炎症性変化;高リン酸化Tau凝集体;ニューロン損失;アミロイドプラークおよび不溶性Abeta沈着物および13月齢で検出可能なプラーク;ならびに学習および記憶テストにおける劣った成績。Charles Riverはこれらのマウスにおける研究に対する予定表を開発し、5ヶ月が、治療を開始するのに良好な時間であることを示した。しかしながら、これは、Tg2576マウスは、この時点でlabテストでの著しく低減した文脈的記憶および増加したエラーを示すという事実に基づく。よって、我々は我々のトレーサーをマウスを用いて3月齢、ならびに5月齢で開始して試験したい。3ヶ月で開始すると、我々には疾患の初期段階、症状が存在し、不溶性プラークが形成される前の洞察が、総Abetaが増加し始める(脳でのオリゴマー化およびクリアリングの減少を示す)のと同じように、得られる。これらの所見に基づき、我々はマウスを、AD進行初期のトランスジェニックマウスを用いて、野生型(WT)症例と比べ、3月齢および5月齢で試験した。テストは18F-標識アルファ-シートペプチドのWTおよびTg2576マウスの両方への注射を含み、我々のトレーサーの局在化の有無を確認するために、PETスキャンを実施した。我々はトランスジェニックマウスの脳内でトレーサーの局在化を観察した。
【0192】
【0193】
実施例4.アミロイド形成の阻害の改善のためのAPペプチドデンドリマー
序論
実施例1で記載されるように、アルファ-シートペプチドの阻害特性を改善する目的で、二量体を設計し、試験した。ここでは、目的は二量体を超えてデンドリマーまで移行することである。ポリ-リジンコア足場の周りに構築されたデンドリマーは、多価アルファ-シート-ヘアピンペプチドを作製するために開発した。これらのデンドリマーにより、複数のヘアピンペプチドが、単一担体コアに結合される。ポリ-リジン足場は一級アミン保護基の同時脱保護により生成され、単一直鎖ペプチドではなく、分枝ペプチドが生成される。ポリ-リジンコアに共有結合により結合させた4つのAP5単量体ペプチドからなるデンドリマーの例を記載する。
【0194】
結果
AP5デンドリマーは
図16において概略的に示されるように、リジン残基に共有結合により連結された4つのAP5単量体ヘアピンを含む。これにより8つのアルファ-シート結合ストランド/表面が可能になる。
【0195】
AP5デンドリマーを、PDAコーティングを有さないTMB SOBAアッセイにおいてAbeta42オリゴマーの結合について試験した(
図17)。効果は結合活性がより重要となる低濃度で>4倍である。例えば、2.5nMでは、デンドリマーと二量体シグナルの比は5.8である。Abeta42オリゴマーの結合の同じ評価を、この場合、化学ルミネセンスおよびPDAコーティングを使用して実施することにより、シグナルはAP510二量体を用いた場合よりずっとより高くなり、それらは1fMで依然として非常に有意である(
図18)。
【0196】
材料および方法
ペプチド合成
標準手動Fmocペプチド合成を使用して、AP5-MAPSペプチドを生成させ1、ニンヒドリンテストを使用して、各アミノ酸間の適正なカップリングを確認した。各カップリングを、前の残基上の有効な一級アミンに関して4倍モル過剰で実施した。コアリジン残基は2つの有効な一級アミンを有する。そのため、デンドリマーの第1のリジンを付加した後、一級N末端アミンおよびR-基アミンの両方を反応させなくてはならず、そのため、第1のリジン上の有効なアミン基に関して4倍過剰を使用し、これは反応するたった1つの有効なアミンしか有さない樹脂に関しては8倍モル過剰である。第2のリジンを合成に付加した後、我々は樹脂に関して16倍M過剰で反応させ、全てのその後のカップリングにより、ポリ-リジンコア上にAP5配列を合成させる。コアリジンアミノ酸のN末端およびR基を同時に脱保護し、その後、デンドリマーコアのために、配列の次のアミノ酸、Fmoc-Lys(Fmoc)アミノ酸の付加を使用した。これにより、両方のFmoc保護基がピペリジン塩基による除去される。
【0197】
SOBA
実施例3において以上で提供される方法をAbeta42標準の調製およびSOBAプレートおよびアッセイプロトコルの調製のために使用した。
【0198】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】