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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】塞栓形成用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/04 20060101AFI20240814BHJP
   A61L 31/18 20060101ALI20240814BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20240814BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20240814BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240814BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20240814BHJP
   C07C 69/712 20060101ALI20240814BHJP
   C07C 237/46 20060101ALI20240814BHJP
   C07C 233/54 20060101ALI20240814BHJP
   C07D 213/68 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
A61L31/04 110
A61L31/18
A61L31/12
A61L31/14
A61L31/04 120
A61L31/06
A61K49/04 210
A61P7/04
C07C43/225 C
C07C69/712 Z
C07C237/46
C07C233/54
C07D213/68 CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504171
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2022070825
(87)【国際公開番号】W WO2023006679
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21382685.2
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】522105816
【氏名又は名称】イベロスピテックス,エセ.アー.
【氏名又は名称原語表記】IBERHOSPITEX,S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロペス モヤ,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ラモス ペレス,ビクター
【テーマコード(参考)】
4C081
4C085
4H006
【Fターム(参考)】
4C081BA11
4C081BB02
4C081BB03
4C081CA052
4C081CA082
4C081CA102
4C081CA182
4C081CC01
4C081CD022
4C081CE11
4C081DA15
4C085HH05
4C085JJ01
4C085KA26
4C085KB41
4C085KB42
4C085KB46
4C085KB47
4C085KB56
4C085KB68
4C085KB70
4C085KB74
4C085LL01
4H006AA03
4H006AB92
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM74
4H006BN10
4H006BP10
4H006BP30
4H006BT12
4H006BT32
4H006BV36
4H006BV72
(57)【要約】
(a)約2~約20重量%のポリマー;(b)2000g/mol未満の分子量を有する約5~約40重量%の放射線不透過性分子;及び(c)約40~約93重量%の非生理的溶媒又は溶媒系を含む液体ポリマー組成物であって;(i)組成物中の全成分の重量パーセントの合計は100であり、(ii)ポリマーと放射線不透過性分子は共有結合せず、両方とも非生理的溶媒又は溶媒系に溶解し、(iii)該ポリマーは、室温で該非生理的溶液に可溶であり、かつ、生理的溶液に不溶であり、(iv)該液体ポリマー組成物は、生理的条件と接触すると、少なくとも30分間液体ポリマー組成物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持し、6ヶ月未満で液体ポリマー組成物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う放射線不透過性沈殿物を形成することができる、組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約2~約20重量%のポリマー;
(b)2000g/mol未満の分子量を有する約5~約40重量%の放射線不透過性分子;及び
(c)約40~約93重量%の非生理的溶媒系又は溶媒系を含む液体ポリマー組成物であって;
(i)組成物中の全成分の重量パーセントの合計は100であり、
(ii)ポリマーと放射線不透過性分子は共有結合せず、両方とも非生理的溶媒又は溶媒系に溶解し、
(iii)前記ポリマーは、室温で前記非生理的溶液に可溶であり、かつ、生理的溶液に不溶であり、
(iv)前記液体ポリマー組成物は、生理的条件と接触すると、少なくとも30分間液体ポリマー組成物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持し、6ヶ月未満で液体ポリマー組成物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う放射線不透過性沈殿物を形成することができ、特に、前記沈殿物は、少なくとも1時間液体ポリマー組成物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持し、3ヶ月未満で液体ポリマー組成物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う、組成物。
【請求項2】
生理的条件との接触時に均一な放射線不透過性を有する沈殿物を形成する、請求項1に記載の液体ポリマー組成物。
【請求項3】
前記放射線不透過性化合物が、前記組成物中に2.0~9.0のLogPを有する芳香族分子である、請求項1~2のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【請求項4】
前記放射線不透過性化合物が、前記組成物中に2.0~7.0、特に3.0~5.0のLogPを有する非イオン化性芳香族分子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【請求項5】
前記放射線不透過性化合物が、前記組成物中に4.0~9.0、特に5.0~8.0のLogPを有し、酸性基又は塩基性基を含むイオン化性芳香族分子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【請求項6】
前記放射線不透過性化合物が、室圧及び室温で液体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【請求項7】
前記放射線不透過性分子が、分子1グラム当たりヨウ素又は臭素300mg当量を超える濃度でヨウ素又は臭素を含有する芳香族分子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【請求項8】
前記放射線不透過性分子が、トリヨードフェノール、イオフェノキシ酸(iophenoxic acid)、トリヨード安息香酸、3,5-ジヨード-4-ピリドンジアトリゾ酸、5-アミノ-2,4,6-トリヨードイソフタル酸又はトリヨードアニリンのペグ化誘導体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【請求項9】
前記放射線不透過性分子が、式I、式II、又は式Vの化合物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物:
【化1】


式中、
及びRは独立して、-H、-COOH、-(C~C25)アルキル、-(C~C25)アルキル-COOH、-O-(C~C25)アルキル、-(C~C25)アルキル-COO-(C~C25)アルキル、-O-(CH-CH-O)-CH、-NH-CO-(C~C25)アルキル、-NH、-NH-(C~C25)アルキル、-N-((C~C10)アルキル)-CF、-Cl、-F、-CN、-NO、及び-CO-NH-(C~C25)アルキルから成る群から選択され、
は独立して、
-X-(C~C20)アルキル-COO-R
-X-(CH-CH-O)-R
-X-(CH-CH-O)-(CH-COO-R
-X-(CH-CH-O)-COO-R
-X-(C~C10)アルキル-COO-(CH-CH-O)-R
-X-(C~C20)アルキル-NH
-X-(C~C10)アルキル-NH-(C~C10)アルキル
-X-(C~C10)アルキル-N-((C~C10)アルキル)
-(CH-O-(CH-CH-O)-Rから成る群から選択され、
Xは独立して、O、COO、及びC(O)NH-から成る群から独立して選択され、
は、-H、-OH、-(C~C)アルキル、-(C~C)アルキル-OH、(C1~C8)アシル、-(CH-CH-O)-CH、及び生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解されることができる少なくとも1つの結合を含むアルキル鎖から成る群から選択され、
bは0~20の整数であり、
cは0~10の整数である。
【化2】


式中、
及びRは独立して、-H、-COOH、-(C~C25)アルキル、-(C~C25)アルキル-COOH、-O-(C~C25)アルキル、-(C~C25)アルキル-COO-(C~C25)アルキル、-O-(CH-CH-O)-CH、-NH-CO-(C~C25)アルキル、-NH、-NH-(C~C25)アルキル、-N-((C~C10)アルキル)-CF、-Cl、-F、-CN、-NO、及び-CO-NH-(C~C25)アルキルから成る群から選択され、
は、-(CH-COO-Rであって、式中、dは0~10の整数であり、Rは、-H、-OH、-(C~C)アルキル、-(C~C)アルキル-OH、(C~C)アシル、-(CH-CH-O)-CH(式中、bは0~20の整数である)、及び生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解されることができる少なくとも1つの結合を含むアルキル鎖から成る群から選択される。
【請求項10】
前記放射線不透過性分子が、式IIIの化合物及び式IVの化合物から選択される、請求項8に記載の液体ポリマー組成物:
【化3】


式中、
n及びmは独立して1~20の整数であり、
及びRは独立して、-H、-COOH、-(C~C25)アルキル、-(C~C25)アルキル-COOH、-O-(C~C25)アルキル、-(C~C25)アルキル-COO-(C~C25)アルキル、-O-(CH-CH-O)-CH、-NH-CO-(C~C25)アルキル、-NH、-NH-(C~C25)アルキル、-N-((C~C10)アルキル)-CF、-Cl、-F、-CN、-NO、及び-CO-NH-(C~C25)アルキルから成る群から選択され、
は、-H、-OH、-(C~C)アルキル、-(C~C)アルキル-OH、(C~C)アシル、-(CH-CH-O)-CH(式中、bは0~20の整数である)、及び生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解されることができる少なくとも1つの結合を含むアルキル鎖から成る群から選択される。
【請求項11】
前記放射線不透過性分子が、末端ヒドロキシルを含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【請求項12】
生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解されることができる前記少なくとも1つの結合が、エステル、ポリエステル、アミド及びカーボネートから成る群から選択される、請求項9~11のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【請求項13】
前記ポリマーが、エチレンビニルアルコール共重合体、酢酸セルロース、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、酢酸セルロースの共重合体、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はその両方、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)共重合体、ポリ(オリゴエチレングリコール)-(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド共重合体、及びそれらの組合せ、特にエチレンビニルアルコール共重合体から成る群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【請求項14】
前記非生理的溶媒又は溶媒系が、水と混和性の有機溶媒を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【請求項15】
前記非生理的溶媒又は溶媒系が、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、一価アルコール、多価アルコール、エトキシ化多価アルコール、N-メチルピロリドン、エトキシ化多価アルコールのメチルエーテル、又はこれらの組合せを含み、特に、前記非生理的溶媒又は溶媒系が、ジメチルスルホキシドを含む、請求項14に記載の液体ポリマー組成物。
【請求項16】
前記組成物の粘度が40℃で50cSt未満である、請求項1~15のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物を含む注射剤。
【請求項18】
請求項8~12のいずれか一項に記載の放射線不透過性化合物。
【請求項19】
血管を塞栓形成する際に使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物、又は請求項17に記載の注射剤、又は請求項18に記載の放射線不透過性化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年7月26日に出願された欧州特許出願第21382685.2号の利益を主張する。
【0002】
本発明は一般に、血管環境で使用するための組成物、より詳細には、血管の塞栓形成用組成物に関する。組成物は、生理的条件に供されると液体から固体に移行するポリマーと放射線不透過性化合物とを含む。
【背景技術】
【0003】
多くの臨床状況では、動脈瘤、動静脈奇形又は瘻孔などの血管奇形を治療するために、臓器出血又は胃腸出血などの出血を制御するために、又は腫瘍などの患部組織を切除するために、血管を塞栓することが必要とされる。血管の塞栓形成は、微粒子、金属コイル及びポリマー組成物などの様々な異なる材料で行うことができる。これらの材料の中でも、ポリマー組成物は、送達装置を介して液体状態で導入され、組織又は生理的流体と接触すると固体状態に移行することができるので、優れた汎用性を示す。ポリマー組成物に使用されるポリマー材料には、送達部位でin situ重合するもの、すなわちシアノアクリレート、及び生体適合性溶媒に溶解し、送達部位で固体状態(沈殿物)に移行するもの、すなわちエチレンビニルアルコール共重合体、酢酸セルロース又はポリアクリレートが含まれる。
【0004】
理想的には、塞栓形成用ポリマー組成物は、カテーテルを通した送達が容易である必要があり、意図された血管部位に迅速かつ制御可能に塞栓形成を引き起こし、空間充填及び凝集性の塊を生成する必要がある。得られた固体材料は、断片化を回避するために十分な凝集性を持つ必要があり、断片化が生じると、より小さな固体材料が循環系に組み込まれ、最終的に望ましくない位置での塞栓形成につながりうる。更に、ポリマー組成物は、生体適合性及び放射線不透過性である必要がある。塞栓形成組成物の放射線不透過性は、血管部位への組成物の注入を監視し、塞栓術の完全性及び質を確認するために重要である。したがって、ポリマー製剤は、通常は蛍光透視ガイド下で、インビボでの可視化を可能にすることができる可視化化学種として造影剤を含む。
【0005】
特許文献1は、ジメチルスルホキシド又は他の適切な生体適合性溶媒に溶解したエチレンビニルアルコール共重合体と、タンタル、酸化タンタル又は硫酸バリウムから選択される水不溶性放射線不透過性化合物とを含む注射可能な液体塞栓形成組成物を開示している。しかしながら、これらの組成物は取り扱いが困難である。これらの組成物は、均一なタンタル粉末懸濁液を得るために長時間の予備混合を必要とする。激しい混合にもかかわらず、タンタル粉末が沈降すると、長時間の注射中に視覚的制御を損なう可能性がある。更に、蛍光透視監視中にタンタルはアーチファクトを生成し、過度の遮蔽を引き起こし得るため、このことは、特に繰り返し塞栓形成再介入を必要とする場合(臨床診療では非常に頻繁に起こる)には不利である。酸化バリウムに関しては、この化合物は毒性作用を生じると更に記載されている。
【0006】
水溶性造影剤を含有する塞栓形成ポリマー組成物も提案されている。この水溶性造影剤は、ヨウ素系放射線不透過性化合物、例えば、イオヘキソール(CAS番号66108-95-0)、イオパミドール(CAS番号60166-93-0)及びイオプロミド(CAS番号73334-07-3)であることが多い。しかしながら、水溶性造影剤を使用すると、注入部位からの急速な溶解及び除去のため、塞栓形成剤を血管内へ入れる注入手順を監視する能力が制限されてもよい。水溶性が高い造影剤はまた、塞栓形成剤の沈殿挙動及び/又は得られた凝固物の凝集性を変化させ、遠位血管の意図しない塞栓形成を引き起こし得る。更に、塞栓領域から水溶性造影剤が浸出すると、処置された対象において局所的及び全身的な副作用の可能性を生じ得る。これらの理由から、水溶性が非常に高い造影剤は血管の塞栓形成にほとんど使用されてこなかった。
【0007】
上述の制限を解決するために、予備混合を必要とせずに経時的に均一な放射線不透過性を確保するために、ポリマー共有結合ヨウ素系造影剤が開発されている。例えば、特許文献2は、放射線不透過性ヨウ素化化合物への生分解性結合を含む生体適合性ポリマーと、非生理的溶液とを含む注射可能な塞栓形成組成物を開示している。液体組成物は、血管内の生理的条件に接触すると沈殿する。しかしながら、これらの組成物は複雑な合成を必要とする。更に、ヨウ素系造影剤の共有結合的コンジュゲーションは、塞栓形成組成物の沈殿挙動及び/又は凝集性に有害な影響を及ぼし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5667767号明細書
【特許文献2】欧州特許第2906254号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の欠点を有さない液体塞栓形成組成物を提供する必要性がある。
【0010】
本発明者らは、ポリマー及び選択された放射線不透過性分子を非生理的溶液に溶解することによって、所望の特性を有する注射可能な塞栓形成組成物を簡便に調製できることを見出した。
【0011】
したがって、本発明の第1の態様は、(a)約2~約20重量%のポリマー;(b)2000g/mol未満の分子量を有する約5~約40重量%の放射線不透過性分子;(c)約40~約93重量%の非生理的溶媒又は溶媒系を含む液体ポリマー組成物であって、(i)組成物中の全成分の重量%の合計は100であり、(ii)ポリマー及び放射線不透過性分子は両方とも非生理的溶媒又は溶媒系に溶解し、(iii)液体ポリマー組成物は、生理的条件と接触すると、放射線不透過性沈殿物を形成することができる、組成物に関する。
【0012】
注入時にポリマーの沈殿が起こり、溶媒が周囲の水性環境に拡散し、水がポリマーマトリックスに拡散し、これにより放射線不透過性化合物が埋め込まれたin situ固体ポリマー移植片(又は塞栓)が生じ、したがって凝集性の均一な放射線不透過性沈殿物が得られる。形成された放射線不透過性沈殿物は、処置の適切な放射線透視監視/識別を可能にするのに十分な量の放射線不透過性材料を捕捉する。次いで、放射線不透過性化合物は、沈殿物から生理的流体(例えば、血液循環中に)中に徐々に放出され、その結果、沈殿物は徐々に放射線不透過性を失う。最終的に、放射線不透過性は完全に消失し、塞栓領域は蛍光透視法に対して半透明になる。例えば、本発明のポリマー組成物は、好都合な時間範囲にわたって放射線不透過性を維持する放射線不透過性沈殿物を形成し、例えば、放射線不透過性沈殿物は、少なくとも30分間放射線不透過性の少なくとも50%を維持し、6ヶ月未満で放射線不透過性の少なくとも50%を失ってもよい。
【0013】
本発明の第1の態様の液体ポリマー組成物は、本明細書では「塞栓形成組成物」又は単に本発明の「組成物」とも呼ばれる。
【0014】
ポリマーは、非生理的溶媒又は溶媒系に可溶であり、生理的溶液に不溶である。生理条件と接触すると、例えば血管に注射されると、組成物中のポリマーは放射線不透過性化合物を埋め込んで沈殿する。
【0015】
本発明の組成物の放射線不透過性化合物はポリマーに共有結合していないので、塞栓形成組成物を容易かつ経済的に調製する。更に、この放射線不透過性分子及びポリマーは、液体塞栓形成組成物に溶解される。その結果、これらの組成物は取り扱いが容易となり、組成物中の放射線不透過性分子を均一化するために混合を必要としない。患者への注射前又は注射中に放射線不透過性化合物が沈降するリスクもない。
【0016】
本発明の液体ポリマー組成物は、血管部位に容易に送達され、放射線不透過性が経時的に減少する凝集性かつ均一な固体沈殿物を迅速に形成する。重要なことに、本発明の液体ポリマー組成物は、塞栓術中に形成された塞栓の適切な監視を可能にし、臨床的に適切な時間枠で生体再吸収して、再介入を必要とする場合により良好な監視を可能にしてもよい。
【0017】
本発明の第1の態様による組成物は、成分の各々を添加し、得られた組成物を、組成物全体が実質的に均一になるまで一緒に混合する従来の方法によって調製される。
【0018】
したがって、第2の態様では、本発明は又、本発明の第1の態様で定義された液体ポリマー組成物を調製する方法であって、該方法は、(i)非生理的溶媒又は溶媒系、ポリマー及び放射線不透過性化合物を提供するステップと、(ii)均一な溶解が達成されるまで混合するステップとを含む方法に関する。
【0019】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様で定義された液体ポリマー組成物を含む注射剤(製品)に関する。
【0020】
本発明の第4の態様は、塞栓形成用キットであって、該キットは、本発明の第1の態様による液体ポリマー組成物を収容する容器を含む、キットに関する。
【0021】
本発明の第5の態様は、血管を塞栓形成するのに使用するための、第1の態様で定義された液体ポリマー組成物に関する。これは又、十分な量の第1の態様で定義された液体ポリマー組成物を血管に注射することによって血管を塞栓形成する方法として製剤化されてもよい。
【0022】
本発明の第6の態様は、血管欠損の充填に使用するための、第1の態様で定義された液体ポリマー組成物に関する。これは又、十分な量の第1の態様で定義された液体ポリマー組成物を血管に注射することによって血管欠損を充填する方法として製剤化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】例示的な放射線不透過性分子を示す。
図2】37℃のPBS中での30分及び30日間のインキュベーション後の色々な製剤の放射線不透過性を示す。
図3】ニュージーランドウサギ(New Zealand rabbit)の皮下に埋め込まれた放射線不透過性化合物を含有する組成物のインビボ放射線不透過性損失を示す。
図4】時刻0(右)及び14日後(左)の製剤LFE09で塞栓形成した腎臓。
図5】インビボでの放射線不透過性沈殿物の放射線不透過性損失対放射線不透過性分子のlogP。マウス(各群n=3)に、a)300mg/mlのタンタル、b)150 mg当量のヨウ素/mlのLFE01(logP 6.8)、c)150mg当量のヨウ素/mlのLFE04(logP 3.9)、又はd)150mg当量のヨウ素/mlのイオメプロール(logP-2.8)を含有する30ulの塞栓形成剤を注射した。注射後1日目、15日目及び30日目にマウスを安楽死させ、放射線不透過性移植片の放射線不透過性をX線透視画像化によって評価した。放射線不透過性損失は、標準的な方法ASTM F640-20 Standard Test Methods for Determining Radiopacity for Medical Useに従って決定した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明を更に詳細に論じる前に、以下の用語をまず定義する。
【0025】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」及び「an」は、「少なくとも1つ」又は「1つ又は複数」と同義である。特に指示しない限り、本明細書で使用される「the」などの定冠詞は、名詞の複数形も含む。
【0026】
「塞栓形成」という用語は、材料が血管に注入され、その後、血管を充填又は閉塞する、及び/又は血管を通る血流が止まるように血餅形成を促進するプロセスを指す。血管の塞栓術は、出血(例えば、臓器出血、胃腸出血、血管出血、動脈瘤に関連する出血)を防止/制御する上で、又は出血の血液供給を遮断することによって疾患組織(例えば、腫瘍など)を切除する上で重要である。
【0027】
本明細書では「造影剤」とも呼ばれることがある「放射線不透過性分子」という用語は、X線又は同様の放射線を通過させない分子を指す。放射線不透過性は、インビボ又はインビトロで標準的な方法によって決定してもよい。インビボでは、X線撮影によって放射線不透過性を決定することが一般的である。
【0028】
「生体適合性」という用語は、特定の用途において適切な宿主応答で機能する有機材料を指す。生体適合性材料は好ましくは、使用される量で身体に接触したときに有害作用を生じない。
【0029】
「生理的条件」という表現は、ヒト(又は一般に、哺乳動物)体内、特に血管系内の状態又はそれに適合する状態を指す。当業者は、どの条件を生理的と考えるかを容易に認識してもよい。例えば、生理的条件は、温度範囲摂氏35~40度、大気圧1、pH6~8、特に約7.5、及びグルコース濃度1~20mMを含む。より詳細には、インビトロ生理的条件は、本明細書ではpH7.4及び37℃のリン酸緩衝生理食塩水と理解される。そのため、非生理的条件は、人体に適合しない状態である。やはり、当業者は、生理的ではない条件を容易に認識することができる。
【0030】
「エチレンビニルアルコール共重合体」という用語は、エチレン及びビニルアルコールモノマーの両方の残基を含む共重合体を指す。少量の(例えば、5モル%未満)追加のモノマーが組成物の塞栓形成特性を変化させない限り、そのような追加のモノマーをポリマー構造に含めるか、又はポリマー構造にグラフトすることができる。このような追加のモノマーとしては、単なる例として、無水マレイン酸、スチレン、プロピレン、アクリル酸、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0031】
「重量パーセント(weight percent)」又は「重量%(%by weight)」又は「重量%(%wt)」という表現は、最終組成物の総量に対する言及された成分の重量パーセントとして理解される。本発明では、重量パーセントは通常、%w/vを指し、換言すれば、成分Aのx重量%は、全組成物100mL中の成分Aのxグラムを表す。組成物中の成分の重量%の合計は100となる必要がある。
【0032】
「官能基」という用語は、一般に最新技術において、すなわち、その分子の特徴的な化学反応を担う分子内の複数の原子又は結合の特定の群として理解される。同じ官能基は、官能基がその一部である分子のサイズにかかわらず、同じ又は類似の化学反応を受ける。
【0033】
本明細書で使用される「(Cx-Cy)-アルキル」という表現は、x~y個の炭素原子を有する飽和分枝又は直鎖炭化水素側鎖を指す。例えば、「(Cx-Cy)-アルキル」は、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル及びt-ブチルから選択される非置換基である(C1~C4)-アルキルであってもよい。
【0034】
組成物
本明細書には、非生理的溶媒又は溶媒系に溶解したポリマー及び放射線不透過性分子を含む液体ポリマー組成物が記載される。これらの組成物は、送達装置を介して生理的流体に液体状態で導入され、生理的流体と接触すると固体状態に移行することができる。組成物は、血管を塞栓形成するのに有用である。
【0035】
本発明の第1の態様の組成物は、(a)約2~約20重量パーセントのポリマー;(b)約5~約50重量パーセントの放射線不透過性分子;(c)約40~約93重量%の非生理的溶媒又は溶媒系を含む。
【0036】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の一実施形態では、本発明の組成物は、(a)約2~約20重量%のポリマー;(b)約5~約40重量パーセントの放射線不透過性分子;(c)約40~約93重量%の非生理的溶媒又は溶媒系を含む。
【0037】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の一実施形態では、本発明の組成物は、(a)約2.5~約8重量パーセントのポリマー;(b)約10~約40重量パーセントの放射線不透過性分子;(c)約52~約87.5重量%の非生理的溶媒又は溶媒系を含む。
【0038】
別の実施形態では、本発明の組成物は、(a)約4~約5.2重量%のポリマー;(b)約20~約40重量パーセントの放射線不透過性分子;(c)約54.8~約76重量%の非生理的溶媒又は溶媒系を含む。
【0039】
組成物中の全成分の重量パーセントの合計は100である。
【0040】
上述のように、ポリマーと放射線不透過性化合物との両方は、非生理的溶媒に独立して溶解される。放射線不透過性分子は、ポリマーと共有結合していない。生理的条件と接触すると、例えば血管に注射されると、組成物中のポリマーは放射線不透過性化合物を捕捉して沈殿し、したがって放射線不透過性沈殿物を形成する。好ましくは、放射線不透過性分子は沈殿物内に均一に分布している。造影剤及びポリマーは、共重合体成分及び造影剤成分に分離しない一体的な密着沈殿物を形成する。十分な量の放射線不透過性分子は、塞栓術の適切なモニタリングを可能にするのに十分な時間、固化時に沈殿物内に留まる。その後、放射線不透過性分子は、塞栓領域/形成された沈殿物から徐々に放出され、その結果、放射線不透過性は徐々に消失する。
【0041】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、沈殿物は、少なくとも24時間にわたって沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持する、又は少なくとも8時間にわたって沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持する、又は少なくとも4時間にわたって沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持する、又は少なくとも2時間にわたって沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持する、又は少なくとも1時間にわたって沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持する、又は少なくとも30分間にわたって沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持する。
【0042】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、沈殿物は、6ヶ月未満で沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う、又は5ヶ月未満で沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う、又は4ヶ月未満で沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う、又は3ヶ月未満で沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う、又は3ヶ月未満で沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う、又は1ヶ月未満で沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う、又は15日未満で沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う。
【0043】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、放射線不透過性沈殿物は、少なくとも30分間沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持し、6ヶ月未満で沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う。特定の実施形態では、放射線不透過性沈殿物は、少なくとも30分間沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持し、3ヶ月未満で沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う。他の特定の実施形態では、放射線不透過性沈殿物は、少なくとも30分間沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持し、1ヶ月未満で沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う。他の特定の実施形態では、放射線不透過性沈殿物は、少なくとも1時間の間沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持し、3ヶ月未満で沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う。他の特定の実施形態では、放射線不透過性沈殿物は、少なくとも1時間の間沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持し、1ヶ月未満で沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う。他の特定の実施形態では、放射線不透過性沈殿物は、少なくとも24時間の間沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持し、15日未満で沈殿物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う。
【0044】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、放射線不透過性分子は、形成された沈殿物から最大6ヶ月間連続的に放出される。特定の実施形態では、放射線不透過性分子は、形成された沈殿物から最大3ヶ月間連続的に放出される。更に特定の実施形態では、放射線不透過性分子は、形成された沈殿物から最大1ヶ月間連続的に放出される。
【0045】
当業者は、インビボ又はインビトロで標準的な方法によって放射線不透過性損失を決定してもよい。例えば、放射線不透過性は、液体ポリマー塞栓形成組成物を食塩水中に注入し、形成された沈殿物の放射線不透過性を経時的に蛍光透視法で決定することによって測定されてもよい。以下の実施例2は、塞栓形成組成物の放射線不透過性損失を評価するためのプロトコルの例及び本発明によるいくつかの液体ポリマー組成物について観察された結果を示す。放射線不透過性損失は、標準的な方法ASTM F640-20 Standard Test Methods for Determining Radiopacity for Medical Useに記載されているように、異なる時点での塞栓のX線画像の画像分析によって決定することができる。沈殿物によって形成された塞栓は通常、蛍光透視法(X線)及び/又はコンピュータ断層撮影(CT)撮像下でインビボで視覚化される。
【0046】
本発明の液体ポリマー組成物は、送達装置、例えばマイクロカテーテルを介して、送達部位及び/又は治療部位に配置される。組成物の粘度は、そのような装置を介した送達を可能にする必要がある。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、液体ポリマー組成物は、40℃で40センチストーク以下の粘度を有する。特に、液体ポリマー組成物の粘度は、40℃で30センチストーク以下である。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、液体ポリマー組成物は、40℃で10センチストーク以上の粘度を有する。
【0047】
放射線不透過性分子
本発明者らは、組成物中の放射線不透過性化合物が2.0~9.0のLogPを有する場合、特に放射線不透過性化合物が2~7のLogPを有する場合、塞栓術の最適なモニタリングが達成されることを見出した。
【0048】
LogPという用語は、造影剤分子の水相とオクタノール相との間の分配係数を指す。当業者は、標準的な経験的手順(Chemical Reviews,1971,Vol.71,No.6,525-616)に従ってLogPを決定する方法を知っている。しかしながら、今日では、ソフトウェアを使用してLogPを決定することがより一般的である。LogPを決定するための適切なソフトウェアは市販されている。例えば、本発明の放射線不透過性化合物のLogPは、ChemAxon、バージョン20.7.0で決定してもよい。
【0049】
2~9、特に2~7のLogP値を有する放射線不透過性分子は、塞栓術の間に沈殿物中に捕捉されたままであり、ポリマーに共有結合する必要なしに、蛍光透視下での優れた監視を可能にする。しかし、そのような分子は沈殿物からゆっくりと放出され、徐々に放射線不透過性が失われ、タンタル又はヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル(エチオダイズド油、ethiodized oil)などの一般的な造影剤に関連する問題が回避される。
【0050】
さらに、本発明の組成物の放射線不透過性分子は沈殿物に有害な影響を及ぼさず、その結果、この放射線不透過性分子を含有する組成物は、断片化のない凝集沈殿物を形成する。
【0051】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の一実施形態では、放射線不透過性分子は2.0~7.0のLogPを有する。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、放射線不透過性分子は2.0~6.0のLogPを有する。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、放射線不透過性分子は、3.0~5.5、又は3.0~5.0、又は3.5~5、又は4~5のLogPを有する。
【0052】
本発明によれば、放射線不透過性化合物のLogPは好ましくは、組成物中のこの化合物によって得られる形態であると考えられる。この意味で、いくつかの放射線不透過性分子、例えばイオン化の影響を受けやすいものは、LogPの変化をもたらす生理的条件に供された場合に変換を受けてもよいことに留意されたい。例えば、放射線不透過性化合物は、生理的条件に供されるとプロトン化され、したがって化合物のLogPを修飾してもよい。他の放射線不透過性分子は、エステル、ポリエステル、カーボネート又はペプチドなどの生分解性結合を含有してもよく、これらは生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解することができる。この結合が加水分解すると、LogPが低下して沈殿物中の必要な範囲内に入ってもよい。
【0053】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、放射線不透過性分子は非イオン化性分子である。特定の実施形態では、非イオン化性放射線不透過性化合物は、組成物中に2.0~7.0、特に3.0~5.0のLogPを有する。
【0054】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の別の特定の実施形態では、放射線不透過性分子はイオン化性分子である。特定の実施形態では、イオン化性放射線不透過性化合物は、組成物中に4.0~9.0、特に5.0~8.0のLogPを有する。特定の実施形態では、このイオン化性放射線不透過性分子は、酸性基又は塩基性基を含む。放射線不透過性化合物が、例えば、酸性基又は塩基性基を含有するためにイオン化の影響を受けやすい場合、放射線不透過性化合物のLogPは、生理的条件、すなわち化合物が血管に注入されたときに起こることに似た条件で、この化合物によって得られる形態であると考えられてもよい。この意味で、イオン化性放射線不透過性化合物は、生理的条件に供された場合、2.0~7.0、特に3.0~5.0の範囲のLogPを有してもよい。
【0055】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせて、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、放射線不透過性分子は、室圧及び室温で液体である。
【0056】
本発明の第1の態様のほとんどの実施形態では、放射線不透過性分子は芳香族化合物である。本発明の第1の態様のほとんどの実施形態では、放射線不透過性分子はヨウ素化化合物である。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、放射線不透過性分子は、芳香族ヨウ素化化合物、例えば、分子1グラム当たりヨウ素又は臭素200~900mg当量の範囲の濃度でヨウ素又は臭素を含有する芳香族有機分子である。特定の実施形態では、放射線不透過性分子は、分子1グラム当たりヨウ素又は臭素300~800mg当量の範囲、又は分子1グラム当たりヨウ素又は臭素350~700mg当量の範囲、又は分子1グラム当たりヨウ素400~600mg当量の範囲の濃度を有する。本発明の組成物中の放射線不透過性分子は、組成物中に、約50~約500mg当量のヨウ素又は臭素/ml組成物、又は約100~約300mg当量のヨウ素又は臭素/ml、又は約100~約250mg当量のヨウ素又は臭素/ml、又は約125~約200mg当量のヨウ素又は臭素/ml、例えば150mg当量のヨウ素又は臭素/mlの範囲であることができるヨウ素又は臭素濃度を提供する。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、放射線不透過性分子は、少なくとも2個のヨウ素原子又は臭素原子を有する芳香族有機分子である。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、放射線不透過性分子はヨウ素を含む。複数のヨウ素原子を有する芳香環は、造影剤設計において良好な選択肢を提供する。本発明の意味において適切な芳香環は、5個又は6個の炭素を有してもよい。芳香環の非限定的な例は、ベンゼン、ピリドン、及びピリジンである。例えば、ヨウ素を含有する適切な芳香族環は、トリヨードフェノール、イオフェノキシ酸(iophenoxic acid)、トリヨード安息香酸、3,5-ジヨード-4-ピリドン、トリヨードアニリン、及びこれらの誘導体、例えばトリヨードフェノール、イオフェノキシ酸(iophenoxic acid)、トリヨード安息香酸、3,5-ジヨード-4-ピリドン、又はトリヨードアニリンのエステル及びエーテルであることができる。このような化合物は、ヨウ素化脂肪族分子よりも高い安定性及び低い毒性を示す。特に好都合な造影剤は、ポリマーと共に均一で凝集した沈殿物を生成する。
【0057】
造影剤の物理的、化学的、及び薬理学的特性は、芳香環上に存在する官能基を利用することによって操作及び修飾することができる。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、組成物は好都合には、分子構造が両親媒性を示し、明確に定義された親水性部分及び親水性部分を有する造影剤を含有する。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、放射線不透過性化合物は、トリヨードフェノールのペグ化誘導体、イオフェノキシ酸のペグ化誘導体、及びトリヨード安息香酸のペグ化誘導体から成る群から選択される。
【0058】
上述のように、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、造影剤は、生理的条件で切断の影響を受けやすい少なくとも1つの結合を含む。構造内のそのような生分解性結合(linkages)/結合(bonds)は、生理的条件で破壊され、元の構造の一部を異なる溶解度を有する分子として放出してもよい。したがって、任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、放射線不透過性分子は、生理的条件下で、上述の本発明の意味において適切なLogPを有する分子に変換される。生分解性結合は一般に、加水分解を受けやすいものと酵素作用を受けやすいものとの2種類に分離することができる。加水分解を受けやすい結合は一般に、エステル、ポリエステル又はカーボネートを含むことができる。当業者は、生分解性結合を造影剤分子に導入する実行可能な方法を想定することができる。エステル結合は、とりわけ、ヒドロキシル基を無水物又は酸塩化物と反応させることによって導入することができる。放射線不透過性損失の速度は、例えば、エステル選択及び造影剤に挿入されるエステルの数によって制御することができる。生理的環境で酵素的に加水分解されることができる結合は、酵素、例えば、限定されないが、マトリックスメタロプロテイナーゼ、コラゲナーゼ、エラスターゼ、カテプシン、又はそれらの組合せによって分解されることができるペプチド結合を含むことができる。
【0059】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、放射線不透過性分子は、式I又は式IIの化合物である:
【化1】
式中、
2及びR3は独立して、-H、-COOH、-(C1~C25)アルキル、-(C1~C25)アルキル-COOH、-O-(C1~C25)アルキル、-(C1~C25)アルキル-COO-(C1~C25)アルキル、-O-(CH2-CH2-O)b-CH3、-NH-CO-(C1~C25)アルキル、-NH2、-NH-(C1~C25)アルキル、-N-((C1~C10)アルキル)2-CF3、-Cl、-F、-CN、-NO2、及び-CO-NH-(C1~C25)アルキルから成る群から選択され、
1は独立して、
-X-(C1~C20)アルキル-COO-R4
-X-(CH2-CH2-O)b-R4
-X-(CH2-CH2-O)b-(CH2c-COO-R4
-X-(CH2-CH2-O)b-COO-R4
-X-(C1~C10)アルキル-COO-(CH2-CH2-O)b-R4
-X-(C1~C20)アルキル-NH2
-X-(C1~C10)アルキル-NH-(C1~C10)アルキル
-X-(C1~C10)アルキル-N-((C1~C10)アルキル)2
-(CH2c-O-(CH2-CH2-O)b-R4から成る群から選択され、
Xは独立して、O、COO、及びC(O)NH-から成る群から選択され、
4は、-H、-OH、-(C1~C8)アルキル、-(C1~C8)アルキル-OH、(C1~C8)アシル、-(CH2-CH2-O)b-CH3、及び生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解されることができる少なくとも1つの結合を含むアルキル鎖から成る群から選択され、
bは0~20の整数であり、
cは0~10の整数である。
【0060】
特定の実施形態では、cは1~4の整数、例えば1又は2である。
【0061】
特定の実施形態では、bは1~15、例えば3~12の整数である。
【0062】
特定の実施形態では、R2及びR3は独立して、H、-(C1~C4)アルキル、-NH-CO-CH3、-COOH、-COOCH3、-COOCH2CH3、-NH2、-NH-(C1~C4)アルキル、-N-((C1~C4)アルキル)2-CF3、-Cl、-F、-CN、-NO2、及び-CO-NH-(C1~C4)アルキルから成る群から選択される。
【0063】
特定の実施形態では、R4は、-H、-OH、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルキル-OH、(C1~C4)アシル、-(CH2-CH2-O)b-CH3、-(C1~C4)アルキル-COO-(C1~C8)アルキル、及び-(C1~C4)アルキル-C(O)NH-(C1~C8)アルキルから成る群から選択される。特定の実施形態では、R4は、-H、-OH、-(C1~C2)アルキル、-(C1~C2)アルキル-OH、(C1~C2)アシル、-(CH2-CH2-O)b-CH3、-CH2-COO-CH3、-CH2-COO-CH2-CH3、-CH2-COO-CH3、-CH2-CH2-COO-CH2-CH3、-CH2-CONH-CH3、-CH2-CONH-CH2-CH3、-CH2-CH2-CONH-CH3、及び-CH2-CH2-CONH-CH2-CH3から成る群から選択される。
【0064】
特定の実施形態では、放射線不透過性分子は式Iの化合物である。
【0065】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、造影剤は、式IIIの化合物及び式IVの化合物である:
【化2】
式中、
n及びmは独立して1~20の整数であり、
2及びR3は独立して、-H、-COOH、-(C1~C25)アルキル、-(C1~C25)アルキル-COOH、-O-(C1~C25)アルキル、-(C1~C25)アルキル-COO-(C1~C25)アルキル、-O-(CH2-CH2-O)b-CH3、-NH-CO-(C1~C25)アルキル、-NH2、-NH-(C1~C25)アルキル、-N-((C1~C10)アルキル)2-CF3、-Cl、-F、-CN、-NO2、及び-CO-NH-(C1~C25)アルキルから成る群から選択され、
4は、-H、-OH、-(C1~C8)アルキル、-(C1~C8)アルキル-OH、(C1~C8)アシル、-(CH2-CH2-O)b-CH3(式中、bは0~20の整数である)、及び生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解されることができる少なくとも1つの結合を含むアルキル鎖から成る群から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態では、放射線不透過性分子は末端ヒドロキシルを含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、式IV又はIIIの化合物のいずれかについて、nは3~12の整数である。いくつかの実施形態では、mは1~5の整数である。いくつかの実施形態では、R2及びR3は独立して、H、-(C1~C4)アルキル、-NH-CO-CH3、-COOH、-COOCH3、及び-COOCH2CH3から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、R4は、-H、-OH、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルキル-OH、(C1~C4)アシル、-(CH2-CH2-O)b-CH3、及び生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解されることができる少なくとも1つの結合を含むアルキル鎖、例えば、-(C1~C4)アルキル-COO-(C1~C8)アルキル及び-(C1~C4)アルキル-C(O)NH-(C1~C8)アルキルから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、R4は、-H、-CH3、-CH2-COO-CH3、-CH2-COO-CH2-CH3、-CH2-CH2-COO-CH3、-CH2-CH2-COO-CH2-CH3、-CH2-CONH-CH3、-CH2-CONH-CH2-CH3、-CH2-CH2-CONH-CH3、及び-CH2-CH2-CONH-CH2-CH2である。いくつかの実施形態では、放射線不透過性分子は、式IIIの化合物であり、式中R2及びR3は両方とも-Hであり、nは11であり、R4は-CH3である。いくつかの実施形態では、放射線不透過性分子は、式IVの化合物であり、R2及びR3は両方とも-Hであり、nは3であり、mは1であり、R4は-CH3である。
【0068】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、造影剤はpHに対して感受性である。pH感受性放射線不透過性分子の非限定的な例は、アミノ含有ヨウ素化化合物である。アミノ含有ヨウ素化化合物は、本発明の組成物中で脱プロトン化形態で溶解することができ、そのような化合物は、低い水溶性を有し、塞栓術の間に形成された沈殿物に捕捉されてもよい。一度沈殿物が形成されると、周囲のpHによりアミンがかなりプロトン化してもよく、造影剤のLogPを減少させ、その結果、周囲の生理的媒体への拡散によって沈殿物から除去される。上記に提供される式に含まれるいくつかの化合物に加えて、この種類の放射線不透過性分子の他の非限定的な例は、3,5-ジヨード-4-ピリドン-1-酢酸及びトリヨードアニリンの誘導体である。したがって、他の特定の実施形態では、放射線不透過性分子は、3,5-ジヨード-4-ピリドン-1-酢酸又はトリヨードアニリンの誘導体、例えばアミド又はN-アシル化誘導体である。
【0069】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、放射線不透過性分子は式Vの化合物である:
【化3】
式中、
6及びR7は独立して、-H、-COOH、-(C1~C25)アルキル、-(C1~C25)アルキル-COOH、-O-(C1~C25)アルキル、-(C1~C25)アルキル-COO-(C1~C25)アルキル、-O-(CH2-CH2-O)b-CH3、-NH-CO-(C1~C25)アルキル、-NH2、-NH-(C1~C25)アルキル、-N-((C1~C10)アルキル)2-CF3、-Cl、-F、-CN、-NO2、及び-CO-NH-(C1~C25)アルキルから成る群から選択され、
5は、-(CH2d-COO-R8であって、式中、dは0~10の整数であり、R8は、-H、-OH、-(C1~C8)アルキル、-(C1~C8)アルキル-OH、(C1~C8)アシル、-(CH2-CH2-O)b-CH3(式中、bは0~20の整数である)、及び生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解されることができる少なくとも1つの結合を含むアルキル鎖から成る群から選択される。
【0070】
いくつかの実施形態では、dは、1~5、又は1~4、例えば1、2、3又は4の整数である。いくつかの実施形態では、R6及びR7は独立して、H、-(C1~C4)アルキル、-NH-CO-CH3、-COOH、-COOCH3及び-COOCH2CH3から成る群より選択される。いくつかの実施形態では、R8は、-H、-OH、-(C1~C4)アルキル、-(C1~C4)アルキル-OH、(C1~C4)アシル、-(CH2-CH2-O)b-CH3、-(C1~C4)アルキル-COO-(C1~C8)アルキル、及び-(C1~C4)アルキル-C(O)NH-(C1~C8)アルキルから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、放射線不透過性分子は、式Vの化合物であり、R6及びR7は両方とも-Hであり、dは1であり、R8は-CH2-CH2-CH3である。いくつかの実施形態では、放射線不透過性分子は、式Vの化合物であり、R6及びR7は両方とも-Hであり、dは1であり、R8は-(CH25-CH3である。
【0071】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、式I~Vの化合物のいずれかについて、R4及びR8は、生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解されることができる少なくとも1つの結合を含むアルキル鎖であってもよい。特定の実施形態では、生理的環境で化学的に加水分解されることができる該結合は、エステル、ポリエステル、アミド、及びカーボネート、例えば-(C1~C4)アルキル-COO-(C1~C8)アルキル又は-(C1~C4)アルキル-C(O)NH-(C1~C8)アルキルから選択される。生理的環境で酵素的に加水分解されることができる結合は、限定されないが、マトリックスメタロプロテイナーゼ、コラゲナーゼ、エラスターゼ、カテプシン、又はそれらの組合せなどの酵素によって分解されることができるペプチド結合を含むことができる。
【0072】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、放射線不透過性分子は、少なくとも1つのペグ化鎖を含む式I~Vの化合物から選択される分子である。
【0073】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、放射線不透過性分子は、LFE03、LFE04、LFE05、LFE06、LFE07、LFE08、LFE09、LFE10、LFE111、LFE12、LFE17、LFE18、LFE19、及びLFE20(図1に示す)から成る群から選択される分子である。より特定の実施形態では、放射線不透過性分子は、LFE05、LFE06、LFE07、LFE09、及びLFE10(図1に示す)から成る群から選択される分子である。
【0074】
上記に加えて、本発明で考慮される放射線不透過性分子は通常、2500g/mol以下の分子量を有する。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、放射線不透過性分子は2000g/mol以下の分子量を有する。特定の実施形態では、放射線不透過性分子は、1900g/mol以下、例えば、1800g/mol、1700g/mol、1600g/mol、1500g/mol、1400g/mol、1300g/mol、1200g/mol、1100g/mol、1000g/mol、900g/mol、800g/mol、700g/mol、600g/mol、又は500g/molの分子量を有する。
【0075】
本願はまた、上で定義した放射線不透過性分子、並びに塞形成における放射線不透過性分子の使用、例えば、塞栓形成組成物に放射線不透過性を提供するための放射線不透過性分子の使用、又は単に塞栓形成組成物を調製するための放射線不透過性分子の使用を提供する。特定の実施形態では、本願は、上で定義した式I、II、III、IV、又はVを有する化合物である放射線不透過性分子を提供する。より特定の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのペグ化鎖を含む式I~Vの化合物から選択される分子である放射線不透過性分子を提供する。他の特定の実施形態では、本発明は、LFE03、LFE04、LFE05、LFE06、LFE07、LFE08、LFE09、LFE10、LFE111、LFE12、LFE17、LFE18、LFE19、及びLFE20(図1に示す)から成る群から選択される分子である放射線不透過性分子を提供する。さらにより特定の実施形態では、放射線不透過性分子は、LFE05、LFE06、LFE07、LFE09、及びLFE10(図1に示す)から成る群から選択される分子である。
【0076】
ポリマー
本発明の液体ポリマー組成物中のポリマーは、非生理的溶液に可溶であり、生理的溶液に不溶なものである。ポリマーが溶液に可溶である場合、ポリマーは、送達装置、例えばマイクロカテーテルを介して送達部位及び/又は治療部位に配置することが容易であることができる。しかしながら、一度溶液から沈殿すると、ポリマーを配置することははるかに困難になりうる。例えば、一度沈殿すると、ポリマーは、場合によっては、送達装置を介して配置することがより困難になる可能性がある。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法は、そうでなければ送達装置を出る前に可溶でなくても容易に投与されない部位にポリマー処理溶液を提供することができる。本発明の組成物中のポリマーは生体適合性である。
【0077】
本発明の第1の態様に係る液体ポリマー組成物は、非生理的溶媒又は溶媒系(例えば、非生理的pHを有する溶媒)を含む。したがって、本発明の塞栓形成組成物は溶液である。ポリマーは溶液に可溶であるが、生理的条件では不溶である。いくつかの実施形態では、ポリマーは、水混和性有機溶媒に可溶であることができるが、生理的条件(例えば水)では不溶でありうる。
【0078】
ポリマー、例えば液体塞栓ポリマーの機能は、血液又は他の生理的流体と接触したときに沈殿する可能性がある。あるいは、溶解トリガーが水混和性有機溶媒への溶解性及び生理的条件での不溶性である場合、任意の生理的環境が沈殿を開始しうる。
【0079】
生理学的条件でのポリマーの沈殿を使用して、生物学的構造を閉塞することができる。液体塞栓ポリマーの溶解度の制御は、ポリマーの組成を選択することによって達成することができる。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、ポリマーは、2つの異なる重合性モノマー、3つの異なる重合性モノマー、4つの異なる重合性モノマー、5つの異なる重合性モノマー、又はそれ以上の反応生成物でありうる。
【0080】
重合性部分は、エチレン、ビニルアルコール、ビニル、プロピレン、エチレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びそれらの誘導体を含むがこれらに限定されない、フリーラジカル又はアニオン重合を可能にする。あるいは、限定されないが、求核剤/N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、求核剤/ハロゲン化物、ビニルスルホン/アクリレート又はマレイミド/アクリレートなどの他の反応性化学物質を使用して液体塞栓ポリマーを重合することができる。好ましい重合性部分は、エチレン、ビニルアルコール、アクリレート及びアクリルアミドであり得る。
【0081】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、ポリマーが、エチレンビニルアルコール共重合体、酢酸セルロース、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、酢酸セルロースを含む共重合体、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はその両方、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)共重合体、ポリ(オリゴエチレングリコール)-(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド共重合体、及びそれらの組合せから成る群から選択される。
【0082】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、ポリマーはエチレンビニルアルコール共重合体である。エチレンビニルアルコール共重合体は、エチレン(疎水性)とビニルアルコール(親水性)とのランダム混合物を主成分とする生体適合性ポリマーである。このポリマーは、非生理的溶媒、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解される。この混合物が水性生理的媒体、例えば血液と接触すると、DMSOは急速に拡散し、ポリマーのin situ沈殿及び固化を引き起こす。
【0083】
本明細書で使用されるエチレンビニルアルコール共重合体は、市販されているか、又は当技術分野で認識されている手順によって調製することができる。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、エチレンビニルアルコール共重合体組成物は、6重量%のエチレンビニルアルコール共重合体と20~40重量%の放射線不透過性分子とのDMSO溶液が、40℃で30センチストークス以下の粘度を有するように選択される。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、エチレンビニルアルコール共重合体は、1~20の範囲のメルトフローインデックスを有する。他の特定の実施形態では、エチレンビニルアルコール共重合体は、1.5~15、例えば2~5の範囲のメルトフローインデックスを有する。
【0084】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、エチレンビニルアルコール共重合体は、約25~約60モル%のエチレン及び約40~約75モル%のビニルアルコールを含む。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の特定の実施形態では、エチレンビニルアルコール共重合体は、約30~約50モル%のエチレン及び約50~約70モル%のビニルアルコールを含む。これらの組成物は、血管を塞栓形成する際の使用に適した適切な沈殿速度を提供する。
【0085】
非生理的溶媒
本発明の第1の態様による液体ポリマー組成物は、非生理的溶媒又は溶媒系を含む。非生理的溶媒又は溶媒系は、非生理的な特徴を有する。一般に、非生理的溶媒又は溶媒系は、水以外の任意の溶媒である。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、非生理的溶媒又は溶媒系は、水と混和性の有機溶媒である。
【0086】
本発明の第1の態様によれば、ポリマー及び放射線不透過性分子は、非生理的溶媒又は溶媒系に可溶である。本発明の組成物中の非生理的溶媒又は溶媒系はまた、使用される濃度で生体適合性でもある。
【0087】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様の一実施形態では、非生理的溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、DMSOの類似体/ホモログ、ジメチルホルムアミド、一価アルコール、多価アルコール、エトキシ化多価アルコール、エトキシ化多価アルコールのメチルエーテル、N-メチルピロリドン、又はそれらの組合せである。他の特定の実施形態では、非生理的溶媒はDMSOである。
【0088】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、塞栓形成組成物は、2つ以上の溶媒を含む溶媒系を含む。例えば、非生理的溶媒系は、水と混和性である1つ又は複数の有機溶媒及び水を含んでもよい。特定の実施形態では、溶媒系は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、DMSOの類似体/同族体、ジメチルホルムアミド、一価アルコール、多価アルコール、エトキシ化多価アルコール、エトキシ化多価アルコールのメチルエーテル、N-メチルピロリドン、又はそれらの組合せを含む。特定の実施形態では、溶媒系は、上記の溶媒の1つ又はそれらの組み合わせ及び水を含む。
【0089】
特定の実施形態では、非生理的溶媒系はアルコール及び水である。他の特定の実施形態では、非生理的溶媒はDMSO及び水である。
【0090】
調製方法及び製品
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様で定義される液体ポリマー組成物を調製するための方法であって、方法は、
(i)非生理的溶媒又は溶媒系、ポリマー及び放射線不透過性化合物を提供するステップと、
(ii)均一な溶解が達成されるまで混合するステップを含む、
方法に関する。
【0091】
溶媒又は溶媒系、ポリマー及び放射線不透過性分子について上で定義した全ての実施形態は、本発明のこの第2の態様にも適用される。
【0092】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第2の態様のいくつかの実施形態では、穏やかな加熱及び撹拌を使用して、共重合体を生体適合性溶媒へ溶解することができ、例えば、50℃で12時間である。
【0093】
溶媒又は溶媒系への成分の添加の特定の順序は重要ではなく、得られた懸濁液の撹拌は、組成物の均一性を達成するために必要に応じて行われる。好ましくは、組成物の混合/撹拌は、周囲圧力の無水雰囲気下で行われる。得られた組成物を加熱滅菌した後、保存してもよい。得られた組成物は、例えば、密封された琥珀色のボトル又はバイアルに必要になるまで保存されてもよい。
【0094】
液体ポリマー組成物は、針及びシリンジを使用してバイアルから取り出すことができ、シリンジは後で送達装置又はカテーテルに接続することができる。あるいは、液体塞栓ポリマー配合物は、送達シリンジに予め包装されることができる。
【0095】
したがって、本発明は第3の態様では、本発明の第1の態様で定義された液体ポリマー組成物を含む注射剤(製品)を提供する。溶媒又は溶媒系、ポリマー及び放射線不透過性分子について上で定義した全ての実施形態は、本発明のこの第3の態様にも適用される。いくつかの実施形態では、注射剤は送達シリンジに予め包装される。
【0096】
第4の態様では、本発明はまた、塞栓用キットであって、キットは、本発明の第1の態様による液体ポリマー組成物を収容する容器を含む、キットを提供する。溶媒又は溶媒系、ポリマー及び放射線不透過性分子について上で定義した全ての実施形態は、本発明のこの第4の態様にも適用される。任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第4の態様の特定の実施形態では、容器は、予め包装された送達シリンジ又はバイアルである。この第4の態様の別の特定の実施形態では、キットは更なる容器を備える。この更なる容器は、例えば、すすぎ用の非生理的溶液(すすぎ溶液)を含んでもよい。すすぎ溶液は、塞栓形成組成物中の溶液と同じであってもよい。この第4の態様のより特定の実施形態では、組成物又はすすぎ溶液は、着色化合物を更に含む。着色化合物は、塞栓形成組成物とすすぎ溶液を明確に区別するために添加されてもよい。他の特定の実施形態では、キットは、塞栓形成組成物を使用するための説明書を備える。
【0097】
医学的適応
次いで、上述の組成物を、哺乳動物の血管を塞栓形成するための方法に使用する。本発明の第5及び第6の態様はそれぞれ、血管を塞栓形成するのに使用するための、及び血管欠損を充填するのに使用するための本発明の第1の態様の組成物を企図する。
【0098】
溶媒又は溶媒系、ポリマー及び放射線不透過性分子について上で定義した全ての実施形態は、本発明の第5及び第6の態様にも適用される。
【0099】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第5及び第6の態様の一実施形態では、ポリマーの沈殿時に血管が塞栓されるように、十分な量の本発明の第1の態様による組成物が、従来の手段(例えば、蛍光透視下での注射又はカテーテル送達)によって選択された血管に導入される。使用される塞栓形成組成物の特定の量は、塞栓される血管系の総体積、組成物中のポリマーの濃度、共重合体の沈殿速度(固体形成)などによって決定される。そのような要因は十分に当業者の技術の範囲内である。沈殿速度は、ポリマーの全体的な疎水性/親水性を変化させることによって制御することができ、より疎水性のポリマー組成物によってより速い沈殿速度が達成される。これは、例えば、塞栓形成組成物中のエチレンビニルアルコール共重合体中のエチレン含有量を増加させることによって達成されてもよい(エチレンビニルアルコールがポリマーである場合)。
【0100】
任意選択で上記又は下記に提供される実施形態のいずれかと組み合わせた、本発明の第5及び第6の態様の一実施形態では、第1の態様による塞栓形成組成物は、小径医療用カテーテルを介して選択された血管部位に送達される。使用される特定のカテーテルは、ポリマーカテーテル構成要素が塞栓形成組成物と適合する限り(すなわち、カテーテル構成要素が塞栓形成組成物中で容易に分解しない)、重要ではない。これに関して、1つの特定の実施形態では、本明細書に記載の塞栓形成組成物の存在下での不活性のために、ポリエチレンがカテーテル構成要素に使用される。塞栓形成組成物と適合する他の材料は、当業者によって容易に決定することができ、例えば、他のポリオレフィン、フルオロポリマー(例えば、テフロン、シリコーンなど)が挙げられる。
【0101】
カテーテルによって送達される場合、注入速度は、血管部位における沈殿物の形態を部分的に決定する。具体的には、約0.05~0.3ml/分の低い注入速度は、粒又は小結節の形態の沈殿物を提供し、沈殿物は主に注入点で形成するため、部位特異的塞栓術に特に有益である。対照的に、約0.1~0.5ml/数秒以上(例えば、最大10秒)の高い注入速度は、カテーテル先端から下流に突出するフィラメント状の塊を提供し、これは血管樹の深部に塞栓形成剤を提供するのに特に有益である。そのような手順は、腫瘍塊、器官及び動静脈奇形(AVM)を塞栓形成するのに適している。
【0102】
血管部位に導入されると、溶媒は血液中に急速に拡散し、固体沈殿物が形成され、その沈殿物は放射線不透過性分子がその中に封入されたポリマーである。いかなる理論にも限定されるものではないが、最初に、血液と接触すると柔らかいゲルからスポンジ状の固体沈殿物が形成され、この沈殿物は構造に隙間があり、繊維状であると考えられる。次いで、この沈殿物は血流を制限し、赤血球を捕捉し、それによって血管の血餅塞栓を引き起こす。沈殿物に封入された造影剤は、ゆっくり放出され、加水分解、酵素作用又は(脱)プロトン化によってより水溶性の高い分子に変換され、その結果、沈殿物は徐々に放射線不透過性を失う。最終的に、放射線不透過性は完全に消失し、塞栓領域は蛍光透視法に対して半透明になる。漸進的な放射線不透過性損失は、後続の塞栓術での視覚化の改善を可能にしてもよいので有利であってもよい。
【0103】
上述の血管の塞栓形成は、出血(例えば、臓器出血、胃腸出血、血管出血、動脈瘤に関連する出血)を防止/制御するため、又は患部組織(例えば、腫瘍など)を切除するために使用することができる。したがって、本発明はまた、部分的又は完全に出血を止めるのに使用するための本発明の第1の態様による組成物を企図する。
【0104】
更に、上で定義した組成物は、医薬を血管部位へ送達するための適切なビヒクルを提供する。したがって、本発明は、薬物の送達に使用するための本発明の第1の態様の組成物も企図する。具体的には、塞栓形成組成物と適合する適切な医薬、例えば化学療法剤、成長因子剤、抗炎症剤、鎮痙剤などを治療レベルでこの組成物に含め、血管部位に直接送達することができる。
【0105】
明細書及び特許請求の範囲を通して、「備える(comprise)」という語及びこの語の変形は、他の技術的特徴、添加剤、成分又はステップを排除することを意図しない。更に、「含む(comprise)」という語は、「から成る(consisting of)」の場合を包含する。本発明の更なる目的、利点及び特徴は、記載を考察すると当業者に明らかになるか、又は本発明の実施によって習得されてもよい。以下の実施例及び図面は例示として提供され、本発明を限定することを意図するものではない。更に、本発明は、本明細書に記載の特定かつ好ましい実施形態の全ての可能な組み合わせを網羅する。
【実施例
【0106】
実施例1:放射線不透過性化合物の合成
【0107】
ジアトリゾ酸の誘導体の合成:LFE21及びLFE22
以下の実施例は、化合物LFE21の合成を例示する。Sigma Aldrich製のジアトリゾ酸(LFE23、1.2当量)、1-ブロモヘキサン(1当量)、炭酸カリウム(1.2当量)及びヨウ化カリウム(1.2当量)をDMFに溶解し、90℃で一晩撹拌した。翌朝、反応混合物を冷却し、脱イオン水(10×体積のDMF)中で沈殿させた。沈殿物を濾過し、脱イオン水で洗浄し、真空下で乾燥させた。生成物をメタノール及びヘキサンからの結晶化によって更に精製した。
【0108】
ジアトリゾ酸のエステル化を1-ブロモプロパンで行うこと以外はLFE23と同じ手順に従ってLFE22を調製した。
【0109】
イオメプロールの誘導体の合成:LFE14、LFE15及びLFE16
この実施例は、化合物LFE14の合成を例示する。簡潔には、イオメプロールをブラコから購入し(LFE13、1当量)、無水酢酸(25当量)及び無水重炭酸ナトリウム(10当量)を乾燥酢酸エチル中、室温で48時間撹拌した。反応の完了後、混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残渣にジクロロメタン及び水を添加し、相を分離した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。シロップをヘキサン及び酢酸エチルの混合物から結晶化させた。
【0110】
LFE15及びLFE16は、イオメプロールのエステル化をそれぞれプロピオン酸無水物及び酪酸無水物を用いて実行すること以外はLFE14と同じ手順に従って調製した。
【0111】
3,5-ジヨード-4-ピリドン-N-酢酸の誘導体の合成:LFE03及びLFE04
この実施例では、化合物LFE03の合成を例示する。簡潔には、Manchester Organics製の3,5-ジヨード-4-ピリドン-N-酢酸(1部)、1-プロパノール(10部)及び濃硫酸(0.01部)を一晩還流した。得られたエステルは冷却すると結晶化した。生成物をメタノールから再結晶した。
【0112】
3,5-ジヨード-4-ピリドン-N-酢酸のエステル化を1-ヘキサノールで行うこと以外はLFE03と同じ手順に従ってLFE04を調製した。
【0113】
2,4,6-トリヨードフェノールの誘導体:LFE01、LFE05、LFE06、LFE07、LFE08、LFE11、LFE12及びLFE24の合成
この実施例は、化合物LFE05の合成を例示する。40℃の乾燥アセトニトリル中のSigma Aldrich製の2,4,6-トリヨードフェノール(0.5当量)、炭酸カリウム(2当量)及びヨウ化カリウム(1当量)を添加し、反応混合物を1時間撹拌した。次いで、アセトニトリルに溶解した1-(2-ブロモエトキシ)-2-(2-メトキシエトキシ)エタン(1当量)を滴加し、内容物を80℃で一晩加熱した。濾過によって塩基を除去した後、溶媒を真空中で除去し、得られた生成物を酢酸エチルに溶解した。有機相を飽和NaHCO3及び水で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、シリカパッドを通して濾過した。溶出した生成物をヘキサン及び酢酸エチルから再結晶した。
【0114】
2,4,6-トリヨードフェノールのエーテル化を1-ブロモヘキサン、2-[2-(2-クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、Br-Peg5-OH、Br-Peg12-OH、Br-Peg4-COOEt、Br-Peg3-OAc及び2-エチルヘキシルブロミドを用いて行うこと以外はLFE05と同じ手順に従って、LFE01、LFE06、LFE07、LFE08、LFE11、LFE12及びLFE24を調製した。
【0115】
2,3,5-トリヨード安息香酸の誘導体:LFE17及びLFE18の合成
以下の実施例は、化合物LFE18の合成を例示する。2,3,5-トリヨード安息香酸(1当量)及びトリエチレングリコール(1当量)をジクロロメタンに溶解した。ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.1当量)をジクロロメタンに別々に溶解した。両方の溶液を-20℃に冷却し、一緒に混合した。触媒量の4-ジメチルアミノピリジンを添加し、反応混合物を4℃で一晩維持した。翌朝、反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物を濾過し、有機相を飽和重炭酸ナトリウムで数回、最後に水で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ロータリーエバポレートした。生成物をヘキサン及び酢酸エチルから再結晶した。
【0116】
2,3,5-トリヨード安息香酸のエステル化をペンタエチレングリコールを用いて行うこと以外はLFE18と同じ手順に従ってLFE17を調製した。
【0117】
2,4,6-トリヨードフェノキシ酢酸の誘導体:LFE02、LFE09及びLFE10の合成
以下の実施例は、化合物LFE09の合成を例示する。簡潔には、40℃の乾燥アセトニトリル中のSigma Aldrich製の2,4,6-トリヨードフェノール(0.5当量)、炭酸カリウム(2当量)及びヨウ化カリウム(1当量)を添加し、反応混合物を1時間撹拌した。次いで、アセトニトリルで希釈したブロモ酢酸エチル(1当量)を滴加し、内容物を80℃で一晩加熱した。濾過によって塩基を除去した後、溶媒を真空中で除去し、得られた生成物を酢酸エチルに溶解した。有機相を飽和NaHCO3及び水で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ロータリーエバポレートした。これにより、エチル2,4,6-トリヨードフェノキシアセテート、すなわち化合物LFE02が得られた。
【0118】
エチル2,4,6-トリヨードフェノキシアセテート(1当量)及び水酸化カリウム(4当量)をメタノールに溶解し、室温で一晩撹拌した。メタノールを蒸発させ、固体を水に溶解した。混合物をHCl 2Nで酸性化し、得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、乾燥させて、2,4,6-トリヨードフェノキシ酢酸を得た。
【0119】
2,4,6-トリヨードフェノキシ酢酸(1当量)及びトリエチレングリコールモノメチルエーテル(1当量)をジクロロメタンに溶解した。ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.1当量)をジクロロメタンに別々に溶解した。両方の溶液を-20℃に冷却し、一緒に混合した。触媒量の4-ジメチルアミノピリジンを添加し、反応混合物を4℃で一晩維持した。翌朝、反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物を濾過し、有機相を飽和重炭酸ナトリウムで数回、最後に水で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ロータリーエバポレートした。生成物をヘキサン及び酢酸エチルから再結晶した。
【0120】
2,4,6-トリヨードフェノキシ酢酸のエステル化をトリエチレングリコールを用いて行うこと以外はLFE09と同じ手順に従ってLFE10を調製した。
【0121】
2,3,5-トリヨードベンジル誘導体:LFE19及びLFE20の合成
以下の実施例では、化合物LFE20の合成を例示する。簡潔には、Sigma Aldrich製の氷冷した2,3,5-トリヨードベンジル(1.0当量)アルコールのエーテル溶液に、PBr3(1.5当量)を窒素下で滴加した。混合物を室温で一晩撹拌し、H2O(15mL)を少量ずつ0℃で添加することによって反応をクエンチした。水相を除去し、有機層をH2Oで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、真空中で蒸発させた。2,3,5-トリヨードベンジルブロミドの精製を、ヘキサン及び酢酸エチルを溶媒として使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって達成した。
【0122】
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(1.0当量)の氷冷THF溶液に、水素化ナトリウム(鉱油分散液中60%、1.04当量)をゆっくり添加した。混合物を室温で30分間撹拌し、その後、THFに溶解した2,3,5-トリヨードベンジルブロミド(1当量)を滴加した。反応物を室温で一晩撹拌し、次いで、H2Oでクエンチした。生成物を酢酸エチルで4回抽出し、合わせた有機相をMgSO4で乾燥させ、ロータリーエバポレートした。生成物を、ヘキサン及び酢酸エチルを溶離液として使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。
【0123】
2,3,5-トリヨードベンジルブロミドのエーテル化をペンタエチレングリコールモノメチルエーテルを用いて行うこと以外はLFE20と同じ手順に従ってLFE19を調製した。
【0124】
実施例2:ポリマー及び造影剤を含む組成物造影剤のLogP並びに組成物の粘度及び沈殿挙動
【0125】
実施例1の放射線不透過性化合物を、DSMOに6%で溶解したエチレンビニルアルコール共重合体(44%エチレン)(Sigma Aldrich 414107)と共にヨウ素当量150mg/mlの濃度で溶解した。得られた溶液をアッセイして、沈殿挙動及び放射線不透過性損失を評価した。得られた溶液の粘度は、平行プレート構成のレオメーター(Anton Paar MCR 92)を用いて決定した。測定は、新たに調製した溶液で直径100mmのプレートを用いて40℃で行った。塞栓形成配合物は、40℃で20~35cstの範囲の粘度を有していた。
【0126】
合成した造影剤のlogPは、MarvinSuiteソフトウェア(ChemAxon、バージョン20.7.0)を使用して計算した。計算方法は、Viswanadhanら(J.Chem.Inf Comput.Sci.1989,29,163-172)の刊行物に基づいている。
【0127】
シリンジ及び細針(27G)を使用して、塞栓製剤をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)にゆっくり注射した。100ulの塞栓形成製剤をゆっくりと注射した(およそ1分)後に、塞栓形成物質の沈殿物を得た。沈殿挙動を観察し、凝集(2)、材料の一部の損失を伴う凝集(1)及び制御不能な注射又は非凝集(0)としてスコア化した。
【0128】
沈殿物の放射線不透過性損失を、新たに調製した試料(時間=0)及び37℃のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で30日間インキュベートした試料の放射線不透過性を比較することによって決定した。PBSは、可能であれば毎日交換した。放射線不透過性は、CアームX線装置(OEC Fluorostar 7900 COMPACT 2、General Electric)を使用して決定した。放射線不透過性損失は、放射線不透過性損失が5%未満である場合に放射線安定(スコア=0)、放射線不透過性損失が5~25%の間に含まれる場合にわずかに放射線不安定(スコア=1)、放射線不透過性損失が26~69%の間に含まれる場合に中程度に放射線不安定(スコア=2)、及び放射線不透過性損失が70~100%の間に含まれる場合に高度に放射線不安定(スコア=3)としてスコア化した。放射線不透過性の均一性も、非均一(スコア=0)又は均一(スコア=1)としてスコア化した。
【0129】
【表1】
【0130】
凝集性及び放射線不透過性損失のスコアが高い塞栓化合物を、プログラムされた放射線不透過性損失を有する塞栓形成製剤を調製するための潜在的な候補として優先順位付けした。
【0131】
図2は、上述した代表的な化合物の経時的な(時間0、並びに37℃で30分間及び30日間インキュベートした後の)PBSにおける放射線不透過性損失を示す。-1、6~7、6の範囲のlogP値を有する以下の放射線不透過性化合物:LFE24、LFE21、LFE15、LFE03、LFE09、LFE08、LFE23及びLFE13をアッセイした。手順は上で定義したとおりであった。logP値が高い、すなわち7.0を超える製剤は放射線安定である一方、logP値が低い、すなわち2.0未満(pH 7.4でlogP(LFE13)=-1.6及びlogP(LFE23)=-0.5)の製剤は数分以内に放射線不透過性を失うことを観察することができる。しかし、2.8~5.8の間に含まれる中間logP値の化合物を含む製剤は、最初の30分間はかなりの放射線不透過性を維持する一方、37℃で30日間PBS中でインキュベートした後にはかなりの放射線不透過性損失を示す。
【0132】
放射線不透過性の定量化を表2に示す。logP=7.6の化合物LFE24は、37℃のPBS中で30日後に完全な放射線安定性を示した。logP値が2.8~5.8の間に含まれる放射線不透過性化合物LFE03、LFE08、LFE09、LFE15及びLFE21で調製した製剤は、30分後に化合物の放射線不透過性の50%超を維持したが、37℃のPBS中で30日後にかなりの放射線不透過性損失を示した。放射線不透過性損失は、これらの化合物のlogP値と正の相関があり、この範囲のlogP値の化合物が、放射線不透過性化合物を6ヶ月未満で生体再吸収する必要があってもよい塞栓目的に適切であってもよいことを示唆している。対照的に、それぞれ-1.6及び-0.5のPBS中のlogPを有する、LFE13及びLFE23などの高度に水溶性の放射線不透過性化合物で調製した製剤は、30分後の時点0で化合物の放射線不透過性の50%を超える放射線不透過性の損失を示し、化合物の水溶性及び拡散が速すぎてもよく、塞栓形成プロセスの正確な監視を可能にしなくてもよいあることを示唆した。
【0133】
【表2】
【0134】
実施例3:放射線不透過性損失のインビボ決定
【0135】
実施例2に記載される色々な化合物を含有する塞栓形成製剤を、ヨウ素当量150mg /mlでの放射線不透過性損失についてインビボで評価した。最初に、製剤を2%アガロース型に沈殿させ、室温で2時間インキュベートしてロッド状沈殿を確実に形成した。その後、得られたロッドを型から慎重に取り出し、穏やかに振盪しながら脱イオン水中で1時間インキュベートしてジメチルスルホキシドを除去した。得られたロッドを穏やかな真空下で一晩乾燥させ、ペットマイクロチップシリンジに充填した。ロッド状沈殿物を充填したマイクロチップシリンジをエチレンオキシドで滅菌し、得られた沈殿物を最終的にニュージーランドウサギ(New Zealand rabbit)(4.5Kg)の皮下に埋め込んだ。移植片の放射線不透過性を、移植直後及び4週間後にX線画像化によって決定した。4週間後、移植片を除去し、移植片の放射線不透過性もエクスビボで測定した。
【0136】
図3に示す結果から、放射線不透過性が4週間にわたって徐々に失われたことが示される。いくつかの移植片、すなわちLFE05、LFE07、LFE09及びLFE12では、放射線不透過性が初期時間の間/時点で十分に保持されたが、放射線不透過性の損失は移植の4週間後には完全又はほぼ完全だった。これらの移植片の放射線不透過性は、X線蛍光透視法で監視した場合に観察されず、これらの造影剤が完全に生体再吸収され、塞栓目的の良好な候補であることが示唆された。残りの移植片、LFE04、LFE22、LFE21、LFE02及びLFE15は、移植の4週間後に蛍光透視法下で明確に局在化することができた。しかしながら、色々な程度の放射線不透過性損失が観察され、異なる放射線不透過性分子が異なる速度で、したがって分子の物理化学的特性で生体再吸収されたことが示唆された。放射線不透過性損失の割合は、6ヶ月後に50%を超える損失と適合し、logPが2.0~7.0の間に含まれるこれらの化合物も塞栓目的の良好な候補であることが示唆された。エチレンビニルアルコール共重合体で被覆された鋼線から成る対照移植片は、移植の4週間後に放射線不透過性の変化を示さなかった。
【0137】
回収した移植片及びインビボで移植されていない対照移植片の放射線不透過性を比較することによって、放射線不透過性損失をエクスビボで定量化した。結果は、表3に示すように、放射線不透過性損失と放射線不透過性材料の分配係数(logP)との間の正の相関を示す。
【0138】
【表3】
【0139】
実施例4:ブタ腎臓における塞栓製剤LFE09のインビボ評価
【0140】
この実施例では、実施例2に従って調製された塞栓組成物LFE09を使用する血管塞栓術のために35kgのブタを用意した。左腎臓の塞栓形成は、腎臓内にマイクロカテーテルを配置することによって進めた。カテーテルを腎動脈に前進させ、造影剤を流して位置を特定し、次いでDMSOを流し、続いて0.6mlのLFE09組成物を流し、続いて更にカテーテル内のDMSOを流した。LFE09組成物を腎動脈に迅速に注入した。組成物の送達後、腎臓の上極を遮断した。14日後、右腎臓を同じLFE09製剤0.6mlで塞栓形成し、動物を安楽死させた。図4に示すように、両方の腎臓で放射線不透過性を比較した。結果から、本発明の組成物が哺乳動物対象における血管のインビボ塞栓術に適しており、放射線不透過性が徐々に失われることが示される。
【0141】
実施例5:インビボでの放射線不透過性分子の放射線不透過性損失対logP
【0142】
DSMOに6%で溶解したエチレンビニルアルコール共重合体(44%エチレン)(Sigma Aldrich 414107)と共に、適切な放射線不透過性分子をヨウ素当量150mg/mlの濃度で溶解することによって、塞栓形成剤を調製した。この実施例では、LFE01(logP 6.8)、LFE04(logP 3.9)及びイオメプロール(logP-2.8)を使用した。対照として、DSMOに6%で溶解したエチレンビニルアルコール共重合体(44%エチレン)(Sigma Aldrich 414107)と共に300mg/mlの微粉化タンタルを使用して塞栓形成剤を調製した。しかしながら、この場合には懸濁液が得られた。得られた製剤を、インスリンシリンジ(マウスあたり30μL、放射線不透過性材料の群あたり3匹の動物)を使用してマウスの皮下に注射した。マウスを1日目(塞栓形成剤の注射後5分)、15日目及び30日目に安楽死させた。放射線不透過性沈殿物の形成及び存在を、OEC Cアーム蛍光透視装置(GE)を使用して監視した。放射線不透過性損失、すなわち、得られた放射線不透過性沈殿物からの放射線不透過性材料の放出を、標準的な方法ASTM F 640-20 Standard Test Methods for Determining Radiopacity for Medical Useに従って同じ装置を使用して評価した。放射線不透過性損失は、1日目、すなわち、注射の5分後に形成された放射線不透過性沈殿物の放射線不透過性と比較した残留放射線不透過性の割合として表した。この実施例の結果は、以下の表に見出すことができる。
【0143】
【表4】
【0144】
タンタルを用いた塞栓形成剤は、実験全体を通して一定の放射線不透過性を示し、タンタルが放射線不透過性沈殿物から放出されなかったことが確認された(図5a)。ヨウ素含有放射線不透過性分子を用いた塞栓形成剤は、logP値の減少に伴って放射線不透過性損失の増加を示した。logP6.8の放射線不透過性分子であるLFE01化合物を用いた塞栓形成剤は、凝集沈殿物を示し、30日後に放射線不透過性分子の一部を放出した(図5b)。中程度のlogP値(logP 3.9)の放射線不透過性分子であるLFE04化合物を用いた塞栓形成剤は、均一な放射線不透過性を有する沈殿物を示し、放射線不透過性分子は30日後に完全に放出された(図5c)。対照的に、低いlogP値(logP-2.8)を有する水溶性造影剤であるイオメプロールを用いた塞栓形成剤は、放射線不透過性が急速に消失する非凝集性沈殿物を示し、この沈殿物は注射後の急速な溶解のため注射の5分後にはほとんど見えなかった(図5d)。したがって、logPパラメータの適切な選択は、医学的に好都合な時間枠内での完全な放射線不透過性損失の利点を伴って、均一な放射線不透過性を有する凝集沈殿物を塞栓形成用途に適したものにしてもよい。
【0145】
条項
完全を期すために、本発明の様々な態様を、以下の番号付けされた条項に記載する。
【0146】
1.
(a)約2~約20重量%のポリマー;
(b)2000g/mol未満の分子量を有する約5~約40重量%の放射線不透過性分子;及び
(c)約40~約93重量%の非生理的溶媒系又は溶媒系を含む液体ポリマー組成物であって;
(i)組成物中の全成分の重量%の合計は100であり、
(ii)ポリマーと放射線不透過性分子は、両方とも非生理的溶媒又は溶媒系に溶解し、
(iii)液体ポリマー組成物は、生理的条件と接触すると、少なくとも30分間液体ポリマー組成物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持し、6ヶ月未満で液体ポリマー組成物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う放射線不透過性沈殿物を形成することができ、特に、沈殿物は、少なくとも1時間液体ポリマー組成物の放射線不透過性の少なくとも50%を維持し、3ヶ月未満で液体ポリマー組成物の放射線不透過性の少なくとも50%を失う、液体ポリマー組成物。
【0147】
2.
生理的条件との接触時に均一な放射線不透過性を有する沈殿物を形成する、請求項1に記載の液体ポリマー組成物。
【0148】
3.
放射線不透過性化合物が、組成物中に2.0~9.0のLogPを有する芳香族分子である、請求項1~2のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【0149】
4.
放射線不透過性化合物が、組成物中に2.0~7.0、特に3.0~5.0のLogPを有する非イオン化性芳香族分子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【0150】
5.
放射線不透過性化合物が、組成物中に4.0~9.0、特に5.0~8.0のLogPを有し、酸性基又は塩基性基を含むイオン化性芳香族分子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【0151】
6.
放射線不透過性分子が、分子1グラム当たりヨウ素又は臭素300mg当量を超える濃度でヨウ素又は臭素を含有する芳香族分子である、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【0152】
7.
放射線不透過性分子が、トリヨードフェノール、イオフェノキシ酸(iophenoxic acid)、トリヨード安息香酸、3,5-ジヨード-4-ピリドンジアトリゾ酸、5-アミノ-2,4,6-トリヨードイソフタル酸又はトリヨードアニリンのペグ化誘導体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【0153】
8.
放射線不透過性分子が式I、式II、又は式Vの化合物である:
【化4】
式中、
2及びR3は独立して、-H、-COOH、-(C1~C25)アルキル、-(C1~C25)アルキル-COOH、-O-(C1~C25)アルキル、-(C1~C25)アルキル-COO-(C1~C25)アルキル、-O-(CH2-CH2-O)b-CH3、-NH-CO-(C1~C25)アルキル、-NH2、-NH-(C1~C25)アルキル、-N-((C1~C10)アルキル)2-CF3、-Cl、-F、-CN、-NO2、及び-CO-NH-(C1~C25)アルキルから成る群から選択され、
1は独立して、
-X-(C1~C20)アルキル-COO-R4
-X-(CH2-CH2-O)b-R4
-X-(CH2-CH2-O)b-(CH2c-COO-R4
-X-(CH2-CH2-O)b-COO-R4
-X-(C1~C10)アルキル-COO-(CH2-CH2-O)b-R4
-X-(C1~C20)アルキル-NH2
-X-(C1~C10)アルキル-NH-(C1~C10)アルキル
-X-(C1~C10)アルキル-N-((C1~C10)アルキル)2
-(CH2c-O-(CH2-CH2-O)b-R4から成る群から選択され、
Xは独立して、O、COO、及びC(O)NH-から成る群から独立して選択され、
4は、-H、-OH、-(C1~C8)アルキル、-(C1~C8)アルキル-OH、(C1~C8)アシル、-(CH2-CH2-O)b-CH3、及び生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解されることができる少なくとも1つの結合を含むアルキル鎖から成る群から選択され、
bは0~20の整数であり、
cは0~10の整数である。
【化5】
式中、
6及びR7は独立して、-H、-COOH、-(C1~C25)アルキル、-(C1~C25)アルキル-COOH、-O-(C1~C25)アルキル、-(C1~C25)アルキル-COO-(C1~C25)アルキル、-O-(CH2-CH2-O)b-CH3、-NH-CO-(C1~C25)アルキル、-NH2、-NH-(C1~C25)アルキル、-N-((C1~C10)アルキル)2-CF3、-Cl、-F、-CN、-NO2、及び-CO-NH-(C1~C25)アルキルから成る群から選択され、
5は、-(CH2d-COO-R8であって、式中、dは0~10の整数であり、R8は、-H、-OH、-(C1~C8)アルキル、-(C1~C8)アルキル-OH、(C1~C8)アシル、-(CH2-CH2-O)b-CH3(式中、bは0~20の整数である)、及び生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解されることができる少なくとも1つの結合を含むアルキル鎖から成る群から選択される。
【0154】
9.
前記放射線不透過性分子が、式IIIの化合物及び式IVの化合物から選択される、請求項8に記載の液体ポリマー組成物。
【化6】
式中、
n及びmは独立して1~20の整数であり、
2及びR3は独立して、-H、-COOH、-(C1~C25)アルキル、-(C1~C25)アルキル-COOH、-O-(C1~C25)アルキル、-(C1~C25)アルキル-COO-(C1~C25)アルキル、-O-(CH2-CH2-O)b-CH3、-NH-CO-(C1~C25)アルキル、-NH2、-NH-(C1~C25)アルキル、-N-((C1~C10)アルキル)2-CF3、-Cl、-F、-CN、-NO2、及び-CO-NH-(C1~C25)アルキルから成る群から選択され、
4は、-H、-OH、-(C1~C8)アルキル、-(C1~C8)アルキル-OH、(C1~C8)アシル、-(CH2-CH2-O)b-CH3(式中、bは0~20の整数である)、及び生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解されることができる少なくとも1つの結合を含むアルキル鎖から成る群から選択される。
【0155】
10.
生理的環境で化学的又は酵素的に加水分解されることができる少なくとも1つの結合が、エステル、ポリエステル、アミド及びカーボネートから成る群から選択される、請求項8~9のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【0156】
11.
ポリマーが、エチレンビニルアルコール共重合体、酢酸セルロース、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、酢酸セルロースの共重合体、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はその両方、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)共重合体、ポリ(オリゴエチレングリコール)-(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド共重合体、及びそれらの組合せ、特にエチレンビニルアルコール共重合体から成る群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【0157】
12.
非生理的溶媒又は溶媒系が、水と混和性の有機溶媒を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【0158】
13.
非生理的溶媒又は溶媒系が、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、一価アルコール、多価アルコール、エトキシ化多価アルコール、N-メチルピロリドン、エトキシ化多価アルコールのメチルエーテル、又はこれらの組合せを含み、特に、非生理的溶媒又は溶媒系が、ジメチルスルホキシドを含む、請求項12に記載の液体ポリマー組成物。
【0159】
14.
組成物の粘度が40℃で50cSt未満である、請求項1~13のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物。
【0160】
15.
請求項1~14のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物を含む注射剤。
【0161】
16.
請求項7~9のいずれか一項に記載の放射線不透過性化合物。
【0162】
17.
血管を塞栓形成する際に使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の液体ポリマー組成物、又は請求項15に記載の注射剤、又は請求項16に記載の放射線不透過性化合物。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】