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特表2024-530441形質転換成長因子ベータ1(TGF-β1)模倣エピトープを示す自己組織化ペプチド両親媒性物質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】形質転換成長因子ベータ1(TGF-β1)模倣エピトープを示す自己組織化ペプチド両親媒性物質
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/495 20060101AFI20240814BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240814BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C07K14/495 ZNA
C07K7/06
A61K38/08
A61K31/728
A61P19/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505073
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 US2022074263
(87)【国際公開番号】W WO2023010082
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/227,097
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】513208191
【氏名又は名称】ノースウエスタン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】NORTHWESTERN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】633 Clark Street,Evanston,Illinois 60208,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,シェルビー チー
(72)【発明者】
【氏名】ストゥップ,サミュエル アイ.
(72)【発明者】
【氏名】サザー,ニコラス エー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA26
4C084BA36
4C084CA59
4C084DB60
4C084MA02
4C084MA23
4C084MA66
4C084MA67
4C084NA14
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA25
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA23
4C086MA66
4C086MA67
4C086NA20
4C086ZA96
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA11
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA32
4H045BA50
4H045CA40
4H045DA22
4H045DA86
4H045EA20
4H045FA33
(57)【要約】
生物活性形質転換成長因子ベータ1(TGF-β1)模倣エピトープを含む自己組織化ペプチド両親媒性物質(PA)、TGF-β1模倣エピトープを示すPAの高アスペクト比ナノ構造、ならびに軟骨の再生/修復及び/または変形性関節症及び他の筋骨格損傷及び疾患の治療を増強する方法が本明細書に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性ペプチド両親媒性物質(PA)を含む組成物であって、前記生物活性ペプチド両親媒性物質(PA)が、
(i)疎水性非ペプチドセグメントと、
(ii)βシート形成ペプチドセグメントと、
(iii)酸性ペプチドセグメントと、
(iv)TGF-β1模倣エピトープペプチドと、を含む、前記組成物。
【請求項2】
前記TGF-β1模倣エピトープペプチドが、CESPLKRQC(配列番号1)に対して3つ以下の置換を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記TGF-β1模倣エピトープペプチドが、CESPLKRQC(配列番号1)と100%の配列類似性を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記生物活性ペプチド両親媒性物質の前記疎水性非ペプチドセグメントが、アシル鎖を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アシル鎖が、C~C20を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記アシル鎖が、C16を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記生物活性ペプチド両親媒性物質の前記βシート形成ペプチドセグメントが、2~6つのV残基及びA残基の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記生物活性ペプチド両親媒性物質及び荷電ペプチド両親媒性物質の前記βシート形成ペプチドセグメントが、VVVAAA(配列番号3)、AAAVVV(配列番号4)、AAVV(配列番号5)、VVAA(配列番号6)、AA、VV、VA、またはAVから選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記生物活性ペプチド両親媒性物質の前記酸性ペプチドセグメントが、1~4つのGlu(E)残基及び/またはAsp(D)残基の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記酸性ペプチドセグメントが、E、EE、EEE、D、DD、DDD、ED、DE、EDE、DED、EDD、及びDEEから選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
C16-AAEE(配列番号7)、C16-AEAE(配列番号8)、及びC16-VVVAAAEEE(配列番号9)から選択される前記生物活性ペプチド両親媒性物質の骨格PAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記TGF-β1模倣エピトープペプチドが、ジスルフィドを介して環化されたCESPLKRQC(配列番号1)である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記TGF-β1模倣エピトープペプチドが、リジンリンカーによって前記骨格PAに連結される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
(i)疎水性非ペプチドセグメントと、
(ii)βシート形成ペプチドセグメントと、
(iii)荷電ペプチドセグメントと、を含む、希釈PAを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記希釈ペプチド両親媒性物質の前記疎水性非ペプチドセグメントが、アシル鎖を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記アシル鎖が、C~C20を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記アシル鎖が、C16を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記希釈ペプチド両親媒性物質の前記βシート形成ペプチドセグメントが、2~6つのV残基及びA残基の組み合わせを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記希釈ペプチド両親媒性物質の前記βシート形成ペプチドセグメントが、VVVAAA(配列番号3)、AAAVVV(配列番号4)、AAVV(配列番号5)、VVAA(配列番号6)、AA、VV、VA、またはAVから選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記希釈ペプチド両親媒性物質の前記酸性ペプチドセグメントが、1~4つのGlu(E)残基及び/またはAsp(D)残基の組み合わせを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
前記希釈ペプチド両親媒性物質の前記酸性ペプチドセグメントが、E、EE、EEE、D、DD、DDD、ED、DE、EDE、DED、EDD、及びDEEから選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
C16-AAEE(配列番号7)、C16-AEAE(配列番号8)、及びC16-VVVAAAEEE(配列番号9)から選択される前記希釈ペプチド両親媒性物質の骨格PAを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項23】
5%~95%(mol)の生物活性ペプチド両親媒性物質と、5%~95%(mol)の希釈ペプチド両親媒性物質と、を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項24】
請求項1~23の一項に記載の組成物と、生体適合性ポリマーと、を含む、複合材料。
【請求項25】
前記生体適合性ポリマーが、ヒアルロン酸である、請求項24に記載の複合物。
【請求項26】
前記ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸粒子として存在する、請求項25に記載の複合物。
【請求項27】
軟骨の修復または再生を促進する方法であって、軟骨の欠損または損傷を患う対象に、請求項1~23の一項に記載の組成物または請求項24~26の一項に記載の複合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
変形性関節症または筋骨格損傷もしくは疾患を治療する方法であって、変形性関節症または筋骨格損傷もしくは疾患を患う対象に、請求項1~23の一項に記載の組成物または請求項24~26の一項に記載の複合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項25】
変形性関節症または筋骨格損傷もしくは疾患を予防する方法であって、変形性関節症または筋骨格損傷もしくは疾患のリスクが高い対象に、請求項1~23の一項に記載の組成物または請求項24~26の一項に記載の複合物を投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月29日出願の米国仮特許出願第63/227,097号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
10,544バイトのファイルサイズを有する、2022年7月28日に作成された「39648-601_SEQUENCE_LISTING」と題された、本明細書とともに出願されたコンピュータ可読配列表のテキストは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
生物活性形質転換成長因子ベータ1(TGF-β1)模倣エピトープを含む自己組織化ペプチド両親媒性物質(PA)、TGF-β1模倣エピトープを示すPAの高アスペクト比ナノ構造、ならびに軟骨の再生/修復及び/または変形性関節症及び他の筋骨格損傷及び疾患の治療を増強する方法が本明細書に提供される。
【背景技術】
【0004】
軟骨変性は、最も広範で治癒不能な筋骨格障害のうちの1つである。関節軟骨は、関節の動きに不可欠であり、常に高い負荷及び反復的な影響を受け、経時的に変形性関節症(OA)を含む変性を引き起こす。OAは、米国の3200万人を超える成人に痛みを伴う機能障害及び併存疾患をもたらし、この数は人口の高齢化に伴って増加すると予測されている。軟骨の再生は、既存の治療法では対処が不十分ないくつかの独特な生物学的及び機械的課題に直面しており、全国的に720億ドルの直接医療費をもたらす。現在、認可された疾患修飾OA薬はなく、現在の治療は一時的なものであり、再生的ではなく対症的であり、疾患の進行を遅らせるか、または避けられない関節全置換を延期させることを目的としている3、4。マイクロフラクチャー術は、臨床的に軟骨を修復するためのゴールドスタンダードであり続けているが、最近、新しい生体材料及び成長因子戦略が有望的な工学的アプローチとして浮上している。しかしながら、これらの戦略はしばしば、非生分解性、低い機械的強度、及びオフターゲット免疫効果の問題に直面する6、7。軟骨の再生を促進するために、生体材料足場は、軟骨形成分化及び維持に必要な生体分子シグナル伝達を促進しながら、関節環境の機械的負荷に耐えなければならない。
【発明の概要】
【0005】
生物活性形質転換成長因子ベータ1(TGF-β1)模倣エピトープを含む自己組織化ペプチド両親媒性物質(PA)、TGF-β1模倣エピトープを示すPAの高アスペクト比ナノ構造、ならびに軟骨の再生/修復及び/または変形性関節症及び他の筋骨格損傷及び疾患の治療を増強する方法が本明細書に提供される。
【0006】
いくつかの実施形態では、生物活性ペプチド両親媒性物質(PA)を含む組成物であって、生物活性ペプチド両親媒性物質(PA)が、(i)疎水性非ペプチドセグメントと、(ii)βシート形成ペプチドセグメントと、(iii)酸性ペプチドセグメントと、(iv)TGF-β1模倣エピトープペプチドとを含む、組成物が本明細書で提供される。
【0007】
いくつかの実施形態では、TGF-β1模倣エピトープペプチドは、CESPLKRQC(配列番号1)に対して3つ以下(例えば、3、2、1、0)の置換を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、TGF-β1模倣エピトープペプチドは、CESPLKRQC(配列番号1)に対して少なくとも50%の配列類似性(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、100%、またはそれらの間の範囲)を有する。
【0008】
いくつかの実施形態では、生物活性ペプチド両親媒性物質の疎水性非ペプチドセグメントは、アシル鎖を含む。いくつかの実施形態では、アシル鎖は、C~C20(例えば、C、C、C10、C12、C14、C16、C18、C20)を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、生物活性ペプチド両親媒性物質のβシート形成ペプチドセグメントは、2~6つのV残基及びA残基の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、生物活性ペプチド両親媒性物質及び荷電ペプチド両親媒性物質のβシート形成ペプチドセグメントは、VVVAAA(配列番号3)、AAAVVV(配列番号4)、AAVV(配列番号5)、VVAA(配列番号6)、AA、VV、VA、またはAVから選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、生物活性ペプチド両親媒性物質の酸性ペプチドセグメントは、1~4つのGlu(E)残基及び/またはAsp(D)残基の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、酸性ペプチドセグメントは、E、EE、EEE、D、DD、DDD、ED、DE、EDE、DED、EDD、及びDEEから選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、生物活性PAは、C16-AAEE(配列番号7)、C16-AEAE(配列番号8)、及びC16-VVVAAAEEE(配列番号9)から選択される骨格PAを含む。いくつかの実施形態では、TGF-β1模倣エピトープペプチドは、ジスルフィドを介して環化されたCESPLKRQC(配列番号1)である。いくつかの実施形態では、TGF-β1模倣エピトープペプチドは、リジンリンカーによって骨格PAに連結される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書の組成物(例えば、ナノ構造)は、(i)疎水性非ペプチドセグメントと、(ii)βシート形成ペプチドセグメントと、(iii)荷電ペプチドセグメントと、を含む、希釈PAを更に含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、希釈ペプチド両親媒性物質の疎水性非ペプチドセグメントは、アシル鎖を含む。いくつかの実施形態では、アシル鎖は、C~C20(例えば、C、C、C10、C12、C14、C16、C18、C20)を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、希釈ペプチド両親媒性物質のβシート形成ペプチドセグメントは、2~6つのV残基及びA残基の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、生物活性ペプチド両親媒性物質及び荷電ペプチド両親媒性物質のβシート形成ペプチドセグメントは、VVVAAA(配列番号3)、AAAVVV(配列番号4)、AAVV(配列番号5)、VVAA(配列番号6)、AA、VV、VA、またはAVから選択される。
【0015】
いくつかの実施形態では、希釈ペプチド両親媒性物質の酸性ペプチドセグメントは、1~4つのGlu(E)残基及び/またはAsp(D)残基の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、酸性ペプチドセグメントは、E、EE、EEE、D、DD、DDD、ED、DE、EDE、DED、EDD、及びDEEから選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、希釈PAは、C16-AAEE(配列番号7)、C16-AEAE(配列番号8)、及びC16-VVVAAAEEE(配列番号9)から選択される骨格PAを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書の組成物(例えば、ナノ構造)は、5%~95%(mol)の生物活性ペプチド両親媒性物質と、5%~95%(mol)の希釈ペプチド両親媒性物質とを含む。例えば、5~95%は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれらの間の範囲(例えば、25~75%)を含み得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、軟骨の欠損または損傷を患う対象に、本明細書のPAナノ構造組成物を投与することを含む、軟骨の修復または再生を促進する方法が本明細書で提供される。
【0019】
いくつかの実施形態では、変形性関節症または筋骨格損傷もしくは疾患を治療する方法であって、変形性関節症または筋骨格損傷もしくは疾患を患う対象に、PAナノ構造組成物を投与することを含む、方法を本明細書で提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、変形性関節症または筋骨格損傷もしくは疾患を予防する方法であって、変形性関節症または筋骨格損傷もしくは疾患のリスクが高い対象に、PAナノ構造組成物を投与することを含む、方法を本明細書で提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】1A~Dは、PA及びペプチド分子の化学構造。(a)骨格PA-a(配列番号7)(上)及び骨格PA-b(配列番号8)(下)、式中、R=H、(b)TGF-β1模倣PA、(c)直鎖lnTGF-β1PA、及び(d)TGF-β1模倣ペプチド(配列番号1)。
図2】2A~Jは、(a~f)(a)骨格PA-a、(b)TGF PA-a、(c)直鎖lnTGF PA-a、(d)骨格PA-b、(e)TGF PA-b、及び(f)直鎖lnTGF PA-bナノ構造の低温TEM顕微鏡写真。骨格PAナノ構造は100mol%で組織化し、エピトープナノ構造は、希釈骨格PAと10mol%で共組織化する。(g~j)各骨格PA-a(青の色合い)及び骨格PA-b(赤の色合い)ベースの系上の骨格PA、TGF PA、及びlnTGF PAナノ構造の構造分析。(g)SAXSパターン、(h)WAXSパターン、(i)CDスペクトル、及び(j)FTIRスペクトル。全てのPA溶液を、12mMの総PA、30mMのNaCl、及びpH6.8の水に溶解した。(***、p<0.001)。
図3】3A~Cは、TGF-β1模倣PA組織化体の超分子動態の分析であり、TGF PA分子は、希釈骨格PA分子と10mol%で共組織化する。(a)TAMRA標識TGF-β1模倣エピトープを有するTGF PA-a及びTGF PA-b組織化体の蛍光異方性。(b)TGF PA-a及びTGF PA-b組織化体についての時間及び回帰線の関数としてのH NMRスペクトルピーク強度。(c)TGF PA-a及びTGF PA-b組織化体におけるプロトンのHスピン格子緩和速度。
図4】4A~Fは、TGF PAで処理したヒト軟骨細胞におけるSmad2活性化及び下流TGF-β1経路分析。(a)インビトロで4時間、様々な共組織化体比及び濃度での、TGF PA-a及びTGF PA-bで処理した軟骨細胞におけるSox9、リン酸化Smad2(p-Smad2)、Smad2、及びアクチンのウエスタンブロット。TGF-β1タンパク質(rhTGF-β1)及び飢餓培地(Strv)を、それぞれ陽性対照及び陰性対照として使用した。(b)リン酸化されるSmad2の画分を示す、(a)からのウエスタンブロットデータの定量的密度測定分析(*、対rhTGF-β1;#、対10%TGF PA-a 50μM)。(c)インビトロで4時間、Strv、rhTGF-β1、TGF模倣ペプチド、及び異なるPA条件(骨格PA、TGF模倣PA、及び直鎖lnTGF PA)で処理した軟骨細胞におけるp-Smad2及びSmad2のウエスタンブロット。(d)リン酸化されるSmad2の画分を示す、(c)からのウエスタンブロットデータの定量的密度測定分析(*、対rhTGF-β1;#、対TGF PA-a)。(e)Strv、rhTGF-β1、TGF PA-a、及びTGF PA-bで処理した軟骨細胞におけるp-Smad2及びSmad2のウエスタンブロット(各々、汎TGF-β中和抗体1D11の添加なし(-)及びあり(+))。(f)リン酸化されるSmad2の画分を示す、(e)からのウエスタンブロットデータの定量的密度測定分析(*、対rhTGF-β1-1D11;#、TGF PA-a β1-1D11)。(#、p<0.05;**/##、p<0.01、***/###、p<0.001)。
図5】5A~Eは、TGF PAで処理したヒト軟骨細胞におけるECMタンパク質合成。(a)インビトロで3日間、Ctrl、rhTGF-β1、TGF模倣ペプチド、及び異なるPA条件(骨格PA、TGF模倣PA、及び直鎖TGF PA)で処理した軟骨細胞におけるコラーゲンII、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)、Sox9、及びアグレカンのウエスタンブロット。(b)アクチンに正規化された各ECMタンパク質の画分を示す、(a)からのウエスタンブロットデータの定量的密度測定分析(*、対rhTGF-β1;#、TGF PA-a)。(c~d)インビトロで3日間、Ctrl、rhTGF-β1、TGF模倣ペプチド、及び異なるPA条件(骨格PA、TGF模倣PA、及び直鎖TGF PA)で処理したヒト軟骨細胞の蛍光顕微鏡写真。細胞を、(c)中のコラーゲンII(赤色)、(d)中のアグレカン(赤色)、F-アクチン(緑色)、及びDAPI(核、青色)について染色した。(e)(c~d)のICC顕微鏡写真からのコラーゲンII及びアグレカンの蛍光強度定量化(*、対rhTGF-β1;#、TGF PA-a)。(*/#、p<0.05;**、p<0.01、***/###、p<0.001)。
図6】6A~Gは、PAヒドロゲルの機械的特徴付け、及びヒドロゲルに封入されたヒト軟骨細胞の軟骨形成挙動。(a~c)(a)骨格PA-aのみ、(b)TGF PA-a、及び(c)lnTGF PA-a PAゲルのSEM顕微鏡写真。(d)骨格PA-aのみ、TGF PA-a、及びlnTGF PA-aのPAゲルのひずみの関数としての貯蔵弾性率及び損失弾性率。流動ひずみ及び弾性率は、それぞれ、垂直線及び水平線によって示される。(e~g)PAヒドロゲルに封入されたヒト軟骨細胞。インビトロで3日後の(e)骨格PA-aゲル、(f)TGF PA-aゲル、及び(g)lnTGF PA-aゲルに封入された細胞の3次元zスタック再構築物。細胞を、F-アクチン(緑色)及び核(赤色)について染色し、F-アクチンと核との間のオーバーレイ領域は黄色として現れる。
図7】それぞれ、10、25、50、75、及び100mol%で、希釈骨格PA-a及び骨格PA-bと共組織化したTGF PA-a(上)及びTGF PA-b(下)の低温TEM顕微鏡写真。
図8】それぞれ、10、25、及び50mol%で、希釈骨格PA-a及び骨格PA-bと共組織化した直鎖lnTGF PA-a(上)及びlnTGF PA-b(下)の低温TEM顕微鏡写真。
図9】100mol%でのTGF模倣ペプチドの低温TEM顕微鏡写真。(b)100mol%でのミセルTGF模倣ペプチド凝集体の動的光散乱。
図10】100mol%でのミセルTGF模倣ペプチド凝集体の動的光散乱。
図11】11A~Bは、それぞれ、10、25、50、75、及び100mol%で、希釈骨格PA-a及び骨格PA-bと共組織化したTGF PA-a(上)及びTGF PA-b(下)の構造分析。TGF PA共組織化体の(a)SAXSパターン、及び(b)WAXSパターン。
図12】12A~Bは、それぞれ、10、25及び50mol%で、希釈骨格PA-a及び骨格PA-bと共組織化した直鎖lnTGF PA-a(上)及びlnTGF PA-b(下)の構造分析。lnTGF PA共組織化体及びペプチドミセル構造体の(a)SAXSパターン、及び(b)WAXSパターン。
図13】13A~Bは、それぞれ、10、25、50、75、及び100mol%で、希釈骨格PA-a及び骨格PA-bと共組織化したTGF PA-a(上)及びTGF PA-b(下)の二次構造分析。TGF PA共組織化体の(a)円形二色性、及び(b)FTIRスペクトル。
図14】14A~Bは、それぞれ、10、25、及び50mol%で、希釈骨格PA-a及び骨格PA-bと共組織化した直鎖lnTGF PA-a(上)及びlnTGF PA-b(下)の構造分析。lnTGF PA共組織化体及びペプチドミセル構造体の(a)円形二色性、及び(b)FTIRスペクトル。
図15】0.2mol%のTGF PA分子がTAMRA色素にコンジュゲートされ、TGF PAが希釈骨格PAと10mol%で共組織化される、TGF PAナノ構造のTEM顕微鏡写真。
図16】16A~Bは、(a)TGF PA-a及び(b)TGF PA-bにおけるプロトンのH NMRスペクトル。エピトープリジン残基のメチレンプロトンは赤色で示され、アルキル鎖の末端炭素のメチルプロトンは青色で示される。
図17】17A~Bは、(a)TGF PA-a及び(b)TGF PA-bについてT2-NMRで使用されるプロトンの位置。エピトープリジン残基のメチレンプロトンは赤色で示され、アルキル鎖の末端炭素のメチルプロトンは青色で示される。
図18】18A~Bは、様々な共組織化体比及び濃度で、TGF PA-a及びTGF PA-bの生体適合性を試験する生存率アッセイ。TGF-β1タンパク質(rhTGF-β1)及び成長培地を対照として使用した。(a)24時間インビトロで処理し、続いてカルセインAM(緑色、生)及びヨウ化プロピジウム(赤色、死)について染色した、細胞の蛍光顕微鏡写真。(b)細胞/mmに基づく細胞生存の定量化(#、対培地対照)。(*、p<0.05;##、p<0.01)
図19】19A~Bは、様々な共組織化体比及び濃度で、TGF PA-a及びTGF PA-bの生体適合性を試験する生存率アッセイ。TGF-β1タンパク質(rhTGF-β1)及び成長培地を対照として使用した。(a)3日間インビトロで処理し、続いてカルセインAM(緑色、生)及びヨウ化プロピジウム(赤色、死)について染色した、細胞の蛍光顕微鏡写真。(b)細胞/mmに基づく細胞生存の定量化(#、対培地対照;^、対10%TGF PA-a 10μM)。(*/#/^、p<0.05;**/##/^^、p<0.01;***/###/^^^、p<0.001)。
図20】20A~Bは、様々な濃度で、異なるPA条件(TGF模倣ペプチド、骨格、TGF模倣PA 10mol%共組織化体、及び直鎖lnTGF PA 10mol%共組織化体)の生体適合性を試験する生存率アッセイ。TGF-β1タンパク質(rhTGF-β1)及び成長培地を対照として使用した。(a)24時間インビトロで処理し、続いてカルセインAM(緑色、生)及びヨウ化プロピジウム(赤色、死)について染色した、細胞の蛍光顕微鏡写真。(b)細胞/mmに基づく細胞生存の定量化。(*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001)
図21】21A~Bは、様々な濃度で、異なるPA条件(TGF模倣ペプチド、骨格、TGF模倣PA 10mol%共組織化体、及び直鎖lnTGF PA 10mol%共組織化体)の生体適合性を試験する生存率アッセイ。TGF-β1タンパク質(rhTGF-β1)及び成長培地を対照として使用した。(a)3日間インビトロで処理し、続いてカルセインAM(緑色、生)及びヨウ化プロピジウム(赤色、死)について染色した、細胞の蛍光顕微鏡写真。(b)細胞/mmに基づく細胞生存の定量化。(*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001)
図22】アクチンに正規化されたSox9発現を示す図4aからのウエスタンブロットデータの定量的密度測定分析(^、対10%TGF PA-b 10μM;°、対25%TGF PA-b50μM)。(°/^、p<0.05;^^、p<0.01)。
図23】インビトロで3日後の、ゲルに封入された細胞からのLDH放出。
図24】24A~Fは、骨格PA-a(a、d)、TGF PA-a(b、e)、及びlnTGF PA-aゲル(c、f)のレオロジー分析。(a~c)0~100rad/sの範囲の角周波数の貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を示す周波数掃引。(d~f)0~100%の範囲の剪断ひずみにおける貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)を示すひずみ掃引。
図25】25A~Bは、ハイブリッドTGF PAゲルの機械的特性。架橋HA粒子の濃度を変化させたTGF PA-aスラリーの(a)貯蔵弾性率(G’)及び損失(G”)弾性率。(b)G’=G”のときの交差点によって定義されるTGF PA-aヒドロゲルを破砕するために必要なひずみ(**、p<0.01;***、p<0.001)。
図26】26A~Cは、ウサギ骨軟骨欠損モデルにおけるTGF模倣PAスラリーの移植。内側顆への移植後、手術の(a)1日後、(b)2日後、及び(c)7日後に、染料標識PA分子を使用してスラリー保持を追跡した。顆の組織学的切片の蛍光画像化(中段)及びH&E染色(下段)は、新しい軟骨が形成されるにつれて良好なインプラント統合及び生分解を示した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本明細書に記載のものと同様または同等の任意の方法及び材料は、本明細書に記載の実施形態の実施または試験に使用され得るが、いくつかの好ましい方法、組成物、デバイス、及び材料が、本明細書に記載される。しかしながら、本発明の材料及び方法を説明する前に、本明細書に記載の特定の分子、組成物、方法論、またはプロトコルは日常的な実験及び最適化に従って変化し得るため、本発明はそれらに限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される専門用語は、特定のバージョンまたは実施形態を説明することのみを目的としており、本明細書に記載の実施形態の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0023】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。しかしながら、矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。したがって、本明細書に記載の実施形態の文脈において、以下の定義が適用される。
【0024】
本明細書において、また付属の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈によってそうでない旨が明確に示されない限り、複数の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「ペプチド両親媒性物質」への言及は、当業者などに既知の1つ以上のペプチド両親媒性物質及びその等価物への言及である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」という用語及びその言語的変形は、追加の特徴(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)などの存在を除外することなく、列挙された特徴(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)などの存在を示す。逆に、「からなる」という用語及びその言語的変形は、列挙された特徴(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)などの存在を示し、通常関連する不純物を除いて、任意の列挙されていない特徴(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)などを除外する。「から本質的になる」という語句は、列挙された特徴(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)など、及び組成物、システム、または方法の基本的な性質に実質的に影響を与えない任意の追加の特徴(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)などを示す。本明細書の多くの実施形態は、オープンな「含む」という言葉を使用して説明される。そのような実施形態は、複数のクローズな「からなる」及び/または「から本質的になる」の実施形態を包含し、これは、代替的にそのような言葉を使用して特許請求または説明され得る。
【0026】
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、及びアミノ酸類似体を指し、それらの構造がそのような立体異性体形態を許容する場合、別段の指示がない限り、全てそれらのD及びL立体異性形態にある。
【0027】
天然アミノ酸としては、アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GlnまたはQ)、グルタミン酸(GluまたはE)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リジン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)、及びバリン(ValまたはV)が挙げられる。
【0028】
非天然アミノ酸としては、アゼチジンカルボン酸、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、ベータ-アラニン、ナフチルアラニン(「naph」)、アミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、三級ブチルグリシン(「tBuG」)、2,4-ジアミノイソ酪酸、デスモシン、2,2’-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、ホモプロリン(「hPro」または「homoP」)、ヒドロキシリジン、allo-ヒドロキシリジン、3-ヒドロキシプロリン(「3Hyp」)、4-ヒドロキシプロリン(「4Hyp」)、イソデスモシン、allo-イソロイシン、N-メチルアラニン(「MeAla」または「Nime」)、N-メチルグリシンを含むN-アルキルグリシン(「NAG」)、N-メチルイソロイシン、N-メチルペンチルグリシンを含むN-アルキルペンチルグリシン(「NAPG」)が挙げられるが、これらに限定されない。N-メチルバリン、ナフチルアラニン、ノルバリン(「Norval」)、ノルロイシン(「Norleu」)、オクチルグリシン(「OctG」)、オルニチン(「Orn」)、ペンチルグリシン(「pG」または「PGly」)、ピペコリン酸、チオプロリン(「ThioP」または「tPro」)、ホモリジン(「hLys」)、及びホモアルギニン(「hArg」)。
【0029】
「アミノ酸類似体」という用語は、C末端カルボキシ基、N末端アミノ基、及び側鎖生物活性基のうちの1つ以上が、化学的に遮断されているか、可逆的もしくは不可逆的に修飾されているか、またはさもなければ別の生物活性基に変更されている、天然または非天然アミノ酸を指す。例えば、アスパラギン酸-(ベータ-メチルエステル)は、アスパラギン酸のアミノ酸類似体であるか、N-エチルグリシンは、グリシンのアミノ酸類似体であるか、またはアラニンカルボキサミドは、アラニンのアミノ酸類似体である。他のアミノ酸類似体としては、メチオニンスルホキシド、メチオニンスルホン、S-(カルボキシメチル)-システイン、S-(カルボキシメチル)-システインスルホキシド、及びS-(カルボキシメチル)-システインスルホンが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって一緒に連結されたアミノ酸の短いポリマーに対するオリゴマーを指す。他のアミノ酸ポリマー(例えば、タンパク質、ポリペプチドなど)とは対照的に、ペプチドは、約50アミノ酸以下の長さのものである。ペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、アミノ酸類似体、及び/または修飾アミノ酸を含み得る。ペプチドは、天然に存在するタンパク質の部分配列または非天然(人工)配列であり得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「人工」という用語は、人によって設計または調製され、天然に存在しない組成物及び系を指す。例えば、人工ペプチド、ペプトイド、または核酸は、非天然配列(例えば、天然に存在するタンパク質またはその断片と100%の同一性を有しないペプチド)を含むものである。
【0032】
本明細書で使用される場合、「保存的」アミノ酸置換は、ペプチドまたはポリペプチド中のアミノ酸の、サイズまたは電荷などの類似の化学的特性を有する別のアミノ酸との置換を指す。本開示の目的のために、次の8つの群の各々は、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:
1)アラニン(A)及びグリシン(G)、
2)アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)、
3)アスパラギン(N)及びグルタミン(Q)、
4)アルギニン(R)及びリジン(K)、
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、及びバリン(V)、
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びトリプトファン(W)、
7)セリン(S)及びスレオニン(T)、ならびに
8)システイン(C)及びメチオニン(M)。
【0033】
天然に存在する残基は、共通の側鎖特性、例えば、極性陽性(または塩基性)(ヒスチジン(H)、リジン(K)、及びアルギニン(R))、極性陰性(または酸性)(アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E))、極性中性(セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q))、非極性脂肪酸(アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M))、非極性芳香族(フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W))、プロリン及びグリシン、ならびにシステインに基づいて、クラスに分けてもよい。本明細書で使用される場合、「半保存的」アミノ酸置換は、ペプチドまたはポリペプチド中のアミノ酸の、同じクラス内の別のアミノ酸との置換を指す。
【0034】
いくつかの実施形態では、別段の定めがない限り、保存的または半保存的アミノ酸置換はまた、天然残基と同様の化学的特性を有する天然に存在しないアミノ酸残基を包含し得る。これらの非天然残基は、典型的には、生物学的系における合成によってではなく、化学的ペプチド合成によって組み込まれる。これらには、ペプチド模倣物及び他の逆転または反転形態のアミノ酸部分が含まれるが、これらに限定されない。本明細書の実施形態は、いくつかの実施形態では、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、及び/またはアミノ酸類似体に限定され得る。
【0035】
非保存的置換は、あるクラスのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを伴い得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」という用語は、2つのポリマー配列(例えば、ペプチド、ポリペプチド、核酸など)が同じモノマーサブユニットの連続した組成を有する程度を指す。「配列類似性」という用語は、2つのポリマー配列(例えば、ペプチド、ポリペプチド、核酸など)が、保存的及び/または半保存的アミノ酸置換によってのみ異なる程度を指す。「配列同一性パーセント」(または「配列類似性パーセント」)は、(1)比較ウィンドウ(例えば、より長い配列の長さ、より短い配列の長さ、特定されたウィンドウなど)にわたって2つの最適に整列された配列を比較すること、(2)同一の(または類似の)モノマーを含有する位置の数(例えば、同じアミノ酸が両方の配列に発生し、類似したアミノ酸が両方の配列に発生する)を決定して、一致した位置の数を得ること、(3)一致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(例えば、より長い配列の長さ、より短い配列の長さ、特定されたウィンドウ)で割ること、及び(4)結果に100を掛けて、配列同一性パーセントまたは配列類似性パーセントを得ることによって計算される。例えば、ペプチドA及びペプチドBが両方とも20アミノ酸の長さであり、かつ1つの位置を除いた全ての位置で同一のアミノ酸を有するならば、ペプチドA及びペプチドBは、95%の配列同一性を有する。非同一位置のアミノ酸が同じ生物物理学的特徴(例えば、双方とも酸性であった)を共有する場合、ペプチドA及びペプチドBは、100%の配列類似性を有するであろう。別の例として、ペプチドCが20個のアミノ酸の長さであり、ペプチドDが15個のアミノ酸の長さであり、かつペプチドD内の15個のアミノ酸のうちの14個が、ペプチドCの一部のものと同一である場合、ペプチドC及びDは、70%の配列同一性を有するが、ペプチドDは、ペプチドCの最適な比較ウィンドウと93.3%の配列同一性を有する。本明細書では、「配列同一性パーセント」(または「配列類似性パーセント」)を計算する目的で、整列された配列における任意のギャップは、その位置でのミスマッチとして扱われる。
【0037】
参照配列ID番号と特定の配列同一性または類似性パーセント(例えば、少なくとも70%)を有するものとして本明細書に記載の任意のポリペプチドはまた、その参照配列に対して最大数の置換(または末端欠失)を有するものとして表されてもよい。例えば、配列番号Z(例えば、100個のアミノ酸)と少なくともY%の配列同一性(例えば、90%)を有する配列は、配列番号Zに対して最大Xの置換(例えば、10)を有し得、したがって、「配列番号Zに対してX(例えば、10)以下の置換を有する」としても表され得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ナノ繊維」という用語は、典型的には100ナノメートル未満の直径を有する(例えば、幅または直径よりも顕著に大きい長さの寸法を有する)細長いまたは糸状のフィラメントを指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「超分子」(例えば、「超分子複合体」、「超分子相互作用」、「超分子繊維」、「超分子ポリマー」など)という用語は、結果として形成される分子(例えば、ポリマー、巨大分子など)と、多成分組織化体、複合体、系、及び/または繊維との間の非共有結合相互作用を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「自己組織化する」及び「自己組織化」という用語は、構成要素部分からの別個の非ランダムな凝集構造の形成を指し、該組織化は、それらの構成要素の固有の化学的または構造的特性及び引力のみに起因して、構成要素(例えば、分子)のランダムな動きを通じて自発的に生じる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ペプチド両親媒性物質」という用語は、少なくとも、非ペプチド親油性(疎水性)セグメント、構造ペプチドセグメント、及び/または荷電ペプチドセグメント(多くの場合、両方)、ならびに任意選択で生物活性セグメント(例えば、リンカーセグメント、生物活性セグメントなど)を含む分子を指す。ペプチド両親媒性物質は、生理的pHで、正味の正または負のいずれかの正味の電荷で正味の電荷を表す場合があるか、または両性イオン性であってもよい(すなわち、正の電荷及び負の電荷の両方を有する)。ある特定のペプチド両親媒性物質は、(1)疎水性、非ペプチドセグメント(例えば、6つ以上の炭素のアシル基を含む)、(2)構造ペプチドセグメント(例えば、βシート形成)、(3)荷電ペプチドセグメント、及び(4)生物活性セグメント(例えば、リンカーセグメント)からなるか、またはそれらを含む。
【0042】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「親油性部分」または「疎水性部分」という用語は、ペプチド両親媒性物質の一方の末端(例えば、C末端、N末端)に配置された部分(例えば、アシル、エーテル、スルホンアミド、またはホスホジエステル部分)を指し、本明細書及び他の箇所では、親油性または疎水性セグメントまたは構成要素と称され得る。疎水性セグメントは、両親媒性挙動をもたらし、水または別の極性溶媒系中で凝集体(またはナノスフィアまたはナノ繊維)形成をもたらすのに十分な長さのものでなければならない。したがって、本明細書に記載の実施形態の関連において、疎水性構成要素は、好ましくは、式:Cn-12n-1C(O)--(式中、n=2~25)の単一の直鎖アシル鎖を含む。いくつかの実施形態では、直鎖アシル鎖は、親油性基(飽和または不飽和炭素)、パルミチン酸である。しかしながら、ステロイド、リン脂質、及びフルオロカーボンなどのアシル鎖の代わりに他の親油性基を使用してもよい。
【0043】
本明細書で使用される場合、「構造的ペプチド」という用語は、典型的には、疎水性セグメントと荷電ペプチドセグメントとの間に配置された、ペプチド両親媒性物質の一部分を指す。構造ペプチドは、一般に、非極性の非荷電側鎖(例えば、His(H)、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Ala(A)、Phe(F))を有する3~10のアミノ酸残基で構成され、これらは、隣接する構造セグメントの構造セグメントと水素結合または他の安定化相互作用(例えば、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用など)を形成する傾向があるために選択される。いくつかの実施形態では、構造ペプチドセグメントを有するペプチド両親媒性物質のナノ繊維は、顕微鏡によって検査されたときに直鎖または2D構造を示し、及び/または環状二色性(CD)によって検査されたときにαヘリックス及び/またはβシート特性を示す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ベータ(β)シート形成ペプチドセグメント」という用語は、βシート様特性を示す(例えば、CDによって分析される場合)傾向を有する構造的ペプチドセグメントを指す。いくつかの実施形態では、ベータ(β)シート形成ペプチドセグメント中のアミノ酸は、ベータシート二次構造を形成する傾向があるために選択される。20個の天然に存在するアミノ酸から選択される好適なアミノ酸残基の例としては、Met(M)、Val(V)、Ile(I)、Cys(C)、Tyr(Y)、Phe(F)、Gln(Q)、Leu(L)、Thr(T)、Ala(A)、及びGly(G)(ベータシートを形成する傾向の順に列挙される)が挙げられる。しかしながら、同様のベータシート形成傾向の天然に存在しないアミノ酸も使用され得る。ベータシートを形成するために相互作用することができるペプチドセグメント及び/またはベータシートを形成する傾向を有するペプチドセグメントが理解される(例えば、Mayo et al.Protein Science(1996),5:1301-1315を参照されたい;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0045】
本明細書で使用される場合、「荷電ペプチドセグメント」という用語は、荷電アミノ酸残基が豊富(例えば、50%超、75%超など)であるペプチド両親媒性物質の一部分、または生理学的条件下で正味の正もしくは負の電荷を有するアミノ酸残基を指す。荷電ペプチドセグメントは、酸性(例えば、負荷電)、塩基性(例えば、正荷電)、または両性イオン性(例えば、酸性残基及び塩基性残基の両方を有する)であり得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「カルボキシ豊富ペプチドセグメント」、「酸性ペプチドセグメント」、及び「負荷電ペプチドセグメント」という用語は、カルボン酸側鎖を示す側鎖(例えば、Glu(E)、Asp(D)、または非天然アミノ酸)を有する1つ以上のアミノ酸残基を含むペプチド両親媒性物質のペプチド配列を指す。カルボキシ豊富ペプチドセグメントは、任意選択で、1つ以上の追加の(例えば、非酸性)アミノ酸残基を含有してもよい。当業者には明らかであるように、非天然アミノ酸残基、または酸性側鎖を有するペプチド模倣物を使用することができる。このセグメントには、約2~約7個のアミノ酸、及び/または約3もしくは4個のアミノ酸が存在し得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「アミノ豊富ペプチドセグメント」、「塩基性ペプチドセグメント」、及び「正荷電ペプチドセグメント」という用語は、正荷電酸側鎖を示す側鎖(例えば、Arg(R)、Lys(K)、His(H)、もしくは非天然アミノ酸、またはペプチド模倣物)を有する1つ以上のアミノ酸残基を含むペプチド両親媒性物質のペプチド配列を指す。塩基性ペプチドセグメントは、任意選択で、1つ以上の追加の(例えば、非塩基性)アミノ酸残基を含有してもよい。当業者には明らかであるように、塩基性側鎖を有する非天然アミノ酸残基を使用することができる。このセグメントには、約2~約7個のアミノ酸、及び/または約3もしくは4個のアミノ酸が存在し得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「生物活性ペプチド」という用語は、それに関連する配列、分子、または超分子複合体の作用を媒介するアミノ酸配列を指す。ペプチド両親媒性物質及び生物活性ペプチド(例えば、TGF-β1模倣ペプチドなど)を有する構造(例えば、ナノ繊維)は、生物活性ペプチドの機能性を示す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「生体適合性」という用語は、細胞または生物に毒性がない材料及び薬剤を指す。いくつかの実施形態では、物質は、インビトロでの細胞へのその添加が、約10%以下の細胞死、通常5%未満、より通常には1%未満をもたらす場合、「生体適合性」であるとみなされる。
【0050】
本明細書で使用される場合、本明細書でポリマー、ヒドロゲル、及び/または創傷被覆材を説明するために使用される「生分解性」は、生理学的条件への曝露下で分解された、またはそうでなければ「分解された(broken down)」組成物を意味する。いくつかの実施形態では、生分解性物質は、細胞機構、酵素分解、化学プロセス、加水分解などによって分解される。いくつかの実施形態では、創傷被覆材またはコーティングは、生分解性を提供する加水分解性エステル結合を含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、「生理学的条件」という語句は、組織の細胞内及び細胞外流体に遭遇する可能性が高い化学的(例えば、pH、イオン強度)及び生化学的(例えば、酵素濃度)条件の範囲に関する。ほとんどの組織について、生理的pHは、約7.0~7.4の範囲である。
【0052】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、特定の状態、疾患状態(例えば、変形性関節症、軟骨損傷など)、またはその症状の量または重症度を、その状態または疾患状態を現在経験しているまたは患っている対象において低減することを指す。これらの用語は、必ずしも完全な治療(例えば、状態、疾患、またはそれらの症状の完全な消失)を示すものではない。「治療」は、疾患(例えば、ヒトを含む哺乳動物における)に対する治療薬または技法の任意の投与または適用を包含し、疾患の阻害、その発症の阻止、疾患の緩和、退行の誘発、または喪失、欠損した、もしくは不全な機能の回復もしくは修復、または非効率的なプロセスの刺激を含む。
【0053】
本明細書で使用される場合、「予防する」、「予防」、及び「予防すること」という用語は、特定の状態または疾患状態(例えば、変形性関節症、軟骨劣化など)が、現在その状態または疾患状態を経験していないか、または患っていない対象において発生する可能性を低減することを指す。この用語は、必ずしも、完全なまたは絶対的な予防を示すものではない。例えば、「変形性関節症の予防」とは、変形性関節症を現在経験していないか、またはそれと診断されていない対象において変形性関節症が発生する可能性を低減することを指す。「変形性関節症を予防する」ために、組成物または方法は、変形性関節症の可能性を低減することだけを必要とし、そのあらゆる可能性を完全に遮断する必要はない。「予防」は、(例えば、ヒトを含む哺乳動物において)疾患発症の可能性を低減するための治療薬または技法の任意の投与または適用を包含する。そのような可能性は、集団または個体について評価され得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「共投与」及び「共投与すること」という用語は、対象への少なくとも2つの薬剤(複数可)または療法(例えば、TGF-β1模倣ペプチドを示すPAナノ構造及び1つ以上の治療薬)の投与を指す。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤または療法の共投与は、同時である。他の実施形態では、第1の薬剤/療法は、第2の薬剤/療法の前に投与される。当業者は、使用される様々な薬剤または療法の製剤化及び/または投与経路が異なり得ることを理解する。共投与のための適切な投与量は、当業者によって容易に決定され得る。いくつかの実施形態では、薬剤または療法が共投与される場合、それぞれの薬剤または療法は、それらの単独投与に適切な投与量よりも少ない投与量で投与される。よって、薬剤もしくは療法の共投与が、潜在的に危険な(例えば、毒性の)薬剤(複数可)の必要投与量を低下させる実施形態において、及び/または2つ以上の薬剤の共投与が、薬剤のうちの一方の共投与によって、他方の薬剤の有益な効果に対する対象の感作をもたらす場合、共投与が特に望ましい。
[発明を実施するための形態]
【0055】
生物活性形質転換成長因子ベータ1(TGF-β1)模倣エピトープを含む自己組織化ペプチド両親媒性物質(PA)、TGF-β1模倣エピトープを示すPAの高アスペクト比ナノ構造、ならびに軟骨の再生/修復及び/または変形性関節症及び他の筋骨格損傷及び疾患の治療を増強する方法が本明細書に提供される。
【0056】
この技術は、軟骨再生のためのTGF-β1の軟骨形成活性を模倣するペプチド両親媒性(PA)分子及び超分子PAナノ構造を含む。TGF-β1模倣エピトープにコンジュゲートされた生物活性PA分子は、自己組織化のために希釈エピトープ不含分子と共組織化され、それらの表面に生物活性TGF-β1模倣ドメインを提示する高アスペクト比ナノ構造になることができる。これらのナノ構造は、PAナノ構造上のエピトープの好ましい提示を通じて、細胞シグナル伝達及び軟骨形成応答を増強する。これらの生物活性PA系は、追加の外因性成長因子なしで軟骨の再生及び修復を増強することができ、変形性関節症ならびに他の筋骨格損傷及び疾患を治療するための無細胞再生足場として使用することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実施形態のペプチド両親媒性分子及び組成物は、ペプチドのN末端(またはC末端)で標準アミノ酸の代わりに脂肪酸を添加して、当業者に周知の調製技法、好ましくは、標準固相ペプチド合成によって、親油性セグメントを作製するために合成される(しかしながら、いくつかの実施形態では、ナノ繊維の整列は、当技術分野で以前に開示または使用されていない技法(例えば、メッシュスクリーンを通した押出)を介して行われる。合成は、典型的には、アミノ酸が、Rinkアミド樹脂(樹脂からの切断後、ペプチドのC末端に--NH2基をもたらす)またはWang樹脂(C末端に--OH基をもたらす)のいずれかを使用して順次付加されるC末端から始まる。したがって、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、--H、--OH、--COOH、--CONH2、及び--NH2からなる群から選択され得るC末端部分を有するペプチド両親媒性物質を包含する。
【0058】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、ペプチドに連結された疎水性(非ペプチド)セグメントを含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、構造セグメント(例えば、水素結合形成セグメント、ベータシート形成セグメントなど)、及び荷電セグメント(例えば、酸性セグメント、塩基性セグメント、両性イオンセグメントなど)を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、溶解性、可撓性、セグメント間の距離などを追加するためのリンカーまたはスペーサーセグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、疎水性セグメントとは反対のペプチドの末端にスペーサーセグメント(例えば、ペプチド及び/または非ペプチドスペーサー)を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーセグメントは、ペプチド及び/または非ペプチド要素を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーセグメントは、1つ以上の生物活性基(例えば、アルケン、アルキン、アジド、チオールなど)を含む。いくつかの実施形態では、様々なセグメントは、リンカーセグメント(例えば、ペプチド(例えば、GG)または非ペプチド(例えば、アルキル、OEG、PEGなど)リンカー)によって接続されてもよい。
【0059】
親油性または疎水性セグメントは、典型的には、最後のアミノ酸カップリングの後、ペプチドのN末端またはC末端に組み込まれ、アシル結合によりN末端またはC末端アミノ酸に連結される脂肪酸または他の酸で構成される。水溶液中では、PA分子は、そのコア中に親油性セグメントを埋め、表面上に生物活性ペプチドを示す(例えば、円筒形ミセル(別名、ナノ繊維)に)自己組織化する。構造ペプチドは、分子間水素結合を受けて、ミセルの長軸に平行に配向するベータシートを形成する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、次に疎水性セグメント及びペプチドセグメントを含むPAビルディングブロックを含む。ある特定の実施形態では、十分な長さ(例えば、2個の炭素、3個の炭素、4個の炭素、5個の炭素、6個の炭素、7個の炭素、8個の炭素、9個の炭素、10個の炭素、11個の炭素、12個の炭素、13個の炭素、14個の炭素、15個の炭素、16個の炭素、17個の炭素、18個の炭素、19個の炭素、20個の炭素、21個の炭素、22個の炭素、23個の炭素、24個の炭素、25個の炭素、26個の炭素、27個の炭素、28個の炭素、29個の炭素、30個以上の炭素、またはそれらの間の任意の範囲)の疎水性(例えば、炭化水素及び/またはアルキル/アルケニル/アルキニル尾部、またはコレステロールなどのステロイド)セグメントは、ペプチドセグメント(例えば、ベータ鎖立体構造または他の超分子相互作用を好むセグメントを含むペプチド)に共有結合して、ペプチド両親媒性分子をもたらす。いくつかの実施形態では、複数のそのようなPAは、水(または水溶液)中でナノ構造(例えば、ナノ繊維)に自己組織化する。様々な実施形態では、ペプチドセグメント及び疎水性セグメントの相対長さは、異なるPA分子形状及びナノ構造アーキテクチャをもたらす。例えば、より広いペプチドセグメント及びより狭い疎水性セグメントは、PAの組織化体に影響を有する概して円錐形の分子形状をもたらす(例えば、J.N.Israelachvili Intermolecular and surface forces;2nd ed.;Academic:London San Diego,1992を参照されたい;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。他の分子形状は、組織化体及びナノ構造アーキテクチャに対して同様の影響を有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質の水溶液の自己組織化を誘導するために、溶液のpHを変更(上げるまたは下げる)してもよく、あるいはカルシウムなどの多価イオン、または荷電ポリマーもしくは他の巨大分子を溶液に添加してもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、疎水性セグメントは、非ペプチドセグメント(例えば、アルキル/アルケニル/アルキニル基)である。いくつかの実施形態では、疎水性セグメントは、4~25個の炭素(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個)、フッ素化セグメント、フッ素化アルキル尾部、複素環式環、芳香族セグメント、piコンジュゲートセグメント、シクロアルキル、オリゴチオフェンなどのアルキル鎖(例えば、飽和)を含む。いくつかの実施形態では、疎水性セグメントは、2~30個の炭素(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個)のアシル/エーテル鎖(例えば、飽和)を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、PAは、1つ以上のペプチドセグメントを含む。ペプチドセグメントは、天然アミノ酸、修飾アミノ酸、非天然アミノ酸、アミノ酸類似体、ペプチド模倣物、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、ペプチドセグメントは、本明細書に記載のペプチド配列の1つ以上に対して少なくとも50%の配列同一性または類似性(例えば、保存的または半保存的)を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、荷電ペプチドセグメントを含む。荷電セグメントは、酸性、塩基性、または両性イオン性であり得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、酸性ペプチドセグメントを含む。例えば、いくつかの実施形態では、酸性ペプチドは、配列に1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7つ以上)の酸性残基(D及び/またはE)を含む。いくつかの実施形態では、酸性ペプチドセグメントは、最大7つの残基の長さを含み、少なくとも50%の酸性残基を含む。いくつかの実施形態では、酸性ペプチドセグメントは、(Xa)1-7を含み、各Xaは、独立して、DまたはEである。いくつかの実施形態では、酸性ペプチドセグメントは、EEを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、塩基性ペプチドセグメントを含む。例えば、いくつかの実施形態では、酸性ペプチドは、配列に1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7つ以上)の塩基性残基(R、H、及び/またはK)を含む。いくつかの実施形態では、塩基性ペプチドセグメントは、最大7つの残基の長さを含み、少なくとも50%の塩基性残基を含む。いくつかの実施形態では、酸性ペプチドセグメントは、(Xb)1-7を含み、各Xbは、独立して、R、H、及び/またはKである。
【0067】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、構造及び/またはベータシート形成セグメントを含む。いくつかの実施形態では、構造セグメントは、H、I、L、F、V、及びA残基が豊富である。いくつかの実施形態では、構造及び/またはベータシート形成セグメントは、アラニン及びバリン豊富ペプチドセグメント(例えば、AAVV、AAAVVV(配列番号4)、またはV残基及びA残基の他の組み合わせなど)を含む。いくつかの実施形態では、構造及び/またはベータシートペプチドは、4つ以上の連続したA及び/またはV残基、またはそれに対して保存的もしくは半保存的置換を含む。いくつかの実施形態では、構造及び/またはベータシート形成ペプチドセグメントは、4つ以上の連続した非極性脂肪族残基(例えば、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M))を含む。いくつかの実施形態では、構造及び/またはベータシート形成ペプチドセグメントは、2~16個のアミノ酸の長さを含み、4つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、またはそれらの間の範囲)の非極性脂肪族残基を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、非ペプチドスペーサーまたはリンカーセグメントを含む。いくつかの実施形態では、非ペプチドスペーサーまたはリンカーセグメントは、疎水性セグメントとは反対のペプチドの末端に位置する。いくつかの実施形態では、スペーサーまたはリンカーセグメントは、生物活性基の結合部位を提供する。いくつかの実施形態では、スペーサーまたはリンカーセグメントは、PAの機能化のための反応性基(例えば、アルケン、アルキン、アジド、チオール、マレイミドなど)を提供する。いくつかの実施形態では、スペーサーまたはリンカーは、CH、O、(CHO、O(CH、NH、及びC=O基(例えば、CH2(O(CHNH、CH2(O(CHNHCO(CHCCHなど)の実質的に直鎖である。いくつかの実施形態では、スペーサーまたはリンカーは、追加の生物活性基、置換基、分岐などを更に含む。
【0069】
本明細書の材料で使用するのに好適なペプチド両親媒性物質、ならびにPA及び関連材料の調製方法、PAで使用するためのアミノ酸配列、ならびにPAで使用することができる材料は、以下の特許に記載されている:米国特許第9,044,514号、米国特許第9,040,626号、米国特許第9,011,914号、米国特許第8,772,228号、米国特許第8,748,569号、米国特許第8,580,923号、米国特許第8,546,338号、米国特許第8,512,693号、米国特許第8,450,271号、米国特許第8,236,800号、米国特許第8,138,140号、米国特許第8,124,583号、米国特許第8,114,835号、米国特許第8,114,834号、米国特許第8,080,262号、米国特許第8,076,295号、米国特許第8,063,014号、米国特許第7,851,445号、米国特許第7,838,491号、米国特許第7,745,708号、米国特許第7,683,025号、米国特許第7,554,021号、米国特許第7,544,661号、米国特許第7,534,761号、米国特許第7,491,690号、米国特許第7,452,679号、米国特許第7,371,719号、米国特許第7,030,167号(それらの全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0070】
PA超分子構造の特徴(例えば、形状、剛性、親水性など)は、ペプチド両親媒性物質(例えば、親油性セグメント、酸性セグメント、構造セグメント、生物活性セグメントなど)の構成要素の同一性に依存する。例えば、ナノ繊維、ナノスフィア、中間形状、及び他の超分子構造は、PA構成要素部分の同一性を調整することによって達成される。いくつかの実施形態では、PAの超分子ナノ構造の特徴は、組織化後の操作(例えば、加熱/冷却、延伸など)によって変更される。
【0071】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、(a)8~24個の炭素のアルキル鎖を含む疎水性尾部、(b)構造セグメント(例えば、VVAAを含む)、及び(c)荷電セグメント(例えば、KK、EEなどを含む)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の構成要素を含む、本明細書に記載の範囲内の、または当業者の技術内の任意のPAが、本明細書において使用され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、生物活性部分(例えば、TGF-β1模倣エピトープ)を含む。特定の実施形態では、生物活性部分は、PAの最もC末端またはN末端のセグメントである。いくつかの実施形態では、生物活性部分は、荷電セグメントの末端に結合している。いくつかの実施形態では、生物活性部分は、組織化PA構造(例えば、ナノ繊維)の表面上に露出される。生物活性部分は、典型的には、ペプチド(例えば、TGF-β1模倣エピトープなど)であるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、生物活性部分は、目的のペプチドまたはポリペプチドに結合するペプチド配列、例えば、成長因子である。いくつかの実施形態では、TGF-β1模倣エピトープは、PA生物活性部分として提供される。いくつかの実施形態では、そのようなTGF-β1模倣エピトープは、配列番号1(CESPLKRQC)と、少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、またはこれらの間の範囲)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、TGF-β1模倣エピトープペプチドは、環化される。いくつかの実施形態では、TGF-β1模倣エピトープは、配列番号1である。いくつかの実施形態では、配列番号1のうちの1つと少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、またはそれらの間の範囲)の配列同一性を有するペプチドのうちの1つ以上を示す生物活性PAを含むナノ繊維が提供される。いくつかの実施形態では、生物活性ペプチドは、配列番号1のうちの1つに対して保存的または半保存的置換を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、(a)8~24個の炭素のアルキル鎖を含む疎水性尾部、(b)構造セグメント(例えば、VVAA(配列番号6)、AAVV(配列番号5)、VA、AV、AAなどを含む)、(c)荷電セグメント(例えば、KK、EE、EK、KE、EEEなどを含む)、及び生物活性ペプチド(例えば、TGF-β1模倣エピトープ)を含む。いくつかの実施形態では、PAは、PAのペプチド部分に疎水性尾部を結合させるための結合セグメントまたは残基(例えば、K)を更に含む。いくつかの実施形態では、疎水性尾部は、リジン側鎖に結合している。いくつかの実施形態では、PAは、生物活性ペプチドを構造セグメントに結合させるための結合セグメントまたは残基(例えば、K)を更に含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、(例えば、C末端からN末端に、またはN末端からC末端に)、生物活性ペプチド(例えば、TGF-β1模倣エピトープ)-荷電セグメント(例えば、KK、EE、EK、KE、EEEなどを含む)-構造セグメント(例えば、VVAA(配列番号6)、AAVV(配列番号5)、VA、AV、AAなどを含む)-疎水性尾部(例えば、8~24個の炭素のアルキル鎖を含む)を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、(例えば、C末端からN末端に、またはN末端からC末端に)、生物活性ペプチド(例えば、TGF-β1模倣エピトープ)-荷電セグメント(例えば、KK、EE、EK、KE、EEEなどを含む)-構造セグメント(例えば、VVAA(配列番号6)、AAVV(配列番号5)、VA、AV、AAなどを含む)-結合セグメントまたはペプチド(例えば、K)-疎水性尾部(例えば、8~24個の炭素のアルキル鎖を含む)を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、(例えば、C末端からN末端に、またはN末端からC末端に)、生物活性ペプチド(例えば、TGF-β1模倣エピトープ)-結合セグメントまたはペプチド(例えば、K)-荷電セグメント(例えば、KK、EE、EK、KE、EEEなどを含む)-構造セグメント(例えば、VVAA(配列番号6)、AAVV(配列番号5)、VA、AV、AAなどを含む)-疎水性尾部(例えば、8~24個の炭素のアルキル鎖を含む)を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、(例えば、C末端からN末端に、またはN末端からC末端に)、生物活性ペプチド(例えば、TGF-β1模倣エピトープ)-EEEAAAVVV(配列番号10)-疎水性尾部(例えば、8~24個の炭素のアルキル鎖を含む)を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、ペプチド両親媒性物質は、(例えば、C末端からN末端に、またはN末端からC末端に)、生物活性ペプチド(例えば、TGF-β1模倣エピトープ)-EEAA(配列番号11)-疎水性尾部(例えば、8~24個の炭素のアルキル鎖を含む)を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のペプチド両親媒性物質から組織化されたナノ繊維及びナノ構造が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、ナノ繊維は、本明細書に記載のPAの自己組織化によって調製される。いくつかの実施形態では、ナノ繊維は、TGF-β1模倣エピトープを示すPAを含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、TGF-β1模倣エピトープは、ナノ繊維の表面上に示される。いくつかの実施形態では、TGF-β1模倣エピトープを示すPAに加えて、フィラーPAがナノ繊維に含まれる。いくつかの実施形態では、フィラーPAは、本明細書に記載されるペプチド両親媒性物質(例えば、構造セグメント、荷電セグメント、疎水性セグメントなど)であるが、生物活性部分を欠く。いくつかの実施形態では、フィラーペプチドは、生物活性部分(例えば、V3A3K3、V3A3E3など)を欠く塩基性または酸性のペプチドである。いくつかの実施形態では、フィラーPA及びTGF-β1模倣エピトープPAは、両方の種類のPAを含むナノ繊維に自己組織化する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のペプチド両親媒性物質から組織化されたナノ構造(例えば、ナノ繊維)が提供される。
【0080】
いくつかの実施形態では、ナノ構造は、(1)生物活性部分(例えば、TGF-β1模倣エピトープ)を有するPA、及び(2)フィラーPA(例えば、標識されていない、または生物活性部分を示していない酸性または塩基性のPAなど)から組織化される。いくつかの実施形態では、ナノ構造(例えば、ナノ繊維)は、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、または1%(またはそれらの間の任意の範囲)のTGF-β1模倣エピトープPAを含む。いくつかの実施形態では、ナノ構造(例えば、ナノ繊維)は、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、または1%(またはそれらの間の任意の範囲)の酸性フィラーPAを含む。いくつかの実施形態では、ナノ構造(例えば、ナノ繊維)は、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、または1%(またはそれらの間の任意の範囲)の塩基性フィラーPAを含む。いくつかの実施形態では、ナノ繊維におけるTGF-β1模倣エピトープPAと酸性及び/または塩基性PAとの比率は、ナノ繊維材料の機械的特徴(例えば、液体またはゲル)を決定し、どのような条件下で材料が様々な特徴(例えば、生理学的条件への曝露によるゲル化、生理学的条件への曝露による液化など)を採用するかを決定する。
【0081】
ペプチド両親媒性(PA)ナノ繊維溶液は、PAの任意の好適な組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、溶液の少なくとも0.05mg/mL(例えば、0.10mg/ml、0.15mg/ml、0.20mg/ml、0.25mg/ml、0.30mg/ml、0.35mg/ml、0.40mg/ml、0.45mg/ml、0.50mg/ml、0.60mg/ml、0.70mg/ml、0.80mg/ml、0.90mg/ml、1.0mg/ml以上、またはそれらの間の範囲)は、フィラーPA(例えば、ペプチドエピトープまたは他のナノ繊維表面提示部分を含まない)である。いくつかの実施形態では、少なくとも0.25mg/mLの溶液は、フィラーPAである。いくつかの実施形態では、フィラーPAは、分子の末端(例えば、表面提示末端)に高荷電グルタミン酸残基を有する非生物活性PA分子である。これらの負の荷電PAは、イオン架橋を介してナノ繊維間でゲル化が行われることを可能にする。いくつかの実施形態では、フィラーPAは、分子の末端(例えば、表面提示末端)に高荷電リジン残基を有する非生物活性PA分子である。これらの正の荷電PAは、基塩基性条件下でゲル化が行われることを可能にする。フィラーPAは、ナノ繊維溶液のゲル化能力を依然として確保しながら、他の生物活性PA分子をナノ繊維マトリックスに組み込む能力を提供する。いくつかの実施形態では、溶液は、粘度の増加及びより強いゲル力学のためにアニールされる。これらのフィラーPAは、例えば、米国特許第8,772,228号(例えば、C16-VVVAAAEEE(配列番号9))(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される配列を有する。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のPAナノ繊維は、小さな断面直径(例えば、25nm未満、20nm未満、15nm未満、約10nmなど)を示す。いくつかの実施形態では、ナノ繊維の小さな断面(直径約10nm)は、繊維が脳実質に浸透することを可能にする。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のPA及びナノ構造は、変形性関節症、軟骨損傷/劣化、ならびに他の筋骨格損傷及び疾患の治療または予防に使用される。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書のTGF-β1模倣エピトープPAナノ構造組成物は、対象への送達のために製剤化される。本明細書に記載の薬学的組成物を投与する好適な経路としては、局所、皮下、経皮、皮内、病巣内、関節内、腹腔内、膀胱内、経粘膜、歯肉、歯内、蝸牛内、鼓室内、臓器内、硬膜外、髄腔内、筋肉内、静脈内、血管内、骨内、眼周囲、腫瘍内、脳内、及び脳室内投与が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、TGF-β1模倣エピトープPAナノ構造組成物は、非経口投与される。いくつかの実施形態では、非経口投与は、髄腔内投与、脳室内投与、または実質内投与によるものである。
【0085】
本明細書のTGF-β1模倣エピトープPAナノ構造組成物は、唯一の活性剤として、または変形性関節症、軟骨損傷/劣化、ならびに他の筋骨格損傷及び疾患の治療に使用される他の薬剤などの他の医薬品と組み合わせて投与され得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書のPAナノ構造は、1つ以上の追加の構成要素を有する複合材料として提供される。いくつかの実施形態では、本明細書の複合物は、PAナノ構造と、生体適合性ポリマーとを含む。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、粒子(例えば、微粒子(例えば、1μmより大きいが1mm未満の直径)、ナノ粒子(例えば、1nmより大きいが1μm未満の直径)など)の形態である。いくつかの実施形態では、複合物は、スラリー、ペースト、ゲルなどの形態である。
【0087】
本明細書の材料で使用するための好適な生体適合性ポリマーは、PLA、PLLA、PGA、PGLA、PCL、キトサン、ポリラクチド、ポリグリコリド、イプシロン-カプロラクトン、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリヒドロキシ酪酸、他のポリヒドロキシ酸、ポリトリメチレンカーボネート、ポリアミン、ビニルポリマー、エステルを含有するポリアクリル酸及びそれらの誘導体、ポリエチレングリコール、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリオルトエステル、ポリアミノ酸、ポリホスホエステル、ポリエステルアミド、ポリフマレート、ポリ無水物、ポリシアノアクリレート、ポリオキサマー、ポリウレタン、ポリホスファゼン、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル-エステル)、ポリアキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基含有ポリオキサエステル、ポリアセタール、ポリアルカノエート、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、多糖類、アルギネート、キチン、ヒアルロン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0088】
いくつかの実施形態では、粒子は、任意の好適なサイズ及び形状のものである。いくつかの実施形態では、粒子は微粒子であり、1μm~1mm(例えば、1μm、2μm、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、1mm、またはそれらの間の範囲)の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、粒子はナノ粒子であり、1nm~1μm(例えば、1nm、2nm、5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、1nm、またはそれらの間の範囲)の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、粒子は、冷凍(例えば、液体N下で)、乾燥、冷凍乾燥、凍結乾燥、破砕、粉砕、溶媒(例えば、エタノール)への曝露、ふるい分け、及びこれらの組み合わせなどの任意の好適な技法を使用して生成される。
【0089】
例示的な実施形態では、生体適合性粒子及びペプチド両親媒性溶液を、中性pH水中、5重量%の生体適合性粒子及び1重量%のPAで混合する。他の範囲(例えば、1重量%~20重量%(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9 10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれらの間の任意の範囲)の生体適合性粒子;0.1重量%~10重量%(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれらの間の任意の範囲)のPA)を用いてもよい。特定の実施形態では、ポリマー(例えば、HA)は、0重量%~20重量%で使用され、PAは、0.05重量%~3重量%で使用される。
【実施例
【0090】
実験
実施例1
TGF-β1模倣超分子ナノ構造のインビトロ特徴付け
材料及び方法
PAの合成及び精製
Wang樹脂(EMD Biosciences)での標準フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)合成を使用して、全てのPA分子を合成した。PAは、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。HPLC精製後のPAの各画分の質量スペクトルを、Agilentモデル6520で直接注入Q-ToF MSを使用して検証した。Phenomenex Gemini C18カラムを使用して、0.1%水酸化アンモニウムを含む5%から95%の水対アセトニトリル勾配にわたって液体クロマトグラフィー-エレクトロスプレーイオン化質量分析(LCMS)により、PAの純度を確認した。
【0091】
直交保護基を有する樹脂上のFmoc-Lys(Mtt)-OHリジン残基を使用して、TGF-β1模倣PA分子を合成した。Fmoc脱保護後、C16-AAEE(配列番号7)またはC16-AEAE(配列番号8)のいずれかのPA骨格を、C末端からN末端に、リジンα-アミノ基から合成した。Mtt脱保護後、PEGをリジン側鎖アミンから合成し、続いてTGF-β1模倣エピトープを合成し、これを樹脂でのジスルフィド結合によって環化した。合成の後、ペプチドの環化を確実にするために、高速液体クロマトグラフィー及び液体クロマトグラフィー質量分析でペプチドを精製した。
【0092】
各PAの精製確認画分をプールし、溶液を凍結乾燥により冷凍乾燥した。希釈骨格PAを、凍結乾燥粉末を滅菌水に溶解することによって、異なるモルパーセントでそれぞれのTGF-β1模倣PAまたは直鎖状のエピトープPAと共組織化した。PA溶液を、1MのNaOHの滅菌濾過溶液を使用してpH7に調整し、次いで30分間超音波浴を行った。溶液を80℃で30分間熱的にアニールし、次いで1分当たり1℃の速度で25℃に冷却した。次いで、溶液を150mMのNaClの滅菌溶液を使用して30mMのNaClに調整し、次いで50℃で30分間アニールし、冷却した。
【0093】
PAゲル調製
ゲルを、前述のように調製した2重量%のPA溶液を使用して、10mol%のエピトープPAと希釈PAとの共組織化体を使用して作製した。12ウェルチャンバースライド(Ibidi)を、0.01mg/mLのポリD-リジン(Sigma-Aldrich)溶液でコーティングし、37℃で一晩インキュベートした。ウェルを水で3回洗浄し、少なくとも30分間空気乾燥させた。120μLのPA溶液をピペットで均等にウェルに入れ、110mMのNaCl、3mMのKCl、及び25mMのCaClで構成されるゲル化溶液をPA溶液の上にピペットで滴下した。ゲルを37℃で30分間インキュベートし、次いで過剰なゲル化溶液を除去した。
【0094】
低温透過型電子顕微鏡法
レーシーカーボンフィルムを有する300メッシュの銅グリッド(Electron Microscopy Sciences)を、PELCO easiGlowシステム(Ted Pella, Inc.)で30秒間グロー放電した。PA溶液を前述のように調製し、次いで、画像化の前に水中で1mMに希釈した。7μLのPA溶液を、グリッド上に配置し、ブロットし、95~100%の湿度に維持されたFEI Vitrobot Mark IV(FEI)を使用して、液体エタン中でプランジ凍結した。液体窒素に浸漬しながら、Gatan 626クライオホルダー(Gatan)にガラス化試料を移し、100kVの加速電圧で動作するJEOL 1230 TEMで画像化した。液体窒素温度は画像化中維持され、顕微鏡写真はGatan 832 CCDカメラで捕捉した。
【0095】
従来の透過型電子顕微鏡法
PA溶液を水中で0.6mMに希釈し、直ちに銅TEMメッシュグリッド(Electron Microscopy Sciences)上に30秒間配置し、水で2回ブロットし、2%酢酸ウラニルで染色し、15分間空気乾燥させた。画像化は、FEI Sprit G2透過型電子顕微鏡で行った。
【0096】
動的光散乱
DLS測定は、Malvern Zetasizer Nano ZSP光散乱分光計で行った。PAを含まないTGF-β1模倣ペプチド単独を、前述のように1重量%で調製した。試料測定中、温度を25℃に保った。各測定を行う前に、試料を30秒間平衡化した。各測定の持続時間は10秒であり、測定角度は173°の後方散乱であった。減衰器は、各実行の蓄積数と同様に、機器によって自動的に決定された。各測定実行を3回繰り返した。
【0097】
X線散乱
Advanced Photon Source of Argonne National LaboratoryのDupont-Northwestern-Dow Collaborative Access Team Synchrotron Research Centerで、ビームライン5ID-Dで実験を行った。4.8mMのPA溶液を石英キャピラリーセルで調製し、17keVの単色X線に5回、2~3秒間曝露した。散乱強度は、試料の245cm後ろに配置されたCCD検出器で記録した。収集した2次元散乱画像を、データ還元プログラムFIT2Dを使用して方位積分によって平均化し、波数ベクトルq=(4π)sin(θ/2)(ここで、d=2π/q)に対してプロットした。30mMのNaCl緩衝液のみの試料をバックグラウンド減算して、最終強度を得た。SAXSパターンを両対数スケールでプロットし、必要に応じてコア-シェルシリンダーモデルに適合させた。WAXSパターンを線形スケールでプロットし、データのピーク及び最小値をMATLABピークファインダー機能を使用して特定した。
【0098】
円二色性
CDスペクトルは、0.5mmの光学長さの平行プレート石英チャンバーを使用して、JASCOモデルJ-815分光偏光計で記録した。測定直前に、PA溶液を水中で0.1及び0.5mMに希釈した。スペクトルを、1nmのステップサイズ、100nm/分の走査速度、及び標準感度で、190~300nmの波長範囲にわたって収集した。測定値が飽和していないことを確認するために、各試料について高張力電圧を記録した。3つの測定値の蓄積を使用し、30mMのNaCl緩衝液のみの試料をバックグラウンド減算して、最終スペクトルを得た。全てのPA濃度を一緒に分析して、線形二色性がないことを確認し、0.5mMのPA溶液のスペクトルを最終分析に使用した。
【0099】
フーリエ変換赤外線分光法
前述の方法を使用して、PA溶液を無水条件下で調製した。PAをDOに可溶化し、DOHでpHを調整し、DO中150mMのNaClを使用して12mMのPA及び30mMのNaClに希釈した。PA溶液を、測定直前にDO中5mMに希釈し、次いで、50μmの分離を伴う2つのCaFウィンドウの間に配置した。透過率は、Bruker Tensor 37 FTIR分光計で測定した。1cm-1の解像度で25回のスキャンにわたってスペクトルを記録し、平均化し、DO緩衝液のみ試料の30mMのNaCl及び空気をバックグラウンド減算して、最終スペクトルを得た。スペクトル内のピークは、MATLABピークファインダー機能を使用して特定し、二次構造は、ピーク位置を通して特定した。
【0100】
蛍光異方性
希釈PA、TGF-β1模倣PA、及び蛍光色素コンジュゲートTGF-β1模倣PAのPA共組織化体を、90:8:2mol%の比率で調製した。色素コンジュゲートPAを、TGF-β1模倣エピトープのN末端アミンにコンジュゲートしたテトラメチルローダミン(TAMRA)分子と前述のように合成した。PA溶液を前述のように調製し、測定直前に100μMのPA、100μMのCaCl2、及び30mMのNaClに希釈した。蛍光測定は、電力が18Aに設定された300Wキセノンアークランプを装備したISS PC1光子計数定常状態蛍光分光計で行った。1mmの励起スリット幅(8nm帯域幅)及び0.5mmの放射スリット幅(4nm帯域幅)が使用された。蛍光異方性の測定は、λex=554nm及びλem=580nmで、式:
【数1】

(式中、F||は励起平面に平行な強度であり、Fは励起平面に垂直な強度であり、gはg因子であり、これは垂直格子と平行格子の間の放射の違いを説明する)に従って行われた。測定は3つ組みで行われ、最終データ分析のために平均化された。
【0101】
横緩和核磁気共鳴分光法
NMRスペクトルは、QCI-Fクライオプローブを有するBrucker Neoシステムで、600MHzで取得した。TFA-d、HO/DOを9/1の比率(DOは0.05重量%の3-(トリメチルシリル)プロピオン-2,2,3,3-d酸、ナトリウム塩を含有する)で溶媒として使用して、PAのNMRスペクトルを25℃で記録した。化学シフトは、100万分の1(ppm)で報告される。90°のパルス幅は15μsであり、典型的なスペクトルは32回のスキャンを必要とした。可変ループにおいて、0.2msの遅延時間でCarr-Purcell-Gill-Meiboomパルスシーケンスを使用して、スピン-スピン緩和速度を測定した。ピーク強度データは、以下の形態に適合し、指数関数的であった:
【数2】

(式中、τは遅延時間の長さであり、R2はスピン-スピン緩和速度であり、bはベースラインである)
【0102】
細胞培養
C28/I2ヒト関節軟骨細胞(Millipore)を、10%ウシ胎仔血清(Denville Scientific)、100U/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシン(Gibco)を補充したDMEM高グルコース培地(Gibco)中で、標準細胞培養技法を使用して維持した。0.25%トリプシン(Gibco)を使用して細胞を継代し、継代3~8で実験に使用した。
【0103】
インビトロでのPA細胞処理
PA溶液(骨格PA、TGF PA、lnTGF PA、及びペプチドのみ)を前述のように1重量%で滅菌条件下で調製した。24時間未満にわたる細胞処理のために、PA処理溶液または天然rhTGF-β1タンパク質(R&D Systems)を、0.5%ウシ胎仔血清(Denville Scientific)、100U/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシン(Gibco)を補充したDMEM高グルコース培地(Gibco)で構成される飢餓培地中で希釈した。24時間以上にわたる細胞処理のために、PA処理溶液または天然rhTGF-β1タンパク質(R&D Systems)を完全成長培地中で希釈した。PA溶液を、1、10、50、及び100μMの様々な濃度で調製し、濃度は、エピトープPAの濃度を指す。
【0104】
細胞生存率アッセイのために、細胞を、約15,400細胞/ウェルの密度で48ウェルプレートに播種し、24時間培養した。次いで、細胞を、インビトロで24時間または3日間、溶液中のPAで処理した。
【0105】
4時間のPA処理のウエスタンブロットのために、細胞を、600,000細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種し、24時間培養した。次いで、細胞を、0.5%ウシ胎仔血清(Denville Scientific)、100U/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシン(Gibco)を補充したDMEM高グルコース培地(Gibco)中で20時間、血清飢餓状態にした。次いで、細胞を、インビトロで4時間、溶液中のPAで処理した。3日間のPA処理のウエスタンブロットのために、細胞を、230,000細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種し、24時間培養した。次いで、細胞を、インビトロで3日間、溶液中のPAで処理した。
【0106】
免疫細胞化学(ICC)のために、12mmガラスカバースリップを、滅菌濾過した0.01mg/mLのポリ-D-リジン(Sigma-Aldrich)溶液でコーティングし、37℃で一晩インキュベートした。カバースリップを滅菌水で3回洗浄し、少なくとも30分間空気乾燥させた。細胞を、約3,000細胞/カバースリップの密度でカバースリップ上に播種し、24時間培養した。次いで、細胞を、インビトロで3日間、溶液中のPAで処理した。処理後、細胞を、室温で15分間、4%パラホルムアルデヒド中に固定した。
【0107】
生存率アッセイ
2D生存率アッセイのために、細胞を培養し、前述のようにインビトロでPA溶液で処理した。24時間または3日間の培養後、細胞をHBSS(Gibco)で洗浄し、37℃で30分間、2μMのカルセインAM(Invitrogen)及び100ng/mLのヨウ化プロピジウム(Sigma-Aldrich)を含有するHBSSと培地を交換した。細胞をHBSSで洗浄し、画像化した。
【0108】
3D生存率アッセイのために、細胞をPAゲルに封入し、後述するようにインビトロで培養した。3日間の培養後、培地の画分を収集して、CyQUANT(商標)LDH細胞傷害性アッセイ(Invitrogen)を使用して、細胞溶解時にのみ放出される細胞質酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の存在を測定した。
【0109】
ウエスタンブロット
タンパク質を、Haltプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific)を使用して細胞から抽出し、BCAアッセイ(Thermo Scientific)を行って、各試料のタンパク質含有量を決定した。細胞タンパク質を充填し、4~20%のSDS-PAGEゲル(Bio-Rad)を使用して分離した。次いで、それをゲルからニトロセルロース膜(Bio-Rad)に電気泳動転写した。膜を10%乳溶液(Bio-Rad)で30分間遮断し、続いて4℃で一次抗体を用いて一晩インキュベートした。以下の一次抗体を使用した:ウサギ抗pSmad2(1:1000、Cell Signaling)、ウサギ抗Smad2(1:1000、Cell Signaling)、ウサギ抗Sox9(1:500、Abcam)、マウス抗アグレカン(1:500、ThermoFisher)、ウサギ抗COMP/軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(1:500、Abcam)、マウス抗コラーゲンII(1:500、ThermoFisher)、及びマウス抗アクチン(1:1000、Novus Bio)。次いで、膜を、対応する二次HRPコンジュゲート抗体(1:1000、ThermoFisher )とインキュベートした。タンパク質シグナルは、Radiance Bioluminescent ECL基質(Azure Biosystems)を使用して検出した。タンパク質負荷の対照として総受容体含有量またはアクチンに標準化された密度測定分析を、ImageJソフトウェアを使用して行った。定量化のために、実験的な3つ組みの試料を分析し、2つの異なる実験を行った。
【0110】
免疫細胞化学
固定試料を透過させ、室温で2時間、0.1%(v/v)Triton X-100及び1%正常ウマ血清(Invitrogen)の溶液中で遮断した。試料を一次抗体と4℃で一晩インキュベートした。以下の一次抗体を使用した:ウサギ抗Sox9(1:500、Abcam)、マウス抗アグレカン(1:500、ThermoFisher)、マウス抗コラーゲンII(1:500、ThermoFisher )、及びマウス抗核(1:500、Sigma-Aldrich)。翌日、試料をAlexaFluor488二次抗体、AlexaFluor555二次抗体、Phalloidin AlexaFluor488、及び/またはPhalloidin AlexaFluor633(1:1000、Invitrogen)と室温で2~3時間インキュベートした。次いで、2D細胞培養のために、試料をDAPI(1:1000、Invitrogen)とともに室温で10分間インキュベートした。ガラスカバースリップにまだ設置していない場合、試料をImmu-Mount(Thermo Scientific)とともに載置し、Nikon A1Rスペクトル顕微鏡で画像化した。ImageJソフトウェアを使用して、画像分析を行った。
【0111】
細胞の封入
計数するために、軟骨細胞をトリプシン処理し、成長培地に再懸濁し、次いで、ペレット化し、成長培地に6×10細胞/mLまで再懸濁した。細胞溶液を、30mMのNaCl中3重量%で調製した滅菌PA溶液と1:2v/vで混合した。またrhTGF-β1タンパク質を封入するゲル(R&D Systems)については、熱アニーリング後に可溶性タンパク質をPA溶液に添加した。120μLのPA/細胞溶液をピペットで穏やかに完全に混合し、次いでPDLコーティングされた12ウェルチャンバースライド(Ibidi)に配置した。110mMのNaCl、3mMのKCl、及び25mMのCaClで構成される滅菌ゲル化溶液を、PA/細胞溶液の上にピペットで滴下し、ゲルを37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、過剰なゲル化溶液を除去し、250μLの成長培地を各ウェルに添加した。上述のように、LDH生存率アッセイのために培地を3日後に除去した。ICCについては、3日間のインビトロ培養後、ゲルを4%のパラホルムアルデヒドで室温で30分間固定した。
【0112】
統計分析
統計分析は、MATLAB2021ソフトウェアを使用して行った。データが非ガウスであり、Kruskal-Wallis検定を代わりに使用した細胞面積分析を除き、Tukeyの事後分析を伴う有意性の分散分析(ANOVA)検定を、全ての多群分析に使用した。エラーバーは、標準誤差を表す。
【0113】
結果
TGF-β1模倣PAナノ構造の設計
本明細書の実施形態の開発中に、環状ペプチドCESPLKRQC(配列番号1)の提示を介して、軟骨におけるTGF-β1シグナル伝達を模倣する超分子ナノ構造を開発するための実験を行った。TGF-β1模倣PA分子(TGF PA)を、このペプチドを、テトラ(エチレングリコール)スペーサーを介して2つの異なるPA分子のC末端にコンジュゲートすることによって設計した(図1)。エピトープSESPLKRQS(配列番号2)を提示する模倣PA(lnTGF PA)の直鎖非環化誘導体もまた設計した。100mol%のエピトープPA分子を含有するPA組織化体は、おそらくエピトープの立体要求のために、長い繊維状構造を形成することができなかった(図7)。各骨格PA単独では、堅牢な高アスペクト比構造を形成し37、これは、細胞生存率及び生物活性をより促進することが示されている38、39。したがって、非生物活性希釈骨格PA分子(骨格PA-a及び骨格PA-b)を、それぞれ、環状エピトープ(TGF PA-a及びTGF PA-b)または非環状対照(lnTGF PA-a及びlnTGF PA-b)にコンジュゲートされたそれぞれのPAと共組織化して、それらの表面上にエピトープを示す長い繊維状ナノ構造を形成した。エピトープの生物活性が、PA超分子ナノ構造上でのその提示によって増強されるかどうかを調べるために、可溶性環状TGF-β1模倣ペプチドも単独で評価した。
【0114】
TGF-β1模倣PAナノ構造の材料特徴付け
生物体活性及び希釈PAのモル比が、ナノ構造形態、エピトープ提示、及び生物活性に影響を与えることが示されているため28、30、31、エピトープPAと対応する希釈骨格PAとの様々な共組織化体比(10、25、50、75、及び100モル%)を特徴付けて、細胞生存率及び生物活性を促進する長く均一な構造に自己組織化するための最適な比率を決定した。低温透過型電子顕微鏡法(低温TEM)は、異なる骨格系と共組織化体比との間のナノ構造形態の明確な違いを明らかにした(図2a~f、図7、及び図8)。希釈骨格PAのみが、エピトープPA分子との共組織化時に変化する、高アスペクト比のねじれたリボン様構造を形成した(図2a及び2d)。10%のモル比で、TGF PA系及びlnTGF PA系の両方が、高アスペクト比構造を形成した。TGF PA-aは、幅50~60nmの広い螺旋状リボン様構造を形成し、TGF PA-bは、一次元円筒形繊維を形成した(図2b及び2e)。TGF PAのモル比が50mol%以上に増加すると、両方の系は、おそらく環状エピトープからの立体反発に起因して、短い繊維またはミセルを形成した(図7)。両方の直鎖lnTGF PA系は、10mol%で幅20~30nmの狭いねじれリボンを形成した(図2c、2f、及び8)。動的光散乱は、TGF-β1模倣エピトープのみが、約2nmの水力学的直径を有するミセル及び200nm程度のミセルの凝集体を形成したことを明らかにした(図9及び10)。
【0115】
低温TEMで観察されるこれらの形態をより定量的に特徴付けるために、ナノ構造を、小角度及び広角度X線散乱(SAXS及びWAXS)を使用してインサイチュで分析した(図2g~h、11、12)。両対数スケールでプロットされたSAXS強度プロファイルは、TGF PA-aについては約-2、TGF PA-bについては約-1の傾きを有する低q Guinier領域に線形的に適合させることができ、それぞれ、高アスペクト比の二次元及び一次元構造を示した(図2g)40。WAXSは、2つの骨格系間の分子充填スキームの明確な違いを明らかにした(図2h)。TGF PA-a WAXSパターンにおける複数の鋭いピークは、TGF PA-bの低秩序内部組織とは対照的に、高秩序の結晶充填を示した。次に、組織化体の二次構造及びPA分子間の水素結合の程度を調べるために、円形二色性(CD)及びフーリエ変換赤外線(FTIR)分光法を行った(図2i~j、13、及び14)。骨格PA-a、骨格PA-b、及びTGF PA-a組織化体は、CD最大がおよそ195nmで強いβシート様特性を示したが41、両方のlnTGF PA組織化体は、ほとんどまたは全くβシート構造を有さず(図2i)、直鎖エピトープがβシート形成に必要とされる水素結合をより重度に妨げたことを示した。同様に、TGF PA-a及びTGF PA-b組織化体の両方のFTIRスペクトルは、およそ1625~1640cm-1の正準βシートアミドIバンドを示し42、これはlnTGF PAスペクトルの両方に存在しなかった(図2j)。骨格PA-aはまた、およそ1600cm-1で第2のピークを示し、これは他の全ての試料に存在しなかった(図2j)。骨格PA及びエピトープPAの異なる組み合わせは、組織化体の内部秩序及び二次構造の変化をもたらした。
【0116】
組織化体内の個々のPA分子の分子間の動態及び移動度を更にプローブするために、蛍光異方性(FA)を使用して、TGF PAナノ構造内のTAMRA標識エピトープの回転拡散を測定した(図3a)。TGF PAを10mol%で希釈骨格PAと共組織化し、0.2mol%のTGF PA分子を環状エピトープ上のTAMRAとコンジュゲートした。TAMRAフルオロフォアは自己組織化を妨げず、TAMRA標識エピトープを有するPAナノ構造は、標識されていない組織化体と同じ形態を形成したことが確認された(図15)。FAは、TGF PA-bと比較して、回転拡散の観点から、エピトープ移動度の増加を示したTGF PA-aにおける顕著に低い異方性値を明らかにした(図3a)。このより高い回転拡散は、TGF PA-a組織化体上のエピトープが高次構造を変化させるか、またはナノ構造から延在し、細胞受容体と結合することを可能にし得る。
【0117】
組織化体の内部動態及び個々のPA分子の移動拡散をよりよく理解するために、横緩和核磁気共鳴(T2-NMR)分光法を使用して、CESPLKRQC(配列番号1)環状エピトープのリジン残基のε炭素(Hε)上のメチレンプロトン(2.64ppmで観察される)、及びペプチドN末端のアルキル尾部の末端炭素上のメチルプロトン(0.77ppm)のスピン格子緩和(T2)速度を測定した(図3b~c、16、及び17)。標識エピトープの回転拡散のみを測定するFAとは対照的に、T2-NMRはまた、組織化体内のPA分子の移動拡散をプローブし、分子間凝集を推定することができる。TGF PA-a組織化体におけるアルキル尾部プロトンの緩和速度は、TGF PA-b組織化体よりもはるかに高く、ほぼ5倍高かった(図3b~c)。この高い緩和速度は、超分子構造を安定化するPA分子間の引力によって説明されるように、より低い移動拡散及びより強い分子間凝集と一致していた。アルキル尾部プロトンからのT2-NMR測定は、我々のWAXS結果を確認し、TGF PA-a組織化体が、TGF PA-bと比較して高い内部秩序及びより強い分子間凝集を有したことを示した。対照的に、TGF PA-a及びTGF PA-b組織化体の両方におけるエピトーププロトンは、同様の低い緩和速度を有した(図3b~c)。これは、TGF PA-a組織化体が高い内部秩序を有していたが、ナノ構造表面上に提示されたエピトープが可撓性及び移動性であったことを示した。内部結晶化度及びエピトープ移動度のこの共存は、エピトープPA分子がTGF PA-aナノ構造内の超分子動態に顕著に影響を及ぼしたことを明らかにした。TGF PA-a組織化体において、環状エピトープPA分子は、結晶構造に局所的な破壊を生じさせ、エピトープにより大きな移動度を提供した可能性がある。骨格PA組織化体におけるアルキル尾部プロトンの同様のT2-NMR測定は、骨格PA-bと比較して、骨格PA-a組織化体の外周における超分子動態の増加を明らかにした(表1)。TGF PA-aにおける骨格及びエピトープPA動態のこれらの相互作用は、組織化体の内核が非常に秩序がありかつ凝集している場合でも、エピトープ及び外周は依然として動的移動度を示すことができることを示したため、予想外であった。TGF PA-aナノ構造はまた、それらの広いベルト様形態に起因して表面積が増加しており、これは、細胞とより好ましく相互作用するための動的運動範囲を有する環状エピトープ分子を提示する可能性が高い。
【表1】
【0118】
TGF-β1模倣ペプチド両親媒性ナノ構造に対する細胞応答
TGF PA-a及びTGF PA-bのナノ構造間の形態、内部秩序、及び超分子動態の違いを考慮して、培地中で希釈したPA溶液で、インビトロでヒト関節軟骨細胞を処理することによって、生物活性に対するこれらの違いの効果を分析した。生体適合性を、異なる共組織化体比及び濃度で、各TGF PA溶液で細胞を処理することによって測定し、次いで、培養の24時間及び3日後に生存率を分析した(図18及び19)。24時間後、全てのPA処理は、10μM及び50μMの両方で高い生存率(300細胞/mm超)を示した。3日後、ほぼ全ての10μMのPA処理は同様に、高い生存率(400細胞/mm超)を示した。25mol%及び50mol%の共組織化体は、生体適合性及び形態の両方が変化したが、均一な繊維構造を形成した10%共組織化体は、一貫した濃度及び時間依存的生体適合性を明らかにした。総PA濃度を10mol%エピトープの共組織化体で変更して、生体適合性のための最適濃度を決定した。細胞を、様々な濃度で各TGF PA、lnTGF PA、骨格PA、ペプチド単独、または天然組換えヒトTGF-β1(rhTGF-β1)を含む溶液中で処理した(図20及び21)。培養の24時間後、100μMの骨格PA-b及びlnTGF PA-bを除く全てのPA処理は、高い生存率(300細胞/mm超)を示した。培養の3日後、10μM以下の全てのPA処理は、高い生存率(300細胞/mm超)を示したが、より高い濃度は、おそらく過度のシグナル伝達または3日後に細胞の上に蓄積した過剰なPA材料に起因して、生存率を顕著に減少させた。これらの結果は、50μM及び10μMのPA処理が、それぞれ、最大24時間及び3日間の処理時点に対して適切な濃度であったことを実験設計に知らせた。
【0119】
3日後、骨格PA-a系、TGF PA-a、及びlnTGF PA-aは、対応する骨格PA-b系よりも高い生体適合性を示した。生体適合性のこの違いは、全ての組織化体が、一般的に細胞生存率の向上に起因する物理的属性である長い高アスペクト比構造を形成したため、予想外であった35、43。各系の分子は、非生物活性PA骨格内の2つの隣接するアミノ酸の順序のみ異なる。しかしながら、WAXS及びT2-NMR分光法は、TGF PA-b組織化体について、内部秩序があまりなく、緩和速度が低いことを明らかにし、それらがナノ繊維からのTGF PA-b分子の解離を介して細胞脂質膜を破壊し、細胞死をもたらす原因となった可能性がある、移動拡散の増加及びより弱い内部凝集を示唆した。逆に、TGF PA-a組織化体の高い内部秩序及び緩和率は、高アスペクト比ナノ構造が無傷のままであり、共存し、細胞と相互作用することを可能にする、より強い内部凝集を示した。
【0120】
TGF-β1模倣PAナノ構造が細胞内シグナル伝達を活性化する
本明細書の実施形態の開発中に、軟骨細胞における細胞内TGF-β1シグナル伝達を活性化するPA材料の能力を評価するために実験を行った。TGF PA-aナノ構造について、広いベルト様形態、結晶内部秩序、及び動的エピトープは、軟骨形成シグナル伝達のための増強された生物活性に寄与するだろうと仮定された。共組織化体及び濃度掃引を、異なる共組織化体比(10、25、及び50mol%)及び濃度(10及び50μM)の各TGF PA、陽性対照としてのrhTGF-β1、または陰性対照としての飢餓培地で細胞を処理することによって行った。処理の4時間後、リン酸化Smad2(p-Smad2)及びSox9のレベルを評価するために、ウエスタンブロット分析を行った(図4a~b及び22)。Smad2リン酸化は、受容体結合後の軟骨における正準TGF-β1シグナル伝達の最初のステップである。活性化時に、リン酸化Smad2及びSmad3は、核に転座して転写を開始する(軟骨形成遺伝子の転写を含む)Smad4と複合体を形成する11、12。10mol%共組織化体及び50μMでのTGF PA-aは、強いp-Smad2活性化を示した。同様に、おそらく短い繊維及びミセルがあまり好ましくない立体構造または分布のエピトープを示したため、高い共組織化体比は、細胞応答をほとんど誘導せず、長い繊維構造で以前に見られた増強されたシグナル伝達を妨げた。Sox9は、初期の間葉系幹細胞縮合中に発現する核転写因子であり、成熟した軟骨細胞において顕著に上方調節されるとは予想されなかった10。Sox9の顕著な上方調節はなかったが、全ての条件でベースラインレベルの発現が示され、健康な軟骨細胞表現型を示した(図22)。
【0121】
生体適合性及び生物活性の結果に基づいて、全てのエピトープPA組織化体については10mol%共組織化体、短時間(24時間未満)の処理については50μM、そして長時間(24時間超)の処理については10μMで実験を行った。細胞を、50μMの各TGF PA、lnTGF PA、骨格PA、ペプチド単独、またはrhTGF-β1で4時間処理した。ウエスタンブロット分析は、骨格PA、直鎖エピトープPA、またはペプチド単独による活性化を示さず、エピトープの環化及びPAナノ構造上のその提示の両方が生物活性を付与したという仮説を確認した(図4c~d)。TGF PA-aは、その構成異性体であるTGF PA-bを含む他の全てのPA処理よりも顕著にp-Smad2を上方調節した。これは更に、内側PA骨格が形態及び内部動態を介して生物活性シグナル伝達に影響を及ぼし、TGF PA-a組織化体上により好ましく提示されるエピトープとの細胞受容体相互作用を増強するという仮説を支持した。次に、模倣PAナノ構造によるTGF-β1活性化の性質を研究するために、細胞を、各々がインビトロ及びインビボでTGF-βの3つのアイソフォーム全てを中和することが示されている汎TGF-β中和抗体、1D11を添加される、または添加されない、TGF PA-a、TGF PA-b、またはrhTGF-β1で処理した44~46。ウエスタンブロット分析は、1D11がp-Smad2の活性化においてTGF PA-a、TGF PA-b、及びrhTGF-β1を効果的に中和したことを明らかにした(図4e~f)。1D11の有無にかかわらずp-Smad2の活性化を比較すると、TGF PA-aに対する1D11の中和効果は統計的に有意であったが、TGF PA-bに対するその効果は有意ではなかった。これは、TGF PA-aがp-Smad2をTGF PA-bよりも上方調節したためである可能性が最も高い。これらの結果は、模倣TGF PA-aナノ構造が軟骨細胞における細胞内TGF-β1シグナル伝達を活性化したことを確認した。
【0122】
TGF PAナノ構造は、軟骨細胞におけるECM合成を増強する
関節軟骨における軟骨細胞の主な役割は、ECMの維持であるため1、8、軟骨性タンパク質の合成を、インビトロで3日間の10μMのPA処理後に分析した。ウエスタンブロットを使用して、コラーゲンII(Col2a1)、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)、及びアグレカン(Acan)のレベル、関節軟骨の全ての必須成分10、12、及び転写因子Sox9(図5a~b)を分析した。一般に、TGF PA-aは、他の全てのPA処理よりも顕著にECM合成を上方調節した。骨格PA、直鎖状のエピトープPA、及びペプチド単独の処理は、再び低い活性化を示し、PAナノ構造上の環状エピトープの提示が生物活性にとって重要であることを更に実証した。興味深いことに、TGF PA-aで処理された細胞は、天然rhTGF-β1タンパク質で処理された細胞よりも顕著に高いレベルのコラーゲンIIを有した。軟骨細胞シグナル伝達は、主に、インテグリン-コラーゲンII結合47、及びECMで隔絶された内因性TGF-β1の機械的活性化48などの物理的な細胞-ECM相互作用によって媒介され、TGF PA-aナノ構造の形態及び超分子動態が、受容体結合に対してより好ましく模倣エピトープを物理的に提示し得ることを示す。
【0123】
ウエスタンブロットからのこれらの結果を確認するために、免疫細胞化学(ICC)染色及び蛍光強度画像分析を、ウエスタンブロットと同じ条件下で処理された細胞で行った(図5c~d)。共焦点顕微鏡画像化の結果は、ウエスタンブロットの結果と一致し、模倣TGF PA-aが、天然rhTGF-β1よりも顕著に多くのコラーゲンII産生を誘導したことを明らかにした(図5c)。これらの結果は、TGF PA-aナノ構造が、溶液中の天然タンパク質と比較して、受容体結合のための最適な配向、密度、及び/または動的運動を有するエピトープを提示した可能性があることを示す。加えて、天然TGF-β1タンパク質は、インビボでその活性形態でわずか2~3分の半減期を有する49。したがって、PAナノ構造は、天然タンパク質に対して、エピトープ分解を遅らせ、活性化動態を改善した可能性がある。rhTGF-β1及びTGF PA-aの両方が、同様のレベルでアグレカン合成を顕著に増加させた。模倣ペプチド単独で処理した細胞は、いずれのタンパク質の上方調節をほとんど示さず、再び、ペプチド単独ではTGF-β1を模倣することができないことを示した。F-アクチンの染色はまた、rhTGF-β1及びTGF PA-aで処理された細胞が健全な軟骨細胞表現型を維持し、肥大を防いだことを明らかにし、これは、規則的な、丸いまたは楕円形の形態、及びコンパクトな細胞サイズによって証明された(図5c~d)。これらの結果は、TGF PA-aがECM合成を増強しただけでなく、より長いインビトロ培養期間にわたって肥大することなく成熟軟骨細胞表現型を維持したことも示した。
【0124】
三次元TGF PA足場は、軟骨細胞表現型を維持する
TGF-β1模倣PAナノ構造は、細胞内TGF-β1シグナル伝達及びECM合成を効果的に活性化したため、関節軟骨の構造及び機能における三次元ECM組織の重要な役割に起因して、三次元ゲルネットワークとしてのそれらの機能を調べるために、本明細書の実施形態の開発中に実験を行った。TGF PA-aは生物活性を示したため、試験は、骨格PA-a、TGF PA-a、及びlnTGF PA-aで構成されるヒドロゲルに焦点を当てた。PAヒドロゲルネットワークは、PA溶液をカルシウムイオンに曝露することによって調製された26。生物活性の違いがヒドロゲルの機械的特性の違いによって引き起こされないことを確認するために、走査型電子顕微鏡(SEM)及びレオロジーを行い、PAヒドロゲルがそれぞれ同様の形態及び粘弾性挙動を有することを実証した(図6a~d、24、表2)。3つのPAゲルは、同様の流動ひずみ及び弾性率を有し、それらがインビボで剪断ひずみと同様に挙動し得ることを示した。次に、軟骨細胞をPAゲル内に封入し、インビトロでそれらを3日間培養して、生体適合性を測定し、軟骨形成挙動を観察した。細胞は、封入プロセスに耐え、培養培地中の細胞溶解時にのみ放出される細胞質酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)のレベルによって測定した場合、高い生存率を維持した(図23)。封入された細胞の形態及び分布を、F-アクチンICC染色及び共焦点顕微鏡法を使用して調べた(図6e~g)。細胞の遊走またはクラスター化の増加は、変形性関節症、脱分化、及び軟骨形成能力の低下を示すため50~53、PAゲル内の軟骨細胞の表現型応答及び遊走応答を分析した。生存率に顕著な違いはなかったが、各PAゲルにおける細胞は顕著に異なって挙動した。同じ濃度の細胞が封入されているにもかかわらず、TGF PA-aゲルと比較して、大部分の骨格PA-a及びlnTGF PA-aゲル内で目に見える細胞ははるかに少なかった(図6e~g)。対照的に、TGF PA-aゲル中の細胞は、ゲル内に留まり、インビトロで3日間生存し、TGF PA-aヒドロゲルが、持続可能な微小環境のために必要な生物活性シグナルを提供したことを示した。更に、細胞は、コンパクトで楕円形の形態を示し、天然軟骨における軟骨形成挙動に類似したTGF PA-aゲル全体によく分散していた。これらの細胞-PA相互作用は、軟骨形成性TGF-β1応答を誘導することに加えて、我々のTGF-β1模倣PAナノ構造が、3次元ECM環境内で健全な軟骨細胞の表現型及び挙動を維持したことを示した。
【表2】
【0125】
実施例2
スラリー製剤及びインビボデータ
方法
PA/HAスラリー製剤
インビトロデータについて記載したように、PA溶液を2重量%で調製し、次いで様々な量の架橋ヒアルロン酸粒子と混合した。得られたスラリーを物理的に攪拌し、次いで15分間微量遠心分離した後、4℃で24時間保管して、HA粒子を完全に水和させた。スラリー材料を19ゲージの針を備えた1mLのシリンジに充填し、手術中に使用するまで氷上に保持した。蛍光標識PAは、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)の希釈骨格PA-aのC末端への共有結合機能化によって産生された。蛍光標識PA実験について、最終共組織化体比は、10mol%エピトープPA、88mol%骨格PA、及び2mol%TAMRA PAであった。
【0126】
レオロジー
測定は、25mm平行プレート固定具を備えたAnton Paar MCR302レオメータで行った。120μLのPA/HAハイブリッドスラリーを底板上に配置し、30μLの50mMのCaCl/75mMのNaClゲル化溶液を上部固定具上に配置した。固定具を10分間、0.5mmのギャップまで下げ、その間、0.1%の振動ひずみを10rad/sの角周波数で適用した。ギャップの高さを変化させて、通常の力を0Nに保った。次に、0.1%~100%のひずみで、10rad/sでひずみ掃引を行い、ゲルを破壊するひずみを測定した。
【0127】
ウサギ骨軟骨欠損モデル
この手順には、ニュージーランド白ウサギ(2.8~3.2kg)を使用した。手術前に、ウサギを手術部位にわたってクリップで留め、クロルヘキシジンスクラブで滅菌処理した。全てのウサギについて、膝蓋腱の外側面に3cmの曲線切開を行った。関節包及び滑膜は、関節の外側面にわたって切開された。我々の確立されたプロトコルに従って、各ウサギの内側顆に約3mmの深さの円形骨軟骨欠損(直径2~3mm)を両側に作製した。約30μLのPA/HAスラリーをシリンジから排出し、欠損空間に充填した。PA/HAスラリーで欠損部を充填した後、約30μLの滅菌50mMのCaCl、75mMのNaClゲル化溶液を各欠損部の上に滴加した。生理食塩水で関節を洗浄した後、滑膜及び関節包を連続パターンで4-0の吸収性縫合糸を使用して1層に閉じた。また、筋層及び皮下組織を4-0の吸収性縫合糸で閉じ、表皮下パターンで4-0または5-0の吸収性縫合糸で皮膚を閉じた。安楽死後、手術関節を採取し、肉眼的な外観をデジタル写真で記録した。次いで、帯のこを使用して、各群の手術した内側顆を、欠損部及びそれに関連する下部の軟骨下骨を含む小さな骨ブロックに切断した。骨ブロックを10%中性緩衝ホルマリンで固定し、その後、EDTA/スクロース脱灰溶液(5%スクロース中20%EDTA)を使用して脱灰した。脱灰後、カミソリの刃を使用して欠損部の中心を通してブロックを半分に切断し、両方の部分を同じパラフィンブロックに埋め込んだ。連続する5μm厚さの切片を調製し、H&Eで染色して、移植部位の一般的な形態を評価した。TissueGnostics顕微鏡を使用して、染色した切片(組織学)及び染色していない切片(蛍光)の両方を画像化した。
【0128】
結果
インビボでTGF模倣PAの生物活性を試験するために、TGF PA-aナノ繊維の溶液を架橋ヒアルロン酸(HA)粒子と混合して、軟骨欠損部に移植することができ、関節内の剪断力に耐えることができる堅牢な注射可能なスラリー製剤を作製した。このハイブリッド材料の様々な比率を、異なる量のHA(2~6重量%)と混合した2重量%のPA溶液を使用して試験した。ハイブリッドゲルを破砕するために必要な貯蔵弾性率及びひずみは、HAの濃度の増加に伴って増加した(図25)。PAゲル単独と比較して、ハイブリッドPA/HAスラリーは、破断するひずみが3~4倍高く、ハイブリッド材料の延性及び剪断に対する耐性の増加を強調した。高濃度のHAは、ゲルの剛性及び靭性を改善するが、それはまた、生理食塩水中の体積膨張の増加をもたらし、これは、移植後の材料の変位につながる可能性がある。したがって、機械的靭性と最小限の膨潤とのバランスをとるために、2重量%のPA+4重量%のHAスラリー製剤をインビボ研究に使用した。
【0129】
インビボで軟骨欠損部における材料保持を試験するために、ウサギの顆モデルにおいて、蛍光標識PAで、ハイブリッドスラリーを骨軟骨欠損部に移植した(図26)。PA/HAスラリー(ピンク色)は、移植後の欠損部にはっきりと見えて局在していた。手術の1日後及び2日後の関節の外植片は、頑丈な血餅が肉眼的に観察され、インプラント部位で明確な蛍光シグナルが検出されたため、欠損部におけるインプラントの良好な保持を示した。組織学的染色は、インプラントと周囲の骨及び軟骨組織との良好な統合を示し、これは、堅牢な軟骨再生にとって重要である。7日後、欠損部位は、組織学的スライスにおいて、肉眼的に良好な組織充填及び軟骨再生の初期段階を示した。PA材料から蛍光シグナルは検出されず、インプラントが組織再生プロセスを開始し、次いで予想通りに生分解を開始したことを示唆した。
【0130】
前述の詳細な説明及び付随する例は、単なる例示にすぎず、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、本開示の範囲は、専ら添付の特許請求の範囲及び等価物によって定義されることを理解されたい。
【0131】
本開示の実施形態に対する様々な変更及び修正は、当業者には明らかであろう。本開示の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成物、組成物、製剤、または使用方法に関連するもの含むがこれらに限定されない、そのような変更及び修正は、その趣旨及び範囲から逸脱することなく行われ得る。
【0132】
本明細書で参照される任意の特許及び刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0133】
参照文献
以下の参考文献(そのうちのいくつかは番号によって本明細書に引用される)は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
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【0134】
図1
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図16A-B】
図17A-B】
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図26
【配列表】
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【国際調査報告】