(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】3D印刷されたインプラントおよびインプラントの3D印刷のための方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/36 20210101AFI20240814BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240814BHJP
B22F 10/38 20210101ALI20240814BHJP
B22F 1/12 20220101ALI20240814BHJP
B22F 10/62 20210101ALI20240814BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240814BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240814BHJP
A61F 2/28 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
B22F10/36
B22F10/28
B22F10/38
B22F1/12
B22F10/62
B33Y10/00
B33Y80/00
A61F2/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505077
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 IB2022056607
(87)【国際公開番号】W WO2023007304
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham MA 02767-0350 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】マクナマラ・フィオナン・アーダハン
(72)【発明者】
【氏名】サイダ・ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ガーバー・デビッド
(72)【発明者】
【氏名】マクミラン・ロデリック
(72)【発明者】
【氏名】トロイ・パトリック・エイ
【テーマコード(参考)】
4C097
4K018
【Fターム(参考)】
4C097AA10
4C097BB01
4C097DD06
4C097DD09
4C097MM03
4C097MM07
4C097SC10
4K018AA06
4K018AA10
4K018AA14
4K018AA33
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA08
4K018BA17
4K018BB04
4K018FA24
4K018KA70
(57)【要約】
埋め込み型デバイスを作製する方法が、粉末床の上のビルド表面上に、複数の隣接するエネルギーピクセルを有するレーザエネルギーの照射を方向付けるステップであって、それによって埋め込み型デバイスの層を形成する、方向付けるステップを含む。方向付けるステップは、形成された層の全体が埋め込み型デバイスの少なくとも一部分を画定するように、層ごとに複数回繰り返される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み型デバイスを作製する方法であって、
粉末床の上のビルド表面上にレーザエネルギーの照射を方向付けることであって、それによって埋め込み型デバイスの層を形成し、前記レーザエネルギーの照射は、前記ビルド表面上の共通の境界を共有する隣接するエネルギーピクセルを含み、各ピクセルは、前記ビルド表面上で実質的に均一なそれぞれの出力密度を有する、方向付けることと、
前記形成された層の全体が前記埋め込み型デバイスの少なくとも一部分を画定するように、層ごとに複数回、前記方向付けるステップを繰り返すことと、を含む方法。
【請求項2】
前記繰り返すステップの後に、前記埋め込み型デバイスの前記少なくとも一部分が、50倍の倍率で基準面において観察可能な不規則なプロファイルを有する少なくとも1つの縁部を画定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記50倍の倍率は、光学顕微鏡法を使用して実行可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記埋め込み型デバイスは、整形外科用デバイスである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記埋め込み型デバイスは、脊椎固定デバイスである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方向付けるステップおよび前記繰り返すステップは、前記拡張可能な脊椎固定デバイスのそれぞれの終板および作動機構の層を形成することを含み、前記作動機構は、前記繰り返すステップの終了後に前記終板間の距離を拡張するように構成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記繰り返されるステップの終了後、前記埋め込み型デバイスは、約99.5パーセント~約100パーセントの範囲の印刷密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記繰り返されるステップの終了後、前記埋め込み型デバイスは、約32HRC~約40HRCの範囲の硬度を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザエネルギーの照射は、前記ビルド表面上のエネルギーピクセルの線アレイおよびエネルギーピクセルの面アレイのうちの少なくとも1つを含み、前記少なくとも1つのアレイ内の隣接するエネルギーピクセルは、前記ビルド表面上の共通の境界を共有し、各ピクセルは、前記ビルド表面上で実質的に均一なそれぞれの出力密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記繰り返される方向付けるステップのうちの少なくともいくつかの間に、前記それぞれの層は、前記埋め込み型デバイスの相互接続可能な構成要素の部分を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記相互接続可能な構成要素は、前記繰り返すステップのうちの少なくともいくつかの間に相互接続され、前記相互接続された構成要素は、マクロ構造、ミクロ構造、およびナノ構造のうちの少なくとも1つを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記相互接続された構成要素は、約10マイクロメートル(μm)未満のスケールで空間分解能および精度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記相互接続された構成要素は、前記埋め込み型デバイスを通る導管を集合的に画定する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記繰り返すステップの後に、前記形成された層の全体が、相互接続された構成要素を有する前記埋め込み型デバイスを画定する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記相互接続された構成要素のうちの少なくとも第1の構成要素は、埋め込み処置における前記埋め込み型デバイスの作動プロセス中に、前記相互接続された構成要素のうちの少なくとも第2の構成要素によって画定される相補的な表面との摺動接触界面を提供するように十分に平滑であるガイド表面を画定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記相互接続された構成要素は、前記埋め込み型デバイスを1つ以上の椎骨に固定するための展開可能な固定スパイクを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記粉末床は金属粉末を含有し、前記埋め込み型デバイスは金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記粉末床は、セラミック粉末をさらに含有し、前記繰り返すステップのうちの少なくともいくつかの間に、前記エネルギーピクセルは、前記埋め込み型デバイスの少なくとも1つの金属構成要素を形成し、同時に、前記埋め込み型デバイスの少なくとも1つのセラミック構成要素を形成し、前記繰り返すステップの終了後、前記少なくとも1つのセラミック構成要素は、前記少なくとも1つの金属構成要素の少なくとも一部分をコーティングするセラミックコーティングである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記セラミックコーティングは再吸収可能である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記セラミックコーティングはヒドロキシアパタイト(HA)を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記繰り返される方向付けるステップのうちの少なくともいくつかの間に、前記それぞれの層は、前記埋め込み型デバイスの表面またはその近傍に実質的に欠陥を持たないミクロ構造を構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記繰り返すステップの終了後、前記埋め込み型デバイスは、前記埋め込み型デバイスの表面またはその近傍にそれぞれが実質的に欠陥を持たない1つ以上のミクロ構造を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上のミクロ構造は、前記繰り返すステップの終了後にアルファマルテンサイトとなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上のミクロ構造は、ステンレス鋼、チタン-アルミニウム-バナジウム(TAV)合金、チタン-モリブデン合金、およびコバルト-クロム合金の群から選択される1つ以上の材料を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
骨形成を促進するように構成された表面仕上げ粗さを前記1つ以上のミクロ構造に提供するために、前記1つ以上のミクロ構造を表面仕上げすることをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記繰り返すステップの終了後に、前記埋め込み型デバイスを真空熱処理することをさらに含み、前記真空熱処理することは、前記埋め込み型デバイスの疲労性能を向上させる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記方向付けるステップおよび前記繰り返すステップは、前記繰り返すステップの終了後に、前記埋め込み型インプラントの前記少なくとも一部分が目標の弾性率を有するように実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記方向付けるステップおよび前記繰り返すステップは、前記繰り返すステップの終了後に、前記埋め込み型インプラントの前記少なくとも一部分の第1の個別領域が第1の弾性率を有し、前記埋め込み型インプラントの前記少なくとも一部分の第2の個別領域が前記第1の個別領域とは異なる第2の弾性率を有するように実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記埋め込み型デバイスは椎体置換デバイスである、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記方向付けるステップおよび前記繰り返すステップは、椎体切除術の後に行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記繰り返される方向付けるステップのうちの少なくとも1つの間に、前記それぞれの層上に電子回路を印刷することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記電子回路を印刷するステップは、前記層上に基板を堆積させ、前記基板上に半導体材料および伝導性トレースをさらに堆積させることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記電子回路は、1つ以上のコンピュータプログラムを実行するように構成されたスマート電子機器を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記電子回路は、加速度計、歪みゲージ、近接センサ、PHセンサ、熱センサ、および熱伝導体のうちの1つまたは複数を備える、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記繰り返すステップの後に、前記形成された層の全体が前記埋め込み型デバイスを画定し、前記埋め込み型デバイスは、骨移植片を送達および受容するための空隙を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記繰り返すステップの後に、前記形成された層の全体が前記埋め込み型デバイスを画定し、前記埋め込み型デバイスは機能性ねじを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
インプラントであって、
第1の方向、第2の方向、および第3の方向に沿った寸法を画定する本体であって、前記第1の方向、前記第2の方向、および前記第3の方向は、互いに実質的に垂直である、本体を備え、
前記本体は、50倍の倍率で基準面において観察可能なセグメントを含む階段状のプロファイルを有する少なくとも1つの縁部を画定し、前記少なくとも1つの縁部は、前記第1の方向、前記第2の方向、および前記第3の方向のうちの少なくとも1つに対して湾曲しているか、または斜めに配向されているか、あるいはその両方である、インプラント。
【請求項38】
前記階段状のプロファイルは、18倍未満の倍率で実質的に観察できない、請求項37に記載のインプラント。
【請求項39】
前記本体は、前記第3の方向に沿って連続して離間された複数の層を備え、前記複数の層のうちの少なくとも2つの隣接する層は、互いに対して階段状の幾何形状を有し、前記階段状の幾何形状は、50倍の倍率で観察可能である、請求項37に記載のインプラント。
【請求項40】
前記本体の大部分は、本質的に溶融粒子からなる材料から構成されている、請求項37に記載のインプラント。
【請求項41】
前記溶融粒子は融解されたものである、請求項40に記載のインプラント。
【請求項42】
前記溶融粒子は、前記溶融粒子の大部分の間に間隙が延在するように一緒に融解されたものである、請求項40に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラントを作製するための付加製造プロセスに関し、より詳細には、インプラントの連続層を作成するためにレーザエネルギーの照射を利用する付加製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
選択的レーザ焼結または溶融による付加製造は、粉末層の逐次溶融を使用して3次元(3D)物体を作成するプロセスを意味する。最初に、少なくとも1つの粉末層が粉末床を形成するように、薄い粉末層が作業台(「ビルドプラットフォーム」と呼ばれることが多い)上に分配される。次いで、粉末層の選択されたエリアが、指向性エネルギー源、典型的にはレーザビームへの露出によって溶融される。したがって、レーザビームの露光パターンは、3次元物体の断面を形成する。部品は、垂直方向に沿って層ごとに積み重ねられたそのように形成された断面の連続的な溶融によってビルドされ、各層の溶融の間に、ビルドプラットフォームが下向きに増分され、粉末の新しい層がビルド表面上に堆積される。レーザ粉末溶融付加製造の一般的なプロセスは、選択的レーザ溶融(SLM)、選択的レーザ焼結(SLS)、および直接金属レーザ焼結(DMLS)を含むいくつかの用語によって知られるようになっており、これらの用語は、レーザ粉末床溶融結合(L-PBF)という用語によって包含される。これらのプロセスは、様々な金属、セラミック、ポリマー、合金、および複合材料に適用されてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の一実施形態によれば、埋め込み型デバイスを作製する方法は、粉末床の上のビルド表面上にレーザエネルギーの照射を方向付け、それによって埋め込み型デバイスの層を形成することを含む。レーザエネルギーの照射は、ビルド表面上の共通の境界を共有する隣接するエネルギーピクセルを含む。各ピクセルは、ビルド表面上で実質的に均一なそれぞれの出力密度を有する。方向付けるステップは、形成された層の全体が埋め込み型デバイスの少なくとも一部分を画定するように、層ごとに複数回繰り返される。
【0004】
本開示の別の実施形態によれば、インプラントは、互いに実質的に垂直な第1の方向、第2の方向、および第3の方向に沿った寸法を画定する本体を有する。本体は、50倍の倍率で基準面において観察可能なセグメントを含む階段状のプロファイルを有する少なくとも1つの縁部を画定する。当該少なくとも1つの縁部は、第1の方向、第2の方向、および第3の方向のうちの少なくとも1つに対して湾曲しているか、または斜めに配向されている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
前述の概要および本出願の例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解されるであろう。本出願の特徴を例示する目的で、例示的な実施形態を図面に示す。しかし、本出願は、図示される正確な配置および手段に限定されないことを理解すべきである。図面のうち:
【
図1】インプラントの付加製造のための従来技術の装置の概略図である。
【
図2】
図1に示される装置の粉末床のビルド表面上にレーザエネルギーの線照射を送達する従来技術のレーザ線光源の概略図である。
【
図3A】レーザエネルギーピクセルから構成されるレーザエネルギーの例示的な従来技術の照射の概略図である。
図3Aは、矩形レーザエネルギーピクセルの線形ピクセルアレイを示し、
図3Bは、複数の行に配列された矩形レーザエネルギーピクセルのエリアピクセルアレイを示す。
【
図3B】レーザエネルギーピクセルから構成されるレーザエネルギーの例示的な従来技術の照射の概略図である。
図3Aは、矩形レーザエネルギーピクセルの線形ピクセルアレイを示し、
図3Bは、複数の行に配列された矩形レーザエネルギーピクセルのエリアピクセルアレイを示す。
【
図4A】粉末材料の層に送達される、
図2に示されるレーザエネルギーの従来技術の線照射の概略図であり、層のいくつかのエリアはレーザエネルギーの照射によって選択的に溶融されるが、他のエリアは溶融されないままである。
【
図4B】粉末材料の層に送達されるレーザエネルギーの従来技術の面照射の概略図であり、層のいくつかのエリアは面照射によって選択的に溶融され、他のエリアは溶融されないままである。
【
図5A】様々な形状のレーザエネルギーを層上に照射する複数の従来技術のレーザ源に露出された粉末材料の層の概略図である。
【
図5B】様々な形状のレーザエネルギーを層上に照射する複数の従来技術のレーザ源に露出された粉末材料の層の概略図である。
【
図5C】様々な形状のレーザエネルギーを層上に照射する複数の従来技術のレーザ源に露出された粉末材料の層の概略図である。
【
図5D】本開示の実施形態による、層上にレーザエネルギーの照射を送達するレーザ源に露出された粉末材料の層の概略図であり、レーザ源はまた、層上に付加的材料を堆積させるための堆積型プリントヘッドを含む。
【
図6】2つの異なる粉末材料から構成された粉末材料の層に送達されるレーザエネルギーの従来技術の照射の概略図である。
【
図7A】本開示のある実施形態による、粉末材料の層への
図2に図示されるレーザエネルギーの線照射の送達によって構築される、多構成要素インプラントの層の斜視図である。
【
図7B】
図7Aの破線領域7Bによって示された多構成要素インプラントの一部分の拡大平面図である。
【
図7C】
図7Bの破線領域7Cによって示された多構成要素インプラントの下位部分のさらなる拡大平面図である。
【
図8A】本開示の実施形態によるレーザ粉末床溶融結合(L-PBF)を介して製造された中実立方体試料の選択部分を50倍の倍率で示す写真画像である。
【
図8B】700倍の倍率で示された、
図8Aの中実立方体試料の別の部分の断面画像である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、本開示の一部を形成する、添付図面および実施例に関連する以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。本開示は、本明細書に説明および/または図示される特定の装置、方法、用途、条件またはパラメータに限定されるものではなく、本明細書で使用される専門用語は実施例を用いて具体的な実施形態を説明する目的のためだけのものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。また、添付の請求項を含む明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は複数を含み、特定の数値への言及は、文脈により明確に別様に指示されない限り、少なくともこの特定の値を含む。
【0007】
「複数」という用語は、本明細書で使用される場合、1つよりも多いことを意味する。値の範囲が表されている場合、別の実施形態においては、ある特定の値から、および/または他の特定の値までが含まれる。同様に、先行する「約」によって値が近似の形式で表現された場合、その特定値により別の実施形態が形成されることが理解されるであろう。範囲はいずれも境界値を含み、組み合わせが可能である。
【0008】
寸法、角度、比率、およびその他の形状に関して本明細書で使用される場合、「略」、「約」、および「実質的に」という用語は、製造公差を考慮したものである。さらに、「略」、「約」、および「実質的に」という用語は、規定の寸法、比率、または角度よりも10%大きいものまたは小さいものを含むことができる。さらに、「略」、「約」、および「実質的に」という用語は、規定された特定の値にも等しく適用され得る。
【0009】
第1、第2などの用語は、様々な要素を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素を別の要素と区別するために使用される。例えば、本明細書に開示される実施形態の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。
【0010】
本明細書に開示される実施形態は、埋め込み型デバイス(本明細書では「インプラント」とも呼ばれる)の付加製造のための技法に関し、特に、粉末床の上のビルド表面上へのレーザエネルギーの少なくとも1回の照射を使用して、粉末の選択領域を1つまたは複数の中実モノリシック埋め込み型構築物に溶融するか、焼結するか、あるいは別様に変換する技法に関する。本明細書において「レーザ粉末床溶融結合」(L-PBF)という用語によって包含されるこれらの技法は、還元的製造プロセスよりも少ない材料廃棄物で、複雑な形状を有するものを含むインプラントの迅速な製造を提供することができる。これらの技法はまた、製造されたインプラントの材料特性の微細な制御を提供することができる。
【0011】
次に
図1~
図6を参照して、本開示の付加製造技法を実行するための様々な例示的なシステム、デバイス、および手段性について説明する。これらの特徴の多くは、次の参考文献、すなわち、El-Dasherの名義で2020年5月7日に公開された米国特許出願公開第2020/0139487(A1)号(「参考文献’487号」)(Lawrence Livermore National Security LLC(Livermore,California,米国)によって所有されているものとして刊行物の表面に掲載されている)、2017年10月26日にBullerの名義で公開された米国特許出願公開第2017/0304894(A1)号(「参考文献’894号」)、2020年6月23日にBullerらの名義で発行された米国特許第10,688,722号(以下、「参考文献’722号」)、2019年10月8日にBullerらの名義で発行された米国特許第10,434,573号(以下、「参考文献’573号」)、2020年4月7日にBullerらの名義で発行された米国特許第10,611,092号(以下、「参考文献’092号」)、2021年1月12日にSymeonidisらの名義で発行された米国特許第10,888,925号(以下、「参考文献’925号」)(参考文献’894号、参考文献’722号、参考文献’573号、参考文献’092号、および参考文献’925号は、Velo3D,Inc.(Campbell,California,米国)によって所有されているものとして刊行物の表面に掲載されている)、2020年9月1日にSullivanらの名義で発行された米国特許第10,759,084号(「参考文献’084号」)(Oceanit Laboratories Inc.(Honolulu,Hawaii,米国)によって所有されているものとして特許の表面に掲載されている)、2021年12月29日にFeldmannらの名義で発行された米国特許第10,875,094号(以下、「参考文献’094号」)、2021年2月16日にFeldmannらの名義で発行された米国特許第10,919,090号(以下、「参考文献’090号」)(参考文献’094号と参考文献’090号は共に、VulcanForms Inc.(Burlington,Massachusetts,米国)によって所有されているものとして特許の表面に掲載されている)、2019年9月3日にDallarosaらの名義で発行された米国特許第10,399,183号(「参考文献’183号」)(IPG Photonics Corp.(Oxford,Massachusetts,米国)によって所有されているものとして特許の表面に掲載されている)、2017年5月25日にDeMuthらの名義で公開された米国特許出願公開第2017/0144224(A1)号(「参考文献’224号」)(Seurat Technologies,Inc.(Mountain View,California,米国)によって所有されているものとして刊行物の表面に掲載されている)、および2019年7月25日にStengelらの名義で公開された国際公開第2019/141381(A1)号(「参考文献’381号」)(SLM Solutions Group AG(Lubeck,Germany)によって所有されているものとして刊行物の表面に掲載されている)により完全に説明されている。これらの参考文献のそれぞれの開示全体は、それらの全体が本明細書に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、前述のシステム、デバイス、および手段性は、本開示のインプラントを作製するための付加製造技法のために利用され得る、ハードウェア、プロセス、方法、および技法の非限定的な例として提供されることを理解されたい。レーザエネルギーを用いて構成粉末材料を中実インプラント構造体へと溶融する他のシステム、デバイス、および手段性も、本開示の範囲内にある。
【0012】
図1を参照すると、本開示の実施形態による付加製造のための例示的な装置100が、チャンバ2内に配置された粉末床4を有する作業台5を含む。チャンバ2は、粉末床4の上部表面7(「ビルド表面」7とも呼ばれる)がレーザ源1に露出されることを可能にする窓3を含む。レーザ源1、またはレーザ源の光路内に位置付けられた他の構成要素は、粉末床に対するレーザビーム照射の位置を変更するための手段、例えば、チャンバの内部または外部に位置付けられ得る1つまたは複数のミラーガルバノメータを含み得るガントリシステムおよび/またはミラーベースシステムを含む。粉末床4と交差するレーザエネルギーを変調および/または成形する手段は、ビーム変調デバイスおよび光弁(例えば、格子光弁および平面光弁)を含む。レーザ源からの制御されたエネルギー送達は、局所的加熱およびその後の冷却時に、粉末の最上層(本明細書では「ビルド層」とも呼ばれる)内での選択的溶融を可能にする。次に、作業台が第1の方向すなわち垂直方向Zに沿って下降され、新しい粉末層が粉末床の上部に分配される。ここで新しい粉末層によって画定されるビルド表面7は、局所的加熱およびその後の冷却時に粉末層内でさらに選択的に溶融するためにレーザ源1に露出される。これらのステップ(例えば、作業台を下降すること、粉末床の上に新しい粉末層を分配すること、および新しい粉末層をレーザ源1に露出すること)は、必要に応じて層ごとに繰り返される。このようにして、3次元(3D)部品が、複数の連続的に溶融された断面として層ごとに製造(すなわち、付加製造)される。断面は平面的であってもよいが、平面的である必要はないことが理解され得る。この例示的な実施形態では、粉末層は、作業台領域において垂直に作動される粉末カートリッジ6から粉末を散布するスプレッダ機構8を含むリコータシステムを用いて形成される。粉末層形成のための代替的な手段性および方法には、ノズル機構による粉末の堆積、インクジェット堆積、電気流体力学的堆積、または超音波堆積が含まれ得る。
【0013】
ここで
図2を参照すると、レーザ源1は、粉末層の1つ以上の別個の領域内の粉末粒子を選択的に溶融するために、ビルド表面7(すなわち、粉末層の上部表面)上にレーザエネルギーの照射を送達するように構成されている。本実施形態では、レーザ源1は、レーザエネルギーの線照射22を送達するように構成される。しかしながら、図示される線照射22は、本明細書に開示されるレーザ源によって生成可能なレーザエネルギーの照射のタイプの非限定的な例を表すことを理解されたい。レーザ源1は、以下により詳細に説明されるように、面照射23、ドット形状照射12、または前述のものの種々の組み合わせ等のレーザエネルギーの種々の他の照射を送達するように構成されてもよい。
【0014】
図2に示される実施形態を引き続き参照すると、レーザ源1は、線照射22のエネルギー強度プロファイル、およびビルド表面7に沿った線照射22の空間的移動(例えば、走査方向および走査速度)を含む線照射22のパラメータを制御するように構成された制御機構を含む。線照射22の強度プロファイルは、製造される部品の所望の特性(例えば、非限定的な例として、材料組成、充填密度、弾性率)に応じて必要に応じて調整され得る。例えば、線照射22の強度プロファイルは、この例では
図1に示される第1の方向Zに実質的に垂直な第2の方向Yによって示される線伸長の方向に沿って変調され得る。追加的にあるいは代替的に、線照射22の強度プロファイルは、伸長方向Yと、この例では第1の方向および第2の方向Yに実質的に垂直な第3の方向Xによって示される横断方向との両方に沿って変調され得る。線照射22の強度プロファイルは、必要に応じて(例えば、伸長方向Yに沿っておよび/または横断方向Xに沿って)、単一層を溶融しながら、実質的に均一と不均一との間で変化され得る。例えば、強度のパラメータは、線照射22の実質的に全体がビルド表面7上の下にある粉末の局所的な溶融を引き起こすように選定され得る。代替的に、強度のパラメータは、線照射22の1つ以上の領域が下にある粉末の局所的な溶融を引き起こす一方で、線照射22の1つ以上の他の領域が溶融閾値未満の強度を有するように選択されてもよく、その結果、下にある粉末はこれらの他の領域(複数可)で溶融されず、したがって線照射22の分離されたエリア内で粉末の選択的溶融が達成される。線照射の強度プロファイル(複数可)は、参考文献’090号においてより完全に説明されるように適合され得ることを理解されたい。
【0015】
レーザ源1の制御機構は、線照射22の強度プロファイルを調整するかあるいは別様に変調するために、1つ以上の種々の制御デバイスを採用し得る。非限定的な例として、そのような制御デバイスは、線に沿って強度を変調するための格子光弁(GLV)、または、線に沿って、また線を横切って強度を変調するための平面光弁(PLV)などの光弁を含むことができる。レーザエネルギーの一部分のみが、所望の空間パターンをなして媒体を透過し、ビルド表面に入射するようにするため、レーザを局所的に調整可能な光透過率を有する媒体と交差させるなど、空間光変調の他の手段が採用されてもよい。
【0016】
次に
図3A~
図3Bを参照して、粉末床粒子を溶融するためのレーザエネルギーの照射の例を説明する。特に、レーザエネルギーの照射は、レーザエネルギーピクセルの様々なアレイ30から構成され得る。これらのレーザエネルギーピクセルの態様は、レーザエネルギーの照射の強度を制御するために、個別にかつ/または集合的に制御され得る。
【0017】
ここで
図3Aを参照すると、線照射22の強度を制御するための1つのそのような例示的な実施形態が、矩形レーザエネルギーピクセル31~38の線アレイ30を採用することを含むことができ、ピクセル31~38は組み合わされて線照射22を画定する。このようにして、線照射22は、線伸長方向Yに沿って互いに隣接して配列された複数の個々のレーザエネルギーピクセルを含むことができる。
図3Aは、説明のために8個のレーザエネルギーピクセル31~38を示しているが、線アレイ30は、10個を超えるピクセル、100個を超えるピクセル、および1000個を超えるピクセルを含むことができることを理解されたい。線アレイ30内の隣接するピクセル31~38は、ビルド表面7上で互いに共通の境界を共有することができ、それにより、各ピクセルがオンにされたときに出力レベル(強度)が線照射22に沿って実質的に均一になる。
【0018】
任意の単一ピクセルにわたる出力密度は、ピクセルがオンにされたときにそのピクセルが正方形または「シルクハット」形のエネルギープロファイルを有するように、実質的に均一であり得る。レーザエネルギーピクセル31~38は、個別に制御されるそれぞれの出力レベルを有することができ、それぞれ独立してオンまたはオフにされる(すなわち、オン状態とオフ状態との間で反復される)ことができる。他の実施形態では、任意の単一ピクセルにわたる出力密度は、任意選択で、そのピクセルがオンにされたときに種々の他のエネルギープロファイルに従って変動することができる。非限定的な例として、参考文献’094号においてより完全に説明されているものなど、レーザエネルギーピクセル31~38を提供し、それらの強度を変調するための様々な手段および手段性が提供され得ることを理解されたい。
【0019】
次に
図3Bを参照すると、別の例示的な実施形態では、レーザエネルギーの照射23は、レーザエネルギーピクセル31~41の面アレイ30を使用することができ、これらのピクセルは、上述したように長方形とすることができる。示されるように、面アレイ30は、ピクセルの複数の行R1、R2を有するピクセルグリッドを含むことができる。上記のように、面アレイ30内のピクセルは、その中の様々なピクセルがオン状態とオフ状態との間で反復され得るように、個別に制御可能であり得る(オフ状態は、
図3Bにおいて破線ピクセル境界によって示される)。レーザエネルギーピクセルのアレイの様々な特徴が必要に応じて適合され得ることを理解されたい。
【0020】
ビルド表面上へのレーザエネルギーの線照射を方向付ける、および/またはその強度を変調するためのさらに他の手段が、本開示の範囲内にあることを理解されたい。
【0021】
次に
図4A~
図4Bを参照すると、線照射22(
図4A)および面照射23(
図4B)を含む上述の照射に適用される強度プロファイル、走査速度、および/または走査方向はそれぞれ、ビルド表面7上に所望の空間的および時間的強度パターンを作成するために必要に応じて同時に変調され得ることも理解されたい。例えば、線照射22および面照射23の強度プロファイルは、溶融エリア43の外形がプロセスによって制御されるだけでなく、溶融エリア43および非溶融エリア44の任意の所望のパターンが粉末層内に作成され得るように変調され得る。照射22、23の走査(すなわち、並進)は、均一な速度で行われる必要はなく、任意選択で、非限定的な例として、層の走査中に前後に交互に変わる経路など、ビルド表面7にわたる様々な経路に従うことができる。照射22、23は、例えば、非限定的な例として、参考文献’894号および参考文献’090号により完全に説明されているものなど、様々な速度で様々な経路に沿って走査されてよい。
【0022】
次に
図5A~
図5Dを参照すると、付加製造装置は、レーザ源1の様々な組合せを使用することができ、レーザ源1は、ビルド層内の粉末のそれぞれの領域を溶融するために同時にかつ/または順次に動作することができる。例えば、
図5Aに示されるように、線照射22が互いに平行になるように、2つの線照射22のレーザ光源1が利用され得る。このような各レーザ源1は、ビルド層上で独立して制御されてもよい。
図5Bに示されるように、線照射22のレーザ源1と面照射23のレーザ源1は、それらの伸長方向が、垂直配向等で、相互から角度オフセットされるように、一緒に利用され得るが、他の角度オフセットも本開示の範囲内にある。
図5Cに示されるように、線照射22のレーザ源1は、ビルド表面7上にドット形状照射12を送達するレーザ源10と共に利用され得る。
図5Dに示されるように、追加の実施形態では、線照射22のレーザ源1が堆積3Dプリントヘッド18と共に利用されてもよく、これらは、ビルド表面上で順次的にかつ/または同時に動作することができる(ただし、ビルド表面7の同じ領域で同時に動作しないことが好ましい)。この実施形態では、堆積3Dプリントヘッド18は、以下でより詳細に説明されるように、ビルド層上に回路または他の電子部品を印刷するために利用され得る。複数のレーザ源1の前述の組み合わせは、必要に応じて調整され得ることを理解されたい。例えば、
図5A~
図5Dに示される線照射22のレーザ源のいずれかは、面照射23のレーザ源と置換されてもよく、逆もまた同様である。
【0023】
次に
図6を参照すると、付加製造装置は、2つ以上の異なる材料から構成される部品を製造するように適合され得る。そのような実施形態では、粉末床4は、異なる溶融温度を有し得る粉末材料P1および粉末材料P2などの少なくとも2つの材料の空間配列を含むビルド表面61の構築などのために、異なる材料組成を有する粉末を含有し得る。図示の例では、ビルド表面61は、粉末材料P1からなるエリア64、65、67と、粉末材料P2からなるエリア63、66と、を有する。エリア63~67は、少なくとも1つのレーザ源1で走査され、レーザ源1は、この例では、ビルド表面7上に線照射22を送達するように示されている。他の実施形態では、少なくとも1つのレーザ源1は、面照射23、ドット形状照射12、またはレーザエネルギーの照射の種々の組み合わせを送達することができる。所与の出力および走査速度でのレーザエネルギー源への露出は、粉末材料P1、P2の両方ではなく一方を溶融させることができる。図示のように、線照射22は、正のX方向にビルド表面7を走査することができる。エリア66および67を含む、線照射22の左側の図示されたビルド表面7は、既にレーザに曝露されているが、粉末材料P2からなるエリア66のみが溶融され、粉末材料P1からなるエリア67は、この露出によって溶融されることがなかった。エリア63および64を含む線照射22の右側のビルド表面7の部分は、まだレーザに露出されておらず、したがって、図示されたどの点においても溶融されていない。このエリアがレーザに露出されると、再び粉末材料P2からなるエリア63のみが溶融され、粉末材料P1からなるエリア64は溶融されないままである。
【0024】
次に
図7Aを参照すると、本明細書に記載の付加製造技法による製造の中間ステップ中の多構成要素インプラント50の例が示されている。この例におけるレーザエネルギーの図示された照射は、単一の線照射22であるが、上述のレーザエネルギーの照射12、22、23のうちの任意のもの(それらの組み合わせを含む)が利用され得ることが理解されるべきである。図示されたインプラント50は、椎間インプラント、特に椎間脊椎固定インプラント(「脊椎固定ケージ」とも呼ばれる)であり、インプラントが折り畳まれた構成にある間に、隣接する椎体間の椎間腔に挿入可能である。挿入後、インプラント50は、圧潰構成から拡張構成へと頭尾方向に沿って拡張するように構成され、拡張構成において、インプラントの上位および下位終板52、54は、それぞれの上位椎体および下位椎体に係合する。したがって、図示されたインプラント50は、頭尾方向に沿って終板52、54間の距離を増加させるための拡張機構を含む。図示のように、拡張機構は、膨張を始動させるように駆動可能なアクチュエータ56を含むことができる。図示される実施形態の拡張機構はまた、終板52、54によって画定される相補的なガイド表面64に沿って摺動するように構成された摺動表面62を有する一対の拡張ウェッジ58、60を含む。アクチュエータ56は、ねじ山68を画定する第1のねじ山付き部分66およびねじ山72を画定する第2のねじ山付き部分70等の1つ以上のねじ山付き部分を有するシャフトであり得る。多構成要素インプラント50は、それぞれの構成要素がそれらの相対位置にある状態で、層ごとに製造され得る。そのような構築を容易にするために、装置100は、それぞれの粉末組成物を各ビルド層に対するそれらの相対位置に堆積させる多軸粉末堆積ヘッドを含むことができる。そのような実施形態では、線照射22は、ビルド表面上に方向付けられ(すなわち、走査され)、かつ/または必要に応じて変調されて、別個の構成要素がビルド層内で一緒に溶融することを防止することができる。インターフェースおよび/または相互接続された構成要素は、約10μm未満のスケールで空間分解能および精度(およびギャップサイズ)を有し得ることを理解されたい。
【0025】
次に
図7B~
図7Cを参照すると、インプラント50の層を形成するための線照射22および/または面照射23の使用により、水平面(すなわち、X-Y平面)で見たインプラント50の縁部80、特に、丸みを帯びているか、あるいは伸長方向Yもしくは横断方向Xに対して斜角で延在する縁部80は、少なくとも、例えば20倍~200倍の範囲の倍率を含めて50倍以上の倍率で見た場合に、従来式で形成されたインプラントのものと比較して、ギザギザの、階段状の、ピクセル様の、または他の不規則な非平滑プロファイルを有する傾向がある。例示目的のために、
図7B~
図7Cは、直線セクション82、84を含むような不規則な非平滑プロファイルを示すが、不規則なプロファイルは、丸みを帯びた部分(隣接する溶融材料に付着された非溶融粉末粒子によって画定されるような)または他のミクロ形状特徴部を有することができる。さらに、層ごとの形成プロセスに起因して、インプラント50の縁部、特に、丸みを帯びているか、あるいは垂直方向Zおよび横断方向Xに対して斜角で延在する縁部も、少なくとも、50倍以上の倍率、例えば20倍~200倍の範囲の倍率で見た場合に、同様の不規則な/階段状のプロファイルを示す。いくつかの実施形態では、丸みを帯びた縁部または斜めの縁部のそのような不規則な/階段状のプロファイルは、約18倍未満の倍率では観察できない場合がある。
【0026】
次に、埋め込み型デバイス(本明細書では「インプラント」とも呼ばれる)を作製する例示的な方法について説明する。以下の例示的な方法は、非限定的な例示的な方法として提供されることを理解されたい。したがって、以下に具体的に記載されない他の方法も、本開示の範囲内にあり得る。
【0027】
インプラントを作製する方法は、一例によれば、粉末床の上のビルド表面にレーザエネルギーの線照射および/またはレーザエネルギーの面照射を方向付けることであって、それによって、インプラントの層を形成するように粉末の粒子を互いに溶融する、方向付けることを含む。線照射および/または面照射は、任意選択で、その中の隣接するエネルギーピクセルがビルド表面上で共通の境界を共有し、各ピクセルがビルド表面上で実質的に均一であるそれぞれの出力密度を有するように構成されたエネルギーピクセルのアレイであり得る。この例示的な方法は、形成された層の全体がインプラントの少なくとも一部分を画定するように、層ごとに複数回、方向付けるステップを繰り返すステップを含む。繰り返すステップは、繰り返すステップの最後の1つが終了した後にインプラントの全体が形成されるまで実行され得る。
【0028】
各繰り返すステップは、粉末床4を下降させ、スプレッダ機構8などを用いて、前に形成された層の上に粉末の新しいビルド層を広げることを含む。繰り返すステップの終了時に、未溶融粉末粒子が、例えば1つ以上の真空ノズルを介して除去され得る。
【0029】
上述したように、繰り返すステップの終了時に形成されるインプラントは、50倍以上の倍率で見たときに水平基準平面および/または垂直基準平面において観察可能な不規則な/階段状のプロファイルを画定する縁部を有する。拡大は、非限定的な例として、光学顕微鏡法を使用して行うことができる。
【0030】
これらの例示的な方法およびステップに従って形成されるインプラントは、非限定的な例として、椎間インプラント(例えば、拡張可能な脊椎固定ケージ)、椎体置換(VBR)インプラント、または骨プレート固定デバイス(例えば、頸椎インプラント)などの整形外科インプラントであり得る。骨プレート(例えば、剛性プレートおよび関節動作可能な相互接続リンク型プレート)、骨アンカー(例えば、骨ねじ)、アンカーヘッド、脊椎ロッド、ガイドワイヤ(例えば、Kワイヤ)、剛性縫合糸アンカー、縫合ハブ、再建関節、プラットフォーム、髄内釘、合成骨移植片などを含むがこれらに限定されない、多数の他のタイプの整形外科インプラントが、本明細書に記載の付加製造プロセスに従って製造され得ることを理解されたい。さらに、本明細書で説明される付加製造プロセスは、非限定的な例として、挿入器具、開創器、ガイドチャネル、トライアルスペーサ、組織切断部材、および骨移植片送達デバイスなどの、埋め込み処置中の支援のための器具を製造するために利用され得ることを理解されたい。本明細書のインプラントは、骨組織(皮質および/または海綿質組織を含む)および軟組織(例えば、筋肉、腱、靭帯、器官)における使用のために構成され得る。事実上、任意のタイプの剛性インプラントまたは剛性構成要素を有するインプラントが、本明細書に説明される付加製造プロセスに従って製造され得る。
【0031】
例えば、インプラントタイプに基づいて、ビルド層のうちの1つ以上は、インプラントの別個の構成要素を含むことができ、構成要素は、ビルド層内でかつ/または複数の層にわたって相互接続され得る。別個の構成要素がビルド層内で相互接続される場合、それぞれの繰り返すステップは、以下でより詳細に説明されるように、構成要素、または少なくともその層ごとの部分を効果的に相互接続するものとして特徴付けられ得る。
【0032】
本明細書に記載の方法は、マクロ構造(例えば、1mm~200mm以上の寸法)、ミクロ構造(例えば、1マイクロメートル(μm)~1000マイクロメートル(μm)の寸法)、およびナノ構造(例えば、100μm未満の寸法)を有する構成要素の層内相互接続を可能にすることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態では、相互接続された構成要素は、約10μm未満のスケールで空間分解能および精度を有する。さらなる実施形態では、ナノ構造は、1つ以上のそれぞれのビルド層内などの粉末床に追加され得る。そのような実施形態では、ビルド層は、粉末ベース材料と、少なくとも1つの寸法が1~100nmの範囲であるカーボンナノチューブ(CNT)またはナノ粒子などのナノ構造を含むかあるいはそれからなる第2の材料と、を含有し得る。そのようなナノ構造は、粉末のベース材料と材料組成が異なる必要はないが、ナノ粒子は、それらのサイズに起因して、抑制された溶融/焼結温度を有し得ることを理解されたい。
【0033】
例示的な構造体および方法のいくつかの実施形態では、層内構造体または多層構造体は、構造体の少なくとも第2の相互接続された構成要素によって画定される摺動表面などの相補的な移動表面との摺動接触界面を提供するのに十分に滑らかなガイド表面を画定する構造体の第1の相互接続された構成要素を含むことができる。摺動接触界面は、非限定的な例として、拡張可能な固定ケージの拡張プロセスなどの、埋め込み処置中のインプラントの作動プロセスを容易にし得る。このようにして、そのような相補的なガイド/移動表面は、非限定的な例として、アクチュエータ、拡張部材、固定および/または保持部材(例えば、椎骨などの隣接する組織に係合するための展開可能なスパイクおよび/またはバーブ)、および/または係止部材など、インプラントの様々な可動構成要素上に画定され得る。拡張可能な固定ケージを伴うもの等のいくつかのそのような実施形態では、相互接続された可動構成要素は、終板の一方または両方内に画定されたガイド溝またはチャネルに沿って摺動するように構成された部分を有する拡張ウェッジを含むことができる。さらなるそのような実施形態では、相互接続された可動構成要素は、非限定的な例として、拡張ウェッジのそれぞれのボア内の雌ねじと噛み合うように構成されたアクチュエータ上の雄ねじなどの嵌合ねじを含むことができる。さらに追加のそのような実施形態では、相互接続された可動構成要素は、非限定的な例として、アクチュエータおよび/または拡張部材(例えば、拡張ウェッジ)の位置を固定するために展開可能であり、それによって、固定ケージの拡張された高さを固定するロックピンなどのロック部材を含むことができる。本明細書の構造および方法のいくつかの実施形態では、相互接続された可動構成要素は、未溶融粉末のビルドおよび除去の終了時に、補助的な表面仕上げプロセスを必要としないことを含めて、機能的または少なくとも擬似機能的であり得ることを理解されたい。
【0034】
それに加えて、あるいはそれに代わって、層内構築物または多層構築物の各部分は、インプラントまたはその部分を通る空隙および/または導管等の内部空間を画定することができる。そのような空間、空隙、および/または導管は、非限定的な例として、骨移植片、骨内殖誘導材料などの生体材料を送達、伝達、受容、および/または保持するように構成され得る。それに加えて、あるいはそれに代わって、そのような空間、空隙、および/または導管は、上記で説明されるもの等のインプラントの可動構成要素を選択的に受容するように構成されてもよい。
【0035】
それに加えて、あるいはそれに代わって、そのような空間、空隙、および/または導管は、非限定的な例として、プリント回路基板(PCB)、プロセッサ、マイクロプロセッサ、コンピュータメモリ、通信デバイス、センサ等の電子回路を受容するように構成されてもよい。そのような電子回路は、ソフトウェアまたは他のコンピュータプログラムなどの1つまたは複数のアルゴリズムを自律的または半自律的に実行するように構成されたタイプなどの「スマート」電子構成要素を含むことができる。そのようなスマート電子機器は、非限定的な例として、加速度計、ひずみゲージ、近接センサ、PHセンサ、熱センサ、および熱伝導体のうちの1つまたは複数を含むことができる。そのような実施形態では、本明細書における方法は、ビルド層内にあるいは複数のビルド層にわたって画定されたレセプタクル内に予め構築された電子機器を配置するステップを含むことができる。それに加えて、あるいはそれに代わって、本明細書における方法は、ビルド層内または複数のビルド層内に電気部品を作製するステップを含むことができる。例えば、そのようなステップは、3D印刷などの印刷などを介して、ビルド層上に電子回路を堆積させることを含むことができる。回路は、
図5Dを参照して上述したような1つ以上の堆積3Dプリントヘッド18によって3D印刷され得る。そのようなステップでは、3Dプリントヘッドは、ビルド層(例えば、層内構築物)上に基板材料の構成層を堆積させることができる。本3Dプリントヘッドまたは別の3Dプリントヘッドは、その後、非限定的な例として、半導体材料の層および半導体層内のまたは半導体層に沿った伝導性トレースなどの1つまたは複数の追加の層を基板上に堆積させることができる。
【0036】
粉末床4は、インプラントの所望の組成に応じて様々な材料組成を有することができる。粉末材料は、金属、セラミック、ポリマー、合金、および複合材料を含むことができる。材料は、医療グレードまたはその他の生体適合性材料を含むことができ、任意選択で、そのような後者の材料が、ビルドされたインプラント内の生体適合性材料内に封入されるかあるいは別様に密閉される実施形態等において、非生体適合性材料を含むことができる。非限定的な例として、金属は、ステンレス鋼、建築用鋼、軽金属および合金(チタン、アルミニウムおよびアルミニウム-リチウム合金)、追加の合金(チタン-アルミニウム-バナジウム合金(例えば、Ti64とも呼ばれるTi64Al4VなどのTAV)、チタン-モリブデン合金(例えば、TiMo)、コバルト-クロム合金(例えば、CoCr))、超合金(例えば、インコネルおよびハステロイなどのニッケル基合金)、硬質および耐熱金属(例えば、タングステンおよびモリブデン)、貴金属(例えば、金)、熱伝導性および導電性金属(例えば、銅および銀)を含むことができる。セラミックは、本明細書では、金属、半金属または非金属原子からなる無機非金属固体を指し得るが、これらに限定されない。例として、炭化物、窒化物およびホウ化物(例えば、炭化タングステンおよび炭化チタン、窒化ケイ素および炭化物および窒化ホウ素)、ならびに酸化アルミニウム、酸化亜鉛およびジルコニアなどの酸化物がある。ポリマーは、本明細書では、フォトポリマー、熱可塑性樹脂および熱硬化性ポリマーを指し得るが、これらに限定されない。
【0037】
材料が粉末としてビルド表面に塗布される場合、そのような粉末粒子は、様々なサイズ、サイズ(および平均サイズ)分布、ならびに異なる幾何学的形状のものであり得る。粉末サイズ(および平均サイズ)分布は、1~1000nm、1~100μm、および/または10μm~1mmの範囲であってよい。粉末粒子サイズは、ビルドされたインプラントの好ましい溶融および溶融された粒子構造をもたらすサイズおよび材料組成に基づいて選択され得る。
【0038】
様々なビルド層は、少なくとも1つの金属粉末と少なくとも1つのセラミック粉末との組合せなど、複数の材料および粉末を含有し得る。そのような実施形態では、レーザエネルギー(例えば、エネルギーピクセルのアレイを含むものなどの線照射および/または面照射22、23)は、埋め込み型デバイスの少なくとも1つの金属構成要素を形成し、同時に埋め込み型デバイスの少なくとも1つのセラミック構成要素を形成するように、ビルド層に印加され得る。例えば、金属粉末およびセラミック粉末のそのような使用は、少なくとも1つの金属構成要素および少なくとも1つのセラミック構成要素または特徴部を含むインプラントを生産するために、層ごとの様式でレーザエネルギーと共に利用され得る。例えば、ビルドされたインプラントは、少なくとも1つの金属構成要素の少なくとも一部分をコーティングするセラミックコーティングを有する少なくとも1つの金属構成要素を含むことができる。そのような実施形態では、セラミックコーティングは、ヒドロキシアパタイト(HA)を含むセラミックコーティングなど、再吸収可能であり得る。
【0039】
層内構造体の少なくとも1つは、表面欠陥を実質的に持たない溶融ミクロ構造を有することができる。さらなる実施形態では、ビルドされたインプラントは、それぞれが表面欠陥または表面に隣接する欠陥を実質的に持たない1つ以上のミクロ構造を含むことができる。さらに、そのようなミクロ構造は、非限定的な例として、ステンレス鋼、TAV、コバルト-クロム、およびTiMoのものなど、ビルドの終了時に(例えば、任意のビルド後熱処理の前に)アルファマルテンサイト結晶粒構造を有することができる。本明細書における方法は、骨形成を促進するように構成された表面仕上げ粗さを提供するためなど、インプラント表面のうちの1つまたは複数に対して1つまたは複数の表面仕上げステップを実行することをさらに含むことができる。
【0040】
本明細書の方法は、真空熱プロセスなどの1つまたは複数の熱処理プロセスを実行することをさらに含むことができる。そのような熱プロセスは、インプラントの寿命にわたるその疲労性能等の、ビルドされたインプラントの動的特性を促進および/または向上させることができる。例えば、ビルド後熱処理プロセスは、インプラント内のアルファマルテンサイト結晶粒構造を促進することができ、あるいはインプラントの既存のアルファマルテンサイト結晶粒構造を向上させることができる。真空熱プロセスは、熱間等方圧加圧を必要とせずに動的特性を向上させ得るので、好ましいビルド後熱プロセスであり得る。しかしながら、熱間等方圧加圧を含む様々な他の熱処理プロセスが必要に応じて利用され得ることが理解されるべきである。本明細書の方法はまた、1つ以上の種々のコーティングまたは補足的外部層をインプラントに適用する等の、任意選択のビルド後仕上げプロセスも含むことができる。
【0041】
前述のステップの種々の様態は、ビルドされたインプラントまたは少なくともそのそれぞれの部分が目標の弾性率を有するように、必要に応じて適合され得る。1つのそのような非限定的な例では、前述のステップの選択された態様は、ビルドされたインプラントの一部分の第1の個別領域が第1の弾性率を有し、ビルドされたインプラントの一部分の第2の個別領域が第1の個別領域とは異なる第2の弾性率を有するように適合され得る。
【0042】
上述の方法の実施形態によれば、繰り返されるステップの終了後(すなわち、「ビルド」の終了時)、インプラント(すなわち、「ビルドされたインプラント」)またはその選択された部分は、約35パーセント~100パーセントの範囲の印刷充填密度を有することができ、これは、インプラントの異なる領域において所望通りに変化することができる。ビルドされたインプラントの中実部分はまた、約99.5パーセント~約100パーセントの範囲、より具体的には約99.8パーセントの体積密度を有することができる。ビルドされたインプラントは、ロックウェルC硬度(HRC)スケールに従って測定されるとき、約32HRC~約40HRCの範囲の硬度を有することができる。インプラントの印刷密度および/または硬度は、非限定的な例として、材料組成、粉末サイズ、および充填体積を調整することなどによって適合され得ることを理解されたい。
【0043】
1つのそのような非限定的な例によれば、インプラントは、100パーセントの充填体積を利用する層ごとの3D印刷プロセスにおいて、TAV粉末(具体的には、Ti
64Al
4V)をレーザエネルギーの線照射および/または面照射に露出することによって構築され得る。そのような3D印刷されたTAV構築物の1つの研究において、本発明者らは、異なる形状を有する中実本体の様々な3D印刷された試料を試験したが、これらの中実構築物のそれぞれは、Ti
64Al
4V構成粉末から印刷されたものである。比較のために、本発明者らはまた、同じ構成粉末タイプ(Ti
64Al
4V)から3D印刷されたが、低減された充填体積を有する(すなわち、その中に開放空間を有する)類似形状の物体の追加の試料を試験した。3D印刷され試験された試料は、インプラントの様々な構成要素を表すものとして特徴付けられ得る。印刷された試料を、とりわけ、試料の多孔性およびミクロ構造の検査のために、Keyence Light Optical System(Model VHX-5000)およびZeiss EVO60 XVP走査電子顕微鏡(SEM)で撮像した。試料の1つの様々な画像を
図8A~
図8Bに示す。また、試料に硬度試験を行った。
【0044】
本発明者らは、これらの試験中にいくつかの驚くべき観察を行った。例えば、試料の断面を分析することによって、試料の中実部分のミクロ構造が約99.8パーセントの体積密度(すなわち、多孔度の逆数)を有することが観察された。また、上記で参照した試料の全てにおいて最後に印刷された層は、外側表面の周りに非溶融球体を示すことが観察された。いずれの試料においても、微小亀裂、バリまたは変形した材料は観察されなかった。試料はそれぞれ、35~38HRCの範囲の硬度および測定システムの範囲内で0%の面積気孔率を実証した。これらの試験結果によって実証されるように、本明細書で説明される付加製造プロセスの1つの利点は、インプラント/構成要素の中実部分のビルドされたままの気孔率が0%に近いため、欠陥を解決するためのビルド後処理の必要性が回避され得るか、あるいは少なくとも低減され得ることである。
【0045】
ここで
図8Aを参照すると、中実試料の側面の拡大光光学(LO)図が50倍の倍率で示されており、試料本体の層状構造を明らかにしている。
図8Bは、700倍の倍率での中実本体試料の断面画像であり、試料のミクロ構造を示し、アルファマルテンサイト結晶粒構造を実証している。上記で参照した試料の全ては、アルファマルテンサイト結晶粒構造を有していた。
【0046】
上記の方法および手段性は、迅速なインプラント製造のために有利に利用され得ることが理解されるべきである。本明細書に記載される製造プロセスの迅速性は、患者固有の幾何形状(すなわち、インプラントが存在するように構成される患者固有の解剖学的構造に対応するように調整されたインプラント幾何形状)を有するインプラントの迅速なオンデマンド生産を可能にすることができ、この形状は、患者の解剖学的構造のスキャンデータに部分的に基づき得ることも理解されたい。例えば、VBRインプラントの場合、インプラント幾何形状は、置換される椎体の患者スキャンデータ(椎体の一連のCTスキャンスライスの支援により構築された3Dモデルなど)の支援により3D仮想空間において作成することができ、この3D仮想インプラント幾何形状は、治療目的を提供するために必要に応じて調整することができる。拡張可能な脊椎固定ケージの場合、インプラント幾何形状は、隣接する椎体のスキャンデータ支援により3D仮想空間内に作成することができる。特に、終板の対向する外側表面は、隣接する椎体のそれぞれの上面および下面の輪郭に対応する輪郭を有するように、3D仮想空間において調整することができる。ケージ幾何形状は、例えば、所望の術後椎間高さに基づいて、さらに調整することができる。本明細書に記載の高速付加製造方法は、患者固有のデータに基づいて調整された3D仮想幾何形状を有するインプラントを作成するために利用することができる。
【0047】
上述した材料、エネルギー、およびプロセスの様々なパラメータ、特性、および特徴は、製造プロセスおよび手段性を3D印刷または他の方法でインプラントを付加製造するように適合させるための例示的な特徴として提供されていることを理解されたい。これらのパラメータは、本開示の範囲から逸脱することなく、必要に応じて調整することができる。
【0048】
本明細書において、数的な前置詞(例えば、「第1の」、「第2の」、「第3の」)が、要素、構成要素、寸法、ステップ、またはそれらの特徴(例えば、「第1の」部分、「第2の」部分、「第1の」ステップ、「第2の」ステップ)に関して使用される場合、かかる数的な前置詞は、当該要素、構成要素、寸法、ステップ、および/または特徴を別のかかる要素、構成要素、寸法、ステップ、および/または特徴から区別するために使用され、その場合に使用される特定の数的な前置詞に限定されるものではないことをさらに理解されたい。例えば、「第1の」部分、構成要素、またはステップは、数的な前置詞が使用される文脈で当該部分、構成要素、および/またはステップが適切に区別される限り、本開示の範囲から逸脱することなく、異なる文脈で「第2の」部分、構成要素、またはステップと称することもできる。
【0049】
本開示を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更、代用、および改変を行い得る点を理解されたい。さらに、本開示の範囲は、本明細書に説明される特定の実施形態に限定されるものではない。特に、前述の実施形態からの特徴のうちの1つまたは2つ以上は、本明細書の他の実施形態において使用されることができる。当業者がそのプロセスから容易に理解するように、本明細書において説明される対応する実施形態と実質的に同じ機能を実施する、または実質的に同じ結果を達成する、現在存在するまたは後に開発される機械、製造法、組成物、手段、方法、または工程は、本開示に従って利用され得る。
【0050】
〔実施の態様〕
(1) 埋め込み型デバイスを作製する方法であって、
粉末床の上のビルド表面上にレーザエネルギーの照射を方向付けることであって、それによって埋め込み型デバイスの層を形成し、前記レーザエネルギーの照射は、前記ビルド表面上の共通の境界を共有する隣接するエネルギーピクセルを含み、各ピクセルは、前記ビルド表面上で実質的に均一なそれぞれの出力密度を有する、方向付けることと、
前記形成された層の全体が前記埋め込み型デバイスの少なくとも一部分を画定するように、層ごとに複数回、前記方向付けるステップを繰り返すことと、を含む方法。
(2) 前記繰り返すステップの後に、前記埋め込み型デバイスの前記少なくとも一部分が、50倍の倍率で基準面において観察可能な不規則なプロファイルを有する少なくとも1つの縁部を画定する、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記50倍の倍率は、光学顕微鏡法を使用して実行可能である、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記埋め込み型デバイスは、整形外科用デバイスである、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記埋め込み型デバイスは、脊椎固定デバイスである、実施態様4に記載の方法。
【0051】
(6) 前記方向付けるステップおよび前記繰り返すステップは、前記拡張可能な脊椎固定デバイスのそれぞれの終板および作動機構の層を形成することを含み、前記作動機構は、前記繰り返すステップの終了後に前記終板間の距離を拡張するように構成される、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記繰り返されるステップの終了後、前記埋め込み型デバイスは、約99.5パーセント~約100パーセントの範囲の印刷密度を有する、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記繰り返されるステップの終了後、前記埋め込み型デバイスは、約32HRC~約40HRCの範囲の硬度を有する、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記レーザエネルギーの照射は、前記ビルド表面上のエネルギーピクセルの線アレイおよびエネルギーピクセルの面アレイのうちの少なくとも1つを含み、前記少なくとも1つのアレイ内の隣接するエネルギーピクセルは、前記ビルド表面上の共通の境界を共有し、各ピクセルは、前記ビルド表面上で実質的に均一なそれぞれの出力密度を有する、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記繰り返される方向付けるステップのうちの少なくともいくつかの間に、前記それぞれの層は、前記埋め込み型デバイスの相互接続可能な構成要素の部分を構成する、実施態様1に記載の方法。
【0052】
(11) 前記相互接続可能な構成要素は、前記繰り返すステップのうちの少なくともいくつかの間に相互接続され、前記相互接続された構成要素は、マクロ構造、ミクロ構造、およびナノ構造のうちの少なくとも1つを有する、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記相互接続された構成要素は、約10マイクロメートル(μm)未満のスケールで空間分解能および精度を有する、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記相互接続された構成要素は、前記埋め込み型デバイスを通る導管を集合的に画定する、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記繰り返すステップの後に、前記形成された層の全体が、相互接続された構成要素を有する前記埋め込み型デバイスを画定する、実施態様10に記載の方法。
(15) 前記相互接続された構成要素のうちの少なくとも第1の構成要素は、埋め込み処置における前記埋め込み型デバイスの作動プロセス中に、前記相互接続された構成要素のうちの少なくとも第2の構成要素によって画定される相補的な表面との摺動接触界面を提供するように十分に平滑であるガイド表面を画定する、実施態様14に記載の方法。
【0053】
(16) 前記相互接続された構成要素は、前記埋め込み型デバイスを1つ以上の椎骨に固定するための展開可能な固定スパイクを含む、実施態様14に記載の方法。
(17) 前記粉末床は金属粉末を含有し、前記埋め込み型デバイスは金属を含む、実施態様1に記載の方法。
(18) 前記粉末床は、セラミック粉末をさらに含有し、前記繰り返すステップのうちの少なくともいくつかの間に、前記エネルギーピクセルは、前記埋め込み型デバイスの少なくとも1つの金属構成要素を形成し、同時に、前記埋め込み型デバイスの少なくとも1つのセラミック構成要素を形成し、前記繰り返すステップの終了後、前記少なくとも1つのセラミック構成要素は、前記少なくとも1つの金属構成要素の少なくとも一部分をコーティングするセラミックコーティングである、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記セラミックコーティングは再吸収可能である、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記セラミックコーティングはヒドロキシアパタイト(HA)を含む、実施態様18に記載の方法。
【0054】
(21) 前記繰り返される方向付けるステップのうちの少なくともいくつかの間に、前記それぞれの層は、前記埋め込み型デバイスの表面またはその近傍に実質的に欠陥を持たないミクロ構造を構成する、実施態様1に記載の方法。
(22) 前記繰り返すステップの終了後、前記埋め込み型デバイスは、前記埋め込み型デバイスの表面またはその近傍にそれぞれが実質的に欠陥を持たない1つ以上のミクロ構造を含む、実施態様21に記載の方法。
(23) 前記1つ以上のミクロ構造は、前記繰り返すステップの終了後にアルファマルテンサイトとなる、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記1つ以上のミクロ構造は、ステンレス鋼、チタン-アルミニウム-バナジウム(TAV)合金、チタン-モリブデン合金、およびコバルト-クロム合金の群から選択される1つ以上の材料を含む、実施態様23に記載の方法。
(25) 骨形成を促進するように構成された表面仕上げ粗さを前記1つ以上のミクロ構造に提供するために、前記1つ以上のミクロ構造を表面仕上げすることをさらに含む、実施態様23に記載の方法。
【0055】
(26) 前記繰り返すステップの終了後に、前記埋め込み型デバイスを真空熱処理することをさらに含み、前記真空熱処理することは、前記埋め込み型デバイスの疲労性能を向上させる、実施態様23に記載の方法。
(27) 前記方向付けるステップおよび前記繰り返すステップは、前記繰り返すステップの終了後に、前記埋め込み型インプラントの前記少なくとも一部分が目標の弾性率を有するように実行される、実施態様1に記載の方法。
(28) 前記方向付けるステップおよび前記繰り返すステップは、前記繰り返すステップの終了後に、前記埋め込み型インプラントの前記少なくとも一部分の第1の個別領域が第1の弾性率を有し、前記埋め込み型インプラントの前記少なくとも一部分の第2の個別領域が前記第1の個別領域とは異なる第2の弾性率を有するように実行される、実施態様1に記載の方法。
(29) 前記埋め込み型デバイスは椎体置換デバイスである、実施態様1に記載の方法。
(30) 前記方向付けるステップおよび前記繰り返すステップは、椎体切除術の後に行われる、実施態様29に記載の方法。
【0056】
(31) 前記繰り返される方向付けるステップのうちの少なくとも1つの間に、前記それぞれの層上に電子回路を印刷することをさらに含む、実施態様1に記載の方法。
(32) 前記電子回路を印刷するステップは、前記層上に基板を堆積させ、前記基板上に半導体材料および伝導性トレースをさらに堆積させることを含む、実施態様31に記載の方法。
(33) 前記電子回路は、1つ以上のコンピュータプログラムを実行するように構成されたスマート電子機器を含む、実施態様31に記載の方法。
(34) 前記電子回路は、加速度計、歪みゲージ、近接センサ、PHセンサ、熱センサ、および熱伝導体のうちの1つまたは複数を備える、実施態様31に記載の方法。
(35) 前記繰り返すステップの後に、前記形成された層の全体が前記埋め込み型デバイスを画定し、前記埋め込み型デバイスは、骨移植片を送達および受容するための空隙を有する、実施態様1に記載の方法。
【0057】
(36) 前記繰り返すステップの後に、前記形成された層の全体が前記埋め込み型デバイスを画定し、前記埋め込み型デバイスは機能性ねじを有する、実施態様1に記載の方法。
(37) インプラントであって、
第1の方向、第2の方向、および第3の方向に沿った寸法を画定する本体であって、前記第1の方向、前記第2の方向、および前記第3の方向は、互いに実質的に垂直である、本体を備え、
前記本体は、50倍の倍率で基準面において観察可能なセグメントを含む階段状のプロファイルを有する少なくとも1つの縁部を画定し、前記少なくとも1つの縁部は、前記第1の方向、前記第2の方向、および前記第3の方向のうちの少なくとも1つに対して湾曲しているか、または斜めに配向されているか、あるいはその両方である、インプラント。
(38) 前記階段状のプロファイルは、18倍未満の倍率で実質的に観察できない、実施態様37に記載のインプラント。
(39) 前記本体は、前記第3の方向に沿って連続して離間された複数の層を備え、前記複数の層のうちの少なくとも2つの隣接する層は、互いに対して階段状の幾何形状を有し、前記階段状の幾何形状は、50倍の倍率で観察可能である、実施態様37に記載のインプラント。
(40) 前記本体の大部分は、本質的に溶融粒子からなる材料から構成されている、実施態様37に記載のインプラント。
【0058】
(41) 前記溶融粒子は融解されたものである、実施態様40に記載のインプラント。
(42) 前記溶融粒子は、前記溶融粒子の大部分の間に間隙が延在するように一緒に融解されたものである、実施態様40に記載のインプラント。
【国際調査報告】