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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】デジタル透かしのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/467 20140101AFI20240814BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240814BHJP
   H04N 19/126 20140101ALI20240814BHJP
   H04N 19/136 20140101ALI20240814BHJP
   H04N 21/8358 20110101ALI20240814BHJP
【FI】
H04N19/467
G06T1/00 500B
H04N19/126
H04N19/136
H04N21/8358
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506455
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 US2022038173
(87)【国際公開番号】W WO2023014530
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】21189088.4
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】63/228,220
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507236292
【氏名又は名称】ドルビー ラボラトリーズ ライセンシング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】シールズ,ジェローム ディー.
【テーマコード(参考)】
5B057
5C159
5C164
【Fターム(参考)】
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CA19
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CB19
5B057CE11
5B057DA16
5B057DB02
5B057DB09
5C159MD03
5C159RC19
5C159TA53
5C159TC02
5C164MA02S
5C164MB35P
5C164PA34
5C164SB02S
5C164UB02S
(57)【要約】
デジタル透かし方法は、電子プロセッサによって、一連の元の視覚画像を含む元の画像信号を受信するステップであって、前記元の画像信号は、前記元の画像信号内にPQ輝度ステップを生じる知覚量子化器(PQ)輝度レベル符号化伝達関数を使用して符号化され、前記PQ輝度ステップは、輝度範囲にわたって変化するサイズを有する、ステップを含む。前記方法は、前記電子プロセッサによって、透かしを含む透かし画像信号を受信するステップと、所定の第1PQ輝度ステップ数である少なくとも第1重み付け係数によって前記透かしの強度を調整するステップとを更に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル透かし方法であって、
電子プロセッサによって、一連の元の視覚画像を含む元のビデオ信号を受信するステップであって、前記元のビデオ信号は前記元のビデオ信号内に知覚量子化器(PQ)輝度ステップを生じるPQ輝度レベル符号化伝達関数を用いて符号化され、前記PQ輝度ステップは、輝度範囲にわたって様々なサイズを有する、ステップと、
前記電子プロセッサによって、透かしを含む透かし画像信号を受信するステップと、
所定の第1PQ輝度ステップ数である少なくとも第1重み付け係数によって前記透かし画像信号の振幅を調整することによって、前記透かしが人間の目には見えないが、画像キャプチャ装置によって復元可能になるように、前記透かしの強度を調整するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
所定の第1PQ輝度ステップ数である少なくとも第1重み付け係数によって前記透かし画像信号の振幅を調整することによって、前記透かしの強度を調整するステップは、前記輝度範囲にわたって前記透かしの強度を前記PQ輝度レベル符号化伝達関数に比例させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記輝度範囲が少なくとも0.001nitから1000nitに及ぶ、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1重み付け係数が、少なくとも0.01nitから50nitの輝度範囲にわたって前記所定の第1PQ輝度ステップ数である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1重み付け係数は、静的力の重み付け係数を含み、前記方法は、第2重み付け係数によって前記透かしの強度を調整するステップであって、前記第2重み付け係数は、運動力の重み付け係数を含む、ステップ、を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2重み付け係数は、第2PQ輝度ステップ数に比例する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2PQ輝度ステップ数は、前記一連の元の視覚画像における第1画像と、前記一連の元の視覚画像における第2画像との間のPQステップの変化に等しい、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記調整された透かし画像信号を前記元のビデオ信号に埋め込んで、埋め込みビデオ信号を生成するステップであって、前記埋め込みビデオ信号は、一連のマークされた視覚画像を含む、ステップ、を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記埋め込み画像信号を再生装置へ送信するステップ、を更に含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記調整された透かし画像信号をスクリーン上へ送信するステップ、を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記調整された透かし画像信号の極性を繰り返し変更することによって、前記調整された透かし画像信号を変調するステップ、を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータ実行可能命令を格納している非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ実行可能命令は、1つ以上のプロセッサにより請求項1~11のいずれかに記載の方法を実行するためのものである、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
デジタル透かしを生成するシステムであって、前記システムは、
メモリと、
前記メモリに結合されプロセッサを含む制御部と、
を含み、前記プロセッサは、
一連の元の視覚画像を含む元のビデオ信号を受信し、前記元のビデオ信号は前記元のビデオ信号内に様々な知覚量子化器(PQ)輝度ステップを生じるPQ輝度レベル符号化伝達関数を用いて符号化され、前記PQ輝度ステップは、輝度範囲にわたって様々なサイズを有し、
透かしを含む透かし画像信号を受信し、
所定の第1PQ輝度ステップ数である少なくとも第1重み付け係数によって前記透かし画像信号の振幅を調整することによって、前記透かしが人間の目には見えないが、画像キャプチャ装置によって復元可能になるように、前記透かしの強度を調整する、
よう構成される、システム。
【請求項14】
前記制御部は、所定の第1PQ輝度ステップ数である少なくとも第1重み付け係数によって前記透かし画像信号の振幅を調整することによって、前記透かしの強度を調整して、前記輝度範囲にわたって前記透かしの強度を前記PQ輝度レベル符号化伝達関数に比例させるよう構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記輝度範囲が少なくとも0.001nitから1000nitに及ぶ、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1重み付け係数は、静的力の重み付け係数を含み、前記プロセッサは、第2重み付け係数によって前記透かしの強度を調整するよう更に構成され、前記第2重み付け係数は、運動力の重み付け係数を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記第2重み付け係数は、第2PQ輝度ステップ数に比例する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第2PQ輝度ステップ数は、前記一連の元の視覚画像における第1画像と、前記一連の元の視覚画像における第2画像との間の量子化ステップの変化に等しい、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記制御部は、前記調整された透かし画像信号を前記元のビデオ信号に埋め込んで、埋め込みビデオ信号を生成するよう更に構成され、埋め込みビデオ信号は、一連のマークされた視覚画像を含む、請求項13~18のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、米国仮特許出願番号第63/228,220号、2021年8月2日出願、及び欧州特許出願番号第21189088.4号、2021年8月2日出願の優先権を主張する。両出願は、参照によりその全体がここに組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本明細書に記載される実施形態は、視覚的盗難防止保護に関する。より具体的には、本明細書に記載される実施形態は、視覚的作品の違法コピーを識別するためのデジタル透かしを作成するシステム及び方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
海賊版が映画、コンサート及び独占イベントなどのコンテンツを違法に記録することは既知の問題である。多くの場合、これらの録画のコピーは海賊版業者によって営利目的で販売されたり、(例えばインターネット上で)無料で配布されたりして、コンテンツの正当な所有者の収入を奪っている。著作権で保護された作品の許可されていないコピーを阻止する既存の方法は、記録機械が許可されていないコピーを作成することを防止するために機械レベルで動作する。しかしながら、これらの方法は、著作権で保護された作品のライブコピーを阻止しない。更に、著作権で保護された作品のライブコピーを阻止する既存の方法は、すべてのビデオ信号に対して普遍的に有効ではない。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、デジタル透かしを作成するためのシステム及び方法を提供する。本願明細書で提供される実施形態は、デジタル透かし方法であって、電子プロセッサによって、一連の元の視覚画像を含む元の画像(ビデオ)信号を受信するステップであって、前記元の画像(ビデオ)信号は、前記元の画像(ビデオ)信号内にPQ輝度ステップを生じる知覚量子化器(PQ)輝度レベル符号化伝達関数を使用して符号化され、前記PQ輝度ステップは、輝度範囲にわたって変化するサイズを有する、ステップを含む方法を含む。前記方法は、前記電子プロセッサによって、透かしを含む透かし画像信号を受信するステップと、所定の第1PQ輝度ステップ数である少なくとも第1重み付け係数によって前記透かしの強度を調整するステップとを更に含む。
【0005】
本願明細書で提供される実施形態は、デジタル透かしを生成するシステムを含む。前記システムは、
メモリと、
前記メモリに結合されプロセッサを含む制御部と、
を含み、前記プロセッサは、
一連の元の視覚画像を含む元の画像信号を受信し、前記元のビデオ信号は輝度範囲にわたって様々なPQ輝度ステップを生じる知覚量子化器(変化PQ)輝度レベル符号化伝達関数を用いて符号化され、
透かしを含む透かし画像信号を受信し、
所定の第1PQ輝度ステップ数である少なくとも1つの重み付け係数によって前記透かしの強度を調整する、
よう構成される。
【0006】
他の態様は、詳細な説明及び添付の図面を考慮することによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】人間の目とカメラとの間の輝度の知覚の違いを示すグラフである。
【0008】
図1B】輝度範囲にわたって「弁別域」(JND)ステップの均等な分布を生成する際の例示的な輝度レベル符号化関数の有効性を示す。
【0009】
図2】輝度範囲にわたって知覚量子化器(PQ)レベル符号化関数の動作を概略的に示し、透かしの強度を決定するための力の成分を示すグラフである。
【0010】
図3A】第1極性に従って分極された例示的な透かし画像を提供する。
【0011】
図3B】第2極性に従って分極された図3Aの透かし画像を示す。
【0012】
図4】本開示の実施形態によるデジタル透かしを生成する方法のフローチャートである。
【0013】
図5】本開示の実施形態によるデジタル透かしを生成する方法のフローチャートである。
【0014】
図6】本開示の実施形態によるデジタル透かしを生成するシステムの概略図である。
【0015】
図7】本開示の実施形態によるデジタル透かしを生成する別のシステムの概略図である。
【0016】
図8】本開示の実施形態によるデジタル透かしを生成する別のシステムの概略図である。
【0017】
図9】本開示の実施形態によるデジタル透かしを生成する別のシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
複数のハードウェア及びソフトウェアベースのデバイス、ならびに複数の異なる構造コンポーネントを利用して、本明細書に記載する実施形態又はその部分を実施することができることに留意されたい。更に、本明細書に記載する実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、及び電子コンポーネント又はモジュールを含むことができ、これらは、説明の目的上、コンポーネントの大部分がハードウェアのみで実施されるかのように図示及び説明さあれる場合があることを理解されたい。しかしながら、当業者であれば、この詳細な説明を読むことに基づいて、少なくとも1つの実施形態において、本明細書に記載する電子ベースの態様は、1つ以上のプロセッサによって実行可能な(非一時的なコンピュータ可読媒体に格納された)ソフトウェアで実施することができることを認識されたい。このように、複数のハードウェア及びソフトウェアベースのデバイス、ならびに複数の異なる構造コンポーネントを利用して、本明細書に記載する実施形態を実施することができることに留意されたい。例えば、本明細書に記載される「制御部」、「制御ユニット」、及び「制御アセンブリ」は、1つ以上のプロセッサ、非一時的なコンピュータ可読媒体を含む1つ以上のメモリモジュール、1つ以上の入力/出力インターフェース、及びコンポーネントを接続する様々な接続部(例えば、システムバス)を含むことができる。更に、本明細書で使用される用語「ムービー」、「ビデオ」、「ビデオ信号」などは、一連の視覚画像を含む画像データ又は画像信号を指すことを意図している。
【0019】
デジタル透かしによる不正コピーの抑止
【0020】
本願は、一連の視覚画像を有するビデオ、ムービー、及びその他の視覚作品の不正コピーを作成する海賊又はその他の不正行為者の問題に対処する。本発明は、視覚作品の不正コピーを検出及び/又は阻止するために、デジタル透かし信号をビデオ信号に埋め込むか又はオーバーレイするシステム及び方法を提供する。このような作品の不正コピーを検出及び阻止する従来の方法は、記録機械(例えば、DVDプレイヤ又はビデオレコーダ)がコピー、又は少なくとも歪みのないコピーを作成することを防止することによって、機械レベルで動作した。しかしながら、これらの方法は、画像キャプチャ装置(例えば、カメラ)上のビデオ画像のライブコピーを防止しない。例えば、これらの方法は、人がカメラ又は携帯電話を使用して映画館で映画を記録することを防止しない。
【0021】
従って、不正コピーを阻止する新しい方法は、海賊版がライブ映画を記録する場合でも透かしを識別できるように、映画にデジタル透かしを埋め込むことを含む。デジタル透かしを生成する場合、重要な考慮事項は透かしの強度であり、強度は、一般に、デジタル透かしの埋め込みによる映画(又は透かしが適用される他のオリジナル画像)の輝度の変化の大きさを指すと理解される。具体的には、効果的なデジタル透かしは、一般に不可視であるか、人間の目には容易に認識できないが、カメラによって復元及び/又は検出されるのに十分な強度である必要がある。埋め込まれた透かしが、人間の目に見え、映画館の常連客などの許可された視聴者による映画の楽しみを損なうほど強力であることは望ましくない。同様に、視覚作品の違法に取得されたコピーを識別するために電子プロセッサによって検出できないほどデジタル透かしが弱いことは望ましくない。
【0022】
デジタル透かしを生成する既存の方法は、すべての種類のビデオ信号上で透かしの適切な強度を達成するのに普遍的に成功しているわけではない。特に、ビデオ画像のライブ不正コピーを阻止するためにデジタル透かしを生成する既存の方法は、すべての輝度範囲のビデオ画像に対して理想的ではない。同様に、デジタル透かしを生成する既存の方法は、特定の伝達関数を使用して符号化された輝度であるビデオ画像に対して理想的ではない。例えば、幾つかの既存のデジタル透かし技術は、高ダイナミックレンジ(high dynamic range (HDR))ビデオ画像に対して最適化されていない。一部の再生装置(プロジェクタなど)は、上映時に映画に透かしを挿入する。これらの装置は、標準ダイナミックレンジ(Standard Dynamic Range (SDR))ビデオ画像など、輝度範囲が制限された映画に透かしを埋め込むように設計されている。映画に透かしを埋め込む既存の方法は、DCIデジタルシネマシステム仕様に従ってDCIガンマ符号化された映画で動作する。しかしながら、ビデオに透かしを埋め込む既存の方法は、HDRビデオ画像では不十分である。同様に、映画に透かしを埋め込む既存の方法の中には、ガンマ符号化関数以外の輝度符号化関数を使用して符号化されたビデオ画像に適用するとき、理想的ではないものがある。例えば、幾つかの既存のデジタル透かし技術は、知覚量子化器(Perceptual Quantizer (PQ))伝達関数を使用して符号化された輝度であるビデオ画像には理想的ではない。具体的には、幾つかの既存のデジタル透かし方法は、透かしが強すぎて人間の目に見え、許可された視聴者に混乱を与えるか、又は弱すぎて透かしの復元が困難な透かしを生成してしまう。
【0023】
従って、透かし(信号)が人間の目には見えないが、電子プロセッサ及び/又は画像キャプチャ装置によって復元可能であるように、一連の視覚画像を含むビデオ信号又は他の信号に透かし信号を埋め込むシステム及び方法が本明細書に提供される。この方法は、透かしの強度がこの範囲内に収まるように調整することによって、人間の目が画像を知覚する能力と画像記録装置が画像をキャプチャする能力との差を利用する。開示された透かし方法は、HDRビデオ画像上で動作可能である。開示された透かしシステムは、PQ伝達関数などの量子化された伝達関数を使用して符号化された輝度であるビデオ画像上でも動作可能である。PQマッピング関数の例は、SMPTE ST 2084:2014「High Dynamic Range EOTF of Mastering Reference Displays」(以後、「SMPTE」と呼ぶ)に説明されており、その全文は参照によりここに組み込まれている。場合によっては、透かし信号は、元の許可されたビデオ信号を送信した場所及び/又はベンダーに関する識別情報を含むことができる。
【0024】
輝度レベル符号化
【0025】
輝度レベル符号化の背後にある基礎理論は、物理的に測定可能な量である「輝度(luminance)」と、輝度に対する人間の知覚である「明るさ(brightness)」との違いに由来する。簡単に言えば、人間の目はカメラと同じようには光を知覚しない。図1Aに示すように、カメラの出力信号は輝度の変化に応じて線形に変化する。例えば、2倍の光子がセンサに当たると、カメラの出力信号は2倍になる。しかし、人間は輝度の変化が明るさの変化と線形関係にあるとは認識しない。むしろ、人間が認識するとき、明るさは輝度の平方根関数に似ている。従って、図1Aに示すように、2倍の光子が人の目に当たると、その人は2倍の明るさを検出しない。むしろ、人は明るさの2倍未満の明るさの増加を検出する。
【0026】
加算又は減算輝度変化に対する人間の視覚システムの感度は、高い輝度レベルよりも低い輝度レベルで著しく高い。従って、人間の視覚システムは、ニト(nit)の量だけ異なる比較的低い輝度値のペアの間の違いを認識することができるが、同じニトの量だけ異なる比較的高い輝度のペアの間の違いを認識することはできない。一般に、人間の視覚は、輝度値が少なくとも「弁別域」(just noticeable difference (JND))と呼ばれるものだけ異なる場合にのみ、違いを認識する。輝度と明るさとの間の人間の視覚の非線形知覚のために、JNDの大きさは、光レベルの範囲にわたって変化し、一般に、低い輝度レベルでは小さく、高い輝度レベルでは大きい。
【0027】
従って、人間が光をどのように知覚するかをよりよく表現するために、ビデオ画像は、輝度レベル符号化によって符号化され得る。図1Bを参照すると、等しいサイズ又は線形にスケーリングされたサイズの輝度量子化ステップを有する符号化画像データは、人間の視覚の知覚非線形性と一致しない。輝度範囲にわたって固定サイズの輝度量子化ステップを有する符号化画像データも、人間の視覚の知覚非線形性と一致しない。線形輝度符号化関数の結果は、要素20として図1Bに示される。これらの技術の下では、量子化された輝度値を表すためにコードワードが割り当てられるとき、光レベルの範囲の特定の領域(例えば、明領域)には多すぎるコードワードが分布し、光レベルの範囲の異なる領域(例えば、暗領域)には少なすぎるコードワードが分布する場合がある。過密領域では、多数のコードワードは知覚差を生じない可能性があり、従って、すべての実用的な目的のために、無駄になる。過密領域では、2つの隣接するコードワードは、JNDよりもはるかに大きな知覚差を生じ、輪郭歪み(バンディングとしても知られる)視覚アーチファクトを生じる可能性がある。
【0028】
しかし、輝度量子化ステップが人間の視覚の知覚非線形性に一致するように変化するとき、コードワードは、JNDステップと1対1の相関を有するように調整することができる。言い換えれば、各コードワードは、JNDと等しい(又はJNDの直ぐ下の)知覚差を生じる。様々な種類の輝度レベル符号化式は、この目標を達成しようとする。非線形輝度符号化関数の結果は、要素25として図1Bに示される。これらの輝度符号化関数は、シーン光が入力であるか、又はビデオ信号が入力であるかに応じて、一般に、電気-光学伝達関数(electro-optical transfer functions (EOTF))、光-電子伝達関数(opto-electronic transfer functions (OETF))、又は光-光学伝達関数(opto-optical transfer functions (OOTF))と呼ぶことができる。例えば、幾つかのビデオ画像は、ビデオ信号を符号化するためにガンマ関数(例えば、DCIガンマ符号化)又は対数関数を使用して符号化される。他のビデオ画像は、ビデオ信号を符号化するためにPQ伝達関数を使用して符号化される。
【0029】
図2は、輝度範囲にわたる様々な関数をグラフ化する。x軸は、0.0001ニトから1万ニトまでの輝度範囲を表す。y軸は、量子化されたステップサイズを表す。前述のように、人間の光の知覚をより良く表すために、各量子化されたステップは互いに等しくない。むしろ、各ステップ間の輝度の変化は、人間の光の知覚に一致するように変化させることができる。従って、y軸は、特定の輝度レベル(すなわちx軸に沿って)における各ステップ間の輝度の増加又は減少(すなわち、変更)を示す。各ステップ間の輝度の変化は、パーセンテージとして提供される。例えば、高い輝度レベルでは、知覚量子化器(PQ)関数35について、ステップ間の輝度の百分率変化は、約0.25%である。これは、高い輝度レベルでは、人が、0.25%の増加又は減少を有する輝度の変化を識別できることを意味する。低い輝度レベル及びPQ関数35では、ステップ間の輝度の百分率変化は、より多様であり、ステップ間の輝度の10%変化に近いか、又は超える。低い輝度レベルにおける第1JNDの輝度の百分率変化は、高い輝度レベルにおける第2JNDの輝度の百分率変化よりも大きいが、第1JNDの輝度の絶対変化は、第2JNDの輝度の絶対変化よりも小さいことに留意すべきである(第1JNDは、第2JNDよりも低い輝度レベルにあるため)。
【0030】
引き続き図2を参照すると、輝度レベル符号化関数は、すべての輝度範囲に普遍的に適用されるわけではない。例えば、ガンマ符号化関数は、約0.001ニトから100ニトの範囲である輝度の標準ダイナミックレンジ(SDR)でのみ動作する。ガンマ符号化関数は、約0.0001ニトから1万ニトの範囲である輝度の高ダイナミックレンジ(HDR)にわたってJNDを十分に表現しない。代わりに、HDRビデオは、他のタイプの輝度レベル符号化関数を使用して符号化することができる。例えば、HDRは、知覚量子化(Perceptual Quantizer (PQ))関数35を使用して符号化することができる。図2に示すように、PQ関数35は、輝度のHDRにわたって適用される。
【0031】
デジタル透かしを生成する既存の方法は、特定の輝度レベル符号化プロセスによって符号化されたビデオ信号に対して最強の不可視透かしを生成するように最適化されていない。例えば、幾つかの既存のデジタル透かし技術は、PQ輝度レベル符号化関数35などの量子化輝度レベル符号化関数を使用して符号化されたビデオ信号に対して最適化されていない。同様に、幾つかの既存のデジタル透かし技術は、高ダイナミックレンジのビデオ信号に対して最適化されていない。特に、幾つかの既存のデジタル透かし技術は、人間の目には見えず、電子プロセッサによって確実に復元できるほど十分に強い透かしを生成することに失敗している。むしろ、特定の輝度レベル符号化関数によって符号化されたビデオ信号に適用された場合、透かしは、人間の目に見えるか、又は確実に復元できず、識別できない。従って、本明細書では、HDRビデオ信号に有効なデジタル透かしを生成する方法を提供する。更に、本明細書では、PQ輝度符号化関数35などの量子化輝度レベル符号化関数を使用して符号化されたビデオ信号で有効なデジタル透かしを生成する方法を提供する。本明細書に記載された方法は、従来の透かし方法を使用して以前は不可能であった、輝度範囲にわたる透かし品質及び一貫性における予期しない結果を提供する。更に、本明細書で提供される方法は、デジタル透かしを生成するプロセスを簡素化し、HDRビデオ画像に容易に適用できるクリーンな定式化アプローチを提供する。
【0032】
デジタル透かしの生成方法
【0033】
上述したように、デジタル透かしシステムは、目に見えないデジタル透かし画像をビデオ信号に付加して、映画などの視覚作品の不正コピーを識別するのに役立つ。図3A及び図3Bは、視覚作品をマークするために使用できる例示的な透かし画像を提供する。透かし画像を含む透かし画像信号をビデオ信号に埋め込んで、データをビデオのコピーから復元できるようにすることができる。透かしの存在だけで、ビデオが不正コピーであることを示すことができる。更に、透かしは、映画がコピーされた場所(例えば、映画がどの映画館からコピーされたか)、又は映画がコピーされた時間枠を示す追加情報を含むことができる。
【0034】
デジタル透かしは、透かし画像シーケンス(例えば、インタリーブされた透かし画像55a及び55bのシーケンス)が生成されるように、バイナリビットストリームに従ってデジタル透かし画像を変化させることによって、バイナリデータとしてビデオ信号に埋め込むことができる。透かし画像は、ビットストリームによって変調することができる。透かし画像シーケンスの各フレームは、1つ以上のデータビットを表すことができ、透かし画像55aはゼロを表し、デジタル透かし画像55bは1を表す(又はその逆)。透かし画像を一時的に変調することによって、映画のコピーから透かしを抽出する方法が可能になる。
【0035】
幾つかの実施形態では、透かし画像は、その極性を変更することによって変調される固定画像であってもよい(透かし画像55a及び55bによって示されるように)。例えば、図3A及び図3Bは、例示的な透かし(透かし画像55a及び55b)の2つの極性を示す。具体的には、図3Aは、正の極性などの第1極性を有する透かし55aを示し、図3Bは、負の極性などの第2極性を有する透かし55bを示す。透かし画像信号は、透かし画像シーケンス内の各フレームについて、第1極性と第2極性との間で極性を変更することによって、透かし画像を変調してもよい。例えば、映画の第1フレームでは、「1」のデータビットは、映画フレームにいくらかの正の強度(透かし画像55a)を加えることができる。映画の第2フレームでは、「0」のデータビットは、いくらかの負の強度(透かし画像55b)を加えることができる。このプロセスは、データビットに従って、フレームごとに透かし画像55a及び55bに正及び負の量の強度を加えることによって、データビットストリームを埋め込むことを、映画シーケンスに対して繰り返してもよい。他の実施形態では、透かしは、実際の映画画像に関連し、極性を変更することによって変調されるか、又は何らかの他の方法によって変調される可能性がある動画のシーケンスであってもよい。更に、他の実施形態では、透かしは、固定画像と動画の組み合わせであってもよい。
【0036】
前述のように、有効な透かしの重要な特性は、透かし画像の強度(例えば、変調された透かし画像の埋め込みから生じる映画又は他の画像における輝度変化)である。透かしが強すぎると、視聴者に見えるか、又はちらつき効果(ウォーターマークの極性が変調されるため、映画の輝度が連続フレームにおいて明るくなったり暗くなったりする)が生じる。透かしが弱すぎると、不正コピーを識別するために必要なデータを復元して取得することが困難になる。従って、透かし又はちらつき効果を見ることができる人の能力の直ぐ下である強度を持つ透かしを生成することが望ましい。透かしが適用される動画のシーケンスにおける動きは、透かし又はちらつき効果を認識する人の能力を低下させる可能性があることに留意されたい。人が透かしを見始める可能性があるレベルは、臨界レベル、又は変調された透かしの臨界変調レベルと呼ばれることがある。臨界変調レベルは、透かしを設計する際に重要な考慮事項である。有効な透かしは、臨界レベルに近づくが、臨界レベル未満にとどまる強度を有するべきである。
【0037】
幾つかの実施形態では、輝度範囲にわたる透かしの臨界レベルは、量子化輝度レベル符号化関数、この場合はPQ輝度レベル符号化関数35と同様の曲線に従う。従って、量子化輝度レベル符号化関数35は、透かし信号が適切な臨界レベルに近づくように、透かしの強度を決定するためのガイドとして使用することができる。特に、透かしの強度は、量子化輝度レベル符号化関数35に比例して調整することができる。例えば、透かしの強度は、所定の量子化ステップ数である少なくとも1つの重み付け係数によって調整することができる。量子化された輝度レベル符号化関数35に比例する関数を適用することによって透かし信号の強度を調整することにより、より広い範囲の輝度値にわたって臨界レベルに近づく透かしレベルを生成するより単純なシステムが得られる。言い換えれば、PQ輝度関数のステップサイズに比例して透かし信号の強度を調整することにより、より効果的な透かし及びより広い輝度範囲にわたって効果的な透かしが得られる。
【0038】
図4は、一連の元の視覚画像を含む元の画像(ビデオ)信号と共に使用するためのデジタル透かしを生成する方法100を示す。方法100は、電子プロセッサを有する1つ以上の制御部によって実行することができる。方法100は、一連の元の視覚画像を含む元の画像(ビデオ)信号を受信するステップを含み、元の画像(ビデオ)信号は輝度レベル符号化伝達関数を使用して符号化される(ステップ110)。元の画像(ビデオ)信号は、人間の目に知覚可能な一連の元の視覚画像を含む映画又はビデオであってもよい。元の画像(ビデオ)信号は、PQ伝達関数を使用して輝度符号化されてもよい。方法100は、透かし画像を含む透かし画像信号を受信するステップを更に含む(ステップ115)。透かし画像は、幾何学的形状、記号、単語、又は視覚作品の識別に役立つ他の識別可能なマークであってもよい。幾つかの実施形態では、透かし画像は、一定の形状を保持する固定画像である。他の実施形態では、透かし画像は、透かしが相対位置をシフトするか又は形状を変化させる一連の動画像である。他の実施形態では、透かし画像は、元の画像シーケンスに関連する画像シーケンスである。方法100は、所定の量子化輝度レベル符号化ステップ数に比例して透かし画像の強度を調整するステップを更に含む(120)。幾つかの実施形態では、透かし画像の強度は、所定のPQステップ数に比例して調整することができる。透かしの強度は、透かし信号の振幅を調整することによって調整することができる。
【0039】
幾つかの実施形態では、透かしは、局所レベルで調整及び/又は変調することができる。例えば、透かしの強度は、ピクセルごとに調整されるので、各ピクセルが独立して調整できる。別の例として、透かしの極性は、ピクセルごとに調整することができる。
【0040】
図2に戻ると、透かしの強度は、PQ輝度レベル符号化関数35に作用する重み付け係数に基づいて調整されるので、輝度範囲にわたり透かしの強度がPQ輝度レベル符号化関数35に比例するようにすることができる。例えば、重み付け係数は、所定のPQステップ数に設定することができる。PQ輝度レベル符号化関数は臨界レベルと同様の曲線をたどるので、重み付け係数も輝度範囲にわたって臨界レベルにほぼ比例し、従って輝度範囲にわたって臨界レベルに近づくという目標を達成する。更に、重み付け係数をPQ輝度レベル符号化関数35に基づくことによって、透かしは、HDR画像のようなより広い輝度範囲にわたって効果的に調整することができる。例えば、幾つかの実施形態では、透かし強度は、0.001ニトから1000ニトの輝度範囲にわたって所定のPQステップ数に比例して調整することができる。別の例として、幾つかの他の実施形態では、透かし強度は、0.0001ニトから1万ニトの輝度範囲にわたって所定のPQステップ数により調整することができる。他の実施形態では、透かし強度は、0.01ニトから50ニトの輝度範囲にわたって所定のPQステップ数により調整することができる。幾つかの他の実施形態では、透かし強度は、約0.0ニトから100ニトの輝度範囲にわたって所定のPQステップ数により調整することができる。一方、ガンマ関数などのSDR画像に使用される符号化関数に基づく重み付け係数は、輝度範囲にわたってPQステップサイズ又は臨界レベルに比例する強度の透かしを生成しない。従って、ガンマ伝達関数などの関数に基づく重み付け係数は、輝度範囲のある部分にわたって強すぎる、又は輝度範囲の別の部分にわたって弱すぎる透かし強度を生成することができる。
【0041】
更に、透かしの強度は、静的力(static force)成分45及び運動力(motion force)成分50を含む重み付け係数によって調整することができる。例えば、透かしの強度は、式:f=sf+mfによって調整することができる。ここで、fは変調レベル(又は力)であり、sfは静的力成分であり、mfは運動力成分である。更に、幾つかの実施形態では、静的力成分45の重み付け係数は、所定数の量子化された輝度レベル符号化ステップであってもよい。透かしの静的力成分45は、常に存在してもよく、ムービー画像における動きのレベルとは独立であってもよい。例えば、静的力成分45は、変調レベルを臨界レベル未満に維持することによって、ムービー画像における動きのレベルに関係なく、不可視であってもよい。幾つかの実施形態では、静的力成分45は、一定に設定されてもよく、輝度範囲にわたる透かしの変調レベルは、PQステップ数、すなわち臨界レベルに比例する。
【0042】
重み付け係数の運動力成分50は、ムービー画像におけるフレーム間の動きに依存する。動きが透かしの可視性及びフリッカー効果を阻害するため、動きのある画像の領域では、より強い透かしが許容されてもよい。従って、ある領域にわたってより多くの動きが生じるほど、その領域における透かしはより強くなる。より大きな動きが許容される場合に、より強い透かしを適用するには、透かしの可視性を阻害する動きの強度を測定し、それに応じて透かしの強度を調整する必要がある。透かしの可視性を阻害する動きは、透かしの可視性に密接に関連する視覚特性を有するため、動きの強度は、輝度範囲にわたって臨界レベル及びPQステップサイズに比例する単位で測定されてもよい。同じ理由により、透かしの強度は、輝度範囲にわたって臨界レベル及びPQステップサイズに比例する単位で調整されてもよい。輝度範囲にわたる単位のサイズ決定は注目に値する。量は、人間の視覚の特性の輝度範囲にわたる感度に比例するように輝度範囲にわたってサイズを決定される単位で調整され、測定される。透かし画像シーケンスが可視性であるその特性は、臨界変調レベルの輝度範囲にわたる大きさによって表される。この単位のサイズ決定は、不可視である最強の透かしの生成を容易にし、単純化する。
【0043】
重み付け係数の運動力成分50は、ムービー画像の空間的及び時間的処理を含むことができる。静的力成分45と同様に、運動力成分50は、PQ輝度レベル符号化関数に基づいて調整することができる。特に、元の画像シーケンスの領域における測定された運動レベルに応じて、運動力成分50は、その領域において、PQ量子化輝度レベル符号化ステップに比例することができる。例えば、動きは、一連の画像における第1画像と一連の画像における第2画像との間のPQ量子化輝度レベル符号化ステップの変化として測定することができ、運動力成分50は、測定されたレベルに比例する量によって調整される。測定された動きをPQステップサイズに比例させ、重み付け係数の運動力成分50をPQステップサイズに比例させて調整することによって、動き及び運動力成分50は共に、輝度範囲にわたって関連する視覚特性をより良く表現する。最も強いが見えない透かしのために最適化する場合、運動力成分50の計算も単純化することができる。更に、動きはより容易に知覚的に測定され、変調はより容易に臨界変調レベルに比例して生成される。
【0044】
図5は、一連の元の視覚画像を含む元の画像(ビデオ)信号と共に使用するためのデジタル透かしを生成する別の例示的な方法200を示す。方法200は、電子プロセッサを有する1つ以上の制御部によって実行することができる。方法200は、方法100と同様のステップを幾つか含み、同様の方法ステップには同様の番号が付されている。方法200は、一連の元の視覚画像を含む元の画像(ビデオ)信号を受信するステップを含み、元の画像(ビデオ)信号は輝度レベル符号化伝達関数を使用して符号化される(ステップ210)。元の画像(ビデオ)信号は、人間の目に知覚可能な一連の元の視覚画像を含む映画又はビデオであってもよい。元の画像(ビデオ)信号は、PQ伝達関数を使用して輝度符号化されてもよい。方法200は、透かし画像を含む透かし画像信号を受信するステップを更に含む(ステップ215)。方法200は、透かし画像の極性を調整することによって透かし画像を変調するステップを含んでよい(ステップ217)。方法200は、所定の量子化輝度レベル符号化ステップ数に比例する重み付け係数によって透かし画像の強度を調整するステップを更に含む(ステップ220)。透かしの強度は、透かし信号の振幅を調整することによって調整することができる。特に、方法200は、第1所定PQステップ数である重み付け係数の静的力成分45を調整するステップ(ステップ222)と、第2PQステップ数に比例する重み付け係数の運動力成分50を調整するステップ(ステップ224)とを含むことができ、第2ステップ数は、第3PQステップ数で測定される画像の動きに関連し、ステップサイズが輝度範囲にわたって臨界変調レベルに比例するように、PQステップが利用される。方法200は、調整された透かし画像信号を元の画像(ビデオ)信号に埋め込み、埋め込み画像信号を生成するステップ(ステップ230)を更に含むことができる。方法200は、プロジェクタ、TV、コンピュータ、又はスマートデバイスなどの再生装置に埋め込み画像信号を送信するステップ(ステップ235)を含むこともできる。
【0045】
理解されるように、幾つかの実施形態では、これらのステップのうちの1つ以上を実行しなくてもよく、又は逆に、追加のステップを実行してもよい。更に、幾つかの実施形態では、1つ以上のステップを異なる順序で実行してもよく、又は同時に実行してもよい。記載される方法の変形は、本開示の残りの部分に従って実行してもよい。例えば、方法200は、調整された透かし信号を元の画像信号に埋め込むステップ(すなわち、ステップ230)を含まなくてもよい。むしろ、方法200は、元の画像信号を送信し、調整された透かし画像信号を別に送信するステップを含んでもよい。
【0046】
デジタル透かし方法を実行するための例示的なシステム
【0047】
図6から図9は、本明細書に記載の方法を実行するように構成された様々なシステムの概略図を提供する。これらの図は、様々な特徴が例示的な実施形態と生成された追加の実施形態との間で交換可能である例示的な実施形態であることを意図している。
【0048】
図6は、本明細書に開示された方法によるデジタル透かしを生成するためのシステム300を概略的に示す。システムは、外部メモリソース320及び再生装置330と通信する制御部310を含む。再生装置は、プロジェクタ、テレビ、コンピュータ、DVDプレイヤ、スマートデバイス、又は一連の視覚画像を表示することができる他の任意の装置であってもよい。再生装置は、1つ以上の画像送信装置350を有してもよい。制御部310は、一連の元の視覚画像を有する元の画像(ビデオ)信号及び透かし画像を有する透かし画像信号を外部メモリソース320から受信するように構成される。制御部310は、方法100及び200などのデジタル透かしを生成する方法を実行し、埋め込み画像信号を再生装置330に出力する。例えば、制御部310は、PQステップなどの所定量子化ステップ数に比例して透かしの強度を調整してもよい。次に、制御部310は、調整された透かし信号を元の画像(ビデオ)信号に埋め込み、埋め込み画像信号を再生装置330に出力してもよい。埋め込み画像信号は、次に、再生装置330によってスクリーン340に投影されてもよい。
【0049】
幾つかの実施形態では、制御部310は、制御ユニット内又は同じコンピューティング装置内の内部メモリから、元の画像(ビデオ)信号及び透かし画像信号の一方又は両方を受信してもよい。幾つかの実施形態では、制御部は、再生装置の一部であってもよいし、再生装置と一体であってもよい。従って、制御部は、埋め込み画像信号又は調整された透かし信号を常に再生装置に送信するとは限らない。更に、幾つかの実施形態では、制御部は、埋め込み画像信号を生成するために、調整された透かし信号を元の画像信号に埋め込まなくてもよい。むしろ、幾つかの実施形態では、制御部は、調整された透かし信号を生成し、元の画像信号及び調整された透かし画像信号の一方又は両方を再生装置に送信してもよい。同様に、再生装置は、埋め込み画像信号(すなわち、合成された元の画像信号と透かし画像信号)を常にスクリーンに送信するとは限らない。代わりに、再生装置は、元の画像信号及び調整された透かし画像信号をオーバーレイしてもよい。更に、幾つかの実施形態では、再生装置は、元の画像信号、調整された透かし画像信号、及び/又は埋め込み画像信号を送信するために、複数のプロジェクタ又は画像送信装置を含んでもよい。
【0050】
図7は、本明細書に開示された方法によるデジタル透かしを生成するための別のシステム400を概略的に示す。システムは、外部メモリソース420及び再生装置430と通信する制御部410を含む。再生装置は、プロジェクタ、テレビ、コンピュータ、DVDプレイヤ、スマートデバイス、又は一連の視覚画像を表示することができる他の任意の装置であってもよい。制御部410は、一連の元の視覚画像を有する元の画像(ビデオ)信号を外部メモリソース420から受信するように構成される。制御部410はまた、透かし画像を有する透かし画像信号を制御ユニット410内の内部メモリソースから受信する。制御部410は、方法100及び200などのデジタル透かしを生成する方法を実行し、埋め込み画像信号を再生装置430に出力する。例えば、制御部410は、PQステップなどの所定量子化ステップ数に比例して透かしの強度を調整してもよい。次に、制御部410は、調整された透かし信号を元の画像(ビデオ)信号に埋め込み、埋め込み画像信号を再生装置430に出力してもよい。埋め込み画像信号は、次に、再生装置430によってスクリーン440に投影されてもよい。
【0051】
図8は、本明細書に開示された方法によるデジタル透かしを生成するためのシステム500を概略的に示す。システムは、外部メモリソース520と通信する制御部510を含む。制御部510は、1つ以上の画像送信装置550を有する再生装置530の一部であってもよく、又はそれと一体であってもよい。例えば、制御部510は、再生装置530を少なくとも部分的に制御する別個の物理ユニットであってもよい。再生装置は、プロジェクタ、テレビ、コンピュータ、スマートデバイス、又は一連の視覚画像を表示することができる他の任意の装置であってもよい。制御部510は、一連の元の視覚画像を有する元の画像(ビデオ)信号及び透かし画像を有する透かし画像信号を外部メモリソース520から受信するように構成される。制御部510は、方法100及び200などのデジタル透かしを生成する方法を実行し、埋め込み画像信号を再生装置の画像送信装置550に出力する。例えば、制御部510は、PQステップなどの所定量子化ステップ数に比例して透かしの強度を調整してもよい。次に、制御部510は、調整された透かし信号を元の画像(ビデオ)信号に埋め込み、埋め込み画像信号を画像送信装置550に出力してもよい。埋め込み画像信号は、次に、画像送信装置550によってスクリーン540に投影されてもよい。
【0052】
図9は、本明細書に開示された方法によるデジタル透かしを生成するためのシステム600を概略的に示す。システムは、外部メモリソース620及び再生装置630と通信する制御部610を含む。再生装置は、プロジェクタ、テレビ、コンピュータ、DVDプレイヤ、スマートデバイス、又は一連の視覚画像を表示することができる他の任意の装置であってもよい。再生装置は、1つ以上の画像送信装置650を有してもよい。制御部610は、一連の元の視覚画像を有する元の画像(ビデオ)信号及び透かし画像を有する透かし画像信号を外部メモリソース620から受信するように構成される。制御部610は、方法100及び200などのデジタル透かしを生成する方法を実行して、調整された透かし信号を生成する。例えば、制御部610は、PQステップなどの所定量子化ステップ数に比例して透かしの強度を調整してもよい。次に、制御部610は、元の画像(ビデオ)信号及び調整された透かし画像信号を再生装置630に出力してもよい。図示された実施形態では、制御部610は、元の画像(ビデオ)信号及び調整された透かし画像信号を2つの別々の信号として出力してもよい。次に、制御部630は、元の画像(ビデオ)信号及び調整された透かし画像信号をスクリーン640に出力してもよい。例えば、再生装置630は、第1プロジェクタなどの第1画像送信装置650aを使用して、元の画像(ビデオ)信号をスクリーン640に投影してもよい。再生装置630は、第2プロジェクタなどの第2画像送信装置650bを使用して、調整された透かし画像信号をスクリーン640に投影してもよい。この実施形態では、投影された一連の元の画像及び投影された透かし画像を、スクリーン640上で重ね合わせることができる。
【0053】
上記のシステム及び方法は、透かしを生成及び調整することを可能にする。本開示に従ったシステム、方法及び装置は、以下の構成のうちの1つ以上を取り入れることができる。
【0054】
(1)デジタル透かし方法は、電子プロセッサによって、一連の元の視覚画像を含む元の画像信号を受信するステップであって、前記元の画像信号は、前記元の画像信号内にPQ輝度ステップを生じる知覚量子化器(PQ)輝度レベル符号化伝達関数を使用して符号化され、前記PQ輝度ステップは、輝度範囲にわたって変化するサイズを有する、ステップを含む。前記方法は、前記電子プロセッサによって、透かしを含む透かし画像信号を受信するステップと、所定の第1PQ輝度ステップ数である少なくとも第1重み付け係数によって前記透かしの強度を調整するステップとを更に含む。
【0055】
(2)透かし信号の強度を調整することは、透かし信号の振幅を調整することを含む、(1)に記載の方法。
【0056】
(3)前記輝度範囲が少なくとも0.001nitから1000nitに及ぶ、(1)又は(2)に記載の方法。
【0057】
(4)前記第1重み付け係数が、少なくとも0.01nitから50nitの輝度範囲にわたって前記所定の第1PQ輝度ステップ数である、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
【0058】
(5)前記第1重み付け係数は、静的力の重み付け係数を含み、前記方法は、第2重み付け係数によって前記透かしの強度を調整するステップであって、前記第2重み付け係数は、運動力の重み付け係数を含む、ステップ、を更に含む(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
【0059】
(6)前記第2重み付け係数は、第2PQ輝度ステップ数に比例する、(5)に記載の方法。
【0060】
(7)前記第2PQ輝度ステップ数は、前記一連の元の視覚画像における第1画像と、前記一連の元の視覚画像における第2画像との間のPQステップの変化に等しい、(6)に記載の方法。
【0061】
(8)前記調整された透かし信号を前記元のビデオ信号に埋め込んで、埋め込みビデオ信号を生成するステップであって、前記埋め込みビデオ信号は、一連のマークされた視覚画像を含む、ステップ、を更に含む(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
【0062】
(9)前記埋め込み画像信号を再生装置へ送信するステップ)、を更に含む(8)に記載の方法。
【0063】
(10)前記調整された透かし信号をスクリーン上へ送信するステップ)、を更に含む(1)~(9)のいずれかに記載の方法。
【0064】
(11)前記調整された透かし画像の極性を繰り返し変更することによって、前記調整された透かし画像を変調するステップ、を更に含む(1)~(10)のいずれかに記載の方法。
【0065】
(12)コンピュータ実行可能命令を格納している非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ実行可能命令は、1つ以上のプロセッサにより(1)に記載の方法を実行するためのものである、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【0066】
(13)デジタル透かし生成するシステムであって、前記システムは、
メモリと、
前記メモリに結合されプロセッサを含む制御部と、
を含み、前記プロセッサは、
一連の元の視覚画像を含む元の画像信号を受信し、前記元のビデオ信号は輝度範囲にわたって様々なPQ輝度ステップを生じる知覚量子化器(変化PQ)輝度レベル符号化伝達関数を用いて符号化され、
透かしを含む透かし画像信号を受信し、
所定の第1PQ輝度ステップ数である少なくとも1つの重み付け係数によって前記透かしの強度を調整する、
よう構成される、システム。
【0067】
(14)前記輝度範囲が少なくとも0.001nitから1000nitに及ぶ、(13)に記載のシステム。
【0068】
(15)前記第1重み付け係数は、静的力の重み付け係数を含み、前記プロセッサは、第2重み付け係数によって前記透かしの強度を調整するよう更に構成され、前記第2重み付け係数は、運動力の重み付け係数を含む、(13)又は(14)に記載のシステム。
【0069】
(16)前記第2PQ輝度ステップ数は、前記一連の元の視覚画像における第1画像と、前記一連の元の視覚画像における第2画像との間の量子化ステップの変化に等しい、(15)に記載のシステム。
【0070】
(17)前記制御部は、前記調整された透かし信号を前記元の画像信号に埋め込んで、埋め込み画像信号を生成するよう更に構成され、埋め込み画像信号は、一連のマークされた視覚画像を含む、(13)~(16)のいずれかに記載のシステム。
【0071】
本明細書に記載の実施形態の様々な特徴及び利点は、以下の請求項に記載される。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】