(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】水係合装置アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B63B 39/06 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B63B39/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506904
(86)(22)【出願日】2022-07-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 US2022038964
(87)【国際公開番号】W WO2023014621
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523030968
【氏名又は名称】シーキーパー, インク.
【氏名又は名称原語表記】Seakeeper, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ギャラガー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】センプレヴィヴォ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】アダムス,ジョン
(57)【要約】
船舶に接続されるように適合された支持構造に接続された回転アクチュエータを含む水係合アクチュエータシステム及び装置を提供する。回転アクチュエータは、被駆動シャフトと、被駆動シャフトと対向して配置された非被駆動スレーブシャフトとを含む。回転アクチュエータは更に、シールされた清浄環境内に封入された少なくとも1対のベアリングと、被駆動シャフトに接続された弧状ブレードを有する水係合装置と、非被駆動スレーブシャフトを被駆動シャフトから隔てている空間に配置された少なくとも1つのエンコーダと、を含む。コントローラが回転アクチュエータと通信接続されており、この通信接続は、船舶の動的アクティブ制御を行うために、水係合装置が格納位置と展開位置との間の位置まで自動的に動くように被駆動シャフトが回転することをコントローラが命令するために行われている。回転アクチュエータは更に、回転シャフトシールが2つ以下である船舶から発生する流体力学的ドラグ負荷を吸収し、弧状ブレードを(100mm/秒以上で)水中に自動的に展開することによって起こる意図せぬ外乱を相殺し、船舶の動的アクティブ制御を行うように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に接続されるように適合された支持構造に接続された回転アクチュエータであって、前記回転アクチュエータは、前記回転アクチュエータの長手軸が前記船舶の長手軸に垂直に配置されるように前記支持構造に接続されており、前記回転アクチュエータは被駆動シャフトを含む、前記回転アクチュエータと、
前記被駆動シャフトに接続された水係合装置と、
前記回転アクチュエータと通信接続されているコントローラであって、前記通信接続は、前記船舶の動的アクティブ制御を行うために、前記水係合装置が格納位置と展開位置との間の位置まで自動的に動くように前記被駆動シャフトが回転することを前記コントローラが命令するために行われている、前記コントローラと、
を含む水係合装置アクチュエータシステム。
【請求項2】
前記水係合装置は弧状ブレードである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記弧状ブレードは凹形弧状ブレードである、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記水係合装置の前記展開によって発生する流体力学的力同士が前記被駆動シャフトの回転中心で交差する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記回転アクチュエータは更に、前記被駆動シャフトと対向して配置された非被駆動スレーブシャフトを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記回転アクチュエータは更に、前記非被駆動スレーブシャフトを前記被駆動シャフトから隔てている空間に配置された少なくとも1つのエンコーダを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記回転アクチュエータは更に、シールされた清浄環境内に封入された少なくとも1対のベアリングを含み、
前記回転アクチュエータは更に、回転シャフトシールが2つ以下である前記船舶から発生する流体力学的ドラグ負荷を吸収するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記支持機構は、前記船舶の水線より上又は下に設置可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは更に、前記回転アクチュエータが故障するか作動しなくなると前記水係合装置が前記格納位置に動くように前記回転アクチュエータが回転することを前記回転アクチュエータに命令するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記回転アクチュエータは、前記水係合装置を100mm/秒以上の速度で展開することを可能にするように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
船舶に接続されるように適合された支持構造のアクチュエータプレートとシールプレートとの間に配置された回転アクチュエータであって、前記回転アクチュエータは、前記回転アクチュエータの長手軸が前記船舶の長手軸に垂直に配置されるように配置されており、前記回転アクチュエータは被駆動シャフトを含む、前記回転アクチュエータと、
前記被駆動シャフトに接続された弧状ブレードを有する水係合装置と、
前記回転アクチュエータと通信接続されているコントローラであって、前記通信接続は、前記船舶の動的アクティブ制御を行うために、前記水係合装置が格納位置と展開位置との間の位置まで自動的に動くように前記被駆動シャフトが回転することを前記コントローラが命令するために行われている、前記コントローラと、
を含む水係合装置。
【請求項12】
前記弧状ブレードは凹形弧状ブレードである、請求項11に記載の水係合装置。
【請求項13】
前記水係合装置の前記展開によって発生する流体力学的力同士が前記被駆動シャフトの回転中心で交差する、請求項11に記載の水係合装置。
【請求項14】
前記回転アクチュエータは更に、前記被駆動シャフトと対向して配置された非被駆動スレーブシャフトを含む、請求項11に記載の水係合装置。
【請求項15】
前記回転アクチュエータは更に、前記非被駆動スレーブシャフトを前記被駆動シャフトから隔てている空間に配置された少なくとも1つのエンコーダを含む、請求項14に記載の水係合装置。
【請求項16】
前記回転アクチュエータは更に、シールされた清浄環境内に封入された少なくとも1対のベアリングを含み、
前記回転アクチュエータは更に、回転シャフトシールが2つ以下である前記船舶から発生する流体力学的ドラグ負荷を吸収するように構成されている、
請求項11に記載の水係合装置。
【請求項17】
前記支持機構は、前記船舶の水線より上又は下に設置可能である、請求項11に記載の水係合装置。
【請求項18】
前記コントローラは更に、前記回転アクチュエータが故障するか作動しなくなると前記水係合装置が前記格納位置に動くように前記回転アクチュエータが回転することを前記回転アクチュエータに命令するように構成されている、請求項11に記載の水係合装置。
【請求項19】
前記回転アクチュエータは、前記水係合装置を100mm/秒以上の速度で展開することを可能にするように構成されている、請求項11に記載の水係合装置。
【請求項20】
前記回転アクチュエータは更に、
前記被駆動シャフトの第1の端部及び第2の端部において、それぞれ前記被駆動シャフトと一体化された第1のアクチュエータアーム及び第2のアクチュエータアーム
を含み、
前記第1のアクチュエータアーム及び前記第2のアクチュエータアームは、前記回転アクチュエータから、前記回転アクチュエータの前記長手軸に垂直な平面上を半径方向に延びている、
請求項11に記載の水係合装置。
【請求項21】
前記弧状ブレードは、前記第1のアクチュエータアーム及び前記第2のアクチュエータアームを介して前記回転アクチュエータに回転可能に接続されている、請求項20に記載の水係合装置。
【請求項22】
船舶に接続されるように適合された支持構造に接続された回転アクチュエータであって、前記回転アクチュエータは、前記回転アクチュエータの長手軸が前記船舶の長手軸に垂直に配置されるように前記支持構造に接続されており、前記回転アクチュエータは、被駆動シャフトと、前記被駆動シャフトと対向して配置された非被駆動スレーブシャフトとを含む、前記回転アクチュエータ
を含み、
前記回転アクチュエータは更に、シールされた清浄環境内に封入された少なくとも1対のベアリングを含み、
前記被駆動シャフトに接続された弧状ブレードを有する水係合装置と、
前記非被駆動スレーブシャフトを前記被駆動シャフトから隔てている空間に配置された少なくとも1つのエンコーダと、
前記回転アクチュエータと通信接続されているコントローラであって、前記通信接続は、前記船舶の動的アクティブ制御を行うために、前記水係合装置が格納位置と展開位置との間の位置まで自動的に動くように前記被駆動シャフトが回転することを前記コントローラが命令するために行われている、前記コントローラと、
を含み、
前記回転アクチュエータは更に、回転シャフトシールが2つ以下である前記船舶から発生する流体力学的ドラグ負荷を吸収するように構成されており、
前記回転アクチュエータは、前記弧状ブレードを水中に自動的に展開することによって起こる意図せぬ外乱を相殺し、船舶の動的アクティブ制御を行うように構成されている、
船舶。
【請求項23】
前記回転アクチュエータは、前記弧状ブレードを100mm/秒以上の速度で展開することを可能にするように構成されている、請求項22に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年7月29日に出願された米国特許非仮出願第17/877,785号、並びに2021年8月6日に出願された米国特許仮出願第63/230,253号の利益及び優先権を主張するものであり、これらの内容は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、全般的には、船舶の運動の最適性能及び動的アクティブ制御(DAC)を実現する、改良された水係合システム及び装置に関する。特に、本開示は、回転アクチュエータを有する水係合装置アクチュエータを対象とし、これは、船舶の動的アクティブ制御を最適化し、同時に船舶のそのような動的アクティブ制御に必要な電力消費を最小化するために、弧状ブレードの水平マウント及び高速展開を行うように構成及び有効化されている。
【背景技術】
【0003】
船舶安定化の業界では、以下の用語及び関連付けられた定義が用いられている。「トリム制御」は、船舶の、幅方向軸(ピッチ軸)を中心とする(1秒以上にわたって平均される)平均角度の制御を意味する。「リスト制御」又は「ロール制御」は、船舶の、長手方向軸(ロール軸)を中心とする(1秒以上にわたって平均される)平均角度の制御を意味する。「ヨー制御」は、船舶の、ヨー軸を中心とする(1秒以上にわたって平均される)平均角度の制御を意味する。「水係合装置(WED)」は、船舶が特定方向(又は前方)に進んでいるときの船舶のトランサム面の下又は近くの水流との又は水流中への装置の選択的係合によって、又は船舶が前方に進んでいる間の水流に対する装置の迎角を変化させることによって、船舶において可変量のリフトを発生させるように構成された機械式又は電気機械式の装置を意味する。WEDは、本明細書に開示のシステムにおいてはコントローラと呼ばれることもあり、コントローラ及び/又はWEDへのいかなる参照も同じ装置を意味する。WEDデルタ位置は、左舷WEDの展開と右舷WEDの展開との差として定義される。「展開(deployment)」は、水流との又は水流中へのWEDの選択的係合、又はWED迎角の変化を意味する。船舶におけるロールモーメントは、船舶の長手方向軸(ロール軸)を中心として船舶を回転させる力が船舶に印加された結果である。船舶におけるピッチモーメントは、船舶の幅方向軸(ピッチ軸)を中心として船舶を回転させる力が船舶に印加された結果である。船舶におけるヨーモーメントは、船舶の垂直方向軸(ヨー軸)を中心として船舶を回転させる力が船舶に印加された結果である。例えば、(1)「ロールモーメント」は、船舶において左舷WEDと右舷WEDとが非対称に展開され、それが船舶をロールさせうる場合に発生しうる。(2)「ヨーモーメント」は、左舷WEDと右舷WEDとが非対称に展開され、それが船首方位の変化を引き起こしうる場合に発生しうる。(3)「ピッチモーメント」は、左舷WEDと右舷WEDとが対称に展開された場合、又は、船舶の中心を中心として単一WEDが展開され、それが船舶をピッチさせうる場合に発生しうる。
【0004】
WEDは、本明細書に開示のシステムにおいてはコントローラと呼ばれ、コントローラ及び/又はWEDへのいかなる参照も同じ装置を意味する。WEDデルタ位置は、左舷WEDの展開と右舷WEDの展開との差として定義される。「展開(deployment)」は、水流との又は水流中へのWEDの選択的係合、又はWED迎角の変化を意味する。船舶におけるロールモーメントは、船舶の長手方向軸(ロール軸)を中心として船舶を回転させる力が船舶に印加された結果である。船舶におけるピッチモーメントは、船舶の幅方向軸(ピッチ軸)を中心として船舶を回転させる力が船舶に印加された結果である。船舶におけるヨーモーメントは、船舶の垂直方向軸(ヨー軸)を中心として船舶を回転させる力が船舶に印加された結果である。
【0005】
「ロールモーメント」は、船舶において左舷WEDと右舷WEDとが非対称に展開され、それが船舶をロールさせうる場合に発生しうる。「ヨーモーメント」は、左舷WEDと右舷WEDとが非対称に展開され、それが船首方位の変化を引き起こしうる場合に発生しうる。「ピッチモーメント」は、左舷WEDと右舷WEDとが対称に展開された場合、又は、船舶の中心を中心として単一WEDが展開され、それが船舶をピッチさせうる場合に発生しうる。
【0006】
従来の船舶安定化技法は、WEDを均等に展開して、連続的なリフトを発生させることを可能にし、同時に、船舶のトリム角度及びリスト角度を調節することを可能にする。市販のWEDの2、3の例として(これは全く網羅的と見なされるべきではない)、同様に係合して同様の機能性を実現することが可能なインタセプタ、トリムタブ、及びフィン、並びに他の同様の装置がある。船舶安定化技術は、船舶がランダムな環境誘発外乱を伴わずに水上クルーズの楽しさを味わう上で重要である。そのような外乱(例えば、急な予期せぬロール)によって、乗船者が不快さ及び混乱を感じる可能性がある。
【0007】
既存の先行技術システムでは、WEDは、船舶をロール軸及びピッチ軸における平均角度に持っていくようにリスト及びトリムを制御するように設計及び構成されている。レジャー市場で使用される小さめの船舶は一般に、手動でアクチュエートされるWEDを有し、一方、商用区域で運航される大きめの船舶は、運動を安定化するために、自動でアクチュエートされるシステムを使用する。しかしながら、そのような先行技術システムは一般に高出力の装置であり、WEDの高速展開(100mm/秒以上の展開速度)を達成するためにトランサムに設置するには、特定の最低限の垂直方向高さ要件がある。
図4に示すように、特定の最低限の垂直方向高さを有して船舶のトランサムに設置される直線アクチュエーションシステムを後で示す。(本明細書に開示のWEDの展開による)DACは、船舶のロール軸、ピッチ軸、及びヨー軸における加速度、レート、及び角度を同時に制御するように構成されている。
【0008】
アクチュエータの従来式の高速直線運動は、防水シールを達成することに関しては困難である。その主な原因は、シールが行われるシャフト表面が絶えず変わること、並びに、シャフト表面上又はシール上に海中生物が付着した場合はこすり取る必要があることである。更に、シャフトの一部をシールされた清浄環境から汚れのある塩水環境に動かす必要がある。(本明細書に開示のように)高速直線運動シールではなく高速回転運動防水を行うほうが格段に経済的であり、それは、常に同じシャフト表面をシールするからである。
【0009】
現在利用可能なレジャー用及び商用の、直線油圧アクチュエータを使用するフィンロール安定化システムには多くの欠点がある。例えば、WEDを展開するアクチュエータが、ほぼ常に船舶の内部に位置する。アクチュエータの動作中に何らかのシール故障に伴って油圧オイルが漏れても、アクチュエータが船舶の内部に位置することにより、オイルが水中(例えば、海中)に出ていくことはない。ほとんどの従来式アクチュエータは、シール故障によって電気モータが損傷しないように、電気式直線アクチュエータが船舶の内部に位置するように構成されている。即ち、従来式のWEDアクチュエータでは、WEDは必ず直線アクチュエータ及び/又は直線シャフトシールを伴う。本明細書に開示のWEDアクチュエータは、高速アクチュエータが船舶の外部にマウントされることを可能にしており、これによって設置の課題及びそれに伴うコストが大幅に軽減される。
【0010】
(本明細書に開示のように)凹形弧状ブレードを有する回転アクチュエータを使用するWEDアクチュエータは、先行技術のWEDアクチュエータシステムの様々な欠点に対処することが可能であり、例えば、現在利用可能な最高速のレジャー用船舶安定性制御システムより大幅に短時間で(100mm/秒以上の展開/格納速度で)WEDを展開することが可能であり、これに限定されない。このWEDアクチュエータは、限られた数のシャフトシールを有する、シールされた清浄環境においてWEDと弧状ブレード及び複数のベアリングとを結合することにより、電力の大幅な節約を実現する。
【0011】
本開示は、船舶の動的アクティブ制御(DAC)の実現のために、直線シャフトシールなしでWEDの高速展開(100mm/秒以上の展開速度)を可能にする、ユニークな設計及び構成の回転アクチュエータを有するWEDアクチュエータを対象とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来の技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
水係合装置アクチュエータシステムがアクチュエータアセンブリを含み、アクチュエータアセンブリは、船舶に接続されるように適合された支持構造に接続された回転アクチュエータであって、回転アクチュエータの長手軸が船舶の長手軸に垂直に配置されるように支持構造に接続された回転アクチュエータを含む。回転アクチュエータは、被駆動シャフトと、被駆動シャフトと対向する非被駆動スレーブシャフトとを含む。水係合装置が被駆動シャフトに接続されており、コントローラが回転アクチュエータと通信接続されており、この通信接続は、船舶の動的アクティブ制御を行うために、水係合装置が格納位置と展開位置との間の位置まで自動的に動くように被駆動シャフトが回転することをコントローラが命令するために行われている。
【0014】
弧状ブレードを含む水係合装置が被駆動シャフトに接続されており、非被駆動スレーブシャフトを被駆動シャフトから隔てている空間に少なくとも1つのエンコーダが配置されている。別の実施形態では、弧状ブレードは凹形弧状ブレードである。コントローラは回転アクチュエータと通信接続されており、コントローラは、船舶の動的アクティブ制御を行うために、水係合装置が格納位置と展開位置との間の位置まで自動的に動くように被駆動シャフトが回転することを命令するように構成されている。回転アクチュエータは更に、回転シャフトシールが2つ以下である船舶から発生する流体力学的ドラグ負荷を吸収するように構成されている。更に、回転アクチュエータは、弧状ブレードを100mm/秒以上で水中に自動的に展開することによって起こる意図せぬ外乱を相殺し、船舶の動的アクティブ制御を行うように構成されている。
【0015】
アクチュエータアセンブリは回転シャフトシールを含み、回転シャフトシールは、容易なマウント、並びに船舶の動的アクティブ制御のための水係合装置の垂直方向の高速展開が行われるように構成されている。回転アクチュエータは、船舶に接続されるように適合された支持構造のアクチュエータプレートとシールプレートとの間に、回転アクチュエータの長手軸が船舶の長手軸と垂直になるように配置されている。支持構造は、シールプレート及びアクチュエータプレートに加えて、ウェッジパック及びトランサムプレートを含み、これらの構成要素は、船舶運航中の水係合装置(弧状ブレード)の格納及び展開を構造的に支持するために互いに接続されている。水係合装置アクチュエータ(回転アクチュエータ)に接続された水係合装置(弧状ブレード)は、シールされた清浄環境内に封入された少なくとも1対のベアリングを含む。
【0016】
上述のように、又、後で詳述するように、水係合装置アクチュエータアセンブリ(具体的には回転アクチュエータ)は更に、回転シャフトシールが2つ以下である船舶から発生する流体力学的ドラグ負荷を吸収するように構成されている。支持構造は、船舶の水線より上又は下に設置可能であり、弧状ブレードの展開によって発生する流体力学的力同士が回転アクチュエータの被駆動シャフトの回転中心で交差するように設置可能であり、これについては後で更に詳述する。コントローラは更に、回転アクチュエータが故障するか作動しなくなると水係合装置が格納位置に動くように回転アクチュエータが回転することを回転アクチュエータに命令するように構成されている。回転アクチュエータは更に、第1のアクチュエータアーム及び第2のアクチュエータアームがそれぞれ被駆動シャフトの第1の端部及び第2の端部において被駆動シャフトと一体化されており、第1のアクチュエータアーム及び第2のアクチュエータアームは、回転アクチュエータから、回転アクチュエータの長手軸に垂直な平面上を半径方向に延びている。別の実施形態では、第1のアクチュエータアーム及び第2のアクチュエータアームは更に、水係合装置又は回転アクチュエータアセンブリ内のブレード支持アーム又は他の同等の構造に接続されている。弧状ブレードは、第1のアクチュエータアーム及び第2のアクチュエータアームを介して回転アクチュエータに回転可能に接続されており、WEDAシステムは、弧状ブレードを100mm/秒以上で水中に展開する。
【0017】
船舶のトランサムに設置されたWEDAは、ブレードにかかる力に伴う流体力学的損失に打ち勝つために特に電力を必要としない。弧状ブレードは、回転アクチュエータの円筒ボディから半径方向に延びているアクチュエータアームを介してアクチュエータに回転可能に接続されており、少なくとも一部分がシールプレートの前方に取り付けられて配置されている。後の詳細開示で更に述べるように、弧状ブレードは更に、モールド成型された側部シールドをブレードとともに1つのアセンブリとして有するように構成されている。ブレードは更に、業界標準の留め具(例えば、ボルト)を使用してアクチュエータアームに接続されて(留められて)固定されて、張力がかかるように配置されている。本明細書に開示の装置は、WEDAの他の構成要素及び/又は船舶のエンジンの中に水が噴霧として入り込まないように設計されている。回転アクチュエータは更に、弧状ブレードの容易な水平方向マウント及び垂直方向展開を可能にするように構成されている。回転アクチュエータは、船舶の運航中に、船舶の運動における意図せぬ外乱を相殺するために、水係合装置(弧状ブレード)を支持機構に対して、完全(又は部分的)に展開された位置と完全(又は部分的)に格納された位置との間で枢動させるように構成されている。
【0018】
特定の実施形態を図面に示す。しかしながら、当然のこととして、本開示は、添付図面に示された構成及び手段に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】船舶安定化に使用される従来の一般的な直線アクチュエーションシステムを示す。
【
図2】本開示の一態様による、船舶のトランサムの前面図を示しており、船舶のトランサムに設置された2つの水係合装置アクチュエータが描かれている。
【
図3】本開示の一態様による水係合装置(弧状ブレード)の完全展開状態及び完全格納状態を、船舶の動きによって起こる水流と関連付けて示す。
【
図4C】本開示の一態様による水係合装置アクチュエータアセンブリの斜視(分解)図及び断面図を示す。
【
図5】本開示の一態様による、船舶のトランサムに沿って接続されるように組み立てられた水係合装置アクチュエータを示す。
【
図6】本開示の一態様による、最小限の摩擦損失で流体力学的ドラグ負荷を吸収するために水係合装置アクチュエータで使用される機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に開示の原理の推進及び理解のために、ここからは、図面に示された好ましい実施形態を参照し、その実施形態を具体的な言葉で説明していく。本開示に開示の実施形態は、新規であり改良された水係合装置アクチュエータアセンブリ(WEDA1000)を提供する。これについて
図1~6を参照して説明する。更に、水係合装置アクチュエータアセンブリの好ましい実施形態及び代替実施形態を開示する。
【0021】
図1は、船舶安定化に使用される従来の一般的な直線アクチュエーションシステムである。
図2は、本開示の一態様による、船舶のトランサムの前面図を示しており、船舶のトランサムに設置された2つの水係合装置アクチュエータが描かれている。
図3は、本開示の一態様による、船舶の動きによって起こる水流に関連する、水係合装置(弧状ブレード500)の展開状態及び格納状態を示す。
図3では、弧状ブレード500は、完全に伸展された(展開された)状態と、完全に格納された状態とで示されている。
【0022】
図4A~Cは、本発明の好ましい実施形態による水係合装置アクチュエータアセンブリ(WEDA1000)の(分解)斜視図及び断面図を示しており、WEDA1000は、船舶2000のトランサムに取り付けられるように構成されている。本明細書に開示のWEDA1000は、船尾のほぼ垂直な面に取り付けられるように構成されており、船舶2000の船尾のトランサムエッジに沿って、その垂直面の横幅の一部分に沿って延びるように取り付けられるように構成されている。
図4A~Cは、本開示の一実施形態による1つのWEDAを示している。しかしながら、本発明は、そのような数だけに限定されないことに注意されたい。本発明は、用途のニーズに応じて、例えば、
図2に示すように、2つ、3つ、又はそれ以上のWEDAにより実施されてよい。一態様では、船舶2000は、少なくとも1対のWEDAを含んでよく、
図2に示すように、1つの回転アクチュエータ800が船舶2000の左舷側に配置され、1つの回転アクチュエータ800が右舷側に配置されてよい。この2つのWEDA(2つの回転アクチュエータ)は、直列にアクチュエートされてよい。つまり、各回転アクチュエータ800は、任意の時点で同様にアクチュエートされてよい。代替として、各回転アクチュエータ800は、船舶2000の動的アクティブ制御を行うために個別にアクチュエートされてよい。
【0023】
図4A~Cに示すように、水係合装置アクチュエータアセンブリ1000は、回転アクチュエータ800、弧状ブレード500を支持構造とともに含み(支持構造は、シールプレート600、アクチュエータプレート300、ウェッジパック400、トランサムプレート700を含む)、支持構造は、(回転アクチュエータ800及び弧状ブレード500を含む)WEDAアセンブリ1000を船舶2000のトランサムに設置するために使用されている。図示のように、回転アクチュエータ500は、船舶2000に接続されるように適合された支持構造のアクチュエータプレート300とシールプレート600との間に、回転アクチュエータ500の長手軸が船舶2000の長手軸と垂直になるように配置されている。凹形弧状ブレードとして成形された弧状ブレード500は、回転アクチュエータ800の被駆動シャフトに接続されている。回転アクチュエータ800は更に、被駆動シャフトと、被駆動シャフトと対向する非被駆動スレーブシャフトとを含む。コントローラが回転アクチュエータ800と通信接続されており、この通信接続は、(
図3に示すように)船舶2000の動的アクティブ制御を行うために、弧状ブレード500が格納位置と展開位置との間の位置まで自動的に動くように被駆動シャフトが回転することをコントローラが命令するために行われている。
【0024】
WEDA1000(具体的には回転アクチュエータ800)は、弧状ブレード500の展開によって発生する流体力学的力同士が被駆動シャフトの回転中心で交差するように構成及び設置されている。上述のように、回転アクチュエータ800は更に、被駆動シャフトと対向して配置された非被駆動スレーブシャフトと、非被駆動スレーブシャフトを回転アクチュエータ800の被駆動シャフトから隔てている空間に配置された少なくとも1つのエンコーダとを含む。図示のように、回転アクチュエータ800は更に、シールされた清浄環境内に封入された少なくとも1対のベアリングを含み、回転アクチュエータ800は更に、回転シャフトシールが2つ以下である船舶から発生する流体力学的ドラグ負荷を吸収するように構成されている。回転アクチュエータ800は更に、(トルクアームとも呼ばれる)第1のアクチュエータアーム803及び第2のアクチュエータアーム806がそれぞれ被駆動シャフトの第1の端部及び第2の端部において被駆動シャフトと一体化されており、第1のアクチュエータアーム803及び第2のアクチュエータアーム806は、回転アクチュエータ800から、回転アクチュエータ800の長手軸に垂直な平面上を半径方向に延びている。更に図示のように、弧状ブレード500は、第1のアクチュエータアーム803及び第2のアクチュエータアーム806を介して回転アクチュエータに回転可能に接続されている。
【0025】
WEDA1000は、1つ以上のコントローラ(例えば、埋め込みプロセッサベースのソフトウェアモジュール)と通信結合されており、これらのコントローラは、アクチュエータ800を制御して、水係合装置(弧状ブレード500)を、
図3に示すように、展開状態と格納状態との間で移行させるように構成されている。回転アクチュエータ800と通信接続されたコントローラ/ソフトウェアモジュールは、3軸全てにおける船舶の様々な運動を学習、捕捉、特定、及び/又は予測し、船舶のピッチ運動、ロール運動、及びヨー運動を相殺するためのブレード500の高速展開を命令し、船舶全体のピッチ軸制御を行うために、独自の慣性センシングハードウェア及びソフトウェアにより構成されてよい。回転アクチュエータ800は、速度入力、操舵入力、センサ入力等のような様々な入力信号に基づいて船舶の動的アクティブ制御を行うように自動的に動作してよい。更に、船舶の運転者は、回転アクチュエータ800と通信接続された操作パネルから、船舶の機能(トリム、操舵等)を操作することも可能である。
【0026】
図4A~Cを再度参照すると、弧状ブレード500は回転アクチュエータ800によって枢動可能であるように構成されており、船舶運航中の弧状ブレード500の完全(又は部分的)展開及び/又は完全(又は部分的)格納を支持するために、支持構造の様々な構成要素が互いに固定的に接続されている。例えば、トランサムプレート700は、前面が船舶2000に接続されるように適合されている。又、アクチュエータプレート300には、前面と、前面から延びているフランジとがあり、フランジは、トランサムプレート700の底部側の下に配置されるように構成及び成形されている。アクチュエータプレート300をトランサムプレート700に接続するために、クランプアセンブリが、トランサムプレート700をアクチュエータプレート300と係合させるように構成されてよい。支持構造の構成要素は、回転アクチュエータ800及び弧状ブレード500を収容できるサイズ及び形状になっている。一態様では、ブレード500の展開中又は格納中に発生する高圧水がシールプレート400又はWEDA1000の他の構成要素に入らないように、弧状ブレード500がシールプレート600内に精密公差関係を以て配置されてよい。更に、図示のように、支持構造は、WEDA1000の様々な構成要素を収容及び捕捉するための穴が支持構造内に形成されてよく、これについては後で詳述する。シールプレート600は更に、可撓であるように構成されており、これは、回転アクチュエータ800と全周にわたって係合して回転アクチュエータ800をプレート内の定位置に固定するためである。別の実施形態では、シールプレート600の上部フランジが少し厚めになっており(シールプレート600が厚めの上部フランジを有しており)、これは、留め具(例えば、
図4Cに示すように、シールプレート600を固定する複数のボルト/ねじ)が、変形を起こさずに必要な圧縮力をかけて、アクチュエータプレート300に対して密封を維持するためである。
【0027】
図4A~Cを再度参照すると、トランサムプレート700は、特定の船舶グレードの、又は他の適切な接着剤で船舶2000のトランサムに固定的に取り付けられるように構成されている。別の実施形態では、トランサムプレート700は、様々な標準的な留め具を使用して船舶2000のトランサムにボルト固定又はねじ固定されてよい。ウェッジパック400は1つ又は複数のウェッジ又はシムからなり、そのそれぞれは、ある範囲の角度を、個別に又は組み合わせで提供し、トランサムプレート700の背面とアクチュエータプレート300との間に配置されるように構成されている。ウェッジパック600は、船舶2000のトランサムに対するシールプレート600の角度を調節する追加オプションを提供しており、これは、様々なタイプのトランサムにWEDA1000を設置することに更なるフレキシビリティを与える。
【0028】
図4A~Cを再度参照すると、ウェッジパック400を介してトランサムプレート700をアクチュエータプレート300に接合すること、並びにシールプレート600をアクチュエータプレート300に取り付けることのために、(
図4B及び4Cに示した、構成要素の多数の貫通穴及び切り欠きに通す留め具、ボルト、ねじを含む)様々な追加取り付け手段が設けられている。アクチュエータアーム803、806の周囲に1箇所以上の亜鉛コーティングが施されてよく、これは、バリアとして働いて、海洋環境での繰り返し使用による腐食を防ぐためである。図示のように、アクチュエータアーム803、806は、アクチュエータ800の側部に回転可能に接続されており、回転アクチュエータ800の円筒ボディから半径方向に延びている。図示のように、WEDA1000の組み立てを完成させるために、(
図4A~Cに示すように)複数の埋め込み成形切り欠きリブを有するシールプレート600がアクチュエータプレート300に取り付けられ、回転アクチュエータ800の円筒ボディは、シールプレート600及びアクチュエータプレート300の内側に圧力嵌合される。互いに固定的に接続されたWEDA1000の全ての構成要素を保持し、同時に回転アクチュエータ800がブレード500を枢動的に格納又は展開することを可能にするために、業界標準の留め具が使用されてよい。回転アクチュエータ800は、アクチュエータプレート300の前部とシールプレート600の凹んだ後部との間に配置されており、シールプレート600は、プレート600の埋め込まれた切り欠き及び/又は凹部の中に回転アクチュエータ800を囲んで捕捉しており、それによって、回転アクチュエータはシールプレート600のフレームに枢動可能に取り付けられている。アクチュエータプレート300をシールプレート600の凹んだ後ろ側に取り付けて、回転アクチュエータ800をシールプレート600とアクチュエータプレート300との間で捕捉するために、様々な取り付け手段が設けられている。WEDA1000の様々な構成要素に多数の凹部及び/又は切り欠きが組み込まれていることにより、船舶2000の運航中に回転アクチュエータ800のアクチュエータアーム(803、806)を支障なく効率的に動かすことが可能になっている。
【0029】
WEDA1000の各種構成要素は、海洋環境に耐えて存続可能な材料から適切に製造されてよい。例えば、繊維強化ポリマー樹脂、強化されていない又は強化されたプラスチック又は複合材料、金属(例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム)、ゴム、又は等価な特性及び特徴を有する他の材料等の材料が各種構成要素に使用されてよい。WEDA1000は、船舶の切り欠き(又は穴)の中に配置可能なモジュールの形態である。代替として、弧状ブレード500を含むWEDA1000は、様々なタイプの船舶向けに単独で市販されることが可能なモジュール式の自己完結型構造であってよい。
【0030】
図4A~Cを再度参照すると、アクチュエータアーム803、806は、回転アクチュエータ800の第1の端部及び第2の端部から半径方向に延びており、WEDAアセンブリに電力を供給するためにブレード支持アームに接続されている。回転アクチュエータ800の内部にある被駆動シャフト及び被駆動シャフトと対向して配置された非被駆動スレーブシャフトは更に、テーパ状であり、アクチュエータアーム803、806(アクチュエータのトルクアーム)と干渉嵌合するように構成されている。なお、当業者であれば想定されうるであろう、トルクアームに対する他の境界面も可能である(そのようなものとして、スプライン歯構成、非テーパ状境界面等が挙げられ、これらに限定されない)。更に、非被駆動スレーブシャフトを被駆動シャフトから隔てている空間に配置されたエンコーダは、絶対位置測定を可能にするように、且つ、アクチュエータ内のブラシレスモータのコミュテーションをサポートするように構成されている。別の実施形態では、エンコーダは位置センサとして働くことが可能である。即ち、エンコーダは、被駆動シャフトに取り付けられて、WEDA1000に対する弧状ブレード500の相対的な位置を監視する。エンコーダ(即ち、位置センサ)は、船舶2000内に配置されてWEDA1000に通信接続並びに作用的に接続されているコントローラ又は別の集中制御されたコンピュータに位置データを伝達するために使用されるポテンショメータ又は同等の装置を含んでよい。回転アクチュエータ800の内部にある非被駆動スレーブシャフトと被駆動シャフトは内部ではつながっていない。このようにシャフト同士が離れている構成により、エンコーダがWEDAアセンブリ1000のシールされた清浄環境内に収容されることが可能である。弧状ブレード500は更に、モールド成型された側部シールドをブレード500とともに1つのアセンブリとして有するように構成されており、それによって、容易な水平方向マウント、並びに船舶運航中の凹形弧状ブレード500の高速展開/格納を可能にするように構成されている。
【0031】
図4A~C及び
図5を再度参照すると、シャフトとアクチュエータアーム803、806は更に、標準的な従来式留め具(例えば、ボルト)で互いに保持されている。シャフトに取り付けられた支持アーム801、805は、船舶2000の運航中に弧状ブレード500をアクチュエートして水中に展開するための電気信号を供給し、弧状ブレード500は、(
図3に示したように)WEDAに対して完全(又は部分的)に展開された位置及び/又は完全(又は部分的)に格納された位置の間で(100mm/秒以上(好ましくは250mm/秒超)で)動く(即ち、垂直方向に変位可能である)ように構成されている。WEDA1000は更に、回転アクチュエータ800を船舶2000の水線より上又は下に設置することを容易にするために、複数の方位(例えば、異なる4つの方位)でマウント及び設置されるように構成されている。例えば、回転アクチュエータ800は、用途に必要とされる望ましいケーブル出口に応じて、シールプレート600の上部にモールド成型された2つの穴のいずれかでコントローラと接続されてよい。アクチュエータケーブルは、船舶2000のトランサムの上の所望の高さまで引き回されてよく、ケーブルが船舶2000のトランサムを貫通するようにケーブルを90度曲げるために追加構成要素が使用されてよい。各方位のWEDA1000は、様々な構成及びレイアウトのアクチュエータ800用配線を用いて、電力及び信号を伝達し、100mm/秒以上でのブレード500の展開に備える。
【0032】
回転シャフトシールにより、回転アクチュエータ800は、市販の既製のベアリングをシールされた環境で使用することが可能であり、ベアリングは、ブレード500に伴う流体力学的ドラグ負荷を吸収することが可能である。
図6に示すように、マルチベアリング(例えば、4ベアリング)構成により、2つの半径方向シャフトシールだけでベアリングをシールされた環境で使用することが可能である。このベアリング構成は更に、4つのベアリング全てが、WEDA当たり最大2つの回転シールで固定されることを可能にするように構成されており、これは、WEDAのその2つの回転シールから発生する変動反力を吸収することによって可能にする。回転シャフトシールは、弧状ブレード500及び市販の既製のベアリングと組み合わされ、一体として、非常に少ない電力消費を実現しながらブレード500の展開/格納の高速応答時間を可能にし、しかも先行技術の水係合装置システムより速い応答時間を可能にするように構成されている。先行技術では、4つのシャフトシールを組み込むことの複雑さを避けるためにフェノールベアリングが一般的に使用されている。そのような先行技術のベアリングは、本明細書に開示の、WEDA1000内のベアリングより格段に大きい転がり損失が発生する。このベアリングの構成は限定ではなく、アクチュエータアーム803、806を支持するためにシャフトのいずれの端部に設置されてもよい。WEDA1000の新規な構成及び設計は、回転アクチュエータ800当たり2つの回転シールのみで、非常に低い摩擦損失でドラグ負荷を吸収することを可能にしており、先行技術の水係合装置に対してブレードを展開するために、電力の大幅な低減を実現する、この新規な水係合装置アクチュエータアセンブリが必要とされる。
【0033】
図4A~Cを再度参照すると、回転アクチュエータ800のシャフトの中央に位置するヒンジが、回転アクチュエータ800の回転中心を形成している。WEDA1000が設置されると、WEDAのブレード表面の弧及びシールプレート600は、船舶2000の底面に平行に並ぶように配置されてよい。WEDA1000は更に、水(特定の速度で船舶を通り過ぎる水の流れ)の中に弧状ブレード500を展開することに伴う流体力学的力が、ブレード500の弧の表面に対して垂直に働くように構成されている。弧状ブレード500の弧は、その表面に垂直に働く力が弧状ブレードの回転中心と交差するような形状になっている。つまり、流体力学的力ベクトルが回転中心と交差するので、回転中心までの距離がゼロである。従って、この新規なWEDAアセンブリ1000の多くある利点の1つとして、回転アクチュエータ800は、ブレード500を水中に展開することに伴う流体力学的負荷に打ち勝つために必要なトルクがゼロである(トルクは力に距離を乗じたものとして測定されるが、その距離がゼロに等しいため)。本明細書に記載の実施形態は、WEDAアセンブリ1000を形成する様々な構成要素の、当業者であれば想定されうる多様な幾何学的形状及び寸法に対して実現可能である。
【0034】
別の実施形態では、WEDA1000は、安全デフォルト故障モード(Safe Default Failure Mode)(SDFM)の下で動作してよい。例えば、船舶の運航中に、アクチュエータが故障するか作動しなくなると、シールプレート600とブレード500との間のギャップによって発生したジェットが、ブレード500に作用して、ブレード500の自動格納を引き起こす(ブレード500を水との有効な係合から引き上げる)。
【0035】
当然のことながら、上記は本開示の幾つかの例及び実施形態の詳細な説明に過ぎず、本開示の趣旨又は範囲から逸脱しない限り、本明細書でなされた開示に従って、開示の実施形態に対する様々な変更が行われてよい。従って、上記の説明は、本開示の範囲を限定することを意図しておらず、当業者であれば過度の負担を伴わずに本開示を実施できる程度の開示を提供することを意図している。更に当然のこととして、本開示の範囲は、当業者であれば明らかになるであろう他の実施形態を完全に包含する。
【0036】
「個別の(differential)」及び「個別に(differentially)」は、本文書中では、角度、速度、レート、方向、運動方向、出力、力、モーメント、慣性、質量、バランス、比較可能な物の適用等において、等しくないこと、中心から外れていること、及び/又は差を含むこととして定義されている。「動的」及び/又は「動的アクティブ制御」という用語は、必要とされた瞬間、直ちにアクションが行われることを意味しうる。この応用分野で「直ちに」という用語が使用された場合、これは、制御アクションがない場合には制御されない状態で船舶の運動及び姿勢が発生するであろう直前に、船舶の運動及び姿勢を阻止又は緩和する程度の応答性で制御アクションが行われることを意味する。
【0037】
当業者であれば、制御目的は達成されるものの、最大全体遅延の観点での、検知された運動パラメータと必要な効果器応答との間の関係性が存在しうることを理解されよう。「動的」及び/又は「動的アクティブ制御」は、異なる力を含む、インタラクティブなハードウェアシステム及びソフトウェアシステムの説明において使用されてよく、連続的な変化及び/又はアクティビティで特徴付けられてよい。「動的」は、船舶と環境との間のインタラクションを説明する際にも使用されてよい。上述のように、船舶は、その推進システムから、並びに船舶が運航する環境から発生する様々な動的な力にさらされうる。船舶の姿勢についての言及は、3つの回転軸に対して相対的なものとして定義されてよく、それらは、Y軸(幅方向軸、スウェイ軸)を中心とするピッチ姿勢又はピッチ回転、X軸(長手方向軸、サージ軸)を中心とするロール姿勢又はロール回転、及びZ軸(垂直方向軸、ヒーブ軸)を中心とするヨー姿勢又はヨー回転を含む。
【0038】
本明細書に記載の例示的実施形態の様々な特徴は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせを用いて実施されてよく、1つ以上のコンピュータシステム又は他の処理システムにおいて実施されてよい。しかしながら、これらの実施形態において行われるマニピュレーションは、一般的には人間の操作者が行う知的操作に関連付けられる「決定する(determining)」等の用語で言及される場合が多かった。人間の操作者のそのような能力は、本明細書に記載のいずれの操作においても不要である。つまり、操作は、機械動作によって完全に実施されうる。本明細書に記載の例示的実施形態の操作を行うことに有用な機械として、汎用デジタルコンピュータ又は同様の装置がある。ハードウェアに関しては、CPUは、典型的には、プログラム実行に必要な算術演算及び/又は論理演算を実施する1つ以上のマイクロプロセッサ、プログラム及びデータを格納する記憶媒体(例えば、1つ以上のディスクドライブ又はメモリカード(例えば、フラッシュメモリ))、一時データ及びプログラム命令を格納するランダムアクセスメモリ等の1つ以上の構成要素を含む。ソフトウェアに関しては、CPUは、典型的には、記憶媒体(例えば、ディスクドライブ又はメモリカード)にあるソフトウェアであって、実行されると送信及び受信の各動作をCPUに行わせるソフトウェアを含む。
【0039】
CPUソフトウェアは、記憶媒体に格納されているオペレーティングシステム(例えば、UNIX(登録商標)又はWindows(例えば、NT、XP、Vista)、Linux(登録商標)等)で動作可能であり、様々なプロトコル(例えば、Ethernet、ATM、TCP/IP、CAN、LINの各プロトコル、及び/又は他のコネクションプロトコル又はコネクションレスプロトコル)に従うことが可能である。当該技術分野において知られているように、CPUは、様々なオペレーティングシステムを実行することが可能であり、様々なタイプのソフトウェアを含むことが可能であり、その各タイプは、特定ソースからのデータ/情報を処理及び管理すること、或いは、データ/情報を1つのフォーマットから別のフォーマットに変換することのように、それぞれ異なる機能に専念する。従って、当然のことながら、本明細書に記載の実施形態は、いずれかの特定タイプのサーバコンピュータでの使用に限定されるものとして解釈されるべきではなく、それどころか、情報の交換及び格納を促進することに適する他の任意のタイプの装置で使用されてよい。
【0040】
CPUは、単一CPUであってよく、或いは、複数の個別CPUを含んでもよく、そのそれぞれは、別々の用途(例えば、データ用途、音声用途、及び映像用途等)に専念する。本明細書に記載の例示的実施形態のソフトウェア実施形態は、コンピュータプログラム製品(即ち、ソフトウェア)として提供されてよく、これは、機械アクセス可能な又は非一時的なコンピュータ可読媒体(即ち、「機械可読媒体」とも呼ばれる媒体)上の製造物(命令を含む)を含んでよい。機械アクセス可能又は機械可読な媒体に関する各命令は、コンピュータシステム又は他の電子装置をプログラムする際に使用されてよい。機械可読媒体としては、フロッピーディスク、光ディスク、CD-ROM、光磁気ディスク、USBメモリ、及びSDカード、又は他のタイプの、電子的命令の格納又は送信に適する媒体/機械可読媒体があってよく、これらに限定されない。本明細書に記載の技術は、いかなる特定のソフトウェア構成にも限定されない。本明細書に記載の技術は、任意のコンピューティング環境又は処理環境に応用性を見出しうる。「機械アクセス可能媒体」、「機械可読媒体」、及び「コンピュータ可読媒体」という用語は、本明細書では、機械(例えば、CPU又は他のタイプの処理装置)が実行する命令のシーケンスであって、本明細書に記載のいずれかの方法を機械に実施させる命令のシーケンスを格納、エンコード、又は送信することが可能な任意の非一時的媒体を包含するものとする。なお、ソフトウェアのことを、1つの形態又は別の形態(例えば、プログラム、プロシージャ、プロセス、アプリケーション、モジュール、ユニーク、ロジック等)で、アクションを起こすこと、又は結果を引き起こすことだと言うのは、(当業者であれば想定しうるように)当該技術分野では一般的である。そのような表現は、処理システムによるソフトウェアの実行によって、アクションを実施して結果を引き起こすことをプロセッサに行わせることを簡略的に述べているに過ぎない。
【0041】
本発明を説明する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)「a」、「an」、及び「the」の各語句、並びに同様の指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数及び複数の両方を包含するものとして解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「包含する(containing)」の各語句は、特に断らない限り、オープンエンドターム(即ち、「~を含むが、これに限定されない」という意味)として解釈されるべきである。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に参照するための略記法としての役割を果たすことのみを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、本明細書に組み込まれている。本明細書中で説明される全ての方法は、本明細書中で特に指摘されたり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、任意の好適な順序で実施されてよい。
【0042】
本明細書中で与えられるあらゆる例、又は例示的言い回し(例えば、「等の(such as)」)は、特に主張されない限り、単に本発明をより明らかにすることだけを意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。当然のことながら、上記は本開示の幾つかの例及び実施形態の詳細な説明に過ぎず、本開示の趣旨又は範囲から逸脱しない限り、本明細書でなされた開示に従って、開示の実施形態に対する様々な変更が行われてよい。従って、上記の説明は、本開示の範囲を限定することを意図しておらず、当業者であれば過度の負担を伴わずに本開示を実施できる程度の開示を提供することを意図している。
【0043】
更に当然のこととして、本開示の範囲は、当業者であれば明らかになるであろう他の実施形態を完全に包含する。ある実施形態の一部として図示又は記述された特徴が、別の実施形態に用いられて更に別の実施形態が得られることがあってよい。従って、本開示は、そのような修正形態及び変形形態を、添付の特許請求項及びそれらの均等物の範囲に収まるものとして包含するものとする。当業者であれば理解されるように、本説明は、例示的実施形態の説明に過ぎず、本開示のより広い態様を限定することを意図しておらず、そのより広い態様は例示的構成に埋め込まれている。
【国際調査報告】