(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】免疫不全障害の新規治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/47 20060101AFI20240814BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240814BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240814BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240814BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240814BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240814BHJP
A61P 15/02 20060101ALI20240814BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240814BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240814BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240814BHJP
C07D 215/18 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61K31/47
A61P37/02
A61P29/00
A61P17/02
A61P1/04
A61P1/16
A61P15/02
A61P25/00
A61K9/06
A61P37/04
C07D215/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507026
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 CN2022110573
(87)【国際公開番号】W WO2023011635
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/111247
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522216754
【氏名又は名称】エンリティザ(シャンハイ)ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】サミュエルソン、ベングト インゲマール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
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4C076BB13
4C076CC03
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4C086AA01
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4C086ZB05
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4C086ZC08
(57)【要約】
免疫不全障害の治療のための医薬の製造のための、また、免疫抑制を特徴とする状態を有するか、又はそれに対して脆弱である患者における炎症を特徴とする障害の治療のための、モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の使用。言及され得る特定の障害としては、例えばがん治療の一部としての放射線療法によって引き起こされる障害、例えば、放射線直腸炎が挙げられる。モンテルカスト及びその塩は、好ましくは、局所的かつ局在的に、例えば、肛門直腸に投与される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫不全障害の治療のための医薬の製造のためのモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項2】
前記免疫不全障害が、原発性免疫不全障害であり、体液性免疫不全障害、細胞性免疫不全障害、体液性免疫不全障害と細胞性免疫不全障害との組み合わせ、食細胞性免疫不全及び/又は補体欠損症の群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記免疫不全障害が、続発性免疫不全障害である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記障害が、高齢、栄養失調、慢性障害、1つ以上の薬物及び/又は放射線の群のうちの1つ以上によって引き起こされる、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
免疫抑制を引き起こす前記慢性障害が、再生不良性貧血、白血病、多発性骨髄腫及び鎌状赤血球症の群から選択される血液のがん及び/又は障害;ダウン症候群;ウイルス感染;細菌感染;糖尿病;慢性腎疾患;ネフローゼ症候群;慢性肝炎;肝不全;全身性エリテマトーデス;アルコール依存症;慢性熱傷、及び/又は手術の群から選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記1つ以上の薬物が、抗発作薬、免疫抑制薬、生物製剤、化学療法薬及び/又はコルチコステロイドの群から選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記放射線が、障害の治療中に施される放射線療法である、請求項4に記載の使用。
【請求項8】
抑制された免疫系を有するか、又はそれに対して脆弱である患者における炎症及び/又は創傷を特徴とする状態の治療のための医薬の製造のためのモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項9】
前記モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩が、前記状態に関連する創傷の回復及び/又は治癒を促進するのと同時に免疫回復効果を提供する、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩が、患者の免疫系を損なうことなく抗炎症効果を提供する、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
免疫抑制が、障害の治療中に施される放射線療法によってもたらされる、請求項8~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記放射線療法によって治療される障害が、がんである、請求項7又は11に記載の使用。
【請求項13】
前記放射線療法が、下腹部を標的とする、請求項7、11又は12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記炎症を特徴とする状態が、放射線腸炎、放射線大腸炎、放射線肝炎、放射線脊髄炎、放射線膣炎及び放射線直腸炎の群から選択される、請求項8~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記障害が、放射線直腸炎であり、かつ/又は急性放射線直腸炎、放射線大腸炎、放射線に関連する血管拡張症及び/又は慢性放射線直腸障害の群のうちの1つ以上を含む、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩が、局在的かつ局所的に適用される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記モンテルカストが、ゲルの形態で適用される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記局在的、局所的適用が、肛門直腸適用である、請求項16又は17に記載の使用。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか一項に定義されるような障害の治療方法における使用のためのモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩。
【請求項20】
請求項1~15のいずれか一項に定義されるような障害の治療方法であって、前記方法が、前記治療を必要とする患者へのモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の投与を含む、方法。
【請求項21】
患者における免疫抑制を特徴とする状態の治療方法であって、前記方法が、前記治療を必要とする患者へのモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の投与を含む、方法。
【請求項22】
前記状態が、請求項1~15のいずれか一項に定義されるような障害である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
損なわれた免疫系を有する患者の治療方法であって、前記方法が、そのような患者へのモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の投与を含む、方法。
【請求項24】
患者の免疫系の正常な機能を回復させるための方法であって、前記方法が、そのような患者へのモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の投与を含む、方法。
【請求項25】
患者における免疫抑制、並びに炎症及び/又は創傷を特徴とする放射線によって誘導される状態の治療方法であって、前記方法が、前記治療を必要とする患者へのモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の投与を含む、方法。
【請求項26】
患者の免疫系の正常な機能を同時に回復させつつ、放射線によって誘導される免疫不全障害に関連する炎症及び/又は創傷を治療する方法であって、前記方法が、前記治療を必要とする患者へのモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の投与を含む、方法。
【請求項27】
前記方法が、請求項16~18のいずれか一項に定義されるような様式でモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、請求項19に記載の使用のための化合物、又は請求項20~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記モンテルカストの薬学的に許容される塩が、モンテルカストナトリウムである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用、使用のための化合物、又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既知の薬学的に活性な化合物の新規な使用、特に、放射線直腸炎等の免疫抑制を特徴とする状態の治療におけるその使用に関する。
【0002】
背景技術及び先行技術
免疫系は、微生物(例えば、細菌、ウイルス及び真菌)、寄生虫(例えば、虫)並びにがん細胞等の外来又は危険な侵入者に対する身体の自然防御である。
【0003】
免疫系は、体内に属するものとそうでないものとを区別する。免疫系によって認識される物質は、「抗原」と呼ばれる。他の点では健康な個体において、抗原は、危険であると認識された場合、体内で免疫応答を刺激する。正常な一連の事象は、潜在的に有害な抗原の認識、次いでそれを可動化及び中和するための身体の免疫応答の活性化からなる。
【0004】
自然免疫系は、優勢な一次免疫系応答である。自然免疫系は、化学伝達物質(サイトカイン)の産生を介して感染部位に免疫細胞を動員し、細菌を特定するために補体カスケードを活性化し、細胞を活性化させ、臓器、組織、血液及びリンパに存在する外来物質を特定し、除去することによって働く。
【0005】
感染又は刺激に応答して、損傷した細胞によって放出されるサイトカインは、炎症を引き起こす傾向があり、これにより感染の拡大に対する物理的障壁を確立するのに役立ち、また、病原体のクリアランス後の任意の損傷組織の治癒を促進する傾向がある。
【0006】
急性炎症段階は、感染又は傷害の開始時に起こり、組織に(例えば、マクロファージ、樹状細胞等に)存在する細胞によって開始される。これらの細胞は、それらのパターン認識受容体(pattern recognition receptor、PRR)の1つを介して活性化を受け、病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular pattern、PAMP)を認識して炎症性メディエーター(例えば、ヒスタミン、ブラジキニン、セロトニン、ロイコトリエン及びプロスタグランジン)を放出し、これらが疼痛受容体を感作し、局所的な血管拡張を引き起こし、食細胞(例えば、好中球)を誘引し、さらなる白血球及びリンパ球を集める因子を放出することによって、免疫系の他の部分を誘発する。
【0007】
自然免疫系はまた、適応免疫系として知られる、高等脊椎動物における免疫系の二次的な要素を活性化する。適応免疫系は、病原体を排除するか、又はそれらの成長を防止する、特殊な全身性細胞及びプロセスから構成される。
【0008】
自然免疫系とは異なり、適応免疫系は、身体が過去に遭遇した各々の特定の病原体に特異的であり、特定の病原体に対する初期応答に続いて、免疫学的記憶を生成する。これにより、その病原体との将来の遭遇に対する応答の増強がもたらされる。これは、ウイルス性疾患又は細菌性疾患から回復したヒトが、その後に、時には残りの生涯にわたって保護されるプロセスであり、ワクチン接種のプロセスの基礎である。
【0009】
適応免疫応答に関与する重大な細胞は、2つの異なる種類のリンパ球であるB細胞及びT細胞である。適応免疫応答において、B細胞は、抗体(免疫グロブリン)を分泌するように活性化され、これが抗原に結合して、抗原を不活性化するため、損傷を引き起こすことができなくなるが、一方で、T細胞は、外来細胞又は異常細胞を特定し、破壊するのに役立つ。
【0010】
適応免疫により、病原体に特異的な受容体が獲得され、将来のチャレンジのための免疫系を準備する。しかしながら、場合によっては、適応免疫系は、花粉又は食物分子等の無害な異物から有害な異物を区別することができず、喘息及び花粉症等のアレルギー若しくはアレルギー状態を引き起こすか、又は関節リウマチ及び全身性エリテマトーデスを含む、免疫系が体内の自身の組織を攻撃し得る自己免疫状態を引き起こす。
【0011】
免疫系の他の障害には、身体が抗原に対する適切な免疫応答を生成することができない障害が含まれる。このような状態は、多くの場合、「免疫不全」と呼ばれ、患者は「免疫が損なわれて」いる。
【0012】
免疫不全を特徴とする障害、又は「免疫不全障害」は、抗原に対して身体を防御する免疫系の能力が低下している。結果として、感染がより容易に起こり得るか、又はがん(例えば、リンパ腫)が発症し得る。免疫不全障害を有する多くの人々は、自己免疫障害も有している。原発性免疫不全障害(Primary immunodeficiency disorder、PIDD)は、典型的には、稀な先天性障害であり、通常は遺伝性である。このような障害は、多くの場合、小児期に現れるが、常に小児期に現れるわけではなく、影響を受ける免疫系の部分(欠損、数の減少、異常及び/又は機能不全)によって特徴付けられてもよく、B細胞(体液性免疫不全)、T細胞(細胞性免疫不全)、食細胞(好中球、単球、マクロファージ、及び好酸球、食細胞性免疫不全)、及び/又は補体タンパク質(補体不全)を含む。体液性免疫不全障害は、最も一般的なPIDDであり、過半数を占めている。
【0013】
続発性免疫不全障害(Secondary immunodeficiency disorder、SIDD)は、より一般的であり、後の人生で発症する傾向がある。それらは、通常、加齢、栄養不良(特に栄養不足)、化学物質(薬物を含む)への曝露、慢性疾患若しくは障害、例えば、糖尿病、HIV感染若しくはがん(リンパ球を産生する骨髄の能力を損なう白血病及びリンパ腫を含む)、又はがん等の障害を治療するために使用される化学療法及び/若しくは放射線療法を含む、他の何らかの結果である。
【0014】
有効医薬成分は、治療を意図するものに応じて、免疫抑制効果を有するように設計されることがある。例としては、移植された臓器若しくは組織の拒絶を予防するために与えられるもの、又は自己免疫障害を有する患者に与えられるもの、並びに関節リウマチ等の様々な障害における過剰に活発な免疫系から生じる炎症を抑制するために使用されることが多いコルチコステロイドが挙げられる。しかしながら、免疫抑制を誘導することの明らかな副作用は、上に記載したように、感染を撃退する身体の生来の能力に影響を及ぼすことである。
【0015】
免疫不全障害の現在の治療は、いくらか制限されている。良好な衛生による感染の予防に加えて、ワクチン、抗ウイルス薬及び抗生物質が多くの場合与えられる。加えて、免疫グロブリン療法(すなわち、正常な免疫系を有するヒトの血液から得られた抗体で患者を治療する)等によって失われた免疫系の一部を置き換えることは、時には有効である。
【0016】
重度に罹患した患者は、多くの場合、生涯を通じて集中的かつ頻回な治療を必要とし、患者の状態は、多くの場合、幹細胞移植によってのみ矯正することができる。遺伝子療法及び胸腺組織移植は時には有用であるが、これらは高価であり、最も生命を脅かす免疫不全障害のために確保されている。
【0017】
したがって、免疫不全障害のより有効な及び/又はより容易に利用可能な治療に対する明らかに満たされていない臨床的必要性が存在する。
【0018】
ここで特に興味深いのは、放射線療法であり、DNA、脂質、及びタンパク質に対する電離放射線の直接的な効果によって、(例えば、がん)細胞に損傷を与えることによって作用する。水が細胞の大部分を構成するため、電離放射線によって酸素フリーラジカル(oxygen-free radical、OFR)が生成する。OFRの生成は、全身性炎症応答症候群の発症に関与することが知られている。OFRは、(とりわけ)サイトカイン産生を活性化する。サイトカインは、全身性炎症応答の進行に関与する主要なメディエーターである(Closa et al,IUBMB Life,56,185 2004))。
【0019】
放射線直腸炎は、前立腺がん又は子宮頸がん等のがんを治療するために与えられる骨盤放射線照射から持続的に起こる直腸への損傷の結果として生じる腸の炎症である。放射線直腸炎は、放射線療法に対するタイミングに応じて、急性又は慢性であり得るが、本質的には、正常な組織が損傷を修復又は回復する能力を失う放射線量の結果である。病因は不明であるが、放射線照射後の全身性グルタチオン欠乏が、酸化的損傷の増加を引き起こすことが示唆されている(Do et al,Gastroenterol.Res.Pract.(2011),doi:10.1155/2011/917941)。
【0020】
上に述べたように、炎症は、局所レベルで治癒をもたらすという点で、正常な免疫応答の重要な部分である。一方、放射線直腸炎は、傷害、損傷及び治癒を特徴とする状態ではあるが、患者の免疫応答は抑制されているため、局所化された免疫応答が、通常の治癒プロセスをもたらす傾向はなく、長期間にわたって持続する場合がある。さらに、コルチコステロイド等の局所抗炎症薬は、免疫応答をさらに抑制することによって、事態を悪化させる傾向がある。
【0021】
したがって、全身性免疫応答を直接回復させることができるか、本明細書で以下に記載するように、患者の全身性免疫応答をさらに損なうことなく、放射線直腸炎の症状を治療することができるか、又は免疫回復効果を有するか、若しくは少なくとも免疫抑制効果を有さない方法で作用しつつ、それらの両方の事態を行う(すなわち、それらの症状を軽減すること)ことができる薬剤を使用する、有効な放射線直腸炎治療に対する明らかに満たされていない臨床上の必要性が存在する。
【0022】
モンテルカストは、季節性アレルギーの症状の維持治療及び予防のために胃腸管へと経口投与される、経口活性非ステロイド系免疫調節化合物である(例えば、Hon et al,Drug Design,Development and Therapy,8,839(2014)を参照されたい)。主に、気道のシステイナル(cysteinal)ロイコトリエン受容体CysLT1に対するロイコトリエンD4(並びにロイコトリエンC4及びE4)の作用を遮断することによって作用する。錠剤形態の低用量(1日4mg~10mg)で、喘息のような慢性アレルギー状態を治療することが知られている。
【0023】
この観点で、ステロイドと同様に、モンテルカストは、典型的には、対象の免疫系が他の点では無害なアレルゲンに反応している過活性免疫系の結果を治療するように投与される。Theron et al(J.Immunol.Res., http://dx.doi.org/10.1155/2014/608930)による総説文献に記載されるように、CysLT1に対するモンテルカストの作用は、自然免疫系の一部である炎症応答の重症度を減少させるように働く。
【0024】
国際特許出願第WO2019/007356号には、モンテルカストを含む局所組成物が、開放創傷及び熱傷に直接適用された場合に、その回復を促進することをどのようにして予想外に見出したかを記載している。
本明細書中で以下に記載されるように、本願発明者らは、驚くべきことに、モンテルカストが動物モデルにおける免疫応答の放射線によって誘導される抑制を回復させることができ、したがって、予想外の免疫回復特性を有することを見出した。このことは、免疫抑制障害の治療における、及び/又は放射線直腸炎の場合のように、損なわれた免疫系を有する患者において誘導される創傷を含む障害若しくはその症状の治療における、潜在的な使用を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】国際特許出願第WO2019/007356号
【発明の概要】
【0026】
この観点で、また、本発明の一態様によれば、患者における免疫抑制を特徴とする状態の治療のための医薬の製造のためのモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の使用が提供される。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、損なわれた免疫系を有する患者の治療のための、及び患者の免疫系の正常な機能を回復させるための、免疫不全障害の治療のための医薬の製造のためのモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の使用が提供される。
【0028】
モンテルカストは、塩の形態で提供され得る。言及され得る塩としては、薬学的に許容される塩、例えば、薬学的に許容される酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。このような塩は、従来の手段によって、例えば、モンテルカストと、1当量以上の適切な酸又は塩基とを、任意選択的に、溶媒中で、又は塩が不溶である媒体中で反応させ、次いで、標準的な技術を使用して(例えば、高減圧下で、凍結乾燥によって、又は濾過によって)、上述の溶媒又は上述の媒体を除去することによって形成されてもよい。塩はまた、例えば、好適なイオン交換樹脂を使用して、塩の形態の有効成分の対イオンを別の対イオンと交換することによって、調製されてもよい。
【0029】
好ましい塩としては、例えば、酢酸塩、塩酸塩、重硫酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属塩、又はカリウム塩、特にナトリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0030】
免疫抑制を特徴とする状態(又は免疫不全障害)としては、PIDDが挙げられ、したがって、体液性免疫不全障害、例えば、分類不能型免疫不全、選択的免疫グロブリン欠乏症(例えば、IgA欠乏症)、乳児の一過性低ガンマグロブリン血症、X連鎖無ガンマグロブリン血症;細胞性免疫不全障害、例えば、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ディジョージ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群;体液性免疫不全障害及び細胞性免疫不全障害の複合、例えば、毛細血管拡張性運動失調症、高免疫グロブリン血症E症候群、重症複合免疫不全、ウィスコット・アルドリッチ症候群;食細胞性免疫不全、例えば、チェディアック-東症候群、慢性肉芽腫症、周期性好中球減少症、白血球接着不全症;並びに補体不全、例えば、補体成分1(complement component 1、C1)阻害剤欠損症(若しくは遺伝性血管性浮腫)、C3欠損症、C4欠損症、及びC5、C6、C7、C8、及び/又はC9欠損症が挙げられる。
【0031】
しかしながら、本発明に従って治療される免疫不全障害は、SIDD、すなわち、加齢、栄養不良(例えば、栄養不足)、慢性障害、1つ以上の化学薬剤(例えば、薬物)及び/又は(例えば、電離)放射線等の二次的要因によって引き起こされる免疫不全障害であることが好ましい。患者において免疫不全を引き起こし得る障害としては、がん;血液の障害、例えば、再生不良性貧血、白血病、多発性骨髄腫;鎌状赤血球症;ダウン症候群;水痘、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バール・ウイルス、HIV、麻疹及び細菌感染を含む、ウイルス感染等の感染;糖尿病;内臓の疾患、例えば、慢性腎疾患、ネフローゼ症候群、慢性肝炎、肝不全;全身性エリテマトーデス;アルコール依存症、慢性熱傷;及び手術、例えば、脾臓の摘出が挙げられる。
【0032】
患者において免疫不全を引き起こし得る薬物としては、抗発作薬、例えば、ラモトリギン、フェニトイン、バルプロ酸塩;免疫抑制薬、例えばアザチオプリン、シクロスポリン、エベロリムス、レフルノミド、ミコフェノレート、モフェチル、シロリムス、タクロリムス、トファシチニブ;生物製剤、例えば、アバタセプト、アダリムマブ、アナキンラ、バシリキシマブ、セルトリズマブ、ダクリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、イキセキズマブ、ムロモナブ(OKT3)、ナタリズマブ、リツキシマブ、セクキヌマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ;及び特に、コルチコステロイド、例えば、天然に存在するコルチコステロイド、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、アルドステロン、コルチコステロン、コルチゾン、プレグネノロン、プロゲステロンを含む、及びコルチコステロイド生合成の天然に存在する前駆体及び中間体、及び天然に存在するコルチコステロイドの他の誘導体、例えば、11-デオキシコルチゾール、21-デオキシコルチゾール、11-デヒドロコルチコステロン、11-デオキシコルチコステロン、18-ヒドロキシ-11-デオキシコルチコステロン、18-ヒドロキシコルチコステロン、21-デオキシコルチゾン、11β-ヒドロキシプレグネノロン、11β、17α、21-トリヒドロキシプレグネノロン、17α,21-ジヒドロキシプレグネノロン、17α-ヒドロキシプレグネノロン、21-ヒドロキシプレグネノロン、11-ケトプロゲステロン、11β-ヒドロキシプロゲステロン、17α-ヒドロキシプロゲステロン及び18-ヒドロキシプロゲステロン、及び合成コルチコステロイド、ヒドロコルチゾン型(グループA)のもの、例えば、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾンアセポネート、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、チキソコルトール及びピバル酸チキソコルトール、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、クロロプレドニゾン、クロプレドノール、ジフルプレドナート、フルドロコルチゾン、フルオシノロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、ロテプレドノール、アセトニド類及び関連物質(グループB)、例えばアムシノニド、ブデゾニド、デソニド、フルオシノロンセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド、トリアムシノロンアセトニド、シクレソニド、デフラザコルト、ホルモトルオール、フルドロキシコルチド、フルニソリド及びフルオシノロンアセトニド、(ベタ)メタゾン型(グループC)のもの、例えばベクロメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル及びベタメタゾン吉草酸エステル、デキサメタゾン、フルオコルトロン、ハロメタゾン、モメタゾン及びモメタゾンフロエート、アルクロメタゾン及びアルクロメタゾンプロピオン酸エステル、クロベタゾール及びクロベタゾールプロピオン酸エステル、クロベタゾン及びクロベタゾン酪酸エステル、クロコルトロン、デソキシメタゾン、ジフロラゾン、ジフルオコルトロン(difluocortolone)、フルクロロン、フルメタゾン、フルオコルチン、フルプレドニデン及び酢酸フルプレドニデン、フルチカゾン、フルチカゾンフランカルボン酸エステル及びプロピオン酸フルチカゾン、メプレドニソン、パラメサゾン、プレドニリデン、リメキソロン及びウロベタゾール、プロゲステロン型のもの、例えば、フルゲストン、フルオロメトロン、メドリゾン及び酢酸プレベジオロン、並びにプロゲステロン誘導体(プロゲスチン)、例えば、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、メドロゲストン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール及び酢酸セゲステロン、並びに、他のコルチコステロイド、例えばコルチバゾール及び6-メチル-11β,17β-ジヒドロキシ-17α-(1-プロピニル)アンドロスタ-1,4,6-トリエン-3-オンが挙げられる。言及され得る特定のコルチコステロイドとしては、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン及びデキサメタゾンが挙げられる。
【0033】
しかしながら、特に言及され得る患者において免疫不全を引き起こし得る薬物としては、アレムツズマブ、ブスルファン、シクロホスファミド、メルファラン等のがんの化学療法治療が挙げられる。
【0034】
言及され得る特定のSIDDとしては、がん等の障害を治療するために用いられる放射線療法によって引き起こされるもの(すなわち、放射線によって誘導される免疫抑制)が挙げられる。
【0035】
電離放射線は、前述のように免疫系を抑制するだけでなく、照射された臓器における免疫系の機能を他の方法で変化させることもできる。例えば、NF-κB及びSMAD2/3等の炎症性メディエーター、並びにIL-1、IL-2、IL-6、IL-8、IL-33、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor、TNF-α)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(transforming growth factor beta、TGF-β)及びインターフェロンガンマ(IFN-γ)等のサイトカインのレベルの増加は、反応性酸素種(reactive oxygen species、ROS)及び一酸化窒素(nitric oxide、NO)を含むプロスタグランジン及びフリーラジカルの放出に関連する。偶発的曝露の間に起こり得る高線量の放射線への曝露(例えば、核災害又は放射線災害の結果として)は、炎症応答及び/又は創傷を引き起こす場合があり、これがその後数年間にわたって継続する場合があり、かつ/又は照射された臓器の機能を破壊する場合がある。
【0036】
したがって、本明細書中に記載されるように、モンテルカストは、予想外に、特に炎症及び/総称の部位に局所投与された場合に、抗炎症特性及び創傷治癒特性を両方とも保有することも知られているため、それ自体で放射線によって誘導される免疫抑制を治療することができることが見出されたが、その免疫回復特性は、損なわれた免疫系を有する患者において炎症及び/又は創傷を特徴とする状態の治療に特に有用であることを意味する。このような患者としては、免疫不全を特徴とする前述の状態のうちの1つ以上を有する患者が挙げられ、特に、放射線によって誘導される炎症、創傷、及び/又は免疫抑制を有する患者が挙げられる。
【0037】
特に、そのような放射線によって誘導される状態の治療において、モンテルカスト又はその塩は、免疫回復効果を提供するためだけではなく、創傷回復及び/又は治癒を同時に促進するためにも使用され得る。このことは、このような状態に関連する創傷が、放射線によって誘導される免疫抑制効果及び正常な内因性炎症応答の欠如という観点で、適切に治療することが不可能ではないにしても困難であるという事実を考慮すると、特に有用である。
【0038】
さらに、前述の免疫回復効果を提供することによって、これにより、身体の免疫系及び局在化された炎症応答がより効果的になることを可能にし、この観点、モンテルカスト及びその塩はまた、さらなる創傷治癒を促進すると同時に、しかし患者の免疫系をさらに損なわない様式で(コルチコステロイドが炎症を治療するために使用される場合にそうである様式で)、抗炎症効果を提供するために使用され得る。
【0039】
本発明のさらなる態様によれば、免疫抑制を特徴とする状態を有するか、又はそれに対して脆弱である患者において、炎症及び/又は炎症若しくは創傷を特徴とする状態の治療のための医薬の製造のための、モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の使用であって、炎症及び/又は創傷を特徴とする放射線によって誘導される状態の治療を含む、使用が提供される。
【0040】
それ自体が放射線によって誘導され、かつ/又は放射線によって誘導される免疫抑制を生じ得る疾患(炎症及び/又は創傷を特徴とするものを含む)としては、放射線への偶発的な曝露後に生じ得るもの(一般に「放射能中毒」として知られる)、又は例えば、がん等の疾患を治療するための(例えば、電離)放射線療法の結果としての放射線への意図的及び/若しくは標的化された曝露後に生じ得るものが挙げられる。
【0041】
放射線療法は、例えば、がん細胞を死滅させるために強いエネルギーの外部ビームを使用する、例えば、がん治療の一種である。放射線療法は、X線を使用することが最も多いが、陽子又は他の種類のエネルギーも使用することができる。放射線療法は、一次がん治療として、ネオアジュバント療法(手術前にがん性腫瘍を縮小させる)、アジュバント療法(手術後のがん細胞の増殖を予防する)において、進行したがんによって引き起こされる症状を軽減するために、又は上述の2つ以上を組み合わせて、使用することができる。放射線療法は、化学療法等の他の治療と組み合わせて使用することもできる。
【0042】
放射線への曝露から生じ得る粘膜及び/又は皮膚の炎症及び/又は創傷を特徴とする障害は、多くの場合、標的化/照射される身体の部分に関連する。例えば、
・放射線によって誘導される皮膚炎及び粘膜炎は、それぞれ、照射される身体の部分に近接し得る位置で、皮膚又は粘膜で生じ得る。例えば、放射線によって誘導される口腔粘膜炎は、頭部又は頸部の照射後に生じ得る。
・照射によって誘導される脳炎もまた、頭部又は頸部の照射後に生じ得る。
・放射線肺臓炎及び/又は放射線食道炎は、多くの場合、肺がん、乳がん、リンパ腫、胸腺腫瘍、又は食道がんの放射線による放射線治療から生じる。
【0043】
(例えば、子宮頸がん、前立腺がん、膀胱がん、又は直腸がんを治療するための)腹部、骨盤、又は直腸を対象とする放射線治療は、放射線腸疾患(又は放射線大腸炎を含む放射線腸炎)、放射線肝炎、放射線脊髄炎、放射線膣炎のうちの1つ以上、特に放射線直腸炎を引き起こし得る。
【0044】
特に、放射線直腸炎又は放射線直腸障害は、放射線療法中の放射線への曝露後の直腸に対する損傷を特徴とする状態である。炎症は、急性(急性放射線直腸炎、及び関連する放射線大腸炎)又は慢性(例えば、放射線に関連する血管拡張症(radiation associated vascular ectasias、RAVE)及び慢性放射線直腸障害)であり得る。
【0045】
急性放射線直腸炎の初期症状としては、骨盤痛、下痢及びテネスムスが挙げられるが、直腸に対する放射線損傷は、多くの場合、尿失禁及び直腸出血を引き起こし、重篤な症例では、創傷、狭窄及び/又は瘻孔を引き起こす。
【0046】
したがって、例えば、上に定義される放射線直腸炎、放射線大腸炎、及び放射線によって誘導される皮膚炎等の障害を含む、がん療法のための照射、より具体的には、下腹部領域の照射によって誘導される障害の治療において、モンテルカスト及びその塩を使用して、
・そのような障害に関連する創傷を治療し、及び/又は創傷の回復及び/若しくは治癒を促進すると同時に、免疫回復効果を提供してもよく、並びに/あるいは
・患者の免疫系を損なうことなく、さらなる創傷治癒を促進するために利用可能であると同時に、より直接的な抗炎症効果を提供してもよい。
【0047】
本発明の2つのさらなる態様によれば、
・(i)免疫抑制、及び(ii)炎症及び/又は創傷を特徴とする放射線によって誘導される状態の治療方法、並びに
・患者の免疫系の正常な機能を同時に回復させつつ、放射線によって誘導される免疫不全障害に関連する炎症及び/又は創傷を治療する方法が提供され、
本方法は、モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0048】
本明細書に記載の治療方法及び使用は、例えばがん療法のための照射によって誘導される障害が、上述のような下腹部領域の照射から生じる場合に特に有用である。
【0049】
本発明のなおさらなる態様によれば、患者における炎症及び/又は創傷を特徴とする放射線(例えば、電離放射線)によって誘導される障害であるか、又はそれに関連し得る罹患率及び/又は死亡率の発生率を低下させる方法であって、本方法が、モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、方法が提供される。
【0050】
誤解を避けるために、本発明の文脈では、「治療」、「療法」、及び「治療方法」という用語は、治療を必要とする患者の療法的治療又は緩和的治療、並びに上述の障害又は状態にかかりやすい患者の予防的治療及び/又は診断を含む。
【0051】
ある治療が、患者の免疫系の正常な機能を回復させたかどうかは、客観的尺度(例えば、以下に記載されるもの等のバイオマーカー)によって、又は主観的尺度(例えば、患者自身の意見、又はより高い可能性では、資格のある医師の意見)によって決定され得る。この用語はまた、患者の免疫応答の正常なレベルへの完全な回復だけでなく、その部分的な回復、さらには、免疫抑制及び/又は免疫不全障害の経過中に、例えばベースラインレベルと比較して、及び/又は正常/予測される悪化の進行に従って、予測される程度まで経時的に悪化しないことも含むと理解される。
【0052】
「患者」には、爬虫類、鳥類、好ましくは、哺乳動物(特にヒト)の患者が含まれる。この観点で、「医薬」及び「薬学的に許容される」という用語は、「獣医学的」及び「獣医学的に許容される」を含む。
【0053】
本発明によれば、モンテルカスト及びその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される剤形のモンテルカスト又はその塩を含む医薬調剤の形態で、局在的又は全身的に、例えば、経口、静脈内又は動脈内(血管内及び他の血管周囲デバイス/剤形(例えば、ステント)によるものを含む)、筋肉内、皮膚、皮下、経粘膜(例えば、舌下若しくは頬側)、粘膜内、直腸又は直腸内、膣内、皮内、経皮、経鼻、肺(例えば、気管若しくは気管支)、好ましくは局所的に、直接的な注射によって、又は任意の他の非経口経路によって投与され得る。
【0054】
直接的な全身投与は、通常の経口(peroal)投与及び胃腸管を通しての有効成分の吸収によって、又は直接的な非経口投与、例えば、経皮又は経粘膜(例えば、任意の粘膜(直腸、膣、鼻腔、口腔、又は結腸及び/又は肛門直腸粘膜等の下部腸を含む胃腸管を含む)を通しての活性成分の吸収)によって、又は同じ生物学的表面への皮内及び/又は粘膜内注射によって、達成され得る。
【0055】
モンテルカスト又はその塩は、代替的には、直接的な局在的及び/又は局所的投与によって投与され得る。例えば、注射は、関連組織、例えば、脊柱(硬膜外)に対して局在的(例えば、皮内、粘膜内又は皮下)であってもよく、又は全身的効果をもたらすことを目的として、例えば骨髄内への直接注射によって、局在的であってもよい。
【0056】
モンテルカストの局在的、局所的(特に粘膜)投与は、局所効果だけでなく、全身効果(上に述べたように、全身吸収の結果として)も生じ得る。
【0057】
局在的/局所的、又は全身投与かどうかに関わらず、注射に使用するための薬学的に許容される製剤が、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、又は担体と混合してモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩を含んでもよく、これらは、意図される直接的な非経口投与及び標準的な医薬の慣行を十分に考慮して選択され得る。そのような薬学的に許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であってもよく、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有さなくてもよい。そのような薬学的に許容される担体はまた、モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の即時放出又は放出調節を付与し得る。
【0058】
このため、注射用の製剤は、懸濁液、及び/又はより好ましくは溶液等の水性製剤(例えば、生理食塩水含有製剤(例えば、溶液)、ホスファート含有製剤(例えば、溶液)、アセタート含有製剤(例えば、溶液)、若しくはボラート含有製剤(例えば、溶液)等の(任意選択の)緩衝された水性製剤(例えば、溶液)、あるいは使用(例えば、注射)前に水性ビヒクル等のビヒクルで再構成され得る凍結乾燥粉末の形態であってもよい。
【0059】
注射用の製剤には、溶媒(例えば、水)、共溶媒、可溶化剤(例えば、シクロデキストリン)、湿潤剤、懸濁剤、乳化剤、増粘剤、キレート剤、抗酸化剤、還元剤、抗菌防腐剤、増量剤、及び/又は保護剤等の当業者に既知の他の好適な賦形剤が含まれてもよい。
【0060】
注射用の製剤は、好ましくは、標準的な技術により、本明細書に記載されるように緩衝液及び/又はpH調整剤を使用して、生理学的に許容されるpH値(例えば、約4.5~約9.5、例えば、約6~約9、例えば、約6.5~約8.5のpH)に緩衝され、並びに/あるいは張度調節剤(塩化ナトリウム等)をさらに含んでもよい。
【0061】
加えて、モンテルカスト又はその塩は、非経口投与又は経口投与の後に、標的化様式で、胃、腸、膵臓、肝臓、脾臓、膀胱、腎臓、肺、心血管系(心臓及び血管系を含む)、卵巣、前立腺、中枢神経系、骨髄、眼、膣、子宮頚部等の患者の1つ以上の内臓に投与してもよく、組成物の送達を標的化するために、既知のガレノス操作が用いられる。
【0062】
例えば、下部胃腸管への標的化された局在的送達による投与は、当業者に知られている標準的な遅延放出又は徐放コーティング技術によって、非経口送達、特に、経口送達によって達成され得る。特に、上部又は下部の腸の別個の部分が標的とされ得る。例えば、結腸投与はまた、最初に経口的又は非経口的に投与される結腸標的化薬物送達手段によって達成することができる。
【0063】
局所投与はまた、例えば鼻腔内吸入又は肺への肺吸入によって達成され得る。局所製剤は、例えば、粉末エアロゾルを使用することによって、又はネブライザー等の適切な微粒化技術若しくは装置を使用する水性ミストによって、モンテルカスト又はその塩を含むスプレーを作製することによって、このように投与され得る。
【0064】
モンテルカスト(monteukast)又はその薬学的に許容される塩の局在的送達手段はまた、皮膚及び/又は適切な粘膜表面への適用に適した適切な(例えば、薬学的及び局所的に許容される)ビヒクルでの直接的な(例えば、口腔及び/又は鼻粘膜、肺、肛門直腸領域及び/又は結腸を含む粘膜への、又は皮膚への)局所適用を含む。このようなビヒクルは市販されていてもよく、経口、静脈内、皮膚又は皮下、経鼻、筋肉内、腹腔内、又は肺送達にも適していてもよい。
【0065】
モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩を含む局所製剤は、一般に、意図される投与経路(例えば、関連する粘膜(肺を含む)若しくは好ましくは皮膚への局所投与)及び標準的な医薬又は他の(例えば、美容)慣行を十分に考慮して選択され得る、(例えば、薬学的及び/又は局所的に許容される)アジュバント、希釈剤、又は担体と混合した1つ以上の医薬製剤の形態で投与されるであろう。そのような薬学的に許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であってもよく、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有さなくてもよい。そのような薬学的に許容される担体はまた、モンテルカストの即時放出又は放出調節を付与し得る。
【0066】
適切な医薬製剤は、市販されていてもよく、又はそれ以外の文献、例えば、Remington The Science and Practice of Pharmacy,22ndedition,Pharmaceutical Press (2012)and Martindale-The Complete Drug Reference,38thEdition,Pharmaceutical Press(2014)、及びその中に言及される書類に記載される技術に従って調製され得る(全ての書類における関連する開示は、本明細書に参考として組み込まれる)。その他、モンテルカスト及びその塩を含む適切な製剤の調製は、慣習的な技術を使用して、当業者によって非発明的方法で達成され得る。
【0067】
モンテルカスト及びその塩は、さらに、及び/又は代替的には、適切な賦形剤と組み合わせて、以下を調製してもよい。
・ゲル製剤(そのための好適なゲルマトリックス材料には、セルロース誘導体、カルボマー及びアルギン酸塩、トラガントガム、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、デンプン、キサンタンガム、カチオン性グアーガム、寒天、非セルロース多糖類、グルコース等の糖類、グリセリン、プロパンジオール、ビニルポリマー、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、特に、ヒアルロン酸が含まれる)、
・ローション(そのための好適なマトリックス材料には、セルロース誘導体、グリセリン、非セルロース多糖類、異なる分子量のポリエチレングリコール、及びプロパンジオールが含まれる)、
・ペースト若しくは軟膏(そのための好適なペーストマトリックス材料には、グリセリン、ワセリン、パラフィン、異なる分子量のポリエチレングリコール等が含まれる)、
・クリーム又はフォーム(そのための好適な賦形剤(例えば、発泡剤)には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、異なる分子量のポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム、脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテルスルホン酸ナトリウム、コーングルテン粉末、及びアクリルアミドが含まれる)、
・粉末エアロゾル(そのための好適な賦形剤には、マンニトール、グリシン、デキストリン、デキストロース、スクロース、ラクトース、ソルビトール、及びポリソルベート、例えば、乾燥粉末吸入剤が含まれる)、
・経口用若しくは吸入用の液体、例えば、水、(エアロゾル)スプレー(そのための好適な賦形剤には、ヒアルロン酸等の粘度調節剤、グルコース及びラクトース等の糖、乳化剤、緩衝剤、アルコール、水、防腐剤、甘味料、香料等が含まれる)、並びに/あるいは
・注射液又は懸濁液(水性又はその他であってもよく、そのための好適な賦形剤には、溶媒及び共溶媒、可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤、乳化剤、増粘剤、キレート剤、抗酸化剤、還元剤、抗菌防腐剤、緩衝液、及び/又はpH調整剤、増量剤、保護剤、並びに張度調節剤が含まれる)、言及され得る特定の注射液又は懸濁液は、特にcモンテルカスト/その塩をヒアルロン酸と組み合わせるとき、皮膚充填剤(すなわち、注射充填剤又は軟組織充填剤)を含む。
【0068】
保湿剤、例えば、グリセロール、グリセリン、ポリエチレングリコール、トレハロース、グリセロール、ワセリン、パラフィン油、シリコーン油、ヒアルロン酸及び塩(例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩)、オクタン酸/カプリン酸トリグリセリド等;並びに/あるいは抗酸化剤、例えば、ビタミン及びグルタチオン;並びに/あるいはpH調節剤、例えば、酸、塩基、及びpH緩衝液もまた、必要に応じてそのような製剤中に含まれてもよい。
【0069】
さらに、界面活性剤/乳化剤、例えば、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、脂肪酸(例えば、ステアリン酸)、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ソルビタンエステル(例えば、ステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン等)、モノアシルグリセリド(モノステアリン酸グリセリン等)ポリエトキシ化アルコール、ポリビニルアルコール、ポリオールエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、エトキシ化脂肪酸エステル、ポリオキシルグリセリド、ラウリルジメチルアミンオキシド、胆汁酸塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム)、脂質(例えば、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、ステロール、プレノール、糖脂質、ポリケチド)、リン脂質、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、ヘキサデシルトリメチル-アンモニウムブロミド、ポロキサマー、レシチン、ステロール(例えばコレステロール)、糖エステル、ポリソルベート等;防腐剤、例えばフェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリン等;並びに増粘剤、例えばアクリロイルジメチルタウレート/VPコポリマーが含まれてもよい。具体的には、ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリル、ヘキサデカノール、ステアリン酸ソルビタン、セチルアルコール、オクタン酸/カプリン酸グリセリド等が、特にクリーム製剤中に含まれてもよい。
【0070】
モンテルカスト及びその塩、及びそれらを含む(例えば、医薬)製剤(例えば、上に記載されているような水溶液、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、フォーム、ペースト、及び/又は乾燥粉末)を、適切なマトリックス材料とさらに組み合わせて、皮膚又は粘膜表面等の生物学的表面に適用するための包帯又は治療パッチを調製することができる。したがって、そのような製剤を用いて、ガーゼ、不織布、又は絹紙等のマトリックス材料に含浸してもよい。あるいは、治療パッチは、例えば、バンドエイド、フェイシャルマスク、アイマスク、ハンドマスク、フットマスク等であってもよい。
【0071】
そのような包帯を創傷に適用する際に使用するためにワセリンを用いてもよいが、我々はまた、PEG(例えば、PEG400)に基づく軟膏をマトリックス材料と組み合わせて、ワセリンを使用する必要なく、包帯を調製することができることも見出した。
【0072】
モンテルカスト及びその塩はまた、固体支持体(鼻用包帯等(例えば、鼻の出血を止めるための)、皮膚の足場(例えば、創傷治癒において)又は人工骨(例えば、骨移植/インプラント治療の場合))と組み合わせて使用され得る。
【0073】
(例えば、本明細書に記載される粘膜表面への)局所投与のためのゲルは、水に加えて、可溶化剤(例えば、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンを含むシクロデキストリン等のデキストリン)、増粘剤又は懸濁剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、ポリエチレングリコール等)、キレート剤(エデト酸ナトリウム等)、抗菌防腐剤、緩衝剤及び/又はpH調整剤等の賦形剤を含み得る。
【0074】
モンテルカスト及びその塩は、懸濁液、乾燥粉末、又は溶液によって吸入のために投与され得る。好適な吸入デバイスには、手動又は呼気で作動し、標準のスペーサー装置の有無に関わらず用いることができる加圧式定量吸入器(pressurized metered-dose inhaler、pMDI)、単回投与、複数回投与のパワーアシスト式であり得る乾燥粉末吸入器(dry powder inhaler、DPI)、及び微細なミスト中のエアロゾル薬物が、例えば、pMDIを使用して供給されるスプレーよりも遅い速度で送達されるソフトミスト吸入器(soft mist inhaler、SMI)又はネブライザーが含まれる。
【0075】
pMDIでは、モンテルカスト及びその塩は、各作動で約20~約100μLの1回以上の計量された用量を送達するために、推進剤(例えば、HFA、マンニトール、ラクトース、ソルビトール等の賦形剤とともに)に分散された微粉化粒子の加圧懸濁液として、又はエタノール溶液として投与され得る。作動は、手で(例えば、押す)又は吸入(呼吸作動)によって行うことができ、ばねによって駆動されるフロートリガーシステムを伴う。
【0076】
DPIでは、モンテルカスト及びその塩は、デバイスに予め充填され得るか、又は手動で充填され得るカプセル内で、単独で、又はより大きな粒子サイズの不活性賦形剤(例えば、マンニトール)とブレンドされて、微粉化された薬物粒子(約1~約5μmの間のサイズ)の形態で投与され得る。DPIからの吸入は、薬剤粒子を分解し、気道内に分散させる可能性がある。
【0077】
SMIでは、モンテルカスト及びその塩は、デバイスに充填されるカートリッジ内に溶液として保管され得る。ばねは、ボタンが押されたときに用量が放出され、薬液のジェット流を放出するように、用量をマイクロポンプに放出することができる。
【0078】
また様々なネブライザーを使用して、エアロゾル化溶液の微細なミストの形態でモンテルカスト及びその塩を投与し得る。ネブライザーとしては、呼吸増強ジェットネブライザー(この場合、コンプレッサーの補助により、気流がジェットを通って移動し、薬物溶液をエアロゾル化させる)、呼吸作動式ジェットネブライザー(患者が吸入した後、コンプレッサーの補助により、空気流がチューブを通って移動し、薬物溶液をエアロゾル化させる)、超音波ネブライザー(圧電結晶が振動し、加熱によりエアロゾル化を引き起こし、噴霧化を引き起こす)、振動メッシュネブライザー(圧電結晶がメッシュプレートを振動させてエアロゾル化を引き起こし、噴霧化中に溶液の温度を有意に変化させることなく非常に微細な液滴を与える)が挙げられ得る。
【0079】
しかしながら、治療される状態が放射線直腸炎である場合、適切な送達手段(例えば、本明細書で上に記載される標的化/遅延放出組成物のうちの1つ以上の間接的な局所適用)を使用するか、又は手動で及び/若しくは浣腸剤(例えば、フォーム浣腸剤、ゲル浣腸剤又は液体浣腸剤)として適用される溶液、フォーム若しくはゲルの直接的な局所投与による、直腸内注射による、又は坐剤による、局所肛門直腸投与が特に有用である。
【0080】
本発明に従って使用するためのモンテルカストを含む組成物は、適切な規制基準を満たすために、投与前に無菌であってもよく(又は好ましくは無菌であってもよく)、又は滅菌されてもよい。滅菌は、滅菌濾過及び/又は無菌処理等の系内滅菌プロセスによって、又は乾熱滅菌及び湿熱滅菌(例えば、オートクレーブ中)を含む加熱等による最終滅菌プロセスによって実施され得る。
【0081】
本発明のさらなる態様によれば、上述の状態に使用するための、モンテルカスト、又はその薬学的に許容される塩と、アジュバント、希釈剤又は担体等の1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む(例えば医薬)組成物が提供される。
【0082】
(例えば、皮膚、口腔及び/又は鼻粘膜を含む粘膜、肺、結腸、及び/又は特に肛門直腸領域への)局所投与のために、抑制された免疫系を有する患者における、免疫抑制障害の治療、又は創傷、炎症、若しくは炎症を特徴とする状態の治療に使用するために、適しており、そのために適応され、及び/又はそのために包装され、提示され、抑制された免疫系は、例えばがん等の放射線療法によって、その製剤の(例えば、皮膚への、口腔及び/又は鼻粘膜を含む粘膜への、肺、結腸及び/又は特に肛門直腸領域への)直接的な局所投与によって、及び/又は皮内、経皮、及び/若しくは粘膜内注射によって引き起こされ得る、モンテルカスト、又はその薬学的に許容される塩を含む好ましい医薬組成物。
【0083】
誤解を避けるために、モンテルカスト又はその塩を含む局所製剤は、本明細書で上に述べられ、定義されるか、又は記載されるような、例えばがんのための放射線療法によるもの(例えば、それによって引き起こされるもの)であってもよい、本明細書に記載の任意の免疫抑制障害、又は抑制された免疫系を有する患者における炎症の治療を含む、本明細書に記載の任意及び全ての状態に使用され得る。同様に、言及され得るモンテルカスト又はその塩を含む局所製剤には、本明細書で言及され、定義されるか、又は記載されるもののいずれか及び全てが含まれる。本明細書の関連する開示のいずれか及び全ては、本発明のこの態様と組み合わせて参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
モンテルカスト又はその塩の投与は、連続的又は断続的であり得る。投与様式は、投与のタイミング及び頻度によっても決定され得るが、療法的治療の場合、状態の重症度によっても決まる。
【0085】
治療される障害、及び治療される患者、並びに投与経路に応じて、モンテルカスト又はその塩は、様々な治療有効用量で、それを必要とする患者へ投与され得る。
【0086】
同様に、製剤中のモンテルカスト又はその塩の量は、治療される状態の重症度及び治療される患者によって決まるが、当業者によって決定され得る。
【0087】
いずれにせよ、医療従事者又は他の当業者は、状態の重症度及び投与経路に応じて、個々の患者に最も適した実際の投薬量を日常的に決定し得る。本明細書に記載の投薬量は、平均的な場合の例であり、当然のことながら、より高い又はより低い投薬量範囲が妥当である個々の事例があり得、それらも本発明の範囲内である。
【0088】
用量は、1日1回~4回(例えば、3回)投与することができる。
【0089】
水溶液製品中のモンテルカスト又はその塩の適切な濃度は、全ての場合で遊離モンテルカストとして計算して、約0.01(例えば、約0.1)~約15.0mg/mLであり得る。
【0090】
モンテルカスト又はその塩の適切な局所用量(局所に適用されるものも含む)は、全ての場合で遊離モンテルカストとして計算して、約0.05~約50(例えば、約20)μg/治療領域のcm2、例えば、約0.1(例えば、約0.5)~約20(例えば、5)μg/治療領域のcm2の範囲であり、約1~約10μg/治療領域のcm2、例えば、5μg/治療領域のcm2を含む。
【0091】
いずれにせよ、哺乳動物、特にヒトに投与される用量は、本発明の文脈では、(上に記載の)妥当な時間枠にわたって哺乳動物の治療応答をもたらすのに十分でなければならない。当業者は、正確な用量及び組成並びに最も適切な送達レジメンの選択が、とりわけ製剤の薬理学的特性、治療される状態の性質及び重症度、レシピエントの体調及び精神状態、並びに治療される患者の年齢、状態、体重、性別及び反応、疾患の病期/重症度、並びに患者間の遺伝的差異によっても影響されることを認識している。
【0092】
モンテルカスト又はその塩は、損なわれた免疫系を有する患者における、免疫抑制障害の治療、及び/又は炎症、若しくは炎症を特徴とする状態の治療に使用するための、以下の任意の治療薬、又は薬物を含む、複数の既知の医薬有効成分と組み合わせてもよい。
・特に、哺乳動物、特にヒト対象(患者)を含む生きている対象において、ある種の生理学的効果(特定の疾患状態又は状態に対して治療能力又は予防能力のいずれかに関わらず)をもたらすことができ、モンテルカスト又はその塩と「協調して」作用して、治療される状態を治療するもの、あるいは
・免疫抑制、及び/又は炎症及び免疫抑制の組み合わせを引き起こすことが知られているか、又はそれが疑われており、モンテルカストの免疫回復特性及び/又は抗炎症特性によってそれに対抗することができるもの。
【0093】
免疫抑制、及び/又は炎症及び免疫抑制の組み合わせを引き起こすことが知られているか、又はそれが疑われている医薬有効成分/治療薬に関して、これらには、参照により本発明のこの態様に組み込まれる、本明細書で上に記載したもののいずれか1つ以上が含まれる。
【0094】
医薬有効薬は、モンテルカストの免疫回復特性及び/又は抗炎症特性に対して累積的、相加的及び/又は相乗的な効果を有していてもよく、特定の他の抗炎症剤、抗生物質、抗細菌剤及び/又は抗原虫剤、抗ウイルス剤(例えば、プロテアーゼ阻害剤)から選択され得る。
【0095】
本明細書に記載の使用及び治療方法に従って使用することができる抗炎症薬としては、関節炎等の自己免疫疾患の治療に使用されるもの(カタフラム、ベタメタゾン、ナプロキセン、シクロスポリン、コンドロイチン、セレコキシブ、エトドラク、メクロフェナメート、サルサレート、メチルプレドニゾロン、及びピロキシカム等)、及び変形性関節症の治療に使用されるもの(スリンダク、メロキシカム、フェノプロフェン、エトリコキシブ、及びナブメトン等)が挙げられる。
【0096】
本明細書に記載の使用及び治療方法に従って使用することができる抗菌薬の非限定的な例としては、クロラムフェニコール、オフロキサシン、レボフロキサシン、トブラマイシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、ロメフロキサシン、リンコマイシン、フルコナゾール、エノキサシン、フラゾリドン、ニトロフラゾン、リファンピシン、ミクロノマイシン(micronomicin)、ゲンタマイシン、セチルピリジニウム、ネオマイシン、ロキシスロマイシン、スルファジアジン銀、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、アジスロマイシン、マフェニド、スルファメトキサゾール、パラセタモール、クロラムフェニコール、シュードエフェドリン、ムピロシン、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラン酸、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、セファレキシン、モキシフロキサシン、上述のいずれかの既知の又は市販の薬学的に許容される塩、並びに上述の化合物及び/又は塩のいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0097】
本明細書に記載の使用及び治療方法に従って使用することができる抗ウイルス薬の非限定的な例としては、トブラマイシンリバビリン、アシクロビル、モロキシジン、ホスカルネット、ガンシクロビル、イドクスウリジン、トリフルリジン、ブリブジン、ビダラビン、エンテカビル、テルビブジン、ホスカルネット、ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、エムトリシタビン、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリン、リルピビリン、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、リトナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、ダルナビル、テラプレビル、ボセプレビル、シメプレビル、アスナプレビル、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ドルテグラビル、rsv-igiv、パリビズマブ、ドコサノール、エンフビルチド、マラビロク、vzig、varizig、アシクロビル、ガンシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、バルガンシクロビル、シドホビル、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、アデホビルピボキシル、ホミビルセン、ポドフィロックス、イミキモド、シネカテキンス、インターフェロン-α2b(組換え体、ヒト)、上述のいずれかの既知の又は市販の薬学的に許容される塩、並びに上述の化合物及び/又は塩のいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0098】
モンテルカスト及びその塩はまた、幹細胞(例えば、分化全能性(全能性)、多能性(胚性又は人工多能性幹細胞等)、複能性(間葉系幹細胞等)、少能性(造血幹細胞等)、又は単能性(筋幹細胞等))と、本明細書に記載の使用及び治療方法に従って合わせることもできる。
【0099】
患者はまた、例えば、本明細書に記載の状態のうちの1つ以上を治療するために、上述の他の既知の医薬有効成分のうちの1つ以上の投与に基づく療法を受けている場合もあり(かつ/又は既に受けている場合もあり)、このことは、モンテルカスト又はその塩による治療の前に、治療に加えて、及び/又は治療の後に、本明細書に言及される有効成分のうちの1つ以上の処方用量を受けていることを意味する。
【0100】
そのような他の医薬有効成分もまた、多くの方法でモンテルカスト又はその塩と組み合わせて投与され得る。
【0101】
例えば、モンテルカスト又はその塩は、同じ(例えば、医薬)製剤で一緒の投与、又は異なる(例えば、医薬)製剤における別個の投与(同時又は順次)のために、他の医薬有効成分(又は「治療薬」)と「組み合わせ」られ得る。
【0102】
したがって、そのような併用製品は、他の治療薬と組み合わせたモンテルカスト又はその塩の投与を提供し、よって、これらの製剤のうちの少なくとも1つがモンテルカスト/その塩を含み、かつ少なくとも1つが他の治療薬を含む、別個の製剤として提示されてもよく、又は組み合わせ調剤として提示され(すなわち、製剤化され)(すなわち、モンテルカスト/その塩及び他の治療薬を含む単一の製剤として提示され)てもよい。
【0103】
したがって、さらに、以下のものが提供される。
(1)(例えば、医薬)製剤であって、モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩と、本明細書で上に記載したような別の医薬有効成分と、薬学的に許容される不活性賦形剤(例えば、アジュバント、希釈剤、又は担体)と、を含む、製剤(本明細書で以下、製剤は「組み合わせ調剤」と称される)、並びに、
(2)以下の成分:
(A)薬学的に許容される不活性賦形剤(例えば、アジュバント、希釈剤又は担体)と混合した医薬製剤の形態のモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩と、
(B)薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤又は担体と混合された医薬製剤の形態において上に記載した別の医薬有効成分といった構成要素を含み、
構成要素(A)及び(B)が、各々、他方と組み合わせた投与に好適な形態で提供される、部品キット。
【0104】
本発明のさらなる態様では、本明細書で上に定義される組み合わせ調剤(1)の調製のためのプロセスであって、本プロセスが、モンテルカスト/その塩、他の医薬有効成分、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と関連付けることを含む、プロセスが提供される。
【0105】
本発明のさらなる態様では、本明細書で上に定義される部品キット(2)を調製するためのプロセスであって、本プロセスが、構成要素(A)及び(B)を関連付けることを含む、プロセスが提供される。本明細書で使用される場合、関連付けることへの言及は、2つの構成要素を互いに組み合わせて投与するのに適したものにすることを意味する。
【0106】
よって、本明細書で上に定義される部品キットの調製のためのプロセスに関連して、2つの構成要素を互いに「関連付ける」とは、部品キットの2つの構成要素が、
(i)別個の製剤として(すなわち、互いに独立して)提供されてもよく、その後、併用療法において互いに組み合わせて使用するために一緒にされてもよいこと、又は
(ii)併用療法において互いに組み合わせて使用するための「併用パック」の別個の構成要素として一緒に包装され、提示されてもよいこと、が含まれる。
【0107】
したがって、
(I)本明細書で定義された構成要素(A)又は(B)のうちの1つ、並びに、
(II)構成要素を、2つの構成要素の他方の構成要素と組み合わせて使用するための指示書を含む、部品キットがさらに提供される。
【0108】
本明細書に記載の部品キットは、繰り返し投薬を提供するために、1つより多い適切な量/用量のモンテルカスト/その塩(例えば、それらを含む製剤)、及び/又は1つより多い適切な量/用量の他の医薬有効成分(例えば、それらを含む製剤)を含み得る。上述のいずれかの量/用量を含む1つより多い製剤、又は上述のいずれかの量/用量が存在する場合、それらは、同じであってもよく、又はいずれかの化合物、化学組成物、及び/又は物理的形態の用量の観点で、異なっていてもよい。
【0109】
本明細書に記載の部品キットに関して、「~と組み合わせた投与」とは、それぞれの構成要素が、関連する状態の一連の治療にわたって、順次、別個、及び/又は同時に投与されることが含まれる。
【0110】
したがって、本発明による併用製品に関して、「~と組み合わせた投与」という用語は、併用製品(モンテルカスト/その塩及び他の医薬有効成分)の2つの構成要素が、モンテルカスト/その塩、又は他の薬剤のいずれかが、同じ一連の治療(放射線療法)にわたって他の構成要素が存在しない状態で単独で(任意選択的に繰り返し)投与される場合よりも、関連状態の一連の治療にわたって患者にとってより大きな有益な効果を可能にするために、一緒に、又は時間的に十分に近接して、(任意選択的に繰り返し)投与されることを含む。併用が、特定の状態の治療に関して、かつ一連の治療にわたって、より大きな有益な効果を提供するか否かの決定は、治療又は予防される状態に依存するが、当業者によって慣習的に達成され得る。
【0111】
さらに、本発明による部品キットの文脈では、「~と組み合わせた」という用語は、2つの構成要素のうちの一方又は他方が、他方の構成要素の投与の前、その後、及び/又は投与と同時に(任意選択的に繰り返して)投与され得ることを含む。この文脈で使用される場合、「同時に投与される」及び「~と同時に投与される」という用語は、個々の量/用量のモンテルカスト/その塩及び他の有効医薬成分が互いに48時間(例えば24時間)以内に投与されることを含む。
【0112】
加えて、モンテルカスト及びその薬学的に許容される塩は、放射線療法と組み合わせた投与に適した形態、すなわち、例えば、がん等の疾患を治療するための放射線療法を受けているか、受けたことがあるか、又は受ける予定の患者へのモンテルカスト/その塩の投与である形態で提供され得る。
【0113】
上述のことから類推して、「放射線療法と組み合わせたモンテルカスト/塩の投与」は、2つの構成要素(モンテルカスト/その塩及び放射線療法)が、モンテルカスト/その塩が同じ一連の治療(放射線療法)にわたって(任意選択的に繰り返し)投与されない場合よりも、関連状態の一連の治療にわたって患者にとってより大きな有益な効果を可能にするために、一緒に、又は時間的に十分に近接して、(任意選択的に繰り返し)投与されることを含む。この併用が、治療に関して、かつ一連の治療にわたって、より大きな有益な効果を提供するか否かの決定は、治療又は予防される状態に依存するが、当業者によって慣習的に達成され得る。
【0114】
さらに、この文脈において、「~と組み合わせた」という用語は、モンテルカスト/その塩が、放射線療法の投与の前に、その後に、及び/又はそれと同時に(任意選択的に繰り返して)投与されることを含む。この文脈で使用される場合、「同時に投与される」及び「~と同時に投与される」という用語は、ある量/用量のモンテルカスト/その塩及び放射線療法が、互いに最大約60日、又は約21日、又は約10日、又は約7日、又は48時間(例えば、24時間)以内に投与されることを含む。
【0115】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、放射線直腸炎等の放射線によって誘導される炎症状態の治療のための医薬の製造のためのモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩の使用であって、本方法が、がん等の疾患を治療するための放射線療法を受けているか、受けたことがあるか、又は受ける予定の患者にモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩を治療することを含む、使用が提供される。
【0116】
「約」という用語が、本明細書で、例えば、期間、有効成分の濃度及び/若しくは用量、粒径、体積、及びpH等の量の文脈で用いられる場合はいつでも、そのような変数は、近似値であり、したがって本明細書で指定された数値から±10%、例えば、±5%、及び好ましくは±2%(例えば、±1%)変動し得ることが理解されるであろう。この観点で、「約10%」という用語は、例えば、数値10について±10%、すなわち9%~11%を意味する。
【0117】
本明細書に記載の使用及び方法はまた、免疫抑制障害、及び/又は免疫抑制を特徴とする障害を有する患者における炎症、又はその他の治療において使用するためのものであるかに関わらず、本明細書で上に言及される状態の治療において、先行技術で知られている類似の化合物又は方法(治療)よりも、それが医師及び/若しくは患者にとって便利であり、効果的であり、毒性が低く、広範囲の活性を有し、強力であり、少ない副作用をもたらし得るか、又はそれ/それらが、先行技術で知られている類似の化合物又は方法(治療)を上回る有用な薬理学的特性を有し得るという利点も有し得る。
本発明は、以下の実施例によって例示される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1】照射されたラットにおける、経時的な末梢血中の免疫細胞数に対するモンテルカストの効果を示す。
【
図4】放射線直腸炎が誘導されたラットにおける、結腸直腸機能に対する異なる薬剤の効果を示す。
【0119】
実施例1
ラットにおける放射線直腸炎
40匹のSprague-Dawleyラットを、それぞれ10匹のラットを含む4群に分けた。
【0120】
3群(合計30匹)のラットを、医療用線形加速器を使用して照射し、「正常対照」群の10匹のラットは未治療のままにした。放射線源と皮膚との間の距離は100cmであった。照射野領域は、ラットの肛門から2cm×5cmであり、放射線量は17.5Gyであった。照射後、ラットをケージに戻した。
【0121】
0.033gのモンテルカストナトリウム(Tianyu Pharmaceutical Co.(Zhejiang,China))を42.167gの蒸留水に溶解することによって、低用量(0.33mg/g)のモンテルカストゲルを調製した。得られた溶液に、20.0gのヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(hydroxypropyl-beta-cyclodextrin、HP-β-CD、Shandong Binzhou Zhiyuan Biotechnology Co.,Ltd.)を、完全に溶解するまで一定に撹拌しながらゆっくりと添加した。次いで、24gのヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methylcellulose、HPMC、Rohm Haas Electronic Materials(Shanghai)Co.,Ltd.、5%水溶液)を添加し、十分に混合した。0.01gの水酸化ナトリウム(China Pharmaceutical Group Chemical Reagents Co.,Ltd)及び0.1gのEDTA-2Na(China Pharmaceutical Group Chemical Reagents Co.,Ltd)を16.69gの蒸留水に別個に溶解して、pHが7.2~7.5の溶液を作製した。2種類の溶液を一定に撹拌しながら一緒に混合し、全ての気泡が消失するまで放置した。
【0122】
本質的に同じ手順を用いて、0.1gのモンテルカストナトリウムをほぼ同量の蒸留水に添加し、次いで上述の賦形剤を同じ順序で添加することによって、高用量(1mg/g)のモンテルカストゲルを作製した。
【0123】
低用量及び高用量のモンテルカストゲルを、照射後に2つの別々の群(それぞれ「低用量」群及び「高用量」群)の10匹のラットのそれぞれの直腸に投与した。ブランクゲルベース(モンテルカストを含まない以外は上述と同じゲル)を、正常対照群のラット及び残りの10匹の照射ラット(「モデル」群)に与えた。
【0124】
正常対照群、モデル群及び高用量群からの血液試料を1日おきに採取した。全白血球、リンパ細胞及び好中球の数を決定した。
【0125】
結果を
図1に示す。正常対照群と比較して、全細胞数は、照射後に有意に減少した。しかしながら、高用量モンテルカスト群における細胞数は、5日後に増加し始め、これはモデル群では見られなかった。
【0126】
ラットを7日後に安楽死させた。5cmの直腸組織を採取し、2片に切断し、一方の部分を組織病理学的分析に送り(
図2)、他方の部分をELISAキットによるサイトカイン検出(IL-1β)のためにホモジナイズした(
図3)。
【0127】
図2に示される結果は、モンテルカストが直腸において損傷の程度を減少させ(
図2(a))、上皮再生を促進した(
図2(b))ことを示す。
図3に示される結果は、モデル群、低用量群及び高用量群におけるIL-1β濃度が、対照群と比較して減少したことを示す。しかしながら、モンテルカスト治療群のIL-1β濃度は、用量依存的様式で、モデル群のIL-1β濃度より高かった。
【0128】
したがって、それを示すモデルにおいて、ラットの免疫応答を抑制する放射線レベルで、モンテルカストは、創傷治癒を促進し、抗炎症効果を有すると同時に、それを回復するのに役立ち得る。
【0129】
実施例2
モンテルカストゲルの経直腸投与及び静脈投与による放射線直腸炎の治療
体重180~220gの70匹の雄Wistarラットを、Zhejiang Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd(Zhejiang,China)から入手した。全ての動物を、標準的なケージ内で、交互に12時間の明暗状態にしつつ、標準的なげっ歯類用飼料及び水道水で維持した。
【0130】
ラットを、10%抱水クロラール(3.3mL/kg)の腹腔内注射で麻酔した。ラットは、仰臥位で板紙に尾と四肢で拘束され、テープで留められた。照射を、Elekta Synergy医療用線形加速器(Elekta limited,UK)を使用して行った。偽手術群(「シャム」)を除く全ての動物が、単一の線量の連続的な骨盤照射を受けた。動物から照射源までの距離は、100cmであった。放射線領域は、肛門開口部から5cm上方の2cm×5cmであった。放射線量は、600cGy/分の線量率で17.5Gyであった。
【0131】
照射後、自然回復のために動物をケージに戻した。シャム群の動物には、照射を行わずに腹腔で麻酔した。ラットの毎日の飼料摂取量及び体重を測定し、全般的な観察を毎日行った。
【0132】
1日目(D1)を、照射24時間後の薬物投与の最初の日として定義した。ラットに、以下の表1に従って異なる薬物を与えた。シャム群及びモデル群(「モデル」)のラットに、ブランクゲル(すなわち、以下に記載されるように調製されたが、モンテルカストを含まないゲル基剤)を与えた。
【0133】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(24mg)、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(400mg)及びエデト酸二ナトリウム(2mg)を混合し、121℃で30分間蒸気によって滅菌することによって、滅菌モンテルカストゲルを調製した。1mg(Monte L)、3mg(Monte M)又は10mg(Monte H)のモンテルカストナトリウムを水(1,564mL)に溶解し、0.2μmフィルターを通して濾過して滅菌した。次いで、2つの部分を一緒に混合することによってゲルを形成した。
【0134】
静脈内(i.v.)注射(Monte IV)のためのモンテルカスト溶液を、450mgのモンテルカストナトリウムを300mLの水に溶解することによって作製し、次いでこれを0.2μmフィルターを通して濾過して、滅菌された1.5mg/mLを得た。
【0135】
メサラジン坐剤(Dr Falk Pharma GmbH、Germany)を陽性対照として使用した(メサラジン)。坐剤を40℃の水浴中で融解させ、開封し、0.2gのメサラジンをラットの直腸に注射した。
【0136】
ラットを1日1回、21日間連続して治療した(D1~D21)。
【表1】
【0137】
腸の運動を低減させ、直腸内のゲルの持続時間を延長するために、全ての動物に、投与前に毎日6mL/kgの5%抱水クロラールの腹腔内注射を行った。各ラットについて0.3mLの投与体積で、胃内針によって直腸の内側約3cmに製剤を導入した。
【0138】
全体的な状態及び糞便の特徴を観察し、毎日記録した。疾患活動性指数(disease activity index、DAI)を以下の表2に記載の基準に従って評価した。22日目(D22)に、全ての動物を安楽死させ、評価のために直腸を採取した。ラットは、投与の少なくとも12時間前に絶食させた。
【表2】
【0139】
抱水クロラールの腹腔内注射により麻酔した後、ラットを後頸動脈瀉血により安楽死させた。
【0140】
約7cmの結腸直腸管を、肛門周囲の毛の端部から約0.3cmのところで分離した。検体をトリミングし、結腸直腸試料の近位及び遠位の1cmが、それぞれ同じ人によって切り取られた。次に、腸管を、縦方向に切開し、写真を撮り、秤量した。
【0141】
結腸粘膜損傷指数(colon mucosa damage index、CMDI)のスコアを、以下の表3の基準に従って肉眼観察によって評価した。
【表3】
【0142】
検体を10%ホルムアルデヒド溶液で48時間かけて固定し、HEで染色した後、病理学者(試験に対して盲検であった)による光学顕微鏡検査を行った。粘膜上皮の変性/壊死/剥離、粘膜下浮腫及び炎症性細胞浸潤を以下のように等級付けした。
0=正常、又は(確実に)放射線に帰することができない軽微な変化、
1=わずかな放射線損傷(軽度の炎症及び/又はわずかな陰窩の変化)、
2=軽度の損傷(より顕著な炎症及び/又は陰窩の損傷)、
3=中等度の損傷(上皮の顕著な喪失を有していなければならず、炎症の程度は様々である)、並びに
4=重度の損傷(潰瘍、壊死)。
【0143】
結腸直腸機能は、結腸直腸機能の指標であるDAIスコアによって評価した。結果を表4及び
図4に示し、各群における異なるDAIレベルのラットの数を示す。
【表4】
【0144】
各々が下痢、軟らかい、軟便及び/又は粘液性の便、さらには死亡等の様々な程度の疾病を示した対照群と比較して、モンテルカストの直腸内投与及び静脈内投与の両方が、疾患の重症度を用量依存的に低下させることが見出された。静脈内投与は、Monte M直腸内投与用量よりもわずかに良好であったが、Monte H用量よりも有効性が低かった。
【0145】
結腸粘膜の肉眼的形態学的評価をCMDIスコアによって評価し、ここで、スコアが高いほど、より高いレベルの病変を表す。結果を以下の表5及び
図5に示し、各群におけるCMDIスコア分布の割合を示す。
【表5】
【0146】
結果は、病変のレベルが、モンテルカスト用量の増加に伴って減少したことを示す。ここでも、静脈内投与は、Monte M用量よりもわずかに良好であったが、直腸内投与されたMonte H用量よりも有効性が低かった。
【0147】
組織病理学的評価結果を
図6に示しており、モンテルカストゲルが、放射線によって引き起こされた病変を低減し、上皮損傷、粘膜下浮腫及び炎症性細胞浸潤が用量依存的に軽減されたことを示している。直腸内投与は、静脈内投与よりも上皮の修復において良好な有効性を示した。
【国際調査報告】