(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】バッテリ用のバッテリセルパック及びバッテリ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20240814BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20240814BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20240814BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20240814BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240814BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20240814BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/289 101
H01M50/291
H01M50/293
H01M10/0562
H01M50/264
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507095
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2022071680
(87)【国際公開番号】W WO2023025536
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】102021122106.4
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルコチュ・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ロッホ・ローベルト
【テーマコード(参考)】
5H029
5H040
【Fターム(参考)】
5H029AK01
5H029AL01
5H029AM11
5H029BJ02
5H040AA07
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY08
5H040CC26
5H040CC34
5H040JJ03
5H040LL06
5H040NN00
(57)【要約】
【課題】充電された状態と放電された状態の間でその空間的な拡大に関して変化するバッテリセルを特に有利にはめ込み、あるいは配置する。
【解決手段】隣り合って配置されたバッテリセル3と、バッテリセル3に幾何学的に対応するフレーム要素であって、バッテリセル3が隣り合う2つのフレーム要素によって形成されるバッテリセル空間へはめ込まれることで、隣り合う2つのフレーム要素を用いてバッテリセル3が位置固定されている、フレーム要素と、バッテリセル3が中間層を用いてバッテリセル空間に保持されるように、バッテリセル3とフレーム要素の間に直接配置されたバッテリセル3ごとに1つの中間層とを備え、中間層が、直接隣接するバッテリセル3の膨張寸法への膨張によって、規定どおりに破壊することなく弾性的に圧縮され、バッテリセル3の膨張にもかかわらず、バッテリセルパック1の外部寸法18が一定のままである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-互いに隣り合って配置された複数のバッテリセル(3)と;
-前記バッテリセル(3)に幾何学的に対応する複数のフレーム要素(10)であって、対応するバッテリセル(3)が互いに直接隣り合う2つのフレーム要素(10)によって形成されるバッテリセル空間(11)へはめ込まれることで、互いに直接隣り合う2つのフレーム要素(10)を用いてバッテリセル(3)が位置固定されている、フレーム要素と;
-バッテリセル(3)ごとに1つの中間層(17)であって、各バッテリセル(3)が中間層(17)によって前記バッテリセル空間(11)に保持されるように、各バッテリセル(3)と前記フレーム要素(10)との間に直接配置された中間層(17)と
を備え、
前記中間層(17)は、直接隣接するバッテリセル(3)の膨張寸法への膨張によって、規定どおりに破壊することなく弾性的に圧縮可能であり、これにより、対応するバッテリセル(3)の膨張にもかかわらず、前記バッテリセル空間(11)の大きさ、及びしたがってバッテリセルパック(1)の外部寸法(18)が一定のままであることを特徴とするバッテリセルパック(1)。
【請求項2】
各バッテリセル(3)は固体バッテリセルとして形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリセルパック(1)。
【請求項3】
各中間層(17)は、ポアソン比(μ)が0.3より小さな材料を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のバッテリセルパック(1)。
【請求項4】
各中間層(17)は発泡材料を有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のバッテリセルパック(1)。
【請求項5】
前記中間層(17)は、それぞれ、バッテリセルが膨張していないときに、各バッテリセル(3)に最大10bar、好ましくは最大5bar、特に最大1barの初期圧力が作用するように構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のバッテリセルパック(1)。
【請求項6】
2つの受圧プレート(4,5)及び2つのクランプ要素(6,7)が設けられており、前記受圧プレート(4,5)は、バッテリセルパック(1)を長手延長方向(8)に沿って画定し、長手延長方向(8)に沿って受圧プレート(4,5)同士の間に配置されたバッテリセル(3)、フレーム要素(10)及び中間層(17)が互いにクランプされるように、前記クランプ要素(6,7)を用いて長手延長方向(8)に沿って相互にクランプされていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のバッテリセルパック(1)。
【請求項7】
前記フレーム要素(10)は、結合要素(21)を用いて互いに固定されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のバッテリセルパック(1)。
【請求項8】
前記フレーム要素(10)は、別の結合要素(22)を用いてクランプ要素(6,7)に固定されていることを特徴とする請求項6に記載のバッテリセルパック(1)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に従って形成されたバッテリセルパック(1)を備えたバッテリ(2)。
【請求項10】
ハウジング下部(24)及びハウジング上部(25)を備えたバッテリハウジング(23)が設けられており、バッテリセルパック(1)及びハウジング下部(24)が接着装置(27)を用いて互いに接着されており、バッテリセルパック(1)及びハウジング上部(25)が別の接着装置(26)を用いて互いに接着されていることを特徴とする請求項9に記載のバッテリ(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に固体バッテリセルを有するバッテリセルパックと、特に少なくとも部分的に電気的に駆動可能あるいは移動可能な自動車用のバッテリとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
少なくとも部分的に電気的に駆動可能あるいは移動可能な自動車自動車、特にハイブリッド自動車、電機自動車などは、電気機械式のエネルギー変換器を用いて、自動車の駆動のための電気エネルギーを貯蔵し、提供するバッテリ、特に二次電池を備えている。このために、バッテリは複数のバッテリセルを備えており、当該バッテリセルは、例えばそれぞれパウチセルとして形成されている。バッテリセルは、自動車の動作中に繰返し充電及び放電され、各バッテリセルは、放電された状態及び充電された状態で異なる外部寸法、すなわち異なる三次元寸法を有している。各バッテリセルの動作において生じる当該寸法変化により、空間的(三次元的)な寸法変化をバッテリセルの取付位置において受け止め(吸収し)、あるいは補整するために、構造上の措置を講じるべきである。空間的な寸法変化は、充電された状態と放電された状態とでバッテリセルごとに最大10%の体積差において現れる。
【0003】
特許文献1では、少なくとも1つのバッテリセル及び導電体を有するバッテリが提案されている。ここでは、導電体は蛇行状に配置されており、これにより、導電体は、バッテリセルの三次元変化に損傷なく追従することが可能である。特許文献2及び特許文献3には、それぞれ、互いに隣り合う2つのセルユニットを備えたバッテリアセンブリが提案されており、セルユニットは、スペーサ要素を介して互いに隣接している。このとき、スペーサ要素によって冷却通路が形成されている。隣り合うセルユニットが膨張することでスペーサ要素によって形成される冷却通路が不都合に共に押圧されるのを回避するために、スペーサ要素は、セルユニットの膨張を阻止する手段を備えている。
【0004】
しかしながら、当該従来のバッテリ装置は、その構造に関して特に手間がかかるものであるとともに、サンドイッチ構造を有するCell-to-Pack(セルトゥーパック)統合を許容するものではない。これに代えて、当該従来のバッテリ装置では、少なくとも1つのCell-to-Module(セルトゥーパック)配置が必要であり、そして初めて、Module-to-Pack(モジュールトゥーパック)統合が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102017008390号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第112012002517号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第112012002518号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、充電された状態と放電された状態とでその空間的な拡大に関して変化するバッテリセルを特に有利にはめ込み、あるいは配置することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当該課題は、独立請求項の対象によって解決される。本発明の別の可能な態様は、従属請求項、明細書及び図面に開示されている。
【0008】
本発明によれば、バッテリ、特に自動車用バッテリのためのバッテリセルパックが提案される。バッテリセルパックの規定どおりの取付位置では、バッテリあるいは自動車用バッテリはバッテリセルパックを備えている。バッテリセルパックは、互いに並んで配置された複数のバッテリセル、特に二次電池セルを備えている。バッテリセルパックの一形態では、各バッテリセルが固体バッテリセルとして形成されている。したがって、この場合、各バッテリセルは固体電解質を有している。加えて、特に、各バッテリセルはいかなる液体も有していない。このように構成されたバッテリセルは、ASSBセル(ASSB:All-Solid-State-Battery:(全)固体バッテリ)と呼ばれる。固体バッテリセルは、エネルギー密度比が特に大きい点で、及び動作安全性が改善されている点で利点を有している。
【0009】
いずれにしても、バッテリセルパックは、バッテリセルに幾何学的に対応する複数のフレーム要素を更に備えており、互いに直接隣り合う2つのフレーム要素を用いてバッテリセルが位置的に固定されている。このために、互いに直接隣り合うフレーム要素は、当該フレーム要素によって、あるいは当該フレーム要素間にバッテリセル空間が形成されるように互いに配置されている。当該バッテリセル空間には、バッテリセルが、はめ込まれているとともに、これにより互いに直接隣り合うフレーム要素内で/フレーム要素において位置的に定着あるいは固定されている。
【0010】
加えて、バッテリセルパックは、通常、バッテリセルごとに少なくとも1つの中間層を備えており、当該中間層は、各バッテリセルと、対応するバッテリセルを位置的に固定するフレーム要素のうち少なくとも1つとの間に直接配置されている。これにより、各バッテリセルは、中間層を用いてバッテリセル空間に保持されている。換言すれば、バッテリセルは、中間層を用いて、フレーム要素のうち1つ、又はバッテリセルが規定どおりにはめ込まれているバッテリセル空間を共に形成する両フレーム要素に接触する。
【0011】
中間層は、規定に従い、破壊することなく弾性的に圧縮可能に形成されている。これに対応して、バッテリセル空間にはめ込まれてこれにより1つ又は複数の中間層に隣接するバッテリセルが膨張寸法に膨張することで、中間層は、規定に従いバッテリセルによって、破壊することなく弾性的に圧縮可能である。このとき、対応するバッテリセルの膨張寸法は、対応するバッテリセルの基本寸法よりも大きい。バッテリセルのその基本寸法から膨張寸法への膨張は、例えば実際の充電状態(SOC:state of charge)に関連している。すなわち、バッテリセルは、放電された状態(SOC=0)においては基本寸法を有する一方、バッテリセルは、充電された状態(SOC>0)においては膨張寸法を有する。バッテリセルが膨張寸法を有する場合には、バッテリセルは、少なくとも1つの空間方向においてバッテリセルが基本寸法を有する場合よりも大きい。単純化していえば、バッテリセルは、当該バッテリセルが膨張寸法を有している場合には、当該バッテリセルが基本寸法を有している場合よりも幅広及び/又は長く及び/又は深い。
【0012】
バッテリセルパックにおいては、対応するバッテリセルの膨張にもかかわらず、特に3つの空間方向において、バッテリセル空間の大きさ及びしたがってバッテリセルパックの外部寸法は一定のままである。なぜなら、対応するバッテリセルの膨張時に、バッテリ空間内の寸法変化が、各中間層が対応するバッテリセルの膨張によってバッテリセル空間内で圧縮されることによって、1つ又は複数の中間層によって受け止められ、あるいは補整されるからである。これは、膨張する、又は膨張したバッテリセルが圧縮力を各中間層へ加えることで、例えば各中間層の厚さが変化することを意味している。中間層は、当該圧縮力によって変形され、例えば圧縮される。このとき、共にバッテリセル空間を形成するフレーム要素は、互いに対して相対的に不動のままであるため、バッテリセルの膨張は、バッテリセル空間の外側では寸法変化として現れない。したがって、フレーム要素の幾何形状及び外部寸法は、バッテリセルが基本寸法を有しているか、又は膨張寸法を有しているかにかかわらず一定のままである。したがって、フレーム要素の寸法、特にバッテリセル空間の寸法は、バッテリセルのサイクル中に変化しない。
【0013】
そのため、有利には、Cell-to-Pack(セルトゥーパック)構造をシステムレベルで実現することが可能である。特に、複数のバッテリセルを有するバッテリセルパックをサンドイッチ構造に配置し、特にハウジング要素及び/又は支持部要素に材料結合式に結合、特に接着することが可能である。例えば、バッテリセルパックをバッテリハウジングのハウジング上側及びハウジング下側に接着することが可能となる。当該サンドイッチ構造により、バッテリセルパックは、バッテリ及び/又はバッテリを備える自動車のための支持要素として機能することが可能である。例えば、車体構造は、バッテリセルパックのサンドイッチ構造により補強される。このようなバッテリセルパック又は当該バッテリセルパックを備えるバッテリが自動車において用いられれば、これにより、特に有利なNVHクオリティ(NVH:noise、vibrations、harshness)につながる。なぜなら、バッテリセルパックあるいはバッテリが、騒音を発生させ得る構造要素を特にわずかにしか有さない、特に当該構造要素を有さないためである。さらに、バッテリセルパックの上述の構造により、バッテリセルパック自体を支持部要素として用いることが可能である。さらに、有利には、バッテリセルパックは、統合プロセスをバッテリセルパックに大幅に適合させる必要なく、バッテリあるいは自動車の製造時に既存の統合プロセスへ組み込まれることが可能である。
【0014】
各バッテリセルに作用する圧力が不均等に分散すると、バッテリ内部での樹枝状結晶成長及び最終的にバッテリセルの破壊が促進される。バッテリセルの幅側全体が中間層で覆われるように特にバッテリセル上に/バッテリセルに全面的に設けられた中間層を用いると、セルへのできる限り均等でフラットな圧力分散が保証される。
【0015】
バッテリセルパックの別の態様では、各中間層は、ポアソン比(μ)が0.3より小さい、すなわちμ<0.3、特にμ<0.2、例えばμ=0.1の材料を有している。特に、各中間層は、このような小さなポアソン比μを有する材料で形成されている。特に小さなポアソン比μにより、中間層は、圧縮軸に沿った圧縮時に、圧縮軸に対して横方向の寸法の増大を受けないか、又はわずかな当該寸法の増大しか受けない。これにより、バッテリセルの膨張時にバッテリセルの膨張方向に対して横方向に1つあるいは複数のフレーム要素に対して中間層が押圧されることが保証されている。これにより、各バッテリセルが基本寸法を有しているか、又は膨張寸法を有しているかにかかわらず、バッテリセルパックが特に形状安定的である。
【0016】
バッテリセルパックの一形態では、各バッテリセルが発泡材料、特にポリウレタンフォームを有するように構成されている。このとき、特に連続気泡(オープンセル)の発泡材料、特に連続気泡のポリウレタンフォームが用いられるため、バッテリセルの膨張によるその基本寸法から膨張寸法への寸法変化を特に効率的に受容(吸収)し、あるいは補整することが可能である。
【0017】
バッテリセルパックの特に長い寿命及び特に信頼性をもった動作を保証するために、バッテリセルパックの一発展態様によれば、各バッテリセルが膨張していない場合でも、すなわち基本寸法を有する場合でも、各バッテリセルには初期圧力が作用するように中間層がそれぞれ構成、すなわち形成及び配置されるようになっている。当該初期圧力は、最大で10bar、好ましくは最大で5bar、特に最大で1barである。
【0018】
別の一態様によれば、バッテリセルパックは、2つの受圧プレート及び2つのクランプ要素、特にクランプバンドを備えている。このとき、受圧プレートは、バッテリセルパックをその長手延長方向に沿って画定するとともに、クランプ要素あるいはクランプバンドによって長手延長方向に沿って互いに押圧されている。このために、クランプ要素及び受圧プレートは、嵌合式、係合式及び/又は材料結合式に互いに結合されている。例えば、クランプ要素及び受圧プレートは、互いに溶接、特にレーザ溶接、クリンチ、螺着、リベット留め、接着などされている。このとき、バッテリセル、フレーム要素及び中間層は、長手延長方向に沿って受圧プレート間に配置されているため、バッテリセル、フレーム要素及び中間層は、受圧プレートによって、及びクランプ要素によって互いに押圧されている。さらに、バッテリセル、フレーム要素及び中間層が規定どおりに受圧プレート間に配置されていれば、クランプ要素は、受圧プレート間で引張負荷を受けている。
【0019】
一般的に、バッテリセルパックについて、バッテリセル、フレーム要素及び中間層を以下の順序に従って配置することが可能である:受圧プレート(存在する場合)-中間層-バッテリセル-中間層-フレーム要素-中間層-バッテリセル-中間層-フレーム要素(以下同様)。バッテリセル、フレーム要素及び中間層の配置に関して、バッテリセルパックは特に鏡面対称に形成されているため、バッテリセルパックの対応する端部において、「最後の」バッテリセルに「最後の」中間層がつづき、その後、対応する受圧プレートがつづく。
【0020】
バッテリセルパックの発展形態では、受圧プレート、バッテリセル、フレーム要素及び中間層の配置について別の/他の順序が得られる。例えば:受圧プレート(存在する場合)-中間層-バッテリセル-中間層-バッテリセル-中間層-フレーム要素-中間層-バッテリセル-中間層-バッテリセル-中間層-フレーム要素(以下同様)、又は受圧プレート(存在する場合)-バッテリセル-中間層-バッテリセル-フレーム要素-バッテリセル-中間層-バッテリセル-フレーム要素(以下同様)。
【0021】
受圧プレート及びクランプ要素を有するバッテリセルパックの構成により特に強固な、あるいは安定的なバッテリセルパックの構造が得られるため、当該バッテリセルパックは、例えば自動車の構造において、特に資源効率的及び/又は構造空間効率的に自動車の支持要素又は自動車用の支持要素として用いられることが可能である。
【0022】
バッテリセルパックの別の構成では、例えば有利で特に安定的なバッテリセルパックの構造を更にサポートするために、フレーム要素が結合要素を用いて互いに固定されている構成となっている。結合要素は、嵌合式の要素、係合式の要素及び/又は材料結合式の要素、特に接着要素である。これは、フレーム要素が例えば互いに接着されていることを意味する。一般的に、バッテリセルパックの各フレーム要素は合成樹脂で形成されることが可能である。この場合、剛性樹脂溶接(プラスチック溶接)を用いてフレーム要素を材料結合式に互いに結合することが考えられる。さらに、一般的に、基礎プレートと、基礎プレートの外側エッジに沿って設けられたバンドとを各フレーム要素が備えることが、各フレーム要素について当てはまる。このとき、基礎プレートとバンドによって対向する2つのシェルを形成するよう、バンドは基礎プレートから両側で突出する。したがって、各フレーム要素は、断面図においてダブルT字形状を有している。これは、各フレーム要素が上側ベルト及び下側ベルト並びに上側ベルトと下側ベルトとを結合するウェブを備えていることを意味し、ベルトはバンドによって形成されており、ウェブは基礎プレートによって形成されている。そして、上述したように、フレーム要素のうち2つ(左側に配置されたフレーム要素及び右側に配置されたフレーム要素)が互いに直接隣り合う場合には、バッテリセル空間は、内側で両ウェブ及び各ベルトによって画定されており、右側のフレーム要素の左側のシェルと、左側のフレーム要素の右側のシェルは、共にバッテリセル空間を形成する。フレーム要素が嵌合式、係合式及び/又は材料結合式に互いに結合される場合には、フレーム要素は、各上側ベルト及び各下側ベルトに、すなわち各バンドを介して互いに結合されるように構成されることが可能である。
【0023】
バッテリセルパックの発展形態では、当該バッテリセルパックは、フレーム要素をクランプ要素に固定する別の結合要素を備えている。この別の結合要素は、上述の(第1の)結合要素と同一に、又は類似して形成されることが可能である。また、第1の結合要素及び/又は別のあるいは第2の結合要素が二重の機能、すなわち、第一に、フレーム要素を相互に結合する機能、及び第二に、フレーム要素をクランプ要素に結合する機能を有するように構成されることが可能である。この点では、バッテリセルパックが1つのみの結合要素、すなわち第1の結合要素と第2の結合要素のいずれかを有するように構成することが可能である。
【0024】
フレーム要素が第1及び/又は第2の結合要素を用いてクランプ要素に固定されることで、有利には、バッテリセルパックの特に強固な、あるいは安定的な構造が更にサポートされている。
【0025】
加えて、本発明は、上述の説明に従い形成されたバッテリセルパックを備えた、特に自動車用のバッテリに関するものである。バッテリ、特に二次バッテリは、高電圧バッテリと呼ばれ得る。例えば、1つ又は複数のバッテリセルパックを備えたバッテリは、自動車のための駆動バッテリとして用いられることができ、その場合、自動車は、少なくとも部分的に電気式に駆動可能あるいは移動可能に形成されている。この点では、自動車は、例えばハイブリッド自動車、電気自動車などである。自動車は、特に、自家用車及び/又は商用車として形成されている。しかし、これにより、他の用途(船舶分野、航空分野など)に対するバッテリあるいはバッテリセルパックの使用が排除されるわけではない。
【0026】
本発明によるバッテリセルパックの特徴、利点及び有利な構成は、本発明によるバッテリの特徴、利点及び有利な構成とみなすことができ、また逆も同様である。
【0027】
バッテリの一発展形態によれば、当該バッテリは、ハウジング下部及び少なくとも1つのハウジング上部によって形成されたバッテリハウジングを備えている。このとき、1つ又は複数のバッテリセルパック及びハウジング下部は、第1の接着装置を用いて互いに接着されており、バッテリセルパック及びハウジング上部は、第2の接着装置を用いて互いに接着されている。このとき、特に、バッテリセルパック及びハウジング下部あるいはハウジング上部が、クランプ要素あるいはクランプバンドによって互いに接着されるようになっている。これは、接着装置が、一方ではハウジング上部あるいはハウジング下部に直接接触し、他方では対応するクランプバンドに接触することを意味している。換言すれば、クランプ要素の上側のものとハウジング下部との間及びクランプ要素の下側のものとハウジング下部との間に接着装置が配置されていることで、ハウジング下部及びバッテリセルパック並びにハウジング上部及びバッテリセルパックは、材料結合式に互いに結合されている。
【0028】
さらに、本発明は、上述の説明に従い形成されたバッテリを備えた自動車に関するものである。本発明によるバッテリの特徴、利点及び有利な構成は、本発明による自動車の特徴、利点及び有利な構成とみなすことができ、また逆も同様である。
【0029】
本発明の別の特徴は、特許請求の範囲、図面及び図面による説明から明らかであり得る。本明細書において上述した特徴及び特徴の組合せ並びに以下において図面による説明及び/又は図面において単に示される特徴及び特徴の組合せは、本発明の範囲を逸脱することなく、それぞれ記載された組合せにおいてのみならず、他の組合せ又は単独で使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】断面II-II(
図1参照)に沿って切断されたバッテリセルパックの分解図である。
【
図3】組み立てられた状態における、断面II-IIに沿って切断されたバッテリセルパックを示す図である。
【
図4】2つのバッテリセルパックを備えたバッテリの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
各図では、同一の、及び機能的に同一の要素には同一の参照符号が付されている。
【0032】
バッテリセルパック1と、バッテリセルパック1を備えるバッテリ2と、自動車(不図示)とを共通の説明において以下に述べる。このために、
図1には、互いに隣り合って配置された複数のバッテリセル3を備えたバッテリセルパック1の斜視図が示されている。
図1では、バッテリセル3のうちいくつかのみに対応する符号が付されている。本例では、各バッテリセル3は、それぞれ固体バッテリセルとして形成されている。これには、単に1つの固体電解質を有し液体状の成分を有さないバッテリセルが当てはまるが、本発明は、液体を含まないバッテリセルに限定されていない。むしろ、ここでの「バッテリセル」という用語によって、動作において膨張する全ての形態のパウチセルが含まれる。したがって、各バッテリセル3あるいは固体バッテリセルは、いわゆるASSBセルである。
【0033】
さらに、本例では、バッテリセルパック1が2つの受圧プレート4,5及び2つのクランプ要素6,7を備えていることが
図1から見て取れる。バッテリセルパック1は、受圧プレート4,5によって、長手延長方向8に沿ってそれぞれ側方で画定されている。このとき、ここではそれぞれクランプバンドとして形成されているクランプ要素6,7は、バッテリセルパック1の長手延長方向8に沿って完全に延在しているとともに、受圧プレート4,5と嵌合式に、係合式に、及び/又は材料結合式に結合されている。本例では、クランプ要素6,7あるいはクランプバンド及び受圧プレート4,5は、互いにリベット留めされている。
図1では、対応するリベット留め箇所9が見て取れ、見やすさの理由から、これらリベット留め箇所のうちいくつかのみに対応する符号が付されている。
【0034】
図2には、断面II-II(
図1参照)に沿って切断されたバッテリセルパック1の分解図が示されている。バッテリセルパック1は、バッテリセル3に幾何学的に対応する複数のフレーム要素10を備えており、対応するバッテリセル3が互いに直接隣り合う2つのフレーム要素10によって形成されるバッテリセル空間11へはめ込まれることで、互いに直接隣り合う2つのフレーム要素10を用いてバッテリセル3が位置固定されている。ここでは、各フレーム要素10は、互いに反対を向いた、あるいは互いから離れるように向いた2つのシェルを有するダブルシェル形状、したがって断面図ではダブルT字状はり部の形態での断面形状を有している。さらに、ここでは、各バッテリセル3は平坦な立方体に従い形成されており、バッテリセル3の各幅狭側12は、長手延長方向8に対して平行に配置されており、バッテリセル3の各幅広側13は、長手延長方向8に対して垂直に配置されている。各フレーム要素10の各上側ベルト14及び各下側ベルト15は、組み立てられた状態(
図3参照)において、互いに直接隣接し、各バッテリセル3は、各フレーム要素10の各ウェブ16に対して平行に配置されている。このとき、各バッテリセル3は、フレーム要素10のウェブ16間に配置されている。
【0035】
各バッテリセル3が中間層17によってバッテリセル空間11に保持されるように、バッテリセルパッケージ1は、バッテリセル3ごとに少なくとも1つの中間層17、ここでは、各バッテリセル3とフレーム要素10の間に直接配置された2つの中間層17を備えている。バッテリセルパック1においては、当該バッテリセルパックがフレーム要素10で終端するように、中間層17で終端するように、又はバッテリセル3で終端するように構成されることが可能である。上述のように、本例ではバッテリセルパック1は側方で受圧プレート4,5によって終端するため、バッテリセルパック1は、本例では、一方側でのみ中間層17を介してフレーム要素10のうち1つに隣接する2つのバッテリセル3を備えている。この場合、当該「最後の」バッテリセル3は、対応して他方の側において各受圧プレート4,5に隣接する。これは、本例では、一方ではフレーム要素によって、他方では対応する受圧プレート4,5によって形成された2つのバッテリセル空間11が得られることを意味する。この点では、各「最後の」バッテリセル3が少なくとも部分的に各受圧プレート4,5によって包囲されているように構成されることが可能である。
【0036】
各バッテリセル3は、基本寸法、すなわち基本幅、基本長さ及び基本深さ(基本高さ)を有しており、バッテリセル3は、一方ではその寿命にわたって、他方では充電下で膨張寸法へ膨張する。したがって、新しいあるいは新品のバッテリセル3については、当該バッテリセルは、充電されていない状態(SOC=0)において、基本寸法、すなわち基本寸法に対応する外部寸法を有している。バッテリセル3が充電されると、バッテリセル3は、幅及び/又は長さ及び/又は深さに関して膨張する。さらに、バッテリセルの幅及び/又は長さ及び/又は深さは、バッテリ3の経時劣化中に拡大する。しかし、バッテリセルパック1のバッテリセル3の充電状態にかかわらず、及びバッテリセルパック1のバッテリセル3のそれぞれの古さにかかわらず、バッテリセルパック1の一定あるいは同一に維持される長さ18を保証するために、各中間層17は、規定に従い、破壊することなく弾性的に圧縮可能に形成されている。このとき、各中間層17は、ポアソン比μが0.3より小さい、すなわちμ<0.3、特にμ<0.2、例えばμ=0.1の材料を有している。換言すれば、各中間層17は、特に低いポアソン比μを有する材料によって少なくとも部分的に形成されている。ここでは、各中間層は、発泡材料、特にポリウレタンフォームを有している。これは、各中間層17が少なくとも部分的に発泡材料、例えばポリウレタンフォームで形成されていることを意味する。
【0037】
したがって、各バッテリセル3のその膨張寸法への膨張によって、中間層17が規定に従い、及び破壊することなく弾性的に圧縮されるため、対応するバッテリセル3の膨張にもかかわらず、バッテリセル空間11の大きさ、及びしたがってバッテリセルパック1の外部寸法、特に長さ18が一定のままである。
【0038】
図3には、組み立てられた状態における、断面II-IIに沿って切断されたバッテリセルパック1の図が示されている。
図2において省略符号19で示唆されているように、バッテリセルパック1は、その長手延長方向8に適宜の多くのユニット20によって形成されることができ、各ユニット20は、少なくとも1つのバッテリセル3と、中間層17と、特に別の中間層17とを備えている。このとき、長手延長方向8に沿って連続する2つのユニット20は、それぞれフレーム要素10によって互いに接触する。したがって、バッテリセルパック1において長手延長方向8に沿って以下の配置が得られる:受圧プレート4-ユニット20-フレーム要素10-ユニット20-フレーム要素10(以下同様)。「最後の」フレーム要素10の後には、「最後の」ユニット20がつづき、その後受圧プレート5がつづく。バッテリセル3、フレーム要素10及び中間層17は、長手延長方向8に沿って受圧プレート4,5間で互いに押圧されている。換言すれば、ユニット20は、長手延長方向8に沿って受圧プレート4,5間で互いに押圧されている。このために、クランプ要素6,7あるいはクランプバンド及び受圧プレート4,5は、リベット留め箇所9において互いにリベット留めされ、及び/又はそうでなければ嵌合式、係合式及び/又は材料結合式に互いに結合されている。このとき、クランプ要素6,7は引張負荷を受けるため、少なくともフレーム要素10は、各上側ベルト14及び/又は各下側ベルト15において互いにクランプされている。これに代えて、又はこれに加えて、長手延長方向8に沿って直接互いに隣り合うそれぞれ2つのフレーム要素10は、第1の結合要素21を用いて嵌合式、係合式及び/又は材料結合式に互いに結合されている。各フレーム要素10は、本例では合成樹脂で形成されているため、第1の結合要素21は、合成樹脂溶接部として形成されることが可能である。また、第1の結合要素21は、接着箇所として形成されることが可能である。特に、直接互いに隣り合う両フレーム要素10は、その各上側ベルト14及び/又はその各下側ベルト15を介して互いに定着あるいは固定されている。
【0039】
図2及び
図3において見て取れるように、本例では、更に、フレーム要素10が第2の結合要素22を用いてクランプ要素6,7に固定されるように構成されている。第2の結合要素22は、例えば、ベルト14,15とクランプ要素あるいはクランプバンド6,7との間に配置された接着要素あるいは接着層である。第1の結合要素21を用いて、又は第2の結合要素22を用いて、直接互いに隣り合う両フレーム要素10の間の各結合も、また、フレーム要素10とクランプ要素6,7の間の結合も実現可能である。これは、バッテリセルパック1が第1の結合要素21のみ又は第2の結合要素22のみを備えることができることを意味し、対応する結合要素21,22は、二重の機能を有している。
【0040】
各中間層17は、バッテリセルが膨張していないときに、各バッテリセル3に最大10bar、好ましくは最大5bar、特に最大1barの初期圧力が各バッテリセル3に作用するように構成されている。これにより、バッテリセル3の信頼性のある動作が保証される。
【0041】
したがって、各バッテリセル3がその基本寸法から膨張寸法へ膨張すると、バッテリセル3と共通にバッテリセル空間11に配置された少なくとも1つの中間層、特に両中間層17が、膨張するバッテリセル3によって圧縮され、バッテリセル空間11の幾何形状及び寸法は影響を受けない。特に、各中間層17は、バッテリセル3が膨張時に拡大する量だけ圧縮される。したがって、有利には、バッテリセル3の膨張あるいは寸法拡大が受け止められ(吸収され)、あるいは補整される。
【0042】
図4には、ここでは2つのバッテリセルパック1を備えたバッテリ2の平面図が示されている。バッテリ2は、特に少なくとも部分的に電気式に駆動可能な自動車のために、すなわちハイブリッド自動車、電気自動車などのために形成されているとともに、自動車用の駆動バッテリとして機能することが可能である。バッテリ2は、高電圧バッテリと呼ばれ得る。
図4によれば、バッテリ2はバッテリハウジング23を備えており、当該バッテリハウジングは、ハウジング下部24と、少なくとも1つのハウジング上部25とで形成されている。このとき、各バッテリセルパック1は、ハウジング下部24にも、またハウジング上部25にも材料結合式に保持されている。これは、各バッテリセルパック1は、ハウジング下部24にも、またハウジング上部25にも材料結合式に結合されていることを意味する。本例では、各バッテリセルパック1は、接着装置26,27を用いてハウジング部分24,25に接着されている。ハウジング部分24,25及び接着装置26,27は、
図2及び
図3に図示されている。本例ではバッテリセルパック1がそのクランプバンドあるいはクランプ要素6,7を介してハウジング下部24あるいはハウジング上部25に接着されていることが、
図2及び
図3において更に見て取れる。この点では、接着装置26は、ハウジング上部25とバッテリセルパック1のクランプ要素6の間にある。これに対して、接着装置27は、クランプ要素7とハウジング下部24の間にある。
【0043】
また、バッテリ2が別々に形成されたバッテリハウジング23を有さないことも考えられる。この場合、受圧プレート4,5及びクランプ要素6,7は、バッテリ2の外表面として、いわばバッテリ2用のハウジングとして機能する。特にバッテリセルパック1の安定的な構造により、別々に形成されるバッテリハウジング23を省略することができ、これにより、質量上の利点が得られる。
【0044】
全体として、本発明は、充電された状態と放電された状態の間でその空間的な拡大に関して変化するバッテリセル3を特に有利にはめ込み、あるいは配置する可能性を示すものである。バッテリセル3のはめ込みあるいは配置は、特にそのいまや可能なシステムレベルでのCell-to-Pack(セルトゥーパック)構造に関して有利である。生じるモジュールをModule-to-Pack(モジュールトゥーパック)に従い配置するための、従来のバッテリセルをまずはCell-to-Module(セルトゥーモジュール)に従い配置する従来のプロセスステップを省略することができ、これは、経済的及び環境的に好ましい。さらに、受圧プレート4,5及びクランプ要素6,7により、バッテリセルパック1について、当該バッテリセルパック1が支持構造としての役割さえ果たすことができるように、当該バッテリセルパックが特に強固な、あるいは安定した構造を有することとなる。
【符号の説明】
【0045】
1 バッテリセルパック
2 バッテリ
3 バッテリセル
4 受圧プレート
5 受圧プレート
6 クランプ要素
7 クランプ要素
8 長手延長方向
9 リベット留め箇所
10 フレーム要素
11 バッテリセル空間
12 幅狭側
13 幅広側
14 上側ベルト
15 下側ベルト
16 ウェブ
17 中間層
18 長さ
19 省略符号
20 ユニット
21 第1の結合要素
22 第2の結合要素
23 バッテリハウジング
24 ハウジング下部
25 ハウジング上部
26 接着装置
27 接着装置
【国際調査報告】