(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】爪疾患の治療における使用のための人工爪
(51)【国際特許分類】
A45D 31/00 20060101AFI20240814BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240814BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240814BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240814BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240814BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240814BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240814BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240814BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240814BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240814BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20240814BHJP
A61K 31/4412 20060101ALI20240814BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240814BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20240814BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240814BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240814BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240814BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240814BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240814BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240814BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A45D31/00
A61K47/42
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/38
A61K45/00
A61P17/00
A61P31/04
A61K31/137
A61K31/155
A61K31/4412
A61K31/506
A61K31/454
A61K31/496
A61K47/10
A61K47/40
A61K47/04
A61K47/02
A61K47/20
A61K9/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507176
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2022072016
(87)【国際公開番号】W WO2023012309
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524047475
【氏名又は名称】オニコル・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ファン・デル・ヘースト
(72)【発明者】
【氏名】オスカル・ファン・ロースブルーク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA99
4C076BB31
4C076CC31
4C076DD22
4C076DD30
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD55
4C076EE03
4C076EE05
4C076EE12
4C076EE13
4C076EE21
4C076EE22
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE25
4C076EE26
4C076EE27
4C076EE30
4C076EE33
4C076EE41
4C076EE43
4C084AA17
4C084MA63
4C084NA10
4C084ZA891
4C084ZB352
4C086BC17
4C086BC50
4C086BC60
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA12
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA07
4C206HA31
4C206KA04
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA83
4C206NA10
4C206ZA89
4C206ZB35
(57)【要約】
本発明は、爪疾患、特に、爪の真菌性疾患の治療における使用のための人工爪に関する。本発明は更に、感染した爪の美容処置法を含めた、感染した爪に対する抗真菌組成物の延長された及び有効な曝露のための前記人工爪を用いた、爪疾患を治療するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪疾患の治療における使用のための人工爪(2)であって、前記人工爪(2)が、爪及び/又は爪の爪床の表面を密閉するための爪の形状をとり、前記人工爪が、爪のケラチン板に類似する表面側(5)及び、治療されようとする爪及び/又は爪床(1)に向けられた腹側(3)で構成されるポリマー層で構成され、前記腹側が、抗菌性化合物を含む液体組成物を保持するための1つ又は複数のリザーバー(4)を含み、かつ/又は、前記腹側(3)が、ポリマー層の腹側(3)への前記液体組成物の接着を提供するための1つ又は複数の突起(6)を含み、前記1つ又は複数のリザーバー(4)が、抗菌性化合物を含む前記液体組成物を、治療されようとする前記爪及び/又は爪床(1)に適用することができるように構成される、人工爪(2)。
【請求項2】
前記1つ又は複数のリザーバー(4)が、液体組成物の素通り及び液体組成物と治療されようとする爪及び/又は爪床(1)との間の接触を可能にするための液体透過性ポリマーマトリックスで構成され、液体透過性ポリマーマトリックスが、ケラチン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリグリコリド、ポリイソシアネート、ポリラクチド、ポリプロピレン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラ-フルオロエチレン、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、酢酸セルロース、キトサン、コラーゲン、変性ポリアクリロニトリルからなる群、好ましくは、ケラチン及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数の材料で構成される、請求項1に記載の人工爪(2)。
【請求項3】
前記1つ又は複数の突起(6)が、マッシュルーム、木、ジャイロイド、立方体、円錐、円柱、角錐、及び球からなる群、好ましくはマッシュルーム、木又はジャイロイド形状から選択される3D形状を有する、請求項1又は2に記載の人工爪(2)。
【請求項4】
前記ポリマー層が、ケラチン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイソシアネート、ポリプロピレン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、酢酸セルロース、キトサン、エポキシからなる群、好ましくは、ケラチン及びそれらの組み合わせから選択される1種又は複数の材料から構成される、請求項2に記載の人工爪(2)。
【請求項5】
前記1つ又は複数のリザーバー(4)が、樹脂、ロジン、TSF樹脂、ポリエポキシド、コーパル、ラテックス、ガム樹脂、エゴノキ液、サリチル酸メチル、メタクリレート、アクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート、ソボミルアクリレート、ジメチルアクリルアミド、エチルシアノアクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、N-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、N,N-ジメチル-p-トルイジン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン、(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジtertペンチルフェノール、多官能性アミン、イソホロンジアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される接着性ポリマー材料(1)で更に構成される、液体透過性ポリマーマトリックスで構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の人工爪(2)。
【請求項6】
1つ又は複数のリザーバー(4)が、体積5~250μl、好ましくは、10~150μl、より好ましくは、25~125μl、更に好ましくは、50~100μl、最も好ましくは、75~85μlを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の人工爪(2)。
【請求項7】
1つ又は複数のリザーバー(4)が、少なくとも2つ、好ましくは、少なくとも3つ、より好ましくは、少なくとも4つ、最も好ましくは、少なくとも5つのリザーバーである、請求項1から6のいずれか一項に記載の人工爪(2)。
【請求項8】
前記人工爪が、不均一性の厚さの剛構造を備え、前記爪の背側が、滑面を有し、腹側が、治療されようとする爪及び/又は爪床に沿う、請求項1から7のいずれか一項に記載の人工爪(2)。
【請求項9】
腹側(3)における人工爪表面が、治療されようとする爪及び/又は爪床(1)の表面の形状に沿った、及び/又は治療されようとする爪及び/又は爪床(1)の輪郭に沿った複数の凸面及び凹面で構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の人工爪(2)。
【請求項10】
前記ポリマー層が、少なくとも1種のUV硬化性ポリマーで構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の人工爪(2)。
【請求項11】
前記人工爪の前記ポリマー層が、抗菌化合物を含む液体組成物を保持するための、1つ又は複数のリザーバー(4)を(再)充填するための、閉鎖手段、例えば、栓等と組み合わせた、少なくとも1つの弁又は少なくとも1つの開口部を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の人工爪(2)。
【請求項12】
人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法であって、
a)請求項1から11のいずれか一項に規定の人工爪を用意する工程と、
b)抗菌化合物を含む液体組成物を、1つ又は複数のリザーバーに加えることにより、人工爪を調製する工程と、
c)調製された人工爪を、治療されようとする爪及び/又は爪床に適用し、それにより、爪及び/又はその爪床を環境から密閉する工程とを含む、人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法。
【請求項13】
調製された人工爪を適用する工程が、1つ又は複数のリザーバーが、治療されようとする爪及び/又はその爪床と直接接触させることを含む、請求項12に記載の人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法。
【請求項14】
抗菌性化合物を含む液体組成物が、水及び/又はアルコール、プロピレングリコール、ヒドロキシプロピル-b-シクロデキストリン、塩酸、水酸化ナトリウム及び抗菌性化合物を含む溶液である、請求項12又は13に記載の人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法。
【請求項15】
前記液体組成物が、アセチルシステイン、システイン、メルカプトエタノール、及びチオグリコール酸からなる群から選択されるスルフヒドリル(-SH)基を含む1種又は複数の化合物、好ましくは、アセチルシステインを更に含む、請求項14に記載の人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法。
【請求項16】
調製された人工爪を、治療されようとする爪及び/又は爪床に適用する前に、治療されようとする前記爪及び/又は爪床を摩耗させる、請求項12から15のいずれか一項に記載の人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法。
【請求項17】
前記抗菌性化合物が、抗真菌剤、イトラコナゾール、タバボロール、エフィナコナゾール、テルビナフィン、ミコナゾール、クロトリマゾール、ビフォナゾール、ブトコナゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、ケトコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、ボリコナゾール、アルバコナゾール、フルコナゾール、ラブコナゾール、アモロルフィン、ブテナフィン、クロルヘキシジンナフチフィン、アンディラファンギン、カスポファンギン、ミカファンギン、安息香酸、シクロピロックス、トルナフテート、ウンデシレン酸、クリスタルバイオレット、メチレンブルーからなる群から選択される1種又は複数であり、好ましくは、イトラコナゾールである、請求項12から16のいずれか一項に記載の人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法。
【請求項18】
爪疾患が、爪真菌症、シュードモナス感染症、爪の乾癬及び爪囲炎からなる群から選択される1種又は複数であり、好ましくは、爪真菌症である、請求項12から17のいずれか一項に記載の人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法。
【請求項19】
調製された人工爪が、少なくとも1日、好ましくは1週間、より好ましくは少なくとも2週間、更に好ましくは少なくとも4週間、最も好ましくは少なくとも2ヵ月の期間、治療されようとする前記爪及び/又は爪床に維持される、請求項12から18のいずれか一項に記載の人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法。
【請求項20】
爪疾患を治療する美容方法である、請求項12から19のいずれか一項に記載の人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法。
【請求項21】
人工爪が、爪上皮の縁、側爪郭及び爪甲の下の表皮に、好ましくは、爪甲の遠位端までの最大距離が最大でも1mm、好ましくは最大でも0.5mm、より好ましくは最大でも0.2mm、更に好ましくは最大でも0.1mm、好ましくは最大でも0.05mm、最も好ましくは最大でも0.01mmである爪甲の遠位端で付着させることにより、爪及び/又は爪床に適用される、請求項12から20のいずれか一項に記載の人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法。
【請求項22】
人工爪と、治療されようとする前記爪及び/又は爪床の側爪郭及び爪上皮との間の距離が、最大でも1mm、好ましくは最大でも0.5mm、より好ましくは最大でも0.2mm、更に好ましくは最大でも0.1mm、好ましくは最大でも0.05mm、最も好ましくは最大でも0.01mmである、請求項12から21のいずれか一項に記載の人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法。
【請求項23】
爪疾患の治療のための、請求項1から11のいずれか一項に規定の人工爪の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔説明〕
本発明は、爪疾患、特に、爪の真菌性疾患の治療における使用のための人工爪に関する。本発明は更に、感染した爪の美容処置法を含めた、感染した爪に対する抗真菌組成物の延長された及び有効な曝露のための前記人工爪を用いた、爪疾患を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
爪真菌症は、爪の真菌感染症であり、最も一般的な爪の疾患であり、すべての爪異常の約半数を占める。爪真菌症は、成人人口の約10%に生じる。爪真菌症は趾爪と指の爪の両方に発症し得るが、趾爪の感染が特に一般的である。爪の真菌感染症の最も一般的な症状の1つは、爪の肥厚と変色(主に、白又は黄色)である。感染が進行すると、爪はもろくなり、趾爪や指の爪から剥がれる。未処置のままにしておいた場合、皮膚は、爪の下及び周囲に炎症を起こし、痛みを伴うようになる。美容的観点から、爪の感染症は、見た目が不快となる可能性があり、また身体に著しい不快感をもたらすおそれがある。
【0003】
爪感染症を治療するためのいくつかの方法は、全身治療(錠剤又はカプセル)及び局所治療(例えば、クリーム又はラッカー)を含めて、利用可能である。全身治療アプローチは、爪感染症に罹患している対象に、胃腸管から十分に吸収される、抗菌性若しくは抗真菌性化合物又は薬剤を投与することからなる。そのような化合物は、錠剤又はカプセルとして配合され、爪感染症の治療のために、患者に連続的に又は定時の間隔で投与される。局所治療は、爪に直接適用される。
【0004】
しかしながら、爪の真菌感染症は、皮膚及び爪床の深層に蓄積することが公知である。これらの部位は、血管形成されず、したがって、例えば、全身循環を介した、全身治療が達成されにくい又はまったく達成されない。それによって、健康な爪は成長し、一方、真菌感染症は、爪の深部に成長し続ける。全身治療アプローチに関連する別の制限は、爪の成長が遅いことにより治療期間を延長(例えば、少なくとも約3~6ヵ月)する必要があり、それによって、例えば、全身毒性、薬物-薬物相互作用、いくつかの場合では、更に重症の肝毒性等の潜在的な全身薬物相互作用及び副作用の発生に至る。まとめると、これらの制限は、治療のコンプライアンスの制限(例えば、対象が治療を中断する可能性がある)に寄与し、続いて治癒率の低下が観察される。
【0005】
局所治療は、爪に直接適用される。局所治療法は、抗真菌活性又は抗菌活性を有する活性化合物又は薬物を、(例えば、ラッカー又はクリームの形態で)感染した爪の表面に直接適用することからなる。しかしながら、爪は、異物の進入に対して優れた天然の剛性バリアであるため、薬物成分が、爪の感染部位に到達して有効となるのをやはり妨げる。したがって、爪を直接治療するための局所用薬物の使用は、爪の層全体へのその浸透が乏しいため、むしろ効果がない。治療用化合物の浸透を改善するために、爪の表面を軟化させる(例えば、α-ケラチンを標的とする)ことを目的とした他の局所治療アプローチが試みられているが、辛うじて成功していることも判明している。更に、局所治療は、通常、適用後乾燥するまで放置される。この手順の結果として、原薬及び配合物を構成する任意の添加物は、爪床へのアクセス又は浸透をあまりせずに、爪の高層領域(表層又は部分)に沈殿する。沈殿した薬物は、活性化せず、実際、可溶化したままである場合、爪の深部への拡散によるアクセスを可能にしたはずの任意のチャンネルを塞ぐ。
【0006】
したがって、爪真菌症の治療に関連する主な課題は、現在存在する全身治療(錠剤又はカプセル)及び爪に適用する局所治療が、有効性に非常に乏しく、しばしばその状態(爪真菌症等の爪疾患)を治癒させることができないことが多いことである。爪真菌症を局所的に治療する戦略は、配合物の要件により制約される。ラッカーは、ある特定の時間内に硬化しなければならない。抗真菌組成物の流動性を高めることによって爪の浸透性が改善されるが、感染部位における活性化合物の蒸発及び曝露時間にもやはり影響するため、クリームは、正確な粘度を必要とする。更に、液体抗真菌組成物を治療部位に長時間及び有効に曝露し、有効な治療をもたらすことは、達成することが非常に困難である。また、ラッカー又はクリーム、どちらの場合でも、真菌を抑制するために必要な添加剤は、結晶化する、蒸発する、又は移動する前に、吸収され、正確な位置に到達し、それらの標的に結合する必要がある。
【0007】
上記を考慮すると、改善された有効性、例えば、爪又は感染部位への活性化合物の浸透の改善等を有し、治療のコンプライアンスを保証するために長期間の使用が容易であり、長期の薬物レジメン(drug regiment)の曝露の副作用を予防し、爪疾患の治療の成功の確率が高いことを保証する、前記爪疾患、例えば、爪真菌症等の美容処置法を含めた、爪疾患の治療が当技術分野において必要である。更に、爪感染症に伴うネガティブな美容上の有害作用及び身体の不快感を軽減する治療が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、他の目的の中でもとりわけ、当技術分野における上記の必要性に取り組むことである。本発明の目的は、他の目的の中でもとりわけ、添付の特許請求の範囲に概略が示される本発明によって達成される。
【0009】
詳細には、上記目的は、他の目的の中でもとりわけ、第一の態様によれば、本発明により、爪疾患の治療における使用のための人工爪により達成され、本人工爪は、爪及び/又は爪の爪床の表面を密閉するための爪の形状をとり、本人工爪は、爪のケラチン板(keratinous plate)に類似するポリマー表面側及び、治療されようとする爪及び/又は爪床に向けられた腹側から構成され、前記腹側は、抗菌性化合物を含む液体組成物を保持するための1つ又は複数のリザーバーを含み、かつ/又は、前記腹側は、ポリマー層の腹側への前記液体組成物の接着を提供するための1つ又は複数の突起を含み、前記1つ又は複数のリザーバーは、抗菌性化合物を含む前記液体組成物を、治療されようとする前記爪及び/又は爪床に適用することができるように構成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の人工爪は、活性抗菌化合物又は治療薬の連続投与、すなわち、長期間にわたる感染部位又は疾患部位への活性化合物の改善された経爪(transungual)送達を提供する。結果として、治療に対するより高いコンプライアンス(例えば、接着性)、著しく改善された有効性及び/又は治癒率が達成される。1つ又は複数のリザーバーは、抗菌化合物を治療のために適用する必要がある指又は趾の爪又は爪床の治療されようとする表面領域に面した腹側の内面にある。爪を特異的に密閉状態(すなわち、抗菌性化合物を含む液体溶液の蒸発を防止する遮断状態)にすることと組み合わせて、抗菌性化合物で爪の治療されようとする部位を長時間曝露すると、抗菌性化合物のために十分な時間が取れて、有効であるための十分な量で、作用部位に到達し、したがって、感染又は疾患の部位への活性化合物の経爪送達が改善される。人工爪と治療されようとする爪又は爪床との間の密閉された結合は、外部環境から保護又は遮蔽されるようなものである(例えば、周囲空気と接触しない、又は実質的に接触しない)。密閉又は遮断条件下で、爪は、液体組成物並びにその中の可溶化薬物を吸収する能力がより高く、これは、可溶化薬物を含む液体が爪の深層まで容易に拡散することができることを意味する。人工爪の使用に伴うさらなる利点は、感染した爪の遮断被覆により、感染した爪による交差汚染又は硬化爪(curing nail)の再感染が防止又は低減されることである。人工爪は、内側から見える爪甲の輪郭に正確に沿い、爪甲表面の少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%、更に好ましくは、99%、最も好ましくは、100%が囲まれる。
【0011】
更に、本発明の人工爪は、人工爪の治療効果及び美容効果を向上させるために、外側から可視の爪甲の輪郭に正確に沿うことが好ましい。したがって、本発明の人工爪の外面は、自然な爪の形状を有する凸面からなり得、感染した爪に面する内面は、感染した爪の3次元の幾何形状に応じて、凸ゾーン及び凹ゾーンからなる。人工爪は、爪上皮の縁、側爪郭及び爪甲の下の表皮に、好ましくは、爪甲の遠位端までの最大距離が最大でも1mmである爪甲の遠位端で付着させることにより、爪及び/又は爪床に適用するのに適している。人工爪と、治療されようとする前記爪及び/又は爪床の側爪郭及び爪上皮との間の距離は、最大でも1mmである。
【0012】
本発明の人工爪は、抗菌性化合物を含む液体組成物を保持するための1つ又は複数のリザーバーからなる腹側を備え、本腹側は、前記液体組成物の前記腹側への付着を提供するための1つ又は複数の突起を備える。1つ又は複数の突起は、液体のメニスカスが架橋するために必要なギャップを減らし、液体が人工爪の腹側に「くっつく」ようにする追加の表面を提供する。そのため、突起は、より均一な液膜になり、人工爪への液体の付着を改善し、抗菌効果及び感染した爪床の治療の改善をもたらす。したがって、液状組成物は、患部である爪又は爪床に置いた場合に、所定の位置に保持され、第2のポリマー上でより分散され、容易には液が垂れ落ちなくなる。
【0013】
別の利点は、本発明の人工爪が、天然の非感染爪表面、すなわち、非感染爪の天然の外観、例えば、形状、色、構造、サイズ、半透明性に類似する表面側である外面を備え、それにより、視覚的又は美容的側面を改善することによって、爪疾患に関連する不快な見た目及び身体の不快感を軽減し、治療コンプライアンスを更に改善し、したがって、感染爪の美容処置法を更に提供することである。人工爪は、例えば、3Dプリント技術を用いることにより、治療しようとする特定の天然爪に適合させる。
【0014】
本発明の人工爪は、適用又はインキュベーションの時間の制約、抗菌性組成物の粘度又は蒸発の制限、置換の課題、又は爪の治療されようとする領域における化合物の吸収の課題を有しない。本配合物は、流動性、粘度において変わり得、溶液、懸濁液、ゲル、リポソーム配合物、又はそれらの組み合わせであり得るが、好ましくは、感染した爪又は爪床への含浸を改善し、治療効果を向上させるための、水性、アルコール又は溶媒ベースの液体組成物である。
【0015】
好ましい実施形態によれば、本発明は、前記1つ又は複数のリザーバーが、液体組成物の素通り及び液体組成物と治療されようとする爪及び/又は爪床との間の接触を可能にするための液体透過性ポリマーマトリックスからなり、液体透過性ポリマーマトリックスは、ケラチン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソシアネート、ポリメチルメタクリレート、変性ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリヒアルロン酸、環状オレフィンコポリマー、コラーゲン、キトサンセルロースアセテート、及びこれらの組み合わせ、好ましくは、ケラチン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1種又は複数の材料から構成される、人工爪に関する。透過性ポリマーマトリックスは、1つ又は複数のリザーバー内の人工爪の液体組成物の分布を更に改善するために、小型の開口部を備えてもよい。液体透過性ポリマーマトリックスは、感染又は疾患の部位への活性化合物の経爪送達及び治療の有効性の改善のために、感染した爪又は爪床に爪が配置された場合、抗菌剤を含む液体組成物が流れ、到達し、治療期間にわたって感染した爪又は爪床と直接かつ継続的に接触することができる、開口型スポンジ(open sponge)様構造を有する液体透過性ポリマー閉鎖エレメント、開口部及び/又はエンドキャップであり得る。
【0016】
更に別の好ましい実施形態によれば、本発明は、前記1つ又は複数の突起が、マッシュルーム、木(すなわち、分枝状柱又は微絨毛)、ジャイロイド、格子、立方体、円錐、円柱、角錐、及び球からなる群から選択される3D形状を有し、好ましくはマッシュルーム形を有する、人工爪に関する。1つ又は複数の突起のある特定の3D形状は、本発明の人工爪の治療されようとする爪と第2のポリマー爪との間に保持される、1つ又は複数のリザーバーからの抗菌化合物を含む液体組成物の改善された接着接触領域を提供する。これらの3D構造は、人工爪における液体組成物の分布を改善し、人工爪を治療されようとする部位に適用する間の液体組成物の垂れ落ち及び溢流を防止する。抗菌化合物を含有する液体組成物は、爪甲と直接接触してもよい。
【0017】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、ポリマー層が、ケラチン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイソシアネート、ポリプロピレン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、酢酸セルロース、キトサン、エポキシからなる群から選択される1種又は複数の材料、好ましくは、ケラチン及びそれらの組み合わせから構成される、人工爪に関する。
【0018】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、前記1つ又は複数のリザーバーが、樹脂、ロジン、TSF樹脂、ポリエポキシド、コーパル、ラテックス、ガム樹脂、エゴノキ液(styrax liquid)、サリチル酸メチル、メタクリレート、アクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート、ソボミルアクリレート(sobornyl acrylate)、ジメチルアクリルアミド、エチルシアノアクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、N-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、N,N-ジメチル-p-トルイジン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン、(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジtertペンチルフェノール、多官能性アミン、好ましくは、イソホロンジアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される接着性ポリマー材料で更に構成される液体透過性ポリマーマトリックスで構成される、人工爪に関する。接着性ポリマー材料は、感染した爪又は爪床へのポリマー人工爪の改善された接着を提供し、1つ又は複数のリザーバーのさらなる囲いを提供する。接着性ポリマー材料は、液体組成物が、素通り及び感染した爪又は爪床表面との継続的な接触を可能にするために、液体透過性ポリマー材料である必要がある。更に、人工爪を、感染した爪に適用する場合、接着性の最上層、例えば、Tegaderm(登録商標)により更に覆うことができる。
【0019】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、1つ又は複数のリザーバーが、体積5~250μl、好ましくは、10~150μl、より好ましくは、25~125μl、更に好ましくは、50~100μl、最も好ましくは、75~85μlを含む、人工爪に関する。液状抗菌剤組成物の有効性及び人工爪から得られる薬物放出速度に応じて、天然爪を模倣するのを容易にするために、最小体積が必要である。
【0020】
更に別の好ましい実施形態によれば、本発明は、1つ又は複数のリザーバーが、少なくとも2つ、好ましくは、少なくとも3つ、より好ましくは、少なくとも4つ、最も好ましくは、少なくとも5つのリザーバーである、人工爪に関する。複数の別個のリザーバーが存在することにより、爪疾患の併用治療が可能になり、本リザーバーは、様々な抗菌化合物又は異なるレジメンを含む、異なる液体組成物で充填される。別の好ましい実施形態は、1週間毎の異なる抗菌組成物の連続投与であり、例えば、第1週に水性組成物、第2週に、抗真菌剤を含むアルコール系組成物である。抗菌化合物を含有する液体組成物は、好ましくは、爪甲と直接接触される。爪甲と直接接触することによって、薬物の爪甲への浸透及び透過並びに爪甲を通した浸透及び透過が改善される。
【0021】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、人工爪が、不均一性の厚さの剛構造を備え、前記爪の背側が、滑面を有し、腹側が、治療されようとする爪及び/又は爪床に沿う、すなわち、爪真菌症により発症した爪甲の変更された解剖学的形態に沿う、人工爪に関する。
【0022】
更に別の好ましい実施形態によれば、本発明は、腹側(3)における人工爪表面が、治療されようとする爪及び/又は爪床(1)の表面の形状に沿った、及び/又は治療されようとする爪及び/又は爪床(1)の輪郭に沿った複数の凸面及び凹面で構成される、人工爪に関する。したがって、本発明の人工爪の外面は、自然な爪の形状を有する凸面からなり得、感染した爪に面する内面は、感染した爪の3次元の幾何形状に応じて、凸ゾーン及び凹ゾーンからなり得る。正確な形状、フィット感、遮断特性のため、本発明の人工爪は、好ましくは3Dプリントによって得られる。3Dスキャン及び3Dプリントのプロセスにより、形状及び精度を有する人工爪を得ることが可能である。罹患した爪の解剖学的形態は、爪真菌症において変化する。爪真菌症は、爪が脆弱になり、一部が剥がれたり、過角化症により爪が肥厚したり、爪甲の多孔度が増加し、及び構造的完全性が低下し、表面がより粗くなる。オープンコンパートメントを要さないが、(例えば、側郭に近接させて側部で)爪甲と直接接触する場合、3Dプリントされた人工爪の表面の幾何学的形状を一致させることにより、爪甲を摩耗させる必要もなく、強力な接着を得ることができる。
【0023】
人工爪は、側爪郭、爪上皮及び爪甲の遠位端の表皮に付着させる、又は別の実施形態では、人工爪は、爪甲に直接付着させる。本発明の人工爪は、周囲の表皮に付着させることができ、爪甲の上部外向き部分の全体又は/及び完全な上部外向き部分を可能にし、密閉し、それにより、水和状態を改善する。側爪郭及び爪の遠位端の表皮は、液体が蒸発する場所であり、爪甲の水和状態に影響を与える。水和状態及び含水量は、薬物拡散速度並びに薬物の浸透及び透過に影響を及ぼす最も重要なパラメータの1つであると考えられるため、これは、達成することが非常に困難である特徴であり、したがって、好ましくは、本発明の人工爪の製造において3Dプリントを用いることによって複製される。
【0024】
更に別の好ましい実施形態によれば、本発明は、ポリマー層が少なくとも1種のUV硬化性ポリマーで構成される人工爪に関する。UV硬化性ポリマーは、容易に3Dプリントを行うことができる、ある特定のポリマー群である。
【0025】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、人工爪のポリマー層が、抗菌化合物を含む液体組成物を保持するための、1つ又は複数のリザーバー(4)を(再)充填するための、閉鎖手段、例えば、栓等と組み合わせた、少なくとも1つの弁又は少なくとも1つの開口部を備える、人工爪に関する。弁は、液体組成物を含有し、人工爪の密閉機能を維持するのに十分な小ささの、屈曲性ポリマー層内のスリットであっても間隙であってもよい。しかしながら、弁は、例えば、人工爪のリザーバーに液体組成物を再(充填)するために、弁に針又は注射器を用いて、加えた力により開くことができる。
【0026】
本発明は、第2の態様によれば、
a)本発明の人工爪を用意する工程と、
b)抗菌化合物を含む液体組成物を、1つ又は複数のリザーバーに加えることにより、人工爪を調製する工程と、
c)調製された人工爪を、治療されようとする爪及び/又は爪床に適用し、それにより、爪及び/又はその爪床を環境から封鎖する工程とを含む、人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法に関する。
【0027】
好ましくは、本発明の方法は、上記に開示した人工爪を用いた爪疾患を治療する美容方法に関する。本方法は、感染した爪の最上部に、天然の非感染爪表面、すなわち、非感染爪の天然の外観、例えば、形状、色、構造、サイズに類似する表面側である外面を有する人工爪を提供し、それにより、視覚的又は美容的側面を改善することによって、爪疾患に関連する不快な見た目及び身体の不快感を軽減し、治療コンプライアンスを更に改善し、感染爪の美容処置法を提供する。人工爪は、治療されようとする天然爪に接着するための手段を含むことができる。同様に、人工爪を、治療されようとする天然爪に付着させて、追加の接着剤カバー層で治療することができる。人工爪と治療されようとする爪又は爪床との間の密閉された結合は、外部環境から保護又は遮蔽されるようなものである(例えば、周囲空気と接触しない、又は実質的に接触しない)。
【0028】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、調製された人工爪を適用する工程は、1つ又は複数のリザーバーを、治療されようとする爪及び/又はその爪床と直接接触させることを含む、人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法に関する。
【0029】
更に別の好ましい実施形態によれば、本発明は、抗菌性化合物を含む液体組成物は、水及び/又はアルコール、プロピレングリコール、ヒドロキシプロピル-b-シクロデキストリン、塩酸、水酸化ナトリウム、及び抗菌性化合物を含む溶液である、人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法に関する。水又はアルコールベースの液体組成物は、爪の膨潤を促進することにより、爪全体の薬物輸送を容易にし、その結果、感染した爪又は爪床におけるバリア及び孔形成における薬物の移動性が大きくなる。液体組成物は、任意の流体、ゲル、懸濁液、又はコロイド系(例えば、リポソーム、又はミセルを含む)であり得る。水性組成物は、爪の浸透性を高める。
【0030】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、液体組成物が、アセチルシステイン、システイン、メルカプトエタノール、及びチオグリコール酸からなる群から選択されるスルフヒドリル(-SH)基を含む1種又は複数の化合物、好ましくは、アセチルシステインを更に含む、人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法に関する。
【0031】
スルフヒドリル(-SH)基を含有する化合物、例えば、アセチルシステイン、システイン、メルカプトエタノールは、爪のタンパク質中のジスルフィド結合を、還元し、切断することができ、爪のケラチンネットワークを不安定化し、これによって、抗菌剤に対する浸透性が高まる。
【0032】
好ましい実施形態によれば、本発明は、調製された人工爪を、治療されようとする爪及び/又は爪床に適用する前に、治療されようとする前記爪及び/又は爪床の摩耗が行われる、人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法に関する。磨耗は、爪が肥厚している場合、人工爪を下地の爪及び/又は残存構造に適切に付着させるのに役立ち得る。爪は異物の進入を防ぐ優れたバリアであるが、その結果、効果的な局所治療の妨げにもなる。爪はα-ケラチンで構成されており、これが構造的な剛性をもたらしている。爪の磨耗等の機械的方法は、爪甲の部分的な除去によって、治療されようとする爪の構造的完全性を更に低下させ、その結果、感染部位又は疾患部位における抗菌化合物の浸透を高めるのに有効であり得る。
【0033】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、抗菌化合物が、抗真菌剤、イトラコナゾール、タバボロール、エフィナコナゾール、テルビナフィン、ミコナゾール、クロトリマゾール、ビフォナゾール、ブトコナゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、ケトコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、ボリコナゾール、アルバコナゾール、フルコナゾール、ラブコナゾール、アモロルフィン、ブテナフィン、クロルヘキシジン、ナフチフィン、アンディラファンギン、カスポファンギン、ミカファンギン、安息香酸、シクロピロックス、トルナフテート、ウンデシレン酸、クリスタルバイオレット、メチレンブルーからなる群から選択される1種又は複数であり、好ましくは、イトラコナゾールである、人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法に関する。
【0034】
更に別の好ましい実施形態によれば、本発明は、爪疾患は、爪真菌症、シュードモナス感染症、爪の乾癬、及び爪囲炎からなる群から選択される1種又は複数であり、好ましくは、爪真菌症である、人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法に関する。
【0035】
好ましい実施形態によれば、本発明は、調製された人工爪は、少なくとも1日、好ましくは1週間、より好ましくは少なくとも2週間、更に好ましくは少なくとも4週間、最も好ましくは少なくとも2ヶ月の期間、治療されようとする前記爪及び/又は爪床上に維持される、人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法に関する。
【0036】
好ましい実施形態によれば、本発明は、人工爪が、爪上皮の縁、側爪郭及び爪甲の下の表皮に、好ましくは、爪甲の遠位端までの最大距離が、最大でも1mm、好ましくは最大でも0.5mm、より好ましくは最大でも0.2mm、更に好ましくは最大でも0.1mm、好ましくは最大でも0.05mm、最も好ましくは最大でも0.01mmである、爪甲の遠位端で付着させることにより、爪及び/又は爪床に適用される、人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法に関する。本発明の人工爪を爪甲に付着させる場合、爪甲の遠位端から離れるほど、より多くの表面が、抗菌配合物によって被覆されず、その結果として、より低濃度の抗真菌剤に曝露される。更に、曝露された爪甲は、空気に曝露され、水和状態を低下させるおそれがある。
【0037】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、人工爪と、治療されようとする前記爪及び/又は爪床の側爪郭及び爪上皮との間の距離は、最大でも1mm、好ましくは最大でも0.5mm、より好ましくは最大でも0.2mm、更に好ましくは最大でも0.1mm、好ましくは最大でも0.05mm、最も好ましくは最大でも0.01mmである、人工爪を用いた爪疾患を治療するための方法に関する。側爪郭及び爪の遠位端の表皮は、液体が蒸発する場所であり、爪甲の水和状態に影響を与える。したがって、上記で示した通り、人工爪を配置することによって、蒸発効果が防止される又は低減され、それにより、水和状態及び含水量が、薬物の拡散動態に影響を与える最も重要なパラメータの1つと考えられているため、抗菌の有効性を改善させる。人工爪を周囲の表皮(爪上皮)に付着させる場合、爪甲から更に引き離すと、人工爪の自然な外見及び感触にならず、装着したときの心地よさが減じられ、周りの健常な表皮が不必要に薬物に曝露されることになる。人工爪を爪甲に付着させるだけの場合、それは爪甲の表面を密閉するにすぎず、側爪郭及び爪上皮の空気への曝露が、爪甲環境の健常な恒常性にとって必要な場合には、好ましいこともある。
【0038】
さらなる態様によれば、本発明は、爪疾患の治療のための本発明の人工爪の使用に関する。本使用は、抗菌剤を含む液体組成物が、治療されようとする爪と直接接触し、人工爪が治療されようとする爪又は爪床を(遮断方式で)密閉するように、液体組成物を有する1つ又は複数のリザーバーを備える人工爪を、感染した爪又は爪床に配置することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の人工爪(2)を適用することにより治療される足における真菌感染した爪(1)を示す図である。
【
図2】爪のケラチン板に類似するポリマー表面側(5)及び、治療されようとする爪及び/又は爪床に向けられる腹側(3)で構成される、本発明の人工爪(2)の側面図である。
【
図3】本発明の人工爪(2)の腹側(3)を示す図である。
【
図4】感染した爪の治療のための抗菌化合物を含む液体組成物を保持するための複数のリザーバー(4)を備える人工爪(2)の腹側(3)の拡大図である。
【
図5】本発明の人工爪(2)の腹側(3)を示す図である。
【
図6】ある特定の3D構造、例えば、木状(7)、マッシュルーム形(8)、ジャイロイド形(9)等は、本発明の人工爪(2)の腹側に対する、接着接触面積を改善させ、液状組成物の表面張力を増加させ、人工爪を治療部位に適用する間の液状組成物の垂れ落ち及び溢流を防止することを示す図である。
【
図7】ある特定の3D構造、例えば、木状(7)、マッシュルーム形(8)、ジャイロイド形(9)等は、本発明の人工爪(2)の腹側に対する、接着接触面積を改善させ、液状組成物の表面張力を増加させ、人工爪を治療部位に適用する間の液状組成物の垂れ落ち及び溢流を防止することを示す図である。
【
図8】ある特定の3D構造、例えば、木状(7)、マッシュルーム形(8)、ジャイロイド形(9)等は、本発明の人工爪(2)の腹側に対する、接着接触面積を改善させ、液状組成物の表面張力を増加させ、人工爪を治療部位に適用する間の液状組成物の垂れ落ち及び溢流を防止することを示す図である。
【
図9】爪のケラチン板に類似するポリマー表面側(5)及び感染した爪に向けられる腹側(3)で構成される、人工爪(2)の側面図である。
【
図10】爪のケラチン板に類似するポリマー表面側(5)及び感染した爪(1)に向けられる腹側(3)で構成される、本発明の人工爪(2)の横断面図である。
【
図11】爪のケラチン板に類似するポリマー表面側(5)及び感染した爪(1)に向けられる腹側(3)で構成される、本発明の人工爪(2)の横断面図である。
【
図12】爪のケラチン板に類似するポリマー表面側(5)及び感染した爪(1)に向けられる腹側(3)で構成される、本発明の人工爪(2)の横断面図である。
【
図13】健康な爪及びその解剖学的形態;爪甲の遠位縁又は端(15)、側爪郭(パラニキウム)(16)、爪上皮(エポニキウム)(17)、爪甲(18)、爪半月(19)、及び近位爪郭(20)を示す図である。
【
図14】腹側(3)の人工爪表面が、治療されようとする爪及び/又は爪床(1)の表面の形状に沿った複数の凸面(21)及び凹面(22)で構成される、本発明の一実施形態による人工爪(2)を示す図である。
【
図15】腹側(3)の人工爪表面が、治療されようとする爪及び/又は爪床(1)の輪郭に沿った複数の凸面(23)及び複数の凹面(24)で構成される、本発明の一実施形態による人工爪(2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、次の実施例及び図において更に詳細に説明される:
【0041】
図1は、本発明の人工爪(2)を適用することにより治療される足における真菌感染した爪(1)を示す図である。治療されようとする爪又は爪床に適用した場合、人工爪は、自然の爪及び爪床の輪郭に沿って、感染した爪を環境から完全に封鎖する。爪を特異的に密閉状態(すなわち、抗菌性化合物を含む液体溶液の蒸発を防止する遮断状態)にすることによって、抗菌性化合物が、有効であるために十分な量で作用部位に到達するのに十分な時間が与えられて、感染又は疾患の部位への活性化合物の経爪送達が改善される。密閉又は遮断条件下で、爪は、液体組成物並びにその中の可溶化薬物を吸収する能力がより高く、これは、可溶化薬物を含む液体が爪の深層まで容易に拡散することができることを意味する。
【0042】
図2は、爪のケラチン板に類似するポリマー表面側(5)及び、治療されようとする爪及び/又は爪床に向けられる腹側(3)で構成される、本発明の人工爪(2)の側面図である。腹側は、治療されようとする、感染した爪及び/又は爪床(1)の治療のための抗菌化合物を含む液体組成物を保持するための1つ又は複数のリザーバー(4)を備える。人工爪のリザーバーは、感染した爪を治療するための抗菌化合物を含む液体組成物を保持し、治療のために抗菌化合物を適用する必要がある指又は足指の爪床の爪の治療されようとする表面領域に面する腹側の内面にある。本発明の人工爪は、長期間にわたる感染の部位への活性抗菌化合物の連続投与を提供する。
【0043】
図3は、本発明の人工爪(2)の腹側(3)を示す図である。腹側は、感染した爪の治療のための抗菌化合物を含む液体組成物を保持するための複数のリザーバー(4)を備える。
【0044】
図4は、感染した爪の治療のための抗菌化合物を含む液体組成物を保持するための複数のリザーバー(4)を備える人工爪(2)の腹側(3)の拡大図である。リザーバーは、リザーバー間で液体接続を提供する液体組成物の素通り、及び液体組成物と治療されようとする、感染した爪又は爪床との間の接触を可能にする、液体透過性ポリマーマトリックスで構成される。透過性ポリマーマトリックスはまた、1つ又は複数のリザーバー(4)内の人工爪における液体組成物の分布を更に改善するために、小型の開口部(10)を備えることができ、感染又は疾患の部位への活性化合物の経爪送達及び治療の有効性の改善のために、人工爪(2)が、感染した爪又は爪床に配置される場合、治療の期間中、流動し、感染した爪又は爪床と直接かつ継続的に接触することが可能になる。これらの開口部(4)は、リザーバー間の液体接続を提供するリザーバー(4)の液体ポリマーマトリックス内のいずれに位置してもよいが、治療されようとする、感染した爪又は爪床の近くに位置する開口部は、治療期間中、感染した爪又は爪床との液体の最適かつ継続的な接触の場合に好まれる。
【0045】
図5は、本発明の人工爪(2)の腹側(3)を示す図である。腹側は、前記液体組成物の前記腹側への接着を提供するためのある特定の3D形状を有し得る1つ又は複数の突起(6)を備える。突起のある特定の3D形状により、接着剤の接触面積が改善され、感染した爪及び人工爪の腹側との間に保持される1つ又は複数のリザーバーからの液体組成物についての表面張力が増加する。
【0046】
図6~
図8は、ある特定の3D構造、例えば、木状(7)、マッシュルーム形(8)、ジャイロイド形(9)等は、本発明の人工爪(2)の腹側に対する、接着接触面積を改善させ、液状組成物の表面張力を増加させ、人工爪を治療部位に適用する間の液状組成物の垂れ落ち及び溢流を防止することを示す図である。
【0047】
図9は、爪のケラチン板に類似するポリマー表面側(5)及び感染した爪に向けられる腹側(3)で構成される、人工爪(2)の側面図である。腹側は、感染した爪の治療のための抗菌化合物を含む液体組成物を保持するためのリザーバー(4)及びリザーバー内の液体組成物に対する改善された接着接触領域を提供する複数の突起(6)を備える。リザーバー(4)は、液体透過性ポリマーマトリックスで構成され、このポリマーマトリックスは、人工爪の密着性を高め、リザーバー(4)のさらなる囲いを提供するための接着性ポリマー材料(11)で構成される。
【0048】
図10は、爪のケラチン板に類似するポリマー表面側(5)及び感染した爪(1)に向けられる腹側(3)で構成される、本発明の人工爪(2)の横断面図である。腹側は、抗菌化合物を含む液体組成物を保持するためのリザーバー(4)と人工爪のポリマー層の腹側への前記液体組成物の接着を提供するための突起(6)とを備える。
人工爪のリザーバー(4)は、液体透過性であり、液体組成物の素通り及び、液体組成物と治療されようとする爪及び/又は爪床との間の接触、並びに人工爪の密着性の改善、リザーバー(4)のさらなる囲いを提供することを可能にする、接着性ポリマー材料(11)層で構成される、液体透過性ポリマーマトリックスで構成される。リザーバー(4)は、1つ又は複数のリザーバー(4)内の液体組成物の分散を更に改善するために、小型の開口部(10)を更に含み、治療の期間中、感染した爪又は爪床(1)との流動及び直接的かつ継続的な接触を可能にする。更に、人工爪は、接着性の最上層(11)、例えば、Tegadermにより更に被覆することができる。
【0049】
図11は、爪のケラチン板に類似するポリマー表面側(5)及び感染した爪(1)に向けられる腹側(3)で構成される、本発明の人工爪(2)の横断面図である。腹側は、抗菌化合物を含む液体組成物を保持するためのリザーバー(4)を備える。人工爪(2)のポリマー層は、リザーバー(4)を追加する又は(再)充填するための弁(14)を備える。
【0050】
図12は、爪のケラチン板に類似するポリマー表面側(5)及び感染した爪(1)に向けられる腹側(3)で構成される、本発明の人工爪(2)の横断面図である。腹側は、抗菌化合物を含む液体組成物を保持するためのリザーバー(4)を備える。人工爪(2)のポリマー層は、リザーバー(4)を追加する又は(再)充填するための、閉鎖手段(14)、例えば、栓等と組み合わせた開口部を備える。
【0051】
図13は、健康な爪及びその解剖学的形態;爪甲の遠位縁又は端(15)、側爪郭(パラニキウム)(16)、爪上皮(エポニキウム)(17)、爪甲(18)、爪半月(19)、及び近位爪郭(20)を示す図である。人工爪は、爪上皮の縁、側爪郭及び爪甲の下の表皮に、好ましくは、爪甲の遠位端までの最大距離が最大でも1mmである爪甲の遠位端で付着させることにより、爪及び/又は爪床に適用するのに適している。人工爪と、治療されようとする前記爪及び/又は爪床の側爪郭及び爪上皮との間の距離は、最大でも1mmである。
【0052】
図14は、腹側(3)の人工爪表面が、治療されようとする爪及び/又は爪床(1)の表面の形状に沿った複数の凸面(21)及び凹面(22)で構成される、本発明の一実施形態による人工爪(2)を示す図である。腹側は、抗菌化合物を含む液体組成物を保持するためのリザーバー(4)を備える。
【0053】
図15は、腹側(3)の人工爪表面が、治療されようとする爪及び/又は爪床(1)の輪郭に沿った複数の凸面(23)及び複数の凹面(24)で構成される、本発明の一実施形態による人工爪(2)を示す図である。
【0054】
(実施例1)
感染部位における高い含水率及び湿度を維持する能力
真菌性爪疾患の効果的な治療のために、100%の相対湿度(RH)又は高含水率が、経爪的薬物送達を促進し、その結果、爪の患部に、より効果的かつ効率的な治療をもたらすことが知られている。本実験では、既知の爪疾患の処置;クリーム、液体及びラッカーを、爪の状態を模倣した半透膜(アクリル系粘着剤Tegadermを用いたポリウレタン製の半透過性透明創傷ドレッシングフィルム)に適用した、本発明の人工爪と比較して試験している。処置の適用前に、膜を校正済み測定器(Mettler Toledo)で秤量した。処置を施し、室温で1時間及び24時間維持した。曝露の24時間後、膜をワイプ(Kimtech社)で清掃した。膜を再度秤量し、含水量の近似値を求めた。
【0055】
本実験において観察した通り、公知の処置、例えば、クリーム、リキッド、ラッカーを用いて、1時間後の含水率は、100%を大きく下回った。しかしながら、本発明の人工爪を用いると、含水率は、依然として90%近くのままであり、24h後でも高い保湿状態を維持する。液状配合物の蒸発及び速やかな除去により、現在の技術水準では、爪疾患の治療のための液体配合物の使用は好ましくない。しかしながら、これらの結果から、高含水率及び水和状態、より詳細には、水性液体組成物を、本発明の人工爪と組み合わせて用いると、感染部位又は疾患部位への経爪的薬物送達が促進され、治療が改善されることが示される。
【0056】
(実施例2)
爪への浸透アッセイ
本実験では、抗菌性化合物の爪への浸透及び薬用抗真菌剤の爪への透過に対する遮断及び水和の効果を調査する。関連のある倫理委員会により承認されたヒトの切り落とした爪の収集物を用いた。少なくとも長さ8mmの切り落とした爪が、書面によるインフォームドコンセントの後、健常なボランティアにより寄付された。爪の厚さは、300μm~550μmまで変わった。異なる抗真菌剤(Novartis社、Pierre Fabre Dermatologie社、Sandoz社、Cedium社、Valeant社、Ortho Dermatologics社から入手したテルビナフィン(Terbinafme)、シクロピロクス、ボリコナゾール、クロルヘキシジン、エフィナコナゾール(Efmoconazole)を用いた)による5種の異なる配合物を、遮断型と非遮断型の改良型フランツ型拡散セルセットアップにおいて比較した。
【0057】
遮断した状態における抗真菌配合物の爪への浸透を垂直型拡散セルのセットアップを用いて試験し、又はドナーチャンバー、爪若しくは半透過性膜を備えたマウント、撹拌器を有するレセプターチャンバーで構成された、0.5mLの小型のレセプターコンパートメントを有する改良型フランツ型拡散セル(Permegear.com)を用いた。爪を、ドナーチャンバーとレセプターチャンバーとの間に取り付け、爪の腹側をレセプターチャンバーに向けた。
【0058】
レセプター液(5mL)は、リン酸緩衝食塩水(pH7.4)であり、それを、0.5%のポリソルベート80と共に撹拌した。ネイルチップを、脱イオン水中で30分間水和させた。ネイルチップを、拡散セルのドナーコンパートメントとレセプターコンパートメントとの間に挟んだネイルアダプターに入れた。各配合物を、遮断型及び非遮断型セットアップで、3回試験した。条件毎に、単回用量をドナーコンパートメントに適用した。遮断条件では、蒸発を制限し、NAIL-IT条件を模倣するために、インラインセルセットアップのドナーコンパートメントを非透過性の包装材料で被覆した。非遮断条件では、溶液を投与し、ドナーコンパートメントを、開放し続けた。本アセンブリーを、水平振とう機で7日間振とうした。次に、レセプターサンプル(0.4mL)を、24h後及びその後24h毎に収集し、全7日間新鮮な培地に置き換えた。サンプルを、ガラス管に収集し、分析のために解凍されるまで、-18℃未満の暗所で保存した。レセプターチャンバー内の抗真菌剤の濃度を、HPLCにより定量した。
【0059】
次に、本配合物に曝露された爪の領域を細断し、1mLのメタノール:水(80:20)又はその他の溶媒で7日間振とうすることにより抗真菌剤を抽出した。抽出物中の抗真菌剤の濃度を、HPLCにより決定した。抽出物中の抗真菌剤の濃度は、AB Sciex API 3000トリプル四重極質量分析計(Concord社、ON、Canada)及びAgilent 1100シリーズHPLC系(Agilent Technologies社、Palo Alto、USA)、及び冷却オートサンプラーを用いた、LC-MS/MSにより決定した。抗真菌アッセイを、一般的な検証パラメータ(正確度、精度、定量限界、選択性、マトリックス効果、回復、キャリーオーバー)に関して検証した。流量(μg cm-2 s-1)を算出し、爪1平方センチメートル当たりの1平方センチメートル当たり抗真菌剤のマイクログラムとして表した。透過率(cm s-1)は、流量を開始濃度(μg cm-3)で割ることによって流量から導き出される。Table 1(表1)は、化合物毎、遮断型及び非遮断型の試験条件毎の結果をまとめて示す。
【0060】
【0061】
本発明による遮断型爪は、有意に改善された流量(>50%~400%増加)及び得られた浸透性、並びに治療された爪表面の有意に改善された全回復パーセンテージを提供し、本発明の人工爪を用いた治療的処置及び美容処置法が強化されたことを示した。
【0062】
(実施例3)
In vivoケーススタディ
本発明の人工爪を、軽度から中等度の爪真菌症を伴い、罹患した爪が最大3本である対象において試験した。罹患した爪をすべて治療して、処置中に未治療の爪に同時感染するリスクを回避する。感染した趾爪についての治療手順を以下に記載する。
【0063】
罹患し肥厚した爪を、感染していない正常な割合まで薄く削り、可能な限り除去した。残りの爪又は爪甲に直接損傷を与えない程度に磨耗させた。続いて、罹患した爪の3Dスキャンを行い、寸法(長さ、幅、曲率、外形)を罹患した爪から得た。爪の寸法に基づいて、治療されようとする表面領域を完全に遮断する人工爪の形状のポリマー材料(SLA材料)を作製した。ポリマー材料に付着させるのは、3Dマッシュルーム構造を有するポリプロピレンのリザーバーであり、本リザーバーに、抗真菌流体組成物、すなわち、活性抗真菌剤としてイトラコナゾールを含有する配合物を充填(約200ul)した。本配合物は、プロピレングリコール、ヒドロキシプロピル-b-シクロデキストリン、塩酸、水酸化ナトリウム、及び水を含有する溶液中で、イトラコナゾール10mg/mlを含有した。ポリプロピレンのスポンジを、リザーバーに入れて、流体組成物を所定の位置に保持する。この材料がオープン構造であることによって、イトラコナゾール溶液が爪に直接アクセスすることができる。遮断状態を、適用期間中維持する。
【0064】
本発明の爪を適用する前に、t=0における写真を、爪の写真で作製した。その直後に、爪及び爪床の輪郭をシアノアクリレートで接着し、Fixiomull(BSN medical社)の特大シートにより爪を被覆することにより、爪を固定した。爪を、連続36日間少なくとも8時間適用し、処置後、爪を除去し、処置した爪及び領域を視覚的に観察し、写真を撮影した。次いで、爪を3週間放置して治療せず、その後再び、目視観察を行った。更に、上記の手順を、1日1回の適用サイクルでやはり行い、36回繰り返した(合計5週間)。適用サイクル毎に、リザーバー内の抗真菌溶液を新鮮な溶液に置き換えた。
【0065】
それらの結果から、適切に処置した場合、処置中に漏出又は溢流は全く起こらなかったことが示される。最初の30日間は感染した爪の視覚的な改善が観察された(健康な爪の成長によって実証された)、その後、改善が停止し、処置を中止した。装着したときの心地よさは、試験対象により「良い」と示された。
【符号の説明】
【0066】
1 真菌感染した爪
1 治療されようとする爪及び/又は爪床
2 人工爪
3 腹側
4 リザーバー
5 ポリマー表面側
6 突起
7 木状
8 マッシュルーム形
9 ジャイロイド形
10 小型の開口部
11 接着性ポリマー材料
11 接着性の最上層
14 弁
14 閉鎖手段
15 爪甲の遠位縁又は端
16 側爪郭(パラニキウム)
17 爪上皮(エポニキウム)
18 爪甲
19 爪半月
20 近位爪郭
21 凸面
22 凹面
23 複数の凸面
24 複数の凹面
【国際調査報告】