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特表2024-530501細胞毒性を有するベンゾジアゼピン誘導体を調製するための改良法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】細胞毒性を有するベンゾジアゼピン誘導体を調製するための改良法
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/00 20060101AFI20240814BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20240814BHJP
   C07K 1/30 20060101ALI20240814BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C07K5/00
C07K1/14
C07K1/30
C07D487/04 152
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508373
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 US2022040203
(87)【国際公開番号】W WO2023018960
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/232,757
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504039155
【氏名又は名称】イミュノジェン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,アンドリュー・ブライアン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA11
4H045BA12
4H045FA10
4H045GA05
(57)【要約】
本発明は、インドリノベンゾジアゼピン二量体化合物及びその合成前駆体を調製するための新規な改良法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)に示す化合物を調製する方法であって、
【化1】
(i)式(I)に示す化合物を、
【化2】
式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO塩)と反応させて、
【化3】
式(II)に示す化合物を形成するステップ、
【化4】
(ii)前記式(II)に示す化合物を、カルボン酸脱保護剤と反応させて、前記式(III)に示す化合物を形成するステップ、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記式(III)に示す化合物が式(IIIa)に示す化合物によって代表される、請求項1に記載の方法であって、
【化5】
(i)式(Ia)に示す化合物を、
【化6】
前記式(b)に示す化合物の前記重硫酸塩(HSO塩)と反応させて、式(IIa)に示す化合物を形成するステップ、
【化7】
(ii)前記式(IIa)に示す化合物をカルボン酸脱保護剤と反応させて、前記式(IIIa)に示す化合物を形成するステップ、
を含む前記方法。
【請求項3】
ステップ(i)において、前記式(I)または(Ia)に示す化合物と、前記式(b)に示す化合物の前記重硫酸塩(HSO)との間の前記反応が、活性化剤の存在下で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性化剤が、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド、カルボジイミド、ウロニウム、活性化エステル、ホスホニウム、2-アルキル-1-アルキルカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、2-アルコキシ-1-アルコキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、またはアルキルクロロホルメートである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記活性化剤が2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド(T3P)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(i)において、前記式(I)または(Ia)に示す化合物と、前記式(b)に示す化合物の前記重硫酸塩(HSO)との間の前記反応が、塩基の存在下で行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基がトリエチルアミンまたはN,N-ジイソプロピルエチルアミンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応が、ジクロロメタン中で行われる、請求項3~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記式(II)または(IIa)に示す化合物が、有機溶媒による溶媒抽出によって前記式(II)または(IIa)に示す化合物を含む有機相を形成し、次いで前記有機相を1回以上水性洗浄し、前記水性洗浄の少なくとも1回を炭酸水素塩水溶液で行うことによって精製される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記炭酸水素塩水溶液がNaHCO水溶液である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(ii)の前記カルボン酸脱保護剤がトリフルオロ酢酸(TFA)である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
式(Va)に示す化合物を調製する方法であって、
【化8】
式(IIIa)に示す化合物を、
【化9】
式(IVa)に示す化合物と、
【化10】
活性化剤の存在下、メタノール中で反応させて前記式(Va)に示す化合物を形成するステップを含み、前記活性化剤がHATUである前記方法。
【請求項13】
前記式(IIIa)に示す化合物と前記式(IVa)に示す化合物との間の前記反応が、塩基の存在下で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記塩基がトリエチルアミン、またはN,N-ジイソプロピルエチルアミンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記反応がメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)でクエンチされる、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応にHOAtを添加しない、請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物の水性後処理を実施しない、請求項12~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
式(Va)に示す化合物を調製する方法であって、
【化11】
(i)式(Ia)に示す化合物を、
【化12】
式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO塩)と反応させて、
【化13】
式(IIa)に示す化合物を形成するステップ、
【化14】
(ii)前記式(IIa)に示す化合物をカルボン酸脱保護剤と反応させて、式(IIIa)に示す化合物を形成するステップ、
【化15】
(iii)前記式(IIIa)に示す化合物を式(IVa)に示す化合物と反応させて、
【化16】
前記式(Va)に示す化合物を形成するステップ、
を含む前記方法。
【請求項19】
ステップ(i)において、前記式(Ia)に示す化合物と前記式(b)に示す化合物の前記重硫酸塩(HSO)との間の前記反応が、活性化剤の存在下で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記活性化剤が、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド、カルボジイミド、ウロニウム、活性化エステル、ホスホニウム、2-アルキル-1-アルキルカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、2-アルコキシ-1-アルコキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、またはアルキルクロロホルメートである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記活性化剤が2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド(T3P)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(i)において、前記式(Ia)に示す化合物と前記式(b)に示す化合物の前記重硫酸塩(HSO)との間の前記反応が、塩基の存在下で行われる、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記塩基がトリエチルアミン、またはN,N-ジイソプロピルエチルアミンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記式(IIa)に示す化合物が、有機溶媒による溶媒抽出によって前記式(IIa)に示す化合物を含む有機相を形成し、次いで前記有機相を1回以上水性洗浄し、前記水性洗浄の少なくとも1回を炭酸水素塩水溶液で行うことによって精製される、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記炭酸水素塩水溶液がNaHCO水溶液である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(ii)における前記カルボン酸脱保護剤がトリフルオロ酢酸(TFA)である、請求項18~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(iii)において、前記式(IIIa)に示す化合物と前記式(IVa)に示す化合物との前記反応が、活性化剤の存在下で行われる、請求項18~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記活性化剤が、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1、2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール、もしくは1H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-1-オール(HOAt)、カルボジイミド(例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、または1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC))、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、ウロニウム、活性化エステル、ホスホニウム、2-アルキル-1-アルキルカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、2-アルコキシ-1-アルコキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、もしくはアルキルクロロホルメート、またはそれらの組み合わせである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記活性化剤がHATUである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(iii)において、前記式(IIIa)に示す化合物と前記式(IVa)に示す化合物との間の前記反応が、塩基の存在下で行われる、請求項18~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記塩基がトリエチルアミンまたはN,N-ジイソプロピルエチルアミンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(iii)において、前記式(IIIa)に示す化合物と前記式(IVa)に示す化合物との間の前記反応が、アルコールの存在下で実施される、請求項18~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記アルコールがメタノールである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(iii)の前記反応が、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)でクエンチされる、請求項18~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
ステップ(iii)の前記反応にHOAtを添加しない、請求項18~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
ステップ(iii)における前記反応混合物の水性後処理が実施されない、請求項18~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
式(VIIa)に示す化合物を調製する方法であって、
【化17】
式(VIa)に示す化合物を、
【化18】
ラネーニッケル触媒の存在下、Hと反応させるステップを含む前記方法。
【請求項38】
前記反応がMeOH中で実施される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記反応が、40℃と60℃の間、または45℃と55℃の間の温度で実施される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記反応混合物を金属スカベンジャーと接触させるステップをさらに含む、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記反応混合物をシリカベースのスカベンジャーと接触させることをさらに含む、請求項37~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記シリカベースのスカベンジャーがシリカチオールである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記式(VIIa)に示す化合物が結晶化により精製される、請求項37~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記結晶化がMeOH及び水中で実施される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
式(VIIIa)に示す化合物を調製する方法であって、
【化19】
式(VIIa)に示す化合物を、
【化20】
式(c)に示す化合物と反応させて、
【化21】
前記式(VIIIa)に示す化合物を形成するステップを含み、前記反応が、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)及び1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジン(ADDP)の存在下で行われる前記方法。
【請求項46】
前記反応がTHF中で実施される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記反応が5℃から15℃の間の温度で実施される、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記式(VIIIa)に示す化合物がクロマトグラフィーにより精製される、請求項45~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記式(VIIIa)に示す化合物が結晶化により精製される、請求項45~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記式(VIIIa)に示す化合物が酸付加塩として結晶化される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記酸が(+)-O,O’-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸(D-(+)-DTTA)である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記式(VIIIa)に示す化合物を、式(d)に示す化合物と反応させて、
【化22】
式(IXa)に示す化合物を形成するステップをさらに含む、請求項45~51のいずれか1項に記載の方法。
【化23】
【請求項53】
前記式(IXa)に示す化合物が沈殿により精製される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記沈殿がアセトニトリルと水の混合物中で実施される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記アセトニトリルと水の比が1:1(v/v)である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記式(IXa)に示す化合物を還元剤と反応させて、式(IVa)に示す化合物を形成するステップをさらに含む、請求項52~55のいずれか1項に記載の方法。
【化24】
【請求項57】
前記還元剤がFe/NHClである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記式(c)に示す化合物が、式(c1)に示す化合物を、
【化25】
トルエン中で塩酸と反応させることによって調製される、請求項45~57のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月13日に出願された米国仮出願第63,232,757号の優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、細胞毒性を有するインドリノベンゾジアゼピン誘導体及び前駆体を調製するための改良法に関する。
【背景技術】
【0003】
一つのイミン官能性及び一つのアミン官能性を有するインドリノベンゾジアゼピン二量体の細胞結合剤抱合体は、以前に開示された二つのイミン官能性を有するベンゾジアゼピン誘導体と比較して、生体内ではるかに高い治療指数(最大耐容量と最小有効量の比)を発現することが示されている。例えば、WO2012/128868を参照されたい。以前に開示された一つのイミン官能性及び一つのアミン官能性を有するインドリノベンゾジアゼピン二量体を製造するための方法は、様々な欠点及び問題を有する。例えば、以前に開示された一つの方法は、二つのイミン官能性を有するインドリノベンゾジアゼピン二量体の部分還元を含む。部分還元ステップは、一般に、完全に還元された副生物の形成、及び未反応の出発物質の形成をもたらし、面倒な精製ステップを必要とし、収率が低くなる。以前に開示された方法における他の問題は、前駆体を調製する過程で発生する不純物によって引き起こされる場合があり、これらの不純物は除去することが困難であり、その結果、前駆体を汚染し、やがては最終的な所望のインドリノベンゾジアゼピン二量体生成物の主不純物に至る。従来の方法に関連するその他の問題としては、溶媒及び試薬のコストが高いこと、生成物の安定性が低いこと、反応時間が長いこと等が挙げられる。
【0004】
したがって、インドリノベンゾジアゼピン二量体を調製するための、より効率的で、大規模な製造ステップに適した改良法の開発が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、インドリノベンゾジアゼピン二量体化合物及びその合成前駆体の新規調製法を提供する。
【0006】
一つの態様において、本発明は、式(III)に示す化合物を調製する方法であって、
【化1】
(i)式(I)に示す化合物を、
【化2】
式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO塩)と反応させて、
【化3】
式(II)に示す化合物を形成するステップ、
【化4】
(ii)式(II)に示す化合物をカルボン酸脱保護剤と反応させて、式(III)に示す化合物を形成するステップ、
を含む方法に関する。
【0007】
別の態様において、本発明は、式(Va)に示す化合物を調製する方法であって、
【化5】
式(IIIa)に示す化合物を、
【化6】
式(IVa)に示す化合物と、
【化7】
活性化剤の存在下、メタノール中で反応させて、式(Va)に示す化合物を形成するステップを含み、前記活性化剤がHATUである方法に関する。
【0008】
別の態様において、本発明は、式(Va)に示す化合物を調製する方法であって、
【化8】
(i)式(Ia)に示す化合物を、
【化9】
式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO塩)と反応させて、
【化10】
式(IIa)に示す化合物を形成するステップ、
【化11】
(ii)式(IIa)に示す化合物をカルボン酸脱保護剤と反応させて、式(IIIa)に示す化合物を形成するステップ、
【化12】
及び、
(iii)式(IIIa)に示す化合物を式(IVa)に示す化合物と反応させて、
【化13】
式(Va)に示す化合物を形成するステップ、
を含む方法を提供する。
【0009】
さらに別の態様において、本発明は、式(VIIa)に示す化合物を調製する方法であって、
【化14】
式(VIa)に示す化合物を、
【化15】
ラネーニッケル触媒の存在下、Hと反応させるステップを含む方法を提供する。
【0010】
本明細書ではまた、式(VIIIa)に示す化合物を調製する方法であって、
【化16】
式(VIIa)に示す化合物を、
【化17】
式(c)に示す化合物と反応させて、
【化18】
式(VIIIa)に示す化合物を形成するステップを含み、前記反応が、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)及び1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジン(ADDP)の存在下で行われる方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の特定の実施形態について詳細に説明するが、その実施例は添付の構造及び式に示される。本発明を列挙した実施形態と併せて説明するが、これらの実施形態は本発明をこれらの実施形態に限定することを意図していないことは理解されるであろう。それどころか、本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれる場合があるすべての代替物、改変物、及び等価物を網羅することを意図している。当業者であれば、本発明の実施において使用され得る、本明細書に記載されたものと類似または同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。
【0012】
本明細書に記載された実施形態のいずれも、明示的に放棄されるか、または不適切でない限り、本発明の一つまたは複数の他の実施形態と組み合わせることができることを理解されたい。実施形態の組み合わせは、複数の従属請求項を介して請求される特定の組み合わせに限定されない。
【0013】
定義
「アルキル」は、本明細書で使用される場合、飽和直鎖または分岐一価炭化水素ラジカルを指す。好ましい実施形態では、直鎖または分枝鎖アルキルは、30個以下の炭素原子(例えば、直鎖アルキル基の場合はC-C30、分枝鎖アルキルの場合はC-C30)を有し、より好ましくは20個以下の炭素原子を有する。さらに好ましくは、直鎖または分岐鎖アルキルは、10個以下の炭素原子(すなわち、直鎖アルキル基の場合はC-C10、分岐アルキルの場合はC-C10)を有する。他の実施形態では、直鎖または分枝鎖アルキルは、6個以下の炭素原子(すなわち、直鎖アルキル基の場合はC-C、分枝鎖アルキルの場合はC-C)を有する。アルキルの例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-メチル-1-プロピル、-CHCH(CH、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル、1-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、1-ヘプチル、1-オクチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本明細書、実施例及び特許請求の範囲を通して使用される場合、「アルキル」という用語は、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両方を含むことが意図され、後者は、炭化水素骨格の一つまたは複数の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル部分を指す。本明細書で使用される場合、(C-Cxx)アルキルまたはCx-xxアルキルは、xからxx個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状のアルキルを意味する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「活性化エステル」とは、ヒドロキシル基またはアミン基によって容易に置換されるエステル基を指す。例示的な活性化エステルとしては、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ニトロフェニル(例えば、2または4-ニトロフェニル)エステル、ジニトロフェニル(例えば、2,4-ジニトロフェニル)エステル、スルホテトラフルオロフェニル(例えば、4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)エステル、ペンタフルオロフェニルエステル、ニトロピリジル(例えば、4-ニトロピリジル)エステル、トリフルオロ酢酸塩、及び酢酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
「化合物」という用語は、本発明において構造もしくは式またはその誘導体が開示されている化合物、または参照により組み込まれた構造もしくは式またはその誘導体を含むことを意図している。この用語には、立体異性体、幾何異性体、または互変異性体も含まれる。本出願に記載された本発明の特定の態様における「立体異性体」、「幾何異性体」、「互変異性体」、「塩」の特定の記載は、「化合物」という用語がこれらの他の形体の記載なしに使用される、本発明の他の態様におけるこれらの形体の意図された省略として解釈されないものとする。
【0016】
所与の基の「前駆体」という用語は、任意の脱保護、化学修飾、またはカップリング反応によってその基に至る可能性があるあらゆる基を指す。
【0017】
「キラル」という用語は、鏡像相手と重ね合わせることができない分子を指し、「アキラル」という用語は、鏡像相手と重ね合わせることができる分子を指す。
【0018】
「立体異性体」という用語は、化学的構成と結合性は同一であるが、空間における原子の向きが異なり、単結合に関する回転によって相互変換できない化合物を指す。
【0019】
「ジアステレオマー」とは、キラリティの中心が二つ以上あり、分子が互いに鏡像ではない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、融点、沸点、スペクトル特性、反応性などの物理的性質が異なる。ジアステレオマーの混合物は、結晶化、電気泳動、及びクロマトグラフィーなどの高分解能分析手順で分離することがある。
【0020】
「エナンチオマー」とは、ある化合物の二つの立体異性体のことで、互いに重ね合わせることができない鏡像体である。
【0021】
本明細書で使用される立体化学的定義及び慣例は、概してS.P.Parker, Ed.,McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(1984)McGraw-Hill Book Company,New York及びEliel,E.and Wilen,S.,“Stereochemistry of Organic Compounds,”John Wiley & Sons,Inc.,New York,1994に従う。本発明の化合物は、不斉中心またはキラル中心を含み、したがって、異なる立体異性体の形体で存在する場合がある。ジアステレオマー、エナンチオマー及びアトロピソマー、ならびにラセミ混合物のようなそれらの混合物を含むがこれらに限定されない本発明の化合物のすべての立体異性体が、本発明の一部を形成することが意図される。多くの有機化合物は、光学活性な形体、すなわち、平面偏光の平面を回転させる能力を有する形体で存在する。光学活性化合物を記述する際、D及びL、またはR及びSという接頭辞が、キラル中心(複数可)に関する分子の絶対配置を示すために使用される。d及びl、または(+)及び(-)という接頭辞が、化合物による平面偏光の回転の符号を示すために使用され、(-)またはlは化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdの接頭辞を持つ化合物は右旋性である。ある所与の化学構造について、これらの立体異性体は、互いに鏡像であることを除いて同一である。特定の立体異性体はエナンチオマーと呼ばれる場合もあり、このような異性体の混合物はしばしばエナンチオマー混合物と呼ばれる。エナンチオマーの50:50の混合物は、ラセミ混合物またはラセミ体と呼ばれ、化学反応またはプロセスにおいて立体選択性または立体特異性がない場合に生じる場合がある。「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」という用語は、光学活性のない二つのエナンチオマー種の等モル混合物を指す。
【0022】
「互変異性体」または「互変異性形体」という用語は、低エネルギー障壁を介して相互変換可能な、異なるエネルギーの構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピック互変異性体としても知られる)には、ケト-エノール異性化及びイミン-エナミン異性化のような、プロトンの移動を介した相互変換が含まれる。原子価互変異性体には、結合電子の一部の再編成による相互変換が含まれる。
【0023】
「保護基」または「保護部位」という用語は、化合物、その誘導体、またはその結合体上の他の官能基が反応している一方で、特定の官能基をブロックまたは保護するために一般的に用いられる置換基を指す。
【0024】
「カルボン酸保護基」とは、カルボン酸官能基のカルボニル基またはアルコール基に結合した置換基であり、化合物中のカルボン酸官能基をブロックまたは保護する。このような基は当技術分野で周知である(例えば、P.Wuts and T.Greene,2007,Protective Groups in Organic Synthesis,Chapter 5,J.Wiley & Sons,NJを参照)。適切なカルボン酸保護基としては、アルキルエステル(例えば、メチルエステルまたはtert-ブチルエステル)、ベンジルエステル、チオエステル(例えば、tert-ブチルチオエステル)、シリルエステル(例えば、トリメチルシリルエステル)、9-フルオレニルメチルエステル、(2-トリメチルシリル)エトキシメチルエステル、2-(トリメチルシリル)エチルエステル、ジフェニルメチルエステルまたはオキサゾリンが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、カルボン酸保護基は、メチルエステル、tert-ブチルエステル、ベンジルエステルまたはトリメチルシリルエステルである。特定の実施形態では、カルボン酸保護基は、tert-ブチルエステルである。
【0025】
本明細書で使用される場合、「カルボン酸脱保護剤」とは、カルボン酸保護基を切断して遊離カルボン酸を生成することができる試薬を指す。このような試薬は、当該技術分野において周知であり(例えば、P.Wuts and T.Greene,2007,Protective Groups in Organic Synthesis,Chapter 5,J.Wiley & Sons,NJを参照)、使用されるカルボン酸保護基に依存する。例えば、カルボン酸保護基がtert-ブチルエステルである場合、それは酸で切断することができる。特定の実施形態では、カルボン酸脱保護剤はトリフルオロ酢酸である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「アルコール活性化剤」とは、ヒドロキシル基の反応性を高め、それによってヒドロキシル基をより優れた脱離基とする試薬を指す。このようなアルコール活性化剤の例としては、p-トルエンスルホン酸クロリド、塩化チオニル、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、メタンスルホニルクロリド、メタンスルホン酸無水物、トリフェニルホスフィン、アシルクロリド、4-ジメチルアミノピリジンなどが挙げられる。特定の実施形態では、アルコール活性化剤は塩化チオニルである。特定の実施形態では、アルコール活性化剤はトリフェニルホスフィンである。
【0027】
本明細書で使用される場合、「塩」という語句は、本発明の化合物の有機塩または無機塩を指す。例示的な塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシル酸塩」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩(すなわち1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))塩、アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、及びアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。塩には、酢酸イオン、コハク酸イオン、その他の対イオンのような別の分子が含まれていてもよい。対イオンは、親化合物の電荷を安定化させる有機または無機の部分であれば何でもよい。さらに、塩はその構造中に複数の荷電原子を持つ場合がある。複数の荷電原子が塩の一部である場合、複数の対イオンを持つことができる。したがって、塩は一つ以上の荷電原子及び/または一つ以上の対イオンを有することができる。
【0028】
本発明の化合物が塩基である場合、所望の塩は、当該技術分野で利用可能な任意の適切な方法、例えば、遊離塩基の無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸など、または有機酸、例えば酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、馬尿酸、グルクロン酸またはガラクツロン酸などのピラノシド酸、クエン酸、酒石酸、または(+)-O,O’-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸(DTTA)などのα-ヒドロキシ酸、アスパラギン酸またはグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸または桂皮酸などの芳香族酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、またはエタンスルホン酸などのスルホン酸などによる処理によって調製することができる。
【0029】
本発明の化合物が酸である場合、所望の塩は、任意の適切な方法、例えば、遊離酸の無機または有機塩基、例えば、アミン(第一級、第二級または第三級)、アルカリ金属水酸化物、またはアルカリ土類金属水酸化物などによる処理によって調製することができる。好適な塩の説明的な例としては、グリシン及びアルギニンなどのアミノ酸、アンモニア、第一級、第二級及び第三級アミン、ならびにピペリジン、モルホリン及びピペラジンなどの環状アミンから誘導される有機塩、及びナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及びリチウムから誘導される無機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
特定の実施形態では、塩は薬学的に許容される塩である。「薬学的に許容される」という語句は、物質または組成物が、製剤を構成する他の成分、及び/またはそれによって処置される哺乳動物と、化学的及び/または毒物学的に適合性がなければならないことを示す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「スカベンジャー」という用語は、過剰な試薬、触媒、不純物及び不要な反応生成物、例えば酸素を除去または不活性化し、それらが好ましくない反応を引き起こさないようにするために、混合物に添加される化学物質を指す。スカベンジャーには、高分子スカベンジャー、ラジカルスカベンジャー、無機酸素スカベンジャーなどがある。金属スカベンジャーは、過剰な金属錯体と反応して結合するように設計された官能基シリカゲルである。シリカベースの金属スカベンジャーは、他のあらゆる方法よりも選択される精製方法であることが証明されており、様々な業界の複数の企業が使用している。シリカマトリックスはポリマーよりも優れている(膨潤しない、より全般的な溶媒との相溶性、より高い機械的及び熱的安定性、応用が容易に拡張可能で、製品は様々な形態、すなわちSPE、フラッシュカートリッジ、バルクなどで利用可能)ため、シリカ金属スカベンジャーは、医薬品候補物を汚染することなく金属を除去するための解決策である。シリカベースの金属スカベンジャーの例としては、Deloxan(登録商標)MP金属スカベンジャー(チオール官能化ポリシロキサン)、SiliCycle SiliaMetS(登録商標)金属スカベンジャー(トリアミン)、SiliaMetS(登録商標)チオール(Si-チオール)金属スカベンジャー、SiliCycle(商標)SiliaMetS(商標)金属スカベンジャーチオール(SH)、Silicathiol(iMoLbox-LMat-NH01)などがある。
【0032】
本発明の方法
本発明は、インドリノベンゾジアゼピン二量体化合物及び前駆体を調製する新規合成法を提供する。
【0033】
第1の実施形態では、本発明は式(III)に示す化合物を調製する方法であって、
【化19】
(i)式(I)に示す化合物を、
【化20】
式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO塩)と反応させて、
【化21】
式(II)に示す化合物を形成するステップ、
【化22】
(ii)式(II)に示す化合物をカルボン酸脱保護剤と反応させて、式(III)に示す化合物を形成するステップ、
を含む方法を提供する。
【0034】
第1の具体的な実施形態では、本発明は、式(IIIa)に示す化合物を調製する方法を提供し、
【化23】
この方法は、
(i)式(Ia)に示す化合物を、
【化24】
式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO塩)と反応させて、式(IIa)に示す化合物を形成するステップ、
【化25】
(ii)式(IIa)に示す化合物をカルボン酸脱保護剤と反応させて、式(IIIa)に示す化合物を形成するステップ、
を含む。
【0035】
以前に開示された方法(例えば、WO2020/102053)では、式(Ia)に示す化合物を式(b)に示す化合物のTFA塩またはHCl塩と反応させて式(IIa)に示す化合物を得、次いで次ステップのBoc-脱保護反応によって式(IIIa)に示す化合物を調製した。以前に開示された反応条件下では、式(b)に示す化合物のTFA塩は、以下に図示するトリフルオロアセトアミド不純物、化合物1の形成を引き起こす場合があり、これは反応混合物から除去するのが困難であるため、式(IIa)に示す化合物を汚染する。式(b)に示す化合物のHCl塩の使用は、式(b)に示す化合物中のマレイミド基とHClが反応する可能性があるために制限され、望ましくない副生物をもたらす場合がある。
【化26】
【0036】
本発明は、式(b)に示す化合物の重硫酸塩を使用することにより、トリフルオロアセトアミド不純物の生成を回避でき、プロセスの効率とコストが改善され、大規模生産により適することを見出した。
【0037】
特定の実施形態では、式(Ia)に示す化合物と式(b)に示す化合物の重硫酸塩の、活性化剤(例えば、T3P)の存在下における反応は、水溶性副生物を生ずるが、これは水、及び塩基性水溶液(例えば、NaHCO溶液)で洗浄することによって反応混合物から容易に除去され得る。未反応の式(Ia)に示す化合物も、水洗浄によって除去することができる。水洗浄後の残留有機溶媒中に生じる生成物(式(IIa)に示す化合物)は、従来の方法で通常必要とされる更なる精製(例えば、結晶化)を行うことなく、次のBoc脱保護反応に直接持ち越すことができる。
【0038】
本発明の方法によって調製された式(IIa)に示す化合物を次のステップのBoc-脱保護反応に供すると、得られる生成物(すなわち、式(IIIa)に示す化合物)が高純度で、未反応の出発物質(すなわち、式(Ia)に示す化合物)のBoc-脱保護副生物である以下に描写する二酸不純物、化合物2を含まない状態で形成され得る。
【化27】
【0039】
第2の実施形態では、本発明は、式(Va)に示す化合物を調製する方法であって、
【化28】
式(III)に示す化合物を、
【化29】
式(IVa)に示す化合物と、
【化30】
活性化剤の存在下で反応させて、式(Va)に示す化合物を形成するステップを含む方法を提供する。
【0040】
第2の具体的な実施形態では、本発明は、式(Va)に示す化合物を調製する方法であって、
【化31】
式(IIIa)に示す化合物を、
【化32】
式(IVa)に示す化合物と、
【化33】
活性化剤の存在下で反応させて、式(Va)に示す化合物を形成するステップを含む方法を提供する。
【0041】
式(Va)に示す化合物を調製するための以前に開示された方法は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、HATU及びHOAtを利用する。旧製法に関連する一つの欠点は、前記反応条件下において式(IIIa)に示す化合物が本来有する不安定性であり、これは副生物の形成につながる場合があり、その除去のために追加の精製を必要とする。別の重要な問題は、水性後処理中の式(Va)に示す化合物の不安定性であった。
【0042】
旧プロセスの他の問題は、式(IIIa)に示す化合物の品質である。上述したように、旧製法で調製された式(IIIa)に示す化合物は二酸不純物、化合物2で汚染される傾向があり、それがカップリング反応中にさらなる不純物をもたらす場合がある。
【0043】
式(Va)に示す化合物を調製するための本発明の方法は、反応速度及び生成物の品質に、以下のような著しい改善をもたらす。速い反応時間(例えば、1時間以内に完了)、安定な生成物(例えば、著しい副生物の形成なしに16時間まで安定)、及び粗生成物の高純度(例えば、クロマトグラフィーの前に反応混合物から単離された式(Va)に示す化合物の純度>90%)。例えば、本発明の方法は、式(IIIa)に示す化合物と式(IVa)に示す化合物との間のカップリング反応におけるHOAtの使用を排除することができる。
【0044】
本発明方法の一つの実施例では、MeOHの存在及び低い反応温度(例えば、10℃以下)により、式(IVa)に示す化合物の酸化を抑制できることが観察される。別の実施例では、本発明の方法においてクエンチング試薬(例えば、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE))を使用することにより、反応溶液から式(Va)の粗化合物を直接沈殿させることができ、これは、以前の方法に関連する有害な水性後処理なしに、容易にろ過して単離することができる。
【0045】
第3の実施形態では、本発明は、式(V)に示す化合物を調製する方法であって、
【化34】
(i)式(I)に示す化合物を、
【化35】
式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO塩)と反応させて、
【化36】
式(II)に示す化合物を形成するステップ、
【化37】
(ii)式(II)に示す化合物をカルボン酸脱保護剤と反応させて、式(III)に示す化合物を形成するステップ、
【化38】
(iii)式(III)に示す化合物を式(IVa)に示す化合物と反応させて、
【化39】
式(V)に示す化合物を形成するステップ、
を含む方法を提供する。
【0046】
第3の具体的な実施形態では、本発明は、式(Va)に示す化合物を調製する方法であって、
【化40】
(i)式(Ia)に示す化合物を、
【化41】
式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO塩)と反応させ、
【化42】
式(IIa)に示す化合物を形成するステップ、
【化43】
(ii)式(IIa)に示す化合物をカルボン酸脱保護剤と反応させて、式(IIIa)に示す化合物を形成するステップ、
【化44】
(iii)式(IIIa)に示す化合物を式(IVa)に示す化合物と反応させて、
【化45】
式(Va)に示す化合物を形成するステップ、
を含む方法を提供する。
【0047】
第4の実施形態では、第1もしくは第3の実施形態、または第1もしくは第3の具体的な実施形態に記載の方法について、式(I)もしくは(Ia)に示す化合物またはその塩と、式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO)との間のステップ(i)の反応は、活性化剤の存在下で行われる。
【0048】
特定の実施形態では、活性化剤は、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド、カルボジイミド(例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)または1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC))、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、ウロニウム、活性化エステル、ホスホニウム、2-アルキル-1-アルキルカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、2-アルコキシ-1-アルコキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、またはアルキルクロロホルメートである。
【0049】
別の具体的な実施形態では、活性化剤は、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシドである。より具体的な実施形態では、活性化剤は、2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド(T3P)である。
【0050】
活性化剤は、粉末、結晶、液体または溶液を含む任意の形態で使用することができる。特定の実施形態では、活性化剤は溶媒中の溶液である。活性化剤の溶液を作るために、任意の適切な溶媒を使用することができる。より具体的な実施形態では、活性化剤は、酢酸エチル(EtOAc)中のT3Pの溶液である。溶媒中の活性化剤の濃度は、0~100wt%、20~100wt%、30~100wt%、50~100wt%、または60~100wt%の範囲である。特定の実施形態では、EtOAc中のT3Pの濃度は、40~60wt%の範囲である。
【0051】
式(I)もしくは(Ia)に示す化合物またはその塩と、式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO)との間の反応においては、任意の適切な量の活性化剤を使用することができる。一つの実施形態では、式(I)または(Ia)に示す化合物の量に対して1.0~5.0モル当量の活性化剤(例えば、T3P)が反応に使用される。特定の実施形態では、式(I)または(Ia)に示す化合物の量に対して1.0~3.0、2.0~3.0、1.5~2.5、または2.0~4.0モル当量のT3Pが使用される。より具体的な実施形態では、2.0当量のT3Pが使用される。
【0052】
一つの実施形態では、式(I)もしくは(Ia)に示す化合物またはその塩と、式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO)との反応は、塩基の存在下で行われる。一つの実施形態では、塩基は非求核塩基である。例示的な非求核塩基としては、トリエチルアミン、イミダゾール、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、2,6-ルチジン、ジメチルホルムアミド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、またはテトラメチルピペリジンが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、塩基はトリエチルアミンまたはN,N-ジイソプロピルエチルアミンである。別の具体的な実施形態では、塩基はトリエチルアミンである。
【0053】
別の実施形態では、式(I)もしくは(Ia)に示す化合物またはその塩と、式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO)との反応は、上記の活性化剤及び上記の塩基の存在下で実施される。特定の実施形態では、反応は、活性化剤として2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド(T3P)、及び塩基としてトリエチルアミンまたはN,N-ジイソプロピルエチルアミンの存在下で実施される。別の具体的な実施形態では、反応は、2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド(T3P)、及びトリエチルアミンの存在下で行われる。
【0054】
式(I)もしくは(Ia)に示す化合物またはその塩と、式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO)との反応は、任意の適切な有機溶媒(複数可)中で実施することができる。一つの実施形態では、反応はジクロロメタン中で行われる。
【0055】
別の実施形態では、式(I)もしくは(Ia)に示す化合物またはその塩と、式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO)との反応は、不活性雰囲気下で行われる。特定の実施態様では、不活性雰囲気は、反応溶液を脱気し、反応容器を窒素またはアルゴンでパージすることにより達成される。
【0056】
式(I)もしくは(Ia)に示す化合物またはその塩と、式(b)に示す化合物の重硫酸塩(HSO)との反応は、適切な温度で実施することができる。いくつかの実施形態では、反応は、0℃と50℃の間、0℃と25℃の間、2℃と23℃の間、3℃と20℃の間、0℃と5℃の間、または0℃と3℃の間の温度で実施される。より具体的な実施形態では、反応は0℃と20±3℃の間の温度で実施される。
【0057】
第5の実施形態では、第1もしくは第3の実施形態、または第1もしくは第3の具体的な実施形態に記載の方法について、式(II)または(IIa)に示す化合物は、有機溶媒を用いた溶媒抽出によって精製され、式(II)または(IIa)に示す化合物を含む有機相を形成し、次いで有機相の1回以上の水性洗浄が行われ、水性洗浄の少なくとも1回は、炭酸水素塩水溶液を用いて行われる。特定の実施形態では、炭酸水素塩水溶液はNaHCOの水溶液である。炭酸水素塩水溶液の濃度は0.0~10.0mol/L(M)の範囲である。いくつかの実施形態では、濃度は0.0~5.0M、0.5~4.0M、1.0~3.0M、1.0~2.0M、または0.5~1.5Mの範囲である。より具体的な実施形態では、炭酸水素塩水溶液は1MのNaHCO水溶液である。
【0058】
第6の実施形態では、第1もしくは第3の実施形態、または第1もしくは第3の具体的な実施形態に記載される方法について、任意の適切なカルボン酸脱保護剤が、ステップ(ii)で使用できる。特定の実施形態では、tert-ブチルエステル保護基を除去するために、酸が使用され得る。例示的な酸としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、及びリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、トリフルオロ酢酸がカルボン酸脱保護剤として使用される。
【0059】
一つの実施形態では、脱保護反応は任意の適切な有機溶媒(複数可)中で実施することができる。例示的な有機溶媒としては、DMF、CHCl、ジクロロエタン、THF、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、脱保護反応はジクロロメタン中で行われる。脱保護反応は、適当な温度、例えば、0℃と50℃の間、0℃と25℃の間、0℃と10℃の間、15℃と25℃の間、または20℃と25℃の間の温度で実施することができる。
【0060】
第7の実施形態では、第2もしくは第3の実施形態、または第2もしくは第3の具体的な実施形態に記載の方法について、式(III)もしくは(IIIa)に示す化合物またはその塩と、式(IVa)に示す化合物またはその塩との反応は、活性化剤の存在下で実施される。
【0061】
特定の実施形態では、活性化剤は、2,4,6-トリアルキル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2、3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール、もしくは1H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-1-オール(HOAt)、カルボジイミド(例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、もしくは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC))、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、ウロニウム、活性化エステル、ホスホニウム、2-アルキル-1-アルキルカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、2-アルコキシ-1-アルコキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、またはアルキルクロロホルメート、またはそれらの組み合わせである。より具体的な実施形態では、活性化剤は、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)である。
【0062】
式(III)もしくは(IIIa)の化合物またはその塩と、式(IVa)に示す化合物またはその塩との間の反応では、任意の適切な量の活性化剤を使用することができる。一つの実施形態では、式(IVa)に示す化合物の量に対して1.0~5.0モル当量のHATUが反応に使用される。特定の実施形態では、1.0~2.0、1.2~1.7、または1.3~1.6モル当量のHATUが使用される。特定の実施形態では、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6または1.7モル当量のHATUが使用される。より具体的な実施形態では、1.5当量のHATUが使用される。
【0063】
一つの実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)の化合物またはその塩と、式(IVa)に示す化合物またはその塩との反応は、塩基の存在下で実施される。一つの実施形態では、塩基は非求核塩基である。例示的な非求核塩基としては、トリエチルアミン、イミダゾール、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(またはHunigの塩基)、ピリジン、2,6-ルチジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、またはテトラメチルピペリジンが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、塩基はトリエチルアミンまたはN,N-ジイソプロピルエチルアミンである。別の具体的な実施形態では、塩基はN,N-ジイソプロピルエチルアミンである。
【0064】
別の実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)に示す化合物またはその塩と、式(IVa)に示す化合物またはその塩との反応は、上記の活性化剤及び上記の塩基の存在下で実施される。特定の実施形態では、反応は、活性化剤としてHATU、塩基としてN,N-ジイソプロピルエチルアミンの存在下で実施される。
【0065】
より具体的な実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)に示す化合物またはその塩と、式(IVa)に示す化合物またはその塩との間の反応には、HOAtを添加しない。
【0066】
別の実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)に示す化合物またはその塩と、式(IVa)に示す化合物またはその塩との反応は、不活性雰囲気下で実施される。特定の実施形態では、不活性雰囲気は、反応溶媒を脱気し、反応容器を窒素またはアルゴンでパージすることにより達成される。
【0067】
式(III)もしくは(IIIa)の化合物またはその塩と、式(IVa)に示す化合物またはその塩との反応は、任意の適切な有機溶媒(複数可)中で実施することができる。一つの実施形態では、反応は、ジクロロメタン中で実施される。別の実施形態では、式(III)または(IIIa)に示す化合物と、式(IVa)に示す化合物との間の反応は、アルコールの存在下で実施される。特定の実施形態では、アルコールはメタノールである。
【0068】
別の実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)に示す化合物またはその塩と、式(IVa)に示す化合物またはその塩との反応は、ジクロロメタンとメタノールとの混合物中で行われる。反応に使用されるジクロロメタンとメタノールの体積比は、1:10~10:1の範囲である。いくつかの実施形態では、ジクロロメタンとメタノールの体積比は、1:5~8:1、1:2~6:1、1:1~5:1、2:1~4:1、または3:1~4:1の範囲である。特定の実施形態では、ジクロロメタンとメタノールの体積比は15:4である。
【0069】
式(III)もしくは(IIIa)の化合物またはその塩と、式(IVa)に示す化合物またはその塩との間の反応は、適切な温度で実施することができる。いくつかの実施形態では、反応は、0℃と50℃の間、0℃と30℃の間、5℃と25℃の間、または10℃と15℃の間の温度で実施される。より具体的な実施形態では、反応は10℃±5℃で行われる。
【0070】
第8の実施形態では、第2もしくは第3の実施形態、または第2もしくは第3の具体的な実施形態に記載の方法について、式(III)もしくは(IIIa)に示す化合物またはその塩と、式(IVa)に示す化合物またはその塩との間の反応は、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)でクエンチされる。一つの実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)に示す化合物またはその塩と、式(IVa)に示す化合物またはその塩との間の反応は、0℃と5℃の間の温度に冷却され、クエンチング試薬MTBEが添加される。
【0071】
別の実施形態では、クエンチング試薬MTBEは、式(III)もしくは(IIIa)に示す化合物またはその塩と、式(IVa)に示す化合物またはその塩との反応の反応混合物から、式(V)または(Va)に示す化合物の粗生成物を沈殿させる。特定の実施形態では、式(V)または(Va)に示す化合物の粗生成物は、ろ過により反応混合物から単離される。特に、単離された粗生成物は、90%~100%の範囲のHPLC純度を有する式(V)または(Va)に示す化合物を含む。
【0072】
一つの実施形態では、式(III)もしくは(IIIa)に示す化合物またはその塩と、式(IVa)に示す化合物またはその塩との反応後、反応混合物の水性後処理は実施しない。
【0073】
第9の実施形態では、本発明は、式(VIIa)に示す化合物を調製する方法であって、
【化46】
式(VIa)に示す化合物を、
【化47】
触媒の存在下、Hと反応させるステップを含む方法を提供する。
【0074】
式(VIa)に示す化合物またはその塩とHとの間の反応には、任意の適切な触媒を使用することができる。一つの実施形態では、触媒はラネーニッケル触媒(例えば、Raney(登録商標)ニッケル(40~60メッシュ)、タイプW6、Ni含有量約90%)である。以前に開示されたプロセスでは、ベンジルモノマー(すなわち、式(VIa)に示す化合物)からTBDI(すなわち、式(VIIa)に示す化合物)への2段階の反応(脱ベンジル化反応及び還元反応)を必要とする。触媒(例えば、ニッケル触媒)を使用する本開示の方法は、一つのステップで二つの変換(還元)を完了させるものであり、スループットの改善を伴った操作上より単純な方法である。
【0075】
適切な量の触媒を使用することができる。一つの実施形態では、式(VIa)に示す化合物に対して0.1~10.0、1.0~10.0、1.0~5.0、3.0~5.0、3.0~3.5、5.0~10.0または6.0~7.0モル当量の触媒を使用することができる。
【0076】
式(VIa)に示す化合物またはその塩とHとの触媒の存在下での反応は、任意の適切な有機溶媒(複数可)中で実施することができる。例示的な有機溶媒としては、MeOH、EtOH、THF、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、ジオキサン、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、反応はMeOH、EtOH、またはTHF中で実施される。特定の実施形態では、反応はMeOH中で行われる。
【0077】
式(VIa)に示す化合物またはその塩とHとの触媒の存在下での反応は、適切な温度で実施することができる。いくつかの実施形態では、反応は、0℃と100℃の間、20℃と80℃の間、30℃と70℃の間、40℃と60℃の間、または40℃と50℃の間の温度で実施される。より具体的な実施形態では、反応は40℃と60℃の間、または45℃と55℃の間の温度で行われる。
【0078】
いくつかの実施形態では、第9の実施形態における方法は、反応混合物を金属スカベンジャー(例えば、シリカベースのスカベンジャー)と接触させ、ニッケルを除去するステップをさらに含む。より具体的な実施形態では、シリカベースのスカベンジャーは、シリカチオール(iMoLbox-LMat-NH01)である。
【0079】
別の実施形態では、式(VIIa)に示す化合物は結晶化によって精製される。結晶化には、任意の適切な溶媒を使用することができる。いくつかの実施形態では、結晶化は、MeOHと水の中で実施される。いくつかの実施形態では、MeOHと水の体積比は、1:10~10:1、1:10~1:5、または1:3~1:5である。いくつかの実施形態では、MeOHと水の体積比は1:4である。いくつかの実施形態では、結晶化は、MeOHと水の混合物中の式(VIIa)に示す化合物を高温(例えば、40℃と80℃の間、50℃と70℃の間、60℃と70℃の間、または65℃と70℃の間)に加熱して化合物を完全に溶解させ、次いで徐冷し(例えば、室温まで、または0℃と10℃の間、もしくは0℃と5℃の間の温度まで)、結晶化が起こるように実施される。
【0080】
式(VIIa)に示す化合物を調製するための本発明の方法は、式(VIIa)に示す化合物が2段階反応で得られた以前に開示された方法(例えば、WO2010/091150)と比較して、より効率的なプロセスである。特に、ステップ1では、シクロヘキサジエンを水素源として用いる移動水素化を用いてベンジル基を除去して式(d)に示す化合物を生成し、そしてステップ2では、式(d)に示す化合物をボランで処理してイミン官能性を還元し、式(VIIa)に示す化合物を得た。
【化48】
【0081】
第10の実施形態では、本発明は、式(VIIIa)に示す化合物を調製する方法であって、
【化49】
式(VIIa)に示す化合物を、
【化50】
式(c)に示す化合物と反応させて、
【化51】
式(VIIIa)に示す化合物を形成するステップを含む方法を提供する。
【0082】
一つの実施形態では、式(VIIa)に示す化合物またはその塩と式(c)に示す化合物との間の反応は、アルコール活性化剤及びアゾジカルボキシレートまたはアゾジカルボンアミドの存在下で実施される。特定の実施形態では、アルコール活性化剤は、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン(PPh)、または2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)である。別の具体的な実施形態では、アゾジカルボキシレートまたはアゾジカルボンアミドは、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)、1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジン(ADDP)、1,1’-アゾジカルボニルジモルホリド(ADDM)、1,1’-アゾジカルボニルジグライム(ADDG)、及びジ-tert-ブチルアゾジカルボキシレート(DBAD)である。特定の実施形態では、アルコール活性化剤は、2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)であり、アゾジカルボキシレートまたはアゾジカルボンアミドは、1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジン(ADDP)である。特定の実施形態では、式(VIIa)に示す化合物に対して1.0~5.0、1.0~2.0、1.3~1.7、または1.4~1.6モル当量のアルコール活性化剤(例えば、DPPE)、及び式(VIIa)に示す化合物に対して1.0~5.0、1.0~2.0、1.3~1.7、または1.4~1.6モル当量のアゾジカルボキシレートまたはアゾジカルボンアミド(例えば、ADDP)が反応に使用される。
【0083】
式(VIIa)に示す化合物またはその塩と式(c)に示す化合物との反応は、任意の適切な有機溶媒(複数可)中で実施することができる。特定の実施形態では、反応はTHF中で実施される。
【0084】
式(VIIa)に示す化合物またはその塩と式(c)に示す化合物との反応は、適切な温度で実施することができる。いくつかの実施形態では、反応は、0℃と30℃の間、0℃と20℃の間、0℃と15℃の間、5℃と15℃の間、または5℃と20℃の間の温度で実施される。より具体的な実施形態では、反応は5℃と15℃の間の温度で実施される。
【0085】
いくつかの実施形態では、式(VIIIa)に示す化合物は、クロマトグラフィーによって精製される。いくつかの実施形態では、式(VIIIa)に示す化合物は、結晶化によって精製される。いくつかの実施形態では、式(VIIIa)に示す化合物は、酸付加塩として結晶化される。式(VIIIa)に示す化合物の結晶化において、任意の適切な酸を使用することができる。好適な酸としては、(+)-O,O’-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸(D-(+)-DTTA)、(-)-O,O’-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸(L-(-)-DTTA)、硫酸、リン酸、塩化水素、馬尿酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、D-酒石酸、コハク酸、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、及びメタンスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、酸は、(+)-O,O’-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸(D-(+)-DTTA)である。別の具体的な実施形態では、酸は硫酸である。
【0086】
式(VIIIa)に示す化合物を調製するための本発明の方法は、アルコール活性化剤としてトリフェニルホスフィン(PPh)を、アゾジカルボキシレートまたはアゾジカルボンアミドとしてDIADを使用する以前に開示されたプロセスと比較して、より効率的なプロセスである。旧来のプロセスでは、面倒な精製が必要な多くの反応副生物が得られた。例えば、PPhから生成するトリフェニルホスフィンオキシド副生物は、クロマトグラフィーでも除去が困難である。本発明は、PPh及びDIADを1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)及び1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジン(ADDP)に置き換えることで、反応副生物の除去が容易になり、高純度の生成物が得られることを見出した。例えば、DPPE一酸化物副生物は反応溶媒に非常に不溶であり、容易にろ過除去することができ、ADDP還元体副生物は水溶性であり、水洗により容易に除去することができる。
【0087】
第11の実施形態では、第10の実施形態の方法は、式(VIIIa)に示す化合物を式(d)に示す化合物と反応させ、
【化52】
式(IXa)に示す化合物を形成するステップをさらに含む。
【化53】
【0088】
一つの実施形態では、式(VIIIa)に示す化合物と式(d)のモノマー化合物との間の反応は、塩基の存在下で実施される。一つの実施形態では、塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、または水素化カリウムである。特定の実施形態では、塩基は炭酸カリウムである。別の実施形態では、式(VIIIa)に示す化合物と式(d)のモノマー化合物との間の反応は、ヨウ化カリウムをさらに含む。特定の実施形態では、式(VIIIa)に示す化合物と式(d)のモノマー化合物との間の反応は、炭酸カリウム及びヨウ化カリウムの存在下で実施される。
【0089】
式(VIIIa)に示す化合物またはその塩と式(d)に示す化合物との反応は、任意の適切な有機溶媒(複数可)中で実施することができる。例示的な有機溶媒としては、DMF、ジメチルアセトアミド(DMA)、MeCN、THF、ジクロロメタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、反応はDMFまたはDMA中で実施される。
【0090】
式(VIIIa)に示す化合物またはその塩と式(d)に示す化合物との反応は、適当な温度、例えば、0℃と50℃の間、0℃と30℃の間、0℃と25℃の間、0℃と10℃の間、15℃と25℃の間、または20℃と25℃の間の温度で実施することができる。特定の実施形態では、反応は20℃と25℃の間の温度で行われる。
【0091】
いくつかの実施形態では、式(IXa)に示す化合物は沈殿により精製される。沈殿は、任意の適切な溶媒、例えば、アセトニトリルと水の混合溶媒中で実施することができる。いくつかの実施形態では、アセトニトリルと水の比は1:1(v/v)である。沈殿法によって精製された式(IXa)に示す化合物は、85~90%の範囲の純度を有し、面倒なクロマトグラフィー精製を行うことなく、次のステップに直接使用することができる。
【0092】
第12の実施形態では、第11の実施形態の方法は、式(IXa)に示す化合物を還元剤と反応させて、式(IVa)に示す化合物を形成するステップをさらに含む。
【化54】
【0093】
ニトロ基(-NO)をアミン基(-NH)に変換することができる任意の適切な還元剤が、式(IXa)に示す化合物を式(IVa)に示す化合物に変換するために使用することができる。一つの実施形態では、還元試薬は、水素ガス、亜硫酸水素ナトリウム、硫化ナトリウム、塩化第一スズ、塩化第二チタン、亜鉛、鉄、及びヨウ化サマリウムからなる群より選択される。別の実施形態では、還元試薬は、Fe/NHCl、Zn/NHCl、FeSO/NHOH、硫黄/NaBHまたはスポンジニッケルである。特定の実施形態では、還元剤はFe/NHClである。
【0094】
第13の実施形態では、第10、第11、または第12の実施形態に記載の方法について、式(c)に示す化合物は、式(c1)に示す化合物を、
【化55】
トルエン中で塩酸と反応させることによって調製される。
【0095】
本明細書及び後述の実施例に引用されているすべての参考文献は、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。
【実施例
【0096】
以下の溶媒、試薬、保護基、部位及びその他の呼称は、括弧内の略号で示される場合がある:
eq=モル当量
V=体積
g=グラム
h=時間
min=分
mg=ミリグラム
mL=ミリリットル
mmol=ミリモル
T=温度
LCMS=液体クロマトグラフィー質量分析法
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
IPC=インプロセス制御
MS=質量分析
NEt=トリエチルアミン
NMR=核磁気共鳴分光法
ACNまたはMeCN=アセトニトリル
ADDP=1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジン
DPPE=1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン
DCM=ジクロロメタン
DIPEA=N,N-ジイソプロピルエチルアミンまたはヒューニッヒ塩基
DMAc=N,N-ジメチルアセトアミド
EtOAc=酢酸エチル
IPAc=酢酸イソプロピル
HATU=1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
HOAt=1H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-1-オールまたは1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール
MTBE=メチルtert-ブチルエーテル
T3P=2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン2,4,6-トリオキシド
TFA=トリフルオロ酢酸
THF=テトラヒドロフラン
v/v=体積/体積
wt=重量
wrt=に関して
wt%=重量パーセント
w/w=重量/重量
【0097】
実施例1.tert-ブチル(6-((2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)アミノ)-6-オキソヘキサノイル)-L-アラニル-L-アラニネート(式(IIa)に示す化合物)の調製
【化56】
6-(((S)-1-(((S)-1-(tert-ブトキシ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-6-オキソヘキサン酸(式(Ia)に示す化合物)(50.0g、145.2mmol、1.0eq)を、窒素雰囲気下、乾燥DCM(800mL)に溶解した。1-(2-エチルアミノ)マレイミド重硫酸塩(式(b)に示す化合物の重硫酸塩)(36.3g、152.4mmol、1.05eq)を、DCM(100mL)とともに添加し、バッチをアセトン/氷浴中でT<5℃まで冷却した。NEt(72mL、512.5mmol、3.53eq)のDCM(225mL)溶液を、T<5℃を維持しながら滴下添加した。バッチをT<2℃に冷却し、T3P(EtOAc中50wt%、173mL、290.4mmol、2.0eq)を、T<3℃を維持しながら、20分間かけて滴下添加した。反応混合物をアセトン/氷浴中で30分間撹拌した後、周囲温度に温め、一晩撹拌した。反応物を3時間、20時間、及び24時間でサンプリングした。反応は、生成物(式(IIa)に示す化合物)に対して出発物質(式(Ia)に示す化合物)が2%以下であれば完了である。24時間の時点で、反応混合物を攪拌している75%飽和食塩水(750mL)に注ぎ、フラスコはDCM(250mL)ですすいだ。水相を除去し、DCM相を1M塩酸(500mL)で洗浄した。有機相を除去し、水相をDCM(200mL)で逆抽出した。合わせた有機物を1M NaHCO(250mL)で洗浄した。水相を除去し、有機相を75%飽和食塩水(275mL)で洗浄した。有機物を減圧下、理論生成物に対して約20volまで濃縮し、NaClを除去するために研磨ろ過した。式(IIa)に示す化合物を含むろ液(1.14L)をHPLC分析用にサンプリングし(溶液アッセイ収率72%、48.7アッセイg、104.4mmol、HPLC純度=99.5面積%)、DCM中の溶液として次のステップに持ち越した。
【0098】
実施例2.(6-((2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)アミノ)-6-オキソヘキサノイル)-L-アラニル-L-アラニン(式(IIIa)に示す化合物)の調製
【化57】
式(IIa)に示す化合物(48.7g、104.4mmol)のDCM(1.14L)溶液を冷却水浴(T=18℃)に入れ、TFA(244mL、3184mmol、30.5eq)を、T=18~20℃を維持しながら、30分間かけて滴下添加した。反応物を周囲温度で一晩撹拌し、1.5時間と20時間でサンプリングした。反応は、生成物(式(IIIa)に示す化合物)に対して2%以下の出発物質(式(IIa)に示す化合物)が存在すれば完了である。20時間の時点で、反応物を流動性のあるオイルまで濃縮し、これをDCM(3×100mL)で追跡した。得られたオイルをDCM(250mL)に溶解し、撹拌しながらMTBE(500mL)をゆっくり加えた。得られた懸濁液を減圧下濃縮し、約250mLとした。MTBE(500mL)を加え、懸濁液を約250mLまで濃縮した。これをさらに2回繰り返し、その時点でMTBE(500mL)を加え、懸濁液を周囲温度で30分間撹拌した。固体をろ過して集め、MTBE(50mL)で洗浄した。固体を窒素雰囲気下、ろう斗上で一晩乾燥させた。式(IIIa)に示す化合物がオフホワイトの固体として単離された(41.1g、94%収率)。質量:m/z=411.2[M+H];HPLC純度=99.0面積%。
【0099】
実施例3.(3-(クロロメチル)-5-ニトロフェニル)メタノール(式(c)に示す化合物)の調製
【化58】
5-ニトロ-1,3-フェニレンジメタノール(式(c1)に示す化合物)(5.0g、1.0eq.)のトルエン(90.0mL)溶液に、添加ろう斗を介して濃塩酸(10.0mL)を10±2分かけて滴下添加し、混合物を撹拌しながら窒素下で95±5℃に加熱した。反応は、MeCN(1mL)中に希釈した反応混合物18μLの分析により、HPLC(IPC)で完了をモニターした。式(c)に示す化合物に対して式(c1)に示す化合物が1%以下であれば、反応は完了し、次のステップに進む。HPLCは、反応の大部分が最初の6時間以内に完了することを示した。反応時間が長くなると、ジクロリドの形成が増加する。16~24時間後、反応物を20±5℃に冷却し、水(2×50.0mL)で洗浄した。合わせた有機相を集め、飽和炭酸水素ナトリウム(水中に9wt%の炭酸水素ナトリウム;50.0mL)で洗浄し、浴温を40±5℃に設定したロータリーエバポレーターで50.0mLまで濃縮した。濃縮物を5±3℃に冷却し、少なくとも2時間熟成させて白色沈殿物を得る。真空下で固体をろ別し、トルエン(2×25.0mL)で洗浄する。固体を真空下で最低1時間脱液し、固体をオーブンに移し、25±5℃で一定重量になるまで真空下で乾燥させ、式(c)に示す化合物(3.67g、収率66.7%)を白色から黄色の固体として得る。HPLC純度=99.0面積%。
【0100】
実施例4.(S)-9-ヒドロキシ-8-メトキシ-11,12,12a,13-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-6-オン(式(VIIa)に示す化合物)の調製
【化59】
反応器中の(S)-9-(ベンジルオキシ)-8-メトキシ-12a,13-ジヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-6-オン(式(VIa)に示す化合物)(100g、0.260モル)のMeOH(1988.6mL)溶液をアルゴンでパージし、ラネーNi(50g、0.849モル、3.26当量)を加えた。反応器を50psi下で、Hで3回入れ替え、45~50℃に加熱し、8~12時間撹拌を続けた。反応の完了はHPLC(IPC)でモニターした。式(VIIa)に示す化合物に対して式(VIa)に示す化合物が1%以下であった場合、反応は完了したとみなされる。12~25℃に冷却した後、反応混合物を100gの珪藻土(1~3X)を通してろ過し、使用済み触媒を除去した。フィルターウェットケーキを500mLのMeOHで3回洗浄した。ろ液を真空下50℃未満で2容量(約200mL)まで濃縮した。生成物を結晶化させるため、ろ液を65~70℃に加熱し、水800mLを加えた。得られた混合物を30~60分間撹拌し続け、0~5℃で1~2時間冷却して生成物を溶液から析出させた。ろ過後、ウェットケーキを水中20%MeOH(100g、1wt)で2回洗浄した。フィルターケーキを真空下、40~45℃で8~10時間乾燥し、所望の生成物(式(VIIa)に示す化合物)(57.1g、収率74%)を薄茶色の固体として得た。質量:m/z=297.3[M+H];HPLC純度=98.6面積%。
【0101】
実施例5.シリカ系スカベンジャーを用いた(S)-9-ヒドロキシ-8-メトキシ-11,12,12a,13-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-6-オン(式(VIIa)に示す化合物)の調製
【化60】
反応器中の(S)-9-(ベンジルオキシ)-8-メトキシ-12a,13-ジヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-6-オン(式(VIa)に示す化合物)(1重量、1eq.)のMeOH(20容量)溶液をアルゴンでパージし、ラネーニッケル(Raney(登録商標)Nickel(40~60mesh)、タイプW6、ニッケル濃度約90%、1wt、6.55eq.)を添加した。反応器を50psi下で、Hで3回入れ替え、45~50℃に加熱し、16~20時間撹拌を続けた。反応の完了はHPLC(IPC)でモニターした。式(VIIa)に示す化合物に対して式(VIa)に示す化合物が1%以下であった場合、反応は完了したとみなされる。12~25℃に冷却した後、反応混合物を、セライトベッド(1wt)を通してろ過した。フィルターウェットケーキをMeOH(2×2容量)で洗浄した。洗浄液をろ液と合わせ、シリカチオール(iMoLbox-LMat-NH01、0.5wt)を加えてニッケルを除去した。懸濁液を45~55℃に加熱し、5時間撹拌した。その後、懸濁液をろ過し、メタノール(2×2容量)で洗浄した。有機相を合わせた。生成物を結晶化させるため、ろ液を65~70℃に加熱し、水(8容量)を加えた。得られた混合物を30~60分間撹拌し続け、0~5℃で1~2時間冷却して生成物を溶液から析出させた。ろ過後、ウェットケーキをMeOH:水の1:4混合液(2×1容量)で2回洗浄した。フィルターケーキを真空下、40~45℃で40~50時間乾燥させ、所望の生成物(式(VIIa)に示す化合物)を得た。この調製プロセスを用いて、出発物質750gまでの様々なスケールを実施した。式(VIIa)に示す化合物の観察収率は77%、78%及び74%であり、HPLC純度はそれぞれ98.6%、98.2%及び98.9%であった。
【0102】
実施例6.(S)-9-((3-(クロロメチル)-5-ニトロベンジル)オキシ)-8-メトキシ-11,12,12a,13-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-6-オン(式(VIIIa)に示す化合物)の調製
【化61】
式(VIIa)に示す化合物(8g、1.0eq.)、式(c)に示す化合物(5.8g、1.08eq.)、及び1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)(15.5g、1.46eq.)の無水THF(200mL)溶液を窒素下で10℃以下に冷却し、1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジン(ADDP)(10.4g、1.54eq.)の無水THF(90mL)溶液を、添加ろう斗を介して約4分かけて滴下し、橙色の溶液を得た。反応混合物を10℃±5℃で一晩(少なくとも16時間)撹拌し続け、HPLC(9分IPC法)で少なくとも16時間後の完了をモニターした。反応は、生成物(式(VIIIa)に示す化合物)に対して出発物質(式(VIIa)に示す化合物)が1.0%以下であれば完了である。16~18時間で、反応物をIPAc(160mL)で希釈し、10℃±5℃で1時間撹拌した。懸濁液をろ過し、IPAc(80mL)で洗浄して、反応の副生物であるDPPEのモノオキシドを主体とする固体を除去した。ろ液を合わせ、減圧下、ロータリーエバポレーターで(約18mL)に濃縮し、次いでIPAc(80mL)を加えた。懸濁液を水(80mL)で洗浄し、続いて25%w/w食塩水(80mL)で洗浄した。有機相を分離し、収量がわかるまで水相を保持する。有機相をロータリーエバポレーターで減圧下濃縮乾固して粗生成物を得、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで、カラム負荷1~23(粗生成物1g当たりシリカ23g)で40分かけて0~20%グラジエントのDCM/EtOAcで溶出させて精製し、式(VIIIa)に示す化合物(7.78g、収率60.7%)を固体として得た。HPLC純度=99.6面積%。
【0103】
実施例7.(S)-8-メトキシ-9-((3-((((S)-8-メトキシ6-オキソ-11,12,12a,13-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-9-イル)オキシ)メチル)-5-ニトロベンジル)オキシ)-12a,13-ジヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-6-オン(式(IXa)に示す化合物)の調製
【化62】
式(VIIIa)に示す化合物(7.78g、1eq.)をDMAc(28mL)に溶解し、窒素で15分間スパージして、不要なインドール不純物の形成につながるインドリノベンゾジアゼピン環系の酸化を導く場合がある溶存酸素を除去した。別の反応器で、(S)-9-ヒドロキシ-8-メトキシ-12a,13-ジヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-6-オン(式(d)に示す化合物)(6g、1.5eq.)、ヨウ化カリウム(1.35g、0.5eq.)、及び炭酸カリウム(4.48g、2.00eq.)のDMAc(52mL)溶液を、使用前に少なくとも15分間、室温で、窒素でスパージして溶存酸素を除去した。反応器をアルミホイルで覆って入射光を遮断し、反応中はフードの照明も消した。反応混合物を窒素下で35±5℃に加熱し、この温度で少なくとも30分間窒素でスパージした。反応から酸素を除去することは、不要な副生物を最小限に抑えるために重要である。調製された式(VIIIa)に示す化合物(7.78g、1eq.)のDMAc(28mL)脱気溶液を、約1時間かけてシリンジポンプで反応混合物に添加した。反応は、3時間後にHPLC(IPC)により完了をモニターする。式(IXa)に示す化合物に対して式(VIIIa)に示す化合物が2.0%以下であれば反応は完了である。完了後、反応物を20℃±5℃に冷却し、MeCN:HOの50:50混合物(320mL)を反応混合物中に少なくとも10分かけてゆっくり添加することによりクエンチする。20℃±5℃で1時間撹拌した後、固体をポリプロピレン媒体フリットフィルター上で、真空下でろ過し、水(40mL)、10%IPA:HO(40mL)、最後に10%IPA/n-ヘプタン(40mL)で順次洗浄した。フィルター上の固体を真空下で少なくとも1時間吸引して部分的に乾燥させた後、真空オーブンに移し、全真空下で、25℃以下で一定重量になるまで乾燥させ、式(IXa)に示す化合物(11.96g、収率100%)を淡橙色~黄色の固体として得た。固体は定重量に達しても残留溶媒を含むことが多いので、次のステップで化学量論を計算する目的で、反応は定量的であると仮定する。アッセイで補正した場合、反応の収率は80%以上である。質量:m/z=738.2[M+H];HPLC純度=88.1面積%。
【0104】
実施例8.(S)-9-((3-アミノ-5-((((S)-8-メトキシ-6-オキソ-11,12,12a,13-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-9-イル)オキシ)メチル)ベンジル)オキシ)-8-メトキシ-12a,13-ジヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-6-オン(式(IVa)に示す化合物)の調製
【化63】
式(IXa)に示す化合物(20.00g、1eq.)のテトラヒドロフラン(250mL)、MeOH(34mL)及び脱イオン水(17mL)中の溶液に、塩化アンモニウム(15.23g、10.5eq.)を加えた。反応混合物を40~45℃に加熱しながら、約5~15分間窒素でパージした。鉄粉(超高純度縮小粒径約10μm、8.48g、5.6eq)を1回で加えた。得られた混合物を窒素下で60℃±5℃に加熱し、4~6時間後にHPLC(IPC)で完了をモニターした。式(IVa)に示す化合物に対して式(IXa)に示す化合物が1%以下であれば反応は完了である。完了後、反応を20℃±5℃に冷却し、DCM(20mL)を加えた。懸濁液をセライト(登録商標)のパッドを通してろ過し、ウェットケーキをDCM(200mL)で洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮乾固し、DCM(300mL)に再溶解し、脱イオン水(2×100mL)で洗浄した。有機相を集め、減圧下で濃縮乾固した。DCM(100mL)を加えて乾燥残渣を溶解し、得られた溶液を減圧下、冷却フィンガー/凝縮器からの顕著な溶媒の凝縮がなくなるまで濃縮乾固し、粗生成物を茶色固体として得た。粗生成物をMeOH/DCM(1/100、v/v)からMeOH/DCM(2/100、v/v)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、式(IVa)に示す化合物(11.88g、収率62%)を淡黄色固体として得た。HPLC純度=95.6面積%。
【0105】
実施例9.N1-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)-N6-((S)-1-(((S)-1-((3-((((S)-8-メトキシ-6-オキソ-11,12,12a,13-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-9-イル)オキシ)メチル)-5-((((S)-8-メトキシ-6-オキソ-12a,13-ジヒドロ-6H-ベンゾ[5,6][1,4]ジアゼピノ[1,2-a]インドール-9-イル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アジパミド(式(Va)に示す化合物)の調製
【化64】
反応器で、式(IIIa)に示す化合物(3.95g、1.5eq.)及びHATU(3.66g、1.5eq.)の無水DCM(75mL)溶液を、窒素下で10℃±1℃に冷却し、MeOH(20mL)を添加した。式(IVa)に示す化合物(4.41g、1eq.)を窒素下で無水DCM(65mL)に溶解し、DIPEA(1.64mL、1.5eq.)及びMeOH(20mL)を加えて黄色溶液を得、これを、先に調製したDCM及びMeOH中の式(IIIa)に示す化合物及びHATUの混合物を含む反応器に、10℃±5℃で、窒素下で加えた。透明な茶色の溶液が観察された。反応混合物を、窒素下、10℃±2℃で撹拌を続け、HPLC(IPC)(35分IPC法)により完了をモニターした。生成物(式(Va)に示す化合物)に対して出発物質(式(IVa)に示す化合物)が1%以下である場合、反応は完了し、次のステップに進む。約1時間の時点で反応の完了を観察し、窒素下で0℃±2℃に冷却した。予め冷却した(-10℃)MTBE(350mL)を加え、粗生成物を溶液から沈殿させた。懸濁液を0℃±5℃で10分間、激しく撹拌した。懸濁液は-20℃で少なくとも20時間安定であることが実証された。固体上を窒素雰囲気に保ちながら、真空下で固体をろ別し、ウェットケーキをMTBE(150mL)及びn-ヘプタン(150mL)で洗浄した。ろ過された固体を、ケーキの上の正圧窒素雰囲気を維持しながら真空下で少なくとも2時間乾燥させて、粗生成物(式(Va)に示す化合物)(アッセイ収率は典型的には>80%、HPLC純度は典型的には>92%)を得、これはフィルター上で、室温で少なくとも16時間安定であることが示された。粗生成物をDMA:MeCNの1:1混合溶媒(200mL)に溶解し、精製のために予め平衡化したRediSep Rf Gold C18カラム(Teledyne ISCO 69-2203-341)にロードした。カラムは5%MeCN水溶液で流速150mL/minで平衡化し、5%MeCN水溶液を流速14mL/minで5カラム容量分、50%MeCN水溶液を流速110mL/minで5カラム容量分、及び100%MeCNを流速110mL/minで5カラム容量分溶出した(検出/捕集波長254nm)。式(Va)に示す化合物の面積%が≧90%である合わせた画分をDCMで抽出した(合わせたMeCN/水画分の総容量に対して0.5容量)。DCM相を分離し、真空下で蒸発乾固した。残渣を窒素下20℃±5℃で無水DCM(30mL)に再溶解し、撹拌しながらMTBE(60mL)を加えて固体を沈殿させ、固体を窒素雰囲気に保ちながら真空下でろ過した。ウェットケーキを1:2/DCM:MTBE(15mL)で洗浄した。ケーキの上の正圧窒素雰囲気を維持しながら、真空下で少なくとも2時間固体を脱液し、固体を真空オーブンに移し、完全真空下で≦35℃で、重量が一定になるまで少なくとも24時間乾燥させ、所望の生成物(式(Va)に示す化合物)(4.45g、収率65%)を黄色固体として得た。HPLC純度=97.3面積%;質量:m/z=1100.25[M+H]
【0106】
実施例10.塩形成による式(VIIIa)に示す化合物の精製
実施例5の粗生成物流(HPLCによる純度約66%)を、室温で以下の表1に示す原液と混合した。得られた混合物を常温で一晩撹拌した。結晶形成が観察された場合、ろ過により単離し、H NMR及びHPLCにより分析し、塩の品質を評価した。スクリーニングされた塩(表1)のうち、式(VIIIa)に示す化合物のジトルイル酒石酸塩が、式(VIIIa)に示す化合物を98.7%の純度で単離し、群を抜いて最高の純度を与えた。硫酸塩は2番目に良く、式(VIIIa)に示す化合物を85.5%の純度で得た。リン酸塩と塩酸塩の両方では、式(VIIIa)に示す化合物を約80%の純度で得た。
【表1】
【0107】
実施例11.代表的な塩の形成と遊離塩基の遊離
【化65】
式(VIIIa)に示す化合物(溶液アッセイにより8.69g/18.1mmolと計算)のIPAc溶液を、約45℃/約150mmHgの圧力で約125mLの容量まで共沸乾燥させ、得られた溶液を周囲温度で撹拌しながら、(+)-O,O’-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸(7.23g、18.7mmol)を固体として添加した。最初は溶液が形成されたが、5~10分以内に懸濁液が形成され始めた。混合物を一晩撹拌し、0℃まで冷却した。塩をろ過により単離し、1:1のMTBE:IPAc(50mL)の冷混合液で洗浄した。MTBE(50mL、常温)で2回目の洗浄を行い、窒素気流下で塩をフィルター上で乾燥させ、式(VIIIa)に示す化合物のジ-p-トルオイル-D-酒石酸塩((VIIIa)・DTTA)を微細な白亜の淡黄色粉末(9.45g、純度98.7面積%)として、収率60.3%で得た。
【0108】
式(VIIIa)に示す化合物は、DCMに溶解させ、炭酸カリウムの水溶液で洗浄することにより、その塩から遊離させることができる。磁石撹拌棒付き500mLフラスコに、(VIIIa)・DTTA(7.59g、8.8mmol)とDCM(80mL)を仕込んだ。攪拌により黄色がかった懸濁液が得られ、これを2.65M炭酸カリウム水溶液で処理した。すべての固体は1分以内に溶解し、水相を水(40mL)で希釈した。下相の有機相を濃縮し、99%超の収率で高純度の式(VIIIa)に示す化合物(4.21g、99.1面積%純度)を得た。
【国際調査報告】