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特表2024-530508形状記憶合金ワイヤによって制御されるアクチュエータサブアセンブリ、複数のそのようなサブアセンブリを備えるシステム、及びそのようなシステム向けの制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】形状記憶合金ワイヤによって制御されるアクチュエータサブアセンブリ、複数のそのようなサブアセンブリを備えるシステム、及びそのようなシステム向けの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F03G 7/06 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
F03G7/06 D
F03G7/06 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508527
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022072691
(87)【国際公開番号】W WO2023017158
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102021000021887
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517067202
【氏名又は名称】アクチュエーター・ソリュ―ションズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ケプファー
(57)【要約】
本発明は、形状記憶合金ワイヤによって制御されるアクチュエータサブアセンブリ、複数のそのようなサブアセンブリを備えるシステム、及びそのようなシステム向けの制御方法に固有であり、形状記憶合金ワイヤはいわゆる拮抗構成にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータサブアセンブリ(100;201、202、203、204)であって、
-4つのコーナコネクタ(120、120’、120’’、120’’’;320、320’、320’’、320’’’、320iv)を有する、好ましくは正方形状の四角形フレーム(110;310)と、
-前記四角形フレーム(110;310)の中心に一致して配置され、弾性変形可能アーム(140、140’、140’’、140’’’;340、340’)によってそれに接続された可動要素(160;360)と、
-前記コーナコネクタのうちの対向する位置に配置された2つに固定された第1の形状記憶合金ワイヤ(130;330、331、332、333)と、
-他の2つの対向するコーナコネクタに固定された第2の形状記憶合金ワイヤ(130’;330’、331’、332’、333’)であって、各々がその関連するコーナコネクタを有する形状記憶合金ワイヤを含む2つのワイヤ平面が90°±20°の角度で交差する、第2の形状記憶合金ワイヤと
を備え、
前記第1の形状記憶合金ワイヤ(130;330、331、332、333)が前記可動要素(160;360)の第1の表面に接触し、前記第2の形状記憶合金ワイヤ(130’;330’、331’、332’、333’)が前記可動要素(160;360)の第2の表面に接触し、2つの前記形状記憶合金ワイヤが前記可動要素(160;360)に反対方向の力を及ぼす拮抗構成で配置されるように、前記第2の表面が前記第1の表面に対向する、アクチュエータサブアセンブリ。
【請求項2】
プランジャ(170)が前記可動要素(160;360)の前記第2の表面に接続され、前記第2の形状記憶合金ワイヤ(130’)がそれらの間を通る、請求項1に記載のアクチュエータサブアセンブリ。
【請求項3】
前記第1の形状記憶合金ワイヤ(130;330、331、332、333)と前記第2の形状記憶合金ワイヤ(130’;330’、331’、332’、333’)との間の最大距離が、2.5mm~15mmの間に含まれる、請求項1または2に記載のアクチュエータサブアセンブリ。
【請求項4】
前記フレームの対角線に沿った前記コーナコネクタ(120、120’、120’’、120’’’;320、320’、320’’、320’’’、320iv)間の距離が、25mm~100mmの間に含まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載のアクチュエータサブアセンブリ。
【請求項5】
それらの上部及び下部が互いに絶縁された共通のコーナコネクタを共有する隣接するサブアセンブリを有する行列構成に配置された、請求項1から4のいずれか一項に記載の複数のアクチュエータサブアセンブリ(100;201、202、203、204)を備えるシステム(200;300)であって、
前記サブアセンブリの各々が、接地線に接続された2つの隣接するコーナコネクタを有し、対向する前記コーナコネクタの各々が、起動電圧と絶縁状態との間をトグルするそれぞれのハードウェアスイッチに接続され、トグルする前記スイッチが、好ましくは固体半導体、リレー、または電気機械スイッチで実現される、システム。
【請求項6】
共通の接地線が、アクチュエータサブアセンブリの2つの隣接する行のために使用され、前記システムが少なくとも2つの別個の共通の接地線を含むとき、それらの各々が、他方から分離され、接地電位から電位なしに切り替え可能な別個の接地レベルである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の形状記憶合金ワイヤ(330、331、332、333)のうちの少なくとも1つが、複数の対角線上に位置合わせされた可動要素(160;360)の上面に接触し、前記第2の形状記憶合金ワイヤ(330’、331’、332’、333’)のうちの少なくとも1つが、複数の対角線上に位置合わせされた可動要素(160;360)の下面に接触し、単一の形状記憶合金ワイヤ(330、331、332、333;330’、331’、332’、333’)によって接触される前記可動要素(160;360)の数が、好ましくは6~96の間に含まれる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
複数の前記第1の形状記憶合金ワイヤ(330、331、332、333)が互いに平行であり、複数の前記第2の形状記憶合金ワイヤ(330’、331’、332’、333’)が互いに平行である、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
特定の形状記憶合金ワイヤ(330、331、332、333;330’、331’、332’、333’)の作動が、前記ワイヤが固定された前記対向するコーナコネクタ間の電圧差を設定することによって実現される、請求項5から8のいずれか一項に記載のシステムを制御する方法。
【請求項10】
そのような方法が、分析機器内の試験ウェルの選択的な開閉を制御するために採用され、前記試験ウェルの数が、好ましくは6~384の間に含まれる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金(SMA)ワイヤによって制御されるアクチュエータサブアセンブリ、複数のそのようなサブアセンブリを備えるシステム、及びそのようなシステムを制御する方法に固有である。
【背景技術】
【0002】
一般的に言えば、作動要素としてのSMAワイヤの使用は、適切に整形されたSMAワイヤが加熱されたときに、最も典型的には適切な電流供給を介したジュール効果によって縮む能力を介して、重量、電力消費、及びコストの観点から他の作動システムに対して様々な利点を提供する。
【0003】
SMAワイヤ、より一般的にはSMA技術の上記の利点は、様々な技術分野、例えば、特許文献1に記載されたカメラモジュールアクチュエータ、または特許文献2に記載された双方向離散アクチュエータ、または特許文献3及び特許文献4に記載された双安定慣性アクチュエータ、または特許文献5に記載された流体バルブサブアセンブリ(上記のすべてが出願人の名前にある)、または特許文献5に記載された一体型作動を有するマルチセグメントスパイン、または特許文献7に記載された折畳式構造に利用されている。
【0004】
一般的に言えば、SMAベースのアクチュエータは、変位可能な物品の双方向の動きを保証するために、SMA作動構成要素の動作に対向する復帰手段を必要とする。復帰手段は、特許文献8に記載されたプラグアクチュエータの様々な実施形態のような線形バネまたはコイルバネなどの受動弾性要素、またはいわゆる拮抗構成で、最初の1つに対して反対に作用するSMA構成要素などの別の能動要素であり得る。アクチュエータ内のSMAベースの拮抗構成要素のいくつかの例は、前述の特許文献7及び特許文献2、特許文献9、特許文献10、並びに特許文献11に与えられている。
【0005】
SMAベースのアクチュエータにおいてしばしば諒解される別の特徴は、前述の特許文献3及び特許文献4に記載されているような双安定機械制御の可能性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第10514593号明細書
【特許文献2】欧州特許第3877650号明細書
【特許文献3】国際特許出願公開第2021/197980号
【特許文献4】国際特許出願公開2022/184533号
【特許文献5】国際特許出願公開2022/229247号
【特許文献6】米国特許第20100295417号明細書
【特許文献7】米国特許第9205593号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2012/104292号明細書
【特許文献9】欧州特許第3908753号明細書
【特許文献10】米国特許第4544988号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2012/151913号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、拮抗構成並びに双安定性のSMAワイヤに基づくSMAアクチュエータを用いて既知の技術の限界を克服することであり、その第1の態様は、4つのコーナコネクタを有する四角形フレームと、前記フレームの中心に一致して配置され、弾性変形可能アームによってそれに接続された可動要素と、2つの対向するコーナコネクタに固定され、前記可動要素の第1の表面に接触する第1の形状記憶合金ワイヤと、他の2つの対向するコーナコネクタに固定され、前記可動要素の第2の表面に接触する第2の形状記憶合金ワイヤとを備えるアクチュエータサブアセンブリにあり、前記第2の表面は前記第1の表面に対向する。
【0008】
最も一般的な実施形態では、第1の表面は可動要素の上面であり、第2の表面は可動要素の下面である。
【0009】
「前記フレームの中心に一致する」という表現は、その製造公差を有する実際の装置の文脈で解釈されなければならないことを強調することが重要である。したがって、フレームの中心と可動要素の中心との間の理想的な位置合わせが望ましいが、(存在する場合)可動要素対称軸が第1の形状記憶合金ワイヤ及び第2の形状記憶合金ワイヤを含む平面間の交差に位置せず、むしろ可動要素が全体としてそのような平面交差を遮断する場合でも、システムは機能することができる。
【0010】
本発明は、以下の図の助けを借りてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の第1の実施形態による、アクチュエータサブアセンブリの上方から見た概略図である。
図1B】その安定位置にある図1Aのアクチュエータサブアセンブリの線A-Aに沿った概略断面図である。
図1C】その安定位置にある図1Aのアクチュエータサブアセンブリの線A-Aに沿った概略断面図である。
図2A図1Aによる、複数のアクチュエータサブアセンブリを備えるシステムの上方から見た概略図である。
図2B図2Aのシステムの線A-A’に沿った概略断面図である。
図3A】第2の実施形態による、複数のアクチュエータサブアセンブリを備えるシステムの上方から見た概略図である。
図3B】異なる平衡/安定状態にあるアクチュエータサブアセンブリを有する図3Aのシステムの線A-A’に沿った概略断面図である。
図3C】異なる平衡/安定状態にあるアクチュエータサブアセンブリを有する図3Aのシステムの線A-A’に沿った概略断面図である。
図3D図3Aのシステムの線B-B’に沿った概略断面図である。
図4A】本発明による、24個のアクチュエータサブアセンブリを備えるシステムの上部SMAワイヤを制御するのに適した電子回路図である。
図4B】本発明による、24個のアクチュエータサブアセンブリを備えるシステムの下部SMAワイヤを制御するのに適した電子回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特にSMAワイヤの直径及び弾性変形可能アームの厚さを排他的に参照するのではないが、図面の理解を助けるために、図に示された様々な要素のサイズ及び寸法比は、場合によっては変更されていることに留意されたい。その上、電流/電圧をSMAワイヤに供給する手段は、当業者に広く知られており、本発明の理解のために必要ではないので、示されていない。
【0013】
本発明の第1の実施形態によるアクチュエータサブアセンブリの上方からの概略図が図1Aに示されており、その2つの断面図が図1B及び図1Cに示されている。アクチュエータサブアセンブリ100は、その角に一致する4つの固定要素120、120’、120’’、120’’’を有する、詳細には正方形状の四角形フレーム110を備え、第1の対角線に沿った対向する要素120’、120’’’は、第1の形状記憶合金ワイヤ130を固定するために使用され、他方の対角線に沿った対向する要素120及び120’’は、第2の形状記憶合金ワイヤ130’を固定するために使用される。
【0014】
形状記憶合金ワイヤ130、130’は、いわゆる拮抗構成にあり、この場合、ワイヤ130がその上を通り、ワイヤ130’がその下を通る可動要素160である特定の構成要素に対してそれらが反対方向に力を及ぼすことを意味する。可動要素160の上面は、第1のSMAワイヤ130を定位置に保持するためのガイド1310を有し、第2のSMAワイヤ130’は、プランジャ170が接続される可動要素160の下面に形成されたガイド(図示せず)内に保持され、第2のSMAワイヤ130’はそれらの間を通る。
【0015】
第1のSMAワイヤ130はフレーム110の上方にあり、第2のSMAワイヤ130’はフレーム110の下方にあり、それらは、フレーム110が上述された特許文献1、特許文献2、特許文献9、特許文献11、及び特許文献10に示された構成とは異なり、図に示された好ましい正方形状を有するときに互いに直交する異なる平面内にある。
【0016】
詳細には、特許文献11は、2つのSMAワイヤが各々四角形フレームの対向する角に接続される本発明とは異なり、各SMAワイヤが平行六面体フレームの2つの隣接する角に接続される拮抗構成の2つの対のSMAワイヤを示す。特許文献10は、特許文献11のように隣接する角に同様の接続でSMA拮抗ワイヤを有するフレームレス構造を有する。また、上述された特許文献8は、本質的に同じ平面内にある拮抗構成の2つのSMAワイヤを有する一実施形態を有し、すなわち、それらの2つの先端は、アセンブリカバーの同じ対向する壁に接続される。
【0017】
拮抗構成で、同時に互いに直交するかまたはほぼ直交する平面内にあるSMAワイヤを使用することにより、アクチュエータの2つの安定位置の間で切り替える間に可動構造が傾くことが防止される。SMAワイヤ平面は、SMAワイヤ及びそのコーナコネクタを含む平面として定義され、SMAワイヤ平面間のそのような実質的な直交状態は、それらの平面が90°±20°の角度で交差するように、四角形フレームの対向する角に接続されているSMAワイヤによって実現される。そのような状態は、前述の特許文献11号及び特許文献10の隣接するSMAワイヤ接続によっても、特許文献8では、本質的に同じ平面内にある拮抗構成のSMAワイヤによっても実現可能ではない。
【0018】
この態様は、可動要素材料が硬くなく、SMAワイヤの複数回の作動時に変形する場合があるときに特に関連する。その上、実質的な直交配置は、両方のワイヤを加熱して流れ及び切替えタイミングを調整する作業を簡素化する。両方のワイヤが同じ方向に沿って応力を受けると、取り付け点が完全に位置決めされてないときに傾斜モーメントを発生させる可能性があり、これは、実際の装置のように、SMAワイヤの平面が本質的に平行であるが完全に平行ではないときに起こる。拮抗ワイヤを有する特許文献8の上述の構成は、この問題を特に顕在化させやすい。
【0019】
一方、特許文献11の可動構造は、その平行六面体フレームの内面に形成されたチャネルにぴったりとそれを嵌合させることにより、2つの安定位置の間の円滑な移行を妨げるリスクがある傾斜またはねじれが防止される。同様の配置が、2つの安定位置の間の可動構造の移動を誘導するためのガイドレールを提供する特許文献10にも開示されており、前記可動構造は、弾性変形可能アームによってではなく、SMAワイヤ自体によってのみそのフレームに接続されている。
【0020】
本発明は、図1A図1Cに示されたように、拮抗性SMAワイヤ130、130’との堅固な接触に利用可能な2つの対向する表面をそれが有する限り、可動要素160のいかなる特定の形状または幾何学的構成にも限定されない。プランジャ170は、多数の試験セルまたは試験ウェル(可能な数値範囲は非常に広く、通常は6~1536の間に含まれる)を備える試験マイクロプレートなどの流体装置または分析機器でアクチュエータサブアセンブリを使用されやすくするために、可動要素160と接続される。そのような装置は広く知られ、普及しており、例えば、M.Jalal Uddinらによる論文「Fully integrated rapid microfluidic device translated from conventional 96-well ELISA kit」、Scientific Reports volume 11、Article number:1986(2021)を参照されたい。
【0021】
図1A図1Cのアクチュエータサブアセンブリ100は、フレーム側面の中央位置で可動要素160を正方形フレーム110に接続する4つの弾性変形可能アーム140、140’、140’’、140’’’を介して双安定動作を実現し、前記弾性変形可能アーム140、140’、140’’、140’’’の各々は、図1B(上)及び図1C(下)に示されたように、2つの安定位置、上部位置及び下部位置を有する。SMAワイヤ130、130’の交互の作動は、単にスナップオン平衡位置を超えて弾性変形可能アーム140、140’、140’’、140’’’を運ぶのに十分である必要があるだけであり、すなわち、可動要素160の総移動は、SMAワイヤ押し込みの効果及び変形可能アームのスナップ留めの組合せであることに留意されたい。図1B図1Cに示されたように、可撓性アームは、フレーム110に接続された第1の直線剛性部分1400と、可動要素160に接続された第2の弾性変形可能部分1410とを有することができる。
【0022】
好ましくは、2つのSMAワイヤ130、130’は、SMAワイヤ130及び130’がそれぞれその上面及び下面と接触しているので、図1A図1Cに示された構成において可動要素160の高さに対応する、2.5mm~15mmの間に含まれる互いの間の最大距離を有する。好ましくは、フレーム対角線に沿ったフレームコーナコネクタ間の距離は、25mm~100mmの間に含まれる。
【0023】
可動要素160の位置は、最後に作動されたSMAワイヤ、すなわち上昇構成におけるプランジャ170用の下部SMAワイヤ130’(図1B)及び下降構成におけるプランジャ170用の上部SMAワイヤ130(図1C)に依存する。弾性変形可能アーム140、140’、140’’、140’’’によって加えられる力は、SMAワイヤ130、130’の作動を必要とせずにアクチュエータサブアセンブリをその安定位置に維持し、そのため、電力は、アクチュエータサブアセンブリを一方の安定位置から他方の安定位置に切り替えるためにのみ適切なSMAワイヤに提供されることに留意されたい。
【0024】
本発明によるアクチュエータサブアセンブリは、独立型アクチュエータの能動部品として使用することができるとしても、その利点は、いわゆる行列構成、すなわち複数のアクチュエータサブアセンブリが行及び列で互いに接続された構成において十分に活用される。この場合、単一のSMAワイヤは、複数の対角線上に位置合わせされたアクチュエータサブアセンブリ上で動作することができ、隣接するサブアセンブリは、1つまたは2つの共通のフレームコーナコネクタを共有する。
【0025】
図2Aは、各行に4つ、各列に4つ、図1Aによる16個のアクチュエータサブアセンブリによって構成されたそのようなシステム200の上方から見た概略図を示す。図2Bに示された、例えば線A-A’に沿った所与の行の断面図は、行を構成する4つのサブアセンブリ201、202、203、204がどのように異なる状態にあり得るか、すなわちプランジャ170がアクチュエータサブアセンブリ201、203、204内で上げられ、代わりにアクチュエータサブアセンブリ202内で下げられるかを示す。
【0026】
図2Aの上述されたアクチュエータサブアセンブリシステムの変形形態が、アクチュエータサブアセンブリを備えるシステム300を示す図3A図3Dに示され、アクチュエータサブアセンブリ内で可動要素360は十字形の垂直断面を有し、弾性変形可能アーム340、340’は、コーナコネクタ320、320’、320’’、320’’’、及び320ivを一体化したフレーム310と可動要素360を接続する変形可能な直線要素である。
【0027】
図3Aの線A-A’に沿った断面図を表す図3B図3Cの比較によって示されたように、対向するフレームコーナコネクタ間に電圧差を設定することによって特定のアクチュエータサブアセンブリを駆動することが可能である。図3Bに例示されたケースでは、第2及び第4のサブアセンブリは、それぞれSMAワイヤ331及び333の作動を介して下げられ、変形可能アームの動作によってその位置に保持される可動要素360を有する。それを上方位置に戻すために、SMAワイヤ331’及び333’は、それぞれコネクタ320’/320’’及び320’’’/320ivを介してそれに電流を通すことによってアクティブ化され、その結果、可動要素360は図3Cに示されたように上方に押し上げられる。
【0028】
これらの断面図では、図2Aのシステムのように、SMA要素330、331、332、333、330’、331’、332’、333’はすべて異なるワイヤであるが、単一のSMAワイヤは、図3Aの線B-B’に沿って取られた概略断面図である図3Dに示されたように、システム対角線に沿って配置された複数のアクチュエータサブアセンブリを制御できることが強調されるべきである。この場合、下部のSMA要素はすべて単一の形状記憶合金ワイヤ333’の部分であり、上部のSMA要素330、331、332、333はすべて異なるSMAワイヤである。この実施形態では、少なくとも1つのSMAワイヤは複数のアクチュエータサブアセンブリを接続し、その数は好ましくは6~96の間に含まれる。
【0029】
本発明によるシステムを動作させる方法に関して、対向するフレームコーナコネクタ間の適切な電圧差により、形状記憶合金要素、より多くのアクチュエータサブアセンブリを接続するSMAワイヤの場合はSMAワイヤまたはSMAワイヤ部分が、アクチュエータサブアセンブリを他の安定位置に変更するように作動(短縮)されるように、フレームコーナコネクタのいずれかに印加される電圧を別々に制御できることが重要である。言うまでもなく、アクチュエータサブアセンブリをその以前の安定位置に戻す必要が生じるまで、その拮抗的なSMA要素にはいかなる電流も供給されない。
【0030】
複数のアクチュエータサブアセンブリの上面及び/または底面に同じワイヤを使用することは、かなりの製造上及びコスト上の利益をもたらす。これを実現するためには、各サブアセンブリ内に接地線に接続された2つの隣接するフレームコーナコネクタが存在し、対向するフレームコーナコネクタの各々が、起動電圧と絶縁状態との間をトグルするそれぞれのハードウェアスイッチに接続されるレイアウトを準備することが重要である。トグル電気スイッチは、好ましくは、固体半導体、リレー、または電気機械スイッチで実現することができる。これは、同じ連続するSMAワイヤ、または導電性であることがそれらを単一のワイヤのようにする共通のコネクタに取り付けられた別個のSMAワイヤも使用する隣接するフレームへの無電流を維持する。
【0031】
システムフレームは、(例えば、フレームを二重層PCBとして作製することにより)図1B図1C図2B図3B図3Dの断面図に示されたように、各コネクタの上部及び下部が互いに分離されるように作製されることにも留意されたい。
【0032】
6×4行列に配置された24個のアクチュエータサブアセンブリを備えるシステム用のSMA要素に電力を供給する好ましい電気回路図が図4A及び図4Bに示されている。アクチュエータサブアセンブリの2つの隣接する行に共通の接地線が使用され、電気的スキームを簡素化することを観察することが可能である。システムは、2つの別個のスイッチング接地線を使用して動作し、すなわち、接地電位は、接地1/接地2から電位なし(開)に切り替え可能でなければならず、接地1及び接地2は、互いに分離された(ガルバニック分離された)2つの別個の接地レベルでなければならない。
【0033】
上記の解決策では、システム内のありとあらゆるアクチュエータサブアセンブリを正確に同時に動作させることは可能でないが、同時作動(すなわち、状態変化)は、そのような遅延がミリ秒のオーダであり、システムの性能に影響を及ぼさないことを考慮して、電気スイッチの適切な動作で最小の動作遅延を適用することにより、動作の観点から実現できることが強調されるべきである。
【0034】
より詳細には、図4Aの回路図410は、第1の(上部)SMAワイヤを制御するためのものであり、各サブアセンブリのSMAワイヤまたはSMAワイヤ部分を制御するためのピンは、左上のピン及び右下のピンであり、それにより、ピン7及びピン29は、それらにワイヤが取り付けられないはずなので図4Aでは欠落している。同様に、図4Bの回路図420は、第2の(下部)SMAワイヤを制御するためのものであり、各サブアセンブリのSMAワイヤまたはSMAワイヤ部分を制御するためのピンは、右上のピン及び左下のピンであり、それにより、ピン1及びピン35は、それらにワイヤが取り付けられないはずなので図4Bでは欠落している。
【0035】
アクチュエータサブアセンブリの構成の詳細に関してすでに述べられたように、好ましい用途のうちの1つは分析機器内である。これに関して、本発明によるシステムに適用される制御方法は、分析機器内の試験ウェルの選択的制御(開閉)を可能にし、試験ウェルの数は、通常、6、12、14、48、96、及び384であり、ANSI/SBS1-2004、ANSI/SBS2-2004、ANSI/SBS3-2004、ANSI/SBS4-2004によるANSI規格として生体分子科学協会によって指定されている。
【0036】
本発明は、30μm及び200μmからなる直径を有するワイヤが好ましく使用されるとしても、特定のSMAワイヤサイズに限定されない。同様に、本発明は、ニチノールなどのNi-Tiベースの合金が好ましいとしても、SMAワイヤのための特定の材料に限定されない。
【0037】
最後に、拮抗ワイヤを操作及び制御する方法に関して、この情報は当業者に知られており、例えば、2012年にSensors、12、7682-7700において公表されたWangらによる論文「An accurately controlled antagonistic shape memory alloy actuator with self-sensing」を参照されたい。拮抗ワイヤという用語は、その作動が反対方向の変位可能要素への動きを付与するSMAワイヤを示すことを強調することが重要である。
【符号の説明】
【0038】
100,201~204 アクチュエータサブアセンブリ、110,310 フレーム、120,120’,120’’,120’’’,320,320’,320’’,320’’’,320iv コーナコネクタ、130 第1の形状記憶合金ワイヤ、130’ 第2の形状記憶合金ワイヤ、140,140’,140’’,140’’’,330,330’,331,331’,332,332’,333,333’,340,340’ 弾性変形可能アーム、160,360 可動要素、170 プランジャ、200,300 システム、410,420 回路図、1310 ガイド、1400 第1の直線剛性部分、1410 第2の弾性変形可能部分
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
【国際調査報告】