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特表2024-530510電気泳動ゲルの光重合システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】電気泳動ゲルの光重合システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20240814BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G01N27/447 315F
G01N21/78 C
G01N27/447 315A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508604
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 US2022041012
(87)【国際公開番号】W WO2023027978
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/236,020
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】アンニャ・デデオ
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・アマラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラード・リビー
(72)【発明者】
【氏名】ポール・シドロフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ケイトリン・カバノー
(72)【発明者】
【氏名】トリシャー・ベイリー
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・ティー・アレン
(57)【要約】
電気泳動に使用するアクリルアミドゲル配合物、及び電気泳動ゲルキャスティングのシステム及び方法。いくつかの実施形態では、システムは、UV-Vis硬化光源と、単一ステップでの分離ゲル及びスタッキングゲルの光重合を可能にするアクリルアミド配合物とを含む。いくつかの実施形態では、分離溶液配合物は、アクリルアミド及びビスアクリルアミドと、ビストリス緩衝剤と、水溶性光開始剤としてのフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイル-ホスフィン酸リチウム(LAP)(これにより、特定の波長内のUV放射を使用して溶液を光重合させることができる)を含む。いくつかの実施形態では、希釈緩衝液製剤は、アクリルアミド及びビスアクリルアミドと、ビストリス緩衝剤と、及びフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイル-ホスフィン酸リチウム(LAP)とを含む。アクリルアミドの濃度を所望の濃度に修正するために、希釈緩衝液を選択された量で分離溶液に添加することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、電気泳動ゲル配合物:
a.アクリルアミド及びビスアクリルアミドと、
2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’,2”-ニトリロトリエタノールを含む緩衝剤と、
水溶性光開始剤としてのフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイル-ホスフィン酸リチウムと
を含む分離ゲル;及び
b.アクリルアミド及びビスアクリルアミドと、
2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’,2”-ニトリロトリエタノールを含む緩衝剤と、
光開始剤としてのフェニル-2,4,6-トリメチル-ベンゾイルホスフィン酸リチウムと
を含むスタッキングゲル。
【請求項2】
前記分離ゲル配合物におけるアクリルアミド:ビスアクリルアミドの重量比は、19:1~37.5:1である、請求項1に記載の電気泳動ゲル配合物。
【請求項3】
前記分離ゲル配合物中の総アクリルアミド濃度が8~20%w/vである、請求項2に記載の電気泳動ゲル配合物。
【請求項4】
前記分離ゲル配合物中の前記緩衝剤の濃度が200~375mMであり、前記分離ゲル配合物中の前記光開始剤の濃度が0.015%w/vである、請求項2に記載の電気泳動ゲル配合物。
【請求項5】
前記スタッキングゲル配合物中のアクリルアミド:ビスアクリルアミドの重量比が19:1である、請求項1に記載の電気泳動ゲル配合物。
【請求項6】
前記スタッキングゲル配合物中の総アクリルアミド濃度が4.5~5.5%w/vである、請求項2に記載の電気泳動ゲル配合物。
【請求項7】
前記スタッキングゲル配合物中の前記緩衝剤の濃度が375mMであり、前記スタッキングゲル配合物中の前記光開始剤の濃度が0.025%w/vである、請求項2に記載の電気泳動ゲル配合物。
【請求項8】
前記分離ゲルが密度調整剤をさらに含む、請求項1に記載の電気泳動ゲル配合物。
【請求項9】
前記密度調整剤がスクロース又はグリセロールである、請求項8に記載の電気泳動ゲル配合物。
【請求項10】
前記分離ゲル配合物中のアクリルアミド:ビスアクリルアミドの重量比が19:1~29:1である、請求項1に記載の電気泳動ゲル配合物。
【請求項11】
以下を含む、電気泳動ゲル配合物を重合するためのシステム:
a.ゲル配合物を保持するように構成されたゲルカセット、
ここで、前記ゲル配合物は、重合性分離ゲル溶液及び重合性スタッキングゲル溶液を含み、
前記重合性分離ゲル溶液は、アクリルアミド及びビスアクリルアミドと、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’,2”-ニトリロトリエタノールを含む緩衝剤と、水溶性光開始剤としてのフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイル-ホスフィン酸リチウムとを含み、
前記スタッキングゲル溶液は、アクリルアミド及びビスアクリルアミドと、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’,2”-ニトリロトリエタノールを含む緩衝剤と、光開始剤としてのフェニル-2,4,6-トリメチル-ベンゾイルホスフィン酸リチウムとを含む;
b.365~405nmの波長を有する光源。
【請求項12】
前記光源は、前記ゲル配合物の表面において6mW/cm2~23mW/cm2の光強度を有するように、前記ゲル配合物に対して配向される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記分離ゲル溶液が密度調整剤をさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記密度調整剤がグリセロール又はスクロースである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記分離ゲル配合物中のアクリルアミド:ビスアクリルアミドの重量比が19:1~37.5:1である、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
以下を含む、電気泳動ゲルをキャスティングする方法:
a.アクリルアミド及びビスアクリルアミドと、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’,2”-ニトリロトリエタノールを含む緩衝剤と、水溶性光開始剤としてのフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイル-ホスフィン酸リチウムとを含む、分離ゲル溶液を配合すること;
b.アクリルアミド及びビスアクリルアミドと、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’,2”-ニトリロトリエタノールを含む緩衝剤と、光開始剤としてのフェニル-2,4,6-トリメチル-ベンゾイルホスフィン酸リチウムとを含む、スタッキングゲル溶液を配合すること、
ここで、ステップa及びbは、前記分離溶液の密度が前記スタッキング溶液の密度よりも大きくなるように実行される;
c.前記分離溶液をゲルカセットに導入すること;
d.前記ゲルカセット内の前記分離溶液の上に前記スタッキング溶液を導入すること;及び
e.前記分離溶液及び前記スタッキング溶液を、365nm~405nmの波長のUV放射線に同時に露光して、前記分離溶液と前記スタッキング溶液を重合させる。
【請求項17】
さらに、前記分離溶液に、0~10%w/vの総アクリルアミド、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’,2”-ニトリロトリエタノール、スクロース、及びフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイル-ホスフィン酸リチウムを含む希釈緩衝液を添加することにより、前記分離溶液中のアクリルアミドの濃度を変更するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記光源が、6mW/cm2~23mW/cm2の光強度で前記分離溶液及び前記スタッキング溶液を照射する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記分離ゲル配合物中のアクリルアミド:ビスアクリルアミドの重量比が19:1~37.5:1である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年8月23日に出願された米国仮出願第63/236,020号の優先権を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)などのゲル電気泳動の使用は、生物学的物質の分離に広く普及している技術である。非生物学的物質もゲル又は他のクロマトグラフィー担体を使用して分離できるが、生物学的物質に関する取り組みの範囲はさらに大きくなる。代表的な用途には、配列決定のコンテキストにおける、さまざまなサイズの核酸断片の分離;多型の検出;又は他のコンテキストでのサイズの検証が含まれる。また、タンパク質(例:ドデシル硫酸ナトリウムを使用するSDS-PAGEによる)、糖タンパク質、タンパク質断片の分離や、均一性や純度の検証、翻訳後修飾の同定、分子量の確認としてのゲル分離の適用も頻繁に行われる。
【0003】
これらすべての手順では、生物学的実体の混合サンプルが電気泳動ゲルに適用され、ゲル全体に電場を印加することによって成分が分離される。ゲルの開発方法に関係なく、サンプルに含まれる物質の結果として生じる移動パターンが、化学発光又は蛍光検出などによって検出される。
【0004】
ウェスタンブロッティングは、モノクローナル又はポリクローナル抗体を使用して検出する前に、膜上にタンパク質を固定化することを含む技術の1つである。タンパク質をメンブレンに固定化する前に、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を使用してサンプルタンパク質を分離し、天然タンパク質と変性タンパク質を分離する。次に、タンパク質は膜上に転写又はエレクトロブロットされ、そこでプローブされ、最終的には標的タンパク質に特異的な抗体を使用して検出される。抗体と抗原の相互作用の特異性により、複雑なタンパク質混合物の中から単一のタンパク質を識別することができる。
【0005】
同様の分子量を持つタンパク質を分離するには、多くの場合、不連続ゲルでSDS-PAGEが実行され、ここでスタッキングゲルが分離ゲルの上にキャストされる。スタッキングゲルは、分離ゲルよりも多孔度が高く(前者のポリアクリルアミド濃度が低いため)、これが効果的なタンパク質分離の一部を担っている。最適なタンパク質分離を達成するために、分離ゲル内のアクリルアミドの濃度を変えることができる。
【0006】
電気泳動ゲルをハンドキャストするためのシステムは市販されており、さまざまなアプローチ(シングル、デュアル、マルチキャストなど)が含まれる。ほとんどのハンドキャストシステムでは、ユーザーは、キャストしたい必要なゲルの厚さ(例:0.75mm、1.0mm、1.5mm)に適したスペーサーを備えた一連の可変サイズのガラスプレートを組み立てることによってシステムをセットアップする必要がある。望ましいゲルの厚さは、電気泳動プロセスに必要なサンプル量によって決まる。これらのキャスティングシステムをセットアップするには、ガラスプレートを適切に位置合わせし、ホルダー又はタンクにロードする。これは、ガラス板を機械的に圧縮し、ガラスを何らかのガスケット手段(シリコンスペーサーなど)に押し付けて、アクリルアミド液体がシステムから漏れるのを防ぐ。圧縮されたガラスプレートは、電気泳動ゲルに重合する前に液体ポリアクリルアミドゲルで満たされるポケットを2枚の間に備えたカセットを形成する。
【0007】
キャスティングシステムが組み立てられたら、液体アクリルアミド溶液をガラスカセットに加えることによってゲルをキャスティングできる。通常、ポリアクリルアミドゲルは2つの層から形成される:タンパク質をゲル界面に集中させるための、低パーセンテージのアクリルアミドスタッキングゲル、及びタンパク質やその他の高分子を分子量別に分離するための、高パーセンテージのアクリルアミド分離ゲル。スタッキング及び分離ゲル溶液は、ある比率のアクリルアミドモノマーと架橋剤(ビスアクリルアミドなど)で構成される。アクリルアミドと架橋剤のポリアクリルアミドゲルへの重合は、多くの場合、化学開始剤である過硫酸アンモニウム(APS)とテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を使用して行われる。この方法では、スタッキングゲルと分離ゲルを組み合わせた重合時間は1~2時間で完了する。あるいは、リボフラビンも重合開始剤として使用され、多くの場合、触媒としてTEMEDと組み合わせられる。リボフラビンは、光にさらされるとフリーラジカルを放出する光開始剤であり、この方法では完全な重合には最大8時間かかる。
【0008】
システムが適切に組み立てられ、セットアップされると、キャスティングプロセスの最初のステップは、ピペッティングなどによって液体アクリルアミド分離ゲルをガラス板のカセットに導入することから始まる。シングルシステムとデュアルシステムでは、個々のカセットの上部にある狭い開口部に注入する必要がある。マルチキャストシステムを使用すると、ユーザーはカセットのスタック全体を同時にフラッディングできるが、これにより余分なアクリルアミド廃棄物が生成され、キャストプロセス全体が完了した後に洗浄する必要がある。望ましい高さの分離ゲルを達成するには、カセット内の視認性が非常に重要であり、これはシングル及びデュアルカセットシステムでは利点であるが、マルチキャストシステムの最初の数層を超えると達成できない。アクリルアミド分離ゲル配合物を作成する場合、過硫酸アンモニウム(APS)とTEMEDをアクリルアミドと混合して、ゲルの重合を触媒する。この液体アクリルアミド配合物をカセットに注入した後、ユーザーは分離ゲルが完全に重合するまで30~45分間待つ必要があり、これは、電気泳動ゲルを作成する際に最も時間がかかる作業の1つである。
【0009】
分離ゲルが重合したら、キャスティングプロセスの第2ステップでは、アクリルアミドスタッキングゲルを各カセットに、再びピペット操作などによって第1ステップの分離ゲルの上に導入する。スタッキングゲルがカセットに導入されたら、ユーザーはゲルの厚さに合わせたサンプルウェルコームを挿入する;コームはウェルを形成するための多数の歯で構成されており、その数はサンプルサイズと必要なウェル容積に基づくものである(一般的な構成は10、12、及び15ウェルのコームである)。分離ゲル配合物と同様に、スタッキングゲル配合物は通常、アクリルアミド、APS、及びTEMEDで構成されるが、試薬濃度が異なる。スタッキングゲルの場合、スタッキングゲルが完全に重合するまで、同様の30~45分間の待ち時間を経る必要がある。
【0010】
典型的なキャスティング方法では、最初に分離ゲル溶液をキャスティングカセットに加え、次に酸素による重合阻害を防ぐためにアルコールをその上に置く。分離ゲルを30~60分間重合させた後、アルコールオーバーレイを注ぎ除き、カセットを脱イオン水で穏やかにすすぎ、乾燥させ、次に、スタッキングゲル溶液をカセットの上部に追加し、サンプルウェルコームを挿入してウェルを形成する。完成したゲルは60分間重合を続けた後、使用したり、後で使用するために保管したりできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
いくつかの実施形態では、待ち時間を短縮し、準備ステップの数を削減し、及び/又は使用される有毒化学物質の数を削減する簡素化されたユーザーワークフローを有する、改良された重合プロセス及びシステムを提供することが望ましい。また、適切に選択され配向された光源による重合を可能にする光開始剤を含むゲル配合物を利用する反復可能な重合プロセス及びシステムを提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書に開示される実施形態は、電気泳動で使用するためのアクリルアミドゲル配合物、ならびに電気泳動ゲルキャスティングのためのシステム及び方法に関する。いくつかの実施形態では、システムは、UV-Vis硬化光源などの光源と、単一ステップで分離ゲル及びスタッキングゲルを光重合させるアクリルアミド配合物とを備える。いくつかの実施形態では、アクリルアミド配合物により、分離ゲル及びスタッキングゲルを複数のステップで光重合させることができる。いくつかの実施形態では、分離溶液配合物は、アクリルアミド及びビスアクリルアミドと、ビストリス緩衝剤と、スクロース又はグリセロールなどの任意選択の密度調整剤と、水溶性光開始剤としてのフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイル-ホスフィン酸リチウム(LAP)(これにより、特定の波長内の放射線を使用して溶液を光重合させることができる)を含む。いくつかの実施形態では、希釈緩衝液配合物は、ビストリス緩衝剤と、スクロースやグリセロールなどの任意選択の密度調整剤と、水溶性光開始剤としてのフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイル-ホスフィン酸リチウム(LAP)(これにより、特定の波長内の放射線を使用して溶液を光重合させることができる)を含み、アクリルアミド及びビスアクリルアミドを含むか、含まなくてもよい。アクリルアミドの濃度を所望の濃度に修正するために、希釈緩衝液を選択された量で分離溶液に添加することができる。好ましくは、密度調整剤が使用される場合、分離溶液及び希釈緩衝液中で同じである。
【0013】
いくつかの実施形態では、スタッキング溶液は、アクリルアミド及びビスアクリルアミドと、ビストリス緩衝剤と、光開始剤としてフェニル-2,4,6-トリメチル-ベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)(これにより、特定の波長内の放射線を使用して溶液を光重合させることもできる)を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、分離溶液及びスタッキング溶液は、分離溶液の密度がスタッキング溶液の密度よりも大きくなるように配合され得る。これにより、ゲルカセットなどで液体の状態のときに、スタッキング溶液が分離溶液の上(例:使用時のサンプル移動方向における分離溶液の上流)に位置することが可能になる。結果として、分離溶液とスタッキング溶液の両方を単一のステップで同時に重合させることができる。
【0015】
特定の実施形態では、分離ゲルとスタッキングゲルを含む電気泳動不連続ゲルシステムが開示され、分離ゲルは、第1の密度を有する分離溶液配合物から重合され、アクリルアミド及びビスアクリルアミド、ビストリス緩衝剤、スクロース、及びフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイル-ホスフィン酸リチウムを含む。スタッキングゲルは、第2の密度を有するスタッキング溶液配合物から重合され、アクリルアミド及びビスアクリルアミド、ビストリス緩衝剤、及びフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイル-ホスフィン酸リチウムを含み、前記第1の密度は前記第2の密度よりも大きい。いくつかの実施形態では、電気泳動ゲルシステムは、分離溶液配合物とスタッキング溶液配合物を同時に重合させることによって形成される。
【0016】
他の実施形態では、分離ゲル中の密度調整剤が除去されるなどして、密度勾配をほとんど又はまったく持たないで、分離溶液及びスタッキング溶液が配合され、そして、分離溶液とスタッキング溶液は同時にではなく逐次的に重合される。
【0017】
特定の実施形態では、システムは、重合前の分離溶液配合物及びスタッキング溶液配合物を含むゲルカセットを含む。特定の実施形態では、システムは、重合後の分離ゲル及びスタッキングゲルを含むゲルカセットを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、分離溶液及びスタッキング溶液の一方又は両方が、適切な光源によって重合される。いくつかの実施形態では、電気泳動システムは適切な光源を含む。いくつかの実施形態では、適切な光源はUV-Vis光を含む。いくつかの実施形態では、UV-Vis光源は365nm~405nmの波長を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、ゲルカセットは、1つ又は複数の適切なスペーサー(通常はプレートの周囲に沿って配置される)によって間隔をあけられた2枚の平らなガラスプレートによって形成され、プレート間に容積又はポケットを形成する。スペーサーの厚さはゲルの厚さを定義する。スペーサーは、別個の独立した構成要素であってもよく、又はプレートの1つに一体化又は接着されていてもよい。ゲルカセットは、使用中にゲルを所定の位置に保持するゲルホルダーとして機能する。
【0020】
特定の実施形態では、電気泳動ゲルの迅速な充填及び重合のために設計された装置が開示される。
【0021】
本明細書に開示される実施形態は、様々なコンポーネント及びコンポーネントの配置、ならびに様々なプロセス動作及びプロセス動作の配置で形をとることができる。図面は、好ましい実施形態を説明することのみを目的としており、限定するものとして解釈されるべきではない。この開示には以下の図面が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】特定の実施形態による、UV光源で照射されているゲルカセットの概略側面図である。
図2】特定の実施形態による光源及びキャスティングフレームの斜視図である。
図3】特定の実施形態による、キャスティングフレームを収容するハウジングの斜視図である。
図4】特定の実施形態による、キャスティングフレーム及びゲルカセットを示す、図2のハウジングの斜視図である。
図5】代替実施形態によるハウジングの斜視図である。
図6】特定の実施形態による複数のキャスティンアセンブリを有するゲルキャスティンシステムの斜視図である。
図7】ゲル重合用の両面光源を有するゲルキャスティングシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
明確にするために以下の説明では特定の用語が使用されているが、これらの用語は、図面で説明するために選択された実施形態の特定の構造のみを指すことを意図しており、本開示の範囲を定義又は制限することを意図していない。図面及び以下の説明において、同様の番号指定は同様の機能のコンポーネントを指すことを理解されたい。
【0024】
単数形「a」、「an」、「the」には、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象が含まれる。
【0025】
本明細書で使用される場合、さまざまなデバイス及び部品は、他のコンポーネントを「含む」ものとして説明される場合がある。本明細書で使用される「含む」、「備える」、「有している」、「有する」、「できる」、「含有する」という用語、及びそれらの変形は、追加のコンポーネントの可能性を妨げない、制限のない移行的なフレーズ、用語、又は単語であることを意図している。
【0026】
本明細書に開示されるすべての範囲には、記載された端点が含まれており、独立して組み合わせることができる。(例えば、「2インチ~10インチ」の範囲には、端点の2インチと10インチ、及びすべての中間値が含まれる)。
【0027】
本明細書で使用されるように、近似言語は、関連する基本機能の変更をもたらすことなく、変化する可能性のある任意の定量的表現を修正するために適用され得る。したがって、「約」及び「実質的に」などの用語によって修飾された値は、場合によっては、指定された正確な値に限定されない場合がある。修飾語「約」も、2つの端点の絶対値によって定義される範囲を開示するとみなされる必要がある。例えば、「約2~約4」という表現は、「2~4」の範囲も開示する。
【0028】
ここで使用される用語の多くは相対的な用語であることに注意されたい。例えば、「上部」と「下部」という用語が使用されている場合、その位置は相互に相対的なものであり、つまり、上部コンポーネントは下部コンポーネントよりも高い標高に位置しており、構造の特定の向きや位置を必要とするものとして解釈されるべきではない。さらなる例として、用語「内部」、「外部」、「内側」、及び「外側」が使用される場合、中心を基準としたものであり、構造の特定の向き又は位置を必要とするものとして解釈されるべきではない。
【0029】
「上部」及び「底部」という用語が使用される場合、これは絶対基準、つまり地球の表面に対するものである。別の言い方をすると、上部の位置は常に下部の位置よりも地表に向かって高い位置にある。
【0030】
「水平」及び「垂直」という用語が使用される場合、これは絶対基準、つまり地面レベルに対する方向を示すために使用される。ただし、これらの用語は、構造が互いに完全に平行であること、又は完全に垂直であることを要求すると解釈されるべきではない。
【0031】
まず図1を参照すると、特定の実施形態によるアクリルアミドゲル配合物を重合するための例示的なシステムの概略図が示されている。このシステムは、アクリルアミド系溶液2を光重合させるために光を放射するように構成された光源1を含み、これは、溶液2とガラスカセットアセンブリ3の下のガスケット4で密閉されたガラスカセットアセンブリ3内に保持される。ガラスカセットアセンブリ3は、当業者には知られているように、従来の設計及び構造でよい。例えば、キャストされる所望のゲルの厚さ(例えば、0.75mm、1.0mm、及び1.5mm)に適した1つ又は複数のスペーサーを備えたガラス板を使用することができる。ガラス板は適切に位置合わせされ、キャスター装置にロードされる。これはカセットアセンブリを保持する機能を持ち、ガラスプレートを一緒に機械的に圧縮し、ガラスをスペーサー又はガスケットに押し付けて、アクリルアミド液体がアセンブリから漏れるのを防ぐことができる。分離溶液、希釈緩衝液(使用する場合)及びスタッキング溶液は、ピペット操作などの当技術分野で周知の方法によってガラスカセットアセンブリ3内に手動で注入され得る。
【0032】
特定の実施形態によれば、単一工程で両方の溶液の重合を可能にする、分離溶液及びスタッキング溶液配合物が提供される。これは、最初に分離溶液を重合させる必要があった従来の配合に比べて、時間を大幅に節約できる改善であり、それにより、スタッキング溶液を重合する前に、得られた重合分離ゲル上でスタッキング溶液を適切に配向させることが可能となる。いくつかの実施形態では、分離溶液配合物は、アクリルアミド及びビス-アクリルアミドと、ビストリス緩衝剤(2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’,2”-ニトリロトリエタノール)と、スクロースと、水溶性光開始剤としてのフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイル-ホスフィン酸リチウム(LAP)(これにより、特定の波長範囲内の放射線を使用して溶液を光重合させることができる)を含む。適切な分離溶液配合物には、19:1~37.5:1の間のアクリルアミド:ビスアクリルアミドの重量比が含まれる。適切な重量比には以下が含まれる:19:1、19.5:1、20:1、20.5:1、21:1、21.5:1、22:1、22.5:1、23:1、23.5:1、24:1、24.5:1、25:1、25.5:1、26:1、26.5:1、27:1、27.5:1、28:1、28.5:1、29:1、29.5:1、30:1、30.5:1、31:1、31.5:1、32:1、32.5:1、33:1、33.5:1、34:1、34.5:1、35:1、35.5:1、36:1、36.5:1、37:1、37.5:1、及び前述の範囲内の任意の比率(例:19.75:1)。好ましくは、総アクリルアミド濃度は8~20%w/vであり、ビストリス濃度は200~375mMであり、LAP濃度は0.015%w/vである。
【0033】
分離溶液中のアクリルアミドの濃度は、分離溶液と希釈緩衝液を組み合わせることによってカスタマイズでき、ここで、希釈緩衝液は、分離溶液よりも低いアクリルアミド濃度と、ビストリス緩衝剤、スクロース又は他の密度調整剤、及びLAPを含む。例示的な希釈緩衝液は、0~10%w/vの総アクリルアミド濃度、4~10%w/vのスクロース濃度、200~375mMのビストリス濃度、及び0.015%w/vのLAP濃度を有し得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、スタッキング溶液は、アクリルアミド及びビスアクリルアミドと、ビストリス緩衝剤と、光開始剤としてフェニル-2,4,6-トリメチル-ベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)(これにより、特定の波長内の放射線を使用して溶液を光重合させることもできる)を含む。適切なスタッキング溶液の配合には、アクリルアミド:ビスアクリルアミドの重量比が19:1、総アクリルアミド濃度が4.5~5.5%w/v;ビストリス濃度が375mM、LAP濃度が0.0015~0.05%w/vとなるように含まれる
【0035】
この実施形態では、分離溶液及びスタッキング溶液は、分離溶液の密度がスタッキング溶液の密度よりも大きくなるように配合される。これにより、スタッキング溶液を混合せずに分離溶液の上に置くことができ(例えば、使用時にサンプルの移動方向における分離溶液の上流);ゲルカセットなどで液体の状態にあるとき、より密度の高い分離溶液がより密度の低いスタッキング溶液をサポートし、両者の間に界面を形成する。その結果、これまで従来行われてきた2段階での重合ではなく、分離溶液とスタッキング溶液の両方を同時に又は単一段階で重合させることができる。
【0036】
特定の実施形態では、分離溶液とスタッキング溶液との間の密度勾配は、分離溶液配合物中に密度調整剤を含めることによって生成される。例示的な密度調整剤はスクロースである。分離溶液中のスクロースの適切な量は、4~10%w/vの範囲である。別の例示的な密度調整剤は、同様の量のグリセロールである。
【0037】
別の実施形態では、密度調整剤の除去などにより、分離溶液とスタッキング溶液との間に密度勾配がほとんど又は全くない。この実施形態において、アクリルアミド配合物は、密度調整剤が存在しないことを除いて、分離溶液配合物、希釈緩衝液配合物及びスタッキング溶液配合物から構成される。
【0038】
特定の実施形態では、重合時に得られるスタッキングゲルが得られる分離ゲルの上にあるように、分離溶液及びスタッキング溶液はガラスゲルカセットアセンブリ3内で垂直に配向される。この配向により、電気泳動中にタンパク質がスタッキングゲルを通って下方向に移動し、分離ゲルに入ることが保証される。
【0039】
図2は、光源1、ゲルカセット2及びキャスティングフレーム10を有するアセンブリの実施形態を示す。光源1は、ゲルカセットアセンブリ内に保持されたアクリルアミドゲル溶液を効果的に照射して重合させるための最適な光強度を達成するように、ゲルカセット2に対して位置決めされるべきである。放射線とポリアクリルアミドゲルの間の相互作用を最適にするには、光がガラスカセットアセンブリ2内のゲルウィンドウを照射するときに、光が完全に遮られないようにする必要がある。ライトとジェルの間にある透明なガラスは唯一の例外である。光がゲルと相互作用するときの表面の均一性は90%以上である必要がある。特定の実施形態では、光源はゲルカセットアセンブリ2から約1インチから3インチの間に配置されるべきである。前述の距離での最適な光強度範囲は6mW/cm2~23mW/cm2である。光開始剤を活性化するには、光源の波長は365nm~405nmである必要がある。適切な波長には、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404及び405nmが含まれる。
【0040】
図3及び図4は、前述の特定の光パラメータを有し、ゲルを照射している間同じ位置を維持する、LEDアレイなどの光源1を収容するために使用され得る例示的なハウジング20を示す。ハウジングは、光源と通信して配置され、照射時間、光の強度、光のパルスなどの様々な動作パラメータを制御するように構成され得るコントローラ21を含み得る。
【0041】
本明細書に開示される実施形態のいずれかで使用される1つ又は複数のコントローラは、処理ユニット及び記憶要素を有することができる。処理ユニットは、マイクロプロセッサなどの汎用コンピューティングデバイスであってもよい。あるいは、プログラマブルロジックコントローラー(PLC)などの特殊な処理デバイスであってもよい。記憶要素は、RAM、DRAM、ROM、フラッシュROM、EEROM、NVRAM、磁気媒体、又はコンピュータ可読データ及び命令を保持するのに適したその他の媒体などの任意のメモリ技術を利用することができる。コントローラユニットは、UV光源を含むシステム内の1つ以上の動作ユニットと電気通信(例えば、有線、無線)することができる。コントローラはまた、システムの動作及び/又は本明細書に記載の方法の実行に関与するパラメータのうちの1つ又は複数を表示し又はオペレータに指示するヒューマンマシンインターフェース又はHMIと関連付けることができる。記憶要素は、処理装置によって実行されると、システムが本明細書で説明される機能を実行できるようにする命令を含むことができる。いくつかの実施形態では、複数のコントローラを使用することができる。コントローラ21は、筐体20に対して着脱可能であってもよい。
【0042】
特定の実施形態では、ハウジング20は、ゲルカセットを保持するためにハウジング内に配置されたカセットホルダー22を含み、これにより、ユーザーは注型操作中にゲルをはっきりと見ることができ、注型操作中に手やピペットでカセットに適切にアクセスできる。
【0043】
いくつかの実施形態では、ハウジング20は、閉位置(図3)と開位置(図4)との間で移動可能である可動ドア24を有し、後者の位置はゲルカセットを露出させてアクセスを提供する。図4の実施形態では、光源1はドア24の内面に結合され得、ドア24を閉じると、ゲルカセットに対して光源が適切に配向され、繰り返し可能で再現可能な方法でそれを行える。これにより、光の照射を妨げることなく、ゲルを完全に光にさらすことができる。ドア24が開いているときにライトの電源がオンになるのを防ぐために、安全機構を含めることができる。
【0044】
特定の実施形態では、取り外し可能な位置決めトレイ又はプラットフォーム23がハウジングに関連付けられ、動作中に発生する可能性のある化学物質の流出を捕捉するようにハウジング内で配向され、清掃を容易にするために取り外し可能であってもよい。取り外し可能なトレイ23は、ゲルカセットアセンブリを配置するための位置決め機構25と、ハウジング20内でのトレイ自体の位置決め機構(例えば、磁石)(図示せず)とを有してもよく、これにより、ハウジング内でのキャスティングフレーム10及びゲルカセットアセンブリ3の反復可能かつ再現可能な配置が可能になる。
【0045】
図5は、硬化システムの追加の実施形態を示す。この実施形態では、位置決めトレイ23と制御装置を備えた光源1は別個の存在である。この実施形態を使用してゲルを作成するには、まずハウジング20を取り外し、続いて、ゲルカセットが分離ゲル及びスタッキングゲルで満たされる前に、ゲルカセットアセンブリ3を有するキャスティングフレーム10をトレイ23上に配置する。次に、キャスティングフレーム10、カセットアセンブリ3、及びトレイ23を収容するようにハウジングが配置される。図4の実施形態と同様に、光源はハウジング20の内面に結合され、ハウジングがゲルカセットアセンブリ3に対して適切に配向されると、光源も適切に配向される。この実施形態は、よりコンパクトな設置面積と、トレイ23を備えたモジュール式プラットフォームを形成する可能性を可能にし、ユーザーが別のゲルを光重合させながら1つのカセットをゲルで満たすことを可能にする。
【0046】
図6は、モジュール式硬化システムのさらに別の実施形態を示す。この実施形態では、複数のキャスティングアセンブリが背中合わせの関係で配向され、それぞれが専用の光源を有する。前の実施形態と同様に、各光源1は、ハウジング20”の内壁に取り付けられた片面パネルであってもよく、これにより、ゲルカセットアセンブリに対してハウジングを適切に位置決めすると、各光源はゲルカセットアセンブリに対して適切に配向され、最適な光照射が得られる。図示の実施形態では、第1及び第2の光源1は、第1の光源から放射された光が第2の光源に向かう方向に放射されるように、ハウジング20”の対向する内壁に配置される。
【0047】
図7はさらに別のモジュール式実施形態を示す。この実施形態では、複数のキャスティングアセンブリ(図示せず)が横並びに配置される。これにより、各鋳造アセンブリの光源を、例えば各面にLEDライトのアレイを含む両面ライトパネルなどを介して、図に示すように2つのアセンブリの間に配置できるようになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】