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特表2024-530517真空列車チューブ用熱延鋼板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】真空列車チューブ用熱延鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20240814BHJP
   C21D 8/02 20060101ALI20240814BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20240814BHJP
   C22C 38/04 20060101ALI20240814BHJP
   C22C 38/14 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C22C38/00 301B
C21D8/02 B
C21D9/46 S
C22C38/04
C22C38/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510693
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 KR2022012878
(87)【国際公開番号】W WO2023033478
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0115367
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、 ホン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ヒュン-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ハン-スン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ジョン-ウク
(72)【発明者】
【氏名】ラ、 スン-ミン
【テーマコード(参考)】
4K032
4K037
【Fターム(参考)】
4K032AA04
4K032AA05
4K032AA16
4K032AA17
4K032AA22
4K032AA31
4K032AA32
4K032AA35
4K032AA36
4K032BA01
4K032CA02
4K032CA03
4K032CC04
4K032CE02
4K037EA05
4K037EA06
4K037EA15
4K037EA16
4K037EA19
4K037EA28
4K037EA31
4K037EA32
4K037EB05
4K037EB09
4K037EB11
4K037FA02
4K037FA03
4K037FC04
4K037FE02
4K037FE03
4K037FE05
4K037JA07
(57)【要約】
本発明の一実施形態によれば、降伏強度、振動減衰比、溶接性及び溶接部低温靭性に優れ、真空列車チューブ用に適した物性を有する熱延鋼板及びその製造方法を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、炭素(C):0.03~0.11%、シリコン(Si):1.0~2.0%、マンガン(Mn):1.2~2.2%、残りのFe及びその他の不可避不純物を含み、
フェライト及びパーライト複合組織を微細組織として有し、
下記の関係式1~関係式3を満たす、真空列車チューブ用熱延鋼板。
[関係式1]
355≦11+394×D(-0.5)+448×[C]+94×[Si]+69×[Mn]
[関係式2]
100≦186-240×D(-0.5)-121×[C]-13.2×[Si]+13.7×[Mn]
[関係式3]
27≦476-95.22×ln(D)-220×[C]-88×[Si]
前記関係式1~関係式3において、Dは前記熱延鋼板に含まれるフェライトの平均粒子サイズ(μm)を意味し、[C]、[Si]及び[Mn]は、それぞれ前記熱延鋼板に含まれる炭素(C)、シリコン(Si)及びマンガン(Mn)の含量(重量%)を意味する。
【請求項2】
前記熱延鋼板の微細組織は、60~95面積%のフェライト、5~40面積%のパーライト及びその他の不可避組織からなる、請求項1に記載の真空列車チューブ用熱延鋼板。
【請求項3】
前記熱延鋼板に不可避に含まれるチタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)の合計合量は、0.01%未満(0%を含む)である、請求項1に記載の真空列車チューブ用熱延鋼板。
【請求項4】
前記フェライトの平均粒子サイズ(D)は10~20μmである、請求項1に記載の真空列車チューブ用熱延鋼板。
【請求項5】
前記熱延鋼板の降伏強度は350MPa以上であり、
前記熱延鋼板の-20℃基準シャルピー衝撃エネルギーは27J以上であり、
前記熱延鋼板を長さ×幅×厚さが80mm×20mm×2mmである試験片に加工した後、曲げ振動モード(flexural vibration mode)で1650Hzの周波数に対して測定した振動減衰比が100×10-6以上である、請求項1に記載の真空列車チューブ用熱延鋼板。
【請求項6】
サブマージドアーク溶接で前記熱延鋼板を溶接して形成された溶接部において、
前記溶接部の-20℃基準シャルピー衝撃エネルギーは27J以上であり、
前記溶接部に含まれるM-A相の分率は5面積%以下(0%を含む)である、請求項1に記載の真空列車チューブ用熱延鋼板。
【請求項7】
前記熱延鋼板の厚さは10mm以上である、請求項1に記載の真空列車チューブ用熱延鋼板。
【請求項8】
重量%で、炭素(C):0.03~0.11%、シリコン(Si):1.0~2.0%、マンガン(Mn):1.0~2.2%、残りのFe及びその他の不可避不純物を含むスラブを1100℃~1300℃の加熱温度(T)で加熱する段階と、
前記加熱されたスラブを900℃~1000℃の仕上げ圧延温度(T)で熱間圧延して熱延鋼板を提供する段階と、
前記熱延鋼板を600℃~700℃の巻取温度(T)で巻き取る段階と、を含み、
前記仕上げ圧延温度(T)及び巻取温度(T)は、下記の関係式4を満たす、真空列車チューブ用熱延鋼板の製造方法。
[関係式4]
10≦-101.9+0.103×[T]+0.0339×[T]-61.9×[C]-190.2×[Nb]≦20
前記関係式4において、[T]、[T]及び[T]は、それぞれスラブ加熱温度(T、℃)、仕上げ圧延温度(T、℃)及び巻取温度(T、℃)を意味し、[C]及び[Nb]は、それぞれ前記熱延鋼板に含まれる炭素(C)及びニオブ(Nb)の含量(重量%)を意味する。
【請求項9】
前記スラブに不可避に含まれるチタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)の合計合量は0.01%未満(0%を含む)である、請求項8に記載の真空列車チューブ用熱延鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱延鋼板及びその製造方法に関し、詳細には、降伏強度、振動減衰比、溶接性及び溶接部低温靭性に優れ、真空列車チューブ用に適した物性を有する熱延鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空列車、別名、ハイパーチューブ列車(hyper tube train)は、真空のチューブ内を磁気浮上列車が移動するシステムである。真空列車は、列車が走行する際の主要なエネルギー損失の原因である空気やトラックとの摩擦がないため、超高速運転が可能である。エネルギー損失が少なく、航空機に比べて93%の省エネが可能であるため、環境に優しい次世代交通手段として脚光を浴びながら世界中で活発な研究が進められている。
【0003】
超高速真空列車に用いられる真空チューブは、その構造と素材がシステムの性能やコストに影響を与える。現在、真空列車のチューブ素材として研究されている材料は大きく3つほどある。その一つはコンクリートである。コンクリートチューブはコスト的な面では有利であるが、10m内外の個々のチューブを互いにつなぐ接合が容易ではない。また、コンクリート内部の気孔により、真空を実現した際に外部の気体がチューブの内部に侵入し、真空度が容易に崩れるという欠点がある。研究が多く行われている他の素材の一つは、炭素繊維などのような複合物質素材である。炭素繊維などのような複合物質素材は軽量で高性能であるが、高いコストが最も大きな欠点として挙げられる。
【0004】
現在、真空列車チューブ用素材として最も有力な素材は鉄鋼である。鉄鋼は低コストで大量生産が可能な素材である。鉄鋼は高い剛性及び強度を有し、加工が容易な素材である。また、チューブ間又はチューブに付属品を組み立てたり溶接したりしやすい素材であり、真空を維持する際の脱気体率も適正な素材でもある。但し、超高速真空列車は、現行の高速列車に比べて著しく速い速度で運行されるため、乗客及び周辺施設の安全性を最優先に考慮しなければならない。現在、超高速真空列車の安全基準すら確立されていない状況であり、超高速真空列車の安全を確保するためのチューブ用素材の開発も不十分な状況である。
【0005】
したがって、真空列車チューブ用に適した加工性及び脱気体率を有しながらも、安全性の確保が可能な真空列車チューブ用素材への開発が急がれる実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許公報第10-2106353号(2020.05.04.公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、降伏強度、振動減衰比、溶接性及び溶接部低温靭性に優れ、真空列車チューブ用に適した物性を有する熱延鋼板及びその製造方法を提供することができる。
【0008】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。通常の技術者であれば、本明細書の全体的な内容から本発明のさらなる課題を理解する上で何ら困難もない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る真空列車チューブ用熱延鋼板は、重量%で、炭素(C):0.03~0.11%、シリコン(Si):1.0~2.0%、マンガン(Mn):1.2~2.2%、残りのFe及びその他の不可避不純物を含み、フェライト及びパーライト複合組織を微細組織として有し、下記の関係式1~関係式3を満たすものであってよい。
【0010】
[関係式1]
355≦11+394×D(-0.5)+448×[C]+94×[Si]+69×[Mn]
【0011】
[関係式2]
100≦186-240×D(-0.5)-121×[C]-13.2×[Si]+13.7×[Mn]
【0012】
[関係式3]
27≦476-95.22×ln(D)-220×[C]-88×[Si]
【0013】
上記関係式1~関係式3において、Dは、上記熱延鋼板に含まれるフェライトの平均粒子サイズ(μm)を意味し、[C]、[Si]及び[Mn]は、それぞれ上記熱延鋼板に含まれる炭素(C)、シリコン(Si)及びマンガン(Mn)の含量(重量%)を意味する。
【0014】
上記熱延鋼板の微細組織は、60~95面積%のフェライト、5~40面積%のパーライト及びその他の不可避組織からなるものであってよい。
【0015】
上記熱延鋼板に不可避に含まれるチタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)の合計合量は、0.01%未満(0%含む)であってよい。
【0016】
上記フェライトの平均粒子サイズ(D)は10~20μmであってよい。
【0017】
上記熱延鋼板の降伏強度は350MPa以上であり、上記熱延鋼板の-20℃基準シャルピー衝撃エネルギーは27J以上であり、上記熱延鋼板を長さ×幅×厚さが80mm×20mm×2mmである試験片に加工した後、曲げ振動モード(flexural vibration mode)で1650Hzの周波数に対して測定した振動減衰比が100×10-6以上であってよい。
【0018】
サブマージドアーク溶接で上記熱延鋼板を溶接して形成された溶接部において、上記溶接部の-20℃基準シャルピー衝撃エネルギーは27J以上であり、上記溶接部に含まれるM-A相の分率は5面積%以下(0%を含む)であってよい。
【0019】
上記熱延鋼板の厚さは10mm以上であってよい。
【0020】
本発明の一実施形態に係る真空列車チューブ用熱延鋼板の製造方法は、重量%で、炭素(C):0.03~0.11%、シリコン(Si):1.0~2.0%、マンガン(Mn):1.2~2.2%、残りのFe及びその他の不可避不純物を含むスラブを1100℃~1300℃の加熱温度(T)で加熱する段階と、上記加熱されたスラブを900℃~1000℃の仕上げ圧延温度(T)で熱間圧延して熱延鋼板を提供する段階と、上記熱延鋼板を600℃~700℃の巻取温度(T)で巻き取る段階と、を含み、上記仕上げ圧延温度(T)及び巻取温度(T)は、下記の関係式4を満たすものであってよい。
【0021】
[関係式4]
10≦-101.9+0.103×[T]+0.0339×[T]-61.9×[C]-190.2×[Nb]≦20
【0022】
上記関係式4において、[T]、[T]及び[T]は、それぞれスラブ加熱温度(T、℃)、仕上げ圧延温度(T、℃)及び巻取温度(T、℃)を意味し、[C]及び[Nb]は、それぞれ上記熱延鋼板に含まれる炭素(C)及びニオブ(Nb)の含量(重量%)を意味する。
【0023】
上記スラブに不可避に含まれるチタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)の合計含量は、0.01%未満(0%を含む)であってよい。
【0024】
上記課題の解決手段は、本発明の特徴の全てを列挙したものではなく、本発明の様々な特徴及びそれによる利点及び効果は、以下の具体的な実施形態及び実施例を参照してより詳細に理解することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態によれば、降伏強度、振動減衰比、溶接性及び溶接部低温靭性に優れ、真空列車チューブ用に適した物性を有する熱延鋼板及びその製造方法を提供することができる。
【0026】
本発明の効果は上述の事項に限定されるものではなく、通常の技術者が本明細書に記載された事項から合理的に類推可能な事項を含むものと解釈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】シリコン(Si)を含まない溶接材料を用いて、1.5重量%のシリコン(Si)を含む母材を溶接して形成された溶接部を観察した顕微鏡写真である。
図2】0.3重量%のシリコン(Si)を含む溶接材料を用いて、2.0重量%のシリコン(Si)を含む母材を溶接して形成された溶接部を観察した顕微鏡写真である。
図3】試験片1の微細組織観察に用いられた光学顕微鏡写真である。
図4】既存の構造用鋼材であるEN-S355の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、真空列車チューブ用熱延鋼板及びその製造方法に関するものであり、以下では、本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明の実施形態は様々な形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明される実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。本実施形態は、当該発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に本発明をより詳細に説明するために提供されるものである。
【0029】
真空列車は、真空又は亜真空状態のチューブの中を走る列車であって、現在、開発の初期段階にある次世代運送手段である。真空列車は、車輪と軌道との間の摩擦抵抗を除去し、空気の抵抗を最小化するため、高速化及び高効率性を効果的に達成することができる運送手段である。但し、超高速で運行する真空列車の特性上、真空列車の安全性が十分に確保されない場合、重大事故が発生するおそれがある。特に、真空チューブが構造的に破損又は崩壊する場合だけでなく、チューブの一部の形状に変形が発生した場合にも、大惨事を誘発する恐れがあるため、真空列車用のチューブ用素材にはより厳しい安全性が要求される。本発明の発明者は、鋭意研究の結果、真空列車の安全性を確保するための真空チューブ用素材として、次の物性が主要であることを見出した。
【0030】
真空チューブ用素材に要求される第一の物性は、高強度特性である。真空列車は真空チューブの内部を通過して移動するため、真空チューブ用素材は構造体として十分な強度を有することが求められる。また、真空チューブは、内部を真空又は亜真空状態に維持する必要があるため、内部と外部の圧力差によってチューブの形状が変形しないように十分な高強度特性を有することが求められる。
【0031】
真空チューブ用素材に要求される第二の物性は、振動減衰能である。真空列車は、数名~数十名が搭乗したポッド(pod)が数十秒~数分の間隔で真空チューブの内部を通過することになる。先行ポッド(pod)が通過した後、後行ポッド(pod)が通過する際に、真空チューブ内で振動が増幅して共鳴が発生することがあり、ひどい場合には、チューブの破損まで誘発する可能性がある。したがって、一定レベル以上の振動減衰比を有する素材を真空チューブに適用することにより、先行ポッド(pod)の通過後にチューブ内の振動を効果的に減少させることができ、真空列車の安全性に効果的に寄与することができる。
【0032】
真空チューブ用素材に要求される第三の物性は、低温靭性である。真空列車は極地又は深海でも運行されることがある。鉄鋼素材は、低温又は極低温の環境でより容易に破損する傾向があるため、鉄鋼素材を真空チューブに適用する場合、安全性を確保するために一定レベル以上の低温靭性を有することが求められる。特に、真空列車用チューブは、溶接を介してチューブ形態で作製されるため、母材だけでなく溶接部においても優れた低温靭性を有することが求められる。
【0033】
本発明の発明者は、鋭意研究により、鋼板の合金組成の含量及び微細組織を厳密に制御し、優れた降伏強度、振動減衰比、溶接性及び溶接部低温靭性を両立させることができることを認知し、本発明を導出するに至った。
【0034】
以下、本発明の一実施形態に係る真空列車チューブ用熱延鋼板についてより詳細に説明する。
【0035】
本発明の一実施形態に係る真空列車チューブ用熱延鋼板は、重量%で、炭素(C):0.03~0.11%、シリコン(Si):1.0~2.0%、マンガン(Mn):1.2~2.2%、残りのFe及びその他の不可避不純物を含み、フェライト及びパーライト複合組織を微細組織として有し、下記の関係式1~関係式3を満たすものであってよい。
【0036】
[関係式1]
355≦11+394×D(-0.5)+448×[C]+94×[Si]+69×[Mn]
【0037】
[関係式2]
100≦186-240×D(-0.5)-121×[C]-13.2×[Si]+13.7×[Mn]
【0038】
[関係式3]
27≦476-95.22×ln(D)-220×[C]-88×[Si]
【0039】
上記関係式1~関係式3において、Dは、上記熱延鋼板に含まれるフェライトの平均粒子サイズ(μm)を意味し、[C]、[Si]及び[Mn]は、それぞれ上記熱延鋼板に含まれる炭素(C)、シリコン(Si)及びマンガン(Mn)の含量(重量%)を意味する。
【0040】
以下、本発明の熱延鋼板に含まれる鋼組成についてより詳細に説明する。以下、特に断りのない限り、各元素の含量を表す%は重量を基準とする。
【0041】
炭素(C):0.03~0.11%
炭素(C)は、鋼板の強度に非常に大きな影響を及ぼす成分である。本発明は、構造体が要求する強度を確保するために0.03%以上の炭素(C)を含むことができる。一方、炭素(C)の含量が過剰な場合、素材の靭性が低下し、溶接性が低下し、降伏比が上昇する可能性がある。また、炭素(C)の含量が過剰な場合、結晶粒の粗大化に困難を伴うため、本発明では、炭素(C)含量の上限を0.11%に制限することができる。
【0042】
シリコン(Si):1.0~2.0%
シリコン(Si)は、製鋼段階で酸素と結合してスラグを形成するため、酸素と共に除去される傾向がある。また、シリコン(Si)は、素材の強度向上にも効果的に寄与する成分でもある。したがって、本発明は、このような効果のために1.0%以上のシリコン(Si)を含むことができる。一方、シリコン(Si)の含量が過剰な場合、表面スケールの脱落を妨げて製品の表面品質を低下させる可能性がある。また、シリコン(Si)の含量が過度な場合、溶接部にM-A相(マルテンサイト-オーステナイト複合体)の形成を助長して溶接部の低温靭性が低下する可能性があるため、本発明では、シリコン(Si)の含量を2.0%以下に制限することができる。
【0043】
マンガン(Mn):1.2~2.2%
マンガン(Mn)は、鋼の強度及び硬化能を向上させる成分である。したがって、本発明は、このような効果を確保するために1.2%以上のマンガン(Mn)を含むことができる。一方、マンガン(Mn)の含量が過度な場合、中心部の偏析により材質ばらつきが発生し、クラック(crack)伝播抵抗性が低下する可能性がある。また、マンガン(Mn)の含量が過度な場合、鋼の靭性が低下する可能性があるため、本発明では、マンガン(Mn)の含量を2.2%以下に制限することができる。
【0044】
本発明の熱延鋼板は、上述の成分以外に、残りのFe及びその他の不可避不純物を含んでもよい。但し、通常の製造過程では、原料又は周囲環境から意図しない不純物が不可避に混入する可能性があるため、これを全面的に排除することはできない。これらの不純物は、本技術分野において通常の知識を有する者であれば、誰でも分かるものであるため、本明細書では、その全ての内容について特に言及しない。さらに、上述の成分以外に、有効な成分のさらなる添加が全面的に排除されるものではない。
【0045】
本発明の熱延鋼板は、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)の添加を極力抑制し、これらの成分が不可避に含まれても、その合計含量を0.01%未満(0%を含む)に制限することができる。チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)は代表的な析出強化元素であって、微細炭窒化物を生成して鋼の強度向上に効果的に寄与する成分である。但し、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)は鋼の微細組織を過度に微細化して振動減衰能の確保に不利に作用するため、本発明は、これらの成分を極力抑制しようとする。また、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)は高価な成分であって、経済性の観点からも好ましくない。本発明は、これらの成分を人為的に添加せず、不可避に添加される場合であっても、これらの成分の合計含量を0.01%未満に極力抑制することができる。これらの成分の好ましい合計含量は0.005%以下であることができ、これらの成分のより好ましい合計含量は0%であることができる。
【0046】
本発明の一実施形態に係る熱延鋼板は、微細組織として、フェライト及びパーライトからなる複合組織を有することができる。本発明は、ベイナイト及びマルテンサイトなどの低温組織の生成を極力抑制することができる。ベイナイト及びマルテンサイトなどの低温組織は高い強度を有し、降伏比が低く、構造用材料として優れた物性を発揮することができる。但し、本発明が目的とする真空列車チューブ用熱延鋼板は、厚さが10mm以上のレベルと厚いため、低温組織を導入しても鋼板の厚さ方向に物性のばらつきが発生する。これは、鋼板の表面にのみ低温組織が形成され、鋼板の中心部まで低温組織が十分に生成され難いためである。
【0047】
したがって、本発明は、物性のばらつきを低減するために、鋼板の微細組織をフェライト及びパーライトからなる複合組織で構成し、ベイナイト及びマルテンサイト等の低温組織は不可避に形成されても、その分率を1面積%以下(0%を含む)に極力抑制することができる。物性確保の観点から、フェライトの分率は60~95面積%であってよく、パーライトの分率は5~40面積%であってよい。
【0048】
目的とする降伏強度、振動減衰比及び低温靭性を同時に確保するために、本発明は、フェライトの平均粒度を一定範囲に制限することができる。結晶粒サイズが大きくなるほど、振動減衰比の確保に有利であるため、本発明はフェライトの平均粒度を10μm以上に制限することができる。一方、結晶粒のサイズが過度に大きくなる場合、素材の強度及び低温靭性が劣化するため、本発明では、フェライトの平均粒径を20μm以下に制限することができる。
【0049】
本発明の発明者は、真空列車チューブ用素材の安定性確保方案について鋭意研究を行った結果、本発明のような低合金系鋼板において、炭素(C)、シリコン(Si)及びマンガン(Mn)の含量と、フェライトの平均粒径を一定範囲に制御することにより、降伏強度、振動減衰比及び溶接部低温靭性を同時に確保可能であることを認知し、下記の関係式1~関係式3を導出するに至った。
【0050】
[関係式1]
355≦11+394×D(-0.5)+448×[C]+94×[Si]+69×[Mn]
【0051】
[関係式2]
100≦186-240×D(-0.5)-121×[C]-13.2×[Si]+13.7×[Mn]
【0052】
[関係式3]
27≦476-95.22×ln(D)-220×[C]-88×[Si]
【0053】
上記関係式1~関係式3において、Dは、上記熱延鋼板に含まれるフェライトの平均粒子サイズ(μm)を意味し、[C]、[Si]及び[Mn]は、それぞれ上記熱延鋼板に含まれる炭素(C)、シリコン(Si)及びマンガン(Mn)の含量(重量%)を意味する。
【0054】
本発明の真空列車チューブ用熱延鋼板は関係式1~3を全て満たすため、目的とする降伏強度、振動減衰比及び溶接部低温靭性を同時に確保することができる。
【0055】
本発明の真空列車チューブ用熱延鋼板は、350MPa以上の降伏強度及び27J以上の-20℃シャルピー衝撃エネルギーを有するものであってよい。これにより、本発明の真空列車チューブ用熱延鋼板は、構造材として適切な強度及び低温靭性を確保し、真空列車用チューブの構造的安全性を効果的に確保することができる。
【0056】
本発明の真空列車チューブ用熱延鋼板は、100×10-6以上の振動減衰比を有するものであってよい。ここで、振動減衰比とは、長さ×幅×厚さが80×20×2mmである試験片に対して曲げ振動モード(flexural vibration mode)で打撃した後、1650Hzの周波数に対して測定した振動減衰比を意味する。本発明の真空列車チューブ用熱延鋼板は、100×10-6以上の振動減衰比を有するため、真空チューブ内での振動増幅を効果的に抑制することができ、振動による真空列車用チューブの破損を効果的に防止することができる。
【0057】
本発明の一実施形態に係る熱延鋼板を、サブマージドアーク溶接を用いて溶接したとき、溶接部の-20℃基準シャルピー衝撃エネルギーは27J以上であってよく、溶接部に含まれるM-A相の分率は5面積%以下(0%を含む)であってよい。好ましい溶接部M-A相の分率は3面積%以下であり、より好ましい溶接部のM-A相の分率は1面積%以下であってよい。ここで、溶接部は溶融線(fusion line)から1mm離れた位置であり、溶融金属(weld metal)部及び溶接熱影響部(heat-affected zone、HAZ)の両方を含む意味に解釈することができる。
【0058】
本発明において、溶接に用いられる溶接材料は特に限定されるものではないが、なるべくシリコン(Si)を含まない溶接材料を用いて溶接を行うことが好ましい。シリコン(Si)を含む溶接材料を用いて溶接を行う場合、過度な硬化能により溶接部に硬質のM-A相が多量に形成される可能性があるためである。図1は、シリコン(Si)を含まない溶接材料を用いて1.5重量%のシリコン(Si)を含む母材を溶接して形成された溶接部を観察した顕微鏡写真であり、図2は、0.3重量%のシリコン(Si)を含む溶接材料を用いて、2.0重量%のシリコン(Si)を含む母材を溶接して形成された溶接部を観察した顕微鏡写真である。図2では、結晶粒界に多量の白色領域(M-A相)が観察されるのに対し、図1では、M-A相が観察されないことが確認できる。
【0059】
したがって、本発明の一実施形態によれば、降伏強度、振動減衰比及び溶接部低温靭性に優れ、真空列車チューブ用に適した物性を有する熱延鋼板を提供することができる。
【0060】
以下、本発明の一実施形態に係る真空列車チューブ用熱延鋼板の製造方法についてより詳細に説明する。
【0061】
本発明の一実施形態に係る真空列車チューブ用熱延鋼板の製造方法は、重量%で、炭素(C):0.03~0.11%、シリコン(Si):1.0~2.0%、マンガン(Mn):1.2~2.2%、残りのFe及びその他の不可避不純物を含むスラブを1100℃~1300℃の加熱温度(T)で加熱する段階と、上記加熱されたスラブを900℃~1000℃の仕上げ圧延温度(T)で熱間圧延して熱延鋼板を提供する段階と、上記熱延鋼板を600℃~700℃の巻取温度(T)で巻き取る段階と、を含み、上記仕上げ圧延温度(T)及び巻取温度(T)は、下記の関係式4を満たすことができる。
【0062】
[関係式4]
10≦-101.9+0.103×[T]+0.0339×[T]-61.9×[C]-190.2×[Nb]≦20
【0063】
上記関係式4において、[T]、[T]及び[T]は、それぞれスラブ加熱温度(T、℃)、仕上げ圧延温度(T、℃)及び巻取温度(T、℃)を意味し、[C]及び[Nb]は、それぞれ上記熱延鋼板に含まれる炭素(C)及びニオブ(Nb)の含量(重量%)を意味する。
【0064】
鋼スラブの準備及び加熱
所定の合金組成を有する鋼スラブを準備する。本発明の鋼スラブは、上述の熱延鋼板と対応する合金組成を備えるため、鋼スラブの合金組成に関する説明は、上述した熱延鋼板の合金組成に対する説明に代わる。
【0065】
準備された鋼スラブを1100℃~1300℃の加熱温度(T)で加熱することができる。熱間圧延時の圧延負荷を考慮して、鋼スラブは1100℃以上の温度範囲で加熱することができる。特に、本発明では、一定サイズ以上の微細組織を導入しようとするため、好ましい鋼スラブの加熱温度は1200℃以上であってよい。より好ましい鋼スラブ加熱温度は1250℃以上であってよい。一方、鋼スラブ加熱温度が過度に高い場合、スケールの生成による表面品質の低下が懸念されるため、本発明では、鋼スラブの加熱温度を1300℃以下に制限することができる。
【0066】
熱間圧延
加熱された鋼スラブを900℃~1000℃の仕上げ圧延温度(T)で熱間圧延して熱延鋼板を提供することができる。本発明の熱間圧延によって提供される鋼板は、10μm以上の厚さを有するものであってよい。
【0067】
熱間圧延時、素材が圧延されながら結晶粒は変形するが、すぐに再結晶する。このような過程を経て粗大かつ不均一であった組織は微細化して均質化される。熱間圧延時の重要な工程変数は、圧延を終えたときの温度である仕上げ圧延温度(Finishing Delivery Temperature、FDT)である。仕上げ圧延温度によって最終微細組織の粒度などが制御できるためである。本発明は、最終微細組織を一定サイズ以上のレベルに制御しようとするため、900℃以上の仕上げ圧延温度で熱間圧延を行うことができる。好ましい仕上げ圧延温度は950℃以上であってよい。一方、仕上げ圧延温度が過度に高い場合、最終微細組織が過度に粗大に実現されることがあるため、本発明では、仕上げ圧延温度の上限を1000℃に制限することができる。
【0068】
巻き取り
熱間圧延により提供された熱延鋼板は、水冷を経た後、600℃~700℃の巻取温度(T)で巻き取ることができる。本発明は、最終組織として、フェライト及びパーライトの複合組織を実現しようとするため、600℃以上の温度範囲で巻き取りを行うことができる。本発明は、一定サイズ以上の最終微細組織を実現しようとするため、650℃以上の温度範囲で巻き取ることがより好ましい。但し、巻取温度が過度に高い場合、粗大な微細組織が形成されたり、表面品質が劣化することがあるため、本発明では、巻取温度の上限を700℃に制限することができる。
【0069】
本発明の発明者は、最終微細組織の粒度を制御するための技術的手段に関連して鋭意研究を行い、本発明の成分系において最終微細組織の粒度制御のためには、鋼スラブ加熱時の加熱温度(T)、熱間圧延時の仕上げ圧延温度(T)及び熱延鋼板の巻き取り時の巻取温度(T)が独立して一定範囲を満たすように制御しなければならず、さらに、仕上げ圧延温度(T)及び巻取温度(T)を互いに連携して一定の範囲内で制御する必要があることを確認し、下記の関係式4を導出するに至った。
【0070】
[関係式4]
10≦-101.9+0.103×[T]+0.0339×[T]-61.9×[C]-190.2×[Nb]≦20
【0071】
上記関係式4において、[T]、[T]及び[T]は、それぞれスラブ加熱温度(T、℃)、仕上げ圧延温度(T、℃)及び巻取温度(T、℃)を意味し、[C]及び[Nb]は、それぞれ上記熱延鋼板に含まれる炭素(C)及びニオブ(Nb)の含量(重量%)を意味する。
【0072】
したがって、本発明の一実施形態に係る真空列車チューブ用熱延鋼板の製造方法は、1100℃~1300℃の加熱温度(T)でスラブを加熱し、900℃~1000℃の仕上げ圧延温度(T)で熱間圧延を行い、600℃~700℃の巻取温度(T)で熱延鋼板を巻き取るだけでなく、仕上げ圧延温度(T)及び巻取温度(T)が関係式4を満たすように工程条件を制御するため、目標とする熱延鋼板の微細組織を効果的に実現することができる。
【0073】
上述の製造方法により製造された熱延鋼板は、下記の関係式1~3を満たすものであってよい。
【0074】
[関係式1]
355≦11+394×D(-0.5)+448×[C]+94×[Si]+69×[Mn]
【0075】
[関係式2]
100≦186-240×D(-0.5)-121×[C]-13.2×[Si]+13.7×[Mn]
【0076】
[関係式3]
27≦476-95.22×ln(D)-220×[C]-88×[Si]
【0077】
上記関係式1~関係式3において、Dは、上記熱延鋼板に含まれるフェライトの平均粒子サイズ(μm)を意味し、[C]、[Si]及び[Mn]は、それぞれ上記熱延鋼板に含まれる炭素(C)、シリコン(Si)及びマンガン(Mn)の含量(重量%)を意味する。
【0078】
上述の製造方法により製造された熱延鋼板は、350MPa以上の降伏強度及び27J以上の-20℃シャルピー衝撃エネルギーを有するだけでなく、長さ×幅×厚さが80×20×2mmである試験片を準備し、曲げ振動モード(flexural vibration mode)で1650Hzの周波数に対して測定した振動減衰比100×10-6以上のレベルを満たすことができる。
【0079】
また、上述の製造方法により製造された熱延鋼板をサブマージドアーク溶接で溶接したとき、溶接部の-20℃基準シャルピー衝撃エネルギーは27J以上であることができ、溶接部に含まれるM-A相の分率は5面積%以下(0%を含む)であってよい。ここで、溶接部は、溶融線(fusion line)から1mm離れた位置を意味することができる。
【0080】
したがって、本発明の一実施形態によれば、降伏強度、振動減衰比及び溶接部低温靭性に優れ、真空列車チューブ用に適した物性を有する熱延鋼板の製造方法を提供することができる。
【実施例
【0081】
以下、具体的な実施例を通じて、本発明の真空列車チューブ用熱延鋼板及びその製造方法についてより詳細に説明する。以下の実施例は、本発明の理解のためのものであり、本発明の権利範囲を特定するためのものではないことに留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項及びこれにより合理的に類推される事項によって決定されることができる。
【0082】
(実施例)
以下の表1の合金組成で備えられる厚さ250mmの鋼スラブを準備した後、表2の工程条件を適用して厚さ15mmの熱延鋼板を製造した。以下の表1に記載されていない合金成分は不純物及び残部Feを意味し、「-」の表示は誤差範囲内で0wt%に近接した場合を意味する。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
各試験片の微細組織及び機械的物性を分析して表3に記載し、各試験片の関係式1~関係式3の満足の可否を表3に併せて記載した。微細組織は、ナイタル(Nital)エッチング法で各試験片をエッチングした後、500倍率の光学顕微鏡を用いて測定した。フェライトの結晶粒サイズはASTM E112に従って測定した。図3は、試験片1の微細組織観察に用いられた光学顕微鏡写真である。KS B 0802及びKS B 0810に従って機械的物性を測定し、測定された降伏強度を表3に併せて記載した。
【0086】
振動減衰比は、長さ×幅×厚さが80×20×2mmの試験片を準備した後、IMCEのRFDA LTV800を使用して常温で測定した。曲げ振動モード(flexural vibration mode)で打撃した後、該当試験片の振動モードのうち1stモードに該当する1650Hz領域の振動減衰比を測定して分析し、その結果を表3に併せて記載した。
【0087】
C:0.052重量%、Mn:1.53重量%、Ni:1.3重量%、Mo:0.135重量%、残りのFe及びその他の不可避不純物を含む溶接材料を用いて各試験片に対するサブマージドアーク溶接を行った。サブマージドアーク溶接の際、内側(inside)には20kJ/cmの入熱量を適用し、外側(outside)には22kJ/cmの入熱量を適用した。KS B 0810に従って溶接部の-20℃シャルピー衝撃靭性を測定し、その結果を表3に記載した。溶融線(fusion line)から1mm離れた領域について、5gのEDTA、0.5gのNaFを蒸留水100mlに溶かした溶液を用いて1次エッチングした後、25gのNaOH、5gのpicric acidを蒸留水100mlに溶かした溶液を用いて2次エッチングを行い、ASTM E 562に従ってM-A相の分率を測定した。
【0088】
【表3】
【0089】
表1~表3に記載されているように、本発明の合金組成、工程条件及び関係式1~4を満たす試験片は、350MPa以上の降伏強度、100×10-6以上の振動減衰比を満たすだけでなく、溶接部の-20℃基準シャルピー衝撃エネルギーが27J以上を満たすのに対し、本発明が制限する条件のうちいずれか一つ以上を満たさない試験片は、目的とする物性を同時に確保できないことが分かる。
【0090】
また、従来材との比較のために、既存の構造用鋼材であるEN-S355についても同じ条件で試験を行い、EN-S355の場合、同じ条件で測定された振動減衰比が60×10-6のレベルに過ぎないことが確認できた。図4は、光学顕微鏡を用いて撮影したEN-S355の微細組織観察写真である。
【0091】
したがって、本発明の一実施形態によれば、降伏強度、振動減衰比及び溶接部低温靭性に優れ、真空列車チューブ用に適した物性を有する熱延鋼板及びその製造方法を提供することができる。
【0092】
以上のように、実施例を通じて本発明について詳細に説明したが、これと異なる形態の実施例も可能である。したがって、以下に記載される特許請求の範囲の技術的思想及び範囲は実施例に限定されない。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】