(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】薄膜太陽電池構造、その製造装置及び製造設備
(51)【国際特許分類】
H01L 31/18 20060101AFI20240814BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20240814BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20240814BHJP
H01L 31/0352 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01L31/04 460
H10K30/50
H10K30/40
H01L31/04 340
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512152
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2021136614
(87)【国際公開番号】W WO2023024323
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202121986052.2
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438869
【氏名又は名称】中国華能集団清潔能源技術研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUANENG CLEAN ENERGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】Lab Block A, Huaneng Base, Beiqijia Future Science Park, Changping District, Beijing 102209, China
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】リー, シンリャン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, ピン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ, ジンギョウ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ, ドンミン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン, ユン
(72)【発明者】
【氏名】キア, ユアン
(72)【発明者】
【氏名】キン, シャオジュン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ, ジャリャン
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA05
5F251AA09
5F251AA10
5F251AA11
5F251FA03
5F251FA04
5F251GA03
(57)【要約】
本出願は薄膜太陽電池構造を提供し、当該薄膜太陽電池構造は、基板上に位置する裏面電極層を備え、第1の基板壁と第1の裏面電極層壁との間の距離、及び第2の基板壁と第2の裏面電極層壁との間の距離はそれぞれエッジデリーション領域の幅であり、第1の基板壁と第1の積層壁との間の距離、及び第2の基板壁と第2の積層壁との間の距離はそれぞれエッジデリーション領域の幅であり、第1のノッチと第1の基板壁との間の距離、及び第2のノッチと第2の基板壁との間の距離はそれぞれエッジデリーション領域の幅よりも大きい。これにより、レーザーを用いてエッジデリーション領域を形成する時、ノッチとエッジデリーション領域との間には依然としてバリアとして一定の積層が存在し、たとえバリアとしての積層の一部が高エネルギーレーザーの照射によって溶融されてエッジデリーション領域に入ったとしても、エッジデリーション領域と膜層本体部分との間には依然としてバリアとしての積層及びノッチが存在するため、溶融された部分が膜層本体部分に接触することを回避することができ、薄膜太陽電池の膜層間にラップショートが発生するのを効果的に回避し、薄膜太陽電池の性能を効果的に向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜太陽電池構造であって、
基板と、
該基板上に位置する裏面電極層であって、電流の流れ方向に平行な基板壁がそれぞれ第1の基板壁及び第2の基板壁であり、前記電流の流れ方向に平行な裏面電極層壁がそれぞれ第1の裏面電極層壁及び第2の裏面電極層壁であり、前記第1の基板壁と前記第1の裏面電極層壁との間の距離、及び前記第2の基板壁と前記第2の裏面電極層壁との間の距離がそれぞれエッジデリーション領域の幅である裏面電極層と、
該裏面電極層の前記基板から離れる側に設けられる積層であって、前記電流の流れ方向に平行な積層壁がそれぞれ第1の積層壁及び第2の積層壁であり、前記第1の基板壁と前記第1の積層壁との間の距離、及び前記第2の基板壁と前記第2の積層壁との間の距離がそれぞれ前記エッジデリーション領域の幅である積層と、
該積層を貫通して前記裏面電極層に接触する第1のノッチ及び第2のノッチであって、前記第1のノッチ及び前記第2のノッチが前記積層の前記電流の流れ方向に垂直な両端を貫通し、前記第1のノッチと前記第1の基板壁との間の距離、及び前記第2のノッチと前記第2の基板壁との間の距離がそれぞれ前記エッジデリーション領域の幅よりも大きい第1のノッチ及び第2のノッチとを備える、ことを特徴とする薄膜太陽電池構造。
【請求項2】
前記積層は、光電変換機能層及び導電層を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池構造。
【請求項3】
前記光電変換機能層は、電池吸収層、バッファ層及び/又は輸送層を備える、ことを特徴とする請求項2に記載の薄膜太陽電池構造。
【請求項4】
前記基板の材料はガラスであり、前記裏面電極層の材料は導電性金属又は透明な導電性金属酸化物材料である、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池構造。
【請求項5】
前記光電変換機能層の材料は、セレン化銅インジウムガリウム、テルル化カドミウム、アモルファスシリコン又はペロブスカイトを含み、透明な前記導電層の材料は、酸化インジウムスズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛又はフッ素ドープ酸化スズを含む、ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の薄膜太陽電池構造。
【請求項6】
前記ノッチの幅は20~300umである、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池構造。
【請求項7】
薄膜太陽電池構造の製造装置であって、
高エネルギーレーザー光源と、低エネルギーレーザー光源及び機械式エッチングニードルのどちらか一方とを備え、
前記高エネルギーレーザー光源は、高エネルギーレーザーを照射してエッジデリーション領域を形成するために使用され、
前記低エネルギーレーザー光源又は前記機械式エッチングニードルは、ノッチを形成するために使用される、ことを特徴とする薄膜太陽電池構造の製造装置。
【請求項8】
前記機械式エッチングニードルの材料は、タングステン鋼材質又は金剛石材質である、ことを特徴とする請求項7に記載の薄膜太陽電池構造の製造装置。
【請求項9】
前記高エネルギーレーザー光源が照射した前記高エネルギーレーザーのパルスエネルギー範囲は1mJよりも大きく、前記低エネルギーレーザー光源が照射した低エネルギーレーザーのパルスエネルギー範囲は1~300μJである、ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の薄膜太陽電池構造の製造装置。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池構造の製造装置を備える、ことを特徴とする薄膜太陽電池構造の製造設備。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、2021年8月23日に中国特許庁に提出された、出願番号が202121986052.2、発明の名称が「薄膜太陽電池構造、その製造装置及び製造設備」である中国特許出願の優先権を主張し、そのすべての内容は参照により本出願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本出願は、薄膜太陽電池の分野に関し、特に薄膜太陽電池構造、その製造装置及び製造設備に関する。
【背景技術】
【0003】
太陽電池の継続的な発展に伴い、研究開発者はすでに様々な太陽電池を開発した。そのうち、薄膜太陽電池は、光電変換率が高く、性能が優れ、コストが低いなどの利点を持つため、人々の注目を集めている。
【0004】
薄膜太陽電池の製造時に、電池エッジデリーションを行う必要がある。電池エッジデリーションとは、電池のエッジの膜層のすべて又はその一部を選択的に除去することで、電池のエッジの絶縁を確保することを指す。そのうち、電池の端部、即ち電流の流れ方向に平行なベースの端部に対して、エッジデリーションを行ってベース表面のすべての膜層を除去する必要がある。現在、高エネルギーのレーザー照射で膜層を一括除去するのが一般的であるが、レーザーエネルギーが大きいため、エッジデリーション中の熱が高すぎて膜層が溶断しやくなり、薄膜太陽電池の膜層間にラップショートが発生し、薄膜太陽電池の性能に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の課題を解決するために、本出願は、薄膜太陽電池内の膜層間にラップショートが発生するのを回避し、薄膜太陽電池の性能を向上できる薄膜太陽電池構造、その製造装置及び製造設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、本出願の実施例では、基板と、該基板上に位置する裏面電極層であって、電流の流れ方向に平行な基板壁がそれぞれ第1の基板壁及び第2の基板壁であり、前記電流の流れ方向に平行な裏面電極層壁がそれぞれ第1の裏面電極層壁及び第2の裏面電極層壁であり、前記第1の基板壁と前記第1の裏面電極層壁との間の距離、及び前記第2の基板壁と前記第2の裏面電極層壁との間の距離がそれぞれエッジデリーション領域の幅である裏面電極層と、該裏面電極層の前記基板から離れる側に設けられる積層であって、前記電流の流れ方向に平行な積層壁がそれぞれ第1の積層壁及び第2の積層壁であり、前記第1の基板壁と前記第1の積層壁との間の距離、及び前記第2の基板壁と前記第2の積層壁との間の距離がそれぞれ前記エッジデリーション領域の幅である積層と、該積層を貫通して前記裏面電極層に接触する第1のノッチ及び第2のノッチであって、前記第1のノッチ及び前記第2のノッチが前記積層の前記電流の流れ方向に垂直な両端を貫通し、前記第1のノッチと前記第1の基板壁との間の距離、及び前記第2のノッチと前記第2の基板壁との間の距離がそれぞれ前記エッジデリーション領域の幅よりも大きい第1のノッチ及び第2のノッチとを備える、薄膜太陽電池構造が提供される。
【0007】
選択可能に、前記積層は、光電変換機能層及び導電層を備えていてもよい。
【0008】
選択可能に、前記光電変換機能層は、電池吸収層、バッファ層及び/又は輸送層を備えていてもよい。
【0009】
選択可能に、前記基板の材料はガラスであり、前記裏面電極層の材料は、導電性金属又は透明な導電性金属酸化物材料であってもよい。
【0010】
選択可能に、前記光電変換機能層の材料は、セレン化銅インジウムガリウム、テルル化カドミウム、アモルファスシリコン又はペロブスカイトを含み、透明な前記導電層の材料は、酸化インジウムスズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛又はフッ素ドープ酸化スズを含んでいてもよい。
【0011】
選択可能に、前記ノッチの幅は20~300umであってもよい。
【0012】
第2の態様によれば、本出願の実施例では、高エネルギーレーザー光源と、低エネルギーレーザー光源及び機械式エッチングニードルのどちらか一方とを備え、前記高エネルギーレーザー光源は、高エネルギーレーザーを照射してエッジデリーション領域を形成するために使用され、前記低エネルギーレーザー光源又は前記機械式エッチングニードルは、ノッチを形成するために使用される、薄膜太陽電池構造の製造装置が提供される。
【0013】
選択可能に、前記機械式エッチングニードルの材料は、タングステン鋼材質又は金剛石材質であってもよい。
【0014】
選択可能に、前記高エネルギーレーザー光源が照射する前記高エネルギーレーザーのパルスエネルギー範囲は1mJよりも大きく、前記低エネルギーレーザー光源が照射する低エネルギーレーザーのパルスエネルギー範囲は1~300uJであってもよい。
【0015】
第3の態様によれば、本出願の実施例では、上記の薄膜太陽電池構造の製造装置を備える、薄膜太陽電池構造の製造設備が提供される。
【発明の効果】
【0016】
従来技術と比べて、本出願は少なくとも以下の利点を有する。
【0017】
本出願は、薄膜太陽電池構造、その製造装置及び製造設備を提供し、当該薄膜太陽電池構造は、基板と、基板上に位置する裏面電極層であって、電流の流れ方向に平行な基板壁がそれぞれ第1の基板壁及び第2の基板壁であり、電流の流れ方向に平行な裏面電極層壁がそれぞれ第1の裏面電極層壁及び第2の裏面電極層壁であり、第1の基板壁と第1の裏面電極層壁との間の距離、及び第2の基板壁と第2の裏面電極層壁との間の距離がそれぞれエッジデリーション領域の幅である裏面電極層と、裏面電極層の基板から離れる側に設けられる積層であって、電流の流れ方向に平行な積層壁がそれぞれ第1の積層壁及び第2の積層壁であり、第1の基板壁と第1の積層壁との間の距離、及び第2の基板壁と第2の積層壁との間の距離がそれぞれエッジデリーション領域の幅である積層と、積層を貫通して裏面電極層に接触する第1のノッチ及び第2のノッチであって、第1のノッチ及び第2のノッチが積層の電流の流れ方向に垂直な両端を貫通し、第1のノッチと第1の基板壁との間の距離、及び第2のノッチと第2の基板壁との間の距離がそれぞれエッジデリーション領域の幅よりも大きい第1のノッチ及び第2のノッチと、を備える。第1のノッチと第1の基板壁との間の距離、及び第2のノッチと第2の基板壁との間の距離がそれぞれエッジデリーション領域の幅よりも大きいため、ノッチとエッジデリーション領域との間には依然としてバリアとして一定の積層が存在し、たとえバリアとしての積層の一部が高エネルギーレーザーの照射によって溶融されてエッジデリーション領域に入ったとしても、エッジデリーション領域と膜層本体部分との間に依然としてバリアとしての積層及びノッチが存在するため、溶融された部分が膜層本体部分に接触することを回避することができ、薄膜太陽電池の膜層間にラップショートが発生するのを効果的に回避し、薄膜太陽電池の性能を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本出願の実施例又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明し、以下の説明における図面が本出願の一部の実施例に過ぎないことは明らかであり、当業者であれば、創作的な尽力なしに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0019】
【
図1】本出願の実施例に係る薄膜太陽電池構造の断面図である。
【
図2】本出願の実施例に係る薄膜太陽電池構造の上面図である。
【
図3】本出願の実施例に係る薄膜太陽電池内の積層の具体的な構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本出願の上記目的、特徴及び利点をより分かりやすくするために、以下、図面を参照して本出願の具体的な実施形態を詳しく説明する。
【0021】
以下の説明では、本出願を十分に理解するために多くの詳細が示されているが、本出願は、ここで説明される方式と異なる他の方式で実施することができ、当業者であれば、本出願の趣旨に違反せず類似の普及を行うことができ、そのため、本出願は以下で開示された具体的な実施例によって限定されない。
【0022】
背景技術で説明したとおり、太陽電池の継続的な発展に伴い、研究開発者はすでに様々な太陽電池を開発した。そのうち、薄膜太陽電池は、光電変換率が高く、性能が優れ、コストが低いなどの利点を持つため、人々の注目を集めている。
【0023】
薄膜太陽電池の製造時に、電池エッジデリーションを行う必要があり、電池エッジデリーションとは、電池のエッジの膜層のすべて又はその一部を選択的に除去することで、電池エッジの絶縁を確保することを指す。そのうち、電池の端部、即ち電流の流れ方向に平行なベースの端部に対して、エッジデリーションを行ってベース表面のすべての膜層を除去する必要がある。現在、高エネルギーのレーザー照射で膜層を一括除去するのが一般的であるが、レーザーエネルギーが大きいため、エッジデリーション中の熱が高すぎて膜層が溶断しやくなり、薄膜太陽電池の膜層間にラップショートが発生し、薄膜太陽電池の性能に影響を与える。
【0024】
上記の課題を解決するために、本出願は、薄膜太陽電池構造、その製造装置及び製造設備を提供し、当該薄膜太陽電池構造は、基板と、基板上に位置する裏面電極層であって、電流の流れ方向に平行な基板壁がそれぞれ第1の基板壁及び第2の基板壁であり、電流の流れ方向に平行な裏面電極層壁がそれぞれ第1の裏面電極層壁及び第2の裏面電極層壁であり、第1の基板壁と第1の裏面電極層壁との間の距離、及び第2の基板壁と第2の裏面電極層壁との間の距離がそれぞれエッジデリーション領域の幅である裏面電極層と、裏面電極層の基板から離れる側に設けられる積層であって、電流の流れ方向に平行な積層壁がそれぞれ第1の積層壁及び第2の積層壁であり、第1の基板壁と第1の積層壁との間の距離、及び第2の基板壁と第2の積層壁との間の距離がそれぞれエッジデリーション領域の幅である積層と、積層を貫通して裏面電極層に接触する第1のノッチ及び第2のノッチであって、第1のノッチ及び第2のノッチが積層の電流の流れ方向に垂直な両端を貫通し、第1のノッチと第1の基板壁との間の距離、及び第2のノッチと第2の基板壁との間の距離がそれぞれエッジデリーション領域の幅よりも大きい第1のノッチ及び第2のノッチと、を備える。第1のノッチと第1の基板壁との間の距離、及び第2のノッチと第2の基板壁との間の距離がそれぞれエッジデリーション領域の幅よりも大きいため、ノッチとエッジデリーション領域との間には依然としてバリアとして一定の積層がされ、たとえバリアとしての積層の一部が高エネルギーレーザーの照射によって溶融されてエッジデリーション領域に入ったとしても、エッジデリーション領域と膜層本体部分との間に依然としてバリアとしての積層及びノッチが存在するため、溶融された部分が膜層本体部分に接触することを回避することができ、薄膜太陽電池の膜層間にラップショートが発生するのを効果的に回避し、薄膜太陽電池の性能を効果的に向上させることができる。
【0025】
本出願の技術案及び技術的効果をよりよく理解するために、以下、図面に合わせて具体的な実施例を詳しく説明する。
【0026】
(例示的な構造)
図1は、本出願の実施例に係る薄膜太陽電池構造の断面図を示し、
図1に示すように、当該構造は、基板101と、裏面電極層102と、積層103と、第1のノッチ1041及び第2のノッチ1042と、を備える。
【0027】
本出願の実施例では、基板101の材料がガラスであってもよく、本出願の実施例では基板の材料が特に限定されず、当業者が実際の状況に応じて設定することができる。
【0028】
裏面電極層102は、基板101上に位置し、電流の流れ方向に平行な基板壁がそれぞれ第1の基板壁1011及び第2の基板壁1012であり、電流流れ方向に平行な裏面電極層壁がそれぞれ第1の裏面電極層壁1021及び第2の裏面電極層壁1022であり、第1の基板壁1011と第1の裏面電極層壁1021との間の距離と、第2の基板壁1012と第2の裏面電極層壁1022との間の距離とが同じであり且つそれぞれエッジデリーション領域の幅w0及びw1である。
【0029】
図1のIが電流流れ方向を示し、具体的には
図2を参照されたく、
図2が本出願の実施例に係る薄膜太陽電池構造の上面図を示し、Iが電流流れ方向を示す。選択可能に、裏面電極層の材料が導電性金属又は透明な導電性金属酸化物材料であってもよい。
【0030】
積層103は、裏面電極層102の基板101から離れる側に設けられ、電流の流れ方向に平行な積層壁がそれぞれ第1の積層壁1031及び第2の積層壁1032であり、第1の基板壁1011と第1の積層壁1031との間の距離、及び第2の基板壁1012と第2の積層壁1032との間の距離がそれぞれエッジデリーション領域の幅w0及びw1である。
【0031】
選択可能に、
図3に示すように、積層103は、光電変換層103A及び導電層103Bを備えることができる。選択可能に、光電変換層103Aの材料はセレン化銅インジウムガリウム、テルル化カドミウム、アモルファスシリコン又はペロブスカイトであってもよく、導電層103Bの材料は金、銀、銅、アルミニウム、酸化インジウムスズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛又はフッ素ドープ酸化スズなどであってもよい。なお、本出願の実施例では、各膜層の材料が特に限定されず、上記の材料は単に例示するものであり、具体的には、当業者が実際に状況に応じて設定することができる。
【0032】
選択可能に、光電変換機能層は、電池吸収層、バッファ層及び/又は輸送層(図示せず)を備えることができ、例えば、電池吸収層の材料がセレン化銅インジウムガリウムである場合、光電変換機能層は、材料が硫化カドミウムであるバッファ層をさらに備えてもよく、電池吸収層の材料がペロブスカイトである場合、光電変換機能層は、電子輸送層及び正孔輸送層をさらに備えてもよい。
【0033】
第1のノッチ1041及び第2のノッチ1042は、積層103を貫通して裏面電極層102に接触し、且つ第1のノッチ1041及び第2のノッチ1042は積層103の電流流れ方向に垂直な両端を貫通し、第1のノッチ1041と第1の基板壁1011との間の距離w2、及び第2のノッチ1042と第2の基板壁1012との間の距離w3は、それぞれエッジデリーション領域の幅w1よりも大きい。選択可能に、第1のノッチ1041及び第2のノッチ1042の幅は同じであってもよく、20~300umであってもよい。
【0034】
なお、上記のエッジデリーション領域の幅w0、w1、第1のノッチ1041と第1の基板壁1011との間の距離w2、及び第2のノッチ1042と第2の基板壁1012との間の距離w3について、本出願の実施例ではw0、w1、w2及びw3間のサイズ関係のみが例を挙げて説明されたが、w0、w1、w2及びw3の具体的な数値が特に限定されず、具体的には当業者が実際の状況に応じて限定することができる。
【0035】
選択可能に、本出願の実施例では、電池の流れ方向に平行な基板の端部の膜層のみに対してエッジデリーションを行って、エッジデリーション領域を形成したが、基板の4つの端部の膜層に対してエッジデリーションを行って、基板上の4つの端部にはエッジデリーション領域を有する薄膜太陽電池構造を形成してもよい。本出願の実施例ではこれに限定されず、具体的には当業者が実際の状況に応じて設定することができる。
【0036】
選択可能に、第1のノッチ1041と第1の基板壁1011との間の距離w2と、第2のノッチ1042と第2の基板壁1012との間の距離w3とが等しくてもよい。エッジデリーション領域の幅w0及びw1は等しくてもよい。第1のノッチ1041と第1の基板壁1011との間の距離w2、及び第2のノッチ1042と第2の基板壁1012との間の距離w3がそれぞれエッジデリーション領域の幅w1よりも大きいため、高エネルギーレーザーを用いてエッジデリーション領域を形成する時、ノッチとエッジデリーション領域との間には依然としてバリアとして一定の積層がされ、たとえバリアとしての積層の一部が高エネルギーレーザーの照射によって溶融されてエッジデリーション領域に入ったとしても、エッジデリーション領域と膜層本体部分との間に依然としてバリアとしての積層及びノッチが存在するため、溶融された部分が膜層本体部分に接触することを回避することができ、薄膜太陽電池の膜層間にラップショートが発生するのを効果的に回避し、薄膜太陽電池の性能を効果的に向上させることができる。
【0037】
(例示的な装置)
上記の薄膜太陽電池構造に基づいて、本出願の実施例は、高エネルギーレーザー光源と、低エネルギーレーザー光源及び機械式エッチングニードルの一方と、を備える、薄膜太陽電池構造の製造装置をさらに提供する。
【0038】
低エネルギーレーザー光源又は機械式エッチングニードルはノッチを形成するために使用され、低エネルギーレーザー光源又は機械式エッチングニードルを用いてノッチを形成するのは積層内の膜層の熔断を引き起こすことはなく、膜層の熔断によるラップショートを回避することができる。
【0039】
高エネルギーレーザー光源は高エネルギーレーザーを照射して前記エッジデリーション領域を形成するために使用され、第1のノッチと第1の基板壁との間の距離、及び第2のノッチと第2の基板壁との間の距離がそれぞれエッジデリーション領域の幅よりも大きいため、ノッチとエッジデリーション領域との間には依然としてバリアとして一定の積層が存在し、たとえバリアとしての積層の一部が高エネルギーレーザーの照射によって溶融されてエッジデリーション領域に入ったとしても、エッジデリーション領域と膜層本体部分との間に依然としてバリアとしての積層及びノッチが存在するため、溶融された部分が膜層本体部分に接触することを回避することができ、薄膜太陽電池の膜層間にラップショートが発生するのを効果的に回避し、薄膜太陽電池の性能を効果的に向上させることができる。
【0040】
選択可能に、本出願の実施例に係る高エネルギーレーザー光源のパルスエネルギーの範囲は1mJよりも大きくてもよく、低エネルギーレーザー光源の単一パルスエネルギー範囲は1~300uJであってもよい。選択可能に、本出願の実施例に係る機械式エッチングニードルの直径は20~300umであってもよく、機械式エッチングニードルの材料はタングステン鋼材質又は金剛石材質であってもよい。
【0041】
例示的な装置の部分で提供される薄膜太陽電池構造の製造装置を用いることにより、当該製造装置によって加工製造された薄膜太陽電池は、導電層と裏面電極層とのラップショートによる電池漏電の問題が発生しないため、太陽電池のより信頼的な性能が確保される。
【0042】
(例示的な製造設備)
本実施例は、例示的な装置の部分で提供される薄膜太陽電池構造の製造装置を備える薄膜太陽電池構造の製造設備を提供する。
【0043】
例示的な装置の部分で提供される薄膜太陽電池構造の製造装置を用いることにより、当該製造設備によって加工製造される薄膜太陽電池は、導電層と裏面電極層とのラップショートによる電池漏電の問題が発生しないため、太陽電池のより信頼的な性能が確保される。
【0044】
本明細書内の各実施例は少しずつ進める方式で説明され、各実施例の間の同じや類似の部分は互いに参照可能であり、各実施例は他の実施例との相違点を中心に説明した。
【0045】
上記の説明は本出願の好ましい実施形態に過ぎず、本出願は好ましい実施例により以上のように開示されたが、本出願を限定することは意図されていない。当業者であれば、本出願の技術案の範囲から逸脱しない限り、上記開示された方法及び技術内容を用いて本出願の技術案に対して様々な変更及び修正を行ったり、同等変更された実施例に修正したりすることができる。従って、本出願の技術案から逸脱の内容から逸脱しない限り、本出願の技術的本質に従って以上の実施例に対して行ったあらゆる単純な修正、同等の変更及び置き換えは依然として本出願の技術案の保護範囲内に属する。
【国際調査報告】