(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-21
(54)【発明の名称】細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240814BHJP
C12N 5/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
C12N5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513077
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 CN2022114503
(87)【国際公開番号】W WO2023025192
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110998251.3
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522043220
【氏名又は名称】アベルゼータ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ワン,フェイ
(72)【発明者】
【氏名】シェ,リ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リ
(72)【発明者】
【氏名】レン,ジアチャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ディジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,イウェン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB11
4B029DG01
4B029DG06
4B029DG10
4B029GB02
4B029HA05
4B065AA93X
4B065BB03
4B065BB19
4B065BB25
4B065BC11
4B065BD09
4B065BD12
4B065CA44
(57)【要約】
細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置および方法。装置は、試料供給モジュールと、液体補充モジュールと、液体分配モジュールとを備える。この装置により、細胞分注を密閉状態で行うことができ、外部環境との接触による感染リスクが低減され、分注された細胞の生存率が確保されるため、分注後に得られる細胞の精度が高くなり、分注された細胞の品質が向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料供給モジュールと、液体補充モジュールと、液体分配モジュールとを備えることを特徴とする、細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置であって、
前記試料供給モジュールは、細胞試料容器を備え、
前記液体補充モジュールは、複数の液体補充手段を備え、前記液体補充手段は、複数の液体補充容器を備え、
前記液体分配モジュールは、液体分配器を備え、前記液体分注器には、接続された試料供給管、液体出口管、抽出管、廃液管、および液体補充管が設けられ、前記試料供給管、前記液体出口管、前記抽出管、前記廃液管、および前記液体補充管は連通し、前記試料供給管、前記液体出口管、前記抽出管、前記廃液管、および前記液体補充管にはそれぞれバルブが設けられ、
前記試料供給管は前記細胞試料容器に接続され、前記液体出口管は細胞冷凍容器に接続され、前記抽出管は抽出装置に接続され、前記廃液管は廃液容器に接続され、前記液体補充管は複数の分岐管を介して前記複数の液体補充容器に順次接続され、各分岐管にはバルブが設けられている、装置。
【請求項2】
前記液体補充容器の数は2つであり、前記2つの異なる液体補充容器は、それぞれ液体補充構成要素1および液体補充構成要素2を収容し、前記液体補充構成要素1は化合物電解質注射液およびヒト血清アルブミン水溶液を含み、前記液体補充構成要素2はCS10凍結保存液を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記化合物電解質注射液は、3~7重量部の塩化ナトリウム、3~7重量部のグルコン酸ナトリウム、2~6重量部の酢酸ナトリウム、0.1~0.8重量部の塩化カリウム、0.1~0.6重量部の塩化マグネシウム、および950~1,050重量部の水を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ヒト血清アルブミン水溶液中のヒト血清アルブミン濃度が15~25%(v/v)である、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記抽出装置は、液体を吸引して圧送することができる請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記化合物電解質注射液の前記ヒト血清アルブミン水溶液に対する前記体積比が、(80~120):1、好ましくは(90~110):1、より好ましくは(95~105):1である、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記CS10凍結保存液が、8~12%(v/v)DMSO水溶液を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置を使用して細胞懸濁液を調製する方法であって、以下のステップ、すなわち、
(1)前記細胞試料容器に細胞試料を収容させ、2つの異なる液体補充容器に、それぞれ液体補充構成要素1および液体補充構成要素2を収容させ、
前記液体補充構成要素1は化合物電解質注射液およびヒト血清アルブミン水溶液を含み、前記液体補充構成要素2はCS10凍結保存液を含むステップと、
(2)前記細胞試料容器の前記細胞試料を、前記抽出装置の吸引に基づいて前記試料供給管および前記抽出管により前記抽出装置内に送り、その後、前記細胞試料を、前記抽出装置の排出に基づいて前記抽出管および前記廃液管により前記廃液容器内に送って、前記試料供給管、前記抽出管および前記廃液管の管洗浄を行うステップと、
(3)前記細胞試料容器の前記細胞試料を、前記抽出装置の吸引に基づいて前記試料供給管および前記抽出管により前記抽出装置内に送り、その後、前記細胞試料を、前記抽出装置の排出に基づいて前記抽出管および前記液体出口管により前記細胞冷凍容器内に送るステップと、
(4)前記液体補充容器の前記液体補充構成要素1を、前記抽出装置の吸引に基づいて前記液体補充管および前記抽出管により前記抽出装置内に送り、その後、前記液体補充構成要素1を、前記抽出装置の排出に基づいて前記抽出管および前記液体出口管によって前記細胞冷凍容器内に送るステップと、
その他の液体補充容器の前記液体補充構成要素2を、前記抽出装置の吸引に基づいて前記液体補充管および前記抽出管により前記抽出装置内に送り、その後、前記液体補充構成要素2を、前記抽出装置の排出に基づいて前記抽出管および前記液体出口管によって前記細胞冷凍容器内に送るステップと
を含み、
ステップ(4)では、前記液体補充構成要素1および前記液体補充構成要素2を、前記細胞冷凍容器内に順次送り、前記液体補充構成要素1と前記液体補充構成要素2との前記体積比は1:1であること
を特徴とする、方法。
【請求項9】
所望の細胞密度を伴う細胞懸濁液を得るために、ステップ(5):ステップ(4)において前記細胞冷凍容器の細胞をカウントするステップと、前記細胞密度が大きい場合にはステップ(4)の前記動作に従って液体補充を実施するステップと、前記細胞密度が小さい場合にはステップ(2)の前記動作に従って前記細胞試料を補充するステップとをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
分注ステップ(6)をさらに含み、前記ステップは、前記細胞懸濁液を収容した前記細胞冷凍容器を前記試料供給管に接続するステップと、前記廃液管を分注バッグに接続するステップとを含み、
前記細胞冷凍容器の前記細胞懸濁液は、前記抽出装置の吸引に基づいて前記試料供給管および前記抽出管によって前記抽出装置内に送られ、その後、前記細胞懸濁液は、前記抽出装置の排出に基づいて前記抽出管および前記廃液管によって前記分注バッグ内に送られ、前記分注バッグを変更することにより、前記細胞懸濁液の複数回の分注が実現される、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物電解質注射液は、3~7重量部の塩化ナトリウム、3~7重量部のグルコン酸ナトリウム、2~6重量部の酢酸ナトリウム、0.1~0.8重量部の塩化カリウム、0.1~0.6重量部の塩化マグネシウム、および950~1,050重量部の水を含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学の技術分野に関し、具体的には、細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞免疫療法は、患者の免疫細胞を採取し、遺伝子改変およびインビトロ増幅培養を行うことにより、免疫細胞の標的化能、致死率および持続性を高めるための細胞療法である。近年、この治療法は、腫瘍免疫療法において大きな臨床成績を有しており、腫瘍の臨床的治癒が期待されている。しかしながら、調製した免疫細胞を洗浄し、濃縮し、複数の冷凍バッグに分注する必要があり、細胞を分注するプロセスフロー、設備および施設、試薬の選択等の中間リンクは、分注された細胞の品質に影響を及ぼし、それによって臨床効果に影響を及ぼす。したがって、免疫細胞の完全密閉および完全自動分注のためのプロセスは、製品の安全性およびバッチ間の安定性を確保し、ヒトおよび環境によって引き起こされる影響を低減し、免疫細胞療法製品の品質を改善することができる。従来の細胞分注は、人工および非密閉条件下でのみ実行することができ、それによって外部環境との接触による感染のリスクを高め、製品の安全性に大きく影響する。
【0003】
したがって、免疫細胞の完全密閉および完全自動分注のための方法を当分野で開発する必要があり、これは臨床使用のための高品質の免疫細胞を迅速に得るために使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、臨床使用のために高品質の免疫細胞を迅速に得るために使用することができる、免疫細胞の完全密閉および完全自動分注のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置を提供する。装置は、試料供給モジュールと、液体補充モジュールと、液体分配モジュールとを備え、
試料供給モジュールは、細胞試料容器(細胞試料バッグ等)を備え、
液体補充モジュールは、複数の液体補充手段を備え、液体補充手段は、複数の液体補充容器(例えば、液体補充バッグ(8-1、8-2))を備え、
液体分配モジュールは、液体分配器を備え、液体分注器には、接続された試料供給管、液体出口管、抽出管、廃液管および液体補充管が設けられ、試料供給管、液体出口管、抽出管、廃液管および液体補充管は連通し、試料供給管、液体出口管、抽出管、廃液管および液体補充管にはそれぞれバルブが設けられ、
試料供給管は細胞試料容器(細胞試料バッグ等)に接続され、液体出口管は細胞冷凍容器(細胞冷凍バッグ(7)等)に接続され、抽出管は抽出装置(1)に接続され、廃液管は廃液容器(廃液バッグ(6)等)に接続され、液体補充管は複数の分岐管を介して複数の液体補充容器(液体補充バッグ等)に順次接続され、各分岐管にはバルブが設けられている。
【0006】
別の好ましい実施形態では、液体補充容器(液体補充バッグ等)の数は、1、2、3、4、5、6、7、または8である。
【0007】
別の好ましい実施形態では、液体補充容器(液体補充バッグ等)の数は2つであり、2つの異なる液体補充容器(液体補充バッグ等)は、それぞれ液体補充構成要素1および液体補充構成要素2を収容する。好ましくは、液体補充構成要素1は化合物電解質注射液およびヒト血清アルブミン水溶液を含み、液体補充構成要素2はCS10凍結保存液を含む。
【0008】
別の好ましい実施形態では、細胞試料容器(細胞試料バッグ等)は細胞試料を収容する。
【0009】
別の好ましい実施形態では、化合物電解質注射液は、3~7重量部の塩化ナトリウム、3~7重量部のグルコン酸ナトリウム、2~6重量部の酢酸ナトリウム、0.1~0.8重量部の塩化カリウム、0.1~0.6重量部の塩化マグネシウム、および950~1,050重量部の水を含む。
【0010】
別の好ましい実施形態では、ヒト血清アルブミン水溶液中のヒト血清アルブミンの濃度は、15~25%(v/v)、好ましくは18~22%(v/v)である。
【0011】
別の好ましい実施形態では、化合物電解質注射液のヒト血清アルブミン水溶液に対する体積比は、(80~120):1、好ましくは(90~110):1、より好ましくは(95~105):1である。
【0012】
別の好ましい実施形態では、CS10凍結保存液はDMSO水溶液を含む。
【0013】
別の好ましい実施形態では、CS10凍結保存液は、8~12%(v/v)DMSO水溶液を含む。
【0014】
別の好ましい実施形態では、抽出装置は、液体を吸引し、液体を圧送することができる。
【0015】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に記載の装置を使用して細胞懸濁液を調製する方法を提供する。本方法は、以下のステップを含む、すなわち、
(1)細胞試料容器(細胞試料バッグ等)に細胞試料を収容させ、2つの異なる液体補充容器(液体補充バッグ等)に、それぞれ液体補充構成要素1および液体補充構成要素2を収容させ、
液体補充構成要素1は化合物電解質注射液およびヒト血清アルブミン水溶液を含み、液体補充構成要素2はCS10凍結保存液を含むステップ、
(2)細胞試料容器(例えば、細胞試料バッグ)の細胞試料を、抽出装置の吸引に基づいて試料供給管および抽出管により抽出装置内に送り、その後、細胞試料を、抽出装置の排出に基づいて抽出管および廃液管により廃液容器(例えば、廃液バッグ)内に送って、試料供給管、抽出管および廃液管の管洗浄を行うステップ、
(3)細胞試料容器(細胞試料バッグ等)の細胞試料を、抽出装置の吸引に基づいて試料供給管および抽出管により抽出装置内に送り、その後、細胞試料を、抽出装置の排出に基づいて抽出管および液体出口管により細胞冷凍容器(細胞冷凍バッグ等)内に送るステップ、
(4)液体補充容器(液体補充バッグ等)の液体補充構成要素1を、抽出装置の吸引に基づいて液体補充管および抽出管により抽出装置内に送り、その後、液体補充構成要素1を、抽出装置の排出に基づいて抽出管および液体出口管によって細胞冷凍容器(細胞冷凍バッグ等)内に送るステップ、
ならびに、その他の液体補充容器(その他の液体補充バッグ等)の液体補充構成要素2を、抽出装置の吸引に基づいて液体補充管および抽出管により抽出装置内に送り、その後、液体補充構成要素2を、抽出装置の排出に基づいて抽出管および液体出口管によって細胞冷凍容器(細胞冷凍バッグ等)内に送るステップであり、
ステップ(4)では、液体補充構成要素1および液体補充構成要素2を、細胞冷凍容器(例えば、細胞冷凍バッグ)内に順次送り、液体補充構成要素1と液体補充構成要素2との体積比は1:1である。
【0016】
別の好ましい実施形態では、本方法は、所望の細胞密度を伴う細胞懸濁液を得るために、ステップ(5):ステップ(4)において細胞冷凍容器(細胞冷凍バッグ等)の細胞をカウントするステップ、細胞密度が大きい場合にはステップ(4)の動作に従って液体補充を実施するステップ、および細胞密度が小さい場合にはステップ(2)の動作に従って細胞試料を補充するステップをさらに含む。
【0017】
別の好ましい実施形態では、本方法は、分注ステップ(6)をさらに含み、このステップは、細胞懸濁液を収容した細胞冷凍容器(細胞冷凍バッグ等)を試料供給管に接続するステップ、および廃液管を分注バッグに接続するステップを含み、
細胞冷凍容器(例えば、細胞冷凍バッグ)の細胞懸濁液は、抽出装置の吸引に基づいて試料供給管および抽出管によって抽出装置内に送られ、その後、細胞懸濁液は、抽出装置の排出に基づいて抽出管および廃液管によって分注バッグ内に送られ、分注バッグを変更することにより、細胞懸濁液の複数回の分注が実現される。
【0018】
別の好ましい実施形態では、分注ステップ(6)は、ステップ(5)の後に実行される。
【0019】
別の好ましい実施形態では、化合物電解質注射液は、3~7重量部の塩化ナトリウム、3~7重量部のグルコン酸ナトリウム、2~6重量部の酢酸ナトリウム、0.1~0.8重量部の塩化カリウム、0.1~0.6重量部の塩化マグネシウム、および950~1,050重量部の水を含む。
【0020】
本発明の範囲内で、本発明の上記の技術的特徴および以下に具体的に説明する技術的特徴(実施例等)を互いに組み合わせて、新しいまたは好ましい技術的スキームを形成することができることを理解されたい。スペースが限られているため、本明細書では詳細を説明しない。
【0021】
図面は、例示的な説明のためにのみ使用され、実用新案の限定として解釈されるべきではない。実施例をよりよく説明するために、図面のいくつかの部分は、製品の実際のサイズを表すものではなく、省略、拡大、または縮小されてもよい。当業者にとっては、図面におけるいくつかの周知の構造および説明が省略され得ることは理解されよう。同じまたは類似のラベルは、同じまたは類似の部分に対応する。図面における位置関係を説明するために使用される用語は、例示的な説明のためにのみ使用され、本特許の限定として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一例における細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置の構造概略図であり、8-1および8-2は液体補充バッグを表し、5は試料供給管を表し、1は抽出装置を表し、6は廃液バッグを表し、7は細胞冷凍容器(細胞冷凍バッグ等)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者は、広範かつ詳細な研究を通じて、予期せぬことに、細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置および方法を初めて開発した。本方法により、細胞分注を密閉条件下で行うことができ、外部環境との接触による感染のリスクが低減される。本発明の細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置および方法によれば、分注された細胞の生存率を確保することができ、分注後に得られる細胞の精度が高く、分注された細胞の品質が向上する。これにより、本発明者は本発明を完成するに至った。
【0024】
用語
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「含む(include)」、「備える(comprise)」、および「収容する(contain)」という用語は互換的に使用されてもよく、これには、オープンな定義だけでなく、半クローズドおよびクローズドの定義も含まれる。換言すれば、用語は、「...からなる」および「基本的に...からなる」を含む。
【0026】
装置
説明を簡便にするために、本発明の細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置を、
図1を参照して以下でさらに説明する。本発明において、図面は本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0027】
典型的には、本発明における細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置は、試料供給モジュールと、液体補充モジュールと、液体分配モジュールとを含み、
試料供給モジュールは、細胞試料容器(細胞試料バッグ等)を含み、
液体補充モジュールは、複数の液体補充手段を含み、液体補充手段は、複数の液体補充容器(例えば、液体補充バッグ(8-1、8-2))を含み、
液体分配モジュールは、液体分配器を含み、液体分注器には、接続された試料供給管、液体出口管、抽出管、廃液管および液体補充管が設けられ、試料供給管、液体出口管、抽出管、廃液管および液体補充管は連通し、試料供給管、液体出口管、抽出管、廃液管および液体補充管にはそれぞれバルブが設けられ、
試料供給管は細胞試料容器(細胞試料バッグ等)に接続され、液体出口管は細胞冷凍容器(細胞冷凍バッグ(7)等)に接続され、抽出管は抽出装置(1)に接続され、廃液管は廃液容器(廃液バッグ(6)等)に接続され、液体補充管は複数の分岐管を介して複数の液体補充容器(液体補充バッグ等)に順次接続され、各分岐管にはバルブが設けられている。
【0028】
本発明の好ましい一実施形態では、液体補充容器(液体補充バッグ等)の数は、1、2、3、4、5、6、7、または8である。
【0029】
本発明の別の好ましい実施形態では、液体補充容器(液体補充バッグ等)の数は2つであり、2つの異なる液体補充容器(液体補充バッグ等)は、それぞれ液体補充構成要素1および液体補充構成要素2を収容する。好ましくは、液体補充構成要素1は化合物電解質注射液およびヒト血清アルブミン水溶液を含み、液体補充構成要素2はCS10凍結保存液を含む。
【0030】
好ましくは、化合物電解質注射液は、3~7重量部の塩化ナトリウム、3~7重量部のグルコン酸ナトリウム、2~6重量部の酢酸ナトリウム、0.1~0.8重量部の塩化カリウム、0.1~0.6重量部の塩化マグネシウム、および950~1,050重量部の水を含む。
【0031】
別の好ましい実施形態では、ヒト血清アルブミン水溶液中のヒト血清アルブミンの濃度は、15~25%(v/v)、好ましくは18~22%(v/v)である。
【0032】
別の好ましい実施形態では、化合物電解質注射液のヒト血清アルブミン水溶液に対する体積比は、(80~120):1、好ましくは(90~110):1、より好ましくは(95~105):1である。
【0033】
別の好ましい実施形態では、CS10凍結保存液はDMSO水溶液を含む。
【0034】
別の好ましい実施形態では、CS10凍結保存液は、8~12%(v/v)DMSO水溶液を含む。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態では、細胞試料容器(細胞試料バッグ等)は細胞試料を収容する。
【0036】
方法
本発明はさらに、本発明の細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置を使用して細胞を分注する方法を提供する。本方法は、以下のステップを含む、すなわち、
(1)細胞試料容器(細胞試料バッグ等)に細胞試料を収容させ、2つの異なる液体補充容器(液体補充バッグ等)に、それぞれ液体補充構成要素1および液体補充構成要素2を収容させ、
液体補充構成要素1は化合物電解質注射液およびヒト血清アルブミン水溶液を含み、液体補充構成要素2はCS10凍結保存液を含むステップ、
(2)細胞試料容器(例えば、細胞試料バッグ)の細胞試料を、抽出装置の吸引に基づいて試料供給管および抽出管により抽出装置内に送り、その後、細胞試料を、抽出装置の排出に基づいて抽出管および廃液管により廃液容器(例えば、廃液バッグ)内に送って、試料供給管、抽出管および廃液管の管洗浄を行うステップ、
(3)細胞試料容器(細胞試料バッグ等)の細胞試料を、抽出装置の吸引に基づいて試料供給管および抽出管により抽出装置内に送り、その後、細胞試料を、抽出装置の排出に基づいて抽出管および液体出口管により細胞冷凍容器(細胞冷凍バッグ等)内に送るステップ、
(4)液体補充容器(液体補充バッグ等)の液体補充構成要素1を、抽出装置の吸引に基づいて液体補充管および抽出管により抽出装置内に送り、その後、液体補充構成要素1を、抽出装置の排出に基づいて抽出管および液体出口管によって細胞冷凍容器(細胞冷凍バッグ等)内に送るステップ、
ならびに、その他の液体補充容器(その他の液体補充バッグ等)の液体補充構成要素2を、抽出装置の吸引に基づいて液体補充管および抽出管により抽出装置内に送り、その後、液体補充構成要素2を、抽出装置の排出に基づいて抽出管および液体出口管によって細胞冷凍容器(細胞冷凍バッグ等)内に送るステップであり、
ステップ(4)では、液体補充構成要素1および液体補充構成要素2を、細胞冷凍容器(例えば、細胞冷凍バッグ)内に順次送り、液体補充構成要素1と液体補充構成要素2との体積比は1:1である。
【0037】
本発明の好ましい一実施形態では、化合物電解質注射液は、3~7重量部の塩化ナトリウム、3~7重量部のグルコン酸ナトリウム、2~6重量部の酢酸ナトリウム、0.1~0.8重量部の塩化カリウム、0.1~0.6重量部の塩化マグネシウム、および950~1,050重量部の水を含む。
【0038】
本発明の好ましい一実施形態では、本方法は、所望の細胞密度を伴う細胞懸濁液を得るために、ステップ(5):ステップ(4)において細胞冷凍容器(細胞冷凍バッグ等)の細胞をカウントするステップ、細胞密度が大きい場合にはステップ(4)の動作に従って液体補充を実施するステップ、および細胞密度が小さい場合にはステップ(2)の動作に従って細胞試料を補充するステップをさらに含む。
【0039】
本発明の好ましい一実施形態では、本方法は、分注ステップ(6)をさらに含み、このステップは、細胞懸濁液を収容した細胞冷凍容器(細胞冷凍バッグ等)を試料供給管に接続するステップ、および廃液管を分注バッグに接続するステップを含み、
細胞冷凍容器(例えば、細胞冷凍バッグ)の細胞懸濁液は、抽出装置の吸引に基づいて試料供給管および抽出管によって抽出装置内に送られ、その後、細胞懸濁液は、抽出装置の排出に基づいて抽出管および廃液管によって分注バッグ内に送られ、分注バッグを変更することにより、細胞懸濁液の複数回の分注が実現される。
【0040】
別の好ましい実施形態では、分注ステップ(6)は、ステップ(5)の後に実行される。
【0041】
本発明は、主に以下の利点を有する。
【0042】
本発明における細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置および方法によれば、細胞分注を密閉条件下で行うことができ、その結果、外部環境との接触による感染のリスクが低減される。本発明の細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置および方法によれば、分注された細胞の生存率を確保することができ、分注後に得られる細胞の精度が高く、分注された細胞の品質が向上する。
【0043】
本発明の細胞を調製するための方法により、免疫細胞を迅速に調製することができ、企業のコストが低減され、生産能力が向上し、工業生産に適している。一方、本発明の細胞を調製するための方法により調製された免疫細胞は、高い品質を有し、臨床効果を確保することができる。
【0044】
本発明を、特定の実施例と組み合わせて以下にさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解される。以下の実施例における特定の条件のない実験方法は、通常、従来の条件に従って、または製造業者によって推奨される条件に従って使用される。特に明記しない限り、百分率および部は重量で計算される。
【0045】
[実施例1]
1.実験スキーム
a)凍結保存細胞数の要求:最終製品バッグの陽性T細胞の量は150×106細胞であり、凍結保存容量は40mlであり、試験細胞バッグ中の陽性T細胞の量は37.5×106細胞であり、凍結保存容量は10mlであり、細胞陽性率は20.71%であり、理論凍結保存密度は19.918×106cells/mlであった。
【0046】
b)機能性試薬の調製:
i.構成要素1:濃度20%(v/v)のHSA(ヒト血清アルブミン)水溶液を化合物電解質注射液(塩化ナトリウム5.26g、グルコン酸ナトリウム5.02g、酢酸ナトリウム3.68g、塩化カリウム0.37g、および塩化マグネシウム0.30gを含む、各々1,000mlの水)に添加し、次いで、構成要素1バッグに充填し、化合物電解質注射液に対する20%(v/v)の濃度を伴うHSA水溶液の体積比は、1:100であった。
【0047】
ii.構成要素2:CS10凍結保存液を構成要素2のバッグに充填し、CS10凍結保存液はDMSO水溶液であり、DMSOの体積分率は10%であった。
【0048】
c)分注前の配管準備:
i.キットCT-49.1(細胞の完全密閉および完全自動分注のための装置)を安全キャビネットで開き、クランプを閉じ、滅菌チューブ接続を使用して、採取した細胞試料バッグを位置5で、250ml細胞冷凍バッグを位置7で、構成要素1のバッグを位置8-1で、構成要素2のバッグを位置8-2で、および廃液バッグを位置6でそれぞれ接続した。キットCT-49.1の配管位置概略図を
図1に示す。
【0049】
【0050】
d)培養洗浄手順による細胞懸濁液の濃度
i.細胞カウント:細胞懸濁液を濃縮した後、細胞懸濁液を入れた250mlの冷凍バッグに5mlシリンジを接続し、冷凍バッグを均一に振盪し、約0.2mlの細胞懸濁液を吸引して細胞カウントを行った。
【0051】
e)希釈(分注)手順による最終製品の調製:最終凍結保存液に構成要素1および構成要素2を50%:50%の割合で添加した。
【0052】
i.構成要素体積算出:上記ステップにおける細胞カウント結果に基づいて、細胞懸濁液体積、最終製品充填密度および最終製品充填細胞量、構成要素1および構成要素2の添加体積をそれぞれ算出した。構成要素1の添加体積=冷凍バッグ中の細胞懸濁液の体積+さらに添加する必要がある構成要素1の体積。
【0053】
ii.管リンス:構成要素1のリンス体積、10mlを帰属させ、管クランプを開き、手順を開始した。
【0054】
iii.構成要素1の分注:分注体積、すなわちさらに添加が必要な構成要素1の体積を帰属させ、「レ」をクリックし、配管クランプを開き、手順を開始した。
【0055】
iv.管リンス:構成要素2のリンス体積、10mlを帰属させ、管クランプを開き、手順を開始した。
【0056】
v.構成要素2の分注:分注体積、すなわち添加が必要な構成要素2の総体積を帰属させ、「レ」をクリックし、管クランプを開き、手順を開始した。
【0057】
f)最終製品の分注:
i.管リンス:最終製品のリンス体積、10mlを帰属させ、管クランプを開き、手順を開始した。
【0058】
ii.試験細胞バッグの分注:分注前に、最初に試験細胞バッグの充填細胞量および凍結保存密度に従って分注体積を算出し、次いで50ml細胞冷凍バッグを位置6に接続し、算出した分注体積を帰属させ、「レ」をクリックし、管クランプを開き、手順を開始した。このステップを2回繰り返し、3つの試験細胞バッグを得た。
【0059】
iii.最終製品の分注:分注前に、最初に最終製品バッグの充填細胞量および凍結保存密度に従って分注体積を算出し、次いで250ml細胞冷凍バッグを位置6に接続し、算出した分注体積を帰属させ、「レ」をクリックし、管クランプを開き、手順を開始した。最後に、1つの最終製品バッグを得た。
【0060】
iv.3つの試験細胞バッグおよび最終製品バッグの空気を排出し、バッグを密封した。
【0061】
v.密封したバッグを定速冷凍機に移し、定速冷凍機で冷凍した後、液体窒素冷凍機に移して冷凍後保管した。
【0062】
2.実験結果
a)濃縮細胞懸濁液のカウント
細胞試料バッグ中の濃縮細胞の密度および生存率を、表1に示すように、細胞カウンターによって測定した。濃縮後の細胞量は、181.5×10
6cells/ml×(12.2ml-0.2ml)=2178×10
6cellsと表記した。
【表1】
【0063】
b)最終製品の調製
算出された構成要素体積を表2に示し、総体積を54.7ml+54.7ml=109.4mlと表記する。
【表2】
【0064】
c)最終製品の分注
3つの試験細胞バッグおよび最終製品バッグに分注した細胞の密度および生存率を、それぞれ表4、表5、表6および表7に示すように、細胞カウンターによって測定した。試験細胞バッグ1の陽性細胞量は、19.25×10
6cells/ml×10ml×20.71%=39.87×10
6cellsと表記した。試験細胞バッグ2の陽性細胞量は、18.8×10
6cells/ml×10ml×20.71%=38.93×10
6cellsと表記した。試験細胞バッグ3の陽性細胞量は、16.5×10
6cells/ml×10ml×20.71%=34.17×10
6cellsと表記した。最終製品バッグの陽性細胞量は、20.033×10
6cells/ml×40ml×20.71%=165.95×10
6cellsと表された。細胞分注の要約結果を表8に示す。理論凍結密度と比較して、3つの試験細胞バッグおよび最終製品バッグの細胞密度に大きな差はなく、最大差は1517.16%である。理論陽性細胞量と比較して、最大差は10.63%であり、それは許容範囲内であり、様々なバッグは細胞生存率にほとんど差がない。したがって、このプロセスを使用してSepaxによって調製された最終製品の体積および総細胞量は正確であり、細胞はほとんど失われず、回収された細胞に対してSepaxを使用して最終製品分注を行うことが可能であり、免疫細胞を分注するプロセスフローの完全密閉自動化が実現されることを示している。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0065】
本発明で言及されるすべての文献は、あたかも各文献が参照として別々に引用されているかのように、本出願において参照として引用される。加えて、本発明の上記の内容を読んだ後、当業者は本発明に対して様々な変更または修正を行い得、すべての同等の形態も本出願の特許請求の範囲によって限定される範囲内にあることを理解されたい。
【国際調査報告】