(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-22
(54)【発明の名称】共振周波数追跡を可能にするように構成された音響流体デバイスおよびその方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20240815BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240815BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20240815BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240815BHJP
B01J 19/10 20060101ALI20240815BHJP
G01H 13/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G01N1/00 101F
B81B3/00
B81C1/00
G01N37/00 101
B01J19/10
G01H13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571182
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022065892
(87)【国際公開番号】W WO2022258831
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519125416
【氏名又は名称】アコーソート アーベー
【氏名又は名称原語表記】ACOUSORT AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エバンデル,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】イベール,マグヌス
【テーマコード(参考)】
2G052
2G064
3C081
4G075
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AD29
2G052BA21
2G052DA09
2G064AB01
2G064AB11
2G064BB67
2G064BD18
3C081AA13
3C081BA24
3C081BA43
3C081BA48
3C081BA55
3C081CA44
3C081CA45
3C081DA03
3C081DA06
3C081DA31
3C081EA29
4G075AA13
4G075AA27
4G075AA39
4G075BB05
4G075BB08
4G075BB10
4G075CA23
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB50
4G075FA12
4G075FB12
4G075FB13
(57)【要約】
a)基板と、b)基板に取り付けられるか、または基板と接触している超音波トランスデューサとを備える音響流体デバイスが提供される。組み合わされた基板および超音波トランスデューサは、基板および超音波トランスデューサの材料および寸法によって決定される第1のセットの音響固有システム共振を有する。各システム共振は、共振周波数および共振品質係数を含む。デバイスは、c)基板内に設けられ、流体を収容するマイクロ流体空洞をさらに備え、空洞は、各々が空洞の寸法および流体内の音速によって決定される共振周波数および共振品質係数を有する第2のセットの音響固有空洞共振を有する。基板および超音波トランスデューサの材料および寸法は、少なくとも1つの個々の空洞共振が、超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルの最小値の周波数に対応する共振周波数を有するように選択される。音響流体デバイスを製造する方法、ならびに共振周波数を追跡し、音響流体動作を実行する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-基板と、
-前記基板に取り付けられるか、または前記基板と接触している超音波トランスデューサであって、
組み合わされた前記基板および前記超音波トランスデューサが、前記基板の材料および寸法ならびに前記超音波トランスデューサの材料および寸法によって決定される第1のセットの音響固有システム共振を有し、各システム共振が共振周波数および共振品質係数を含む、超音波トランスデューサと、
-前記基板内に設けられ、流体を収容するマイクロ流体チャネルなどのマイクロ流体空洞であって、前記マイクロ流体空洞が、前記空洞の寸法および前記流体内の音速によって決定される第2のセットの音響固有空洞共振を有し、各空洞共振が共振周波数および共振品質係数を含む、マイクロ流体空洞と
を備え、
前記基板の前記材料および前記寸法、ならびに前記超音波トランスデューサの前記材料および前記寸法がすべて、前記第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振が、前記基板に取り付けられるか、または前記基板と接触している前記超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルの最小値、好ましくは局所的最小値、より好ましくは大域的最小値の周波数に対応する共振周波数を有するように選択される、音響流体デバイス。
【請求項2】
前記マイクロ流体空洞が、長さ寸法、幅寸法、および高さ寸法を有し、前記第2のセットの空洞共振が、前記幅寸法および/または高さ寸法などの、前記長さ寸法、幅寸法、および高さ寸法の少なくとも1つの共振を含む、請求項1に記載の音響流体デバイス。
【請求項3】
前記第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振が、
-前記第1のセットの音響固有システム共振の前記共振周波数とは異なる共振周波数、および/または
-前記少なくとも1つの個々の空洞共振の前記共振周波数に最も近い共振周波数を有する、前記第1のセットの音響固有システム共振の、前記システム共振の前記共振品質係数よりも大きい共振品質係数、および好ましくは、
-前記第1のセットの音響固有システム共振の前記システム共振の各々の前記共振品質係数よりも大きい共振品質係数
を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の音響流体デバイス。
【請求項4】
前記基板の前記材料および前記寸法ならびに前記超音波トランスデューサの前記材料および前記寸法がすべて、前記少なくとも1つの個々の空洞共振の前記共振品質係数が、少なくとも50%など、少なくとも100%など、少なくとも200%など、少なくとも400%などの少なくとも25%大きいように構成される、請求項3に記載の音響流体デバイス。
【請求項5】
前記音響流体デバイスが、前記第1のセットの音響固有システム共振の少なくとも1つの共振の前記共振品質係数を減少させ、それによって前記第1のセットの音響固有システム共振の少なくとも1つの共振を減衰または除去するように構成される、先行する請求項のいずれか1項に記載の音響流体デバイス。
【請求項6】
前記音響流体デバイスに、
-前記基板の少なくとも一部と接触して設けられ、前記第1のセットの音響固有システム共振の少なくとも1つの共振の前記共振品質係数を減少させ、それによって前記第1のセットの音響固有システム共振の少なくとも1つの共振を減衰または除去するように構成された減衰材料であって、前記減衰材料が、硬化接着剤、ゴム、シリコーン、またはポリウレタンなどの寸法安定ポリマー材料を含む、減衰材料
が設けられる、先行する請求項のいずれか1項に記載の音響流体デバイス。
【請求項7】
前記音響流体デバイスが、
-プリント回路基板などの支持面
をさらに備え、
前記超音波トランスデューサが、前記第2の側面の少なくとも一部を介して前記支持面に取り付けられ、かつ/または
前記超音波トランスデューサの前記第2の側面の少なくとも一部が、前記支持面と電気的もしくは物理的に接触しておらず、かつ/または
前記減衰材料の少なくとも一部が前記支持面と接触している、
先行する請求項のいずれか1項に記載の音響流体デバイス。
【請求項8】
前記超音波トランスデューサが、前記基板に取り付けられた第1の側面から反対側の第2の側面まで延在する高さ寸法を有し、前記超音波トランスデューサが、前記高さ寸法における少なくとも1つの共振の前記共振品質係数が、幅寸法および長さ寸法のうちの1つにおける少なくとも1つの共振の前記共振品質係数よりも大きくなるように構成され、前記幅寸法および長さ寸法の各々が、前記高さ寸法および互いに対して垂直であり、
好ましくは、前記超音波トランスデューサの前記第2の側面に、前記幅寸法および/または前記長さ寸法における少なくとも1つの共振の前記共振品質係数を低減するための複数の離間した平行溝が設けられる、先行する請求項のいずれか1項に記載の音響流体デバイス。
【請求項9】
前記超音波トランスデューサが、接着層を介して前記基板に取り付けられ、前記接着層が、好ましくは、100μm以下などの200μm以下の厚さを有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の音響流体デバイス。
【請求項10】
前記トランスデューサが、前記超音波トランスデューサの前記材料および寸法によって決定される第3のセットの音響固有トランスデューサ共振を有し、各トランスデューサ共振が共振周波数および共振品質係数を含み、前記第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振が、前記第3のセットの音響固有トランスデューサ共振の前記共振周波数とは異なる共振周波数を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の音響流体デバイス。
【請求項11】
前記第2のセットの音響固有空洞共振の前記少なくとも1つの個々の空洞共振の前記共振周波数と、前記第3のセットの音響固有トランスデューサ共振の前記共振周波数との間の差が、前記第3のセットの音響固有トランスデューサ共振の前記共振周波数の少なくとも2.5%、より好ましくは少なくとも3.5%である、請求項10に記載の音響流体デバイス。
【請求項12】
先行する請求項のいずれか1項に記載の音響流体デバイスを製造する方法であって、前記音響流体デバイスが、少なくとも前記個々の空洞共振の前記共振周波数で音響泳動動作を実行するために使用されるべきであり、前記方法が、
i.計算またはシミュレーションにより、基板パラメータ、超音波トランスデューサパラメータ、およびマイクロ流体空洞パラメータのパラメータ値の複数の異なる組合せの各々について前記超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルを決定するステップであって、
a.前記基板パラメータが、基板材料および基板寸法を含み、
b.前記超音波トランスデューサパラメータが、超音波トランスデューサ材料および超音波トランスデューサ寸法を含み、
c.マイクロ流体空洞パラメータが、マイクロ流体空洞寸法、前記マイクロ流体空洞内の流体の流体特性、および前記基板内のマイクロ流体空洞位置を含む、
ステップと、
ii.シミュレーションの計算により、基板パラメータ、超音波トランスデューサパラメータ、およびマイクロ流体空洞パラメータのパラメータ値の前記複数の異なる組合せの各々について第2のセットの固有音響空洞共振を決定するステップと、
iii.基板パラメータ、超音波トランスデューサパラメータ、およびマイクロ流体空洞パラメータのパラメータ値の前記複数の異なる組合せの中から、
a.基板材料SMおよび一組の基板寸法SM、
b.超音波トランスデューサ材料UMおよび一組の超音波トランスデューサ寸法UD、ならびに
c.一組のマイクロ流体空洞寸法CD、前記マイクロ流体空洞内の流体の一組の流体特性CF、および前記基板内のマイクロ流体空洞位置CP
を選択するステップであって、
前記第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振が、前記基板に取り付けられるか、または前記基板と接触している前記超音波トランスデューサの前記対応するインピーダンススペクトルの最小値、好ましくは局所的最小値、より好ましくは大域的最小値の前記周波数に対応する共振周波数を有する、
ステップと、
iv.前記基板材料SMおよび前記基板寸法SD、ならびに前記超音波トランスデューサ材料UMおよび前記超音波トランスデューサ寸法UDを有する前記音響流体デバイスを製造するステップと
を含む、方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の音響流体デバイスの個々の空洞共振の共振周波数を識別する方法であって、前記方法が、
i.前記マイクロ流体空洞の予想される共振周波数に及ぶある範囲の周波数で前記超音波トランスデューサを駆動するステップと、
ii.前記超音波トランスデューサが前記範囲の周波数で駆動されるときにその電気インピーダンスを測定することによってインピーダンススペクトルを取得するステップと、
iii.前記個々の空洞共振の前記共振周波数を、前記インピーダンススペクトルの最小値、好ましくは局所的最小値、より好ましくは大域的最小値として識別するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
流体内の粒子の音響捕捉などの音響流体動作を実行する方法であって、
i.請求項1~11のいずれか1項に記載の音響流体デバイスを提供するステップと、
ii.前記空洞内に流体を供給するステップと、
iii.前記個々の空洞共振の共振周波数で前記超音波トランスデューサを作動させるステップと
を含む、方法。
【請求項15】
iv.ステップiiiで使用された前記個々の空洞共振の前記共振周波数を識別するために、請求項13による方法を実行することにより、前記個々の空洞共振の前記共振周波数の周波数追跡を実行するステップ
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(iv)が、繰り返し実行されるか、または以下の事象
a)所定の時間間隔が経過した、
b)前記流体の温度が変化した、
c)前記流体の組成が変化した、
d)前記流体が別の流体によって置き換えられた、
e)前記空洞内に洗浄液が供給された、
f)前記超音波トランスデューサへの駆動信号が変化した、
g)前記超音波トランスデューサおよび/または前記基板の温度が変化した、
h)前記音響流体動作のユーザがコマンドを与えた、
i)評価デバイスが、前記音響流体動作の結果を評価し、前記結果が設定値と比較して不十分であることを発見した、
j)前記超音波トランスデューサが前記接着層を介して前記基板に取り付けられた、または
k)前記減衰材料が前記基板と接触するようにされた
のうちの1つまたは複数が発生した後に実行される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で提案される技術は、一般に、音響流体デバイスならびにそのようなデバイス内の粒子または細胞を処理または分離するシステムおよび方法の分野に関する。より詳細には、本明細書で提案される技術は、使用中に共振周波数追跡を可能にするように構成された音響流体デバイスに関し、すなわち、その結果、共振周波数を追跡することができ、音響流体デバイスの超音波トランスデューサの作動周波数は、超音波エネルギーの効率的な使用のために調整される。
【0002】
背景
音響流体デバイスおよびシステムは、音響流体、例えば、マイクロ流体と、その中で試料流体に対して音響流体動作を実行することによって試料流体が処理され得るチャネルなどの空洞とを備えるマイクロ流体音響流体チップを含む。音響流体動作の間、超音波エネルギーは、任意のマイクロ流体チャネルまたは空洞を含む音響流体デバイスに供給されて、試料流体および試料流体内に懸濁した任意の粒子に影響を及ぼす。音響流体動作は、分離のうちの1つ、すなわち、音響流体デバイスに供給されている超音波エネルギーによって各粒子がどのように影響を受けるかに応じて、異なる粒子が流体内で異なる距離を移動するように、試料流体内の粒子の移動に影響を及ぼすことであり得る。マイクロ流体チャネルまたは空洞の適切な設計により、試料の層流または非流動条件の適切な選択とともに、異なる粒子は異なる位置に移動し、その後互いに分離することができる。他の音響流体動作は、試料流体内の粒子をマイクロ流体チャネルまたは空洞の中心または壁などの位置に向かって押し出すことを含む。さらに別の音響流体は、懸濁媒体の流れに対して特定の位置に選択された粒子を保持または捕捉することに関し、したがって、例えば、懸濁媒体が別の媒体によって置き換えられることを可能にする。
【0003】
しかしながら、音響流体動作の効率的な実行は、音響流体デバイスに供給される超音波エネルギーの周波数が選択される、すなわち、マイクロ流体チャネルまたは空洞内に共振波または定在波が発生するように調整されることを必要とする。したがって、動作周波数、すなわち、供給または適用された超音波の周波数は、マイクロ流体チャネルまたは空洞の共振周波数と一致するべきである。
【0004】
より具体的には、流体試料内の粒子を移動させ空間的に局在化することができるために、例えば、チャネルの幅にわたって、チャネルの高さにわたって、またはその両方にわたって、粒子が移動するチャネルまたは空洞の寸法において共鳴が発生しなければならない。通常、対象の空洞寸法は、流体試料内、すなわち粒子が懸濁されている流体内の整数個の半波長をサポートしなければならず、したがって、明確に定義された節および腹を有する音響定在波の形成が可能になる。共振条件では、空洞内部の粒子は、それらの音響物理学的特性、例えば密度および圧縮率に応じて、空洞内の特定の位置または領域に向かって粒子を移動させる音響放射力の影響を受ける。このようにして、異なる粒子/細胞を分離または凝集させることができる。音響流体動作は、流体試料の流れの間、または流体試料の流れがない状態で実行することができる。
【0005】
しかしながら、チャネルまたは空洞の寸法が既知である場合でも、設計目的でしばしば使用される1次元定在平面音響波近似は、音響流体デバイス内のチャネルまたは空洞の音響共振周波数を正確に決定するのに十分ではない。したがって、チャネルの幅が超音波の波長の倍数であり、この幅に対応する特定の周波数で共振(音響定在波)が発生すると予想される場合でも、実際のまたは最適な動作周波数は、通常、異なる周波数で実現される。
【0006】
その上、効率的な音響流体動作を取得したいという要望は、正しい共振周波数を見つけることの問題を悪化させる。ガラスまたはシリコンなどの音速が高い低減衰材料、およびよく適合した超音波トランスデューサを使用することにより、高いQ値を有する音響流体デバイスを取得することができる。Q値は、共振器がどの程度減衰不足であるかを記述するパラメータである。したがって、高いQ値は、エネルギー損失率が低いシステムを示す。音響流体デバイスの場合、高いQ値は、音響エネルギーがシステム内に効率的に蓄積されることを意味する。そのようなデバイスは、デバイスの過度の加熱をもたらすことなく、試料スループットに関して良好な性能を提供する。
【0007】
しかしながら、高いQ値を有する音響流体デバイスを作成するために取られる任意の手段は、デバイスを動作させることができる周波数範囲を同時に狭める(帯域幅を減少させる)。したがって、高いQ値を有する音響流体デバイスは、空洞内の流体の特性、および共振周波数に影響を及ぼし得る温度などの他の動作条件に敏感である。これらのパラメータの変化は、デバイスの共振周波数の予想外のシフトをもたらす可能性があり、それによって粒子および流体に対する力が変化し、その結果、所望の効果、すなわち粒子の捕捉または移動が失われる。
【0008】
これは、1つの特定の流体または使用のために使用される最も効率的な動作周波数が、別の流体または使用のために非効率的であることが判明する可能性があるので、異なる流体または使用のための音響流体デバイスの使用を妨げる可能性がある。
【0009】
上記の現象に起因して、チャネルまたは空洞の共振周波数は、今日では、一般的に、予想される共振周波数を包含する周波数範囲にわたって周波数を手動で走査しながら(流体試料内の)粒子バンド形成の目視検査によって実験的に見出される。この方法は、オペレータに依存し、関数発生器および顕微鏡などの高価な機器へのアクセスを必要とする。この方法は、さらに精度が低く、時間がかかり、再現不可能であり得る。これらは、一般ユーザのための音響流体デバイスの単純化および商品化をさらに妨げる要因である。
【0010】
適切な共振周波数を決定するための自動化方法を提供する1つの試みは、電気駆動信号を音響流体デバイスに供給される超音波エネルギーに変換する圧電トランスデューサの電気インピーダンスを測定することを含む。
【0011】
この手法の一例として、J Dual、P Hahn、I Leibacher、D Moller、およびT Schwarz、Acoustofluidics 6:Experimental characterization of ultrasonic particle manipulation devices、Lab on a Chip、12(5):852{862、2012は、超音波システムを特徴付け、共振周波数を見つけるために電気インピーダンスを測定することを提案している。
【0012】
さらに、Hammarstrom、M Evander、JWahlstrom、およびJ Nilsson、Frequency tracking in acoustic trapping for improved performance stability and system surveillance、Lab on a Chip、14(5):1005{1013、2014は、単純なガラス毛管を作動させるときに、あらかじめ注釈付けされたインピーダンス最小値を周波数追跡するように管理され、効率的な音響捕捉をもたらす。
【0013】
しかしながら、これらの手法は、任意の音響流体デバイスにおける動作周波数の追跡および調整に成功することができないか、またはそれらは複雑であり、かつ/もしくは追跡するインピーダンス特徴の事前注釈、すなわち事前知識を必要とする。
【0014】
さらに、これらの手法は、場合によっては、トランスデューサから基板への(トランスデューサ内の内部共振に起因する)望ましくない振動の伝達を減少させるために、超音波トランスデューサと基板との間の結合材料として流体層を使用する。そのような流体層は、実験室でまたは研究のために使用される音響流体デバイスには許容可能であり得るが、流体層の一時的性質に起因して、音響流体デバイスの商品化にあまり適していない。
【0015】
目的
本明細書で提案される技術の目的は、共振周波数追跡を可能にするように構成された音響流体デバイスの提供を含む。そのようなデバイスは、それらの構成、すなわち構造により、インピーダンス特徴を識別する困難さを低減し、したがって、共振周波数追跡のより単純および/またはより堅牢な方法を可能にする。
【0016】
本明細書で提案される技術の他の目的は、共振周波数追跡を実行する方法、ならびに共振周波数追跡を含む音響流体動作を実行する方法の提供を含む。
【0017】
概要
上記の目的のうちの少なくとも1つ、または以下の説明から明らかになるさらなる目的のうちの少なくとも1つは、
-基板と、
-基板に取り付けられるか、または基板と接触している超音波トランスデューサであって、
組み合わされた基板および超音波トランスデューサが、基板の材料および寸法ならびに超音波トランスデューサの材料および寸法によって決定される第1のセットの音響固有システム共振を有し、各システム共振が共振周波数および共振品質係数を含む、超音波トランスデューサと、
-基板内に設けられ、流体を収容するマイクロ流体チャネルなどのマイクロ流体空洞であって、マイクロ流体空洞が、空洞の寸法および流体内の音速によって決定される第2のセットの音響固有空洞共振を有し、各空洞共振が共振周波数および共振品質係数を含む、マイクロ流体空洞と
を備える、音響流体デバイスによって取得される本明細書で提案される技術の第1の態様によるものであり、
基板の材料および寸法、ならびに超音波トランスデューサの材料および寸法はすべて、第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振が、基板に取り付けられるか、または基板と接触している超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルの、最小値、好ましくは局所的最小値、より好ましくは大域的最小値の周波数に対応する共振周波数を有するように選択される。
【0018】
したがって、本発明者らは、第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振が、超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルの最小値の周波数に対応する共振周波数を有するという条件で、超音波トランスデューサが基板に取り付けられるか、または基板と接触している場合でも、すなわち、超音波トランスデューサと基板との間の流体層などの結合材料を使用せずに、音響流体デバイスにおいて共振周波数追跡を実行することが実際に可能であることを見出した。したがって、超音波トランスデューサと基板との間にグリセロールなどの流体層は存在しない。
【0019】
音響流体デバイスは、例えば、粒子および/または分子の有無にかかわらない流体の混合、粒子および/または分子の選別、粒子および/または分子の分離のいずれかなどの音響動作に使用されてもよい。
【0020】
基板は、シリコンから作られてもよいが、プラスチックなどのポリマー材料、または代替としてガラスから作られてもよい。また、セラミックおよび金属などの他の材料も可能である。基板はチップなどの平面であってもよく、または代替として、基板は円形または長方形の断面を有する毛管として形成されてもよい。
【0021】
マイクロ流体空洞は、好ましくは、正方形または長方形の断面を有するチャネルである。マイクロ流体空洞は、例えば、断面高さの1倍~2倍などの1倍~10倍の断面幅を有する場合がある。この場合、マイクロ流体空洞の長さは幅と少なくとも同じであるが、好ましくは何倍も長い。幅は、例えば、0.15mm~2mm、または0.15mm~1mmであってもよい。高さは、例えば、0.1mm~5mmであってもよい。
【0022】
好ましくは、基板は細長く、マイクロ流体空洞は、基板の長さの少なくとも大部分に沿って延在するチャネルである。そのような基板は音響流体デバイスに非常に適しているので、これは有利である。チャネルは、好ましくは、高さの少なくとも2倍である幅を有する長方形の断面を有する。最も好ましくは、基板は、高さが0.1mm~5mmで幅が1mm~10mmのチャネルを有する毛管である。
【0023】
マイクロ流体空洞は、基板内に設けられる。基板は、ベース基板、ベース基板の上面に形成され、マイクロ流体空洞を画定する溝、およびマイクロ流体空洞を閉じるためにベース基板の上面の上に配置された蓋基板を有する2つの部分から作られてもよい。
【0024】
流体は、空洞内に提供または収容されてもよい。流体は、静止していてもよく、または空洞を通って流されてもよい。流れは、ポンピング、圧力、吸引、電場の作用、重力、および毛管作用によって生成されてもよい。空洞は、それを通って流体が空洞に導かれる入口に流体接続され、それを通って流体が空洞から離れる出口に流体接続されてもよい。流体の異なる部分を異なる出口に連れて行くために、2つ以上の出口が空洞に流体接続されてもよい。また、異なる試料流体、他の流体、粒子および/または試薬が空洞に導かれることを可能にするために、2つ以上の入口が設けられてもよい。
【0025】
流体は、血漿、水、尿、酵母細胞培養液、細胞培地、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、間質液、乳、血漿などを含んでもよい。流体が粒子を含む場合、粒子は、赤血球、白血球、血小板、癌細胞、循環腫瘍細胞、細菌細胞、ウイルス、酵母細胞、脂肪細胞、エキソソーム、細胞外小胞、微小胞、リポタンパク質、塵埃粒子、シリカ粒子、およびポリマー粒子を含んでもよい。流体は、ポンピング、圧力、吸引、電場の作用、重力、および/または毛管作用によって空洞内に配置されてもよい。
【0026】
超音波トランスデューサは、好ましくは長方形または正方形であり、第1の側面および第2の側面は平行である。超音波トランスデューサは、好ましくは圧電トランスデューサまたは電歪トランスデューサである。超音波トランスデューサは、電圧の最小値~最大値(Vpp)によって定義される周波数fおよび振幅を有する周期信号によって駆動、例えば作動されてもよい。超音波トランスデューサがある範囲の周波数にわたって駆動されてインピーダンススペクトルを取得する場合、Vppは例えば少なくとも1Vppであってもよい。そのような場合、周波数の範囲は、例えば、開始周波数で始まり、周波数ステップだけ増加し、終了周波数で終わる有限数の周波数のアレイ、または代替として連続周波数掃引を含んでもよい。超音波トランスデューサは、好ましくは、空洞の少なくとも1つの寸法の音響定在波を提供するように駆動される。
【0027】
超音波トランスデューサは、基板に取り付けられるか、または基板と接触している。これは、超音波トランスデューサと基板との間に流体層またはゲル結合層が存在しないことを意味する。好ましくは、超音波トランスデューサは、接着剤によって基板に取り付けられる。
【0028】
組み合わされた基板および超音波トランスデューサは、第1のセットの音響固有システム共振を有する。具体的には、基板は、基板の材料および寸法によって決定される第1のセットの音響固有基板共振を有し、各基板共振は共振周波数および共振品質係数を含む。さらに、超音波トランスデューサは、基板の材料および寸法によって決定される第1のセットの音響固有トランスデューサ共振を有し、各トランスデューサ共振は共振周波数および共振品質係数を含む。
【0029】
第1のセットの音響固有システム共振は、超音波トランスデューサが基板に取り付けられるか、または基板と接触すると取得され、したがって基板および超音波トランスデューサのシステムの固有共振を含む。
【0030】
第1のセットの音響固有システム共振は、基板および超音波トランスデューサのシステムの長さ、幅、高さ、および体積の寸法のうちの1つまたは複数における共振を含む場合がある。一般に、共振は、寸法が基板および超音波トランスデューサのシステムに加えられる振動(超音波)の整数個の半波長を支持するかまたはそれに対応するときに発生する場合がある。
【0031】
各システム共振は、共振周波数および共振品質係数を含む。共振周波数は、システム共振が得られる周波数であり、共振品質係数は、システムが特定の共振においてどの程度減衰不足であるかの尺度である。
【0032】
マイクロ流体空洞は、空洞の寸法および流体内の音速によって決定される第2のセットの音響固有空洞共振を有する。第2のセットの音響固有空洞共振は、空洞の長さ、幅、および高さの寸法のうちの1つまたは複数における共振を含む場合がある。一般に、共振は、空洞の寸法が空洞およびその中の流体に加えられる振動(超音波)の整数個の半波長を支持するかまたはそれに対応するときに発生する場合がある。
【0033】
各空洞共振は、共振周波数および共振品質係数を含む。
共振周波数は、空洞共振が得られる周波数であり、共振品質係数は、空洞が特定の共振においてどの程度減衰不足であるかの尺度である。
【0034】
マイクロ流体空洞の共振周波数の共振周波数追跡を実行するために、すなわち、共振および対応する音響定在波が流体および任意の粒子に対する音響流体効果を有する場合、システムのすべての他の共振の中でこの共振およびその共振周波数を検出することが可能でなければならない。
【0035】
驚くべきことに本発明者らによって発見されたように、これは、超音波トランスデューサが基板に取り付けられるかまたは接触している場合、すなわち、それらの間に流体(またはゲル)結合層が存在しない場合でも実際に可能である。
【0036】
したがって、第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振が、超音波トランスデューサの最小値、好ましくは局所的最小値、より好ましくは大域的最小値のインピーダンススペクトルの周波数に対応する共振周波数を有するように、基板の材料および寸法ならびに超音波トランスデューサの材料および寸法を選択することが実際に可能である。
【0037】
言い換えれば、基板および超音波トランスデューサの材料および寸法は、システムのすべての他の共振の中で少なくとも1つの空洞共振を検出することができるように選択することができる。したがって、そのような音響流体デバイスの超音波トランスデューサをある範囲の周波数にわたって駆動することによって取得されるインピーダンススペクトルは、少なくとも1つの空洞共振の共振周波数に対応する、局所的最小値、または好ましくは大域的最小値などの最小値を示す。
【0038】
通常、マイクロ流体空洞は、長さ寸法、幅寸法、および高さ寸法を有し、第2のセットの空洞共振は、幅寸法および/または高さ寸法などの、長さ寸法、幅寸法、および高さ寸法の少なくとも1つの共振を含む。
【0039】
好ましくは、マイクロ流体空洞は、幅、高さ、および長さを有するチャネルとして成形される。
【0040】
少なくとも個々の空洞共振がインピーダンススペクトルの最小値を提供することができるいくつかの方法がある。
【0041】
好ましくは、第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振は、
-第1のセットの音響固有システム共振の共振周波数とは異なる共振周波数、および/または
-少なくとも1つの個々の空洞共振の共振周波数に最も近い共振周波数を有する、第1のセットの音響固有システム共振の、システム共振の共振品質係数よりも大きい共振品質係数、および好ましくは、
-第1のセットの音響固有システム共振のシステム共振の各々の共振品質係数よりも大きい共振品質係数
を有する。
【0042】
例えば、個々の空洞共振がシステム共振の共振品質係数よりも大きい共振品質係数を有するとき、超音波によって供給される振動エネルギーは、基板および超音波トランスデューサ内の音響定在波としてよりも、空洞および流体内の音響定在波として効率的に蓄積される。好ましくは、基板の材料および寸法ならびに超音波トランスデューサの材料および寸法はすべて、少なくとも1つの個々の空洞共振の共振品質係数が、これらの場合には、少なくとも50%など、少なくとも100%など、少なくとも200%など、少なくとも400%などの少なくとも25%大きいように構成される。
【0043】
第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振が、第1のセットの音響固有システム共振の共振周波数とは異なる共振周波数を有する場合、差は、第1のセットの音響固有トランスデューサ共振の共振周波数の、好ましくは少なくとも2.5%、より好ましくは少なくとも3.5%、好ましくは各々である。さらに以下の
図3A~
図3Cおよび
図4A~
図4Bの説明を参照して考察されるように、(システム共振に大きく影響する)空洞共振とトランスデューサ共振との間の2.5%の差は、1.65%または1.5%の差が可能ではない追跡を可能にした。好ましくは少なくとも2.5%の差は、第1のセットの音響固有トランスデューサ共振の共振周波数の150%未満、100%未満など、75%未満など、例えば50%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満、好ましくは各々である。言い換えれば、差は、したがって、第1のセットの音響固有トランスデューサ共振の共振周波数の2.5%~150%、2.5%~100%、好ましくは2.5%~75%、例えば2.5%~50%、好ましくは2.5%~25%、より好ましくは2.5%~10%、好ましくは各々であり得る。
【0044】
好ましくは、音響流体デバイスは、第1のセットの音響固有システム共振の少なくとも1つの共振の共振品質係数を減少させ、それによって第1のセットの音響固有システム共振の少なくとも1つの共振を減衰または除去するように構成される。
【0045】
これは、少なくとも1つの個々の空洞共振の最小値がインピーダンススペクトル内でより容易に検出されることを可能にするので好ましい。
【0046】
したがって、音響流体デバイスには、
-基板の少なくとも一部と接触して設けられ、第1のセットの音響固有システム共振の少なくとも1つの共振の共振品質係数を減少させ、それによって第1のセットの音響固有システム共振の少なくとも1つの共振を減衰または除去するように構成された減衰材料であって、減衰材料が、好ましくは、硬化接着剤、ゴム、シリコーン、またはポリウレタンなどの寸法安定ポリマー材料を含む、減衰材料
が設けられてもよい。
【0047】
理論によって束縛されることは望まないが、減衰材料は、超音波トランスデューサからの一次超音波振動が基板およびマイクロ流体空洞内に効率的に伝達され、空洞内に超音波振動を提供することを可能にするが、同時に、基板の残りの中のすべての他の可能な共振から発生する二次振動は、減衰材料によって多かれ少なかれ選択的に減衰する。
【0048】
減衰材料は、少なくとも基板の一部と接触している。減衰材料は、基板の少なくとも一部に取り付けられることにより、少なくとも基板の一部と接触していてもよい。減衰材料は、基板上に連続的または不連続的に設けられてもよいが、減衰材料は、超音波トランスデューサが基板と接触している場所またはその反対側では基板に設けられないことが好ましい。
【0049】
複数の減衰材料または減衰材料の断片が、基板と接触して使用/配置されてもよい。
好ましくは、減衰材料は、寸法安定ポリマー材料、好ましくは硬化接着剤、ゴム、シリコーン、またはポリウレタンを含む。そのような減衰材料は、とりわけ、成形および/または硬化によって基板に塗布することができるという点で有利である。減衰材料は、超音波エネルギー、すなわち基板の超音波振動を減衰させることが可能であるべきである。減衰材料の量は、超音波エネルギーの適切な減衰が得られるように構成されるべきである。
【0050】
好ましくは、減衰材料は硬化接着剤である。接着剤の硬化ショアA硬度は、好ましくは65~85であり、より好ましくは、硬化ショアD硬度は、85などの80~90である。
【0051】
好ましくは、減衰材料は基板を取り囲む。これは、基板の物理的保護も実現しながら、2次元以上の振動の減衰を保証するという点で有利である。減衰材料は、例えば、基板の周りに配置された減衰材料の1つまたは複数のカラーとして提供されてもよい。毛管などの細長い基板の場合、減衰材料は、したがって、基板に沿った1つまたは複数の長手方向位置に設けられ、基板を取り囲む1つまたは複数のカラーとして提供されてもよい。減衰材料は、例えば、基板を取り囲み、超音波トランスデューサが配置された長手方向位置を包囲する第1および第2の長手方向位置に配置された第1および第2のカラーとして提供されてもよい。言い換えれば、減衰材料は、基板上の超音波トランスデューサの位置の両側に設けられる。減衰材料と超音波トランスデューサとの間の距離は、少なくとも0.1mmであってもよい。
【0052】
代替または追加として、音響流体デバイスは、
-プリント回路基板などの支持面
をさらに備え、
超音波トランスデューサは、第2の側面の少なくとも一部を介して支持面に取り付けられ、かつ/または
超音波トランスデューサの第2の側面の少なくとも一部は、支持面と電気的もしくは物理的に接触しておらず、かつ/または
減衰材料の少なくとも一部は支持面と接触している。
【0053】
これは、例えば超音波トランスデューサを駆動するための駆動回路、または空洞を検出もしくは撮像するための検出器デバイスなどの音響流体デバイスのさらなる構成要素が、超音波トランスデューサの近傍、したがって基板の近傍に取り付けられることを可能にするという点で有利である。プリント回路基板(PCB)という用語は、その上に電子部品、光学部品、および/または流体部品を取り付けることができる、任意の平面支持体または基板を包含することを意図している。
【0054】
支持面は、超音波トランスデューサを冷却するために冷却されてもよい。
超音波トランスデューサの第2の側面の少なくとも一部は、支持面と電気的または物理的に接触していないことが好ましく、何故なら、これにより、超音波トランスデューサから支持面に伝達される超音波エネルギーの量が減少し、したがって、支持面内の共振による超音波振動が減少するからである。好ましくは、支持面は、超音波トランスデューサの第2の側面の一部が支持面と電気的または物理的に接触しないように、超音波トランスデューサの第2の側面の少なくとも一部の下に切り欠きまたは窪みを含む。
【0055】
これは、基板および音響流体デバイスの振動を減衰させる際の減衰材料の効率を高めるので、減衰材料の少なくとも一部が支持面と接触していることがさらに好ましい。これはまた、基板が減衰材料を介して支持面によって支持されるので、物理的損傷から基板を保護するという点で有利である。減衰材料は、例えば、1つの側面が支持面と接触する1つまたは複数のカラーなどのように、基板を取り巻いていてもよい。あるいは、減衰材料は、例えば、基板と支持面との間の空間を埋めるビーズまたは充填剤として、支持面に面する基板の側面にのみ提供されてもよい。好ましくは、減衰材料は、支持面に取り付けられることにより、例えば支持面に接着または固着されることによって支持面と接触している。
【0056】
代替または追加として、超音波トランスデューサは、基板に取り付けられた第1の側面から反対側の第2の側面まで延在する高さ寸法を有し、超音波トランスデューサは、高さ寸法における少なくとも1つの共振の共振品質係数が、幅寸法および長さ寸法のうちの1つにおける少なくとも1つの共振の共振品質係数よりも大きくなるように構成され、幅寸法および長さ寸法の各々は、高さ寸法および互いに対して垂直であり、
好ましくは、超音波トランスデューサの第2の側面には、幅寸法および/または長さ寸法における少なくとも1つの共振の共振品質係数を低減するための複数の離間した平行溝が設けられる。
【0057】
これは、システム共振の強度および数を減少させるという点で有利である。
溝は、好ましくは、超音波トランスデューサの第2の側面に等間隔で配置される。通常、各溝の幅は、2つの隣接する溝の間の距離よりも小さい。溝の深さは、好ましくは、超音波トランスデューサの第1の側面と第2の側面との間の距離の60%~95%である。
【0058】
超音波トランスデューサは、好ましくは、溝がマイクロ流体空洞の最長寸法を横断するように構成され、基板に取り付けられる。したがって、マイクロ流体空洞がチャネルである場合、溝は、好ましくは、チャネルの長手方向に対して90度の角度で延びる。
【0059】
超音波トランスデューサの第1の側面は、有利なことに、第1の側面の一部が基板に取り付けられないような寸法であり得る。これは、電気駆動信号を超音波トランスデューサに搬送するために必要なリード線のうちの1つまたは複数を取り付けるための空間を提供するので有利であり得る。
【0060】
超音波トランスデューサは、溝がトランスデューサの最長寸法に平行または直角に延びるように構成されてもよい。
【0061】
追加または代替として、超音波トランスデューサは、接着層を介して基板に取り付けられ、接着層は、好ましくは、100μm以下などの200μm以下の厚さを有する。
【0062】
接着層の材料および寸法は、第2のセットの共振を減衰させないように選択されるべきである。
【0063】
接着層は200μm以下の厚さを有する。好ましくは、接着層は150μm以下の厚さを有する。より好ましくは、接着層は100μm以下の厚さを有する。接着層は、好ましくは硬化接着剤から作られるが、代替として、両面テープなどの固形接着剤シートから作られてもよい。硬化接着剤は、超音波トランスデューサが基板から分離される必要はないが、永久的にそれに結合される必要がある音響流体デバイスにとって有利であるが、固形接着剤シートは、超音波トランスデューサが基板から分離可能であるべきことが望ましい場合に有利である。好ましくは、接着層は、少なくとも55D、好ましくは最大85Dの硬化ショア硬度を有する接着剤から形成される。
【0064】
接着層を形成するのに適した接着剤には、熱硬化性エポキシ接着剤、シアノアクリレート接着剤、メタクリレート接着剤、およびUV硬化性アクリル接着剤が含まれる。
【0065】
それは、音響流体デバイスが減衰材料を備え、超音波トランスデューサの第2の側面に複数の離間した平行溝が設けられるときに特に好ましい。それは、さらに超音波トランスデューサが100μm以下などの200μm以下の厚さを有する接着層を介して基板に取り付けられときにさらにいっそう好ましい。具体的には、200um以下の厚さを有する接着層と、基板の少なくとも一部と接触している減衰材料との組合せは、超音波エネルギーの基板への効率的な伝達を保証すると同時に、その超音波エネルギーの一部が吸い取られる、すなわち減衰することを可能にする。これは、複数の離間した平行溝が設けられたその第2の側面を有する超音波トランスデューサと組み合わされると、ノイズが低減され、その中で空洞の共振周波数に関連するインピーダンス最小値がより容易に識別可能である(トランスデューサがある範囲の周波数で駆動されたときに超音波トランスデューサの電気インピーダンスを測定することによって取得された)インピーダンススペクトルを提供し、したがって、それが確実に識別されることが可能になり、超音波エネルギーを効率的に使用するために超音波トランスデューサの作動周波数を共振周波数に対して調整することができる。
【0066】
好ましくは、トランスデューサは、超音波トランスデューサの材料および寸法によって決定される第3のセットの音響固有トランスデューサ共振を有し、各トランスデューサ共振は、共振周波数および共振品質係数を含み、第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振は、第3のセットの音響固有トランスデューサ共振の共振周波数とは異なる共振周波数を有する。
【0067】
これは、超音波トランスデューサの共振周波数の1つではない周波数で超音波トランスデューサを作動させることに対応する。これは、超音波トランスデューサの共振を著しく減少させるという点で有利である。
【0068】
好ましくは、第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振の共振周波数と、第3のセットの音響固有トランスデューサ共振の共振周波数との間の差は、第3のセットの音響固有トランスデューサ共振の共振周波数の少なくとも2.5%、より好ましくは少なくとも3.5%、好ましくは各々である。さらに以下の
図3A~
図3Cおよび
図4A~
図4Bの説明を参照して考察されるように、2.5%の差は、1.65%または1.5%の差が可能ではない追跡を可能にした。
【0069】
好ましくは少なくとも2.5%の差は、第3のセットの音響固有トランスデューサ共振の共振周波数の150%未満、100%未満など、75%未満など、例えば50%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満、好ましくは各々である。言い換えれば、差は、したがって、第3のセットの音響固有トランスデューサ共振の共振周波数の2.5%~150%、2.5%~100%、好ましくは2.5%~75%、例えば2.5%~50%、好ましくは2.5%~25%、より好ましくは2.5%~10%、好ましくは各々であり得る。
【0070】
追加または代替として、第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振の共振周波数と、第3のセットの音響固有トランスデューサ共振の共振周波数との間の差は、好ましくは少なくとも0.05MHz、より好ましくは少なくとも0.1MHzである。
【0071】
したがって、超音波トランスデューサが例えば2MHzの共振周波数を有する場合、音響流体デバイスは、空洞および空洞内の流体の寸法によって決定される少なくとも1つの空洞共振が、2.05MHz以上、または1.95MHz以下のような、少なくとも2.5%だけ異なるように構成されてもよい。
【0072】
さらに、超音波トランスデューサが例えば2MHzおよび2.5MHzの共振周波数を有する場合、音響流体デバイスは、空洞および空洞内の流体の寸法によって決定される少なくとも1つの空洞共振が、0.05MHz以上または2MHz以下などの少なくとも2.5%だけ、かつ0.0625MHz以上または2.5MHz以下などの少なくとも2.5%だけ異なるように構成されてもよい。
【0073】
上記の目的のうちの少なくとも1つ、または以下の説明から明らかになるさらなる目的のうちの少なくとも1つは、本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイスを製造する方法によって実現される本明細書で提案された技術の第2の態様によるものであり、音響流体デバイスは、少なくとも個々の空洞共振の共振周波数で音響泳動動作を実行するために使用されるものであり、方法は、
i.計算またはシミュレーションにより、基板パラメータ、超音波トランスデューサパラメータ、およびマイクロ流体空洞パラメータのパラメータ値の複数の異なる組合せの各々について、超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルを決定するステップであって、
a.基板パラメータが、基板材料および基板寸法を含み、
b.超音波トランスデューサパラメータが、超音波トランスデューサ材料および超音波トランスデューサ寸法を含み、
c.マイクロ流体空洞パラメータが、マイクロ流体空洞寸法、マイクロ流体空洞内の流体の流体特性、および基板内のマイクロ流体空洞位置を含む、
ステップと、
ii.シミュレーションの計算により、基板パラメータ、超音波トランスデューサパラメータ、およびマイクロ流体空洞パラメータのパラメータ値の複数の異なる組合せの各々について、第2のセットの固有音響空洞共振を決定するステップと、
iii.基板パラメータ、超音波トランスデューサパラメータ、およびマイクロ流体空洞パラメータのパラメータ値の複数の異なる組合せの中から、
a.基板材料SMおよび一組の基板寸法SM、
b.超音波トランスデューサ材料UMおよび一組の超音波トランスデューサ寸法UD、ならびに
c.一組のマイクロ流体空洞寸法CD、マイクロ流体空洞内の流体の一組の流体特性CF、および基板内のマイクロ流体空洞位置CP
を選択するステップであって、
第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振が、基板に取り付けられるか、または基板と接触している超音波トランスデューサの対応するインピーダンススペクトルの最小値、好ましくは局所的最小値、より好ましくは大域的最小値の周波数に対応する共振周波数を有する、
ステップと、
iv.基板材料SMおよび基板寸法SD、ならびに超音波トランスデューサ材料UMおよび超音波トランスデューサ寸法UDを有する音響流体デバイスを製造するステップと
を含む。
【0074】
音響流体デバイスは、複数の個々の空洞共振の複数の共振周波数で音響泳動動作を実行するために使用されてもよい。
【0075】
本発明の文脈において、製造は、設計および/または構築を包含すると理解されるべきである。
【0076】
計算またはシミュレーションは、好ましくは、マイクロ流体空洞内の流体を有する音響流体デバイスの少なくとも2次元、好ましくは3次元のモデルにおける音響共振をシミュレートすることを含む。
【0077】
上記の目的のうちの少なくとも1つ、または以下の説明から明らかになるさらなる目的のうちの少なくとも1つは、本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイスの個々の空洞共振の共振周波数を識別する方法によって実現される本明細書で提案された技術の第3の態様によるものであり、方法は、
i.マイクロ流体空洞の予想される共振周波数に及ぶある範囲の周波数で超音波トランスデューサを駆動するステップと、
ii.超音波トランスデューサがある範囲の周波数で駆動されるときのその電気インピーダンスを測定することによってインピーダンススペクトルを取得するステップと、
iii.個々の空洞共振の共振周波数を、インピーダンススペクトルの最小値、好ましくは局所的最小値、より好ましくは大域的最小値として識別するステップと
を含む。
【0078】
方法を実行することにより、共振周波数は追跡され得、超音波トランスデューサが駆動される周波数は、音響流体デバイスを用いて実行される音響流体動作の効率を高めるために調整される。
【0079】
方法は、例えば、音響流体動作の実行前、実行中、または実行後に1回または複数回実行されてもよい。
【0080】
周波数の範囲は、予想される共振周波数の50%から150%に及ぶ場合がある。より好ましくは、周波数の範囲は、予想される共振周波数の75%から125%に及ぶ場合がある。
【0081】
予想される周波数は、空洞の寸法および空洞内に提供されるように意図された流体内の音速から決定されてもよい。予想される周波数はまた、効率的な音響流体動作が得られるまで周波数を手動で調整することによって決定されてもよい。方法が2回以上実行される場合、予想される周波数は、方法によって以前に識別された共振周波数であり得る。
【0082】
上記の目的のうちの少なくとも1つ、または以下の説明から明らかになるさらなる目的のうちの少なくとも1つは、試料流体内の粒子の音響捕捉などの音響流体動作を実行する方法によって実現される本明細書で提案された技術の第4の態様によるものであり、
i.本願明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイスを提供するステップと、
ii.空洞内に試料流体を供給するステップと、
iii.個々の空洞共振の共振周波数で超音波トランスデューサを作動させるステップと
を含む。
【0083】
方法を実行することにより、音響流体動作の効率が向上および/または維持される。
方法は、任意選択で、基板の温度を制御するステップをさらに含んでもよい。
【0084】
ステップ(iii)は、いくつかの個々の空洞共振の共振周波数で超音波トランスデューサを作動させることを含んでもよく、それらのうちの1つ、または好ましくはすべては、インピーダンススペクトルの対応する最小値を有する。
【0085】
好ましくは、方法は、
iv.ステップiiiで使用された個々の空洞共振の共振周波数を識別するために、本明細書で提案された技術の第3の態様による方法を実行することにより、個々の空洞共振の共振周波数の周波数追跡を実行するステップ
をさらに含む。
【0086】
ステップ(iii)および(iv)は、1回または複数回実行されてもよい。
好ましくは、ステップ(iv)は、繰り返し実行されるか、または以下の事象のうちの1つまたは複数が発生した後に実行される。
【0087】
a)所定の時間間隔が経過した、
b)試料流体の温度が変化した、
c)試料流体の組成が変化した、
d)試料流体が別の試料流体によって置き換えられた、
e)空洞内に洗浄液が供給された、
f)超音波トランスデューサへの駆動信号が変化した、
g)超音波トランスデューサおよび/または基板の温度が変化した、
h)音響流体動作のユーザがコマンドを与えた、
i)評価デバイスが、音響流体動作の結果を評価し、結果が設定値と比較して不十分であることを発見した、
j)超音波トランスデューサが接着層を介して基板に取り付けられた、または
k)減衰材料が基板と接触するようにされた。
【0088】
これは、音響流体動作の効率を向上または維持することを実現するという点で有利である。
【0089】
事象(a)に関して、これは、ステップ(iii)および(iv)を繰り返すための好ましい事象である。所定の時間は、1秒から10分の範囲であってもよい。ステップ(iii)および(iv)を所定の間隔で連続的に繰り返すことにより、共振周波数は、(すなわち、他の列挙された事象(b)~(l)に起因する)共振周波数の任意の変化またはドリフトの原因となるように繰り返し識別される。
【0090】
事象(b)に関して、試料流体の温度は、例えば、温度センサまたは温度計によって連続的または繰り返し測定されてもよい。好ましくは、事象(b)は、試料流体の第1の温度と試料流体のさらなる温度との間の差が、例えば1℃、より好ましくは2℃などの設定値よりも大きいときにのみ発生したと見なされる。
【0091】
事象(c)に関して、試料流体の組成は、とりわけ、試料流体内の任意の粒子の濃度、試料流体内の任意の粒子の識別情報、および試料流体の特性を含む。したがって、試料流体の組成は、とりわけ、分光光度計、顕微鏡および/またはカメラ、感光性アレイ、インピーダンスセンサ、導電率センサによって決定されてもよい。好ましくは、事象(c)は、共振周波数の変化が予想され得るように組成が十分に変化したときにのみ発生したと見なされる。
【0092】
事象(d)に関して、1つの試料流体から別の試料流体への変化は、例えば、上記の事象(c)のように試料流体の組成を決定することによって検出されてもよい。一般に、ステップ(iii)および(iv)が繰り返し実行される場合、識別される周波数は、1つの試料流体が別の試料流体によって空洞から変位したときに、試料流体の組成の変化に対応して変化する。これは事象(e)について当てはまる。
【0093】
共振周波数はまた、任意の流体が空になった空洞、すなわち事象(f)について識別されてもよい。このように識別された共振周波数は、例えば、空洞が実際に空であるかどうか、および/または音響流体デバイスが損傷している、点検が必要であるなど、多少なりとも変化したかどうかを判定するために、空の空洞について決定された以前の共振周波数と比較されてもよい。
【0094】
事象(g)に関して、周波数または電圧(振幅)などの駆動信号の変化も、ステップ(iii)および(iv)を実行するためのプロンプトとして使用されてもよい。
【0095】
事象(h)に関して、トランスデューサおよび/または基板の温度も、温度センサまたは温度計を使用して監視されてもよく、任意の変化、または1℃、より好ましくは2℃の十分に大きい変化のみが、ステップ(iii)~(iv)の実行を促すために使用されてもよい。
【0096】
事象(i)に関して、ユーザは、任意の所望の時間に共振周波数を識別することを望む場合がある。
【0097】
事象(j)に関して、カメラ付き顕微鏡および画像認識ソフトウェアなどの評価デバイスは、音響流体動作の結果または効率を判定するために使用することができる。音響流体動作が試料流体から粒子を分離することを含む場合、この分離の効率は、例えば、顕微鏡およびカメラ、インピーダンスセンサ、または光電池検出器を使用して、分離後に試料流体内に残っている粒子の数をカウントすることによって決定されてもよく、したがって分離の効率の尺度が提供される。設定値は、例えば、最大値から1%、5%、または10%の効率の損失に対応してもよい。
【0098】
事象(k)に関して、これは、基板が接着テープまたは接着フィルムによって超音波トランスデューサに取り付けられている場合に有用であり、したがって、基板が超音波トランスデューサから取り外されたか、または別のものと交換された場合に共振周波数が識別されることが実現される。
【0099】
事象(l)に関して、これは、減衰材料が基板と接触および非接触にされ得る場合に有用である。減衰材料は、例えば、音響流体動作が実行されるべきときに、基板から分離され、基板と接触させられてもよい。
【0100】
事象(a)~(l)の各々は、ステップ(iii)~(iv)を繰り返すときに、インピーダンススペクトルおよび共振の変化を評価することによってさらに検出される場合がある。具体的には、事象(a)~(l)の各々は、共振周波数の変化をもたらす場合がある。共振周波数を追跡することにより、これらの変化を検出および/または定量化することができる。
【0101】
本明細書で提案された技術のさらなる利点および特徴は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになる。
【0102】
図面の簡単な説明および詳細な説明
本明細書で提案された技術の上記および他の特徴および利点のより完全な理解は、添付の図面とともに好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図1A】本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイスの断面側面図を示す。
【
図1B】本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイスの部分断面上面図を示す。
【
図1C】本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイスの部分断面端面図を示す。
【
図2A】本明細書で提案された技術の第1の態様による代替の音響流体デバイスの断面側面図を示し、音響流体デバイスは、超音波トランスデューサが取り付けられ、減衰材料が接触しているプリント回路基板または支持体をさらに備える。
【
図2B】本明細書で提案された技術の第1の態様による代替の音響流体デバイスの部分断面端面図を示し、音響流体デバイスは、超音波トランスデューサが取り付けられ、減衰材料が接触しているプリント回路基板または支持体をさらに備える。
【
図2C】本明細書で提案された技術の第1の態様によるさらなる代替の音響流体デバイスの断面側面図を示し、音響流体デバイスは、超音波トランスデューサが取り付けられ、最小量の減衰材料が接触しているプリント回路基板または支持体をさらに備える。
【
図3A】空気または水で満たされたチャネルを備える一般的な音響流体デバイス内の超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルを示す。
【
図3B】それぞれ、減衰材料および溝の効果を示す、本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイス内の超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルを示す。
【
図3C】マイクロ流体空洞の共振周波数の追跡を可能にするインピーダンス最小値を示す、本明細書で提案された技術の第1の態様による好ましい音響流体デバイス内の超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルを示す。
【
図4A】マイクロ流体空洞の共振周波数の追跡を可能にするインピーダンス最小値を示す、本明細書で提案された技術の第1の態様による異なる音響流体デバイス内の超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルを示す。
【
図4B】マイクロ流体空洞の共振周波数の追跡を可能にするインピーダンス最小値を示す、本明細書で提案された技術の第1の態様によるさらなる音響流体デバイス内の超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0104】
図面および説明において、同じ参照番号は同じ特徴を指すために使用される。参照番号に付加されたA’は、そのように参照された特徴が、’がない参照番号を有する特徴と同様の機能、構造、または重要性を有するが、この特徴と同一ではないことを示す。
【0105】
図1Aは、本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイス10の断面側面図を示す。音響流体デバイス10は、ここではチャネル高さchおよび(
図1Bに示された)チャネル幅cwを有するチャネルによって表されたマイクロ流体空洞14を備える、ここでは毛管によって表された基板12を備える。マイクロ流体空洞14は、入口16および出口18を備える。第1の側面22および第2の側面24を有する超音波トランスデューサ20であって、複数の離間した平行溝26が設けられた第2の側面24は、接着層30を介してその第1の側面22によって基板12に取り付けられている。減衰材料40aおよび40bの第1および第2の層は、互いに離間した位置で、かつその下に超音波トランスデューサ20が取り付けられた空洞の一部の両側で基板12を取り囲むように設けられている。
【0106】
使用中、試料流体、例えば粒子を含む溶液は、マイクロ流体空洞14内に導かれる。超音波トランスデューサ20は、超音波トランスデューサ20の振動を引き起こすために(
図1Cに示された)リード線によって第1の側面22および第2の側面24に印加される(
図1Cに示された)駆動回路からの電気信号によって駆動される。複数の平行溝26のおかげで、結果として生じる振動は主に垂直方向である。振動は、接着層30によって超音波トランスデューサからマイクロ流体空洞14に伝達される。これにより、マイクロ流体空洞14内に音波がもたらされ、音波は、粒子を捕捉または選別する、すなわち、異なるタイプの音響泳動動作を実行するために使用され得る。
【0107】
超音波トランスデューサ20が接着層30を介して基板に取り付けられているという事実にもかかわらず、固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振がすべて、基板に取り付けられるか、または基板と接触している超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルの最小値、好ましくは局所的最小値、より好ましくは大域的最小値の周波数に対応する共振周波数を有するように、基板の材料および寸法ならびに超音波トランスデューサの材料および寸法が選択されるので、マイクロ流体空洞の共振周波数を追跡することが依然として可能である。そのような最小値は、以下でさらに考察される
図3Bに見られる。
【0108】
音響流体デバイス10は、共振周波数の追跡をさらに容易にするために、第1のセットの音響固有システム共振の少なくとも1つの共振の共振品質係数を減少させ、それによって第1のセットの音響固有システム共振の少なくとも1つの共振を減衰または除去するためのいくつかの任意選択の有利な特徴を含む。
【0109】
したがって、超音波トランスデューサ20の第2の側面24の平行溝26は、水平方向の超音波トランスデューサの振動を低減する。これは、第1のセットのシステム共振における共振の数を制限する。
【0110】
さらに、減衰材料40aおよび40bは、基板12内の振動を低減し、したがって、第1のセットのシステム共振における共振をさらに制限および/または低減する。
【0111】
図1Bは、本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイス10の部分断面上面図を示す。この図では、超音波トランスデューサ20は、好ましくは、その第1の側面22の一部が基板12を越えて延在するような寸法にされていることが分かる。これにより、超音波トランスデューサ20に電気駆動信号を供給するために必要なリード線を、1つのリード線を第1の側面22に、第2のリード線を第2の側面24に取り付けることが可能になる。
【0112】
また、減衰材料40aおよび40bは、それぞれ、基板12を取り囲むバンドまたはカラーを形成することも分かる。減衰材料40aおよび40bによって覆われる基板12の範囲が大きいほど、減衰は大きくなる。
【0113】
したがって、それぞれの減衰層40aおよび40bの幅waおよびwbは、変化する場合がある。また、減衰材料40aおよび40bの外縁と超音波トランスデューサ20との間のそれぞれの距離daおよびdbも、変化する場合がある。
【0114】
図1Cは、本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイス10の部分断面端面図を示す。この図では、減衰材料40aおよび40bは、基板12を取り囲むバンドまたはカラーを形成することも分かる。マイクロ流体空洞14が長方形の断面を有することがさらに示されている。
【0115】
図1Cは、駆動信号を提供し、超音波トランスデューサ20の第1の側面22に接続された接地リード線52および第2の側面24に接続された信号リード線54を介して超音波トランスデューサ20に接続されている駆動回路50をさらに概略的に示す。
【0116】
図2Aは、本明細書で提案された技術の第1の態様による代替の音響流体デバイス10’の断面側面図を示し、音響流体デバイス10’は、プリント回路基板または支持体60をさらに備え、その上に第1の側面62、超音波トランスデューサ20が取り付けられ、その上に、接触している(ここでは取り付けられている)第1の側面62に向かってその厚さを拡張するようにここでは修正された減衰材料40a’および40b’が、基板12内の望ましくない振動および共振をさらに減衰させるか、またはプリント回路基板60内に導く。減衰材料40a’および40b’をプリント回路基板60に取り付けることにより、基板12の堅牢性および剛性がさらに高められ、したがって、曲げおよび/またはねじりおよび/または他の力が基板12に加えられることを引き起こす損傷および破損などの損傷から基板12が保護される。
【0117】
望ましくない振動および共振をさらに低減するために、プリント回路基板60には、有利なことに、第1の側面62から第2の側面64まで延在し、超音波トランスデューサ20の空気逆洗を実現する切り欠き66が設けられ、それによって超音波トランスデューサ20の第2の側面24の大部分はプリント回路基板と接触しない。これにより、空洞またはチャネル14の高さchの方向における超音波トランスデューサ20のより自由な振動が可能になり、したがってその方向の振動がさらに容易になり、より単純なインピーダンススペクトルが提供される。これは、第1のセットのシステム共振における共振の数を制限する。
【0118】
図2Bは、本明細書で提案された技術の第1の態様による代替の音響流体デバイス10’の部分断面端面図を示す。
【0119】
また、プリント回路基板60の第1の側面62に取り付けられ、プリント回路基板内のリード線(図示せず)および信号リード線52’によって超音波トランスデューサ20の第1の側面22に接続され、プリント回路基板内に設けられた接地リード線(図示せず)を介して第2の側面24に接続された、修正された駆動回路52も示されている。
【0120】
図2Cは、本明細書で提案された技術の第1の態様によるさらなる代替の音響流体デバイス10’’の断面側面図を示し、音響流体デバイスは、その上に超音波トランスデューサが取り付けられ、最小量の減衰材料40a’’および40b’’が取り付けられたプリント回路基板または支持体60をさらに備える。
【0121】
図3Aは、空気または水で満たされたチャネルを備える一般的な音響流体デバイス内の超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルを示す。
図3Aは、このように、2MHzトランスデューサおよびより大きいガラス基板を備える音響流体デバイスのインピーダンスを示す。超音波トランスデューサは、接着剤によって基板に取り付けられた。空洞共振周波数は、実験的に2.033MHzであると決定された。しかしながら、2.033MHzにおけるチャネル共振周波数は、図によって示されたように、インピーダンススペクトルの対応する最小値をもたない。これは、空気充填および水充填のチャネルのスペクトルがほぼ同一であることを考慮すると、特に明らかである。これは、空気の音速とは著しく異なる音速を有する水をチャネルに導いても、スペクトルに明確な差は生じないことを意味する。したがって、この音響流体デバイスが実際に2.033MHzのチャネル共振周波数を有し、そのチャネル共振が音響流体動作を実行するために使用できることを実験が示したという事実にもかかわらず、このチャネル共振は、インピーダンススペクトルの検出可能な最小値を生み出さない。したがって、このシステムのインピーダンススペクトルを使用して、チャネル共振周波数2.033MHzを追尾することは可能ではない。基板は、45mmの長さ、5mmの幅、1.4mmの厚さ(高さ)の外形寸法を有していた。内側チャネルは、420μmの幅および150μmの高さを有していた。トランスデューサは、寸法8×24mm
2を有していた。トランスデューサには平行溝が設けられず、基板には減衰材料が取り付けられなかった。
【0122】
図3Bは、それぞれ、減衰材料および溝(切り口)の効果を示す、本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイス内の超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルを示す。使用される音響流体デバイスは、
図1Aに示されたものと同様である。
【0123】
ここで、トランスデューサおよび基板の寸法および材料は、基板は毛管であり、チャネルの寸法は、インピーダンススペクトルの最小値、ここでは大域的最小値に対応するので、4.1MHzでのチャネル共振が検出可能であるように選択されており、「切り口が付けられていない」と示された線を参照されたい。
【0124】
(切り口と呼ばれる)超音波トランスデューサの第2の側面への溝の付加は、インピーダンススペクトルを平滑化するために示されており、「切り口が付けられた」と示された線を参照されたい。
【0125】
あるいは、基板への減衰材料の付加も、インピーダンススペクトルを平滑化し、「減衰された」と示された線を参照されたい。
【0126】
溝(切り口)および減衰材料でデバイスを構成することなく音響流体デバイスの共振周波数を追跡することが可能であるが、
図3Cに示されたように、インピーダンススペクトルを平滑化するためにそうすることが好ましい。
【0127】
図3Cは、このように、マイクロ流体空洞の共振周波数の追跡を可能にするインピーダンス最小値を示す、本明細書で提案された技術の第1の態様による好ましい音響流体デバイス内の超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルを示す。ここで、トランスデューサおよび基板の寸法および材料は、基板は毛管であり、チャネルの寸法は、インピーダンススペクトルの最小値、ここでは大域的最小値に対応するので、4.1MHzでのチャネル共振が検出可能であるように選択されている。
【0128】
この最小値は、システムの別の共振に対応する4.30MHzにおける最小値からも識別可能である。さらに、トランスデューサのみの固有共振は4MHzであり、チャネルの共振周波数はトランスデューサの共振周波数とは異なると結論付けることができる。したがって、チャネル内の流体の温度および含有量の変化に起因してチャネル共振の共振周波数が変化する場合、かつ変化するとき、4.1MHzでの共振を追跡することができる。インピーダンススペクトルを取得するために使用される音響流体デバイスは、
図1Aに示されたデバイス10に対応する。チャネルは、2mmの幅、1mmの高さ、および25mmの長さを有していた。毛管の肉厚は0.25mmであった。超音波トランスデューサの寸法は3.5×1.55mm
2であった。超音波トランスデューサは、接着剤によって毛管に取り付けられ、トランスデューサには、毛管に取り付けられていない側面に離間した平行溝がさらに設けられた。硬化接着剤の形態の減衰材料は、超音波トランスデューサの位置の両側の毛管の外面に取り付けられた。
【0129】
図4Aは、マイクロ流体空洞の共振周波数の追跡を可能にするインピーダンス最小値を示す、本明細書で提案された技術の第1の態様による異なる音響流体デバイス内の超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルを示す。Rとマークされた垂直線によって
図4Aに示されたように、インピーダンススペクトルは、追跡に使用可能な2.07MHzにおける局所的最小値および大域的最小値を表す。インピーダンススペクトルを取得するために使用される音響流体デバイスは、
図2Aに示されたデバイス10’と同様であり、長方形の断面を有する厚壁毛管として構成された。基板は、10×3×1.5mm
3の外形寸法を有し、基板の全長(10mm)に沿って延在するチャネルは、1.0×0.5mm
2の長方形の断面を有していた。超音波トランスデューサはプリント回路基板に取り付けられ、基板は接着剤を使用して超音波トランスデューサに取り付けられた。超音波トランスデューサは、2MHzの固有共振周波数を有し、このように、2.07MHzにおけるチャネル共振は、超音波トランスデューサの固有共振とは異なっていた。超音波トランスデューサには切り口が設けられなかった。
【0130】
図4Bは、マイクロ流体空洞の共振周波数の追跡を可能にするインピーダンス最小値を示す、本明細書で提案された技術の第1の態様によるさらなる音響流体デバイス内の超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルを示す。垂直線Rによって
図4Bに示されたように、インピーダンススペクトルは、追跡することができる2.05MHzにおける局所的最小値を表す。R0とマークされた垂直線によって示されたさらなる空洞共振は、1.97MHzにおいて実験的に見出されたが、対応する最小値は、2MHzにおける固有のトランスデューサ共振と重複するので、インピーダンススペクトルにおいて識別することができなかった。基板は、45×5×1.5mmの外形寸法を有し、基板の中央に配置された30×0.5×0.2mm(長方形の断面)の寸法を有するフローチャネルを特徴とするガラスチップとして構成され、基板の一端に、基板の対向する長手方向側面からフローチャネルの第1の端部まで垂直に延在する2つの別々の入口チャネルを含み、基板の対向する端部に、フローチャネルの第2の端部から基板の対向する長手方向側面まで反対方向に垂直に延在する2つの別々の出口チャネルを含むフロースプリッタがその後に続く。超音波トランスデューサはプリント回路基板に取り付けられ、基板は接着剤を使用して超音波トランスデューサに取り付けられた。超音波トランスデューサは、2MHzの固有共振周波数を有し、切り口が設けられなかった。
【0131】
上記を要約すると、
図3Cおよび
図4A~
図4Bは、本明細書で提案された技術の第1の態様によらない音響流体デバイスからのインピーダンススペクトルを示す
図3Aと比較して、本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイスからのインピーダンススペクトルを示す。それぞれの音響流体デバイスの特性が以下の表に要約されている。
【0132】
【0133】
したがって、表から、固有のトランスデューサ共振と空洞共振との間の少なくとも2.5%の差により、追跡が実行されることが可能になることが分かる。2.5%は、2.05MHzと2MHzとの間の0.05MHzの差(
図4B)に相当し、4.1MHzと4MHzとの間の0.1MHzの差(
図3C)に相当する。4.30MHzにおける
図3Cのさらなる空洞共振は、7.5%の差に相当する0.30MHzの差を有する。さらに、2.07MHzにおける空洞共振は、固有のトランスデューサ共振2MHz(
図4A)から3.5%だけ異なる。これらの共振のすべてが追跡を可能にする。
【0134】
対照的に、
図3Aは、空洞共振と固有のトランスデューサ共振との間の0.033MHzの差を有し、1.65%の差に相当する。
図4Bの1.97MHzにおけるさらなる空洞共振は、1.5%に相当する0.03(2-1.97)の差を有する。これらはいずれも追跡を可能にしない。
【0135】
表は、切り口の有無、および減衰の有無にかかわらず、追跡が可能であることを示す。表は、本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイスが、比較的薄いまたは厚い壁を有する毛管、ならびに複数の入口および出口を有する空洞を含む細長い長方形の基板を備える一般的なチップフォーマットを含む異なる構成で製造され得ることをさらに示す。また、異なる固有の共振周波数を有する異なる超音波トランスデューサを使用することができる。
【0136】
一般に、本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイスを構築するために、上述されたように本明細書で提案された技術の第2の態様による方法が実行されてもよい。
【0137】
簡単な実装形態では、音響流体デバイスを製造する方法は、
-所与の超音波トランスデューサの共振周波数を選択し、注記するステップと、
-共振周波数に対応する整数個の半波長に対応する少なくとも1つのマイクロ流体空洞寸法を計算し、空洞内に供給される流体内の音速を考慮するステップと、
-修正された空洞寸法を取得するために、計算された少なくとも1つの空洞寸法を共振周波数の少なくとも2.5%に相当する量だけ増加または減少させるステップと、
-修正された空洞寸法を有するマイクロ流体空洞を有する基板を設けるステップと、
-超音波トランスデューサを基板に取り付けるか、または基板と接触させるステップと
を含んでもよい。
【0138】
音響流体デバイスの追跡特性をさらに向上させるために、減衰材料は、上述されたように基板に取り付けられてもよく、かつ/または超音波トランスデューサには、上述されたように切り口が設けられてもよい。さらに、基板の外形寸法は、修正された空洞寸法の共振周波数に対応するいかなる共振周波数ももたないように選択されてもよい。したがって、少なくとも1つの空洞共振周波数と超音波トランスデューサの固有の共振周波数との間に共振周波数の少なくとも2.5%の差があるように音響流体デバイスを製造することは、本明細書で提案された技術の第1の態様による音響流体デバイスを取得する1つの簡単な方法にすぎないことに留意されたい。音響流体デバイスは、特に、本明細書で提案された技術の第2の態様による方法に従って製造されてもよい。
【0139】
第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振がすべて、基板に取り付けられるか、または基板と接触している超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルの最小値、好ましくは局所的最小値、より好ましくは大域的最小値の周波数に対応する共振周波数を有するように、基板の材料および寸法ならびに超音波トランスデューサの材料および寸法が選択されている限り、追跡は可能である。
【0140】
したがって、本発明の第1の態様による音響流体デバイスは、少なくとも1つの空洞共振周波数と超音波トランスデューサの固有の共振周波数との間の共振周波数の差が2.5%未満であるようなデバイスを包含することができる。
【0141】
これは、例えば、第2のセットの音響固有空洞共振の少なくとも1つの個々の空洞共振が、
-少なくとも1つの個々の空洞共振の共振周波数に最も近い共振周波数を有する、第1のセットの音響固有システム共振の、システム共振の共振品質係数よりも大きい共振品質係数、および好ましくは、
-第1のセットの音響固有システム共振のシステム共振の各々の共振品質係数よりも大きい共振品質係数
を有するときに当てはまる。
【0142】
これらの場合、少なくとも1つの個々の空洞共振は、第1のセットの音響固有システム共振の共振よりも顕著であり、したがって、それは、超音波トランスデューサのインピーダンススペクトルの最小値として識別可能である。
【0143】
実現可能な修正形態
本明細書で提案された技術は、主に例示的かつ実証的な目的を有する、上述され図面に示された実施形態のみに限定されない。本特許出願は、本明細書に記載された好ましい実施形態のすべての調整および変形を網羅するものであり、したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の文言によって定義される。
【0144】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通して、文脈上特に必要とされない限り、「含む(comprise)」という単語、および「含む(comprises)」または「含む(comprising)」などの変形は、記載された整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループを含むが、任意の他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループを除外しないことを意味するように理解される。
【国際調査報告】