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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-22
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20240815BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240815BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240815BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240815BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20240815BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20240815BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20240815BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/485
H01M4/139
H01G11/36
H01G11/38
H01G11/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503768
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 US2022037845
(87)【国際公開番号】W WO2023004025
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/224,237
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513295777
【氏名又は名称】ファーストキャップ・システムズ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】FastCAP SYSTEMS Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ブランビッラ,ニコロ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ギテ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,ティン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シュージエ
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ワンジュン ベン
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AB06
5E078BA27
5E078BA41
5E078BB24
5E078DA03
5E078DA06
5E078FA02
5E078FA12
5E078FA13
5H050AA07
5H050AA14
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA23
5H050FA16
5H050GA02
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA14
(57)【要約】
高アスペクト比炭素要素(例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ束、グラフェンフレークなど)のネットワークを含有する電極活性層が開示され、これは、活物質を絡ませたり引っ掛けたりして前記層を支持することのできる高電気伝導性骨格を提供する。高アスペクト比の炭素要素に表面処理を適用して、活物質とその下の電極層との間の付着を促進し、活性層の全体結合性および機械的安定性を向上させることができる。この表面処理は、ネットワーク上にごく薄い(場合により単分子の)層を形成し、バルクのバインダー材料なしの大きなボイド空間を残し、その代わりに活物質で充たされ得る。得られる活性層は、厚さが大きくかつ活物質の質量負荷が高くても、優れた機械的安定性を有して形成され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク内にボイド空間を規定する、高アスペクト比炭素要素のネットワークと、
ネットワーク内のボイド空間に配置され、ネットワーク内に引っ掛けられる、複数の電極活物質粒子と、
高アスペクト比炭素要素の表面上の表面処理であって、高アスペクト比炭素要素と活物質粒子との間の付着を促進する、表面処理と
を含む電極活性層を含む、装置。
【請求項2】
高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも10倍である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも100倍である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも1000倍である、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも100000倍である、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも10倍である、請求項1~5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも100倍である、請求項1~6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも1000倍である、請求項1~7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも10000倍である、請求項1~8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
高アスペクト比炭素要素が、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ束を含む、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
高アスペクト比炭素要素が、グラフェンフレークを含む、請求項1~10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
電極活性層が、ボイド空間に配置された10重量%未満のポリマーバインダーを含有する、請求項1~11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
電極活性層が、ボイド空間に配置された1重量%未満のポリマーバインダーを含有する、請求項1~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
電極活性層が、ボイド空間に配置された1重量%未満のポリマーバインダーを含有する、請求項1~13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
電極活性層が、表面処理以外のポリマー材料を実質的に含まない、請求項1~14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
電極活性層が、ポリマー材料を実質的に含まない、請求項1~15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
表面処理が、202℃未満の沸点を有する溶媒中に可溶な材料を含む、請求項1~16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
表面処理が、185℃未満の沸点を有する溶媒中に可溶な材料を含む、請求項1~17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
活性層を形成する間に、表面処理を形成する材料が、202℃未満の沸点を有する溶媒中に溶解した、請求項1~18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
活性層を形成する間に、表面処理を形成する材料が、185℃未満の沸点を有する溶媒中に溶解した、請求項1~19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
活性層を形成する間に、表面処理を形成する材料が、イソプロピルアルコールを含む溶媒中に溶解した、請求項1~20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
活性層を形成する間に、表面処理を形成する材料が、n-メチル-2-ピロリドンを実質的に含まない溶媒中に溶解した、請求項1~21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
活性層を形成する間に、表面処理を形成する材料が、ピロリドン化合物を実質的に含まない溶媒中に溶解した、請求項1~22のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
ネットワークが、少なくとも90重量%炭素である、請求項1~23のいずれかに記載の装置。
【請求項25】
ネットワークが、少なくとも95重量%炭素である、請求項1~24のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
ネットワークが、少なくとも99重量%炭素である、請求項1~25のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
ネットワークが、少なくとも99.9重量%炭素である、請求項1~26のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
ネットワークが、パーコレーション閾値を超える接続性を示す電気的に相互接続された炭素要素のネットワークを含む、請求項1~27のいずれかに記載の装置。
【請求項29】
ネットワークが、1つ以上の高電気伝導性経路を規定する、請求項1~28のいずれかに記載の装置。
【請求項30】
前記経路が、100μmを超える長さを有する、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記経路が、1000μmを超える長さを有する、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
前記経路が、10000μmを超える長さを有する、請求項29に記載の装置。
【請求項33】
ネットワークが、炭素要素で形成される1つ以上の構造体を含有し、前記構造体が、炭素要素の最大寸法の長さに対して少なくとも10倍の全体長さを含む、請求項1~32のいずれかに記載の装置。
【請求項34】
ネットワークが、炭素要素で形成される1つ以上の構造体を含有し、前記構造体が、炭素要素の最大寸法の長さに対して少なくとも100倍の全体長さを含む、請求項1~33のいずれかに記載の装置。
【請求項35】
ネットワークが、炭素要素で形成される1つ以上の構造体を含有し、前記構造体が、炭素要素の最大寸法の長さに対して少なくとも1000倍の全体長さを含む、請求項1~34のいずれかに記載の装置。
【請求項36】
表面処理が、炭素要素上に配置された界面活性剤層を含む、請求項1~35のいずれかに記載の装置。
【請求項37】
界面活性剤層が、炭素要素に結合している、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
界面活性剤層が、疎水性末端および親水性末端を各々有する複数の界面活性剤要素を含み、疎水性末端が、炭素要素の表面1の近位に配置され、親水性末端が、炭素要素の前記表面1の遠位に配置される、請求項36または37に記載の装置。
【請求項39】
界面活性剤要素の少なくとも一部の親水性末端が、活物質粒子と結合を形成する、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
結合が、イオン結合を含む、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
結合が、共有結合を含む、請求項39に記載の装置。
【請求項42】
結合が、π-π結合、水素結合および静電結合からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項39に記載の装置。
【請求項43】
界面活性剤要素の親水性末端が、第1極性の分極電荷を有し、および
活物質粒子が、前記第1極性と反対の第2極性の分極電荷を帯びている、
請求項38に記載の装置。
【請求項44】
界面活性剤層が、水溶性界面活性剤を含む、請求項36~43のいずれかに記載の装置。
【請求項45】
界面活性剤層が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートに由来するイオンを含む、請求項36~44のいずれかに記載の装置。
【請求項46】
界面活性剤層が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、N-(ココアルキル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ココアミドプロピルベタインヘキサデシルトリメチルアンモニウムアセテート、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウム硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つに由来するイオンを含む、請求項36~45のいずれかに記載の装置。
【請求項47】
界面活性剤層が、イオン性化合物を溶媒に溶解させて形成される界面活性剤イオンの層を含む、請求項36~46のいずれかに記載の装置。
【請求項48】
活性層が、イオン性界面活性剤化合物を溶媒に溶解させて形成される界面活性剤イオンに対する残留カウンターイオンを含む、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
カウンターイオンが、電気化学セルにおける使用に適合するように選択される、請求項48に記載の装置。
【請求項50】
カウンターイオンが、ハロゲン化物基を実質的に含まない、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
残留カウンターイオンが、臭素を実質的に含まない、請求項48~50のいずれかに記載の装置。
【請求項52】
イオン性界面活性剤化合物が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、N-(ココアルキル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ココアミドプロピルベタインヘキサデシルトリメチルアンモニウムアセテート、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウム硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項51に記載の装置。
【請求項53】
炭素要素が、官能基化されている、請求項1~52のいずれかに記載の装置。
【請求項54】
炭素要素が、界面活性剤材料で官能基化されている、請求項53に記載の装置。
【請求項55】
炭素要素が、ネットワークへの活物質粒子の付着を促進する官能基で官能基化されている、請求項53または54に記載の装置。
【請求項56】
官能基が、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、およびシラノ基からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項55に記載の装置。
【請求項57】
官能基化された炭素要素が、ナノ形態の炭素と界面活性剤とを含む乾燥させた水性分散物から形成される、請求項48~56のいずれかに記載の装置。
【請求項58】
官能基化された炭素要素が、ナノ形態の炭素と界面活性剤とを含む凍結乾燥させた水性分散物から形成される、請求項57に記載の装置。
【請求項59】
水性分散物が、酸を実質的に含まない、請求項57~58のいずれかに記載の装置。
【請求項60】
表面処理が、炭素要素上に配置された薄いポリマー層を含み、該ポリマー層は、ネットワークに対する活物質の付着を促進する、請求項1~59のいずれかに記載の装置。
【請求項61】
薄いポリマー層が、自己組織化ポリマーを含む、請求項60に記載の装置。
【請求項62】
薄いポリマー層が、水素結合を介して活物質に結合する、請求項60~61のいずれかに記載の装置。
【請求項63】
薄いポリマー層が、ネットワークの外表面に対して垂直な方向に、1nm以下の最大厚さを有する、請求項60~62のいずれかに記載の装置。
【請求項64】
薄いポリマー層が、ネットワークの外表面に対して垂直な方向に、10nm以下の最大厚さを有する、請求項60~63のいずれかに記載の装置。
【請求項65】
薄いポリマー層が、ネットワークの外表面に対して垂直な方向に、50nm以下の最大厚さを有する、請求項60~64のいずれかに記載の装置。
【請求項66】
ネットワークによって規定されるボイド空間の1体積%未満が、薄いポリマー層で充たされている、請求項60~65のいずれかに記載の装置。
【請求項67】
ネットワークによって規定されるボイド空間の0.1体積%未満が、薄いポリマー層で充たされている、請求項60~66のいずれかに記載の装置。
【請求項68】
ネットワークによって規定されるボイド空間の0.1体積%未満が、薄いポリマー層で充たされている、請求項60~67のいずれかに記載の装置。
【請求項69】
表面処理が、熱分解されたポリマー材料から形成される炭素質材料の層を含む、請求項1~35のいずれかに記載の装置。
【請求項70】
熱分解されたポリマー材料から形成される炭素質材料の層が、ネットワークに対する活物質粒子の付着を促進する、請求項69に記載の装置。
【請求項71】
活物質粒子が、金属酸化物を含む、請求項1~70に記載の装置。
【請求項72】
活物質粒子が、リチウム金属酸化物を含む、請求項1~71に記載の装置。
【請求項73】
活物質が、ネットワークに絡まっている、請求項1~72に記載の装置。
【請求項74】
表面処理が、活物質層と集電体層との付着を促進する、請求項1~73に記載の装置。
【請求項75】
表面処理が、集電体層と結合した官能基を含有する、請求項74に記載の装置。
【請求項76】
官能基が、非共有結合により集電体層と結合している、請求項75に記載の装置。
【請求項77】
官能基が、π-π結合、水素結合およびイオン結合からなる群より選択される少なくとも1つにより集電体層と結合している、請求項75に記載の装置。
【請求項78】
集電体が金属箔を含む、請求項74~77に記載の装置。
【請求項79】
活物質層が、集電体に対して垂直な方向に少なくとも200μmの厚さを有する、請求項74~77のいずれかに記載の装置。
【請求項80】
活物質層が、集電体に対して垂直な方向に少なくとも300μmの厚さを有する、請求項74~77のいずれかに記載の装置。
【請求項81】
活物質層が、集電体に対して垂直な方向に少なくとも400μmの厚さを有する、請求項74~77のいずれかに記載の装置。
【請求項82】
エネルギー貯蔵セルを更に含み、
エネルギー貯蔵セルが、
活物質層を含む第1電極と、
第2電極と、
第1電極と第2電極との間に配置される透過性セパレータと、
第1および第2電極を濡らす電解質と
を含む、請求項1~81のいずれかに記載の装置。
【請求項83】
高アスペクト比炭素要素および表面処理材料を溶媒に分散させて初期スラリーを形成することであって、前記分散工程により高アスペクト比炭素上に表面処理を形成すること、
活物質を初期スラリーに混合して最終スラリーを形成すること、
最終スラリーを基材上にコーティングすること、および
最終スラリーを乾燥させて電極活性層を形成すること
を含む、方法。
【請求項84】
高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも10倍である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも100倍である、請求項83または84に記載の方法。
【請求項86】
高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも1000倍である、請求項83~85のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも100000倍である、請求項83~86のいずれかに記載の方法。
【請求項88】
高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも10倍である、請求項83~87のいずれかに記載の方法。
【請求項89】
高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも100倍である、請求項83~88のいずれかに記載の方法。
【請求項90】
高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも1000倍である、請求項83~89のいずれかに記載の方法。
【請求項91】
高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも10000倍である、請求項83~90のいずれかに記載の方法。
【請求項92】
高アスペクト比炭素要素が、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ束を含む、請求項83~91のいずれかに記載の方法。
【請求項93】
高アスペクト比炭素要素が、グラフェンフレークを含む、請求項83~92のいずれかに記載の方法。
【請求項94】
初期スラリーが、0.1~20.0重量%の範囲の固形分を有する、請求項83~93のいずれかに記載の方法。
【請求項95】
最終スラリーが、10.0~80重量%の範囲の固形分を有する、請求項83~94のいずれかに記載の方法。
【請求項96】
溶媒が、202℃未満の沸点を有する、請求項83~95のいずれかに記載の方法。
【請求項97】
溶媒が、185℃未満の沸点を有する、請求項83~96のいずれかに記載の方法。
【請求項98】
溶媒が、125℃未満の沸点を有する、請求項83~97のいずれかに記載の方法。
【請求項99】
溶媒が、100℃以下の沸点を有する、請求項83~98のいずれかに記載の方法。
【請求項100】
溶媒が、メタノール、エタノール、2-プロパノールおよび水からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項83~99のいずれかに記載の方法。
【請求項101】
活性層を形成する間に、表面処理を形成する材料が、ピロリドン化合物を実質的に含まない溶媒中に溶解した、請求項83~100のいずれかに記載の装置。
【請求項102】
溶媒が、n-メチル-2-ピロリドンを実質的に含まない、請求項83~101のいずれかに記載の方法。
【請求項103】
表面処理材料が、界面活性剤を含む、請求項83~102のいずれかに記載の方法。
【請求項104】
界面活性剤が、ハロゲン化物基を実質的に含まない、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
界面活性剤が、臭素を実質的に含まない、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
表面処理を形成することが、炭素要素上に界面活性剤層を形成することを含む、請求項83~105のいずれかに記載の方法。
【請求項107】
表面処理が、自己組織化層である、請求項83~106のいずれかに記載の方法。
【請求項108】
界面活性剤層を形成することが、炭素要素の表面に複数の界面活性剤要素を配置することを含み、界面活性剤要素の各々が、疎水性末端および親水性末端を有し、疎水性末端が、炭素要素の表面1の近位に配置され、親水性末端が、炭素要素の前記表面1の遠位に配置される、請求項106または107に記載の方法。
【請求項109】
界面活性剤要素の少なくとも一部の疎水性末端が、活物質粒子と結合を形成することをもたらすことを更に含む、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
結合が、イオン結合を含む、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
結合が、共有結合を含む、請求項109に記載の方法。
【請求項112】
結合が、π-π結合、水素結合および静電結合からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項109に記載の方法。
【請求項113】
界面活性剤要素の親水性末端が、第1極性の分極電荷を有し、
活物質粒子が、前記第1極性と反対の第2極性の分極電荷を帯びている、
請求項108に記載の方法。
【請求項114】
界面活性剤材料が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、N-(ココアルキル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ココアミドプロピルベタインヘキサデシルトリメチルアンモニウムアセテート、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウム硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項103~113のいいずれかに記載の方法。
【請求項115】
高アスペクト比炭素要素および表面処理材料を溶媒に分散させて初期スラリーを形成することが、凝集した炭素要素に力を印加して、前記要素を、該要素の短軸に対して横断方向にスライドさせて互いに引き離すことを含む、請求項83~114のいずれかに記載の方法。
【請求項116】
最終スラリーを202℃未満の温度で乾燥させることを含む、請求項83~114のいずれかに記載の方法。
【請求項117】
最終スラリーを185℃未満の温度で乾燥させることを含む、請求項83~114のいずれかに記載の方法。
【請求項118】
最終スラリーを125℃未満の温度で乾燥させることを含む、請求項83~114のいずれかに記載の方法。
【請求項119】
最終スラリーを100℃以下の温度で乾燥させることを含む、請求項83~114のいずれかに記載の方法。
【請求項120】
活性層をカレンダー加工して、活物質とネットワークとの間の付着を促進することを更に含む、請求項83~119のいずれかに記載の方法。
【請求項121】
高アスペクト比炭素要素および表面処理材料を水性溶媒に分散させて初期スラリーを形成することであって、前記分散工程により高アスペクト比炭素上に表面処理を形成すること、および
初期スラリーを乾燥させて実質的に全ての水分を除去し、高アスペクト比炭素の乾燥した粉末およびその上の表面処理をもたらすこと
を含む、方法。
【請求項122】
初期スラリーを乾燥させることが、初期スラリーを凍結乾燥させることを含む、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
水性溶媒および初期スラリーが、高アスペクト比炭素要素に損傷を与える物質を実質的に含まない、請求項121または122に記載の方法。
【請求項124】
水性溶媒および初期スラリーが、酸を実質的に含まない、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
初期スラリーが、高アスペクト比炭素要素、表面処理材料および水から本質的に成る、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
高アスペクト比炭素の乾燥粉末を表面処理と共に溶媒に分散させ、活物質を添加して、第2スラリーを形成すること、
第2スラリーを基材上にコーティングすること、および
第2スラリーを乾燥させて電極活性層を形成すること
を更に含む、請求項121~125のいずれかに記載の方法。
【請求項127】
高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも10倍である、請求項121~126のいずれかに記載の方法。
【請求項128】
高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも100倍である、請求項121~127のいずれかに記載の方法。
【請求項129】
高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも1000倍である、請求項121~128のいずれかに記載の方法。
【請求項130】
高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも100000倍である、請求項121~129のいずれかに記載の方法。
【請求項131】
高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも10倍である、請求項121~130のいずれかに記載の方法。
【請求項132】
高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも100倍である、請求項121~131のいずれかに記載の方法。
【請求項133】
高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも1000倍である、請求項121~132のいずれかに記載の方法。
【請求項134】
高アスペクト比炭素要素が、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ束を含む、請求項121~133のいずれかに記載の方法。
【請求項135】
高アスペクト比炭素要素が、グラフェンフレークを含む、請求項121~134のいずれかに記載の方法。
【請求項136】
溶媒が、202℃未満の沸点を有する、請求項121~135のいずれかに記載の方法。
【請求項137】
溶媒が、185℃未満の沸点を有する、請求項121~135のいずれかに記載の方法。
【請求項138】
溶媒が、125℃未満の沸点を有する、請求項121~135のいずれかに記載の方法。
【請求項139】
溶媒が、100℃以下の沸点を有する、請求項121~135のいずれかに記載の方法。
【請求項140】
第2溶媒が、メタノール、エタノール、2-プロパノールおよび水からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項121~139のいずれかに記載の方法。
【請求項141】
第2溶媒が、ピロリドン化合物を実質的に含まない、請求項121~140のいずれかに記載の方法。
【請求項142】
第2溶媒が、n-メチル-2-ピロリドンを実質的に含まない、請求項121~141のいずれかに記載の方法。
【請求項143】
表面処理材料が、界面活性剤を含む、請求項121~142のいずれかに記載の方法。
【請求項144】
界面活性剤が、ハロゲン化物基を実質的に含まない、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
界面活性剤が、臭素を実質的に含まない、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
表面処理を形成することが、炭素要素上に界面活性剤層を形成することを含む、請求項121~145のいずれかに記載の方法。
【請求項147】
界面活性剤層が、自己組織化層である、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
第2スラリーを202℃未満の温度で乾燥させることを含む、請求項126~147のいずれかに記載の方法。
【請求項149】
第2スラリーを185℃未満の温度で乾燥させることを含む、請求項126~147のいずれかに記載の方法。
【請求項150】
第2スラリーを125℃未満の温度で乾燥させることを含む、請求項126~147のいずれかに記載の方法。
【請求項151】
第2スラリーを100℃以下の温度で乾燥させることを含む、請求項126~147のいずれかに記載の方法。
【請求項152】
活性層をカレンダー加工して、付着を促進することを更に含む、請求項121~151のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月21日に出願された第63/224,237号の利益を享受し、その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
リチウムバッテリは、医療デバイス、電気自動車、飛行機、ならびに例えばラップトップコンピュータ、携帯電話およびカメラなどの消費者製品を含む多くの製品に使用されている。リチウムイオンバッテリは、その高いエネルギー密度、高い動作電圧、低い自己放電により、二次バッテリ市場を席捲し、製品中での新たな使用を模索し続けて産業を発展させている。
【0003】
一般的に、リチウムイオンバッテリ(「LIB」または「LiB」)は、アノードと、カソードと、例えばリチウム塩を含む有機溶媒などの電解質材料とを含む。より詳細には、アノードおよびカソード(総称して「電極」)は、アノード活物質またはカソード活物質をバインダーおよび溶媒と混合してペーストまたはスラリーを形成し、そしてこれを集電体(例えばアルミニウムまたは銅など)上にコートして乾燥させて、集電体上にフィルムを形成することによって、形成される。そして、アノードおよびカソードを、積層または巻回した後、電解質材料を含む加圧ケーシングに収容し、これら全てが一体となってリチウムイオンバッテリを形成する。
【0004】
従来の(または常套的な)電極バインダーは、加圧バッテリケーシング内にフィットするように操作された場合であっても、集電体上にコートしたフィルムが集電体との接触を維持するように十分な付着および化学的特性を有するものが使用される。フィルムは電極活物質を含有するので、フィルムが集電体と十分な接触を維持できなければ、バッテリの電気化学特性に対して顕著な障害が生じるであろう。更に、バッテリの充電および放電の間に電極活物質の膨張および収縮の程度に耐え得るように、電極活物質と機械的に適合し得るバインダーを選択することが重要であった。
【0005】
従って、良好な機械的特性を提供するために、セルロース系バインダーまたは架橋ポリマーバインダーのようなバインダーが使用されてきた。しかしながら、そのようなバインダー材料は不利な効果を有している。例えば、バルクのバインダーが、電極活性層中の体積(容積)を充たし、かかる体積はそうでなければ活物質の質量負荷を増大させ、電極の電気伝導性を低減させるために使用され得るものであった。更に、バインダーはセル(または電池)内で使用される電解質と(特に、高電圧、高電流および/または高温用途において)電気化学的に反応する傾向にあり、このため、セルの性能が劣化する。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、バルクポリマーバインダーを要することなく、優れた機械的安定性を示すように電極を構成することを実現した。1つの要旨において、本開示は、高アスペクト比炭素要素(elements)(例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ束、グラフェンフレークなど)のネットワークを含有する電極活性層の態様を記載し、これは、活物質を絡ませたり引っ掛けたりして前記層を支持することのできる高電気伝導性骨格を提供する。以下に詳述するように、高アスペクト比の炭素要素に表面処理(または表面処理物)を適用して、活物質とその下の電極層(例えば集電体層)との付着を促進し、活性層の全体結合性および機械的安定性を向上させることができる。この表面処理は、ネットワーク上にごく薄い(場合により単分子の)層を形成し、バルクのバインダー材料なしの大きなボイド空間を残し、その代わりに活物質で充たされ得る。得られる活性層は、厚さが大きくかつ活物質の質量負荷が高くても、優れた機械的安定性を有して形成され得る。
【0007】
もう1つの要旨において、本開示は、高アスペクト比炭素要素および表面処理材料を溶媒に分散させて初期スラリーを形成することであって、前記分散工程により高アスペクト比炭素上に表面処理を形成すること;活物質を初期スラリーに混合して最終スラリーを形成すること;最終スラリーを基材上にコーティングすること;および最終スラリーを乾燥させて電極活性層を形成することを含む、方法を記載する。
【0008】
さまざまな態様が、本明細書に記載される特徴または要素を個々にまたは任意の適切な組み合わせで含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、活物質層を特徴とする電極の模式図である。
図2図2は、活物質層の1つの態様を詳細に説明する図である。
図3図3は、活物質層のもう1つの態様を詳細に説明する図である。
図4図4は、本明細書に記載されるタイプの活物質の電子顕微鏡写真である。
図5図5は、エネルギー貯蔵セルの模式図である。
図6図6は、図1の電極を作製する方法を説明するフローチャートである。
図7図7は、パウチセルバッテリの模式図を示す。
図8図8は、EV用途でのパウチセルバッテリに対する機能パラメータの要約を示す。
図9図9は、パウチセルバッテリに対する機能パラメータの要約を示す。
図10図10は、バインダーフリーカソードを特徴とするパウチセルバッテリ(左プロット)と、バインダーベースのカソードを特徴とするパウチセルバッテリ(右プロット)との比較性能評価の結果を示す。
図11図11は、バインダーフリーカソードを特徴とするパウチセルバッテリ(上側トレース)と、バインダーベースのカソードを特徴とするパウチセルバッテリ(下側トレース)との比較性能評価の結果を示す。
図12図12は、ハーフセルリチウムバッテリ装置の模式図である。
図13図13は、バインダーフリーカソードハーフセル(実線トレース)および参照のバンダーベースのカソードハーフセル(点線トレース)についての、さまざまな電流密度での、比容量に対する電位(Li/Li電位を参照とする)を示すプロットである。
図14図14は、バインダーフリーカソードハーフセル(実線トレース)および参照のバンダーベースのカソードハーフセル(点線トレース)についての、さまざまな電流密度での、体積容量に対する電位(Li/Li電位を参照とする)を示すプロットである。
図15図15は、バインダーフリーカソードハーフセル(上側トレース)および参照のバンダーベースのカソードハーフセル(下側トレース)についての、電流密度に対する体積容量のプロットを示す。
図16図16は、いくつかのバンダーフリーカソードハーフセル(丸、四角および三角印のトレース)および参照のバンダーベースのカソードハーフセルについての、電気化学インピーダンス分光法によって得られたナイキストプロットを示す。バンダーフリーカソードハーフセルは、参照セルよりも著しく良好な性能を示す。
図17図17は、(「NX」)NMC811カソード電極コーティングプロセスおよび電極のロールを示す。
図18図18は、Si-Cアノード電極コーティングプロセスおよび電極のロールを示す。
図19A図19は、NMC811およびSi-C電極の双方についての機械的付着力テストのまとめを示す。
図19B】(上記参照)
図20図20は、電極性能評価のためのパウチセルの構造を示す。
図21A図21は、さまざまな活物質に基づく(NX)カソード電極およびPVDFコントロールNMC811電極についての、ハーフセル(カソードvsLi/Li)Cレート急速充電テストの結果を示す。
図21B】(上記参照)
図21C】(上記参照)
図21D】(上記参照)
図21E】(上記参照)
図21F】(上記参照)
図21G】(上記参照)
図21H】(上記参照)
図22A図22は、さまざまな活物質に基づくカソード電極についての、フルセル(NX NMC811||Si-Cシステム)3.5CレートCC-CV急速充電テスト結果を示す。
図22B】(上記参照)
図23図23は、開示のバッテリ電極についての、フルセル(NX NMC811||Si-Cシステム)30℃における1C1Cサイクル寿命および50℃SOC100カレンダー寿命テスト結果を示す。
図24図24は、NX NMC811||Si-C1.5Ahパウチセルについてのサイクリング性能を示す。
図25A図25Aは、9Ah NMC811||Si-Cバッテリサイズを示す。
図25B図25Bは、図25Aにおけるバッテリについての初期充放電容量を示す。
図26図26は、9Ah NMC811||Si-Cバッテリエネルギー密度計算および分析を示す。
図27図27は、SOC0からSOC100までの9Ah NMC811||Si-Cバッテリ体積膨張および急速充電性能を示す。
図28A図28Aは、初回サイクル電圧プロファイルを示す。
図28B図28Bは、100サイクル後のフルセル放電エネルギー保持を示す。
図28C図28Cは、NX NMC811カソードおよびマイクロシリコン支配的アノードから構成されたフルセルの100サイクル後のアノード活性層(コートされた質量)の比容量を示す。
図28D図28Dは、上述のフルセルの、異なるCレート(CC領域のみ)での容量を示す。
図29図29は、新しいタイプのイオン液体(IL)電解質添加剤ありの、NX89%マイクロSiアノードvsLi/Liハーフセルサイクリング性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照して、電極10が示され、これは集電体101上に配置された活性層100を含有する。いくつかの態様は、活性層101と集電体102との間に配置されたオプションの(任意選択され得る)接着層102を含有してよい。他の態様において、接着層102は無くてよい。
【0011】
集電体101は、例えば金属箔などの電気伝導性層であり得る。オプションの接着層102(いくつかの態様では無くてよい)は、集電体102と活性層100との間の付着を促進する材料の層であり得る。集電体101およびオプションの接着層102に好適な材料の例は、2018年6月7日公開の国際公開WO/2018/102652に記載されている。
【0012】
電極活性層
いくつかの態様では、活性層100は、ネットワーク200内にボイド空間を規定する高アスペクト比炭素要素201の三次元ネットワーク200を含有し得る。複数の活物質粒子300が、ネットワーク200内のボイド空間に配置される。従って、活物質粒子がネットワーク200に絡まったり引っ掛かったりし(enmeshed or entangled)、活性層100の結合性(cohesion)が向上する
【0013】
いくつかの態様では、表面処理(または表面処理物)202(図示せず、図2参照)が、ネットワーク200の高アスペクト比炭素要素201の表面に適用される。表面処理は、高アスペクト比炭素要素と活物質粒子300との間の付着を促進する。表面処理は、高アスペクト比炭素要素と集電体100(本明細書において「伝導性層」とも称される)および/またはオプションの接着層102との間の付着も促進し得る。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「高アスペクト比炭素要素」は、炭素質要素(elements)であって、該要素の横方向の寸法(dimension:または次元)におけるサイズ(「短寸法」)より著しく大きい1つ以上の寸法におけるサイズ(「長寸法」)を有するものを言う。
【0015】
例えば、いくつかの態様では、高アスペクト比炭素要素201は、2つの長寸法と1つの短寸法とを有するフレークまたは板状の形状の要素を含み得る。例えば、かかるいくつかの態様では、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比は、少なくとも5倍、10倍、100倍、500倍、1000倍、5000倍、10000倍またはそれ以上であり得る。このタイプの例示的な要素は、グラフェンシートまたはフレークを含む。
【0016】
例えば、いくつかの態様では、高アスペクト比炭素要素201は、1つの長寸法と2つの短寸法とを有する伸長ロッドまたはファイバーの形状の要素を含み得る。例えば、かかるいくつかの態様では、短寸法の各々の長さに対する長寸法の長さの比は、少なくとも5倍、10倍、100倍、500倍、1000倍、5000倍、10000倍またはそれ以上であり得る。このタイプの例示的な要素は、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブの束(バンドル)、カーボンナノロッドおよびカーボンファイバーを含む。
【0017】
いくつかの態様では、高アスペクト比炭素要素201は、シングルウォールナノチューブ(SWNT)、ダブルウォールナノチューブ(DWNT)、またはマルチウォールナノチューブ(MWNT)、カーボンナノロッド、カーボンファイバー、またはそれらの混合物を含み得る。いくつかの態様では、高アスペクト比炭素要素201は、CNTまたは他の高アスペクト比炭素材料の相互接続された束、クラスターまたは凝集体から形成され得る。いくつかの態様では、高アスペクト比炭素要素201は、シート、フレーク、カーブしたフレークの形態の、および/または高アスペクト比のコーン、ロッドなどに形成されたグラフェンを含み得る。
【0018】
いくつかの態様では、電極活性層100は、バルクバインダー材料をわずかしか含まず、または含まないものであり得、ネットワーク200に、活物質粒子300で占められる空間をより多く残し得る。例えば、いくつかの態様では、活性層200は、ボイド空間に配置されたバインダー材料(例えばポリマーまたはセルロース系のバインダー材料)を10重量%未満、1重量%未満、0.1重量%未満、0.01重量%未満またはそれ以下で含み得る。
【0019】
例えば、いくつかの態様では、電極活性層は、ポリマー材料を、あるいは活物質300およびネットワーク200(高アスペクト比炭素要素201およびその上に配置された表面処理202から成る)以外の他の材料を、含まないか、実質的に含まない。
【0020】
いくつかの態様では、ネットワーク200は、大部分またはその全体が炭素から成る。例えば、いくつかの態様では、ネットワーク200は、少なくとも90重量%炭素、少なくとも95重量%炭素、少なくとも96重量%炭素、少なくとも97重量%炭素、少なくとも98重量%炭素、少なくとも99重量%炭素、少なくとも99.5重量%炭素、少なくとも99.9重量%炭素、またはそれ以上である。
【0021】
いくつかの態様では、ネットワーク200を形成する高アスペクト比炭素要素201の、1つまたは2つの長寸法に沿ったサイズ(例えば平均サイズ、メジアンサイズ、または最小サイズ)は、少なくとも0.1μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、7000μm、800μm、900μm、1000μm、またはそれ以上であり得る。例えば、いくつかの態様では、ネットワーク200を形成する要素201のサイズ(例えば平均サイズ、メジアンサイズ、または最小サイズ)は、1μm以上1000μm以下の範囲またはそれより狭い範囲、例えば1μm以上600μm以下であり得る。
【0022】
いくつかの態様では、要素のサイズは比較的均一であり得る。例えば、いくつかの態様では、要素201の50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%を超える部分またはそれ以上が、ネットワーク200を形成する要素201に対する平均サイズの10%以内にある、1つまたは2つの長寸法に沿ったサイズを有し得る。
【0023】
出願人らは、本明細書に記載のタイプの活性層100が、層100中のネットワーク200を形成する要素201の質量割合が極めて低くても、活物質粒子300の質量負荷を高くすることができ、模範的な性能(例えば高伝導性(または導電性)、低抵抗、高電圧性能、ならびに高エネルギーおよび電力密度)を示すことを見出した。例えば、いくつかの態様では、活性層100は、少なくとも約50重量%、60重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、99.5重量%またはそれ以上の活物質粒子300であり得る。
【0024】
いくつかの態様では、ネットワーク200は、活性層100を通る電流のための高電気伝導性経路(例えば電子またはイオン輸送)の相互接続されたネットワークを形成する。例えば、いくつかの態様では、ネットワークの要素201が互いに交差する箇所や、電荷キャリア(例えば電子またはイオン)が1つの要素から次へと量子トンネリングし得るのに要素201が十分に近い箇所にて、高伝導性(導電性)結合が生じる。要素201が、活性層の比較的少ない質量割合(例えば10重量%、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%より少ない、またはそれ未満、例えば0.5重量%以上10重量%以下の範囲またはそれより狭い範囲、例えば1重量%以上5.0重量%以下)を占めつつも、ネットワーク200に形成された高電気伝導性経路の相互接続されたネットワークにより、長い伝導性経路が形成され、活性層100内および活性層を通って電流が流れるのを容易にする。
【0025】
例えば、いくつかの態様では、ネットワーク200は、相互接続された要素201の1つまたはそれ以上の構造体を含み得、該構造体は、1つ以上の寸法(または次元)に沿って、該構造体を形成する構成要素201の平均長さに対して、2、3、4、5、10、20、50、100、500、1000、10000倍またはそれ以上長い全体長さを有する。例えば、いくつかの態様では、ネットワーク200は、相互接続された要素200の1つまたはそれ以上の構造体を含み得、該構造体は、該構造体を形成する構成要素201の平均長さに対して、2~10000倍の範囲(またはそれより狭い範囲)にある全体長さを有する。例えば、いくつかの態様では、ネットワーク200は、100μm、500μm、1000μm、10000μmまたはそれ以上より大きい長さ(例えば100μm以上10000μm以下の範囲またはそれより狭い範囲)を有する高伝導性経路を含み得る。
【0026】
本明細書にて使用される場合、用語「高伝導性(または導電性)経路」は、ネットワーク200に引っ掛かった活物質粒子の電気伝導性より高い電気伝導性を有する相互接続された要素201によって形成される経路として理解されるべきである。
【0027】
理論に拘束されるものではないが、いくつかの態様では、ネットワーク200は、パーコレーション閾値(percolation threshold:または浸透限界)を超える伝導性を示す要素201の電気的に相互接続されたネットワークとして特徴付けられ得る。パーコレーション閾値は、ランダムなシステムにおける長範囲伝導性の形成であるパーコレーション理論に関する数学的概念である。閾値より下では、システムサイズのオーダーのいわゆる「ジャイアント」接続成分は存在せず、閾値より上では、システムサイズのオーダーのジャイアント成分が存在する。
【0028】
いくつかの態様では、パーコレーション閾値は、活性層の他の全ての特性を一定に維持しつつ層の伝導性を測定しながら、活性層100における要素201の質量割合を増加させることによって測定できる。かかるいくつかの場合には、閾値は、要素201を更に添加しながら、層の伝導性が急激に増加する質量割合および/またはそれを超えると層の伝導性がわずかしか増加しない質量割合によって特定できる。そのような挙動は、相互接続された構造体であって、活性層100のサイズのオーダーにある長さを有する伝導性経路を提供する構造体の形成に必要な閾値を横切っていることを示す。
【0029】
図2は、ネットワーク200(図1に示す)の高アスペクト比炭素要素201の詳細な図であって、いくつかの活物質粒子300の近くに位置するものを示す図である。図示する態様では、要素201上の表面処理(または表面処理物)202は、要素201の表面の外層と結合した界面活性剤層である。図示するように、界面活性剤層は、疎水性末端211および親水性末端212を各々有する複数の界面活性剤要素210を含み、疎水性末端は炭素要素201の表面の近位に配置され、親水性末端212は該表面の遠位に配置される。
【0030】
いくつかの態様では、炭素要素201は、疎水性(例えばCNT、CNT束およびグラフェンフレークなどのナノ形態の炭素要素の典型的な場合)であり、界面活性剤要素210の疎水性末端211は炭素要素201に引き寄せられる。従って、いくつかの態様では、表面処理202は自己組織化層であり得る。例えば、以下に詳細に説明するように、いくつかの態様では、要素201を界面活性剤要素210と共に溶媒中に混合してスラリーを形成すると、スラリー中での要素201および210の間の静電相互作用により、表面処理202層は、表面上で自己組織化する。
【0031】
いくつかの態様では、表面処理202は、自己限定的な層であり得る。例えば、以下に詳細に説明するように、いくつかの態様では、要素201を界面活性剤要素210と共に溶媒中に混合してスラリーを形成すると、スラリー中での要素201および210の間の静電相互作用により、表面処理202層は、表面上で自己組織化する。いくつかの態様では、要素201の表面の領域が界面活性剤要素210で被覆されると、追加の界面活性剤要素210はその領域に引き寄せられなくなる。いくつかの態様では、要素201の表面が界面活性剤要素202で被覆されると、更なる要素は層からはねつけられ、自己限定的なプロセスになる。例えば、いくつかの態様では、表面処理202は自己限定的プロセスで形成され、これにより、層が薄く、例えば単分子または数分子の厚さであることが確保される。
【0032】
いくつかの態様では、界面活性剤要素の少なくとも一部の親水性末端212は、活物質粒子300と結合を形成する。従って、表面処理202は、ネットワーク200の要素201と活物質粒子との間に良好な付着を提供できる。いくつかの態様では、結合は、共有結合、または非共有結合、例えばπ-π結合、水素結合、静電結合またはそれらの組み合わせであり得る。
【0033】
例えば、いくつかの態様では、界面活性剤要素210の親水性末端212は、第1極性の分極電荷を有し、他方、活物質粒子300の表面は、第1極性と反対の第2極性の分極電荷を帯びており、よって、互いに引き寄せ合う。
【0034】
例えば、いくつかの態様では、層100を形成する間、活物質粒子300が、表面処理202を有する炭素要素201(以下により詳細に説明する)と共に溶媒中に組み合わされ、活物質粒子300の外表面は、表面処理202の外表面のゼータ電位と逆の符号のゼータ電位(当該技術分野において既知の通り)で特徴付けられ得る。従って、いくつかの態様では、表面処理202を有する炭素要素201と活物質粒子300との間の引力により、活物質粒子300がネットワーク200の炭素要素201に引っ掛かった構造体の自己組織化が促進される。
【0035】
いくつかの態様では、表面活性剤要素の少なくとも一部の親水性末端212は、活物質層100の下にある接着層または集電体層と結合を形成する。従って、表面処理202は、ネットワーク200の要素201とかかる下にある層との間の良好な付着を提供し得る。いくつかの態様では、結合は、共有結合、または非共有結合、例えばπ-π結合、水素結合、静電結合またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様では、この構成により、以下により詳細に説明するように、電極10の優れた機械的安定性が提供される。
【0036】
さまざまな態様では、上述したように表面処理202を形成するために使用される界面活性剤は、任意の適切な材料を含み得る。例えば、いくつかの態様では、界面活性剤は次の1つ以上を含み得る:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(CTAP)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート(CTAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムアセテート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム硝酸塩、ホカミドプロピルベタイン(hocamidopropyl betaine)、N-(ココアルキル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、およびココアミドプロピルベタイン。追加の適切な材料は後述する。
【0037】
いくつかの態様では、界面活性剤層202は、界面活性剤の層が化合物に由来するイオンから形成されるように(例えば上述した自己限定的プロセス)、化合物を溶媒に溶解させることによって形成され得る。いくつかの態様では、活性層100は、よって、表面処理202を形成する界面活性剤イオンに対する、残留(または残りの)カウンターイオン214を含むこととなる。
【0038】
いくつかの態様では、界面活性剤カウンターイオン214は、電気化学セルにおける使用に適合するように選択される。例えば、いくつかの態様では、カウンターイオンは、セルに使用される材料、例えば電解質、セパレータ、ハウジングなどに対して非反応性または緩やかな反応性であるように選択される。例えば、アルミニウムハウジングが使用される場合、カウンターイオンは、アルミニウムハウジングに対して非反応性または緩やかな反応性であるように選択され得る。
【0039】
例えば、いくつかの態様では、残留カンターイオンは、ハロン化物基(halide group)を含まないか実質的に含まない。例えば、いくつかの態様では、残留カウンターイオンは、臭素を含まないか実質的に含まない。
【0040】
いくつかの態様では、残留カウンターイオンは、活性層200を含有するエネルギー貯蔵セルに使用される電解質と適合するように選択され得る。例えば、いくつかの態様では、残留カウンターイオンは、電解質に使用されるイオンそのものと同じ種であり得る。例えば、電解質が、溶解したLiPF塩を含む場合、電解質アニオンはPFである。そのような場合、界面活性剤は、例えばCTAPFとして選択され得、表面処理202がCTAPFに由来するアニオンの層として形成され、他方、残留界面活性剤カウンターイオンはCTAPFに由来するPFアニオンである(よって、電解質のアニオンと一致する)。
【0041】
いくつかの態様では、使用される界面活性剤材料は、有利な特性を示す溶媒に可溶であり得る。例えば、いくつかの態様では、溶媒は、水、またはアルコール、例えばメタノール、エタノールもしくは2-プロパノール(イソプロピルアルコール、しばしばIPAと称される)あるいはそれらの混合物を含み得る。いくつかの態様では、溶媒は、溶媒の特性を更に向上させるために使用される1つ以上の添加剤を含み得、例えばアセトニトリル(ACN)、脱イオン水、およびテトラヒドロフランなどの低沸点添加剤であり得る。
【0042】
例えば、低沸点溶媒を表面処理202の形成に使用する場合、溶媒は、比較的低い温度で実施される熱乾燥プロセス(例えば、より詳細に後述するタイプのもの)を使用して迅速に除去され得る。当業者に理解されるように、これにより、活性層202の製造のスピードおよび/またはコストを向上させることができる。
【0043】
例えば、いくつかの態様では、表面処理202は、250℃、225℃、202℃、200℃、185℃、180℃、175℃、150℃、125℃より低い、またはそれより低い、例えば100℃以下の沸点を有する溶媒に可溶である材料から形成される。
【0044】
いくつかの態様では、溶媒は、他の有利な特性を示し得る。いくつかの態様では、溶媒は、低い粘度、例えば20℃にて3.0センチポアズ、2.5センチポアズ、2.0センチポアズ、1.5センチポアズ以下の、またはそれより小さい粘度を有し得る。いくつかの態様では、溶媒は、低い表面張力、例えば、20℃にて40mN/m、35mN/m、30mN/m、25mN/m以下の、またはそれより小さい表面張力を有し得る。いくつかの態様では、溶媒は、低毒性、例えばイソプロピルアルコールなどのアルコールと同程度の毒性を有し得る。
【0045】
とりわけ、このことは、例えばポリビニリデンフルオライドまたはポリビニリデンジフルオライド(PVDF)などのバルクバインダー材料を特徴とする従来の電極活性層を形成するためのプロセスと対照的である。そのようなバルクバインダーは、しばしば高沸点を特徴とするアグレッシブな溶媒を必要とする。そのような1つの例は、n-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。NMP(または他のピロリドン系溶媒)の溶媒としての使用は、溶媒を除去するために高温乾燥プロセスを必要とする。更に、NMPは高価で、複雑な溶媒回収システムを必要とし、高毒性で、顕著な安全性の問題をもたらす。これに対して、より詳細に後述するように、さまざまな態様において、活性層200は、NMPまたは例えばピロリドン化合物のような類似化合物の使用なしに、形成することができる。
【0046】
表面処理202の例示的な1つのクラスを上述したが、他の処理を使用し得ることが理解される。例えば、さまざまな態様では、表面処理202は、本明細書に記載の、または当該技術分野において既知の任意の適切な技術を用いて、高アスペクト比炭素要素201を官能基化(functionalizing:または機能化)することによって形成され得る。要素201に適用される官能基は、活物質粒子300とネットワーク200との間の付着を促進するように選択される。例えば、さまざまな態様では、官能基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、シラノ基およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0047】
より詳細に後述するように、いくつかの態様では、官能基化された炭素要素201は、ナノ形態の炭素および例えば界面活性剤などの官能基化材料を含む乾燥(例えば凍結乾燥)させた水性分散物から形成される。かかるいくつかの態様では、水性分散物は、炭素要素201を損傷させる材料、例えば酸を実質的に含まない。
【0048】
図3を参照して、いくつかの態様では、高アスペクト比炭素要素201上の表面処理202は、炭素要素上に配置された薄いポリマー層を含み、これは、ネットワークへの活物質の付着を促進する。いくつかの態様では、薄いポリマー層は、自己組織化または自己限定性ポリマー層を含む。いくつかの態様では、薄いポリマー層は、例えば水素結合を介して、活物質に結合する。
【0049】
いくつかの態様では、薄いポリマー層は、炭素要素の外表面に対して垂直な方向に、要素201の短寸法に対して3倍、2倍、1倍、0.5倍、0.1倍より小さい(またはそれより小さい)厚さを有し得る。
【0050】
いくつかの態様では、薄いポリマー層は、例えばπ-π結合などの非共有結合を介して、活物質に結合する官能基(例えば側鎖官能基)を含む。いくつかの態様では、薄いポリマー層は、要素201の少なくとも一部を覆う安定な被覆層を形成し得る。
【0051】
いくつかの態様では、要素201のいくらかを覆う薄いポリマー層は、活性層200の下にある接着層102または集電体101と結合していてよい。例えば、いくつかの態様では、薄いポリマー層は、例えばπ-π結合などの非共有結合を介して、接着層102または集電体101の表面に結合する側鎖官能基を含む。かかるいくつかの態様では、薄いポリマー層は、要素201の少なくとも一部を覆う安定した被覆層を形成し得る。いくつかの態様では、この構成により、より詳細に後述するように、電極10の優れた機械的安定性が提供される。
【0052】
いくつかの態様では、ポリマー材料は、上記の例に記載したタイプの溶媒に混和性である。例えば、いくつかの態様では、ポリマー材料は、例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール、しばしばIPAと称される)またはそれらの組み合わせなどのアルコールを含む溶媒に混和性である。いくつかの態様では、溶媒は、溶媒の特性を更に向上させるために使用される1つ以上の添加剤、例えばアセトニトリル(ACN)、脱イオン水およびテトラヒドロフランなどの低沸点添加剤を含み得る。
【0053】
ポリマー層を形成するために使用され得る材料の適切な例には、水溶性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンなどが含まれる。追加の例示的材料は後述する。
【0054】
いくつかの態様では、ポリマー材料は、例えば1000000g/モル、500000g/モル、100000g/モル、50000g/モル、10000g/モル、5000g/モル、2500g/モル以下またはそれより少ない低い分子質量を有する。
【0055】
上述したポリマー層は、従来の電極に使用されるバルクポリマーバインダーと質的に区別されることに留意されたい。活性層100の体積のかなりの部分を充たすのではなく、薄いポリマー層は、高アスペクト比炭素要素の表面上に存在し、活物質粒子300を保持可能なようにネットワーク200内のボイド空間の大部分を残す。
【0056】
例えば、いくつかの態様では、薄いポリマー層は、ネットワークの外表面に垂直な方向に、炭素要素201のその短寸法に沿ったサイズに対して、1倍、0.5倍、0.25倍以下、またはそれより小さい最大厚さを有する。例えば、いくつかの態様では、薄いポリマー層は、数分子厚さ(例えば100、50、10、5、4、3、2、または1分子厚さ以下)であり得る。従って、いくつかの態様では、活性層100の体積の10%、5%、1%、0.1%、0.01%、0.001%未満またはそれより小さい部分が薄いポリマー層で充たされる。
【0057】
また更なる例示的な態様では、表面処理202は、高アスペクト比炭素要素201上に配置されたポリマー材料の熱分解に由来する炭素質材料の層から形成され得る。炭素質材料(例えばグラファイトの、またはアモルファスのカーボン)のかかる層は、活物質粒子300に(例えば共有結合を介して)付着または付着を促進し得る。適切な熱分解技術の例は、2020年5月20日出願の米国特許出願第63/028982号に記載される。この技術に使用されるのに適切な1つのポリマー材料は、ポリアクリロニトリル(PAN)である。
【0058】
さまざまな態様では、活物質粒子300は、エネルギー貯蔵デバイスにおける使用に適切な任意の活物質を含み、例えばリチウム金属酸化物などの金属酸化物を含む。例えば、活物質粒子300は、リチウムコバルト酸化物(LCO、しばしば「リチウムコバルテート」または「リチウムコバルタイト」と称され、1つの変異体のあり得る式はLiCoOである化学化合物である);リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC、変異体の式はLiNiMnCo);リチウムマンガン酸化物(LMO、変異体の式はLiMn、LiMnOおよびその他);リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNiCoAlO、およびNCAとしてのその変異体)およびリチウムチタネート酸化物(LTO、1つの変異体の式はLiTi12);リチウム鉄フォスフェート酸化物(LFP、1つの変異体の式はLiFePO)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(およびそのNCAとしての変異体)ならびに他の類似の材料を含み得る。上記のものの他の変異体も含まれ得る。
【0059】
いくつかの態様では、NMCを活物質として使用する場合、ニッケルリッチなNMCを使用し得る。例えば、いくつかの態様では、NMCの変異体はLiNiMnCo1-x-y(式中、xは、約0.7、0.75、0.80、0.85以上またはそれより多い)であり得る。いくつかの態様では、いわゆるNMC811(上記の式中、xは約0.8、yは約0.1である)が使用され得る。
【0060】
いくつかの態様では、活物質は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物の他の形態(LiNiMnCo)を含む。例えば、一般的な変異体、例えばNMC111(LiNi0.33Mn0.33Co0.33);NMC532(LiNi0.5Mn0.3Co0.2);NMC622(LiNi0.6Mn0.2Co0.2)およびその他が使用され得るが、これらに限定されない。
【0061】
いくつかの態様では、例えば電極がアノードとして使用される場合、活物質はグラファイト、硬質炭素、活性炭、ナノ形態のカーボン、シリコン、シリコン酸化物、カーボンに包埋されたシリコンナノ粒子を含み得る。いくつかの態様では、活性層100は、例えば当該技術分野にて既知のプレリチウム化(pre-lithiation)法を用いて、リチウムでインターカレートされ得る。
【0062】
いくつかの態様では、本明細書に記載の技術は、優れた機械的特性(例えば、本明細書に記載のタイプのエネルギー貯蔵デバイスでの動作の間にデラミネーションがないこと)を示しつつ、活性層における材料の大部分、例えば75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、99重量%、99.5重量%、99.9重量%より多くまたはそれより多くで、活性層100が構成されることを可能にする。例えば、いくつかの態様では、優れた機械的特性(例えば、本明細書に記載のタイプのエネルギー貯蔵デバイスでの動作の間にデラミネーションがないこと)を示しつつ、活性層は、上述の多い量の活物質および大きい厚さ(例えば50μm、100μm、150μm、200μmより大きい、またはそれより大きい)を有し得る。
【0063】
活性層100における活物質粒子201は、例えば0.1μm以上50μm以下の範囲またはそれより狭い範囲にあるメジアン粒子サイズで特徴付けられ得る。活性層100における活物質粒子201は、単項式(monomial)、二峰性または多峰性の粒子サイズ分布である粒子サイズ分布によって特徴付けられ得る。活物質粒子201は、0.1m/g以上100m/g以下の範囲およびそれより狭い範囲にある比表面積を有し得る。
【0064】
いくつかの態様では、活性層100は、例えば少なくとも20mg/cm、30mg/cm、40mg/cm、50mg/cm、60mg/cm、70mg/cm、80mg/cm、90mg/cm、100mg/cm、またはそれより多い活物質粒子300の質量負荷(mass loading)を有し得る。
【0065】
図4を参照して、本明細書に記載のタイプの例示的な活物質層の電子顕微鏡写真を示す。テンドリル様の高アスペクト比炭素要素201(CNT束から形成される)が、活物質粒子300を引っ掛けている(enmeshing:または捕捉している)ことが明らかに示されている。層内の空間を占めるバルクの(または嵩張る)ポリマー材料がないことに留意されたい。
【0066】
エネルギー貯蔵セル
図5を参照して、エネルギー貯蔵セル(または電池)500が示され、これは、第1電極501および第2電極502、第1電極501および第2電極502の間に配置された透過性セパレータ503、ならびに第1電極501および第2電極502を濡らす電解質504を含む。電極501、502の片方または双方が、本明細書に記載のタイプのものであり得る。
【0067】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、バッテリ、例えばリチウムイオンバッテリであり得る。いくつかの態様では、電解質は、溶媒中に溶解したリチウム塩、例えばQi Li、Juner Chen、Lei Fan、Xueqian Kong、Yingyping Lu、「Progress in electrolytes for rechargeable Li-based batteries and beyond」、Green Energy & Environment、Volume 1、Issue 1、Pages 18-42に記載されるタイプのものであり得、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵セルは、1.0V以上5.0V以下の範囲、または例えば2.3V以上4.3V以下のより狭い範囲にある動作電圧を有し得る。
【0069】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、-40℃以上100℃以下の範囲、または例えば-10℃以上60℃以下のより狭い範囲にある動作温度を有し得る。
【0070】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも100Wh/kg、200Wh/kg、300Wh/kg、400Wh/kg、500Wh/kg、1000Wh/kg、またはそれより高い重量エネルギー密度を有し得る。
【0071】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも200Wh/L、400Wh/L、600Wh/L、800Wh/L、1000Wh/L、1500Wh/L、2000Wh/L、またはそれより高い体積エネルギー密度を有し得る。
【0072】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、0.1以上50以下の範囲にあるCレートを有し得る。
【0073】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、またはそれより多い充放電サイクルのサイクル寿命を有し得る。
【0074】
いくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、2020年5月8日に出願された米国特許出願第63/021492号に記載されるタイプのリチウムイオンキャパシタであり得る。
【0075】
かかるいくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、-60℃以上100℃以下、または例えば-45℃以上85℃以下のより狭い範囲を含む動作温度範囲を有し得る。
【0076】
かかるいくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも10Wh/kg、15Wh/kg、20Wh/kg、30Wh/kg、40Wh/kg、50Wh/kg、またはそれより高い重量エネルギー密度を有し得る。
【0077】
かかるいくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも20Wh/L、30Wh/L、40Wh/L、50Wh/L、60Wh/L、70Wh/L、80Wh/L、またはそれより高い体積エネルギー密度を有し得る。
【0078】
かかるいくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも5kW/kg、7.5kW/kg、10kW/kg、12.5kW/kg、14kW/kg、15kW/kg、またはそれより多い重量電力密度を有し得る。
【0079】
かかるいくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも10kW/L、15kW/L、20kW/L、22.5kW/L、25kW/L、28kW/L、30kW/L、またはそれより多い体積電力密度を有し得る。
【0080】
かかるいくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、1.0以上100以下の範囲にあるCレートを有し得る。
【0081】
かかるいくつかの態様では、エネルギー貯蔵セル500は、少なくとも100000、500000、1000000、またはそれより多い充放電サイクルのサイクル寿命を有し得る。
【0082】
組み立て方法
本明細書に記載されるような活性層100を特徴とする電極10は、任意の適切な製造方法を使用して作製され得る。当業者には理解されるように、いくつかの態様では、電極10は、2018年6月7日に公開された国際公開WO2018/102652に記載されるタイプのウェットコーティング技術を、本明細書に記載される更なる教示に鑑みて使用して作製できる。
【0083】
図6を参照して、いくつかの態様では、電極10の活性層100は、方法1000を使用して形成され得る。工程1001にて、高アスペクト比炭素要素201および表面処理材料(例えば、本明細書に記載されるようなポリマー材料または界面活性剤)が溶媒(本明細書に記載されるタイプのもの)と組み合わされて、初期スラリーを形成する。
【0084】
工程1002にて、初期スラリーを加工して、スラリー中の固体材料の良好な分散を確保する。いくつかの態様では、この加工は、溶媒および固体材料の混合物に(例えば、しばしば「ソニファイア」とも称され得る、超音波破砕機、または他の適切な混合デバイス(例えば、高せん断ミキサ)を使用して)機械的エネルギーを導入することを含み得る。いくつかの態様では、混合物に導入される機械的エネルギーは、少なくとも0.4kWh/kg、0.5kWh/kg、0.6kWh/kg、0.7kWh/kg、0.8kWh/kg、0.9kWh/kg、1.0kWh/kg、またはそれより多い。例えば、混合物単位キログラム当たりの混合物に導入される機械的エネルギーは、0.4kWh/kg以上1.0kWh/kgの範囲、または例えば0.4kWh/kg以上0.6kWh/kg以下のより狭い範囲にあり得る。
【0085】
いくつかの態様では、超音波浴ミキサーを使用し得る。他の態様では、プローブソニケーター(またはプローブ超音波破砕装置)を使用し得る。プローブソニケーションは、ナノ粒子の用途に対しては、超音波浴に比較して、著しくパワフルかつ効果的であり得る。超音波キャビテーションにより生じる高せん断力は、粒子の凝集を解砕する能力を有し、より小さくかつより均一な粒子サイズをもたらす。他のもののなかでも、ソニケーションは、スラリー中の固体の安定かつ均質な懸濁物を得ることができる。一般的に、これにより、固体の分散ならびに脱凝集およびその他の解砕をもたらす。プローブソニケーションデバイスの例には、QSonia LLC(コネティカット州ニュータウン)から入手可能なQシリーズプローブソニケーターが含まれる。他の例には、Thomas Scientific(ニュージャージー州スウェズボロ)から市販で入手可能なBranson Digital SFX-450が含まれる。
【0086】
しかしながら、いくつかの態様では、プローブ装置内の各プローブの局所的な性質により、不均一な混合および懸濁になり得る。そのようなことは、例えば、大きいサンプルで起こり得る。これは、連続フローセルおよびプロパー混合のセットアップを使用したときに起こり得る。すなわち、このようなセットアップでは、スラリーの混合により、完全ではないが満足のいく程度に均質な分散物が得られることになる。
【0087】
いくつかの態様では、初期スラリーは、加工されると、5000cps以上25000cps以下の範囲、またはそれより狭い、例えば6000cps以上19000cps以下の範囲にある粘度を有することになる。
【0088】
工程1003では、表面処理202が、初期スラリー中の高アスペクト比炭素要素201上に完全または部分的に形成され得る。いくつかの態様では、この段階にて、表面処理202は、図2および図3を参照して詳細に上述したように、自己組織化され得る。得られる表面処理201は、官能基または他の特徴(これは以下の更なる工程で説明する)を含み得、高アスペクト比炭素要素201と活物質粒子300との間の付着を促進し得る。
【0089】
工程1004では、活物質粒子300を初期スラリーと組み合わせて、活物質粒子300を、その上に形成された表面処理202を有する高アスペクト比炭素要素201と共に含有する最終スラリーを形成し得る。
【0090】
いくつかの態様では、活物質300は、初期スラリーに直接添加され得る。他の態様では、活物質300を、まず(例えば初期溶媒と関連して上述した技術を用いて)溶媒に分散させて、活物質スラリーを形成してよい。そして、この活物質スラリーを初期スラリーと組み合わせて最終スラリーを形成してよい。
【0091】
工程1005では、最終スラリーを加工して、最終スラリー中の固体材料の良好な分散を確保する。さまざまな態様では、当該技術分野において既知の任意の適切な混合プロセスが使用され得る。いくつかの態様では、この加工は、工程1002に関連して上述した技術を使用してよい。いくつかの態様では、例えば多軸(例えば3以上の軸の)遊星ミキサーのような遊星ミキサーが使用され得る。いくつかの態様では、遊星ミキサーは、例えば2つ以上の混合ブレードおよび例えばディスク分散ブレードなどの1つ以上の(例えば2つ、3つまたはそれより多い)分散ブレードである、複数のブレードを特徴とするものであってよい。
【0092】
いくつかの態様では、工程1005の間、活物質300を引っ掛けている(または捕捉している)マトリックス200は、図2および図3を参照して詳細に上述したように、完全または部分的に自己組織化し得る。いくつかの態様では、表面処理202と活物質300との間の相互作用が、自己組織化プロセスを促進する。
【0093】
いくつかの態様では、最終スラリーは、加工されると、1000cps以上10000cps以下の範囲、またはそれより狭い、例えば2500cps以上6000cps以下の範囲にある粘度を有することになる。
【0094】
工程1006では、活性層100が、最終スラリーから形成される。いくつかの態様では、最終スラリーは、集電体伝導層101(またはオプションの接着層102)上に直接ウェットでキャストされ、そして乾燥させ得る。例として、キャスティングは、溶媒および他のあらゆる液体の実質的に全てが除去されるまで、熱および真空の少なくとも一方を適用し、それによって活性層100を形成することによるものであり得る。かかるいくつかの態様では、下の層のさまざまな部分を保護することが望ましいものであり得る。例えば、電極10を両面動作で使用するよう意図される場合、伝導層101の下面を保護することが望ましいものであり得る。保護には、例えば、所定の領域をマスキングすることによる、または溶媒を除去するためのドレンを提供することによる、溶媒からの保護が含まれる。
【0095】
他の態様では、最終スラリーは、任意の適切な技術(例えばロール・トゥ・ロール層アプリケーション)を用いて、どこか別の場所で少なくとも部分的に乾燥させ、そして接着層102または伝導層101の上に移送して、活性層100を形成してよい。いくつかの態様では、適切な表面を有する中間材料上に、組み合わせるウェットスラリーを配置し、そして乾燥させて、層(すなわち、活性層)を形成してよい。適切な表面を有する任意の材料は、中間材料として使用され、例示的には中間材料はPTFEを含み、これは表面からのその後の除去が、その性質により容易である。いくつかの態様では、所定の層をプレスで形成して、所望の厚さ、面積および密度を示す層を提供する。
【0096】
いくつかの態様では、最終スラリーは、シート状に形成され、そして適切なように接着層102または伝導層101の上にコートされる。例えば、いくつかの態様では、最終スラリーは、適用される層の厚さを制御するために、スロットダイを通じて適用され得る。他の態様では、スラリーは、適用された後、所望の厚さに(例えばドクターブレードを使用して)レベリングされ得る。他のさまざまな技術を、スラリーを適用するために使用してよい。例えば、コーティング技術には次のものが含まれるが、これらに限定されない:コンマコーティング;コンマリバースコーティング;ドクターブレードコーティング;スロットダイコーティング;ダイレクトグラビアコーティング;エアードクターコーティング(エアーナイフ);チャンバードクターコーティング;オフセットグラビアコーティング;ワンロールキスコーティング;より小さい直径のグラビアロールを用いるリバースキスコーティング;バーコーティング;3本リバースロールコーティング(トップフィード);3本リバースロールコーティング(ファウンテンダイ);リバースロールコーティングおよびその他。
【0097】
最終スラリーの粘度は、適用技術に応じてさまざまであり得る。例えば、コンマコーティングでは、粘度は約1000cps以上約200000cps以下の範囲であり得る。リップダイコーティングは、約500cps以上約300000cps以下の粘度を示すスラリーによるコーティングを提供する。リバースキスコーティングは、約5cps以上1000cps以下の範囲の粘度を示すスラリーによるコーティングを提供する。いくつかの態様では、各層は、複数のパスによって形成され得る。
【0098】
いくつかの態様では、最終スラリーから形成された活性層100は、電極10に適用される前または後に、(例えばカレンダー加工装置を用いて)圧縮され得る。いくつかの態様では、スラリーは、圧縮プロセスの前または間に、(例えば熱、真空またはそれらの組み合わせを適用することによって)部分的または完全に乾燥させられ得る。例えば、いくつかの態様では、活性層は、圧縮前の厚さの(例えば、集電体層101に対して垂直な方向に)90%、80%、70%、50%、40%、30%、20%、10%より小さい、またはそれより小さい最終厚さに圧縮され得る。
【0099】
さまざまな態様では、コーティングまたは圧縮プロセスの間に、部分的に乾燥した層が形成される場合、層は、その後(例えば熱、真空またはそれらの組み合わせを適用することによって)完全に乾燥させてよい。いくつかの態様では、溶媒の実質的に全てが活性層100から除去される。
【0100】
いくつかの態様では、スラリーを形成するために使用された溶媒は、回収されて、スラリー作製プロセスにリサイクルされる。
【0101】
いくつかの態様では、活性層を圧縮して、例えば構成物である高アスペクト比炭素要素または他の炭素質材料のいくつかを破壊して、各層の表面積を増加させてよい。いくつかの態様では、この圧縮処理は、層間の付着、層内でのイオン輸送率、および層の表面積の1つ以上を増大させ得る。さまざまな態様では、圧縮は、各層を電極10に適用または形成する前または後に、適用してよい。
【0102】
いくつかの態様では、活性層100を圧縮するためにカレンダー加工が使用される場合、カレンダー加工装置は、層の圧縮前の厚さの90%、80%、70%、50%、40%、30%、20%。10%以下の、またはそれより小さいギャップ間隔を有して設定され得る(例えば層の圧縮前厚さの約33%に設定される)。カレンダーロールは、適切な圧力、例えばロール長さ1cm当たり1トンより大きい、ロール長さ1cm当たり1.5トンより大きい、ロール長さ1cm当たり2.0トンより大きい、ロール長さ1cm当たり2.5トンより大きい、またはそれより大きい圧力を提供するように構成され得る。いくつかの態様では、圧縮後活性層は、1g/cc以上10g/cc以下の範囲、またはそれより狭い範囲、例えば2.5g/cc以上4.0g/cc以下の密度を有し得る。いくつかの態様では、カレンダー加工プロセスは、20℃以上140℃以下の範囲またはそれより狭い範囲の温度で実施され得る。いくつかの態様では、活性層は、カレンダー加工の前に、例えば20℃以上100℃以下の範囲、またはそれより狭い範囲の温度で、予熱され得る。
【0103】
電極10が組み立てられると、電極100は、エネルギー貯蔵デバイス10を組み立てるために使用され得る。エネルギー貯蔵デバイス10の組み立ては、セパレータを有する電極の組み立ておよび例えばキャニスターまたはパウチなどのハウジング内への設置のために使用される従来の工程に従い得、さらに、電解質添加およびハウジングの封止のための追加の工程を含み得る。
【0104】
さまざまな態様では、方法1000は、以下の特徴を(個々にまたは任意の適切な組み合わせで)含み得る。
【0105】
いくつかの態様では、初期スラリーは、0.1重量%以上20.0重量%以下の範囲(またはそれより狭い範囲)にある固体含有率を有する。いくつかの態様では、最終スラリーは、10.0重量%以上80重量%以下の範囲(またはそれより狭い範囲)にある固体含有率を有する。
【0106】
さまざまな態様では、使用される溶媒は、表面処理202の形成に関連して本明細書にて記載される任意のものであり得る。いくつかの態様では、表面処理202を形成するために使用される界面活性剤材料は、有利な特性を示す溶媒に可溶であり得る。例えば、いくつかの態様では、溶媒は、水、またはアルコール、例えばメタノール、エタノールもしくは2-プロパノール(イソプロピルアルコール、しばしばIPAと称される)あるいはそれらの混合物を含み得る。いくつかの態様では、溶媒は、溶媒の特性を更に向上させるために使用される1つ以上の添加剤を含み得、例えばアセトニトリル(ACN)、脱イオン水、およびテトラヒドロフランなどの低沸点添加剤であり得る。
【0107】
いくつかの態様では、低沸点溶媒を使用する場合、溶媒は、比較的低い温度で実施される熱乾燥プロセスを使用して迅速に除去され得る。当業者に理解されるように、これにより、電極10の製造のスピードおよび/またはコストを向上させることができる。例えば、いくつかの態様では、溶媒は、250℃、225℃、202℃、200℃、185℃、180℃、175℃、150℃、125℃より低い、またはそれより低い、例えば100℃以下の沸点を有し得る。
【0108】
いくつかの態様では、溶媒は、他の有利な特性を示し得る。いくつかの態様では、溶媒は、低い粘度、例えば20℃にて3.0センチポアズ、2.5センチポアズ、2.0センチポアズ、1.5センチポアズ以下の、またはそれより小さい粘度を有し得る。いくつかの態様では、溶媒は、低い表面張力、例えば、20℃にて40mN/m、35mN/m、30mN/m、25mN/m以下の、またはそれより小さい表面張力を有し得る。いくつかの態様では、溶媒は、低毒性、例えばイソプロピルアルコールなどのアルコールと同程度の毒性を有し得る。
【0109】
いくつかの態様では、活性層の形成の間に、表面処理を形成する材料は、ピロリドン化合物を実質的に含まない溶媒に溶解させ得る。いくつかの態様では、溶媒は、n-メチル-2-ピロリドンを実質的に含まない。
【0110】
いくつかの態様では、表面処理201は、本明細書に記載されるタイプの界面活性剤を含む材料から形成される。
【0111】
いくつかの態様では、高アスペクト比炭素要素および表面処理材料を溶媒に分散させて初期スラリーを形成することは、凝集した炭素要素に力を印加して、該要素を、該要素の短軸に対して横断方向に沿ってスライドさせて互いに引き離すことを含む。いくつかの態様では、そのような分散物を形成する技術は、2018年6月7日に公開された国際公開WO2018/102652に記載されるものから、本明細書に記載される教示内容に鑑みて適用され得る。
【0112】
いくつかの態様では、高アスペクト比炭素要素201は、電極10を形成するために使用されるスラリーを形成する前に官能基化され得る。例えば、1つの要旨において、高アスペクト比炭素要素201および表面処理材料を水性溶媒に分散させて初期スラリーを形成することであって、前記分散工程により高アスペクト比炭素上に表面処理を形成すること;初期スラリーを乾燥させて実質的に全ての水分を除去し、高アスペクト比炭素の乾燥した粉末およびその上の表面処理をもたらすことを含む、方法が開示される。いくつかの態様では、乾燥粉末は、例えば溶媒と活物質とのスラリーと組み合わされて、方法1000に関連して上述したタイプの最終溶媒を形成し得る。
【0113】
いくつかの態様では、初期スラリーを乾燥させることは、初期スラリーを凍結乾燥(フリーズドライ)することを含む。いくつかの態様では、水性溶媒および初期スラリーは、高アスペクト比炭素要素を損傷する物質を実質的に含まない。いくつかの態様では、水性溶媒および初期スラリーは、酸を実質的に含まない。いくつかの態様では、初期スラリーは、高アスペクト比炭素要素、表面処理材料および水から本質的に成る。
【0114】
いくつかの態様は、高アスペクト比炭素の乾燥粉末を表面処理と共に溶媒に分散させ、活物質を添加して、第2スラリーを形成すること;第2スラリーを基材上にコーティングすること;第2スラリーを乾燥させて電極活性層を形成することを更に含む。いくつかの態様では、先行する工程が、2018年6月7日に公開された国際公開WO2018/102652に記載されるものから、本明細書に記載される教示内容に鑑みて適用される技術を用いて実施され得る。
【0115】
いくつかの態様では、最終スラリーは、例えばポリアクリル酸(PAA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルアセテート)(PVAc)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイソプレン(PIpr)、ポリアニリン(PANi)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)などのポリマー添加剤を含み得る。いくつかの態様では、活性層は、熱を適用することによって処理されて、添加剤を熱分解し、よって、表面処理202が、ポリマー添加剤の熱分解により得られる炭素質材料の層を形成してよい。かかる炭素質材料(例えばグラファイトのまたはアモルファスの炭素)の層は、活物質粒子300に(例えば共有結合を介して)付着するか付着を促進し得る。熱処理が、任意の適切な手段によって、例えばレーザービームを適用することによって適用される。適切な熱分解技術の例は、2020年5月22日に出願された米国特許出願第63/028982号に記載されている。
【0116】
界面活性剤
上述した技術は、活物質粒子300との付着を促進するために、高アスペクト比炭素ナノチューブ201上の表面処理に対して界面活性剤を使用することを含む。いくつかの有利で適切な界面活性剤は既に説明されているが、以下のものを含む他の界面活性剤材料を使用してよいことが理解されるであろう。
【0117】
界面活性剤は、表面活性を有する分子または分子の基であり、湿潤剤、分散剤、乳化剤、洗浄剤および発泡剤を含む。さまざまな界面活性剤が、本明細書に記載の表面処理を調製するのに使用され得る。典型的には、使用される界面活性剤は、親油性非極性炭化水素基および極性官能性親水性基を含む。極性官能性基は、カルボキシレート、エステル、アミン、アミド、イミド、ヒドロキシル、エーテル、ニトリル、ホスフェート、スルフェート、またはスルホンであり得る。界面活性剤は、単独でまたは組み合わされて使用され得る。従って、界面活性剤の組み合わせは、界面活性剤分子の集団のヘッド領域に正味の正または負電荷が存在する限り、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両イオン性、両性(amphoteric, and ampholytic)界面活性剤を含み得る。いくつかの態様では、単一の負に帯電または正に帯電した界面活性剤が、本開示の電極組成物の調製に使用される。
【0118】
本開示の電極組成物の調製に使用される界面活性剤は、アニオン性であり得、例えばアルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルファオレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、およびアルキルエステルスルホネートなどのスルホネート;例えばアルキルスルフェート、アルキルアルコキシスルフェートおよびアルキルアルコキシル化スルフェートなどのスルフェート;例えばモノアルキルホスフェートおよびジアルキルホスフェートなどのホスフェート:ホスホネート;例えば脂肪酸、アルキルアルコキシカルボキシレート、サルコシネート、イセチオネート、およびタウレートなどのカルボキリレートを含むが、これらに限定されない。カルボキシレートの特定の例は、オレイン酸ナトリウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、メチルオレオイルタウリン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、トリデセスカルボン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸、およびココイルサルコシネートを含む。スルフェートの特定の例は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、トリデセス硫酸ナトリウム、トリデシル硫酸ナトリウム、コシル(cocyl)硫酸ナトリウム、およびラウリルモノグリセリド硫酸ナトリウムを含む。
【0119】
適切なスルホネート界面活性剤は、スルホン酸アルキル、スルホン酸アリール、モノアルキルおよびジアルキルスルホサクシネート、ならびにモノアルキルおよびジアルキルスルホサシナメートを含むが、これらに限定されない。各アルキル基は、約2~20炭素を独立して含み、ならびに、各アルキル基につき平均して約8単位まで、好ましくは約6単位まで、例えば2、3、または4単位のエチレンオキシドでエトキシル化されていてよい。アルキルおよびアリールスルホネートの代表的な例は、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(STBS)およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)である。
【0120】
スルホサクシネートの代表的な例は、スルホコハク酸ジメチコンコポリオール、スルホコハク酸ジアミル、スルホコハク酸ジカプリル、スルホコハク酸ジシクロヘキシル、スルホコハク酸ジヘプチル、スルホコハク酸ジヘキシル、スルホコハク酸ジイソブチル、スルホコハク酸ジオクチル、スルホコハク酸C12-15パレス、スルホコハク酸セテアリル、スルホコハク酸ココポリグルコース、ココイルブチルグルセス-10スルホコハク酸、デセス-5スルホコハク酸、デセス-6スルホコハク酸、ジヒドロキシエチルスルホコハク酸ウンデシレネート、水素化綿実グリセリドスルホコハク酸塩、スルホコハク酸イソデシル、スルホコハク酸イソステアリル、スルホコハク酸ラネス-5、スルホコハク酸ラウレス、スルホコハク酸ラウレス-12、スルホコハク酸ラウレス-6、スルホコハク酸ラウレス-9、スルホコハク酸ラウリル、スルホコハク酸ノンオキシノール-10、スルホコハク酸オレス-3、スルホコハク酸オレイル、PEG-10ラウリルクエン酸スルホコハク酸、スルホコハク酸シトセレス(sitosereth)-14、スルホコハク酸ステアリル、獣脂、スルホコハク酸トリデシル、スルホコハク酸ジトリデシル、ビスグリコールリシノスルホスクシネート(bisglycol ricinosulfosuccinate)、ジ(1,3-ジ-メチルブチル)スルホスクシネート、およびシリコーンコポリオールスルホスクシネートを含むが、これらに限定されない。
【0121】
スルホサシナメートの代表的な例は、スルホコハク酸ラウラミドMEA、スルホコハク酸オレアミドPEG-2、スルホコハク酸コカミドMIPA、スルホコハク酸コカミドPEG-3、スルホコハク酸イソステアラミドMEA、スルホコハク酸イソステアラミドIPA、スルホコハク酸ラウラミドMEA、スルホコハク酸ラウラミドPEG-2、スルホコハク酸ラウラミドPEG-5、スルホコハク酸ミリスタミドMEA、スルホコハク酸オレアミドMEA、スルホコハク酸オレアミドPIPA、スルホコハク酸オレアミドPEG-2、スルホコハク酸パルミタミドPEG-2、スルホコハク酸パルミトールアミドPEG-2、スルホコハク酸PEG-4コカミドMIPA、リシノレアミドMEAスルホコハク酸、ステアラミドMEAスルホコハク酸、ステアリルスルホサクシンアミド酸、タラミド(tallamido)MEAスルホコハク酸、牛脂スルホサクシンアミド酸、牛脂アミド(tallowamido)MEAスルホコハク酸、ウンデシルエナミドMEAスルホコハク酸、ウンデシルエナミドPEG-2スルホコハク酸、小麦ゲルアミドMEAスルホコハク酸、および小麦ゲルアミドPEG-2スルホコハク酸を含むが、これらに限定されない。
【0122】
市販のスルホネートのいくつかの例は、AEROSOL(登録商標)OT-S、AEROSOL(登録商標)OT-MSO、AEROSOL(登録商標)TR70%(ニュージャージー州ウェストパターソン、Cytec Inc.社)、NaSul CA-HT3(コネチカット州ノーウォーク、King Industries社)およびC500 (カナダオンタリオ州ウェストヒル、Crompton Co.社)である。AEROSOL(登録商標)OT-Sは、石油蒸留物中のスルホコハク酸ジオクチルナトリウムである。AEROSOL(登録商標)OT-MSOも、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムを含む。AEROSOL(登録商標)TR70%は、エタノールと水との混合物中のスルホコハク酸ビストリデシルナトリウムである。NaSul CA-HT3は、カルシウムジノニルナフタレンスルホネート/カルボキレート複合物である。C500は、油溶性カルシウムスルホネートである。
【0123】
アルキルまたはアルキル基は、1つ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を言い、直鎖アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、へプチルオクチル、ノニル、デシルなど)、環式アルキル基(あるいはシクロアルキルまたは脂環式もしくは炭素環式基)(例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)、分岐アルキル基(例えばイソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチルなど)およびアルキル置換アルキル基(例えばアルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基)を含む。
【0124】
アルキルは、非置換アルキルおよび置換アルキルの双方を含み得る。置換アルキルは、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上にある1つ以上の水素を置換した置換基を有するアルキル基を言う。かかる置換基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲノ、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシ、ホスフェート、ホスホナト、 ホスフィナト(phosphinato)、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロ環式、アルキルアリール、または芳香族(複素環式芳香族を含む)基を含み得る。
【0125】
いくつかの態様では、置換アルキルは、ヘテロ環式基を含み得る。ヘテロ環式基は、環にある炭素原子の1つ以上が炭素以外の元素、例えば窒素、硫黄、または酸素などである、炭素環式基の類似体の閉じた環構造体を含む。ヘテロ環式基は、飽和または不飽和であり得る。例示的なヘテロ環式基は、アジリジン、エチレンオキシド(エポキシド、オキシラン)、チイラン(エピスルフィド)、ジオキシラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ジオキセタン、ジジエタン、ジチエト、アゾリジン、ピロリジン、ピロリン、オキソラン、ジヒドロフランおよびフランを含む。
【0126】
アニオン性界面活性剤について、カウンターイオンは典型的にはナトリウムであるが、代わりに、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、アミン(1級、2級、3級または4級)または他の有機塩基(organic base)であってよい。例示的なアミンは、イソプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンを含む。上記カチオンの混合物も使用し得る。
【0127】
本開示の材料の調製に使用される界面活性剤は、カチオン性であり得る。かかるカチオン性界面活性剤は、ピリジン含有化合物、ならびに1級、2級、3級または4級有機アミンを含むが、これらに限定されない。カチオン性界面活性剤について、カウンターイオンは、例えば、クロリド、ブロミド、メトスルファート、エトスルファート、ラクテート、サッカリネート、アセテートおよびホスフェートであり得る。カチオン性アミンの例は、ポリエトキシル化オレイル/ステアリルアミン、エトキシル化牛脂アミン、ココアルキルアミン、オレイルアミン、および牛脂アルキルアミン、ならびにそれらの混合物を含む。
【0128】
単一の長鎖アルキル基を有する4級アミンの例は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(BddaBr)、ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド(BdhaCl)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、オレイルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムメトスルフェート(ココトリモニウムメトスルフェートとも知られている)、セチルジメチルヒドロキシエチルリン酸二水素アンモニウム、バッスアミドプロピルコニウム(bassuamidopropylkonium)クロリド、ココトリモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリド、小麦麦芽アミドプロパルコニウムクロリド、ステアリルオクチルジモニウムメトスルフェート、イソステアラミノプロパルコニウムクロリド、ジヒドロキシプロピルPEG-5リノレアミニウムクロリド、PEG-2ステアルモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ジセチルジモニウムクロリド、牛脂トリモニウムクロリドおよびベヘンアミドプロピルエチルジモニウムエトスルフェートである。
【0129】
2つの長鎖アルキル基を有する4級アミンの例は、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、ジステアリルジモニウムクロリド、ジセチルジモニウムクロリド、ステアリルオクチルジモニウムメトスルフェート、二水素化パルモイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトスルフェート、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトスルフェート、ジオレイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトスルフェート、およびヒドロキシプロピルビスステアリルジモニウムクロリドである。
【0130】
イミダゾリン誘導体の4級アンモニウム化合物は、例えば、イソステアリルベンジルイミドニウムクロリド、ココイルベンジルヒドロキシエチルイミダゾリウムクロリド、ココイルヒドロキシエチルイミダゾリウムPGクロリドホスフェート、およびステアリルヒドロキシエチルイミドニウムクロリドを含む。他のヘテロ環式4級アンモニウム化合物、例えばドデシルピリジニウムクロリド、アンプロリウム塩酸塩(AH)、およびベンゼトニウム塩酸塩(BH)も使用し得る。
【0131】
本開示の材料の調製に使用される界面活性剤は、非イオン性であり得、ポリアルキレンオキシドカルボシキル酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪族アルコール、エトキシル化脂肪族アルコール、ポロキサマー、アルカノールアミド、アルコキシル化アルカノールアミド、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、およびアルキルポリサッカライドを含むが、これらに限定されない。ポリアルキレンオキシドカルボン酸エステルは、1つ以上のカルボン酸エステル成分を有し、該成分は、約8~20炭素と、約5~200アルキレンオキシド単位を含有するポリアルキレンオキシド成分とを各々有する。エトキシル化脂肪族アルコールは、エチレンオキシド成分を含み、該成分は、約5~150エチレン酸化物単位と、約6~30炭素を有する脂肪族アルコール成分とを含有する。脂肪族アルコール成分は、環式、直鎖または分岐であってよく、飽和または不飽和であってよい。エトキシル化脂肪族アルコールのいくつかの例は、オレスアルコール、ステアレスアルコール、ラウリルアルコールおよびイソセチルアルコールのエチレングリコールエーテルを含む。ポロキサマーは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーであり、約15~約100モルのエチレンオキシドを有する。アルキルポリサッカライド(APS)界面活性剤(例えばアルキルポリグリコシド)は、約6~約30炭素を有する疎水性基と、親水性基としてのポリサッカライド(例えばポリグリコシド)とを含む。市販の非イオン性界面活性剤の例は、FOA-5(コロラド州リトルトン、Octel Starreon LLC.社)である。
【0132】
適切な非イオン性界面活性剤の具体的な例は、例えばコカミドジエタノールアミド(DEA)、コカミドモノエタノールアミド(MEA)、コカミドモノイソプロパノールアミド(MIPA)、PEG-5コカミドMEA、ラウラミドDEA、およびラウラミドMEAなどのアルカノールアミド;例えばラウラミド酸化物、コカミド酸化物、コカミドプロピルアミン酸化物、およびラウラミドプロピルアミド酸化物などのアルキルアミン酸化物;ソルビタンラウレート、ソルビタンジステアレート、脂肪酸または脂肪酸エステル、例えばラウリル酸、イソステアリル酸、およびPEG-150ジステアレートなど;例えばラウリルアルコールなどの脂肪族アルコールまたはエトキシル化脂肪族アルコール、例えばデシルグルコシド、ラウリルグルコシドおよびココグルコシドなどのアルキルポリグリコシドを含む。
【0133】
本開示の材料の調製に使用される界面活性剤は、正式な正および負の双方の電荷を同一分子に有する両イオン(zwitterionic)であり得る。正電荷基は、4級アンモニウム、ホスホニウム、またはスルホニウムであり得、負電荷基は、カルボキシレート、スルホネート、スルフェート、ホスフェート、またはホスホネートであり得る。界面活性剤の他のクラスと同様に、疎水性成分は、約8~18炭素原子の1つ以上の長い、直鎖、環式、または分岐の脂肪族鎖を含有し得る。両イオン界面活性剤の具体的な例は、例えばココジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルアルファ-カルボキシエチルベタイン、セチルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)カルボキシメチルベタイン、ステアリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)カルボキシメチルベタイン、オレイルジメチルガンマ-カルボキシプロピルベタイン、およびラウリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)アルファカルボキシ-エチルベタイン、アミドプロピルベタインなどのアルキルベタイン;例えばココジメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルジメチル(stearyidimethyl)スルホプロピルベタイン、ラウリルジメチルスルホエチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)スルホプロピルベタイン、およびアルキルアミドプロピルヒドロキシスルタインなどのアルキルスルタイン(sultaine)を含む。
【0134】
本開示の材料の調製に使用される界面活性剤は、両性(amphoteric)であり得る。適切な両性界面活性剤の例は、アルキルアンホカルボキシグリシネートおよびアルキルアンホカルボキシプロピオネート、アルキルアンホジプロピオネート、アルキルアンホジアセテート、アルキルアンホグリシネート、およびアルキルアンホプロピオネート、ならびにアルキルイミノプロピオネート、アルキルイミノジプロピオネート、およびアルキルアンホプロピルスルホネートのアンモニウムまたは置換アンモニウム塩を含む。具体的な例は、ココアンホアセテート、ココアンホプロピオネート、ココアンホジアセテート、ラウロアンホアセテート、ラウロアンホジアセテート、ラウロアンホジプロピオネート、ラウロアンホジアセテート、ココアンホプロピルスルホネート、カプロアンホジアセテート、カプロアンホアセテート、カプロアンホジプロピオネートおよびステアロアンホアセテートである。
【0135】
また、本開示の材料の調製に使用される界面活性剤は、例えばN-置換ポリイソブテニルスクシンイミドおよびスクシネート、アルキルメタクリレートビニルピロリドンコポリマー、アルキルメタクリレート-ジアルキルアミノエチルメタクリレートコポリマー、アルキルメタクリレートポリエチレングリコールメタクリレートコポリマー、ポリステアラミド、ならびにポリエチレンイミンなどのポリマーでもあり得る。
【0136】
また、本開示の材料の調製に使用される界面活性剤は、例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(ポリソルベート40)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60)またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80)などのポリソルベートタイプの非イオン性界面活性剤であり得る。
【0137】
本開示の材料の調製に使用される界面活性剤は、油脂ベースの分散物であり得、これは、アルキルスクシンイミド、スクシネートエステル、高分子量アミン、ならびにマンニッヒ塩基およびリン酸誘導体を含む。いくつかの具体的な例は、ポリイソブテニルスクシンイミド-ポリエチレンポリアミン、ポリイソブテニルコハク酸エステル、ポリイソブテニルヒドロキシベンジル-ポリエチレンポリアミン、およびビス-ヒドロキシプロピルホスフェートである。
【0138】
本開示の材料の調製に使用される界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両イオン性、および両性(amphoteric and ampholytic)界面活性剤から成る群より選択される同じまたは異なるタイプの2つ以上の界面活性剤の組み合わせであり得る。同じタイプの2つ以上の界面活性剤の組み合わせの適切な例は、2つのアニオン性界面活性剤の混合物、3つのアニオン性界面活性剤の混合物、4つのアニオン性界面活性剤の混合物、2つのカチオン性界面活性剤の混合物、3つのカチオン性界面活性剤の混合物、4つのカチオン性界面活性剤の混合物、2つの非イオン性界面活性剤の混合物、3つの非イオン性界面活性剤の混合物、4つの非イオン性界面活性剤の混合物、2つの両イオン性界面活性剤の混合物、3つの両イオン性界面活性剤の混合物、4つの両イオン性界面活性剤の混合物、2つの両性(amphoteric)界面活性剤の混合物、3つの両性(amphoteric)界面活性剤の混合物、4つの両性(amphoteric)界面活性剤の混合物、2つの両性(ampholytic)界面活性剤の混合物、3つの両性(ampholytic)界面活性剤の混合物、および4つの両性(ampholytic)界面活性剤の混合物を含むが、これらに限定されない。
【0139】
薄いポリマー層材料
上述の技術は、活物質粒子300との付着を促進するために、高アスペクト比カーボンナノチューブ上の表面処理201を形成するためのポリマーの使用を含む。いくつかの好都合で適切なポリマーを説明したが、以下のものを含む他のポリマー材料が使用され得ることが理解される。
【0140】
本開示の材料の調製に使用されるポリマーは、ウォータープロセスが可能なポリマー材料などのポリマー材料であり得る。さまざまな態様では、次のポリマー(およびそれらの組み合わせ)が使用され得る:ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルアセテート)(PVAc)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイソプレン(PIpr)、ポリアニリン(PANi)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)。いくつかの態様では、別の例示的なポリマー材料は、フッ素アクリルハイブリッドラテックス(TDR202A)であり、JSR株式会社より供給されている。
【実施例
【0141】
以下の非限定的な実施例は、本開示の教示の適用を更に説明する。以下の実施例において、用語「バインダーフリー」または「バインダレス」電極は、高アスペクト比炭素の3Dマトリックスまたは骨格であって、その上に、例えばPVDFなどのバルクポリマーバインダーなしに骨格への活物質の付着を促進する表面処理が在るものを特徴とする、上記で詳述したタイプの電極を言う。
【0142】
以下にて使用される場合、用語Cレートは、その最大容量に対して、バッテリが放電されるレートの大きさ(measure)を言う。1Cレートは、放電電流が、完全なバッテリを1時間で放電することを意味する。100アンペア-時間の容量を有するバッテリでは、これは、100アンペアの放電電流に等しい。
【0143】
実施例1-電気自動車バッテリセル
以下のバッテリセルは、電気自動車(EV)での使用に適する。このセルは、例えばEV用途での使用のために、本明細書に記載されるタイプのカソードおよびアノード技術を組み合わせている。鍵となるハイレベルの利点には、より低い製造コスト、より高いエネルギー密度、優れた電力密度、および幅広い動作温度範囲が含まれる。これらの利点は、本明細書に記載のバッテリ電極製造のための手法に由来するものであり、これは、PVDFポリマーバインダーおよびN-メチル-2-ピロリドン(NMP)のような毒性溶媒を排除するものである。この結果、範囲、充電速度、ならびにより低いコスト、より少ない資本集約およびバッテリ製造者のより高い安全性を提供する製造プロセスへエンドユーザを促すことにおいて、実質的な性能上の利点が得られる。
【0144】
本明細書における教示は、次の利点を示し得るエネルギー貯蔵用電極を製造する技術基盤を提供する:製造コストおよび得られるLiBのドル/kWhにおける低減、カソードを厚いコーティングならびに、例えばSiまたはSiOxなどの高性能活物質を特徴とする高キャパシティアノードと組み合わせることによるエネルギー密度における増加、急速充電。本明細書における教示により、従来のポリマーバインダーを活物質コーティングから除去することによって、エネルギー貯蔵における電力密度を向上させるための拡張可能な技術が提供される。
【0145】
従来のLiB用電極は、活物質、伝導性添加剤およびポリマーバインダーをスラリー中で混合することによって作製される。従来のカソードは、NMPベースのスラリーおよびPVDFポリマーバインダーを用いて製造される。そのようなバインダーは、高分子量を有し、次の2つのメインメカニズムによる集電体箔への付着および活物質粒子の凝集を促進する:1)長いポリマー鎖によって促進される絡まり(または絡み合いもしくは絡めとり)、および2)ポリマー、活物質および集電体の間の水素結合。しかしながら、ポリマーバインダーベースの方法は、性能:電力密度、エネルギー密度の点で、また更に製造コストの点で著しい不利益がある。
【0146】
本明細書における教示は、カソードにおけるPVDFバインダーまたはアノードにおける他の従来の(または常套的な)バインダーを有しない電極を提供する。その代わりに、上記に詳述したように、3D炭素骨格またはマトリックスが、活物質粒子を一緒に保持して、金属の集電体にも強固に接着した凝集層を形成する。そのような活物質構造は、スラリー調製ならびにその後のロール・トゥ・ロール(「R2R」)コーティングおよび乾燥プロセスの間に形成される。この技術の主要な利点の1つは、従来の電極製造プロセスと適合可能であることによる、その拡張可能性および「ドロップイン(drop-in)(または部分交換)」性である。
【0147】
3D炭素マトリクスは、本明細書に記載される技術を用いるスラリー調製の間に形成される:例えば(図6を参照して上述したタイプのような)2ステップスラリー調製プロセスを用いて、高アスペクト比炭素材料が適切に分散され、化学的に官能基化される。化学的官能基化は、オーガナイズされた自己組織化構造が活物質粒子(例えば、カソードで使用される場合はNMC粒子であり、または、アノードの場合はシリコン粒子(「Si」)またはシリコン酸化物(「SiOx」)粒子である)の表面を有して形成されるように設計される。そのようにして形成されるスラリーは、カソードではアルコール溶媒を、アノードでは水をベースとするものであり得、そしてかかる溶媒は、製造プロセスの間に非常に容易に蒸発させられ、取り扱われる。静電相互作用が、スラリー中での自己組織化構造を促進し、そして、乾燥プロセス後、そのように形成された活物質粒子を伴う炭素マトリックスと集電体の表面との間の結合が、表面処理(例えばマトリックス上の官能基)ならびに炭素マトリックス中の活物質の強い絡まりによって、促進される。
【0148】
当業者には理解されるように、電極の機械的特性は、用途、および表面官能基化対絡まり効果をチューニングすることによる質量負荷要件に依存して容易に改変され得る。
【0149】
コーティングおよび乾燥後、電極は、活物質の密度および間隙率(または多孔度)を制御するために、カレンダー加工工程に付される。NMCカソード電極では、3.5g/cc以上の密度および20%以上の間隙率が得られ得る。質量負荷およびLIBセル要件に依存して、間隙率は最適化され得る。SiOx/Siアノードの場合、間隙率は、リチウム化プロセスの間の活物質の膨張に適応するように特に制御される。
【0150】
いくつかの典型的な用途では、ドル/kWhにおける最大20%の低減を提供し得る。蒸発が容易なフレンドリーな溶媒を使用することによって、電極のスループット(または生産能力)はより高くなり、そしてより重要には、長い乾燥器によるエネルギー消費が著しく低減される。また、従来のNMP回収システムは、アルコールまたは他の溶媒混合物を使用する場合、はるかに簡素化される。
【0151】
本明細書に記載の教示は、例えばPVDFなどの従来のバインダーを使用した電極に比べて、10倍以上100倍以下で、電極伝導性を劇的に向上させる3Dマトリックスを提供し、これは、バッテリレベルにて急速な充電を可能にする。この技術では、集電体の片面あたり、150μmまで(またそれより大きい)の、カソードにおける厚い電極コーティングが可能である。スラリーにおいて強固な3D炭素マトリクスと共に使用される溶媒は、乾燥工程の間にクラッキングすることなく、厚いウェットコーティングを達成するように設計される。高容量アノードと共に使用される厚いカソードは、400Wh/kg以上に達するエネルギー密度における実質的なジャンプを可能にする。
【0152】
急速充電は、アロイイングプロセス(Si/SiOx)を経てリチウム化された高容量アノードと組み合わせることによって、およびアノードとカソードとを本明細書に記載されるように組み合わせた場合のセルの全インピーダンスを低減することによって、達成される。本明細書における教示は、高伝導性電極および特に高伝導性カソード電極を有することによって、急速充電を提供する。
【0153】
1つの例示的な態様は、カソードにおけるNiリッチNMC活物質とアノードにおけるSiOxおよびグラファイトのブレンドの活物質とを組み合わせて、アノードおよびカソードの双方が本明細書に記載の3D炭素マトリックスプロセスを用いて作製された、パウチセル形態のLiイオンバッテリエネルギー貯蔵デバイスを含む。
【0154】
電極配置パウチセルデバイスの模式図を図7に示す。図示するように、アルミニウム箔集電体の対抗する面にポリマーバインダーフリーのカソード層を用いた両面カソードが、銅箔集電体の上に配置されたポリマーバインダーフリーのアノード層を各々有する2つの片面アノードの間に配置される。電極は、電解質(図示せず)で濡れた透過性セパレータ材料(図示せず)によって隔離される。この構成は、当該技術分野にて周知のタイプのパウチセルに収容される。
【0155】
これらデバイスは、NiリッチNMCカソード電極の高質量負荷およびその製造方法を特徴とし得る:質量負荷=20~30mg/cm、比容量>210mAh/g。SiOx/グラファイトアノード(SiOx含量=~20重量%)ベースの電極およびその材料合成ならびに製造方法:質量負荷 8~14mg/cm、可逆比容量≧550mAh/g。特にSiOx/グラファイトアノードベースのLiイオンベースの、バッテリ用電極についての長い寿命性能:-30℃以上60℃以下。高エネルギー、高電力密度、および長いサイクル寿命Niリッチカソード/SiOx+グラファイト/カーボン+ベースのLiイオンバッテリパウチセル:容量≧5Ah、比エネルギー≧300Wh/kg、エネルギー密度≧800Wh/L、1Cレート充放電下での500サイクル以上のサイクル寿命、および超高電力急速充放電Cレート(最大5Cレート)性能。このタイプのパウチセルの性能パラメータの要約を図8にまとめる。
【0156】
実施例2-NMC811リチウムイオンバッテリの比較的性能
上述のように、本明細書における教示は、先進的な3D高アスペクト比炭素結合構造を有して構成された電極であって、伝統的なバッテリ電極デザインに比べて、ポリマーバインダーの必要性を排除し、より大きい電力、エネルギー密度(例えばより厚い電極およびより高い質量負荷の活物質を介して)、および過酷な環境下での性能を提供する。高性能Liイオンバッテリエネルギー貯蔵デバイスが、バインダーフリーのカソード/アノード電極の最適化された容量比デザイン、アノード電極プレリチウム化、および幅広い動作温度電解質(例えば-30℃~60℃)、および最適化されたテスト形成プロセスを有して設計および製造される。
【0157】
本明細書に記載されるように、電極は、例えばPVDFなどの高分子量ポリマー、ならびに活物質層からの毒性のあるNMP溶媒を完全に除外して製造される。これは、製造コスト、ならびに混合、コーティングおよび乾燥、NMP溶媒回収ならびにカレンダー加工に関連した設備投資を低減しながら、LiB性能を劇的に向上させる。電極の態様では、3Dナノスケール炭素マトリックスが、電極活物質に対する機械的骨格として働き、およびポリマー鎖の絡まりを真似する。また、炭素の表面、活物質、および集電体の間に化学結合が存在し、付着および凝集を促進する。しかしながら、ポリマーとは異なり、3Dナノスケール炭素マトリックスは、非常に電気伝導性であり、これは、非常に高い電力(高いCレート)を可能にする。また、この骨格構造は、厚い電極活物質を提供するのにより適しており、これは、LiBセルのエネルギー密度を増大させる強力な方法である。
【0158】
本実施例では、活物質としてのNMC811を特徴とし、リチウムイオンバッテリ(LIB)に組み込まれる、バインダーフリーのカソードを、本開示の教示に従って作製した。セルには、当該技術分野において既知の従来のタイプのグラファイトアノードを用いた。セルを、図7を参照して上述したように、図9にまとめたパラメータを用いて構成した。1重量%のビニルカーボネート添加剤を有するエチレンカーボネートおよびジメチルカーボネートの溶媒混合物中の1MのLiPFから構成される従来の電解質を使用した。比較のために、PVDFバインダーベースのカソードを使用したこと以外は同じセルを作製した。セルの性能を以下に記載するように比較し、これは、バインダーフリーのカソードセルにてついて明確な利点を示した。
【0159】
図10にまとめた結果に示すように、バインダーフリーセルは、20Ahバッテリセルデザインおよび2Cレート充電/放電下での2000サイクルを超えるサイクル寿命を有するグラファイトアノードに基づいて、320Wh/kgもの高い比エネルギーを達成する。比較において、従来のバインダーベースのカソードセルは、セルレベルでの比エネルギーで100~250Wh/kgに達するのみである。
【0160】
バインダーフリーのカソードセルは、超高電力急速充放電Cレートを、容量保持50%超にて最大5Cレートを示す。図10は、バインダーフリーのカソードセル(左)と従来のバインダーベースのカソードセル(右)に対するさまざまなCレートでの充放電曲線の比較を示す。バインダーフリーのカソードセルの充放電曲線は、5Cレートでの組み合わせ充放電で、60%を超える容量保持を示す。従って、別個の放電または充電は、より高い容量保持を示すであろう。従来のグラファイトアノードを使用するという条件の例では、初期実験結果は、Si支配的アノードを本実施例で使用したNMC811カソードと組み合わせる場合、10C充電レートを達成することを示すことに留意されたい。
【0161】
図11は、上述したセルのサイクル寿命の比較を示す。セルを25℃にて2.75Vと4.2Vとの電圧の間で繰り返して、放電容量を記録した。バインダーフリーのカソードセルは、20%未満の放電容量損失にて2000サイクルを超える寿命を示している。これに対して、バンダーベースのカソードセルは、わずか1000サイクルの後、20%超の放電容量損失を示している。
【0162】
実施例3-パウチハーフセル比較
本明細書に記載されるタイプのバンダーフリーのカソード電極は、好都合に高質量負荷を達成し、例えばNMC811活物質の片面当たり45mg/cmの質量負荷が可能である。本実施例は、かかる高質量負荷のバインダーフリー電極の性能を、PVDFバインダーおよびNMC811活物質を特徴とするコントロール電極と比較して示す実験結果について述べる。
【0163】
比較を行うために、図12に示すタイプのハーフセルを、片面カソード(バインダーフリーおよびバインダーベースのコントロールの双方)およびセルのカンター電極としての銅基材上のリチウム箔を用いて構成した。ハーフセルを、さまざまな電流密度下にて充電レート試験に付し、結果を以下にまとめた。
【0164】
図13は、バインダーフリーカソードハーフセル(実線トレース)および参照のバンダーベースのカソードハーフセル(点線トレース)についての、さまざまな電流密度での、比容量に対する電位(Li/Li電位を参照とする)を示すプロットである。全ての電流密度(および従って全てのCレート)にて、バインダーフリーカソードハーフセルが、(トレースの比較的右側のシフトによって示されるように)より優れた性能を示している。
【0165】
図14は、バインダーフリーカソードハーフセル(実線トレース)および参照のバンダーベースのカソードハーフセル(点線トレース)についての、さまざまな電流密度での、体積容量に対する電位(Li/Li電位を参照とする)を示すプロットである。全ての電流密度(および従って全てのCレート)にて、バインダーフリーカソードハーフセルが、(トレースの比較的右側のシフトによって示されるように)より優れた性能を示している。
【0166】
図15は、バインダーフリーカソードハーフセル(上側トレース)および参照のバンダーベースのカソードハーフセル(下側トレース)についての、電流密度に対する体積容量のプロットである。全ての電流密度(および従って全てのCレート)にて、バインダーフリーカソードハーフセルが、より優れた性能を示しており、より高いCレートで比較性能ギャップがより大きくなっている。
【0167】
図16は、いくつかのバンダーフリーカソードハーフセル(丸、四角および三角印のトレース)および参照のバンダーベースのカソードハーフセルについての、電気化学インピーダンス分光法によって得られたナイキストプロットを示す。バンダーフリーカソードハーフセルは、参照セルよりも著しく良好な性能を示す。
【0168】
図面から、電流密度が0.5から10mA/cm(1.2Cレート)に増加したときに、バンダーフリーNMC811電極の放電容量保持は、バンダーベースのPVDFコントロールNMC811電極に比べて、両方の電極が同じ45mg/cmの質量負荷を有するにもかかわらず、かなり高いことが理解され得る。さまざまな電流密度下でのこのCレートテストは、従来のバインダーベースのPVDFカソードとバンダーフリーカソードとの相対比較として示すものであり、フルセル構成における完全なCレート性能(例えば上記実施例1および2にて示すもの)を反映していないことに留意されたい。
【0169】
実施例4
本明細書に記載される電極技術は、例えばバッテリ、ウルトラキャパシタなどのエネルギー貯蔵デバイスの性能を劇的に向上させ得る。所定の材料および低コストプロセスを使用して、開示の電極を先進的な3Dナノスケール結合構造(例えば、本明細書にて開示の技術とも称する)を有して形成し得る。得られる製品は、伝統的なエネルギー貯蔵デザインに比べて、より大きい電力、エネルギー密度、および過酷な環境における性能を提供する。バッテリおよびスーパーキャパシタの製造者は、開示の電極を利用して、それらの製造プロセスを最適化し、生産性の伸びを支援し、コストを低減し、ならびに最近のアノードおよびカソード材料、例えばNiリッチNMC、シリコンベースのアノードおよび固体電極を含む最も活性な物質との適合性を増大させ得る。いくつかの態様では、開示の電極は、バインダーフリーまたは実質的にバインダーフリーである。開示のバインダーフリー電極製造プロセスの発展により、開示の電極技術は、Liイオンバッテリを使用する場合に関連して実施され得、コストを低減し、ならびに自動車OEMおよびバッテリ製造者から要求されるクリティカルな性能面を向上させる、抜本的な利点を達成することができる。
【0170】
さまざまな態様には、例えばクリティカルなUSABC技術の目標などのいくつかの電気自動車産業の目標に合致またはこれを上回り得る低コストおよび急速充電(LCFC)EVバッテリセルが含まれる。いくつかの態様では、セルは、開示のカソードおよびアノード技術を急速充電EV用途に組み合わせる。開示のカソードおよびアノード技術の使用の鍵となる高レベルの利点には、低製造コスト、高エネルギー密度、優れた電力密度、および幅広い温度範囲での動作が含まれる。これらの利点は、バッテリ電極を製造する新しいアプローチであって、PVDF(ポリビニリデンフルオフライド)ポリマーバインダーおよび、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの毒性のある溶媒の使用を排除するものに由来する。従って、さまざまな態様は、範囲、充電速度、ならびにより低いコスト、より少ない資本集約およびバッテリ製造者のより高い安全性を提供する製造プロセスへエンドユーザを促すことにおいて、実質的な性能上の利点を提供する。
【0171】
さまざまな態様には、例えば高性能LCFC EVバッテリセルが含まれ、これは、(1)高比容量カソード電極の発展;(2)Si支配的アノード電極の発展;(3)50℃カレンダー寿命およびサイクル寿命を向上させる電解質処方の発展;(4)LCFC-EV65Ahバッテリセルデザインおよび製造プロセスの発展;(5)LCFC-EV65Ahバッテリセル資格(qualifications)を含む。
【0172】
この技術は、以下のことを容易にする。
・LiBの製造コストおよびドル/kWhの低減
・厚いコーティングを有するカソードを、例えばSi、Si-CまたはSiOxなどの高容量アノードと組み合わせることによるエネルギー密度の増大
・急速充電能力の向上
これは、拡張可能な技術を含み、活物質コーティングから従来のポリマーバインダーを除去(または低減)することによって、エネルギー貯蔵における電流密度を向上させる。いくつかの態様では、電極は、わずかな(nominal)量のポリマーバインダーを含む。いくつかの態様では、電極は、ポリマーバンダーを含まない、すなわち、ポリマーバインダーフリーである。
【0173】
関連する技術によるLiB用電極は、通常、活物質、伝導性添加剤、およびポリマーバインダーをスラリー中に混合することによって作製される。関連する技術によるカソードは、通常、NMPベースのスラリーおよびPVDFポリマーバインダーを用いて製造される。かかるバインダーは、非常に高い分子量を有し、活物質粒子の凝集性、ならびに集電体箔への次の2つのメインメカニズムによる付着を促進する:1)長いポリマー鎖によって促進される絡まり、および2)ポリマー、活物質および集電体の間の水素結合。しかしながら、このポリマーバインダーベースの方法は、性能(電流密度、エネルギー密度)および製造コスト上の重大な欠点を提示する。
【0174】
さまざまな態様によれば、これらの電極は、カソードにPVDFバインダーを有することなく、シリコン支配的アノードに低減された量のバインダーを有する。いくつかの態様では、これらの電極は、金属の集電体にも強固に付着した凝集層を形成するように、活物質粒子を一緒に保持する3Dカーボンマトリックスを含む。かかる活物質構造は、スラリー調製ならびにその後のR2Rコーティングおよび乾燥工程の間に形成される。この技術の利点は、いくつかの態様では、この技術は従来の電極製造プロセスに基づいていることから、その拡張可能性および「ドロップイン」性である。
【0175】
3D炭素マトリックスは、スラリー調製の間に形成される:高アスペクト比1Dおよび2D炭素材料が、2段階専有(proprietary)調製プロセスを用いて適切に分散および化学的に官能基化される。化学的官能基化は、活物質粒子(例えばNMC粒子またはSi/SiOx粒子)の表面を有する組織化された自己組織化構造を形成するように設計される。このようにして形成されたスラリーは、通常、カソードについてはアルコール溶媒、アノードについては水に基づくものであり、ごく簡単に蒸発させ、取り扱われる。静電相互作用が、スラリー中の自己組織化構造を促進し、そして乾燥プロセスの後、そのようにして形成された活物質粒子を有する炭素マトリックスと集電体の表面との間の結合が、表面官能基ならびに強固な絡まりによって促進される。
【0176】
電極の機械的特性は、用途に応じて改変できる。同様に、質量負荷の要件は、表面官能基対絡まり効果をチューニングすることによって改変できる。
【0177】
いくつかの態様では、コーティングおよび乾燥後、電極は、活物質の密度および間隙率を制御するために、カレンダー加工工程に付され得る。NiリッチNMCカソード電極では、密度≧3.5g/ccおよび≦20%間隙率を達成できる。質量負荷およびLIBセル要件に応じて、間隙率を最適化できる。いくつかの態様では、SiOx/Siアノードでは、間隙率は、リチウム化プロセスの間の活物質の膨張に適応するように特に制御され得る。
【0178】
さまざまな態様によれば、この技術の製造/電極のデザインに関連した実施は、ドル/kWhにおける最大18%の低減をもたらし得る。容易に蒸発させられるフレンドリーな溶媒を使用することによって、電極のスループットはより高くなり、そしてより重要には、長い乾燥器によるエネルギー消費が著しく低減される。また、従来のNMP回収システムは、アルコールまたは他の溶媒混合物を使用する場合、はるかに簡素化される。
【0179】
3Dマトリックスは、10倍以上100倍以下で、電極伝導性を劇的に向上させ、これは、バッテリレベルにて急速な充電を可能にする。この技術により、カソードにおける厚い電極コーティング(集電体の片面あたり、150μmまで)が可能である。スラリーにおいて強固な3D炭素マトリクスと共に使用される溶媒は、乾燥工程の間にクラッキングすることなく、厚いウェットコーティングを達成するように設計される。さまざまな態様によれば、高容量アノードと組み合わされる比較的厚いカソードは、エネルギー密度における実質的なジャンプを可能にする。例えば、エネルギー密度は、400Wh/kgに達し得る。いくつかの態様では、エネルギー貯蔵デバイスは、400Wh/kg以下のエネルギー密度を示す。いくつかの態様では、エネルギー貯蔵デバイスは、400Wh/kgを超えるエネルギー密度を示す。いくつかの態様では、エネルギー貯蔵デバイスは、330Wh/kg以上のエネルギー密度を示す。
【0180】
この技術は、急速充電への独特なアプローチを有し、これは、アロイイングプロセス(Si/SiOx)を経てリチウム化された高比容量アノードと組み合わせることによって、および開示の材料でこれらの方法により製造されたアノードとカソードとを組み合わせた場合のセルの全インピーダンスを低減することによって、達成される。Si支配的アノードに加えて、技術は、高伝導性電極および特に高伝導性カソード電極を有することによって、セルインピーダンスを低減する。加えて、電極技術は、バッテリカソードおよびアノード電極について、イオン輸送および電荷移動の抵抗を低減し得る。
【0181】
さまざまな態様によれば、Liイオンバッテリエネルギー貯蔵デバイス(「パウチセル」)は、NiリッチNMC/NCMA(または他の新しいタイプの)カソードおよびSi支配的(Si元素重量%≧50%)アノードを含む。さまざまな態様は、以下の1つ以上を示すエネルギー貯蔵デバイスに関する。
1)寿命初期(「BOL」)でのLCFC-EVバッテリセル容量≧65Ah
2)BOLでのLCFC-EVバッテリエネルギー密度:≧330Wh/kg、≧800Wh/L
3)LCFC-EVバッテリ急速充電:15分間にて80%SOC
4)30℃でのC/3充電によるLCFC-EVバッテリDSTサイクル寿命:C/3容量保持≧80%で1000サイクル
5)30℃での≧3.5C急速充電によるLCFC-EVバッテリDSTサイクル寿命:C/3容量保持≧80%で1000サイクル
6)30℃でのLCFC-EVバッテリカレンダー寿命:≧10年
7)BOLでのLCFC-EVバッテリコスト≦79ドル/kWh
【0182】
【0183】
さまざまな態様によれば、フルバッテリセルが発展させられ、その電力性能、コスト、再充電性、必要なインフラ、および商業的実現可能性の点で評価される。評価は、USABCに規定されるガイドラインに基づいており、電圧限界、温度制御、圧力制御、バッテリサイズおよび充電手順を含むバッテリ用途の性能および寿命挙動を特徴付けるための一連のテストに従う。
【0184】
さまざまな態様によれば、この技術は、エネルギー貯蔵デバイス(例えばEVに使用されるエネルギー貯蔵デバイス)を、例えばPVDFなどの高分子量ポリマーおよび毒性NMP溶媒を活物質層から完全に除去することによって製造するように、改めて発明されたものである。電極を、例えばPVDFなどの高分子量ポリマーおよび毒性NMP溶媒を活物質層から除去して実現することにより、混合、コーティングおよび乾燥、NMP溶媒回収ならびにカレンダー加工に関連した製造コストおよび設備投資を低減しつつも、LiB性能が劇的に向上する。
【0185】
これらの電極では、3Dナノスケール炭素マトリックスは、電極活物質に対して機械的骨格として働き、およびポリマー鎖の絡まりを真似する。また、炭素の表面、活物質、および集電体の間に化学結合が存在し、付着および凝集を促進する。しかしながら、ポリマーとは異なり、3Dナノスケール炭素マトリックスは、非常に電気伝導性であり、これは、非常に高い電力(高いCレート)急速充放電を可能にする。また、この骨格構造は、厚い電極活物質層を提供するのにより適しており、これは、LiBセルのエネルギー密度を増大させる強力な方法である。
【0186】
電極技術の製造プロセスは、以下の工程を含む。さまざまな態様によれば、ロール・トゥ・ロール(R2R)スロットダイコーティングプロセスによる、開示される(NX)バッテリ電極製造が実証される。図17(下)は、NX NMC811カソード電極製造のためのスロットダイコーティングプロセスと、完成された良好な品質のNX NMC811電極(例えば開示の技術を含む電極)のロールとを示す。NX Si-Cアノードについては、図18から理解されるように、NX Si-Cアノードスラリーをコーティングするためにスロットダイを使用するのに問題はなく、良好な品質のNX Si-Cアノード電極が製造および再現可能であることが示される。
【0187】
図19は、NX NMC811およびSi-C電極の双方についての機械的付着力テストのまとめを示す。図19は、付着力が、5.6mAh/cm負荷のNX NM811およびPVDFコントロールNMC811カソード電極の間で同等であることを示す。双方とも、150~170N/mの平均範囲であり、これは、NX NM811が、PVDFコントロールNMC811電極と同様の機械的性能を達成し得ることを示す。~6.2mAh/cm負荷のNX Si-Cアノードでは、平均付着力は、約235N/mであり、2mmのマンドレルテストに合格する。NX Si-Cアノード電極の厚さは、NX NMC811よりはるかに薄く、Liイオンバッテリに対してより高いエネルギー密度を達成できるからである。
【0188】
電極の電気化学的性能をテストするために、いずれもパウチセル型であるハーフセルおよびフルセルを分析した。ハーフセルおよびフルセルの双方についてのパウチセルの構造を図20に示す。図21は、NXにおけるさまざまなカソード活物質およびPVDFコントロールに基づく、ハーフセル(NXカソードvsLi/Li)初期第1回サイクル充放電比容量および急速充電Cレート性能を示す。図21から理解されるように、NX NMC811カソード電極は、全てのハーフセルテスト結果のなかで最も高い初期クーロン効率(ICE)を示し、これは、~95.7%に及ぶ。NX NMC811についての初期放電比容量は、計算中にNXナノカーボン重量を含めて活性層重量(活物質ではない)に基づいて、約~210mAh/gである。PVDFコントロールNMCは、はるかに低いICEを示し、これは88.8%であり、そして比容量は200mAh/g未満である。
【0189】
カソードハーフセル急速充電Cレート性能については、図21から理解されるように、5.6mAh/cm負荷NX NMC811は、0.1Cレート充電に比べて3.4Cレート急速充電下にて、77.3%の一定電流(CC)領域容量保持を達成し得、他方、5.2mAh/cm負荷PVDFコントロールNMC811は、3.4Cレート急速充電下にて、35.9%のCC領域容量保持を維持し得たに過ぎない。このことは、NX NMC811カソード電極技術が、Liをカウンター電極として使用したハーフセルにおいて、従来のPVDFバンダーベースのNMC811電極に比較して、>2倍の急速充電能力に改善し得ることを実証するものである。
【0190】
更にNX Si-Cアノード電極性能を評価するため、NX NMC811/NCMAカソードおよびNX Si-Cアノードフルパウチセルを組み立てて、急速充電性能を評価した。NX Si-Cアノードハーフセル(アノードvsLi/Li 1.2V~1mV)テスト結果に基づいて、NXナノカーボン重量を含む活性層重量(活物質ではない)に基づいて、初期第1回Li充電比容量は、約1234mAh/gであり、第1回Li放電比容量は、約1116mAh/gである。NX Si-Cアノード初期ICEは、約~90%である。
【0191】
図22は、NX NMC811/NCMA||Si-Cセルシステムについての急速充電性能を示す。図22から理解されるように、5.6mAh/cm負荷のNX NMC♯2は、NX Si-Cアノードと組み合わせて、最良の急速充電性能を示す。15分間の3.5CレートCC-CV急速充電の後、4.2~2.8Vセル電圧範囲のC/3 CC-CV充電容量に比較して、急速充電容量保持は>80%である。このことは、フルセルシステムにNX NMC811およびNX Si-Cを組み合わせた後、優れた急速充電能力を達成することを実証するものである。
【0192】
図23は、NX NMC811||Si-Cフルバッテリセルについての寿命性能を示す。図23から理解されるように、NXバッテリセルは、30℃にて、600サイクル1C1Cサイクリング後に>80%エネルギー保持を、1000サイクル1C1Cサイクリング後に~70%を達成し得る。50℃SOC100カレンダー寿命試験については、30日後、全てのタイプの電解質セルが、~80%容量保持をほぼ有する。さまざまな態様が、このLCFC-EVバッテリ発展プロジェクトにおける50℃SOC100カレンダー寿命性能向上のために最適化された電解質処方物を含む。
【0193】
NX電極電気化学性能評価の後、NX電極を用いて、標準的なR&D1.5Ahバッテリセルを組み立てた。表1(下記)は、NX NMC811||Si-C1.5AhLIBパウチセルのまとめである。NX NMC811電極は、3.5g/cmの圧力密度にて約5mAh/cm面積負荷である。セルのこのバッチについてのN/P比は約1.10である。セルサイズは、下記に示すように46x46x3.4mmである。表1から理解されるように、1.5AhセルについてのICEは、各々90%~91%である。エネルギー密度は、セルフォーマットが小さいサイズであるので、パッケージを考慮せずに、スタックおよび電解質を含めて、325~329Wh/kgおよび817~830Wh/L(SOC100)である。カソードおよびアノード電極についてスタック総を増やしてセル容量を>65Ahまで増加させた場合、セル効率を~95%に増加させ得る。また、NX Si-Cアノード(5.3mg/cm質量負荷)は、従来のグラファイトアノード電極(24mg/cmNX NMC811カソードに適合するように16mg/cm)に比べて、同じR&D小フォーマットパウチセルおよび同じスタック電極層数で、>30%比エネルギーおよびエネルギー密度を向上させることが結論付けられる。
【0194】
初期容量およびエネルギー性能を評価した後、室温(RT)における1C1Cサイクリング性能を、2つの異なる電圧範囲:4.2~2.8Vおよび4.2~3.0Vにて実施する。優れたサイクル寿命がNX1.5Ahセルで達成される。図24から理解されるように、1.5Ahセルは、1C1C下での4.2~3.0Vサイクリングの500サイクルの後に~90%エネルギー保持を、1C1C下での4.2~2.8Vサイクリングの500サイクルの後に~80%エネルギー保持を、それぞれ達成し得る。このことは、NX NMC811||Si-Cバッテリ電極技術が、安定したサイクル性能を達成し得ることを実証するものである。
【0195】
さまざまな態様には、図25に示すようなNX NMC811||Si-C9AhLIBパウチセルが含まれる。この9Ahセルは、スタッキングセル製造プロセスによって、15層のNMCカソード電極および16層のSi-Cアノード電極を有して構成されている。NMCカソード質量負荷は、3.12g/cmの圧力密度にて約26.5mg/cmであり、Si-Cアノード質量負荷は、1.47g/cmの圧力密度にて約5.4mg/cmである。バッテリセルのN/P比は、約1.07~1.08である。図25から理解されるように、NXバッテリについての初期放電容量は、~89.2%のICEにて約9.1Ahである。放電エネルギーは、4.2~2.5Vで31.2Whであり、4.2~2.8Vで29.8Whである。
【0196】
図26は、9Ah NXバッテリエネルギー密度計算およびバッテリ試作品の図面を示す。9Ah NXバッテリ試作品のエネルギー密度は、823Wh/Lもの高さを達成し得、これは、現在の産業における従来の(または常套的な)NMC622||グラファイトバッテリ化学よりも>25%高い。現在のNX 9Ahパウチセルのパッケージ効率は、わずか~86%である。従って、LCFC-EVバッテリ発展プロジェクトにおいて、65Ahセルデザインおよび製造プロセスより大きい場合、パウチセルパッケージ効率を86%から~95%に増加させるために、一層の発展作業が実施されるであろう。
【0197】
9Ah NXバッテリ試作品の初期容量およびエネルギー評価の後、SOC0からSOC100までの体積膨張(厚さ変化)および急速充電能力をテストおよび評価する。図27から結論付けられるように、セルをSOC0からSOC100まで充電したときのセル体積膨張は約8.8%変化であり、これは、多層セルレベルで10%未満体積膨張である。3.5CレートCC-CV15分間急速充電の後、急速充電容量保持は、C/3 CC-CV充電容量に比較して、約79.3%である。1.5Ahセルから9Ahバッテリ試作品へのR&D実現可能性研究工程は、NX NMC811||Si-C電極技術および現在のSi-Cアノード活物質化学に基づいて、Liイオンバッテリセルをスケールアップするのに問題がないことを実証するものである。
【0198】
さまざまな態様によれば、開示の電極技術は、製造コストを低減することにより、ドル/kWhを18%低減することを達成し得、これにより、コーティングおよびカレンダー加工装置に関連して必要な設備投資を低減し、エネルギー密度を向上させる。コーティング装置については、低沸点で、化学的にフレンドリーで非凝集性の溶媒を使用することにより、スラリーをより迅速に乾燥させ得るので、より短いオーブンを有するロール・トゥ・ロールコーティング装置を利用できる。加えて、このような種類の溶媒に対する溶媒回収システムは、標準的なNMP回収システムに比べ得て、簡素化されており、より低コストである。また、SiOxおよびSiマイクロ粒子を用いるシリコン支配的アノードデザインも、ドル/kWhを低減するのに大きく貢献する。さまざまな態様によれば、従来のバッテリ技術に比べて、NMC811およびSiアノード(本明細書中に開示されるような)は、ドル/kWhを18%低減する。開示のカソードプロセスは、単独で、コストを12%低減する。
【0199】
ケアンエネルギーリサーチアドバイザーズERA(CairnERA)モデルでは、米国の当該技術分野の35GWh工場が、リチウムイオンバッテリを100.66ドル/kWh(COGS)で製造できる。開示の技術の導入により、同じ工場が、82.59ドル/kWhでバッテリを製造できる。さまざまな態様によれば、開示の材料および製造プロセス技術を実施することにより、11.89ドル/kWhのコストの節約になる。開示の技術とともに、50%シリコン含量をアノードに含めることを含む態様は、18.07ドル/kWhのコストの節約に増加し得る。ケアンERAは、バッテリ産業が、2025年には706GWhにまで成長すると予測している。従って、これら節約は、バッテリ産業にとって84億ドルの価値を示す。50%シリコン含量が開示の技術によって達成できる場合、世界的なバッテリの節約は、128億ドルになる。ケアンERAは、複数の他のバッテリ製造技術をモデル化している。現在の他の技術では、最もアグレッシブなシナリオでさえも、バッテリ製造のコストを、2ドルを超えて低減することができない。開示のプロセスおよび電極技術による可能性のある節約の規模は、先例のないものである。
【0200】
さまざまな態様によれば、開示の電極技術の実施は、以下の点を示す:
・いずれも開示のNMC811およびSi-Cアノードバッテリ電極製造プロセスが、スロットダイR2Rコーティングおよびカレンダー加工プロセスによって実証された。
・開示のバッテリセル製造プロセスが、標準的なLiイオンバッテリパウチセル製造プロセスによって実証された。
・発展/最適化作業なしに、開示のバッテリ電極は、エネルギー密度(Wh/L)、1C1Cサイクル寿命、および15分3.5CレートCC-CV急速充電において優れた性能を示した。
【0201】
上記にまとめた点に基づいて、ナノラミック(Nanoramic)は、その電極製造技術側の改良を既に実証している。さまざまな態様は、以下を示す開示の技術の実施を含む:
・バッテリセルエネルギー、急速充電およびサイクル寿命性能を向上させるための、Liイオンバッテリ低コストおよび高容量カソード活物質(CAM)NCMA(Ni%≧91%)またはNCM307、例えば、およびSiアノード活物質(安価なドル/kWhおよびドル/kg)選択の発展
・サイクリング性能および高温度50℃SOC100カレンダー寿命を向上させるための、電解質処方の発展
・パッケージング効率の増加≧95%およびセルデザインモデリングならびに製造プロセス発展を含む、大規模フォーマット≧65Ah LCFC-EVバッテリセルデザイン発展
【0202】
ギャップ表
【0203】
要約
【0204】
さまざまな態様には、NiリッチNCMA(Ni%≧90%)、コバルトフリー(Coフリー)、およびマンガン(Mn)リッチな低コストカソード活物質が含まれる。NiリッチNCMAは、高エネルギー密度および急速充電バッテリセルのための高比容量≧225~230mAh/g(可逆比容量)を有するオプションの1つである。もう1つのCAMオプションは、NCM307であり、これは、92%~93%の初期ICEにて~270mAh/g初期比容量を有する。NCM307についての電位vsLi/Liウィンドウは、高電圧電解質を組み合わせて、4.7~2.5Vに増加させ得る。
【0205】
さまざまな態様には、少なくとも部分的にさまざまなCAM特性に基づく、NXカソード電極処方物の最適化が含まれる。20~40Lバッチサイズでのさまざまな態様のカソード処方および加工パラメータの効果が、市販で入手可能な分散-遊星スラリー混合装置の使用を通じて実証され得る。
【0206】
さまざまな態様によれば、高キャパシティ負荷≧5.6mAh/cmNXカソード電極のロールは、産業製造スケールR2Rスロットダイコーティングおよびカレンダー加工機器によって製造され得る。カレンダー加工プロセスの後、≧3.4~3.5g/cmの高プレス密度が達成され得、バッテリセルのエネルギー密度を最大化し得る。高い均一性、コーティング速度、およびコーティングプロセスからの収率を確保し、技術の商業的容易性およびその大量生産EV市場用途への好適性を確保するために、得られるスラリーのレオロジー特性が特徴付けられ、およびスロットダイコーティングパラメータが最適化される。
【0207】
いくつかの態様では、シリコンベースのアノードにおけるSEIの安定性が、LiBセルを機能させるために必須である。シリコンリッチアノードの膨張およびサイクリング(または繰り返し)安定性の問題に対処するための多数の異なるアプローチが、過去20年間に利用されてきた。しかしながら、最もポピュラーなアプローチのうちの2つである、最適化シリコン酸化物マイクロ粒子(SiOx)およびナノ加工されたシリコン-炭素複合構造体(粒子、ナノロッドなど)は、ドル/kWhベースでの材料のコストのため、EV用途用の伝統的なグラファイトアノードに対して、今のところ商業的に対抗できていない。SiOxおよびナノ加工されたシリコン-炭素の双方についてのドル/kgでのコストは、依然として、グラファイトアノード活物質より10~20倍高い。ミクロンサイズのシリコン粒子(マイクロ-Si)は、材料レベルからの比容量にて+2000mAh/gを示しながら、非常に低コストポイントにて市販で入手可能である(7~10ドル/kgの範囲であり、これは、グラファイトに匹敵する)。しかし、シリコン粒子の大きいミクロンサイズのため、サイクリングの間に、粒子の破砕が、制御不能なSEI表面の成長および電気的接続の損失をもたらす。マイクロSiのこれらの特徴は、サイクル安定性および容量保持を要する材料の用途を厳しく制限する。マイクロシリコンの粒子破砕およびSEI成長を首尾よく防止することができる材料、電極、セルレベル設計が、例えばSiOxなどの競合するシリコン材料を含むセル設計に比較したドル/kWhベースでのセルレベルのコストを同時に低減しつつも、例えばLi金属アノード、硫黄カソードおよび固体電解質セル設計などの実現困難で商業的に立証されていない技術概念に頼ることなく、LiBセルエネルギーを大幅に増加させることによって、顕著な商業的機会を提供すべきである。このタスクにおいて選択および評価されるマイクロSiは、マイクロSi材料についてのICEが≧93%~95%であるので、プレリチウム化を必要としない。
【0208】
さまざまな態様には、6~8μmの粒子サイズの市販で既納の(off-the-shelf)マイクロシリコン粒子を、以下の図28に示すような開示の電極プロセッシング技術と組み合わせて使用するSi支配的アノードが含まれる。この研究において使用された電解質は、特別な電解質発展作業なしの、FECによる既納の電解質であった。図28から理解されるように、NX NMC811||89%マイクロSiバッテリシステムについてのICEは、プレリチウム化なしに、~95%を達成できる。1C1C下での初期100サイクルの後、Siアノード活性層比容量は、1300mAh/gより高く、これは、マイクロSiアノードにとって非常に期待できる結果である。また、急速充電Cレート性能の結果は、最大6Cレートの、期待できる急速充電性能も示す。さまざまな態様が、いくつかの市販で得られるLiBグレードマイクロシリコン粉末の特徴に少なくとも部分的に基づくエネルギー貯蔵デバイス設計を最適化することと組み合わせて、マイクロシリコン支配的アノードの繰り返し性能を向上させる。
【0209】
ナノラミックは、3つのメジャーな材料製造者からの3つ~5つの異なるグレードのマイクロシリコン材料を、さまざまな粒子サイズ/分布および炭素表面処理にて、評価する。この目的は、開示の3Dナノ炭素支持マトリックスと一緒に使用したときにベストなクーロン効率を示す、最適な粒子モルフォロジーおよび表面特徴を決定することである。
【0210】
さまざまな態様にて、マイクロSi、ナノSiおよびSiOxを含むSiアノード活物質のさまざまタイプ、ならびに電気化学テスト性能が比較される。
【0211】
さまざまな態様には、低コストナノカーボン原料材料を使用するナノカーボン複合体の処方の最適化が含まれる。得られるシリコン支配的アノードは、最大5重量%のナノカーボンマトリックス材料を含み得、これは、優れた機械的おおび電気化学的特性を保持しながら、90重量%までのシリコン活物質を機械的および電気的に支持できる。これは、NXナノカーボンの分散および官能基化プロセスに関連する開示の技術を使用して実施される。全プロセスが、標準的な研究室空気環境内で実施され、環境要因および設備セットアップに敏感でなく、これは、ナノラミックの設備での現在のキログラムスケールの実施から商業的製造のためのトンスケールへのスケールアップを極めて容易に行い得る。
【0212】
この最適化プロセスは、ナノラミックで発展させた既に実証された拡張可能なプロセッシング技術による、望ましい電気化学的および機械的安定性を有するマイクロシリコン支配的アノードを可能にする、コスト効果のあるナノカーボンマトリックスを実現するものである。NXカソード||Si支配的アノードフルバッテリコストの上述の材料選択に基づく目標は、≦79ドル/kWhであり、これは、USABC LCFC-EVバッテリのコスト目標に近い。
【0213】
高負荷≧6.2mAh/cmNX Si支配的アノード電極製造プロセスの最適化
高容量負荷≧6.2mAh/cmNX Si支配的アノード電極のロールは、産業製造スケールR2Rスロットダイコーティングおよびカレンダー加工機器を使用して製造され得る。カレンダー加工プロセスの後のSi支配的アノード電極のプレス密度は、バッテリセルのエネルギー密度およびサイクル寿命性能を最大化するように最適化され得る。
【0214】
Si支配的アノード電解質処方の発展
リチウムイオンバッテリにて従来使用されているグラファイトアノードとは異なり、マイクロSiは、著しい体積膨張を示し、これは、充放電の際に材料のクラッキングおよび電極孔構造の変化をもたらす。従来のカーボネート電解質から生成される固体電解質界面(SEI)は、リチウム化の間のSiの歪および応力を調整し損ね、これは、常に低いサイクリング、SEIの厚膜化、急速な容量低下をもたらす不均質なリチウム化によって示される。これらの問題を解決するために、さまざまな態様による電解質は、1)SEIの厚膜化および不均質なリチウム化を回避するために、初期サイクルにて効果的に、安定的かつ低抵抗なSEIを形成し、2)サイクルの間の電極孔体積の厳しい変化に耐え、かつマイクロSiの完全な容量の利用を可能にするために、電極を容易に濡らす。
【0215】
さまざまな態様が、50℃でのSOC100カレンダー寿命を向上させ、およびC/3充電および急速充電の双方についてDSTサイクル寿命を最適化する。さまざまな態様には、機械的に頑強かつ電気化学的に安定な固体電解質界面(SEI)層をSi支配的アノード粒子上に形成するために、高性能電解質処方システムが含まれる。カーボネートなしの室温イオン液体(NC-RTIL)が、Si支配的アノード上により良いSEI層を形成するための添加剤として利用され得るであろう。SEI層の安定性は、NC-RTIL電解質の化学的構成および得られる分解生成物に起因する。例えば、提案された電解質システム内のFSIアニオンの分解は、Fを放出し、これは、SEI安定性を向上するとして既知のLiFを形成する。図29に示す、初期の準備的なサイクル寿命テストの結果から、RTIL添加剤ありの新しいタイプの電解質が、NX89%マイクロSiアノードハーフセル(カウンター電極としてLi)に基づいて、初期90サイクルで~100%に近いCE(クーロン効率)%の値を達成できることが実証される。初期90サイクルの後、NX Siアノード比容量は、0.2Cレートサイクリング下にて、50mV~1VvsLi/Liで、≧2250mAh/gを達成できる。
【0216】
LCFC-EV≧65Ah開示のバッテリセル設計および製造プロセス発展:
1:電極パンチングサイズ、スタック(または積層)された層の数の計算、リードタブの配置、およびエネルギー密度計算を含む、65Ah NXバッテリセル設計
【0217】
2:電気的-化学的-熱的-機械的挙動を予測するための65Ah NXバッテリマルチフィジックスモデリングおよびシミュレーション;このモデリングは、バッテリセルの急速充電能力および長期間DSTサイクリング性能に特に着目する。
【0218】
作業のアウトラインを以下に詳細に示し、4つのパートに分けて規定する。第1パートは、ベースラインモデルを確立するものである。まず、ベースラインマルチフィジックス結合モデルが、電圧、電流、および容量の挙動を説明するバッテリモデルと、変形および応力発生の挙動を説明する固体メカニクスモデルと、温度分布および伝搬挙動を説明する熱モデルとを含んで、確立される。
【0219】
第2パートは、ベースラインモデルを、我々が65Ahセルに基づいて得た実験データによって確認することである;モデリングによる変形、温度、および電圧のプロファイル(それぞれ0.1C、0.33Cおよび3.5Cの1つの完全なサイクル内における)を分析し、実験データと比較する。
【0220】
第3パートは、サイクル性能をモデリングすることである。確認されたモデルを、次に、実験と同じ負荷条件下におけるサイクリングモデリングのために使用する。モデリング結果を、モデルを更に確認するために、実験データと比較する。モデルの正確性を向上させるために、比較に基づいて、必要な改変を行う。
【0221】
第4パートは、パラメータ的研究であり、第3パートと同時に実施される。確認されたモデルに基づいて、ジオメトリ(または幾何的配置)、負荷密度、およびスタッキング圧力などの効果を研究するために、一連のパラメータ的研究を行い、バッテリ設計および最適化へのガイダンスを提供する。3:電極パンチング、スタッキング、タブ溶接、3面熱シーリング、電解質充填および真空シーリング、形成および脱ガスならびに最終シーリングおよびトリミングなどを含む65Ah NXバッテリ製造プロセス発展および最適化
【0222】
LCFC-EV≧65Ah NXバッテリセル資格:
Liイオンバッテリパウチセルテストは次のものを含む:電気自動車用USABCバッテリテストマニュアルに基づく、USABCコアテスト、加速カレンダーテスト、サイクル寿命テスト[14A]、およびリファレンスパフォーマンステスト(RPT)。詳細なテストプランは下記の第5セクションに示す。
【0223】
同等の42個の提案の65Ah LCFC-EVバッテリを製造し、そのうち21個のセルをアイダホナショナルラボ(INL)に輸送して、セル性能を評価する。プロジェクトの30カ月後(最終にて)、同等の42個の提案のLCFC-EVバッテリ65Ahを製造し、そのうち21個のセルをアイダホナショナルラボ(INL)に輸送して、セル性能を評価する。
【0224】
さまざまな態様では、国際出願PCT/US20/040943に開示の技術が、本明細書に開示されるようなエネルギー貯蔵デバイスおよび/またはエネルギー貯蔵デバイス用電極に使用され得、その複写物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0225】
ある態様では、装置は、ネットワーク内にボイド空間を規定する、高アスペクト比炭素要素のネットワークと;ネットワーク内のボイド空間に配置され、ネットワークに引っ掛けられる、複数の電極活物質粒子と;高アスペクト比炭素要素の表面上の表面処理であって、高アスペクト比炭素要素と活物質粒子との間の付着を促進する、表面処理と、を含む電極活性層を含む。ある態様では、高アスペクト比炭素要素は、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも10倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素は、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも100倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素は、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも1000倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも10,0000倍である。
【0226】
ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも10倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも100倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも1000倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも10000倍である。
【0227】
ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ束を含む。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、グラフェンフレークを含む。ある態様では、電極活性層が、ボイド空間に配置された10重量%未満のポリマーバインダーを含有する。ある態様では、電極活性層が、ボイド空間に配置された1重量%未満のポリマーバインダーを含有する。ある態様では、電極活性層が、ボイド空間に配置された1重量%未満のポリマーバインダーを含有する。ある態様では、電極活性層が、表面処理以外のポリマー材料を実質的に含まない。ある態様では、電極活性層が、ポリマー材料を実質的に含まない。
【0228】
ある態様では、表面処理が、202℃未満の沸点を有する溶媒中に可溶な材料を含む。ある態様では、表面処理が、185℃未満の沸点を有する溶媒中に可溶な材料を含む。
【0229】
ある態様では、活性層を形成する間に、表面処理を形成する材料が、202℃未満の沸点を有する溶媒中に溶解した。ある態様では、活性層を形成する間に、表面処理を形成する材料が、185℃未満の沸点を有する溶媒中に溶解した。
【0230】
ある態様では、活性層を形成する間に、表面処理を形成する材料が、イソプロピルアルコールを含む溶媒中に溶解した。ある態様では、活性層を形成する間に、表面処理を形成する材料が、n-メチル-2-ピロリドンを実質的に含まない溶媒中に溶解した。ある態様では、活性層を形成する間に、表面処理を形成する材料が、ピロリドン化合物を実質的に含まない溶媒中に溶解した。
【0231】
ある態様では、ネットワークが、少なくとも90重量%炭素である。ある態様では、ネットワークが、少なくとも95重量%炭素である。ある態様では、ネットワークが、少なくとも99重量%炭素である。ある態様では、ネットワークが、少なくとも99.9重量%炭素である。
【0232】
ある態様では、ネットワークが、パーコレーション閾値を超える接続性を示す電気的に相互接続された炭素要素のネットワークを含む。ある態様では、ネットワークが、1つ以上の高電気伝導性経路を規定する。ある態様では、経路が、100μmを超える長さを有する。ある態様では、経路が、1000μmを超える長さを有する。ある態様では、経路が、10000μmを超える長さを有する。
【0233】
ある態様では、ネットワークが、炭素要素で形成される1つ以上の構造体を含有し、前記構造体が、炭素要素の最大寸法の長さに対して少なくとも10倍の全体長さを含む。ある態様では、ネットワークが、炭素要素で形成される1つ以上の構造体を含有し、前記構造体が、炭素要素の最大寸法の長さに対して少なくとも100倍の全体長さを含む。
【0234】
ある態様では、ネットワークが、炭素要素で形成される1つ以上の構造体を含有し、前記構造体が、炭素要素の最大寸法の長さに対して少なくとも1000倍の全体長さを含む。
【0235】
ある態様では、表面処理が、炭素要素上に配置された界面活性剤層を含む。ある態様では、界面活性剤層が、炭素要素に結合している。
【0236】
ある態様では、界面活性剤層が、疎水性末端および親水性末端を各々有する複数の界面活性剤要素を含み、疎水性末端が、炭素要素の表面1(surface one)の近位に配置され、親水性末端が、炭素要素の前記表面1の遠位に配置される。ある態様では、界面活性剤要素の少なくとも一部の親水性末端が、活物質粒子と結合を形成する。ある態様では、結合が、イオン結合を含む。ある態様では、結合が、共有結合を含む。ある態様では、結合が、π-π結合、水素結合および静電結合からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0237】
ある態様では、界面活性剤要素の親水性末端が、第1極性の分極電荷を有し;および活物質粒子が、前記第1極性と反対の第2極性の分極電荷を帯びている。ある態様では、界面活性剤層が、水溶性界面活性剤を含む。ある態様では、界面活性剤層が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートに由来するイオンを含む。ある態様では、界面活性剤層が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、N-(ココアルキル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ココアミドプロピル(cocamidopropyl)ベタインヘキサデシルトリメチルアンモニウムアセテート、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウム硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つに由来するイオンを含む。
【0238】
ある態様では、界面活性剤層が、イオン性化合物を溶媒に溶解させて形成される界面活性剤イオンの層を含む。
【0239】
ある態様では、活性層が、イオン性界面活性剤化合物を溶媒に溶解させて形成される界面活性剤イオンに対する残留カウンターイオンを含む。ある態様では、カウンターイオンが、電気化学セルにおける使用に適合するように選択される。ある態様では、カウンターイオンが、ハロゲン化物基を実質的に含まない。ある態様では、残留カウンターイオンが、臭素を実質的に含まない。
【0240】
ある態様では、イオン性界面活性剤化合物が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、N-(ココアルキル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ココアミドプロピルベタインヘキサデシルトリメチルアンモニウムアセテート、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウム硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つを含む。ある態様では、炭素要素が、官能基化されている。ある態様では、炭素要素が、界面活性剤材料で官能基化されている。ある態様では、炭素要素が、ネットワークへの活物質粒子の付着を促進する官能基で官能基化されている。ある態様では、官能基が、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、およびシラノ基からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0241】
ある態様では、官能基化された炭素要素が、ナノ形態の炭素と界面活性剤とを含む乾燥させた水性分散物から形成される。ある態様では、官能基化された炭素要素が、ナノ形態の炭素と界面活性剤とを含む凍結乾燥させた水性分散物から形成される。ある態様では、水性分散物が、酸を実質的に含まない。
【0242】
ある態様では、表面処理が、炭素要素上に配置された薄いポリマー層を含み、該ポリマー層は、ネットワークに対する活物質の付着を促進する。ある態様では、薄いポリマー層が、自己組織化ポリマーを含む。ある態様では、薄いポリマー層が、水素結合を介して活物質に結合する。ある態様では、薄いポリマー層が、ネットワークの外表面に対して垂直な方向に、1nm以下の最大厚さを有する。ある態様では、薄いポリマー層が、ネットワークの外表面に対して垂直な方向に、10nm以下の最大厚さを有する。薄いポリマー層が、ネットワークの外表面に対して垂直な方向に、50nm以下の最大厚さを有する。
【0243】
ある態様では、ネットワークによって規定されるボイド空間の1体積%未満が、薄いポリマー層で充たされている。ある態様では、ネットワークによって規定されるボイド空間の0.1体積%未満が、薄いポリマー層で充たされている。ある態様では、ネットワークによって規定されるボイド空間の0.1体積%未満が、薄いポリマー層で充たされている。ある態様では、表面処理が、熱分解されたポリマー材料から形成される炭素質材料の層を含む。
【0244】
ある態様では、熱分解されたポリマー材料から形成される炭素質材料の層が、ネットワークに対する活物質粒子の付着を促進する。ある態様では、活物質粒子が、金属酸化物を含む。ある態様では、活物質粒子が、リチウム金属酸化物を含む。
【0245】
ある態様では、活物質が、ネットワークに絡まっている。ある態様では、表面処理が、活物質層と集電体層との付着を促進する。
【0246】
ある態様では、表面処理が、集電体層と結合した官能基を含有する。ある態様では、官能基が、非共有結合により集電体層と結合している。ある態様では、官能基が、π-π結合、水素結合およびイオン結合からなる群より選択される少なくとも1つにより集電体層と結合している。
【0247】
ある態様では、集電体が金属箔を含む。ある態様では、活物質層が、集電体に対して垂直な方向に少なくとも200μmの厚さを有する。ある態様では、活物質層が、集電体に対して垂直な方向に少なくとも300μmの厚さを有する。ある態様では、活物質層が、集電体に対して垂直な方向に少なくとも400μmの厚さを有する。
【0248】
ある態様では、装置が、エネルギー貯蔵セルを含み、エネルギー貯蔵セルが、活物質層を含む第1電極と;第2電極と;第1電極と第2電極との間に配置される透過性セパレータと;第1および第2電極を濡らす電解質と、を含む。ある態様では、方法が、高アスペクト比炭素要素および表面処理材料を溶媒に分散させて初期スラリーを形成することであって、前記分散工程により高アスペクト比炭素上に表面処理を形成すること;活物質を初期スラリーに混合して最終スラリーを形成すること;最終スラリーを基材上にコーティングすること;および最終スラリーを乾燥させて電極活性層を形成すること、を含む。
【0249】
ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも10倍である。
【0250】
ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも100倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも1000倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも10,0000倍である。
【0251】
ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも10倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも100倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも1000倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも10000倍である。
【0252】
ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ束を含む。
【0253】
ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、グラフェンフレークを含む。ある態様では、初期スラリーが、0.1~20.0重量%の範囲の固形分を有する。
【0254】
ある態様では、最終スラリーが、10.0~80重量%の範囲の固形分を有する。
【0255】
ある態様では、溶媒が、202℃未満の沸点を有する。ある態様では、溶媒が、185℃未満の沸点を有する。ある態様では、溶媒が、125℃未満の沸点を有する。ある態様では、溶媒が、100℃以下の沸点を有する。
【0256】
ある態様では、溶媒が、メタノール、エタノール、2-プロパノールおよび水からなる群より選択される少なくとも1つを含む。ある態様では、活性層を形成する間に、表面処理を形成する材料が、ピロリドン化合物を実質的に含まない溶媒中に溶解した。ある態様では、溶媒が、n-メチル-2-ピロリドンを実質的に含まない。
【0257】
ある態様では、表面処理材料が、界面活性剤を含む。ある態様では、界面活性剤が、ハロゲン化物基(halide group)を実質的に含まない。ある態様では、界面活性剤が、臭素を実質的に含まない。
【0258】
ある態様では、表面処理を形成することが、炭素要素上に界面活性剤層を形成することを含む。ある態様では、表面処理が、自己組織化層である。ある態様では、界面活性剤層が、炭素要素の表面に複数の界面活性剤要素を配置することを含み、界面活性剤要素の各々が、疎水性末端および親水性末端を有し、疎水性末端が、炭素要素の表面1(surface one)の近位に配置され、親水性末端が、炭素要素の前記表面1の遠位に配置される。ある態様では、界面活性剤要素の少なくとも一部の疎水性末端が、活物質粒子と結合を形成することをもたらす。ある態様では、結合が、イオン結合を含む。ある態様では、結合が、共有結合を含む。ある態様では、結合が、π-π結合、水素結合および静電結合からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0259】
ある態様では、界面活性剤要素の親水性末端が、第1極性の分極電荷を有し;活物質粒子が、前記第1極性と反対の第2極性の分極電荷を帯びている。ある態様では、界面活性剤材料が、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、N-(ココアルキル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ココアミドプロピルベタインヘキサデシルトリメチルアンモニウムアセテート、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウム硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0260】
ある態様では、高アスペクト比炭素要素および表面処理材料を溶媒に分散させて初期スラリーを形成することが、凝集した炭素要素に力を印加して、前記要素を、該要素の短軸に対して横断方向にスライドさせて互いに引き離すことを含む。ある態様では、最終スラリーを202℃未満の温度で乾燥させることを含む。ある態様では、最終スラリーを185℃未満の温度で乾燥させることを含む。
【0261】
ある態様では、最終スラリーを125℃未満の温度で乾燥させることを含む。ある態様では、最終スラリーを100℃以下の温度で乾燥させることを含む。
【0262】
ある態様では、活性層をカレンダー加工して、活物質とネットワークとの間の付着を促進する。ある態様では、方法が、高アスペクト比炭素要素および表面処理材料を水性溶媒に分散させて初期スラリーを形成することであって、前記分散工程により高アスペクト比炭素上に表面処理を形成すること;および初期スラリーを乾燥させて実質的に全ての水分を除去し、高アスペクト比炭素の乾燥した粉末およびその上の表面処理をもたらすこと、を含む。
【0263】
ある態様では、初期スラリーを乾燥させることが、初期スラリーを凍結乾燥させることを含む。ある態様では、水性溶媒および初期スラリーが、高アスペクト比炭素要素に損傷を与える物質を実質的に含まない。ある態様では、水性溶媒および初期スラリーが、酸を実質的に含まない。ある態様では、初期スラリーが、高アスペクト比炭素要素、表面処理材料および水から本質的に成る。
【0264】
ある態様では、高アスペクト比炭素の乾燥粉末を表面処理と共に溶媒に分散させ、活物質を添加して、第2スラリーを形成すること;第2スラリーを基材上にコーティングすること;および第2スラリーを乾燥させて電極活性層を形成すること。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも10倍である。
【0265】
ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも100倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも1000倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、2つの長寸法と1つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の長さに対する長寸法の各々の長さの比が少なくとも10,0000倍である。
【0266】
ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも10倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも100倍である。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、1つの長寸法と2つの短寸法とを各々有する要素を含み、短寸法の各々の長さに対する各長寸法の長さの比が少なくとも1000倍である。
【0267】
ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ束を含む。ある態様では、高アスペクト比炭素要素が、グラフェンフレークを含む。ある態様では、溶媒が、202℃未満の沸点を有する。ある態様では、溶媒が、185℃未満の沸点を有する。ある態様では、溶媒が、125℃未満の沸点を有する。ある態様では、溶媒が、100℃以下の沸点を有する。ある態様では、前記第2溶媒(secondary solvent、または二次溶媒)が、メタノール、エタノール、2-プロパノールおよび水からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0268】
ある態様では、第2溶媒が、ピロリドン化合物を実質的に含まない。
【0269】
ある態様では、第2溶媒が、n-メチル-2-ピロリドンを実質的に含まない。ある態様では、表面処理材料が、界面活性剤を含む。ある態様では、界面活性剤が、ハロゲン化物基を実質的に含まない。ある態様では、界面活性剤が、臭素を実質的に含まない。
【0270】
ある態様では、表面処理を形成することが、炭素要素上に界面活性剤層を形成することを含む。ある態様では、界面活性剤層が、自己組織化層である。ある態様では、第2スラリーを、202℃未満の温度で乾燥させる。
【0271】
ある態様では、第2スラリーを185℃未満の温度で乾燥させることを含む。ある態様では、第2スラリーを125℃未満の温度で乾燥させる。ある態様では、第2スラリーを100℃以下の温度で乾燥させる。ある態様では、活性層をカレンダー加工して、付着を促進する。
【0272】
本明細書に示されるあらゆる方向の用語は、単に導入する目的であり、本発明を限定するものではない。例えば、「上部」層は、第2層とも称され得、「底部」層は、第1層とも称され得る。他の命名および配置が、本明細書の教示を限定することなく使用され得る。
【0273】
本明細書における教示の要旨を提供するために、さまざまな他の要素を包含および指名してよい。例えば、追加の材料、材料の組み合わせおよび/または材料の省略が、本明細書における教示の範囲内にある追加の態様を提供するために、使用され得る。
【0274】
本明細書における教示のさまざまな改変が実現され得る。一般的に、改変は、ユーザ、設計者、製造者または類似の関与者の要請により、設計され得る。改変は、当該者により重要であるとみなされる性能の特定の標準に適合させるよう意図され得る。同様に、性能の適合性は、適切なユーザ、設計者、製造者または他の類似の関与者により査定される。
【0275】
特定の機能を提供するものとしていくつかの化学物質が本明細書に列挙され得るが、所与の化学物質は、他の目的のために役立ち得る。
【0276】
本発明またはその態様の要素を説明する場合、冠詞「a」、「an」および「the」は、1つまたはそれより多い要素を意味するよう意図される。同様に、形容詞「another(もう1つの)」は、要素を説明するために使用される場合、1つまたはそれより多い要素を意味するよう意図される。用語「including(含むまたは含有する)」および「having(有する)」は、列挙した要素以外の追加の要素が存在し得ることを含めるよう意図される。本明細書に使用される場合、用語「exemplary(例示的に)」は、最上の例を暗示することを意図したものでない。むしろ、「exemplary」は、多くの可能性のある態様の1つである態様を言う。
【0277】
上記に示した刊行物および特許出願の各々の全内容が、参照することにより本明細書に組み込まれる。言及した文献のいずれかが、本開示と矛盾する場合には、本開示が統制すべきである。
【0278】
添付の特許請求の範囲において使用されるあらゆる機能的表現は、各請求項において語彙「means for」または「steps for」の使用により特別に表現される場合を除いて、「means-plus-function」文言としての米国特許法第112条(f)の解釈を行使するよう解されるように意図したものではない。
【0279】
本発明を例示的な態様を参照しながら開示したが、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更がなされ得ること、およびその要素を均等物が置換し得ることが、理解されるであろう。例えば、いくつかの態様では、前述の層の1つが、その内部に複数の層を含んでいてよい。加えて、本発明の教示に対して、本発明の本質的範囲を逸脱することなく、特定の器具、状況または材料に適合するように、多くの改変が歓迎されるであろう。従って、本発明は、本発明を実施するために熟考されたベストモードとして開示される特定の態様に限定されるよう意図されておらず、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての態様を含むものである。
図1
図2
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【国際調査報告】