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特表2024-530541粘膜の癒着を予防、緩和或いは治療する薬物及びその応用
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  • 特表-粘膜の癒着を予防、緩和或いは治療する薬物及びその応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-22
(54)【発明の名称】粘膜の癒着を予防、緩和或いは治療する薬物及びその応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20240815BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240815BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240815BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240815BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240815BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20240815BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240815BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240815BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240815BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240815BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240815BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
A61K38/17
C12N15/12 ZNA
C07K14/47
C07K16/18
C12Q1/02
C12Q1/6851 Z
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
A61K31/7088
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P1/00
A61P11/00
A61P13/00
A61P17/00
A61P19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503774
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 CN2022107526
(87)【国際公開番号】W WO2023001304
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】202110833123.3
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522293490
【氏名又は名称】シャンハイ シンヴィダ バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジュンリン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,シュエメイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ヤンジュン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045DA14
2G045DA36
2G045FB01
2G045FB02
2G045FB03
4B063QA01
4B063QQ20
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS36
4B063QX02
4C084AA13
4C084AA17
4C084CA53
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA67
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB11
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085GG02
4C085GG05
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA67
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB11
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、癒着を予防、緩和又は治療する薬物及びその応用を提供する。本発明は、体腔内の外界からの刺激を受けた線維芽細胞内に、活性化負制御受容体Pear1が存在し、線維芽細胞内のPear1の欠失により、体内の粘膜癒着の形成が顕著に促進され、Pear1アゴニストは、線維芽細胞の活性化を特異的に阻害し、細胞外マトリックスを合成し、癒着性病変を改善することを開示する。Pear1アゴニストを投与することにより、癒着の形成を効果的に防止できる。同時に、本発明は、Pear1アゴニスト抗体を提供し、それが、正常な組織の修復や治癒に影響を与えず、組織に低酸素状態を引き起こさず、抗体薬物としての半減期が長く、拡散しやすく、副作用が少なく、投与に便利である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癒着疾患を予防、緩和または治療するための薬物組成物の製造におけるPear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニストの応用。
【請求項2】
前記癒着疾患は、粘膜癒着疾患、形質膜癒着疾患;好ましくは、前記癒着疾患は、損傷、出血、感染、異物刺激、腫瘍浸潤又は炎症性細胞浸潤後に形成される癒着疾患を含む;好ましくは、前記損傷により形成される癒着は術後癒着、放射線治療または化学療法後癒着を含み、前記感染により形成される癒着は炎症癒着を含む;好ましくは、前記癒着疾患は、消化器系、泌尿器系、呼吸系、生殖系、口腔、関節、皮膚内層の癒着疾患を含む;より好ましくは、腹腔、骨盤腔、胸腔、子宮、関節腔、心嚢、硬膜外または歯周部の癒着疾患を含む;より好ましくは、前記癒着疾患は、腹腔癒着、骨盤癒着、胸腔癒着または関節腔癒着であることを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項3】
前記Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質のアゴニストは、Pear1の発現、活性、安定性、および/または有効作用時間を増強する薬剤を含む;好ましくは、Pear1活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアント、Pear1を組換えて発現する発現構築物、Pear1の化学アゴニスト、Pear1遺伝子プロモーターの駆動能力を促進する発現アップレギュレーターを含む;より好ましくは、前記Pear1の化学アゴニストは、FcεR1α、デキストラン硫酸、フコイダン、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項4】
前記Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質、またはそのアゴニストは、以下のことにさらに使用されることを特徴とする請求項1に記載の応用:
粘膜線維芽細胞の活性化を阻害すること;
組織ヒドロキシプロリン含有量を低下させること;
病巣部の粘膜厚を下げること;
病巣における線維芽細胞の増殖または活性化を低下させること;
病巣におけるコラーゲンの合成を低下させること;または
癒着関連指標を下げること;好ましくは、前記指標は、フィブリノーゲン、α-平滑筋アクチン、t-PA/PAI、MMP/TIMP、トランスフォーミング成長因子、血管内皮成長因子、腫瘍壊死因子および/またはインターロイキンを含む。
【請求項5】
予防、緩和または治療を必要とする対象に、Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニストを投与することを含む、癒着疾患を予防、緩和または治療する方法。
【請求項6】
有効量のPear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト、および薬学的に許容される担体を含む、癒着疾患を予防、緩和または治療する薬物組成物またはキット。
【請求項7】
前記アゴニストは、Pearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアントである;好ましくは、前記抗体は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2とHCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 26、27と28に示され、或いはSEQ ID NO: 26、27と29に示され、或いはSEQ ID NO: 26、30と28に示され、或いはSEQ ID NO: 31、27と32に示され、或いはSEQ ID NO: 33、34と35に示される;及び/又は前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 45、GATとSEQ ID NO:46に示され、或いはSEQ ID NO: 47、SASとSEQ ID NO: 28に示され、或いはSEQ ID NO: 49、DTSとSEQ ID NO: 50に示され、或いはSEQ ID NO:51、GATとSEQ ID NO: 52に示される;
より好ましくは、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14或いは15に示され、或いは前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 16、17、18、19、20、22、23、24或いは25に示される;
ことを特徴とする請求項1に記載の応用、請求項5に記載の方法、または請求項6に記載の薬物組成物。
【請求項8】
癒着疾患を予防、緩和または治療する薬物または化合物をスクリーニングするためのPear1遺伝子またはそれがコードするタンパク質の応用。
【請求項9】
(1)候補物質でPear1を発現する、またはPear1を含む発現システムを処理すること;及び
(2)前記システム内のPear1の発現または活性を検出すること;
を含む;
前記候補物質が、統計的にPear1の発現または活性を増加させる場合、これは、当該候補物質が所望の薬物または化合物であることを示す、癒着疾患を予防、緩和または治療する薬物または化合物をスクリーニングする方法。
【請求項10】
ステップ(1)は、試験群では、前記発現システムに候補物質を添加することを含む;および/または、
ステップ(2)は、前記システムにおけるPear1の発現または活性を検出し、かつ対照群と比較することを含み、ここで、前記対照群は、候補物質を添加しない発現システムである;前記候補物質が統計的にPear1の発現または活性を増加させる場合、これは、当該候補物質が所望の薬物または化合物であることを示す;
を特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月22日に提出された中国出願番号202110833123.3の特許出願に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、生物医薬物分野に属し、癒着を緩和或いは治療することに関連する標的及びその調節分子に関わり、具体的に、癒着を緩和或いは治療することにおける標的としてのPear1の応用に関わり、さらに、Pear1に標的する調節分子(例えば抗体)及びその応用に関わる。
【背景技術】
【0003】
人体と動物体の粘膜は、機体の重要な部分に属し、それは、主に機体の消化システム、泌尿器システム、呼吸システム、口腔、関節、皮膚内層などに被覆され、分布は比較的に広い。粘膜は、生体免疫システムの障壁を構成し、有害物質や病原微生物の侵入に抵抗でき、相応の損傷も現れ、粘膜病変を形成する。粘膜内には血管と神経があり、粘液を分泌することができる。
【0004】
複数の要因UI、例えば機械的損傷、感染などは、粘膜癒着を引き起こす。例えば、外科手術は、手術治療の効果を達成することができるが、外科介入は患者の組織、例えば腹膜などに異なる程度の損傷を与え、粘着性嚢膜炎、腹腔癒着、骨盤癒着、心嚢癒着、硬膜外癒着、歯周癒着、関節腔癒着を含む線維性接着を形成し、これは患者の身体機能の回復と予後効果を深刻に脅かし、例えば腹腔癒着による腸癒着、腸閉塞などの合併症は腹痛を引き起こし、そして生命に危害を及ぼす腸壊死と女性不妊を引き起こすことができる;また、癒着は、二次手術組織の分離が困難であり、手術出血量の増加を招く主な原因でもある。癒着は、手術後の人体自然治癒過程であるが、過剰な治癒は、過剰な癒着の形成を招き、臓器や組織の正常な活動機能に影響を与え、かつ二次手術に大出血の危険性をもたらす。
【0005】
手術による癒着は、1つの組織内から別の組織に延び、通常は、2つの傷ついた表面において、細胞外マトリックスタンパク質が損傷した組織上に堆積して組織癒着が発生する。手術による癒着の形成のメカニズムは複雑で、組織損傷後の修復の結果であり、手術による鋭性、機械性或いは熱損傷、感染、熱放射、局所虚血、脱水及び異物反応などの多種の要素と関係があり、組織創傷に基づいて一連の反応を続発し、大量のヒスタミン、キニンなどの血管活性物質の放出を招き、局所血管透過性が増加し、局所組織は、酸素不足に基づいて酸化ストレス損傷を発生し、局所的に大量に遊離した酸素、窒素ラジカルは、局所炎症反応をさらに誘発し、組織損傷を加重する。その後、細胞外マトリックスタンパク質は、局所的に堆積し、大量に滲出した白血球、マクロファージを含有し、その後、マトリックスタンパク質堆積と線維芽細胞増殖活性化により組織の治癒過程を完成し、細胞外フィブリン堆積が優勢であり、早期の癒着を形成する。その後、線維芽母細胞と血管が侵入し、局所的に血管化し、永久的な癒着を形成する。
【0006】
当分野にも、癒着を防止する薬物がいくつかあり、例えば癒着防止膜、癒着防止ゲルは手術終了前に傷口を植え込み、術後の癒着を防止するために使用できるが、現在の癒着防止膜などの薬物は、すべて生理的隔離であり、局所組織の酸欠を招き、傷口の治癒に影響を与えることがある。そのため、当分野では、組織の治癒に影響を与えずに組織器官の癒着を防止するための新しい癒着を防止する薬物の開発が切実に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、粘膜の癒着を緩和又は治療する薬物及びその応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様では、癒着疾患を予防、緩和または治療するための薬物組成物の製造におけるPear1(血小板内皮凝集受容体1、Platelet Endothelial Aggregation Receptor 1)遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニストの応用を提供する。
【0009】
1つの実施形態では、前記癒着疾患は、粘膜癒着疾患、形質膜癒着疾患;好ましくは、前記癒着疾患は、損傷、出血、感染、異物刺激、腫瘍浸潤又は炎症性細胞浸潤後に形成される癒着疾患を含むが、これらに限定されない;好ましくは、前記損傷により形成される癒着は術後癒着、放射線治療または化学療法後癒着を含み、前記感染により形成される癒着は炎症癒着を含む;好ましくは、前記癒着疾患は、消化器系、泌尿器系、呼吸系、生殖系、口腔、関節、皮膚内層の癒着疾患を含むが、これらに限定されない;より好ましくは、腹腔、骨盤腔、胸腔、子宮、関節腔、心嚢、硬膜外または歯周部の癒着疾患を含む。
【0010】
別の実施形態では、前記癒着疾患は、腹腔癒着、骨盤癒着、胸腔癒着または関節腔癒着である。
【0011】
別の実施形態では、前記Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質のアゴニストは、Pear1の発現、活性、安定性、および/または有効作用時間を増強する薬剤を含む;好ましくは、Pear1活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアント、Pear1を組換えて発現する発現構築物(発現ベクターを含む)、Pear1の化学アゴニスト、Pear1遺伝子プロモーターの駆動能力を促進する発現アップレギュレーターを含むが、これらに限定されない;より好ましくは、前記Pear1の化学アゴニストは、FcεR1α、デキストラン硫酸、フコイダン、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0012】
別の実施形態では、前記Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質、またはそのアゴニストは、以下のことにさらに使用される:粘膜線維芽細胞の活性化を阻害すること、組織ヒドロキシプロリン含有量を低下させること、病巣部の粘膜厚を下げること、病巣における線維芽細胞(例えば筋線維芽細胞)の増殖または活性化を低下させること、病巣におけるコラーゲンの合成を低下させること、または癒着関連指標を下げること;好ましくは、前記指標は、フィブリノーゲン(FIB)、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、t-PA/PAI、MMP/TIMP、トランスフォーミング成長因子(TGF-β1)、血管内皮成長因子(VEGF)、腫瘍壊死因子(TNF-α)および/またはインターロイキン(IL-6、IL-17)を含む。
【0013】
本発明の別の態様では、予防、緩和または治療を必要とする対象に、Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニストを投与することを含む、癒着疾患を予防、緩和または治療する方法を提供する。
【0014】
本発明の別の態様では、有効量のPear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト、および薬学的に許容される担体を含む、癒着疾患を予防、緩和または治療する薬物組成物またはキットを提供する。
【0015】
別の実施形態では、前記薬物組成物の剤形は、物理的形態に応じて、煎じ薬、注射剤、懸濁液などの液剤、凍結乾燥剤、散剤、顆粒剤、丸剤などの固形剤、軟膏、ペースト剤などの半固形剤、エアゾール剤、ドライパウダー吸入器、エアロゾル吸入剤などのガス剤から選ばれる。
【0016】
別の実施形態では、前記薬物組成物の剤形は、投与経路に応じて、以下から選ばれるものを含む:注射剤(例えば腔内(非静脈)、静脈内、筋肉内、皮下、皮内および経穴注射など)、皮膚薬物送達製剤(例えばローション、コーティング剤、軟膏、経皮パッチなど)、粘膜薬物送達製剤(例えば経口フィルム、舌下錠、うがい薬など)、消化器剤(例えば煎じ薬、混合剤、顆粒剤、丸剤、錠剤など)、吸入剤(例えばエアゾール剤、ドライパウダー吸入剤、エアロゾル吸入剤など)、直腸用製剤(例えば坐剤、浣腸剤など)、またはそれらの組み合わせ。
【0017】
別の実施形態では、前記薬物組成物あるいはキットにおいて、成分または組成物の投与は、局所適用、局所注射、経皮吸収、皮下注射、吸入投与、および肺噴霧を含む。
【0018】
別の実施形態では、前記薬物組成物は、Pear1アゴニストとして、FcγR1α、デキストラン硫酸、フコイダン、アプタマー、および小分子化合物の1つまたは複数をさらに含む;より好ましくは、FcγR1α、デキストラン硫酸、およびフコイダンを含む。
【0019】
別の実施形態では、前記アゴニストは、Pearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアントである;好ましくは、前記抗体は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2とHCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 26、27と28に示され、或いはSEQ ID NO: 26、27と29に示され、或いはSEQ ID NO: 26、30と28に示され、或いはSEQ ID NO: 31、27と32に示され、或いはSEQ ID NO: 33、34と35に示される;及び/又は前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 45、GATとSEQ ID NO:46に示され、或いはSEQ ID NO: 47、SASとSEQ ID NO: 28に示され、或いはSEQ ID NO: 49、DTSとSEQ ID NO: 50に示され、或いはSEQ ID NO:51、GATとSEQ ID NO: 52に示される。
【0020】
別の実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14或いは15に示され、或いは前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 16、17、18、19、20、22、23、24或いは25に示される。
【0021】
別の実施形態では、前記抗体は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含む;前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2とHCDR3アミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 28に示される;前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 45、GAT、SEQ ID NO: 46に示され、或いは、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 47、GTS、SEQ ID NO: 48に示され、或いは、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 49、DTS、SEQ ID NO: 50に示され、或いは、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 51、GAT、SEQ ID NO: 52に示され、或いは、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 53、LVS、SEQ ID NO: 54に示される。
【0022】
別の実施形態では、前記バリアントは、抗体のCDR配列、FR配列、または全長配列において、1~数個、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以内のアミノ酸残基が付加、欠失、または置換された配列である。
【0023】
別の実施形態では、前記バリアントは、Pear1を標的にして活性化する活性を有するか、または実質的に有する。
【0024】
別の実施形態では、前記バリアントのHCDR1は、SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列の第三位のSからA或いはTへ突然変異し、第六位のGからDへ突然変異し、及び/又は、第八位のPからT或いはYへ突然変異するものである;及び/又は、前記バリアントのHCDR2は、SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列の第三位のPからS或いはGへ突然変異し、第四位のYからNへ突然変異し、及び/又は、第八位のTからAへ突然変異するものである;及び/又は、前記バリアントのHCDR3は、SEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列の第九位のAからDへ突然変異し、及び/又は、第十位のYからFへ突然変異するものである。
【0025】
別の実施形態では、前記抗体或いはそのバリアントのHCDR1は、SEQ ID NO: 26、31、33、36とSEQ ID NO: 39に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;HCDR2は、SEQ ID NO: 27、30、34、37、とSEQ ID NO: 40-44に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び、HCDR3は、SEQ ID NO:28、29、32、35とSEQ ID NO: 38に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び/又は、前記抗体或いはそのバリアントのLCDR1は、SEQ ID NO: 45、47、49、51とSEQ ID NO: 53に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;LCDR2は、GAT、SAS、DTS、とLVSに示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び、LCDR3は、SEQ ID NO:46、48、50、52或いはSEQ ID NO: 54に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む。
【0026】
別の実施形態では、前記抗体或いはそのバリアントのHFR(重鎖可変領域フレームワーク領域)1は、SEQ ID NO: 55、56とSEQ ID NO: 57に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;HFR2は、SEQ ID NO: 58、59、60、61、62、63、64、65とSEQ ID NO:66に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び、HFR3は、SEQ ID NO: 67、68、69、70、71、72、73、74、75とSEQ ID NO:76に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び、HFR4は、SEQ ID NO: 77とSEQ ID NO:78に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び/又は、
別の実施形態では、前記抗体或いはそのバリアントのLFR(軽鎖可変領域フレームワーク領域)1は、SEQ ID NO: 79、80、81、82、83とSEQ ID NO: 84に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;LFR2は、SEQ ID NO: 85、86、87、88、89とSEQ ID NO: 90に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び、LFR3は、SEQ ID NO: 91、92、93、94、95、96、97とSEQ ID NO: 98に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及びLFR4は、SEQ ID NO: 99、100、101、102とSEQ ID NO: 103に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む。
【0027】
別の実施形態では、前記の抗体或いはそのバリアントは、それぞれに、以下のアミノ酸配列を含む:
SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO: 45、GAT、SEQ ID NO: 46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:45、GAT、SEQ ID NO:46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:47、GTS、SEQ ID NO:48に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:49、DTS、SEQ ID NO:50に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:49、GAT、SEQ ID NO:54に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは
SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:41、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:49、SAS、SEQ ID NO:54に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは
SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:49、LVS、SEQ ID NO:52に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは
SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:32に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:45、GAT、SEQ ID NO:54に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは
SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:32に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:51、GAT、SEQ ID NO:52に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:32に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:53、LVS、SEQ ID NO:46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:32に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:45、SAS、SEQ ID NO:50に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:35に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:47、GAT、SEQ ID NO:50に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:49、DTS、SEQ ID NO:54に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:45、GAT、SEQ ID NO:46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:32に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:53、LVS、SEQ ID NO:46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:35に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:47、GAT、SEQ ID NO:50に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:49、DTS、SEQ ID NO:54に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:53、LVS、SEQ ID NO:54に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:32に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:45、SAS、SEQ ID NO:50に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:35に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:47、GAT、SEQ ID NO:50に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:49、DTS、SEQ ID NO:54に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:45、GAT、SEQ ID NO:46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:32に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:45、SAS、SEQ ID NO:50に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:35に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:47、GAT、SEQ ID NO:50に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:49、DTS、SEQ ID NO:54に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:49、GAT、SEQ ID NO:48に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:45、GAT、SEQ ID NO:46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:41、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:45、GAT、SEQ ID NO:46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:45、GAT、SEQ ID NO:46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:45、GAT、SEQ ID NO:46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:45、GAT、SEQ ID NO:46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3。
【0028】
別の実施形態では、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 16とSEQ ID NO: 1に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 16とSEQ ID NO: 2に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 17とSEQ ID NO: 3に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 18とSEQ ID NO: 2に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 19とSEQ ID NO: 4に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 20とSEQ ID NO: 5に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 21とSEQ ID NO: 6に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 7に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 23とSEQ ID NO: 7に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 24とSEQ ID NO: 7に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 25とSEQ ID NO: 7に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 8に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 23とSEQ ID NO: 8に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 24とSEQ ID NO: 8に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 25とSEQ ID NO: 8に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 9に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 23とSEQ ID NO: 9に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 24とSEQ ID NO: 9に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 25とSEQ ID NO: 9に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 10に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 23とSEQ ID NO: 10に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 24とSEQ ID NO: 10に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 25とSEQ ID NO: 10に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 11に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 12に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 13に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 14に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 15に示される。
【0029】
別の実施形態では、前記バリアントは、前記抗体のアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する。
【0030】
別の実施形態では、前記抗体は、全長抗体、Fab、Fab´、F(ab´)2、Fvであり、例えば、scFv、二重特異性抗体、多重特異性抗体、もしくは単一ドメイン抗体であるか、または上記の抗体から調製されたモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体である。
【0031】
別の実施形態では、前記抗体またはそのバリアントは、全長抗体であり、当該全長抗体の重鎖定常領域は、hIgG1、hIgG2、hIgG3、またはhIgG4の重鎖定常領域、またはその誘導体配列から選ばれる。
【0032】
別の実施形態では、前記抗体の軽鎖定常領域は、κ鎖もしくはλ鎖、またはそれらの誘導体配列から選ばれる。
【0033】
別の実施形態では、前記重鎖定常領域の誘導体配列は、前記hIgG1、hIgG2、hIgG3、またはhIgG4の重鎖定常領域の配列において、1~数個、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以内のアミノ酸残基が付加、欠失、または置換された配列である。
【0034】
別の実施形態では、前記重鎖定常領域の誘導配列は、hIgG1、hIgG2、hIgG3、またはhIgG4の重鎖定常領域と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する。
【0035】
別の実施形態では、前記全長抗体の重鎖定常領域は、hIgG3もしくはhIgG4の重鎖定常領域、あるいはその誘導体配列である。
【0036】
別の実施形態では、前記誘導配列は、hIgG1、hIgG2、hIgG3またはhIgG4の重鎖定常領域のアミノ酸配列において、1~2個のアミノ酸が置換された配列である。
【0037】
別の実施形態では、前記誘導配列は、hIgG4 S228P変異である。
【0038】
別の実施形態では、前記軽鎖定常領域は、ヒトκ鎖である。
【0039】
別の実施形態では、前記発現構築物(発現ベクター)は、ウイルスベクター、非ウイルスベクターを含み、例えば、前記発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターを含む。
【0040】
本発明の別の態様では、癒着疾患を予防、緩和または治療する薬物または化合物をスクリーニングするため(すなわち、薬剤スクリーニング標的として)のPear1遺伝子またはそれがコードするタンパク質の応用を提供する。
【0041】
本発明の別の態様では、癒着疾患を予防、緩和または治療する薬物または化合物(または潜在的な薬物または化合物)をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、(1)候補物質でPear1を発現する、またはPear1を含む発現システムを処理すること;及び(2)当該システム内のPear1の発現または活性を検出すること;を含む;前記候補物質が、統計的にPear1の発現または活性を増加させる場合、これは、当該候補物質が所望の(興味深い)薬物または化合物であることを示す。
【0042】
別の実施形態では、ステップ(1)は、試験群では、前記発現システムに候補物質を添加することを含み、および/または、ステップ(2)は、前記システムにおけるPear1の発現または活性を検出し、かつ対照群と比較することを含み、ここで、前記対照群は、候補物質を添加しない発現システムである;前記候補物質が統計的にPear1の発現または活性を増加させる(例えば、20%を超える増加、好ましくは50%を超える増加、好ましくは80%を超える増加)場合、これは、当該候補物質が所望の(興味深い)薬物または化合物であることを示す。
【0043】
別の実施形態では、前記システムは、細胞システム(または細胞培養物システム)、サブ細胞システム(またはサブ細胞培養物システム)、溶液システム、組織システム、器官システムまたは動物システムから選ばれる。
【0044】
別の実施形態では、前記システムは、細胞または細胞培養物システムである。好ましくは、当該細胞は、Pearlを発現もしくは過剰発現する;あるいは、当該細胞はPearlで処理され、ただし、前記Pearlの濃度は0.001nM~1Mである。
【0045】
別の実施形態では、前記細胞は、粘膜線維芽細胞を含む。
【0046】
別の実施形態では、粘膜線維芽細胞によってスクリーニングする場合、線維芽細胞の細胞外マトリックスを合成する能力を検出することによってさらなる判断/補助判断が行われ、対照群に比べて、試験群の細胞の細胞外マトリックスを合成する能力が弱る場合、対応する候補物質は、潜在的に望ましい(興味深い)薬物または化合物である。
【0047】
別の実施形態では、前記システムは、動物システムである。
【0048】
別の実施形態では、前記動物システムは、Pear1ヒト化トランスジェニック動物である。
【0049】
別の実施形態では、前記動物は、マウス、ラット、ネコ、イヌ、サル、ラマ、アルパカ、またはそれらの組み合わせを含む。
【0050】
別の実施形態では、動物によってスクリーニングする場合、BhatiaDSスコアまたはZuhlkeスコアによって、さらなる判断/補助判断が行われ、対照群に比べて、試験群のBhatiaDSスコアまたはZuhlkeスコアが大幅に低下している場合、対応する候補物質は、潜在的に望ましい(興味深い)薬物または化合物である。
【0051】
別の実施形態では、動物によってスクリーニングする場合、組織ヒドロキシプロリン含有量の測定によって、さらなる判断/補助判断が行われ、対照群に比べて、試験群の組織ヒドロキシプロリン含有量が大幅に低下している場合、対応する候補物質は、潜在的に望ましい(興味深い)薬物または化合物である。
【0052】
別の実施形態では、動物によってスクリーニングする場合、癒着関連指標(例えば、フィブリノーゲン(FIB)、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、t-PA/PAI、MMP/TIMP、トランスフォーミング成長因子(TGF-β1)、血管内皮成長因子(VEGF)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、インターロイキン(IL-6、IL-17))の測定によって、さらなる判断/補助判断が行われ、対照群に比べて、試験群の癒着関連指標が大幅に低下している場合、対応する候補物質は、潜在的に望ましい(興味深い)薬物または化合物である。
【0053】
別の実施形態では、動物によってスクリーニングする場合、皮下粘膜と皮膚の厚さ、線維芽細胞の増殖、過剰な活性化とコラーゲンの合成に対する測定によって、さらなる判断/補助判断が行われ、対照群に比べて、試験群の皮下粘膜と皮膚の厚さ、線維芽細胞の増殖、過剰な活性化とコラーゲンの合成が大幅に低下している場合、対応する候補物質は、潜在的に望ましい(興味深い)薬物または化合物である。
【0054】
別の実施形態では、前記活性は、Pear1を活性化する活性である。
【0055】
別の実施形態では、前記候補物質は、Pear1、その断片またはバリアント、それがコードする遺伝子またはその上流および下流の分子またはシグナル伝達経路に対して設計された抗体(モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体);過剰発現/発現喪失/ダウンレギュレーションさせる分子、例えば構築物;活性を促進または阻害する分子;低分子化学分子;相互作用分子などを含むが、これらに限定されない。
【0056】
別の実施形態では、前記方法は、さらに、候補物質から癒着疾患の予防、緩和または治療に有用な組成物をさらに選択および決定するために、得られた薬物または化合物(潜在的な薬物または化合物)についてさらなる細胞実験および/または動物実験を行うことを含む。
【0057】
本文に開示された内容に基づき、当業者にとって、本発明の他の面は自明なものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、Pear1欠失マウスは、対照マウスよりも重篤な皮下粘膜癒着を発症することを示す。A、創傷のHE染色では、Pear1欠失マウスの創傷内で、増殖している多数の線維芽細胞と、体積的により大きな活性化された筋線維芽細胞の増加が示されている。ImageJソフトウェアを使用して、表皮と真皮の厚さを計算した。B、創傷のマッソン染色で、コラーゲン面積を統計した。
図2図2は、抗Pear1モノクローナル抗体は、粘膜線維芽細胞の活性化を阻害することを示す。A、細胞培養上清中のヒドロキシプロリン含有量の検出。B、QPCRで、線維芽細胞における細胞外マトリックスタンパク質コラーゲン1a2、平滑筋アクチンα2(ACTA2)の発現レベルを検出した。
図3図3は、抗ヒトPear1モノクローナル抗体は、癒着の形成を阻害することを示す。A、創傷のHE染色、B、創傷のマッソン染色;対照群に比べて、抗Pear1モノクローナル抗体LF2およびhLF105で治療したマウスでは、創傷の皮下粘膜におけるコラーゲンの沈着が少ないことが分かる。C、HE染色を統計し、対照群に比べて、抗Pear1モノクローナル抗体LF2、hLF105で治療したマウスでは、創傷において線維芽細胞が少なく、真皮の厚さが薄いことを示した。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明者は、体腔内の外界からの刺激を受けた線維芽細胞内に、活性化負制御受容体Pear1が存在し、線維芽細胞内のPear1の欠失により、体内の粘膜癒着の形成が顕著に促進され、Pear1アゴニスト(Pear1活性を特異的に活性化する抗体、アゴニスト抗体など)は、線維芽細胞の活性化を特異的に阻害し、細胞外マトリックスを合成し、癒着性病変を改善することを思いがけず初めて発見した。Pear1アゴニストを投与することにより、癒着の形成を効果的に防止できる。さらに、本発明は、Pear1アゴニスト抗体を提供し、それが、正常な組織の修復や治癒に影響を与えず、組織に低酸素状態を引き起こさず、抗体薬物としての半減期が長く、拡散しやすく、副作用が少なく、投与に便利である。
【0060】
本発明者は、線維性疾患の標的としてPear1を用いて先行特許を出願し、それが、Pear1の活性を増強する抗体を構築し、線維芽細胞の過剰な活性化経路を阻害することで、線維性疾患の治療という目的を達成した。これらの出願は、出願日2020/1/23の中国特許出願202010076729.2および出願日2020/11/3の中国特許出願202011212639.8を含む。上述の中国特許出願の全文が、本出願に引用される。本発明は、さらに、調節標的としてPear1を使用し、粘膜癒着の緩和または治療に関連する新しい治療計画を提案する。
【0061】
用語
本明細書で使用される場合、用語「粘膜」および「ねんまく」は、互換的に使用され、生物体(口、器官、胃、腸、尿道などの内部)における上皮組織および結合組織から構成される膜状の構造である。本発明においては、管腔臓器や関節腔の腔に面する上皮や結合組織を指しても良い。
【0062】
本明細書で使用される場合、「癒着」および「粘着」という用語は互換的に使用される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「増強する」、「促進する」、および「向上する」、「増加する」などの用語は互換的に使用される;好ましくは、それらは統計的に有意な「増強」、「促進」、「向上」、または「増加」であり、例えば、2%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、50%以上、80%以上、100%以上、200%以上、500%以上の増加である。
【0064】
本明細書で使用される場合、「低下する」、「減少する」、「弱化する」などの用語は互換的に使用される;好ましくは、それらは統計的に有意な「抑制」、「低下」、「減少」、または「弱化」であり、例えば、2%以下、5%以下、10%以下、15%以下、20%以下、30%以下、50%以下、80%以下、100%以下、200%以下、500%以下の低下である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「治療」、「処理」および「処置」という用語は、1つまたは複数の活性成分を投与することで、症状または合併症の発症を予防または遅延し、及び病気、状態、または障害の発症を予防または遅延し、および/または、当該病気、状態、または障害を排除または制御し、及び当該病気、状態、または障害に関連する症状または合併症を軽減することを含む。「治療」という用語は、治療(すなわち、治癒的治療および/または緩和的治療)と予防(すなわち、予防的治療)の両方を含む。治療的治療とは、1つ又は複数の急性または慢性形態の前記病気を発症した患者に対する治療を指す。治療的治療は、特定の適応症の症状を緩和するための対症療法であってもよく、またはその適応症の症状を逆転または部分的に逆転させるための、または疾患の進行を予防または遅らせるための原因治療であっても良い。予防的治療(「予防」)とは、疾患が臨床的に発症する前に、リスクを軽減するために、前記状態の1つ以上を発症する前記リスクがある患者の治療を指す。
【0066】
本明細書で使用する場合、「標的活性化」という用語は、試験された分子が、標的の遺伝子、タンパク質またはその活性を活性化し、それによって、その発現または活性をアップレギュレートする能力を有すること指す。一般に、「標的活性化」には、その遺伝子又はタンパク質の発現量、活性レベル、影響される下流の経路又は分泌される物質などの1つまたは複数を測定することで計測することができる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「受験者」および「対象」という用語は、生きている動物(例えば、哺乳類)を指し、ヒト、ヒト以外の霊長類、げっ歯類などを含むが、これらに限定されなく、それらは、特定の治療を受けることになる。通常、「対象」と「患者」という用語は、互換的に使用される。
【0068】
本明細書で使用される場合、「含有」という用語は、各成分はともに本発明の混合物または組成物に応用しても良いことを示す。そして、用語「主に・・・からなる」と「・・・からなる」は、用語「含有する」に含まれる。「主に・・・からなる」と「・・・からなる」という用語は、用語「含有する」に含まれる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」成分は、ヒト及び/又は哺乳動物に適用され、過度の不良な副作用(例えば毒性、刺激とアレルギー反応)がないもので、すなわち合理な利益/リスク比がある物質である。「薬学的に許容される担体」という用語とは、治療剤の投薬に用いられる担体を指し、各種な賦形剤と希釈剤を含む。
【0070】
本明細書で使用する場合、「有効量」とは、本発明の薬学的に活性な成分の以下の量を意味し、前記量の本発明の薬学的に活性な成分は、(i)当該特定の疾患または病気を治療または予防するか、(ii)当該特定の疾患または病気の1つまたは複数の症状を軽減、改善または解消するか、または(iii)本明細書に記載の特定の疾患もしくは病気の1つ以上の症状の発症を予防もしくは遅延する。「有効量」、「安全有効量」、または「治療有効量」という用語は、本明細書では互換的に使用される。当業者(経験豊富な臨床医など)は、対象に応じて、「安全有効量」を調整することができる。
【0071】
本明細書で使用される場合、「抗体またはそのバリアント」という用語は、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子に由来するタンパク質、抗体断片またはポリペプチド配列を指す。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル、多重鎖または単鎖、または完全な免疫グロブリンであり、天然または組換えから由来することができる。特定の実施形態では、本発明の「抗体またはバリアント」は単離され、組換えから由来するものである。
【0072】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」という用語は、(例えば、結合、立体障害、安定化/不安定化、空間分布を介して)抗原と特異的に相互作用する能力を保持する抗体の少なくとも一部を指す。抗体断片の例としては、Fab、Fab´、F(ab´)2、Fv断片、scFv抗体断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、直鎖状抗体、単一ドメイン抗体、抗体断片(例えば、ヒンジ領域のジスルフィド結合によって結合された2つのFab断片を含む二価断片)から形成される多重特異性抗体、および抗体から単離されたCDRまたは抗体の他のエピトープ結合断片を含むが、これらに限定されい。抗原結合断片は、単一ドメイン抗体、最大抗体、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、およびキメラ抗体に組み込むこともできる。
【0073】
範囲:本開示全体を通して、本発明のさまざまな態様は範囲形式で存在しても良い。理解すべきことは、範囲形式に対する説明は、単に便宜および簡潔にするためのものであり、本発明の範囲を不可逆的に限定するものとして解釈されるべきではない。したがって、範囲に対する説明は、すべての可能な部分範囲およびその範囲内の個々の値を開示しているとみなされるべきである。たとえば、1~6などの範囲に対する説明は、サブ範囲(たとえば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など)とその範囲内の個々の値(例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、6など)を具体的に開示するものとみなされる必要がある。別の例として、95~99%の同一性の範囲は、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の範囲を含み、かつ、96~99%、96~98%、96~97%、97~99%、97~98%、および98~99%の同一性のサブ範囲も含む。これは範囲の幅に関係なく適用される。
【0074】
癒着疾患
本発明において、「癒着」、「癒着疾患」および「癒着病変」は互換的に使用され、身体の粘膜または形質膜病変を指し、その誘発因子は数多くあり、損傷、出血、感染、異物刺激または腫瘍浸潤後に形成される癒着(術後癒着、放射線療法または化学療法後の癒着、炎症性癒着など)を含む。本発明に記載の癒着疾患は、生物体(口、器官、胃、腸、尿道などの内部)における上皮組織および結合組織から構成される膜状の構造である。本発明においては、線維芽細胞の過剰な活性化やコラーゲンの異常蓄積により、管腔臓器、臓器間、体腔、臓器または関節腔に面する上皮および結合組織に生じる異常過形成組織を指す場合もある。
【0075】
癒着病変は、消化器系、泌尿器系、呼吸器系、口腔、関節、皮膚内層などを含むがこれらに限定されない広範囲の身体部分で発生する可能性がある。癒着の形成には多くの理由があり、そのメカニズムは複雑ですが、その形成プロセスはほとんど類似しており、手術による癒着の形成を例として、癒着は、組織損傷後の修復の結果であり、手術による鋭性、機械性或いは熱損傷、感染、熱放射、局所虚血、脱水及び異物反応などの多種の要素と関係があり、組織創傷に基づいて一連の反応を続発し、大量のヒスタミン、キニンなどの血管活性物質の放出を招き、局所血管透過性が増加し、局所組織は、酸素不足に基づいて酸化ストレス損傷を発生し、局所的に大量に遊離した酸素、窒素ラジカルは、局所炎症反応をさらに誘発し、組織損傷を加重する。その後、細胞外マトリックスタンパク質は、局所的に堆積し、大量に滲出した白血球、マクロファージを含有し、その後、マトリックスタンパク質堆積と線維芽細胞増殖活性化により組織の治癒過程を完成し、細胞外フィブリン堆積が優勢であり、早期の癒着を形成する。その後、線維芽母細胞と血管が侵入し、局所的に血管化し、永久的な癒着を形成する。
【0076】
癒着のある患者の症状は、癒着の程度と場所によって異なる。たとえば、腹腔癒着や腸管癒着のある患者では、癒着により腸の蠕動運動が遅くなったり停滞したりすることがあり、軽症の場合は、明らかな不快症状がないか、食後に軽度の腹痛や膨満感を感じることもあるが、重症の場合は、腹痛や膨満感、排気不良、げっぷ、しゃっくり、乾いた便などを伴うことがよくある;正常な腸の蠕動は、食べ物のカスやガスを体外に排出することができるが、腸管癒着のある患者は、癒着により腸管が狭くなり、腸内容物の通過が妨げられ、腸内のガスや便がスムーズに排出されなくなり、腸内にガスや便がたまり続けると腸腔内の圧力も高まり、腸閉塞を引き起こす。さらに、癒着の存在により、局所組織の虚血、低酸素症、および壊死が発生しやすくなり、酸化ストレス損傷は、低酸素に基づいて局所組織で発生し、局所領域に多量の遊離酸素と窒素フリーラジカルが存在し、さらに局所炎症反応が誘発され、組織損傷が悪化し、その結果、2回目の手術での分離が困難になり、組織の脆弱性が増大し、周囲の接続組織の出血が増加し、手術がより困難になる。
【0077】
本発明の癒着疾患は、管腔臓器の腔、臓器間、臓器内部の上皮組織や結合組織など、特に手術、放射線療法、化学療法後の局所に生じる癒着疾患が挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、腹腔、胸部、骨盤腔、関節腔などの腔内の場所を挙げられる。
【0078】
Pear1遺伝子またはそのタンパク質及びおよび薬物スクリーニング標的としてのその応用
本発明は、線維芽細胞におけるPear1の欠失がインビボでの粘膜癒着の形成を有意に促進でき、Pear1アゴニストは、線維芽細胞の活性化を特異的に阻害し、細胞外マトリックスを合成し、癒着病変を改善することを初めて開示する。
【0079】
Pear1、すなわち血小板内皮凝集受容体1(Platelet Endothelial Aggregation Receptor 1,GeneID:375033)は、150 kDaのI型膜貫通タンパク質であり、多上皮増殖因子様ドメイン受容体ファミリー(Multiple Epidermal Growth Factor-Like Domains Protein,MEGF)タンパク質ファミリーのメンバーである。ヒトPear1は、1037個のアミノ酸(aa)を含み、ただし、20aaのシグナル配列、735aaの細胞外ドメイン(Extracellular domain,ECD)、21aaの膜貫通領域、および261aaの細胞質領域を含む。Pear1は、あらゆる哺乳類に存在し、かつ高い類似性を持ち、例えば、ヒトPear1とマウスPear1(Gene ID: 73182)の類似性は84%である。
【0080】
本発明において、線維芽細胞特異的Pear1ノックアウト動物に対して、腹部癒着モデルを用いた偽手術を行い、結果としては、Pear1アゴニストで処理したマウスのBhatiaDSスコアまたはZuhlkeスコアが、対照群に比べて有意に低いことが示された。組織ヒドロキシプロリン測定により、Pear1アゴニストで処理した動物の組織ヒドロキシプロリン含有量が、対照群よりも有意に低いことが示された。
【0081】
Pear1アゴニストで処理した動物では、癒着関連指標が対照群よりも有意に低かった。線維芽細胞特異的Pear1ノックアウト動物を用いて、皮下粘膜癒着の形成を観察した結果は、Pear1が、粘膜線維芽細胞の過剰な活性化と皮下粘膜癒着の形成を阻害することがわかった。
【0082】
本発明者らは、QPCRにより、粘膜線維芽細胞における細胞外マトリックスタンパク質(例えばコラーゲン7a1(Col 7a1)、平滑筋アクチンα2(ACTA2))の発現レベルを検出し、それを線維芽細胞の活性化とコラーゲン合成の特徴付けに使用した結果、Pear1を標的とすることで粘膜線維芽細胞の活性化を阻害できることが示された。
【0083】
インビボでの癒着形成阻害におけるPear1の標的化の役割を検出するために、本発明者らは、ヒト化Pear1動物の癒着モデルを構築し、同時に創傷部位にPear1アゴニスト処理を行い、結果としては、Pear1アゴニストが、線維芽細胞の細胞外マトリックス合成能力を阻害することが示された。
【0084】
Pear1の機能とメカニズムがわかれば、当該特徴に基づいて、Pear1を標的として、Pear1の発現や活性を促進する物質をスクリーニングすることができる。
【0085】
本発明は、癒着疾患を予防、緩和または治療するために使用できる物質(潜在的な物質を含む)をスクリーニングするための方法を提供し、当該方法は、以下を含む:Pear1を発現するシステムまたはPear1が存在するシステムに候補物質を接触させる;及び、Pear1に対する候補物質の効果を検測する;前記候補物質がPear1の発現または活性を増加させることができる場合、当該候補物質は、癒着疾患の予防、緩和または治療に使用できる物質であることを意味する。
【0086】
本発明の好ましい態様においては、スクリーニングの際に、Pear1とそれが関与するシグナル伝達経路タンパク質またはその上流および下流タンパク質の発現または活性の変化をより簡単に観察するために、対照群を設定することもでき、前記対照群は、前記候補物質を添加しないPear1を発現するシステムまたはPear1を含むシステムとするであっても良い。
【0087】
前記発現システムは、例えば、細胞(または細胞培養物)システムであってもよく、前記細胞は、内因的にPear1を発現する細胞であってもよく、または、Pear1を組換え的に発現する細胞であってもよい。前記Pear1を発現するシステムは、サブ細胞システム、溶液システム、組織システム、器官システム、または動物システム(動物モデルなど)などであってもよいが、これらに限定されない。
【0088】
本発明の好ましい態様として、上記の方法は、さらに、得られた潜在物質に対してさらなる細胞実験および/または動物実験を実施して、癒着疾患の予防、緩和または治療に本当に有用な物質をさらに選択および確定することを含む。
【0089】
本発明は、Pear1の発現、活性、存在量または分泌状況の検測方法に、特に制限はない。SDS-PAGE法、Western-Blot法、ELISAなどの従来のタンパク質定量的または半定量的検出技術を使用できるが、これらに限定されない。
【0090】
一方、本発明は、前記スクリーニング方法で得られる化合物、組成物、薬物、あるいはいくつかの潜在物質も提供する。最初にスクリーニングされた物質は、スクリーニングライブラリーを形成することができ、人々は、最終的に癒着疾患の予防、緩和または治療に本当に有用な物質を、臨床用途に向けてスクリーニングすることができる。
【0091】
Pear1アゴニストおよび組成物
本発明において、「アゴニスト」は、Pear1遺伝子の発現を促進することにより作用する発現アップレギュレーターを含み、前記発現によって、より多くのPear1タンパク質が得られる(多重発現)場合、通常、Pear1活性の増加も意味し、癒着疾患の抑制に役立つ。
【0092】
本発明においては、Pear1の活性を向上する、Pear1の安定性を維持する、Pear1の発現を促進する、Pear1の分泌を促進する、Pear1の有効作用時間を延長する、または、Pear1の転写および翻訳を促進することができる任意の物質を使用することができるが、Pear1の機能/活性をアップレギュレートする有効な物質は、すべて「アゴニスト」または「アップレギュレーター」と呼ぶことができる。前記アップレギュレーターは、活性アップレギュレーターまたは発現アップレギュレーターであっても良い。
【0093】
本明細書で使用される場合、「アゴニスト」、「Pear1アゴニスト」、または「Pear1遺伝子またはそのタンパク質のアゴニスト」という用語は、互換的に使用され、いずれも、Pear1遺伝子またはそのタンパク質の活性を増強し、および/またはPear1タンパク質に結合し、および/またはPear1を促進して線維芽細胞活性化シグナル伝達経路を阻害し、および/または線維芽細胞によるECMの放出を減少させることができる物質を指す。本発明の具体的な実施形態では、癒着疾患に対して優れた阻害効果を有する、Pear1を調節標的とするPear1アゴニスト抗体を提供する。
【0094】
本発明の一実施形態として、前記Pear1アップレギュレーターは、細胞に導入された後に、Pear1を発現(好ましくは過剰発現)できる発現ベクターまたは発現構築物を含むが、これらに限定されない。通常、前記発現ベクターは、遺伝子カセットを含み、前記遺伝子カセットは、Pear1をコードする遺伝子およびそれに作動可能に連結された発現制御配列を含む。「作動可能に連結された」または「作動可能に連結する」とは、直鎖状DNA配列のある部分が、同じ直鎖状DNA配列の他の部分の活性を調節または制御できる状況を指す。例えば、プロモーターが、配列の転写を制御する場合、当該プロモーターは、コード配列に作動可能に連結されている。
【0095】
本発明において、Pear1ポリヌクレオチド配列は、組換え発現ベクターに挿入されてもよく、そして、それを細胞に導入し、過剰発現させてPear1を産生することができる。宿主内で複製可能で安定している限り、任意のプラスミドとベクターを本発明に使用することができる。発現ベクターの重要な特徴の一つは、通常に、複製起点、プロモーター、マーカー遺伝子、および翻訳制御要素を含むことである。例えば、前記発現ベクターは、ウイルスベクター、非ウイルスベクターなどを含む。
【0096】
好ましくは、本発明によって提供されるアゴニストは、Pear1遺伝子またはそのタンパク質に結合して、Pear1の構造を変化させ、それによって、線維芽細胞の活性化を阻害することができるアゴニストである。好ましくは、前記アゴニストは、Pear1タンパク質を標的とし、かつそれに結合するアゴニストである。
【0097】
好ましい実施例では、本発明の抗体に加えて、本発明のアゴニストは、さらに、Pear1に対する活性化作用を有する他の種類の物質(例えば、FcαR1α(すなわち、IgE受容体IaのFc断片)、デキストラン硫酸、フコイダン、またはそれらの組み合わせ)を含んでも良く、Pear1天然アプタマーおよび/または小分子化合物を含んでも良い;より好ましくは、FcαR1α、デキストラン硫酸、とフコイダンを含む。
【0098】
本発明のPearl標的を利用して、当業者はPear1に対する様々なアゴニストを設計することができ、小分子アゴニスト、抗体またはその活性断片、miRNAなどを含むが、これらに限定されない。本発明において、前記小分子化合物は、天然に存在する、または人工的に開発されたPear1受容体の小分子アゴニストを指す場合もある。
【0099】
本発明において、前記アプタマー(Aptamer)とは、in vitroスクリーニング技術-指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化技術(Systematic evolution of ligands by exponential enrichment,SELEX)を通じて得られる構造化されたオリゴヌクレオチド配列(RNAまたはDNA)を指し、対応する標的分子(タンパク質、ウイルス、細菌、細胞、重金属イオンなど)は、厳密な認識能力と高い親和性を有する。
【0100】
本発明の好ましい実施態様として、Pear1タンパク質に特異的に結合する/標的とする抗体またはそのバリアントを使用し、該抗体またはそのバリアントは、細胞レベルおよび動物レベルで、明確なPear1活性化効果を有することが確認されている。好ましくは、本発明の抗体またはそのバリアントは、マウス由来のモノクローナル抗体であり、または、組換え抗体、ポリクローナル抗体、多重鎖もしくは単鎖、または完全な免疫グロブリンであってもよい。好ましくは、本発明の抗体またはそのバリアントは、ヒト化されたものである。より好ましくは、本発明の抗体は、キメラ抗体である。好ましくは、本発明の抗体またはそのバリアントは、表1~4に示される通りである。
【0101】
前記Pear1を標的とする抗体は、全長抗体および抗体断片(例えば、Fab、Fab´、F(ab´)2、scFvなどのFv)を含み、それらを含む二重特異性抗体、多重特異性抗体、単一ドメイン抗体、またはこれらの抗体から調製されるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体も含む。前記抗体のFab断片(抗原結合断片、Fragment of antigen binding)は、抗原結合断片とも呼ばれ、抗原に結合できる抗体構造内の領域である。Fab断片は、完全な軽鎖と重鎖のVHドメインおよびCH1ドメインで構成される。パパインの作用下では、抗体は、2つのFab断片と1つのFc断片に分解される;ペプシンの作用下では、抗体は、1つの(Fab)2断片とFc断片に分解される。
【0102】
本発明の抗体またはそのバリアントに使用できるFabのFR断片は、特に限定されない;好ましくは、本発明が、ヒトIgG4のFRおよび複数の変異を有するFR配列を用い、その結果としては、FR配列を変更しても、抗原と抗体の結合力はあまり変化しない。これにより、本発明の抗体のCDR断片は、Pear1タンパク質に対して非常に特異的かつ安定した結合機能を有することが分かる。当業者は、本発明のPear1標的およびそれが線維性疾患と相関する教示に基づき、本発明の抗体またはそのバリアントのCDRを利用し、既知の様々なFRを使用して、構成された抗体をスクリーニングし、それによって、得られた本発明の抗体またはバリアントと同じまたは実質的に同じ活性を有する抗体も本発明の保護範囲に含まれる。
【0103】
本発明で使用できる抗体またはそのバリアントの定常領域は、特に限定されない。当業者は、本発明のPear1標的およびそれが線維性疾患と相関する教示に基づき、本発明の抗体またはそのバリアントを含むのに適した定常領域断片をスクリーニングし、それによって、本発明の抗体またはバリアントと同じまたは実質的に同じ活性を有する完全な抗体を得る。
【0104】
本発明は、さらに、有効量(例えば0.000001~20重量%、好ましくは0.00001~10重量%)の前記Pear1またはそのアゴニスト(例えば、そのアゴニスト、またはPear1を過剰発現する発現ベクター)、またはその類似体、および薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0105】
本発明の組成物は、癒着疾患を予防、緩和または治療するために直接使用することができ、または、他の治療剤または補助剤と組み合わせて使用することもできる。
【0106】
一般に、これらの材料は、非毒性で、不活性で、薬学的に許容される水性担体媒体中で、通常、約5~8のpH、好ましくは約6~8のpHで処方することができる。
【0107】
本発明の組成物は、安全有効量のPear1、またはそのアゴニスト(例えば、当該Pear1を過剰発現する発現ベクター)、またはその類似体、および薬学的に許容される担体を含有する。このような担体としては、生理食塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。通常、薬物製剤は、投与形態に応じる必要であり、本発明の薬物組成物は、注射剤に調製して、例えば、生理食塩水やブドウ糖やその他の補助剤を含む水溶液を用いて常法により調製される。前記薬物組成物は、好ましくは、無菌条件下で製造される。活性成分の投与量は、治療有効量である。本発明の薬物製剤は、徐放性製剤とすることもできる。
【0108】
本発明に記載のPear1またはそのアゴニストの有効量は、投薬方式と治療しようとする疾病の重症度に応じて変更してもよい。好ましい有効量の選択は、当業者が様々な要因に基づいて決定することができる(例えば、臨床試験による)。かかる要因としては、前記Pear1またはそのアゴニストの薬物動態学的パラメータ、例えばバイオアベイラビリティ、代謝、半減期など;患者の治療しようとする疾患の重症度、患者の体重、患者の免疫状況、投与経路などがある。
【0109】
本発明は、さらに、癒着疾患を予防、緩和または治療する方法を提供し、対象に、有効量のPear1またはそのアゴニスト(例えば、そのアゴニスト抗体またはPear1を過剰発現する発現ベクター)を投与することを含む。
【0110】
本発明のPear1またはそのアゴニストの投与方式は、特に限定されなく、全身的または局所的であっても良い。例えば、本発明のPear1またはそのアゴニストは、以下のものであってもよいが、これらに限定される:注射剤(例えば腔内(非静脈)、静脈内、筋肉内、皮下、皮内および経穴注射など)、皮膚薬物送達製剤(例えばローション、コーティング剤、軟膏、経皮パッチなど)、粘膜薬物送達製剤(例えば経口フィルム、舌下錠、うがい薬など)、消化器剤(例えば煎じ薬、混合剤、顆粒剤、丸剤、錠剤など)、吸入剤(例えばエアゾール剤、ドライパウダー吸入剤、エアロゾル吸入剤など)、直腸用製剤(例えば坐剤、浣腸剤など)、またはそれらの組み合わせ。
【0111】
本発明の一実施形態として、前記Pear1を、哺乳動物(例えばヒト)に直接投与でき、あるいは、Pear1をコードする遺伝子を、常法により適当なベクター(例えば、通常の原核生物または真核生物発現ベクター、またはヘルペス ウイルス ベクターまたはアデノウイルスベクターなどのウイルスベクター)にクローニングし、前記ベクターを、Pear1を発現可能な細胞に導入することにより、Pear1を発現することができる。適切な量の前記細胞を、哺乳動物の体の適切な部分に導入することで、Pear1の発現を達成できる。
【0112】
Pear1またはそのアゴニストの投与方式は、主に、前記アゴニストの種類と特性によって異なる。
【0113】
以下、具体的な実施例を参照して、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の単なる例示であることが理解されるべく。以下の実施例における特定の条件を特定しない実験方法は、通常に、J.Sambrookら、Guide to Molecular Cloningに記載された通常条件に従って実施され、或いはメーカーが推奨する条件に従って実施される。
【0114】
実験材料と方法
1.抗体の調製
本発明者らは、ヒトPear1細胞外タンパク質を使用してBALB/cマウスを免疫し、標準的なマウス脾細胞およびマウス骨髄腫細胞融合技術を通じて高親和性モノクローナルハイブリドーマ細胞を調製し、標準的な抗体シークエンシング、293S細胞発現、および精製を通じて、抗ヒトPear1モノクローナル抗体を得た。
【0115】
抗ヒトPear1モノクローナル抗体LF2、LF3、LF7、LF11、LF15、LF16抗体の軽鎖可変領域配列と重鎖可変領域配列を表1に、これらのCDR部分配列を表2に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
本発明はまた、CDR移植の方法を採用し、上記抗体をヒト化し、フレームワーク領域内の部位に対して、異なる復帰突然変異を行った。ヒト化抗体hLF101~116、hLF-N55S、hLF-N55D、hLF-N55Q、hLF-G56A、とhLF-G56Vの配列も表3に示す。
【0118】
【表3】
本発明の抗体のCDR配列は、下記の表4のSEQ ID NO:26~55に示され、これらの抗体のCDR配列は、IMGTのナンバリングルールを採用する。
【0119】
【表4】
2、モデルの構築
2.1粘膜癒着モデルの構築:腹膜癒着動物モデル
ヒト化マウスの腹腔盲端から3cm以内の虫垂を対象として文献(章志量ら、異なる原因によるラット腹膜癒着の実験研究、中国医学雑誌、2005)中の方法でモデルを作って、3群に分け、群ごと20匹である:A、生理食塩水対照群;B、予防的に腹腔内へ抗ヒトPear1モノクローナル抗体(LF2またはhLF105抗体を含む)0.5mg/kgを投与する群、週1回;C、予防的に腹腔内へ抗ヒトPear1モノクローナル抗体1mg/kgを投与する群、週1回。2週間、4週間の2つの時点で、それぞれに、マウスを安楽死した後、腹部で逆「U」型切開し、元の手術切開を避けるように腹部に進入し、腹腔内全体の癒着状況を観察し、癒着組織と灌漑洗浄液検体を取り、さらに観察、検査を行った。腹膜癒着モデルの癒着程度を評価した。
【0120】
2.2皮下粘膜癒着モデルの構築
ペントバルビタールナトリウムで麻酔したマウスに、腹腔注射を行った。脱毛して消毒し、皮膚を切除した。シリカゲルプレートの片側に、接着剤を薄く塗り、クリップを傷の周りに同心に固定した。各クランプを、8針間隔で均一に断続的に縫合固定し、クランプを傷口の周囲の完全な組織に補強して固定し、傷口の縁が縮むのを防止した。無菌パッチを使用し、円形にカットし、シリカゲルプレートに貼り、動物による傷や咀嚼を防ぐために傷を保護した。本発明の抗ヒトPear1モノクローナル抗体を、腹腔癒着モデルと同様に予防的に滴下した。
【0121】
3.モデルのメンテナンスと写真
マウスをイソフルランで麻酔し、イソフルラン流量を2%維持した。シリカゲルプレートにおける無菌パッチをはがし(はがさなくてもよい)、固定位置とスケールのそばで、傷の写真を撮った。必要に応じて、無菌パッチを貼り直すことができる。ImageJを使用して写真を処理し、スケールに基づき、傷の大きさを囲み、傷の面積を計算した。
【0122】
4.ヘマトキシリンとエオシン(HE)とマッソン染色
マウスの肺と肝臓を、4%のパラホルムアルデヒドで48時間固定し、パラフィンに包埋した後、半自動回転ミクロトーム(leica;rm2235とcm1950)を使用して切片にし、室温で脱パラフィンし、勾配エタノールで再水和し、HEとマッソンで染色した。
【0123】
5.ヒドロキシプロリンの検測
培養された粘膜または皮下組織から由来する線維芽細胞を12時間飢餓状態にし、それぞれに、1μg/mLの抗ヒトPear1モノクローナル抗体(LF2抗体またはhLF105抗体を含む)を添加して細胞を処理し、30分後、10ng/mLのTGFβを添加して、細胞を48時間処理し、細胞上清を回収し、南京建成生物技術有限会社のヒドロキシプロリン検出キットを使用し、説明書に従ってヒドロキシプロリン含有量を検出した。
【0124】
6.定量的PCR(QPCR)
方法5の粘膜線維芽細胞を収集し、Trizol法(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)を使用して、標準プロトコールに従って、全mRNAを抽出した。相補的DNAを、逆転写酵素(Takara)を使用して合成した。ABI7000リアルタイムPCR装置(life technology)で、遺伝子発現を検出し、PCRプライマー配列を表5に示す。18sRNA遺伝子を内部参照とした。
【0125】
【表5】
7.Pear1ヒト化トランスジェニックマウスの構築
CRISPR/Cas9技術により、ヒトPear1遺伝子ノックインマウスを構築し、マウスPear1遺伝子コード領域のエクソン1-ATGの付近に、標的を設計し、相同組換えテンプレートの存在下では、外来遺伝子ヒトPear1を、部位特異的に標的位置に組み込み、マウスPear1遺伝子配列を置き換えた。
【0126】
8.統計的手法
すべてのデータは、Graphpad8.0ソフトウェアを使用して統計的に分析した。2つ群のデータの比較は、t検定を使用して実行した。生存分析には、カプランマイヤー分析を使用した。すべてのデータ比較において、0.033未満のp値は、統計的に有意であるとみなされる。
【実施例1】
【0127】
実施例1.皮下粘膜線維芽細胞と真皮層の癒着との相関関係
線維芽細胞特異的Pear1ノックアウトマウスを使用して、その皮下粘膜癒着の形成を観察し、対照群と比較した。
【0128】
その結果、対照マウスよりもPear1欠失マウスは、重度の皮下粘膜癒着を発症したことが示され、図1A~Bに示すように、それは、創傷部位の粘膜厚さの増加、線維芽細胞の大量増殖、活性化された筋線維芽細胞の増加、およびコラーゲン面積の増加として現れた。
【0129】
この実験結果は、Pear1が、粘膜線維芽細胞の過剰な活性化と皮下粘膜癒着の形成を阻害し、したがって、Pear1は、粘膜癒着を阻害するための潜在的な標的として使用できることを示す。
【実施例2】
【0130】
実施例2.Pear1を標的とすることで粘膜線維芽細胞の活性化を阻害できる
粘膜線維芽細胞の活性化を阻害することにおけるPear1の標的化の役割をさらに調べるために、単離されたヒト化Pear1マウス皮下粘膜線維芽細胞を、in vitroで培養し、TGFβ活性化線維芽細胞を、抗ヒトPear1モノクローナル抗体(LF2またはhLF105を含む)で48時間処理し、ヒドロキシプロリンの含有量を検出するためにそれぞれに上清を収集し、コラーゲン7a1(Col7a1)や平滑筋アクチンα2(ACTA2)などの細胞外マトリックスタンパク質の発現レベルをQPCRで検出するために細胞を収集し、線維芽細胞の活性化とコラーゲン合成の特徴付けに使用された。
【0131】
実験結果は、対照群と比較して、図2AおよびBに示すように、抗Pear1モノクローナル抗体(LF2またはhLF105を含む)が、いずれも、線維芽細胞の活性化および細胞外マトリックスを合成する能力を阻害することを示した。
【0132】
この実験データは、Pear1を標的とする抗Pear1抗体を使用すると、粘膜線維芽細胞の活性化を阻害でき、かつ、損傷後の粘膜への当該標的に対する抗体を早期に適用すると、癒着の予防に優れた役割を果たし得ることを示した。
【実施例3】
【0133】
実施例3.抗Pear1モノクローナル抗体は、ヒト化Pear1マウス皮下粘膜癒着モデルにおける癒着形成を阻害する
次に、生体内での癒着形成の阻害におけるPear1の標的化の役割を調べるために、本発明者らは、ヒト化Pear1マウスにおいて癒着モデルを構築し、同時に、創傷部位に、それぞれに、5μgの抗ヒトPear1モノクローナル抗体(LF2またはhLF105を含む)を7日ごとに点滴した。14日目に、創傷部位の皮下粘膜組織を摘出し、HE染色とマッソン染色を行った後、顕微鏡で写真を撮影し、ImageJソフトウェアを用いて皮下粘膜および皮膚の厚さおよびコラーゲン面積を計測し、癒着の形成の特徴付けに使用された。
【0134】
結果は、図3A、B、Cに示すように、抗Pear1モノクローナル抗体が、創傷部位の真皮と粘膜の厚さ、線維芽細胞の増殖と過剰な活性化、コラーゲンの合成を大幅に減少させることを示した。
【0135】
これらのデータは、抗Pear1モノクローナル抗体が、癒着の形成を予防および阻害できることを示す。
【実施例4】
【0136】
実施例4.抗Pear1モノクローナル抗体は、ヒト化Pear1マウス腹腔粘膜癒着モデルにおける癒着形成を阻害する
線維芽細胞特異的Pear1ノックアウトマウスについては、腹部癒着モデルを使用して、マウスに偽手術を行い、モデルの作成と動物の群分けは、上記のとおりであった。
【0137】
1.BhatiaDSスコア
BhatiaDSスコア基準によると、グレード0:癒着なし;グレードI:虫垂の盲端における処理面の癒着面積が処理面の総面積の50%未満であり、鈍的に剥離しやすい;グレードII:上記の面積率が50%以上で、鈍的に剥離しやすい;グレードIII:癒着領域の大きさに関わらず、癒着を剥離することが困難である限り、鈍的な剥離を実現できるが、剥離後に腸壁に重大な損傷が生じる;グレードIV:癒着面積の大小に関わらず、癒着が強ければ、鈍的な剥離はできず、鋭的な剥離が求められる。各マウスを3人でスコアリングし、その平均値を、当該サンプルの癒着スコアとした。
【0138】
その結果は、抗ヒトPear1モノクローナル抗体(LF2またはhLF105を含む)で処理したマウスのBhatiaDSスコアは、対照群のスコアよりも有意に低く(表6)(特に高用量群(1.0mg/kg)で)、Pear1抗体の使用が、腹部癒着を効果的に予防できることがわかった。
【0139】
【表6】
2.Zuhlkeスコア
組織切片をさまざまな染色法で染色し、光学顕微鏡で、癒着組織の厚さ、炎症細胞の浸潤の程度、新生毛細血管の増殖、線維芽細胞と間質細胞の増殖、コラーゲン線維の並べなどを観察し、定量的なスコアとしてZuhlkeスコア基準を使用した:グレード1、緩い結合組織、豊富な細胞があり、成熟および未熟なフィブリンおよび網状線維が見える;グレード2、細胞と毛細血管を含む結合組織があり、少量のコラーゲン線維が見える;グレード3、固い結合組織、少数の細胞があり、より多くの血管、少量の弾性線維と平滑筋線維が見える;グレード4、成熟した肉芽組織があり、細胞がほとんどなく、形質膜層の区別が困難である。
【0140】
その結果、抗ヒトPear1モノクローナル抗体(LF2またはhLF105を含む、1.0mg/kg)で処理したマウスの腹部癒着組織は、比較的に緩く、細胞が豊富で、スコアは、グレード1からグレード2の範囲であるが、対照群は、すべてグレード4で、結合組織と肉芽組織が密であることが示され、Pear1抗体の使用により、腹部癒着を効果的に予防できることがわかった。
【0141】
3.組織ヒドロキシプロリンの測定
組織癒着の形成は、コラーゲンの合成に依存し、ヒドロキシプロリンは、コラーゲン合成の前駆体である;この理論に基づくと、組織のヒドロキシプロリン含有量の測定は、癒着の重症度を間接的に反映するでき、両者の間には、直線的な正の相関関係があるため、採取した癒着組織のヒドロキシプロリンレベルを測定することも癒着評価の重要な方法である。
【0142】
結果は、抗ヒトPear1モノクローナル抗体(LF2またはhLF105を含む)で処理したマウスの組織のヒドロキシプロリン含有量は、対照群のヒドロキシプロリン含有量よりも有意に低いことを示した。
【0143】
4.マウスにおける癒着関連指標の測定
免疫組織化学またはRT-PCR法を使用し、癒着の重症度を反映する癒着形成に関連するいくつかの指標を測定する:フィブリノーゲン(FIB)、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、MMP/TIMP、トランスフォーミング成長因子(TGF-β1)、血管内皮成長因子(VEGF)。
【0144】
結果は、抗ヒトPear1モノクローナル抗体(LF2またはhLF105を含む)で処理したマウスの癒着関連指標は、対照群の癒着関連指標よりも有意に低いことを示した。
【0145】
本出願に言及されている全ての参考文献は、参照として単独に引用されるように、本出願に引用されて、参照になる。理解すべきなのは、本発明の上記の開示に基づき、当業者は、本発明を様々な変更または修正を行っても良い、これらの同等の形態も本出願に添付された請求の範囲に規定される範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
【配列表】
2024530541000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-03-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癒着疾患を予防、緩和または治療するための薬物組成物の製造におけるPear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニストの応用。
【請求項2】
前記癒着疾患は、粘膜癒着疾患又は形質膜癒着疾患を含む;好ましくは、前記癒着疾患は、損傷、出血、感染、異物刺激、腫瘍浸潤又は炎症性細胞浸潤後に形成される癒着疾患を含む;好ましくは、前記損傷により形成される癒着疾患は術後癒着、放射線治療または化学療法後癒着を含み、前記感染により形成される癒着疾患は炎症癒着を含む;好ましくは、前記癒着疾患は、消化器系、泌尿器系、呼吸系、生殖系、口腔、関節、皮膚内層の癒着疾患を含む;より好ましくは、腹腔、骨盤腔、胸腔、子宮、関節腔、心嚢、硬膜外または歯周部の癒着疾患を含む;より好ましくは、前記癒着疾患は、腹腔癒着、骨盤癒着、胸腔癒着または関節腔癒着であることを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項3】
前記Pear1のアゴニストは、Pear1の発現、活性、安定性、および/または有効作用時間を増強する薬剤を含む;好ましくは、Pear1活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアント、Pear1を組換えて発現する発現構築物、Pear1の化学アゴニスト、Pear1遺伝子プロモーターの駆動能力を促進する発現アップレギュレーターを含む;より好ましくは、前記Pear1の化学アゴニストは、FcεR1α、デキストラン硫酸、フコイダン、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項4】
前記Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質、またはそのアゴニストは、以下のことにさらに使用されることを特徴とする請求項1に記載の応用:
粘膜線維芽細胞の活性化を阻害すること;
組織におけるヒドロキシプロリン含有量を低下させること;
病巣部の粘膜厚を下げること;
病巣における線維芽細胞の増殖または活性化を低下させること;
病巣におけるコラーゲンの合成を低下させること;または
癒着関連指標を下げること;好ましくは、前記指標は、フィブリノーゲン、α-平滑筋アクチン、t-PA/PAI、MMP/TIMP、トランスフォーミング成長因子、血管内皮成長因子、腫瘍壊死因子および/またはインターロイキンを含む。
【請求項5】
前記アゴニストは、Pearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアントである;好ましくは、前記抗体は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2とHCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 26、27と28に示され、或いはSEQ ID NO: 26、27と29に示され、或いはSEQ ID NO: 26、30と28に示され、或いはSEQ ID NO: 31、27と32に示され、或いはSEQ ID NO: 33、34と35に示される;及び/又は、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 45、GATとSEQ ID NO:46に示され、或いはSEQ ID NO: 47、SASとSEQ ID NO: 28に示され、或いはSEQ ID NO: 49、DTSとSEQ ID NO: 50に示され、或いはSEQ ID NO:51、GATとSEQ ID NO: 52に示される;
ことを特徴とする請求項1に記載の応用
【請求項6】
前記抗体は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含む;前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2とHCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27とSEQ ID NO: 28に示され;前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 45、GATとSEQ ID NO: 46に示され、或いは、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 47、GTSとSEQ ID NO: 48に示され、或いは、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 49、DTSとSEQ ID NO: 50に示され、或いは、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 51、GATとSEQ ID NO: 52に示され、或いは、前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 53、LVSとSEQ ID NO: 54に示される;
ことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項7】
前記バリアントのHCDR1は、SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列において第三位のSからA或いはTへ突然変異し、第六位のGからDへ突然変異し、及び/又は、第八位のPからT或いはYへ突然変異するものである;及び/又は、前記バリアントのHCDR2は、SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列において第三位のPからS或いはGへ突然変異し、第四位のYからNへ突然変異し、及び/又は、第八位のTからAへ突然変異するものである;及び/又は、前記バリアントのHCDR3は、SEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列において第九位のAからDへ突然変異し、及び/又は、第十位のYからFへ突然変異するものである;ことを特徴とする請求項5又は6に記載の応用。
【請求項8】
HCDR1は、SEQ ID NO: 26、31、33、36とSEQ ID NO: 39から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;HCDR2は、SEQ ID NO: 27、30、34、37、とSEQ ID NO: 40-44から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び、HCDR3は、SEQ ID NO:28、29、32、35とSEQ ID NO: 38から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び/又は、LCDR1は、SEQ ID NO: 45、47、49、51とSEQ ID NO: 53から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;LCDR2は、GAT、SAS、DTS、とLVSから選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び、LCDR3は、SEQ ID NO:46、48、50、52或いはSEQ ID NO: 54から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;ことを特徴とする請求項5又は6に記載の応用。
【請求項9】
HFR1は、SEQ ID NO: 55、56とSEQ ID NO: 57から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;HFR2は、SEQ ID NO: 58、59、60、61、62、63、64、65とSEQ ID NO:66から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び、HFR3は、SEQ ID NO: 67、68、69、70、71、72、73、74、75とSEQ ID NO:76から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び、HFR4は、SEQ ID NO: 77とSEQ ID NO:78から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び/又は、
LFR1は、SEQ ID NO: 79、80、81、82、83とSEQ ID NO: 84から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;LFR2は、SEQ ID NO: 85、86、87、88、89とSEQ ID NO: 90から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び、LFR3は、SEQ ID NO: 91、92、93、94、95、96、97とSEQ ID NO: 98から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及びLFR4は、SEQ ID NO: 99、100、101、102とSEQ ID NO: 103から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の応用。
【請求項10】
前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15に示される、或いは、前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 16、17、18、19、20、22、23、24、又は25に示されることを特徴とする請求項5又は6に記載の応用。
【請求項11】
有効量のPear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト、および薬学的に許容される担体を含む、癒着疾患を予防、緩和または治療する薬物組成物またはキット。
【請求項12】
前記アゴニストは、Pearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアントである;好ましくは、前記抗体は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2とHCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 26、27と28に示され、或いはSEQ ID NO: 26、27と29に示され、或いはSEQ ID NO: 26、30と28に示され、或いはSEQ ID NO: 31、27と32に示され、或いはSEQ ID NO: 33、34と35に示される;及び/又は前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 45、GATとSEQ ID NO:46に示され、或いはSEQ ID NO: 47、SASとSEQ ID NO: 28に示され、或いはSEQ ID NO: 49、DTSとSEQ ID NO: 50に示され、或いはSEQ ID NO:51、GATとSEQ ID NO: 52に示される;
より好ましくは、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14或いは15に示され、或いは前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 16、17、18、19、20、22、23、24或いは25に示される;
ことを特徴とする請求項11に記載の薬物組成物またはキット
【請求項13】
癒着疾患を予防、緩和または治療する薬物または化合物をスクリーニングするためのPear1遺伝子またはそれがコードするタンパク質の応用。
【請求項14】
(1)候補物質でPear1を発現する、またはPear1を含む発現システムを処理すること;及び
(2)前記システム内のPear1の発現または活性を検出すること;
を含む;
前記候補物質が、統計的にPear1の発現または活性を増加させる場合、これは、当該候補物質が所望の薬物または化合物であることを示す、癒着疾患を予防、緩和または治療する薬物または化合物をスクリーニングする方法。
【請求項15】
ステップ(1)は、試験群では、前記発現システムに候補物質を添加することを含む;および/または、
ステップ(2)は、前記システムにおけるPear1の発現または活性を検出し、かつ対照群と比較することを含み、ここで、前記対照群は、候補物質を添加しない発現システムである;前記候補物質が統計的にPear1の発現または活性を増加させる場合、これは、当該候補物質が所望の薬物または化合物であることを示す;
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】