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特表2024-530564歯科補綴物のための多色酸化ジルコニウムブランク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】歯科補綴物のための多色酸化ジルコニウムブランク
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/083 20060101AFI20240816BHJP
   A61C 13/01 20060101ALI20240816BHJP
   A61K 6/818 20200101ALI20240816BHJP
   A61K 6/822 20200101ALI20240816BHJP
   A61K 6/824 20200101ALI20240816BHJP
   A61K 6/807 20200101ALI20240816BHJP
   A61K 6/802 20200101ALI20240816BHJP
   A61K 6/78 20200101ALI20240816BHJP
【FI】
A61C13/083
A61C13/01
A61K6/818
A61K6/822
A61K6/824
A61K6/807
A61K6/802
A61K6/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576123
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2022072435
(87)【国際公開番号】W WO2023017075
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】21190668.0
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】プリド, ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ロスブラスト, フランク
(72)【発明者】
【氏名】セルバン, コリーナ
(72)【発明者】
【氏名】クロリコフスキ, セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】カドゥフ, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】リッツベルガー, クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4C089
4C159
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089AA14
4C089BA01
4C089BA03
4C089BA04
4C089BA05
4C089BA20
4C089CA04
4C159FF02
4C159FF11
4C159FF24
4C159GG04
4C159GG12
(57)【要約】
本発明は、酸化ジルコニウムセラミックベースの第1の層と、酸化ジルコニウムセラミックベースの第2の層とを有する、歯科補綴物のためのブランクに関し、第1の層および第2の層は、色が異なり、境界表面を形成し、境界表面は、交互する波谷および波頭を伴う、起伏のある形状において、歯列弓の進行方向に形成され、波頭の頂点線は、境界表面の平面図において視認されると、近心遠位方向に放射線状に延在する。第2の層は、連続的または非連続的色勾配を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科補綴物のためのブランクであって、前記ブランクは、酸化ジルコニウムセラミックベースの第1の層と、酸化ジルコニウムセラミックベースの第2の層とを有し、前記第1の層および前記第2の層は、色が異なり、境界表面を形成し、前記境界表面は、交互する波谷および波頭を伴う、起伏のある形状において、前記歯列弓の進行方向に形成され、前記境界表面の平面図において視認されると、前記波頭の頂点線は、近心遠位方向に放射線状に延在する、ブランク。
【請求項2】
前記第2の層は、連続的または非連続的色勾配を有する、請求項1に記載のブランク。
【請求項3】
前記第2の層の酸化ジルコニウムセラミックは、イットリウムを含み、前記色勾配は、イットリウムの含有量の勾配によって形成される、請求項2に記載のブランク。
【請求項4】
前記第2の層内のイットリウムの含有量は、前記境界表面から前記境界表面に対向する前記第2の層の外側表面まで増加する、請求項3に記載のブランク。
【請求項5】
前記第2の層は、内側層と、外側層とを備え、前記内側層は、前記第1の層と前記第2の層との間の前記境界表面に隣接し、前記外側層は、前記境界表面に対向する前記第2の層の外側表面に隣接する、請求項2~4のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項6】
(a)前記内側層は、2.0~6.0モル%、好ましくは、3.0~5.0モル%のイットリウム含有量を有し、
(c)前記外側層は、3.5~8.0モル%、好ましくは、4.0~7.5モル%のイットリウム含有量を有し、
前記イットリウム含有量は、Y、ZrO、およびHfOの物質量の合計に対する、Yの物質量の比率として定義される、請求項5に記載のブランク。
【請求項7】
前記第1の層は、酸化ジルコニウムセラミック、または、アルミナ強化酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム強化アルミナ、スピネル、顔料、もしくはその混合物から成る群から選択される、1つ以上の材料を伴う、酸化ジルコニウムセラミックの混合物から作製される、請求項1~6のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項8】
前記第1の層の酸化ジルコニウムセラミックは、エルビウムおよび/またはイットリウムを含み、前記第1の層は、好ましくは、0.0~4.5モル%、特に、0.5~4.25モル%、特に好ましくは、1.5~3.5モル%のエルビウム含有量(前記エルビウム含有量は、Er、ZrO、およびHfOの物質量の合計に対する、Erの物質量の比率として定義される)、および/または0.0~4.5モル%、特に、0.5~4.25モル%、特に好ましくは、0.75~2.0モル%のイットリウム含有量(前記イットリウム含有量は、Y、ZrO、およびHfOの物質量の合計に対する、Yの物質量の比率として定義される)を有し、前記エルビウムおよびイットリウム含有量の合計は、さらに、特に好ましくは、1.5~6.0モル%、特に、2.0~4.5モル%、特に好ましくは、2.5~4.0モル%である、請求項1~7のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項9】
第1の層は、白色または桃色を帯びており、前記第2の層は、歯色である、請求項1~8のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項10】
前記第1の層の酸化ジルコニウムセラミックおよび前記第2の層の酸化ジルコニウムセラミックは、事前焼結されており、前記第1の層の酸化ジルコニウムセラミックおよび前記第2の層の酸化ジルコニウムセラミックは、相互から独立して、好ましくは、1.8~4.4g/cm、特に、2.5~4.0g/cmの密度を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項11】
前記第1の層および前記第2の層は、一体型製造によって、相互に接続される、請求項1~10のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項12】
少なくとも部分的に円弧形状であり、好ましくは、ディスクの形状、特に、円形ディスクの形状を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項13】
突起部、好ましくは、外方向に突出する挟着エッジは、前記ブランクの外周上に形成される、請求項12に記載のブランク。
【請求項14】
前記境界表面は、前記境界表面の平面図において視認されると、生産されることになる前歯の領域において、口腔-前庭方向に、扇形状において、波頭の頂点線を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項15】
前記境界表面は、前記境界表面の平面図において視認されると、生産されることになる大臼歯の領域において、口腔-頬方向に、相互に略平行である、前記波谷の放射状の頂点線または前記波谷の頂点線を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項16】
生産されることになる第2大臼歯に関する前記波谷の最低点を生産されることになる中切歯に関する前記波谷の最低点と接続する架空の直線と、前記円弧形状ブランクの床表面の上の本架空の直線の突出部との間の角度は、2.0°~4.5°、好ましくは、2.0°~4.0°、特に好ましくは、2.5°~3.5°、最も好ましくは、約3.0°である、請求項12または13に記載のブランク。
【請求項17】
前記ブランクの高さは、30mmを超えず、好ましくは、20~30mm、より好ましくは、25~29mmであり、好ましくは、(i)前記第1の層の高さは、5.0~9.0mm、特に、6.0~7.5mm、より好ましくは、約7.0mmであり、および/または(ii)前記第2の層の高さは、15.0~25.0mm、特に、18.0~22.0mm、より好ましくは、約20mmである、請求項12~16のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項18】
前記円弧形状ブランクの床表面と前記起伏のある境界表面の前記波頭の前記頂点線との間の角度は、7°~13°、好ましくは、9°~11°、より好ましくは、約10°である、請求項12~17のいずれか1項に記載のブランク。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載のブランクを調製するためのプロセスであって、
(i)第1および第2の素地を提供することであって、前記第1の素地は、前記ブランクの前記第1の層を形成するために提供され、前記第2の素地は、前記ブランクの前記第2の層を形成するために提供され、前記第1の素地の第1の側面は、波谷および波頭によって形成される、前記第1の層の波幾何学形状を有し、前記第2の素地の第1の側面は、対応する逆波幾何学形状を有する、ことと、
(ii)前記第1の素地の第1の側面および前記第2の素地の第1の側面が、それらの表面全体にわたって相互と近接して接触することになるように、前記第1および第2の素地を相互の上に置くことと、
(iii)前記第1および第2の素地をともに圧縮することと、
(iv)前記酸化ジルコニウムを事前焼結酸化ジルコニウムに変換するために、少なくとも1回の熱処理を遂行することと
を含む、プロセス。
【請求項20】
ステップ(iii)では、前記第1および第2の素地は、100MPaを超える圧力において、好ましくは、150~1,000MPa、好ましくは、150~500MPaの圧力において、ともに等圧的に圧縮される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
ステップ(iv)では、前記熱処理は、700~1,200℃の温度において、好ましくは、800~1,100℃の温度において行われる、請求項19または20に記載のプロセス。
【請求項22】
歯科修復物、特に、歯科補綴物を調製するための、請求項1~18のいずれか1項に記載のブランクの使用であって、前記歯科補綴物は、好ましくは、上顎総義歯と、下顎総義歯と、上顎部分義歯と、下顎部分義歯とから成る群から選択される、ブランクの使用。
【請求項23】
歯科修復物を調製するためのプロセスであって、
(i-1)機械加工によって、前記歯科修復物の形状を請求項1-18のいずれか1項に記載のブランクに提供することと、
(i-2)前記第1および第2の層の酸化ジルコニウムを高密度焼結酸化ジルコニウムに変換するために、少なくとも1回の熱処理を遂行することと、
(i-3)随意に、取得される前記歯科修復物の表面を仕上げることと
を含む、プロセス。
【請求項24】
前記機械加工は、コンピュータ制御されたミリングおよび/または研削デバイスを用いて遂行される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記歯科修復物は、上顎総義歯と、下顎総義歯と、上顎部分義歯と、下顎部分義歯とから成る群から選択される、請求項23または24に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科目的のため、特に、歯科補綴物等の歯科修復物の製造のためのブランクに関し、これを用いて、天然歯材料および天然口腔粘膜の光学性質が、非常に良好に模倣され得、これは、その性質に起因して、特に、上顎総義歯および/または下顎総義歯等の審美的に洗練された歯科補綴物の簡易な製造にとって好適であり、非常に良好な機械的性質を伴う。
【背景技術】
【0002】
歯科分野では、下顎および上顎における患者の治療のために、複合的かつある程度幅広なインプラント支持型修復物が、最近、ますます加工されている。歯の審美性に加えて、口腔粘膜(歯肉)への遷移の色合致および実際の口腔粘膜の最適な色模倣は、全体的な審美的結果に関して不可欠な役割を果たす。しかしながら、高度な手動労力が、実物同様の様式において歯肉面積を修復するためには要求される。
【0003】
過去には、総義歯は、通常、患者の無歯顎のシリコーン型押を行い、これに基づいて、石膏模型を加工し、ワックスプレートの支援を伴って、石膏模型上に人工歯列を設定し、患者上での試適、かつ必要な場合、事後補正を遂行し、人工歯、ワックス模型、および石膏模型の一部を石膏内に埋め込み、ワックスを融解し、結果として生じる空洞をPMMAベースの義歯材料で充填し、石膏埋込部を除去し、最終的な清浄および表面研磨を遂行することによって加工されていた。本手順は、通常、非常に良好な結果を生産するが、非常に時間がかかり、人手もかかる。
【0004】
象牙質からエナメル質への色および透光性の勾配をシミュレートする多色ブロック、ならびに歯科技術におけるそれらの使用は、先行技術から公知である。酸化ジルコニウムセラミックベースのブランク、およびコンピュータ制御されたミリング機械を用いたCAD/CAMプロセスにおける歯科補綴物の製造のためのそれらの使用もまた、すでに先行技術から公知である。しかしながら、そのようなブランクを使用するときであっても、高度な手動労力が、実物同様の様式において、歯肉面積を修復するために要求される。これは、主に、第1の代替案によると、例えば、歯肉色圧縮鋳塊を用いて、ZrO修復物の上で、歯肉部分を層状化または圧縮し、オールセラミック技法を用いて、それを自然に忠実なものに再作成することによって、歯肉面積が、続いて適用される必要があるという事実に起因する。また、修復の完了後、複合材料を用いて、歯肉面積を層状化することもまた、可能性として考えられる。しかしながら、色の不安定性および歯垢または悪臭形成のリスクが存在する。
【0005】
第2の代替案によると、事前成形歯肉面積を伴う酸化ジルコニウムブランクが、使用されるが、しかしながら、これは、依然として、歯肉の最適な色模倣を達成するために、事後処理を要求する。事前成形歯肉面積を伴う、歯色かつ事前陰影付酸化ジルコニウムディスクを使用するとき、歯色面積は、いくつかのステップにおいて、ガラスセラミック層状化、化粧張、着色、および特性付け材料で被覆される。事前形成された歯肉部分を伴う、無着色または微着色酸化ジルコニウムディスクを使用するとき、本問題は、現在のところ、歯肉面積において、ErCl、ErCl・6HO、またはEr(NO・5HO等の水溶性Er3+塩ベースの高度濃縮溶液を浸潤させることによって解決される。
【0006】
Er3+ベースの高度濃縮浸潤溶液は、強酸性pH値を有し、多くの場合、1~3の範囲内にある。安全上の理由のために、したがって、不適切に使用される場合、すなわち、好適な通風室または適正な室内換気を使用することなく、容器を開封するとき、ユーザが、熱傷を負う、またはHClまたはHNO蒸気等の有害なガス/蒸気を吸引するという非常に高いリスクが存在する。さらに、そのような溶液は、通常、長期間にわたって安定的ではなく、したがって、経時的に、それらの性質を変化させる。溶媒の制御されない蒸発もまた、経時的に、濃度における変化につながり得る。これらの溶液が、通常、ある有機化合物を含有するため、制御されない複合体形成もまた、生じ得る。最悪の場合では、これは、ある化合物の沈殿につながる。
【0007】
着色溶液を用いた浸潤はさらに、着色溶液が、多孔質酸化ジルコニウム中に均質に分散されないことを結果としてもたらし得る。これは、ユーザだけではなく、埃がない状態の程度および水分含有量等の修復物の表面品質に依存し得る。不均質性は、最終的な結果に有意な影響を与え得る。
【0008】
歯肉面積内の浸潤はまた、最終的な焼結後、酸化ジルコニウムの安定化の度合いおよび位相組成における変化を引き起こす。最終的な焼結の間、Er3+イオンは、酸化ジルコニウムの中にすでに組み込まれているY3+イオンに加えて、結晶骨格の中に組み込まれ得る。これは、ひいては、浸潤された面積内の位相組成における、過剰な安定化および関連付けられる変化につながる。これは、機械的性質、特に、破砕靭性および二軸強度の劣化を結果としてもたらす。特に、歯肉面積では、非常に大きな咀嚼負荷が、インプラント支持型修復物によって吸収されるため、したがって、本面積の弱化が、回避されなければならない。
【0009】
さらに、より高濃度のErを用いてドープすることは、酸化ジルコニウムの焼結挙動を変化させる。Erは、焼結活性剤として作用し、安定化された酸化ジルコニウムの理論的密度を変化させる。浸潤された面積の総収縮が、増加し、したがって、鋳塊をミリングするときに考慮される拡大係数は、もはや正しくなく、高密度焼結修復物の適合の正確度は、悪影響を受ける。Erが、歯肉面積を着色するために、局所的にのみ使用される場合、局所的な収縮が、焼結の間、より早期に生じ、すなわち、歯肉面積が、すでに縮小している一方、歯面積における修復は、収縮よりも遅れる。これは、全体的構造物内に留まり、それを恒久的に弱化する、焼結プロセスの間の応力につながる。突然の破砕は、多くの場合、作業場において、または修復物が設置されるときに生じる。
【0010】
第WO 2010/057584 A1号(特許文献1)は、義歯の加工を簡略化するために、桃色成分および歯色成分を伴う、ミリングブロックであって、桃色成分および歯色成分は両方とも、本質的に、PMMAまたは(メタ)アクリレートベースのプラスチックから作製される、ミリングブロックを提案している。さらに、数値的に制御されたミリングユニットを用いることで、CAD/CAMプロセスを用いて、上顎総義歯または下顎総義歯の加工のためのそのようなミリングブロックの使用が、説明されている。
【0011】
第WO 2013/068124号(特許文献2)はまた、歯科補綴物の生産のための2つの面積を伴うミリングブロックを説明している。第1の面積は、顎の形状に対応して機械加工され、ミリングによって患者の個々の粘膜に適合され得る、義歯床を有する。第2の面積は、所定の配列において設定され、任意のさらなる仕上げを要求しない、非個別化され、事前加工された人工歯を有する。他の材料の中でもとりわけ、酸化ジルコニウムセラミックは、第1および第2の面積のための材料として述べられている。しかしながら、そのようなミリングブロックを用いる場合、対向する顎における個々の患者の状況に対する適合が、不可能である。
【0012】
第US 2021/0128283 A1号(特許文献3)は、CAD/CAMを用いた補綴物の加工のための2色ブランクであって、ブランクは、歯肉を模倣するための下側桃色層と、歯を模倣するための上側歯色層とを有する、ブランクを説明している。とりわけ、酸化ジルコニウムセラミックが、上側および下側層のための材料として述べられている。2つの層間の境界表面は、複数の凸面部分と、凹面部分とを有し、したがって、歯肉層の上側表面は、起伏のある形状を有する。このように、歯肉への自然な遷移が、特に容易に模倣され得ること、陰影補正ステップの数を低減させることが可能であることが、説明されている。
【0013】
第EP 3 064 170 A1号および第EP 3 597 143 A1号はそれぞれ、薄橙色樹脂材料と、歯色樹脂材料とから成る義歯ブランクであって、材料間の境界表面は、歯列弓方向に視認されると、起伏がある、義歯ブランクを開示している。
【0014】
したがって、歯科技術の分野における使用に対する、特に、歯科補綴物の生産に対する多様な要件を満たすブランクを提供することは、大きな課題である。そのようなブランクは、製造することが容易であるべきであるだけではなく、それらはまた、所望の幾何学形状に成形することが容易であるが、依然として、高強度な修復物を生産するべきである。最終的に、ブランクは、天然歯材料および天然口腔粘膜の外観に近いものを結果としてもたらすはずであり、したがって、歯科補綴物の所望の光学性質の費用のかかる後続の作成が、省略され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2010/057584号
【特許文献2】国際公開第2013/068124号
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0128283号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によると、上記で述べられた問題が、回避されることになる。本発明は、したがって、特に、製造することが容易であり、対照的にて所望の歯科修復物の形状が、簡易様式において機械加工されることによって与えられ得、成形後、精密かつ高強度な歯科補綴物に変換され得る、ブランクであって、ブランクは、天然歯材料および天然口腔粘膜の光学的外観を非常に良好に模倣することが可能である、ブランクを提供するという問題に基づいている。
【0017】
本問題は、請求項1~18に記載のブランクによって解決される。請求項19~21に記載のブランクを調製するためのプロセス、請求項22に記載のブランクの使用、および請求項23~25に記載の歯科補綴物を調製するためのプロセスを提供することもまた、本発明の目的である。
【0018】
本発明は、歯科補綴物ブランク、すなわち、歯科補綴物ブランクに関する。本発明によるブランクは、酸化ジルコニウムセラミックベースの第1の層と、酸化ジルコニウムセラミックベースの第2の層とを有し、第1の層および第2の層は、色が異なり、境界表面を形成し、境界表面は、交互する波谷および波頭を伴う、起伏のある形状において、歯列弓の進行方向に形成され、境界表面の平面図において視認されると、波頭の頂点線は、近心遠位方向に、放射線状に延在することを特徴とする。
【0019】
用語「~ベースの」は、ブランクの第1および第2の層が、層の全ての成分の合計の質量に基づいて、主として、酸化ジルコニウム、すなわち、ZrOを含むことを意味する。ZrOおよび少量の不純物HfOに加えて、第1および/または第2の層は、例えば、Fe、Tb、Ce、Pr、Mn、Cr、Ni、Co、Nd、Dy、Eu、Er、V、および/またはTi等の色を調節するための成分、ならびに/もしくはMg、Al、Y、Ce、La、Yb、Gd、Ga、および/またはIn等の焼結動態を調節するための成分を含んでもよい。さらに、第1および/または第2の層は、酸化ジルコニウムと顔料との複合物および/または混合物の形態において、酸化ジルコニウムと他のセラミックまたはスピネルとの混合物を含有してもよい。
【0020】
色における差異は、より狭義な意味では、色陰影における差異、および/または透光性、乳白光性、または蛍光性における差異を指す。用語「透光性」は、光の透過率を説明する。色は、特に、そのLab値によって、または歯科業界において一般的に使用される陰影ガイドによって特徴付けられることができる。さらに、ブランク内の第1および第2の層の色における差異は、ヒトの眼に可視である必要はない。むしろ、陰影および/または透光性における差異は、焼結ステップまたは熱処理後にのみ、可視となり得る。同様に、用語「色勾配」は、色相の勾配に加えて、透光性、乳白光性、または蛍光性の勾配を含む。
【0021】
第1の層と第2の層との間の境界表面は、加工されることになる歯科補綴物の歯列弓の進行方向に、起伏のある形状において形成される。これは、円弧形状、特に、ブランクを通した放物線状または半円形の切断表面の側面図において、第1の層と第2の層との間の境界表面が、波形状であることを意味する。例えば、ブランクが、ディスクの形状を有する場合、切断表面は、ディスクの上側床表面から下側床表面まで延在し、ディスクの外側面に略平行である。波形状は、交互する波谷および波頭を有する。波谷はまた、溝または窪みとも称され得、波頭はまた、隆線または標高とも称され得る。波頭のピークおよび下方に対向する波谷のピークもそれぞれ、頂点線を形成する。換言すると、波頭または波谷の頂点はそれぞれ、線、特に、直線を形成する。波頭の頂点線および好ましくは波谷の頂点線もまた、境界表面またはブランクの床表面の上方から視認されるとき、内側から外側まで、すなわち、近心から遠位まで延在する。用語「起伏のある」は、本文脈において、純粋に正弦曲線である波形のみを説明するために使用されず、概して、交互する隆起および陥凹面積を伴う、全ての波形を含む。
【0022】
さらに、ブランクの第1の層と第2の層との間の境界表面の幾何学形状は、境界表面が、近心遠位方向に放射状に成形されるような方法で設計される。すなわち、ブランクの境界表面の上面図において、波頭の頂点線は、ブランクの中央領域から、放射状方向に、すなわち、外方向に、光線形状において、好ましくは、直線の形態において延在する。3次元の起伏のある放射状幾何学形状は、好ましくは、多数の実際の患者の症例からのデータに基づく。
【0023】
本発明によるブランクは、したがって、特に、所望の色勾配が、2つの異色層ならびに層の統合された起伏のある放射状幾何学形状を伴って作成されるという事実によって特徴付けられ、したがって、歯および歯肉の色ならびに歯材料から歯肉への遷移の進行方向が、仕上げられる歯科補綴物において、特に良好に模倣されることができる。第1の層の起伏のある形状は、歯肉縁を特に良好に再生産することができる。放射状に延在する波構造に起因して、歯肉縁は、要求される歯列弓のサイズにかかわらず、常時、準自動的に作成されることができる。これは、第US 2021/0128283 A1号から公知の凸面および凹面の格子様分布に優る特定の利点を表す。
【0024】
さらに、本発明によるブランクは、酸化ジルコニウムセラミックベースの層を使用することによって、例えば、補綴物等の長期の歯科修復物の機械的性質に対する要件を完全に満たす、高強度な歯科修復物が、生産され得るという事実によって特徴付けられる。加えて、材料としてのZrOの使用は、さらなる利点につながる。例えば、酸化ジルコニウムセラミックの場合では、ブランクは、プラスチック材料ベースのブランクと比較して、全体的により平坦に作製されることができ、したがって、ブランクの全高は、低減され得、通常のCAMミリングユニットにおけるブランクの機械加工は、例えば、設計におけるより少ないアンダーカットに起因して、簡略化されることができる。
【0025】
本発明によるブランクを用いる場合、天然歯材料だけではなく、天然口腔粘膜の光学的外観も、非常に良好に模倣されることができる。さらに、本発明によるブランクは、特に、簡易様式において、所望の歯科補綴物の形状を与えられることができる。驚くべきことに、これは、第1の層と第2の層との間の境界表面の特別な設計と、第1および第2の層の材料としての酸化ジルコニウムの使用との組み合わせによって達成される。本発明によるブランクは、デジタル固定型および条件付除去可能補綴物の分野において、効率的なモノリシック加工を有効にし、したがって、部分的または全体的な補綴物が、1回のミリングプロセスおよびわずかな手動ステップにおいて加工されることができる。また、本発明によるブランクを用いる場合、例えば、CAMミリングによる成形後、後続の歯肉面積内の着色溶液を用いた浸潤は、必要とされず、これは、過去においては、生体内での修復の失敗の頻発する症例につながっていた。これは、応力のないモノリシック加工、したがって、長期間の安定した修復物を保証する。
【0026】
本発明によるブランクの好ましい実施形態では、ブランクの第1の層と第2の層との間の境界表面の幾何学形状は、境界表面が、境界表面の上面図において視認されると、加工されることになる補綴物の前歯の領域において、近心遠位方向に扇形状であるような方法で設計される。すなわち、ブランクの境界表面の上面図において、波頭の頂点線は、作成されることになる歯列弓の部分的断面の中心点から、放射線状方向に、すなわち、外方向に、扇形状において延在する。これは、作成されることになる前歯の面積内で、波頭および好ましくは波谷もまた、口腔-前庭方向に視認されるとき、扇形状において、すなわち、光線中心から始まり、放射線状に延在することを意味する。
【0027】
さらに、作成されることになる大臼歯の面積内の第1の層と第2の層との間の境界表面は、境界表面の上面図において視認されると、口腔-頬方向に、波谷の放射状の頂点線、特に、相互に略平行である、波谷および好ましくは波頭の頂点線もまた有することが好ましい。表現「略平行」は、波谷および好ましくは波頭の頂点線もまた、平行に延在する、または平行度から最大10度、特に、最大5度偏移することを意味する。作成されることになる大臼歯の面積内の波谷の平行な頂点線の設計は、特に、後部領域におけるより良好な審美性という利点を提供する。
【0028】
全体として、前部領域内の波頭の頂点線の扇形状の設計および後部領域内の波谷の頂点線の平行な設計という2つの上記の実施形態は、最終的な歯科補綴物の機能および審美性の両方を改良することを可能にする。特に、小さな歯列弓および大きな歯列弓の両方にとって好適な歯セットを提供することが、可能である。大きな歯列弓に関して、歯列弓は、わずかにさらに放射状に外方向にミリングされ、すなわち、前庭方向に変位され、小さな歯列弓に関して、これは、さらに内方向にミリングされる、すなわち、口腔方向に変位される。本発明による大臼歯の面積に関する境界表面の波頭および波谷の平行化に起因して、比較的大きな咬合表面もまた、本発明による小さな歯列弓に対しても利用可能である。
【0029】
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるブランクは、作成されることになる中切歯の面積内に、真の光線中心を伴う扇形状の波谷および波頭を有することができる。しかしながら、これは、作成されることになる犬歯に関する波頭の頂点線によって、もはや適切に符合されない。代わりに、本頂点線は、あまり扇形状ではなく、側切歯の隣接する頂点線に対してより平行である。これはまた、第1小臼歯の頂点線にも該当し、これも、再度、さらにより平行に近い進行方向を有する。次の頂点線、すなわち、第2小臼歯、第1大臼歯、および第2大臼歯に関する頂点線は、相互に対して完全に平行である。
【0030】
さらに、頂点線は、好ましくは、遠位から近心まで上方向に進む。境界表面は、したがって、好ましくは、鋳塊内に斜めに配列される。これは、天然歯、特に、前歯の色および透光性を特に良好に模倣することを可能にする。
【0031】
さらに好ましい実施形態では、本発明によるブランクの第2の層は、連続的、すなわち、線形、または非連続的、すなわち、非線形の色勾配を有する。これはまた、天然歯、特に、前歯の色および透光性の勾配が、特に良好に模倣されることを可能にする。
【0032】
特に好ましくは、第2の層の酸化ジルコニウムセラミックは、イットリウムを含有し、色勾配、特に、透光性勾配は、好ましくは、イットリウムの量の勾配によって、すなわち、イットリウムの量を徐々に変化させることによって形成される。したがって、ブランクは、好ましくは、イットリウムの量の連続的、すなわち、線形、または非連続的、すなわち、非線形の勾配を呈する。特に、イットリウムの含有量は、第1の層と第2の層との間の境界表面から、境界表面に対向する第2の層の外側表面に向かって増加する。イットリウム含有量の本増加は、連続的または漸増的であり得る。
【0033】
一実施形態では、本発明によるブランクの第2の層は、それらのイットリウム含有量が異なる、少なくとも2つの離散層を有する。
【0034】
好ましくは、第2の層は、内側層と、外側層とを備え、内側層は、第1の層と第2の層との間の境界表面に隣接し、外側層は、境界表面に対向する第2の層の外側表面に隣接する。内側層は、特に、いわゆる象牙質層としての役割を果たす、すなわち、天然歯の象牙質面積を模倣する。外側層は、特に、切歯層としての役割を果たす、すなわち、天然歯のエナメル質層を模倣する。
【0035】
本実施形態では、
(a)内側層は、2.0~6.0モル%、特に、3.0~5.0モル%のイットリウム含有量を有し、
(c)外側層は、3.5~8.0モル%、特に、4.0~7.5モル%のイットリウム含有量を有する、ことが、特に、好ましく、
イットリウム含有量は、Y、ZrO、およびHfOの物質量の合計に対する、Yの物質量の比率として定義される。
【0036】
随意に、内側層と外側層との間に、いわゆる中間層が存在する。中間層が存在する場合では、
(a)内側層は、2.0~6.0モル%、特に、3.0~5.0モル%のイットリウム含有量を有し、
(b)中間層は、3.0~7.0モル%、特に、3.5~4.5モル%のイットリウム含有量を有し、
(c)外側層は、3.5~8.0モル%、特に、4.0~7.5モル%のイットリウム含有量を有する、ことが、特に、好ましく、
イットリウム含有量は、Y、ZrO、およびHfOの物質量の合計に対する、Yの物質量の比率として定義される。
【0037】
さらに、内側層、外側層、および随意に、中間層は、Yに加えて、色を調節するための酸化物、特に、Fe、Cr、Mn、Tb、Pr、Ce、Ni、Co、Nd、Dy、Eu、Er、V、および/またはTiの酸化物と、焼結動態を調節するための酸化物、特に、Mg、La、Al、Ce、Yb、Gd、Ga、および/またはInを含有することが好ましい。
【0038】
好ましくは、内側層、外側層、および随意に、中間層はさらに、Yに加えて、色を調節するために、Fe、Cr、Mn、Tb、およびPrのうちの少なくとも1つの酸化物、特に好ましくは、これらの元素の全ての酸化物を含む。好ましくは、内側層、外側層、および随意に、中間層はさらに、Yに加えて、焼結動態を調節するために、Mg、La、Y、およびAlのうちの少なくとも1つの酸化物、特に好ましくは、これらの元素の全ての酸化物を含有する。
【0039】
第2の層は、好ましくは、示される量において、以下の成分のうちの少なくとも1つ、特に、その全てを含み得る。
【表1】
【0040】
さらに、内側層は、好ましくは、示される量において、以下の成分のうちの少なくとも1つ、特に、その全てを含み得る。
【表2】
【0041】
さらに、外側層は、好ましくは、示される量において、以下の成分のうちの少なくとも1つ、特に、その全てを含み得る。
【表3】
【0042】
さらに、中間層は、好ましくは、示される量において、以下の成分のうちの少なくとも1つ、特に、その全てを含み得る。
【表4】
【0043】
第1の層の酸化ジルコニウムセラミックは、好ましくは、エルビウムおよび/またはイットリウムを用いて安定化される、酸化ジルコニウムを含む。好ましくは、第1の層の酸化ジルコニウムセラミックは、0.0~4.5モル%、特に、0.5~4.25モル%、特に好ましくは、1.5~3.5モル%のエルビウム含有量を有し、エルビウム含有量は、Er、ZrO、およびHfOの物質量の合計に対する、Erの物質量の比率として定義される。さらに、第1の層の酸化ジルコニウムセラミックは、好ましくは、0.0~4.5モル%、特に、0.5~4.25モル%、特に好ましくは、0.75~2.0モル%のイットリウム含有量を有し、イットリウム含有量は、Y、ZrO、およびHfOの物質量の合計に基づいて、Yの物質量の比率として定義される。さらに、エルビウムおよびイットリウムの含有量の合計が、1.5~6.0モル%、特に、2.0~4.5モル%、より好ましくは、2.5~4.0モル%であることが好ましい。ブランクの第1の層が、加工されることになる歯科修復物の歯肉面積を形成する役割を果たすため、第1の層内のイットリウムの色勾配または材料勾配の形成は、有利ではない。したがって、第1の層内のイットリウム含有量は、好ましくは、略一定である。代替として、第1の層は、固定型かつ可動性歯肉を表すために、勾配を有してもよい。
【0044】
第1の層の酸化ジルコニウムセラミックは、好ましくは、示される量において、以下の成分のうちの少なくとも1つ、特に、その全てを含有し、
【表5】
第1の着色酸化物は、Feと、Tbと、Prと、Vとから成る群から選択され、特に、酸化ジルコニウムセラミックの付加的な黄色着色をもたらすことが可能であり、第2の着色酸化物は、Mnと、Crと、CoOとから成る群から選択され、特に、酸化ジルコニウムセラミックの付加的な灰色着色をもたらすことが可能である。
【0045】
一実施形態では、ブランクの第1の層は、酸化ジルコニウムセラミック、または酸化ジルコニウムセラミックとアルミナ強化酸化ジルコニウム(ATZ)、酸化ジルコニウム強化アルミナ(ZTA)、スピネル、顔料、もしくはそれらの混合物から成る群から選択される、1つ以上の材料との混合物を含むことが好ましい。
【0046】
アルミナ強化酸化ジルコニウム(ATZ)は、5~40重量%、特に、約20重量%のAlと、60~95重量%、特に、約80重量%のZrOとを含む。Al部分は、50重量ppm~3重量%等のMgOを用いてドープされてもよい。ZrO部分は、1~3モル%等のYを用いてドープされてもよい。
【0047】
酸化ジルコニウム強化アルミナ(ZTA)は、60~95重量%、特に、約80~90重量%のAlと、5~40重量%、特に、約10~20重量%のZrOとを含む。Al部分は、50重量ppm~3重量%等のMgOを用いてドープされてもよい。ZrO部分は、1~3モル%等のYを用いてドープされてもよい。
【0048】
酸化ジルコニウムセラミックとATZおよびZTAとの混合物では、離散AlおよびZrO微結晶が、SEMによって最終的な構造内で検出され得る。対照的に、現在の歯科用途のための酸化ジルコニウムセラミックでは、Al微結晶が、通常、SEMによる微小構造内で検出されることができない。これは、おそらくは、Alのより少ない量、通常、約0.05~0.1重量%、およびその均質な分布に起因する。ATZおよびZTA複合物は、ブランクの機械的性質に正の影響を与え、特に、二軸強度および破砕靭性の両方を増加させることができる。破砕靭性における増加は、特に、ATZまたはZTAのZrO含有量が、1.5~2.5モル%の
によって安定化されるときに達成される。
【0049】
LaMgスピネル等、MgAlと、SrAlと、Laスピネルと、Yスピネルと、その混合物とから成る群から選択されるスピネルは、特に、スピネルとして好適である。スピネルは、ブランクの機械的性質に正の影響を与え、特に、二軸強度および破砕靭性の両方を増加させることができる。破砕靭性における増加は、特に、酸化ジルコニウムセラミックのZrO部分が、1.5~2.5モル%のYによって安定化されるときに達成される。酸化ジルコニウムセラミックとスピネルとの複合物では、スピネルは、通常、棒の形態において、特に、高い焼結温度において増大し、これは、複合物の破砕靭性に正の効果をもたらす。
【0050】
本発明によるブランクの第2の層が、好ましくは、歯色であり、ブランクの熱処理後であっても、歯色陰影を保持する一方、第1の層は、白色または桃色を帯びた色であり、熱処理後であっても、そのような陰影を保持することができる。白色を帯びた陰影を伴う第1の層の場合では、仕上げられる歯科修復物内の歯肉面積の審美性を可能な限り厳密に模倣するために、成形および熱処理後、続いて、歯肉面積をコーティングすることが、一般的である。そのようなステップは、事前着色された第1の層を伴う第1の層の場合では、省略させることができ、したがって、本実施形態では、例えば、歯科補綴物のより簡易な生産が、可能である。
【0051】
特に有利であるのは、第1の層の酸化ジルコニウムセラミックおよび第2の層の酸化ジルコニウムセラミックが事前焼結される、本発明によるブランクである。これは、歯科修復物の加工のための後続の機械加工の間の処理能力および精度を改良する。特に、事前焼結状態における酸化ジルコニウムのより低い強度に起因して、ブランクの簡易で、時短となり、かつミリングツールの扱いが容易な成形が、可能にされる。好ましくは、第1の層の酸化ジルコニウムセラミックおよび第2の層の酸化ジルコニウムセラミックは、1.8~4.4g/cm、特に、2.5~4.0g/cmの密度を有する。
【0052】
そのような事前焼結ブランクの場合、歯科修復物の加工のために、ブランクを焼結ステップ、すなわち、熱処理に曝すことが必要とされ、したがって、所望の機械的性質、特に、高強度および硬度が、達成される。そのような熱処理の間、酸化ジルコニウムセラミックの焼結収縮が、生じる。したがって、事前焼結ブランクを使用するとき、焼結収縮を伴わない材料、例えば、プラスチック材料ベースのブランクと比較して、本発明によるブランクの起伏のある放射線状幾何学形状が、拡大されることが必要とされる。好ましくは、事前焼結状態における本発明によるブランクでは、幾何学形状の寸法は、1.200~1.250、特に、1.22~1.25倍増加される。本発明による緑色状態のブランクの場合では、幾何学形状の寸法は、1.250~1.350、特に、約1.275倍増加される。
【0053】
本発明によるブランクは、好ましくは、10~150MPa、特に、20~120MPa、より好ましくは、25~80MPaの二軸破砕強度を有する。二軸破砕強度は、ISO 8672(2008)(ピストンオンスリーボール試験)に従って判定された。
【0054】
さらに、本発明によるブランクは、好ましくは、50~1,000MPa、特に、300~850MPa、より好ましくは、300~700MPaのビッカース硬度Hv2.5を有する。ビッカース硬度は、2.5kgの荷重において、ISO 14705:2016に従って測定された。
【0055】
さらに、本発明によるブランクの第1の層および第2の層は、一体型製造によって、相互に接続されることが好ましい。これは、効率的なモノリシック生産を可能にし、すなわち、患者特有の全体的な補綴物が、1回のミリングプロセスにおいて、1つのブランクから生産されることができる。
【0056】
本発明によるブランクの形状は、好ましくは、少なくとも部分的に、円弧形状である。特に、ブランクは、ディスクの形状、特に好ましくは、円形ディスクの形状を有する。
【0057】
さらに、円弧形状ブランクは、外周上に突起部、特に、外方向に突出する挟着エッジを有することが好ましい。本挟着エッジは、共通のCAD/CAMデバイス等の研削およびミリングデバイスにおけるホルダとしての役割を果たす。突起部は、ブランクと同一の材料から作製されることができる。本場合では、ブランクは、最初に、より大きな円周を提供されてもよく、突起部は、例えば、ミリング機械上での機械加工によって取得可能であり得る。代替として、突起部は、異なる材料から形成されることもでき、例えば、続いて、ブランクに適用されるプラスチック環によって、形成されることができる。
【0058】
さらに、本発明によるブランクは、外周上に少なくとも2つのマーキング、溝、および/または平坦部を有し、これらは、相互に非対称かつ非回転対称に、すなわち、相互に正反対に配列され、回転保護または回転防止保護としての役割を果たすことが好ましい。ディスクと関連する起伏のある幾何学形状の位置は、既知であり、全ての空間方向に固定されなければならず、したがって、修復物は、機械加工のための後続のステップにおいて、波形状と関連して設置されることができる。
【0059】
本発明による酸化ジルコニウムセラミックベースのブランクは、特に、固定型補綴物のために使用される。これは、本発明によるブランクが、特に、螺着または接合することによって、インプラントまたは歯残根等の残存歯部分に取り付けられる、固定型歯科補綴物の加工にとって好適であることを意味する。結果として、上顎補綴物の製造のための本発明によるブランクの場合では、患者の口蓋への補綴物の接着のために必要とされる、折畳型口蓋床が、省略されることができる。これは、ひいては、歯肉面積を模倣する役割を果たす、ブランクの第1の層の高さが、低減され得ることを意味する。さらに、口蓋床に対する必要性を排除することによって、第1の層全体を桃色にする、または別様にそれを着色することは必要とされない。むしろ、ブランクの円弧形状床の上方から視認されるとき、内側面積が、省略される、または無着色のまま残されることができる。
【0060】
その結果、本発明によるブランクの場合では、その高さが、低減されることができ、したがって、市販の歯科ミリング機械においてブランクを機械加工するための臨界限界である、30mmを大きく下回ったままである。好ましい実施形態では、ブランクの高さ、すなわち、ブランクの円弧形状頂部とブランクの対向側の円弧形状底部との間の距離は、30mmを超えず、好ましくは、20~30mm、より好ましくは、25~29mmである。さらに、第1の層の高さは、好ましくは、5.0~9.0mm、特に、6.0~7.5mm、特に好ましくは、約7.0mmである、および/または第2の層の高さは、好ましくは、15.0~25.0mm、特に、18.0~22.0mm、特に好ましくは、約20mmである。第1の層の高さは、好ましくは、ディスク形状ブランクの外側表面の側面図において、境界表面に対向する第1の層の外側表面と第1の層の最深波谷との間の最小距離として定義される。第2の層の高さは、図3において距離31として下記に図示されるように、好ましくは、ディスク形状ブランクの外側表面の側面図において、境界表面に対向する第2の層の外側表面と第2の層の最高波頭との間の最小距離として定義される。
【0061】
第1の層の高さ対第2の層の高さの比は、好ましくは、1:1~1:5、特に、1:2.5~1:3.5である。
【0062】
本発明による、ブランクの特別な波幾何学形状と使用されることになる酸化ジルコニウム材料とを組み合わせることによって、さらなる利点が、ブランクの全高における低減に加えて、達成され得る。例えば、驚くべきことに、先行技術において公知の義歯ブランクと比較して、(i)第1の層と第2の層との間の境界表面とブランクの表面との間の角度、および/または(ii)境界表面の波頭の頂点線とブランクの表面との間の角度を低減させることが可能であることが、見出されている。
【0063】
特に、上顎内の補綴物の調製にとって好適である、好ましい実施形態では、ブランクは、加工されることになる第2大臼歯に関する波谷の最低点を加工されることになる中切歯に関する波谷の最低点と接続する架空の直線と、ブランクの円弧形状床表面の上の本架空の直線の突出部との間の角度が、2.0°~4.5°、好ましくは、2.0°~4.0°、特に好ましくは、2.5°~3.5°、最も好ましくは、約3.0°であることを特徴とする。そのような小さな角度を使用することによって、色勾配の利点が、特に、第2の層内に色勾配を伴うブランクの場合では、より良好に利用されることができ、加工されることになる補綴物の前歯および後歯の色ならびに透光性の勾配が、改良されることができる。
【0064】
さらに好ましい実施形態では、ブランクは、ブランクの円弧形状床表面と起伏のある形状の境界表面の波頭の頂点線との間の角度が、7°~13°、好ましくは、9°~11°、特に好ましくは、約10°であることを特徴とする。
【0065】
特に、ブランクの全高の低減と組み合わせると、これらの実施形態では、より少ないアンダーカットが、必要とされるため、ブランクの表面に対する境界表面の角度の低減および/またはブランクの表面に対する波頭の頂点線の角度の低減は、ミリング機械におけるブランクのより容易な機械加工性につながる。
【0066】
本発明はまた、本発明によるブランクを調製するためのプロセスに関する。
【0067】
本発明によるブランクを調製するためのプロセスは、
(i)第1および第2の素地が、提供され、第1の素地は、ブランクの第1の層を形成するために提供され、第2の素地は、ブランクの第2の層を形成するために提供され、第1の素地の第1の側面は、波谷および波頭によって形成される、第1の層の波幾何学形状を有し、第2の素地の第1の側面は、対応する逆波幾何学形状を有し、
(ii)第1および第2の素地は、第1の素地の第1の側面および第2の素地の第1の側面が、それらの表面全体にわたって相互に近接して接触することになるように、相互の上に置かれ、
(iii)第1および第2の素地は、ともに圧縮され、
(iv)少なくとも1回の熱処理が、酸化ジルコニウムを事前焼結酸化ジルコニウムに変換するために遂行される、ことを特徴とする。
【0068】
特に好ましくは、第1の素地および第2の素地は、ステップ(i)において、第1の層および第2の層のための酸化ジルコニウムセラミック出発材料をそれぞれ別個に型枠の中に充填し、続いて、塊をそれぞれ一軸的におよび/または等圧的に圧縮することによって、別個に提供される。本圧縮の間の圧力は、好ましくは、100MPa未満である。
【0069】
続いて、第1および第2の素地の表面の所望の成形は、好ましくは、ミリングによって達成され得る。
【0070】
さらに、第1および第2の素地は、ステップ(iii)において、特に、100MPaを超える圧力において、好ましくは、150~1,000MPa、好ましくは、150~500MPaの圧力において、ともに等圧的に圧縮されることが好ましい。
【0071】
さらに、ステップ(iv)では、熱処理は、700~1,200℃の温度において、好ましくは、800~1,100℃の温度において行われることが好ましい。ステップ(iv)における熱処理の持続時間は、700~1,200℃、好ましくは、800~1,100℃の温度範囲内で、好ましくは、5~600分、特に、10~300分であり得る。
【0072】
本発明によるブランクの説明された特別な性質に起因して、それらは、特に、歯科修復物、特に、歯科補綴物の生産にとって好適である。本発明はまた、したがって、歯科修復物、特に、歯科補綴物の調製のために、本発明によるブランクの使用に関し、歯科補綴物は、好ましくは、上顎総義歯と、下顎総義歯と、上顎部分義歯と、下顎部分義歯とから成る群から選択される。特に、該歯科補綴物は、有利なこととして、インプラント修復物であってもよい。本場合では、インプラントに対する歯科補綴物の境界表面は、直接製造されることができ、したがって、歯科補綴物は、例えば、ねじ接続によって、直接インプラントに接続され得る。代替として、歯科補綴物は、例えば、接着によって、床、例えば、チタンから作製される床に接続されることができ、これは、次いで、螺着によってインプラントに接続される。
【0073】
さらなる側面では、本発明はまた、歯科修復物を調製するためのプロセスであって、
(i-1)機械加工によって、歯科修復物の形状を本発明によるブランクに提供することと、
(i-2)第1および第2の層の酸化ジルコニウムを高密度焼結酸化ジルコニウムに変換するために、少なくとも1回の熱処理を遂行することと、
(i-3)随意に、取得される歯科修復物の表面を仕上げることと
を含む、プロセスに関する。
【0074】
望ましく成形された歯科修復物、特に、歯科補綴物は、本発明によるブランクから容易に機械加工されることができる。
【0075】
ステップ(i-1)における機械加工は、通常、材料除去プロセスによって、特に、ミリングおよび/または研削によって遂行される。機械加工は、コンピュータ制御されたミリングおよび/または研削デバイスを用いて遂行されることが好ましい。特に好ましくは、機械加工は、CAD/CAMプロセスの一部として遂行される。
【0076】
ステップ(i-2)では、ブランクは、熱処理にさらされ、高密度焼結酸化ジルコニウムセラミックの形成をもたらす。熱処理は、特に、1,050~1,700℃、好ましくは、1,100~1,600℃の温度において行われる。熱処理は、特に、0~240分、好ましくは、5~180分、特に好ましくは、30~120分の持続時間にわたって遂行され、用語「持続時間」は、最高温度の保持時間を指す。
【0077】
本発明に従って生産される歯科修復物は、特に、歯科補綴物であり、特に好ましくは、上顎総義歯と、下顎総義歯と、上顎部分義歯と、下顎部分義歯とから成る群から選択される。
【0078】
優秀な光学性質に加えて、本発明に従って生産される歯科補綴物は、特に、高い強度によって特徴付けられる。好ましくは、歯科補綴物は、800MPaを超える、特に、900MPaを超える、特に好ましくは、1,000MPaを超える、ISO 6872(2208)(ピストンオンスリーボール試験)に従って、歯肉面積内、すなわち、第1の層内に二軸破砕強度を有する。
【0079】
さらに、象牙質面積内、すなわち、第2の層の内側層内では、歯科補綴物は、好ましくは、600MPaを超える、特に、600MPaを超える、特に好ましくは、800MPaを超える、ISO 6872(2208)(ピストンオンスリーボール試験)に従って、二軸破砕強度を有する。
【0080】
加えて、切開領域内、すなわち、第2の層の外側層内の歯科補綴物は、好ましくは、300MPaを超える、特に、400MPaを超える、特に好ましくは、500MPaを超える、ISO 6872(2208)(ピストンオンスリーボール試験)に従って、二軸破砕強度を有する。
【0081】
随意のステップ(i-3)では、歯科修復物の表面は、依然として、仕上げられることができる。特に、天然口腔粘膜の陰影を特に良好に模倣するために、歯科補綴物の歯肉面積を、白色を帯びた歯肉面積を用いて、すなわち、白色を帯びた第1の層を伴うブランクを使用するとき、層状化、化粧張、着色、または特徴付け材料を用いて被覆することが可能である。代替として、または加えて、歯状修復物の表面研磨は、ステップ(i-3)において遂行されることができる。
【0082】
さらなる特徴および利点が、図面を参照して、本発明の実施形態の以下の説明から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1図1は、本発明による、ブランクの概略斜視図である。
【0084】
図2図2は、図1に示される、ブランクの第1の層の概略上面図である。
【0085】
図3図3は、本発明による、ブランクの概略側面図である。
【0086】
図4図4は、本発明による、ブランクの別の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
図1は、上顎のための歯科補綴物に関する本発明によるブランク1を示す。ブランク1の基本構造は、ディスク形状である。これは、酸化ジルコニウムセラミックベースの第1の層3と、酸化ジルコニウムセラミックベースの第2の層5とを有する。第1の層3および第2の層5は、色が異なり、境界表面7を形成する。図1による図示では、第1の層3の上側および第2の層5の下側は、ブランクの境界表面7を表す。歯列弓の例示的概略進行方向、すなわち、作製されることになる義歯の歯の進行方向が、図1において線9として示される。歯列弓9の進行方向では、境界表面7は、波谷11および波頭13が交互する、起伏のある形状において形成される。作製されることになる前歯の面積15では、波頭13は、口腔-前庭方向に、扇形状様式において延在する。これは、波頭13の頂点線が、歯列弓9の中心点17から放射状方向に、すなわち、外方向に、前庭側に向かって、放射状形状において延在することを意味する。
【0088】
図2は、図1に示される、ブランク1の第1の層3の上側の上面図を示す。上面図では、光線中心17から始まる、波頭13の扇形状の進行方向が、前歯領域15において確認され得る。
【0089】
図2はまた、作製されることになる大臼歯の面積19内の波谷11および波頭13の頂点線が、口腔-頬方向に、略平行に進むことを示す。上記に説明されるように、大臼歯の面積内の波頭および波谷の本平行化は、比較的大きな咬合表面が、小さな歯列弓を伴う場合であっても、仕上げられる歯科補綴物において利用可能であることを確実にする。
【0090】
図2によるブランクはまた、その外周、すなわち、外側面21上に、3つの平坦部23を有し、これらは、相互に回転対称に配列されていない。平坦部23は、ディスク自体と関連して、ディスク内の起伏のある、かつ放射状幾何学形状の位置を画定するために、マーキングとしての役割を果たし、したがって、ディスクは、歯科補綴物の製造の間、正しく設置されることができる。したがって、平坦部23は、後続のミリングプロセスの間、回転保護または回転防止保護としての役割を果たす。
【0091】
第1の層3の内側面積25は、補綴物の挿入後、患者の口蓋、すなわち、いわゆる口蓋床内に接触することになるであろう、作製されることになる補綴物の面積を表す。インプラントまたは歯残根支持型義歯の場合、面積25は、省略されることができる、または無着色のまま残されることができる。
【0092】
図3は、図1に示される、ブランク1の側面図を示す。ブランクは、全高27を有し、これは、図に示されるブランクの具体的実施形態では、26.80mmである。第1の層の高さ29は、6.80mmであり、第2の層の高さ31は、20.00mmである。歯肉層および歯層の高さが、通常、それぞれ、約19.00mmである、第EP3 064 170 A1号および第EP 3 597 143 A1号から公知のプラスチック材料ベースのブランクと比較して、ブランク1の全高は、有意に低減されており、30mmの臨界限界を下回り、これは、市販の歯科ミリング機械における容易な機械加工を可能にする。加えて、歯層対歯肉層の比が、有意に増加され得、これは、より良好な色および透光性の勾配が、達成されることを可能にする。
【0093】
さらに、図3によるブランク1は、作製されることになる第2大臼歯に関する波谷11aの最深点を作製されることになる中切歯に関する波谷11bの最深点と接続する、架空の直線35と、ブランクの床表面、本場合では、ブランクの上側表面37の上への本架空の直線35の突出部との間の角度33が、3°であり、したがって、通常、そこでは5°である、第EP 3 064 170 A1号および第EP 3 597 143 A1号から公知のプラスチック材料ベースのブランクの場合の対応する角度よりも小さいことを特徴とする。角度33を低減させることによって、加工されることになる補綴物の前歯および後歯の色および透光性はさらに、改良されることができる。
【0094】
図4は、図1に示されるブランク1のさらなる側面図を示す。表面37と波頭13aの頂点線との間の角度39は、示される実施形態では、10°であり、したがって、通常、15°である、第EP3 064 170 A1号および第EP 3 597 143 A1号から公知のプラスチック材料ベースのブランクにおける対応する角度よりも有意に小さい。角度39の低減は、角度33の低減と同様に、より少ないアンダーカットが、これらの実施形態において必要とされるため、ミリング機械におけるブランクのより簡易な機械加工につながる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】