(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】植え込み型除細動器
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20240816BHJP
A61N 1/05 20060101ALI20240816BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240816BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20240816BHJP
【FI】
A61N1/39
A61N1/05
A61B5/33 120
A61B5/287
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578739
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2022072970
(87)【国際公開番号】W WO2023030891
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512158181
【氏名又は名称】バイオトロニック エスエー アンド カンパニー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】BIOTRONIK SE & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Woermannkehre 1 12359 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デール、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイス、インゴ
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053CC01
4C053JJ01
4C053JJ02
4C053JJ13
4C053JJ23
4C127AA02
4C127LL08
(57)【要約】
本発明は、プロセッサと、メモリ・ユニットと、単一の電極接続ポート3と、ヒト又は動物の心臓5を刺激するために、電極接続ポート3に接続されている電極4、14に電気パルスを提供するように構成された刺激ユニットと、同じ電極4、14から同じ心臓5の電気信号を受信するように構成された検出ユニットとを備えるハウジング2を有する植え込み型除細動器1に関する。発明の一態様によると、電極接続ポート3は、経皮静脈法による植え込み型電極4又は胸骨下からの植え込み型電極14を受け入れるように構成されており、メモリ・ユニットは、経皮静脈法による植え込み型電極4が電極接続ポート3に接続された場合、プロセッサに刺激ユニット及び/又は検出ユニットを第1の動作モードで動作させ、胸骨下からの植え込み型電極14が電極接続ポート3に接続された場合、第2の動作モードで動作させるコンピュータ可読プログラムを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、メモリ・ユニットと、単一の電極接続ポート(3)と、ヒト又は動物の心臓(5)を刺激するために、前記電極接続ポート(3)に接続されている電極(4、14)に電気パルスを提供するように構成された刺激ユニットと、前記同じ電極(4、14)から前記同じ心臓(5)の電気信号を受信するように構成された検出ユニットとを備えるハウジング(2)を有する植え込み型除細動器であって、
前記電極接続ポート(3)は、経皮静脈法による植え込み型電極(4)又は胸骨下からの植え込み型電極(14)を受け入れるように構成されており、前記メモリ・ユニットは、経皮静脈法による植え込み型電極(4)が前記電極接続ポート(3)に接続された場合、前記プロセッサに前記刺激ユニット及び/又は前記検出ユニットを第1の動作モードで動作させ、胸骨下からの植え込み型電極(14)が前記電極接続ポート(3)に接続された場合、第2の動作モードで動作させるコンピュータ可読プログラムを備えることを特徴とする、植え込み型除細動器。
【請求項2】
前記第1の動作モードは、前記刺激ユニットによる電気パルスの生成及び前記検出ユニットによる電気信号の感知のための、第1のセットのパラメータ及びアルゴリズムを有し、前記第2の動作モードは、前記刺激ユニットによる電気パルスの生成及び前記検出ユニットによる電気信号の感知のための、第2のセットのパラメータ及びアルゴリズムを有し、第2のセットのパラメータ及びアルゴリズムは、第1のセットのパラメータ及びアルゴリズムとは異なることを特徴とする、請求項1に記載の植え込み型除細動器。
【請求項3】
前記第1のセットのパラメータ及びアルゴリズム及び前記第2のセットのパラメータ及びアルゴリズムは、前記刺激ユニットによって生成されるべき前記電気パルスのショック・エネルギーを含むことを特徴とする、請求項2に記載の植え込み型除細動器。
【請求項4】
前記第1の動作モードは、前記刺激ユニットが、事前に決定することが可能な閾値を超える電圧及び/又はエネルギーを有する電気パルスを生成するのを防止する安全装置を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の植え込み型除細動器。
【請求項5】
前記閾値は60Jから1000Jから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の植え込み型除細動器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の植え込み型除細動器(1)と、前記植え込み型除細動器(1)の前記電極接続ポート(3)に接続された電極(4、14)とを備える細動除去装置。
【請求項7】
前記メモリ・ユニットは、前記プロセッサ上で実行されるとき、以下のステップ、
a)前記検出ユニット及び前記電極(4、14)を使用して、前記細動除去装置が植え込まれている患者の少なくとも1つの生理的パラメータを測定するステップと、
b)前記少なくとも1つの生理的パラメータを使用して、前記接続された電極(4、14)が経皮静脈法によって植え込まれたか、又は胸骨下より植え込まれたかを判定するステップと、
c)前記植え込み型除細動器(1)は、前記電極(4)が経皮静脈法によって植え込まれた場合、前記第1の動作モードで動作させ、前記電極(14)が胸骨下より受け込まれた場合、前記第2の動作モードで動作させるステップとを
前記プロセッサに実行させるコンピュータ可読プログラムを備えることを特徴とする、請求項6に記載の細動除去装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの生理的パラメータは、インピーダンスと、心電図から成る群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の細動除去装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの生理的パラメータは、心電図であり、前記判定するステップは、前記心電図において検出された信号の時間的な発生の分析を含むことを特徴とする、請求項7又は8に記載の細動除去装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの生理的パラメータは、心電図であり、前記判定するステップは、前記心電図において検出された信号の形態分析を含むことを特徴とする、請求項7から9までのいずれか一項に記載の細動除去装置。
【請求項11】
前記コンピュータ可読プログラムは、前記接続された電極(4、14)が経皮静脈法によって植え込まれた電極(4)か、胸骨下より植え込まれた電極(14)かを判定するために、前記電極(4、14)の電子識別子を前記プロセッサに読み出させることを特徴とする、請求項6に記載の細動除去装置。
【請求項12】
前記細動除去装置は、前記第1の動作モード及び前記第2の動作モードの両方において、電極の極(6、7、8)と前記植え込み型除細動器(1)の極との間に少なくとも60Vの電圧を有する電気パルスを送達するように構成されることを特徴とする、請求項6から11までのいずれか一項に記載の細動除去装置。
【請求項13】
前記接続ポート(3)は、複数のコネクタ極(21、22、23、24)を備え、前記第1の動作モードにおける前記コネクタ極(21、22、23、24)と前記接続された電極(4、14)の極(6、7、8)との間の第1の接続構成は、前記第2の動作モードにおける前記コネクタ極(21、22、23、24)と前記電極の極(6、7、8)との間の第2の接続構成とは異なることを特徴とする、請求項6から12までのいずれか一項に記載の細動除去装置。
【請求項14】
請求項6から13までのいずれか一項に記載の細動除去装置を動作させるための方法であって、前記細動除去装置は、1)プロセッサ、メモリ・ユニット及び単一の電極接続ポート(3)を備えるハウジング(2)有する植え込み型除細動器(1)と、2)前記電極接続ポート(3)に接続された電極(4、14)とを備え、前記ハウジング(2)は、ヒト又は動物の心臓(5)を刺激するために前記電極(4、14)に電気パルスを提供するように構成された刺激ユニットと、前記電極(4、14)から前記同じ心臓(5)の電気信号を受信するように構成された検出ユニットとをさらに備え、
前記方法は、以下のステップ、
a)前記検出ユニット及び前記電極(4、14)を使用して、前記細動除去装置が植え込まれている患者の少なくとも1つの生理的パラメータを測定するステップと、
b)前記少なくとも1つの生理的パラメータを使用して、前記接続された電極(4、14)が経皮静脈法によって植え込まれたか、又は胸骨下より植え込まれたかを判定するステップと、
c)前記電極(4)が経皮静脈法によって植え込まれた場合、前記植え込み型除細動器(1)を第1の動作モードで動作させ、前記電極(14)が胸骨下より植え込まれた場合、第2の動作モードで動作させるステップとを含むことを特徴とする、細動除去装置を動作させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる植え込み型除細動器、及び請求項6のプリアンブルによるそのような植え込み可能型除細動器を備える細動除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植え込み型除細動器(ICD:implantable cardioverter-defibrillator)は、患者の体内に植え込まれ、細動除去及び任意選択で心臓のペーシングによってもカルディオバージョンを行うことが可能である。異なる種類の電極をICDに接続し、選択された電極で適切に機能するために、これに従ってICDをプログラムすることが一般的に可能である。
【0003】
米国特許公報第5,411,528号は、ICDなどの植え込み型身体組織刺激装置のための電気的にプログラム可能な有極性コネクタを記載している。この文脈において、医師は、ICDのメモリにリードのタイプ(例えば、経静脈法、心膜パッチ、皮下など)及びリードの配置(例えば、右心室又は左心室、心房、上大静脈、冠状静脈洞など)をプログラムしてよいことが記載されている。この米国特許は、任意の治療中の医師がICDに質問し、正確なショック構成を決定し、必要であれば、電極極性の効果を評価することを続け、それに従って効果を変更することができる可能性もさらに記載している。
【0004】
米国特許公報5,441,518号は、多数の独立して制御可能でプログラム可能な切換式電極放電経路を備えた植え込み型マルチ・チャンバ・カルディオバージョン及び細動除去システムを記載している。この独立して制御される切り替え装置は、全てのカルディオバージョン及び細動除去カウンターショックの極性、段階、方向及びタイミングに対する制御を提供し、最初のカウンターショック後のその後のカウンターショックを修正することを可能にする。切換装置は、好ましくは、システムの植え込み前にプログラム可能であり、システムの植え込み後の再プログラムも可能である。
【0005】
米国特許公報2004/0215240号は、検出回路及びエネルギー送達回路が中に設けられているハウジングを含む再構成可能な心臓デバイスを記載している。1つ又は複数の皮下の、胸郭内ではない電極が、エネルギー送達及び検出回路に結合される。リード・インターフェースが、ハウジング上に設けられ、エネルギー送達及び検出回路に結合される。リード・インターフェースは、1つ又は複数の胸郭内リード電極を含む少なくとも1つのリードを受け入れるように構成される。コントローラが、ハウジング内に設けられ、リード・インターフェース及びエネルギー送達及び検出回路に結合される。システムは、リードがない場合、皮下電極を用いる第1の構成で動作可能であり、リード電極のうちの少なくとも1つ又は複数を使用する第2の構成でも動作可能である。システムは、第1のシステム構成及び第2のシステム構成の各々においてそれぞれ、心臓活動感知及び心臓の刺激を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許公報第5,411,528号
【特許文献2】米国特許公報2004/0215240号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
様々な用途に対して一般的に使用することができ、従来技術から既知の除細動器より高いレベルの使い易さ及び安全性を提供する植え込み型除細動器を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する植え込み型除細動器で達成される。そのような植え込み型除細動器(ICD)は、プロセッサ、メモリ・ユニット、正確に1つの電極接続ポート、刺激ユニット及び検出ユニットを備えるハウジングを有する。刺激ユニットは、ヒト又は動物の心臓を刺激するために、電極接続ポートに接続された電極に電気パルスを提供するように構成される。検出ユニットは、同じ電極の助けを借りて同じ心臓の電気信号を受信するように設計される。単一の信号電極接続ポートのために、一度に1つの電極しかICDに接続することはできない。
【0009】
本発明の態様によると、電極接続ポートは、経静脈法による植え込み型電極又は胸骨下からの植え込み型電極のいずれかを受け入れるように構成される。さらに、メモリ・ユニットは、経皮静脈法による植え込み型電極が電極接続ポートに接続された場合、プロセッサに刺激ユニット及び/又は検出ユニットを第1の動作モードで動作させ、胸骨下からの植え込み型電極が電極接続ポートに接続された場合、プロセッサに刺激ユニット及び/又は検出ユニットを第2の動作モードで動作させる、コンピュータ可読プログラムを備える。
【0010】
よって、これから特許請求されるICDは、電極接続ポートに接続されている電極の種類を自動的に検出することで、正しい電極構成をICDによって自動的に選択し、適用することができる。その結果、医師は、もはやICDを不注意で誤ってプログラムすることがない。さらに、特許請求されるICDは、単一の電極に対して1つの接続ポートしか提供しない。よって、不注意により電極のための誤った接続ポートが選択される可能性ももはやない。電極が挿入されている接続ポートに従って接続された電極の構成を判定するICDが市場には存在するが、この種の電極のために意図されていない電極接続ポートに電極が挿入される場合のような可能性は、エラーの原因であることは明らかである。このエラーの原因を阻止するために、異なるアダプタ又は電極コネクタを使用して、誤った電極接続ポートの選択を回避する。しかしながら、これは必要な部品の数を増やし、従来技術から既知のICDシステムの全体の複雑さも高めることになる。
【0011】
これから特許請求されるICDはいかなるアダプタも必要としない。むしろ、規定された、又は規格化された接続部を有する何らかの経皮静脈法による植え込み型電極、及び何らかの胸骨下からの植え込み型電極を電極接続ポートに接続することができる。
【0012】
これから特許請求されるICDはよって、植え込みより前に電極の選択を行うことなく、経皮静脈法による植え込み型電極、又は胸骨下からの植え込み型電極と一緒に使用することができる。これは、ICDを患者に植え込む医師の計算の労力を軽減する。経皮静脈法による植え込み型電極、又は胸骨下からの植え込み型電極を必要とする患者の数にかかわらず、医師は、ICDのためのより大きな共用施設を使用することができ、その用途はICDに接続される、特有の種類の電極に限定されない。
【0013】
一実施例において、刺激ユニットは、ICDを身につけている患者のヒト又は動物の心臓に所望の心臓治療を適用することが可能である。適切な治療は、ショック療法、抗頻拍ペーシング(ATP:anti-tachycardic pacing)、又は一定のペーシング(抗徐脈ペーシング)である。
【0014】
一実施例において、第1の動作モードは、刺激ユニットによる電気パルスの生成、及び検出ユニットによる電気信号の感知のための第1のセットのパラメータ、及びアルゴリズムを有する。同様に第2の動作モードは、刺激ユニットによる電気パルスの生成、及び検出ユニットによる電気信号の感知のための第2のセットのパラメータ、及びアルゴリズムを有する。この文脈において、第2のセットは第1のセットと異なる。よって、検出及び刺激のために必要なパラメータ及びアルゴリズムは、ICDの電極ポートに接続されている電極の種類に明確に適合される。
【0015】
一実施例において、選択されたパラメータ及びアルゴリズム上のデータは、プログラミング・デバイスに伝達され、選択されたパラメータ及びアルゴリズムの個々の制御を可能にするために、ユーザに表示することができる。さらに、プログラミング・デバイスは、パラメータ及びアルゴリズムの選択されたセットの個々のパラメータ及びアルゴリズムの適合を可能にしてよい。
【0016】
一実施例において、第1のセットのパラメータ及びアルゴリズム、及び第2のセットのパラメータ及びアルゴリズムは、刺激ユニットによって生成されるべき電気パルスのショック・エネルギーを有する。胸骨下より植え込まれた電極の場合、必要なショック・エネルギーは、経皮静脈法によって植え込まれた電極の場合よりも通常高くなる。
【0017】
一実施例において、第1のセットのパラメータ及びアルゴリズム及び第2のセットのパラメータ及びアルゴリズムはまた、刺激ユニットによって送達されるべき任意の電気ショックが採るべきショック路上に情報を有する。ショック・エネルギーの場合のように、ショック路もまた、静脈内より植え込まれた電極を使用する場合、胸骨下より植え込まれた電極の場合とはかなり異なる。
【0018】
一実施例において、第1のセットのパラメータ及びアルゴリズム、及び第2のセットのパラメータ及びアルゴリズムは、ICDのペーシング機能の起動又は機能停止を制御するパラメータを有する。胸骨下より植え込まれた、接続された電極の場合、そのようなペーシング機能は典型的には必要ではない。対照的に、経皮静脈法によって植え込まれた電極がICDと接続されて使用される場合、ICDは、刺激されるべき心臓のペーシング機能に従って機能を遂行することができる。
【0019】
一実施例において、第1の動作モード(すなわち、経皮静脈法による植え込み型電極がICDのハウジングの電極接続ポートに接続されたときに選択される動作モード)は、安全装置又は安全システムを備える。この安全装置は、刺激ユニットが、高過ぎる電圧及び/又はエネルギーを有する電気パルスを生成するのを防止する。より正確に言えば、安全装置は、事前に決定された閾値を超える電圧及び/又はエネルギーを有するパルスの生成を防止する。
【0020】
一実施例において、閾値は、60Jである、又は40Jから60Jの範囲内、詳細には、45Jから55Jの範囲内にある、詳細には50J前後である。そのような閾値は、生成されたパルスのエネルギーが、第1の動作モードの安全装置によって制限されるべき場合に選択される。
【0021】
一実施例において、閾値は1000Vである、又は500Vから1000Vの範囲内、特に600Vから900Vの範囲内、特に700Vから800Vの範囲内にある。そのような閾値は、生成されたパルスの電圧が、第1の動作モードの安全装置によって制限されるべき場合に選択される。
【0022】
先に言及した電圧及びエネルギーのいかなる組み合わせも可能であり、本発明の実施例から網羅される。
【0023】
一実施例において、ICDは、カルディオバージョン及び/又は細動除去のために十分に高いショック・エネルギーを有するショックパルスを送達するために、20Jを超えるエネルギーを有するエネルギー・パルスを生成することが可能である。接続される電極のタイプに応じて、10Jから60Jの範囲内、特に30Jから45Jの範囲内、又は20Jから120Jの範囲内、特に30Jから100Jの範囲内、特に、40Jから90Jの範囲内、特に50Jから80Jの範囲内、特に60Jから110Jの範囲内、特に70Jから100Jの範囲内、特に80Jから90Jの範囲内にある送達されるショック・エネルギーがとりわけ適切である。
【0024】
一実施例において、ハウジングは、70cm3より小さい体積、特に20cm3から70cm3の範囲内、特に30cm3から65cm3の範囲内、特に40cm3から60cm3の範囲内、特に50cm3から55cm3の範囲内にある体積を有する。
【0025】
一実施例において、ハウジングは、13mmを超えない厚さ、特に5mmから13mmの範囲内、特に6mmから12mmの範囲内、特に7mmから11mmの範囲内、特に、8mmから10mmの範囲内にある厚さを有する。
【0026】
一実施例において、ハウジングは、少なくともセクション毎に1mmより大きい、特に1mmから5mmの範囲内、特に1.5mmから4.5mmの範囲内、詳細には、2mmから4mmの範囲内、特に2.5mmから3.5mmの範囲内にある半径を有する丸められた縁部を有する。
【0027】
一実施例において、ICDは、ICDの適切な機能の容易なモニタリングを可能にするためにホーム・モニタリング・システムにデータを送信する能力を有する。
【0028】
一実施例において、ICDは、皮下より植え込まれる場合がある。それはその後、ICDとして表示することができる。
【0029】
一態様において、本発明は、先の説明のいずれかによる植え込み型除細動器と、この植え込み型除細動器の電極接続ポートに接続された電極とを備える細動除去装置に関する。上記で説明したように、電極は、経皮静脈法による植え込み型電極か、胸骨下からの植え込み型電極のいずれかである。ICDの電極接続ポートに接続され得る全ての電極は、電極の特有の種類に関わらず、同じコネクタ・タイプを備える。特に適切なコネクタは、IS-1、DF-1、IS4、及びDF4コネクタである。これらのタイプのコネクタは、規格化されており、商業的に利用可能なコネクタであるため、ICDは、複数の広く利用可能な電極に接続可能である。
【0030】
一実施例において、ICDのメモリ・ユニットは、プロセッサ上で実行されるとき、以下に説明されるステップをプロセッサに実行させるコンピュータ可読プログラムを備える。
【0031】
最初に、検出ユニット及び電極を使用して、細動除去装置が植え込まれている患者の少なくとも1つの生理的パラメータを測定する。
【0032】
その後、少なくとも1つの生理的パラメータを使用して、接続された電極が経皮静脈法によって植え込まれたか、又は胸骨下より植え込まれたかを判定する。
【0033】
最後に、電極が経皮静脈法によって植え込まれた電極であると特定された場合、植え込み型除細動器を第1の動作モードで自動的に動作させる。同様に、電極が胸骨下より植え込まれた電極であると特定された場合、ICDを第2の動作モードで動作させる。既に植え込まれた電極の電極タイプのこのような自動検出のために、ICD及びその接続された電極の特に安全で信頼できる動作が可能になる。
【0034】
一実施例において、少なくとも1つの生理的パラメータは、インピーダンスと、心電図から成る群から選択される。静脈内より植え込まれた電極とICDのハウジングとの間のインピーダンスは、胸骨下より植え込まれた電極とICDのハウジングとの間のインピーダンスよりかなり高くなる。したがって、インピーダンスは、ICDの電極接続ポートに接続された電極が静脈内より植え込まれた電極か、又は胸骨下より植え込まれた電極かを判定するのにとりわけ信頼できる尺度である。
【0035】
接続された電極が、胸骨下より植え込まれた電極か、又は静脈内より植え込まれた電極かを判定するための別の信頼できる尺度は、心電図内に存在する信号は心電図の取得の場所に応じて異なるため、電極で記録された心電図の評価である。
【0036】
一実施例において、少なくとも1つの生理的パラメータは心電図であり、接続された電極が経皮静脈法によって植え込まれた電極か、又は胸骨下より植え込まれた電極かの判定は、心電図において検出された信号の時間的な発生の分析を含む。心電図のそのようなタイミング分析はまた、接続された電極が経皮静脈法によって植え込まれたか、又は胸骨下より植え込まれたかを明らかにすることができる。
【0037】
一実施例において、少なくとも1つの生理的パラメータは心電図であり、判定するステップは、心電図において検出された信号の形態分析を含む。信号の時間的な発生に加えて、心電図における信号の形態も、心電図の取得の場所に応じて異なる。
【0038】
一実施例において、コンピュータ可読プログラムは、電極の電子識別子をプロセッサに読み出させる。この電子識別子は、接続された電極が経皮静脈法によって植え込まれた電極か、胸骨下より植え込まれた電極かについての情報を含む。よって、患者の生理的パラメータを使用して、経皮静脈法によって植え込まれた電極と胸骨下より植え込まれた電極の区別をするだけではなく、そのような電子識別子は、植え込まれた電極上、又は電極内にも存在している。適切な電子識別子は、高周波識別(RFID:radio-frequency identification)を基にして機能する識別子である。RFIDを使用する場合、電極は、一実施例においてトランスポンダを備え、その一方でICDは読み出しデバイスとして機能する。
【0039】
一実施例において、細動除去装置は、第1の動作モード及び第2の動作モードにおいて、電極の極と植え込み型除細動器の極との間に少なくとも60Vの電圧を有する電気パルスを送達するように構成される。そのような電圧を有する電気パルスは、典型的には高圧パルスとして表示することができ、カルディオバージョン/細動除去を達成するためにとりわけ適切である。一実施例において、そのような電気パルスの電圧は、60Vから1000Vの範囲内、特に80Vから900Vの範囲内、特に100Vから800Vの範囲内、特に200Vから700Vの範囲内、特に300Vから600Vの範囲内、特に400Vから500Vの範囲内にある。
【0040】
一実施例において、接続ポートは複数のコネクタ極を備える。この文脈において、第1の動作モードにおけるコネクタ極と電極の極との間の第1の接続構成は、第2の動作モードにおけるコネクタ極と電極の極との間の第2の接続構成とは異なる。結果として、接続された電極の電極の極を、選択された動作モードに応じて異なる方法で制御することが可能である。
【0041】
一実施例において、接続ポートは、最も近位のコネクタ極から最も遠位のコネクタ極まで連続して、低圧、低圧、高圧及び高圧を提供する4つのコネクタ極を備える。この文脈において、用語「低圧」は、0.1Vから60V未満の範囲にある(例えば、59.9V)、特に1Vから55Vの範囲内、特に5Vから50Vの範囲内、特に10Vから40Vの範囲内、特に20Vから30Vの範囲内にある電圧を指す。代替として、又は追加で、用語「高圧」は、60Vから1000Vの範囲内、特に80Vから900Vの範囲内、特に100Vから800Vの範囲内、特に200Vから700Vの範囲内、特に300Vから600Vの範囲内、特に400Vから500Vの範囲内にある電圧を指す。
【0042】
一実施例において、第1の接続構成は、第1のコネクタ極(最も近位のコネクタ極)と先端の電極の極との間、第2のコネクタ極(第1のコネクタ極の遠位であり、且つそれに隣接する)とリング電極の極との間、並びに第4のコネクタ極(最も遠位のコネクタ極)とショック・コイル電極の極との間に電気接点を確立する。この電気接続構成では、第3のコネクタ極(第2のコネクタ極と第4のコネクタ極との間にある)は使用されない。
【0043】
一実施例において、第2の接続構成は、第1のコネクタ極(最も近位のコネクタ極)と感知電極の極との間、第2のコネクタ極(第1のコネクタ極の遠位であり、且つそれに隣接する)と別の感知電極の極との間、第3のコネクタ極(第2のコネクタ極の遠位であり、且つそれに隣接する、並びに第4のコネクタ極の近位であり、且つそれに隣接する)とショック・コイル電極の極との間、第4のコネクタ極(最も遠位のコネクタ極)とショック・コイル電極の極との間に電気接点を確立する。一実施例において、ショック・コイルに接続された両方のラインが、各ケースにおいてショック・コイルの異なる端部に電気エネルギーを供給する。
【0044】
一実施例において、細動除去装置は、磁気共鳴撮像を利用する方法と適合可能(MRI適合型)である。これは、細動除去装置が植え込まれる患者のその先の検査を促進する。これは、患者のその先の診断及び治療上の検査を促進する。
【0045】
一態様において、本発明は、先の説明による細動除去装置を動作させるための第1の方法に関する。前に説明されるように、そのような細動除去装置は、プロセッサ、メモリ・ユニット及び単一の電極接続ポートを備えるハウジングを有する植え込み型除細動器(ICD)を備える。細動除去装置は、電極接続ポートに接続された電極をさらに備える。ICDのハウジングは、刺激ユニットと、検出ユニットとをさらに備える。刺激ユニットは、ヒト又は動物の心臓を刺激するために電気パルスを電極に提供するように機能する。検出ユニットは、電極の助けを借りて同じ心臓の電気信号を受信するように機能する。方法は、以下に説明されるステップを含む。
【0046】
最初に、検出ユニット及び電極を使用して、細動除去装置が植え込まれている患者の少なくとも1つの生理的パラメータを測定する。
【0047】
その後、少なくとも1つの生理的パラメータを使用して、接続された電極が経皮静脈法によって植え込まれたか、又は胸骨下より植え込まれたかを判定する。
【0048】
最後に、電極が経皮静脈法によって植え込まれた電極である場合、ICDを第1の動作モードで動作させ、電極が胸骨下より植え込まれた場合、第2の動作モードで動作させる。よって、この方法は、使用される電極の種類の自動で信頼できる検出を可能にし、ICDの動作モードの自動構成により、接続された電極のタイプに応じてICDの安全で信頼できる動作を確実にする。
【0049】
一態様において、本発明は、先の説明による細動除去装置を動作させる第2の方法に関する。この方法は、以下において説明されるステップを含む。
【0050】
最初に、電極上又は電極内の電子識別子がICDによって読み出される。
【0051】
その後、識別子の読み出しの結果を使用して、接続された電極が経皮静脈法によって植え込まれたか、又は胸骨下より植え込まれたかを判定する。
【0052】
最後に電極が経皮静脈法によって植え込まれた電極である場合、ICDを第1の動作モードで動作させ、電極が胸骨下より植え込まれた場合、第2の動作モードで動作させる。よって、この方法もまた、使用される電極の種類の自動で信頼できる検出を可能にし、ICDの動作モードの自動構成により、接続された電極のタイプに応じてICDの安全で信頼できる動作を確実にする。それは、患者の生理的パラメータとは無関係に機能するが、電子識別子を備える電極を必要とする。
【0053】
植え込み型除細動器の全ての実施例は、任意の所望の方法で組み合わせることができ、個別に、又は何らかの任意選択の組み合わせのいずれかで、細動除去装置及び方法に引き継ぐことができる。同様に、植え込み型除細動器の全ての実施例は、任意の所望の方法で組み合わせることができ、個別に、又は何らかの任意選択の組み合わせのいずれかで、植え込み型細動除去装置及び記載される方法に引き継ぐことができる。最後に、方法の全ての実施例は、任意の所望の方法で組み合わせることができ、個別に、又は何らかの任意選択の組み合わせのいずれかで、記載される植え込み型除細動器、細動除去装置及びそれぞれ他の方法に引き継ぐことができる。
【0054】
本発明の態様のさらなる詳細は、例示の実施例及び添付の図面を参照する以下において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1A】細動除去装置の第1の実施例の概略図である。
【
図1B】細動除去装置の第2の実施例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1Aは、ハウジング2と、電極接続ポート3とを有する植え込み型除細動器(ICD)を示す。経皮静脈法によって植え込まれた電極4が、電極接続ポート3に接続される。経皮静脈法によって植え込まれた電極4は、大静脈を経由してヒトの心臓5に植え込まれる。電極4は、ショック・コイル6、リング電極の極7及び先端電極の極8を備える。
【0057】
一方のリング電極7又は先端電極8と他方のハウジング2との間のインピーダンスを測定することによって、ICD1は、電極4が本当に経皮静脈法によって植え込まれた電極かどうか判定する。インピーダンスが低すぎる場合、むしろ胸骨下より植え込まれた電極が電極接続ポート3に接続されている。そのような状況は
図1Bに例示されている。この図面及び全ての以下の図面では、同様の要素は同じ数字の参照番号で表示される。
【0058】
図1Bでは、胸骨下より植え込まれた電極14が、
図1Aに既に示されるICD1のハウジング2の接続ポート3に接続される。胸骨下より植え込まれた電極14は、ヒトの心臓5より対角線上に配置される。それはまた、ショック・コイル6、リング電極7及び先端電極8を備える。経皮静脈法によって植え込まれた電極4の場合(
図1Aを参照)リング電極7はショック・コイル6と先端電極8との間に配置されるが、胸骨下より植え込まれた電極14の場合、リング電極7はショック・コイル6の近位方向に配置される。しかしながら他の電極の極配置も可能である。
【0059】
胸骨下より植え込まれた電極14のリング電極7とICD1のハウジング2との間のインピーダンスを判定する際、結果として生じる値は、電極14が本当に胸骨下より植え込まれた電極であり、経皮静脈法によって植え込まれた電極でないことを明白に特定する。その後、ICD1は、そのような胸骨下より植え込まれた電極14用に設計され、とりわけそれに適した動作モードになる。
【0060】
図2Aは、一方のコネクタ極と他方の電極の極との間の第1の接続構成を示す。この第1の接続構成は、経皮静脈法によって植え込まれた電極の場合に適用される。第1のコネクタ極21は、経皮静脈法によって植え込まれた電極の先端電極8と電気的に接続される(より詳細には
図1Aを参照)。第1のコネクタ極21は、全てのコネクタ極の最も近位のコネクタ極である。第2のコネクタ極22は、第1のコネクタ極21に隣接し、これの遠位に位置しており、経皮静脈法によって植え込まれた電極のリング電極7と接続される。第3のコネクタ極23は、いずれの電極の極にも接続されない。しかしながら第4のコネクタ極24は、経皮静脈法によって植え込まれた電極のショック・コイル6の一端に接続される。よって、ショック・コイル6が単一の電気接続を備えることで、ショック・コイル6に第4のコネクタ極24から電気パルスを供給する際に、電気勾配が蓄積されることになる。対電極は、各ケースにおいて、ICD1のハウジング2である(より詳細には
図1Aを参照)。
【0061】
図2Bは、胸骨下より植え込まれた電極14がICD1のハウジング2の電極コネクタ3に接続されるときに典型的に適用される第2の接続構成を示す(より詳細には
図1Bを参照)。ここでは、第1のコネクタ極21(すなわち、最も近位のコネクタ極)は、胸骨下より植え込まれた電極の先端電極の極8に接続される。さらに、第2のコネクタ極22はリング電極7に接続される。第3のコネクタ極23は、第2のコネクタ極22と第4のコネクタ極24との間に位置しており、ショック・コイル6の第1の端部に接続される。第4のコネクタ極24(最も遠位のコネクタ極)は、ショック・コイル6の反対の端部に接続される。第3のコネクタ極23及び第4のコネクタ極24を介してショック・コイル6に高圧を適用する際、この電圧は、同時に両端部においてショック・コイル6に送達される。これは、ショック・コイル6と、ショック・コイル6のための対電極として機能するICDのハウジング2との間に極めて均一な電場を生じさせることになる(より詳細には
図1Bを参照)。
【0062】
低電圧を電極の極に送達するコネクタ極は、互いに隣接して配置される(言い換えれば、第1のコネクタ極21と第2のコネクタ極22)ことは、
図2A及び
図2Bから明らかである。同様に、対応する電極の極に高圧を送達することが可能な2つのコネクタ極もまた、互いに隣接して配置される(言い換えれば、第3のコネクタ極23と第4のコネクタ極24)。
【国際調査報告】