(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】触媒組成物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B01J 29/70 20060101AFI20240816BHJP
C01B 39/48 20060101ALI20240816BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240816BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240816BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B01J29/70 A
C01B39/48
B01D53/94 222
F01N3/10 A
F01N3/08 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578753
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 GB2022051524
(87)【国際公開番号】W WO2023007113
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、サンユアン
(72)【発明者】
【氏名】タリナ、アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ギルランド、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】スペル、ローガン
(72)【発明者】
【氏名】ルッゲリ、マリア ピア
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB05
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4G169ZA14A
4G169ZA14B
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4G169ZD01
(57)【要約】
本発明は、触媒組成物を製造するための方法に関し、特に、NOx含有排気ガスを処理するための組成物に関する。本組成物は、9~30のSARを有する小細孔ゼオライトと、1つ以上の希土類金属とを含む。本方法は、従来のウォッシュコーティング手法で達成することができるよりも高いレベルの希土類(RE)金属のゼオライトへの導入を達成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOx含有排気ガスを処理するための触媒組成物を製造する方法であって、前記組成物が、9~30のSARを有する小細孔ゼオライトと、1つ以上の希土類金属と、を含み、前記方法が、
i)大細孔前駆体ゼオライトを提供することと、
ii)イオン交換及び焼成によって、前記前駆体ゼオライトに1つ以上の希土類金属を導入して、希土類金属置換前駆体ゼオライトを形成することと、
iii)前記希土類金属置換前駆体ゼオライトを、構造指向剤の存在下で、小細孔ゼオライトに変換することと、を含む、方法。
【請求項2】
工程(iii)が、前記希土類金属置換前駆体ゼオライト及び前記構造指向剤を含む合成ゲルを形成し、次いで前記合成ゲルを加熱して前記小細孔ゼオライトを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記小細孔ゼオライトが、0.05~3.5重量%、好ましくは0.05~2重量%の総量で前記1つ以上の希土類金属を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記小細孔ゼオライトが、Cu及び/又はFeを、好ましくは0.1~6重量%の総量で、より好ましくは1~3重量%の総量で更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記大細孔前駆体ゼオライトが、USY骨格構造タイプを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記小細孔ゼオライトが、CHA又はAEI骨格構造タイプを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記構造指向剤が、N,N,N,トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド又はその塩である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記希土類金属が、Y及びCe並びにそれらの混合物から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
NOx含有排気ガスを処理するための触媒組成物であって、前記触媒組成物が、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法に従って得ることができ、前記触媒組成物の前記小細孔ゼオライトが、9~30のSARと、1つ以上の希土類金属と、を有する、触媒組成物。
【請求項10】
NOx含有排気ガス中のNOxの選択的触媒還元のための、請求項9に記載の触媒組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒組成物を製造するための方法に関し、特に、NOx含有排気ガスを処理するための組成物に関する。本方法は、従来のウォッシュコーティング手法で達成することができるよりも高いレベルの希土類(rare earth、RE)金属のゼオライトへの導入を達成する。
【背景技術】
【0002】
NH3-SCRは、希薄燃焼エンジン排気の後処理におけるNOx軽減のために最も有効な技術である。これに関して、Cu-SSZ-13は、優れた触媒性能及び水熱安定性というその重要な利点により、NH3-SCR触媒として商業化されてきた。しかし、特に冷間始動条件下の車両について、エンジン排気からの排出物に課される制限がますます厳しくなるにつれて、SCR触媒の低温NH3-SCR活性及び水熱安定性を更に高めることが非常に望ましい。
【0003】
低いシリカ対アルミナ比(silica to alumina ratio、SAR)を有するCHA及びAEIのような小細孔ゼオライトは、通常、同等のSCR作業条件下で、高SARの骨格よりも高いフレッシュ活性を有するが、耐久性が低い。低SAR構造の全体的な性能を向上させるためには、耐久性を高める必要がある。
【0004】
国際公開第2019/223761(A1)号は、構造タイプ、SAR範囲、RE元素、及び量(重量%又はM/Al比のいずれかとして)によって定義される希土類含有材料を開示している。この特許は、性能が改善されたRE安定化低SAR CHAを開示している。CHAは、有機構造指向剤(organic structure directing agent、OSDA)非含有の手順によって合成され、約7.5~8.0のSARを有する。Yの取り込みは、ゼオライト中のシリカ重量に基づいて約1.0~3.0重量%であり、これは従来のイオン交換によって行われた。国際公開第2019/223761(A1)号では、従来のイオン交換法によって調製された希土類(RE)含有の低SAR CHAは、耐久性の向上を示した。
【0005】
従来のイオン交換法によって、小細孔ゼオライト(例えば、CHA及びAEIなど)における三価金属イオン(例えば、Fe(III)、Ce(III)及びLa(III)など)の高い取り込みを達成することは、既知の課題である。これは、ゼオライト細孔開口のサイズに比べて大きなサイズの水和カチオンの好ましくない立体効果、及び高SARゼオライト骨格と三価カチオンとの間の電荷密度の不均衡にも起因し得る。
【0006】
国際公開第2019/223761号は、実質的に8より高いSARを有するRE-CHAを達成せず、同時に、実質的に1重量%より高いRE取り込みも達成していない。したがって、一般に小細孔ゼオライト、並びに特に、高いSAR及び高いRE取り込みの両方を有するCHAに対する技術的必要性が依然として存在する。このタイプの材料は、多くの用途において性能上の利点を示すことが期待される。
【0007】
米国特許第8906329号は、セリウムを含む卑金属によるCHAの安定化及びCu SCR用途における性能の改善を開示している。
【0008】
中国特許出願公開第108786911(A)号は、RE含有AEI及び合成方法を開示している。実施例1では、硝酸ランタン及び水ガラスを25重量%の濃度の1,1-ジメチル-3,5-ジメチルに添加し、ピペリジンの溶液中で撹拌した後、HYモレキュラーシーブ、NaOH及び脱イオン水を添加して合成ゲルを形成し、次いでこれを結晶化させ、濾過し、焼成してLa-AEIモレキュラーシーブを得た。この特許出願は、特許請求されたRE-AEIのSAR、RE含有量、XRD相、結晶形態、相純度若しくは結晶化度に関するいかなる情報も、又は特許請求されたRE-AEIの結晶形態に関するいかなるXRDデータ若しくはSEMも開示していなかった。
【0009】
Usui et al.,ACS Catal.2018,8,9165-9173、表題「Improve the Hydrothermal Stability of Cu-SSZ-13 Zeolite Catalyst by Loading a Small Amount of Ce」は、イオン交換部位上の高いCu担持容量、及びいかに豊富な酸部位が低SAR Cu-CHAの高い活性に寄与するかを説明している。所定のSARについて、ゼオライト構造の安定性又はエージング条件下での結晶化度の保持には、水熱エージング温度の上昇とともに減少する最適なCu担持量がある。これは、エージング条件下での高いCu担持量及びAlリッチ骨格が、それぞれ不活性CuOx種の形成及び骨格の脱アルミニウムを受けやすいためである。少量のセリウムの担持は、高いCu担持量を有するCHAの安定性を著しく高めることができる。高いCu担持量は、高い活性に必須である。約13のSARを有するCHAについて、0.2~0.4重量%のCe担持量で最良の結果が見出された。安定化効果を説明するために、著者らは、Ceイオンが結晶欠陥を充填するか、又はシラノール基を中和し、したがって安定性を高めることができ、またイオン交換部位上のCeイオンがプロトンよりも骨格をより良好に安定化させることができることを示唆した。セリウムは、従来の溶液イオン交換又は固体状態反応のいずれかによって担持することができ、性能に差はない。高い取り込みでは、XRDによるCeO2の存在によって証明されるように、全てのセリウムイオンがイオン交換部位を占有するわけではなく、イオン交換部位へのCe取り込みの制約を示している。
【0010】
Li et al.,Ind.Eng.Chem.Res.2020,59,5675-5685、表題「A Density Functional Theory Modeling on the Framework Stability of Al-Rich Cu-SSZ-13 Zeolite Modified by Metal Ions」は、計算モデリング法を適用して、骨格8環におけるYの選択的配置によって促進される骨格6環におけるCuの選択的配置及びREとゼオライト骨格Oとの間の複数の配位結合の形成を介した、AlリッチCHA構造におけるY安定化効果を理論的に説明している。
【0011】
Zhao et al.,Catal.Sci.Technol.,2019,9,241、表題「Rare-earth ion exchanged Cu-SSZ-13 zeolite from organotemplate-free synthesis with enhanced hydrothermal stability in NH3-SCR of NOx」は、いくつかのRE元素(Ce、La、Sm、Y、Yb)を調査し、イットリウムが、OSDA非含有手順によって合成されたAlリッチCHAにおいて最も高い安定化効果を与えることを見出した。Y取り込みの増加により、Cu-CHAは、水熱エージング後であっても、改善された低温NO変換活性を示した。Y種がCHA構造のイオン交換部位に組み込まれ、Yが骨格Alを安定化することができ、またAlリッチCHA中のブレンステッド酸部位を保存することができることを示す実験的証拠が提供された。
【0012】
したがって、NOx含有排気ガスを処理するための改善された触媒組成物を提供すること、及び/又は従来技術に関連する問題のうちの少なくともいくつかに取り組むこと、あるいは少なくとも、商業的に採算の合うその代替案を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0013】
第1の態様によれば、本発明は、NOx含有排気ガスを処理するための触媒組成物を製造する方法であって、組成物が、9~30のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する小細孔ゼオライトと、1つ以上の希土類金属と、を含み、この方法が、
i)大細孔前駆体ゼオライトを提供することと、
ii)イオン交換及び焼成によって、前駆体ゼオライトに1つ以上の希土類金属を導入して、希土類金属置換前駆体ゼオライトを形成することと、
iii)希土類金属置換前駆体ゼオライトを、構造指向剤の存在下で、小細孔ゼオライトに変換することと、を含む、方法を提供する。
【0014】
ここで、本発明を更に説明する。以下の節において、本発明の異なる態様がより詳細に定義される。そのように定義された各態様は、別途明確に矛盾することが示されていない限り、任意の他の態様又は複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0015】
ゼオライト構造が合成工程で最初に形成され、RE組み込みが合成後のイオン交換工程で行われた国際公開第2019/223761号の教示とは対照的に、本発明によるRE含有ゼオライトは、小細孔ゼオライト構造が形成される際にRE元素が組み込まれる直接合成法によって調製される。本発明は、より高いレベルのRE金属を構造に導入することを可能にし、これにより、耐久性が向上する。
【0016】
合成ゲルの調製において希土類源及びHYモレキュラーシーブが別々に添加される中国特許出願公開第108786911(A)号の教示とは対照的に、本発明では、ゼオライトを小細孔ゼオライトに変換する前に、RE金属を大細孔モレキュラーシーブ上に担持し、焼成してゼオライトのケージ内にRE金属を固定し、それによってRE金属の良好な分布を達成した。
【0017】
好ましくは、本発明では、RE元素は、最初に、それぞれイオン交換及び焼成によって、ゼオライト(USY)などの大細孔前駆体上に担持及び固定され、次に、RE-USYは、合成条件下でRE-CHAに変換される。SAR9~30を有する高品質なRE含有CHA、及び同時に無水ゼオライト質量に基づいて0.06~3.5重量%、例えば0.6~3.5重量%の量のREが、本発明の方法に従って製造された。
【0018】
本発明の方法は、NOx含有排気ガスを処理するための触媒組成物の製造に関する。そのような排気ガスは、燃焼反応において、特にガソリン及びディーゼル自動車エンジンなどのエンジンにおける燃料の燃焼において生成される。N2及びH2Oなどの無害なガスを生成するためのSCRによるNOxの処理は、当該技術分野において周知である。
【0019】
組成物は、排気ガス処理システムに含めるための基材上に提供されてもよい。例えば、組成物は、ハニカムモノリス体上にウォッシュコートされてもよく、又はハニカムモノリス体を形成するために使用される押出組成物の固有成分として提供されてもよい。触媒組成物を含むそのような触媒物品を形成するための技術は、当該技術分野において周知である。
【0020】
この組成物は、9~30のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する小細孔ゼオライトを含む。ゼオライトは、アルミナ及びシリカから形成される構造であり、SARは、ゼオライト構造内の反応部位を決定する。小細孔ゼオライトは、8個の四面体原子(Si4+及びAl3+)で構成される細孔を有し、それぞれが共有酸素によって連結されるこれらの8員環の細孔は、全体的な触媒性能にとって重要である、より大きな分子の進入及び離脱を制限しつつ、結晶内空隙空間への、例えば、自動車排気浄化(NOx除去)中のNOxへの、又は軽質オレフィンへのその変換の途中のメタノールへの小分子のアクセスを提供する。小細孔ゼオライトは、環中に8個の四面体原子を有する細孔開口部を含む材料であるが、中細孔ゼオライトは、最小細孔が環中に10個の四面体原子を有するものであり、大細孔ゼオライトは、最小細孔が環中に12個の四面体原子を有するものである。
【0021】
好ましくは、小細孔ゼオライトは、AEI、AFT、AFX、CHA、EMT、GME、KFI、LEV、LTN、ERI、SWY、SAV、LTA及びSFW(これらのうちの2つ以上の混合物を含む)からなる群から選択される骨格構造を有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトは、AEI、CHA、AFX、LTA、ERI、及びSWYからなる群から選択される骨格構造を有する。ゼオライトは、CHA又はAEIタイプの骨格構造を有することが特に好ましい。
【0022】
好ましくは、小細孔ゼオライトは、10~25、より好ましくは12~20のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する。いくつかの実施形態では、SARは、10~24、例えば、11~23、13~22、14~21、15~20、又は16~18である。これらのSAR値は、国際公開第2019/223761号で達成されたものよりも高い。より高いSAR比は、酸性度が低く(Al3+部位がより少ない)、より安定であることに留意されたい。
【0023】
好ましくは、1つ以上の希土類金属は、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Y及びSc並びにそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の希土類金属は、La、Er、Pr、Ce及びYからなる群から選択される。好ましくは、希土類金属は、Y、Ce及びそれらの混合物から選択される。
【0024】
好ましくは、小細孔ゼオライトは、無水ゼオライト質量に基づいて、0.05~3.5重量%、好ましくは0.05~3.5重量%、より好ましくは0.05~2重量%の総量で、1つ以上の希土類金属を含む。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライトは、無水ゼオライト質量に基づいて、0.1~3重量%、例えば、0.15~2.8重量%、0.2~2.5重量%、0.3~2.2重量%、0.5~2重量%、1~1.8重量%、1.2~1.5重量%の総量で、1つ以上の希土類金属を含む。この量は、フレッシュ及びエージング済みの両方で高い活性を維持するのに必要な求められる耐久性を提供する。
【0025】
本方法は、大細孔前駆体ゼオライトを提供することを含む。好ましくは、大細孔前駆体ゼオライトは、USY、ベータ、又はZSM-20骨格構造タイプ、好ましくはUSY骨格構造タイプを有する。
【0026】
第1の工程では、イオン交換及び焼成によって、前駆体ゼオライトに1つ以上の希土類金属を導入して、希土類金属置換前駆体ゼオライトを形成する。イオン交換技術及び必要な焼成は、RE金属をゼオライトに導入するための技術分野において周知である。例えば、イオン交換及び焼成は、必要な希土類金属塩(例えば、希土類金属硝酸塩)を溶液に溶解することで達成できる。溶液は、撹拌下でゼオライトスラリー(例えば、USYスラリー)に添加することができる。次いで、得られた混合物を一定時間(例えば、1時間)加熱(例えば、100℃まで)することができる。次いで、これを濾過し、洗浄し、乾燥させて固体生成物を形成することができる。次いで、得られた乾燥生成物を焼成することができる(例えば、550℃で1時間、好ましくは昇温速度3℃/分で)。
【0027】
第2の工程では、希土類金属置換前駆体ゼオライトを、構造指向剤の存在下で、小細孔ゼオライトに変換する。構造指向群の例としては、N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウム、N,N,N-ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム、トリメチル(シクロヘキシルメチル)アンモニウム、テトラエチルアンモニウム、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウム及び1,1-ジエチル-2,6-ジメチルピペリジニウムの水酸化物又は塩が挙げられる。好ましくは、構造指向剤は、N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド又はその塩である。この工程は、希土類金属置換前駆体ゼオライト及び構造指向剤を含む合成ゲルを形成し、次いで、所望の最終ゼオライトを形成するのに必要な条件下でゲルを加熱することを含む。合成ゲルは、希土類金属置換前駆体ゼオライト、構造指向剤、水及びアルカリ金属(例えば、Na及び/又はK)を含むことができる。希土類金属置換前駆体ゼオライトは、シリカ及びアルミナの原料として使用されることが好ましい。Si及びAlの代替源も使用することができる。例えば、Al源は、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、及びアルミナを含む群から選択することができる。Si源は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカゲル、シリカゾル、ヒュームドシリカ、ケイ素アルコキシド、及び沈降シリカを含む群から選択することができる。合成ゲルは、好ましくは100~200℃の温度で5時間~10日間加熱される。
【0028】
合成ゲルは、希土類金属置換前駆体ゼオライトを、1%~30%、好ましくは、2%~15%、例えば、3%~6%、6%~9%、9%~11%又は11%~15%の量で含むことができ、%は合成ゲルの総重量に基づく重量%である。
【0029】
合成ゲルは、構造指向剤を、0.01~0.2、好ましくは、0.02~0.15、例えば、0.03~0.05、0.04~0.07、0.07~0.1又は0.1~0.15のQ/SiO2モル比の量で含むことができる。Qは、構造指向剤である。
【0030】
第2の工程は、合成ゲル(例えば、希土類金属置換前駆体ゼオライト及び構造指向剤を含む合成ゲル)を形成することと、小細孔ゼオライトの成長に適した温度及び期間にわたってゲルを加熱することとを含むことができる。合成ゲルは、100℃~200℃、より好ましくは、110℃~190℃、120℃~180℃、120℃~170℃、又は更には125℃~165℃の温度で加熱することができる。ゲルが適切な温度に加熱される期間は、好ましくは少なくとも10時間、より好ましくは、20~60時間、例えば5時間~10日間、例えば10時間~8日間、20時間~7日間、1~6日間、2~5日間である。ゲルをこれらの温度に加熱し、これらの温度でこれらの期間、例えば、100℃~200℃の温度で少なくとも10時間保持することが特に好ましい。
【0031】
好ましくは、このような温度及び期間にわたって合成ゲルを加熱することで得られるゼオライト生成物は、典型的な真空濾過によって回収される。好ましくは、濾過された生成物は、残留母液を除去するために使用される脱塩水(脱イオン水としても知られる)で洗浄される。好ましくは、ゼオライト生成物は、濾液の導電率が0.1mS未満になるまで洗浄される。好ましくは、濾過及び洗浄された生成物は、次いで、100℃を超える温度、好ましくは約120℃で乾燥される。次いで、乾燥生成物を焼成することができる(例えば、OSDA含有量を燃焼除去するために)。次いで、アンモニウムイオン交換を使用することができる(例えば、アルカリカチオンを除去するために)。次いで、最終焼成を使用することができる(例えば、生成物をアンモニウム形態から活性化形態に変換するために)。これらの工程は、当業者に一般的に知られている典型的な手順によって行うことができ、実施例に例示されている。
【0032】
合成ゲルを調製するために、USYがシリカ及びアルミナの両方のための好ましい原料として使用されるが、ゼオライト合成において一般的に使用される他の原料もまた使用され得る。例えば、Al源は、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、及びアルミナを含む群から選択することができる。Si源は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカゲル、シリカゾル、ヒュームドシリカ、ケイ素アルコキシド、及び沈降シリカを含む群から選択することができる。
【0033】
RE硝酸塩をRE金属源として使用してもよく、他のRE塩の水溶液を使用することもできる。例えば、酢酸塩、イットリウム又はハロゲン(F、Cl、Br及びIなど)をRE塩として使用することができる。
【0034】
N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド溶液が好ましいOSDAであるが、CHA構造の合成に一般的に知られている他の適用可能なOSDAも使用することができる。構造指向群の例としては、N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウム、N,N,N-ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム、トリメチル(シクロヘキシルメチル)アンモニウム、テトラエチルアンモニウム、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウム及び1,1-ジエチル-2,6-ジメチルピペリジニウムの水酸化物又は塩が挙げられる。
【0035】
特定の範囲内でのゲル組成物の制御は、RE含有CHAを形成するために重要であり、SARの範囲は、10~100、好ましくは20~50であり、RE/Al2O3モル比の範囲は、0.01~1.00、好ましくは0.05~0.30であり、NaOH/SiO2モル比の範囲は、0.05~2.00、好ましくは0.15~0.95であり、Q/SiO2モル比の範囲は、0.001~0.20、好ましくは0.02~0.10であり、H2O/SiO2モル比の範囲は、5~100、好ましくは20~50である。Qは、構造指向剤である。
【0036】
ゲル組成物は、10~100、例えば、20~90、30~80、40~70、又は50~60のSAR範囲を有することができる。
【0037】
合成ゲルは、以下の組成モル比のうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上又は4つ全てを有することができ、組成モル比において、
RE/Al2O3は、0.01~1.00、例えば、0.01~1、0.05~0.5、0.1~0.3であり、
NaOH/SiO2は、約0.05~約2.00、例えば、0.05~2、0.1~0.95、0.15~0.95、0.2~0.9、0.3~0.8又は0.5~0.7であり、
Q/SiO2は、約0.001~約0.20、例えば、0.001~0.2、0.01~0.15、0.02~0.1、0.05~0.9、0.1~0.8又は0.2~0.5であり、
H2O/SiO2は、約5~約100、例えば、10~80、20~75、30~60又は40~50である。
【0038】
結晶化温度は、100℃~200℃、好ましくは110~180℃の範囲である。完全な結晶化のための時間は、5時間~10日間、好ましくは10~60時間である。結晶化後、合成されたままのゼオライトは、通常の固液分離法によって合成混合物から回収され、濾液の導電率が0.1mS未満になるまで脱塩水で洗浄される。次いで、濾過ケーキをオーブン乾燥して表面水を減少させ、乾燥粉末生成物を得る。OSDA含有量を燃焼除去するための乾燥生成物の焼成、続いてアルカリカチオンを除去するためのアンモニウムイオン交換、及び生成物をアンモニウム形態から活性化形態に変換するための最終焼成は、当業者に一般的に知られている典型的な手順によって行われ、実施例に例示されている。
【0039】
粉末X線回折(Powder X-ray diffraction、PXRD)を使用して、目的とするゼオライト構造の結晶化度を決定し、不純物相の有無を特定する。走査電子顕微鏡(Scanning electron microscopy、SEM)を使用して、形成されたゼオライト生成物の結晶形態を調べる。X線蛍光分光法(X-ray fluorescence spectroscopy、XRF)を使用して、形成されたゼオライトの元素組成を決定する。
【0040】
好ましくは、小細孔ゼオライトは、90%超、好ましくは95%超、更により好ましくは98%超の結晶化度を有する。
【0041】
好ましくは、小細孔ゼオライトは、粒状粒子を有する。すなわち、ゼオライトは、実質的に一次元形状を有する棒状粒子又は二次元形状を有するディスク若しくはプレート状粒子とは対照的に、ゼオライト結晶が三次元形状を有する粒子形態を有することが好ましい。ゼオライトは、立方結晶を含むか又は立方結晶からなる粒状粒子を有することが好ましい。一実施形態では、小細孔ゼオライトは、立方形態を有する。
【0042】
好ましくは、小細孔ゼオライトは、Cr、Mn、Fe、Co、Ce、Ni、Cu、Zn、Ga、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Re、Ir、Pt、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の遷移金属を更に含む。これらは、好ましくは総量で0.1~6重量%、好ましくは2~5重量%、より好ましくは2~4重量%である。遷移金属は、0.1~6重量%、例えば、0.5~5.5重量%、1~5重量%、1.5~4.5重量%、2~4重量%、又は2.5~3重量%の総量であり得る。遷移金属は、Cu、Fe、Mn、Pt、Pd及びRhから選択することができる。最も好ましい遷移金属は、Cu及び/又はFeである。
【0043】
第2の態様によれば、本発明は、NOx含有排気ガスを処理するための触媒組成物であって、この触媒組成物は、上記の第1の態様の方法に従って得ることができ、触媒組成物の小細孔ゼオライトは、9~30のSARと、1つ以上の希土類金属と、を有する、触媒組成物を提供する。
【0044】
第3の態様によれば、本発明は、NOx含有排気ガス中のNOxの選択的触媒還元のための触媒組成物の使用を提供する。
【0045】
ここで、以下の非限定的な実施例に関連して本発明を更に説明する。
【0046】
実施例1(P04D2QA)
まず、USYをイットリウム(III)でイオン交換し、焼成した。得られたY-USY、水酸化ナトリウム溶液、17.61gの25.5%N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド溶液及び脱塩水を混合して、初期合成ゲルを生成した。得られた合成混合物は、均一なスラリーであり、表1に列挙するモル組成を有する。
【0047】
次に、合成混合物を結晶化のために反応器に移した。
【0048】
調製した合成混合物を600mLのステンレス鋼製撹拌オートクレーブ中に密封し、130℃に加熱して22時間結晶化させた。従来の固液分離法により固体生成物を回収し、得られた固相を十分な量の脱塩水で洗浄した後、120℃のオーブンで乾燥した。XRDにより、得られた生成物が高度に結晶化された純粋なCHAであることが確認された。合成されたままの固体生成物を、1℃/分の昇温速度で550℃に加熱したマッフル炉内で焼成し、550℃で6時間保持した。
【0049】
焼成した生成物を冷却し、次いでアンモニウム交換を2回行った。硫酸アンモニウムを使用し、イオン交換を80℃で2時間行った。固体生成物を濾過によって回収し、洗浄後、濾過ケーキを120℃で乾燥させた。得られたNH4形態の乾燥生成物を、1℃/分の昇温速度で加熱し、550℃で2時間保持したマッフル炉内で焼成した。最終的に得られる生成物は、活性化H型及びY含有ゼオライト生成物である。
【0050】
最終生成物は、高度に結晶化された純粋なCHA構造のX線回折パターンを示したが(
図2)、これは、有機テンプレートを除去するための焼成、アルカリカチオンを除去するためのイオン交換、及びNH
4型からH型に変換するための最終活性化の後に材料が安定なままであることを示している。最終活性化生成物の元素分析の結果を表2に列挙する。結晶粒子像の形態をSEMで観察した。
【0051】
実施例2~16
実施例1の手順を繰り返したが、出発原料の量を調整し、及び/又は硝酸イットリウムの代わりに硝酸セリウムを用いて、表1に示す特定のモル比及び/又は様々なRE元素の組み込みを有する反応混合物を生成した。結晶化及び生成物の活性化形態を導く他の合成後の処理工程を、実施例1に記載したのと同じ方法で行ったが、いくつかの場合には、表1に示すように、結晶化条件(温度及び時間)は、結晶化の完了のために特定の実施例で必要とされるのに応じていくらか変化させた。各実施例からの生成物の結果を表2に列挙する。
【0052】
比較例1~4
イオン交換及び焼成処理によるREの担持なしでUSYを使用することによって合成ゲルを調製した以外は、実施例1、8、10及び16の合成を繰り返した。これらの合成は、それぞれ比較例1、2、3及び4に対応する。これらの比較例から得られたRE非含有CHAを使用して、対応するRE含有CHAと比較する。結晶化及びRE非含有CHAの活性化形態を導く他の合成後の処理工程を、対応する実施例に記載されているのと同じ方法で行った。これらの比較例からの結果を表2に列挙する。
【0053】
【表1】
[1]REは、希土類金属、イットリウム及びセリウムを表す。
[2]Qは、N,N,N-トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシドを表す。
[3]165℃/48時間、続いて180℃/21時間。
【0054】
【0055】
選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction、SCR)性能
実施例5、6及び17並びに比較例C1について記載した手順に従って調製した活性化ゼオライトに、脱塩水に溶解した必要量の酢酸銅(II)を用いて金属を含浸させた。金属含浸ゼオライトを、80℃で一晩乾燥させ、次いで、空気中、550℃で4時間焼成した。銅をゼオライトに添加して、ゼオライトの総重量に基づいて、2.75重量%の銅を達成した。
【0056】
各試料をペレット化し、500ppmのNO、550ppmのNH3、350ppmの10%H2O及び10%O2を含むガス流を用いて試験した。試験で使用した各触媒の量は、0.3gであった。試験で使用したガス流の流量は、2.6L/分であり、これは触媒1グラム当たり520L/時間に等しい。試料を、NH3を除いた上述のガス混合物の下で、室温から150℃まで加熱した。150℃で、NH3を、ガス混合物に添加し、試料を、これらの条件下で30分間保持した。次いで、温度を、5℃/分の速度で150℃から500℃まで増加させた。ゼオライトによって処理された下流ガスを監視して、NOx変換率及びN2O選択性を決定した。
【0057】
Cu含浸試料の一部を、5体積%のH2Oを含む空気中、850℃で16時間、水熱エージングした。これらの試料を、フレッシュ試料について上述したものと同様の条件下で、装備上で試験した。
【図面の簡単な説明】
【0058】
ここで、以下の非限定的な図に関連して本発明を更に説明する。
【
図1】実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8及び実施例9で作製した合成されたままのY含有CHA構造のXRDパターンを示す。
【
図2】実施例10、実施例11、実施例12、実施例13、実施例14、実施例15、及び実施例16で作製した合成されたままのCe含有CHA構造のXRDパターンを示す。
【
図3】実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8及び実施例9で作製した活性化Y含有CHA構造のXRDパターンを示す。
【
図4】実施例10、実施例11、実施例12、実施例13、実施例14、実施例15、及び実施例16で作製した活性化Ce含有CHA構造のXRDパターンを示す。
【
図5】実施例5、実施例6、実施例8、実施例9並びに比較例C1及びC2で作製した活性化Y含有CHA構造のXRDパターンを示す。
【
図6】実施例12、実施例14、実施例16、並びに比較例C1、C3及びC4で作製した活性化Ce含有CHA構造のXRDパターンを示す。
【
図7】実施例2で作製した合成されたままのY-CHAの顕微鏡画像を示す。
【
図8】実施例10で作製した合成されたままのCe-CHAの顕微鏡画像を示す。
【
図9(a)】1分当たり5℃の昇温速度で150~500℃の温度で試験した実施例15及び比較例C1のフレッシュ触媒及びエージング済み触媒の、NOx変換活性及びN
2O選択性をそれぞれ示すグラフである。
【
図9(b)】1分当たり5℃の昇温速度で150~500℃の温度で試験した実施例15及び比較例C1のフレッシュ触媒及びエージング済み触媒の、NOx変換活性及びN
2O選択性をそれぞれ示すグラフである。
【
図10(a)】1分当たり5℃の昇温速度で150~500℃の温度で試験した実施例5及び比較例C1のフレッシュ触媒及びエージング済み触媒の、NOx変換活性及びN
2O選択性をそれぞれ示すグラフである。
【
図10(b)】1分当たり5℃の昇温速度で150~500℃の温度で試験した実施例5及び比較例C1のフレッシュ触媒及びエージング済み触媒の、NOx変換活性及びN
2O選択性をそれぞれ示すグラフである。
【
図11(a)】1分当たり5℃の昇温速度で150~500℃の温度で試験した実施例5、6及び比較例C1のエージング済み触媒の、NOx変換活性及びN
2O選択性をそれぞれ示すグラフである。
【
図11(b)】1分当たり5℃の昇温速度で150~500℃の温度で試験した実施例5、6及び比較例C1のエージング済み触媒の、NOx変換活性及びN
2O選択性をそれぞれ示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
実施例1~9からのY-CHA試料の合成されたままの形態のいくつかには、2シータ約12.65に非CHAショルダーピークがあるが(
図1)、同じY-CHAの活性化された形態の全てには、そのようなショルダーピークはないことが注目された(
図3)。このショルダーピークは、Y-CHA中のイットリウム含有量の増加とともに現れ、成長する。
【0060】
Y-CHAとは異なり、合成されたままのCe-CHAは、CHAのみのXRDピークを示す(
図2)。活性化されたY-CHA(実施例5、6、8、9)及びCe-CHA(実施例12、14、16)並びに同様のSARを有するRE非含有CHA(比較例C1、C2、C3、C4)の重ね合わせXRDパターンは、ピーク広がり及びピーク位置に関して非常によく一致するディフラクトグラムを示す(
図5及び6)。
【0061】
CHA構造におけるRE原子の位置は、T原子の同形置換として骨格内にあるか、又はケージ内の余分な骨格種として骨格外にあるかのいずれかであってもよい。骨格REはまた、焼成処理などの合成後の処理工程において、骨格位置から骨格外位置に排出され得る。
【0062】
実施例2及び10からのRE-CHAの均一なサイズ約0.5~1.0μmを有する十分に成形された立方体様結晶は、同等の合成から作製されるRE非含有CHAと同様である(
図7及び8)。
【0063】
図9(a)及び
図9(b)に示すように、本発明の方法に従って形成され、13.7のSARを有し0.41重量%のセリアを含有する触媒(実施例15)は、13のほぼ同じSARを有するCuCHAゼオライトを用いる比較例C1と同様のフレッシュNOx変換率及びN
2O選択性を示した。
【0064】
しかし、同じ
図9(a)及び
図9(b)に示すように、本発明の方法に従って形成され、13.7の間のSARを有し0.41重量%のセリアを含有する触媒(実施例15)は、150~500℃の温度にわたって著しく改善されたエージング済みNOx変換率及びN
2O選択性を示す。
【0065】
図10(a)及び
図10(b)に示すように、本発明の方法に従って形成され、13.9のSARを有し0.24重量%のYを含有する触媒(実施例5)は、比較例C1と同じフレッシュ活性を示した。しかし、エージング後、実施例5は、CuCHAゼオライトを使用する比較例C1と比較して、150~500℃の温度にわたって著しく改善されたNOx変換率及びN
2O選択性を示す。これらの触媒の両方についての銅の量は、2.75重量%で同じであり、したがって、活性の改善は、本発明の方法に従ってゼオライトを形成することによって達成される0.24重量%のY担持量に起因することに留意されたい。
【0066】
実施例5、6及び比較例C1のエージング済みNOx変換率及びN
2O選択性を示す
図11(a)及び
図11(b)に示されるように、触媒のY担持量が0.11重量%である場合にも同様の効果が達成される。
【0067】
したがって、
図9~
図11は、本発明の方法に従ってゼオライトを形成することによって、セリア及びイットリアなどの希土類金属をゼオライト中に含めることが、改善されたエージング済みNOx変換率及びN
2O選択性を達成することを示している。
【0068】
本発明の好ましい実施形態について本明細書で詳細に説明してきたが、本発明の範囲又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、変形がなされ得ることが当業者には理解されるであろう。
【国際調査報告】