(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 7/04 20060101AFI20240816BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20240816BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20240816BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240816BHJP
【FI】
B22F7/04 D
H01G9/00 290D
B22F1/05
B22F1/00 N
B22F7/04 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580617
(86)(22)【出願日】2023-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2023075165
(87)【国際公開番号】W WO2024027122
(87)【国際公開日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】202210920985.4
(32)【優先日】2022-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518446097
【氏名又は名称】南通海星電子股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Nantong Haixing Electronics Limited Liability Company
【住所又は居所原語表記】No.518, South Tongyang Road, Pingchao Town, Tongzhou District, Nantong City, Jiangsu 226300 China
(71)【出願人】
【識別番号】518446101
【氏名又は名称】南通海一電子有限公司
【氏名又は名称原語表記】Nantong Haiyi Electronics Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.519, South Tongyang Road, Pingchao Town, Tongzhou District, Nantong City Jiangsu 226300 China
(71)【出願人】
【識別番号】518446112
【氏名又は名称】四川中雅科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Si Chuan Zhongya Technology Company.
【住所又は居所原語表記】Industrial Park Yaan, Sichuan 625000 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】王建中
(72)【発明者】
【氏名】程恒洋
(72)【発明者】
【氏名】冒慧敏
(72)【発明者】
【氏名】何桂麗
(72)【発明者】
【氏名】濮▲ウィ▼
(72)【発明者】
【氏名】李姜紅
(72)【発明者】
【氏名】朱偉晨
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA14
4K018BA08
4K018BB04
4K018CA33
4K018HA08
4K018JA29
4K018KA39
(57)【要約】
本発明は、高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法を提供しており、アルミニウム粉末、接着剤、添加剤を有機溶媒に混合し、撹拌して混合スラリーを得るステップと、混合スラリーをアルミニウム箔表面に塗布し、乾燥固化して膜を形成して焼結箔を形成するステップと、焼結箔基材を焼結し、粉末焼結箔を得るステップと、粉末焼結箔をチタン含有前駆体溶液に浸漬し、その後、水切りして高温焼結処理を実行して複合焼結箔を得るステップと、複合焼結箔に対し化成処理を実行するステップとを含む。本発明の製造過程では、アルミニウム箔に対し表面腐食による穴拡張処理を行う必要がないため、大量の酸溶液の使用が不要である。また、電極箔の誘電特性が向上することができる。さらに、親水化処理後、製造されたゲル前駆体溶液が粉末焼成箔に付着しやすくなり、酸化チタンの担持量が増加し、成形後の二酸化チタンとアルミニウム箔気体との間の良好な結合強度が確保される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法であって、
アルミニウム粉末、接着剤、および添加剤を有機溶媒に混合し、均一に撹拌して混合スラリーを得るステップS1と、
ステップS1で得られた前記混合スラリーをアルミニウム箔表面に塗布し、乾燥固化して膜を形成して、焼結箔を形成するステップS2と、
ステップS2で得られた前記焼結箔基材を不活性ガスに置き、焼結して粉末焼結箔を得るステップS3と、
ステップS3で得られた前記粉末焼結箔をチタン含有前駆体溶液に浸漬して、水切り処理を行い、その後、熱処理を行って、前記粉末焼結箔の表面に二酸化チタンを形成して複合焼結箔を得るステップS4と、
ステップS4で得られた前記複合焼結箔を化成して高誘電性複合粉末焼結箔を得るステップS5とを含み、
前記チタン含有前駆体溶液の製造方法は、以下のサブステップを含み、
チタン酸テトラブチル溶液を乳酸溶液に一滴ずつ加え、3~5min撹拌して混合溶液を形成し、ここで、前記チタン酸テトラブチル溶液と前記乳酸溶液との体積比は、1:6であり、前記チタン酸テトラブチル溶液の濃度が0.01~0.5mol/Lである、サブステップS41と、
ステップS41で得られた前記混合溶液に脱イオン水を加えて希釈し、均一に撹拌する、サブステップS42と、
前記混合溶液に、引き続き、濃度0.2~0.5g/Lのポリビニルアルコール水溶液を加え、均一に混合されるまで3~5min撹拌するサブステップS43とを含む、ことを特徴とする高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法。
【請求項2】
ステップS1では、前記混合スラリー中の各成分の質量比は、アルミニウム粉末が60~85%、接着剤が5~10%、添加剤が1~5%、有機溶媒が6~30%である、ことを特徴とする請求項1に記載の高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法。
【請求項3】
ステップS1では、前記アルミニウム粉末の純度が99.9%以上であり、粒径が1~50μmである、ことを特徴とする請求項2に記載の高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法。
【請求項4】
ステップS1では、前記接着剤は、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロースまたはアクリル樹脂のいずれか1つまたはその組合せである、ことを特徴とする請求項2に記載の高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法。
【請求項5】
ステップS1では、前記添加剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸またはポリビニルアルコールのいずれか1つまたはその組合せである、ことを特徴とする請求項2に記載の高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法。
【請求項6】
ステップS1では、前記有機溶媒は、エタノール、エチレングリコール、グリセリン、N-メチルピロリドンのいずれか1つまたはその組合せである、ことを特徴とする請求項2に記載の高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法。
【請求項7】
ステップS2では、前記アルミニウム箔の厚みが30~80μmであり、表面粗さRaが0.2~0.25μmであり、前記混合スラリーの塗布方式が刷毛塗り、ローリング塗りまたはスプレー塗り方式でありm前記混合スラリー固化膜形成の乾燥温度が150~200℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法。
【請求項8】
前記ステップS3は、
ステップS2で得られた前記焼結箔基材を不活性ガスに置き、温度が300~450℃であり、1.5~2h維持する、サブステップS31と、
ステップS31で得られた前記焼結箔基材を、引き続き、不活性ガスに置き、500~650℃まで昇温して3~5h維持する、サブステップS32とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法。
【請求項9】
ステップS4では、前記チタン含有前駆体溶液を水切りした後、前記複合焼結箔を製造するための熱処理温度が550~600℃であり、保温時間が25~30minである、ことを特徴とする請求項1に記載の高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法。
【請求項10】
ステップS5は、
前記複合焼結箔を90~95℃の水中で8~10min煮沸する、サブステップS51と、
ステップS51で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度2~10%のホウ酸水溶液と0.5~2%五ホウ酸アンモニウム溶液に浸漬し、70~90℃、電流密度20mA/cm
2、電圧200Vの条件下で、一次化成を行い、化成時間が10~20minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS52と、
ステップS52で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度2~10%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度0.2~1.5%の五ホウ酸アンモニウム溶液に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm
2、電圧430Vの条件下で、二次化成を行い、化成時間が10~15minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS53と、
ステップS53で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度4~9%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度0.1~1%の五ホウ酸アンモニウム溶液に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm
2、電圧590Vの条件下で、三次化成を行い、化成時間が8~15minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS54と、
ステップS54で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度4~9%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度0.1~1%の五ホウ酸アンモニウム溶液に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm
2、電圧620Vの条件下で、四次化成を行い、化成時間が20~30minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS55と、
ステップS55で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度5~6%のリン酸溶液に浸漬し、温度が50~80℃に制御され、浸漬時間が5~10minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS56と、
ステップS56で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度10~12%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度1~1.5%の五ホウ酸アンモニウム溶液に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm
2、電圧620Vの条件下で、後一次化成を行い、化成時間が5~8minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS57と、
ステップS57で得られた前記複合焼結箔をオーブンに入れ、温度が400~550℃に制御され、時間が3~5minに制御されて乾燥する、ステップS58と、
ステップS58で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度4~9%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度0.1~1%の五ホウ酸アンモニウム溶液に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm
2、電圧620Vの条件下で、後二次化成を行い、化成時間が7~10minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS59と、
ステップS59で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度1~5%のリン酸二水素アンモニウム溶液に入れ、60~80℃で5~8min浸漬し、その後、取り出して水で洗浄して乾燥する、スサブテップS60とを、含むことを特徴とする請求項1に記載の高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極箔の製造技術分野に属し、特に、高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアルミ電解コンデンサに使用されている電極箔は、アルミ箔を化学的・電気化学的に腐食(エッチング)して穴を開けることで、比表面積の増加を実現している。この方法は、大量の酸液を使用する必要があり、廃液が発生するため環境保全コストが増える問題がある。近年、電気化学的腐食の代わりに、アルミニウム基板の表面上でアルミニウム粉末を焼結することによって高い比表面積を得る方法が出現した。研究の結果により、粉末焼結箔は腐食箔に比べて大きな比表面積が得られ、製造工程で各種腐食性の酸を使用しないため、環境負荷と経済コストが大幅に削減されることがわかっている。
【0003】
近年、研究者らは、アルミニウム電極箔に高誘電材料を添加することが、アルミニウム電極箔の面積比容量を増加させる効果的な手段であることを確認した。例えば、中国特許CN106384670Bには、高誘電率の複合酸化被膜電極箔の製造方法を開示している。具体的に、面拡大腐食が実施されたアルミニウム箔を、ゾルゲル法で調製した50~70℃n-チタン酸ブチルとエチレングリコールメチルエーテルとの混合系に浸漬し、その後、当該混合系に5~10Vの直流電圧を印加し、30~60mA/cm2電流密度で0.5~2min電着し、次に、100~200℃空気雰囲気で3~5min乾燥し、1~3atm圧力の保護気体粉末で400~600℃の高温熱処理を1~24h実行し、化成(陽極酸化)する。前記n-チタン酸ブチルとエチレングリコールメチルエーテルとの体積比は1:3~5であり、混合した溶液は、40~80℃で12~24hキレート反応させた後、純水を加えて溶液の濃度を0.1~1mol/Lに調製する。実際の実験結果では、上述した方法で製造された電極箔は、従来技術と比較して、面積比容量が20%以上向上できるが、アルミニウム箔を面拡張する過程では、大量の酸と電気エネルギーが必要である。また、環境汚染をなくすために、工場は廃酸処理設備を購入するために多額の追加費用を費やす必要がある。さらに、アルミニウム箔の表面に形成される孔の孔径、深さ、分布密度の均一性などのパラメータを制御することは困難であり、チタン含有高誘電率複合酸化物皮膜の形成品質およびアルミニウム箔基材の結合強度に影響を与えることは避けられない。よって、従来技術で製造された高誘電率複合酸化物皮膜は、加振力や外力によりアルミ箔基材から剥離しやすくなり、アルミニウム電解コンデンサの性能を低下する。したがって、従来技術の問題をどのように解決するのが、当業者にとって急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術の問題点および欠点を考慮して、本発明の設計者は、関連情報を収集し、多くの側面を評価および検討し、さらに、この業界で長年の研究開発経験を持つ技術者によって実験と修正を続けることで、最終に、高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の従来技術の問題を解決するために、本発明は、高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法であって、アルミニウム粉末、接着剤、および添加剤を有機溶媒に混合し、均一に撹拌して混合スラリーを得るステップS1と、ステップS1で得られた前記混合スラリーをアルミニウム箔表面に塗布し、乾燥固化して膜を形成して、焼結箔を形成するステップS2と、ステップS2で得られた前記焼結箔基材を不活性ガスに置き、焼結して粉末焼結箔を得るステップS3と、ステップS3で得られた前記粉末焼結箔をチタン含有前駆体溶液に浸漬して、水切り処理を行い、その後、熱処理を行って、前記粉末焼結箔の表面に二酸化チタンを形成して複合焼結箔を得るステップS4と、ステップS4で得られた前記複合焼結箔を化成して高誘電性複合粉末焼結箔を得るステップS5とを含み、前記チタン含有前駆体溶液の製造方法は、以下のサブステップを含み、チタン酸テトラブチル溶液を乳酸溶液に一滴ずつ加え、3~5min撹拌して混合溶液を形成し、ここで、前記チタン酸テトラブチル溶液と前記乳酸溶液との体積比は、1:6であり、前記チタン酸テトラブチル溶液の濃度が0.01~0.5mol/Lである、サブステップS41と、ステップS41で得られた前記混合溶液に脱イオン水を加えて希釈し、均一に撹拌する、サブステップS42と、前記混合溶液に、引き続き、濃度0.2~0.5g/Lのポリビニルアルコール水溶液を加え、均一に混合されるまで3~5min撹拌するサブステップS43とを含む高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法を提供する。
【0006】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、ステップS1では、前記接着剤は、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロースまたはアクリル樹脂のいずれか1つまたはその組合せである。
【0007】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、ステップS1では、前記添加剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸またはポリビニルアルコールのいずれか1つまたはその組合せである。
【0008】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、ステップS1では、前記有機溶媒は、エタノール、エチレングリコール、グリセリン、N-メチルピロリドンのいずれか1つまたはその組合せである。
【0009】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、ステップS2では、前記アルミニウム箔の厚みが30~80μmであり、表面粗さRaが0.2~0.25μmであり、前記混合スラリーの塗布方式が刷毛塗り、ローリング塗りまたはスプレー塗り方式でありm前記混合スラリー固化膜形成の乾燥温度が150~200℃である。
【0010】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、ステップS3は、ステップS2で得られた前記焼結箔基材を不活性ガスに置き、温度が300~450℃であり、1.5~2h維持する、サブステップS31と、ステップS31で得られた前記焼結箔基材を、引き続き、不活性ガスに置き、500~650℃まで昇温して3~5h維持する、サブステップS32とを含む。
【0011】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、不活性ガスが窒素ガスまたはアルゴンガスである。
【0012】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、ステップS4では、前記チタン含有前駆体溶液を水切りした後、前記複合焼結箔を製造するための熱処理温度が550~600℃であり、保温時間が25~30minである。
【0013】
本発明で開示される技術的解決策のさらなる改良として、ステップS5は、前記複合焼結箔を90~95℃の水中で8~10min煮沸する、サブステップS51と、ステップS51で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度2~10%のホウ酸水溶液と0.5~2%五ホウ酸アンモニウム溶液に浸漬し、70~90℃、電流密度20mA/cm2、電圧200Vの条件下で、一次化成を行い、化成時間が10~20minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS52と、ステップS52で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度2~10%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度0.2~1.5%の五ホウ酸アンモニウム溶液に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm2、電圧430Vの条件下で、二次化成を行い、化成時間が10~15minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS53と、ステップS53で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度4~9%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度0.1~1%の五ホウ酸アンモニウム溶液に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm2、電圧590Vの条件下で、三次化成を行い、化成時間が8~15minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS54と、ステップS54で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度4~9%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度0.1~1%の五ホウ酸アンモニウム溶液に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm2、電圧620Vの条件下で、四次化成を行い、化成時間が20~30minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS55と、ステップS55で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度5~6%のリン酸溶液に浸漬し、温度が50~80℃に制御され、浸漬時間が5~10minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS56と、ステップS56で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度10~12%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度1~1.5%の五ホウ酸アンモニウム溶液に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm2、電圧620Vの条件下で、後一次化成を行い、化成時間が5~8minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS57と、ステップS57で得られた前記複合焼結箔をオーブンに入れ、温度が400~550℃に制御され、時間が3~5minに制御されて乾燥する、ステップS58と、ステップS58で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度4~9%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度0.1~1%の五ホウ酸アンモニウム溶液に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm2、電圧620Vの条件下で、後二次化成を行い、化成時間が7~10minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する、サブステップS59と、ステップS59で得られた前記複合焼結箔を、質量百分率濃度1~5%のリン酸二水素アンモニウム溶液に入れ、60~80℃で5~8min浸漬し、その後、取り出して水で洗浄して乾燥する、スサブテップS60とを含む。
【発明の効果】
【0014】
実際の応用では、高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法は少なくとも以下の有益な効果を有する。
1)アルミニウム箔表面にチタン複合酸化物被膜を形成する従来の面拡大腐食電着プロセスと比較して、本願が開示した技術では、アルミニウム箔の表面腐食および穴拡大処理を行う必要がないため、製造過程全体は、大量な酸性溶液を使用するのを抑え、電極箔の作製の難易度やコストがある程度軽減されるだけでなく、廃酸処理の負担も軽減される。
2)二酸化チタンの存在により、電極箔の誘電特性がさらに改善され、複合電極箔がより高い面積比容量性能を得ることができる。
3)親水化処理を施すことにより、製造されたゲル前駆体溶液が粉末焼結箔に密着しやすくなり、成形後の二酸化チタン膜の表面品質や形状が均一になるだけでなく、成形後の二酸化チタンの膜相とアルミニウム箔基材はより優れた結合強度を有しており、加振力や外力によるアルミニウム箔基材からの剥離現象を効果的に回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の理解を深めるために実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を説明するためにのみ使用されるものであり、本発明の保護範囲を限定するものではない。また、以下の説明において、特別な説明のないかぎり、すべでは周知技術である。
【0016】
実施例1
本発明の電性複合粉末焼結箔の製造方法は、以下のステップを含む。
【0017】
S1、アルミニウム粉末と、エポキシ樹脂と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとをエタノールに混合し、均一に撹拌して混合スラリーを得る。混合スラリー中の各成分の質量比は、アルミニウム粉末60~85%、エポキシ樹脂5~10%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1~5%、エタノール6~30%、且つアルミニウム粉末の純度が99.9%以上であり、粒径は1~50μmに制御される。
【0018】
S2、ステップS1で得られた混合スラリーを、厚さ30μm、表面粗さRaが0.2~0.25μmに制御されたアルミニウム箔表面に塗布し、乾燥固化して膜を形成し、焼結箔を形成する。混合スラリー固化膜形成の乾燥温度が150℃に制御される。
【0019】
S3、粉末焼結箔の成形は、以下のサブステップを含む。
【0020】
S31、ステップS2で得られた焼結箔基材をアルゴン雰囲気中に置き、温度300℃に2時間維持する。
【0021】
S32、ステップS31で得られた焼結箔基材を引き続きアルゴン雰囲気中に置き、500℃まで昇温して5時間維持する。
【0022】
S4、ステップS3で得られた粉末焼結箔をチタン含有前駆体溶液に浸漬し、水切り処理後、熱処理を行って粉末焼結箔の表面に二酸化チタンを形成して複合焼結箔を得る。チタン含有前駆体溶液を水切りした後、複合焼結箔を製造するための熱処理温度が550℃に制御され、かつ保温時間を30minにする。
【0023】
チタン含有前駆体溶液の製造方法は、以下のサブステップを含む。
【0024】
S41、チタン酸テトラブチル溶液を、乳酸溶液に一滴ずつ加え、3~5min撹拌して混合溶液を形成する。チタン酸テトラブチル溶液と乳酸溶液との体積比は、1:6であり、チタン酸テトラブチル溶液の濃度は0.05~0.1mol/Lである。
【0025】
S42、ステップS41で得られた混合溶液に脱イオン水を加えて希釈し、均一に撹拌する。
【0026】
S43、混合溶液に、引き続き、濃度0.2~0.5g/Lのポリビニルアルコール水溶液を加え、均一に混合されるまで3~5min撹拌する。
【0027】
S5、ステップS4で得られた複合焼結箔を従来の化成プロセスによって化成し、高誘電性複合粉末焼結箔を得る。
【0028】
従来の化成プロセスは、以下のサブステップを含む。
【0029】
S51、ステップS4で得られた複合焼結箔を、25wt%二酸アンモニウム溶液に浸漬して化成(化学腐食、酸化腐食)し、化成中に電流密度10mA/cm2の電流を印加し、溶液タンク内の温度が90℃に制御され、一次化成箔を得る。
【0030】
S52、一次化成箔を、25wt%二酸アンモニウム溶液に浸漬して化成(化学腐食、酸化腐食)し、化成中に電流密度30mA/cm2の電流を印加し、溶液タンク内の温度が90℃に制御され、二次化成箔を得る。
【0031】
S53、二次化成箔を、5wt%二酸アンモニウム溶液に浸漬して化成(化学腐食、酸化腐食)し、化成中に電流密度40mA/cm2の電流を印加し、溶液タンク内の温度が90℃に制御され、三次化成箔を得る。
【0032】
S54、三次化成箔を25wt%二酸アンモニウム溶液に浸漬して化成(化学腐食、酸化腐食)し、化成中に電流密度50mA/cm2の電流を印加し、溶液タンク内の温度が60℃に制御され、複数回の化成(化学腐食、酸化腐食)を繰り返し、四次~六次の電流密度が50mA/cm2であり、六次化成箔を得る。
【0033】
S55、得られた六次化成箔に対してデポラリゼーション処理を行う。
【0034】
実施例2
高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法であって、以下のステップを含む。
【0035】
S1、アルミニウム粉末、エポキシ樹脂、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムをエタノールに混合し、均一に撹拌して混合スラリーを得る。混合スラリー中の各成分の質量比は、アルミニウム粉末60~85%、エポキシ樹脂5~10%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1~5%、エタノール6~30%、かつアルミニウム粉末の純度の99.9%以上に制御され、粒径が1~50μmに制御される。
【0036】
S2、ステップS1で得られた混合スラリーを、厚さ30μm、表面粗さRa0.2~0.25μmのアルミニウム箔表面に塗布し、乾燥固化して膜を形成して、焼結箔を形成する。混合スラリー固化膜形成の乾燥温度が180℃に制御される。
【0037】
S3、粉末焼結箔の成形には、以下のサブステップを含む。
【0038】
S31、ステップS2で得られた焼結箔基材を、アルゴン雰囲気に置き、温度が450℃に制御し、1.5h維持する。
【0039】
S32、ステップS31で得られた焼結箔基材を引き続きアルゴン雰囲気に置き、650℃まで昇温して3h維持する。
【0040】
S4、ステップS3で得られた粉末焼結箔を、チタン含有前駆体溶液に浸漬して、水切り処理した後、熱処理を行い、粉末焼結箔の表面に二酸化チタンを形成して、複合焼結箔を得る。チタン含有前駆体溶液を水切りした後、複合焼結箔を製造するための熱処理温度が600℃に制御され、かつ保温時間を25minにする。
【0041】
チタン含有前駆体溶液の製造方法は、以下のサブステップを含む。
【0042】
S41、チタン酸テトラブチル溶液を乳酸溶液に一滴ずつ加え、3~5min撹拌して混合溶液を形成する。チタン酸テトラブチル溶液と乳酸溶液との体積比は1:6であり、チタン酸テトラブチル溶液の濃度が0.05~0.1mol/Lである。
【0043】
S42、ステップS41で得られた混合溶液に脱イオン水を加えて希釈し、均一に撹拌する。
【0044】
S43、混合溶液に、引き続き、濃度0.2~0.5g/Lのポリビニルアルコール水溶液を加え、均一に混合されるまで3~5min撹拌する。
【0045】
S5、ステップS4で得られた複合焼結箔を、従来の化成プロセスによって化成し、高誘電性複合粉末焼結箔を得る。
【0046】
従来の従来の化成プロセスは、以下のサブステップを含む。
【0047】
S51、ステップS4で得られた複合焼結箔を、25wt%二酸アンモニウム溶液に浸漬して化成(化学腐食、酸化腐食)し、化成中に電流密度10mA/cm2の電流を印加し、溶液タンク内の温度が90℃に制御され、一次化成箔を得る。
【0048】
S52、一次化成箔を、25wt%二酸アンモニウム溶液に浸漬して化成(化学腐食、酸化腐食)し、化成中に電流密度30mA/cm2の電流を印加し、溶液タンク内の温度が90℃に制御され、二次化成箔を得る。
【0049】
S53、二次化成箔を、5wt%二酸アンモニウム溶液に浸漬して化成(化学腐食、酸化腐食)し、化成中に電流密度40mA/cm2の電流を印加し、溶液タンク内の温度が90℃に制御され、三次化成箔を得る。
【0050】
S54、三次化成箔を、25wt%二酸アンモニウム溶液に浸漬して化成(化学腐食、酸化腐食)し、化成中に電流密度50mA/cm2の電流を印加し、溶液タンク内の温度が60℃に制御され、複数回の化成(化学腐食、酸化腐食)を繰り返し、四次~六次の電流密度が50mA/cm2であり、これによって、六次化成箔を得る。
【0051】
S55、得られた六次化成箔に対してデポラリゼーション処理を行う。
【0052】
実施例3
高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法は、以下のステップを含む。
【0053】
S1、アルミニウム粉末、エポキシ樹脂、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムをエタノールに混合し、均一に撹拌して混合スラリーを得る。混合スラリー中の各成分の質量比は、アルミニウム粉末60~85%、エポキシ樹脂5~10%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1~5%、エタノール6~30%、かつアルミニウム粉末の純度が99.9%以上に制御され、粒径が1~50μmに制御される。
【0054】
S2、ステップS1で得られた混合スラリーを、厚さ30μm、表面粗さRa0.2~0.25μmのアルミニウム箔表面に塗布し、乾燥固化して膜を形成して焼結箔を形成する。混合スラリー固化膜形成の乾燥温度が180℃に制御される。
【0055】
S3、粉末焼結箔の成形,以下のサブステップを含む:
S31、ステップS2で得られた焼結箔基材を、アルゴン雰囲気に置き、温度が350℃に制御され、1.8h維持する。
【0056】
S32、ステップS31で得られた焼結箔基材を、引き続き、アルゴン雰囲気に置き、550℃まで昇温し、4h維持する。
【0057】
S4、ステップS3で得られた粉末焼結箔を、チタン含有前駆体溶液に浸漬して、水切り処理した後、熱処理を行い、粉末焼結箔の表面に二酸化チタンを形成して、複合焼結箔を得る。チタン含有前駆体溶液を水切りした後、複合焼結箔を製造するための熱処理温度が600℃に制御され、かつ保温時間を25minにする。
【0058】
チタン含有前駆体溶液の製造方法は、以下のサブステップを含む。
【0059】
S41、チタン酸テトラブチル溶液を乳酸溶液に一滴ずつ加え、3~5min撹拌して混合溶液を形成する。チタン酸テトラブチル溶液と乳酸溶液との体積比は、1:6であり、チタン酸テトラブチル溶液の濃度が0.05~0.1mol/Lである。
【0060】
S42、ステップS41で得られた混合溶液に脱イオン水を加えて希釈し、均一に撹拌する。
【0061】
S43、混合溶液に、引き続き、濃度0.2~0.5g/Lのポリビニルアルコール水溶液を加え、均一に混合されるまで3~5min撹拌する。
S5、ステップS4で得られた複合焼結箔を従来の化成プロセスによって化成し、高誘電性複合粉末焼結箔を得る。
【0062】
従来の化成プロセスは、以下のサブステップを含む。
【0063】
S51、ステップS4で得られた複合焼結箔を、25wt%二酸アンモニウム溶液に浸漬して化成(化学腐食、酸化腐食)し、化成中に電流密度10mA/cm2の電流を印加し、溶液タンク内の温度が90℃に制御され、一次化成箔を得る。
【0064】
S52、一次化成箔を、25wt%二酸アンモニウム溶液に浸漬して化成(化学腐食、酸化腐食)し、化成中に電流密度30mA/cm2の電流を印加し、溶液タンク内の温度が90℃に制御され、二次化成箔を得る。
【0065】
S53、二次化成箔を5wt%二酸アンモニウム溶液に浸漬して化成(化学腐食、酸化腐食)し、化成中に電流密度40mA/cm2の電流を印加し、溶液タンク内の温度が90℃に制御され、三次化成箔を得る。
【0066】
S54、三次化成箔を25wt%二酸アンモニウム溶液に浸漬して化成(化学腐食、酸化腐食)し、化成中に電流密度50mA/cm2の電流を印加し、溶液タンク内の温度が60℃に制御され、複数回の化成(化学腐食、酸化腐食)を繰り返し、四次~六次の電流密度が50mA/cm2であり、六次化成箔を得る。
【0067】
S55、得られた六次化成箔に対してデポラリゼーション処理を行う。
【0068】
実施例4
高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法は、以下のステップを含む。
【0069】
S1、アルミニウム粉末、エポキシ樹脂、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムをエタノールに混合し、均一に撹拌して混合スラリーを得る。混合スラリー中の各成分の質量比は、アルミニウム粉末60~85%、エポキシ樹脂5~10%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1~5%、エタノール6~30%、かつアルミニウム粉末の純度が99.9%以上に制御され、粒径が1~50μmに制御される。
【0070】
S2、ステップS1で得られた混合スラリーを、厚さ30μm、表面粗さRa0.2~0.25μmのアルミニウム箔表面に塗布し、乾燥固化して膜を形成して、焼結箔を形成する。混合スラリー固化膜形成の乾燥温度が180℃に制御される。
【0071】
S3、粉末焼結箔の成形は、以下のサブステップを含む。
【0072】
S31、ステップS2で得られた焼結箔基材を、アルゴン雰囲気に置き、温度が350℃に制御され、1.8h維持する。
【0073】
S32、ステップS31で得られた焼結箔基材を、引き続き、アルゴン雰囲気に置き、550℃まで昇温し、4h維持する。
【0074】
S4、ステップS3で得られた粉末焼結箔をチタン含有前駆体溶液に浸漬し、水切り処理後、熱処理を行って、粉末焼結箔の表面に二酸化チタンを形成して複合焼結箔を得る。チタン含有前駆体溶液を水切りした後、複合焼結箔を製造するための熱処理温度が600℃に制御され、かつ保温時間を25minにする。
【0075】
チタン含有前駆体溶液の製造方法は、以下のサブステップを含む。
【0076】
S41、チタン酸テトラブチル溶液を乳酸溶液に一滴ずつ加え、3~5min撹拌して混合溶液を形成する。チタン酸テトラブチル溶液と乳酸溶液との体積比は、1:6であり、チタン酸テトラブチル溶液の濃度は、0.05~0.1mol/Lである。
【0077】
S42、ステップS41で得られた混合溶液に脱イオン水を加えて希釈し、均一に撹拌する。
【0078】
S43、混合溶液に、引き続き、濃度0.2~0.5g/Lのポリビニルアルコール水溶液を加え、均一に混合されるまで3~5min撹拌する。
【0079】
S5、ステップS4で得られた複合焼結箔を、従来の化成プロセスによって化成し、高誘電性複合粉末焼結箔を得る。
【0080】
ステップS5は、以下のサブステップを含む。
【0081】
S51、複合焼結箔を90~95℃の水中で8~10min煮沸する。
【0082】
S52、ステップS51で得られた複合焼結箔を、質量百分率濃度2~10%のホウ酸水溶液と0.5~2%五ホウ酸アンモニウム溶液中に浸漬し、70~90℃、電流密度20mA/cm2、電圧200Vの条件下で、一次化成(化学腐食、酸化腐食)をし、化成時間が10~20minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する。
【0083】
S53、ステップS52で得られた複合焼結箔を、質量百分率濃度2~10%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度0.2~1.5%の五ホウ酸アンモニウム溶液中に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm2、電圧430Vの条件下で、二次化成(化学腐食、酸化腐食)をし、化成時間が10~15minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する。
【0084】
S54、ステップS53で得られた複合焼結箔を、質量百分率濃度4~9%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度0.1~1%の五ホウ酸アンモニウム溶液中に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm2、電圧590Vの条件下で、三次化成(化学腐食、酸化腐食)をし、化成時間が8~15minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する。
【0085】
S55、ステップS54で得られた複合焼結箔を、質量百分率濃度4~9%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度0.1~1%の五ホウ酸アンモニウム溶液中に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm2、電圧620Vの条件下で、四次化成(化学腐食、酸化腐食)をし、化成時間が20~30minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する。
【0086】
S56、ステップS55で得られた複合焼結箔を、質量百分率濃度5~6%のリン酸溶液中に浸漬し、温度が50~80℃に制御され、浸漬時間が5~10minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する。
【0087】
S57、ステップS56で得られた複合焼結箔を、質量百分率濃度10~12%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度1~1.5%の五ホウ酸アンモニウム溶液中に浸漬し、80~95℃、電流密度20mA/cm2、電圧620Vの条件下で、一次化成(化学腐食、酸化腐食)をし、化成時間が5~8minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する。
【0088】
S58、ステップS57で得られた複合焼結箔をオーブンに入れ、温度が400~550℃に制御され、時間が3~5minに制御される。
【0089】
S59、ステップS58で得られた複合焼結箔を、質量百分率濃度4~9%のホウ酸水溶液と質量百分率濃度0.1~1%の五ホウ酸アンモニウム溶液中に入れ、80~95℃、電流密度20mA/cm2、電圧620Vの条件下で、二次化成(化学腐食、酸化腐食)をし、化成時間が7~10minに制御され、その後、取り出して水で洗浄する。
【0090】
S60、ステップS59で得られた複合焼結箔を、質量百分率濃度1~5%のリン酸二水素アンモニウム溶液に浸漬し、60~80℃の条件下で、5~8min浸漬し、その後、取り出して水で洗浄し、乾燥させる。
【0091】
表1は、従来技術および実施例1~4で得られた電極箔の性能試験結果を示している。
【0092】
【表1】
備考:
1)既存の電気箔の製造プロセスは中国特許CN106384670Bの明細書に記載された第2の実施例に関する内容を参照して実施されている。
【0093】
2)剥離面積は、ISO2409-1992「塗料およびワニスの横断面切断試験」の方法を使用して試験した。
【0094】
実際の応用では、高誘電性複合粉末焼結箔の製造方法は、すくなくとも以下の有利な効果を達成している。
【0095】
1)アルミニウム箔表面にチタン複合酸化物被膜を形成する従来の面拡大腐食電着プロセスと比較して、本願が開示した技術では、アルミニウム箔の表面腐食および穴拡大処理を行う必要がないため、製造過程全体は、大量な酸性溶液を使用するのを抑え、電極箔の作製の難易度やコストがある程度軽減されるだけでなく、廃酸処理の負担も軽減される。また、粉末焼結箔は比表面積が大きいため、非体積性能が向上することができる。
【0096】
2)二酸化チタンの存在により、電極箔の誘電特性がさらに改善され、複合電極箔がより高い面積比容量性能を得ることができる。
【0097】
3)親水化処理を施すことにより、製造されたゲル前駆体溶液が粉末焼結箔に密着しやすくなり、成形後の二酸化チタン膜の表面品質や形状が均一になるだけでなく、成形後の二酸化チタンの膜相とアルミニウム箔基材はより優れた結合強度を有しており、加振力や外力によるアルミニウム箔基材からの剥離現象を効果的に回避することができる。
【0098】
なお、本発明の第4実施形態が、上述した第1、第2、第3の実施形態と異なる点は、従来とは異なる化成方法を開示していることである。具体的に、ステップS5では、複合焼結箔は、ホウ酸と五ホウ酸アンモニウムを混合して形成され、かつ化成過程は複数の段階(具体的に、一次化成(化学腐食、酸化腐食)、二次化成、三次化成、四次化成、後一次化成および後二次化成を含む)で実行され、このような化成過程で得られた酸化被膜の微細構造はより緻密であり、高誘電率二酸化チタンと酸化アルミニウム被膜との結合強度や複合後の全体的な曲げ性能の向上に有利であり、実際の応用では、複数の曲げにより、複合膜(高誘電率の二酸化チタンと酸化アルミニウム膜とで複合して形成されたもの)が接続断裂・破損するか、複合膜が高誘電性複合粉末焼結箔から広い面積で剥離することを効果的に回避することができる。
【0099】
開示された実施形態に関する説明により、当業者は本発明を製造または使用することができる。これらの実施形態に対する様々な修正は当業者には容易であり、本明細書で定義される一般原理は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく他の実施形態で実施することができる。したがって、本発明は、発明の詳細に示される実施形態に限定されるものではなく、その原理および特徴と一致する最も広い範囲も含まれている。
【国際調査報告】