(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】PPTCタンクヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/14 20060101AFI20240816BHJP
F24H 1/20 20220101ALI20240816BHJP
F24H 9/1818 20220101ALI20240816BHJP
【FI】
H05B3/14 A
F24H1/20 F
F24H9/1818
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503531
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 US2022038175
(87)【国際公開番号】W WO2023004187
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226506
【氏名又は名称】リテルフューズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ジアンフア
(72)【発明者】
【氏名】ファガネッロ、ダヴィデ
【テーマコード(参考)】
3K092
3L122
【Fターム(参考)】
3K092PP13
3K092QA05
3K092QB16
3K092QB18
3K092QB21
3K092VV40
3L122AA02
3L122AA33
3L122AB12
3L122AB30
(57)【要約】
高分子正温度係数(PPTC)タンクヒータは、第1導電性領域、ヒータ本体、及び第2導電性領域を特徴とし、サンドイッチを形成する。第1導電性領域は、第1リードに接続されている第1導電性表面及び第2リードに接続されちる第2導電性表面を含む。ヒータ本体は、導電性フィラー及び半結晶性高分子を含むPPTC高分子マトリックスである。サンドイッチは、直列に接続されている複数の加熱要素を含み、各加熱要素は異なる抵抗を供給する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リードに結合された第1導電性表面;及び
第2リードに結合された第2導電性表面
を含む第1導電性領域;
PPTC高分子マトリックスを含むヒータ本体、前記PPTC高分子マトリックスは導電性フィラー及び半結晶性高分子を含む;及び
第2導電性領域、ここで、前記ヒータ本体は、前記第1導電性領域及び前記第2導電性領域の間に配置されてサンドイッチを形成する、
を備え、
ここで、前記サンドイッチは、直列に結合された複数の加熱要素を含み、前記複数の加熱要素の各加熱要素は異なる抵抗を含む、
高分子正温度係数(PPTC)タンクヒータ。
【請求項2】
前記第1導電性領域は更に、前記第1導電性表面及び前記第2導電性表面の間に配置された第3導電性表面を含む、請求項1に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項3】
前記第1導電性表面及び前記第3導電性表面の間に配置されている第1スロット;及び
前記第3導電性表面及び前記第2導電性表面の間に配置されている第2スロット
を更に備える、請求項2に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項4】
前記第2導電性領域は更に:
第4導電性表面;
第5導電性表面;及び
前記第4導電性表面及び前記第5導電性表面の間に配置されている第3スロット
を備える、請求項3に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項5】
前記複数の加熱要素は:
前記第1導電性表面、前記ヒータ本体、及び前記第4導電性表面を含む第1加熱要素;
前記第4導電性表面、前記ヒータ本体、及び前記第3導電性表面を含む第2加熱要素;
前記第3導電性表面、前記ヒータ本体、及び前記第5導電性表面を含む第3加熱要素;及び
前記第5導電性表面、前記ヒータ本体、及び前記第2導電性表面を含む第4加熱要素
を更に備える、請求項4に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項6】
前記第1加熱要素は前記第2加熱要素に結合され、前記第2加熱要素は前記第3加熱要素に結合され、前記第3加熱要素は前記第4加熱要素に結合されている、請求項5に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項7】
前記第4加熱要素は、前記第1加熱要素、前記第2加熱要素及び前記第3加熱要素より速く温度が上昇する、請求項6に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項8】
前記第1加熱要素は、前記第2加熱要素、前記第3加熱要素及び前記第4加熱要素より遅く温度が上昇する、請求項6に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項9】
PPTC高分子マトリックスを含むヒータ本体、前記PPTC高分子マトリックスは導電性フィラー及び半結晶性高分子を含む;
第1導電性表面及び第2導電性表面の間に配置される前記ヒータ本体を含む第1加熱要素、ここで前記第1導電性表面は第1リードに結合されている;
前記第2導電性表面及び第3導電性表面の間に配置されている前記ヒータ本体を含む第2加熱要素;
前記第3導電性表面及び第4導電性表面の間に配置されている前記ヒータ本体を含む第3加熱要素;及び
前記第4導電性表面及び第5導電性表面の間に配置されている前記ヒータ本体を含む第4加熱要素、ここで前記第5導電性表面は第2リードに結合される
を備え;
ここで、前記第1加熱要素、前記第2加熱要素、前記第3加熱要素及び前記第4加熱要素は直列に結合されている、高分子正温度係数(PPTC)タンクヒータ。
【請求項10】
前記第1加熱要素は第1抵抗を含み、前記第2加熱要素は第2抵抗を含み、前記第3加熱要素は第3抵抗を含み、前記第4加熱要素は第4抵抗を含み、ここで、前記第1抵抗は前記第2抵抗に等しくなく、前記第2抵抗は前記第3抵抗に等しくなく、前記第3抵抗は前記第4抵抗に等しくなく、前記第4抵抗は前記第1抵抗に等しくない、請求項9に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項11】
前記第1導電性表面は第1高さを有し、前記第2導電性表面は第2高さを有し、ここで前記第2高さは前記第1高さより大きい、請求項10に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項12】
前記第3導電性表面は第3高さを有し、前記第4導電性表面は第4高さを有し、ここで前記第3高さは前記第4高さより大きい、請求項11に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項13】
前記第5導電性表面は第5高さを有し、前記第5高さは前記第1高さ、前記第2高さ、前記第3高さ、及び前記第4高さより小さい、請求項12に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項14】
前記第1導電性表面、前記第2導電性表面、前記第3導電性表面、前記第4導電性表面、及び前記第5導電性表面は同じ幅及び厚みを有する、請求項9に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項15】
前記第1導電性表面、前記第3導電性表面、及び前記第5導電性表面は、第1スロット及び第2スロットを含む第1導電性領域の一部であり、ここで前記第1スロットは、前記第1導電性表面及び前記第3導電性表面の間に配置され、前記第2スロットは、前記第3導電性表面及び前記第5導電性表面の間に配置される、請求項9に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項16】
前記第2導電性表面及び前記第4導電性表面は、第3スロットを含む第2導電性領域の一部であり、ここで前記第3スロットは、前記第2導電性表面及び前記第4導電性表面の間に配置される、請求項15に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項17】
前記ヒータ本体は、前記第1導電性領域及び前記第2導電性領域の間にサンドイッチされる、請求項16に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項18】
PPTC高分子マトリックスを含むヒータ本体、前記PPTC高分子マトリックスは導電性フィラー及び半結晶性高分子を含む;
N個の導電性表面及びN-1個のスロットを含む第1導電性領域、ここでNは整数である;及び
M個の導電性表面及びM-1個のスロットを含む第2導電性領域、ここでMは整数であり、前記N個の導電性表面及び前記M個の導電性表面の各々は同じ幅、同じ厚み及び異なる高さを有し、ここで前記ヒータ本体は前記第1導電性領域及び前記第2導電性領域の間にサンドイッチされる
を備え;
ここで、複数の加熱要素が形成され、前記複数の加熱要素の各加熱要素は、前記N個の導電性表面からの第1導電性表面、及び、前記M個の導電性表面からの第2導電性表面を含み、前記ヒータ本体は前記第1導電性表面及び前記第2導電性表面の間にサンドイッチされる、
高分子正温度係数(PPTC)タンクヒータ。
【請求項19】
前記導電性フィラーは、カーボン、グラフェン、カーボン及びグラフェン、導電性セラミック、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブを有するカーボン、及びカーボンナノチューブを有するグラフェンから成る群から選択される、請求項18に記載のPPTCタンクヒータ。
【請求項20】
前記半結晶性高分子は、ポリエチレン、フッ化ポリビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、エチレン酢酸ビニル、エチレン及びアクリル酸共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、及びポリパーフルオロアルコキシから成る群から選択される、請求項18に記載のPPTCタンクヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、両方とも参照によって全体が本明細書に組み込まれる、2020年12月28日に出願されたPCT出願第PCT/CN2020/140264号、及び、2021年2月16日に出願された米国特許出願第17/176,649号の継続であり、それらに対する優先権を主張する。
【0002】
本開示の実施形態は、PPTCデバイスに関し、より具体的には、タンク内の液体を加熱するPPTCデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
いくつかの車両燃焼エンジンは水注入システムを含む。一実装において、水は、細かい飛沫として、吸入口マニホールドプレナムチャンバ内に注入され、そこで蒸発し、したがって、吸入空気の温度を低下させる。これにより、燃焼チャンバにおける最終圧縮温度を低減する。ノッキングのリスクの低減、動力及びトルクの上昇、効率の改善、及びエンジン寿命の延長を含む複数の利益がこの技法から得られる。
【0004】
水注入システムは、水を吸入口マニホールドプレナムチャンバへ送達するために、タンクなどの水リザーバ、ホース、及び、ポンプを含む。水注入システムが動作するために、タンクにおける水の供給が維持される必要がある。車両エンジンがオフに切り替えられるとき、ホース内の水は、タンク内に再び排出され得、したがって、水の凍結に起因する損傷からホースを保護する。更に、内容物の凍結を回避するべく、水タンクは断熱され得る。水タンクが凍結する場合、水注入システムは動作することが不可能である。したがって、車両の水注入システムは、特定の気候において、又は、年間の特定の時期に使用されないことがあり得る。
【0005】
正温度係数(Positive Temperature Coefficient:PTC)デバイス及び高分子PTC(Polymer PTC:PPTC)デバイスは、電子システム内の高価な回路に損傷を与え得る過電流及び過電圧状態を遮断するために回路で利用される。PTCには、加熱すると物理的特性が変化する材料が含まれている。PTCは、電流の流れの増加により、温度が上昇すると、抵抗が増加する。障害状態が解除されると、PTCデバイスは元の構成まで冷却される。したがって、PTC及びPPTCは、再設定可能なヒューズと考えられる。
【0006】
PTC技術は、ヒータ用途に使用され得る。しかしながら、PTCデバイスは、それらのサイズ及び形状に起因して、いくつかのヒータ用途に対して不適切であり、加熱用途において効果的であるために電力密度がより高い。
【0007】
本改善は、これら及び他の考慮事項に関して有用であり得る。
【発明の概要】
【0008】
この概要は、以下の詳細な説明でさらに記載される概念の選択を簡略化した形態で紹介するために提供されている。この概要は、特許請求される主題の重要又は不可欠な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定する助けとなることを意図するものでもない。
【0009】
本開示による高分子正温度係数(PPTC)タンクヒータの例示的な実施形態は、第1リード(ワイヤ)に接続された第1導電性表面及び第2リードに接続された第2導電性表面を有する第1導電性領域、PPTC高分子マトリックスを有するヒータ本体(PPTC高分子マトリックスは導電性フィラー及び半結晶性高分子である)、及び、第2導電性領域を備え得、ヒータ本体は、第1導電性領域及び第2導電性領域の間であり、サンドイッチを形成する。サンドイッチは、直列に接続された複数の加熱要素を含み、各加熱要素は異なる抵抗を供給する。
【0010】
本開示によるPPTCタンクヒータの別の例示的な実施形態は、直列に接続されたヒータ本体及び4個の加熱要素を含み得る。ヒータ本体は、PPTC高分子マトリックス(PPTC高分子マトリックスは導電性フィラーを含む)及び半結晶性高分子を含む。第1加熱要素は、第1導電性表面及び第2導電性表面の間に配置されたヒータ本体を含み、第1導電性表面は第1リードに接続されている。第2加熱要素は、第2導電性表面及び第3導電性表面の間に配置されたヒータ本体を含む。第3加熱要素は、第3導電性表面及び第4導電性表面の間に配置されたヒータ本体を含む。第4加熱要素は、第4導電性表面、及び、第2リードに接続されている第5導電性表面の間に配置されたヒータ本体を含む。
【0011】
本開示によるPPTCタンクヒータの例示的な実施形態は、ヒータ本体及び2つの導電性領域を含み得る。ヒータ本体は、導電性フィラー及び半結晶性高分子からできているPPTC高分子マトリックスを含む。第1導電性領域は、N個の導電性表面及びN-1個のスロットから成り、Nは整数である。第2導電性領域は、M個の導電性表面及びM-1個のスロットから成り、Mは整数であり、N個の導電性表面及びM個の導電性表面の各々は、同じ幅及び厚みを有するが、異なる高さを有し、ヒータ本体は、第1導電性表面及び第2導電性表面の間にサンドイッチされている。この構成に基づいて、複数の加熱要素が形成され、各加熱要素は、N個の導電性表面からの1つの導電性表面、及び、M個の導電性表面からの第2導電性表面を有し、ヒータ本体は、2つの導電性表面の間にサンドイッチされている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図1B】例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図1C】例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図1D】例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータを例示する図である。
【0013】
【
図2A】例示的な実施形態による
図1A~1DのPPTCタンクヒータに対して実行される試験を例示する図である。
【
図2B】例示的な実施形態による
図1A~1DのPPTCタンクヒータに対して実行される試験を例示する図である。
【
図2C】例示的な実施形態による
図1A~1DのPPTCタンクヒータに対して実行される試験を例示する図である。
【0014】
【
図3A】例示的な実施形態による、
図1A~1DのPPTCタンクヒータを利用するタンクを例示する図である。
【
図3B】例示的な実施形態による、
図1A~1DのPPTCタンクヒータを利用するタンクを例示する図である。
【0015】
【
図4A】例示的な実施形態による環状PPTCタンクヒータに対して実行される試験を例示する図である。
【
図4B】例示的な実施形態による環状PPTCタンクヒータに対して実行される試験を例示する図である。
【
図4C】例示的な実施形態による環状PPTCタンクヒータに対して実行される試験を例示する図である。
【
図4D】例示的な実施形態による環状PPTCタンクヒータに対して実行される試験を例示する図である。
【0016】
【
図5A】例示的な実施形態による、平坦なPPTCタンクヒータに対して実行される試験を例示する図である。
【
図5B】例示的な実施形態による、平坦なPPTCタンクヒータに対して実行される試験を例示する図である。
【
図5C】例示的な実施形態による、平坦なPPTCタンクヒータに対して実行される試験を例示する図である。
【
図5D】例示的な実施形態による、平坦なPPTCタンクヒータに対して実行される試験を例示する図である。
【0017】
【
図6A】例示的な実施形態による、環状PPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図6B】例示的な実施形態による、環状PPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図6C】例示的な実施形態による、環状PPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図6D】例示的な実施形態による、環状PPTCタンクヒータを例示する図である。
【0018】
【
図7A】例示的な実施形態による、環状PPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図7B】例示的な実施形態による、環状PPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図7C】例示的な実施形態による、環状PPTCタンクヒータを例示する図である。
【0019】
【
図8A】例示的な実施形態による、
図6A~6D及び7A~7Cの環状PPTCタンクヒータの特性を例示する図である。
【
図8B】例示的な実施形態による、
図6A~6D及び7A~7Cの環状PPTCタンクヒータの特性を例示する図である。
【
図8C】例示的な実施形態による、
図6A~6D及び7A~7Cの環状PPTCタンクヒータの特性を例示する図である。
【0020】
【
図9A】例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図9B】例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図9C】例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータを例示する図である。
【0021】
【
図10A】例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図10B】例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図10C】例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータを例示する図である。
【0022】
【
図11】例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータを例示する図である。
【0023】
【
図12A】例示的な実施形態による環状PPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図12B】例示的な実施形態による環状PPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図12C】例示的な実施形態による環状PPTCタンクヒータを例示する図である。
【
図12D】例示的な実施形態による環状PPTCタンクヒータを例示する図である。
【0024】
【
図13A】例示的な実施形態による開示されたPPTCタンクヒータのいずれかについてのヒータ本体の図である。
【
図13B】例示的な実施形態による開示されたPPTCタンクヒータのいずれかについてのヒータ本体の図である。
【
図13C】例示的な実施形態による開示されたPPTCタンクヒータのいずれかについてのヒータ本体の図である。
【
図13D】例示的な実施形態による開示されたPPTCタンクヒータのいずれかについてのヒータ本体の図である。
【0025】
【
図14A】例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータの曲げの効果の例示である。
【
図14B】例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータの曲げの効果の例示である。
【0026】
【
図15】例示的な実施形態によるにPPTCタンクヒータの製造の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に記載される実施形態によれば、水注入システムについての新規のタンクヒータが開示される。環状タンクヒータは、導電性フィラー及び半結晶性高分子から成る高分子正温度係数(PPTC)デバイスである。導電性フィラーは、一例としてカーボン/グラフェンの組み合わせであり得るが、PPTCタンクヒータは、様々な導電性フィラーからでき得る。PPTCタンクヒータの形状は、環状又は平坦であり得る。制御された量の熱を受け構造のそれぞれの試験ポイントへ各々が供給する一連の別個の加熱要素により、PPTCタンクヒータは、自己均衡(self-balancing)する。PPTCタンクヒータはまた、自己限定的であり、その温度は予め定められた上限を超えない。スロットの数、幅、及び向き、導電性表面の数及び寸法、ヒータ本体の組成及び寸法、リードの場所、環状又は平坦構造の高さ、厚み、及び直径など、PPTCタンクヒータの物理的特徴は、電流の流れ及び温度が戦略的に制御されることを可能にする。
【0028】
利便性及び明瞭性のために、本明細書では、「上部」、「下部」、「より高い」、「より低い」、「鉛直」、「水平」、「横方向」、「横断」、「半径方向」、「内側」、「外側」、「左」、及び「右」等の用語が、電気ボックスの特徴及びコンポーネントの相対的な配置及び向きを記載するために使用される場合があり、これらは各々、本明細書で提供される斜視図、分解斜視図、及び断面図に表される電気ボックスの他の特徴及びコンポーネントの形状及び向きに対するものである。当該用語は、限定を意図するものではなく、具体的に言及される単語、それに関する派生語、及び同様の意味をもつ単語を含む。
【0029】
PPTCタンクヒータ
【0030】
図1A~1Dは、例示的な実施形態による新規のPPTCタンクヒータの代表図である。
図1Aは、環状(輪状)構成におけるPPTCタンクヒータの斜視図であり;
図1Bは、環形状になる前のサンドイッチ構成におけるPPTCタンクヒータの斜視図であり;
図1Cは、環状構成におけるPPTCタンクヒータの写真画像であり;
図1Dは、サンドイッチ構成におけるPPTCタンクヒータの分解斜視図である。高分子正温度係数(PPTC)タンクヒータ100は、PTC材料から成るヒータ本体104を含む。ヒータ本体は、「サンドイッチ」として2つの導電性領域102及び106の間に配置される。導電性領域102及び106は、ヒータ本体104がそれを通じて見える0又はより多くのスロット118及び間隙116を各々が含み得る、対向する表面である。PPTCタンクヒータ100は、本明細書において例示及び記載される環状PPTCタンクヒータの複数の実施形態の1つである。
【0031】
サンドイッチ構成(
図1B及び1D)において、ヒータ本体104及び2つの導電性領域102及び106の間の距離は誇張されている。例示的な実施形態において、導電性領域102(ヒータ本体104の左)は2つの導電性表面102a及び102bから成る。導電性領域106(ヒータ本体104の右)は、3つの導電性表面106a、106b、及び106cから成る。環状構成(
図1A)において、導電性領域102は、外側部分と考えられ得、導電性領域106は、PPTCタンクヒータ100の内側部分と考えられ得る。
【0032】
リード(ワイヤ)108が導電性表面106cに接続される一方で、リード(ワイヤ)110が導電性表面106aに接続される。それらは部分的に見えないので、導電性表面106c及び106aの内側(見えない)表面それぞれに対するリード108及び110の接続ポイントを示すために点線が使用される。導電性表面106c及び106aはまた、それぞれリード108及び110に接続するので、電極として考えられ得、一方、導電性表面106b、102a、及び102bは、技術的には電極でない。例示的な実施形態において、導電性表面102a、102b、106a、106b、及び106cは、例えば金属箔などの同一の導電性材料からできている。記載を容易にするために、導電性領域102(外側部分)を構成するすべての表面(102a及び102b)及び導電性領域106(内側部分)を構成するすべての表面(106a、106b、及び106c)は、導電性表面と称される。
【0033】
例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ100は、間隙116を含み、間隙は、本明細書においてスロット118としても知られている、水平方向に配置された開口である。PPTCタンクヒータ100の間隙116/スロット118は、ヒータ本体104が見える領域である。間隙116a/スロット118aは、導電性表面102a及び102bの間の領域であり;間隙116b/スロット118bは、導電性表面106a及び106bの間の領域であり;間隙116c/スロット118cは、導電性表面106b及び106cの間の領域であり;間隙116dは、外周縁に沿ってヒータ本体104が見える(
図1A)領域、又は、上表面(
図1B)であり、すなわち、導電性領域102及び106の間であり;間隙116eは、鉛直開口に沿った領域(
図1A)、又は、環形状PPTCタンクヒータの側方表面(
図1B)である。本明細書においてより詳細に記載されるように、例示的な実施形態において、ヒータ本体104を露出することに加えて、スロット118はまた、PPTCタンクヒータ100を通る電流の流れが妨害される領域である。したがって、スロット118は、電流の流れについての「決定ポイント」として考えられ得る。
【0034】
例示的な実施形態において、すべての導電性表面102a、102b、106a、106b及び106cは、同じ幅w及び厚みt
1を有する。いくつかの実施形態において、各導電性表面の高さは変動する。
図1Bにおいて高さhが導電性表面102aに与えられる。いくつかの実施形態において、導電性表面102aの高さは、導電性表面102bの高さより大きい。いくつかの実施形態において、導電性表面106bの高さは、導電性表面106a及び106cの高さより大きい。いくつかの実施形態において、導電性表面106aの高さは、導電性表面106cの高さより大きい。
【0035】
PPTCタンクヒータ100は、片側電極、3スロット設計として考えられ得る。これは、PPTCタンクヒータ100が3個のスロット118を有し、電極(導電性表面106a及び106c)が導電性領域106の1つの側におけるそれぞれのリード110及び108に接続されることを意味する。本明細書におけるPPTCタンクヒータの他の例(
図5B及び12A)は、ヒータ本体の反対側に配置される電極を特徴とする。
図1B及び1Dに示されるように、ヒータ本体104の形状は実質的に平面であり、導電性領域102及び106に接続するための2つの対向する表面を有する。例示的な実施形態において、ヒータ本体は、調整可能である厚みt
2を有する。例示的な実施形態では、ヒータ本体104の厚みは1mm未満である。ヒータ本体は更に、下の
図13A~13Dにおいて記載及び例示される。
【0036】
図1Cは、例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータ100の写真画像である。下の
図3A及び3Bに示されるように、PPTCタンクヒータ100は、液体タンクの吸入口など、加熱される円筒形のデバイスの周囲に配置されるのに好適な環状(リング)形状である。セラミックPTCなどの従来技術のPTCデバイスに対して、PPTCタンクヒータ100の近い位置は、PPTCタンクヒータ及び円筒表面の間の表面接触を増加させる。リード108及び110がPPTCタンクヒータ100の内側表面上に配置される。
【0037】
図1Dは、PPTCタンクヒータ100の分解斜視図を提供する。番号が付いた線は、リード110から開始する、例示的な実施形態における、PPTCタンクヒータ100を通る電流の流れの可能な経路を例示する。電流は、リード110に接続された電源(示されない)から導電性表面106aへ流れる(1)。それから、電流は、スロット118bを越えて導電性表面106aから導電性表面106bへ流れ得る。しかしながら、例示的な実施形態において、スロット118bの抵抗は、導電性表面106aから、ヒータ本体104を通って、導電性表面102aまでの間の抵抗より大きいように設計される。いくつかの実施形態において、スロット118bのより高い抵抗は、スロットの幅に基づく。代わりに、電流は、導電性表面106aから、ヒータ本体104を通って(2)、導電性表面102aへ進む(3)。ステップ1、2、及び3において電流によってトラバース(traversed)されるPPTCタンクヒータ100の一部は、第1加熱要素として考えられ得る。したがって、第1加熱要素は、導電性表面106a、ヒータ本体104、及び導電性表面102aから成るサンドイッチである。
【0038】
次に、電流は、導電性表面102aを越えて進む(4)。導電性表面102a及び102bの間にスロット118aがある。再び、電流は、スロット118aを越えて導電性表面102bへ進み得る。しかしながら、再び設計によって、スロット118aは、電流が代わりに導電性表面102aからヒータ本体104を通って導電性表面106bへ進む場合に存在するより高い抵抗を有するように設計されている。したがって、電流は、導電性表面102aからヒータ本体104を通って(5)、次に、導電性表面106bへ進む(6)。ステップ4、5、及び6において電流によってトラバースされるPPTCタンクヒータ100の一部は、第2加熱要素として考えられ得る。したがって、第2加熱要素は、導電性表面102a、ヒータ本体104、及び導電性表面106bから成るサンドイッチである。
【0039】
次に、電流は、導電性表面106bを越えて進む(7)。前のように、導電性表面106b及び106cの間のスロット118cは、導電性表面106bからヒータ本体104を通って(8)導電性表面102b(9)へ電流が実際に進むより高い抵抗を有するほど十分に広い。ステップ7、8、及び9において電流によってトラバースされたPPTCタンクヒータ100のこの部分は、第3加熱要素と考えられ得る。したがって、第3加熱要素は、導電性表面106b、ヒータ本体104、及び導電性表面102bから成るサンドイッチである。
【0040】
次に、電流は、導電性表面102bを越えて(10)、ヒータ本体104を通って(11)、導電性表面106cへ進み(12)、リード108を通じてPPTCタンクヒータ100を出る(13)。ステップ10、11、12、及び13において電流によってトラバースされたPPTCタンクヒータ100のこの部分は、第4加熱要素として考えられ得る。そうして、第4加熱要素は、導電性表面102b、ヒータ本体104、及び導電性表面106cから成るサンドイッチである。
図1Dは、直線として示されているが、ヒータ本体104をトラバースする前に特に導電性表面にわたって(例えば、4、7、及び10)より分散されている可能性が高い電流の流れの幾分簡略化された例示である。
【0041】
したがって、PPTCタンクヒータ100は、4個の別個の加熱要素の直列接続として考えられ得る。例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ100は、4個の加熱要素の抵抗が異なるように設計される。4個の別個の抵抗は、結果として、各加熱要素によって生成される4つの異なる電力プロファイルをもたらす。したがって、4個の電力プロファイルの結果生じる表面温度は、例示的な実施形態において異なる。したがって、PPTCタンクヒータ100の設計は、PPTCタンクヒータが取り付けられる物体の差動加熱(differential heating)を可能にする。
【0042】
PPTCタンクヒータ100の4個の加熱要素の抵抗、ひいては温度は、1)スロット118の幅、ここで、スロット118a、118b、及び、118cの幅は、互いに異なり得;2)導電性表面102a~b及び106a~cの寸法;3)ヒータ本体104の寸法;4)ヒータ本体104の組成;5)PPTCタンクヒータ100の高さh
1及び直径d
1;6)間隙116d/eの幅、ここで、間隙116dの幅は、間隙116eの幅に等しい;及び、7)環状構造の直径d
1(
図1A)に基づいて修正され得る。例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ100の任意の特徴の修正は、その抵抗に影響を与える。
【0043】
第1の実験
【0044】
図2A~2Cは、例示的な実施形態による、
図1A~1Dの環状PPTCタンクヒータ100を用いて実行される実験に関する代表図である。
図2Aは、試験回路図であり;
図2Bは、平坦なPPTCタンクヒータ100の側面図であり;及び、
図2Cは、実験の結果を示すグラフである。試験回路(
図2A)は、20Aの最大電流を伴う12V電圧源、リレー、及び、-40℃の温度の液体のタンク(
図3Aなど)に沈められるPPTCタンクヒータ100から成り、T1、T2、T3及びT4で示される、ヒータの4つのポイントにわたる温度が測定される。PPTCタンクヒータ100は、0.345オームの初期抵抗、9.0cmの高さ、約9cmの直径(
図1Aにおけるd
1)、252cm
2の面積を有し、コーティングを有しない。
【0045】
図2Bの側面図は、PPTCタンクヒータ100を示し、導電性領域106が前にあり、導電性領域102は見えない。導電性表面106a、106b、及び106cが見えるが、一方、導電性表面102a及び102bは、図の左側に点線で示されている。スロット118b及び118cは前に見え、前から見えないスロット118aは点線として示される。この実験において、導電性表面106aは、30mm×280mmの寸法を有し;導電性表面106bは、45mm×280mmの寸法を有し;導電性表面106cは、15mm×280mmの寸法を有し;導電性表面102aは、55mm×280mmの寸法を有し;導電性表面102bは、35mm×280mmの寸法を有する。一実施形態において、スロット118の幅は約2mmである。
【0046】
図2Cは、例示的な実施形態による、PPTCタンクヒータ100についての試験時間対温度のグラフ200である。4つの試験ポイントT1、T2、T3、及びT4における温度が測定される。例示的な実施形態において、4つの試験ポイントは、
図1Dに記載される4個の加熱要素に対応する。したがって、試験ポイントT4は、導電性表面102a及び106aの間にサンドイッチされるヒータ本体104から成る第1加熱要素に対応し;試験ポイントT3は、導電性表面102a及び106bの間にサンドイッチされるヒータ本体104から成る第2加熱要素に対応し;試験ポイントT2は、導電性表面102b及び106bの間にサンドイッチされるヒータ本体104から成る第3加熱要素に対応し;試験ポイントT1は、導電性表面102b及び106cから成る第4加熱要素に対応する。
【0047】
タンク内の液体は-40℃であるので、4つの試験ポイントのすべてがこの温度で開始する。試験ポイントT1は、試験ポイントT2、T3及びT4より速く増加を開始する。5秒の時点で、T1は既に10℃を超えている。試験ポイントT2は、10秒後に10℃である。試験ポイントT3は、約15秒後に10℃に到達し、一方で、試験ポイントT4は10℃に到達しないが、約15秒以内に約-5℃に到達する。したがって、グラフ200は、異なる試験ポイントにおける大きい変動性を示す。
【0048】
また、
図2Bを見ると、
図2Cのグラフ200は、PPTCタンクヒータ100の下方部分において、温度が最も速く上昇することを示す。したがって、他の加熱要素に比べて、温度は、PPTCタンクヒータ100の下部にある第4加熱要素(T1)において最も速く上昇する。他の加熱要素に比べて、温度は、PPTCタンクヒータ100の上部にある第1加熱要素(T4)において最も遅く上昇する。
【0049】
したがって、
図2B及び2Cは、例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータ100の差動的性質を例示する。PPTCタンクヒータ100の差動加熱は、様々な用途において有用であり得る。用途の1つは、タンク内の液体を加熱することであり得、液体を迅速にかつ効率的に加熱するために、PPTCタンクヒータ100は、4つの試験ポイントを念頭において戦略的に配置される。
【0050】
液体注入システム
【0051】
図3A及び3Bは例えば、例示的な実施形態による2つの液体注入システムの代表図である。
図3Aは、
図1A~DのPPTCタンクヒータ100を利用する液体注入システム310を特徴とし、
図3Bは、異なるPPTCタンクヒータ300を利用する液体注入システム320を特徴とする。
【0052】
図3Aは、水などの液体を格納するための格納タンク312、及び、格納タンクの内側に部分的に沈められる吸入口314を含む液体注入システム310を示す。例示的な実施形態において、吸入口314の形状は円筒形である。格納タンク312は
図3Aにおいても円筒形であるが、格納タンクは、立方体、直方体、ブラダ、又は不規則形状など、液体を格納するのに好適な任意の形状であり得る。更に、格納タンク312は、格納タンクの内側に格納された液体の凍結から保護するために断熱され得る。
【0053】
図3Bは、水などの液体を格納するための格納タンク322、及び、格納タンクの内側に部分的に沈められる吸入口324を含む液体注入システム320を示す。液体注入システム310のように、例示的な実施形態において、吸入口324の形状は円筒形であるが、格納タンク322は、液体を格納するのに好適な任意の形状であり得、断熱され得る。
【0054】
液体注入システム310/320は、それぞれの格納タンク312/322から吸入口314/324を通ってその意図される目的地へ水を送るためのポンプなどの手段を含み得る。液体注入システム310/320はまた、吸入口314/324上に配置されるフィルタを含み得る。
【0055】
図3Aにおける液体注入システム310は、PPTCタンクヒータ100を含む。例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ100は、吸入口314の下部の近くに配置される。したがって、タンク312内側の液体が凍結する場合、タンクが25%満杯、50%満杯、又は完全に満杯であるかにかかわらず、液体はタンクの下方部分にある。PPTCタンクヒータ100は、PPTCタンクヒータに電力を供給するためにタンク312の外側に配置されたバッテリーなどの電源316に接続される。
【0056】
車両効率及び動力を向上するために使用されるとき、格納タンク312は水で充填され得、吸入口314は、車両のエンジンに接続され得る。水は、細かい霧としてエアインテーク内にポンピングされ、結果として、車両動作中のエンジンコンポーネントの冷却をもたらす。いくつかの車両製造元は、例えば、燃焼チャンバ内側の温度を低減するためにエアインテーク内へ水を注入する結果、燃料の消費が低くなり、二酸化炭素排出が低くなり、動力が高くなることを主張する。
【0057】
液体を凍結から保護するための材料が存在するが、それにもかかわらず、格納タンク312が凍結する環境があり得、また内側の内容物の凍結を生じさせる。格納タンク312が水を含む場合、水は氷になり得、氷は吸入口314を通じて車両エンジンのエアインテークへポンピングできない。したがって、凍結は、より暖かい環境における車両に利用可能な動力及び効率の改善を限定する。新規のPPTCタンクヒータ100無しでは、車両の水注入システムは、特定の気候において、又は、年間の特定の時期に使用されないことがあり得る。
【0058】
しかしながら、PPTCタンクヒータ100は、例示的な実施形態において、格納タンク312における凍結した液体を迅速に融解するのに好適である。PPTCタンクヒータ100の環形状は、吸入口の表面を効率的に加熱するために吸入口314を囲む。格納タンク312に沈められることにより、吸入口314の加熱は、熱を格納タンク312内の液体に迅速に伝達する。格納タンク312が氷を含む場合、氷は迅速に融解し、したがって、車両が過酷な温度環境においてさえ水注入システムを利用することを可能にする。
【0059】
液体注入システム310(
図3A)及び液体注入システム320(
図3B)を比較すると、格納タンク322は格納タンク312より大きく、吸入口324は直径d
3を有し、これは、吸入口314の直径d
2より大きい。したがって、液体注入システム320については、異なるPPTCタンクヒータ300が使用される。PPTCタンクヒータ100が高さh
1及び直径d
1を有する場合、PPTCタンクヒータ300は、高さh
2及び直径d
4を有し、ここでh
2>h
1、及び、d
4>d
1である。例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ100及びPPTCタンクヒータ300の両方は、異なる試験ポイントにおける加熱が変動するという点で、差動ヒータである。PPTCタンクヒータ300は、吸入口324の表面を実質的に覆い、一方、PPTCタンクヒータ100は、吸入口314の下方部分を覆う。更に、PPTCタンクヒータ300は、3スロット、4加熱要素PPTCタンクヒータ100より多くのスロットを特徴とする。PPTCタンクヒータ300は、PPTCタンクヒータに電力を供給するために、タンク322の外側に配置されたバッテリーなどの電源326に接続されている。示されるように、PPTCタンクヒータ100の原理は、互いに直列に配置されたNスロット構成及びM個の加熱要素に及び得、N及びMは整数である。したがって、例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ100は、デバイスの異なる加熱エリアにおけるステップ加熱のために設計され得る。
【0060】
セラミックPTCデバイスは、円筒形の物体の近くに近接して配置されることは不可能である。CPTCは、単一の強力な熱源を生じさせる。これは、格納タンクにおける液体をより効率的に融解するためにヒートシンクが使用されることを意味する。PPTCタンクヒータ100は、広い表面上に分散される電力を生じさせることを可能にし、追加のヒートシンクの必要性を無くし、その設計をより単純に、安価にし、信頼性を高める。
【0061】
例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ100は、車両が清浄な液体を利用可能であることを確実にするために、フィルタを有する格納タンク312の吸入口314の周囲の環状加熱を提供する。格納タンク312の内側の媒質が凍結する場合、その粘度が増加し、蜂蜜又は蝋状になり得る。フィルタの存在は、液体の条件を悪化させ得る。例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ100及び300は、フィルタを有する又は有しない液体注入システムにおいて動作することが可能である。
【0062】
例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ100のヒータ本体104のカーボン/グラフェン及び半結晶性高分子は、約125℃の自動調節温度で構成される。これは、温度が上昇するにつれて、予め定められた「トリップ」温度に到達するまで、PPTCタンクヒータ100の抵抗が非常に低いままであることを意味する。下で詳細に記載される実証的実験において、PPTCタンクヒータ100の構成に応じて、このトリップ温度は変動する。トリップ温度に到達すると、抵抗がいくらか増加し、温度が約125℃に到達すると、抵抗は最終的に非常に迅速に急上昇する。更に、例示的な実施形態において、温度は125℃より上では著しく上昇せず、このことは、PPTCタンクヒータ100が125℃より上で自己限定的であることを示す。いくつかの実施形態において、PPTCタンクヒータ100は、デバイスへの電力が無効になった場合でも、危険なほど熱くならないことがあり得る。
【0063】
したがって、PPTCタンクヒータ100は、車両とともに使用されるなどの、水注入システムの用途において長所を提供する。温度限定機能は、格納タンクを加熱するときに過熱が生じないことを確実にする。
図3Aにおいて、吸入口314は直径d
2を有する。例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ100の直径d
1は、吸入口の直径d
2に近く、したがって、吸入口314の周りに緊密に篏合し得、その結果、ヒータの導電性領域106(内側表面)は、すべてのポイントにおいて吸入口の外側表面に接続される。
【0064】
PPTCタンクヒータ100は、その4個の別個の加熱要素が異なる特性を示す3スロット差動シートヒータとして考えられ得る。例示的な実施形態において、これらの特性は、液体を含むタンクを加熱するように設計され、ここで、液体の体積は異なる時間において変動する。これまでに列挙された7つの特徴は、各加熱要素の特徴:1)スロットの幅;2)導電性表面の寸法;3)ヒータ本体の寸法;4)ヒータ本体の組成;5)PPTCタンクヒータの高さ及び直径;6)間隙の幅;及び7)環状構造の直径を制御するように修正され得ることに留意されたい。更に、例示的な実施形態において、本明細書に記載されるPPTCタンクヒータはまた、8)スロットの数;9)導電性領域の数;10)電極(ひいてはリード)が導電性表面の1つの側にあるか又は2つの側にあるか;11)スロットが水平方向に配置されているか(
図1A~D)又は鉛直方向に配置されているか(下の
図10A~10B及び
図11)を修正するように設計され得る。
【0065】
例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ100は薄い(<1mm)が、大きい加熱エリア(直径10cm)を有する。いくつかの実施形態において、PPTCタンクヒータ100の直径d1は、加熱用途に従って調節される。更に、PPTCタンクヒータ100を液体注入システム310の標的加熱エリア内、例えばタンクの下部の近くなどに配置することによって、結果としての効率は、熱ループを低減し、部品設計の複雑性を低くする。
【0066】
例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ100は、タンクが満杯(100%)であるか、又は部分的に満杯(例えば、10%、50%、80%)であるかに応じて、調整可能である。複数の試験の実証的な結果は、この利点を確認するものであり、
図4A~4D及び5A~5Dに関連して下で示され、記載されている。
【0067】
いくつかの実施形態において、追加の「ダミー」吸入口が格納タンク312に追加され得、複数のPPTCタンクヒータが各追加の吸入口に沿って配置される。ダミー吸入口は単純に、液体を格納タンク312から送るのではなく、熱をそれぞれのPPTCタンクヒータから格納タンクへ伝達するために使用される中実シリンダーであり得る。更に、いくつかの実施形態において、環状形態でなく平坦なPPTCタンクヒータは、タンクの液体媒質が空に近いときでも最適に加熱するために、格納タンク312の下部に配置され得る。例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ100は、コーティングで断熱され、氷又は水、及び、他の電気伝導性流体における短絡を回避する。
【0068】
第2実験
【0069】
図4A~4Dは、例示的な実施形態による、PPTCタンクヒータ100などの環形状PPTCタンクヒータを用いて実行される実験に関する代表図である。
図4Aは、使用される試験回路を示し、
図4Bは、実験的な格納タンク、及び、PPTCタンクヒータが取り付けられる吸入口であり、
図4C及び4Dは、実験の結果を示すグラフである。試験回路(
図4A)は、13.5V電圧源、リレー、及び、凍結した氷に沈められるPPTCタンクヒータ(示されない)から成り、PPTCデバイスの電流及び電圧は測定される。試験環境(
図4B)は、凍結した水を3.5リットル保持するプラスチック容器402であり、PPTCタンクヒータ404がその中に配置される。容器402の4つの場所が、T1、T2、T3、及びT4で示される温度データについて試験される。PPTCタンクヒータ404は、100mmの高さ、0.55mmの厚み、及び100mmの直径を有する。PPTCタンクヒータ404は更に、PTC材料の1つの側に2つの水平の導電性表面、及び、PTC材料の反対側に1つの完全サイズの導電性表面を有する(例えば、
図6A~6DにおけるPPTCタンクヒータ600を参照)。
【0070】
図4Cは、例示的な実施形態による、PPTCタンクヒータについての温度対抵抗のグラフ400である。グラフ400は、温度が約125℃に到達するまで、PPTCタンクヒータの抵抗が、0オームに非常に近いままであることを示す。125℃より上では、抵抗は、非常に高い抵抗まで非常に迅速に増加する。したがって、実験は、PPTCタンクヒータが単一の強力な熱源を生じさせることを示す。更に、PPTCタンクヒータの温度は、約130℃を超えないように見える。したがって、実験は、過熱を限定するためにPPTCタンクヒータが自己調節することを示す。
【0071】
図4Dのグラフ450はまた、PPTCタンクヒータの能力を例示する。グラフは、
図4Bに示されるタンク402の内側の4つのプロットポイント、T1、T2、T3、及びT4の温度に対して時間をプロットする。T1は、吸入口404の上部(氷の外側)にあり、T2は、吸入口の近くの沈められた氷の中にあり、T3は、吸入口の下のタンクの下部にあり、T4は、タンクの1つの縁にある。10分の時間において、グラフ450の上部から下部を見ると、T1は第1の線(円形)、T2は第2の線(正方形)、T4は第3の線(三角形)、T3は第4の線(ひし形)である。すべての4つのプロットポイントは、時間0において、温度が約-10℃であることを示す。
【0072】
最初の5分以内に、T1の温度は著しく上昇した(40℃より上)。10分以内に、T2及びT4の両方は、約0℃(水の融点)へ移動した。約35分以内に、すべての4つのプロットポイントは、タンク302の最下部におけるT3でさえ、0℃の温度に到達した。60分以内に、すべての4つのプロットポイントは、水の凍結温度である0℃より上になる。
【0073】
第3実験
【0074】
図5A~5Dは、例示的な実施形態による、PPTCタンクヒータを用いて実行される第3の実験に関する代表図である。
図5Aは、使用される試験回路を示し、
図5Bは、PPTCタンクヒータ500が取り付けられる実験的な格納タンクの写真であり、
図5C及び5Dは、実験の結果を示すグラフである。試験回路(
図5A)は、13.5V電圧源、リレー、及びPPTCタンクヒータから成り、PPTCデバイスの電流及び電圧が測定される。試験環境(
図5B)は、凍結された水1リットルを保持するプラスチック容器502であり、平坦な長方形の構造であるPPTCタンクヒータ500は、氷に部分的に沈められる。この実験において、リード508及び510は、PPTCタンクヒータ500の反対側にある。2つの場所が、T1及びT2で示される温度データについて試験され、ここで、T1は氷中のPPTCタンクヒータ上にあり、T2は空気中(タンク502の外側)のPPTCタンクヒータ上にある。使用されるPPTCタンクヒータは、950mmの高さ、120mmの幅、及び、0.55mmの厚みを有する。
【0075】
図5Cは、例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータについての温度対抵抗のグラフ540である。グラフ540は、温度が約125℃に到達するまで、PPTCタンクヒータの抵抗が、0オームに非常に近いままであることを示す。125℃より上では、抵抗は、非常に高い抵抗まで非常に迅速に増加する。したがって、実験は、PPTCタンクヒータが単一の強力な熱源を生じさせることを示す。更に、PPTCタンクヒータの温度は、約135℃を超えないように見える。したがって、実験は、過熱を限定するためにPPTCタンクヒータが自己調節することを示す。
【0076】
図5Dのグラフ550も、PPTCタンクヒータの能力の例示である。グラフは、2つのプロットポイントT1(氷中のPPTCタンクヒータ500上)及びT2(空気中のPPTCタンクヒータ上)の温度対時間をプロットする。時間0において、T1は約-18℃、T2は約-2℃である。約5分において、T1は約20℃、T2は約75℃である。約20分において、T1は氷を融解するのに十分な約32℃であり、T2は90℃より上である。1時間以内に、T1は60℃より上であり、T2は100℃より上である。したがって、
図2A~2C、4A~4D、及び5A~5Dの3つの実験は、PPTCタンクヒータが、車両の液体注入システムなどに使用可能であり得ることを示す。
【0077】
例示的な実施形態において、環状PPTCタンクヒータは、格納タンクの円筒形吸入口の周りの360°の加熱を提供する。PPTCタンクヒータの自己調節能力は、過熱の懸念を限定する。PPTCタンクヒータは、部分的又は完全なタンクについての自己均衡加熱を提供することが可能である。PPTCタンクヒータは、高温スポットに対して反対の作用をする。PPTCタンクヒータは、高価及び/又は嵩高いことがあり得るヒートシンク無しで使用され得る。PPTCタンクヒータは、互いに直列に配置されたN個のスロット及びM個の加熱要素の差動設計に起因する、加熱における温度分散のために設計され、N及びMは整数である。防水性の断熱材でPPTCタンクヒータをコーティングすることによって、水/氷及び他の電気伝導性流体中に沈められ得る。
【0078】
代替的な実施形態
【0079】
図6A~6D(PPTCタンクヒータ600)、
図7A~7C(PPTCタンクヒータ700)、
図9A~9C(PPTCタンクヒータ900)、
図10A~10C(PPTCタンクヒータ1000)、
図11(PPTCタンクヒータ1100)、及び
図12A~12Dは、例示的な実施形態による、上で参照されるPPTCタンクヒータ100及び300に対する代替形態を提供する。これらのPPTCタンクヒータの各々は、例示的な実施形態による液体注入システム310及び320(
図3A~3B)などのタンクにおける液体を加熱するのに好適であり得る。PPTCタンクヒータ設計の各々について、ヒータ本体は更に、下の
図13A~13Dにおいて記載及び例示される。
【0080】
限定を意味するものではない下の例は、片側電極(PPTCタンクヒータ100、300、600、700、900、及び1100)又は両側電極(PPTCタンクヒータ1000及び1200)のいずれかとして記載される、スロットの数、スロットの配置(水平又は鉛直)、及びリードの配置のバリエーションを示す。これらのバリエーションに加えて、スロットの幅、導電性表面の寸法、ヒータ本体の寸法、ヒータ本体の組成、間隙の幅、環状構造の高さ及び直径、及び導電性領域の数は、本明細書に提示される実施形態から変動し得る。これらの特徴に基づいて、例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータを構成する加熱要素の数、及び、各加熱要素によって生じる差動加熱出力(
図1Dに記載され、
図2Bにおける試験ポイントT1~T4によって測定される)は、特定の用途に適合するよう修正され得る。
【0081】
PPTCタンクヒータ600-片側電極、1水平スロット
【0082】
図6A~6Dは、例示的な実施形態による、PPTCタンクヒータの代表図である。
図6AはPPTCタンクヒータ600の側面図であり、
図6Bはその上断面図であり、
図6Cはその下断面図であり、
図6Dはその例示である。PPTCタンクヒータ600は、PTC材料から成るヒータ本体604を含む。ヒータ本体604は、2つの対向する表面を有する、実質的に平面の形状である。例示的な実施形態において、ヒータ本体604の厚みは1mm未満である。
【0083】
PPTCタンクヒータ600は、ヒータ本体604の対向する表面に配置される導電性表面602及び導電性表面606を含む。導電性表面602/606は、導電性表面が存在しないスロット616によって分離され、ヒータ本体604はスロットにおいて露出される。
図6Aの側面図において、スロット616は、水平方向に配置され、導電性表面606はスロット616の下にあり、導電性表面602はスロットの上にある。したがって、導電性表面606は、
図6Bの上断面図において見えないが、一方、導電性表面602は、
図6Cの下断面図において見えない。リード608が導電性表面606に接続される一方、リード610は導電性表面602に接続される。導電性表面612は、2つの導電性表面602及び606の第2の対向する表面に配置される。
【0084】
図6B及び6Cは更に、ヒータ本体604の対向する表面に配置された導電性表面612を例示し、対向する表面は、第1及び第2導電性表面602及び606が配置された表面とは反対にある。ヒータ本体604は厚み614を有する。したがって、ヒータ本体604は、1つの側の導電性表面602/606及び他方側の導電性表面612の間にサンドイッチされ、スロット616は、導電性表面602及び606の間にヒータ本体を露出する。
【0085】
図6Dは、例示的な実施形態による、PPTCタンクヒータ600の写真画像である。PPTCタンクヒータ600は、加熱される円筒形のデバイスの周りに配置されるのに好適な環状(リング)形状である。導電性表面602及び606は、PPTCタンクヒータ600の環形状の内側表面に配置され、一方、導電性表面612は外側面に配置される。ヒータ本体604のPPTC材料は、導電性表面602及び606の間に(水平方向に配置される開口として)、及びリングの上縁及び側縁に沿って、両方に示される。
【0086】
例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ600は、薄い(1mm未満の厚み)が、直径は大きい(直径10cmより大きい)。したがって、例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータ600は、比較的大きい円筒形物体を囲むことが可能である。いくつかの実施形態において、第1の特徴(薄さ)は、それと円筒形構造との直接接触を確実にし、その結果、高い加熱効率をもたらし、一方、第2の特徴(大きい直径)は、円筒形状のPPTCタンクヒータ600が、10cmに近い予め定められたサイズの円筒形状に加熱を提供することを可能にし、したがって、対象表面の迅速かつ効率的な加熱を可能にする。
【0087】
PPTCタンクヒータ700-片側電極、1鉛直スロット
【0088】
図7A~7Cは、例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータの代表図である。
図7Aは例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータ700側面図であり、
図7Bはその上断面図であり、
図7Cはその写真的例示である。PPTCタンクヒータ700は、PTC材料から成るヒータ本体704を含む。ヒータ本体704は、2つの対向する表面を有する、実質的に平面の形状である。例示的な実施形態では、ヒータ本体704の厚みは1mm未満である。
【0089】
PPTCタンクヒータ700は、ヒータ本体704の第1の対向する表面に配置される導電性表面702及び導電性表面706を含む。導電性表面702/706は、導電層は存在しないスロット716によって分離され、ヒータ本体704はスロットにおいて露出される。
図7Aの側面図において、スロット716は、鉛直に配置され、導電性表面706はスロットの左に、導電性表面702はスロットの右にある。リード708が導電性表面706に接続され、一方、リード710が導電性表面702に接続される。導電性表面712が導電性表面702及び706の第2の対向する表面に配置される。
【0090】
図7Bは、ヒータ本体704の対向する表面に配置される712を更に例示し、表面は、導電性表面702及び706が配置される表面の反対である。ヒータ本体704は厚み714を有する。したがって、ヒータ本体704は、1つの側の導電性表面702/706及び他方側の導電性表面712の間にサンドイッチされ、スロット716は、導電性表面702及び706の間にヒータ本体を露出する。
【0091】
図7Cは、例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータ700の写真である。PPTCタンクヒータ700は、加熱される円筒形のデバイスの周りに配置されるのに好適な環形状である。導電性表面702及び706は、PPTCタンクヒータ700の環形状の内側表面に配置され、一方、導電性表面712は外側面に配置される。ヒータ本体704のPPTC材料は、導電性表面702及び706の間に(鉛直に配置される開口として)、及びリングの上及び側縁に沿って、両方に示される。リード708及び710がそれぞれ、導電性表面706及び702に配置される。PPTCタンクヒータ600及び700は、同一の概略的な電力設計を示し、N=1である(Nは、導電性表面の両側のスロットの合計数を表す)。
【0092】
図8A~8Cは、例示的な実施形態による、PPTCタンクヒータ600及び700の特性を例示する代表図である。
図8Aは、例示的な実施形態による、PPTCタンクヒータ600(
図6A~6C)及び700(
図7A~7C)の等価回路を提示する。R
0及びR
7はそれぞれ、リード608/708及び610/710の抵抗を表し(その逆も成立)、R
1及びR
6はそれぞれ、導電性表面602/702及び606/706の抵抗を表し(その逆も成立)、R
3は、導電性表面612/712の抵抗を表し、R
2、R
4、及びR
5は、ヒータ本体604/704(PTC材料)を表す。例示的な実施形態では、抵抗R
4は抵抗R
2又はR
5よりも、著しく大きい。
【0093】
PTC材料の単一のヒータ本体604/704があるが、ヒータ600/700を通る電流の流れは、R
2、R
4、及びR
5によって与えられるように、ヒータ本体604/704のPTC材料を通る3つの可能な経路を取り得る。
図8Bは、例示的な実施形態による、PPTCタンクヒータ600及び700で生じ得る、ヒータ本体を通じた3つの可能な電流経路を例示する。矢印802、804、及び806は、PPTC材料を通る電流の流れの方向を示す。
図8Aは、電流の流れに2つの可能な経路があることを示す。第1電流経路は、R
0、R
1、R
2、R
3、R
5、R
6及びR
7を通り、その逆も成立する。したがって、矢印802及び804は、第1電流経路のサブ経路である。第2電流経路はR
0、R
1、R
4、R
6、及びR
7を通過する。したがって、矢印806は、第2電流経路の一部である。
【0094】
抵抗R2(矢印802によって示される)において、電流は、導電性表面606/706(R1)及び導電性表面612/712(R3)の間でPPTC材料を流れる。抵抗R5(矢印804によって示される)において、電流は、導電性表面612/712(R3)及び導電性表面602/702(R6)の間でPPTC材料を流れる。抵抗R4(矢印806によって示される)において、電流は、導電性表面606/706(R1)及び導電性表面602/702(R6)の間でPPTC材料を流れる。抵抗R4は、抵抗R2又はR5よりも著しく大きいため、例示的な実施形態では、第3の電流の流れの方向(R4)は、抵抗R2又はR5によって与えられる他の電流の流れの方向よりも発生する可能性が低い。
【0095】
図8Cは、例示的な実施形態による、環形状におけるPPTCタンクヒータ600又は700の代表図である。
図8Cは、環形状PPTCタンクヒータ600(
図6D)及び700(
図7C)を通る可能な電流の流れ方向を例示するために使用される。環形状リングは、中央におけるヒータ本体604/704から成り、導電性表面612/712はリングの外側表面を囲み、導電性表面606/706及び導電性表面602/702はリングの内側表面に配置される。PPTCタンクヒータ600については、導電性表面602は、リングの内側表面上の第1導電性表面606(
図6A及び6Dも参照)の上に配置される。PPTCタンクヒータ700については、導電性表面706は、1つの側に配置され、一方、導電性表面702は、リングの内側表面の他方側に配置される(
図7A及び7Cも参照)。
【0096】
図8Bのように、
図8Cの矢印は、電流の流れの可能な方向を示す。電流は、リード608/708(矢印808及び抵抗R
2によって示される)で開始して、導電性表面606/706から、ヒータ本体604/704のPPTC材料を越えて、ヒータ本体の反対側に配置された導電性表面612/712へ流れる。電流は、(矢印810及び抵抗R
3によって示される)導電性表面612/712に沿って流れる。次に電流は導電性表面612/712から、ヒータ本体604/704のPPTC材料を越えて、リード610/710(矢印812及び抵抗R
5によって示される)へ流れる。代替的に、電流は、矢印814及び816によって示されるように(その逆も成立)、また、抵抗R
4によって示されるように、導電性表面606/706と導電性表面602/702との間を流れ得る。
【0097】
様々な実施形態において、PPTCタンクヒータ600及び700のヒータ本体及び導電性表面の設計は、R
4の値がR
2又はR
5(
図8A)の値より遥かに大きいというものであり得る。この状況は、ヒータ本体604の厚み614/714を、スロット616/716より比較的小さく構成することによって、PPTCタンクヒータ600(
図6A~6C)及びPPTCタンクヒータ700(
図7A及び7B)において達成され得る。例示的な実施形態において、ヒータ本体604の厚み614(
図6B~6C)又はヒータ本体704の厚み714(
図7B)は、様々な非限定的実施形態において3ミル(0.0762mm)及び120ミル(3.048mm)の間であり、いくつかの実施形態において、5ミル(0.127mm)及び10ミル(0.254mm)の間であり、一方、導電性表面602及び導電性表面606の間に水平方向に配置されたスロット616(
図6A)、又は、導電性表面702及び導電性表面706の間に鉛直方向に配置されたスロット716(
図7A)のいずれかであるスロットの値は、それぞれのヒータ本体604/704の厚み616/716より比較的大きい。例えば、ヒータ本体604の厚み620が10ミル(0.254mm)である場合、スロット616又は716の値は50ミル(1.27mm)又はより大きいことがあり得、R
4がR
2又はR
5より遥かに大きいことを確実にする。
【0098】
例示的な実施形態において、等価回路(
図8A)によって表されるPPTCタンクヒータ600及び700の抵抗は凡そ、初期抵抗に4を乗算した値である(R
2=R
5かつヒータが非トリップ状態にあるとき、R≒4R
i)。これらの実施形態に変形によれば、スロット場所(616又は716)の設計は、上部及び下部(PPTCタンクヒータ600)の、又は、左及び右側(PPTCタンクヒータ700)の加熱効果を決定し得る(各PPTCセグメントの抵抗を制御することによって、1つの側をより高く、別の側をより低くする)。一実施形態において、PPTCタンクヒータ600設計は、ヒータ全体が環形状に曲げられる例においてPPTCタンクヒータ700より良い機械的強度を有する。
【0099】
PPTCタンクヒータ900-片側電極;3水平スロット
【0100】
図9A~9Cは、例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータ900を例示する代表図である。
図9Aは、PPTCタンクヒータ900の第1側面図を特徴とし;
図9Bは、PPTCタンクヒータ900の第2(反対の)側面図を特徴とし;
図9Cは、PPTCタンクヒータ900の等価回路である。
【0101】
導電性表面906はリード908に接続され、導電性表面902はリード910に接続される。3つの追加の導電性表面914、918及び922も示される。したがって、PPTCタンクヒータ900は5つの導電性表面902、906、914、918及び922を含む。導電性表面902、922及び906がPPTCタンクヒータ900の1つの側で見え(
図9A)、一方、2つの導電性表面914及び918がPPTCタンクヒータの反対側で見える(
図9B)。スロット912、916、及び920は、ヒータ本体904が露出された領域である。したがって、スロット912及び920は、PPTCタンクヒータ900の1つの側で見え(
図9A)、一方、スロット916は、PPTCタンクヒータの反対側で見える(
図9B)。PPTCタンクヒータ900の反対側に配置されている場合、スロット912、916及び920は、より明るい影で示される。
【0102】
したがって、導電性表面902は、スロット912によって導電性表面922から分離され、導電性表面922は、スロット920によって導電性表面906から分離され、ここで、各スロット912、920は、PPTC材料のヒータ本体904を露出する(
図9A)。PPTCタンクヒータ900の反対の表面において、導電性表面918は、PPTC材料のヒータ本体904を露出するスロット916の導電性表面914によって分離される(
図9B)。したがって、スロット920及び912は、導電性表面902、922及び906の抵抗と比較して、比較的より高い抵抗であるPPTCタンクヒータ900の1つの面に沿って領域を画定し、一方、スロット916は、導電性表面914及び918の抵抗と比較して、比較的より高い抵抗であるPPTCタンクヒータの対向する表面に沿って領域を画定する。スロット912、916及び920は、リード908及び910の一般的な方向に対して垂直に延在するよう構成される。
【0103】
PPTCタンクヒータ900は、
図9Cに示される等価回路によって特徴付けられ得、ここで、R
0及びR
12は、リード908、910の抵抗を表し、R
1及びR
11は、導電性表面906及び902の抵抗を表し、R
3、R
6及びR
8は、導電性表面914、922及び918の抵抗を表し、R
2、R
5、R
7及びR
10は、ヒータ本体904の厚みを通じて、すなわち、リード908、910(Y方向)及びスロット912、916及び920(X方向)の両方に垂直に、又は、Z方向に流れる電流に対するヒータ本体904の抵抗を表し、R
4、R
9及びR
13は、ヒータ本体904の表面に沿って、すなわち、リード908、910に平行に(Y方向)、しかし、スロット912、916及び920に垂直に、又はY方向に流れる電流に対するヒータ本体904の抵抗を表す。特に、トリップ温度より下の動作中に、PPTCタンクヒータ900の電流は、主にリード908(R
0)を通じて;導電性表面906(R
1)を通じて;ヒータ本体904の厚み(R
2)を通じて(Z方向);ヒータ本体の裏側に沿った導電性表面914の表面(R
3)に沿って(
図9B);再びヒータ本体904の厚み(R
5)を通じてデバイスの前方へZ方向に(
図9A);導電性表面922(R
6)に沿って;ヒータ本体904の厚み(R
7)を通じてデバイスの裏側へZ方向に(
図9B);導電性表面918(R
8)に沿って;ヒータ本体904(R
10)の厚みを通じて、Z方向に、再びデバイスの前方へ(
図9A);及び導電性表面902(R
11)及びリード910(R
12)を通じて流れることによってリード908及びリード910の間を流れ得る。換言すると、トリップ温度より下の動作中、電流はデバイスの前側のスロット912又は920を越えて、及び、デバイスの裏側のスロット916を越えて、Y方向にジャンプしない。一般に、スロット916、912、920のサイズは、ヒータ本体904の厚みより遥かに大きいことがあり得るので、電流は典型的には、抵抗R
4、R
9、R
13によって示されるようにヒータ本体の平面における経路に沿って(Y方向に)流れない。
【0104】
PPTCタンクヒータ1000-片側電極、3鉛直スロット
【0105】
図10A~10Cは、例示的な実施形態による新規のPPTCタンクヒータ1000を例示する代表図である。
図10Aは、PPTCタンクヒータ1000の第1側面図を特徴とし;
図10Bは、PPTCタンクヒータ1000の第2(反対の)側面図を特徴とし;
図10Cは、PPTCタンクヒータ1000についての等価回路である。PPTCタンクヒータ1000のヒータ構成は一般に、PPTCタンクヒータ900と同じであるが、スロットがリードの一般的な方向に対して略平行に延在するよう構成されていることを除く。
【0106】
導電性表面1006はリード1008に接続され、導電性表面1002はリード1010に接続される。3つの追加の導電性表面1014、1018、及び1022も示される。したがって、PPTCタンクヒータ1000は、5つの導電性表面1002、1006、1014、1018、及び1022を含む。3つの導電性表面1006、1022及び1002は、PPTCタンクヒータ1000(
図10A)の1つの側で見え、一方、導電性表面1014及び1018の2つは、PPTCタンクヒータの反対側で見える(
図10B)。スロット1012、1016及び1020は、ヒータ本体1004が露出される領域である。したがって、スロット1012及び1020は、PPTCタンクヒータ1000の1つの側で見え(
図10A)、一方、スロット1016は、PPTCタンクヒータの反対側で見える(
図10B)。PPTCタンクヒータ1000の反対側に配置される場合、スロット1012、1016及び1020はより明るい影で示される。
【0107】
したがって、導電性表面1006は、スロット1012によって導電性表面1022から分離され、導電性表面1022は、スロット1020によって導電性表面1002から分離され、ここで、各スロット1012、1020はPPTC材料のヒータ本体1004を露出する(
図10A)。PPTCタンクヒータ1000の反対の表面上で、導電性表面1018は、PPTC材料のヒータ本体1004を露出するスロット1016によって導電性表面1014から分離される(
図10B)。したがって、スロット1020及び1012は、導電性表面1006、1022、及び1002の抵抗と比較して、比較的より高い抵抗であるPPTCタンクヒータ1000の1つの面に沿った領域を画定し、一方、スロット1016は、導電性表面1014及び1018の抵抗と比較して、比較的より高い抵抗であるPPTCタンクヒータの対向する表面に沿って領域を画定する。スロット1012、1016、及び1020は、リード1008及び1010の一般的な方向に対して平行に延在するよう構成されている。
【0108】
PPTCタンクヒータ1000は、
図10Cに示されるように等価回路によって特徴付けられ得る。例示的な実施形態において、
図9C及び10Cの等価回路は実質的に同様である。R
0及びR
12は、リード1008、1010の抵抗を表し、R
1及びR
11は、導電性表面1006及び1002の抵抗を表し、R
3、R
6、及びR
8は、導電性表面1014、1022及び1018の抵抗を表し、R
2、R
5、R
7、及びR
10は、ヒータ本体1004の厚みを通じて、すなわち、リード1008、1010(Y方向)及びスロット1012、1016、及び1020(Y方向)の両方に対して垂直に、又は、Z方向に流れる電流に対するヒータ本体1004の抵抗を表し、R
4、R
9及びR
13は、ヒータ本体1004の表面に沿って、すなわち、リード1008、1010に垂直に(Y方向)、及び、スロット1012、1016、及び1020に垂直に、又はX方向に流れる電流に対するヒータ本体1004の抵抗を表す。
【0109】
特に、トリップ温度より下の動作中、PPTCタンクヒータ1000の電流は主に、リード1008(R
0)を通じて;導電性表面1006(R
1)を通じて;ヒータ本体1004(R
2)の厚みを通じて(Z方向);ヒータ本体の裏側に沿った導電性表面1014(R
3)の表面に沿って(
図10B);再びヒータ本体1004の厚み(R
5)を通じて、デバイスの前方へZ方向に(
図10A);導電性表面1022(R
6)の表面に沿って;ヒータ本体1004(R
7)の厚みを通じて、Z方向に、デバイスの裏へ(
図10B);導電性表面1018(R
8)の表面に沿って;ヒータ本体1004(R
10)の厚みを通じて、Z方向に、再びデバイスの前へ(
図10A);及び導電性表面1002(R
11)及びリード1010(R
12)を通じて流れることによって、リード1008及びリード1010の間を流れ得る。換言すると、トリップ温度より下の動作中、電流はデバイスの前側のスロット1012又は1020を越えて、及び、デバイスの裏側のスロット1016を越えて、Y方向にジャンプしない。
【0110】
スロット1016、1012、1020のサイズは、ヒータ本体1004の厚みより遥かに大きいことがあり得るので、電流は典型的には、抵抗R4、R9、R13によって示されるようにヒータ本体の平面における経路に沿って(X方向に)流れない。いくつかの実施形態において、PPTCタンクヒータ900及び1000は、同じ電力設計(N=3)を提供する。所与のヒータ抵抗の抵抗は凡そ、初期抵抗に16を乗算したものである(R2=R5=R7=R10であり、PPTCタンクヒータが非トリップ状態にあるとき、R≒16Ri)。
【0111】
上に記載されたPPTCタンクヒータの原理は、遥かに多くのスロットを有する片側電極に及び得る。
図11は例えば、例示的な実施形態による、片側電極、7スロット設計を有するPPTCタンクヒータ1100を示す。導電性表面1106はリード1108に接続され、導電性表面1102はリード1110に接続される。PPTCタンクヒータ1100は、7つの追加の導電性表面を含み、導電性表面1114、1118、1122、1106及び1102は、1つの側に配置され、導電性表面1126、1130、1134及び1138は、反対側に配置される。スロット1112、1116、1120及び1124は、ヒータ本体1104がPPTCタンクヒータ1100の1つの側で露出される領域であり、一方、スロット1128、1132及び1136は、反対側でヒータ本体を露出する。
【0112】
図12A~12Dは、例示的な実施形態によるPPTCタンクヒータ1200に関連する代表図である。
図12Aは、PPTCタンクヒータ1200の側面図を示し、
図12Bは、PPTCタンクヒータ1200についての等価回路であり、
図12Cは、PPTCタンクヒータ1200の写真であり、
図12Dは、環形状のPPTCタンクヒータ1200を示す。PPTCタンクヒータ1200は、導電性表面1202及び導電性表面1206の間にサンドイッチされたヒータ本体1204(
図12D)を含む。リード1208がPPTCタンクヒータ1200の1つの側に配置され(
図12Dにおける環状面の外側)、一方、リード1210は、反対側(
図12Dにおける環状面の内側)に配置される。この例において、導電性表面1202はリード1208に接続され、一方、導電性表面1206はリード1210に接続される。したがって、電流は、PPTCタンクヒータ本体の厚みを通じてZ方向に通る。
図12Bの等価回路において、R
0及びR
4は、リード1208及び1210の抵抗を表し、R
1及びR
3は、導電性表面1202及び1206の抵抗を表し、R
2は、ヒータ本体の厚みを流れる電流に対するヒータ本体1204の抵抗を表す。
【0113】
ヒータ本体
【0114】
図13A~13Dは、例示的な実施形態による、PPTCタンクヒータのヒータ本体の側面図である。本明細書に開示されるPPTCタンクヒータは、PPTC材料から成るヒータ本体を含み、ここで、PPTC材料は、1)導電相材料又は導電性フィラー(カーボン及び/又はグラフェンなど)及び2)半結晶性高分子から成る高分子マトリックスから成ることに留意されたい。
図13Aに示されるように、ヒータ本体1304は、高分子1308内に配置された導電性フィラー1306から成るPPTC高分子マトリックス1302から成り、高分子マトリックスは2つの金属箔1310の間にサンドイッチされている。例示的な実施形態では、金属箔1310はそれぞれ、PPTC高分子マトリックス1302と接する1つの側にノジュール(突起)を含み、これにより、箔及びマトリックスの間の接続が強化される。
【0115】
ヒータ本体1304は、ヒータ本体を含むPPTCタンクヒータが事前定義された自動調節温度を有するように製造され得る。例示的な実施形態において、自動調節温度は125℃であるが、PPTCタンクヒータ、及び、具体的には、導電性フィラー及び高分子から構成される高分子マトリックスを含むヒータ本体が、多種多様な顧客の温度の希望を満たすように設計され得る。具体的には、導電性フィラー及び高分子のタイプ、及び各々の組み合わせの割合を調節して、特定の自動調節温度プロファイルを達成し得る。それに応じて、PPTC高分子マトリックス1302の導電性フィラー1306及び高分子1308の両方を構成するために使用され得る多くの異なる材料がある。
【0116】
図13B~13Dは、例示的な実施形態による、高分子マトリックス1302を構成し得るグラフェン及びカーボンの可能な組み合わせを例示する。グラフェンとカーボンの比は、0:100であり得、すなわち、グラフェンが無く、すべてがカーボンであり(
図13B);グラフェンとカーボンの比は、100:0であり得、すなわち、すべてがグラフェンで、カーボンが無く(
図13C);又は、グラフェンとカーボンの比は、1:99及び99:1の間の範囲、すなわち、1及び99%の間の、2つの材料の任意の割合の組み合わせであり得る(
図13D)。
【0117】
例示的な実施形態では、高分子1308は、半結晶性高分子、例えば、ポリエチレン、フッ化ポリビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、エチレン酢酸ビニル、エチレン及びアクリル酸共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、ポリパーフルオロアルコキシ、又はこれらの材料の1又は複数の何らかの組み合わせを含む。さらに、例示的な実施形態では、PPTC高分子マトリックス1302内の導電性フィラー1306に対する高分子1308の体積百分率は、50%及び99%の間、好ましくは、60%及び95%の間である。したがって、例えば、スペクトルの一端において、高分子マトリックスは、50%高分子及び50%導電性フィラーから成り得る。スペクトルの他端では、高分子マトリックスは、99%の高分子及び1%の導電性フィラーから成り得る。好ましくは、高分子マトリックスは、一方の端で60%の高分子及び40%の導電性フィラー、他方の端で95%の高分子及び5%の導電性フィラーから成り得、これらの好みの間には、好ましい自動調節温度プロファイルをもたらし得る他の多くの組み合わせが存在する。
【0118】
例示的な実施形態では、高分子マトリックスの導電性フィラー1306は、カーボン、グラフェン、カーボン及びグラフェン、導電性セラミック、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブを有するカーボン、又はカーボンナノチューブを有するグラフェンから構成される。例示的な実施形態では、PPTC高分子マトリックス1302の導電性フィラー1306は、10nm及び100nmの間の一次粒径を有し、さらに、5cm3/100g及び500cm3/100gの間のフタル酸ジブチル(Di-Butyl Phthalate:DBP)値を有するカーボンから構成される。好ましくは、DBP値は8cm3/100g及び200cm3/100gの間の範囲である。更に、例示的な実施形態において、グラフェン(カーボン)の充填は、20%及び65%の間、好ましくは、25%及び30%の間である。
【0119】
例示的な実施形態では、PPTC高分子マトリックス1302の導電性フィラー1306はグラフェンで構成され、グラフェンは、機械的方法又は化学的方法によって調製され、グラフェン層の数は1~数百、好ましくは、1及び30層の間である。例示的な実施形態では、各グラフェン層の厚みは、20nm未満、好ましくは、0.34nm及び10.2nmの間である。さらに、例示的な実施形態では、グラフェンの粒径は0.1μm及び100μmの間、好ましくは、5μm及び30μmの間の範囲である。例示的な実施形態において、グラフェンの充填は、1%及び50%の間、好ましくは、4%及び30%の間である。
【0120】
例示的な実施形態では、PPTC高分子マトリックス1302の導電性フィラー1306は、カーボン又は導電性セラミックで構成され、カーボンの一次粒径は、10nm及び100nmの間であり、5cm3/100g及び500cm3/100gの間のDBP値、好ましくは、8cm3/100g及び200cm3/100gの間のDBP値の範囲である。カーボン又は導電性セラミックとグラフェンの比率は、0%/100%(カーボン/導電性セラミックなし、100%グラフェン)及び100%/0%(100%カーボン又は導電性セラミック、グラフェンなし)の間、及びその間の任意の値にし得る。
好ましい実施形態では、グラフェンに対するカーボン又は導電性セラミックの比率は、1%及び90%の間、好ましくは、30%及び60%の間である。
【0121】
例示的な実施形態では、PPTC高分子マトリックス1302の導電性フィラー1306は、カーボンナノチューブ(Carbon NanoTube:CNT)又はカーボンを含むグラフェンで構成され、カーボンの一次粒径は、10nm及び100nmの間であり、5cm3/100g及び500cm3/100gの間のDBP値、好ましくは、8cm3/100g及び200cm3/100gの間のDBP値の範囲である。例示的な実施形態では、導電性フィラー1306のナノチューブの長さは10nm及び10μmの間であり、直径は2nm及び50nmの間であり、CNTの長さ/直径は5及び5000の間、好ましくは、100及び1000の間である。例示的な実施形態では、カーボン対グラフェン、又はカーボン対ナノチューブの比率は、1%及び90%の間、好ましくは、30%及び60%の間である。
【0122】
さらに、例示的な実施形態では、PPTC高分子マトリックス1302の高分子1308又は導電性フィラー1306のいずれか、又はその両方には、限定されないが、酸化防止剤、分散剤、カップリング剤、架橋剤、アーク抑制剤などを含む材料が補充される。したがって、ヒータ本体1304は、多種多様な材料を使用して製造され得、
図13Aのヒータ本体は、本明細書において開示及び記載されるPPTCタンクヒータのいずれかの一部であり得る。
【0123】
図14A及び14Bは、例示的な実施形態による、PPTCタンクヒータ、具体的には、PPTC高分子マトリックスを含むヒータ本体のPPTC材料についての曲げ工程の効果を例示する代表図である。PPTCタンクヒータのヒータ本体1404(PPTCタンクヒータ本体1404)は、金属箔1410が高分子マトリックスのいずれかの側に配置されたPPTC高分子マトリックス1402から成る。
【0124】
例示的な実施形態では、その材料組成に基づいて、PPTC高分子マトリックス1402は、弾塑性の範囲で、すなわち、塑性変形は非常に小さいが、あたかも弾性変形及び塑性変形の両方が起こったかのように曲げることができる。仮想中立線1420は、PPTC高分子マトリックス1402がかなり曲げることができることを示している。金属箔1410は、2つの接触面の間の接続を改善するために、PPTC高分子マトリックス1402に隣接する側面に配置されたノジュールを含み得ることを想起されたい。いくつかの実施形態において、金属箔1410のノジュールは、曲げ中に弾性範囲において動くのに十分に高い。それにもかかわらず、この曲げは、外側の金属箔1410及びPPTC高分子マトリックス1402の半分に引張を生じさせると同時に、内側の金属箔及びPPTC高分子マトリックス1402のもう一方の半分に圧縮を生じさせる。更に、PPTC高分子マトリックス1402の半分及びPPTC高分子マトリックス1402の別の半分の間に仮想中立線1420がある。
【0125】
曲げ操作中のPPTCタンクヒータの加熱は必須ではない。一実施形態において、曲げ操作中にいくらかの熱がPPTCタンクヒータに適用される。しかしながら、加熱温度は半結晶性高分子の融解温度未満に維持される。そうでない場合、PPTC高分子マトリックスの導電性粒子の特性は変化し、PPTCタンクヒータの製造工程を妨害する可能性がある。ヒータ本体1404が曲げ後に所望の環形状になると、曲げ応力を解放するためにアニール工程を使用し得る。
【0126】
図14Bは、例示的な実施形態による、
図14AのPPTCタンクヒータ本体1404の応力及び歪みの特徴を例示する図である。σによって与えられる応力は、外側の金属箔1410(σ
foil)及びPPTC高分子マトリックス1402(σ
pPTC)の両方について示されている。Eによって与えられる弾性率は、外側の金属箔1410(E
foil)及びPPTC高分子マトリックス1402(E
pPTC)についても与えられる。この情報から、各材料の張力εは、式σ=Eεを使用して計算され得る。
【0127】
図15は、例示的な実施形態による開示されたPPTCタンクヒータのいずれかなど、PPTCタンクヒータを製造するための工程ステップを示す流れ図である。製造工程は、高分子及び導電性フィラーが上述の高分子マトリックスを構成するため、これらの混合操作から始まる(ブロック1502)。次いで、加熱融解押出工程が高分子マトリックスに対して行われる(ブロック1504)。加熱融解押出(Hot Melt Extrusion:HME)は、熱及び圧力を加えて高分子を融解し、連続工程で開口部に押し通す工程である。これにより、高分子マトリックスが予め定められた均一な形状及び密度をとることができる。次いで、高分子マトリックスをシートに押し出す(ブロック1506)。押し出された高分子マトリックスのシートは次に、両方の側で金属箔と積層され(ブロック1508)、上記のPPTCタンクヒータに記載されるように、高分子マトリックスが間にある金属箔のサンドイッチ(電極及び/又は導電性領域)を形成する。
【0128】
金属箔の積層に続いて、PPTC架橋動作が高分子マトリックス上で実行される(ブロック1510)。高分子化学では、架橋結合では高分子の物理的特性の変化を促進するために架橋が使用される。ここでは、高分子マトリックスが架橋され、その結果、所望の特性を備えたPPTCが出現する。例示的な実施形態では、PPTC架橋は、電子線照射、ガンマ線照射、又は化学的架橋によって達成される。次いで、箔-PPTC-箔サンドイッチシートが形成される(ブロック1512)。サンドイッチシートは次に、設計されたチップサイズに、1つの側でエッチングされ(N=1である場合)、又は、両方の側でエッチングされる(N≧3である場合)(ブロック1514)。サンドイッチシートは次に、個々のチップへのエッチングに基づいて切断され(ブロック1516)、ここで、各チップは、PPTCタンクヒータについて所望されるような金属箔-PPTC-金属箔のサンドイッチである。
【0129】
次いで、個々のチップをそれぞれ曲げて、指定された直径の環形状を形成する(ブロック1518)。本明細書において記載される実施形態は、格納タンクについての円筒形吸入口上に篏合するように輪状にされているが、個々のチップは代替的に、所望の用途に好適な他の形状に曲げられ得る。例示的な実施形態において、PPTCタンクヒータの形状は、加熱されるデバイスの形状に適合するように、この段階で曲げられる。
【0130】
チップを所望の形状に曲げることに続いて、リードの組み立てが実行され、リード(例えば、
図1Aのリード108及び110)は、サンドイッチされたチップに取り付けられる(ブロック1520)。次いで、内部応力を除去して材料を強化するために、サンドイッチされたチップが加熱され、ゆっくりと冷却することができるアニール工程が実行される。次いで、サンドイッチされたチップは、デバイスを保護するため、又はデバイスに他の機能を追加するために、適切な材料でコーティングされる(ブロック1522)。例えば、一実施形態において、異なる温度においてデバイスに色を変更させる温度感受性コーティングが追加される(ブロック1524)。次いで、デバイスのR試験が実行され(ブロック1526)、デバイスは適切な包装材料で包装される(ブロック1528)。sそうして、PPTCタンクヒータ製造工程ステップが完了する。
【0131】
図15のPPTC処理ステップの1又は複数は、示されている以外の順序で実行されてもよい。当業者の設計者であれば、これらの製造操作が実行され得る複数の手段を認識するであろう。
【0132】
本明細書で使用する場合、単数形で記載され、「a」又は「an」という単語で始まる要素又はステップは、そのような除外が明示的に記載されていない限り、複数の要素又はステップを除外しないものとして理解されるべきである。さらに、本開示の「1つの実施形態」への言及は、記載された特徴も組み込む追加の実施形態の存在を排除するものとして解釈されることを意図するものではない。
【0133】
本開示は、特定の実施形態に言及している一方、添付の特許請求の範囲で定義されるような本開示の領域及び範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対する多くの改変、修正、及び変更を行うことが可能である。したがって、本開示は、記載された実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲の文言及びその均等物により定義される完全な範囲を有することが意図されている。
【国際調査報告】