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特表2024-530597リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質及びその製造方法、正極シート、二次電池及び電力消費装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質及びその製造方法、正極シート、二次電池及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20240816BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240816BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20240816BHJP
   C01B 25/30 20060101ALI20240816BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 A
H01M4/136
C01B25/30
C01B25/45 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504524
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 CN2022106079
(87)【国際公開番号】W WO2024011621
(87)【国際公開日】2024-01-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 少▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ヂャン▼ 文▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 欣欣
(72)【発明者】
【氏名】欧▲陽▼ 楚英
(72)【発明者】
【氏名】李 清政
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA02
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
(57)【要約】
本願はリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質及びその製造方法、正極シート、二次電池及び電力消費装置を提供する。前記製造方法は、鉄源、固体アルカリ及び選択可能なドーピング元素M源を混合粉砕して各成分に低温固相反応を発生させ、粉砕終了後に得られた生成物を洗浄して不純物を除去し、乾燥させて、ナノオーダーの鉄含有酸化物を得るステップと、得られたナノオーダーの鉄含有酸化物と溶媒、リチウム源、マンガン源、リン源、選択可能なドーピング元素N源、選択可能なドーピング元素Q源及び選択可能なドーピング元素R源を所定の割合で混合した後粉砕し、粉砕終了後に噴霧乾燥による造粒を行い粉末を得るステップと、得られた粉末に対して焼結処理を行い、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得るステップと、を含む。本願が提供する製造方法は、良好な電気的、化学的特性と高タップ密度とを両立させたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温固相反応法でナノオーダーの鉄含有酸化物を製造するステップS1であって、鉄源、固体アルカリ及び選択可能なドーピング元素M源を混合粉砕して各成分に低温固相反応を発生させ、粉砕終了後に得られた生成物を洗浄して不純物を除去し、乾燥させて、ナノオーダーの鉄含有酸化物を得て、前記ドーピング元素Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはAl、Cu、Mg、Zn、Ni、Ti、V、Zr、Co、Ga、Sn、Sb、Nb及びGeのうちの少なくとも1つを含むステップS1と、
噴霧乾燥による造粒を行うステップS2であって、ステップS1で得られたナノオーダーの鉄含有酸化物と溶媒、リチウム源、マンガン源、リン源、選択可能なドーピング元素N源、選択可能なドーピング元素Q源及び選択可能なドーピング元素R源を所定の割合で混合した後粉砕し、粉砕終了後に噴霧乾燥による造粒を行って粉末を得て、前記ドーピング元素Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、好ましくはZn、Al、Na、K、Mg、Nb、Mo及びWのうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素Qはリンサイトのドーピング元素を表し、好ましくはB、S、Si及びNのうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素Rは酸素サイトのドーピング元素を表し、好ましくはS、F、Cl及びBrのうちの少なくとも1つを含むステップS2と、
焼結を行うステップS3であって、ステップS2で得られた粉末に対して焼結処理を行い、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得るステップS3と、を含む、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記ステップS1において、
前記鉄源と前記固体アルカリとのモル比は1:(1~3)であり、及び/又は、
前記混合粉砕の時間は20min~60minであり、及び/又は、
前記洗浄して不純物を除去するプロセスは水洗浄及びアルコール洗浄を含み、及び/又は、
前記乾燥は真空乾燥であり、及び/又は、
前記乾燥の温度は100℃以下であり、及び/又は、
前記乾燥の時間は2h~15hである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ステップS1において、前記混合粉砕は乳鉢又はボールミルタンクで行われ、
好ましくは、前記乳鉢の粉砕速度は100r/minであり、
好ましくは、前記ボールミルの回転速度は300r/min~800r/minである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ステップS1において、混合粉砕終了後に、静置ステップをさらに含み、好ましくは、前記静置時間は30min~120minである、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ステップS1において、さらに界面活性剤を加えて前記鉄源、前記固体アルカリ及び前記ドーピング元素M源と一緒に混合粉砕し、
好ましくは、前記界面活性剤はポリエチレングリコールを含み、
好ましくは、前記界面活性剤の添加量は、前記鉄源、前記固体アルカリ及び前記ドーピング元素M源の総重量に対して、5重量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ステップS1において、前記鉄源、前記固体アルカリ及び前記ドーピング元素M源を混合粉砕して各成分に低温固相反応を発生させる前に、さらに、前記鉄源、前記固体アルカリ及び前記ドーピング元素M源をそれぞれ粉砕するステップを含み、
好ましくは、前記鉄源を粉砕する時間は30min~90minであり、
好ましくは、前記固体アルカリを粉砕する時間は30min~90minであり、
好ましくは、前記ドーピング元素M源を粉砕する時間は30min~90minである、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ステップS1において、
前記鉄源は三価鉄塩であり、好ましくは塩化第二鉄、硝酸第二鉄及び硫酸第二鉄のうちの少なくとも1つを含み、及び/又は、
前記固体アルカリは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムのうちの少なくとも1つを含み、好ましくは水酸化ナトリウムを含み、及び/又は、
前記ドーピング元素M源はドーピング元素Mの塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩及び酢酸塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ステップS2において、
前記粉砕はボールミルタンクで行われ、好ましくは、前記ボールミルの回転速度は300r/min~800r/minであり、好ましくは、前記ボールミル時間は3h~24hであり、及び/又は、
前記噴霧乾燥の温度は200℃~250℃である、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ステップS2において、
前記溶媒はエタノール、水又はその混合溶媒を含み、及び/又は、
前記リチウム源はLiCO、LiOH、LiPO及びLiHPOのうちの少なくとも1つを含み、及び/又は、
前記マンガン源はMnCO、Mn(CHCOO)及びMnCのうちの少なくとも1つを含み、及び/又は、
前記リン源は(NHHPO、NHPO、(NHPO及びHPOのうちの少なくとも1つを含み、及び/又は、
前記ドーピング元素N源はドーピング元素Nの塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩及び酢酸塩のうちの少なくとも1つを含み、及び/又は、
前記ドーピング元素Q源はドーピング元素Qの硫酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩及びケイ酸塩のうちの少なくとも1つを含み、及び/又は、
前記ドーピング元素R源はドーピング元素Rの単体及びアンモニウム塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ステップS2において、さらに炭素源を加えて一緒に混合粉砕し、好ましくは、前記炭素源は有機炭素源、無機炭素源のうちの少なくとも1つを含み、好ましくはグルコース、スクロース、デンプン、フルクトース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール及びクエン酸のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ステップS3において、前記焼結プロセスは、
前記ステップS2で得られた粉末を350℃~550℃、空気雰囲気又は保護ガス雰囲気下で低温予備焼結し、反応終了後に予備焼結材料を得るステップS31と、
前記ステップS31で得られた予備焼結材料を粉砕した後に噴霧乾燥による造粒を行って予備焼結材料粉末を得るステップS32と、
前記ステップS32で得られた予備焼結材料粉末を650℃~750℃、保護ガス雰囲気下で高温焼結し、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得るステップS33と、を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ステップS31において、前記低温予備焼結の時間は2h~10hであり、及び/又は、
前記ステップS33において、前記高温焼結の時間は2h~10hである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ステップS32において、前記粉砕はボールミルタンクで行われ、好ましくは、前記ボールミルの回転速度は300r/min~800r/minであり、好ましくは、前記ボールミル時間は3h~24hである、請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ステップS3で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を必要な粒径に破砕するステップをさらに含み、好ましくは、前記破砕は気流粉砕である、請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の製造方法で得られるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質であって、
化学式LiFeMn1-x-y1-m4-nを有し、前記ドーピング元素Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはAl、Cu、Mg、Zn、Ni、Ti、V、Zr、Co、Ga、Sn、Sb、Nb及びGeのうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、好ましくはZn、Al、Na、K、Mg、Nb、Mo及びWのうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素Qはリンサイトのドーピング元素を表し、好ましくはB、S、Si及びNのうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素Rは酸素サイトのドーピング元素を表し、好ましくはS、F、Cl及びBrのうちの少なくとも1つを含み、aは0.9~1.1であり、bは0~0.1であり、好ましくは0.001~0.1であり、xは0.001~0.999であり、好ましくは0.199~0.50であり、yは0.001~0.999であり、好ましくは0.499~0.80であり、1-x-yは0~0.1であり、好ましくは0.001~0.1であり、mは0~0.1であり、好ましくは0.001~0.1であり、nは0~0.1であり、好ましくは0.001~0.1であり、且つ前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は電気的に中性であり、
前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質のタップ密度は1.4g/cm以上であり、好ましくは1.47g/cm~1.82g/cmである、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質。
【請求項16】
前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の体積基準粒度分布Dv50は300nm~500nmであり、及び/又は、
前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は球状又は略球状の単結晶形状を有する、請求項15に記載のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質。
【請求項17】
正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも1つの表面に設置された正極フィルム層を含み、前記正極フィルム層は請求項1~14のいずれか一項に記載の製造方法で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質又は請求項15~16のいずれか一項に記載のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を含み、好ましくは、前記正極フィルム層における前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の含有量は、前記正極フィルム層の総重量に対して50重量%以上であり、より好ましくは90重量%~99重量%である、正極シート。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか一項に記載の製造方法で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質又は請求項15~16のいずれか一項に記載のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質又は請求項17に記載の正極シートを含む二次電池。
【請求項19】
請求項18に記載の二次電池を含む電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池技術分野に属し、具体的にはリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質及びその製造方法、正極シート、二次電池及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池は水力、火力、風力及び太陽光発電所等のエネルギー貯蔵電源システム、さらには電動工具、電動自転車、電動オートバイ、電気自動車、軍事装備、航空宇宙等の複数の分野に広く応用されている。二次電池の応用及び普及に伴い、その安全性能にますます注目が集まっている。リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は容量が大きく、安全性能が高く、原材料の供給源が豊富であるなどの利点から、現在最も注目されている正極活物質の一つである。しかしながら、現在製造されているリン酸マンガン鉄リチウム正極材料は二次電池に良好な電気的、化学的特性と高いエネルギー密度とを両立させることが困難である。
【発明の概要】
【0003】
本願の目的は、良好な電気的、化学的特性と高いタップ密度を両立したリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得ることができ、それにより二次電池に良好な電気的、化学的特性と高いエネルギー密度とを両立させるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質及びその製造方法、正極シート、二次電池及び電力消費装置を提供することである。
【0004】
本願の第1態様によれば、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法を提供し、ステップS1~S3を含み、
ステップS1は、低温固相反応法でナノオーダーの鉄含有酸化物を製造するステップであり、
鉄源、固体アルカリ及び選択可能なドーピング元素M源を混合粉砕して各成分に低温固相反応を発生させ、粉砕終了後に得られた生成物を洗浄して不純物を除去し、乾燥させて、ナノオーダーの鉄含有酸化物を得て、前記ドーピング元素Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはAl、Cu、Mg、Zn、Ni、Ti、V、Zr、Co、Ga、Sn、Sb、Nb及びGeのうちの少なくとも1つを含み、
ステップS2は、噴霧乾燥による造粒を行うステップであり、
ステップS1で得られたナノオーダーの鉄含有酸化物と溶媒、リチウム源、マンガン源、リン源、選択可能なドーピング元素N源、選択可能なドーピング元素Q源及び選択可能なドーピング元素R源を所定の割合で混合した後粉砕し、粉砕終了後に噴霧乾燥による造粒を行って粉末を得て、前記ドーピング元素Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、好ましくはZn、Al、Na、K、Mg、Nb、Mo及びWのうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素Qはリンサイトのドーピング元素を表し、好ましくはB、S、Si及びNのうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素Rは酸素サイトのドーピング元素を表し、好ましくはS、F、Cl及びBrのうちの少なくとも1つを含み、
ステップS3は、焼結を行うステップであり、
ステップS2で得られた粉末に対して焼結処理を行い、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得る。
【0005】
本願の任意の実施形態において、ステップS1において、前記鉄源と前記固体アルカリとのモル比は1:(1~3)である。
【0006】
本願の任意の実施形態において、ステップS1において、前記混合粉砕時間は20min~60minである。
【0007】
本願の任意の実施形態において、ステップS1において、前記洗浄して不純物を除去するプロセスは水洗浄及びアルコール洗浄を含む。
【0008】
本願の任意の実施形態において、ステップS1において、前記乾燥は真空乾燥である。
【0009】
本願の任意の実施形態において、ステップS1において、前記乾燥の温度は100℃以下である。
【0010】
本願の任意の実施形態において、ステップS1において、前記乾燥の時間は2h~15hである。
【0011】
本願の任意の実施形態において、ステップS1において、前記混合粉砕は乳鉢又はボールミルタンクで行われ、好ましくは、前記乳鉢の粉砕速度は100r/minであり、好ましくは、前記ボールミルの回転速度は300r/min~800r/minである。
【0012】
本願の任意の実施形態において、ステップS1において、混合粉砕終了後に、低温固相反応を完了させるために、静置ステップをさらに含む。好ましくは、前記静置時間は30min~120minである。
【0013】
本願の任意の実施形態において、ステップS1において、さらに界面活性剤を加えて前記鉄源、前記固体アルカリ及び前記ドーピング元素M源と一緒に混合粉砕し、それにより得られるナノオーダーの鉄含有酸化物の形状を調整する。好ましくは、前記界面活性剤はポリエチレングリコールを含み、好ましくは、前記界面活性剤の添加量は、前記鉄源、前記固体アルカリ及び前記ドーピング元素M源の総重量に対して5重量%以下である。
【0014】
本願の任意の実施形態において、ステップS1において、前記鉄源、前記固体アルカリ及び前記ドーピング元素M源を混合粉砕して各成分に低温固相反応を発生させる前に、さらに、前記鉄源、前記固体アルカリ及び前記ドーピング元素M源をそれぞれ粉砕するステップを含み、それにより低温固相反応を十分に進行させ、且つ形状及びサイズが制御可能なナノオーダーの鉄含有酸化物を得ることに役立つ。好ましくは、前記鉄源を粉砕する時間は30min~90minであり、好ましくは、前記固体アルカリを粉砕する時間は30min~90minであり、好ましくは、前記ドーピング元素M源を粉砕する時間は30min~90minである。
【0015】
本願の任意の実施形態において、ステップS1において、前記鉄源は三価鉄塩であり、好ましくは塩化第二鉄、硝酸第二鉄及び硫酸第二鉄のうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
本願の任意の実施形態において、ステップS1において、前記固体アルカリは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムのうちの少なくとも1つを含み、好ましくは水酸化ナトリウムを含む。
【0017】
本願の任意の実施形態において、ステップS1において、前記ドーピング元素M源はドーピング元素Mの塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩及び酢酸塩のうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
本願の任意の実施形態において、ステップS2において、前記粉砕はボールミルタンクで行われる。好ましくは、前記ボールミルの回転速度は300r/min~800r/minであり、好ましくは、前記ボールミル時間は3h~24hである。
【0019】
本願の任意の実施形態において、ステップS2において、前記噴霧乾燥の温度は200℃~250℃である。
【0020】
本願の任意の実施形態において、ステップS2において、前記溶媒はエタノール、水又はその混合溶媒を含む。
【0021】
本願の任意の実施形態において、ステップS2において、前記リチウム源はLiCO、LiOH、LiPO及びLiHPOのうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
本願の任意の実施形態において、ステップS2において、前記マンガン源はMnCO、Mn(CHCOO)及びMnCのうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
本願の任意の実施形態において、ステップS2において、前記リン源は(NHHPO、NHPO、(NHPO及びHPOのうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
本願の任意の実施形態において、ステップS2において、前記ドーピング元素N源はドーピング元素Nの塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩及び酢酸塩のうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
本願の任意の実施形態において、ステップS2において、前記ドーピング元素Q源はドーピング元素Qの硫酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩及びケイ酸塩のうちの少なくとも1つを含む。
【0026】
本願の任意の実施形態において、ステップS2において、前記ドーピング元素R源はドーピング元素Rの単体及びアンモニウム塩のうちの少なくとも1つを含む。
【0027】
上記各ドーピング元素源を選択することにより、上記各ドーピング元素の分布の均一性を向上させることができ、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の電気的、化学的特性を改善する。
【0028】
本願の任意の実施形態において、ステップS2において、さらに炭素源を加えて一緒に混合粉砕し、これにより炭素が被覆されたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得る。好ましくは、前記炭素源は有機炭素源、無機炭素源のうちの少なくとも1つを含み、より好ましくはグルコース、スクロース、デンプン、フルクトース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール及びクエン酸のうちの少なくとも1つを含む。
【0029】
本願の任意の実施形態において、ステップS3において、前記焼結プロセスは、ステップS31~S33を含み、ステップS31では、ステップS2で得られた粉末を350℃~550℃、空気雰囲気又は保護ガス雰囲気下で低温予備焼結し、反応終了後に予備焼結材料を得る。ステップS32では、ステップS31で得られた予備焼結材料を粉砕した後に噴霧乾燥による造粒を行い予備焼結材料粉末を得る。ステップS33では、ステップS32で得られた予備焼結材料粉末を650℃~750℃、保護ガス雰囲気下で高温焼結し、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得る。
【0030】
本願の任意の実施形態において、ステップS31において、前記低温予備焼結の時間は2h~10hである。
【0031】
本願の任意の実施形態において、ステップS33において、前記高温焼結の時間は2h~10hである。
【0032】
本願の任意の実施形態において、ステップS32において、前記粉砕はボールミルタンクで行われる。好ましくは、前記ボールミルの回転速度は300r/min~800r/minであり、好ましくは、前記ボールミル時間は3h~24hである。
【0033】
本願の任意の実施形態において、前記製造方法はさらに、ステップS3で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を必要な粒径に破砕するステップを含み、好ましくは、前記破砕は気流粉砕である。
【0034】
本願の第2態様によれば、本願の第1態様の製造方法で得られるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を提供し、化学式LiFeMn1-x-y1-m4-nを有し、前記ドーピング元素Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはAl、Cu、Mg、Zn、Ni、Ti、V、Zr、Co、Ga、Sn、Sb、Nb及びGeのうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、好ましくはZn、Al、Na、K、Mg、Nb、Mo及びWのうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素Qはリンサイトのドーピング元素を表し、好ましくはB、S、Si及びNのうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素Rは酸素サイトのドーピング元素を表し、好ましくはS、F、Cl及びBrのうちの少なくとも1つを含み、aは0.9~1.1であり、bは0~0.1であり、好ましくは0.001~0.1であり、xは0.001~0.999であり、好ましくは0.199~0.50であり、yは0.001~0.999であり、好ましくは0.499~0.80であり、1-x-yは0~0.1であり、好ましくは0.001~0.1であり、mは0~0.1であり、好ましくは0.001~0.1であり、nは0~0.1であり、好ましくは0.001~0.1であり、且つ前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は電気的に中性であり、前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質のタップ密度は1.4g/cm以上であり、好ましくは1.47g/cm~1.82g/cmである。これにより二次電池の体積エネルギー密度を向上させることができる。
【0035】
本願の任意の実施形態において、前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の体積基準粒度分布Dv50は300nm~500nmである。これにより二次電池の電気的、化学的特性を向上させることができる。
【0036】
本願の任意の実施形態において、前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は球状又は略球状の単結晶形状を有する。これにより二次電池の電気的、化学的特性及びエネルギー密度を向上させることができる。
【0037】
本願の第3態様によれば、正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも1つの表面に設置された正極フィルム層を含む正極シートを提供し、前記正極フィルム層は本願の第1態様の製造方法で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質又は本願の第2態様のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を含む。
【0038】
本願の任意の実施形態において、前記正極フィルム層における前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の含有量は、前記正極フィルム層の総重量に対して50重量%以上であり、好ましくは90重量%~99重量%である。
【0039】
本願の第4態様によれば、本願の第1態様の製造方法で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質又は本願の第2態様のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質又は本願の第3態様の正極シートを含む二次電池を提供する。
【0040】
本願の第5態様によれば、本願の第4態様の二次電池を含む電力消費装置を提供する。
【発明の効果】
【0041】
本願が提供するリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法はプロセスがシンプルで、エネルギー消費が小さく、生産コストが低く、且つ良好な電気的、化学的特性と高いタップ密度を両立したナノオーダーのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得ることができ、例えばタップ密度は1.4g/cm以上であり、初期比容量は138mAh/g以上であり、これは従来の高温固相焼結法で得られるナノオーダーのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質よりもはるかに高く、これにより本願の製造方法で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を二次電池に応用することで、良好な電気的、化学的特性と高い体積エネルギー密度を両立した二次電池を得ることができる。本願の電力消費装置は本願の二次電池を含み、従って前記二次電池と少なくとも同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本願の実施例における技術的解決手段をより明確に説明するめに、以下に本願の実施例に必要な図面を簡単に説明する。理解すべきことは、以下に示された図面は本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、図面に基づいて他の図面をさらに取得することができる。
図1】本願の二次電池の一実施形態に係る概略図である。
図2図1に示す二次電池の実施形態に係る分解概略図である。
図3】本願の電池モジュールの一実施形態に係る概略図である。
図4】本願の電池パックの一実施形態に係る概略図である。
図5図4に示す電池パックの実施形態に係る分解概略図である。
図6】本願の二次電池を電源として含む電力消費装置の一実施形態に係る概略図である。
図7】実施例1で製造されたナノオーダーの鉄含有酸化物の走査型電子顕微鏡画像である。
図8】実施例1で製造されたナノオーダーのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の走査型電子顕微鏡画像である。 図面において、図面は実際の比率に従って描かれたものではない。
【符号の説明】
【0043】
1 電池パック
2 上筐体
3 下筐体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極アセンブリ
53 カバープレート
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本願のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質及びその製造方法、正極シート、二次電池及び電力消費装置の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、不必要な詳細な説明は省略する場合がある。例えば、周知の事項の詳細な説明や、実質的に同一の構造についての重複する説明は省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長にならないようにして、当業者の理解を容易にするためである。また、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されたものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0045】
本願に開示される「範囲」は、下限及び上限の形で定義され、所与の範囲は、1つの下限と1つの上限を選定することによって定義され、選定された下限及び上限は、特定の範囲の境界を定義するものである。このような方法で定義された範囲は、両端の値が含まれてもよく又は含まれていなくてもよく、且つ任意に組み合わせることができ、すなわち、任意の下限を任意の上限と組み合わせて範囲を形成することができる。例えば、60~120及び80~110の範囲が特定のパラメータについて列挙されている場合、60~110及び80~120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲値1及び2が列挙されており、及び最大範囲値3、4及び5が列挙されている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲がすべて企図されている。本願において、説明がない限り、数値範囲「a~b」は、aからbの間の任意の実数の組み合わせの省略表現を意味し、a及びbは両方とも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、「0~5」の間の全ての実数が本明細書に全て列挙されていることを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの省略表現にすぎない。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現する場合、該パラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等であることを開示することに相当する。
【0046】
本願のすべての実施形態及び選択可能な実施形態は、特に明記しない限り、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができ、且つそのような技術的解決手段は、本願の開示に含まれると見なされるべきである。
【0047】
本願のすべての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、特に明記しない限り、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができ、且つそのような技術的解決手段は、本願の開示に含まれると見なされるべきである。
【0048】
本願の全てのステップは、特に説明しない限り、順に又はランダムに実施することができ、好ましくは順に実施する。例えば、前記方法がステップS1及びS2を含む場合、前記方法は、順に実施されるステップS1及びS2を含んでもよく、又は順に実施されるステップS2及びS1を含んでもよいことを示す。例えば、前記方法がステップS3をさらに含んでもよいという場合、ステップS3を任意の順序で前記方法に加えてもよいことを意味し、例えば、前記方法はステップS1、S2及びS3を含んでもよく、又はステップS1、S3及びS2を含んでもよく、又はステップS3、S1及びS2を含んでもよいなどを示す。
【0049】
本願で言及される「含む」及び「包含する」は、特に説明しない限り、開放形式及び閉鎖形式の両方を示す。例えば、前記「含む」及び「包含する」は、列挙されていない他の構成要素も含む又は包含してもよいことを示すことができ、又は列挙された構成要素のみを含む又は包含してもよいことを示すことができる。
【0050】
本願において、特に説明しない限り、「又は」という用語は包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はA及びBの両方」を意味する。より具体的には、「A又はB」という条件は、Aが真(又は存在)であり、Bが偽(又は存在しない)であるか、Aが偽(又は存在しない)であり、Bが真(又は存在する)であるか、又はA及びBの両方が真(又は存在する)のいずれかによって満たされる。
【0051】
本願において、「複数個」、「複数」という用語は2つ又は2つ以上を意味する。
【0052】
現在、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法は主に高温固相焼結法であり、それは各原料を混合して前駆体を得た後、高温焼結プロセスを経てリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得る。しかしながら、従来の技術で製造されたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は形状及びサイズの制御がしにくく、且つその多くはマイクロオーダーの粒子であるため、電気的、化学的特性の発揮に影響を及ぼす。
【0053】
高速ボールミルなどのプロセスにより、得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質をナノ化することで分極を減少させ、リチウムイオンの伝送距離を短縮し、電気的、化学的特性を向上させることができるが、ナノ化によりリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の比表面積が顕著に増加し、それによりタップ密度が顕著に低下して、二次電池の体積エネルギー密度の低下を招き、エネルギー密度が高い二次電池のニーズを満たすことができない。
【0054】
従って、従来の高温固相焼結法で得られるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は良好な電気的、化学的特性と高いタップ密度とを両立させることが困難である。
【0055】
本願の発明者らは、研究の過程で、予め低温固相反応法を採用してナノオーダーの鉄含有酸化物を製造した後、噴霧乾燥による造粒プロセス及び焼結プロセスにより、良好な電気的、化学的特性と高いタップ密度とを両立させることができるナノオーダーのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質が得られることを発見した。
製造方法
【0056】
具体的に、本願の第1態様によれば、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法を提供し、以下のステップS1、S2、S3を含む。
【0057】
ステップS1では、低温固相反応法でナノオーダーの鉄含有酸化物を製造する。
【0058】
鉄源、固体アルカリ及び選択可能なドーピング元素M源を混合粉砕して各成分に低温固相反応を発生させ、粉砕終了後に得られた生成物を洗浄して不純物を除去し、乾燥させて、ナノオーダーの鉄含有酸化物を得て、前記ドーピング元素Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表す。
【0059】
ステップS2では、噴霧乾燥による造粒を行う。
【0060】
ステップS1で得られたナノオーダーの鉄含有酸化物と溶媒、リチウム源、マンガン源、リン源、選択可能なドーピング元素N源、選択可能なドーピング元素Q源及び選択可能なドーピング元素R源を所定の割合で混合した後粉砕し、粉砕終了後に噴霧乾燥による造粒を行って粉末を得て、前記ドーピング元素Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、前記ドーピング元素Qはリンサイトのドーピング元素を表し、前記ドーピング元素Rは酸素サイトのドーピング元素を表す。
【0061】
ステップS3では、焼結を行う。
【0062】
ステップS2で得られた粉末に対して焼結処理を行い、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得る。
【0063】
本願はリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を製造する時に、ナノオーダーの鉄含有酸化物を原料とし、従来の高温固相反応法で製造される鉄含有酸化物とは異なり、本願は低温固相反応法でナノオーダーの鉄含有酸化物を製造し、これは高温焼結処理を必要とせず、鉄源、固体アルカリ及び選択可能なドーピング元素M源を低い温度で混合粉砕するだけで各原料成分に短時間で化学反応を発生させ、且つワンステップ法で鉄含有酸化物を合成することができる。且つ本願の低温固相反応法で得られる鉄含有酸化物は形状及びサイズを制御することができ、粒子サイズはナノオーダーレベルであり、同時に得られた鉄含有酸化物は純度が高く、不純物が少なく、反応転化率が100%である。
【0064】
本願はリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を製造する時に、ナノオーダーの鉄含有酸化物を原料とし、シュウ酸第一鉄又はリン酸鉄を原料とすることに比較して、本願の製造方法は得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の形状及びサイズを効果的に制御することができ、粒子形状はより規則的であり、粒子サイズはナノオーダーレベルで且つ粒子の粒度分布がより均一であり、これにより良好な電気的、化学的特性を有することができる。同時に得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は高いタップ密度を有するため、二次電池の体積エネルギー密度を向上させることができる。また、得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は純度が高く、バッチ生産における安定性が高いなどの利点を有する。
【0065】
また、従来の高温固相焼結法はその多くが高速ボールミルでリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造過程で用いられる各原料(例えば鉄源、マンガン源、リン源、リチウム源など)の形状及びサイズを微細化して、各元素(例えばリチウム元素、マンガン元素、鉄元素など)の均一な分布を実現しようとするが、得られる効果は良好ではなく、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質及び二次電池の電気的、化学的特性の発揮に影響を及ぼす。同時に高速ボールミルプロセスを使用することでエネルギー消費及び生産コストを増加させる。本願はリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を製造する時に、ナノオーダーの鉄含有酸化物を原料とすることにより、リチウム元素、マンガン元素、鉄元素及び各ドーピング元素などが分子レベルで均一に混合されたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得ることができ、従来の高温固相焼結法で製造した場合の原料の粒子が大きく、各元素の分布が不均一であり、エネルギー消費が大きいなどの問題を回避する。
【0066】
本願はリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を製造する時に、鉄元素とマンガン元素との割合を正確に制御することができ、それにより得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は結晶欠陥が少なく、例えば陽イオンアンチサイト欠陥(例えばLi/Mnアンチサイト欠陥)が少なく、Li/Mnアンチサイト欠陥の割合は<0.2%であり、リチウムイオンの輸送及び高レート充電に有利である。結晶欠陥とは結晶の内部構造の完全性が破壊された位置を指し、Li/Mnアンチサイト欠陥とはリン酸マンガン鉄リチウム結晶格子において、LiとMn2+との位置に交換が生じたことを指す。Li/Mnアンチサイト欠陥の割合とは、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質においてMn2+との交換が発生したLiがLiの総量に占めるパーセンテージである。Li輸送チャネルは一次元チャネルであるため、Mn2+はLi輸送チャネルにおいて移動しにくく、従って、アンチサイト欠陥のMn2+がLiの輸送を阻害する。本願において、Li/Mnアンチサイト欠陥の割合はJIS K 0131-1996に基づき、X線回折スペクトル(XRD)法で測定され、例えばリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質試験サンプルのXRD結果と標準結晶のPDF(Powder Diffraction File)カードとを比較して、Li/Mnアンチサイト欠陥の割合を得る。
【0067】
従って、本願が提供するリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の製造方法はプロセスがシンプルで、エネルギー消費が小さく、生産コストが低く、且つ良好な電気的、化学的特性と高いタップ密度を両立したナノオーダーのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得ることができ、例えばタップ密度は1.4g/cm以上であり、初期比容量は138mAh/g以上であり、これは従来の高温固相焼結法で得られるナノオーダーのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質よりもはるかに高く、これにより本願の製造方法で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を二次電池に応用することで、良好な電気的、化学的特性と高い体積エネルギー密度を両立した二次電池を得ることができる。
【0068】
いくつかの実施例において、ステップS1において、前記鉄源は三価鉄塩であり、好ましくは塩化第二鉄、硝酸第二鉄及び硫酸第二鉄のうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素M源はドーピング元素Mの塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩及び酢酸塩のうちの少なくとも1つを含む。従って、本願において、前記ナノオーダーの鉄含有酸化物は酸化第二鉄(Fe)であってもよく、酸化第二鉄(Fe)とドーピング元素Mの酸化物との固溶体であってもよい。
【0069】
いくつかの実施例において、ステップS1において、前記固体アルカリは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムのうちの少なくとも1つを含み、好ましくは水酸化ナトリウムを含む。
【0070】
いくつかの実施例において、ステップS1において、前記鉄源と前記固体アルカリとのモル比は1:(1~3)である。
【0071】
鉄源、固体アルカリ及び選択可能なドーピング元素M源を混合粉砕する過程で、まず反応により、ドーピング元素Mがドープされた又はドープされていない鉄水酸化物を形成した後、ドーピング元素Mがドープされた又はドープされていない鉄水酸化物は固体アルカリの作用下でナノオーダーの鉄含有酸化物、例えば酸化第二鉄、又は酸化第二鉄とドーピング元素Mの酸化物との固溶体に迅速に変換される。低温固相反応の過程で、ドーピング元素Mがドープされた又はドープされていない鉄水酸化物の融点(又は分解温度)は低く、これにより固体アルカリの作用下でナノオーダーの鉄含有酸化物が迅速に生成される。混合粉砕の過程で、前記反応原料はまず固体状からペースト状に、次いでペースト状から粉末状に変換され、粉砕の過程では粒子性がなく、且つ得られた鉄含有酸化物は粒子が微細で、サイズはナノオーダーレベルであり、例えば100nm~800nmの間である。
【0072】
前記ドーピング元素Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表す。いくつかの実施例において、好ましくは、前記ドーピング元素MはAl、Cu、Mg、Zn、Ni、Ti、V、Zr、Co、Ga、Sn、Sb、Nb及びGeのうちの少なくとも1つを含む。より好ましくは、前記ドーピング元素MはAl、Cu、Mg、Zn及びNiのうちの少なくとも1つを含む。
【0073】
いくつかの実施例において、ステップS1において、前記混合粉砕は本分野で既知の適切な粉砕方式で実施することができ、例えば、前記混合粉砕は乳鉢又はボールミルタンクにおいて実施されてもよい。好ましくは、前記乳鉢の粉砕速度は100r/minである。好ましくは、前記ボールミルの回転速度は300r/min~800r/minである。
【0074】
いくつかの実施例において、ステップS1において、前記混合粉砕の時間は20min~60minである。
【0075】
いくつかの実施例において、ステップS1において、混合粉砕終了後に、低温固相反応を完了させるために、静置ステップをさらに含む。好ましくは、前記静置時間は30min~120minである。
【0076】
いくつかの実施例において、ステップS1において、前記混合粉砕の時間と前記静置時間との和は90min以上であり、これにより低温固相反応の完了を保証し、且つ得られたナノオーダーの鉄含有酸化物は純度がより高い。
【0077】
いくつかの実施例において、ステップS1において、前記鉄源、前記固体アルカリ及び前記ドーピング元素M源を混合粉砕して各成分に低温固相反応を発生させる前に、さらに、前記鉄源、前記固体アルカリ及び前記ドーピング元素M源をそれぞれ粉砕するステップを含み、それにより低温固相反応を十分に進行させ、且つ形状及びサイズが制御可能なナノオーダーの鉄含有酸化物を得ることに役立つ。好ましくは、前記鉄源を粉砕する時間は30min~90minである。好ましくは、前記固体アルカリを粉砕する時間は30min~90minである。好ましくは、前記ドーピング元素M源を粉砕する時間は30min~90minである。
【0078】
いくつかの実施例において、ステップS1において、さらに界面活性剤を加えて前記鉄源、前記固体アルカリ及び前記ドーピング元素M源と一緒に混合粉砕し、それにより得られるナノオーダーの鉄含有酸化物の形状を調整する。好ましくは、前記界面活性剤はポリエチレングリコールを含み、例えばポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600のうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、前記界面活性剤の添加量は、前記鉄源、前記固体アルカリ及び前記ドーピング元素M源の総重量に対して5重量%以下である。
【0079】
いくつかの実施例において、ステップS1において、前記洗浄して不純物を除去するプロセスは水洗浄及びアルコール洗浄を含み、好ましくは、前記アルコール洗浄はエタノールを溶媒として使用する。好ましくは、前記水洗浄の回数は2~4回であり、前記アルコール洗浄の回数は2~4回である。
【0080】
いくつかの実施例において、ステップS1において、前記乾燥は真空乾燥である。
【0081】
いくつかの実施例において、ステップS1において、前記乾燥の温度は100℃以下である。
【0082】
いくつかの実施例において、ステップS1において、前記乾燥の時間は2h~15hである。
【0083】
いくつかの実施例において、ステップS2において、前記リチウム源はリン酸マンガン鉄リチウムの正極活物質を製造することに用いられる当分野で既知のリチウム含有化合物であってもよく、例えば、前記リチウム源はLiCO、LiOH、LiPO及びLiHPOのうちの少なくとも1つを含む。
【0084】
いくつかの実施例において、ステップS2において、前記マンガン源はリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を製造することに用いられる本分野で既知のマンガン含有化合物であってもよく、例えば、前記マンガン源はMnCO、Mn(CHCOO)及びMnCのうちの少なくとも1つを含む。
【0085】
いくつかの実施例において、ステップS2において、前記リン源はリン酸マンガン鉄リチウムの正極活物質を製造することに用いられる本分野で既知のリン含有化合物であってもよく、例えば、前記リン源は(NHHPO、NHPO、(NHPO及びHPOのうちの少なくとも1つを含む。
【0086】
前記ドーピング元素Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、いくつかの実施例において、好ましくは、前記ドーピング元素NはZn、Al、Na、K、Mg、Nb、Mo及びWのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施例において、好ましくは、ステップS2において、前記ドーピング元素N源はドーピング元素Nの塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩及び酢酸塩のうちの少なくとも1つを含む。
【0087】
前記ドーピング元素Qはリンサイトのドーピング元素を表し、いくつかの実施例において、好ましくは、前記ドーピング元素QはB、S、Si及びNのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施例において、好ましくは、ステップS2において、前記ドーピング元素Q源はドーピング元素Qの硫酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩及びケイ酸塩のうちの少なくとも1つを含む。
【0088】
前記ドーピング元素Rは酸素サイトのドーピング元素を表し、いくつかの実施例において、好ましくは、前記ドーピング元素RはS、F、Cl及びBrのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施例において、好ましくは、ステップS2において、前記ドーピング元素R源はドーピング元素Rの単体及びアンモニウム塩のうちの少なくとも1つを含む。
【0089】
上記各ドーピング元素源を選択することにより、上記各ドーピング元素の分布の均一性を向上させることができ、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の電気的、化学的特性を改善する。
【0090】
いくつかの実施例において、ステップS2において、前記溶媒はエタノール、水又はその混合溶媒を含む。
【0091】
いくつかの実施例において、ステップS2において、前記粉砕は本分野で既知の適切な粉砕方式で実施することができ、例えば、前記粉砕はボールミルタンクにおいて実施されてもよい。好ましくは、前記ボールミルの回転速度は300r/min~800r/minである。好ましくは、前記ボールミルの時間は3h~24hである。
【0092】
いくつかの実施例において、ステップS2において、前記噴霧乾燥の温度は本分野で噴霧乾燥を行う時の通常の温度であってもよい。好ましくは、前記噴霧乾燥の温度は200℃~250℃である。
【0093】
いくつかの実施例において、ステップS2において、さらに炭素源を加えて一緒に混合粉砕し、これにより炭素が被覆されたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得る。好ましくは、前記炭素源は有機炭素源、無機炭素源のうちの少なくとも1つを含み、好ましくはグルコース、スクロース、デンプン、フルクトース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール及びクエン酸のうちの少なくとも1つを含む。
【0094】
いくつかの実施例において、ステップS3において、前記焼結プロセスはマッフル炉で実施される。
【0095】
いくつかの実施例において、ステップS3において、前記焼結プロセスは段階的焼結プロセスであってもよい。好ましくは、前記段階的焼結プロセスは、ステップS31~S33を含み、ステップS31では、ステップS2で得られた粉末を350℃~550℃、空気雰囲気又は保護ガス雰囲気下で低温予備焼結し、反応終了後に予備焼結材料を得る。ステップS32では、ステップS31で得られた予備焼結材料を粉砕した後に噴霧乾燥による造粒を行って予備焼結材料粉末を得る。ステップS33では、ステップS32で得られた予備焼結材料粉末を650℃~750℃、保護ガス雰囲気下で高温焼結し、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得る。
【0096】
いくつかの実施例において、ステップS31において、前記低温予備焼結の時間は2h~10hである。
【0097】
いくつかの実施例において、ステップS33において、前記高温焼結の時間は2h~10hである。
【0098】
いくつかの実施例において、ステップS31において、前記保護ガス雰囲気は窒素ガス、不活性ガス又はその組み合わせであってもよい。
【0099】
いくつかの実施例において、ステップS33において、前記保護ガス雰囲気は窒素ガス、不活性ガス又はその組み合わせであってもよい。
【0100】
いくつかの実施例において、ステップS32において、前記粉砕は本分野で既知の適切な粉砕方式で実施することができ、例えば、前記粉砕はボールミルタンクにおいて実施されてもよい。好ましくは、前記ボールミルの回転速度は300r/min~800r/minである。好ましくは、前記ボールミルの時間は3h~24hである。
【0101】
いくつかの実施例において、ステップS32において、前記噴霧乾燥の温度は本分野で噴霧乾燥を行う時の通常の温度であってもよい。好ましくは、前記噴霧乾燥の温度は200℃~250℃である。
【0102】
いくつかの実施例において、前記製造方法はさらに、ステップS3で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を必要な粒径に破砕するステップを含む。好ましくは、前記破砕は気流粉砕である。
【0103】
いくつかの実施例において、前記製造方法は、鉄源、固体アルカリ及び選択可能なドーピング元素M源を20min~60min混合粉砕した後に30min~120min静置して、各成分に低温固相反応を発生させ、得られた生成物を洗浄して不純物を除去し、乾燥させて、ナノオーダーの鉄含有酸化物を得て、前記ドーピング元素Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表すステップと、得られたナノオーダーの鉄含有酸化物と溶媒、リチウム源、マンガン源、リン源、炭素源、選択可能なドーピング元素N源、選択可能なドーピング元素Q源及び選択可能なドーピング元素R源を所定の割合で混合した後粉砕し、粉砕終了後に噴霧乾燥による造粒を行って粉末を得て、前記ドーピング元素Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、前記ドーピング元素Qはリンサイトのドーピング元素を表し、前記ドーピング元素Rは酸素サイトのドーピング元素を表すステップと、得られた粉末を350℃~550℃、空気雰囲気又は保護ガス雰囲気下で2h~10h低温予備焼結し、予備焼結材料を得るステップと、得られた予備焼結材料を粉砕した後に噴霧乾燥による造粒を行って予備焼結材料粉末を得るステップと、得られた予備焼結材料粉末を650℃~750℃、保護ガス雰囲気下で2h~10h高温焼結し、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得るステップと、を含む。
【0104】
本願の製造方法において、ドーピング元素M、N、Q、Rそれぞれの源の添加量は目標ドーピング量に依存しており、鉄源、リチウム源、マンガン源及びリン源の添加量はリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の化学量論比に適合する。いくつかの実施例において、リチウム源の添加量はやや過剰であってもよく、例えばリチウム源の理論質量の100%~110%であってもよく、リチウム源の理論質量とは、リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の化学量論比に基づいて計算されるリチウム源の質量である。
【0105】
上記製造方法において、特に明記しない限り、各原料はいずれも直接購入されたものであってもよく、各原料は結晶水を有してもよく、結晶水を有さなくてもよい。塩化第二鉄を例にすると、本願の製造方法において、無水塩化第二鉄を用いてもよく、塩化第二鉄六水和物FeCl・6HOを用いてもよい。
リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質
【0106】
本願の実施形態の第2態様によれば、本願の実施形態の第1態様の製造方法で得られるリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を提供する。
【0107】
前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は化学式LiFeMn1-x-y1-m4-nを有し、前記ドーピング元素Mはマンガンサイト及び鉄サイトのドーピング元素を表し、好ましくはAl、Cu、Mg、Zn、Ni、Ti、V、Zr、Co、Ga、Sn、Sb、Nb及びGeのうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素Nはリチウムサイトのドーピング元素を表し、好ましくはZn、Al、Na、K、Mg、Nb、Mo及びWのうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素Qはリンサイトのドーピング元素を表し、好ましくはB、S、Si及びNのうちの少なくとも1つを含み、前記ドーピング元素Rは酸素サイトのドーピング元素を表し、好ましくはS、F、Cl及びBrのうちの少なくとも1つを含み、aは0.9~1.1であり、bは0~0.1であり、xは0.001~0.999であり、yは0.001~0.999であり、1-x-yは0~0.1であり、mは0~0.1であり、nは0~0.1であり、且つ前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は電気的に中性である。
【0108】
好ましくは、xは0.199~0.50であり、yは0.499~0.80であり、これにより前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質はより良好な電気的、化学的特性を有することができる。
【0109】
好ましくは、x:yは5:5~2:8であり、これにより前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質はより良好な電気的、化学的特性を有することができる。
【0110】
好ましくは、1-x-yは0.001~0.1である。
【0111】
好ましくは、bは0.001~0.1である。
【0112】
好ましくは、mは0.001~0.1である。
【0113】
好ましくは、nは0.001~0.1である。
【0114】
これにより前記リン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の構造安定性がより高くなり、より良好な電気的、化学的特性を有することができる。
【0115】
本願の上記製造方法で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質のタップ密度は1.4g/cm以上であり、好ましくは1.47g/cm~1.82g/cmである。これにより二次電池の体積エネルギー密度を向上させることができる。
【0116】
本願の上記製造方法で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の体積基準粒度分布Dv50は300nm~500nmである。これにより二次電池の電気的、化学的特性を向上させることができる。
【0117】
本願の上記製造方法で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は球状又は略球状の単結晶形状を有する。これにより二次電池の電気的、化学的特性及びエネルギー密度を向上させることができる。
正極シート
【0118】
本願の実施形態の第3態様によれば、正極集電体及び前記正極集電体の少なくとも1つの表面に設置された正極フィルム層を含む正極シートを提供し、前記正極フィルム層は本願の実施形態の第1態様の製造方法で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質又は本願の実施形態の第2態様のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を含む。前記正極集電体は、それ自体の厚み方向に対向する2つの面を有し、前記正極フィルム層は、前記正極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0119】
いくつかの実施例において、前記正極フィルム層における前記正極活物質の含有量は、前記正極フィルム層の総重量に対して50重量%以上であり、好ましくは90重量%~99重量%である。
【0120】
正極フィルム層は、本願の第1態様の製造方法で得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質又は本願の実施形態の第2態様のリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質以外の他の成分を排除せず、例えば前記正極フィルム層はさらに他の正極活物質が含まれてもよく、好ましくは、前記他の正極活物質はリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの少なくとも1つが含まれてもよい。例として、前記他の正極活物質はリチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、及びこれらの改質化合物のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0121】
いくつかの実施例において、前記正極フィルム層は、好ましくは正極導電剤をさらに含むことができる。本願は前記正極導電剤の種類を特に制限せず、例として、前記正極導電剤は超伝導カーボン、導電性黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つを含む。
【0122】
いくつかの実施例において、前記正極フィルム層は、好ましくは正極バインダーをさらに含むことができる。本願は前記正極バインダーの種類を特に制限せず、例として、前記正極バインダーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ素含有アクリル樹脂のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0123】
いくつかの実施例において、前記正極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔は、例としてアルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は、高分子基材層と、高分子基材層の少なくとも1つの表面に形成された金属材料層と、を含むことができる。 例として、前記金属材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金のうちの少なくとも1つを含むことができる。例として、高分子基材層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)うちの少なくとも1つを含むことができる。
【0124】
前記正極フィルム層は、一般的に正極ペーストを正極集電体に塗布し、乾燥させ、冷間プレスして形成される。前記正極ペーストは、一般的に正極活物質と、好ましい導電剤、好ましいバインダー及びその他の任意の成分を溶媒に分散させ、均一に撹拌することにより形成される。溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限定されるものではない。
二次電池
【0125】
本願の実施形態の第4態様は、二次電池を提供する。二次電池は充電式電池又は蓄電池とも呼ばれ、電池が放電した後に充電する方式で活性材料を活性化して使用を継続できる電池である。一般的に、二次電池は正極シート、負極シート及びセパレータを含む電極アセンブリ及び電解液を含む。セパレータは正極シートと負極シートとの間に設置され、主に正極と負極の短絡を防止する役割を果たすと同時に、活性イオンを通過させることができる。電解質は、正極シートと負極シートとの間で活性イオンを伝導する役割を果たす。
[正極シート]
【0126】
本願の二次電池で使用される正極シートは、本願の実施形態の第3態様のいずれかの実施例に記載の正極シートである。
[負極シート]
【0127】
いくつかの実施例において、前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられ且つ負極活物質を含む負極フィルム層と、を含む。例えば、前記負極集電体は、それ自体の厚み方向に対向する2つの面を有し、前記負極フィルム層は、前記負極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0128】
前記負極活物質は、本分野で公知の二次電池用負極活物質を使用することができる。例として、前記負極活物質は天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムのうちの少なくとも1つを含むがこれらに限定されない。前記シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体、シリコン合金材料のうちの少なくとも1つを含むことができる。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物、スズ合金材料のうちの少なくとも1つを含むことができる。本願はこれらの材料に限定されるものではなく、二次電池の負極活物質として使用可能な公知の他の材料を使用することができる。これらの負極活物質は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
いくつかの実施例において、前記負極フィルム層は、好ましくは負極導電剤をさらに含む。本願は前記負極導電剤の種類を特に制限せず、例として、前記負極導電剤は、超伝導カーボン、導電性黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0130】
いくつかの実施例において、前記負極フィルム層は、好ましくは負極バインダーをさらに含む。本願は前記負極バインダーの種類を特に限定せず、例として、前記負極バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMAA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0131】
いくつかの実施例において、前記負極フィルム層は、好ましくは他の助剤をさらに含む。例として、他の助剤は、増粘剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、PTCサーミスタ材料などを含むことができる。
【0132】
いくつかの実施例において、前記負極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔は、例として銅箔を用いることができる。複合集電体は、高分子基材層と、高分子基材層の少なくとも1つの表面に形成された金属材料層と、を含むことができる。 例として、前記金属材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金のうちの少なくとも1つを含むことができる。例として、前記高分子基材層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)うちの少なくとも1つを含むことができる。
【0133】
前記負極フィルム層は、一般的に負極ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥させ、冷間プレスして形成される。前記負極ペーストは、一般的に負極活物質と、好ましい導電剤、好ましいバインダー、その他の好ましい他の助剤を溶媒に分散させ、均一に撹拌することにより形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0134】
前記負極シートは、前記負極フィルム層以外の他の付加機能層を排除するものではない。例えば、いくつかの実施例において、本明細書に記載の負極シートは、前記負極集電体と前記負極フィルム層との間に挟まれ、前記負極集電体の表面に設けられる導電性プライマー層(例えば、導電剤及びバインダーからなる)をさらに含む。他のいくつかの実施例において、本明細書に記載の負極シートは、前記負極フィルム層の表面を被覆する保護層をさらに含む。
[電解質]
【0135】
本願は前記電解質の種類を特に限定せず、実際の必要に応じて選択することができる。 例えば、前記電解質は、固体電解質及び液体電解質(すなわち電解液)のうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0136】
いくつかの実施例において、前記電解質は電解液を使用し、前記電解液は電解質塩及び溶媒を含む。
【0137】
前記電解質塩の種類は具体的に限定されず、実際の必要に応じて選択することができる。 いくつかの実施例において、例として、前記電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiFSI)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiDFOB)、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO)、リチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート(LiDFOP)、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート(LiTFOP)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0138】
前記溶媒の種類は特に限定されず、実際の必要に応じて選択することができる。いくつかの実施例において、例として、前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1、4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、メチルスルフォニルメタン(MSM)、メタンスルホン酸エチル(EMS)、及びジエチルスルホン(ESE)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0139】
いくつかの実施例において、前記電解質は好ましくは添加剤をさらに含むことができる。例えば、前記添加剤は、負極成膜添加剤を含んでもよく、正極成膜添加剤を含んでもよく、さらに、電池の特定の性能を改善することができる添加剤、例えば、電池の過充電特性を改善する添加剤、電池の高温特性を改善する添加剤、電池の低温出力特性を改善する添加剤などを含むことができる。
[セパレータ]
【0140】
電解液を用いた二次電池や、固体電解質を用いた二次電池において、さらにセパレータを含む。前記セパレータは前記正極シートと前記負極シートとの間に設置され、主に正負極の短絡を防止する役割を果たし、同時に活性イオンを通過させることができる。本願は前記セパレータの種類を特に制限せず、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0141】
いくつかの実施例において、前記セパレータの材料は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つを含むことができる。前記セパレータは単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。前記セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であっても異なっていてもよい。
【0142】
いくつかの実施例において、前記正極シート、前記セパレータ及び前記負極シートから捲回プロセス及び/又はラミネートプロセスを経て電極アセンブリを製造することができる。
【0143】
いくつかの実施例において、前記二次電池は外装材を含むことができる。 該外装材は、上記電極アセンブリ及び電解質を封入するために用いられる。
【0144】
いくつかの実施例において、前記二次電池の二次電池の外装材は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどの硬質ケースであってもよい。前記二次電池の外装材は、パウチ型ソフトパックなどのソフトパックであってもよい。 前記ソフトパックの材質はプラスチック、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0145】
本願は二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、角形、又は他の任意の形状であってもよい。 図1は一例としての角形構造の二次電池5である。
【0146】
いくつかの実施例において、図2に示すように、外装材は、ハウジング51及びカバープレート53を含むことができる。ハウジング51は底板及び底板に接続された側板を含み、底板及び側板で囲まれた収容キャビティが形成される。ハウジング51は収容キャビティと連通する開口部を有し、カバープレート53は前記開口部をカバーして、前記収容キャビティを密閉するために用いられる。正極シート、負極シート及びセパレータは捲回プロセス及び/又はラミネートプロセスを経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は前記収容キャビティに封入される。電解液は電極アセンブリ52内に含浸している。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は1つ又は複数であってもよく、実際の必要に応じて調整することができる。
【0147】
本願の二次電池の製造方法は公知のものである。いくつかの実施例において、正極シート、セパレータ、負極シート及び電解液を組み立てて、二次電池を形成することができる。例として、正極シート、セパレータ、負極シートから捲回プロセス又はラミネートプロセスを経て電極アセンブリが形成され、電極アセンブリを外装材の中に入れて、乾燥させてから電解液を注入し、真空封入、静置、予備充電、整形などのプロセスを経て二次電池を得ることができる。
【0148】
本願のいくつかの実施例において、本願に係る二次電池を電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの用途及び容量に応じて調整することができる。
【0149】
図3は一例としての電池モジュール4の概略図である。図3に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5を電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並べて設置することができる。当然ながら、他の任意の方式で配置してもよい。 また、該複数の二次電池5は締結具によって固定することができる。
【0150】
好ましくは、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有する外ケースをさらに備えてもよい。
【0151】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールはさらに電池パックに組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの用途及び容量に応じて調整することができる。
【0152】
図4及び図5は一例としての電池パック1の概略図である。図4及び図5に示すように、電池パック1は、電池ケースと、電池ケース内に設置された複数の電池モジュール4と、を含むことができる。電池ケースは上筐体2及び下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3に被せて、且つ電池モジュール4を収容する密閉空間を形成するために用いられる。複数の電池モジュール4は、任意の方法で電池ケース内に配置することができる。
電力消費装置
【0153】
本願の実施形態の第5態様は、本願の二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置を提供する。 前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として使用されてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵要素として使用されてもよい。 前記電力消費装置はモバイル機器(例えば携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいがそれらに限定されない。
【0154】
前記電力消費装置は、二次電池、電池モジュール又は電池パックをその使用要件に応じて選択することができる。
【0155】
図6は、一例としての電力消費装置の概略図である。 該電力消費装置は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。該電力消費装置の高出力及び高エネルギー密度の要件を満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0156】
別の例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。 該電力消費装置は、一般的に軽量薄型化が求められており、電源として二次電池を用いることができる。
実施例
【0157】
以下の実施例は、本願に開示された内容をより具体的に記載しているが、本願に開示された内容の範囲内でなされる種々の修正及び変更は当業者にとって明らかであることから、これらの実施例は例示に過ぎない。特に明記しない限り、以下の実施例で報告される全ての部、パーセント、比はいずれも重量を基準とし、且つ実施例で使用される全ての試薬は市販されているか、又は従来の方法に従って合成されたものであり、処理することなく直接使用することができ、実施例で使用される機器はいずれも市販のものである。
実施例1
【0158】
FeCl・6HO(38mmol)、MgCl・6HO(2mmol)及びNaOH(60mmol)を乳鉢に加えてそれぞれ60min粉砕して、粒子を微細化した後、NaOHをFeCl・6HO及びMgCl・6HOに加えて30min混合粉砕し続けて、粉末状の前駆体を得た後、60min静置して、反応の完了を保証し、得られた粉末に対して水洗浄及びアルコール洗浄をそれぞれ3回行った後、80℃の真空乾燥機で12h乾燥させて、ナノオーダーの鉄含有酸化物を得る。
【0159】
得られたナノオーダーの鉄含有酸化物(20mmol)とLiCO(50mmol)、MnC(60mmol)、NHPO(100mmol)、スクロース(15mmol)をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、500r/minの回転速度で8hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移し噴霧乾燥による造粒を行って粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。
【0160】
得られた粉末をマッフル炉に入れて、400℃、空気雰囲気で5h焼結し、室温まで自然冷却して予備焼結材料を得て、得られた予備焼結材料をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、800r/minの回転速度で4hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移して噴霧乾燥による造粒を行って予備焼結材料粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。得られた予備焼結材料粉末をマッフル炉に入れて、700℃、窒素ガス雰囲気で10h焼結し、室温まで自然冷却し、気流粉砕を経て最終生成物、すなわちナノオーダーのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質LiFe0.38Mn0.60Mg0.02POを得る。各元素の含有量は誘導結合プラズマ発光分析(ICP)で検出する。
実施例2
【0161】
Fe(NO・9HO(39.5mmol)、CoSO・7HO(0.5mmol)及びNaOH(120mmol)を乳鉢に加えてそれぞれ60min粉砕して、粒子を微細化した後、NaOHをFe(NO・9HO及びCoSO・7HOに加えて30min混合粉砕し続けて、粉末状の前駆体を得た後、120min静置して、反応の完了を保証し、得られた粉末に対して水洗浄及びアルコール洗浄をそれぞれ3回行った後、80℃の真空乾燥機で12h乾燥させて、ナノオーダーの鉄含有酸化物を得る。
【0162】
得られたナノオーダーの鉄含有酸化物(20mmol)とLiOH・HO(105mmol)、MnCO(60mmol)、(NHHPO(100mmol)、グルコース(15mmol)をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、600r/minの回転速度で8hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移し噴霧乾燥による造粒を行って粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。
【0163】
得られた粉末をマッフル炉に入れて、450℃、窒素ガス雰囲気で10h焼結し、室温まで自然冷却して予備焼結材料を得て、得られた予備焼結材料をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、800r/minの回転速度で12hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移して噴霧乾燥による造粒を行って予備焼結材料粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。得られた予備焼結材料粉末をマッフル炉に入れて、650℃、窒素ガス雰囲気で6h焼結し、室温まで自然冷却し、気流粉砕を経て最終生成物、すなわちリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質LiFe0.395Mn0.60Co0.005POを得る。各元素の含有量は誘導結合プラズマ発光分析(ICP)で検出する。
実施例3
【0164】
FeCl・6HO(39mmol)、CoCl・6HO(1mmol)及びNaOH(80mmol)を乳鉢に加えてそれぞれ60min粉砕して、粒子を微細化した後、NaOHをFeCl・6HO及びCoCl・6HOに加えて30min混合粉砕し続けて、粉末状の前駆体を得た後、120min静置して、反応の完了を保証し、得られた粉末に対して水洗浄及びアルコール洗浄をそれぞれ3回行った後、80℃の真空乾燥機で12h乾燥させて、ナノオーダーの鉄含有酸化物を得る。
【0165】
得られたナノオーダーの鉄含有酸化物(20mmol)とLiOH・HO(105mmol)、MnCO(60mmol)、(NHHPO(100mmol)、グルコース(15mmol)をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、600r/minの回転速度で8hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移し噴霧乾燥による造粒を行って粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。
【0166】
得られた粉末をマッフル炉に入れて、450℃、窒素ガス雰囲気で10h焼結し、室温まで自然冷却して予備焼結材料を得て、得られた予備焼結材料をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、800r/minの回転速度で12hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移して噴霧乾燥による造粒を行って予備焼結材料粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。得られた予備焼結材料粉末をマッフル炉に入れて、650℃、窒素ガス雰囲気で6h焼結し、室温まで自然冷却し、気流粉砕を経て最終生成物、すなわちナノオーダーのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質LiFe0.39Mn0.60Co0.01POを得る。各元素の含有量は誘導結合プラズマ発光分析(ICP)で検出する。
実施例4
【0167】
FeCl・6HO(39.9mmol)、ZnCl(0.1mmol)及びNaOH(70mmol)を乳鉢に加えてそれぞれ60min粉砕して、粒子を微細化した後、NaOHをFeCl・6HO及びZnClに加えて30min混合粉砕し続けて、粉末状の前駆体を得た後、60min静置して、反応の完了を保証し、得られた粉末に対して水洗浄及びアルコール洗浄をそれぞれ3回行った後、80℃の真空乾燥機で12h乾燥させて、ナノオーダーの鉄含有酸化物を得る。
【0168】
得られたナノオーダーの鉄含有酸化物(20mmol)とLiCO(51mmol)、MnC(60mmol)、NHPO(100mmol)、スクロース(15mmol)をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、600r/minの回転速度で6hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移し噴霧乾燥による造粒を行って粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。
【0169】
得られた粉末をマッフル炉に入れて、400℃、空気雰囲気で5h焼結し、室温まで自然冷却して予備焼結材料を得て、得られた予備焼結材料をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、500r/minの回転速度で4hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移し噴霧乾燥を行って予備焼結材料粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。得られた予備焼結材料粉末をマッフル炉に入れて、700℃、窒素ガス雰囲気で10h焼結し、室温まで自然冷却し、気流粉砕を経て最終生成物、すなわちナノオーダーのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質LiFe0.399Mn0.60Zn0.001POを得る。各元素の含有量は誘導結合プラズマ発光分析(ICP)で検出する。
実施例5
【0170】
FeCl・6HO(40mmol)及びNaOH(60mmol)を乳鉢に加えてそれぞれ60min粉砕して、粒子を微細化した後、NaOHをFeCl・6HOに加えて30min混合粉砕し続けて、粉末状の前駆体を得た後、60min静置して、反応の完了を保証し、得られた粉末に対して水洗浄及びアルコール洗浄をそれぞれ3回行った後、80℃の真空乾燥機で12h乾燥させて、ナノオーダーの酸化第二鉄を得る。
【0171】
得られたナノオーダーの酸化第二鉄(20mmol)とLiCO(50mmol)、MnC(60mmol)、NHPO(100mmol)、スクロース(15mmol)をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、500r/minの回転速度で8hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移し噴霧乾燥による造粒を行って粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。
【0172】
得られた粉末をマッフル炉に入れて、400℃、空気雰囲気で5h焼結し、室温まで自然冷却して予備焼結材料を得て、得られた予備焼結材料をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、800r/minの回転速度で4hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移し噴霧乾燥による造粒を行って予備焼結材料粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。得られた予備焼結材料粉末をマッフル炉に入れて、700℃、窒素ガス雰囲気で10h焼結し、室温まで自然冷却し、気流粉砕を経て最終生成物、すなわちナノオーダーのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質LiFe0.40Mn0.60POを得る。各元素の含有量は誘導結合プラズマ発光分析(ICP)で検出する。
比較例1
【0173】
FeC(40mmol)とLiCO(50mmol)、MnC(60mmol)、NHPO(100mmol)、スクロース(15mmol)をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、500r/minの回転速度で8hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移し噴霧乾燥による造粒を行って粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。
【0174】
得られた粉末をマッフル炉に入れて、400℃、空気雰囲気で5h焼結し、室温まで自然冷却して予備焼結材料を得て、得られた予備焼結材料をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、800r/minの回転速度で4hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移し噴霧乾燥による造粒を行って予備焼結材料粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。得られた予備焼結材料粉末をマッフル炉に入れて、700℃、窒素ガス雰囲気で10h焼結し、室温まで自然冷却し、気流粉砕を経て最終生成物、すなわちリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質LiFe0.40Mn0.60POを得る。各元素の含有量は誘導結合プラズマ発光分析(ICP)で検出する。
比較例2
【0175】
ARグレードのマイクロオーダー粒子Fe(20mmol、Dv50は約10μm、国薬集団化学試薬有限公司から購入)とLiCO(50mmol)、MnC(60mmol)、NHPO(100mmol)、スクロース(15mmol)をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、500r/minの回転速度で8hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移し噴霧乾燥による造粒を行って粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。
【0176】
得られた粉末をマッフル炉に入れて、400℃、空気雰囲気で5h焼結し、室温まで自然冷却して予備焼結材料を得て、得られた予備焼結材料をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、800r/minの回転速度で4hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移し噴霧乾燥による造粒を行って予備焼結材料粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。得られた予備焼結材料粉末をマッフル炉に入れて、700℃、窒素ガス雰囲気で10h焼結し、室温まで自然冷却し、気流粉砕を経て最終生成物、すなわちリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質LiFe0.40Mn0.60POを得る。各元素の含有量は誘導結合プラズマ発光分析(ICP)で検出する。
比較例3
【0177】
比較例2で使用したマイクロオーダー粒子Feを、高速ボールミルでナノオーダーレベルまで破砕した後、LiCO(50mmol)、MnC(60mmol)、MgCl・6HO(2mmol)、NHPO(100mmol)、スクロース(15mmol)とともにボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、500r/minの回転速度で8hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移し噴霧乾燥による造粒を行って粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。
【0178】
得られた粉末をマッフル炉に入れて、400℃、空気雰囲気で5h焼結し、室温まで自然冷却して予備焼結材料を得て、得られた予備焼結材料をボールミルタンクに入れて、少量のエタノール及び水を溶媒として加え、800r/minの回転速度で4hボールミリングして、ペーストを得て、得られたペーストを噴霧乾燥装置に移し噴霧乾燥による造粒を行って予備焼結材料粉末を得て、乾燥温度は210℃に設定する。得られた予備焼結材料粉末をマッフル炉に入れて、700℃、窒素ガス雰囲気で10h焼結し、室温まで自然冷却し、気流粉砕を経て最終生成物、すなわちナノオーダーのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質LiFe0.38Mn0.60Mg0.02POを得る。各元素の含有量は誘導結合プラズマ発光分析(ICP)で検出する。
試験の部
【0179】
(1)体積基準粒度分布Dv50の試験
【0180】
体積基準粒度分布Dv50は、材料の累積体積分布パーセンテージが50%に達した時の対応する粒径である。本願はMalvern Master Size 3000型レーザ粒度分布装置を使用して上記製造されたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の体積基準粒度分布Dv50を測定した。測定の依拠としてGB/T 19077-2016を参照した。
(2)タップ密度試験
【0181】
丹東百特計器有限公司のBT-301型粉体タップ密度試験機を使用して上記製造されたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質のタップ密度を測定した。測定の依拠としてGB/T 5162-2006を参照した。
(3)ボタン電池の初期比容量試験
【0182】
上記製造されたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質、バインダーのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電剤のアセチレンブラックを重量比90:5:5でN-メチルピロリドン(NMP)に加え、乾燥室内で撹拌してペーストを製造する。アルミニウム箔上に上記ペーストを塗布し、乾燥させ、冷間プレスして正極シートを製造する。塗布量は10mg/cmであり、圧粉密度は2.0g/cmである。
【0183】
リチウムシートを負極として用い、体積比1:1:1のエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びジメチルカーボネート(DMC)中の1mol/LのLiPFの溶液を電解液として用い、上記製造された正極シートと共にボタン電池ケース内でボタン電池を組み立てる。
【0184】
25℃の恒温環境で、ボタン電池を4.3Vまで0.1Cの定電流で充電した後、4.3Vにおいて電流が0.05mA以下になるまで定電圧充電し、5min静置した後、0.1Cの定電流で2.0Vまで放電し、この時に得られる放電容量がボタン電池の初期比容量である。
【0185】
【表1】
【0186】
図7は、実施例1で製造されたナノオーダーの鉄含有酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、図8は、実施例1で製造されたナノオーダーのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図7から分かるように、本願は低温固相反応法により形状が規則で、粒子サイズがナノオーダーレベルの鉄含有酸化物を製造する。図8から分かるように、本願はリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を製造する時に、ナノオーダーの鉄含有酸化物を原料とし、形状が規則で、粒子サイズがナノオーダーレベルのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を製造することができる。実施例1-5の試験結果を総合すると分かるように、本願の製造方法により、高い初期比容量と高いタップ密度とを両立するナノオーダーのリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を得ることができる。
【0187】
比較例1及び比較例2はそれぞれシュウ酸第一鉄及びマイクロオーダーの酸化第二鉄を原料としており、従来の高温固相焼結法でリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質を製造しているが、得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質は高い初期比容量と高いタップ密度とを両立させることが困難である。
【0188】
比較例3は、比較例2の高速ボールミリングの後に得られたナノオーダーの酸化第二鉄を原料としてリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質製造しているが、得られたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質はタップ密度が低い。同時にドーピング元素Mgが噴霧乾燥による造粒と焼結プロセスにおいて導入されるため、ドーピング元素Mg、鉄元素、マンガン元素及びリチウム元素などの均一な分布を実現することが難しく、従って、実施例1と比較して、比較例3で製造されたリン酸マンガン鉄リチウム正極活物質の初期比容量は明らかに低下する。
【0189】
なお、本願は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示に過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲内で、技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を発揮する実施形態はいずれも本願の技術的範囲に包含される。また、本願の主旨を逸脱しない範囲で、当業者が想到できる各種の修正を実施形態に追加したものや、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も本願の範囲内に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】