(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】多孔質のガラス容器および同ガラス容器を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C03C 15/00 20060101AFI20240816BHJP
C03B 32/00 20060101ALI20240816BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C03C15/00 G
C03C15/00 Z
C03B32/00
A61J1/05 311
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505062
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 US2022037044
(87)【国際公開番号】W WO2023009322
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】クリスティ,デイン アルファンソ
(72)【発明者】
【氏名】サラフィアン,アダム ロバート
【テーマコード(参考)】
4C047
4G015
4G059
【Fターム(参考)】
4C047AA02
4C047BB01
4C047CC04
4C047CC12
4C047CC13
4C047CC14
4C047DD28
4C047FF10
4C047GG03
4G015EA01
4G059AA04
4G059AB02
4G059AB09
4G059AC30
4G059BB04
4G059BB10
4G059BB12
(57)【要約】
ガラス容器は、ガラス本体であって、外面と、この外面と反対側の内面と、外面と内面との間に延在する厚さTと、外面からガラス本体の厚さ内に延在する外面層とを備えたガラス本体を含み、外面層は、この外面層から内面に延在するガラス本体の残存部分の気孔率よりも高い気孔率を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス容器であって、
ガラス本体であって、外面と、該外面と反対側の内面と、前記外面と前記内面との間に延在する厚さTと、前記外面から前記ガラス本体の前記厚さ内に延在する外面層とを備えたガラス本体を備え、
前記外面層は、該外面層から前記内面に延在する前記ガラス本体の残存部分の気孔率よりも高い気孔率を有する、
ガラス容器。
【請求項2】
前記外面層は30%超50%以下の気孔率を有する、請求項1記載のガラス容器。
【請求項3】
前記ガラス本体の前記残存部分は0%以上30%以下の気孔率を有する、請求項1記載のガラス容器。
【請求項4】
前記外面層は、10nm以上20nm以下の気孔サイズを有する気孔を含み、
前記ガラス本体の前記残存部分は、10nm未満の気孔サイズを有する気孔を含む、
請求項1記載のガラス容器。
【請求項5】
前記ガラス本体の前記残存部分は完全に緻密化されている、請求項1記載のガラス容器。
【請求項6】
前記ガラス容器は、前記ガラス本体の前記外面層の気孔内に配置されたポリマーを含むコーティングされたガラス容器である、請求項1記載のガラス容器。
【請求項7】
前記ポリマーは前記ガラス本体の前記外面にも配置されている、請求項6記載のガラス容器。
【請求項8】
前記ポリマーは0.7以下の摩擦係数を有する、請求項6記載のガラス容器。
【請求項9】
段階気孔率を有するガラス容器を形成する方法であって、
ガラス本体であって、外面と、該外面と反対側の内面と、前記外面と前記内面との間に延在する厚さTと、前記外面から前記ガラス本体の前記厚さ内に延在する外面層とを備えたガラス本体を有するガラス容器を準備するステップと、
前記段階気孔率を有する前記ガラス容器を製造するために、前記ガラス本体の前記外面を第1のエッチャントに接触させるステップおよび前記ガラス本体の前記内面と前記第1のエッチャントとの間の接触を阻止するステップと
を含み、
前記外面層は、該外面層から前記内面に延在する前記ガラス本体の残存部分の気孔率よりも高い気孔率を有する、
方法。
【請求項10】
前記ガラス本体の少なくとも前記残存部分における気孔を少なくとも部分的に緻密化するために、エッチングされた前記ガラス容器を加熱するステップをさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記エッチングされたガラス容器を加熱するステップは、
前記エッチングされたガラス容器を50℃/時間以上150℃/時間以下の第1の平均加熱速度で200℃以上300℃以下の第1の温度範囲に加熱するステップと、
前記エッチングされたガラス容器を150℃/時間以上250℃/時間以下の第2の平均加熱速度で1150℃以上1300℃以下の第2の温度範囲に加熱するステップと、
前記ガラス本体の少なくとも前記残存部分における前記気孔が少なくとも部分的に緻密化されるように、前記エッチングされたガラス容器を0.1時間以上0.5時間以下の期間にわたって前記第2の温度範囲に保つステップと、
部分的に緻密化された前記ガラス容器を室温に冷却するステップと
を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ガラス容器はアルカリホウケイ酸ガラス組成物から形成されており、
前記第1のエッチャントに接触させるステップに先だって、前記ガラス容器を加熱して、前記アルカリホウケイ酸ガラス組成物を酸化ホウ素リッチ相とシリカリッチ相とに分離するステップをさらに含む、
請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記第1のエッチャントに接触させるステップを20℃以上125℃以下の温度で0.1時間以上1時間以下の期間にわたって行う、請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記ガラス本体の前記外面を75℃以上125℃以下の温度で16時間以上48時間以下の期間にわたって第2のエッチャントに接触させるステップをさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項15】
エッチングされた前記ガラス容器を溶液中にて75℃以上125℃以下の温度で12時間以上24時間以下の期間にわたってリンスするステップと、エッチングされた前記ガラス容器を水中にて75℃以上125℃以下の温度で12時間以上24時間以下の期間にわたってリンスするステップとをさらに含む、請求項9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は、米国特許法第119条のもと、2021年7月27日に出願された米国仮特許出願第63/203,581号の優先権の利益を主張し、その内容は本明細書の依拠するところであって、その内容全体を参照によって本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して、ガラス容器に関し、特に多孔質のガラス容器に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラスは、通常、その特性が別種の材料に比べて特有であるため、種々の商業用途および消費者用途に使用される。例えば、少なくともポリマー材料と比較した場合、ガラスはその相対的な不活性によって、包装材料と相互作用してしまう消耗品、例えば食料品または医薬品のパッケージへの使用に良好に適している。また、少なくともポリマー材料と比較した場合、ガラスはその相対的な硬さまたは耐スクラッチ性によって、電子装置、例えばLCDおよびLEDディスプレイ、コンピュータモニタ、現金自動預け払い機(ATM)およびこれに類するものにおけるカバーガラスとしての使用に良好に適している。
【0004】
前述した消費者用途および商業用途に使用されるガラス物品は、損傷または破損なしに通常の接触に耐えられるように十分に頑丈でなければならない。ガラス物品を強化するために、強化プロセス、例えば熱強化および化学強化が利用されてよい。しかしながら、こういった強化技術は、製造、輸送およびハンドリング中に生じてしまうある種の損傷、例えばスクラッチを阻止することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、機械的な損傷に対する改善された耐性を有する代替的な物品、例えばガラス容器またはこれに類するものが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様A1によれば、ガラス容器が、ガラス本体であって、外面と、この外面と反対側の内面と、外面と内面との間に延在する厚さTと、外面からガラス本体の厚さ内に延在する外面層とを備えたガラス本体を備え、外面層が、この外面層から内面に延在するガラス本体の残存部分の気孔率よりも高い気孔率を有してよい。
【0007】
第2の態様A2は、外面層が、外面からガラス本体の厚さ内に10nm以上100nm以下にわたって延在している、第1の態様A1記載のガラス容器を含む。
【0008】
第3の態様A3は、外面層が30%超50%以下の気孔率を有する、第1の態様A1または第2の態様A2記載のガラス容器を含む。
【0009】
第4の態様A4は、ガラス本体の残存部分が0%以上30%以下の気孔率を有する、第1の態様A1から第3の態様A3までのいずれか1つ記載のガラス容器を含む。
【0010】
第5の態様A5は、ガラス本体の残存部分の気孔率が0%である、第4の態様A4記載のガラス容器を含む。
【0011】
第6の態様A6は、外面層が、10nm以上20nm以下の気孔サイズを有する気孔を含む、第1の態様A1から第5の態様A5までのいずれか1つ記載のガラス容器を含む。
【0012】
第7の態様A7は、ガラス本体の残存部分が、10nm未満の気孔サイズを有する気孔を含む、第1の態様A1から第6の態様A6までのいずれか1つ記載のガラス容器を含む。
【0013】
第8の態様A8は、ガラス本体の残存部分の気孔が5nm以下の気孔サイズを有する、第7の態様A7記載のガラス容器を含む。
【0014】
第9の態様A9は、ガラス本体の残存部分が完全に緻密化されている、第1の態様A1から第8の態様A8までのいずれか1つ記載のガラス容器を含む。
【0015】
第10の態様A10は、ガラス本体が25モル%以上のSiO2を含む、第1の態様A1から第9の態様A9までのいずれか1つ記載のガラス容器を含む。
【0016】
第11の態様A11は、ガラス容器が、ガラス本体の外面層の気孔内に配置されたポリマーを含むコーティングされたガラス容器である、第1の態様A1から第10の態様A10までのいずれか1つ記載のガラス容器を含む。
【0017】
第12の態様A12は、ポリマーがガラス本体の外面にも配置されている、第11の態様A11記載のガラス容器を含む。
【0018】
第13の態様A13は、ポリマーが0.7以下の摩擦係数を有する、第11の態様A11または第12の態様A12記載のガラス容器を含む。
【0019】
第14の態様A14は、ガラス容器が医薬品パッケージである、第1の態様A1から第13の態様A13までのいずれか1つ記載のガラス容器を含む。
【0020】
第15の態様A15によれば、ガラス容器を形成する方法が、ガラス本体であって、外面と、この外面と反対側の内面と、外面と内面との間に延在する厚さTと、外面からガラス本体の厚さ内に延在する外面層とを備えたガラス本体を有するガラス容器を準備するステップと、段階気孔率を有するガラス容器を製造するために、ガラス本体の外面を第1のエッチャントに接触させるステップおよびガラス本体の内面とエッチャントとの間の接触を阻止するステップとを含み、外面層が、この外面層から内面に延在するガラス本体の残存部分の気孔率よりも高い気孔率を有してよい。
【0021】
第16の態様A16は、ガラス本体の少なくとも残存部分における気孔を少なくとも部分的に緻密化するために、エッチングされたガラス容器を加熱するステップをさらに含む、第15の態様A15記載の方法を含む。
【0022】
第17の態様A17は、エッチングされたガラス容器を加熱するステップが、エッチングされたガラス容器を50℃/時間以上150℃/時間以下の第1の平均加熱速度で200℃以上300℃以下の第1の温度範囲に加熱するステップと、エッチングされたガラス容器を150℃/時間以上250℃/時間以下の第2の平均加熱速度で1150℃以上1300℃以下の第2の温度範囲に加熱するステップと、ガラス本体の少なくとも残存部分における気孔が少なくとも部分的に緻密化されるように、エッチングされたガラス容器を0.1時間以上0.5時間以下の期間にわたって第2の温度範囲に保つステップと、部分的に緻密化されたガラス容器を室温に冷却するステップとを含む、第16の態様A16記載の方法を含む。
【0023】
第18の態様A18は、エッチングされたガラス容器を加熱するステップに先だって、ガラス本体の外面層内の気孔をマスキングする、第16の態様A16または第17の態様A17記載の方法を含む。
【0024】
第19の態様A19は、ガラス本体の外面層内の気孔を黒鉛、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ハロゲン化アルカリ塩またはこれらの組合せによってマスキングする、第18の態様A18記載の方法を含む。
【0025】
第20の態様A20は、部分的に緻密化されたガラス容器を、0.7以下の摩擦係数を有するコーティングによってコーティングするステップをさらに含む、第16の態様A16から第19の態様A19までのいずれか1つ記載の方法を含む。
【0026】
第21の態様A21は、ガラス容器がアルカリホウケイ酸ガラス組成物から形成されている、第15の態様A15から第20の態様A20までのいずれか1つ記載の方法を含む。
【0027】
第22の態様A22は、エッチャントに接触させるステップに先だって、ガラス容器を加熱して、アルカリホウケイ酸ガラス組成物を酸化ホウ素リッチ相とシリカリッチ相とに分離するステップをさらに含む、第21の態様A21記載の方法を含む。
【0028】
第23の態様A23は、第1のエッチャントが、実質的にフッ化物不含の水性の酸性処理媒体である、第15の態様A15から第22の態様A22までのいずれか1つ記載の方法を含む。
【0029】
第24の態様A24は、第1のエッチャントに接触させるステップを20℃以上125℃以下の温度で0.1時間以上1時間以下の期間にわたって行う、第15の態様A15から第23の態様A23までのいずれか1つ記載の方法を含む。
【0030】
第25の態様A25は、ガラス本体の外面を75℃以上125℃以下の温度で16時間以上48時間以下の期間にわたって第2のエッチャントに接触させるステップをさらに含む、第15の態様A15から第24の態様A24までのいずれか1つ記載の方法を含む。
【0031】
第26の態様A26は、エッチングされたガラス容器を溶液中にて75℃以上125℃以下の温度で12時間以上24時間以下の期間にわたってリンスするステップと、エッチングされたガラス容器を水中にて75℃以上125℃以下の温度で12時間以上24時間以下の期間にわたってリンスするステップとをさらに含む、第15の態様A15から第25の態様A25までのいずれか1つ記載の方法を含む。
【0032】
本明細書に記載した多孔質のガラス容器の付加的な特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載してあり、部分的にその説明から当業者に容易に明らかであるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲ならびに添付の図面を含め、本明細書に記載した実施形態を実施することによって認識されるはずである。
【0033】
当然ながら、前述の概説および以下の詳細な説明は、種々の実施形態を記載したものであり、特許請求の範囲の主題の本質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図している。添付の図面は、種々の実施形態の更なる理解を提供するために含めてあり、本明細書に組み込んで、本明細書の一部を成している。図面は、本明細書に記載した種々の実施形態を示しており、明細書と共に特許請求の範囲の主題の原理および動作を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本明細書に示して記載した1つ以上の実施形態によるガラス容器の概略的な断面図である。
【
図2】本明細書に示して記載した1つ以上の実施形態による
図1のガラス容器の概略的な拡大断面図である。
【
図3】本明細書に示して記載した1つ以上の実施形態による、コーティングを備えたガラス容器の概略的な断面図である。
【
図4】本明細書に示して記載した1つ以上の実施形態による
図3のガラス容器の概略的な拡大断面図である。
【
図5】本明細書に示して記載した1つ以上の実施形態によるガラス容器の緻密化時間および気孔率(x軸:緻密化時間;y軸:気孔率)のプロットを示す図である。
【
図6】本明細書に示して記載した1つ以上の実施形態によるガラス容器の残存部分の緻密化時間および気孔率(x軸:緻密化時間;y軸:気孔率)のプロットを示す図である。
【
図7】本明細書に示して記載した1つ以上の実施形態によるガラス容器の外面層の緻密化時間および気孔率(x軸:緻密化時間;y軸:気孔率)のプロットを示す図である。
【
図8】本明細書に示して記載した1つ以上の実施形態によるガラス容器の外面層の緻密化時間および気孔率(x軸:緻密化時間;y軸:気孔率)のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、所望の気孔率を有する多孔質のガラス物品、例えばガラス容器および同ガラス物品を製造する方法の種々の実施形態について詳細に言及することにする。ガラス容器は、ガラス本体であって、外面と、この外面と反対側の内面と、外面と内面との間に延在する厚さTと、外面からガラス本体の厚さ内に延在する外面層とを備えたガラス本体を含んでおり、外面層は、この外面層から内面に延在するガラス本体の残存部分の気孔率よりも高い気孔率を有している。多孔質のガラス容器および同ガラス容器を製造する方法の種々の実施形態を添付の図面を具体的に参照しながら本明細書に記載する。
【0036】
本明細書では、範囲を「約」一方の特定の数値からかつ/または「約」他方の特定の数値までとして表すことがある。このような範囲を表すとき、別の実施形態は、一方の特定の数値からかつ/または他方の特定の数値までを含んでいる。また、数値を先行詞「約」の使用によって近似値として表すときには、当然ながら、特定の数値が別の実施形態を成している。さらに、当然ながら、範囲の各々の端点は、他方の端点に関連して両方とも重要であり、また、他方の端点に関係なく重要である。
【0037】
本明細書で使用する方向に関する用語、例えば、上方、下方、右、左、前、後ろ、上側、下側は、図示の図面に対して言及しているものでしかなく、絶対的な向きを意味することを意図するものではない。
【0038】
特段明記しない限り、本明細書に記載したあらゆる方法が、そのステップが特定の順序で実施されることを要求するものとして解釈されることは決して意図しておらず、また、任意の装置によって特定の向きが要求されることも決して意図していない。したがって、方法の請求項が、そのステップが従うべき順序を実際に列挙していないか、装置のいずれかの請求項が、個々の構成要素に対する順序または向きを実際に列挙していないか、ステップが特定の順序に限定されるべきことを特許請求の範囲または明細書に特段詳述していないか、または装置の構成要素に対する特定の順序または向きを列挙していない場合、いかなる点に関しても、順序または向きが推論されることは決して意図していない。このことは、ステップの配置、操作の流れ、構成要素の順序または構成要素の向きに関する論理の問題と、文法的な構成または句読点に由来する明白な意味と、本明細書に記載した実施形態の数または種類とを含む、解釈のためのあらゆる可能な非明示的な基準に該当する。
【0039】
本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈に特段明示がない限り、複数形に関する言及を含んでいる。したがって、例えば、「a」構成要素という言及は、文脈に特段明示がない限り、2つ以上のこのような構成要素を有する態様を含んでいる。
【0040】
本明細書に記載したガラス組成物の実施形態では、酸化物形態の構成成分(例えばSiO2、Al2O3およびこれに類するもの)の濃度を、特段規定しない限り、酸化物を基準としたモル%(mol%)で規定している。
【0041】
「0モル%」、「含まない」および「実質的に含まない」という用語は、ガラス組成物中の特定の構成成分の濃度および/または不在を記載するために使用する場合、構成成分がガラス組成物に意図的に添加されていないことを意味している。しかしながら、ガラス組成物は、0.01モル%未満の量の汚染物質または混入物としての僅かな構成成分を含んでいることがある。
【0042】
ガラス組成物の粘度は、本明細書に記載したとき、ASTM C965-96に従って測定している。
【0043】
「融点」という用語は、本明細書で使用するとき、ガラス組成物の粘度が200ポアズ(20Pa・s)であるときの温度を表している。
【0044】
「軟化点」という用語は、本明細書で使用するとき、ガラス組成物の粘度が1×107.6ポアズ(1×106.6Pa・s)であるときの温度を表している。軟化点は、ASTM C1351Mに類似して、107ポアズ(106Pa・s)~109ポアズ(108Pa・s)の無機ガラスの粘度を温度の関数として測定する平行板粘度法に従って測定している。
【0045】
「歪み点」という用語は、本明細書で使用するとき、ガラス組成物の粘度が1×1014.68ポアズ(1×1013.68Pa・s)であるときの温度を表している。
【0046】
「線熱膨張係数」および「CTE」という用語は、本明細書に記載したとき、ASTM E228-85に従って25℃~300℃の温度範囲にわたって測定していて、この温度範囲にわたる平均としての「×10-7/℃」で表現している。
【0047】
「分相可能なガラス組成物」という用語は、本明細書に記載したとき、分相処理、例えば熱処理またはこれに類することに曝された際に2つ以上の個別の相に分相されるガラス組成物を表している。
【0048】
「気孔率」という用語は、本明細書に記載したとき、ガラスが連続気孔のネットワークを含む開放気孔率を表していて、ASTMD4404-10に従って測定している。
【0049】
「気孔サイズ」という用語は、本明細書に記載したとき、500nmの走査サイズでの原子間力顕微鏡法により得られた試料の断面の画像分析を介して測定したガラス容器の参照部分のメジアン気孔サイズである。
【0050】
「緻密化する」という用語は、本明細書で使用するとき、ガラスの気孔率が減じられることを表している。
【0051】
「部分的に緻密化された」という用語は、本明細書で使用するとき、熱緻密化スケジュールに供された結果として気孔率が減じられたガラスまたはその一部を表している。
【0052】
「完全に緻密化された」という用語は、本明細書で使用するとき、0%の気孔率を有するガラスまたはその一部を表している。
【0053】
「リッチ相」という用語は、本明細書で使用するとき、分相処理に曝された際に形成される、列挙した成分が最も多い量で存在しているガラス相を表している。例えば、「シリカリッチ相」は、シリカが最も多い量で存在しているガラス相である。別の例において、「シリカリッチかつチタニアリッチ相」は、シリカおよびチタニアが最も多い量および2番目に多い量で存在しているガラス相である。
【0054】
歴史的に見て、ガラスはその気密性、光学的な透明性および別の材料に比べて優れた化学的な耐久性のため、医薬品を包装するための好適な材料として使用されてきた。具体的には、医薬品パッケージに使用されるガラスは、医薬品パッケージ内に収容される医薬組成物の安定性に影響を与えないように、十分な化学的な耐久性を有していなければならない。適切な化学的な耐久性を有するガラスには、化学的な耐久性の証明された履歴を有する、ASTM規格「Type 1B」の範囲内のガラス組成物が含まれる。
【0055】
しかしながら、このような用途でのガラスの使用は、ガラスの機械的な性能によって制限されている。製薬業界では、ガラスの破損はエンドユーザに対する安全上の懸念事項である。なぜならば、破損した容器および/またはその容器の内容物によってエンドユーザが怪我をしてしまうからである。さらに、壊滅的とまではいかない破損(つまり、ガラスに亀裂は入っているものの、破壊までには至っていない場合)によって、内容物がその無菌性を失ってしまい、そして、その結果、コストのかかる製品リコールが発生してしまう。
【0056】
具体的には、ガラス製の医薬品パッケージの製造および充填に利用される高い処理速度の結果、容器の外面に機械的な損傷、例えば摩損が生じてしまう。なぜならば、容器がプロセス機器、ハンドリング機器および/または別の容器に接触させられるからである。こういった機械的な損傷は、ガラス製の医薬品パッケージの強度を著しく低下させ、その結果、ガラスにおいて亀裂が進行する可能性を高めてしまうか、容器内に収容された医薬品の無菌性を潜在的に無にしてしまうか、または容器を完全に破損させてしまう。
【0057】
ガラス容器の機械的な耐久性を改善するための1つのアプローチは、ガラス容器を熱強化および/または化学強化することである。熱強化は、成形後の急冷中に表面圧縮応力を生じさせることによってガラスを強化する。この技術は、薄型のジオメトリを有するガラス物品(例えば窓)、約2mm超の厚さを有するガラス物品および高い熱膨張を伴うガラス組成物に対して良好に機能する。しかしながら、医薬品ガラスパッケージは、典型的には、複雑なジオメトリ(バイアル、チューブ、アンプル等)や肉薄の壁(場合により約1~1.5mm)を有していて、低膨張ガラスから製造されるため、ガラス製の医薬品パッケージは、従来の熱強化による強化に適していない。化学強化も表面圧縮応力の導入によってガラスを強化する。応力は、物品を溶融塩浴内に浸漬することによって導入される。ガラスに基づくイオンが溶融塩に基づくより大きなイオンに置き換えられると、ガラスの表面に圧縮応力が生じる。化学強化の利点は、複雑なジオメトリや肉薄の試料に使用することができ、ガラスの熱膨張特性の影響を比較的受けにくいことにある。
【0058】
しかしながら、こういった強化技術は、鈍的な衝撃に耐えるための強化ガラスの能力を改善することができる一方、製造、輸送およびハンドリング中に生じてしまう摩損、例えばスクラッチに対するガラスの耐性を改善することにはあまり効果的でない。
【0059】
コーティングは、ガラス物品、例えば医薬品パッケージとして使用することができるガラス容器の外面に被着されてよい。コーティングは、コーティングされたガラス容器に有利な特性、例えば減じられた摩擦係数および高められた耐損傷性を提供することができる。減じられた摩擦係数は、ガラスへの摩擦損傷を軽減することによって、ガラス容器に改善された強度および耐久性を与えることができる。さらに、コーティングは、医薬品の包装において使用される包装ステップおよび予備包装ステップ中に生じるような高められた温度および別の状況、例えば脱パイロジェン処理、凍結乾燥処理、オートクレーブ処理およびこれに類することに曝した後、前述した改善された強度および耐久性の特性を維持することに役立てることができる。
【0060】
所定の用途では、ガラス物品の完全に緻密化された外面の表面積を増加させて、外面とコーティングとの間により多くの接触を提供することが所望されることがある。
【0061】
概して、ガラス容器は、ガラスが完全に緻密化されているように形成されている。しかしながら、所定の用途では、完全に緻密化された外面の表面積を増加させて、外面とコーティングとの間の付着を促進し、これによって、コーティングの割れ、小剥がれおよび/または剥がれを減じるかまたは阻止することが所望されることがある。
【0062】
本明細書には、前述したニーズに対処するガラス容器および同ガラス容器を製造する方法が開示してある。特に、本明細書には、増加された表面積を提供し、ひいては、この表面積へのコーティング付着を改善するための所望の気孔率を有する外面を備えたガラス容器が記載してある。また、このようなガラス容器を製造する方法も開示してある。
【0063】
ここで、
図1を参照すると、ガラス容器100が概略的に示してある。このガラス容器100はガラス本体102を備えている。このガラス本体102は、外面104(つまり、第1の表面)と内面106(つまり、第2の表面)との間に延在する厚さTを有している。ガラス本体102の内面106は、ガラス容器100の内容積108を規定している。
【0064】
実施形態では、ガラス容器100は医薬品パッケージである。例えば、ガラス本体102は、バイアル、アンプル、ボトル、フラスコ、瓶、ビーカー、バケット、カートリッジ、バット、シリンジ本体またはこれに類する形状であってよい。ガラス容器100は任意の組成物を収容するために使用されてよく、実施形態では、医薬組成物を収容するために使用されてよい。医薬組成物は、疾患の医学的な診断、療治、治療または予防での使用を意図した任意の化学物質を含んでいてよい。医薬組成物の例は、以下に限定するわけではないが、薬、薬物、医薬品、薬剤、治療薬およびこれに類するものを含んでいる。医薬組成物は、液体、固体、ゲル、懸濁液、粉末またはこれに類するものの形態であってよい。
【0065】
ここで、
図2を参照すると、ガラス本体102は、外面104からガラス本体102の厚さT内に延在する外面層120を有している。実施形態では、この外面層120は、ガラス本体102の残存部分122に隣接していて、この残存部分122と一体形である。実施形態では、外面層120は、10nm以上100nm以下で外面104からガラス本体102の厚さT内に延在していてよい。実施形態では、外面層120は、10nm以上、20nm以上、さらには、30nm以上で外面104からガラス本体102の厚さT内に延在していてよい。実施形態では、外面層120は、100nm以下、80nm以下、さらには、60nm以下で外面104からガラス本体102の厚さT内に延在していてよい。実施形態では、外面層120は、10nm以上100nm以下、10nm以上80nm以下、10nm以上60nm以下、20nm以上100nm以下、20nm以上80nm以下、20nm以上60nm以下、30nm以上100nm以下、30nm以上80nm以下、さらには、30nm以上60nm以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲で外面104からガラス本体102の厚さT内に延在していてよい。
【0066】
外面層120は、この外面層120から内面106に延在するガラス本体102の残存部分122の気孔率よりも高い気孔率を有している。外面層120のこの相対的に大きな気孔率によって、外面104へのコーティングの付着が促進され、これによって、コーティングの割れ、小剥がれおよび/または剥がれが減じられるかまたは排除される。
【0067】
実施形態では、外面層120は、ガラス容器へのコーティングの付着を促進するために、30%以上50%以下の気孔率を有していてよい。コーティングは外面層120の気孔内に浸透し、これによって、付着を改善することができる。実施形態では、外面層120の気孔率は、30%超、33%以上、さらには、35%以上であってよい。実施形態では、外面層120の気孔率は、50%以下、45%以下、さらには、40%以下であってよい。実施形態では、外面層120の気孔率は、30%超50%以下、30%超45%以下、30%超40%以下、33%以上50%以下、33%以上45%以下、33%以上40%以下、35%以上50%以下、35%以上45%以下、さらには、35%以上40%以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲であってよい。
【0068】
実施形態では、ガラス本体102の残存部分122は、外面層120の気孔率よりも低い気孔率を有していてよい。実施形態では、ガラス本体102の残存部分122の気孔率は0%以上30%以下である。実施形態では、ガラス本体102の残存部分122の気孔率は、0%以上、3%以上、さらには、5%以上であってよい。実施形態では、ガラス本体102の残存部分122の気孔率は、30%以下、20%以下、さらには、10%以下であってよい。実施形態では、ガラス本体102の残存部分122の気孔率は、0%以上30%以下、0%以上20%以下、0%以上10%以下、3%以上30%以下、3%以上20%以下、3%以上10%以下、5%以上30%以下、5%以上20%以下、さらには、5%以上10%以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲であってよい。実施形態では、ガラス本体102の残存部分122の気孔率は0%である。
【0069】
実施形態では、外面層120は、ガラス容器へのコーティングの付着を促進するために、10nm以上20nm以下の気孔サイズを有する気孔120aを有していてよい。実施形態では、外面層120は、10nm以上、さらには、13nm以上の気孔サイズを有する気孔120aを有していてよい。実施形態では、外面層120は、20nm以下、17nm以下、さらには、15nm以下の気孔サイズを有する気孔120aを有していてよい。実施形態では、外面層120は、10nm以上20nm以下、10nm以上17nm以下、10nm以上15nm以下、13nm以上20nm以下、13nm以上17nm以下、さらには、13nm以上15nm以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲の気孔サイズを有する気孔120aを有していてよい。
【0070】
実施形態では、ガラス本体102の残存部分122は、10nm未満の気孔サイズを有する気孔122aを有していてよい。実施形態では、ガラス本体102の残存部分122は、5nm以下の気孔サイズを有する気孔122aを有していてよい。実施形態では、ガラス本体102の残存部分122は、10nm未満、5nm以下、さらには、3nm以下の気孔サイズを有する気孔を有していてよい。実施形態では、ガラス本体102の残存部分122は、0nm超、0.5nm以上、さらには、1nm以上の気孔サイズを有する気孔122aを有していてよい。実施形態では、ガラス本体102の残存部分122は、0nm超10nm未満、0nm超5nm以下、0nm超3nm以下、0.5nm以上10nm未満、0.5nm以上5nm以下、0.5nm以上3nm以下、1nm以上10nm未満、1nm以上5nm以下、さらには、1nm以上3nm以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲の気孔サイズを有する気孔122aを有していてよい。実施形態では、ガラス本体102の残存部分122は完全に緻密化されている(つまり、決して気孔を有していない)。
【0071】
本明細書に記載したガラス容器の実施形態では、ガラス容器は、処理中に第1のガラス相と少なくとも1つの第2のガラス相とに分相されてよく、各々のガラス相は、互いに異なる組成を有している。したがって、当然ながら、ガラス容器は、分相処理に曝された際に分相しやすいガラス組成物から形成されている(つまり、ガラス組成物は「分相可能な」ガラス組成物である)。実施形態では、ガラス容器は、ガラスの連続マトリックスであって、第1のガラス相と、この第1のガラス相の連続マトリックスにわたって分散された第2のガラス相とから形成されたガラスの連続マトリックスを含んでいてよい。こういった実施形態では、第2のガラス相自体が第1のガラス相の連続マトリックスの内部で連接されている。実施形態では、第1のガラス相および第2のガラス相は、水、塩基性の溶液および/または酸性の溶液中で互いに異なる溶解速度を有していてよい。例えば、分相されたガラス容器に存在する少なくとも1つの第2のガラス相は、水および/または酸性の溶液中で第1のガラス相よりも溶解しやすくてよい。代替的には、分相されたガラス容器に存在する第1のガラス相が、水および/または酸性の溶液中で少なくとも1つの第2のガラス相よりも容易に溶解してよい。この特徴によって、第1のガラス相または第2のガラス相をガラス容器から選択的に除去することが可能となるため、ガラス容器の残りの部分は、分相されたガラス組成物の残りの相から形成された多孔質の連続マトリックスを成している。実施形態では、第1のガラス相は、シリカリッチ相またはシリカリッチかつチタニアリッチ相であってよい。実施形態では、第2のガラス相は、酸化ホウ素リッチ相、酸化リンリッチ相、酸化カルシウムリッチ相またはこれらの組合せであってよい。実施形態では、第1のガラス相はシリカリッチ相であってよく、第2のガラス相は酸化ホウ素リッチ相であってよい。実施形態では、第1のガラス相はシリカリッチ相であってよく、第2のガラス相は酸化リンリッチ相であってよい。実施形態では、第1のガラス相はシリカリッチかつチタニアリッチ相であってよく、第2のガラス相は酸化カルシウムリッチかつ酸化ホウ素リッチ相であってよい。実施形態では、シリカリッチ相は、シリカのほかに、5質量%以下の別のガラス成分(例えば酸化カルシウム、酸化ホウ素および/または酸化リン)を含んでいてよい。実施形態では、シリカリッチ相内の別のガラス成分の量は、分相処理の温度および時間によって制御されてよい。
【0072】
本明細書に記載したガラス容器を形成するために使用される分相可能なガラス組成物は、ケイ酸ガラス組成物として説明することができ、SiO2を含んでいてよい。実施形態では、ガラス組成物はアルカリホウケイ酸ガラス組成物であってよく、SiO2、B2O3およびR2O(例えばNa2O、Li2O、K2O、Rb2Oおよび/またはCs2O)を含んでいてよい。実施形態では、B2O3に対して付加的にまたはB2O3に対する代替として、ガラス組成物がP2O5および/またはTiO2を含んでいてよい。
【0073】
SiO2は、本明細書に記載したガラス組成物中の主要なガラス形成物であり、ガラス容器のネットワーク構造を安定させるように機能することができる。ガラス組成物中のSiO2の濃度は、基本的なガラス形成能を提供するために十分に高いことが求められる(例えば25モル%以上)。SiO2の濃度は、ガラス組成物の融点を制御するために制限されてよい(例えば80モル%以下)。なぜならば、純粋なSiO2ガラスまたは高SiO2ガラスの溶融温度が望ましくないほど高いからである。したがって、SiO2の濃度を制限することは、結果的に得られるガラス容器の溶融性および成形性を改善することに役立てることができる。
【0074】
したがって、実施形態では、ガラス組成物は、25モル%以上のSiO2を含んでいてよい。実施形態では、ガラス組成物中のSiO2の濃度は、25モル%以上、35モル%以上、45モル%以上、さらには、55モル%以上であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のSiO2の濃度は、80モル%以下、75モル%以下、70モル%以下、さらには、65モル%以下であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のSiO2の濃度は、25モル%以上80モル%以下、25モル%以上75モル%以下、25モル%以上70モル%以下、25モル%以上65モル%以下、35モル%以上80モル%以下、35モル%以上75モル%以下、35モル%以上70モル%以下、35モル%以上65モル%以下、45モル%以上80モル%以下、45モル%以上75モル%以下、45モル%以上70モル%以下、45モル%以上65モル%以下、55モル%以上80モル%以下、55モル%以上75モル%以下、55モル%以上70モル%以下、さらには、55モル%以上65モル%以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲であってよい。
【0075】
実施形態では、ガラス組成物はAl2O3を含んでいてよい。SiO2同様、Al2O3もガラスネットワークを安定させることができ、さらに、改善された機械的な特性および化学的な耐久性をガラス組成物に提供する。Al2O3の量は、ガラス組成物の粘度を制御するように調整されてもよい。実施形態では、ガラス組成物中のAl2O3の濃度は、0モル%以上、1モル%以上、5モル%以上、さらには、10モル%以上であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のAl2O3の濃度は、18モル%以下、16モル%以下、さらには、14モル%以下であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のAl2O3の濃度は、0モル%超18モル%以下、0モル%超16モル%以下、0モル%超14モル%以下、1モル%超18モル%以下、1モル%超16モル%以下、1モル%超14モル%以下、5モル%超18モル%以下、5モル%超16モル%以下、5モル%超14モル%以下、10モル%超18モル%以下、10モル%超16モル%以下、さらには、10モル%超14モル%以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲であってよい。実施形態では、ガラス組成物はAl2O3を含んでいなくてよいかまたは実質的に含んでいなくてよい。
【0076】
実施形態では、ガラス組成物はB2O3を含んでいてよい。B2O3はガラス組成物の溶融温度を低下させ、ガラス組成物の耐損傷性を改善することができる。さらに、ガラス組成物中にB2O3を組み込むことによって、シリカリッチ相と酸化ホウ素リッチ相とへのガラス組成物の分離を促進することもできる。こういった実施形態では、シリカリッチ相は、水および/または酸性の溶液中で酸化ホウ素リッチ相よりも溶解の影響を受けにくく、そして、これによって、酸化ホウ素リッチ相の選択的な除去と、ガラス容器への多孔質のミクロ組織の形成とを促進することができる。実施形態では、ガラス組成物中のB2O3の濃度は、0モル%以上、5モル%以上、10モル%以上、さらには、15モル%以上であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のB2O3の濃度は、35モル%以下、30モル%以下、さらには、25モル%以下であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のB2O3の濃度は、0モル%以上35モル%以下、0モル%以上30モル%以下、0モル%以上25モル%以下、5モル%以上35モル%以下、5モル%以上30モル%以下、5モル%以上25モル%以下、10モル%以上35モル%以下、10モル%以上30モル%以下、10モル%以上25モル%以下、15モル%以上35モル%以下、15モル%以上30モル%以下、さらには、15モル%以上25モル%以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲であってよい。実施形態では、ガラス組成物はB2O3を含んでいなくてよいかまたは実質的に含んでいなくてよい。
【0077】
実施形態では、ガラス組成物はNa2Oを含んでいてよい。Na2Oはガラス組成物の軟化点を低下させ、これによって、ガラスにおける成形性が向上させられる。実施形態では、ガラス組成物中のNa2Oの濃度は、0モル%以上、2モル%以上、さらには、4モル%以上であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のNa2Oの濃度は、25モル%以下、15モル%以下、さらには、10モル%以下であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のNa2Oの濃度は、0モル%以上25モル%以下、0モル%以上15モル%以下、0モル%以上10モル%以下、2モル%以上25モル%以下、2モル%以上15モル%以下、2モル%以上10モル%以下、4モル%以上25モル%以下、4モル%以上15モル%以下、さらには、4モル%以上10モル%以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲であってよい。実施形態では、ガラス組成物はNa2Oを含んでいなくてよいかまたは実質的に含んでいなくてよい。
【0078】
実施形態では、ガラス組成物はMgOを含んでいてよい。MgOはガラス組成物の粘度を低下させ、これによって、成形性、歪み点およびヤング率が向上させられる。実施形態では、ガラス組成物中のMgOの濃度は、0モル%以上、さらには、1モル%以上であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のMgOの濃度は、5モル%以下、さらには、3モル%以下であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のMgOの濃度は、0モル%以上5モル%以下、0モル%以上3モル%以下、1モル%以上5モル%以下、さらには、1モル%以上3モル%以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲であってよい。実施形態では、ガラス組成物はMgOを含んでいなくてよいかまたは実質的に含んでいなくてよい。
【0079】
実施形態では、ガラス組成物はCaOを含んでいてよい。CaOはガラス組成物の粘度を低下させ、これによって、成形性、歪み点およびヤング率が向上させられる。また、CaOを組み込むによって、シリカリッチ相と酸化カルシウムリッチ相とへのガラス組成物の分離を促進することもできる。こういった実施形態では、シリカリッチ相は、水および/または酸性の溶液中で酸化カルシウムリッチ相よりも溶解の影響を受けにくく、そして、これによって、酸化カルシウムリッチ相の選択的な除去と、ガラス容器への多孔質のミクロ組織の形成とを促進することができる。実施形態では、ガラス組成物中のCaOの濃度は、0モル%以上、10モル%以上、さらには、20モル%以上であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のCaOの濃度は、30モル%以下、28モル%以下、さらには、26モル%以下であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のCaOの濃度は、0モル%以上30モル%以下、0モル%以上28モル%以下、0モル%以上26モル%以下、10モル%以上30モル%以下、10モル%以上28モル%以下、10モル%以上26モル%以下、20モル%以上30モル%以下、20モル%以上28モル%以下、さらには、20モル%以上26モル%以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲であってよい。実施形態では、ガラス組成物はCaOを含んでいなくてよいかまたは実質的に含んでいなくてよい。
【0080】
実施形態では、ガラス組成物はP2O5を含んでいてよい。P2O5を組み込むことによって、シリカリッチ相と酸化リンリッチ相とへのガラス組成物の分離を促進することができる。こういった実施形態では、シリカリッチ相は、水および/または酸性の溶液中で酸化リンリッチ相よりも溶解の影響を受けにくく、そして、これによって、酸化リンリッチ相の選択的な除去と、ガラス容器への多孔質のミクロ組織の形成とを促進することができる。実施形態では、ガラス組成物中のP2O5の濃度は、0モル%以上、10モル%以上、さらには、25モル%以上であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のP2O5の濃度は、40モル%以下、さらには、35モル%以下であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のP2O5の濃度は、0モル%以上40モル%以下、0モル%以上35モル%以下、10モル%以上40モル%以下、10モル%以上35モル%以下、25モル%以上40モル%以下、さらには、25モル%以上35モル%以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲であってよい。実施形態では、ガラス組成物はP2O5を含んでいなくてよいかまたは実質的に含んでいなくてよい。
【0081】
実施形態では、ガラス組成物はTiO2を含んでいてよい。ガラス組成物中に存在するTiO2は分離して、シリカと共にシリカリッチかつチタニアリッチ相を形成することができる。こういった実施形態では、シリカリッチかつチタニアリッチ相は、水および/または酸性の溶液中で酸化ホウ素リッチ相および/または酸化カルシウムリッチ相よりも溶解の影響を受けにくく、そして、これによって、酸化ホウ素リッチ相および/または酸化カルシウムリッチ相の選択的な除去と、ガラス容器への多孔質のミクロ組織の形成とを促進することができる。実施形態では、ガラス組成物中のTiO2の濃度は、0モル%以上、10モル%以上、さらには、15モル%以上であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のTiO2の濃度は、30モル%以下、さらには、25モル%以下であってよい。実施形態では、ガラス組成物中のTiO2の濃度は、0モル%以上30モル%以下、0モル%以上25モル%以下、10モル%以上30モル%以下、10モル%以上25モル%以下、15モル%以上30モル%以下、さらには、15モル%以上25モル%以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲であってよい。実施形態では、ガラス組成物はTiO2を含んでいなくてよいかまたは実質的に含んでいなくてよい。
【0082】
実施形態では、ガラス組成物は1種以上の清澄剤を含んでいてよい。実施形態では、清澄剤は、例えばSnO2を含んでいてよい。実施形態では、ガラス組成物中のSnO2の濃度は、0モル%以上、さらには、0.1モル%以上であってよい。実施形態では、SnO2の濃度は、0.5モル%以下、さらには、0.25モル%以下であってよい。実施形態では、SnO2の濃度は、0モル%以上0.5モル%以下、0モル%以上0.25モル%以下、0.1モル%以上0.5モル%以下、さらには、0.1モル%以上0.25モル%以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲であってよい。実施形態では、ガラス組成物はSnO2を含んでいなくてよいかまたは実質的に含んでいなくてよい。
【0083】
ここで、
図3および
図4を参照すると、実施形態では、ガラス容器は、コーティング230を有するコーティングされたガラス容器200であってよい。特に、コーティング230はポリマーであってよい。実施形態では、ポリマーは、ガラス本体202の外面層220の気孔220a内に配置されていてよい。実施形態では、ポリマーは、ガラス本体202の外面204に配置されていてよい。実施形態では、コーティングは、全体を参照により本明細書に援用する米国特許第9,763,852号明細書に開示されているようなポリマーであってよい。例えば、実施形態では、ポリマーは熱安定性ポリマーまたはポリマーの混合物、例えば、以下に限定するわけではないが、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリフェニル、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリビスチアゾールならびに有機充填剤もしくは無機充填剤の有無に左右されない多環芳香族複素環ポリマーであってよい。実施形態では、ポリマーは別の熱安定性ポリマー、例えば、200℃~400℃の範囲内の温度、例えば250℃、300℃および350℃で分解しないポリマーから形成されていてよい。実施形態では、コーティング230は、硬化の際にポリマーを形成するモノマーおよびシランであってよい。
【0084】
実施形態では、コーティング230は、100μm以下、さらには、1μm以下の厚さを有していてよい。実施形態では、コーティング230は、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、さらには、25nm以下の厚さを有していてよい。実施形態では、コーティング230は、コーティングされたガラス容器200の全体にわたって均一な厚さでなくてよい。例えば、コーティングされたガラス容器200は、コーティング230を形成するプロセスに起因して、一部の領域により肉厚のコーティング230を有していてよい。実施形態では、コーティング230の厚さは、コーティングされたガラス容器200のそれぞれ異なる領域にわたって変えられていてよく、これによって、選択された領域における保護を促進することができる。
【0085】
実施形態では、コーティング230は、全体を参照により本明細書に援用する米国特許第10,737,973号明細書に記載されているようなバイアル・オン・バイアルジグ試験によって決定されるような類似にコーティングされたガラス容器に対して相対的に0.7以下の摩擦係数を有していてよい。実施形態では、摩擦係数は、0.6以下、0.5以下、0.4以下、さらには、0.3以下であってよい。0.7以下の摩擦係数を有するコーティングされたガラス容器は、概して、摩擦による損傷に対して改善された耐性を示し、結果として、改善された機械的な特性を有している。例えば、(本明細書に記載したようなコーティング230なしの)従来のガラス容器は、0.7超の摩擦係数を有してしまっている。
【0086】
実施形態では、コーティングされたガラス容器200のコーティング230を備えた部分の摩擦係数は、同じガラス組成物から形成されたコーティングされていないガラス容器の表面の摩擦係数よりも少なくとも20%小さい。例えば、コーティングされたガラス容器200のコーティング230を備えた部分の摩擦係数は、同じガラス組成物から形成されたコーティングされていないガラス容器の表面の摩擦係数よりも少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも20%、少なくとも40%、さらには、少なくとも50%小さくてよい。
【0087】
ガラス容器を形成するために、限定することなしに、種々のプロセス、例えば、フュージョン成形、スロットドロー、フローティング、ローリングおよび当業者に知られている別のガラス成形プロセスが使用されてよい。ガラス容器は、形成されると、例えば真空成形または任意の別の従来のガラス成形プロセスによって所望の3次元の形状に任意選択的に成形されてよい。
【0088】
ガラス容器は、形成され、任意選択的に成形されると、熱処理されて、分相を生じさせ、これによって、少なくとも1つの第2のガラス相が内部に分散されている第1のガラス相の連続マトリックスが形成される。熱処理プロセスは、概して、ガラス容器を熱処理温度に加熱することと、ガラス容器に所望の量の分相を生じさせるのに十分な期間にわたってガラス容器を熱処理温度に保つこととを含んでいる。実施形態では、熱処理温度は、500℃以上650℃以下、525℃以上650℃以下、550℃以上650℃以下、500℃以上625℃以下、525℃以上625℃以下、550℃以上625℃以下、500℃以上600℃以下、525℃以上600℃以下、さらには、550℃以上600℃以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲であってよい。実施形態では、ガラス容器は、0.05時間以上50時間以下、0.1時間以上50時間以下、1時間以上50時間以下、4時間以上50時間以下、0.05時間以上36時間以下、0.1時間以上36時間以下、1時間以上36時間以下、4時間以上36時間以下、0.05時間以上24時間以下、0.1時間以上24時間以下、1時間以上24時間以下、4時間以上24時間以下、0.05時間以上12時間以下、0.1時間以上12時間以下、1時間以上12時間以下、さらには、4時間以上12時間以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲の期間にわたって熱処理温度に保たれてよい。
【0089】
本明細書に記載したように、コーティングの付着を促進しかつコーティングの割れ、小剥がれおよび/または剥がれを減じるかまたは排除するために、ガラス容器の外面における表面積を増加させることが所望されることがある。したがって、段階気孔率(つまり、外面層が、この外面層から内面に延在するガラス本体の残存部分の気孔率よりも高い気孔率を有している)を有するガラス容器が形成されてよい。したがって、実施形態では、ガラス容器に分相を生じさせるための熱処理に続いて、ガラス容器がさらに処理され、少なくとも1つの第2のガラス相が第1のガラス相の連続マトリックスから除去されて、ガラス容器に第1のガラス相の多孔質の連続マトリックスが形成される。実施形態では、少なくとも1つの第2のガラス相は、ガラス容器をエッチングすることによって、第1のガラス相の連続マトリックスから除去されてよい。上述したように、実施形態では、少なくとも1つの第2のガラス相は、水、塩基性の溶液および/または酸性の溶液中でガラス容器の分相されたガラス組成物の第1のガラス相よりも高い溶解速度を有していて、これによって、少なくとも1つの第2のガラス相を第1のガラス相よりも溶解しやすくすることができる。
【0090】
実施形態では、ガラス容器をエッチングすることは、段階気孔率を有するガラス容器を製造するために、ガラス本体の外面を第1のエッチャントに接触させることと、ガラス本体の内面とエッチャントとの間の接触を阻止することとを含んでいる。実施形態では、気孔率および/または気孔サイズはエッチング後に均一でなく、このことは、ガラス本体の少なくとも所定の残存部分における部分的な緻密化を促進するのに役立てることができる。例えば、実施形態では、エッチング後、ガラス本体の外面層は、30%以上50%以下の気孔率を有していてよく、この気孔率は外面から内面に減少していてよい。実施形態では、エッチャントの浸透深さが外面層の厚さを規定している。
【0091】
ガラス容器は、ガラスクラッド層104a,104bにおける第1のガラス相の連続マトリックスから少なくとも1つの第2のガラス相の全てを実質的に除去するのに十分な温度でかつ期間にわたってエッチャントに接触させられ、これによって、第1のガラス相の多孔質の連続マトリックスが残される。
【0092】
実施形態では、第1のエッチャントに接触させることは、20℃以上125℃以下の温度でかつ0.1時間以上1時間以下の期間にわたって行われてよい。実施形態では、第1のエッチャントに接触させることは、20℃以上125℃以下、40℃以上120℃以下、60℃以上115℃以下、さらには、80℃以上110℃以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲の温度で行われてよい。実施形態では、第1のエッチャントに接触させることは、0.1時間以上1時間以下、さらには、0.5時間以上0.75時間以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲の期間にわたって行われてよい。
【0093】
実施形態では、段階気孔率を有するガラス容器を製造するためのプロセスは、さらに、ガラス本体の外面を第2のエッチャントに接触させることを含んでいてよい。実施形態では、第2のエッチャントに接触させることは、75℃以上125℃以下の温度で16時間以上48時間以下の期間にわたって行われてよい。実施形態では、第2のエッチャントに接触させることは、75℃以上125℃以下、80℃以上120℃以下、85℃以上115℃以下、さらには、90℃以上110℃以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲の温度で行われてよい。実施形態では、第2のエッチャントに接触させることは、16時間以上48時間以下、20時間以上44時間以下、24時間以上40時間以下、さらには、28時間以上36時間以下またはこれらの端点のいずれかから形成される任意のかつ全ての部分範囲の期間にわたって行われてよい。
【0094】
実施形態では、段階気孔率を有するガラス容器を製造するためのプロセスは、さらに、エッチングされたガラス容器を溶液中にて75℃以上125℃以下の温度で12時間以上24時間以下の期間にわたってリンスすることと、エッチングされたガラス容器を水中にて75℃以上125℃以下の温度で12時間以上24時間以下の期間にわたってリンスすることとを含んでいてよい。実施形態では、溶液は、無機酸、弱酸またはこれらの組合せであってよい。実施形態では、無機酸は、HCl、HNO3またはこれらの組合せを含んでいてよい。実施形態では、弱酸は、クエン酸溶液(例えば0.1M(100mol/m3))、酒石酸、アスコルビン酸、EDTA、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸またはこれらの組合せを含んでいてよい。
【0095】
実施形態では、第1のエッチャントおよび/または第2のエッチャントは、全体を参照により本明細書に援用する米国特許第8,978,414号明細書に開示されているような実質的にフッ化物不含の水性の酸性処理媒体であってよい。「実質的にフッ化物不含の」という文言は、媒体がその総重量を基準として約0.15質量%(つまり、1500ppm(約0.15%))以下のフッ化物イオンを含んでいることを意味している。したがって、実施形態では、水性の酸性処理媒体はフッ化物イオンを有していない。実施形態では、(例えばHF、NaF、NH4HF2またはこれに類するものに基づく)フッ化物イオンの供給源が存在しているはずである。例えば、実施形態では、実質的にフッ化物不含の水性の酸処理媒体は、約0.1質量%までのフッ化物イオンを含んでいるはずである。実施形態では、実質的にフッ化物不含の水性の酸処理媒体は、約0.001質量%~約0.095質量%のフッ化物イオンを含んでいてよい。実施形態では、実質的にフッ化物不含の水性の酸処理媒体が使用されて、ガラス容器の気孔サイズおよび/または気孔率が変化させられてよい。
【0096】
実質的にフッ化物不含の水性の処理媒体を調製するためには、種々の酸性化合物が単独でまたは組み合わされて使用されてよい。実施形態では、水性の酸性処理媒体は、無機酸またはキレート有機酸を含む有機酸、例えば酸の水溶液を含んでいてよい。このような酸の実例は、HCl、HBr、HNO3、H2SO4、H2SO3、H3PO4、H3PO2、HOAc、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、EDTA、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸およびこれらの組合せを含んでいる。実施形態では、無機酸は、少なくとも1つの第2のガラス相をエッチングするために使用される。
【0097】
本明細書に記載したように、ガラス容器の内面を完全に緻密化することを含めて、ガラス容器の残存部分を少なくとも部分的に緻密化して、化学的な耐久性を有する不活性の医薬品パッケージを形成する一方、外面の十分な気孔率を確保して、ガラス容器へのコーティングの付着を促進することも所望されることがある。
【0098】
したがって、実施形態では、段階気孔率を有するガラス容器を製造するためのプロセスは、さらに、エッチングされた容器を(例えば熱緻密化スケジュールに従って)加熱して、ガラス本体の少なくとも残存部分における気孔を少なくとも部分的に緻密化することを含んでいてよい。本明細書に記載したように、実施形態では、ガラス容器の気孔サイズは、エッチングされたガラス本体にわたって均一でない。外面層とガラス本体の残存部分との間の気孔サイズのばらつきによって、外面層を部分的にまたは完全に緻密化することなしに、ガラス本体の少なくとも残存部分における部分的な緻密化を促進することができる。実施形態では、エッチングされたガラス容器を加熱することは、エッチングされたガラス容器を50℃/時間以上150℃/時間以下の第1の平均加熱速度で200℃以上300℃以下の第1の温度範囲に加熱することと、エッチングされたガラス容器を150℃/時間以上250℃/時間以下の第2の平均加熱速度で1150℃以上1300℃以下の第2の温度範囲に加熱することと、ガラス本体の少なくとも残存部分における気孔が少なくとも部分的に緻密化されるように、エッチングされたガラス容器を0.1時間以上0.5時間以下の期間にわたって第2の温度範囲に保つことと、部分的に緻密化されたガラス容器を室温に冷却することとを含んでいる。
【0099】
熱緻密化スケジュールに対して付加的にまたは熱緻密化スケジュールに対する代替として、実施形態では、ガラス容器の残存部分が緻密化されている間に気孔が外面に残ること確保するために、ガラス本体の外面層における気孔が、エッチングされたガラス容器を加熱することに先だってマスキングされてよい。実施形態では、ガラス本体の外面層における気孔は、黒鉛、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ハロゲン化アルカリ塩またはこれらの組合せによってマスキングされる。実施形態では、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)またはハロゲン化アルカリ塩は、外面層に被着されることに先だって、飽和するまで溶媒(例えば水、イソプロパノール、エタノールまたはこれらの組合せ)中で溶解され、外面層に接触させられると、析出する。実施形態では、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)および/またはポリ(ビニルピロリドン)の浸透深さは、溶媒粘度によって制限されてよい。実施形態では、ハロゲン化アルカリ塩の浸透深さは、塩の核生成速度および成長速度によって制限されてよい。気孔が、黒鉛、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)および/またはポリ(ビニルピロリドン)によってマスキングされている実施形態では、高められた温度(例えば緻密化温度)で酸素に曝されると、黒鉛、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)および/またはポリ(ビニルピロリドン)が急速に酸化して、ガラス本体の外面層における気孔から除去されることになる。気孔がハロゲン化アルカリ塩によってマスキングされる実施形態では、塩が水溶解によってガラス本体の外面層における気孔から除去される。
【0100】
実施形態では、ガラス容器がエッチングされ、緻密化された後、本明細書に記載したように、ガラス容器はコーティングによってコーティングされてよい。ガラス容器は、本明細書に記載したエッチングステップと緻密化ステップとにより形成された段階気孔率を有しているため、ガラス容器の外面における表面積が増加させられ、これによって、ガラス容器へのコーティングの付着が促進され、コーティングの割れ、小剥がれおよび/または剥がれが減じられるかまたは排除される。ガラス容器を充填するかまたはコーティングするために、限定することなしに、浸漬コーティング、フローコーティング、真空コーティングまたはこれに類するものを含めて、種々の技術が使用されてよい。
【実施例】
【0101】
種々の実施形態をより理解しやすくするために、本明細書に記載した多孔質のガラス容器の種々の実施形態を示した以下の例について言及することにする。
【0102】
表1には、本明細書に記載したガラス容器を形成するために使用されてよい例1~16のガラス組成物が(モル%に関して)示してある。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
ガラス組成物は、本明細書に記載したガラス容器を形成するために使用されてよい。なぜならば、ガラス組成物が熱処理の際に分相可能であるからである。例えば、例1~9のガラス組成物は、シリカリッチ相と酸化ホウ素リッチ相とに分離されてよい。例10~12のガラス組成物は、シリカリッチ相と酸化リンリッチ相とに分離されてよい。例13~15のガラス組成物は、シリカリッチかつチタニアリッチ相と、酸化カルシウムリッチかつ酸化ホウ素リッチ相とに分離されてよい。
【0107】
ここで、
図5を参照すると、1mmの厚さを有する第1のガラス容器および第2のガラス容器を例1のガラス組成物から形成した。ガラス容器を炉内にて580℃で3時間にわたって熱処理して、シリカリッチ相と酸化ホウ素リッチ相とへの分相を生じさせた。熱処理し、分相を生じさせた後、ガラス容器を、二フッ化アンモニウム(0.26M(260mol/m
3))とクエン酸(1M(1000mol/m
3))とを含むエッチャントによって25℃で1.5時間にわたってエッチングして、エッチングされた表面層を有するガラス容器を製造した。次いで、ガラス容器を、HCl(1M(1000mol/m
3))によって95℃で24時間にわたってエッチングし、酸化ホウ素リッチ相を除去し、段階気孔率を有するガラス容器を製造した。
図5に示したように、第1のガラス容器の外面層EL
1(つまり、外面からガラス容器の厚さ内に100nm延在する層)は、50%の気孔率と20nmの気孔サイズとを有していた。第1のガラス容器の残存部分R
1は、30%±0.03の気孔率と5nmの気孔サイズとを有していた。第2のガラス容器の外面EL
2は、50%の気孔率と10nmの気孔サイズとを有していた。
【0108】
エッチングされたガラス容器を炉内で後続の熱緻密化スケジュールに供し、室温から250℃に100℃/時間の速度で加熱し、250℃から1225℃に200℃/時間の速度で加熱し、1225℃に20分にわたって保ち、炉速度で1225℃から室温に冷却した。熱緻密化スケジュールに供された後、第1のガラス容器の外面層EL
1は、33%の気孔率と13nmの気孔サイズとを有していた。第1のガラス容器の残存部分R
1は、0%の気孔率と0nmの気孔サイズとを有していた。第2のガラス容器の外面層EL
2は、17%の気孔率と3.5nmの気孔サイズとを有していた。
図5によって示したように、本明細書に記載したガラス容器は、緻密化された内面と、外面層へのコーティングの付着を促進するための外面層に所望の気孔率および気孔サイズとを達成するために、特定の熱緻密化スケジュールに供されてよい。
【0109】
ここで、
図6~
図8を参照すると、
図5に関して説明したガラス容器を、プロットで示したような保温温度は別として、同じ熱緻密化スケジュールに供した。
図6には、第1のガラス容器の残存部分の気孔率が示してあり、
図7には、熱緻密化スケジュールに供される前の10nmの気孔サイズを有する外面層を備えた第2のガラス容器の気孔率が示してあり、
図8には、熱緻密化スケジュールに供される前の20nmの気孔サイズを有する外面層を備えた第1のガラス容器の気孔率が示してある。
図6~
図8によって示したように、本明細書に記載したガラス容器は、緻密化された内面と、外面層へのコーティングの付着を促進するための外面層に所望の気孔率とを達成するために、特定の熱緻密化スケジュールに供されてよい。
【0110】
当業者に明らかであるように、特許請求の範囲の主題の趣旨および範囲から逸脱することなしに、本明細書に記載した実施形態に対して種々の変更および変形が行われてよい。したがって、本明細書は、本明細書に記載した種々の実施形態の変更および変形が、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内にある限り、このような変更および変形を網羅しているという意図がある。
【0111】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0112】
実施形態1
ガラス容器であって、
ガラス本体であって、外面と、該外面と反対側の内面と、前記外面と前記内面との間に延在する厚さTと、前記外面から前記ガラス本体の前記厚さ内に延在する外面層とを備えたガラス本体を備え、
前記外面層は、該外面層から前記内面に延在する前記ガラス本体の残存部分の気孔率よりも高い気孔率を有する、
ガラス容器。
【0113】
実施形態2
前記外面層は、前記外面から前記ガラス本体の前記厚さ内に10nm以上100nm以下にわたって延在している、実施形態1記載のガラス容器。
【0114】
実施形態3
前記外面層は30%超50%以下の気孔率を有する、実施形態1または2記載のガラス容器。
【0115】
実施形態4
前記ガラス本体の前記残存部分は0%以上30%以下の気孔率を有する、実施形態1から3までのいずれか1つ記載のガラス容器。
【0116】
実施形態5
前記ガラス本体の前記残存部分の前記気孔率は0%である、実施形態4記載のガラス容器。
【0117】
実施形態6
前記外面層は、10nm以上20nm以下の気孔サイズを有する気孔を含む、実施形態1から5までのいずれか1つ記載のガラス容器。
【0118】
実施形態7
前記ガラス本体の前記残存部分は、10nm未満の気孔サイズを有する気孔を含む、実施形態1から6までのいずれか1つ記載のガラス容器。
【0119】
実施形態8
前記ガラス本体の前記残存部分の前記気孔は5nm以下の気孔サイズを有する、実施形態7記載のガラス容器。
【0120】
実施形態9
前記ガラス本体の前記残存部分は完全に緻密化されている、実施形態1から8までのいずれか1つ記載のガラス容器。
【0121】
実施形態10
前記ガラス本体は25モル%以上のSiO2を含む、実施形態1から9までのいずれか1つ記載のガラス容器。
【0122】
実施形態11
前記ガラス容器は、前記ガラス本体の前記外面層の気孔内に配置されたポリマーを含むコーティングされたガラス容器である、実施形態1から10までのいずれか1つ記載のガラス容器。
【0123】
実施形態12
前記ポリマーは前記ガラス本体の前記外面にも配置されている、実施形態11記載のガラス容器。
【0124】
実施形態13
前記ポリマーは0.7以下の摩擦係数を有する、実施形態11または12記載のガラス容器。
【0125】
実施形態14
前記ガラス容器は医薬品パッケージである、実施形態1から13までのいずれか1つ記載のガラス容器。
【0126】
実施形態15
段階気孔率を有するガラス容器を形成する方法であって、
ガラス本体であって、外面と、該外面と反対側の内面と、前記外面と前記内面との間に延在する厚さTと、前記外面から前記ガラス本体の前記厚さ内に延在する外面層とを備えたガラス本体を有するガラス容器を準備するステップと、
前記段階気孔率を有する前記ガラス容器を製造するために、前記ガラス本体の前記外面を第1のエッチャントに接触させるステップおよび前記ガラス本体の前記内面と前記第1のエッチャントとの間の接触を阻止するステップと
を含み、
前記外面層は、該外面層から前記内面に延在する前記ガラス本体の残存部分の気孔率よりも高い気孔率を有する、
方法。
【0127】
実施形態16
前記ガラス本体の少なくとも前記残存部分における気孔を少なくとも部分的に緻密化するために、エッチングされた前記ガラス容器を加熱するステップをさらに含む、実施形態15記載の方法。
【0128】
実施形態17
前記エッチングされたガラス容器を加熱するステップは、
前記エッチングされたガラス容器を50℃/時間以上150℃/時間以下の第1の平均加熱速度で200℃以上300℃以下の第1の温度範囲に加熱するステップと、
前記エッチングされたガラス容器を150℃/時間以上250℃/時間以下の第2の平均加熱速度で1150℃以上1300℃以下の第2の温度範囲に加熱するステップと、
前記ガラス本体の少なくとも前記残存部分における前記気孔が少なくとも部分的に緻密化されるように、前記エッチングされたガラス容器を0.1時間以上0.5時間以下の期間にわたって前記第2の温度範囲に保つステップと、
部分的に緻密化された前記ガラス容器を室温に冷却するステップと
を含む、実施形態16記載の方法。
【0129】
実施形態18
前記エッチングされたガラス容器を加熱するステップに先だって、前記ガラス本体の前記外面層内の気孔をマスキングする、実施形態16または17記載の方法。
【0130】
実施形態19
前記ガラス本体の前記外面層内の前記気孔を黒鉛、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ハロゲン化アルカリ塩またはこれらの組合せによってマスキングする、実施形態18記載の方法。
【0131】
実施形態20
部分的に緻密化された前記ガラス容器を、0.7以下の摩擦係数を有するコーティングによってコーティングするステップをさらに含む、実施形態16から19までのいずれか1つ記載の方法。
【0132】
実施形態21
前記ガラス容器はアルカリホウケイ酸ガラス組成物から形成されている、実施形態15から20までのいずれか1つ記載の方法。
【0133】
実施形態22
前記第1のエッチャントに接触させるステップに先だって、前記ガラス容器を加熱して、前記アルカリホウケイ酸ガラス組成物を酸化ホウ素リッチ相とシリカリッチ相とに分離するステップをさらに含む、実施形態21記載の方法。
【0134】
実施形態23
前記第1のエッチャントは、実質的にフッ化物不含の水性の酸性処理媒体である、実施形態15から22までのいずれか1つ記載の方法。
【0135】
実施形態24
前記第1のエッチャントに接触させるステップを20℃以上125℃以下の温度で0.1時間以上1時間以下の期間にわたって行う、実施形態15から23までのいずれか1つ記載の方法。
【0136】
実施形態25
前記ガラス本体の前記外面を75℃以上125℃以下の温度で16時間以上48時間以下の期間にわたって第2のエッチャントに接触させるステップをさらに含む、実施形態15から24までのいずれか1つ記載の方法。
【0137】
実施形態26
エッチングされた前記ガラス容器を溶液中にて75℃以上125℃以下の温度で12時間以上24時間以下の期間にわたってリンスするステップと、エッチングされた前記ガラス容器を水中にて75℃以上125℃以下の温度で12時間以上24時間以下の期間にわたってリンスするステップとをさらに含む、実施形態15から25までのいずれか1つ記載の方法。
【国際調査報告】