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特表2024-530616マクロ細孔およびミクロ細孔の複合ハイブリッドスケール繊維マトリクス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】マクロ細孔およびミクロ細孔の複合ハイブリッドスケール繊維マトリクス
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/60 20060101AFI20240816BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20240816BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20240816BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20240816BHJP
   D04H 3/011 20120101ALI20240816BHJP
【FI】
A61L27/60
A61L15/26 100
A61L27/40
D01F6/62 305
D04H3/011
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505250
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 IB2022057029
(87)【国際公開番号】W WO2023007444
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/203,731
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524035933
【氏名又は名称】アセラ サージカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マキュアン、マシュー・アール
(72)【発明者】
【氏名】ジェン、リリー
(72)【発明者】
【氏名】ラヒミ、アブドゥルラソル
(72)【発明者】
【氏名】ジャッサル、マニーシャ
(72)【発明者】
【氏名】コヴァーチ、タマーシュ
【テーマコード(参考)】
4C081
4L035
4L047
【Fターム(参考)】
4C081AA12
4C081AB19
4C081BA12
4C081BA13
4C081BA16
4C081CA172
4C081DA04
4C081DB03
4C081DB07
4C081DC02
4C081EA02
4C081EA13
4L035AA04
4L035BB02
4L035BB11
4L035DD13
4L047AA19
4L047AA21
4L047BD01
4L047CC03
(57)【要約】
創傷治癒を改善するために使用し得る不織ハイブリッドスケール繊維マトリクスシートの実施形態が本明細書に開示される。不織ハイブリッドスケール繊維マトリクスシートは、ハイブリッドスケール繊維マトリクスに起因するミクロ細孔と、ハイブリッドスケール繊維マトリクスシートに切断または穿孔を追加することによるマクロ細孔の両方であってもよい。ミクロ細孔性シートおよびマクロ細孔性シートは、創傷部位における生物学的治癒を改善し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷ケアのために組織を修復する際に使用するための三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片であって、
第1の生体吸収性ポリマーを含む電界紡糸繊維の第1のセットと、第2の生体吸収性ポリマーを含む電界紡糸繊維の第2のセットとを有する、柔軟な電界紡糸繊維網を有しており、
前記第1の生体吸収性ポリマーは、前記第2の生体吸収性ポリマーとは異なる組成を有しており、
前記柔軟な電界紡糸繊維網は、1つ以上のマクロスケール細孔および1つ以上のミクロスケール細孔をさらに有しており、前記1つ以上のマクロスケール細孔は、約1mm~約20mmの開口部を有しており、前記1つ以上のミクロスケール細孔は、面積が約10μm~約10,000μmの開口部を有しており、
前記三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片は、前記組織の不均一な表面への前記三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片の適用を容易にするのに十分な柔軟性を有しており、
前記三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片は、前記組織による前記三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片の移動を可能にするのに十分な柔軟性を有しており、
前記電界紡糸繊維の第1のセットおよび前記電界紡糸繊維の第2のセットが、前記組織への適用後に分解するように構成されている、三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片。
【請求項2】
前記三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片の前記1つ以上のマクロスケール細孔が、滲出液の通過を可能にするように構成されている、請求項1に記載の三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片。
【請求項3】
前記三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片の前記1つ以上のミクロスケール細孔が、細胞増殖を促進するように構成されている、請求項1に記載の三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片。
【請求項4】
前記表面から生じる少なくとも1つの突起をさらに有する、請求項1に記載の三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片。
【請求項5】
前記第1の生体吸収性ポリマーがポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含み、前記第2の生体吸収性ポリマーがポリジオキサノンを含む、請求項1に記載の三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片。
【請求項6】
穿孔が前記マトリクス全体に均等に分布している、請求項1に記載の三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片。
【請求項7】
組織修復用の生物医学的パッチデバイスを製造する方法であって、
電界紡糸を介して電界紡糸されたハイブリッドスケール繊維を有する繊維の第1の構造を堆積させるステップであって、前記繊維の第1の構造が細胞増殖を促進するように構成されている、ステップと、
電界紡糸を介して電界紡糸されたハイブリッドスケール繊維を有する繊維の第2の構造を堆積させるステップであって、前記繊維の第2の構造が細胞増殖を促進するように構成されている、ステップとを含み、
前記繊維の第1の構造は、前記繊維の第2の構造とは異なる組成を含んでおり、
前記繊維の第1の構造および前記繊維の第2の構造は、1つ以上のマクロスケール細孔および1つ以上のミクロスケール細孔を有しており、前記1つ以上のマクロスケール細孔は、約1mm~約20mmの開口部を有し、前記1つ以上のミクロスケール細孔は、面積が約10μm~約10,000μmの開口部を有しており、
前記生物医学的パッチデバイスは表面を有しており、前記表面は、組織と接触するように構成された表面パターンを有しており、前記表面パターン、前記繊維の第1の構造、および前記繊維の第2の構造は、1つ以上の定義された方向における細胞増殖を促進するように構成されており、前記生物医学的パッチデバイスは、前記生物医学的パッチデバイスの前記組織の不均一な表面への適用を容易にするのに十分な柔軟性を有しており、前記生物医学的パッチデバイスは、前記生物医学的パッチデバイスの前記組織との移動を可能にするために十分な柔軟性を有しており、
前記繊維の第1の構造および前記繊維の第2の構造が、前記組織への適用後に分解するように構成されている、方法。
【請求項8】
特定のサイズの前記生物医学的パッチの第1の部分が、前記特定のサイズの生物医学的パッチの第2の部分よりも多数の繊維を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記表面パターンが、収集器と紡糸口金との間にマスクを配置することによって形成され、前記マスクが、前記収集器上に前記繊維の第1の構造または前記繊維の第2の構造の少なくとも一部が堆積するのを防止するように構成されている、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記表面パターンが、前記繊維の第1の構造および前記繊維の第2の構造をマスクなしで収集器上に直接堆積させることによって形成される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記表面パターンが、複数の組織化された特徴を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記表面パターンが、前記複数の定義された方向のうちの1つ以上における細胞の移動をさらに促進するように構成された複数のトポグラフィ特徴を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記マクロスケール細孔が、機械的、電子的、および/またはコンピュータ制御による切断によって生成される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記切断がレーザ切断である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記表面パターンが、前記表面から生じる突起をさらに有する、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記表面パターンが、前記表面から下方に突出するへこみをさらに有する、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、生体適合性を改善するためのマクロ細孔およびミクロ細孔を有するハイブリッドスケール繊維マトリクスのシートに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の病的状態および外科的処置により、様々な臓器、組織および解剖学的構造に実質的な欠陥が生じる。そのような症例の大部分では、外科医および医師は、特殊なタイプの外科用メッシュ、材料、および/または足場を利用してそのような欠陥を修復する必要がある。残念ながら、既知の外科用材料のインビボ性能は、いくつかの制限要因によって悪影響を受ける。例えば、既存の合成外科用メッシュは、典型的には、過剰な線維症または瘢痕化をもたらし、組織一体化不良をもたらし、術後疼痛のリスクが増大する。同時に、既知の生物学的材料は、強い免疫反応および異常な組織内殖を誘発し、患者の転帰に悪影響を及ぼし得る。さらに、既存の合成外科用メッシュは、瘢痕化、術後疼痛、可動性の制限、可動域の制限、癒着、感染症、びらん、生体力学的特性の低下、および/または術中の取り扱いの低下を引き起こす可能性がある。
【0003】
ナノ加工、ナノ繊維、またはハイブリッドスケール繊維マトリクスは、個々のヒト細胞よりも数万~数千倍小さい再吸収性ポリマー繊維から構成されるメッシュまたは材料であり、最近、埋め込み可能な外科用メッシュおよび材料のための独自の基材として提案されている。一般に、既存のナノ繊維材料は、既知の外科用メッシュと比較して機械的性能が最適でない傾向がある。既存のナノ繊維材料は、多数の外科用途またはインビボ配置前の基本的な術中操作に必要な引張強度、引裂抵抗、および破裂強度を有していない。この欠点に対抗するために、機械的強度を改善する手段として、より高い繊維密度を使用して既知のメッシュが形成される。しかし、そのような高密度メッシュの利用は、メッシュ内への有効な細胞および組織内殖を減少させ、天然組織とのメッシュ一体化を減少させ、ポリマーインプラントの生体適合性を低下させ得る。結果として、厚さおよび/または強度が増加し、良好な細胞および/または組織一体化および生体適合性を有するナノ繊維またはハイブリッドスケール繊維マトリクス材料、ならびにナノ繊維材料を製造する方法が必要とされている。
【0004】
組織の修復は、問題の天然組織のように作用するポリマー材料のシートまたは処理された組織を含む、本明細書に記載の1つ以上の材料によって促進され得る。例えば、外傷によってまたは医療処置中に意図的に引き起こされるものを含む皮膚創傷は、好ましい細胞および組織一体化を有する材料の適用によって修復され得る。皮膚創傷の修復を促進するために、創傷の治癒を促進し、さらなる害から創傷を保護するために、包帯および他の被覆材を臨床および外科の両方の状況で適用し得る。典型的な創傷被覆材には、滲出液の吸収、滲出液の排液、滲出液の管理、異物および死細胞物質の剥離、出血の停止、感染からの保護、および疼痛の緩和、ならびに一般的に治癒過程の促進を含む様々な目的がある。別の例として、神経外科修復は、本明細書に記載の1つ以上の材料を使用して行われ得る。
【0005】
さらに、細胞マイクロアレイは生物医学研究および組織工学に有用であり得るが、そのような細胞マイクロアレイを製造するための少なくともいくつかの既知の技術は、費用および時間がかかる場合があり、特殊化された高度な機器の使用を必要とする場合がある。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載の様々な実施形態は、生体適合性を改善するためのマクロ細孔およびミクロ細孔を有するハイブリッドスケール繊維マトリクスのシートに関する。
【0007】
特に、いくつかの実施形態では、創傷ケアのために組織を修復する際に使用するための三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクスであって、第1の生体吸収性ポリマーを含む電界紡糸繊維の第1のセットと、第2の生体吸収性ポリマーを含む電界紡糸繊維の第2のセットとを有する、柔軟な電界紡糸繊維網を有しており、第1の生体吸収性ポリマーは、第2の生体吸収性ポリマーとは異なる組成を有しており、柔軟な電界紡糸繊維網は、1つ以上のマクロスケール細孔および1つ以上のミクロスケール細孔をさらに有しており、1つ以上のマクロスケール細孔は、約1mm~約20mmの開口部を有しており、1つ以上のミクロスケール細孔は、面積が約10μm~約10,000μmの開口部を有しており、三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクスは、組織の不均一な表面への三次元電界紡糸ナノ繊維合成皮膚移植片の適用を容易にするのに十分な柔軟性を有しており、三次元電界紡糸ナノ繊維合成皮膚移植片は、組織による三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクスの移動を可能にするのに十分な柔軟性を有しており、電界紡糸繊維の第1のセットおよび電界紡糸繊維の第2のセットが、組織への適用後に分解するように構成されている、三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクス合成皮膚移植片が記載される。
【0008】
三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクスのいくつかの実施形態では、三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクスの1つ以上のマクロスケール細孔は、滲出液の通過または管理を可能にするように構成されている。三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクスのいくつかの実施形態では、三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクスの1つ以上のミクロスケール細孔は、細胞増殖を促進するように構成されている。
【0009】
いくつかの実施形態では、三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクスは、表面から生じる少なくとも1つの突起をさらに有する。いくつかの実施形態では、三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクスの、第1の生体吸収性ポリマーがポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含み、第2の生体吸収性ポリマーがポリジオキサノンを含む。三次元電界紡糸ハイブリッドスケール繊維マトリクスのいくつかの実施形態では、穿孔がマトリクス全体に均等に分布している。
【0010】
また、組織修復用の生物医学的パッチデバイスを製造する方法であって、電界紡糸を介して電界紡糸されたナノ繊維を有する繊維の第1の構造を堆積させるステップであって、繊維の第1の構造が細胞増殖を促進するように構成されている、ステップと、電界紡糸を介して電界紡糸されたナノ繊維を有する繊維の第2の構造を堆積させるステップであって、繊維の第2の構造が細胞増殖を促進するように構成されている、ステップとを含み、繊維の第1の構造は、繊維の第2の構造とは異なる組成を含んでおり、繊維の第1の構造および繊維の第2の構造は、1つ以上のミクロスケール細孔および1つ以上のマクロスケール細孔を有しており、1つ以上のマクロスケール細孔は、約1mm~約20mmの開口部を有しており、1つ以上のミクロスケール細孔は、面積が約10μm~約10,000μmの開口部を有しており、生物医学的パッチデバイスは表面を有しており、表面は、組織と接触するように構成された表面パターンを有しており、表面パターン、繊維の第1の構造、および繊維の第2の構造は、1つ以上の定義された方向における細胞増殖を促進するように構成されており、生物医学的パッチデバイスは、生物医学的パッチデバイスの組織の不均一な表面への適用を容易にするのに十分な柔軟性を有しており、生物医学的パッチデバイスは、生物医学的パッチデバイスの組織との移動を可能にするために十分な柔軟性を有しており、繊維の第1の構造および繊維の第2の構造が、組織への適用後に分解するように構成されている、方法が開示される。
【0011】
方法のいくつかの実施形態では、特定のサイズの生物医学的パッチの第1の部分は、特定のサイズの生物医学的パッチの第2の部分よりも多数の繊維を含む。方法のいくつかの実施形態では、表面パターンは、収集器と紡糸口金との間にマスクを配置することによって形成され、マスクは、収集器上に繊維の第1の構造または繊維の第2の構造の少なくとも一部が堆積するのを防止するように構成されている、方法のいくつかの実施形態では、表面パターンは、繊維の第1の構造および繊維の第2の構造をマスクなしで収集器上に直接堆積させることによって形成される。方法のいくつかの実施形態では、表面パターンは、複数の組織化された特徴を有する。いくつかの実施形態では、表面パターンは、複数の定義された方向のうちの1つ以上における細胞の移動をさらに促進するように構成された複数のトポグラフィ特徴を有する。いくつかの実施形態では、マクロスケール細孔は、機械的、電子的、および/またはコンピュータ制御による切断により生成される。いくつかの実施形態では、切断はレーザ切断である。いくつかの実施形態では、表面パターンは、表面から生じる突起をさらに有するいくつかの実施形態では、表面パターンは、表面から下方に突出するへこみをさらに有する。
【0012】
この概要の目的のために、本発明の特定の態様、利点、および新規な特徴が本明細書に記載されている。本発明の任意の特定の実施形態に従って、必ずしも全てのそのような利点が達成され得るとは限らないことを理解されたい。したがって、例えば、当業者は、本発明が、本明細書で教示または示唆され得るような他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの利点または利点の群を達成するように具体化または実施され得ることを認識するであろう。
【0013】
これらの実施形態は全て、本明細書に開示される発明の範囲内にあることが意図されている。これらおよび他の実施形態は、添付の図を参照して以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになり、本発明は、いかなる特定の開示された実施形態にも限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の不織ハイブリッドスケール繊維マトリクスの一実施形態の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
図2】ハイブリッドスケール繊維マトリクスのマクロ細孔性およびミクロ細孔性シートの実施形態を示す図である。
図3】マクロ細孔性パターンの種々の実施形態を示す図である。
図4】マクロ細孔性パターンの種々の実施形態を示す図である。
図5】マクロ細孔性パターンの種々の実施形態を示す図である。
図6】マクロ細孔性パターンの種々の実施形態を示す図である。
図7】マクロ細孔性パターンの種々の実施形態を示す図である。
図8】マクロ細孔性パターンの種々の実施形態を示す図である。
図9】マクロ細孔性パターンの種々の実施形態を示す図である。
図10】マクロ細孔性パターンの種々の実施形態を示す図である。
図11図11A図11Bは、本開示の実施形態の例示的な穿孔を示す図である。
図12図12A図12Dは、ハイブリッドスケール繊維マトリクスのマクロ細孔およびミクロ細孔シートの実施形態を示す図である。
図13図13A図13Eは、本開示の実施形態の例示的な穿孔を示す図である。
図14】例示的な皮膚創傷を示す図である。図14Aは、裂傷によって生じた皮膚創傷を示す。図14Bは、剥離および網目状ハイブリッドスケール繊維マトリクス被覆を有する皮膚創傷を示す。
図15】例示的な皮膚創傷およびその後の治癒過程を経時的に示す図である。
図16】例示的な皮膚創傷および経時的な治癒の進行を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で提供される実施形態は、図1に示すような複数の繊維を有する生物医学的パッチ(例えば、移植片、ナノ繊維マトリクス、ハイブリッドスケール繊維マトリクス、シート)に基づいて、生物学的組織の修復または生物医学的材料の補強を容易にする。そのような繊維は、非常に小さい断面直径(例えば、1~3000ナノメートル、1~1000ナノメートル)を有し得、したがって、ナノ繊維および/またはミクロ繊維と呼ばれることがある。生物医学的パッチは、硬膜および外科用メッシュとしての使用を参照して本明細書に記載されるが、記載された実施形態は、任意の生体組織に適用され得る。特定の実施形態では、生物医学的パッチは、皮膚創傷の処置として使用され得る。さらに、生物医学的パッチとして説明されているが、繊維を有する構造体は、他の目的のために使用されてもよい。したがって、記載される実施形態は、生物医学的パッチに限定されない。
【0016】
パッチは、その各々の全体が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2017/0326270号、同第2017/0319323号、ならびに米国特許第10,124,089号にさらに詳細に記載されている。
【0017】
有利には、開示されたハイブリッドスケール繊維マトリクスシースの実施形態は、ミクロ細孔性およびマクロ細孔性(例えば、網目状)のいずれでもあり得る。ハイブリッドスケール繊維マトリクス自体はミクロ細孔性であってもよく、追加のマクロカット/スリット/細孔/穴をマトリクスに追加して、滲出物(例えば、液体)がシートを通過することを可能にする手段を提供し得る。これは、シートおよび創傷の間に液体が閉じ込められることが問題となる可能性があるので、湿潤創傷にとって特に有利であり得る。創傷部における過剰な滲出液の蓄積は、組織損傷および感染の原因となり得る-したがって、滲出液の好適な排液および通過は、創傷処置の際の治癒転帰を改善し得る。
【0018】
有利には、開示されたシートの実施形態は、材料中の細胞内殖および組織内殖ならびに流体流の両方に最適化される重要かつ特定の切断パターンを含み得る。他の特性に加えて、追加の表面積強度、柔軟性、および全体的な適合性をカバーするためのシートの延伸など、他の物理的特性も最適化し得る。さらに、本開示の実施形態は、パターンを制御可能にし得、したがって、ユーザは、種々の特性を最適化するために必要に応じてシートを修正し得る。
【0019】
概して、本開示は、それぞれが独立した機械的、化学的および/または生物学的特性を有する2つ以上の異なる種類の繊維組成物を含む不織移植片材料に関する。さらに、材料は、ミクロ細孔性およびマクロ細孔性のいずれでもある。例えば、一実施形態では、1つの繊維組成物を含めることにより、得られた不織移植片材料を安定化し得、他方の繊維組成物により、不織移植片材料の安定性、自由収縮特性、機械的特性および吸収速度を改善し得る。
【0020】
本明細書で互換的に使用される場合、「不織移植片材料」および「不織移植片織物」は、織り合わされた個々の繊維または糸の構造を有するが、編物または織布のように識別可能な方法ではない材料を指す。不織移植片材料および不織移植片織物は、例えば、電界紡糸法、メルトブロー法、スパンボンド法、メルトスプレー法および接着カードウェブ法などの多くの方法から形成し得る。不織移植片材料の坪量は、通常、平方ヤード当たりの材料のオンス(osy)または平方メートル当たりのグラム(gsm)で表され、繊維径は、通常、ナノメートルおよびマイクロメートル(μm)で表される。本開示の不織移植片材料の好適な坪量は、約50gsm~約300gsmの範囲であり得る。より好適には、本開示の不織移植片材料の坪量は、約70gsm~約140gsmの範囲であり得る。本開示の不織移植片材料の引張強度は、約5ニュートン(N)~約50ニュートン(N)の範囲であり得、約1N~約10N~約15Nを含む。本開示の不織移植片材料の強度は、縫合糸が不織移植片材料から引き裂かれ得る力を指す、縫合糸引き抜き強度に関しても記載し得る。好適な縫合糸引き抜き強度は、約1N~約5Nの範囲であり得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「ミクロ繊維」という用語は、75μm以下の平均直径を有する小径繊維、例えば、約0.5μm~約50μmの平均直径を有する小径繊維、またはより具体的には、約2μm~約40μmの平均直径を有するミクロ繊維を指す。繊維径の別のよく使用される表現はデニールである。例えば、μmで与えられるポリプロピレン繊維の直径は、二乗し、その結果に0.00629を掛けることによってデニールに変換し得、したがって、15μmのポリプロピレン繊維は、約1.42(15×0.00629=1.415)のデニールを有する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「ナノサイズ繊維」または「ナノ繊維」という用語は、2000ナノメートル以下、1500ナノメートル以下、好適には1000ナノメートル(nm)以下の平均直径を有する非常に小径の繊維を指す。ナノ繊維は、一般に、約10~約1500nm、より具体的には約10~約1000nm、さらに具体的には約20~約500nm、最も具体的には約20~約400nmの繊維径範囲を有すると理解される。他の例示的な範囲としては、約50~約500nm、約100~500nm、または約40~約200nmが挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「スパンボンド繊維」という用語は、溶融された熱可塑性材料を紡糸口金の複数の微細な、通常は円形の毛細管から押し出し、押し出されたフィラメント直径を、例えば、その各々の全体が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Appelらに対する米国特許第4,340,563号、Dorschnerらに対する米国特許第3,692,618号、Matsukiらに対する米国特許第3,802,817号、Kinneyに対する米国特許第3,338,992号および第3,341,394号、Levyに対する米国特許第3,502,763号および第3,909,009号、ならびにDoboらに対する米国特許第3,542,615号のように急速に小さくすることによって形成される小径繊維を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「メルトブロー繊維」という用語は、溶融糸またはフィラメントとしての複数の微細で通常は円形のダイキャピラリを通して溶融熱可塑性材料を、溶融熱可塑性材料のフィラメントを減衰させてその直径を縮小させる(ミクロ繊維の直径であってもよい)収束高速ガス(例えば空気)ストリームに押し出すことによって形成された繊維を指す。その後、メルトブロー繊維は、高速ガス流によって運ばれ、捕集面上に堆積され、ランダムに分散したメルトブロー繊維が形成される。そのような方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第3,849,241号に開示されている。メルトブロー繊維は、連続的であっても不連続的であってもよく、一般に直径が10μm未満のミクロ繊維である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「電界紡糸」という用語は、流体力学と荷電表面との間の相互作用を使用して溶液から電界紡糸繊維と呼ばれるナノサイズの繊維を製造する技術を指す。一般に、電界紡糸繊維の形成には、電圧源と電気的に連通している本体内のオリフィスに溶液を供給することが含まれ、電気力は、接地されているか、そうでなければ本体よりも低電圧であり得る表面上に堆積される微細繊維の形成を補助する。電界紡糸では、1つ以上の針、スロットまたは他のオリフィスから供給されたポリマー溶液または溶融物は、収集グリッドに対して高電圧に帯電される。電気力により表面張力が克服され、ポリマー溶液または溶融物の微細ジェットを接地または反対に帯電した収集グリッドに向かって移動させる。ジェットは、標的に到達する前にさらに細かい繊維流に引き伸ばされる可能性があり、相互接続された小さな繊維として収集される。具体的には、溶媒が蒸発しているとき(溶媒を使用するプロセスにおいて)、この液体ジェットは、ポリマーの連続的な超薄繊維を生成するために元の長さの何倍にも引き伸ばされる。乾燥または固化した繊維は、その直径が約40nm、または約10~約100nmであり得るが、100~500nmの繊維が一般的に観察される。電界紡糸ナノ繊維の様々な形態には、分岐ナノ繊維、チューブ、リボンおよびスプリットナノ繊維、ナノ繊維糸、(例えば、炭素、金属などで)表面被覆されたナノ繊維、真空中で製造されたナノ繊維などが含まれる。電界紡糸繊維の製造は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、P.W.Gibsonら,"Electrospun Fiber Mats:Transport Properties,"AIChE Journal,45(1):190-195(1999年1月)を含む多くの刊行物および特許に示されている。
【0026】
本明細書で使用される場合、「種々の繊維」または「異なる種類の繊維」を指す場合などの「種類」という用語は、「平均直径」または他の「サイズ」の違いの外側に、測定可能に異なる特性を有する「実質的に異なる全体的な材料組成」を有する繊維を指す。すなわち、2つの繊維は、本明細書で定義される同じ「種類」であり得るが、異なる「平均直径」または「平均直径範囲」を有し得る。繊維は、実質的に異なる全体的な材料組成を有する場合、繊維は異なる「種類」であるが、それらは依然として1つ以上の共通成分を有することがある。例えば、少なくとも10重量%のレベルで存在する第1のポリマー成分を有するポリマーブレンドから作製された電界紡糸繊維は、第1のポリマー要素を実質的に含まないポリマーブレンドから作製された電界紡糸繊維とは異なる種類の繊維と考えられる。異なる「種類」の繊維はまた、完全に異なる含有量を有し得、それぞれが例えば異なるポリマーから作製され、または一方がポリマー繊維から作製され、他方がチタニア繊維から作製され、またはセラミック繊維およびチタニア繊維などから作製される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語としては、一般に、ホモポリマー、コポリマー、例えばブロック、移植片、ランダムおよび交互コポリマー、ターポリマーなど、ならびにそれらのブレンドおよび修飾が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、特に具体的に限定されない限り、「ポリマー」という用語は、材料の全ての可能な幾何学的構成を含むものとする。これらの構成としては、アイソタクチック対称およびアタクチック対称が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
ハイブリッドスケール繊維移植片材料
【0029】
本開示の不織移植片材料は、典型的には、それぞれが独立した機械的、化学的および/または生物学的特性を有するハイブリッドスケール繊維マトリクスを含む組成物を含む、少なくとも2つの異なる種類の繊維組成物を含む。しかし、いくつかの実施形態では、繊維は同じであってもよい。繊維組成物は、合成吸収性ポリマー材料から好適に作製される。本明細書で使用される場合、「吸収性ポリマー材料」という用語は、吸収性(「生体吸収性」とも呼ばれる)ポリマーから形成された材料を指す。すなわち、ポリマーは、材料が術後部位に存在する条件に典型的な条件に曝露されたときに分解して、術後治癒の期間とほぼ一致する期間内に部位から除去され得る分解生成物となる特性を有する。このような分解産物は、患者の体内に吸収され得る。術後治癒の期間は、本開示の不織移植片材料の適用から術後部位が実質的に治癒するまでに測定される期間であると理解すべきである。この期間は、外科手術の侵襲性および特定の個体の治癒速度に応じて、数日から数ヶ月の期間の範囲であり得る。本発明の不織移植片材料は、不織移植片材料の再吸収に必要な時間が、治癒または組織の再形成および再生に必要な時間と一致するように制御され得るように調製され得ることが意図される。例えば、本開示のいくつかの不織移植片材料では、繊維組成物は約1週間の期間内に分解するように選択されるが、他の不織移植片材料では、組成物は3年の期間内に、または所望であればさらに長い期間内に分解するように選択される。
【0030】
本開示で使用される繊維組成物は、それらの基準が上述されているように、その材料の基準を満たす任意の吸収性材料から製造され得る。繊維組成物は、吸収性ポリマー、例えば(限定されないが)、乳酸およびグリコール酸のポリマー、乳酸とグリコール酸のコポリマー、ポリ(エーテル-コ-エステル)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリカプロラクトン、乳酸およびε-アミノカプロン酸のコポリマー、ラクチドポリマー、ポリ(ヒドロキシブチレート)および3-ヒドロキシバレレートのコポリマー、コハク酸のポリエステル、ポリ(N-アセチル-D-グルコサミン)、ポリジオキサノン、架橋ヒアルロン酸、架橋コラーゲンなど、およびそれらの組み合わせから形成され得る。好適な合成ポリマーは、例えば、ポリカプロラクトン(ポリ(ε-カプロラクトン)、PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(P(DLLA))、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、モンモリロナイト(MMT)、ポリ(L-ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)(P(LLA-CL))、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-エチルエチレンホスフェート)(P(CL-EEP))、ポリ[ビス(p-メチルフェノキシ)ホスファゼン](PNmPh)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、ポリ(ウレタンエステル)尿素(PEUU)、ポリ(p-ジオキサノン)(PPDO)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)(PEVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアルコール)、ポリマーナノクレイナノコンポジット、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン(PS)およびこれらの組み合わせであり得る。特に好適なポリマーとしては、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
繊維組成物のための繊維は、不織移植片材料の最終目的のために当業者によって好適であると考えられるような様々なサイズのものであり得る。いくつかの実施形態では、繊維組成物用の繊維は、ハイブリッドスケール繊維マトリクスであってもよい。典型的には、ハイブリッドスケール繊維マトリクスの繊維は、5μm未満(2μm未満を含む、1.5μm未満を含む、および1.0μm未満を含む)の平均繊維直径を有する。例えば、いくつかの実施形態では、繊維は、約10nm~約5μm、より具体的には約10nm~約1.0μm、より具体的にはさらに約20nm~約500nm、最も具体的には約20nm~約400nmの範囲の平均繊維径を有し得る。他の例示的な範囲としては、約50nm~約500nm、約100nm~約500nm、および約40nm~約200nmが挙げられる。
【0032】
不織移植片材料をもたらす第1の繊維組成物と第2の繊維組成物との好適な比は、約10~1から約1~10の範囲であり得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、不織移植片材料は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)から調製された第1の不織繊維組成物およびポリジオキサノンから調製された第2の不織繊維組成物から作製される。得られた不織移植片材料は、局所炎症を軽減して創傷治癒および組織再生を改善しながら、最適な強度、取り扱いおよび縫合性を提供するように設計された非生物学的組織代替物である。例示的な実施形態では、不織移植片材料は、グリコリドおよびL-ラクチドのコポリマーを含む第1の繊維組成物と、ポリジオキサノン(100mol%)を含む第2の繊維組成物とを電界紡糸して、天然の細胞外マトリクスを連想させる構造を作製することによって合成し得る。L-ラクチドのmol%に対するグリコリドのmol%は、約100mol%グリコリド~0mol%L-ラクチドから0mol%グリコリド~約100mol%L-ラクチドの範囲であり得る。特に好適な不織移植片材料は、90mol%のグリコリドおよび10mol%のL-ラクチドの、L-ラクチドのmol%に対するグリコリドのmol%を含む第1の繊維組成物を含む。この合成方法により、天然組織の外観および感触を提供しながら、機械的に強い材料が作製される。この非生物学的移植片材料の構造は、炎症を最小限に抑えながら、細胞および組織の内方成長およびネオデュラリゼーション(neoduralization)をさらに支援する。
【0034】
不織移植片材料は、典型的には、様々なサイズ、形状および厚さのいずれかであるように調製し得る。湿潤および乾燥不織移植片材料は、任意の所望のサイズおよび形状に好適に切断およびトリミングされ得る。特に好適な実施形態では、不織移植片材料は、直径約0.55インチ~約0.5インチ×1インチ~約2.5cm×2.5cm(1インチ×1インチ)~約25.5cm×50cm(10インチ×20インチ)の範囲のサイズを有し、例えば、約2.5cm×2.5cm(1インチ×1インチ)、約5.0cm×5.0cm(2インチ×2インチ)、約7.5cm×7.5cm(3インチ×3インチ)を含み、約12.5cm×17.5cm(5インチ×7インチ)を含み、約10cm×12.5cm(4インチ×5インチ)を含む。
【0035】
不織移植片材料は、典型的には、約0.1mm~約5mmの範囲の厚さを有し、約0.3mm~約0.8mm、約0.3mm~約0.7mm、および約0.3mm~約0.5mmを含む。
【0036】
不織移植片材料は、典型的にはミクロ細孔性であり、約10μm~約10,000μmの範囲の孔径を有する相互接続細孔を有する。特に好適な実施形態は、300μm未満の孔径を有する。このサイズ範囲の細孔は、細胞の侵入を受け入れ可能であり、細胞の成長および増殖、その後の血管新生および組織発生を支援し得ると考えられる。
【0037】
さらに、図2に示すように、材料は、マクロ細孔性およびミクロ細孔性であり得る。したがって、不織ハイブリッドスケール繊維マトリクス移植片材料シート200は、シート200に1つ以上の穿孔(例えば、穴、切り込み、スロット、スリット、開口)202を有し得る。いくつかの実施形態では、穿孔202は、シート200全体にわたって見出し得る。いくつかの実施形態では、穿孔202は、シート200の25%、50%、または75%など、シート200の一部にのみ形成されていてもよい。穿孔202を有する部分は、分離または接続されていてもよい。いくつかの実施形態では、穿孔202は均一であってもよいが、他の実施形態では均一でなくてもよい。いくつかの実施形態では、穿孔202は、シート200全体にわたってほぼ均等に分布しており、これにより、流体輸送の均等な分布がもたらされ得る。いくつかの実施形態では、穿孔202は、シート200の特定の領域に集中させ得、結果として、特定の領域を他の領域よりも流体輸送可能にする。いくつかの実施形態では、不織ハイブリッドスケール繊維マトリクス移植片材料シート中のスリットの密度は、1平方インチあたり1~400スリットの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、不織ハイブリッドスケール繊維マトリクス移植片材料中のスリットは、1平方インチあたり約1スリット、1平方インチあたり約5スリット、1平方インチあたり約10スリット、1平方インチあたり約15スリット、1平方インチあたり約20スリット、1平方インチあたり約40スリット、1平方インチあたり約60スリット、1平方インチあたり約80スリット、1平方インチあたり約100スリット、1平方インチあたり約150スリット、1平方インチあたり約200スリット、1平方インチあたり約250スリット、1平方インチあたり約300スリット、1平方インチあたり約350スリット、1平方インチあたり約400スリットの密度を含んでもよく、および/または前述の値の2つによって定義される範囲内の密度を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、不織ハイブリッドスケール繊維マトリクス移植片材料シートの穿孔の長さは、1~20mmの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、穿孔の長さは、約1mm、約2mm、約3mm、約5mm、約10mm、約15mm、約20mmであってもよく、および/または前述の値のうちの2つによって定義される範囲内の長さを有するスリットを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、穿孔は列に分離されてもよく、各列間の距離は0.5~20mmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、各列間の距離は、約0.5mm、約1mm、約2mm、約3mm、約5mm、約10mm、約15mm、約20mmであってもよく、および/または前述の値のうちの2つによって定義される範囲内の距離を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、列内の個々の穿孔間の距離は、1~20mmの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、個々の穿孔間の距離は、約1mm、約2mm、約3mm、約5mm、約10mm、約15mm、約20mmであってもよく、および/または前述の値のうちの2つによって定義される範囲内の距離を含んでいてもよい。
【0038】
図3図10は、本開示の実施形態で使用し得る非限定的な様々な穿孔パターンを示す。
【0039】
さらに、上述の図は、穿孔を直線カットとして示しているが、他の種類の穿孔も同様に使用し得る。図11A図11Bは、円形(図11A)および菱形(図11B)を使用する交互の穿孔のいくつかの例を示す。これらは限定的な形状ではなく、三角形、長方形、楕円形、不規則なポリマーなどの他の形状も穿孔に使用し得る。さらに、異なる種類の穿孔の組み合わせも使用し得る。図13A図13Eはまた、山形および星形を形成するための穿孔の組み合わせ、ならびに不規則な形状を含む、非限定的な例示的な穿孔パターンを開示する。
【0040】
図12A図12Dは、本明細書で論じられるマクロ細孔性およびミクロ細孔性マトリクスの実施形態を示す。図12Aは、3±0.05インチ×1±0.05インチの寸法を有するマクロおよびミクロ細孔性マトリクスの一実施形態の代表的な平面図を示す。図12Aでは、マトリクスは、第1の繊維集合体がグリコリドおよびL-ラクチドの間のコポリマーであり、第2の繊維集合体がパラジオキサノンのポリマーである、電界紡糸法によって作製された2つの繊維集合体から構成される。図12Aは、マトリクスのかなりの部分にわたって繰り返される白線として表される円形の突起および穿孔を特徴とする繰り返しパターンをさらに特徴とする。図12Bは、0.2~0.95mmの範囲のマトリクスの全体的な厚さを示す、マクロ細孔性およびミクロ細孔性マトリクスの一実施形態の深さ表現側面図である。図12Cは、3±0.05インチ×1±0.05インチの寸法を有するマクロおよびミクロ多孔質マトリクスの一実施形態の代表的な平面図を示す。図12Cは、第1の繊維集合体がグリコリドおよびL-ラクチドとの間のコポリマーであり、第2の繊維集合体がパラジオキサノンのポリマーである、電界紡糸法によって作製された2つの繊維集合体から構成されることを特徴とする。図12Dは、表面が実質的に平坦であるか、そうでなければ表面パターンがない、マクロ細孔性マトリクスおよびミクロ細孔性マトリクスの一実施形態の深さ表現側面図である。図14A図14B図15、および図16は、組織に適用される場合のハイブリッドスケール繊維マトリクスの非限定的な実施形態を示す。図14Aおよび図14Bは、不織移植片材料が創傷部位に重ねられる非限定的な実施形態を示す。
【0041】
いくつかの態様では、不織移植片材料は、(限定されないが)ヒアルロナン、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、成長因子、インテグリンペプチド(Arg-Gly-Asp、すなわち、RGDペプチド)などの生体分子で、または細胞の移動および増殖を増強すると考えられるヒアルロン酸ナトリウムおよび/またはキトサンナイアシンアミドアスコルベート、またはそれらの任意の組み合わせで表面修飾し得る。材料には、これらおよび他の生物活性剤、例えば薬物、ビタミン、成長因子、治療用ペプチドなども含浸させ得る。さらに、疼痛を緩和する薬物も材料に組み込み得る。
【0042】
別の態様では、本開示は、第1の不織繊維組成物および第2の不織繊維組成物を含む不織移植片材料を含む積層体に関する。
【0043】
いくつかの実施形態では、積層体の不織移植片材料は、本明細書に記載のように、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含む第1の不織繊維組成物およびポリジオキサノンを含む第2の不織繊維組成物を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、不織移植片材料は、不織移植片材料の表面から生じる少なくとも1つの突起を有し得る。突起は、不織移植片材料の表面から生じる突出または隆起である。突起は、不織移植片材料の上面、不織移植片材料の底面、ならびに不織移植片材料の上面および底面から生じ得る。突起は、例えば、円形、球形、正方形、長方形、菱形、星形、不規則形、およびそれらの組み合わせなどの任意の所望の形状とし得る。突起は、材料の表面から突起の頂部まで測定される任意の所望の高さとし得る。一実施形態では、突起は、材料の表面から実質的に均一な高さを有し得る。別の実施形態では、突起は、材料の表面から突起の最も高い測定可能な表面まで徐々に形成し得る。いくつかの実施形態では、不織移植片材料の表面は、複数の突起を含む。複数の突起は、不織移植片材料の表面上にパターン化され得るか、またはランダムに分布し得る。別の実施形態では、この方法は、不織移植片材料の表面に少なくとも1つのへこみを形成することを含む。へこみは、不織移植片材料の表面の凹部またはくぼみである。へこみは、不織移植片材料の上面、不織移植片材料の底面、ならびに不織布移植片材料の上面および底面にあってもよい。へこみは、例えば、円形、球形、正方形、長方形、菱形、星形、不規則形、およびそれらの組み合わせなどの任意の所望の形状とし得る。へこみは、材料の表面からへこみの底部まで測定される任意の所望の深さとし得る。一実施形態では、へこみは、材料の表面からへこみの最も深い深さまで実質的に均一な深さを有し得る。別の実施形態では、へこみは、材料の表面からへこみの最も深い深さまで徐々に形成し得る。いくつかの実施形態では、不織移植片材料の表面は、複数のへこみを含む。複数のへこみは、不織移植片材料の表面上にパターン化され得るか、またはランダムに分布させ得る。別の実施形態では、不織移植片材料は、不織移植片材料の表面および不織移植片材料の表面の少なくとも1つのへこみから生じる少なくとも1つの突起を有し得る。別の実施形態では、不織移植片材料は、不織移植片材料の上面から生じる少なくとも1つの突起と、不織移植片材料の上面の少なくとも1つのへこみとを有し得る。別の実施形態では、不織移植片材料は、不織移植片材料の底面および不織移植片材料の底面の少なくとも1つのへこみから生じる少なくとも1つの突起を有し得る。別の実施形態では、不織移植片材料は、不織移植片材料の上面から生じる少なくとも1つの突起、不織移植片材料の底面から生じる少なくとも1つの突起、不織移植片材料の上面の少なくとも1つのへこみ、および不織移植片材料の底面の少なくとも1つのへこみを有し得る。複数のへこみおよび複数のへこみは、不織移植片材料の表面上にパターン化され得るか、またはランダムに分布され得る。突起およびへこみを形成するための好適な方法としては、プレス、スタンピング、および当業者に公知の他の方法が挙げられる。
【0045】
電界紡糸
【0046】
いくつかの実施形態では、本開示は、不織移植片材料を調製する方法に関する。この方法は、概して、上記のポリマーの水溶液を調製することを含む。特に、別々のポリマー溶液から得られた繊維は、電界紡糸、エレクトロスプレー、メルトブロー、スパンボンドなどの1つ以上の方法を使用して互いに接触させて、不織移植片材料を形成し、不織移植片材料を乾燥させる。
【0047】
不織移植片材料を乾燥させて、ポリマー水溶液を調製するために使用される溶媒を除去する。乾燥は、ヤンキードライヤー、真空チャンバ、真空オーブン、およびスルーエアドライヤーを含むがこれらに限定されない、当技術分野で一般的に公知の方法を使用して行い得る。好ましくは、不織移植片材料の嵩または厚さを保存する傾向がある非圧縮乾燥法が使用される。好適なスルー乾燥装置およびスルー乾燥布は、従来から周知である。当業者は、特定のスルー燥操作のための最適な乾燥ガス温度および滞留時間を容易に決定し得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、第1のポリマー水溶液から得られる第1の繊維組成物および第2のポリマー水溶液から得られる第2の繊維組成物を混合して、上述のような電界紡糸法を用いて不織移植片材料を形成する。電界紡糸法は、一般に、ポリマー繊維溶液に高電圧(例えば、電界紡糸装置の構成に応じて、約3kV~約80kVを含む約1kV~約100kV)を印加してポリマージェットを生成することを含む。ジェットが空気中を移動すると、ジェットは反発静電力下で伸長し、ポリマー繊維溶液からナノ繊維またはハイブリッドスケール繊維が生成される。高電圧は、接地面(または反対に帯電した面)と、高分子繊維溶液が注入される導電性毛細管との間に印加される。毛細管がガラスピペットなどの非導電体である場合、配線を通して溶液または溶融物に高電圧を印加もし得る。最初に、毛細管の開放先端の溶液は、電気力と表面張力との相互作用によって円錐形状(いわゆる「テイラーコーン」)に引っ張られる。特定の電圧範囲では、テイラーコーンの先端にポリマー繊維溶液の微細なジェットが形成され、標的に向かって発射される。電場からの力は、ジェットを加速させ、伸張させる。この延伸は、溶媒分子の蒸発と共に、ジェット直径をより小さくする。ジェット直径が減少するにつれて、ポリマー内の静電力がジェットを一緒に保持する凝集力に打ち勝つまで電荷密度が増加し(例えば、表面張力)、ジェットをポリマーナノ繊維またはハイブリッドスケールの繊維のマルチフィラメントに分割または「噴霧」させる。繊維は収集器に達するまで膨張し続け、そこで不織ナノ繊維またはハイブリッドスケール繊維として収集され、場合により乾燥される。
【0049】
ポリマー水溶液を調製するのに適した溶媒としては、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトンおよびエタノールが挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、方法は、不織移植片材料の表面から生じる少なくとも1つの突起を形成すること、不織移植片材料の表面に少なくとも1つのへこみを形成すること、およびそれらの組み合わせをさらに含み得る。突起は、不織移植片材料の表面から生じる突出または隆起である。突起は、不織移植片材料の上面、不織移植片材料の底面、ならびに不織移植片材料の上面および底面から生じ得る。突起は、例えば、円形、球形、正方形、長方形、菱形、星形、不規則形、およびそれらの組み合わせなどの任意の所望の形状とし得る。突起は、材料の表面から突起の頂部まで測定される任意の所望の高さとし得る。一実施形態では、突起は、材料の表面から実質的に均一な高さを有し得る。別の実施形態では、突起は、材料の表面から突起の最も高い測定可能な表面まで徐々に形成し得る。いくつかの実施形態では、不織移植片材料の表面は、複数の突起を含む。複数の突起は、不織移植片材料の表面上にパターン化され得るか、またはランダムに分布し得る。別の実施形態では、この方法は、不織移植片材料の表面に少なくとも1つのへこみを形成することを含む。へこみは、不織移植片材料の表面の凹部またはくぼみである。へこみは、不織移植片材料の上面、不織移植片材料の底面、ならびに不織布移植片材料の上面および底面にあってもよい。へこみは、例えば、円形、球形、正方形、長方形、菱形、星形、不規則形、およびそれらの組み合わせなどの任意の所望の形状とし得る。へこみは、材料の表面からへこみの底部まで測定される任意の所望の深さとし得る。一実施形態では、へこみは、材料の表面からへこみの最も深い深さまで実質的に均一な深さを有し得る。別の実施形態では、へこみは、材料の表面からへこみの最も深い深さまで徐々に形成し得る。いくつかの実施形態では、不織移植片材料の表面は、複数のへこみを含む。複数のへこみは、不織移植片材料の表面上にパターン化され得るか、またはランダムに分布させ得る。別の実施形態では、不織移植片材料は、不織移植片材料の表面および不織移植片材料の表面の少なくとも1つのへこみから生じる少なくとも1つの突起を有し得る。別の実施形態では、不織移植片材料は、不織移植片材料の上面から生じる少なくとも1つの突起と、不織移植片材料の上面の少なくとも1つのへこみとを有し得る。別の実施形態では、不織移植片材料は、不織移植片材料の底面および不織移植片材料の底面の少なくとも1つのへこみから生じる少なくとも1つの突起を有し得る。別の実施形態では、不織移植片材料は、不織移植片材料の上面から生じる少なくとも1つの突起、不織移植片材料の底面から生じる少なくとも1つの突起、不織移植片材料の上面の少なくとも1つのへこみ、および不織移植片材料の底面の少なくとも1つのへこみを有し得る。複数のへこみおよび複数のへこみは、不織移植片材料の表面上にパターン化され得るか、またはランダムに分布され得る。突起およびへこみを形成するための好適な方法としては、プレス、スタンピング、および当業者に公知の他の方法が挙げられる。
【0051】
いくつかの実施形態では、材料が電界紡糸されると、上述のマクロ穿孔は、切断ステップなどによって材料のシートに組み込み得る。これは、いくつかの実施形態では一貫性を提供するために、機械的、電子的、および/またはコンピュータ制御で行い得る。また、レーザ切断を使用して、材料に穿孔を形成し得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、電界紡糸法の際に穿孔を材料に組み込み得、結果として、追加の切断ステップを使用し得ない。例えば、繊維が基材上に電界紡糸されると、繊維が材料中に特定の穿孔パターンを残すように、基材パターンを調製し得る。例えば、基材は金属であってもよく、繊維は金属基材に付着して所望の切断パターンを形成し得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、シートは、本明細書で論じられるマクロ細孔性能力を提供し得る、繊維の密度がより高いか、またはより低い領域を有するように製造し得る。
【0054】
組織修復
【0055】
いくつかの実施形態では、本開示は、組織修復を必要とする個体における組織修復の方法に関する。この方法は、不織移植片材料は、第1の繊維組成物および第2の繊維組成物を含む不織移植片材料を手術野に適用することを含み得る。この方法は、例えば、硬膜、心膜、小腸粘膜下組織、真皮、表皮、腱、気管、心臓弁尖、胃腸管、および心臓組織などの組織を修復するのに特に適している。好適な組織修復処置としては、例えば、硬膜修復、皮膚移植、気管修復、胃腸管修復(例えば、腹部ヘルニア修復、潰瘍修復)、心臓欠損修復、頭頸部手術、骨折への適用、および熱傷修復などの神経外科手術が挙げられる。
【0056】
好適には、不織移植片材料は第1の繊維組成物を含み、第1の繊維組成物としては、ポリカプロラクトン(ポリ(ε-カプロラクトン)、PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(P(DLLA))、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、モンモリロナイト(MMT)、ポリ(L-ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)(P(LLA-CL))、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-エチルエチレンホスフェート)(P(CL-EEP))、ポリ[ビス(p-メチルフェノキシ)ホスファゼン](PNmPh)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、ポリ(ウレタンエステル)尿素(PEUU)ポリ(p-ジオキサノン)(PPDO)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)(PEVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアルコール)、ポリマーナノクレイナノコンポジット、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン(PS)およびこれらの組み合わせから選択されるポリマーが挙げられる。特に好適なポリマーとしては、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
好適には、不織移植片材料は第2の繊維組成物を含み、第2の繊維組成物としては、ポリカプロラクトン(ポリ(ε-カプロラクトン)、PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(P(DLLA))、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、モンモリロナイト(MMT)、ポリ(L-ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)(P(LLA-CL))、ポリ(ε-カプロラクトン-コ-エチルエチレンホスフェート)(P(CL-EEP))、ポリ[ビス(p-メチルフェノキシ)ホスファゼン](PNmPh)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、ポリ(ウレタンエステル)尿素(PEUU)ポリ(p-ジオキサノン)(PPDO)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)(PEVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(エチレン-コ-ビニルアルコール)、ポリマーナノクレイナノコンポジット、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン(PS)およびこれらの組み合わせから選択されるポリマーが挙げられる。特に好適なポリマーとしては、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
特に好適な実施形態では、不織移植片材料は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含む第1の繊維組成物およびポリジオキサノンを含む第2の繊維組成物を含む。
【0059】
本明細書で使用される場合、「組織修復を必要とする個体」は、組織欠損、組織損傷、損傷または除去のために欠損している組織、および切開によって損傷した組織を有する個体を指す。本方法は、硬膜の修復を必要とする硬膜欠損を有する個体または個体のサブセットでの使用に特に適している。硬膜欠損を有する個体は、硬膜に穿孔を有する個体、硬膜が除去された個体、硬膜が損傷した個体、および外科的切開を伴う硬膜を有する個体であり得る。組織修復を必要とする個体は、成人個体、幼児および小児個体であり得る。特に好適な個体はヒトであり得る。他の特に好適な個体は、霊長類、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの動物であり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、不織移植片材料は、例えば不織移植片材料を術野に縫合することによって、術野に固定される。他の実施形態では、不織移植片材料は、外科用接着剤などによって手術野に固定される。
【0061】
上記の説明から、本発明のナノ繊維およびハイブリッドスケールの繊維マトリクスならびに製造方法および使用方法が開示されていることが理解されよう。いくつかの構成要素、技術、および態様をある程度の特殊性をもって説明してきたが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書で上述した特定の設計、構造、および方法論に多くの変更を加え得ることは明らかである。
【0062】
別個の実施態様の文脈で本開示に記載されている特定の特徴は、単一の実施態様において組み合わせて実施もし得る。逆に、単一の実施態様の文脈で説明されている様々な特徴は、複数の実施態様において別々に、または任意の好適な部分的組み合わせでも実施し得る。さらに、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして上述され得るが、特許請求される組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては、組み合わせから削除し得、組み合わせは、任意の部分的組み合わせまたは任意の部分的組み合わせの変形として特許請求され得る。
【0063】
さらに、方法は、特定の順序で図面に描写されるか、または本明細書に記載され得るが、そのような方法は、示された特定の順序または順番で実施される必要はなく、望ましい結果を達成するために、全ての方法が実施される必要はない。図示または記載されていない他の方法は、例示的な方法およびプロセスに組み込み得る。例えば、記載された方法のいずれかの前、後、同時に、またはその間に、1つ以上の追加の方法を実施し得る。さらに、方法は、他の実施態様では並べ替えたり、順序を変えてもよい。また、上記の実施態様における様々なシステム構成要素の分離は、全ての実施態様においてそのような分離を必要とすると理解されるべきではなく、記載された構成要素およびシステムは、一般に、単一の製品に一緒に統合されるか、または複数の製品にパッケージ化され得ることを理解されたい。さらに、他の実施態様も本開示の範囲内である。
【0064】
「し得る(can)」、「できる(could)」、「可能性がある(might)」、または「場合がある(may)」等の条件付き言い回しは、別途具体的に記載されない限り、または使用される文脈の範囲内で別途解釈されない限り、特定の実施形態が、特定の特徴、要素、またはステップを含むまたは含まないということの伝達を意図するのが通例である。したがって、このような条件付き言語は、一般的に、その特徴、要素、および/またはステップが1つ以上の実施形態に必要な任意の方法であることを暗示することを意図していない。
【0065】
「X、Y、およびZのうちの少なくとも一つ」などの連言的言い回しは、別途具体的に記載されない限り、ある項目や用語などが、Xか、Yか、Zのいずれかであり得ることを伝えるのに一般的に用いられる文脈と共に、別途解釈されるものである。したがって、このような連言的言い回しは、特定の実施形態が、少なくともXのうちの1つと、少なくともYのうちの1つと、少なくともZのうちの1つとを含むことを必要とするという示唆を必ずしも意図するものではない。
【0066】
「およそ」、「約」、「概して」および「実質的に」という用語などの、本明細書において使用される程度表現は、記載された値や量、特徴に近い値や量、特徴であって、依然として所望の機能を実行したり所望の結果を実現したりし得る値または量、特徴を表すものである。例えば、「およそ」、「約」、「概して」および「実質的に」という用語は、記載された量の10%以下の範囲内、5%以下の範囲内、1%以下の範囲内、0.1%以下の範囲内、および0.01%以下の範囲内にある量を指していてもよい。記載された量が0(例えば、なし、有しない)である場合、上に列挙された範囲は特定の範囲であり得、値の特定の%以内ではない。例えば、記載量の10wt./vol.%.以下、5wt./vol.%.以下、1wt./vol.%.以下、0.1wt./vol.%.以下、0.01wt./vol.%.以下である。さらに、本開示内の表における全ての値は、記載される値、またはあるいはおよそ記載される値であると理解される。
【0067】
種々の実施形態に関する任意の特定の特徴、態様、方法、特性、特質、性質、属性、構成要素などの本明細書における開示は、本明細書に示される他の全ての実施形態に使用可能である。さらに、本明細書に記載される任意の方法は、記載のステップを実施することに適する任意のデバイスを使用して実施し得るということが認識される。
【0068】
本開示の数多くの実施形態および変形を詳細に記載しているが、他の変形およびこれを用いる方法は当業者に明らかになるものである。したがって、種々の用途、変形、材料、および代替物は、本明細書における特有の創意に富んだ開示、または特許請求の範囲から逸脱することなく同等物からなされ得るということが理解される必要がある。
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【国際調査報告】