(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】エアロゾル火災抑制材料、システム、及び実行方法
(51)【国際特許分類】
A62C 35/10 20060101AFI20240816BHJP
A62C 37/11 20060101ALI20240816BHJP
A62C 37/38 20060101ALI20240816BHJP
A62D 1/06 20060101ALI20240816BHJP
H01M 50/204 20210101ALN20240816BHJP
H01M 50/202 20210101ALN20240816BHJP
【FI】
A62C35/10
A62C37/11
A62C37/38
A62D1/06
H01M50/204 401F
H01M50/202 401F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505632
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 US2022038947
(87)【国際公開番号】W WO2023009862
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522075944
【氏名又は名称】マレー,ドナルド エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】マレー,ドナルド エー.
【テーマコード(参考)】
2E189
2E191
5H040
【Fターム(参考)】
2E189BA01
2E189BB01
2E189BD03
2E189GB05
2E191AA01
2E191AA06
2E191AB14
2E191AB22
2E191AB51
2E191AC08
5H040AA37
5H040AS07
(57)【要約】
【解決手段】防火・火災抑制装置、防火・火災抑制材料、防火・火災抑制システム、及び、その使用方法が開示されている。消火用途では、シート、パネル又は他の形態のエアロゾル消火剤が、火災危険物を含む包囲体内、火災危険物自体の内部の一若しくは複数を含むが、これらに限定されない様々な実装位置に配置され得るか、又は火災危険物の構造体に組み込まれ得る。エアロゾル消火材料は開始すると燃焼して、火災を消火できるエアロゾル微粒子を生成して直接分散させる。エアロゾル剤は、望ましくない火災からの炎又は熱によって開始し得る。代替の開始方法には、自動火災検知システム、電気手動方法、又は機械/熱イニシエータによって信号が送られる電気イニシエータが含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの包囲壁を有して内部容積を画定する包囲体、
前記内部容積を少なくとも2つの個別のサブ容積に分割する内部区画構造体、並びに
エアロゾル火災抑制材料及び可燃性基材を含むマトリクスから作製されている前記少なくとも1つの包囲壁及び前記内部区画構造体の内の少なくとも1つ
の内の少なくとも1つを備えている、火災抑制システム。
【請求項2】
前記可燃性基材はエポキシ樹脂である、請求項1に記載の火災抑制システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの包囲壁は前記マトリクスから作製されている、請求項1に記載の火災抑制システム。
【請求項4】
前記内部区画構造体は前記マトリクスから作製されている、請求項1に記載の火災抑制システム。
【請求項5】
火災危険物のための包囲体に使用するための火災抑制システムであって、
第1の包囲体対向側及び第2の危険物対向側を有する少なくとも1つのエアロゾル火災抑制材料体と、
前記第1の包囲体対向側に近接して配置されている耐火材料と、
前記第2の危険物対向側に配置されているシール剤材料と
を備えている、火災抑制システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのエアロゾル火災抑制材料体は、剛性パネル、半剛性パネル、可撓性シート、三次元幾何学的固体、表面上の被覆体の内の少なくとも1つの形態である、請求項5に記載の火災抑制システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのエアロゾル火災抑制材料体は、包囲体への取付具、包囲体内の分割体、包囲体内の仕切り、火災危険物の構造要素の内の少なくとも1つを有している、請求項5に記載の火災抑制システム。
【請求項8】
前記第1の包囲体対向側及び前記耐火材料間に配置されている絶縁層を更に備えている、請求項5に記載の火災抑制システム。
【請求項9】
前記耐火材料はセラミック塗料を含んでいる、請求項5に記載の火災抑制システム。
【請求項10】
前記耐火材料はパターンで適用されており、マトリクスの少なくとも1つの表面が露出したままである、請求項5に記載の火災抑制システム。
【請求項11】
前記パターンは、市松模様、縞模様パターン、渦巻パターン、ダイヤモンドパターン、一連の同心円の内の1つを含んでいる、請求項10に記載の火災抑制システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのエアロゾル火災抑制材料体は、前記第1の包囲体対向側及び前記第2の危険物対向側間に延びている少なくとも1つの横方向側を更に有している、請求項5に記載の火災抑制システム。
【請求項13】
前記耐火材料は、前記少なくとも1つの横方向側に配置されている、請求項12に記載の火災抑制システム。
【請求項14】
前記耐火材料の包囲体対向側に配置されている接着領域を更に備えている、請求項5に記載の火災抑制システム。
【請求項15】
前記接着領域は、前記耐火材料の包囲体対向側に配置されている接着材料の層と、前記接着材料の層を覆う保護材料の取り外し可能な層とを有している、請求項14に記載の火災抑制システム。
【請求項16】
潜在的な火災危険物上に又は前記火災危険物に物理的に近接して配置されているエアロゾル材料を有しており、
前記エアロゾル材料は、熱又は炎の少なくとも1つに曝されることにより動作するように構成されており、
前記エアロゾル材料は、エアロゾル火災抑制物質を含浸させた材料体;潜在的な前記火災危険物の表面に若しくは潜在的な前記火災危険物に物理的に近接して適用されている被覆体;の内の少なくとも1つの形態である、火災抑制システム。
【請求項17】
前記材料体は、可撓性、剛性、これらの組み合わせの内の1つを有し;円筒形、角錐形、角柱形、直方体、球形、不規則なシェル、これらの組み合わせの内の1つである形状を有し;中空、全体に固体、全体に固体であるが多孔性の内の1つであり;これらの組み合わせである、請求項16に記載の火災抑制システム。
【請求項18】
前記エアロゾル火災抑制物質は、硝酸カリウム、炭酸カリウム、エポキシ樹脂、有機樹脂、ジシアンジアミド(DCDA)、マグネシウムの内の少なくとも1つを含んでいる、請求項17に記載の火災抑制システム。
【請求項19】
前記エアロゾル材料は、エアロゾル火災抑制物質の少なくとも2つの層を更に有しており、
第1の層のエアロゾル火災抑制物質は、第2の層のエアロゾル火災抑制物質とは異なる、請求項16に記載の火災抑制システム。
【請求項20】
前記エアロゾル火災抑制物質の作動を容易にすべく、前記エアロゾル材料に動作可能に結合されているイニシエータ、
所定の温度を超える熱、炎、所定の濃度を超える燃焼生成物、少なくとも所定の成分を有する燃焼生成物の少なくとも1つを検知すると、前記イニシエータを作動させるべく、前記イニシエータに動作可能に連結されている火災検知器、及び
前記イニシエータ及び前記エアロゾル材料に結合されている制御装置
の内の少なくとも1つを更に備えており、
前記制御装置は、前記イニシエータを人によって選択的に作動可能にするための手動式アクチュエータ、及び、所定の温度を超える熱、炎、所定の濃度を超える燃焼生成物、少なくとも所定の成分を有する燃焼生成物の内の少なくとも1つを検知すると、イニシエータを作動させるように構成されているプログラム可能な装置の内の少なくとも1つを有している、請求項16に記載の火災抑制システム。
【請求項21】
前記火災危険物は、デバイス及び処理システムの内の少なくとも1つを有しており、前記制御装置は、前記デバイスの動作を監視する監視装置に連結されている、請求項20に記載の火災抑制システム。
【請求項22】
前記エアロゾル材料は、エアロゾル火災抑制物質を含浸させた材料体の形態であり、保護材料の層が、火災危険物に対向して配置される前記材料体の側に配置されており、前記保護材料の層は、エアロゾル火災抑制物質を含浸させた材料体の一部が露出するようなパターンで配置されている、請求項16に記載の火災抑制システム。
【請求項23】
潜在的な火災危険物を保護する方法であって、
火災危険物を含む構造体の外面に直接エアロゾル発生材料を適用する工程を有し、
エアロゾル発生材料を適用する工程は、
危険物を含む構造体の外面にエアロゾル材料を噴霧する工程、
前記危険物を含む構造体をエアロゾル発生材料に浸漬する工程、及び
前記エアロゾル発生材料を可撓性シートに形成して、前記危険物を含む構造体に前記可撓性シートを付加する工程
の内の一又は複数を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に区画及び包囲体などの場所で使用するための防火・火災抑制装置、防火・火災抑制材料、防火・火災抑制システム、及び、これらの使用方法に関する。
【0002】
本発明は、設備を簡素化して空間要件を減らし、重量を減少させて消火部品及び設備の両方でコストを削減する、簡素化された設備へのエアロゾル消火剤の採用に関する。
【0003】
より具体的には、本発明は一部分では、危険物内の空所に挿入される材料として、危険物の構造体又は部品を形成するために使用される材料として、又は、大きな筐体若しくは容器を必要とせずに区画又は包囲体に採用され得るような被覆体として、パネル、シート又は様々な形態に形成される固体エアロゾル消火剤に関する。
【背景技術】
【0004】
北米では通常4つの火災クラス(A,B,C及びD)を参照する。欧州などの他の地域では、同様の手法があり得るが、名称は異なる。
クラスAは、木材、紙などの一般的な可燃物の燃焼である。
クラスBは、アルコール、ガソリンなどの可燃性液体の燃焼である。
クラスCは、「電気火災」であるが、多少の説明が必要である。
電気自体は燃えないが、電気は発火源である。燃焼するのは、クラスAの材料及び/又はクラスBの材料として挙動する材料であり、プラスチックタイプの製品で形成された電気絶縁体が一般的である。クラスAの火災挙動は束、つまり電線に起因し、この場合、燃焼するケーブルが束の中心にある場合に必要なように、消火剤を電線の束の十分な深さまで浸透させることが問題になる。クラスBの火災挙動は、プラスチックが燃え始める前に溶けたときに生じる。
【0005】
電気を発火源として火災が発生した場合、以下の2つのシナリオがある。
1.電源が自動又は手動で止められる場合、「非通電」火災はクラスA若しくはクラスBの火災、又はその両方になる。プラスチックがAの挙動及びBの挙動の両方を有し得ると認識することが依然として重要である。
2.電源が止められない場合、発火源が未だ存在するため、消火が遥かに困難な通電電気火災である。一部の電気火災は、電源を取り除くまで消火されない場合がある。
【0006】
通電電気火災は、不可能ではないにしても消火が困難であるため、且つ感電の危険性があるため、極めて危険であり得る。
【0007】
この執筆時点では、Underwriters' Laboratories(商標)は、消火器が使用され得る火災の種類に応じて、消火器をAリスト、Bリスト、Cリスト及び/又はDリストで評価する。「C」リストは、消火剤が通常導電性を有しないこと(電気が消火器の放出流を通って流れて消火器のオペレータに戻らないこと)を単に意味する。これは、あらゆる通電電気火災に対する消火器の有効性を証明するものではない。
【0008】
クラスDは、可燃性金属の火災である。マグネシウム、非常に微細なアルミニウムなど。
【0009】
火災抑制用語
難燃剤
難燃剤は、火災の拡大を遅らせるために適用される。通常、燃料の可燃性を低下させる。
例えば、
森林火災の消火活動では、進行中の森林火災の前方に飛行機が大量の水を投下し、一般に水は地面の木、低木の可燃性を低下させる化学添加物を含む。このため、火災の進行が遅くなる。火災を直接狙えば、落ちた水は消火し得るが、主な仕事は封じ込めである。また、森林火災を消火するために航空機からかなりの水が必要となり、火災の延焼が阻止されれば、利用可能な水はより効果的である。
通常、難燃剤は、消火するのではなく火災の進行を遅らせるために採用される。
【0010】
火災抑制剤
「火災抑制剤」という用語は混乱を招く可能性がある。この用語は、作用剤が特定の火災を抑制するが、必ずしも消火するわけではないことを示す。言うまでもなく、本当の目標は消火することであるが、特定の火災に対して特定の作用剤を使用して達成され得る最善の目標は、火災を弱めるか又は遅らせることである。言い換えれば、一部の用途で消火が達成され、他の用途では消火が達成されない。
一部の消火システム製造業者は、必ずしも消火を達成するとは限らないため、自社製品を「火災抑制システム」として宣伝している。これは、製造物責任管理措置として自社製品を「消火システム」と呼ぶことを避けることにより行われる場合がある。しかしながら、客が本当に求めているのは「消火システム」であるため、購入希望者は、「抑制システム」という用語に慎重になるか又は用途に関する作用剤の機能を注意深く確認する必要がある。
一般的な良い例として、クラスAの火災に対するハロカーボンの気体作用剤が挙げられる。
クラスAの材料の燃焼が机の上の筆記用紙又はくず籠の火災など軽い場合、システムはこれらの火災を消火する可能性がある。或いは、クラスAの燃焼する材料が、棚に置かれた解体された段ボールの梱包箱である場合、ハロカーボン作用剤は、これらの材料内の火災領域に浸透するのはかなり困難である可能性があり、火災は消火されることなく、抑制されるだけである。従って、防火システムの製造業者は、自社のシステムを抑制システムと呼ぶ。
【0011】
消火剤
消火剤は消火する。
これらのシステムは、難燃剤又は火災抑制剤より遥かに優れている。
火災危険物、例えばバッテリの火災危険物に対処するためには、
バッテリの火災が激しく、消火が困難であるため、難燃剤及び火災抑制剤を避ける必要がある。意味を成すシステムは、迅速な消火が可能であって、危険物が冷えて暴走する危険性を止めるまで火災に耐えることができるシステムだけである。
【0012】
消火器の種類
(エアロゾルは近いものであるが)普遍的な作用剤はない。夫々の火災分類に使用される「従来の」作用剤は以下の通りである。
クラスA 水、多目的乾燥化学物質
クラスB 泡、乾燥化学物質、二酸化炭素
クラスC 多目的乾燥化学物質、二酸化炭素
クラスD (砂と類似の)特殊な乾燥粉末
【0013】
リチウムイオン電池の火災
例えば電気自動車へのリチウムイオン電池などの電池の使用がますます普及しているため、このようなバッテリに基づく電力システムの動作の安全性を高めることへの関心が高まっている。様々な技術を備えた複数の型のリチウムイオン式電池があるが、この「群」のバッテリは全て同様の消火課題を有する。
【0014】
リチウムイオン電池の火災は、クラスA、クラスB、クラスC及びクラスDの火災を全て一度に発生させ得るため特有である。
【0015】
主な危険性の問題は、蓄えられたエネルギーである。他の危険要素は、火災の際に自ら酸素を発生させ得る可燃性電解質、高可燃性リチウム金属、及び包装材料である。
【0016】
リチウムイオン電池の消火について考えるとき、特に注目すべき点を幾つか挙げる。
バッテリは非常に高いエネルギー貯蔵が可能である。
火災又は爆発の開始がほとんど予測不可能であり得る。
火災又は爆発の進行が非常に速く、場合によっては開始と爆発又は制御不可能な火災との間に数秒しかない。
問題には2つの「段階」がある。
包装体の破壊的な開放及び火災/爆発の開始、
バッテリの残骸が制御されずに急速に加熱すること、隣り合うバッテリが熱に急速に曝されること、及び、延焼/爆発、
従来の消火剤は機能しないこと、並びに
水は消火剤としてうまく機能しないが、大量の水が危険物を冷却することができ、最終的に火災を終了させる場合がある。
【0017】
火災抑制及び消火におけるエアロゾルの使用に関して、乾燥した化学消火粉末を含む薄い金属パネルが自動車の燃料タンクの周囲に配置されているため、車両が追突された場合、燃料タンクが破裂する可能性があり、消火剤を含むパネルも破裂し、ひいては乾燥粉末剤を分散させて火災を防止又は消火する。フォード・クラウンビクトリアの警察車両の一部にこれらの乾燥化学剤パネルが取り付けられてあり、テスト及び実際の事故の両方で火災抑制に成功している。米国軍も、ホイールウェルなどを保護するために同様のパネルを装甲車両に取り付けている。これらの用途ではエアロゾル剤が使用されていない。
【0018】
通常、重炭酸ナトリウム又は重炭酸カリウムで形成された乾燥化学剤は、微粒子の一般的な直径が25ミクロンである微粉末として貯蔵されて放出される。これらの粉末が炎に入ると、主に火災の化学反応を中断することによって消火する。
【0019】
通常、酸化剤(硝酸カリウムなど)と混合した燃料(エポキシ樹脂など)で形成されたエアロゾル剤は、炎又は高熱に曝されると燃焼する固体の可燃性材料である。燃焼生成物は、遥かに小さい直径(10ミクロン未満、2ミクロン未満の直径が一般的である)及びそれほど多くない量の窒素及び他の気体を有する微細なエアロゾルサイズの微粒子である。
【0020】
全米防火協会(NFPA Standard 2010 Standard for Fixed Aerosol Fire-Extinguishing Systems, Section 3.3.2.1)は、「凝縮エアロゾル」を以下のように定めている。
「一般に直径が10ミクロン未満の微細に分割された固体粒子と、固体エアロゾル形成化合物の燃焼過程により生成される気体物質とから構成される消火媒体」。これは、「非常に」微細に分割された固体又は液体の微粒子状物質のより一般的に理解されている意味を細かく記載したものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の実施形態によれば、実装される凝縮エアロゾル材料は2つの状態をとり、つまり、(剛性又は半剛性のパネル、可撓性シート、(直方体などの)ブロック、(四面体又は錐体などの)三次元固体の形態で、発火後に火災抑制エアロゾルを発生させる化合物又は前駆体材料である)固体状態、及び発火後に微細に分割された固体又は液体の粒子を含むエアロゾル発生状態をとる。
【0022】
この微細なエアロゾル微粒子も、火災の化学反応を中断することにより消火し、直径が小さいため、作用剤の微粒子の表面積が大幅に増加し、微粒子が他の作用剤と比較して炎中で非常に迅速に反応することを可能にするので、エアロゾル微粒子は遥かに迅速な消火性能をもたらす。
【0023】
化学的中断機構を使用した作用剤を、炎の中で迅速に反応する能力と組み合わせるため、作用剤は、他の作用剤と比較して非常に効率的であり、必要な作用剤が遥かに少なくなる。
【0024】
本発明の実施形態では、火災抑制システムが、
少なくとも1つの包囲壁を有して内部容積を画定する包囲体、
内部容積を少なくとも2つの個別のサブ容積に分割する内部区画構造体、並びに
エアロゾル火災抑制材料及び可燃性基材を含むマトリクスから作製された少なくとも1つの包囲壁及び内部区画構造体の内の少なくとも1つ
の内の少なくとも1つを備えている。
【0025】
固体又は可撓性の凝縮エアロゾル消火材料のパネル、シート、様々な形態及び被覆体が、消火する微粒子/気体作用剤を放出するために火又は熱によって発火し得る。
【0026】
これらの凝縮エアロゾル剤は、放出された作用剤が火災の化学連鎖反応を中断する能力を有するため、リチウムイオン電池火災などの困難な火災で特に有用である。この消火機構により、必要な作用剤の量が大幅に減る。
【0027】
更に、消火微粒子は微細であるため、結果として作用剤の表面積が大きく、炎の中で非常に迅速な反応を可能にし、エアロゾル剤が非常に迅速に消火を行う。
【0028】
パネル、シート、様々な形態及び被覆体は自己完結型であり、火災の検出と凝縮された消火シート、パネル、様々な形態及び被覆体の作動との両方を提供するため、キャニスタ型のエアロゾル発生器より更に改善されており、更に、遮蔽された包囲体内の消火剤の分散を改善する。
【0029】
本発明は一部分では、火災危険物のための包囲体に使用するための火災抑制システムであって、第1の包囲体対向側及び第2の危険物対向側を有する凝縮エアロゾル火災抑制材料のパネルと、第1の包囲体対向側に近接して配置されている耐火材料と、第2の危険物対向側に配置されているシール剤材料とを備えている、火災抑制システムを備えている。
【0030】
パネルは、「そのままで」使用されることもでき、すなわち、包囲体に取り付けることなく、セラミック塗料、接着剤、シール剤など無しで使用されることができる。例えば、トラック又は飛行機で輸送するために新しいバッテリ又はラップトップコンピュータを箱に入れる場合、梱包を行う人が、固体エアロゾルの簡単なパネルを、輸送箱に取り付けることなく輸送箱に挿入することが可能である。このようなパネルは、あらゆる接着剤、シール剤、セラミックを必要としない場合がある。
【0031】
本発明の実施形態では、火災抑制システムは、第1の包囲体対向側及び耐火材料間に配置されている絶縁層を更に備えている。
【0032】
本発明の実施形態では、耐火材料はセラミック塗料を含んでいる。
【0033】
本発明の実施形態では、パネルは、第1の包囲体対向側及び第2の危険物対向側間に延びている少なくとも1つの横方向側を更に有している。耐火材料は、少なくとも1つの横方向側に配置されてもよい。
【0034】
本発明の実施形態では、火災抑制システムは、耐火材料の包囲体対向側に配置されている接着領域を更に備えている。接着領域は、耐火材料の包囲体対向側に配置されている接着材料の層と、接着材料の層を覆う保護材料の取り外し可能な層とを有してもよい。
【0035】
本発明の実施形態では、火災抑制システムが、潜在的な火災危険物上に又は火災危険物に物理的に近接して配置されているエアロゾル材料を有しており、エアロゾル材料は、熱又は炎の少なくとも1つに曝されることにより動作するように構成されており、エアロゾル材料は、エアロゾル火災抑制物質を含浸させた材料体;潜在的な火災危険物の表面に若しくは潜在的な火災危険物に物理的に近接して適用されている被覆体;の内の少なくとも1つの形態である。本発明の実施形態では、材料体は、可撓性、剛性、これらの組み合わせの内の1つを有し;円筒形、角錐形、角柱形、直方体、球形、不規則なシェル、これらの組み合わせの内の1つである形状を有し;中空、全体に固体、全体に固体であるが多孔性の内の1つであり;これらの組み合わせである。
【0036】
パネルは、包囲体上に取り付けるために設けられ得るか、若しくは危険物質のセクションを分離すべく包囲体内の仕切り又は分割体として設けられ得るか、及び/又は、危険物質上に取り付けられ得るか、若しくは危険物の内部に、例えば複数のセルで形成されたバッテリモジュール内の空間の内部に取り付けられ得る。本発明の実施形態では、仕切り又は分割体は、より大きな箱又は包装体の内部の箱の中のバッテリ又は電気デバイスを輸送する際に使用される。
【0037】
本発明の実施形態では、エアロゾル材料は、機械的特性の点でプラスチックと同様であることが好ましく、従って、危険物の構造又は特定の部品がエアロゾル材料から作製され得る。エアロゾル材料は、火災の場合には消火剤として利用可能である一方、適切な部品を設けて、危険物に必要な部品を設けるために形成されて打ち抜かれて成型されて機械加工され得る。このため、消火剤が危険物に一体化されると、消火剤を危険物に可能な限り近づける更なる機構が提供される。
【0038】
本発明の実施形態では、エアロゾル火災抑制物質は、硝酸カリウム、炭酸カリウム、エポキシ樹脂、有機樹脂、ジシアンジアミド(DCDA)、マグネシウム、燃料及び酸化剤を構成する同様の材料の内の少なくとも1つを含んでいる。本発明の好ましい実施形態では、エアロゾル材料は、潜在的な健康への悪影響に関する懸念のため、いかなる形態又は組成にもストロンチウムを含まない。
【0039】
本発明の実施形態では、エアロゾル材料はエアロゾル火災抑制物質の複数の層を更に含んでいる。複数の層は少なくとも2つの層を有してもよく、更に第1の層のエアロゾル火災抑制物質は、第2の層のエアロゾル火災抑制物質とは異なる。
【0040】
本発明の実施形態では、火災抑制システムは、エアロゾル火災抑制物質の作動を容易にすべく、エアロゾル材料に動作可能に結合されているイニシエータを更に備えている。
【0041】
本発明の実施形態では、火災抑制システムは、所定の温度を超える熱、炎、所定の濃度を超える燃焼生成物、少なくとも所定の成分を有する燃焼生成物の少なくとも1つを検知すると、イニシエータを作動させるべくイニシエータに動作可能に連結されている火災検知器を更に備えている。
【0042】
本発明の実施形態では、火災抑制システムは、イニシエータ及びエアロゾル材料に結合されている制御装置を更に備えている。
【0043】
本発明の実施形態では、制御装置は、イニシエータを人によって選択的に作動させ得る手動式アクチュエータを有している。
【0044】
本発明の実施形態では、火災抑制システムは、所定の温度を超える熱、炎、所定の濃度を超える燃焼生成物、少なくとも所定の成分を有する燃焼生成物の少なくとも1つを検知すると、イニシエータを作動させるべく、イニシエータに動作可能に連結されている火災検知器及び制御装置を更に備えている。本発明の実施形態では、火災危険物はデバイス及び処理システムの少なくとも1つを有しており、制御装置は、デバイスの動作を監視する監視装置に連結されている。このようなデバイスは、車両又は設備内のバッテリ又はバッテリバンクであり得る。或いは、処理システムは、火災の危険性が特に顕著であるあらゆるタイプの製造システム又は動作システムで有り得る。
【0045】
本発明の実施形態では、エアロゾル材料は、エアロゾル火災抑制物質を含浸させた材料体の形態であり、保護材料の層が、火災危険物に対向して配置される材料体の側に配置されており、保護材料の層は、エアロゾル火災抑制物質を含浸させた材料体の一部が露出するようなパターンで配置されている。
【0046】
本発明の前述した機能及び利点並びに他の機能及び利点は、正しい縮尺で示されていない添付図面と併せて読むと、現在好ましい実施形態の以下の詳細な記載から更に明らかになる。詳細な記載及び図面は、限定するのではなく、単に本発明を例示するものであり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定められている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】潜在的な火災危険物が配置されている典型的な包囲体を示す概略図である。
【
図2】
図1に示されている火災危険物の包囲体上に配置されている、本発明の実施形態に係るエアロゾル製品を示す概略図である。
【
図3】エアロゾル製品の代替の配置を示す、本発明の代替の実施形態を示す概略図である。
【
図4】層又は異なる形状のエアロゾル製品の配置を示す、本発明の代替の実施形態を示す概略図である。
【
図5】包囲体のエアロゾル剤の配置を示して、例示的な制御・検出・開始システムを更に示す本発明の代替の実施形態を示す概略図である。
【
図6】特定のエアロゾルパネル構成を示す、本発明の実施形態を示す概略図である。
【
図7】特定のエアロゾルパネル構成を示す、本発明の実施形態を示す概略図である。
【
図8】包囲体内の火災危険物上へのエアロゾルシステムの配置を示す、本発明の実施形態を示す概略図である。
【
図9】エアロゾル材料が火災危険物に適用されてもよいモードを示す、本発明の実施形態を示す概略図である。
【
図10】エアロゾル材料が火災危険物に組み込まれる本発明の実施形態を示す概略図である。
【
図11】個々のバッテリセルなどの例示的な火災危険物上へのエアロゾル材料の配置を示す、本発明の実施形態の概略図である。
【
図12】グループ化された個々のバッテリセルなどの例示的な火災危険物上へのエアロゾル材料の配置を示す、本発明の実施形態の概略図である。
【
図13】個々のバッテリセルの列などの例示的な火災危険物のユニット間の隙間空間内のエアロゾル材料の配置を示す、本発明の実施形態の概略図である。
【
図14】個々のバッテリセルのアレイなどの例示的な火災危険物のユニット間の隙間空間内のエアロゾル材料の配置を示す、本発明の実施形態の概略図である。
【
図15】エアロゾル材料が分割体又は仕切りに組み込まれている本発明の実施形態を示す一連の図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る硬化されたエアロゾル材料から作製された包囲体を示す断面図である。
【
図17】エアロゾル材料の活性化を制御するために選択的に配置されている抑制被覆体を組み込んだエアロゾルパネルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は多くの様々な形態で実施可能であるが、本開示は本発明の原理の例示とみなされるべきであり、本発明を図示されている一又は複数の実施形態に限定するものではないという理解に基づき、特定の実施形態が図面に示されて本明細書に詳細に記載されている。
【0049】
当業者が本発明を実施し得るために、本発明及び添付図面は、示されている参照番号を参照して記載されている。図面及び説明は、本発明の様々な態様の例示であり、添付の特許請求の範囲を狭めるものではない。特に言及されていない限り、明細書及び特許請求の範囲の用語及びフレーズは、適用可能な技術の当業者に平易で通常の慣例的な意味を伝えることが意図されている。尚、発明者は自らの語彙学者で有り得る。発明者は、明確に記載されていない限り、自らの語彙学者として明細書及び特許請求の範囲で用語の平易で通常の意味のみを使用すべく明確に選択し、更に、その用語の「特別な」定義を明確に記載して、その定義が平易で通常の意味とどのように異なるかを説明する。「特別な」定義を適用する意図を明確に示していない場合、用語の単純で平易な通常の意味が明細書及び特許請求の範囲の解釈に適用されることを、発明者は意図して望んでいる。
【0050】
本発明者は、英語の文法の通常の規則を更に認識している。従って、名詞、用語又はフレーズが何らかの方法で更に特徴付けられる、特定される又は狭められることを意図されている場合、このような名詞、用語又はフレーズは、英語の文法の通常の規則に従って追加の形容詞、記述語又は他の修飾語を明確に含む。このような形容詞、記述語又は修飾語を使用しない場合、このような名詞、用語又はフレーズは、上述したように適用可能な技術の当業者に平易で通常の英語の意味を伝えることが意図されている。
【0051】
更に、本発明者は、米国特許法第112 条(f) 又は旧米国特許法第112 条~6の特別規定の基準及び適用について十分に情報を得ている。従って、本発明の詳細な説明又は特許請求の範囲における単語「機能」、「手段」又は「ステップ」の使用は、発明を定義するために米国特許法第112 条(f) 又は旧米国特許法第112 条~6の特別規定を行使しようとしていることを何らかの形で示すものではない。反対に、発明を定義すべく、米国特許法第112 条(f) 又は旧米国特許法第112 条~6の規定を行使しようとする場合、特許請求の範囲は、正確なフレーズ「ための手段」又は「ためのステップ」及び特定の機能(例えば「ローストするための手段」)を具体的且つ明確に記載し、このようなフレーズに機能の裏付けとしていかなる構造、材料又は行為も述べることはない。そのため、特許請求の範囲が「・・・ための手段」又は「・・・ためのステップ」を記載している場合であっても、特許請求の範囲が、その手段又はステップの裏付けとするか又は記載されている機能を行うあらゆる構造、材料又は行為を更に記載する場合、発明者は、米国特許法第112 条(f) 又は旧米国特許法第112 条~6の規定を行使する意図がないことが明らかである。更に、主張する発明を定義すべく、米国特許法第112 条(f) 又は旧米国特許法第112 条~6の規定を行使する場合であっても、発明は、図示されている実施形態に記載されている特定の構造、材料又は行為のみに限定されず、発明の代替の実施形態又は形態に記載されているような主張された機能を行うか、又は主張された機能を行うための広く知られている現在の若しくは将来開発される等価の構造、材料若しくは行為であるあらゆる全ての構造、材料若しくは行為を更に含むことが意図されている。
【0052】
以下の記載では説明のために、発明の様々な態様を完全に理解すべく多くの具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本発明は、これらの具体的な詳細無しで実施され得ることを、関連する技術の当業者は理解する。他の例では、発明の不明瞭さを避けるために、既知の構造及び装置がより一般的に示されるか又は記載される。多くの場合、動作の記載は、特に動作をソフトウェアで行う場合に発明の様々な形態の実施を可能にするのに十分である。
【0053】
開示された発明が適用され得る多くの異なる代替の構成、装置及び技術があることに留意すべきである。従って、発明の範囲全体は、以下の例に限定されない。
【0054】
本発明の様々な態様が、機能ブロック要素及び様々な処理ステップの点で記載されてもよい。このような機能ブロックは、特定された機能を実行して様々な結果を達成するように構成された任意の数のハードウェア部品又はソフトウェア部品によって実現されてもよい。
【0055】
従って、火工式で生成される消火抑制物質の生成及び分散を実施するための改善された装置、システム及び方法が開示されているが、以下の開示におけるシステム及び装置への言及は、記載された処理のための関連する構造を利用する他の消火抑制装置及び消火抑制方法にも適用可能であることが理解される。同様に、方法への言及は、記載された装置の動作で処理を行うシステム及び装置にも適用可能である。特許請求の範囲から逸脱することなく、示されている様々な実施形態の要素又は構造の組み合わせを含むが、これらに限定されない多くの変更が本発明になされてもよいことが認識される。例えば、本明細書に記載されている装置を製造する特定の材料及び/又は方法が説明され得るが、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、所望であれば又は特定の用途の要件を満たす必要性に応じて、異なる材料及び/又は製造方法を選択してもよいことが理解される。
【0056】
図1~7は、例えば本発明の実施形態を示し、熱及び/又は炎に曝されることにより放出され得る火工式エアロゾル火災抑制剤が、火工式エアロゾル剤を含浸させた材料体の形態で設けられており、実施形態ではシートの形態で設けられている。このようなシートは、潜在的な火災危険物上に又は潜在的な火災危険物の近傍に戦略的に配置されてもよい。他のエアロゾル消火システムのための空間が限られている場合、又はエアロゾル剤の分散に著しい障害がある場合、エアロゾル剤パネル(シート、被覆体など)が特に適している。或いは、エアロゾル剤のシート又は被覆体が、ノズルを介して分散する火工式火災抑制剤の補足として設けられてもよい。
【0057】
火災抑制剤を含浸させる材料が、本明細書ではシートの形態で記載されて図示されているが、他の幾何学的構成が更に可能であり、本発明の範囲内にあるとみなされる。含浸材料体のこのような代替の構成は、可撓性、剛性、これらの組み合わせの内の1つ;円筒形、角錐形、角柱形、直方体、球形、不規則なシェル、これらの組み合わせの内の1つである形状;中空、全体に固体、全体に固体であるが多孔性の内の1つ;これらの組み合わせ;を含んでもよいが、これらに限定されない。また、本開示の目的上、「エアロゾル材料」への言及は、エポキシ樹脂材料を含むがこれに限定されないバインダ材料に埋め込まれるか又は含浸させる材料及び/又は材料の混合物若しくは組成物を指すことを意味する。エアロゾル火災抑制剤の作動概要は、以下の通りである。
a) (発火する前の)凝縮剤は通常、(エポキシ樹脂であり得る)燃料及び(硝酸カリウムなどの)酸化剤で主に構成されている固体材料である(が、液体又はスラリーもあり得る)。この凝縮剤は、花火、弾薬、エアバッグインフレータなどを含み得る他の火工式材料に類似している。
b) 材料が発火すると、酸化剤によって燃焼が大幅に促進される。燃焼速度によって、数秒で消火剤が発生するか、又は、爆弾が爆発効果を得るために即座に燃焼するかが決定される。
c) 凝縮剤の燃焼により消火エアロゾル剤が発生する。通常、固体ペレットは、窒素及び他の気体を含み得る複数の気体状副産物と共に、超微細粒子の形態で(通常は白い煙として存在し得る)実際のエアロゾルを発生させる。
d) 通常の消火対象の火災では、燃料が燃焼すると、空気中の酸素と結合する化学ラジカルを生じさせて、発熱反応を起こして燃焼を維持する。
e) 対象の火災は、以下の事象の一又は複数が発生しない限り、燃焼し続ける。
1.酸素が除去される(例えば、C02 消火器が使用される)
2.火災が冷却される(水スプリンクラ又は水ホースが使用される)
3.燃料が除去される(燃料供給バルブが閉じられると、漏れるパイプからの気体噴射火災が停止する)
f) 火工式エアロゾル火災抑制システムが、上述した3つの「従来の」方法のいずれかを使用しない。エアロゾル火災抑制剤として生成される微粒子はカリウムベースである。非常に微細な微粒子が対象の火災の炎に入ると、通常は酸素に結合する燃料のラジカルが、代わりにエアロゾル剤から供給されるカリウムラジカルに優先的に結合する。カリウムラジカルを介して生成される新しい化合物は安定しており、燃焼しないため、対象の火災は消火される。
g) 繰り返しになるが、通常は火災を囲み、対象の火災が燃焼し続け得るために必要な室内からの酸素が依然として存在する。火工式エアロゾル火災抑制剤は、火災に使用できる酸素を減少させない。代わりに、対象の火災の燃料ラジカルは、周囲の大気中の酸素より、火工品によって生成されるカリウムラジカルに高い親和性を有する。従って、酸素が依然として存在している間、酸素がカリウムの存在によって排除されるため、対象の火災は消火される。
【0058】
図1は、潜在的な火災危険物12が配置されている典型的な包囲体10を示す概略図である。保護すべき危険物は、例えば容器を有してもよく、容器は、実質的に漏れ防止であってもよく、軽微な漏れがあってもよく、潜在的な火災危険物を意味してもよい。火災危険物は包囲体内にある。火災のクラスは、クラスA(普通可燃物)、クラスB(可燃性液体)、クラスC(電気火災)、クラスD(リチウムなどの可燃性金属)、又はリチウムイオン式バッテリの特定の電解質など、大気中の酸素を必要とせずに燃焼する材料であり得る。
【0059】
図2は、
図1に示されている火災危険物12上に配置されている、本発明の実施形態に係るエアロゾル製品14を示す概略図である。シート、パネル又は他の形態から形成されるエアロゾル剤が包囲体10内に適合され得る。エアロゾル剤の量及び配置は、容積、利用可能空間、漏れ、障害によって決まる。高エネルギーの危険物では、不要な火災が、エアロゾル剤の燃焼を開始するのに十分なエネルギー、炎及び/又は熱を有することになる。この最も簡素な配置では、火災検知のための要件がなく、消火機能の作動が自動的である。
【0060】
「固体エアロゾル形成化合物」の作用剤の製剤はエネルギー物質である。エネルギー物質は通常、燃料及び酸化剤で構成されている。燃焼速度は、材料の選択によって決定される。非常に急速な燃焼は爆発とみなされる。ゆっくり燃焼する製剤が、固体エアロゾル形成化合物の防火製造業者によって使用される。固体エアロゾル形成化合物を考慮すると、使用される燃料は通常エポキシ樹脂であり、酸化剤は通常、硝酸カリウム又は同様の酸化剤である。より完全に述べると、(火工式発生器で使用される)エアロゾルペレットの構成に又は含浸シート上に使用されてもよい典型的な材料は、硝酸カリウム、炭酸カリウム、エポキシ樹脂、有機樹脂、ジシアンジアミド(DCDA)、マグネシウムの内の一又は複数を含むが、これらに限定されない。硝酸カリウムと炭酸カリウムとの間では、炭酸カリウムが強力な酸化剤であるが、炭酸カリウムは衝撃を受けやすいため、硝酸カリウムがより安全でより安定しているとみなされている。そのため、本発明の目的上、硝酸カリウムが、特に動き、衝撃、振動などを受けやすい場合がある火災危険物内で又は火災危険物に隣り合って実装するためのより安全な材料であるとみなされる。
【0061】
火工式発生器又は含浸シートを構成する場合、特定の化学組成;シートの表面積、又は発生器の場合のノズル面積及び/若しくはチャンバ体積、又はシート若しくはパネルの形状及び/若しくは厚さ;セラミック「塗料」などの(シート、パネル又は発生器ペレット上での)抑制被覆体の使用を含むが、これらに限定されない火災抑制エアロゾルの生産率を決定する際に、様々な要因を考慮してもよい。
【0062】
加えて、エアロゾル発生材料を支持するために外部のフレーム又はホルダに依存するのではなく、エアロゾル発生材料を支持するために自立体を設けるべくかなりの量のエポキシ樹脂が使用される本発明の実施形態では、エポキシ樹脂は燃焼速度に影響を及ぼし、潜在的に自己消火点まで燃焼を遅らせる場合がある。従って、例えば粉末状又はフレーク状のマグネシウム、アルミニウム又は同様の材料などの燃焼調節材料又は燃焼促進材料が樹脂内に分散してもよい。
【0063】
図3は、本発明の代替の実施形態の概略図であり、エアロゾル製品14が、危険物12を含む容器、筐体、包囲体10などの上に配置されている。
【0064】
図4は、エアロゾル製品14の代替の配置を示す、つまり複数の層16, 18として例示する本発明の代替の実施形態を示す概略図である。所望であれば、更なる層が設けられてもよい。例えば、エアロゾル製品が組み込まれてもよい形態は、パネル、シート、ブロック、細片及び棒状体を含む。エアロゾル製品14のエアロゾル剤は、包囲体10及び火災危険物12の最適な位置に配置され得る。全てのエアロゾル剤は、開始すると、エアロゾル材料のエネルギーにより作動する。取り付けられているエアロゾル剤のシート/パネル又は形態が互いに接しない場合でも、近くのエアロゾル剤が燃焼し始めて消火剤を発生させる。或いは、更に、層16, 18は、問題となる特定の火災危険物12の性質に合わせて、異なる温度で展開し得るように異なるエアロゾル材料を使用して作製されてもよい。
【0065】
図5は、検知システム及び作動システムと組み合わせたエアロゾル製品14の配置を示す、本発明の代替の実施形態を示す概略図である。火災から著しい炎又はエネルギーが発生した場合の自己開始に加えて、火災がエアロゾル燃焼の開始に必要なエネルギーではないと予測される場合、又は更なる信頼性が望まれる場合に使用するために一又は複数の火災検知器22及び電気イニシエータ24を追加することにより、エアロゾル剤材料を開始させることが可能である。火災検知には、煙検知器、熱検知器、炎検知器、及び/又は、自動式若しくは手動式の一若しくは複数の作動制御ステーション20が使用され得る。
【0066】
火災検知システムを使用して火災抑制エアロゾル発生器又はシートを作動させる方法に加えて、又はこの方法の代わりに、潜在的に発火し得る設備を監視するために設けられる(図示されていない)処理監視システムから受信した信号によって、作動を引き起こすことが更に可能である。例えば車両内のバッテリ区画を保護する場合、制御装置に信号を送信するように構成されている専用の火災/煙センサに加えて、更にバッテリバンクが監視システムを有することができ、監視システムは、発火又は爆発の原因となり得るが、実際に検知可能な煙、過度の熱又は炎が存在する前の状況に対応し得るバッテリバンクの動作不良を検知することが可能である。
【0067】
これらのパネル、形態又は被覆体14は、限定されないがバッテリの包囲体などの包囲体10の天井/最上部、壁及び床/底部に適用されて、作用剤が発火すると作用剤を直接、包囲体/部屋に分散させることができる。包囲体が、煙若しくは火災が発生している間に停止しないか若しくは停止し得ないアクティブな換気装置(例えば送風装置)を備えた包囲体である場合、又は、(換気装置のルーバーのように)開口部が固定されている状況、又は、包囲体の完全性が煙/熱/火災の発生によって急速に損なわれる場合がある状況では、日常的な設計及び工学的手法を使用する当業者は、このように損なわれる要因の結果として生じる場合がある活性化されたエアロゾル材料の潜在的な損失又は方向ミスに対処するためにエアロゾル剤の量を増やしてもよい。
【0068】
消火エアロゾルを発生させるエアロゾル剤の燃焼は、炎又は火の高熱によって直接開始され得る。エアロゾル剤に適合されたイニシエータを電気的に作動させるための熱センサ、煙センサ若しくは炎センサ又は手動式作動ステーションを使用した様々な火災検知システム20, 22, 24によってエアロゾル剤の燃焼を開始させることが更に可能である。他のタイプのイニシエータは、区画内の温度上昇を使用する熱作動タイプ若しくは機械タイプであるか、又はイニシエータを作動させるための手動機械式手段である。
【0069】
図6~7は、シート、パネル及び被覆体内の凝縮エアロゾル剤の更なる詳細を示している。
【0070】
図6~7に示されているように、畝状又は可撓性の凝縮エアロゾルパネル、シート及び被覆体をより実用的にするために、複数の改良及び特徴が提供され得る。
【0071】
薄いセラミック塗料又は被覆体30又は同様の難燃剤が、(図示されていない)火災危険物を囲むか又は含む包囲体36の一又は複数の表面34に適用されるパネル、シート及び/又はエアロゾル被覆体26の選択された表面32に適用され得る。このような材料は、一定期間、カ氏1500度以上の温度に耐え得る場合がある。これらの被覆体は、パネル、シート及び被覆体の燃焼を、難燃性材料が適用されない領域に制限する。このため、エアロゾル材料が消火剤を発生させるために燃焼する方法及び場所の制御が改善され、余りにも急速な燃焼を防ぐことが更に可能である。非常に急速な燃焼又は制御不能な燃焼は、危険物の包囲体を損傷し得る過度の圧力を発生させ得る。セラミック被覆体は通常、非常に薄い塗料層に類似しているとみなされるが、特定の厚さが、特定の実装要件に対応するために当業者によって決定されてもよい。この執筆時点では、本開示に従って実装されてもよいセラミック被覆体の潜在的な候補として、業界には多くのブランド及び製品が存在する。あるセラミック塗料又は被覆体が非常に高い熱に耐え得る。この特性を利用して、発火して燃焼する固体のエアロゾル剤の表面積を選択的に制御又は限定することが可能である。本発明の実施形態では、通常の用途のセラミック塗料の厚さは、1ミル(0.001 インチ)以上6ミル以下である。セラミック被覆体の厚さは6ミル~50ミルである。この執筆時点で市販されている1つの製品は、公称定格が最大1,800 °F(1,000 ℃)であるC-7700などのCerakote(商標)Cシリーズの被覆体である。別の製品ブランドは、3M(商標)NEXTEL(商標)の塗料及び被覆体である。
【0072】
シール剤、ゴム加工が施された被覆体又は薄膜38が、通常、凝縮エアロゾル剤材料の領域に存在する場合がある湿気又は他の腐食性化学物質の有害な影響を防止するためにエアロゾル材料の表面に適用され得る。この利点は、エアロゾル材料が、作用剤の材料を劣化させて性能を低下させ得る環境汚染から保護されるということである。これらの追加されたシール剤、ゴム加工が施された被覆体又は薄膜は可燃性を有するため、エアロゾル材料が炎又は熱に反応するのを妨げず、危険物からの炎が、シール剤、ゴム加工が施された被覆体又は薄膜を通って即座に燃焼して、凝縮したエアロゾル材料を依然として迅速に作動させて消火する。更に、シール剤は固体のエアロゾル剤を保護するだけでなく、露出した炎に対するパネルの反応時間を改善するのに役立つため、シール剤を、エアロゾル剤より速く燃焼を開始するエネルギー材料と混ぜ合わせることがよく知られている。シール剤の厚さは同様に、当業者によって特定の実装要件に従って変更され得る。本発明の実施形態では、10ミル(ここで1ミルは0.001 インチである)~100 ミルの薄い被覆体が、本発明の実施形態では好ましい範囲であるとみなされる。知られている潜在的な候補は、FLEX-SEAL (商標)というブランド名で販売されているゴムシール剤又は3M(商標)の同様の製品である。
【0073】
燃焼するエアロゾル材料から包囲体又は包装体への熱伝達を制限するために絶縁体40がエアロゾル材料に追加され得る。セラミック絶縁シート、布地又は被覆体などの高性能な絶縁材料が使用され得る。この利点は、筐体又は包装体をより薄くすることができるか、又はより安価な材料で形成することができ、更にガラス繊維、プラスチック、繊維板又はボール紙の容器などの可燃物とし得るということである。
【0074】
本発明の実施形態に従った使用に適切であるとみなされる絶縁材料の1つの供給源は、3M(商標)NEXTEL(商標)として知られている高性能な絶縁製品の優れた製品群を製造する3M(商標)である。本発明の実施形態によれば、絶縁層は、薄い布地として、又は可撓性のボール紙と同様の構成及び性能特性を有して作製された材料として設けられる。この材料は、放出後の放熱を遅らせて損傷を防止するためにエアロゾルキャニスタ内で既に使用されているが、エアロゾル剤の熱が包囲体に伝達されるのを直接防止するためには使用されていなかった。
【0075】
熱伝導に耐えるために広範囲の高性能なセラミック絶縁製品が利用可能である。3MのNEXTEL(商標)製品又はINTERAM (商標)製品のあるモデルが850 ℃以上の定格があると考えられており、固体の構造シート又は非構造織布として利用可能である。
【0076】
パネル又は他の形態が包囲体又は危険物に取り付けられる場合、設置の際にスプレー式又はブラシ式の接着剤が塗布され得る。
【0077】
或いは、設置前に、パネル、シート及び被覆体のエアロゾル材料の後ろに接着剤42が追加され得る。この利点は、接着剤が予め塗布され得るため、包装に使用されるフィルムを除去すると接着剤が露出して、次にパネル、シート及び被覆体がより迅速に且つより少ない労力で取り付けられ得るということである。例えば、接着剤の層を適用して、次に取り外し可能な保護フィルム又は剥離層(不図示)によって覆ってもよい。例として、両面取り付けテープ、又はエアロゾル材料の側に予め塗布されて、選択的に除去される保護層又は細片で覆われる接着剤の層がある。当業者は、特定の実装条件に適した接着剤を選択するが、3M(商標)が販売する接着材料、又はGorilla Glue(商標)などの一般的な他の接着剤が多くの用途に適しているとみなされる。1つの選択理由は、接着材料の燃焼がエアロゾルの火災抑制特性を妨げない、高熱又は炎の環境で有毒ではない等のように、接着剤の化学的性質がエアロゾル燃料及び酸化剤の化学的性質に適合している必要があるということである。
【0078】
図8~14は、エアロゾルのシート、パネル及び被覆体の複数の様々な用途を示している。シート、パネル及び被覆体54内の凝縮エアロゾル剤は、
包囲体自体の内面若しくは外面に取り付けるか、又は包囲体の内部内の仕切り上に若しくは仕切りとして取り付けることにより、包囲体50内に、
包囲体内の部品を含む、危険な部品52自体の上に、
危険な部品内に(
図10)、或いは
危険な部品の構造を構成するために
完全に又は部分的に設けられ得る。
【0079】
凝縮エアロゾル消火シート、パネル又は被覆体が包囲体、箱又は同様の容器に適用されるか、又は包囲体内の分割体又は分離体として使用されることに加えて、凝縮エアロゾル材料は、危険な材料若しくは集合体のすぐ近く、危険な材料若しくは集合体の上に又は危険な材料若しくは集合体の内部に使用されてもよい。
【0080】
パネル、可撓性及び/又は剛性のシート並びに被覆体内のエアロゾル材料は、火災危険物上に直接適用され得るか、又は火災危険物のすぐ近くに適用され得る。
図9は、エアロゾル材料の一又は複数のシート54が危険物52の一又は複数の側部56に適用され得る方法の例を示している。
【0081】
凝縮エアロゾル剤の材料は、危険物の一若しくは複数の表面に、このような表面の上に若しくはこのような表面のすぐ近くに適用され得るか、又は、危険物がパネル、可撓性及び/若しくは剛性のシート若しくは被覆体内のエアロゾル材料によって部分的に若しくは完全に覆われているか若しくは囲まれているように設けられ得る。
【0082】
この利点は、火災の検出及びエアロゾル消火材料の作動に要する時間を大幅に短縮し得るということである。更に、消火剤は火災危険物のより近くに分散する。
【0083】
例として、より大きな包囲体内にある一又は複数のリチウムイオン電池モジュール、又は完全なバッテリパックがある。モジュールは、1つの集合体としてまとめて保護され得るか、又は各モジュールが個々に保護され得る。
【0084】
更に、更なる保証のために、バッテリモジュール、バッテリパック又はバッテリセル60(
図11~14)を含むより大きい包囲体が、パネル、シート又は被覆体内の自身のエアロゾル材料を使用したエアロゾル保護を提供することが更に可能である。
【0085】
本発明の実施形態では、(
図11~12に示されているように)危険物の部品上に被覆体58を配置するか、又は(
図13~14に示されているように)危険物の空所の一部若しくは全てにエアロゾル材料62を充填することにより、エアロゾル材料が危険物内に適用され得る。特に
図11を参照すると、本発明の実施形態は、実際の危険な材料を構成する構造体又はデバイスの外面に直接エアロゾル発生材料を適用することにより、潜在的な火災危険物を保護する方法を有する。例えば、エアロゾル材料は、一又は複数の個々のバッテリセルを保持する全体的な電池パックに組み込まれる前に、個々のバッテリセルの外面に直接適用される。エアロゾル材料は、噴霧、浸漬、例えば接着剤の介在層を介したエアロゾル材料の薄いシートの適用、又はこれらの処置の内の2以上の組み合わせによって適用されてもよい。
【0086】
図15は、エアロゾル材料が分割体又は仕切りに組み込まれている本発明の実施形態を示す一連の図である。具体的には、分割体70は、例えば成型によって1つのユニットとして一体に形成されてもよい一連のパネル72として作製されている。或いは、分割体70は、互いに粘着して付着した別々のパネル72から作製されてもよい。別の代替の実施形態では、分割体70が、1つの細長い大型のパネル72及び一連の小型のパネル72から作製されてもよく、これらのパネルは全て、大型のパネル及び小型のパネルが互いに嵌合して分割体を形成するのを容易にすべく(図示されていない)スロットを有するように適切に成型されるか又は打ち抜かれている。
【0087】
図16は、ケース84内に含まれる複数のバッテリ82の形態で例示的な火災危険物80を示す断面図である。バッテリ82は、輸送又は保管のためにケース84内に含まれてもよい。或いは、ケース84は、複数のバッテリ82が共に保持されて互いに電気的に連結される機能ユニットを形成すべく使用されてもよい。本発明の実施形態では、ケース84は、4つの側部86(これらの内の2つが示されている)、底部88及び最上部プレート90を有しており、これらは、(図示されているが、参照番号は付与されていない)ねじ穴で受けるねじなどの留め具92, 94により共に保持されてもよい。
【0088】
図16の実施形態では、側部86、底部88及び最上部プレート90の内の一又は複数は、本明細書に記載されているような硬化されたエアロゾル材料から作製されてもよい。これらは、特定の寸法に機械加工されてもよく、或いは成型されるか、打ち抜かれるか圧延されるか、又はあらゆる適切な方法で作製されてもよい。更に、強化樹脂エアロゾル材料からバッテリパック又は電源の構造部品を作製することにより、最上部、底部、側壁、及び/又は内部の分割体若しくは壁を機械加工するか、ねじ用にタップ加工するか、他の留め具用に穿孔することが可能になる。本発明によって検討されているエアロゾル材料は、十分高い温度及び/又は活性な直火の存在下で自己作動しているので、包囲体及び潜在的な火災危険物の内部構造要素を構築する際にこのような材料を使用することにより、エアロゾル発生材料を発火させて一又は複数のエアロゾル火災抑制物質を放出させるためのセンサ、高度なプロセッサ及び/又は点火デバイスの必要性がなくなり得る。包囲体及び/又は内部構造要素の形状及び構成を変更する必要がない。
【0089】
図17は、エアロゾル材料の活性化を制御するために、エアロゾル含浸樹脂の基層102 が、選択的に配置されている抑制被覆体104 を有するエアロゾルパネル100 を示す斜視図である。
【0090】
更なる燃焼を制御して、パネル、シート又は被覆体の表面領域全体が余りにも急速に発火し始めるのを防ぐため、パネル、シート又は被覆体102 の表面の一部分は、セラミック塗料104 などの抑制剤で塗装/被覆され得る。この抑制被覆体102 は、パネル、シート又は被覆体102 上にセラミック塗料104 の市松模様又は同様のパターンをシルクスクリーン印刷するなどの形態で設けられ得るため、パネルの広い領域が炎に曝されるとき、パネルが作動する速度を制限する。このため、パネルの(最悪の場合には爆発になる)制御されていない急速な作動ではなく、制御された作動が保証される。
図17に示されているような市松模様のパターンに加えて、代替のパターンには、縞模様又は細片、渦巻パターン、ダイヤモンドパターン、(標的の中心円と同様の)同心円などが含まれてもよい。エアロゾル材料の一部を覆って他を露出させる保護材料のパターンの1つの機能は、エアロゾル材料の全てが直ちに火災に関与しないことを保証することであり、従って、所望であれば又は特定の実行要件を満たす必要性に応じてエアロゾル材料を徐々に又は少なくとも制御して経時的に、例えば1分以上に亘って放出することを可能にする。
【0091】
作用剤の材料を、完成した集合体への作製前にシート若しくは被覆体として部品に適用し得るか、又は、集合体をエアロゾル材料で噴霧若しくは浸漬することが可能である。
【0092】
更に、危険物集合体内又は危険物集合体の周りにエアロゾル材料を注入することにより、集合体の空所にエアロゾル材料を完全に又は部分的に充填するか又は含浸させることが可能である。一部の空間は、集合体の換気のために残されてもよい。
【0093】
十分なエアロゾル剤が設けられるが、集合体の換気のために一部の空間が残され得るように、バッテリモジュールは、バッテリモジュール内に格子としてエアロゾル剤を含むことが可能である。
【0094】
本発明の実施形態では、エアロゾル材料は、モジュールの部品を完全に若しくは部分的に被覆するか、又はバッテリセルを完全に若しくは部分的に被覆することにより、危険物領域内に適用され得る。一部の空間は、集合体の換気のために残されてもよい。
【0095】
本発明の実施形態では、火災危険物の構造自体は、凝縮エアロゾル剤から作製されてもよい。例えば、エアロゾル剤は、硬質プラスチックのような材料に似た外観及び物理的特性で畝状に形成され得る。この材料は機械加工され得るか、打ち抜かれ得るか、成型され得るか又は他の方法で形成され得るため、バッテリモジュールの構造は、金属又はプラスチックの代わりにエアロゾル剤で形成され得る。
【0096】
上記の段落では、エアロゾルのパネル、シート及び被覆体の更なる詳細及び改良が述べられている。セラミックの被覆体、シール剤、絶縁体及び接着剤などの同一の改良が、凝縮エアロゾル材料を危険物の部品若しくは集合体の近く、危険物の部品若しくは集合体の上、又は危険物の部品若しくは集合体の内部に設けるときに採用され得る。
【0097】
本明細書に開示されているエアロゾル放出火災抑制システムは、既知のシステムに比べて様々な利点を提供するとみなされる。
【0098】
A.他の更に従来の消火方法と比較して、本発明の利点は以下の通りである。
【0099】
熱暴走を伴うバッテリの火災は、消火して熱暴走の危険性がなくなるまで防ぐことが極めて困難である。本発明の実施形態は、リチウムイオン電池の用途で非常に迅速に消火して熱暴走を停止する一方、従来の作用剤(乾燥化学物質、標準的な水システム、泡、二酸化炭素など)は通常、消火を達成できない。この優れた性能は、エアロゾル剤の消火機構が火災の化学反応の中断であるために達成される。
【0100】
電池火災に対する性能に加えて、本発明の実施形態では、電池火災以外の他の種類の火災で他のほとんどの作用剤より遥かに速く消火する。
【0101】
本発明の実施形態は自己完結型であり、他の消火剤と比較して、コストが遥かに低く、重量が遥かに軽いとみなされる。
【0102】
B.キャニスタを使用する他のエアロゾルシステムと比較して、本発明の複数の認識される利点は、以下のように記載され得る。
【0103】
バッテリの火災及び熱暴走は非常に速い速度で進行する。これらの火災事象を検出して作動させ、消火する時間が重要になる。本発明の実施形態では、以下の理由により、リチウムイオン電池の用途でより迅速に応答する。
【0104】
パネル、シート及び他の集合体にエアロゾルを使用することにより、パネル、シート及び他の集合体は、包囲体内に置かれるとき、又は発火が予想される危険物上に直接置かれるとき、又はバッテリ集合体内に置かれるとき、又は実際のバッテリに被覆体として使用されるときに火災に遥かに近づくことが可能である。
【0105】
シート又はパネルにエアロゾル発生作用剤を広げることにより、本質的に作用剤の分散が改善されて障害が克服される。
【0106】
動作速度が遥かに速いということは、エアロゾルが、より小さく、ひいてはより危険が少ない火災に、バッテリ内の熱がより少ない状態で放出されることを意味し、そのため、消火して熱暴走を停止するタスクは、作用剤が適用されるのが早いほど簡単になる。
【0107】
本発明の実施形態は、包囲体の損傷、漏れを克服するため又は止められてない場合がある換気装置を補うために高い安全マージンを提供することが可能である。パネルに設けられる作用剤の量を容易に増加させることが可能である。
【0108】
本発明の実施形態は、自己完結型であり、低コストであり、空間要件が非常に低く、非常に軽量で実質的にメンテナンスが不要である。
【0109】
本発明は、火災検知システム又は作動システムが不要であり、機器がより少ないと故障のリスクもより少ないため、より高いレベルの信頼性を有する。
【0110】
C.露出したエアロゾルの小さいユニットを小さいフレームに使用する他のエアロゾルシステムと比較して、本発明の利点は以下の通りである。
【0111】
作用剤が、包囲体に接着され得るか、危険物上に取り付けられ得るか若しくは危険物に含浸し得るか、又は被覆体として適用され得るため、本発明はフレーム又は保持集合体を必要としない。更に、作用剤が機械加工又は形成されて、危険物の作製された要素をもたらすことが可能である。
【0112】
本発明の部品の大きさ及び形状は、各用途に合わせて与えられ得る。本発明は、設置する際に遥かに高いレベルの柔軟性を提供する。
【0113】
本発明では、作動して消火するのが遥かに速くなり、火災が拡大して、熱暴走を更に困難にする前に迅速な消火を行うことが特に重要である。応答時間の数秒が非常に重要になる。
【0114】
本発明に固有の高い安全マージンにより、エアロゾル剤の漏れを克服し、バッテリの残骸が冷却されて熱暴走の危険性を終わらせるまで火災の再発火を防止することにより保護を継続することが可能である。
【0115】
フレームに取り付けられたこれらの小さいユニットと比較しても、本発明は、設置の柔軟性を高め、作動時間及び消火時間を大幅に短縮し、作用剤の分散を向上させて、困難な障害を克服する能力を提供し、コストを削減して軽量化/省スペース化を行い、メンテナンスを不要にする。
【0116】
本明細書に開示されている本発明の実施形態が好ましいと現在みなされているが、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、様々な変更及び調節を行うことができる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に示されており、均等物の意味及び範囲内にある全ての変更及び調節は、本発明の範囲に包含されることが意図されている。例えば、本開示は、バッテリ火災の危険、特にリチウムイオン電池火災の危険の環境における製品、システム及び方法の使用に重点を置いている場合があるが、本発明の範囲はそのように限定されておらず、本明細書に記載されて例証されている原理は他の種類の火災危険物に適用されてもよいことを理解されたい。
【0117】
本発明は上記の例を参照して記載されているが、多くの調節及び変更が本明細書に開示されているように本発明の実施形態の真の趣旨及び範囲内であるとみなされると理解される。本明細書に記載されている本発明の多くの変更及び他の実施形態は、前述の説明及び関連する図面に示されている教示の恩恵を受ける、本発明が関連する技術の当業者に想到される。そのため、本発明は開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変更及び他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されて検討されていることを理解する必要がある。特定の用語が本明細書に使用されているが、これらは一般的且つ説明的な意味でのみ使用されており、限定のために使用されているわけではない。
【0118】
本願は、2021年7月30日に出願された米国特許第17/389539号の優先権を主張しており、その完全な内容全体が、参照により本明細書に明確に組み込まれている。
【国際調査報告】