(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】船舶間のバンカー燃料交換を監視および検証するためのシステムおよびプロセス
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240816BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506549
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2022056766
(87)【国際公開番号】W WO2023012563
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】10202108445U
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524041565
【氏名又は名称】エーディーピー クリア ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クロス,アリステア
(72)【発明者】
【氏名】バロン,タイラー
【テーマコード(参考)】
5L050
【Fターム(参考)】
5L050CC11
(57)【要約】
流体が補給船舶から受入船舶へ事前に確定された契約に従って供給されるプロセスを検証するシステムが開示される。システムは、例えば、流体の質量流量を測定するように構成された測定装置を備え、測定パラメータを受信し、パラメータを含む電子記録を作成して記憶する監視ユニットをさらに備える。システムは、監視ユニットに接続された無線ルータと、無線ルータに接続され、補給船舶と受入船舶との間にポイントツーポイント無線リンクを提供するように構成された無線アクセスポイントと、無線アクセスポイントの無線クライアント装置とを含むプライベートローカルエリアネットワークをさらに含み、クライアント装置は受入船舶上に位置する。第1のユーザおよび第2のユーザの各々が契約に関して電子記録を肯定的に検証したことを示す電子署名を行ったときに、供給プロセスが検証される
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補給船舶から受入船舶へバンカーラインを介して、事前に確立された契約条項に従って流体が供給される供給プロセスを監視および検証するためのシステムであって、前記システムは、
前記供給プロセスに関連するデータをキャプチャするように構成されたデータキャプチャ装置と、
前記供給プロセスに関連するデータを受信するために前記データキャプチャ装置に動作可能に接続された監視ユニットであって、前記監視ユニットは、
前記供給プロセスに関連する受信データの少なくとも一部を含む電子記録を作成するように構成された少なくとも1つのプロセッサ、および
前記電子記録および/または前記供給プロセスに関連する受信データを記憶するための少なくとも1つのメモリ
を備える監視ユニットと、
を備え、
前記システムは、
前記監視ユニットに動作可能に接続された第1の無線トランシーバであって、前記補給船舶上の1人以上の第1の認可ユーザの1つ以上の無線通信機器による前記監視ユニットへの無線アクセスを提供するように構成された第1の無線トランシーバと、
前記第1の無線トランシーバに動作可能に接続され、前記補給船舶と前記受入船舶との間にポイントツーポイント無線リンクを提供するように構成された第2の無線トランシーバと、
前記受入船舶上に位置し、前記ポイントツーポイント無線リンクを介して、前記受入船舶上の1人以上の第2の認可ユーザの1つ以上の無線通信機器による前記第2の無線トランシーバへの無線アクセスを提供するように構成された第3の無線トランシーバと、
を備えるプライベートローカルエリアネットワークをさらに備え、
前記プロセッサは、前記プライベートローカルエリアネットワークへのアクセスを有する前記第1のユーザおよび前記第2のユーザにアクセス可能なダッシュボードを作成するようにさらに構成され、前記ダッシュボードは、前記第1のユーザおよび前記第2のユーザに前記電子記録を提示し、前記第1のユーザおよび前記第2のユーザの各々が前記事前に確立された契約条項に関して前記電子記録を肯定的に検証したかどうかをそれぞれ示すための前記第1のユーザおよび前記第2のユーザの各々の電子署名を受け入れるように構成され、前記供給プロセスは、前記第1のユーザおよび前記第2のユーザの両方が電子署名を行ったときに検証される
ことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記データキャプチャ装置は、前記供給プロセス中に前記データを経時的にキャプチャするように構成され、前記監視ユニットのプロセッサは、前記ダッシュボード内の前記キャプチャデータの全てまたは一部を経時的にストリームとして提示するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記データキャプチャ装置、前記監視ユニット、および前記第1の無線トランシーバおよび前記第2の無線トランシーバが前記補給船舶上に配置され、前記測定装置が第1の物理的電気通信接続によって前記監視ユニットに接続され、前記監視ユニットが追加の物理的電気通信接続によって前記第1のトランシーバに接続されるように構成される、請求項1または2のどちらかに記載のシステム。
【請求項4】
前記第2の無線トランシーバおよび前記第3の無線トランシーバが、互いに見通し内通信を実行することができるように位置決めされるように構成される、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のトランシーバは無線ルータであり、前記第2のトランシーバは無線アクセスポイントであり、前記第3の無線トランシーバは前記無線アクセスポイントのクライアントである、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記データキャプチャ装置は、前記バンカーラインと係合し、前記バンカーラインの少なくとも一部を通る流体の質量流量、前記流体の物理的特性、前記流体の化学的性質、および前記流体の品質のうちの1つ以上に関するパラメータセットを測定するように構成された測定装置である、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記データキャプチャ装置は、前記供給プロセスに関連するデータの少なくとも一部がキャプチャされたコンピュータメモリまたはデータベース、前記供給プロセスの少なくとも一部に関連する日付および/または時間をキャプチャするタイマ、前記供給プロセスの少なくとも一部の間に前記補給船舶および/または前記受入船舶の位置をキャプチャするグローバル位置センサ、ならびに前記供給プロセスの少なくとも一部のビデオデータをキャプチャするビデオキャプチャ装置のうちの1つである、請求項1~5のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記データキャプチャ装置は、前記バンカーラインに挿入されるように構成された質量流量計を備える測定装置を備え、前記パラメータセットは、少なくとも前記質量流量計の少なくとも一部を通る流体の質量流量に関連し、前記質量流量計は、それぞれの運動センサが取り付けられた前記質量流量計の少なくとも一部の移動の関数として電気信号を提供するようにそれぞれ構成された複数の運動センサを備え、前記測定装置は、少なくとも
前記質量流量計の少なくとも一部を発振させるように前記質量流量計の一部を駆動し、
前記それぞれの運動センサから前記電気信号を受信し、
前記運動センサのうちの少なくとも2つからの電気信号間の位相差の関数として、前記バンカーラインを通る流体の質量流量を計算する
ように構成された送信機をさらに備える、請求項1~6のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記送信機は、前記運動センサのうちの1つ以上からの受信電気信号の周波数に基づいて、前記流体の密度を計算するようにさらに構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記測定装置は、前記質量流量計に動作可能に接続されるように構成され、少なくとも前記質量流量計を通る流体の質量流量および/または前記質量流量計によって測定される流体の密度に基づいて前記パラメータセットを計算するように構成されたフローコンピュータをさらに備え、前記フローコンピュータおよび前記質量流量計が正確なパラメータセットを提供する組み合わせであるとして計測局によって認定された組み合わせを形成するように構成される、請求項8または請求項9のどちらかに記載のシステム。
【請求項11】
前記監視ユニットは、少なくとも前記質量流量計を通る流体の質量流量および/または前記質量流量計によって測定される流体の密度に基づいて前記パラメータセットを計算し、前記質量流量計および前記監視ユニットが正確なパラメータセットを提供する組み合わせであるとして計測局によって認定された組み合わせを形成するように構成される、請求項8または請求項9のどちらかに記載のシステム。
【請求項12】
前記測定装置は、温度センサ、1つ以上の圧力センサ、レオメータ、タイマ、および化学センサのうちの1つ以上を備え、前記パラメータセットは、前記流体の温度、前記測定装置の少なくとも一部における流体の圧力または前記測定装置の一部の前後の圧力差、前記流体の粘度、前記流体の全てまたは一部を供給するのに要した時間、前記流体中の含水率、前記流体中の沈殿物含有量の割合、前記流体中の硫黄含有量の割合、および前記流体中の灰含有量の割合のうちの1つ以上を含む、請求項6~11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
さらに追加の物理的電気通信接続によって前記第1の無線トランシーバに接続されるように構成されたゲートウェイ装置をさらに備え、前記ゲートウェイ装置は、前記監視ユニットのプロセッサによる広域ネットワークへの安全なアクセスを提供するように構成され、前記プロセッサは、前記広域ネットワークの記憶装置に前記測定値セットを記憶するように構成され、前記ゲートウェイ装置および前記第1の無線トランシーバは、前記補給船舶上の1人以上の第1のユーザの1つ以上の無線通信機器による前記広域ネットワークへの安全なアクセスを提供するように構成される、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
補給船舶から受入船舶へバンカーラインを介して、事前に確立された契約条項に従って流体が供給される供給プロセスを監視および検証するためのコンピュータ実施方法であって、前記方法は、
前記供給プロセスに関連する少なくとも1つのデータをキャプチャするか、または、前記バンカーラインの少なくとも一部を通る流体の質量流量、前記流体の物理的特性、前記流体の化学的性質、および前記流体の品質のうちの1つ以上に関連する少なくとも1組のパラメータセットを測定することと、
プロセッサを使用して、前記キャプチャデータの全てもしくは一部、または前記パラメータセットのうちの少なくとも1つのパラメータを含む電子記録を作成することと、
前記電子記録をメモリに記憶することと、
前記プロセッサを使用して、ダッシュボードを作成することであって、前記ダッシュボードは、前記電子記録を提示し、少なくとも2人のユーザの各々が前記事前に確立された契約条項に関して前記電子記録を肯定的に検証したかどうかを示すための前記2人のユーザからの電子署名を受け入れるように構成されることと、
前記補給船舶上の無線ルータを介して、前記補給船舶上の少なくとも1人の第1の認可ユーザの無線通信機器によって、プライベートローカルエリアネットワーク上で、前記ダッシュボードへのアクセスを提供することと、
前記補給船舶上の無線アクセスポイントと前記無線アクセスポイントの無線クライアント装置との間のポイントツーポイント無線通信チャネルを介して、前記受入船舶上の少なくとも1人の第2の認可ユーザの無線通信機器によって、前記プライベートローカルエリアネットワーク上で、前記ダッシュボードへのアクセスを提供することであって、前記無線クライアント装置は前記受入船舶上にあることと、
前記ダッシュボードを介して、前記第1の認可ユーザが前記事前に確立された契約条項に関して前記電子記録を検証したかどうかを示すための前記第1の認可ユーザの電子署名と、前記第2の認可ユーザが前記事前に確立された契約条項に関して前記電子記録を検証したかどうかを示すための前記第2の認可ユーザの電子署名とを受信することであって、前記電子署名の両方が受信されたときに前記供給プロセスが検証されることと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記電子記録は、バンカー供給記録である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
コンピュータによって実施されるときに、前記コンピュータに請求項14または15のどちらかに記載の方法を実行させる非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
コンピュータに請求項14または15のどちらかに記載の方法を実行させるためのコンピュータ可読プログラム手段を含む、コンピュータ使用可能媒体に記憶されたコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
コンピュータに請求項14または15のどちらかに記載の方法を実行させるためのコンピュータ可読プログラム手段を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的には、台船と船舶との間のバンカリング作業中に供給される燃料の量を測定するためのシステムに関する。より具体的には、本明細書に記載される発明概念は、そのような測定値をバンカリングプロセス中にリアルタイムで報告することを可能にし、報告されている測定値の真正性を保証することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
バンカリングの不法行為は、海運業界において周知の現象である。悪徳な当事者は、バンカリングプロセス中にバンカー補給船(台船)からバンカー受入船舶に供給される燃料の品質および/または量について虚偽報告することによって、実質的な利益を得ることになる。バンカー燃料は、船舶に搭載されたシステムの推進または動作のための燃焼目的の任意の留出燃料または残留燃料を指すこともある。バンカー燃料は、留出船舶用(DM)燃料油、高硫黄燃料油(HSFO)、残留船舶用燃料油(RM)、極低硫黄燃料油(ULSFO)、超低硫黄燃料油(VLSFO)、重油燃料(HFO)、低硫黄燃料油(LSFO)、船舶用ディーゼル油(MDO)、船舶用軽油(MGO)、LNG燃料バンカーなどを含み得る。バンカー燃料は、台船から受入船舶へバンカーラインを通して圧送される。バンカリングは、ある程度手作業を必要とするプロセスであり、不法行為の多くの機会を伴うが、この場合、かなりの量の燃料がなくなるか、そうでなければ報告されないままであり、したがって収益損失をもたらすことになる。このような損失を最小限に抑えるために多くの努力がなされてきた。
【0003】
従来、手動の船舶サウンディングまたは浸漬技術が、船舶内のバンカー燃料の量を決定するために使用されていた。これらの方法は、燃料の体積を推定することを可能にする。しかし、バンカー燃料は、通常、重量で販売される。単位体積当たりの重量は、燃料の密度に応じて変化し、燃料の密度は、例えば、温度または圧力によって変化し得る。したがって、供給される燃料の量を推定するための従来の手法は、かなり労働集約的であり、密度を決定するために実験室試験を必要とし、体積から重量などに変換するために手動ディップおよびルックアップテーブルの使用に大きく依存する。例えば、そのルックアップテーブルを使用し、燃料供給の前後のバンカー台船内の燃料のレベル間の高さの差を測定することにより、台船マスターは、温度Tにおける船Xの燃料レベルの6インチ低下が所与の燃料量に対応することを計算することができる。受入船舶のチーフエンジニアは、その船舶独自の計算を行うことができる。両当事者は、その計算を文書化し、供給詳細に関する互いの主張を検証し、証明する。不注意にまたは悪意を持ってエラーが生じることが多く、その結果、当事者のいずれかによって異議が提出されるか、またはさらには本格的な法的紛争が生じる可能性がある。これらのプロセスは全て紙ベースであり、手作業で書類に署名するために、台船マスターとチーフエンジニアとの間で交換する物理的文書を必要とする。
【0004】
より最新の測定方法は、供給されるバンカー燃料の重量また質量を直接測定することを可能にする。供給される燃料の質量を直接測定することにより、供給セッション中の燃料の密度および/もしくは粘度の変化または燃料中の気泡の存在に起因する、体積を測定するときに発生する可能性があるエラーが低減される。質量の直接測定は、質量流量計(慣性流量計とも称する)を使用して行うことができる。質量流量計は、管を通って移動する流体の質量流量、すなわち、単位時間当たりに所与の点を通過する流体の質量を測定するための装置である。バンカーラインに挿入されたコリオリ質量流量計は、バンカリングセッション中に移送される燃料の質量を直接測定するために使用され得る。バンカリングプロセスを監視するために使用される質量流量計は、通常、港湾局または国家度量衡局、または質量流量計が業界で認められている計測要件に適合することを保証する責任を負う他の当局によって認定される。このような質量流量計は、通常、流量計の動作を制御するために必要な電子制御信号を出して、流量計から測定信号を受信するためのコントローラを有する。これらの質量流量計は、例えば、質量流量、体積流量、密度、および温度を測定するように構成され得る。コントローラは、処理される測定データを送信するための送信機を有してもよい。データは、専用のフローコンピュータによって処理されてもよい。例えば、時間、日付、および移送燃料の総量を含むバンカー移送受領書を印刷するように構成されてもよい。移送受領書は、法的(度量衡)文書として使用されてもよい。移送受領書からの情報は、コマーシャルインボイスの基礎として使用される公式受領書である、バンカー供給記録BDN)に記入するために使用されてもよい。BDNは、供給燃料の量、硫黄含有量(%m/m)、および少数の他の物理的特性を列挙するものである。また、もし論争が生じた場合の将来の分析のために、ドリップサンプルも採取され、保管される。安全手順に関連する他の文書および/または証明書も記入される。これらの文書は全て、署名/副署のために台船と船舶との間でやり取りしなければならない。
【0005】
先行技術は、バンカリング作業において供給される燃料の量を測定するためのシステムおよび方法を含む。このようなシステムは、コリオリ流量計などの振動式メータを使用し得る。このようなシステムおよび方法は、上述したより従来式の方法のいずれかを使用して生じることが知られている虚偽または誤った測定に関連する問題を解決するために使用されており、したがって、大型外航船舶のための信頼性の高いバンカリング作業を提供する。先行技術はさらに、コリオリ質量流量計を使用するシステムを含み、このシステムは、バンカーライン内の同伴空気または他のガスが流量計に誤った読み取りをさせるという問題を解決するように構成されている。
【0006】
測定システムを含むバンカー燃料移送システムが周知であり、このシステムでは、様々なセンサを使用して、バンカリングセッション中にバンカーラインまたは流管を通って流れるバンカー燃料に関連する特定のパラメータを測定する。センサは、バンカーラインを通るバンカー燃料の流量を測定するように構成されたコリオリ質量流量計の運動センサと、温度センサと、圧力センサとを含み、システムは、バンカリングセッション中に移送される燃料の質量を計算するように構成される。システムはさらに、移送された燃料の量を記録した、受入船舶に関するバンカーレポートを作成するように構成される。この物理的なバンカーレポートは、次に、受入船舶のチーフエンジニアによって署名され、上述の通常の方法で、バンカリングセッションに関連する他の全ての書類と共に、副署のために台船マスターに渡される。
【0007】
例えば、米国特許出願公開第US 2010/217536 A1号は、バンカー燃料供給トランザクションの量の確実性を提供するためのバンカー燃料移送システムを開示している。このバンカー燃料移送システムは、コリオリ流管と、コリオリトランスミッタと、燃料を補給するバンカー台船のデッキ上のスキッド上に配置され得るマルチ測定計量システムとを含む。これらの機器は、補給されている船舶の制御室内のコンピュータおよびバンカー受領書発行装置にリンクされ、コンピュータは、機器から様々な測定値を受信し、とりわけ、どれだけの燃料が供給されたかを計算する。バンカー受領書発行装置は、バンカー供給記録および/またはバンカー移送レポートを作成することができ、次いで、これらは、供給に関する契約条項を満たしているという証拠を提供するために、署名され、バンカー台船に渡されて副署される必要がある。船舶は、副署されたレポートを電子メールでクライアントに、またはブロードバンド無線通信手段もしくは衛星通信手段を介してクライアントFTPサイトに送信することを可能にするブロードバンドルータを有する。
【0008】
遠隔地から船舶の特性を監視する船舶監視システムが周知である。このようなシステムは、一般に、燃料消費量を監視するために質量流量計を使用する。システムは、衛星を介して基地局受信機に監視データを送信するために衛星トランシーバをさらに含む。他の車両監視システムは、質量流量計を含む複数のセンサと、測定パラメータを監視すべき特性に変換するためのテレメトリユニットと、テレメトリ信号を処理のために遠隔サイトに送信するためのトランシーバとを備え得る。このようなシステムで使用されるトランシーバは、一般に、衛星、GPRS、またはWiMaxの通信手段を使用して動作する。
【0009】
したがって、質量流量計は、先行技術において、バンカリングの状況で広く使用されてきた。しかしながら、質量流量計の導入により、正確な質量ベースの測定に基づく報告に対してより厳密さが得られたかもしれないが、それらが虚偽報告に関連する問題を完全に排除したとは言えない。実際に、質量流量計は、特に海上で、または質量流量計が義務付けられていない任意の場所で、例えば、再循環ライン、低流量、不適切な停止、不適切なドライブゲインレベル、空気混入の補正不足などを使用して、依然として操作される場合がある。さらに、質量流量計を使用しても、通常は地上通信ネットワークへのアクセスがない海洋環境では、台船と船舶との間で物理的文書を手動でやり取りすることによって、紙の文書に署名し、交換し、副署しなければならないという問題が依然として残る。
【発明の概要】
【0010】
バンカリング作業は、通常、海上で行われ、そこでは、ブロードバンド無線通信サービスまたは衛星通信サービスへの接続が制限されているか、または存在しないことさえある。したがって、無線通信手段を介して電子バンカー移送レポートをクライアントに送信することは必ずしも可能ではない。さらに、衛星を介した通信は、信頼できる接続が十分に長く持続され得る場合であっても、バンカー供給特性のリアルタイムの監視を実行するのに十分な低遅延接続を提供するものではない。
【0011】
先行技術を考慮しても、バンカー移送特性を監視し、バンカー移送が正確に実行されたことを署名して承認するか、または他の方法で検証もしくは認証するための、より効率的で費用効果の高い手段を提供する必要性が残る。流体が補給船舶またはバンカー台船から受入船舶に供給される間のバンカー供給セッションに関連するパラメータまたは特性の正確なインラインのリアルタイム測定値にアクセスする必要がある。船舶とは、例えば、台船、ボート、船などの海上航行船舶または水上船を意味する。流体は、多相流体、またはベース相が液体である2つ以上の成分の任意の混合物(例えば、同伴ガスを含む液体、粒子を含んだ流れ、スラリー、エマルション、および多液混合物)であり得る。好ましくは、流体はバンカー燃料である。
【0012】
第1の態様によれば、補給船舶から受入船舶へバンカーラインを介して、事前に確立された契約条項に従って流体が供給される供給プロセスを監視および検証するためのシステムであって、そのシステムは、
供給プロセスに関連するデータをキャプチャするように構成されたデータキャプチャ装置と、
供給プロセスに関連するデータを受信するためにデータキャプチャ装置に動作可能に接続された監視ユニットであって、監視ユニットは、
供給プロセスに関連する受信データの少なくとも一部を含む電子記録を作成するように構成された少なくとも1つのプロセッサ、および
電子記録および/または供給プロセスに関連する受信データを記憶するための少なくとも1つのメモリ
を備える、監視ユニットと、
を備え、
システムは、
監視ユニットに動作可能に接続された第1の無線トランシーバであって、補給船舶上の1人以上の第1の認可ユーザの1つ以上の無線通信機器による監視ユニットへの無線アクセスを提供するように構成された第1の無線トランシーバと、
第1の無線トランシーバに動作可能に接続され、補給船舶と受入船舶との間にポイントツーポイント無線リンクを提供するように構成された第2の無線トランシーバと、
受入船舶上に位置し、ポイントツーポイント無線リンクを介して、受入船舶上の1人以上の第2の認可ユーザの1つ以上の無線通信機器による第2の無線トランシーバへの無線アクセスを提供するように構成された第3の無線トランシーバと、
を備えるプライベートローカルエリアネットワークをさらに備え、
プロセッサは、プライベートローカルエリアネットワークへのアクセスを有する第1のユーザおよび第2のユーザにアクセス可能なダッシュボードを作成するようにさらに構成され、ダッシュボードは、第1のユーザおよび第2のユーザに電子記録を提示し、第1のユーザおよび第2のユーザの各々が前記事前に確立された契約条項に関して電子記録を肯定的に検証したかどうかをそれぞれ示すための第1のユーザおよび第2のユーザの各々の電子署名を受け入れるように構成され、供給プロセスは、第1のユーザおよび第2のユーザの両方が電子署名を行ったときに検証されることを特徴とする、システムが本明細書に開示される。
【0013】
データキャプチャ装置は、供給セッションに関連するいくつかのデータが記憶されている電子メモリ、コンピュータメモリ、またはデータベースであり得る。供給セッションに関連するデータは、例えば、受入船舶の名称またはシリアルナンバー、供給船舶の名称またはシリアルナンバー、供給セッションの参照番号、供給されている流体の参照番号または名称、供給セッションの段階を示す参照記号などであり得る。別の実施形態によれば、データキャプチャ装置は、ナビゲーションシステムなどの装置であってもよく、供給セッションに関連するデータは、供給セッション中の台船または船舶のグローバル位置、ならびに/または供給セッションが行われる日付および/もしくは時間であってもよい。別の実施形態によれば、データキャプチャ装置は、コンピュータであってもよく、供給セッションに関連するデータは、コンピュータのIPアドレスであってもよい。さらに別の実施形態によれば、データキャプチャ装置は、ビデオカメラであってもよく、供給セッションに関連するデータは、バンカリングプロセスの一部のビデオ画像であってもよい。さらに別の実施形態によれば、データキャプチャ装置は、タンク内の燃料のレベル、バンカーラインを通して供給される燃料の質量流量、燃料の温度、燃料の粘度などの供給プロセスに関連する1つ以上のパラメータを測定するための1つ以上のセンサを有する測定装置であってもよい。一実施形態では、異なるタイプのいくつかの異なるキャプチャ装置が使用され得る。
【0014】
第3の無線トランシーバは、受入船舶上の任意の無線機器のトランシーバであり得る。例えば、タブレットコンピュータのトランシーバまたはスマートフォンのトランシーバである。第3のトランシーバは、そうでなければ、受入船舶上のユーザが受入船舶のブリッジコンピュータまたはポータブルコンピュータなどのコンピューティングデバイスを使用して接続することができる受入船舶上のネットワークデバイスのトランシーバであってもよい。第3の無線トランシーバは、いくつかの実施形態では、アンテナを有し得る。
【0015】
データキャプチャ装置によってキャプチャされるデータは、要求される安全要件および/または法的要件を満たすためにバンカリング分野で一般に使用される任意のコンプライアンス基準または規制基準に従って、運航の契約上の義務が適切に実行されたことを実証または検証するために使用され得る任意のデータであり得る。
【0016】
第2の態様によれば、補給船舶から受入船舶へバンカーラインを介して、事前に確立された契約条項に従って流体が供給される供給プロセスを監視および検証するためのコンピュータ実施方法であって、その方法は、
供給プロセスに関連する少なくとも1つのデータをキャプチャするか、または、バンカーラインの少なくとも一部を通る流体の質量流量、流体の物理的特性、流体の化学的性質、および流体の品質のうちの1つ以上に関連する少なくとも1組のパラメータセットを測定することと、
プロセッサを使用して、そのパラメータセットのうちの少なくとも1つのパラメータを含む電子記録を作成することと、
前子記録をメモリに記憶することと、
プロセッサを使用して、ダッシュボードを作成することであって、ダッシュボードは、電子記録を提示し、少なくとも2人のユーザの各々が前記事前に確立された契約条項に関して電子記録を肯定的に検証したかどうかを示すための少なくとも2人のユーザからの電子署名を受け入れるように構成されることと、
補給船舶上の無線ルータを介して、補給船舶上の少なくとも1人の第1の認可ユーザの無線通信機器によって、プライベートローカルエリアネットワーク上で、ダッシュボードへのアクセスを提供することと、
補給船舶上の無線アクセスポイントと無線アクセスポイントの無線クライアント装置との間のポイントツーポイント無線通信チャネルを介して、受入船舶上の少なくとも1人の第2の認可ユーザの無線通信機器によって、プライベートローカルエリアネットワーク上で、ダッシュボードへのアクセスを提供することであって、クライアント装置は、受入船舶上にあることと、
ダッシュボードを介して、第1の認可ユーザが事前に確立された契約条項に関して電子記録を検証したかどうかを示すための第1の認可ユーザの電子署名と、第2の認可ユーザが事前に確立された契約条項に関して電子記録を検証したかどうかを示すための第2の認可ユーザの電子署名とを受信することであって、前記電子署名の両方が受信されたときに供給プロセスが検証されることと、
を含む、方法が提供される。
【0017】
一実施形態によれば、供給プロセスは、全ての規制条件が満たされたときに検証され、とりわけ、上述の電子署名、IPアドレス署名、ジオタグ署名、および/または時刻を含む日付スタンプを含み得る。
【0018】
第3の態様によれば、コンピュータによって実施されるときに、コンピュータに上記で開示された方法を実行させる非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。
【0019】
第4の態様によれば、コンピュータ使用可能媒体に記憶されたコンピュータプログラム製品であって、コンピュータに上記で開示された方法を実行させるためのコンピュータ可読プログラム手段を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0020】
第5の態様によれば、本明細書に開示される方法(単数または複数)をコンピュータに実行させるためのコンピュータ可読プログラム手段を含むコンピュータプログラムが提供される。したがって、本明細書に開示される技術を実行するためのコンピュータ可読プログラム手段は、コンピュータ可読媒体に記憶するために、例えば、インターネットなどの通信ネットワークを介して、コンピュータプログラムをダウンロードすることによって、ユーザによって取得されてもよい。
【0021】
本発明の実施形態は、バンカー燃料供給プロセスの1つ以上の態様を、好ましくはリアルタイムで、監視し検証することを可能にする。バンカリングプロセスは、一般に、海上の船舶間で行われ、船舶間のブロードバンド通信または衛星通信は、費用がかかり、信頼性がなく、および/または、必要とされるリアルタイム監視を行うのに十分な帯域幅を有さない場合がある。
【0022】
本明細書に記載される実施形態は、補給船舶の台船マスターと受入船舶のチーフエンジニアとの間の信頼できるバンカー関連情報の経済的、双方向性、低遅延、そしてリアルタイムの通信を提供し、そのことにより、バンカリングセッションまたはプロセスの重要な態様を検証して承認するために電子文書の署名および副署のやり取りを可能にする。
【0023】
本明細書に記載される発明概念は、発明概念の実施形態の非限定的な実施例として示した、以下の詳細な説明および添付図面によってよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】バンカーラインを介して補給船舶またはバンカー台船から受入船舶にバンカー燃料が供給される、海上におけるバンカリングプロセスを例解する。
【
図2】少なくとも1つの運動センサを備え、送信機/コントローラによって制御される質量流量計が挿入されたバンカーラインを示す。
【
図3】本明細書に記載される一実施形態に係るシステムの一部の概略図を示す。
【
図4】本明細書に記載される一実施形態に係るシステムの概略図を示す。
【
図5】本明細書に記載される別の実施形態に係るシステムの概略図を示す。
【
図6】本明細書に記載される一実施形態に係るシステムを例解する。
【
図7】広域ネットワークへのアクセスがゲートウェイ装置を介して提供される一実施形態に係る、補給船舶上の本開示のシステムの一部の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
海運業界におけるバンカー供給プロセスを合理化するためのシステムが開示される。このシステムは、効率を高め、バンカー供給プロセスに透明性を持たせるためのバンカー供給プラットフォームを提供する。プラットフォームは、バンカー台船または補給船舶の台船マスター、および受入船舶のチーフエンジニアなどのバンカー供給プロセスにおける利害関係者が、とりわけ、供給プロセス中にリアルタイムで燃料の量および/または品質を監視および検証することを可能にする。プロセスの重要な特性を示すデータを有するダッシュボードは、満たさなければならない一定の基準を記載した、事前に確立された契約に関してプロセスを各利害関係者が検証できるように、各利害関係者が利用可能である。ダッシュボードで提示されるデータは、燃料を供給するバンカーラインに動作可能に接続された測定装置内の様々なセンサから直接得られてもよく、センサは、燃料がバンカーラインを通過するときの燃料の質量流量、燃料の温度、燃料の密度、燃料の化学物質含有量(例えば、硫黄含有量)、バンカーライン内の圧力、バンカーラインの一部の前後の差圧などに関連するパラメータを測定するように構成される。システムは、測定装置内のセンサから測定データを収集するように構成された、プロセッサおよびメモリを備えるカスタムハードウェアコンポーネントである監視ユニットを含む。監視ユニットはまた、補給船舶および受入船舶上の認可ユーザによる測定データへのアクセスを提供するためにカスタムソフトウェアを実行する。
【0026】
ダッシュボードで測定データを示す代わりに、またはそれに加えて、システムは、単に測定装置以外の他のタイプのデータキャプチャ装置を備えてもよい。契約上または規制上の要件を立証するかまたは他の方法で認証するのに有用な任意の他のタイプのデータが使用されてもよい。例えば、システムは、メモリを備えてもよく、または、船舶名、供給される燃料の種類などのような供給セッションに関するデータが記憶され得るデータベースへのアクセスを有してもよい。データキャプチャ装置は、船舶の位置を自動的に追跡し、船舶の位置のグローバル座標を提供するために使用されるGPS装置またはAISシステムであり得る、または供給セッションの日付および/または時間情報を提供するためのタイマであり得る。一実施形態によれば、データキャプチャ装置は、供給セッション中にプロセスまたはプロセスステップの全てまたは一部のビデオデータをキャプチャするためのビデオキャプチャ装置であってもよい。例えば、サンプリングプロセスは、供給セッション中の一定の時間において燃料の小滴を収集することによって、3つの小さな燃料ボトルを収集することを含む。ビデオキャプチャ装置は、サンプリングプロセスのビデオストリームを提供するように構成され得、ビデオデータは、監視ユニットによって受信され、ポイントツーポイント無線通信リンクを介して送信される。ダッシュボードに表示するために電子記録にビデオフィードを含めることによって、サンプリングプロセスが規制手続きに従って実行されたことを適切に検証することができる。
【0027】
本明細書に記載されるシステムの実施形態は、好ましくは補給船舶上にある無線ルータの周囲に構築されたプライベートローカルエリア無線ネットワークを含む。監視ユニットおよびルータは、物理的なローカルエリアネットワーク接続を介して相互接続され、ルータは、好ましくは補給船舶上の無線アクセスポイントを有する場所のダイレクトラインで、受入船舶上の対応するクライアント無線ルータへのポイントツーポイント双方向無線通信リンクを実装するように構成された無線アクセスポイントにも接続される。したがって、受入船舶上にモバイル通信機器を有する認可ユーザは、例えばウェブブラウザを使用して、このプライベートローカルエリア無線ネットワークを介して監視ユニットにアクセスすることができる。システムはさらに、電子バンカー供給記録、ならびに供給プロセスを監査するために必要な他の文書を作成し得る。バンカー供給記録は、プライベートローカルエリアネットワークを介してチーフエンジニアに利用可能であり得る。電子文書が供給燃料の量および品質に一致することに両当事者が合意すると、両当事者はそれぞれ、ポータルを介して、供給プロセスが検証されたことを示す電子署名を行うことができる。契約の詳細は、当事者が検証を実行できるようにシステムに記憶され得る。これらの詳細は、バンカー供給サンプリング手順フォーム、取り扱い手順フォーム、初期供給前測定のためのアレージレポート、バンカー分析レポート、安全性チェックリスト、予想燃料量などを含み得る。供給後、バンカー供給受領書、アレージレポート、および陳述書などのさらなる電子文書が作成され得る。
【0028】
このシステムは、燃料が供給されている間に測定装置内の異なるセンサから受信されたリアルタイムのインライン測定値に基づいて、電子文書を自動的に作成することができるという利点を提供する。手動データ入力によって発生する可能性のあるエラーは、このようにして回避される。書類は、相互検証のために、補給船舶と受入船舶との間でプライベート無線ネットワークを介してやり取りされ得る。電子文書はさらに、当事者の承認を示すために容易に署名され得る。
【0029】
ユーザは、リアルタイムの対話型バンカー管理ダッシュボードを介して、バンカー供給に関する情報およびメトリクスへの安全で許可されたURLアクセスを使用して、クライアントポータルによってアクセスすることができる。ユーザは、例えば、電子バンカー供給記録、質量流量計測定データ、台船監査記録および報告、動作タイムライン、ならびに質量流量計プロファイルなどの供給プロセスに関するメトリクスを含む、現在および履歴のバンカー供給情報を閲覧することができる。本発明のシステムにより、現在および履歴のバンカー供給情報は、任意のグローバルな場所にいる認可ユーザによって閲覧され得る。
【0030】
一実施形態によれば、広域ネットワークへのアクセスは、例えば、衛星接続へのアクセスを有するルータにゲートウェイ装置を接続することによっても提供され得る。この実施形態では、電子バンカー供給記録に基づいて、供給のための電子請求書を顧客に直接送ることができる。この実施形態では、監視ユニットは、他の場所にいる他の認可された当事者が参照することができるように、ゲートウェイ装置を介してクラウドに測定値をアップロードするようにさらに構成される。したがって、システムは、供給船舶の台船マスターおよび受入船舶のチーフエンジニアとは別のバンカリングプロセスにおける他の利害関係者(例えば、港湾局、税関当局など)への自動的なリアルタイムの報告を提供する。
【0031】
図1を参照すると、バンカリングセッション100が例解されており、このバンカリングセッション100において、補給船舶であるバンカー台船102の貯蔵タンク103からバンカーライン108を通して受入船舶105の1つ以上の燃料タンク106にバンカー燃料が移送される。バンカー台船は、通常、受入船舶よりも小さく、高さが低いので、バンカー台船は、バンカーラインを受入船舶のバンカリングマニホールドに接続するのに十分な高さにバンカーラインを持ち上げるクレーンを有し得る。
【0032】
図2は、コリオリ質量流量計221の概略図であり、このコリオリ質量流量計221は、バンカーライン208に挿入され得、流体(バンカー燃料)がバンカーラインを通過するときに、その流量を測定するために使用され得る。質量流量計の特定の部分に配置された磁石コイルアセンブリは、電気信号223によって駆動され、これにより、動作中に質量流量計の一部が振動または発振する。流量計の異なる部分が発振する方法は、質量流量計を通って移動する流体の質量流量に依存する。少なくとも2つの追加の磁石コイルアセンブリが、センサとして動作するように、流体の流れに沿った異なる位置で質量流量計上に配置される。流量計のこれらの部分の振動により、センサは互いに位相のずれた電気信号を生成することができる。センサは、質量流量計を通る流体の流れによって引き起こされる質量流量計の対応する部分の運動を表す正弦波信号224a、224bを生成する。センサによって生成された信号の位相を比較することによって、流量計を通って流れる流体の質量流量を決定することができる。質量流量計は、通常、質量流量計を駆動し、センサ信号を受信して処理する送信機/コントローラ222と共に動作する。通常は単に送信機と呼ばれる送信機/コントローラは、例えば、質量および体積流量、正味の生成物含有量または流量、温度、密度または濃度などのパラメータ225を出力し得る。
【0033】
コリオリ質量流量計は、コリオリの原理を用いて質量流量(キログラム毎時)および密度を直接測定する。このような質量流量計は、質量流量、体積流量、または両方の組み合わせを表示するように構成され得る。一部の質量流量計は、測定される液体または液体混合物の温度を示すこともできる。流量は、異なるセンサから受信された信号間の位相差から計算され得る。密度は、センサからの信号の周波数から計算され得る。
【0034】
図3は、本明細書に記載されるように、流体が補給船舶から受入船舶にバンカーライン308を介して供給される供給プロセスを監視および検証するためのシステム390の一部の概略図である。
図3は、流体を供給するバンカーライン308の一部を示す。システムは、何らかの方法でバンカーラインと係合して供給プロセスに関連する特定のパラメータを測定することを可能にするデータキャプチャ装置(この場合、測定装置320である)を備える。
図3に示すように、測定装置は、質量流量計321を備え得る。質量流量計は、流体がバンカーラインを通って移動するときに流体の質量流量を測定することができるように、バンカーラインに挿入されたコリオリ質量流量計であり得る。他の実施形態によれば、測定装置は、異なるパラメータを測定することができるように、異なるタイプのセンサを有してもよい。例えば、温度センサは、バンカーライン内の流体の流れをプローブ測定することによってバンカーラインと係合することができる。他のセンサ、例えば、タイマ、バンカーライン内の流体の圧力を測定するまたはバンカーラインの一部に沿った圧力差を測定する1つもしくは複数の圧力センサ、流体の粘度を測定するレオメータ、または流体中の含水率、流体中の沈殿物含有量の割合、流体中の硫黄含有量の割合、もしくは流体中の灰含有量の割合などを検出する多数の異なる化学センサのうちの1つ以上のセンサが可能である。
【0035】
図3では、質量流量計は、その送信機322と組み合わせて示されており、送信機322は、質量流量計内に発振を引き起こすために電気信号323を送信し、質量流量計内のセンサから電気信号324a、324bを受信して、バンカーラインを通る流体の質量流量を計算し、流体の密度を計算することを可能にする。好ましくは、質量流量計は、補給船舶に配置される。
【0036】
システムは、監視ユニット330をさらに備え、監視ユニット330は、測定パラメータ325が測定される際に測定パラメータ325を受信することができるように測定装置に接続される。一実施形態によれば、監視ユニット330は、測定パラメータを記憶するための少なくとも1つのメモリ332と、測定パラメータを処理するための少なくとも1つのプロセッサ331とを備える。パラメータは、供給プロセス中に異なる時間間隔で測定され、監視ユニットに供給され得る。プロセッサは、受信した測定パラメータセットのうちの少なくとも1つのパラメータを含む電子記録を作成するように構成され得る。電子記録は、それ以外に、または追加的に、測定パラメータのうちの1つ以上から導出された、または他の方法で計算されたデータを含み得る。特定の実施形態によれば、特に測定装置がコリオリ質量流量計を備える場合、測定装置は、質量流量計からパラメータ測定値を受信し、それらを処理するように適合されたフローコンピュータ(
図3には図示せず)をさらに備える。質量流量計の製造業者は、計測性能を向上させ、測定の不確実性を低減し、ひいては、測定契約の遵守を保証するために、質量流量計とフローコンピュータとをユニットとして一緒に提供することがある。このようなユニットは、通常、度量衡局によって、または、港湾局もしくはユニットが業界で認められている計測要件に準拠することを保証する責任を負う他の同様の計測局によって認定される。このような実施形態では、監視ユニットは、読み取り専用モードで質量流量計から測定パラメータを収集するので、監視ユニットによって受信されたデータが関係当局によって認定されたコンプライアンスを満たすことが保証される。他の実施形態では、フローコンピュータを用いずに、監視ユニットが質量流量計から直接測定パラメータを読み取り、関係当局によって認定されるのは質量流量計と監視ユニットとの組み合わせである。
【0037】
監視ユニットのプロセッサは、プライベートローカルエリアネットワークへのアクセスを有する第1のユーザおよび第2のユーザに(好ましくは、ウェブブラウザを使用して)アクセス可能なネットワークアクセス可能ダッシュボードを作成するようにさらに構成され、ダッシュボードは、第1のユーザおよび第2のユーザに電子記録を提示し、第1のユーザおよび第2のユーザの各々が前記事前に確立された契約条項に関して電子記録を肯定的に検証したかどうかをそれぞれ示すための第1のユーザおよび第2のユーザの各々の電子署名を受け入れるように構成され、供給プロセスは、第1のユーザおよび第2のユーザの両方がそれらの電子署名を行ったときに検証される。
【0038】
一実施形態によれば、質量流量計から監視ユニットに測定データを供給することに加えて、補給船舶上でプリンタ305を使用して、バンカー供給受領書を印刷することができる。これは
図3に示されており、バンカリングプロセスが完了した後、スイッチ307を作動させて、測定装置出力をプリンタに送るように切り替えることができる。実施形態は、プリンタおよびスイッチなしでも成り立つ。
【0039】
監視ユニットは、物理的な通信ネットワークケーブルを介して、補給船舶または台船上の無線ルータ310に接続される。したがって、台船上のユーザは、ウェブブラウザを使用して監視ユニットに接続し、例えば、電話またはタブレットコンピュータ315などのモバイル通信機器を使用して測定結果を閲覧することができる。一実施形態によれば、監視ユニットは、ソフトウェアアプリケーションを実行して、測定データ、または測定データから導出された、もしくは他の方法で計算された他のデータを、ウェブブラウザによってアクセス可能なダッシュボードに提示するように構成される。データキャプチャ装置がビデオキャプチャ装置である実施形態では、監視ユニットは、ウェブブラウザを介してアクセス可能なダッシュボードに、供給セッション中のプロセスの少なくとも一部の間にキャプチャされたビデオコンテンツの全てまたは一部を提示するように構成される。同様に、データキャプチャ装置がメモリまたはデータベースからデータをキャプチャするときに、監視ユニットは、ダッシュボードにキャプチャデータを提示するように構成される。
【0040】
実施形態によれば、システムは、物理的通信ネットワークケーブルによって無線ルータに接続され、受入船舶上の対応する追加のトランシーバにポイントツーポイント無線通信リンクを提供するために無線アクセスポイント340として構成されたアンテナをさらに備え、追加のトランシーバは、アクセスポイントに対するクライアント装置として構成される。好ましくは、アクセスポイントおよびクライアントのそれぞれの船舶上の配置は、ポイントツーポイント通信リンクを介して台船と受入船舶との間の見通し内通信を提供するように選択される。
図3は、無線アクセスポイントまでのシステムを示す。クライアント装置および受入船舶は図示されていない。追加のトランシーバは、アンテナをさらに有してもよく、船舶上の1つ以上のコンピュータまたはモバイル機器への無線接続を提供してもよい。別の実施形態では、追加のトランシーバは、スマートフォンまたはタブレットコンピュータまたは他のモバイル通信機器などのモバイル通信機器の一部であり得る。
【0041】
ポイントツーポイント通信ネットワークは、好ましくは、プライベートネットワークである。このようにして形成されたネットワークを、受入船舶上の無線機器と、台船および監視ユニット上の無線機器とを含めて、イントラネットと呼ぶことができる。
【0042】
一実施形態に係る台船402および受入船舶405上に配備されたシステム400が、
図4に概略的に示されている。
図4は、受入船舶405とポイントツーポイント無線通信499を行う、ボックスで示された台船およびそのシステムコンポーネント402を示す。受入船舶は、台船上のアクセスポイントのクライアントであるルータとして構成されたアンテナ445を有する。受入船上の認可ユーザは、次いで、自身のモバイル通信機器425を使用してネットワークに接続することができる。
【0043】
図5に示される別の実施形態によれば、受入船舶505は、追加のアンテナ545に接続された追加のルータ546をさらに備え、受入船舶上のユーザ525がネットワーク599に接続することを可能にする。
【0044】
一実施形態によれば、受入船舶上にはアンテナがなく、ポイントツーポイント通信リンクは、受入船舶上で使用されるモバイル通信機器のトランシーバを使用して完成される。
【0045】
図6は、本発明の一実施形態が展開され得るシステム600の一例を例解する。台船602上には、データキャプチャ装置がある。この場合、データキャプチャ装置は、燃料供給を行うバンカーライン608と係合することによって供給プロセスに関連するパラメータセットを測定する測定装置620である。測定データは、監視ユニット630によって読み取られ、記憶される。監視ユニットはさらに、アプリケーションを実行して、測定値が提示されるネットワークアクセス可能なダッシュボードを作成するように構成される。ダッシュボードは、プライベート無線通信ネットワークを介して、ウェブブラウザを使用してアクセス可能であり得る。監視装置は、このようにして作成されたダッシュボードが、好ましくはユーザの電子署名の形態で、認可ユーザからの入力を受け入れて、ダッシュボードに提示された測定値またはパラメータが供給プロセスに関する事前に確立された契約条項に記載された要件を満たすことをユーザが検証したことを示すように構成される。
【0046】
データキャプチャ装置がビデオキャプチャ装置である実施形態では、監視ユニットは、供給セッション中に使用されるプロセスの全てまたは一部のキャプチャビデオデータを処理して、ダッシュボードに表示できるように構成される。
【0047】
本明細書に記載された実施形態を使用すれば、台船マスターおよび受入船舶のチーフエンジニアの両方が、ポイントツーポイントプライベート無線ネットワーク699および監視ユニット630によって作成されたダッシュボードによって、バンカー燃料が供給されているときにリアルタイムでバンカリングセッションの1つ以上の特性を監視することが可能である。システムは、供給燃料の粘度、その密度、その温度、その質量、その流量、供給燃料中の含水率、沈殿物含有量の割合、硫黄含有量の割合、灰含有量の割合、および供給燃料を圧送するのに要した時間または圧送が行われた回数を含む、様々な異なる特性を監視することを可能にする異なるセンサを備え得る。好ましい実施形態では、システムは、流量計の前後の差圧を測定するための圧力センサを備え、これは、同伴ガスがバンカー燃料に含まれるときに測定値を補正するのに有用である。測定パラメータおよび特性を使用して、電子バンカー供給記録(BDN)が自動的に作成され、追加され得る。バンカーセッションに関する他の文書または証明書も、測定値を使用して作成され、追加されてもよい。作成された電子文書は、台船マスターによって電子署名され、次いで受入船舶のチーフエンジニアに無線で送信され、その後、チーフエンジニアは、文書に副署して、コピーをバンカーマスターに送り返すことができる。一実施形態によれば、文書はクラウドに送信されてもよい。
【0048】
図7は、物理的なローカルエリアネットワークケーブルを介して台船上のルータ710、例えば、Sigma Clusterに接続されたゲートウェイ装置750を備える一実施形態を例解する。この実施形態では、監視ユニット730は、その測定値、または供給プロセスを監視するための他のデータをクラウド760に記憶することができ、クラウド760では、例えば、衛星技術または4G通信技術を使用して、認可ユーザのいる場所がクラウドへのアクセスを提供する場所であればどこでも、認可ユーザがアクセス可能である。船舶がクラウドへのアクセスが可能な場所にあるときはいつでも、船舶は、その測定データをアップロードすることができ、および/またはクラウドからソフトウェア変更もしくは設定変更を受信することができる。したがって、測定データ、ビデオデータ、請求書発行データ、または供給プロセスを検証するために使用される任意の他のデータは、好ましくは、ウェブブラウザを介してアクセス可能なダッシュボードを介して、供給プロセスにおけるクライアントまたは他の利害関係者に利用可能であってもよい。データキャプチャ装置または測定装置720、ならびに監視ユニット730、無線ルータ710、および船舶へのポイントツーポイントプライベート双方向無線リンクを構築するための無線アクセスポイント740が示されている。
【0049】
一実施形態によれば、監視ユニットのプロセッサは、バンカリングプロセスが完了されるときにプライベートネットワークを解体するように構成される。
【国際調査報告】