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特表2024-530643バイオ医薬組成物および安定同位体標識ペプチドマッピング法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】バイオ医薬組成物および安定同位体標識ペプチドマッピング法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/13 20060101AFI20240816BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240816BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240816BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240816BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240816BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240816BHJP
   A61K 38/06 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C07K1/13 ZNA
A61K47/68
A61K39/395 L
A61K39/395 T
A61P35/00
C07K16/28
G01N33/68
A61K38/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506801
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 IB2022057173
(87)【国際公開番号】W WO2023012669
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/228,951
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513032275
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ディベロップメント、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY DEVELOPMENT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】タイラー、キース、デイビス
(72)【発明者】
【氏名】ヒラリー、アンバー、シュスラー
【テーマコード(参考)】
2G045
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G045DA38
2G045FB06
2G045FB07
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA15
4C084BA23
4C084CA59
4C084DA27
4C084NA05
4C084ZB26
4C085AA21
4C085CC23
4C085DD53
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、正確で高感度なコンジュゲーション部位定量化のための、安定同位体標識(SIL)ペプチドマッピング法が開示される。本明細書ではまた、BCMAを標的とする抗体薬物複合体(ADC)を含む組成物も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)カルボニル基を含有する同位体標識された細胞毒素と還元剤とを使用して、システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体(ADC)の未占有システイン部位のコンジュゲーションを行うことにより、同位体標識されたADCサンプルを作製すること、および、
(ii)前記サンプルのペプチドマッピングを行うこと
を含む分析方法。
【請求項2】
前記細胞毒素が、MMAFまたはMMAEである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ADCが、はじめに前記還元剤によって還元され、次いで前記同位体標識された細胞毒素とコンジュゲートされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記還元剤が、ジチオトレイトール(DTT)またはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
余剰の還元剤が、前記ペプチドマッピングの前に、サイズ排除クロマトグラフィーカラムから前記サンプルを溶出させることにより除去される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
コンジュゲーションが、前記ADCを前記同位体標識された細胞毒素と反応させることにより起こる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
余剰の同位体標識された細胞毒素が、前記ペプチドマッピングの前に、サイズ排除クロマトグラフィーカラムから前記サンプルを溶出させることにより除去される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ペプチドマッピングが、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)の使用を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ペプチドマッピングが、前記サンプルの変性、残留する総てのジスルフィド結合の還元、および生じた遊離スルフヒドリルのアルキル化を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ペプチドマッピングが、前記サンプルの酵素消化による同位体標識されたコンジュゲートペプチドの生成、および任意選択で、強酸の添加による酵素消化のクエンチを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記同位体標識されたコンジュゲートペプチドがイオン化され、質量電荷比が検出される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記同位体標識されたコンジュゲートペプチドに関して検出された質量電荷比が、同位体標識されていないコンジュゲートペプチドと比較される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
細胞毒素を同位体標識された水と反応させて、前記同位体標識された細胞毒素を生成することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞毒素をアセトニトリル中で同位体標識された水と反応させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ADCがベランタマブマホドチンである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体を含む組成物であって、
前記抗体が、
配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1、
配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2、
配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3、
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1、
配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2、および、
配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3
を含み、かつ、
前記細胞毒性剤が、MMAFまたはMMAEであり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が、約56%~約80%である、組成物。
【請求項17】
抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体を含む組成物であって、
前記抗体が、
配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1、
配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2、
配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3、
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1、
配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2、および、
配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3
を含み、かつ、
前記細胞毒性剤が、MMAFまたはMMAEであり、かつ、
HC C224での薬物負荷の割合が、約58%~約81%である、組成物。
【請求項18】
抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体を含む組成物であって、
前記抗体が、
配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1、
配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2、
配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3、
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1、
配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2、および、
配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3
を含み、かつ、
前記細胞毒性剤が、MMAFまたはMMAEであり、かつ、
HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が、約15%~約46%である、組成物。
【請求項19】
抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体を含む組成物であって、
前記抗体が、
配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1、
配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2、
配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3、
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1、
配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2、および、
配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3
を含み、かつ、
前記細胞毒性剤が、MMAFまたはMMAEであり、かつ、
HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が、約11%~約15%である、組成物。
【請求項20】
抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体を含む組成物であって、
前記抗体が、
配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1、
配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2、
配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3、
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1、
配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2、および、
配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3
を含み、かつ、
前記細胞毒性剤が、MMAFまたはMMAEであり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が、約56%~約80%であり、HC C224での薬物負荷の割合が、約58%~約81%であり、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が、約15%~約46%であり、かつ、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が、約11%~約15%である、組成物。
【請求項21】
抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体を含む組成物であって、
前記抗体が、
配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1、
配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2、
配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3、
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1、
配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2、および、
配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3
を含み、かつ、
前記細胞毒性剤が、MMAFまたはMMAEであり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が、約63%~約76%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が、約65%~約78%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が、約22%~約40%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が、約11%~約16%である、組成物。
【請求項22】
抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体を含む組成物であって、
前記抗体が、
配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1、
配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2、
配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3、
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1、
配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2、および、
配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3
を含み、かつ、
前記細胞毒性剤が、MMAFまたはMMAEであり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が、約65%~約71%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が、約68%~約74%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が、約24%~約30%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が、約12%~約18%である、組成物。
【請求項23】
前記抗BCMA抗体がベランタマブである、請求項16~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記ADCがベランタマブマホドチンである、請求項16~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
DL2の割合が少なくとも約30%、約15%~約27%、または約15%~約32%であり、かつ/あるいは、
DL4aの割合が少なくとも約30%、約35%~約38%、または約30%~約40%であり、かつ/あるいは、
DL4bの割合が少なくとも約5%、約7%~約9%、または約5%~約10%であり、かつ/あるいは
DL6の割合が少なくとも約10%、約14%~約20%、または約10%~約20%であり、かつ/あるいは、
DL8の割合が少なくとも約1%、約6.0%~約12.0%、または約4%~約15%である、請求項16~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
DL0の割合が約10%以下または約5%以下である、請求項16~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
請求項16~26のいずれか一項に記載の組成物と、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項28】
癌を治療する方法であって、それ必要とする対象に治療有効量の請求項16~26のいずれか一項に記載の組成物または請求項27に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項29】
癌の治療に使用するための、請求項16~26のいずれか一項に記載の組成物または請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
癌の治療に使用するための医薬の製造における、請求項16~26のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項31】
システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体のコンジュゲーションレベルを決定する方法であって、
a)前記抗体薬物複合体を還元して還元抗体薬物複合体を形成すること、
b)前記還元抗体薬物複合体を同位体標識された細胞毒素とコンジュゲートして同位体標識された抗体薬物複合体を形成すること、
c)前記同位体標識された抗体薬物複合体から同位体標識されたコンジュゲートペプチドを生成し、前記同位体標識されたコンジュゲートペプチドに対してペプチドマッピングを行うこと、
d)前記同位体標識されたコンジュゲートペプチドの質量電荷比を検出すること、および、
e)前記同位体標識されたコンジュゲートペプチドの質量電荷比を同位体標識されていないコンジュゲートペプチドの質量電荷比と比較して、システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体のコンジュゲーションレベルを決定すること
を含む、方法。
【請求項32】
前記細胞毒素が、MMAFまたはMMAEである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体が、はじめに還元剤によって還元され、次いで前記同位体標識された細胞毒素とコンジュゲートされる、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記還元剤が、ジチオトレイトール(DTT)またはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
余剰の還元剤が、前記ペプチドマッピングの前に、サイズ排除クロマトグラフィーカラムからサンプルを溶出させることにより除去される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
コンジュゲーションが、前記システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体を前記同位体標識された細胞毒素と反応させることにより起こる、請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
余剰の同位体標識された細胞毒素が、前記ペプチドマッピングの前に、サイズ排除クロマトグラフィーカラムからサンプルを溶出させることにより除去される、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ペプチドマッピングが、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)の使用を含む、請求項31~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ペプチドマッピングが、サンプルの変性、残留ジスルフィド結合の還元、および生じた遊離スルフヒドリルのアルキル化を含む、請求項31~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ペプチドマッピングが、サンプルの酵素消化よる同位体標識されたコンジュゲートペプチドの生成、および任意選択で、強酸の添加による酵素消化のクエンチを含む、請求項31~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
細胞毒素を同位体標識された水と反応させて、前記同位体標識された細胞毒素を生成することを含む、請求項31~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞毒素をアセトニトリル中で同位体標識された水と反応させる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体が、ベランタマブマホドチンである、請求項31~42のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年8月3日に出願された米国特許出願第63/228,951号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書の一部とされる。
【0002】
配列表
本願は、XML形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書の一部とされる。前記XMLファイルは054624_09_5031_Sequence_Listing.xmlの名称で、2022年7月25日に作成され、15,855バイトのサイズである。
【0003】
分野
本明細書では、低分子細胞毒性ペイロード(例えば、MMAFまたはMMAE)を有する、システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体(cysteine-conjugated antibody drug conjugate)の部位特異的コンジュゲーションレベルを、安定同位体標識(stable isotope labeling)(SIL)ペプチドマッピングを使用して決定する方法が開示される。
【背景技術】
【0004】
背景
抗体薬物複合体(ADC)は、モノクローナル抗体(mAb)の特異性と細胞毒性低分子薬物の効力とを組み合わせた、標的腫瘍療法のための、成長中のクラスのバイオ医薬品である(Hafeezら、Antibody-Drug Conjugates for Cancer Therapy.、Molecules.、2020年、25巻、4764頁およびBoniら、The Resurgence of Antibody Drug Conjugates in Cancer Therapeutics:Novel Targets and Payloads.、Am Soc Clin Oncol Educ Book.、2020年、40巻、1~17頁)。低分子ペイロードは通常、システインまたはリジンタンパク質残基を介してコンジュゲートされ、その結果、異なる薬物負荷(DL)種の不均一な混合物となる(Ponzianiら、Antibody-Drug Conjugates:The New Frontier of Chemotherapy.、Int.J.Mol.Sci.、2020年、21巻、5510頁)。ADCの薬物抗体比(DAR)は、薬物の効力および有効性に影響を及ぼすため、重要な品質特性(CQA)として特定されている(Liら、Impact of Physiologically Based Pharmacokinetics,Population Pharmacokinetics and Pharmacokinetics/Pharmacodynamics in the Development of Antibody-Drug Conjugates.、The Journal of Clinical Pharmacology.、2020年、60巻、105~119頁)。その結果、ADCは、mAbバイオ医薬品で一般に特性評価されるタンパク質配列および翻訳後修飾(PTM)に加えて、これらの薬物負荷種の特性評価という分析上の課題を要する。
【0005】
ADCの広範囲のDARは、以下のいくつかの分析法で決定することができる:疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)(Bobalyら、Optimization of non-linear gradient in hydrophobic interaction chromatography for the analytical characterization of antibody-drug conjugates.、Journal of Chromatography A.、2017年、1481巻、82~91頁)、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)(D’Atriら、Characterization of an antibody-drug conjugate by hydrophilic interaction chromatography coupled to mass spectrometry.、Journal of Chromatography B.、2018年、1080巻、37~41頁)、キャピラリーゲル電気泳動(CGE)(Lechnerら、Insights from capillary electrophoresis approaches for characterization of monoclonal antibodies and antibody drug conjugates in the period 2016-2018.、Journal of Chromatography B.、2019年、1122~1123巻、1~17頁)、ならびにネイティブおよびサブユニット液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)(Zhuら、Current LC-MS-based strategies for characterization and quantification of antibody-drug conjugates.、Journal of Pharmaceutical Analysis.、2020年、10巻、209~220頁)。これらの方法は、コンジュゲーション部位の位置に関する定性的な情報も提供できるが、部位特異的なコンジュゲーションレベルを評価することは困難であった。
【0006】
酵素消化物の液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)(ペプチドマッピング)は、天然型ペプチドと修飾型ペプチドの相対的定量を行うことによって、タンパク質配列の特徴付けおよびバイオ医薬品の翻訳後修飾(PTM)の定量を行うための、広く使用されている分析方法である。MMAFコンジュゲートペプチドは、疎水性の薬物ペイロードの付加により天然型ペプチドとコンジュゲートペプチド間の質量および保持時間に比較的大きい差があるため、このアプローチを複雑にしている。これらの差により、イオン化効率が大きく異なるペプチドペアが生じ、ペプチド間の相対定量には適さなくなる。
【0007】
その結果、ほとんどのADCペプチドマッピングの適用は、実際は、コンジュゲーション部位の位置を確認するだけの定性的なものとなり、これらの部位におけるコンジュゲーションのレベルを定量する試みはほとんど記載されていない。Q.Luoら(Structural Characterization of a Monoclonal Antibody-Maytansinoid Immunoconjugate.、Analytical Chemistry.、2016年、88巻、695~702頁)が記載している1つの方法は、ADCサンプルとともにコンジュゲートされていないmAb中間体サンプルの分析を含むものであった。mAbサンプルで検出されたコンジュゲートされていないピーク面積を、ADCサンプルで検出された面積と比較し、面積の損失はそのペプチド部位でのコンジュゲーションに起因するものとされた。しかし、この方法では、mAbとADCのサンプル間におけるサンプル調製のばらつきが正規化されず、システインコンジュゲートされたADCの重鎖ヒンジペプチドのように、1個のペプチドに複数のコンジュゲーション部位がある場合は考慮できなかった。
【0008】
L.Chenら(In-depth structural characterization of Kadcyla(登録商標)(ado-trastuzumab emtansine)and its biosimilar candidate.、mAbs.、2016年、8巻、1210~1223頁)が記載している別の方法では、既知量のロイシンエンケファリンペプチドを添加した場合のピーク面積に対して、コンジュゲートペプチドのピーク面積を正規化することにより、サンプル調製のばらつきの補正が試みられた。しかしながら、この方法はサンプル間の相対的なコンジュゲーション定量を提供するだけであり、特定のコンジュゲーション部位の真の部位占有率を提供するものではなかった。
【0009】
H.Sangら(Conjugation site analysis of antibody-drug-conjugates(ADCs)by signature ion fingerprinting and normalized area quantitation approach using nano-liquid chromatography coupled to high resolution mass spectrometry.、Analytica Chimica Acta.、2017年、955巻、67~78頁)が記載している第3の方法は、コンジュゲートペプチドのピーク面積を、それぞれの非コンジュゲートペプチドのピーク面積で正規化することにより、イオン化の違いを考慮することを試みた。次いで、この比に、非コンジュゲートペプチドとコンジュゲートペプチドの検量線の傾きを割って算出した相対イオン化強度係数を掛けて、正規化比を求めた。次いで、この正規化された比率の関数として、部位のコンジュゲーションレベルを計算した。しかし、この方法では、総てのコンジュゲーション部位のペプチドペアの検量線を作製するために、標準物質を分析する必要があった。さらに、このコンジュゲーションレベルの式は、1個のペプチドに複数のコンジュゲーション部位があることを考慮していなかった。
【0010】
安定同位体標識(SIL)は、目的の分析物に重い同位体原子を組み込むプロセスであり、その結果、質量分析によって検出することができる質量変化が生じる。SILペプチドマッピングは、プロテオミクスの分野において、差異のある標識サンプル中のタンパク質の相対定量を提供するための一般的な方法である(Liuら、Advances and applications of stable isotope labeling-based methods for proteome relative quantitation.、Trends in Anal.Chem.、2020年、124巻、115815)が、タンパク質のPTM特性評価にも応用されている。Liuら(Accurate Determination of Protein Methionine Oxidation by Stable Isotope Labeling and LC-MS Analysis.、Anal.Chem.、2013年、85巻、11705~11709頁)は、mAbサンプルを酸素-18過酸化水素と反応させて目的のメチオニンを完全に酸化することで、メチオニンの酸化レベルを調べた。次いで、同位体ピーク面積を使用して、酸化ペプチドの天然型(+16 Da)とSIL型(+18 Da)の相対定量を行った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、当技術分野には、ADCのための改良された分析方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
概要
本開示の第1の態様によれば、
(i)カルボニル基を含有する同位体標識された細胞毒素と還元剤とを使用して、システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体(ADC)の未占有システイン部位のコンジュゲーションを行うことにより、同位体標識されたADCサンプルを作製すること、および、
(ii)前記サンプルのペプチドマッピングを行うこと
を含む方法(例えば、分析方法)が提供される。
【0013】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体を含む組成物であって、
前記抗体が、
配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1、
配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2、
配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3、
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1、
配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2、および、
配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3
を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約56%~約80%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約58%~約81%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約15%~約46%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約11%~約15%である、組成物が提供される。
【0014】
本開示のさらなる態様によれば、本明細書に記載される組成物と、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0015】
本開示のさらなる態様によれば、約20mg/mL~約60mg/mLのADCと、約10mM~約30mMのクエン酸緩衝液と、約120mM~約240mMのトレハロースと、約0.01mM~約0.1mMのEDTAと、約0.01%~約0.05%のポリソルベート20またはポリソルベート80とを含む本明細書に記載される医薬組成物を含む製剤であって、製剤のpHが約5.9~約6.5である製剤が提供される。
【0016】
本開示のさらなる態様によれば、それを必要とする対象に治療有効量の本明細書に開示される組成物または製剤を投与することを含む、癌を治療する方法が提供される。
【0017】
本開示のさらなる態様によれば、癌の治療に使用するための本明細書に開示される組成物または製剤が提供される。
【0018】
本開示のさらなる態様によれば、癌の治療に使用するための医薬の製造における、本明細書に開示される組成物の使用が提供される。
【0019】
本開示のさらなる態様によれば、システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体のコンジュゲーションレベルを決定する方法であって、
前記抗体薬物複合体を還元して還元抗体薬物複合体を形成すること、
前記還元抗体薬物複合体を同位体標識された細胞毒素とコンジュゲートして同位体標識された抗体薬物複合体を形成すること、
前記同位体標識された抗体薬物複合体から同位体標識されたコンジュゲートペプチドを生成し、前記同位体標識されたコンジュゲートペプチドに対してペプチドマッピングを行うこと、
前記同位体標識されたコンジュゲートペプチドの質量電荷比を検出すること、および、
前記同位体標識されたコンジュゲートペプチドの質量電荷比を同位体標識されていないコンジュゲートペプチドの質量電荷比と比較して、システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体のコンジュゲーションレベルを決定すること
を含む方法が提供される。一実施形態において、細胞毒素はMMAFまたはMMAEである。別の実施形態において、システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体は、はじめに還元剤により還元され、次いで同位体標識された細胞毒素とコンジュゲートされる。一実施形態において、還元剤はジチオトレイトール(DTT)またはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)である。別の実施形態において、余剰の還元剤は、ペプチドマッピングの前に、サイズ排除クロマトグラフィーカラムからサンプルを溶出させることによって除去される。さらに別の実施形態において、コンジュゲーションは、システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体を同位体標識された細胞毒素と反応させることにより起こる。別の実施形態において、余剰の同位体標識された細胞毒素は、ペプチドマッピングの前に、サイズ排除クロマトグラフィーカラムからサンプルを溶出させることによって除去される。さらに別の実施形態において、ペプチドマッピングは、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)分析の使用を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドマッピングは、サンプルの変性、残留ジスルフィド結合の還元、および生じた遊離スルフヒドリルのアルキル化を含む。別の実施形態において、ペプチドマッピングは、サンプルの酵素消化による同位体標識されたコンジュゲートペプチドの生成、および任意選択で、強酸の添加による酵素消化のクエンチを含む。いくつかの実施形態において、方法は、細胞毒素を同位体標識された水と反応させて同位体標識された細胞毒素を生成することを含む。別の実施形態において、細胞毒素をアセトニトリル中で同位体標識された水と反応させる。さらに別の実施形態において、システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体はベランタマブマホドチンである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、安定同位体標識されたMMAFのUVクロマトグラムおよびMSスペクトルを示す。
図2図2は、安定同位体標識の前と後のベランタマブマホドチン軽鎖および重鎖の還元LC-MSスペクトルを示す。
図3図3は、ベランタマブマホドチンにおける薬物負荷種不均一混合物の概略図を示す。
図4図4は、標準ペプチドマッピングおよび安定同位体標識ペプチドマッピングから検出された軽鎖、重鎖fabおよび重鎖ヒンジピークのXICを比較する図である。
図5図5は、標識されたコンジュゲート軽鎖ペプチドおよび標識されていないコンジュゲート軽鎖ペプチドの代表的MSスペクトルを示す。アイソトポマー寄与の計算のために使用した天然同位体比を示している。
図6図6は、標識されたコンジュゲート重鎖Fabペプチドおよび標識されていないコンジュゲート重鎖Fabペプチドの代表的MSスペクトルを示す。アイソトポマー寄与の計算のために使用した天然同位体比を表示している。
図7図7は、標識された重鎖ヒンジペプチドおよび標識されていないコンジュゲート重鎖ヒンジペプチドの代表的MSスペクトルを示す。アイソトポマー寄与の計算のために使用した天然同位体比を表示している。
図8図8は、全コンジュゲーション部位に関して、標準ペプチドマッピングと安定同位体標識ペプチドマッピングの間での線形応答曲線を比較する図である。
図9図9は、ベランタマブマホドチン線形サンプルについて、標準ペプチドマッピングとSILペプチドマッピングでの計算DARと理論DARを比較する図である。
図10図10は、DARが異なるベランタマブマホドチンサンプルのコンジュゲーション値を示す。
図11図11は、DARが異なるベランタマブマホドチンサンプルについて、SILペプチドマッピングでの計算DARと理論HIC DARを比較する図である。
図12図12は、薬物負荷画分を回収するために使用した、分析的疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび分取スケール疎水性相互作用クロマトグラフィーのトレースを示す。
図13図13は、精製されたDL0、DL2、DL4a、DL4b、DL6およびDL8の代表的NR-CGEエレクトロフェログラムを示す。
図14図14は、精された製DL0、DL2、DL4a、DL4b、DL6およびDL8薬物負荷バリアントのインタクトマススペクトルを示す。
図15図15は、精製されたDL0、DL2、DL4a、DL4b、DL6およびDL8薬物負荷バリアントの重鎖(A)および軽鎖(B)の還元マススペクトルを示す。
図16図16は、精製されたDL0、DL2、DL4a、DL4b、DL6およびDL8薬物負荷バリアントのキャピラリー示差走査熱量測定(DSC)のトレースを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
安定同位体標識(SIL)ペプチドマッピング法
「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、当業者によって決定される特定の値に対して許容可能な誤差範囲内であることを意味し得る。この誤差範囲は、値がどのように測定または決定されるか、例えば、測定システムの限界に部分的に依存する。
【0022】
例えば、「約」は、当業者の慣例に従って、プラスまたはマイナス10%を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値のプラスもしくはマイナス20%、プラスもしくはマイナス10%、プラスもしくはマイナス5%、またはプラスもしくはマイナス1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、値の10倍以内、5倍以内または2倍以内を意味し得る。本願および特許請求の範囲に特定の値が記載されている場合、特に断りのない限り、特定の値について許容される誤差範囲内を意味する「約」という用語が想定されるべきである。また、値の範囲および/または下位範囲が示される場合、その範囲および/または下位範囲は、その範囲および/または下位範囲の端点を含み得る。
【0023】
本開示は、安定同位体標識ペプチドマッピングLC-MS/MS分析を使用して、低分子ペイロード(例えば、細胞毒素)を有する、システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体の部位特異的コンジュゲーションレベルを決定するための方法を提供する。
【0024】
本開示の第1の態様によれば、
(i)カルボニル基を含有する同位体標識された細胞毒素と還元剤とを使用して、システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体(ADC)の未占有システイン部位のコンジュゲーションを行うことにより、同位体標識されたADCサンプルを作製すること、および、
(ii)前記サンプルのペプチドマッピングを行うこと
を含む分析方法が提供される。
【0025】
一実施形態において、細胞毒素はカルボニル基(例えば、二重結合を有するカルボニル酸素)を含む。
【0026】
一実施形態において、細胞毒素はモノメチルアウリスタチンF(MMAF)またはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)である。
【0027】
酵素消化物の液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)(ペプチドマッピング)は、天然型ペプチドと修飾型ペプチドとの間の相対定量を行うことにより、バイオ医薬のタンパク質配列を同定しPTMを定量するための、当業者に広く知られている分析方法である。本明細書に記載の分析方法は、未占有システイン部位と安定同位体標識された細胞毒素とをコンジュゲートして、保持時間が同一で、質量および疎水性の違いが最小限のペプチドペアを作製し、1つの多属性分析法(multi-attribute analytical method)(MAM)において、モニタリングされるその他の翻訳後修飾(post-translational modifications)(PTM)と並行した相対定量を可能とすることにより、従来技術の方法に伴うイオン化効率が異なるという問題を軽減する(排除することも含む)。
【0028】
安定同位体標識(SIL)は、重い同位体原子(例えば、炭素-13、窒素-15、酸素-18)を目的の分析物に組み込むプロセスであり、これにより、質量分析によって検出可能な質量変化が生じる。本明細書に記載のペプチドマッピング法は、利用可能なコンジュゲーション部位を同位体標識された細胞毒素で標識して、保持時間が同一で、質量の違いが最小限のコンジュゲーション部位ペプチドペアを作製することにより、ペプチドのイオン化効率が異なるという問題を軽減する(排除することも含む)。この方法は、部位特異的なコンジュゲーションレベルの正確な定量を可能とし、1つの多属性分析法(MAM)において、タンパク質配列およびPTMの特性評価と並行して「ボトムアップ」のDAR特性評価を行う最初の既知例を提供する。
【0029】
一実施形態において、本明細書に記載の分析方法は、細胞毒素を同位体標識された水(例えば、H 18O)と反応させて同位体標識された細胞毒素を作製することを含む。一実施形態において、同位体標識された水は、カルボニル基(二重結合を有する酸素、例えば、ケトン)を含む細胞毒素との溶媒交換を受け、同位体標識された細胞毒素を生成する。この反応は室温または37℃で起こり得る。反応時間は、2日~数週間であり得る。一実施形態において、反応時間は、7日~14日である。
【0030】
一実施形態において、細胞毒素は、同位体標識された水と反応させる前に有機溶媒、例えば、アセトニトリル(ACN)に溶解させる。一実施形態において、ACN中の細胞毒素をH 18Oと反応させて同位体標識された細胞毒素を生成する。別の実施形態において、ACN中のMMAFまたはMMAEをH 18Oと反応させて同位体標識されたMMAFまたはMMAEを生成する。特定の実施形態において、細胞毒素は、強酸性条件下で同位体標識された水と反応させる。酸としては、TFAまたはギ酸が挙げられる。特定の実施形態において、標識された分子の同位体純度は、同位体標識された細胞毒素をイオン化して、その同位体標識された細胞毒素に関連する質量電荷比を検出することによって評価することができる。
【0031】
一実施形態において、システインコンジュゲートされた抗体薬物複合体(ADC)の未占有システイン部位を、同位体標識された細胞毒素とコンジュゲートする。
【0032】
特定の実施形態において、還元剤は、同位体標識された細胞毒素とのコンジュゲーションの前に、ADC鎖間ジスルフィド結合を還元して遊離スルフヒドリル基(例えば、未占有システイン部位)を生成するために使用される。遊離スルフヒドリル基は、その後、同位体標識された細胞毒素とのコンジュゲーションに利用可能である。したがって、一実施形態において、ADCは、はじめに還元剤により還元され、次いで同位体標識された細胞毒素とコンジュゲートされる。
【0033】
一実施形態において、還元剤は、鎖間ジスルフィド結合を還元することができる任意の化合物または試薬である。特定の実施形態において、還元剤は、ジチオトレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール、および/または、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)である。さらなる実施形態において、還元剤はDTTである。別の実施形態において、還元剤はTCEPである。その他の還元剤も本明細書で開示される方法で使用可能であり、当業者に周知である。
【0034】
還元剤は、鎖間ジスルフィド結合を還元するために適用される。一実施形態において、還元剤は、鎖間ジスルフィド結合の完全な還元を確保するために過剰量で適用され、これにより、その後の標識化が総てのジスルフィド結合部位でなくても大部分のジスルフィド結合部位で確実となる。還元剤の量を最適化するための方法は、当業者に公知である。還元剤の濃縮物を、鎖内ジスルフィド結合が還元されるまで、漸増量で加えることができ、鎖内ジスルフィド結合の還元は、還元反応の後に分離された重鎖および軽鎖を測定することにより検出可能である。鎖間ジスルフィド結合の完全な還元が起こらなければ、一部のジスルフィド結合は細胞毒素(天然の細胞毒素または同位体標識された細胞毒素)で標識されず、天然の細胞毒素の定量値が人為的により高くなる可能性がある。
【0035】
一実施形態において、余剰の還元剤は、コンジュゲーションの前に除去される。特定の実施形態において、還元剤は、その後のコンジュゲーション工程を妨害する可能性があるため、コンジュゲーションの前に余剰の還元剤を除去する必要がある。例えば、一実施形態において、余剰の還元剤は、サイズ排除クロマトグラフィーカラムからサンプルを溶出させることにより除去される。別の実施形態において、余剰の還元剤は、分子量カットオフ(MWCO)フィルターにより除去される。さらなる実施形態において、余剰の還元剤は、同位体標識された細胞毒素とのコンジュゲーションの前に除去される。
【0036】
一実施形態において、コンジュゲーションは、ADCを同位体標識された細胞毒素と反応させることにより起こる。反応は、例えば、室温または約37℃でADCと同位体標識された細胞毒素を混合することによって起こり得る。反応時間は最適化することができる。一実施形態において、反応時間は5分~約60分である。一実施形態において、同位体標識された細胞毒素は、同位体標識されたMMAFまたはMMAEである。一実施形態において、ADCの標識細胞毒素に対する比率は、細胞毒素(天然の細胞毒素または同位体標識された細胞毒素)のないジスルフィド結合が存在しないことに確実にするために最適化され、例えば、生じる総てのADCは、薬物負荷が8(DL8)であるべきである。ADCの薬物負荷を試験するための様々な方法が当業者に公知である。
【0037】
一実施形態において、余剰の同位体標識された細胞毒素(抗体にコンジュゲートされていないもの)は、ペプチドマッピングの前に除去される。一実施形態において、余剰の同位体標識された細胞毒素(抗体にコンジュゲートされていないもの)は、ペプチドマッピングの前に、サイズ排除クロマトグラフィーカラムからサンプルを溶出させることによって除去される。
【0038】
一実施形態において、コンジュゲーションの後、同位体標識された細胞毒素および同位体標識されていない細胞毒素(例えば、「天然の細胞毒素」)の混合物を有するADCサンプルが得られる。
【0039】
別の実施形態において、同位体標識された細胞毒素とのコンジュゲーションの後、ADCサンプルのペプチドマッピング(例えば、LC-MS/MS分析によるペプチドマッピング)が行われる。この工程は、同位体標識された抗体薬物複合体の変性、残留する総てのジスルフィド結合の還元、生じた遊離スルフヒドリルのアルキル化、サンプルの酵素消化、および、サンプルの質量分析による分析を含む。様々なペプチドマッピング法が当業者に周知であり、例えば、Analytical Biochemistry、266巻、31~47頁(1999年)に記載されている。一実施形態において、変性剤は、例えば、グアニジンHCl、尿素またはその後の還元のために総ての鎖間および鎖内ジスルフィド結合を開裂(open up)する任意の変性剤を含み得る。還元剤の例としては、TCEPおよびDTTが挙げられる。還元の後、ジスルフィド結合が再形成されないことを確実にするために、サンプルにアルキル化剤を適用することができる。例示的なアルキル化剤としては、ヨード酢酸ナトリウムが挙げられる。特定の実施形態において、酵素消化の前に残存している変性剤を、酵素の添加の前に、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによって除去することができる。特定の実施形態において、サンプルのペプチドは、酵素的に消化される。例示的な酵素としては、トリプシンまたはLys-Cが挙げられる。サンプルの酵素消化は、HClまたはTFA等の強酸の添加によってクエンチすることができる。いくつかの実施形態において、得られたペプチドは次いでイオン化され、天然の(同位体標識されていない)および同位体標識されたコンジュゲートペプチドに関連する質量電荷比が検出され、比較される。
【0040】
抗体薬物複合体
本明細書に記載の分析方法は、カルボニル基を含む細胞毒素(例えば、MMAFまたはMMAE)を含むADCを分析するために特によく適している。一実施形態において、ADCは抗BCMA ADCである。さらなる実施形態において、抗BCMA ADCはベランタマブマホドチンである。ベランタマブマホドチンは、マレイミドカプロイル(MC)リンカーによってMMAF細胞毒性剤に結合された抗BCMA抗体を含む。
【0041】
本開示はまた、抗BCMA抗体薬物複合体(ADC)を含む組成物およびBCMAが媒介する疾患または障害を治療するための関連の方法を提供する。本明細書に記載される抗BCMA ADCを含む組成物はまた、本明細書に記載される抗BCMA ADCの集団と呼ぶこともでき、これらの語句は互換性があると理解される。
【0042】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および/または、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。
【0043】
別の実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および/または、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0044】
さらに別の実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖(HC);および/または、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む。
【0045】
本開示の一態様において、本明細書に記載の分析方法は、抗体(例えば、ベランタマブ)上の細胞毒性剤の特定のアミノ酸残基の位置ならびに各アミノ酸残基における細胞毒素の定量的な量を決定することができる。一実施形態において、細胞毒素は、システイン含有アミノ酸、例えば、軽鎖(LC)C214、重鎖(HC)C224、重鎖ヒンジ領域(HCヒンジ)C230、および/または、重鎖ヒンジ領域(HCヒンジ)C233にコンジュゲートされている。一実施形態において、重鎖ヒンジ領域は、C230およびC233の両方に2個の細胞毒素分子を含む。これは本明細書では「HCヒンジDL2」と呼称される場合がある。別の実施形態において、重鎖ヒンジ領域は、C230またはC233のいずれかに1個の細胞毒素分子を含む。これは本明細書では「HCヒンジDL1」と呼称される場合がある。本明細書に記載の方法は、HCヒンジDL2アイソフォームとHCヒンジDL1アイソフォームを識別することができる。HCヒンジDL1アイソフォームが検出される場合、本明細書に記載の方法は、HCヒンジDL1アイソフォームの有無を決定することができる。
【0046】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号9(CDRを下線で示し;HC C224、HC C230およびHC C233を太字/下線で示す)の重鎖配列を含むベランタマブである。
【0047】
【化1】
【0048】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号10(CDRを下線で示し;LC C214を太字/下線で示す)の軽鎖配列を含むベランタマブである。
【0049】
【化2】
【0050】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約2.1であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約38%~約44%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約40%~約46%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約5%~約9%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約3%~約7%である、組成物が提供される。
【0051】
したがって、本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号9の重鎖アミノ酸配列と配列番号10の軽鎖アミノ酸配列とを含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAE(特に、MMAF)であり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約2.1であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約41%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約43%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約7%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約5%である、組成物が提供される。
【0052】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3.0であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約53%~約59%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約55%~約61%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約13%~約19%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約8%~約14%である、組成物が提供される。
【0053】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号9の重鎖アミノ酸配列と配列番号10の軽鎖アミノ酸配列とを含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAE(特に、MMAF)であり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3.0であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約56%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約58%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約16%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約11%である、組成物が提供される。
【0054】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3.5であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約60%~約66%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約62%~約68%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約20%~約26%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約8%~約14%である、組成物が提供される。
【0055】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えばベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号9の重鎖アミノ酸配列と配列番号10の軽鎖アミノ酸配列とを含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAE(特に、MMAF)であり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3.5であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約63%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約65%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約23%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約11%である、組成物が提供される。
【0056】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約4.0であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約65%~約71%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約68%~約74%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約24%~約30%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約12%~約18%である、組成物が提供される。
【0057】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号9の重鎖アミノ酸配列と配列番号10の軽鎖アミノ酸配列とを含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAE(特に、MMAF)であり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約4.0であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約68%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約71%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約27%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約15%である、組成物が提供される。
【0058】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約4.6であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約72%~約78%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約73%~約79%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約37%~約43%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約13%~約19%である、組成物が提供される。
【0059】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号9の重鎖アミノ酸配列と配列番号10の軽鎖アミノ酸配列とを含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAE(特に、MMAF)であり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約4.6であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約75%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約76%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約40%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約16%である、組成物が提供される。
【0060】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体を含む組成物であって、
前記抗体(例えば、ベランタマブ)が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約5.0であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約75%~約81%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約77%~約83%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約43%~約49%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約11%~約17%である、組成物が提供される。
【0061】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号9の重鎖アミノ酸配列と配列番号10の軽鎖アミノ酸配列とを含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAE(特に、MMAF)であり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約5.0であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約78%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約80%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約46%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約14%である、組成物が提供される。
【0062】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約5.7であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約81%~約87%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約82%~約88%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約56%~約61%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約10%~約16%である、組成物が提供される。
【0063】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号9の重鎖アミノ酸配列と配列番号10の軽鎖アミノ酸配列とを含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAE(特に、MMAF)であり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約5.7であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約84%であり、かつ/あるいは、HC C224での薬物負荷の割合が約85%であり、かつ/あるいは、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約58%であり、かつ/あるいは、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約13%である、組成物が提供される。
【0064】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞傷毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約56%~約80%である、組成物が提供される。
【0065】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
HC C224での薬物負荷の割合が約58%~約81%である、組成物が提供される。
【0066】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約15%~約46%である、組成物が提供される。
【0067】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約11%~約15%である、組成物が提供される。
【0068】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約56%~約80%であり、HC C224での薬物負荷の割合が約58%~約81%であり、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約15%~約46%であり、かつ、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約11%~約15%である、組成物が提供される。
【0069】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3~約5であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約56%~約80%である、組成物が提供される。
【0070】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3~約5であり、かつ、
HC C224での薬物負荷の割合が約58%~約81%である、組成物が提供される。
【0071】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3~約5であり、かつ、
HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約15%~約46%である、組成物が提供される。
【0072】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3~約5であり、かつ、
HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約11%~約15%である、組成物が提供される。
【0073】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3~約5であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約56%~約80%であり、HC C224での薬物負荷の割合が約58%~約81%であり、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約15%~約46%であり、かつ、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約11%~約15%である、組成物が提供される。
【0074】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約63%~約76%である、組成物が提供される。
【0075】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
HC C224での薬物負荷の割合が約65%~約78%である、組成物が提供される。
【0076】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約22%~約40%である、組成物が提供される。
【0077】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約11%~約16%である、組成物が提供される。
【0078】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約63%~約76%であり、HC C224での薬物負荷の割合が約65%~約78%であり、HC C230およびHC C233でのCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約22%~約40%であり、かつ、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約11%~約16%である、組成物が提供される。
【0079】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3.5~約4.6であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約63%~約76%である、組成物が提供される。
【0080】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3.5~約4.6であり、かつ、
HC C224での薬物負荷の割合が約65%~約78%である、組成物が提供される。
【0081】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3.5~約4.6であり、かつ、
HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約22%~約40%である、組成物が提供される。
【0082】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3.5~約4.6であり、かつ、
HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約11%~約16%である、組成物が提供される。
【0083】
本開示のさらなる態様によれば、抗体薬物複合体(ADC)を形成する、細胞毒性剤にコンジュゲートされた抗BCMA抗体(例えば、ベランタマブ)を含む組成物であって、
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRL2;および、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL3を含み、かつ、
前記細胞毒性剤がMMAFまたはMMAEであり、かつ、
平均薬物抗体比(DAR)が約3.5~約4.6であり、かつ、
LC C214での薬物負荷の割合が約63%~約76%であり、HC C224での薬物負荷の割合が約65%~約78%であり、HC C230およびHC C233でのHCヒンジDL2の薬物負荷の割合が約22%~約40%であり、かつ、HC C230またはHC C233でのHCヒンジDL1の薬物負荷の割合が約11%~約16%である、組成物が提供される。
【0084】
本明細書に記載の組成物における抗BCMA ADCは、BCMAが媒介する様々な疾患(例えば、リンパ腫および多発性骨髄腫等のB細胞が媒介する癌を含む)の治療および/または予防に有用であり得る。本明細書に記載の抗BCMA ADCは、ヒトBCMA(例えば、GenBankアクセッション番号Q02223.2のアミノ酸配列を含むヒトBCMA)またはそれに対して少なくとも90%のアミノ酸配列相同性もしくは少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するBCMAタンパク質と結合し得る。
【0085】
抗BCMA ADCは、抗BCMA抗原結合タンパク質を含む。「抗原結合タンパク質」という用語は、本明細書で使用する場合、抗原に結合し得る抗体、抗体フラグメントおよびその他のタンパク質構築物、例えば、BCMA(例えば、ヒトBCMA)に結合し得る抗BCMA抗原結合タンパク質を指す。抗原結合タンパク質は、天然の抗体またはその機能的フラグメントもしくは等価物の構造にフォーマットされ得る本開示の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み得る。したがって、抗原結合タンパク質は、適当な軽鎖と組合せた場合に、全長抗体、(Fab’)2フラグメント、Fabフラグメントまたはその等価物(例えば、scFV、バイボディ、トリボディまたはテトラボディ、Tandab等)にフォーマットされる本開示のV領域を含み得る。抗体は、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4、IgM、IgA、IgEもしくはIgDまたはそれらの修飾バリアントであり得る。抗体重鎖の定常ドメインを、それに応じて選択することができる。軽鎖定常ドメインは、κまたはλ定常ドメインであり得る。さらに、抗原結合タンパク質は、総てのクラスの修飾、例えばIgG二量体、Fc受容体と結合しなくなったFc変異体またはC1q結合を媒介しなくなったFc変異体を含み得る。抗原結合タンパク質はまた、抗原結合領域および非免疫グロブリン領域を含む、国際公開第86/01533号に記載されているタイプのキメラ抗体であり得る。
【0086】
抗原結合タンパク質は、dAb、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体またはミニボディのいずれかであり得る。抗原結合タンパク質は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体のいずれかであり得る。抗原結合タンパク質は、ヒト化された抗体であり得る。抗原結合タンパク質は、モノクローナル抗体であり得る。
【0087】
例示的な抗BCMA抗原結合タンパク質およびその作製方法は、国際公開第2012/163805号に開示され、その全体が参照により本明細書の一部とされる。さらなる例示的な抗BCMA抗原結合タンパク質には、国際公開第2016/014789号、同第2016/090320号、同第2016/090327号、同第2016/020332号、同第2016/079177号、同第2014/122143号、同第2014/122144号、同第2017/021450号、同第2016/014565号、同第2014/068079号、同第2015/166649号、同第2015/158671号、同第2015/052536号、同第2014/140248号、同第2013/072415号、同第2013/072406号、同第2014/089335号、米国特許公開第2017/165373号、国際公開第2013/154760号および同第2017/051068号に記載されているものが含まれ、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書の一部とされる。
【0088】
別の実施形態において、本明細書に記載の抗BCMA抗原結合タンパク質は、BCMA受容体に対するBAFFおよび/またはAPRILの結合を阻害し得る。別の実施形態において、本明細書に記載の抗BCMA抗原結合タンパク質は、FcγRIIIAに結合することができるか、またはFcγRIIIAにより媒介されるエフェクター機能を示すことができる。
【0089】
抗BCMA抗原結合タンパク質は、抗体(「抗BCMA抗体」)を含んでいてもよい。「抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、免疫グロブリン様ドメインを有する分子(例えば、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE)を指し、このタイプのモノクローナル分子、組換え分子、ポリクローナル分子、キメラ分子、ヒト分子およびヒト化分子を含み得る。モノクローナル抗体は、抗体を発現する真核細胞クローンまたは原核生物クローン細胞(prokaryotic close cell)によって産生され得る。モノクローナル抗体はまた、真核細胞株によっても産生され得、真核細胞株は、細胞に導入された抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸配列を有することによって、抗体の重鎖および軽鎖を組換え的に発現し得る。種々の真核細胞株、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ハイブリドーマまたは動物(例えばヒト)に由来する不死化抗体細胞から抗体を産生するための例示的な方法は、当業者に周知である。
【0090】
抗体は、例えば、ラット、マウス、霊長類(例えば、カニクイザル、旧世界ザルまたは大型類人猿)、ヒト、またはその他の供給源(例えば、当業者に周知の分子生物学的技術を使用して作製された、抗体分子をコードする核酸)のいずれかに由来し得る。
【0091】
抗体は、定常領域を含み得、任意のアイソタイプまたはサブクラスであり得る。定常領域は、IgGアイソタイプ、例えば、IgG、IgG、IgG、IgGまたはそれらのバリアントであり得る。
【0092】
抗原結合タンパク質は、1または2以上の修飾を含み得、修飾としては、例えば、抗原結合タンパク質が抗体である場合には、抗体のエフェクター機能/ADCCおよび/または補体活性化を増強するように変異した定常ドメインが挙げられる。
【0093】
抗BCMA抗体は、抗体依存性の細胞媒介細胞傷害活性(ADCC)エフェクター機能が増強されている。「エフェクター機能」という用語は、本明細書で使用する場合、抗体依存性の細胞媒介細胞傷害活性(ADCC)、補体依存性細胞傷害性(CDC)媒介応答、Fc媒介貪食作用および/またはFcRn受容体を介した抗体のリサイクルのうち、1または2以上を指すことを意味する。IgG抗体の場合、ADCCおよびADCPを含み得るエフェクター機能、重鎖定常領域と免疫細胞の表面に存在するFcγ受容体ファミリーとの相互作用によって媒介され得る。ヒトにおいて、これらはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)を含み得る。抗原に結合した抗原結合タンパク質とFc/Fcγ複合体形成との間の相互作用は、様々な作用、例えば、細胞傷害性、免疫細胞活性化、貪食作用および/または炎症性サイトカインの放出を誘導し得る。
【0094】
抗BCMA抗体は、BCMA受容体へのBAFFおよび/またはAPRILの結合を阻害し得る。抗BCMA抗体は、FcγRIIIAに結合することができるか、またはFcγRIIIA媒介エフェクター機能を示し得る。
【0095】
抗BCMA抗体は、2個の免疫グロブリン(Ig)重鎖(「HC」)と2個のIg軽鎖(「LC」)を含み得る。基本の抗体構造単位は、例えば、サブユニットの四量体を含み得る。各四量体は2対のポリペプチド鎖を含み得、各対は1本の「軽鎖」(約25kDa)と1本の「重鎖」(約50~70kDa)を含み得る。各鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識を担う約100~110またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を含み得る。この可変領域は、最初に、切断可能なシグナルペプチドに結合されて発現し得る。シグナルペプチドを含まない可変領域は、成熟可変領域と呼ばれる。したがって、一例において、軽鎖成熟可変領域は、軽鎖シグナルペプチドを含まない軽鎖可変領域を含み得る。各鎖のカルボキシ末端部分は、定常領域を規定し得る。重鎖定常領域は、主としてエフェクター機能を担うものであり得る。
【0096】
各軽鎖/重鎖対の成熟可変領域は、抗体結合部位(抗原結合部位とも呼ばれる)を形成し得る。「抗原結合部位」は、抗原と特異的に結合し得る抗体上の部位を指し、これは単一の可変ドメインであり得るか、または標準的な抗体に見られるような対をなしたV/Vドメインであり得る。したがって、インタクトな抗体は、例えば2個の結合部位を有し得る。二機能性または二重特異性抗体の場合を除き、これらの2個の結合部位は同一であり得る。これらの鎖は総て、相補性決定領域または「CDR」とも呼ばれる3個の超可変領域により結合された、比較的保存されているフレームワーク領域(FR)の同一の一般構造を示し得る。各対の2個の鎖に由来するCDRは、フレームワーク領域により整列され、特定のエピトープへの結合を可能とする。したがって、一例において、軽鎖および重鎖とも、N末端からC末端へ、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。
【0097】
「CDR」は、抗体の相補性決定領域のアミノ酸配列として定義される。これらは、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の超可変領域である。免疫グロブリンの可変部分には、3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDR(またはCDR領域)が存在する。したがって、「(複数の)CDR」は、本明細書で使用する場合、3個総ての重鎖CDR、3個総ての軽鎖CDR、総ての重鎖および軽鎖CDR、または少なくとも2個のCDRを指す。一実施形態において、組成物は、本明細書に記載される1個または2個以上のCDR、または本明細書に記載される重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインの一方もしくは両方を含む抗BCMA抗体を含む。
【0098】
「バリアント」、「抗体バリアント」、「CDRバリアント」および「翻訳後修飾バリアント」という用語は、抗体配列の少なくとも1つのアミノ酸変化を指す。バリアントは、翻訳後修飾、化学変化または少なくとも1つの欠失、置換もしくは付加による配列変化の結果であり得る。配列を変化させない化学変化(例えば、Metと酸化Met、またはAspと異性体化/iso-Asp、または凝集)をもたらす翻訳後修飾もあれば、配列変化、例えば、あるアミノ酸残基の別のアミノ酸残基への変換(例えば、脱アミド化によるAsnのAspへの変換、またはリジン欠失)をもたらす翻訳後修飾もある。さらなる翻訳後修飾バリアントを以下に記載する。配列変化を含むバリアント抗体配列は、設計された配列変化または翻訳後修飾の結果であり得る。アミノ酸の配列変化は、欠失、置換または付加であり得る。
【0099】
このような一実施形態において、置換は保存的置換である。別の実施形態において、抗体バリアントは、少なくとも1つの置換を含み得、抗原結合タンパク質のカノニカル構造を保持する。一実施形態において、抗体バリアントは、親抗体のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%または少なくとも約95%同一である(すなわち、親抗体のアミノ酸配列とのアミノ酸配列同一性を有する)。別の実施形態において、抗体バリアントは、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%もしくは少なくとも約95%同一の重鎖アミノ酸配列、および/または、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%もしくは少なくとも約95%同一の重鎖アミノ酸配列を含む。
【0100】
抗原結合タンパク質は、FcRnに対する定常ドメインまたはそのフラグメントの親和性を高めるアミノ酸修飾(例えば、アミノ酸置換)を有し得る。治療用および診断用のIgG抗体およびその他の生物活性分子の半減期(例えば、血清半減期)の延長は、これらの分子の投与量および/または投与頻度の低減を含む多くの利益を有する。一実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質は、以下のアミノ酸修飾のうち1または2以上を有するIgG定常ドメインの全部または一部(FcRn結合部分)を含む。
【0101】
例えば、IgG1に関して、M252Y/S254T/T256E(一般に「YTE」と呼ばれる)および/またはM428L/N434S(一般に「LS」と呼ばれる)の修飾は、pH6.0でFcRn結合を増加させる(Wangら、2018年)。
【0102】
半減期はまた、T250Q/M428L、V259I/V308F/M428L、N434AおよびT307A/E380A/N434A修飾(IgG1およびKabatナンバリングを参照)によっても延長され得る(Monnetら)。
【0103】
半減期およびFcRn結合はまた、H433KおよびN434F修飾(一般に「HN」または「NHance」と呼ばれる)(IgG1を参照)を導入することによっても延長され得る(国際公開第2006/130834号)。
【0104】
国際公開第00/42072号には、FcRn結合親和性が変更されたバリアントFc領域を含むポリペプチドが開示され、このポリペプチドは、Fc領域のアミノ酸位置238、252、253、254、255、256、265、272、286、288、303、305、307、309、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、386、388、400、413、415、424、433、434、435、436、439および447(EUインデックスナンバリング)のうちの任意の1または2以上のアミノ酸修飾を含む。
【0105】
国際公開第02/060919号には、野生型IgG定常ドメインに比べて1または2以上のアミノ酸修飾を含むIgG定常ドメインを含む修飾IgGが開示されており、この修飾IgGは、野生型IgG定常ドメインを有するIgGの半減期に比べて半減期の延長を示し、これら1または2以上のアミノ酸修飾は、251、253、255、285~290、308~314、385~389および428~435のうち1または2以上に存在する。
【0106】
Shieldsら(2001年、J Biol Chem、276巻、6591~604頁)は、アラニンスキャニング変異誘発を使用してヒトIgG1抗体のFc領域の残基を変更し、次いで、ヒトFcRnへの結合を評価した。アラニンに変更された場合にFcRnへの結合を効果的に抑制する位置としては、I253、S254、H435およびY436挙げられる。以下のその他の位置:E233~G236、R255、K288、L309、S415およびH433は、結合に顕著な低下を示さなかった。いくつかのアミノ酸位置は、アラニンに変更された場合にFcRn結合の改善を示し、これらの中で顕著なものは、P238、T256、E272、V305、T307、Q311、D312、K317、D376、E380、E382、S424およびN434である。その他の多くのアミノ酸位置は、FcRn結合にわずかな改善を示した(D265、N286、V303、K360、Q362およびA378)か、または変化がなかった(S239、K246、K248、D249、M252、E258、T260、S267、H268、S269、D270、K274、N276、Y278、D280、V282、E283、H285、T289、K290、R292、E293、E294、Q295、Y296、N297、S298、R301、N315、E318、K320、K322、S324、K326、A327、P329、P331、E333、K334、T335、S337、K338、K340、Q342、R344、E345、Q345、Q347、R356、M358、T359、K360、N361、Y373、S375、S383、N384、Q386、E388、N389、N390、K392、L398、S400、D401、K414、R416、Q418、Q419、N421、V422、E430、T437、K439、S440、S442、S444およびK447)。
【0107】
FcRn結合の改善に関して最も顕著な効果は、組合せバリアントに見られた。pH6.0で、E380A/N434Aバリアントは、FcRnへの結合は、天然(native)のIgG1に対して8倍以上優れていたが、E380Aでは2倍、N434Aでは3.5倍であった。これにT307Aを追加すると、天然のIgG1と比較して結合が12倍改善した。一実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質は、E380A/N434A置換を含み、FcRnへの結合の増大を示す。
【0108】
Dall’Acquaら(2002年、J Immunol.、169巻、5171~80頁)は、マウスFcRnに対するヒトIgG1ヒンジFcフラグメントのファージディスプレーライブラリーのランダム変異誘発およびスクリーニングについて記載している。著者らは、位置251、252、254~256、308、309、311、312、314、385~387、389、428、433、434および436のランダム変異誘発を開示している。IgG1-ヒトFcRn複合体安定性の主な改善は、Fc-FcRn界面に沿った帯域に位置する残基(M252、S254、T256、H433、N434およびY436)を置換する場合に生じ、周辺(periphery)の残基、例えば、V308、L309、Q311、G385、Q386、P387およびN389の置換の場合には、改善の程度は低い。ヒトFcRnに対する親和性が最も高いバリアントは、M252Y/S254T/T256E(「YTE」)とH433K/N434F/Y436H変異を組み合わせることで得られ、野生型IgG1と比較して57倍の親和性を示した。このように変異したヒトIgG1のin vivoでの挙動は、野生型IgG1と比較して、カニクイザルの血清半減期にほぼ4倍の延長を示した。
【0109】
抗原結合タンパク質は、FcRnに対して最適な結合を示し得る。したがって、抗原結合タンパク質は、前記抗原結合タンパク質のFc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、前記修飾は、Fc領域の226、227、228、230、231、233、234、239、241、243、246、250、252、256、259、264、265、267、269、270、276、284、285、288、289、290、291、292、294、297、298、299、301、302、303、305、307、308、309、311、315、317、320、322、325、327、330、332、334、335、338、340、342、343、345、347、350、352、354、355、356、359、360、361、362、369、370、371、375、378、380、382、384、385、386、387、389、390、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、403、404、408、411、412、414、415、416、418、419、420、421、422、424、426、428、433、434、438、439、440、443、444、445、446および447からなる群から選択されるアミノ酸位置に存在する(Kabatら(Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda,Md.(1991年))のようにEUインデックスに従うナンバリング)。
【0110】
さらに、様々な刊行物には、半減期が変更された生理活性分子を得るための方法が記載されており、その方法は、FcRn結合ポリペプチドを分子に導入することによって得る方法(国際公開第97/43316号、米国特許公開第5869046号、同第5747035号、国際公開第96/32478号および同第91/14438)、またはそれらの分子を、FcRn結合親和性は保存されているが、その他Fc受容体に対する親和性は大幅に低減されている抗体に融合することによって得る方法(国際公開第99/43713号)、または抗体のFcRn結合ドメインと融合させることによって得る方法(国際公開第00/09560号、米国特許公開第4703039号)のいずれかである。
【0111】
抗体細胞傷害性と半減期の両方を改善するためのFcRn親和性が増強されたFcバリアントは、pH6.0でのスクリーニングで同定された。選択されたIgGバリアントは、低フコシル化分子として作製され得る。得られたバリアントは、hFcRnマウスにおいて血清持続性の増強を示すとともに、保存され増強されたADCCを示す(Monnetら)。例示的なバリアントとしては以下のものが挙げられる(IgG1およびKabatらのEUインデックスに従うナンバリングを参照):
P230T/V303A/K322R/N389T/F404L/N434S;
P228R/N434S;
Q311R/K334R/Q342E/N434Y;
C226G/Q386R/N434Y;
T307P/N389T/N434Y;
P230S/N434S;
P230T/V305A/T307A/A378V/L398P/N434S;
P230T/P387S/N434S;
P230Q/E269D/N434S;
N276S/A378V/N434S;
T307A/N315D/A330V/382V/N389T/N434Y;
T256N/A378V/S383N/N434Y;
N315D/A330V/N361D/A387V/N434Y;
V259I/N315D/M428L/N434Y;
P230S/N315D/M428L/N434Y;
F241L/V264E/T307P/A378V/H433R;
T250A/N389K/N434Y;
V305A/N315D/A330V/P395A/N434Y;
V264E/Q386R/P396L/N434S/K439R;
E294del/T307P/N434Y(「del」は欠失を示す)。
【0112】
また、本明細書に記載の抗原結合タンパク質を生産するための方法であって、以下の工程:a)本明細書に記載の単離された核酸を含む発現ベクターを含む組換え宿主細胞を培養する工程であって、α-1,6-フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を組換え宿主細胞中で不活化する工程;およびb)抗原結合タンパク質を回収する工程を含む方法も記載される。このような抗原結合タンパク質を生産するための方法は、例えば、BioWa,Inc.(プリンストン、NJ)から入手可能なPOTELLIGENT技術システムを使用して行うことができ、このシステムにおいて、FUT8遺伝子の機能的コピーを欠くCHOK1SV細胞は、増強された抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)活性を有するモノクローナル抗体を産生し、この活性は、機能的FUT8遺伝子を有する細胞内で生産された同一のモノクローナル抗体よりも増強されている。POTELLIGENT技術システムの態様は、米国特許公開第7214775号、同第6946292号、国際公開第0061739号および同第0231240号に記載され、これらは総て、引用することにより本明細書の一部とされる。当業者はまた、抗原結合タンパク質、例えば、抗体を生成するためのその他の適切なシステムおよび方法を認識する。
【0113】
抗体は、従来のタンパク質精製手順によって回収および精製され得る。例えば、抗体は培養培地から直接採取され得る。細胞培養培地の採取は、清澄化、例えば、遠心分離および/または深層濾過による清澄化であり得る。抗体を回収した後、十分な純度を確保するための精製が行われる。したがって、本明細書に記載の抗体を含む細胞培養培地もまた記載される。一実施形態において、細胞培養培地は、CHO細胞を含む。
【0114】
次いで、抗体は、細胞培養培地から精製され得る。これは、細胞培養上清を採取し、細胞培養上清を精製媒体(例えば、抗体分子を結合させるためのプロテインA樹脂またはプロテインG樹脂)と接触させ、精製媒体から抗体分子を溶出させて溶出液を生成することを含み得る。したがって、一態様において、本明細書に記載の抗体を含む溶出液が提供される。
【0115】
精製には、1または2以上のクロマトグラフィー工程を精製に使用してもよく、例えば、1または2以上のクロマトグラフィー樹脂および/または1または2以上の濾過工程を精製に使用することができる。例えば、樹脂、例えば、プロテインA、GまたはLを使用するアフィニティークロマトグラフィーを使用して、組成物を精製することができる。あるいは、またはそれに加えて、陽イオン交換樹脂、例えば、陽イオン交換体を使用して、組成物を精製することができる。
【0116】
あるいは、精製工程は、アフィニティークロマトグラフィー樹脂による工程と、その後の陽イオン交換樹脂による工程とを含む。
【0117】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1(「CDRH1」)を含む。一実施形態において、重鎖可変領域CDR1(「CDRH1」)は、配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して1つのアミノ酸変異(「バリアント」)を有するアミノ酸配列を含む。
【0118】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2(「CDRH2」)を含む。一実施形態において、重鎖可変領域CDR2(「CDRH2」)は、配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して1つのアミノ酸変異(「バリアント」)を有するアミノ酸配列を含む。
【0119】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3(「CDRH3」)を含む。一実施形態において、重鎖可変領域CDR3(「CDRH3」)は、配列番号3に示されるアミノ酸配列に対して1つのアミノ酸変異(「バリアント」)を有するアミノ酸配列を含む。
【0120】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1(「CDRL1」)を含む。一実施形態において、軽鎖可変領域CDL1(「CDR1」)は、配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して1つのアミノ酸変異(「バリアント」)を有するアミノ酸配列を含む。
【0121】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2(「CDRL2」)を含む。一実施形態において、軽鎖可変領域CDL2(「CDR2」)は、配列番号5に示されるアミノ酸配列に対して1つのアミノ酸変異(「バリアント」)を有するアミノ酸配列を含む。
【0122】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3(「CDRL3」)を含む。一実施形態において、軽鎖可変領域CDL3(「CDR3」)は、配列番号6に示されるアミノ酸配列に対して1つのアミノ酸変異(「バリアント」)を有するアミノ酸配列を含む。
【0123】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRL2;および/または、配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。
【0124】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(「V」)を含む。
【0125】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(「V」)を含む。
【0126】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むV;および配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVを含み、抗BCMA抗体は、BCMAに対する結合を保持する。
【0127】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖領域(「HC」)を含む。
【0128】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖領域(「LC」)を含む。
【0129】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHC;および配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCを含む。
【0130】
クエリーアミノ酸配列とサブジェクトアミノ酸配列の間の「配列同一性」は、ペアワイズBLASTPアラインメントが実行された後に、サブジェクトアミノ酸配列がクエリーアミノ酸配列と100%のクエリーカバー率を有する場合に、BLASTPアルゴリズムにより計算されるパーセンテージとして表される「同一性」の値である。クエリーアミノ酸配列とサブジェクトアミノ酸配列の間のこのようなペアワイズBLASTPアラインメントは、National Center for Biotechnology Instituteのウェブサイトで利用可能なBLASTPアルゴリズムのデフォルト設定を、低複雑性領域のフィルターをオフにして使用することによって実行される。重要なこととして、クエリー配列は本明細書の1または2以上の請求項で特定されるアミノ酸配列により記載され得る。
【0131】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するCDRH1;配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するCDRH2;配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するCDRH3;配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するCDRL1;配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するCDRL2;および配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するCDRL3を含む。
【0132】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するV;および配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVを含む。
【0133】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を有するHC、および配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するLCを含むベランタマブである。
【0134】
抗体の配列は、Kabatナンバリングシステム(Kabatら、Sequences of proteins of Immunological Interest NIH、1987年)によって決定され得る。あるいは、Chohtiaナンバリングシステム(Al-Lazikaniら、1997年、JMB、273巻、927~948頁)、接触定義法(contact definition method)(MacCallum R.M.、Martin A.C.R.およびThornton J.M、1996年、Journal of Molecular Biology、262巻5号、732~745頁)または抗体の残基をナンバリングして、当業者に公知のCDRを決定するための任意のその他の確立された任意の方法を使用して決定することができる。当業者が利用可能な抗体配列のためのその他のナンバリング規則としては、「AbM」法(バース大学)および「接触」法(ロンドン大学)がある。最後に、抗体配列は、連続的にナンバリングすることができる。
【0135】
本明細書に記載のアミノ酸を数値的に言及する場合は、Kabat法または連続ナンバリング法に従ってナンバリングされ得る。別段の明記がない限り、特定のアミノ酸番号に対する数値の言及は、本明細書では、連続ナンバリングシステムで記載される。本明細書を通じて、「CDR」、「CDRL1」、「CDRL2」、「CDRL3」、「CDRH1」、「CDRH2」、「CDRH3」という用語は、Kabatナンバリングに従う。可変領域配列および全長抗体配列のアミノ酸残基は、任意の抗体配列バリアントの位置または翻訳後修飾バリアント位置、例えば、異性体化バリアント(例えば、D103)、脱アミド化バリアント(例えば、N388)または酸化バリアント(例えば、M34)を表すために連続的にナンバリングされる。
【0136】
CDR(例えば、M34またはD103)の位置への言及は、全抗体配列に関する位置番号(連続的ナンバリング)を提供する。したがって、CDRH1のM34は、配列番号1の4番目の残基、すなわち、NYWH(配列番号1)の下線を指すと理解される。同様に、CDRH3のD103は、配列番号3の5番目の残基、すなわち、GAIYGYDVLDN(配列番号3)の下線を指す。
【0137】
一実施形態において、組成物は、一次配列における1または2以上のアミノ酸の変化を含む抗体バリアントを含む。一実施形態において、組成物は、配列番号9の重鎖アミノ酸配列および/または配列番号10の軽鎖配列と少なくとも約90%同一である抗体であって、アスパラギン酸(D)からアスパラギン(N)へのアミノ酸変化、例えば、CDRH3におけるD103N(例えば、KabatナンバリングにおけるD99N)を有する抗体を含む。
【0138】
別の実施形態において、組成物は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するCDRH2、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するCDRH3、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するCDRL2、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するCDRL3を含む抗体であって、アスパラギン酸(D)からアスパラギン(N)へのアミノ酸変化、例えば、CDRH3におけるD103Nを含む抗体を含む。
【0139】
別の実施形態において、抗BCMA抗体は、ベランタマブを含み、かつ、アスパラギン酸(D)からアスパラギン(N)へのアミノ酸変化、例えば、CDRH3におけるD103Nを含む。
【0140】
一実施形態において、組成物は、配列番号9の重鎖アミノ酸配列および/または配列番号10の軽鎖アミノ酸配列と少なくとも約90%同一の抗体の混合物であって、混合物中の抗体の約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約50%以上、約75%以上または約90%以上がCDRH3にD103Nを含む混合物を含む。
【0141】
一実施形態において、組成物は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するCDRH2、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するCDRH3、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するCDRL2、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するCDRL3を含む抗体の混合物であって、混合物中の抗体の約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約50%以上、約75%以上または約90%以上がCDRH3にD103Nを含む混合物を含む。
【0142】
一実施形態において、組成物はベランタマブを含み、ベランタマブの約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約50%以上、約75%以上または約90%以上はCDRH3にD103Nを含む。
【0143】
一実施形態において、組成物はベランタマブを含み、ベランタマブは、Kabatナンバリングシステムを使用して、G27Y、S30T、A93T、A24G、K73T、M48I、V67A、F71Y、D99N、M4LおよびK45Eからなる群から選択される少なくとも1つの抗体バリアントを含む。
【0144】
抗体薬物複合体
抗体薬物複合体(ADC)は、新たなクラスの強力な抗癌剤であり、近年、顕著な臨床的有用性が示されている。ADCは、リンカーを介して抗体に化学的に結合した細胞毒性剤で構成されている。おそらく、細胞表面での抗原結合、エンドサイトーシス、リソソームへの輸送、ADCの分解、ペイロードの放出、細胞処理(例えば、有糸分裂)の阻害およびアポトーシスを含む一連のイベントによって、ADCは細胞表面タンパク質の過剰発現を有する癌細胞を破壊し得る。ADCは、モノクローナル抗体の抗原により駆動される標的化特性と、細胞毒性剤の強力な抗腫瘍効果を併せ持つ。例えば、2011年に、ADCETRIS(登録商標)(抗CD30抗体-MMAE ADC)は、難治性ホジキンリンパ腫および全身性未分化リンパ腫の治療薬として規制当局の承認を得た。
【0145】
ADCは、癌の治療において、細胞毒性剤、例えば、細胞を死滅させるまたは細胞の成長もしくは増殖を阻害する薬物の局所送達のために使用されてきた(Lambert,J.、2005年、Curr.Opinion in Pharmacology 5、543~549頁;Wuら、2005年、Nature Biotechnology、23巻9号、1137~1146頁;Payne,G.、2003年、i3、207~212頁;SyrigosとEpenetos、1999年、Anticancer Research 19、605~614頁;Niculescu-DuvazとSpringer、1997年、Adv.Drug Deliv.Rev.26巻、151~172頁;米国特許公開第4,975,278号)。ADCは、腫瘍への薬物部分の標的化送達およびそこでの細胞内蓄積を可能にし、コンジュゲートされていない薬物の全身投与は、排除しようとする腫瘍細胞だけでなく正常細胞にも許容できないレベルの毒性をもたらす可能性がある(Baldwinら、Lancet、1986年3月15日、603~05頁;Thorpe、1985年、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」in Monoclonal Antibodies 84、Biological And Clinical Applications(A.Pincheraら編)475~506頁)。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方がこれらの戦略に有用であると報告されている(Rowlandら、1986年、Cancer Immunol.Immunother.、21巻、183~87頁)。抗体-毒素複合体に使用される毒素には、細菌毒素、例えばジフテリア毒素、植物毒素、例えばリシン、低分子毒素、例えばゲルダナマイシン(Mandlerら、2000年、J.Nat.Cancer Inst.、92巻19号、1573~1581頁;Mandlerら、2000年、Bioorganic&Med.Chem.Letters 10、1025~1028頁;Mandlerら、2002年、Bioconjugate Chem.、13巻、786~791頁)、メイタンシノイド(欧州特許公開第1391213号;Liuら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93巻8618~8623頁)およびカリケアミシン(Lodeら、1998年、Cancer Res.、58巻、2928頁;Hinmanら、1993年、Cancer Res.、53巻、3336~3342頁)等が含まれる。
【0146】
一実施形態において、抗BCMA ADCは、1または2以上の細胞毒性剤、例えば、化学療法薬、薬物増殖阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素またはそれらのフラグメント)、あるいは放射性同位体(例えば、放射性複合体(radioconjugate))にコンジュゲートされた抗体または抗体フラグメントを含む。
【0147】
一実施形態において、抗BCMA ADCは、以下の一般構造:
ABP-((リンカー)-Ctx)
[式中、
ABPは、抗原結合タンパク質、抗体または抗体フラグメントであり、
リンカーは、存在しないか、または任意の切断可能もしくは切断不可能なリンカーであり、
Ctxは、本明細書に記載の任意の細胞毒性剤であり、
nは、0、1、2または3であり、かつ、
mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。]
を有する。
【0148】
例示的な実施形態において、使用可能な酵素的に活性な毒素およびそのフラグメントには、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンまたはトリコテセンが挙げられる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照されたい。様々な放射性核種、例えば、211At、212Bi、131I、131In、90Y、または186Reが放射性複合体抗体の生産に利用可能である。
【0149】
本開示の抗BCMA抗体またはそのフラグメントは、1または2以上の細胞毒性剤、例えば、限定するものではないが、カリケアミシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、アウリスタチン、トリコテセンおよびCC1065、または毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体にコンジュゲートされ得る。好適な細胞毒性剤としては、例えば、アウスタリチン(モノメチルアウリスタチンF(MMAF)およびモノメチルアウリスタチンE(MMAE)ならびにMMAEのエステル形態を含む)、DNA副溝結合剤、DNA副溝アルキル化剤、エンジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシン、タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセルを含む)、ピューロマイシン、ドラスタチン、メイタンシノイドおよびビンカアルカロイドが挙げられる。特定の細胞毒性剤としては、トポテカン、モルホリノ-ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、ドラスタチン-10、エチノマイシン、コンブレタスタチン(combretastatin)、カリケアミシン、メイタンシン、DM-1、DM-4、ネトロプシンが挙げられる。その他の好適な細胞毒性剤としては、抗チューブリン剤、例えば、アウリスタチン、ビンカアルカロイド、ポドフィロトキシン、タキサン、バッカチン誘導体、クリプトフィシン、メイタンシノイド、コンブレタスタチンまたはドラスタチンが挙げられる。抗チューブリン剤としては、ジメチルバリン-バリンドライソロイン-ドラプロイン-フェニルアラニン-p-フェニレン-ジアミン(AFP)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、VP-16、カンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロンA、エポチロンB、ノコダゾール、コルヒチン、コルシミド(colcimid)、エストラムスチン、セマドチン(cemadotin)、ディスコデルモリド、メイタンシン、DM-1、DM-4またはエリュテロビンが挙げられる。
【0150】
一実施形態において、抗BCMA ADCは、MMAEまたはMMAFに結合された抗BCMA抗体を含む。
【0151】
【化3】
【0152】
例示的なリンカーとしては、切断可能リンカーおよび切断不能リンカーが挙げられる。切断可能リンカーは、細胞内条件下で切断に感受性があり得る。好適な切断可能リンカーとしては、細胞内プロテアーゼ、例えば、リソソームプロテアーゼまたはエンドソームプロテアーゼにより切断可能なペプチドリンカーが挙げられる。例示的な実施形態において、リンカーは、ジペプチドリンカー、例えば、バリン-シトルリン(val-cit)リンカーまたはフェニルアラニン-リジン(phe-lys)リンカーであり得る。その他の好適なリンカーとしては、5.5より低いpHで加水分解可能なリンカー、例えばヒドラゾンリンカーが挙げられる。その他の好適な切断可能リンカーとしては、例えば、ジスルフィドリンカーが挙げられる。例示的なリンカーとしては、6-マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロパノイル(MP)、バリン-シトルリン(val-cit)、アラニン-フェニルアラニン(ala-phe)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボンキシレート(SMCC)およびN-スクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノベンゾエート(SIAB)が挙げられる。
【0153】
一実施形態において、リンカーは、チオール反応性マレイミド、カプロイルスペーサー、ジペプチドバリン-5シトルリン、p-アミノベンジルオキシカルボニル、自己犠牲フラグメント化基(self-immolative fragmenting group)、またはプロテアーゼ耐性マレイミドカプロイルを含み得る。
【0154】
別の実施形態において、抗BCMA ADCは、下記の構造で示されるようなMCリンカーによりMMAEまたはMMAFに結合された抗BCMA抗体を含む。
【0155】
【化4】
【0156】
本明細書に記載の抗BCMA ADCは、本明細書に記載の任意の抗BCMA抗体を本明細書に記載の任意の細胞毒性剤とともに含み得る。
【0157】
一実施形態において、抗BCMA ADCは、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRL2;および/または、配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDRL3を含む抗BCMA抗体を含み、MMAEまたはMMAFにコンジュゲートされている。
【0158】
さらに別の実施形態において、抗BCMA ADCは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するCDRH1;配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するCDRH2;配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するCDRH3;配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するCDRL1;配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するCDRL2;および配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するCDRL3を含む抗BCMA抗体を含み、MMAFまたはMMAEにコンジュゲートされている。
【0159】
一実施形態において、抗BCMA ADCは、配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むV;および/または、配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVを含む抗BCMA抗体を含み、MMAEまたはMMAFにコンジュゲートされている。
【0160】
さらに別の実施形態において、抗BCMA ADCは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するV;および配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVを含む抗BCMA抗体を含み、MMAFまたはMMAEにコンジュゲートされている。
【0161】
一実施形態において、抗BCMA ADCは、配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHC;および/または、配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCを含む抗BCMA抗体を含み、MMAFまたはMMAEにコンジュゲートされている。
【0162】
さらに別の実施形態において、抗BCMA ADCは、配列番号9に示されるアミノ酸配列を有するHC、および配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するLCを含む抗BCMA抗体を含むベランタマブマホドチンであり、MMAFにコンジュゲートされている。
【0163】
ADCの調製および特性評価
特定の天然IgG1分子は、16個のジスルフィド結合(32個のシステインまたはスルフヒドリル基)を含む。特定の態様において、抗体は、4個の鎖間ジスルフィド結合のみが還元される方法で還元され、細胞毒性剤とコンジュゲートすることができ、細胞毒性剤に対する結合部位を最大8個とすることができる。言い換えれば、薬物負荷(「DL」)数、すなわち、抗体分子当たりの細胞毒性剤の数は0~8の範囲であり得、本明細書においてDL0、DL2(DL2aおよびDL2bを含む)、DL4(DL4a、DL4bおよびDL4cを含む)、DL6(DL6aおよびDL6bを含む)およびDL8として記載される。
【0164】
コンジュゲーションプロセスは、1)各抗体分子に結合する薬物の数、および2)細胞毒性剤の位置の両方が異なる、所与のADC組成物に対する薬物-抗体結合の不均一性をもたらし得る。これにより、様々なDL種を有するADC組成物が得られる。本明細書において、不均一なADC組成物全体の平均薬物抗体比を「平均DAR」または「DAR」と呼ぶ。例えば、ADC組成物は、それぞれが独自のDLを有する抗体種の混合物(混合物中のいくつかの種はDL2であり、混合物中のいくつかの種はDL4であり、混合物中のいくつかの種はDL6であり、混合物中のいくつかの種はDL8である)を含む場合があり、組成物全体の平均DARは約4であり得る。
【0165】
別の実施形態において、不均一なADC組成物内の特定のDL種の割合を記載するために「DLの割合」という用語を使用する場合がある(例えば、DL2の割合は不均一なADC組成物全体の約10%~約30%である)。
【0166】
薬物は、抗体上のスルフヒドリル基を介して抗体にコンジュゲートされ得る。スルフヒドリル基は、システイン側鎖上のスルフヒドリル基であり得る。システイン残基は、抗体内に天然に存在する(例えば、鎖間ジスルフィド)か、またはその他の手段、例えば突然変異誘発によって導入され得る。薬物と抗体上のスルフヒドリル基をコンジュゲートする方法は当技術分野で周知である(例えば、米国特許第7,659,241号、同第7,498,298号、および国際公開第2011/130613号、同第2014/152199号、同第2015/077605号およびBioconjugate Chem.、2005年、16巻、1282~1290頁を参照)。抗体は一般に、スルフヒドリル基をコンジュゲーションに利用可能とするために、コンジュゲーション前に還元される。抗体は、当技術分野で既知の条件を使用して還元され得る。還元条件は、一般にその後の抗体の変性を生じず、一般に抗体の抗原結合親和性に影響を及ぼさない条件である。
【0167】
還元工程で使用される還元剤はTCEPであり得、TCEPは、例えば、室温で30分間、過剰量で添加することができる。例えば、pH7.4の10mM TCEP溶液250μLは、室温30分で、1~100μgの抗体の鎖間ジスルフィドを容易に還元する。しかしながら、その他の還元剤および条件も使用可能である。反応条件の例としては、pH5~8で、5℃~37℃の温度の条件が挙げられる。
【0168】
ADC組成物のDL種の割合および/または平均DARを計算するための様々な方法が存在し、当業者に公知である。例えば、システインに結合されたADCの不均一性は、一般に、負荷される薬物の数に基づいてDL種を分離する疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により測定される。LC-MSアッセイもまた、DL分布を評価するために開発されている。ADC組成物における薬物負荷分布を計算するための例示的な方法は、例えば、Journal of Chromatography B 1060、2017年、182~189頁に見出すことができる。
【0169】
例えば、DL0は、抗体に薬物負荷がない。例えば、DL2は、薬物負荷が2である。一実施形態において、DL2のコンジュゲーション部位は、LC C214およびHC C224である。例えば、DL4は、薬物負荷が4である。一実施形態において、DL4aのコンジュゲーション部位は、LC C214、HC C224、LC C214およびHC C224である。一実施形態において、DL4bのコンジュゲーション部位は、HC C230、HC C233、HC C230およびHC C233である。例えば、DL6は、薬物負荷が6である。一実施形態において、DL6のコンジュゲーション部位は、LC C214、HC C224、HC C230、HC C233、HC C230およびHC C233である。例えば、DL8は、薬物負荷が8である。一実施形態において、DL8のコンジュゲーション部位は、LC C214、HC C224、LC C214、HC C224、HC C230、HC C233、HC C230およびHC C233である。
【0170】
一実施形態において、特定のDL種の割合(例えば、DL0の割合、DL2の割合、DL4aの割合、DL4bの割合、DL6の割合、DL8の割合)は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を使用して個々のDL種を分離し、各DLピークの曲線下面積を計算し、各DLピークを、総てのDL種の合計の総曲線下面積で割ることによって決定することができる。一実施形態において、平均DARは、下式を使用して各DL種の曲線下面積から計算することができる。
【数1】
【0171】
一実施形態において、特定の下位種のDARの割合(例えば、DL2の合計に占めるDL2aの割合)は、HIC、非還元分離法および質量分析技術を含み得る分析技術の組合せを使用して、特定のDL種を収集することによって決定される。
【0172】
一実施形態において、抗BCMA ADC組成物の平均DARは、約2~約7、約2~約6、約2.1~約5.7、約2.1~約5.0、約2.1~約4.6、約2.1~約4.1、約2.1~約3.5、約2.1~約3.0、約3.0~約5.7、約3.0~約5.0、約3.0~約4.6、約3.0~約4.1、約3.0~約3.5、約3.5~約5.7、約3.5~約5.0、約3.5~約4.6、約3.5~約4.1、約3.8~約4.5、約4.1~約5.7、約4.1~約5.0、約4.1~約4.6、約4.6~約5.7、約4.6~約5.0、約5.0~約5.7、約2.1、約3.0、約3.5、約4.1、約4.6、約5.0または約5.7である。
【0173】
別の実施形態において、組成物は、平均DARが約2.1~約5.7、約3.4~約4.6、約3.8~約4.5または約4である抗BCMA ADCを含む。
【0174】
一実施形態において、組成物は抗BCMA ADCを含み、抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するCDRH2、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するCDRH3、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するCDRL2、および配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するCDRL3を含み、細胞毒性剤はMMAEまたはMMAFであり、平均DARは、約2~約6、約2.1~約5.7、約3.4~約4.6または約3.8~約4.5である。
【0175】
一実施形態において、組成物は抗BCMA ADCを含み、抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVおよび配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVを含み、細胞毒性剤はMMAEまたはMMAFであり、平均DARは、約2~約6、約2.1~約5.7、約3.4~約4.6または約3.8~約4.5である。
【0176】
一実施形態において、組成物はベランタマブマホドチンを含み、平均DARは、約2~約6、約2.1~約5.7、約3.4~約4.6または約3.8~約4.5である。
【0177】
一実施形態において、抗BCMA ADC組成物中のDL0種の割合は、約10%以下、約5%以下、約1%~約10%、約1%~約5%または約2.8%~約4.7%である。
【0178】
一実施形態において、抗BCMA ADC組成物中のDL2種の割合は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、約15.8%~約26.3%、約15%~約27%、約15%~約32%または約10%~約40%である。
【0179】
一実施形態において、抗BCMA ADC組成物中のDL4a種の割合は、少なくとも約30%、少なくとも約35%、約35.5%~約37.9%、約35%~約38%、約30%~約40%または約20%~約50%である。別の実施形態において、DL4a種の割合は抗BCMA ADC組成物中の主要な種であり、組合された総ての種の約30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上または90%以上を占める。
【0180】
一実施形態において、抗BCMA ADC組成物中のDL4b種の割合は、少なくとも約5%、少なくとも約7%、約7.1%~約8.5%、約7%~約9%、約5%~約10%または約1%~約15%である。
【0181】
一実施形態において、抗BCMA ADC組成物中のDL6種の割合は、少なくとも約10%、少なくとも約14%、約14.0%~約19.1%、約14%~約20%、約10%~約20%または約5%~約30%である。
【0182】
一実施形態において、抗BCMA ADC組成物中のDL8種の割合は、少なくとも約1%、少なくとも約6%、約6.0%~約12.0%、約4%~約15%または約1%~約20%である。
【0183】
一実施形態において、組成物は抗BCMA ADCを含み、DL2の割合は約15%~約27%または約15%~約32%であり、DL4aの割合は約35%~約38%または約30%~約40%であり、DL4bの割合は約7%~約9%または約5%~約10%であり、DL6の割合は約14%~約20%または約10%~約20%であり、かつ/あるいは、DL8の割合は約6.0%~約12.0%または約4%~約15%である。
【0184】
一実施形態において、組成物はベランタマブマホドチンを含み、DL2の割合は約15%~約27%または約15%~約32%であり、DL4aの割合は約35%~約38%または約30%~約40%であり、DL4bの割合は約7%~約9%または約5%~約10%であり、DL6の割合は約14%~約20%または約10%~約20%であり、かつ/あるいは、DL8の割合は約6.0%~約12.0%または約4%~約15%である。
【0185】
「望ましくないDAR種」という用語は、本明細書で使用する場合、最終組成物中において望ましくなく、最終治療用生成物の特定の特性(例えば、標的結合、有効性、安全性等)に悪影響を及ぼし得る任意のDAR種を指す。一実施形態において、望ましくないDAR種はDL0、すなわち、コンジュゲーションプロセス後に細胞毒性剤と結合していない抗体である。一実施形態において、ADC組成物中のDL0の割合は、約15%以下、約14%以下、約13%以下、約12%以下、約11%以下、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下または約0.5%以下である。別の実施形態において、ADC組成物中のDL0の割合は、約1%~約10%、約2%~約5%または約2.0%~約4.8%である。
【0186】
翻訳後修飾
本明細書に記載の抗体の「翻訳後修飾産物」は、組成物の全部または一部が「翻訳後修飾」を含む抗体組成物である。翻訳後修飾は、宿主細胞中で抗体の生産、上流および下流製造、および/または貯蔵(例えば、光、温度、pH、水への曝露の影響、あるいは賦形剤および/または直後の容器閉鎖システムとの反応)の結果であり得る抗体への変化である。したがって、本開示の組成物は、抗体の製造または貯蔵から形成され得る。例示的な翻訳後修飾は、抗体配列の変化(上記のような「抗体バリアント」)、特定のリーダー配列切断、様々なグリコシル化パターンにおける様々な糖部分の付加、非酵素糖化、脱アミド化、酸化、ジスルフィド結合のスクランブル化(disulfide bond scrambling)およびその他のシステインバリアント(例えば、遊離スルフヒドリル、ラセミ化ジスルフィド、チオエーテルおよびトリスルフィド結合)、異性化、C末端リジン切断、および/またはN末端グルタミン環化を含む。
【0187】
一例において、翻訳後修飾産物は、機能および/または活性の低下をもたらす化学変化を含む「産物関連不純物(product-related impurity)」を含む。別の例において、翻訳後修飾産物は、機能および/または活性の低下をもたらさない化学変化を含む「産物関連物質(product-related substance)」を含む。本明細書に記載の抗体の産物関連不純物としては、異性化バリアントおよび酸化バリアントが挙げられる。本明細書に記載の抗体の産物関連物質としては、脱アミド化バリアント、グリコシル化バリアント、C末端切断バリアントおよびN末端ピログルタミン酸バリアントが挙げられる。
【0188】
一実施形態において、組成物は、配列番号9の重鎖配列および配列番号10の軽鎖配列を含み、1または2以上のその機能的翻訳後修飾を含む。別の実施形態において、組成物は、配列番号11、配列番号12、配列番号13または配列番号14の重鎖配列、および配列番号10の軽鎖を含み、1または2以上のその機能的翻訳後修飾を含む。
【0189】
本明細書で提供されるバリアントの割合は、組成物中の抗体の総量(例えば、抗体の「集団」)に対するパーセンテージとして表される。例えば、40%以下の酸化バリアントは、組成物中の総量100%抗体のうち40%以下が酸化されていることを指す。例えば、25%以下の異性化バリアントは、組成物中の総量100%抗体のうち25%以下が異性化されていることを指す。
【0190】
糖化は、グルコース等の還元糖とタンパク質中の遊離アミン基との間の非酵素的化学反応を含む翻訳後修飾であり、一般にリジン側鎖のイプシロンアミンまたはタンパク質のN末端に見られる。糖化は、還元糖の存在下での製造および/または貯蔵中に起こり得る。
【0191】
製造および/または貯蔵中に起こり得る脱アミド化は、酵素反応または化学反応であり得る。脱アミド化は、分子内環化を介した単純な化学反応によって起こり得、鎖内の隣のアミノ酸のアミド窒素がアミドに求核的に攻撃(N+1がNに攻撃)してスクシンイミド中間体を形成する。脱アミド化は、主にアスパラギン(N)をイソアスパラギン酸(イソアスパルテート)とアスパラギン酸(アスパルテート)(D)に約3:1比で変換する。したがって、この脱アミド化反応は、アスパルテート(D)のイソアスパルテートへの異性化に関連すると考えられる。アスパラギンの脱アミド化もアスパルテートの異性化も、中間体であるスクシンイミドが関与している可能性がある。程度ははるかに低いが、脱アミド化はグルタミン残基でも同様に起こり得る。脱アミド化はCDR、Fab(非CDR領域)またはFc領域で起こり得る。異性化はアスパルテート(D)からイソアスパルテートへの変換であり、中間体スクシンイミドが関与する。
【0192】
酸化は、製造および/または貯蔵中に(例えば、酸化条件の存在下で)に起こり得、直接的には反応性酸素種によって、または間接的には酸化ストレスの二次副産物との反応によって誘導されるタンパク質の共有結合的修飾をもたらす。酸化は主にメチオニン残基で起こり得るが、トリプトファン残基および遊離システイン残基でも起こり得る。酸化はCDR、Fab(非CDR)領域またはFc領域で起こり得る。
【0193】
ジスルフィド結合のスクランブル化は、製造および/または貯蔵条件中に起こり得る。特定の状況下において、ジスルフィド結合は破断するかまたは不適切に形成され、不対のシステイン残基(-SH)を生じることがある。これらの遊離(不対)スルフヒドリル(-SH)は、シャッフリングを促進し得る。
【0194】
チオエーテルの形成およびジスルフィド結合のラセミ化は、製造または貯蔵中の塩基性条件下で起こり得、ジスルフィド架橋のβ脱離によって、デヒドロアラニンおよび過硫化物中間体を介してシステイン残基に戻る。その後のデヒドロアラニンとシステインの架橋によってチオエーテル結合が形成され得、または遊離システイン残基がD-システインとL-システインの混合物とジスルフィド結合を再形成する。
【0195】
トリスルフィドは、硫黄原子のジスルフィド結合(Cys-S-S-S-Cys)への挿入から生じ得、生産細胞培養において硫化水素の存在によって形成され得る。
【0196】
重鎖および/または軽鎖におけるN末端グルタミン(Q)およびグルタメート(グルタミン酸)(E)は、環化によりピログルタメート(pGlu)を形成し得る。pGlu形成は、生産バイオリアクター内で形成される可能性があるが、処理および貯蔵条件のpHおよび温度に応じて、例えば非酵素的に形成されることもある。N末端QまたはEの環化は、天然のヒト抗体で一般的に観察される。
【0197】
C末端リジンの切断はカルボキシペプチダーゼによって触媒される酵素反応であり、組換え抗体および天然のヒト抗体で一般的に観察される。このプロセスの変形には、組換え宿主細胞からの細胞酵素による一方または両方の重鎖からのリジンの除去が含まれる。ヒト対象/患者に投与すると、残留するC末端リジンの除去が起こる可能性がある。
【0198】
本開示は、本明細書に記載の翻訳後修飾のうち1または2以上を施された可能性のある、または受けた可能性のある抗体を包含する。例示的な組成物は、1)本明細書に記載の(1または2以上の)翻訳後修飾を有するおよび有さない、または2)2以上の翻訳後修飾を有する抗体の混合物またはブレンドを含む。
【0199】
組成物は、抗体バリアントと翻訳後修飾バリアントの混合物を含み得る。例えば、抗体組成物は、酸化バリアント、脱アミド化バリアント、異性化バリアント、N末端ピログルタメートバリアントおよびC末端リジン切断バリアントのうち1または2以上、例えば2または3以上を含む。
【0200】
例えば、一実施形態において、組成物は、抗体の混合物であって、混合物中の抗体の10%が配列番号9および10のアミノ酸配列を含み、混合物中の抗体の90%がC末端リジン切断を有する配列番号9および10のアミノ酸配列を含む混合物を含み得る。
【0201】
別の例示的実施形態において、組成物は、抗体の混合物であって、混合物中の抗体の10%が配列番号9および10のアミノ酸配列を含み、混合物中90%の抗体がC末端リジン切断を有する配列番号9および10のアミノ酸配列を含み、その100%の全抗体混合物のうち、最大100%のN末端グルタミンがピログルタメートへと環化されている混合物を含み得る。
【0202】
別の例示的実施形態において、組成物は、抗体の混合物であって、混合物中の抗体の10%が配列番号9および10のアミノ酸配列を含み、混合物中90%の抗体がC末端リジン切断を有する配列番号9および10のアミノ酸配列を含み、その100%の全抗体混合物のうち、最大100%がN末端ピログルタメートであり、最大23%がCDRH3のD103で異性化されている抗体を含み得る。
【0203】
さらに別の例示的実施形態において、組成物は、抗体の混合物であって、混合物中の抗体の20%が配列番号9および10のアミノ酸配列を含み、混合物中の抗体の80%がCDRH3にN103のバリアントを有する配列番号9および10のアミノ酸配列を含み、その100%の全抗体混合物のうち、抗体の最大37%がCDRH1のアミノ酸M34で酸化されている混合物を含み得る。
【0204】
一実施形態において、本明細書に記載の翻訳後修飾は、抗原結合親和性、生物活性、薬物動態学(PK)/薬力学(PD)、凝集、免疫原性、および/または、Fc受容体との結合に有意な変化をもたらさない。ただし、産物関連不純物として特定および記載される場合を除く。
【0205】
本明細書に記載されるような「機能」または「活性」は、1)BCMAとの結合、2)FcγRIIIaとの結合、および/または3)FcRnとの結合のうち1または2以上として定義される。一実施形態において、「機能の低下」または「活性の低下」は、BCMAとの結合、FcγRIIIaとの結合またはFcRnとの結合が、参照標準と比較したパーセンテージとして低下し、アッセイのばらつきに対して有意であることを意味する。例えば、機能または活性の低下は、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上または50%以上の低下として記載することができる。
【0206】
一実施形態において、抗BCMA抗体は、配列番号9および配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも約90%同一の抗体を含み、存在する場合には、抗体のあらゆる翻訳後修飾を含む。
【0207】
別の実施形態において、抗BCMA抗体は、ベランタマブを含み、存在する場合にはあらゆる翻訳後修飾を含む。
【0208】
抗体バリアントは、抗体の組成物が等電点(IEF)ゲル電気泳動、キャピラリー等電点(cIEF)ゲル電気泳動、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)および陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)等の電荷に基づく分離技術により分析される際に一般に観察される。
【0209】
医薬組成物
本明細書に記載の組成物は、医薬組成物の形態であり得る。「医薬組成物」は、本明細書に記載の組成物(例えば、有効成分)と、1または2以上の薬学的に許容可能な賦形剤とを含み得る。賦形剤は、製剤のその他の成分と適合し、医薬製剤化が可能であり、そのレシピエントに有害でなく、および/または有効成分の有効性を妨げないという意味で許容可能でなければならない。
【0210】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容可能な賦形剤」は、ありとあらゆる溶媒、希釈剤、担体、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および/または吸収遅延剤を含み得る。薬学的に許容可能な賦形剤の例としては、緩衝剤、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等のうち1または2以上、ならびにそれらの組合せが挙げられる。多くの場合、組成物には等張剤、例えば、ポリオール、糖類、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)または塩化ナトリウム;保存剤;共溶媒;抗酸化剤(アスコルビン酸およびメチオニンを含む);キレート剤(EDTA等);金属錯体(例えば、Zn2+-タンパク質複合体);生分解性ポリマー;および/または塩形成対イオン(ナトリウムまたはカリウム等)を含むことが好ましい。
【0211】
賦形剤またはその他の材料の厳密な性質は投与経路に依存し、投与経路は、例えば、経口、直腸、鼻腔、局所(頬および舌下を含む)、膣、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内および硬膜外を含む)および腫瘍内であり得る。好ましい賦形剤は、例えば、レシピエントの状態および治療される疾患によって異なり得ることが認識される。
【0212】
賦形剤およびそれぞれの集合物の混合物は、一緒に「医薬製剤」(または「製剤」)を形成する。製剤は、液体形態であってもまたは凍結乾燥形態であってもよい。液体製剤中の組成物は容器に充填し、凍結させることができる。特定の実施形態において、組成物を含む凍結製剤のアリコートは、凍結乾燥させることができる。凍結乾燥物は、水またはその他の水溶液の添加によって再構成されて、組成物を含む再構成製剤を生成し得る。
【0213】
いくつかの実施形態において、抗BMCA抗原結合タンパク質は、製剤中に少なくとも約10mg/mLまたは少なくとも約20mg/mLの濃度で存在する。いくつかの実施形態において、抗BMCA抗原結合タンパク質は、製剤中に約20mg/mL~約100mg/mL、または約20mg/mL~約60mg/mLの濃度で存在する。特定の実施形態において、製剤中の抗BCMA抗原結合タンパク質の濃度は、約20mg/mL、約25mg/mL、約50mg/mL、約60mg/mLまたは約100mg/mLである。一実施形態において、抗BMCA抗原結合タンパク質は、液体製剤中に約20mg/mLまたは約25mg/mLの濃度で存在する。別の実施形態において、抗BMCA抗原結合タンパク質は、凍結乾燥製剤中に約50mg/mLまたは約60mg/mLの濃度で存在する。さらに別の実施形態において、抗BMCA抗原結合タンパク質は、再構成製剤中に約50mg/mLの濃度で存在する。
【0214】
特定の実施形態において、緩衝剤は、クエン酸緩衝液である。クエン酸緩衝液は、例えば、共役酸/共役塩基系(クエン酸ナトリウム/クエン酸)の使用によって、またはクエン酸ナトリウム溶液のHCl滴定によって達成され得る。特定の実施形態において、クエン酸緩衝液の濃度は約10mM~約30mMである。好ましい実施形態において、クエン酸緩衝液の濃度は25mMである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、約5mM~約35mMの濃度のヒスチジン緩衝液である。
【0215】
緩衝剤は、好ましいpH範囲を維持するのを補助するために使用することができる。特定の実施形態において、製剤のpHは、約5.5~約7または約5.9~約6.5、好ましくはpH6.2である。
【0216】
いくつかの実施形態において、製剤はポリオールを含む。いくつかの実施形態において、ポリオールは糖であり、好ましくは、非還元糖である。いくつかの実施形態において、非還元糖はトレハロースである。いくつかの実施形態において、製剤は、トレハロースを約120mM~約240mM含む。さらに別の実施形態において、製剤は、トレハロースを約200mM含む。
【0217】
一実施形態において、製剤はキレート剤を含む。別の実施形態において、キレート剤はEDTAである。特定の実施形態において、製剤は、EDTAを0.01mM~約0.1mMの濃度で含む。さらに別の実施形態において、製剤は、EDTAを0.05mMの濃度で含む。
【0218】
いくつかの実施形態において、製剤は界面活性剤を含む。「界面活性剤」は、親水基と疎水基の両方を含有する化学組成のために、固-固、固-液、液-液および液-気界面でそれらの効果を発揮し得る界面活性剤である。界面活性剤は、タンパク質が吸着し凝集する可能性のある空気-水および/または水-固界面において、希釈溶液中のタンパク質濃度を低下し得る。界面活性剤は、タンパク質製剤の疎水性界面に結合し得る。いくつかの非経口的に(parentally)許容可能な非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート群またはポリエーテル群を含む。ポリソルベート20および80は、本開示の製剤において好適な界面活性安定剤である。いくつかの実施形態において、製剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80を約0.01%~約0.05%で含む。さらに別の実施形態において、製剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80を約0.02%で含む。好ましい実施形態において、製剤は、ポリソルベート80を約0.02%で含む。
【0219】
本開示の一態様は、約20mg/mL~約100mg/mLの抗BCMA ADCと、約10mM~約25mMの緩衝剤と、約120mM~約240mMのポリオールとを含む製剤であって、製剤のpHが5.5~6.5である製剤に関する。
【0220】
一実施形態において、製剤は、約20mg/mL~約60mg/mLの抗BCMA ADCと、約10mM~約30mMのクエン酸緩衝液と、約120mM~約240mMのトレハロースと、約0.01mM~約0.1mMのEDTAと、約0.01%~約0.05%のポリソルベート20またはポリソルベート80とを含み、製剤のpHは約5.9~約6.5である。
【0221】
一実施形態において、組成物は、製剤中にADCを含み、抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するCDRH2、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するCDRH3、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有するCDRL2、および配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するCDRL3を含み、細胞毒素はMMAEまたはMMAFであり、製剤は、約20mg/mL~約60mg/mLのADCと、約10mM~約30mMのクエン酸緩衝液と、約120mM~約240mMのトレハロースと、約0.01mM~約0.1mMのEDTAと、約0.01%~約0.05%のポリソルベート20またはポリソルベート80とを含み、製剤のpHは約5.9~約6.5である。
【0222】
一実施形態において、組成物は、製剤中にADCを含み、抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するV、および配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVを含み、細胞毒素はMMAFまたはMMAEであり、製剤は、約20mg/mL~約60mg/mLのADCと、約10mM~約30mMのクエン酸緩衝液と、約120mM~約240mMのトレハロースと、約0.01mM~約0.1mMのEDTAと、約0.01%~約0.05%のポリソルベート20またはポリソルベート80とを含み、製剤のpHは約5.9~約6.5である。
【0223】
一実施形態において、組成物は、製剤中にADCを含み、ADCはベランタマブマホドチンであり、製剤は、約20mg/mL~約60mg/mLのベランタマブマホドチンと、約10mM~約30mMのクエン酸緩衝液と、約120mM~約240mMのトレハロースと、約0.01mM~約0.1mMのEDTAと、約0.01%~約0.05%のポリソルベート20またはポリソルベート80とを含み、製剤のpHは約5.9~約6.5である。
【0224】
一実施形態において、組成物は、製剤中にベランタマブマホドチンを含み、製剤は、約20mg/mL、約25mg/mL、約50mg/mLまたは60mg/mLのベランタマブマホドチンと、25mMのクエン酸緩衝液と、200mMのトレハロースと、0.05mMの二ナトリウムEDTAと、0.02%のポリソルベートまたは80ポリソルベート80とを含み、製剤のpHは約5.9~約6.5である。
【0225】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物1mL当たりに、ベランタマブマホドチン(50mg)、クエン酸(0.42mg)、エデト酸二ナトリウム二水和物(0.019mg)、ポリソルベート80(0.2mg)、トレハロース二水和物(75.6mg)およびクエン酸三ナトリウム二水和物(6.7mg)を含み、pHは約6.2である。
【0226】
「安定な」製剤は、その中のタンパク質が、製造、輸送、貯蔵および投与の間、その物理的および/または化学的安定性を本質的に保持する製剤である。安定性は、選択された期間、選択された温度で測定することができる。例えば、2℃~8℃の推奨温度で貯蔵される製品の場合、製剤は室温、約30℃または40℃で少なくとも1か月間安定であり、および/または約2~8℃で少なくとも1年間、好ましくは少なくとも2年間安定である。例えば、貯蔵中の凝集の程度をタンパク質の安定性の指標として使用することができる。したがって、「安定な」製剤は、例えば、タンパク質の約10%未満、好ましくは約5%未満が製剤中に凝集体として存在するものであってもよい。タンパク質の安定性を測定するための種々の分析技術が当技術分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery、247~301頁、Vincent Lee編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、N.Y.,Pubs.、1991年およびJones、A.Adv.Drug Delivery Rev.、10巻、29~90頁、1993年に概説されている。
【0227】
本開示の特定の態様において、製剤は、組成物が凍結、解凍、および/または混合に対して安定性を保持することを可能にする。
【0228】
さらに別の態様において、本開示は、本明細書に記載の製剤中に組成物を保持する容器を含む製品、例えばキットを対象とする。一態様において、製剤を含む注射デバイスが提供される。注射デバイスは、ペンインジェクターデバイスまたはオートインジェクターデバイスを含み得る。一実施形態において、製剤は、充填済みシリンジ中に含まれる。
【0229】
治療方法および使用のための組成物
本開示の組成物は、B細胞関連障害もしくは疾患(例えば、抗体媒介疾患もしくは形質細胞媒介疾患、または形質細胞悪性腫瘍(例えば、多発性骨髄腫等の癌))、または抗BCMA ADCにより治療可能なその他の疾患の治療のための治療的アプローチを提供し得る。特に、本開示の1つの目的は、抗BCMA ADCを含む組成物であって、BCMA(例えば、ヒトBCMA)と特異的に結合し、BCMAとそのリガンド(例えば、BAFFおよび/またはAPRIL)との相互作用を調整(例えば、阻害または遮断)する組成物を、その相互作用の調整に応答する疾患および障害の治療において提供することである。
【0230】
本開示の別の態様において、B細胞関連障害もしくは疾患(例えば、抗体媒介疾患もしくは形質細胞媒介疾患、または形質細胞悪性腫瘍(例えば、多発性骨髄腫等の癌)に罹患している対象(例えば、ヒト患者)を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載される抗BCMA ADC組成物を対象に投与する工程を含む方法が提供される。
【0231】
さらに別の実施形態において、本開示は、癌患者を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の抗BCMA ADC組成物を患者に投与する工程を含む方法が提供される。
【0232】
本明細書で使用される場合、「癌」および「腫瘍」という用語は互換的に使用され、単数形または複数形のいずれでも、宿主生物を病的な状態にする形質転換、例えば悪性の形質転換を受けた細胞を指す。原発性癌細胞は、十分に確立された技術、特に組織学的検査によって、非癌細胞と容易に区別することができる。本明細書で使用する場合、癌細胞の定義には、原発性癌細胞だけでなく、癌細胞の原細胞に由来するいずれの細胞も含まれる。これには、転移した癌細胞、ならびに癌細胞由来のin vitro培養物および細胞株が含まれる。「臨床的に検出可能な」腫瘍とは、通常固形腫瘍として発現するタイプの癌を指す場合、腫瘍塊に基づいて検出可能な腫瘍、例えば、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、X線、超音波または身体検査での触診等の手順によって検出可能な腫瘍、および/または、患者から得られるサンプル中の1または2以上の癌特異的抗原の発現によって検出可能な腫瘍である。腫瘍は、造血系(hematopoietic)(または血液性(hematologic)または血液学的(hematological)または血液関連性(blood-related))癌、例えば、血液細胞または免疫細胞に由来する癌であってもよく、これらは「液性腫瘍」と呼ばれることがある。血液性腫瘍に基づく臨床状態の具体例としては、白血病、例えば、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病および急性リンパ性白血病;形質細胞悪性腫瘍、例えば、多発性骨髄腫、MGUSおよびワルデンストロームマクログロブリン血症;リンパ腫、例えば、非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫等が挙げられる。
【0233】
癌は、異常な数の芽球細胞または望ましくない細胞増殖が存在する癌、またはリンパ性および骨髄性の両方の悪性腫瘍を含む血液学的癌と診断される癌のいずれかである。骨髄性悪性腫瘍には、限定するものではないが、急性骨髄性(myeloid)(または骨髄性(myelocytic)または骨髄性(myelogenous)または骨髄芽球性(myeloblastic))白血病(未分化型または分化型)、急性前骨髄性(promyeloid)(または前骨髄性(promyelocytic)または前骨髄性(promyelogenous)または前骨髄芽球性(promyeloblastic))白血病、急性骨髄単球性(または骨髄単芽球性)白血病、急性単球性(または単芽球性)白血病、赤白血病および巨核球性(または巨核芽球性)白血病が含まれる。これらの白血病は、急性骨髄性(myeloid)(または骨髄性(myelocytic)または骨髄性(myelogenous))白血病(AML)と総称されることがある。骨髄性悪性腫瘍にはまた、限定するものではないが、慢性骨髄性(myelogenous)(または骨髄性(myeloid))白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、本態性血小板血症(または血小板増加症)、および真性赤血球増加症(PCV)を含む骨髄増殖性障害(MPD)も含まれる。骨髄性悪性腫瘍にはまた、不応性貧血(RA)、芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)および移行期の芽球増加を伴う不応性貧血(RAEBT)と呼ばれることがある骨髄異形成(または骨髄異形成症候群またはMDS);ならびに原因不明の骨髄化生を伴うまたは伴わない骨髄線維症(MFS)も含まれる。
【0234】
造血器癌にはまた、リンパ性悪性腫瘍が含まれ、リンパ節、脾臓、骨髄、末梢血および/または節外部位に影響を及ぼし得る。リンパ性癌には、限定するものではないが、B細胞悪性腫瘍が含まれ、これにはB細胞性非ホジキンリンパ腫(B-NHL)が含まれる。B-NHLは、インドレント(もしくは低悪性度)、中悪性度(もしくはアグレッシブ)または高悪性度(高度アグレッシブ)であり得る。インドレントB細胞リンパ腫には、濾胞性リンパ腫(FL);小リンパ球性リンパ腫(SLL);辺縁帯リンパ腫(MZL)、例えば、結節性MZL、節外性MZL、脾臓MZLおよび絨毛リンパ球を伴う脾臓MZL;リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL);および粘膜関連リンパ組織型(MALTまたは節外性辺縁帯)リンパ腫が含まれる。中悪性度B-NHLには、白血球浸潤を伴うまたは伴わないマントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型リンパ腫(DLBCL)、濾胞性大細胞(またはグレード3またはグレード3B)リンパ腫、および原発性縦隔リンパ腫(PML)が含まれる。高悪性度B-NHLには、バーキットリンパ腫(BL)、バーキット様リンパ腫、小型非切れ込み核細胞性リンパ腫(SNCCL)およびリンパ芽球性リンパ腫が含まれる。その他のB-NHLには、免疫芽球性リンパ腫(または免疫細胞種)、原発性滲出液リンパ腫、HIV関連(またはAIDS関連)リンパ腫、および移植後リンパ増殖性障害(PTLD)または移植後リンパ腫が含まれる。B細胞悪性腫瘍にはまた、限定するものではないが、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、ワルデンストロームマクログロブリン血症(WM)、有毛細胞白血病(HCL)、大顆粒リンパ球性(LGL)白血病、急性リンパ性(またはリンパ球性またはリンパ芽球性)白血病、およびキャッスルマン病も含まれる。NHLにはまた、T細胞非ホジキンリンパ腫(T-NHL)を含むことができ、これには、限定するものではないが、とりわけ、特定不能T細胞非ホジキンリンパ腫(NOS)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、血管免疫芽球性リンパ節症(AILD)、鼻腔ナチュラルキラー(NK)細胞/T細胞リンパ腫、γ/δリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、およびセザリー症候群が含まれる。
【0235】
造血器癌にはまた、ホジキンリンパ腫(またはホジキン病)、例えば、古典的ホジキンリンパ腫、結節硬化型ホジキンリンパ腫、混合細胞型ホジキンリンパ腫、リンパ球優位型(LP)ホジキンリンパ腫、結節性LPホジキンリンパ腫、およびリンパ球減少型ホジキンリンパ腫を含むも含まれる。造血器癌にはまた、形質細胞疾患または形質細胞癌、例えば、多発性骨髄腫(MM)(くすぶり型MMを含む)、意義不明(または未知もしくは不明確な)単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫(骨、髄外)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、ワルデンストロームマクログロブリン血症、形質細胞白血病および原発性アミロイドーシス(AL)も含まれる。造血器癌はまた、さらなる造血系細胞、例えば、多形核白血球(または好中球)、好塩基球、好酸球、樹状細胞、血小板、赤血球およびナチュラルキラー細胞その他の癌も含み得る。本明細書で「造血細胞組織」と呼ぶ造血細胞を含む組織には、骨髄;末梢血;胸腺;および末梢リンパ組織、例えば、脾臓、リンパ節、粘膜に関連するリンパ組織(腸関連リンパ組織等)、扁桃腺、パイエル板および虫垂、ならびにその他の粘膜(例えば気管支の内膜)に関連するリンパ組織が含まれる。
【0236】
一実施形態において、癌は、大腸癌(CRC)、胃癌、食道癌、子宮頸癌、膀胱癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、EC扁平上皮細胞、非小細胞肺癌、中皮腫、膵臓癌および前立腺癌からなる群から選択される。
【0237】
用語「治療する」およびその派生語は、本明細書で使用される場合、治療的療法を含むことを意味する。特定の状態に関して治療するとは、(1)その状態もしくはその状態の生物学的発現の1もしくは2以上を改善すること、(2)(a)その状態に至る、もしくは状態の原因となる生物学的カスケードにおける1もしくは2以上のポイント、または(b)その状態の生物学的発現の1もしくは2以上を妨げること、(3)その状態に関連する症状、影響もしくは副作用の1もしくは2以上、またはその状態もしくはその治療に関連する症状、影響もしくは副作用の1もしくは2以上を軽減すること;(4)その状態またはその状態の生物学的発現の1もしくは2以上の進行を遅らせること、および/あるいは(5)寛解の期間にわたって追加の治療を行うことなく、その発現の寛解状態とみなされる期間、状態の生物学的発現の1または2以上を排除するまたは検出不能なレベルまで減少させることにより、状態または状態態の生物学的発現の1または2以上を治癒させることを意味する。当業者であれば、特定の疾患または状態について寛解とみなされる期間を理解する。
【0238】
B細胞障害は、B細胞の発生/免疫グロブリン産生の欠損(例えば、免疫不全症)および過剰/制御不能な増殖(例えば、リンパ腫、白血病)に分けることができる。本明細書で使用する場合、B細胞障害は両方のタイプの疾患を指し、本明細書に記載される組成物を使用してB細胞障害を治療する方法が提供される。
【0239】
特定の態様において、疾患または障害は、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、孤立性形質細胞腫(骨、髄外)、アミロイドーシス(AL)、くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)、孤立性形質細胞腫(骨、髄外)またはワルデンストロームマクログロブリン血症である。
【0240】
予防的療法もまた企図される。当業者は、「予防」が絶対的な用語ではないことを認識する。医学において「予防」とは、状態もしくはその生物学的発現の可能性または重症度を実質的に低減させるか、またはそのような状態もしくはその生物学的発現の発症を遅延させるための薬物の予防的投与を指すと理解される。予防的療法は、例えば、癌を発症するリスクが高いと考えられる場合、例えば、対象が癌の強い家族歴を有する場合または対象が発癌物質に暴露されてきた場合に適切である。
【0241】
「対象」または「患者」は、本明細書において互換的に使用され、治療を必要とするあらゆる人、例えば癌治療を必要とする人を含むように広く定義される。対象は、哺乳動物が含み得る。一実施形態において、対象はヒト患者である。癌治療を必要とする対象は、様々なステージ、例えば、新規診断、再発、難治性、病勢進行、寛解およびその他の患者を含み得る。癌治療を必要とする対象には、幹細胞移植を受けた患者、または移植不適格とみなされる患者も含まれ得る。
【0242】
本明細書に記載される組成物による治療に選択されるために、対象を事前にスクリーニングすることができる。一実施形態において、対象からのサンプルは、本明細書に記載の組成物による治療の前に、BCMAの発現に関して検査される。
【0243】
対象には、本開示の組成物による治療を受ける前に、少なくとも1種の癌療法を受けたことがあってもよい。一実施形態において、対象には、本開示の組成物による治療を受ける前に少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種または少なくとも7種の癌療法を受けたことがある。
【0244】
別の実施形態において、対象は新たに癌と診断され、本開示の組成物による治療を受ける前に療法を受けたことがない。
【0245】
本開示の組成物は、任意の適切な経路によって投与され得る。いくつかの組成物において、好適な経路としては、経口、直腸、鼻腔、局所(頬および舌下を含む)、膣、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内および硬膜外を含む)および腫瘍内が挙げられる。好ましい経路は、例えば、レシピエントの状態および治療される癌によって異なり得ることが認識される。
【0246】
特定の実施形態において、本開示の組成物は医薬組成物として投与される。
【0247】
「投与する」という用語は、本明細書で使用する場合、治療目的を達成するための本明細書に記載される組成物の送達を指すことを意味する。組成物は、臨床的有効性を達成するために十分な投与間隔、期間で投与され得る。組成物は、特定の部位に療法を標的化するように対象に投与され得る。
【0248】
いくつかの実施形態において、組成物は、注射によって投与される。したがって、一態様において、本開示の組成物、医薬組成物または製剤を含む注射デバイスが提供される。注射デバイスは、ペンインジェクターデバイスまたはオートインジェクターデバイスを含み得る。
【0249】
組成物の「治療有効量」または「治療有効用量」という用語は、本明細書で使用する場合、B細胞媒介障害または障害の症状の予防または治療または緩和に有効な量を指す。治療有効量および治療レジメンは、一般に経験的に決定され、患者の年齢、体重および健康状態、ならびに治療される疾患または障害等の要因に依存し得る。このような要因は主治医の管理範囲内にある。
【0250】
抗BCMA ADCを含む組成物の適切な治療有効量は、当業者により容易に決定される。本明細書に記載される組成物の好適な用量は、体重によって患者ごとに計算することができ、例えば、好適な用量は、約0.1mg/kg~約20mg/kg、例えば、約1mg/kg~約20mg/kg、例えば、約10mg/kg~約20mg/kg、または例えば、約1mg/kg~約15mg/kg、例えば、約10mg/kg~約15mg/kgであり得る。
【0251】
一実施形態において、抗BCMA ADCを含む組成物の治療有効用量は、約0.03mg/kg~約4.6mg/kgである。さらに別の実施形態において、抗BCMA ADCを含む組成物の治療有効用量は、少なくとも約0.03mg/kg、少なくとも約0.06mg/kg、少なくとも約0.12mg/kg、少なくとも約0.24mg/kg、少なくとも約0.48mg/kg、少なくとも約0.96mg/kg、1mg/kg、少なくとも約1.92mg/kg、少なくとも約3.4mg/kgまたは少なくとも約4.6mg/kgである。さらに別の実施形態において、抗BCMA ADCを含む組成物の治療有効用量は、1.9mg/kg、2.5mg/kgまたは3.4mg/kgである。
【0252】
特定の実施形態において、組成物は、対象に1または2以上の追加の治療薬とともに併用投与することができる。別の実施形態において、組成物は、対象に1または2以上の追加の癌治療とともに併用投与することができる。追加の癌治療薬としては、限定するものではないが、その他の免疫調節薬、治療抗体(例えば、ダラツムマブ等の抗CD38抗体)、CAR-T治療薬、BiTE、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、抗炎症性化合物および免疫調節性イミド薬(IMiD)(例えば、サリドマイドおよびその類似体)が挙げられる。
【0253】
「併用投与」とは、同一の医薬組成物または別個の医薬組成物に組み合わせて対象に投与する2または3以上の異なる医薬組成物または治療(例えば、放射線治療)の投与を意味する。したがって、併用投与は、2または3以上の医薬剤を含む単一の医薬組成物の同時投与、または2または3以上の異なる組成物の同一対象への同時もしくは異なる時間での投与を含む。
【0254】
本開示の一態様において、本開示は、それを必要とする対象においてB細胞疾患または障害を治療する方法であって、治療有効用量の、本明細書に記載される抗BCMA ADCを含む組成物を投与する方法を提供する。
【0255】
本開示の一態様において、本開示は、B細胞疾患または障害の治療に使用するための本明細書に記載される組成物を提供する。本開示の別の態様において、本開示は、癌の治療に使用するための本明細書に記載される組成物を提供する。
【0256】
本開示の一態様において、B細胞疾患または障害の治療に使用するための薬剤の製造における組成物の使用が提供される。本開示の別の態様において、癌の治療に使用するための薬剤の製造における組成物の使用が提供される。
【0257】
本明細書に開示される総ての特許および参考文献は、参照により明示的かつ完全に本明細書の一部とされる。
【実施例
【0258】
試薬および器具
ベランタマブは、標準的なmAb製造手順を使用して作製および精製した。次いで、ベランタマブをMMAFとコンジュゲートし、ベランタマブマホドチンADC原薬を作製した。サンプルは総て、製剤バッファー中、-80℃で分析まで保存した。
【0259】
マレイミドカプロイルモノメチルアウリスタチンF(mcMMAF)は、MedChemExpress(モンマス ジャンクション、NJ)から購入した。同位体標識された水(H 18O、97%)、ジチオトレイトール(DTT)、ヨード酢酸ナトリウム(IAA)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、塩化カルシウムおよびジメチルスルホキシド(DMSO)は、Sigma-Aldrich(セントルイス、MO)から購入した。グアニジンHClは、MP Biomedicals(アーバイン、CA)から購入した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)スピンカラムは、Bio-Rad(ハーキュリーズ、CA)から購入し、トリプシンはWorthington Biochemical(レイクウッド、NJ)から購入した。トリス塩基、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム塩、塩酸およびLC-MS用グレードトリフルオロ酢酸(TFA)、水(HO)およびアセトニトリル(ACN)は、ThermoFisher Scientific(ウォルサム、MA)から購入した。
【0260】
液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)は、Thermo Scientific Orbitrap XL質量分析計に接続したWaters BEH 300 C18カラム(2.1×150mm、粒径1.7μm)搭載のWaters Acquity UPLCシステムで実施した。
【0261】
還元LC-MS分析は、Xevo G2-XS質量分析計に接続したWaters BEH200 SEC(4.6×150mm、粒径1.7μm)搭載のWaters Acquity UPLCシステムで実施した。
【0262】
実施例1:MMAFの安定同位体標識
サンプル調製
MMAF(20mg)を120μLのアセトニトリルに溶解して、H 18O中2.5%(v/v)TFA 80μLと混合して、1%TFA 60:40/ACN:H 18O中、100mg/mL MMAFの最終反応条件とした。この溶液を14日間、室温で遮光して反応させた。アリコート(10μL)を、分析まで-80℃で凍結した。
【0263】
標識されたMMAFの同位体純度は、アリコートを50:50/ACN:HOで1000倍希釈(0.1mg/mL)して、流量0.2mL/分にて5分間で0%から100%Bへの直線勾配を使用する逆相液体クロマトグラフィー分離を使用して分析することにより決定した。移動相Aは水中0.1%TFAであり、移動相BはACN中0.09%TFAであった。カラムは、各注入の後に100%Bで3分間フラッシュし、0%Bで12分間再平衡化した。カラム温度は30℃、オートサンプラー温度は5℃、注入量は5μLとした。
【0264】
MS分析は、データ依存性取得モード(1MSスキャンの後2MS/MSスキャン)で作動するポストUV検出(215nm)で実施した。エレクトロスプレーイオン化(ESI)のスプレー電圧は4.5kV、シースガス流量は40L/分、溶媒脱離補助ガス流量は5L/分、キャピラリー電圧は60V、キャピラリー温度は250℃、チューブレンズは120Vおよびスキャン範囲はm/z250~2000であった。データはThermo Xcaliburソフトウェアを使用して調べた。
【0265】
結果および考察
MMAFの安定同位体標識は、(Liuら、Advances and applications of stable isotope labeling-based methods for proteome relative quantitation.、Trends in Anal.Chem.、2020年、124巻、115815頁)に記載されている酸媒介溶媒交換メカニズムを使用して実施した。簡単に述べれば、酸性条件下で反応させた際に、2個の18-酸素原子を、同位体標識された水からオルト酸中間体を介してカルボン酸官能基へ交換することができる。酸濃度[0.1%~10%(v/v)]、酸の種類(TFAまたはFA)、反応温度(室温、37℃、70℃)および有機相(ACNまたはDMSO)を含むいくつかの標識最適化条件を検討した。反応時間は1時間~6週間とし、予想されたように、酸の濃度および温度が高いほど標識速度は増した。最適化実験は、50:50/ACN:H 18O中、0.1mg/mL MMAFを使用して実施した。50:50/ACN:H 18Oでは薄い有機溶媒層が形成されるため、濃いバッチ(100mg/mL)を60:40/ACN:H 18O中で標識した。
【0266】
MMAF加水分解の最小化(図1)は、未占有のADCコンジュゲーション部位に対して、マレイミド含有フラグメントと標識されたMMAFとが競合する可能性があるため、標識反応条件を最適化する際の主な要因であった。この制限により標識反応は平衡に進むことができず、最小限の非標識(+0Da)MMAFが残った時点で停止された。その結果、一重標識(+2Da)と二重標識(+4Da)のMMAFの混合物となった。この不一致はMSデータ処理中に説明がついた。最終的な標識反応条件(1%TFA、室温、14日間)は、十分な標識(+0Da MMAFの最小化)と最小限の加水分解(<5%)に基づいて最終的に選択された。
【0267】
実施例2:ADCの還元および同位体標識されたMMAFとのコンジュゲーション
サンプル調製
ベランタマブマホドチン(250μg、10mg/mL)を1.25μLの1M DTTで37℃にて15分間、製剤バッファー(pH6.2)中で部分的に還元した。余剰のDTTは、製剤バッファーで平衡化したSECスピンカラムからサンプルを溶出させることによって除去した。次いで、サンプルを室温で30分間、100mg/mLの同位体標識されたMMAF 1μLとコンジュゲートさせた。余剰のMMAFは、製剤バッファーで平衡化したSECスピンカラムからサンプルを溶出させることによって除去した。
【0268】
コンジュゲーション効率は、サンプルを水で1mg/mLに希釈し、流量0.2mL/分で、65:35/ACN:HO移動相中、0.1%TFAを使用する無勾配サイズ排除液体クロマトグラフィー分離を使用して分析することによって決定した。カラム温度は25℃、オートサンプラー温度は5℃、注入量は1μLとした。
【0269】
MS分析は高感度モードのポストUV検出(215nm)で実施した。エレクトロスプレーイオン化(ESI)のスプレー電圧は2.2kV、サンプリングコーンは120、イオン源温度は150℃、オフセット電圧は80V、脱溶媒温度は500℃、コーンガス流量は60L/時および脱溶媒ガス流量は800L/時であった。スキャン範囲はm/z700~5000、スキャン時間は1秒とした。データは、Waters MassLynxソフトウェアを使用して調べた。
【0270】
結果および考察
還元/コンジュゲーションスキーム:簡単に述べれば、ベランタマブはTCEPで部分的に還元された後に、MMAFとコンジュゲートされた。TCEPは、それぞれMMAFとDTTのマレイミド基とチオール基の間で競合する副反応を避けるために、一般にDTTに優先して使用される。最初の還元/コンジュゲーション実験では、TCEPはDTTに比べてより高いコンジュゲーション効率を可能にすることが確認されたが、その後のレガシー法(legacy method)を使用したペプチドマッピング解析では、残りのジスルフィド結合を総て完全に還元するためにはDTTを使用することが求められた。両方の還元工程にDTTを選択し、その後のMMAFコンジュゲーション前に、余剰のDTTをSECスピンカラムで除去したところ、加水分解フラグメントのコンジュゲーションが最小限になり、完全にコンジュゲートされた軽鎖と重鎖が得られた(図2)。
【0271】
実施例3:ベランタマブマホドチンの安定同位体標識ペプチドマッピングLC-MS/MS分析
サンプル調製
ベランタマブマホドチン(250μg、10mg/mL)を還元し、実施例2に記載されるように同位体標識されたMMAFとコンジュゲートした。次いで、サンプルを、標準的なペプチドマッピング手順を使用して、乾固付近(約5μL)まで蒸発させること、および60μLの変性バッファー(6MグアニジンHCl、1.2MトリスHCl、2.5mM NaEDTA、pH7.5)を添加して室温にて2分間ボルテックスで撹拌することにより変性させることによって調製した。サンプルは、3μLの1M DTTを加えて室温で20分間インキュベートすることによって還元し、次いで、7.2μLの1M IAAを加えて室温で30分間インキュベートすることによってアルキル化した。アルキル化は、4.2μLの1M DTTを加えることによってクエンチした。次いで、サンプルを、SECスピンカラムを使用して、消化バッファー(50mMトリス、1mM CaCl、pH7.5)とのバッファー交換を行い、2.5μLの5mg/mLトリプシン(1:20/酵素:タンパク質)を加えて37℃で30分間インキュベートすることによって消化した。消化は、3μLの1N HClを加えることによってクエンチし、LC-MS/MS分析のために10μLを注入した。
【0272】
サンプルは、90分で0%から40%のB、続いて10分で40%から60%のBの2段階の勾配としたことを除き、実施例2の記載と同一のLC-MS/MS条件を使用して分析した。カラムは100%Bで12分間フラッシュし、各注入後0%Bで18分間再平衡化した。配列カバー率とPTMデータはProtein Metrics Byosソフトウェア(クパチーノ、CA)を使用して解析した。同位体コンジュゲーションデータはSkylineソフトウェア(ワシントン大学)を使用して解析した。
【0273】
結果および考察
システインコンジュゲートされたADCは一般に、鎖間ジスルフィド結合に関与するシステイン残基でコンジュゲートされる。これらのジスルフィド結合の還元は、8個の潜在的コンジュゲーション部位(各軽鎖に1個、各重鎖Fab領域に1個、および各重鎖ヒンジ領域に2個)を生じる。各ジスルフィド結合が還元されると、2個の遊離スルフヒドリル基が生じるため、偶数の薬物負荷種が一般に見られる。このプロセスにより、DL0からDL8までの薬物負荷種が、位置異性体の可能性とともに生じる(図3)。
【0274】
SILペプチドマッピングでは、天然型ペプチドと標識されたペプチドの両方のコンジュゲートペプチドを含む液体クロマトグラフィーのピークが得られ、一方、標準ペプチドマッピングでは天然型ペプチドとコンジュゲートペプチドについて別々のピークが得られた(図4)。SILサンプルのコンジュゲートペプチドのピークデータは、目的の個々の同位体のピーク面積を得るために、Skylineソフトウェアを使用して、抽出イオンクロマトグラム(XIC)を積分することにより処理された。
【0275】
SILは、天然型ペプチドとSILペプチドの同位体エンベロープを完全に分離するほど十分に大きな質量変化を誘発しなかった。この結果、天然型またはSILコンジュゲートペプチドに対応する同重体同位体の重なりにより、同位体異性体(アイソトポマー)の混合物が生じた。したがって、標識されていないADCサンプルから計算した理論的同位体比を使用して、軽鎖および重鎖FabペプチドのM+2~M+4アイソトポマーの天然同位体寄与を計算した(図5および図6)。この計算ではまた、単一標識された(+2Da)MMAFとコンジュゲートした部位も補正した。次いで、合計した天然アイソトポマーピーク面積を全アイソトポマーピーク面積で割って、ペプチドコンジュゲーションレベルを決定した。
【0276】
ヒンジペプチドの二重コンジュゲート型(DL2、C230およびC233)ならびに天然型(DL0)の理論的同位体比を、それぞれ標識されていないADCサンプルおよびSIL mAb中間体サンプルから計算した(図7)。mAbサンプルのDL0同位体比は、利用可能な2個のヒンジコンジュゲーション部位のSIL MMAFの総ての組合せで標識されたDL0ペプチドからの同位体寄与を考慮した。これらのDL2およびDL0の理論的同位体比を使用して、各ペプチド形態の同位体寄与を計算した。はじめに、MとM+1のアイソトポマーピーク面積は、DL2ペプチドと完全に関連すると仮定した。次いで、M+1ピーク面積に各アイソトポマーのDL2相対理論的同位体比を掛けて、M+2~M+14アイソトポマーへのDL2の寄与を求めた。次いで、M+15とM+16アイソトポマーはDL0ペプチドと完全に関連すると仮定した。次いで、M+15のピーク面積に各アイソトポマーのDL0相対理論的同位体比を掛けて、M+2~M+14アイソトポマーへのDL0の寄与を求めた。最後に、DL2アイソトポマーとDL0アイソトポマーの両方のピーク面積を各アイソトポマーピーク面積の合計から差し引き、単一コンジュゲート(DL1、C230またはC233)ヒンジペプチドの寄与を求めた。次いで、各形態のアイソトポマーピーク面積の合計を、総アイソトポマーピーク面積で割って、各ヒンジのコンジュゲーションペプチド形態のレベルを求めた。興味深いことに、このデータ処理方法をJenningsとMatthews(Determination of Complex Isotopomer Patterns in Isotopically Labeled Compounds by Mass Spectrometry.、Anal.Chem.、2005年、77巻、6435~6444頁)が記載しているより厳密なアルゴリズムと比較したところ、両方法は同様の結果であった。
【0277】
SILペプチドマッピングと標準ペプチドマッピングの比較
ベランタマブ(mAb)とベランタマブマホドチン(ADC)の直線的組合せで構成されるサンプルを試験して、DARが0.0~5.7の範囲のサンプルを作製することにより、方法の直線性を調べた(表1および表2)。標準ペプチドマッピングでは、軽鎖および重鎖Fabコンジュゲーションレベルを定量する際に感度と直線性が低下し、天然型ペプチドとコンジュゲートペプチド間の相対定量を使用することが実用的でないことが示された。一方、SILペプチドマッピングでは、総てのサンプルにおいて、両方の部位で優れた直線性(R≧0.996)を示した(図8)。両方法とも一重および二重コンジュゲートされたヒンジ部位について直線的結果が得られたが、SILペプチドマッピングでは、一重コンジュゲートされたヒンジと二重コンジュゲートされたヒンジの量により大きな相違が見られた。一重コンジュゲートされたヒンジは、直交法によりベランタマブマホドチンのどの薬剤負荷種でも、主要なアイソフォームとして検出されなかった。この結果は、実験4で述べた薬剤負荷画分のSILペプチドマッピング解析とよく相関していた。さらに、SILペプチドマッピングから計算されたDAR値は、標準ペプチドマッピングと比較してより優れた直線性(R=0.998)を示し、HICによって決定された理論的DARの5%以内で相関した(図9)。
【0278】
ベランタマブマホドチン参照標準(DAR=4.0)のコンジュゲーションレベルを定量し、両方法を使用して比較した(表3)。SILペプチドマッピング調製物(n=4)を標準ペプチドマッピング調製物(n=4)と並行して分析し、再現性を評価した。SILペプチドマッピングでは、標準ペプチドマッピング(約90%~95%)と比較して、より低レベルの軽鎖および重鎖Fabコンジュゲーション(約70%)が検出された。標準ペプチドマッピング(二重コンジュゲートおよび一重コンジュゲートでそれぞれ約15%および約12%)と比較して、より高レベルの二重コンジュゲートされたヒンジ(約25%)とより低レベルの一重コンジュゲートされたヒンジ(約5%~10%)が検出された。SILペプチドマッピングから計算されたDAR値(3.9~4.0)も、理論的DAR4.0と比較した場合、標準ペプチドマッピングから計算された値(4.6)よりも正確であった。ベランタマブマホドチンの典型的なPTMも定量化されたが、SILサンプルと標準サンプルの間に大きな差異は検出されなかった(表4)。総てのサンプルについて、完全な配列カバーも検出された。
【0279】
【表1】
【0280】
【表2】
【0281】
【表3】
【0282】
【表4】
【0283】
実施例4:疎水性相互作用クロマトグラフィー薬物負荷画分の分析
サンプル調製
DARが異なるサンプル(DAR=2.1~5.7)および個々の薬物負荷サンプル(DL2、DL4a、DL4bおよびDL6)を、実験3で記載したようにSILペプチドマッピングで分析した。
【0284】
結果および考察
2.1~5.7のDARを有するベランタマブマホドチンサンプルを、薬物有効性に対するDARの影響を評価するために前臨床試験の一部として製造した。これらのサンプルのDARは、HICクロマトグラムで種々の薬物負荷種のピーク面積を積分することにより計算した。SILペプチドマッピング結果(表5および図10)は、DARの増加サンプルで、41.8%~85.8%の軽鎖および重鎖Fabコンジュゲーションを示した。この結果は、軽鎖と重鎖のFab部位がジスルフィド結合で対になっているため予想されたものである。二重コンジュゲートされたヒンジは7.2%~57.4%を示したが、単一コンジュゲートされたヒンジは5.1%~15.8%というはるかに低くなり、より高いDARでは二重コンジュゲートされたヒンジが優勢であることが強調された。興味深いことに、単一コンジュゲートされたヒンジは4.0および4.6DARサンプルで最大となり、より高いDARサンプルでは単一コンジュゲートされたヒンジが減少する変曲点を示した。HICとSILペプチドマッピングから計算されたDAR値は10%以内の相関があり、「ボトムアップ」のDAR特性評価のためのSILペプチドマッピングの実用性を示すとともに、部位特異的コンジュゲーションレベルも提供することが示された(図11参照)。
【0285】
個々の薬物負荷ベランタマブマホドチンサンプル(DL2、DL4a、DL4bおよびDL6)を、スケールアップした疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)法で画分により回収した(図12)。DL2、DL4およびDL6の主要な位置異性体を直交分析法で確認し、理論的コンジュゲーション部位占有値を計算するために使用した。DL4bサンプルの理論値は、このサンプルがDL4aアイソフォームとDL4bアイソフォームの混合物であり、HICピークが重なるために計算しなかった。SILペプチドマッピングからは、理論値とよく相関した値が得られた(表6)。SILペプチドマッピングでは、アイソフォームDL4bおよびDL6の主なヒンジのコンジュゲーション形態が二重コンジュゲートであることも確認され、少量の単一コンジュゲートされたヒンジが検出された。
【0286】
【表5】
【0287】
【表6】
【0288】
実施例5:薬物負荷バリアントの非還元型キャピラリーゲル電気泳動(NR-CGE)分析
サンプル調製
HIC分取精製法を最適化し、Tosoh Toyopearl Butyl-650Sカラム(35μm、8mm×10cm)(Part No.45126)を使用するAKTAシステムにて、25℃、流量3.5mL/分、注入量60mgおよび280nmでのUV吸光度検出の条件を使用して実施した。この方法では、1.5M硫酸アンモニウムおよび50mMリン酸カリウム、pH7.0で構成される初期移動相と20%2-プロパノールおよび50mMリン酸カリウム、pH7.0で構成される溶出移動相の勾配流を使用する。ピーク頂点で4.5mLの画分を採取した。各DLバリアント(DL0、DL2、DL4a、DL4b、DL6およびDL8)の画分を複数回の注入から回収し、プールし、製剤バッファーとバッファー交換した。
【0289】
結果
精製したDLバリアントDL0、DL2、DL4a、DL4b、DL6およびDL8を、純度分析ために放出および安定性のHIC法(release and stability HIC method)を使用して試験した。これらのDLバリアントのHICクロマトグラフィーから得られた結果を表7にまとめる。DL0、DL2、DL4aおよびDL6の純度は90%を超えた。DL4bおよびDL8はそれぞれ純度69.3%および81.9%であった。
【0290】
【表7】
【0291】
精製されたDLバリアントのNR-CGE分析は、放出および安定性のキャピラリーゲル電気泳動(CGE)法を使用して行った。変性サンプルの調製手順は重鎖と軽鎖の解離をもたらし、これらはもはやジスルフィド結合で結合されておらず、生じた分離によって薬物コンジュゲーションの特徴的なフィンガープリントが提供される。ベランタマブマホドチンの可能性のあるアイソフォームが図3に模式的に示され、各DLバリアントの理論的NR-CGEフィンガープリントを表8に示す。
【0292】
【表8】
【0293】
精製されたDLバリアントのNR-CGE分析の結果を表9にまとめる。精製されたDL0は、HICで純度94.6%(表7)およびNR-CGEで92.9%IgGであり、HICのDL0ピークはおそらくコンジュゲートされていないIgGであることを示す。精製されたDL0のNR-CGEプロファイルの追加のピークには、軽鎖(LC)種およびHC-HC-LC(HHLC)種が含まれ、これらはおそらく画分中に存在する4.5%のDL2に由来する。
【0294】
精製されたDL2は、NR-CGE分析で、主としてLCおよびHHLC種を含み、これはDL2aと一致し、主要なDL2バリアントがDL2aであることを示す。一部のDL2bはDL2ピーク下に共溶出し、精製されたDL2に4.4%のIgGが検出されたことにより示唆された。
【0295】
精製されたDL4aは、NR-CGE分析で、主としてLCおよびHC-HC(HHC)種を含み、これはDL4aがベランタマブマホドチンにおける主要なDL4バリアントであることを示す。HICにおけるDL4aのピークは、LCとHCの間に鎖間ジスルフィド結合を含む4個のシステイン残基コンジュゲートされたDLバリアントである。HHLCフラグメントはおよそ6%に見られ、おそらくDL2aまたはDL4cのいずれかに由来するものである。しかしながら、示されているように、HICによればDL4aの純度は97.1%であることから、DL4aピーク下にはおそらく何らかの種の共溶出があり、これが高いHHLC含量の主要因である。
【0296】
精製されたDL4bは、NR-CGE分析で、主としてLC、HHCおよびHC-LC(HLC)種を含む。HICの結果は、画分の28.6%がDL4aであることを示唆し、これが観測されたLCおよびHHCフラグメントである。HLCフラグメントは、DL4bの結果であり、ベランタマブマホドチンのHIC分析においてDL4bピーク下に溶出する種が、ヒンジ領域内に2個の鎖間ジスルフィド結合を含む4個のシステイン基に大部分がコンジュゲートされていることを示す。精製されたDL4bはまた、少量のHHLCおよびHCフラグメントも含み、これはおそらくDL4cまたはDL6aの共精製によるものである。
【0297】
精製されたDL6は、NR-CGE分析で、LC、HCおよびHLC種の混合物を含む。これはDL6aと一致し、ベランタマブマホドチンにおける主要なDL6バリアントは、ヒンジ領域内の2個の鎖間ジスルフィド結合およびLCとHC鎖間のジスルフィド結合に由来する2個のシステイン残基を含む4個のシステイン残基でコンジュゲートされていることを示す。HHC種は3.2%存在し、おそらくDL4aの共精製由来である。
【0298】
精製されたDL8は、主としてLCおよびHC種を含み、これはベランタマブマホドチンの4個の鎖間ジスルフィド結合を含む8個のシステイン残基におけるコンジュゲーションと一致する。おそらくDL4bまたはDL6aの共精製に由来するHLCフラグメントはおよそ11%存在し、HIC分析で報告されたピークと一致する(表7)。
【0299】
精製されたDL0、DL2、DL4a、DL4b、DL6およびDL8の代表的NR-CGEエレクトロフェログラムを図13に示す。
【0300】
【表9】
【0301】
実施例6:インタクトおよび還元LC-MSの結果
実施例5に記載されるように調製された、精製されたDLバリアントを、インタクトおよび還元LC-MSを使用して分析した。精製されたDLバリアントの総薬物負荷は、インタクトLC-MS分析を使用して決定した。重鎖および軽鎖の総薬物負荷は、還元LC-MSを使用して決定した。結果を表10に示し、スペクトルを図14および図15に示す。
【0302】
精製されたDLバリアントのインタクトLC-MS分析の結果は、分析的HIC分析の純度の結果(表7)と一致し、両分析で、同様の種がほぼ同一の存在量で確認された。これに対する例外は、精製されたDL4b画分においてDL3バリアントはHICによって検出されるが、インタクトLC-MS分析では、この画分において3個の薬物分子の薬物負荷に相当する質量を有する種は検出されなかった。このことは、精製されたDL4b画分におけるDL3のピークは、実際には、3個の薬物分子の薬物負荷を有する種ではなく、別のDL4バリアントであることを示唆している。
【0303】
精製されたDLバリアントの還元LC-MS分析の結果は、NR-CGE結果によって予測されるコンジュゲーションパターンと一致していた。精製されたDL2は、DL2aと一致する還元LC-MSプロファイルであり、LCおよびHCとも、50%DL0および50%DL1を有し、LCとHCの間に鎖間ジスルフィド結合を含む2個のシステイン残基でのコンジュゲーションを示している。
【0304】
精製されたDL4aの還元LC-MS分析は、それぞれLCおよびHCで93.6%および96.9%のDL1を示し、これはいずれもLCとHCの間に鎖間ジスルフィド結合を含む4個のシステイン残基でのコンジュゲーションと一致している。これは精製されたDL4aのほとんど全部がDL4aバリアントであることを示している。DL2aおよびDL4bもまたHIC結果で低レベルで観察され、還元LC-MS分析で観察された低レベルのLC DL0およびHC DL2に寄与している。
【0305】
純粋なDL4bバリアントの還元LC-MSは、100%LC DL0および100%HC DL2からなると予想された。LC DL0は50.8%で存在し、HC DL2は54.7%で存在し、サンプルのおよそ50%がDL4bを含むことが示された。50%のLCがDL1であり、50%のHCがDL1であることから、その集団中にDL4aが存在する可能性が示され、これはHICによって30%のDL4aが検出されたことと一致した。その他のDL4バリアントも、還元LC-MS分析で検出されたLC DL1ピークおよびHC DL1ピークに寄与している可能性がある。
【0306】
精製されたDL6の還元LC-MS分析は、精製されたDL6画分がDL6aバリアントであることを示した。純粋なDL6aバリアントは、LCにおける50:50/DL0:DL1およびHCにおける50:50/DL2:DL3からなると予想された。純粋なDL6a画分から予想されるものよりもLC DL1およびHC DL2がやや多かったが、これはいくらかのDL6bバリアントが存在する可能性があることを示した。これらの結果は、ベランタマブマホドチンの主要なDL6バリアントが、ヒンジ内に鎖間ジスルフィド結合を含む4個のシステイン残基およびLCとHCの間に鎖間ジスルフィド結合を含む2個のシステイン残基でコンジュゲートされていることを示した。
【0307】
精製されたDL8の還元LC-MS分析は、100%LC DL1および100%HC DL3からなると予想された。これらの結果は、80%を超えるLCがDL1であり、80%を超えるHCがDL3であることを示した。これらの結果は、HIC純度に基づく予想存在量がおよそ80%であることと一致した(表7)。LC DL1およびHC DL2はそれぞれ17%および14%で検出され、これらはおそらく、HICの結果から、DL6およびDL4bがDL8バリアントとともに共精製された結果である可能性がある。
【0308】
【表10】
【0309】
実施例7:LC-MS/MSによるペプチドマッピング
実施例5に記載されているように調製した、精製されたDLバリアントのコンジュゲーション部位および翻訳後修飾を、ペプチドマッピングLC-MS/MSを使用して評価した。
【0310】
SPRによる抗原、FcγRIIIaおよびFcRNの結合
精製されたDLバリアントの抗原、FcγRIIIaおよびFcRn特異的結合活性を、SPRを使用して測定した。抗原、FcγRIIIaおよびFcRN分析は、放出および安定性の表面プラズモン共鳴(SPR)法を使用して行った。測定された特異的結合活性は、精製されたDLバリアントでは80~110%の間であった。3つのSPR活性アッセイは、コンジュゲートされた薬物分子の数が増えると特異的活性が低下することを示した(表11)。この傾向が観察されたにもかかわらず、薬物負荷の関数としての結合活性の低下は最小であり、規格の許容基準内に留まっていた。DARが増加しても、SPRによる抗原FcγRIIIa結合および抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)活性に有意な変化はないことが確認された。
【0311】
【表11】
【0312】
細胞増殖阻害による効力およびADCCリポーターバイオアッセイ
精製されたDLバリアントの生物活性を、放出および安定性の細胞増殖阻害バイオアッセイおよびADCCリポーターバイオアッセイを使用してモニタリングした。結果を表12に示す。細胞増殖阻害バイオアッセイにおける精製されたDLバリアントの相対効力は、薬物負荷の増加と相関した。細胞増殖阻害バイオアッセイにおける精製されたDL0バリアントの相対効力は、コンジュゲートされていない分子に関して予想されるように0.0であった。
【0313】
ADCCリポーターバイオアッセイにおける精製されたDLバリアントの相対効力は類似していた。FcγRIIIaおよびFcRnの結合で観察されたものと同様に、相対効力の増加と薬物負荷の低下の間にはおそらく相関があった(表11)。ヒンジ領域付近での薬物のコンジュゲーションは、Fcにおけるタンパク質-タンパク質相互作用に影響を及ぼす若干のコンフォメーション変化を起こし得るため、これは予想できないことではなかった。
【0314】
【表12】
【0315】
キャピラリー示差走査熱量測定法(DSC)
キャピラリーDSC法を使用して、薬物コンジュゲーション後のベランタマブマホドチンの三次構造および熱安定性の変化を測定した(図16)。ベランタマブの典型的なサーモグラムでは、第1ピークはCH2ドメインの展開(unfolding)に相当し、第2ピークはCH3ドメインおよびFabの展開に相当する。mAbのCH3およびFabの融解転移はしばしば重複し、一般に、CH2ドメインに比べて同一であるか高い温度で生じる。融解温度は一般にタンパク質の安定性と相関し、安定性の増大は、タンパク質を展開するのに必要なエネルギー量が増えるため、通常、融解温度の上昇に表れる。
【0316】
表13および図16は、精製されたDLバリアントの転移温度およびDSCサーモグラムをそれぞれ示す。精製されたDL0のDSCサーモグラムと転移温度は、ベランタマブに類似している。ベランタマブに比べてTmに若干の増加が見られたが、これはおそらく製剤バッファーの違いによるものである。
【0317】
精製されたDL2のDSC分析は、84.2℃から78.2℃へのFabの見掛けの転移温度の低下を示した。これはおそらく、LCとHCの間に鎖間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基であるLC C214およびHC C224における薬物コンジュゲーションの結果である。このデータは、NR-CGEおよび還元LC-MS結果と一致した。
【0318】
精製されたDL4aのDSC分析は、精製されたDL2で観察されたものに類似し、Fabの見掛けの転移温度の低下を示した。しかしながら、精製されたDL2と比較すると、精製されたDL4aバリアントは78.0℃にはるかに大きいピーク面積を持つ。これは、LCとHCの間に鎖間ジスルフィド結合を含む両方のシステインがコンジュゲートされていることを示すデータと相関した。CH2ドメインの見掛けの転移温度に若干の低下が観察されたが、これはDL4aと共精製された別のDL4バリアントに由来するものである可能性がある。
【0319】
精製されたDL4bのDSC分析は、精製されたDL2の結果と一部類似しており、Fabドメインの見掛けの転移温度が低下していた。しかしながら、DL2とは異なり、CH2ドメインの見掛けの転移温度も低下していた。このことは、精製されたDL4bがヒンジとFab鎖間ジスルフィドの両方でシステインにコンジュゲーションを有する種を含むことを示唆している。
【0320】
精製されたDL6のDSC分析は、CH2ドメインおよび一部のFabの見掛けの転移温度に低下を示した。シフトしたFabの割合は、精製されたDL2で観察されたものと類似していた。このデータは、LCとHCの間に鎖間ジスルフィド結合を形成する2個のシステイン残基、およびヒンジ鎖間ジスルフィド結合における4個のシステイン残基の薬物コンジュゲーションと一致していた。
【0321】
精製されたDL8のDSC分析は、精製されたDL6で観察されたものと類似する、CH2ドメインの融解温度の低下を示した。さらに、精製されたDL4aで観察されたものと類似する、Fabの見掛けの転移温度の低下があった。これらの結果は、4個の鎖間ジスルフィド結合における8個のシステイン残基のコンジュゲーションと一致していた。
【0322】
システイン残基の部分的な還元とコンジュゲーションによって鎖間ジスルフィド結合が破壊されると、熱的展開の転移温度が低くなると予想される。精された製DLバリアントについて得られたキャピラリーDSCのデータは、この仮説と一致していた。
【0323】
【表13】
【0324】
実施例5~7からの結論
精製されたDLバリアントに、ベランタマブマホドチン上のコンジュゲーション部位を含め、その純度、効力および同一性を決定するための特性評価を行った。その結果、DL分布は、鎖間ジスルフィド結合の部分的還元後に偶数個の薬物(mcMMAF)とコンジュゲートしたDLバリアントの不均一な混合物であることが示された。ベランタマブマホドチンの主な薬物負荷バリアントはDL4a種であり、LCとHC間の鎖間ジスルフィド結合を含む、各LC C214と各HC C224にコンジュゲートした4個のMMAF分子を含んだ。DL0バリアントはコンジュゲートされていないベランタマブであることが確認された。DLバリアントの相対効力は、細胞増殖阻害アッセイで薬剤負荷の増加に関連して増加したが、ベランタマブマホドチンは、全体的な相対効力に寄与するこれらのDLバリアントの分布で構成されていた。DLの分布は薬物抗体比(DAR)によって制御された。HIC法は現在、ベランタマブマホドチンの放出時および安定時の薬物負荷バリアントをモニタリングするために、原薬と製剤の両方で実施されている。
【0325】
配列表
配列番号1:CDRH1
NYWMH
【0326】
配列番号2:CDRH2
ATYRGHSDTYYNQKFKG
【0327】
配列番号3:CDRH3
GAIYDGYDVLDN
【0328】
配列番号4:CDRL1
SASQDISNYLN
【0329】
配列番号5:CDRL2
YTSNLHS
【0330】
配列番号6:CDRL3
QQYRKLPWT
【0331】
配列番号7:重鎖可変領域(CDRに下線)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSNYWMHWVRQAPGQGLEWMGATYRGHSDTYYNQKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGAIYDGYDVLDNWGQGTLVTVSS
【0332】
配列番号8:軽鎖可変領域(CDRに下線)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSNLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYRKLPWTFGQGTKLEIKR
【0333】
配列番号9:重鎖領域(CDRに下線;HC C224、HC C230およびHC C233は太字/下線)
【化5】
【0334】
配列番号10:軽鎖領域(CDRに下線;LC C214は太字/下線)
【化6】
【0335】
配列番号11:D103Nを含む重鎖領域(CDRに下線)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSNYWMHWVRQAPGQGLEWMGATYRGHSDTYYNQKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGAIYNGYDVLDNWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0336】
配列番号12:N388Dを含む重鎖領域(CDRに下線)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSNYWMHWVRQAPGQGLEWMGATYRGHSDTYYNQKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGAIYDGYDVLDNWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESDGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0337】
配列番号13:N393Dを含む重鎖領域(CDRに下線)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSNYWMHWVRQAPGQGLEWMGATYRGHSDTYYNQKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGAIYDGYDVLDNWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPEDNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0338】
配列番号14:N388DおよびN393Dを含む重鎖領域(CDRに下線)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSNYWMHWVRQAPGQGLEWMGATYRGHSDTYYNQKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGAIYDGYDVLDNWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESDGQPEDNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
【配列表】
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【国際調査報告】