(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】電気光学ディスプレイを駆動する方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1685 20190101AFI20240816BHJP
G02F 1/167 20190101ALI20240816BHJP
G02F 1/16766 20190101ALI20240816BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240816BHJP
G09G 3/34 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G02F1/1685
G02F1/167
G02F1/16766
G09G3/20 624B
G09G3/34 C
G09G3/20 670J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506928
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022040697
(87)【国際公開番号】W WO2023023213
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チェン, アーロン
(72)【発明者】
【氏名】シム, テック ピン
(72)【発明者】
【氏名】クラウンス, ケネス アール.
(72)【発明者】
【氏名】アムンドソン, カール レイモンド
【テーマコード(参考)】
2K101
5C080
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BB11
2K101BD61
2K101EC08
2K101ED13
2K101ED25
2K101ED75
2K101EG52
2K101EJ23
5C080AA13
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD29
5C080EE29
5C080FF11
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ05
(57)【要約】
複数のディスプレイピクセルを有する電気光学ディスプレイを駆動する方法が、説明される。ディスプレイピクセルの各々は、ディスプレイトランジスタに関連付けられている。方法は、以下のステップを順に含む。第1の電圧が、複数のディスプレイピクセルのうちの第1のディスプレイピクセルに関連付けられた第1のディスプレイトランジスタに印加される。第1の電圧は、駆動波形の少なくとも1つのフレーム中に印加される。第2の電圧が、第1のディスプレイピクセルに関連付けられた第1のディスプレイトランジスタに印加される。第2の電圧は、第1の電圧より小さい非ゼロ振幅を有し、駆動波形の最後のフレーム中に印加される。第2の電圧の振幅は、電圧オフセット値と、第1の電圧が第1のディスプレイトランジスタに印加されているとき、駆動波形の各フレームが第1のディスプレイピクセルに寄与する残留電圧の合計とに基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、前記電気光学ディスプレイは、複数のディスプレイピクセルを有し、前記複数のディスプレイピクセルの各々は、ディスプレイトランジスタに関連付けられており、前記方法は、
第1の電圧を前記複数のディスプレイピクセルのうちの第1のディスプレイピクセルに関連付けられた第1のディスプレイトランジスタに印加するステップであって、前記第1の電圧は、駆動波形の少なくとも1つのフレーム中に印加される、ステップと、
第2の電圧を前記第1のディスプレイピクセルに関連付けられた前記第1のディスプレイトランジスタに印加するステップと
を順に含み、
前記第2の電圧は、前記第1の電圧より小さい非ゼロ振幅を有し、前記駆動波形の最後のフレーム中に印加され、
前記第2の電圧の振幅は、電圧オフセット値と、前記第1の電圧が前記第1のディスプレイピクセルに関連付けられた前記第1のディスプレイトランジスタに印加されているときの前記駆動波形の各フレームが前記第1のディスプレイピクセルに寄与する残留電圧の合計とに基づく、方法。
【請求項2】
前記駆動波形の各フレームの持続時間は、実質的に同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の電圧の振幅は、前記駆動波形から生じる前記第1のディスプレイピクセルの明度の量にさらに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電圧オフセット値は、前記第1のディスプレイトランジスタのゲート電圧における変化および前記第1のディスプレイトランジスタの寄生静電容量に起因して、前記第1のディスプレイピクセルに寄与される電圧に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第3の電圧を前記第1のディスプレイピクセルに関連付けられた前記第1のディスプレイトランジスタに印加するステップをさらに含み、前記第3の電圧は、実質的に0Vである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の電圧が前記第1のディスプレイピクセルに関連付けられた前記第1のディスプレイトランジスタに印加されているときの前記駆動波形の各フレームが前記第1のディスプレイピクセルに寄与する残留電圧の量は、前記第1の電圧の振幅と残留電圧係数とに基づいて決定され、前記残留電圧係数は、前記駆動波形のフレームが前記ディスプレイピクセルに寄与する残留電圧の量に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
動作可能相互コンダクタンス増幅器回路モデルを使用して残留電圧係数を決定することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
白黒電気光学ディスプレイを光学レール状態に駆動する方法であって、前記電気光学ディスプレイは、複数のディスプレイピクセル電極と共通電極との間に電気的に結合された電気泳動ディスプレイ媒体を備え、前記複数のディスプレイピクセル電極の各々は、ディスプレイピクセルに関連付けられており、前記電気泳動ディスプレイ媒体は、複数の帯電黒色顔料粒子と帯電白色顔料粒子とを備え、前記方法は、
前記複数のディスプレイピクセルのうちの第1のディスプレイピクセルに関連付けられた第1のディスプレイトランジスタを第1の電圧ドライバ回路に接続するステップであって、前記第1の電圧ドライバ回路は、前記ディスプレイピクセルを光学レール状態に駆動するために十分な第1の電圧を提供するように構成され、前記第1の電圧は、駆動波形の1つ以上のフレーム中に提供される、ステップと、
前記複数のディスプレイピクセルのうちの前記第1のディスプレイピクセルに関連付けられた前記第1のディスプレイトランジスタを第2の電圧ドライバ回路に接続するステップであって、前記第2の電圧ドライバ回路は、前記駆動波形が前記第1のディスプレイピクセルに寄与する残留電圧の量を減らすために、前記第1の電圧より小さい非ゼロ振幅を有する第2の電圧を提供するように構成され、前記第2の電圧は、前記駆動波形の1つ以上のフレームの後に提供される、ステップと、
前記第1のディスプレイピクセルを浮動状態に置くステップと
を順に含む、方法。
【請求項9】
前記光学レール状態は、実質的に黒色の状態または実質的に白色の状態のうちの1つを備えている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電気泳動ディスプレイ媒体は、前記複数の帯電黒色顔料粒子および帯電白色顔料粒子のみを備えている、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の電圧は、前記駆動波形の各フレームより持続時間において長い期間にわたって提供される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の電圧は、前記駆動波形の各フレームより持続時間において短い期間にわたって提供される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記複数のディスプレイピクセルのうちの前記第1のディスプレイピクセルに関連付けられた前記第1のディスプレイトランジスタを前記第1の電圧ドライバ回路に接続することは、前記第1の電圧ドライバ回路と電気連通している第1の切り替えデバイスと、前記第1のディスプレイピクセルに関連付けられたディスプレイピクセル電極とを閉状態に設定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のディスプレイピクセルのうちの前記第1のディスプレイピクセルに関連付けられた前記第1のディスプレイトランジスタを前記第2の電圧ドライバ回路に接続することは、
前記第1の切り替えデバイスを開状態に設定することと、
前記第2の電圧ドライバ回路と電気連通している第2の切り替えデバイスと前記第1のディスプレイピクセルに関連付けられたディスプレイピクセル電極とを閉状態に設定することと
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のディスプレイピクセルを浮動状態に置くことは、前記第2の切り替えデバイスを開状態に設定することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のディスプレイピクセルを浮動状態に置くことは、前記共通電極と接地電圧との間の電気的接続を切断することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の電圧と前記第2の電圧とは、同じ極性を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の電圧の振幅および前記第2の電圧が提供される持続時間は、前記駆動波形から生じる前記光学レール状態の明度の量に基づく、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年8月18日に出願された米国仮出願第63/234,295号および2022年4月29日に出願された米国仮出願第63/336,331号の優先権を主張する。前述の仮出願の開示全体は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に開示される主題は、電気光学ディスプレイを駆動する手段および方法に関する。より具体的に、本主題は、残存電荷によって引き起こされる光学キックバックおよび残留電圧の蓄積を減らすための駆動方法および/またはスキームに関連する。
【背景技術】
【0003】
電気泳動ディスプレイまたはEPDは、一般に、いわゆるDC平衡波形によって駆動される。DC平衡波形は、深刻なハードウェア劣化を減らし、他の信頼性問題を排除することによって、EPDの長期使用を増進することが証明されている。しかしながら、DC平衡波形制約は、EPDディスプレイを駆動するために利用可能な可能な波形の組を限定し、波形モードを介した有利な特徴を実装することを困難にし、時としてそれを不可能にする。例えば、「フラッシュレス」ホワイトオンブラックディスプレイモードを実装するとき、過剰な白色縁蓄積が、黒色に遷移したグレートーンが非点滅黒色背景の隣にあるとき、眼に見えるようになり得る。そのような縁を取り除くために、DC非平衡駆動スキームが、良好に機能し得るが、そのような駆動スキームは、DC平衡制約を破ることを要求する。DC平衡ではない波形は、分極キックバック(例えば、電気光学媒体が駆動されることを停止した後の短い期間における媒体の光学状態における変化、例えば、黒色に駆動されるピクセルが、波形が終結した後の短い期間、暗灰色に戻り得る)を結果としてもたらし、電極に対する損傷を引き起こし得る。
【0004】
さらに、DC非平衡波形によって駆動される電気光学ディスプレイは、残留電圧を生産し得、本残留電圧は、ディスプレイピクセルの開回路電気化学的電位を測定することによって確認可能である。残留電圧は、電気泳動および他のインパルス駆動型電気光学ディスプレイにおいて、原因および効果の両方において、より一般的な現象であることが見出されている。DC非平衡は、いくつかの電気泳動ディスプレイの長期間の寿命時間の劣化を引き起こし得ることも、見出されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上で説明される欠陥に対処する起動方法またはスキームを設計する必要性が、存在する。特に、光学キックバックおよび残留電圧によって引き起こされるハードウェアの劣化を排除することまたは最小化することが可能な駆動方法またはスキームに対する必要性が、存在する。
【0006】
一側面では、本発明は、複数のディスプレイピクセルを有する電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、ディスプレイピクセルの各々は、ディスプレイトランジスタに関連付けられる、方法を含む。方法は、以下のステップを順に含む:第1の電圧が、複数のディスプレイピクセルのうちの第1のディスプレイピクセルに関連付けられた第1のディスプレイトランジスタに印加される。第1の電圧が、駆動波形の少なくとも1つのフレーム中に印加される。第2の電圧が、第1のディスプレイピクセルに関連付けられた第1のディスプレイトランジスタに印加される。第2の電圧は、第1の電圧より小さい非ゼロ振幅を有し、駆動波形の最後のフレーム中に印加される。第2の電圧の振幅は、電圧オフセット値と、第1の電圧が第1のディスプレイピクセルに関連付けられた第1のディスプレイトランジスタに印加されているとき、駆動波形の各フレームが第1のディスプレイピクセルに寄与する残留電圧の合計とに基づく。
【0007】
いくつかの実施形態において、駆動波形の各フレームの持続時間は、実質的に同じである。いくつかの実施形態において、第2の電圧の振幅は、駆動波形から生じる第1のディスプレイピクセルの明度の量にさらに基づく。いくつかの実施形態において、電圧オフセット値は、第1のディスプレイトランジスタのゲート電圧における変化および第1のディスプレイトランジスタの寄生静電容量に起因して、第1のディスプレイピクセルに寄与される電圧に基づく。
【0008】
いくつかの実施形態において、方法は、第3の電圧を第1のディスプレイピクセルに関連付けられた第1のディスプレイトランジスタに印加することも含み、第3の電圧は、実質的に0Vである。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1の電圧が第1のディスプレイピクセルに関連付けられた第1のディスプレイトランジスタに印加されているときの駆動波形の各フレームが第1のディスプレイピクセルに寄与する残留電圧の量は、第1の電圧の振幅と、駆動波形のフレームがディスプレイピクセルに寄与する残留電圧の量に対応する残留電圧係数とに基づいて決定される。
【0010】
いくつかの実施形態において、方法は、動作可能相互コンダクタンス増幅器回路モデルを使用して、残留電圧係数を決定することも含む。
【0011】
別の側面では、本発明は、白黒電気光学ディスプレイを光学レール状態に駆動する方法を含む。電気光学ディスプレイは、複数のディスプレイピクセル電極と共通電極との間に電気的に結合された電気泳動ディスプレイ媒体を含む。複数のディスプレイピクセル電極の各々は、ディスプレイピクセルに関連付けられ、電気泳動ディスプレイ媒体は、複数の帯電黒色顔料粒子と、帯電白色顔料粒子とを含む。方法は、以下のステップを順に含む:複数のディスプレイピクセルのうちの第1のディスプレイピクセルに関連付けられた第1のディスプレイトランジスタが、ディスプレイピクセルを光学レール状態に駆動するために十分な第1の電圧を提供するように構成される第1の電圧ドライバ回路に接続される。第1の電圧は、駆動波形のうちの1つ以上のフレーム中に提供される。複数のディスプレイピクセルのうちの第1のディスプレイピクセルに関連付けられた第1のディスプレイトランジスタは、駆動波形が第1のディスプレイピクセルに寄与する残留電圧の量を減らすために、第1の電圧より小さい非ゼロ振幅を有する第2の電圧を提供するように構成される第2の電圧ドライバ回路に接続され、第2の電圧は、駆動波形の1つ以上のフレームの後に提供される。第1のディスプレイピクセルは、浮動状態に置かれる。
【0012】
いくつかの実施形態において、光学レール状態は、実質的に黒色の状態または実質的に白色の状態のうちの1つを含む。いくつかの実施形態において、電気泳動ディスプレイ媒体は、複数の帯電黒色顔料粒子および帯電白色顔料粒子のみを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、第2の電圧は、駆動波形の各フレームより持続時間において長い期間にわたって提供される。いくつかの実施形態において、第2の電圧は、駆動波形の各フレームより持続時間において短い期間にわたって提供される。
【0014】
いくつかの実施形態において、複数のディスプレイピクセルのうちの第1のディスプレイピクセルに関連付けられた第1のディスプレイトランジスタを第1の電圧ドライバ回路に接続することは、第1の電圧ドライバ回路と電気連通している第1の切り替えデバイスと、第1のディスプレイピクセルに関連付けられたディスプレイピクセル電極とを閉状態に設定することを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、複数のディスプレイピクセルのうちの第1のディスプレイピクセルに関連付けられた第1のディスプレイトランジスタを第2の電圧ドライバ回路に接続することは、第1の切り替えデバイスを開状態に設定することと、第2の電圧ドライバ回路と電気連通している第2の切り替えデバイスと、第1のディスプレイピクセルに関連付けられたディスプレイピクセル電極とを閉状態に設定することとを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、第1のディスプレイピクセルを浮動状態に置くことは、第2の切り替えデバイスを開状態に設定することを含む。いくつかの実施形態において、第1のディスプレイピクセルを浮動状態に置くことは、共通電極と接地電圧との間の電気的接続を切断することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、第1の電圧および第2の電圧は、同じ極性を有する。いくつかの実施形態において、第2の電圧の振幅および第2の電圧が提供される持続時間は、駆動波形から生じる光学レール状態の明度の量に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、例示的電気泳動ディスプレイを表す回路図を図示する。
【0019】
【
図2】
図2は、電気光学結像層の回路モデルを示す。
【0020】
【
図3A】
図3Aは、電気泳動ディスプレイの線形インクモデルを図示する。
【0021】
【0022】
【
図4】
図4は、アクティブ駆動後の短絡および浮動から生じる電気光学媒体を横断する電圧を図示する。
【0023】
【
図5】
図5は、DC平衡白色-白色遷移の残存電荷の蓄積を図示する。
【0024】
【
図6】
図6は、駆動波形の個々のフレームに対応する例示的残留電圧係数図を図示する。
【0025】
【
図7】
図7は、8つのサンプル駆動波形を図示する。
【0026】
【
図8】
図8は、
図7に示される波形に対応する残留電圧値を図示する。
【0027】
【
図9】
図9Aは、ディスプレイピクセルを黒色に駆動するための例示的波形を図示する。
図9Bは、ディスプレイピクセルを白色に駆動するための例示的波形を図示する。
【0028】
【
図10A】
図10Aは、電気光学媒体を横断する電圧および結果として生じる明度の定義を図示する。
【0029】
【
図10B】
図10Bは、駆動電圧と保持時間の異なる組み合わせに関する、駆動終了時の明度を図示する。
【0030】
【
図11A】
図11Aは、異なる
wV
L電圧を伴う電気光学媒体を横断する別の電圧を図示する。
【0031】
【0032】
【0033】
【
図12】
図12は、DC平衡白色-白色遷移の残存電荷の蓄積を図示する。
【0034】
【
図13】
図13は、本明細書に提示される駆動方法の一実装を図示する。
【0035】
【
図14】
図14は、本明細書に提示される波形を実装する一方法を図示する。
【0036】
【
図15A】
図15Aは、本明細書に提示される波形を使用した電気光学媒体を横断する電圧および光学トレースを図示する。
【0037】
【
図15B】
図15Bは、アクティブ駆動後に浮動を伴う電気光学媒体を横断する電圧および光学トレースを図示する。
【0038】
【
図15C】
図15Cは、アクティブ駆動後に短絡を伴う電気光学媒体を横断する電圧および光学トレースを図示する。
【0039】
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書に開示される主題は、電気光学ディスプレイ耐久性を改良することに関連する。具体的に、主題は、経時的にハードウェアの劣化を引き起こし得る残留電圧または電荷を最小化するように設計される駆動方法またはスキームに関連する。
【0041】
用語「電気光学」は、材料またはディスプレイに適用されるように、結像技術分野におけるその従来的な意味で使用され、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する材料を指すために、本明細書で使用され、材料は、材料への電場の印加によって、その第1からその第2の表示状態に変化させられる。光学特性は、典型的に、ヒトの眼に知覚可能な色であるが、光学透過率、反射率、ルミネッセンス、または機械読み取りのために意図されるディスプレイの場合、可視範囲外の電磁波長の反射の変化の意味における擬似色等の別の光学特性であり得る。
【0042】
用語「双安定」および「双安定性」は、当技術分野におけるそれらの従来の意味で、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備えているディスプレイを指すために、本明細書で使用され、ディスプレイは、第1または第2の表示状態のうちのいずれか一方を示すように、有限持続時間のアドレスパルスを用いて、所与の要素が駆動されてから、アドレスパルスが終了した後、表示要素の状態を変化させるために必要とされるアドレスパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、その状態が続くようなものである。米国特許第7,170,670号では、グレースケール対応のいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、その極端な黒および白状態においてだけではなく、その中間グレー状態においても、安定しており、同じことは、いくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイにも当てはまることが示されている。このタイプのディスプレイは、適切に、双安定性ではなく、「多安定性」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定性」が、本明細書では、双安定性および多安定性ディスプレイの両方を網羅するために使用され得る。
【0043】
用語「グレー状態」は、本明細書では結像技術分野におけるその従来的な意味で使用され、2つの極端なピクセルの光学的状態の中間の状態を指し、必ずしも黒と白とのこれらの2つの極端な状態の間の遷移を意味するわけではない。例えば、下記に参照されるいくつかの電気泳動インクに関する特許および公開された出願は、極端な状態が白および濃青であり、中間の「グレー状態」が実際には薄青になるであろう電気泳動ディスプレイを説明している。実際、すでに述べたように、光学的状態の変化は、色の変化では全くないこともある。用語「黒」および「白」は、ディスプレイの2つの極端な光学的状態(「光学レール状態」とも称される)を指すように以下で使用され得、例えば、前述の白および濃青状態等の厳密には黒および白ではない極端な光学的状態を通常含むものとして理解されるべきである。用語「単色」は、以降、介在グレー状態を伴わず、ピクセルをそれらの2つの極端な光学状態にのみ駆動するディスプレイまたは駆動スキームを指すために使用され得る。
【0044】
用語「ピクセル」は、本明細書では、ディスプレイ自体が示し得る全ての色を発生させることが可能なディスプレイの最小単位を意味するために、ディスプレイ技術におけるその従来の意味において使用される。フルカラーディスプレイでは、典型的に、各ピクセルは、複数のサブピクセルから成り、それらの各々は、ディスプレイ自体が示し得る全てより少ない色を表示することができる。例えば、大部分の従来のフルカラーディスプレイでは、各ピクセルは、赤色サブピクセル、緑色サブピクセル、青色サブピクセル、および随意に、白色サブピクセルから成り、サブピクセルの各々は、黒色からその規定された色の最も明るいバージョンまでの色の範囲を表示することが可能である。
【0045】
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが、公知である。1つのタイプの電気光学ディスプレイは、例えば、米国特許第5,808,783号、第5,777,782号、第5,760,761号、第6,054,071号、6,055,091号、第6,097,531号、第6,128,124号、第6,137,467号、および第6,147,791号に説明されるような回転二色部材タイプである(このタイプのディスプレイは、多くの場合、「回転二色ボール」ディスプレイと称されるが、前述の特許のうちのいくつかでは、回転部材が球状ではないので、用語「回転二色部材」の方がより正確なものとして好ましい)。そのようなディスプレイは、異なる光学特性を伴う2つ以上の区分と、内部双極子とを有する多数の小さい本体(典型的に、球状または円筒形)を使用する。これらの本体は、マトリクス内に液体が充填された空胞の中に懸濁され、空胞は、本体が自由に回転するように、液体で充填されている。ディスプレイの外観は、ディスプレイに電場を印加し、それによって、本体を種々の位置に回転させ、視認表面を通して見られる本体の区分を変動させることによって、変更される。このタイプの電気光学媒体は、典型的に、双安定性である。
【0046】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック媒体、例えば、少なくとも部分的に半導体金属酸化物から形成された電極と、電極に取り付けられた色の変化を反転可能な複数の染色分子とから成るナノクロミックフィルムの形態におけるエレクトロクロミック媒体を使用する。例えば、O’Regan,B.,et al,Nature 1991,353,737,およびWood,D.,Information Display,18(3),24(2002年3月)を参照されたい。Bach,U.,et al,Adv.Mater.,2002,14(11),845も参照されたい。このタイプのナノクロミックフィルムは、例えば、米国特許第6,301,038号、第6,870,657号、および第6,950,220号にも説明されている。このタイプの媒体も、典型的に、双安定性である。
【0047】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、Philipsによって開発され、Hayes,R.A.,et al,「Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting」,Nature,425,383-385(2003年)に説明されているエレクトロウェッティングディスプレイである。米国特許第7,420,549号に、そのようなエレクトロウェッティングディスプレイが双安定性となり得ることが示されている。
【0048】
長年にわたり研究および開発の関心の対象である、あるタイプの電気光学ディスプレイは、粒子ベースの電気泳動ディスプレイであり、複数の帯電粒子が、電場の影響下で流体を通って移動する。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較したとき、良好な輝度および対比、広視野角、状態双安定、および低電力消費の属性を有することができる。
【0049】
上で述べたように、電気泳動媒体は、流体の存在を必要とする。殆どの従来技術の電気泳動媒体では、この流体は、液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生産され得る(例えば、Kitamura,T.,et al.「Electrical toner movement for electronic paper-like display」,IDW Japan,2001,Paper HCS1-1、およびYamaguchi,Y.,et al.,「Toner display using insulative particles charged triboelectricaily」,IDW Japan,2001,Paper AMD4-4号参照)。同様に、米国特許第7,321,459号および第7,236,291号も参照されたい。そのようなガスベース電気泳動媒体は、例えば、媒体が垂直面内に配置された看板等、媒体がそのような沈降を可能にする向きで使用されるとき、粒子沈降に起因して液体ベース電気泳動媒体と同じ種類の問題の影響を受けやすいと考えられる。実際、粒子沈降は、電気泳動粒子のより高速の沈降を可能にする流体の粘度と比較して、ガス状懸濁流体のより低い粘度により、液体ベース電気泳動媒体よりガスベース電気泳動媒体において深刻な問題であると考えられる。
【0050】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡された、またはそれらの名義の多数の特許および出願は、カプセル化電気泳動および他の電気光学媒体に使用される種々の技術を説明している。そのようなカプセル化媒体は、多数の小型カプセルを含み、それらの各々は、それ自体、電気泳動により移動可能な粒子を流体媒体中に含む内相と、内相を包囲するカプセル壁とを含む。典型的に、カプセルは、それ自体、ポリマー接着剤内に保持され、2つの電極間に位置付けられるコヒーレント層を形成する。これらの特許および出願に説明される技術としては、以下が挙げられる。
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号参照);
(b)カプセル、結合剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号参照);
(c)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号参照);
(d)バックプレーン、接着剤層、および他の補助層、およびディスプレイに使用される方法(例えば、米国特許第D485,294号、第6,124,851号、第6,130,773号、第6,177,921号、第6,232,950号、第6,252,564号、第6,312,304号、第6,312,971号、第6,376,828号、第6,392,786号、第6,413,790号、第6,422,687号、第6,445,374号、第6,480,182号、第6,498,114号、第6,506,438号、第6,518,949号、第6,521,489号、第6,535,197号、第6,545,291号、第6,639,578号、第6,657,772号、第6,664,944号、第6,680,725号、第6,683,333号、第6,724,519号、第6,750,473号、第6,816,147号、第6,819,471号、第6,825,068号、第6,831,769号、第6,842,167号、第6,842,279号、第6,842,657号、第6,865,010号、第6,873,452号、第6,909,532号、第6,967,640号、第6,980,196号、第7,012,735号、第7,030,412号、第7,075,703号、第7,106,296号、第7,110,163号、第7,116,318号***、第7,148,128号、第7,167,155号、第7,173,752号、第7,176,880号、第7,190,008号、第7,206,119号、第7,223,672号、第7,230,751号、第7,256,766号、第7,259,744号、第7,280,094号、第7,301,693号、第7,304,780号、第7,327,511号、第7,347,957号、第7,349,148号、第7,352,353号、第7,365,394号、第7,365,733号、第7,382,363号、第7,388,572号、第7,401,758号、第7,442,587号、第7,492,497号、第7,535,624号***、第7,551,346号、第7,554,712号、第7,583,427号、第7,598,173号、第7,605,799号、第7,636,191号、第7,649,674号、第7,667,886号、第7,672,040号、第7,688,497号、第7,733,335号、第7,785,988号、第7,830,592号、第7,843,626号、第7,859,637号、第7,880,958号、第7,893,435号、第7,898,717号、第7,905,977号、第7,957,053号、第7,986,450号、第8,009,344号、第8,027,081号、第8,049,947号、第8,072,675号、第8,077,141号、第8,089,453号、第8,120,836号、第8,159,636号、第8,208,193号、第8,237,892号、第8,238,021号、第8,362,488号、第8,373,211号、第8,389,381号、第8,395,836号、第8,437,069号、第8,441,414号、第8,456,589号、第8,498,042号、第8,514,168号、第8,547,628号、第8,576,162号、第8,610,988号、第8,714,780号、第8,728,266号、第8,743,077号、第8,754,859号、第8,797,258号、第8,797,633号、第8,797,636号、第8,830,560号、第8,891,155号、第8,969,886号、第9,147,364号、第9,025,234号、第9,025,238号、第9,030,374号、第9,140,952号、第9,152,003号、第9,152,004号、第9,201,279号、第9,223,164号、第9,285,648号、および第9,310,661号、および米国特許出願公開第2002/0060321号、第2004/0008179号、第2004/0085619号、第2004/0105036号、第2004/0112525号、第2005/0122306号、第2005/0122563号、第2006/0215106号、第2006/0255322号、第2007/0052757号、第2007/0097489号、第2007/0109219号、第2008/0061300号、第2008/0149271号、第2009/0122389号、第2009/0315044号、第2010/0177396号、第2011/0140744号、第2011/0187683号、第2011/0187689号、第2011/0292319号、第2013/0250397号、第2013/0278900号、第2014/0078024号、第2014/0139501号、第2014/0192000号、第2014/0210701号、第2014/0300837号、第2014/0368753号、第2014/0376164号、第2015/0171112号、第2015/0205178号、第2015/0226986号、第2015/0227018号、第2015/0228666号、第2015/0261057号、第2015/0356927号、第2015/0378235号、第2016/077375号、第2016/0103380号、および第2016/0187759号、および国際出願公開第WO00/38000号、欧州特許第1,099,207B1号および第1,145,072B1号参照);
(e)色形成および色調節(例えば、米国特許第6,017,584号、第6,664,944号、第6,864,875号、第7,075,502号、第7,167,155号、第7,667,684号、第7,791,789号、第7,956,841号、第8,040,594号、第8,054,526号、第8,098,418号、第8,213,076号、および第8,363,299号、および米国特許出願公開第2004/0263947号、第2007/0109219号、第2007/0223079号、第2008/0023332号、第2008/0043318号、第2008/0048970号、第2009/0004442号、第2009/0225398号、第2010/0103502号、第2010/0156780号、第2011/0164307号、第2011/0195629号、第2011/0310461号、第2012/0008188号、第2012/0019898号、第2012/0075687号、第2012/0081779号、第2012/0134009号、第2012/0182597号、第2012/0212462号、第2012/0157269号、および第2012/0326957号参照);
(f)ディスプレイを駆動する方法(例えば、米国特許第7,012,600号および第7,453,445号参照);
(g)ディスプレイの適用(例えば、米国特許第7,312,784号および第8,009,348号参照);
(h)非電気泳動ディスプレイ(米国特許第6,241,921号、第6,950,220号、第7,420,549号、および第8,319,759号、および米国特許出願公開第2012/0293858号参照);
(i)マイクロセル構造、壁材料、およびマイクロセルを形成する方法(例えば、米国特許第7,072,095号および第9,279,906号参照);
(j)マイクロセルを充填およびシールする方法(例えば、米国特許第7,144,942号および第7,715,088号参照)。
【0051】
本願はさらに、米国特許第D485,294号、第6,124,851号、第6,130,773号、第6,177,921号、第6,232,950号、第6,252,564号、第6,312,304号、第6,312,971号、第6,376,828号、第6,392,786号、第6,413,790号、第6,422,687号、第6,445,374号、第6,480,182号、第6,498,114号、第6,506,438号、第6,518,949号、第6,521,489号、第6,535,197号、第6,545,291号、第6,639,578号、第6,657,772号、第6,664,944号、第6,680,725号、第6,683,333号、第6,724,519号、第6,750,473号、第6,816,147号、第6,819,471号、第6,825,068号、第6,831,769号、第6,842,167号、第6,842,279号、第6,842,657号、第6,865,010号、第6,873,452号、第6,909,532号、第6,967,640号、第6,980,196号、第7,012,735号、第7,030,412号、第7,075,703号、第7,106,296号、第7,110,163号、第7,116,318号、第7,148,128号、第7,167,155号、第7,173,752号、第7,176,880号、第7,190,008号、第7,206,119号、第7,223,672号、第7,230,751号、第7,256,766号、第7,259,744号、第7,280,094号、第7,301,693号、第7,304,780号、第7,327,511号、第7,347,957号、第7,349,148号、第7,352,353号、第7,365,394号、第7,365,733号、第7,382,363号、第7,388,572号、第7,401,758号、第7,442,587号、第7,492,497号、第7,535,624号、第7,551,346号、第7,554,712号、第7,583,427号、第7,598,173号、第7,605,799号、第7,636,191号、第7,649,674号、第7,667,886号、第7,672,040号、第7,688,497号、第7,733,335号、第7,785,988号、第7,830,592号、第7,843,626号、第7,859,637号、第7,880,958号、第7,893,435号、第7,898,717号、第7,905,977号、第7,957,053号、第7,986,450号、第8,009,344号、第8,027,081号、第8,049,947号、第8,072,675号、第8,077,141号、第8,089,453号、第8,120,836号、第8,159,636号、第8,208,193号、第8,237,892号、第8,238,021号、第8,362,488号、第8,373,211号、第8,389,381号、第8,395,836号、第8,437,069号、第8,441,414号、第8,456,589号、第8,498,042号、第8,514,168号、第8,547,628号、第8,576,162号、第8,610,988号、第8,714,780号、第8,728,266号、第8,743,077号、第8,754,859号、第8,797,258号、第8,797,633号、第8,797,636号、第8,830,560号、第8,891,155号、第8,969,886号、第9,147,364号、第9,025,234号、第9,025,238号、第9,030,374号、第9,140,952号、第9,152,003号、第9,152,004号、第9,201,279号、第9,223,164号、第9,285,648号、および第9,310,661号、および米国特許出願公開第2002/0060321号、第2004/0008179号、第2004/0085619号、第2004/0105036号、第2004/0112525号、第2005/0122306号、第2005/0122563号、第2006/0215106号、第2006/0255322号、第2007/0052757号、第2007/0097489号、第2007/0109219号、第2008/0061300号、第2008/0149271号、第2009/0122389号、第2009/0315044号、第2010/0177396号、第2011/0140744号、第2011/0187683号、第2011/0187689号、第2011/0292319号、第2013/0250397号、第2013/0278900号、第2014/0078024号、第2014/0139501号、第2014/0192000号、第2014/0210701号、第2014/0300837号、第2014/0368753号、第2014/0376164号、第2015/0171112号、第2015/0205178号、第2015/0226986号、第2015/0227018号、第2015/0228666号、第2015/0261057号、第2015/0356927号、第2015/0378235号、第2016/077375号、第2016/0103380号、および第2016/0187759号、および国際出願公開第WO00/38000号、欧州特許第1,099,207B1号、および第1,145,072B1号(上記に列挙された出願の全ては、参照することによってその全体として組み込まれる)に関連する。
【0052】
本願は、米国特許第5,930,026号、第6,445,489号、第6,504,524号、第6,512,354号、第6,531,997号、第6,753,999号、第6,825,970号、第6,900,851号、第6,995,550号、第7,012,600号、第7,023,420号、第7,034,783号、第7,061,166号、第7,061,662号、第7,116,466号、第7,119,772号、第7,177,066号、第7,193,625号、第7,202,847号、第7,242,514号、第7,259,744号、第7,304,787号、第7,312,794号、第7,327,511号、第7,408,699号、第7,453,445号、第7,492,339号、第7,528,822号、第7,545,358号、第7,583,251号、第7,602,374号、第7,612,760号、第7,679,599号、第7,679,813号、第7,683,606号、第7,688,297号、第7,729,039号、第7,733,311号、第7,733,335号、第7,787,169号、第7,859,742号、第7,952,557号、第7,956,841号、第7,982,479号、第7,999,787号、第8,077,141号、第8,125,501号、第8,139,050号、第8,174,490号、第8,243,013号、第8,274,472号、第8,289,250号、第8,300,006号、第8,305,341号、第8,314,784号、第8,373,649号、第8,384,658号、第8,456,414号、第8,462,102号、第8,537,105号、第8,558,783号、第8,558,785号、第8,558,786号、第8,558,855号、第8,576,164号、第8,576,259号、第8,593,396号、第8,605,032号、第8,643,595号、第8,665,206号、第8,681,191号、第8,730,153号、第8,810,525号、第8,928,562号、第8,928,641号、第8,976,444号、第9,013,394号、第9,019,197号、第9,019,198号、第9,019,318号、第9,082,352号、第9,171,508号、第9,218,773号、第9,224,338号、第9,224,342号、第9,224,344号、第9,230,492号、第9,251,736号、第9,262,973号、第9,269,311号、第9,299,294号、第9,373,289号、第9,390,066号、第9,390,661号、および第9,412,314号、および米国特許出願公開第2003/0102858号、第2004/0246562号、第2005/0253777号、第2007/0070032号、第2007/0076289号、第2007/0091418号、第2007/0103427号、第2007/0176912号、第2007/0296452号、第2008/0024429号、第2008/0024482号、第2008/0136774号、第2008/0169821号、第2008/0218471号、第2008/0291129号、第2008/0303780号、第2009/0174651号、第2009/0195568号、第2009/0322721号、第2010/0194733号、第2010/0194789号、第2010/0220121号、第2010/0265561号、第2010/0283804号、第2011/0063314号、第2011/0175875号、第2011/0193840号、第2011/0193841号、第2011/0199671号、第2011/0221740号、第2012/0001957号、第2012/0098740号、第2013/0063333号、第2013/0194250号、第2013/0249782号、第2013/0321278号、第2014/0009817号、第2014/0085355号、第2014/0204012号、第2014/0218277号、第2014/0240210号、第2014/0240373号、第2014/0253425号、第2014/0292830号、第2014/0293398号、第2014/0333685号、第2014/0340734号、第2015/0070744号、第2015/0097877号、第2015/0109283号、第2015/0213749号、第2015/0213765号、第2015/0221257号、第2015/0262255号、第2016/0071465号、第2016/0078820号、第2016/0093253号、第2016/0140910号、および第2016/0180777号(上記に列挙された出願の全ては、参照することによってその全体として組み込まれる)にも関連する。
【0053】
前述の特許および出願の多くは、カプセル化電気泳動媒体における別々のマイクロカプセルを包囲する壁が、連続相と置換され得、したがって、いわゆる高分子分散電気泳動ディスプレイを生産し、高分子分散電気泳動ディスプレイにおいて、電気泳動媒体が、電気泳動流体の複数の別々の液滴と、高分子材料の連続相とを備え、そのような高分子分散電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の別々の液滴が、別々のカプセル膜が各個々の液滴に関連付けられない場合でも、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得ることを認識する。例えば、前述の米国特許第6,866,760号を参照されたい。故に、本願の目的のために、そのような高分子分散電気泳動媒体は、カプセル化電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0054】
関連タイプの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、帯電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されないが、代わりに、キャリア媒体、典型的に、ポリマーフィルム内に形成された複数の空洞内に保持される。例えば、米国特許第6,672,921号および第6,788,449号を参照されたい(両方は、Sipix Imaging,Incに譲渡されている)。
【0055】
多くの場合、電気泳動媒体は不透明であり(例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子は、ディスプレイを通る可視光の透過を実質的に遮断するので)、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、1つのディスプレイ状態が実質的に不透明であり、1つは、光透過性である、いわゆる「シャッタ」モードで動作するように作製され得る。例えば、米国特許第5,872,552号、第6,130,774号、第6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。誘電泳動ディスプレイは、電気泳動ディスプレイと類似するが、電場強度の変動に依存し、類似のモードで動作し得る。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他の種類の電気光学ディスプレイも、シャッタモードで動作することが可能であり得る。シャッタモードで動作する電気光学媒体は、フルカラーディスプレイ用の多層構造で有用であり得、そのような構造では、ディスプレイの視認表面に隣接する少なくとも1つの層は、視認表面からより遠くにある第2の層をさらすことまたは隠すことを行うために、シャッタモードで動作する。
【0056】
カプセル化された電気泳動ディスプレイは、典型的に、従来的な電気泳動デバイスのクラスタ化および沈降故障モードに悩まされることがなく、多様な柔軟性および堅い基材上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力等のさらなる利点を提供する。(「印刷」という語の使用は、全ての形態の印刷およびコーティングを含むことが意図され、限定ではないが、前計量コーティング、例えば、パッチダイコーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等、ロールコーティング、例えば、ナイフオーバーロールコーティング、フォワードおよびリバースロールコーティング等、グラビアコーティング、浸漬コーティング、吹き付けコーティング、メニスカスコーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シルクスクリーン印刷プロセス、静電気印刷プロセス、熱印刷プロセス、インクジェット印刷プロセス、電気泳動析出(米国特許第7,339,715号参照)、および他の同様の技術が挙げられる。)したがって、得られるディスプレイは、柔軟であり得る。さらに、ディスプレイ媒体は、種々の方法を使用して印刷され得るので、ディスプレイ自体は、安価に作製され得る。
【0057】
他のタイプの電気光学材料も、本発明で使用され得る。
【0058】
電気泳動ディスプレイは、通常、電気泳動材料の層と、電気泳動材料の両側に配置された少なくとも2つの他の層(これらの2つの層のうちの1つは、電極層である)とを備えている。大部分のそのようなディスプレイでは、両層が、電極層であり、電極層の一方または両方が、ディスプレイのピクセルを画定するようにパターン化される。例えば、一方の電極層は、細長い行電極に、他方は、行電極と直角に伸びる細長い列電極にパターン化され得、ピクセルは、行電極と列電極との交点によって、画定される。代替として、かつより一般的に、一方の電極層は、単一連続電極の形態を有し、他方の電極層は、ピクセル電極の行列にパターン化され、ピクセル電極の各々が、ディスプレイの1ピクセルを画定する。ディスプレイと別個のスタイラス、印字ヘッド、または類似可動電極との使用が意図される別のタイプの電気泳動ディスプレイでは、電気泳動層に隣接する層のうちの1つのみが、電極を備え、電気泳動層の反対側の層は、典型的に、可動電極が電気泳動層に損傷を及ぼすことを防止することが意図される保護層である。
【0059】
米国特許第6,704,133号に説明されるようなさらに別の実施形態において、電気泳動ディスプレイは、2つの連続電極と、電極間の電気泳動層および光電気泳動層とで構築され得る。光電気泳動材料は、光子の吸収に伴って抵抗率を変化させるので、入射光が、電気泳動媒体の状態を改変するために使用されることができ、そのようなデバイスは、
図1に図示される。米国特許第6,704,133号に説明されるように、
図1のデバイスは、ディスプレイの視認表面と反対側に配置されたLCDディスプレイ等の発光型源によって駆動されるとき、最良に機能する。いくつかの実施形態において、米国特許第6,704,133号のデバイスは、ディスプレイの正面からの入射光によって引き起こされる「暗電流」を減らすために、特別な障壁層を正面電極と光電気泳動材料との間に組み込み、入射光は、反射性電気光学媒体を越えて漏れる。
【0060】
前述の米国特許第6,982,178号は、大量生産に非常に適した固体電気光学ディスプレイ(カプセル化された電気泳動ディスプレイを含む)を組み立てる方法を説明している。本質的に、この特許は、いわゆる「フロントプレーン積層体」(「FPL」)を説明し、フロントプレーン積層体は、順に、光透過性導電性層、導電性層と電気接触する固体電気光学媒体の層、接着剤層、および剥離シートを備えている。典型的に、光透過性導電性層は、光透過性基材上に支持され、好ましくは、基材が永久的な変形を伴わずに、(例えば)直径10インチ(254mm)のドラムの周囲に手で巻き付けられ得るという意味で柔軟である。この出願および本明細書において、「光透過性」という用語は、そのように指定される層が、その層を通して見ている観察者が、電気光学媒体のディスプレイ状態の変化を観察することを可能にするために十分な光を透過させ、通常、導電性層および隣接する基材(存在する場合)を通して見られることを意味するように使用され、電気光学媒体が非可視波長における反射率における変化を表示する場合、「光透過性」という用語は、当然ながら、関連する非可視波長の透過を指すように解釈されるべきである。基板は、典型的に、ポリマーフィルムであり、通常、約1~約25ミル(25~634μm)、好ましくは、約2~約10ミル(51~254μm)の範囲内の厚さを有するであろう。導電性層は、便利に、例えば、アルミニウムまたはITOの薄金属または金属酸化物層であり得るか、または、伝導性ポリマーであり得る。アルミニウムまたはITOでコーティングされたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムは、例えば、E.I.du Pont de Nemours & Company(Wilmington DE)からの「アルミ被覆Mylar」(「Mylar」は、登録商標である)として商業上利用可能であり、そのような商業上の材料は、フロントプレーン積層体における良好な結果と共に使用され得る。
【0061】
現在、残留電圧は、原因および影響の両方において、電気泳動および他のインパルス駆動式電気光学ディスプレイにおいてより一般的現象であることが、見出されている。DC非平衡がいくつかの電気泳動ディスプレイの長期寿命劣化を生じさせ得ることも、見出されている。
【0062】
残留電圧の複数の潜在的源が存在する。残留電圧の主要原因は、ディスプレイを形成する種々の層の材料内のイオン分極であると考えられる(但し、いくつかの実施形態は、本考えによっていかようにも限定されない)。
【0063】
そのような分極は、種々の方法において生じる。第1の(便宜上、「タイプI」と示される)分極では、イオン二重層が、材料界面を横断してまたはそれに隣接して生成される。例えば、酸化インジウムスズ(「ITO」)電極における正の電位は、隣接する積層接着剤における負のイオンの対応する分極層を生産し得る。そのような分極層の減衰率は、積層接着剤層における分離されたイオンの再結合に関連付けられている。そのような分極層の幾何学形状は、界面の形状によって決定されるが、事実上、平面であり得る。
【0064】
第2の(「タイプII」)タイプの分極では、単一材料内の団塊、結晶、または他の種類の材料異質性は、イオンが周囲材料より低速に移動し得る領域をもたらし得る。異なるイオン移動率は、異なる電荷分極度を媒体のバルク内にもたらし得、分極は、したがって、単一ディスプレイ構成要素内で生じ得る。そのような分極は、事実上、実質的に局所化されるか、または、層全体を通して分散され得る。
【0065】
第3の(「タイプIII」)タイプの分極では、分極は、任意の特定のタイプのイオンの電荷輸送に対する障壁を表す任意の界面において生じ得る。マイクロキャビティ電気泳動ディスプレイ内のそのような界面の一例は、懸濁媒体および粒子を含む電気泳動懸濁液(「内相」)と、壁、接着剤、および結合剤を含む周囲媒体(「外相」)との間の境界である。多くの電気泳動ディスプレイでは、内相は、疎水性液体である一方、外相は、ゼラチン等のポリマーである。内相内に存在するイオンは、外相内で不溶性かつ非拡散性であり、その逆も同様であり得る。そのような界面と垂直な電場の印加時、反対符号の分極層が、界面の両側に蓄積するであろう。印加される電場が除去されると、結果として生じる非平衡電荷分布は、測定可能残留電圧電位をもたらし、残留電圧電位は、界面の両側の2つの位相内のイオンの移動度によって決定される緩和時間に伴って減衰するであろう。
【0066】
分極は、駆動パルス中、生じ得る。各画像更新は、残留電圧に影響を及ぼし得る事象である。正の波形電圧は、具体的電気光学ディスプレイに応じて、同じまたは反対の極性(または、ほぼゼロ)である残留電圧を電気光学媒体を横断して生成することができる。
【0067】
ある事例では、駆動シーケンスの最後のフレームは、インクスタックの分極に最高レベルを与え得る。例えば、時として、最後のフレームが、先のフレームより複数倍(例えば、10倍)多いインクスタックに対する残留電荷を与え得る。
【0068】
前述の議論から、分極は、電気泳動または他の電気光学ディスプレイ内の複数の場所で生じ得、各場所は、主に、界面および材料異質性において、減衰時間のそれ自体の特性スペクトルを有することが明白であろう。電気アクティブ部品(例えば、電気泳動懸濁液)に対するこれらの電圧源の場所(言い換えると、分極された電荷分布)および各種類の電荷分布と懸濁液を通した粒子の運動または他の電気光学アクティビティとの間の電気結合度に応じて、種々の種類の分極が、多かれ少なかれ有害な効果を生産するであろう。電気泳動ディスプレイは、電気光学層の分極を本質的に生じさせる荷電粒子の運動によって動作するので、ある意味、好ましい電気泳動ディスプレイは、残留電圧が、常時、ディスプレイ内に存在しないものではなく、むしろ、残留電圧が好ましくない電気光学挙動を生じさせないものである。理想的に、残留インパルスは、最小化され、残留電圧は、最小の一時停止を画像更新間に導入することによって、電気泳動ディスプレイが、残留電圧効果を懸念せずに、光学状態間の全ての遷移に影響を及ぼし得るように、1秒以内、好ましくは、50ms以内に、1Vを下回って、好ましくは、0.2Vを下回って減少するであろう。ビデオレートまたは+/-15Vを下回る電圧で動作する電気泳動ディスプレイに関して、これらの理想的値は、対応して減らされるべきである。類似考慮点は、他のタイプの電気光学ディスプレイに適用される。
【0069】
要約すると、現象としての残留電圧は、少なくとも実質的に、界面または材料自体内のいずれかにおいて、ディスプレイ材料成分内に生じるイオン分極の結果である。そのような分極は、特に、それらが約50ms~約1時間またはより長い時間スケールで持続するとき、問題である。残留電圧自体は、種々の方法において画像残影または視覚的アーチファクトとして存在し得、深刻の程度は、画像更新間の経過時間に伴って変動し得る。残留電圧は、DC非平衡も生成し、最終ディスプレイ寿命を短くし得る。残留電圧の影響は、したがって、電気泳動または他の電気光学デバイスの品質に有害であり、残留電圧自体および残留電圧の影響に対するデバイスの光学状態の感度の両方を最小化することが、望ましくあり得る。
【0070】
図1は、本明細書で提起される主題による電気光学ディスプレイのピクセル100の概略図を示す。ピクセル100は、結像フィルム110を含み得る。いくつかの実施形態において、結像フィルム110は、双安定であり得る。いくつかの実施形態において、結像フィルム110は、限定ではないが、カプセル化電気泳動結像フィルムを含み得、それは、例えば、荷電顔料粒子を含み得る。
【0071】
結像フィルム110は、正面電極102と背面電極104との間に配置され得る。正面電極102は、結像フィルムとディスプレイの正面との間に形成され得る。いくつかの実施形態において、正面電極102は、透明であり得る。いくつかの実施形態において、正面電極102は、限定ではないが、酸化インジウムスズ(ITO)を含む任意の好適な透明な材料から形成され得る。背面電極104は、正面電極102と反対側に形成され得る。いくつかの実施形態において、寄生静電容量(図示せず)が、正面電極102と背面電極104との間に形成され得る。
【0072】
ピクセル100は、複数のピクセルのうちの1つであり得る。複数のピクセルは、任意の特定のピクセルが、1つの規定される行および1つの規定される列の交点によって一意に画定されるようにマトリクスを形成するために、行および列の2次元配置において配置され得る。いくつかの実施形態において、ピクセルのマトリクスは、「アクティブマトリクス」であり得、各ピクセルは、少なくとも1つの非線形回路要素120に関連付けられている。非線形回路要素120は、バックプレート電極104とアドレス電極108との間に結合され得る。いくつかの実施形態において、非線形要素120は、限定ではないが、MOSFETを含むダイオードおよび/またはトランジスタを含み得る。MOSFETのドレイン(またはソース)は、バックプレート電極104に結合され得、MOSFETのソース(またはドレイン)は、アドレス電極108に結合され得、MOSFETのゲートは、MOSFETのアクティブ化および非アクティブ化を制御するように構成されるドライバ電極106に結合され得る(便宜上、バックプレート電極104に結合されるMOSFETの端子はMOSFETのドレインと称され、アドレス電極108に結合されるMOSFETの端子は、MOSFETのソースと称されるであろう。しかしながら、当業者は、いくつかの実施形態において、MOSFETのソースおよびドレインが、交換され得ることを認識するであろう。)。
【0073】
アクティブマトリクスのいくつかの実施形態において、各列内の全てのピクセルのアドレス電極108は、同じ列電極に接続され得、各行内の全てのピクセルのドライバ電極106は、同じ行電極に接続され得る。行電極は、行ドライバに接続され得、それは、選択された行内の全てのピクセル100の非線形要素120をアクティブ化するために十分な電圧を選択された行電極に印加することによって、ピクセルの1つ以上の行を選択し得る。列電極は、列ドライバに接続され得、それは、選択された(アクティブ化された)ピクセルのアドレス電極106に、ピクセルを所望の光学状態に駆動するために好適な電圧をかけ得る。アドレス電極108に印加される電圧は、ピクセルのフロントプレート電極102に印加される電圧(例えば、おおよそゼロボルトの電圧)に相対的であり得る。いくつかの実施形態において、アクティブマトリクス内の全てのピクセルのフロントプレート電極102は、共通電極に結合され得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、アクティブマトリクスのピクセル100は、行毎様式で書き込まれ得る。例えば、ピクセルの行が、行ドライバによって選択され得、ピクセルの行に関する所望の光学状態に対応する電圧が、列ドライバによってピクセルに印加され得る。「ラインアドレス時間」として公知の事前選択された間隙の後、選択された行は、選択解除され得、別の行が、選択され得、列ドライバ上の電圧が、変更され得、したがって、ディスプレイの別の行が、書き込まれる。
【0075】
図2は、本明細書に提示される主題による正面電極102と背面電極104との間に配置された電気光学結像層110の回路モデルを示す。抵抗器202およびコンデンサ204は、任意の接着剤層を含む電気光学結像層110、正面電極102、および背面電極104の抵抗および静電容量を表し得る。抵抗器212およびコンデンサ214は、ラミネーション接着剤層の抵抗および静電容量を表し得る。コンデンサ216は、正面電極102と背面電極104との間に形成され得る静電容量、例えば、結像層とラミネーション接着剤層との間、および/またはラミネーション接着剤層とバックプレーン電極との間の界面等、層間の界面接触エリアを表し得る。ピクセルの結像フィルム110を横断する電圧Viは、ピクセルの残留電圧を含み得る。
【0076】
電気光学媒体を表す別の図では、ここで
図3Aおよび
図3Bを参照すると、V
1は、インクの内相を横断する電圧を表し、V
2は、外相を横断する電圧を表し、V
3は、接着剤および電極の界面層を横断する電圧を表す。静電容量および抵抗値は、モデルを実際の実験データに適合させることによって決定され得る。これらの静電容量および抵抗値に基づいて、
図3Bは、内部層、外部層、および界面層を横断する電圧を示す。示されるように、インクの内相は、光学キックバックを結果としてもたらす短絡中の駆動電圧の反転を示す。
【0077】
この光学キックバックを回避する一方法は、アクティブ駆動の終了時にピクセルを浮動させることである(すなわち、ピクセルに対応するTFTのゲート、ある事例では、そのソースの電源をオフにし、それによって、ピクセルを任意の伝導性経路から隔離する)。光学キックバックを回避することは、極端な暗色/黒色および白色状態のために有益であり得る。何故なら、これらの光学レール(例えば、電気光学媒体の2つの極端な光学状態、すなわち、典型的に、黒色および白色)が、ディスプレイの達成可能な動的範囲、したがって、ディスプレイの基本的な光学品質に影響を及ぼすからである。
図4は、試験ガラスを用いたアクティブ駆動後の短絡(a)および浮動(b)に関する光学効果および残留電圧減衰を図示する。ここで
図5を参照すると、アクティブ駆動が光学キックバックの問題に対処した後、浮動している間、(
図5における定常状態の残留電圧によって測定されるような)電気光学媒体中の残存電荷の蓄積は、高く、可能性として、ディスプレイに損傷を与え得る。これが、区画化されたディスプレイおよびアクティブマトリクスディスプレイの両方における典型的な駆動において、短絡が残存電荷の蓄積を減らすためにアクティブ駆動後に使用され得る理由である。
【0078】
実践では、上で説明される分極効果に起因して電気泳動材料内に蓄積される電荷は、例えば、駆動シーケンスの最後のフレームの電圧レベルを減らすことによって、軽減され、残留電圧の影響を減らし得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、N個のフレームを伴って印加された駆動波形V(k)による残留電圧における変化は、
ΔVrem=Voffset+Σk=1~NV(k)×b(N-k+1)(1)
として予測され得、式中、残留電圧における変化ΔVremは、オフセット電圧Voffsetと駆動波形の各フレームによって寄与される残留電圧の合計との合計であり、オフセットVoffsetは、ゲート電圧の変化およびTFTの寄生静電容量に起因して追加される電圧である。実践では、駆動波形の各フレームは、残留電圧係数bによって決定付けられるようなある量の残留電圧に寄与し、ある事例では、残留電圧係数bは、駆動の最後のフレームに関して最高値である。残留電圧係数bは、実験的に決定され得るか、または太田回路モデル等のモデルを使用して数学的に計算され得る。
【0080】
ここで
図6を参照すると、複数のランダム波形を使用して、式(1)の線形残留電圧モデルをアクティブマトリクスディスプレイ(例えば、電気泳動ディスプレイ)上の測定された残留電圧変化に適合させることによって決定される例示的残留電圧係数曲線が、ここで図示される。
図6が示すように、最後のフレームは、インクスタックの分極に最高レベルまで寄与し、先のフレーム(b(k>1))より10倍高い残留電圧係数(b(1))を結果としてもたらす。
【0081】
実践では、駆動シーケンス、または駆動スキーム、または駆動波形の最後のフレームの電圧振幅を正しいレベルまで調節することは、生成される残留電荷または電圧の低減を結果としてもたらし得る。ここで
図7を参照すると、異なる最後のフレームの電圧振幅を伴う8つの波形が、ディスプレイに印加される。具体的に、波形1は、先のフレームと同じ電圧を有する最後のフレームを示し、対照的に、波形6は、先のフレームと比較して、より低い電圧を有する最後のフレームを示す。結果として生じる残留電圧値が、
図8に提示されており、波形6(すなわち、絶対値においておおよそ4.2ボルト)が、波形1のもの(すなわち、絶対値においておおよそ5.2ボルト)と比較して、生成される残留電圧の低減を結果としてもたらした。一般に、より良好な光学状態を達成し、蓄積される残留電圧も減らすために、かつ本明細書に提示される動作原理を例証する目的のために、白色-白色遷移が、例として、ここでは使用され、負の電圧が、ディスプレイピクセルを白色に駆動する。
ΔV
rem,new≧ΔV
rem,old (2)
L
new≧L
old (3)
式中、新しい波形を印加することに起因する残留電圧における変化ΔV
rem,newは、古い波形を印加することに起因する残留電圧における変化ΔV
rem,oldより大きいか、または等しいが、負の電圧がディスプレイピクセルを駆動するために使用され、結果として生じる残留電圧も同様に値において負である白色-白色遷移が、ここで議論されており、従って、ΔV
rem,new≧ΔV
rem,oldは、より少ない残留電圧が新しい波形によって生成されるので、新しい波形に起因する残留電圧における変化が、古い波形が印加される場合より負ではないことを意味することに留意されたい。
【0082】
さらに、式(2)が、式(1)の表現において表される場合、
Σk=1~NV(k)×b(N-k+1+Δk)+Vlow×b(1+Δk)≧Σk=1~NV(k)×b(N-k+1)
→Vlow≧Vlow
*=[1/b(1+Δk)]×Σk=1~NV(k)×[b(N-k+1)-b(N-k+1+Δk)] (4)
これは、Δk個のフレームだけシフトされる波形の終了時の低電圧Vlowが、大きさにおいて、式(4)において定義されるようなVlow
*以下である必要がある一方、新しい波形(Lnew)から生じるディスプレイピクセルの明度が、より小さい残留電圧コストで強化された明度を達成するために、古い波形(Lold)のそれより白いか、またはそれと同等である必要があることを意味する。
【0083】
いくつかの実施形態において、光学キックバックは、アクティブ駆動の終了時に短絡させるのではなく、代わりに、光学キックバックを結果として生じさせず、残存電荷の過剰な蓄積を回避するために十分小さい駆動パルスと同じ極性のより低い電圧まで、ディスプレイピクセルに印加される電圧を引くことによって回避されることができる。本明細書に説明される技法は、特に、着色顔料粒子のタイプのみを組み込む電気泳動媒体を有する電気光学ディスプレイに関して有効であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に説明される方法は、荷電黒色顔料粒子および荷電白色顔料粒子のみを組み込む電気泳動媒体を有する白黒電気光学ディスプレイに対して実行される。
【0084】
図9Aおよび
図9Bは、それぞれ、ディスプレイピクセルを黒色状態および白色状態に駆動するための駆動波形を図示する。図示される成形された波形パルスは、例証目的のみのために本明細書に提示される。当業者は、本明細書内の動作原理が、他の形状の波形に適用され得、他の光学遷移のために適用され得ることを理解するであろう。
【0085】
いくつかの実施形態において、光学キックバックおよび残存電荷を最小化するために波形を構築することにおいて、白色光学レールが到達されるように、
wV
H≦-10V、
wt
H>20ms(
wV
H,
wt
H)対が選択され得る。
図10Aは、電気光学媒体を横断する電圧と、結果として生じる明度の定義を図示し、
図10Bは、電圧
wV
Hおよび時間
wt
Hの異なる組み合わせに関する駆動終了時の明度L
*を図示する。
wV
Hおよび
wt
Hの組み合わせが、光学白色レールの必要とされる明度を達成するために選択されることができる。
bV
H≧10Vおよび
bt
H>20msを使用する同じ方法論が、ディスプレイピクセルを黒色光学レールに駆動するために適用されることができる。第2に、
wt
L>20msに関して0>
wV
L≧-10Vの範囲内の値は、光学キックバックが無視できるほどであるか、または、容認可能なレベルまでであるように選択されることができる。最小の
wV
Lは、ディスプレイモジュールへの残留電圧の影響を低下させるように選択され得る。さらに、更新時間は、
図10Bによって示唆されるように、
wV
Hを増加させ、
wt
Hを減らすことによってさらに減らされ、
wt
Lに関して必要とされる余分な時間を補償することができる。当業者は、方法がディスプレイピクセルを黒色光学状態に駆動するために採択され得ることを理解するであろう。
【0086】
いくつかの実施形態において、
wV
Hおよび
wt
Hに関する値は、
図11A、
図11B、および
図11Cに示されるプロットに基づいて選択されることができ、それらは、所望の光学レールを達成するための
wV
Hおよび
wt
Hの値間のトレードオフを例証することに役立つ。いくつかの実施形態において、より高い
wV
Hが、インク速度を増加させ、所望の光学レールを達成するための時間
wt
Hを減らすことができ、その逆の場合も同じである。
wV
Hおよび
wt
Hを選択することは、所望の最大更新時間および所望の白色状態レール要件に基づいて決定され得る。ここで
図11Cを参照すると、例として、
wV
H=15Vかつ
wt
H=247.1msを伴う、白色-白色駆動に関して、
wV
H=5Vを選択することは、ディスプレイピクセルが駆動電圧を減らすことなく駆動波形の終了時に0Vまで短絡される駆動スキームにわたって、光学キックバックを0.6L
*を上回って減らすことができる。
【0087】
0<
bV
L≦10Vの範囲内の
bV
Lおよび
bt
L>20msを伴う同じ方法論が、黒色レールに関して採用されることができる。さらに、最小化された
wt
L>20msおよび
bt
L>20msは、モジュールへの残存電荷の蓄積が最小化されるように選択され得る。最小の
wt
Lおよび
bt
Lが、ここでは、合計波形更新時間への影響を減らすために、この特別な波形の更新に関して所望される。いくつかの実施形態において、
wt
Lに関する値は、
図12に示されるプロットに基づいて選択されることができる。
図12は、異なる
wt
L時間に関する(定常状態の残留電圧によって測定されるような)電気光学媒体中の残存電荷の蓄積を図示する。一実施形態において、
wt
L=141.2msを選択することは、残存電荷の蓄積を最小化することと波形の全体的な更新時間を最小化することとの間で、良好なトレードオフが達成されることを可能にする。
【0088】
いくつかの実施形態において、選択された(wVL,wtL)対は、(wVH,wtH)対によって決定付けられる通常のパルス駆動の終了時、所与のインクプラットフォームに対して固定され得る。同様に、選択された(bVL,btL)対は、(bVH,btH)対によって決定付けられる通常のパルス駆動の終了時、所与のインクプラットフォームに対して固定され得る。この構成は、(前述の実装の節において与えられたような)レール電圧変調を使用するために柔軟性を提供し、アクティブマトリクスディスプレイを用いた所望の低電圧設定を達成する。加えて、V.msにおけるインパルス電位は、駆動波形のDC平衡を維持するための尺度として使用されることができ、このインパルス電位は、以下の通りに定義され得る。
インパルス電位V.ms(白色への駆動パルス)=wVH×wtH+wVL×wtL
インパルス電位V.ms(黒色への駆動パルス)=bVH×btH+bVL×btL
【0089】
最後に、駆動波形の完了後、ディスプレイピクセルを電気的浮動状態に保つことが選定され得る。
【0090】
実践では、本明細書に開示される主題は、
図13に図示されるように実装され得る。いくつかの実施形態において、
wt
H、
wt
L、
bt
H、および
bt
L持続時間に関する
wV
H、
wV
L、
bV
H、および
bV
Lの選択は、それぞれ、スイッチSW1、SW2、SW3、およびSW4によって、制御され得る。さらに、浮動が、全てのスイッチ(SW1-SW4)を開状態に設定することによって、駆動の終了時に達成され得る。例えば、アクティブマトリクスディスプレイに関して、例示的波形は、米国特許第8,125,501号(本明細書にその全体として組み込まれる)において説明されるように、電圧変調された駆動システムを使用して、
wt
H、
wt
L、
bt
H、および
bt
Lを伴う
wt
H、
wt
L、
bt
H、および
bt
L持続時間に関する
wV
H、
wV
L、
bV
H、および
bV
L値が、フレーム時間の数倍であるように設定することによって実装され得る。次いで、低電圧駆動の終了時の浮動は、VCOM_PANELライン上の高インピーダンススイッチを使用し、共通電極を浮動させることによって達成されることができる。
【0091】
別の実施形態において、アクティブマトリクスディスプレイに関して、波形は、
図14に示されるように、供給レール電圧(すなわち、VPOSおよびVNEG)を変調させることによって、フレーム時間の数倍であるような
wt
H、
wt
L、
bt
H、および
bt
Lを伴う
wt
H、
wt
L、
bt
H、および
bt
L持続時間に関して、
wV
H、
wV
L、
bV
H、および
bV
L値を選択することによって実装され得る。この構成では、中間グレートーンへの(黒色および白色以外への)遷移は、i)V
LがVPOSおよびVNEGに対して変調されているフレームにおいてゼロ駆動を選択するように、または、ii)駆動の終了時のより低い電圧を考慮して中間グレートーンを調整するように強制されるであろう。低電圧駆動の終了時における浮動は、VCOM_PANELライン上の高インピーダンススイッチを使用し、共通電極を浮動させることによって達成され得る。
【0092】
ここで
図15A-
図15Cを参照すると、これらは、駆動の終了時に短絡する現存のデフォルト方法と比較して、光学特性および残存電荷の蓄積の性能の観点において、結果として生じる成形された波形を示す。特に、
図15Aは、本明細書に提示される波形を使用した電気光学媒体を横断する電圧および光学トレースを図示する。
図15Bは、アクティブ駆動後に浮動を伴う電気光学媒体を横断する電圧および光学トレースを図示する。
図15Cは、アクティブ駆動後に短絡を伴う電気光学媒体を横断する電圧および光学トレースを図示する。
【0093】
図15Dは、DC平衡白色-白色遷移の残存電荷の蓄積を図示する。本結果は、本明細書に提示される提案された方法が、適切に最適化されるとき、短絡のデフォルト方法と比較して、光学キックバックを回避するだけではなく、残存電荷の蓄積も減らすことを示す。加えて、
図15Bに示され、米国特許第7,034,783号(本明細書にその全体として組み込まれる)によって提案されるように、駆動直後の浮動は、光学キックバックを回避する一方、残存電荷の蓄積に起因して、長期に及ぶ使用の後、可能性として、ディスプレイへの有害な影響を有するであろう。
【0094】
多数の変更および修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、上で説明される本発明の具体的実施形態に行われることができることが、当業者に明白となるであろう。故に、前述の説明の全体は、限定的意味ではなく、例証的意味で解釈されるべきである。
【国際調査報告】