(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】タンパク質のグリコプロファイリング用の標準
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240816BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
G01N33/53 V
G01N33/53 U
C07K14/47 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507939
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2022072138
(87)【国際公開番号】W WO2023012352
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524048829
【氏名又は名称】グリカノスティクス エス.アール.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】トカシュ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ベルトク トマーシュ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA53
4H045CA40
4H045DA86
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、糖タンパク質用の標準としてネオ糖タンパク質を使用することによって、シグナルを相対化する方法に関し、ここで該ネオ糖タンパク質は、グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチンを通して結合したストレプトアビジン分子を含み、かつ該ネオ糖タンパク質の対応する使用に関する。それによって、特定のグリカン構造(A)が関心対象のタンパク質上に存在するかどうかの表明が可能である。がん、自己免疫疾患、または炎症性疾患などの疾患の診断における応用が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を相対化するための方法であって、
該関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナルを、標準として働くネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)と比較する工程
を含み、
該ネオ糖タンパク質が、該グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチン-ストレプトアビジン相互作用を通して結合したストレプトアビジン分子を含み、
相対化することが、シグナル(1)を標準からのシグナル(2)と比較することを含み、それによって、シグナル(2)が、シグナル(1)によって得られた情報を関連付けることを可能にし、
それによって、該シグナル(1)を該シグナル(2)に対して相対化する、またはその逆である、
方法。
【請求項2】
相対化することが、
前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)と比較すること
を含み、
(i)シグナル(1)がシグナル(2)よりも低い場合には、該疑われるグリカン構造(A)が該関心対象のタンパク質上に存在しないことを示し、または
(ii)シグナル(1)がシグナル(2)と等しいかもしくはそれよりも高い場合には、該疑われるグリカン構造(A)が該関心対象のタンパク質上に存在することを示す、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
相対化することが、
前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)の濃度系列を決定することから得られたシグナル(2)と比較すること
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記濃度系列が、
それよりも上で前記グリカン構造(A)が前記関心対象のタンパク質上に存在することが公知である、予め決定された閾値濃度
に対応する濃度を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を実際に含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチンを通して結合したストレプトアビジン分子を含む、標準として働くネオ糖タンパク質の、
関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、該ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)に対して相対化するための
使用であって、
該ネオ糖タンパク質が、該グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチン-ストレプトアビジン相互作用を通して結合したストレプトアビジン分子を含み、
相対化することが、シグナル(1)を標準からのシグナル(2)と比較することを含み、それによって、シグナル(2)が、シグナル(1)によって得られた情報を関連付けることを可能にする、
使用。
【請求項6】
相対化することが、
前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)と比較すること
を含み、
(i)シグナル(1)がシグナル(2)よりも低い場合には、該疑われるグリカン構造(A)が該関心対象のタンパク質上に存在しないことを示し、または
(ii)シグナル(1)がシグナル(2)と等しいかもしくはそれよりも高い場合には、該疑われるグリカン構造(A)が該関心対象のタンパク質上に存在することを示す、
請求項5記載の使用。
【請求項7】
相対化することが、
前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)の濃度系列を決定することから得られたシグナル(2)と比較すること
を含む、請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記濃度系列が、
それよりも上で前記グリカン構造(A)が前記関心対象のタンパク質上に存在することが公知である、予め決定された閾値濃度
に対応する濃度を含む、請求項7記載の使用。
【請求項9】
前記シグナルが、シグナル強度である、請求項1~8のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項10】
シグナル(1)およびシグナル(2)が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)、磁性ELLA(MELLA)、好ましくは、ELLAまたはMELLAによって得られる、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項11】
前記グリカン構造(A)が、コアフコース、アンテナ型フコース、Fucα1-6GlcNAc-N-Asn含有N結合型オリゴ糖、Fucα1-6/3GlcNAc、α-L-Fuc、Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、Fucα1-2Gal、Fucα1-6GlcNAc、Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc、分枝N結合型六糖、Manα1-3Man、α-D-Man、(GlcNAcβ1-4)
2-4、Galβ1-4GlcNAc、GlcNAcα1-4Galβ1-4GlcNAc、(GlcNAcβ1-4)
2-5、Neu5Ac(シアル酸)、Galβ1-3GalNAc-セリン/スレオニン、Galα1-3GalNAc、Galβ1-6Gal、Galβ1-4GlcNAc、Galβ1-3GalNAc、GalNAcα1-3GalNAc、GalNAcα1-3Gal、GalNAcα/β1-3/4Gal、α-GalNAc、GalNAcβ1-4Gal、GalNAcα1-3(Fucα1-2)Gal、GalNAcα1-2Gal、GalNAcα1-3GalNAc、GalNAcβ1-3/4Gal、GalNAc-Ser/Thr(Tn抗原)、Galβ1-3GalNAc-Ser/Thr(T抗原)、GalNAcβ1-4GlcNAc(LacdiNAc)、α-2,3Neu5Ac(α2-3結合型シアル酸)、α-2,6Neu5Ac(α2-6結合型シアル酸)、α-2,8Neu5Ac(α2-8結合型シアル酸)、シアル酸(α-2,3Neu5Ac、α-2,6Neu5Ac、またはα-2,8Neu5Ac)、Neu5Acα4/9-O-Ac-Neu5Ac、Neu5Acα2-3Galβ1-4Glc/GlcNAc、Neu5Acα2-6Gal/GalNAc、N結合型バイアンテナ型、N結合型トリ/テトラアンテナ型、分枝β1-6GlcNAc、Galα1-3(Fucα1-2)Galβ1-3/4GlcNAc、Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc、NeuAcα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc、Fucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc、Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、NeuAcα2-3Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、高マンノース、シアリルルイス
a(シアリルLe
a)抗原、シアリルルイス
x(シアリルLe
x)抗原、ルイス
x(Le
x)抗原、シアリルTn抗原、シアリルT抗原、ルイス
y(Le
y)抗原、硫酸化コア1グリカン、Tn抗原、T抗原、コア2グリカン、ルイス
a(Le
a)抗原、(GlcNAcβ1-4)
n、β-D-GlcNAc、GalNAc、Gal-GlcNAc、GlcNAc、Galα1-3Gal、Galβ1-3GalNAc、α-Gal、α-GalNAc、(GlcNAc)
n、分枝(LacNAc)
nからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項12】
前記関心対象のタンパク質が、がんバイオマーカータンパク質、自己免疫疾患バイオマーカータンパク質、または炎症性疾患バイオマーカータンパク質である、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項13】
前記がんバイオマーカータンパク質が、卵巣がんバイオマーカータンパク質、乳がんバイオマーカータンパク質、大腸がんバイオマーカータンパク質、膵臓がんバイオマーカータンパク質、前立腺がんバイオマーカータンパク質、甲状腺がんバイオマーカータンパク質、肝臓がんバイオマーカータンパク質、肺がんバイオマーカータンパク質、胃がんバイオマーカータンパク質、精巣がんバイオマーカータンパク質、または膀胱がんバイオマーカータンパク質である、請求項13記載の方法または使用。
【請求項14】
前記前立腺がんバイオマーカータンパク質が、β-ハプトグロビン、TIMP-1、PSA、fPSA、またはtPSAである、請求項14記載の方法または使用。
【請求項15】
前記グリカン構造(A)の存在が、がんを示す、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、糖タンパク質用の標準としてネオ糖タンパク質を使用することによって、シグナルを相対化する方法であって、該ネオ糖タンパク質が、グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの、好ましくは4つの予め定義されたグリカン決定基にビオチンを通して結合したストレプトアビジン分子を含む方法、および該ネオ糖タンパク質の対応する使用に関する。それによって、特定のグリカン構造(A)が関心対象のタンパク質上に存在するかどうかの表明が可能である。がん、自己免疫疾患、または炎症性疾患などの疾患の診断における応用が開示される。
【背景技術】
【0002】
背景
グリカンは、様々な異なるタンパク質上に存在し、そこで、タンパク質の輸送、安定性、およびフォールディングに影響を与え、最終的にその生化学的特性および生物物理学的特性を変化させる。さらに、グリカンは、タンパク質分解パターンを媒介するか、またはリガンド-受容体相互作用、発癌性シグナル伝達、免疫認識、遊走、ならびに細胞-細胞および細胞-マトリックスの接着の両方を直接媒介することができる。そのため、特定のグリカンは、腫瘍細胞に対して選択的な利点を発揮し得る。したがって、特定のグリカンの存在、または特定のタンパク質上の特定のグリカンの存在は、例えば、がんの診断用の、バイオマーカーとして使用され得る。
【0003】
グリカン構造は、特定のグリカン構造に特異的に結合する結合分子を用いることによって、解析することができる。グリカン構造に特異的な抗体に加えて、レクチンもまた使用することができる。レクチンは、他の分子の一部である糖類に非常に特異的である、糖質結合タンパク質である。これらの結合分子を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)、磁性ELLA(MELLA)などのアッセイにおいて、特定のグリカン構造の有無を解析するために用いることができる。
【0004】
しかし、これらの方法を適用することによって得られるシグナルは、特定のグリカン構造が存在するか否かの妥当な表明を可能にするため、または試料においてそれを定量するために、(陽性)対照または標準によって相対化する必要がある。市販の糖タンパク質標準は、関心対象のグリカン構造と同一ではない1つのグリカン構造のみを含有し、すなわち、これらを、疾患に関連するグリカン構造が関心対象のタンパク質上に存在するか否かを評価するために用いることはできない。このように、特定のグリカン構造を含むタンパク質標準は、容易に入手可能ではない。そのような対照を得る1つの可能性は、関心対象のグリカン構造を関心対象のタンパク質にコンジュゲートすることである。しかし、これは、複雑で、大きな労力を要し、かつ高価である。さらに、関心対象のグリカン構造および関心対象のタンパク質のあらゆる新しい組み合わせについて、繰り返さなければならない。
【0005】
したがって、信頼でき、安価で、かつ汎用性がある糖タンパク質標準について、継続的な必要性がある。本発明は、この必要性に対処することを目的とする。
【発明の概要】
【0006】
この必要性は、特許請求の範囲および本明細書に記載される態様において定義されるような主題によって解決される。
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)の決定から得られたシグナルを相対化するために、そのような修飾された関心対象の(糖)タンパク質を提供する必要はなく、代わりにネオ糖タンパク質を標準として使用できることを見出した。この標準は、ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)を提供する。ネオ糖タンパク質は、前記グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチンを通して結合したストレプトアビジン分子を含む。したがって、ストレプトアビジンは、それ自体が相対化するための標準として働くネオ糖タンパク質用のスキャフォールドとして見ることができる。実施例に示されるように、ビオチン化グリカン構造(A)が負荷されたストレプトアビジンを、標準として使用することができる。
【0008】
したがって、本発明は、関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を相対化するための方法であって、該関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナルを、ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)と比較する工程を含み、該ネオ糖タンパク質が、該グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチンを通して結合したストレプトアビジン分子を含み、それによって、該シグナル(1)を該シグナル(2)に対して相対化する、またはその逆である、方法に関する。
【0009】
また、本発明は、関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を相対化するための方法であって、該関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナルを、標準として働くネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)と比較する工程を含み、該ネオ糖タンパク質が、該グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチン-ストレプトアビジン相互作用を通して結合したストレプトアビジン分子を含み、相対化することが、シグナル(1)を標準からのシグナル(2)と比較する工程を含み、それによって、シグナル(2)が、シグナル(1)によって得られた情報を関連付けることを可能にし、それによって、該シグナル(1)を該シグナル(2)に対して相対化する、またはその逆である、方法に関する。
【0010】
本発明は、さらに、
関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を実際に含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチンを通して結合したストレプトアビジン分子を含む、ネオ糖タンパク質の、
関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、該ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)に対して相対化するための
使用であって、
該ネオ糖タンパク質が、該グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にストレプトアビジン結合分子を通して結合したストレプトアビジン分子を含む、
使用に関する。
【0011】
また、本発明は、
関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を実際に含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチンを通して結合したストレプトアビジン分子を含む、標準として働くネオ糖タンパク質の、
関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、該ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)に対して相対化するための
使用であって、
該ネオ糖タンパク質が、該グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチン-ストレプトアビジン相互作用を通して結合したストレプトアビジン分子を含み、相対化することが、シグナル(1)を標準からのシグナル(2)と比較することを含み、それによって、シグナル(2)が、シグナル(1)によって得られた情報を関連付けることを可能にする、
使用に関する。
【0012】
相対化することは、シグナル(1)を標準からのシグナル(2)と比較することを含み得、それによって、シグナル(2)が、シグナル(1)によって得られた情報を関連付けることを可能にする。有利なことに、そのような比較で、シグナル(1)は、前記シグナル(2)に対して相対化され、またはその逆である。
【0013】
相対化することは、前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナルを、前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)と比較することを含み得、(i)シグナル(1)がシグナル(2)よりも低い場合には、該疑われるグリカン構造(A)が該関心対象のタンパク質上に存在しないことを示し、または(ii)シグナル(1)がシグナル(2)と等しいかもしくはそれよりも高い場合には、該疑われるグリカン構造(A)が該関心対象のタンパク質上に存在することを示す。
【0014】
相対化することは、前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)の濃度系列を決定することから得られたシグナル(2)と比較することをさらに含み得る。
【0015】
濃度系列は、それよりも上で前記グリカン構造(A)が前記関心対象のタンパク質上に存在することが公知である予め決定された閾値濃度に、対応する濃度を含み得る。
【0016】
シグナルは、シグナル強度であり得る。
【0017】
シグナル(1)およびシグナル(2)は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)、磁性ELLA(MELLA)、好ましくは、ELLAまたはMELLAによって得られ得る。
【0018】
グリカン構造(A)は、コアフコース、アンテナ型フコース、Fucα1-6GlcNAc-N-Asn含有N結合型オリゴ糖、Fucα1-6/3GlcNAc、α-L-Fuc、Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、Fucα1-2Gal、Fucα1-6GlcNAc、Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc、分枝N結合型六糖、Manα1-3Man、α-D-Man、(GlcNAcβ1-4)2-4、Galβ1-4GlcNAc、GlcNAcα1-4Galβ1-4GlcNAc、(GlcNAcβ1-4)2-5、Neu5Ac(シアル酸)、Galβ1-3GalNAc-セリン/スレオニン、Galα1-3GalNAc、Galβ1-6Gal、Galβ1-4GlcNAc、Galβ1-3GalNAc、GalNAcα1-3GalNAc、GalNAcα1-3Gal、GalNAcα/β1-3/4Gal、α-GalNAc、GalNAcβ1-4Gal、GalNAcα1-3(Fucα1-2)Gal、GalNAcα1-2Gal、GalNAcα1-3GalNAc、GalNAcβ1-3/4Gal、GalNAc-Ser/Thr(Tn抗原)、Galβ1-3GalNAc-Ser/Thr(T抗原)、GalNAcβ1-4GlcNAc(LacdiNAc)、α-2,3Neu5Ac(α2-3結合型シアル酸)、α-2,6Neu5Ac(α2-6結合型シアル酸)、α-2,8Neu5Ac(α2-8結合型シアル酸)、シアル酸(α-2,3Neu5Ac、α-2,6Neu5Ac、またはα-2,8Neu5Ac)、Neu5Acα4/9-O-Ac-Neu5Ac、Neu5Acα2-3Galβ1-4Glc/GlcNAc、Neu5Acα2-6Gal/GalNAc、N結合型バイアンテナ型、N結合型トリ/テトラアンテナ型、分枝β1-6GlcNAc、Galα1-3(Fucα1-2)Galβ1-3/4GlcNAc、Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc、NeuAcα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc、Fucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc、Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、NeuAcα2-3Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、高マンノース、シアリルルイスa(シアリルLea)抗原、シアリルルイスx(シアリルLex)抗原、ルイスx(Lex)抗原、シアリルTn抗原、シアリルT抗原、ルイスy(Ley)抗原、硫酸化コア1グリカン、Tn抗原、T抗原、コア2グリカン、ルイスa(Lea)抗原、(GlcNAcβ1-4)n、β-D-GlcNAc、GalNAc、Gal-GlcNAc、GlcNAc、Galα1-3Gal、Galβ1-3GalNAc、α-Gal、α-GalNAc、(GlcNAc)n、分枝(LacNAc)nからなる群より選択され得る。
【0019】
関心対象のタンパク質は、がんバイオマーカータンパク質、自己免疫疾患バイオマーカータンパク質、または炎症性疾患バイオマーカータンパク質であり得る。前記がんバイオマーカータンパク質は、卵巣がんバイオマーカータンパク質、乳がんバイオマーカータンパク質、大腸がんバイオマーカータンパク質、膵臓がんバイオマーカータンパク質、前立腺がんバイオマーカータンパク質、甲状腺がんバイオマーカータンパク質、肝臓がんバイオマーカータンパク質、肺がんバイオマーカータンパク質、胃がんバイオマーカータンパク質、精巣がんバイオマーカータンパク質、または膀胱がんバイオマーカータンパク質であり得る。前記前立腺がんバイオマーカータンパク質は、β-ハプトグロビン、TIMP-1、PSA、fPSA、またはtPSAであり得る。
【0020】
前記グリカン構造(A)の存在は、がんを示し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、非限定的な実施例および添付の図面と併せて考慮すると、詳細な説明を参照してより良く理解されるであろう。
【0022】
【
図1】本発明の例示的な態様の例示的なスキームを図示する。MAA-IIレクチンおよび任意でBSAなどのブロッキング剤を、ELISAプレートウェルの底に物理的に吸着させる。抗ストレプトアビジン抗体およびセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)が共固定化された磁性粒子を用いて、分析物(この場合はグリカン-ストレプトアビジンバイオコンジュゲート)を選択的に探り出し、その後、レクチン-バイオ認識(biorecognition)界面に適用する。光シグナルを、着色生成物2,3-ジアミノフェナジンを形成するようにo-フェニレンジアミンおよび過酸化水素を用いて生成させ、一般的なELISAリーダーによって検出する(例えば、λ=450~490 nm)。
【
図2】
図2Aは、ストレプトアビジン(左列)およびMAA-IIレクチン(右列)についてのpH調査中の勾配値を図示する。
図2Bは、CM5チップを用いたpH 4.0酢酸緩衝液中での3つの異なるリガンドの固定化を図示する、センサーグラムを示す。
【
図3】ストレプトアビジン修飾CM5チップ上での抗ストレプトアビジンAbのSCK(シングルサイクルカイネティクス)解析を図示する。
【
図4】(A)1つの部位上にプリズムを有する、むき出しのAu SPRチップ、それぞれ2Dおよび3Dマトリックスを作り出す、(B)11-メルカプトウンデカン酸の自己組織化単分子膜または(C)カルボキシメチル-デキストランによって修飾されたものを図示する。エバネッセント波の振幅は、指数関数的に減衰するため(赤矢印)、高濃度の負電荷、立体障害、および解離相中の再結合のより高い可能性を一緒に伴う3Dマトリックスは、サンドイッチ構成、すなわちMAA-II/ネオ糖タンパク質/Abの調製を観察するにはあまり適していなかった。
【
図5】各工程後の表面の概略図を含む、2D構成に用いたアッセイワークフロー(
図5A)、ならびにネオ糖タンパク質(グリココンジュゲート)捕捉および抗ストレプトアビジン抗体の結合解析のセンサーグラム(
図5B)を図示する。
【
図6】リンカー密度が(2D構成、すなわち、マトリックスに拡散障壁がない場合に)Au表面近傍および界面上で同じであるときの、平面表面(例えば、SPRチップ、A)上のモデル状況を図示する。しかし、状況は、球状界面(例えば、MNP、B)については異なる。成功した固定化およびネオ糖タンパク質との相互作用を示す、3つの試料のNTA解析(C)。
【
図7】非修飾MNP(濃い線)およびMNP+Ab(過剰の抗体を用いた場合、薄い線)のNTA解析を図示し、表面上に固定化された抗体によって引き起こされるピーク最大値の明らかな増大が観察された。
【
図8】約13 kDaのピーク(単一のストレプトアビジン単量体)について最高強度を示す、ネオ糖タンパク質(タンパク質標準)のMS分析を図示する。
【
図9-1】他のピーク(
図8と比較してより低い強度を有する)を示す、MS分析を図示する。(A);ビオチン化グリカンに対応する約1030 Daのピークは、純粋なストレプトアビジンを含む試料(B)においては検出できないが、すべての他の試料において、より低いグリカン/ストレプトアビジン比であっても、かつ脱塩手順後であっても存在し、これは、SPRを用いて既に確認された事実である、グリカンがストレプトアビジン上に存在することを意味する(C)。このピークの強度は、グリカン/ストレプトアビジン比の増大とともに増大する(D)。ELLBAを用いて、非コンジュゲートおよびビオチン化MAA-IIレクチンを用いた競合的構成において、飽和密度のグリカンを有するネオ糖タンパク質を調製するための最適な比を見出し(E)、1+5以上の比が最適であると判明した(F)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明を、以下に詳細に説明し、また、添付の実施例および図によってさらに例証する。
【0024】
利用可能である場合には、先行技術において使用される標準は、典型的には、関心対象のタンパク質上にあると疑われる(関心対象の)グリカン構造(A)で標識されている、関心対象のタンパク質である。したがって、先行技術における標準は、グリカン構造(A)を含む関心対象のタンパク質自体である。しかし、そのような標準を合成することは、複雑で、時間がかかり、かつ高価である。したがって、本発明は、関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造を決定することから得られたシグナルを相対化するための、信頼でき、安価で、かつ汎用性があるグリカン構造または糖タンパク質標準を提供することを目的とする。
【0025】
本発明者らは、驚くべきことに、関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)の決定から得られたシグナルを相対化するために、そのような修飾された関心対象の(糖)タンパク質を提供する必要はなく、代わりにネオ糖タンパク質を標準として使用できることを見出した。ネオ糖タンパク質上のグリカン構造(A)を決定することから得られたこのシグナル(2)により、シグナル(1)の相対化が可能になる。ネオ糖タンパク質は、前記グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチンを通して結合したストレプトアビジン分子を含む。したがって、ストレプトアビジンは、関心対象のグリカン構造(A)がそれにカップリングできる、ネオ糖タンパク質用のスキャフォールドとして見ることができる。
【0026】
実施例に示されるように、ビオチン化グリカン構造(A)が負荷されたストレプトアビジンを、標準として使用することができる。これは、タンパク質/ストレプトアビジンスキャフォールド上に4つのグリカンを有するネオ糖タンパク質を形成するように、最大で4つのビオチニル-グリカンに結合したストレプトアビジン分子からなる、本明細書に記載されるようなグリココンジュゲートまたは例示的なネオ糖タンパク質を開発する最初の研究である。同時に、本発明の概念により、ビオチン化グリカンを用いて、ストレプトアビジンの表面上に存在する定義されたグリカン構造(A)を有する任意の種類のネオ糖タンパク質を調製することが可能になる。次いで、(最大で)4つのグリカンを有するそのようなネオ糖タンパク質を、例えば、WO 2019/185515 A1に開示されるMELLA技術で、前記グリカン構造(A)を決定するためのタンパク質標準として使用してもよい。例示的な態様において、そのようなネオ糖タンパク質は、レクチンおよび抗ストレプトアビジン抗体に同時に、すなわち、サンドイッチ構成で結合して、光シグナルを提供することができ、これは、試料の解析からのシグナルを、(とりわけ)前立腺がん診断用のGlycanosticsのMELLAプロトコルを用いてそれに対して相対化することができる、シグナルであると考えられる(
図1)。
【0027】
したがって、本発明は、関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を相対化するための方法であって、該関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナルを、ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)と比較する工程を含み、該ネオ糖タンパク質が、該グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチンを通して結合したストレプトアビジン分子を含み、それによって、該シグナル(1)を該シグナル(2)に対して相対化する、またはその逆である、方法に関する。
【0028】
また、本発明は、関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を相対化するための方法であって、該関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナルを、標準として働くネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)と比較する工程を含み、該ネオ糖タンパク質が、該グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチン-ストレプトアビジン相互作用を通して結合したストレプトアビジン分子を含み、相対化することが、シグナル(1)を標準からのシグナル(2)と比較することを含み、それによって、シグナル(2)が、シグナル(1)によって得られた情報を関連付けることを可能にし、それによって、該シグナル(1)を該シグナル(2)に対して相対化する、またはその逆である、方法に関する。
【0029】
本発明は、さらに、
関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を実際に含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチンを通して結合したストレプトアビジン分子を含む、ネオ糖タンパク質の、
関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、該ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)に対して相対化するための
使用であって、
該ネオ糖タンパク質が、該グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にストレプトアビジン結合分子を通して結合したストレプトアビジン分子を含む、
使用に関する。
【0030】
また、本発明は、
関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を実際に含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチンを通して結合したストレプトアビジン分子を含む、標準として働くネオ糖タンパク質の、
関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、該ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)に対して相対化するための
使用であって、
該ネオ糖タンパク質が、該グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチン-ストレプトアビジン相互作用を通して結合したストレプトアビジン分子を含み、相対化することが、シグナル(1)を標準からのシグナル(2)と比較することを含み、それによって、シグナル(2)が、シグナル(1)によって得られた情報を関連付けることを可能にする、
使用に関する。
【0031】
「相対化すること」は、1つのシグナル(1)を別のシグナル(2)と比較し、それによって、シグナル(1)がいかにシグナル(2)に関連するかについての情報を提供するプロセスを説明することとして見ることができる。シグナル(2)は、本発明の文脈において標準として見ることができる。換言すると、シグナル(2)は、シグナル(1)によって得られた情報、例えば、シグナル強度を、状況付けるかまたは関連付けることを可能にする。したがって、シグナル(2)は、陽性対照として働き得、それによって、シグナル(1)を陽性とみなすために必要とされるシグナルについての情報を提供し得る。代替的にまたは追加的に、シグナル(2)は、陽性対照であるだけではなく、濃度系列の結果であってもよく、それによって、シグナル(1)を異なる濃度での一連のシグナル(2)と比較(相対化)することによる、グリカン構造(A)の量の定量化を可能にする。この文脈において、本発明の方法および使用はまた、関心対象のタンパク質のグリコプロファイリングとして説明することができる。
【0032】
上記と一致して、「相対化すること」は、シグナル(1)を標準からのシグナル(2)と比較することを含み得、それによって、シグナル(2)は、シグナル(1)によって得られた情報を関連付けることを可能にする。有利なことに、そのような比較で、シグナル(1)は、前記シグナル(2)に対して相対化され、またはその逆である。
【0033】
「タンパク質のグリコプロファイル」という用語は、関心対象のタンパク質の糖質構造、例えば、共有結合した糖質の組成および/または構造、例えば、共有結合した糖質の量、存在、または不在を意味する。「グリコプロファイリング」という用語は、関心対象のタンパク質上の糖質構造(例えば、共有結合した糖質の組成および/または構造、例えば、共有結合した糖質の量、存在、または不在)を決定することを意味する。
【0034】
シグナル(1)およびシグナル(2)によって提供される情報は、グリカン構造(A)が関心対象のタンパク質上に存在するか否かの情報を提供することができる。この目的で、シグナル(1)(前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られた)を、標準/シグナル(2)(前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られた)と比較(相対化)する。シグナル(1)がシグナル(2)と等しいかまたはそれよりも高い場合、前記グリカン構造(A)が関心対象のタンパク質上に存在するとみなされることを示す。したがって、相対化することは、前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)と比較することを含み得、シグナル(1)がシグナル(2)よりも低い場合には、該疑われるグリカン構造(A)が該関心対象のタンパク質上に存在しないことを示す。
【0035】
さもなければ、シグナル(1)がシグナル(2)よりも低い場合には、前記グリカン構造(A)が関心対象のタンパク質上に存在しないとみなされることを示す。したがって、相対化することは、前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)と比較することを含み得、シグナル(1)がシグナル(2)と等しいかまたはそれよりも高い場合には、該疑われるグリカン構造(A)が該関心対象のタンパク質上に存在することを示す。
【0036】
しかし、本発明の方法および使用は、定性的な表明に限定されない。対照的に、シグナル(1)を、一連の異なる濃度のネオ糖タンパク質で決定される一連のシグナル(2)と比較する場合には、試料中の関心対象のタンパク質上にあると疑われるグリカン構造(A)の量の定量的解析が可能になる。したがって、(本発明の方法および使用において)相対化することは、前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)の濃度系列を決定することから得られたシグナル(2)と比較することを含み得る。
【0037】
本明細書に記載されるような「濃度系列」は、2つ以上の異なる濃度のネオ糖タンパク質でグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)のデータセットに関する。データセットは、シグナル(強度)(1)から試料中のグリカン構造(A)の実際のレベルまたは量への結論を可能にする、例えば線形回帰による、標準曲線を提供または計算するために用いられ得る。濃度系列はまた、グリカン構造(A)が関心対象のタンパク質上に存在すると考えられるシグナル(強度)を提供する、予め決定された閾値を設定することを可能にし得る。異なるように言うと、濃度系列は、いかなるネオ糖タンパク質も(濃度系列において)解析されるべき試料に添加されていない、データポイントのベースライン(閾値)を設定するために用いられ得る。したがって、濃度系列はまた、それよりも上で前記グリカン構造(A)が前記関心対象のタンパク質上に存在することが公知である予め決定された閾値濃度に対応する濃度を含み得る。
【0038】
本明細書で用いられるような「ネオ糖タンパク質」は、少なくとも1つ、および最大で4つ、すなわち、1つ、2つ、3つ、または4つ、好ましくは4つのビオチン化グリカン構造(A)が、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用によってそれに非共有結合している、ストレプトアビジン分子に関する。したがって、ネオ糖タンパク質は、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を通して結合している。ストレプトアビジンは、それによって、所望のグリカン構造(A)にカップリングさせることができるスキャフォールドとして働く。それによって、汎用性が高く、かつ迅速に利用可能なネオ糖タンパク質標準を、提供することができる。したがって、グリカン構造(A)は、好ましくは過剰に、例えば、少なくとも4:1(グリカン構造(A):ストレプトアビジン)、少なくとも5:1、少なくとも7.5:1、または少なくとも10:1のモル比で、ストレプトアビジンに添加される。好ましくは、グリカン構造(A)は、4.5:1~5.5:1の間のモル比、最も好ましくは5:1のモル比で、ストレプトアビジンに添加される。
【0039】
「ストレプトアビジン」は、細菌であるストレプトマイセス・アビジニ(Streptomyces avidinii)から精製されたタンパク質である。ストレプトアビジンホモ四量体は、ビオチン(ビタミンB7またはビタミンHとしても知られる)に対して極めて高い親和性を有する。ストレプトアビジンに対するビオチンの結合は、約10
-14モル/Lのオーダーの解離定数(K
d)で、天然で知られる最も強い非共有結合性相互作用の1つである。野生型ストレプトアビジンの例示的なアミノ酸配列は、
である。ストレプトアビジンの例示的な野生型配列はまた、1991年8月1日のUniProtデータベースエントリーP22629、バージョン1に示される。本明細書で用いられるような、例えば、本明細書に記載される方法または使用の文脈におけるストレプトアビジンはまた、ストレプトアビジンムテインを包含し得る。ストレプトアビジンムテインは、例えば、WO 2017/186669またはWO 2014/076277に開示されている。本発明の方法および使用において用いられるストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインは、N末端または/およびC末端で短縮されているストレプトアビジンバリアントに由来し得る。本発明による好ましいポリペプチドは、アミノ酸10~16位の領域でN末端が始まり、アミノ酸133~142位の領域でC末端が終わる、最小ストレプトアビジンのアミノ酸配列を含む。そのようなストレプトアビジンムテインポリペプチドは、好ましくは、Ala13からSer139までの位置のアミノ酸配列を含み、任意で、Ala13の代わりにN末端メチオニン残基を有する、変異領域の外側の最小ストレプトアビジンに対応する。本出願において、アミノ酸位置のナンバリングは、また1991年8月1日のアクセッション番号UniProtKB - P22629, v1の下で寄託されている、成熟wt-ストレプトアビジン(Argarana et al., Nucleic Acids Res. 14 (1986), 1871-1882、SEQ ID NO: 1参照)のナンバリングを、終始参照する。本明細書で用いられるような、本明細書に記載される方法または使用の文脈における「ストレプトアビジン」はまた、ストレプトアビジン以外の他のビオチン結合部分、例えば、ビオチンに結合するタンパク質またはアプタマーに関連し得る。
【0040】
ストレプトアビジンは、SEQ ID NO: 1のものと実質的に同一であるアミノ酸配列を有し得る。本明細書で用いられるようなストレプトアビジンは、SEQ ID NO: 1に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。本明細書で用いられるようなストレプトアビジンは、SEQ ID NO: 1に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり得る。
【0041】
一般に、本明細書で用いられる場合、2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における、「パーセント(%)同一」または「パーセント(%)同一性」という用語は、2つ以上の配列または部分配列が同じである程度を指す。2つの配列は、比較される領域にわたって同じ配列のアミノ酸またはヌクレオチドを有する場合には、「同一」である。2つの配列が、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを用いて、または手動アライメントおよび目視検査によって測定されるような比較ウィンドウ、または指定領域にわたって、最大の対応のために比較され、アライメントされた場合に、同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドの指定されたパーセンテージ(すなわち、指定された領域にわたる、または指定されない場合、配列全体にわたる、60%の同一性、任意で、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%の同一性)を有する場合には、2つの配列は「実質的に同一」である。任意で、同一性は、長さが少なくとも約30ヌクレオチド(または10アミノ酸)である領域にわたって、またはより好ましくは、長さが100~500、もしくは1000、もしくはそれ以上のヌクレオチド(または20、50、200、もしくはそれ以上のアミノ酸)である領域にわたって、存在する。
【0042】
配列相同性または配列同一性のパーセンテージは、例えば、プログラムBLASTP、バージョンblastp 2.2.5(2002年11月16日)(Altschul et al., Nucleic Acids Res, 1997参照)を用いて、本明細書において決定することができる。この態様において、相同性のパーセンテージは、好ましくは、一対比較において参照として野生型タンパク質スキャフォールドを用いて、プロペプチド配列を含むポリペプチド配列全体のアラインメント(マトリックス:BLOSUM 62;ギャップコスト:11.1;10-3に設定したカットオフ値)に基づく。それは、BLASTPプログラムのアウトプットにおいて結果として示された「陽性」(相同アミノ酸)の数を、アライメントのためにプログラムによって選択されたアミノ酸の総数で割ったパーセンテージとして計算される。
【0043】
「グリカン」または「グリカン構造(A)」は、グリコシド結合した単糖からなる化合物に関連し、かつまた、糖タンパク質、糖脂質、グリコRNA(例えば、Flynn et al, Cell, 184(12):3109-3124を参照されたい)、またはプロテオグリカンなどのグリココンジュゲートの糖質部分を、たとえ糖質が単糖またはオリゴ糖のみであっても、指し得る。
【0044】
本明細書に記載されるネオ糖タンパク質中のストレプトアビジンに結合したグリカン構造(A)は、有利にビオチン化される。「ビオチン化」とは、ビオチンを、タンパク質、核酸、または他の分子、特に本明細書に記載されるようなグリカン構造(A)に共有結合させるプロセスである。グリカン構造(A)をビオチン化するための様々な方法が、当業者に知られている。例えば、ビオチン化は、一級アミンがアルデヒドにカップリングしてイミンを、または一級アミンがヒドラジド基として存在する場合にはヒドラゾンを形成する、還元的アミノ化に基づき得る。このイミン(ヒドラゾン)は、次いで、二級アミンに還元され、これが、形成された連結を安定化させる(下記のスキームを参照されたい)。この反応手順を用いて、ビオチン-LC-ヒドラジドは、任意の糖質の還元末端に容易にカップリングして、安定なビオチン標識生成物を形成することができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Grun et al. (2006), Analytical Biochemistry, 354(1):54-63を参照されたい。
【0045】
ビオチンはまた、グリカンとビオチンとの間のトリエチレングリコール(PEG3)スペーサーなどのポリエチレングリコールリンカーによって、グリカンにカップリングさせてもよい。例示的なグリカン構造(A)は、グリカンとビオチンとの間にβ結合型トリエチレングリコール(PEG3)スペーサーを有するビオチン化3'-シアリル化N-アセチルラクトサミン(LacNAc=LN=Galβ1,4GlcNAc)である、3'-シアリルラクトサミン-PEG3-ビオチン(単一アーム、約1100 Da)である。そのようなビオチン化グリカンは、例えば、Sussex Chemicals, Ottawa, Canadaから市販されている。
【0046】
本発明は、いかなる特定のグリカン構造(A)にも限定されない。対照的に、ネオ糖タンパク質のモジュール構造(modulary construction)は、本明細書に記載されるネオ糖タンパク質のスキャフォールドであるストレプトアビジンに対する、事実上任意のグリカン構造(A)の非共有結合を可能にする。例示的なグリカン構造(A)には、コアフコース、アンテナ型フコース、Fucα1-6GlcNAc-N-Asn含有N結合型オリゴ糖、Fucα1-6/3GlcNAc、α-L-Fuc、Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、Fucα1-2Gal、Fucα1-6GlcNAc、Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc、分枝N結合型六糖、Manα1-3Man、α-D-Man、(GlcNAcβ1-4)2-4、Galβ1-4GlcNAc、GlcNAcα1-4Galβ1-4GlcNAc、(GlcNAcβ1-4)2-5、Neu5Ac(シアル酸)、Galβ1-3GalNAc-セリン/スレオニン、Galα1-3GalNAc、Galβ1-6Gal、Galβ1-4GlcNAc、Galβ1-3GalNAc、GalNAcα1-3GalNAc、GalNAcα1-3Gal、GalNAcα/β1-3/4Gal、α-GalNAc、GalNAcβ1-4Gal、GalNAcα1-3(Fucα1-2)Gal、GalNAcα1-2Gal、GalNAcα1-3GalNAc、GalNAcβ1-3/4Gal、GalNAc-Ser/Thr(Tn抗原)、Galβ1-3GalNAc-Ser/Thr(T抗原)、GalNAcβ1-4GlcNAc(LacdiNAc)、α-2,3Neu5Ac(α2-3結合型シアル酸)、α-2,6Neu5Ac(α2-6結合型シアル酸)、α-2,8Neu5Ac(α2-8結合型シアル酸)、シアル酸(α-2,3Neu5Ac、α-2,6Neu5Ac、またはα-2,8Neu5Ac)、Neu5Acα4/9-O-Ac-Neu5Ac、Neu5Acα2-3Galβ1-4Glc/GlcNAc、Neu5Acα2-6Gal/GalNAc、N結合型バイアンテナ型、N結合型トリ/テトラアンテナ型、分枝β1-6GlcNAc、Galα1-3(Fucα1-2)Galβ1-3/4GlcNAc、Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc、NeuAcα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc、Fucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc、Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、NeuAcα2-3Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、高マンノース、シアリルルイスa(シアリルLea)抗原、シアリルルイスx(シアリルLex)抗原、ルイスx(Lex)抗原、シアリルTn抗原、シアリルT抗原、ルイスy(Ley)抗原、硫酸化コア1グリカン、Tn抗原、T抗原、コア2グリカン、ルイスa(Lea)抗原、(GlcNAcβ1-4)n、β-D-GlcNAc、GalNAc、Gal-GlcNAc、GlcNAc、Galα1-3Gal、Galβ1-3GalNAc、α-Gal、α-GalNAc、(GlcNAc)n、分枝(LacNAc)nが含まれるが、それらに限定されない。
【0047】
本明細書で用いられるような糖質の略号には、以下が含まれる:N-アセチルノイラミン酸に対する「Neu5Ac」;フコースに対する「Fuc」;N-アセチルガラクトサミンに対する「GalNAc」;N-アセチルグルコサミンに対する「GlcNAc」;ガラクトースに対する「Gal」(例えば、Varki A, Cummings RD, Esko JD, Freeze HH, Stanley P, Bertozzi CR, Hart GW, E. ME., Essentials of Glycobiology, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (NY), 2009)。
【0048】
さらに、本明細書で用いられる場合、以下の用語は、下記に定義される。
「コアフコース」とは、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC6原子に連結されていることを意味し、
「アンテナ型フコース」とは、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結されているか、またはフコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介して隣接するフコースのC2原子に連結されていることを意味し、
「Fucα1-6GlcNAc-N-Asn含有N結合型オリゴ糖」とは、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC6原子に連結され、それがN-グリコシド結合を介してアスパラギンに連結されている、フコースを有するオリゴ糖を意味し、
「Fucα1-6/3GlcNAc」とは、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC6(C3)原子に連結されていることを意味し、
「α-L-Fuc」とは、α-L-フコースを意味し、
「Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc」とは、フコースがそのC1原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC2原子に連結され、そのガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結され;同時に、第2のフコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結されていることを意味し、
「Fucα1-2Gal」とは、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC2原子に連結されていることを意味し、
「Fucα1-6GlcNAc」とは、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC6原子に対する連結されていることを意味し、
「Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc」とは、マンノースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結され、そのN-アセチルグルコサミンが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結されていることを意味し、
「分枝N結合型六糖」とは、N-グリコシド結合によってアスパラギンに連結されたいくつかの糖質から構成される非直鎖状グリカンを意味し、
「Manα1-3Man」とは、マンノースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してマンノースのC3原子に連結されていることを意味し、
「α-D-Man」とは、α-D-マンノースを意味し、
「(GlcNAcβ1-4)2-4」とは、N-アセチルグルコサミンが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に繰り返し連結されていることを意味し、
「Galβ1-4GlcNAc」とは、ガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結されていることを意味し、
「GlcNAcα1-4Galβ1-4GlcNAc」とは、N-アセチルグルコサミンが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC4原子に連結され、そのガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結されていることを意味し、
「N-アセチルグルコサミン」とは、グルコサミンと酢酸との間のアミドを意味し、
「(GlcNAcβ1-4)2-5」とは、N-アセチルグルコサミンが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に繰り返し連結されていることを意味し、
「Neu5Ac」(またはシアル酸)とは、N-アセチルノイラミン酸を意味し、
「Galβ1-3GalNAc-セリン/スレオニン」とは、ガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結され、そのN-アセチルグルコサミンが、セリン/スレオニンに連結されていることを意味し、
「Galα1-3GalNAc」とは、ガラクトースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルガラクトサミンのC3原子に連結されていることを意味し、
「Galβ1-6Gal」とは、ガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してガラクトースのC6原子に連結されていることを意味し、
「Galβ1-4GlcNAc」とは、ガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結されていることを意味し、
「Galβ1-3GalNAc」とは、ガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルガラクトサミンのC3原子に連結されていることを意味し、
「GalNAcα1-3GalNAc」とは、N-アセチルガラクトサミンが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルガラクトサミンのC3原子に連結されていることを意味し、
「GalNAcα1-3Gal」とは、N-アセチルガラクトサミンが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC3原子に連結されていることを意味し、
「GalNAcα/β1-3/4Gal」とは、N-アセチルガラクトサミンが、そのC1原子のα-グリコシド結合またはβ-グリコシド結合を介してガラクトースのC3原子またはC4原子に連結されていることを意味し、
「α-GalNAc」とは、α-ガラクトサミンと酢酸との間のアミドを意味し、
「GalNAcβ1-4Gal」とは、N-アセチルガラクトサミンが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してガラクトースのC4原子に連結されていることを意味し、
「GalNAcα1-3(Fucα1-2)Gal」とは、N-アセチルガラクトサミンが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC3原子に連結され、同時に、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC2原子に連結されていることを意味し、
「GalNAcα1-2Gal」とは、N-アセチルガラクトサミンが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC3原子に連結されていることを意味し、
「GalNAcα1-3GalNAc」とは、N-アセチルガラクトサミンが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルガラクトサミンのC3原子に連結されていることを意味し、
「GalNAcβ1-3/4Gal」とは、N-アセチルガラクトサミンが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してガラクトースのC3原子またはC4原子に連結されていることを意味し、
「GalNAc-Ser/Thr」(またはTn抗原)とは、N-アセチルガラクトサミンが、O-グリコシド結合を介してセリン/スレオニンに連結されていることを意味し、
「Galβ1-3GalNAc-Ser/Thr」(T抗原またはトムセン-フリーデンライヒ(Thomsen-Friedenreich)抗原)とは、ガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルガラクトサミンのC3原子に連結され、そのN-アセチルガラクトサミンが、O-グリコシド結合を介してセリン/スレオニンに連結されていることを意味し、
「GalNAcβ1-4GlcNAc」(またはLacdiNAc)とは、N-アセチルガラクトサミンが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結されていることを意味し、
「α2-3Neu5Ac」(またはα2-3結合型シアル酸)とは、N-アセチルノイラミン酸が、そのC2原子のα-グリコシド結合を介して隣接する糖のC3原子に連結されていることを意味し、
「α2-6Neu5Ac」(またはα2-6結合型シアル酸)とは、N-アセチルノイラミン酸が、そのC2原子のα-グリコシド結合を介して隣接する糖のC6原子に連結されていることを意味し、
「α2-8Neu5Ac」(またはα2-8結合型シアル酸)とは、N-アセチルノイラミン酸が、そのC2原子のα-グリコシド結合を介して隣接するN-アセチルノイラミン酸のC8原子に連結されていることを意味し、
「Neu5Acα4/9-O-Ac-Neu5Ac」とは、N-アセチルノイラミン酸が、そのC4原子のα-グリコシド結合を介して隣接するO-アセチルN-アセチルノイラミン酸のC9原子に連結されていることを意味し、
「Neu5Acα2-3Galβ1-4Glc/GlcNAc」とは、N-アセチルノイラミン酸が、そのC2原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC3原子に連結され、そのガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してグルコースまたはN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結されていることを意味し、
「Neu5Acα2-6Gal/GalNAc」とは、N-アセチルノイラミン酸が、そのC2原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースまたはN-アセチルガラクトサミンのC6原子に連結されていることを意味し、
「N結合型バイアンテナ型」とは、N-グリコシド結合によってアスパラギンに連結された2つのアンテナ(糖鎖)を有する非直鎖状グリカンを意味し、
「N結合型トリ/テトラアンテナ型」とは、N-グリコシド結合によってアスパラギンに連結された3つ/4つのアンテナ(糖鎖)を有する非直鎖状グリカンを意味し、
「分枝β1-6GlcNAc」とは、N-アセチルグルソサミン(N-acetylglusosamine)が、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介して隣接する糖のC6原子に連結されていることを意味し、
「Galα1-3(Fucα1-2)Galβ1-3/4GlcNAc」とは、ガラクトースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC3原子に連結され、そのガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子またはC4原子に連結され;同時に、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC2原子に連結されていることを意味し、
「Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc」とは、ガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルソサミンのC3原子に連結され;同時に、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結されていることを意味し、
「NeuAcα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc」とは、N-アセチルノイラミン酸が、そのC2原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC3原子に連結され、そのガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結され;同時に、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結されていることを意味し、
「Fucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc」とは、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC2原子に連結され、そのガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結され;同時に、第2のフコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結されていることを意味し、
「Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc」とは、ガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結され;同時に、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結されていることを意味し、
「NeuAcα2-3Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc」とは、N-アセチルノイラミン酸が、そのC2原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC3原子に連結され、そのガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結され;同時に、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結されていることを意味し、
「Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc」とは、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC2原子に連結され、そのガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結され;同時に、第2のフコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結されていることを意味し、
「高マンノース」とは、3つよりも多いマンノース単位を含有するグリカンを意味し、
「シアリルルイスa」(シアリルLea)抗原とは、N-アセチルノイラミン酸が、そのC2原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC3原子またはC6原子に連結され、そのガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結され;同時に、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結されていることを意味する、Neu5Acα2-3/6Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcであり、
「シアリルルイスx」(シアリルLex)抗原とは、N-アセチルノイラミン酸が、そのC2原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC3原子またはC6原子に連結され、そのガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結され;同時に、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結されていることを意味する、Neu5Acα2-3/6Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcであり、
「ルイスx」(Lex)抗原とは、ガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結され;同時に、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結されていることを意味する、「Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc」であり、
「シアリルTn抗原」とは、N-アセチルノイラミン酸が、そのC2原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルガラクトサミンのC3原子またはC6原子に連結され、そのN-アセチルガラクトサミンが、O-グリコシド結合を介してセリン/スレオニンに連結されていることを意味する、「Neu5Acα2-3/6GalNAc-Ser/Thr」であり、
「シアリルT抗原」とは、N-アセチルノイラミン酸が、そのC2原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC3原子またはC6原子に連結され、そのガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルガラクトサミンのC3原子に連結され、そのN-アセチルガラクトサミンが、O-グリコシド結合を介してセリン/スレオニンに連結されていることを意味する、「Neu5Acα2-3/6Galβ1-3GalNAc-Ser/Thr」であり、
「ルイスy」(Ley)抗原とは、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC2原子に連結され、そのガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結され;同時に、第2のフコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結されていることを意味する、「Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc」であり、
「硫酸化コア1グリカン」とは、T抗原の硫酸化伸長型に基づくグリカンであり、
「コア2グリカン」とは、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルガラクトサミンのC3原子に連結されたガラクトースを有し、同時に、N-アセチルグルコサミンが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルガラクトサミンのC6原子に連結され、そのN-アセチルガラクトサミンが、セリン/スレオニンに連結されているグリカンの伸長型を意味する、Galβ1-3(GlcNAcβ1-6)GalNAc-Ser/Thrの伸長型に基づくグリカンであり、
「ルイスa」(Lea)抗原とは、ガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC3原子に連結され;同時に、フコースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結されていることを意味する、Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcであり、
「(GlcNAcβ1-4)n」とは、N-アセチルグルコサミンが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に繰り返し連結されていることを意味し、
「β-D-GlcNAc」とは、β-D-グルコサミンと酢酸との間のアミドを意味し、
「GalNAc」とは、ガラクトサミンと酢酸との間のアミド、すなわち、N-アセチルガラクトサミンを意味し、
「Gal-GlcNAc」とは、ガラクトースが、非特定の結合を介してN-アセチルグルコサミンに連結されていることを意味し、
「GlcNAc」とは、グルコサミンと酢酸との間のアミド、すなわち、N-アセチルグルコサミンを意味し、
「Galα1-3Gal」とは、ガラクトースが、そのC1原子のα-グリコシド結合を介してガラクトースのC3原子に連結されていることを意味し、
「Galβ1-3GalNAc」とは、ガラクトースが、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルガラクトサミンのC3原子に連結されていることを意味し、
「α-Gal」とは、α-ガラクトースを意味し、
「α-GalNAc」とは、α-D-ガラクトサミンと酢酸との間のアミドを意味し、
「(GlcNAc)n」とは、N-アセチルグルコサミンが、非特定の結合を介してN-アセチルグルコサミンに連結されていることを意味し、
「分枝(LacNAc)n」とは、そのC1原子のβ-グリコシド結合を介してN-アセチルグルコサミンのC4原子に連結されたガラクトースの分枝反復形態を意味する、Galβ1,4-GlcNAcの分枝反復形態である。
【0049】
本明細書で用いられるような「シグナル」は、関心対象のタンパク質上にある(あると疑われる)グリカン構造(A)を決定することによって得られた情報に関する。この情報は、典型的には、例えば、特定の波長での吸収または特定の波長での蛍光発光の、シグナル強度である。シグナル強度は、好ましくは、関心対象のタンパク質上に存在するグリカン構造(A)の量に依存する。したがって、シグナルはまた、関心対象のタンパク質のグリコプロファイルについての情報を提供するとして見られ得る。
【0050】
本明細書に記載されるネオ糖タンパク質は、本発明の方法および使用における標準として働く。これらは、シグナル(1)またはシグナル(2)を提供するグリカン構造(A)を決定することに関する。本明細書で用いられるような「グリカン構造(A)を決定すること」は、特定のグリカン構造(A)が関心対象のタンパク質上に存在するか否かをアッセイするのに適している、好ましくは、(試料中の)グリカン構造(A)の量を決定するのに適している、任意の方法に関する。換言すると、グリカン構造(A)を決定することはまた、その上にグリカン構造(A)を有すると疑われる関心対象のタンパク質をグリコプロファイリングする方法として見られ得る。したがって、この方法は、相対化されるシグナル(シグナル(1))、または相対化するための基礎であるシグナル(シグナル(2))を提供する。適している方法には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)、磁性ELLA(MELLA)、好ましくは、ELLAまたはMELLAが含まれるが、それらに限定されない。したがって、シグナル(1)およびシグナル(2)は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)、磁性ELLA(MELLA)、好ましくは、ELLAまたはMELLAによって得られ得る。好ましくは、シグナル(1)およびシグナル(2)は、同じ濃度での同じ試薬を含む、同じ条件で得られる。しかし、本発明は、これらの方法に限定されず、グリカン解析を含む任意の他のアッセイ法を含み得る。
【0051】
ELISAは、様々な類似のアッセイまたはELISA様アッセイへの出発点として見ることができる。ELISAは、免疫グロブリンと、関心対象のタンパク質上にあると疑われるグリカン構造(A)などの関心対象の分子との特異的相互作用に基づき、該特異的相互作用は、関心対象の分子の存在下でのみシグナルの生成を可能にし、シグナル(強度)は、解析される試料中の関心対象の分子の濃度に対応する。ELISA、ELLA、およびMELLAのようなアッセイは、当業者に知られている。サンドイッチELISA、競合ELISA、およびリバースELISAなどの様々なELISAバリエーションが、当技術分野においてさらに知られている。本発明の文脈において、一次免疫グロブリン、すなわち、関心対象の分子に結合する免疫グロブリンは、関心対象のタンパク質上にあると疑われるグリカン構造(A)に結合する。したがって、一次免疫グロブリン、好ましくは抗体またはその断片は、関心対象のグリカン構造(A)に特異的に結合する。ELLAにおいては、一次免疫グロブリンが、グリカン構造(A)に特異的に結合するレクチンによって置き換えられる。磁性ELLA(MELLA)は、その全体が参照によりその本明細書に組み入れられる、WO 2019/185515 A1に記載されているELLAのさらなる発展の結果である。これらのアッセイの読み出し、例えば、シグナル強度は、本発明の文脈においてシグナル(1)またはシグナル(2)として見ることができる。典型的には、読み出しは、一次免疫グロブリン、関心対象のタンパク質(関心対象の糖タンパク質のタンパク質骨格)、またはレクチンに結合する第2の免疫グロブリンにカップリングした酵素の酵素反応の結果である。あるいは、酵素を、レクチンに(直接)カップリングさせることができる。頻繁に用いられる読み出しには、多くの場合コンジュゲートタンパク質として用いられるHRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)を検出するための、琥珀色に変わるOPD(o-フェニレンジアミン二塩酸塩);HRPを検出すると青色に変わり、硫酸またはリン酸の添加後に黄色に変わるTMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン);HRPを検出すると緑色に変わるABTS(2,2'-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-ジアンモニウム塩);またはアルカリホスファターゼを検出すると黄色に変わるPNPP(p-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩)が含まれるが、それらに限定されない。これらの比色読み出しに加えて、放射性標識、蛍光標識、電気化学標識、化学発光標識、比色アプローチ、またはさらに標識がない形式(例えば、SPR)もまた、用いることができる。別の例は、過酸化水素(H2O2)またはペルオキシダーゼ活性を検出するための10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン(Amplex(登録商標) Red試薬)である。ペルオキシダーゼの存在下で、Amplex(登録商標) Red試薬は、H2O2と1:1の化学量論で反応して、赤色蛍光酸化生成物であるレゾルフィンを産生する。レゾルフィンは、およそ571 nmおよび585 nmの励起極大および発光極大を有する。
【0052】
本明細書で用いられる場合の「レクチン」という用語は、糖質結合タンパク質を指す。レクチンは、典型的には、1つまたは複数の糖質部分に対して高度に特異的である(例えば、レクチンは、糖タンパク質のグリカン(例えば、糖タンパク質、例えば、本発明の意味の範囲内の標的ポリペプチドおよび本明細書の表1に記載されるようなバイオマーカーなどの、分枝糖分子)などの、他の分子の末端グリコシド残基と特異的に反応する)。レクチンは、当技術分野において一般的に知られている。当業者は、どのレクチンが、関心対象の1つまたは複数の糖質部分、例えば、タンパク質に付着したグリカンの1つまたは複数の糖質部分への結合に用いられ得るかを判定することを容易に利用できる。本発明の文脈において適用される好ましいレクチンが、本明細書に記載される。また、「レクチン」という用語には、Siglec(シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン)、ガレクチン(β-ガラクトシド含有グリカンに特異的に結合するレクチン)、およびセレクチン(シアリルルイスX(SLex)決定基NeuAcα2-3Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、および関連するシアリル化、フコシル化グリカンに結合する)も含まれる。注目すべきことに、本明細書で用いられる場合の「レクチン」という用語はまた、グリカン結合抗体を指す。したがって、本明細書で用いられる場合の「レクチン」という用語はまた、レクチン、Siglec、ガレクチン、セレクチンなど、およびグリカン結合抗体も包含し得る。レクチンはまた、グリカンを認識するDNA/RNAアプタマーも含み得る。
【0053】
レクチンは、マメ科植物の種子から得ることができるが、他の植物および動物の供給源からも得ることができる。レクチンは、特定の単糖およびオリゴ糖(例えば、糖タンパク質のグリカン)に対する結合部位を含有することができる。レクチンは、膜糖タンパク質における特定の糖残基に結合することによって、細胞を凝集させることができる。好ましくは、本発明のレクチンは、本明細書において定義されるような、イヌエンジュ(Maackia amurensis)レクチンII(MAA II);コンカナバリンA(Con A);ヒイロチャワンタケ(Aleuria aurantia)レクチン(AAL);セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)(SNA-I)レクチン;フジ(Wisteria floribunda)レクチン(WFL)からなる群より選択される。
【0054】
本発明のさらに好ましいレクチンを、下記の表1に示す。
【0055】
本発明の特に好ましいレクチンは、以下のUniProtKBアクセッション番号:P0DKL3、P02866、P18891、O04366、A0A218PFP3、Q945S3、Q00022、Q6YNX3、Q71QF2、P02872、P18670、Q2UNX8、Q8L5H4、A0A089ZWN7、P05045、P19588、P83410、P17931、P56470、P24146、Q41263、Q39990、Q2F1K8、G9M5T0、B3XYC5、P02870、P19664、P0DKL3、P49300、A9XX86、Q40423、P16300、P05088、P05087、Q9AVB0、P02867、O24313、Q9SM56、P06750、B9SPG3、Q9BZZ2、P20916、Q9NYZ4、Q96RL6、P05046、P93535、P02876、P10968、P10969、P22972、またはP56625、およびそれらの対応する成熟型を有するレクチンである。
【0056】
本発明の例示的なレクチンには、以下がさらに含まれる。
イヌエンジュレクチンII(MAA II)は、イヌエンジュ属(Maackia)種子由来のヘマグルチニンイソレクチンである。α2-3結合を介して隣接するガラクトース残基に連結された末端シアル酸を含有するオリゴ糖を認識する、シアル酸結合レクチン。Neu5Acα2-3-Gal-β-1-4-GlcNAcの三糖配列に結合する。好ましくは、MAA IIは、SEQ ID NO: 2(またはその成熟型)を有する。
コンカナバリンA(Con A)は、元々ナタマメ(jack-bean)であるタチナタマメ(Canavalia ensiformis)から抽出されたD-マンノース特異的レクチンである。好ましくは、Con Aは、SEQ ID NO: 3またはSEQ ID NO: 4(Con A、成熟型)を有する。
ヒイロチャワンタケレクチン(AAL)は、ヒイロチャワンタケ(オレンジピールマッシュルーム)から抽出されたフコース特異的レクチンである。好ましくは、AALは、SEQ ID NO: 5(またはその成熟型)を有する。AALの単離は、例えば、(Debray et al.、Kochibe et al.)に記載されている。
セイヨウニワトコ(SNA-I)レクチンは、セイヨウニワトコ(ヨーロッパニワトコ)から抽出されたNeu5Acα2-6)Gal/GalNAc特異的アグルチニンである。好ましくは、SNA-Iは、SEQ ID NO: 6(またはその成熟型)を有する。
フジレクチン(WFL)は、フジ(日本の藤)から抽出されたアグルチニンである。好ましくは、WFLは、SEQ ID NO: 7(またはその成熟型)を有する。
【0057】
さらに、本発明の意味の範囲内の適しているレクチンには、本明細書に開示されるようなレクチンの翻訳後にプロセシングされた型および成熟型が明確に含まれ得る。
【0058】
「抗体」という用語はまた、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多特異性抗体または多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、ヒト抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、変異抗体、移植抗体、およびインビトロ生成抗体を含むが、それらに限定されず、しかしそれらを包含し、キメラ抗体またはヒト化抗体が好ましい。「ヒト化抗体」という用語は、HCおよびLCの特異性をコードするCDRが適切なヒト可変フレームワークに移された(「CDR移植」)抗体について一般的に定義される。「抗体」という用語はまた、scFv、一本鎖抗体、ダイアボディまたはテトラボディ、ドメイン抗体(dAb)、およびナノボディも含む。本発明に関して、「抗体」という用語はまた、いくつかの抗原結合部位を有する二量体、三量体、もしくは多量体抗体、または二機能性、三機能性、もしくは多機能性抗体を含むものとする。前記用語はまた、抗原結合部分を含む。また、「抗体」という用語には、FN3スキャフォールド、アドネクチン(adnectin)、アフィボディ(affibody)、アンチカリン(anticalin)、アビマー(avimer)、二環式ペプチド、DARPin、Kunitzドメイン、Obody、またはアプタマー、例えば、DNA、RNA、もしくはペプチドアプタマーが含まれ得る。
【0059】
本発明の好ましい抗体には、抗PSA抗体、抗AFP抗体、抗MUC16抗体、抗WFDC2抗体、抗MUC1抗体、抗ERBB2抗体、抗CEACAM5抗体、抗FUT3抗体、または抗TG抗体などが含まれるが、それらに限定されない。本発明に関するさらに好ましい抗体を、下記の表1に示す。
【0060】
さらに、本明細書で使用されるような「抗体」という用語はまた、本明細書に記載される抗体(断片を含む)の誘導体に関する。抗体の「誘導体」は、アミノ酸残基の置換、欠失、または付加の導入によって変更されたアミノ酸配列を含む。追加的に、誘導体は、抗体またはタンパク質に対する任意のタイプの分子の共有結合によって修飾された抗体を包含する。そのような分子の例には、糖、PEG、ヒドロキシル基、エトキシ基、カルボキシ基、またはアミン基が含まれるが、これらに限定されない。実質的に、抗体の共有結合性修飾は、グリコシル化、ペグ化、アセチル化、リン酸化、アミド化をもたらすが、これらに限定されない。
【0061】
関心対象のタンパク質は、特定のタンパク質に限定されない。対照的に、およびネオ糖タンパク質の汎用性により、本発明の方法および使用は、特定のグリカン構造(A)が関心対象のタンパク質上に存在するかどうかをアッセイするために適用することができる。しかし、関心対象のタンパク質は、好ましくは、糖タンパク質、または異なるように言うと、グリカン構造(A)を有すると疑われるタンパク質である。関心対象のタンパク質上のグリカン構造(A)の有無は、疾患の診断または予後に重要であり得るため、関心対象のタンパク質は、好ましくは、そのグリコプロファイルが疾患に関連するタンパク質である。本明細書で用いられるような「糖タンパク質」(または「グリコシル化タンパク質」)という用語は、例えば、単糖から分枝多糖(スルホ基またはホスホ基の付加などのそれらの修飾を含む)にわたる、様々なタイプの1つまたは複数のN-、O-、S-、またはC-共有結合型糖質を含有するタンパク質を意味する。N結合型グリカンは、アスパラギンの-NH2基に結合した糖質である。O結合型グリカンは、セリン、スレオニン、またはヒドロキシル化アミノ酸の-OH基に結合した糖質である。S結合型グリカンは、システインの-SH基に結合した糖質である。C結合型グリカンは、C-C結合を介してトリプトファンに結合した糖質である。
【0062】
「糖質」という用語は、化学量論式Cn(H2O)nを有する化合物(例えば、アルドースおよびケトースなど)を意味する。「糖質」という一般用語は、単糖、オリゴ糖、および多糖、ならびに、カルボニル基の還元によって(アルジトール)、1つもしくは複数の末端基のカルボン酸への酸化によって、または1つもしくは複数のヒドロキシ基の水素原子、アミノ基、チオール基、もしくは類似した基による置き換えによって単糖から誘導された物質を含む。また、これらの化合物の誘導体も含む。
【0063】
本明細書に既に記載されたように、関心対象のタンパク質上の特定のグリカン構造(A)の存在は、がん、自己免疫疾患、または炎症性疾患などの特定の疾患の診断に関連し得る。タンパク質(関心対象のもの、すなわちバイオマーカータンパク質)とグリカン構造(A)とのいくつかの組み合わせが、疾患を示すことが知られている。疾患を示す関心対象のタンパク質とグリカンとの具体的な組み合わせを、特定のグリカン構造に結合する抗体またはレクチンと同様に表1に例示する。したがって、本発明の方法および使用は、がん、自己免疫疾患、または炎症性疾患などの疾患の診断において用いることができる。したがって、前記グリカン構造(A)の存在は、がん、自己免疫疾患、または炎症性疾患などの疾患を示し得る。
【0064】
この文脈において、関心対象のタンパク質は、好ましくは、がんバイオマーカータンパク質、自己免疫疾患バイオマーカータンパク質、または炎症性疾患バイオマーカータンパク質である。
【0065】
本明細書で用いられる場合、「自己免疫疾患」とは、自分自身の組織に対する抗体の産生に関連する疾患を特徴とする疾患の群を指す。自己免疫疾患の非限定的な例には、橋本病、原発性胆汁性肝硬変、全身性エリテマトーデス、リウマチ熱、関節リウマチ、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、およびウイルス感染後脳脊髄炎、アジソン病、自己免疫性腸症、原発性胆汁性肝硬変、グッドパスチャー症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、粘液水腫、類天疱瘡、関節リウマチ、シェーグレン症候群、交感性眼炎、両方の型のエリテマトーデス、甲状腺中毒症、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、セリアック病、1型糖尿病、グレーブス病、炎症性腸疾患、および乾癬が含まれるが、それらに限定されない。
【0066】
本明細書で用いられる場合、「炎症性疾患」とは、身体の炎症機構の障害および/または機能異常を特徴とする疾患の群を指す。炎症性疾患の非限定的な例には、壊死性全腸炎、胃腸炎、骨盤内炎症性疾患(PID)、蓄膿症、胸膜炎、腎盂炎、咽頭炎、アンギナ、関節炎、ざ瘡、尿路感染症、尋常性ざ瘡、喘息、セリアック病、慢性前立腺炎、大腸炎、憩室炎、糸球体腎炎、化膿性汗腺炎、過敏症、炎症性腸疾患、間質性膀胱炎、肥満細胞活性化症候群、肥満細胞症、耳炎、骨盤内炎症性疾患、再灌流障害、リウマチ熱、関節リウマチ、鼻炎、サルコイドーシス、移植拒絶反応、血管炎が含まれるが、それらに限定されない。
【0067】
本明細書で用いられる場合、「がん」とは、身体における異常細胞の制御されない増殖を特徴とする疾患の群を指す。調節されない細胞分裂は、悪性腫瘍、または隣接組織に侵入し、リンパ系または血流を通して身体の遠隔部に転移し得る細胞の形成を結果としてもたらし得る。がんの非限定的な例には、扁平上皮癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)、非NSCLC、神経膠腫、胃腸がん、腎がん(例えば、明細胞癌)、卵巣がん、肝臓がん、大腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん(例えば、腎細胞癌(RCC))、前立腺がん(例えば、ホルモン抵抗性前立腺腺癌)、甲状腺がん、神経芽腫、膵臓がん、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫)、子宮頸がん、胃がん(stomach cancer)、膀胱がん、肝細胞癌、乳がん、結腸癌、および頭頸部がん(または癌腫)、胃がん(gastric cancer)、胚細胞腫瘍、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、黒色腫(例えば、皮膚悪性黒色腫または眼内悪性黒色腫などの転移性悪性黒色腫)、骨がん、皮膚がん、子宮がん、肛門部がん、精巣がん、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰部癌、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、小児期の固形腫瘍、尿管がん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘導されたものを含む環境的に誘導されたがん、ウイルス関連がん(例えば、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)関連腫瘍)、ならびに2つの主要な血液細胞系列のいずれか、すなわち、骨髄系細胞系統(顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージ、および肥満細胞を産生する)またはリンパ系細胞系統(B、T、NK、および形質細胞を産生する)に由来する血液悪性腫瘍、例えば、すべてのタイプの白血病、リンパ腫、および骨髄腫、例えば、急性、慢性、リンパ性、および/または骨髄性白血病、例えば、急性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML)、未分化AML(MO)、骨髄芽球性白血病(M1)、骨髄芽球性白血病(M2; 細胞成熟を伴う)、前骨髄球性白血病(M3またはM3バリアント[M3V])、骨髄単球性白血病(M4または好酸球増加を伴うM4バリアント[M4E])、単球性白血病(M5)、赤白血病(M6)、巨核芽球性白血病(M7)、孤立性顆粒球性肉腫、および緑色腫;リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ形質細胞様リンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、未分化(例えば、Ki 1+)大細胞リンパ腫、成人T細胞リンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸管T細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、Tリンパ芽球性;およびリンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)、末梢T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、移植後、リンパ球増殖性障害、真性組織球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、リンパ系列の造血腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽球性大細胞リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTLC)(菌状息肉症またはセザリー症候群とも呼ばれる)、およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を伴うリンパ形質細胞様リンパ腫(LPL);骨髄腫、例えば、IgG骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、くすぶり型骨髄腫(不活性骨髄腫とも呼ばれる)、孤立性、形質細胞腫、および多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、毛様細胞リンパ腫;骨髄系列の造血腫瘍、線維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;精上皮腫、奇形癌、中枢神経および末梢神経の腫瘍(星細胞腫、神経鞘腫を含む);線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫を含む、間葉起源の腫瘍;ならびに、黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞がん、および奇形癌を含む、他の腫瘍、リンパ系列の造血腫瘍、例えば、小細胞型および脳回状(cerebriform)細胞型を含む、T前リンパ球性白血病(T-PLL)などのT細胞障害を含むがそれらに限定されない、T細胞およびB細胞腫瘍;好ましくはT細胞型の大顆粒リンパ球白血病(LGL);a/d T-NHL肝脾リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性および免疫芽球性サブタイプ);血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫;頭頸部がん、腎がん、直腸がん、甲状腺がん;急性骨髄性リンパ腫、ならびに前記がんの任意の組み合わせが含まれる。好ましいがんをまた、表1に示す。
【0068】
がんはまた、卵巣がん、乳がん、大腸がん、膵臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、肝臓がん、肺がん、胃がん、精巣がん、または膀胱がんであり得る。したがって、バイオマーカータンパク質(関心対象のタンパク質)は、卵巣がんバイオマーカータンパク質、乳がんバイオマーカータンパク質、大腸がんバイオマーカータンパク質、膵臓がんバイオマーカータンパク質、前立腺がんバイオマーカータンパク質、甲状腺がんバイオマーカータンパク質、肝臓がんバイオマーカータンパク質、肺がんバイオマーカータンパク質、胃がんバイオマーカータンパク質、精巣がんバイオマーカータンパク質、または膀胱がんバイオマーカータンパク質であり得る。
【0069】
本発明の意味の範囲内の、例示的ながん、異常なグリコシル化を伴うがんバイオマーカー、レクチン、抗体、および対応するグリカン修飾をまた、下記の表1に示す。表1:がん、異常なグリコシル化を伴う対応するがんバイオマーカー、レクチン、および抗体において用いられるレクチンの略語:AAA - ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)アグルチニン(UniProtKBアクセッション番号:Q7SIC1)、AAL - ヒイロチャワンタケレクチン、ABA - マッシュルーム(Agaricus bisporus)アグルチニン、ACA - ヒモゲイトウ(Amaranthus caudatus)アグルチニン、AHA - ラッカセイ(Arachis hypogaea)アグルチニン=ピーナッツアグルチニン(PNA)、AIA - パラミツ(Artocarpus integrifolia)アグルチニン=ジャカリン(Jacalin)、AlloA - カブトムシ(Allomyrina dichotoma)アグルチニン、AOL - コウジカビ(Aspergillus oryzae)レクチン、BanLec - バナナ(Musa paradisiaca)レクチン、BS-I - バンデイラエア・シンプリシフォリア(Bandeiraea simplicifolia)レクチン=グリフォニア(Griffonia)(バンデイラエア)シンプリシフォリアレクチンI、Con A - コンカナバリンA、DBA - ヒマラヤフジマメ(Dolichos biflorus)アグルチニン、DSA - ヨウシュチョウセンアサガオ(Datura stramonium)アグルチニン(ジャカリン)、ECL - アメリカデイゴ(Erythrina cristagalli)レクチン、GNA - スノードロップ(Galanthus nivalis)アグルチニン、GSA I(GSL I) - グリフォニア(バンデイラエア)シンプリシフォリアレクチンI、GSL II - グリフォニア(バンデイラエア)シンプリシフォリアレクチンII、HHL - ヒッペアストラム(Hippeastrum)ハイブリッド(アマリリス属(Amaryllis))レクチン、HPA - リンゴマイマイ(Helix pomatia)アグルチニン、LBA - ライマメ(Phaseolus lunatus)(リマビーン、LBA)、LEL - トマト(Lycopersicon esculentum)(トマト)レクチン、LCA - レンズマメ(Lens culinaris)アグルチニン、LTA - アスパラガスエンドウ(Lotus tetragonolobus)レクチン、MAA I - イヌエンジュアグルチニンI、MAA II - イヌエンジュアグルチニンII、MGBL 1 - マクロファージガラクトース結合レクチン1、MGBL 2(マクロファージガラクトース結合レクチン2)、NPA - ラッパズイセン(Narcissus pseudonarcissus)(ラッパズイセン)レクチン、PHA E - インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)アグルチニンE、PHA L - インゲンマメアグルチニンL、PhoSL - スギタケ(Pholiota squarrosa)レクチン、PNA - ピーナッツアグルチニン、PSL - エンドウ(Pisum sativum)レクチン、PTA I - シカクマメ(Psophocarpus tetragonolobus)レクチンI、PTA II - シカクマメII、PWM - ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)、RCA I - トウゴマ(Ricinus communis)アグルチニンI、RCA II - トウゴマアグルチニンII、SBA - 大豆アグルチニン(ダイズ(Glycine max)アグルチニン)、SCA - アメリカニワトコ(Sambucus canadensis)アグルチニン=セイヨウニワトコアグルチニン(SNA)、SJA - エンジュ(Sophora japonica)アグルチニンII、SNA - セイヨウニワトコアグルチニン、SSA - ニワトコ(Sambucus sieboldiana)アグルチニン、SSL - クラリセージ(Salvia sclarea)レクチン、STL - ジャガイモ(Solanum tuberosum)レクチン、TJA-I - キカラスウリ(Trichosanthes japonica)アグルチニンI、TJA-II - キカラスウリアグルチニン(Yamashita et al.)、TVA - コムギ(Triticum vulgaris)アグルチニン=WGA - 小麦胚芽アグルチニン、UEA - ハリエニシダ(Ulex europaeus)アグルチニン、VVA - ナヨクサフジ(Vicia villosa)レクチン、WFA - フジレクチン、WGA - 小麦胚芽アグルチニン=TVA - コムギアグルチニン。上向き矢印である記号「↑」は、対応するグリカンまたは複合体(例えば、二量体、三量体など)の濃度の増大を意味する。下向き矢印である記号「↓」は、対応するグリカンまたは複合体(例えば、二量体、三量体など)の濃度の増大を意味する。
【0070】
(表1)がん、異常なグリコシル化を伴う対応するがんバイオマーカー、レクチン、および抗体。この表の組み合わせは、単に様々ながんタイプについての例である。本発明は、これらの例示的な組み合わせに限定されない。
【0071】
【0072】
本発明は、以下の項目にさらに関する。
1. 関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を相対化するための方法であって、
該関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナルを、好ましくは標準として働くネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)と比較する工程
を含み、
該ネオ糖タンパク質が、該グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチンを通して、不確かさを避けるためにはビオチン-ストレプトアビジン相互作用を通して、結合したストレプトアビジン分子を含み、
好ましくは相対化することが、シグナル(1)を標準からのシグナル(2)と比較することを含み、それによって、シグナル(2)が、シグナル(1)によって得られた情報を関連付けることを可能にし、
それによって、該シグナル(1)を該シグナル(2)に対して相対化する、またはその逆である、
方法。
2. 相対化することが、
前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)と比較すること
を含み、
(i)シグナル(1)がシグナル(2)よりも低い場合には、該疑われるグリカン構造(A)が該関心対象のタンパク質上に存在しないことを示し、または
(ii)シグナル(1)がシグナル(2)と等しいかもしくはそれよりも高い場合には、該疑われるグリカン構造(A)が該関心対象のタンパク質上に存在することを示す、
項目1の方法。
3. 相対化することが、
前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)の濃度系列を決定することから得られたシグナル(2)と比較すること
を含む、項目1の方法。
4. 前記濃度系列が、
それよりも上で前記グリカン構造(A)が前記関心対象のタンパク質上に存在することが公知である、予め決定された閾値濃度
に対応する濃度を含む、項目3の方法。
5. 関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を実際に含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にビオチンを通して結合したストレプトアビジン分子を含む、好ましくは標準として働くネオ糖タンパク質の、
関心対象のタンパク質上に存在すると疑われるグリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、該ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)に対して相対化するための
使用であって、
該ネオ糖タンパク質が、該グリカン構造(A)を含む少なくとも1つの予め定義されたグリカン決定基にストレプトアビジン結合分子を通して、好ましくはビオチン-ストレプトアビジン相互作用を通して結合したストレプトアビジン分子を含み、
好ましくは相対化することが、シグナル(1)を標準からのシグナル(2)と比較することを含み、それによって、シグナル(2)が、シグナル(1)によって得られた情報を関連付けることを可能にする、
使用。
6. 相対化することが、
前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(2)と比較すること
を含み、
(i)シグナル(1)がシグナル(2)よりも低い場合には、該疑われるグリカン構造(A)が該関心対象のタンパク質上に存在しないことを示し、または
(ii)シグナル(1)がシグナル(2)と等しいかもしくはそれよりも高い場合には、該疑われるグリカン構造(A)が該関心対象のタンパク質上に存在することを示す、
項目5の使用。
7. 相対化することが、
前記関心対象のタンパク質上に存在すると疑われる前記グリカン構造(A)を決定することから得られたシグナル(1)を、前記ネオ糖タンパク質によって実際に含まれる該グリカン構造(A)の濃度系列を決定することから得られたシグナル(2)と比較すること
を含む、項目6の使用。
8. 前記濃度系列が、
それよりも上で前記グリカン構造(A)が前記関心対象のタンパク質上に存在することが公知である、予め決定された閾値濃度
に対応する濃度を含む、項目7の使用。
9. 前記シグナルが、シグナル強度である、項目1~8のいずれか1つの方法または使用。
10. シグナル(1)およびシグナル(2)が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)、磁性ELLA(MELLA)、好ましくは、ELLAまたはMELLAによって得られる、前記項目のいずれか1つの方法または使用。
11. 前記グリカン構造(A)が、コアフコース、アンテナ型フコース、Fucα1-6GlcNAc-N-Asn含有N結合型オリゴ糖、Fucα1-6/3GlcNAc、α-L-Fuc、Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、Fucα1-2Gal、Fucα1-6GlcNAc、Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc、分枝N結合型六糖、Manα1-3Man、α-D-Man、(GlcNAcβ1-4)2-4、Galβ1-4GlcNAc、GlcNAcα1-4Galβ1-4GlcNAc、(GlcNAcβ1-4)2-5、Neu5Ac(シアル酸)、Galβ1-3GalNAc-セリン/スレオニン、Galα1-3GalNAc、Galβ1-6Gal、Galβ1-4GlcNAc、Galβ1-3GalNAc、GalNAcα1-3GalNAc、GalNAcα1-3Gal、GalNAcα/β1-3/4Gal、α-GalNAc、GalNAcβ1-4Gal、GalNAcα1-3(Fucα1-2)Gal、GalNAcα1-2Gal、GalNAcα1-3GalNAc、GalNAcβ1-3/4Gal、GalNAc-Ser/Thr(Tn抗原)、Galβ1-3GalNAc-Ser/Thr(T抗原)、GalNAcβ1-4GlcNAc(LacdiNAc)、α-2,3Neu5Ac(α2-3結合型シアル酸)、α-2,6Neu5Ac(α2-6結合型シアル酸)、α-2,8Neu5Ac(α2-8結合型シアル酸)、シアル酸(α-2,3Neu5Ac、α-2,6Neu5Ac、またはα-2,8Neu5Ac)、Neu5Acα4/9-O-Ac-Neu5Ac、Neu5Acα2-3Galβ1-4Glc/GlcNAc、Neu5Acα2-6Gal/GalNAc、N結合型バイアンテナ型、N結合型トリ/テトラアンテナ型、分枝β1-6GlcNAc、Galα1-3(Fucα1-2)Galβ1-3/4GlcNAc、Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc、NeuAcα2-3Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc、Fucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc、Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、NeuAcα2-3Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc、高マンノース、シアリルルイスa(シアリルLea)抗原、シアリルルイスx(シアリルLex)抗原、ルイスx(Lex)抗原、シアリルTn抗原、シアリルT抗原、ルイスy(Ley)抗原、硫酸化コア1グリカン、Tn抗原、T抗原、コア2グリカン、ルイスa(Lea)抗原、(GlcNAcβ1-4)n、β-D-GlcNAc、GalNAc、Gal-GlcNAc、GlcNAc、Galα1-3Gal、Galβ1-3GalNAc、α-Gal、α-GalNAc、(GlcNAc)n、分枝(LacNAc)nからなる群より選択される、前記項目のいずれか1つの方法または使用。
12. 前記関心対象のタンパク質が、がんバイオマーカータンパク質、自己免疫疾患バイオマーカータンパク質、または炎症性疾患バイオマーカータンパク質である、前記項目のいずれか1つの方法または使用。
13. 前記がんバイオマーカータンパク質が、卵巣がんバイオマーカータンパク質、乳がんバイオマーカータンパク質、大腸がんバイオマーカータンパク質、膵臓がんバイオマーカータンパク質、前立腺がんバイオマーカータンパク質、甲状腺がんバイオマーカータンパク質、肝臓がんバイオマーカータンパク質、肺がんバイオマーカータンパク質、胃がんバイオマーカータンパク質、精巣がんバイオマーカータンパク質、または膀胱がんバイオマーカータンパク質である、項目13の方法または使用。
14. 前記前立腺がんバイオマーカータンパク質が、β-ハプトグロビン、TIMP-1、PSA、fPSA、またはtPSAである、項目14の方法または使用。
15. 前記グリカン構造(A)の存在が、がんを示す、前記項目のいずれか1つの方法または使用。
16. 前記関心対象のタンパク質が、対象から得られた試料から得られる、前記項目のいずれか1つの方法または使用。
17. 前記試料が、唾液試料、血清試料、組織試料、血液試料、尿試料、リンパ液試料、鼻咽頭洗浄試料、喀痰試料、口スワブ試料、咽頭スワブ試料、鼻スワブ試料、気管支肺胞洗浄試料、または気管支分泌試料である、項目16の方法または使用。
18. 前記対象が、哺乳動物、好ましくはヒトである、項目16または17の方法または使用。
【0073】
本明細書で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の言及を含むことが注目される。したがって、例えば、「試薬」への言及は、そのような様々な試薬の1つまたは複数を含み、「方法」への言及は、本明細書に記載される方法のために修飾または置換することができる、当業者に知られている等価の工程および方法への言及を含む。
【0074】
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連のあらゆる要素を指すと理解されるべきである。当業者は、本明細書に記載される本発明の具体的な態様に対する多くの等価物を認識するか、または日常的に過ぎない実験を用いて確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明によって包含されるように意図される。
【0075】
「および/または」という用語は、本明細書で用いられる場合は必ず、「および」、「または」、ならびに「該用語によって接続される要素のすべてまたは任意の他の組み合わせ」の意味を含む。
【0076】
「未満」または次に「超」という用語は、具体的な数を含まない。
【0077】
例えば、20未満は、示された数よりも少ないことを意味する。同様に、超(more thanまたはgreater than)は、示された数よりも多いかまたは大きいことを意味し、例えば、80%超は、80%という示された数よりも多いかまたは大きいことを意味する。
【0078】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲の全体を通して、文脈が別段必要としない限り、「含む(comprise)」という単語、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの語尾変化は、述べられた整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の包含を意味するが、任意の他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の排除を意味しないと理解される。本明細書で用いられる場合、「含む(comprising)」という用語は、「含有する(containing)」もしくは「含む(including)」という用語で置換することができ、または本明細書で用いられる場合、時には「有する(having)」という用語で置換することができる。本明細書で用いられる場合、「からなる」は、特定されていない任意の要素、工程、または成分を排除する。
【0079】
「含む」という用語は、「含むが限定されない」ことを意味する。「含む」および「含むが限定されない」は、互換的に用いられる。
【0080】
本明細書で用いられる場合、「約」、「およそ」、または「本質的に」という用語は、所与の値または範囲の20%以内、好ましくは15%以内、好ましくは10%以内、およびより好ましくは5%以内を意味する。また、具体的な数を含み、すなわち、「約20」は20という数を含む。
【0081】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、材料、試薬、および物質などに限定されず、そのため変動できることが、理解されるべきである。本明細書で用いられる用語は、特定の態様を説明することだけを目的としており、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定するようには意図されない。
【0082】
本明細書の本文全体を通して引用されるすべての刊行物(すべての特許、特許出願、科学刊行物、説明書などを含む)は、上記または下記にかかわらず、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書におけるいずれも、本発明が、先行発明のためにそのような開示に先立つ権利を有しないという承認として解釈されるべきではない。参照により組み入れられる資料が、本明細書と矛盾するか、または一貫しない範囲では、本明細書が、任意のそのような資料に取って代わる。
【0083】
本明細書で引用されるすべての文書および特許文書の内容は、その全体が参照により組み入れられる。
【実施例】
【0084】
本発明およびその利点のさらに良好な理解は、例証目的でのみ提供される以下の実施例から明白であろう。実施例は、本発明の範囲を限定するようには決して意図されない。
【0085】
実施例1
材料および方法
化学物質
非コンジュゲートストレプトアビジン(約55 kDa、グリコシル化されていない)、MAA-II(約130 kDa)、および抗ストレプトアビジン抗体(約150 kDa)は、Vector Labs, USから購入した。グリカン3'-シアリルラクトサミン-PEG3-ビオチン(単一アーム、約1100 Da)は、Sussex Research, Canadaから入手した。脱塩カラム(MWCO=7000 Da)は、Thermo, USから購入した。緩衝液成分などのようなすべての一般的な化学物質は、Sigma Merck, USから購入した。すべての実験に、超高純度脱イオン水(G=0.055μS)を用いた。すべての緩衝液は、使用前に0.22μm滅菌フィルターを用いて濾過した。
【0086】
表面プラズモン共鳴(SPR)
SPRに用いたすべての試薬は、HBS-P+(緩衝液10×;BR-1006-71)、カップリングキット(BR100050)、EDC(0.4 M)、NHS(0.1 M)、塩酸エタノールアミン(1 M;pH 8.5)を含めて、GE Healthcareから購入した。再生にはNaOH(50 mM;BR-1003-58)を、およびカップリングには酢酸緩衝液pH 4.0(BR-1003-51)を用いた。SPRアッセイは、センサーチップCM5(29-1496-04)または11-メルカプトウンデカン酸(UV/VISエタノール中5 mM、Sigma Merck, US;RTで一晩インキュベート)を用いて修飾したAuチップを用いたBiacoreX100(GE Healthcare)で、25℃で30μL/分の一定流速下で行った。オリジナルのSW Biacore X100 Control Softwareを用いて、機器を運転した。
【0087】
ナノ粒子トラッキング解析(NTA)
すべての試料を、0.1 M PB(pH 7.4、0.22μmフィルター処理)において希釈し、連続流で測定した(500μlの総体積を、単一のランのために調製した)。測定濃度は、示唆されるように、フレーム値あたりの理想的な粒子(20~100粒子/フレーム)を予め試験することによって見出した。NanoSight NS300についての製造業者のソフトウェアマニュアルに従って、以下の設定を行った:検出閾値は、10~100個の赤色クロスがカウントされるという制限で、可能な限り多くの粒子を含むように決定した。青色クロスのカウントは、最小に限定した。不明瞭な粒子を避けるように、オートフォーカスを調整した。各測定について、5回の60秒ビデオを、以下の条件下で取った:細胞温度:25℃;シリンジ速度:10μl/分。取り込み後、ビデオを、内蔵のNanoSight Software NTA 3.1 Build 3.1.46によって、検出閾値=10で解析した。
【0088】
結果および考察
ストレプトアビジン-グリカンネオ糖タンパク質の調製
凍結乾燥ストレプトアビジン粉末を、滅菌0.1 M PB(pH 7.4)に再懸濁し、1 mg.ml-1の濃度を得た。公知濃度のビオチン化グリカンについて、これらの2つの溶液を、1+5分子比で、穏やかに混ぜながら(500 rpm)37℃で1時間混合した。最後に、このネオ糖タンパク質を、7k MWCOのZeba Spin脱塩カラム(事前にPBを用いて平衡化)を用いて、3000 rpmで1分間、冗長グリカンを精製した。ネオ糖タンパク質を、c=約0.9 mg.ml-1で得て、残りの実験作業のために4℃で保存した。
【0089】
SPR結合解析。最初のランにおいて、カルボキシメチル-デキストランCM5 SPRチップを用いて、最適な固定化pH値を見出し、その後、リガンドをセンサー表面上に固定化した。すべての場合に最適なpHは、異なるpH値についてのセンサー界面上のリガンドの事前濃縮中の勾配値に基づいて、4.0であった(
図2A)。ストレプトアビジンおよびMAA-IIレクチンのpI値は、それぞれ、5.0および4.7であるが、類似した値が、ネオ糖タンパク質について同様に予測される。3つの場合すべてにおいて、すなわち、ストレプトアビジン、ネオ糖タンパク質、およびMAA-IIレクチンについて、活性化およびエタノールアミンブロッキングのためにアミンカップリング(EDC/NHSプロトコル)を用いた(
図2B)。サンドイッチ構成を完成させるために、抗ストレプトアビジン抗体(Ab)およびMAA-IIレクチンが、ネオ糖タンパク質に同時に結合するべきである。しかし、恐らく立体障害、かなり高密度の負電荷、およびプリズム/金界面からの層の厚さ/距離(ならびにこれらの要因の組み合わせ)のために、シングルサイクルカイネティクス(SCK)中のストレプトアビジン修飾CM5チップに対するAb結合のみを観察することができた(
図3)。残りの実験については、(そのすべてがシアリル化された/負に帯電したグリカン部分に結合するはずである、MAA-II、SNA-I、およびWGAを伴う)ネオ糖タンパク質修飾チップを用いたレクチン結合中でさえも、SCK中の試料の濃度が高ければ高いほど、通常、負の応答が多かった。
【0090】
サンドイッチ(MAA-II/グリカン-ストレプトアビジン/抗体)の調製の成功を確認するために、むき出しのAuチップを11-メルカプトウンデカン酸の5 mMエタノール溶液中に浸漬することによって、2Dチップを調製した(RT、暗所、一晩)。このアプローチの利点は、基本的にすべての負電荷(カルボキシ基)が、表面上に局在し、固定化/ブロッキング後に除去されることである。サンドイッチ調製全体およびアッセイワークフローを、
図5Aに示す。
【0091】
各工程に適用した条件の詳細な概要を、以下の表2にまとめる。
【0092】
(表2)SPR結合アッセイを用いたサンドイッチ調製に適用した個々の工程の概要、すなわち、
図4に示されるような、分子のタイプ、条件、および結果。すべてのR.U.は、ブランク(フローセル1、FC1)を検出セル(FC2)から差し引いた後に計算される。表面の再生は、任意であり、Glycanostics MELLBAアッセイには適用されないが、50 mM NaOHのみを用いては、表面を完全に再生させることができなかった。
【0093】
MNPの修飾および濃縮プロセスのNTA解析
磁性ナノ粒子(MNP、130 nm COOH末端、デキストランコートナノマグ(nanomag))の修飾を観察するNTA解析のために、3つの試料すべて、すなわち、むき出しのMNP、Ab修飾MNP(MNP+Ab)、およびネオ糖タンパク質濃縮Ab修飾MNP(MNP+Ab+C)を、特定の化学物質/成分を用いようとまたはブランクの場合にPBを用いようと、同等に処理し、したがって、3つの試料をすべて、同じ方法/同じ回数で分離した。球状界面をバイオ認識に用いると、この場合により高いシグナルを生じ、それは、リガンド密度が、より長いリンカー分子とともに減少し、上記のSPR実験に用いた平面表面と比較してMELLBAの立体障害を減少させるためである(
図6AおよびB;仮説であるが、別の場所に公開)。NTAからの結果を、
図6Cに示す。修飾/濃縮後に、修飾MNPは、その直径の増大の結果として、試験管の底に沈降物を形成する可能性がより高かった。NTA解析のために、各試料を、滅菌PBにおいて500倍希釈した。
【0094】
非修飾の(しかし分離された回数は同等の)MNPは、ほぼ排他的に1つのd≦140 nmの単一ピークを生じたが、Abコンジュゲーション(アミンカップリング、10分、RT)後には、2つの主要な画分である、(i)≦120 nm(非修飾粒子と比較してわずかに小さい)および約20%の(ii)≦150 nmがある。これらの粒子と精製ネオ糖タンパク質とのインキュベーション後に、少なくとも4つの異なる画分を観察することができ、約220 nmのさらにより大きな凝集物が生じた。プロセス1(ab固定化)における流体力学的直径(d
H)の減少は、MNPの結合能が固定化プロセス中に飽和されない場合に、固定化abの周りのデキストランマトリックスの「圧縮」によって引き起こされる(仮説)。そうでなければ、d
Hは、
図7におけるように増大する。この実験の重要な局面は、プロセス2におけるd
Hの約20 nmの増大であり、これは、グリカン(三糖およびPEG3リンカーは、重度に水和されており、かなり可動性である)の事実によって影響を受ける値である。
【0095】
グリカン含量を検出するためのMALDI-TOF MSおよびELLBA
様々なストレプトアビジン+ビオチニル-グリカン比(すなわち、1+0、1+1、1+2、1+3、1+4、1+5、1+6、および1+7の体積あたりの分子数の比)を用いて、完全グリコシル化タンパク質標準を調製した。MALDI-TOF質量分析計(Bruker, USA)および事前に最適化されたプロトコル(2,5-ジヒドロキシアセトフェノン(DHA)マトリックスを用いる)を用いて、以前に別の場所に記載されたように、イオン化された試料成分について質量フラグメント(m/zパラメータ)を検出した。
図9に、質量スペクトルを詳細に示し、すなわち、すべての試料におけるストレプトアビジンフラグメントは(A)、約55 kDaのホモ四量体における1つサブユニットの質量である約13 kDa分、異なっている。最も強いピークは、常に同様に約13 kDaにあり(
図8)、他のピークは、ずっとより低い強度を有する。ビオチニル-グリカンと事前にインキュベートした試料のみ(1+0、すなわちむき出しのストレプトアビジンを除くすべて、
図9B)がまた、3'-シアリル化グリカン誘導体であるm/z=約1300 Daのピークの存在を示した(
図9C)。さらに、このピークの強度は、グリカン/ストレプトアビジン比の増大とともに増大した(
図9D)。しかし、ストレプトアビジンは、最大で4つのビオチンにしか結合できないため、これらのグリカンによるタンパク質標準の完全飽和を維持するのに妥当なグリカン/ストレプトアビジン比を用いることが重要である。
【0096】
この目的で、酵素結合レクチン結合アッセイ(ELLBA)を用いて、完全飽和比を見出した。アッセイ構成を、
図9E左に図示し、タンパク質標準を、ELISAプレートウェルの底に固定化し、非コンジュゲートMAA-II(2,3-シアル酸/Gal特異的で、利用可能なグリカンエピトープをすべて、効果的にブロックすることができる)とインキュベートし、およびその後、いくつかのビオチン分子を有し、かつ不飽和ストレプトアビジン標準上の遊離ビオチン結合部位に結合するビオチン化MAA-IIとインキュベートする。その後、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼを用いて、光学シグナル(OPD/過酸化水素)を生成させる。ストレプトアビジン-HRPは、ビオチン化MAA-II上に存在する遊離ビオチン分子にのみ結合し、したがって、ストレプトアビジン上に存在するグリカン分子の量と相互関係にある(
図9E右)。
【0097】
結論
ストレプトアビジンに対するビオチン化グリカンの付着によって作製されたネオ糖タンパク質(タンパク質標準)は、MAA-IIレクチンによっておよび抗ストレプトアビジン抗体によって、同時に認識された。この予想外の知見により、そのようなネオ糖タンパク質を、ELISA様形式の解析(MELLAを含む)のためのタンパク質標準として適用できることが示される。
【0098】
実施例2
実験作業により、例えば、上記の実施例1において適用された標準のような、本発明のネオ糖タンパク質(標準)または標準とも本明細書で呼ばれる、糖タンパク質標準は、4℃で保存した場合、少なくとも1週間安定であることが示された。そのような標準は、再現性の高い方法で調製することができ、すなわち、18週間以内の17回の独立した調製バッチでの糖タンパク質標準の調製について、8.17%のRSDである。
【配列表】
【国際調査報告】