(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】乳酸からラクチドを製造するためのプラントおよび効率的な方法
(51)【国際特許分類】
C07D 319/12 20060101AFI20240816BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20240816BHJP
B01J 31/04 20060101ALI20240816BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C07D319/12
B01J31/02 101M
B01J31/04 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508429
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022072617
(87)【国際公開番号】W WO2023017136
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518458344
【氏名又は名称】ズルツァー・マネージメント・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ディスタンテ, フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー, フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】フォン スカラ ライヘンバッハ ド スーザ, クラウディア
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA27A
4G169BC16A
4G169BC22A
4G169BC35A
4G169BC50A
4G169BE06A
4G169BE08A
4G169CB25
4G169CB46
4G169CB67
4G169CB75
4G169DA04
4H039CA42
4H039CH10
(57)【要約】
乳酸からラクチドを製造する方法であって、方法は、
a)乳酸、炭化水素溶媒および少なくとも1つの触媒を反応器システムの反応器に供給して、反応器内に反応混合物を形成する工程、
b)反応器から水および炭化水素溶媒の共沸物を除去するように反応混合物の少なくとも一部を蒸留しながら、乳酸の少なくとも一部がラクチドおよび水に変換されるように反応混合物を反応させる工程、
c)工程b)で反応器から除去された共沸物から水の少なくとも一部を分離する工程、
d)反応混合物からラクチドの少なくとも一部を分離する工程を含み、
少なくとも1つの触媒が、錫アルコキシド、亜鉛アルコキシド、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、錫カルボキシレート、亜鉛カルボキシレート、アルミニウムカルボキシレート、チタンカルボキシレートおよびこれらの化合物うちの2つ以上の任意の混合物からなる群から選択される有機金属化合物を含む均一触媒を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸からラクチドを製造する方法であって、
a)乳酸、炭化水素溶媒および少なくとも1つの触媒を反応器システム(12)の反応器(14)に供給して、反応器(14)内に反応混合物を形成する工程、
b)反応器(14)から水および炭化水素溶媒の共沸物を除去するように反応混合物の少なくとも一部を蒸留しながら、乳酸の少なくとも一部がラクチドおよび水に変換されるように反応器(14)内で反応混合物を反応させる工程、
c)工程b)で反応器(14)から除去された共沸物から水の少なくとも一部を分離する工程、
d)反応混合物からラクチドの少なくとも一部を分離する工程を含み、
少なくとも1つの触媒が、錫アルコキシド、亜鉛アルコキシド、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、錫カルボキシレート、亜鉛カルボキシレート、アルミニウムカルボキシレート、チタンカルボキシレートおよびこれらの化合物うちの2つ以上の任意の混合物からなる群から選択される有機金属化合物を含む均一触媒を含む、方法。
【請求項2】
少なくとも1つの触媒が、錫カルボキシレート、好ましくは、1つ以上のC
2~14-カルボキシレート基を、より好ましくは1つ以上のC
6~14-カルボキシレート基を含む錫カルボキシレートを含むかまたはそれからであり、少なくとも1つの触媒が最も好ましくは錫オクトエートである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
炭化水素溶媒が、80~130℃、好ましくは90~120℃、より好ましくは100~120℃の沸点を有する芳香族炭化水素溶媒であり、好ましくは炭化水素溶媒がトルエンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
反応混合物が、工程b)において、100~180℃の温度、好ましくは110~160℃の温度、より好ましくは120~160℃の温度、さらにより好ましくは130~150℃の温度、最も好ましくは135~145℃の温度で反応する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
反応混合物が、工程b)において、0.10~0.40MPaの圧力、好ましくは0.15~0.30MPaの圧力、より好ましくは0.15~0.25MPaの圧力、さらにより好ましくは0.18~0.22MPaの圧力、最も好ましくは0.19~0.21MPaの圧力で反応する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)において、乳酸、炭化水素溶媒および少なくとも1つの触媒が供給される反応器(14)が、連続撹拌タンク反応器であり、工程b)において、共沸蒸留が、連続撹拌タンク反応器(14)の上部に配置された蒸留カラム(18)で実施される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
反応器システム(12)が、互いに直列の2つの反応器(14、16)を含み、工程a)において、乳酸、炭化水素溶媒および少なくとも1つの触媒が供給される第1の反応器(14)が、連続撹拌タンク反応器であり、第1の反応器(14)の下流の第2の反応器(16)が、連続撹拌タンク反応器であり、反応混合物が、第2の反応器(16)から取り出され、工程d)の分離に供される前に、反応混合物が、第1の反応器(14)から取り出され、第2の反応器(16)に導かれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
反応混合物が、工程b)において、反応器システム(12)内で0.1~10時間、好ましくは1~5時間、より好ましくは2~4時間、最も好ましくは2.5~3.5時間反応する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程d)の反応混合物からのラクチドの少なくとも一部の分離が、以下の下位工程:
d
1)第1のベッセル(35)内の反応混合物を有機相と水性相とに分離する工程、
d
2)工程d
1)で得られた有機相を、液/液抽出工程において水で抽出して、有機相および水性副産物含有相を得る工程、ならびに
d
3)蒸留カラム(56)内で工程d
2)で得られた有機相をラクチド富化相と炭化水素溶媒富化相とに分離する工程であって、炭化水素溶媒富化相が好ましくは反応器(14)内にリサイクルされる工程
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
液/液抽出工程d
2)が、1つ以上のコアレッサ(38)を含む液/液抽出カラム(42)内で実行され、コアレッサ(38)として、好ましくは静電コアレッサ(38)、機械的コアレッサ(38)、1つ以上の構造化された波形金属もしくはプラスチックシートを含む機械的コアレッサ(38)、いずれかの相の液滴合一を促進するために表面自由エネルギーが大きく異なる2つの材料を含むコアレッサ、および/または液体がカートリッジの中心から半径方向外側に流れる、選択された繊維材料で作られたカートリッジを含む機械的コアレッサが使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
液/液抽出工程d
2)で得られる水性副産物含有相画分が、工程a)でリサイクルされ、反応器(14)に供給される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
工程c)において実施される共沸物からの水の少なくとも一部の分離が、以下の下位工程:
c
1)工程b)で反応器(14)から取り出された共沸物を凝縮させて液体流を得る工程、
c
2)工程c
1)で得られた液体流を、反応器(14)の上部の蒸留カラム(18)にリサイクルされる炭化水素溶媒に富む画分と、水に富む画分とに分離する工程
を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
乳酸からラクチドを製造するためのプラント(10)であって、
少なくとも1つの反応器(14)を含む反応器システム(12)であって、蒸留カラム(18)が、反応器(14)内の作動中に生じた蒸気を水と炭化水素との共沸物に蒸留することができるように反応器(14)の上部に配置されており、蒸留カラム(18)が、水と炭化水素溶媒との共沸物用の出口ライン(22)を含み、反応器システム(12)が、供給ライン(24)および反応混合物用の出口ライン(26)を含む反応器システム(12)、
蒸留カラム(18)の水と炭化水素との共沸物用の出口ライン(22)と接続されており、出口ライン(22)を通って除去された共沸物から水の少なくとも一部を分離するための分離器(48)、および
反応混合物用の出口ライン(26)に接続されている分離器(35)
を含むプラント(10)。
【請求項14】
反応器システム(12)が、上部に蒸留カラム(18)が配置された連続撹拌タンク反応器(14)である1つの反応器(14)を含むか、または反応器システム(12)が、互いに直列の2つの反応器(14、16)を含み、供給ライン(24)がつながる第1の反応器(14)が連続撹拌タンク反応器(14)であり、その上部に蒸留カラム(18)が配置されており、第1の反応器(14)の下流の第2の反応器(16)が連続撹拌タンク反応器であり、その上部に蒸留カラム(19)が配置されており、両方の反応器(14、16)が、作動中に反応混合物を第1の反応器(14)から第2の反応器(16)に除去するようにライン(20)を介して接続されている、請求項13に記載のプラント(10)。
【請求項15】
プラント(10)が、
上部に蒸留カラム(18)が配置された連続撹拌タンク反応器(14)と、連続撹拌タンク反応器(14)の下流に、その上部に蒸留カラム(19)が配置されたさらなる連続撹拌タンク反応器(16)とを含む反応器システム(12)であって、両反応器(14、16)が、作動中に反応混合物を連続撹拌タンク反応器(14)から連続撹拌タンク反応器(16)に除去するようにライン(20)を介して接続されており、蒸留カラム(14、16)がそれぞれ、水と炭化水素溶媒との共沸物用の出口ライン(22、22’)を含み、反応器システム(12)が、供給ライン(24)および反応混合物用の出口ライン(26)を含む反応器システム(12)、
反応混合物用の出口ライン(26)と接続されている第1の分離器(35)であって、水性相用の出口ライン(37)および有機相用の出口ライン(37)を含むベッセルである第1の分離器(35)、
水に富む流れ用の入口ライン(40)と、第1の分離器(35)の有機相用の出口ライン(36)に接続されている入口ラインと、有機相用の出口ライン(44)と、水性副産物含有相用の出口ライン(46)とを含む液/液抽出カラム(42)であって、好ましくは1つ以上の静電コアレッサ(38)および/または1つ以上の機械的コアレッサ(38)を含む液/液抽出カラム(42)、
連続撹拌タンク反応器(14)の共沸物用の出口ライン(22)と接続されているコンデンサー(49)およびその下流の分離器(48)、ならびにさらなる連続撹拌タンク反応器(16)の共沸物用の出口ライン(22’)と接続されているコンデンサー(49’)およびその下流の分離器(48’)であって、分離器(48、48’)の各々が、対応する蒸留カラム(18、19)に戻るリサイクルライン(52、52’)と水に富む画分用の出口ライン(50)とを含み、水に富む画分用の出口ライン(50)の一方または両方から分岐するライン(40)が、液/液抽出カラム(42)の水に富む流れ用の入口ライン(40)に接続されている、コンデンサー(49、49’)およびその下流の分離器(48、48’)、
さらなる蒸留カラム(56)であって、液/液抽出カラム(42)の有機相用の出口ライン(44)と接続されている入口ライン(58)、ラクチド用の出口ライン(62)、および炭化水素溶媒用の出口ライン(64)を含み、好ましくは炭化水素溶媒用の出口ライン(64)が反応器システム(12)の供給ライン(24)に接続されている蒸留カラム(56)
を含む、請求項13または14に記載のプラント(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸からラクチドを製造する、好ましくは連続的に製造する方法およびプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸は、ポリ乳酸のモノマーである。乳酸の単一重合体および共重合体は、再生可能資源から得ることができ、ほとんどが堆肥化可能および/または生分解性であるので、特に興味深い。さらに、これらの重合体の技術的および物理化学的特性は、化石系資源に由来する重合体の特性に非常に近く、これは、これらの重合体が化石系資源に由来する重合体の非常に有望な代替物と見なされる理由を説明する。さらに、乳酸の単一重合体および共重合体は、広範囲の用途を有する。例えば、ポリ乳酸は、生物医学分野において、冶金インプラント、フィルム、例えば包装、繊維、例えば衣類、衛生物品、カーペットおよび使い捨てプラスチック製品、例えば使い捨ての刃物または容器などで使用される。さらに、ポリ乳酸は、繊維強化プラスチックなどの複合材料に広く適用されている。ポリ乳酸共重合体は、コモノマーおよびそれらの互いに対する相対量を適切に選択し、適切な分子量を調整することによって、共重合体の特定の特性を意図する用途に合わせることができるので、ポリ乳酸単一重合体の興味深い代替物である。
【0003】
一般に、ポリ乳酸単一重合体またはポリ乳酸共重合体を合成するための2つの代替的な主要な方法が知られている。第1の主要な方法は、乳酸を任意選択的にカプロラクトンおよび/またはグリコリドなどの1つ以上のコモノマーと共に、それぞれの単一重合体または共重合体に直接重縮合すること、例えば乳酸をポリ乳酸単一重合体に直接重縮合することである。しかしながら、この主要な方法は、低分子量(コ)重合体のみをもたらし、したがって、特定の(コ)重合体に限定される。
【0004】
ポリ乳酸単一重合体またはポリ乳酸共重合体を合成するのに知られている第2の主要な方法は、ラクチド(乳酸の環状ジエステルである)と、任意選択的に1つ以上の他の環状エステル、例えばグリコリド(グリコール酸の環状ジエステルである)、ラクトンなどとの開環重合である。これは、今日、ポリ乳酸単一重合体またはポリ乳酸共重合体の工業的製造のための好ましい方法である。ラクチドは、2つの乳酸分子の縮合によって製造され得る。あるいは、乳酸を最初にオリゴマー化した後、オリゴマーを脱重合反応に供することによってラクチドを製造してもよい。例えば、ラクチドは、デンプン、糖またはトウモロコシなどのバイオマス由来の炭水化物を発酵させて乳酸を得、次いで乳酸をオリゴマー化し、その後オリゴマーを脱重合反応に供することによって調製される。同様に、任意選択的な他の環状ジエステルコモノマーは、2つのヒドロキシ酸分子の環状ジエステルへの縮合、例えばグリコール酸のグリコリドへの縮合、または例えばラクトン、例えばカプロラクトンの場合などには、脂肪族ヒドロキシ酸の分子内エステル化によって製造され得る。精製後、ラクチドと、コモノマーとしてのヒドロキシ酸の任意選択的な1つ以上の他の環状ジエステルとを、触媒および任意選択的に開始剤の存在下で重合して、高分子量重合体を形成する。未反応(コ)モノマーは、市場性のある品質の生成物を得るために、重合後に少なくとも0.5重量%未満の最終濃度まで除去されなければならない。
【0005】
2つの乳酸分子のラクチドおよび水への縮合による乳酸からのラクチドの合成は、触媒の存在下で行わなければならず、そうでなければ変換率が許容できないほど低いからである。さらに、触媒は、熱力学的に有利な乳酸の乳酸オリゴマーへの縮合の変換率と比較して、2つの乳酸分子のラクチドおよび水への変換率を高めるという意味で選択的でなければならない。この目的のために、通常、前述の要件を満たすために、酸性ゼオライトなどのゼオライト触媒が典型的に使用される。
【0006】
例えば、Dusselierらは、Science,2015,volume 349,pages 78 to 80において、酸性ゼオライトおよび好ましくはH-ベータゼオライト触媒を使用して、乳酸からラクチドを製造する方法について記載している。より具体的には、それぞれの方法は、乳酸、水、溶媒としてのo-キシレンおよびH-ベータゼオライト触媒を含む混合物を、反応を促進するために反応中に生成された水の一部を除去する水-溶媒蒸留によって行われる連続還流下で、110℃にて反応させることを含む。特定のゼオライト触媒は、直鎖状乳酸ダイマーおよび他の直鎖状乳酸オリゴマーなどの比較的少量の副産物で乳酸からラクチドへの高い転化率を得るために、高い選択性を有するものとする。さらに、乳酸からラクチドへの変換率は、ゼオライト触媒および比較的高沸点を有する溶媒、すなわち約139℃の沸点を有するo-キシレンを使用する組合せによって高められ、これは、トルエンなどのより低沸点を有する溶媒よりも高い乳酸からラクチドへの変換率をもたらす。反応混合物を反応器から連続的に取り出し、次いで、反応混合物を水および副産物を含む水性相画分ならびに有機ラクチドに富む画分に分離するために液液抽出に供し、次いで、これを結晶化してラクチドを溶媒から分離する。水-溶媒蒸留によって反応器から除去された画分は、この画分を水と溶媒に分離するために、セトラーで相分離され、反応器にリサイクルされる。しかしながら、このプロセスにはいくつかの欠点がある。第1に、ゼオライトは溶媒に可溶型ではなく、よってこのプロセスでは不均一な触媒である。これには、反応混合物からの分離、次いで追加の溶媒および分離を伴う触媒の洗浄を含む、ゼオライト触媒を再生する必要があるという欠点がある。さらに、ゼオライトは溶媒に可溶型でないため、ゼオライト触媒は、溶媒相に作用するだけでなく、乳酸オリゴマーおよびその他の副産物を含む水性相にも作用し、原理的に必要以上の副産物を不必要に生成する。別の欠点は、この文献によれば、十分に高い乳酸のラクチドへの変換率を得るために、ゼオライト触媒が溶媒としてo-キシレンの使用を必要とすることである。しかしながら、o-キシレンは、ラクチドに対する溶解度が比較的低く、乳酸ダイマーまたは他の乳酸オリゴマーなどの副産物に対する溶解度が大きいため、液液抽出で得られた水性相では一定量のラクチドが失われ、液液抽出で得られた溶媒相にはかなりの量の副産物が含有される。
【発明の概要】
【0007】
これを考慮して、本発明の根底にある目的は、乳酸からラクチドを製造する方法であって、プラントのための資本コストが最小限かつ作動コストが最小限であっても、高純度および高収率でラクチドを迅速に得ることを可能にする方法を提供することである。
【0008】
本発明によれば、この目的は、乳酸からラクチドを製造する方法であって、
a)乳酸、炭化水素溶媒および少なくとも1つの触媒を反応器システムの反応器に供給して、反応器内に反応混合物を形成する工程、
b)反応器から水および炭化水素溶媒の共沸物を除去するように反応混合物の少なくとも一部を蒸留しながら、乳酸の少なくとも一部がラクチドおよび水に変換されるように反応器内で反応混合物を反応させる工程、
c)工程b)で反応器から除去された共沸物から水の少なくとも一部を分離する工程、
d)反応混合物からラクチドの少なくとも一部を分離する工程を含み、
少なくとも1つの触媒が、錫アルコキシド、亜鉛アルコキシド、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、錫カルボキシレート、亜鉛カルボキシレート、アルミニウムカルボキシレート、チタンカルボキシレートおよびこれらの化合物うちの2つ以上の任意の混合物からなる群から選択される有機金属化合物を含む均一触媒を含む、方法を提供することによって果たされる。
【0009】
この解決策は、錫アルコキシド、亜鉛アルコキシド、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、錫カルボキシレート、亜鉛カルボキシレート、アルミニウムカルボキシレート、チタンカルボキシレートおよびこれらの化合物のうちの2つ以上の任意の混合物からなる群から選択される有機金属化合物を含む均一触媒を使用することによって、乳酸、炭化水素溶媒および少なくとも1つの触媒を反応器システムの反応器に供給し、反応器内に反応混合物を形成する工程、b)反応器から水および炭化水素溶媒の共沸物を除去するように反応混合物の少なくとも一部を蒸留しながら、反応混合物を反応器内で反応させ、乳酸の少なくとも一部を反応させてラクチドおよび水を形成する工程、c)工程b)で反応器から除去された共沸物から、水の少なくとも一部を分離する工程、ならびにd)反応混合物からラクチドの少なくとも一部を分離する工程を含む方法において、ラクチドが高純度の迅速なプロセスで得られるだけでなく、効率的に高収率で得られるという驚くべき知見に基づく。特に、この方法は、低い作動コストで作動可能であり、低い資本コストを有するプラントしか必要としない。錫アルコキシド、亜鉛アルコキシド、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、錫カルボキシレート、亜鉛カルボキシレート、アルミニウムカルボキシレート、チタンカルボキシレートおよびこれらの化合物のうちの2つ以上の任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの有機金属化合物を含む均一触媒の使用は、それが特に高い選択性を有し、よって、直鎖状乳酸ダイマーおよび他の乳酸オリゴマーなどの非常に少量の副産物と共に、乳酸のラクチドへの高変換率をもたらすという利点を有する。これは、とりわけ、触媒がトルエンなどの炭化水素溶媒に選択的に可溶型であるが水には可溶型でないため、炭化水素溶媒に可溶型の種に対してのみ触媒作用を発揮し、水溶性の種、すなわち乳酸オリゴマーおよび酸性不純物を反応環境から遠ざけるという事実に起因する。さらに、ゼオライトのような不均一触媒とは異なり、本発明による方法において使用される均一触媒は、蒸留によって炭化水素溶媒から容易に分離可能であり、直接再使用することができるため、追加の溶媒および分離を用いて再生プロセスを行う必要がない。さらに、例えば錫オクトエート(tin octoate)(
これは、オクタン酸錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)またはオクタン酸第一錫(Sn(Oct)2)としても知られている)などのこれらの触媒は、ほとんどがFDA承認の触媒であり、よって毒性学的に重要ではない。本発明による方法のさらなる利点は、代わりに、前述の先行技術におけるような高沸点炭化水素溶媒、例えば0.2MPaの高圧で、ならびに特に高い選択性、すなわちラクチドに対して非常に高い溶解度、および乳酸オリゴマーなどの副産物に対して特に低い溶解度を有するトルエンなどの低沸点炭化水素溶媒を用いて実施することができることである。したがって、ラクチドは反応混合物の有機溶媒相にほぼ完全に含まれるが、副産物は反応混合物の水性相にほぼ完全に保持される。最後に、本発明による方法は柔軟であり、バッチ式で、半連続手的にまたは連続的に実施することができる。
【0010】
本発明の意味における均一触媒は、反応体分子と同じ相、すなわち炭化水素溶媒を含む反応混合物中に存在する任意の触媒を意味する。これとは対照的に、不均一触媒は、反応物の1つ以上とは異なる相にあり、反応が起こり得る表面として作用することが多い。よって、本発明の意味における均一触媒は、水性相ではなく炭化水素溶媒中での反応中に溶解するように、使用される炭化水素溶媒中で高い溶解度を有する任意の非固体触媒である。したがって、本発明によれば、工程a)で使用される触媒は、常温、すなわち23℃ならびに少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の周囲圧力で使用される炭化水素相における溶解度を有する。特に、均一触媒は、水中よりも炭化水素溶媒中で高い溶解度を有する。好ましくは、工程a)で使用される触媒の23℃での水への溶解度は、10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満である。通常、均一触媒は水に全く可溶型ではないが、例えば水と接触すると分解する。例えば、本発明の最も好ましい均一触媒である錫オクトノエートは、水中で2-エチルヘキサノエートおよびSn(II)イオンに解離し、Sn(II)イオンは水中で自然に酸化し、不溶性無機固体Sn(IV)O2を形成する。ゼオライトのような固体の不均一触媒とは対照的に、均一触媒の使用は、反応前に反応物を吸着し、反応後に生成物を脱着する工程を回避し、通常は物質移動が制限される。
【0011】
本発明によれば、工程a)で反応器に供給される触媒、すなわち、工程b)の間に反応器に含まれる触媒は、錫アルコキシド、亜鉛アルコキシド、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、錫カルボキシレート、亜鉛カルボキシレート、アルミニウムカルボキシレート、チタンカルボキシレートおよびこれらの化合物の2つ以上の任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの有機金属化合物を含む。好ましくは、触媒は、少なくとも50重量%の前述の触媒、より好ましくは少なくとも80重量%の前述の触媒を含み、さらにより好ましくは少なくとも90重量%の前述の触媒、さらにより好ましくは少なくとも95重量%の前述の触媒を含み、最も好ましくは前述の触媒からなる。よって、最も好ましくは、前述の有機金属化合物のうちの1つ以上以外の他の触媒は、工程a)およびb)において使用されない。
【0012】
少なくとも1つの触媒が、錫カルボキシレート、亜鉛カルボキシレート、アルミニウムカルボキシレート、チタンカルボキシレートおよびこれらの化合物の2つ以上の任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの有機金属化合物を含むかまたはそれからなる場合、良好な結果が特に得られる。より好ましくは、前述のカルボキシレートはすべて、1つ以上のC2~14-カルボキシレート基、より好ましくは1つ以上のC6~14-カルボキシレート基を含有する有機金属化合物である。さらにより好ましくは、少なくとも1つの触媒は、少なくとも1つの錫カルボキシレート、好ましくは1つ以上のC2~14-カルボキシレート基、より好ましくは1つ以上のC6~14-カルボキシレート基を含む錫カルボキシレートを含むかまたはそれからなる。またより好ましくは、少なくとも1つの触媒は、錫オクトエート(すなわち、錫2-エチルヘキサノエート)、錫オキサレートまたはジブチル錫ジラウレートを含むかまたはそれらからなる。最も好ましくは、少なくとも1つの触媒は、錫オクトエートを含むかまたはそれからなる。錫オクトエートは、FDAに承認されているという利点を有する。さらに、錫オクトエートは、ラクチドのポリ乳酸への開環重合反応における触媒として使用されることが多く、本発明による乳酸からラクチドを製造するプロセスと、そのようにして得られたラクチドをポリ乳酸バイオ重合体に反応させるその後のプロセスとを容易に統合することを可能にする。
【0013】
本発明の着想のさらなる発展において、工程a)で反応器に供給される反応混合物中の触媒の含有量は、反応混合物中の乳酸の乾燥含有量に基づいて、0.01~1.00モル%、好ましくは0.02~0.50モル%、より好ましくは0.05~0.30モル%、またより好ましくは0.05~0.20モル%、最も好ましくは0.08~0.12モル%であることが提案される。
【0014】
本発明によれば、工程a)において、乳酸、炭化水素溶媒および少なくとも1つの触媒を反応器システムの反応器に供給して、反応器内で反応混合物を形成する。前述の成分のすべては、1つの混合物として、または互いに別々に反応器に添加されてもよい。さらに、さらなる成分、例えば好ましくは水、および任意選択的に1つ以上のリサイクル流、例えば少量の乳酸および工程d)で得られた水の精製によって得られる副産物を含む水性流が反応器に供給されてもよい。さらに好ましくは、工程a)において1つの混合物として反応器に供給される前に、すべての成分が一緒に混合される。例えば、水中の乳酸の水溶液および1つ以上の任意選択的なリサイクル流が混合されて反応混合物が得られる前に、炭化水素溶媒が触媒と混合されてもよい。
【0015】
好ましくは、工程a)において、乳酸、水、炭化水素溶媒および少なくとも1つの触媒を含む混合物が反応器に供給される。反応混合物の水性部分中の乳酸の含有量は、乳酸および水の合計に基づいて、好ましくは60~80重量%の量であり、反応混合物中の乳酸の含有量は、炭化水素溶媒の含有量に基づいて、好ましくは15~30重量%の量である。
【0016】
原則として、本発明は、触媒と共に均一な触媒に対する前述の溶解度を満たす限り、炭化水素溶媒の化学的性質に関して特に限定されない。
【0017】
さらに、本発明による方法において使用される炭化水素溶媒が、ラクチドに対して高い溶解度を有することが好ましい。より具体的には、炭化水素溶媒中のラクチドの溶解度は、常温、すなわち23℃、ならびに周囲圧力で、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも4重量%、なおより好ましくは少なくとも4.5重量%、またより好ましくは少なくとも6重量%、より好ましくは少なくとも7.5重量%である。
【0018】
良好な結果は、特に、ベンゼンまたはベンゼン誘導体、例えば任意のアルキル置換ベンゼン、例えばトルエン、o-、m-またはp-キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、モノエチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、テトラエチルベンゼン、ペンタエチルベンゼン、ヘキサエチルベンゼン、モノプロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン、トリプロピルベンゼン、プロピルベンゼン、ペンタプロピルベンゼン、ヘキサプロピルベンゼンおよびこれらの組合せにより得られる。
【0019】
本発明の着想のさらなる発展において、炭化水素溶媒は、芳香族炭化水素溶媒、すなわち、それぞれが80~130℃、より好ましくは90~120℃、さらにより好ましくは100~120℃の沸点を有する1種の炭化水素化合物または2種以上の炭化水素化合物の混合物であることが示唆される。
【0020】
最も好ましくは、炭化水素溶媒はトルエンである。トルエンは、非常に高い選択性、すなわちラクチドに対して極めて高い溶解度、および乳酸オリゴマーなどの副産物に対して特に低い溶解度を有するだけでなく、比較的安価であり、特にキシレンおよびイソブチルベンゼンなどの高沸点溶媒よりも著しく安価である。
【0021】
本発明の特定の好ましい実施形態によれば、反応混合物は、本方法の工程b)において、100~180℃の温度、より好ましくは110~160℃の温度、またより好ましくは120~160℃の温度、さらにより好ましくは130~150℃の温度、最も好ましくは135~145℃の温度で反応する。これらの温度は、トルエンが炭化水素溶媒として使用される場合に特に好ましい。
【0022】
さらに、反応混合物は、本方法の工程b)において、0.10~0.40MPaの圧力、より好ましくは0.15~0.30MPaの圧力、さらにより好ましくは0.15~0.25MPaの圧力、さらにより好ましくは0.18~0.22MPaの圧力、最も好ましくは0.19~0.21MPaの圧力で反応することが好ましい。これらの圧力は、トルエンが炭化水素溶媒として使用される場合に特に好ましい。
【0023】
前述の実施形態の両方を組み合わせると、すなわち、反応混合物を100~180℃の温度および0.10~0.40MPaの圧力で、より好ましくは110~160℃の温度および0.15~0.30MPaの圧力で、さらにより好ましくは120~160℃の温度および0.15~0.25MPaの圧力で、さらにより好ましくは130~150℃の温度および0.18~0.22MPaの圧力で、最も好ましくは135~145℃の温度および0.19~0.21MPaの圧力で本方法の工程b)において反応させると、特に良好な結果が得られる。これらの温度および圧力条件は、トルエンが炭化水素溶媒として使用される場合に特に好ましい。これにより、トルエンの前述の溶解度の利点、すなわち、ラクチドの溶解度が非常に高く、副産物の溶解度が非常に低いことは、乳酸のラクチドおよび水への反応の反応速度が温度によって駆動されるため、高温および高圧条件と相まって有利である。
【0024】
本発明は、反応装置システムに含まれる反応器の数および種類に特に限定されない。例えば、反応器は、1つ以上の連続撹拌タンク反応器、1つ以上のループ反応器、1つ以上のプラグフロー反応器および上述の反応器のうちの1つ以上の任意の組合せを含んでもよい。好ましくは、工程a)において乳酸、炭化水素溶媒および少なくとも1つの触媒が供給される反応器システムの反応器は、連続撹拌タンク反応器またはプラグフロー反応器である。最も好ましくは、工程a)において乳酸、炭化水素溶媒および少なくとも1つの触媒が供給される反応器システムの反応器は、連続撹拌タンク反応器である。
【0025】
工程b)における蒸留は、より好ましくは連続撹拌タンク反応器である反応器の上部に配置されるのが好ましい蒸留カラムにおいて実現されてもよい。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、反応器システムは、1つの反応器、すなわちさらなる反応器を含まず、より好ましくは1つの反応器として連続撹拌タンク反応器を含む。この実施形態では、反応混合物を反応器から取り出し、次いで工程d)の分離に供する。
【0027】
本発明の代替的実施形態によれば、反応器システムは、互いに直列の2つの反応器を含む。好ましくは、工程a)において乳酸、炭化水素溶媒および少なくとも1つの触媒が供給される第1の反応器は、連続撹拌タンク反応器であり、第1の反応器の下流の第2の反応器は、連続撹拌タンク反応器またはプラグフロー反応器であり、好ましくは連続撹拌タンク反応器である。この実施形態では、反応混合物が第2の反応器から取り出され、工程d)の分離に供される前に、反応混合物が第1の反応器から取り出され、第2の反応器に導かれる。
【0028】
本発明の着想のさらなる発展において、反応混合物は、工程b)において、反応器システム内で0.1~10時間、好ましくは1~5時間、より好ましくは2~4時間、最も好ましくは2.5~3.5時間反応する。この反応時間は、反応器システムに含まれるすべての反応器内の反応時間の合計である。よって、反応器システムが3つの反応器を含む場合、第1の反応器中の反応混合物の滞留時間+第2の反応器中の反応混合物の滞留時間+第3の反応器中の反応混合物の滞留時間は、反応器システムにおいて工程b)で反応混合物が反応する総時間である。これに関連して、反応は、反応混合物を反応器内で一定の滞留時間インキュベートすることを意味する。
【0029】
前述の実施形態において、特に、本方法の工程b)において、反応混合物を110~160℃の温度および0.15~0.30MPaの圧力で0.1~10時間、より好ましくは120~160℃の温度および0.15~0.25MPaの圧力で1~5時間、さらにより好ましくは130~150℃の温度および0.18~0.22MPaの圧力で2~4時間、最も好ましくは135~145℃の温度および0.19~0.21MPaの圧力で2.5~3.5時間反応させると良好な結果が得られる。
【0030】
本発明の方法の工程d)において、反応混合物が反応器システムから、すなわち反応器システムの最も下流の反応器から取り出された後、ラクチドの少なくとも一部が反応混合物から分離される。これは、結晶化、蒸留、吸収、またはこれらのいずれかの任意の組合せなどの1つ以上の分離技法によってラクチドが有機相から分離される前に、例えば重力によって駆動される反応混合物を、炭化水素溶媒およびラクチドを含有する有機相に、ならびに水および副産物を含有する水性相に分離することによって達成され得る。得られた水性相はまた、純水および副産物を含有する濃縮水性画分を得るために、前述の分離技法の1つ以上などの分離技術のいずれかでさらに精製されてもよい。副産物を含有する濃縮水性画分は、反応器システムへの供給物にリサイクルされ得る。
【0031】
本特許出願の方法の特定の好ましい第1の実施形態によれば、工程d)の反応混合物から、すなわち反応器システムの最も下流の反応器から取り出された反応混合物からのラクチドの少なくとも一部の分離は、以下の下位工程を含む:
d1)第1のベッセル内の反応混合物を有機相と水性相とに分離する工程、
d2)工程d1)で得られた有機相を、液/液抽出工程において水で抽出して、有機相および水性副産物含有相を得る工程、ならびに
d3)蒸留カラム内で工程d2)で得られた有機相をラクチド富化相と炭化水素溶媒富化相とに分離する工程であって、炭化水素溶媒富化相が好ましくは反応器内にリサイクルされる工程。
【0032】
工程d1)で使用される第1のベッセルは、反応混合物が有機相および水性相に駆動される重力を分離するベッセルまたはセトラーであってもよい。
【0033】
好ましくは、液/液抽出工程d2)は、抽出カラム内で実施される。工程d2)で効率的かつ迅速な分離を得るために、本発明の着想のさらなる発展において、工程d2)で使用される液/液抽出カラムは、1つ以上のコアレッサ、好ましくは1つのコアレッサを含むことが提案される。任意の種類の静電コアレッサおよび/または任意の種類の機械的コアレッサなどの、任意の種類のコアレッサをこの目的のために使用することができる。例えば、1つ以上の構造化された波形金属もしくはプラスチックシートを含む機械的コアレッサ、いずれかの相の液滴合一を促進するために表面自由エネルギーが大きく異なる2つの材料を含む機械的コアレッサ、または液体がカートリッジの中心から半径方向外側に流れる、選択された繊維材料で作られたカートリッジを含む機械的コアレッサを使用することができる。工程d2)の抽出中、可能な限り多くの副産物および不純物が水による抽出によって有機相から除去される。好ましくは、工程d1)で得られた有機相は、第1の位置で工程d2)の液/液抽出カラムに供給され、水は、第2の位置で液/液抽出カラムに供給され、第2の位置は、第1の位置の垂直上方にある。
【0034】
工程d3)の間、工程d2)で得られた有機相は、ラクチド画分および炭化水素溶媒画分を得るために蒸留カラムで蒸留される。好ましくは、工程d3)で得られたラクチド画分は、その純度を所望のレベルまで高めるために、少なくとも1つのさらなる蒸留工程でさらに精製される。
【0035】
さらに、本プロセスに必要な炭化水素溶媒の量を最小限にするために、工程d3)で得られた炭化水素溶媒画分がリサイクルされ、工程a)の反応器に供給されることが好ましい。
【0036】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、加水分解ユニットは、液/液抽出カラムの下流に配置され、液/液抽出カラムの出口と流体的に接続され、水性副産物含有相画分は未反応乳酸および乳酸オリゴマーを含み、その結果、加水分解ユニットでのさらなる工程d4)において、乳酸オリゴマーは、より短いオリゴマーおよび乳酸に、またはさらに排他的には乳酸のみに加水分解される。工程d4)の加水分解は、加水分解ユニット内の残留画分に水および乳酸を添加することによって達成され得る。また、加水分解ユニットは、反応速度を高めるために、イオン交換触媒、例えば固体酸触媒または固体塩基触媒、好ましくは固体酸触媒を含んでもよい。
【0037】
好ましくは、液/液抽出工程d2)で得られる水性副産物含有相画分は、加水分解ユニットで好ましい処理に供されるか否かとは無関係に、工程a)でリサイクルされ、反応器に供給される。
【0038】
あるいは、本発明の方法の好ましい第2の実施形態では、工程d)の反応混合物から、すなわち反応器システムの最下流の反応器から取り出された反応混合物からのラクチドの少なくとも一部の分離は、以下の下位工程を含み得る:
d1)第1のベッセル内の反応混合物を有機相と水性相とに分離する工程、
d2)第2のベッセル内で工程d1)で得られた有機相をラクチド画分と炭化水素溶媒画分とに分離する工程、ならびに
d3)第3のベッセル内で工程d1)で得られた水性相を水と、未反応の乳酸および乳酸オリゴマーを含む残留画分とに分離する工程。
【0039】
反応混合物の有機相および水性相への効率的かつ迅速な分離を得るために、本発明の着想のさらなる発展において、工程d1)で使用される第1のベッセルが1つ以上のコアレッサを含むことが提案される。例えば、第1のベッセルは、1つ以上のコアレッサを含むカラムであってもよい。任意の種類の静電コアレッサおよび/または任意の種類の機械的コアレッサなどの、任意の種類のコアレッサをこの目的のために使用することができる。例えば、1つ以上の構造化された波形金属もしくはプラスチックシートを含む機械的コアレッサ、いずれかの相の液滴合一を促進するために表面自由エネルギーが大きく異なる2つの材料を含む機械的コアレッサ、または液体がカートリッジの中心から半径方向外側に流れる、選択された繊維材料で作られたカートリッジを含む機械的コアレッサを使用することができる。1つ以上のコアレッサの代わりに、第1のベッセルは、1つ以上のミキサーセトラーを含んでもよい。
【0040】
本発明のさらに特に好ましい実施形態によれば、工程d1)の分離中、有機相から可能な限り多くの副産物および不純物を除去するために、有機相も水で洗浄される。好ましくは、この目的のために、反応混合物は、第1の位置で工程d1)の第1のベッセルに供給され、水は、第2の位置で工程d1)の第1のベッセルに供給され、1つ以上の液体分配器によって第1のベッセルの断面平面にわたって分配され、第2の位置は、第1の位置の垂直上方にある。これにより、上方に流れる有機相、すなわち軽相が水で洗浄され、その結果、水溶性副産物および乳酸オリゴマーなどの不純物が有機相から洗い流される。
【0041】
本発明のさらなる実施形態によれば、工程d2)で使用される第2のベッセルは蒸留カラムであり、その中で有機相を蒸留してラクチド画分および炭化水素溶媒画分を得る。
【0042】
工程d2)で得られたラクチド画分は、その純度を所望のレベルまで高めるために、少なくとも1つのさらなる蒸留工程でさらに精製することができる。
【0043】
好ましくは、工程d2)で得られた炭化水素溶媒画分は、本プロセスに必要な炭化水素溶媒の量を最小限に抑えるために、工程a)でリサイクルされ、反応器に供給される。
【0044】
特に、工程d3)で良好な結果が得られ、工程d3)で使用される第3のベッセルが蒸留カラムであり、水性相が蒸留カラムで蒸留されて、未反応の乳酸および乳酸オリゴマーを含む水および残留画分が得られる。あるいは、水の除去ならびに未反応乳酸およびそのオリゴマーの回収のために逆浸透(RO)膜ユニットを使用することができる。
【0045】
本発明の特定の好ましい実施形態によれば、加水分解ユニットは、未反応の乳酸および乳酸オリゴマーを含む画分の出口と流体接続された第1または第3のベッセルの下流に配置され、その結果、加水分解ユニットのさらなる工程d4)において、乳酸オリゴマーは、より短いオリゴマーおよび乳酸に、またはらに排他的には乳酸のみに加水分解される。工程d4)の加水分解は、加水分解ユニット内の残留画分に水および乳酸を添加することによって達成され得る。また、加水分解ユニットは、反応速度を高めるために、イオン交換触媒、例えば固体酸触媒または固体塩基触媒、好ましくは固体酸触媒を含んでもよい。
【0046】
好ましくは、工程d3)で得られた未反応乳酸および乳酸オリゴマーを含む残留画分、またはさらにより好ましくは、工程d4)で得られた未反応乳酸を含む残留画分は、工程a)でリサイクルされ、反応器に供給される。
【0047】
本特許出願のさらに特定の好ましい実施形態によれば、工程c)における共沸物からの水の少なくとも一部の分離は、以下の下位工程を含む:
c1)工程b)で反応器から取り出された共沸物を凝縮させて液体流を得る工程、
c2)工程c1)で得られた液体流を、反応器の上部の蒸留カラムにリサイクルされる炭化水素溶媒に富む画分と、水に富む画分とに分離する工程。
【0048】
工程c2)の分離は、デカントによって、1つ以上のコアレッサを使用することによって、吸着によって、蒸留によって、または任意の他の好適な分離技術によって実施することができる。好ましくは、工程c2)の分離は、それぞれベッセルまたはセトラー内でのデカンテーションによって行われる。
【0049】
さらに、本発明による方法の前述の特に好ましい第1の実施形態では、工程c2)で得られた水に富む画分を単独で、または工程d1)で得られた水性相と共に、抽出剤として液/液抽出工程に供給することが好ましい。
【0050】
あるいは、工程c)で実施される共沸物からの水の少なくとも一部の分離は、以下の下位工程を含み得る:
c1)共沸物を部分的または完全に冷却し、液体流を得る工程であって、液体流溶媒の一部が反応器の上部の蒸留カラムにリサイクルされる工程、
c2)反応器にリサイクルされなかった液体流の一部を、水に富む画分と、炭化水素溶媒に富む画分とに分離する工程。
【0051】
工程c2)の分離は、デカントによって、1つ以上のコアレッサを使用することによって、吸着によって、蒸留によって、または任意の他の好適な分離技術によって実施することができる。好ましくは、工程c2)の分離はデカンテーションによって行われる。
【0052】
さらに、本発明による方法の前述の特に好ましい第2の実施形態では、工程c2)で得られた炭化水素に富む溶媒に富む画分を単独で、または工程d1)で得られた有機相と共に、工程d2)の第2のベッセルに供給することが好ましい。
【0053】
さらに、工程c2)で得られた水に富む画分を単独で、または本発明による方法の前述の特に好ましい第1の実施形態では、工程d2)で得られた水性副産物含有相と一緒に、または本発明による方法の前述の特に好ましい第2の実施形態では、工程d1)で得られた水性相と一緒に、工程d3)の第3のベッセルに供給することが好ましい。
【0054】
上記のように、本発明による方法は柔軟であり、バッチ式で、半連続的または連続的に実施することができる。好ましくは、本方法は連続的に実施される。
【0055】
本発明の別の態様は、乳酸からラクチドを製造するためのプラントであって、
-少なくとも1つの反応器を含む反応器システムであって、蒸留カラムが、反応器内の作動中に生じた蒸気を水と炭化水素との共沸物に蒸留することができるように反応器の上部に配置され、蒸留カラムが、水と炭化水素溶媒との共沸物用の出口ラインを含み、反応器システムが、供給ラインおよび反応混合物用の出口ラインを含む反応器システム、
-蒸留カラムの水と炭化水素との共沸物用の出口ラインに接続されており、出口ラインを通って除去された共沸物から水の少なくとも一部を分離するための分離器、ならびに
-反応混合物用の出口ラインに接続されている分離器
を含むプラントである。
【0056】
本発明の好ましい実施形態によれば、本プラントの反応器システムは、連続撹拌タンク反応器である1つの反応器を含み、その上部に蒸留カラムが配置される。好ましくは、コンデンサーは、出口ラインと分離器との間に配置され、分離器は、好ましくは、分離器内で分離された炭化水素溶媒を蒸留カラムにリサイクルするためのリサイクルラインを含む。
【0057】
本発明の代替的実施形態によれば、本プラントの反応器システムは、互いに直列の2つの反応器を含み、供給ラインがつながる第1の反応器は連続撹拌タンク反応器であり、その上部に蒸留カラムが配置され、第1の反応器の下流の第2の反応器は連続撹拌タンク反応器またはプラグフロー反応器であり、好ましくは連続撹拌タンク反応器であり、その上部に蒸留カラムが配置され、両方の反応器は、作動中に反応混合物を第1の反応器から第2の反応器に除去するようにラインを介して接続されている。この実施形態では、蒸留カラムの各々は、水と炭化水素溶媒との共沸物用の出口ラインを含み、反応混合物用の出口ラインは、第2の連続撹拌タンク反応器に配置される。第1の蒸留カラムの水と炭化水素溶媒との共沸物用の出口ラインは、出口ラインを通って除去された共沸物から水の少なくとも一部を分離するための分離器と接続され、一方、第2の蒸留カラムの水と炭化水素溶媒との共沸物用の出口ラインは、出口ラインを通って除去された共沸物から水の少なくとも一部を分離するための別の分離器と接続されている。好ましくは、コンデンサーは、各出口ラインと分離器との間に配置され、各分離器は、好ましくは、分離器内で分離された炭化水素溶媒を蒸留カラムにリサイクルするためのリサイクルラインを含む。
【0058】
本発明の着想のさらなる発展において、反応混合物の出口ラインに接続されている分離器は、反応混合物が有機相および水性相に駆動される重力を分離するベッセルまたはセトラーであることが示唆される。
【0059】
あるいは、特に本発明の方法の前述の好ましい第2の実施形態が工程d)に使用される場合、反応混合物の出口ラインに接続されている分離器は、1つ以上のコアレッサを含んでもよい。例えば、分離器は、1つ以上のコアレッサを含むカラムであってもよい。任意の種類の静電コアレッサおよび/または任意の種類の機械的コアレッサなどの、任意の種類のコアレッサをこの目的のために使用することができる。例えば、1つ以上の構造化された波形金属もしくはプラスチックシートを含む機械的コアレッサ、いずれかの相の液滴合一を促進するために表面自由エネルギーが大きく異なる2つの材料を含む機械的コアレッサ、または液体がカートリッジの中心から半径方向外側に流れる、選択された繊維材料で作られたカートリッジを含む機械的コアレッサを使用することができる。本発明の方法の前述の好ましい第2の実施形態の工程d1)の分離中に有機相を水で洗浄できるようにするために、反応混合物の出口ラインは、第1の位置で分離器に通じ、水入口ラインは、第2の位置で分離器に通じ、第2の位置は、第1の位置の垂直上方にあり、水入口ラインは、分離器の断面平面にわたって水を分配するための分配器に接続されていることが好ましい。
【0060】
本特許出願のプラントの特定の好ましい第1の実施形態によれば、乳酸からラクチドを製造するためのプラントは、
-上部に蒸留カラムが配置された連続撹拌タンク反応器と、連続撹拌タンク反応器の下流に、上部に蒸留カラムが配置されたさらなる連続撹拌タンク反応器とを含む反応器システムであって、両反応器が、作動中に反応混合物を連続撹拌タンク反応器から連続撹拌タンク反応器に除去するようにラインを介して接続され、蒸留カラムはそれぞれ、水と炭化水素溶媒との共沸物用の出口ラインを含み、反応器システムは、供給ラインおよび反応混合物用の出口ラインを含む反応器システム、
-反応混合物用の出口ラインに接続されている第1の分離器であって、それぞれ、水性相用の出口ラインおよび有機相用の出口ラインを含むベッセルまたはセトラーである第1の分離器、
-水に富む流れ用の入口ラインと、第1の分離器の有機相用の出口ラインに接続されている入口ラインと、有機相用の出口ラインと、水性副産物含有相用の出口ラインとを含む液/液抽出カラムであって、好ましくは1つ以上の静電コアレッサおよび/または1つ以上の機械的コアレッサを含む液/液抽出カラム、
-連続撹拌タンク反応器の共沸物用の出口ラインに接続されているコンデンサーおよびその下流の分離器、ならびにさらなる連続撹拌タンク反応器の共沸物用の出口ラインに接続されているコンデンサーおよびその下流の分離器であって、分離器の各々が、対応する連続撹拌タンク反応器の上部で蒸留カラムに戻るリサイクルライン、および水に富む画分用の出口ラインを含み、水に富む画分用の出口ラインの一方または両方から分岐するラインが、液/液抽出カラムの水に富む流れ用の入口ラインに接続されているコンデンサーおよびその下流の分離器、
-さらなる蒸留カラムであって、液/液抽出カラムの有機相用の出口ラインに接続されている入口ライン、ラクチド用の出口ライン、および炭化水素溶媒用の出口ラインを含み、好ましくは炭化水素溶媒用の出口ラインが反応器システムの供給ラインに接続されている蒸留カラム
を含む。
【0061】
特定の好ましい第1の実施形態のプラントは、好ましくは、上述のさらなる蒸留カラムのラクチド用の出口ラインに接続されている入口ラインを含む別の蒸留カラムをさらに含み、蒸留カラムは、ラクチド用の出口ラインおよび炭化水素溶媒用の出口ラインをさらに含む。
【0062】
本発明の着想のさらなる発展において、液/液抽出カラムの加水分解ユニットが、液/液抽出カラムの水性副産物含有相用の出口ラインに接続されていることが示唆される。加水分解ユニットは、i)水用の入口ラインおよびii)乳酸用の入口ラインまたは水と乳酸との混合物用の入口ラインを含み得る。加えて、加水分解ユニットは、固体酸触媒などのイオン交換触媒を含んでもよい。さらに、加水分解ユニットは、乳酸および乳酸オリゴマー含有流用の出口ラインを含むことができ、出口ラインは反応器システムの供給ラインと接続されていてもよい。
【0063】
あるいは、本発明のプラントの好ましい第2の実施形態では、乳酸からラクチドを製造するためのプラントは、
-上部に蒸留カラムが配置された連続撹拌タンク反応器と、連続撹拌タンク反応器の下流に、上部に蒸留カラムが配置されたさらなる連続撹拌タンク反応器とを含む反応器システムであって、両方の反応器は、作動中に反応混合物を連続撹拌タンク反応器から連続撹拌タンク反応器に除去するようにラインを介して接続され、蒸留カラムはそれぞれ、水と炭化水素溶媒との共沸用の出口ラインを含み、反応器システムは、供給ラインと反応混合物用の出口ラインとを含む反応器システム、
-反応混合物用の出口ラインに接続されている第1の分離器であって、1つ以上の静電コアレッサおよび/または1つ以上の機械的コアレッサを含むカラムであり、反応混合物用の出口ラインは、第1の位置でカラムに通じ、水入口ラインは、第2の位置で分離器に通じ、第2の位置は、第1の位置の垂直上方にあり、水入口ラインは、分離器の断面平面にわたって水を分配するための分配器に接続され、カラムは、有機相用の出口ラインおよび水性相用の出口ラインをさらに含む第1の分離器、
-水に富む画分および炭化水素溶媒に富む画分を得るために、共沸物用の出口ラインを通って除去された共沸物から水の少なくとも一部を分離するための蒸留カラムからの出口ラインと接続されている第2の分離器であって、水に富む画分用の出口ラインおよび炭化水素溶媒に富む画分用の出口ラインを含む第2の分離器、ならびに
-第1の分離器の有機相用の出口ラインと接続されている入口ラインを含み、第2の分離器の炭化水素溶媒に富む画分用の出口ラインと接続されている入口ラインを含むさらなる蒸留カラムであって、ラクチド用の出口ラインおよび炭化水素溶媒用の出口ラインを含み、炭化水素溶媒用の出口ラインが好ましくは反応器システムの供給ラインに接続されているさらなる蒸留カラム
を含む。
【0064】
前述の好ましい第2の実施形態のプラントは、好ましくは、第1の分離器の水性相用の出口ラインと接続されており、且つ第2の分離器の水に富む画分用の出口ラインと接続されている入口ラインを含む別の蒸留カラムをさらに含み、蒸留カラムは、水用の出口ラインおよび水性副産物含有相用の出口ラインをさらに含む。水性副産物含有相用の出口ラインは、反応器システムの供給ラインに接続されてもよい。
【0065】
本発明のこの好ましい第2の実施形態の着想のさらなる発展において、加水分解ユニットは他の蒸留カラムの下流に配置されており、加水分解ユニットは水性副産物含有相の出口ラインに接続されている。加水分解ユニットは、水用の入口ラインおよび乳酸用の入口ラインまたは水と乳酸との混合物用の入口ラインを含み得る。加えて、加水分解ユニットは、固体酸触媒などのイオン交換触媒を含んでもよい。さらに、加水分解ユニットは、乳酸および乳酸オリゴマー含有流用の出口ラインを含むことができ、出口ラインは反応器システムの供給ラインと接続されていてもよい。
【0066】
好ましくは、前述の好ましい第2の実施形態のプラントは、第3の蒸留カラムをさらに含み、第3の蒸留カラムは、第1の蒸留カラムのラクチド用の出口ラインと接続されている入口ラインを含み、ラクチド用の出口ライン、炭化水素溶媒用の出口ライン、およびパージ用の出口ラインを含む。
【0067】
次に、本発明を、限定するものではないが例示的な図によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】本発明の一実施形態によるプラントの概略図を示す。
【
図2】本発明の別の実施形態によるプラントの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1に示されているプラント10は、第1の連続撹拌タンク反応器14と、第1の連続撹拌タンク反応器14の下流に第2の連続撹拌タンク反応器16とを含む反応器システム12を含む。両方の反応器14、16は、プラント10の作動中に第1の連続撹拌タンク反応器14からの反応混合物が第2の連続撹拌タンク反応器16に導かれるようにライン20を介して接続されている。第1の連続撹拌タンク反応器14の上部には、水と炭化水素溶媒との共沸物用の出口ライン22を含む(第1の)蒸留カラム18が配置されている。同様に、第2の連続撹拌タンクの上部には、水と炭化水素溶媒との共沸物用の出口ライン22’を含む別の(第2の)蒸留カラム19が配置されている。反応器システム12は、供給ライン24および反応混合物用の出口ライン26を含み、供給ライン24は、乳酸オリゴマーおよび乳酸などの反応の副産物を含むリサイクルされた水性画分を有する乳酸/水混合物の混合物用のライン34、触媒用の入口ライン30、および炭化水素溶媒用の入口ライン32と接続されている。
【0070】
反応器システム12の下流には、第1の分離器35が配置されており、これは、第2の連続撹拌タンク反応器16からの反応混合物用の出口ライン26と接続され、第1の分離器35は、有機相用の出口ライン36および水性相用の出口ライン37を含む。さらに、プラント10は、機械的コアレッサ38を含む液/液抽出カラム42を含み、液/液抽出カラム42は、出口ライン36が第1の位置で液/液抽出カラム42の下部に通じるように、第1の分離器35の有機相用の出口ライン36に接続されている。さらに、液/液抽出カラム42は、水に富む画分用の入口ライン40を含み、これは、第1の位置の垂直上方にある第2の位置で液/液抽出カラム42につながる。さらに、液/液抽出カラム42は、有機相用の出口ライン44および水性相用の出口ライン46を含み、水性相用の出口ライン46は、リサイクルライン84への水性相用の出口ライン37と組み合わされる。リサイクルライン84は撹拌ベッセル83に通じており、撹拌ベッセルはまた、乳酸/水混合物用の入口ライン28および乳酸/水混合物とリサイクルされた水性画分との混合物用の(出口)ライン34に接続されている。
【0071】
さらに、プラント10は、第2の分離器48、48’として、コンデンサー49、49’を介して共沸物用の出口ライン22、22’を通って除去された共沸物から水の少なくとも一部を分離するために、一方の48が第1の蒸留カラム18の出口ライン22と接続されており、他方の48’が第2の蒸留カラム19の出口ライン22’と接続されている2つのセトラーを含む。セトラー48、48’の各々は、コンデンサー49、49’およびそれぞれの蒸留カラム18、19の頂部に戻るライン52、52’に接続されている。それにより、プラント10の作動中、出口ライン22を介して第1の蒸留カラム18から取り出される共沸物は、セトラー48内で水に富む画分と炭化水素溶媒に富む画分とに分離し、これはライン52を介して第1の蒸留カラム18に戻される。同様に、出口ライン22’を介して第2の蒸留カラム19から取り出される共沸物は、セトラー48’内で水に富む画分と炭化水素溶媒に富む画分とに分離し、これはライン52’を介して第2の蒸留カラム19に戻される。セトラー48、48’から取り出される両方の水に富む画分は、水に富む画分用のライン50で組み合わされ、残りのライン78が(第3の)分離器76につながる前に、ライン40から分岐される。第3の分離器76は、有機相用の出口ライン82および水用の出口ライン80を含む。
【0072】
さらに、プラント10は、液/液抽出カラム42の有機相用の出口ライン44と接続されている入口ライン58を含む第3の蒸留カラム56を含む。第3の蒸留カラム56は、ラクチド用の出口ライン62および炭化水素溶媒用の出口ライン64を含む。炭化水素溶媒用の出口ライン64は、コンデンサー66を介して、リサイクルライン68を介して、バッファータンク70を介しておよびライン32を介して反応器システム12の供給ライン24に接続されている。また、バッファータンク74からの新鮮な炭化水素溶媒用の入口ライン72がバッファータンク70に通じている。
【0073】
最後に、プラント10は、第4の蒸留カラム86をさらに含み、第4の蒸留カラムは、第3の蒸留カラム56のラクチド用の出口ライン62と接続されている入口ライン87を含み、ラクチド用の出口ライン88、炭化水素溶媒用の出口ライン90およびパージ用の出口ライン92を含む。
【0074】
プラント10の作動中、水、乳酸、触媒および炭化水素溶媒を含む反応混合物は、供給ライン24を介して第1の連続撹拌タンク反応器14に供給される。反応混合物に含有される乳酸は、第1の連続撹拌タンク反応器14内でラクチドおよび水に反応し、反応中、水と炭化水素溶媒との共沸物が第1の蒸留カラム18内で蒸留され、第1の蒸留カラム18から出口ライン22を取り出される。第1の連続撹拌タンク反応器14の反応混合物は、第1の連続撹拌タンク反応器14から連続的に取り出され、ライン20を介して第2の連続撹拌タンク反応器16に導かれ、ここで反応が継続される。反応中、水と炭化水素溶媒との共沸物が第2の蒸留カラム19で蒸留され、これは出口ライン22’を介して第2の蒸留カラム19から取り出される。第2の連続撹拌タンク反応器16の反応混合物は、第2の連続撹拌タンク反応器16から連続的に取り出され、ライン26を介して第1の分離器35のカラムに導かれる。反応混合物は、第1の分離器35内で、反応からの水および副産物/不純物を含む水性相と、有機相とに分離される。さらに、ライン22、22’を介して第1および第2の蒸留カラム18、19から取り出される水と炭化水素溶媒との共沸物は、コンデンサー49、49’で凝縮され、そこからそれぞれ第2の分離器またはセトラー48、48’に導かれる。出口ライン22を介して第1の蒸留カラム18から取り出された共沸物は、セトラー48内で水に富む画分と炭化水素溶媒に富む画分とに分離し、これはライン52を介して第1の蒸留カラム18に戻され、出口ライン22’を介して第2の蒸留カラム19から取り出された共沸物は、セトラー48’内で水に富む画分と炭化水素溶媒に富む画分とに分離し、これはライン52’を介して第2の蒸留カラム19に戻される。セトラー48、48’から取り出される両方の水に富む画分は、水に富む画分用のライン50で結合し、そこから一部は抽出剤としてライン40を介して液/液抽出カラム42に導かれ、その残りの部分はライン78を介して第3の分離器76に導かれる。水に富む画分は、第3の分離器76において、ライン82を介して取り出される有機相と、ライン80を介して取り出される純水とに分離する。加えて、第1の分離器35で得られた有機相はライン36を介して液/液抽出カラム42に供給され、ライン40を介して液/液抽出カラム42に水が供給されることにより、液/液抽出カラム42で有機相が抽出される。ライン46を介して液/液抽出カラム42から取り出される水性副産物含有相は、リサイクルライン84、撹拌タンク83ならびにライン34および24を介してライン37を介して第1の分離器35から取り出される水性相と共に第1の連続撹拌タンク反応器14に供給される。撹拌タンク83では、ライン46を介して液/液抽出カラム42から取り出される水性副産物含有相画分に含有される乳酸オリゴマーは、より短いオリゴマーおよび乳酸に、またはさらに排他的に乳酸のみに加水分解される。ライン44を介して液/液抽出カラム42から取り出されている精製有機相は、ライン58を介して第3の蒸留カラム56に供給される。炭化水素溶媒に富む画分は、第3の蒸留カラム56で炭化水素溶媒画分およびラクチド画分に分離される。ラクチド画分はライン62を介して第3の蒸留カラム56から取り出され、下流の蒸留カラム86でさらに精製されるが、炭化水素溶媒に富む画分はライン64を介して第3の蒸留カラム56から取り出され、コンデンサー66で凝縮され、ライン68、バッファータンク70、ライン32および供給ライン24を介して第1の連続撹拌タンク反応器14に部分的に戻される。
【0075】
図2に示されているプラント10は、第1の連続撹拌タンク反応器14と、第1の連続撹拌タンク反応器14の下流に第2の連続撹拌タンク反応器16とを含む反応器システム12を含む。両方の反応器14、16は、プラント10の作動中に第1の連続撹拌タンク反応器14からの反応混合物が第2の連続撹拌タンク反応器16に導かれるようにライン20を介して接続されている。第1の連続撹拌タンク反応器14の上部には、水と炭化水素溶媒との共沸物用の出口ライン22を含む(第1の)蒸留カラム18が配置されている。同様に、第2の連続撹拌タンクの上部には、水と炭化水素溶媒との共沸物用の出口ライン22’を含む別の(第2の)蒸留カラム19が配置されている。反応器システム12は、供給ライン24および反応混合物用の出口ライン26を備え、供給ライン24は、乳酸/水混合物用の入口ライン28、触媒用の入口ライン30、炭化水素溶媒用の入口ライン32、および乳酸オリゴマーおよび乳酸などの反応の副産物を含む水性画分用のリサイクルライン84と接続されている。
【0076】
反応器システム12の下流には、第1の分離器35が配置されており、第1の分離器は、第2の連続撹拌タンク反応器16からの反応混合物用の出口ライン26と接続され、出口ライン26は、第1の位置で第1の分離器35の下部に通じている。より具体的には、第1の分離器35は、三つの機械的コアレッサ38、38’、38”を含むカラムである。さらに、第1の分離器35は、第1の位置の垂直上方にある第2の位置で第1の分離器35のカラムに通じる洗浄水用の入口ライン94を含む。第1の分離器35のカラムは、プラント10の作動中に第1の分離器35のカラムに導入された水を第1の分離器35の断面にわたって分配する液体分配器96を含む。さらに、第1の分離器35のカラムは、有機相用の出口ライン44および水性相用の出口ライン37を含む。
【0077】
さらに、プラント10は、プラント10の作動中に水に富む画分および炭化水素溶媒に富む画分を得るために、コンデンサー49、49’を介して共沸物用の出口ライン22、22’を通って除去された共沸物から水の少なくとも一部を分離するために、蒸留カラム18、19からの出口ライン22、22’と接続されているセトラーを第2の分離器48として含む。水に富む画分は、出口ライン50を通って第2の分離器48から取り出されるが、炭化水素溶媒に富む画分は、バッファータンク54に接続された出口ライン52を通って第2の分離器48から取り出される。
【0078】
さらに、プラント10は、第3の蒸留カラム56を含み、第3の蒸留カラム56は、第1の分離器35の有機相用の出口ライン44と接続されている入口ライン58を含む。また、入口ライン58は、炭化水素溶媒に富む画分用のバッファータンク54の出口ライン60に接続されている。第3の蒸留カラム56は、ラクチド用の出口ライン62および炭化水素溶媒用の出口ライン64を含む。炭化水素溶媒用の出口ライン64は、コンデンサー66を介して、リサイクルライン68を介して、バッファータンク70を介しておよびライン32を介して反応器システム12の供給ライン24に接続されている。また、バッファータンク74からの新鮮な炭化水素溶媒用の入口ライン72がバッファータンク70に通じている。
【0079】
加えて、プラント10は、第4の蒸留カラム86をさらに含み、第4の蒸留カラムは、第3の蒸留カラム56のラクチド用の出口ライン62と接続されている入口ライン87を含み、ラクチド用の出口ライン88、炭化水素溶媒用の出口ライン90およびパージ用の出口ライン92を含む。
【0080】
最後に、プラント10は、第5の蒸留カラム98をさらに含み、これは、第1の分離器35のカラムの水性相用の出口ライン37と接続されており、且つ第2の分離器48の水に富む画分用の出口ライン50と接続されている入口ライン100を含む。第5の蒸留カラム98は、水用の出口ライン80および水性副産物含有相用の出口ライン102をさらに含む。第5の蒸留カラム98の下流には加水分解ユニット83が配置さており、これはライン104を介して出口ライン102に接続され、第5の蒸留カラム98に戻る出口ライン85をさらに含む。出口ライン102は、反応器システム12の供給ライン24との反応の副産物を含む水性画分のリサイクルライン84を介してさらに接続されている。
【0081】
プラント10の作動中、水、乳酸、触媒および炭化水素溶媒を含む反応混合物は、供給ライン24を介して第1の連続撹拌タンク反応器14に供給される。反応混合物に含有される乳酸は、第1の連続撹拌タンク反応器14内でラクチドおよび水に反応し、反応中、水と炭化水素溶媒との共沸物が第1の蒸留カラム18内で蒸留され、第1の蒸留カラム18から出口ライン22を取り出される。第1の連続撹拌タンク反応器14の反応混合物は、第1の連続撹拌タンク反応器14から連続的に取り出され、第2の連続撹拌タンク反応器16に導かれ、ここで反応が継続される。反応中、水と炭化水素溶媒との共沸物が第2の蒸留カラム19で蒸留され、これは出口ライン22’を介して第2の蒸留カラム19から取り出される。第2の連続撹拌タンク反応器16の反応混合物は、第2の連続撹拌タンク反応器16から連続的に取り出され、ライン26を介して第1の分離器35のカラムに導かれる。反応混合物は、第1の分離器35において、反応からの水および副産物/不純物を含む水性相と、有機相とに分離され、水がライン94を介して第1の分離器35のカラムに供給され、液体分配器96によって第1の分離器35の断面平面にわたって分配されることによって洗浄される。さらに、ライン22、22’を介して第1および第2の蒸留カラム18、19から取り出される水と炭化水素溶媒との共沸物は、コンデンサー49、49’で凝縮される。それによって得られた流れの一部は蒸留カラム18、19にリサイクルされるが、流れの残りの部分はそれぞれ第2の分離器48またはセトラーに導かれる。第2の分離器48において、流れは水に富む画分と炭化水素溶媒に富む画分とに分離する。水に富む画分は、出口ライン50を介して第2の分離器48から取り出されるが、炭化水素溶媒に富む画分は、ライン58を介して第1の分離器35で得られた有機相と共に、出口ライン52を介してバッファータンク54を介して第2の分離器48から第3の蒸留カラム56に取り出される。炭化水素溶媒に富む画分は、第3の蒸留カラム56で炭化水素溶媒画分およびラクチド画分に分離される。ラクチド画分はライン62を介して第3の蒸留カラム56から取り出され、下流の蒸留カラム86でさらに精製されるが、炭化水素溶媒に富む画分はライン64を介して第3の蒸留カラム56から取り出され、コンデンサー66で凝縮され、ライン68、バッファータンク70、ライン32および供給ライン24を介して第1の連続撹拌タンク反応器14に戻される。出口ライン50を介して第2の分離器48から取り出される水に富む画分は、ライン100を介して第1の分離器35のカラムから蒸留カラム98に取り出される水性相と共に導かれる。水はライン80を介して蒸留カラム98から除去されるが、水性副産物含有相は蒸留カラム98から部分的にライン102を介して加水分解ユニット83に導かれ、そこからライン85を介して蒸留カラム98に戻され、水性副産物含有相の残りの部分はライン102、84、24を介して第1の連続撹拌タンク反応器14に導かれる。乳酸オリゴマーは、加水分解ユニット83内でより短い乳酸オリゴマーおよび/または乳酸と反応し、よって、ライン84、24を介して第1の連続撹拌タンク反応器14にリサイクルされる乳酸オリゴマーのサイズおよび量を低減少させる。
【符号の説明】
【0082】
10 プラント
12 反応器システム
14 第1の反応器/連続撹拌タンク反応器
16 第2の反応器/連続撹拌タンク反応器
18 (第1の)蒸留カラム
19 (第2の)蒸留カラム
20 反応混合物用のライン
22、22’ 共沸物用の出口ライン
24 連続撹拌タンク反応器への供給ライン
26 反応混合物用の出口ライン
28 乳酸/水混合物用の入口ライン
30 触媒用の入口ライン
32 炭化水素溶媒用の入口ライン
34 乳酸/水混合物とリサイクル水性画分との混合物用の(出口)ライン
35 第1のベッセル/第1の分離器
36 有機相用の出口
37 水性相用の出口
38、38’、38” 機械的コアレッサ
40 水に富む画分用の入口ライン
42 液/液抽出カラム
44 有機相用の出口ライン
46 副産物含有相用の出口ライン
48、48’ 第2の分離器/セトラー
49、49’ コンデンサー
50 水に富む画分用のライン
52、52’ 炭化水素溶媒に富む画分用の出口ライン
54 バッファータンク
56 第3の蒸留カラム
58 第3の蒸留カラムの入口ライン
60 バッファータンクの出口ライン
62 ラクチド用の出口ライン
64 炭化水素溶媒用の出口ライン
66 コンデンサー
68 リサイクルライン
70 バッファータンク
72 新鮮な炭化水素溶媒用の入口ライン
74 バッファータンク
76 残留溶媒および他の不純物の(第3の)分離器
78 水に富む画分の分離器への入口ライン
80 水用の出口ライン
82 有機相用の出口ライン
83 撹拌ベッセル/加水分解ユニット
84 リサイクルライン
85 加水分解ユニットからの出口ライン
86 (第4の)蒸留カラム
87 第4の蒸留カラムへの入口ライン
88 ラクチド用の出口ライン
90 炭化水素溶媒用の出口ライン
92 パージ用の出口ライン
94 新鮮な水用の入口ライン
96 液体分配器
98 第5の蒸留カラム
100 入口ライン
102 水性副産物含有相用の出口ライン
104 加水分解ユニットへのライン
【国際調査報告】