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特表2024-530678自動揺動のための、乳母車、フレーム、及び、方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】自動揺動のための、乳母車、フレーム、及び、方法
(51)【国際特許分類】
   B62B 9/22 20060101AFI20240816BHJP
   B62B 9/08 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B62B9/22
B62B9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508454
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2022071972
(87)【国際公開番号】W WO2023016922
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102021120796.7
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505222381
【氏名又は名称】サイベックス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スパウアー ジリ
【テーマコード(参考)】
3D051
【Fターム(参考)】
3D051AA02
3D051AA08
3D051BA02
3D051BA05
3D051BB07
3D051CA02
3D051CE10
3D051CG04
3D051DD14
(57)【要約】
乳母車において、当該乳母車を駆動するためのプッシャ(11)及び車輪(12)を有するフレーム(10)と、当該車輪(12)のうちの少なくとも1つに駆動接続された駆動装置(13)と、少なくとも1つの車輪(12)用であって、車輪の自由回転を伴った駆動状態、及び、少なくとも1つの被制動車輪(12)を伴った被制動状態、へ移行可能である、制動デバイス(14)と、を備え、当該駆動装置(13)が、当該乳母車の自動揺動機能のために作動されることが可能である、乳母車であって、当該乳母車の自動揺動のために、当該制動デバイス(14)によって制動された当該車輪(12)が、当該被制動状態において車輪周方向の両方に、限定された程度まで回転可能である、乳母車。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳母車を駆動するためのプッシャ(11)及び車輪(12)を有するフレーム(10)と、前記車輪(12)のうちの少なくとも1つに駆動接続された駆動装置(13)と、少なくとも1つの車輪(12)用であって、車輪の自由回転を伴った駆動状態、及び、少なくとも1つの被制動車輪(12)を伴った被制動状態、へ移行可能である、制動デバイス(14)と、を備え、前記駆動装置(13)が、前記乳母車の自動揺動機能のために作動可能であり、
前記乳母車の自動揺動のために、前記制動デバイス(14)によって制動された前記車輪(12)を、前記被制動状態において車輪周方向の両方に、限定された程度まで回転させることが可能である、乳母車。
【請求項2】
前記制動デバイス(14)が、パーキングブレーキを備えている、請求項1に記載の乳母車。
【請求項3】
前記制動デバイス(14)が、異なる車輪角度位置においていくつかの制動位置を有し、前記制動位置の各々が、前記被制動車輪(12)の、両方の車輪周方向における、限定された前記回転を可能にする、請求項1又は2に記載の乳母車。
【請求項4】
前記制動デバイス(14)が、係合手段(15)、及び/又は、係合凹部、特に、係合開口部(16)、を有し、前記係合手段(15)、及び/又は、前記係合凹部、特に、前記係合開口部(16)が、制動のために、前記それぞれの車輪(12)の、対応する係合開口部(16)又は対応する係合手段(15)と相互作用する、請求項1から3のいずれか一項に記載の乳母車。
【請求項5】
前記車輪周方向において遊びを形成するために、前記係合凹部、特に、前記係合開口部(16)、の内周が、前記係合手段(15)の外周よりも大きい、請求項4に記載の乳母車。
【請求項6】
前記係合手段(15)が、ピンを備え、前記係合凹部、特に、前記係合開口部(16)が、対応するピン差込口を備え、前記ピン差込口が、前記ピンの直径よりも大きな長さを有する、請求項4又は5に記載の乳母車。
【請求項7】
前記ピン差込口が、車輪の部分周に沿って長手方向に延在する、請求項6に記載の乳母車。
【請求項8】
前記駆動装置(13)が、少なくとも1つのモータ(17)、特に、電気モータと、少なくとも1つのエネルギ源、特に、バッテリ又は蓄電池と、少なくとも1つのセンサ及び/又は制御ユニットと、を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の乳母車。
【請求項9】
前記モータ(17)が、前記フレーム(10)の後車軸上に配置されているか、又は、ハブモータとして設計されている、請求項8に記載の乳母車。
【請求項10】
前記駆動装置(13)、或いは、特に、前記モータ(17)及び/又は前記蓄電池を備えた前記駆動装置(13)の一部が、取り外し可能モジュールとして設計されている、請求項8又は9に記載の乳母車。
【請求項11】
前記制御ユニットが、検出されたデータの解析と、前記モータ(17)の制御と、のために設計されていることを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載の乳母車。
【請求項12】
- 前記乳母車の被制動状態が検出され、
- 前記揺動機能が作動すると、前記乳母車の揺動距離を、駆動装置(13)により前後に自動的に動かされ、
- 前記揺動距離の始点及び終点のそれぞれが、少なくとも1つの車輪(12)のブロックにより限定される、
ような方式で、前記制御ユニットが構成されている、請求項8から11のいずれか一項に記載の乳母車。
【請求項13】
前記駆動装置(13)の出力が、前記揺動距離の開始後に増大され、前記揺動距離の前記終了前に低減されるような方式で、前記制御ユニットが構成されている、請求項12に記載の乳母車。
【請求項14】
前記駆動装置(13)の前記出力が、前記揺動距離の、20%~80%の後、特に30%~60%の後、例えば50%の後、に低減されるような方式で、前記制御ユニットが構成されていることを特徴とする、請求項12又は13に記載の乳母車。
【請求項15】
前記揺動距離を進行する度毎に、前記駆動装置(13)の前記出力が往復して変更されるような方式で、前記制御ユニットが構成されている、請求項12から14のいずれか一項に記載の乳母車。
【請求項16】
乳母車用のフレームにおいて、前記フレームが、前記フレームを駆動するためのプッシャ(11)及び車輪(12)と、前記車輪(12)のうちの少なくとも1つに駆動接続された駆動装置(13)と、少なくとも1つの車輪(12)用であって、車輪の自由回転を伴った駆動状態、及び、少なくとも1つの被制動車輪(12)を伴った被制動状態、へ移行可能である、制動デバイス(14)と、を有し、前記駆動装置(13)が、前記フレームの自動揺動機能のために作動可能である、フレームであって、
前記フレームの自動揺動のために、前記制動デバイス(14)によって制動された前記車輪(12)が、前記被制動状態において車輪周方向の両方に、限定された程度まで回転可能である、フレーム。
【請求項17】
揺動機能を備えた乳母車、特に請求項1に記載の乳母車、を自動的に揺動させるための方法であって、
- 前記乳母車の被制動状態が検出され、
- 前記揺動機能が作動すると、前記乳母車の揺動距離が、駆動装置(13)により前後に自動的に動かされ、
- 揺動セクションの前記始点及び前記終点のそれぞれが、少なくとも1つの車輪(12)の前記ブロックにより限定される、
方法。
【請求項18】
前記駆動装置(13)の前記出力が、揺動距離区間の前記開始後に増大され、前記揺動距離の前記終了前に低減される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記駆動装置(13)の前記出力が、前記揺動距離の、20%~80%の後、特に30%~60%の後、例えば約50%の後、に低減される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記駆動装置(13)の前記出力が、保持時間の後に前記揺動距離の前記終了に到達した後、ゼロまで低減される、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記乳母車が最大揺動距離を上回ったときに、前記駆動装置(13)がオフに切り替えられる、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記揺動距離を進行する度毎に、前記駆動装置(13)の前記出力が往復して変更される、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記揺動距離の長さが、異なるサイズに調節又は設定される、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記揺動距離の前記長さが、揺動期間中に、より短い又はより長い揺動距離に自動的に調節される、請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[説明]
本発明は、自動揺動のための、乳母車、乳母車用のフレーム、及び、方法、に関する。請求項1のプリアンブルの特徴を備えた乳母車が、例えば、DE 10 2008 039 599 A1から公知である。
【0002】
公知の乳母車には、駆動装置が設けられており、当該駆動装置は、押し駆動装置の短時間の補助、揺動機能、並びに、座部又は寝台の上昇及び下降のため、オンに切り替えられることが可能であり、それにより、この機構は、座部又は寝台の高さ位置の変更の観点で説明される。これらは、固定ベルトを介して、伸縮式でスピンドル作動式の2つのアームの上側部分に取り付けられており、当該アームは、その上側部分が乳母車のシャーシに接続される。
【0003】
EP 2 818 382 A1は、乳母車を押し動作を補助するための駆動装置が装備された、さらなるモータ駆動式乳母車を開示している。EP 2 818 382 A1は、押し進める力に関連する、駆動装置の制御に焦点をあてている。図1(先行技術)は、EP 2 818 382 A1において公知である乳母車の構造を示しており、当該乳母車は、車輪が備えられたフレームと、当該フレームに接続された乳母車アタッチメントと、当該乳母車の押し動作のためのプッシャと、を備えている。公知の乳母車の、フレームの下側エリアにおける駆動装置が、概略的に示されている。
【0004】
押し動作の補助用に設けられた駆動装置を、乳母車を自動的に揺動させるためにも使用することが、上述の一般的な先行技術から公知である。しかしながら、モータ補助式の自動揺動を用いる場合、そのような揺動運動の生成が重要であるだけではなく、当該揺動運動が、扱うのに安全なものであり、乳母車アタッチメント内に横たわっている子供を落ち着かせるか、又は、揺動させて眠らせさえもすること、も重要である。
【0005】
本発明の目的は、上述の公知の乳母車の改善を、以下のような方式で、即ち、できる限り安全で実用的な自動揺動機能を、駆動装置の補助を受けて実装するような方式で行うことであり、当該駆動装置は、乳母車の所望の揺動運動を、手動による補助なしで可能にする。本発明のさらなる目的は、乳母車用としての対応するフレームと、同様に、乳母車を自動的に揺動させるための対応する方法と、を提供することである。
【0006】
本発明によると、この目的は、乳母車に関して、請求項1の主題により達成される。この目的は、フレームに関して、請求項16の主題により達成され、方法に関して、請求項17の主題により達成される。
【0007】
具体的には、この目的は、乳母車であって、当該乳母車を駆動するためのプッシャ及び車輪を有するフレームを備えた乳母車、によって達成される。当該乳母車は、車輪のうちの少なくとも1つに駆動接続された駆動装置と、少なくとも1つの車輪のための制動デバイスと、を有する。当該制動デバイスは、車輪が回転自在である駆動状態、及び、少なくとも1つの被制動車輪(可能性としていくつかの被制動車輪)を伴った被制動状態、へ移行可能である。当該駆動装置は、当該乳母車の自動揺動機能のために作動させることができる。自動揺動のために、当該制動デバイスによって制動された(それぞれの)車輪は、当該被制動状態において車輪周方向の両方に、限定された程度までは回転可能である。
【0008】
本発明は、子供を落ち着かせるのに実際上典型的である揺動を、乳母車を前方及び後方に静かに動かすことによってシミュレーションすることができるという利点を有する。このことは、被制動状態において車輪の部分的回転を許容する制動デバイスによって達成される。この部分的回転により、乳母車が限定された距離だけ移動することができるという効果を奏する。この目的のために、制動デバイスによって制動された車輪は、被制動状態において車輪周方向の両方に、限定された程度まで回転することができる。車輪の回転運動を限定することにより、被制動状態において移動フレームが創出され、当該移動フレームは、揺動運動のために乳母車の駆動装置によって利用され得る。このことにおいて、被制動車輪の部分的回転は、車輪周方向の両方において限定される。これにより、反復的な往復する進行運動、即ち、実際上典型的である乳母車の前後運動、のシミュレーションが可能となる。それと同時に、揺動運動の安全性が保証され、その理由は、制動デバイスが、自動揺動中に被制動状態にあり、自由で且つ非制動の車輪回転を防止するためである。
【0009】
車輪の自由回転は、車輪が自由に回転することができるように制動デバイスが完全に解放されている駆動状態に対応している。それとは対照的に、被制動状態においては、車輪の部分的回転のみが可能であり、当該被制動状態は、揺動運動に必要とされる、乳母車の限定された前後運動を許容する。乳母車の、手動による揺動中において筋力によって生じる反復性の制動が、制動デバイスによって代替される。よって、本発明は、自然であって且つ手動による揺動運動を指向する、モータ補助式の自動揺動運動のための前提条件を提供する。
【0010】
本発明は、乳母車を前後に動かすことによって揺動を可能にする、全てのタイプの乳母車に適用可能である。例えば、本発明は、図1に示される伝統的な乳母車(先行技術)、子供用ストローラ、乳児及び幼児を搬送するように働くバギー又は同様の車両、に適用することが可能である。
【0011】
よって、当該乳母車は好ましくは、少なくとも3つの車輪、特に少なくとも2つ、好ましくは厳密には2つ、の後輪と、少なくとも1つの前輪、好ましくは厳密には1つの前輪、又は、厳密には2つの前輪と、を有する。制動デバイスは、車輪のうちの少なくとも1つ、好ましくは、1つの後輪又は両方の後輪、の回転を許容すること(駆動状態)又は防止すること(被制動状態)が可能である。好ましくは(少なくとも)明確には、制動デバイスも係合することが可能な(それぞれの)少なくとも1つの車輪が、駆動される。
【0012】
実施形態に従って、フレームは、それにより一覧が網羅的ではないものの、
- 少なくとも1つの後脚部、好ましくは2つの後脚部、
- 少なくとも1つの前脚部、好ましくは厳密には1つ又は厳密には2つの前脚部、
- 子供を搭載するための搭載ユニット、及び/又は、子供を搭載するための搭載ユニットの脱着可能なアタッチメントを許容する少なくとも1つのアダプタ、
- (2つの)後輪を接続する車軸、並びに/或いは、
- フレームの少なくとも2つのフレームセクションを回転可能に接続するための継手であって、当該継手によって接続されるフレームセクションのうちの、好ましくは少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、及び/又は、全て、が、
- プッシャ、
- 少なくとも1つの後脚部、
- 少なくとも1つの前脚部、
から選択される、継手、
も有することができる。
【0013】
本発明は、駆動装置の厳密な構成に(必ずしも)依存している訳ではない。このことは、運動を反転するのに必要とされる力又はトルクの方向の変更を、異なる方式で達成することができることを意味する。本発明は、モータ駆動式運動が、2つの進行方向のうちの一方、又は、両方の進行方向、において制御不能な態様で生じ得ないことを保証するための構成を設定している。本発明に従って、揺動運動は、駆動装置によってではなく制動デバイスによって限定されており、少なくとも主として限定されている。
【0014】
本発明の好ましい実施形態について従属請求項に提示されている。
【0015】
制動デバイスは、パーキングブレーキを備え得る。パーキングブレーキは、減速ブレーキとは対照的に、被制動車輪を完全にブロックする。このことは、車輪の2つのブロック位置の間で、被制動状態において所望の部分的回転が許容されるという利点を有する。これにより、自動揺動中における、乳母車の意図しない運動に対する最適な安全性がもたらされる。
【0016】
さらなる好ましい一実施形態において、制動デバイスは、異なる車輪角度位置においていくつかの制動位置を有することができ、当該制動位置の各々は、被制動車輪の、車輪周方向の両方における、限定された回転を可能にする。このことは、自動揺動機能が、旧来の手動による揺動を用いるのとちょうど同じように、(ほぼ)あらゆる車輪位置において可能であるという利点を有する。
【0017】
制動デバイス及び(それぞれの)車輪は、好ましくは、車輪の回転を(機械的に)限定するための、少なくとも1(可能性として2)対の相補的な(少なくとも1つの状態において接触している)止め(運動止め;止め面)を有する。(それぞれの)対は、2つの係合突起(これにより、少なくとも1つの係合突起は、ピンにより形成され得る)、並びに/或いは、係合突起(可能性としてピン)及び係合開口部(可能性として、弧、好ましくは円弧、に沿って延在する)、例えば、係合開口部(特に、係合貫通穴)又は係合凹部(特に、係合止まり穴)、により形成することができる。好都合にも、制動デバイスは、少なくとも又は厳密には1つの係合手段(例えば、係合突起)、並びに/或いは、少なくとも又は厳密には1つの係合凹部(特に、係合開口部)、を有し、これらは、制動のために、それぞれの車輪の、対応する係合凹部(特に、係合開口部)又は対応する係合手段(例えば、係合突起)と相互作用する。これにより、制動デバイスを、制動機能のための標準部品に戻すことができ、標準部品は、部分的回転のために、相対的に容易に改変することができる。運動学的反転のために、(それぞれの)係合手段(例えば、係合突起)及び/又は(それぞれの)係合凹部(特に、係合開口部)を、制動デバイス上に形成することができる。逆の言い方をすると、車輪は、少なくとも又は厳密に1つの係合開口部、並びに/或いは、少なくとも又は厳密には1つの係合手段(例えば、係合突起)(対応する態様で相補的に形成されている)、を有することができる。典型的には、車輪は、少なくとも1つ(可能性として、厳密には1つ)の係合開口部を有し、制動デバイスは、(少なくとも1つの)相補的係合手段を有する。
【0018】
好ましくは、車輪の周方向において遊びを形成するために、(それぞれの)係合凹部(特に、係合開口部)の内周及び/又は長さ(車輪の周方向に延在する)は、係合手段(係合突起)の外周又は長さ(車輪の周方向に延在する)よりも大きい。この実施形態において、遊び又は制動遊びは、部分的回転を可能にし、よって、乳母車の、揺動に必要とされる線形運動を可能にする。
【0019】
好ましくは、(それぞれの)係合凹部(特に係合開口部)の半径方向伸長度は、係合手段(係合突起)の外周又は長さ(車輪周方向において延在する)よりも大きな、車輪周方向における遊びを形成するための半径方向伸長度に等しいか、又は、それよりも大きい。
【0020】
具体的な一実施形態において、係合手段は、ピン及び/又はスタッドを備えることができ、並びに/或いは、係合開口部は、対応するピン差込口又はスタッド差込口を備えることができ、これにより、ピン差込口は、ピンの直径よりも大きな長さを有する。ここでも標準部品を使用することができ、標準部品は、所望のブレーキ遊びを達成するために、相対的に簡単な製造手段により改変することができる。ピン差込口は、車輪の部分周に沿って長手方向に延在することができる。このことは、被制動状態において、ピンが、あたかも湾曲したガイド溝内におけるように、ピン差込口内において進むか又はガイドされ、当該ピン差込口の端部が、運動止め、即ち、遊びの限界、を形成する、という利点を有する。周の周りに、いくつかのピン差込口を配置及び分散させることができ、いくつかの係合位置又は制動位置が許容される。
【0021】
各被制動車輪について、(厳密には)1つの係合手段(特に、係合突起、例えばピン)、並びに/或いは、複数の(例えば、少なくとも3つの若しくは少なくとも8つの、及び/又は、最大で30個若しくは最大で18個の)係合凹部(特に、係合開口部)、が存在し得る。
【0022】
各被制動車輪について、N個(Nは1以上)の係合手段(特に、係合突起、例えば、ピン)と、複数のM個の係合凹部(特に、係合開口部)と、が存在し得る。ここで、好ましくは、M≧2*N;任意にはM≧5*N、若しくは、M≧10*N;及び/又は、M≦30*N、が適用される。
【0023】
実施形態において、(少なくとも)1つの具体的な係合手段(特に、係合突起、例えば、ピン)は、少なくとも3つの又は少なくとも8つの、並びに/或いは、最大で30個の、異なる係合凹部(特に、係合開口部)と係合させることができる(特に、対応する異なる想定可能な状態においてであり、それにより、それぞれの想定された状態において、係合手段(特に、係合突起、例えば、ピン)が、1つのみの係合凹部(特に、係合開口部)と係合していることが、好ましくは適用される))。
【0024】
駆動装置は、少なくとも1つのモータ、特に、電気モータと、少なくとも1つのエネルギ源、特に、バッテリ又は蓄電池と、少なくとも1つのセンサ及び/又は制御ユニットと、を有し得る。モータは、フレームの後車軸上に配置され得るか、又は、ハブモータとして設計され得る。好都合には、駆動装置、或いは、特に、モータ及び/又は蓄電池を備えた駆動装置の一部は、取り外し可能モジュールとして設計されている。このような取り外し可能モジュールは、乳母車又はフレームの、車輪といった、他のコンポーネントも備え得る。
【0025】
設けられた1つ以上のセンサは、車輪、特に、被制動車輪、の回転又は回転角度を検出又は測定し得る。代替的に又は追加的には、備えられたセンサは、ブレーキを稼働させているかどうかを検出し得る。代替的に又は追加的には、備えられたセンサは、モータ運動(特に、電気モータの回転)を検出又は測定し得る。
【0026】
好ましい一実施形態において、制御ユニットは、検出されたデータの解析、及びモータの制御、のために設計されている。デバイスの一部として乳母車に関連して開示及び特許請求されている、実施形態に沿った制御ユニットの構成が、自動揺動のための方法として、追加的に説明及び特許請求されている。制御ユニットの実施形態に沿った利点及び詳細を、方法の請求項に関連して開示及び説明する。方法の請求項の文脈における記載事項は、制御ユニットの構成にも等しく当てはまり、そのため、同じく、制御ユニットに関連して、即ち、デバイスの文脈において、開示及び特許請求されている。
【0027】
乳母車に対して代替的に又は追加的に、フレーム、特に、乳母車用のシャーシ(可能性として、上に子供が横たわる及び/又は座るためのアタッチメントを備えておらず、当該アタッチメントは、必要な場合、別個に設けることができる)、が開示及び特許請求されており、当該フレームは、その他の点では、本発明に従って請求項1と同じ特徴を有している。したがって、利点に関しては、乳母車についての記載事項が参照される。
【0028】
揺動機能を備えた乳母車を自動的に揺動させるための、本発明に沿った方法は、
- 乳母車の被制動状態が検出されること、
- 揺動機能が稼働すると、乳母車の揺動距離が駆動装置により前後に自動的に動かされること、並びに、
- 揺動距離の始点及び終点のそれぞれが、少なくとも1つの車輪のブロックにより限定されること、
を特徴とする。
【0029】
本発明に沿った発明は、好ましくは、しかし排他的にではなく、請求項1に記載の乳母車に適用可能である。本発明に沿った方法の利点は、乳母車の、自動揺動中における意図しない運動に対する安全性の増大が得られることにあるが、その理由は、制動機能が、揺動機能の上位にあり、且つ、車輪の、周方向における遊びの増大により、拡張されるものの取り消されないためである。このことは、揺動距離の開始及び終点の各々それぞれが、少なくとも1つの車輪のブロックによって限定される点において達成される。上記及び下記の乳母車又はフレームの、さらなる機能的特徴は、具体的な方法ステップとして実施することができる。
【0030】
本発明の特に好ましい一実施形態において、駆動装置の出力は、揺動距離の開始後に増大され、揺動距離の終了前に低減される。これにより、乳母車の円滑な始動及び制動が達成されるとともに、ぎこちない運動が回避される。揺動時の、随伴する速度プロファイルが、手動による揺動運動に、特に近似したものとなる。駆動装置の出力は、揺動距離の、20%~80%の後、特に30%~60%の後、例えばおよそ50%の後、に低減させることができる。
【0031】
駆動装置の出力が、保持時間の後に揺動距離の終了に到達した後、ゼロまで低減される場合、駆動装置、特に、駆動装置のモータが、安全にアイドル状態になってから、方向の反転が促される。このことは特に、電気モータの使用時に知覚できる。
【0032】
自動揺動中における安全性は、乳母車が最大揺動距離を上回ったときに、駆動装置がオフに切り替えられるという事実により、さらに増大する。最大揺動距離は、乳母車が手動力により前後に動かされるときの典型的な駆動距離に、少なくとも本質的に対応する。最大揺動距離は、揺動距離の始点及び終点における、少なくとも1つの車輪のブロックによって決定される。制動デバイスによる駆動運動の限定により提供される安全性に加えて、駆動装置の出力は、最大揺動距離(それ自体、又は、揺動距離の少なくとも予め規定された割合、例えば、5%~50%だけ)を上回ったことが検出された場合、オフに切り替えられる。
【0033】
好ましくは、揺動距離を進行するのに伴い、駆動装置の出力は、同じ又は同様の速度プロファイルが揺動中に両方の駆動方向において設定されるように、往復して変更される。
【0034】
方法のさらなる一実施形態において、揺動距離の長さは、異なるサイズに調節又は設定することができる(これにより、最大値は、例えば、最小値の少なくとも2倍又は少なくとも5倍に対応することが可能である)。揺動距離の長さは、揺動期間中に、より短い又はより長い揺動距離に自動的に設定することもできる。実際の経験によれば、人は、揺動段階中においてさえも、子供を落ち着かせるために、より短い又はより長い期間にわたり、乳母車を時として前後に押すことが公知である。
【0035】
本発明に沿った方法の好ましい実施形態の上述の特徴は、本発明に沿った乳母車の実施形態における制御ユニットの、対応する構成という手段によって実装することもできる。この点に関し、上述の方法の特徴は、同じく、対応する態様で構成された制御ユニットに関連して、開示及び特許請求されている。
【0036】
それにより、所望の機能を実施する制御ユニットの適応性について、特許請求されている。例えば、制御ユニットは、揺動距離の長さが、異なるサイズに、調節可能であるか又は調節できるような方式で、構成されている。揺動距離の長さは、揺動期間中に、より短い又はより長い揺動距離に自動的に設定することができる。同じことが、他のプロセスの特徴にも当てはまる。
【0037】
以下に述べる揺動機能の制御のパラメータは、異なるサイズに調節可能であり得るものであり、及び/又は、設定し得るものである。
【0038】
実施形態に沿って、揺動機能を制御するために様々なパラメータが規定され得、特に、
- 揺動距離の予め規定された割合であって、これにより、揺動距離の予め規定された割合は、揺動距離の、20%~80%、特に30%~60%、例えば、およそ50%、であり得る、揺動距離の予め規定された割合、及び/又は、
- 低減されたモータ出力であって、低減されたモータ出力は、最大モータ出力の30%未満、好ましくは20%未満、例えば、最大モータ出力の5%~15%、であり得る、低減されたモータ出力
が規定され得る。
【0039】
センサが動作する周波数は、10Hz~200Hz、好ましくは20Hz~100Hz、例えば、50Hz、であり得る。このことは、それぞれのセンサが、5ms~100ms毎に、好ましくは10ms~50ms毎に、例えば、20ms毎に、新規の値を検出することを意味する。異なるセンサが異なる周波数で動作することが規定され得る。
【0040】
揺動機能を異なるモードで動作させることが可能であることを規定することができ、これにより、当該モードは、例えば、揺動機能の周波数によって異なり得る。特に、異なるモードには、揺動距離の開始後に、出力の異なる増大を割り当てることができ、及び/又は、異なるモードには、揺動距離の、予め規定された異なる割合を割り当てることができ、これにより、予め規定された異なる割合に到達した後、駆動装置の出力が低減される。具体的には、2つから5つ、例えば3つの、異なるモードが設けられ得る。
【0041】
揺動距離の開始後に、揺動距離の予め規定された割合を進行するまで、モータ出力を連続的に(可能性として線形に)増大させることが規定され得る。さらに、揺動距離の予め規定された割合を進行したときに、モータ出力を、低減されたモータ出力まで突然制限することが規定され得る。また、低減されたモータ出力を、一定レベルにおいて揺動距離の終了まで維持することも規定され得る。
【0042】
揺動機能に利用可能なモータ出力は、最大モータ出力の予め設定された割合、好ましくは、最大モータ出力の50%よりも多く、例えば、最大モータ出力の70%~80%、まで限定することができる。揺動機能に利用可能なモータ出力に到達するか又はそれを上回ったときに、当該距離の予め規定された割合を未だ進行していない場合でさえも、低減されたモータ出力のみを提供することが規定され得る。
【0043】
揺動距離の長さは、20cm未満、好ましくは10cm未満、であり得る。追加的に又は代替的には、揺動距離の長さは、0.5cmよりも大きく、好ましくは1cmよりも大きいものであり得る。具体的には、揺動距離の長さは、2cm~7cmの間の範囲であり得る。
【0044】
制動デバイスによって制動される車輪の回転は、最大で90°又は、最大で50°、好ましくは、最大で30°、に限定され得る。制動デバイスによって制動される車輪について、少なくとも1°又は少なくとも2°、好ましくは少なくとも4°、だけの回転が可能であることが規定され得る。
【0045】
(揺動距離の予め規定された割合を進行した後に)モータ運動が存在しないこと(可能性として、予め定められた時間、例えば、50ms~250msにわたり、モータ運動が一切発生しないことであり、これにより、予め定められた時間が、保持時間に対応し得る)をセンサが検出するまで、低減されたモータ出力が提供されることが規定され得る。
【0046】
全周期の持続時間(即ち、揺動距離を2回経由すること、つまり、「往路」1回及び「復路」1回)は、0.2秒~10秒の間、好ましくは、0.5秒~5秒の間、の範囲内であり得る。
【0047】
ユーザが、揺動機能をモータ上において直接的にオン及びオフに切り替え得ることと、必要な場合は揺動機能を設定し得ることと、が可能であり得るが、好ましくは、このことは、摺動体上に設けられたオペレーティングユニットを介して、及び/又は、アプリケーションを介して、可能である。この目的のために、ワイヤード接続、及び/又は、特にワイヤレス接続、が設けられ得る。
【0048】
本発明は、さらなる詳細を有する添付の概略図を参照して、実施形態の一例という手段により、より詳細に解説される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
これらにおいては、以下のものを示す。
【0050】
図1】先行技術に沿った、押し動作の補助のための駆動装置を備えた乳母車の構造の一例
図2】本発明に沿った実施形態の一例に沿った乳母車の、第1の位置にある制動デバイスを備えた、被制動車輪の上面図
図3】第2の位置にある、図2に沿った制動デバイス
図4】本発明に沿った実施形態の一例に沿った乳母車の、車輪位置との関連における、駆動装置の出力曲線
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、駆動装置13を備えた、先行技術に沿った乳母車を示しており、駆動装置13は、乳母車のフレーム10の下側エリアに配置されている。本発明は、このような乳母車に適用可能であり、公知の乳母車に追加的に設けられていて押し動作の機能を補助する駆動装置13を使用した、自動揺動機能の実装を可能にする。本発明に沿った実施形態の例に沿った乳母車の基本的構築について、公知の乳母車を参照して説明するが、公知の乳母車は、その他の点では、拡張された制動機能と併せて揺動機能を示していない。
【0052】
本発明、又は、本発明に沿った実施形態の例は、押し動作の機能を追加的に補助して自動揺動機能を実現するように設けられた駆動装置13を使用している。駆動装置13の、このデュアル機能の代わりに、揺動機能のための別個の駆動装置が設けられ得る。対照的に、デュアル機能は、駆動装置13の数が低減されるが故に、乳母車がコンパクトに且つ軽量に組み立てられるという利点を有する。駆動装置13は、乳母車の自動揺動機能のために、それに応じて作動させることができる。駆動装置13の作動は、対応する制御ユニットによって行うことができる。いずれのケースにおいても、駆動装置13は、駆動装置13が作動すると、揺動機能が、自動的に、即ち手動による介入なしに生じるように設計されている。この目的のために、駆動装置13は、手動による力の印加により乳母車を揺動させるときのように、進行方向の自動反転を可能にする。
【0053】
図1による乳母車において、駆動装置13は、後輪12のうちの少なくとも1つに駆動接続されたハブモータを備える。他のモータ及びモータ配置が可能である。フレーム10は、ハンドルを備えたプッシャ11と、車輪12と、を備え、車輪12は、フレーム10に回転可能に接続されている。ここでもまた、異なる設計のフレーム10、例えば、3つ又は4つの車輪を備えた設計、が可能である。本発明は、フレーム10の具体的な構成に限定されない。
【0054】
駆動装置13は、モータ17、例えば電気モータと、バッテリ又は蓄電池といったエネルギ源と、1つ以上の検出ユニット(センサ)及び/又は制御装置と、を備える。図1には、エネルギ源、センサ、又は、制御装置、は示されていない。センサは、少なくとも1つの被制動車輪12の回転を検出するように、特に、被制動車輪12の回転の角度を測定するように、設計され得る。好ましくは、センサは、モータ17の回転を追加的に検出可能である。さらなるセンサの助けを借りて、制動デバイス14、特にパーキングブレーキ、が稼働されているかどうかをモニタし得る。このことは、安全性という目的を果たすが、その理由は、パーキングブレーキが稼働されていないケースにおいて、揺動機能が防止されるためである。この安全性に対して代替的に又は追加的には、乳母車が駆動されると揺動機能がトリガされることを防止するために、乳母車の速度又は他の対応するパラメータが測定され得る。
【0055】
乳児又は幼児を搭載するために、搭載ユニット18が使用され、搭載ユニット18は、例えばアダプタによってフレーム10に接続されているか、又は、恒久的に接続されている。搭載ユニット18は、好ましくは、リクライニングユニットとして、特に、持ち運び用寝台及び/又は小児キャリアとして、設計されている。必要な場合にリクライニング位置へ動かすことが可能な座部アタッチメントもまた、可能である。
【0056】
制御ユニットは、図1には示されていないが、センサにより検出されたデータの解析と、これに基づいた、駆動装置ユニット13、特にモータ17、の制御と、のために設計されている。同じく図1には示されていないが、図2及び図3に示されているのが制動デバイス14であり、制動デバイス14は、駆動状態及び被制動状態へ移行させることができる。制動デバイス14は、駆動状態においては、乳母車が妨げられずに押されることが可能になるように、解放されて車輪の自由回転を許容する。制動デバイス14の被制動状態においては、少なくとも1つの車輪12が制動される。好ましくは、制動デバイス14及び駆動装置13は、1つの同一の車輪12に作用する。乳母車の制動デバイス14は、十分な遊びを有しているため、乳母車の線形運動又は前後運動が可能であり、当該線形運動又は当該前後運動は、手動による揺動運動に本質的に対応する。この目的のために、制動デバイス14によって制動された車輪12は、被制動状態において車輪周方向の両方に、限定された程度まで回転し得る。
【0057】
図2及び図3は、本発明に沿った乳母車、又は、本発明に沿った乳母車用のフレーム、の実施形態の一例を示しており、本発明において、制動デバイス14は、車輪、特に、被駆動車輪12、の回転が、被制動状態において限定された程度まで可能にされるような方式で構築されている(部分的回転)。この目的のために、制動デバイス14は係合手段15を有しており、係合手段15は、図2に沿った実施形態の例において、スタッド又はピン15として設計されている。ピン15は、車輪12の相補的係合開口部16と相互作用することができるようにするために、車輪12のハブ軸に対して平行に延在するとともに、フレーム10との関連で外方に突出している。係合開口部16は、ピン15のためのピン差込口として設計されている。
【0058】
したがって、制動デバイス14は、ピン差込口又は係合開口部16内のピン15が車輪12の回転を阻止するが故に、パーキングブレーキである。
【0059】
図2及び図3の比較は、ピン15が、車輪12又は係合開口部16に対して異なる位置を取っていることを示している。ピン15の異なる位置は、制動デバイス4の制動遊びを例示しており、当該制動遊びは、図2及び図3に沿った実施形態の例において、乳母車のモータ駆動式自動揺動機能を実装するために使用される。
【0060】
図2において、ピン5は、下側位置にあり、係合開口部16の第1の内側側面に突き当たっている。これにより、車輪12の(図2に示される図における)時計回り方向の回転が防止される。図3は、係合開口部16内におけるピン15の上側位置を示しており、係合開口部16内において、ピン15は、係合開口部16の第2の内側側面に突き当たっている。これにより、車輪16の、反時計回り方向の運動が防止される。係合開口部16の第1の内側側面及び第2の内側側面は、車輪12の周方向において互いに対向して配置されており、それにより、これら2つの内側側面間に、係合開口部16の、充分に大きな自由空間が形成されており、当該自由空間内においては、ピン15が、車輪12に対する所望の部分的回転を実施することができ、又は、その逆も同様である。
【0061】
換言すると、係合開口部16の周方向に延在するその長さは、ピン15の直径よりも大きい。係合開口部16の第1の内側側面及び第2の内側側面は、被制動状態における車輪12の部分的回転を決定するものであり、互いから遠くなるように、且つ、揺動運動のための乳母車の所望の揺動距離の進行が可能となるように、間隔をあけて配置されている。
【0062】
係合開口部16の幅は、車輪12の半径方向に延在する。係合開口部15の幅は、ピン15の少なくとも直径に対応しており、又は、ピン15の直径よりも大きい。
【0063】
実施形態に従って、ピン15は、図2及び図3の図面平面に対して直角を成す方向において、少なくとも2つの位置、つまり、ピン15が係合開口部16のうちの1つに係合する第1の位置と、ピン15が係合開口部16との係合から外れる、後退した第2の位置と、に運ばれることを可能にし得る。
【0064】
係合開口部16の形状は、図2及び図3に示される外形に限定されない。他の形状が可能である。
【0065】
図2及び図3においては、いくつかの係合開口部16が、車輪の周の周りに配置されており、係合開口部16が、ピン15にとって様々な係合可能性が存在するように同一に設計されていること、が直ちに認識可能である。揺動機能は、ブレーキ遊びが整合していること、又は、係合開口部16の長さが同一であること、を理由として、いかなる位置においても可能である。
【0066】
図2及び図3に沿った実施形態の例の動作モードについて、図4のグラフを使用して解説する。図4は、駆動装置13及び制動デバイス14の相互作用を例示している。
【0067】
図4の上側部分図は、駆動装置13又はモータ17の、被制動状態であって自動揺動中における経時的な出力曲線を例示的に示している。図4の下側部分図は、車輪12の、被制動状態であって自動揺動中における、対応する車輪位置を示している。2つの車輪位置の中心は、最大揺動距離、即ち、前後に動かしたときの乳母車の線形運動、に対応している。2つの最大車輪位置は、制動デバイス4により規定されており、これら2つの最大車輪位置は、図4の下側部分図に示された、車輪12の部分的回転の開始及び終了を限定している。図4の車輪12の左手位置において、図3に沿ったピン15は、係合開口部16の一方の内側表面に突き当たっており、それにより、車輪12のさらなる運動が防止される(後端ストップ)。同じことが、図4における他方の車輪位置(前端ストップ)にも当てはまり、この、他方の車輪位置は、係合開口部16の他方の内側表面上における、ピン15の停止によって規定される。
【0068】
図4における上側部分図は、駆動装置13又はモータ17の出力曲線を示しており、当該出力曲線は、車輪運動の速度プロファイルを決定する。揺動距離の開始後、出力はまず、勾配αにて、最大値Pmax、例えば、総モータ出力の70%、まで増大する。最大値Pmaxには、図4に沿った下側部分図との比較から視認できるように、揺動距離の約半分で到達する。他の時間が可能である。最大出力Pmaxに到達した後、出力は、最小値Pmin、例えば、総モータ出力の7%、まで降下し、最小値Pminは、揺動距離の終了まで一定に保たれ、それにより、揺動運動は、ピン15が係合開口部16の内側に突き当たっていることにより、静かに失速する。出力は、モータ17が停止してから運動の反転が始まることを達成するために、保持時間中において、ピン15が係合開口部16の内側表面と突き当たっていることを超えて、最小値Pminに維持される。
【0069】
出力増大の開始と保持時間の終了との間の時間Tcは、揺動段階、図4に沿った例においては、乳母車の前方運動、を規定している。傾きα及び揺動段階の時間Tcは共に、揺動運動に影響を与える。傾きが大きくなり且つ時間Tcが短くなるほど、揺動運動は強くなる。全揺動プロセスについては、保持時間の終了後に、力の方向が反転されるか、又は、モータの回転方向が変更され、それにより、往復する運動が生じ、このことは、乳母車の後方運動を結果的に生じる。このことにおいて、モータの出力は、図4に示されるのと同じ経路を経由するものの、反対方向に経由する。したがって、揺動運動は、一方では、被制動状態における制動デバイス4の相互作用により、他方では、駆動装置13、又は、モータ17の経時的な出力曲線、により、総合的に決定される。一方では、制動デバイス4による減速を切り離すことにより、他方では、駆動装置13による車輪16の運動により、自動揺動中の安全性に加えてプロセス制御が改善されるが、その理由は、運動の安全な反転を達成するために、制動デバイス4の止めを超えてモータ17を稼働させるためである。
【0070】
示される例示的実施形態に沿った方法は、以下のステップ、即ち、
1.揺動機能を(スイッチにより又はアプリケーションを介して)オンに切り替えるステップ、
2.パーキングブレーキが稼働しているかどうかを検出するステップ(否の場合:取り消し)、
3.少なくとも1つの車輪に、モータを介して力を印加して、モータ出力を(可能性として線形に)増大させるステップ、
4.どれほど遠くまで車輪が回ったかを(充分に高い周波数、例えば、20Hz~100Hz、を用いて)検出するステップ、
5.予め規定された回転の所望の割合(20%~80%、好ましくは30%~60%、例えば、50%)に到達したときに、モータ出力が(最大モータ出力の50%未満、好ましくは30%未満、例えば7%又は15%、であることが可能な、予め規定された値まで)低減されるステップ、
6.低減されたモータ出力を、(実施形態に従って、ピンが穴の端部に突き当たるが故に)モータが回転を止めるまで維持するステップ、
7.少なくとも1つの車輪に、モータにより力を(3.と比較して反対方向に)印加して、モータ出力を(可能性として線形に)増大させるステップ、
8.ステップ4~6の後に、3.を続けるステップ、
9.以下の一覧からの事象、即ち、
a.揺動機能の、オフへの切り替え、
b.パーキングブレーキの稼働停止、
c.回転が、予め定められた値、特に、予め規定された回転の100%よりも多く、例えば、120%又は150%、を上回ること、
d.エネルギ源のエネルギが、予め規定された値まで、又は、予め規定された値よりも下に、降下すること、
により、取り消すステップ(述べられた全ての取り消し基準の実装が必要である訳ではない)、
を含むことができる。
【0071】
実施形態に従って、3.又は7.におけるモータ出力は、予め規定された値(特に、最大モータ出力の>50%、及び/又は、最大モータ出力の<90%)、例えば60%~80%、例えば70%又は75%、まで限定することができる。
【0072】
実施形態に従って、6.において低減されたモータ出力は、予め規定された時間(保持時間)にわたり、依然として維持することができる。
【0073】
この点において、指摘されるべきこととして、上記の部品の全て、特に、図面に示された詳細は、個々に及びあらゆる組み合わせにおいて見たときに、本発明に本質的なものであるように特許請求されている。それらの改変は、当業者にとって熟知されている。
【0074】
さらに、指摘されることとして、できる限り広い保護の範囲が求められる。この点に関し、請求項に包含される開示は、さらなる特徴を用いて(これらのさらなる特徴が必ずしも含まれていない状態でさえも)説明される特徴によって指定されることも可能である。明示的に指摘されることとして、丸括弧及び「特に」という用語は、それぞれの文脈における特徴の任意性を強調することが意図されており、このことは、逆の言い方をすると、或る特徴が、対応する文脈において、このような認識なく必須とみなされるべきであることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0075】
[参照符合]
10…フレーム、11…プッシャ、12…車輪、13…駆動装置、14…制動デバイス、15…係合手段、16…係合開口部、17…モータ、18…搭載ユニット。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】