(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】光電変換装置、電磁波検出装置、光電変換方法、及び、電磁波検出方法
(51)【国際特許分類】
H01J 40/06 20060101AFI20240816BHJP
H01J 40/12 20060101ALI20240816BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20240816BHJP
G01J 4/04 20060101ALI20240816BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01J40/06
H01J40/12
G01J1/02 C
G01J1/02 D
G01J4/04 Z
H01Q21/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508576
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022072099
(87)【国際公開番号】W WO2023016940
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522312399
【氏名又は名称】デンマークス テクニスケ ユニベルシテット
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100206966
【氏名又は名称】崎山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】河合 直弥
(72)【発明者】
【氏名】吉新 英朗
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ サイモン レインコーフ
(72)【発明者】
【氏名】イェプセン ピーター ウドゥ
【テーマコード(参考)】
2G065
5J021
【Fターム(参考)】
2G065AB03
2G065AB10
2G065BA18
2G065BA40
2G065BC13
2G065BC16
2G065DA08
5J021AA09
5J021AB02
5J021JA05
5J021JA06
5J021JA10
(57)【要約】
光電変換装置は、電子放出部材を備えている。電子放出部材は、電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェスを有する。メタサーフェスは、第一アンテナ部と、第一バイアス部と、第二アンテナ部と、第二バイアス部と、を含んでいる。第一アンテナ部は、第一方向に延在していると共に電磁波の入射に応じて電子を放出する。第一バイアス部は、第一アンテナ部に面していると共に第一アンテナ部との間において第一方向の成分を有する電界を発生させるように構成される。第二アンテナ部は、第一方向と交差する第二方向に延在していると共に電磁波の入射に応じて電子を放出する。第二バイアス部は、第二アンテナ部に面していると共に第二アンテナ部との間において第二方向の成分を有する電界を発生させるように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェスを有する電子放出部材を備えており、
前記メタサーフェスは、第一方向に延在していると共に前記電磁波の入射に応じて電子を放出する第一アンテナ部と、前記第一アンテナ部に面していると共に前記第一アンテナ部との間において前記第一方向の成分を有する電界を発生させるように構成される第一バイアス部と、前記第一方向と交差する第二方向に延在していると共に前記電磁波の入射に応じて電子を放出する第二アンテナ部と、前記第二アンテナ部に面していると共に前記第二アンテナ部との間において前記第二方向の成分を有する電界を発生させるように構成される第二バイアス部と、を含んでいる、光電変換装置。
【請求項2】
前記メタサーフェスに付与する電位を制御する電位制御部をさらに備えており、
前記電位制御部は、
前記メタサーフェスに付与する電位を制御することによって、前記第一バイアス部から前記第一アンテナ部に向かう電界の前記第一方向における成分が正である第一状態と、前記第一バイアス部から前記第一アンテナ部に向かう電界の前記第一方向における成分が負である第二状態とを切り替え、
前記第二バイアス部から前記第二アンテナ部に向かう電界の前記第二方向における成分が正である第三状態と、前記第二バイアス部から前記第二アンテナ部に向かう電界の前記第二方向における成分が負である第四状態と、を切り替える、請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第一アンテナ部は、前記第一方向において互いに異なる位置に配置されている第一及び第二先端を含んでおり、
前記第一バイアス部は、前記第一先端に面していると共に前記第一先端との間において前記第一方向の成分を有する電界を発生させる第一部分と、前記第二先端に面していると共に前記第二先端との間において前記第一方向の成分を有する電界を発生させる第二部分とを含んでおり、
前記第二アンテナ部は、前記第二方向において互いに異なる位置に配置されている第三及び第四先端を含んでおり、
前記第二バイアス部は、前記第三先端に面していると共に前記第三先端との間において前記第二方向の成分を有する電界を発生させる第三部分と、前記第四先端に面していると共に前記第四先端との間において前記第二方向の成分を有する電界を発生させる第四部分とを含んでおり、
前記第一方向において、前記第二部分、前記第二先端、前記第一先端、前記第一部分は、この順に配置されており、
前記第二方向において、前記第四部分、前記第四先端、前記第三先端、前記第三部分は、この順に配置されている、請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記メタサーフェスに付与する電位を制御する電位制御部をさらに備えており、
前記電位制御部は、前記メタサーフェスに付与する電位を制御することによって、
前記第一先端から前記第一部分に向かう電界の前記第一方向における成分は正であり、前記第二部分から前記第二先端に向かう電界の前記第一方向における成分は正であり、前記第三先端から前記第三部分に向かう電界の前記第二方向における成分は正であり、前記第四先端から前記第四部分に向かう電界の前記第二方向における成分は負である第一状態と、
前記第一部分から前記第一先端に向かう電界の前記第一方向における成分は負であり、前記第二先端から前記第二部分に向かう電界の前記第一方向における成分は負であり、前記第三先端から前記第三部分に向かう電界の前記第二方向における成分は正であり、前記第四先端から前記第四部分に向かう電界の前記第二方向における成分は負である第二状態と、を切り替え、
前記第一先端から前記第一部分に向かう電界の前記第一方向における成分は正であり、前記第二先端から前記第二部分に向かう電界の前記第一方向における成分は負であり、前記第三先端から前記第三部分に向かう電界の前記第二方向における成分は正であり、前記第四部分から前記第四先端に向かう電界の前記第二方向における成分は正である第三状態と、
前記第一先端から前記第一部分に向かう電界の前記第一方向における成分は正であり、前記第二先端から前記第二部分に向かう電界の前記第一方向における成分は負であり、前記第三部分から前記第三先端に向かう電界の前記第二方向における成分は負であり、前記第四先端から前記第四部分に向かう電界の前記第二方向における成分は負である第四状態と、を切り替える、請求項3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記メタサーフェスに付与する電位を制御する電位制御部をさらに備えており、
前記電位制御部は、前記メタサーフェスに付与する電位を制御することによって、
前記第一部分に付与される電位は前記第一アンテナ部に付与される電位よりも低く、前記第二部分に付与される電位は前記第一アンテナ部に付与される電位よりも高く、前記第三部分に付与される電位は前記第二アンテナ部に付与される電位よりも低く、前記第四部分に付与される電位は前記第二アンテナ部に付与される電位よりも低い第一状態と、
前記第一部分に付与される電位は前記第一アンテナ部に付与される電位よりも高く、前記第二部分に付与される電位は前記第一アンテナ部に付与される電位よりも低く、前記第三部分に付与される電位は前記第二アンテナ部に付与される電位よりも低く、前記第四部分に付与される電位は前記第二アンテナ部に付与される電位よりも低い第二状態と、を切り替え、
前記第一部分に付与される電位は前記第一アンテナ部に付与される電位よりも低く、前記第二部分に付与される電位は前記第一アンテナ部に付与される電位よりも低く、前記第三部分に付与される電位は前記第二アンテナ部に付与される電位よりも低く、前記第四部分に付与される電位は前記第二アンテナ部に付与される電位よりも高い第三状態と、
前記第一部分に付与される電位は前記第一アンテナ部に付与される電位よりも低く、前記第二部分に付与される電位は前記第一アンテナ部に付与される電位よりも低く、前記第三部分に付与される電位は前記第二アンテナ部に付与される電位よりも高く、前記第四部分に付与される電位は前記第二アンテナ部に付与される電位よりも低い第四状態と、を切り替える、請求項3に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記第一方向と前記第二方向とは、直交しており、
前記メタサーフェスは、前記第一方向と前記第二方向とに交差する第三方向に延在していると共に前記電磁波の入射に応じて電子を放出する第三アンテナ部と、前記第三アンテナ部に面していると共に前記第三アンテナ部との間において前記第三方向の成分を有する電界を発生させるように構成される第三バイアス部をさらに含んでいる、請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記メタサーフェスに付与する電位を制御する電位制御部をさらに備えており、
前記電位制御部は、
前記メタサーフェスに付与する電位を制御することによって、前記第一バイアス部から前記第一アンテナ部に向かう電界の前記第一方向における成分が正である第一状態と、前記第一バイアス部から前記第一アンテナ部に向かう電界の前記第一方向における成分が負である第二状態と、を切り替え、
前記第二バイアス部から前記第二アンテナ部に向かう電界の前記第二方向における成分が正である第三状態と、前記第二バイアス部から前記第二アンテナ部に向かう電界の前記第二方向における成分が負である第四状態と、を切り替え、
前記第三バイアス部から前記第三アンテナ部に向かう電界の前記第三方向における成分が負である第五状態と、前記第三バイアス部から前記第三アンテナ部に向かう電界の前記第三方向における成分が正である第六状態と、を切り替える、請求項6に記載の光電変換装置。
【請求項8】
気密に封止されていると共に電磁波を透過する窓部を有しているハウジングをさらに備え、
前記電子放出部材は、前記ハウジング内に配置されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
請求項2、4、5、及び、7のいずれか一項に記載の光電変換装置と、
前記電子放出部材から放出された電子を検出する検出部と、
前記第一状態における前記検出部の検出結果と、前記第二状態における前記検出部の検出結果と、前記第三状態における前記検出部の検出結果と、前記第四状態における前記検出部の検出結果とに基づいて前記電磁波の偏光情報を演算する演算部と、を備えている、電磁波検出装置。
【請求項10】
第一方向に延在している第一アンテナ部と、前記第一アンテナ部に面している第一バイアス部と、前記第一方向と交差する第二方向に延在している第二アンテナ部と、前記第二アンテナ部に面している第二バイアス部と、を含むメタサーフェスを用いて、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて、前記第一バイアス部と前記第一アンテナ部との間において第一方向の成分を有する電界を発生させた状態において前記第一アンテナ部から電子を放出させるステップと、
前記メタサーフェスを用いて、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて、前記第二バイアス部と前記第二アンテナ部との間において第二方向の成分を有する電界を発生させた状態において前記第二アンテナ部から電子を放出させるステップと、を備えている、光電変換方法。
【請求項11】
前記第一アンテナ部から電子を放出させるステップは、
前記メタサーフェスに、前記第一バイアス部から前記第一アンテナ部に向かう電界の前記第一方向における成分が正であるように電位を付与した第一状態において、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて前記第一アンテナ部から電子を放出させる第一電子放出ステップと、
前記メタサーフェスに、前記第一バイアス部から前記第一アンテナ部に向かう電界の前記第一方向における成分が負であるように電位を付与した第二状態において、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて前記第一アンテナ部から電子を放出させる第二電子放出ステップと、を含んでおり、
前記第二アンテナ部から電子を放出させるステップは、
前記メタサーフェスに、前記第二バイアス部から前記第二アンテナ部に向かう電界の前記第二方向における成分が正であるように電位を付与した第三状態において、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて前記第二アンテナ部から電子を放出させる第三電子放出ステップと、
前記メタサーフェスに、前記第二バイアス部から前記第二アンテナ部に向かう電界の前記第二方向における成分が負であるように電位を付与した第四状態において、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて前記第二アンテナ部から電子を放出させる第四電子放出ステップと、を含んでいる、請求項10に記載の光電変換方法。
【請求項12】
前記第一方向と前記第二方向とは、直交しており、
前記メタサーフェスは、前記第一方向と前記第二方向とに交差する第三方向に延在している第三アンテナ部と、前記第三アンテナ部に面している第三バイアス部をさらに含み、
当該光電変換方法は、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて前記第三アンテナ部から電子を放出させるステップをさらに備えている、請求項10に記載の光電変換方法。
【請求項13】
前記第一アンテナ部から電子を放出させるステップは、
前記メタサーフェスに、前記第一バイアス部から前記第一アンテナ部に向かう電界の前記第一方向における成分が正であるように電位を付与した第一状態において、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて前記第一アンテナ部から電子を放出させる第一電子放出ステップと、
前記メタサーフェスに、前記第一バイアス部から前記第一アンテナ部に向かう電界の前記第一方向における成分が負であるように電位を付与した第二状態において、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて前記第一アンテナ部から電子を放出させる第二電子放出ステップと、を含んでおり、
前記第二アンテナ部から電子を放出させるステップは、
前記メタサーフェスに、前記第二バイアス部から前記第二アンテナ部に向かう電界の前記第二方向における成分が正であるように電位を付与した第三状態において、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて前記第二アンテナ部から電子を放出させる第三電子放出ステップと、
前記メタサーフェスに、前記第二バイアス部から前記第二アンテナ部に向かう電界の前記第二方向における成分が負であるように電位を付与した第四状態において、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて前記第二アンテナ部から電子を放出させる第四電子放出ステップと、を含んでおり、
前記第三アンテナ部から電子を放出させるステップは、
前記メタサーフェスに、前記第三バイアス部から前記第三アンテナ部に向かう電界の前記第三方向における成分が負であるように電位を付与した第五状態において、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて前記第三アンテナ部から電子を放出させる第五電子放出ステップと、
前記メタサーフェスに、前記第三バイアス部から前記第三アンテナ部に向かう電界の前記第三方向における成分が正であるように電位を付与した第六状態において、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて前記第三アンテナ部から電子を放出させる第六電子放出ステップと、を含んでいる、請求項12に記載の光電変換方法。
【請求項14】
請求項10から13のいずれか一項における光電変換方法を備えた電磁波検出方法であって、
前記第一電子放出ステップにおいて電子放出部材から放出された電子を検出する第一検出ステップと、
前記第二電子放出ステップにおいて電子放出部材から放出された電子を検出する第二検出ステップと、
前記第三電子放出ステップにおいて電子放出部材から放出された電子を検出する第三検出ステップと、
前記第四電子放出ステップにおいて電子放出部材から放出された電子を検出する第四検出ステップと、
前記第一検出ステップ、前記第二検出ステップ、前記第三検出ステップ、及び、前記第四検出ステップの検出結果に基づいて、前記電磁波の偏光情報を演算する演算ステップと、をさらに備えている、電磁波検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、光電変換装置、電磁波検出装置、光電変換方法、及び、電磁波検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出には、たとえば、熱電子放出、光電子放出、二次放出、及び、電子放出の4つのタイプがある。熱電子放出は、電極を熱することによって生じる。光電子放出は、光子の照射によって生じる。二次放出は、光速電子の衝突によって生じる。電界放出は、静電界の存在下で生じる。米国2016/0216201号公報は、電磁波を検出する電磁波検出システムを示している。このシステムは、電磁波を電子に変換する光電変換装置を含んでいる。光電変換装置は、メタマテリアル構造を有している電子放出部材を備えている。このシステムは、電子放出部材に入射した電磁波を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記光電変換装置の電子放出部材は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。上記システムは、電子放出部材から放出された電子に基づいて、入射した電磁波を検出する。上記システムによれば、例えば、テラヘルツ波が検出され得る。
【0005】
ところで、入射した電磁波の偏光状態を検出したいという需要がある。偏光状態の検出には、偏光子と検出器とを組み合わせた光学系を用いることが考えられる。例えば、ワイヤーグリッドと検出器が組み合わされた光学系が用いられる。しかし、このような光学系を用いる場合、装置の構造が複雑であり、偏光状態の検出における費用コストもかさむ。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、電磁波の偏光状態の検出を容易に実現し得る光電変換装置を提供することを目的とする。本開示の別の側面は、電磁波の偏光状態を容易に検出できる電磁波検出装置を提供することを目的とする。本開示のさらに別の側面は、電磁波の偏光状態の検出を容易に実現し得る光電変換方法を提供することを目的とする。本開示の別の側面は、電磁波の偏光状態を容易に検出できる電磁波検出方法を提供することを目的とする。
【0007】
本開示の一側面における光電変換装置は、電子放出部材を備えている。電子放出部材は、電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェスを有する。メタサーフェスは、第一アンテナ部と、第一バイアス部と、第二アンテナ部と、第二バイアス部と、を含んでいる。第一アンテナ部は、第一方向に延在していると共に電磁波の入射に応じて電子を放出する。第一バイアス部は、第一アンテナ部に面していると共に第一アンテナ部との間において第一方向の成分を有する電界を発生させるように構成される。第二アンテナ部は、第一方向と交差する第二方向に延在していると共に電磁波の入射に応じて電子を放出する。第二バイアス部は、第二アンテナ部に面していると共に第二アンテナ部との間において第二方向の成分を有する電界を発生させるように構成される。
【0008】
この光電変換装置において、第一アンテナ部と第二アンテナ部とが互いに交差する第一及び第二方向に延在している。第一バイアス部は、第一バイアス部と第一アンテナ部との間に、第一方向の成分を有する電界を発生するように構成される。第二バイアス部は、第二バイアス部と第二アンテナ部との間に、第二方向の成分を有する電界を発生するように構成される。このような構成によれば、第一アンテナ部は、入射した電磁波の電界強度の第一方向における成分に応じて電子を放出する。第二アンテナ部は、入射した電磁波の電界強度の第二方向における成分に応じて電子を放出する。このため、入射した電磁波の電界強度の第一方向における成分に応じて放出された電子と、入射した電磁波の電界強度の第二方向における成分に応じて放出された電子とが検出され得る。これらの検出によって、電磁波の偏光状態の検出が容易に実現され得る。
【0009】
上記一側面において、光電変換装置は、メタサーフェスに付与する電位を制御する電位制御部をさらに備えていてもよい。電位制御部は、メタサーフェスに付与する電位を制御することによって、第一状態と第二状態とを切り替え、第三状態と第四状態とを切り替えてもよい。第一状態において、第一バイアス部から第一アンテナ部に向かう電界の第一方向における成分は正であってもよい。第二状態において、第一バイアス部から第一アンテナ部に向かう電界の第一方向における成分は負であってもよい。第三状態において、第二バイアス部から第二アンテナ部に向かう電界の第二方向における成分は正であってもよい。第四状態において、第二バイアス部から第二アンテナ部に向かう電界の第二方向における成分は負であってもよい。この場合、第一状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第一方向における正の成分に応じて電子が第一アンテナ部から放出される。第二状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第一方向における負の成分に応じて電子は第一アンテナ部から放出される。第三状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第二方向における正の成分に応じて電子は第二アンテナ部から放出される。第四状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第二方向における負の成分に応じて電子は第二アンテナ部から放出される。このため、この光電変換装置は、各状態においてメタサーフェスから放出された電子の検出によって、電子放出部材に入射した電磁波の電界強度について、第一方向及び第二方向の各々における極性ごとの測定を実現できる。この結果、電磁波の偏光状態の検出がより正確に実現され得る。
【0010】
上記一側面において、第一アンテナ部は、第一方向において互いに異なる位置に配置されている第一及び第二先端を含んでいてもよい。第一バイアス部は、第一部分と第二部分とを含んでいてもよい。第一部分は、第一先端に面していると共に第一先端との間において第一方向の成分を有する電界を発生させてもよい。第二部分は、第二先端に面していると共に第二先端との間において第一方向の成分を有する電界を発生させてもよい。第二アンテナ部は、第二方向において互いに異なる位置に配置されている第三及び第四先端を含んでいてもよい。第二バイアス部は、第三部分と第四部分とを含んでいてもよい。第三部分は、第三先端に面していると共に第三先端との間において第二方向の成分を有する電界を発生させてもよい。第四部分は、第四先端に面していると共に第四先端との間において第二方向の成分を有する電界を発生させてもよい。第一方向において、第二部分、第二先端、第一先端、第一部分は、この順に配置されていてもよい。第二方向において、第四部分、第四先端、第三先端、第三部分は、この順に配置されていてもよい。この場合、簡易な構成でありながら、メタサーフェスから放出された電子の検出によって、電子放出部材に入射した電磁波の電界強度について、第一方向及び第二方向の各々における極性ごとの測定が実現され得る。
【0011】
上記一側面において、メタサーフェスに付与する電位を制御する電位制御部をさらに備えていてもよい。電位制御部は、メタサーフェスに付与する電位を制御することによって、第一状態と第二状態とを切り替え、第三状態と第四状態とを切り替えてもよい。第一状態において、第一先端から第一部分に向かう電界の第一方向における成分は正であり、第二部分から第二先端に向かう電界の第一方向における成分は正であり、第三先端から第三部分に向かう電界の第二方向における成分は正であり、第四先端から第四部分に向かう電界の第二方向における成分は負であってもよい。第二状態において、第一部分から第一先端に向かう電界の第一方向における成分は負であり、第二先端から第二部分に向かう電界の第一方向における成分は負であり、第三先端から第三部分に向かう電界の第二方向における成分は正であり、第四先端から第四部分に向かう電界の第二方向における成分は負であってもよい。第三状態において、第一先端から第一部分に向かう電界の第一方向における成分は正であり、第二先端から第二部分に向かう電界の第一方向における成分は負であり、第三先端から第三部分に向かう電界の第二方向における成分は正であり、第四部分から第四先端に向かう電界の第二方向における成分は正であってもよい。第四状態において、第一先端から第一部分に向かう電界の第一方向における成分は正であり、第二先端から第二部分に向かう電界の第一方向における成分は負であり、第三部分から第三先端に向かう電界の第二方向における成分は負であり、第四先端から第四部分に向かう電界の第二方向における成分は負であってもよい。この場合、第一状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第一方向における正の成分に応じて電子は第一アンテナ部から放出され、入射した電磁波の電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。第二状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第一方向における負の成分に応じて電子は第一アンテナ部から放出され、入射した電磁波の電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。第三状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第二方向における正の成分に応じて電子は第二アンテナ部から放出され、入射した電磁波の電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。第四状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第二方向における負の成分に応じて電子は第二アンテナ部から放出され、入射した電磁波の電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。
【0012】
上記一側面において、メタサーフェスに付与する電位を制御する電位制御部をさらに備えていてもよい。電位制御部は、メタサーフェスに付与する電位を制御することによって、第一状態と第二状態とを切り替え、第三状態と第四状態とを切り替えてもよい。第一状態において、第一部分に付与される電位は第一アンテナ部に付与される電位よりも低く、第二部分に付与される電位は第一アンテナ部に付与される電位よりも高く、第三部分に付与される電位は第二アンテナ部に付与される電位よりも低く、第四部分に付与される電位は第二アンテナ部に付与される電位よりも低くてもよい。第二状態において、第一部分に付与される電位は第一アンテナ部に付与される電位よりも高く、第二部分に付与される電位は第一アンテナ部に付与される電位よりも低く、第三部分に付与される電位は第二アンテナ部に付与される電位よりも低く、第四部分に付与される電位は第二アンテナ部に付与される電位よりも低くてもよい。第三状態において、第一部分に付与される電位は第一アンテナ部に付与される電位よりも低く、第二部分に付与される電位は第一アンテナ部に付与される電位よりも低く、第三部分に付与される電位は第二アンテナ部に付与される電位よりも低く、第四部分に付与される電位は第二アンテナ部に付与される電位よりも高くてもよい。第四状態において、第一部分に付与される電位は第一アンテナ部に付与される電位よりも低く、第二部分に付与される電位は第一アンテナ部に付与される電位よりも低く、第三部分に付与される電位は第二アンテナ部に付与される電位よりも高く、第四部分に付与される電位は第二アンテナ部に付与される電位よりも低くてもよい。この場合、第一先端と第一部分との間、第二先端と第二部分との間、第三先端と第三部分との間、第四先端と第四部分との間に、電位差が生じる。電位差によって、電界が生じる。この結果、第一状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第一方向における正の成分に応じて電子は第一アンテナ部から放出され、入射した電磁波の電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。第二状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第一方向における負の成分に応じて電子は第一アンテナ部から放出され、入射した電磁波の電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。第三状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第二方向における正の成分に応じて電子は第二アンテナ部から放出され、入射した電磁波の電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。第四状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第二方向における負の成分に応じて電子は第二アンテナ部から放出され、入射した電磁波の電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。
【0013】
上記一側面において、第一方向と第二方向とは、直交していてもよい。メタサーフェスは、第三アンテナ部と第三バイアス部とをさらに含んでいてもよい。第三アンテナ部は、第一方向と第二方向とに交差する第三方向に延在していると共に電磁波の入射に応じて電子を放出してもよい。第三バイアス部は、第三アンテナ部に面していると共に第三アンテナ部との間において第三方向の成分を有する電界を発生させるように構成されていてもよい。このような構成によれば、第三アンテナ部は、入射した電磁波の電界強度の第三方向における成分に応じて電子を放出する。この場合、入射した電磁波の電界強度の第三方向における成分に応じて放出された電子がさらに検出され得る。このため、メタサーフェスから放出された電子の検出により簡易な演算処理によって、入射した電磁波について円偏光も含めた偏光状態が検出され得る。
【0014】
上記一側面において、メタサーフェスに付与する電位を制御する電位制御部をさらに備えていてもよい。電位制御部は、メタサーフェスに付与する電位を制御することによって、第一状態と第二状態とを切り替え、第三状態と第四状態とを切り替え、第五状態と第六状態とを切り替えてもよい。第一状態において、第一バイアス部から第一アンテナ部に向かう電界の第一方向における成分は正であってもよい。第二状態において、第一バイアス部から第一アンテナ部に向かう電界の第一方向における成分は負であってもよい。第三状態において、第二バイアス部から第二アンテナ部に向かう電界の第二方向における成分は正であってもよい。第四状態において、第二バイアス部から第二アンテナ部に向かう電界の第二方向における成分は負であってもよい。第五状態において、第三バイアス部から第三アンテナ部に向かう電界の第三方向における成分は負であってもよい。第六状態において、第三バイアス部から第三アンテナ部に向かう電界の第三方向における成分は正であってもよい。この場合、第一状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第一方向における正の成分に応じて電子は第一アンテナ部から放出される。第二状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第一方向における負の成分に応じて電子が第一アンテナ部から放出される。第三状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第二方向における正の成分に応じて電子は第二アンテナ部から放出される。第四状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第二方向における負の成分に応じて電子は第二アンテナ部から放出される。第五状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第三方向における負の成分に応じて電子は第二アンテナ部から放出される。第六状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第三方向における正の成分に応じて電子は第二アンテナ部から放出される。したがって、この光電変換装置は、各状態においてメタサーフェスから放出された電子の検出によって、電子放出部材に入射した電磁波の電界強度について、第一方向、第二方向、及び、第三方向の各々における極性ごとの測定を実現できる。
【0015】
上記一側面において、光電変換装置は、気密に封止されていると共に電磁波を透過する窓部を有しているハウジングをさらに備えていてもよい。電子放出部材は、ハウジング内に配置されていてもよい。この場合、ハウジング内を真空にする又はハウジング内にガスを充填することによって、電磁波の入射に応じた電子の放出量が向上し得る。
【0016】
本開示の別の側面における電磁波検出装置は、上述した光電変換装置と、検出部と、演算部とを備えている。検出部は、電子放出部材から放出された電子を検出する。演算部は、第一状態における検出部の検出結果と、第二状態における検出部の検出結果と、第三状態における検出部の検出結果と、第四状態における検出部の検出結果とに基づいて電磁波の偏光情報を演算する。この場合、この電磁波検出装置は、電磁波の偏光状態を容易に検出できる。
【0017】
本開示のさらに別の側面における光電変換方法は、第一アンテナ部と第一バイアス部と第二アンテナ部と第二バイアス部とを含むメタサーフェスを用いて、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて、第一バイアス部と第一アンテナ部との間において第一方向の成分を有する電界を発生させた状態において第一アンテナ部から電子を放出させるステップと、上記メタサーフェスを用いて、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて、第二バイアス部と第二アンテナ部との間において第二方向の成分を有する電界を発生させた状態において第二アンテナ部から電子を放出させるステップと、を備えている。第一アンテナ部は、第一方向に延在している。第一バイアス部は、第一アンテナ部に面している。第二アンテナ部は、第一方向と交差する第二方向に延在している。第二バイアス部は、第二アンテナ部に面している。
【0018】
この光電変換方法において、第一バイアス部と第一アンテナ部との間において第一方向の成分を有する電界を発生させた状態において測定対象の電磁波がメタサーフェスに入射すると、第一アンテナ部から電子が放出される。第二バイアス部と第二アンテナ部との間において第二方向の成分を有する電界を発生させた状態において、測定対象の電磁波がメタサーフェスに入射すると第二アンテナ部から電子が放出される。この場合、第一アンテナ部は、入射した電磁波の電界強度の第一方向における成分に応じて電子を放出する。第二アンテナ部は、入射した電磁波の電界強度の第二方向における成分に応じて電子を放出する。このため、入射した電磁波の電界強度の第一方向における成分に応じて放出された電子と、入射した電磁波の電界強度の第二方向における成分に応じて放出された電子とが検出され得る。これらの検出によれば、電磁波の偏光状態の検出が容易に実現され得る。
【0019】
上記さらに別の側面において、第一アンテナ部から電子を放出させるステップは、第一電子放出ステップと、第二電子放出ステップとを含んでいてもよい。第一電子放出ステップでは、第一状態において、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて第一アンテナ部から電子を放出させてもよい。第一状態においては、第一バイアス部から第一アンテナ部に向かう電界の第一方向における成分が正であるように、電位がメタサーフェスに付与されてもよい。第二電子放出ステップでは、第二状態において、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて第一アンテナ部から電子を放出させてもよい。第二状態においては、第一バイアス部から第一アンテナ部に向かう電界の第一方向における成分が負であるように、電位がメタサーフェスに付与されてもよい。第二アンテナ部から電子を放出させるステップは、第三電子放出ステップと、第四電子放出ステップとを含んでいてもよい。第三電子放出ステップは、第三状態において、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて第二アンテナ部から電子を放出させてもよい。第三状態においては、第二バイアス部から第二アンテナ部に向かう電界の第二方向における成分が正であるように、電位がメタサーフェスに付与されてもよい。第四電子放出ステップは、第四状態において、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて第二アンテナ部から電子を放出させてもよい。第四状態においては、第二バイアス部から第二アンテナ部に向かう電界の第二方向における成分が負であるように、電位がメタサーフェスに付与されてもよい。この場合、第一状態において、第一バイアス部から第一アンテナ部に向かう電界の第一方向における成分は正である。このため、第一状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第一方向における正の成分に応じた電子は第一アンテナ部から放出される。第二状態において、第一バイアス部から第一アンテナ部に向かう電界の第一方向における成分は負である。このため、第二状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第一方向における負の成分に応じた電子は第一アンテナ部から放出される。第三状態において、第二バイアス部から第二アンテナ部に向かう電界の第二方向における成分は正である。このため、第三状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第二方向における正の成分に応じた電子は第二アンテナ部から放出される。第四状態において、第二バイアス部から第二アンテナ部に向かう電界の第二方向における成分は負である。このため、第四状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第二方向における負の成分に応じた電子は第二アンテナ部から放出される。したがって、この光電変換方法によれば、各状態においてメタサーフェスから放出された電子の検出によって、電子放出部材に入射した電磁波の電界強度について、第一方向及び第二方向の各々における極性ごとの測定が実現され得る。
【0020】
上記さらに別の側面において、第一方向と第二方向とは、直交していてもよい。メタサーフェスは、第三アンテナ部と第三バイアス部とをさらに含んでいてもよい。第三アンテナ部は、第一方向と第二方向とに交差する第三方向に延在していてもよい。第三バイアス部は、第三アンテナ部に面していてもよい。この光電変換方法は、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて第三アンテナ部から電子を放出させるステップをさらに備えていてもよい。この場合、第三アンテナ部は、入射した電磁波の電界強度の第三方向における成分に応じて電子を放出する。したがって、入射した電磁波の電界強度の第三方向における成分に応じて放出された電子が検出され得る。このため、メタサーフェスから放出された電子の検出により簡易な演算処理によって、入射した電磁波について円偏光も含めた偏光状態が検出され得る。
【0021】
上記さらに別の側面において、第一アンテナ部から電子を放出させるステップは、第一電子放出ステップと、第二電子放出ステップとを含んでいてもよい。第一電子放出ステップでは、第一状態において、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて第一アンテナ部から電子を放出させてもよい。第一状態においては、メタサーフェスに第一バイアス部から第一アンテナ部に向かう電界の第一方向における成分が正であるように、電位がメタサーフェスに付与されてもよい。第二電子放出ステップでは、第二状態において、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて第一アンテナ部から電子を放出させてもよい。第二状態においては、第一バイアス部から第一アンテナ部に向かう電界の第一方向における成分が負であるように、電位がメタサーフェスに付与されてもよい。第二アンテナ部から電子を放出させるステップは、第三電子放出ステップと、第四電子放出ステップとを含んでいてもよい。第三電子放出ステップは、第三状態において、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて第二アンテナ部から電子を放出させてもよい。第三状態においては、第二バイアス部から第二アンテナ部に向かう電界の第二方向における成分が正であるように、電位がメタサーフェスに付与されてもよい。第四電子放出ステップは、第四状態において、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて第二アンテナ部から電子を放出させてもよい。第四状態においては、第二バイアス部から第二アンテナ部に向かう電界の第二方向における成分が負であるように、電位がメタサーフェスに付与されてもよい。第三アンテナ部から電子を放出させるステップは、第五電子放出ステップと、第六電子放出ステップとを含んでいてもよい。第五電子放出ステップは、第五状態において、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて第三アンテナ部から電子を放出させてもよい。第五状態においては、第三バイアス部から第三アンテナ部に向かう電界の第三方向における成分が負であるように、電位がメタサーフェスに付与されてもよい。第六電子放出ステップは、第六状態において、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて第三アンテナ部から電子を放出させてもよい。第六状態においては、第三バイアス部から第三アンテナ部に向かう電界の第三方向における成分が正であるように、電位がメタサーフェスに付与されてもよい。この場合、第五状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第三方向における正の成分に応じた電子は第二アンテナ部から放出される。第六状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の第三方向における負の成分に応じた電子は第二アンテナ部から放出される。したがって、各状態においてメタサーフェスから放出された電子の検出によって、電子放出部材に入射した電磁波の電界強度について、第一方向、第二方向、及び、第三方向の各々における極性ごとの測定が実現され得る。
【0022】
本開示のさらに別の側面における電磁波検出方法は、上述した光電変換方法を備えており、第一検出ステップと、第二検出ステップと、第三検出ステップと、第四検出ステップと、演算ステップとをさらに備えている。第一検出ステップにおいて、第一電子放出ステップにおいて電子放出部材から放出された電子が検出される。第二検出ステップにおいて、第二電子放出ステップにおいて電子放出部材から放出された電子が検出される。第三検出ステップにおいて、第三電子放出ステップにおいて電子放出部材から放出された電子が検出される。第四検出ステップにおいて、第四電子放出ステップにおいて電子放出部材から放出された電子が検出される。演算ステップにおいて、第一検出ステップ、第二検出ステップ、第三検出ステップ、及び、第四検出ステップの検出結果に基づいて、電磁波の偏光情報が演算される。この場合、電磁波の偏光状態が容易に検出され得る。
【0023】
本開示の一側面によれば、電磁波の偏光状態の検出を容易に実現し得る光電変換装置を提供することが可能となる。本開示の別の側面によれば、電磁波の偏光状態を容易に検出できる電磁波検出装置を提供することが可能となる。本開示のさらに別の側面によれば、電磁波の偏光状態の検出を容易に実現し得る光電変換方法を提供することが可能となる。本開示のさらに別の側面によれば、電磁波の偏光状態を容易に検出できる電磁波検出方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本実施形態における電磁波検出装置の概略図である。
【
図4】(a)は、光電変換装置の動作を説明するための図である。(b)は、光電変換装置の動作を説明するための図である。
【
図5】
図5は、光電変換装置の動作を説明するための図である。
【
図6】
図6は、光電変換装置の動作を説明するための図である。
【
図7】(a)は、光電変換装置の動作を説明するための図である。(b)は、光電変換装置の動作を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。
【
図10】(a)は、本実施形態の変形例におけるパターンの構造を示す図である。(b)は、本実施形態の変形例におけるパターンの構造を示す図である。
【
図13】
図13は、本実施形態の変形例における演算処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0026】
まず、
図1を参照して、本実施形態における電磁波検出装置の構成を説明する。
図1は、本実施形態における電磁波検出装置の概略図である。
【0027】
電磁波検出装置1は、入射した電磁波を検出する。電磁波検出装置1は、光電変換装置2を含んでいる。光電変換装置2は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。本明細書において、「光」は、可視光以外の電磁波を含んでいる。本実施形態において、電磁波検出装置1は、電磁波の入射に応じて光電変換装置2から放出された電子に基づいて、入射した電磁波を検出する。光電変換装置2は、例えば、いわゆるミリ波から赤外光の波長の範囲の電磁波が入射されることによって、電子を放出する。ミリ波から赤外光の波長の範囲は、例えば、0.01~150THz程度の周波数域に相当する。本明細書において、「波長の範囲」は、互いに分離した複数の波長域の範囲を含んでいてもよいし、一つの連続した波長域の範囲であってもよい。光電変換装置2は、例えば、電界放出(フィールドエミッション)によって電子を放出する。
【0028】
電磁波検出装置1は、例えば、電磁波の入射に応じて電気信号を出力する電子管である。例えば、電磁波検出装置1は、電子管の内部において、電磁波の入射に応じて電子を放出し、放出された電子を検出し、検出結果に基づく電気信号を出力する。電子管は、例えば、光電子増倍管(Photomultiplier Tube:PMT)である。電磁波検出装置1は、電磁波が入射した場合に内部で電子を放出し、放出された電子を増倍する。本実施形態の変形例として、電磁波検出装置1は、電子管内に電子を検出する構成を備えていなくてもよい。換言すれば、電磁波検出装置1は、電磁波の入射に応じて電子を外部に放出する電子管を光電変換装置2として備え、この電子管の外部に電子管から放出された検出する検出部を備えていてもよい。
【0029】
電磁波検出装置1は、ハウジング10と、電子放出部材20と、保持部材30と、電子増倍部40と、電子収集部50と、電源部70と、演算部75と、を備えている。電子放出部材20、保持部材30、電子増倍部40及び電子収集部50は、ハウジング10内に配置されている。光電変換装置2は、ハウジング10と、電子放出部材20と、電源部70とを備え、電磁波検出装置1の一部を構成している。
【0030】
ハウジング10は、バルブ11及びステム12を有している。ハウジング10の内部は、バルブ11とステム12とによって気密に封止されている。本実施形態において、ハウジング10の内部は真空に保持されている。ハウジング10内の真空は、絶対真空でなくてもよく、大気圧よりも低い圧力の気体で満たされた状態であってもよい。例えば、ハウジング10の内部は、1×10-4~1×10-7Paに保持される。
【0031】
バルブ11は、電磁波透過性を有する窓部11aを含んでいる。本明細書において、「電磁波透過性」とは、入射した電磁波の波長の範囲の少なくとも一部の波長の範囲が透過する性質をいう。本実施形態において、ハウジング10は円筒形状を有している。ハウジング10は、
図1に示されているようにX軸方向に延在する。ステム12は、ハウジング10の底面を構成している。ステム12は、例えば、ハウジング10のX軸方向における一方の端面を構成している。バルブ11は、ハウジング10の側面及びステム12に面している底面を構成している。X軸、Y軸、及び、Z軸は、互いに直交している。
【0032】
窓部11aは、ステム12に面している底面を構成している。窓部11aは、例えば、X軸方向から見て、YZ軸方向を径方向とする円形状を呈している。電磁波の透過率の周波数特性は、材料に応じて異なる。このため、窓部11aは、ハウジング10に入射する電磁波の周波数域に応じた最適な材料によって構成される。例えば、窓部11aは、例えば、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ダイアモンド、及びカルコゲナイドガラスから選択される少なくとも1種を含む。これにより、ミリ波から赤外光のうち任意の周波数域の電磁波をハウジング10の内部に導くことができる。例えば、石英は0.1~5THz、シリコンは0.04~11THz及び46THz以上、フッ化マグネシウムは40THz以上、ゲルマニウムは13THz以上、セレン化亜鉛は14THz以上の周波数域を有する電磁波を透過する部材の材料に適している。
【0033】
ハウジング10は、ハウジング10の外部と内部との電気的な接続を可能とする複数の配線13をさらに有している。複数の配線13は、例えば、リード線又はピンである。本実施形態において、複数の配線13は、ステム12を貫通するピンであり、ハウジング10の内部から外部に延在している。複数の配線13の少なくとも一つが、ハウジング10の内部に設けられた種々の部材と接続されている。
【0034】
電子放出部材20は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。電子放出部材20は、支持体21を備えている。支持体21は、例えば、板形状である。支持体21は、例えば、平面視で矩形を呈している。支持体21は、互いに対向する主面21a及び主面21bを有している。主面21aと主面21bとは、互いに反対側に位置する支持体21の表面である。主面21a及び主面21bは、例えば、平坦面であり、平面視で矩形を呈している。主面21a及び主面21bは、窓部11aに対して平行に配置されている。主面21aは、窓部11aに面している。主面21aには、窓部11aを通過した電磁波が入射する。
【0035】
支持体21は、窓部11aを透過する電磁波に対して電磁波透過性を有している。このため、支持体21は、窓部11aを透過した電磁波の少なくとも一部の周波数域を透過する。支持体21は、窓部11aと同様の材料から構成され得る。支持体21の材料は、たとえば、シリコンを含んでいる。1つの光電変換装置2において、支持体21と窓部11aとは同一の材料でなくてもよい。支持体21は、窓部11a及び電子増倍部40から離間している。
【0036】
電子放出部材20は、メタサーフェス22を有している。メタサーフェス22は、支持体21に設けられている。メタサーフェス22は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。メタサーフェス22は、例えば、いわゆるミリ波から赤外光の波長の範囲の電磁波に対して感度を有している。メタサーフェス22は、テラヘルツ波に対しても感度を有している。テラヘルツ波の波長の範囲は、100GHzから30THzの周波数域に相当する。「電磁波に対して感度を有する」とは、この電磁波の入射に応じて電子が放出されることを意味している。
【0037】
メタサーフェス22は、例えば、支持体21の主面21b上に形成された酸化物層と、酸化物層上に形成された金属層とを含んでいる。酸化物層の材料は、たとえば二酸化シリコン及び酸化チタンを含んでいる。例えば、酸化物層は、二酸化シリコンを含む層と、酸化チタンを含む層とを含んでいる。金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。本実施形態において、石英からなる支持体21の主面21b上に、酸化物層が形成され、酸化物層の上に金属層が形成されている。例えば、支持体21の厚さは525μmであり、メタサーフェス22の二酸化シリコンを含む層の厚さは1μmであり、メタサーフェス22の二酸化チタンを含む層の厚さは10nmであり、メタサーフェス22の金属層の厚さは200nmである。メタサーフェス22は、平面視で矩形状である。本実施形態の変形例において、メタサーフェス22は、主面21aに設けられていてもよい。
【0038】
保持部材30は、ハウジング10の内部において電子放出部材20を保持している。保持部材30は、ハウジング10の内側面10aに対して位置決めされる。保持部材30は、ハウジング10に対して電子放出部材20を位置決めする。保持部材30は、ハウジング10の内側面10aに沿う枠状であり、保持部材30には貫通口が形成されている。電子放出部材20の主面21a,21bに直交する方向から見た場合に、貫通口を画成する縁の内側に、電子放出部材20のメタサーフェス22が配置される。
【0039】
電子増倍部40は、ハウジング10の内部に配置されており、電子放出部材20から放出された電子が入射する入射面40aを有している。電子増倍部40は、入射面40aに入射した電子を増倍する。本実施形態において、電子放出部材20の主面21bは、電子増倍部40の入射面40aに面している。メタサーフェス22は、電子増倍部40の入射面40aに面しており、メタサーフェス22から放出された電子が入射面40aに入射する。電子放出部材20の主面21aは、ハウジング10の窓部11aに面している。電子増倍部40は、例えば、複数段のダイノードを有している。
【0040】
電子収集部50は、ハウジング10の内部に配置されており、電子増倍部40で増倍された電子を収集する。電子収集部50は、電子放出部材20から放出された電子を検出する検出部である。電磁波検出装置1は、電子収集部50において電子を検出することによって、電磁波を検出する。本実施形態において、電子収集部50は、例えば、複数の配線13のうち1つが接続されているアノードを有している。アノードには、所定の電位が配線13を通して付与される。アノードは、電子増倍部40のダイノードで増倍された電子を捕捉する。電子収集部50は、アノードの代わりにダイオードを有していてもよい。
【0041】
本実施形態において、メタサーフェス22は、アクティブタイプであり、バイアス電圧の付与によって動作する。メタサーフェス22は、電源部70によって電位を付与されることによって動作する。電源部70は、メタサーフェス22に電気的に接続されている。電源部70は、電位付与部71と電位制御部72とを含んでいる。電位付与部71は、メタサーフェス22に電位を付与する。電位制御部72は、電位付与部71を制御する。電位制御部72によって、メタサーフェス22に付与する電位が制御される。メタサーフェス22は、電位制御部72によって制御される電位に応じて動作する。換言すれば、メタサーフェス22は、電位制御部72による電位の制御に応じて、電子を放出する。
【0042】
演算部75は、電子収集部50における検出結果を取得し、この検出結果に基づいて電磁波の電界強度に関する情報を演算する。例えば、演算部75は、電子収集部50において収集された電子に基づく電気信号を検出結果として取得する。演算される電磁波の電界強度に関する情報は、電界強度自体であってもよい。演算部75は、電磁波の電界強度に関する情報に基づいて、電磁波の偏光情報を演算する。「偏光情報」は、「偏光状態」に関する情報である。例えば、演算部75は、直線偏光の偏光方向を演算する。例えば、演算部75は、演算された電界強度に関する情報及び偏光情報を不図示の表示部に出力し、表示させる。
【0043】
電位制御部72及び演算部75は、例えば、ハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された1又は複数のコンピュータである。電位制御部72及び演算部75は、ハードウェアとして、例えば、プロセッサと、主記憶装置と、補助記憶装置と、通信装置と、入力装置とを備えている。プロセッサは、オペレーティングシステム及びアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶装置は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。補助記憶装置は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶装置は、一般的に主記憶装置よりも大量のデータを記憶する。通信装置は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。入力装置は、キーボード、マウス、及び、タッチパネルなどにより構成される。電位制御部72と演算部75とは、一体に構成されていてもよいし、分離していてもよい。
[光電変換装置の構成]
【0044】
次に、
図2及び
図3を参照して、光電変換装置2についてさらに詳細に説明する。
図2は、光電変換装置の模式図である。
図3は、光電変換装置における電子放出部材の平面図である。
【0045】
図2に示されている例において、ハウジング10に入射した電磁波Wがメタサーフェス22に入射し、メタサーフェス22が電磁波Wの入射に応じて電子Pを放出している。電磁波Wの電界強度は、例えば、Y軸方向成分とZ軸方向成分とを含んでいる。メタサーフェス22から放出された電子Pは、電子増倍部40に入射する。電子増倍部40において増倍された電子は、電子収集部50において収集される。例えば、Z軸方向が第一方向に対応する場合、Y軸方向が第二方向に対応する。
【0046】
図3に示されているように、メタサーフェス22は、少なくとも一つの光電変換部25を含んでいる。光電変換部25は、対応する波長を有している電磁波Wの入射に応じて電子Pを放出する。例えば、光電変換部25は0.5THzを中心周波数とする周波数域に感度を有している。例えば、光電変換部25は、電磁波Wの電界強度のY軸方向成分及びZ軸方向成分に感度を有している。光電変換部25が正のY軸方向成分に感度を有する場合と、光電変換部25が負のY軸方向成分に感度を有する場合と、光電変換部25が正のZ軸方向成分に感度を有する場合と、光電変換部25が負のZ軸方向成分に感度を有する場合とは、電位制御部72による電位制御に応じて、切り換えられる。光電変換部25が感度を有する電界の方向成分及び周波数域は、これに限定されない。
【0047】
図3に示されているように、メタサーフェス22は、互いに離間した複数のパターン31,32,33,34,35を含んでいる。光電変換部25が感度を有する電界の方向成分及び周波数域は、複数のパターン31,32,33,34,35の構成に依存している。「構成」は、形状及び材質などの種々の属性を含んでいる。「形状」は、サイズも含んでいる。パターン31,32は、それぞれ、バイアス部β1を含んでいる。パターン33,34は、それぞれ、バイアス部β2を含んでいる。パターン35は、アンテナ部α1とアンテナ部α2とを含んでいる。アンテナ部α1,α2の各々において、アンテナ部α1,α2のサイズが小さいほど、波長が短い電磁波、すなわち、周波数が大きい電磁波に対して電界電子放出が生じやすい。アンテナ部α1とアンテナ部α2とは、互いに異なる方向成分に対して感度を有している。アンテナ部α1は、Z軸方向成分に対して感度を有している。アンテナ部α2は、Y軸方向成分に対して感度を有している。例えば、アンテナ部α1が第一アンテナ部に対応する場合、アンテナ部α2が第二アンテナ部に対応する。バイアス部β1が第一バイアス部に対応する場合、バイアス部β2が第二バイアス部に対応する。
【0048】
アンテナ部α1,α2は、電磁波Wの入射に応じて電子Pを放出する。アンテナ部α1は、Z軸方向に延在している。バイアス部β1は、アンテナ部α1に面している。バイアス部β1は、バイアス電位が印加された場合に、対応するアンテナ部α1との間にZ軸方向の成分を有する電界を発生させるように構成される。本実施形態において、バイアス部β1は、アンテナ部α1との間においてZ軸方向の電界を発生させる。アンテナ部α1よりも高い電位がバイアス部β1に付与された場合に、アンテナ部α1のうちバイアス部β1側の先端部分におけるポテンシャル障壁が薄くなる。アンテナ部α1よりも低い電位がバイアス部β1に付与された場合に、アンテナ部α1のうちバイアス部β1側の先端部分におけるポテンシャル障壁が厚くなる。
【0049】
アンテナ部α2は、Y軸方向に延在している。バイアス部β2は、アンテナ部α2に面している。バイアス部β2は、バイアス電位が印加された場合に、対応するアンテナ部α2との間にY軸方向の成分を有する電界を発生させるように構成される。本実施形態において、バイアス部β2は、アンテナ部α2との間においてY軸方向の電界を発生させる。アンテナ部α2よりも高い電位がバイアス部β2に付与された場合に、アンテナ部α2のうちバイアス部β2側の先端部分におけるポテンシャル障壁が薄くなる。アンテナ部α2よりも低い電位がバイアス部β2に付与された場合に、アンテナ部α2のうちバイアス部β2側の先端部分におけるポテンシャル障壁が厚くなる。アンテナ部よりも高い電位がバイアス部に付与される状態を、「順バイアス」という。アンテナ部よりも低い電位がバイアス部に付与される状態を、「逆バイアス」という。
【0050】
アンテナ部α1,α2に電磁波Wが入射すると、アンテナ部α1,α2の周囲に電界が誘起される。アンテナ部α1,α2の周囲に誘起された電界によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなる。順バイアスの状態におけるアンテナ部α1,α2への電磁波Wの入射によってポテンシャル障壁がさらに薄くなれば、アンテナ部α1,α2に存在した電子は、トンネル効果によってポテンシャル障壁を抜け得る。ポテンシャル障壁を抜けた電子Pは、アンテナ部α1,α2の周囲の電界によって加速される。このように、順バイアスの状態におけるアンテナ部α1,α2に対する電磁波Wの入射によって、電界電子放出が生じ得る。
【0051】
各パターン31,32,33,34,35は、支持体21の主面21b上に配されている。複数のパターン31,32,33,34,35は、酸化物層を介して接続されている。複数のパターン31,32,33,34,35は、酸化物層によって互いに分離されており、少なくとも光電変換装置2の非動作時において互いに絶縁されている。各パターン31,32,33,34,35は、伝導線であり、電子を伝導する。各パターン31,32,33,34,35は、少なくともメタサーフェス22の酸化物層上に形成された金属層を含んでいる。この金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。
【0052】
図3に示されている例において、パターン31は、複数の線形状部41と、複数の線形状部41を互いに電気的に接続する線形状部42とを含んでいる。各線形状部41は、Y軸方向に延在している。各線形状部41は、バイアス部β1を構成している。各線形状部41は、例えば、Y軸方向に延在する矩形状を呈している。線形状部42は、各線形状部41に連結されている。本実施形態において、複数の線形状部41がY軸方向に延在する同一直線上に配列されており、互いに隣り合う線形状部41が複数の線形状部42によって連結されている。各々がY軸方向に延在する同一直線上に配置された複数の線形状部41からなる複数のグループが、Z軸方向において互いに平行に配列されている。
【0053】
パターン32は、複数の線形状部43と、複数の線形状部43を互いに電気的に接続する線形状部44とを含んでいる。各線形状部43は、Y軸方向に延在している。各線形状部43は、バイアス部β1を構成している。各線形状部43は、例えば、Y軸方向に延在する矩形状を呈している。互いに対応する線形状部41と線形状部43とは、Z軸方向に延在する同一直線上に配置されている。互いに対応する線形状部41と線形状部43との間には、パターン35が配置されている。線形状部44は、各線形状部43に連結されている。本実施形態において、複数の線形状部43がY軸方向に同一直線上に配列されており、互いに隣り合う線形状部43が複数の線形状部44によって連結されている。各々がY軸方向に延在する同一直線上に配置された複数の線形状部43からなる複数のグループが、Z軸方向において互いに平行に配列されている。複数の線形状部41からなる1つの上記グループと複数の線形状部43からなる1つの上記グループとの間には、パターン35が配置されている。線形状部41が第一部分に対応する場合、線形状部43が第二部分に対応する。
【0054】
パターン33は、複数の線形状部46と、複数の線形状部46を互いに電気的に接続する線形状部47とを含んでいる。各線形状部46は、Z軸方向に延在している。各線形状部46は、バイアス部β2を構成している。各線形状部46は、例えば、Z軸方向に延在する矩形状を呈している。線形状部47は、各線形状部46に連結されている。本実施形態において、複数の線形状部46がZ軸方向に同一直線上に配列されており、互いに隣り合う線形状部46が複数の線形状部47によって連結されている。各々がZ軸方向に延在する同一直線上に配置された複数の線形状部46からなる複数のグループが、Y軸方向において互いに平行に配列されている。
【0055】
パターン34は、複数の線形状部48と、複数の線形状部48を互いに電気的に接続する線形状部49とを含んでいる。各線形状部48は、Z軸方向に延在している。各線形状部48は、バイアス部β2を構成している。各線形状部48は、例えば、Z軸方向に延在する矩形状を呈している。互いに対応する線形状部46と線形状部48とは、Y軸方向に延在する同一直線上に配置されている。互いに対応する線形状部46と線形状部48との間には、パターン35が配置されている。線形状部49は、各線形状部48に連結されている。本実施形態において、複数の線形状部48がZ軸方向に同一直線上に配列されており、互いに隣り合う線形状部48が複数の線形状部49によって連結されている。各々がZ軸方向に延在する同一直線状に配置された複数の線形状部48からなる複数のグループが、Y軸方向において互いに平行に配列されている。複数の線形状部46からなる1つの上記グループと複数の線形状部48からなる1つの上記グループとの間には、パターン35が配置されている。線形状部46が第三部分に対応する場合、線形状部48が第四部分に対応する。
【0056】
パターン35は、パターン31,32、及び、パターン33,34に向かって延在している。パターン35は、パターン31、パターン32、パターン33、又は、パターン34よりも低い電位が付与された状態において、電磁波Wの入射に応じて電子Pを放出する。パターン35は、複数の線形状部51と、複数の線形状部52とを含んでいる。線形状部51と線形状部52とは、それぞれ、互いに交差する方向に延在している。換言すれば、線形状部51が延在している方向と、線形状部52が延在している方向とは、互いに交差している。本実施形態において、線形状部51と線形状部52とは、それぞれ、互いに直交する方向に延在している。
【0057】
各線形状部51は、Z軸方向に延在している。各線形状部51は、アンテナ部α1を構成している。各線形状部51は、例えば、Z軸方向に延在する矩形状を呈している。複数の線形状部51は、互いに平行である。パターン35は、複数の線形状部51を互いに電気的に接続する線形状部53を含んでいる。線形状部53は、各線形状部51に連結されている。本実施形態において、複数の線形状部51がY軸方向に同一直線上に配列されており、互いに隣り合う線形状部51が複数の線形状部53によって連結されている。各々がZ軸方向に延在する同一直線上に配置された複数の線形状部51からなる複数のグループが、Y軸方向において配列されている。互いに異なるグループに含まれている複数の線形状部51が、Z軸方向に延在する同一直線上に配置されている。
【0058】
各線形状部51は、線形状部53に接続された部分から+Z軸方向と-Z軸方向とに延在している。各線形状部53は、各線形状部51の中央に連結されている。各線形状部51は、一対の線形状部51a,51bを含んでいる。線形状部51aは、線形状部53に接続された部分から+Z軸方向に延在している。線形状部51bは、線形状部53に接続された部分から-Z軸方向に延在している。本実施形態において、各線形状部51における一対の線形状部51a,51bは、Z軸方向に延在する同一直線上に延在している。各線形状部51は、Z軸方向において、一対のバイアス部β1の間に配置されている。各線形状部51は、Z軸方向において、パターン31とパターン32との間に配置されている。各線形状部51は、Z軸方向において、線形状部41と線形状部43との間に配置されている。
【0059】
各線形状部52は、Y軸方向に延在している。各線形状部52は、アンテナ部α2を構成している。各線形状部52は、例えば、Y軸方向に延在する矩形状を呈している。複数の線形状部52は、互いに平行である。上述した線形状部53は、複数の線形状部52を互いに電気的に接続する。線形状部53は、各線形状部52に連結されている。本実施形態において、複数の線形状部52がZ軸方向に同一直線上に配列されており、互いに隣り合う線形状部52が複数の線形状部53によって連結されている。各々がZ軸方向に延在する同一直線上に配置された複数の線形状部52からなる複数のグループが、Y軸方向において配列されている。互いに異なるグループに含まれている複数の線形状部52が、Y軸方向に延在する同一直線上に配置されている。本実施形態において、複数の線形状部51と複数の線形状部52とは、線形状部53によって電気的に接続されている。
【0060】
各線形状部52は、線形状部53に接続された部分から+Y軸方向と-Y軸方向とに延在している。各線形状部53は、各線形状部52の中央に連結されている。各線形状部52は、一対の線形状部52a,52bを含んでいる。線形状部52aは、線形状部53に接続された部分から+Y軸方向に延在している。線形状部52bは、線形状部53に接続された部分から-Y軸方向に延在している。本実施形態において、各線形状部52における一対の線形状部52a,52bは、Y軸方向に延在する同一直線上に延在している。各線形状部52は、Y軸方向において、一対のバイアス部β2の間に配置されている。各線形状部52は、Y軸方向において、パターン33とパターン34との間に配置されている。各線形状部52は、Y軸方向において、線形状部46と線形状部48との間に配置されている。
【0061】
パターン35は、パターン31に面している先端36と、パターン32に面している先端37と、パターン33に面している先端38と、パターン34に面している先端39とを含んでいる。例えば、先端36が第一先端に対応し、先端37が第二先端に対応し、先端38が第三先端に対応し、先端39が第四先端に対応する。本実施形態において、アンテナ部α1を構成する各線形状部51が、先端36と先端37とを含んでおり、アンテナ部α2を構成する各線形状部52が、先端38と先端39とを含んでいる。
【0062】
先端36と先端37とは、各線形状部51の両端に位置している。先端36は、線形状部51aに含まれている。先端37は、線形状部51bに含まれている。同一の線形状部51に含まれている先端36と先端37とは、Z軸方向に延在する同一直線上に配置されている。先端38と先端39とは、各線形状部52の両端に位置している。先端38は、線形状部52aに含まれている。先端39は、線形状部52bに含まれている。同一の線形状部52に含まれている先端38と先端39とは、Y軸方向に延在する同一直線上に配置されている。
【0063】
先端36は、バイアス部β1に面している。先端36は、バイアス部β1のうち対応する線形状部41に面している。線形状部41は、先端36との間においてZ軸方向成分を有する電界を発生させる。先端36は、この先端36を含んでいる線形状部51において、パターン31に最も近い部分である。先端36は、パターン35の他の部分よりも、対応する線形状部41の近くに配置されている。
【0064】
先端37は、バイアス部β1に面している。先端37は、バイアス部β1のうち対応する線形状部43に面している。線形状部43は、先端37との間においてZ軸方向成分を有する電界を発生させる。先端37は、この先端37を含んでいる線形状部51において、パターン32に最も近い部分である。先端37は、パターン35の他の部分よりも、対応する線形状部43の近くに配置されている。
【0065】
先端36及び先端37、並びに、線形状部41及び線形状部43は、Z軸方向において、線形状部43、先端37、先端36、線形状部41の順に配置されている。光電変換部25において、各線形状部51は、線形状部41又は線形状部43よりも低い電位が付与された状態において電磁波Wの入射に応じて電子Pを放出し得る。
【0066】
先端38は、バイアス部β2に面している。先端38は、バイアス部β2のうち対応する線形状部46に面している。線形状部46は、先端38との間においてY軸方向成分を有する電界を発生させる。先端38は、この先端38を含んでいる線形状部52において、パターン33に最も近い部分である。先端38は、パターン35の他の部分よりも、対応する線形状部46の近くに配置されている。
【0067】
先端39は、バイアス部β2に面している。先端39は、バイアス部β2のうち対応する線形状部48に面している。線形状部48は、先端39との間においてY軸方向成分を有する電界を発生させる。先端39は、この先端39を含んでいる線形状部52において、パターン34に最も近い部分である。先端39は、パターン35の他の部分よりも、対応する線形状部48の近くに配置されている。
【0068】
先端38及び先端39、並びに、線形状部46及び線形状部48は、Y軸方向において、線形状部48、先端39、先端38、線形状部46の順に配置されている。光電変換部25において、各線形状部52は、線形状部46又は線形状部48よりも低い電位が付与された状態において電磁波Wの入射に応じて電子Pを放出し得る。
【0069】
光電変換部25は、線形状部51,52の構造の変更に応じて、例えば、いわゆるミリ波から赤外光の波長の範囲に対応するように構成される。例えば、Z軸方向における線形状部51の長さは、光電変換部25において電子Pが放出される電磁波Wの波長域に対応している。例えば、Z軸方向における線形状部51の長さは、光電変換部25から電子Pを放出させる所望の波長域に応じて設計される。同様に、Y軸方向における線形状部52の長さは、光電変換部25において電子Pが放出される電磁波Wの波長域に対応している。例えば、Y軸方向における線形状部52の長さは、光電変換部25から電子Pを放出させる所望の波長域に応じて設計される。例えば、各線形状部51,52は、所望の波長域における中心波長の半分の長さを有している。各線形状部51の長さは、Z軸方向における先端36から先端37までの長さである。各線形状部52の長さは、Y軸方向における先端38から先端39までの長さである。
【0070】
本実施形態のように、支持体21等を透過した電磁波Wが線形状部51,52に入射する場合には、透過した支持体21等の屈折率も考慮される。例えば、電子管に入射した電磁波Wの波長が600μmであり、かつ、支持体21の屈折率がこの電磁波Wに対して3.4である場合において、線形状部51,52に入射する電磁波Wの波長は600μm/3.4=176μmである。したがって、この場合、例えば、Z軸方向における線形状部51の長さ、及び、Y軸方向における線形状部52の長さは、176μm/2=88μmであることが適している。
【0071】
電子放出部材20は、
図3に示されているように、互いに離間している複数の電極61,62,63,64,65をさらに備えている。複数の電極61,62,63,64,65は、支持体21の主面21b上に設けられている。複数の電極61,62,63,64,65は、光電変換部25に電気的に接続されている。本実施形態において、各電極61,62,63,64,65は、矩形状を呈している。本実施形態の変形例として、各電極61,62,63,64,65は、線形状部42,44,47,49,53と同様に線形状を呈していてもよい。これらの電極は、貫通電極によって、支持体21の主面21a側に接続されていてもよい。
【0072】
例えば、電極61は、パターン31に含まれている。電極61は、線形状部42を介して、複数の線形状部41に電気的に接続されている。電極61は、線形状部42及び複数の線形状部41と一体に形成されていてもよい。電極62は、パターン32に含まれている。電極62は、線形状部44を介して、複数の線形状部43に電気的に接続されている。電極62は、線形状部44及び複数の線形状部43と一体に形成されていてもよい。電極63は、パターン33に含まれている。電極63は、線形状部47を介して、複数の線形状部46に電気的に接続されている。電極63は、線形状部47及び複数の線形状部46と一体に形成されていてもよい。電極64は、パターン34に含まれている。電極64は、線形状部49を介して、複数の線形状部48に電気的に接続されている。電極64は、線形状部49及び複数の線形状部48と一体に形成されていてもよい。電極65は、パターン35に含まれている。電極65は、線形状部53を介して、複数の線形状部51,52に電気的に接続されている。電極65は、線形状部53及び複数の線形状部51,52と一体に形成されていてもよい。
【0073】
光電変換部25は、複数の電極61,62,63,64,65を介して電源部70から電位を付与されることによって動作する。電源部70の電位付与部71は、複数の電極61,62,63,64,65を介して、光電変換部25に電位を付与する。電源部70の電位制御部72は、メタサーフェス22の光電変換部25に付与する電位を制御する。
【0074】
次に、
図4(a)、
図4(b)、
図5、
図6、
図7(a)、及び、
図7(b)を参照して、本実施形態における光電変換装置2の動作を詳細に説明する。
図4(a)、
図4(b)、
図5、
図6、
図7(a)、及び、
図7(b)は、光電変換部25の一部を示している。
図4(a)、
図4(b)、及び、
図6は、互いに異なる状態におけるアンテナ部α1とバイアス部β1とに関する動作を説明するための図である。
図5、
図7(a)、及び、
図7(b)は、アンテナ部α2とバイアス部β2とに関する動作を説明するための図である。
図4(a)、
図4(b)、
図5、
図6、
図7(a)、及び、
図7(b)において、矢印D1は、アンテナ部α1又はアンテナ部α2の周囲に発生する電界の方向を示している。
図4(a)、
図4(b)、
図7(a)、及び、
図7(b)において、矢印D2は、アンテナ部α1又はアンテナ部α2において電子Pが移動する方向を示している。
【0075】
電位制御部72は、複数のパターン31,32,33,34,35に付与する電位を制御することによって、第一状態と第二状態とを切り替え、第三状態と第四状態とを切り替える。第一状態は、
図4(a)及び
図5によって示される状態に対応する。第一状態において、電位制御部72は、電磁波Wの入射に応じてアンテナ部α1の先端37から電子Pが放出され、アンテナ部α1の先端36及びアンテナ部α2の先端38,39からの電子の放出は抑制されるように、電位を制御する。第二状態は、
図4(b)及び
図5によって示される状態に対応する。第二状態において、電位制御部72は、電磁波Wの入射に応じてアンテナ部α1の先端36から電子Pが放出され、アンテナ部α1の先端37及びアンテナ部α2の先端38,39からの電子の放出は抑制されるように、電位を制御する。第三状態は、
図6及び
図7(a)に示されている状態に対応する。第三状態において、電位制御部72は、電磁波Wの入射に応じてアンテナ部α2の先端39から電子Pが放出され、アンテナ部α1の先端36,37及びアンテナ部α2の先端38からの電子の放出は抑制されるように、電位を制御する。第四状態は、
図6及び
図7(b)に示されている状態に対応する。第四状態において、電位制御部72は、電磁波Wの入射に応じてアンテナ部α2の先端38から電子Pが放出され、アンテナ部α1の先端36,37及びアンテナ部α2の先端39からの電子の放出は抑制されるように、電位を制御する。
【0076】
第一状態において、パターン35に付与される電位は、パターン31に付与される電位よりも高く、パターン32に付与される電位よりも低い。換言すれば、バイアス部β1を構成する線形状部41に付与される電位は、アンテナ部α1を構成する線形状部51aに付与される電位よりも低い。バイアス部β1を構成する線形状部43に付与される電位は、アンテナ部α1を構成する線形状部51bに付与される電位よりも高い。
【0077】
この場合、
図4(a)に示されているように、先端36と線形状部41との間において、+Z軸方向に電界が発生し、先端37と線形状部43との間において、+Z軸方向に電界が発生する。換言すれば、アンテナ部α1を構成する線形状部51aから、バイアス部β1を構成する線形状部41に向かう電界が発生する。バイアス部β1を構成する線形状部43から、アンテナ部α1を構成する線形状部51bに向かう電界が発生する。
【0078】
この結果、第一状態において、線形状部51aによって構成されるアンテナ部α1の先端部分のポテンシャル障壁が厚くなる。換言すれば、パターン35とパターン31との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が厚くなる。したがって、線形状部51aへの電磁波Wの入射に応じた線形状部51aからの電子の放出は抑制されている。第一状態において、線形状部51aの先端36から、バイアス部β1を構成する線形状部41に向かう電界のZ軸方向における成分は正である。
【0079】
第一状態において、線形状部51bによって構成されるアンテナ部α1の先端部分のポテンシャル障壁は薄くなる。換言すれば、パターン35とパターン32との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなる。したがって、線形状部51bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部51bからの電子Pの放出が促進されている。第一状態において、バイアス部β1を構成する線形状部43から、アンテナ部α1を構成する線形状部51bの先端37に向かう電界のZ軸方向における成分は正である。このため、第一状態において光電変換部25に入射した電磁波Wの電界強度のZ軸方向における成分が正である場合に、この電磁波Wの入射に応じてアンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁はさらに薄くなる。したがって、第一状態において光電変換部25に入射した電磁波Wの電界強度のZ軸方向における成分が正である場合に、線形状部51bから電子Pが放出される。
【0080】
第一状態において、パターン35に付与される電位は、パターン33及びパターン34に付与される電位よりも高い。換言すれば、バイアス部β2を構成する線形状部46に付与される電位は、アンテナ部α2を構成する線形状部51bに付与される電位よりも低い。バイアス部β2を構成する線形状部48に付与される電位は、アンテナ部α2を構成する線形状部51bに付与される電位よりも低い。
【0081】
この場合、
図5に示されているように、先端38と線形状部46との間において、+Y軸方向に電界が発生し、先端39と線形状部48との間において、-Y軸方向に電界が発生する。換言すれば、アンテナ部α2を構成する線形状部52aから、バイアス部β2を構成する線形状部46に向かう電界が発生する。アンテナ部α2を構成する線形状部52bから、バイアス部β2を構成する線形状部48に向かう電界が発生する。
【0082】
この結果、第一状態において、線形状部52a,52bによって構成されるアンテナ部α2の各先端部分のポテンシャル障壁が厚くなる。換言すれば、パターン35とパターン33,34との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が厚くなる。したがって、線形状部52a,52bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部52a,52bからの電子の放出は抑制されている。第一状態において、線形状部52aの先端38から、バイアス部β2を構成する線形状部46に向かう電界のY軸方向における成分は正であり、線形状部52bの先端39から、バイアス部β2を構成する線形状部48に向かう電界のY軸方向における成分は負である。
【0083】
第二状態において、パターン35に付与される電位は、パターン31に付与される電位よりも低く、パターン32に付与される電位よりも高い。換言すれば、バイアス部β1を構成する線形状部41に付与される電位は、アンテナ部α1を構成する線形状部51aに付与される電位よりも高い。バイアス部β1を構成する線形状部43に付与される電位は、アンテナ部α1を構成する線形状部51bに付与される電位よりも低い。
【0084】
この場合、
図4(b)に示されているように、先端36と線形状部41との間において、-Z軸方向に電界が発生し、先端37と線形状部43との間において、-Z軸方向に電界が発生する。換言すれば、バイアス部β1を構成する線形状部41から、アンテナ部α1を構成する線形状部51aに向かう電界が発生する。アンテナ部α1を構成する線形状部51bから、バイアス部β1を構成する線形状部43に向かう電界が発生する。
【0085】
この結果、第二状態において、線形状部51aによって構成されるアンテナ部α1の先端部分のポテンシャル障壁が薄くなる。換言すれば、パターン35とパターン31との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなる。したがって、線形状部51aへの電磁波Wの入射に応じた線形状部51aからの電子Pの放出が促進されている。第二状態において、バイアス部β1を構成する線形状部41から、アンテナ部α1を構成する線形状部51aの先端36に向かう電界のZ軸方向における成分は負である。このため、第二状態において、光電変換部25に入射した電磁波Wの電界強度のZ軸方向における成分が負である場合に、この電磁波Wの入射に応じてアンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁はさらに薄くなる。この結果、第二状態において、光電変換部25に入射した電磁波Wの電界強度のZ軸方向における成分が負である場合に、線形状部51aから電子Pが放出される。
【0086】
第二状態において、線形状部51bによって構成されるアンテナ部α1の先端部分のポテンシャル障壁が厚くなる。換言すれば、パターン35とパターン32との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が厚くなる。したがって、線形状部51bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部51bからの電子の放出は抑制されている。第二状態において、線形状部51bの先端37から、バイアス部β1を構成する線形状部43に向かう電界のZ軸方向における成分は負である。
【0087】
第二状態において、パターン35に付与される電位は、第一状態と同様に、パターン33及びパターン34に付与される電位よりも高い。換言すれば、バイアス部β2を構成する線形状部46に付与される電位は、アンテナ部α2を構成する線形状部51bに付与される電位よりも低い。バイアス部β2を構成する線形状部48に付与される電位は、アンテナ部α2を構成する線形状部51bに付与される電位よりも低い。
【0088】
第二状態においても、
図5に示されているように、先端38と線形状部46との間において、+Y軸方向に電界が発生し、先端39と線形状部48との間において、-Y軸方向に電界が発生する。この結果、第二状態において、線形状部52a,52bによって構成されるアンテナ部α2の各先端部分のポテンシャル障壁が厚くなる。換言すれば、パターン35とパターン33,34との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が厚くなる。したがって、線形状部52a,52bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部52a,52bからの電子の放出は抑制されている。第二状態において、線形状部52aの先端38から、バイアス部β2を構成する線形状部46に向かう電界のY軸方向における成分は正であり、線形状部52bの先端39から、バイアス部β2を構成する線形状部48に向かう電界のY軸方向における成分は負である。
【0089】
第三状態において、パターン35に付与される電位は、パターン31及びパターン32に付与される電位よりも高い。換言すれば、バイアス部β1を構成する線形状部41に付与される電位は、アンテナ部α1を構成する線形状部51aに付与される電位よりも低い。バイアス部β1を構成する線形状部43に付与される電位は、アンテナ部α1を構成する線形状部51aに付与される電位よりも低い。
【0090】
この場合、
図6に示されているように、先端36と線形状部41との間において、+Z軸方向に電界が発生し、先端37と線形状部43との間において、-Z軸方向に電界が発生する。換言すれば、アンテナ部α1を構成する線形状部51aから、バイアス部β1を構成する線形状部41に向かう電界が発生する。アンテナ部α1を構成する線形状部51bから、バイアス部β1を構成する線形状部43に向かう電界が発生する。
【0091】
この結果、第三状態において、線形状部51a,51bによって構成されるアンテナ部α1の各先端部分のポテンシャル障壁が厚くなる。換言すれば、パターン35とパターン31,32との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が厚くなる。したがって、線形状部51a,51bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部51a,51bからの電子の放出は抑制されている。第三状態において、線形状部51aの先端36から、バイアス部β1を構成する線形状部41に向かう電界のZ軸方向における成分は正であり、線形状部51bの先端37から、バイアス部β1を構成する線形状部43に向かう電界のZ軸方向における成分は負である。
【0092】
第三状態において、パターン35に付与される電位は、パターン33に付与される電位よりも高く、パターン34に付与される電位よりも低い。換言すれば、バイアス部β2を構成する線形状部46に付与される電位は、アンテナ部α2を構成する線形状部52aに付与される電位よりも低い。バイアス部β2を構成する線形状部48に付与される電位は、アンテナ部α2を構成する線形状部52bに付与される電位よりも高い。
【0093】
この場合、
図7(a)に示されているように、先端38と線形状部46との間において、+Y軸方向に電界が発生し、先端39と線形状部48との間において、+Y軸方向に電界が発生する。換言すれば、アンテナ部α2を構成する線形状部52aから、バイアス部β2を構成する線形状部46に向かう電界が発生する。バイアス部β2を構成する線形状部48から、アンテナ部α2を構成する線形状部52bに向かう電界が発生する。
【0094】
この結果、第三状態において、線形状部52aによって構成されるアンテナ部α2の先端部分のポテンシャル障壁が厚くなる。換言すれば、パターン35とパターン33との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が厚くなる。したがって、線形状部52aへの電磁波Wの入射に応じた線形状部52aからの電子の放出は抑制されている。第三状態において、線形状部52aの先端38から、バイアス部β2を構成する線形状部46に向かう電界のY軸方向における成分は正である。
【0095】
第三状態において、線形状部52bによって構成されるアンテナ部α2の先端部分のポテンシャル障壁は薄くなる。換言すれば、パターン35とパターン34との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなる。したがって、線形状部52bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部52bからの電子Pの放出が促進されている。第三状態において、バイアス部β2を構成する線形状部48から、アンテナ部α2を構成する線形状部52bの先端39に向かう電界のY軸方向における成分は正である。このため、第三状態において光電変換部25に入射した電磁波Wの電界強度のY軸方向における成分が正である場合に、この電磁波Wの入射に応じてアンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁はさらに薄くなる。この結果、第三状態において光電変換部25に入射した電磁波Wの電界強度のZ軸方向における成分が正である場合に、線形状部52bから電子Pが放出される。
【0096】
第四状態において、パターン35に付与される電位は、第三状態と同様に、パターン31及びパターン32に付与される電位よりも高い。換言すれば、バイアス部β1を構成する線形状部41に付与される電位は、アンテナ部α1を構成する線形状部51aに付与される電位よりも低い。バイアス部β1を構成する線形状部43に付与される電位は、アンテナ部α1を構成する線形状部51aに付与される電位よりも低い。
【0097】
第四状態においても、
図6に示されているように、先端36と線形状部41との間において、+Z軸方向に電界が発生し、先端37と線形状部43との間において、-Z軸方向に電界が発生する。この結果、第四状態において、線形状部51a,51bによって構成されるアンテナ部α1の各先端部分のポテンシャル障壁が厚くなる。換言すれば、パターン35とパターン31,32との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が厚くなる。したがって、線形状部51a,51bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部51a,51bからの電子の放出は抑制されている。第四状態において、線形状部51aの先端36から、バイアス部β1を構成する線形状部41に向かう電界のZ軸方向における成分は正であり、線形状部51bの先端37から、バイアス部β1を構成する線形状部43に向かう電界のZ軸方向における成分は負である。
【0098】
第四状態において、パターン35に付与される電位は、パターン33に付与される電位よりも低く、パターン34に付与される電位よりも高い。換言すれば、バイアス部β2を構成する線形状部46に付与される電位は、アンテナ部α2を構成する線形状部52aに付与される電位よりも高い。バイアス部β2を構成する線形状部48に付与される電位は、アンテナ部α2を構成する線形状部52bに付与される電位よりも低い。
【0099】
この場合、
図7(b)に示されているように、先端38と線形状部46との間において、-Y軸方向に電界が発生し、先端39と線形状部48との間において、-Y軸方向に電界が発生する。換言すれば、バイアス部β2を構成する線形状部46から、アンテナ部α2を構成する線形状部52aに向かう電界が発生する。アンテナ部α2を構成する線形状部52bから、バイアス部β2を構成する線形状部48に向かう電界が発生する。
【0100】
この結果、第四状態において、線形状部52aによって構成されるアンテナ部α2の先端部分のポテンシャル障壁が薄くなる。換言すれば、パターン35とパターン33との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなる。したがって、線形状部52aへの電磁波Wの入射に応じた線形状部52aからの電子Pの放出が促進されている。第四状態において、バイアス部β2を構成する線形状部46から、アンテナ部α2を構成する線形状部52aの先端38に向かう電界のY軸方向における成分は負である。このため、第四状態において、光電変換部25に入射した電磁波Wの電界強度のY軸方向における成分が負である場合に、この電磁波Wの入射に応じてアンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁はさらに薄くなる。したがって、第四状態において、光電変換部25に入射した電磁波Wの電界強度のY軸方向における成分が負である場合に、線形状部52aから電子Pが放出される。
【0101】
第四状態において、線形状部52bによって構成されるアンテナ部α2の先端部分のポテンシャル障壁が厚くなる。換言すれば、パターン35とパターン34との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が厚くなる。したがって、線形状部52bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部52bからの電子の放出は抑制されている。第四状態において、線形状部52bの先端39から、バイアス部β2を構成する線形状部48に向かう電界のY軸方向における成分は負である。
【0102】
演算部75は、第一状態、第二状態、第三状態、及び、第四状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度の偏光情報を演算する。電子収集部50の検出結果は、例えば、電子放出部材20から放出された電子の放出強度を示す情報である。放出強度は、放出される電子の量を表し、電子放出部材20に入射する電磁波Wの電界強度に依存する。例えば、演算部75は、第一状態における電子収集部50の検出結果に基づいて電磁波Wの電界強度のZ軸方向における正の成分に関する第一情報を演算する。演算部75は、第二状態における電子収集部50の検出結果に基づいて電磁波Wの電界強度のZ軸方向における負の成分に関する第二情報を演算する。演算部75は、第三状態における電子収集部50の検出結果に基づいて電磁波Wの電界強度のY軸方向における正の成分に関する第三情報を演算する。演算部75は、第四状態における電子収集部50の検出結果に基づいて電磁波Wの電界強度のY軸方向における負の成分に関する第四情報を演算する。演算部75は、第一情報、第二情報、第三情報、及び、第四情報に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度の偏光情報を演算する。
【0103】
演算部75は、第一状態及び第二状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度について、Z軸方向成分の電界強度を演算する。演算部75は、第一状態及び第二状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度について、Z軸方向における極性を判断する。例えば、演算部75は、第一状態における電子収集部50の検出結果と、第二状態における電子収集部50の検出結果との比較によって、Z軸方向における電界の極性を判断する。演算部75は、第三状態及び第四状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度について、Y軸方向成分の電界強度を演算する。演算部75は、第三状態及び第四状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度について、Y軸方向における極性を判断する。例えば、演算部75は、第三状態における電子収集部50の検出結果と、第四状態における電子収集部50の検出結果との比較によって、Y軸方向における電界の極性を判断する。演算部75は、Z軸方向成分の電界強度とY軸方向成分の電界強度とに基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの偏光情報を演算する。例えば、演算部75は、Z軸方向成分の電界強度とY軸方向成分の電界強度との比較によって、電子放出部材20に入射した電磁波Wの偏光方向を判断する。
【0104】
次に、
図8を参照して、電子放出部材の変形例について説明する。
図8は、本実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。本変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じである。本変形例における電子放出部材は、Y軸方向及びZ軸方向に交差する方向に感度を有しているアンテナ部も備えている点で、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0105】
この変形例において電子放出部材20は、メタサーフェス22Aを有している。メタサーフェス22Aは、メタサーフェス22に相当する。メタサーフェス22Aは、アクティブタイプであり、バイアス電圧の付与によって動作する。メタサーフェス22Aは、電源部70によって電位を付与されることによって動作する。
【0106】
図8に示されているメタサーフェス22Aは、少なくとも一つの光電変換部25Aを含んでいる。光電変換部25Aは、対応する波長及び対応する電界強度の方向成分を有している電磁波Wの入射に応じて電子Pを放出する。光電変換部25Aは、電磁波Wの電界強度のY軸方向成分及びZ軸方向成分に加えて、Y軸方向及びZ軸方向に交差するγ
1軸方向の成分に感度を有している。γ
1軸は、YZ面内においてY軸及びZ軸に交差する軸である。γ
1軸方向は、γ
2軸方向に対して直交している。γ
2軸方向は、YZ面内においてY軸方向及びZ軸方向に対して45度の角度で傾斜している。光電変換部25Aが正のY軸方向成分に感度を有する場合と、光電変換部25Aが負のY軸方向成分に感度を有する場合と、光電変換部25Aga正のZ軸方向成分に感度を有する場合と、光電変換部25Aが負のZ軸方向成分に感度を有する場合と、光電変換部25Aが正のγ1軸方向成分に感度を有する場合と、光電変換部25Aが負のγ1軸方向成分に感度を有する場合とは、電位制御部72による電位制御に応じて切り換えられる。光電変換部25Aが感度を有する電界の方向成分及び周波数域は、これに限定されない。Z軸方向及びY軸方向が第一方向および第二方向に対応する場合、γ
1軸方向は、第三方向に対応する。
【0107】
図8に示されているメタサーフェス22Aは、互いに離間した複数のパターン31A,32A,33A,34A,35A,81A,82Aを含んでいる。光電変換部25Aが感度を有する電界の方向成分及び周波数域は、複数のパターン31A,32A,33A,34A,35A,81A,82Aの構成に依存している。複数のパターン31A,32Aは、それぞれ、バイアス部β1を含んでいる。パターン33A,34Aは、それぞれ、バイアス部β2を含んでいる。パターン35Aは、アンテナ部α1とアンテナ部α2とアンテナ部α3とを含んでいる。パターン81A,82Aは、それぞれ、バイアス部β3を含んでいる。アンテナ部α3においても、アンテナ部α1,α2と同様に、アンテナ部α3のサイズが小さいほど、波長が短い電磁波、すなわち、周波数が大きい電磁波に対する電界電子放出が生じやすい。アンテナ部α3は、アンテナ部α1及びアンテナ部α2と異なる方向成分に対して感度を有している。アンテナ部α3は、YZ面内においてγ
1軸方向の成分に対して感度を有している。アンテナ部α3は、γ
1軸方向に延在している。例えば、アンテナ部α1及びアンテナ部α2が第一及び第二アンテナ部に対応する場合、アンテナ部α3は、第三アンテナ部に対応する。バイアス部β1及びバイアス部β2が第一及び第二バイアス部に対応する場合、バイアス部β3は、第三バイアス部に対応する。
【0108】
アンテナ部α1,α2,α3は、電磁波Wの入射に応じて電子Pを放出する。バイアス部β3は、アンテナ部α3に面している。バイアス部β3は、バイアス電位が印加された場合に、対応するアンテナ部α3との間にγ1軸方向の成分を有する電界を発生させるように構成される。本実施形態において、バイアス部β3は、アンテナ部α3との間においてγ1軸方向の電界を発生させる。バイアス部β3は、バイアス電位が印加された場合に、対応するアンテナ部α3との間に電界を発生させる。アンテナ部α3よりも高い電位がバイアス部β3に付与された場合に、アンテナ部α3のうちバイアス部β3側の先端部分におけるポテンシャル障壁が薄くなる。アンテナ部α3よりも低い電位がバイアス部β3に付与された場合に、アンテナ部α3のうちバイアス部β3側の先端部分におけるポテンシャル障壁が厚くなる。アンテナ部α3に電磁波Wが入射すると、アンテナ部α1,α2と同様に、アンテナ部α3の周囲に電界が誘起され、順バイアスの状態におけるアンテナ部α3への電磁波Wの入射によってポテンシャル障壁がさらに薄くなれば、電界電子放出が生じ得る。
【0109】
各パターン31A,32A,33A,34A,35A,81A,82Aは、支持体21の主面21b上に配されている。複数のパターン31A,32A,33A,34A,35A,81A,82Aは、酸化物層を介して接続されている。複数のパターン31A,32A,33A,34A,35A,81A,82Aは、酸化物層によって互いに分離されており、少なくとも光電変換装置2の非動作時において互いに絶縁されている。各パターン31A,32A,33A,34A,35A,81A,82Aは、伝導線であり、電子を伝導する。各パターン31A,32A,33A,34A,35A,81A,82Aは、少なくともメタサーフェス22Aの酸化物層上に形成された金属層を含んでいる。この金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。
【0110】
図8に示されている例において、パターン31Aは、複数の線形状部41Aと、複数の線形状部41Aを互いに電気的に接続する線形状部42Aとを含んでいる。各線形状部41Aは、Y軸方向に延在している。各線形状部41Aは、バイアス部β1を構成している。各線形状部41Aは、例えば、Y軸方向に延在する矩形状を呈している。線形状部42Aは、各線形状部41Aに連結されている。本変形例において、複数の線形状部41AがY軸方向に延在する同一直線上に配列されており、互いに隣り合う線形状部41Aが複数の線形状部42Aによって連結されている。
【0111】
パターン32Aは、複数の線形状部43Aと、複数の線形状部43Aを互いに電気的に接続する線形状部44Aとを含んでいる。各線形状部43Aは、Y軸方向に延在している。各線形状部43Aは、バイアス部β1を構成している。各線形状部43Aは、例えば、Y軸方向に延在する矩形状を呈している。互いに対応する線形状部41Aと線形状部43Aとは、Z軸方向に延在する同一直線上に配置されている。互いに対応する線形状部41Aと線形状部43Aとの間には、パターン35が配置されている。線形状部44Aは、各線形状部43Aに連結されている。本変形例において、複数の線形状部43AがY軸方向に同一直線上に配列されており、互いに隣り合う線形状部43Aが複数の線形状部44Aによって連結されている。線形状部41Aが第一部分に対応する場合、線形状部43Aが第二部分に対応する。
【0112】
パターン33Aは、複数の線形状部46Aと、複数の線形状部46Aを互いに電気的に接続する線形状部47Aとを含んでいる。各線形状部46Aは、Z軸方向に延在している。各線形状部46Aは、バイアス部β2を構成している。各線形状部46Aは、例えば、Z軸方向に延在する矩形状を呈している。線形状部47Aは、各線形状部46Aに連結されている。本変形例において、複数の線形状部46AがZ軸方向に同一直線上に配列されており、互いに隣り合う線形状部46Aが複数の線形状部47Aによって連結されている。
【0113】
パターン34Aは、複数の線形状部48Aと、複数の線形状部48Aを互いに電気的に接続する線形状部49Aとを含んでいる。各線形状部48Aは、Z軸方向に延在している。各線形状部48Aは、バイアス部β2を構成している。各線形状部48Aは、例えば、Z軸方向に延在する矩形状を呈している。互いに対応する線形状部46Aと線形状部48Aとは、Y軸方向に延在する同一直線上に配置されている。互いに対応する線形状部46Aと線形状部48Aとの間には、パターン35が配置されている。線形状部49Aは、各線形状部48Aに連結されている。本変形例において、複数の線形状部48AがZ軸方向に同一直線上に配列されており、互いに隣り合う線形状部48Aが複数の線形状部49Aによって連結されている。線形状部46Aが第三部分に対応する場合、線形状部48Aが第四部分に対応する。
【0114】
パターン81Aは、複数の線形状部86Aと、複数の線形状部86Aを互いに電気的に接続する線形状部87Aとを含んでいる。各線形状部86Aは、γ2軸方向に延在している。各線形状部86Aは、バイアス部β3を構成している。各線形状部86Aは、例えば、γ2軸方向に延在する矩形状を呈している。線形状部87Aは、各線形状部86Aに連結されている。本変形例において、複数の線形状部86Aがγ2軸方向に同一直線上に配列されており、互いに隣り合う線形状部86Aが複数の線形状部87Aによって連結されている。
【0115】
パターン82Aは、複数の線形状部88Aと、複数の線形状部88Aを互いに電気的に接続する線形状部89Aとを含んでいる。各線形状部88Aは、γ2軸方向に延在している。各線形状部88Aは、バイアス部β2を構成している。各線形状部88Aは、例えば、γ2軸方向に延在する矩形状を呈している。互いに対応する線形状部86Aと線形状部88Aとは、γ1軸方向に延在する同一直線上に配置されている。互いに対応する線形状部86Aと線形状部88Aとの間には、パターン35が配置されている。線形状部89Aは、各線形状部88Aに連結されている。本変形例において、複数の線形状部88Aがγ2軸方向に同一直線上に配列されており、互いに隣り合う線形状部88Aが複数の線形状部89Aによって連結されている。線形状部86Aが第五部分に対応する場合、線形状部88Aが第六部分に対応する。
【0116】
パターン35Aは、パターン31A,32A、パターン33A,34A、及び、パターン81A,82Aに向かって延在している。パターン35Aは、パターン31A、パターン32A、パターン33A、パターン34A、パターン81A、又は、パターン82Aよりも低い電位が付与された状態において、電磁波Wの入射に応じて電子Pを放出する。パターン35Aは、複数の線形状部91と、複数の線形状部92と、複数の線形状部95とを含んでいる。線形状部91と線形状部92と線形状部95とは、それぞれ、YZ面内において互いに交差する方向に延在している。換言すれば、線形状部91が延在している方向と、線形状部92が延在している方向と、線形状部95が延在している方向とは、YZ面内において互いに交差している。本変形例において、線形状部91と線形状部92とは、それぞれ、互いに直交する方向に延在している。
【0117】
各線形状部91は、Z軸方向に延在しており、上述した線形状部51と同一の構成を有している。各線形状部91は、線形状部51と同様に、アンテナ部α1を構成している。パターン35Aは、複数の線形状部91を互いに電気的に接続する線形状部93を含んでいる。線形状部93は、各線形状部91に連結されている。各線形状部91は、一対の線形状部51a,51bに対応する一対の線形状部91a,91bを含んでいる。線形状部91aは、線形状部93に接続された部分から+Z軸方向に延在している。線形状部91bは、線形状部93に接続された部分から-Z軸方向に延在している。本実施形態において、各線形状部91は、Z軸方向において、線形状部41Aと線形状部43Aとの間に配置されている。
【0118】
各線形状部92は、Y軸方向に延在しており、上述した線形状部52と同一の構成を有している。各線形状部92は、線形状部52と同様に、アンテナ部α2を構成している。上述した線形状部93は、複数の線形状部92を互いに電気的に接続する。線形状部93は、各線形状部92に連結されている。各線形状部92は、一対の線形状部52a,52bに対応する一対の線形状部92a,92bを含んでいる。線形状部92aは、線形状部93に接続された部分から+Y軸方向に延在している。線形状部92bは、線形状部93に接続された部分から-Y軸方向に延在している。本実施形態において、各線形状部92は、Y軸方向において、線形状部46Aと線形状部48Aとの間に配置されている。複数の線形状部91と複数の線形状部92とは、線形状部93によって電気的に接続されている。
【0119】
各線形状部95は、γ1軸方向に延在している。各線形状部95は、アンテナ部α3を構成している。各線形状部95は、例えば、γ1軸方向に延在する矩形状を呈している。複数の線形状部95は、互いに平行である。上述した線形状部93は、複数の線形状部95を互いに電気的に接続する。線形状部93は、各線形状部95に連結されている。本変形例において、複数の線形状部95がγ2軸方向に同一直線上に配列されており、互いに隣り合う線形状部95が複数の線形状部93によって連結されている。
【0120】
各線形状部95は、線形状部93に接続された部分から+γ1軸方向と-γ1軸方向とに延在している。各線形状部93は、各線形状部95の中央に連結されている。各線形状部95は、一対の線形状部95a,95bを含んでいる。線形状部95aは、線形状部93に接続された部分から-γ1軸方向に延在している。線形状部95bは、線形状部93に接続された部分から+γ1軸方向に延在している。本変形例において、各線形状部95における一対の線形状部95a,95bは、γ1軸方向に延在する同一直線上に延在している。各線形状部95は、γ1軸方向において、一対のバイアス部β3の間に配置されている。各線形状部93は、γ1軸方向において、パターン81Aとパターン82Aとの間に配置されている。各線形状部95は、γ1軸方向において、線形状部86Aと線形状部88Aとの間に配置されている。
【0121】
パターン35Aは、パターン31Aに面している先端36Aと、パターン32Aに面している先端37Aと、パターン33Aに面している先端38Aと、パターン34Aに面している先端39Aと、パターン81Aに面している先端96Aと、パターン82Aに面している先端97Aとを含んでいる。本変形例において、各線形状部91が先端36Aと先端37Aとを含んでおり、各線形状部92が先端38Aと先端39Aとを含んでおり、各線形状部95が先端96Aと先端97Aとを含んでいる。
【0122】
先端36A,37Aは、それぞれ上述した先端36,37に対応する。先端38A,39Aは、それぞれ上述した先端38,39に対応する。先端36Aは、線形状部91aに含まれている。先端37Aは、線形状部91bに含まれている。先端36Aと先端37Aとは、各線形状部91の両端に位置している。先端38Aは、線形状部92aに含まれている。先端39Aは、線形状部92bに含まれている。先端38Aと先端39Aとは、各線形状部92の両端に位置している。
【0123】
先端96Aは、バイアス部β3に面している。先端96Aは、対応する線形状部86Aに面している。先端96Aは、この先端96Aを含んでいる線形状部95において、パターン81Aに最も近い部分である。先端96Aは、パターン35Aの他の部分よりも、対応する線形状部86Aの近くに配置されている。
【0124】
先端97Aは、バイアス部β3に面している。先端97Aは、対応する線形状部88Aに面している。先端97Aは、この先端97Aを含んでいる線形状部95において、パターン82Aに最も近い部分である。先端97Aは、パターン35Aの他の部分よりも、対応する線形状部88Aの近くに配置されている。
【0125】
先端96A及び先端97A、並びに、線形状部86A及び線形状部88Aは、γ1軸方向において、線形状部86A、先端96A、先端97A、線形状部88Aの順に配置されている。光電変換部25において、各線形状部95は、線形状部86A又は線形状部88Aよりも低い電位が付与された状態において電磁波Wの入射に応じて電子Pを放出し得る。
【0126】
光電変換部25Aは、線形状部91,92,95の構造の変更に応じて、例えば、いわゆるミリ波から赤外光の波長の範囲に対応するように構成される。例えば、γ1軸方向における線形状部95の長さは、光電変換部25Aにおいて電子Pが放出される電磁波Wの波長域に対応している。例えば、γ1軸方向における線形状部95の長さは、光電変換部25Aから電子Pを放出させる所望の波長域に応じて設計される。例えば、各線形状部91,92,95は、所望の波長域における中心波長の半分の長さを有している。各線形状部91の長さは、Z軸方向における先端36Aから先端37Aまでの長さである。各線形状部92の長さは、Y軸方向における先端38Aから先端39Aまでの長さである。各線形状部95の長さは、γ1軸方向における先端96Aから先端97Aまでの長さである。線形状部51,52と同様に、支持体21等を透過した電磁波Wが線形状部91,92,95に入射する場合には、透過した支持体21等の屈折率も考慮される。
【0127】
図8に示されている電子放出部材20は、互いに離間している複数の電極61A,62A,63A,64A,65A,67A,68Aをさらに備えている。複数の電極61A,62A,63A,64A,65A,67A,68Aは、支持体21の主面21b上に設けられている。複数の電極61A,62A,63A,64A,65A,67A,68Aは、光電変換部25Aに電気的に接続されている。本変形例において、各電極61A,62A,63A,64A,65A,67A,68Aは、矩形状を呈している。各電極61A,62A,63A,64A,65A,67A,68Aは、線形状部42A,44A,47A,49A、87A、又は、89Aと同様に線形状を呈していてもよい。
【0128】
例えば、電極61Aは、パターン31Aに含まれている。電極61Aは、線形状部42Aを介して、複数の線形状部41Aに電気的に接続されている。電極61Aは、線形状部42A及び複数の線形状部41Aと一体に形成されていてもよい。電極62Aは、パターン32Aに含まれている。電極62Aは、線形状部44Aを介して、複数の線形状部43Aに電気的に接続されている。電極62Aは、線形状部44A及び複数の線形状部43Aと一体に形成されていてもよい。電極63Aは、パターン33Aに含まれている。電極63Aは、線形状部47Aを介して、複数の線形状部46Aに電気的に接続されている。電極63Aは、線形状部47A及び複数の線形状部46Aと一体に形成されていてもよい。
【0129】
電極64Aは、パターン34Aに含まれている。電極64Aは、線形状部49Aを介して、複数の線形状部48Aに電気的に接続されている。電極64Aは、線形状部49A及び複数の線形状部48Aと一体に形成されていてもよい。電極65Aは、パターン35Aに含まれている。電極65Aは、線形状部93を介して、複数の線形状部91,92,95に電気的に接続されている。電極65Aは、線形状部93及び複数の線形状部91,92,95と一体に形成されていてもよい。電極67Aは、パターン81Aに含まれている。電極67Aは、線形状部87Aを介して、複数の線形状部86Aに電気的に接続されている。電極67Aは、線形状部87A及び複数の線形状部86Aと一体に形成されていてもよい。電極68Aは、パターン82Aに含まれている。電極68Aは、線形状部89Aを介して、複数の線形状部88Aに電気的に接続されている。電極68Aは、線形状部89A及び複数の線形状部88Aと一体に形成されていてもよい。
【0130】
光電変換部25Aは、複数の電極61A,62A,63A,64A,65A,67A,68Aを介して電源部70から電位を付与されることによって動作する。電源部70の電位付与部71は、複数の電極61A,62A,63A,64A,65A,67A,68Aを介して、メタサーフェス22Aの光電変換部25Aに電位を付与する。電源部70の電位制御部72は、光電変換部25Aに付与する電位を制御する。
【0131】
本変形例における電子放出部材20を備える光電変換装置2において、電位制御部72は、複数のパターン31A,32A,33A,34A,35A,81A,82Aに付与する電位を制御することによって、第一状態と第二状態とを切り替え、第三状態と第四状態とを切り替え、第五状態と第六状態とを切り替える。第一状態においては、電磁波Wの入射に応じてアンテナ部α1の先端37Aから電子Pが放出され、アンテナ部α1の先端36A、並びに、アンテナ部α2及びアンテナ部α3からの電子の放出は抑制されるように、電位が制御される。第二状態においては、電磁波Wの入射に応じてアンテナ部α1の先端36Aから電子Pが放出され、アンテナ部α1の先端37A、並びに、アンテナ部α2及びアンテナ部α3からの電子の放出は抑制されるように、電位が制御される。第三状態においては、電磁波Wの入射に応じてアンテナ部α2の先端39Aから電子Pが放出され、アンテナ部α2の先端38A、並びに、アンテナ部α1及びアンテナ部α3からの電子の放出は抑制されるように、電位が制御される。第四状態においては、電磁波Wの入射に応じてアンテナ部α2の先端38Aから電子Pが放出され、アンテナ部α2の先端39A、並びに、アンテナ部α1及びアンテナ部α3からの電子の放出は抑制されるように、電位が制御される。
【0132】
第五状態においては、電磁波Wの入射に応じてアンテナ部α3の先端96Aから電子Pが放出され、アンテナ部α3の先端97A、アンテナ部α1及びアンテナ部α2からの電子の放出は抑制されるように、電位が制御される。第六状態においては、電磁波Wの入射に応じてアンテナ部α3の先端97Aから電子Pが放出され、アンテナ部α3の先端96A、アンテナ部α1及びアンテナ部α2からの電子の放出は抑制されるように、電位が制御される。
【0133】
第五状態において、パターン35Aに付与される電位は、パターン31A,32A,33A,34A,81Aに付与される電位よりも低く、パターン82Aに付与される電位よりも高い。換言すれば、バイアス部β3を構成する線形状部88Aに付与される電位は、アンテナ部α3を構成する線形状部95bに付与される電位よりも高い。バイアス部β3を構成する線形状部86Aに付与される電位は、アンテナ部α3を構成する線形状部95aに付与される電位よりも低い。第五状態において、アンテナ部α3を構成する線形状部95aの先端96Aから、バイアス部β3を構成する線形状部86Aに向かう電界のγ1軸方向における成分は負であり、バイアス部β3を構成する線形状部88Aから、アンテナ部α3を構成する線形状部95bの先端97Aに向かう電界のγ1軸方向における成分は負である。
【0134】
第六状態において、パターン35Aに付与される電位は、パターン31A,32A,33A,34A,82Aに付与される電位よりも低く、パターン81Aに付与される電位よりも高い。換言すれば、バイアス部β3を構成する線形状部88Aに付与される電位は、アンテナ部α3を構成する線形状部95bに付与される電位よりも低い。バイアス部β3を構成する線形状部86Aに付与される電位は、アンテナ部α3を構成する線形状部95aに付与される電位よりも高い。第六状態において、アンテナ部α3を構成する線形状部95bの先端97Aから、バイアス部β3を構成する線形状部88Aに向かう電界のγ1軸方向における成分は正であり、バイアス部β3を構成する線形状部86Aから、アンテナ部α3を構成する線形状部95aの先端96Aに向かう電界のγ1軸方向における成分は正である。
【0135】
本変形例において、演算部75は、第一状態、第二状態、第三状態、第四状態、第五状態、及び、第六状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度の偏光情報を演算する。例えば、演算部75は、上述した実施形態と同様に、第一情報、第二情報、第三情報、及び、第四情報を演算する。演算部75は、第五状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電磁波Wの電界強度のγ1軸方向における負の成分に関する第五情報を演算する。演算部75は、第六状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電磁波Wの電界強度のγ1軸方向における正の成分に関する第六情報を演算する。演算部75は、第一情報、第二情報、第三情報、第四情報、第五情報、及び、第六情報に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度の偏光情報を演算する。
【0136】
演算部75は、上述した実施形態と同様に、第一状態及び第二状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度について、Z軸方向成分の電界強度を演算する。演算部75は、第一状態及び第二状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度について、Z軸方向における極性を判断する。演算部75は、上述した実施形態と同様に、第三状態及び第四状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度について、Y軸方向成分の電界強度を演算する。演算部75は、第三状態及び第四状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度について、Y軸方向における極性を判断する。演算部75は、第五状態及び第六状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度について、γ1軸方向成分の電界強度を演算する。演算部75は、第五状態及び第六状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度について、γ1軸方向における極性を判断する。例えば、演算部75は、第五状態における電子収集部50の検出結果と、第六状態における電子収集部50の検出結果との比較によって、Y軸方向における電界の極性を判断する。演算部75は、Z軸方向成分の電界強度とY軸方向成分の電界強度とγ1軸方向成分の電界強度とに基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの偏光情報を演算する。例えば、演算部75は、Z軸方向成分の電界強度とY軸方向成分の電界強度とγ1軸方向成分の電界強度との比較によって、電子放出部材20に入射した電磁波が直線偏光、円偏光、及び、楕円偏光のいずれであるかを判断する。演算部75は、電子放出部材20に入射した電磁波Wの偏光方向を判断する。
【0137】
次に、
図9を参照して、電子放出部材の別の変形例について説明する。
図9は、本実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。本変形例は、概ね、上述した実施形態及び
図8に示した変形例と類似又は同じである。本変形例における電子放出部材20は、バイアス部β1,β2,β3のそれぞれに1つの電極のみが接続されている点で、
図8に示した変形例と相違する。以下、
図8に示した変形例との相違点を主として説明する。
【0138】
図9に示されている電子放出部材20は、互いに離間している複数の電極61B,63B,65A,67Bを備えている。複数の電極61B,63B,65A,67Bは、支持体21の主面21b上に設けられている。複数の電極61B,63B,65A,67Bは、光電変換部25Aに電気的に接続されている。本変形例において、各電極61B,63B,65A,67Bは、矩形状を呈している。各電極61B,63B,65A,67Bは、線形状部42A,44A,47A,49A、87A、又は、89Aと同様に線形状を呈していてもよい。
【0139】
例えば、電極61Bは、パターン31Bに含まれている。電極61Bは、線形状部42Aを介して、複数の線形状部41Aに電気的に接続されている。電極61Bは、線形状部44Aを介して、複数の線形状部43Aに電気的に接続されている。電極61Bは、線形状部42A,44A、及び、複数の線形状部41A,43Aと一体に形成されていてもよい。電極63Bは、パターン33Bに含まれている。電極63Bは、線形状部47Aを介して、複数の線形状部46Aに電気的に接続されている。電極63Bは、線形状部49Aを介して、複数の線形状部48Aに電気的に接続されている。電極63Bは、線形状部47A,49A、及び、複数の線形状部46A,48Aと一体に形成されていてもよい。電極65Aは、パターン35Bに含まれている。電極65Aは、線形状部93を介して、複数の線形状部91,92,95に電気的に接続されている。電極65Aは、線形状部93及び複数の線形状部91,92,95と一体に形成されていてもよい。電極67Bは、パターン81Bに含まれている。電極67Bは、線形状部87Aを介して、複数の線形状部86Aに電気的に接続されている。電極67Bは、線形状部89Aを介して、複数の線形状部88Aに電気的に接続されている。電極67Bは、線形状部87A,89A、及び、複数の線形状部86A,88Aと一体に形成されていてもよい。
【0140】
光電変換部25Aは、複数の電極61B,63B,65A,67Bを介して電源部70から電位を付与されることによって動作する。電源部70の電位付与部71は、複数の電極61B,63B,65A,67Bを介して、光電変換部25Aに電位を付与する。電源部70の電位制御部72は、光電変換部25Aに付与する電位を制御する。
【0141】
本変形例における電子放出部材20を備える光電変換装置2において、電位制御部72は、複数のパターン31B,33B,35B,36Bに付与する電位を制御することによって、第七状態と第八状態と第九状態とを切り替える。第七状態においては、電磁波Wの入射に応じてアンテナ部α1の先端36A及び先端37Aから電子Pが放出され、アンテナ部α2及びアンテナ部α3からの電子の放出は抑制されるように、電位が制御される。第八状態においては、電磁波Wの入射に応じてアンテナ部α2の先端38A,39Aから電子Pが放出され、アンテナ部α1及びアンテナ部α3からの電子の放出は抑制されるように、電位が制御される。第九状態においては、電磁波Wの入射に応じてアンテナ部α3の先端96A,97Aから電子Pが放出され、アンテナ部α1及びアンテナ部α2からの電子の放出は抑制されるように、電位が制御される。
【0142】
第七状態において、パターン35Bに付与される電位は、パターン31Bに付与される電位よりも低く、パターン33B,81Bに付与される電位よりも高い。換言すれば、線形状部41A,43Aによって構成されるバイアス部β1に付与される電位は、線形状部91a,91bによって構成されるアンテナ部α1に付与される電位よりも高い。第七状態において、線形状部41Aによって構成されるバイアス部β1から線形状部91aの先端36Aに向かう電界のZ軸方向における成分は負であり、線形状部43Aによって構成されるバイアス部β1から線形状部91bの先端37Aに向かう電界のZ軸方向における成分は正である。
【0143】
第八状態において、パターン35Bに付与される電位は、パターン33Bに付与される電位よりも低く、パターン31B,81Bに付与される電位よりも高い。換言すれば、線形状部46A,48Aによって構成されるバイアス部β2に付与される電位は、線形状部92a,92bによって構成されるアンテナ部α2に付与される電位よりも高い。第八状態において、線形状部46Aによって構成されるバイアス部β2から線形状部92aの先端38Aに向かう電界のY軸方向における成分は負であり、線形状部48Aによって構成されるバイアス部β2から線形状部92bの先端39Aに向かう電界のY軸方向における成分は正である。
【0144】
第九状態において、パターン35Bに付与される電位は、パターン81Bに付与される電位よりも低く、パターン31B,33Bに付与される電位よりも高い。換言すれば、線形状部86A,88Aによって構成されるバイアス部β3に付与される電位は、線形状部95a,95bによって構成されるアンテナ部α3に付与される電位よりも高い。第九状態において、線形状部86Aによって構成されるバイアス部β3から線形状部95aの先端96Aに向かう電界のγ1軸方向における成分は正であり、線形状部88Aによって構成されるバイアス部β3から線形状部95bの先端97Aに向かう電界のγ1軸方向における成分は負である。
【0145】
本変形例において、演算部75は、第七状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wについて、Z軸方向成分の電界強度を演算する。演算部75は、第八状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wについて、Y軸方向成分の電界強度を演算する。演算部75は、第九状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wについて、γ1軸方向成分の電界強度を演算する。演算部75は、Z軸方向成分の電界強度とY軸方向成分の電界強度とγ1軸方向成分の電界強度とに基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの偏光情報を演算する。例えば、演算部75は、Z軸方向成分の電界強度とY軸方向成分の電界強度とγ1軸方向成分の電界強度との比較によって、電子放出部材20に入射した電磁波Wが円偏光、及び、楕円偏光のいずれであるかを判断する。
【0146】
次に、
図10(a)及び
図10(b)を参照して、本実施形態のさらに別の変形例におけるパターンの構造を詳細に説明する。
図10(a)及び
図10(b)は、本実施形態のさらに別の変形例におけるパターンの構造を示す図である。
図10(a)及び
図10(b)は、パターン31,32,35の一部を示している。
図10(a)及び
図10(b)は、バイアス部及びアンテナ部の構成の一例として、バイアス部β1を構成する線形状部41,44及びアンテナ部α1を構成する線形状部51に関する構造の変形例を示すが、バイアス部β2,β3及びアンテナ部α2,α3に同様の構成が適用されてもよい。
【0147】
図10(a)及び
図10(b)に示されている例において、互いに離間する一対の線形状部41が線形状部51に面している。一対の線形状部41は、それぞれ、先端101と先端102とを含んでいる。一対の線形状部41の先端101と先端102とは、互いに面している。各線形状部41は、上述した実施形態と同様に、線形状部42を介して、電極61に電気的に接続されている。一対の線形状部41は、Y軸方向に延在している同一直線上に位置している。
【0148】
図10(a)及び
図10(b)に示されている例において、互いに離間する一対の線形状部43が線形状部51に面している。一対の線形状部43は、それぞれ、先端103と先端104とを含んでいる。一対の線形状部43の先端103と先端104とは、互いに面している。各線形状部43は、上述した実施形態と同様に、線形状部44を介して、電極62に電気的に接続されている。一対の線形状部43は、Y軸方向に延在している同一直線上に位置している。
【0149】
図10(a)及び
図10(b)に示されている例において、線形状部51は、線形状部53に接続された部分から+Z軸方向と-Z軸方向とに延在している。線形状部51は、上述した実施形態と同様に、一対の線形状部51a,51bを含んでいる。線形状部51aは、線形状部53に接続された部分から+Z軸方向に延在している。線形状部51bは、線形状部53に接続された部分から-Z軸方向に延在している。
【0150】
線形状部51aの先端36は、先端101と先端102とに面している。Z軸方向において、線形状部51の先端36は、先端101と先端102との間に位置している。先端36と先端101との最短距離は、先端36と先端102との最短距離と等しい。Y軸方向における先端36と先端101との距離は、Y軸方向における先端36と先端102との距離と等しい。Z軸方向における先端36と先端101との距離は、Z軸方向における先端36と先端102との距離と等しい。同一の先端36に面している先端101と先端102とは、互いに異なる線形状部41に含まれている。
【0151】
線形状部51bの先端37は、先端103と先端104とに面している。Z軸方向において、線形状部51の先端37は、先端103と先端104との間に位置している。先端37と先端103との最短距離は、先端37と先端104との最短距離と等しい。Y軸方向における先端37と先端103との距離は、Y軸方向における先端37と先端104との距離と等しい。Z軸方向における先端37と先端103との距離は、Z軸方向における先端37と先端104との距離と等しい。同一の先端37に面している先端103と先端104とは、互いに異なる線形状部43に含まれている。
【0152】
図10(a)に示されている例において、線形状部51における一対の線形状部51a,51bは、Z軸方向に延在する同一直線上に配置されている。
図10(b)に示されている例において、線形状部51における一対の線形状部51a,51bは、互いに離間しており、それぞれ、Z軸方向に延在する互いに異なる直線上に配置されている。
図10(b)に示されている例において、線形状部51aは先端36と反対側の先端111において線形状部53に連結されており、線形状部51bは先端37と反対側の先端112において線形状部53に連結されている。
【0153】
上述した実施形態と同様に、Z軸方向における線形状部51の長さは、光電変換部25から電子Pを放出させる所望の波長域に応じて設計される。
図10(a)に示されている例において、線形状部51は、所望の波長域における中心波長の半分の長さを有する。したがって、
図10(a)に示されている例において、Z軸方向における先端36から先端37までの長さL1が、所望の波長域における中心波長の半分の長さである。支持体21等を透過した電磁波Wが線形状部51に入射する場合には、透過した支持体21等の屈折率が考慮される。
【0154】
図10(b)に示されている例において、線形状部51a,51bの各々が、所望の波長域における中心波長の半分の長さを有する。したがって、
図10(b)に示されている例において、Z軸方向における先端36から先端111までの長さL2と、Z軸方向における先端37から先端112までの長さL3との各々が、所望の波長域における中心波長の半分の長さである。この場合も、支持体21等を透過した電磁波Wが線形状部51a,51bに入射する場合には、透過した支持体21等の屈折率が考慮される。
[光電変換方法]
【0155】
次に、
図11及び
図12を参照して、本実施形態における電磁波検出方法について説明する。この電磁波検出方法は、入射した電磁波Wに応じて電子を放出する光電変換方法を含んでいる。
図11及び
図12は、本実施形態における電磁波検出方法のフローチャートである。
図11及び
図12に示されている電磁波検出方法において、メタサーフェス22に付与される電位の状態の制御によって、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度の方向成分ごとに異なるタイミングでメタサーフェス22から電子Pが放出される。この結果、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度が方向成分ごとに測定される。
図3及び
図8に示されているような構成では、メタサーフェス22に付与される電位の状態の制御によって、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度の各方向成分の極性ごとに異なるタイミングでメタサーフェス22から電子Pが放出される。この結果、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度が各方向成分の極性ごとに測定される。
【0156】
図11を参照して、本実施形態における電磁波検出方法の概要を説明する。まず、電子放出部材20が準備される(処理S1)。例えば、電子放出部材20を備えた電磁波検出装置1が配置される。
【0157】
次に、電子放出部材20に測定対象の電磁波Wを入射する(処理S2)。本実施形態では、処理S2において、電子放出部材20への電磁波Wの入射が開始され、電磁波Wの検出が終了するまで電子放出部材20への電磁波Wの入射が継続される。
【0158】
次に、各方向成分における電界強度の取得処理が実行される(処理S3)。処理S3において、演算部75が、各方向成分の電界強度を演算する。
【0159】
次に、電子放出部材20に入射した電磁波Wの偏光情報が演算される(処理S4)。処理S4において、演算部75が、電子放出部材20に入射した電磁波Wの偏光情報を演算する。例えば、演算部75は、処理S3において取得された各方向成分の電界強度に関する情報を比較し、電子放出部材20に入射した電磁波Wの偏光情報を演算する。例えば、演算部75は、演算された各方向成分の電界強度を比較し、電子放出部材20に入射した電磁波Wの偏光方向を出力する。
【0160】
次に、
図12を参照して、処理S3について詳細に説明する。
図12は、各方向成分における電界強度の取得処理の流れを示している。
【0161】
まず、各パターンに付与する電位が決定される(処理S11)。本実施形態において、電位制御部72が、第一状態、第二状態、第三状態、及び、第四状態のいずれか一つの状態となるように、各パターン31,32,33,34,35に付与する電位を決定する。例えば、
図8に示されている構成の場合は、電位制御部72は、第一状態から第六状態のいずれか一つの状態となるように、各パターン31A,32A,33A,34A,35A,81A,82Aに付与する電位を決定する。
【0162】
次に、各パターンに電位が付与される(処理S12)。例えば、電位付与部71が、電位制御部72からの指示に従って、電極を介して各パターンに電位を付与する。例えば、電位付与部71は、直前の処理S11において決定された電位を各パターン31,32,33,34,35に付与する。電位付与部71は、少なくとも処理S13及び処理S14が終了するまで、直前の処理S11において決定された電位を各パターンに付与する。
【0163】
次に、各パターンに電位が付与された状態において、メタサーフェスから電子が放出される(処理S13)。例えば、電子放出部材20は、直前の処理S11に決定された電位を各パターン31,32,33,34,35に電位が付与された状態において、メタサーフェス22に測定対象の電磁波Wが入射されると、アンテナ部α1又はアンテナ部α2のいずれか一つの先端から電子Pを放出する。アンテナ部α1又はアンテナ部α2のどの先端から電子Pが放出されるかは、処理S12においてどのように各パターンに電位が付与されているかに依存する。例えば、各パターンに付与されている電位の状態が第一状態であれば、アンテナ部α1の先端37から電子Pが放出される。各パターンに付与されている電位の状態が第二状態であれば、アンテナ部α1の先端36から電子Pが放出される。各パターンに付与されている電位の状態が第三状態であれば、アンテナ部α2の先端39から電子Pが放出される。各パターンに付与されている電位の状態が第四状態であれば、アンテナ部α2の先端38から電子Pが放出される。
【0164】
例えば、
図8に示されている構成では、電子放出部材20は、直前の処理S11に決定された電位を各パターン31A,32A,33A,34A,35A,81A,82Aに電位が付与された状態において、アンテナ部α1、アンテナ部α2、又は、アンテナ部α3のいずれか一つの先端から電子Pを放出する。この場合、各パターンに付与されている電位の状態が第一状態であれば、アンテナ部α1の先端37Aから電子Pが放出される。各パターンに付与されている電位の状態が第二状態であれば、アンテナ部α1の先端36Aから電子Pが放出される。各パターンに付与されている電位の状態が第三状態であれば、アンテナ部α2の先端39Aから電子Pが放出される。各パターンに付与されている電位の状態が第四状態であれば、アンテナ部α2の先端38Aから電子Pが放出される。各パターンに付与されている電位の状態が第五状態であれば、アンテナ部α3の先端97Aから電子Pが放出される。各パターンに付与されている電位の状態が第六状態であれば、アンテナ部α3の先端96Aから電子Pが放出される。
【0165】
次に、放出された電子Pが検出される(処理S14)。例えば、電子収集部50が、処理S13において放出された電子Pを収集し、収集された電子Pを検出する。演算部75は、電子収集部50から出力された信号を取得する。
【0166】
次に、電界強度に関する情報が演算される(処理S15)。例えば、演算部75は、処理S14において電子収集部50から取得された信号に基づいて、電磁波Wの電界強度に関する情報を演算する。例えば、処理S13及び処理S14において、各パターンに付与されている電位の状態が第一状態であれば、演算部75は、電磁波Wの電界強度の正のZ軸方向成分に関する第一情報を演算する。
【0167】
次に、正および負の同一軸方向成分の電界強度に関する情報が取得されたか否かが判断される(処理S16)。例えば、演算部75は、直前の処理S15において演算された電界強度の方向成分について、正と負との双方の同一軸方向成分の電界強度に関する情報が取得されたか否かを判断する。例えば、演算部75は、直前の処理S15において電界強度の正のZ軸方向成分に関する情報が演算されたと取得された場合には、電界強度の負のZ軸方向成分に関する情報が取得されていないと判断する。例えば、演算部75は、直前の処理S13及び処理S14において各パターンに付与されている電位の状態が第一状態である場合、第二状態における情報、すなわち電界強度の負のZ軸方向成分に関する第二情報が取得されていないと判断する。
【0168】
正および負の同一軸方向成分の電界強度に関する情報が取得されたと判断されなかった場合には、処理は処理S11に戻る。この際、処理S11において、取得されていない極性の電界強度に関する情報が取得されるように、各パターンに付与する電位が決定される。例えば、処理S16において第一情報が取得され第二情報が取得されていないと判断された場合には、電位制御部72は、処理S11において、第二状態となるように各パターン31,32,33,34,35に付与する電位を決定する。例えば、処理S16において第三情報が取得され第四情報が取得されていないと判断された場合には、電位制御部72は、処理S11において、第四状態となるように各パターン31,32,33,34,35に付与する電位を決定する。
【0169】
正および負の成分の電界強度に関する情報が取得されたと判断された場合には、電界の極性が判断される(処理S17)。例えば、演算部75は、第一情報、及び、第二情報に基づいて、電磁波WのZ軸方向における電界の極性を判断する。演算部75は、第三情報、及び、第四情報に基づいて、電磁波WのY軸方向における電界の極性を判断する。
図8に示される構成においては、演算部75は、第五情報、及び、第六情報に基づいて、電磁波Wのγ
1軸方向における電界の極性を判断する。電磁波Wの電界の極性は、例えば、フェムト秒オーダーで切り替わる。このため、例えば、第一情報及び第二情報がフェムト秒オーダーで取得される場合には、演算部75は、電磁波Wの電界強度における正のZ軸方向成分と電磁波Wの電界強度における負のZ軸方向成分とのうち大きい方を、Z軸方向における電界の極性として出力する。第三情報及び第四情報がフェムト秒オーダーで取得される場合には、演算部75は、電磁波Wの電界強度における正のY軸方向成分と電磁波Wの電界強度における負のY軸方向成分とのうち大きい方を、Y軸方向における電界の極性として出力する。第1情報、第2情報、第3情報、及び、第4情報は、ピコ秒オーダーで取得することができる。情報の取得時間は、電磁波Wの時間波形に依存する。
【0170】
処理S17が終了すると、全ての方向成分の電界強度に関する情報が取得されたか否かが判断される(処理S18)。例えば、演算部75は、Z軸方向成分の電界強度に関する第一及び第二情報と、Y軸方向成分の電界強度に関する第三及び第四情報とが取得されたか否かを判断する。
図8に示される構成においては、演算部75は、Z軸方向成分の電界強度に関する第一及び第二情報と、Y軸方向成分の電界強度に関する第三及び第四情報と、Z軸方向成分の電界強度に関する第五及び第六情報とが取得されたか否かを判断する。
【0171】
全ての方向成分の電界強度に関する情報が取得されたと判断されなかった場合には、処理は処理S11に戻る。この際、処理S11において、取得されていない方向成分の電界強度に関する情報が取得されるように、各パターンに付与する電位が決定される。例えば、処理S18において、Y軸方向成分の電界強度に関する情報が取得されていないと判断された場合には、電位制御部72は、処理S11において、第三又は第四状態となるように各パターン31,32,33,34,35に付与する電位を決定する。
図8に示される構成において、例えば、処理S18においてγ
1軸方向成分の電界強度に関する情報が取得されていないと判断された場合には、電位制御部72は、処理S11において、第五又は第六状態となるように各パターン31A,32A,33A,34A,35A,81A,82Aに付与する電位を決定する。
【0172】
全ての方向成分の電界強度に関する情報が取得されたと判断された場合には、処理S3における一連の処理が終了する。処理S18によって、全ての方向成分の電界強度に関する情報が取得されるまで、処理S11から処理S17が繰り返される。処理S11から処理S14が繰り返されることによって、上述した第一から第四状態のそれぞれにおいて電子Pが放出される。本実施形態において、処理S11から処理S14が繰り返されることによって、第一状態、第二状態、第三状態、第四状態の順に、各パターンに電位が付与される。
図8に示されている構成においては、処理S11から処理S14が繰り返されることによって、第一状態、第二状態、第三状態、第四状態、第五状態、第六状態の順に、各パターンに電位が付与される。
【0173】
処理S15が繰り返されることによって、第一から第四状態のそれぞれにおいて放出された電子Pが検出される。
図8に示されている構成においては、処理S11から処理S14が繰り返されることによって、上述した第一から第六状態のそれぞれにおいて電子Pが放出され、処理S15が繰り返されることによって、第一から第六状態のそれぞれにおいて放出された電子Pが検出される。処理S17が繰り返されることによって、各方向における電界の極性が判断される。
【0174】
処理S1から処理S4、及び、処理S11から処理S18の順番は、
図11及び
図12に示したものに限定されない。例えば、処理S17は、処理S18の後に行われてもよい。処理S16及び処理S17はなくてもよい。処理S16がない場合には、処理S18において、全ての状態において電界強度に関する情報が取得されたか否かが判断される。例えば、処理S2における電磁波Wの入射は、処理S13及び処理S14においてのみ行われてもよい。
【0175】
以上の様に、本実施形態における電磁波検出方法において、各状態において電子放出部材20から放出された電子Pが検出され、電磁波Wの偏光情報が演算される。例えば、演算部75は、第一情報から第四情報を演算し、第一情報から第四情報に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの偏光情報を演算する。
図8に示される構成においては、演算部75は、第一情報から第六情報を演算し、第一情報から第六情報に基づいて、電子放出部材20に入射した電磁波Wの偏光情報を演算する。
[作用及び効果]
【0176】
この光電変換装置2において、アンテナ部α1とアンテナ部α2とが互いに交差するZ軸方向及びY軸方向に延在している。バイアス部β1は、バイアス部β1とアンテナ部α1との間に、Z軸方向の成分を有する電界を発生するように構成されている。バイアス部β2は、バイアス部β2とアンテナ部α2との間に、Y軸方向の成分を有する電界を発生するように構成されている。このような構成によれば、アンテナ部α1は、電磁波Wの電界強度のZ軸方向における成分に応じて電子Pを放出する。アンテナ部α2は、電磁波Wの電界強度のY軸方向における成分に応じて電子Pを放出する。このため、電磁波Wの電界強度のZ軸方向における成分に応じて放出された電子Pと、電磁波Wの電界強度のY軸方向における成分に応じて放出された電子Pとが検出され得る。例えば、これらの検出結果によれば、電磁波Wの電界強度のZ軸方向における成分と、電磁波Wの電界強度のY軸方向における成分との比が演算され得る。演算された比によって、電磁波Wの偏光状態の検出が容易に実現され得る。光電変換装置2は、冷却も不要である。
【0177】
光電変換装置2は、メタサーフェス22又はメタサーフェス22Aに付与する電位を制御する電位制御部72をさらに備えている。例えば、電位制御部72は、メタサーフェス22の複数のパターン31,32,33,34,35に付与する電位を制御することによって、第一状態と第二状態とを切り替え、第三状態と第四状態とを切り替える。この場合、第一状態においてメタサーフェス22又はメタサーフェス22Aに電磁波Wが入射すると、電磁波Wの電界強度のZ軸方向における正の成分に応じた電子Pがアンテナ部α1から放出される。第二状態においてメタサーフェス22又はメタサーフェス22Aに電磁波Wが入射すると、電磁波Wの電界強度のZ軸方向における負の成分に応じた電子Pがアンテナ部α1から放出される。第三状態においてメタサーフェス22又はメタサーフェス22Aに電磁波Wが入射すると、電磁波Wの電界強度のY軸方向における正の成分に応じた電子Pがアンテナ部α2から放出される。第四状態においてメタサーフェス22又はメタサーフェス22Aに電磁波Wが入射すると、電磁波Wの電界強度のY軸方向における負の成分に応じた電子Pがアンテナ部α2から放出される。このため、この光電変換装置2は、第一状態及び第二状態においてメタサーフェス22又はメタサーフェス22Aから放出された電子Pの検出によって、電磁波Wの電界強度について、Z軸方向における極性ごとの測定を実現できる。同様に、第三状態及び第四状態においてメタサーフェス22又はメタサーフェス22Aから放出された電子Pの検出によって、電磁波Wの電界強度について、Y軸方向における極性ごとの測定が実現され得る。この結果、各方向成分の極性を考慮して、電磁波Wの偏光状態の検出がより正確に実現され得る。
【0178】
光電変換装置2において、演算部75は、電磁波Wの電界強度における各軸方向における電界の極性を判断する。このため、電磁波Wの偏光状態に加えて、電磁波Wについてより詳細な情報が取得される。例えば、電磁波Wの電場波形データが取得されうる。
【0179】
図8に示された構成において、メタサーフェス22Aは、アンテナ部α3とバイアス部β3とをさらに含んでいる。アンテナ部α3は、Y軸方向とZ軸方向とに交差するγ
1軸方向に延在していると共に電磁波Wの入射に応じて電子Pを放出する。バイアス部β3は、アンテナ部α3に面していると共にアンテナ部α3との間においてγ
1軸方向の成分を有する電界を発生させるように構成されている。このような構成によれば、アンテナ部α3は、電磁波Wの電界強度のγ
1軸方向における成分に応じて電子Pを放出する。この場合、さらに、電磁波Wの電界強度のγ
1軸方向における成分に応じて放出された電子Pが検出され得る。したがって、例えば、電磁波Wの電界強度のZ軸方向における成分と、電磁波Wの電界強度のY軸方向における成分と、電磁波Wの電界強度のγ
1軸方向における成分との比が演算され得る。演算された比によって、より簡易な演算処理によって、電磁波Wの偏光状態の検出がさらに容易に実現され得る。電磁波Wについて、円偏光も含めた偏光状態が検出され得る。
【0180】
図8に示された構成において、電位制御部72は、メタサーフェス22Aの複数のパターン31A,32A,33A,34A,35A,81A,82Aに付与する電位を制御することによって、第一状態と第二状態とを切り替え、第三状態と第四状態とを切り替え、第五状態と第六状態とを切り替えてもよい。この場合、この光電変換装置2は、第一状態及び第二状態においてメタサーフェス22Aから放出された電子Pの検出によって、電磁波Wの電界強度について、Z軸方向における極性ごとの測定を実現できる。同様に、第三状態及び第四状態においてメタサーフェス22Aから放出された電子Pの検出によって、電磁波Wの電界強度について、Y軸方向における極性ごとの測定を実現できる。さらに、第五状態及び第六状態においてメタサーフェス22Aから放出された電子Pの検出によって、電磁波Wの電界強度について、γ
1軸方向における極性ごとの測定を実現できる。この結果、各方向成分の極性を考慮して、電磁波Wの偏光状態の検出がより正確に実現され得る。
【0181】
メタサーフェス22のアンテナ部α1は、Z軸方向において互いに異なる位置に配置されている先端36,37を含んでいる。バイアス部β1は、線形状部41,43を含んでいる。線形状部41は、先端36に面していると共に先端36との間においてZ軸方向の成分を有する電界を発生させる。線形状部43は、先端37に面していると共に先端37との間においてZ軸方向の成分を有する電界を発生させる。アンテナ部α2は、Y軸方向において互いに異なる位置に配置されている先端38,39を含んでいる。バイアス部β2は、線形状部46,48を含んでいる。線形状部46は、先端38に面していると共に先端38との間においてY軸方向の成分を有する電界を発生させる。線形状部48は、先端39に面していると共に先端39との間においてY軸方向の成分を有する電界を発生させる。先端36,37、及び、線形状部41,43は、Z軸方向において、線形状部43、先端37、先端36、線形状部41の順に配置されている。先端38,39、及び、線形状部46,48は、Y軸方向において、線形状部48、先端39、先端38、線形状部46の順に配置されている。この場合、簡易な構成でありながら、メタサーフェス22から放出された電子Pの検出によって、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度について、Z軸方向及びY軸方向の各々における極性ごとの測定が実現され得る。メタサーフェス22Aにおいても同様の作用効果が奏される。
【0182】
例えば、第一状態において、先端36から線形状部41に向かう電界のZ軸方向における成分は正であり、線形状部43から先端37に向かう電界のZ軸方向における成分は正であり、先端38から線形状部46に向かう電界のY軸方向における成分は正であり、先端39から線形状部48に向かう電界のY軸方向における成分は負である。第二状態において、線形状部41から先端36に向かう電界のZ軸方向における成分は負であり、先端37から線形状部43に向かう電界のZ軸方向における成分は負であり、先端38から線形状部46に向かう電界のY軸方向における成分は正であり、先端39から線形状部48に向かう電界のY軸方向における成分は負である。第三状態において、先端36から線形状部41に向かう電界のZ軸方向における成分は正であり、先端37から線形状部43に向かう電界のZ軸方向における成分は負であり、先端38から線形状部46に向かう電界のY軸方向における成分は正であり、線形状部48から先端39に向かう電界のY軸方向における成分は正である。第四状態において、先端36から線形状部41に向かう電界のZ軸方向における成分は正であり、先端37から線形状部43に向かう電界のZ軸方向における成分は負であり、線形状部46から先端38に向かう電界のY軸方向における成分は負であり、先端39から線形状部48に向かう電界のY軸方向における成分は負である。この場合、第一状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、電磁波Wの電界強度のZ軸方向における正の成分に応じて電子Pはアンテナ部α1から放出され、電磁波Wの電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。第二状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、電磁波Wの電界強度のZ軸方向における負の成分に応じて電子Pはアンテナ部α1から放出され、電磁波Wの電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。第三状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、電磁波Wの電界強度のY軸方向における正の成分に応じて電子Pはアンテナ部α2から放出され、電磁波Wの電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。第四状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、電磁波Wの電界強度のY軸方向における負の成分に応じて電子Pはアンテナ部α2から放出され、電磁波Wの電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。したがって、より正確に各方向成分の極性ごとの測定が実現され得る。さらに、電磁波Wの偏光状態の検出がより正確に実現され得る。メタサーフェス22Aにおいても同様の作用効果が奏される。
【0183】
例えば、第一状態において、線形状部41に付与される電位はアンテナ部α1に付与される電位よりも低く、線形状部43に付与される電位はアンテナ部α1に付与される電位よりも高く、線形状部46に付与される電位はアンテナ部α2に付与される電位よりも低く、線形状部48に付与される電位はアンテナ部α2に付与される電位よりも低い。第二状態において、線形状部41に付与される電位はアンテナ部α1に付与される電位よりも高く、線形状部43に付与される電位はアンテナ部α1に付与される電位よりも低く、線形状部46に付与される電位はアンテナ部α2に付与される電位よりも低く、線形状部48に付与される電位はアンテナ部α2に付与される電位よりも低い。第三状態において、線形状部41に付与される電位はアンテナ部α1に付与される電位よりも低く、線形状部43に付与される電位はアンテナ部α1に付与される電位よりも低く、線形状部46に付与される電位はアンテナ部α2に付与される電位よりも低く、線形状部48に付与される電位はアンテナ部α2に付与される電位よりも高い。第四状態において、線形状部41に付与される電位はアンテナ部α1に付与される電位よりも低く、線形状部43に付与される電位はアンテナ部α1に付与される電位よりも低く、線形状部46に付与される電位はアンテナ部α2に付与される電位よりも高く、線形状部48に付与される電位はアンテナ部α2に付与される電位よりも低い。この場合、先端36と線形状部41との間、先端37と線形状部43との間、先端38と線形状部46との間、先端39と線形状部48との間に、電位差が生じる。この電位差によって、上述のように電界が生じる。この結果、第一状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、電磁波Wの電界強度のZ軸方向における正の成分に応じて電子Pはアンテナ部α1から放出され、電磁波Wの電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。第二状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、電磁波Wの電界強度のZ軸方向における負の成分に応じて電子Pはアンテナ部α1から放出され、電磁波Wの電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。第三状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、電磁波Wの電界強度のY軸方向における正の成分に応じて電子Pはアンテナ部α2から放出され、電磁波Wの電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。第四状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、電磁波Wの電界強度のY軸方向における負の成分に応じて電子Pはアンテナ部α2から放出され、電磁波Wの電界強度の他の成分に応じた電子の放出は抑制される。したがって、より正確に各方向成分の極性ごとの測定が実現され得る。さらに、電磁波Wの偏光状態の検出がより正確に実現され得る。メタサーフェス22Aにおいても同様の作用効果が奏される。
【0184】
光電変換装置2は、気密に封止されていると共に電磁波Wを透過する窓部11aを有しているハウジング10をさらに備えている。電子放出部材20は、ハウジング10内に配置されている。この場合、ハウジング10内を真空にする又はハウジング10内にガスを充填することによって、電磁波Wの入射に応じた電子Pの放出量が向上し得る。
【0185】
電磁波検出装置1は、上述した光電変換装置2と、電子収集部50と、演算部75とを備えている。電子収集部50は、電子放出部材20から放出された電子Pを検出する。演算部75は、第一状態における電子収集部50の検出結果と、第二状態における電子収集部50の検出結果と、第三状態における電子収集部50の検出結果と、第四状態における電子収集部50の検出結果とに基づいて、電磁波Wの偏光情報を演算する。この場合、電磁波検出装置1は、電磁波Wの偏光状態を容易に検出できる。電磁波検出装置1は、冷却も不要である。
【0186】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0187】
例えば、光電変換部25,25Aの構成は、適宜組み合わせ可能である。1つの電子放出部材20に複数種の光電変換部が設けられてもよい。
【0188】
パターン31,32,33,34,35、パターン31A,32A,33A,34A,35A,81A,82A、及び、パターン31B,33B,81Bにおける各種の線形状部の配置は、上述した実施形態の構成に限定されない。互いに対応するバイアス部とアンテナ部との機能的な関係が保持されれば、線形状部の数及び配置は適宜変更可能である。
【0189】
例えば、1つの線形状部が、電磁波Wの入射に応じて電子Pを放出するアンテナ部と、電界を発生させるバイアス部とを兼ねるように構成されてもよい。例えば、電子放出部材20の光電変換部は、互いに対向していると共に同一方向に延在する一対の第一及び第二線形状部を含むように構成され、第一線形状部がアンテナ部として機能し第二線形状部がバイアス部として機能する状態と、第一線形状部がバイアス部とて機能し第二線形状部がアンテナ部として機能する状態とが切り替えられるように構成されてもよい。一対の第一及び第二線形状部の先端は、互いに面するように配置される。例えば、第一線形状部と第二線形状部において、アンテナ部として機能する状態とバイアス部として機能する状態との切替は、各線形状部に電気的に接続されている電極に付与する電位を制御することによって行われる。互いに面する第一及び第二線形状部のいずれをアンテナ部として機能させるか切り替えることによって、電磁波Wの電界強度について、一対の線形状部の延在方向における成分の極性ごとの検出が可能となる。
【0190】
また、アンテナ部α1とアンテナ部α2とは互いに直交していなくてもよい。演算部75は、互いに直交しないアンテナ部α1とアンテナ部α2とから放出された電子Pに基づいて、偏光状態を判断するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0191】
1…電磁波検出装置、2…光電変換装置、10…ハウジング、11a…窓部、20…電子放出部材、22,22A…メタサーフェス、72…電位制御部、75…演算部、P…電子、W…電磁波。
【国際調査報告】