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特表2024-530683光電変換装置、電磁波検出装置、光電変換方法、及び、電磁波検出方法
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  • 特表-光電変換装置、電磁波検出装置、光電変換方法、及び、電磁波検出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】光電変換装置、電磁波検出装置、光電変換方法、及び、電磁波検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 40/06 20060101AFI20240816BHJP
   H01J 40/12 20060101ALI20240816BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20240816BHJP
   G01J 1/02 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
H01J40/06
H01J40/12
H01Q21/08
G01J1/02 C
G01J1/02 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508577
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022072070
(87)【国際公開番号】W WO2023016936
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】21190595.5
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522312399
【氏名又は名称】デンマークス テクニスケ ユニベルシテット
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100206966
【弁理士】
【氏名又は名称】崎山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】河合 直弥
(72)【発明者】
【氏名】吉新 英朗
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ サイモン レインコーフ
(72)【発明者】
【氏名】イェプセン ピーター ウドゥ
【テーマコード(参考)】
2G065
5J021
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB03
2G065BA18
2G065BA40
2G065DA08
5J021AA07
5J021AB02
5J021JA10
(57)【要約】
光電変換装置において、電位制御部は、メタサーフェスに付与する電位を制御する。メタサーフェスは、互いに離間した複数のパターンを含んでいる。複数のパターンは、アンテナ部と、少なくとも一つのバイアス部とを含んでいる。アンテナ部は、所定方向に延在していると共に電磁波の入射に応じて電子を放出する。少なくとも一つのバイアス部は、アンテナ部に面している。電位制御部は、複数のパターンに付与する電位を制御することによって、第一状態と第二状態とを切り替える。第一状態において、バイアス部からアンテナ部に向かう電界の所定方向における成分は正である。第二状態において、バイアス部からアンテナ部に向かう電界の所定方向における成分は負である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェスを有する電子放出部材と、
前記メタサーフェスに付与する電位を制御する電位制御部と、を備えており、
前記メタサーフェスは、互いに離間した複数のパターンを含んでおり、
前記複数のパターンは、所定方向に延在していると共に前記電磁波の入射に応じて電子を放出するアンテナ部と、前記アンテナ部に面している少なくとも一つのバイアス部と、を含んでおり、
前記電位制御部は、前記複数のパターンに付与する電位を制御することによって、前記バイアス部から前記アンテナ部に向かう電界の前記所定方向における成分が正である第一状態と、前記バイアス部から前記アンテナ部に向かう電界の前記所定方向における成分が負である第二状態と、を切り替える、光電変換装置。
【請求項2】
前記アンテナ部は、前記所定方向において互いに異なる位置に配置されている第一及び第二先端を含んでおり、
前記バイアス部は、前記第一先端に面している第一バイアス部と、前記第二先端に面している第二バイアス部とを含んでおり、
前記第一状態において、前記第一先端から前記第一バイアス部に向かう電界の前記所定方向における成分は正であると共に前記第二バイアス部から前記第二先端に向かう電界の前記所定方向における成分は正であり、
前記第二状態において、前記第一バイアス部から前記第一先端に向かう電界の前記所定方向における成分は負であると共に前記第二先端から前記第二バイアス部に向かう電界の前記所定方向における成分は負である、請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記アンテナ部は、前記所定方向において互いに異なる位置に配置されている第一及び第二先端を含んでおり、
前記バイアス部は、前記第一先端に面している第一バイアス部と、前記第二先端に面している第二バイアス部とを含んでおり、
前記第一及び第二先端、並びに、前記第一及び第二バイアス部は、前記所定方向において、前記第二バイアス部、前記第二先端、前記第一先端、前記第一バイアス部の順に配置されており、
前記第一状態において、前記第一バイアス部に付与される電位は前記アンテナ部に付与される電位よりも低く、前記第二バイアス部に付与される電位は前記アンテナ部に付与される電位よりも高く、
前記第二状態において、前記第一バイアス部に付与される電位は前記アンテナ部に付与される電位よりも高く、前記第二バイアス部に付与される電位は前記アンテナ部に付与される電位よりも低い、請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記複数のパターンは、互いに離間している第一線形状部と第二線形状部とを含んでおり、
前記第一及び第二線形状部は、前記所定方向に延在していると共に前記所定方向において互いに面しており、
前記第一状態において、前記第一線形状部は前記アンテナ部を構成し、前記第二線形状部は前記バイアス部を構成し、
前記第二状態において、前記第一線形状部は前記バイアス部を構成し、前記第二線形状部は前記アンテナ部を構成する、請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項5】
気密に封止されていると共に電磁波を透過する窓部を有しているハウジングをさらに備え、
前記電子放出部材は、前記ハウジング内に配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の光電変換装置と、
前記電子放出部材から放出された電子を検出する検出部と、
前記第一状態における前記検出部の検出結果に基づいて前記電磁波の電界強度の正の前記所定方向の成分に関する情報を演算し、前記第二状態における前記検出部の検出結果に基づいて前記電磁波の電界強度の負の前記所定方向の成分に関する情報を演算する演算部と、を備えている、電磁波検出装置。
【請求項7】
所定方向に延在しているアンテナ部と前記アンテナ部に面している少なくとも一つのバイアス部とを含む複数のパターンを含んでいるメタサーフェスを用いて、前記バイアス部から前記アンテナ部に向かう電界の前記所定方向における成分が正であるように電位を前記メタサーフェスに付与した第一状態において、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて前記アンテナ部から電子を放出させる第一電子放出ステップと、
前記バイアス部から前記アンテナ部に向かう電界の前記所定方向における成分が負であるように電位を前記メタサーフェスに付与した第二状態において、前記メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じて前記アンテナ部から電子を放出させる第二電子放出ステップと、を備えている、光電変換方法。
【請求項8】
前記アンテナ部は、前記所定方向において互いに異なる位置に配置されている第一及び第二先端を含んでおり、
前記バイアス部は、前記第一先端に面している第一バイアス部と、前記第二先端に面している第二バイアス部とを含んでおり、
前記第一電子放出ステップにおいて、前記第一先端から前記第一バイアス部に向かう電界の前記所定方向における成分が正であると共に前記第二バイアス部から前記第二先端に向かう電界の前記所定方向における成分が正であるように前記メタサーフェスに電位が付与され、
前記第二電子放出ステップにおいて、前記第一バイアス部から前記第一先端に向かう電界の前記所定方向における成分が負であると共に前記第二先端から前記第二バイアス部に向かう電界の前記所定方向における成分が負であるように前記メタサーフェスに電位が付与される、請求項7に記載の光電変換方法。
【請求項9】
前記アンテナ部は、前記所定方向において互いに異なる位置に配置されている第一及び第二先端を含んでおり、
前記バイアス部は、前記第一先端に面している第一バイアス部と、前記第二先端に面している第二バイアス部とを含んでおり、
前記第一及び第二先端、並びに、前記第一及び第二バイアス部は、前記所定方向において、前記第二バイアス部、前記第二先端、前記第一先端、前記第一バイアス部の順に配置されており、
前記第一電子放出ステップにおいて、前記第一バイアス部に付与される電位は前記アンテナ部に付与される電位よりも低く、前記第二バイアス部に付与される電位は前記アンテナ部に付与される電位よりも高く、
前記第二電子放出ステップにおいて、前記第一バイアス部に付与される電位は前記アンテナ部に付与される電位よりも高く、前記第二バイアス部に付与される電位は前記アンテナ部に付与される電位よりも低い、請求項7に記載の光電変換方法。
【請求項10】
前記複数のパターンは、互いに離間している第一線形状部と第二線形状部とを含んでおり、
前記第一及び第二線形状部は、前記所定方向に延在していると共に前記所定方向において互いに面しており、
前記第一電子放出ステップにおいて、前記第一線形状部は前記アンテナ部を構成し、前記第二線形状部は前記バイアス部を構成し、
前記第二電子放出ステップにおいて、前記第一線形状部は前記バイアス部を構成し、前記第二線形状部は前記アンテナ部を構成する、請求項7に記載の光電変換方法。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか一項における光電変換方法を備えた電磁波検出方法であって、
前記第一電子放出ステップにおいて電子放出部材から放出された電子を検出する第一検出ステップと、
前記第二電子放出ステップにおいて電子放出部材から放出された電子を検出する第二検出ステップと、
前記第一状態における前記第一検出ステップの検出結果に基づいて、前記電磁波の電界強度の正の前記所定方向の成分に関する情報を演算する第一演算ステップと、
前記第二状態における前記第二検出ステップの検出結果に基づいて、前記電磁波の電界強度の負の前記所定方向の成分に関する情報を演算する第二演算ステップと、をさらに備えている、電磁波検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、光電変換装置、電磁波検出装置、光電変換方法、及び、電磁波検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出には、たとえば、熱電子放出、光電子放出、二次放出、及び、電子放出の4つのタイプがある。熱電子放出は、電極を熱することによって生じる。光電子放出は、光子の照射によって生じる。二次放出は、光速電子の衝突によって生じる。電界放出は、静電界の存在下で生じる。米国2016/0216201号公報は、電磁波を検出する電磁波検出システムを示している。このシステムは、電磁波を電子に変換する光電変換装置を含んでいる。光電変換装置は、メタマテリアル構造を有している電子放出部材を備えている。このシステムは、電子放出部材に入射した電磁波を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国2016/0216201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記光電変換装置の電子放出部材は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。上記システムは、電子放出部材から放出された電子に基づいて、入射した電磁波を検出する。上記システムによれば、例えば、テラヘルツ波が検出され得る。しかし、このシステムを用いても電磁波の電界強度を極性ごとに測定することはできない。「極性」は、例えば、所定方向における正の成分と負の成分とのそれぞれを示す。
【0005】
テラヘルツ波の波形の検出する技術として、テラヘルツ時間領域分光(THz-TDS:Terahertz TimeDomain Spectroscopy)を用いた電気光学(EO:Electro-Optic)サンプリングが知られている。この技術によれば、電磁波の電界強度が極性ごとに測定され得る。しかし、この技術を用いたシステムは、測定する電磁波とは別にレーザの入射を要すると共にプリズム、ミラー、及びレンズを用いた複雑な光学系を要する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、簡易な構成でありながら、電磁波の電界強度の極性ごとの測定を実現し得る光電変換装置を提供することを目的とする。本開示の別の側面は、簡易な構成でありながら、電磁波の電界強度を極性ごとに測定できる電磁波検出装置を提供することを目的とする。本開示のさらに別の側面は、電磁波の電界強度の極性ごとの測定を容易に実現し得る光電変換方法を提供することを目的とする。本開示の別の側面は、電磁波の電界強度を極性ごとに容易に測定できる電磁波検出方法を提供することを目的とする。
【0007】
本開示の一側面における光電変換装置は、電子放出部材と、電位制御部とを備えている。電子放出部材は、電磁波の入射に応じて電子を放出するメタサーフェスを有している。電位制御部は、メタサーフェスに付与する電位を制御する。メタサーフェスは、互いに離間した複数のパターンを含んでいる。複数のパターンは、アンテナ部と、少なくとも一つのバイアス部とを含んでいる。アンテナ部は、所定方向に延在していると共に電磁波の入射に応じて電子を放出する。少なくとも一つのバイアス部は、アンテナ部に面している。電位制御部は、複数のパターンに付与する電位を制御することによって、第一状態と第二状態とを切り替える。第一状態において、バイアス部からアンテナ部に向かう電界の所定方向における成分は正である。第二状態において、バイアス部からアンテナ部に向かう電界の所定方向における成分は負である。
【0008】
この光電変換装置において、電位制御部による電位の制御によって、バイアス部からアンテナ部に向かう電界が制御される。測定対象の電磁波がメタサーフェスに入射すると、バイアス部からアンテナ部に向かう電界の影響によって、アンテナ部から電子が放出される。第一状態において、バイアス部からアンテナ部に向かう電界の所定方向における成分は正である。このため、第一状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の正の上記所定方向成分に応じて電子がアンテナ部から放出される。第二状態において、バイアス部からアンテナ部に向かう電界の所定方向における成分は負である。このため、第二状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の負の上記所定方向成分に応じて電子がアンテナ部から放出される。したがって、この光電変換装置は、簡易な構成でありながら、第一状態と第二状態とのそれぞれにおいてメタサーフェスから放出された電子の検出によって、メタサーフェスに入射した電磁波の電界強度の極性ごとの測定を実現できる。
【0009】
上記一側面において、アンテナ部は、所定方向において互いに異なる位置に配置されている第一及び第二先端を含んでいてもよい。バイアス部は、第一バイアス部と第二バイアス部とを含んでいてもよい。第一バイアス部は、第一先端に面していてもよい。第二バイアス部は、第二先端に面していてもよい。第一状態において、第一先端から第一バイアス部に向かう電界の所定方向における成分は正であると共に第二バイアス部から第二先端に向かう電界の所定方向における成分は正であってもよい。第二状態において、第一バイアス部から第一先端に向かう電界の所定方向における成分は負であると共に第二先端から第二バイアス部に向かう電界の所定方向における成分は負であってもよい。この場合、入射した電磁波の電界強度の正の上記所定方向成分に応じて電子が第二先端から放出され、入射した電磁波の電界強度の負の上記所定方向成分に応じて電子が第一先端から放出される。第一状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の正の上記所定方向成分に応じて電子が第二先端から放出される。第一状態において、第一先端からの電子の放出は抑制される。第二状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の負の上記所定方向成分に応じて電子が第一先端から放出される。第二状態において、第二先端からの電子の放出は抑制される。
【0010】
上記一側面において、アンテナ部は、所定方向において互いに異なる位置に配置されている第一及び第二先端を含んでいてもよい。バイアス部は、第一先端に面している第一バイアス部と、第二先端に面している第二バイアス部とを含んでいてもよい。第一及び第二先端、並びに、第一及び第二バイアス部は、所定方向において、第二バイアス部、第二先端、第一先端、第一バイアス部の順に配置されていてもよい。第一状態において、第一バイアス部に付与される電位はアンテナ部に付与される電位よりも低く、第二バイアス部に付与される電位はアンテナ部に付与される電位よりも高くてもよい。第二状態において、第一バイアス部に付与される電位はアンテナ部に付与される電位よりも高く、第二バイアス部に付与される電位はアンテナ部に付与される電位よりも低くてもよい。この場合、入射した電磁波の電界強度の正の上記所定方向成分に応じて電子が第二先端から放出され、入射した電磁波の電界強度の負の上記所定方向成分に応じて電子が第一先端から放出される。第一状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、第二バイアス部と第二先端との電位差に起因する電界によって第二先端から電子が放出される。第一状態において、第一先端からの電子の放出は、第一バイアス部と第一先端との電位差に起因する電界によって抑制される。第二状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、第一バイアス部と第一先端との電位差に起因する電界によって第一先端から電子が放出される。第二状態において、第二バイアス部と第二先端との電位差に起因する電界によって第二先端からの電子の放出は抑制される。
【0011】
上記一側面において、複数のパターンは、互いに離間している第一線形状部と第二線形状部とを含んでいてもよい。第一及び第二線形状部は、所定方向に延在していると共に所定方向において互いに面していてもよい。第一状態において、第一線形状部はアンテナ部を構成し、第二線形状部はバイアス部を構成してもよい。第二状態において、第一線形状部はバイアス部を構成し、第二線形状部はアンテナ部を構成してもよい。この光電変換装置は、さらに簡易な構成でありながら、電磁波の電界強度の極性ごとの測定を実現し得る。
【0012】
上記一側面において、光電変換装置は、気密に封止されていると共に電磁波を透過する窓部を有しているハウジングをさらに備えていてもよい。電子放出部材は、ハウジング内に配置されていてもよい。この場合、ハウジング内を真空にする又はハウジング内にガスを充填することによって、電磁波の入射に応じた電子の放出量が向上し得る。
【0013】
本開示の別の側面における電磁波検出装置は、上述した光電変換装置と、検出部と、演算部とを備えている。検出部は、電子放出部材から放出された電子を検出する。演算部は、第一状態における検出部の検出結果に基づいて電磁波の電界強度の正の所定方向の成分に関する情報を演算する。演算部は、第二状態における検出部の検出結果に基づいて電磁波の電界強度の負の所定方向の成分に関する情報を演算する。この場合、この電磁波検出装置は、簡易な構成でありながら、電磁波の電界強度を極性ごとに測定できる。
【0014】
本開示のさらに別の側面における光電変換方法は、第一電子放出ステップと、第二電子放出ステップとを備えている。第一及び第二電子放出ステップにおいて、メタサーフェスが用いられる。メタサーフェスは、所定方向に延在しているアンテナ部とアンテナ部に面している少なくとも一つのバイアス部とを含む複数のパターンを含んでいる。第一電子放出ステップにおいて、第一状態において、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じてアンテナ部から電子が放出される。第一状態は、バイアス部からアンテナ部に向かう電界の所定方向における成分が正であるように電位をメタサーフェスに付与した状態である。第二電子放出ステップにおいて、第二状態において、メタサーフェスへの測定対象の電磁波の入射に応じてアンテナ部から電子が放出される。第二状態は、バイアス部からアンテナ部に向かう電界の所定方向における成分が負であるように電位をメタサーフェスに付与した状態である。
【0015】
この光電変換方法において、測定対象の電磁波がメタサーフェスに入射すると、第一状態及び第二状態のそれぞれにおける電界の影響によって、アンテナ部から電子が放出される。第一状態において、バイアス部からアンテナ部に向かう電界の所定方向における成分は正である。このため、第一状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の正の上記所定方向成分に応じて電子がアンテナ部から放出される。第二状態において、バイアス部からアンテナ部に向かう電界の所定方向における成分は負である。このため、第二状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の負の上記所定方向成分に応じて電子がアンテナ部から放出される。したがって、第一状態と第二状態とのそれぞれにおいてメタサーフェスから放出された電子の検出によって、メタサーフェスに入射した電磁波の電界強度の極性ごとの測定が容易に実現され得る。
【0016】
上記別の側面において、アンテナ部は、所定方向において互いに異なる位置に配置されている第一及び第二先端を含んでいてもよい。バイアス部は、第一バイアス部と第二バイアス部とを含んでいてもよい。第一バイアス部は、第一先端に面していてもよい。第二バイアス部は、第二先端に面していてもよい。第一電子放出ステップにおいて、第一先端から第一バイアス部に向かう電界の所定方向における成分は正であると共に第二バイアス部から第二先端に向かう電界の所定方向における成分は正であるようにメタサーフェスに電位が付与される。第二電子放出ステップにおいて、第一バイアス部から第一先端に向かう電界の所定方向における成分は負であると共に第二先端から第二バイアス部に向かう電界の所定方向における成分は負であるようにメタサーフェスに電位が付与される。この場合、入射した電磁波の電界強度の正の上記所定方向成分に応じて電子が第二先端から放出され、入射した電磁波の電界強度の負の上記所定方向成分に応じて電子が第一先端から放出される。第一状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の正の上記所定方向成分に応じて電子が第二先端から放出される。第一状態において、第一先端からの電子の放出は抑制される。第二状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の負の上記所定方向成分に応じて電子が第一先端から放出される。第二状態において、第二先端からの電子の放出は抑制される。
【0017】
上記別の側面において、アンテナ部は、所定方向において互いに異なる位置に配置されている第一及び第二先端を含んでいてもよい。バイアス部は、第一バイアス部と第二バイアス部とを含んでいてもよい。第一バイアス部は、第一先端に面していてもよい。第二バイアス部は、第二先端に面していてもよい。第一及び第二先端、並びに、第一及び第二バイアス部は、所定方向において、第二バイアス部、第二先端、第一先端、第一バイアス部の順に配置されていてもよい。第一電子放出ステップにおいて、第一バイアス部に付与される電位はアンテナ部に付与される電位よりも低く、第二バイアス部に付与される電位はアンテナ部に付与される電位よりも高くてもよい。第二電子放出ステップにおいて、第一バイアス部に付与される電位はアンテナ部に付与される電位よりも高く、第二バイアス部に付与される電位はアンテナ部に付与される電位よりも低くてもよい。この場合、入射した電磁波の電界強度の正の上記所定方向成分に応じて電子が第二先端から放出され、入射した電磁波の電界強度の負の上記所定方向成分に応じて電子が第一先端から放出される。第一状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の正の上記所定方向成分に応じて電子が第二先端から放出される。第一状態において、第一先端からの電子の放出は抑制される。第二状態においてメタサーフェスに電磁波が入射すると、入射した電磁波の電界強度の負の上記所定方向成分に応じて電子が第一先端から放出される。第二状態において、第二先端からの電子の放出は抑制される。
【0018】
上記別の側面において、複数のパターンは、互いに離間している第一線形状部と第二線形状部とを含んでいてもよい。第一及び第二線形状部は、所定方向に延在していると共に所定方向において互いに面していてもよい。第一電子放出ステップにおいて、第一線形状部はアンテナ部を構成し、第二線形状部はバイアス部を構成してもよい。第二電子放出ステップにおいて、第一線形状部はバイアス部を構成し、第二線形状部はアンテナ部を構成してもよい。この光電変換方法は、電磁波の電界強度の極性ごとの測定をさらに容易に実現し得る。
【0019】
本開示のさらに別の側面における電磁波検出方法は、上述した光電変換方法を備えている。この電磁波検出方法は、第一検出ステップと、第二検出ステップと、第一演算ステップと、第二演算ステップとをさらに備えている。第一検出ステップでは、第一電子放出ステップにおいて電子放出部材から放出された電子が検出される。第二検出ステップでは、第二電子放出ステップにおいて電子放出部材から放出された電子が検出される。第一演算ステップでは、第一状態における第一検出ステップの検出結果に基づいて、電磁波の電界強度の正の所定方向の成分に関する情報が演算される。第二演算ステップでは、第二状態における第二検出ステップの検出結果に基づいて、電磁波の電界強度の負の所定方向の成分に関する情報が演算される。この場合、この電磁波検出方法は、電磁波の電界強度を極性ごとに容易に測定できる。
【0020】
本開示の一側面によれば、簡易な構成でありながら、電磁波の電界強度の極性ごとの測定を実現し得る光電変換装置を提供することが可能となる。本開示の別の側面によれば、簡易な構成でありながら、電磁波の電界強度を極性ごとに測定できる電磁波検出装置を提供することが可能となる。本開示のさらに別の側面によれば、電磁波の電界強度の極性ごとの測定を容易に実現し得る光電変換方法を提供することが可能となる。本開示の別の側面によれば、電磁波の電界強度を極性ごとに容易に測定できる電磁波検出方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本実施形態における電磁波検出装置の概略図である。
図2図2は、光電変換装置の模式図である。
図3図3は、光電変換装置の模式図である。
図4】(a)は、光電変換装置の動作を説明するための図である。(b)は、光電変換装置の動作を説明するための図である。
図5図5は、本実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。
図6】(a)は、本実施形態の変形例における光電変換装置の動作を説明するための図である。(b)は、本実施形態の変形例における光電変換装置の動作を説明するための図である。
図7図7は、本実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。
図8】(a)は、本実施形態の変形例における光電変換装置の動作を説明するための図である。(b)は、本実施形態の変形例における光電変換装置の動作を説明するための図である。
図9図9は、電磁波検出方法のフローチャートである。
図10】(a)は、電磁波検出装置に入射する電磁波の電界の波形を示す図である。(b)は、電磁波検出装置に入射する電磁波の電界の検出結果を示す図である。(c)は、電磁波検出装置に入射する電磁波の電界の検出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0023】
まず、図1を参照して、本実施形態における電磁波検出装置の構成を説明する。図1は、本実施形態における電磁波検出装置の概略図である。
【0024】
電磁波検出装置1は、入射した電磁波を検出する。電磁波検出装置1は、光電変換装置2を含んでいる。光電変換装置2は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。本明細書において、「光」は、可視光以外の電磁波を含んでいる。本実施形態では、電磁波検出装置1は、電磁波の入射に応じて光電変換装置2から放出された電子に基づいて、入射した電磁波を検出する。光電変換装置2は、例えば、いわゆるミリ波から赤外光の波長の範囲の電磁波が入射されることによって、電子を放出する。ミリ波から赤外光の波長の範囲は、例えば、0.01~150THz程度の周波数域に相当する。本明細書において、「波長の範囲」は、互いに分離した複数の波長域の範囲を含んでいてもよいし、一つの連続した波長域の範囲であってもよい。光電変換装置2は、例えば、電界放出(フィールドエミッション)によって電子を放出する。
【0025】
電磁波検出装置1は、例えば、電磁波の入射に応じて電気信号を出力する電子管である。例えば、電磁波検出装置1は、電子管の内部において、電磁波の入射に応じて電子を放出し、放出された電子を検出し、検出結果に基づく電気信号を出力する。電子管は、例えば、光電子増倍管(Photomultiplier Tube:PMT)である。電磁波検出装置1は、電磁波が入射した場合に内部で電子を放出し、放出された電子を増倍する。本実施形態の変形例として、電磁波検出装置1は、電子管内に電子を検出する構成を備えていなくてもよい。換言すれば、電磁波検出装置1は、電磁波の入射に応じて電子を外部に放出する電子管を光電変換装置2として備え、この電子管の外部に電子管から放出された検出する検出部を備えていてもよい。
【0026】
電磁波検出装置1は、ハウジング10と、電子放出部材20と、保持部材30と、電子増倍部40と、電子収集部50と、電源部60と、演算部70と、を備えている。電子放出部材20、保持部材30、電子増倍部40及び電子収集部50は、ハウジング10内に配置されている。光電変換装置2は、ハウジング10と、電子放出部材20と、電源部60とを備え、電磁波検出装置1の一部を構成している。
【0027】
ハウジング10は、バルブ11及びステム12を有している。ハウジング10の内部は、バルブ11とステム12とによって気密に封止されている。本実施形態において、ハウジング10の内部は真空に保持されている。ハウジング10内の真空は、絶対真空でなくてもよく、大気圧よりも低い圧力の気体で満たされた状態であってもよい。例えば、ハウジング10の内部は、1×10-4~1×10-7Paに保持される。
【0028】
バルブ11は、電磁波透過性を有する窓部11aを含んでいる。本明細書において、「電磁波透過性」とは、入射した電磁波の波長の範囲の少なくとも一部の波長の範囲が透過する性質をいう。本実施形態において、ハウジング10は円筒形状を有している。ハウジング10は、図1に示されているようにX軸方向に延在する。ステム12は、ハウジング10の底面を構成している。ステム12は、例えば、ハウジング10のX軸方向における一方の端面を構成している。バルブ11は、ハウジング10の側面及びステム12に面している底面を構成している。
【0029】
窓部11aは、ステム12に面している底面を構成している。窓部11aは、例えば、X軸方向から見て、YZ軸方向を径方向とする円形状を呈している。電磁波の透過率の周波数特性は、材料に応じて異なる。このため、窓部11aは、ハウジング10に入射する電磁波の周波数域に応じた最適な材料によって構成される。例えば、窓部11aは、例えば、石英、シリコン、ゲルマニウム、サファイア、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ダイアモンド、及びカルコゲナイドガラスから選択される少なくとも1種を含む。これにより、ミリ波から赤外光のうち任意の周波数域の電磁波をハウジング10の内部に導くことができる。例えば、石英は0.1~5THz、シリコンは0.04~11THz及び46THz以上、フッ化マグネシウムは40THz以上、ゲルマニウムは13THz以上、セレン化亜鉛は14THz以上の周波数域を有する電磁波を透過する部材の材料に適している。
【0030】
ハウジング10は、ハウジング10の外部と内部との電気的な接続を可能とする複数の配線13をさらに有している。複数の配線13は、例えば、リード線又はピンである。本実施形態において、複数の配線13は、ステム12を貫通するピンであり、ハウジング10の内部から外部に延在している。複数の配線13の少なくとも一つが、ハウジング10の内部に設けられた種々の部材と接続されている。
【0031】
電子放出部材20は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。電子放出部材20は、支持体21を備えている。支持体21は、例えば、板形状である。支持体21は、例えば、平面視で矩形を呈している。支持体21は、互いに対向する主面21a及び主面21bを有している。主面21aと主面21bとは、互いに反対側に位置する支持体21の表面である。主面21a及び主面21bは、例えば、平坦面であり、平面視で矩形を呈している。主面21a及び主面21bは、窓部11aに対して平行に配置されている。主面21aは、窓部11aに面している。主面21aには、窓部11aを通過した電磁波が入射する。
【0032】
支持体21は、窓部11aを透過する電磁波に対して電磁波透過性を有している。このため、支持体21は、窓部11aを透過した電磁波の少なくとも一部の周波数域を透過する。支持体21は、窓部11aと同様の材料から構成され得る。支持体21の材料は、たとえば、シリコンを含んでいる。1つの光電変換装置2において、支持体21と窓部11aとは同一の材料でなくてもよい。支持体21は、窓部11a及び電子増倍部40から離間している。
【0033】
電子放出部材20は、メタサーフェス22を有している。メタサーフェス22は、支持体21に設けられている。メタサーフェス22は、電磁波の入射に応じて電子を放出する。メタサーフェス22は、例えば、いわゆるミリ波から赤外光の波長の範囲の電磁波に対して感度を有している。メタサーフェス22は、テラヘルツ波に対しても感度を有している。テラヘルツ波の波長の範囲は、100GHzから30THzの周波数域に相当する。「電磁波に対して感度を有する」とは、この電磁波の入射に応じて電子が放出されることを意味している。
【0034】
メタサーフェス22は、例えば、支持体21の主面21b上に形成された酸化物層と、酸化物層上に形成された金属層とを含んでいる。酸化物層の材料は、たとえば二酸化シリコン及び酸化チタンを含んでいる。例えば、酸化物層は、二酸化シリコンを含む層と、酸化チタンを含む層とを含んでいる。金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。本実施形態において、石英からなる支持体21の主面21b上に、酸化物層が形成され、酸化物層の上に金属層が形成されている。例えば、支持体21の厚さは525μmであり、メタサーフェス22の二酸化シリコンを含む層の厚さは1μmであり、メタサーフェス22の二酸化チタンを含む層の厚さは10nmであり、メタサーフェス22の金属層の厚さは200nmである。メタサーフェス22は、平面視で矩形状である。本実施形態の変形例において、メタサーフェス22は、主面21aに設けられていてもよい。
【0035】
保持部材30は、ハウジング10の内部において電子放出部材20を保持している。保持部材30は、ハウジング10の内側面10aに対して位置決めされる。保持部材30は、ハウジング10に対して電子放出部材20を位置決めする。保持部材30は、ハウジング10の内側面10aに沿う枠状であり、保持部材30には貫通口が形成されている。電子放出部材20の主面21a,21bに直交する方向から見た場合に、貫通口を画成する縁の内側に、電子放出部材20のメタサーフェス22が配置される。
【0036】
電子増倍部40は、ハウジング10の内部に配置されており、電子放出部材20から放出された電子が入射する入射面40aを有している。電子増倍部40は、入射面40aに入射した電子を増倍する。本実施形態において、電子放出部材20の主面21bは、電子増倍部40の入射面40aに面している。メタサーフェス22は、電子増倍部40の入射面40aに面しており、メタサーフェス22から放出された電子が入射面40aに入射する。電子放出部材20の主面21aは、ハウジング10の窓部11aに面している。電子増倍部40は、例えば、複数段のダイノードを有している。
【0037】
電子収集部50は、ハウジング10の内部に配置されており、電子増倍部40で増倍された電子を収集する。電子収集部50は、電子放出部材20から放出された電子を検出する検出部である。電磁波検出装置1は、電子収集部50において電子を検出することによって、電磁波を検出する。本実施形態において、電子収集部50は、例えば、複数の配線13のうち1つが接続されているアノードを有している。アノードには、所定の電位が配線13を通して付与される。アノードは、電子増倍部40のダイノードで増倍された電子を捕捉する。電子収集部50は、アノードの代わりにダイオードを有していてもよい。
【0038】
本実施形態において、メタサーフェス22は、アクティブタイプであり、バイアス電圧の付与によって動作する。メタサーフェス22は、電源部60によって電位を付与されることによって動作する。電源部60は、メタサーフェス22に電気的に接続されている。電源部60は、電位付与部61と電位制御部62とを含んでいる。電位付与部61は、メタサーフェス22に電位を付与する。電位制御部62は、電位付与部61を制御する。電位制御部62によって、メタサーフェス22に付与する電位が制御される。メタサーフェス22は、電位制御部62によって制御される電位に応じて動作する。換言すれば、メタサーフェス22は、電位制御部62による電位の制御に応じて、電子を放出する。
【0039】
演算部70は、電子収集部50における検出結果を取得し、この検出結果に基づいて電磁波の電界強度を演算する。例えば、演算部70は、電子収集部50において収集された電子に基づく電気信号を検出結果として取得する。演算部70は、演算された電界強度に関する情報を出力する。例えば、演算部70は、演算された電界強度に関する情報を不図示の表示部に表示する。
【0040】
電位制御部62及び演算部70は、例えば、ハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された1又は複数のコンピュータである。電位制御部62及び演算部70は、ハードウェアとして、例えば、プロセッサと、主記憶装置と、補助記憶装置と、通信装置と、入力装置とを備えている。プロセッサは、オペレーティングシステム及びアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶装置は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。補助記憶装置は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶装置は、一般的に主記憶装置よりも大量のデータを記憶する。通信装置は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。入力装置は、キーボード、マウス、及び、タッチパネルなどにより構成される。電位制御部62と演算部70とは、一体に構成されていてもよいし、分離していてもよい。
[光電変換装置の構成]
【0041】
次に、図2及び図3を参照して、光電変換装置2についてさらに詳細に説明する。図2は、光電変換装置の模式図である。図3は、光電変換装置における電位の付与を説明するための模式図である。
【0042】
図2に示されている例において、ハウジング10に入射した電磁波Wがメタサーフェス22に入射し、メタサーフェス22が電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出している。電磁波Wの電界強度は、正のZ軸方向成分と負のZ軸方向成分とを含んでいる。メタサーフェス22から放出された電子Eは、電子増倍部40に入射する。電子増倍部40において増倍された電子は、電子収集部50において収集される。
【0043】
図3に示されているように、メタサーフェス22は、少なくとも一つの光電変換部25を含んでいる。光電変換部25は、対応する電界の方向成分及び対応する波長を有している電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出する。例えば、光電変換部25は1.5THzを中心周波数とする周波数域に感度を有している。例えば、光電変換部25は、電磁波Wの電界のZ軸方向成分に感度を有している。光電変換部25が正のZ軸方向成分に感度を有する場合と、光電変換部25が負のZ軸方向成分に感度を有する場合とは、電位制御部62による電位制御に応じて切り換えられる。光電変換部25が感度を有する電界の方向成分及び周波数域は、これに限定されない。
【0044】
図3に示されているように、メタサーフェス22は、互いに離間した複数のパターン31,32,33を含んでいる。光電変換部25が感度を有する電界の方向成分及び周波数域は、複数のパターン31,32,33の構成に依存している。「構成」は、形状及び材質などの種々の属性を含んでいる。「形状」は、サイズも含んでいる。複数のパターン31,32,33は、アンテナ部P1とバイアス部P2とを含んでいる。アンテナ部P1のサイズが小さいほど、波長が短い電磁波、すなわち、周波数が大きい電磁波に対して電界電子放出が生じやすい。
【0045】
アンテナ部P1は、電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出する。バイアス部P2は、バイアス電位が印加された場合に、対応するアンテナ部P1との間に電界を発生させる。アンテナ部P1よりも高い電位がバイアス部P2に付与された場合に、アンテナ部P1のうちバイアス部P2側の先端部分におけるポテンシャル障壁が薄くなる。アンテナ部P1よりも低い電位がバイアス部P2に付与された場合に、アンテナ部P1のうちバイアス部P2側の先端部分におけるポテンシャル障壁が厚くなる。アンテナ部P1よりも高い電位がバイアス部P2に付与される状態を、「順バイアス」という。アンテナ部P1よりも低い電位がバイアス部P2に付与される状態を、「逆バイアス」という。
【0046】
アンテナ部P1に電磁波Wが入射すると、アンテナ部P1の周囲に電界が誘起される。アンテナ部P1の周囲に誘起された電界によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなる。順バイアスの状態におけるアンテナ部P1への電磁波Wの入射によってポテンシャル障壁がさらに薄くなれば、アンテナ部P1に存在した電子は、トンネル効果によってポテンシャル障壁を抜け得る。ポテンシャル障壁を抜けた電子は、アンテナ部P1の周囲の電界によって加速される。このように、順バイアスの状態におけるアンテナ部P1に対する電磁波Wの入射によって、電界電子放出が生じ得る。
【0047】
各パターン31,32,33は、支持体21の主面21b上に配されている。複数のパターン31,32,33は、酸化物層を介して接続されている。複数のパターン31,32,33は、酸化物層によって互いに分離されており、少なくとも光電変換装置2の非動作時において互いに絶縁されている。各パターン31,32,33は、伝導線であり、電子を伝導する。各パターン31,32,33は、少なくともメタサーフェス22の酸化物層上に形成された金属層を含んでいる。この金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。
【0048】
図3に示されている例において、パターン31は、Y軸方向に延在している線形状部41を含んでいる。線形状部41は、例えば、直線形状を呈している。パターン31は、各々がZ軸方向に延在している複数の線形状部42を含んでいる。複数の線形状部42は、互いに離間している。各線形状部42は、例えば、直線状を呈している。各線形状部42は、一端において線形状部41と接続されている。パターン31は、対応する線形状部42の他端に接続されている複数の線形状部43を含んでいる。各線形状部43は、Y軸方向に延在している。複数の線形状部43は、Y軸方向に延在している同一直線上に位置している。「他端」は、一端と反対側に位置している部分である。複数の線形状部43は、互いに離間している。
【0049】
各線形状部43は、先端34と先端35とを含んでいる。先端34と先端35とは、各線形状部43のうちY軸方向において互いに最も離れている部分である。各線形状部42は、先端34と先端35との中間において、対応する線形状部43に接続されている。互いに隣り合う線形状部43の先端34と先端35とは、互いに面している。各線形状部45は、Y軸方向に延在している。複数の線形状部45は、Y軸方向に延在している同一直線上に位置している。
【0050】
パターン32は、Y軸方向に延在している線形状部44を含んでいる。線形状部44は、例えば、直線形状を呈している。パターン32は、各々が+Z軸方向に延在している複数の線形状部45を含んでいる。複数の線形状部45は、互いに離間している。各線形状部45は、例えば、直線状を呈している。各線形状部45は、一端において線形状部44と接続されている。パターン32は、対応する線形状部45の他端に接続されている複数の線形状部46を含んでいる。各線形状部46は、Y軸方向に延在している。複数の線形状部46は、Y軸方向に延在している同一直線上に位置している。複数の線形状部46は、互いに離間している。
【0051】
各線形状部46は、先端36と先端37とを含んでいる。先端36と先端37とは、各線形状部46のうちY軸方向において互いに最も離れている部分である。各線形状部45は、先端36と先端37との中間において、対応する線形状部46に接続されている。互いに隣り合う線形状部46の先端36と先端37とは、互いに面している。パターン32は、パターン31と線対称の構造を有している。
【0052】
パターン33は、パターン31,32に向かって延在している。パターン33は、パターン31に面している先端38を含んでいる。パターン33は、パターン33に面している先端39を含んでいる。例えば、先端38が第一先端である場合、先端39が第二先端である。本実施形態において、パターン33は、パターン31又はパターン32よりも低い電位が付与された状態において、電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出する。
【0053】
パターン33は、Y軸方向に延在している線形状部47を含んでいる。線形状部47は、例えば、直線状を呈している。線形状部47は、例えば、線形状部41と線形状部44とに平行である。パターン33は、各々がZ軸方向に延在している複数の線形状部48を含んでいる。複数の線形状部48は、互いに離間している。複数の線形状部48は、例えば、互いに平行である。各線形状部48は、線形状部47に接続された部分から+Z軸方向と-Z軸方向とに延在している。各線形状部48は、その中央において線形状部47に連結されている。各線形状部48は、例えば、直線状を呈している。各線形状部48は、一対の線形状部48a,48bを含んでいる。線形状部48aは、線形状部47に接続された部分から+Z軸方向に延在している。線形状部48bは、線形状部47に接続された部分から-Z軸方向に延在している。各線形状部48における一対の線形状部48a,48bは、Z軸方向において同一直線上に延在している。各線形状部48は、Z軸方向において、パターン31とパターン32との間に配置されている。換言すれば、各線形状部48は、Z軸方向において、線形状部43と線形状部46との間に配置されている。
【0054】
各線形状部48は、上述した先端38と先端39とを含んでいる。先端38と先端39とは、Z軸方向において互いに異なる位置に配置されている。先端38,39は、各線形状部48の両端に位置している。各線形状部48は、先端38と先端39との間において線形状部47に接続されている。先端38は、線形状部48aに含まれている。先端39は、線形状部48bに含まれている。同一の線形状部48に含まれている先端38と先端39とは、Z軸方向において同一直線上に配置されている。
【0055】
パターン33の先端38は、この先端38を含んでいる線形状部48において、パターン31に最も近い部分である。先端38は、パターン33の他の部分よりも、対応する線形状部43の近くに配置されている。先端38は、パターン31の先端34と先端35とに面している。Z軸方向において、各線形状部48の先端38,39は、互いに面している先端34と先端35との間に位置している。先端38と先端34との最短距離は、先端38と先端35との最短距離と等しい。互いに面している先端34と先端35と先端38とにおいて、Y軸方向における先端38と先端34との距離は、Y軸方向における先端38と先端35との距離と等しい。互いに面している先端34と先端35と先端38とにおいて、Z軸方向における先端38と先端34との距離は、Z軸方向における先端38と先端35との距離と等しい。同一の先端38に面している先端34と先端35とは、互いに異なる線形状部43に含まれている。
【0056】
パターン33の先端39は、この先端39を含んでいる線形状部48において、パターン32に最も近い部分である。先端39は、パターン33の他の部分よりも、対応する線形状部46の近くに配置されている。先端39は、パターン32の先端36と先端37とに面している。Z軸方向において、各線形状部48の先端38,39は、互いに面している先端36と先端37との間に位置している。先端39と先端36との最短距離は、先端39と先端37との最短距離と等しい。互いに面している先端36と先端37と先端39とにおいて、Y軸方向における先端39と先端36との距離は、Y軸方向における先端39と先端37との距離と等しい。互いに面している先端36と先端37と先端39とにおいて、Z軸方向における先端39と先端36との距離は、Z軸方向における先端39と先端37との距離と等しい。同一の先端39に面している先端36と先端37とは、互いに異なる線形状部46に含まれている。各線形状部48は、この線形状部48の先端38に面している先端34と先端35との中間点と、この線形状部48の先端39に面している先端36と先端37との中間点とを結んだ直線に沿って延在している。
【0057】
光電変換部25において、線形状部43及び線形状部46はそれぞれバイアス部P2を構成し、線形状部48はアンテナ部P1を構成している。アンテナ部P1はZ軸方向に延在しており、2つのバイアス部P2はそれぞれアンテナ部P1に面している。先端38及び先端39、並びに、2つのバイアス部P2は、Z軸方向において、線形状部46によって構成されるバイアス部P2、先端39、先端38、線形状部43によって構成されるバイアス部P2の順に配置されている。光電変換部25において、各線形状部48は、線形状部43又は線形状部46よりも低い電位が付与された状態において電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出し得る。例えば、線形状部43によって構成されるバイアス部P2が第一バイアス部である場合、線形状部46によって構成されるバイアス部P2が第二バイアス部である。
【0058】
光電変換部25は、線形状部48の構造の変更に応じて、例えば、いわゆるミリ波から赤外光の波長の範囲に対応するように構成される。例えば、Z軸方向における線形状部48の長さは、光電変換部25において電子Eが放出される電磁波Wの波長域に対応している。例えば、Z軸方向における線形状部48の長さは、光電変換部25から電子Eを放出させる所望の波長域に応じて設計される。例えば、各線形状部48は、所望の波長域における中心波長の半分の長さを有している。各線形状部48の長さは、Z軸方向における先端38から先端39までの長さである。本実施形態のように、支持体21等を透過した電磁波が線形状部48に入射する場合には、透過した支持体21等の屈折率も考慮される。例えば、電子管に入射した電磁波の波長が600μmであり、かつ、支持体21の屈折率がこの電磁波に対して3.4である場合において、線形状部48に入射する電磁波の波長は600μm/3.4=176μmである。したがって、この場合、Z軸方向における線形状部48の長さは、176μm/2=88μmが適している。
【0059】
電子放出部材20は、図3に示されているように、互いに離間している複数の電極51,52,53をさらに備えている。複数の電極51,52,53は、支持体21の主面21b上に設けられている。複数の電極51,52,53は、光電変換部25に電気的に接続されている。本実施形態において、各電極51,52,53は、矩形状を呈している。本実施形態の変形例として、各電極51,52,53は、線形状部41、線形状部44、又は、線形状部47と同様に線形状を呈していてもよい。各電極51,52,53は、線形状部41、線形状部44、又は、線形状部47と一体に形成されていてもよい。
【0060】
例えば、電極51は、光電変換部25の線形状部47に電気的に接続されている。電極52は、光電変換部25の線形状部41に電気的に接続されている。電極53は、光電変換部25の線形状部44に電気的に接続されている。光電変換部25は、複数の電極51,52,53を介して電源部60から電位を付与されることによって動作する。電源部60の電位付与部61は、複数の電極51,52,53を介して、光電変換部25に電位を付与する。電源部60の電位制御部62は、光電変換部25に付与する電位を制御する。
【0061】
図3に示されているように、電位付与部61は、例えば、第一電位付与部61aと、第二電位付与部61bとを含んでいる。第一電位付与部61aは、電極51と電極52との間に電位差を与える。第二電位付与部61bは、電極51と電極53との間に電位差を与える。電位制御部62は、第一電位付与部61aと、第二電位付与部61bとをそれぞれ制御する。
【0062】
次に、図4(a)及び図4(b)を参照して、本実施形態における光電変換装置2の動作を詳細に説明する。図4(a)及び図4(b)は、光電変換部25の一部を示している。図4(a)及び図4(b)において、線形状部48は、図3よりも簡略化して示されている。図4(a)及び図4(b)において、矢印αは、線形状部48の周囲に発生する電界の方向を示している。図4(a)及び図4(b)において、矢印βは、線形状部48において電子Eが移動する方向を示している。電位制御部62は、複数のパターン31,32,33に付与する電位を制御することによって、図4(a)に示されている状態と図4(b)に示されている状態とを切り替える。
【0063】
図4(a)に示されている状態において、パターン33に付与される電位は、パターン31に付与される電位よりも高く、パターン32に付与される電位よりも低い。換言すれば、線形状部43によって構成されるバイアス部P2に付与される電位は、線形状部48aによって構成されるアンテナ部P1に付与される電位よりも低い。線形状部46によって構成されるバイアス部P2に付与される電位は、線形状部48bによって構成されるアンテナ部P1に付与される電位よりも高い。
【0064】
図4(a)に示されている状態において、先端38と先端34との間において発生する電界と、先端38と先端35との間において発生する電界とが合成され、+Z軸方向に電界が発生する。この状態において、線形状部48aによって構成されるアンテナ部P1から、線形状部43によって構成されるバイアス部P2に向かう電界が発生している。この結果、線形状部48aによって構成されるアンテナ部P1の先端部分のポテンシャル障壁が厚くなる。換言すれば、パターン33とパターン31との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が厚くなる。したがって、線形状部48aへの電磁波Wの入射に応じた線形状部48aからの電子Eの放出は抑制されている。図4(a)に示されている状態において、線形状部48aの先端38から線形状部43によって構成されるバイアス部P2に向かう電界のZ軸方向における成分は正である。
【0065】
図4(a)に示されている状態において、先端39と先端36との間において発生する電界と、先端39と先端37との間において発生する電界とが合成され、+Z軸方向に電界が発生する。この状態において、線形状部46によって構成されるバイアス部P2から線形状部48bによって構成されるアンテナ部P1に向かう電界が発生している。この結果、線形状部48bによって構成されるアンテナ部P1の先端部分のポテンシャル障壁が薄くなる。換言すれば、パターン33とパターン32との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなる。したがって、線形状部48bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部48bからの電子Eの放出が促進されている。
【0066】
図4(a)に示されている状態において、線形状部46によって構成されるバイアス部P2から線形状部48bによって構成されるアンテナ部P1に向かう電界のZ軸方向における成分は正である。線形状部46によって構成されるバイアス部P2から線形状部48bの先端39に向かう電界のZ軸方向における成分は正である。このため、光電変換部25に入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が正である場合に、この電磁波Wの入射に応じてアンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁がさらに薄くなる。この結果、光電変換部25に入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が正である場合に、線形状部48bから電子Eが放出される。
【0067】
図4(b)に示されている状態において、パターン33に付与される電位は、パターン31に付与される電位よりも低く、パターン32に付与される電位よりも高い。換言すれば、線形状部43によって構成されるバイアス部P2に付与される電位は、線形状部48aによって構成されるアンテナ部P1に付与される電位よりも高い。線形状部46によって構成されるバイアス部P2に付与される電位は、線形状部48bによって構成されるアンテナ部P1に付与される電位よりも低い。
【0068】
図4(b)に示されている状態において、先端38と先端34との間において発生する電界と、先端38と先端34との間において発生する電界とが合成され、-Z軸方向に電界が発生する。この状態において、線形状部43によって構成されるバイアス部P2から線形状部48aによって構成されるアンテナ部P1に向かう電界が発生している。この結果、線形状部48aによって構成されるアンテナ部P1の先端部分のポテンシャル障壁が薄くなる。換言すれば、パターン33とパターン31との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなる。したがって、線形状部48aへの電磁波Wの入射に応じた線形状部48aからの電子Eの放出が促進されている。
【0069】
図4(b)に示されている状態において、線形状部43によって構成されるバイアス部P2から線形状部48aによって構成されるアンテナ部P1に向かう電界のZ軸方向における成分は負である。線形状部43によって構成されるバイアス部P2から線形状部48aの先端38に向かう電界のZ軸方向における成分は負である。このため、光電変換部25に入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が負である場合に、この電磁波Wの入射に応じてアンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁がさらに薄くなる。この結果、光電変換部25に入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が負である場合に、線形状部48aから電子Eが放出される。
【0070】
図4(b)に示されている状態において、先端39と先端36との間において発生する電界と、先端39と先端37との間において発生する電界とが合成され、-Z軸方向に電界が発生する。この状態において、線形状部48bによって構成されるアンテナ部P1から線形状部46によって構成されるバイアス部P2に向かう電界が発生している。この結果、線形状部48bによって構成されるアンテナ部P1の先端部分のポテンシャル障壁が厚くなる。換言すれば、パターン33とパターン32との電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が厚くなる。したがって、線形状部48bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部48bからの電子Eの放出は抑制されている。図4(b)に示されている状態において、線形状部48bの先端39から線形状部46によって構成されるバイアス部P2に向かう電界のZ軸方向における成分は負である。
【0071】
次に、図5を参照して、電子放出部材の変形例について説明する。図5は、本実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。この変形例において電子放出部材20は、メタサーフェス22Aを有している。メタサーフェス22Aは、アクティブタイプであり、バイアス電圧の付与によって動作する。メタサーフェス22Aは、電源部60によって電位を付与されることによって動作する。
【0072】
図5に示されているように、メタサーフェス22Aは、少なくとも一つの光電変換部25Aを含んでいる。光電変換部25Aは、対応する電界の方向成分及び対応する波長を有している電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出する。例えば、光電変換部25Aは、電磁波Wの電界のZ軸方向成分に感度を有している。光電変換部25Aは、電位制御部62による電位制御に応じて、正のZ軸方向成分と負のZ軸方向成分とのどちらに感度を有するかが変化する。光電変換部25Aが感度を有する周波数域及び電界の方向成分は、これに限定されない。
【0073】
図5に示されているように、メタサーフェス22Aは、互いに離間した複数のパターン31A,32A,33Aを含んでいる。光電変換部25Aが感度を有する周波数域及び電界の方向成分は、複数のパターン31A,32A,33Aの構成に依存している。複数のパターン31A,32A,33Aは、アンテナ部P1とバイアス部P2とを含んでいる。
【0074】
各パターン31A,32A,33Aは、支持体21の主面21b上に配されている。複数のパターン31A,32A,33Aは、酸化物層を介して接続されている。複数のパターン31A,32A,33Aは、酸化物層によって互いに分離されており、少なくとも光電変換装置2の非動作時において互いに絶縁されている。各パターン31A,32A,33Aは、伝導線であり、電子を伝導する。各パターン31A,32A,33Aは、少なくともメタサーフェス22Aの酸化物層上に形成された金属層を含んでいる。この金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。
【0075】
図5に示されている例において、パターン31Aは、Y軸方向に延在している線形状部41Aを含んでいる。線形状部41Aは、例えば、直線形状を呈している。パターン31Aは、各々が-Z軸方向に延在している複数の線形状部42Aを含んでいる。複数の線形状部42Aは、互いに離間している。各線形状部42Aは、例えば、直線状を呈している。各線形状部42Aは、一端において線形状部41Aと接続されている。各線形状部42Aは、先端34Aを含んでいる。先端34Aは、各線形状部42Aのうち線形状部41Aに接続されている一端の反対側に位置している部分である。
【0076】
パターン32Aは、Y軸方向に延在している線形状部44Aを含んでいる。線形状部44Aは、例えば、直線形状を呈している。パターン32Aは、各々が+Z軸方向に延在している複数の線形状部45Aを含んでいる。複数の線形状部45Aは、互いに離間している。各線形状部45Aは、例えば、直線状を呈している。各線形状部45Aは、一端において線形状部44Aと接続されている。各線形状部45Aは、先端36Aを含んでいる。先端36Aは、各線形状部45Aのうち線形状部44Aに接続されている一端の反対側に位置している部分である。パターン32Aは、パターン31A,33Aに向かって延在している。
【0077】
パターン33Aは、パターン31Aに面している先端38Aを含んでいる。パターン33Aは、パターン32Aに面している先端39Aを含んでいる。例えば、先端38Aが第一先端である場合、先端39Aが第二先端である。本実施形態において、パターン33Aは、パターン31A又はパターン32Aよりも低い電位が付与された状態において、電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出する。
【0078】
パターン33Aは、Y軸方向に延在している線形状部47Aを含んでいる。線形状部47Aは、例えば、直線状を呈している。線形状部47Aは、例えば、線形状部41Aと線形状部44Aとに平行である。パターン33Aは、各々がZ軸方向に延在している複数の線形状部49を含んでいる。複数の線形状部49は、互いに離間している。複数の線形状部49は、例えば、互いに平行である。各線形状部49は、線形状部47Aに接続された部分から+Z軸方向と-Z軸方向とに延在している。各線形状部49は、その中央において線形状部47Aに連結されている。各線形状部49は、例えば、直線状を呈している。各線形状部49は、一対の線形状部49a,49bを含んでいる。線形状部49aは、線形状部47Aに接続された部分から+Z軸方向に延在している。線形状部49bは、線形状部47Aに接続された部分から-Z軸方向に延在している。各線形状部49における一対の線形状部49a,49bは、Z軸方向において同一直線上に延在している。各線形状部49は、Z軸方向において、パターン31Aとパターン32Aとの間に配置されている。換言すれば、各線形状部49は、Z軸方向において、線形状部42Aと線形状部45Aとの間に配置されている。
【0079】
各線形状部49は、上述した先端38Aと先端39Aとを含んでいる。先端38Aと先端39Aとは、Z軸方向において互いに異なる位置に配置されている。先端38A,39Aは、各線形状部49の両端に位置している。各線形状部49は、先端38Aと先端39Aとの間において線形状部47Aに接続されている。先端38Aは、線形状部49aに含まれている。先端39Aは、線形状部49bに含まれている。同一の線形状部49に含まれている先端38Aと先端39Aとは、Z軸方向において同一直線上に配置されている。
【0080】
パターン33Aの先端38Aは、この先端38Aを含んでいる線形状部49において、パターン31Aに最も近い部分である。先端38Aは、パターン33Aの他の部分よりも、対応する線形状部42Aの近くに配置されている。先端38Aは、パターン31Aの先端34Aに面している。
【0081】
パターン33Aの先端39Aは、この先端39Aを含んでいる線形状部49において、パターン32Aに最も近い部分である。先端39Aは、パターン33Aの他の部分よりも、対応する線形状部45Aの近くに配置されている。先端39Aは、パターン32Aの先端36Aに面している。互いに面している先端34A及び先端38Aは、Z軸方向において同一直線上に配置されている。互いに面している先端39A及び先端36Aは、Z軸方向において同一直線上に配置されている。
【0082】
光電変換部25Aにおいて、線形状部42A及び線形状部45Aはそれぞれバイアス部P2を構成し、線形状部49はアンテナ部P1を構成している。アンテナ部P1はZ軸方向に延在しており、2つのバイアス部P2はそれぞれアンテナ部P1に面している。先端38A及び先端39A、並びに、2つのバイアス部P2は、Z軸方向において、線形状部45Aによって構成されるバイアス部P2、先端39A、先端38A、線形状部42Aによって構成されるバイアス部P2の順に配置されている。例えば、線形状部42Aによって構成されるバイアス部P2が第一バイアス部である場合、線形状部45Aによって構成されるバイアス部P2が第二バイアス部である。
【0083】
光電変換部25Aは、線形状部49の構造の変更に応じて、例えば、いわゆるミリ波から赤外光の波長の範囲に対応するように構成される。例えば、Z軸方向における線形状部49の長さは、光電変換部25Aにおいて電子Eが放出される電磁波Wの波長域に対応している。例えば、Z軸方向における線形状部49の長さは、光電変換部25Aから電子Eを放出させる所望の波長域に応じて設計される。例えば、各線形状部49は、所望の波長域における中心波長の半分の長さを有している。各線形状部49の長さは、Z軸方向における先端38Aから先端39Aまでの長さである。線形状部48と同様に、支持体21等を透過した電磁波が線形状部49に入射する場合には、透過した支持体21等の屈折率も考慮される。
【0084】
電子放出部材20は、図5に示されているように、互いに離間している複数の電極71,72,73をさらに備えている。複数の電極71,72,73は、支持体21の主面21b上に設けられている。複数の電極71,72,73は、光電変換部25Aに電気的に接続されている。本実施形態において、各電極71,72,73は、矩形状を呈している。各電極71,72,73は、線形状部41A、線形状部44A、又は、線形状部47Aと同様に線形状を呈していてもよい。各電極71,72,73は、線形状部41A、線形状部44A、又は、線形状部47Aと一体に形成されていてもよい。
【0085】
例えば、電極71は、光電変換部25Aの線形状部47Aに電気的に接続されている。電極72は、光電変換部25Aの線形状部41Aに電気的に接続されている。電極73は、光電変換部25Aの線形状部44Aに電気的に接続されている。光電変換部25Aは、複数の電極71,72,73を介して電源部60から電位を付与されることによって動作する。電源部60の電位付与部61は、複数の電極71,72,73を介して、光電変換部25Aに電位を付与する。電源部60の電位制御部62は、光電変換部25Aに付与する電位を制御する。
【0086】
次に、図6(a)及び図6(b)を参照して、本実施形態の変形例における光電変換装置2の動作を詳細に説明する。図6(a)及び図6(b)は、光電変換部25Aの一部を示している。図6(a)及び図6(b)において、矢印αは、線形状部49の周囲に発生する電界の方向を示している。図6(a)及び図6(b)において、矢印βは、線形状部49において電子Eが移動する方向を示している。電位制御部62は、複数のパターン31A,32A,33Aに付与する電位を制御することによって、図6(a)に示されている状態と図6(b)に示されている状態とを切り替える。
【0087】
図6(a)に示されている状態において、パターン33Aに付与される電位は、パターン31Aに付与される電位よりも高く、パターン32Aに付与される電位よりも低い。換言すれば、線形状部42Aによって構成されるバイアス部P2に付与される電位は、線形状部49aによって構成されるアンテナ部P1に付与される電位よりも低い。線形状部45Aによって構成されるバイアス部P2に付与される電位は、線形状部49bによって構成されるアンテナ部P1に付与される電位よりも高い。
【0088】
図6(a)に示されている状態において、先端38Aと先端34Aとの間において+Z軸方向に電界が発生する。この状態において、線形状部49aによって構成されるアンテナ部P1から、線形状部42Aによって構成されるバイアス部P2に向かう電界が発生している。この結果、線形状部49aによって構成されるアンテナ部P1の先端部分のポテンシャル障壁が厚くなる。換言すれば、パターン33Aとパターン31Aとの電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が厚くなる。したがって、線形状部49aへの電磁波Wの入射に応じた線形状部49aからの電子Eの放出は抑制されている。図6(a)に示されている状態において、線形状部49aの先端38Aから線形状部42Aによって構成されるバイアス部P2に向かう電界のZ軸方向における成分は正である。
【0089】
図6(a)に示されている状態において、先端39Aと先端36Aとの間において+Z軸方向に電界が発生する。この状態において、線形状部45Aによって構成されるバイアス部P2から線形状部49bによって構成されるアンテナ部P1に向かう電界が発生している。この結果、線形状部49bによって構成されるアンテナ部P1の先端部分のポテンシャル障壁が薄くなる。換言すれば、パターン33Aとパターン32Aとの電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなる。したがって、線形状部49bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部49bからの電子Eの放出が促進されている。
【0090】
図6(a)に示されている状態において、線形状部45Aによって構成されるバイアス部P2から線形状部49bによって構成されるアンテナ部P1に向かう電界のZ軸方向における成分は正である。線形状部45Aによって構成されるバイアス部P2から線形状部49bの先端39Aに向かう電界のZ軸方向における成分は正である。このため、光電変換部25Aに入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が正である場合に、この電磁波Wの入射に応じてアンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁がさらに薄くなる。この結果、光電変換部25Aに入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が正である場合に、線形状部49bから電子Eが放出される。
【0091】
図6(b)に示されている状態において、パターン33Aに付与される電位は、パターン31Aに付与される電位よりも低く、パターン32Aに付与される電位よりも高い。換言すれば、線形状部42Aによって構成されるバイアス部P2に付与される電位は、線形状部49aによって構成されるアンテナ部P1に付与される電位よりも高い。線形状部45Aによって構成されるバイアス部P2に付与される電位は、線形状部49bによって構成されるアンテナ部P1に付与される電位よりも低い。
【0092】
図6(b)に示されている状態において、先端38Aと先端34Aとの間において-Z軸方向に電界が発生する。この状態において、線形状部42Aによって構成されるバイアス部P2から線形状部49aによって構成されるアンテナ部P1に向かう電界が発生している。この結果、線形状部49aによって構成されるアンテナ部P1の先端部分のポテンシャル障壁が薄くなる。換言すれば、パターン33Aとパターン31Aとの電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなる。したがって、線形状部49aへの電磁波Wの入射に応じた線形状部49aからの電子Eの放出が促進されている。
【0093】
図6(b)に示されている状態において、線形状部42Aによって構成されるバイアス部P2から線形状部49aによって構成されるアンテナ部P1に向かう電界のZ軸方向における成分は負である。線形状部42Aによって構成されるバイアス部P2から線形状部49aの先端38Aに向かう電界のZ軸方向における成分は負である。このため、光電変換部25Aに入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が負である場合に、この電磁波Wの入射に応じてアンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁がさらに薄くなる。この結果、光電変換部25Aに入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が負である場合に、線形状部49aから電子Eが放出される。
【0094】
図6(b)に示されている状態において、先端39Aと先端36Aとの間において-Z軸方向に電界が発生する。この状態において、線形状部49bによって構成されるアンテナ部P1から線形状部45Aによって構成されるバイアス部P2に向かう電界が発生している。この結果、線形状部49bによって構成されるアンテナ部P1の先端部分のポテンシャル障壁が厚くなる。換言すれば、パターン33Aとパターン32Aとの電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が厚くなる。したがって、線形状部49bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部49bからの電子Eの放出は抑制されている。図6(b)に示されている状態において、線形状部49bの先端39Aから線形状部45Aによって構成されるバイアス部P2に向かう電界のZ軸方向における成分は負である。
【0095】
次に、図7を参照して、電子放出部材の変形例について説明する。図7は、本実施形態の変形例における電子放出部材の平面図である。この変形例において電子放出部材20は、メタサーフェス22Bを有している。メタサーフェス22Bは、アクティブタイプであり、バイアス電圧の付与によって動作する。メタサーフェス22Bは、電源部60によって電位を付与されることによって動作する。
【0096】
図7に示されているように、メタサーフェス22Bは、少なくとも一つの光電変換部25Bを含んでいる。光電変換部25Bは、対応する波長及び対応する電界の方向成分を有している電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出する。例えば、光電変換部25Bは、電磁波Wの電界のZ軸方向成分に感度を有している。光電変換部25Bは、電位制御部62による電位制御に応じて、正のZ軸方向成分と負のZ軸方向成分とのどちらに感度を有するかが変化する。光電変換部25Bが感度を有する周波数域及び電界の方向成分は、これに限定されない。
【0097】
図7に示されているように、メタサーフェス22Bは、互いに離間した複数のパターン31B,32Bを含んでいる。光電変換部25Bが感度を有する周波数域及び電界の方向成分は、複数のパターン31B,32Bの構成に依存している。複数のパターン31B,32Bは、アンテナ部P1とバイアス部P2とを含んでいる。
【0098】
各パターン31B,32Bは、支持体21の主面21b上に配されている。複数のパターン31B,32Bは、酸化物層を介して接続されている。複数のパターン31B,32Bは、酸化物層によって互いに分離されており、少なくとも光電変換装置2の非動作時において互いに絶縁されている。各パターン31B,32Bは、伝導線であり、電子を伝導する。各パターン31B,32Bは、少なくともメタサーフェス22Bの酸化物層上に形成された金属層を含んでいる。この金属層の材料は、たとえば金を含んでいる。
【0099】
図7に示されている例において、パターン31Bは、Y軸方向に延在している線形状部41Bを含んでいる。線形状部41Bは、例えば、直線形状を呈している。パターン31Bは、各々が-Z軸方向に延在している複数の線形状部42Bを含んでいる。複数の線形状部42Bは、互いに離間している。各線形状部42Bは、例えば、直線状を呈している。各線形状部42Bは、一端において線形状部41Bと接続されている。各線形状部42Bは、先端34Bを含んでいる。先端34Bは、各線形状部42Bのうち線形状部41Bに接続されている一端の反対側に位置している部分である。
【0100】
パターン32Bは、Y軸方向に延在している線形状部44Bを含んでいる。線形状部44Bは、例えば、直線形状を呈している。パターン32Bは、各々が+Z軸方向に延在している複数の線形状部45Bを含んでいる。複数の線形状部45Bは、互いに離間している。各線形状部45Bは、例えば、直線状を呈している。各線形状部45Bは、一端において線形状部44Bと接続されている。各線形状部45Bは、先端36Bを含んでいる。先端36Bは、各線形状部45Bのうち線形状部44Bに接続されている一端の反対側に位置している部分である。線形状部42Bと線形状部45Bとは、互いに離間しており、Z軸方向において互いに面している。
【0101】
パターン31Bの先端34Bは、パターン31Bのうち対応するパターン32Bに最も近い部分である。先端34Bは、パターン31Bの他の部分よりも、対応する線形状部45Bの近くに配置されている。互いに対応する線形状部42B及び線形状部45Bにおいて、先端34Bと先端36Bとは、互いに面している。
【0102】
パターン32Bの先端36Bは、パターン32Bのうち対応するパターン31Bに最も近い部分である。先端36Bは、パターン32Bの他の部分よりも、対応する線形状部42Bの近くに配置されている。互いに面している先端34Bと先端36Bとは、Z軸方向において同一直線上に配置されている。
【0103】
光電変換部25Bにおいて、各線形状部42Bは、線形状部45Bよりも低い電位が付与された状態において、電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出し得る。この状態において、線形状部45Bはバイアス部P2を構成し、線形状部42Bはアンテナ部P1を構成する。アンテナ部P1はZ軸方向に延在しており、バイアス部P2はアンテナ部P1に面している。
【0104】
光電変換部25Bにおいて、各線形状部45Bは、線形状部42Bよりも低い電位が付与された状態において、電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出し得る。この状態において、線形状部42Bはバイアス部P2を構成し、線形状部45Bはアンテナ部P1を構成する。この場合も、アンテナ部P1はZ軸方向に延在しており、バイアス部P2はアンテナ部P1に面している。このように、光電変換部25Bにおいて、線形状部42Bと線形状部45Bとの双方が、アンテナ部P1及びバイアス部P2として構成される。
【0105】
光電変換部25Bは、線形状部42B,45Bの構造の変更に応じて、例えば、いわゆるミリ波から赤外光の波長の範囲に対応するように構成される。例えば、Z軸方向における線形状部42Bの長さ及び線形状部45Bの長さは、光電変換部25Bにおいて電子Eが放出される電磁波Wの波長域に対応している。例えば、Z軸方向における線形状部42Bの長さ及び線形状部45Bの長さは、光電変換部25Bから電子Eを放出させる所望の波長域に応じて設計される。例えば、Z軸方向における各線形状部42B,45Bは、所望の波長域における中心波長の半分の長さを有している。線形状部48と同様に、支持体21等を透過した電磁波が線形状部42B,45Bに入射する場合には、透過した支持体21等の屈折率も考慮される。
【0106】
電子放出部材20は、図7に示されているように、互いに離間している複数の電極81,82をさらに備えている。複数の電極81,82は、支持体21の主面21b上に設けられている。複数の電極81,82は、光電変換部25Bに電気的に接続されている。本実施形態において、各電極81,82は、矩形状を呈している。各電極81,82は、線形状部41B又は線形状部44Bと同様に線形状を呈していてもよい。各電極81,82は、線形状部41B又は線形状部44Bと一体に形成されていてもよい。
【0107】
例えば、電極81は、光電変換部25Bの線形状部44Bに電気的に接続されている。電極82は、光電変換部25Bの線形状部41Bに電気的に接続されている。光電変換部25Bは、複数の電極81,82を介して電源部60から電位を付与されることによって動作する。電源部60の電位付与部61は、複数の電極81,82を介して、光電変換部25Bに電位を付与する。電源部60の電位制御部62は、光電変換部25Bに付与する電位を制御する。
【0108】
次に、図8(a)及び図8(b)を参照して、本実施形態の変形例における光電変換装置2の動作を詳細に説明する。図8(a)及び図8(b)は、光電変換部25Bの一部を示している。図8(a)及び図8(b)において、矢印αは、線形状部42B及び線形状部45Bの周囲に発生する電界の方向を示している。図8(a)及び図8(b)において、矢印βは、線形状部42B及び線形状部45Bにおいて電子Eが移動する方向を示している。電位制御部62は、複数のパターン31B,32Bに付与する電位を制御することによって、図8(a)に示されている状態と図8(b)に示されている状態とを切り替える。
【0109】
図8(a)に示されている状態において、パターン32Bに付与される電位は、パターン31Bに付与される電位よりも高い。換言すれば、先端36Bに付与される電位は、先端34Bに付与される電位よりも高い。この状態において、先端36Bと先端34Bとの間において+Z軸方向に電界が発生する。この状態において、線形状部45Bによって構成されるバイアス部P2から、線形状部42Bによって構成されるアンテナ部P1に向かう電界が発生している。この結果、線形状部42Bによって構成されるアンテナ部P1の先端部分のポテンシャル障壁が薄くなる。換言すれば、パターン31Bとパターン32Bとの電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなる。したがって、線形状部42Bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部42Bからの電子Eの放出が促進されている。
【0110】
図8(a)に示されている状態において、線形状部45Bよって構成されるバイアス部P2から線形状部42Bによって構成されるアンテナ部P1に向かう電界のZ軸方向における成分は正である。線形状部45Bの先端36Bから線形状部42Bによって構成されるバイアス部P2に向かう電界のZ軸方向における成分は正である。このため、光電変換部25Bに入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が正である場合に、この電磁波Wの入射に応じてアンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁がさらに薄くなる。この結果、光電変換部25Bに入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が正である場合に、線形状部42Bから電子Eが放出される。
【0111】
図8(b)に示されている状態において、パターン32Bに付与される電位は、パターン31Bに付与される電位よりも低い。換言すれば、先端36Bに付与される電位は、先端34Bに付与される電位よりも低い。この状態において、先端36Bと先端34Bとの間において-Z軸方向に電界が発生する。この状態において、線形状部42Bによって構成されるバイアス部P2から、線形状部45Bによって構成されるアンテナ部P1に向かう電界が発生している。この結果、線形状部45Bによって構成されるアンテナ部P1の先端部分のポテンシャル障壁が薄くなる。換言すれば、パターン31Bとパターン32Bとの電位差によって、アンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁が薄くなる。したがって、線形状部45Bへの電磁波Wの入射に応じた線形状部42Bからの電子Eの放出が促進されている。
【0112】
図8(b)に示されている状態において、線形状部42Bよって構成されるバイアス部P2から線形状部45Bによって構成されるアンテナ部P1に向かう電界のZ軸方向における成分は負である。線形状部42Bによって構成されるバイアス部P2から線形状部45Bの先端36Bに向かう電界のZ軸方向における成分は負である。このため、光電変換部25Bに入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が負である場合に、この電磁波Wの入射に応じてアンテナ-真空境界面におけるポテンシャル障壁がさらに薄くなる。この結果、光電変換部25Bに入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が負である場合に、線形状部45Bから電子Eが放出される。
【0113】
このように、光電変換部25Bにおいて、線形状部42Bは、電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出するアンテナ部P1と、線形状部45Bとの間に電界を発生させるバイアス部P2とを兼ねている。光電変換部25Bにおいて、線形状部45Bは、電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出するアンテナ部P1と、線形状部42Bとの間に電界を発生させるバイアス部P2とを兼ねている。線形状部42B及び線形状部45Bの一方は、電磁波Wの入射に応じて電子Eを放出するアンテナ部P1と、線形状部42B及び線形状部45Bの他方との間に電界を発生させるバイアス部P2とを兼ねている。
[光電変換方法]
【0114】
次に、図9を参照して、本実施形態における電磁波検出方法について説明する。この電磁波検出方法は、入射した電磁波に応じて電子を放出する光電変換方法を含んでいる。この電磁波検出方法は、図5から図8(b)において示した変形例においても適用され得る。図9は、本実施形態における電磁波検出方法のフローチャートである。図9に示されている電磁波検出方法において、メタサーフェス22に付与される電位の状態の制御によって、メタサーフェス22に入射した電磁波Wの電界強度の極性ごとに異なるタイミングでメタサーフェス22から電子Eが放出される。この結果、メタサーフェス22に入射した電磁波Wの電界強度が極性ごとに測定される。
【0115】
まず、電子放出部材20を準備する(処理S1)。例えば、電子放出部材20を備えた電磁波検出装置1が配置される。
【0116】
次に、電子放出部材20に測定対象の電磁波Wを入射する(処理S2)。本実施形態では、処理S2において、電子放出部材20への電磁波Wの入射が開始され、電磁波Wの検出が終了するまで電子放出部材20への電磁波Wの入射が継続される。
【0117】
次に、メタサーフェス22に第一状態の電位を付与する(処理S3)。第一状態は、バイアス部P2からアンテナ部P1に向かう電界のZ軸方向における成分が正であるように、メタサーフェス22に電位が付与される状態である。電位制御部62は、例えば、第一状態の電位を各パターン31,32,33に付与する。図4(a)、図6(a)及び図8(a)に示されている状態は、第一状態に相当する。
【0118】
例えば、図3に示されている構成では、処理S3において、先端38から線形状部43によって構成されるバイアス部P2に向かう電界のZ軸方向における成分が正であると共に線形状部46によって構成されるバイアス部P2から先端39に向かう電界のZ軸方向における成分が正であるように、メタサーフェス22に電位が付与される。図4(a)に示されている状態において、線形状部43によって構成されるバイアス部P2に付与される電位はアンテナ部P1に付与される電位よりも低く、線形状部46によって構成されるバイアス部P2に付与される電位はアンテナ部P1に付与される電位よりも高い。換言すれば、図4(a)に示されている状態において、パターン32に付与される電位はパターン33に付与される電位よりも高く、パターン31に付与される電位はパターン33に付与される電位よりも低い。例えば、図7に示されている構成では、処理S3において、線形状部42Bはアンテナ部P1を構成し、線形状部45Bはバイアス部P2を構成する。
【0119】
次に、第一状態において、測定対象の電磁波Wの入射によってメタサーフェス22から電子Eを放出させる(処理S4)。処理S4において、第一状態においてメタサーフェス22に測定対象の電磁波Wが入射されると、アンテナ部P1から電子Eが放出される。
【0120】
次に、第一状態において、電子放出部材20から放出された電子Eを検出する(処理S5)。処理S5において、電子収集部50は、第一状態において電子Eを収集し、第一状態において電子放出部材20から放出された電子Eを検出する。処理S5において、演算部70は、電子収集部50から出力された信号を取得する。
【0121】
次に、第一状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電磁波Wの電界強度に関する情報を演算する(処理S6)。処理S6において、演算部70は、処理S5における検出結果に基づいて電磁波Wの電界強度の正のZ軸方向成分に関する情報を演算する。
【0122】
処理S4において、バイアス部P2からアンテナ部P1に向かう電界のZ軸方向における成分は正であるため、例えば、光電変換部25に入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が正である場合に線形状部48bから電子Eが放出される。したがって、処理S5において、電界のZ軸方向成分が正である電磁波Wが検出される。処理S4において電子放出部材20から放出される電子Eの量は、正のZ軸方向成分の電界強度に連関している。したがって、処理S4から処理S6によって、光電変換部25に入射した電磁波Wのうち、正のZ軸方向成分の電界強度が測定される。少なくとも処理S4及び処理S5は、例えば予め決められた測定時間の間に行われる。例えば、演算部70は、予め決められた第一測定時間において電子収集部50よって収集された電子Eの量に関する情報を取得し、取得された情報に基づいて演算結果を出力する。第一測定時間は、例えば、数ナノ秒である。
【0123】
次に、第一状態における電磁波Wの検出処理を終了するか否かを判断する(処理S7)。処理S7において検出処理を終了しないと判断された場合において、処理は処理S3に進む。処理S7において検出処理を終了すると判断された場合において、処理は処理S8に進む。処理S7における判断は、例えば、電位制御部62によって行われる。電位制御部62は、例えば、上述した第一測定時間が経過した否かを判断する。この場合、電位制御部62は、例えば、第一測定時間が経過していていない場合において検出処理を終了しないと判断し、第一測定時間が経過していている場合において検出処理を終了すると判断する。
【0124】
例えば、電位制御部62は、処理S5が所定の回数行われたか否かを判断してもよい。この場合、例えば、電位制御部62は、処理S5が行われた回数が所定の回数以下である場合において検出処理を終了しないと判断し、処理S5が行われた回数が所定の回数を超えた場合において検出処理を終了すると判断してもよい。処理S7における判断は、演算部70によって行われてもよいし、電磁波検出装置1における他の制御部によって行われてもよい。
【0125】
処理S7において検出処理を終了すると判断された場合において、メタサーフェス22に第二状態の電位を付与する(処理S8)。第二状態は、バイアス部P2からアンテナ部P1に向かう電界のZ軸方向における成分が負であるように、メタサーフェス22に電位が付与される状態である。電位制御部62は、例えば、第二状態の電位を各パターン31,32,33に付与する。図4(b)、図6(b)及び図8(b)に示されている状態は、第二状態に相当する。
【0126】
例えば、図3に示されている構成では、処理S8において、先端39から線形状部46によって構成されるバイアス部P2に向かう電界のZ軸方向における成分が負であると共に線形状部43によって構成されるバイアス部P2から先端38に向かう電界のZ軸方向における成分が正であるように、メタサーフェス22に電位が付与される。図4(b)に示されている状態において、線形状部43によって構成されるバイアス部P2に付与される電位はアンテナ部P1に付与される電位よりも高く、線形状部46によって構成されるバイアス部P2に付与される電位はアンテナ部P1に付与される電位よりも低い。換言すれば、図4(b)に示されている状態において、パターン31に付与される電位はパターン33に付与される電位より高く、パターン32に付与される電位はパターン33に付与される電位より低い。例えば、図7に示されている構成では、処理S8において、線形状部42Bはバイアス部P2を構成し、線形状部45Bはアンテナ部P1を構成する。
【0127】
次に、第二状態において、測定対象の電磁波Wの入射によってメタサーフェス22から電子Eを放出させる(処理S9)。処理S9において、第二状態においてメタサーフェス22に測定対象の電磁波Wが入射されると、アンテナ部P1から電子Eが放出される。
【0128】
次に、第二状態において、電子放出部材20から放出された電子Eを検出する(処理S10)。処理S10において、電子収集部50は、第二状態において電子Eを収集し、第二状態において電子放出部材20から放出された電子Eを検出する。処理S10において、演算部70は、電子収集部50から出力された信号を取得する。
【0129】
次に、第二状態における電子収集部50の検出結果に基づいて、電磁波Wの電界強度に関する情報を演算する(処理S11)。処理S11において、演算部70は、第二状態における電子収集部50の検出結果に基づいて電磁波Wの電界強度の負のZ軸方向成分に関する情報を演算する。
【0130】
処理S9において、バイアス部P2からアンテナ部P1に向かう電界のZ軸方向における成分は負であるため、例えば、光電変換部25に入射した電磁波Wの電界のZ軸方向における成分が負である場合に線形状部48aから電子Eが放出される。したがって、処理S10において、電界のZ軸方向成分が負である電磁波Wが検出される。処理S9において電子放出部材20から放出される電子Eの量は、負のZ軸方向成分の電界強度に連関している。したがって、処理S9から処理S11によって、光電変換部25に入射した電磁波Wのうち、負のZ軸方向成分の電界強度が測定される。少なくとも処理S9及び処理S10は、例えば予め決められた測定時間の間に行われる。例えば、演算部70は、予め決められた第二測定時間において電子収集部50によって収集された電子Eの量に関する情報を取得し、取得された情報に基づいて演算結果を出力する。第二測定時間は、例えば、第一測定時間と同一である。
【0131】
次に、第二状態における電磁波Wの検出処理を終了するか否かを判断する(処理S12)。処理S12において検出処理を終了しないと判断された場合において、処理は処理S7に進む。処理S12において検出処理を終了すると判断された場合において、電磁波検出の一連の処理を終了する。処理S12における判断は、例えば、電位制御部62によって行われる。電位制御部62は、例えば、上述した第二測定時間が経過した否かを判断する。この場合、電位制御部62は、例えば、第二測定時間が経過していていない場合において検出処理を終了しないと判断し、第二測定時間が経過していている場合において検出処理を終了すると判断する。
【0132】
例えば、電位制御部62は、処理S10が所定の回数行われたか否かを判断してもよい。この場合、例えば、電位制御部62は、処理S10が行われた回数が所定の回数以下である場合において検出処理を終了しないと判断し、処理S10が行われた回数が所定の回数を超えた場合において検出処理を終了すると判断してもよい。処理S12における判断は、演算部70によって行われてもよいし、電磁波検出装置1における他の制御部によって行われてもよい。
【0133】
処理S2から処理S12の順番は、図9に示したものに限定されない。例えば、処理S3から処理S7の前に、処理S8から処理S12が行われてもよい。例えば、処理S6及び処理S11は、処理S12の後に行われてもよい。例えば、電磁波Wの入射は、処理S4及び処理S5の間、並びに、処理S9及び処理S10の間においてのみ行われてもよい。
【0134】
以上の様に、本実施形態における電磁波の検出方法において、第一状態と第二状態との各々において電子放出部材20から放出された電子Eが検出される。これによって、電子放出部材20に入射した電磁波Wのうち、正のZ軸方向成分の電界強度と負のZ軸方向成分の電界強度とがそれぞれ測定される。換言すれば、メタサーフェス22に入射した電磁波Wの電界強度の極性ごとの測定が実現される。
【0135】
図10(a)は、電子放出部材20に入射される電磁波Wの一例を示している。図10(a)において、データD1は、電子放出部材20に入射される電磁波Wの電界の波形を示している。図10(a)において、縦軸は電界強度を示しており、横軸は時間を示している。
【0136】
図10(b)は、処理S6における演算結果の一例を示している。図10(b)において、データD2は、図10(a)に示された電磁波Wを電子放出部材20に入射した場合における演算結果である。図10(b)において、縦軸は信号の強度を示しており、横軸は時間を示している。データD2の信号強度は、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度の正のZ軸方向成分に連関している。例えば、データD2の時間積分値を算出することによって、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度の正のZ軸方向成分が推定される。
【0137】
図10(c)は、処理S11における演算結果の一例を示している。図10(c)において、データD3は、図10(a)に示された電磁波Wを電子放出部材20に入射した場合における演算結果である。図10(c)において、縦軸は信号の強度を示しており、横軸は時間を示している。データD3の信号強度は、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度の負のZ軸方向成分に連関している。例えば、データD3の時間積分値を算出することによって、電子放出部材20に入射した電磁波Wの電界強度の負のZ軸方向成分が推定される。例えば、データD2とデータD3とを比較することによって、入射した電磁波Wの電界強度について正の所定方向成分と負の所定方向成分の比が求められる。例えば、データD2の時間積分値とデータD3の時間積分値とを比較することによって、入射した電磁波Wの電界強度について正のZ軸方向成分と負のZ軸方向成分の比が求められる。
[作用及び効果]
【0138】
この光電変換装置2において、電位制御部62による電位の制御によって、バイアス部P2からアンテナ部P1に向かう電界が制御される。測定対象の電磁波Wがメタサーフェス22に入射すると、バイアス部P2からアンテナ部P1に向かう電界の影響によって、アンテナ部P1から電子Eが放出される。第一状態において、バイアス部P2からアンテナ部P1に向かう電界のZ軸方向における成分は正である。このため、第一状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、入射した電磁波Wの電界強度の正のZ軸方向成分に応じて電子Eがアンテナ部P1から放出される。第二状態において、バイアス部P2からアンテナ部P1に向かう電界のZ軸方向における成分は負である。このため、第二状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、入射した電磁波Wの電界強度の負のZ軸方向成分に応じて電子Eがアンテナ部P1から放出される。このため、第一状態において入射した電磁波Wの電界強度の正のZ軸方向成分に応じて電子Eが検出され、第二状態において入射した電磁波Wの電界強度の負のZ軸方向成分に応じて電子Eが検出される。この結果、簡易な構成でありながら、第一状態と第二状態とのそれぞれにおいてメタサーフェス22から放出された電子Eの検出によって、メタサーフェス22に入射した電磁波Wの電界強度の極性ごとの測定が実現され得る。光電変換装置2は、冷却も不要である。
【0139】
例えば、図3に示されている構成において、アンテナ部P1は、Z軸方向において互いに異なる位置に配置されている先端38,39を含んでいる。バイアス部P2は、線形状部43によって構成されるバイアス部P2と線形状部46によって構成されるバイアス部P2とを含んでいる。線形状部43によって構成されるバイアス部P2は、先端38に面している。線形状部46によって構成されるバイアス部P2は、先端39に面している。第一状態において、先端38から線形状部43によって構成されるバイアス部P2に向かう電界のZ軸方向における成分は正である。第一状態において、線形状部46によって構成されるバイアス部P2から先端39に向かう電界のZ軸方向における成分は正である。第二状態において、線形状部43によって構成されるバイアス部P2から先端38に向かう電界のZ軸方向における成分は負である。第二状態において、先端39から線形状部46によって構成されるバイアス部P2に向かう電界のZ軸方向における成分は負である。この場合、入射した電磁波Wの電界強度の正のZ軸方向成分に応じて電子Eが先端39から放出され、入射した電磁波Wの電界強度の負のZ軸方向成分に応じて電子Eが先端38から放出される。第一状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、入射した電磁波Wの電界強度の正のZ軸方向成分に応じて電子Eが先端39から放出される。第一状態において、先端38からの電子の放出は抑制される。第二状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、入射した電磁波Wの電界強度の負のZ軸方向成分に応じて電子Eが先端38から放出される。第二状態において、先端39からの電子の放出は抑制される。図5に示されている構成においても、同様の作用効果が奏される。
【0140】
例えば、図3に示されている構成において、先端38,39及びバイアス部P2は、Z軸方向において、線形状部46によって構成されるバイアス部P2、先端39、先端38、線形状部43によって構成されるバイアス部P2の順に配置される。第一状態において、線形状部43によって構成されるバイアス部P2に付与される電位はアンテナ部P1に付与される電位よりも低く、線形状部46によって構成されるバイアス部P2に付与される電位はアンテナ部P1に付与される電位よりも高い。第二状態において、線形状部43によって構成されるバイアス部P2に付与される電位はアンテナ部P1に付与される電位よりも高く、線形状部46によって構成されるバイアス部P2に付与される電位はアンテナ部P1に付与される電位よりも低い。この場合、入射した電磁波Wの電界強度の正のZ軸方向成分に応じて電子Eが先端39から放出され、入射した電磁波Wの電界強度の負のZ軸方向成分に応じて電子Eが先端38から放出される。第一状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、線形状部46によって構成されるバイアス部P2と先端39との電位差に起因する電界によって、先端39から電子Eが放出される。第一状態において、先端38からの電子Eの放出は、線形状部43によって構成されるバイアス部と先端38との電位差に起因する電界によって抑制される。第二状態においてメタサーフェス22に電磁波Wが入射すると、線形状部43によって構成されるバイアス部P2と先端38との電位差に起因する電界によって先端38から電子Eが放出される。第二状態において、線形状部46によって構成されるバイアス部P2と先端39との電位差に起因する電界によって先端39からの電子の放出は抑制される。図5に示されている構成においても、同様の作用効果が奏される。
【0141】
例えば、図7に示されている構成において、複数のパターン31B,32Bは、互いに離間している線形状部42Bと線形状部45Bとを含んでいる。線形状部42B,45Bは、Z軸方向に延在していると共にZ軸方向において互いに面している。第一状態において、線形状部42Bはアンテナ部P1を構成し、線形状部45Bはバイアス部P2を構成する。第二状態において、線形状部42Bはバイアス部P2を構成し、線形状部45Bはアンテナ部P1を構成する。この光電変換装置2は、さらに簡易な構成でありながら、電磁波Wの電界強度の極性ごとの測定を実現し得る。
【0142】
光電変換装置2は、封止されていると共に電磁波Wを透過する窓部11aを有しているハウジング10をさらに備えている。電子放出部材20は、ハウジング10内に配置されている。この場合、ハウジング10内を真空にする又はハウジング10内にガスを充填することによって、電磁波Wの入射に応じた電子Eの放出量が向上し得る。
【0143】
電磁波検出装置1は、上述した光電変換装置2と、電子収集部50と、演算部70とを備えている。電子収集部50は、電子放出部材20から放出された電子Eを検出する。演算部70は、第一状態における電子収集部50の検出結果に基づいて電磁波Wの電界強度の正のZ軸方向成分に関する情報を演算する。演算部70は、第二状態における電子収集部50の検出結果に基づいて電磁波Wの電界強度の負のZ軸方向成分に関する情報を演算する。この場合、電磁波検出装置1は、簡易な構成でありながら、電磁波Wの電界強度を極性ごとに測定できる。電磁波検出装置1は、冷却も不要である。
【0144】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0145】
例えば、光電変換部25,25A,25Bの構成は、適宜組み合わせ可能である。光電変換部25における線形状部43又は線形状部46の一部が、光電変換部25Aのようにアンテナ部P1の先端に1つの線形状部のみが面するように構成されてもよい。
【0146】
光電変換部25において、Z軸方向において同一直線上に位置する線形状部48aと線形状部48bとは互いに接続されていなくてもよい。この場合、線形状部48aと線形状部48bとは、互いに異なる線形状部47に接続されていてもよい。この場合、線形状部48aと線形状部48bとは、線形状部47を介して、互いに異なる電極51に接続されていてもよい。電子放出部材20は、複数の電極51を備えていてもよい。
【0147】
光電変換部25Aにおいて、Z軸方向において同一直線上に位置する線形状部49aと線形状部49bとは互いに接続されていなくてもよい。この場合、線形状部49aと線形状部49bとは、互いに異なる線形状部47Aに接続されていてもよい。この場合、線形状部49aと線形状部49bとは、線形状部47Aを介して、互いに異なる電極71に接続されていてもよい。電子放出部材20は、複数の電極71を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0148】
1…電磁波検出装置、2…光電変換装置、10…ハウジング、11a…窓部、20…電子放出部材、22,22A,22B…メタサーフェス、31,31A,31B,32,32A,32B,33,33A…パターン、62…電位制御部、70…演算部、E…電子、P1…アンテナ部、P2…バイアス部、W…電磁波。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】