(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】原材料を回収するための高分子ポリウレタン化合物の熱分解
(51)【国際特許分類】
C07C 209/62 20060101AFI20240816BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20240816BHJP
C07C 211/50 20060101ALI20240816BHJP
C08G 18/82 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C07C209/62
C08J11/12 ZAB
C07C211/50
C08G18/82
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508707
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2022073103
(87)【国際公開番号】W WO2023021145
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エイデン ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ベリングハウゼン ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ オーレル
(72)【発明者】
【氏名】アルバッハ ロルフ
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
4J034
【Fターム(参考)】
4F401AA26
4F401BA06
4F401CA70
4F401CA87
4F401CA90
4F401CB01
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4F401DA01
4F401FA01Z
4F401FA02Z
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4F401FA06Z
4H006AA02
4H006AC52
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC19
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC71
4J034LA22
4J034LA34
(57)【要約】
本発明は、熱分解の商業的な実施のための請求項1に記載の方法に関し、この方法で使用される熱分解原料の熱分解のための熱分解装置に関する。熱分解原料は、式(I):
(式中、Qは2個~8個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子を有する炭化水素基であり、nは2~4、最も好ましくは2の数を表し、-
*はポリマー主鎖への共有結合を表す)の少なくとも1つの構造ポリウレタン単位を有する高分子化合物を含む。本発明による方法及び熱分解装置によれば、より多量の熱分解原料でも、ポリウレタン含有材料の合成に再利用可能な開裂生成物を含む或る量の熱分解生成物が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の工程:
(a)式(I):
【化1】
(式中、
Qは、2個~8個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
nは、2~4、好ましくは2の数であり、
-
*は、ポリマー主鎖への共有結合を表す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有する少なくとも1種の高分子化合物を含む熱分解対象材料を、反応器に導入する工程と、
(b)工程(a)において導入された前記熱分解対象材料の少なくとも前記高分子化合物を前記反応器内で200℃~350℃の温度にて分解して、熱分解物としての気相生成物及び非気相熱分解残渣を得る工程と、
ここで、
(i)前記分解中に、前記反応器内の酸素ガスの量は、該反応器内に存在するガスの総体積に対して2.0体積%以下であり、かつ、
(ii)前記分解中に、前記熱分解物は前記反応器から排出され、かつ、
(iii)前記熱分解残渣は前記反応器から排出される;
(c)排出された前記熱分解物を200℃未満の温度に冷却して、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はそれらの混合物から選択される熱分解生成物を得る工程と、
(d)任意に、前記熱分解生成物を後処理する工程と、
を含む、熱分解プロセス。
【請求項2】
導入した前記熱分解対象材料を200℃~350℃に温度制御し、この目標温度に到達したら、対応して温度制御された熱分解対象材料の、該熱分解対象材料から生じる前記熱分解残渣の排出時間までの滞留時間を1秒~5時間、好ましくは2分~120分とすることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程(b)における温度は、200℃~300℃、230℃~295℃、好ましくは250℃~290℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
工程(b)における絶対圧力は、1.2bar以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
工程(b)における絶対圧力は、少なくとも0.8barであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記反応器からの前記熱分解物の排出を、前記反応器を通過するガス流又は吸引によって、好ましくは、前記熱分解物の形成時間と、前記反応器から得られる前記熱分解物の排出時間との間の期間としての前記熱分解物の滞留時間を0.1秒~600秒、好ましくは0.5秒から300秒の間、より好ましくは0.5秒~200秒とすることによって確保することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応器からの前記熱分解物の排出を、前記反応器を通過するガス流によって確保し、前記反応器内での前記ガス流の空塔速度としての流量を0.01m/秒~20m/秒の範囲とすることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
連続プロセス制御の文脈において、少なくとも工程(a)及び工程(b)を同時に行うことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
工程(b)における前記反応器内の酸素ガスの量は、いずれの場合も前記反応器内に存在する気体の総体積に対して、0.5体積%以下、好ましくは0.1体積%以下であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
不活性ガス、特に窒素、アルゴン、CO
2、NO、又はそれらの混合物を、前記熱分解対象材料が充填された前記反応器に通過させることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記高分子化合物は、式(Ia):
【化2】
(式中、-
*は、ポリマー主鎖への共有結合である)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記高分子化合物は、少なくとも、
i1)2個~8個の炭素原子を有する、好ましくは3個~8個の炭素原子を有する炭化水素単位に結合した少なくとも2個~4個、特に2個のイソシアネート基を含む少なくとも1種の有機イソシアネート化合物と、
i2)少なくとも2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物と、
の反応によって得ることができることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記少なくとも1種の有機イソシアネート化合物は、前記炭化水素単位として、上述の炭素原子数を有し、かつ脂肪族炭化水素単位、脂環式炭化水素単位、芳香脂肪族炭化水素単位、芳香族炭化水素単位、又は複素環式炭化水素単位から誘導される単位を含むことを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
式(III):
【化3】
の少なくとも1つのジイソシアネートは、有機ポリイソシアネート化合物として選択されることを特徴とする、請求項12又は13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記高分子化合物は、固体粒子の形態で、特に粒状混合物の形態で、材料の構成要素として前記反応器に導入されることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
更なる工程において、前記反応器から排出された前記熱分解残渣は、第2の反応器に導入され、ここで360℃超の温度で分解されて、気相である第2の熱分解物と、気相でない第2の熱分解残渣を得て、この分解中に、前記反応器内の酸素ガスの量が、前記第2の反応器内に存在するガスの総体積に対して2.0体積%以下であり、かつ、この分解中に、前記第2の熱分解物が前記反応器から排出され、前記第2の熱分解残渣が前記反応器から排出されることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記第2の熱分解物は、後処理に供され、得られた生成物ガスは、第3の反応器に供給され、そこでアルキレンオキシドに変換されることを特徴とする、請求項16又は17に記載のプロセス。
【請求項18】
式(I):
【化4】
(式中、
Qは、3個~8個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつ、
nは、2~4、好ましくは2の数であり、かつ、
-
*は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有する高分子化合物の熱分解によって少なくとも1個のアミノ基を有する有機化合物を得るための、熱分解対象材料を送り込む少なくとも1つの計量供給装置と、熱分解用の少なくとも1つの加熱可能な反応器と、少なくとも1つの熱分解物捕集器とを備える熱分解装置の使用であって、
前記熱分解用の加熱可能な反応器は、200℃~350℃の温度で前記反応器の温度制御に使用可能な少なくとも1つの加熱要素とともに、熱分解対象材料用の少なくとも1つの入口及び熱分解物用の少なくとも1つの別個の出口も備え、かつ、
前記計量供給装置及び前記熱分解用の加熱可能な反応器は、該計量供給装置が少なくとも1つの供給導管を介して前記反応器の熱分解対象材料用の入口に接続されるように相互に配置及び構成されており、かつ、
前記熱分解用の加熱可能な反応器及び前記熱分解物捕集器は、好ましくはガス状の熱分解物を前記熱分解物用出口から排出し、排出された前記熱分解物を前記熱分解物捕集器に導入することが可能であるように互いに流体連通しており、かつ、
少なくとも1つの熱分解物捕集器は、上記捕集器内で上記反応器から排出される前記熱分解物の温度を200℃未満に低下させて、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はそれらの混合物から選択される熱分解生成物を形成するのに使用することが可能な200℃未満の温度で温度制御された少なくとも1つの冷却装置を備え、また冷却により得られる前記熱分解生成物の捕集及び排出用の少なくとも1つの容器を備え、かつ、
熱分解対象材料を送り込む少なくとも1つの計量供給装置、熱分解用の少なくとも1つの加熱可能な反応器、及び少なくとも1つの熱分解物捕集器は、これらが同時に作動することができるように相互に配置及び構成されている、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子ポリウレタン化合物を熱利用するための熱分解プロセス、熱分解装置の対応する使用、及びポリウレタン製造に再利用可能な種類の原材料を含む熱分解生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン含有材料は、冷却分野及び建築分野における緩衝材又は断熱材として使用されている。特に、ポリウレタン含有フォーム材料は、例えば緩衝要素、マットレス、又は断熱材として使用される。軟質ポリウレタンフォームは、内装材として適している。
【0003】
ポリウレタン材料を含む製品の耐用年数が終了すると、これらは新しい製品と交換され、通常は廃棄される。結果として生じるプラスチック廃棄物の総量は年々増加している。総量の約60%は焼却、40%は埋め立てによって処分されている。焼却すると空気中にCO2が排出され、これは地球温暖化の原因となる。その低い密度は、埋め立て地にあるプラスチック廃棄物が大きな体積を占め、そこから河川及び海洋における一般的な汚染の原因となる可能性もあることを意味する。この理由から、廃棄物問題を解決することができると同時に化石資源の節約を可能にする効率的なリサイクル方法を開発することが重要である。上述の軟質ポリウレタンフォームは特にポリマー市場のごく僅かな部分(およそ2%)しか占めていないため、ポリウレタンのリサイクルは当初は開発の焦点ではなかった。しかしながら、プラスチック市場が成長し続けていることから、CO2排出量の削減及び化石エネルギー源の節約を両立するために、今や全ての種類のポリマーに対するリサイクル技術を開発することが重要となっている。
【0004】
プラスチック廃棄物をリサイクルするプロセスは、3つのカテゴリーに大別することができる。
(1)機械的リサイクル:ここでは、プラスチック廃棄物をそのまま再度溶融させ、次いで再利用することができる。これは、ポリウレタンエラストマーには不可能である。
(2)化学的及び熱化学的リサイクル:ここでは、有用な化学原料を得るために、プラスチック廃棄物をモノマーへと解重合する又はより小さな分子へと分解する。
(3)熱的リサイクル:ここでは、プラスチック廃棄物をオフガス及び熱エネルギーに変換する。
【0005】
熱化学的リサイクルから得られた化学原料を使用して、新たな合成樹脂又は他の化学生成物を合成することができる。
【0006】
熱化学的リサイクルは熱分解と呼ばれる。大抵の場合、熱分解は、包装廃棄物に対して使用され、ドロップイン溶液の形態で、粉砕機(crackers)を用いる既知の精製プロセスにおいて或る種のリサイクルナフサとして使用される熱分解油が得られる。ポリウレタンの熱分解については、ほとんど知られていない。
【0007】
熱分解プロセスにおいて触媒又は添加剤を使用すると、操作温度を低下させ、反応時間を短縮し、分解効率を高め、生成物分布を制限することができ、プロセスがより効率的になる。
【0008】
Garridoら(非特許文献1)は、後に熱分解生成物を凝縮及び単離することなく、300℃~850℃の温度域で軟質ポリウレタンフォームを分解し、機器分析によってイソシアネート種の形成が検出されたことを記載する。
【0009】
Hilemanら(非特許文献2)は、後に熱分解生成物を凝縮及び単離することなく、市販の軟質ポリウレタンフォームを300℃、500℃、750℃、及び1000℃の温度で熱分解を行った。対応するアミンへと加水分解することができるイソシアネート成分(この場合はTDI)は、500℃の温度で最も多く形成することが観察された。非特許文献2によると、TDI及び対応するアミンは500℃未満の温度では熱的に安定であるが、750℃超の温度では分解が進む。
【0010】
Raveyら(非特許文献3)は、後に熱分解生成物を凝縮及び単離することなく、軟質ポリウレタンフォームが320℃~360℃の温度にてマイクロスケールで熱的分解され、芳香族イソシアネート(この場合はTDI)又は芳香族アミン(この場合はDAT)の形成がガスクロマトグラフで検出されたことを記載している。
【0011】
Kumagaiaら(非特許文献4)は、およそ800℃で実施される軟質フォーム及び硬質フォームの熱分解について記載しており、そこではイソシアネート、ジアミン、及びポリオール由来の非常に多くのその他の断片が得られる。
【0012】
特許文献1は、400℃~530℃及び減圧でウレタンからイソシアネートを熱的に製造するプロセスを開示している。常圧でのポリウレタンを用いた実験については述べられていない。
【0013】
特許文献2は、流動床中での軟質ポリウレタンフォームのジアミンへの加水分解を提案している。
【0014】
従来技術に記載された熱分解プロセスはいずれも、分析目的でマイクログラムスケールの熱分解として使用することを主な目的としているため、工業的又は商業的使用に適していない。したがって、従来技術において提示された熱分解は、いずれの場合も、工業的又は商業的使用には適さない熱分解装置で行われる。
【0015】
特に、より多量のポリウレタン含有材料を熱分解する場合には、適切なプロセス制御を通して不所望な副生成物の形成を削減することが可能な好適な反応器を用いた新規のより選択的なプロセスが必要とされる。ポリウレタン含有材料から、ポリウレタン合成に再利用可能な高含有量の開裂生成物、特にアニリン及び/又はトルイジン及び/又はTDA等の芳香族アミン化合物を含む熱分解生成物が選択的に得られるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許第2410505号
【特許文献2】独国特許第2362915号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Chemosphere 168 (2017), 667-675
【非特許文献2】J. of Polymer Science, Polymer Chemistry Edition 13 (1975), 571-584
【非特許文献3】J. of Applied Polymer Science, 63 (1997), 47-74
【非特許文献4】Journal of Analytical and Applied Pyrolysis 126 (2017) 337-345
【発明の概要】
【0018】
したがって、熱分解の商業的な実施のために、少なくともポリウレタン含有材料を含む熱分解対象材料を熱分解するプロセス及び上記プロセスにおいて使用可能な熱分解装置であって、これらを使用すると、比較的多量の熱分解対象材料でも、使用されるポリウレタン含有材料の総重量に対して、好ましくはアミノ基含有開裂生成物が10重量%超の量でポリウレタン含有材料の合成に再使用可能な開裂生成物を含む或る量の熱分解生成物が得られる、プロセス及び熱分解装置を提供することが目的であった。ポリウレタン含有高分子化合物の製造に使用される有機イソシアネートの総重量に対して少なくとも40重量%のアミノ基含有開裂生成物の回収が本明細書にある。
【0019】
したがって、本出願は、少なくとも以下の工程:
(a)
式(I):
【化1】
(式中、
Qは、2個~8個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつ、
nは、2~4、より好ましくは2の数であり、かつ、
-
*は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有する少なくとも1種の高分子化合物を含む熱分解対象材料を反応器に導入する工程と、
(b)少なくとも工程(a)で導入された熱分解対象材料の高分子化合物を反応器内で200℃~350℃の温度にて分解して、熱分解物としての気相生成物及び非気相熱分解残渣を得る工程と、
ここで、
(i)上記分解中に、反応器内の酸素ガスの量は、反応器内に存在するガスの総体積に対して2.0体積%以下であり、かつ、
(ii)上記分解中に、熱分解物は反応器から排出され、かつ、
(iii)上記熱分解残渣は反応器から排出される;
(c)排出された熱分解物を200℃未満の温度に冷却して、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はそれらの混合物から選択される熱分解生成物を得る工程と、
(d)任意に、熱分解生成物を後処理する工程と、
を含む、熱分解プロセスを提供する。
【0020】
「熱分解対象材料」という用語は、熱分解のために反応器へと導入され、そこで酸素ガスの不存在下又は低量の酸素ガスの存在下で熱処理を受ける物質の全体を指す。熱分解対象材料は、反応器への導入前は固体の形態であることが好ましい。
【0021】
「熱分解物」は、工程(b)の条件下で反応器内の気相にある(より詳細には、気体及び/又はエアロゾルの形態である)、熱分解によって形成された生成物の全体を意味するものと理解される。
【0022】
「熱分解残渣」は、工程(b)の条件下で反応器内の気相にない、熱分解によって形成される物質と熱分解対象材料の他の残渣との全体を意味するものと理解される。プロセスの好ましい実施の形態は、反応器内の熱分解残渣が固体又は液体であるものである。
【0023】
「熱分解生成物」は、工程(c)において熱分解物が冷却された場合に凝縮及び/又は再昇華によって蓄積する、熱分解物からの生成物の全体を意味するものと理解される。液体である熱分解生成物は、熱分解油とも称する。
【0024】
これに関連して明確に別段の定義がされていない限り、物質(例えば、材料、熱分解対象材料、熱分解物、熱分解生成物、熱分解残渣)は、20℃、1013mbarで液体の状態である場合は「液体」である。これに関連して明確に別段の定義がされていない限り、物質(例えば、材料、熱分解対象材料、熱分解物、熱分解生成物、熱分解残渣)は、20℃、1013mbarで固体状態である場合は「固体」である。これに関連して明確に別段の定義がされていない限り、物質(例えば、材料、熱分解対象材料、熱分解物、熱分解残渣)は、20℃、1013mbarで気体として存在する場合は「気体」である。
【0025】
或る物質の化学構造が少なくとも1つの炭素-水素共有結合を含む場合、その物質は「有機」である。
【0026】
本出願において、ポリマー又はポリマー成分に対して規定される平均モル質量は、明確に別段の記載がない限り、常に重量平均モル質量Mwである。これは、原則的には、外部標準に対する測定を行うのに適切なRI検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって求めることができる。
【0027】
「反応器」は、熱分解対象材料からの材料の化学変換、例えば、熱的分解が起こる容積である。熱的分解の場合、これは、例えば、熱分解対象材料が入った加熱容器の容積とすることができる。
【0028】
本発明によれば、熱分解対象材料を、本発明のプロセスに従って、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、固定床反応器、流動床反応器、スクリュー反応器、スクリューコンベア反応器、噴流反応器(entrained-flow reactor)、噴流反応器(entrainment-flow reactor)、回転管反応器、流動床反応器及びドラム反応器から選択されることを特徴とする反応器に導入することが有利である。より詳細には、好適な反応器は、好ましくは、熱分解対象材料を連続的に導入することができるものであり、特に、回転管反応器、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、固定床反応器(特に、内部熱交換器、好ましくは内部熱交換管を備えた連続床交換式のもの(シャフト反応器))、スクリュー反応器、スクリューコンベア反応器、噴流反応器、回転管反応器又は流動床反応器から選択される。プロセスの一実施の形態においては、非常に特に好ましい反応器は、スクリュー反応器、回転オーブン又は流動床から選択される。本発明のプロセス及びその実施の形態において好ましい更なる反応器は、本発明の熱分解装置の実施の形態及び触媒を使用するプロセスの実施の形態において説明する(以下を参照)。
【0029】
本発明によれば、反応器に導入される熱分解対象材料は、式(I):
【化2】
(式中、
Qは、2個~8個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつ、
nは、2~4、より好ましくは2の数であり、かつ、
-
*は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有する少なくとも1種の高分子化合物を含む。
【0030】
Qは、好ましくは、脂肪族炭化水素単位、脂環式炭化水素単位、芳香脂肪族炭化水素単位、芳香族炭化水素単位、又は複素環式炭化水素単位から誘導される。
【0031】
本発明のプロセスは、式(I)によるQが芳香族基を含む上述の種類の高分子化合物を含む材料に特に非常に適している。
【0032】
本発明のプロセスの非常に特に好ましい実施の形態は、高分子化合物が、式(Ia):
【化3】
(式中、-
*は、ポリマー主鎖への共有結合である)の少なくとも1つの構造単位を含むことを特徴とする。
【0033】
によって高分子化合物が得られることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のプロセス。
【0034】
上記材料中に存在する高分子化合物は、好ましくは、少なくとも、
i1)2個~8個の炭素原子を有する、好ましくは3個~8個の炭素原子を有する炭化水素単位に結合した少なくとも2個~4個、特に2個のイソシアネート基を含む少なくとも1種の有機イソシアネート化合物と、
i2)少なくとも2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物と、
の反応によって得ることができる。
【0035】
更なる実施の形態において、少なくとも1種の有機イソシアネート化合物は、上記炭化水素単位として、i1)に述べた炭素原子数を有し、かつ脂肪族炭化水素単位、脂環式炭化水素単位、芳香脂肪族炭化水素単位、芳香族炭化水素単位、又は複素環式炭化水素単位から誘導される単位を含むことが好ましい。
【0036】
特に好ましくは、上記有機イソシアネート化合物として、式(II):
Q(NCO)n (II)
(式中、nは、2~4、好ましくは2又は3の数であり、かつQは、2個~8個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、3個~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6個~8個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、又は6個~8個の炭素原子を有する芳香脂肪族炭化水素基から選択される基である)に対応する少なくとも1種の化合物が選択される。
【0037】
上記高分子化合物が上記式(Ia)の実施の形態の少なくとも1つの構造単位を含む場合、上記プロセスの更なる好ましい実施の形態は、式(III):
【化4】
の少なくとも1種のジイソシアネートが、工程i1)において少なくとも1種の有機ポリイソシアネート化合物として選択される場合であることが判明した。
【0038】
上記工程i2)の好ましい実施の形態は、少なくとも2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、又はそれらの混合物から選択され、より好ましくは、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールを含む群から選択される場合である。
【0039】
DIN 53240-1(2013年6月)によると、それぞれの場合で、少なくとも2個のヒドロキシ基を有する使用される有機化合物又は少なくとも2個のヒドロキシ基を有する使用される有機化合物(複数)のOH価は、好ましくは15mg KOH/g~4000mg KOH/gである。少なくとも2個のヒドロキシ基を有する有機化合物を複数用いる場合、上記化合物の混合物は、好ましくは20mg KOH/g~200mg KOH/g、特に25mg KOH/g~100mg KOH/gのヒドロキシル価を有することができる。少なくとも2個のヒドロキシ基を有する単一の付加有機化合物の場合、OH価(又はヒドロキシル価)は上記化合物のOH価を示す。報告された混合物のOH価は、それぞれのモル割合における個々の成分のOH価から計算された混合物の数平均OH価に関する。OH価は、アセチル化を受ける際に1グラムの物質によって結合される酢酸の量に相当する水酸化カリウムの量(ミリグラム単位)を示す。これは、本明細書の文脈では、DIN 53240-1規格(2013年6月)に従って決定される。
【0040】
少なくとも2個のヒドロキシ基を有する有機化合物は、100g/mol以上~15000g/mol以下、特に2000g/mol以上~12000g/mol以下、より好ましくは3500g/mol以上~6500g/mol以下の数平均分子量を有することが好ましい。
【0041】
数平均モル質量Mn(又は分子量)は、本明細書の文脈では、明確に別段の定義が他でされていない限り、2007年8月のDIN 55672-1に従ってゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。
【0042】
少なくとも2個のヒドロキシル基を有する有機化合物は、1~8の官能価を有し、本発明の文脈において、「官能価」とは、既知の入力材料から算出した理論平均官能価(分子中のイソシアネート反応性官能基又はポリオール反応性官能基の数)及びその割合を指す。
【0043】
使用可能なポリエーテルエステルポリオールは、エーテル基、エステル基、及びOH基を含有する化合物である。ポリエーテルエステルポリオールの製造には、個別に又は混合物で使用される、最大12個の炭素原子を有する有機ジカルボン酸、好ましくは4個~6個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、又は芳香族ジカルボン酸を使用することが好ましい。例としては、スベリン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、マロン酸、フタル酸、ピメリン酸、及びセバシン酸が挙げられ、特に、グルタル酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、及びイソテレフタル酸が挙げられる。有機ジカルボン酸に加えて、これらの酸の誘導体、例えばそれらの無水物、また1個~4個の炭素原子を有する低分子量の単官能性アルコールとのそれらのエステル及びモノエステルも使用することができる。上述のバイオベース出発物質、特に脂肪酸/脂肪酸誘導体(オレイン酸、大豆油等)の割合の使用も同様に可能であり、例えばポリオール製剤の貯蔵安定性、寸法安定性、火災挙動、及びフォームの圧縮強度等の点で有利であり得る。
【0044】
多価アルコール等のスターター分子のアルコキシ化によって得られるポリエーテルポリオールは、ポリエーテルエステルポリオールの製造に使用される更なる成分である。スターター分子は少なくとも二官能性であるが、任意に、より高官能価、特に三官能性のスターター分子の割合を含んでもよい。
【0045】
スターター分子の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンテン-1,5-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘプタン-1,7-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、デカン-1,10-ジオール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、3-メチルペンタン-1,5-ジオール、2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール、2-ブテン-1,4-ジオール及び2-ブチン-1,4-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、並びに二官能性及び三官能性のポリエーテルポリオールが挙げられる。ポリエーテルポリオールは、好ましくは2~4のOH官能価、62g/mol~4500g/molの範囲の分子量Mn、及び特に62g/mol~3000g/molの範囲の分子量Mnを有する。OH以外の官能基を有するスターター分子も単独で又は混合物で使用され得る。
【0046】
ポリエーテルエステルポリオールはまた、有機ジカルボン酸の反応によって得られる反応生成物及びその誘導体、並びにツェレウィチノフ活性水素(Zerewitinoff-active hydrogen)を有する成分、特にジオール及びポリオールのアルコキシ化、特にエトキシ化及び/又はプロポキシ化によっても製造され得る。使用され得るかかる酸の誘導体としては、例えば、それらの無水物が挙げられる。
【0047】
ポリエステルポリオールは、例えば、2個~12個の炭素原子を有する、好ましく2個~6個の炭素原子を有する多価アルコール、好ましくはジオールと、ポリカルボン酸、例えばジカルボン酸、トリカルボン酸若しくは更にはテトラカルボン酸、又はヒドロキシカルボン酸若しくはラクトンとの重縮合物であってもよく、芳香族ジカルボン酸、又は芳香族と脂肪族ジカルボン酸の混合物を使用することが好ましい。遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物又は対応する低級アルコールのポリカルボン酸エステルをポリエステルの製造に使用することも可能である。
【0048】
有用なカルボン酸としては、特に、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン二酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラクロロフタル酸、イタコン酸、マロン酸、2-メチルコハク酸、3,3-ジエチルグルタル酸、2,2-ジメチルコハク酸、ドデカン二酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ダイマー脂肪酸、トリマー脂肪酸、クエン酸、トリメリト酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸が挙げられる。同様に、これらのカルボン酸の誘導体、例えばテレフタル酸ジメチルを用いることも可能である。カルボン酸は、個別に又は混合物のいずれかで使用され得る。好んで用いられるカルボン酸は、アジピン酸、セバシン酸及び/又はコハク酸であり、より好ましくはアジピン酸及び/又はコハク酸である。
【0049】
末端ヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールの製造において共反応物として同時に使用され得るヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、リンゴ酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。好適なラクトンとしては、カプロラクトン、ブチロラクトン、及びホモログが挙げられる。
【0050】
また、バイオベースの出発物質及び/又はその誘導体は、ポリエステルポリオールの製造に特に有用であり、例えば、ヒマシ油、ポリヒドロキシ脂肪酸、リシノール酸、ヒドロキシル変性油、ブドウ種子油、ブラッククミン油、カボチャ種子油、ボラージ種子油、大豆油、小麦芽油、菜種油、ヒマワリ種子油、ピーナッツ油、アプリコット核油、ピスタチオ油、アーモンド油、オリーブ油、マカデミアナッツ油、アボカド油、シーバックソーン油、ゴマ油、ヘンプ油、ヘーゼルナッツ油、プリムラ油、ワイルドローズ油、ベニバナ油、クルミ油、脂肪酸、ヒドロキシル変性及びエポキシ化脂肪酸及び脂肪酸エステルであり、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、ペトロセリン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、アルファ-リノレン酸及びガンマ-リノレン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、クルパノドン酸及びセルボン酸である。特に、多官能性アルコール、例えばグリセロールとのリシノール酸のエステルが好ましい。かかるバイオベース酸と他のカルボン酸、例えばフタル酸との混合物の使用も好ましい。
【0051】
適切なジオールの例は、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、並びに更にプロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール及び異性体、ネオペンチルグリコール、又はネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートである。エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール又は上記ジオールの少なくとも2つの混合物、特にブタン-1,4-ジオールと、ペンタン-1,5-ジオールと、ヘキサン-1,6-ジオールとの混合物を用いることが好ましい。
【0052】
さらに、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼン又はトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオールを使用することもでき、グリセロール及びトリメチロールプロパンが好ましい。
【0053】
少なくとも2個のヒドロキシ基を有する有機化合物として使用され得るポリエーテルポリオールは、当業者に知られている調製方法、例えば、2個~8個、好ましくは2個~6個の反応性水素原子が結合した少なくとも1つのスターター分子を用いて、2個~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキレンオキシドを、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド若しくはカリウムエトキシド、又はカリウムイソプロポキシド等のアルカリ金属アルコキシド、又はジメチルエタノールアミン(DMEA)、イミダゾール及び/又はイミダゾール誘導体等のアミン系アルコキシ化触媒、又はDMC触媒と共に、アニオン重合することによって得られる。
【0054】
好適なアルキレンオキシドの例は、テトラヒドロフラン、1,3-プロピレンオキシド、1,2-及び2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド、並びに好ましくはエチレンオキシド及び1,2-プロピレンオキシドである。アルキレンオキシドは、個別に、互いに交互に、又は混合物として用いてもよい。好ましいアルキレンオキシドは、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドであり、特にプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの共重合体が好ましい。アルキレンオキシドを、CO2と組み合わせて反応させてもよい。
【0055】
有用なスターター分子の例としては、水、コハク酸、アジピン酸、フタル酸及びテレフタル酸等の有機ジカルボン酸、脂肪族及び芳香族、任意に、モノ-及びジアルキル置換エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3-プロピレンジアミン、1,3-及び1,4-ブチレンジアミン、1,2-、1,3-、1,4-、1,5-及び1,6-ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、2,3-、2,4-及び2,6-トリレンジアミン、並びに2,2’-、2,4’-及び4,4’-ジアミノジフェニルメタン等のアルキル基中に、任意に、1個~4個の炭素原子を有するN-モノ-、N,N-及びN,N’-ジアルキル置換ジアミンが挙げられる。
【0056】
エタンジオール、プロパン-1,2-及び-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、パラホルムアルデヒド、トリエタノールアミン、ビスフェノール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、及びスクロース等の二価アルコール又は多価アルコールを使用することが好ましい。
【0057】
使用可能なポリカーボネートポリオールとしては、ヒドロキシル含有ポリカーボネート、例えばポリカーボネートジオールが挙げられる。これらは、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、又はホスゲン等の炭酸誘導体と、ポリオール、好ましくはジオールとの反応において形成される。
【0058】
このようなジオールの例は、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール及びプロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,3-ジオール及びブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノール類、及び上述の種類のラクトン変性ジオールである。
【0059】
また、純粋なポリカーボネートジオールの代わりに、又はそれに加えて、例えばアルキレンオキシド、例えばプロピレンオキシドとCO2との共重合によって得られるポリエーテル-ポリカーボネートジオールも使用可能である。
【0060】
イソシアネート反応性水素原子を有する化合物としては、少なくとも2個のヒドロキシ基を有する有機化合物としてポリマーポリオール、PHDポリオール、及びPIPAポリオールを用いることもできる。ポリマーポリオールは、ベースポリオールにスチレン又はアクリロニトリル等の好適なモノマーのフリーラジカル重合によって製造される固体ポリマーの割合を含むポリオールである。PHD(ポリヒドラゾジカルボンアミド)ポリオールは、例えばイソシアネート又はイソシアネート混合物を、ポリオール、好ましくはポリエーテルポリオール中でジアミン及び/又はヒドラジン(又はヒドラジン水和物)とin-situ重合することによって製造される。PHD分散液は、好ましくは、三官能性スターターのアルコキシ化により製造されるポリエーテルポリオール(例えば、グリセロール及び/又はトリメチロールプロパン)中で、75重量%~85重量%の2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)及び15重量%~25重量%の2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)のイソシアネート混合物を、ジアミン及び/又はヒドラジン水和物と反応させることにより製造される。PIPAポリオールは、アルカノールアミンをポリイソシアネート重付加により修飾したポリエーテルポリオールであり、このポリエーテルポリオールは、好ましくは2.5~4.0の官能価を有し、3mg KOH/g~112mg KOH/g(分子量500g/mol~18000g/mol)のヒドロキシル価を有する。
【0061】
また、連続気泡形成効果(cell opening effect)を有するイソシアネート反応性物質、例えば、エチレンオキシドを過剰に有するエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、又はジエチルトルエンジアミン等の芳香族ジアミンを使用することもできる。
【0062】
コールドキュアフォームプロセスにおけるポリウレタンフォームの製造では、少なくとも2個のヒドロキシル基と20mg KOH/g~50mg KOH/gのOH価を有するポリエーテルは、更なる実施の形態において、少なくとも2個のヒドロキシ基を有する有機化合物として使用され、OH基の少なくとも80mol%が第一級OH基である(1H NMR(例えばBruker DPX 400、重クロロホルム)による決定)。OH価が25mg KOH/g~40mg KOH/gである場合が特に好ましく、非常に好ましくは25mg KOH/g~35mg KOH/gである。
【0063】
上記定義の式(I)又は式(Ia)の構造単位に加えて、材料の高分子化合物は、任意に、以下の式:
【化5】
(式中、Rは、二価の炭化水素基、特に二価の芳香族炭化水素基である)のイソシアヌレート構造単位を更に含んでいてもよい。この実施の形態では、このイソシアヌレート構造単位の割合が材料の総重量の1重量%以下である場合に好ましいことが判明した。
【0064】
上記高分子化合物を含む材料は、好ましくはフォーム、より好ましくはポリウレタンフォームである。材料がポリウレタンフォームの形態で存在する場合、これは更に、軟質ポリウレタンフォーム又は硬質ポリウレタンフォームであることが好ましい。軟質ポリウレタンフォームは、プロセスの工程a)において熱分解対象材料に導入される高分子化合物の非常に特に好ましい実施の形態である。
【0065】
上記高分子化合物が軟質ポリウレタンフォームの形態で存在する場合、軟質ポリウレタンフォームが、DIN 7726:1982-05に従って、10%圧縮の場合の圧縮荷重時にDIN 53421:1984-06に従って測定された15kPa以下の圧縮応力を有する場合に有利であることが判明した。
【0066】
熱分解対象材料における上記高分子化合物が、好ましくは固形粒子の形態(特に粒状混合物の形態)で反応器に導入される場合に有利であることが判明した。対応する粒状混合物は、多数の緩い固形粒子から形成され、それらの固形粒子には更にいわゆる粒状物が含まれる。粒状物は、粉末の粒状構成要素(粒状物は緩い固形粒子である)、粉塵の粒状構成要素(粒状物は緩い固形粒子である)、顆粒の粒状構成要素(緩い固形粒子は幾つかの粒状物の凝集体である)、及びその他の粒状混合物の粒状構成要素を表す用語である。粒状混合物の流動性は、その粒状混合物が直径16.5mmの出口を有する注入試験用漏斗から自重で自由流動する能力に該当する。
【0067】
好ましくは、上記固形粒子、より詳細には粒状混合物の緩い固形粒子は、0.01mm~5cm、好ましくは0.1mm~5cmの中央径X50.3(体積平均)を有する。中央粒径X50.3は、篩別することによって、又はRetschのCamsizer粒度分布分析装置を使用することによって決定される。
【0068】
本発明のプロセスの熱分解における熱分解対象材料の計量供給及び処理性は、工程(a)における上記熱分解対象材料が、上記高分子化合物に加えて、少なくとも1つのフィラーを更に含むことによって容易にすることができる。上記フィラーは、熱分解の際のポリウレタンの熱的分解に触媒作用を及ぼさないことが好ましい。よって、フィラーが、好ましくはSiO2から選択される、熱分解の際のポリウレタンの熱的分解に対して触媒活性を示さない少なくとも1つの金属酸化物であることが特に好ましい。
【0069】
上記材料を、フィラー、例えば砂と混合することで、本発明のプロセスの連続プロセス制御をより容易にすることが好ましい。特に、反応器内及び計量供給装置から反応器への供給における上記高分子化合物の付着が回避される。一実施の形態においては、フィラー及び上記高分子化合物を、フィラーと上記高分子化合物との体積比が少なくとも0.1:1~10:1である混合物として熱分解対象材料に供給する。
【0070】
熱分解材料が追加で少なくとも1種の触媒を含んでもよい。この触媒は上記高分子化合物の分解反応に影響を与える。適切な触媒は、熱分解温度を低下させ、生成物のスペクトルを所望の生成物に低減し、任意で炭化を最小限に抑えることができる。効率的なプロセスのためには、安価な触媒が好ましい。
【0071】
触媒は、大掛かりな合成を必要としないため、無機塩、耐火性酸化物、鉱物及び工業用石等の簡易なイオン交換プロセスで任意にイオン交換可能な天然由来材料とすることができる。それらは容易に入手可能であるため、比較的安価である。一方、ゼオライト(ZSM-5、ゼオライト、X、Y等)等の合成触媒は、効果的ではあるが、特別に製造する必要があるため、安価ではない触媒の例である。
【0072】
触媒は、触媒としての機能だけでなく、熱分解における熱分解対象材料の計量及び加工性を容易にすることもできる。触媒の使用により、フィラーの使用量を削減することができる。一実施の形態においては、上記材料の量に対するフィラー及び触媒の総量は、少なくとも0.1:1~10:1の体積比で混合物として熱分解対象材料に供給される。
【0073】
工程(a)において反応器に導入する熱分解対象材料は、工程(b)に従って少なくとも部分的に分解され、熱分解物及び熱分解残渣が形成される。
【0074】
反応器への導入後、熱分解対象材料を200℃~350℃の範囲の温度に加熱する。本発明のプロセスの結果の特に成功した改善は、一実施の形態において、導入した熱分解対象材料を200℃~350℃で温度制御し、この目標温度に到達したら、対応して温度制御された熱分解対象材料の、この熱分解対象材料から得られる熱分解残渣の排出時間までの滞留時間を、1秒~2時間、好ましくは2分~60分とすることにより達成することができる。この時間の間の反応器内の酸素ガスの温度及び含有量は、工程(b)で規定する値である。
【0075】
これとは独立して、工程(b)において行う反応器からの熱分解物の排出を、反応器を通過するガス流によって又は吸引によって、及びより好ましくは、工程(a)において反応器に導入する上記材料の導入時間と、熱分解物の排出時間との間の時間としての熱分解物の滞留時間を、0.1秒~600秒、好ましくは0.5秒~300秒、より好ましくは0.5秒~200秒とすることによって確保することで良好な結果を達成することができる。
【0076】
この目的のためにガス流を反応器に通過させる場合、このガス流用の気体としては、好ましくは、窒素、アルゴン、CO2、NO、又はこれらの混合物から選択される不活性ガスが特に好適である。
【0077】
ガス流を使用して熱分解物を排出する場合、本発明によると、反応器内でのガス流の空塔速度としての流量が0.01m/秒~20m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として固定床反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内でのガス流の空塔速度としての流量が0.03m/秒~1m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として流動床反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内でのガス流の空塔速度としての流量が0.5m/秒~2m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として噴流反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内でのガス流の空塔速度としての流量が5m/秒~20m/秒の範囲であることが好ましい。
【0078】
工程(b)における熱分解における分解に対する本発明の条件として、反応器内の温度は200℃~350℃であり、反応器内の酸素ガスの量は、反応器内に存在する気体の総体積に対して、0体積%~2.0体積%である。
【0079】
本発明によると、この酸素ガスの量は、上記熱分解対象材料の上記材料を充填した反応器を、不活性ガス、より詳細には、窒素、アルゴン、CO2、NO、又はこれらの混合物で満たすことによって確立される。不活性ガスを、酸素ガス以外の反応性ガス、特に、メタン、気体状H2O、水素ガス、又はこれらの混合物から選択される気体と追加的に混合することもできる。
【0080】
反応器への熱分解対象材料の導入による酸素ガスの侵入を最小限に抑えるために、熱分解対象材料を工程(a)において導入する前に、例えば、反応器の上流の貯留容器内で、例えば、ストリッピングガスを用いたストリッピングを通して酸素ガスを追い出すことによって、熱分解対象材料から酸素ガスを除去することができる。例えば、不活性ガス、より詳細には、窒素、アルゴン、CO2、NO、又はこれらの混合物を、ストリッピングガスとして貯留容器の天井から又は底から(好ましくは天井から)フリットを介して容器内に通過させ、そして酸素ガスを追い出すように熱分解対象材料に通過させることができる。
【0081】
高分子化合物がフォームの形態、特に軟質ポリウレタンフォームの形態である場合、プレス又はホットプレス(200bar)によってフォームは大幅に体積を減らし、次いで、小さな粒子に切断又は細断することができる。このようにして処理されたフォームであれば、より簡単に熱分解反応器に導入することができる。
【0082】
プロセスの更に好ましい実施の形態においては、工程(b)における絶対圧力は、1.2bar以下である。
【0083】
プロセスの更に好ましい実施の形態においては、工程(b)における絶対圧力は、少なくとも0.8barである。
【0084】
また、一般に、工程(b)において温度を300℃超に設定しないようにプロセス制御を構成すると、更に有利であることがわかっている。したがって、本発明のプロセスの更に好ましい実施の形態においては、工程(b)における温度は、200℃~300℃、更に好ましくは230℃~295℃、更に好ましくは250℃~290℃である。
【0085】
本発明のプロセスの更に好ましい実施の形態においては、工程(b)における反応器内の酸素ガスの量は、いずれの場合も反応器内に存在する気体の総体積に対して、0.5体積%以下、好ましくは0.1体積%以下である。
【0086】
本発明のプロセスの非常に好ましい実施の形態において、第一に、工程(b)における温度は200℃~300℃、更に好ましくは230℃~295℃、より好ましくは250℃~290℃であり、第二に、反応器内の酸素ガスの量は、それぞれの場合に反応器内に存在するガスの総体積に対して0.5体積%以下、好ましくは0.1体積%以下である。さらに、第三に、工程(b)における絶対圧力が0.8bar~1.2barであることが更に極めて好ましい。
【0087】
プロセスの好ましい実施の形態は、連続プロセス制御を提供する。このために、連続プロセス制御の文脈において、少なくとも工程(a)及び工程(b)を同時に行う。
【0088】
工程(c)に従って得られた熱分解生成物を、標準的な分離方法、例えば蒸留又は選択的凝縮を使用して後処理し、それにより(i)を得ることができる。
【0089】
排出された熱分解残渣は、熱分解対象材料の元の高分子化合物、特にポリオール構造単位に存在する更なる構造単位に起因する化合物が多量に含まれていることがわかっている。本発明による好ましい逐次熱分解プロセスにおいて、排出された熱分解残渣を更に360℃超の温度で2回目の熱分解に供すると有利であることが証明された。したがって、本発明のプロセスの好ましい実施の形態は、更なる工程において、反応器から排出された熱分解残渣が、第2の反応器に導入され、ここで360℃超の温度で分解されて、気相である第2の熱分解物と、気相でない第2の熱分解残渣を得て、この分解中に、反応器内の酸素ガスの量が、第2の反応器内に存在するガスの総体積に対して2.0体積%以下であり、かつ、この分解中に、第2の熱分解物が反応器から排出され、上記第2の熱分解残渣が反応器から排出されることを特徴とする。
【0090】
先の熱分解の熱分解対象材料中に存在する高分子化合物は、少なくとも、
i1)2個~8個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭化原子を有する炭化水素単位に結合した、少なくとも2個~4個、特に2個のイソシアネート基を含有する少なくとも1つの有機イソシアネート化合物と、
i2)少なくとも2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1つの有機化合物と、
の反応によって得られた場合に好ましいことがわかっている。
【0091】
i1)とi2)とのこの反応の前述の好ましい実施の形態のいずれもが、同様に、好ましくは、この実施の形態において好適であると考えられる。
【0092】
前述のプロセスの一連の実施の形態において、第2の反応器内での分解が少なくとも360℃、特に400℃超の場合に特に好ましい。触媒及び反応器レジメンによっては、ここでプロペン及びエテンのいずれかを得ることができ、それぞれ、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドに、又は芳香族化合物(好ましくは、6個~10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素化合物、特に非常に好ましくはベンゼン、トルエン、キシレン又はそれらの混合物)に変換することができる。
【0093】
本発明のプロセスを、適切に構成された熱分解装置を用いて実施することができる。したがって、本発明は、式(I):
【化6】
(式中、
Qは、2個~8個の炭素原子、特に3個~8個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつ、
nは、2~4、好ましくは2の数であり、かつ、
-
*は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有する高分子化合物の熱分解によって少なくとも1個のアミノ基を有する有機化合物を得るための、熱分解対象材料を送り込む少なくとも1つの計量供給装置と、熱分解用の少なくとも1つの加熱可能な反応器と、少なくとも1つの熱分解物捕集器とを備える熱分解装置及びその熱分解装置の使用であって、
上記熱分解用の加熱可能な反応器は、200℃~350℃の温度で反応器の温度制御に使用可能な少なくとも1つの加熱要素とともに、熱分解対象材料用の少なくとも1つの入口、及び熱分解物用の少なくとも1つの別個の出口、及び熱分解残渣用の少なくとも1つの別個の出口も備え、かつ、
計量供給装置及び熱分解用の加熱可能な反応器は、計量供給装置が少なくとも1つの供給導管を介して上記反応器の熱分解対象材料用の入口に接続されるように相互に配置及び構成されており、かつ、
熱分解用の加熱可能な反応器及び熱分解物捕集器は、好ましくはガス状の熱分解物を上記熱分解物用出口から排出し、排出された熱分解物を熱分解物捕集器に導入することが可能であるように互いに流体連通しており、かつ、
少なくとも1つの熱分解物捕集器は、上記捕集器内で上記反応器から排出される熱分解物の温度を200℃未満に低下させて、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はそれらの混合物から選択される熱分解生成物を形成するのに使用することが可能な200℃未満の温度で温度制御された少なくとも1つの冷却装置を備え、また冷却により得られる熱分解生成物の捕集及び排出用の少なくとも1つの容器を備え、かつ、
熱分解対象材料を送り込む少なくとも1つの計量供給装置、熱分解用の少なくとも1つの加熱可能な反応器、及び少なくとも1つの熱分解物捕集器は、これらが同時に作動することができるように相互に配置及び構成されている、熱分解装置及びその熱分解装置の使用を更に提供する。
【0094】
プロセスの説明において述べる高分子化合物は、同様に、熱分解に好ましい高分子化合物とみなされる。
【0095】
本発明によれば、特にアニリン、トルイジン、TDA、又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1個のアミノ基を有する少なくとも1種の芳香族アミノ化合物を回収するのに上記熱分解装置を使用することが好ましい。
【0096】
上記熱分解装置の加熱可能な反応器に使用される加熱ユニットは、例えば加熱要素、例えば、加熱コイル若しくは加熱プレート、又はガス流を加熱し、加熱したガス流を反応器へと導入する装置とすることができる。
【0097】
好ましい実施の形態においては、反応器は、ガス源への少なくとも1つの接続であって、反応器内の好ましくは空塔速度としての流量が0.01m/秒~20m/秒であるガス流が、調整器、例えばバルブを介して、反応器を通って熱分解物捕集器へと流れる、接続を追加的に含む。反応器として固定床反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内でのガス流の空塔速度としての流量が0.03m/秒~1m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として流動床反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内でのガス流の空塔速度としての流量が0.5m/秒~2m/秒の範囲であることが好ましい。反応器として噴流反応器を選択する場合、本発明によると、反応器内でのガス流の空塔速度としての流量が5m/秒~20m/秒の範囲であることが好ましい。
【0098】
ガス源からのガス流は、上述の通り反応器に導入する前に、例えば、加熱ユニットによって加熱してもよい。
【0099】
熱分解装置の熱分解物捕集器は、この捕集器内で、上記反応器から排出された熱分解物の温度を50℃未満まで(より好ましくは30℃未満まで)低下させて、熱分解生成物を形成させるのに使用することができる冷却装置を備えることが好ましい。これには、熱交換器の原理に従って作動する冷却ユニットが特に好適である。ここで、熱分解物捕集器を、熱分解物中に存在する熱分解生成物の構成要素を選択的に凝縮する選択的凝縮器として装備することができる。
【0100】
本発明によると、「流体連通」は、システムの部分を互いに接続し、それを介して、任意の物質状態であり得る物質を1つのプラント構成要素から次の構成要素へと輸送することができる装置の一部を意味するものと理解され、例えば、管の形態での供給導管である。
【0101】
さらに、熱分解装置の更なる好ましい実施の形態においては、上記熱分解装置は、更に、
360℃超の温度での反応器の温度制御に使用することができる少なくとも1つの加熱要素と、熱分解対象材料用の少なくとも1つの入口及び熱分解物用の少なくとも1つの別個の出口も備える、少なくとも1つの熱分解用の更なる加熱可能な反応器を備え、
上記加熱可能な反応器の熱分解残渣用の出口は、更なる加熱可能な反応器の熱分解対象材料用の入口と流体連通していることを条件とする。
【0102】
この実施の形態においては、好ましくは、ガス状の熱分解物が、熱分解物用の上記出口から排出され、排出された熱分解物を熱分解物捕集器に導入することができるように、熱分解装置が、更なる加熱可能な反応器と流体連通している少なくとも1つの更なる熱分解物捕集器を備える場合が好ましい。
【0103】
さらに、上記の更なる熱分解物捕集器は、好ましくは、200℃未満の温度で温度管理され、熱分解凝縮物、熱分解昇華物又はこれらの混合物から選択される熱分解生成物の形成を伴って、上記捕集器において、上記反応器から排出される熱分解物の温度を200℃未満に下げるために使用ことができ、冷却により得られた熱分解生成物を捕集し排出するための少なくとも1つの容器を備える、少なくとも1つの冷却装置を備えるように設計される。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0104】
a)熱分解対象材料の準備:
軟質ポリウレタンフォームを、表1に示す成分から標準的なプロセスによって製造した。
【0105】
【0106】
熱分解対象材料を準備するため、軟質フォームを150℃で、元の高さの1/20まで加熱プレスでプレスした後、1mm片に切断した。次いで、2gの量のこれらの小片を、ホルダー付きの5つのAl2O3坩堝の反応器内に導入した。b)に記載される熱分解を行った。
【0107】
b)熱分解の手順
軟質ポリウレタンフォームの熱分解を、Arが貫流された25mlの容量を有する固定床反応器内で273℃にて実施した。
【0108】
反応器内の窒素ガス流の流速(空塔速度)は0.07m/秒であった。用意された熱分解対象材料を反応器に導入した。導入されたポリウレタン材料の滞留時間は30分であった。反応器を273℃に加熱し、次いでこの温度で30分間保持した。反応器の下流には、得られた熱分解ガスの液体成分を分離するのに2つの凝縮器が設置されていた。得られた炭化材料の含有量を熱分解後のAl2O3坩堝の秤量によって決定した。2つの凝縮器の下流のガスをオンラインGCによって特性評価した。油の形態で得られた熱分解生成物の成分をGC-FIDによって決定した。これをSupelcoのSPB50カラムを備えたAgilent 7890Aを使用して行った。熱分解油をアセトンで1:50又は1:100に希釈した。結果を表2に示す。
【0109】
この熱分解により得られた熱分解残渣を、再度熱分解した。この2回目の熱分解を、N2が貫流された25mlの容量を有する固定床反応器内で360℃にて実施した。
【0110】
反応器内の窒素ガス流の流速(空塔速度)は0.07m/秒であった。先の熱分解からの熱分解残渣を、熱分解対象材料として反応器内に導入した。導入された熱分解対象材料の滞留時間は30分であった。反応器を360℃に加熱し、次いでこの温度で30分間保持した。反応器の下流には、得られた熱分解ガスの液体成分を分離するのに2つの凝縮器が設置されていた。
【0111】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の工程:
(a)式(I):
【化1】
(式中、
Qは、2個~8個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
nは、2~4、好ましくは2の数であり、
-
*は、ポリマー主鎖への共有結合を表す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有する少なくとも1種の高分子化合物を含む熱分解対象材料を、反応器に導入する工程と、
(b)工程(a)において導入された前記熱分解対象材料の少なくとも前記高分子化合物を前記反応器内で200℃~350℃の温度にて分解して、熱分解物としての気相生成物及び非気相熱分解残渣を得る工程と、
ここで、
(i)前記分解中に、前記反応器内の酸素ガスの量は、該反応器内に存在するガスの総体積に対して2.0体積%以下であり、かつ、
(ii)前記分解中に、前記熱分解物は前記反応器から排出され、かつ、
(iii)前記熱分解残渣は前記反応器から排出される;
(c)排出された前記熱分解物を200℃未満の温度に冷却して、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はそれらの混合物から選択される熱分解生成物を得る工程と、
(d)任意に、前記熱分解生成物を後処理する工程と、
を含む、熱分解プロセス。
【請求項2】
導入した前記熱分解対象材料を200℃~350℃に温度制御し、この目標温度に到達したら、対応して温度制御された熱分解対象材料の、該熱分解対象材料から生じる前記熱分解残渣の排出時間までの滞留時間を1秒~5時間、好ましくは2分~120分とすることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程(b)における温度は、200℃~300℃、230℃~295℃、好ましくは250℃~290℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
工程(b)における絶対圧力は、1.2bar以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
工程(b)における絶対圧力は、少なくとも0.8barであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記反応器からの前記熱分解物の排出を、前記反応器を通過するガス流又は吸引によって、好ましくは、前記熱分解物の形成時間と、前記反応器から得られる前記熱分解物の排出時間との間の期間としての前記熱分解物の滞留時間を0.1秒~600秒、好ましくは0.5秒から300秒の間、より好ましくは0.5秒~200秒とすることによって確保することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応器からの前記熱分解物の排出を、前記反応器を通過するガス流によって確保し、前記反応器内での前記ガス流の空塔速度としての流量を0.01m/秒~20m/秒の範囲とすることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
連続プロセス制御の文脈において、少なくとも工程(a)及び工程(b)を同時に行うことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
工程(b)における前記反応器内の酸素ガスの量は、いずれの場合も前記反応器内に存在する気体の総体積に対して、0.5体積%以下、好ましくは0.1体積%以下であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
不活性ガス、特に窒素、アルゴン、CO
2、NO、又はそれらの混合物を、前記熱分解対象材料が充填された前記反応器に通過させることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記高分子化合物は、式(Ia):
【化2】
(式中、-
*は、ポリマー主鎖への共有結合である)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記高分子化合物は、少なくとも、
i1)2個~8個の炭素原子を有する、好ましくは3個~8個の炭素原子を有する炭化水素単位に結合した少なくとも2個~4個、特に2個のイソシアネート基を含む少なくとも1種の有機イソシアネート化合物と、
i2)少なくとも2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1種の有機化合物と、
の反応によって得ることができることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記少なくとも1種の有機イソシアネート化合物は、前記炭化水素単位として、上述の炭素原子数を有し、かつ脂肪族炭化水素単位、脂環式炭化水素単位、芳香脂肪族炭化水素単位、芳香族炭化水素単位、又は複素環式炭化水素単位から誘導される単位を含むことを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
式(III):
【化3】
の少なくとも1つのジイソシアネートは、有機ポリイソシアネート化合物として選択されることを特徴とする、請求項12又は13に記載のプロセス。
【請求項15】
更なる工程において、前記反応器から排出された前記熱分解残渣は、第2の反応器に導入され、ここで360℃超の温度で分解されて、気相である第2の熱分解物と、気相でない第2の熱分解残渣を得て、この分解中に、前記反応器内の酸素ガスの量が、前記第2の反応器内に存在するガスの総体積に対して2.0体積%以下であり、かつ、この分解中に、前記第2の熱分解物が前記反応器から排出され、前記第2の熱分解残渣が前記反応器から排出されることを特徴とする、請求項1~1
4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
式(I):
【化4】
(式中、
Qは、3個~8個の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつ、
nは、2~4、好ましくは2の数であり、かつ、
-
*は、ポリマー主鎖への共有結合を示す)の少なくとも1つのポリウレタン構造単位を有する高分子化合物の熱分解によって少なくとも1個のアミノ基を有する有機化合物を得るための、熱分解対象材料を送り込む少なくとも1つの計量供給装置と、熱分解用の少なくとも1つの加熱可能な反応器と、少なくとも1つの熱分解物捕集器とを備える熱分解装置の使用であって、
前記熱分解用の加熱可能な反応器は、200℃~350℃の温度で前記反応器の温度制御に使用可能な少なくとも1つの加熱要素とともに、熱分解対象材料用の少なくとも1つの入口及び熱分解物用の少なくとも1つの別個の出口も備え、かつ、
前記計量供給装置及び前記熱分解用の加熱可能な反応器は、該計量供給装置が少なくとも1つの供給導管を介して前記反応器の熱分解対象材料用の入口に接続されるように相互に配置及び構成されており、かつ、
前記熱分解用の加熱可能な反応器及び前記熱分解物捕集器は、好ましくはガス状の熱分解物を前記熱分解物用出口から排出し、排出された前記熱分解物を前記熱分解物捕集器に導入することが可能であるように互いに流体連通しており、かつ、
少なくとも1つの熱分解物捕集器は、上記捕集器内で上記反応器から排出される前記熱分解物の温度を200℃未満に低下させて、熱分解物凝縮物、熱分解物昇華物、又はそれらの混合物から選択される熱分解生成物を形成するのに使用することが可能な200℃未満の温度で温度制御された少なくとも1つの冷却装置を備え、また冷却により得られる前記熱分解生成物の捕集及び排出用の少なくとも1つの容器を備え、かつ、
熱分解対象材料を送り込む少なくとも1つの計量供給装置、熱分解用の少なくとも1つの加熱可能な反応器、及び少なくとも1つの熱分解物捕集器は、これらが同時に作動することができるように相互に配置及び構成されている、使用。
【国際調査報告】