(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】部品の射出成形製造
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20240816BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20240816BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240816BHJP
B29C 45/56 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C33/14
B29C45/26
B29C45/56
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508722
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2022072424
(87)【国際公開番号】W WO2023017071
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102021120955.2
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フンペノーデル、イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルタ、ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】ケッテマン、ベルント - ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ワズラ、フリッツ
(72)【発明者】
【氏名】バーンシュ、アニカ
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA21
4F202AA28
4F202AA29
4F202AD05
4F202AD08
4F202AD24
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4F202CA11
4F202CB01
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4F202CQ01
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4F206AA21
4F206AA28
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4F206AD08
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4F206AG28
4F206JA07
4F206JB13
4F206JB15
4F206JF05
4F206JL02
4F206JM04
4F206JM05
4F206JN25
4F206JQ81
(57)【要約】
透光性のプラスチック(50)製の部品(500)を製造する方法において、部品(500)は、n個の輪郭(51)、特にn個の隆起した輪郭を有する前面と、色付きフィルム(40)で覆われた背面と、を有し、まず、第1工具部品(10)および第2工具部品(20)を備える射出成形工具(100)を提供する工程であって、第1工具部品および第2工具部品は、工具が閉じられた場合に、共になって、製造予定部品(500)の輪郭を有するキャビティ(30)を取り囲む、提供する工程が設けられている。第1工具部品(10)の表面は、部品(500)の前面のネガを表し、部品のn個の輪郭(51)に対応するn個の構造部(11)、特にn個の凹部を有する。第2工具部品(20)の表面は、部品(500)の背面のネガを表す。第2工具部品(20)の表面上に、フィルム(40)を位置決めする。射出成形工具(100)を閉じ、形成されたキャビティ(30)中に可塑化プラスチック(50)を射出する。可塑化プラスチック(50)の硬化後に、フィルム(40)が設けられた部品(500)を脱型する。この方法において、第2工具部品(20)の表面に、n個の隆起部(21)を設け、前述の位置決め工程前に、フィルム(40)に、n個の切り欠き部(43)を設け、これにより、第2工具部品(20)の表面上のn個の隆起部(21)が、フィルム(40)の位置決め時に、フィルムのn個の切り欠き部(43)に係合するようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性のプラスチック(50)製の部品(500)を製造するための方法であって、前記部品(500)は、n個の輪郭(51)、特にn個の隆起した輪郭を有する前面と、色付きフィルム(40)で覆われた背面と、を有し、
a.第1工具部品(10)および第2工具部品(20)を備える射出成形工具(100)を提供する工程であって、前記第1工具部品(10)および前記第2工具部品(20)は、前記工具が閉じられた場合に、共になって、前記製造予定部品(500)の輪郭を有するキャビティ(30)を取り囲み、
・前記第1工具部品(10)の表面は、前記部品(500)の前記前面のネガを表し、前記n個の輪郭(51)に対応するn個の構造部(11)、特にn個の凹部を有し、
・前記第2工具部品(20)の表面は、前記部品(500)の前記背面のネガを表す、
提供する工程と、
b.前記第2工具部品(20)の前記表面上に、前記フィルム(40)を位置決めする工程と、
c.前記射出成形工具(100)を閉じ、前記キャビティ(30)中に可塑化プラスチック(50)を射出する工程と、
d.前記可塑化プラスチック(50)の硬化後に、前記フィルム(40)が設けられた前記部品(500)を脱型する工程と、
を有する方法において、
e.前記第2工具部品(20)の前記表面に、n個の隆起部(21)を設け、
f.前記位置決め工程前に、前記フィルム(40)に、n個の切り欠き部(43)を設け、これにより、前記フィルム(40)の位置決め時に、前記第2工具部品(20)の前記表面上の前記n個の隆起部(21)が、前記フィルムの前記n個の切り欠き部(43)に係合するようにする、
方法。
【請求項2】
以下の追加の特徴、
a.前記工具(100)を閉じた後、前記キャビティ(30)中で、前記n個の構造部(11)の各々が前記n個の隆起部(21)のうちの1つに対向するように、前記第1工具部品(10)の前記表面中の前記n個の構造部(11)と、前記第2工具部品(20)の前記表面上の前記n個の隆起部(21)とが位置決めされていること、
b.前記脱型された部品(500)中で、前記フィルム(40)の前記n個の切り欠き部(43)の各々が、前記部品(500)の前記前面および/または前記背面に対して垂直である視認方向で、前記n個の輪郭(51)のうちの1つと重なるように、前記第1工具部品(10)の前記表面中の前記n個の構造部(11)と、前記第2工具部品(20)の前記表面上の前記n個の隆起部(21)とが位置決めされていること、
c.前記フィルム(40)の前記n個の切り欠き部(43)と、前記部品(500)の前記前面側の前記n個の輪郭(51)とが、前記部品の前記前面および/または前記背面に対して垂直である視認方向で、同じ外形を有すること、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の追加の特徴、
a.前記第2工具部品(20)の前記表面上の前記n個の隆起部(21)は、沈み込み可能に形成されていること、
b.前記部品(500)を前記脱型する工程前に、特に前記可塑化プラスチック(50)を前記射出する工程の間に、前記第2工具部品(20)の前記n個の隆起部(21)を沈み込ませ、特に、前記第2工具部品(20)の前記表面が、前記沈み込んだ隆起部の領域中で、完全に平坦になるようにすること、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
以下の追加の特徴、
a.前記フィルム(40)は、ラッカーフィルムまたは転写ラッカーフィルムであり、担体層(41)上にラッカー層(42)を有すること、
b.前記ラッカーフィルムまたは前記転写ラッカーフィルムは、前記担体層(41)がまず先に前記第2工具部分(20)の前記表面上に位置決めされること、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
以下の追加の特徴、
a.前記部品(500)の前記背面には、少なくとも1つの光源(200)が割り当てられること、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
以下の追加の特徴、
a.前記部品(500)は、車両ボディ用の内張り部品であること、
b.前記部品(500)は、車両ボディ用の被覆パネルであること、
c.前記前面側の前記n個の輪郭(51)を備える前記領域を除いて、前記部品(500)は、実質的に均一な厚さを有すること、
d.前記前面側に前記n個の輪郭(51)を備える前記領域を除いて、前記部品(500)の前記前面と前記背面とは、実質的に互いに平行に整列していること、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
以下の追加の特徴、
a.前記部品(500)の前記前面は、部分的または完全に被覆され、特にラッカー塗装され、好ましくはクリアラッカー塗装されること、
b.前記部品の前記前面側の前記n個の輪郭(51)の前記表面は、不透明に被覆される、特に塗装される、かつ/またはクロムメッキされており、好ましくはクロムフィルム(52)がホットスタンプされること、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
プラスチック製の部品(500)を製造するための射出成形工具(100)であって、前記製造予定部品(500)は、n個の輪郭(51)、特にn個の隆起した輪郭を有する前面と、色付きフィルム(40)で覆われた背面とを有し、以下の特徴、
a.前記射出成形工具は、第1工具部品(10)および第2工具部品(20)を備え、前記第1工具部品および前記第2工具部品は、前記工具が閉じられた場合に、共になって、前記製造予定部品(500)の輪郭を有するキャビティ(30)を取り囲み、
・前記第1工具部品(10)の表面は、前記部品(500)の前記前面のネガを表し、前記n個の輪郭(51)に対応するn個の構造部(11)、特にn個の凹部を有し、
・前記第2工具部品(20)の表面は、前記部品(500)の前記背面のネガを表すこと、
b.前記第2工具部品(20)の前記表面は、前記フィルム(40)の位置決めを容易にするために機能するn個の隆起部(21)を有すること、
c.前記工具を閉じた後、前記キャビティ中で、前記n個の構造部(11)の各々が前記n個の隆起部(21)の1つと対向するように、前記第1工具部品(10)の前記表面中の前記n個の構造部(11)と、前記第2工具部品(20)の前記表面上の前記n個の隆起部(21)とが位置決めされていること、
を有する、射出成形工具(100)。
【請求項9】
以下の追加の特徴、
a.前記第2工具部品(20)の前記表面上の前記n個の隆起部(21)は、沈み込み可能に形成されていること、
を有する、請求項8に記載の射出成形工具。
【請求項10】
透光性のプラスチック(50)製の射出成形製造された部品(500)であって、全戸部品(500)は、n個の輪郭(51)、特にn個の隆起した輪郭を有する前面と、色付きフィルム(40)で覆われた背面と、を有し、前記フィルム(40)は、n個の切り欠き部(43)を有し、前記切り欠き部(43)の領域中では、前記部品がフィルムで覆われておらず、前記n個の切り欠き部(43)の各々が、前記部品(500)の前記前面および/または前記背面に対して垂直である視認方向で、前記部品の前面側の前記n個の輪郭(51)のうちの1つと重なる、部品(500)。
【請求項11】
前記部品は、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法によって製造されていることを特徴とする、請求項10に記載の射出成形製造された部品。
【請求項12】
以下の追加の特徴、
a.前記部品(500)の前記背面は、平坦な面を有すること、
を有する、請求項10または11に記載の射出成形製造された部品。
【請求項13】
以下の追加の特徴、
a.前記フィルム(40)は、ラッカーフィルムであり、担体層(41)上にラッカー層(42)を有すること、
b.前記ラッカーフィルムは、前記ラッカー層(42)が、まず先に前記部品(500)の前記背面側に位置決めされていること、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項10~12のいずれか一項に記載の射出成形製造された部品。
【請求項14】
以下の追加の特徴、
a.前記部品(500)は、車両ボディ用の内張り部品であること、
b.前記部品(500)は、車両ボディ用の被覆パネルであること、
c.前記部品の前記前面側の前記n個の輪郭(51)の前記表面は、ラッカー塗装されている、好ましくは不透明にラッカー塗装されている、かつ/またはクロムメッキされていること、
d.少なくとも1つの光源(200)が、前記部品(500)の前記背面に割り当てられていること、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項10~13のいずれか一項に記載の射出成形製造された部品。
【請求項15】
以下の追加の特徴、
a.nは、1から1000までの数、特に10から500までの数であること、
を有する、請求項10~14のいずれか一項に記載の射出成形製造された部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性のプラスチック製の部品を製造するための方法、この種の部品を製造するのに適した射出成形工具、および射出成形製造された部品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性または熱硬化性プラスチック製の部品を製造するための射出成形方法は、長く公知である。この際、通常それぞれのプラスチックは液化され、それぞれの射出成形工具によって形成された型に射出される。冷却および/または架橋により、プラスチックは、再び固体状態に移行し、工具を開いた後、完成部品として取り外し、または脱型することができる。このようにして製造された部品の形状は、射出成形工具の形状によって予め決められる。この際、工具のキャビティが、完成した部品の形状と表面構造とを決定する。この際、キャビティは、通常2つまたは場合によってはこれ以上の工具部品によって画定され、それらが組み合わされてキャビティを形成する。
【0003】
このような射出成形を部品上へのフィルム適用と組み合わせることはすでに公知である。例えば、国際公開第93/04837 Al号には、エンボスフィルムを射出成形工具の2つの工具半体の間に固定して挟む方法が記載されている。工具半体の一方に形成されたスプルー路を介して、プラスチック材料は金型中のキャビティ中に射出され、この材料は、その後硬化してスタンピングフィルムの装飾で装飾されたプラスチック品を形成しつつ硬化し、金型から取り外すことができる。
【0004】
欧州特許公開第1 902 902 Al号は、車両の開口部用の被覆部材を記載していて、この被覆部材は、少なくとも部分的に金属化されたフィルムを有する。このフィルムは、前面側に第1プラスチック製層がオーバーモールドされている。このフィルムは、背面側には、第2プラスチック製の被覆層が後方で射出成形されている。被覆部材として形成されたこの部品は、自動車の距離センサーを被覆するために設けることができる。さらに、この被覆部材は、エンブレムとして形成することもできる。
【0005】
エンブレムまたはその他の装飾的構成を備えた、自動車における内張り部品(被覆パネル)の製造時には、例えば、透明プラスチック製の部品を、背面側に色彩設計を設けて製造することができる。この目的のために、部品の背面側に、特に色付きフィルム、例えば、ラッカーフィルムまたは転写ラッカーフィルムを配置することができ、このフィルムは、部品の射出成形プロセスの過程で上述した方法と同様の方法で適用される。
【0006】
特に、装飾構造部は、前面側での隆起した輪郭であってもよく、これは、部品の前面の表面から突出し、したがって部品の三次元輪郭を形成することができる。
【0007】
特別な視覚的効果は、部品の装飾構成の領域が背面側に色付き層を備えておらず、その結果、これらの領域が透明で、背面側から照明できる際に達成できる。特に魅力的な効果が得られるのは、例えば、装飾部の面に、クロム層またはその他の不透明な層が設けられていて、したがって突出した輪郭として形成された装飾部が後方の照明によって側方で周囲を照明されるようにした場合である。
【0008】
例えば、隆起した輪郭の領域を照明可能なこのような部品を製造するためには、部品の背面の色彩設計をできる限りぴったり合うようにすべきである。色付きフィルム、例えば、ラッカーフィルムまたはラッカー転写フィルムを用いて、部品の背面側で色彩設計を施す場合、部品の背面側の領域であって、部品の前面側の隆起した輪郭の領域に対応する領域は、精確に色彩被覆がないようにすべきである。この際、原理的には、まず、部品の射出成形プロセス中に、部品の背面を色付きフィルムで覆い、その後、部品の背面側の対応する領域を切断するか、またはレーザーで切り落とし、その結果、これらの箇所で、色付きフィルムまたは色付き層を後の時点で取り外すことが可能である。しかし、この追加の作業工程は、実地では場合によっては非常にコスト高となり、特に切り取りが十分に精密でない場合には、場合によっては満足のいく結果につながらない。
【0009】
色付きフィルムの担体層が、部品内側の外側表面側にあり、かつそこに残っていることも、製造予定部品にとって有利であるが、その理由は、これにより、色彩設計が良好になり、かつ同時に後方の色付き層の保護が可能になるからである。しかし、他方で、この場合は、色付き層以外に色付きフィルムの担体層も切り取らなければならないため、後の時点での部分的な切断またはレーザーでの切り落としがより困難になる。このプロセスについて、一方で自動生産を可能にし、他方で非常に精密な結果をもたらす満足のいく解決策はまだ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第93/04837 Al号
【特許文献2】欧州特許公開第1 902 902 Al号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これに対して、本発明の課題は、前面側に輪郭、特に突出したまたは隆起した輪郭、例えば、装飾的な輪郭が設けられていて、その背面側の一部の領域が色彩設計のために色付きフィルムで覆われた透光性のプラスチック製の部品を射出成形製造するための方法を提供することである。n個の輪郭を有する前面側の領域に対向する、部品の背面側の領域は、色付きフィルムで覆われないか、または色彩設計がないようにするべきである。この方法により、一方では簡単で信頼性が高く、自動化可能な製造が可能になり、他方では、非常に精密な結果が達成され、部品の背面の色彩設計が、部品の前面側の輪郭ぴったり合うように適合されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1から明らかであるような、透光性のプラスチック製の部品を製造する方法によって解決される。さらに、この課題は、さらなる独立請求項に示されるように、プラスチック製の部品を製造するための射出成形工具、および射出成形製造された部品によって解決される。この方法、射出成形工具および射出成形部品の好ましい構成は、従属請求項から明らかである。
【0013】
本発明による方法は、透光性のプラスチック製の部品を製造するために設けられ、この部品は、n個の輪郭、特にn個の隆起した輪郭を有する前面と、色付きフィルムで覆われた背面とを有する。n個の輪郭とは、特に、装飾的な輪郭、例えば、1つまたは複数のエンブレム、星形の隆起部などでありえ、これらは三次元的な印象を作り出す。
【0014】
本発明による方法は、まず以下に詳述する工程a~d、
a.第1工具部品および第2工具部品を備える射出成形工具を提供する工程であって、第1工具部品および第2工具部品とは、この工具が閉じられた場合に、共になって、製造予定部品の輪郭を有するキャビティを取り囲み、
・第1工具部品の表面は、部品の前面のネガを表し、n個の輪郭に対応するn個の構造部、特にn個の凹部を有し、
・第2工具部品の表面は、部品の背面のネガを表す、
提供する工程と、
b.第2工具部品の表面上に、フィルムを位置決めする工程と、
c.射出成形工具を閉じ、キャビティ中に可塑化プラスチックを射出する工程と、
d.可塑化プラスチックの硬化後に、フィルムが設けられた部品を脱型する工程と、
を特徴とする。
【0015】
さらに、本発明による方法は、以下のeおよびfの特徴、
e.第2工具部品の表面に、n個の隆起部を設けること、
f.上述の位置決め工程前に、フィルムに、n個の切り欠き部を設けることであって、これにより、フィルムの位置決め時に、第2工具部品の表面上のn個の隆起部が、フィルムのn個の切り欠き部に係合するようにする、設けること、
を特徴とする。
【0016】
この方法により、射出成形プロセス中に、部品の背面側への色付きフィルムの非常に精密かつ正確な適用が達成され、この際、色付きフィルムは、射出成形工具中に挿入される前に、既に切り欠き部を備えていて、これらの切り欠き部が、部品の前面側のn個の輪郭を有する領域に対応する。したがって、部品の背面側の対応する領域は、色付きフィルムがないままであり、その結果、部品の対向する背面側の色付きフィルムを用いた色彩設計は、n個の輪郭の外側の領域にのみ関係する。この提案された方法では、この第2工具部品の表面上のn個の隆起部により、フィルムが射出成形工具中に挿入される際に、フィルムの正確かつ精確な位置決めが行われる。第2工具部品の表面上のn個の隆起部が、フィルムのn個の切り欠き部に係合することにより、いわば、フィルムのひっかけ部または位置決め補助部として使用される。これにより、フィルムは、第2工具部品の表面上で所望の位置中に完全に正確に載置することができる。その後の射出成形プロセスの間でのフィルムの滑り落ちは、高い信頼性をもって回避される。全体として、この提案された方法により、フィルムの位置決めが明らかにより容易になり、色付きフィルムが正確に位置決めされて、かつフィルム中の切り欠き部が部品の前面側のn個の輪郭と精確に調整された部品を製造することができる。この際、第2工具部品の表面上のn個の隆起部は、フィルム中でぴったり合ったn個の切り欠き部と連携して、いわば2つの機能を持つ。一方で、フィルムは、射出成形工具中に固定される。他方、同時にフィルム中でぴったり合った切り欠き部によって、所望の色彩設計が達成される。
【0017】
特に好ましくは、本発明による方法は、第1工具部品および第2工具部品の表面の構成に関して、以下の追加的な特徴a~c、
a.工具を閉じた後、キャビティ中で、n個の構造部の各々がn個の隆起部のうちの1つに対向するように、第1工具部品の表面中のn個の構造部と、第2工具部品の表面上のn個の隆起部とが位置決めされていること、
b.脱型された部品中で、フィルムのn個の切り欠き部の各々が、部品の前面および/または背面に対して垂直である視認方向で、n個の輪郭のうちの1つと重なるように、第1工具部品の表面中のn個の構造部と第2工具部品の表面上のn個の隆起部とが位置決めされていること、
c.フィルムのn個の切り欠き部と、部品の前面側のn個の輪郭とが、部品の前面および/または背面に対して垂直である視認方向で、同じ外形を有すること、
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0018】
好ましくは、前述の特徴aおよびb、またはaおよびc、またはbおよびc、特に好ましくはaおよびbおよびcが共に実現されている。
【発明の効果】
【0019】
特に、製造予定部品の前面および/または背面に対して垂直である視認方向に関して、閉じた射出成形工具中で、第1工具部品の表面中のn個の構造部と第2工具部品の表面上のn個の隆起部とを、正確に一致または互いに対して正確に対向させることにより、製造予定部品の前面側のn個の輪郭に対する、第2工具部品の表面上の色付きフィルムの非常に精密な位置決めが達成される。特に、部品上のn個の輪郭の領域または場合によってはn個の輪郭の縁部領域を通って照明される製造予定部品の用途では、部品の背面側のフィルムのn個の切り欠き部の領域中で、部品中に垂直に放射される光が、部品の前面側の対応するn個の輪郭の領域中で、部品から出る、またはこの輪郭を狙い通り照明することが達成される。したがって、これらの方策により、製造予定部品において、視覚的に特に魅力的な効果を達成することができる。
【0020】
好適には、色付きフィルムのn個の切り欠き部の形状と、部品の前面側のn個の輪郭の形状とが一致する。この形状は、例えば、星形、その他の装飾的な形状またはエンブレム等であってもよい。
【0021】
部品を製造するための透光性のプラスチックは、対応する部品に使用される通常の熱可塑性プラスチックであってもよいか、または熱硬化性プラスチックであってもよく、特に自動車分野で使用されるプラスチックであってもよい。特に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、例えば、PA12、またはこのようなプラスチックのブレンドが特に適している。
【0022】
好ましくは、このプラスチックは、顔料およびこのプラスチックの光透過性に悪影響を及ぼす他の成分を含まない。このプラスチックは、硬化した状態で透明であることが特に好ましい。
【0023】
さらに、このプラスチックは、硬化状態で、好ましくない光の屈折をもたらす可能性のある結晶領域を含まないことが好ましい。
【0024】
本発明による方法の特に好ましい構成では、この方法は、以下の追加の特徴aまたはb、
a.第2工具部品の表面上のn個の隆起部は、沈み込み可能に形成されていること、
b.部品を脱型する工程前に、特に可塑化プラスチックを射出する工程の間に、第2工具部品のn個の隆起部を沈み込ませ、特に、第2工具部品の表面が、沈み込んだ隆起部の領域中で、完全に平坦になるようにすること、
のうちの少なくとも1つを特徴とし、この際、特徴aおよびbを共に実現するのが特に好ましい。
【0025】
したがって、本方法のこの構成によれば、任意選択的に、部品の滑らかな背面を得るために、射出成形の間に第2部品の表面上のn個の隆起部を、工具中に入れ込むことができる。
【0026】
この方法のこの構成では、まず、切り欠き部を備えた色付きフィルムが、第2工具部品の表面上に精確に位置決めされ、かつ、可塑化プラスチックの射出の間に、所定の位置中に留まることが達成される。n個の隆起部は、射出の間に既に沈み込み、その結果、部品の背面が実質的に平坦な表面を形成する。
【0027】
さらに、第2工具部品の表面中でのn個の隆起部が沈み込むことにより、これに続く射出成形工具からの部品の脱型を容易にすることができる。
【0028】
フィルムは、例えば、熱可塑性フィルムであってもよく、これは、有機色素を用いて、または有機顔料および/もしくは無機顔料を用いて着色されたものである。その後、色付きフィルムは、好ましくは単層として構成されていて、好ましくは50μm~1500μmの範囲の厚さを有する。しかしながら、色付きフィルムが少なくとも2つの層で形成されている好ましい実施形態も存在する。
【0029】
したがって、特に好ましい構成において、色付きフィルムに関する本発明による方法は、以下の追加的な特徴aまたはb、
a.フィルムは、ラッカーフィルムまたは転写ラッカーフィルムであり、かつ担体層上にラッカー層を有すること、
b.ラッカーフィルムまたは転写ラッカーフィルムは、担体層がまず先に第2工具部分の表面上に位置決めされること、
のうちの少なくとも1つを特徴とし、この際、双方の特徴の組み合わせが特に好ましい。
【0030】
これらの構成では、必ずしも色付きである必要がない担体が、第1層膜を形成し、ラッカー層が色付きフィルムの第2層膜を形成する。
【0031】
一般的に、色付きフィルムを用いた部品の色彩設計は、製造において特別な利点をもたらす。特に、色の均一な塗布を、低コストで、変わらない良好な品質で達成することができる。転写ラッカーフィルムおよびラッカーフィルムの採用はすでに公知であり、双方とも担体層または担体フィルムと、色付き層、特にラッカー層と、を備える。転写ラッカーフィルムがラッカーフィルムと異なる点は、担体、特に担体層または担体フィルムが、色を塗布した後に除去される点である。ラッカーフィルムの場合、担体層または担体フィルムは、射出成形プロセス後も部品上に、詳しく言えば部品の背面上に残る。
【0032】
担体層を備えたラッカーフィルムを、まず先に第2工具部品の表面上に配置することにより、完成した部品において、部品の背面側で、まず先にラッカー層が存在し、最後に担体層が存在する点が達成される。これにより、ラッカー層が、部品の後方外側に向かって担体層によって保護されているので、ラッカー層の特別な保護が達成される。さらに、ラッカー層を、プラスチック部品または透明射出成形材料と担体フィルムとの間に置くと、視覚的に最適な結果を得るのに有利である。
【0033】
好ましい構成では、ラッカー層は、通常の着色顔料と、通常の結合剤からなるマトリックスと、を含んでもよい。着色顔料は、自動車用ラッカーとして通常使用される全ての有機顔料および/または無機顔料であってもよい。
【0034】
特に好ましい構成では、ラッカー層の着色、したがって製造予定部品の色彩設計は、さらに取り付けされる部品の周囲の色彩設計、例えば、部品が使用される各車両ボディの車両の色に適合される。
【0035】
好ましい実施形態では、ラッカー層を用いて、可視波長域中の光を遮断する不透明層を部品の背面側に塗布するために使用することができる。これにより、残りは透明なプラスチックで形成された部品が、色付きフィルムを用いた背面の色彩設計により、相応の色に見える。
【0036】
透光性のプラスチックにより、基体中で部品を透明に形成することで、さらに、色付きフィルムがない領域を通して照明することができるという特別な利点もある。
【0037】
さらに、部品を基体中で透明に形成することにより、各色付きフィルムの選択を除き、同じ部品を、例えば、異なる車の色の車両ボディ用に使用できるという利点がある。
【0038】
色付きフィルムは、例えば、ウェブ状品として製造し、ロール状として巻かれていてもよく、射出成形工具に挿入する前に相応に裁断することができる。色付きフィルム中でn個の切り欠き部は、例えば、打ち抜きまたはレーザーで切り取ることができる。
【0039】
ラッカーフィルムまたは転写ラッカーフィルムの担体は、この種の目的のために通常使用されるプラスチックフィルムであってもよく、均一な厚さで、例えば、10~300μmの範囲、特に100~150μmの範囲、例えば、120μmの厚さである。この際、担体層は、非極性プラスチック、例えば、ポリプロピレン類の群からまたはフェノール樹脂から形成可能である。
【0040】
担体上のラッカー層は、好ましくは均一な層厚を有し、例えば、10μm~150μm、好ましくは10μm~100μm、特に好ましくは10μm~50μmの範囲の厚さである。例えば、この層厚は、15μm~20μmの範囲であってもよい。ラッカー層は、例えば、プラスチック分散液ベースで作ることができ、特にポリウレタン、ポリエチレンおよび/またはポリカーボネートを使用して作ることができる。
【0041】
合目的には、使用される色付きフィルム、および特に色付きフィルムの顔料で着色された層またはラッカー層は、使用される各透明射出成形プラスチックに適合性を有すべきである。
【0042】
担体上のラッカー層は、好ましくは既に硬化している。好ましくは、未架橋のラッカー成分を架橋させるために、UV照射のような別個の工程を実施するには及ばない。
【0043】
しかしながら、フィルム上に射出される可塑化プラスチックの接着性を向上させるために、第2工具部品の表面上に位置決めされる色付きフィルムを、接着促進物質で被覆するように設けることも可能である。この接着促進物質は、例えば、紫外線硬化性および/または熱硬化性を有するように構成することができる。
【0044】
本発明による方法では、特に担体層上にラッカー層を備えたラッカーフィルムとして形成された色付きフィルムは、射出成形方法の過程で、部品の背面のネガを表す第2工具部品の表面上に置かれる。この際、いくつかの特に好ましい実施形態では、ラッカーフィルムの担体層は、部品上に残る。視覚的に価値の高い外観を得るためには、ラッカー層を透明射出成形材料と担体層との間に配置するのが合目的である。本発明によるプロセスでは、色付きフィルム、特に担体を含むラッカーフィルムまたは転写ラッカーフィルムは、射出成形前にすでに、例えば、レーザーまたは打ち抜きによって、相応の領域中で完全に切り欠き部が設けられる。射出成形工具中のこれらの切り欠き部にされる領域を精確に位置決めするために、本発明は、前述の隆起部を第2工具部分中に設けるが、これらの隆起部は、位置決め補助部として機能し、これは色付きフィルムの切り欠き部に係合する。これらの隆起部は、好適には、製造予定部品の前面側の輪郭の外形に精確に対応する。平坦なフィルム中の切り欠き部もこれに応じて形成され、その結果、部品の前面側の輪郭に対向する領域で、切り欠き部を備えた部品の背面の精密な色彩設計が可能になる。
【0045】
したがって、好ましくは、色付きフィルムの顔料で着色された層、特に色付きラッカー層は、透明な熱可塑性プラスチックで直接オーバーモールドされ、この際、輪郭領域は、色付きフィルム中で、射出成形プロセスの前に既に切り欠き部となっている。
【0046】
本発明による方法の特に好ましい構成では、以下の追加の特徴、
a.部品の背面には、少なくとも1つの光源が割り当てられること、
が設けられている。
【0047】
製造予定部品を後方で照明することによって、特に魅力的な視覚効果が達成される。特に、これに関連して、n個の隆起した輪郭の表面、特に部品の前面側のn個の隆起した輪郭に、例えば、クロムメッキまたはその他の不透明なラッカー塗装により、追加的に設けられて、その結果、後方での照明により、n個の輪郭の外形を、照明することができるように、特別な造形を設けることができる。
【0048】
本発明による方法のさらに好ましい構成では、製造予定部品の構成に関して、以下の追加的特徴a~d、
a.部品は、車両ボディ用の内張り部品であること、
b.部品は、車両ボディ用の被覆パネルであること、
c.前面側のn個の輪郭を備えた領域を除いて、部品は、実質的に均一な厚さを有すること、
d.前面側にn個の輪郭を備えた領域を除いて、部品の前面と背面とは、実質的に互いに平行に整列していること、
のうちの少なくとも1つが設けられている。
【0049】
特に、直前に記した特徴aおよびb、ならびに特徴cおよびdは、好ましい実施形態において互いに組み合わされて実現されている。いくつかの実施形態では、すべての特徴a~dが組み合わされて実現されている。
【0050】
さらに、好ましくは、以下の追加の特徴aおよびb、
a.部品の前面は、部分的または完全に被覆され、特にラッカー塗装され、好ましくはクリアラッカー塗装されること、
b.部品の前面側のn個の輪郭の表面は、不透明に被覆され、特にラッカー塗装される、かつ/またはクロムメッキされること、好ましくはクロムフィルムでホットスタンプされること、
のうちの少なくとも1つが設けられてもよい。
【0051】
好ましくは、前述の特徴aおよびbは、互いに共に実現され、その結果、部品の前面側のn個の輪郭の表面、すなわち例えば、装飾部の表面は、クロムメッキまたは他の方法で不透明に被覆され、前面の残りの表面は、例えば、クリアラッカーで被覆される。この際、n個の輪郭の表面にも、追加的にクリアラッカーを設けてもよい。これによって、一方では部品の表面が保護されるとともに、他方では視覚的に非常に魅力的な効果が得られる。
【0052】
特に、部品の前面側のn個の輪郭に特別な色彩設計を施す、特にラッカー塗装および/またはクロムメッキすることにより、例えば、装飾的な特徴を有するこれらの輪郭を、視覚的に特に強調し、際立たせる。さらに、この構成により、部品の後方からの照明が特に効果的になるが、これは、輪郭がその外形から特に強調されるためである。
【0053】
したがって、提案された方法を用いて、特に視覚的に周囲にある縁部または輪郭の外形を照明することによって、部品の前面側の輪郭を精確に画定して照明することが可能な部品を製造することができる。
【0054】
特に、射出成形プロセスの間に、相応の着色を備えた相応の色付きフィルムを一体化または適用することにより、部品の背面を車両の色で作り上げることができる。色付きフィルムを用いることにより、部品の縁部まで容易に色彩設計を形成することができる。所望の視覚効果に応じて、部品の前面側の輪郭の表面は、被覆する、かつ/または、例えば、クロムメッキすることができるが、これは特にクロムフィルムをホットスタンプすることによって行われる。これは部品の射出成形製造後の時点で行うのが好適である。本発明に従って製造された部品で可能な特別な照明効果は、とりわけ、部品の前面側の輪郭に対応する、部品の後方の領域中で、色付きフィルムが部分的に切り欠き部となっていることによって達成される。前面側の輪郭の表面がクロムまたは他の方法で被覆されている場合、各輪郭の縁部領域または外形が、後方の光源により、直接見えるようになる。
【0055】
さらに、本発明は、プラスチックから、特に透明、詳しく言えば透光性のプラスチックから部品を製造するための射出成形工具を含む。製造予定部品は、n個の輪郭、特にn個の隆起した輪郭を有する前面と、色付きフィルムで覆われた背面とを有する。この際、本発明による射出成形工具は、以下の特徴、
a.射出成形工具は、第1工具部品および第2工具部品を備え、これらの第1工具部品と第2工具部品とは、工具が閉じられた場合に、共になって、製造予定部品の輪郭を有するキャビティを取り囲み、
・第1工具部品の表面は、部品の前面のネガを表し、n個の輪郭に対応するn個の構造部を有し、
・第2工具部品の表面は、部品の背面のネガを表すこと、
b.第2工具部品の表面は、対応するn個の切り欠き部を設けたフィルムの位置決めを容易にするために機能するn個の隆起部を有すること、
c.工具を閉じた後、キャビティ中で、n個の構造部の各々がn個の隆起部の1つと対向するように、第1工具部品の表面中のn個の構造部と、第2工具部品の表面上のn個の隆起部とが位置決めされていること、
を特徴とする。
【0056】
本発明による射出成形工具の更なる詳細および利点は、この種の射出成形工具が採用されるのが好ましい本発明による方法の説明に関連して既に開示している。したがって、射出成形工具のさらなる特徴および利点に関しては、上記の説明を参照されたい。
【0057】
特に、本発明による射出成形工具を用いると、相応の切り欠き部が設けられた色付きフィルムを、第2工具部品の表面上に正確かつ精密に位置付けることが可能であり、この際、第2工具部品の表面上の隆起部は、フィルムの切り欠き部に係合する。この方策を介して、色付きフィルムを用いて、後方に色彩設計を有する部品を製造することが可能であり、この際、部品の前面側のn個の輪郭に対応する、部品の背面側の領域では、正確に色彩設計がない。この際、n個の隆起部を備えた第2工具部品により、フィルムの位置決めが決定的に容易になり、その結果、精密な結果が得られる。
【0058】
本発明による射出成形工具の特に好ましい構成では、射出成形工具は、以下の追加の特徴、
a.第2工具部品の表面上のn個の隆起部は、沈み込み可能に形成されていること、
を特徴とする。
【0059】
n個の隆起部が第2工具部分に沈み込み可能である場合の特別な利点については、本発明による方法の説明に関連して既に詳細に触れたので、ここではそれを参照する。
【0060】
最後に、本発明は、透光性のプラスチック製の射出成形製造された部品を含み、この際、この部品は、n個の輪郭、特に隆起した輪郭を有する前面と、色付きフィルムで覆われた背面と、を有する。フィルムは、n個の切り欠き部を有し、これらの切り欠き部の領域では、部品がフィルムで覆われていない。これらのn個の切り欠き部の各々が、部品の前面および/または背面に対して垂直である視認方向で、部品の前面側のn個の輪郭のうちの1つと重なる。この際、部品が上述した方法で製造されていることが特に好ましい。
【0061】
特に好ましくは、部品の背面が平坦な表面を有するように設けられている。これは、特に、色付きフィルムのn個の切り欠き部に係合する第2工具部品の表面上のn個の隆起部を射出成形プロセスの間に沈み込ませることによって達成され、その結果、部品の背面上のn個の隆起部によって生じた跡に、部品の背面側で、可塑化プラスチックを注ぎ込むことができ、これにより平坦な面を形成することができる。
【0062】
この色付きフィルムは、好ましくは、担体層上のラッカー層によって形成されるラッカーフィルムである。好ましくは、担体層は、部品上に残る。射出成形製造された部品において、特に好ましくは、ラッカーフィルムは、まず先にラッカー層が部品の背面側に位置決めされ、その結果、担体層が、外側にあり、かつラッカー層の保護を形成する。
【0063】
さらに、好ましい実施形態では、部品は、以下の特徴a~d、
a.部品は、車両ボディ用の内張り部品であること、
b.部品は、車両ボディ用の被覆パネルであること、
c.部品の前面側のn個の輪郭の表面は、ラッカー塗装されている、好ましくは不透明にラッカー塗装されている、かつ/またはクロムメッキされていること、
d.少なくとも1つの光源が、部品の背面に割り当てられていること、
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0064】
これらの特徴のさらなる詳細については、上述の説明を参照されたい。
【0065】
原則として、本発明に従って製造可能な射出成形製造された部品の構成は、特に部品の前面側のn個の輪郭に関して、いかなる制限もない。したがって、これらの輪郭の造形は、機能的観点、視覚的観点および/またはデザイン的観点に応じて形成することができる。この際、これらの輪郭が、部品の残りの前面に対して隆起している点も必須ではない。したがって、これらの輪郭は、部品の前面中での凹部として形成することもできる。
【0066】
輪郭の個数nは、好ましくは自由に選択可能である。特に好ましい実施形態では、数nは、1~1000の範囲、好ましくは10~500の範囲である。これらの範囲内で、n=100~300個の輪郭がさらに好ましい。隆起した輪郭がこのような数である場合、およびしたがって射出成形工具の工具部品を相応の数で相応に形成することにより、かつ第1工具部品の表面上の構造部および第2工具部品の表面上の隆起部を形成することにより、部品の製造において、視覚的に非常に魅力的な結果が達成される。さらに、これらの提案された方策により、問題のないかつ故障の起こりにくい製造が可能になる。
【0067】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面と併せて以下の実施形態の説明に示されている。個々の特徴は、個々に、または互いに組み合わせて実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】本発明による射出成形工具の第1工具部品および第2工具部品の縦断面での概略図である。
【
図2】位置決めされた色付きフィルムを有する、本発明による射出成形工具の第1工具部品および第2工具部品の概略図である。
【
図3】射出されたプラスチックを有する、本発明による射出成形工具の第1工具部品および第2工具部品の概略図である。
【
図4】射出されたプラスチックと、第2工具部品において沈み込んだ隆起部とを有する、本発明による射出成形工具の第1工具部品および第2工具部品の概略図である。
【
図5】本発明に従って製造された射出成形部品の概略断面図である。
【
図6】後方からの照明を有する、本発明に従って製造された射出成形部品の概略断面図である。
【
図7】後方から照明された、本発明に従って製造された射出成形部品の視覚的印象を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1は、第1工具部品10および第2工具部品20の概略縦断面図であり、これらはともになって射出成形工具100のキャビティ30を形成するか、または取り囲んでいる。このキャビティ30は、製造予定の射出成形部品の輪郭を画定する。この際、キャビティ30を向いた、第1工具部品10の表面は、部品の前面のネガを形成し、この目的のためにいくつかの構造部11、特に凹部を有し、これらが製造予定部品の前面側の輪郭を画定する。キャビティ30を向いた、第2工具部品20の表面は、部品の背面側のネガを表し、第2工具部品20のこの表面は、いくつかの隆起部21を装備している。これらの隆起部21は、第2工具部品20内に沈み込むことができ、その結果、キャビティ30を向いた、工具部品20の表面は、平坦な表面を形成することができる。
【0070】
図2に図示するように、可塑化プラスチックが工具100のキャビティ30中に射出される前に、色付きフィルム40が第2工具部品20の表面上に置かれる。色付きフィルム40は、担体層41、特にプラスチックフィルムと、その上に配置された顔料を含む層または色付きの層、特にラッカー層42と、を含む。この色付きフィルム40は、切り欠き部43を有するが、その形状、特にその外形が、製造予定部品の前面側の輪郭に対応する。本発明による方法の過程では、これらの切り欠き部43は、製造予定部品の背面側で、製造予定部品の前面側の輪郭に精確に対向するように配置され、その結果、部品の輪郭の領域または外形は、背面側の色彩設計がされずにおかれる。第2工具部品20の表面上の隆起部21は、製造予定部品の背面側に、この色付きフィルム40を精密に位置決めするために機能する。この目的のため、これらの隆起部21は、色付きフィルム40の切り欠き部43に係合し、これにより第2工具部品20の表面上での色付きフィルムの正確な位置決めが可能になる。さらに、フィルム40の滑り落ちが防がれる。
【0071】
図3は、第1工具部品10および第2工具部品20によって画定された、射出成形工具100のキャビティ中への、可塑化プラスチック50の射出を示す。射出過程の間、色付きフィルム40は、第2工具部品20の隆起部21によって、その位置に精確に保持される。可塑化プラスチック50の色付きフィルム40上への接着を改良するために、色付きフィルム40は、プラスチック50を向いた側に接着剤を設けてもよい。部品の前面側には、射出成形プロセスの間に、第1工具部品10の凹部11に対応して、隆起した輪郭51が形成される。
【0072】
製造予定部品のプラスチック50は、特に透明な熱可塑性プラスチックであり、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートまたはポリアミド、特にPA12である。
【0073】
図4は、射出成形プロセスの間に、第2工具部品20中に隆起部21が沈み込んでいることを示している。この方策により、隆起部21によって製造予定部品中に形成された跡が可塑化プラスチックで完全に充填され、その結果、製造予定部品の背面は、平坦な表面を有する。
【0074】
このようにして製造可能な部品500を
図5の断面図で示す。部品500は、プラスチック50製の基体と、部品の背面側に、部品の前面側の輪郭51に対向する領域中に切り欠き部43を有する色付きフィルム40と、を有する。
【0075】
この部品のこの実施形態では、輪郭51の表面は、クロムフィルム52がホットスタンプまたはその他の方法で被覆されている。さらに、部品500をさらに組み立てるために、部品の背面側に2つの接続点53が付加されている。接続点53は、それ自体公知の方法で、さらなる射出成形プロセスで製造された。接続点53は、例えば、PC/ABS(ポリカーボネート/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)で製造されてもよい。
【0076】
場合によって、部品500の前面に、さらなる被覆、例えば、透明なラッカーを用いた被覆を設けることができ、これにより部品の前面の表面に、保護および傷防止性を与えることができる。これは、例えば、ポリカーボネートを熱可塑性材料として使用する場合に非常に有用であってもよい。
【0077】
図6は、射出成形製造された部品500における後方からの照明を図示している。この際、部品500の背面側に光源200が配置されていて、これらの光源は、色付きフィルム40の切り欠き部43の領域において、部品500の透明な基体内を照らす。色付きフィルム40の残りの領域は、可視光線を透過しない不透明層を形成する。輪郭51の表面のクロムフィルムコーティング52も光線に対して不透過性であり、その結果、光線は、輪郭51の外形領域において部品500の基体から出るため、輪郭51の外形のみを照らすことができる照明効果が達成される。
【0078】
図7は、部品500を後方から照明した場合のこの視覚効果を図示している。部品500の前面側の隆起した輪郭51は、星形を形成していて、後方からの照明によって、星形の輪郭51の外形が精確に画定されて周囲が照射される。
【0079】
全体として、本発明による射出成形工具100を用いた本発明による部品500の製造プロセスは、色付きフィルム40を用いて背面側に色彩設計を有する部品500を製造することを可能にし、その際、部品500の前面側の輪郭51を備えた領域、例えば、三次元に見える星を、位置精度をもって狙い通り照明することができる。同時に、背面側に色付きフィルム40を適用することで、部品の縁部まで確実に色彩設計を施すことができる。
【国際調査報告】