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特表2024-530692高感度分析物ネットワーク検出フローアッセイ及び関連方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】高感度分析物ネットワーク検出フローアッセイ及び関連方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G01N33/543 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508747
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 IB2022000468
(87)【国際公開番号】W WO2023017319
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/232,150
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/321,083
(32)【優先日】2022-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524055012
【氏名又は名称】センゾー ヘルス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラチャミム,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジェビン,ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ディアキテ,モハメド ラミネ,ディト ヨウバ
(72)【発明者】
【氏名】レイビー,ジェイコブ
(57)【要約】
【課題】
高感度のフローアッセイが望まれている。
【解決手段】
分析物の検出のための物品(例えば、ラテラルフローアッセイ)及び方法が一般的に記載される。アッセイは、例えば、相互接続ネットワーク又は格子の形成に起因して、アッセイにおける流れを遮断又は制限するネットワークの使用を含むことができる。
【選択図】図1F
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流位置と下流位置とを有する基材と;
前記下流位置に配置された複数の捕捉試薬を含む結合領域と、
を含み、
前記複数の捕捉試薬は、複数の分析物と相互接続されたネットワークを形成するように構成され、前記相互接続されたネットワークが、互いに相互接続された前記複数の捕捉試薬と前記複数の分析物との混合物を含む、
フローアッセイ。
【請求項2】
上流位置と下流位置とを有する基材と;
前記下流位置に配置された複数の捕捉試薬を含む結合領域と;
前記下流位置又は前記上流位置と前記下流位置との間の相互接続ネットワークであって、前記相互接続ネットワークが、互いに相互接続された前記複数の捕捉試薬と前記複数の分析物との混合物を含む、
フローアッセイ。
【請求項3】
前記複数の捕捉試薬の上流に配置され、前記複数の捕捉試薬と結合するように構成された複数の分析物をさらに含む、請求項2に記載のフローアッセイ。
【請求項4】
上流位置と下流位置とを有する基材と;
前記下流位置に配置された複数の捕捉試薬を含む結合領域と
を含み、
前記複数の捕捉試薬の少なくとも一部の流れは、前記分析物が前記捕捉試薬の少なくとも一部に結合するときに制限される、
フローアッセイ。
【請求項5】
前記複数の捕捉試薬の上流に配置され、前記複数の捕捉試薬と結合するように構成された複数の検出試薬をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のフローアッセイ。
【請求項6】
前記複数の捕捉試薬及び前記複数の検出試薬が、複数の分析物と相互接続されたネットワークを形成するように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のフローアッセイ。
【請求項7】
前記検出試薬の流れが、前記試料中に分析物がより多い場合に、前記分析物がより少ないか又は全くない場合よりも少ない前記検出試薬が前記アッセイから流出するように制限される、請求項1~6のいずれか一項に記載のフローアッセイ。
【請求項8】
フローアッセイを用いて試料中の複数の分析物を検出するための方法であって、前記方法が、
前記試料を基材の上流位置に導入することであって、前記基材が、下流位置の結合領域に配置された複数の捕捉試薬を含む、導入することと;
前記試料を前記上流位置から下流位置に向かって流すことと;
複数の検出試薬を前記上流位置から前記下流位置に向かって流すことと;
前記試料の前記複数の分析物を前記複数の捕捉試薬の少なくともいくつかと結合させることと;
前記複数の捕捉試薬と前記複数の分析物との混合物を含む相互接続ネットワークを形成することと:
少なくとも1つの前記分析物を検出することと、
を含む、方法。
【請求項9】
フローアッセイを用いて試料中の複数の分析物を検出するための方法であって、前記方法が、
前記試料を基材の上流位置に導入することであって、前記基材が、下流位置の結合領域に配置された複数の捕捉試薬を含む、導入することと;
前記試料を前記上流位置から前記下流位置に向かって流すことと;
前記試料の前記複数の分析物の少なくとも一部を前記複数の捕捉試薬の少なくとも一部と結合させることと;
前記試料の前記複数の分析物の少なくとも一部が前記複数の捕捉試薬の少なくとも一部と結合した後に、前記フローアッセイに沿った流れを制限することと;
前記分析物の少なくとも1つを検出することと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記複数の捕捉試薬と前記複数の分析物との混合物を含む相互接続ネットワークを形成することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試料の前記複数の分析物を前記複数の検出試薬と結合させることをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記結合領域から離れるように前記相互接続ネットワークを逆流させることをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記相互接続ネットワークを前記結合領域に向かって流すことをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記結合領域内の前記相互接続ネットワークの流れを停止することをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記相互接続ネットワークのサイズを増加させることをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記相互接続ネットワークを形成した後に、前記基材の少なくとも一部の上の流れを減少又は停止させることをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記流動工程のいずれか1つの間に、1つ以上の検出試薬が前記基材から流出されない、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
1つ以上の分析物が前記捕捉試薬に結合しないとき、前記流動工程中に1つ以上の検出試薬が前記基材から流出し、1つ以上の分析物が前記捕捉試薬に結合するとき、流出しない、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記試料の流速が、0.1mm/秒以上及び5mm/秒以下減少する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記相互接続ネットワークが、相互接続された前記複数の捕捉試薬、前記複数の検出試薬、及び/又は前記複数の分析物の混合物を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項21】
前記相互接続ネットワークが、複数の捕捉試薬、検出試薬、及び/又は分析物を含む沈殿物又は格子を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項22】
前記分析物を含む試料をさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項23】
前記複数の捕捉試薬及び前記複数の検出試薬が、前記下流位置で前記複数の分析物と前記相互接続ネットワークを形成するように構成される、請求項1~22のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項24】
前記基材を少なくとも部分的に囲むカセットをさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項25】
前記相互接続ネットワークが、前記複数の分析物、前記複数の検出試薬、及び/又は前記複数の捕捉試薬の間の非共有結合相互作用を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項26】
前記複数の捕捉試薬が、前記基材の表面上の前記下流位置に配置される、請求項1~25のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項27】
前記複数の検出試薬が、前記基材の表面上の前記上流位置に配置される、請求項1~26のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項28】
前記基材が、前記基材の上流位置に配置された検出試薬を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項29】
前記相互接続ネットワークが、前記試料又は前記試料の溶媒内で難溶性又は不溶性である、請求項1~28のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項30】
前記相互接続ネットワークが、前記基材内で沈殿物を形成する、請求項1~29のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項31】
前記相互接続ネットワークが、前記分析物及び前記捕捉試薬の凝集体を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項32】
前記試料が、塩、緩衝液、及び/又は界面活性剤をさらに含む、請求項1~31のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項33】
前記複数の捕捉試薬が複数の捕捉抗体であり、前記分析物が前記複数の捕捉抗体の抗原である、請求項1~32のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項34】
前記検出試薬の流れが、前記試料中に分析物がより多い場合に、分析物がより少ないか又は全くない場合よりも少ない前記検出試薬が前記アッセイから流出するように制限される、請求項1~33のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項35】
前記検出試薬が、1つ以上のHRPコンジュゲートである、請求項1~34のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項36】
前記検出試薬が1つ以上のナノ酵素である、請求項1~35のいずれか一項に記載のフローアッセイ又は方法。
【請求項37】
フローアッセイであって:
上流位置と下流位置とを有する基材と;
前記下流位置に配置された複数の捕捉試薬を含む結合領域と;
前記複数の捕捉試薬の上流に配置された複数の検出試薬と;
前記基材の少なくとも一部を囲むカセットであって、前記カセットは、第1の部分と、前記第1の部分に対向する第2の部分とを備え、前記基材は、前記第1の部分と前記第2の部分との間に配置され、前記第2の部分は、前記第1の部分に向かって延在する突出部を備える、カセットと
を含み、
前記突出部は、前記基材を前記第1の部分に対して押圧する、
フローアッセイ。
【請求項38】
前記突出部が、前記基材の前記上流位置と前記下流位置との間の距離の10%以上である、請求項37に記載のフローアッセイ。
【請求項39】
前記突出部が、前記基材の前記上流位置と前記下流位置との間の距離の90%以下である、請求項37に記載のフローアッセイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
ラテラルフローアッセイ上での分析物の検出のための物品(例えば、ラテラルフローアッセイ)及び方法が、一般的に記載される。
【背景技術】
【0002】
背景
生物学的標的及び化学的標的の迅速な分析は、予備又は緊急の医学的スクリーニングに重要であり得、このことは、分析を実施するために特定の迅速な試験が広範に使用されていることを明らかにする。多くのそのような迅速試験は、紙上のラテラルフローアッセイを用いたクロマトグラフィー技術に基づくものである。これらのラテラルフローデバイスのいくつかは、一般にナノ粒子に基づいており、限られた感度しか提供しない。感度の制限にもかかわらず、これらのナノ粒子に基づく試験は、それらの単純さ及び低い製造コストのために好ましい。しかしながら、増大した感度を有する、改良された後のフローアッセイが望まれている。
【発明の概要】
【0003】
概要
相互接続されたネットワーク(例えば、格子)内の分析物の検出のための物品(例えば、フローアッセイ、ラテラルフローアッセイ)及び方法が一般的に記載される。本開示の主題は、場合によっては、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替解決策、及び/又は1つ以上のシステム及び/又は物品の複数の異なる使用を含む。
【0004】
一態様において、フローアッセイが記載され、フローアッセイは、上流位置と下流位置とを有する基材と、下流位置に配置された複数の捕捉試薬を含む結合領域とを含み、複数の捕捉試薬の少なくとも一部の流れは、分析物が捕捉試薬の少なくとも一部に結合するときに制限される。
【0005】
別の態様では、フローアッセイを用いて試料中の複数の分析物を検出するための方法であって、方法は、試料を基材の上流位置に導入することであって、基材は、下流位置の結合領域に配置された複数の捕捉試薬を含む、導入することと、試料を上流位置から下流位置に向かって流すことと、試料の複数の分析物の少なくとも一部を複数の捕捉試薬の少なくとも一部と結合させることと、試料の複数の分析物の少なくとも一部が複数の捕捉試薬の少なくとも一部と結合した後にフローアッセイに沿った流れを制限することと、分析物の少なくとも1つを検出することと、を含む。
【0006】
別の態様では、上流位置と下流位置とを有する基材と、下流位置に配置された複数の捕捉試薬を含む結合領域とを含むフローアッセイが記載され、複数の捕捉試薬は、複数の分析物と相互接続されたネットワークを形成するように構成され、相互接続されたネットワークは、互いに相互接続された複数の捕捉試薬と複数の分析物との混合物を含む。
【0007】
別の態様では、上流位置と下流位置とを有する基材と、下流位置に配置された複数の捕捉試薬を含む結合領域と、下流位置又は上流位置と下流位置との間の相互接続されたネットワークとを含み、相互接続ネットワークは、互いに相互接続された複数の捕捉試薬と複数の分析物との混合物を含む、フローアッセイが記載される。
【0008】
別の態様では、フローアッセイを用いて試料中の複数の分析物を検出するための方法が記載され、この方法は、基材の上流位置に試料を導入することであって、基材は下流位置の結合領域に位置する複数の捕捉試薬を含む、導入することと、上流位置から下流位置に向かって試料を流すことと、上流位置から下流位置に向かって複数の検出試薬を流すことと、試料の複数の分析物を複数の捕捉試薬の少なくともいくつかと結合させることと、複数の捕捉試薬と複数の分析物との混合物を含む相互接続ネットワークを形成することと、少なくとも1つの分析物を検出することと、を含む。
【0009】
別の態様では、上流位置と下流位置とを有する基材と、下流位置に配置された複数の捕捉試薬を含む結合領域と、複数の捕捉試薬の上流に配置された複数の検出試薬と、基材の少なくとも一部を囲むカセットとを含むフローアッセイが記載され、カセットは、第1の部分と、第1の部分に対向する第2の部分とを含み、基材は、第1の部分と第2の部分との間に配置され、第2の部分は、第1の部分に向かって延在する突出部を含み、突出部は、基材を第1の部分に対して押圧する。
【0010】
本開示の他の利点及び新規な特徴は、添付の図面と併せて考慮される場合、本発明の様々な非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。本明細書と参照により組み込まれる文書が、矛盾し及び/又は一貫性のない開示を含む場合、本明細書が優先するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
本発明の非限定的な実施形態は、概略的であり、一定の縮尺で描かれることを意図しない添付の図面を参照して、例として説明される。図において、図示された同一又はほぼ同一の各構成要素は、一般に単一の数字によって表される。明確にするために、全ての構成要素が全ての図において標識されているわけではなく、また、当業者による本発明の理解を可能にするために図示が必要でない場合、本発明の各実施形態の全ての構成要素が示されているわけでもない。図において:
【0012】
図1A】いくつかの実施形態による、フローアッセイを用いた分析物の検出を概略的に図示する;
図1B】いくつかの実施形態による、フローアッセイを用いた分析物の検出を概略的に図示する;
図1C】いくつかの実施形態による、フローアッセイを用いた分析物の検出を概略的に図示する;
図1D】いくつかの実施形態による、フローアッセイを用いた相互接続ネットワーク内の複数の分析物の検出を概略的に図示する;
図1E】いくつかの実施形態による、フローアッセイを用いた相互接続ネットワーク内の複数の分析物の検出を概略的に図示する;
図1F】いくつかの実施形態による、フローアッセイを用いた相互接続ネットワーク内の複数の分析物の検出を概略的に図示する;
図1G】いくつかの実施形態による、少なくとも1つの分析物及び少なくとも1つの捕捉試薬を含む、相互接続ネットワークを概略的に図示する;
図1H】いくつかの実施形態による、少なくとも1つの分析物及び少なくとも1つの捕捉試薬を含む、相互接続ネットワークを概略的に図示する;
図1I】いくつかの実施形態による、少なくとも1つの分析物及び少なくとも1つの捕捉試薬を含む、相互接続ネットワークを概略的に図示する;
図1J】いくつかの実施形態による、少なくとも1つの分析物及び少なくとも1つの捕捉試薬を含む、相互接続ネットワークを概略的に図示する;
図1K】いくつかの実施形態による、少なくとも1つの分析物及び少なくとも1つの捕捉試薬を含む、相互接続ネットワークを概略的に図示する;
図1L】いくつかの実施形態による、少なくとも1つの分析物及び少なくとも1つの捕捉試薬を含む、相互接続ネットワークを概略的に図示する;
図2A】いくつかの実施形態による、カセットの第1の部分に対して基材を押圧することができる突出部を含むカセットの概略図である;
図2B】いくつかの実施形態による、カセットの第1の部分に対して基材を押圧することができる突出部を含むカセットの概略図である;
図2C】いくつかの実施形態による、カセット及びそれに含まれる突出部の概略図である;
図2D】いくつかの実施形態による、カセット及びそれに含まれる突出部の概略図である;
図2E】いくつかの実施形態による、カセット及びそれに含まれる突出部の概略図である;
図2F】いくつかの実施形態による、カセット及びそれに含まれる突出部の概略図である;
図3】一組の実施形態による基材の写真画像である;
図4】いくつかの実施形態による、小片に切断された基材の写真画像を示す;
図5】いくつかの実施形態による、96ウェルプレート内の切断基材の小片の写真画像である;
図6】いくつかの実施形態による、切断された基材の様々な片の吸光度を示す棒グラフである;
図7】いくつかの実施形態による、2つのアッセイのフロープロファイルを比較する、使用後の2つのラテラルフローアッセイの写真画像である;
図8】いくつかの実施形態による、捕捉試薬としての抗体の異なるタイプ及びサイズの使用を比較する、ラテラルフローアッセイの写真画像を示す;
図9】いくつかの実施形態による、分析物として呼吸器合胞体ウイルス(RSV)由来の抗原を使用する画像である;
図10】いくつかの実施形態による、分析物として呼吸器合胞体ウイルス(RSV)由来の抗原を使用する画像である;
図11】いくつかの実施形態による、抗体の流動特性を決定するために陽性及び陰性試料を比較する、ラテラルフローアッセイ実行中の蛍光標識抗体を有するストリップの経時顕微鏡画像を示す;
図12】いくつかの実施形態による、陽性試料及び陰性試料についての膜を通る流れの間の標識酵素検出試薬の経時顕微鏡画像を示す;
図13】いくつかの実施形態による、TMB添加前及び後の陽性及び陰性試料についてのストリップの蛍光画像化を示す;
図14】いくつかの実施形態による、陽性及び陰性試料についてのTMB添加及び発色後のストリップの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
本開示は、分析物(例えば、相互接続ネットワーク、沈殿物、及び/又は格子内)の検出のためのフローアッセイ及び方法を記載する。いくつかの実施形態では、ラテラルフローアッセイ上の流れは、例えば、分析物が結合領域内の試薬(例えば、捕捉試薬、捕捉抗体)に結合する場合、減少する(例えば、制限される)。有利には、流速の減少(例えば、分析物が捕捉試薬に結合する場合)は、分析物の流れが捕捉試薬への分析物の結合時に減少しない従来のラテラルフローアッセイと比較して、分析物の検出を改善することができる。いくつかの例では、フローアッセイは、紙基材などの基材の表面上に分析物を流すラテラルフローアッセイである。多くの既存のラテラルフローアッセイは、紙基材上のクロマトグラフィー技術に基づいており、例えば、分析される試料内に存在する場合、分析物を視覚的に検出するためにナノ粒子を使用することができる。しかしながら、これらの比色法は、限られた感度しか提供しない。対照的に、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)などの酵素技術は、ELISAが酵素反応及び酵素基材の添加を使用し、アッセイの感度を改善することができるので、ほとんどの既存のラテラルフローアッセイと比較してより高い感度を提供することができる。しかしながら、ELISAプロセスは、法外に時間がかかり、ラテラルフローアッセイと比較してより複雑な処理を必要とする場合がある。
【0014】
本開示の状況において、従来のラテラルフローアッセイで使用されるナノ粒子を酵素(すなわち、捕捉試薬)及び酵素のための発色基材(すなわち、検出試薬)で置き換えることによって、ラテラルフローアッセイの感度及び性能を改善することができることが発見された。発色酵素基材を本明細書に記載の特徴と組み合わせて使用することによって、ラテラルフローアッセイの感度が、多くの既存のラテラルフローアッセイと比較して劇的に改善され得ることが予想外に発見された。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、改善された感度は、捕捉試薬、及び場合により検出試薬を含む相互接続ネットワーク(例えば、格子、沈殿物)の形成によって少なくとも部分的に達成されると考えられ、この相互接続ネットワークの形成は、アッセイの検出限界を増加させ、改善された感度をもたらし得ると考えられる。本明細書に記載される物品及び方法は、マイクロ流体チャネルシステムを含む任意の適切なフローアッセイに適用することができ、本明細書に記載される態様は、ラテラルフローアッセイに限定されないことを理解するべきである。
【0015】
例示的な実施形態では、分析物(又はいくつかの他の目的の種)を含有することが疑われる試料は、ニトロセルロース紙のストリップなどの基材の上流位置に堆積され、ストリップは、上流位置に酵素などの検出試薬と、下流位置に捕捉抗体などの捕捉試薬とを含む。ストリップは、試料を下流の捕捉試薬に向かって流すウィッキング材料を含むことができる。場合によっては、試料が下流に流れるとき、試料内の分析物(存在する場合)は、検出試薬(例えば、検出酵素)に結合することができ、分析物及び検出試薬は、下流捕捉抗体に向かって流れることができる。いくつかの場合において、分析物及び捕捉抗体は結合し、さらに相互接続したネットワーク(例えば、沈殿物、格子)を形成し得る複合体を形成することができる。この相互接続したネットワークは、検出試薬などのアッセイの少なくともいくつかの成分の流れを停止させるか、又は流れを著しく減少させることができる。この相互接続ネットワークについての詳細は、以下にさらに記載されるが、簡単には、またいかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、相互接続ネットワークの形成は、沈殿物及び/又は格子の形成をもたらし得、ここでさらなる分析物、捕捉抗体、及び場合により検出試薬が結合し得るか、又は捕捉され得る(例えば、相互接続ネットワークの細孔内に捕捉され得る)と考えられる。結合領域内のこの相互接続ネットワークの存在は、シグナル(例えば、視覚シグナル)をもたらし得る。場合によっては、シグナルは、視覚的に観察可能である。いくつかの場合において、シグナル(例えば、比色シグナル)を生成するために結合領域に適用される、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)などの染料又は発色試薬。場合によっては、ストリップ上のそのような発色試薬の使用中、発色試薬及び/又は試料又はアッセイの他の成分の逆流(すなわち、下流から上流への流れ)をもたらし得る。しかしながら、本開示によって説明されるように、ストリップは、カセットの第1の部分から、カセットの第1の部分に対してストリップを押圧することができるカセットの第2の対向する部分まで延在する突出部(例えば、ブリッジ)を含むカセット内に(少なくとも部分的に)封入されてもよく、これは試料(又は検出試薬などの試料内の成分)の逆流を減少又は防止することができることも発見された。
【0016】
複数の捕捉試薬(例えば、捕捉抗体)及び複数の分析物の相互接続ネットワークの形成は、以下により詳細に記載されるが、簡潔には、また理論に拘束されることを望むものではないが、この相互接続ネットワークは、分析物が捕捉試薬に結合するが、相互接続ネットワークを形成しない特定の既存のアッセイと比較して、フローアッセイの感度を改善する(例えば、検出限界を低下させる)と考えられる。以下でより詳細に説明されるように、相互接続ネットワークは、複数の分析物及び/又は捕捉試薬(例えば、分析物及び捕捉試薬の混合物)を含む沈殿物及び/又は格子を含むことができ、分析物及び/又は捕捉試薬の少なくともいくつかは、互いに接続されている。複数の分析物及び/又は捕捉試薬間の接続は、共有結合相互作用(例えば、結合)及び/又は非共有結合相互作用(例えば、イオン相互作用、水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用)であり得る。いくつかの実施形態では、複数の分析物及び/又は捕捉試薬間の接続は、抗原-抗体対形成(例えば、1つ以上の抗原-抗体対形成)などの相補的相互作用であり得る。他の接続も可能である。フローアッセイ内の相互接続ネットワークに関する詳細は、以下にさらに記載される。
【0017】
図面を参照して、特定の非限定的な実施形態をさらに詳細に説明する。これらの実施形態に関して記載された様々な構成要素、特徴、システム、アッセイ、及び方法は、本開示が本明細書に記載された特定の実施形態のみに限定されないので、個々に、及び/又は任意の所望の組み合わせで使用することができることを理解するべきである。
【0018】
図1Aは、分析物の検出に使用されるフローアッセイ100の概略図を示す。図において、フローアッセイ100は、上流位置112及び下流位置114を有する表面を含む基材110を含む。基材110上の上流位置112の近くに、試料領域116及び検出試薬領域118が配置され、ここで試料及び検出試薬をそれぞれ堆積させることができる。試料を基材上に(例えば、試料領域内に)導入すると、試料(又は試料内の分析物)のフローは、上流位置から下流位置に(例えば、毛細管作用、ウィッキングを介して)流れる。
【0019】
フローアッセイ100はまた、検出試薬領域118に堆積された検出試薬130を含むことができる。検出試薬130及び/又は試料内の分析物に結合するように構成され得る捕捉試薬120は、結合領域122に配置され得る。したがって、場合によっては、捕捉試薬120は、目的の特定の分析物に結合するように構成され、検出試薬及び目的の分析物の両方との結合を容易にするために、検出試薬に相補的なサイズ、形状、及び/又は組成を有し得る。
【0020】
図1Bでは、分析物140を含む試料が、試料領域116に、すなわち結合領域122の上流の位置に堆積されている。検出試薬130及び分析物140は、図に流れ142として示されるように、下流位置114に向かって結合領域122に向かって(例えば、ウィッキングを介して)流れ得る。最初に、検出試薬130は、捕捉試薬120に結合することができる。次に、分析物140が結合領域122に向かって流れた後、図1Cに概略的に示すように、分析物140は捕捉試薬120に結合することができる。結合すると、分析物-捕捉試薬-検出試薬複合体が(例えば、外部使用者によって視覚的に)検出され得る。捕捉試薬120が分析物140に結合すると、捕捉試薬120は、図に概略的に示されるように、結合領域122に(例えば、上流から下流位置へとフローが続くときでさえ)留まる(例えば、結合領域122から移動しない)ように構成され得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、試料内に複数の分析物が存在し、フローアッセイは複数の分析物のうちの1つ以上を検出し得る。例えば、図1Dに概略的に示されるように、複数の分析物140が試料領域116内に存在し、複数の捕捉試薬120が結合122内に存在する。フローが開始され得(例えば、フロー142)、複数の分析物140及び検出試薬130が、図に示されるように、複数の捕捉試薬120に向かって(例えば、上流位置から下流位置に)流れ得る。
【0022】
複数の分析物及び/又は捕捉試薬は、複数の分析物、捕捉試薬、及び/又は検出試薬のうちの少なくともいくつかを含む、相互接続ネットワークを形成し得る(又は相互接続ネットワークを形成するように構成され得る)。例えば、図1Eに示されるように、複数の分析物及び複数の捕捉試薬を含む相互接続ネットワーク150が示されている。有利には、相互接続ネットワークの形成は、特定の既存のフローアッセイと比較して、フローアッセイの感度を改善することができる。相互接続ネットワークに関する詳細は、以下でさらに説明される。
【0023】
相互接続ネットワークの形成後、分析物を検出することができる。例えば、図1Fに示されるように、染色試薬160がピペット162から、相互接続ネットワーク150を含む結合領域122に分配される。染色試薬は、分析物が存在する場合に試薬がシグナルを生成するように、検出試薬及び/又は分析物を変化させることができる。例えば、図において、相互接続ネットワークに結合するか、又は単に遮断若しくは捕捉され得る検出試薬130Bは、少なくとも1つの分析物140の存在及び染色試薬160への曝露を示すシグナルを生成することができる。
【0024】
相互接続ネットワーク(例えば、析出物、格子)は、様々な構成を有することができる。図1G~1Kは、いくつかの例示的な構成を概略的に示す。例えば、図1Gでは、相互接続ネットワーク150は、複数の捕捉試薬120及び複数の分析物140を含み、複数の分析物140間の非共有結合相互作用によって接続される。対照的に、図1Hは、2つの分析物140間の少なくとも1つの結合152によって接合された相互接続ネットワークを示す。図1Iは、結合152が2つの捕捉試薬120の間にある、相互接続ネットワーク150の構成を概略的に示す。図1Jでは、捕捉試薬120は、2つの分析物を架橋し、相互接続ネットワーク15のための凝集物を形成する。また図1Kは、分析物140が2つの捕捉試薬120を架橋し、相互接続ネットワーク150のための凝集体を形成する、相互接続ネットワーク150の構成を概略的に示す。いくつかの実施形態では、捕捉試薬は、2つ以上の分析物を結合するように構成されている。例えば、図1Lは、相互接続ネットワーク150が2つの分析物を結合する捕捉試薬120を含むように、2つの分析物140を結合するように構成された捕捉試薬120を概略的に示す。いくつかの実施形態では、分析物の少なくともいくつかは、2つ以上の捕捉試薬に結合してもよく、少なくともいくつかの捕捉試薬も2つ以上の分析物に結合してもよく、捕捉試薬及び分析物の鎖又は凝集体を形成する。すなわち、いくつかの実施形態では、相互接続ネットワークは、複数の捕捉試薬及び/又は分析物を含む鎖又は凝集体を含む。もちろん、相互接続ネットワークの他の構成も可能であり、構成は、図に概略的に示されたものに限定されない。相互接続ネットワークに関するさらなる詳細は、以下及び本明細書の他の箇所で説明される。
【0025】
フローアッセイ内の相互接続ネットワーク(例えば、格子)の形成は、アッセイのフロー特性に影響を及ぼし得る。例えば、相互接続ネットワークは、基材の少なくともいくつかの部分上で流れが減少、制限、及び/又は停止されるように、基材の細孔をブロックすることができる。いくつかの実施形態では、逆流(すなわち、下流位置から上流位置への流れ)が可能である。逆流を緩和又は排除するために、カセットに対して基材を押圧する突出部を備えるカセット内に基材を封入(例えば、少なくとも部分的に封入)することができることが発見された。例示として(限定ではなく)、図2A及び図2Bは、そのようなカセットの概略図を示す。図2Aは、試料を堆積させるための試料窓210と、基材の結合領域を見るための視認窓220とを有するカセット200の上面図を示す。図2Bは、カセット200の断面図を示し、カセット200の第1の部分230及び第2の部分240を示し、カセットの対向する第1の部分230に向かって延在する突出部250を有する。突出部は、カセットの第1の部分に対して基材を押圧することができ、これは、有利には、フローアッセイの1つ以上の成分の(例えば、検出試薬、試料溶媒の)逆流を減少又は排除することができる。また図2A図2Bはカセットの1つの突出部を示すが、1つ以上の突出部が存在できることを理解するべきである。カセット及びその突出部に関するさらなる詳細は、以下及び本明細書の他の箇所でさらに説明される。
【0026】
上述したように、本明細書に記載の物品及び方法は、フローアッセイに使用することができる。例えば、いくつかの実施形態において、フローアッセイはラテラルフローアッセイである。当業者によって理解されるように、ラテラルフローアッセイは、分析物の存在(又は非存在)を確認するための診断技術である。ラテラルフローアッセイは、典型的には、液体試料を吸収することができる材料(例えば、紙)のシート又はストリップなどの平面基材を含み、使用者がアッセイの結果を見ることができる試験ラインと、アッセイが適切に機能していることを使用者が確認することができる対照ラインとを含むことができる。試料は、ラテラルフローアッセイの上流位置で試料堆積領域に堆積されることができ、次いで、試料は、基材の上流位置から基材の下流位置に向かって(例えば、基材の試験ライン及び/又は対照ラインに向かって)流れることができる。しかしながら、本明細書に記載の物品及び方法は、ラテラルフローアッセイに適し得るが、他のタイプのフローアッセイも可能であることに留意するべきである。例えば、フローアッセイはまた、クロマトグラフィー技術(例えば、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー)を含んでもよく、試料(又は試料内の分析物)は、本開示がそのように限定されないように、1つ以上の移動相(例えば、溶媒)の助けを借りて、クロマトグラフィーベースのアッセイの1つ以上の固定相を通って流れてもよい。ゲルアッセイ又はマイクロ流体チャネルアッセイも可能である。
【0027】
いくつかの実施形態では、フローアッセイの基材は、上流位置と下流位置とを有する。いくつかの実施形態では、基材は、基材の上流位置に配置された検出試薬(又は複数の検出試薬)を含む。いくつかの実施形態では、試料は、基材の上流位置に(例えば、試料装填領域内又は試料堆積領域内に)導入される。
【0028】
基材は、任意の適切な材料を含むことができる。例示的な実施形態では、基材は、セルロース(例えば、ニトロセルロース)であるか、又はそれを含む。しかしながら、他の材料も可能である。例えば、いくつかの実施形態では、基材は、限定されないが、ポリマー又はポリマー材料(例えば、セルロース繊維、ナイロン、PVDF、ポリマーゲル)を含むか、又はそれから形成される。基材材料の他の非限定的な例としては、紙、ガラス、石英、毛細管、ゲル、充填ビーズ(例えば、シリカビーズ)、及び織物メッシュが挙げられる。いくつかの実施形態では、基材は、吸収性材料(例えば、綿、セルロース繊維、吸収パッド)を含む。いくつかの実施形態では、基材は、他の種を排除しながら、特定の種を選択的に通過させることができる(例えば、他の成分を通過させる一方で、1つ以上の分析物を含む相互接続ネットワークを通過させない)1つ以上の膜又は膜材料であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、基材は、基材の容易な取り扱いを促進するために、可撓性又は硬質材料を含む。いくつかの実施形態では、基材は、1つ以上の層の部分を含む。いくつかのそのような実施形態では、各部分及び/又は層は、独立して、適切な材料を含むことができるか、又は適切な材料から形成され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、基材は、多孔質基材である。例えば、いくつかの実施形態では、基材は、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、又は50%以上の多孔度を有する。いくつかの実施形態では、基材の多孔度は、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、25%以下、又は20%以下である。上記に参照した範囲の組み合わせも可能である(例えば、20%以上及び40%以下)。他の範囲も可能である。
【0030】
いくつかの実施形態では、多孔質基材は、特定の細孔サイズの細孔を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、基材の細孔の平均細孔サイズは、1μm以上、2μm以上、5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、40μm以上、又は50μm以上である。いくつかの実施形態では、基材の細孔の平均細孔サイズは、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、5μm以下、2μm以下、又は1μm以下である。上記に参照した範囲の組み合わせも可能である(例えば、1μm以上又は50μm以下)。他の範囲も可能である。
【0031】
いくつかの実施形態では、基材は、基材を形成するために、互いの上に積み重ねることができる材料の1つ以上の層(例えば、材料のパッド)、及び/又は互いに隣接して配置された1つ以上の層を含む。保持及び/又は排除は、種(例えば、分析物、分析物-捕捉抗体複合体、1つ以上の分析物を含む相互接続ネットワーク)のサイズ、電荷、及び/又は質量を含むが、これらに限定されない様々な因子に基づいて選択することができる。例えば、いくつかの実施形態において、基材は、サイズ排除に基づいて他の種を保持しながら、いくつかの種が通過することを可能にし得る膜を含む。いくつかの実施形態では、基材の特定の細孔サイズ、電荷、又は他の特性は、遊離分析物と、相互接続ネットワーク内の分析物との間の流れの差を決定する際に重要であり得る。
【0032】
本明細書で使用するとき、基材の一部又は層が別の部分又は層に「隣接する」と言及される場合、それは、その部分若しくは層に直接隣接することができ、又は1つ以上の介在する構成要素(例えば、限定されないが、膜、パッド、ポリマー層、ガラス層、コーティング、及び/又は流体を含む部分、層)も存在し得ることにも留意される。層の別の部分に「直接隣接する」部分又は層は、介在する構成要素が存在しないことを意味する。
【0033】
基材又は基材の層は、任意の適切な厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、基材(又は基材の層)は、100μm以上、250μm以上、500μm以上、750μm以上、1mm以上、2mm以上、3mm以上、4mm以上、5mm以上、又は10mm以上の厚さを有する。いくつかの実施形態では、基材(又は基材の層)は、10mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下、750μm以下、500μm以下、250μm以下、又は100μm以下の厚さを有する。上記に参照した範囲の組み合わせも可能である(例えば、100μm以上及び5mm以下)。他の範囲も可能である。
【0034】
いくつかの実施形態では、結合領域は、基材上に配置される。結合領域は、捕捉試薬(例えば、捕捉抗体)を堆積させることができる試験ラインを含むことができる。いくつかの実施形態では、結合領域はまた、フローアッセイが適切に使用者にシグナルを与えることを確実にするために、対照試薬(例えば、別の捕捉抗体)が使用され得る対照ラインを含む。いくつかの実施形態では、結合領域は、下流位置に配置された複数の捕捉試薬を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の分析物を含む相互接続ネットワーキングが結合領域の前又は結合領域内に堆積される。
【0035】
いくつかの実施形態では、結合領域は1つ以上の捕捉試薬を含み、捕捉試薬は、結合領域において基材の表面に、又は表面上に配置された単一タイプの捕捉抗体である。すなわち、単一タイプの捕捉抗体は、単一の特異的抗原に結合することができ、ラテラルフローアッセイ内(すなわち、フローアッセイの結合領域内、又は目的の特定の分析物のアッセイに使用される試薬の全て内)に存在する唯一のタイプの抗体であり得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の捕捉試薬が存在し得るが、これらは、それぞれが同じ分析物を標的とする、同じタイプの単一タイプの捕捉試薬であり得る)。いくつかのそのような実施形態では、結合領域は、単一タイプの捕捉抗体のみを含み、その結果、全ての捕捉抗体のそれぞれは、それぞれが抗体の同じ位置で分析物に結合することができる。しかしながら、他の実施形態では、2つ以上の捕捉試薬が存在し得るが、それぞれが異なる分析物、又は同じ分析物の異なる部分を標的とすることができる(例えば、捕捉試薬は、分析物又は抗原の異なるエピトープをそれぞれ標的とすることができるポリクローナル抗体を含む)。
【0036】
本明細書に記載される物品及び方法は、試料内の分析物を検出するために使用されることができる。試料は、目的の分析物を含有するか、又は目的の分析物を含有する疑いのある、任意の適切な試料であり得る。したがって、場合によっては、試料(又は試料の少なくとも一部)は、分析物を含有しないが、目的の分析物を含有することが疑われ得る。
【0037】
試料は、ヒト若しくは動物などの任意の適切な対象から得ることができ、又は分析物の環境試験(例えば、下水又は河川水中の分析物の検出)のための環境から得ることができる。いくつかの実施形態では、試料は、細胞(例えば、ヒト細胞)から得られる。いくつかの実施形態では、試料は、患者が疾患に罹患しているかどうかを決定するために、患者の鼻腔スワブから得ることができる。いくつかの実施形態では、試料は、血液試料、唾液試料、又は尿試料である(又はそれから得られる)。いくつかの実施形態では、試料は、試料及び/又は分析物を(少なくとも部分的に)精製するために、試料領域へのその導入の前に処理(例えば、物理的処理、化学的処理)されてもよい。例えば、分析物は、固体試料(例えば、便試料)中に含有され得、固体試料は、液体試料を生成するためにさらに処理され得る(例えば、溶媒中に懸濁され、濾過され得る)。
【0038】
いくつかの実施形態では、試料は、試料成分(例えば、試料内に含有される分析物)を溶解及び/又は懸濁するための溶媒を含むことができる。いくつかの実施形態では、試料溶媒はまた、フローアッセイに沿った(例えば、毛細管作用による、ウィッキングによる)試料の流れを促進し得る。いくつかの実施形態では、溶媒はまた、フローアッセイを洗浄するために、例えば、結合していない検出試薬を洗浄するために、及び/又はアッセイから試薬を捕捉するために使用することができる。いくつかの実施形態では、溶媒は、水性溶媒(例えば、水)である。しかしながら、他の溶媒も可能である。溶媒は、試料成分を溶解する能力及び基材の基材材料との適合性を含むがこれらに限定されない様々な因子に基づいて選択することができる。他の溶媒の非限定的な例としては、アセトン、アセトニトリル(MeCN)、ベンゼン、ブタノール、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、又は水が挙げられる。他の溶媒も可能である。
【0039】
いくつかの実施形態では、試料(又は試料の溶媒)は、ラテラルフローアッセイにおけるようなウィッキングを介して流れる。しかしながら、試料は、毛細管力を介して、又は印加された負圧若しくは正圧を介して(例えば、真空を介して、ポンプを介して、圧縮ガスを使用して)など、他の機構を介しても流れることができる。いくつかの実施形態では、フローアッセイは、流れを提供するために外部ポンプと動作可能に結合される。
【0040】
本明細書に記載の物品及び方法は、様々な分析物を検出するのに適切であり得る。例示的な実施形態では、試料は、抗原(例えば、ウイルスタンパク質又は核酸)などの病原体であるか、又は病原体に由来する分析物を含有する。いくつかのそのような実施形態では、分析物は、SARS-CoV-2由来又はそれに関連する核酸を含む。しかしながら、他の分析物又は抗原も可能である。いくつかの実施形態では、分析物は、タンパク質、ペプチド、ホルモン、毒素、核酸(例えば、核酸断片)、及び/又は遺伝子断片、又はいくつかの他の適切なバイオマーカーを含む。いくつかの実施形態では、分析物は、ウイルス、細菌、真菌、植物細胞、又は動物細胞(例えば、ヒト細胞)に由来し得る。いくつかの実施形態では、試料は、使用者又は患者の流体試料(例えば、血液、尿、又は唾液)から得られる。
【0041】
いくつかの実施形態では、分析物は、特定の既存のラテラルフローアッセイと比較して、比較的低い検出限界(LOD)で検出され得る。分析物が病原体に由来する場合、LODは、メジアン組織培養感染量(TCID50)アッセイを測定することによって決定することができる。当業者によって理解されるように、このアッセイは、目的の病原体(例えば、ウイルス)を含有する試料の連続希釈物を、96ウェルプレートフォーマットで複数の細胞に添加することによって実施される。細胞のタイプは、細胞変性効果、すなわち、目的の病原体による細胞の感染時の形態学的変化、又は代替的に細胞死を示すように特異的に選択される。インキュベーション期間の後、細胞をCPE又は細胞死について検査し、各ウェルを感染しているか、又は感染していないと分類する。いくつかの場合において、比色又は蛍光測定の読み取りがこの分類を助けることができ、これはアッセイ感度を増加させ得る。ウェルの50%がCPE又は細胞死を示す希釈液を用いてTCID50を計算する。いくつかの態様において、病原体の濃度は、1,000TCID50/mL以下、200TCID50/mL以下、32TCID50/mL以下、24TCID50/mL以下、20TCID50/mL以下、15TCID50/mL以下、10TCID50/mL以下、5TCID50/mL以下、3TCID50/mL以下、1TCID50/mL以下、0.5TCID50/mL以下、0.4TCID50/mL以下、0.3TCID50/mL以下、0.2TCID50/mL以下、又は0.1TCID50/mL以下である。いくつかの実施形態では、TC50は、0.1TCID50/mL以上、0.5TCID50/mL以上、1TCID50/mL以上、3TCID50/mL以上、5TCID50/mL以上、10TCID50/mL以上、15TCID50/mL以上、20TCID50/mL以上、24TCID50/mL以上、32TCID50/mL以上、200TCID50/mL以上、又は1,000TCID50/mL以上である。上記に参照した範囲の組み合わせも可能である(例えば、0.1TCID50/mL以上及び32TCID50/mL以下)。他の範囲も可能である。
【0042】
上述したように、本明細書に記載のフローアッセイは、1つ以上の捕捉試薬(例えば、複数の捕捉試薬)を含むことができる。捕捉試薬は、分析物に結合するように構成されてもよく、また1つ以上の検出試薬に結合するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、複数の捕捉試薬のそれぞれは、独立して、1つ以上の分析物(例えば、2つの分析物、3つの分析物)に結合することができる。いくつかの実施形態では、複数の捕捉試薬は、基材の表面上の下流位置に配置される。いくつかの実施形態では、方法は、試料の複数の分析物(又は複数の分析物の少なくとも一部)を複数の捕捉試薬の少なくともいくつかと結合させることを含む。いくつかの実施形態では、複数の捕捉試薬は、複数の分析物及び/又は複数の検出、又はいくつかの他の捕捉試薬との相互接続ネットワークを形成するように構成される。
【0043】
いくつかの実施形態では、捕捉試薬(例えば、複数の捕捉試薬)は、基材上に、例えば、基材の結合領域内に、及び/又は基材の試験ライン上(例えば、結合領域内の)に配置される(例えば、固定化、結合、接着される)。捕捉試薬は、共有結合相互作用を介して、又は非共有結合相互作用(例えば、吸収、吸着、静電相互作用、分散力、又はそれらの組み合わせ)を介してなど、様々な方法で基材上に配置され得る。例示的な実施形態では、捕捉試薬は、1つ以上の分析物(例えば、ウイルスに由来する抗原又は核酸)に相補的に結合するように構成された捕捉抗体(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD又はIgE抗体)である。例示的な実施形態では、捕捉試薬はまた、他の捕捉試薬及び/又は分析物及び/又は検出試薬と相互接続ネットワークを形成するように構成される。しかしながら、本開示はそのように限定されないので、他の捕捉試薬も可能である。いくつかの実施形態では、捕捉試薬は、特定の標的分子に結合するように構成されたアプタマー(例えば、タンパク質、オリゴヌクレオチド)を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、捕捉試薬は、検出試薬及び/又は試料導入領域に対して下流の位置に(例えば、試料導入領域の下流に位置する結合領域に)位置し、堆積され、固定化され、又は配置され得る(例えば、最初の使用の前に)。しかしながら、他の実施形態では、捕捉試薬は、代替的に又は追加的に、検出試薬と共に(例えば、最初の使用の前に)位置していてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、捕捉試薬は、検出試薬及び分析物の両方に相補的に結合するように構成され得る。いくつかのそのような実施形態では、検出試薬及び分析物の両方への結合は、捕捉試薬が基材の結合領域に付着したままであることを可能にし得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、捕捉試薬が検出試薬に結合するが分析物には結合しない場合、捕捉試薬は、液体が結合領域を横切って流れるときに、使用中に基材の結合領域から除去される(例えば、分離、放出される)ように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、捕捉試薬が検出試薬に結合するが分析物には結合しない場合、捕捉試薬は、相互接続ネットワークを形成せず、洗浄され得るか、又は基材上の異なる位置に流され得る(例えば、結合領域を通過し、廃棄領域に至る)。
【0046】
いくつかの実施形態では、捕捉試薬は、(例えば、最初の使用の前に)基材に結合されなくてもよいが、その後、それが検出試薬及び/又は分析物に結合するときに、基材に結合するか、又は基材上に(例えば、結合領域に)配置され得る。いくつかのそのような実施形態では、捕捉試薬は、検出試薬及び/又は分析物と相互接続されたネットワークを形成し得る。いくつかのそのような実施形態では、捕捉試薬は、捕捉試薬が分析物に結合している場合、基材上又は基材内を(例えば、フローアッセイの最初の使用中に基材の結合領域から離れて)流れない(又はより遅い速度で流れる)ように構成される。すなわち、いくつかのそのような実施形態では、分析物(及び/又は分析物を担持する液体)は、それが捕捉試薬に結合するときに、流れを停止するか、若しくは減少した流量を有することができ、及び/又はアッセイの別の成分の流れを停止させるか、若しくは減少した流量を有するようにし得る(例えば、分析物が捕捉試薬に結合するとき、及び/又は捕捉及び/又は検出試薬と共に分析物を含むネットワークを形成するとき、上流の捕捉及び/又は検出試薬の流れを減少させるか、又は停止させ得る)。いくつかの実施形態では、捕捉及び/又は検出試薬の流れは、より多くの捕捉試薬が基材上に残るように制限される(例えば、捕捉試薬-分析物相互作用の結果として)。しかしながら、試料が分析物(例えば、標的分析物)を含まないか、又は比較的少ない分析物を含む実施形態では、捕捉及び/又は検出試薬のいずれも、それらの流れが制限されない。したがって、発色試薬(例えば、TMB)が基材(例えば、基材の結合試薬)に適用されるとき、捕捉及び/又は検出試薬のより多くの発色が、試料内に分析物が少ない(又は分析物が存在しない)ときと比較して起こる。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、分析物-捕捉試薬相互作用による流れの制限は、より多くの分析物が存在する場合(したがって、試料が分析物を含有しないか、又はより少ない分析物を含有する場合よりも多くの流れの制限)、より強くなり得、この差は、試料内の分析物の量(例えば、濃度)の定量的又は半定量的測定を可能にし得ると考えられる。これはより多くの分析物が試料内に存在する場合に達成されると考えられ、それは、より多くの分析物が流れのより多くの制限をもたらすため、試料中により少ない分析物が存在する(又は分析物が存在しない)場合よりも、基材上のより多くの捕捉試薬に結合することができ、またより多くの検出試薬に結合することができるので、分析物を検出する(例えば、分析物を視覚的に検出する)ことがより容易になるからである。いくつかの実施形態では、この流れの制限の違いは、より少ない分析物を有する(又は分析物を含まない)試料と比較して、試料中により多くの分析物が存在する場合、分析物-捕捉試薬ネットワーク(例えば、格子)が形成されることに起因し得る。しかしながら、制限の違いは、分析物-捕捉試薬ネットワークの形成がない場合であっても生じ得ることを理解するべきである。
【0047】
いくつかの実施形態では、分析物(例えば、少なくとも1つの分析物、複数の分析物)を含有する試料がラテラルフローアッセイ上を流れた際(例えば、流れが通過し、及び/又は1つ以上の捕捉試薬に結合した際)、流れは制限され、試料が分析物を含まない場合、流れは制限されない。これらの事象は、試料及び/又は液体が基材の端部(例えば、基材の最下流の端部)に到達する前に起こり得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、アッセイにおける試料の流れ及び/又は液体(例えば、溶媒)の流れは、初期の流速と比較して、制限され、減少され、又はさもなければ減速され得る。限定ではなく例証として、試料は2mm/秒の流速でアッセイ上を流れることができ、例えば、複数の分析物のうちの少なくとも1つの分析物が複数の捕捉試薬の一部に結合した後、試料の流速は1mm/秒以下に制限され得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、分析物及び/又は捕捉試薬を含むメッシュ又はネットワークの形成が、例えば、基材上の細孔の充填に起因して(すなわち、サイズ排除)、試料の流速を低下させ得ると考えられる。或いは、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、分析物の捕捉試薬への結合は、物理的障害、電荷に基づく障害、又は何らかの他の効果のいずれかにより、ニトロセルロース膜(又は他の基材)中の細孔をブロックし得る。いくつかの実施形態では、流れの制限は、分析物、捕捉試薬(及びいくつかの実施形態では、塩及び界面活性剤などの試料液体の他の成分)の間の相互接続ネットワークの形成に起因する。他の実施形態では、単に個々の分析物-捕捉試薬が単に流れを遮断し、それにより相互接続されていない遮断ネットワークを形成することができる。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、これは、サイズ、電荷、又は他の制限による、ニトロセルロース膜又は他の基材の細孔の閉塞に起因し得る。いくつかの実施形態では、アッセイ上/中の試料の流れ及び/又は液体の流れは、流れが制限される前の試料又は液体の流速の少なくとも0.9、0.8、0.6、0.5、0.4、0.2、又は0.1倍減少する(例えば、図1Aに示される領域112、116、118、及び/又は110のいずれか1つにおけるような、基材の上流部分における試料/液体の流速と比較して)。いくつかの実施形態では、アッセイ上/アッセイ中の試料の流速及び/又は液体の流速は、流れが制限される前の試料又は液体の流速の0.1、0.2、0.4、0.5、0.6、0.8、又は0.9以下に減少する(例えば、図1Aに示される領域112、116、118、及び/又は110のいずれか1つにおけるような、基材の上流部分における試料/液体の流速と比較して)。上記に参照した範囲の組み合わせも可能である。これらの事象は、試料及び/又は液体が基材の端部(例えば、基材の最下流の端部)に到達する前に起こり得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、アッセイ上/中の試料の流速及び/又は液体(例えば、溶媒)の流速は、側方流における試料(又は液体)の初期流速に対して(例えば、試料の流速が制限される前と比較して)、0.1mm/秒以上、0.2mm/秒以上、0.3mm/秒以上、0.4mm/秒以上、0.5mm/秒以上、1mm/秒以上、2mm/秒以上、3mm/秒以上、又は5mm/秒以上減少する。いくつかの実施形態では、アッセイ上/中の試料及び/又は液体(例えば、溶媒)の流速は、後のフローアッセイにおける試料(又は液体)の初期流速に対して(例えば、試料の流速が制限される前と比較して、例えば、図1Aに示される領域112、116、118、及び/又は110のいずれか1つにおけるような、基材の上流部分における試料/液体の流速と比較して)、5mm/秒以下、3mm/秒以下、2mm/秒以下、1mm/秒以下、0.5mm/秒以下、0.4mm/秒以下、0.3mm/秒以下、0.2mm/秒以下、又は0.1mm/秒以下減少する。上記に参照した範囲の組み合わせも可能である(例えば、0.1mm/秒以上及び5mm/秒以下)。他の範囲も可能である。いくつかの実施形態では、試料/液体の流速は減速されるが、停止されない(例えば、流速は0mm/秒ではない)。いくつかの他の実施形態では、試料の流速は停止される。これらの事象は、試料及び/又は液体が基材の端部(例えば、基材の最下流の端部)に到達する前に起こり得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、試料/液体の流速の制限及び/又は減少は、本明細書に記載されるフローアッセイの任意の1つにおいて生じ得る。いくつかの実施形態では、フローアッセイは、上流位置と下流位置とを有する基材と、下流位置に配置された複数の捕捉試薬を含む結合領域とを含み、複数の捕捉試薬は、複数の分析物と相互接続されたネットワークを形成するように構成され、相互接続されたネットワークは、互いに相互接続された複数の捕捉試薬と複数の分析物との混合物を含む。他の構成も可能である。本方法は、例えば、試料を基材の上流位置に導入すること(ここで、基材は、下流位置の結合領域に配置された複数の捕捉試薬を含む)、試料を上流位置から下流位置に向かって流すこと、試料の複数の分析物の少なくとも一部を複数の捕捉試薬の少なくとも一部と結合させること、試料の複数の分析物の少なくとも一部が複数の捕捉試薬の少なくとも一部と結合した後に、フローアッセイに沿った流れを制限すること、及び分析物の少なくとも1つを検出することを含むことができる。他の工程も可能である。
【0051】
いくつかの実施形態では、捕捉試薬は基材上に配置されるが、基材に結合(又は軽く結合)されず、したがって液体(例えば、溶媒)が適用されたときに捕捉試薬は基材に沿って流れることができる。しかしながら、捕捉試薬が分析物及び/又は検出試薬に結合する場合、得られた複合体は、基材に沿って移動しない(又はよりゆっくりと移動する)ことがある。いくつかの実施形態では、複合体は、相互接続ネットワークを形成するか、又はその内部にあり、相互接続ネットワークは、移動しなくてもよく、又は基材の結合領域内で停止してもよい。相互接続ネットワークに関するさらなる詳細は、以下に説明される。
【0052】
いくつかの実施形態では、結合実体などの化学種が、例えば、基材へのその結合を促進するために、捕捉試薬に付着(例えば、結合)され得る。いくつかの実施形態では、化学種は、ビオチン、ビオチン化誘導体、又は他の適切な結合実体であるか、又はそれを含む。すなわち、捕捉試薬はビオチン化されてもよく、このことは捕捉試薬の基材(例えば、基材上の結合領域)への結合を促進し得る。いくつかの実施形態では、捕捉試薬は、例えば、捕捉試薬上のビオチンへの結合を介して、検出試薬を含むか、検出試薬に結合されるか、又は検出試薬に付着される。しかしながら、本開示はそのように限定されないので、ビオチン以外の他の結合実体も可能である。
【0053】
上述したように、様々な実施形態はまた、1つ以上の検出試薬(例えば、複数の検出試薬)を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、複数の検出試薬は、基材の表面上の上流位置に配置される。検出試薬は、存在する場合、分析物の検出及び/又は同定を容易にするように構成される。例えば、検出試薬は、検出試薬自体の色変化を介して、検出され得る酵素反応を促進することによって、及び/又はさらなるレポーター分子の結合を可能にすることによって、分析物の検出を可能にするように構成され得る。検出試薬は、存在する場合、試料内の分析物の検出を容易にする基材の任意の適切な部分上に配置することができる。いくつかの実施形態では、複数の検出試薬は、複数の捕捉試薬の上流に配置される。いくつかの実施形態では、方法は、試料の複数の分析物(又は複数の分析物の少なくとも一部)を複数の検出試薬の少なくとも一部と結合させることを含む。しかしながら、他の実施形態では、1つ以上の検出試薬は基材上に配置されず(例えば、フローアッセイの最初の使用の前に)、後にフローアッセイに(例えば、試料がフローアッセイ上に堆積された後に)添加され得る。
【0054】
検出試薬は、分析物の存在(又は非存在)を決定するシグナルを生成するための任意の適切な試薬であり得る。いくつかの実施形態では、検出試薬は、Feのナノ粒子などのナノザイム(すなわち、金属ナノ粒子触媒)を含む。いくつかの実施形態では、検出試薬は、金及び/又はラテックスナノ粒子又はいくつかの他のナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、検出試薬は、酵素、例えば、グルコースオキシダーゼ、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ若しくは西洋ワサビペルオキシダーゼ、又はそのコンジュゲート、分子若しくはポリマーを含む。他の検出試薬も可能である。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の物品及び方法は、分析物を検出するための追加の試薬も含むことができる。例えば、いくつかの実施形態は、例えば、分析物、検出試薬、及び/又は分析物及び/又は検出試薬によって生成される生成物を染色することによって、分析物を検出するためのシグナルを生成するために、検出試薬及び/又は分析物と反応するように構成された試薬(例えば、染色試薬)を含むことができる(例えば、検出試薬は、検出のためのシグナルを生成する生成物を生成するために分析物と反応し得る)。染色は、分析物の存在を定性的に検出するために使用することができる。例示的な実施形態では、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB)が、分析物が検出試薬と相互作用した後、染色剤として使用される。しかしながら、他の試薬も可能である。他の試薬の非限定的な例としては、OPD(o-フェニレンジアミン二塩酸塩)、ABTS(2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)、及び/又はNPP(p-ニトロフェニルホスフェート、二ナトリウム塩)が挙げられる。いくつかの実施形態では、分析物検出のための追加の試薬は、ナノ粒子(例えば、金ナノ粒子、ラテックスナノ粒子)及び/又は染料(例えば、ルミノール、CPD-Star、ABEI)を含む。また、いくつかの実施形態が視覚的検出を容易する一方、他の実施形態では、分析物は、吸光度若しくは発光を使用する分光法、又は分析物の存在を定性的及び/又は定量的に決定するために使用され得る他の分光検出法を含む、任意の適切な検出装置を使用して検出され得る。例えば、いくつかの実施形態は、分析物を検出するために検出器(例えば、PMT検出器、PDA検出器)を含むことができる。いくつかの実施形態では、分析物の検出を容易にするために、デジタルリーダーを基材に取り付けることができる。
【0056】
分析物の検出のための時間は、任意の適切な時間であってもよい。いくつかの実施形態では、検出時間は、30分以下、20分以下、15分以下、10分以下、6分以下、5分以下、3分以下、又は1分以下である。いくつかの実施形態では、検出時間は、1分以上、5分以上、10分以上、15分以上、20分以上、又は30分以上である。上記に参照した範囲の組み合わせも可能である(例えば、1分以上及び30分以下)。他の範囲も可能である。
【0057】
上述したように、分析物及び捕捉試薬(例えば、捕捉抗体)は、相互接続ネットワークを形成し得る(又は形成するように構成され得る)。この相互接続ネットワークは、沈殿物(例えば、複数の分析物及び複数の捕捉試薬を含む沈殿物)、若しくは複数の分析物及び複数の捕捉試薬を含む格子から形成され得るか、又はそれを含むことができる。相互接続ネットワークは、場合により、複数の検出試薬及び/又は他の結合実体などの他の試薬を含んでもよい。いくつかの実施形態では、相互接続ネットワークは、複数の捕捉試薬及び分析物を含み、捕捉試薬及び/又は分析物の少なくともいくつかは、1つ以上の架橋を介して相互接続し、架橋は、2つ以上の他の捕捉試薬及び/又は分析物と接続する捕捉試薬及び/又は分析物を含む。
【0058】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、可溶性分析物と可溶性捕捉試薬(すなわち、溶媒試料及び/又は試料緩衝液などの試料の1つ以上の成分に可溶性)との組み合わせは、使用者に見える2つの成分を含有する格子の形成をもたらし得ると考えられる。場合によっては、可溶性分析物と可溶性捕捉試薬が基材上で出会うときに沈殿物の領域(例えば、沈殿の環)が形成され、この領域は、捕捉試薬と分析物(例えば、捕捉抗体と抗原)との間の等価点において形成されることができ、捕捉試薬と分析物が等価にあるとき、相互接続ネットワークが形成する(又は形成し始める)。いくつかの実施形態では、格子は、フローアッセイ内にある間、可溶性(例えば、少なくとも難溶性、少なくとも部分的に可溶性)である。しかしながら、他の実施形態では、格子は、フローアッセイ上又はフローアッセイ内で不溶性である。当業者によって理解されるように、溶解度(又は不溶性)は、試料溶媒、試料緩衝液に応じて変化し得、また、温度などの他の因子によっても変化し得る。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、25℃における特定の溶媒中の種の溶解度積(Ksp)が10-3未満(例えば、10-4以下、10-5以下、10-6以下、10-9以下)である場合、種は不溶性である。25℃における特定の溶媒中のその種のKspが10-3~10(例えば、10-3~1、10-2~1、0.1~1、1~10、1~100、1~10)である場合、種は難溶性又は部分的に可溶性/不溶性であり得る。一般に、25℃でのその種のKspが10より大きい(例えば、10より大きい、10より大きい、10より大きい、10より大きい)場合、種は可溶性である。これらの範囲の組み合わせも可能であり得る。しかしながら、当業者は、これらの境界が上記の因子に応じて変化し得ることを理解し、また当業者は、本開示を考慮して、その複合体が適切な溶解度(すなわち、基材の上流位置と下流位置との間又は結合領域内に格子を形成する溶解度)を有する分析物及び/又は捕捉試薬を選択することができるであろう。いくつかの実施形態では、Kspを決定する際に使用される溶媒は、水である。しかしながら、他の溶媒、例えば、限定することなく、本明細書の他の箇所に記載されている試料溶媒も可能である。
【0059】
いくつかの実施形態では、捕捉試薬と分析物との間の複合体が形成され(又は形成するように構成され)、結合領域へと下流に流れ得る。いくつかの実施形態では、複合体のサイズは、アッセイの上流から下流位置に流れるにつれて増加し得る(例えば、複合体中の捕捉試薬及び/又は分析物試薬の数が増加し得る)。いくつかの実施形態では、複合体は、複数の捕捉試薬及び複数の分析物試薬を含む相互接続ネットワークを形成する。相互接続ネットワーク(例えば、沈殿物及び/又は格子を含む)は、相互接続ネットワークが結合領域に向かって移動又は流れるにつれてサイズが増大し得る。したがって、いくつかの実施形態では、複合体又は相互接続ネットワークのサイズは、上流位置から下流位置に向かって移動するにつれて増加(又は減少)し得るか、又は基材の結合領域内のサイズが増加し得る。他の実施形態では、試薬及び/又は複合体は、下流に流れるが、結合領域に到達するまで、相互接続ネットワークを形成しない。
【0060】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、分析物-捕捉試薬複合体(例えば、抗原-捕捉抗体複合体)は、フローアッセイを通って流れる際に、追加の分析物及び/又は捕捉試薬に結合し得る(例えば、共有結合し、非共有結合相互作用を介して結合し得る)か、又は分析物-捕捉試薬複合体は、結合領域内に固定化され得、追加の分析物及び/又は捕捉試薬が結合領域に向かって移動する際にそれらと結合して、相互接続ネットワークを形成し得ると考えられる。分析物-捕捉試薬複合体が追加の分析物及び/又は捕捉試薬と結合するにつれて、相互接続ネットワーク(分析物-捕捉試薬複合体を含む)のサイズが増大し得る。いくつかの実施形態では、分析物-捕捉試薬複合体又は相互接続はまた、1つ以上の検出試薬に結合する(又は結合するように構成される)ことができ、このことも複合体又は相互接続ネットワークのサイズを増加させることができる。いくつかの実施形態では、ネットワークのサイズを増加させることは、フローアッセイへの塩又は緩衝液の添加を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、方法は、複数の捕捉試薬、複数の検出試薬、及び/又は複数の分析物を含む相互接続ネットワークを形成することを記載する。いくつかの実施形態では、相互接続ネットワークは、複数の捕捉試薬、検出試薬、及び/又は分析物を含む沈殿物又は格子を含む。いくつかの実施形態では、相互接続ネットワークは、分析物及び捕捉試薬の凝集体を含む。いくつかの実施形態では、相互接続ネットワークは、基材内、例えば、基材の結合領域内に沈殿物を形成する。いくつかの実施形態では、複数の捕捉試薬及び/又は複数の検出試薬は、基材の下流位置で複数の分析物と相互接続されたネットワークを形成するように構成される。いくつかの実施形態では、相互接続ネットワークは、互いに相互接続された複数の捕捉試薬及び複数の分析物の混合物を含む。いくつかの実施形態では、複数の捕捉試薬及び複数の検出試薬は、複数の分析物のうちの少なくともいくつかと相互接続されたネットワークを形成するように構成される。いくつかの実施形態では、相互接続ネットワークは、互いに相互接続された複数の捕捉試薬、複数の検出試薬、及び/又は複数の分析物の混合物を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、相互接続ネットワークは、相互接続ネットワークの成分(例えば、分析物、捕捉試薬、及び/又は検出試薬)を互いに接続する1つ以上の接続(例えば、結合)を含む。いくつかの実施形態では、相互接続ネットワークは、分析物、捕捉試薬、及び/又は検出試薬(例えば、複数の分析物のうちの少なくともいくつか、複数の捕捉試薬のうちの少なくともいくつか、及び/又は複数の検出試薬のうちの少なくともいくつか)の間の1つ以上の共有結合を含む。いくつかの実施形態では、相互接続ネットワークは、分析物、捕捉試薬、及び/又は検出試薬の間の1つ以上の非共有結合相互作用を含む。非共有結合相互作用の非限定的な例としては、イオン相互作用(例えば、塩架橋)、水素結合、ファンデルワールス相互作用、及び/又は疎水性相互作用が挙げられる。例えば、いくつかの実施形態では、相互接続ネットワークは、複数の分析物、複数の検出試薬、及び/又は複数の捕捉試薬の間の水素結合を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、1つ以上の塩(又は1つ以上の塩のイオン種)は、基材の流れの遮断に寄与し得る。いくつかの実施形態では、これらの1つ以上の塩(又は1つ以上の塩のイオン種)は、相互接続ネットワーク構造の形成に寄与し得る。異なるタイプの塩及びイオンは、様々な供給源、例えば、試料、試料緩衝液、試料溶媒、基材(例えば、ニトロセルロース膜の金属成分)に由来し得る。塩(又は塩のイオン種)は、基材上でのその移動中に、分析物(例えば、タンパク質などのアミノ酸を含む分析物)の側鎖の断片化及び/又は活性化に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、塩はまた、相互接続ネットワークの少なくとも一部を形成してもよく、又は捕捉試薬への分析物の結合に関連して相互接続ネットワークの少なくとも一部を取り囲んでもよい。いくつかの実施形態では、分析物(例えば、抗原)及び捕捉試薬(例えば、捕捉抗体)は、結合し、相互接続ネットワークのための個々の「シード」又は核形成部位を形成することができ(例えば、抗原-抗体鎖の形成又は凝集による)、このようなシードは、塩が相互接続ネットワークの周りに蓄積又は沈殿するための基礎を形成することができ、ネットワークを強化し、一旦相互接続ネットワークが形成されると、基材上の流れをさらに妨げることができる。有利なことに、この効果は、標的分析物を含有しない陰性試料に対して陽性(標的分析物含有)試料の生成されるシグナルをより大きくし得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、分析物が捕捉試薬に結合すると、立体配座の変化が存在し得、これは、例えば、塩(例えば、緩衝系の塩)からの負電荷又は正電荷に起因して、基材の細孔の閉塞をもたらし得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、塩及び/又は他のイオンのパーセンテージ又は濃度の変化は、相互接続ネットワーク構造の形成をもたらし得る。いくつかのそのような実施形態では、相互接続ネットワークは、場合により1つ以上の塩(例えば、緩衝液の塩)を含む固体沈殿物を形成することができ、これは、基材の細孔を閉塞することができる。いくつかのそのような実施形態では、相互接続ネットワークは、塩架橋の形成を引き起こすことができる。いくつかのそのような実施形態では、塩閉塞は、相互接続ネットワークの形成を「シード」し得、いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、いくつかの経路を通して形成し得る:(A)存在する場合(例えば、試料緩衝液、抗体溶液、HRPコンジュゲート溶液内)、異なるタイプのイオンからなる格子形成をもたらす交互イオン電荷の凝集。イオンは、正又は負に帯電していてもよい。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、これらの電荷は、基材上を移動する間に、分析物の側鎖の曝露、断片化、及び/又は活性化において役割を果たし得る。捕捉試薬への分析物の結合は、細孔内の閉塞を引き起こし得る。さらに、結合領域での又は結合領域内での塩の蓄積は、結合領域内の捕捉試薬及び/又は分析物の電荷分布を変化させ得、凝集が存在し得る;(B)緩衝液及び基材の1つ以上の成分が寄与する塩形成をもたらすそれぞれアニオン及びカチオンである対イオン。いくつかの基材は、Ca2+、Mg2+、ケイ素含有カチオンなどのカチオン性成分を含んでもよく、これらのイオンは、試料緩衝液(存在する場合)のイオンと相互作用し、相互接続ネットワーク又は塩架橋(その上に、相互接続ネットワークが形成又は沈殿し得る)の形成をもたらし得る;(C)基材がCa2+、Mg2+、ケイ素含有カチオンなどの成分を含む、Ca-リン酸塩の形成。より高いpH、すなわち>7では、Ca-リン酸塩の相互作用の傾向があり、これがCaHPOの形成をもたらす。NaClの存在も、Ca-リン酸塩によって形成される沈殿を促進する炭酸塩の供給に寄与し得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、試料は、塩及び/又は緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、NaHPO/NaHPO)を含む。いくつかのそのような実施形態では、塩は、相互接続ネットワークの形成に寄与し得るか、又は相互接続ネットワークの周囲にそのような構造を形成することによって、相互接続ネットワークを強化し得る。塩の例としては、NaCl、KCl、NHCl、KNO、Al(NO、(NHSO、MgSO、FeCO、CaCO、FePO、KHPO、NaHPO、(NHPO、Pb(CHCOO)、Cu(CHCOO)が挙げられるが、これらに限定されない。他の塩も可能である。
【0066】
いくつかの実施形態では、試料(例えば、試料溶媒、試料緩衝液)は、界面活性剤を含む。いくつかのそのような実施形態では、界面活性剤はまた、基材中の流れを制限するのを助けるような方法で、捕捉試薬及び/又は分析物に付着してもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤は相互接続ネットワークの少なくとも一部を形成してもよく、又は相互接続ネットワークの形成に寄与してもよい。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、分析物(例えば、抗原)及び捕捉試薬(例えば、捕捉抗体)が結合し、これは個々の「シード」を形成し得、このようなシードは、界面活性剤が相互接続ネットワークの周りに蓄積又は沈殿するための基礎を形成し得、ネットワークを強化し、基材上の流れをさらに妨害する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、基材上を移動する間に、分析物の側鎖の露出、断片化、及び/又は活性化において役割を果たし得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、捕捉試薬及び/又は分析物又は相互接続ネットワークの他の部分の親水性を増加又は減少させる役割を果たすことができ、これは、ネットワーク形成を引き起こすか又は増強することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、この効果は、標的分析物を含有しない陰性試料に対して陽性(すなわち、分析物含有)試料の生成されるシグナルをより大きくし得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、限定されないが、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウム、パレス硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、αオレフィンスルホネート、及び/又はラウレス硫酸アンモニウムなどのアニオン性界面活性剤を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、限定されるものではないが、In C8-10アルキルヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロリド、C8-10アルキルアミドジメチルプロピルアミン、及び/又はジタロウジメチルアンモニウムクロリドなどのカチオン性界面活性剤を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、限定されるものではないが、ポリソルベート(例えば、ツイーン20)、ソルビタンエステル、アルキル-フェノールポリエチレン(例えば、トリトン)、オリゴマーアルキル-エチレンオキシド、ポリ(アルキレン-オキシド)ブロックコポリマーなどの非イオン性界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、両性界面活性剤である。
【0071】
いくつかの実施形態では、界面活性剤のパーセンテージ又は濃度の変化は、相互接続ネットワーク構造の形成をもたらし得る。いくつかのそのような実施形態では、相互接続ネットワークは界面活性剤を含み、及び/又は界面活性剤は、相互接続ネットワークの少なくとも一部を取り囲み、基材が多孔質である場合、基材の細孔の少なくともいくつかを遮断し得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、非限定的に上述したものなどの界面活性剤は、分析物の立体配置の変化を引き起こし得(例えば、タンパク質含有分析物を「閉鎖」から「開放」立体配置に変化させ)、これはまた、捕捉試薬への結合を可能にするか、又は増強し得る。
【0073】
上述したように、様々な実施形態は、分析物の検出のためのフローアッセイを記載する。したがって、試料(又は試料溶媒)が流され得る。一般に、流れは、上流位置から下流位置までである。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、相互接続ネットワークを結合領域(例えば、下流位置の結合領域)に向かって流すことを含む。いくつかの実施形態では、方法は、相互接続ネットワークの流れを結合領域内で停止させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、相互接続ネットワークを形成した後に、基材の少なくとも一部上の流れを減少又は停止することを含む。いくつかの実施形態では、複数の検出試薬のうちの少なくともいくつかは、フローアッセイにおける相互接続ネットワークの形成後などの、フロー工程のうちのいずれか1つの間にフローアッセイから流出されない。しかしながら、上記のように、いくつかの実施形態では、フローアッセイにおける相互接続ネットワーク(例えば、沈殿物、格子)の形成は、下流位置から上流位置に向かう流れが生じ得る(すなわち、逆流)ように、アッセイのフロー特性に影響を及ぼし得る。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、相互接続ネットワークを結合領域から逆流させることを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、試料が基材の一部又は全部を通過したことを示すために、対照インジケータを使用することができる。いくつかの実施形態では、この対照インジケータは、基材の下流領域又は基材上の下流位置(例えば、基材上又は基材付近の下流位置の吸収体又は他のパッド内)に配置された染料であり得、その結果、試料液体が染料を通過するときに染料は下流に広がり、その元の位置から下流の領域に現れる。インジケータは、基材の下流位置(例えば、吸収体パッドの底部)に配置された任意の適切な色、例えば赤色又は他の色の染料であり得る。赤色インジケータの場合、このインジケータは、試料がそれを通過するときに下流に広がり得、その結果、赤色は、染料の元の位置から下流のカセット内の窓に現れる。いくつかの実施形態では、カセット内の赤色の外観はオペレータによって使用されて、アッセイに検出試薬及び/又は発色試薬をいつ加えるかを決定することができる。インジケータは、目又は読み取り装置を用いて読み取ることができる、流動する任意の比色試薬であってもよい。他の実施形態では、色インジケータは、蛍光粒子又は帯電若しくは磁性粒子を含有する液体又は固体を含む。他の色インジケータも可能である。インジケータの使用は、試料(例えば、試料分析物を含み得る液体)が基材を通過したときを示すことができる。これは、試料中に1つ以上の分析物が存在するときに相互接続ネットワークが形成されたことを示すことができ、及び/又は試料中に標的分析物が存在しないときに検出試薬が基材から流出したことを示し得る。したがって、インジケータが示す場合、検出試薬を添加することができ、及び/又は陽性(分析物含有)試料を陰性試料(分析物を含有しない)と区別することができる発色試薬(例えば、TMB)を添加することができる。多くの既存のラテラルフローアッセイ又は他のシステムでは、試料は、温度、湿度、及び他の因子に応じて異なる速度で流れ得るが、全ての場合において、インジケータは、試料が基材のその位置を流れ通過したときに示すので、インジケータは、試料フローのタイミングの好ましい代替となり得る。
【0075】
上述したように、カセットを使用してフローアッセイ(例えば、ラテラルフローアッセイ)のフロー特性を変更することができる。したがって、いくつかの実施形態は、基材を少なくとも部分的に囲むカセットを備える。図を考慮して上述したように、カセットは、第1の部分と、第1の部分に対向する第2の部分とを備え、フローアッセイの基材は、第1の部分と第2の部分との間に配置することができる。いくつかの実施形態では、第2の部分は、第1の部分に向かって延在する突出部を備え、突出部は、基材を第1の部分に押圧する。有利には、突出部は、基材を介して流れるのではなく、基材又はカセットの第1の部分上の過剰な試料の流れを防止することができ、また、フローアッセイ成分(例えば、試料溶媒の、複数の検出試薬の少なくとも一部の、発色試薬の少なくとも一部の逆流を減少又は防止する。突出部は、基材に対して押圧して第1の部分と接触することができるが、いかなる液体(例えば、試料溶媒)も基材から押し出されることはない。突出部は、十分な力で基材と接触して、基材を通る液体の流れ又は基材を通る液体の逆流を防止する必要があるが、過度の力で基材を押圧しない必要があり、このことは液体を基材から押し出し、及び/又は液体が蓄積する可能性があるくぼみ若しくはトラフを基材に作り出す可能性がある。例えば、そのようなトラフは、発色試薬が蓄積し、そのため、そのような過剰な発色試薬が基材から引き出されず、代わりにトラフ内に残る場所として作用する可能性がある。特定の発色試薬は、十分な時間が与えられれば、発色試薬が存在しない場合でも発色し得るので、これは、試料中に標的分析物が存在しない場合でさえ、陽性シグナルであると思われ得るものの生成をもたらし得、したがって、これは偽陽性アッセイをもたらし得る。他の実施形態では、くぼみに起因して偽陰性アッセイを生じる可能性がある。したがって、特定の特徴及び突出部の作製の制御は、適切な動作のために不可欠である。カセットはまた、例えば、試料の堆積のための、及び/又は分析物検出のシグナルを見るための、1つ以上の窓を含んでもよい。例えば、図2C図2Dでは、カセット200内に視認窓251が含まれている。図2E図2Fは、図2C図2Dに概略的に示される突出部(例えば、ブリッジ)250の概略図を示す。
【0076】
いくつかの実施形態では、突出部は、基材の特定の位置と整合するように配置される。例えば、いくつかの実施形態では、突出部、上流位置と下流位置との間の中間点(例えば、下流位置における結合領域)に配置される。いくつかの実施形態では、突出部、上流位置と下流位置との間の距離の10%以下、20%以下、30%以下、40%以下、50%以下、60%以下、70%以下、80%以下、又は90%以下である。限定ではなく例示として、上流位置と下流位置との間の距離が3cmである場合、突出部は、上流位置からこの距離の50%、すなわち1.5cmに配置され得る。いくつかの実施形態では、突出部、上流位置と下流位置との間の距離の10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上である。上述の範囲の組み合わせも可能である(例えば、突出部は、上流位置と下流位置との間の距離の10%より大きく、及び上流位置と下流位置との間の距離の90%以下に配置される)。他の範囲も可能である。
【0077】
突出部は、第2の部分の表面から第1の部分に向かって延在してもよい。この突出の程度は、存在する場合、基材が第1の部分を押圧するときに基材に加えられる力の程度に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、突出部は、第2の部分の表面から0.1mm以上、0.2mm以上、0.3mm以上、0.5mm以上、0.7mm以上、又は1mm以上延在する。いくつかの実施形態では、突出部は、第2の部分の表面から1mm以下、0.7mm以下、0.5mm以下、0.3mm以下、0.2mm以下、又は0.1mm以下延在する。上述に参照した範囲の組み合わせも可能である(例えば、突出部は、第2の部分の表面から0.1mm以上及び1mm以下の距離だけ延びる)。他の範囲も可能である。
【0078】
いくつかの実施形態では、突出部は、カセットの別の部分と同じ材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS、HIPSを含むがこれらに限定されないプラスチックで形成されている。他の実施形態では、突出部は、カセットの別の部分として異なる材料から形成されている。
【0079】
いくつかの実施形態では、突出部は、カセットの他の部分とは異なる材料で形成されてもよい。例えば、突出部は、フローアッセイの他の構成要素と比較して柔らかい材料から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、突出部は、軟質材料、例えば、ゴム(例えば、シリコーンゴム)又は熱可塑性エラストマー(例えば、ポリウレタン)を含み、突出部の全体を形成するか、又は突出部の基部である別の材料上にオーバーモールドされる。いくつかの実施形態では、より柔らかい材料は、25~40A以下のショアを有してもよい。有利には、低ショア材料の使用は、正確な力(すなわち、基材から液体を圧搾するほど強すぎる力ではないが、基材を押圧するのに不適切な量の力を提供するほど弱すぎる力)を有するために、基材(例えば、ニトロセルロース膜)への硬質突出部に必要な深さを正確に達成することが困難であり得る。そのような厳しい公差は、大量生産において達成することが困難であり得る。しかしながら、本開示によって、代わりにショア25~40A材料を有するより柔らかい突出部の使用(ese)が、突出部の製造を改善できることが発見された。
【0080】
本明細書に開示される物品及び方法は、様々な用途に適している。いくつかの実施形態にでは、物品は、フローアッセイ(例えば、ラテラルフローアッセイ)である。上述したように、例えば、開示される物品及び方法は、SARS-CoV-2などの病原体の検出に使用することができる。開示される物品及び方法は、非限定的な例として、SARS-CoV-2の変異体又はインフルエンザウイルスなどの他の病原体を検出するために使用することができる。しかしながら、他の用途も可能である。例えば、本明細書に記載される物品及び方法は、特定の環境中に存在することが疑われる汚染物質又は毒素などの環境汚染物質の存在を試験するために使用することができる。
【実施例
【0081】
実施例1
以下の実施例は、陽性試料(すなわち、分析物を含有する)及び陰性試料(すなわち、分析物を含有しない)を用いて実行した場合の捕捉試薬(抗体)及び検出試薬(HRPコンジュゲート)の移動及び位置を示す。ここで、HRPは西洋ワサビペルオキシダーゼを意味し、HRPコンジュゲートは、共有結合又は非共有結合のいずれかで、何らかの他の分子又は種にコンジュゲートされていることを意味する。
【0082】
陰性試料において、HRPコンジュゲート及びビオチン化抗体検出試薬が陰性試料の場合には、基材の吸収パッドに洗い流され、標的タンパク質が試料に含まれる場合にニトロセルロース膜基材に残存するという概念を試験するために、6つのデバイスを使用し、3つはPCRで陽性を確認し、3つはPCRで陰性を確認した。
【0083】
試料を試料パッドに加えた。一旦、試料がストリップを通って流れると、基材の吸収体パッドに入った。吸収体パッドを取り出し、96ウェルプレートのウェルに入れた。150μlのTMB染色試薬を加えた。室温で20分間、発色は観察されなかった。
【0084】
吸収体パッド上の検出試薬HRPコンジュゲートの存在が知られているので、試料の流れを考慮すると、吸収体パッドは、染色試薬TMBが検出試薬HRPコンジュゲートと接触するのを妨げていた可能性が高く、及び/又はHRPコンジュゲートの大部分がストリップのバッキングパッド上にあった可能性が高いと考えられた。第2の実施例、実施例2は、検出試薬HRPコンジュゲートの位置を特定するための異なる方法を提供するように設計された。
【0085】
実施例2
以下の実施例は、検出試薬HRPコンジュゲートの存在及び量を決定するために、ラテラルフローアッセイの各セクションを単離することを記載する。12のフローアッセイを用い、6つは吸収体パッド(図3)を用い、6つは用いなかった。各デバイスタイプについて、6つの試料を実行し、3つはPCRで確認された陽性試料であり、3つはPCRで確認された陰性試料で実行した。試料を試料パッドに加えた。流れが完全な膜基材を通って流れて吸収体パッドに達したら、ラテラルフローアッセイをその構成要素部分に分解し、2.5cmの膜基材を0.5cmの切片に切断し、図4に示すようにアッセイの8つの別個の領域を作製した。図5に示すように、切片を96ウェルプレートの個々のウェルに入れた。150μLの染色試薬TMBを加えた。150μlの停止溶液を添加することにより、17分後に反応を停止させた。アッセイ成分をウェルから取り出し、プレートを450nmで読み取った。
【0086】
結果
結果を図6に示す。全てのラテラルフローアッセイにおける検出試薬領域コンジュゲートパッドは、依然として有意な量のHRPコンジュゲートを含有していた。陽性試料を実行したアッセイでは、酵素のレベルが試験ラインを通過してより低いレベルの抗体を含有する膜基材の次のセクション、セクション2まで一定レベルのままであった。対照的に、陰性試料は、コンジュゲートパッド中に残存する酵素のレベルがはるかに低く、膜の2つのセクションの後に非常に低いレベルを有し、膜セクション1~3において無視できるレベルを有した。陰性試料のコンジュゲートパッド中の低レベルの酵素、及び膜全体の低レベルは、HRPコンジュゲートが陰性試料(標的抗原/タンパク質なし)の場合において試料によって膜から大部分が洗い流されたことを示す。これは、陽性試料については、流れが減少又は停止されたが、陰性試料については、流れが減少又は停止されず、HRPコンジュゲートは、アッセイ基材(膜)から大幅に洗い流され得ることを示唆した。
【0087】
陽性試料で実行されたデバイスの各セクションにおける高レベルの酵素の存在(試験ライン後に減少する)は、ビオチン化抗体捕捉試薬への標的分析物抗原の結合が試料の流れを制限し、酵素が流れることを妨げることを示した。
【0088】
抗原-HRPコンジュゲート複合体(ネットワーク又はメッシュ)は、基材の細孔の物理的閉塞を介して、又は膜基材の性質(例えば、pH若しくは電荷)の変化を引き起こすことによって、又は抗原、抗体及び/又はHRPコンジュゲート間のカスケード若しくは連鎖反応によって形成される複合体を制限する任意の他の機構によって、流れを遮断していると思われる。抗原(陰性試料)の非存在下では、制限複合体(ネットワーク)は形成されず、HRPコンジュゲートは洗い流すことができる。
【0089】
実施例3
以下の実施例は、ラテラルフローアッセイについての試料のフローパターンを分析することを説明する。
【0090】
実施例2で議論された観察をさらに確認するために、第3の実施例は、試料の流動プロファイルを追跡することを目的とし、抗原(陽性及び陰性試料)の存在下及び非存在下でストリップ(基材)に沿ったHRPコンジュゲート検出試薬の移動をさらに分析するための設計であった。
【0091】
ラテラルフローアッセイは、実施例2のアッセイと比較して、より長いニトロセルロース膜基材を用いて作製した。試験ラインからさらに1cmを加え、標準デバイス(実験2で使用したストリップ)と同じ距離を試料パッドと試験ラインとの間に残しながら、吸収体パッドを試験ラインから1cm遠くに移動させた。
【0092】
結果
上述のようにアッセイを行い、試料が膜に沿って流れなくなると、試験領域にTMB染色試薬を添加した。TMB染色試薬を添加し、ストリップ全体に沿ったTMB発色を生成して、フロープロファイルをトレースした。図7に示されるように、2つのフロープロファイルは、試料に応じて、試験ライン領域において区別することができる。
【0093】
陰性試料では、Poiseuille型のフロープロファイルが観察され、陰性試料の完全に発達した速度流を示唆する。陽性試料については、流体力学的入口領域を非回転流領域と区別することができる。
【0094】
この結果は、実施例2における以前の観察と一致し、陰性試料において、複合体は試料流体と共に流れ、吸収パッドに到達することを実証した。対照的に、陽性試料において、抗体は、抗原、抗体捕捉試薬及び/又はHRPコンジュゲート検出試薬の間のカスケード又は連鎖反応を介して複合体を形成する標的抗原分析物に結合した。捕捉された複合体は、閉塞領域を生成し、非回転流領域をもたらす。
【0095】
実施例4
以下の実施例は、検出試薬としてIgGを使用する。
【0096】
抗S1 IgMをビオチン化し、ビオチン化IgG検出試薬の代わりにデバイスで使用した。陽性及び陰性試料を、これらの試料を用いて泳動した。
【0097】
陽性試料は良好な発色を示し、陰性試料はブランクのままであった。IgGのサイズは、150kDaである。結果を第8図に示す。対照的に、IgMは970kDaである。2つのタイプの抗体間のサイズの大きな差異を考慮すると、この結果は、膜基材に沿った移動を妨げているのは、抗体-抗原複合体のサイズだけではなく、単一の複合体と膜基材との間、又は2つ以上の抗体-抗原複合体及び/又は塩若しくは試料緩衝液の他の成分の間のいずれかのさらなる相互作用が存在することを示唆した。後者は、フローアッセイが実行されるときの相互接続ネットワークの形成を示唆する。
【0098】
実施例5
以下の実施例は、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質S1サブユニット以外の他の分析物を使用し得ることを実証する。この実施例では、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を分析物の供給源として選択した。
【0099】
Fタンパク質MAB12398-100を標的とするマウス抗RSV抗体IgGを検出試薬として用いた。呼吸器合胞体ウイルスA溶解物を標的分析物として使用した。最初に、100μg/mLから1pg/mLまで10分の1で希釈を行った。陽性試料では、シグナルは1pg/mLで達成され、連続2分の1希釈物は、抽出緩衝液中で0.5pg/mLから3.91fg/mLまで作製された。
【0100】
結果
各アッセイの結果を図9~10に示す。見て分かるように、RSV溶解物は、62.5fg/mLまでの陽性シグナルを与えた。これらの結果は、先の実施例に記載される機構が他の病原体及びバイオマーカーを検出するために使用されることができ、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質S1に限定されないことを示す。
【0101】
同様に、PSAも同様に実行し、同じ方法で試験したところ、検出はpg/mLレベルまで下がり、陰性試料の場合(標的抗原なし)には、シグナルを示さなかった。これらの様々な抗原間でサイズに大きなばらつきがあり得る(例えば、PSAは、非常に小さい)ので、この結果は、膜基材に沿った移動を妨げているのは抗体-抗原複合体のサイズだけでなく、単一の複合体と膜基材との間、又は2つ以上の抗体-抗原複合体及び/又は塩若しくは試料緩衝液の他の成分の間のいずれかのさらなる相互作用があることを示唆した。
【0102】
実施例6
以下の実施例は、陽性及び陰性試料を実行した後の捕捉抗体の位置を決定することを説明する。
【0103】
捕捉抗体が陰性試料の場合には試験ラインから流出しており、陽性試料の場合には所定の位置に留まっているという概念を試験するために、抗体を蛍光体で標識して、顕微鏡法によるストリップの画像化を可能にした。
【0104】
市販のコンジュゲーションキットを用いて、抗S1 IgGをUV標識とコンジュゲートさせた。
【0105】
抗体をニトロセルロース膜上の試験ラインに堆積させ、試験ストリップを、先の実施例と同様の手順に従って製造した。
【0106】
SARS-CoV-2陽性鼻腔スワブを1つのデバイス上で流し、陰性鼻腔スワブを別のデバイス上で流した。陽性及び陰性試験ストリップを、試料の適用後6分から蛍光顕微鏡を用いて画像化し、10分間にわたって50秒間隔で画像化した。
【0107】
結果
結果を図11に示す。陽性試料及び陰性試料の両方における抗体ラインは、10分間の画像化期間を通して同じ位置に留まる。これは、試験ストリップの製造中、抗体がニトロセルロース膜に強く結合し、陽性及び陰性試料の場合、試験ラインから流出しないことを示す。
【0108】
実施例7
以下の実施例は、陽性及び陰性鼻腔スワブ試料の実行中に試験ストリップを通る酵素の流れを可視化するためのストレプトアビジン結合HRPコンジュゲートの標識を記載する。
【0109】
検出試薬として作用した酵素の流れは、陽性試料の場合には制限され、陰性試料の場合には制限されないという概念を試験するために、酵素を標識して、膜を通る流れの間の標識された酵素のタイムラプス画像化を可能にした。
【0110】
蛍光体としてのATTo488を酵素に結合させた。ストレプトアビジン結合HRPコンジュゲートをビオチン化蛍光体と1:4の比でインキュベートして、ストレプトアビジン上の全ての結合部位に結合させた。
【0111】
蛍光体コンジュゲート化ストレプトアビジン結合HRPコンジュゲートを、本明細書の他の箇所に記載されるように製造されたコンジュゲートパッド及び試験ストリップ上に堆積させた。
【0112】
SARS-CoV-2陽性鼻腔スワブを1つのデバイス上で流し、陰性鼻腔スワブを別のデバイス上で流した。
【0113】
陽性及び陰性試験ストリップを、試料の適用後6分から蛍光顕微鏡を用いて画像化し、10分間にわたって30秒間隔で画像化した。
【0114】
結果
陽性スワブ試料中の酵素の流れは、陰性試料と比較した場合に明らかに遅延し、流れの制限を示す。酵素は、10分間の画像期間にわたって、陽性の場合、試験ライン及び吸光度パッドの前端に向かってより濃縮され、一方、陰性試料では、流れは10分間の画像期間にわたって吸光度パッド内に分散する。これらの結果を図12に視覚化する。
【0115】
実施例8
以下の実施例は、酵素移動の蛍光体利用可能画像化との酵素発達との関係を調べるための、またTMBの添加が試験ストリップ内の酵素のさらなる移動をもたらすかどうかを決定するためのHRP基材TMBの使用を記載する。
【0116】
ストレプトアビジン結合HRPコンジュゲートをビオチン化蛍光体と1:4の比でインキュベートして、ストレプトアビジン上の全ての結合部位に結合させた。
【0117】
蛍光体コンジュゲート化ストレプトアビジン結合HRPコンジュゲートを、本明細書の他の箇所に記載されるように製造されたコンジュゲートパッド及び試験ストリップ上に堆積させた。
【0118】
SARS-CoV-2陽性鼻腔スワブを1つの後のフローアッセイデバイス上で流し、陰性鼻腔スワブを別のデバイス上で流した。
【0119】
陽性及び陰性試験ストリップを、試料の適用後6分から蛍光顕微鏡を用いて画像化し、10分間にわたって30秒間隔で画像化した。
【0120】
10分間の撮像期間の終わりに、ストリップを顕微鏡から取り出した。TMBを試験ライン上に堆積させ、5分間発色させた。発色を画像化し、試験ストリップを顕微鏡に戻して酵素の最終位置を画像化した。
【0121】
結果
結果を図13及び図14に示すが、陰性試料の場合、試験ライン上へのTMBの堆積後、TMBがニトロセルロース膜に沿って逆流するにつれて、試験ラインの上流で単一の発色領域(すなわち、図13の領域1)が生じ、この位置での酵素の存在が実証される。
【0122】
陽性試料の場合、試験ラインでのTMBの堆積に続いて、陰性試料の場合に見られるように、試験ライン(すなわち、図13の領域2)に隣接して、強い発色の明瞭な領域が生じ、続いて領域1での発色が生じた。これは、陽性試料の場合に酵素が存在する2つの異なる領域を示し、より多くの量が試験ラインに隣接して保持される。
【0123】
TMB発色後のストリップの蛍光画像化は、ニトロセルロース膜に沿った全ての非結合蛍光体に起因する非特異的シグナル又はバックグラウンド(すなわち、酵素に関連しない)を明らかにした。図は、観察されたTMB発色の領域に対応する暗い領域を示す(図14)。これは、蛍光体の励起及び/又は発光を制限する、発色されたTMBの光学密度に起因し得る。
【0124】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を説明し、例示してきたが、当業者は、本明細書で説明した機能を実行し、及び/又は結果及び/又は利点のうちの1つ以上を得るための様々な他の手段及び/又は構成を容易に想定し、そのような変形態及び/又は修正のそれぞれは、本発明の範囲内にあるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例示的であることを意図し、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、本開示の教示が使用される特定の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、又は確認することができる。したがって、前述の実施形態は、単なる例として提示されており、添付の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内で、本発明は、具体的に記載及び特許請求されている以外の方法で実施され得ることが理解されるべきである。本開示は、本明細書に記載される個々の各特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法に関する。さらに、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の範囲内に含まれる。
【0125】
不定冠詞「a」及び「an」は、本明細書及び特許請求の範囲で用いられるように、明らかに反対のことが示されるのでなければ、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0126】
フレーズ「及び/又は」は、本明細書及び特許請求の範囲で用いられるように、そのように連結された要素、すなわち、いくつかの場合には結合的に存在し、及び他の場合には分離して存在する要素の「いずれか又は双方」を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」節によって具体的に特定される要素以外の他の要素は、明らか反対のことが示されない限り、それらの要素に関連するか又は関連しないかにかかわらず、場合により存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む(comprising)」などのオープンエンド言語と併せて使用される場合、一実施形態では、Bを含まないA(場合によりB以外の要素を含む);別の実施形態では、Aを含まないB(場合によりA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、AとBの両方(場合により他の要素を含む);などを指すことができる。
【0127】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられるように、「又は」は、先に定義された「及び/又は」と同一の意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的、すなわち、要素の数又はリスト、及び、場合により、リストされていないさらなる項目の、少なくとも1つ、また1つを超えるものを含めると解釈されるべきである。明らかに反対に示される用語のみ、例えば「~のうちの1つのみ」若しくは「~のうちの正確に1つ」、又は特許請求の範囲で使用される場合、「からなる」は、要素の数又はリストの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用される「又は」という用語は、排他性の用語、例えば「~のいずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」、又は「~のうちの正確に1つ」が先行する場合、排他的代替物(すなわち、「一方又は他方であるが、両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるものとする。特許請求の範囲で使用される場合、「~から本質的になる」は、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0128】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられるように、1つ以上の要素のリストへの参照におけるフレーズ「少なくとも1つ」は、要素のリスト中のいずれかの1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、要素のリスト内に具体的にリストされたそれぞれ及びあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、且つ要素のリスト中の要素のいずれの組み合わせも排除しない。この定義は、具体的に特定される要素に関連するか又は関連しないかにかかわらず、フレーズ「少なくとも1つ」が参照する要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が場合により存在し得ることを許容する。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は同等に、「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は同等に、「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、場合により1つを超えることを含めた少なくとも1つのAを指し、Bは存在せず(場合により、B以外の要素を含む);別の実施形態では、場合により1つを超えることを含めた少なくとも1つのBを指し、Aは、存在せず(場合により、A以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、場合により1つを超えることを含めた少なくとも1つのA、及び場合により1つを超えることを含めた少なくとも1つのBを指す(場合により、他の要素を含んでもよい);などを指すことができる。
【0129】
いくつかの実施形態は、様々な例が記載された方法として具現化され得る。方法の一部として実行される動作は、任意の適切な方法で順序付けられ得る。したがって、実施形態は、動作が説明されたものとは異なる順序で行われ、記載されたものとは異なる(より多い又は少ない)動作を含み得、及び/又は動作が上記で具体的に記載される実施形態において連続して実行されるものとして示されていても、いくつかの動作を同時に実行することを構成することができる。
【0130】
特許請求の範囲の要素を修正するための請求項における「第1の」、「第2の」、「第3の」などの序数用語の使用は、それ自体では、1つの請求項要素の別のものに対する優先、優先順位、若しくは順序、又は方法の動作が実行される時間的順序を意味するものではなく、単に、請求項要素を区別するために、特定の名称を有する1つの請求項要素を、同じ名称を有する別の要素から区別するための(ただし、序数用語の使用のための)ラベルとして使用される。
【0131】
特許請求の範囲及び上記の明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「担持する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」などの全ての移行句は、オープンエンド、すなわち、限定されないが含むことを意味すると理解されるべきである。「からなる」及び「から本質的になる」という移行句のみが、米国特許庁の特許審査手続マニュアル第2111.03条に記載されているように、それぞれクローズドエンド又はセミクローズドエンドの移行句であるものとする。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図1L
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローアッセイを用いて試料中の複数の分析物を検出するための方法であって、前記方法が:
前記試料を基材の上流位置に導入することであって、前記基材が、下流位置の結合領域に配置された複数の捕捉試薬を含む、導入することと;
前記試料を前記上流位置から前記下流位置に向かって流し、前記試料の前記複数の分析物の少なくとも一部を前記複数の捕捉試薬の少なくとも一部と結合させることと;
抗原の存在下で非応答性の複数の検出試薬を、前記下流位置に向かって流すことと;
捕捉試薬に結合した分析物によって前記検出試薬の少なくとも一部を物理的に捕捉することと;
捕捉された検出試薬を検出することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記結合した分析物及び捕捉試薬が、相互接続ネットワークを形成する、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記相互接続ネットワークのサイズを増加させることをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記相互接続ネットワークを形成した後に、前記基材の少なくとも一部の上の流れを減少又は停止させることをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記試料の流速が、0.1mm/秒以上及び5mm/秒以下減少する、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記相互接続ネットワークが、前記複数の分析物、前記複数の検出試薬、及び/又は前記複数の捕捉試薬の間の非共有結合相互作用を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の検出試薬が、前記基材の表面上の前記上流位置に配置される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記相互接続ネットワークが、前記基材内で沈殿物を形成する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記試料が、塩、緩衝液、及び/又は界面活性剤を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の捕捉試薬が複数の捕捉抗体であり、前記分析物が抗原である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記検出試薬が、1つ以上のHRPコンジュゲートである、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記検出試薬が1つ以上のナノ酵素である、請求項に記載の方法。
【国際調査報告】