IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケーマイクロワークス 株式会社の特許一覧

特表2024-530696多層生分解性フィルム、その製造方法、およびそれを含む環境配慮型包装材
<>
  • 特表-多層生分解性フィルム、その製造方法、およびそれを含む環境配慮型包装材 図1
  • 特表-多層生分解性フィルム、その製造方法、およびそれを含む環境配慮型包装材 図2
  • 特表-多層生分解性フィルム、その製造方法、およびそれを含む環境配慮型包装材 図3
  • 特表-多層生分解性フィルム、その製造方法、およびそれを含む環境配慮型包装材 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】多層生分解性フィルム、その製造方法、およびそれを含む環境配慮型包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240816BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240816BHJP
   B65D 65/46 20060101ALI20240816BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B7/027
B65D65/46
B65D65/40 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508995
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 KR2022013133
(87)【国際公開番号】W WO2023043100
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0123507
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソクイン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、クォンヒョン
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD05
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA35
3E086BB21
3E086BB23
3E086BB35
3E086BB41
3E086BB58
3E086BB62
3E086CA01
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK41D
4F100AK41E
4F100AL01B
4F100AL01D
4F100BA05
4F100BA08
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100GB15
4F100JA04A
4F100JA04B
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JB16D
4F100JB16E
4F100JC00A
4F100JC00C
4F100JC00E
4F100JH01
4F100JK07
4F100JN01
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
本発明は、多層生分解性フィルム、その製造方法、およびそれを含む環境配慮型包装材を提供する。具体的に、前記多層生分解性フィルムは、ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層と、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂層とを含む、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されており、前記第1樹脂層の均一度(LUI)が0.2μm以下に調整されることにより、優れた生分解性とともに、最終フィルムの均一度を向上させることができ、柔軟性および透明性を向上させ、外観特性および騒音度を改善し得るので、包装材として様々な分野に活用され、高品質の環境配慮型包装材を提供し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層と、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂層とを含む、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されており、
前記第1樹脂層の下記式1で表される均一度(LUI)が0.2μm以下である多層生分解性フィルム:
<式1>
前記式1において、
500mmの幅および20μm~25μmの厚さを有する前記多層生分解性フィルムの幅方向の一端部から50mm離れた点(N)、幅方向の他端部から50mm離れた点(S)、および幅方向の中央点(C)で厚さ方向に切断した断面において、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、積層された第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さをそれぞれ測定したとき、
前記tmax、Nは、前記多層生分解性フィルムのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Nは、前記多層生分解性フィルムのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、Sは、前記多層生分解性フィルムのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Sは、前記多層生分解性フィルムのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、Cは、前記多層生分解性フィルムのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Cは、多層生分解性フィルムのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さである。
【請求項2】
下記式2で表される多層生分解性フィルムの幅方向の両端の均一度差(ΔtN,S)が0.06μm以下である、請求項1に記載の多層生分解性フィルム:
<式2>
前記式2において、
前記tmax、N、tmin、N、tmax、S、およびtmin、Sは、請求項1で定義した通りである。
【請求項3】
下記式3で表される柔軟騒音複合度(FNC)が20以下である、請求項1に記載の多層生分解性フィルム:
<式3>
前記式3において、
前記YMおよびNAVGは、それぞれ前記多層生分解性フィルム試験片で測定された単位を除いた数値であり、
前記YMは、ASTM D882に基づいて多層生分解性フィルム試験片を作製して、長さ150mmおよび幅15mmに裁断し、チャック間間隔が50mmとなるように装着して引張速度200mm/分で実験した後、測定開始点から伸び率3%到達時点までの直線勾配値であるヤング率(Young's modulus、kgf/mm)であり、
前記NAVGは、ポリカーボネート製の650(W)mm×450(D)mm×500(H)mmのボックス内で、210mm×297mmのA4サイズに裁断した多層生分解性フィルムをデジタル騒音分析装置から30cm離れたところに位置させ、前記フィルムの両端を治具でつかみ、30回/分の速度で前後にねじることを繰り返して、5秒以上騒音を出すとき測定した騒音度を5回測定して算出した平均騒音度(dB)である。
【請求項4】
下記式4で表されるフィルムの外観騒音品質複合指数(QCI)が28以下である、請求項3に記載の多層生分解性フィルム:
<式4>
前記式4において、
前記HZ、LUI、およびNAVGは、それぞれ前記多層生分解性フィルム試験片で測定された単位を除いた数値であり、
前記HZは、前記多層生分解性フィルムのヘイズ(%)であり、
前記LUIは、請求項1で定義した通りであり、
前記NAVGは、請求項3で定義した通りである。
【請求項5】
前記フィルムの両面最外郭層がそれぞれ第1樹脂層であり、
前記両面最外郭層の厚さの合計が、前記フィルム全体厚さの5%~40%である、請求項1に記載の多層生分解性フィルム。
【請求項6】
前記フィルムが5層以上であり、
前記両面最外郭層を除く第1樹脂層および第2樹脂層の個別層の平均厚さ比が1:0.5~2である、請求項1に記載の多層生分解性フィルム。
【請求項7】
前記脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂の酸成分中の脂肪族成分の含有量が30モル%以上である、請求項1に記載の多層生分解性フィルム。
【請求項8】
ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層と、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂層とを含む、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されており、
前記第1樹脂層の下記式1-1で表される均一度(LUIS)が2.3μm未満である多層生分解性シート:
<式1-1>
前記式1-1において、
650mmの幅および300μmの厚さを有する前記多層生分解性シートの幅方向の一端部から50mm離れた点(N)、幅方向の他端部から50mm離れた点(S)、および幅方向の中央点(C)で厚さ方向に切断した断面において、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、積層された第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さをそれぞれ測定したとき、
前記tmax、N1は、前記多層生分解性シートのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、N1は、前記多層生分解性シートのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、S1は、前記多層生分解性シートのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、S1は、前記多層生分解性シートのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、C1は、前記多層生分解性シートのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、C1は、多層生分解性シートのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さである。
【請求項9】
ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂と、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂とをそれぞれ準備する段階(段階1)と、
前記第1樹脂および前記第2樹脂をそれぞれ溶融押出し、第1樹脂層と第2樹脂層とを交互に積層して、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されたシートを得る段階(段階2)と、
前記積層されたシートを二軸延伸し熱固定して、多層生分解性フィルムを得る段階(段階3)と、を含み、
前記多層生分解性フィルムは、前記第1樹脂層の前記式1で表される均一度(LUI)が0.2μm以下である、多層生分解性フィルムの製造方法:
<式1>
前記式1において、
500mmの幅および20μm~25μmの厚さを有する前記多層生分解性フィルムの幅方向の一端部から50mm離れた点(N)、幅方向の他端部から50mm離れた点(S)、および幅方向の中央点(C)で厚さ方向に切断した断面において、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、積層された第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さをそれぞれ測定したとき、
前記tmax、Nは、前記多層生分解性フィルムのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Nは、前記多層生分解性フィルムのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、Sは、前記多層生分解性フィルムのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Sは、前記多層生分解性フィルムのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、Cは、前記多層生分解性フィルムのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Cは、多層生分解性フィルムのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さである。
【請求項10】
前記第1樹脂層の溶融粘度が、前記第2樹脂層の溶融粘度よりも大きい、請求項9に記載の多層生分解性フィルムの製造方法。
【請求項11】
下記式5で表される210℃における層間溶融粘度差(ΔV)が500ポアズ以上である、請求項9に記載の多層生分解性フィルムの製造方法:
<式5>
ΔV=V1-V2
前記式5において、
前記V1は、第1樹脂層の溶融粘度であり、
前記V2は、第2樹脂層の溶融粘度である。
【請求項12】
前記第1樹脂の溶融押出温度と、前記第2樹脂の溶融押出温度との差が30℃未満である、請求項9に記載の多層生分解性フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記第1樹脂の溶融押出温度は180℃超~250℃であり、
前記第2樹脂の溶融押出温度は180℃超~250℃である、請求項9に記載の多層生分解性フィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の多層生分解性フィルムを含む、環境配慮型包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層生分解性フィルム、その製造方法、およびそれを含む環境配慮型包装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装用途として多く使用されるプラスチックフィルムとしては、セロファン(cellophane)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン(nylon)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられる。
【0003】
しかし、セロファンフィルムは、製造工程中に深刻な環境汚染を誘発して生産自体に多くの規制を受けており、ポリ塩化ビニルフィルムは、焼却の際にダイオキシン等のような有害物質を発生して使用に多くの規制を受けている。また、ポリエチレンフィルムは、耐熱性と機械的特性に乏しく、低級包装用途以外にはその使用に制限がある。ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートなどは、比較的安定した分子構造を持って良好な機械的特性を有しているが、これらは包装用途で使用された後、特別な処理なく埋め立てられると、化学的、生物学的安定性のため、ほとんど分解されず地中に蓄積され、埋立地の寿命を短縮し、土壌汚染の問題を引き起こす。
【0004】
このような分解されないプラスチックフィルムの欠点を補うため、最近では樹脂自体の生分解性が高い脂肪族ポリエステルであるポリ乳酸フィルムが多様に使用されているが、このフィルムは、機械的特性は良好であるけど、固有の結晶構造のため柔軟性が低く、その用途が制限的である。
【0005】
このような問題点を改善するために、特許文献1は、ポリ乳酸以外の生分解性脂肪族ポリエステルを単独で用いてフィルムを製造する方法を開示しているが、この場合ガラス転移温度が低すぎるため、二軸延伸法ではフィルムを製造することが容易ではないだけでなく、最終フィルムの機械的強度が低く熱収縮率が高いため加工過程の中で多くの問題が生じる。
【0006】
一方、特許文献2は、ポリ乳酸を脂肪族-芳香族共重合ポリエステルとブレンドして、フィルムに柔軟性および熱密封(heat sealing)性を付与する方法を開示しているが、この方法によると、ポリ乳酸と脂肪族-芳香族共重合ポリエステルとの低い相溶性および可塑剤の使用によって最終フィルムの透明性が著しく低下して、透明性が求められる包装用途には使用し難いという問題がある。
【0007】
また、ポリ乳酸と脂肪族-芳香族共重合ポリエステルを含む多層フィルムは、特定の押出温度条件でフィルムを成形する際、層均一度の位置別偏差が大きいのでフィルム外観および厚さ調整が難しく、前記均一度の位置別偏差が激しい場合、層の跡や欠陥などが発生しやすいため、フィルムの物性に悪影響を与えることがあり、厚さ調整が難しいため、加工性、生産性および成形性にも問題があり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本特開2006-272712号公報
【特許文献2】日本特開2003-160202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、多層生分解性フィルムの層均一度を調整して、フィルムの柔軟性、透明性、騒音度、および外観特性が同時に改善された、多層生分解性シートまたはフィルムを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、前記多層生分解性シートまたはフィルムの第1樹脂層の均一度(LUI)を最適の範囲に調整するために、第1樹脂層と第2樹脂層との溶融粘度範囲を効率的に制御し、各層の厚さを微細に調整して、本発明で目的とする前記特性を全て満足させ得る多層生分解性フィルムの製造方法を提供することである。
【0011】
本発明のまた他の目的は、前記均一度が調整された多層生分解性フィルムを用いることにより、生分解が可能であるとともに、環境にやさしく、高品質の環境配慮型包装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層と、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂層とを含む、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されており、前記第1樹脂層の下記式1で表される均一度(LUI)が0.2μm以下である、多層生分解性フィルムを提供する。
【0013】
<式1>
前記式1において、
500mmの幅および20μm~25μmの厚さを有する前記多層生分解性フィルムの幅方向の一端部から50mm離れた点(N)、幅方向の他端部から50mm離れた点(S)、および幅方向の中央点(C)で厚さ方向に切断した断面において、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、積層された第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さをそれぞれ測定したとき、
前記tmax、Nは、前記多層生分解性フィルムのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Nは、前記多層生分解性フィルムのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、Sは、前記多層生分解性フィルムのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Sは、前記多層生分解性フィルムのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、Cは、前記多層生分解性フィルムのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Cは、多層生分解性フィルムのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さである。
【0014】
また、本発明は、ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層と、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂層とを含む、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されており、前記第1樹脂層の下記式1-1で表される均一度(LUI)が2.3μm未満である、多層生分解性シートを提供する。
【0015】
<式1-1>
前記式1-1において、
650mmの幅および300μmの厚さを有する前記多層生分解性シートの幅方向の一端部から50mm離れた点(N)、幅方向の他端部から50mm離れた点(S)、および幅方向の中央点(C)で厚さ方向に切断した断面において、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、積層された第1樹脂層の個別層の厚さをそれぞれ測定したとき、
前記tmax、N1は、前記多層生分解性シートのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、N1は、前記多層生分解性シートのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、S1は、前記多層生分解性シートのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、S1は、前記多層生分解性シートのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、C1は、前記多層生分解性シートのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、C1は、多層生分解性シートのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さである。
【0016】
さらに、本発明は、ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂と、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂とをそれぞれ準備する段階(段階1)と、前記第1樹脂および前記第2樹脂をそれぞれ溶融押出し、第1樹脂層と第2樹脂層とを交互に積層して、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されたシートを得る段階(段階2)と、前記積層されたシートを二軸延伸し熱固定して、多層生分解性フィルムを得る段階(段階3)と、を含み、前記多層生分解性フィルムは、前記第1樹脂層の前記式1で表される均一度(LUI)が0.2μm以下である、多層生分解性フィルムの製造方法を提供する。
【0017】
さらには、本発明は、前記多層生分解性フィルムを含む、環境配慮型包装材を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明による多層生分解性フィルムは、優れた均一度、柔軟性および透明性を同時に有するとともに、外観特性および騒音度も改善され得る。特に、前記多層生分解性フィルムは、位置別厚さ偏差が少ないので、特定範囲の均一度を実現できることに特徴がある。
【0019】
また、実現例による多層生分解性フィルムの製造方法は、経済的かつ効率的な方法により、成形性、加工性および生産性をさらに向上させ得る。特に、第1樹脂および第2樹脂の溶融温度並びにこれらの溶融温度差を制御することにより、前記第1樹脂層と第2樹脂層との溶融粘度範囲を効率良く制御することができ、これにより、各々の層の位置別厚さを微調整して、前記多層生分解性フィルムの第1樹脂層の均一度(LUI)を最適の範囲に調整し得る。
【0020】
さらには、前記多層生分解性フィルムは、前記特性とともに生分解が可能であり、埋め立ての際に完全分解して環境に優しい特性を有するので、包装材として様々な分野に活用され、高品質の環境配慮型包装材を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実現例による多層生分解性フィルムの模式図である。
図2図2は、本発明の他の実現例による多層生分解性フィルムの斜視図である。
図3図3は、図2におけるA-A'線に沿って切開した斜視図(a)、およびその断面の拡大図(b)である。
図4図4は、本発明の一実現例による多層生分解性フィルムを製造する方法を概略的に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
実現例は、以下に開示される内容に限定されるものではなく、発明の要旨が変更されない限り、様々な形態に変形され得る。
【0023】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0024】
本明細書における単数表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味と解釈される。
【0025】
また、本明細書に記載の構成要素の物性値、寸法、反応条件等を示す全ての数値範囲は、特に記載がない限り、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解すべきである。
【0026】
一方、本明細書において、第1樹脂層、第2樹脂層、または第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために使用されるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的にのみ使用される。
【0027】
また、各構成要素の「一面」/「打面」または「上」/「下」に対する基準は図面に基づいて説明し、これらの用語は構成要素を区別するための用語であるのみ、実際適用する際に相互互換され得る。
【0028】
本明細書において、1つの構成要素が他の構成要素の上または下に形成されるものと記載されることは、1つの構成要素が他の構成要素の上または下に直接、またはさらに他の構成要素を介して間接的に形成されるものをすべて含む。
【0029】
また、図面における各構成要素の大きさは説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。また、明細書全体にわたって同一参照番号は同一構成要素を指す。
【0030】
一実現例において、ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層と、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂層とを含む、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されており、前記第1樹脂層の下記式1で表される均一度(LUI)が0.2μm以下である、多層生分解性フィルムを提供する。
【0031】
<式1>
前記式1において、
500mmの幅および20μm~25μmの厚さを有する前記多層生分解性フィルムの幅方向の一端部から50mm離れた点(N)、幅方向の他端部から50mm離れた点(S)、および幅方向の中央点(C)で厚さ方向に切断した断面において、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、積層された第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さをそれぞれ測定したとき、
前記tmax、Nは、前記多層生分解性フィルムのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Nは、前記多層生分解性フィルムのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、Sは、前記多層生分解性フィルムのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Sは、前記多層生分解性フィルムのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、Cは、前記多層生分解性フィルムのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Cは、多層生分解性フィルムのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さである。
【0032】
一実現例においては、前記特定の組成を有する第1樹脂層と第2樹脂層とを含む、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されており、特に、前記第1樹脂層の均一度(LUI)が0.2μm以下に調整されることにより、優れた均一度、柔軟性および透明性を同時に有するとともに、外観特性および騒音度も改善された多層生分解性フィルムを提供し得る。
【0033】
ひいては、前記多層生分解性フィルムは、前記特性とともに、生分解が可能で、埋め立ての際に完全分解され環境に優しい特性を有するので、より多様な分野に活用され優れた特性を発揮し得るということに技術的意義がある。
【0034】
[多層生分解性フィルム]
【0035】
図1を参照すると、本発明の実現例による多層生分解性フィルム100は、ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層110と、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂層120とを含む、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されている。また、前記多層生分解性フィルム100は、両面最外郭層として第1樹脂層110'を含み得る。具体的に、前記多層生分解性フィルムの両面最外郭層は、第1樹脂層110'である。
【0036】
一実現例においては、前記特定主成分を有する第1樹脂層および第2樹脂層、具体的にポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層、および前記第1樹脂層の一面に脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂層を含む、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層され含むことにより、柔軟性を向上させ、騒音度を下げ得るのみならず、前記第1樹脂層および第2樹脂層の層間相溶性が良いので層間接着特性を向上させることができ、成形性、加工性および生産性をさらに向上させ得る。
以下、実現例による多層生分解性フィルムの各層について具体的に説明する。
【0037】
<第1樹脂層>
一実現例によると、前記第1樹脂層は、ポリ乳酸(PLA)系重合体を主成分として含み得る。
【0038】
本発明において、「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が50重量%以上であることを意味し、具体的に80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、96重量%以上、97重量%以上、または98重量%以上を意味し得る。
【0039】
具体的に、前記ポリ乳酸系重合体は、前記第1樹脂層の全重量に対して、例えば50重量%以上、具体的に80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、96重量%以上、97重量%以上、または98重量%以上で含まれ得る。
【0040】
前記ポリ乳酸系重合体は、石油ベースの樹脂とは異なり、バイオマス(biomass)をベースとするため、再生資源の活用が可能であり、生産の際に既存の樹脂に比べて地球温暖化の主犯である二酸化炭素の排出が少なく、埋め立ての際に水分および微生物によって生分解されるなど環境にやさしい。
【0041】
前記ポリ乳酸系重合体は、重量平均分子量(Mw)が、100000~1000000g/mol、例えば100000~800000g/mol、100000~500000g/mol、または100000~300000g/molであり得る。前記重量平均分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフィー法(GPC)によって測定され得る。前記ポリ乳酸系重合体の重量平均分子量(Mw)が前記範囲を満足すると、前記多層生分解性フィルムの機械的特性および光学特性をさらに向上させ得る。
【0042】
前記ポリ乳酸系重合体は、L-乳酸、D-乳酸、D、L-乳酸、またはそれらの組み合わせを含み得る。具体的に、前記ポリ乳酸系重合体は、L-乳酸とD-乳酸とのランダム共重合体であり得る。この際、前記D-乳酸の含有量は、前記ポリ乳酸系重合体の総重量を基準に、例えば1重量%~5重量%、例えば1重量%~4重量%、例えば1重量%~3重量%、例えば1重量%~2.5重量%、または例えば1重量%~2重量%であり得る。前記D-乳酸の含有量が前記範囲を満足すると、フィルムの延伸工程性が向上する利点があり得る。
【0043】
前記L-乳酸の含有量は、前記ポリ乳酸系重合体の総重量を基準に、例えば80重量%~99重量%、例えば83重量%~99重量%、または例えば85重量%~99重量%であり得る。前記L-乳酸の含有量が前記範囲を満足すると、フィルムの耐熱特性が向上する利点があり得る。
【0044】
一方、実現例によると、前記第1樹脂層は、脂肪族ポリエステルであるポリ乳酸系重合体を単独で含み得る。
【0045】
また他の実現例によると、前記第1樹脂層は、ポリ乳酸系重合体を少量の他のヒドロキシカルボン酸単位と一緒に共重合して得られた樹脂を含み得る。この際、前記ヒドロキシカルボン酸単位としては、グリコール酸または2-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブチル酸などが挙げられ、前記ヒドロキシカルボン酸単位は、第1樹脂層の総重量を基準に5重量%以下で含まれ得る。
【0046】
また他の実現例によると、前記第1樹脂層は、前記ポリ乳酸系重合体を少量の酢酸ビニルおよびラウリン酸ビニル共重合体と一緒に混合して得られた混合樹脂を含み得る。この際、前記酢酸ビニルおよびラウリン酸ビニル共重合体は、前記第1樹脂層の総重量を基準に30重量%以下で含まれ得る。
【0047】
また他の実現例によると、前記第1樹脂層は、前記ポリ乳酸系重合体をコアシェル構造のブチルアクリレート系ゴムと一緒に混合して得られた混合樹脂を含み得る。この際、前記コアシェル構造のブチルアクリレート系ゴムは、前記第1樹脂層の総重量を基準に10重量%以下で含まれ得る。
【0048】
一方、本発明の実現例によると、第1樹脂層には、通常の静電印加剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線遮断剤、ブロッキング防止剤、およびその他の無機滑剤が本発明の効果を損なわない範囲内で添加されても構わない。
【0049】
<第2樹脂層>
一実現例によると、前記第2樹脂層は、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分として含む。
【0050】
この際、前記脂肪族ポリエステル系樹脂は、前記第1樹脂層に用いられたものと異なる樹脂であってもよく、前記多層生分解性フィルムが前記第1樹脂層とともに、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分として含む第2樹脂層を一緒に含むことにより、柔軟性をさらに向上させ、騒音度を低減するのみならず、前記ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層との層間相溶性に良いので、優れた層間接着特性を維持することができ、成形性、加工性および生産性をさらに向上させ得る。
【0051】
仮に、前記多層生分解性フィルムがポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層のみを含む場合、前記ポリ乳酸系重合体は、機械的および光学特性は良好であり得るが、柔軟性が足りず騒音度が大きいため、多層生分解性フィルムに製造する際、その用途が非常に制限されるという問題があり得る。また、前記多層生分解性フィルムが第1樹脂層のみを含み、前記第1樹脂層が前記ポリ乳酸系重合体を、前記ポリ乳酸系重合体と異なる脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂とブレンドしてフィルムを形成する場合、最終フィルムの透明性が著しく低下して、透明性が求められる包装用途には使用に限界があり得る。
【0052】
具体的に、前記第2樹脂層は、脂肪族または芳香族ジカルボン酸を主成分とする酸成分と、アルキレングリコールを主成分とするグリコール成分とを重縮合した脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を含み得る。
【0053】
前記脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、マロン酸、シュウ酸、アゼライン酸、ノナンジカルボン酸、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0054】
前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、およびそれらの混合物が挙げられ、他の脂肪族または芳香族ジカルボン酸成分を含めて使用し得る。
【0055】
前記グリコール成分の具体例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1、3-プロパンジオール、ジエチレングリコールなどのアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物を使用し得る。
【0056】
この際、高い生分解性を実現するためには、酸成分中の脂肪族成分の含有量が、例えば30モル%以上、例えば40モル%以上、例えば45モル%以上、例えば50モル%以上であり得る。具体的に、前記酸成分中の脂肪族成分の含有量が、30モル%~80モル%、30モル%~70モル%、または40モル%~60モル%であり得る。前記酸成分中の脂肪族成分の含有量が前記範囲を満足すると、生分解性をさらに向上させながら、目的とする物性を実現することができる。
【0057】
本発明の実現例によると、前記脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂、ポリブチレンアジペート(PBA)樹脂、ポリブチレンサクシネート-アジペート(PBSA)樹脂、ポリブチレンサクシネート-テレフタレート(PBST)樹脂、ポリヒドロキシブチレート-co-バレレート(PHBV)樹脂、ポリカプロラクトン(PCL)樹脂、およびポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート(PBSAT)樹脂からなる群より選択される1種以上を含み得る。具体的に、前記脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂、およびポリブチレンアジペート(PBA)樹脂からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0058】
より具体的に、前記脂肪族ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂およびポリブチレンアジペート(PBA)樹脂からなる群より選択される1種以上を含んで良く、例えばポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂を含み得る。また、前記脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)樹脂およびポリブチレンサクシネート-テレフタレート(PBST)樹脂からなる群より選択される1種以上を含んで良く、例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)樹脂を含み得る。
【0059】
本発明の一実現例により、前記第2樹脂層にポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)樹脂を含むことにより、微生物等により自然分解され得るので環境配慮に有利であり、破壊強度、引張強度、伸び率、光学特性、硬度、溶融張力(melt strength)、および耐水性などの機械的物性を向上させることができ、特に、引張強度および伸び率を向上させヤング率を下げて、適切な強度を維持しながら柔軟性を向上させ得る。特に、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)樹脂は、他の生分解性ポリエステル樹脂、例えば、ポリ乳酸系重合体よりもさらに伸縮性に優れ、柔軟性に優れ、騒音度の低い利点がある。このような理由から、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)樹脂を主成分とする第2樹脂層を形成し、これを前記ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層と交互に積層して多層生分解性フィルムを形成すると、適切な強度を維持しながら優れた柔軟性および透明性を実現し、騒音低減効果を同時に達成することができ、様々な生分解性製品への活用が可能であるという大きな利点がある。
【0060】
一方、本発明の実現例によると、前記第2樹脂層は、前記脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を単独で含み得る。
【0061】
また他の実現例によると、前記第2樹脂層は、前記脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)単位と一緒に混合して得られた混合樹脂を含み得る。前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)単位は、ポリ[3-ヒドロキシブチレート](P3-HB)、ポリ[4-ヒドロキシブチレート](P4-HB)、ポリ[3-ヒドロキシバレレート](PHV)、ポリ[3-ヒドロキシブチレート]-co-ポリ[3-ヒドロキシバレレート](PHBV)、ポリ[3-ヒドロキシヘキサノエート](PHC)、ポリ[3-ヒドロキシヘプタノエート](PHH)、ポリ[3-ヒドロキシオクタノエート](PHO)、ポリ[3-ヒドロキシノナノエート](PHN)、ポリ[3-ヒドロキシデカノエート](PHD)、ポリ[3-ヒドロキシドデカノエート](PHDD)、およびポリ[3-ヒドロキシテトラデカノエート](PHTD)からなる群より選択される1種以上を含み得る。具体的に、前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)単位は、第2樹脂層の全重量を基準に30重量%以下で含まれ得る。
【0062】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂は、前記第2樹脂層の全重量に対して、例えば50重量%以上、具体的に80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上。、95重量%以上、96重量%以上、97重量%以上、または98重量%以上で含まれ得る。
【0063】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂は、重量平均分子量(Mw)が、例えば50000~400000g/mol、例えば50000~300000g/mol、例えば50000~200000g/mol、または例えば50000~100000g/molであり得る。前記重量平均分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフィー法(GPC)により測定され得る。前記脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が前記範囲を満足すると、前記ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層と相溶性および加工性にさらに優れることとなり、前記多層生分解性フィルムの適切な強度を維持しながら柔軟性、透明性、および騒音低減効果をさらに向上させ得る。
【0064】
一方、本発明の実現例によると、第2樹脂層には、通常の静電印加剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線遮断剤、ブロッキング防止剤、およびその他の無機滑剤が本発明の効果を損なわない範囲内で添加されても構わない。
【0065】
<第3樹脂層>
一方、本発明の実現例によると、前記第2樹脂層に用いられたものとは異なる脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第3樹脂層を、本発明の効果を損なわない範囲内で第1樹脂層および第2樹脂層と交互に積層して使用することもできる。
【0066】
第3樹脂層に使用され得る脂肪族ポリエステル系樹脂および脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂それぞれの具体例は、前記で第2樹脂層に用いられた樹脂と同一である。
【0067】
同様に、第3樹脂層も通常の静電印加剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線遮断剤、ブロッキング防止剤、およびその他の無機滑剤が本発明の効果を損なわない範囲内で添加されても構わない。
【0068】
<コロナ層またはコーティング層>
一方、本発明の効果を損なわない範囲内で後加工工程の効果を高めるために、少なくともフィルム表面の一面にフィルムの加工適性を高めるためのコロナ処理を行うか、静電気防止やブロッキング防止のための無機物粒子コーティングを行うか、または印刷層との印刷適性を向上させるためのコーティング処理を行い得る。
【0069】
一実現例による多層生分解性フィルムは、前記第1樹脂層の他面上に配置されるコロナ層をさらに含み得る。具体的に、前記コロナ層は、前記第1樹脂層の他面に直接形成され得る。
【0070】
前記多層生分解性フィルムがコロナ層をさらに含むことにより、多層生分解性フィルム表面の油分等の汚染を除去し、接着部位と親和性のある表面を作って接着強度を増加させることができ、化学的および物理的に表面改質がなされ、親水性、接着性、印刷性、コーティング特性、蒸着特性などがさらに向上され得る。
【0071】
前記コロナ層は、前記第1樹脂層のコロナ処理によって形成され、-CO、-COOHおよび-OHからなる群より選択される極性官能基を含み得る。
【0072】
前記第1樹脂層において、前記コロナ処理された面に対する表面張力が38dyn/cm以上であり、例えば38~70dyn/cm、例えば38~68dyn/cm、または例えば38~66dyn/cmであり得る。前記第1樹脂層において、前記コロナ処理された面に対する表面張力が前記範囲を満足すると、前記多層生分解性フィルムの接着性、印刷性、コーティング特性、蒸着特性などをさらに向上させ得る。
【0073】
前記コロナ層の厚さは、多層生分解性フィルムの用途および目的に応じて適宜調整することができ、具体的に、例えば0.1nm~1000nm、例えば0.2nm~900nm、または例えば0.1nm~800nmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0074】
また他の実現例による多層生分解性フィルムは、前記第1樹脂層の他面上に配置されるコーティング層をさらに含み得る。
【0075】
前記コーティング層は、プライマーコーティング層を含んで良く、この場合帯電防止性能を向上させ得る。
【0076】
前記プライマーコーティング層は、前記第1樹脂層の他面、または前記多層生分解性フィルムが前記コロナ層を含む場合、前記第1樹脂層の他面にコロナ層を含み、前記コロナ層の他面(下面)に、前記プライマーコーティング層を含み得る。
【0077】
具体的に、前記第1樹脂層の他面上にプライマー処理を施してプライマーコーティング層を形成し得る。または、前記第1樹脂層の他面上に配置された前記コロナ層の一面(下面)にプライマー処理してプライマーコーティング層を形成し得る。
【0078】
前記プライマーコーティング層は、帯電防止性能を有するアンモニウム系化合物、リン酸系化合物およびアクリル系樹脂、並びにウレタン系樹脂等の高分子からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0079】
前記プライマーコーティング層の表面抵抗は、0.1~30Ω/□、0.2~28Ω/□、0.3~26Ω/□、0.4~24Ω/□、または1~20Ω/□であり得る。
【0080】
前記表面抵抗は、例えば常温(22±2℃)にて相対湿度(60%±10%)下で、表面抵抗測定器で帯電防止性能を評価したものである。
【0081】
前記コーティング層の厚さは、多層生分解性フィルムの用途および目的に応じて適宜調整することができ、具体的に15nm~50nm、20nm~45nm、25nm~40nm、または30nm~35nmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0082】
[多層生分解性フィルムの構造的特徴]
図1を再度参照すると、本発明の実現例による多層生分解性フィルム100は、ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層110と、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂層120とを含む、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されている。
【0083】
また、前記多層生分解性フィルム100は、両面最外郭層として第1樹脂層110'を含み得る。具体的に、前記多層生分解性フィルムの両面最外郭層は、第1樹脂層110'である。
【0084】
前記多層生分解性フィルムの最外郭層が、ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層であると、延伸する上でさらに有利であり、成形性、加工性および生産性の面からさらに有利であり得る。仮に、前記多層生分解性フィルムの最外郭層として、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂層を含む場合、延伸が容易ではないことがあり、キャスティングが容易ではなく粘着が起こり易いため、成形性、加工性および生産性を低下させ得る。
【0085】
本発明の実現例によると、前記両面最外郭層の厚さの合計が、前記フィルム全体厚さの5~40%であり得る。具体的に、前記両面最外郭層の厚さの合計が、前記フィルム全体厚さの10~40%、15~40%、20~40%、25~40%、30~40%、30~38%、または30~37%であり得る。
【0086】
前記両面最外郭層の厚さの合計が前記範囲を満足すると、本発明で目的とする効果を実現する上でより有利であり、延伸する上でさらに有利であり、成形性、加工性および生産性の面から非常に有利であり得る。
また、前記両面最外郭層と接する樹脂層は、第2樹脂層であり得る。
【0087】
本発明の実現例によると、前記多層生分解性フィルムの全層数は、フィルムの個別層の厚さを考慮して調整し得るが、前記両面最外郭層を含めて5層以上であり得る。例えば、前記多層生分解性フィルムは、5層~500層、5層~300層、5層~250層、5層~225層、7層~400層、7層~350層、7層~300層、7層~250層、7層~220層、10層~200層、10層~150層、10層~100層、または10層~50層であり得る。前記多層生分解性フィルムが、前記両面最外郭層を含めて5層未満であると、透明性が低下する問題があり得る。
【0088】
一方、本発明の実現例による多層生分解性フィルムにおいて、前記両面最外郭層を除く第1樹脂層および第2樹脂層の個別層の平均厚さ比が1:0.5~2であり得る。前記最外郭層を除く第1樹脂層および第2樹脂層の個別層の平均厚さ比は、例えば1:0.5~2、例えば1:0.5~1.5、または例えば1:0.5~1.3であり得る。前記最外郭層を除く第1樹脂層および第2樹脂層の個別層の平均厚さ比が前記範囲を満足すると、多層生分解性フィルムの全体的な均一度調整にさらに有利であり得る。
【0089】
前記両面最外郭層を除く第1樹脂層の個別層の平均厚さは、例えば10~1000nm、例えば50~800nm、または例えば100~600nmであり得る。
【0090】
前記両面最外郭層を除く第1樹脂層の総厚さは、例えば3μm~40μm、例えば3μm~30μm、例えば3μm~20μm、例えば5μm~18μm、または例えば5μm~15μmであり得る。
【0091】
前記両面最外郭層を含む第1樹脂層の総厚さは、例えば5μm~60μm、例えば5μm~50μm、例えば8μm~40μm、例えば8μm~30μm、例えば10μm~30μm、または例えば10μm~20μmであり得る。
【0092】
前記第1樹脂層の総厚さおよび個別層の平均厚さが前記範囲を満足すると、本発明で目的とする効果を達成する上でさらに有利であり得る。
【0093】
前記第2樹脂層の個別層の平均厚さは、例えば10nm~800nm、例えば50nm~700nm、または例えば100nm~600nmであり得る。前記第2樹脂層の個別層の平均厚さが前記範囲を満足すると、均一度調整がより容易となり、これによりフィルムの外観特性および機械的物性をさらに向上させ得る。
【0094】
前記第2樹脂層の総厚さは、例えば2.5μm~40μm、例えば4μm~30μm、例えば4μm~20μm、例えば4μm~15μm、または例えば5μm~10μmであり得る。前記第2樹脂層の総厚さおよび個別層の平均厚さが前記範囲を満足すると、本発明で目的とする効果を達成する上でさらに有利であり得る。
【0095】
前記多層生分解性フィルムの総厚さは、前記両面最外郭層を含め、例えば7.5μm~100μm、例えば9μm~80μm、例えば12μm~55μm、例えば13μm~50μm、例えば13μm~40μm、例えば15μm~40μm、例えば15μm~35μm、または例えば20μm~25μmであり得る。
【0096】
[多層生分解性フィルムの物性]
実現例による多層生分解性フィルムは、優れた均一度、柔軟性および透明性を同時に有するとともに、騒音度が低い特徴がある。
【0097】
まず、前記多層生分解性フィルムにおいて、前記第1樹脂層の下記式1で表される均一度(LUI)は、0.2μm以下であり得る。
<式1>
前記式1において、
500mmの幅および20μm~25μmの厚さを有する前記多層生分解性フィルムの幅方向の一端部から50mm離れた点(N)、幅方向の他端部から50mm離れた点(S)、および幅方向の中央点(C)で厚さ方向に切断した断面において、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、積層された第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さをそれぞれ測定したとき、
前記tmax、Nは、前記多層生分解性フィルムのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Nは、前記多層生分解性フィルムのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、Sは、前記多層生分解性フィルムのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Sは、前記多層生分解性フィルムのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、Cは、前記多層生分解性フィルムのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Cは、多層生分解性フィルムのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さである。
【0098】
なお、前記第1樹脂層の個別層は、第1樹脂層のうち両面最外郭層(図1および図3の110')を除く各々の層を意味する。したがって、前記第1樹脂層の個別層110の厚さのうち最大厚さおよび最小厚さは、それぞれ第1樹脂層のうち両面最外郭層110'を除く個別層110の厚さのうちの最大厚さおよび最小厚さのことを意味する。
【0099】
前記式1で表される第1樹脂層の均一度(LUI)は、前記多層生分解性フィルムの外観特性、フィルムの厚さ均一度、並びに柔軟性、透明性および騒音度の程度を左右する重要な物性であり得る。特に、前記第1樹脂層の均一度(LUI)を特定の範囲に調整することにより、最終の多層生分解性フィルムの均一度を制御することができ、これによりフィルムの物性、外観特性および騒音度が変わり得る。
【0100】
一般に、多層生分解性フィルムの成形の際、均一度の観点から位置別の厚さ偏差が大きいとフィルムの外観および厚さの調整が難しく、これによりフィルムの柔軟性および透明性が低下し騒音度が大きくなり、全体的に物性が低下し得る。さらには、位置別の厚さ偏差に起因して延伸が難しくなり、加工性、生産性および成形性にも問題があり得る。
【0101】
したがって、前記第1樹脂層の均一度(LUI)は、前記多層生分解性フィルムを含む包装材等の成形品の品質を示す尺度となり得るので、前記多層生分解性フィルムの第1樹脂層の位置別厚さ偏差を減らして均一度(LUI)を制御することが非常に重要である。
【0102】
図2を参照すると、前記多層生分解性フィルム100の均一度(LUI)は、多層生分解性フィルムの幅(W)方向の中央点を「C」、幅方向の一端部から50mm離れた点(W1)を「N」、幅方向の他端部から50mm離れた点(W2)を「S」とした後、前記多層生分解性フィルムの厚さ方向に切断(A-A')したとき、この切断された断面で電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて測定され得る。
【0103】
図3の(a)および(b)は、それぞれ図2におけるA-A'線に沿って切開した斜視図(a)およびその断面の拡大図(b)である。
【0104】
図3の(b)を参照すると、前記積層された第1樹脂層の個別層の位置別厚さ(このとき、両面最外郭層110'の厚さを除く)、つまりN点における厚さ(tN1、tN2、tN3...)、C点における厚さ(tC1、tC2、tC3...)、S点における厚さ(tS1、tS2、tS3...)をそれぞれ測定し、前記積層された第1樹脂層の個別層の位置別厚さの中から、最大厚さであるtmax、N、tmax、C、tmax、Sおよび最小厚さであるtmin、N、tmin、C、tmin、Sをそれぞれ求め、これらの各値を用いて前記式1で表される均一度(LUI)を測定し得る。すなわち、前記第1樹脂層の均一度(LUI)は、前記積層された第1樹脂層のうち両面最外郭層を除く各個別層の位置別厚さを求め、各々の位置別厚さの最大値から最小値を減じた後3で除した値であり得る。
【0105】
前記第1樹脂層の均一度(LUI)は、第1樹脂層の位置別厚さ偏差が低いほど低く、前記位置別厚さ偏差が高いほど高くあり得る。
【0106】
前記多層生分解性フィルムにおいて、前記第1樹脂層の均一度(LUI)は、例えば0.2μm以下、例えば0.15μm以下、例えば0.12μm以下、例えば0.1μm以下、または例えば、0.08μm以下であり得る。
【0107】
前記多層生分解性フィルムにおいて、前記第1樹脂層の均一度(LUI)が前記範囲を満足すると、多層生分解性フィルムの均一度の位置別偏差を減らすことができ、これによりフィルムの外観特性を向上させることができ、柔軟性および透明性をさらに向上させ、騒音特性を改善させ得る。また、前記第1樹脂層の均一度(LUI)が前記範囲を満足すると、厚さ調整および厚さ偏差調整が容易で工程性をさらに向上させることができ、これにより加工性、生産性および成形性をさらに向上させ得る。仮に、前記第1樹脂層の均一度(LUI)が前記範囲を超える場合、フィルムの外観特性に問題が生じることがあり、位置別均一度が悪くなり、各層に跡や欠陥などが発生することがあり、これにより当該位置別の物性が低下し得る。
【0108】
本発明の一実現例により、多層生分解性フィルムの層が5層~30層であり、フィルムの厚さが20~25μmの場合、前記第1樹脂層の均一度(LUI)は、例えば0.1μm以下、例えば0.09μm以下、または例えば0.08μm以下であり得る。
【0109】
本発明のまた他の実現例により、多層生分解性フィルムの層が30層超~50層未満であり、フィルムの厚さが20~25μmの場合、前記第1樹脂層の均一度(LUI)は、例えば0.15μm以下、例えば0.12μm以下、または例えば0.10μm以下であり得る。
【0110】
本発明のまた他の実現例により、多層生分解性フィルムの層が50層以上であり、フィルムの厚さが20~25μmである場合、前記第1樹脂層の均一度(LUI)は、例えば0.2μm以下、例えば0.15μm以下、または例えば0.13μm以下であり得る。
【0111】
前記第1樹脂層の均一度(LUI)は、前記範囲内でその値が小さいほど、本発明の実現例による目的を達成する上でさらに有利であり得る。
【0112】
また、本発明の実現例による多層生分解性フィルムは、下記式2で表される多層生分解性フィルムの幅方向の両端の均一度差(ΔtN,S)が0.06μm以下であり得る。
【0113】
<式2>
前記式2において、
前記tmax、N、tmin、N、tmax、S、およびtmin、Sは、前記で定義した通りである。
【0114】
具体的に、前記多層生分解性フィルムの幅方向の両端の均一度差(ΔtN,S)は、例えば0.05μm以下、例えば0.03μm以下、例えば0.027μm以下、例えば0.025μm以下、例えば0.02μm以下、または例えば0.015μm以下であり得る。前記多層生分解性フィルムの幅方向の両端の均一度差(ΔtN,S)は0に近いほど有利であり、この場合フィルムの両端の厚さ偏差が減少してフィルムの外観特性を向上させることができ、柔軟性および透明性をさらに向上させ、騒音特性を向上させ得る。仮に、前記多層生分解性フィルムの幅方向の両端の均一度差(ΔtN,S)が前記範囲を外れる場合、フィルムの外観特性に問題が生じることがあり、均一度が悪くなり、各層に跡や欠陥などが発生することがあり、これにより、当該位置別物性が低下し得る。
【0115】
本発明の一実現例によると、N点に対して、前記tmax、Nおよびtmin、Nの差は、例えば、0.15μm以下、例えば0.13μm以下、例えば0.12μm以下、例えば0.1μm以下、例えば0.08μm以下、または例えば0.07μm以下であり得る。
【0116】
S点に対して、前記tmax、Sおよびtmin、Sの差は、例えば0.15μm以下、例えば0.12μm以下、例えば0.1μm以下、または例えば0.1μm未満であり得る。
【0117】
C点に対して、前記tmax、Cおよびtmin、Cの差は、例えば0.2μm以下、例えば0.15μm以下、例えば0.13μm以下、例えば0.12μm以下、または例えば0.1μm以下であり得る。
【0118】
前記多層生分解性フィルムのtmax、Nおよびtmin、Nの差、前記tmax、Sおよびtmin、Sの差、および前記tmax、Cおよびtmin、Cの差のうち少なくとも1つが前記範囲を満足すると、フィルムの厚さ偏差が減少してフィルムの外観特性を向上させることができ、柔軟性および透明性をさらに向上させ、騒音特性を改善し得る。
【0119】
一方、前記多層生分解性フィルムは、下記式3で表される柔軟騒音複合度(FNC)が20以下であり得る。
【0120】
<式3>
前記式3において、
前記YMおよびNAVGは、それぞれ前記多層生分解性フィルムの試験片で測定された単位を除いた数値であり、
前記YMは、ASTM D882に基づいて多層生分解性フィルム試験片を作製した後、長さ150mmおよび幅15mmに裁断し、チャック間間隔が50mmとなるように装着して引張速度200mm/分で実験した後、測定開始点から伸び率3%到達点までの直線勾配値であるヤング率(Young's modulus,kgf/mm)であり、
前記NAVGは、ポリカーボネート製の650(W)mm×450(D)mm×500(H)mmのボックス内で、210mm×297mmのA4サイズに裁断した多層生分解性フィルムをデジタル騒音分析装置から30cm離れたところに位置させ、前記フィルムの両端を治具でつかみ、30回/分の速度で前後にねじることを繰り返して、5秒以上騒音を出すとき測定した騒音度を5回測定して算出した平均騒音度(dB)である。
【0121】
前記式3で表される柔軟騒音複合度(FNC)は、前記多層生分解性フィルムのヤング率と騒音度との積を1000で除した値を示し、これは前記多層生分解性フィルムの柔軟性および騒音度の複合特性程度を示す指標である。
【0122】
前記柔軟騒音複合度(FNC)は、前記多層生分解性フィルムのヤング率および/または騒音度が低いほど低くあり得る。
【0123】
このような特性を有する柔軟騒音複合度(FNC)は、前記特定範囲以下を満足するとき、前記多層生分解性フィルムの柔軟性および透明性をさらに向上させ、騒音度を低減することができ、さらには、前記多層生分解性フィルムを含む包装材などの成形品の品質をより向上させ得る。
【0124】
前記多層生分解性フィルムの柔軟騒音複合度(FNC)は、例えば20以下、例えば2~20、例えば3~18、例えば5~18、または例えば10~19であり得る。前記柔軟騒音複合度(FNC)が前記範囲を満足すると、前記多層生分解性フィルムの柔軟性および騒音特性を同時に改善し得る。
【0125】
一方、前記式3において、前記多層生分解性フィルムのヤング率は、300kgf/mm以下、250kgf/mm以下、または240kgf/mm以下であることが好ましい。前記ヤング率は、ASTM D882に基づいて前記多層生分解性フィルム試験片を作製した後、長さ150mm、幅15mmに切断した後、チャック間間隔が50mmとなるように装着して、前記試験片を引張試験機(インストロン社5566A)により引張速度200mm/分で実験した後、測定開始点から伸び率3%到達点までの直線勾配をヤング率として測定し得る。
【0126】
一般的な方法により作製された単層ポリ乳酸重合体フィルムのヤング率は350kgf/mm以上と、柔軟性が著しく低くフィルムが硬いため、用途が制限され得る。前記多層生分解性フィルムのヤング率が300kgf/mm以下を満足すると、前記柔軟騒音複合度(FNC)を20以下に制御するのにさらに有利で、目的とする効果を容易に実現し得る。
【0127】
また、前記式3において、前記多層生分解性フィルムの平均騒音度(NAVG)は、多層生分解性フィルムをポリカーボネート製の650(W)mm×450(D)mm×500(H)mmのボックス内で、210mm×297mmのA4サイズに裁断し、前記多層生分解性フィルムをデジタル騒音分析装置(Cirrus Research PlC社、モデル名:CR-162C)から30cm離れたところに位置させ、前記フィルムの両端を治具でつかみ、30回/分の速度で前後にねじることを繰り返して、5秒以上騒音を出すときに測定した騒音度を5回測定して算出した平均騒音度と定義した。
【0128】
前記多層生分解性フィルムは、特定の範囲以下に前記平均騒音度(NAVG)を制御することが、高品質の包装材を提供する面から好ましい。
【0129】
具体的に、前記多層生分解性フィルムの平均騒音度(NAVG)は、例えば86dB以下、例えば85dB以下、例えば80dB以下、または例えば79.5dB以下であり得る。
【0130】
特に、前記多層生分解性フィルムの平均騒音度(NAVG)が80dB以下であると、前記柔軟騒音複合度(FNC)を20以下に制御する上でさらに有利で、低い騒音度により品質の良い包装材を提供し得る。
【0131】
さらに、前記多層生分解性フィルムは、下記式4で表されるフィルムの外観騒音品質複合指数(QCI)が28以下であり得る。
【0132】
<式4>
前記式4において、
前記HZ、LUI、およびNAVGは、それぞれ前記多層生分解性フィルム試験片で測定された単位を除いた数値であって、
前記HZは、前記多層生分解性フィルムのヘイズ(%)であり、
前記LUIおよび前記NAVGは、それぞれ前記で定義した通りである。
【0133】
前記式4で表される外観騒音品質複合指数(QCI)は、前記多層生分解性フィルムのヘイズ、均一度および騒音度の合計を3で除した値であり、第1樹脂層の均一度(LUI)、最終多層生分解性フィルムの均一度、透明性および騒音度の複合特性の程度を示す指標である。
【0134】
前記外観騒音品質複合指数(QCI)は、前記多層生分解性フィルムのヘイズ、均一度および騒音特性(騒音低減効果)が全て優れるほど前記範囲を満足することができる。すなわち、前記外観騒音品質複合指数(QCI)は、前記多層生分解性フィルムのヘイズ、均一度および/または騒音度がそれぞれ低いほど低くあり得る。
【0135】
このような特性を有する外観騒音品質複合指数(QCI)は、前述の範囲を満足するとき、前記多層生分解性フィルムのヘイズおよび均一度を同時にさらに向上させ、騒音度を低減することができ、さらには前記多層生分解性フィルムを含む包装材などの成形品の品質をより向上させ得る。
【0136】
前記多層生分解性フィルムの外観騒音品質複合指数(QCI)は、例えば15~28、例えば20~28、例えば22~28、または例えば25~28であり得る。前記多層生分解性フィルムの外観騒音品質複合指数(QCI)を前記範囲で満足すると、柔軟性、騒音低減効果および透明性を同時に向上させ得るので、包装材として様々な分野に活用され、高品質の環境配慮型包装材を提供する上でさらに有利であり得る。
【0137】
また、本発明の実現例による多層生分解性フィルムのヘイズは、10%以下、5%以下、または3%以下であることが好ましい。前記ヘイズが10%を超えると、透明性が足りず用途が制限され得る。
【0138】
本発明の多層生分解性フィルムは、環境負荷を低減しようとする製品の特性上、少なくとも60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の生分解率を有し得る。
【0139】
[多層生分解性フィルムの製造方法]
一実現例により、ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂および脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂をそれぞれ準備する段階(段階1)と、前記第1樹脂および前記第2樹脂をそれぞれ溶融押出し第1樹脂層と第2樹脂層とを交互に積層して、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されたシートを得る段階(段階2)と、前記積層されたシートを二軸延伸し熱固定して、多層生分解性フィルムを得る段階(段階)と、を含み、前記多層生分解性フィルムは前記第1樹脂層の前記式1で表される均一度(LUI)が0.2μm以下である、多層生分解性フィルムの製造方法を提供する。
【0140】
本発明の実現例による多層生分解性フィルムの製造方法は、特定の樹脂を主成分として含む第1樹脂および第2樹脂を用いて溶融押出し、第1樹脂層と第2樹脂層とを交互に積層して、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されたシートを得て、これを二軸延伸および熱固定することにより、成形性、加工性および生産性をより向上させることができ、経済的かつ効率的な方法により、本発明で目的とする優れた均一度、柔軟性および透明性を同時に有するとともに、騒音度も改善された多層生分解性フィルムを得ることができる。
【0141】
特に、前記多層生分解性フィルムの製造方法は、第1樹脂および第2樹脂の溶融温度およびこれらの溶融温度差を制御することにより、前記第1樹脂層と第2樹脂層との溶融粘度範囲を効率的に制御することができ、これにより、各層の位置別厚さを微調整して、前記第1樹脂層の均一度(LUI)を最適の範囲に調整し得ることに技術的意義がある。
【0142】
図4を参照すると、前記多層生分解性フィルムの製造方法(S100)は、ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂および脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂をそれぞれ準備する段階(S110)を含み得る。
【0143】
本発明の実現例によると、前記第1樹脂および第2樹脂は、それぞれ特定範囲の溶融粘度を有し、これにより形成された第1樹脂層および第2樹脂層の溶融粘度範囲および溶融粘度差を効率的に調整して、フィルムの位置別厚さ偏差を減らして均一度を制御することができ、これによって目的とする範囲の柔軟性、透明性および騒音度を実現し得る。
【0144】
したがって、前記第1樹脂および第2樹脂の溶融粘度は、本発明の多層生分解性フィルムの第1樹脂層の均一度(LUI)を調整する上で非常に重要な要素となり得る。
【0145】
一般に、5層以上、例えば5層乃至数百層の多層フィルムを形成する場合、溶融粘度によってフィルムの厚さ均一度が変わり得る。特に、溶融粘度の差によってフィルムの厚さ均一度および物性が変わり得る。特に、薄い層からなる多層生分解性フィルムの場合、層数が多いほど均一度を調整することが難しく、各位置別層の厚さ偏差が大きくなるという問題点があり得る。
【0146】
そこで、本発明においては実現例により、前記第1樹脂層および第2樹脂層を形成する第1樹脂および第2樹脂の溶融粘度を調整することによって、前記第1樹脂層および第2樹脂層の溶融粘度差を減らし、これにより前記第1樹脂層の均一度を目的とする範囲以下に制御し得る。
【0147】
具体的に、前記第1樹脂は、210℃における溶融粘度が、例えば5000ポアズ(poise)~12000ポアズ、例えば6500ポアズ~11000ポアズ、または例えば8000ポアズ~10000ポアズであり得る。この際、前記溶融粘度は、レオメータ(RDS)を用いて測定することができる。
【0148】
前記第1樹脂の溶融粘度は、これにより形成された第1樹脂層の溶融粘度と同一または類似であり得る。したがって、前記第1樹脂の溶融粘度が前記範囲を満足すると、同一または類似の範囲の溶融粘度を有する第1樹脂層を実現することができ、これにより、前記第1樹脂層の均一度を0.2μm以下に容易に制御し得る。仮に、前記第1樹脂の溶融粘度が前記範囲を外れると、前記多層生分解性フィルムの位置別厚さ偏差が大きくなり、均一度が悪くなり得る。
【0149】
一方、前記第1樹脂は、溶融温度(Tm)が例えば100℃~250℃、例えば110℃~220℃、または例えば130℃~220℃であり得る。
【0150】
前記第1樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が例えば30℃~80℃、例えば40℃~80℃、例えば40℃~70℃、または例えば45℃~65℃であり得る。
【0151】
前記第1樹脂の溶融温度(Tm)およびガラス転移温度(Tg)がそれぞれ前記範囲を満足すると、前記多層生分解性フィルムの第1樹脂層の均一度とともに、機械的特性および光学特性を向上させる上でさらに有利であり得る。
【0152】
一方、前記第2樹脂は、210℃における溶融粘度が例えば4000ポアズ~8000ポアズ、例えば5000ポアズ~7000ポアズ、または例えば6000ポアズ~7000ポアズであり得る。
【0153】
前記第2樹脂の溶融粘度は、これにより形成された第2樹脂層の溶融粘度と同一であり得る。前記第2樹脂の溶融粘度が前記範囲を満足すると、同一範囲の溶融粘度を有する第2樹脂層を実現することができ、前記第1樹脂層と第2樹脂層との溶融粘度差を目的とする特定範囲に制御することができるので、前記多層生分解性フィルムの第1樹脂層の均一度(LUI)を制御する上でさらに有利であり得る。
【0154】
前記第1樹脂は、前述の第1樹脂層に含まれる樹脂の種類および特性などと同一であり得る。
【0155】
また、前記第2樹脂は、前述の第2樹脂層に含まれる樹脂の種類および特性などと同一であり得る。
【0156】
前記多層生分解性フィルムの製造方法(S100)は、前記第1樹脂および前記第2樹脂をそれぞれ溶融押出し、第1樹脂層と第2樹脂層とを交互に積層して、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されたシートを得る段階(S120)を含み得る。
【0157】
本発明の実現例によると、前記第1樹脂および第2樹脂の溶融押出温度を制御して第1樹脂層および第2樹脂層を得ることができ、これらを交互に積層して2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されたシートを得ることにより、最終フィルムの位置別厚さ偏差を減らして均一度を制御することができ、これによって目的とする範囲の柔軟性、透明性および騒音度を実現し得る。
【0158】
具体的に、前記段階S110で得られた第1樹脂および第2樹脂を2つの押出機と、2層が交互に積層される多層フィードブロックとを用いて、それぞれ押出機で溶融押出し得る。また、前記多層フィードブロック内で第1樹脂層および第2樹脂層を分岐させた後、これら分岐した第1樹脂層と第2樹脂層とが交互に積層されるようにしてダイ(die)に通過させ、約10℃~40℃に冷却された冷却ロールに密着させて未延伸多層生分解性シートを得ることができる。
【0159】
この際、本発明で目的とする特定範囲の均一度に制御された多層生分解性フィルムを得るために、第1樹脂および第2樹脂の溶融押出温度、およびこれらの溶融押出温度差が非常に重要であり得る。具体的に、前記特定範囲の均一度を有する多層生分解性フィルムを得るために、第1樹脂層と前記第2樹脂層との溶融粘度およびこれらの溶融粘度差を制御することが重要であり、そのために、第1樹脂および第2樹脂の溶融押出温度を制御することにより達成し得る。
【0160】
前記第1樹脂の溶融押出温度と前記第2樹脂の溶融押出温度とは同一または異なり、前記第1樹脂の溶融押出温度と前記第2樹脂の溶融押出温度との差は、例えば30℃以下、例えば30℃未満、例えば20℃以下、例えば15℃以下、例えば15℃未満、例えば10℃以下、または例えば5℃以下であり得る。この場合、最適な粘度差の区間確保によって、最終フィルムの位置別厚さ偏差を減らして、第1樹脂層の均一度を前記範囲に制御することができ、これにより目的とする範囲の柔軟性、透明性および騒音度を実現することができ、外観特性を改善し得る。
【0161】
前記第1樹脂の溶融押出温度は、例えば180℃超~250℃、例えば190℃~240℃、または例えば190℃~230℃であり得る。
【0162】
前記第2樹脂の溶融押出温度は、例えば180℃超~250℃、例えば190℃~240℃、または例えば190℃~230℃であり得る。
【0163】
前記第1樹脂および第2樹脂の溶融押出温度により形成される第1樹脂層および第2樹脂層の溶融粘度およびこれらの溶融粘度偏差を制御し得る。仮に、前記第1樹脂および第2樹脂の溶融押出温度が前記範囲を外れる場合、前記第1樹脂層および第2樹脂層の目的とする溶融粘度を実現することができず、これによって前記多層生分解性フィルムの位置別厚さ偏差が大きくなり、前記第1樹脂層の均一度を目的とする範囲で実現する上で困難があり得る。
【0164】
本発明の実現例によると、前記第1樹脂層の溶融粘度は、前記第2樹脂層の溶融粘度よりも大きくあり得る。この場合、前記多層生分解性フィルムの位置別第1樹脂層の均一度を容易に制御することができ、有利である。仮に、前記第2樹脂層の溶融粘度が前記第1樹脂層の溶融粘度よりも大きい場合、本発明で目的とする効果を達成することに困難があり、加工性、生産性および成形性も低下し得る。
【0165】
また、第1樹脂層の溶融粘度が前記第2樹脂層の溶融粘度よりも大きく、特定の溶融粘度以上の差を示すことが、本発明で実現する効果を達成する上で有利であり得る。
【0166】
一般に、5層未満からなる多層生分解性フィルム、または共押出製品においては、溶融粘度が互いに類似すると、層均一度の面から有利であるが、5層以上、例えば数十層以上の多層生分解性フィルム、特に第1樹脂層が前記フィルムの両面最外郭層を形成する構造では、第1樹脂層の溶融粘度よりも第2樹脂層の溶融粘度がより低く、これらの最適な溶融粘度差(ΔV)が約500ポアズ以上、例えば約2000ポアズ以上のとき、本発明で目的とする物性効果を満足することができる。
【0167】
仮に、前記第2樹脂層の溶融粘度が第1樹脂層の溶融粘度よりも大きいか類似する場合、第1樹脂層と第2樹脂層が多層ブロック内の非常に狭いスリットを通過し、交互に積層されていく過程で、層を構成する界面間圧力が互いに大きくなり、層構成が均一にならなくなり得る。第2樹脂層の溶融粘度を第1樹脂層の溶融粘度より低く、特定範囲の差が出るように溶融押出温度を調整することにより、多層生分解性フィルムの最適な均一度を確保し得る。
【0168】
具体的に、下記式5で表される、210℃における層間溶融粘度差(ΔV)は、500ポアズ以上であり得る。
【0169】
<式5>
ΔV=V1-V2
前記式5において、
前記V1は、第1樹脂層の溶融粘度であり、
前記V2は、第2樹脂層の溶融粘度である。
【0170】
前記210℃における層間粘度差(ΔV)は、例えば700ポアズ以上、例えば800ポアズ以上、例えば1000ポアズ以上、例えば1500ポアズ以上、例えば2000ポアズ以上、例えば2200ポアズ以上、または例えば2500ポアズ以上であり、例えば、3500ポアズ以下、例えば3200ポアズ以下、例えば3000ポアズ以下、または例えば2700ポアズ以下であり得る。具体的に、前記層間粘度差(ΔV)は、500~3000ポアズ、または例えば700~3000ポアズであり得る。
【0171】
具体的に、前記第1樹脂層は、210℃における溶融粘度が、例えば7000ポアズ~12000ポアズ、例えば7500ポアズ~11000ポアズ、または例えば8000ポアズ~10000ポアズであり得る。この際、前記第1樹脂層の溶融粘度は、レオメータ(RDS)を用いて測定し得る。
【0172】
前記第2樹脂層は、210℃における溶融粘度が、例えば4000ポアズ~8000ポアズ、例えば5000ポアズ~7000ポアズ、または例えば6000ポアズ~7000ポアズであり得る。
【0173】
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層の溶融粘度が前記範囲を満足すると、前記多層フィルムの第1樹脂層の均一度を制御することができ、本発明で目的とする効果を達成する上でさらに有利であり得る。
【0174】
なお、前記溶融押出の際に、例えば溶融移送導管内に定量移送装置(例えばギアポンプ)を適用することにより、十分に定量移送および可塑化することができ、この場合、2つの押出機と2層が交互に積層される多層フィードブロックとを使用すると層形成が良好になり得る。
【0175】
一方、実現例により、前記溶融押出の前に前記第1樹脂および前記第2樹脂を乾燥する段階をさらに含み得る。前記乾燥段階は、例えば60℃~100℃にて4時間~24時間行われ得る。
【0176】
一方、前記多層生分解性フィルムの製造方法(S100)は、前記積層されたシートを二軸延伸し熱固定して、多層生分解性フィルムを得る段階(S130)を含み得る。
【0177】
具体的に、前記積層されたシートを二軸延伸することができ、前記二軸延伸段階は、例えば50℃~80℃に予熱した後、40℃~100℃にて縦方向(MD)に2倍~4倍に縦延伸する段階および50℃~150℃にて横方向(MD)に3倍~6倍延伸する段階を含み得る。
【0178】
前記積層されたシートを両方向に二軸延伸することにより、前記多層生分解性フィルムの物性および成形性などをさらに向上させ得るので、高品質の包装材を実現し得る。
【0179】
仮に、縦方向および横方向のいずれか一方向のみに一軸延伸する場合、前記多層生分解性フィルムの厚さ偏差が大きく、延伸を行わない方の強度が低下することがあり、熱特性も低下し得る。
【0180】
また、前記熱固定段階は、50℃~150℃、70℃~150℃、100℃~150℃、または110℃~140℃にて行われ得る。
【0181】
一方、前記多層生分解性フィルムの製造方法(S100)は、前記第1樹脂層の他面上にコロナ層、コーティング層、またはその両方をさらに形成し得る。
【0182】
具体的に、前記第1樹脂層のコロナ処理によりコロナ層を形成し得る。
前記コロナ処理は、高周波-高電圧出力を放電電極-処理ロール間に印加したときにコロナ放電が起こるが、この際所望の面を通過させることにより、コロナ処理を施し得る。
【0183】
具体的に、前記コロナ放電強度は、例えば3kW~20kWであり得る。前記コロナ放電強度が前記範囲未満の場合、コロナ放電処理効果が微小であり、逆に前記コロナ放電強度が前記範囲を超えると、過剰の表面改質により表面損傷を引き起こし得る。
前記コロナ層の構成および物性は前述の通りである。
【0184】
また、前記第1樹脂層の他面上にコーティング層を形成し得る。
前記コーティング層は、プライマーコーティング層を含むことができ、前記プライマーコーティング層は、前記第1樹脂層の他面上にアンモニウム系化合物、リン酸系化合物、並びにアクリル系樹脂およびウレタン系樹脂等の高分子からなる群より選択される1種以上を含むプライマー組成物でプライマー処理し表面粗さを形成して、接着特性をさらに向上させ得る。
【0185】
前記プライマーコーティング層は、前記第1樹脂層の他面、または前記多層生分解性フィルムが前記コロナ層を含む場合、前記第1樹脂層の他面にコロナ層を形成し、前記コロナ層の他面上に前記プライマーコーティング層を形成し得る。
【0186】
また、前記プライマー組成物は硬化剤成分を含有してもよく、より具体的な例としては、4,4'-ジアミノジフェニルメタン(DDM)、芳香族ジアミンおよびこれらの混合物が可能である。なお、前記硬化剤成分の添加量は、前記プライマー組成物の総重量を基準に0.1重量%~50重量%の量で添加され得る。
【0187】
前記プライマー処理方法としては、当業界で用いられる通常の方法を用いることができ、例えば、スプレー噴射法、ブラッシング、ローリング等を用いることができる。具体的に、エアレススプレーを用いて誘導時間1分~30分、噴射圧力5Mpa~500Mpa、ノズル口径0.46mm~0.58mm、および噴射角度40°~80°の条件で、プライマー組成物を前記第1樹脂層の表面に噴射し得る。
【0188】
外にも、多層生分解性フィルムの接着性を高めるために、プラズマ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、または石けん化処理などのような表面処理を適宜行い得る。
【0189】
実現例の製造方法により前記多層生分解性フィルムを製造すると、経済的かつ効率的であり、目的とする構成および物性を有する多層生分解性フィルムを製造する上でより効果的であり得る。
【0190】
[多層生分解性シートおよびその製造方法]
一実現例によると、ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層と、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂層とを含む、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されており、前記第1樹脂層の下記式1-1で表される均一度(LUI)が2.3μm未満である多層生分解性シートを提供し得る。
【0191】
<式1-1>
前記式1-1において、
650mmの幅および300μmの厚さを有する前記多層生分解性シートの幅方向の一端部から50mm離れた点(N)、幅方向の他端部から50mm離れた点(S)、および幅方向の中央点(C)で厚さ方向に切断した断面において、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて積層された第1樹脂層の個別層の厚さをそれぞれ測定したとき、
前記tmax、N1は、前記多層生分解性シートのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、N1は、前記多層生分解性シートのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、S1は、前記多層生分解性シートのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、S1は、前記多層生分解性シートのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、C1は、前記多層生分解性シートのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、C1は、多層生分解性シートのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さである。
【0192】
前記多層生分解性シートにおいて、前記第1樹脂層の均一度(LUI)は、例えば2.2μm以下、例えば2.0μm以下、または例えば2.0μm未満であり得る。
【0193】
前記多層生分解性シートにおいて、前記第1樹脂層の均一度(LUI)が前記範囲を満足すると、多層生分解性シートの均一度の位置別厚さ偏差を減らすことができ、これによりシートの外観特性を向上させることができ、透明性および柔軟性をさらに向上させ、騒音特性(騒音低減効果)を改善し得る。
【0194】
前記多層生分解性シートの層数は、前記多層生分解性フィルムの層数と同一であり得る。
【0195】
また、前記多層生分解性シートの総厚さは、例えば200μm~500μm、例えば250μm~450μm、例えば250μm~400μm、または例えば250μm~350μmであり得る。
【0196】
一方、本発明の実現例により、前記多層生分解性シートの製造方法を提供し得る。
【0197】
具体的に、前記多層生分解性シートの製造方法は、ポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂および脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂をそれぞれ準備する段階(段階1)と、前記第1樹脂および前記第2樹脂をそれぞれ溶融押出し、第1樹脂層と第2樹脂層とを交互に積層して、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されたシートを得る段階(段階2)とを含み得る。
【0198】
前記段階1および前記段階2は、前記多層生分解性フィルムの製造方法における段階1および2と同様に行われ得る。
【0199】
[環境配慮型包装材]
本発明は、一実現例により前記多層生分解性フィルムを含む環境配慮型包装材料を提供し得る。
【0200】
具体的に、前記環境配慮型包装材は、多層生分解性フィルムを含み、前記多層生分解性フィルムがポリ乳酸系重合体を主成分とする第1樹脂層と、脂肪族ポリエステル系樹脂または脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂を主成分とする第2樹脂層とを含む、2種以上の異なる熱可塑性樹脂層が交互に積層されており、前記第1樹脂層の前記式1で表される均一度(LUI)が0.2μm以下であり得る。
【0201】
前記環境配慮型包装材は、例えば一般的な使い捨て包装材および食品包装材等として利用され得るフィルム状でよく、織物、編物、不織布、ロープ等として利用され得る繊維状でよく、弁当等のような食品包装用容器として利用され得る容器の形態であり得る。
【0202】
前記環境配慮型包装材は、優れた均一度、柔軟性および透明性を同時に有するとともに、騒音度の低い多層生分解性フィルムを含むことによって、優れた物性および品質を提供し得る。また、生分解が可能であり、埋め立ての際に完全に分解され、環境に優しい特性を有する包装材を提供し得るので、包装材として様々な分野に活用され、優れた特性を発揮し得る。
【0203】
(実施例)
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。以下の実施例は、本発明を例示するものであるのみ、本発明の範囲はこれらに限定されない。
【0204】
(実施例1:多層生分解性フィルムの製造)
第1樹脂層の樹脂として、D-ラクチド含有量が約1.4%であり、約210℃にて溶融粘度が約8770ポアズを有するポリ乳酸樹脂(Nature Works LLC, 4032D)と、第2樹脂層の樹脂として、210℃にて溶融粘度が約6259ポアズを有し、酸成分中の脂肪族成分の含有量が50モル%である脂肪族-芳香族共重合ポリエステル系樹脂であるポリブチレンアジペート-テレフタレート(PBAT)(XINJIANG BLUE RIDGE TUNHE POLYESTER社)樹脂を使用した。
【0205】
前記第1樹脂層の樹脂は、除湿乾燥機で約80℃にて6時間、前記第2樹脂層の樹脂は、除湿乾燥機で約80℃にて2時間乾燥して水分を除去した後、2つの押出機と2層が交互に積層される多層フィードブロックを用いて、第1樹脂層の樹脂は温度が210℃の押出機で、第2樹脂層の樹脂は温度が210℃の押出機で溶融押出した。
【0206】
前記多層フィードブロック内で第1樹脂層は15層、第2樹脂層は14層に分岐させた後、これら分岐した第1樹脂層と第2樹脂層とが交互に積層されるように780mmダイ(die)に通過させ、約21℃に冷却された冷却ロールに密着させて、29層の未延伸多層生分解性シートを得た。この際、前記上/下面の両面最外郭層には第1樹脂層を配置させ、前記両面最外郭層の厚さの合計が全体厚さの30%となるようにした。
【0207】
このようにして得られた未延伸多層生分解性シートを約65℃にて縦方向3.0倍、120℃にて横方向3.9倍に延伸した後、150℃にて熱固定し、弛緩率1%を付与して、多層生分解性フィルムの全体厚さが20μmの29層で、第1樹脂層の均一度(LUI)が約0.077μmの多層生分解性フィルムを製造した。
【0208】
(実施例2:多層生分解性フィルムの製造)
表1に示すように、第1樹脂層および第2樹脂層の厚さ、フィルムの総層数、両面最外郭層の厚さの合計、および第1樹脂層の均一度(LUI)をそれぞれ調整したことを除いては、実施例1と同様にして行い、多層生分解性フィルムの全体厚さが25μmの43層である多層生分解性フィルムを製造した。
【0209】
(実施例3:多層生分解性フィルムの製造)
表1に示すように、第1樹脂層および第2樹脂層の厚さ、フィルムの総層数、両面最外郭層の厚さの合計、および第1樹脂層の均一度(LUI)をそれぞれ調整したことを除いては、実施例1と同様にして行い、多層生分解性フィルムの全体厚さが20μmの57層である多層生分解性フィルムを製造した。
【0210】
(比較例1:単層生分解性フィルムの製造)
第1樹脂層の樹脂として実施例1と同様のポリ乳酸樹脂を用い、これを除湿乾燥機で約80℃にて6時間乾燥して水分を除去した。前記水分が除去された第1樹脂層の樹脂を温度が210℃の押出機で溶融押出し、780mmダイを通過させた後、20℃に冷却された冷却ロールに密着させて単層未延伸シートを得た。このようにして得られた単層未延伸シートを、65℃にて縦方向3.0倍、120℃にて横方向3.8倍に延伸した後、120℃にて熱固定し、弛緩率1%を付与して厚さ20μmの単層フィルムを製造した。
【0211】
(比較例2:単層生分解性フィルムの製造)
実施例1で用いた第1樹脂層の樹脂と第2樹脂層の樹脂とをそれぞれ80:20の重量比でハンドミックスした後、200℃にて45パイ二軸押出機でブレンドした。これを除湿乾燥機で約60℃にて8時間乾燥した後、200℃にて溶融押出して、厚さ30μmの単層フィルムを製造した。
【0212】
(比較例3:多層生分解性フィルムの製造)
表1に示すように、第1樹脂層の樹脂を温度が210℃の押出機で、第2樹脂層の樹脂を温度が180℃の押出機で溶融押出し、第1樹脂層および第2樹脂層の厚さ、両面最外郭層の厚さの合計、および第1樹脂層の均一度(LUI)をそれぞれ調整したことを除いては、実施例1と同様にして行い、多層生分解性フィルムの全体厚さが20μmの29層である多層生分解性フィルムを製造した。
【0213】
(比較例4:多層生分解性フィルムの製造)
表1に示すように、第1樹脂層の樹脂を温度が210℃の押出機で、第2樹脂層の樹脂を温度が140℃の押出機で溶融押出し、第1樹脂層および第2樹脂層の厚さ、両面最外郭層の厚さの合計、および第1樹脂層の均一度(LUI)をそれぞれ調整したことを除いては、実施例2と同様にして行い、多層生分解性フィルムの全体厚さが25μmの43層である多層生分解性フィルムを製造した。
【0214】
(比較例5:多層生分解性フィルムの製造)
表1に示すように、第1樹脂層の樹脂を温度が210℃の押出機で、第2樹脂層の樹脂を温度が190℃の押出機で溶融押出し、第1樹脂層および第2樹脂層の厚さ、両面最外郭層の厚さの合計、および第1樹脂層の均一度(LUI)をそれぞれ調整したことを除いては、実施例3と同様にして行い、多層生分解性フィルムの全体厚さが20μmの57層である多層生分解性フィルムを製造した。
【0215】
前記実施例1~3および比較例1~5により製造された単層または多層生分解性フィルムに対する各層の特性、および工程条件を下記表1にまとめた。
【0216】
【表1】
【0217】
(評価例)
前記実施例1~3および比較例1~5により製造された単層または多層生分解性フィルムに対する物性測定および性能評価を以下の方法により行った後、その結果を下記表2に示す。
【0218】
(評価例1:厚さ)
実施例および比較例で製造された単層または多層生分解性フィルムの全幅に対する厚さを測定した。
【0219】
前記多層生分解性フィルムの厚さは、MFC-101(NIKON社)を用いて、フィルム幅500mmを10ポイント間隔で分けて平均を出し厚さを測定した。
【0220】
(評価例2:均一度(LUI))
【0221】
<多層生分解性フィルムの第1樹脂層の均一度>
実施例1~3および比較例3~5の多層生分解性フィルムにおいて、第1樹脂層の均一度(LUI)を測定した。
【0222】
具体的に、図1および図3を参照して、前記実施例1~3および比較例3~5により製造された多層生分解性フィルムの幅(W)方向の中央点を「C」、幅方向の一端部から50mm離れた点(W1)を「N」、幅方向の他端部から50mm離れた点(W2)を「S」とした後、前記多層生分解性フィルムの厚さ方向に切断し(A-A')、この切断された断面において電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)(JSM-6701F、JEOL社)を用いて、積層された第1樹脂層の個別層の位置別厚さをそれぞれ測定した。
【0223】
図3(b)を参照すると、前記積層された第1樹脂層の個別層の位置別、すなわちN点における厚さ(tN1、tN2、tN3・・・)、C点における厚さ(tc1、tC2、tC3)...)、S点における厚さ(tS1、tS2、tS3...)をそれぞれ測定し、前記積層された第1樹脂層の個別層の位置別厚さから、第1樹脂層の個別層の厚さのうちの最大厚さのtmax、N、tmax、C、tmax、S、および最小厚さのtmin、N、tmin、C、tmin、Sをそれぞれ求め、これらの各値を用いて下記式1で表される均一度(LUI)を測定した。
【0224】
前記積層された第1樹脂層の個別層の位置別厚さから、第1樹脂層の個別層の厚さのうち最大厚さおよび最小厚さをそれぞれ求め、これらの各値を用いて第1樹脂層の下記式1で表される均一度(LUI)を測定した。
【0225】
<式1>
前記式1において、
500mmの幅および20μm~25μmの厚さを有する前記多層生分解性フィルムの幅方向の一端部から50mm離れた点(N)、幅方向の他端部から50mm離れた点(S)、および幅方向の中央点(C)で厚さ方向に切断した断面において、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、積層された第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さをそれぞれ測定したとき、
前記tmax、Nは、前記多層生分解性フィルムのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Nは、前記多層生分解性フィルムのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、Sは、前記多層生分解性フィルムのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Sは、前記多層生分解性フィルムのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、Cは、前記多層生分解性フィルムのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、Cは、多層生分解性フィルムのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さである。
【0226】
なお、前記第1樹脂層の個別層は、第1樹脂層のうち両面最外郭層(図1および図3の110')を除く各々の層を意味する。したがって、前記第1樹脂層の個別層110の厚さのうち最大厚さおよび最小厚さは、それぞれ第1樹脂層のうち両面最外郭層110'を除く個別層110の厚さのうちの最大厚さおよび最小厚さのことを意味する。
【0227】
<未延伸シートの均一度>
前記多層生分解性フィルムの第1樹脂層の均一度(LUI)と同様の方法により、実施例1~3および比較例3~5の多層生分解性シート(未延伸シート)において、積層された第1樹脂層の個別層の位置別厚さの中で最大厚さおよび最小厚さをそれぞれ求め、これらの各値を用いて第1樹脂層の下記式1-1で表される均一度(LUI)を測定した。
<式1-1>
前記式1-1において、
650mmの幅および300μmの厚さを有する前記多層生分解性シートの幅方向の一端部から50mm離れた点(N)、幅方向の他端部から50mm離れた点(S)、および幅方向の中央点(C)で厚さ方向に切断した断面において、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、積層された第1樹脂層の個別層の厚さをそれぞれ測定したとき、
前記tmax、N1は、前記多層生分解性シートのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、N1は、前記多層生分解性シートのN点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、S1は、前記多層生分解性シートのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、S1は、前記多層生分解性シートのS点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さであり、
前記tmax、C1は、前記多層生分解性シートのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最大厚さであり、
前記tmin、C1は、多層生分解性シートのC点で測定した第1樹脂層の両面最外郭層を除く個別層の厚さのうちの最小厚さである。
【0228】
なお、前記第1樹脂層の個別層は、第1樹脂層のうち両面最外郭層(図1および図3の110')を除く各々の層を意味する。したがって、前記第1樹脂層の個別層110の厚さのうち最大厚さおよび最小厚さは、それぞれ第1樹脂層の両面最外郭層110'を除く個別層110の厚さのうちの最大厚さおよび最小厚さのことを意味する。
【0229】
(評価例3:ヘイズ(HZ))
日本精密光学社のヘイズメーター(モデル名:SEP-H)を用いてASTM D1003規格に基づいて測定した。
【0230】
(評価例4:ヤング率(YM))
ASTM D882に基づいて、実施例および比較例で製造した単層または多層生分解性フィルムの試験片を作製して、長さ150mm、幅15mmに切断した後、チャック間間隔が50mmとなるように装着して、前記試験片を引張試験機、インストロン5566Aを用いて引張速度200mm/分で実験した後、測定開始点から伸び率3%到達時点までの直線勾配値をヤング率(Young's modulus、kgf/mm)で測定した。
【0231】
(評価例5:騒音度(NAVG))
実施例および比較例で製造した単層または多層生分解性フィルムを、ポリカーボネート製の650(W)mm×450(D)mm×500(H)mmのボックス内で、210mm×297mmのA4サイズで裁断し、前記多層生分解性フィルムをデジタル騒音分析装置(Cirrus Research PlC社、モデル名:CR-162C)から30cm離れたところに位置させ、前記フィルムの両端を治具でつかみ、30回/分の速度で前後にねじることを繰り返して、5秒以上騒音を出す時に測定した騒音度を5回測定して算出した。
【0232】
(評価例6:柔軟騒音複合度(FNC))
前記評価例4および5で測定されたYMおよびNAVGの値を用いて、下記式3で表される柔軟騒音複合度(FNC)を計算した。
【0233】
<式3>
前記式3において、
前記YMおよびNAVGは、それぞれ前記多層生分解性フィルム試験片で測定された単位を除いた数値であり、
前記YMは、ASTM D882に基づいて多層生分解性フィルム試験片を作製した後、長さ150mmおよび幅15mmに裁断し、チャック間間隔が50mmとなるように装着し引張速度200mm/分で実験した後、測定開始点から伸び率3%到達時点までの直線勾配値であるヤング率であり、
前記NAVGは、ポリカーボネート製の650(W)mm×450(D)mm×500(H)mmのボックス内で、210mm×297mmのA4サイズに裁断した多層生分解性フィルムを、デジタル騒音分析装置から30cm離れたところに位置させ、前記フィルムの両端を治具でつかみ、30回/分の速度で前後にねじることを繰り返して、5秒以上騒音を出すとき測定した騒音度を5回測定して算出した平均騒音度(dB)である。
【0234】
(評価例7:外観騒音品質複合指数(QCI))
前記評価例2、3および5で測定されたLUI、HZ、NAVGの値を用いて、下記式4で表される外観騒音品質複合指数(QCI)を計算した。
【0235】
<式4>
前記式4において、
前記HZ、LUI、およびNAVGは、それぞれ前記多層生分解性フィルム試験片で測定された単位を除いた数値であり、
前記HZは、前記多層生分解性フィルムのヘイズ(%)であり、
前記LUIは、前記式1で表される均一度であり、
前記NAVGは、ポリカーボネート製の650(W)mm×450(D)mm×500(H)mmのボックス内で、210mm×297mmのA4サイズに裁断した多層生分解性フィルムをデジタル騒音分析装置から30cm離れたところに位置させ、前記フィルムの両端を治具でつかみ、30回/分の速度で前後にねじることを繰り返して、5秒以上騒音を出すとき測定した騒音度を5回測定して算出した平均騒音度(dB)である。
【0236】
【表2】
【0237】
前記表2から、本発明による実施例1~3の多層生分解性シートおよびフィルムは、比較例の単層または多層生分解性シートおよびフィルムに比べて第1樹脂層の均一度に非常に優れ、柔軟性、騒音度および透明性などの物性が全体としていずれも優れていた。
【0238】
具体的に見てみると、第1樹脂層の均一度に関して、実施例1~3の多層生分解性シートの第1樹脂層の均一度(LUI)は1.12~1.91であり、多層生分解性フィルムの第1樹脂層の均一度(LUI)は0.077~0.122であって、LUIおよびLUIがそれぞれ2.3以上および0.221以上である比較例3~5の多層生分解性シートおよびフィルムに比べて第1樹脂層の均一度が著しく改善されたことがわかる。
【0239】
また、柔軟性および騒音度に関して、実施例1~3の多層生分解性フィルムは、221kgf/mm~233kgf/mmのヤング率および79.5dB以下の騒音度を有するのに対して、比較例1の単層生分解性フィルムは、384kgf/mmのヤング率および88.3dBの騒音度であって、柔軟性が低下しており、騒音度が非常に高くなることを確認した。また、比較例3~5の多層生分解性フィルムは、同一層数および厚さを有する実施例1~3の多層生分解性フィルムとそれぞれ比較してみると、柔軟性が低下しており、騒音度が非常に高くなることを確認した。
【0240】
一方、透明性に関して、実施例1~3の多層生分解性フィルムは、ヘイズがいずれも3%以下と、透明性に優れる一方、比較例1~3および5の単層または多層生分解性フィルムは、ヘイズが約3%を超えており、特に、比較例2の単層生分解性フィルムはヘイズが25%とあり、透明性が著しく減少することがわかる。
【0241】
従って、本発明の実施例1~3の多層生分解性シートおよびフィルムは、生分解性に優れるとともに、第1樹脂層の均一度に非常に優れており、最終フィルムの均一度、柔軟性、騒音度、透明性、および外観特性がいずれも優れているので、食品包装材などの包装用途をはじめとする様々な用途に環境配慮型として使用できることを確認し得る。
【符号の説明】
【0242】
100:多層生分解性フィルム
110:第1樹脂層(個別層)
110':両面最外郭層
120:第2樹脂層(個別層)
N:多層生分解性フィルムの幅方向の一端部から50mm離れた点
C:多層生分解性フィルムの幅方向の中央点
S:多層生分解性フィルムの幅方向の他端部から50mm離れた点
W:幅
W1:多層生分解性フィルムの一端部から離れた幅
W2:多層生分解性フィルムの他端部から離れた幅
L:長さ
A-A':切開線
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】