(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-23
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物および表示素子
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20240816BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240816BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20240816BHJP
G03F 7/029 20060101ALI20240816BHJP
H10K 59/122 20230101ALI20240816BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20240816BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240816BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240816BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20240816BHJP
【FI】
G03F7/027 511
G03F7/004 505
G03F7/027 502
G03F7/031
G03F7/029
G03F7/004 501
H10K59/122
H10K59/35
H10K50/86
H10K50/10
H10K85/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510225
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 KR2022012133
(87)【国際公開番号】W WO2023022452
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0109222
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515068085
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】ユン ヒョクミン
(72)【発明者】
【氏名】ヨ テフン
(72)【発明者】
【氏名】イ サンフン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン チヨン
【テーマコード(参考)】
2H225
3K107
【Fターム(参考)】
2H225AC32
2H225AC33
2H225AC36
2H225AC52
2H225AC54
2H225AC62
2H225AC72
2H225AD06
2H225AD20
2H225AE05P
2H225AN39P
2H225AN94P
2H225AN97P
2H225AN98P
2H225AP03P
2H225BA16P
2H225BA22P
2H225CA24
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
3K107CC32
3K107CC45
3K107DD89
3K107DD97
3K107FF06
3K107FF14
3K107FF15
3K107FF18
(57)【要約】
本発明は、優れた光学密度および耐光性を有しながらも、向上した透過度、光反応性および感度を示すことにより、有機電界発光素子など各種表示素子の画素分割層パターンを形成するのに好ましく適用可能な感光性樹脂組成物と、これを用いて製造された表示素子に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂;
複数の光硬化性不飽和官能基を有する多官能性化合物;
黒色顔料、または混合物状態で黒色を示す顔料混合物を含む顔料;および
光開始剤を含み、
前記アルカリ可溶性樹脂は、2以上のフェノール性ヒドロキシ基を有するフェノール系化合物由来の繰り返し単位と、主鎖の両末端に複数の光硬化性不飽和官能基を有する樹脂である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記フェノール系化合物由来の繰り返し単位は、エーテル(ether、-O-)連結基を介して前記光硬化性不飽和官能基と結合する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記フェノール系化合物由来の繰り返し単位は、分子中に2~6個の芳香族環および0~4個の脂環式環を有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルカリ可溶性樹脂は、下記の一般式1の構造を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物:
<一般式1>
(AB)-(ZBA)p-(BA)
前記一般式1中、Aは、光硬化性不飽和官能基であり、
Bはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基、カルボニル基およびカルボキシ基からなる群より選択されるアルカリ可溶性官能基を含む有機基であり、
Zは、2以上のフェノール性ヒドロキシ基を有するフェノール系化合物由来の繰り返し単位であり、
pは、2~100の整数である。
【請求項5】
前記アルカリ可溶性樹脂は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が1000以上である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記アルカリ可溶性樹脂または多官能性化合物に結合した光硬化性不飽和官能基は、(メタ)アクリレート系官能基である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記アルカリ可溶性樹脂は、下記の化学式1および2からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物:
【化1】
【化2】
前記化学式1および2中、前記R
1およびR
4はそれぞれ独立して、分子中に芳香族環または脂環式環を3~8個有し、3個以上のフェノール性ヒドロキシ基を有するフェノール系化合物由来の官能基を示し、
前記R
2、R
3、R
5、R
6およびR
7はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基、カルボニル基およびカルボキシ基からなる群より選択されるアルカリ可溶性官能基を含む置換基を示し、
前記R
2’およびR
5’はそれぞれ独立して、水素またはOR
8であり、R
8はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基、カルボニル基およびカルボキシ基からなる群より選択されるアルカリ可溶性官能基を含む置換基を示し、
前記nは繰り返し数であって、2~100の整数を示す。
【請求項8】
前記化学式1および2のR
2、R
3、R
5、R
6およびR
7はそれぞれ独立して、1以上の脂環式構造を含む、請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記R
1およびR
4は、化学式3~17からなる群より選択されたフェノール系化合物に由来する官能基を示す、請求項7に記載の感光性樹脂組成物:
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【請求項10】
前記アルカリ可溶性樹脂は、下記の化学式3A~17Aからなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物:
【化3A】
【化4A】
【化5A】
【化6A】
【化7A】
【化8A】
【化9A】
【化10A】
【化11A】
【化12A】
【化13A】
【化14A】
【化15A】
【化16A】
【化17A】
前記化学式3A~17A中、nは繰り返し数であって、2~100の整数を示す。
【請求項11】
前記多官能性化合物は、2~20個の(メタ)アクリレート系官能基を有するモノマーまたはオリゴマーであって、
(メタ)アクリレート系化合物、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート系化合物およびエポキシ(メタ)アクリレート系化合物からなる群より選択された1種以上を含む、請求項6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記黒色顔料は、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、リグニンブラック、ラクタム系ブラックおよびカーボンブラックからなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記顔料混合物は、赤色顔料、青色顔料、黄色顔料、緑色顔料およびバイオレット顔料から選択された2種以上を含み、混合物状態で黒色を示す、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
前記黒色顔料または顔料混合物は、100~200nmの粒径を有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
前記光開始剤は、カルバゾール系開始剤、オキシムエステル系開始剤、アミノアルキルフェノン系開始剤およびアシルホスフィンオキシド系開始剤からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項16】
前記アルカリ可溶性樹脂の100重量部を基準として、
前記多官能性化合物の45~100重量部;
前記顔料の25~100重量部;および
前記光開始剤の2~30重量部を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項17】
炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~15のアルコキシアルキル基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびオキセタニル基からなる群より選択された1種以上の架橋基を有する架橋剤をさらに含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項18】
前記架橋剤は、化学式18~29からなる群より選択された1種以上を含む、請求項17に記載の感光性樹脂組成物;
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【請求項19】
前記アルカリ可溶性樹脂の100重量部を基準として、前記架橋剤0.1~30重量部を含む、請求項17に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項20】
前記感光性樹脂組成物は、有機溶媒をさらに含み、固形分含有量が10~50重量%になる、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項21】
前記有機溶媒は、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒およびケトン系溶媒からなる群より選択された1種以上を含む、請求項20に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項22】
基板;
前記基板上に定義された赤色、緑色および青色画素;および
前記画素の間に形成されており、請求項1~21のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化膜を含む画素分割層(pixel define layer)パターンを含む表示素子。
【請求項23】
前記硬化膜は、下記の数式1で定義される光学密度(OD;optical density)が0.5~3.0である、請求項22に記載の表示素子:
[数式1]
光学密度(OD)=2-logT
550
前記数式1中、T
550は、1μmの厚さを有する硬化膜に対して測定された550nmの光に対する光透過度(%)を示す。
【請求項24】
有機電界発光素子(OLED素子)になる、請求項22に記載の表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた光学密度および耐光性を有しながらも、向上した透過度、光反応性および感度を示すことにより、有機電界発光素子など各種表示素子の画素分割層パターンを形成するのに好ましく適用可能な感光性樹脂組成物と、これを用いて製造された表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、スマートフォン、タブレットPCおよびTVなど薄型ディスプレイが適用される多様な電子装置に、有機電界発光素子が表示素子として幅広く適用されている。
【0003】
このような有機電界発光素子は、一般に、基板上に、光取出側に形成された透光性の第1電極と、他側に形成された非透光性の第2電極とが形成されており、第1および第2電極の間に赤色、緑色および青色などの各画素が定義された有機発光層などが形成された構造を有する。また、各画素の間には、これらの画素を分割および定義するための画素分割層パターン(pixel define layer pattern)が形成されており、このような画素分割層パターンは、通常、逆テーパ構造の隔壁パターンに形成される。
【0004】
このような画素分割層パターンは、外光反射による表示素子の視認性およびコントラストの低下を防止するために、黒色顔料を含む感光性樹脂組成物を用いて一般に形成されている。このような黒色顔料含有感光性樹脂組成物で画素分割層パターンを形成する場合、このような画素分割層パターンが高い遮光性を示して外光反射を抑制可能なため、有機電界発光素子などの表示素子が優れた視認性などを示すことができる。
【0005】
代表的に、従来は、光硬化性官能基を有するポリイミド系樹脂などのアルカリ可溶性樹脂、黒色顔料、光硬化性官能基を有する多官能性化合物、および光開始剤を含む感光性樹脂組成物を用いて前記画素分割層パターンを形成できることが知られている。
【0006】
しかし、このような従来の感光性樹脂組成物を用いて隔壁および画素分割層パターンを形成する場合、最終形成された隔壁パターンなどが劣悪な光学密度および耐光性を示すことにより、前記画素分割層パターンの光安定性が十分でなくなるというデメリットがあった。また、前記黒色顔料の作用により感光性樹脂組成物の全体的な光透過度が低下して、光反応性および感度が劣悪になる問題点も存在していた。
【0007】
これに加えて、従来の感光性樹脂組成物を用いて形成された画素分割層パターンは、残膜特性、基材などに対する接着力および/または信頼性も十分でなくなることから、前記画素分割層パターンの全体的な特性を向上させることができる感光性樹脂組成物の開発が要求され続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、優れた光学密度および耐光性を有しながらも、向上した透過度、光反応性および感度を示すことにより、有機電界発光素子など各種表示素子の画素分割層パターンを形成するのに好ましく適用可能な感光性樹脂組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記感光性樹脂組成物から形成された硬化膜を画素分割層パターンを含み、優れた耐光性および光安定性と、優れた残膜特性、接着力および信頼性などを示す表示素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アルカリ可溶性樹脂;
複数の光硬化性不飽和官能基を有する多官能性化合物;
黒色顔料、または混合物状態で黒色を示す顔料混合物を含む顔料;および
光開始剤を含み、
前記アルカリ可溶性樹脂は、2以上のフェノール性ヒドロキシ基を有するフェノール系化合物由来の繰り返し単位と、主鎖の両末端に複数の光硬化性不飽和官能基を有する樹脂である、感光性樹脂組成物を提供する。
本発明はまた、基板;
前記基板上に定義された赤色、緑色および青色画素;
前記画素の間に形成されており、前記感光性樹脂組成物の硬化膜を含む画素分割層(pixel define layer)パターンを含む表示素子を提供する。
【0011】
このような表示素子において、前記硬化膜は、前記多官能性化合物の光硬化性不飽和官能基を介在して硬化および架橋されたアルカリ可溶性樹脂と、
前記硬化および架橋されたアルカリ可溶性樹脂中に分散した黒色顔料または黒色を示す顔料混合物を含む顔料とを含むことができる。
【発明の効果】
【0012】
本明細書に記載の感光性樹脂組成物は、特定構造のフェノール系化合物に由来する繰り返し単位構造を有し、複数の光硬化性不飽和官能基を有するアルカリ可溶性樹脂を含む。
【0013】
このような特定のアルカリ可溶性樹脂を含むことにより、前記感光性樹脂組成物は、優れた光学密度および耐光性を示す硬化膜の形成を可能にする。また、黒色顔料または黒色を呈する顔料混合物の含有にもかかわらず、前記感光性樹脂組成物は、大きく向上した光透過度、光反応性および感度を示すことができるので、相対的に低い光量の露光条件下でも良好な隔壁および画素分割層パターンの形成を可能にする。
【0014】
また、前記感光性樹脂組成物で形成された画素分割層パターンは、優れた信頼性、接着力および残膜特性を示すことができるので、有機電界発光素子など各種表示素子の画素を分割する画素分割層パターンなどを形成するために非常に好ましく適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】信頼性評価のためのパターン化された硬化膜および蒸着されたELおよびAlを含むITO基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則り、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0017】
また、本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるわけではない。
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートをすべて含む意味である。
【0018】
また、本明細書において、フェノール系化合物などに「由来する(繰り返し)単位」とは、前記フェノール系化合物などが他の化合物と反応したり、それ自体で重合されて形成可能な任意の単位連結構造や、重合体(または樹脂)の繰り返し構造または単位構造を総称して意味することができる。
【0019】
以下、本技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように実施例について詳細に説明する。実施例は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する具体的な実施例のみに限定されない。
【0020】
発明の一実施形態によれば、アルカリ可溶性樹脂;
複数の光硬化性不飽和官能基を有する多官能性化合物;
黒色顔料、または混合物状態で黒色を示す顔料混合物を含む顔料;および
光開始剤を含み、
前記アルカリ可溶性樹脂は、2以上のフェノール性ヒドロキシ基を有するフェノール系化合物由来の繰り返し単位と、主鎖の両末端に複数の光硬化性不飽和官能基を有する樹脂である、感光性樹脂組成物が提供される。
【0021】
前記一実施形態の感光性樹脂組成物は、複数のフェノール性ヒドロキシ基を有し、芳香族環などの環構造を含むフェノール系化合物に由来する繰り返し単位構造を有するアルカリ可溶性樹脂を含む。具体的な一例において、前記繰り返し単位は、芳香族環および/または選択的な脂環式環の環構造を3個以上含むことができる。より具体的な例において、前記芳香族環の少なくとも一部は、1個または2個のフェノール性ヒドロキシ基を有することができ、前記繰り返し単位は、分子中に2~6個の芳香族環および0~4個の脂環式環を有することによって、全体的に3個以上、あるいは3~6個、あるいは3~5個のフェノール性ヒドロキシ基を有することができる。
【0022】
また、このようなアルカリ可溶性樹脂において、少なくとも主鎖の両末端には露光によって硬化反応を起こす複数の光硬化性不飽和官能基が結合している。具体的な一例において、前記光硬化性不飽和官能基は、例えば、前記フェノール性ヒドロキシ基に由来するエーテル(ether、-O-)連結基を介して前記フェノール系化合物由来の繰り返し単位と結合できる。
【0023】
上述した構造のアルカリ可溶性樹脂が含まれることによって、前記感光性樹脂組成物は、黒色顔料または黒色を呈する顔料混合物の含有にもかかわらず、大きく向上した光透過度、光開始剤などとの光反応性および感度を示し得ることが確認された。これは、前記芳香族環および選択的な脂環式環の含有によるコンジュゲーション構造が感光性樹脂組成物の光透過度を向上させることができるためと見られる。したがって、一実施形態の感光性樹脂組成物は、相対的に低い光量の露光条件下でも良好な隔壁および画素分割層パターンの形成を可能にする。
【0024】
また、前記アルカリ可溶性樹脂および黒色顔料または顔料混合物の相互作用により、前記一実施形態の感光性樹脂組成物から形成された硬化膜は、優れた光学密度および耐光性を示し得ることが確認された。
【0025】
付け加えて、前記アルカリ可溶性樹脂は少なくとも、1000以上、あるいは2000~30000のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)を有することができる。これによって、前記感光性樹脂組成物は、上述した光透過度、感度および光反応性や耐光性などがさらに向上できる。
【0026】
これとは異なり、前記アルカリ可溶性樹脂の構造、例えば、環構造またはフェノール性ヒドロキシ基の個数や、重量平均分子量の範囲が上述した範囲を超える場合、組成物の感度や光透過度などが低下したり、光学密度および耐光性などが低下して、感光性樹脂組成物で形成された硬化膜、隔壁および画素分割層パターンの接着力および残膜特性などが大きく低下する恐れがあることが確認された。
【0027】
これとは異なり、一実施形態の感光性樹脂組成物を使用すれば、優れた信頼性、耐光性、接着力および残膜特性などを示す画素分割層パターンを形成可能なため、前記一実施形態の組成物は、有機電界発光素子など各種表示素子の画素を分割する画素分割層パターンなどを形成するために非常に好ましく適用可能である。
以下、一実施形態の感光性樹脂組成物を各成分別により具体的に説明する。
【0028】
まず、一実施形態の組成物は、所定のアルカリ可溶性樹脂を含む。このようなアルカリ可溶性樹脂は、分子中に芳香族環などの環構造を有し、2以上、あるいは3以上のフェノール性ヒドロキシ基を有するフェノール系由来の繰り返し単位を含む。具体的な一例によれば、前記繰り返し単位は、芳香族環と、選択的に脂環式環の環構造を3個以上、あるいは3~8個、あるいは3~7個有することができ、全体的に3以上のフェノール性ヒドロキシ基を有することができる。
【0029】
より具体的な例において、前記芳香族環の少なくとも一部は、1個または2個のフェノール性ヒドロキシ基を有することができ、前記繰り返し単位は、分子中に2~6個の芳香族環および0~4個の脂環式環を有することによって、全体的に3以上、あるいは3~6個、あるいは3~5個のフェノール性ヒドロキシ基を有することができる。
【0030】
このようなフェノール系化合物由来の繰り返し単位は、後述する具体例から確認されるように、前記フェノール系化合物のフェノール性ヒドロキシ基がエポキシ化された状態で重合された形態の構造を有する。このような繰り返し単位は、前記フェノール性ヒドロキシ基などに由来するエーテル(ether、-O-)連結基を介して前記光硬化性不飽和官能基と結合でき、このような光硬化性不飽和官能基は、少なくとも前記アルカリ可溶性樹脂の主鎖の両末端に結合できる。
【0031】
より具体的な例において、前記繰り返し単位は、前記エポキシ化されたフェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一部に複数の光硬化性不飽和官能基、例えば、(メタ)アクリレート系官能基が結合した構造を有し、これとともに、例えば、水素、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基、カルボニル基およびカルボキシ基などからなる群より選択されるアルカリ可溶性官能基が直接結合したり、このようなアルカリ可溶性官能基含有置換基が結合した構造を有することができる。
【0032】
前記アルカリ可溶性樹脂が特定のフェノール系化合物由来の繰り返し単位を有することによって、一実施形態の組成物は、向上した光透過度および感度を示すことができ、光開始剤の介在下で多官能性化合物との優れた光反応性を示すことができる。これによって、耐光性および光学密度に優れ、接着力および残膜特性などの諸特性に優れた硬化膜の形成を可能にする。
【0033】
また、前記アルカリ可溶性樹脂に含まれている光硬化性不飽和官能基は、露光部で光開始剤の介在下で多官能性化合物の光硬化性不飽和官能基と光硬化可能なため、それ以上アルカリ可溶性を帯びず隔壁および画素分割層パターンに残留可能になる。
【0034】
これに加えて、前記樹脂中のアルカリ可溶性官能基の存在によって、前記感光性樹脂組成物は、未露光部でアルカリ性現像液、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液によって現像および除去可能である。より具体的には、前記アルカリ可溶性樹脂は、未露光部で、前記アルカリ性現像液、例えば、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液によって、200~2,000Å/secの現像速度で現像および除去できる。
上述した構造的特性を有するアルカリ可溶性樹脂は、例えば、下記の一般式1の構造を有することができる:
<一般式1>
(AB)-(ZBA)p-(BA)
【0035】
前記一般式1中、Aは、光硬化性不飽和官能基であり、Bはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基、カルボニル基およびカルボキシ基からなる群より選択されるアルカリ可溶性官能基を含む有機基であり、Zは、2以上のフェノール性ヒドロキシ基を有するフェノール系化合物由来の繰り返し単位であり、Pは、2~100の整数である。
【0036】
より具体的な例において、上述したアルカリ可溶性樹脂は、下記の化学式1および2で表される構造を有することができ、このような化学式1および2の範疇に属する樹脂の1種以上を含むことができる:
【化1】
【化2】
【0037】
前記化学式1および2中、前記R1およびR4はそれぞれ独立して、分子中に芳香族環または脂環式環を3~8個有し、3個以上のフェノール性ヒドロキシ基を有するフェノール系化合物由来の官能基を示し、
前記R2、R3、R5、R6およびR7はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基、カルボニル基およびカルボキシ基からなる群より選択されるアルカリ可溶性官能基を含む置換基を示し、
前記R2’およびR5’はそれぞれ独立して、水素またはOR8であり、R8はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、炭素数1~5のアルコキシ基、カルボニル基およびカルボキシ基からなる群より選択されるアルカリ可溶性官能基を含む置換基を示し、
前記nは繰り返し数であって、2~100の整数を示す。
【0038】
また、前記化学式1および2のR
2、R
3、R
5、R
6およびR
7はそれぞれ独立して、1以上の脂環式構造を含むことができる。例えば、前記化学式1および2のそれぞれ独立してR
2、R
3、R
5、R
6およびR
7はそれぞれ独立して、1~3の脂環式構造を含むことができる。さらに具体的な一例において、前記アルカリ可溶性樹脂に含まれる繰り返し単位は、特定のフェノール系化合物由来の官能基(連結構造)を含むことができるが、このような官能基(連結構造)になる前記R
1およびR
4の具体例としては、下記の化学式3~17からなる群より選択されたフェノール系化合物に由来する官能基(連結構造)が挙げられる:
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【0039】
上述したアルカリ可溶性樹脂の具体例としては、下記の化学式3A~17Aからなる群より選択された1種以上が挙げられ、その他にも化学式1または2に包括される多様な構造を有してもよいことはもちろんである:
【化3A】
【化4A】
【化5A】
【化6A】
【化7A】
【化8A】
【化9A】
【化10A】
【化11A】
【化12A】
【化13A】
【化14A】
【化15A】
【化16A】
【化17A】
前記化学式3A~17A中、nは繰り返し数であって、2~100の整数を示す。
【0040】
一方、上述したアルカリ可溶性樹脂は、ポリスチレン換算重量平均分子量が1000以上、あるいは2000~30000、あるいは2000~20000となるように重合度が調節されることにより、一実施形態の組成物の光透過度、感度および光反応性をさらに向上させることができ、一歩進んで、一実施形態の組成物で形成された硬化膜などの耐光性、光学密度、接着力および残膜特性をさらに向上させることができる。このような重量平均分子量が上述した範囲を超える場合、アルカリ可溶性樹脂の感度や光反応性などが低下したり、硬化膜の残膜特性や接着力などが劣悪になったり、または耐光性が十分でなくなる恐れがある。
【0041】
また、上述したアルカリ可溶性樹脂は、上述したフェノール系化合物をエピクロロヒドリンなどのエポキシ化剤と反応させて、前記フェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一部をエポキシ化する段階;前記エポキシ化された化合物を前記nの重合度を有するように重合する段階;前記重合体を(メタ)アクリル酸またはその誘導体と反応させてエポキシ化されたフェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一部に(メタ)アクリレート系官能基などの光硬化性不飽和官能基を結合させる段階;および選択的に、前記光硬化性不飽和官能基が結合した重合体(樹脂)にアルカリ可溶性官能基を導入する段階を含む方法で製造することができる。
【0042】
この時、前記エポキシ化剤は、前記フェノール性ヒドロキシ基以下の当量で投入および使用可能である。万一、前記エポキシ化剤の投入当量がフェノール性ヒドロキシ基より高い場合、残留ヒドロキシ基が残らず前記重合段階がうまく進められないことがある。また、前記重合段階では、重合温度および時間の制御によって、アルカリ可溶性樹脂の好ましい重合度および重量平均分子量が達成できる。
【0043】
一方、上述した各反応段階の進行は、通常のエポキシ化反応条件、重合条件および(メタ)アクリル化反応条件などによることができ、具体的な反応条件および進行方法は後述する製造例などにも記載されているので、これに関する追加的な説明は省略する。
【0044】
一方、一実施形態の感光性樹脂組成物は、複数の光硬化性不飽和官能基を有する多官能性化合物を含む。このような多官能性化合物は、感光性樹脂組成物の露光部で、光開始剤の介在下で上述したアルカリ可溶性樹脂と光硬化反応を起こして架橋構造を形成することができ、現像液によって除去されない隔壁および画素分割層パターンを定義できる。
【0045】
このような多官能性化合物は、多様な光硬化性不飽和官能基を有することができるが、より好適には、上述したアルカリ可溶性樹脂と同種の不飽和官能基、例えば、(メタ)アクリレート系官能基を有することができる。
【0046】
より具体的な例において、前記多官能性化合物は、2~20個の(メタ)アクリレート系官能基を有するモノマーまたはオリゴマーになってもよいし、例えば、アルキル(メタ)アクリレート系化合物またはヒドロキシ(メタ)アクリレート系化合物などの(メタ)アクリレート系化合物、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート系化合物およびエポキシ(メタ)アクリレート系化合物からなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0047】
このような多官能性化合物のより具体的な例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートおよび1,6-ヘキサンジオールジアクリレートからなる群より選択された1種以上が挙げられる。
【0048】
ただし、前記多官能性化合物の種類は特に制限されず、以前から感光性樹脂組成物に使用可能と知られたものであったり、商業的に入手可能な多官能性(メタ)アクリレート系化合物などの多官能性化合物を特別な制限なくすべて使用可能である。
【0049】
一方、一実施形態の感光性樹脂組成物は、黒色顔料、または混合物状態で黒色を示す顔料混合物を含む顔料を含む。このような黒色顔料または顔料混合物は、感光性樹脂組成物および硬化膜の光反射などを抑制して表示素子の視認性やコントラストを向上させるために含まれる。また、このような黒色顔料などが含まれて、前記組成物から形成された硬化膜などの耐光性および光学密度がさらに向上できる。
【0050】
前記黒色顔料としては、有機系黒色顔料または無機系黒色顔料をすべて使用可能であり、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、リグニンブラック、ラクタム系ブラックおよびカーボンブラックからなる群より選択された1種以上の黒色顔料を特別な制限なく使用可能である。
【0051】
また、前記顔料は、他の色の顔料が複数種混合されて全体的に黒色を示す顔料混合物が含まれてもよい。より具体的な一例によれば、このような前記顔料混合物は、赤色顔料、青色顔料、黄色顔料、緑色顔料およびバイオレット顔料から選択された2種以上を含み、混合物状態で全体的に黒色を示すものであってもよい。
【0052】
この時、前記顔料混合物を得るための他の色の顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントバイオレット、C.I.ピグメントブルーおよびC.I.ピグメントグリーンからなる群より選択された1種以上が挙げられ、その他にも多様な追加顔料を使用してもよいことはもちろんである。つまり、このような他の色の顔料の複数種を当業者に自明な配合比に応じて混合して、全体的に黒色を示す顔料混合物を得て、これを一実施形態の組成物に含ませることができる。
一方、上述した黒色顔料または顔料混合物以外に、追加的に上述した他の色の追加顔料をさらに含ませてもよいことはもちろんである。
【0053】
上述した黒色顔料または顔料混合物を含む顔料は、100~200nmの粒径を有する粒子状顔料であってもよい。このような微細粒径の顔料を用いることによって、表示素子の耐光性や視認性などをさらに向上させることができる。
【0054】
また、前記顔料は、他の成分と適切に混合されて均一に分散または溶解できるように、有機溶媒、例えば、プロピレングリコールメチルエーテル、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートおよびエチルラクテートからなる群より選択された1種以上の有機溶媒に分散した顔料分散液の形態で、他の成分と混合できる。
【0055】
一方、一実施形態の組成物は、光開始剤をさらに含む。このような光開始剤は、露光部で、上述したアルカリ可溶性樹脂および多官能性化合物間の光硬化および架橋反応を開始および促進させることができる。
【0056】
このような光開始剤としては、以前から感光性樹脂組成物に使用可能と知られた任意の光開始剤を特別な制限なくすべて使用可能であり、その例としては、カルバゾール系開始剤、オキシムエステル系開始剤、アミノアルキルフェノン系開始剤およびアシルホスフィンオキシド系開始剤からなる群より選択された1種以上が挙げられる。このような光開始剤のより具体的な例としては、2-オクタンジオン-1[(4-フェニルチオ)フェニル]-2-ベンゾイル-オキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-O-アセチルオキシム、(E)-2-(アセトキシイミノ)-1-(9,9-ジエチル-9H-フルオレン-2-yl)ブタノンおよびフェニル(4-メトキシフェニル)ヨードニウム六フッ化ヒ素からなる群より選択された1種以上が挙げられ、その他の多様な光開始剤を使用することができる。
【0057】
上述した一実施形態の感光性樹脂組成物は、前記アルカリ可溶性樹脂の100重量部を基準として、前記多官能性化合物の45~100重量部;前記顔料の25~100重量部;および前記光開始剤の2~30重量部を含むことができる。各成分の含有量が上述した範囲を超える場合、表示素子の視認性が低下したり、硬化膜の耐光性、光学密度、残膜特性および接着力などが低下したり、組成物の感度、光反応性または光透過度などが低下する恐れがある。
【0058】
一方、一実施形態の組成物は、上述した各成分以外にも、露光部で前記アルカリ可溶性樹脂および/または多官能性化合物と追加反応して硬化膜内に追加架橋構造を導入するための架橋剤をさらに含んでもよい。このような架橋剤としては、例えば、メトキシ基またはエトキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基、アルコキシメチル基またはアルコキシエチル基などの炭素数1~15のアルコキシアルキル基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびオキセタニル基からなる群より選択された1種以上の架橋基を有する化合物を使用することができる。
【0059】
より具体的な例において、前記架橋剤は、化学式18~29からなる群より選択された1種以上を含むことができ、その他にも上述した架橋基を有する多様な化合物を特別な制限なく使用可能である;
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【0060】
上述した架橋剤は、前記アルカリ可溶性樹脂の100重量部を基準として、0.1~30重量部の含有量で含まれる。前記架橋剤の含有量が過度に高くなれば、未露光部で現像性の増加による接着力が低下する問題点が発生することがある。
【0061】
一方、一実施形態の感光性樹脂組成物は、上述した各成分を溶媒または分散させるための有機溶媒をさらに含むことができる。このような有機溶媒は、上述した各成分を均一に溶媒または分散させながら、溶媒除去などの工程が容易に行われるように、全体組成物の固形分含有量が10~50重量%になる含有量で含まれる。
【0062】
このような有機溶媒の種類は特に制限されず、以前から感光性樹脂組成物に使用可能と知られた任意の溶媒、例えば、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒およびケトン系溶媒からなる群より選択された1種以上の有機溶媒を使用することができる。
【0063】
一方、上述した感光性樹脂組成物は、対象基板上に塗布され、フォトマスクを介して隔壁または画素分割層パターンが残留する部分を露光して、当該露光部の組成物を光硬化し、残りの未露光部の組成物をアルカリ性現像液、例えば、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などで処理して現像および除去する方法により、硬化膜、より具体的には逆テーパ構造の隔壁パターンまたは画素分割層パターン形態に形成される。
【0064】
ただし、このようなパターン形成方法の具体的な進行条件は、一般的な感光性樹脂組成物のパターン形成条件に従い、後述する実施例にも記載されているので、これに関する追加的な説明は省略する。
【0065】
一方、発明の他の実施形態によれば、前記一実施形態の組成物で形成された硬化膜/隔壁パターンを画素分割層パターンに含む表示素子を提供する。このような表示素子は、基板;前記基板上に定義された赤色、緑色および青色画素;および前記画素の間に形成されており、前記一実施形態の感光性樹脂組成物の硬化膜を含む画素分割層(pixel define layer)パターンを含むことができる。
【0066】
このような他の実施形態の表示素子は、一実施形態の組成物で形成された硬化膜を画素分割層パターンに含むことにより、優れた視認性およびコントラストを有することができ、前記画素分割層パターンに優れた耐光性、残膜特性、信頼性および基板に対する接着力などを示すことができる。
【0067】
例えば、前記硬化膜は、下記の数式1で定義される光学密度(OD;optical density)が0.5~3.0になって、優れた耐光性を示すことができる:
[数式1]
光学密度(OD)=2-logT550
前記数式1中、T550は、1μmの厚さを有する硬化膜に対して測定された550nmの光に対する光透過度(%)を示す。
【0068】
前記他の実施形態の表示素子において、前記硬化膜は、一実施形態の組成物に含まれている前記多官能性化合物および前記アルカリ可溶性樹脂にそれぞれ含まれている光硬化性不飽和官能基と、選択的に含まれている架橋剤の架橋基とが硬化して架橋構造を形成した樹脂マトリックスを含み、このような樹脂マトリックス、つまり、前記硬化および架橋されたアルカリ可溶性樹脂中に分散した黒色顔料または黒色を示す顔料混合物を含む顔料を含む化学構造を有することができる。
【0069】
一方、上述した他の実施形態の表示素子は、有機電界発光素子(OLED素子)などの多様な表示素子になってもよく、一実施形態の組成物で形成された画素分割層パターンを含むことを除けば各表示素子の一般的な構造を有することができるので、より詳細な説明は省略する。
【0070】
以下、発明の理解のために実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらのみに限定するのではない。
製造例:アルカリ可溶性樹脂の合成
製造例1:化学式3Aのアルカリ可溶性樹脂の合成
【化3A】
前記化学式3A中、nは繰り返し数であって、2~100の整数を示す。
以下に記載の方法により、化学式3Aの構造を有するアルカリ可溶性樹脂を合成した。
【0071】
まず、化学式3の4,4-[1-[4-[1-(1,4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールにエピクロロヒドリンを2.0当量投入し、トリエチルアミン下で溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを固形分が反応液の80重量%となるように加え、100℃で24時間反応させて反応性エポキシカルボキシレート化合物溶液を得た。この時、反応時間を調節して前記化合物の重合度、繰り返し数nおよび重量平均分子量を調節した(これによって、後述する各実施例に含まれているアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量を調節した)。
【0072】
以後、2-ヒドロキシプロピルアクリレートを投入し、55℃で24時間反応させてフェノール系化合物のエポキシがアクリレート化されたアルカリ可溶性樹脂を得た。最後に、フタリックアンハイドライドを投入し、100℃で24時間反応させて最終アルカリ可溶性樹脂を得た。
製造例2~15:化学式4A~17Aのアルカリ可溶性樹脂の合成
【化4A】
【化5A】
【化6A】
【化7A】
【化8A】
【化9A】
【化10A】
【化11A】
【化12A】
【化13A】
【化14A】
【化15A】
【化16A】
【化17A】
前記化学式4A~17A中、nは繰り返し数であって、2~100の整数を示す。
【0073】
前記製造例1において、フェノール系化合物として、化学式3の化合物の代わりに、化学式4~17から選択された化合物を用いたことを除けば製造例1と同様の方法により、前記化学式4A~17Aで表される製造例2~15のアルカリ可溶性樹脂をそれぞれ得た。
【0074】
このような製造例2~15においても、最初の反応段階の反応時間を調節して前記アルカリ可溶性樹脂の重合度、繰り返し数nおよび重量平均分子量を調節した(これによって、後述する各実施例に含まれているアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量を調節した)。
比較製造例1および2:化学式30および31のアルカリ可溶性樹脂の合成
【化30】
【化31】
前記化学式30および31中、nは繰り返し数であって、2~100の整数を示す。
【0075】
前記製造例1において、フェノール系化合物として、化学式3の化合物の代わりに、クレゾールノボラック化合物またはビフェニル含有化合物を用いたことを除けば製造例1と同様の方法により、前記化学式30または31で表される比較製造例1および2のアルカリ可溶性樹脂をそれぞれ得た。
【0076】
このような比較製造例1および2においても、最初の反応段階の反応時間を調節して前記アルカリ可溶性樹脂の重合度、繰り返し数nおよび重量平均分子量を調節した(これによって、後述する各比較例に含まれているアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量を調節した)。
実施例1~30および比較例1~4:感光性樹脂組成物の製造および硬化膜の形成
【0077】
下記表1~3に記載の組成により、アルカリ可溶性樹脂、多官能性化合物、顔料、光開始剤、架橋剤およびポリエチレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)の有機溶媒を固形分含有量が約20重量%となるように均一に撹拌下で混合して、実施例および比較例の感光性樹脂組成物を製造した。この時、各顔料番号で表された黒色顔料の組成は表1に記載の通りであり、各実施例および比較例で使用された多官能性化合物および光開始剤の組成は表2に記載の通りであり、全体感光性樹脂組成物の組成は表3に記載の通りであった。
【0078】
前記感光性樹脂組成物をITO基板上に回転塗布した後、オーブンで100~120℃の温度下で2分間プリベークして硬化膜を形成した。この時、硬化膜は約1μmの厚さに形成された。
【0079】
【表1】
*全体顔料の100重量部を基準として、各顔料の含有量を重量部で表示する。
*顔料2は、赤色、青色およびバイオレット顔料が混合されて、全体的に黒色を呈する顔料混合物である。
【0080】
【0081】
*各実施例および比較例の感光性樹脂組成物において、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して含まれる各光開始剤および架橋剤の相対的含有量を重量部で表示する。
*光開始剤化合物名:
1.開始剤1:1,2-オクタンジオン-1[(4-フェニルチオ)フェニル]-2-ベンゾイル-オキシム;
2.開始剤2:1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-O-アセチルオキシム;
3.開始剤3:(E)-2-(アセトキシイミノ)-1-(9,9-ジエチル-9H-フルオレン-2-yl)ブタノン;
4.開始剤4:フェニル(4-メトキシフェニル)ヨードニウム六フッ化ヒ素
*架橋剤化合物名:
1.DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;
2.DPPA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;
3.DTTA:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート;
4.TPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート;
5.TCDA:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート。
【0082】
【表3】
*各実施例および比較例の感光性樹脂組成物において、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して含まれる残りの各成分の相対的総含有量を重量部で表示する。
試験例:アルカリ可溶性樹脂、感光性樹脂組成物の製造および硬化膜パターンの物性評価
【0083】
1.アルカリ可溶性樹脂のMwの測定:
前記製造例および比較製造例で製造された各アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量はGPC分析により測定した。
より具体的には、前記GPC分析は、Waters2695、PDA996装置でKF-803、KF-802、KF-801カラムを用いて行い、当該カラムで標準物質としてポリスチレンを用い、テトラヒドロフランを移動相として用いて、流量1ml/minの条件下で測定した。このように測定された各アルカリ可溶性樹脂のMwは前記表3に記載されている。
【0084】
2.感度評価:
前記実施例および比較例で形成された硬化膜に、所定のパターンマスクを用いて、365~435nmでの強度が20mW/cm2の紫外線を1秒間隔で1~20秒間照射した。次に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38重量%の水溶液で23℃で1分間現像した後、超純水で1分間洗浄した。
最終硬化のために、オーブン内で260℃で60分間加熱して硬化膜パターンを得た。SEMを用いて20μmのLine&Space CD基準で残膜率が飽和(saturation)する露光量を感度として測定した。
残膜率が飽和する露光量基準で100mJ以下:◎、100~200mJ:○、200mJ以上:Xとそれぞれ評価して、下記表4にまとめて示した。
【0085】
3.光学密度(OD)評価:
前記感度評価時と同様の硬化膜パターン形成過程で、パターンマスクを介在せず、残りの工程を同様に実施して最終硬化後の厚さが1.0μmの硬化膜を製造した後、この硬化膜に対して光学密度計(361T、Xlite社)を用いて550nmでの透過率を測定して、1μmの厚さに対する光学密度を求めた。
このような光学密度は、前記光透過度から下記の数式1により算出した:
[数式1]
光学密度(OD)=2-logT550
前記数式1中、T550は、1μmの厚さを有する硬化膜に対して測定された550nmの光に対する光透過度(%)を示す。
当該OD評価結果は、下記表4にまとめて示した。
【0086】
4.残渣評価:
前記感度評価時に同様に硬化膜を形成した後、この硬化膜に対して光学顕微鏡(OLS-4100、オリンパス社)を用いて20μmのContact Holeで残渣を測定して、残渣がない場合:○、ある場合:Xとそれぞれ評価して、下記表4にまとめて示した。
【0087】
5.接着力評価:
前記感度評価時に同様に硬化膜を形成した後、この硬化膜に対して光学顕微鏡(OLS-4100、オリンパス社)を用いて20μmのContact Holeで接着力を測定して、接着力に異常がない場合:○、Peel offが発生した場合:Xとそれぞれ評価して、下記表4にまとめて示した。
【0088】
6.直進性評価:
前記感度評価時に同様に硬化膜を形成した後、この硬化膜に対して光学顕微鏡(OLS-4100、オリンパス社)を用いて20μmのContact Holeで直進性を測定して、直進性に優れている場合:○、直進性が低下した場合:Xとそれぞれ評価して、下記表4にまとめて示した。
【0089】
7.信頼性評価:
前記感度評価時に同様に硬化膜を形成し、
図1のような形態にパターン化されたITO基板上に硬化膜パターンを形成し、ELを蒸着した。上部にCathode電極としてAlを蒸着し、Encapsulation工程を行った。85℃、85%RH基準、素子Onの状態で3%輝度Drop時間(T97)を評価した。1000時間以上確保される場合を○、1000時間未満の場合をXと評価して、その評価結果を下記表4にまとめて示した。
【0090】
【0091】
前記表4を参照すれば、所定のアルカリ可溶性樹脂および黒色顔料または混合物を含む実施例の感光性樹脂組成物を用いて硬化膜およびパターンを形成する場合、その感度、OD、残渣、接着性、パターンの直前性および信頼性などの諸特性に優れていることが確認された。
【0092】
これに対し、実施例と異なるアルカリ可溶性樹脂を含む比較例1~4の感光性樹脂組成物を用いる場合、硬化膜およびそのパターンの諸特性の1つ以上が劣悪になることが確認された。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
このような光開始剤としては、以前から感光性樹脂組成物に使用可能と知られた任意の光開始剤を特別な制限なくすべて使用可能であり、その例としては、カルバゾール系開始剤、オキシムエステル系開始剤、アミノアルキルフェノン系開始剤およびアシルホスフィンオキシド系開始剤からなる群より選択された1種以上が挙げられる。このような光開始剤のより具体的な例としては、1,2-オクタンジオン-1[(4-フェニルチオ)フェニル]-2-ベンゾイル-オキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-O-アセチルオキシム、(E)-2-(アセトキシイミノ)-1-(9,9-ジエチル-9H-フルオレン-2-yl)ブタノンおよびフェニル(4-メトキシフェニル)ヨードニウム六フッ化ヒ素からなる群より選択された1種以上が挙げられ、その他の多様な光開始剤を使用することができる。
【国際調査報告】